(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-25
(54)【発明の名称】電荷を有するシクロデキストリンポリマー材料ならびにその製造法及び使用法
(51)【国際特許分類】
C08G 18/64 20060101AFI20220317BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20220317BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20220317BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20220317BHJP
B01D 15/00 20060101ALI20220317BHJP
A62D 9/00 20060101ALI20220317BHJP
C02F 1/28 20060101ALI20220317BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20220317BHJP
C08G 65/40 20060101ALI20220317BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20220317BHJP
【FI】
C08G18/64 084
B01J20/26 A
B01J20/26 E
B01J20/26 G
B01J20/34 G
B01J20/34 H
B01D53/04
B01D15/00 K
A62D9/00
C02F1/28 Z
C02F1/28 A
C02F1/28 B
C08G18/00 F
C08G65/40
C08G101:00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021543475
(86)(22)【出願日】2020-02-13
(85)【翻訳文提出日】2021-07-27
(86)【国際出願番号】 US2020018149
(87)【国際公開番号】W WO2020168104
(87)【国際公開日】2020-08-20
(32)【優先日】2019-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521328744
【氏名又は名称】サイクロピュア, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】バリン, ゴクハン
(72)【発明者】
【氏名】スプルエル, ジェイソン エム.
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン, モイラ
(72)【発明者】
【氏名】リー, シャン
【テーマコード(参考)】
4D012
4D017
4D624
4G066
4J005
4J034
【Fターム(参考)】
4D012BA01
4D012CA10
4D012CA20
4D012CB11
4D012CG01
4D012CG03
4D017BA03
4D017CA13
4D017CA14
4D017CB01
4D017CB03
4D017CB05
4D624AA02
4D624AA04
4D624AA07
4D624AB11
4D624AB16
4D624BA17
4D624BB01
4D624BB02
4D624BB03
4D624BB08
4D624BC01
4D624CA01
4D624DA07
4D624DB06
4G066AA03C
4G066AA20C
4G066AA22C
4G066AA23C
4G066AA30C
4G066AA71C
4G066AB05A
4G066AB10A
4G066AB21A
4G066AB26A
4G066AC01B
4G066AC01C
4G066AC02C
4G066AC03C
4G066AC13C
4G066AC14C
4G066AC15C
4G066AC21C
4G066AC23C
4G066AC26C
4G066AC27C
4G066AC28C
4G066AC31B
4G066AC33B
4G066AC35B
4G066BA03
4G066BA09
4G066BA16
4G066BA22
4G066CA01
4G066CA19
4G066CA32
4G066CA46
4G066CA56
4G066DA03
4G066DA07
4G066DA11
4G066GA01
4G066GA11
4J005AA24
4J005BB01
4J005BC00
4J034BA02
4J034CA03
4J034CB02
4J034CC37
4J034CC46
4J034CC61
4J034CC62
4J034EA04
4J034HA01
4J034HA07
4J034HB11
4J034HB12
4J034HB17
4J034HC03
4J034HC08
4J034HC09
4J034HC12
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA01
4J034JA02
4J034JA12
4J034JA30
4J034JA32
4J034NA03
4J034QB04
4J034QB13
4J034QB15
4J034QC01
4J034QC04
4J034RA02
4J034RA04
4J034RA05
(57)【要約】
本開示は、アニオン性微量汚染物質などの微量汚染物質から流体試料を精製するための電荷を有するポリマー材料及びそれらの使用方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化34】
を有する複数の架橋で架橋された複数のシクロデキストリンを含む、多孔質ポリマー材料であって、
式中、
Aは、アリールまたはヘテロアリール部分であり、
各R
1は、H、C
1~C
6アルキル、C
1~C
3ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-CF
3、-SO
3H、-CN、-NO
2、-NH
2、-NCO、-C(O)
2R
3、-C(O)N(R
3)
2、及び-ハロゲンからなる群から独立して選択され、
各R
2は、独立して、H、-OH、-O-金属カチオン、アルキル、アリール、ヘテロアリール、-SH、-S-金属カチオン、-S-アルキル、-C(O)
2H、または-C(O)NH
2であり、
各R
3は、独立して、-H、-C
1~C
6アルキル、-C
1~C
3 ハロアルキル、アリール、-C(O)N(R
a)(R
b)、-C(O)R
c、-CO
2R
c、-SO
2N(R
a)(R
b)、または-SOR
cであり、各R
a及びR
bは、独立して、H、またはC
1~C
6アルキルであり、
各Wは、独立して、結合、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、-O-アリーレン-、-(CH
2)
a-アリーレン-、-SO
2-アリーレン-、-NH-アリーレン-、-S-アリーレン-、-O-ヘテロアリーレン-、-(CH
2)
a-ヘテロアリーレン-、-SO
2-ヘテロアリーレン-、-NH-ヘテロアリーレン-、-S-ヘテロアリーレン-、-(-O-(CH
2)
a-)
x-、-(-NH-(CH
2)
a-)
x-、-(-S-(CH
2)
a-)
x-、
【化35】
であり、aは、0~100であり、xは、1~100であり、各アリーレンまたはヘテロアリーレン部分は、置換または非置換であってよく、
各Zは、カチオン性部分またはアニオン性部分であり、
各Lは、独立して、-O-、-S-、-N-、C
1~C
6の置換または非置換のアルキレン、C
1~C
3のハロアルキレン、
【化36】
からなる群から選択される連結部分であり、
A’は、Aへの共有結合であり、
Z’は、Zへの共有結合であり、
*は、
【化37】
への共有結合であり、
【化38】
は、複数のシクロデキストリン炭素原子への結合点であり、
xは、0~8であり、
y
1は、1~4であり、
y
2は、1~4であり、
y
3は、0~4である、
前記多孔質ポリマー材料。
【請求項2】
前記カチオン性部分が、-N(R
3)
3
+、-P(R
3)
3
+、-S(R
3)
2
+、または-ヘテロアリール
+である、請求項1に記載の多孔質ポリマー材料。
【請求項3】
前記アニオン性部分が、
【化39】
であり、各R
3が、独立して、-H、C
1~C
6アルキル、C
1~C
3ハロアルキル、アリール、-C(O)N(R
a)(R
b)、-C(O)R
c、-CO
2R
c、-SO
2N(R
a)(R
b)、または-SOR
cであり、各R
a及びR
bが、独立して、H、またはC
1~C
6アルキルである、請求項1に記載の多孔質ポリマー材料。
【請求項4】
各カチオン性部分が、-N(R
3)
3
+である、請求項2に記載の多孔質ポリマー材料。
【請求項5】
各カチオン性部分が、-N(Me)
3
+である、請求項4に記載の多孔質ポリマー材料。
【請求項6】
-W-Zのそれぞれが、一緒になって、-O-CH
2-CH
2-N(Me)
3
+を形成する、請求項5に記載の多孔質ポリマー材料。
【請求項7】
各Lが、-O-である、先行請求項のいずれかに記載の多孔質ポリマー材料。
【請求項8】
Aがアリールであり、フェニル、ナフチル、ピリジル、ベンゾフラニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、トリアジニル、キノリン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、1H-ベンズイミダゾール、イソキノリン、キナゾリン、キノキサリン、ピロール、インドール、ビフェニル、ピレニル、及びアントラセニルからなる群から選択される、先行請求項のいずれかに記載の多孔質ポリマー材料。
【請求項9】
Aが、フェニルである、先行請求項のいずれかに記載の多孔質ポリマー材料。
【請求項10】
各シクロデキストリンが、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、先行請求項のいずれかに記載の多孔質ポリマー材料。
【請求項11】
各シクロデキストリンが、β-シクロデキストリンである、請求項10に記載の多孔質ポリマー材料。
【請求項12】
各R
1が、-F、-Me、-CN、または-NH
2である、先行請求項のいずれかに記載の多孔質ポリマー材料。
【請求項13】
xが、1~4である、先行請求項のいずれかに記載の多孔質ポリマー材料。
【請求項14】
y
1が、1~2である、先行請求項のいずれかに記載の多孔質ポリマー材料。
【請求項15】
y
2が、1~2である、先行請求項のいずれかに記載の多孔質ポリマー材料。
【請求項16】
y
3が、0である、先行請求項のいずれかに記載の多孔質ポリマー材料。
【請求項17】
前記架橋が、式(II):
【化40】
を有し、
式中、
y
2は、1または2であり、
xは、1または2である、
請求項1に記載の多孔質ポリマー材料。
【請求項18】
y
2が2であり、xが1である、請求項17に記載の多孔質ポリマー材料。
【請求項19】
各シクロデキストリンが、β-シクロデキストリンである、請求項17または18に記載の多孔質ポリマー材料。
【請求項20】
式(III):
【化41】
(式中、1つのR
4は-Hであり、1つのR
4は-Meである)の複数のリンカーを含む、請求項1に記載の多孔質ポリマー材料。
【請求項21】
各シクロデキストリンが、β-シクロデキストリンである、請求項20に記載の多孔質ポリマー材料。
【請求項22】
シクロデキストリンと式(I)、(II)、または(III)の架橋剤とのモル比が、約1:1~約1:Xの範囲であり、Xは、前記シクロデキストリン中のグルコースサブユニットの平均数の3倍である、先行請求項のいずれかに記載の多孔質ポリマー材料。
【請求項23】
シクロデキストリンと式(I)、(II)、または(III)の連結基とのモル比が、約1:6、約1:5、約1:4、約1:3、または約1:2である、請求項23に記載の多孔質ポリマー材料。
【請求項24】
前記ポリマーが、約10m
2/g~約2000m
2/gの表面積を有する、先行請求項のいずれかに記載の多孔質ポリマー材料。
【請求項25】
固体基材に固定された多孔質粒子を含む支持された多孔質ポリマー材料であって、前記多孔質粒子が、複数のシクロデキストリン部分を、式(I)、(II)、または(III)を含む複数の架橋とともに含む、前記支持された多孔質ポリマー材料。
【請求項26】
前記固体基材が、微結晶性セルロース、セルロースナノ結晶、セルロースパルプ、アクリレート材料、メタクリレート材料、スチレン材料、ポリスチレン材料、ポリエステル材料、ナイロン材料、ケイ酸塩、シリコーン、アルミナ、チタニア、ジルコニア、ハフニア、ヒドロキシル含有ポリマービーズ、ヒドロキシル含有不規則粒子、アミノ含有ポリマービーズ、アミノ含有不規則粒子、繊維材料、紡糸糸、連続フィラメント糸、ステープル不織布、連続フィラメント不織布、ニット生地、織物、不織布、フィルム膜、螺旋巻回膜、中空繊維膜、布膜、粉末、固体表面、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、タンパク質、タンパク質ベースの繊維、羊毛、キトサン、アミン含有セルロース誘導体、ポリアミド、塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリウレタン、メラミン、ポリイミド、ポリアクリル、ポリアミド、アクリレートブタジエンスチレン(ABS)、バルノックス、PVC、ナイロン、EVA、PET、硝酸セルロース、酢酸セルロース、混合セルロースエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、フッ化ポリビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、シリコン、酸化ケイ素、ガラス、ガラスマイクロファイバー、ホスフィン官能性材料、チオール官能性材料、フィブリル化ポリプロピレン材料、フィブリル化再生セルロース材料、フィブリル化アクリル材料、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項25に記載の支持された多孔質ポリマー材料。
【請求項27】
前記繊維材料が、パルプ繊維、ショートカット繊維、ステープル繊維、連続フィラメント繊維、及びセルロース繊維からなる群から選択され
前記セルロース繊維が、木材パルプ、紙、紙繊維、綿、再生セルロース、セルロースエステル、セルロースエーテル、デンプン、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、及びそれらの誘導体からなる群から選択される、請求項26に記載の支持された多孔質ポリマー材料。
【請求項28】
前記基材が、微結晶性セルロース、セルロースナノ結晶、シリカ、ガラス、または合成ポリマーから作製されたビーズである、請求項26に記載の支持された多孔質ポリマー材料。
【請求項29】
前記基材が、微結晶性セルロースである、請求項28に記載の多孔質ポリマー材料。
【請求項30】
1つ以上の汚染物質を含む流体試料を精製する方法であって、前記方法が、流体試料を請求項1~24のいずれかに記載の多孔質ポリマー材料または請求項25~29の支持された多孔質ポリマー材料と接触させることを含み、それにより前記流体試料中の前記1つ以上の汚染物質の総量の少なくとも50重量%が、前記メソポーラスポリマー材料に吸着される、前記方法。
【請求項31】
前記流体試料が、前記メソポーラスポリマー材料または前記支持されたポリマー材料を横断して、またはその周囲に、またはそれを通じて流れる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記流体試料が、静的条件下でインキュベーション期間にわたって前記多孔質ポリマー材料または前記支持されたポリマー材料と接触させられ、前記インキュベーション期間の後、前記流体試料が前記メソポーラスポリマー材料から分離される、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記流体試料が、飲料水、廃水、地下水、汚染土壌からの水性抽出物、または埋立地浸出液である、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記流体試料が、気相である、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記流体試料が、1つ以上の揮発性有機化合物及び空気を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記汚染物質が、アニオン性微量汚染物質、重金属、及び/または染料のうちの1つ以上である、請求項30に記載の方法。
【請求項37】
前記汚染物質が、アニオン性微量汚染物質である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記アニオン性微量汚染物質が、ポリフッ素化アルキル化合物及び/またはペルフルオロアルキル化合物である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記ペルフルオロアルキル化合物が、PFOA及び/またはPFOSである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記汚染物質が、重金属である、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
前記重金属が、Pb
2+である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
流体試料から1つ以上の化合物を除去するかまたは流体試料中の1つ以上の化合物の有無を判定する方法であって、a)試料と、請求項1~24のいずれかに記載の多孔質ポリマー材料または請求項25~29の支持された多孔質ポリマー材料とをインキュベーション期間にわたって接触させることと、b)前記インキュベーション期間後、前記メソポーラスポリマー材料または前記支持された多孔質ポリマー材料を前記試料から分離することと、c)ステップb)で分離された前記メソポーラスポリマー材料または前記支持された多孔質ポリマー材料を加熱するかまたはステップb)で分離された前記メソポーラスポリマー材料または前記支持された多孔質ポリマー材料を溶媒と接触させ、それにより前記化合物の少なくとも一部を前記メソポーラスポリマー材料または前記支持された多孔質ポリマー材料から放出させることと、d1)必要に応じて、ステップc)で放出された前記化合物の少なくとも一部を単離すること、またはd2)ステップc)で放出された前記化合物の有無を判定することであって、1つ以上の化合物の存在は、前記試料中の前記1つ以上の化合物の存在と相関している、前記判定することと、を含む、前記方法。
【請求項43】
前記判定することが、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、超臨界流体クロマトグラフィー、または質量分析によって行われる、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記試料が食品であり、前記化合物が揮発性有機化合物である、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記試料が香水または芳香剤であり、前記化合物は揮発性有機化合物である、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記化合物が、アニオン性微量汚染物質、重金属、及び/または染料である、請求項42に記載の方法。
【請求項47】
請求項1~24のいずれかに記載の多孔質ポリマー材料または請求項25~29の支持された多孔質ポリマー材料を含む、製造物品。
【請求項48】
保護装置である、請求項47に記載の物品。
【請求項49】
衣類である、請求項48に記載の物品。
【請求項50】
濾材である、請求項43に記載の物品。
【請求項51】
抽出装置である、請求項47に記載の物品。
【請求項52】
前記抽出装置が、極性及び半極性有機分子を吸着することができる固相抽出装置である、請求項51に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
有機微量汚染物質(MP)は、人間の活動の結果として、ngL-1~μgL-1の濃度で水資源中に存在する1,2。人間の健康3~7及び環境8~10への悪影響に関する懸念から、MPをより効果的に除去する技術の開発が進められている11~16。MPは、表面電荷、サイズ、化学官能性など、その物理化学的特性は多岐にわたっている。荷電したMPは、カチオン性、アニオン性、または双性イオン性であり、通常、活性炭などの従来の吸着方法を使用して、天然有機物(NOM)などの複雑なマトリックス成分の存在下で除去することは困難である。アニオン性MPのうち、PFASは、生分解に対する耐性と健康への悪影響との相関のために、特に環境問題となっている。PFASは、何千もの消費財の配合に使用されており1、訓練の場面で航空火災を抑制するために使用される水性フォーム配合物中に含まれている18,19。その結果、PFASは数千に及ぶ空港や軍事施設の近くの地表水と地下水を汚染した20。2016年、Hu及び共同研究者らは、少なくとも600万人のアメリカ人が、2016年の米国環境保護庁のパーフルオロオクタン酸(PFOA)及びパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)の健康勧告限度である70ngL-1以上のPFASで汚染された飲料水を提供されたことを示した21。PFASは、がん3、肝障害4、甲状腺疾患5、及びその他の健康問題との関連が示されている6。
【0002】
汚染された水システムは通常、粒状活性炭(GAC)によって改善されるが、PFAS、特に短鎖誘導体に対する親和性が高くないため、高価で一時的な解決策となってる23,24。最近の報告では14,15、非共有相互作用と官能基の静電気が吸着剤に対するPFASの親和性に影響することが発見された。例えば、架橋剤の親フッ素性相互作用とデカフルオロビフェニル架橋CDP中の低濃度の陰イオン荷電官能基との組み合わせにより、水からのPFOAとPFOSの除去率が高くなった。対照的に、エピクロロヒドリンによって架橋されたCDPは、PFAS除去率が低かった25。
【0003】
吸着プロセスを利用して、空気や水などの流体から特定の汚染物質または汚染物質クラスを除去することができる。活性炭(AC)は、有機汚染物質の除去に使用される最も普及している吸着剤であり、その有効性は主に、高表面積、ナノ構造の細孔、及び疎水性に由来する。ただし、1つのタイプのACですべての汚染物質、特にアニオン性MPを良好に除去できるわけではない。それらの定義が曖昧な構造と結合部位の変化のために、最適な吸着選択性は、新しい設備での経験的なスクリーニングを必要とするため、合理的な設計と改善を行うことができない。さらに、使用済みACの再生はエネルギーを大量に消費し(500~900℃への加熱またはその他のエネルギーを大量に消費する手順)、完全な性能は回復されない。ACはまた、汚染物質の取り込み速度が遅く、数時間から数日でその取り込み平衡に達するため、より迅速な汚染物質の除去には過剰な吸着剤が必要となる。最後に、ACは、多くの新たな汚染物質、特に比較的親水性の汚染物質に対しては高い性能を示さない場合がある。
【0004】
代替的な吸着材料を、β-シクロデキストリン(β-CD)の不溶性ポリマーから生成されたポリマーシクロデキストリン材料から製造することができる。この材料は、内部空洞が有機化合物と結合できる、7個のグルコース単位から構成されるトロイダル大環状化合物である。β-CDは、コーンスターチに由来する安価で持続可能な方法で製造されたモノマーであり、医薬品、風味剤、及び香料の配合と安定化、ならびにキラルクロマトグラフィーの固定相に広く使用されている。不溶性のβ-CDポリマーは、エピクロロヒドリンと他の反応性化合物との架橋によって形成されており、明確に定義された結合部位と高い会合定数を特徴としている。エピクロロヒドリンで架橋された不溶性β-CDポリマーは、浄水用のACの代替品として検討されているが、表面積が小さいため、ACに比べて収着剤の性能が劣る。
【0005】
したがって、ACなどの短所を解消し、MP(アニオン性MPなど)に対してより効果的な収着及び/または隔離特性を提供する新たな収着剤が求められている。迅速なアニオン性MP抽出、高い総取り込み量、並びに容易な再生及び再利用手順を提供する吸着剤が求められている。本発明はそれらの要請を満たすものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
いくつかの実施形態において、本開示は、式(I):
【化1】
を有する複数の架橋で架橋された複数のシクロデキストリンを含む多孔質ポリマー材料を提供し、
式中、
Aは、アリールまたはヘテロアリール部分であり、
各R
1は、H、C
1~C
6アルキル、C
1~C
3ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-CF
3、-SO
3H、-CN、-NO
2、-NH
2、-NCO、-C(O)
2R
3、-C(O)N(R
3)
2、及び-ハロゲンからなる群から独立して選択され、
各R
2は、独立して、H、-OH、-O-金属カチオン、アルキル、アリール、ヘテロアリール、-SH、-S-金属カチオン、-S-アルキル、-C(O)
2H、または-C(O)NH
2であり、
各R
3は、独立して、-H、-C
1~C
6アルキル、-C
1~C
3ハロアルキル、アリール、-C(O)N(R
a)(R
b)、-C(O)R
c、-CO
2R
c、-SO
2N(R
a)(R
b)、または-SOR
cであり、各R
a及びR
bは、独立して、H、またはC
1~C
6アルキルであり、
各Wは、独立して、結合、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、-O-アリーレン-、-(CH
2)
a-アリーレン-、-SO
2-アリーレン-、-NH-アリーレン-、-S-アリーレン-、-O-ヘテロアリーレン-、-(CH
2)
a-ヘテロアリーレン-、-SO
2-ヘテロアリーレン-、-NH-ヘテロアリーレン-、-S-ヘテロアリーレン-、-(-O-(CH
2)
a-)
x-、-(-NH-(CH
2)
a-)
x-、-(-S-(CH
2)
a-)
x-、
【化2】
であり、aは、0~100であり、xは、1~100であり、各アリーレンまたはヘテロアリーレン部分は、置換または非置換であってよく、
各Zは、カチオン性部分またはアニオン性部分であり、
各Lは、独立して、-O-、-S-、-N-、C
1~C
6の置換または非置換のアルキレン、C
1~C
3のハロアルキレン、
【化3】
からなる群から選択される連結部分であり、
A’は、Aへの共有結合であり、
Z’は、Zへの共有結合であり、
*は、
【化4】
への共有結合であり、
【化5】
は、複数のシクロデキストリン炭素原子への結合点であり、
xは、0~8であり、
y
1は、1~4であり、
y
2は、1~4であり、
y
3は、0~4である。
【0007】
いくつかの実施形態において、多孔質ポリマー材料の架橋は、式(II):
【化6】
を有し、
式中、
y
2は、1または2であり、
xは、1または2である。
【0008】
いくつかの実施形態において、本開示の多孔性ポリマー材料は、式(III):
【化7】
の複数のリンカーを含み、
式中、1つのR
4は-Hであり、1つのR
4は-Meである。
【0009】
いくつかの実施形態において、本開示は、固体基材に固定された多孔質粒子を含む支持された多孔質ポリマー材料を提供し、前記多孔質粒子は、複数のシクロデキストリン部分を、式(I)、(II)、または(III)を含む複数の架橋とともに含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、本開示は、1つ以上の汚染物質を含む流体試料を精製する方法を提供し、その方法は、流体試料を本開示の多孔質ポリマー材料または支持された多孔質ポリマー材料と接触させ、それにより流体試料中の1つ以上の汚染物質の総量の少なくとも50重量%が多孔質ポリマー材料に吸着される。
【0011】
いくつかの実施形態において、本開示は、流体試料から1つ以上の化合物を除去するかまたは流体試料中の1つ以上の化合物の有無を判定する方法を提供し、その方法は、a)試料と、本開示の多孔質ポリマー材料または支持された多孔質ポリマー材料とをインキュベーション期間にわたって接触させることと、b)インキュベーション期間後、多孔質ポリマー材料または支持された多孔質ポリマー材料を試料から分離することと、c)ステップb)で分離された多孔質ポリマー材料または支持された多孔質ポリマー材料を加熱するかまたはステップb)で分離された多孔質ポリマー材料または支持された多孔質ポリマー材料を溶媒と接触させ、それにより化合物の少なくとも一部を多孔質ポリマー材料または支持された多孔質ポリマー材料から放出させることと、d1)必要に応じて、ステップc)で放出された化合物の少なくとも一部を単離すること、またはd2)ステップc)で放出された化合物の有無を判定することであって、1つ以上の化合物の存在は、試料中の1つ以上の化合物の存在と相関している、ことと、を含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、本開示は、本開示の多孔質ポリマー材料または支持された多孔質ポリマー材料を含む製品を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】0.5時間(上)及び48時間(下)における本開示のポリマーのPFAS取り込み能力の比較を示す。
【
図2】PFOAの取り込み(上)とPFOSの取り込み(下)について、2つの塩化コリン修飾TFN-CDPポリマーと1つのβ-CD-TDIポリマーの比較を示す。
【
図3】β-CD-TDIポリマー(上)とβ-CD(下)の
1H NMRスペクトルを示している。
【
図4】D
2Oを添加した際のβ-CD-TDIポリマーの
1H NMRスペクトルの変化を示す。
【
図5】異なるβ-CD:TDIのモル当量を用いて調製された異なるβ-CD-TDIポリマーの比較を示す。
【
図6-1】異なるモル当量の塩化コリンを用いて調製された塩化コリン修飾β-CD-TDIポリマーの比較を示す。
【
図6-2】異なるモル当量の塩化コリンを用いて調製された塩化コリン修飾β-CD-TDIポリマーの比較を示す。
【
図7】メチレンブルー(上)とメチルオレンジ(下)を使用して行った塩化コリン修飾β-CD-TFN取り込み実験を示す。
【
図8】1.5(上)及び3.0(中央)当量の塩化コリンを含む修飾TFN-CDPポリマー、及び未修飾TFN-CDP(下)のMO取り込み等温線を示す。各点は実験データポイントを表し、各直線はラングミュアモデルを用いて当てはめた曲線である。
【
図9】1.5(上)及び3.0(中央)当量の塩化コリンを含む修飾TFN-CDPポリマー、及び未修飾TFN-CDP(下)のBPA取り込み等温線を示す。各点は実験データポイントを表し、各直線はラングミュアモデルを用いて当てはめた曲線である。
【
図10】モル当量1:6:1のβ-CD:TDI:塩化コリンを用いて調製された塩化コリン修飾β-CD-TDIポリマーの
1H NMRスペクトルを示す。
【
図11】塩化コリン修飾β-CD-TDIポリマーとβ-CD-TDIポリマーとの比較を示す。
【
図12】異なる塩化コリンの投入量を有する塩化コリン修飾β-CD-TDIポリマー間の比較を示す。
【
図13】塩化コリン修飾β-CD-TDIポリマーのPFOA取り込み率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書で引用するすべての文書は、あたかも個々の文書が参照により具体的かつ個別に援用されることが示されているものと同様にして、あらゆる目的でその全体を参照により援用するものとする。
【0015】
上記で、また本開示の全体を通じて使用される場合、以下の用語は、特に指示のない限り、以下の意味を有するものとして理解されるものとする。用語がない場合、当業者に既知の従来の用語が優先される。
【0016】
本明細書で使用される場合、「含むこと(including)」、「含有すること(containing)」、及び「含むこと(comprising)」という用語は、オープンな非限定的な意味で使用される。
【0017】
冠詞「a」及び「an」は、本開示では、その冠詞の文法的目的語の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「要素(an element)」は、1つの要素または複数の要素を意味する。
【0018】
「及び/または」という用語は、別段の指示がない限り、本開示では「及び」あるいは「または」のいずれかを意味するために使用される。
【0019】
より簡潔に説明するために、本明細書で示される定量的表現のいくつかは、「約」という用語で修飾されない。「約」という用語が明示的に使用されているかどうかにかかわらず、本明細書で示される全ての量は実際の所与の値を意味するように意図されており、また、このような所与の値に対する実験及び/または測定条件による同等の値及び近似値を含めて、当該技術分野の通常の技量に基づいて合理的に推論されるこのような所与の値への近似も意味するように意図されていることを理解されたい。収率がパーセンテージとして示される場合は常に、このような収率は、特定の化学量論的条件下で得られ得る同じ実体の最大量に関して収率が示される実体の質量を意味する。別段の指定がない限り、パーセントとして示される濃度は質量比を指す。
【0020】
吸着剤または吸着する、という用語は、本開示の組成物または方法を指して用いられ、液体(例えば、水)または気体(例えば、空気または窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素、麻酔ガスなどの他の商業的に有用な気体)などの流体媒体から、混入物質または汚染物質、限定されないが典型的には有機分子を除去する、本明細書に記載される固体材料を指す。かかる用語は、特定の物理的機構(例えば、吸着と吸収)を意味するものではない。
【0021】
「シクロデキストリン」という用語は、6~12個のグルコース単位を含む非置換シクロデキストリン、特に、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン及び/またはそれらの誘導体及び/またはそれらの混合物などの既知のシクロデキストリンのいずれをも含む。α-シクロデキストリンは6個のグルコース単位で構成され、β-シクロデキストリンは7個のグルコース単位で構成され、γ-シクロデキストリンは8個のグルコース単位で構成され、グルコース単位はドーナツ型の環に配置される。グルコース単位の特定の結合及び立体配座は、シクロデキストリンに特定の体積の中空の内部を有する堅い円錐形の分子構造を与える。各内部空洞の「ライニング」は、水素原子とグリコシド架橋酸素原子によって形成されており、それにより、この表面は相応に疎水性である。空洞の独特の形状と物理化学的特性により、シクロデキストリン分子は、空洞に収まる有機分子または有機分子の一部を吸収する(包接複合体を形成する)ことができる。
【0022】
特に明記しない限り、「架橋剤」または「架橋する」または「リンカー」という用語は、1つ以上のシクロデキストリンまたはポリマーと反応するか、またはそれらの間で共有結合を形成することができるモノマーを指す。例えば、架橋剤がポリマー鎖の末端で反応する場合、ポリマーの1個のシクロデキストリン部分と(例えば、シクロデキストリンのグリコシド酸素を介して)共有結合的に反応することができる。架橋剤は、他のモノマーまたはシクロデキストリン単位またはポリマー鎖とさらに反応して、例えば、ポリマー鎖を延長するかまたは2つ以上のポリマー鎖を互いに連結することができる場合もあれば、そうでない場合もある。例えば、架橋剤は、1個、2個、3個、または4個以上のモノマーまたはシクロデキストリン単位またはポリマーに結合させることができる。
【0023】
「カチオン性部分」という用語は、正電荷(例えば、+1、+2など)を有する基、例えば、アンモニウム、モノ、ジまたはトリアルキルアンモニウム、ジアルキルスルホニウム及びトリアルキルホスホニウムを指す。
【0024】
「アニオン性部分」という用語は、負電荷(例えば、-1、-2など)を有する基、例えば、リン酸、カルボン酸、アルコキシド、及び硫酸を指す。
【0025】
本明細書で使用する場合、「アルキル」とは、1~10個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状飽和鎖を意味する。代表的な飽和アルキル基として、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、2-メチル-1-プロピル、2-メチル-2-プロピル、2-メチル-1-ブチル、3-メチル-1-ブチル、2-メチル-3-ブチル、2,2-ジメチル-1-プロピル、2-メチル-1-ペンチル、3-メチル-1-ペンチル、4-メチル-1-ペンチル、2-メチル-2-ペンチル、3-メチル-2-ペンチル、4-メチル-2-ペンチル、2,2-ジメチル-1-ブチル、3,3-ジメチル-1-ブチル、2-エチル-1-ブチル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシルなど、及びより長いアルキル基、例えば、ヘプチル、及びオクチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。アルキル基は、非置換または置換であり得る。3個以上の炭素原子を有するアルキル基は、直鎖状または分岐状であってよい。本明細書中で使用する場合、「低級アルキル」とは、1~6個の炭素原子を有するアルキルを意味する。
【0026】
「アルキレン」という用語は、直鎖及び分岐鎖のアルキレン基を指す。典型的なアルキレン基としては、例えば、メチレン(-CH2-)、エチレン(-CH2CH2-)、プロピレン(-CH2CH2CH2-)、イソプロピレン(-CH(CH3)CH2-)、n-ブチレン(-CH2CH2CH2CH2-)、sec-ブチレン(-CH(CH2CH3)CH2-)などが挙げられる。
【0027】
「ヒドロキシル」または「ヒドロキシ」という用語は、OH基を意味する。
【0028】
また、本明細書中の本文、スキーム、実施例、及び表にある満たされていない原子価を有する任意の炭素及びヘテロ原子は、原子価を満たすのに十分な数の水素原子(複数可)を有すると仮定されることにも留意されたい。
【0029】
「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を指す。
【0030】
「シアノ」という用語は、本明細書で使用されるとき、三重結合によって窒素原子に結合した炭素原子を有する置換基、すなわち、C≡Nを意味する。
【0031】
本明細書で使用される「アミン」または「アミノ」という用語は、少なくとも1個の窒素原子を有する置換基を意味する。具体的には、NH2、-NH(アルキル)またはアルキルアミノ、-N(アルキル)2またはジアルキルアミノ、アミド、カルボキサミド、尿素、及びスルファミド置換基が、「アミノ」という用語に含まれる。
【0032】
特に明確に定義されない限り、「アリール」という用語は、フェニル、ビフェニル、またはナフチルなどの単環式または二環式基を含む、1~3個の芳香環を有する環式芳香族炭化水素基を指す。2つの芳香環(二環式など)を含有する場合、アリール基の芳香環は、一点で結合されても(例えば、ビフェニル)、縮合されてもよい(例えば、ナフチル)。さらに、本開示との関連で、アリールという用語は、-CH2-、CR2-(ただし、Rは、H、アルキルなどであり得る)、-SO2-、-SO-、-NR-(ただし、Rは、H、アルキルなどであり得る)、または-O-などの短いリンカーによって連結された2個のアリール環を指すと解釈され、例えば、アリールは、それぞれメチレンジフェニルまたはオキシビスフェニルをそれぞれ指す場合がある。アリール基は、任意の結合点において、1つ以上の置換基(例えば、1~5つの置換基)で任意に置換されてもよい。置換基は、それ自体が任意選択で置換されてもよい。さらに、2つの縮合環を含む場合、本明細書で定義されるアリール基は、完全飽和環と縮合した不飽和または部分飽和環を有し得る。これらのアリール基の例示的な環系としては、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナレニル、フェナントレニル、インダニル、インデニル、テトラヒドロナフタレニル、テトラヒドロベンゾアヌレニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
別途具体的に定義されない限り、「ヘテロアリール」は、N、O、またはSから選択される1つ以上の環ヘテロ原子を含有し、残りの環原子がCである、5~18環原子の一価の単環式もしくは多環式芳香族ラジカル、または多環式芳香族ラジカルを意味する。本明細書で定義されるヘテロアリールは、また、ヘテロ原子がN、O、またはSから選択される多環式(例えば、二環式)ヘテロ芳香族基を意味する。芳香族ラジカルは、独立して、本明細書に記載の1つ以上の置換基で場合により置換される。置換基は、場合により、それ自体が置換されていてもよい。例としては、これらに限定されるものではないが、ベンゾチオフェン、フリル、チエニル、ピロリル、ピリジル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、イミダゾリル、イソキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、ピラジニル、インドリル、チオフェン-2-イル、キノリル、ベンゾピラニル、イソチアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、チエノ[3,2-b]チオフェン、トリアゾリル、トリアジニル、イミダゾ[1,2-b]ピラゾリル、フロ[2,3-c]ピリジニル、イミダゾ[1,2-a]ピリジニル、インダゾリル、ピロロ[2,3-c]ピリジニル、ピロロ[3,2-c]ピリジニル、ピラゾロ[3,4-c]ピリジニル、ベンゾイミダゾリル、チエノ[3,2-c]ピリジニル、チエノ[2,3-c]ピリジニル、チエノ[2,3-b]ピリジニル、ベンゾチアゾリル、インドリル、インドリニル、インドリノニル、ジヒドロベンゾチオフェニル、ジヒドロベンゾフラニル、ベンゾフラン、クロマニル、チオクロマニル、テトラヒドロキノリニル、ジヒドロベンゾチアジン、ジヒドロベンゾオキサニル、キノリニル、イソキノリニル、1,6-ナフチリジニル、ベンゾ[de]イソキノリニル、ピリド[4,3-b][1,6]ナフチリジニル、チエノ[2,3-b]ピラジニル、キナゾリニル、テトラゾロ[1,5-a]ピリジニル、[1,2,4]トリアゾロ[4,3-a]ピリジニル、イソインドリル、ピロロ[2,3-b]ピリジニル、ピロロ[3,4-b]ピリジニル、ピロロ[3,2-b]ピリジニル、イミダゾ[5,4-b]ピリジニル、ピロロ[1,2-a]ピリミジニル、テトラヒドロピロロ[1,2-a]ピリミジニル、3,4-ジヒドロ-2H-1λ2-ピロロ[2,1-b]ピリミジン、ジベンゾ[b,d]チオフェン、ピリジン-2-オン、フロ[3,2-c]ピリジニル、フロ[2,3-c]ピリジニル、1H-ピリド[3,4-b][1,4]チアジニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソキサゾリル、フロ[2,3-b]ピリジニル、ベンゾチオフェニル、1,5-ナフチリジニル、フロ[3,2-b]ピリジン、[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリジニル、ベンゾ[1,2,3]トリアゾリル、イミダゾ[1,2-a]ピリミジニル、[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジニル、ベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾリル、ベンゾ[c][1,2,5]オキサジアゾール、1,3-ジヒドロ-2H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-オン、3,4-ジヒドロ-2H-ピラゾロ[1,5-b][1,2]オキサジニル、4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[1,5-a]ピリジニル、チアゾロ[5,4-d]チアゾリル、イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾリル、チエノ[2,3-b]ピロリル、3H-インドリル、及びその誘導体が挙げられる。さらに、2個の縮合環を含む場合、本明細書で定義されるヘテロアリール基は、完全飽和環と縮合した不飽和または部分飽和環を有してもよい。
【0034】
本明細書で使用される数値範囲は、特に示されない限り、連続的な整数を含むことが意図される。例えば、「0~5まで」として表される範囲は、0、1、2、3、4及び5を含むものとする。
【0035】
本開示は、多孔性(例えば、ミクロポーラスまたはメソポーラス)、一般的には高表面積のシクロデキストリンポリマー材料(P-CDP)、ならびにこれらの材料を製造及び使用する方法を提供する。P-CDPは、安価で、持続可能な方法で製造されるグルコースの大環状化合物であるシクロデキストリンの不溶性ポリマーで構成されている。シクロデキストリンポリマーは、本明細書に記載される連結基で架橋されている。シクロデキストリンのポリマーは、シクロデキストリンに由来するシクロデキストリン部分で構成される。シクロデキストリン部分は、天然に存在するシクロデキストリン(例えば、それぞれ6、7、及び8個のグルコース単位を含むα-、β-、及びγ-)または合成シクロデキストリンから誘導することができる。シクロデキストリン部分は、シクロデキストリン部分が由来するシクロデキストリン上の-OH基に由来する少なくとも1つの-O-結合を有する。シクロデキストリン部分は、3~20個(それらの値の間のすべての範囲を含む)のグルコース単位を含むことができ、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、及び20個のグルコース単位を含む。多くの実施形態において、シクロデキストリン部分は、デンプンから誘導され、6~9個のグルコース単位を含む。ポリマー材料は、2つ以上の異なるシクロデキストリン部分を含むことができる。特定の実施形態では、P-CDPは、β-シクロデキストリン(β-CD)の不溶性ポリマーで構成される。
【0036】
P-CDPはまた、シクロデキストリン誘導体または修飾シクロデキストリンを含んでもよい。シクロデキストリンの誘導体は、OH基の一部がOR基に変換された分子で主に構成されている。シクロデキストリン誘導体は、例えば、望ましい溶解挙動及び親和性特性などのさらなる機能を与える1つ以上のさらなる部分を有することができる。適切なシクロデキストリン誘導体材料の例としては、メチル化シクロデキストリン(例えば、RAMEB、ランダムメチル化β-シクロデキストリン)、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン(例えば、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン及びヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン)、アセチル化シクロデキストリン(例えば、アセチル-γ-シクロデキストリン)、反応性シクロデキストリン(例えば、クロロトリアジニル-β-CD)、分岐シクロデキストリン(例えば、グルコシル-β-シクロデキストリン及びマルトシル-β-シクロデキストリン)、スルホブチル-β-シクロデキストリン、及び硫酸化シクロデキストリンが挙げられる。例えば、シクロデキストリン部分は、ヒ素、カドミウム、銅、または鉛などの金属と(例えば、特異的に)結合する部分をさらに含む。
【0037】
P-CDPはまた、例えば、Rがメチル基またはエチル基である、メチル化シクロデキストリン及びエチル化シクロデキストリンなどの短鎖アルキル基を有するシクロデキストリン誘導体;Rが-CH2-CH(OH)-CH3または-CH2CH2-OH基である、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン及び/またはヒドロキシエチルシクロデキストリンなどのヒドロキシ置換基を有するもの;マルトース結合シクロデキストリンなどの分岐シクロデキストリン;Rが低pHでカチオン性であるCH2-CH(OH)-CH2-N(CH3)2である、2-ヒドロキシ-3-(ジメチルアミノ)プロピルエーテルを含むものなどのカチオン性シクロデキストリン;RがCH2-CH(OH)-CH2-N+(CH3)3Cl-である、例えば、2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピルエーテルクロリド基などの第四級アンモニウム;カルボキシメチルシクロデキストリン、硫酸シクロデキストリン、及びスクシニルシクロデキストリンなどのアニオン性シクロデキストリン;カルボキシメチル/第四級アンモニウムシクロデキストリンなどの両性シクロデキストリン;「Optimal Performances with Minimal Chemical Modification of Cyclodextrins”,F.Diedaini-Pilard and B.Perly,The 7th International Cyclodextrin Symposium Abstracts,April 1994,p.49」(上記参考文献を参照により援用する)に開示される、少なくとも1つのグルコピラノース単位が3-6-アンヒドロ-シクロマルト構造を有するシクロデキストリン、例えば、モノ-3-6-アンヒドロシクロデキストリン;及びこれらの混合物を含む、米国特許第6,881,712号に開示されるようなシクロデキストリン誘導体を含んでもよい。他のシクロデキストリン誘導体は、1964年2月4日発行のParmerterらによる米国特許第3,426,011号;いずれも1969年7月1日発行のいずれもParmerterらの名による米国特許第3,453,257号、同第3,453,258号、同第3,453,259号、及び同第3,453,260号;1969年8月5日発行のGrameraらによる米国特許第3,459,731号;1971年1月5日発行のParmerterらによる米国特許第3,553,191号;1971年2月23日発行のParmerterらによる米国特許第3,565,887号;1985年8月13日発行のSzejtliによる米国特許第4,535,152号;1986年10月7日発行のHiraiらによる米国特許第4,616,008号;1987年7月7日発行のOginoらによる米国特許第4,678,598号;1987年1月20日発行のBrandtらによる米国特許第4,638,058号;ならびに1988年5月24日発行のTsuchiyamaらによる米国特許第4,746,734号に開示されており、上記特許をいずれも本明細書に参照により援用するものである。
【0038】
いくつかの実施形態において、本開示は、式(I):
【化8】
を有する複数の架橋で架橋された複数のシクロデキストリンを含む、多孔質ポリマー材料を提供し、
式中、
Aは、アリールまたはヘテロアリール部分であり、
各R
1は、H、C
1~C
6アルキル、C
1~C
3ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-CF
3、-SO
3H、-CN、-NO
2、-NH
2、-NCO、-C(O)
2R
3、-C(O)N(R
3)
2、及び-ハロゲンからなる群から独立して選択され、
各R
2は、独立して、H、-OH、-O-金属カチオン、アルキル、アリール、ヘテロアリール、-SH、-S-金属カチオン、-S-アルキル、-C(O)
2H、または-C(O)NH
2であり、
各R
3は、独立して、-H、-C
1~C
6アルキル、-C
1~C
3ハロアルキル、アリール、-C(O)N(R
a)(R
b)、-C(O)R
c、-CO
2R
c、-SO
2N(R
a)(R
b)、または-SOR
cであり、各R
a及びR
bは、独立して、H、またはC
1~C
6アルキルであり、
各Wは、独立して、結合、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基であり、-O-アリーレン-、-(CH
2)
a-アリーレン-、-SO
2-アリーレン-、-NH-アリーレン-、-S-アリーレン-、-O-ヘテロアリーレン-、-(CH
2)
a-ヘテロアリーレン-、-SO
2-ヘテロアリーレン-、-NH-ヘテロアリーレン-、-S-ヘテロアリーレン-、-(-O-(CH
2)
a-)
x-、-(-NH-(CH
2)
a-)
x-、-(-S-(CH
2)
a-)
x-、
【化9】
であり、aは、0~100であり、xは、1~100であり、各アリーレンまたはヘテロアリーレン部分は、置換または非置換であってよく、
各Zは、カチオン性部分またはアニオン性部分であり、
各Lは、独立して、-O-、-S-、-N-、C
1~C
6の置換または非置換のアルキレン、C
1~C
3のハロアルキレン、
【化10】
からなる群から選択される連結部分であり、
A’は、Aへの共有結合であり、
Z’は、Zへの共有結合であり、
*は、
【化11】
への共有結合であり、
【化12】
は、複数のシクロデキストリン炭素原子への結合点であり、
xは、0~8であり、
y
1は、1~4であり、
y
2は、1~4であり、
y
3は、0~4である。
【0039】
各Zは、カチオン性部分またはアニオン性部分である。例えば、いくつかの実施形態において、各Zはカチオン性部分である。ある特定の実施形態において、各カチオン性部分は、独立して、-N(R
3)
3
+、-P(R
3)
3
+、-S(R
3)
2
+、または-ヘテロアリール
+であり、各R
3は独立して-H、-C
1~C
6アルキル、-C
1~C
3ハロアルキル、-アリール、-C(O)N(R
a)(R
b)、-C(O)R
c、-CO
2R
c、-SO
2N(R
a)(R
b)、または-SOR
cであり、各R
a及びR
bは、独立して、H、またはC
1~C
6アルキルである。例えば、いくつかの実施形態において、各カチオン性部分は、-N(R
3)
3
+であり、各R
3は、H、またはC
1~C
6アルキルである。したがって、いくつかの実施形態において、各カチオン性部分は、-N(Me)
3
+であるか、または-NH
3
+である。いくつかの実施形態において、各カチオン性部分は-N(Me)
3
+である。いくつかの実施形態において、各カチオン性部分は独立して、-ヘテロアリール
+である。本開示との関連では、さまざまな荷電ヘテロアリールが企図されておりされ、当業者には直ちに明らかである。例えば、いくつかの実施形態において、-ヘテロアリール
+は、ピリジニウム、ピロリジニウム、イミダゾリウム、トリアゾリウム、テトラゾリウムなどを指す場合がある。いくつかの実施形態において、各Zはアニオン性部分である。ある特定の実施形態では、各アニオン性部分は、
【化13】
であり、各R
3は上記で定義した通りである。
【0040】
本開示のある特定の実施形態によれば、各Wは、独立して、結合、アルキレン基(例えば、C
1~C
10、C
10~C
20、またはC
20~C
100)、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、-O-アリーレン-、-(CH
2)
a-アリーレン-、-SO
2-アリーレン-、-NH-アリーレン-、-S-アリーレン-、-O-ヘテロアリーレン-、-(CH
2)
a-ヘテロアリーレン-、-SO
2-ヘテロアリーレン-、-NH-ヘテロアリーレン-、-S-ヘテロアリーレン-、-(-O-(CH
2)
a-)
x-、-(-NH-(CH
2)
a-)
x-、または-(-S-(CH
2)
a-)
x-であり、aは、0~100であり、xは、1~100であり、各アリーレンまたはヘテロアリーレン部分は、置換または非置換であってよい。「アリーレン」という用語は、2個の環炭素から水素原子を除去することによってアリール基(本明細書に記載されるフェニル、ビフェニル、ナフチルなどを含む)から誘導される二価の基を指す。例えば、アリーレンは、2個の価電子がオルト、メタ、またはパラ配向に位置するフェニルを含むことができる。多環式アリーレンの場合、2個の価電子は同じ環または異なる環に存在し得る。アリーレンは、本明細書に記載されるいずれの芳香環からも誘導することができ、置換または非置換であってよい。同様に、「ヘテロアリーレン」という用語は、2個の環原子(炭素またはヘテロ原子であり得る)から水素原子を除去することによってヘテロアリール基(本明細書に記載されるフリル、ピリジルなどを含む)から誘導される二価の基を指す。価電子は、同じ環または異なる環(多環式ヘテロ芳香族の場合)にあってよく、任意の2個の環原子上にあってよい。ヘテロアリーレンは、本明細書に記載されるいずれのヘテロ芳香環からも誘導することができ、置換または非置換であってよい。したがって、いくつかの実施形態において、各Wは結合(すなわち、共有結合)である。他の実施形態では、各Wはアルキレン基である。例えば、各Wは、メチレン(-CH
2-)、エチレン(-CH
2CH
2-)、プロピレン(-CH
2CH
2CH
2-)、イソプロピレン(-CH(CH
3)CH
2-)、n-ブチレン(-CH
2CH
2CH
2CH
2-)、sec-ブチレン(-CH
2(CH
2CH
3)CH
2-)などであり得る。いくつかの実施形態において、各Wは、メチレン(-CH
2-)である。いくつかの実施形態において、各Wは、アリーレン基(フェニレン)である。いくつかの実施形態において、各Wは、ヘテロアリーレン基(フリル、ピリジル)である。いくつかの実施形態において、各Wは、-O-アリーレン-(-O-フェニレン)である。いくつかの実施形態において、各Wは、-(CH
2)
a-アリーレン-(-CH
2-フェニレン)である。いくつかの実施形態において、各Wは、-SO
2-アリーレン-(-SO
2-フェニレン)である。いくつかの実施形態において、各Wは、-NH-アリーレン-(-NH-フェニレン)である。いくつかの実施形態において、各Wは、-S-アリーレン-(-S-フェニレン)である。いくつかの実施形態において、各Wは、ヘテロアリーレン基(フリレン、ピリジレン)である。いくつかの実施形態において、各Wは、-O-ヘテロアリーレン-(-O-ピリジニレン)である。いくつかの実施形態において、各Wは、-(CH
2)
a-ヘテロアリーレン-(-CH
2-ピリジニレン)である。いくつかの実施形態において、各Wは、-SO
2-ヘテロアリーレン-(-SO
2-ピリジニレン)である。いくつかの実施形態において、各Wは、-NH-ヘテロアリーレン-(-NH-ピリジニレン)である。いくつかの実施形態において、各Wは、-S-ヘテロアリーレン-(-S-ピリジニレン)である。いくつかの実施形態において、Wは、-(O-CH
2-CH
2)
x-である。いくつかの実施形態において、Wは、-O-CH
2-CH
2-である。いくつかの実施形態において、Wは、
【化14】
であり、ただし、A’は、Aへの共有結合であり、Z’はZへの共有結合である。いくつかの実施形態において、Wは、
【化15】
である。
【0041】
いくつかの実施形態において、-W-Zのそれぞれが、一緒になって-O-CH
2-CH
2-N(R)
3
+を形成する。いくつかの実施形態において、-W-Zのそれぞれが、一緒になって-O-CH
2-CH
2-N(Me)
3
+を形成する。いくつかの実施形態において、-W-Zのそれぞれが、一緒になって
【化16】
を形成する。
【0042】
いくつかの実施形態において、各Lは、連結部分である。いくつかの実施形態において、各Lは、独立して、-O-、-S-、-N-、
【化17】
からなる群から選択される連結部分であり、ただし、A’はAへの共有結合であり、*は、
【化18】
への共有結合である(本明細書に記載されるように、複数のシクロデキストリン炭素原子への結合点を示す)。いくつかの実施形態において、各Lは、独立して、-O-である。ある特定の実施形態において、Lが独立して
【化19】
または-O-である場合、酸素原子は、本開示の多孔質ポリマー材料の複数のシクロデキストリンからのグリコシド酸素であり得る。例えば、いくつかの実施形態において、各Lが独立して-O-である場合、酸素原子は、本開示の多孔質ポリマー材料の複数のシクロデキストリン原子からのグリコシル酸素である。
【0043】
いくつかの実施形態では、Aは、アリールまたはヘテロアリール部分である。いくつかの実施形態において、Aは、アリール部分である。例えば、Aは、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナレニル、フェナントレニル、インダニル、インデニル、テトラヒドロナフタレニル、またはテトラヒドロベンゾアヌレニルであり得る。いくつかの実施形態において、Aは、ヘテロアリール部分である。例えば、Aは、ベンゾチオフェン、フリル、チエニル、ピロリル、ピリジル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、イミダゾリル、イソキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、ピラジニル、インドリル、チオフェン-2-イル、キノリル、ベンゾピラニル、イソチアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、チエノ[3,2-b]チオフェン、トリアゾリル、トリアジニル、イミダゾ[1,2-b]ピラゾリル、フロ[2,3-c]ピリジニル、イミダゾ[1,2-a]ピリジニル、インダゾリル、ピロロ[2,3-c]ピリジニル、ピロロ[3,2-c]ピリジニル、ピラゾロ[3,4-c]ピリジニル、ベンゾイミダゾリル、チエノ[3,2-c]ピリジニル、チエノ[2,3-c]ピリジニル、チエノ[2,3-b]ピリジニル、ベンゾチアゾリル、インドリル、インドリニル、インドリノニル、ジヒドロベンゾチオフェニル、ジヒドロベンゾフラニル、ベンゾフラン、クロマニル、チオクロマニル、テトラヒドロキノリニル、ジヒドロベンゾチアジン、ジヒドロベンゾオキサニル、キノリニル、イソキノリニル、1,6-ナフチリジニル、ベンゾ[de]イソキノリニル、ピリド[4,3-b][1,6]ナフチリジニル、チエノ[2,3-b]ピラジニル、キナゾリニル、テトラゾロ[1,5-a]ピリジニル、[1,2,4]トリアゾロ[4,3-a]ピリジニル、イソインドリル、ピロロ[2,3-b]ピリジニル、ピロロ[3,4-b]ピリジニル、ピロロ[3,2-b]ピリジニル、イミダゾ[5,4-b]ピリジニル、ピロロ[1,2-a]ピリミジニル、テトラヒドロピロロ[1,2-a]ピリミジニル、3,4-ジヒドロ-2H-1λ2-ピロロ[2,1-b]ピリミジン、ジベンゾ[b,d]チオフェン、ピリジン-2-オン、フロ[3,2-c]ピリジニル、フロ[2,3-c]ピリジニル、1H-ピリド[3,4-b][1,4]チアジニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソキサゾリル、フロ[2,3-b]ピリジニル、ベンゾチオフェニル、1,5-ナフチリジニル、フロ[3,2-b]ピリジン、[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリジニル、ベンゾ[1,2,3]トリアゾリル、イミダゾ[1,2-a]ピリミジニル、[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジニル、ベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾリル、ベンゾ[c][1,2,5]オキサジアゾール、1,3-ジヒドロ-2H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-オン、3,4-ジヒドロ-2H-ピラゾロ[1,5-b][1,2]オキサジニル、4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[1,5-a]ピリジニル、チアゾロ[5,4-d]チアゾリル、イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾリル、チエノ[2,3-b]ピロリル、または3H-インドリルであり得る。いくつかの実施形態において、Aは、フェニル、ナフチル、ピリジル、ベンゾフラニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、トリアジニル、キノリン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、1H-ベンズイミダゾール、イソキノリン、キナゾリン、キノキサリン、ピロール、インドール、ビフェニル、ピレニル、及びアントラセニルからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、Aは、フェニルである。いくつかの実施形態において、Aは、本明細書に参照によりその全容を援用する米国特許第9,855,545号に記載されるアリールまたはヘテロアリール環系である。
【0044】
いくつかの実施形態において、Aは、市販のジイソシアネートの重合生成物である。例えば、いくつかの実施形態において、Aは、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート、2,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジイソシアナト-1,1’-ビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、4,4’-オキシビス(フェニルイソシアネート)、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4-クロロ-6-メチル-1,3-フェニレンジイソシアネート、及び1-クロロメチル-2,4-ジイソシアナトベンゼンを含むがこれらに限定されない市販のアリールジイソシアネートの重合生成物である。いくつかの実施形態において、Aは、
【化20】
であり、ただし、波線は、本明細書で定義されるAに結合した置換基のいずれかを示す。いくつかの実施形態において、Aは、
【化21】
であり、ただし、波線は、本明細書で定義されるAに結合した置換基のいずれかを示す。いくつかの実施形態において、Aは、
【化22】
であり、ただし、波線は、本明細書で定義されるAに結合した置換基のいずれかを示し、上記の構造のアリール環に結合した-Me、-Cl、及び-CH
2-Cl基は、R
1基に対応し、アリール環に結合した-CH
2-及び-C(Me)
2-基は、L基に対応する。いくつかの実施形態において、Aは、
【化23】
であり、ただし、波線は、本明細書で定義されるAに結合した置換基のいずれかを示し、上記の構造のアリール環に結合した-Me及び-Cl基は、R
1基に対応する。
【0045】
本開示の多孔質ポリマー材料は、式(I)を有する複数の架橋を有する複数のシクロデキストリンを含む。本開示の複数のシクロデキストリンは、6~12個のグルコース単位を含む任意のシクロデキストリンであってよい。例えば、いくつかの実施形態において、本開示の複数のシクロデキストリンは、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、各シクロデキストリンは、β-シクロデキストリンである。
【0046】
式(I)を有する複数の架橋のR1基は、各R1は、H、C1~C6アルキル、C1~C3ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-CF3、-SO3H、-CN、-NO2、-NH2、-NCO、-C(O)2R3、-C(O)N(R3)2、及び-ハロゲンからなる群から独立して選択される。ある特定の実施形態では、各R1は、H、C1~C6アルキル、C1~C3ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-CF3、-SO3H、-CN、-NO2、-NH2、-NCO、-C(O)2R3、-C(O)N(R3)2、及び-ハロゲンからなる群から独立して選択される。ある特定の実施形態では、式(I)を有する複数の架橋上に0~8個のR1基が存在する。例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、または8個のR1基が、式(I)を有する個々の架橋のそれぞれに存在する。R1、R2、-W-Z、または-L-で置換されていないAの任意の位置は、非置換であるか、その位置の原子価を満たすために必要な1つ以上のH原子を有することが理解される。当業者には認識されるように、式(I)の個々の架橋のそれぞれのR1基の数は、本開示の多孔質ポリマー材料の全体にわたって変化し得る。例えば、R1が-Fであり、本発明の重合多孔質材料が置換を行うことができる反応物質(例えば、塩化コリン)に曝露される場合、一部の架橋上の-F基が置換されるが、他の架橋では、-F基は、反応物質から効果的に保護されるため、反応しない場合がある。したがって、本開示の多孔質ポリマー材料には、複数の式(I)の連結基が存在してよく、各個々の連結基は、独立して、0~8個(例えば、1、2、または3個)のR1基を有することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、本開示の多孔質ポリマー材料は、平均では、小数で表されるR1、R2、-W-Zまたは-L-基を各架橋基に有するものとして特徴づけることができる。この置換基の小数は、そのような基の総数を多孔質ポリマー材料中の架橋の総数で除すことによって計算することができる。例えば、架橋基の半分が-O-CH2-CH2-N(Me)3
+基で官能化されている場合(例えば、Wが、-O-CH2-CH2-であり、Zが、-N(Me)3である場合)、架橋基1個当たりの-W-Zに対応する-O-CH2-CH2-N(Me)3
+基の平均数(または小数)は、0.5である。R1については、そのような基の小数は、約0、約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約2.5、約2.7、約2.8、約2.9、約3.0、約3.1、約3.2、約3.3、約3.4、約3.5、約3.6、約3.7、約3.8、約3.9、約4.0、約4.1、約4.2、約4.3、約4.4、約4.5、約4.6、約4.7、約4,8.約4.9、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5、約7.6、約7.7、約7.8、約7.9、または約8.0の値を含み、これらの値のうち任意の値間のすべての範囲を含む。R2については、そのような基の小数は、約0、約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約2.5、約2.7、約2.8、約2.9、約3.0、約3.1、約3.2、約3.3、約3.4、約3.5、約3.6、約3.7、約3.8、約3.9、または約4.0を含み、これらの値のうち任意の値間のすべての範囲を含む。-W-Zについては、そのような基の小数は、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約2.5、約2.7、約2.8、約2.9、約3.0、約3.1、約3.2、約3.3、約3.4、約3.5、約3.6、約3.7、約3.8、約3.9、または約4.0を含み、これらの値のうち任意の値間のすべての範囲を含む。-L-については、そのような基の小数は、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約2.5、約2.7、約2.8、約2.9、約3.0、約3.1、約3.2、約3.3、約3.4、約3.5、約3.6、約3.7、約3.8、約3.9、または約4.0を含み、これらの値のうち任意の値間のすべての範囲を含む。
【0048】
各R2は、独立して、H、-OH、-O-金属カチオン、アルキル、アリール、ヘテロアリール、-SH、-S-金属カチオン、-S-アルキル、-C(O)2H、または-C(O)NH2である。いくつかの実施形態において、各R2は、Hである。いくつかの実施形態において、各R2は、-OHである。いくつかの実施形態において、各R2は、-O-金属カチオンである。いくつかの実施形態では、各R2は、アルキルである。いくつかの実施形態において、各R2は、アリール(例えば、置換または非置換のフェニルまたはナフチル)である。いくつかの実施形態において、各R2は、ヘテロアリール(例えば、O、S、またはNからなる群から選択される1個、2個、または3個の環ヘテロ原子を有する置換または非置換の5員または6員のヘテロアリール環)である。いくつかの実施形態において、各R2は、-SHである。いくつかの実施形態において、各R2は、-S-金属カチオンである。いくつかの実施形態において、各R2は、-S-アルキルである。本開示の実施形態によれば、1個、2個、3個、または4個のR2基が存在してもよい。例えば、0個、1個、2個、3個、または4個のR2基が、式(I)を有する複数の架橋上に存在する。当業者には認識されるように、式(I)を有する個々の複数の連結基のそれぞれのR2基の数は、本開示の多孔質ポリマー材料の全体にわたって各個々の連結基ごとに変化し得る。したがって、本開示の多孔質ポリマー材料には、複数の式(I)の連結基が存在してよく、各個々の連結基は、独立して、例えば0個、1個、2個、3個、または4個のR2基を有することができる。1個以上のR2基が複数の式(I)の連結基上に存在する場合、各R2基は同じでも異なっていてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、1つ以上のR2基が-O-金属カチオンであり、1つ以上のR2基が-OHである。
【0049】
各R3は、独立して、-H、-C1~C6アルキル、-C1~C3ハロアルキル、アリール、-C(O)N(Ra)(Rb)、-C(O)Rc、-CO2Rc、-SO2N(Ra)(Rb)、または-SORcであり、各Ra及びRbは、独立して、H、またはC1~C6アルキルである。いくつかの実施形態では、各R3は、Meである。いくつかの実施形態において、各R3は、Hである。R3がアリールである場合、アリールは、例えば、置換または非置換のフェニルまたはナフチルであり得る。
【0050】
ある特定の実施形態では、xは、1~4である。例えば、xは、1、2、3、または4であってよい。いくつかの実施形態において、xは、1または2であり、R1は、-Fである。
【0051】
ある特定の実施形態では、y1は、1~4である。例えば、y1は、1、2、3、または4であってよい。いくつかの実施形態において、y1は、1~2である。
【0052】
ある特定の実施形態では、y2は、1または2である。
【0053】
ある特定の実施形態では、y3は、0または1である。
【0054】
ある特定の実施形態において、本開示の多孔質ポリマー材料は、式(II):
【化24】
を有する複数の架橋により架橋された複数のシクロデキストリンを含み、
式中、
y
2は、1または2であり、
xは、1または2である。いくつかの実施形態において、y
2は、2であり、xは、1である。いくつかの実施形態において、各シクロデキストリンは、β-シクロデキストリンである。
【0055】
ある特定の実施形態において、本開示の多孔性ポリマー材料は、式(III):
【化25】
の複数のリンカーを含み、
【0056】
式中、1つのR4は-Hであり、1つのR4は-Meである。いくつかの実施形態において、各シクロデキストリンは、β-シクロデキストリンである。
【0057】
さまざまな実施形態において、本開示の多孔性ポリマー材料は、同じ構造のシクロデキストリンを同じ構造の架橋剤で架橋することによって調製される。いくつかの実施形態において、本開示の多孔質ポリマー材料は、同じ構造のシクロデキストリンを2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の異なる架橋剤で架橋することによって調製される。さまざまな実施形態において、本開示の多孔質ポリマー材料は、2つ、3つ、または4つの異なるシクロデキストリン(すなわち、異なる構造を有する)を同じ構造の架橋剤で架橋することによって調製される。いくつかの実施形態において、本開示の多孔質ポリマー材料は、2つ、3つ、または4つの異なるシクロデキストリンを、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の異なる架橋剤で架橋することによって調製される。
【0058】
いくつかの実施形態において、多孔質ポリマー材料の架橋の一部のものは、カチオン性またはアニオン性部分(すなわち、式(I)の基「Z」に対応する)を含まない。そのような実施形態では、多孔質ポリマー材料は、式(I)の複数の架橋剤、及び基「Z」に対応するカチオン性またはアニオン性部分がない点を除いて式(I)の架橋剤と同様の構造を有する複数の架橋剤を含む。。したがって、例えば、カチオン性またはアニオン性部分を欠くそのような架橋剤は、あらゆる目的で参照により本明細書に援用する米国特許第10,086,360号に記載の架橋剤構造のいずれかを有することができ、例えば、下記構造(a):
【化26】
または下記構造(b):
【化27】
または、構造(a)と(b)との組み合わせ(構造(b)中のxは、0、1、2、3、または4である)の複数の架橋剤を含む。構造(a)及び/または構造(b)の架橋剤を有する多孔質ポリマー材料のそのような実施形態では、そのような材料は、本明細書に記載の式(I)の荷電架橋剤も含む。
【0059】
更なる他の実施形態において、本開示の多孔性ポリマー材料は、下記構造(c):
【化28】
(式中、X
-は、Cl
-などの薬学的に許容されるアニオン性対イオンである)の複数のカチオン性架橋剤を含む。
【0060】
さらに他の実施形態において、本開示の多孔性ポリマー材料は、下記構造(d):
【化29】
(構造(d)中のxは、0、1、2、3、または4であり、X
-はCl
-などの薬学的に許容されるアニオン性対イオンである)の複数のカチオン性架橋剤を含む。
【0061】
さらに他の実施形態において、本開示の多孔質ポリマー材料は、構造(c)の複数のカチオン性架橋剤及び構造(d)の複数のカチオン性架橋剤を含む。芳香族ハロゲン化物基を有する本開示のいずれの架橋剤も、例えば、本明細書に記載されるような適切な条件下で塩化コリンと反応させることによって、荷電部分を与えるように修飾することができる。
【0062】
他の実施形態において、本開示の多孔質ポリマー材料は、下記構造(e):
【化30】
の複数のアニオン性架橋剤を含む。
【0063】
あるいは、構造(e)のカチオン性対イオン(Na+として示される)は、H+またはK+など(ただしこれらに限定されない)の他の任意の薬学的に許容されるカチオン性対イオンであってもよい。
【0064】
さらに他の実施形態において、本開示の多孔質ポリマー材料は、下記構造(f):
【化31】
(構造(f)中のxは、0、1、2、3、または4である)の複数のアニオン性架橋剤を含む。
【0065】
さらに他の実施形態において、本開示の多孔質ポリマー材料は、構造(e)の複数のカチオン性架橋剤及び構造(f)の複数のカチオン性架橋剤を含む。
【0066】
いくつかの実施形態において、本開示は、1つ以上のポリイソシアネートによって架橋された複数のシクロデキストリン部分を含む多孔質ポリマー材料を提供する。いくつかの実施形態において、複数のシクロデキストリンは、β-シクロデキストリンである。いくつかの実施形態において、1つ以上のポリイソシアネートは、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート、2,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジイソシアナト-1,1’-ビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、4,4’-オキシビス(フェニルイソシアネート)、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4-クロロ-6-メチル-1,3-フェニレンジイソシアネート、及び1-クロロメチル-2,4-ジイソシアナトベンゼン、ならびにこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されないアリールジイソシアネートである。いくつかの実施形態において、アリールジイソシアネートは、2,4-トルエンジイソシアネートである。いくつかの実施形態において、1つ以上のポリイソシアネートは、4,4’-ジイソシアネート-メチレンジシクロヘキサン(HMDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、L-リシンンジイソシアネート(LDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ジイソシアナトブタン、トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、1,6-ジイソシアナト-2,2,4-トリメチルヘキサン、trans-1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,8-ジイソシアナトオクタン、1,12-ジイソシアナトトドデカン、及びこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない脂肪族ジイソシアネートである。いくつかの実施形態において、複数のシクロデキストリンはβ-シクロデキストリンであり、1つ以上のポリイソシアネートは、2,4-トルエンジイソシアネートである。いくつかの実施形態において、多孔質ポリマー材料は、約10m2/g~2000m2/gのブルナウアー・エメット・テラー(BET)表面積を有する。例えば、いくつかの実施形態において、多孔質ポリマー材料は、約10m2/g、20m2/g、30m2/g、40m2/g、50m2/g、75m2/g、100m2/g、150m2/g、200m2/g、250m2/g、300m2/g、350m2/g、400m2/g、450m2/g、500m2/g、550m2/g、600m2/g、650m2/g、700m2/g、750m2/g、800m2/g、850m2/g、900m2/g、950m2/g、1000m2/g、1050m2/g、1100m2/g、1150m2/g、1200m2/g、1250m2/g、1300m2/g、1350m2/g、1400m2/g、1450m2/g、1500m2/g、1550m2/g、1600m2/g、1650m2/g、1700m2/g、1750m2/g、1800m2/g、1850m2/g、1900m2/g、1950m2/g~約2000m2/gのBET表面積を有し、これらの値の間のすべての整数及び範囲を含む。いくつかの実施形態において、多孔質ポリマー材料は、約0mmol/g~約1.0mmol/gのアミン含有量を有する。いくつかの実施形態において、多孔質ポリマー材料は、約0.1mmol/g~約1.0mmol/gのアミン含有量を有する。いくつかの実施形態において、多孔質ポリマー材料は、約0.15mmol/g~約0.35mmol/gのアミン含有量を有する。例えば、いくつかの実施形態において、アミン含有量は、約0.15mmol/g、約0.16mmol/g、約0.17mmol/g、約0.18mmol/g、約0.19mmol/g、約0.20mmol/g、約0.21mmol/g、約0.22mmol/g、約0.23mmol/g、約0.24mmol/g、約0.25mmol/g、約0.26mmol/g、約0.27mmol/g、約0.28mmol/g、約0.29mmol/g、約0.30mmol/g、約0.31mmol/g、約0.32mmol/g、約0.33mmol/g、約0.34mmol/g、及び約0.35mmol/gであってよく、これらの値の間のすべての範囲を含む。いずれの特定の理論に拘束されるものではないが、ポリマー合成にそのままのCD(すなわち未乾燥の)を使用することにより、得られるポリマーは従来技術に記載される同様のポリマーよりも高いアミン含有量を有し、PFASなどの特定の微量汚染物質に対するより高い親和性がもたらされることが発見された。
【0067】
ある特定の実施形態において、シクロデキストリンと式(I)、(II)、または(III)の連結基とのモル比は、約1:1~約1:Xの範囲であり、Xは、シクロデキストリン中のグルコースサブユニットの平均数の3倍である。ある特定の実施形態において、シクロデキストリンと式(I)、(II)、または(III)の連結基とのモル比は、約1:6である。ある特定の実施形態において、シクロデキストリンと式(I)、(II)、または(III)の連結基とのモル比は、約1:5である。ある特定の実施形態において、シクロデキストリンと式(I)、(II)、または(III)の連結基とのモル比は、約1:4である。ある特定の実施形態において、シクロデキストリンと式(I)、(II)、または(III)の連結基とのモル比は、約1:3である。ある特定の実施形態において、シクロデキストリンと式(I)、(II)、または(III)の連結基とのモル比は、約1:2である。さまざまな実施形態において、シクロデキストリン部分とアリール架橋部分とのモル比は、約1:1~約1:24であり、約1:1、約1:1.5、約1:2、約1:2.5、約1:3、約1:3.5、約1:4、約1:4.5、約1:5、約1:5.5、約1:6、約1:6.5、約1:7、約1:7.5、約1:8、約1:8.5、約1:9、約1:9.5、約1:10、約1:10.5、約1:11、約1:11.5、約1:12、約1:12.5、約1:13、約1:13.5、約1:14、約1:14.5、約1:15、約1:15.5、約1:16、約1:16.5、約1:17、約1:17.5、約1:18、約1:18.5、約1:19、約1:19.5、約1:20、約1:20.5、約1:21、約1:21.5、約1:22、約1:22.5、約1:23、約1:23.5、または約1:24を含み、これらの値の間のすべての比の範囲含む。一実施形態では、シクロデキストリン部分とアリール架橋部分とのモル比は、約1:2.5~約1:10である。
【0068】
いくつかの実施形態において、本開示による組成物は、本開示の1つ以上の多孔質ポリマー材料と、1つ以上の支持材料とを含み、多孔質ポリマー材料は支持材料に結合される(例えば、本明細書に記載のように共有結合、接着、または機械的に結合される)。例えば、いくつかの実施形態において、組成物は、式(I)、及び/または(II)、及び/または(III)を有する複数の架橋によって架橋された複数のシクロデキストリンを含む多孔質ポリマー材料を含む。支持材料の例としては、セルロース(例えば、セルロース繊維)、活性炭、酸化グラフェン、及び酸化炭素材料などの炭素系材料、シリカ、アルミナ、天然または合成ポリマー、及び表面ヒドロキシル基を含むように修飾された天然または合成ポリマーが挙げられる。当業者には、支持体として機能するのに適した機械的または他の特性を有し、多孔質ポリマー材料に共有結合できるか、または多孔質ポリマー材料が適切な結合剤材料によって支持体に接着により結合される場合に適切な支持材料として機能することができる任意の材料が認識されよう。一実施形態では、組成物は、膜またはカラム充填材の形態である。一実施形態では、支持体は繊維(例えば、セルロース、ナイロン、ポリオレフィン、またはポリエステル繊維)である。一実施形態では、支持体は、多孔質微粒子材料(例えば、多孔質シリカ及び多孔質アルミナ)である。一実施形態では、支持体は、織布または不織布である。一実施形態では、支持体は、衣服(保護衣服など)または外科用または医療用のドレープ、被覆材、または衛生用品である。
【0069】
いくつかの実施形態において、P-CDPは、支持体上にグラフトまたは結合させる(例えば、化学的または機械的に結合させる)ことで、粒径及び形態が理想的な流動特性を与えるように十分に制御された吸着剤を提供することができる。「機械的結合」という用語は、圧力、超音波接着、及び/または機械的交絡などの意図的な熱の適用を伴わない他の機械的結合プロセスによって2つの材料間に形成される結合を指す。ミクロンサイズの微粒子状物質を定位置に保持するためのミクロフィブリルの物理的な交絡及び被覆は、機械的結合の代表的な例である。機械的結合という用語は、接着剤または化学グラフト化を用いて形成された結合は含まない。いくつかの実施形態において、P-CDPは、支持体上にグラフトまたは結合させる(例えば、化学的または機械的に結合させる)ことで、理想的な流動特性を与えるように十分に制御された粒径及び形態を有する粒子が提供されるように粒径及び形態がさらに操作された(例えば造粒またはミリングにより)吸着剤を提供することができる。
【0070】
P-CDP支持体複合体は、従来のグラフト化法を含むさまざまな方法によって調製することができる。本明細書で使用される場合、「グラフト化」という用語は、P-CDP上の1つ以上の官能基と基材上の1つ以上の官能基との間のカップリング反応によってP-CDPを基材表面に共有結合させることを指す。いくつかの実施形態において、グラフト化は、シクロデキストリン、本開示の連結基、及び表面に結合した求核種(例えば、ヒドロキシル)を有する基材を互いに反応させ、本開示の連結基がシクロデキストリンのヒドロキシル基及び基材の表面求核種と反応することで、本開示の1つ以上の連結基を介して基材に部分的に結合されたP-CDPを形成する、本明細書に記載される「インサイチュ」プロセスを含む。表面に結合した求核種を有する基材としては、ヒドロキシル(微結晶性セルロースなど)、アミン、ホスフィン、及びチオールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
いくつかの実施形態において、「グラフトされた」P-CDP支持体複合体は、最適化されたP-CDP粒子を製造するための反応条件及び材料精製の適切な制御を行う専用の化学反応器中で最初にP-CDPを合成することによって調製される。次に、P-CDPは適切に官能化された基材と化学的に反応させられる。例えば、カルボン酸基(または当該技術分野で知られる酸ハロゲン化物、無水物などのその活性化形態)で官能化された基材は、P-CDP上の1つ以上のヒドロキシルと反応して、基材とエステル結合を形成することができる。あるいは、P-CDPは、基材上の適切な官能基と反応することができるように、その後のP-CDPの修飾によって(例えば、本明細書に記載の官能化シクロデキストリンの選択によって)適切に官能化することもできる。エステル結合を形成するカルボン酸(及びその誘導体)とヒドロキシルとの反応、アミド結合を形成するカルボン酸(及びその誘導体)とアミン基と反応、ウレタンを生成するイソシアネートとアルコールとの反応、尿素を生成するイソシアナートとアミンとの反応、ウレタンを生成する環状炭酸塩とアミンとの反応、チオエーテルを生成するチオールとアルケンまたはアルキンとの反応、エポキシドとアミン基との反応、アクリレート、メタクリレート、チオールなどとオレフィンとの光化学反応など、あらゆる適切な反応化学が企図され得る。本明細書に記載の反応性官能基は、反応が基材とP-CDPとの間に共有結合を形成するという条件の下、P-CDPまたは基材上のいずれに存在してもよい。例えば、ヒドロキシル及びカルボン酸の反応性官能基(反応後にエステル結合を形成する)では、ヒドロキシル基はP-CDP上に存在してよく、カルボキシル基は基材上に存在してよい(またはその逆であってよい)。
【0072】
他の実施形態では、基材は、上記に述べた反応性官能基を有する「プライマー」でコーティングすることができる。プライマーは基材の表面に付着し、適切な条件下で適切に官能化されたP-CDPと反応して、P-CDPとプライマーとの間に共有結合を形成することができる。
【0073】
P-CDP粒子は、特定の粒径が得られるように操作することができる。いくつかの実施形態において、P-CDPは、さらなる粒径の縮小を必要とし得る架橋粒子の形態で生成される(例えば、安定した分散液またはスラリーを形成する目的で、または最適な流動特性を与える目的で)。P-CDPの粒径を減少させるため、粉砕またはミリングなどの当業者には直ちに明らかなさまざまな手段を用いることができる。粉砕及びミリングを用いて、1ミクロン未満のサイズの小さな粒子を作製することができる。一般的なミリング操作は当業者が用いることができ、湿式及び乾式ミリングの両方がある。ミリングは、ボールミル、自生ミル、SAGミル、ペブルミル、ロッドミル、バーストーンミル、タワーミル、垂直シャフトインパクターミルなどを含むがこれらに限定されないさまざまな方法で使用することができる。ミリング媒体としては、ロッド、ボール、不規則な形状を含むさまざまなフォームファクタの金属、ケイ酸塩、及び他の無機材料が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、ミリングは、乾燥プロセスで乾燥P-CDP粉末材料に対して行われ、より微細な乾燥粉末を生成するか、または乳化剤を含むもしくは含まないP-CDP粉末の湿った水性スラリーに対して行われ、より微細な微粒子分散液を生成する。非イオン性、アニオン性、または陽イオン性の特性を有する小分子及びポリマー界面活性剤化合物を含むがこれらに限定されない乳化剤を使用することができ、これらは当業者には直ちに明らかである。微細な微粒子状のフォームファクタを用いることで、(1)分離しにくいことによって時間が経過しても均一に保たれるより安定した水性分散液、(2)分散液中の材料の50重量%以上の値の高い重量ロード量を可能とする、(3)さまざまな基材、表面、繊維、糸、布地などに均一にコーティングまたは塗布できることで、「手」に最小の知覚可能な変化をもたらす仕上げ後の材料を生成する粒子状物質を生成し、及び(4)結合剤、界面活性剤、湿潤剤、または軟化剤などの他のエマルジョンまたは溶液との希釈及び混合に対して安定的な分散液が生成される、などのさまざまな利点が得られることが当業者には認識されよう。いくつかの実施形態において、最終粒子直径は、1ミクロン未満、1~5ミクロン、5~10ミクロン、10~15ミクロン、及び15~20ミクロン、またはそれらの間の範囲を含む。
【0074】
より大きな粒径が望ましい場合、組成物を造粒して、より大きな粒径の凝集体を形成することができる。したがって、いくつかの実施形態において、顆粒(例えば、自立性顆粒)が、さまざまなサイズのP-CDP粒子粉末から生成される。概して、このプロセスは、1~30ミクロンの範囲のサイズ形態のP-CDP粒子粉末を、100ミクロン、200ミクロン、300ミクロン、及びそれよりも大きい顆粒に変換する。このプロセスは、製薬業界に一般的な造粒技術(Handbook of Granulation Technology,Ed.Parikh,D.M.,2005,Taylor & Francis Group)により行うことができ、粉末が物理的及び/または化学的手段によってバッチまたは連続モードで互いに結合される。最も単純な形態では、P-CDPの粒子は、接着性結合剤(通常は合成、半合成、または天然ポリマー)を含む流体(例えば、水性)混合物と機械的にブレンドされる。使用可能な適切な半合成ポリマーとしては、セルロースエーテル、具体的には、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン及びデンプン誘導体などが挙げられる。ポリビニルピロリドンまたはポリエチレングリコールなどの適切な完全合成ポリマーを使用することができる。他の適切な結合剤には、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン(PAE)またはポリマー性グリオキサール架橋剤、ポリビニルアルコール、及びデンプンベースのサイズを含む、繊維産業及び製紙産業で使用されるサイズ及び他のコーティングが含まれる。水または他の溶媒に溶解しにくい耐久性のある顆粒を製造するには、グリオキサール、ホルムアルデヒド、ジイソシアネート、及び/またはジエポキシド官能基などの小分子架橋剤の添加により、さらなる共有結合架橋を促進することができる。共有結合架橋に加えて、高分子電解質の静電凝集も結合モチーフとして利用することができ、カチオン性高分子電解質がP-CDP粉末及び/または支持構造の存在下でアニオン性高分子電解質とブレンドされる際に適切な接着特性を形成する。ポリカチオンは、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(ポリDADMAC)、酸性ポリエチレンイミン、及びポリアクリルアミドを含むがこれらに限定されない、凝集に一般的に使用されるものを含むことができる。ポリアニオンは、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、及びポリビニルスルホネートを含むがこれらに限定されない、凝集に一般的に使用されるものを含むことができる。
【0075】
造粒中の機械的混合は、回転ドラム混合またはオーバーヘッド機械的攪拌などの低剪断プロセスにより行うことができる。当業者には直ちに明らかとなるように、攪拌速度及び攪拌時間の全体の長さは、顆粒径に影響する。造粒は、流動床で、または噴霧乾燥技術により行うこともできる。いずれの場合も、P-CDP粒子は、結合剤化合物を含む水性または溶媒系混合物と組み合わされ、機械的または物理的攪拌が、指定されたせん断力で、所定のサイクル数だけ実行される。得られた粒子は、粒子の平均直径の段階的な成長変化を示し、また、多分散度の変化も示し得る。これらの顆粒の物理的特性は、選択される結合剤、架橋化学、及び造粒に使用される物理的プロセスに依存する。これらのより大きな顆粒状粒子は、水濾過及び工業用分離に一般的に用いられる充填床カラム濾過に適している。
【0076】
いくつかの実施形態において、本開示は、P-CDP粒子を含む安定な水性分散液を提供する。いくつかの実施形態において、そのような安定な水性分散液中に使用され得る本開示のP-CDP粒子は、約1μm~約150μmである。例えば、P-CDP粒子は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、~約150μmである。安定な水性分散液は、「グラフト化」用途で使用することができる。例えば、安定な水性分散液は、機械的充填及び結合、ならびに熱結合微粒子の圧密形態及び溶液処理されたポリマーのフォームファクタへの組み込みのための化学結合剤またはフィブリル化繊維を用いた用途で使用することができる。
【0077】
本開示のP-CDP材料はまた、支持材料(あるいは「基材」と呼ばれる)上に調製することができ、例えば、繊維性基材などの支持体に共有結合、接着結合、または機械的に結合させることができる。支持材料は、架橋剤またはシクロデキストリンとの相互作用(例えば、共有結合または機械的結合)を形成することができる1つ以上の基(例えば、ヒドロキシルまたはアミノ、チオール、またはホスフィン、または本明細書に記載の他の基)を有する任意の材料とすることができる。例えば、架橋剤の一端(例えば、式(I)、(II)、及び/または(III)の連結基)は、基材材料に共有結合し、架橋剤のもう一方の端は、シクロデキストリングルコース単位または修飾シクロデキストリン上の反応中心(シクロデキストリンに結合した酸ハロゲン化物または活性化エステルなど)に共有結合している。支持材料は、使用条件下、例えば水性媒体中で(例えば、目視検査、重量測定法、または分光法によって観察可能な程度に)溶解しないことが望ましい。支持材料の例としては、微結晶性セルロース、セルロースナノ結晶、ポリマー材料(例えば、アクリレート材料、メタクリレート材料、スチレン材料(例えば、ポリスチレン)、ポリエステル材料、ナイロン材料、及びそれらの組み合わせ)、または無機材料(例えば、ケイ酸塩、シリコーン、アルミナ、チタニア、ジルコニア、及びハフニアなどの金属酸化物、ならびにそれらの組み合わせ))が含まれるが、これらに限定されない。さまざまな例において、ポリマー材料は、ホモポリマー、コポリマー、または樹脂(例えば、ポリマー材料を含む樹脂)である。支持材料は、ヒドロキシルまたはアミノ含有ポリマービーズまたは不規則な粒子であり得る。支持材料は、繊維(例えば、パルプ、ショートカット、ステープル繊維、及び連続フィラメント)、繊維束(例えば、糸(紡糸及び連続フィラメントの両方))、繊維マット(例えば、不織布(ステープル及び連続フィラメントの両方))、布地(例えば、ニット、織物、不織布)、膜(例えば、フィルム、螺旋巻き、及び中空繊維)、布、微粒子(例えば、粉末)、または固体表面の形態であり得る。いくつかの実施形態において、繊維質基材はセルロース基材である。セルロース基材は、木材パルプ(例えば、紙または紙繊維)などの植物源に由来するセルロース、綿、再生セルロース、セルロースエステル及び/またはエーテルなどの改質セルロース系、デンプン、ポリビニルアルコール及びその誘導体などの任意の適切な形態のセルロースを含むことができる。セルロース基材は、織布または不織布などの布の形態、または繊維、フィルム、または任意の他の適切な形状として、特に高い表面積または多孔度を与える形状とすることができる。特定の実施形態では、本開示のP-CDP材料は、繊維、例えば、セルロース繊維、または綿などの布に結合される。
【0078】
前の段落に記載された基材に加えて、基材は以下のいずれかを含み得る:ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、タンパク質、タンパク質ベースの繊維(例えば、羊毛)、キトサン及びアミン含有セルロース誘導体、ポリアミド、塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリウレタン、メラミン、ポリイミド、ポリスチレン、ポリアクリル、ポリアミド、アクリレートブタジエンスチレン(ABS)、バルノックス、PVC、ナイロン、EVA、PET、硝酸セルロース、酢酸セルロース、混合セルロースエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)またはポリテトラフルオロエチレン(PFTEまたはTeflon R.)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ホスフィンまたはチオール機能性材料、及びシリコーンまたはそれらの組み合わせ。基材はまた、ケイ素または酸化ケイ素、あるいはガラス(例えば、マイクロファイバーとしての)で構成されてもよい。適切な材料には、布地または合成もしくは天然繊維ベースの材料がさらに含まれる。材料は、任意の形態または形状を有してよく、例えば、シート、ビーズ、顆粒、ロッド、繊維、フォームまたはチューブの形態であってよく、また、剛性、可撓性または弾性であってよい。
【0079】
必要に応じて、材料表面は、例えばコロナ処理、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ、選択的プラズマ臭素化、化学グラフト化、アリル化学、反応性基の化学蒸着(CVD)、プラズマ活性化、スパッタコーティング、エッチング、またはその他の既知の技術を含む既知の表面活性化技術など、当該技術分野では周知の任意の方法によって活性化することができる。例えば、ガラス表面の場合、そのような表面は本明細書ではすでに活性化されていると見なされるので、そのような活性化は通常必要とされない。表面の活性化の目的は、表面修飾官能基またはプライマーポリマーの(直接的な)共有結合に適した表面を与えることである。表面を、その必要に応じた活性化の後、さらに官能化することができる。表面の官能化の目的は、プレコートポリマーの共有結合に適した官能基を与えることである。
【0080】
当業者には、必要に応じて活性化された表面にポリマーを結合させることのさまざまな可能性は十分に認識される。これらの技術は、一般に、アミノ、シラン、チオール、ヒドロキシル、及び/またはエポキシ官能基の表面への導入、及びそれに続く表面へのポリマーの結合を伴う。
【0081】
官能化はまた、プライマーポリマーを所定の距離で表面に結合させるためのスペーサーまたはリンカーの表面への導入を含んでもよい。適切なスペーサーとしては、例えば、表面を例えばアミノアルキルシランと反応させることによるアルキル化がある。
【0082】
P-CDPは、本開示の連結基を介して(例えば、連結基のヒドロキシル基またはアミノ基を介して)基質に結合させることができる。「リンカー部分」は、P-CDPと基材との間に介在する原子を指す。本明細書における「リンカー」及び「連結部分」という用語は、基材とP-CDPとを互いに接続する任意の部分を指す。連結部分は、P-CDPを基材に直接接続する共有結合または化学官能基であり得る。連結部分は、集合的に連結基と呼ばれる一連の共有結合した原子及びそれらの置換基を含むことができる。いくつかの実施形態において、連結部分は、P-CDPをリンカー基の第1の末端に結合する第1の共有結合または化学官能基、及びリンカー基の第2の末端を基材に結合する第2の共有結合または化学官能基によって特徴付けられる。第1及び第2の官能基は、独立して存在する場合も存在しない場合もあり、リンカー基とともに、集合的にリンカー部分と呼ばれる。リンカー部分は、連結基、存在する場合は第1の官能基、及び存在する場合は第2の官能基によって定義される。ある特定の実施形態において、リンカー部分は、これらの原子の供給源及び結合体を合成するために使用される反応シーケンスとは無関係に、P-CDPと基材との間に介在する原子を含む。いくつかの実施形態において、リンカー部分は、本明細書に記載されるアリール部分である。いくつかの実施形態において、リンカーは、以下の官能基、すなわち、多官能性イソシアネート(例えば、ジイソシアネート)、エポキシ、カルボン酸、エステル、活性化エステル、塩化シアヌル、シアヌル酸、酸塩化物、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、チオール、及びホスフィンのうちの1つ以上を有する。
【0083】
いくつかの実施形態において、P-CDPは、微結晶性セルロース(CMC)上にグラフトまたは結合される。CMCは、約10~約500μmのさまざまなメジアン粒径で使用可能であり、約10μm、20μm、45μm、50μm、65μm、75μm、100μm、150μm、180μm、190μm、200μm、225μm、250μm、275μm、300μm、325μm、350μm、375μm、400μm、425μm、450μm、475μm、及び約500μm、及びそれぞれの間の全ての粒径を含む。いくつかの実施形態において、P-CDPは、約50μmのメジアン粒径を有するにCMC上にグラフトまたは結合される。一例では、CMCは、Avicel(商標)として商品化されている。他の実施形態では、P-CDPは、ヒドロキシル基などの本明細書に開示される表面官能基が生成されるように表面が処理された、本明細書に記載のセルロース以外のポリマー基材上にグラフトまたは結合される。
【0084】
いくつかの実施形態において、P-CDP-基材複合体(例えば、式(I)-CMC基材複合体のアリールリンカーで架橋されたP-CDP)は、約1nm~約2000nmのポリマー厚さ(すなわち、基材の表面上の多孔質P-CDP粒子の厚さ)を有する。例えば、P-CDP-基材複合体は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、1500、1550、1600、1650、1700、1750、1800、1850、1900、1950、~約2000nmのポリマー厚さを有する。いくつかの実施形態において、P-CDP-基材複合体は、1000nm未満のポリマー厚さを有する。いくつかの実施形態において、P-CDP-基材複合体は、約800nmのポリマー厚さを有する。当業者には直ちに明らかであるように、より薄い厚さ(例えば、1000nm未満)を有することで、混入物質、例えば水性混入物質を吸収するうえでより速い速度が可能となる。
【0085】
いくつかの実施形態において、P-CDP-基材複合体(例えば、式(I)-CMC基材複合体のアリールリンカーで架橋されたP-CDP)は、CD1g当たりの混入物質が最大500mgの混入物質吸着容量を有する。例えば、吸着容量は、CD1g当たりの混入物質が最大約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490~約500mgであり得る。いくつかの実施形態において、吸着容量は、CD1g当たり混入物質が最大約200mgである。いくつかの実施形態において、混入物質は、アニオン性微量汚染物質(例えば、PFAS)である。いくつかの実施形態において、シクロデキストリンは、β-シクロデキストリンである。いくつかの実施形態において、連結基は、式(I)、(II)、及び/または(III)の連結基である。
【0086】
いくつかの実施形態において、P-CDP-基材複合体(例えば、式(I)-CMC基材複合体のアリールリンカーで架橋されたP-CDP)は、CD1g当たりの混入物質が最大500mgの平衡状態の混入物質吸着容量を有する。例えば、平衡状態の吸着容量は、CD1g当たりの混入物質が最大約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490~約500mgであり得る。いくつかの実施形態において、平衡状態の吸着容量は、CD1g当たり混入物質が最大約200mgである。いくつかの実施形態において、混入物質は、アニオン性微量汚染物質(例えば、PFAS)である。いくつかの実施形態において、シクロデキストリンは、β-シクロデキストリンである。いくつかの実施形態において、連結基は、式(I)、(II)、及び/または(III)の連結基である。
【0087】
いくつかの実施形態において、P-CDP-基材複合体(例えば、式(I)-CMC基材複合体のアリールリンカーで架橋されたP-CDP)は、2分未満の緩和時間を有する。当業者には認識されるように、緩和時間が長いプロセスはゆっくりと平衡に達し、緩和時間が短いプロセスは速やかに平衡に適応する。いくつかの実施形態において、混入物質は、アニオン性微量汚染物質(例えば、PFAS)である。いくつかの実施形態において、シクロデキストリンは、β-シクロデキストリンである。いくつかの実施形態において、連結基は、式(I)、(II)、または(III)の連結基である。
【0088】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるP-CDP材料のいずれも、本明細書に定義されるように、CMC上に直接、またはリンカー基を介してグラフトまたは結合される。いくつかの実施形態において、P-CDPは、CMC表面上に均一に分布する。いくつかの実施形態では、リンカーは、式(I)のアリールリンカーである。いくつかの実施形態では、リンカーは、式(II)の連結基である。いくつかの実施形態では、リンカーは、式(III)の連結基である。いくつかの実施形態において、メジアン粒径は、約50μmである。いくつかの実施形態において、メジアン粒径は、約1~約250μmである。
【0089】
CMCは、とりわけ流動特性に影響することが知られている粒子形状によって区別することもできる。粒子形状の非限定的なリストには、球形(丸みを帯びた形状)、棒状、及び針状が含まれる。粒子は、平ら、平らでかつ細長いと表現することもでき、アスペクト比によって特徴付けることもできる。いくつかの実施形態において、CMCは球形の粒子形状を有する。いくつかの実施形態において、CMCは、より小さなCMC粒子の凝集体の形態で存在する。このようなCMC凝集体は、200μm~約2mmの範囲の粒径を有することができる。例えば、CMC凝集体の粒径は、約200μm、約300μm、約400μm、約500μm、約600μm、約700μm、約800μm、約900μm、約1mm、約1.2mm、約1.3mm、約1.4mm、約1.5mm、約1.6mm、約1.7mm、約1.8mm、約1.9mm、または約2mmであってよく、これらの値の間のすべての範囲を含む。
【0090】
いくつかの実施形態において、P-CDPは、式(I)の連結基を介してCMC上にグラフトまたは結合される。いくつかの実施形態において、P-CDPは、式(Ia)の連結基を介してCMC上にグラフトまたは結合される。いくつかの実施形態において、P-CDPは、式(II)の連結基を介してCMC上にグラフトまたは結合される。いくつかの実施形態において、P-CDPは、式(III)の連結基を介してCMC上にグラフトまたは結合される。
【0091】
いくつかの実施形態において、本開示のP-CDPは、アリールリンカーを介してCMC上にグラフトまたは結合され、アリールリンカーは、CMC結晶上に均一に分布されている。いくつかの実施形態において、メジアン粒径は、約100nmである。
【0092】
本明細書に示されるようなCMCの使用に加えて、他の可能な支持材料の例としては、活性炭、酸化グラフェン、ならびにシリカ及びアルミナなどの上記に述べた材料が挙げられる。
【0093】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される支持されたP-CDP材料(例えば、式(I)-CMC基材複合体のアリールリンカーで架橋されたP-CDP)は、狭い粒径の分散度を有する粒子の形態であることが望ましい。いくつかの実施形態において、粒度分布は、約5以下の低い相対スパンを有し、ここで相対スパンは、(D90-D10)/D50という比によって定義され、D90、D50、及びD10はそれぞれ、分布中の粒子の90%、50%、及び10%がそれよりも小さい直径を有する直径である。適切なスパンは、5、4.5、4、3.5、3、2.5、2、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、または0.1以下であり、これらの値の間のすべての範囲を含む。
【0094】
他のさまざまな実施形態において、P-CDPは、セルロースナノ結晶(CNC)上にグラフトまたは結合され得る。CNCは、機械的、化学的、及び酵素処理後に得られるセルロースミクロフィブリルの結晶領域である。供給元と調製方法に応じて、CNCは、約1~1000nmの範囲の長さ、約3~50nmの範囲の幅で入手可能であり、これらの範囲の間のすべての値を含む。例えば、CNCは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950~約1000nmの長さを有する。CNCは、約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または約50の幅を有する。いくつかの実施形態において、P-CDP-CNC基材は、非結合CNCの2~3倍のサイズ(長さ及び幅)であり得る。CNCは、約2~100の範囲のアスペクト比値(L/D)によってさらに特徴付けられる(George,J.,et al.,Cellulose nanocrystals: synthesis,functional properties,and applications.Nanotechnology,Science and Applications.2015;8:45-54)。例えば、CNCのアスペクト比は、約2、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、または100である。
【0095】
いくつかの実施形態において、P-CDPは、本明細書に記載の式(I)、(II)、及び/または(III)の連結基を介してCNC上にグラフトまたは結合される。いくつかの実施形態において、P-CDPは、式(I)の連結基を介してCMC上にグラフトまたは結合される。いくつかの実施形態において、P-CDPは、式(II)の連結基を介してCMC上にグラフトまたは結合される。いくつかの実施形態において、P-CDPは、式(III)の連結基を介してCMC上にグラフトまたは結合される。
【0096】
いくつかの実施形態において、P-CDPは、リンカーを介してCNC上にグラフトまたは結合され、リンカーはCNC結晶上に均一に分布する。いくつかの実施形態において、メジアン粒径は、約100nmである。
【0097】
CNCは、とりわけ流動特性に影響することが知られている粒子形状によって区別することもできる。粒子形状の非限定的なリストには、球形(丸みを帯びた形状)、棒状、及び針状が含まれる。粒子は、平ら、平らでかつ細長いと表現することもでき、アスペクト比によって特徴付けることもできる。いくつかの実施形態において、CNCは、約5~約100の間のアスペクト比を有する。例えば、アスペクト比は、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95~約100であり得る。いくつかの実施形態において、CNCのアスペクト比は約20~25である。いくつかの実施形態において、CNCは針状である。いくつかの実施形態において、CNCは、より小さなCNC粒子の凝集体の形態で存在する。そのようなCNC凝集体は、凝集体を構成する粒子のサイズ及び数に応じて、個々の粒径よりも5~100倍大きい粒径を有することができる。
【0098】
いくつかの実施形態において、基材は布地または繊維である。したがって、いくつかの実施形態において、本開示は、繊維にグラフトまたは結合された(例えば、化学的または機械的に)P-CDPを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、P-CDPは、本明細書に記載される式(I)、(II)、及び/または(III)のリンカーを介して繊維上にグラフトまたは結合される。いくつかの実施形態において、繊維は不織布繊維である。いくつかの実施形態において、本開示は、布地にグラフトまたは結合された(例えば、化学的に、接着により、または機械的に)P-CDPを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、P-CDPは、式(I)、(II)、または(III)のリンカーを介して布地上にグラフトまたは結合される。
【0099】
使用に適した繊維としては、本明細書に開示されるポリマーのいずれかを含む繊維、例えば、ゲル紡糸超高分子量ポリエチレン繊維(例えば、Morristown,N.J.のHoneywell Advanced Fibersより販売されるSPECTRA(登録商標)繊維、及びオランダのDSM High Performance Fibers Co.より販売されるDYNEMA(登録商標)繊維)、溶融紡糸ポリエチレン繊維(例えば、Charlotte,N.C.のCelanese Fibersより販売されるCERTRAN(登録商標)繊維)、溶融紡糸ナイロン繊維(例えば、Wichita,Kans.のInvistaより販売される高靭性タイプのナイロン6,6繊維)、溶融紡糸ポリエステル繊維(例えば、Wichita,Kans.のInvistaより販売される高靭性タイプのポリエチレンテレフタレート繊維)、及び焼結ポリエチレン繊維(例えば、Charlotte,N.C.のITSより販売されるTENSYLON(登録商標)繊維)などの高度に配向した繊維から作られた繊維が含まれるが、これらに限定されない。適切な繊維としては、リオトロピックリジッドロッドポリマー、複素環式リジッドロッドポリマー、及びサーモトロピック液晶ポリマーなどのリジッドロッドポリマーから製造されるものも含まれる。適切な繊維としては、反応性湿式紡糸ビスコースレーヨン(インドのBirlaまたはオーストリアのLenzingより販売されるビスコース)、銅アンモニアベースのレーヨン(日本の旭化成より販売されるCupro(登録商標)Bemberg)、またはNMMO溶媒から紡糸されたエアギャップ(オーストリアのLenzingより販売されるTencel(登録商標))を含む、再生セルロースから製造されるものも含まれる。リオトロピックリジッドロッドポリマーから製造される適切な繊維としては、ポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)繊維(例えば、Wilmington,Del.のDuPontより販売されるKEVLAR(登録商標)繊維及び日本の帝人より販売されるTWARON(登録商標)繊維)、及び3,4’-ジアミノジフェニルエーテルとp-フェニレンジアミンの1:1コポリテレフタルアミドから製造される繊維(例えば、日本の帝人より販売されるTECHNORA(登録商標)繊維)などのアラミド繊維が挙げられる。p-フェニレン複素環などの複素環式リジッドロッドポリマーから製造される適切な繊維としては、ポリ(p-フェニレン-2,6-ベンゾビスオキサゾール)繊維(PBO繊維)(例えば、日本の東洋紡より販売されるZYLON(登録商標)繊維)、ポリ(p-フェニレン-2,6-ベンゾビスチアゾール)繊維(PBZT繊維)、及びポリ[2,6-ジイミダゾ[4,5-b:4’,5’-e]ピリジニレン-1,4-(2,5-ジヒドロキシ)フェニレン]繊維(PIPD繊維)(例えば、Wilmington,Del.のDuPontより販売されるM5(登録商標)繊維)が挙げられる。サーモトロピック液晶ポリマーから製造される適切な繊維としては、ポリ(6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸-co-4-ヒドロキシ安息香酸)繊維(例えば、Charlotte,N.C.のCelaneseより販売されるVECTRAN(登録商標)繊維)が挙げられる。適切な繊維としては、レーヨン、ポリアクリロニトリル(例えば、Midland,Mich.のDowより販売されるOPF(登録商標)繊維)、及びメソモルフィック炭化水素タール(例えば、Greenville,S.C.のCytecより販売されるTHORNEL(登録商標)繊維)の高温熱分解により製造されるものなどの炭素繊維も挙げられる。ある特定の好ましいと考えられる実施形態においては、繊維層の糸または繊維は、ゲル紡糸超高分子量ポリエチレン繊維、溶融紡糸ポリエチレン繊維、溶融紡糸ナイロン繊維、溶融紡糸ポリエステル繊維、焼結ポリエチレン繊維、アラミド繊維、PBO繊維、PBZT繊維、PIPD繊維、ポリ(6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸-co-4-ヒドロキシ安息香酸)繊維、炭素繊維、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される繊維を含む。
【0100】
本開示のP-CDP材料は、本明細書に記載されるように適切な結合剤ポリマーによってそのような繊維に接着するか、または本明細書に記載されるように繊維の表面を官能化し(例えば、表面ヒドロキシル基を生成するための表面酸化)、繊維表面上にその場でP-CDPを形成するか、または適切に官能化されたP-CDPを官能化された繊維表面と直接的に、もしくは本明細書に記載されるリンカー部分を介して間接的に反応させることによってそのような繊維に化学的に結合させることができる。
【0101】
繊維は、異なる結合方法によって不織布に変換することができる(P-CDPの結合の前または後で)。連続繊維は、業界標準のスパンボンドタイプの技術を使用してウェブとして形成でき、ステープル繊維は、業界標準のカーディング、エアレイド、またはウェットレイド技術を使用してウェブとして形成できる。典型的な結合方法としては、カレンダー(圧力と熱)、通気加熱、機械的交絡、流体力学的交絡、ニードルパンチング、及び化学結合及び/または樹脂結合が含まれる。カレンダー、通気加熱、及び化学結合は、デンプンポリマー繊維の好ましい結合方法である。加圧加熱及び通気加熱結合法には、熱結合可能な繊維が必要とされる。
【0102】
本発明の繊維はまた、他の合成繊維または天然繊維と結合させるかまたは組み合わせて不織布製品を製造することができる。合成繊維または天然繊維は、成形プロセスで互いにブレンドするか、個別の層で使用することができる。適切な合成繊維としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアクリレート、ならびにそれらのコポリマー及びそれらの混合物から製造された繊維が挙げられる。天然繊維としては、セルロース繊維及びその誘導体が挙げられる。適切なセルロース繊維としては、広葉樹繊維、針葉樹繊維、麻、及び綿を含む、任意の樹木または植物に由来するものが挙げられる。レーヨンなどの天然セルロース源を加工して作られた繊維も含まれる。
【0103】
本発明の繊維を使用して、他の適切な物品の中でも特に不織布を製造することができる。不織布物品は、連続的または非連続的な、物理的及び/または化学的に互いに結合された複数の繊維を15%よりも多く含む物品として定義される。不織布は、追加の不織布またはフィルムと組み合わせて、それ自体で、または他の材料の複雑な組み合わせの中の構成要素として使用される層状製品を製造することができる。好ましい物品は、使い捨ての不織布物品である。得られた製品は、空気、油、及び水用のフィルター;吸湿性及び臭気吸収性ならびに着用の柔らかさが改善されたマイクロファイバーまたは通気性布地などの織物;ほこりや汚染物質を収集して除去するための静電荷を帯びた構造化ウェブ;外科用ドレープ、創傷被覆材、包帯、皮膚パッチなどの繊維製品;こぼれた油や水の拭き取りなどに使用される水及び油を吸収するための繊維製品に用途を見出すことができる。本発明の物品はまた、悪臭を吸収するための衛生及び医療用途のための使い捨て不織布も含み得る。衛生用途には、ワイプ;おむつ、特にトップシートまたはバックシート;及び女性用パッドまたは製品、特にトップシートが含まれる。
【0104】
繊維層の糸または繊維は、任意の適切な単位長さ当たりの重量(例えば、デニール)を有することができる。通常、繊維の単位長さ当たりの重量は、フィラメント当たり約1~約50デニール(9000メートル当たり1~約50g)である。糸は、10~約5000本の複数のフィラメントを含む。
【0105】
いくつかの実施形態において、P-CDPは、結合剤を介して繊維または布地などの基材に接着剤で結合される。いくつかの実施形態において、P-CDPは、結合剤を介して繊維または布地などの基材上にコーティングされる。いくつかの実施形態において、P-CDPは、P-CDP粒子の安定な水性分散液に結合剤と共に表面を導入することによって繊維または布地などの基材に結合剤を介して結合またはコーティングされる。P-CDP粒子分散液は、1~50重量%であってよく、ポリマー結合剤材料は、エマルジョンまたは溶液中に1~50重量%で存在してよい。例えば、P-CDP粒子分散液は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または約50重量%で存在してよい。ポリマー結合剤材料は、エマルジョンまたは溶液中に、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または約50重量%で存在してよい。さらなる補助剤を重量で微量成分として使用して、基材による湿潤(湿潤剤)、溶液の発泡または消泡、基材の手用の軟化剤、及び/または結合剤の硬化用の触媒を制御することができる。
【0106】
例えば、浸漬及び圧搾、溶液キャスティング、フォームコーティング、または配合された溶液の目的の基材への噴霧などの当該技術分野では周知のさまざまなコーティング技術を適用することができる。基材としては、織物、編物または不織布、連続フィラメント糸、紡績糸、紡糸繊維、木材表面、及び熱可塑性表面が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、配合された溶液を基材に適用する際、組み合わされた系を乾燥させて水溶媒を除去すると、その時点で、ポリマー結合剤と混合されたP-CDP粒子の均一なフィルムが存在することになる。乾燥プロセスにおいて、乳化ポリマーとして存在する結合剤材料が一緒に流れて連続相となる。結合剤の選択に応じて、P-CDP粒子は、機械的手段または結合剤連続相のみとの接着によって所定の位置に保持されるか、または硬化可能な結合剤が選択される場合にはさらなる共有結合が存在し得る。このような共有結合は、下にある基材を拡張することができ、P-CDP粒子コーティングの耐久性がさらに高められる。
【0107】
当業者には直ちに明らかであるように、得られたP-CDP粒子フィルムは、下にある基材の形状に適合し、物理的摩耗、及び洗浄に対する耐久性があり、物品を展開することができる。さらに、P-CDP粒子がコーティング内の水相または気相にアクセスできる場合、モノリシック粒子と同じ選択的かつ高親和性の小分子吸着特性を示す。このようなフォームファクタは、フィルターカートリッジ、プリーツフィルター、不織布ニードルパンチフィルター、衛生用不織布、及び衣料品に変換できる。
【0108】
本明細書に参照によりその全容を援用する米国特許出願公開第2014/0178457A1号に開示されるもののいずれかなど、当業者には周知のさまざまな結合剤を本開示との関連で使用することができる。適切な結合剤としては、ラテックス結合剤、イソシアナート結合剤(例えば、ブロックイソシアナート結合剤)、アクリル結合剤(例えば、非イオン性アクリル結合剤)、ポリウレタン結合剤(例えば、脂肪族ポリウレタン結合剤及びポリエーテル系ポリウレタン結合剤)、エポキシ結合剤、尿素/ホルムアルデヒド樹脂、メラミン/ホルムアルデヒド樹脂、ポリビニルアルコール(PvOH)樹脂(本明細書に参照によりその全容を援用する米国特許第5,496,649号に開示される)及びそれらの架橋型、ポリエチレンビニルアルコール(EvOH)及びその架橋型、ポリエチレンビニルアセテート(EVA)、デンプン及びデンプン誘導体、セルロースエーテル誘導体、ならびにセルロースエステル誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。ホルムアルデヒド、グリオキサール、ジイソシアネート、ジエポキシド、及び/または四ホウ酸ナトリウム、ならびにそれらの組み合わせを含む、小分子、ポリマーまたは無機架橋剤をさらに使用することができる。
【0109】
いくつかの実施形態において、P-CDP粒子は、フィブリル化繊維などの表面に機械的に結合される。フィブリル化繊維は、粒子状物質を被覆し、閉じ込めることができる高表面積の拡張ネットワークを形成するために使用される。フィブリル化ポリオレフィン(Mitsui Fybrel(登録商標)など)、フィブリル化再生セルロース(Lenzing Tencel(商標)など)、フィブリル化アクリル(Sterling Fibers CFF(商標)など)などの繊維をウェットレイドプロセスで展開して優れた機械的特性、良好な湿潤強度、及び粒子状物質を保持する能力(本明細書に参照によりその全容を援用する米国特許第4,565,727号)を備えた特殊紙を作製する(Onxy Specialty Papers、Helsa Corporationなど)。詳細には、直径5ミクロンを超える粉末活性炭粒子が、ポイントオブユース水フィルターまたはキャビンエアフィルターなどの液体及び蒸気濾過用途で展開される特殊なカーボンペーパーにロードされている。
【0110】
製紙プロセスにおいて、ショートカット繊維(木材パルプ、ポリエステル、ナイロン、またはポリオレフィンなど)、フィブリル化繊維(Fybrel(登録商標)、Tencel(商標)、またはCFF(商標)など)、及び粒子粉末材料の水性分散液またはスラリーブレンドが混合される(例えば、高せん断下で)。次に、この混合物を不織布メッシュまたはスクリーンに迅速に通過させて、ウェットレイド不織布ウェブを堆積させることができる。このウェブを乾燥させて(例えば、熱風オーブンまたは加熱ロール上で)水担体を除去する。平らなフォーマットまたはパターン形成されたロールのいずれかでコールドまたはホットカレンダーを用いてさらなる接着を行って、接着された特殊紙を製造することができる。使用される微粒子状粉末は、規定の粒径のP-CDP微粒子の分散液とすることができる。微粒子の粒径は、前に定義された粉砕及びミリング技術を用いて設定できる。完成後の不織布の微粒子のロード量は、60重量%に及ぶ場合もある。微粒子は、単独で使用することも、粉末活性炭などの他の微粒子とブレンドして使用することもできる。紙の特性を改変または強化するために本明細書に記載されているものなどのさらなる化学結合剤を使用することができ、当業者に理解されるように適用される。
【0111】
得られた粉末充填紙は、水及び/または空気濾過に便宜のよい紙フィルターのフォームファクタでのP-CDP吸着剤粒子の高ロード量に適している。紙は平らな形で使用するか、さまざまな形状に切断するか、またはプリーツを付けて濾材カートリッジ中に接着することができる。
【0112】
いくつかの実施形態において、P-CDP粒子は、糸(例えば、連続フィラメント糸)に機械的に交絡される。いくつかの実施形態において、P-CDP粒子は、連続フィラメント糸に機械的に交絡される。当業者には直ちに明らかであるように、糸仕上げの特殊なサブセットによって、状況に応じて連続フィラメント糸内の微粒子状物質の機械的結合を行うことができる。糸(例えば、連続フィラメント)が各フィラメント表面にミクロフィブリル化傾向があるポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリアミド(ナイロン6またはナイロン6,6)などの一般的な合成ポリマーの複数のフィラメントで構成されている場合、糸束内に微粒子が組み込まれる可能性がある。本開示のP-CDP粒子は、種々の方法で糸に組み込むことができる。1つの非限定的な例は、対象とするP-CDP粒子の分散液を、ディップコーティングまたはオイルロール塗布によって仮撚り加工プロセスにおいて移動中の糸束に塗布することである。このプロセスでは、各フィラメントは、最初に一方向に、次に反対方向に撚ることによって機械的に分離される。最初の撚りの後、各フィラメントは個別化され、糸束内に空隙が生じる。分散液は、プロセス中のこの時点で適用され、その後、束は標準の向きに撚り戻され、糸は加熱されて溶液を乾燥させる。このプロセスは、糸束内への分散粒子の適用を可能とし、分散粒子は連続フィラメント及び連続フィラメント表面から生じるミクロフィブリルによって定位置に保持される。こうしたアプローチは、マイクロカプセル(本明細書に参照によりその全容を援用する米国特許出願公開第2005/0262646A1号)、金属銀微粒子(本明細書に参照によりその全容を援用する米国特許出願公開第2015/0361595A1号)を含むさまざまなミクロンサイズの粒子を連続フィラメント糸に、及び(本明細書に参照によりその全容を援用する米国特許出願公開第2006/0067965A1)その他の機能性粒子を合成繊維の糸束に適用するために使用されている。次いで、これらの加工され、粒子が充填された糸は、衣料品、室内装飾、医療、ディスプレイ、または他の用途で使用するための編物及び織布を形成するために一般的な手段によって加工することができる。
【0113】
いくつかの実施形態において、P-CDP粒子は、熱結合された微粒子が圧密された形態に組み込まれる。粉末吸収材料の一般的なフォームファクタは、熱結合された圧密形態である。このようなフォームファクタは、95重量%に及ぶP-CDP粒子を含有することができ、フィブリル化繊維(Fybrel(登録商標)、Tencel(商標)、またはCFF(商標))、場合によりアタパルジャイト粘土などの無機材料、最後に有機結合剤材料(最も一般的にはセルロースエステル及び類似の誘導体)を添加することで、蛇口用フィルター及び冷蔵庫用フィルターなどの中圧濾過用途に適切な機械的強度及び微粒子保持効率を有する多孔質複合構造が形成される(いずれも本明細書に参照によりその開示内容の全容を援用する米国特許第5,488,021号及び第8,167,141号)。
【0114】
P-CDP乾燥粒子または分散液は、他の吸着材料の代わりに使用するか、または他の吸着材料とブレンドして、上記に述べたような複合吸着剤P-CDP微粒子含有形態を形成することができる。そのような実施形態において、各固体乾燥成分は乾燥ブレンドすることができ、無機粘土及び/またはフィブリル化繊維を含むかまたは含まない乾燥P-CDP粒子及び有機結合剤粉末を必要に応じて含めることができる。P-CDP粒子の水性分散液を使用する場合は、水で希釈して混合物に加えることができる。水を加え(例えば、80~150重量%)、混合物をブレンドして(例えば、高せん断下で)プラスチック材料を形成する。この材料は、目的のフォームファクタに成形し、125~250℃の範囲の温度で乾燥及び硬化することができる。この最終フォームファクタは、ポイントオブユース水フィルターに共通の有用なフォームファクタ中のP-CDP吸着剤粒子を与える。
【0115】
いくつかの実施形態において、P-CDP粒子は、溶液処理されたポリマーフォームファクタに組み込まれる。濾膜材料を製造するためのさまざまな手段が利用可能である。例えば、溶液キャストフィルムを用いるか、または膜ポリマーの中空繊維を押し出し、制御された凝固によって制御された細孔径の凝縮フィルムが形成される。いくつかの実施形態において、NMP、DMSO、またはTHFなどの水混和性有機溶媒に溶解された酢酸セルロースなどのポリマーが使用される。この溶液を、水浴中でフィルムにキャストすることができ、これにより、酢酸セルロースポリマーの急速な凝固及びフィルムの緻密化が引き起こされる。これらのフィルムはロールツーロール装置で処理することができ、多数の層を包み込むことで精密濾過、限外濾過、ガス濾過、または逆浸透用途で使用するための螺旋巻回メンブレンフィルターを形成する。酢酸セルロースの代わりに使用される一般的なポリマーとしては、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、及び同様の改変熱可塑性プラスチックが挙げられる。中空糸を水溶液中に押出して、透析、逆浸透、及び脱塩の用途で一般的に使用される中空糸膜として知られる膜繊維を転相プロセスによって形成することも可能である。
【0116】
いくつかの実施形態において、P-CDP粒子状物質は、膜材料の性能を高めるために膜材料中に組み込まれる。例えば、水性凝固浴中に少量のP-CDP粒子分散液を存在させることが可能であり、この粒子分散液は、転相プロセス中に膜の高密度部分または多孔性部分に組み込まれる。P-CDP粒子を膜に組み込むための第2の方法は、膜ポリマーの有機溶液中に少量の十分に分散された粒子を組み込むことであり、粒子は凝固後に膜に封入される。これらの方法のそれぞれにより、P-CDPを充填したポリマーフォームの製造が可能となる。精密濾過、限外濾過、及び逆浸透などのさまざまな実施形態において、P-CDP粒子の組み込みは、膜システムの微量汚染物質の除去性能を高めるように作用する。
【0117】
いくつかの実施形態において、P-CDP粒子は、溶融押出された熱可塑性プラスチック(例えば、繊維及び成形部品)に組み込まれる。低多分散性の小径乾燥粉末P-CDP粒子材料が利用できるため、この材料を繊維及び成形部品などの溶融加工ポリマーフォームに組み込むことができる。有用な一般的な熱可塑性プラスチックとしては、ポリエチレンテレフタレート、コポリエステル、ポリオレフィン、及びポリアミドが挙げられる。通常の押出温度は250~300℃であるため、空気中(最も好ましい)または不活性雰囲気下でのこれらの温度に対するP-CDP粒子の安定性が求められる。一軸または二軸押出を用いて、せん断下、高温で粉末材料を最大5重量パーセントの熱可塑性プラスチックとブレンド及び混合する。ブレンドされた各成分は、適切に混合された後、小さな円形または他の形状のオリフィスから押出し、フィラメント当たり1~20デニールの範囲の微粒子状物質の線密度を有する繊維を製造するために引くことができる。多くの熱可塑性繊維に添加される一般的な粒子は、繊維を白くし、光沢をなくすために添加される二酸化チタンである。P-CDP粒子も同じ要領で添加される。最も理想的な実施形態では、P-CDP粒子は、そのより高い表面エネルギーのために繊維の表面に移動して滲出するため、存在する粒子の一部は気相または液相によってアクセス可能である。他の実施形態では、ポリマー溶融物を小さなオリフィスから押出す代わりに、ブロー成形するかまたは他の方法で溶融加工してプラスチック部品を製造することもできる。このプラスチック部品もまた、表面に滲出して気相及び液相から小分子微量汚染物質(例えば、アニオン性MP)を除去するために活性化するP-CDP粒子を保持する。
【0118】
本開示のP-CDPは、さまざまな用途に適したさまざまな形状(またはフォームファクタ)に支持または形成することができる。例えば、本開示のP-CDP材料は、粉末、顆粒の形態とするか、例えば、紙もしくは他の不織布形態などのセルロース材料でディスクに形成するか、または例えば、本明細書に記載されるような濾過、水処理、試料吸収などに適したさまざまな形状に押出しもしくはプレスすることができる。
【0119】
支持された形態で吸着剤を提供することは知られていないわけではないが、吸着剤を基材または支持体に固定するために用いられる方法は、使用条件に耐えるように十分に丈夫であることが重要である。さらに、基材への付着手段は、吸着剤の吸着機構を妨害または阻害してはならない。本明細書に開示される吸着剤は、本明細書に記載されるように支持体に付着させることができるので、結果として生じる性能特性は、付着方法によって最小限の影響しか受けない。さまざまな実施形態において、本発明の支持されたポリマー材料は、同一条件下で測定した場合に支持材料なしで調製された同じ組成の吸着剤(等量の吸着剤に基づく)によって与えられるであろう同じ性能特性の少なくとも50%の性能特性を与える。したがって、例えば、微結晶性セルロースにグラフトされた多孔質材料(例えば、式(I)-CMC基材複合体のアリールリンカーで架橋されたP-CDP)は、同じ条件下で試験した支持されていない多孔質材料に見られる特定の性能特性のうちの1つ以上の少なくとも50%を有し得る。
【0120】
いくつかの実施形態において、性能特性は、特定の条件下で1グラムのP-CDP粒子当たりに吸着された汚染物質のミリグラム数として測定される、特定の汚染物質の取り込み量(吸着容量)とすることができる。他の実施形態では、性能特性は、本明細書で以下のように定義される平衡吸着容量(q
e)とすることができる。
【数1】
式中、q
max(mg汚染物質/g吸着剤)は平衡状態での特定の汚染物質に対する吸着剤の最大吸着容量であり、K
L(mol
-1)は平衡定数であり、c
e(mM)は平衡状態での汚染物質濃度である。
【0121】
さらに他の実施形態では、性能特性は、汚染物質の平衡吸着に達する速度(特定の吸着剤の平衡吸着速度)である。この速度は、本開示の支持されたまたは支持されていないP-CDPが特定の吸着種(または汚染物質)について平衡に達するのに必要な時間として表すことができる。
【0122】
さらに他の実施形態では、性能特性は、競合する吸着剤が汚染物質を隔離する速度である。競合する吸着剤は、本明細書に記載の支持されていないP-CDP、または活性炭(粉末または粒状)、イオン交換樹脂、及び固相マイクロ抽出に使用される特殊樹脂(例えば、HLB)などの他の物質であり得る。
【0123】
上記に開示されたこれらの性能特性のいずれについても、本開示の支持されたP-CDPの性能は、例えば、同じ汚染物質、温度、圧力、曝露時間など、基本的に同じ条件下で試験した支持されていない同じ組成のP-CDPと比較して、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、100%、120%、140%、160%、180%、200%、220%、240%、260%、280%、300%、350%、400%、450%、500%以上であり、それらの値の間のすべての値、範囲、及びサブ範囲を含む。
【0124】
本開示の性能特性は、例えば、ビスフェノールAまたはPFAS、または本明細書に開示される別の適切な種に基づいて、当業者には直ちに明らかとなるさまざまな方法によって測定することができる。例えば、混入物質は、飲料水、廃水、地下水、汚染土壌からの水性抽出物、埋め立て浸出液、精製水、または塩もしくはその他の有機物を含むその他の水を含むがそれらに限定されない任意の水性試料中の1ppb(または1マイクログラム/Lまたは5nM)~1ppt(または1g/Lまたは5mM)の範囲のBPAまたは別の適切な種の初期濃度で測定できる。pHは、0~14の範囲であり得る。例えば、pHは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14であってよく、これらの値の間のすべての範囲を含む。性能特性は、本明細書に記載される(例えば、実施例1及び2で)ようにして概ね測定することができ、通常の変更(温度及び圧力などの)も想定される。
【0125】
いくつかの実施形態において、本開示は、本開示の1つ以上のP-CDPまたは1つ以上のP-CDP-基材複合体を含む製造物品を提供する。
【0126】
一実施形態では、製造物品は保護装置である。一実施形態では、製造物品は衣類である。例えば、製造物品は、本開示の1つ以上のP-CDPまたは1つ以上のP-CDP-基材複合体を含む衣類(例えば、多孔質ポリマー材料または組成物で少なくとも部分的にコーティングされたユニフォームなどの衣類)である。別の例では、物品は、本開示の1つ以上のP-CDPまたは1つ以上のP-CDP-基材複合体を含む濾材である。濾材は防毒マスクフィルターとして使用することができる。一実施形態では、物品は、濾材を含むガスマスクである。いくつかの実施形態において、物品は抽出装置である。
【0127】
別の実施形態では、物品は、本開示の1つ以上のP-CDPまたは1つ以上のP-CDP-基材複合体を含む固相ミクロ相(SPME)抽出装置であり、P-CDPまたはP-CDP-基材複合体は装置の抽出相である。
【0128】
別の実施形態では、物品は、極性及び半極性有機分子の固相抽出のための装置である。装置は、HLB媒体(親水性/親油性のバランスが取られたもの)の代わりに、本開示の1つまたは複数のP-CDPまたは1つまたは複数のP-CDP-基材複合体を含む。1つまたは複数のP-CDPまたは1つまたは複数のP-CDP-基材複合体を含む物品の性能は、HLB媒体を上回る。
【0129】
別の実施形態では、物品は、極性及び半極性有機分子の液体濾過のための装置である。装置は、繊維状ウェブ内に接着された本開示の1つまたは複数のP-CDPまたは1つまたは複数のP-CDP-基材複合体を含む(本明細書に参照によりその全容を援用する米国特許第7,655,112号に開示される)。他の実施形態は、熱可塑性結合剤ポリマーを介して融合されて多孔質モノリシック濾材を形成するP-CDP粉末を含む装置を含む(本明細書に参照によりその全容を援用する米国特許第4,753,728号に開示される)。
【0130】
本開示のP-CDP材料は、本明細書に開示されるさまざまな形態及びフォームファクタ(支持された及び支持されないP-CDP材料を含む)で、化合物(例えば、アニオン性またはカチオン性MP)を流体(空気などの気体、水、水性飲料、体液などの液体)から分離することが望ましいあらゆる用途で使用することができる。P-CDP材料は、さらなる分析または定量化のために目的の種を「捕捉」または吸着するため(例えば、空気または水中の環境汚染物質の分析検査において)、混合物を分離するため(例えば、クロマトグラフィー分離において)、または、流体中に希薄な形で存在する望ましいもしくは価値のある種を分離するために使用することができる。いくつかの実施形態において、本開示のP-CDP材料は、流体を精製するために使用するか(例えば、望ましくないまたは有害な不純物を除去することによって)、または混合物もしくは希釈流体溶液から所望の化合物を単離するために使用することができる。
【0131】
いくつかの実施形態において、本開示は、流体試料から1つ以上の化合物(例えば、アニオン性MP)を除去するかまたは流体試料中の1つ以上の化合物の有無を判定する方法であって、a)試料と、本開示の多孔質ポリマー材料または本開示の支持された多孔質ポリマー材料とをインキュベーション期間にわたって接触させることと、b)インキュベーション期間後、多孔質ポリマー材料または支持された多孔質ポリマー材料を試料から分離することと、c)ステップb)で分離された多孔質ポリマー材料または支持された多孔質ポリマー材料を加熱するかまたはステップb)で分離された多孔質ポリマー材料または支持された多孔質ポリマー材料を溶媒と接触させ、それにより化合物の少なくとも一部を多孔質ポリマー材料または支持された多孔質ポリマー材料から放出させることと、d1)任意選択的に、ステップc)で放出された化合物の少なくとも一部を単離すること、またはd2)ステップc)で放出された化合物の有無を判定することであって、1つ以上の化合物の存在は、試料中の1つ以上の化合物の存在と相関している、判定することと、を含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、1つ以上のシクロデキストリン部分は、β-シクロデキストリン部分である。いくつかの実施形態において、前記判定することは、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、超臨界流体クロマトグラフィー、または質量分析によって行われる。いくつかの実施形態において、前記接触させることは、支持された多孔質ポリマー材料を横断して、またはその上に、またはその周囲に、またはそれを通じて水相を流すことによる。いくつかの実施形態において、水性試料は、インキュベーション期間にわたって静的条件下でP-CDP-基材複合体と接触させられ、インキュベーション期間の後、水性試料は多孔質ポリマー材料から分離される。いくつかの実施形態において、試料は食品であり、化合物は揮発性有機化合物である。いくつかの実施形態において、水性試料は、飲料水、廃水、地下水、汚染土壌からの水性抽出物、または埋立地浸出液である。いくつかの実施形態において、試料は香水または芳香剤であり、化合物は揮発性有機化合物である。いくつかの実施形態において、化合物は、アニオン性微量汚染物質、重金属、及び/または染料である。いくつかの実施形態において、化合物は、PFAS(例えば、ポリフッ素化アルキル化合物及び/またはペルフルオロアルキル化合物)などのアニオン性MPである。いくつかの実施形態において、PFASは、PFOA及び/またはPFOSである。
【0132】
一実施形態では、1つ以上の有機化合物を含む水性試料を精製する方法が提供され、この方法は、水性試料を本開示の多孔質ポリマー材料または本開示の支持された多孔質ポリマー材料と接触させることを含み、例えば、1つ以上の汚染物質の少なくとも50%~少なくとも99%が、多孔質ポリマー材料の1つ以上のシクロデキストリン(例えば、β-シクロデキストリン)部分に結合する。例えば、水性試料は、多孔質ポリマー材料を横断して、またはその周囲に、またはそれを通じて流される。別の例では、水性試料は、静的条件下でインキュベーション期間にわたって多孔質ポリマー材料または支持された多孔質ポリマー材料と接触させられ、インキュベーション期間の後、水性試料は、多孔質ポリマー材料から(例えば、濾過によって)分離される。この方法は、飲料水、廃水、地下水、汚染土壌からの水性抽出物、埋立地浸出液などの水性試料を精製するために使用することができる。いくつかの実施形態において、有機化合物は、PFASなどのアニオン性MPである。
【0133】
一実施形態では、試料中の化合物(例えば、アニオン性MP)の有無を判定する方法は、a)試料をインキュベーション期間(例えば、1分以下、5分以下、または10分以下)にわたって本開示の多孔質ポリマー材料または本開示の支持された多孔質ポリマー材料と接触させることと、b)a)からの複合体を試料から分離することと、c)b)からの複合体材料を加熱するかまたはb)からの複合体を溶媒(例えば、メタノール)と接触させて、化合物の少なくとも一部が多孔質材料によって放出されるようにすることと、d)任意の化合物の有無を判定することであって、1つ以上の化合物の存在が試料中の1つ以上の化合物の存在と相関する、判定すること、または化合物を単離する(例えば、濾過により)こと、と、を含む。例えば、決定(例えば、分析)は、ガスクロマトグラフィーまたは質量分析によって行われる。例えば、試料は食品または飲料(例えば、牛乳、ワイン、フルーツジュース(例えば、オレンジジュース、リンゴジュース、及びグレープジュース))、またはアルコール飲料(例えば、ビール及び蒸留酒))であり、化合物は揮発性有機化合物である。多孔質ポリマー材料または支持された多孔質ポリマー材料は、固相マイクロ抽出(SPME)装置の抽出相とすることができる。いくつかの実施形態において、有機化合物は、PFASなどのアニオン性MPである。
【0134】
一実施形態では、試料から化合物(例えば、有機化合物)を除去するための方法は、a)試料を、本開示の多孔質ポリマー材料または本開示の支持された多孔質ポリマー材料とインキュベーション期間にわたって接触させることにより、化合物の少なくとも一部がポリマー中に隔離されるようにすることと、b)a)からの複合体を試料から単離することと、c)b)からの複合体を加熱するかまたはb)からの複合体を溶媒(例えば、メタノール)と接触させることにより、化合物の少なくとも一部が多孔質ポリマー材料によって放出されるようにすることと、d)必要に応じて、化合物の少なくとも一部を単離することと、を含む。。いくつかの実施形態において、化合物は、PFASなどのアニオン性MPである。
【0135】
これらの方法では、さまざまな化合物を方法で扱う(例えば、隔離、検出、及び/または分離する)ことができる。化合物は有機化合物であってよい。化合物は、香味料(例えば、食品の嗜好性に影響する化合物)または医薬化合物(または医薬品中間体)、混入物質(例えば、PCB、PBAなど)、及び/または不純物などの所望の化合物であってよい。いくつかの実施形態において、化合物は、PFASなどのアニオン性MPである。いくつかの実施形態において、化合物は、ゲムフィブロジル、オキシベンゾン、ジクロフェナク、イオキシニル、ケトプロフェン、ナプロキセン、スルファメトキサゾール、ワルファリン、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸、クロフィブリン酸、イブプロフェン、2-メチル-4-クロロフェノキシ酢酸、メコプロップ、バルサルタン、パーフルオロブタン酸、パーフルオロブタンスルホン酸、パーフルオロペンタン酸、パーフルオロペンタンスルホン酸、パーフルオロヘキサン酸、パーフルオロヘキサンスルホン酸、パーフルオロヘプタン酸、パーフルオロヘプタンスルホン酸、パーフルオロオクタン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸、パーフルオロノナン酸、パーフルオロノナンスルホン酸、パーフルオロデカン酸、パーフルオロデカンスルホン酸、パーフルオロウンデカン酸、パーフルオロドデカン酸、パーフルオロトリデカン酸、パーフルオロテトラデカン酸、2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(ヘプタフルオロプロポキシ)プロパノエート、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるアニオン性MPである。
【0136】
シクロデキストリンはキラルである。一実施形態では、キラル化合物は、隔離、検出、及び/または単離される。一実施形態では、キラルカラム(例えば、分取スケールまたは分析スケールのカラムは、キラルな多孔質ポリマー材料またはキラルな多孔質ポリマー材料を含む組成物が充填される)を使用して、ある化合物の単一のエナンチオマーを分離及び検出または単離する(または一方のエナンチオマーについて試料を少なくとも有意に濃縮する)。
【0137】
この方法では、多孔質ポリマー材料または支持された多孔質ポリマー材料を再生することができる(例えば、方法で再利用するために)。例えば、多孔質ポリマー材料は、加熱及び/または溶媒(例えば、メタノールまたはエタノールなどのアルコール、及びそれらの水性混合物)への曝露によって再生される。
【0138】
以下の実施例は、本開示を例示するために示されるものであって、本開示を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0139】
実施例1:β-CD-TDIポリマーの合成
試薬:β-CD:Wacker、Cavamax W7(そのまま使用);トリレン-2,4-ジイソシアネート(TDI):Sigma Aldrich、95%、製品番号T39853;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF):Fisher Chemical、認定ACSグレード、カタログ番号D119-4;水:Milli-Qシステムからの脱イオン(DI)水。
【0140】
手順:β-CD(60.0g、0.0529mol、1当量)を500mLの1つ口丸底フラスコ中の120mLのDMFにマグネチックスターラーの速度400rpmで溶解し、温度を80℃に設定した。加熱には熱電対を備えた油浴を使用した。β-CDを完全に溶解した後、TDI(36.8g、0.2115mol、4当量)をフラスコに80℃で加えた。反応媒体中の水の存在が原因と考えられる気泡が観察された。気泡が発生しなくなった約1分後、フラスコにゴム製セプタムでキャップした。3時間後、30mLのメタノールを加え、加熱を停止することにより反応を停止させた。得られた粘稠な透明溶液を1.2Lのメタノールに沈殿させて、白色の粉末生成物を得た。1時間撹拌した後、粗生成物をブフナー漏斗を使用して真空下で濾過した。濾過したポリマー粉末を2Lビーカーに戻し、1.5Lの脱イオン水×2回及び1.2Lのメタノール×1回で再度洗浄した。各サイクル中の洗浄時間は1時間であった。最終濾過後、湿った固体生成物を蒸発皿に移し、80℃の真空オーブンに入れて72.6gの乾燥ポリマーを得た。6当量以上のTDIから開始すると、ワークアップが困難な硬質ゲルが得られることが観察された。対照的に、2:1~5:1の範囲のTDI:CD比は、メタノールとの反応を停止すると粉末材料を与える(表1)。これらのポリマーは、DMFなどのさまざまな溶媒にも溶解するが、水には溶解しない。表1のポリマーの詳細な比較については、
図5を参照されたい。
【表1】
【0141】
β-CD-TDIの最適化実験
【0142】
β-CD-TDIポリマーを、通常のDMF及び無水DMFへのβ-CD(そのまま及び乾燥したもの)の溶解度を検討することによってさらに最適化し、その結果を表2に示す。そのままのβ-CDは12~14%の水の範囲の含水量を有する。
【表2】
【0143】
表2に示すように、β-CDの溶解度はその含水量に基づいて大きく影響される。したがって、乾燥β-CDを使用する場合、重合は、反応収率に影響を与えるより低い初期濃度でのみ行うことができる。これに対して、DMFの含水量はわずかであるため、溶解度への影響が少なく、通常のDMFを反応に使用することが推奨される。小規模及び大規模バッチで製造されたβ-CD-TDIポリマーの比較を下記表3に示す。
【表3】
【0144】
ポリウレタン型のCDポリマーを製造するには、乾燥β-CDと無水溶媒の使用が重要であることが以前から理解されていたが、本明細書に記載されているように、DMF及び/またはそのままのβ-CDなどの「含水」溶媒(「通常の」溶媒とも呼ばれる)を使用した場合、得られるポリマーは、文献に記載されているポリマーとは構造的に異なり、PFASの隔離により効果的である。以下のTDIについてのスキーム1に示すように、含水/通常の溶媒を使用すると、部分的なイソシアネートの還元が生じることが期せずして発見された。
スキーム1:TDIのイソシアネート基に対する水の影響。
【化32】
【0145】
重合反応におけるアミン基の存在は、無水条件下(例えば、完全無水条件下)でのβ-CDとTDIとの架橋から生じるウレタン結合に加えて、尿素結合の形成をもたらすものと考えられる。さらに、β-CD-TDIポリマー中に遊離アミンが存在すると、PFASの除去に寄与すると考えられる。高いアミン及び尿素含量は、従来技術とは構造的に異なり、アニオン性微量汚染物質(例えば、PFAS)の除去により有利なポリマーを提供する。
【0146】
元素分析データは、1:4の供給比を用いた場合の最終的なCD:TDI比が1:8~1:10であることを示し、これは、シクロデキストリン上に過剰なTDI単位が存在することを示唆している。さらに、
1H NMR分光法は、アミン官能化フェニル単位に由来する-CH
3プロトンの存在を示している(
図3)。アミン基は、アミン基を有するTDI単位に由来する約1.9ppmの-CH
3のピークを用いて定量することができる。-CH
3の各ピークの全積分に対するその積分の比は、アミンを有するTDIの割合(%)を与える。元素分析データから絶対TDI密度を計算できるため、NMRとEAのデータを相関させることにより、ポリマー中のアミン基の濃度(mmol/g)を計算することができる。表4を参照されたい。β-CD-TDIポリマーは、クロラニル試験でさらに陽性と判定され、アミンの存在がさらに確認された。
【表4】
【0147】
アミン含有β-CD-TDIポリマーを、12種類のPFASのパネル(
図1)及びPFOAとPFOSの二成分混合物(
図2)に対してさらに試験した。4当量のTDIを用いて調製されたポリマー(SL-1-010A)は、パネル試験においてわずか30分で70%のPFOAの除去率及び優れたPFOSの除去率(96%)を示し、48時間でほぼ90%のPFOA及び100%のPFOSの除去率に達した。同様の除去性能がPFOAとPFOSの二成分混合物について試験した場合にも観察された。
【0148】
実施例2:β-CD-イソシアネートポリマーの合成及びPFAS除去活性
実施例1に概説された一般的な手順に従って、4,4’-MDIから得られたβ-CD-イソシアネートポリマーを合成し、PFASを除去するそれらの能力について試験した。
【0149】
表5の各ポリマーを、PFASを除去する能力について試験した。すべての実験は、12種類のPFASのそれぞれ1000ng/Lと10mg/Lの吸着剤を使用して行った。対照実験は、吸着剤なしで行った。これらの実験を3重で行った。試料を、0時間、0.5時間、9時間、及び48時間に採取した。
図1は、0.5時間と48時間での結果を示しており、4,4’-MDI及び2,4-TDIから調製されたポリマーがPFASの隔離に特に効果的であった。TDIポリマー(SL-1-010A)でより速い除去速度が観察されたが、MDIポリマー(SL-0420-3)も48時間にわたって良好な除去性能を示した。6当量のTDI及びMDIから得られたポリマーは、PFOAとPFOSのどちらについても良好な除去率を示さなかったが、これは、合成中にハードゲルが形成され、粒子内の結合部位にアクセスできなくなったためと考えられる。
【表5】
【0150】
実施例3:塩化コリン修飾β-CD-TFNポリマーの合成及びPFAS除去活性
本実施例では、アニオン性PFASに対する結合親和性を高めるために、各CDポリマーに正電荷を付与した。特定の理論に拘束されずに言えば、重合中の副反応で生成されたフェノール基の存在は、ポリマーにアニオン性電荷をもたらし、ポリマーのPFOA及びPFOSの取り込みを低減させるものと考えられる。この効果は、別のポリマー配合物であるTFN-CDPで実験的に観察され、このポリマー配合物は、PFASを含む負に帯電したものを除く広範囲の微量汚染物質に対して優れた除去性能を示した。TFN-CDPは、架橋剤としてテトラフルオロテレフタロニトリル(TFN)を使用して比較的大規模に製造することができる。したがって、ポリマー主鎖に正電荷を組み込むことにより、PFASの吸着特性を改変することが望まれた。本実施例では、塩化コリン(ヒドロキシル基を持つ第4級アンモニウム塩)をTFN-CDPの重合反応への添加剤として選択した。塩化コリンは、β-CDと同様にTFNと反応できるため、ポリマー中に組み込まれる。このポリマーを以下でTFN-CDP+と表記する(スキーム2)。
スキーム2:塩化コリン修飾β-CD-TFNポリマーの合成の概要
【化33】
【表6】
【表7】
【表8】
【0151】
PFAS除去率を測定する前に、TFN-CDPとTFN-CDP+のBPA(中性分子)及びメチルオレンジ(MO、負に帯電した色素分子)の取り込み率の比較を行った。BPAの取り込み率は影響を受けなかったが、MOの取り込み率は大幅に改善され、TFN-CDPの約30%からTFN-CDP+では99%超となった。予想された通り、TFN-CDP+ポリマーは、TFN-CDPと比較して、メチレンブルーなどの正に帯電した分子に対して有意に低い親和性を示した(表9、
図7)。この予備データを元に、TFN-CDP+を、環境的に関連する濃度のPFOAとPFOSの除去率について試験した。
【表9】
【0152】
吸着メカニズムを完全に特徴づけるにはさらなる実験が必要であるが、このアプローチにより、(1)単一の材料中で同時に二重の結合機構(β-CDを有する包接複合体及びイオン相互作用)を利用し、(2)CDの空洞近傍の正電荷の存在により、包接複合体の結合親和性を高めることが可能である。さらに、TFN-CDP+は1ステップで合成され、組み込まれる正電荷の量は、反応に用いられる塩化コリンの量を変えることで容易に変更することができる。
【0153】
実験手順:β-CD(1g、0.881mmol)、TFN(1.06g、5.286mmol)、K2CO3(2.44g、17.621mmol)、塩化コリン(0.37g、2.643mmol)、及び5.4mLのH2O/DMSO(2:3、v/v)を、マグネチックスターラーを備えた20mLシンチレーションバイアルに加えた。混合物を60℃で20時間攪拌した。攪拌の最初の1時間後に追加の溶媒(1mL)を加えた。20時間後、10mLの水を加え、ポリマーを30分間攪拌して分散させた。濾過後、粗生成物を遠心分離管に移した。試料を高温のメタノール(約40mL)で3回洗浄した(各サイクルで30分)。メタノールをデカントした後、脱イオン水(約30mL)を加えた。pHが3~4の間で安定するまで、試料を攪拌しながら1MのHClを滴下した。粗生成物をさらに2回、高温のメタノール(約40mL)で洗浄した。最後のメタノール洗浄液を真空下で濾過し、生成物を80℃で一晩乾燥させた。
【0154】
PFOA及びPFOS除去性能の試験-異なるTFN-CDP+ポリマーの除去性能を測定するためにPFAS吸着実験を行った。多数のポリマー配合物のスクリーニングプロセスを容易にするため、ナノ純水中の12種類のPFASの混合物を使用して吸着速度試験を行った。吸着速度は、処理プロセスに関連する吸着剤の用量と必要な接触時間に関する情報を明らかにするものであることからその理解は不可欠である。このパネル実験は、PFOA及びPFOSの取り込み率に関する洞察を与えるだけでなく、GenXや短鎖及び長鎖PFASなどの他のPFASに対する性能の評価も可能とすることで、これらのポリマーの広域にわたるPFAS除去能力を決定することを可能とするものである。
図1に要約される結果は、30分及び48時間の接触時間での各PFASの除去率(%)を示している。これらの実験は、10mg/Lのポリマーロード量で、ナノ純水中、約1ppbの12種類のPFASのそれぞれを使用して3重で行った。吸着剤なしの対照実験も行い、報告された除去率(%)を対照実験において観察された損失量に対して補正する。すべてのポリマーを230メッシュの篩にかけた。
【0155】
印象深い点として、TFN-CDP+の2つの誘導体(つまり、それぞれ3当量及び6当量の塩化コリンから調製されたMB-1-036及びMB-1-037)は、試験したすべてのポリマーの中で最良の除去性能を示し、パネル内のすべてのPFASがほぼ完全に除去された。MB-1-037は、30分間にわたって、PFOAとPFOSに加えてGenXと短鎖PFASの効果的な除去を示したが、これは、おそらくはその高い第4級アンモニウムロード量によるものと考えられる(
図2)。
【0156】
パネル実験下で最初のスクリーニングを行った後、PFOAとPFOSの二成分混合物を使用して除去率評価を絞り込んでポリマーを選択した(表10)。この特定のタスクでは、すべての吸着実験は、10mg/Lのポリマーロード量で0.5ppbのPFOAと1ppbのPFOSを使用して行った。吸着剤なしの対照実験を行い、すべての測定を3重に行った。各溶液からの試料を、0、0.5、2、4、8、及び24時間の所定の時点で分析用に採取した。これらの測定用に選択されたポリマーは、SL-1-010A(TDI)、MB-1-036(TFN+CC)、及びMB-1-037(TFN+CC)であった。試験したすべてのポリマーは、24時間にわたってPFOSの高い除去率を示したが、SL-1-010A(TDI)と2つのTFN-CDP+誘導体は、30分間のみで高い除去(90%超)を示した。PFOAの除去に関しては、SL-1-010A(TDI)がパネル実験と同様の性能を示したにもかかわらず、MB-1-036とMB-1-037は、速度論及び24時間の除去能力の両方の点で他の2つのポリマーの性能を上回った。
【0157】
【0158】
微量汚染物質吸着実験
【0159】
β-CDは、微量汚染物質と安定した包接複合体を形成することが知られている。BPAとMOを、塩化コリン修飾TFN-CDPポリマーにおける吸着機構を理解するために、それぞれ中性及び負に帯電した微量汚染物質の取り込みを試験するためのモデル化合物として選択した。さらに、濃度の関数としての微量汚染物質吸着データをラングミュアモデル(式1及び2)に当てはめることにより、試験した材料の熱力学的パラメーターを決定することができる。
【0160】
均質な吸着表面を想定したシングルサイトラングミュアモデルは、以下のように与えられる。
【数2】
式中、q
e(mg/g)は、平衡状態で吸着剤1グラム当たりの吸着されたMPの量である。q
max(mg/g)は飽和状態の吸着剤の最大吸着容量であり、K
L(L/mg)は平衡定数であり、c
e(mg/Lまたはppm)は平衡状態の濃度である。2つの異なる吸着サイトを想定したデュアルサイトラングミュアモデルは、以下のように与えられる。
【数3】
式中、q
e(mg/g)は、平衡状態で吸着剤1グラム当たりの吸着されたMPの量である。q
max,1及びq
max,2(mg/g)は飽和状態の各サイトの吸着剤の最大吸着容量であり、K
L,1K
L,2(L/mg)は平衡定数であり、c
e(mg/Lまたはppm)は平衡状態の濃度である。非線形回帰を用いて実験吸着データを当てはめることによって、q
max及びK
Lのパラメータを得ることができる。BPA吸着データの当てはめにはシングルサイトラングミュアモデルが適切であると判断されたのに対して、MO吸着データではデュアルサイトモデルを使用して最良の当てはめが得られた。
【0161】
塩化コリン修飾TFN-CDPポリマーの場合、第1の吸着サイトについて、それぞれ1.5当量及び3.0当量の塩化コリンを用いて調製されたポリマーの最大MO容量(q
max,1)は、46.6及び78.8mg/gであった(表11、
図8)。第2の吸着サイト(q
max,2)は、37.3及び33.0mg/gの最大取り込み容量を示し、これらはいずれも非修飾TFN-CDPの最大容量(q
max=37.6mg/g)と極めて近い値である。このデータ、ならびにK
LとK
L,2の値の間の類似性は、塩化コリン修飾TFN-CDPポリマーの第2の吸着サイトがCDの空洞内へのMO吸着に関連していることを示唆している。K
L,1とK
L,2の値の比較は、アニオン性MO分子と第4級アンモニウムサイトとの相互作用に起因すると考えられる大幅に強い第1の吸着サイトも示している。BPA吸着データを、シングルサイトラングミュアモデルを使用して当てはめたところ、3つすべてのポリマーについて同様のK
L値が決定され、中性分子に対する同様の吸着サイトの存在を示した。2つの塩化コリン修飾TFN-CDPポリマーの最大BPA容量は112.1及び100.1mg/gであり、非修飾TFN-CDPの容量は106.1mg/gであった(表11、
図9)。注目すべき点として、これらの飽和取り込み値は、これらのポリマーのCDサイトの密度とよく一致している。この観察結果は、BPA吸着がCDの空洞内で起こることも示唆している。
【0162】
【0163】
実施例4: 塩化コリン修飾β-CD-TDIポリマーの合成及びPFAS除去活性
β-CD(2g、1.76mmol、1当量)を、マグネチックスターラーバーを備えた20mLシンチレーションバイアル中の5mLのDMFに400rpmの攪拌速度及び80℃の温度で溶解した。4gの塩化コリンを80℃で10mLのDMSOに溶解し、0.4g/mLの濃度とした。さまざまな化学量論比の塩化コリン溶液((0.3075mL、0.1230g、0.5当量)、(0.6150mL、0.2460g、1当量)、(0.9225mL、0.369g、1.5当量)、または(1.2300mL、0.492g、2当量))を、80℃のβ-CD溶液に加えた。80℃で5分間混合した後、トルエンジイソシアネート(2,4-TDI、1.8417g、10.57mmol、6当量)を加えた。反応系中の水分が原因と考えられる気泡の発生がジイソシアネートの添加後に観察された。気泡がおさまった約1分後にバイアルに蓋をした。3時間後、10mLのメタノールを加え、加熱を停止することにより反応を停止させた。メタノール添加後、白色粉末生成物が沈殿した。混合物を50mLポリプロピレン遠心管に移した。遠心分離後、溶媒をデカントし、粗生成物を水(40mL×2回)及びメタノール(40mL×2回)で洗浄した。各洗浄サイクルで、混合物を30分間撹拌し、続いて遠心分離した。最終サイクルでは、メタノール中の生成物を真空下で濾過し、80℃で一晩乾燥させた。
図10は、80℃、5mLのDMF中で3時間かけて、モル当量1:6:1のβ-CD:TDI:塩化コリンを用いて調製された塩化コリン修飾β-CD-TDIポリマーの
1H NMRスペクトルを示す。7.75~9.5ppmのウレタン及び尿素基の存在は、ポリマーへの塩化コリンの組み込みが成功したことを示す。
1H NMRスペクトルには、次の化学シフトも見られる。6.75~7.75ppm(TDIの芳香環からのプロトン);5.5~6ppm(β-CDのC2及びC3に結合している-OH基からのプロトン);4.8~5ppm(β-CDのC1に結合しているプロトン);4.25~4.75ppm(β-CDのC6に結合している-OH基からのプロトン);4.1ppm(塩化コリンの-O-CH2-基からのプロトン);3.5~4ppm(β-CDのC2~C6に結合しているプロトン);3.3~3.5ppm(水からのプロトン);3.1~3.2ppm(塩化コリンの-CH3基からのプロトン);2.5ppm(DMSO);1.9~2.1ppm(TDIの-CH3基からのプロトン);星印で示されるピークは、残留溶媒によるものである。
図11は、塩化コリン修飾β-CD-TDIポリマーとβ-CD-TDIポリマーとの比較を示したものであり、主要な違いは、3.13ppmを中心とする幅広いピークである。4.1ppm及び3.1~3.2ppmの鋭いピークは、未反応の塩化コリンに由来する。
図12は、塩化コリンのロード量が異なる3種類の塩化コリン修飾β-CD-TDIポリマーの比較を示しており、塩化コリンの量が増大すると、ピーク強度が3.13ppmで増加するという見方を裏付けるものである。
【0164】
上記で概説した合成手順に従って、以下の表12に示すような異なる化学量論的当量を用いてさまざまなポリマーを調製した。さらに、ポリマーのPFOA取り込み率を試験した。これらの結果は、塩化コリンをβ-CD-TDIポリマーに組み込むことにより、カチオン電荷を制御しながらポリマーに付加することができ、SL-1-010Aポリマーと比較した場合にPFOAの取り込み率が70%から99%に増加することを示している(表12)。
図13も参照されたい。
【0165】
【0166】
均等物
以上、本発明を上記に記載された特定の実施形態に関連して説明したが、多くの代替例、改変例及び他の変形例が当業者には明らかであろう。そのようなすべての代替例、改変例及び変形例は、本発明の趣旨及び範囲内にあることが意図される。
参考文献
(1)Richardson,S.D.;Ternes,T.A.Anal.Chem.2018,90,398-428.
(2)Carpenter,C.M.G.;Helbling,D.E.Environ.Sci.Technol.2018,52,6187-6196.
(3)Barry,V.Winquist,A.Steenland,K.Environ.Health Perspect.2013,121,1313-1318.
(4)Gallo,V.;Leonardi,G.;Genser,B.;Lopez-Espinosa,M.-J.;Frisbee,S.J.;Karlsson,L.;Ducatman,A.M.;Fletcher,T.Environ.Health Perspect.2012,120,655-660.
(5)Melzer,D.;Rice,N.;Depledge,M.H.;Henley,W.E.;Galloway,T.S.Environ.Health Perspect.2010,118,686-692.
(6)DeWitt,J.C.Dietert,R.R.,Ed.;Molecular and Integrative Toxicology;Springer International Publishing: Cham,2015.
(7)Diamanti-Kandarakis,E.;Bourguignon,J.-P.;Giudice,L.C.;Hauser,R.;Prins,G.S.;Soto,A.M.;Zoeller,R.T.;Gore,A.C.Endocr.Rev.2009,30,293-342.
(8)Vajda,A.M.;Barber,L.B.;Gray,J.L.;Lopez,E.M.;Woodling,J.D.;Norris,D.O.Environ.Sci.Technol.2008,42,3407-3414.
(9)Tetreault,G.R.;Bennett,C.J.;Shires,K.;Knight,B.;Servos,M.R.;McMaster,M.E.Aquat.Toxicol.2011,104,278-290.
(10)Gagne,F.;Bouchard,B.;Andre,C.;Farcy,E.;Fournier,M.Comp.Biochem.Physiol.- C Toxicol.Pharmacol.2011,153,99-106.
(11)Alsbaiee,A.;Smith,B.J.;Xiao,L.;Ling,Y.;Helbling,D.E.;Dichtel,W.R.Nature 2016,529,190-194.
(12)Alzate-Sanchez,D.M.;Smith,B.J.;Alsbaiee,A.;Hinestroza,J.P.;Dichtel,W.R.Chem.Mater.2016,28,8340-8346.
(13)Ling,Y.;Klemes,M.J.;Xiao,L.;Alsbaiee,A.;Dichtel,W.R.;Helbling,D.E.Environ.Sci.Technol.2017,51,7590-7598.
(14)Xiao,L.;Ling,Y.;Alsbaiee,A.;Li,C.;Helbling,D.E.;Dichtel,W.R.J.Am.Chem.Soc.2017,139,7689-7692.
(15)Ji,W.;Xiao,L.;Ling,Y.;Ching,C.;Matsumoto,M.;Bisbey,R.P.;Helbling,D.E.;Dichtel,W.R.J.Am.Chem.Soc.2018,140,12677-12681.
(16)Klemes,M.J.;Ling,Y.;Chiapasco,M.;Alsbaiee,A.;Helbling,D.E.;Dichtel,W.R.Chem.Sci.2018,9,8883-8889.
(17)Li,C.;Klemes,M.J.;Dichtel,W.R.;Helbling,D.E.J.Chromatogr.A 2018,1541,52-56.
(18) D’Agostino,L.A.;Mabury,S.A.Environ.Sci.Technol.2017,51,13603-13613.
(19)Barzen-Hanson,K.A.;Roberts,S.C.;Choyke,S.;Oetjen,K.;McAlees,A.;Riddell,N.;McCrindle,R.;Ferguson,P.L.;Higgins,C.P.;Field,J.A.Environ.Sci.Technol.2017,51,2047-2057.
(20)Breysse,P.N.U.S Departement of Health and Human Services: Agency for Toxic Substances and Disease Registry: Toxicological profile for Perfluoroalkyls.2018.
(21)Hu,X.C.;Andrews,D.Q.;Lindstrom,A.B.;Bruton,T.A.;Schaider,L.A.;Grandjean,P.;Lohmann,R.;Carignan,C.C.;Blum,A.;Balan,S.A.;et al.Environ.Sci.Technol.Lett.2016,3,344-350.
(22)Kannan,K.;Corsolini,S.;Falandysz,J.;Fillmann,G.;Kumar,K.S.;Loganathan,B.G.;Mohd,M.A.;Olivero,J.;Van Wouwe,N.;Yang,J.H.;et al.Environ.Sci.Technol.2004,38,4489-4495.
(23)Sun,M.;Arevalo,E.;Strynar,M.;Lindstrom,A.;Richardson,M.;Kearns,B.;Pickett,A.;Smith,C.;Knappe,D.R.U.Environ.Sci.Technol.Lett.2016,3,415-419.
(24)Eschauzier,C.;Beerendonk,E.;Scholte-Veenendaal,P.;De Voogt,P.Environ.Sci.Technol.2012,46,1708-1715.
(25)Xiao,L.;Ching,C.;Ling,Y.;Nasiri,M.;Klemes,M.J.;Reineke,T.M.;Helbling,D.E.;Dichtel,W.R.(Submitted to Chem.Mater.December 2018) 2019,1-9.
(26)Mason,C.R.;Maynard-Atem,L.;Heard,K.W.J.;Satilmis,B.;Budd,P.M.;Friess,K.;Lanc,M.;Bernardo,P.;Clarizia,G.;Jansen,J.C.Macromolecules 2014,47,1021-1029.
(27)Vojkovsk,T.Pept.Res.1995,8,236-237.
(28)Marik,J.;Song,A.;Lam,K.S.Tetrahedron Lett.2003,44,4319-4320.
(29)Buckley,D.;Henbest,H.B.;Slade,P.J.Chem.Soc.1957,4891,4891.
【国際調査報告】