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特表2022-519826ニューロン回路を再現するマイクロ流体回路構造を決定するためのコンピュータ支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-25
(54)【発明の名称】ニューロン回路を再現するマイクロ流体回路構造を決定するためのコンピュータ支援方法
(51)【国際特許分類】
   G06N 3/06 20060101AFI20220317BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20220317BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20220317BHJP
   C12N 5/0793 20100101ALN20220317BHJP
【FI】
G06N3/06
G06Q50/04
C12M1/00 Z
C12N5/0793
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544502
(86)(22)【出願日】2020-01-28
(85)【翻訳文提出日】2021-09-22
(86)【国際出願番号】 FR2020050129
(87)【国際公開番号】W WO2020161412
(87)【国際公開日】2020-08-13
(31)【優先権主張番号】19/01210
(32)【優先日】2019-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521322384
【氏名又は名称】エヌ ウ テ エール イ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オネガー ティボ
(72)【発明者】
【氏名】ララメンディ フロリアン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
5L049
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029AA08
4B029AA27
4B029BB11
4B029CC08
4B029FA15
4B029GA02
4B029GB02
4B065AA90X
4B065BC41
4B065CA44
4B065CA46
4B065CA60
5L049CC03
(57)【要約】
マイクロ流体回路(30)を決定するためのコンピュータ支援方法(100)であって、マイクロ流体回路は、ニューロン回路を再現するように構成され、以下のステップを含む:ニューロン回路の表現(10)を取得すること(101)であって、ニューロン回路の表現(10)は、複数のニューロン集団及び少なくとも1つのニューロン接続を含み;マイクロ流体回路(30)の各ノードについて少なくとも1つの第1のパラメータを決定すること(102)であって、各ノードは、ニューロン回路の1つのニューロン集団に関連し、これを受け取るように構成されており;マイクロ流体回路(30)の少なくとも1つの接続について、少なくとも1つの第2のパラメータを決定すること(103)であって、各接続はニューロン回路の1つのニューロン接続に関連し、これを受け取るように構成されており;各ノード及び各接続の、配置を決定すること(104)。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流体回路(30)を決定するためのコンピュータ支援方法(100)であって、
前記マイクロ流体回路は、ニューロン回路を再現するように構成され、
以下のステップを含む、方法:
・ 前記ニューロン回路の表現(10)を取得すること(101)であって、前記ニューロン回路の前記表現(10)は、複数のニューロン集団(PN1、PN2、PN3、PN4、PN5)及び少なくとも1つのニューロン接続(CN1、CN2、CN3、CN4、CN5)を含み、各ニューロン集団(PN1、PN2、PN3、PN4、PN5)は少なくとも1つのニューロンを含み、前記少なくとも1つのニューロン接続(CN1、CN2、CN3、CN4、CN5)の各ニューロン接続(CN1、CN2、CN3、CN4、CN5)は、前記ニューロン集団の少なくとも1つのニューロンと他のニューロン集団の少なくとも1つの他のニューロンとの間のニューロンリンクにより、前記複数のニューロン集団(PN1、PN2、PN3、PN4、PN5)の1つのニューロン集団を前記複数のニューロン集団(PN1、PN2、PN3、PN4、PN5)の他のニューロン集団にリンクさせ、
・ 前記マイクロ流体回路(30)の複数のノード(N1、N2、N3、N4、N5)の各ノードについて少なくとも1つの第1のパラメータを決定すること(102)であって、前記マイクロ流体回路(30)の前記複数のノード(N1、N2、N3、N4、N5)の各ノードは、前記ニューロン回路の前記複数のニューロン集団(PN1、PN2、PN3、PN4、PN5)のうちの1つのニューロン集団(PN1、PN2、PN3、PN4、PN5)に関連し、これを受け取るように構成されており、
・ マイクロ流体回路(30)の少なくとも1つの接続(C1、C2、C3、C4、C5)について、少なくとも1つの第2のパラメータを決定すること(103)であって、少なくとも1つの接続(C1、C2、C3、C4、C5)の各接続は、前記複数のノード(N1、N2、N3、N4、N5)のうちの1つのノードを、前記複数のノード(N1、N2、N3、N4、N5)の少なくとも1つの他のノードにリンクさせ、マイクロ流体回路(30)の前記少なくとも1つの接続(C1、C2、C3、C4、C5)の各接続(C1、C2、C3、C4、C5)は、前記ニューロン回路の前記少なくとも1つのニューロン接続(C1、C2、C3、C4、C5)の1つのニューロン接続(C1、C2、C3、C4、C5)に関連し、これを受け取るように構成されており、
・ 前記複数のノードの各ノード(N1、N2、N3、N4、N5)及び前記少なくとも1つの接続の各接続(CN1、CN2、CN3、CN4、CN5)の、配置を決定すること(104)。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記表現を取得するステップ(101)は、以下を含む、方法:
・ 前記複数のノードの第1のノード数を決定すること(1011);
・ 前記複数のノードの各ノードの少なくとも1つの第1の特性を決定すること(1012)であって、前記少なくとも1つの第1の特性は、以下のうちの少なくとも1つを含む:
前記ノードに関連する前記ニューロン集団の第2のニューロン数、及び
高さ、及び
幅、及び
表面積、及び
体積、及び
形状、
・ 前記少なくとも1つの接続の各接続の少なくとも1つの第2の特性を決定すること(1013)であって、前記少なくとも1つの第2の特性は、以下のうちの少なくとも1つを含む:
単方向又は双方向、及び
機能的な重み、及び
構造的な重み、及び
前記ノード間の距離。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法(100)において、前記表現はグラフィカルな表現(10)又は行列の表現である、方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法(100)において、
前記複数のノードの各ノードについて少なくとも1つの第1のパラメータを決定するステップ(102)は、以下の中から第1の実装プロセスを選択すること(1021)を含み:
・ 堆積チャンバプロセス、及び
・ ミリメートルの空間閉じ込めプロセス、及び
・ コロイド支持構造プロセス、
前記複数のノードの各ノードの前記少なくとも1つの第1のパラメータを決定すること(102)は、前記第1の選択された実装プロセスの関数である、方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法において、
前記少なくとも1つの接続について少なくとも1つの第2のパラメータを決定するステップ(103)は、第2の実装プロセスを選択すること(1031)を含み、前記少なくとも1つの接続の前記少なくとも1つの第2パラメータを決定すること(103)は、前記第2の選択された実装プロセスの関数である、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、
前記複数のノードの各ノード及び前記少なくとも1つの接続を配置するステップ(104)は、以下のサブステップを含む、方法:
・ 前記第1の選択された実装プロセスに関連する少なくとも1つの第1の制約にしたがい、及び前記第2の選択された実装プロセスに関連する少なくとも1つの第2の制約にしたがい、前記マイクロ流体回路の少なくとも1つの最大寸法を決定すること(1041)、
・ 前記複数のノードの各ノードについて、前記回路の最大寸法、及び前記ノードの前記少なくとも1つの第1の特性、及び前記第1の選択された生成プロセスに関連する少なくとも1つの第1の制約及び前記ノードの前記少なくとも1つの第1のパラメータにしたがい、並びに第2の選択されたプロセスに関連する前記少なくとも1つの第2の制約にしたがい、前記ノードの配置を決定すること(1042);
・ 前記ノードの配置及び前記少なくとも1つの第1の特性にしたがい、並びに他のノードの配置及び前記少なくとも1つの第1の特性にしたがい、並びに前記接続の前記少なくとも1つの第2の特性及び前記少なくとも1つの第2のパラメータにしたがい、並びに前記第1の実装プロセスに関連する前記少なくとも1つの第1の制約にしたがい、並びに前記第2の実装方法に関連する前記少なくとも1つの第2の制約にしたがい、1つのノードを他のノードにリンクさせる少なくとも1つの接続連結(connection linking)の配置を決定すること(1043)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流体回路構造(microfluidic circuit architectures)、特にニューロン回路を再現するマイクロ流体回路構造の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
ニューロン科学では、マイクロチャネルで分離された2つのチャンバに構成されたマイクロ流体回路を使用することが知られている。この空間的な区画化により、ニューロンの2つの集団を物理的に分離し、マイクロチャネル内でニューロン突起を成長させてニューロンの接続を確保することが可能となる。
【0003】
マイクロ流体構成は、機能的な接続性、すなわちニューロン間の情報の伝達、を確保しながら、異なるニューロンを、結果的に異なる媒体(media)で、培養することを可能にする。
【0004】
多数の「ニューロン流体(neurofluidic)」チップ構造が研究の対象となっており、主に、基礎的な神経科学の問題に答えを出し、又は神経変性疾患に関する生物学的仮説に取り組むために、少数のニューロンの神経生物学及び最大2つ又は3つの集団間の信号伝達の分析に焦点が当られている。
【0005】
それにもかかわらず、これらのチップは、通常、最大3つのニューロン集団、したがってそれらを収容するための最大3つの区画、を含む小さな回路をモデル化することに甘んじている。ニューロンを個別のスケールで接続したり、数十個のニューロンを接続して基本回路を再現したりできるデバイスもあるが、これらはすべて同じタイプのニューロンを使用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
既知のデバイスの欠点は、それらが同時に以下を許容しないという事実にある:
・ 適切な区画がないため、同じデバイスで複数のタイプのニューロンを培養すること、
・ 3つ以上のニューロン集団を接続すること、
・ 各区画内のニューロンの量、又は区画間の接続レベルを、それらが存在する場合に、確認すること、
・ 互いに接続された数百万のニューロンを受け入れ可能な、非常に複雑な及び/又は生理学的に重要な、ニューロン回路を生成すること。
【0007】
したがって、本発明は、これらの問題の全部又は一部に対する解決策を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のために、本発明は、マイクロ流体回路を決定するためのコンピュータ支援方法に関する。マイクロ流体回路は、ニューロン回路を再現するように構成され、以下のステップを含む:
・ ニューロン回路の表現(a description)を取得することであって、ニューロン回路の表現は、複数のニューロン集団及び少なくとも1つのニューロン接続を含み、各ニューロン集団は少なくとも1つのニューロンを含み、少なくとも1つのニューロン接続の各ニューロン接続は、ニューロン集団の少なくとも1つのニューロンと他のニューロン集団の少なくとも1つの他のニューロンとの間のニューロンリンクにより、複数のニューロン集団の1つのニューロン集団を複数のニューロン集団の他のニューロン集団にリンクさせ;
・ マイクロ流体回路の複数のノードの各ノードについて少なくとも1つの第1のパラメータを決定することであって、マイクロ流体回路の複数のノードの各ノードは、ニューロン回路の複数のニューロン集団のうちの1つのニューロン集団に関連し、これを受け取るように構成されており;
・ マイクロ流体回路の少なくとも1つの接続について、少なくとも1つの第2のパラメータを決定することであって、少なくとも1つの接続の各接続は、複数のノードの1つのノードを、複数のノードの少なくとも1つの他のノードにリンクさせ、マイクロ流体回路の少なくとも1つの接続の各接続は、ニューロン回路の前記少なくとも1つのニューロン接続の1つのニューロン接続に関連し、これを受け取るように構成されており;
・ 複数のノードの各ノード及び少なくとも1つの接続の各接続の、配置を決定すること。
【0009】
一実施形態では、本発明は、単独で又は組み合わせて考慮される、以下の特徴のうちの1つ又は複数を含む。
【0010】
一実施形態では、少なくとも1つの接続は、複数の接続、すなわち2つ以上の接続を含む。
【0011】
一実施形態では、少なくとも1つのニューロンは、複数のニューロン、すなわち2つ以上のニューロンを含む。
【0012】
一実施形態では、マイクロ流体回路の複数のノードの少なくとも1つのノードについて、ノードは、ノードの入力チャネルを介してノードの入口シンクと、またノードの出力チャネルを介してノードの出力シンクと、流体連結しており(in fluid communication)、本方法は、ノードの入力シンクと入力チャネルとを配置するステップと、ノードの出力シンクと出力チャネルとを配置するステップとを含む。
【0013】
一実施形態では、本方法は、各ノードの出力シンク及び出力チャネルを配置し、各ノードの入力シンク及び入力チャネルを配置するステップの後に、複数のノードの各ノード及び少なくとも1つの接続の各接続の配置を調整するステップを含む。
【0014】
一実施形態では、表現を取得するステップは、以下を含む:
・ 複数のノードの第1のノード数(a first number of nodes)を決定すること;
・ 複数のノードの各ノードの少なくとも1つの第1の特性を決定することであって、少なくとも1つの第1の特性は、以下のうちの少なくとも1つを含む:
ノードに関連するニューロン集団の第2のニューロン数(a second number of neurons)、及び
高さ、及び
幅、及び
表面積、及び
体積、及び
形状、
・ 少なくとも1つの接続の各接続の少なくとも1つの第2の特性を決定することであって、少なくとも1つの第2の特性は、以下のうちの少なくとも1つを含む:
単方向(unidirectional)又は双方向(bidirectional)、及び
機能的な重み、及び
構造的な重み、及び
ノード間の距離。
【0015】
一実施形態では、各ノードの少なくとも1つの第1の特性は、ノードに関連するニューロン集団の第2の数のニューロンを含む。
【0016】
一実施形態では、各ノードの少なくとも1つの第1の特性は高さを含む。
【0017】
一実施形態では、各ノードの少なくとも1つの第1の特性は幅を含む。
【0018】
一実施形態では、各ノードの少なくとも1つの第1の特性は、表面積を含む。
【0019】
一実施形態では、各ノードの少なくとも1つの第1の特性は、体積を含む。
【0020】
一実施形態では、各ノードの少なくとも1つの第1の特性は、形状を含む。
【0021】
一実施形態では、少なくとも1つの接続の少なくとも1つの第2の特性は、単方向の特徴(the unidirectional feature)を含む。
【0022】
一実施形態では、少なくとも1つの接続の少なくとも1つの第2の特性は、双方向の特徴(the bidirectional feature)を含む。
【0023】
一実施形態では、少なくとも1つの接続の少なくとも1つの第2の特性は、機能的な重みを含む。
【0024】
一実施形態では、少なくとも1つの接続の少なくとも1つの第2の特性は、構造的な重みを含む。
【0025】
一実施形態では、少なくとも1つの接続の少なくとも1つの第2の特性は、ノード間の距離を含む。
【0026】
一実施形態では、表現は、グラフィカルな表現(a graphical description)、又は行列の表現(a matrix description)である。
【0027】
一実施形態では、グラフィカルな表現は、各グラフィカルオブジェクトがニューロン回路のノードに対応した、複数のグラフィカルオブジェクトと、各グラフィカルリンクが1つのグラフィカルオブジェクトを他のグラフィカルオブジェクトにリンクさせ、各グラフィカルリンクがニューロン回路のニューロン接続に対応した、複数のグラフィカルリンクとを含む。
【0028】
一実施形態では、行列の表現は、少なくとも1つの行列を含み、少なくとも1つの行列の各行列は、ノードの数に等しい多くの数の行及び多くの数の列を含み、各ノードは、行列の行及び列に関連付けられ、行と列との間の交点におけるバイナリ値又はパーセンテージは、前記バイナリ値による存在若しくは不在、又は行に関連付けられたノードと列に関連付けられた他のノードとの間の接続の、前記パーセンテージによる、相対的な重み若しくは相対的な距離を示す。
【0029】
一実施形態では、複数のノードの各ノードについて少なくとも1つの第1のパラメータを決定するステップは、以下の中から第1のプロセスを選択することを含み:
・ 堆積チャンバプロセス、及び
・ ミリメートルの空間閉じ込めプロセス、及び
・ コロイド支持構造プロセス、
複数のノードの各ノードの少なくとも1つの第1のパラメータの決定は、選択された実装プロセスの関数である。
【0030】
一実施形態では、堆積チャンバプロセスは、複数のノードの各ノードについての堆積チャンバの生成を含む。
【0031】
これらの構成では、チャンバを、ノードが受け入れなければならないニューロンの集団内のニューロンの数にしたがった大きさにすることが可能である。
【0032】
一実施形態では、少なくとも1つの接続について少なくとも1つの第2のパラメータを決定するステップは、第2の実装プロセスを選択することを含み、少なくとも1つの接続の少なくとも1つの第2パラメータの決定は、第2の選択された実装プロセスの関数である。
【0033】
一実施形態では、第2の実装プロセスは、接続を実装するためのマイクロチャネルを生成するステップを含み、マイクロチャネルの形状(a geometry)は、接続の特性にしたがい決定される。
【0034】
一実施形態では、第2の実装プロセスは、コラーゲン繊維により、又は共通の方向のいずれかの側に平行且つ対称的に並置された一組のマイクロチャネルにより、双方向接続を実装するステップを含み、いくつかのチャネルは一方向に向けられ、他のチャネルは反対方向に向けられている。
【0035】
一実施形態では、複数のノードの各ノード及び少なくとも1つの接続を配置するステップは、以下のサブステップを含む:
・ 第1の選択された実装プロセスに関連する少なくとも1つの第1の制約にしたがい、及び第2の選択された実装プロセスに関連する少なくとも1つの第2の制約にしたがい、マイクロ流体回路の少なくとも1つの最大寸法を決定すること;
・ 複数のノードの各ノードについて、回路の最大寸法、及びノードの少なくとも1つの第1の特性、及び第1の選択された生成プロセスに関連する少なくとも1つの第1の制約及びノードの少なくとも1つの第1のパラメータにしたがい、並びに第2の選択されたプロセスに関連する少なくとも1つの第2の制約にしたがい、ノードの配置を決定すること;
・ ノードの配置及び少なくとも1つの第1の特性にしたがい、並びに他のノードの配置及び少なくとも1つの第1の特性にしたがい、並びに接続の少なくとも1つの第2の特性及び少なくとも1つの第2のパラメータにしたがい、並びに第1の実装プロセスに関連する少なくとも1つの第1の制約にしたがい、並びに第2の実装プロセスに関連する少なくとも1つの第2の制約にしたがい、1つのノードを他のノードにリンクさせる少なくとも1つの接続連結(connection linking)の配置を決定すること。
【図面の簡単な説明】
【0036】
より良い理解のために、本発明を、非限定的な例として、本発明に係る方法の実施形態を示す添付の図面を参照して説明する。図面における同じ参照番号は、同様の要素又は同様の機能を有する要素を指す。
図1】ニューロン回路のグラフィカルな表現を示す図である。
図2】マイクロ流体回路の各ノードの入力及び出力シンク並びにチャネルのない、グラフィカルな表現から生成されたマイクロ流体回路を示す図である。
図3】グラフィカルな表現から生成されたマイクロ流体回路を示す図である。
図4】本発明に係る方法の実施のステップを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、ニューロン回路のグラフィカルな表現10の一例を示す。方法100の実施形態を、図1~4を参照して説明する。このグラフィカルな表現10を読み取る最初のステップ101は、考慮されるニューロン回路が複数のニューロン集団PN1、PN2、PN3、PN4、PN5及び少なくとも1つのニューロン接続CN1、CN2、CN3、CN4、CN5を含むことを示す。
【0038】
各ニューロン集団PN1、PN2、PN3、PN4、PN5は、1つ又は複数のニューロンを含む。
【0039】
少なくとも1つのニューロン接続CN1、CN2、CN3、CN4、CN5の各ニューロン接続CN1、CN2、CN3、CN4、CN5は、ニューロン集団の少なくとも1つのニューロンと他のニューロン集団の少なくとも1つの他のニューロンとの間のニューロンリンクにより、複数のニューロン集団PN1、PN2、PN3、PN4、PN5の1つのニューロン集団を複数のニューロン集団PN1、PN2、PN3、PN4、PN5の他のニューロン集団にリンクさせる。前記ニューロン接続は、ニューロン間のシナプス接続により、又は接続されたニューロンに関連するニューロン突起、軸索又は樹状突起の拡張を介することのみにより、確立される。
【0040】
方法100の目的は、図3に示されるような、マイクロ流体回路30の規定であり、マイクロ流体回路30は、表現10で読み取られたニューロン回路の動作を再現するように構成されている;マイクロ流体回路30は、複数のノードN1、N2、N3、N4、N5と、少なくとも1つの接続C1、C2、C3、C4とを含み、各接続C1、C2、C3、C4、C5は、複数のノードN1、N2、N3、N4、N5の少なくとも1つのノードN1、N2、N3、N4、N5を、複数のノードN1、N2、N3、N4、N5の少なくとも1つの他のノードへリンクさせる。
【0041】
マイクロ流体回路30が、表現10で読み取られたニューロン回路の動作を再現できるようにするために、マイクロ流体回路30の複数のノードN1、N2、N3、N4、N5の各ノードは、ニューロン回路の複数のニューロン集団PN1、PN2、PN3、PN4、PN5のうちの1つのニューロン集団PN1、PN2、PN3、PN4、PN5に関連し、これを受け取るように構成されており、マイクロ流体回路30の各接続C1、C2、C3、C4、C5は、ニューロン回路の少なくとも1つのニューロン接続C1、C2、C3、C4、C5の1つのニューロン接続C1、C2、C3、C4、C5に関連し、これを受け取るように構成されている。
【0042】
この目的のために、方法100は、表現を読み取るステップ101の後に実行される以下のステップを含む:
・複数のノードN1、N2、N3、N4、N5の各ノードN1、N2、N3、N4、N5を生成すること102;
・少なくとも1つの接続CN1、CN2、CN3、CN4、CN5の各接続CN1、CN2、CN3、CN4、CN5を生成すること103;
・複数のノードの各ノードN1、N2、N3、N4、N5、及び少なくとも1つの接続の各接続CN1、CN2、CN3、CN4、CN5を配置すること104。
【0043】
一実施形態では、マイクロ流体回路30の複数のノードN1、N2、N3、N4、N5の少なくとも1つのノードN1、N2、N3、N4、N5について、ノードは、ノードの入力シンクPE1、PE2と、ノードの入力チャネルCE2を介して流体連結しており、ノードの出力シンクPS1、PS2と、ノードの出力チャネルCS2を介して流体連結している。本方法は、ノードの入力シンクPE1、PE2と入力チャネルCE2とを配置し、ノードの出力シンクPS1、PS2と出力チャネルSC2とを配置するステップ105を含む。
【0044】
一実施形態では、本方法は、各ノードの入力シンク及び入力チャネルを配置し、各ノードの出力シンク及び出力チャネルを配置するステップ105の後に、複数のノードの各ノード及び少なくとも1つの接続の各接続の配置を調整するステップ106を含む。
【0045】
一実施形態では、ノードは、入力シンク及び出力シンクに統合され得る。
【0046】
一実施形態では、表現10を読み取るステップ101は、以下を含む:
・ 複数のノードN1、N2、N3、N4、N5のノードの数を決定すること1011;
・ 複数のノードの各ノードの少なくとも1つの特性を決定すること1012;
ノードについて考慮されるその特性は、特に、以下を含む:
・ ノードに関連するニューロン集団のニューロンの数、及び/又は
・ ノードの高さ、及び/又は
・ ノードの幅、及び/又は
・ ノードの表面積、及び/又は
・ ノードの体積、及び/又は
・ ノードの形状であって、例えば円形(circular)、四角形、曲線形(rounded)又は星形。
【0047】
表現10のニューロン回路に対応するノードの特徴を、例として、以下の表1にまとめる。
【0048】
【表1】

表現10を読み取るステップ101はまた、各接続の特性を決定すること1013を含む。
【0049】
各接続について考慮されるいくつかの特性は、特に以下を含む:
接続の単方向又は双方向の性質、及び/又は
接続の機能的な重み、及び/又は
接続の構造的な重み、及び/又は
接続により接続されたノード間の距離。
【0050】
表現10は、グラフィカルな表現10又は行列の表現の形式であり得る。
【0051】
一実施形態では、グラフィカルな表現10は、各グラフィカルオブジェクトがニューロン回路のノードに対応した、複数のグラフィカルオブジェクトと、各グラフィカルリンクが1つのグラフィカルオブジェクトを他のグラフィカルオブジェクトにリンクさせ、各グラフィカルリンクがニューロン回路のニューロン接続に対応した、複数のグラフィカルリンクとを含む。
【0052】
一実施形態では、行列の表現は、ノードの数に等しい多くの数の行及び多くの数の列を含む1つの行列を含み、各ノードは行列の行及び列に関連付けられ、行と列との間の交点におけるバイナリ値又はパーセンテージは、前記バイナリ値による存在若しくは不在、又は、行に関連付けられたノードと列に関連付けられた他のノードとの間の接続の、前記パーセンテージによる、重みを示す。
【0053】
表現10のニューロン回路に対応するノード間の接続を、例として、以下の表2に行列の形式で示す。行及び列の交点にある行列の各セルには、この行に関連付けられたノードとこの列に関連付けられたノードとの間の接続に関する情報が含まれている。すなわち、値1又は0は、それぞれこれらのノード間の接続の有無を示す。したがって、各接続に固有の他の特性は、考慮される各接続特性に関連付けられた、同じタイプの行列の表現の対応するセルに見出され得る。
【0054】
したがって、例として、以下の表2~4は、ノードN1、N2、N3、N4及びN5のニューロン集団PN1、PN2、PN3、PN4及びPN5間の相互接続ネットワークを形成する行列を示す。表2は、2つのノード間の接続の存在に関する情報を含む行列を示し、表3は、各接続の相対的な重みに関する情報を含む行列を示し、表4は、各ノード間の距離に関する情報を含む行列を示す。
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
方法100は、ニューロン回路の行列の又はグラフィカルな表現を読み取るステップ101の後、各ノードを生成するステップ102を含む。
【0058】
ノードを生成すること102は、各ノードの実装プロセスを選択すること1021を含む。
【0059】
実装プロセスは、例えば、チャンバ堆積プロセスである。このプロセスでは、ノードは以下のように実装される:
・ ノードに関連するニューロン集団のサンプルを含む液体を受け取るように適合した入力シンク、
・ ノードに合致する、サンプルの少なくとも一部が閉じ込められた堆積チャンバ、
・ 液体を排出することに適合した出力シンク;
・ 入力シンクと堆積チャンバとをリンクさせる入力チャネル;
・ 堆積チャンバと出力シンクとをリンクさせる出力チャネル;
入力チャネル及び出力チャネルは、入力及び出力シンクの高さに等しい高さを有し、入力シンクにより受け取られた液体が入力チャネル、堆積チャンバへ、すなわちノードへ、そして出力チャネル、出力シンクへと通って流れるように相対的に配置されている。入力チャネル及び出力チャネルのそれぞれの寸法は、液体の流れの間に、考慮されるニューロン集団のサンプルの少なくとも一部が堆積チャンバに、すなわちノードに閉じ込められ、そして堆積チャンバ内のサンプルの空間分布が監視されるように、適合される。
【0060】
これらの構成では、ノードが受け取らなければならないニューロン集団のニューロンの数に応じて、堆積チャンバ、したがってノードの、サイズを決定することが可能である。
【0061】
実装の他のプロセスは、例えば、ミリメートルの空間閉じ込めプロセス(millimeter spatial confinement process)の名称で当業者に知られているプロセスである。
【0062】
他の実装プロセスは、例えば、コロイドベースの支持構造の使用に基づくプロセスの名称で当業者に知られているプロセスである;この実装プロセスでは、ノードはコロイド及びニューロンの集合体により形成される。
【0063】
方法100はまた、ステップ101で読み取られた行列の又はグラフィカルな表現10のオブジェクトである回路の各接続を生成するステップ103を含む。
【0064】
接続の生成は、接続を実装するプロセスを選択すること1031を含む。
【0065】
当業者に知られた、接続を実装するためのプロセスにおいて、接続は、マイクロチャネルの形態であり得る。その形状(the geometry)は、接続の特性にしたがって決定される;双方向接続はまた、コラーゲン繊維により、又は共通の方向のいずれかの側に対称的に並置されたチャネルにより実装され得、いくつかのチャネルは一方向に向けられ、他のチャネルはその反対方向に向けられる。
【0066】
この方法は、最終的に、複数のノードの各ノード及び少なくとも1つの接続の各接続を配置し及びサイズ設定(sizing)ステップ104を含む。
【0067】
各ノード及び関連する各接続の配置及びサイジング設定は、以下のサブステップを含む:
・ 第1の選択された生成プロセスに関連する少なくとも1つの第1の制約にしたがい、及び第2の選択されたプロセスに関連する少なくとも1つの第2の制約にしたがい、マイクロ流体回路の少なくとも1つの最大寸法を決定すること1041;
・ 複数のノードの各ノードについて、回路の最大寸法にしたがい、及びノードの少なくとも1つの第1の特性にしたがい、及び第1の選択された生成プロセスに関連する少なくとも1つの第1の制約にしたがい、及び第2の選択されたプロセスに関連する少なくとも1つの第2の制約にしたがい、ノードの配置を決定すること1042;
・ 1つのノードを他のノードにリンクさせる各接続について、ノードの配置及び少なくとも1つの第1の特性にしたがい、並びに他のノードの配置及び少なくとも1つの第1の特性にしたがい、並びに接続の少なくとも1つの第2の特性にしたがい、並びに第1の選択された生成プロセスに関連する少なくとも1つの第1の制約にしたがい、並びに第2の選択されたプロセスに関連する少なくとも1つの第2の制約にしたがい、接続の配置を決定すること1043;
すなわち、例として:
・ 行列の又はグラフィカルな表現10に対応するマイクロ流体回路の最大寸法を決定でき、製造上の制約は20mm×30mmであり;
・ 同様に、入力シンクについての最小寸法は、ピペットを挿入できるという制約により決定でき、すなわち、入力シンクの寸法は、少なくとも直径4mmに決定され;
・ マイクロチャネルの寸法も、製造上の制約により、高さ3μm、幅5μmに決定でき;
・ ノード間の距離は、グラフィカルな10又は行列の表現により決定でき;
・ ノードの寸法は、堆積チャンバプロセスにしたがい決定される。
【0068】
前記の制約、並びにグラフィカルな10又は行列の表現を読み取ることから推定されるノード及び接続の特性に基づき、図2は、回路の各ノードの配置を決定するステップ1042の結果を示し、図3は、ノードの実装のために選択されたプロセスが堆積チャンバプロセスであり、接続の実装のために選択されたプロセスがマイクロチャネルの使用に基づく場合における、接続を決定するステップ1043の結果を示す。
【0069】
すなわち、各ノードについて、チャンバのサイズ設定手順は以下のとおりである:
1-考慮されるニューロンのタイプにしたがい決定された直径を考慮し、考慮される集団のニューロンの数を受け取るのに適した堆積チャンバについて、表面積を計算する。例えば、海馬ニューロンについて、堆積チャンバの表面積の計算に考慮されるニューロンの直径は15μmである。あるいは、いわゆる体積プロセス(volumetric process)によれば、ニューロンの堆積表面積を計算する代わりに、堆積チャンバの体積を計算することが可能である。あるいは、外植片全体を考慮することが可能であり、チャンバの寸法は、標的外植片のサイズに適合するように決定される。
【0070】
2-表面積がノードごとに先に計算されたものに制約され、長さ又は幅の選択が自由度を構成する、長方形のチャンバを生成する。あるいは、チャンバは、同等の表面で異なる形状(円形、ひし形)を有し得る。あるいは、体積プロセスにしたがい、生成されたチャンバの高さにしたがい表面積を決定し、表面の形状を任意に選択し得る。あるいは、外植片について、体積を外植片の体積により固定し得る。
【0071】
3-このように寸法が決められたチャンバは平面に配置され、与えられる可能性のある距離の制約を満たす。図2は、この配置ステップの結果を示す。
【0072】
次に、堆積チャンバのロード(loading)チャネル又はアンロード(unloading)チャネルとも呼ばれる、堆積チャンバの入力チャネル及び出力チャネルを、生成し、配置する。この目的のために、細胞を積載する(loading)ための意図されたプロセスにしたがい、ロード/アンロードチャネルを構築する。一般に、入力/出力チャネルは堆積チャンバに接続され、層流が達成可能であり、沈降する前にチャンバ内に細胞を堆積させることができるようなサイズにされる。
【0073】
堆積チャンバプロセスにおいて、キャリア流体媒体の堆積チャンバ内の流れが、以下の関係によって特徴付けられるように、これらの入力/出力チャネルは、当業者に知られている方法で寸法が決定される:
【0074】
【数1】
ここで、HCh及びDChはそれぞれ堆積チャンバの高さ及び直径であり、Vsediはキャリア流体によって運ばれる細胞の沈降速度であり、Vchはキャリア流体媒体の流速である。
【0075】
4-入出力チャネルを規定して配置したら、利用する製造プロセスとの適合性を確認する必要がある。堆積チャンバプロセスの場合、入力/出力チャネルは互いに交差できず、他の堆積チャンバと交差できない。
【0076】
5-実現可能性の制約にしたがう解が見つかるまで、前の手順を繰り返す。図1~3に示す例において、図2に示す結果は、コンピュータにより事前に計算された324の可能性のうち、それぞれの入力チャネル及び出力チャネルで、ノードのサイズ設定及び配置について採用された解を示す。この解は、デバイスの製造プロセスによる技術的実現可能性基準を満たす唯一のものである;しかし、他の製造プロセスに基づけば他の解を選択し得た。
【0077】
7-入力チャネル及び出力チャネルでノードのサイズ設定及び配置をそれぞれ行った後、例えば接続マイクロチャネルの選択に基づき、接続実装プロセスにしたがい、ノード間接続を生成する。この目的のために、チャネルの寸法は、考慮される細胞タイプにしたがい、当業者に従来知られている方法で確立される(幅5μm、高さ3μm、間隔5μm)。マイクロチャネルは、接続行列に示される接続性にしたがい、各ノード間のマイクロチャネルの数を最大にするように、ノード間に配置する。重み行列が行列の表現に提供される場合、チャネルの可能な最大数は、行列にしたがったマイクロチャネルの数に関連して、1に等しい重みにより与えられる。
【0078】
8-マイクロチャネルは方向性に適している。接続行列にしたがい、先に寸法が決められたマイクロチャネルの形状に対して適合が行われる。したがって、当業者に知られているいわゆるモミプロセス(fir process)を選択することにより、先に寸法が決められたマイクロチャネルは、長方形から三角形に変形され、その最も細かい狭窄(constriction)は、所望の伝播方向を示す。
【0079】
9-最後に、入力/出力タンクを配置する。入力/出力チャンネルは、使用する細胞のタイプに応じて配分されたタンクに割り当てられる。ここに例として示されているケースでは、タンクは直径4mm、高さ5mmのシリンダで構成されている。
【0080】
10-そして、すべてのノード及びチャネルの3D寸法を使用して、チップ全体の3D平面を生成できる。平面の2D投影は、図3に例として示す。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】