(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-25
(54)【発明の名称】光学式リーダーおよび生物学的サンプルを分析する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/21 20060101AFI20220317BHJP
【FI】
G01N21/21
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021545704
(86)(22)【出願日】2020-01-31
(85)【翻訳文提出日】2021-08-04
(86)【国際出願番号】 FI2020050055
(87)【国際公開番号】W WO2020161383
(87)【国際公開日】2020-08-13
(32)【優先日】2019-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519459399
【氏名又は名称】ライフ テクノロジーズ ホールディングス プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】トゥナネン ユッカ
(72)【発明者】
【氏名】ファラレロ アドヤリー
(72)【発明者】
【氏名】トイヴァネン パシ
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB12
2G059CC16
2G059EE05
2G059FF01
2G059KK04
(57)【要約】
生物学的サンプルを分析するための光学式リーダーは、マイクロプレート(1)を受けるための水平読み取り面(3)と、マイクロプレート(1)のウェル(2)内のサンプルを照射するように構成されている照射アレンジメント(4)と、マイクロプレート(1)からの光を受けるように配置されたイメージングデバイス(6)と、照射アレンジメント(4)からの光を読み取り面(3)に向け、マイクロプレート(1)から受けた光をイメージングデバイス(6)に向けるように配置されたビームスプリッタ(7)と、ビームスプリッタ(7)と読み取り面(3)との間に配置されて、照射アレンジメント(4)から受けた光をサンプルに集束させ、サンプルの画像をイメージングデバイス(6)に集束させるレンズシステム(8)と、を含む。光学式リーダーは、照射アレンジメント(4)からレンズシステム(8)に特定の偏光を有する光のみを透過させるように構成されており、光学式リーダーは、レンズシステム(8)とイメージングデバイス(6)の間に配置され、かつレンズシステム(8)の表面から反射した偏光を遮断するように構成されている偏光子(10、19)を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロプレート(1)のウェル(2)内に配置された生物学的サンプルを分析するための光学式リーダーであって、
-複数のウェル(2)を含むマイクロプレート(1)を受けるための水平読み取り面(3)と、
-光源(5)を含み、前記マイクロプレート(1)の前記ウェル(2)内の前記サンプルを照射するように構成されている照射アレンジメント(4)と、
-前記マイクロプレート(1)からの光を受けるように配置されたイメージングデバイス(6)と、
-前記照射アレンジメント(4)からの光の一部を前記読み取り面(3)に向け、前記マイクロプレート(1)から受けた前記光の一部を前記イメージングデバイス(6)に向けるように配置されたビームスプリッタ(7)と、
-少なくとも1つのレンズ(16)を含み、前記ビームスプリッタ(7)と前記読み取り面(3)との間に配置されて、前記照射アレンジメント(4)から受けた前記光をサンプルに集束させ、前記サンプルの画像を前記イメージングデバイス(6)に集束させるレンズシステム(8)と、を含み、
前記光学式リーダーが、前記照射アレンジメント(4)から前記レンズシステム(8)に向けて特定の偏光を有する光のみを透過させるように構成されており、前記光学式リーダーが、前記レンズシステム(8)と前記イメージングデバイス(6)との間に配置され、かつ前記レンズシステム(8)の表面から反射した偏光を遮断するように構成されている偏光子(10、19)を含む、光学式リーダー。
【請求項2】
前記照射アレンジメント(4)が、前記マイクロプレート(1)の前記ウェル(2)内の前記サンプルを第1の偏光方向を有する光で照射するように構成され、前記第1の偏光方向に垂直な第2の偏光方向を有する偏光子(10)が、前記ビームスプリッタ(7)と前記イメージングデバイス(6)との間に配置されている、請求項1に記載の光学式リーダー。
【請求項3】
前記光源(5)が、非偏光を生成するように配置され、前記照射アレンジメント(4)が、前記光源(5)と前記ビームスプリッタ(7)との間に配置された偏光子(9)を含む、請求項2に記載の光学式リーダー。
【請求項4】
円偏光子(19)が、前記ビームスプリッタ(7)と前記レンズシステム(8)との間に配置されている、請求項1に記載の光学式リーダー。
【請求項5】
前記円偏光子(19)の表面の法線(23)と前記レンズシステム(6)の長手方向軸(22)との間の角度(α)が5~15度の範囲にある、請求項4に記載の光学式リーダー。
【請求項6】
前記イメージングデバイス(6)が、カメラセンサ(6a)を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の光学式リーダー。
【請求項7】
前記照射アレンジメント(4)が、一体型チャンバ(13)を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の光学式リーダー。
【請求項8】
前記照射アレンジメント(4)が、前記サンプルを照射するために使用される前記光を生成するための少なくとも1つのLED(14)を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の光学式リーダー。
【請求項9】
前記イメージングデバイス(6)が、前記ビームスプリッタ(7)の上に配置されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の光学式リーダー。
【請求項10】
前記光学式リーダーが、前記照射アレンジメント(4)によって生成され、かつ前記ビームスプリッタ(7)を通る光の強度を測定するように配置された参照検出器(11)を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の光学式リーダー。
【請求項11】
前記光学式リーダーが、前記照射アレンジメント(4)と前記ビームスプリッタ(7)との間に配置され、かつ1つ以上の第1の所定の波長範囲の光のみを通すように構成されている第1のフィルタ(12)と、前記ビームスプリッタ(7)と前記イメージングデバイス(6)との間に配置され、かつ1つ以上の第2の所定の波長範囲の光のみを通すように構成されている第2のフィルタ(18)と、を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の光学式リーダー。
【請求項12】
前記レンズシステム(8)がアパーチャ(17)を含み、前記ビームスプリッタ(7)からの前記光が前記アパーチャ(17)を通して前記マイクロプレート(1)のウェル(2)に向けられ、前記アパーチャ(17)の直径が、最大限でも前記ウェル(2)の直径と同じである、請求項1~11のいずれか一項に記載の光学式リーダー。
【請求項13】
水平読み取り面(3)に配置されたマイクロプレート(1)のウェル(2)に配置された生物学的サンプルを分析する方法であって、
-照射アレンジメント(4)によって偏光または非偏光を生成するステップと、
-生成された光の一部をビームスプリッタ(7)によってマイクロプレート(1)のウェル(2)内のサンプルに向けるステップと、
-非偏光の場合、前記ビームスプリッタ(7)から受けた光を偏光させるステップと、
-レンズシステム(8)によって特定の偏光を有する光を前記サンプルに向けるステップと、
-前記マイクロプレート(1)および前記サンプルから反射され、かつ/または前記サンプルから放出された光の少なくとも一部を前記レンズシステム(8)に通すステップと、
-前記ビームスプリッタ(7)によって前記マイクロプレート(1)および前記レンズシステム(8)から受けた前記光の一部をイメージングデバイス(6)に向けるステップと、
-前記イメージングデバイス(6)によって前記サンプルのイメージを形成するステップと、を含み、
前記レンズシステム(8)の表面から反射した偏光が、前記レンズシステム(8)と前記イメージングデバイス(6)との間に配置された偏光子(10、19)によって遮断される、方法。
【請求項14】
第1の偏光方向を有する光が、前記照射アレンジメント(4)によって生成され、前記レンズシステム(8)および前記ビームスプリッタ(7)から受けた光が、前記第1の偏光方向に垂直な第2の偏光方向を有する偏光子(10)によって偏光される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
非偏光を生成し、それを偏光子(9)に通すことにより、偏光が前記照射アレンジメント(4)において生成される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ビームスプリッタ(7)から受けた光が、前記ビームスプリッタ(7)と前記レンズシステム(8)との間に配置された円偏光子(19)によって偏光される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
非偏光が少なくとも1つのLED(14)によって生成される、請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
非偏光が、積分チャンバ(13)から前記ビームスプリッタ(7)に向けられる、請求項13~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記照射アレンジメント(4)からの前記光が前記ビームスプリッタ(7)によって前記サンプルに向けて反射される、請求項13~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記照射アレンジメント(4)によって生成され、かつ前記ビームスプリッタ(7)を通る光の強度が測定される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記サンプルがマイクロプレート(1)に配置され、前記ウェル(2)の壁が黒色である、請求項13~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記サンプルがマイクロプレート(1)に配置され、前記ウェル(2)の底部が白色である、請求項13~21のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の光学式リーダーに関連する。本発明はまた、他の独立請求項で規定されている生物学的サンプルを分析する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酵素結合免疫吸着スポットアレイ(ELISPOT)は、ヒトおよび他の動物または生物の細胞性免疫応答を監視するために通常使用される方法である。ELISPOT法は、さまざまな物質を分泌する細胞を検出することを可能にする。ELISPOTアッセイは、例えば、抗原特異的抗体分泌細胞またはサイトカイン産生細胞を検出するために使用することができる。検査された細胞は、マイクロプレートのウェルまたは他の適切な小さな容器に入れられ、細胞の少なくとも一部で反応をトリガするように処理される。治療に反応する細胞は、スポットとして検出できる生物学的に関連する分子を分泌する。このアッセイでは、1つのスポットが1つの免疫反応性細胞を表す。これらのスポットは、例えば顕微鏡を使用して手動で、またはELISPOTアッセイに適合した特定のリーダーを使用してのいずれかで自動的に検出およびカウントすることができる。
【0003】
ELISPOTリーダーは、サンプルが照射され、各サンプルの画像を撮影するためにカメラが使用されるように設計されている。ELISPOTアッセイに使用される多くの既知のデバイスの問題は、サンプルを照射する光によって生成される迷光の量である。迷光は画像のコントラストを低下させ、サンプルの分析をより困難にする。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、マイクロプレートのウェル内に配置された生物学的サンプルを分析するための改良された光学式リーダーを提供することである。本発明による光学式リーダーを特徴付ける特性は、請求項1に与えられている。本発明の別の目的は、水平な読み取り面に配置されたマイクロプレートのウェルに配置された生物学的サンプルを分析する改善された方法を提供することである。本方法を特徴づける特性は、他の独立請求項に与えられている。
【0005】
本発明の光学式リーダーは、複数のウェルを含むマイクロプレートを受けるための水平読み取り面と、光源を含み、マイクロプレートのウェル内のサンプルを照射するように配置されている照射アレンジメントと、マイクロプレートからの光を受けるように配置されたイメージングデバイスと、照射アレンジメントからの光の一部を読み取り面に向け、マイクロプレートから受けた光の一部をイメージングデバイスに向けるように配置されたビームスプリッタと、少なくとも1つのレンズを含み、ビームスプリッタと読み取り面との間に配置されて、照射アレンジメントから受けた光をサンプルに集束させ、サンプルの画像をイメージングデバイスに集束させるレンズシステムと、を含む。光学式リーダーが、照射アレンジメントからレンズシステムに向けて特定の偏光を有する光のみを透過させるように構成されており、光学式リーダーが、レンズシステムとイメージングデバイスの間に配置され、かつレンズシステムの表面から反射した偏光を遮断するように構成されている偏光子を含む。
【0006】
本発明による方法は、照射アレンジメントによって偏光または非偏光を生成するステップと、生成された光の一部をビームスプリッタによってマイクロプレートのウェル内のサンプルに向けるステップと、非偏光の場合、ビームスプリッタから受けた光を偏光させるステップと、レンズシステムによって特定の偏光を有する光をサンプルに向けるステップと、マイクロプレートおよびサンプルから反射され、かつ/またはサンプルから放出された光の少なくとも一部をレンズシステムに通すステップと、ビームスプリッタによってマイクロプレートとレンズシステムから受けた光の一部をイメージングデバイスに向けるステップと、イメージングデバイスによってサンプルのイメージを形成するステップと、を含む。レンズシステムの表面から反射した偏光が、レンズシステムとイメージングデバイスの間に配置された偏光子によって遮断される。
【0007】
照射アレンジメントからの光をビームスプリッタとレンズシステムを介してマイクロプレートのウェルに向けることにより、ウェルの底部に均一で明るいスポットを形成することが可能である。ウェル周辺の迷光を大幅に低減することができるため、画像のコントラストが改善する。しかし、照射ビームがレンズシステムを通過すると、各レンズ表面に迷光が形成される。迷光は、レンズシステムの構造内、特に金属表面での照射ビームの散乱によっても形成される。レンズ表面の反射とレンズシステムの金属表面での散乱の両方が、光の偏光を維持する。したがって、この迷光は、偏光を使用してサンプルを照射し、サンプルによって反射した光を偏光してから、光がイメージングデバイスによって捕捉されることによって効果的に除去することができる。したがって、不要な迷光は偏光子によって遮断することができる。しかし、マイクロウェルから反射した光は偏光されていないため、ビームスプリッタとイメージングデバイスの間の偏光子を部分的に通ることができる。その結果、コントラストの高い画像を取得することができる。
【0008】
本発明の一実施形態によれば、照射アレンジメントが、マイクロプレートのウェル内のサンプルを第1の偏光方向を有する光で照射し、第1の偏光方向に垂直な第2の偏光方向を有する偏光子が、ビームスプリッタとイメージングデバイスとの間に配置される。
【0009】
本発明の一実施形態によれば、光源が、非偏光を生成するように配置され、照射アレンジメントが、光源とビームスプリッタとの間に配置された偏光子を含む。したがって、例えば、LEDを光源として使用することができる。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、円偏光子が、ビームスプリッタとレンズシステムとの間に配置される。円偏光子を使用すると、必要な偏光子は1つだけである。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、円偏光子の表面の法線とレンズシステムの長手方向軸との間の角度が5~15度の範囲にある。円偏光子を傾斜させることにより、偏光子の表面からイメージングデバイスへの反射が減少し、画像のコントラストがさらに改善される。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、イメージングデバイスは、カメラセンサを含む。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、照射アレンジメントは、積分球などの積分チャンバを含む。積分チャンバを使用すると、所望のビーム径で均一な照射を作成することができる。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、照射アレンジメントが、サンプルを照射するために使用される光を生成するための少なくとも1つのLEDを含む。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、イメージングデバイスが、ビームスプリッタの上に配置される。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、光学式リーダーは、照射アレンジメントによって生成され、かつビームスプリッタを通る光の強度を測定するように配置された参照検出器を含む。参照検出器を使用すると、光源によって生成された光の強度の変化が画像に及ぼす影響を補正することができる。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、光学式リーダーが、照射アレンジメントとビームスプリッタとの間に配置され、かつ1つ以上の第1の所定の波長範囲の光のみを通すように構成されている第1のフィルタと、ビームスプリッタとイメージングデバイスとの間に配置され、かつ1つ以上の第2の所定の波長範囲の光のみを通すように構成されている第2のフィルタと、を含む。第1のフィルタは、蛍光測定でサンプルを励起するために必要な特定の波長を通すように構成することができる。第2のフィルタは、サンプルから放出される波長のみを通すように構成することができる。したがって、同じリーダーをELISPOTアッセイとFluoroSpotアッセイの両方に使用できる。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、レンズシステムがアパーチャを含み、ビームスプリッタからの光がアパーチャを通してマイクロプレートのウェルに向けられ、アパーチャの直径が、最大限でもウェルの直径と同じである。これにより、サンプルとイメージングデバイスのビネットが防止される。
【0019】
本発明の実施形態による方法では、第1の偏光方向を有する光が、照射アレンジメントによって生成され、レンズシステムとビームスプリッタから受けた光が、第1の偏光方向に垂直な第2の偏光方向を有する偏光子によって偏光される。
【0020】
本発明の一実施形態による方法では、非偏光を生成し、それを偏光子に通すことにより、偏光が照射アレンジメントにおいて生成される。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、ビームスプリッタから受けた光が、ビームスプリッタとレンズシステムとの間に配置された円偏光子によって偏光される。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、非偏光は、少なくとも1つのLEDによって生成される。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、非偏光は、積分球などの積分チャンバからビームスプリッタに向けられる。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、照射アレンジメントからの光がビームスプリッタによってサンプルに向けて反射される。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、照射アレンジメントによって生成され、かつビームスプリッタを通る光の強度が測定される。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、サンプルがマイクロプレートに配置され、ウェルの壁が黒色である。ウェルの底部は、白色とすることができる。黒い壁は迷光を減らし、画像のコントラストを改善させる。
本発明の実施形態は、添付の図面を参照して以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態による光学式リーダーを概略的に示す。
【
図3】本発明の別の実施形態による光学式リーダーを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本発明の一実施形態による光学式リーダーを示す。光学式リーダーは、マイクロプレート1のウェル2に配置されたサンプルを分析するために使用することができる。マイクロプレート1は、光学式リーダーの水平な読み取り面3に配置されている。本発明による光学式リーダーは、特にELISPOTおよびFluoroSpotアッセイに使用することができる。
【0029】
ELISPOTアッセイは、さまざまな物質を分泌する細胞を検出することを可能にする。ELISPOTアッセイは、例えば、抗原特異的抗体分泌細胞またはサイトカイン産生細胞を検出するために使用することができる。検査された細胞は、マイクロプレート1のウェル2内に置かれ、細胞の少なくとも一部で反応を引き起こすように処理される。治療に反応する細胞は、スポットとして検出できる生物学的に関連する分子を分泌する。このアッセイでは、1つのスポットが1つの免疫反応性細胞を表す。
【0030】
FluoroSpotアッセイは、ELISPOTアッセイの修正と見なすことができる。ELISPOTアッセイでは、発色のために酵素標識抗体と沈殿酵素基質を利用するが、FluoroSpot法ではフルオロフォアを使用する。さまざまなフルオロフォアを使用してさまざまな分析物を検出でき、複数の分析物を分泌する細胞を、多色スポットを使用したマルチプレックスアッセイを使用して研究することができる。
【0031】
マイクロプレート(例えば、マイクロタイタープレート、マイクロウェルプレート、マルチウェルプレート、またはマルチウェルとも呼ばれる)は、複数のウェル、すなわち、行と列とに配置された空洞を備えるフラットプレートである。
図1では、ウェル2のうちの1つのみが示されている。ウェル2は、サンプルを受け取り、小さな試験管として機能するように構成されている。典型的なマイクロプレートは、6個、24個、96個、384個、または1536個のウェルを備えるが、より大きなマイクロプレートも存在する。ウェルは、辺の比率が典型的には、2:3である矩形行列に配置される。サンプルは通常、液体であるが、マイクロプレートは、例えば、粉末の形態のサンプルにも使用され得る。マイクロプレートは典型的には、プラスチック材料製である。
【0032】
光学式リーダーは、照射アレンジメント4を含む。照射アレンジメント4の機能は、マイクロプレート1のウェル2内のサンプルを照射するために使用される偏光を生成することである。
図1の光学式リーダーでは、マイクロプレート1の1つのウェル2と1つのサンプルが一度に照射される。
図1の実施形態では、照射アレンジメント4は、非偏光を生成する光源5を含む。したがって、照射アレンジメント4は、直線偏光子である第1の偏光子9をさらに含む。第1の偏光子9は、偏光フィルタとすることができる。光源5によって生成された光ビームは、第1の偏光子9に向けられ、実質的に、第1の偏光方向を有する光のみが第1の偏光子9を通る。
【0033】
第1の偏光子9から、光はビームスプリッタ7に向けられる。ビームスプリッタ7は、光の一部を反射し、残りの光を透過するように構成されている光学デバイスである。実際には、ビームスプリッタ7が受ける光の一部が吸収される。ビームスプリッタ7は、反射光を読み取り面3に向けるように配置されている。ビームスプリッタ7は、例えば、互いに接着された2つの三角形のガラスプリズムで作製することができる。代替的には、ビームスプリッタ7は、コーティングされたガラス板とすることができる。ビームスプリッタ7はさまざまなプロパティで利用可能である。光学式リーダーの最適なビーム分割率は50-50%である。すなわち、ビームスプリッタ7によって反射される光量は、ビームスプリッタ7によって透過される光量に等しい。したがって、ビームスプリッタ7によって吸収されない光の半分が反射され、光の半分が透過する。しかしながら、反射光の部分は、例えば、40~60パーセントの範囲であり得る。
【0034】
ビームスプリッタ7と読み取り面3との間に、少なくとも1つのレンズ16を含むレンズシステム8が配置されている。
図1では、単一のレンズ16のみが示されているが、実際には、レンズシステム8は、複数のレンズを含むことができる。レンズシステム8は、照射アレンジメント4およびビームスプリッタ7から受け取った光を、マイクロプレート1のウェル2の底部に配置されたサンプルに集束させるように配置されている。レンズシステム8は、レンズ16と読み取り面3との間に位置するアパーチャ17をさらに含む。
【0035】
マイクロプレート1のウェル2の底部およびウェル2内のサンプルは、光の一部をレンズシステム8に向けて戻すように反射する。FluoroSpotアッセイの場合、サンプルは光を放出する可能性がある。レンズシステム8は、サンプルの画像をイメージングデバイス6に集束させるように構成されている。したがって、同じレンズシステム8が、サンプルを照射するために使用される光を集束させるため、およびマイクロプレート1から受けた光を集束させるために使用される。レンズシステム8から、光はビームスプリッタ7に向けられる。光の一部は、ビームスプリッタ7から照射アレンジメント4に向かって反射されるが、光の一部は、ビームスプリッタ7を通り、イメージングデバイス6に到達することができる。ビームスプリッタ7のビーム分割率が50-50%であり、ビームスプリッタ7による吸収を省略した場合、光の半分が反射され、光の半分がビームスプリッタ7を透過する。イメージングデバイス6は、デジタルカメラセンサ6aを含むことができる。イメージングデバイス6は、各サンプルの1つ以上の画像を撮影するように構成されている。
【0036】
レンズシステム8のレンズ16と読み取り面3との間のアパーチャ17は、最大でもマイクロプレート3のウェル2の直径と同じ直径を有するように寸法決めされている。これにより、サンプルとイメージングデバイス6の両方でビネットが除去される。アパーチャ17は、光学式リーダーが異なるマイクロプレート1におけるサンプルを分析するために使用可能となるように調整可能とすることができる。アパーチャを使用すると、ウェルの底部にある照射領域のサイズを調整することができる。例えば、典型的な96ウェルプレートでは、照射領域の直径は約6.6mmとすることができ、384ウェルプレートでは、2.5mmとすることができる。
【0037】
ビームスプリッタ7およびレンズシステム8は、照射アレンジメント4から受けた光の偏光を維持する。したがって、サンプルおよびマイクロプレート1のウェル2の底部は、実質的に偏光からなる光で照射される。マイクロプレート1のウェル2の底部は、光を脱分極するように構成されている。底部は、例えば白いマット仕上げにすることができる。したがって、ウェル2の底部から反射した光は、異なる偏光を有する波からなる。底部は、例えば、PVDF膜を含むことができる。ウェル2の壁は、迷光を低減するために黒色にすることができるが、それは必須ではない。適切なマイクロプレートは、例えば、黒いマイクロプレートを作製し、次にマイクロプレートの各ウェルの底部に白い膜を適用することによって製造することができる。代替的には、底部が透明な黒いプレートに、ウェルの底部に白い膜を適用することができる。膜の代わりに、他の種類のコーティングをウェルに使用することができる。
【0038】
第2の偏光子10が、ビームスプリッタ7とイメージングデバイス6との間に配置されている。また、第2の偏光子10は直線偏光子である。第2の偏光子10は、偏光フィルタとすることができる。第2の偏光子10は、第1の偏光方向に垂直な第2の偏光方向を有する。したがって、第2の偏光子10は、第1の偏光方向を有する光を遮断する。例えば、照射アレンジメント4からの光がs偏光である場合、すなわち、光の電場が入射面に垂直である場合、第2の偏光子は、p偏光である、すなわち、入射面に沿ってその電場を有する光のみを透過する。したがって、第1の偏光方向を有するレンズシステム8のレンズ表面からの光の反射は遮断されるが、マイクロプレート1から反射され、異なる偏光方向を有する光からなる光は、第2の偏光子10を部分的に通ることができる。したがって、イメージングデバイス6での画像形成を可能にしながら、迷光を効果的に低減することができる。
【0039】
照射アレンジメント4から受ける光の偏光方向は、ビームスプリッタ7による反射が最大になるように選択されることが好ましい。
【0040】
光源5は、例えば、LEDまたはLEDのグループとすることができる。マイクロプレート1のウェル2の底部にある照射領域は、底部全体を覆うべきである。典型的なLEDチップの直径は、マイクロプレート1のウェル2の直径よりもはるかに小さい。照射領域のサイズは、レンズシステム8によって影響を受ける可能性がある。しかし、LEDまたは他の光源の周りに、Ulbricht球とも呼ばれる積分球を配置することにより、照射領域のサイズを大きくすることが有益なことがある。
図2は、光源5が積分球13を含む一実施形態の概略図を示す。球体13の代わりに、別の種類の内部形状を有するチャンバを使用することができる。LED14は、積分球13の内部で光を放出するように配置されている。積分球13は、球形のキャビティを含む。キャビティの内面は、拡散反射コーティングで覆われる。コーティングにより、光の均一な散乱を発生させる。したがって、光線は、空洞の内面に均等に分布する多重散乱反射による。コーティングの代わりに、チャンバ全体を適切な反射プロパティを有する材料で作製することができる。積分球13には、光がキャビティを出るための開口部15が設けられる。開口部15は、所望の直径を有する光線を生成するように寸法決めされている。光のパワーは積分球13内で実質的に維持されるが、光の空間情報は破壊される。したがって、LED14の代わりに、レーザーも光源として使用することができ、積分球13から出てくる光は非偏光である。
【0041】
非偏光を生成する光源5および第1の偏光子9を使用する代わりに、光源5は偏光を生成することができる。したがって、光源5はレーザーとすることができる。レーザービームは通常狭いため、ビームの直径を大きくするために、光源の後にビームエキスパンダーを配置することができる。
【0042】
光学式リーダーは、マイクロプレート1を移動させるように構成されているプレート移動デバイス(図示せず)をさらに含む。マイクロプレート1は、一度に1つのウェル2がレンズシステム8の下にあるように、読み取り面3内で動かされる。サンプルの1つの画像または複数の画像が撮影され、次にマイクロプレート1が動かされて、次のウェル2がレンズシステム8の下にあるようにする。
【0043】
図1の光学式リーダーは、照射アレンジメント4によって生成され、かつビームスプリッタ7を透過する光の強度を測定するように配置された参照検出器11をさらに含む。LEDが光源5として使用される場合、LEDの強度は、熱によって変化する可能性があり、熱は、イメージングデバイス6によって撮影される画像に影響を与える。光の強度を測定することにより、この効果を光学式リーダーの測定結果を解釈する際に考慮に入れることができる。
【0044】
図1の実施形態では、光学式リーダーには、照射アレンジメント4とビームスプリッタ7との間に配置された第1のフィルタ12がさらに設けられる。第1のフィルタ12は、FluoroSpotアッセイでのみ必要である。リーダーがELISPOTアッセイにのみ使用される場合、第1のフィルタ12は必要ではない。第1のフィルタ12は、サンプルを励起するために必要な光源5のスペクトルのその部分のみを通すように構成されている。第2のフィルタ18は、ビームスプリッタ7とイメージングデバイス6との間に配置されている。最初のフィルタ12と同様に、第2のフィルタ18もFluoroSpotアッセイでのみ必要である。第2のフィルタ18は、サンプルによって放出された波長からなる光を通すように構成されている。
【0045】
図1の実施形態では、イメージングデバイス6は、レンズシステム8の真上に配置されている。照射アレンジメント4は、ビームスプリッタ7と同じ水平面に配置されている。したがって、照射アレンジメント4からの光はマイクロプレート1に向かって反射され、マイクロプレート1からの光はビームスプリッタ7を透過する。このアレンジメントは、サンプルの照射を妨げることなく、参照検出器11の使用を可能にする。しかし、イメージングデバイス6および照射アレンジメント4の場所を切り替えることも可能であろう。したがって、サンプルを照射するために使用される光は、ビームスプリッタ7を通ることができ、サンプルの画像は、ビームスプリッタ7によってイメージングデバイス6に向かって反射され得る。
【0046】
光源4は、2つ以上のLEDを含むことができる。例えば、光源4は、異なる色の3つのLEDを含むことができる。各サンプルの3つの白黒画像を撮影し、それらの画像を使用してカラー画像を作成することができる。
【0047】
図3は、本発明の別の実施形態による光学式リーダーを示す。
図1と
図3の実施形態との違いは、
図3の実施形態では、1つの偏光子19のみが必要とされることである。
図3の光学式リーダーは、非偏光を生成する照射アレンジメント4を含む。照射アレンジメント4からの光は、ビームスプリッタ7に向けられる。光の一部は、ビームスプリッタ7からレンズシステム8に向かって反射され、このレンズシステム8は、
図1の実施形態のレンズシステム8と同一とすることができる。したがって、それは、1つ以上のレンズ16およびアパーチャ17を含む。偏光子19は、ビームスプリッタ7とレンズシステム8との間に配置されている。偏光子19は、ビームスプリッタ7からレンズシステム8に向けて透過される光と、レンズシステム8からビームスプリッタ7に向けて、さらにカメラセンサ6aを含むイメージングデバイス6に透過される光の両方を偏光させるように構成されている。
【0048】
図3の実施形態では、偏光子19は円偏光子である。円偏光子19は、ビームスプリッタ7から受けた非偏光を円偏光に変換するように構成されている。レンズシステム8から受けた円偏光は、円偏光子19で直線偏光に変換される。
【0049】
円偏光子19は、直線偏光子20と1/4波長板21とを含む。ビームスプリッタ7からの非偏光は、最初に直線偏光子20に到達する。特定の偏光を有する光のみが直線偏光子20を通ることができる。直線偏光は、1/4波長リターダーとも呼ばれる1/4波長板21を通る。1/4波長板21は、直線偏光を円偏光に変換する。光は、右円偏光状態または左円偏光状態のいずれかとすることができる。
【0050】
円偏光はレンズシステム8の表面から反射するので、円偏光のままである。しかしながら、1/4波長板21を通る光が右円偏光状態にある場合、偏光は反射で左円偏光に変換される。同様に、左円偏光は右円偏光に変換される。円偏光が1/4波長板21を通ると、直線偏光に変換される。しかしながら、偏光方向は、1/4波長板21が直線偏光子20から受けた光の偏光方向に垂直である。その結果、直線偏光は直線偏光子20によって遮断される。
【0051】
一例として、直線偏光子20は、s偏光フィルタである。それは、ビームスプリッタ7から非偏光を受けて、s偏光を通す。1/4波長板21は、s偏光を右円偏光に変換する。右円偏光はレンズシステム8の表面で反射し、左円偏光に変換される。左円偏光は、1/4波長板21でp偏光に変換される。p偏光は、s偏光フィルタ20によって遮断され、したがって、レンズシステム8の表面からの反射が、ビームスプリッタ7、さらにはイメージングデバイス6に向かって通ることができない。
【0052】
マイクロプレート1の底部から反射した光は、その偏光を失う。したがって、マイクロプレート2から反射した光の一部は、ビームスプリッタ7、さらにイメージングデバイス6に向かって円偏光子19を通ることができる。
【0053】
画像をさらに改善するために、円偏光子19は、レンズシステム8の軸方向に対して傾斜してもよい。したがって、円偏光子19の軸方向は、レンズシステム8の軸方向とは異なる。円偏光子19の表面の法線23とレンズシステム8の長手方向軸22との間の角度αは、例えば、5~15度の範囲とすることができる。円偏光子19を傾斜させることにより、偏光子19からイメージングデバイス6への反射光が少なくなり、画像のコントラストが改善する。
【0054】
光学式リーダーを使用できるELISPOTアッセイの例を以下に説明する。
【0055】
マイクロプレート1のウェル2の底部は、PVDF膜で作製することができる。膜は、適切な抗体コーティング(捕捉抗体)でコーティングされる。T細胞がウェル2内に分注される。T細胞を特定の抗原で処理するときに、細胞は対応するサイトカインを分泌する。これらのサイトカインは、PVDF膜上にある捕捉抗体によって認識される。T細胞は分泌フェーズの後に洗い流される。
【0056】
次に、ビオチン化(検出)抗体がウェル2内に分注され、ウェル2は、また、異なるエピトープを介してサイトカインを認識する。次に、マイクロプレート1を、アルカリホスファターゼ結合ストレプトアビジンまたは同様の検出システムとともにインキュベートする。ストレプトアビジンはビオチン化抗体に結合する。結合していない分子は洗い流される。酵素基質分子がウェル2に追加され、これらはウェル2の底部のラベルの可視性を増幅する。スポットが形成され、ウェル2が光線で照射されるため、イメージングデバイス6を底部の画像を撮影するために使用することができる。スポットは、手動または画像認識を使用してのいずれかでカウントすることができる。
【0057】
FluoroSpotアッセイでは、酵素標識抗体と沈殿酵素基質の代わりにフルオロフォアが使用される。その場合、照射アレンジメント4は、ウェル2の底部のサンプルを特定の波長の光で励起するために使用され、サンプルは、標識分子の光学プロパティに従って、より長い波長の光を放出する。複数の分析物を分泌する細胞が多色のスポットを作成するため、さまざまなフルオロフォアをさまざまな分析物を検出するために同時に使用することができる(アッセイの多重化)。
【0058】
本発明は上に記載される実施形態に限定されないが、添付の特許請求の範囲内で変化し得ることを当業者は理解するであろう。
【国際調査報告】