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特表2022-5198631×N構造を有する耐破断高エネルギマルチストランドケーブル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-25
(54)【発明の名称】1×N構造を有する耐破断高エネルギマルチストランドケーブル
(51)【国際特許分類】
   D07B 1/06 20060101AFI20220317BHJP
   B60C 9/00 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
D07B1/06 A
B60C9/00 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021545829
(86)(22)【出願日】2020-01-14
(85)【翻訳文提出日】2021-08-05
(86)【国際出願番号】 FR2020050042
(87)【国際公開番号】W WO2020161404
(87)【国際公開日】2020-08-13
(31)【優先権主張番号】1901137
(32)【優先日】2019-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァレー マリアンナ
(72)【発明者】
【氏名】バルバ ロマン
(72)【発明者】
【氏名】ローラン ステファーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ピノー レミ
【テーマコード(参考)】
3B153
3D131
【Fターム(参考)】
3B153AA08
3B153AA19
3B153CC51
3B153FF16
3B153GG07
3B153GG40
3D131AA15
3D131AA39
3D131AA40
3D131AA47
3D131AA48
3D131BA02
3D131BA07
3D131BA08
3D131BA18
3D131BA20
3D131BB04
3D131BC22
3D131BC31
3D131DA45
(57)【要約】
抽出されたコード(60’)は、螺旋に巻かれたNストランド(62)の単層(61)を含む1×N構造を有する。各ストランド(62)は、直径D1及びD2を有する金属ワイヤ(F1、F2)の2つの層を有する。抽出コード60’は、構造伸長As’≧1.00%及び弾性率MC’≦80GPaを有する。規格ASTM D2969-04に従って測定された直径D1及びD2を有する金属ワイヤ(F1、F2)のうちの少なくとも50%の機械抵抗は、直径D1を有する金属ワイヤに関して3,500-2,000×D1よりも大きいか又はそれに等しく、直径D2を有する金属ワイヤに関して3,500-2,000×D2よりも大きいか又はそれに等しい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各ストランド(62)が、金属スレッド(F1、F2)の2つの層を有し、かつ直径D1のM≧1内部金属スレッド(F1)からなる内部層(C1)と、該内部層(C1)の周りに巻かれた直径D2のP>1外部金属スレッド(F2)からなる外部層(C2)とを含む螺旋に巻かれたNストランド(62)の単層(61)を含む1×N構造を呈するコード(60)であって、
コード(60)が、2014年の規格ASTM D2969-04を適用することによって決定されたAs≧3.00%であるような構造伸長Asを呈し、
コード(60)が、MC≦127を満足し、ここで、MC=200×cos4(α)×[M×(D1/2)2×cos4(β)+P×(D2/2)2×cos4(γ)]/[M×(D1/2)2+P×(D2/2)2]であり、ここで、
D1及びD2は、mmで表され、
αは、コード(60)内の各ストランド(62)の螺旋角度であり、
βは、前記内部層(C1)内の各内部金属スレッド(F1)の螺旋角度であり、かつ
γは、前記外部層(C2)内の各外部金属スレッド(F2)の螺旋角度であり、
規格ASTM D2969-04に従って測定された直径D1及びD2の前記金属スレッド(F1、F2)のうちの少なくとも50%の機械強度が、直径D1の金属スレッドに関して3500-2000×D1よりも大きいか又はそれに等しく、直径D2の金属スレッドに関して3500-2000×D2よりも大きいか又はそれに等しい、
ことを特徴とするコード(60)。
【請求項2】
Fr≧8500N、好ましくはFr≧9000N、より好ましくはFr≧9350N、更に好ましくはFr≧9600Nであるような破断時の力Frを呈する、
請求項1に記載のコード(60)。
【請求項3】
Ar≧6.50%、好ましくはAr≧6.75%、より好ましくはAr≧6.90%であるような破断時の伸長Arを呈する、
請求項1または2に記載のコード(60)。
【請求項4】
Er≧60 000N.%、好ましくはEr≧63 000N.%、より好ましくはEr≧64 000N.%であるようなNで表されるコードの破断時の力と%で表されるコードの破断時の伸長との積に等しい破断時エネルギインジケータErを呈する、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のコード(60)。
【請求項5】
Er/D≧15 000、好ましくはEr/D≧15 800、より好ましくはEr/D≧16 000、非常に好ましくはEr/D≧16 500であるようなNで表されるコードの破断時の力と%で表されるコードの破断時の伸長との積に等しい破断時エネルギインジケータErと、mmで表される直径Dとを呈する、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のコード(60)。
【請求項6】
各ストランド(62)が、金属スレッド(F1、F2)の2つの層を有し、かつ直径D1のM≧1内部金属スレッド(F1)からなる内部層(C1)と、該内部層(C1)の周りに巻かれた直径D2のP>1外部金属スレッド(F2)からなる外部層(C2)とを含む螺旋に巻かれたNストランド(62)の単層(61)を含む1×N構造を呈するポリマー母材から抽出されたコード(60’)であって、
抽出されたコード(60’)が、2014年の規格ASTM D2969-04を適用することによって決定されたAs’≧1.00%であるような構造伸長As’を呈し、
抽出されたコード(60’)が、弾性率MC’≦80GPaを呈し、
規格ASTM D2969-04に従って測定された直径D1及びD2の金属スレッド(F1、F2)のうちの少なくとも50%の機械強度が、直径D1の金属スレッドに関して3500-2000×D1よりも大きいか又はそれに等しく、直径D2の金属スレッドに関して3500-2000×D2よりも大きいか又はそれに等しい、
ことを特徴とするコード(60’)。
【請求項7】
Fr’≧8500N、好ましくはFr’≧9000Nであるような破断時の力Fr’を呈する、
請求項6に記載の抽出されたコード(60’)。
【請求項8】
Ar’≧3.70%、好ましくはAr’≧3.80%、より好ましくはAr’≧3.90%であるような破断時の伸長Ar’を呈する、
請求項6又は7に記載の抽出されたコード(60’)。
【請求項9】
Er’≧33 000N.%、好ましくはEr’≧35 000N.%、より好ましくはEr’≧36 000N.%であるようなNで表される抽出されたコードの破断時の力と%で表される抽出されたコードの破断時の伸長との積に等しい破断時エネルギインジケータEr’を呈する、
請求項6ないし8のいずれか1項に記載の抽出されたコード(60’)。
【請求項10】
Er’/D≧8500、好ましくはEr’/D≧8800、より好ましくはEr’/D≧9000、非常に好ましくはEr’/D≧9100であるようなNで表される抽出されたコードの破断時の力と%で表される抽出されたコードの破断時の伸長との積に等しい破断時エネルギインジケータEr’と、mmで表される直径Dとを呈する、
請求項6ないし9のいずれか1項に記載の抽出されたコード(60’)。
【請求項11】
規格ASTM D2969-04に従って測定された直径D1及びD2の前記金属スレッド(F1、F2)のうちの少なくとも50%の機械強度が、直径D1の金属スレッドに関して3600-2000×D1よりも大きいか又はそれに等しく、直径D2の金属スレッドに関して3600-2000×D2よりも大きいか又はそれに等しい、
請求項1ないし10のいずれか1項に記載のコード(60、60’)。
【請求項12】
段階中にかつ時系列で、
M>1である時に、前記M内部金属スレッド(F1)が螺旋に巻かれて前記内部層(C1)を形成し、
前記P外部金属スレッド(F2)が前記内部層(C2)の周りに螺旋に巻かれて前記外部層(C2)を形成する、
前記Nストランド(62)の各々を個々に組み立てる段階と、
段階中に前記Nストランド(62)がピッチp3で螺旋に巻かれる捻転によって該Nストランド(62)を集合的に組み立てる段階と、を含む方法によって得られる、
請求項1ないし11のいずれか1項に記載のコード(60、60’)。
【請求項13】
前記Nストランド(62)が、前記ピッチp3からp3’<p3であるような一時的過剰捻転ピッチp3’まで通されるように過剰捻転され、
前記Nストランド(62)が、前記一時的過剰捻転ピッチp3’からp3’’>p3’であるような中間ピッチp3’’まで通されるように逆捻転される、
コードを曝気する段階を前記集合的組み立て段階の後に含む方法によって得られる、
請求項12に記載のコード(60、60’)。
【請求項14】
前記Nストランド(62)が、前記中間ピッチp3’’からp3’’’>p3かつp3’’’>p3’であるような一時的均衡ピッチp3’’’まで通されるように逆捻転され、かつ
前記Nストランド(62)が、前記一時的均衡ピッチp3’’’から前記ピッチp3まで通されるように捻転される、
均衡化段階をコードを前記曝気する段階の後に含む方法によって得られる、
請求項13に記載のコード(60、60’)。
【請求項15】
建設プラント車両のためのタイヤ(10)であって、
タイヤ(10)からの抽出後に、請求項6ないし14のいずれか1項に記載の抽出されたコード(60’)によって形成される、及び/又は
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の又は請求項11ないし14のいずれか1項に記載のコード(60)をポリマー母材に埋め込むことによって得られる、
少なくとも1つのフィラメント状補強要素(43,45,53,55)、
を含むことを特徴とするタイヤ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コードに及びこれらのコードを含むタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
トレッドと、2つの非伸張性ビードと、ビードをトレッドに接続する2つの側壁と、カーカス補強体とトレッド間で周方向に配置されたクラウン補強体とを含む半径方向カーカス補強体を有する建設プラント車両のためのタイヤは、従来技術から、特に文献WO2016/131862から公知である。このクラウン補強体は、金属コードのような補強要素によって補強された複数のプライを含み、1つのプライのコードは、プライのエラストマー母材に埋め込まれる。
【0003】
クラウン補強体は、作動補強体、保護補強体、及び潜在的に更に別の補強体、例えばフープ補強体を含む。
【0004】
保護補強体は、複数の保護フィラメント状補強要素を含む1又は2以上の保護プライを含む。各保護フィラメント状補強要素は、1×N構造を呈するコードである。コードは、ピッチp3=20mmで螺旋に巻かれたN=4ストランドの単層を含む。各ストランドは、一部では、ピッチP1=6.7mmで螺旋に巻かれたM=3内部スレッドの内部層と、ピッチp2=10mmで内部層の周りに螺旋に巻かれたP=8外部スレッドの外部層とを含む。内部及び外部スレッドの各々は、0.35mmに等しい直径と2765MPaに等しい機械強度とを有する。
【0005】
一方で、タイヤが例えば岩石の形態にある障害物を乗り超える時に、これらの障害物は、クラウン補強体に至るまで深くタイヤを穿孔するリスクを呈する。これらの穿孔は、腐食性化学物質がタイヤのクラウン補強体に侵入することを許し、タイヤの寿命を縮める。
【0006】
他方で、保護プライのコードは、特にタイヤが障害物を乗り越える時にコードに印加される比較的有意な変形及び荷重からもたらされる破断を呈する場合があることが見出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2016/131862
【特許文献2】EP0602733
【特許文献3】EP0383716
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、破断の数及び穿孔の数を低減する又は更に排除することを可能にするコードである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的に対して、本発明の主題は、金属スレッドの2つの層を各ストランドが有する螺旋に巻かれたNストランドの単層を含み、かつ
-直径D1のM≧1内部金属スレッドからなる内部層と、
-内部層の周りに巻かれた直径D2のP>1外部金属スレッドからなる外部層と、
を含む1×N構造を呈するコードである。本発明によるコードは、2014年の規格ASTM D2969-04を適用することによって決定されたAs≧3.00%であるような構造伸長Asを呈する。本発明によるコードは、MC≦127を満足し、ここで、MC=200×cos4(α)×[M×(D1/2)2×cos4(β)+P×(D2/2)2×cos4(γ)]/[M×(D1/2)2+P×(D2/2)2]であり、ここで、
-D1及びD2は、mmで表され、
-αは、コード内の各ストランドの螺旋角度であり、
-βは、内部層内の各内部金属スレッドの螺旋角度であり、
-γは、外部層内の各外部金属スレッドの螺旋角度である。
【0010】
インジケータMCは、コードの弾性率を表している。この式では、係数200は、約200GPaである鋼鉄の弾性率を表している。本発明によるコードでは、規格ASTM D2969-04に従って測定された直径D1及びD2の金属スレッドのうちの少なくとも50%の機械強度は、直径D1の金属スレッドに関して3500-2000×D1よりも大きいか又はそれに等しく、直径D2の金属スレッドに関して3500-2000×D2よりも大きいか又はそれに等しい。
【0011】
比較的高い構造伸長とコードの比較的低い弾性率を表すインジケータMCとにより、本発明によるコードは、穿孔を低減し、従って、タイヤの寿命を延ばすことを可能にする。具体的に、本発明に関わる本発明者は、従来技術のものよりも剛性の低いコードが障害物に対してより良好に機能することを発見した。本発明者は、従来技術で一般的に教示されるような障害物によって課せられる変形に対抗するためにコードを可能な限り硬化して補強する試みよりもより低い剛性を有するコードを使用することによって障害物を抱え込むことがより有効であることを見出した。障害物を抱え込むことにより、障害物に対して設定される荷重が低減され、従って、タイヤが穿孔されるリスクも低減される。
【0012】
比較的高い構造伸長と、コードの比較的低い弾性率を表すインジケータMCと、コードの金属スレッドのうちの大部分の比較的高い機械強度とにより、本発明によるコードはまた、破断の数を低減することを可能にする。具体的に、本発明に関わる本発明者は、コード破断を低減するための決定基準が、従来技術で広く教示されているような破断時の力だけではなく、この出願で破断時の力と破断時の伸長との積に等しいインジケータによって表される破断時のエネルギであることを発見した。具体的に、従来技術のコードは、比較的高い破断時の力を有するが比較的低い破断時の伸長を有するか、又は比較的高い破断時の伸長を有するが比較的低い破断時の力を有するかのいずれかである。両方の場合に、従来技術のコードは、比較的低いエネルギによって破断する。その比較的高い構造伸長に起因して、本発明によるコードは、必然的に比較的高い破断時の伸長を呈する。相乗的に、比較的低い弾性率は、弾性ドメインでの力-伸長曲線の比較的低い勾配に起因して破断時の伸長を後退させることを可能にする。最後にかつ取りわけ、本発明者は、金属スレッドのうちの大部分の機械強度の増大が、下記で比較試験によって明らかにするように、構造伸長を増大させて下記で説明するように破断時の伸長及び従って破断時エネルギインジケータを後退させることを可能にし、同じく破断時の力を増大させて破断時エネルギインジケータを増大させることを可能にするその両方を可能にすることを発見した。
【0013】
当業者に公知のパラメータである構造伸長Asは、例えば、力-伸長曲線を取得するために試験されたコードに2014年の規格ASTM D2969-04を適用することによって決定される。Asは、力-伸長曲線の構造部分に対する接線と力-伸長曲線の弾性部分に対する接線との間の交点の伸長軸線の上への投影に対応する%を単位とする伸長として得られた曲線から導出される。力-伸長曲線は、増大する伸長の方向に構造部分、弾性部分、及び塑性部分を含むことを思い出されるであろう。構造部分は、コードを構成する異なるストランド及び金属スレッドが一緒に移動することでもたらされるコードの構造伸長に対応する。弾性部分は、コードの構成、特に、様々な層の角度及びスレッドの直径の構成からもたらされる弾性伸長に対応する。塑性部分は、金属スレッドの可塑性(弾性限界を超える不可逆変形)からもたらされる塑性伸長に対応する。螺旋角度は、次式によって定められる。
α=arctan(2×π×R3/p3)、式中のR3は、ストランドの巻回の半径であり、p3は、ストランドが巻かれるピッチである。
β=arctan(2×π×R1/p1)、式中のR1は、M内部金属スレッドの巻回の半径であり、p1は、M内部金属スレッドがコードに組み立てられるピッチである。ピッチp1は、1/p1=1/p10+1/p3であるようなものであり、ここで、p10は、ストランドを組み立ててコードを形成する前のストランド内のM内部金属スレッドのピッチである。M=1である時に、R1=0及び従ってβ=0である。
γ=arctan(2×π×R2/p2)、式中のR2は、N外部金属スレッドの巻回の半径であり、p2は、N外部金属スレッドがコードに組み立てられるピッチである。ピッチp2は、1/p2=1/p20+1/p3であるようなものであり、ここで、p20は、ストランドが組み立てられてコードを形成する前のストランド内のM外部金属スレッドのピッチである。
【0014】
巻回の半径R3は、コードの主軸線に対して垂直な横断面上で測定され、各ストランドによって表される螺旋の中心とコードの中心の間の距離に対応する。同様に、巻回の半径R1及びR2は、個々に考慮する各ストランドの主軸線に対して垂直な横断面上で測定され、それぞれ各内部及び外部スレッドによって表される螺旋の中心とストランドの中心の間の距離に対応する。
【0015】
本発明では、コードは、Nストランドの単層を含み、それがストランドの1よりも多くも少なくもない1つの層からなるアセンブリを含むことを意味し、アセンブリがストランドのゼロでも2つでもない1つのただ1つの層を有することを意味する。
【0016】
各ストランドは2つの層を有し、それが金属スレッドの2よりも多くも少なくもない2つの層から構成されるアセンブリを含むことを意味し、アセンブリが金属スレッドの1つでも3つでもない2つのただ2つの層を有することを意味する。各ストランドの外部層は、このストランドの内部層と接触してこのストランドの内部層の周りに巻かれる。
【0017】
上記に定めて本発明によるコードは裸であり、それがいずれのポリマー組成物も持たないことを意味し、特に、コードは、いずれのエラストマー組成物も持たない。
【0018】
金属スレッドは、主として(すなわち、その重量の50%よりも多くが)又は完全に(その重量の100%が)金属材料、例えば、炭素鋼からなるコアを含む金属モノフィラメントであると理解される。金属スレッドは、コアを覆う金属コーティングの層を有利に含むことができ、金属コーティングは、亜鉛、銅、錫、及びこれらの金属の合金、例えば、黄銅から選択される。各スレッドは、パーライト又はフェライト-パーライト炭素鋼で好ましくは製造される。
【0019】
この出願で裸コードに関して説明する特徴部の値は、それらが製造された直後、すなわち、ポリマー母材、特にエラストマー母材に埋め込むいずれかの段階の前にコード上で測定される又はコードから決定される。
【0020】
この出願では、「aとbの間」という表現によって表すいずれの値範囲も、aよりも多くからbよりも少ないまでの値範囲を表し(すなわち、端点a及びbを除外し)、それに対して「aからbまで」という表現によって表すいずれの値範囲も、端点「a」から端点「b」に至るまで、すなわち、厳密に端点「a」及び「b」を含む値範囲を意味する。
【0021】
1つの好ましい実施形態では、As≧3.10%である。すなわち、コードの破断時エネルギインジケータは更に増大し、従って、破断のリスクが低減する。
【0022】
任意的に、As≦4.00%、好ましくは、As≦3.75%、より好ましくは、As≦3.50%である。構造伸長を制限することにより、コードが比較的小さい変形に対して十分な荷重をそれにも関わらず吸収することができることが保証される。
【0023】
上述の特質を達成することを可能にする有利な実施形態では、αは、13°から39°、好ましくは、16°から27°、より好ましくは、21°から27°の範囲である。
【0024】
上述の特質を達成することを可能にする有利な実施形態では、βは、6°から22°、好ましくは、8°から15°の範囲である。
【0025】
上述の特質を達成することを可能にする有利な実施形態では、γは、13°から30°、好ましくは、16°から23°の範囲である。
【0026】
1つの好ましい実施形態では、MC≦125である。弾性率インジケータMCを更に制限することにより、弾性部分は更に延長され、従って、破断時エネルギインジケータは増大する。
【0027】
有利なことに、MC≧100、好ましくは、MC≧110、より好ましくは、MC≧115である。比較的高い弾性率インジケータMCを使用することにより、コードが比較的小さい変形に対して十分な荷重をそれにも関わらず吸収することができることが保証される。
【0028】
有利なことに、コードは、Fr≧8500N、好ましくは、Fr≧9000N、より好ましくは、Fr≧9350N、更に好ましくは、Fr≧9600Nであるような破断時の力Frを呈する。破断時の力は、規格ASTM D2969-04に従って測定される。
【0029】
有利なことに、コードは、Ar≧6.50%、好ましくは、Ar≧6.75%、より好ましくは、Ar≧6.90%であるような破断時の伸長Arを呈する。破断時の伸長は、規格ASTM D2969-04に従って測定される。
【0030】
非常に好ましくは、コードは、Nで表される破断時の力Frと%で表される破断時の伸長Arとの積に等しいEr≧60 000N.%、好ましくは、Er≧63 000N.%、より好ましくは、Er≧64 000N.%であるような破断時エネルギインジケータErを呈する。
【0031】
非常に有利なことに、コードは、Nで表される破断時の力Frと%で表される破断時の伸長Arとの積に等しい破断時エネルギインジケータErと、Er/D≧15 000、好ましくは、Er/D≧15 800、より好ましくは、Er/D≧16 000、非常に好ましくは、Er/D≧16 500であるようなmmで表される直径Dとを呈する。すなわち、コードは、特に、コードが位置付けられることになるプライの厚み及び従ってタイヤの重量を低減するために、破断時のエネルギとバルクの間の有利な妥協を呈する。
【0032】
本発明の更に別の主題は、ポリマー母材から抽出されたコードであり、コードは、螺旋に巻かれたNストランドの単層を含む1×N構造を呈し、各ストランドは、金属スレッドの2つの層を有し、かつ
-直径D1のM≧1内部金属スレッドからなる内部層と、
-内部層の周りに巻かれた直径D2のP>1外部金属スレッドからなる外部層と、
を含む。本発明による抽出されたコードは、As’≧1.00%であるような2014年の規格ASTM D2969-04を適用することによって決定された構造伸長As’を呈する。本発明による抽出されたコードは、弾性率MC’≦80GPaを呈する。本発明による抽出されたコードでは、規格ASTM D2969-04に従って測定された直径D1及びD2の金属スレッドのうちの少なくとも50%の機械強度は、直径D1の金属スレッドに関して3500-2000×D1よりも大きいか又はそれに等しく、直径D2の金属スレッドに関して3500-2000×D2よりも大きいか又はそれに等しい。
【0033】
本発明による抽出されたコードは、いずれのポリマー母材も呈示しない上述した裸コードとは対照的に、ポリマー母材に裸コードを埋め込むことから得られる。
【0034】
抽出されたコードの構造伸長As’は、上記で定めた裸コードの構造伸長Asと類似の方法で測定される。
【0035】
抽出されたコードの弾性率MC’は、試験された抽出コードに2014年の規格ASTM D2969-04を適用することによって得られた力-伸長曲線の弾性部分の勾配を測定することにより、次いで、この勾配をコードの金属断面、すなわち、抽出されたコードを構成するスレッドの断面の合計に分配することによって計算される。これに代えて、金属断面は、抽出されたコードの金属線密度を2014年の規格ASTM D2969-04に従って測定することにより、かつこの金属線密度を使用鋼鉄の密度で割り算することによって決定することができる。
【0036】
好ましくは、ポリマー母材は、エラストマー母材である。
【0037】
本発明による抽出されたコードは、上記で定めたポリマー母材なしで裸コードをポリマー母材に埋め込むことによって得られる。ポリマー母材、好ましくは、エラストマー母材は、ポリマー、好ましくは、エラストマー組成物に基づいている。
【0038】
本発明による抽出されたコードでは、ストランドによって境界が定められ、かつ半径方向に各ストランドの内側にあって各ストランドの接線である理論円によって境界が定められた体積に対応するコードのエンクロージャは、ポリマー母材、好ましくは、エラストマー母材で充填される。
【0039】
ポリマー母材は、少なくとも1つのポリマーを含む母材であると理解される。ポリマー母材は、すなわち、ポリマー組成物に基づいている。
【0040】
エラストマー母材は、エラストマー組成物の架橋からもたらされるエラストマー挙動を有する母材であると理解される。好ましいエラストマー母材は、すなわち、エラストマー組成物に基づいている。
【0041】
「に基づく」という表現は、組成物が、使用される様々な成分の化合物及び/又はこれらの成分の原位置反応の生成物を含み、これらの成分の一部が、組成物の製造の様々なフェーズ中に少なくとも部分的に互いに反応する及び/又は互いに反応するように意図されており、すなわち、組成物が完全な又は部分的な架橋状態又は非架橋状態にあることができることを意味するように理解しなければならない。
【0042】
ポリマー組成物は、組成物が少なくとも1つのポリマーを含むことを意味するように理解される。好ましくは、そのようなポリマーは、熱可塑性であり、例えば、ポリエステル又はポリアミド、熱硬化性ポリマー、エラストマー、例えば、天然ゴム、熱可塑性エラストマー、又はこれらのポリマーの組合せである場合がある。
【0043】
エラストマー組成物は、組成物が少なくとも1つのエラストマーと少なくとも1つの他の成分とを含むことを意味するように理解される。好ましくは、少なくとも1つのエラストマーと少なくとも1つの他の成分とを含む組成物は、エラストマーと、架橋システムと、充填材とを含む。上述のプライに使用される組成物は、フィラメント状補強要素のスキムコーティングのための従来の組成物であり、ジエンエラストマー、例えば、天然ゴム、補強充填材、例えば、カーボンブラック及び/又はシリカ、架橋システム、例えば、好ましくは、硫黄とステアリン酸と酸化亜鉛とを含む加硫システム、並びに任意的に加硫促進剤、遅延剤、及び/又は様々な添加物を含む。金属スレッドとそれらが埋め込まれる母材との間の接着は、例えば、金属コーティング、例えば、黄銅層によって与えられる。
【0044】
抽出されたコードに関してこの出願で説明する特徴部の値は、例えば、タイヤのポリマー母材、特にエラストマー母材から抽出されたコード上で測定又はこれらのコードから決定される。従って、ポリマー母材と半径方向に面一な抽出コードを確認することができるように、例えば、タイヤ上で抽出コードの半径方向外側にある材料ストリップが除去される。この除去は、カッター又はグリッパーを用いた剥離により又は平削りによって行うことができる。次いで、抽出コードの端部がナイフを用いて露出される。次に、抽出コードを可塑化しないように比較的浅い角度を用いながら、コードは、それを母材から取り出すように母材から引っ張られる。次いで、抽出されたコードは、それに局所的に接着しているポリマー母材のあらゆる残留物を剥離させるために、金属スレッドの面を損傷しないように注意しながら例えばナイフを用いて注意深く清浄化される。
【0045】
1つの好ましい実施形態では、As’≧1.05%、より好ましくは、As’≧1.10%である。これは、ポリマー母材内のコードの破断時エネルギインジケータを更に増大し、従って、破断のリスクが低減する。
【0046】
任意的に、As’≦1.50%、好ましくは、As’≦1.40%である。構造伸長を制限することにより、ポリマー母材内のコードが比較的小さい変形に対して十分な荷重をそれにも関わらず吸収することができることが保証される。
【0047】
1つの好ましい実施形態では、MC’≦77GPaである。弾性率インジケータMC’を更に低減することにより、弾性部分は更に延長され、従って、破断時エネルギインジケータが増大する。
【0048】
有利なことに、MC’≧60GPa、好ましくは、MC’≧65GPa、より好ましくは、MC’≧68GPaである。比較的高い弾性率インジケータMC’を使用することにより、ポリマー母材内のコードが比較的小さい変形に対して十分な荷重をそれにも関わらず吸収することができることが保証される。
【0049】
有利なことに、抽出されたコードは、Fr’≧8500N、好ましくは、Fr’≧9000Nであるような破断時の力Fr’を呈する。この破断時の力は、抽出されたコード上で規格ASTM D2969-04に従って測定される。
【0050】
有利なことに、抽出されたコードは、Ar’≧3.70%、好ましくは、Ar’≧3.80%、より好ましくは、Ar’≧3.90%であるような破断時の伸長Ar’を呈する。この破断時の伸長は、抽出されたコード上で規格ASTM D2969-04に従って測定される。
【0051】
非常に好ましくは、抽出されたコードは、Nで表される抽出コードの破断時の力Fr’と%で表される抽出コードの破断時の伸長Ar’との積に等しいEr’≧33 000N.%、好ましくは、Er’≧35 000N.%、より好ましくは、Er’≧36 000N.%であるような破断時エネルギインジケータEr’を呈する。
【0052】
非常に有利なことに、抽出されたコードは、Nで表される抽出されたコードの破断時の力Fr’と%で表される抽出されたコードの破断時の伸長Ar’との積に等しい破断時エネルギインジケータEr’と、Er’/D≧8500、好ましくは、Er’/D≧8800、より好ましくは、Er’/D≧9000、非常に好ましくは、Er’/D≧9100であるようなmm単位として表される直径Dとを呈する。従って、抽出されたコードは、それが位置付けられることになるプライの厚み及び従ってタイヤの重量を低減するために破断時の伸長とバルクの間の有利な妥協を呈する。
【0053】
下記で説明する有利な特徴は、上述した裸コードと抽出コードの両方に適用される。
【0054】
好ましくは、規格ASTM D2969-04に従って測定された直径D1及びD2の金属スレッドのうちの少なくとも60%、好ましくは、70%、より好ましくは、各金属スレッドの機械強度は、直径D1の金属スレッドに関して3500-2000×D1よりも大きいか又はそれに等しく、直径D2の金属スレッドに関して3500-2000×D2よりも大きいか又はそれに等しい。
【0055】
有利なことに、規格ASTM D2969-04に従って測定された直径D1及びD2の金属スレッドのうちの少なくとも50%、好ましくは、少なくとも60%、より好ましくは、少なくとも70%、非常に好ましくは、各金属スレッドの機械強度は、直径D1の金属スレッドに関して3600-2000×D1よりも大きいか又はそれに等しく、直径D2の金属スレッドに関して3600-2000×D2よりも大きいか又はそれに等しい。
【0056】
好ましい構成では、N=3又はN=4、好ましくは、N=4である。
【0057】
好ましい構成では、M=3、4、又は5、好ましくは、M=3である。
【0058】
好ましい構成では、P=7、8、9、10、又は11、好ましくは、P=8である。
【0059】
好ましい構成では、M>1内部スレッドがピッチp1で螺旋に巻かれる場合に、p1は、3mmから11mm、好ましくは、5mmから9mmの範囲である。
【0060】
好ましい構成では、P外部スレッドがピッチp2で螺旋に巻かれる場合に、p2は、6mmから14mm、好ましくは、8mmから12mmの範囲である。
【0061】
好ましい構成では、ストランドがピッチp3で螺旋に巻かれる場合に、p3は、10mmから30mm、好ましくは、15mmから25mm、より好ましくは、15mmから19mmの範囲である。
【0062】
非常に好ましい実施形態では、各ストランドの外部層は不飽和化され、好ましくは、完全不飽和状態にある。
【0063】
定義により、不飽和化されたスレッド層は、スレッド間にポリマー組成物、例えば、エラストマー組成物が通過することを可能にするほど十分な間隔が存在するようなものである。従って、不飽和化された層は、この層内のスレッド間が接触せず、層内で隣接する2つのスレッドの間にポリマー組成物、例えば、エラストマー組成物が層を通過することを可能にするほど十分な間隔が存在することを意味する。それとは対照的に、飽和されたスレッド層は、例えば、層内のスレッド間が対になって互いに接触することに起因して、層内のスレッド間にポリマー組成物、例えば、エラストマー組成物が通過することを可能にするほど十分な間隔が存在しないようなものである。
【0064】
有利なことに、各ストランドの外部層のスレッド間距離は5μmよりも大きいか又はそれに等しい。好ましくは、各ストランドの外部層のスレッド間距離は、15μmよりも大きいか又はそれに等しく、より好ましくは、35μmよりも大きいか又はそれに等しく、更に好ましくは、50μmよりも大きいか又はそれに等しい。
【0065】
各ストランドの外部層が不飽和化されることにより、ポリマー組成物、例えば、エラストマー組成物がストランドの中心に至るまで深く通過することが有利に容易になり、従って、ストランドが腐食による影響を受け難くなる。
【0066】
定義により、完全不飽和スレッド層は、この層のPスレッドと同じ直径を有する少なくとも1本の(P+1)番目のスレッドを組み込むほど十分な余地がこの層に存在し、従って、複数のスレッドが互いに接触していること又はしないことが可能であるようなものである。各ストランドの外部層が完全な不飽和状態にあることにより、各ストランド内へのポリマー組成物、例えば、エラストマー組成物の浸透を最大に高めることを可能にし、従って、各ストランドが腐食による影響をより一層受け難くすることを可能にする。従って、有利なことに、各ストランドの外部層のスレッド間距離の合計SI2は、SI2≧D2であるようなものである。合計SI2は、層内で隣接する各1対のスレッドの間のスレッド間距離の合計である。層のスレッド間距離は、コードの主軸線に対して垂直なコードの断面内でこの層の2つの隣接するスレッドの間の平均最短距離として定められる。従って、スレッド間距離は、中間層内のスレッド間隔の個数で合計SI2を割り算することによって計算される。
【0067】
有利なことに、建設プラント車両を装備することが意図されるタイヤでは、各金属スレッドの直径D1、D2は、0.25mmから0.50mm、好ましくは、0.30mmから0.45mm、より好ましくは、0.32mmから0.40mmの範囲である。
【0068】
好ましい実施形態では、各内部スレッドは、各外部スレッドの直径D2よりも大きいか又はそれに等しい直径D1を有する。D1>D2であるような直径の使用は、外部層を貫通するポリマー組成物、例えば、エラストマー組成物の浸透性を促進することを可能にする。D1=D2であるような直径の使用は、コードの製造において管理される異なるスレッドの数を制限することを可能にする。
【0069】
有利なことに、Nストランドの層は不飽和化され、好ましくは、不完全不飽和状態にある。
【0070】
定義により、不飽和化されたストランド層は、ストランド間にポリマー組成物、好ましくは、エラストマー組成物が通過することを可能にするほど十分な間隔が存在するようなものである。不飽和化されたストランド層は、ストランド間が接触せず、2つの隣接するストランドの間にポリマー組成物、好ましくは、エラストマー組成物がエンクロージャに至るまで深く通過することを可能にするほど十分な間隔が存在することを意味する。それとは対照的に、飽和されたストランド層は、例えば、層のストランド間が対になって互いに接触することに起因して、層のストランド間にポリマー組成物、好ましくは、エラストマー組成物が通過することを可能にするほど十分な間隔が存在しないようなものである。
【0071】
有利なことに、コードの主軸線に対して垂直なコードの断面上で2つの隣接するストランドが内接する円形包絡線間の平均最短距離として定められるストランド層のストランド間距離は、不飽和化ストランド層では30μmよりも大きいか又はそれに等しい。好ましくは、2つの隣接するストランド間の平均ストランド間距離Eは、70μmよりも大きいか又はそれに等しく、より好ましくは、100μmよりも大きく/に等しく、更に好ましくは、150μmよりも大きく/に等しく、非常に好ましくは、200μmよりも大きい/に等しい。
【0072】
不完全不飽和状態にあるストランド層は、この層のNストランドと同じ直径を有する少なくとも1本の(N+1)番目のストランドを追加するほど十分な間隔がこの層に存在しないようなものである。
【0073】
本発明により、各ストランドは、原位置でゴム引きされないタイプのものである。原位置でゴム引きされないは、ストランドが互いに組み立てられる前に各ストランドが様々な層のスレッドからなり、いずれのポリマー組成物、特にエラストマー組成物も呈示しないことを意味する。
【0074】
有利なことに、コードの金属スレッドのうちの少なくとも50%、好ましくは、少なくとも60%、より好ましくは、少なくとも70%の各金属スレッド、非常に好ましくは、コードの各金属スレッドは、2000年9月のNF EN 10020規格による組成物と炭素含有量C>0.80%、好ましくは、C≧0.82%とを有する鋼鉄コアを含む。そのような鋼鉄組成物は、非合金鋼(2000年9月のNF EN 10020規格の3.2.1項及び4.1項)と、ステンレス鋼(2000年9月のNF EN 10020規格の3.2.2項及び4.2項)と、他の合金鋼(2000年9月のNF EN 10020規格の3.2.3項及び4.3項)とを組み合わせたものである。比較的高い炭素含有量は、本発明によるコードの金属スレッドの機械強度をもたらすことを可能にする。金属スレッドの機械強度を増大させるために、金属スレッドを製造する方法は、特に各金属スレッドを更に加工硬化することによって修正することができたと考えられる。金属スレッドを製造する方法を修正するには、比較的有意な産業投資を必要とするのに対して、比較的高い炭素含有量の使用は、いずれの投資も必要としない。更に、金属スレッドを更に加工硬化することによって金属スレッドの曲げ-圧縮耐久性が目に見えるほど低下することになると考えられる方法とは異なり、比較的高い炭素含有量の使用は、この曲げ-圧縮耐久性を維持することを可能にする。
【0075】
有利なことに、C≦1.10%、好ましくは、C≦1.00%、より好ましくは、C≦0.90%である。過度に高い炭素含有量の使用は、比較的高価であるのみならず、金属スレッドの疲労-腐食耐久性の降下ももたらす。
【0076】
好ましくは、裸コード又は抽出コードは、D≦4mmであるような好ましくは3.5mm≦D≦4mmであるような直径Dを有する。直径Dは、裸コード又は抽出コード上で規格ASTM D2969-04に従って測定される。
【0077】
有利なことに、裸コード又は抽出コードは、
-段階中に時系列で、
-M>1である時にM内部金属スレッドが螺旋に巻かれて内部層を形成し、
-P外部金属スレッドが内部層の周りに螺旋に巻かれて外部層を形成する、
-Nストランドの各々を個々に組み立てる段階と、
-段階中にNストランドがピッチp3で螺旋に巻かれるNストランドを捻転によって集合的に組み立てる段階と、
を含む方法によって得られる。
【0078】
有利なことに、Nストランドの各々を個々に組み立てる段階は、捻転によって実施される。
【0079】
この有利な実施形態では、個々の組み立て段階中に、M内部金属スレッドは、5mmから15mm、好ましくは、8mmから12mmの範囲であるピッチp10で螺旋に巻かれる。
【0080】
更にこの有利な実施形態では、個々の組み立て段階中に、P外部金属スレッドは、12mmから27mm、好ましくは、17mmから23mmの範囲であるピッチp20で螺旋に巻かれる。
【0081】
1つの特に好ましい実施形態では、裸コード又は抽出コードは、集合的組み立て段階の後に、
-p3’<p3であるような一時的過剰捻転ピッチp3’にピッチp3から変化するようにNストランドを過剰捻転し、
-p3’’>p3’であるような中間ピッチp3’’に一時的過剰捻転ピッチp3’から変化するようにNストランドを逆捻転する、
コードを曝気する段階を含む方法によって得られる。
【0082】
ある一定の好ましい実施形態では、p3’’≧p3である。
【0083】
曝気段階は、追加の捻転によってピッチp3を一時的過剰捻転ピッチp3’まで短縮すること、並びに各ピッチp1及びp2をそれぞれ一時的過剰捻転ピッチp1’及びp2’まで暗黙裏に短縮することを可能にする。逆捻転段階は、追加の捻転を軽減し、中間ピッチp3’’を取得すること、並びに中間ピッチp1’’及びp2’’を暗黙裏に取得することを可能にする。過剰捻転段階及びその後の逆捻転段階の連続及び順序は、金属スレッドを可塑的に変形し、コード上での比較的有効な曝気を与え、例えば、ポリマー組成物、特にエラストマー組成物によるコードの浸透性を促進することを可能にする。
【0084】
非常に好ましくは、裸コード又は抽出コードは、コードを曝気する段階の後に、
-中間ピッチp3’’からp3’’’>p3かつp3’’’>p3’であるような一時的均衡ピッチp3’’’に変化するようにNストランドを逆捻転し、
-均衡ピッチp3’’’からピッチp3に変化するようにNストランドを捻転する、
均衡化段階を含む方法によって得られる。
【0085】
曝気段階は、コードの中に残留捻転トルクを発生させる。逆捻転段階は、逆捻転によって中間ピッチp3’’を一時的均衡ピッチp3’’’まで延長すること、並びに各中間ピッチp1’’及びp2’’をそれぞれ一時的均衡ピッチp1’’’及びp2’’’まで暗黙裏に延長することを可能にする。捻転段階は、逆捻転を排除して初期ピッチp3に戻り、同じく初期ピッチp1及びp2に暗黙裏に戻ることを可能にする。逆捻転段階及びその後の捻転段階の連続及び順序は、残留捻転トルクを排除することを可能にする。従って、均衡化段階の終点で得られるコードは、実質的にゼロの残留捻転トルクを呈する。実質的にゼロの残留捻転トルクは、コードが、それを使用するその後の段階で使用することができるように捩れ均衡にあることに対応する。残留捻転トルクは、回転毎メートルで表され、規格ASTM D2969-04に従って測定され、予め決められた長さのコードが自由に移動することが可能である時にコードの主軸線の周りに回転することができる回数に対応する。
【0086】
有利なことに、p3/p3’>p3’’’/p3である。従って、均衡を可能にし、同時にコードの曝気に対する悪影響を可能な限り殆ど持たないようにするために追加の捻転の大きさは逆捻転の大きさよりも大きい。
【0087】
本発明の別の主題は、タイヤからの抽出の後に上記で定めた抽出コードによって形成された少なくとも1つのフィラメント状補強要素を含む建設プラント車両のためのタイヤである。
【0088】
本発明の更に別の主題は、上記で定めた裸コードをポリマー母材内に埋め込むことによって得られた少なくとも1つのフィラメント状補強要素を含む建設プラント車両のためのタイヤである。上述のように、ポリマー母材に埋め込まれた裸コードは、タイヤから抽出された後に本発明による抽出コードを形成するコードを形成する。
【0089】
本発明の別の主題は、タイヤからの抽出後に上記に定めた抽出コードによって形成されたかつ上記で定めた裸コードをポリマー母材内に埋め込むことによって得られた少なくとも1つのフィラメント状補強要素を含む建設プラント車両のためのタイヤである。
【0090】
1つの好ましい実施形態では、タイヤは、
-トレッドとクラウン補強体とを含むクラウンと、
-2つの側壁と、
-2つのビードと、
を含み、各側壁は、各ビードをクラウンに接続され、タイヤは、ビードの各々内に留められて側壁及びクラウン内を延長するカーカス補強体を含み、クラウン補強体は、半径方向にカーカス補強体とトレッドの間に挟まれ、クラウン補強体は、タイヤからの抽出後に上記で定めた抽出コードによって形成された及び/又は上記で定めた裸コードをポリマー母材内に埋め込むことによって得られた少なくとも1つのフィラメント状補強要素を含む。
【0091】
一実施形態では、カーカス補強体は、少なくとも1つのカーカスプライを含み、カーカスプライは、カーカスフィラメント状補強要素を含み、タイヤの周方向と80°から90°の範囲である角度を形成するように一方のビードから他方のビードに延長する。
【0092】
この実施形態では、クラウン補強体は、好ましくは、タイヤの周方向にタイヤの円周全体の周りに延びる。
【0093】
有利なことに、クラウン補強体は、半径方向にクラウン補強体の外側に配置された保護補強体を含む。すなわち、クラウン補強体は、半径方向に保護補強体の外側に配置されたフィラメント状補強要素によって補強されるいずれの他の補強体も備えない。
【0094】
好ましくは、保護補強体は、タイヤからの抽出後に上記で定めた抽出コードによって形成された及び/又は上記で定めた裸コードをポリマー母材内に埋め込むことによって得られた少なくとも1つのフィラメント状補強要素を含む。
【0095】
より好ましくは、保護補強体は、タイヤの周方向と10°よりも大きいか又はそれに等しく、好ましくは、10°から45°、より好ましくは、15°から40°の範囲である角度を形成する1又は2以上の保護フィラメント状補強要素を含む少なくとも1つの保護プライを含み、この又は各保護フィラメント状補強要素は、タイヤからの抽出後に上記で定めた抽出コードによって形成された及び/又は上記で定めた裸コードをポリマー母材内に埋め込むことによって得られた少なくとも1つのフィラメント状補強要素によって形成される。
【0096】
1つの好ましい実施形態では、保護補強体は、タイヤの周方向と10°よりも大きいか又はそれに等しく、好ましくは、10°から45°、より好ましくは、15°から40°の範囲である角度を形成する1又は2以上の保護フィラメント状補強要素を各々が含む2つの保護プライを含み、この又は各保護フィラメント状補強要素は、タイヤからの抽出後に上記で定めた抽出コードによって形成された及び/又は上記で定めた裸コードをポリマー母材内に埋め込むことによって得られた少なくとも1つのフィラメント状補強要素によって形成される。
【0097】
好ましくは、一方の保護プライ内で保護フィラメント状補強要素とタイヤの周方向とが成す角度の向きは、他方の保護プライ内で保護フィラメント状補強要素とタイヤの周方向とが成す角度の向きと反対である。言い換えれば、一方の保護プライ内の保護フィラメント状補強要素は、他方の保護プライ内の保護フィラメント状補強要素と交差する。角度の向きは、この角度を定める基準直線からこの角度を定める他方の直線に到達するために回転する必要がある時計周り又は反時計周りの方向、この場合はタイヤの周方向を意味する。
【0098】
ある一定の好ましい実施形態では、クラウン補強体は、半径方向に保護補強体の内側に配置されたフープ補強体を含む。
【0099】
有利なことに、フープ補強体は、タイヤからの抽出後に上記で定めた抽出コードによって形成された及び/又は上記で定めた裸コードをポリマー母材内に埋め込むことによって得られた少なくとも1つのフィラメント状補強要素を含む。
【0100】
1つの好ましい実施形態では、保護補強体及びフープ補強体の各々は、タイヤからの抽出後に上記で定めた抽出コードによって形成された及び/又は上記で定めた裸コードをポリマー母材内に埋め込むことによって得られた少なくとも1つの金属フィラメント状補強要素を含む。
【0101】
有利なことに、フープ補強体は、タイヤの周方向と10°よりも小さいか又はそれに等しく、好ましくは、5°よりも小さいか又はそれに等しく、より好ましくは、実質的にゼロ°の角度を形成する1又は2以上のフーピングフィラメント状補強要素を含む少なくとも1つのフーピングプライを含み、この又は各フィラメント状フーピングフィラメント状補強要素は、タイヤからの抽出後に上記で定めた抽出コードによって形成された及び/又は上記で定めた裸コードをポリマー母材内に埋め込むことによって得られた少なくとも1つのフィラメント状補強要素によって形成される。フープ補強体での本発明によるコードの使用は、膨張圧に関連付けられた荷重の吸収を保証し、タイヤの半径方向の拡張を制限することを可能にする。この吸収及び制限は、少なくとも1つの金属フィラメント状補強要素の比較的高い可撓性を考えると、フーピングフィラメント状補強要素とタイヤの周方向とが成す角度が小さい時により一層効果的である。
【0102】
1つの好ましい実施形態では、フープ補強体は、タイヤの周方向と10°よりも小さいか又はそれに等しく、好ましくは、5°よりも小さいか又はそれに等しく、より好ましくは、実質的にゼロ°の角度を形成する1又は2以上のフーピングフィラメント状補強要素を各々が含む2つのフーピングプライを含み、この又は各フィラメント状フーピングフィラメント状補強要素は、タイヤからの抽出後に上記で定めた抽出コードによって形成された及び/又は上記で定めた裸コードをポリマー母材内に埋め込むことによって得られた少なくとも1つのフィラメント状補強要素によって形成される。
【0103】
一実施形態では、これら2つの層は、プライが少なくとも2回の完全周方向巻回にわたって巻かれ、各完全周方向巻回が層を形成する連続周方向プライによって形成される。
【0104】
好ましくは、フーピングフィラメント状補強要素が成す角度が実質的に非ゼロである時に、一方のフーピングプライ内でフーピングフィラメント状補強要素とタイヤの周方向とが成す角度の向きは、他方のフーピングプライ内でフーピングフィラメント状補強要素とタイヤの周方向とが成す角度の向きと反対である。言い換えれば、一方のフーピングプライ内のフーピングフィラメント状補強要素は、他方のフーピングプライ内のフーピングフィラメント状補強要素と交差する。
【0105】
好ましい実施形態では、クラウン補強体は、半径方向に保護補強体の内側に配置された作動補強体を含む。
【0106】
有利なことに、作動補強体は、タイヤの周方向と70°よりも小さいか又はそれに等しく、好ましくは、60°よりも小さいか又はそれに等しく、より好ましくは、15°から40°の範囲である角度を形成する1又は2以上の作動フィラメント状補強要素を含む少なくとも1つの作動プライを含む。
【0107】
1つの好ましい実施形態では、作動補強体は、タイヤの周方向と70°よりも小さいか又はそれに等しく、好ましくは、60°よりも小さいか又はそれに等しく、より好ましくは、15°から40°の範囲である角度を形成する1又は2以上の作動フィラメント状補強要素を各々が含む2つの作動プライを含む。
【0108】
好ましくは、一方の作動プライ内で作動フィラメント状補強要素とタイヤの周方向とが成す角度の向きは、他方の作動プライ内で作動フィラメント状補強要素とタイヤの周方向とが成す角度の向きと反対である。言い換えれば、一方の作動プライ内の作動フィラメント状補強要素は、他方の作動プライ内の作動フィラメント状補強要素と交差する。角度の向きは、この角度を定める基準直線からこの角度を定める他方の直線に到達するために回転する必要がある時計周り又は反時計周りの方向、この場合はタイヤの周方向を意味する。
【0109】
一実施形態では、作動補強体が2つの作動プライを含む場合に、フープ補強体は、半径方向にこれら2つの作動プライの間に配置される。
【0110】
一実施形態では、タイヤは、U≧35、好ましくは、U≧35、より好ましくは、U≧57であるW R Uタイプのサイズを有する。このタイヤサイズ表記は、ETRTO(「欧州タイヤ及びリム技術機関」)の命名によるものである。
【0111】
単に非限定例として与える以下の説明を図面を参照して読解することにより、本発明はより良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0112】
図1】本発明によるタイヤの概略断面図である。
図2図1のタイヤの部分IIの詳細図である。
図3】本発明による抽出コードのコード軸線(直線で静止状態にあると仮定した)に対して垂直な略断面図である。
図4図3の抽出コードの力-伸長曲線を示す図である。
図5】裸状態にある本発明による図3のコードのコード軸線(直線で静止状態にあると仮定した)に対して垂直な略断面図である。
図6図5の抽出コードの力-伸長曲線を示す図である。
図7】本発明による裸コード及び抽出コードを製造するための設備及び方法の概略図である。
図8】本発明による裸コード及び抽出コードを製造するための設備及び方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0113】
これらの図には、タイヤの通常の軸線方向、半径方向、及び周方向の向きに対応する座標系X,Y,Zを示している。
【0114】
タイヤの周方向正中面Mは、タイヤの回転軸線に対して直角であり、各ビードの環状補強構造体から等距離に位置し、クラウン補強体の中心を通過する平面である。
【0115】
図1及び図2は、全体的な参照番号10で表す例えば「ダンパー」タイプの建設プラントタイプ車両のためのタイヤを示している。従って、タイヤ10は、例えば、40.00 R 57又は59/80 R 63のW R Uタイプのサイズを有する。
【0116】
当業者に公知の方式で、Wは、
-H/B形態にある時に、ETRTOで定められる公称アスペクト比H/B(Hは、タイヤの断面の高さであり、Bは、タイヤの断面の幅である)を表し、
-H.00又はB.00の形態にあり、H=Bである時に、H及びBは上記で定めた通りである。
Uは、タイヤを装着することが意図されるリム座部の直径をインチで表し、Rは、タイヤのカーカス補強体のタイプ、この場合はラジアルを表している。U≧35、好ましくは、U≧49、より好ましくは、U≧57である。
【0117】
タイヤ10は、トレッド22とクラウン補強体14とを含むクラウン12を含む。トレッド22は、半径方向にクラウン補強体14の外側に配置される。クラウン補強体14は、タイヤ10の周方向にタイヤ10の円周全体の周りに延びる。
【0118】
タイヤ10は、2つの側壁16と2つのビード18とを更に含み、これらのビード18の各々は、環状構造体、この場合はビードワイヤ20を用いて補強される。各側壁16は、各ビード18をクラウン12に接続する。
【0119】
タイヤ10は、カーカス補強体24を更に含み、カーカス補強体24は、2つのビード18の各々に留められ、この場合は2つのビードワイヤ20の周りに巻かれ、この図にはホイールリム28上に装着された状態に示すタイヤ20の外側に向うように配置された折り返し部26を含む。カーカス補強体24は、側壁16及びクラウン12内を延びる。クラウン補強体14は、半径方向にカーカス補強体24とトレッド22の間に挟まれる。
【0120】
カーカス補強体24は、少なくとも1つのカーカスプライ30を含み、カーカスプライ30は、カーカスフィラメント状補強要素31を含み、タイヤ10の周方向Zと80°から90°の範囲である角度を形成するように一方のビード18から他方のビード18に延びる。
【0121】
タイヤ10は、エラストマーで製造された密封プライ32(一般的に、「内側ライナ」として公知である)を更に含み、密封プライ32は、タイヤの半径方向内面34を定め、タイヤ10の内側の空間から発する空気の拡散からカーカスプライ30を保護することを目的とする。
【0122】
クラウン補強体14は、半径方向にトレッド22の内側に配置された保護補強体36と、半径方向に保護補強体36の内側に配置された作動補強体38と、半径方向に保護補強体36の内側に配置されたフープ補強体50とを含む。従って、保護補強体36は、半径方向にトレッド22と作動補強体38の間に挟まれる。従って、保護補強体36は、同じく半径方向にクラウン補強体14の外側に配置される。
【0123】
保護補強体36は、第1及び第2の保護プライ42、44を含み、第1のプライ42は、半径方向に第2のプライ44の内側に配置される。各第1及び第2の保護プライ42、44は、それぞれ、その各々の中に互いに対して実質的に平行に配置された第1及び第2の保護フィラメント状補強要素43、45を含む。各第1及び第2の保護フィラメント状補強要素43、45は、タイヤ10の周方向Zと10°よりも大きいか又はそれに等しく、好ましくは、10°から45°、望ましくは15°から40°の範囲である角度を形成する。任意的に、第1及び第2の保護フィラメント状補強要素43、45は、一方の保護プライから他方の保護プライまで交差される。この事例では、各第1の保護フィラメント状補強要素43は、タイヤ10の周方向Zと+33°に等しい角度を形成し、各第2の保護フィラメント状補強要素45は、タイヤ10の周方向Zと-33°に等しい角度を形成する。
【0124】
作動補強体38は、第1及び第2の作動プライ46、48を含み、第1のプライ46は、第2のプライ48の半径方向内側に配置される。各第1及び第2の作動プライ46、48は、それぞれ、その各々の内部で互いに対して実質的に平行に配置された第1及び第2の作動フィラメント状補強要素47、49を含む。各第1及び第2の作動金属フィラメント状補強要素47、49は、タイヤ10の周方向Zと70°よりも小さいか又はそれに等しく、好ましくは、60°よりも小さいか又はそれに等しく、より好ましくは、15°から40°の範囲である角度を形成する。任意的に、第1及び第2の作動フィラメント状補強要素47、49は、一方の作動プライから他方の作動プライまで交差される。この事例では、各第1の作動金属フィラメント状補強要素47は、タイヤ10の周方向Zと+19°に等しい角度を形成し、各第2の作動フィラメント状補強要素49は、タイヤ10の周方向Zと-33°に等しい角度を形成する。作動補強要素の例は、文献EP0602733、並びにEP0383716に説明されている。
【0125】
制限ブロックとも呼ぶフープ補強体50は、第1及び第2のフーピングプライ52、54を含み、各第1及び第2のフーピングプライ52、54は、それぞれ、その各々の内部で互いに実質的に平行に配置された第1及び第2のフーピングフィラメント状補強要素53、55を含む。各第1及び第2のフーピングフィラメント状補強要素53、55は、タイヤ10の周方向Zと10°よりも小さいか又はそれに等しく、好ましくは、5°よりも小さいか又はそれに等しく、より好ましくは、実質的にゼロの角度を形成する。この事例では、各第1及び第2のフーピングフィラメント状補強要素53、55は、タイヤ10の周方向Zと実質的にゼロの角度を形成する。
【0126】
図示の実施形態では、フープ補強体50は、半径方向に2つの作動プライ46、48の間で有利に配置される。
【0127】
図3を参照すると、各保護補強要素43、45及び各フーピング補強要素53、55は、下記で説明するようにタイヤ10からの抽出の後に抽出コード60’によって形成される。コード60’に関して、このコードは、保護補強要素43、45及びフーピング補強要素53、55がそれぞれ埋め込まれる各保護プライ42、44及び各フーピング層52、54の各エラストマー母材をそれぞれを形成するポリマー母材、この事例ではエラストマー母材の中に図5に示す裸コード60を埋め込むことによって得られる。
【0128】
裸コード60及び抽出コード60’は、螺旋に巻かれてコードの内部エンクロージャ64を定めるNストランド62の単層61を含む1×N構造を呈する。コード60’内では、内部エンクロージャ64は、それを充填するための充填材66で充填される。充填材66は、各保護補強要素43、45及びフーピング補強要素53、55、この場合は各コード60がそれぞれ埋め込まれる各保護プライ42、44及び各フーピングプライ52、54のエラストマー母材の組成物に等しいポリマー組成物、この場合はエラストマー組成物に基づいている。
【0129】
各ストランド62は、金属スレッドの2つの層を有し、直径D1のM≫1内部金属スレッドF1からなる内部層C1と、内部層C1の周りに巻かれた直径D2のP>1外部金属スレッドF2からなる外部層C2とを含む。
【0130】
この場合に、裸コード60及び抽出コード60’は、D≦4mmであるような好ましくは3.5mm≦D≦4mmであるような直径Dを有する。この事例では、D=3.89mmである。
【0131】
同じく、N=3又はN=4であり、この場合は好ましくは、N=4である。更に、M=3、4、又は5であり、この場合は好ましくは、M=3である。更に、P=7、8、9、10、又は11であり、この場合は好ましくは、P=8である。
【0132】
各金属スレッドF1、F2の各直径D1、D2は、0.25mmから0.50mm、好ましくは、0.30mmから0.45mm、より好ましくは、0.32mmから0.40mmの範囲である。この事例では、D1=D2=0.35mmである。各金属スレッドF1、F2は、2000年9月のNF EN 10020規格による非合金鋼組成物と、C>0.80%、好ましくは、C≧0.82%であり、C≦1.10%、好ましくは、C≦1.00%、より好ましくは、C≦0.90%であるような炭素含有量とを呈する鋼鉄コアを含む。この事例では、C=0.86%である。本発明により、規格ASTM D2969-04に従って測定された直径D1及びD2の金属スレッドF1、F2のうちの少なくとも50%の機械強度Rmは、直径D1、D2の各金属スレッドに関してそれぞれ3500-2000×D1、好ましくは、3600-2000×D1よりも大きいか又はそれに等しく、3500-2000×D2、好ましくは、3600-2000×D2よりも大きいか又はそれに等しい。この事例では、各金属スレッドF1、F2は、直径D1、D2の各金属スレッドに関してそれぞれ3600-2000×D1よりも大きいか又はそれに等しく、3600-2000×D2よりも大きいか又はそれに等しい規格ASTM D2969-04に従って測定された機械強度Rmを呈する。この場合に、各スレッドF1、F2の機械強度Rmは、2960MPaに等しい。
【0133】
Nストランドの層61は、好ましくは、不完全不飽和状態にある。2つの隣接するストランド62の間の距離は200μmに等しい。
【0134】
各ストランド62の外部層C2は不飽和化され、好ましくは、完全不飽和状態にある。この事例では、2つの隣接する外部スレッドF2の間の距離は60μmに等しい。
【0135】
裸コード60及び抽出コード60’内には、M>1内部金属スレッドF1がピッチp1で螺旋に巻かれる。ピッチp1は、3から11mm、好ましくは、5mmから9mmの範囲であり、この場合は、p1=6.4mmである。内部層C1内の各内部金属スレッドF1の対応する螺旋角度βは、6°から22°、好ましくは、8°から15°の範囲であり、この場合は、β=11.2°である。
【0136】
裸コード60及び抽出コード60’内には、P外部金属スレッドF2がピッチp2で螺旋に巻かれる。ピッチp2は、6mmから14mm、好ましくは、8mmから12mmの範囲であり、この場合は、p2=9.5mmである。外部層C2内の各外部金属スレッドF2の対応する螺旋角度γは、13°から30°、好ましくは、16°から23°の範囲であり、この場合は、γ=20.0°である。
【0137】
ストランド62は、ピッチp3で螺旋に巻かれる。ピッチp3は、10mmから30mm、好ましくは、15mmから25mm、より好ましくは、15mmから19mmの範囲であり、この場合は、p3=18mmである。裸コード60及び抽出コード60’内の各ストランド62の螺旋角度αは、13°から39°、好ましくは、16°から27°、より好ましくは、21°から27°の範囲であり、この場合は、α=23.2°である。
【0138】
コード60’は、Fr’≧8500N、好ましくは、Fr’≧9000N、この場合はFr’=9133Nであるような破断時の力Fr’を呈する。コード60’は、Ar’≧3.70%、好ましくは、Ar’≧3.80%、より好ましくは、Ar’≧3.90%、この場合はAr’=3.96%であるような破断時の伸長Ar’を呈する。コード60’は、Nで表される破断時の力Fr’と%で表される破断時の伸長Ar’との積に等しいEr’≧33 000N.%、好ましくは、Er’≧35 000N.%、より好ましくは、Er’≧36 000N.%、この場合はEr’=36 137N.%であるような破断時エネルギインジケータEr’を呈する。mmで表される直径Dに対する破断時エネルギインジケータEr’の比は、Er’/D≧8500、好ましくは、Er’/D≧8800、より好ましくは、Er’/D≧9000、非常に好ましくは、Er’/D≧9100であるようなものである。この事例では、Er’/D=9297である。
【0139】
本発明により、図4に示すように、コード60’は、1.00%よりも大きいか又はそれに等しい構造伸長As’を有し、好ましくは、As’≧1.05%、より好ましくは、As’≧1.10%である。更に、As’≦1.50%、好ましくは、As’≦1.40%である。この事例では、As’=1.20%である。
【0140】
本発明により、図4に示すように、コード60’は、弾性率MC’≦80GPa、好ましくは、MC’≦77GPaを有する。更に、MC’≧60GPa、好ましくは、MC’≧65GPa、より好ましくは、MC’≧68GPaである。この事例では、MC’=74GPaである。
【0141】
図6を参照すると、コード60は、Fr≧8500N、好ましくは、Fr≧9000N、より好ましくは、Fr≧9350N、更に好ましくは、Fr≧9600N、この場合はFr=9835Nであるような破断時の力Frを呈する。コード60は、Ar≧6.50%、好ましくは、Ar≧6.75%、より好ましくは、Ar≧6.90%、この事例ではAr=6.99%であるような破断時の伸長Arを呈する。コード60は、Nで表される破断時の力と%で表される破断時の伸長との積に等しいEr≧60 000N.%、好ましくは、Er≧63 000N.%、より好ましくは、Er≧64 000N.%、この事例ではEr=68 747N.%であるような破断時エネルギインジケータErを呈する。
【0142】
コード60は、Er/D≧15 000、好ましくは、Er/D≧15 800、より好ましくは、Er/D≧16 000、非常に好ましくは、Er/D≧16 500、この事例ではEr/D=17 673であるようなmmで表される直径Dに対する破断時エネルギインジケータErの比を呈する。
【0143】
本発明により、MC≦127、好ましくは、MC≦125である。更に、MC≧100、好ましくは、MC≧110、より好ましくは、MC≧115である。この事例では、MC=117である。弾性率インジケータMCは、MC=200×cos4(α)×[M×(D1/2)2×cos4(β)+P×(D2/2)2×cos4(γ)]/[M×(D1/2)2+P×(D2/2)2]によって定められ、ここで、D1及びD2は、mmで表され、αは、コード60内の各ストランド62の螺旋角度であり、βは、内部層C1内の各内部金属スレッドD1の螺旋角度であり、γは、外部層C2内の各外部金属スレッドD2の螺旋角度である。
【0144】
本発明により、図6に示すように、コード60は、構造伸長As≧3.00%、好ましくは、As≧3.10%を有する。更に、As≦4.00%、好ましくは、As≦3.75%、より好ましくは、As≦3.50%である。この事例では、As=3.20%である。
【0145】
各裸コード60及び抽出コード60’は、最初に、段階中に時系列で、5mmから15mm、好ましくは、8mmから12mmの範囲であり、この場合はp10=10mmであるピッチp10でM内部金属スレッドF1が螺旋に巻かれ、Nストランド62の各々を捻転によって個々に組み立てて内部層C1を形成する段階を含む方法によって得られる。次いで、12mmから27mm、好ましくは、17mmから23mmの範囲であり、この場合はp20=20mmであるピッチp20でP外部金属スレッドF2が内部層C2の周りに螺旋に巻かれて外部層C2を形成する。本方法は、段階中にNストランド62が上述したピッチp3で螺旋に巻かれ、予め形成したNストランド62を捻転によって集合的に組み立てる段階を更に含む。この集合的組み立て段階中に、内部金属スレッドF1及び外部金属スレッドF2のピッチは、p10及びp20から上述したピッチp1及びp2にそれぞれ変化する。
【0146】
集合的組み立て段階の後に、本方法は、最初に、ピッチp3からp3’<p3、この場合はp3’=10mmであるような一時的過剰捻転ピッチp3’に変化するようにNストランド62を過剰捻転する裸コード60を曝気する段階を含む。次いで、曝気段階では、一時的過剰捻転ピッチp3’からp3’’>p3’であり、かつp3’’≧p3、この場合はp3’’=p3=18mmであるような中間ピッチp3’’に変化するようにNストランド62を逆捻転する。
【0147】
曝気段階の後に、本方法は、最初に、中間ピッチp3’’からp3’’’>p3かつp3’’’>p3’、この場合はp3’’’=23mmであるような一時的均衡ピッチp3’’’に変化するようにNストランドを逆捻転する均衡化段階を含む。次いで、均衡化段階では、一時的均衡ピッチp3’’’からピッチp3に変化するようにNストランドを捻転する。この事例では、有利にp3/p3’>p3’’’/p3である。
【0148】
タイヤ10は、その部分に関して、コードを製造する方法の上述した段階に加えて、母材に埋め込まれたコードを含む少なくとも1つのプライ又は層を形成するために、ポリマー母材、この場合はエラストマー母材に例えばスキムコーティングによってコード60を埋め込む段階を含む製造方法によって得られる。次いで、タイヤ10を製造する方法は、未架橋で生形態のタイヤを形成するために、このプライ又は層を少なくとも他の生成物と共に組み立てる段階を含む。次いで、タイヤ10を製造する方法は、未架橋生形態をこの場合は加硫によって架橋させる架橋段階を含む。
【0149】
図7及び図8は、上述した裸コード60を製造するための設備68を示している。
【0150】
設備68は、図7に示す各ストランド62を個々に組み立てるための設備70と、図8に示すストランド62を集合的に組み立てるための設備72とを含む。
【0151】
-組み立て点付近の同期回転に起因して金属スレッド又はストランドがそれ自体の軸線の周りの捻転を受けない場合のケーブリングにより、
-又は金属スレッド又はストランドがそれ自体の軸線の周りの集合的捻転と個々の捻転の両方を受け、それによって金属スレッド及びストランドの各々又はコード自体に対する逆捻転トルクを発生させる捻転により、
そのいずれかによって金属スレッドを組み立てるための2つの可能な技術があることを思い出されるであろう。
【0152】
裸コード60を製造する方法は、ケーブリングではなく捻転を使用する。
【0153】
各ストランド62を個々に組み立てるための設備70は、M内部金属スレッドF1を給送するための手段74と、M内部金属スレッドF1を捻転によって組み立てるための手段76と、組み立てられたM内部金属スレッドを回転状態に設定するための手段77と、P外部金属スレッドF2を給送するための手段78と、P外部金属スレッドF2を内部層C1の周りに捻転によって組み立てるための手段80と、ストランド62を回転状態に設定するための手段81と、ストランド62を引張するための手段83と、ストランド62を格納するための手段84とをストランド62が通過する方向に上流から下流に含む。
【0154】
これらのストランド62を集合的に組み立てるためのアセンブリ72は、Nストランド62を給送するための手段86と、Nストランド62を捻転によって互いに組み立てるための手段88と、裸コード60を回転状態に設定するための手段90と、裸コード60を曝気するための手段92と、裸コード60を均衡化するための手段94と、裸コード60を引張するための手段96と、裸コード60を格納するための手段98とを裸コード60が通過する方向に上流から下流に含む。
【0155】
図7を参照すると、M内部金属スレッドF1を給送するための手段74は、各内部金属スレッドF1を巻き出すためのリール102を含む。M内部金属スレッドF1を捻転によって組み立てるための手段76は、分配器104と組み立て点P1を定めるアセンブリガイド106とを含む。回転状態に設定するための手段77は、組み立て点P1の下流に配置された2つのフライホイール107を含む。
【0156】
P外部金属スレッドF2を給送するための手段78は、各外部金属スレッドF2を巻き出すためのリール108を含む。P外部金属スレッドF2を組み立てるための手段80は、分配器110と組み立て点P2を定めるアセンブリガイド112とを含む。回転状態に設定するための手段81は、組み立て点P2の下流に配置された2つのフライホイール113を含む。
【0157】
ストランド62を引張するための手段83は、1又は2以上のウインチ118を含み、ストランド62を格納するための手段84は、各ストランド62を巻き取るためのリール120を含む。
【0158】
各ストランド62は、この場合は捻転によって組み立てられる。
【0159】
図8を参照すると、Nストランド62を給送するための手段86は、各ストランド62を巻き出すためのリール122を含む。Nストランド62を捻転によって互いに組み立てるための手段88は、分配器124と組み立て点P3を定めるアセンブリガイド126とを含む。裸コード60を回転状態に設定するための手段90は、組み立て点P3の下流に配置された2つのフライホイール128を含む。曝気手段92は、捻転器130を含む。均衡化手段94は、捻転器132を含む。裸コード60を引張するための手段96は、1又は2以上のウインチ134を含み、裸コード60を格納するための手段98は、裸コード60を巻き取るためのリール136を含む。
【0160】
比較試験
【0161】
WO2016/131862に開示されている従来技術コードT0、6つの対照コードT1からT6、及び本発明による2つのコードI1及びI2を下記で比較した。これらのコードの各々に関して、そのある一定の特徴を裸状態とタイヤから抽出した状態とで測定した。コードI2は、その裸状態では上述したコード60に対応し、タイヤから抽出された状態で上述したコード60’に対応することに注意されたい。
【0162】
各コードT0、T2、T3、T5、及びI1は、上述した曝気段階を実施しない方法によって製造したものである。それとは対照的に、各コードT2、T4、T6、及びI2は、上述した曝気段階を実施する方法によって製造したものである。
【0163】
空気透過性試験においてコードの各々を試験した。そのような透過性試験は当業者に公知であり、一定圧力下で所与の期間にわたって試験サンプルに沿って通過する空気の体積を測定することによって試験されるコードの長手方向空気透過性を決定することを可能にする。当業者に公知のそのような試験の原理は、コードを空気に対して不透過性のものにする処理の有効性を明らかにすることであり、例えば、ASTM D2692-98規格に説明されている。そのような試験は、製造されたばかりの未劣化コードに対して実施される。生コードは、コーティング組成物と呼ぶエラストマー組成物で予め外側で被覆される。この目的で、未処理状態にあるジエンエラストマー組成物から構成され、各々が5mmの厚みを有する2つの層又は「スキム」(80mm×200mmの大きさの2つの矩形)の間に平行に置かれた一連の10本のコード(コード間距離:20mm)が配置され、次いで、その全ては、モールド内に固定され、コードの各々は、モールドに配置される時に真っ直ぐに横たわることが保証されるように圧着モジュールを用いて十分な張力(例えば、3daN)下に保たれ、その後に、120℃前後の温度及び15barの圧力下(80mm×200mmの大きさの矩形ピストン)で10時間から12時間程度にわたって加硫(硬化)される。その後に、全体は、モールドから抽出され、こうして被覆された10本のコード試験サンプルが、特徴付けに向けて7mm×7mm×60mmの大きさの直方体の形状に切り出される。使用するコーティングエラストマー組成物は、天然(解膠)ゴム及びカーボンブラックN330(65phr)に基づいており、更に、硫黄(7phr)、スルフェンアミド促進剤(1phr)、ZnO(8phr)、ステアリン酸(0.7phr)、抗酸化剤(1.5phr)、ナフテン酸コバルト(1.5phr)(phrは、エラストマー100重量部毎の重量部を意味する)である通常の添加物を含有するタイヤで従来使用されるジエンエラストマー組成物であり、このコーティングエラストマー組成物のE10弾性率は、10MPa前後である。従って、試験は、硬化状態にある周囲のエラストマー組成物(又はコーティングエラストマー組成物)で被覆された6cm長のコードに対して空気をコードの吸気端部の中に1barの圧力で注入し、排気端部で空気の体積を流量計(例えば、0cm3/分から500cm3/分までに較正された)を用いて測定するという方法を用いて実施された。測定中に、コードの長手軸線に沿って一端から他端までコードに沿って通過する空気の量のみが測定に考慮されるように、コードのサンプルは、圧縮気密シール(例えば、濃密発泡体又はゴムで製造されたシール)内に固定され、気密シール自体の気密性は、エラストマー組成物の固体試験サンプル、すなわち、コードを持たないものを用いて予め検査された。コードの長手方向不透過性が高いほど、平均測定空気流量(10個の試験サンプルにわたって平均された)は低い。コードT0を相対測定値「=」を用いて示している。コードT0よりも透過性が高く、従って、浸透性が低いコードを相対測定値「-」を用いて示し、コードT0よりも透過性がより一層高く、従って、浸透性が非常に低いコードを相対測定値「--」を用いて示している。それとは対照的に、コードT0よりも透過性が低く、従って、浸透性が高いコードを相対測定値「+」を用いて示し、コードT0よりも透過性がより一層低く、従って、浸透性が非常に高いコードを相対測定値「++」を用いて示している。この試験の結果は、「APA」という名称のラインに与えている。これらの比較試験の結果の全ては、下記の表1に対照表示している。
【0164】
(表1)
【0165】
コードI1及びI2での比較的短いピッチp3の使用が、対照コードと比較してこれらのコードのAsを増大させることを可能にすることに注意されたい。そのような増大は、上述のように破断時の伸長Arを増大させ、従って、コードの破断時エネルギインジケータを増大させ、同時に障害物によって引き起こされる変形の吸収を可能にする。更に、比較的短いピッチp3は、比較的控えめな弾性率を取得し、従って、力-伸長曲線の弾性部分を延ばし、更に上述のようにコードの破断時の伸長Arを増大させ、従って、破断時エネルギインジケータErを増大させることを可能にし、同時に障害物によって引き起こされる変形の吸収を可能にする。
【0166】
コードT0とT3だけでなくコードT2とI1を比較すると、より低い機械強度(2765MPa)を有する金属スレッドの代わりに比較的高い機械強度(2960MPa)を有する金属スレッドの使用は、裸コードでは機械強度の増大に対応する破断時エネルギインジケータの増大を引き起こさないことに注意されたい。コードT2とI1の場合に、この破断時エネルギインジケータの変化さえも見受けられない。本発明者は、これを裸ケーブル内の金属スレッド及びストランドが互いに接触しており、金属スレッドを製造するための所与の方法に関して機械強度が高いほど金属スレッドが接触荷重の影響を受けやすくなり、それによって各金属スレッドの機械強度の増大にも関わらずコードの破断時の伸長Ar及び/又は破断時の力Frを低減するという事実によって説明する。それにも関わらず、コードがポリマー組成物で充填された状態で、充填材、この場合はポリマー母材は、金属スレッド間及びストランド間の接触を防止し、比較的高い機械強度(2960MPa)を有する金属スレッドの使用に起因して破断時の伸長Ar’及び/又は破断時の力Fr’の増大によってコードの破断時エネルギインジケータEr’を増大させることを可能にする。
【0167】
最後に、全ての条件が同じであれば、曝気段階を含む方法の実施は、ポリマー組成物、この場合はエラストマー組成物によるコードの浸透性を有意に改善することに注意されたい。
【0168】
本発明は、上述した実施形態に限定されない。
【0169】
具体的に、少なくとも50%、好ましくは、少なくとも60%、より好ましくは、少なくとも70%が、C>0.80%、好ましくは、C≧0.82%であるようなかつC≦1.10%、好ましくは、C≦1.00%、より好ましくは、C≦0.90%であるような炭素含有量Cを有するコードは、本発明の範囲から逸脱することなく使用することができると考えられる。
【0170】
同様に、規格ASTM D2969-04に従って測定された直径D1及びD2の金属スレッドのうちの少なくとも50%、好ましくは、少なくとも60%、より好ましくは、少なくとも70%の機械強度が、直径D1の金属スレッドに関して3500-2000×D1よりも大きいか又はそれに等しく、好ましくは、3600-2000×D1よりも大きいか又はそれに等しく、直径D2の金属スレッドに関して3500-2000×D2よりも大きいか又はそれに等しく、好ましくは、3600-2000×D2よりも大きいか又はそれに等しいコードは、本発明の範囲から逸脱することなく使用することができると考えられる。
【0171】
これは、望ましい特質、特に破断時エネルギ特質を達成することを可能にするのにアセンブリの十分な数の金属スレッドが十分に高い機械強度を有することで十分であるからである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】