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特表2022-519898ボイルオフガスを冷却する方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-25
(54)【発明の名称】ボイルオフガスを冷却する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   F25J 1/00 20060101AFI20220317BHJP
   F25J 1/02 20060101ALI20220317BHJP
   B63B 25/16 20060101ALI20220317BHJP
   F17C 13/00 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
F25J1/00 B
F25J1/02
B63B25/16 D
B63B25/16 G
F17C13/00 302A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547576
(86)(22)【出願日】2020-02-05
(85)【翻訳文提出日】2021-10-08
(86)【国際出願番号】 GB2020050263
(87)【国際公開番号】W WO2020165555
(87)【国際公開日】2020-08-20
(31)【優先権主張番号】1901941.3
(32)【優先日】2019-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521358235
【氏名又は名称】エルジーイー アイピー マネジメント カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LGE IP Management Company Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100170597
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ニック フェルバブ
【テーマコード(参考)】
3E172
4D047
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB04
3E172BA06
3E172BB03
3E172BB05
3E172BB12
3E172BB17
3E172BD02
3E172EB02
3E172EB08
3E172EB20
3E172HA04
3E172HA12
3E172JA08
4D047AA10
4D047BA09
4D047CA06
4D047CA11
4D047CA15
(57)【要約】
単一混合冷媒(SMR)を用いて液化ガスタンクからのボイルオフガス(BOG)流を冷却する方法であって、前記BOG流と、SMR再循環システム内で供される前記SMRとを液化熱交換器システム内で熱交換することで冷却済BOG流を供する段階を少なくとも有する方法が供される。当該方法は、(a)少なくとも1つの遠心圧縮機を用いて前記SMRを圧縮することで圧縮後SMR流を供する段階と、(b)前記圧縮後SMR流を前記液化熱交換器システムへ流すことで前記圧縮後SMR流を冷却して冷却済第1SMR蒸気流を供する段階と、(c)前記液化熱交換器システムから前記冷却済第1SMR蒸気流を取り出す段階と、(d)前記冷却済第1SMR蒸気流を分離することで液相SMR流と軽質SMR蒸気流を供する段階と、(e)前記軽質SMR蒸気流に前記液化熱交換器システムを通過させることで凝縮済SMR流を供する段階と、(f)前記凝縮済SMR流を膨張させることで膨張済最低温度SMR流を供して前記BOG流との熱交換のために前記液化熱交換器システムを通過させる段階を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一混合冷媒(SMR)を用いて液化ガスタンクからのボイルオフガス(BOG)流を冷却する方法であって、前記BOG流と、SMR再循環システム内で供される前記SMRとを液化熱交換器システム内で熱交換することで冷却済BOG流を供する段階を少なくとも有し、
(a) 少なくとも1つの遠心圧縮機を用いて前記SMRを圧縮することで圧縮後SMR流を供する段階と、
(b) 前記圧縮後SMR流を前記液化熱交換器システムへ流入させることで前記圧縮後SMR流を冷却して冷却済第1SMR蒸気流を供する段階と、
(c) 前記液化熱交換器システムから前記冷却済第1SMR蒸気流を取り出す段階と、
(d) 前記冷却済第1SMR蒸気流を分離することで液相SMR流と軽質SMR蒸気流を供する段階と、
(e) 前記軽質SMR蒸気流に前記液化熱交換器システムを通過させることで凝縮済SMR流を供する段階と、
(f) 前記凝縮済SMR流を膨張させることで膨張済最低温度SMR流を供して前記BOG流との熱交換のために前記液化熱交換器システムを通過させる段階、
を有する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記BOGは浮体式船舶内の液化カーゴタンクからのもので、任意でLNGカーゴタンクからのものである、方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、前記液化熱交換器システムは単一の液化熱交換器を備える、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記軽質SMR蒸気流を前記単一の液化熱交換器に部分的に通過させる段階をさらに有する、方法。
【請求項5】
請求項3に記載の方法であって、前記軽質SMR蒸気流を前記単一の液化熱交換器に完全に通過させる段階をさらに有する、方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の方法であって、
前記液化熱交換器システムは、2つのユニット、任意で3つ以上のユニットを有するマルチユニット液化熱交換器を含み、
前記膨張済最低温度SMR流は各ユニットを通過する、
方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、
前記圧縮後SMR流を第1熱交換ユニットへ流入させる段階と、
前記軽質SMR流を第2熱交換ユニットへ流入させる段階、
をさらに有する、方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法であって、
前記圧縮後SMR流を第1熱交換ユニットへ流入させる段階と、
前記軽質SMR流を第1熱交換ユニットと第2熱交換ユニットの両方へ流入させる段階、
をさらに有する、方法。
【請求項9】
請求項6~8のいずれかに記載の方法であって、前記液化熱交換器システムは、2つの多流式熱交換器を備えるマルチユニット液化熱交換器を含む、方法。
【請求項10】
請求項6~8のいずれかに記載の方法であって、前記液化熱交換器システムは、1つの多流式熱交換器と複数の二流式熱交換器を備えるマルチユニット液化熱交換器を含む、方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の方法であって、段階(b)の前に前記圧縮後SMR流を外気冷却する段階をさらに有する、方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の方法であって、
段階(d)の前記液相SMR流を膨張させる段階と、
前記膨張済液相SMR流を前記液化熱交換器システムへ流入させる段階、
をさらに有する、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、前記液化熱交換器システム内で前記膨張済液相SMR流と前記膨張済最低温度SMR流とを合流させる段階をさらに有する、方法。
【請求項14】
請求項12に記載の方法であって、
前記液化熱交換器システムがマルチユニット液化熱交換器システムを備え、
前記マルチユニット液化熱交換器システムの2つのユニット間で前記膨張済液相SMR流と前記膨張済最低温度SMR流とを合流させる段階をさらに有する、
方法。
【請求項15】
請求項10に記載の方法であって、前記液化熱交換器システムの後で前記膨張済液相SMR流と前記膨張済最低温度SMR流とを合流させる段階をさらに有する、方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれかに記載の方法であって、段階(f)は、前記SMR再循環システムの一部として再循環または再利用するために冷却後蒸気SMR流を提供する、方法。
【請求項17】
請求項1~16のいずれかに記載の方法であって、前記凝縮済SMR流の膨張は、膨張済最低温度SMRを提供することが可能である、方法。
【請求項18】
請求項1~17のいずれかに記載の方法であって、段階(a)の前記圧縮後SMR流が段階(d)の前に外部冷媒による冷却を受けない、方法。
【請求項19】
請求項1~18のいずれかに記載の方法であって、前記BOG流は、前記液化熱交換器を通過する前に、外部冷媒による冷却を受けない、方法。
【請求項20】
請求項1~19のいずれかに記載の方法であって、前記液化熱交換器システムは、1つ以上のプレートフィン熱交換器を含む、方法。
【請求項21】
請求項1~20のいずれかに記載の方法であって、前記膨張済最低温度SMR流は前記第1SMR蒸気流を冷却する、方法。
【請求項22】
単一混合冷媒(SMR)を用いて液化ガスタンクからのボイルオフガス(BOG)流を冷却する方法と併用されるSMR再循環システムであって、
前記SMRは当該SMR再循環システム内に供され、
前記方法は、前記BOG流と、液化熱交換器システム内で供される前記SMRとを液化熱交換器システム内で熱交換することで冷却済BOG流を供する段階を少なくとも有し、
(a) 少なくとも1つの遠心圧縮機を用いて前記SMRを圧縮することで圧縮後SMR流を供する段階と、
(b) 前記圧縮後SMR流を前記液化熱交換器システムへ流すことで前記圧縮後SMR流を冷却して冷却済第1SMR蒸気流を供する段階と、
(c) 前記液化熱交換器システムから前記冷却済第1SMR蒸気流を取り出す段階と、
(d) 前記冷却済第1SMR蒸気流を分離することで液相SMR流と軽質SMR蒸気流を供する段階と、
(e) 前記軽質SMR蒸気流に前記液化熱交換器システムを通過させることで凝縮済SMR流を供する段階と、
(f) 前記凝縮済SMR流を膨張させることで膨張済最低温度SMR流を供して前記BOG流との熱交換のために前記液化熱交換器システムを通過させる段階、
を有する、
SMR再循環システム。
【請求項23】
請求項22に記載のSMR再循環システムであって、浮体式船舶の液化カーゴタンクで、任意でLNGカーゴタンクからのBOGを冷却するために使用される、SMR再循環システム。
【請求項24】
請求項22又は23に記載のSMR再循環システムであって、請求項3~10のいずれかに記載の液化熱交換器システムと併用される、SMR再循環システム。
【請求項25】
請求項22~24のいずれかに記載のSMR再循環システムであって、請求項11~16のいずれかに記載の1つ以上の段階をさらに有する、SMR再循環システム。
【請求項26】
請求項22~25のいずれかに記載のSMR再循環システムであって、液化ガスタンクからのボイルオフガス流を冷却するためのすべての準外気冷媒冷却デューティを内部において提供することができる、SMR再循環システム。
【請求項27】
液化ガスタンクからのボイルオフガス(BOG)流を冷却するための装置であって、請求項22~26のいずれかに記載の単一混合冷媒(SMR)再循環システムと、前記BOG流に対して熱交換を行うための液化熱交換器とを備える、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一混合冷媒(SMR)を使用して、浮動船上のカーゴタンクなどの液化ガスタンクからのボイルオフガス(BOG)流を冷却する方法及び装置に関する。特に限定されるわけではないが、浮体式LNG貯蔵タンクからのBOGを冷却する方法である。
【0002】
従来、LNGを貨物として積んでいる船舶(典型的にはLNG船)の液化天然ガス(LNG)貯蔵タンクからのボイルオフガスは、船に動力を供給するために船のエンジンで使用されてきた。そして、余ったBOGは「廃ガス」となり、通常はガス燃焼装置(GCU)に送られ、燃焼処理されている。
【0003】
しかし、船のエンジンの効率はますます向上しており、エンジンに必要なBOGの量は少なくなっている。このことは、BOGのうち廃ガスとしてGCUに送られる割合が多くなっていることを意味する。BOGを再液化してカーゴタンクに戻すことで、このガスの損失を減らすことが経済的にも魅力的になってきた。
【0004】
従来のSMRサイクルが添付の図1に示されている。カーゴタンクからのボイルオフガスは、圧縮機(図示せず)で圧縮され、パイプライン20を介して冷却のために送られる。圧縮されたボイルオフガスは、まずアフタークーラ14で、容易に入手できる外気冷却媒体(海水、淡水、エンジンルーム冷却水、空気など)を用いて冷却され、その後、熱交換器12内でさらに冷却される。この予冷されたBOGは、多流式(すなわち、3つ以上の流れ)熱交換器7(典型的には、ろう付けされたアルミニウムプレート・フィン型熱交換器)に送られ、SMR再循環システムを用いて冷却及び凝縮される。
【0005】
熱交換器12は、別の冷媒カスケード13からパイプライン32を介して供給される外部冷媒(典型的にはプロパン)を使用する。
【0006】
SMR再循環システムでは、冷媒受け取り部1からの混合冷媒ガスは、パイプライン22を通って圧縮機2に流れる。SMRガスはパイプライン24に圧縮される。パイプライン24内のガスは、容易に入手可能な冷却媒体(例えば、海水、淡水、エンジンルーム冷却水、空気)を使用するアフタークーラ6に送られる。
【0007】
アフタークーラ6の下流では、冷媒ガスの凝縮が凝縮器11内の低温外部冷媒(典型的にはプロパン)との熱交換を利用して行われる。この外部冷媒の低温化は、外部冷媒カスケード13内で行われる。パイプライン24内の冷媒は、凝縮器11を通過した後、少なくとも部分的に凝縮され、その後、気液分離器8に入り、気相と液相を提供する。
【0008】
パイプライン29内の冷媒液は、フラッシュバルブ9によって減圧され、部分的に気化して温度が低下する。部分的に気化した冷媒液は、次に多流路交換器7に送られ、そこで完全に気化し、それによって交換器7内の高温流に部分的な冷却を与えることができる。一方、パイプライン26内の冷媒蒸気は、直接交換器7に送られ、そこで実質的に冷却される。冷媒蒸気は交換器7を飛び出して全部又は一部が凝縮される。その後交換器7で必要な冷却を達成するために、冷媒蒸気の圧力はスロットリングバルブ10によって減圧されてパイプライン34に入り、SMR再循環システム内で最低温度となる。これにより、交換器7のための主冷媒流が提供される。
【0009】
パイプライン34内の低温冷媒は、交換器7に送られ、そこで気化して高温流を冷却する。低温冷媒はバルブ9から送られてきた減圧された液体と合流し、合流した冷媒流は、パイプライン28を経由して蒸気として交換器7から出て、冷媒受け取り部1に再流入する。
【0010】
全体として、図1に示した従来のSMRサイクルにおける再液化プロセスの冷却デューティは、SMRの再循環システムと外部冷媒カスケード13の両方によって提供される。
【発明が解決する課題】
【0011】
本発明の目的は、貨物容量が通常200,000mを超えるQ-flexやQ-max LNG船など、より大きな再液化能力を必要とする用途において、外部冷媒カスケードを使用せずにBOG流を冷却する、より単純な方法、プロセス、装置を提供することである。
【0012】
よって本発明の第1態様によると、単一混合冷媒(SMR)を用いて液化ガスタンクからのボイルオフガス(BOG)流を冷却する方法であって、前記BOG流と、SMR再循環システム内で供される前記SMRとを液化熱交換器システム内で熱交換することで冷却済BOG流を供する段階を少なくとも有する方法が供される。当該方法は、
(a) 少なくとも1つの遠心圧縮機を用いて前記SMRを圧縮することで圧縮後SMR流を供する段階と、
(b) 前記圧縮後SMR流を前記液化熱交換器システムへ流入させることで前記圧縮後SMR流を冷却して冷却済第1SMR蒸気流を供する段階と、
(c) 前記液化熱交換器システムから前記冷却済第1SMR蒸気流を取り出す段階と、
(d) 前記冷却済第1SMR蒸気流を分離することで液相SMR流と軽質SMR蒸気流を供する段階と、
(e) 前記軽質SMR蒸気流に前記液化熱交換器システムを通過させることで凝縮済SMR流を供する段階と、
(f) 前記凝縮済SMR流を膨張させることで膨張済最低温度SMR流を供して前記BOG流との熱交換のために前記液化熱交換器システムを通過させる段階を有する。
【0013】
本発明は1つ以上の遠心式圧縮機パッケージを利用している。遠心式圧縮機パッケージは、単一の給油式スクリュー圧縮機で達成できるよりも大きな再液化能力を必要とする用途に適している。遠心式圧縮機は、陸上の天然ガス液化プラントで広く使用されており、陸上の液化プラントの能力は沖合の再液化能力よりもはるかに高い。遠心式圧縮機は、小型給油式スクリュー圧縮機とは異なり、油のキャリーオーバーが実効的にないという追加の利点を有する。遠心圧縮機の能力はかなり高い流量を提供することができるので、遠心圧縮機を採用した大規模なシステムは、全体としてより経済的になる。
【0014】
SMRとは、1種類以上の炭化水素-特にメタン、エタン、プロパン、場合によっては少なくともブタン-と窒素の混合物を含む冷媒-任意でペンタンなどの他の可能な冷媒を含む-を指称するのに用いられる。特定のSMRを生成するための様々な成分とその比率が知られており、ここではこれ以上説明しない。
【0015】
本明細書で定義された1つ以上の流れの分離は任意の適切な分離器で実施することができる。そのような適切な分離器の多くは当技術分野で知られており、一般に、少なくとも1つの気体流-典型的には分離器の上部またはその近くで利用可能な軽い流れと、典型的には分離器の下端で利用可能な少なくとも1つの液相を含む重い流れ-を提供するように意図されている。
【0016】
流れの膨張は、一般的にバルブなどを含む1つ以上の適切な膨張装置を通じて可能である。
【0017】
本明細書で使用する「外気冷却」という用語は、通常は外気温度で提供される外気冷却媒体の使用に関する。これには、海水、淡水、エンジンルーム冷却水、および空気、ならびにそれらの任意の組み合わせが含まれ、これらは通常、流れに外気冷却を提供するために容易に利用可能である。
【0018】
任意で、前記冷却済第1SMR蒸気流および/または前記軽質SMR蒸気流は、前記膨張済最低温度SMR流に対して冷却される。
【0019】
すべての液化ガスタンクは、液化ガス輸送船、バージ、および輸送船を含む他の船舶上のタンクを含めて、既知の理由でボイルオフガスを生成または放出する。液化ガスには、0℃以下、少なくとも-40℃以下の沸点(@1気圧)を有するもの、例えば、各種の石油ガスや石油化学ガス、さらには-160℃以下の沸点を有する液化天然ガス(LNG)などがある。
【0020】
液化ガスタンクからのBOGは、陸上でより容易に利用可能な場合もあるが、特に海上での再液化の追及が望まれている。しかし洋上、特に浮体式の船舶ではスペースが限られており、BOGの再液化の複雑さを軽減することで、たいていの場合、必要なCAPEX(設備投資)や区画面積を削減することができる。
【0021】
任意で前記BOGは浮体式船舶内の液化カーゴタンク-任意でLNGカーゴタンク-からのものである。
【0022】
段階(a)における前記SMRの圧縮は、前記圧縮後SMR流を提供するために、複数の圧縮機の使用-任意で並列または直列またはその両方で-を含むことが可能である。本発明は、少なくとも1つの遠心式スクリュー圧縮機を使用すること以外に、前記SMRの圧縮の方法または種類によって限定されない。
【0023】
前記液化熱交換器システムは、1つ以上のユニットまたはステージに配置された1つ以上の任意の形態の熱交換器であってもよく、2つ以上の流れの間での熱交換を可能にし、任意で前記システムの一部または部分-特に前記BOG流と前記冷媒流のうちの1つとの間-において1つ以上の他の流れと逆流する少なくとも1つの流れを有する。
【0024】
前記液化熱交換器システムが2つ以上の熱交換器を含む場合、前記2つ以上の熱交換器は直列、並列、または直列と並列の組み合わせであってもよく、前記2つ以上の熱交換器は任意で単一の冷却ユニットまたはボックス内において、分離しているか、結合しているか、または連続していてもよく、任意で前記BOG流を液化するためにBOG流と必要な熱交換を提供する1つ以上のユニットまたはステージの形態であってもよい。
【0025】
前記液化熱交換器システムは、1つ以上の接続されたセクション、ユニット、またはステージとなるように配置された二流式または多流式熱交換器の任意の適切な装置を有してよい。任意で1つのセクション、ユニット、またはステージは、その中の平均温度という意味で、他のセクション、ユニット、またはステージよりも「高温」である。
【0026】
当技術分野では、前記液化熱交換器システムの一部となる、または前記液化熱交換器システムを提供することができる多くの液化熱交換器が知られており、典型的には、プレートフィン、シェル&チューブ、プレート&フレーム、シェル&プレート、コイル巻き、およびプリント回路熱交換器、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0027】
任意で前記液化熱交換器システムは、2つの多流式熱交換器を備えるマルチユニット液化熱交換器を含む。
【0028】
あるいはその代わりに、前記液化熱交換器システムは、1つの多流式熱交換器と複数の二流式熱交換器を備えるマルチユニット液化熱交換器を含む。
【0029】
任意で本発明における前記液化熱交換器システムは、1つ以上のプレートフィン熱交換器を含む。
【0030】
任意で本発明における前記液化熱交換器システムは、1つ以上のプレートフィン熱交換器と1つ以上の二流式プレート型(プレート&フレームまたはシェル&プレート)熱交換器との組み合わせを含む。
【0031】
熱交換器は一般に、各流れの1つ以上の入口またはポートと、前記流れの1つ以上の出口またはポートとを有し、その間には温度勾配または勾配経路がある。熱交換器を通過するほとんどの流れは、前記熱交換器の「すべて」を通過する。つまり、前記熱交換器の一方の端または側面にある入口またはポートから、任意に他方の端または側面にある出口またはポートまで、入口と出口の間で可能な最大の熱交換、すなわち前記温度勾配経路に沿って可能な最大の温度変化または相変化を達成するようにする。このような流れは、前記熱交換器を「完全に」または「全体的に」通過している。
【0032】
一部の流れは、一般的には、前記最大可能温度勾配経路の途中の中間温度または位置に入口点またはポートを有するか、前記温度勾配経路の途中の中間温度に出口点またはポートを有するか、またはその両方によって、熱交換器の一部分のみを通過させてよい。そのような流れは、前記熱交換器の一部のみを通過していない。
【0033】
本発明において、前記液化熱交換は、単段または多段配置-任意で前記液化熱交換器システム内で多数の前記液化熱交換器を一列に並べた状態-で提供されてよいが、単一の液化熱交換器で複数の熱交換段を提供することができる場合には、それに限定されない。
【0034】
任意で前記液化熱交換器システムは単一の液化熱交換器である。一のさらなる実施形態では、本方法は、段階(f)の前に、前記軽質SMR蒸気流を前記単一の液化熱交換器に部分的に通過させること、すなわち、前記軽質SMR蒸気流を前記熱交換の途中の中間温度で前記単一の液化熱交換器へ流入することを含む。
【0035】
別のさらなる実施形態では、本方法は、段階(f)の前に、前記軽質SMR蒸気流を前記単一の液化熱交換器に完全に通過させることを含む。
【0036】
任意で前記液化熱交換器システムが単一の液化熱交換器である場合、段階(c)における前記液化熱交換器システムからの前記冷却済第1SMR蒸気流の取り出しは、前記熱交換器内で発生する前記熱交換の途中の中間温度で発生し得て、任意で前記軽質SMR蒸気流が前記液化熱交換器システムへ流入して凝縮済SMR流を提供するときの前記入口に類似した温度で発生し得る。
【0037】
したがって、任意で本発明の段階(c)は、前記液化熱交換器システムの最も冷たい部分の前に、すなわち前記液化熱交換器システムを通る部分的な通路を実現する前に、前記冷却済第1SMR蒸気流を前記液化熱交換器システムから取り出すことを含む。
【0038】
前記軽質SMR蒸気流は、段階(c)の前記取り出された冷却済第1SMR蒸気流の温度よりも高い、低い、同じ、または類似した温度で前記液化熱交換器システムへ流され(戻され)てよい。
【0039】
任意で前記軽質SMR蒸気流は、段階(c)の前記取り出された冷却済第1SMR蒸気流の温度と同様の温度で前記液化熱交換器システムへ流入する。
【0040】
あるいはその代わりに前記液化熱交換器システムは、2つの-任意で3つ以上の-ユニットを有するマルチユニット液化熱交換器または交換器であってもよく、前記膨張済最低温度SMR流は各ユニットを通過する。
【0041】
前記液化熱交換器が2つ以上の液化熱交換器ユニットおよび/またはステージによって提供される場合、任意で、前記冷却済第1SMR蒸気流が第1のユニットおよび/またはステージへ流入し、前記軽質SMR蒸気流が第2ユニットおよび/またはステージへ流入する。あるいは任意で、前記冷却済第1SMR蒸気流が第1熱交換ユニットへ流入し、前記軽質SMR蒸気流が第1熱交換ユニットおよび第2熱交換ユニットの両方へ流入する。
【0042】
前記液化熱交換が2つ以上の液化熱交換器ユニットおよび/またはステージによって提供される場合、さらに任意で前記第1ステージまたは高温ステージは、プレートフィン熱交換器などの多流式熱交換器、又は、一連の別個の熱交換器であって任意で直列若しくは並列又はその両方の状態をとるもののいずれかを含む。前記一連の別個の熱交換器のうちの少なくとも1つは、液相SMR流および軽質SMR蒸気流を提供するために分離する前に前記圧縮後SMR流を冷却して冷却済第1SMR蒸気流を提供することができる。
【0043】
任意で本発明の方法は、段階(d)の前記液相SMR流を膨張させる段階と、前記膨張済液相SMR流を前記液化熱交換器システムへ流入させる段階とをさらに含む。
【0044】
任意で本発明の方法は、前記液化熱交換器システム内において-任意で多段または多ユニット液化熱交換器システムの2つのステージまたはユニットの間で-、前記膨張済液相SMR流と前記膨張済最低温度SMR流とを合流させる段階をさらに含む。
【0045】
任意で本発明の方法は、代替的に、前記液化熱交換器システムの後で、前記膨張済液相SMR流と前記膨張済最低温度SMR流とを合流させる段階をさらに含む。
【0046】
本発明の方法は、前記SMR再循環システムの一部として再循環または再利用するために、液化熱交換後SMR流又は冷却後蒸気SMR流を提供する。この液化熱交換後SMR流又は冷却後蒸気SMR流は任意で、前記液化熱交換器システム内又は後のいずれかで、前記膨張済最低温度SMR流と合流した前記膨張済液相SMR流である。
【0047】
したがって任意で、本発明の方法は、前記SMRを提供するための前記液化熱交換器の後に前記膨張済最低温度SMR流を、典型的には追加の膨張済液相SMR流と一緒に再循環させることをさらに含む。
【0048】
本発明では、段階(a)の前記圧縮後SMR流が、段階(d)の前に外部冷媒による冷却を受けないことが意図されており、その結果として、外部冷媒カスケードが必要とされない。前記SMR液化熱交換器システム自体は、前記軽質SMR蒸気流が前記液化熱交換器システムに戻って膨張する前に前記軽質SMR蒸気流を凝縮させるのに必要な前記冷媒による冷却を完全にまたは実質的に提供する。
【0049】
任意で前記BOG流は、前記液化熱交換器を通過する前に、外部冷媒による冷却を受けない。
【0050】
このようにして、前記膨張済最低温度のSMR流が圧前記縮後SMR流を冷却し、好ましくは、前記膨張済最低温度SMR流が、前記SMR再循環システム内での前記BOG流を冷却する準外気冷媒の冷却デューティをすべて提供する。
【0051】
本発明の他の態様によると、単一混合冷媒(SMR)を用いて液化ガスタンクからのボイルオフガス(BOG)流を冷却する方法と併用されるSMR再循環システムが供される。前記SMRは当該SMR再循環システム内に供され、前記方法は、前記BOG流と、液化熱交換器システム内で供される前記SMRとを液化熱交換器システム内で熱交換することで冷却済BOG流を供する段階を少なくとも有する。当該システムは、(a) 少なくとも1つの遠心圧縮機を用いて前記SMRを圧縮することで圧縮後SMR流を供する段階と、
(b) 前記圧縮後SMR流を前記液化熱交換器システムへ流すことで前記圧縮後SMR流を冷却して冷却済第1SMR蒸気流を供する段階と、
(c) 前記液化熱交換器システムから前記冷却済第1SMR蒸気流を取り出す段階と、
(d) 前記冷却済第1SMR蒸気流を分離することで液相SMR流と軽質SMR蒸気流を供する段階と、
(e) 前記軽質SMR蒸気流に前記液化熱交換器システムを通過させることで凝縮済SMR流を供する段階と、
(f) 前記凝縮済SMR流を膨張させることで膨張済最低温度SMR流を供して前記BOG流との熱交換のために前記液化熱交換器システムを通過させる段階を有する。
【0052】
任意で当該SMR再循環システムは、浮体式船舶の液化カーゴタンク(任意でLNGカーゴタンク)からのBOGを冷却するために使用される。
【0053】
任意で当該SMR再循環システムは、本明細書で定義された液化熱交換器システムと併用するためのものである。
【0054】
任意で当該SMR再循環システムは、BOG流を冷却する方法に関連して本明細書に記載されているような1つ以上のさらなる段階をさらに備える。
【0055】
本発明のSMR再循環システムは、液化ガスタンクからのボイルオフガス流を冷却するためのすべての準外気冷媒冷却デューティを当該SMR再循環システムにおいて提供することができることが意図されている。
【0056】
本発明の別の態様によれば、液化ガスタンクからのボイルオフガス(BOG)流を冷却するための装置が提供される。当該装置は、本明細書で定義された単一混合冷媒(SMR)再循環システムと、前記BOG流に対して熱交換を行うための液化熱交換器とを備える。
【0057】
本発明の他の態様によると、単一混合冷媒(SMR)を用いて液化ガスタンクからのボイルオフガス(BOG)流を冷却する方法を有する容器を総合的に設計する方法であって、前記BOG流と、SMR再循環システム内で供される前記SMRとを液化熱交換器システム内で熱交換することで冷却済BOG流を供する段階を少なくとも有する方法が供される。当該方法は、
(a) 少なくとも1つの遠心圧縮機を用いて前記SMRを圧縮することで圧縮後SMR流を供する段階と、
(b) 前記圧縮後SMR流を前記液化熱交換器システムへ流すことで前記圧縮後SMR流を冷却して冷却済第1SMR蒸気流を供する段階と、
(c) 前記液化熱交換器システムから前記冷却済第1SMR蒸気流を取り出す段階と、
(d) 前記冷却済第1SMR蒸気流を分離することで液相SMR流と軽質SMR蒸気流を供する段階と、
(e) 前記軽質SMR蒸気流に前記液化熱交換器システムを通過させることで凝縮済SMR流を供する段階と、
(f) 前記凝縮済SMR流を膨張させることで膨張済最低温度SMR流を供して前記BOG流との熱交換のために前記液化熱交換器システムを通過させる段階を有する。
【0058】
本発明のさらなる態様によれば、本明細書に記載されたものと同一または類似の段階を含む液化ガスタンクからのボイルオフガス(BOG)流を冷却する方法に使用されるSMR再循環システムを統合的に設計する方法が提供される。
【0059】
本発明のさらに別の態様によれば、本明細書に記載されているのと同じまたは類似の段階を含む単一混合冷媒(SMR)を用いて液化ガスタンクからのボイルオフガス(BOG)流を冷却するプロセスを設計する方法が提供される。
【0060】
本発明のさらに別の態様によれば、本明細書に記載されているのと同じまたは類似の段階を含む、液化ガスタンクからのボイルオフガス(BOG)流を冷却する方法で使用するためのSMR再循環システムを設計する方法が提供される。
【0061】
本明細書で説明する設計方法は、関連する運用機器および制御を容器全体の構造に組み込むためのコンピュータ支援プロセスを組み込んでもよく、関連するコスト、運用能力のパラメータを方法および設計に組み込んでもよい。本明細書に記載されている方法は、コンピュータでの読み取りおよび処理に適した媒体にエンコードされてもよい。例えば、本明細書に記載されている方法を実行するコードは、パーソナルコンピュータまたはメインフレームコンピュータで読み取り、複製可能な磁気媒体または光学媒体にエンコードされてもよい。そして、そのようなパーソナルコンピュータまたはメインフレームコンピュータを使用して、設計エンジニアが方法を実行してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
以下、本発明の実施形態および実施例を、例示として、添付の概略図を参照しながら説明する。
図1】先行技術のSMRシステムを用いてBOG流を冷却する先行技術の方法を示す概略図である。
図2】本発明の一般的な実施形態による、SMRシステムを使用してBOG流を冷却する方法の概略図である。
図3】本発明の第1実施形態によるSMRシステムを使用してBOG流を冷却する方法の概略図である。
図4】本発明の第2実施形態によるSMRシステムを用いてBOG流を冷却する方法の概略図である。
図5】本発明の第3実施形態によるSMRシステムを用いてBOG流を冷却する方法の概略図である。
図6】本発明の第4実施形態によるSMRシステムを用いてBOG流を冷却する方法の概略図である。
図7】本発明の第5実施形態によるSMRシステムを用いてBOG流を冷却する方法の概略図である。
図8】本発明の第6実施形態によるSMRシステムを使用してBOG流を冷却する方法の概略図である。
図9】本発明の第7実施形態によるSMRシステムを用いてBOG流を冷却する方法の概略図である。
【0063】
関連する場合には、同一または類似の特徴を表すのに同一の参照数字が異なる図で使用される。
【発明を実施する形態】
【0064】
図1は、本明細書で説明した先行技術の配置であり、SMR再循環システムと圧縮機2を使用して圧縮済BOGの再液化を実現するために外部冷媒回路とカスケード13に基づく装置を必要とする。
【0065】
図2は、本発明の一般的な実施形態による液化ガスタンクからのボイルオフガス流を単一混合冷媒(SMR)を使用して冷却する方法であって、液化熱交換器システムにおいてBOG流を、本発明の別の実施形態によるSMR再循環システム内で供されるSMRと熱交換して冷却済BOG流を提供する段階を少なくとも含む方法を示す。
【0066】
より詳細には、図2は、1つ以上のLNGカーゴタンク(図示せず)から提供され、圧縮機(これも図示せず)で既に圧縮されたBOG流70を示している。BOG流70は、第1外気熱交換器60において、容易に利用可能な冷却媒体(例えば、海水、淡水、エンジンルーム冷却水、空気)を用いて、任意で外気冷却される。この任意に冷却(圧縮)済BOG流71は、次に、液化熱交換器システム40へ流入する。
【0067】
液化熱交換器システム40は、2つ以上の流れの間-任意に複数の流れの間-での熱交換を可能にできる1つ以上の熱交換器の任意の形態または配置を含んでよい。前記1つ以上の熱交換器の任意の形態または配置は任意で、システムの一部または部分において-特にBOG流と冷媒の1つとの間で-1つ以上の他の流れと逆流する少なくとも1つの流れを有する。複数の熱交換器の任意の配置は、直列、並列、または直列と並列の組み合わせであってよい。熱交換器は、分離していても、結合していても、連続していてもよく、任意で単一の冷却ユニットまたはボックス内にあり、任意でBOG流を液化するためにBOG流と必要な熱交換を行う1つ以上のステージの形態であってよい。
【0068】
複数の熱交換器を含む液化熱交換器システムは、一般的に、あるセクション、ユニット、またはステージを有する。前記セクション、ユニット、またはステージは、システム中の平均温度の意味で、他のセクション、ユニット、またはステージよりも「高温」である。
【0069】
適切な液化熱交換器システムのいくつかの変形例が、以下で議論され、示される。当業者は他の変形例を認識することができ、本発明はそれによって限定されるものではない。
【0070】
図2に示す一般的な液化熱交換器システム40では、冷却(及び圧縮)済BOG流71が、SMR再循環システム200内で生成された、以下で説明するより冷たい流れによって凝縮される。凝縮済BOG流は、パイプライン73を介して交換器システム40を出て、LNGカーゴタンクに戻され得る。
【0071】
SMRシステム200では、冷媒受け取り部51からのSMR冷媒ガス74の初期流が、遠心圧縮機52に送られる。遠心圧縮機は、当該技術分野でよく知られており、本明細書ではさらに説明しない。遠心式圧縮機は、産業界で十分に実証されており、特に大規模または大容量の圧縮の場合には、費用対効果が高い。
【0072】
図2では、1つの遠心式圧縮機パッケージ52を用いて初期SMRストリーム74を圧縮すると、圧縮後SMR流79が得られる。遠心圧縮機パッケージは、複数の圧縮段階で構成されていてもよく、任意で一部またはすべての圧縮段階の間で容易に利用可能な冷却媒体(例えば、海水、淡水、エンジンルーム冷却水、空気)を使用するインタークーラーを備えていてもよい。
【0073】
圧縮後SMR流79は、第2外気熱交換器56において、容易に入手可能な冷却媒体(例えば、海水、淡水、エンジンルーム冷却水、空気)を用いて冷却され、より低温の第1蒸気流80を供する。冷媒の組成および圧力、ならびに第2外気熱交換器56で達成される温度に応じて、SMRのいくらかの凝縮が起こり始める可能性がある。
【0074】
より低温の第1蒸気流80は液化熱交換器システム40へ流入し、そこで冷媒が冷却され、少なくとも部分的に凝縮される。冷却済第1SMR蒸気流81は、液化熱交換器システム40の途中の中間温度から取り出され、蒸気-液体分離器58へ流入する。分離器58では、液相SMR流82がパイプライン82を介して排出され得る。
【0075】
その後、フラッシュバルブ59によって液相SMR流82の圧力は低下させることができ、その結果、一部が気化し、それに伴う温度の低下が生じる。膨張済または少なくとも部分気化済液相SMR流83は、熱交換器システム40に送られ得る。熱交換器システム40では、膨張済液相SMR流83自体が気化しつつ、高温流を冷却する。
【0076】
分離器58では、軽質SMR蒸気流84も熱交換器システム40に送られる。図2では、軽質SMR蒸気流84は、中間温度-任意で冷却済第1SMR蒸気流81の取り出し時の温度と同様の温度-で、熱交換器システム40へ流入する。熱交換器システム40において、この軽質SMR蒸気流84は、一部または全部が凝縮するまで冷却され、凝縮済SMR流85として熱交換器システム40を出る。その後圧力は絞り弁61を介して下がり、部分的な気化と温度低下がもたらされることで、膨張済最低温度SMR流86が提供される。膨張済最低温度SMR流86は、SMRシステム200において最も低温のSMR冷媒流である。
【0077】
膨張済最低温度SMR流86は、熱交換器システム40に送り返され、そこで加熱されながら気化し、そうすることで、熱交換器システム40内のより暖かい流れを冷却して、冷却デューティの大部分を提供する。SMR冷媒流86は、膨張済液相SMR流83と合流して単一流を形成し、冷却後蒸気流89として熱交換器システム40を出て冷媒受け取り部51に戻され得る。
【0078】
このようにして、図1の先行技術の配置では、外部冷媒カスケードの要件が削除される。これにより、資本支出とプラント全体のサイズが削減される。SMR蒸気の部分的な凝縮は、外部冷媒カスケードループなしで達成され、その義務をSMR再循環システムのみに移行した。
【0079】
図3は、図2に示したSMR再循環システム200の第1変形例である、より詳細なSMR再循環システム101を示している。第1SMR再循環システム101は、単一の多流式液化熱交換器57(典型的には、ろう付けされたアルミニウムプレート・フィン型熱交換器)を備える。単一の多流式液化熱交換器57内では、冷却(及び圧縮)済BOG流71が、SMR再循環システム200において本明細書で前に述べたより冷たい流れによって凝縮される。
【0080】
図4は、図2に示したSMR再循環システム200の第2変形例SMR再循環システム102を示している。SMR再循環システム102では、液化熱交換器システムが、第1多流式熱交換ユニット64および第2多流式熱交換ユニット62である2つの熱交換器を備える。図4では、熱交換ユニット64および62の外部で冷たい流れの混合が行われている。すなわち、膨張済最低温度SMR流すなわち最低温冷媒流86は、第2ユニット62に送られ、そこで加熱されながら気化を開始し、そうすることで第2ユニット62内の高温流を冷却する。その後膨張済最低温度SMR流86は、膨張済液相SMR流83と合流して合流88を生成する前に、部分高温SMR流87として出て、次に第1ユニット64へ流入して第1ユニット64内の高温流を冷却し、冷却後蒸気流89として第1ユニット64を出て、冷媒受け取り部51に戻される。一方、第1ユニット64からの冷却済BOGは、流れ72として第2冷却器ユニット62へ流入する。
【0081】
なお、第1熱交換ユニット64及び第2熱交換ユニット62は、連続していてもよいし、分離していてもよい。
【0082】
図5は、図4に示したSMR再循環システム102のさらなる変形例である第3変形例SMR再循環システム103を示す。図5では、液化熱交換システムは、第1多流式熱交換ユニット63および第2多流式熱交換ユニット62を備える。図4と比較して、第1ユニット63内では、膨張済液相SMR流83と一部の高温SMR流88とが分離した状態で保たれている。液化熱交換器システムによって提供される第1高温SMR流90および第2高温SMR流91は、第1ユニット63を出た後に蒸気相で結合され、結合された冷却後蒸気流89を形成して冷媒受け取り部51に戻される。
【0083】
図6は、図4に示したSMR再循環システム102の別の変形例である第4変形例SMR再循環システム104を示している。図6では、液化熱交換システムは、第1多流式熱交換ユニット63Aおよび第2多流式熱交換ユニット62を備える。図4と比較して、蒸気-液体分離器58によって提供された軽量SMR蒸気流95は、今度は、低温の第2ユニット62を通過する前に(凝縮済SMR流85として出るために)、高温の第1ユニット63Aへ流入して中間流92を提供する。
【0084】
図7は、図5に示す第3のSMR再循環システム103と、図6に示す第4SMR再循環システム104との組み合わせである、第5変形例SMR再循環システム105を示す。図7において、液化熱交換器システムは、第1多流式熱交換ユニット65および第2多流式熱交換ユニット62を備え、蒸気-液体分離器58によって提供された軽質SMR蒸気流95は、今度は第1の高温ユニット65へ流入して(第2の低温ユニット62を通過して凝縮済SMR流85として出る前に中間流92を提供し)、膨張済液相SMR流83および部分高温SMR流88は、第1のユニット65内で分離された状態に保たれる。液化熱交換器システムから供給された第1高温SMR流93および第2高温SMR流94は、第1ユニット65を出た後に蒸気相で合流して、合流した冷却後蒸気流89を生成し、冷媒受け取り部51に戻される。
【0085】
図8は、図3に示した第1SMR再循環システム101と、図6に示した第4SMR再循環システム104との15の組み合わせである、第6変形例SMR再循環システム106を示している。図8では、液化熱交換器システムは、単一の多流式液化熱交換器66を備え、気液分離器58によって提供された軽質SMR蒸気流95は、今や熱交換器66を完全に通過(して凝縮済SMR流85を提供)する一方、膨張済液相SMR流83は、熱交換器66内の中間位置で冷媒流86と合流して単一の流を形成し、この流れは冷却後蒸気流89として熱交換器66を出て、冷媒受け取り部51に戻される。
【0086】
図9は、第7のSMR変形例の再循環システム107を示しており、図6に示すSMR再循環システム104の変形例であり、液化熱交換器システムの第1の多流路熱交換器63Aが一連の2流路熱交換器に置き換えられている。一連の二流式熱交換器は、依然として、液化熱交換器システムの同じ第1およびより暖かいステージまたはセクションを提供しているが、今度は、好適に協働するように配置された一連の異なる熱交換器を使用している。
【0087】
図9において、低温第1蒸気流80は、後述する流れに対して第1の2流式熱交換器96へ流入して、前述した方法と同じ方法で冷却済第1SMR蒸気流81を提供し、気液分離器58へ通過する。分離器58からは、液相SMR流82がフラッシュバルブ59によって膨張され、少なくとも部分気化済液相SMR流83を提供する。分離器58はまた、軽質SMR蒸気流95を提供し、この蒸気流は第2の2流式熱交換器97へ流入して、図6に議論及び図示したのと同じ第2のユニット62へ流入する前に中間流92を提供する。
【0088】
一方、冷却および圧縮済BOG流71は、第3の二流式熱交換器98へ流入して、低温BOG流72を提供して第2の冷却器ユニット62へ通過させる。
【0089】
図9の第2ユニット62は、上述したのと同様の方法で凝縮済BOG流73及び部分高温SMR流87を提供する。凝縮済BOG流73及び部分高温SMR流87は膨張済液相SMR流83と合流して合流88を生成する。その後合流88は部分流99Aおよび部分流99Bに分割される。部分流99Aは第2熱交換器97へ流入し、部分流99Bは第3熱交換器98へ流入する。それらの出口流が結合して合流100を形成し、この流れが第1熱交換器96へ流入して冷却後蒸気流89として出る。
【0090】
液化熱交換器システムが複数の熱交換器ユニットを含む場合、本発明は、第1ユニットおよび第2ユニットの相対的な位置関係によって限定されず、これらは連続していても分離していてもよい。
【0091】
本発明の各装置において最良の効果を得るために、SMR内の成分の組成および/または比率を変化させることが可能である。また、図3~9に示す例のそれぞれにおいて、SMRの組成が異なることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、特にLNG再液化のための典型的な単一混合冷媒(SMR)サイクルの改良型で、外部冷媒カスケードを必要とせず、混合冷媒システムに遠心式圧縮機を使用することができる。典型的な装置と比較して、本革新は、複雑さを減らし、機器の数を減らし、資本コストを削減することを可能にし、より大きな再液化容量を必要とする用途に適している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】