(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-25
(54)【発明の名称】タイヤのための改善したRFIDデバイス
(51)【国際特許分類】
B60C 19/00 20060101AFI20220317BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20220317BHJP
H01Q 1/40 20060101ALI20220317BHJP
H01Q 9/16 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
B60C19/00 B
G06K19/077 232
G06K19/077 144
G06K19/077 296
G06K19/077 280
H01Q1/40
H01Q9/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021548157
(86)(22)【出願日】2020-02-03
(85)【翻訳文提出日】2021-10-12
(86)【国際出願番号】 IB2020050829
(87)【国際公開番号】W WO2020170057
(87)【国際公開日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】102019000002337
(32)【優先日】2019-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518333177
【氏名又は名称】ブリヂストン ヨーロッパ エヌブイ/エスエイ
【氏名又は名称原語表記】BRIDGESTONE EUROPE NV/SA
【住所又は居所原語表記】Kleine Kloosterstraat 10, B-1932 Zaventem (BE)
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】フランチェスコ ヨツィア
(72)【発明者】
【氏名】セシリア オッキウツィ
(72)【発明者】
【氏名】ガエタノ マロッコ
(72)【発明者】
【氏名】シモーネ ナッピ
【テーマコード(参考)】
3D131
5J046
【Fターム(参考)】
3D131LA20
5J046AB07
5J046QA01
(57)【要約】
本発明は、タイヤ加硫/硬化前又は後にタイヤの内側ライナーに適用するよう設計され、また革新的な可撓性多層構造の平面状構体を備えるパッチRFIDデバイス(1A、1B、2、3)に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ加硫/硬化前又は後にタイヤの内側ライナーに適用するよう設計され、また可撓性多層構造の平面状構体を備えるパッチ無線周波数識別デバイス(1A、1B、2、3)であって、前記平面状構体は、
・基板(12A、12B、22、32)と、
・前記基板(12A、12B、22、32)の第1部分をカバーし、これにより前記第1部分周りに延在する第2部分を露出させたままにする第1絶縁層(13A、13B、23、33)と、
・前記第1絶縁層(13A、13B、23、33)上で互いに接続かつ配設された無線周波数識別チップ(14A、14B、24、34)及び第1アンテナ(15A、15B、25、35)と、
・前記第1アンテナ(15A、15B、25、35)に電磁的に結合され、また前記第1絶縁層(13A、13B、23、33)上で少なくとも部分的に延在する第2アンテナ(11A、11B、21、31A~31B)であって、前記無線周波数識別チップ(14A、14B、24、34)、前記第1アンテナ(15A、15B、25、35)及び前記第2アンテナ(11A、11B、21、31A~31B)が1つの同一平面上に存在し、前記第2アンテナ(11A、11B、21、31A~31B)が無給電放射体である、該第2アンテナ(11A、11B、21、31A~31B)と、
・前記第1絶縁層(13A、13B、23、33)、前記無線周波数識別チップ(14A、14B、24、34)、前記第1アンテナ(15A、15B、25、35)をカバーし、また少なくとも部分的に前記第2アンテナ(11A、11B、21、31A~31B)をカバーする第2絶縁層と
を有する、パッチ無線周波数識別デバイス。
【請求項2】
請求項1記載のパッチ無線周波数識別デバイスにおいて、前記第2アンテナ(11A、11B、21、31A~31B)は、
・前記第1絶縁層(13A、23、33)上で少なくとも部分的に延在し、また前記基板(12A、22、32)の第2部分上で少なくとも部分的に延在し、また前記第2絶縁層によって部分的にカバーされる、又は
・前記第1絶縁層(13A、23、33)上で完全に延在し、また前記第2絶縁層によって完全にカバーされる、パッチ無線周波数識別デバイス。
【請求項3】
請求項2記載のパッチ無線周波数識別デバイスにおいて、前記第2アンテナ(11A、11B、21、31A~31B)は、
・前記第1絶縁層(13A、13B、23、33)上で延在し、また前記第2絶縁層によってカバーされる第1部分(31A)と、
・第2部分(31B)であって、
- 前記第1絶縁層(13B、23、33)上で前記第1部分(31A)から延在し、また前記第2絶縁層によってカバーされる、又は
- 前記基板(12A、22、32)の前記第2部分における前記第1部分(31A)から延在し、また前記第2絶縁層によってカバーされない、該第2部分(31B)と
を有する、パッチ無線周波数識別デバイス。
【請求項4】
請求項1~3のうちいずれか1項記載のパッチ無線周波数識別デバイスにおいて、前記多層平面状構体は、さらに、前記第2絶縁層及び前記基板の前記第2部分をカバーする頂部ゴム層を有し、前記頂部ゴム層は、タイヤの内側ライナーに適用するよう設計されている、パッチ無線周波数識別デバイス。
【請求項5】
請求項1~3のうちいずれか1項記載のパッチ無線周波数識別デバイスにおいて、前記多層平面状構体は、タイヤの内側ライナーに適用するよう設計され、前記内側ライナーが前記第2絶縁層及び前記基板(12A、12B、22、32)の前記第2部分をカバーする、パッチ無線周波数識別デバイス。
【請求項6】
請求項1~3のうちいずれか1項記載のパッチ無線周波数識別デバイスにおいて、さらに、2つまたはそれ以上の層によって形成されるパッチを備え、前記パッチは、前記多層平面状構体をカプセル封入化し、またタイヤの内側ライナーに適用するよう設計される、パッチ無線周波数識別デバイス。
【請求項7】
請求項1~6のうちいずれか1項記載のパッチ無線周波数識別デバイスにおいて、前記第1アンテナ(15A、15B、25、35)は、近接場カプラーとして動作するよう設計され、また前記第2アンテナ(11A、11B、21、31A~31B)は、遠距離場放射アンテナとして動作するよう設計される、パッチ無線周波数識別デバイス。
【請求項8】
請求項1~7のうちいずれか1項記載のパッチ無線周波数識別デバイスにおいて、前記第2アンテナは、蛇行ライン形状の導電性ワイヤによって形成される蛇行ラインアンテナ(11A、11B)である、パッチ無線周波数識別デバイス。
【請求項9】
請求項1~7のうちいずれか1項記載のパッチ無線周波数識別デバイスにおいて、前記第2アンテナ(21、31A~31B)は、
・真直ぐな導電性ワイヤ、又は
・撚った導電性ワイヤのアセンブリ、又は
・撚った導電性ワイヤ及び非導電性ワイヤのアセンブリ
によって形成される、パッチ無線周波数識別デバイス。
【請求項10】
請求項1~9のうちいずれか1項記載のパッチ無線周波数識別デバイスにおいて、前記第1アンテナ(15A、15B、25、35)は2次元折り曲げ構体である、パッチ無線周波数識別デバイス。
【請求項11】
請求項3記載のパッチ無線周波数識別デバイスにおいて、前記第1アンテナ(35)は2次元折り曲げ構体であり、前記第2アンテナ(31A~31B)は、撚った導電性ワイヤのアセンブリ、又は撚った導電性ワイヤ及び非導電性ワイヤのアセンブリによって形成され、
・前記第1アンテナ(35)及び前記第2アンテナの第1部分(31A)の相対部分が前記2つのアンテナ間に電磁的結合を生ずるようにし、
・前記第2アンテナの第1部分(31A)が前記第1アンテナ(35)の両側サイドに位置付けられる2つの端部を有し、また
・前記第2アンテナの第2部分(31B)が前記第1アンテナ(35)から反対方向に延在する2つの真直ぐなアームを有し、各アームは、前記第2アンテナの第1部分(31A)の対応する端部から延在する
ものである、パッチ無線周波数識別デバイス。
【請求項12】
請求項11記載のパッチ無線周波数識別デバイスにおいて、前記第2アンテナ(31A~31B)は、撚った導電性ワイヤ及び非導電性ワイヤのアセンブリによって形成され、
前記多層平面状構体は、さらに、前記無線周波数識別チップ(34)、前記第1アンテナ(35)、前記第1絶縁層(33)、及び少なくとも部分的に基板(32)の第2部分に取り付けられた補強メッシュ(36)を有し、また
前記撚った導電性ワイヤ及び非導電性ワイヤのアセンブリは前記補強メッシュ(36)と織り合わされて、前記補強メッシュ(36)は、前記撚った導電性ワイヤ及び非導電性ワイヤのアセンブリに対して前記第2アンテナの第1部分(31A)及び第2部分(31B)の形状を維持させるものである、パッチ無線周波数識別デバイス。
【請求項13】
請求項9又は10記載のパッチ無線周波数識別デバイスにおいて、前記第2アンテナ(21)は、撚った導電性ワイヤの真直ぐなアセンブリ、又は撚った導電性ワイヤ及び非導電性ワイヤの真直ぐなアセンブリによって形成される、パッチ無線周波数識別デバイス。
【請求項14】
請求項1~13のうちいずれか1項記載のパッチ無線周波数識別デバイスにおいて、前記無線周波数識別チップ(14A、14B、24、34)は、
・パッチ無線周波数識別デバイス(1A、1B、2、3)が埋設されている前記タイヤに割り当てられる一義的な識別子を記憶し、
・前記第2アンテナ(11A、11B、21、31A~31B)及び前記第1アンテナ(15A、15B、25、35)を介して無線周波数識別リーダーからの呼掛け信号を受信し、また
・前記第1アンテナ(15A、15B、25、35)及び前記第2アンテナ(11A、11B、21、31A~31B)を介して後方散乱した前記一義的な識別子を搬送している呼掛け信号を送信する
よう構成される、パッチ無線周波数識別デバイス。
【請求項15】
請求項1~14のうちいずれか1項記載のパッチ無線周波数識別デバイスにおいて、前記無線周波数識別チップ(14A、14B、24、34)は、チップそれぞれに対応する入力インピーダンス及び/又は前記第1アンテナ(15A、15B、25、35)及び前記第2アンテナ(11A、11B、21、31A~31B)の入力インピーダンスのセルフチューニングを実施し、変動する周囲の誘導的/電磁的な条件に対して補償するよう構成される、パッチ無線周波数識別デバイス。
【請求項16】
請求項1~15のうちいずれか1項記載のパッチ無線周波数識別デバイスにおいて、温度値を測定する温度センサを前記無線周波数識別チップ(14A、14B、24、34)に組み込み、また前記前記無線周波数識別チップ(14A、14B、24、34)は、前記第1アンテナ(15A、15B、25、35)及び前記第2アンテナ(11A、11B、21、31A~31B)を介して、前記温度センサが測定した前記温度値を搬送する後方散乱した呼掛け信号を送信するよう構成される、パッチ無線周波数識別デバイス。
【請求項17】
請求項4又は5記載のパッチ無線周波数識別デバイスにおいて、前記第1絶縁層(13A、13B、23、33)は、第1接着材料/層によって前記基板(12A、12B、22、32)に取り付け、また前記頂部ゴム層又は前記内側ライナーは、第2接着材料/層によって前記第2絶縁層に取り付ける、パッチ無線周波数識別デバイス。
【請求項18】
請求項1~17のうちいずれか1項記載のパッチ無線周波数識別デバイスにおいて、保護樹脂を、
・前記無線周波数識別チップ(14A、14B、24、34)及び前記第1アンテナ(15A、15B、25、35)と、
・前記第2絶縁層と
の間に介在させる、パッチ無線周波数識別デバイス。
【請求項19】
請求項1~18のうちいずれか1項記載のパッチ無線周波数識別デバイスにおいて、前記基板(12A、12B、22、32)は、ゴム、又は1つ若しくはそれ以上のポリマー材料、又は紙、又は布地/織物で作成される、パッチ無線周波数識別デバイス。
【請求項20】
請求項1~19のうちいずれか1項記載のパッチ無線周波数識別デバイスを装備したタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤに使用するための改善した無線周波数識別(RFID)デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの分野において、製造、使用及び廃棄中におけるタイヤの自動化したかつ一義的な識別を可能にする解決策に対しての必要性が感じられる。
【0003】
例えば、とくに、タイヤ製造に言及すると、タイヤの自動化したかつ一義的な識別は、製造プロセス及びロジスティクス作業を最適化し、自動制御システムの使用を促進し、効率的なタイヤ追跡/探知を実施し、またそれ故に、洗練されたスマートタイヤ工場を実現することを可能にする。
【0004】
この文脈において、タイヤ生産及び個別タイヤの生産履歴を管理するようタイヤに適用したバーコードの使用は知られている。しかし、この解決法はその限界があり、これはすなわち、印刷したバーコードには、タイヤの製造及び/又は通常作業中に消滅又は破損し、したがって判読不能、又はいずれにせよ読取り困難になるリスクがあるからである。
【0005】
このような限界を克服するため、特許文献1(米国公開特許公報第2016/0092814号)は、無線周波数識別子(RFID)タグに基づくタイヤ識別システムを用いることを提案している。とくに、特許文献1は、RFIDタグを用いるタイヤ生産管理システムを開示し、運用にあたり、タイヤ製造プロセスで完成タイヤを生産する前にRFIDタグをタイヤに取り付けるステップと、各製造プロセスにおいてタイヤに取り付けたタイヤタグを認識するステップと、個別タイヤにおける製造プロセスによる管理情報を管理するステップと、を備える。特許文献1によるタイヤ生産管理システムは、RFIDタグ取付け部分と、複数のRFIDリーダーと、それぞれに対応するプロセスのための複数の管理端末と、ロット管理サーバーと、タイヤ生産管理サーバーと、を備える。
【0006】
さらに、特許文献2(伊国特許公開第102016000009727号)は、設定可能かつ調整可能な無線周波数無線センサデバイスを開示しており、このデバイスは、有利には、タイヤ製造中、ロジスティクス作業中、及び通常運用中に、タイヤを自動識別するようタイヤに一体化/内蔵、又は適用することができる。さらに、特許文献2によるこの設定可能かつ調整可能な無線周波数無線センサデバイスは、都合よくは、温度データ又は圧力データのような診断データをも提供するよう構成することができる。
【0007】
特許文献3(国際公開第2018/104621号)は、無線周波数トランスポンダーを有するゴムパッチ、及びこのようなゴムパッチであって、第1レイヤ及び第2レイヤがある、該ゴムパッチを有するタイヤを製造する方法を開示し、この方法は、第1レイヤを成形及び加硫処理するステップであって、第1レイヤの外表面は無線周波数トランスポンダーを収容するに適した窪みを有する、該ステップと、前記窪みにトランスポンダーを配置するステップと、次に第2レイヤを位置決め及び加硫処理して前記トランスポンダーを2つのレイヤ間に埋設するステップと、を備える。
【0008】
これに関連して、RFIDタグ(一般的には剛性金属体)をタイヤ(それに反して弾性かつ極めて可撓性が高い本体)内に埋設することは、タイヤ製造(例えば、タイヤ加硫処理/硬化)中、及び通常動作中にタイヤ又はそのコードに対してダメージを与える(例えば、タイヤレイヤ分離/層間剥離、コード断裂、等々を生ずる)おそれがあり、その後に安全性リスクを伴うことは注目に値する。
【0009】
特許文献4(米国公開特許公報第2012/152028号)は、無線センサネットワーク及び同ネットワークを使用するセンサノードのための可撓性PCBを使用するスリムな自己給電式電力供給体、並びにその作製方法を開示している。
【0010】
特許文献5(中国特許公開第201489565号)は、基板、アンテナ及びチップを備える可撓性UHF周波数レンジRFIDラベルを開示しており、このRFIDラベルにおいて、基板は柔軟な合成樹脂体であり、アンテナはプリント回路であり、また第1アンテナ及び第2アンテナを有する。
【0011】
特許文献6(国際公開第2016/193457号)は、放射アンテナ及び電子部分との電気機械的接続なしにアセンブリに対応する無線周波数トランスポンダーを開示しており、この放射アンテナは、ダイポールアンテナを形成する単一ストランドのコイルばねである。
【0012】
特許文献7(欧州特許第1459911号)は、タグをタイヤの内面に取り付ける方法を開示しており、この方法は、タグ又はプレマスクフィルムを感圧式接着剤により側面にコーティングするステップと、タグ又はプレマスクのその側面をタイヤの内面に付着させるステップと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国公開特許公報第2016/0092814号明細書
【特許文献2】伊国特許公開第102016000009727号明細書
【特許文献3】国際公開第2018/104621号パンフレット
【特許文献4】米国公開特許公報第2012/152028号明細書
【特許文献5】中国特許公開第201489565号明細書
【特許文献6】国際公開第2016/193457号パンフレット
【特許文献7】欧州特許第1459911号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本出願人は、タイヤに使用する改善したRFIDデバイスを開発するために綿密な研究を行ってきており、この結果として、本発明に想到した。
【0015】
したがって、本発明の全体的な目的は、現行既知の解決法よりも向上した性能及び特徴を有する、タイヤのためのRFIDデバイスを提供することにある。
【0016】
さらに、本発明の特別な目的は、タイヤ又はそのコードにダメージを与えるのを回避するRFIDデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
これら及び他の目的は本発明によって達成され、本発明は、特許請求の範囲で定義されるように、タイヤ用のパッチ無線周波数識別(RFID)デバイスに関する。
【0018】
より具体的には、本発明は、タイヤ加硫処理/硬化前又は後にタイヤの内側ライナーに適用するよう設計され、また可撓性多層構造の平面状構体を備えるパッチRFIDデバイスに関し、前記平面状構体は、
・基板と、
・前記基板の第1部分をカバーし、これにより前記第1部分周りに延在する第2部分を露出させたままにする第1絶縁層と、
・前記第1絶縁層上で互いに接続かつ配設されたRFIDチップ及び第1アンテナと、
・前記第1アンテナに電磁的に結合され、また前記第1絶縁層上で少なくとも部分的に延在する第2アンテナであって、前記RFIDチップ、前記第1アンテナ及び前記第2アンテナが1つの同一平面上に存在する、該第2アンテナと、
・前記第1絶縁層、前記RFIDチップ、前記第1アンテナをカバーし、また少なくとも部分的に前記第2アンテナをカバーする第2絶縁層と、
を有するものとする。
【0019】
都合よくは、前記第2アンテナは、
・前記第1絶縁層上で少なくとも部分的に延在し、また前記基板の第2部分上で少なくとも部分的に延在し、また前記第2絶縁層によって部分的にカバーされる、又は
・前記第1絶縁層上で完全に延在し、また前記第2絶縁層によって完全にカバーされる、のいずれかとする。
【0020】
より都合よくは、前記第2アンテナは、
・前記第1絶縁層上で延在し、また前記第2絶縁層によってカバーされる第1部分と、
・第2部分であって、
- 前記第1絶縁層上で前記第1部分から延在し、また前記第2絶縁層によってカバーされる、又は
- 前記基板の前記第2部分における前記第1部分から延在し、また前記第2絶縁層によってカバーされない、該第2部分と
を有するものとする。
【0021】
都合よくは、前記多層平面状構体は、さらに、前記第2絶縁層及び前記基板の前記第2部分を(またさらに、基板の第2部分上に延在する場合には、第2アンテナの第2部分も)カバーする頂部ゴム層を有し、前記頂部ゴム層は、タイヤの内側ライナーに適用するよう設計されるものとする。
【0022】
代案として、前記多層平面状構体は、タイヤの内側ライナーに適用するよう設計され、前記内側ライナーが前記第2絶縁層及び前記基板の前記第2部分(またさらに、基板の第2部分上に延在する場合には、第2アンテナの第2部分)をカバーするものとする。
【0023】
それとは別に、パッチRFIDデバイスは、都合よくは、2つまたはそれ以上の層によって形成されるパッチを備え、前記パッチは、前記多層平面状構体をカプセル封入化し、またタイヤの内側ライナーに適用するよう設計されるものとする。
【0024】
都合よくは、前記第1アンテナは、近接場カプラーとして動作するよう設計され、また前記第2アンテナは、遠距離場放射アンテナとして動作するよう設計されるものとする。
【0025】
好適には、前記第2アンテナは、都合よくは、
・蛇行ライン形状の導電性ワイヤ、又は
・真直ぐな導電性ワイヤ、又は
・撚った導電性ワイヤのアセンブリ、又は
・撚った導電性ワイヤ及び非導電性ワイヤのアセンブリ
によって形成することができる無給電放射体とする。
【0026】
好適には、前記第1アンテナは2次元(2D)折り曲げ構体(例えば、ループ状又は円形又は長方形若しくは方形又は蛇行ライン状又はスパイラル状を有する)とする。
【0027】
都合よくは、前記第2アンテナは、撚った導電性ワイヤのアセンブリ、又は撚った導電性ワイヤ及び非導電性ワイヤのアセンブリによって形成され、
・前記第1アンテナ及び前記第2アンテナの第1部分の相対部分が前記2つのアンテナ間に電磁的結合を生ずるようにし、
・前記第2アンテナの第1部分が前記第1アンテナの両側サイドに位置付けられる2つの端部を有し、また
・前記第2アンテナの第2部分が前記第1アンテナから反対方向に延在する2つの真直ぐなアームを有し、各アームは、前記第2アンテナの第1部分の対応する端部から延在するものである。
【0028】
より都合よくは、前記第2アンテナは、撚った導電性ワイヤ及び非導電性ワイヤのアセンブリによって形成され、前記多層平面状構体は、さらに、前記RFIDチップ、前記第1アンテナ、前記第1絶縁層、及び少なくとも部分的に基板の第2部分に取り付けられた補強メッシュを有し、また前記撚った導電性ワイヤ及び非導電性ワイヤのアセンブリは前記補強メッシュと織り合わされて、前記補強メッシュは、前記撚った導電性ワイヤ及び非導電性ワイヤのアセンブリに対して前記第2アンテナの第1部分及び第2部分の形状を維持させるものである。
【0029】
そうでない場合、前記第2アンテナは、都合よくは、撚った導電性ワイヤの真直ぐなアセンブリ、又は撚った導電性ワイヤ及び非導電性ワイヤの真直ぐなアセンブリによって形成することができる。
【0030】
都合よくは、前記RFIDチップは、
・パッチRFIDデバイスが埋設されている前記タイヤに割り当てられる一義的な識別子を記憶し、
・前記第2アンテナ及び前記第1アンテナを介してRFIDリーダーからの呼掛け(インタロゲーション)信号を受信し、また
・前記第1アンテナ及び前記第2アンテナを介して後方散乱した前記一義的な識別子を搬送している呼掛け(インタロゲーション)信号を送信する
よう構成される。
【0031】
好適には、前記RFIDチップは、チップそれぞれに対応する入力インピーダンス及び/又は前記第1アンテナ及び前記第2アンテナの入力インピーダンスのセルフチューニングを実施し、変動する周囲の誘導的/電磁的な条件に対して補償するよう構成される。
【0032】
好適には、温度値を測定する温度センサを前記RFIDチップに組み込み、また前記RFIDチップは、前記第1アンテナ及び前記第2アンテナを介して、前記温度センサが測定した前記温度値を搬送する後方散乱した呼掛け信号を送信するよう構成される。
【0033】
都合よくは、前記第1絶縁層は、第1接着材料/層によって前記基板に取り付け、また前記頂部ゴム層又は前記内側ライナーは、第2接着材料/層によって前記第2絶縁層に取り付ける。
【0034】
都合よくは、保護樹脂を、
・前記RFIDチップ及び前記第1アンテナと、
・前記第2絶縁層と
の間に介在させる。
【0035】
都合よくは、前記基板は、ゴム、又は1つ若しくはそれ以上のポリマー材料、又は紙、又は布地/織物で作成される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
本発明をよりよく理解するため、純粋に非限定的実施例であることを意図する好適な実施形態を以下に添付図面につき説明する。
【
図1A】本発明の2つの代替的実施形態による第1パッチRFIDデバイスを概略的に示す。
【
図1B】本発明の2つの代替的実施形態による第2パッチRFIDデバイスを概略的に示す。
【
図2】本発明の異なる説明上の実施形態による第3パッチRFIDデバイスを概略的に示す。
【
図3】本発明のさらに異なる説明上の実施形態による第4パッチRFIDデバイスを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下の説明は、当業者が本発明を作成しまた使用できるよう提示する。図示及び記載した実施形態に対する様々な変更も、特許請求の範囲で請求する本発明の範囲から逸脱することなく当業者には容易に理解されるであろう。したがって、本発明は、図示及び記載の実施形態に限定することを意図せず、本明細書に記載した、また特許請求の範囲で定義した原理及び特徴に一致する最も幅広い保護範囲に従うものである。
【0038】
本発明は、可撓性多層構造の平面状構体を備えるパッチ無線周波数識別(RFID)デバイスに関し、前記平面状構体は、
・所定材料で作成される(好適には、例えば、内側ライナータイプのゴムで作成される、しかし、ポリマー材料、紙、布地/織物、等々のような他の材料でさえも都合よく使用することができる)基板(平面状かつ可撓性)と、
・前記基板の第1部分をカバーし、これにより前記基板の第1部分周りに延在する基板の第2部分を露出させたままにする第1(平面状かつ可撓性)絶縁層と、
・前記第1絶縁層上で互いに接続かつ配設されたRFIDチップ及び第1(可撓性)アンテナと、
・前記第1アンテナに電磁的に結合(好適には、誘導的に結合)され、また前記第1絶縁層上で少なくとも部分的に延在する第2(可撓性)アンテナ(この場合、第1アンテナは、都合よくは、近接場カプラーとして動作するよう設計され、また前記第2アンテナは、遠距離場放射アンテナとして動作するよう設計される)と、
・前記第1絶縁層、前記RFIDチップ、前記第1アンテナをカバーし、また少なくとも部分的に前記第2アンテナをカバーする第2(平面状かつ可撓性)絶縁層と
を有する。
【0039】
とくに、前記RFIDチップ、前記第1アンテナ及び前記第2アンテナは、ほぼ1つの同一平面上に位置する。
【0040】
都合よくは、前記第2アンテナは、
・前記第1絶縁層上で少なくとも部分的に延在し、また前記基板の第2部分上で少なくとも部分的に延在し、また前記第2絶縁層によって部分的にカバーされる、又は
・前記第1絶縁層上で完全に延在し、また前記第2絶縁層によって完全にカバーされるの、いずれかとする。
【0041】
より具体的には、前記第2アンテナは、
・前記第1絶縁層上で延在し、また前記第2絶縁層によってカバーされる第1部分と、
・第2部分であって、
- 前記第1絶縁層上で前記第1部分から延在し、また前記第2絶縁層によってカバーされる、又は
- 前記基板の前記第2部分における前記第1部分から延在し、また前記第2絶縁層によってカバーされない、
のいずれかとする該第2部分と、
を有する。
【0042】
好適には、前記多層平面状構体は、さらに、前記第2絶縁層及び前記基板の前記第2部分を(並びに前記基板の前記第2部分上に延在する場合には、前記第2アンテナの第2部分も)カバーする頂部(平面状かつ可撓性)ゴム層を有し、前記頂部ゴム層は、タイヤの内側ライナーに適用するよう設計される。
【0043】
代案として、前記多層平面状構体は、前記頂部ゴム層を有することはなく、またタイヤの内側ライナーに適用するよう設計され、これにより内側ライナーは、前記第2絶縁層及び前記基板の前記第2部分を(並びに前記基板の前記第2部分上に延在する場合には、前記第2アンテナの第2部分も)カバーし、したがって、前記頂部ゴム層として作用する。
【0044】
それとは別に、パッチRFIDデバイスは、都合よくは、2つまたはそれ以上の層によって形成されるパッチを備えることができ、前記パッチは前記多層平面状構体をカプセル封入化し、またタイヤの内側ライナーに適用するよう設計される。この場合、前記多層平面状構体は、都合よくは、さらに、1つ又はそれ以上の追加層すなわち、
・タイヤ転動中の機械的応力を吸収する柔軟材料で作成され、及び/又は
・ゴムに対して付着することができる、及び/又は
・混入した空気を逃がすことができるとともに、ゴム流動を防止し、及び/又は
・電磁的特性を有し、これによりRFID通信性能(例えば、インピーダンス整合及び損失の観点で)を最適化する
ような、1つ又はそれ以上の追加層を有することができる。
【0045】
上述したように、本発明によるパッチRFIDデバイスは、好適には、タイヤ加硫処理/硬化前にタイヤの内側ライナーに適用するよう設計される(しかし、パッチRFIDデバイスは、都合よくは、タイヤ加硫処理/硬化後にタイヤの内側ライナーに適用できることも注目に値する)。可撓性多層構造の平面状構体は、タイヤの通常動作/使用中にも、パッチRFIDデバイスの内側ライナーに対して極めて強力な一体付着をもたらす。
【0046】
このことに関連して、上述したように、従来型の剛性RFIDタグは、タイヤ内に埋設されるとき、タイヤ製造中(例えば、タイヤ加硫/硬化中)に及び通常動作中にも、タイヤ又はタイヤのコードに対してダメージを与え、これに関連する安全性リスクがあることも注目に値する。これに代わり、本発明によるパッチRFIDデバイスの可撓性多層構造の平面状構体は、(とくに、極めて減少した標準寸法/厚さ及びその可撓性に起因して)タイヤ又はタイヤのコードに対するダメージを回避する。
【0047】
さらに、RFIDチップ、第1アンテナ、及び(少なくとも)第2アンテナの第1部分は、第1絶縁層に固着的/一体的に取り付け/形成しているため、タイヤの加硫処理/硬化中に、及びその後の通常動作/使用中に第1アンテナ及び第2アンテナの第1部分の相対位置は固定された状態に維持され(すなわち、第1アンテナと第2アンテナの第1部分との間の結合ジオメトリは固定された状態に維持され)、これにより2つのアンテナの相対変位に起因するRFID通信性能の低下を防止する。
【0048】
さらに、ゴム基板の使用、及び存在する場合、可撓性多層構造の平面状構体における頂部ゴム層の使用によれば、タイヤの加硫処理/硬化後に、パッチRFIDデバイスを内側ライナーに強固に取り付けることを可能にし、2つのゴム層(すなわち、ゴム基板及び頂部ゴム層)内に空気が存在することなく、RFIDチップ及び第1及び第2のアンテナをカプセル封入化する。
【0049】
さらに、パッチRFIDデバイスにおけるゴム基板の使用は、現行のタイヤ製造プロセス/機械加工に合致し、またタイヤ組立生産効率を向上させることができる(とりわけ、内側ライナーが頂部ゴム層として作用するときに)。
【0050】
都合よくは、第1絶縁層は第1接着材料/層によって基板に取り付け、また内側ライナーの頂部ゴム層は第2接着材料/層によって第2絶縁層に取り付ける。
【0051】
好適には、付着を一層補強するため、保護樹脂を、
・RFIDチップ及び第1アンテナ(並びに、都合よくは、さらに(少なくとも)第2アンテナの第1部分)と、
・第2絶縁層と
の間に介在させる。
【0052】
都合よくは、第1及び第2の絶縁層は、可塑性ポリマー(例えば、ポリエチレン・)テレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、二軸延伸ポリエチレン・テレフタレート(BoPET、例えば、マイラー)、カプトン、等々)のような絶縁材料で作成するが、しかし、紙及び天然又は合成繊維のような他の絶縁材料さえも都合よく使用することができる。
【0053】
好適には、第2アンテナは無給電放射体とする。
本発明の第1の好適な実施形態によれば、第2アンテナは、都合よくは、蛇行ライン形状の金属又は金属化ワイヤ(例えば、銅、スチール、銀、アルミニウム、等々で作成される-この蛇行ライン形状の金属又は金属化ワイヤは、都合よくは、ポリウレタンのような絶縁性ポリマー材料でエナメル加工することができる)のような蛇行ライン形状の導電性ワイヤによって形成される蛇行ラインアンテナ(МLA)とすることができる。このことは、低ゲージ/厚さのパッチRFIDデバイスにすることができ、これによりタイヤ組み立てを容易にし、混入空気を回避し、またスクラップを減らすことができるとともに、タイヤの耐久性がパッチRFIDデバイスの低ゲージ/厚さによって影響を受けない。この第1の好適な実施形態は、長い読取り距離をもたらす。さらに、第2アンテナの直径を増加させる(しかし、そのワイヤアンテナ形態を常に維持する)ことによって、主に平面内における第2アンテナの疲労抵抗(例えば、タイヤ構築/硬化ステップにおける牽引に対する)も増大させることができるのは注目に値する。
【0054】
その代わり、本発明の第2の好適な実施形態によれば、前記第2アンテナは、
a) 真直ぐな金属又は金属化したワイヤ(例えば、銅、スチール、銀、アルミニウム、等々で作成される-この金属又は金属化ワイヤは、都合よくは、ポリウレタンのような絶縁性ポリマー材料でエナメル加工することができる)のような真直ぐな導電性ワイヤ、又は
b) 撚った金属又は金属化したワイヤ(随意的に、ポリウレタンのような絶縁性ポリマー材料でエナメル加工される)アセンブリのような撚った導電性ワイヤのアセンブリ、又は
c) 撚った繊維及び金属/金属化ワイヤ(随意的に、ポリウレタンのような絶縁性ポリマー材料でエナメル加工される)のアセンブリのような撚った導電性ワイヤ及び非導電性ワイヤのアセンブリ
によって形成できるものとする。
【0055】
とくに上述した選択肢b)及びc)につき説明すると、第2アンテナは、都合よくは、
b1) 撚った導電性ワイヤの真直ぐなアセンブリ、又は
c1) 撚った導電性ワイヤ及び非導電性ワイヤの真直ぐなアセンブリ
を有することができる、又は
b2) 撚った導電性ワイヤのアセンブリであり、
- 電磁的(好適には、誘導的)に結合を生ずるよう第1アンテナを部分的に包囲し(例えば、U字状を形成することによって)、また第1アンテナの両側サイドに位置付けられる2つの端部を有する、第2アンテナの第1部分と、
- 第1アンテナから反対方向に延在する2つの真直ぐなアームを有する第2アンテナの第2部分であって、各アームが第2アンテナの第1部分の対応する端部から延在する、該第2アンテナの第2部分と
を形成する、該撚った導電性ワイヤのアセンブリ、又は
c2) 撚った導電性ワイヤ及び非導電性ワイヤのアセンブリであり、
- 電磁的(好適には、誘導的)に結合を生ずるよう第1アンテナを部分的に包囲し(例えば、U字状を形成することによって)、また第1アンテナの両側サイドに位置付けられる2つの端部を有する、第2アンテナの第1部分と、
- 第1アンテナから反対方向に延在する2つの真直ぐなアームを有する第2アンテナの第2部分であって、各アームが第2アンテナの第1部分の対応する端部から延在する、該第2アンテナの第2部分と
を形成する、該撚った導電性ワイヤ及び非導電性ワイヤのアセンブリ、
を有するものとすることができる。
【0056】
とくに、第2アンテナに対して選択肢c1) 又はc2) を採用する場合、撚った導電性ワイヤ及び非導電性ワイヤのアセンブリに上述した形状(すなわち、選択肢c1の真直ぐな形状)又は選択肢c2のU字プラス2つの真直ぐなアームを持たせるよう、補強メッシュ(織物メッシュのような)を使用すると都合がよい。より詳細には、補強メッシュは、RFIDチップ、第1アンテナ、第1絶縁層、及び少なくとも部分的に基板の第2部分に都合よく取り付けられ、また第2アンテナを形成する撚った導電性ワイヤ及び非導電性ワイヤのアセンブリは、都合よくは、補強メッシュに折り合わせ、該補強メッシュが撚った導電性ワイヤ及び非導電性ワイヤのアセンブリを以下のようにさせる、すなわち、
c1) 真直ぐな形状を持たせる、又は
c2) -第1アンテナを部分的に包囲し、また第1アンテナの両側サイドに位置付けられる2つの端部を有する第1部分と、
-第1アンテナから反対方向に延在する2つの真直ぐなアームを有する第2部分であって、各アームが第1部分の対応する端部から延在する、該第2部分と
を形成させる。
【0057】
本発明の第2の好適な実施形態は、第2アンテナの直径が小さくても第2アンテナのすべての方向における疲労抵抗を増大させることができる(このことは、タイヤ構築/硬化ステップにおいて特に有利である)。さらに、この第2の好適な実施形態は、タイヤの通常動作/使用中におけるアセンブリの疲労抵抗を増大させることができる。
【0058】
より全体的には、第2の好適な実施形態の使用は、以下のこと、すなわち、
・第1実施形態によるMLAに比べると、小さい曲率半径での脆弱ポイントを回避し、これにより第2アンテナの疲労抵抗を増大する(タイヤ構築/硬化ステップ中及びタイヤの通常動作/使用中の双方において)、
・RFIDタグの生産性(すなわち、より迅速な生産)を向上する、及び
・読取り距離に関してより安定したジオメトリ、及びひいてはより安定した性能を得る
ことを可能にする。
【0059】
好適には、前記第1アンテナは2次元(2D)折り曲げ構体とする。
【0060】
上述したことから、2つのアンテナの相対位置(とくに、第1アンテナの位置及び第2アンテナの第1部分の位置)が相互電磁的結合を達成できる場合には、第1アンテナ及び第2アンテナ(第1アンテナに交差すらできる)として、異なる形状(例えば、ループ状、円形、長方形、方形、蛇行ライン状、スパイラル状、等々)が有利に活用できることは当業者には即座に分かるであろう。
【0061】
都合よくは、第1アンテナは、エッチング技術を第1絶縁層に適用することによって作成し、またフリップチップ結合によりRFIDチップに接続する。
【0062】
都合よくは、前記RFIDチップは、
・パッチRFIDデバイスが埋設されている前記タイヤに割り当てられる一義的な識別子を記憶し、
・前記第2アンテナ及び前記第1アンテナを介してRFIDリーダーからの呼掛け信号を受信し、また
・前記第1アンテナ及び前記第2アンテナを介して後方散乱した前記一義的な識別子(及び都合よくは、さらなる追加データ)を搬送している呼掛け信号を送信する
よう構成される。
【0063】
好適には、前記RFIDチップは、入力インピーダンス及び/又は前記第1アンテナ及び前記第2アンテナの入力インピーダンスのセルフチューニングを実施し、変動する周囲の誘導的/電磁的な条件に対して補償するよう構成される。このようにして、パッチRFIDデバイスは、それ自体を周囲の誘導的/電磁的条件に適応させる(例えば、それ自体を埋設した特定タイヤに適応させる)ことができ、これによりそのRFID通信性能(例えば、読取り距離の観点から)を最大化することができる。RFIDチップのセルフチューニング能力により、チップ自体を異なるタイプのタイヤに適応させることができる単一モデルのパッチRFIDデバイスを設計及び作成することを可能にする。換言すれば、RFIDチップのセルフチューニング能力は、異なるモデル/タイプのタイヤに依存して異なる形状及び長さを有するアンテナを設計及び作成することを回避することができる。
【0064】
さらに、RFIDチップは、好適には、それに内蔵した温度センサを有するものとする。このようにして、使用にあたり、RFIDリーダーによる読取りを受けるとき、パッチRFIDデバイスは、埋設されているタイヤの一義的識別子に加え、さらにRFIDチップに内蔵された温度センサが測定した温度値も供給することができる。
【0065】
パッチRFIDデバイスの寸法に関しては、
・基板は、都合よくは、0.1~1.0mmの間、好適には、0.4~0.6mmの間より成る厚さを有することができる、
・第1及び第2の絶縁層それぞれは、0.001~0.01mmの間、好適には、0.002~0.005mmの間より成る厚さを有することができる、
・随意的な頂部ゴム層は、都合よくは、0.1~1.0mmの間、好適には、0.5~1mmの間より成る厚さを有することができる。
【0066】
都合よくは、第1及び第2の絶縁層は、ゴムを第1及び第2の絶縁層に貫入させる(ゴム基板から頂部ゴム層又はタイヤの内部ライナーに向かって、及びその逆向きに)1つ又はそれ以上の孔を装備することができ、これによりパッチRFIDデバイスをより安定したものにすることができる。
【0067】
本発明をより良く理解するため、
図1A及び1Bは、本発明の2つの代替的実施形態による2つのパッチRFIDデバイスを概略的に示す。とくに、
図1A及び1Bそれぞれは、
・第1パッチRFIDデバイス(
図1Aで全体として参照符号1Aにより示す)であって、第2アンテナとして第1MLA(
図1Aで参照符号11Aにより示す)を装備し、この第1MLA11Aは、第1絶縁層(
図1Aで参照符号13Aにより示す)上において部分的に延在し、また基板(
図1Aで参照符号12Aにより示す)上において部分的に延在する、該第1パッチRFIDデバイス、及び
・第2パッチRFIDデバイス(
図1Bで全体として参照符号1Bにより示す)であって、第2アンテナとして第2MLA(
図1Bで参照符号11Bにより示す)を装備し、この第2MLA11Bは、第1絶縁層(
図1Aで参照符号13Bにより示す)上において全体的に延在する、該第2パッチRFIDデバイス
それぞれの頂面図を示す。
【0068】
このことに関連して、説明を分かり易くするため、
図1A及び1Bには第2絶縁層及び頂部ゴム層は示さず、基板(
図1Aでは参照符号12A、及び
図1Bでは参照符号12Bにより示す)、第1絶縁層13A、13B、RFIDチップ(
図1A及び1Bにおいてそれぞれ14A及び14Bによって示す)、及び第1アンテナ(
図1A及び1Bにおいてそれぞれ15A及び15Bによって示す)がはっきりと見えるようにしていることに留意するのは重要である。
【0069】
さらに、
図2及び3は、本発明の教示に基づくパッチRFIDデバイスにおける2つの他の非限定的実施例を概略的に示す。とくに、
図2及び3は、
・第3パッチRFIDデバイス(
図2で全体として参照符号2により示す)であって、第2アンテナとして真直ぐな無給電放射体(
図2で参照符号21により示す)を装備した、該第3パッチRFIDデバイス、及び
・第4パッチRFIDデバイス(
図3で全体として参照符号3により示す)であって、撚った導電性ワイヤ及び非導電性ワイヤのアセンブリによって形成した第2アンテナを装備した、該第4パッチRFIDデバイス
それぞれの頂面図を示す。
【0070】
さらに、
図2及び3に関連して、説明を分かり易くするため、第2絶縁層及び頂部ゴム層は示さず、基板(
図2及び3ではそれぞれ参照符号22、32により示す)、第1絶縁層(
図2及び3ではそれぞれ参照符号23、33により示す)、RFIDチップ(
図2及び3においてそれぞれ24及び34によって示す)、及び第1アンテナ(
図2及び3においてそれぞれ25及び35によって示す)がはっきりと見えるようにしていることに留意するのは重要である。
【0071】
とくに
図3につき説明すると、第4パッチRFIDデバイス3における第2アンテナは、
・第1アンテナ35の周りを部分的に包囲して、これと電磁的(好適には、誘導的)結合を生ずるようにしたU字状部分31Aであって、第1アンテナ35の両側サイドに位置付けられる2つの端部を有する、該U字状部分31Aと、
・第1アンテナ35から互いに反対方向に延在する2つの真直ぐなアーム31Bであって、各々はU字状部分31Aの対応する端部から延在する、該アーム31Bと
を備え、
U字状部分31A及び2つの真直ぐなアーム31Bは、撚った導電性ワイヤ及び非導電性ワイヤの1つの同一アセンブリによって形成され、撚った導電性ワイヤ及び非導電性ワイヤのアセンブリは、補強メッシュ36と織り合わされて、この補強メッシュは、
・U字状部分がそのU字形状を有しかつ維持し、また
・2つの真直ぐなアーム31Bがその真直ぐな形状を有しかつ維持する
ようにさせるものである。
【0072】
第3及び第4のパッチRFIDデバイス2及び3の代替的バージョンによれば、第2アンテナ(真直ぐな無給電放射体によって又は撚った導電性ワイヤ及び非導電性ワイヤのアセンブリによってそれぞれ形成される)は、都合よくは、この場合、より大きな平面状サイズを有する第1絶縁層上において全体的に延在することができ(さらに、第2アンテナは、やはりより大きな平面状サイズを有する第2絶縁層によって完全にカバーされる)。
【0073】
より全体的には、第1絶縁層と第2絶縁層(対応するより大きい又はより小さい平面状サイズを有する)との間に完全に又は部分的に挟持される第2アンテナの使用には賛否両論がある。すなわち、より大きい平面状サイズを有し、また両絶縁層間に完全に挟持される第2アンテナを有する第1及び第2の絶縁層の使用は、この利点が多層平面状構体の可撓性を僅かに低下させる犠牲を払うことになるにしても、第2アンテナをより効果的に保護すること可能にする。他方、第1及び第2の絶縁層に対してより小さい平面状サイズを使用し、この場合、第2アンテナが第1及び第2の絶縁層間に部分的に挟持され、また基板と頂部ゴム層/タイヤ内側ライナーとの間に部分的に挟持されることは、多層平面状構体の可撓性を増大させることができる(ただし残念なことに、第1及び第2の絶縁層で形成されるサンドイッチと、基板及び頂部ゴム層/タイヤ内側ライナーによって形成されるサンドイッチとの間の端縁における第2アンテナの脆弱性をより高める犠牲を払うことになり得る)。
【0074】
上述したことから、本発明の技術的利点及び革新的特徴は当業者であれば即座に分かるであろう。
【0075】
とくに、本発明は、概して、現在既知の解決法と比べると向上した性能及び特徴を有する、またとくに、タイヤ又はタイヤコードに損傷を引き起こすことを回避するタイヤのためのパッチRFIDデバイスを提供することを指摘するのは重要である。
【0076】
さらにまた、本発明、及び本発明の特別な随意的特徴における多くのさらなる技術的利点を詳細に説明してきた。
【0077】
結論として、多くの変更及び改変を本発明に加えることができるのは明らかであり、これら変更及び改変のすべては、特許請求の範囲で定義される本発明の範囲内にある。
【国際調査報告】