IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 石薬集団中奇製薬技術(石家庄)有限公司の特許一覧

特表2022-519974FXR作動薬の固体形態、結晶形態、結晶体A、その調製方法および応用
<>
  • 特表-FXR作動薬の固体形態、結晶形態、結晶体A、その調製方法および応用 図1
  • 特表-FXR作動薬の固体形態、結晶形態、結晶体A、その調製方法および応用 図2
  • 特表-FXR作動薬の固体形態、結晶形態、結晶体A、その調製方法および応用 図3
  • 特表-FXR作動薬の固体形態、結晶形態、結晶体A、その調製方法および応用 図4
  • 特表-FXR作動薬の固体形態、結晶形態、結晶体A、その調製方法および応用 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-28
(54)【発明の名称】FXR作動薬の固体形態、結晶形態、結晶体A、その調製方法および応用
(51)【国際特許分類】
   C07D 413/14 20060101AFI20220318BHJP
   A61K 31/4704 20060101ALI20220318BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20220318BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
C07D413/14 CSP
A61K31/4704
A61P1/16
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021529762
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(85)【翻訳文提出日】2021-07-26
(86)【国際出願番号】 CN2019120992
(87)【国際公開番号】W WO2020108485
(87)【国際公開日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】201811418346.8
(32)【優先日】2018-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513161933
【氏名又は名称】石薬集団中奇製薬技術(石家庄)有限公司
【氏名又は名称原語表記】CSPC ZHONGQI PHARMACEUTICAL TECHNOLOGY (SHIJIAZHUANG) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.226, Huanghe Street, High-Tech Development Zone, Shijiazhuang, Hebei 050035, China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162695
【弁理士】
【氏名又は名称】釜平 双美
(74)【代理人】
【識別番号】100156155
【弁理士】
【氏名又は名称】水原 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】李 小林
(72)【発明者】
【氏名】李 鵬
(72)【発明者】
【氏名】賀 海鷹
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA03
4C063BB02
4C063BB08
4C063CC51
4C063DD14
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC67
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA75
4C086ZC02
(57)【要約】
本発明は、FXR受体作動薬である式(I)で表われる化合物の固体形態、結晶形態、結晶体Aおよびその調製方法、ならびに、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療のための医薬品の調製における式(I)で表われる化合物の使用を開示する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】
式(I)で表われる化合物の固体形態。
【請求項2】
式(I)で表われる化合物の結晶形態。
【請求項3】
X線粉末回折パターンが、3.54±0.2°、12.72±0.2°、25.27±0.2°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、
式(I)で表われる化合物の結晶体A。
【請求項4】
X線粉末回折パターンが、3.54±0.2°、11.86±0.2°、12.72±0.2°、16.15±0.2°、17.40±0.2°、19.72±0.2°、24.18±0.2°、25.27±0.2°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、
請求項3に記載の式(I)で表われる化合物の結晶体A。
【請求項5】
X線粉末回折パターンが、3.54±0.2°、11.86±0.2°、12.72±0.2°、16.15±0.2°、17.40±0.2°、19.72±0.2°、20.38±0.2°、22.60±0.2°、23.80±0.2°、24.18±0.2°、25.27±0.2°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、
請求項4に記載の式(I)で表われる化合物の結晶体A。
【請求項6】
X線粉末回折パターンが、3.54±0.2°、11.86±0.2°、12.72±0.2°、13.67±0.2°、16.15±0.2°、17.40±0.2°、19.72±0.2°、20.38±0.2°、22.60±0.2°、23.80±0.2°、24.18±0.2°、25.27±0.2°、26.57±0.2°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、
請求項5に記載の式(I)で表われる化合物の結晶体A。
【請求項7】
図1に示すXRPDパターンを有する、
請求項6に記載の式(I)で表われる化合物の結晶体A。
【請求項8】
図5に示すXRPDパターンを有する、
請求項3に記載の式(I)で表われる化合物の結晶体A。
【請求項9】
示差走査熱量測定曲線が223.58℃±3℃に吸熱ピークの開始点を有する、
請求項2に記載の式(I)で表われる化合物の結晶形態、または請求項3~7のいずれか一項に記載の式(I)で表われる化合物の結晶体A。
【請求項10】
図2に示すDSCパターンを有する、
請求項7に記載の式(I)で表われる化合物の結晶体A。
【請求項11】
熱重量分析曲線が、111.29℃±3℃で0.7427%±0.2%の重量損失を有し、202.79℃±3℃で3.6977%±0.2%の重量損失を有する、
請求項2~7のいずれか一項に記載の式(I)で表われる化合物の結晶体A。
【請求項12】
図3に示すTGAパターンを有する、
請求項11に記載の式(I)で表われる化合物の結晶体A。
【請求項13】
(a)式(I)で表われる化合物を溶媒に加えること、
(b)30~50℃で40~55時間攪拌すること、および
(c)遠心分離した後、溶媒を揮発させて式(I)で表われる化合物の結晶形Aを得ることを含む、式(I)で表われる化合物の結晶体Aの調製方法であって、
ここで、前記の溶媒は、アルコール類、テトラヒドロフラン、水、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル、アルコール類と水の混合溶媒、またはアセトンと水の混合溶媒である、式(I)で表われる化合物の結晶体Aの調製方法。
【請求項14】
前記のアルコール類が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、およびn-プロパノールから選択される、
請求項13に記載の調製方法。
【請求項15】
前記の溶媒が、アルコール類と水の混合溶媒であり、アルコール類と水との体積比が1:0.6~1.5である、
請求項13に記載の調製方法。
【請求項16】
前記の溶媒が、アルコール類と水の混合溶媒であり、アルコール類と水との体積比は1:1である、
請求項15に記載の調製方法。
【請求項17】
前記の溶媒が、アセトンと水の混合溶媒であり、アセトンと水との体積比が1:1.5~2.5である、
請求項13に記載の調製方法。
【請求項18】
前記の溶媒が、アセトンと水の混合溶媒であり、アセトンと水との体積比が1:2である、
請求項17に記載の調製方法。
【請求項19】
以下の工程を含む式(I)で表われる化合物の調製方法であって、
【化2】
ここで、RはC1-3アルキル基から選択される、
式(I)で表われる化合物の調製方法。
【請求項20】
以下の工程を含む式(I)で表われる化合物の調製方法であって、
【化3】
ここで、
溶媒AがDMFであり;
塩基Bがリン酸カリウムであり;
溶媒Cがトルエンであり;
塩基Dが炭酸セシウムであり;
触媒Eがトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムであり;
配位子Fが2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチルであり;
溶媒Gがテトラヒドロフランであり;
塩基Hが水酸化ナトリウムである、
請求項19に記載の式(I)で表われる化合物の調製方法。
【請求項21】
溶媒Cと中間体cとの体積:質量が10:1であり、塩基Dと中間体cとのモル比が2:1であり、触媒Eと中間体cとのモル比が0.025:1であり、配位子Fと中間体cとのモル比が0.05:1である、
請求項19または20に記載の式(I)で表われる化合物の調製方法。
【請求項22】
式eで表われる化合物、またはその薬学的に許容される塩であって、
【化4】
ここで、RはC1-3アルキル基から選択される、
式eで表われる化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項23】
がCHである、
請求項21に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項24】
FXR関連疾患の治療のための医薬品の調製における、請求項1に記載の固体形態の式(I)で表われる化合物の使用。
【請求項25】
FXR関連疾患の治療のための医薬品の調製における、請求項2に記載の結晶形態の式(I)で表われる化合物の使用。
【請求項26】
FXR関連疾患の治療のための医薬品の調製における、請求項3~12のいずれか一項に記載の式(I)で表われる化合物の結晶体Aの使用。
【請求項27】
前記のFXR関連疾患が非アルコール性脂肪性肝疾患である、請求項24~26のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2018年11月26日に出願された、出願番号がCN201811418346.8である特許出願の優先権を主張する。その中国特許出願全体をここに援用する。
【0002】
(技術分野)
本発明は、FXR受体作動薬である式(I)で表われる化合物の固体形態、結晶形態、結晶体Aおよびその調製方法、ならびに、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療のための医薬品の調製における式(I)で表われる化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ファルネソイドX受容体(farnesoid X receptor,FXR)は、核内受容体スーパーファミリーの一員であり、ラット肝臓のcDNAライブラリーで最初にクローン化され、発見された。FXRは、リガンド非依存性転写活性化ドメイン、DNA結合ドメイン、ヒンジ領域、およびリガンド結合領域からなる典型的な核内受容体構造を持っている。FXRは、肝臓、腸、腎臓および副腎で豊富に発現し、レチノイドX受容体(retinoid X receptor,RXR)とヘテロ二量体を形成し、DNAと結合して遺伝子の転写を調節する。FXR/RXRヘテロ二量体は、逆方向反復として組織化され、単一のヌクレオチドで隔てられた共通AG(G/T)TCAの2つの核内受容体ハーフサイト(half site)から構成されるコンポーネント(IR-1モチーフ)に、優先的に結合する。FXRは、胆汁酸活性化核受容体として、胆汁酸代謝、脂質代謝、糖代謝、肝臓保護などのプロセスを含む身体のさまざまな生理学的活動の調節に関与し、メタボリックシンドローム、肝・胆道系疾患、2型糖尿病などの疾患と密接に関連している。FXRの内因性リガンドであるコール酸には、ケノデオキシコール酸(CDCA)、デオキシコール酸(DCA)、リトコール酸(LCA)、およびこれらのコール酸のタウリンおよびグリシンの抱合体が挙げられる。PX104はFXR受容体作動薬である。
【化1】
【発明の概要】
【0004】
本発明は、式(I)で表われる化合物の固体形態を提供する。
【化2】
【0005】
本発明は、式(I)で表われる化合物の結晶形態を提供する。
【0006】
本発明は、X線粉末回折パターンが、3.54±0.2°、12.72±0.2°、25.27±0.2°の2θ角に特徴的回折ピークを有する式(I)で表われる化合物の結晶体Aを提供する。
【0007】
本発明の一部の実施形態において、前記の式(I)で表われる化合物の結晶体Aは、X線粉末回折パターンが、3.54±0.2°、11.86±0.2°、12.72±0.2°、16.15±0.2°、17.40±0.2°、19.72±0.2°、24.18±0.2°、25.27±0.2°の2θ角に特徴的回折ピークを有する。
【0008】
本発明の一部の実施形態において、前記の式(I)で表われる化合物の結晶体Aは、X線粉末回折パターンが、3.54±0.2°、11.86±0.2°、12.72±0.2°、16.15±0.2°、17.40±0.2°、19.72±0.2°、20.38±0.2°、22.60±0.2°、23.80±0.2°、24.18±0.2°、25.27±0.2°の2θ角に特徴的回折ピークを有する。
【0009】
本発明の一部の実施形態において、前記の式(I)で表われる化合物の結晶体Aは、X線粉末回折パターンが、3.54±0.2°、11.86±0.2°、12.72±0.2°、13.67±0.2°、16.15±0.2°、17.40±0.2°、19.72±0.2°、20.38±0.2°、22.60±0.2°、23.80±0.2°、24.18±0.2°、25.27±0.2°、26.57±0.2°の2θ角に特徴的回折ピークを有する。
【0010】
本発明の一部の実施形態において、前記の式(I)で表われる化合物の結晶体Aは、図1に示すXRPDパターンを有する。
【0011】
本発明の一部の実施形態において、前記の式(I)で表われる化合物の結晶体Aは、XRPDパターンの解析データが表1に示すとおりである。
【0012】
表1
【表1】
【0013】
本発明の一部の実施形態において、前記の式(I)で表われる化合物の結晶体Aは、図5に示すXRPDパターンを有する。
【0014】
本発明の一部の実施形態において、前記の式(I)で表われる化合物の結晶体Aは、示差走査熱量測定曲線が223.58℃±3℃に吸熱ピークの開始点を有する。
【0015】
本発明の一部の実施形態において、前記の式(I)で表われる化合物の結晶体Aは、図2に示すDSCパターンを有する。
【0016】
本発明の一部の実施形態において、前記の式(I)で表われる化合物の結晶体Aは、熱重量分析曲線が111.29℃±3℃で0.7427%±0.2%の重量損失を有し、202.79℃±3℃で3.6977%±0.2%の重量損失を有する。
【0017】
本発明の一部の実施形態において、前記の式(I)で表われる化合物の結晶体Aは、図3に示すTGAパターンを有する。
【0018】
また、本発明は、以下の(a)~(c)を含む、式(I)で表われる化合物の結晶体Aの調製方法を提供する。
(a)式(I)で表われる化合物を溶媒に加える。
(b)30~50℃で40~55時間攪拌する。
(c)遠心分離した後、溶媒を揮発させて結晶形Aを得る。
ここで、前記の溶媒は、アルコール類、テトラヒドロフラン、水、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル、アルコール類と水の混合溶媒、またはアセトンと水の混合溶媒である。
【0019】
本発明の一部の実施形態において、前記のアルコール類は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、およびn-プロパノールから選択される。
【0020】
本発明の一部の実施形態において、前記の溶媒は、アルコール類と水の混合溶媒であり、アルコール類と水との体積比は1:0.6~1.5である。
【0021】
本発明の一部の実施形態において、前記の溶媒は、アルコール類と水の混合溶媒であり、アルコール類と水との体積比は1:1である。
【0022】
本発明の一部の実施形態において、前記の溶媒は、アセトンと水の混合溶媒であり、アセトンと水との体積比は1:1.5~2.5である。
【0023】
本発明の一部の実施形態において、前記の溶媒は、アセトンと水の混合溶媒であり、アセトンと水との体積比は1:2である。
【0024】
本発明は、以下の工程を含む式(I)で表われる化合物の調製方法を提供する。
【化3】
ここで、RはC1-3アルキル基から選択される。
【0025】
本発明の一部の実施形態において、前記の調製方法は以下の工程を含む。
【化4】
ここで、
溶媒AはDMFであり;
塩基Bはリン酸カリウムであり;
溶媒Cはトルエンであり;
塩基Dは炭酸セシウムであり;
触媒Eはトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムであり;
配位子Fは2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチルであり;
溶媒Gはテトラヒドロフランであり;
塩基Hは水酸化ナトリウムである。
【0026】
本発明の一部の実施形態において、前記の調製方法では、溶媒Cと中間体cとの体積:質量は10:1であり、塩基Dと中間体cとのモル比は2:1であり、触媒Eと中間体cとのモル比は0.025:1であり、配位子Fと中間体cとのモル比は0.05:1である。
【0027】
さらに、本発明は、式eで表われる化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【化5】
ここで、RはC1-3アルキル基から選択される。
【0028】
本発明の一部の実施形態において、RはCHである。
【0029】
また、本発明は、FXR関連疾患の治療のための医薬品の調製における、前記の固体形態の式(I)で表われる化合物の使用を提供する。
【0030】
また、本発明は、FXR関連疾患の治療のための医薬品の調製における、前記の結晶形態の式(I)で表われる化合物の使用を提供する。
【0031】
また、本発明は、FXR関連疾患の治療のための医薬品の調製における、前記の式(I)で表われる化合物の結晶体Aの使用を提供する。
【0032】
本発明の一部の実施形態において、前記のFXR関連疾患は非アルコール性脂肪性肝疾患である。
【0033】
定義と説明
特に断らない限り、本明細書で使用される以下の用語および語句は、以下の意味を有する。特定の用語や語句は、特定の定義がなければ、不明瞭または不明確であると見なされるべきではなく、通常の意味で理解されるべきである。本明細書に商品名が記載されている場合、対応する商品またはその有効成分を指すものである。
【0034】
本発明の中間化合物は、以下に列挙される特定の実施形態、それらを他の化学合成方法と組み合わせることにより形成される実施形態、および当業者に周知の同等の代替方法を含む、当業者に周知の様々な合成方法によって調製することができる。好ましい実施形態は、本発明の実施例を含むが、これらに限定されない。
【0035】
本明細書に開示される特定の実施形態における化学反応は、本発明の化学変化および必要とされる試薬や材料に適する適切な溶媒中で行う。本発明の化合物を得るために、当業者が、既存の実施形態に基づいて合成工程または反応スキームを変更または選択する必要がある場合がある。
【0036】
特に断らない限り、用語「C1-3アルキル基」は、1~3個の炭素原子からなる直鎖または分岐の飽和炭化水素基を示す。前記のC1-3アルキル基は、C1-2およびC2-3のアルキル基などを含み;それは、一価の基(例えばメチル基)、二価の基(例えばメチレン基)または多価の基(例えばメチン基)であってもよい。C1-3アルキル基の例として、メチル基(Me)、メチル基(Et)、プロピル基(n-プロピル基およびイソプロピル基を含む)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、これらの実施例は、本発明を限定するものではない。
【0038】
本発明で使用されるすべての溶媒は市販されるものであり、さらに精製することなく使用される。
【0039】
本発明は以下の略語を使用する。r.t.は室温を表し;THFはテトラヒドロフランを表し;NMPはN-メチルピロリドンを表し;MeSOHはメタンスルホン酸を表し;DMEはエチレングリコールジメチルエーテルを表し;DCMはジクロロメタンを表し;Xphosは2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’4’6’-トリイソプロピルビフェニルを表し;EtOAcは酢酸エチルを表し;MeOHはメタノールを表し;acetoneはアセトンを表し;2-Me-THFは2-メチルテトラヒドロフランを表し;IPAはイソプロパノールを表す。
【0040】
化合物は、人工またはChemDraw(登録商標)ソフトウェアによって命名される。また、市販の化合物は、メーカのカタログ名を使用する。
【0041】
本発明における粉末X線回折(X-ray powder diffractometer,XRPD)法
機器モデル:Bruker D8 advance X線回折計
試験方法:約10~20mgのサンプルをXRPD分析に使用した。
詳細なXRPDパラメータは以下の通りである。
ライトチューブ:Cu、kα、(λ=1.54056Å)
ライトチューブ電圧:40kV、ライトチューブ電流:40mA
発散スリット:0.60mm
検出器スリット:10.50mm
散乱防止スリット:7.10mm
走査範囲:3~40degまたは4~40deg
ステップサイズ:0.02deg
ステップ長さ:0.12秒
サンプルディスクの回転速度:15rpm
【0042】
本発明における示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimeter,DSC)法
機器モデル:TA Q2000示差走査熱量計
試験方法:サンプル(~1mg)を採取し、DSCアルミニウムポットに入れて試験を行った。50mL/minのNの条件下、10℃/minの昇温速度で30℃から300℃(または350℃)にサンプルを加熱した。
【0043】
本発明における熱重量分析(Thermal Gravimetric Analyzer,TGA)法
機器モデル:TA Q5000IR熱重量分析器
試験方法:サンプル(2~5mg)を採取し、TGAプラチナポットに入れて試験を行った。25mL/minのNの条件下、10℃/minの昇温速度で室温から350℃までまたは20%の重量損失となるまで、サンプルを加熱した。
【0044】
本発明における動的蒸気吸着分析(Dynamic Vapor Sorption, DVS)法
機器モデル:SMS DVS Advantage動的蒸気吸着測定装置
測定条件:サンプル(10~15mg)をDVSサンプルパンに採取して測定した。
詳細なDVSパラメータは以下の通りである。
温度:25℃
平衡:dm/dt=0.01%/min(最短時間:10min,最長時間:180min)
乾燥:0%RHで120min乾燥させた。
RH(%)測定グラジェント:10%
RH(%)測定グラジェントの範囲:0%-90%-0%
吸湿性評価の分類は以下の通りである。
【表2】
【0045】
技術的効果
式(I)で表われる化合物の結晶体Aは、安定であり、わずかな吸湿性を有し、光および熱による影響が少ない。
式(I)で表われる化合物は、NASスコアを著しく低下させることができ;炎症を改善し、一定の用量依存性を示し;肝臓の脂肪化を大幅に改善し、肝機能を著しく改善し、肝障害を軽減し;肝線維症を改善し、一定の用量依存性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1図1は、式(I)で表われる化合物の結晶体AのCu-Kα放射線によるXRPDパターンである。
図2図2は、式(I)で表われる化合物の結晶体AのDSC曲線である。
図3図3は、式(I)で表われる化合物の結晶体AのTGA曲線である。
図4図4は、式(I)で表われる化合物の結晶体AのDVS曲線である。
図5図5は、式(I)で表われる化合物の結晶体AのCu-Kα放射線によるXRPDパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の内容をよりよく理解するために、特定の実施例によって本発明をさらに説明するが、これらの特定の実施形態は、本発明の内容を限定するものではない。
【0048】
実施例1:式(I)で表われる化合物の調製
【化6】
【化7】
【0049】
工程1:中間体cの合成
a(500.62g,1.65mol)およびb(323.84g,1.98mol)を秤量し、DMF(5.0L)に加え、攪拌して溶解させた後、リン酸カリウム(877.10g,4.13mol)を添加した。反応液を50℃に昇温させ、攪拌しながら16時間反応した。反応液を20℃に冷却し、反応液を攪拌しながら水(40L)にゆっくりと注ぎ、大量の白色固体が析出した。15分間攪拌した後、濾過し、フィルターケーキを少量の水で濯いだ。フィルターケーキをロータリーエバポレーターに移して乾燥させ、粗生成物c(927.65g)を得た。粗生成物c(927.65g)をエタノール(2.5L)に加え、100℃に昇温させ、1時間攪拌した。20℃までゆっくりと冷却し、さらに16時間攪拌した。懸濁液を濾過して、白色固体を得た。固体をロータリーエバポレーターに移して乾燥させ、中間体c(584.63g)を得た。H NMR (400MHz, CDCl) δ = 8.62(br s,1H),7.43-7.38(m,2H),7.36-7.30(m,1H),6.71-6.54(m,3H),4.76(s,2H),2.94-2.82(m,2H),2.64-2.54(m,2H),2.16(tt,J=5.1,8.5Hz,1H),1.33-1.24(m,2H),1.17-1.09(m,2H).
【0050】
工程2:中間体eの合成
窒素雰囲気下で、10Lの3つ口反応フラスコにトルエン(5.5L)を加え、20℃で中間体c(551.12g,1.28mol)、d(396.12g,1.92mol)および炭酸セシウム(834.98g,2.56mol)を順次に添加し、最後に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(29.42g,32.13mmol)および2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル(39.98g,64.21mmol)を添加した。反応系を温度115℃の油浴で加熱し、机械的攪拌して48時間反応させた。反応液を20℃まで冷却し、珪藻土(1.0kg)で濾過し、濾液(約5L)を酢酸エチル(8L)で希釈し、水(6L×2回)、飽和食塩水(6L×1回)で洗浄した。有機相を回転蒸発により濃縮乾固し、黄色の油(1.12kg)を得た。黄色の油(1.12kg)をメタノール(1.2L)に加え、2時間攪拌した。大量の黄色固体は現れた。濾過し、フィルターケーキを少量の冷メタノールで濯いだ。フィルターケーキをロータリーエバポレーターに移して乾燥させ、中間体eの粗生成物(492g)を得た。
前記の中間体eの粗生成物(492g,粗生成物)を5.0Lの酢酸エチルに懸濁させた。反応系を温度100℃の油浴で加熱し、2時間攪拌し、系が透明になった。20℃まで自然冷却し、黄色固体が析出し、さらに16時間攪拌した。濾過し、フィルターケーキを少量の酢酸エチルですすいだ。固体を回転蒸発により濃縮乾固し、黄色固体1(221.56g)を得た。
前記の黄色固体1(221.56g)を2.5Lのテトラヒドロフランに溶解させ、活性炭(110.78g)を添加した。系を50℃で16時間攪拌し、20℃まで冷却し、珪藻土(250g)で濾過し、濾液を回転蒸発により濃縮乾固して、中間体e(220.11g)を得た。
LCMS (ESI):C2922Cl [M+H]:597.9,599.8
H NMR (400MHz,CDCl) δ =9.11(d,J=2.01Hz,1H)8.49(d,J=2.01Hz,1H)7.28-7.40(m,3H)6.69(d,J=2.76Hz,1H)6.50(dd,J=8.91,2.89Hz,1H)6.03(d,J=8.78Hz,1H)4.74(s,2H)3.99(s,3H)2.95-3.10(m,2H)2.75-2.85(m,2H)2.13(tt,J=8.41,5.02Hz,1H)1.62(s,1H)1.22-1.29(m,2H)1.06-1.18(m,2H)。
【0051】
工程3
中間体e(220.11g,367.55mmol)を2.5Lのテトラヒドロフランに溶解させ、溶液を5℃に冷却した。内部温度を4~8℃に維持しながら、水酸化ナトリウム(13.97g,349.17mmol)の水(650mL)溶液を約40分間にわたってゆっくりと上記の系に滴下した。さらに、攪拌して1時間反応させた。反応液に5Lの水を添加し、メチルtert-ブチルエーテル(3L×3)で抽出し、分液させ、有機相を廃棄した。水相を1mol/Lの塩酸でpH=3-4に調整し、酢酸エチル(6L×1次)で抽出し、分液させ、水相を廃棄した。有機相を回転蒸発により濃縮乾固し、237.65gの粗生成物を得た。粗生成物を500mLのアセトニトリルに加え、20℃で24時間攪拌した。濾過し、フィルターケーキをアセトニトリル(200mL)で濯いだ。フィルターケーキを回転蒸発により濃縮乾固し、式(I)で表われる化合物を得た。H NMR (400MHz,d4-MeOH) δ=9.09(d,J=2.0Hz,1H),8.59(d,J=2.0Hz,1H),7.52-7.41(m,3H),6.75(d,J=2.8Hz,1H),6.53(dd,J=2.9,8.7Hz,1H),6.07(d,J=9.0Hz,1H),4.85(s,2H),3.10-3.00(m,2H),2.83-2.72(m,2H),2.30(quin,J=6.8Hz,1H),1.20-1.16(m,4H)
【0052】
実施例2:式(I)で表われる化合物結晶体Aの調製
【0053】
式(I)で表われる化合物50mgを、1.5mlの高速液体クロマトグラフィーバイアルに加え、それぞれ500μLのメタノールを添加し、超音波で均一に混合した。懸濁液サンプルを恒温振盪機(40℃)に置き、2日間撹拌した。溶解したサンプルを高速で遠心分離し、上澄みを採取して遠心分離管に加え、管口をアルミホイル紙で包み、アルミホイル紙に小さな穴を開けて、上澄みを揮発させた。式(I)で表われる化合物の結晶体Aを得た。
【0054】
式(I)で表われる化合物50mgを、1.5mlの高速液体クロマトグラフィーバイアルに加え、それぞれ500μLのエタノールを添加し、超音波で均一に混合した。懸濁液サンプルを恒温振盪機(40℃)に置き、2日間撹拌した。溶解したサンプルを高速で遠心分離し、上澄みを採取して遠心分離管に加え、管口をアルミホイル紙で包み、アルミホイル紙に小さな穴を開けて、上澄みを揮発させた。式(I)で表われる化合物の結晶体Aを得た。
【0055】
式(I)で表われる化合物50mgを、1.5mlの高速液体クロマトグラフィーバイアルに加え、それぞれ500μLのアセトンを添加し、超音波で均一に混合した。懸濁液サンプルを恒温振盪機(40℃)に置き、2日間撹拌した。溶解したサンプルを高速で遠心分離し、上澄みを採取して遠心分離管に加え、管口をアルミホイル紙で包み、アルミホイル紙に小さな穴を開けて、上澄みを揮発させた。式(I)で表われる化合物の結晶体Aを得た。
【0056】
式(I)で表われる化合物50mgを、1.5mlの高速液体クロマトグラフィーバイアルに加え、それぞれ500μLのアセトニトリルを添加し、超音波で均一に混合した。懸濁液サンプルを恒温振盪機(40℃)に置き、2日間撹拌した。溶解したサンプルを高速で遠心分離し、上澄みを採取して遠心分離管に加え、管口をアルミホイル紙で包み、アルミホイル紙に小さな穴を開けて、上澄みを揮発させた。式(I)で表われる化合物の結晶体Aを得た。
【0057】
式(I)で表われる化合物50mgを、1.5mlの高速液体クロマトグラフィーバイアルに加え、それぞれ500μLの酢酸エチルを添加し、超音波で均一に混合した。懸濁液サンプルを恒温振盪機(40℃)に置き、2日間撹拌した。溶解したサンプルを高速で遠心分離し、上澄みを採取して遠心分離管に加え、管口をアルミホイル紙で包み、アルミホイル紙に小さな穴を開けて、上澄みを揮発させた。式(I)で表われる化合物の結晶体Aを得た。
【0058】
式(I)で表われる化合物50mgを、1.5mlの高速液体クロマトグラフィーバイアルに加え、それぞれ200μLのテトラヒドロフランを添加し、超音波で溶解させた。懸濁液サンプルを恒温振盪機(40℃)に置き、2日間撹拌した。溶解したサンプルを高速で遠心分離し、上澄みを採取して遠心分離管に加え、管口をアルミホイル紙で包み、アルミホイル紙に小さな穴を開けて、上澄みを揮発させた。式(I)で表われる化合物の結晶体Aを得た。
【0059】
式(I)で表われる化合物50mgを、1.5mlの高速液体クロマトグラフィーバイアルに加え、それぞれ500μLの水を添加し、超音波で均一に混合または溶解させた。懸濁液サンプルを恒温振盪機(40℃)に置き、2日間撹拌した。溶解したサンプルを高速で遠心分離し、上澄みを採取して遠心分離管に加え、管口をアルミホイル紙で包み、アルミホイル紙に小さな穴を開けて、上澄みを揮発させた。式(I)で表われる化合物の結晶体Aを得た。
【0060】
式(I)で表われる化合物50mgを、1.5mlの高速液体クロマトグラフィーバイアルに加え、体積比でメタノール:水が1:1である混合溶液(500μL)をそれぞれ添加し、超音波で均一に混合または溶解させた。懸濁液サンプルを恒温振盪機(40℃)に置き、2日間撹拌した。溶解したサンプルを高速で遠心分離し、上澄みを採取して遠心分離管に加え、管口をアルミホイル紙で包み、アルミホイル紙に小さな穴を開けて、上澄みを揮発させた。式(I)で表われる化合物の結晶体Aを得た。
【0061】
式(I)で表われる化合物50mgを、1.5mlの高速液体クロマトグラフィーバイアルに加え、体積比でエタノール:水が1:1である混合溶液(500μL)をそれぞれ添加し、超音波で均一に混合または溶解させた。懸濁液サンプルを恒温振盪機(40℃)に置き、2日間撹拌した。溶解したサンプルを高速で遠心分離し、上澄みを採取して遠心分離管に加え、管口をアルミホイル紙で包み、アルミホイル紙に小さな穴を開けて、上澄みを揮発させた。式(I)で表われる化合物の結晶体Aを得た。
【0062】
式(I)で表われる化合物50mgを、1.5mlの高速液体クロマトグラフィーバイアルに加え、体積比でアセトン:水が1:2である混合溶液(500μL)をそれぞれ添加し、超音波で均一に混合または溶解させた。懸濁液サンプルを恒温振盪機(40℃)に置き、2日間撹拌した。溶解したサンプルを高速で遠心分離し、上澄みを採取して遠心分離管に加え、管口をアルミホイル紙で包み、アルミホイル紙に小さな穴を開けて、上澄みを揮発させた。式(I)で表われる化合物の結晶体Aを得た。
【0063】
実施例3:式(I)で表われる化合物結晶体Aの吸湿性の研究
実験材料:
SMS DVS Advantage動的蒸気吸着測定装置
実験方法:
式(I)で表われる化合物の結晶体A(10~15mg)をDVSサンプルパンに採取して測定した。
実験結果:
式(I)で表われる化合物結晶体AのDVS曲線は、図面に示した。△W=0.5834%。
実験結論:
式(I)で表われる化合物結晶体Aは、25℃および80%RHでの吸湿による重量増加が0.5834%であり、わずかな吸湿性を有する。
【0064】
実施例4:式(I)で表われる化合物の結晶体Aの固体安定性試験
「原薬および製剤の安定性試験のガイドライン」(中国薬局方2015年版四部通則9001)に準じて、化合物の結晶形Aの安定性について、高温(60℃、オープン)、高湿度(室温/相対湿度92.5%、オープン)、および強光(5000lx、オープン)でそれぞれ調査した。
【0065】
式(I)で表われる化合物の結晶形A 5mgを秤量し、ガラスサンプルバイアルの底に置いて薄層を形成した。高温および高湿度の条件下に置かれたサンプルについては、バイアル口をアルミホイル紙で密封し、サンプルが環境の空気に十分に接触できるようにアルミホイル紙に小さな穴を開けた。強光の条件下に置かれたサンプルについては、バイアル口をアルミホイル紙で密封した。異なる条件下で配置されたサンプルを、5日目と10日目に採取してXRPDを測定し、測定結果を0日目の最初の測定結果と比較した。測定結果を以下の表3に示す。
【0066】
表2 化合物の結晶体Aの固体安定性試験の結果
【表3】
【0067】
実施例5:式(I)で表われる化合物のインビボ有効性実験
1.実験の設計
この実験のモデルの構築には、高脂肪食の給餌とCClの誘導という2つの工程を含む。まず、非アルコール性脂肪肝を誘発するために、マウスに高脂肪食を与えた。体重が35gを超えるマウスを選択し、25%CCl(0.5mg/kg)を週2回、4週間腹腔内注射して、高脂肪食を与え続けた。
【0068】
CClの投与を開始した日を0日目、CClの投与を開始した時刻を第0時間とした。CClの投与を開始した日に、強制経口投与を開始した。健康対照群、1%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)のモデル群およびPX104対照群では、5mL/kgの投与体積で1日1回、4週間(28日間)連続投与され、式(I)で表われる化合物の投与群および対応する溶媒(40%PEG400/10%solutol/50%水)モデル群では、最初の13日間(0日目から12日目)が5mL/kgの投与体積で1日1回で投与され、次の15日間(13日目から27日目)が10mL/kgで1日1回投与された。CClの注射の時点は、その日の最初の投与の時点から4時間以上離れている必要がある。
【0069】
実験は、健康対照群、1%HPMCモデル群、参照化合物群(PX104)、試験化合物群(式(I)で表われる化合物、3つの投与量)および対応する溶媒モデル群の7つの群に分けた。
【0070】
健康対照群は、6匹の正常なマウスからなり、実験中にCClを注射せず、通常の食餌を与えた。
【0071】
モデル群および投与群では、48匹の肥満マウスを使用した。各群は8匹のマウスで構成された。群分けした後、CClを腹腔内注射し、異なる用量の医薬または溶媒をそれぞれ投与した。
【0072】
試験データはMean±SEMで示された。分析ソフトウェアGraphpad Prism6を使用してT検定分析を選択して、2つの群の間の比較を行った。#p<0.05、##p<0.01、###p<0.001:健康対照群との比較;*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001:モデル群との比較、PX-104群とモデル(1%HPMC)群との比較、式(I)で表われる化合物群と溶媒モデル群との比較。
【0073】
2.式(I)で表われる化合物によるNASスコアの改善
非アルコール性脂肪性肝炎の動物モデルにおける肝病理の分析について、NAFLDの臨床病理学的診断および評価基準を参照し、NAFLD活動性スコア(NAFLD activity score,NAS)を使用して、肝細胞の脂肪変性、肝細胞の風船様変性、および肝小葉における炎症蓄積の3つの側面から、NAFLDに対する化合物の治療効果を総合的に評価した。
【0074】
表3 非アルコール性脂肪性肝炎の評価基準
【表4】
【0075】
健康対照群と比較して、2つのモデル群のNASスコアは有意に増加した(p<0.001)。15mg/kg(p<0.001 vs 1%HPMCモデル群)の用量の陽性対照PX104はNASスコアを顕著に低下させることができた。溶媒モデル群(40%PEG400/10%solutol/50%water)と比較して、式(I)で表われる試験化合物は、いずれも7.5mg/kg、15mg/kgおよび45mg/kgの試験用量で、NASスコアを有意に低下させることができた。結果を表4に示す。
【0076】
表4 NASスコア
【表5】
【0077】
健康対照群と比較して、2つのモデル群の炎症スコアは有意に増加した。参照化合物PX-104は、15mg/kg(p<0.001 vs 1%HPMCモデル群)の用量で炎症を有意に改善することができた。溶媒モデル群と比較して、式(I)で表われる試験化合物は、いずれも7.5mg/kg、15mg/kgおよび45mg/kgの試験用量で炎症の改善効果を示し、また一定の用量依存性を有した。結果を表5に示す。
【0078】
表5 炎症改善実験
【表6】
【0079】
健康対照群と比較して、2つのモデル群における脂肪変性の程度は有意に増加した。参照化合物PX-104は、15mg/kgの用量で肝臓の脂肪変性に対して有意な改善効果を示した(p<0.001 vs 1%HPMCモデル群)。溶媒モデル群と比較して、式(I)で表われる試験化合物は、7.5mg/kgおよび45mg/kgの試験用量で肝臓の脂肪変性に対して有意な改善効果を示した。結果を表6に示す
【0080】
表6 肝臓の脂肪変性実験
【表7】
【0081】
実験におけるマウスは、いずれも肝細胞の風船様変性を示さなかった。結果を表7に示す。
【0082】
表7 肝臓の風船様変性実験
【表8】
【0083】
注:0.021の結果は、その群における1匹のマウスの風船様変性データが0.17であったためである。G検定によって、この値は異常値と判断された。
【0084】
3.式(I)で表われる化合物による肝臓の線維化の改善
Digital pathscope 4Sスライドスキャナーによって、シリウスレッドで染色されたすべてのスライスを完全にスキャンした。5倍の視野で2つの視野をランダムに選択し、2つの視野が肝臓組織の面積の85%をカバーした。次に、Image pro-plus 6.0ソフトウェアで定量分析を行い、スライスにおける線維化沈着面積を算出した。健康対照群と比較して、2つのモデル群の線維化の程度は有意に増加した(p<0.001)。参照化合物PX-104は、15mg/kgの用量で肝臓の線維化に対して有意な改善効果を示した(p<0.05 vs 1%HPMCモデル群)。溶媒モデル群と比較して、式(I)で表われる試験化合物は、15mg/kgおよび45mg/kgの試験用量で肝臓の線維化に対して有意な改善効果を示し、また一定の用量依存性を有した。結果を表8に示す。
【0085】
表8 肝臓の線維化実験
【表9】
【0086】
結論:
本実験は、NASスコアが有意に増加したことおよび肝臓が顕著に線維化したことを特徴とする典型的なNASHモデルを形成した。
本実験の結果は、式(I)で表われる化合物がNASスコアを有意に低下させることができること、炎症を改善し、一定の用量依存性があること、肝臓の脂肪変性を大幅に改善し、肝機能を顕著に改善し、肝障害を軽減すること、肝臓の線維化を改善し、一定の用量依存性があることを示している。
【0087】
実施例6:式(I)で表われる化合物のインビトロ生物活性実験
FXR生化学実験
実験目的:
増幅発光近接均質アッセイ(alphascreen)によって、化合物によるFXR結合反応の活性化を検出した。
【0088】
実験材料:
1.タンパク質:グルタチオン-S-トランスフェラーゼ標識FXRヒトタンパク質(Invitrogen)
2.コアクチベーター:ビオチン標識ステロイド受容体コアクチベーター(Anaspec)
3.検出試薬:増幅発光近接均質アッセイ(alphascreen)用検出キット(PerkinElmer)
【0089】
実験方法:
1.化合物の希釈:試験化合物を40μMのDMSO溶液として調製し、3倍で希釈して10個の濃度ポイントにした。参照化合物は400μMのDMSO溶液として調製し、1.5倍で希釈して10個の濃度ポイントにした。希釈したDMSO溶液を、384ウェルプレートのマイクロウェルに、ウェルあたり150nlの体積で加えた。
2.グルタチオン-S-トランスフェラーゼ標識FXRヒトタンパク質およびビオチン標識ステロイド受容体コアクチベーターを、それぞれ0.4nMおよび30nMの濃度の混合溶液に調製した。混合溶液を、ウェルあたり15μLの体積で384ウェルプレートのマイクロウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。
3.増幅発光近接均質アッセイ(alphascreen)用の検出キット内の受容体ビーズの混合溶液を125倍に希釈し、ウェルあたり7.5μLの体積で384ウェルプレートのマイクロウェルに添加した。実験において、操作は遮光で行った。インキュベーションは室温で1時間行った。
4.増幅発光近接均質アッセイ(alphascreen)用の検出キット内のドナービーズの混合溶液を125倍に希釈し、ウェルあたり7.5μLの体積で384ウェルプレートのマイクロウェルに添加した。実験において、操作は遮光で行った。インキュベーションは室温で1時間行った。
5.EC50アッセイ:Envisionを利用して680nmの波長で励起し、520~620nmにおける吸収シグナルを読み取った。
6.データの分析:データをPrism 5.0で分析し、化合物の活性化効果のEC50値を算出した。
【0090】
表9 FXRに対する式(I)で表われる化合物の活性化効果
【表10】
【0091】
結論:
本実験の結果は、式(I)で表われる化合物がFXRに対して有意なアゴニスト効果を有することを示している。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】