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特表2022-519982トルク伝達装置のトルクを決定するためのセンサデバイスおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-28
(54)【発明の名称】トルク伝達装置のトルクを決定するためのセンサデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/10 20060101AFI20220318BHJP
【FI】
G01L3/10 301L
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021533670
(86)(22)【出願日】2019-12-16
(85)【翻訳文提出日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2019085298
(87)【国際公開番号】W WO2020120795
(87)【国際公開日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】102018009834.7
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511268557
【氏名又は名称】カールスルーエ インスティトゥート フュア テクノロギー
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100217940
【弁理士】
【氏名又は名称】三並 大悟
(72)【発明者】
【氏名】クラウス、シーマン
(72)【発明者】
【氏名】ハーラルト、ライステ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン、バイルレ
(57)【要約】
本発明は、動作状態においてトルク伝達装置上に配置され得る少なくとも1つの強磁性要素と、少なくとも1つの測定要素を有する測定装置とを含むセンサ装置に関する。各測定要素は、少なくとも1つの強磁性要素の強磁性共鳴周波数を測定するように構成される。測定装置は、測定された強磁性共鳴周波数のシフトに基づいてトルク伝達装置のトルクを決定するように構成される。本発明はさらに、トルク伝達装置のトルクを決定するための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作状態においてトルク伝達デバイス(1)上に配置可能な少なくとも1つの強磁性要素(4)と、
少なくとも1つの測定要素(3)を含む測定デバイスと、
を備え、
各測定要素(3)は、少なくとも1つの強磁性要素(4)の強磁性共鳴周波数を測定するように構成され、
前記測定デバイスは、前記測定された強磁性共鳴周波数のシフトに基づいて前記トルク伝達デバイス(1)のトルクを決定するように構成される、
センサ装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの強磁性要素(4)は、少なくとも1つの強磁性層(4A)を有する、請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの強磁性要素(4)は、少なくとも第1の強磁性層(41)および第2の強磁性層(42)を有し、
前記少なくとも1つの強磁性要素(4)は、前記第1の強磁性層(41)と前記第2の強磁性層(42)との間に配置され、前記第1の強磁性層(41)および前記第2の強磁性層(42)を互いに磁気的に分離するように構成される少なくとも1つの絶縁性非導電性分離層(40T)を有する、請求項2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの強磁性層(4A)の各々は、それぞれ、最大で約500μm、好ましくは最大で約1μmおよび/または少なくとも約50nm、好ましくは少なくとも約150nmの厚さを有し、および/または、
前記それぞれの少なくとも1つの強磁性層(4A)の前記厚さおよび/または前記少なくとも1つの強磁性要素(4)の厚さは、実質的に一定である、
請求項2または3に記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの強磁性要素(4)は、前記動作状態において前記少なくとも1つの強磁性層(4A)と前記トルク伝達デバイス(1)との間に配置される少なくとも1つの中間層(4B)を有し、
前記少なくとも1つの中間層(4B)は、前記動作状態において前記少なくとも1つの強磁性層(4A)および前記トルク伝達デバイス(1)を磁気的に分離するように構成され、任意選択的に、
前記少なくとも1つの中間層(4B)は、最大で約500μm、好ましくは最大で約5μmおよび/または少なくとも約200nm、好ましくは少なくとも約750nmの厚さを有する、請求項2から4のいずれか一項に記載のセンサ装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの強磁性要素(4)は、前記動作状態において前記少なくとも1つの強磁性層(4A)と前記トルク伝達デバイス(1)との間に配置される少なくとも1つの基板(4C)を有する、請求項2から5のいずれか一項に記載のセンサ装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの強磁性要素(4)は、前記トルクにより引き起こされる機械的張力を前記トルク伝達デバイス(1)から前記少なくとも1つの強磁性要素(4)に伝達するために、接着、溶接、押圧、化学反応および/またはラッチ接続により前記動作状態におけるトルク伝達デバイス(1)に接続可能であり、任意選択的に、
前記測定デバイスは、前記測定された強磁性共鳴周波数のシフトに基づいて、前記トルク伝達デバイス(1)の前記トルクを決定するように構成され、前記トルク伝達デバイス(1)と前記少なくとも1つの強磁性要素(4)との前記接続を通した前記機械的張力の不完全な伝達が考慮され、任意選択的に、前記測定デバイスは、較正ステップにおいて前記トルク伝達デバイス(1)と前記少なくとも1つの強磁性要素(4)との前記接続を通した前記機械的張力の前記不完全な伝達を決定するように構成される、請求項1から6のいずれか一項に記載のセンサ装置。
【請求項8】
少なくとも1つの測定要素(3)は、周波数掃引によって前記少なくとも1つの強磁性要素(4)の前記強磁性共鳴周波数を測定または決定するように構成され、および/または、
前記動作状態において、少なくとも1つの測定要素(3)と少なくとも1つの強磁性要素(4)との間の最小距離は、最大で約1500μm、好ましくは最大で約500μm、さらに好ましくは最大で約300μm、最も好ましくは最大で約150μmの値を有し、および/または、
少なくとも1つの強磁性要素(4)の前記強磁性共鳴周波数の測定の間、前記少なくとも1つの測定要素(3)の表面と前記少なくとも1つの強磁性要素(4)との間の測定角度は、少なくとも約0°、好ましくは少なくとも約12°、かつ最大で約28°、好ましくは最大で約16°の値を有し、および/または、
前記トルク伝達デバイス(1)は、シャフトとして設計される、請求項1から7のいずれか一項に記載のセンサ装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの測定要素(3)のうちの少なくとも1つの測定要素(3)は、高周波トリプレートストリップ線路として設計され、任意選択的に、
前記高周波トリプレートストリップ線路は、画定された形で導波される高周波電磁波の反射モードで動作されるように構成され、任意選択的に、
前記高周波トリプレートストリップ線路は、前記強磁性共鳴周波数の測定のための前記反射モードにおいて少なくとも1つの反射信号を受信または測定するように構成され、前記少なくとも1つの反射信号は、固定の測定周波数において決定可能または測定可能である、請求項1から8のいずれか一項に記載のセンサ装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの測定要素(3)は、前記動作状態において測定平面に実質的に沿って配置され、前記測定平面は、前記トルク伝達デバイス(1)の表面に対して実質的に正接となるよう設計され、または、
前記少なくとも1つの測定要素(3)は、前記動作状態において前記トルク伝達デバイス(1)の回転軸に関して周方向に実質的に沿って前記トルク伝達デバイス(1)を少なくとも部分的に取り囲む、請求項1から9のいずれか一項に記載のセンサ装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つの強磁性要素(4)は、少なくとも1つの円周強磁性要素(4)として設計され、前記少なくとも1つの円周強磁性要素(4)は、前記動作状態において前記トルク伝達デバイス(1)の回転軸に関して周方向に沿って前記トルク伝達デバイス(1)を実質的に完全に取り囲み、または、
前記少なくとも1つの強磁性要素(4)は、少なくとも2つの強磁性要素(4)を含み、前記少なくとも2つの強磁性要素(4)は、前記トルク伝達デバイス(1)の回転軸に関して周方向に前記トルク伝達デバイス上に配置され、
前記少なくとも2つの強磁性要素(4)のうちの少なくとも1つは、実質的に平面であるように設計され、前記動作状態において、前記トルク伝達デバイス(1)の前記表面の接平面と実質的に平行に向けられ、および/または、
前記少なくとも2つの強磁性要素(4)のうちの少なくとも1つは、部分的に円周強磁性要素(4)として設計され、前記動作状態において、前記トルク伝達デバイス(1)の回転軸に関して周方向に沿って前記トルク伝達デバイス(1)を少なくとも部分的に取り囲む、請求項1から10のいずれか一項に記載のセンサ装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つの強磁性要素(4)は磁気異方性を有し、および/または、
前記測定デバイスは、少なくとも1つの磁界要素(2)をさらに含み、前記少なくとも1つの磁界要素(2)は、前記少なくとも1つの強磁性要素(4)に磁気異方性を生成するまたはそれに影響を及ぼすために、前記動作状態において磁界を生成するように構成される、請求項1から11のいずれか一項に記載のセンサ装置。
【請求項13】
トルク伝達デバイス(1)のトルクを決定するための方法であって、
少なくとも1つの強磁性要素(4)を前記トルク伝達デバイス(1)上に配置することと、
前記少なくとも1つの強磁性要素(4)の強磁性共鳴周波数を測定することと、
前記測定された強磁性共鳴周波数のシフトに基づいて前記トルク伝達デバイス(1)の前記トルクを決定することと、
を含む方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの強磁性要素(4)を配置することは、前記少なくとも1つの強磁性要素(4)の前記トルク伝達デバイス(1)への接着、溶接、押圧、化学反応および/またはラッチ接続を含み、任意選択的に、
前記トルク伝達デバイス(1)の前記トルクを決定することは、前記トルク伝達デバイス(1)と前記少なくとも1つの強磁性要素(4)との間の接続を通した機械的張力の不完全な伝達を考慮することを含み、任意選択的に、前記方法は、前記トルク伝達デバイス(1)と前記少なくとも1つの強磁性要素(4)との間の前記接続を通した前記機械的張力の前記不完全な伝達を決定することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つの強磁性層(4A)を製造することを含み、任意選択的に、
少なくとも1つの強磁性層(4A)を製造することは、少なくとも、
第1の強磁性層(41)を製造することと、
第1の絶縁性非導電性分離層(40T)を前記第1の強磁性層(41)上に製造することと、
第2の強磁性層(42)を前記第1の絶縁性非導電性分離層(40T)上に製造することと、をさらに含む、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
基板(4C)を製造することと、
中間層(4B)を前記基板(4C)上に製造することと、をさらに含み、
前記少なくとも1つの強磁性層(4A)の強磁性層(4A)が前記中間層(4B)上に製造され、前記中間層(4B)は、前記センサ装置の動作状態において前記少なくとも1つの強磁性層(4A)および前記トルク伝達デバイス(1)を磁気的に分離するように構成される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの強磁性要素(4)の磁気異方性を生成するために、外部静磁界中で前記少なくとも1つの強磁性要素(4)をアニールすること、をさらに含む、請求項13から16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルク伝達デバイス、特に荷重シャフトのトルクを決定するためのセンサ装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、機械工学(例えば車両技術、航空宇宙技術)の分野、特にトルクを決定するための測定技術の分野からのものである。特に、交番荷重を受ける回転部品は、直接の電気的接触が難しくまたはできないため、そのトルクの非接触測定がリアルタイムで行われる必要がある。
【0003】
Bertholdら(「Non-contact strain measurements based on inverse magnetostriction」、Sensors and Actuators A 158(2010)224~230)は、周波数混合法に基づいて磁歪反応を測定するための測定技法を記載している。この目的で、2つの周波数を有する磁界が用いられ、磁性材料の存在が、非線形磁化曲線に特有な測定信号のFFTスペクトルの新たなピーク値を生成する。磁化曲線は機械的張力により変化され得るため、ピーク値の振幅は、材料の張力の測定値に対する特徴的な依存性を示す場合がある。Bertholdら(「Non-contact strain measurements based on inverse magnetostriction」、Sensors and Actuators A 158(2010)224~230)の内容は、その全部が、ここで説明の一部として含まれる。
【0004】
米国特許出願公開第2014/159710(A1)号は、第1の磁気リングと、第2の磁気リングと、第1の磁気センサと、第2の磁気センサと、コントローラとを含む非接触検出デバイスを記載している。2つの磁気リングは、各々、トーションシャフトの2つの端部に取り付けられる。トーションシャフトが回転すると、コントローラは、2つの磁気センサを通して2つの磁気リングの磁界を検出する。検出された磁界に基づいて、コントローラは、トーションシャフトに印加されるねじりトルクとトーションシャフトの回転角度とを同時に算出する。米国特許出願公開第2014/159710(A1)号の内容は、その全部が、ここで説明の一部として含まれる。
【0005】
WO2016/162028A1は、逆磁歪効果を利用する、軸内を延びる機械要素上のモーメントの非接触測定のためのアセンブリおよび方法を記載している。機械要素は、少なくとも機械要素の軸方向部分内に設計され、径方向に配列された直線と平行に配列された永久磁化を有する。永久磁化は、好ましくは、軸に関して互いと正反対に配置された唯2つの極を有する。アセンブリは、永久磁化およびモーメントにより引き起こされる磁界の軸方向成分または永久磁化およびモーメントにより引き起こされる磁界の変化の軸方向成分を少なくとも測定するように設計された少なくとも1つの磁界センサをさらに含む。WO2016/162028A1の内容は、その全部が、ここで説明の一部として含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、増大された効率および測定値の向上された信頼性を有する、トルク伝達デバイスのトルクを決定するためのセンサ装置および方法を提供することにある。
【0007】
この目的は、独立請求項に係るトルク伝達デバイスのトルクを決定するためのセンサ装置および方法によって実現される。好適な実施形態は、従属請求項の対象である。
【0008】
1つの態様は、動作状態においてトルク伝達デバイス、特にドライブシャフト上に配置され得る少なくとも1つの強磁性要素と、少なくとも1つの測定要素、特に少なくとも1つの測定ヘッドを含む測定デバイスとを含み、各測定要素は、少なくとも1つの強磁性要素の強磁性共鳴周波数を測定するように構成され、測定デバイスは、測定された強磁性共鳴周波数および/または測定された強磁性共鳴周波数のシフトに基づいてトルク伝達デバイスのトルクを決定するように構成される、センサ装置に関する。
【0009】
本発明に関して、特に、測定された強磁性共鳴周波数または測定された共鳴周波数のシフトに基づいて、生成されるねじり力によって少なくとも1つの強磁性要素の異方性磁界を変化させる印加トルクを決定するための、特に効率的かつ安価な方法が可能であることが認識されている。
【0010】
本説明に関して、動作状態とは、少なくとも1つの強磁性要素がトルク伝達デバイス上に配置され、少なくとも1つの測定要素が少なくとも1つの強磁性要素の強磁性共鳴周波数を測定するように配置されている状態として理解されるべきである。
【0011】
ここで、少なくとも1つの強磁性要素は、特に少なくとも1つの強磁性材料を含んでよく、少なくとも1つの強磁性要素は、好ましくは少なくとも1つの軟磁性強磁性要素として設計される。この文脈における軟磁性とは、少なくとも1つの軟磁性強磁性要素が、1200A/m未満、好ましくは1000A/m未満および/または0A/mよりも大きい、好ましくは300A/mよりも大きい保磁力場強度(coercive field strength)を有するように理解されるべきである。これにより、磁気モーメントの歳差減衰(precession damping)に基づく高周波損失が最小化されることができ、よって、強磁性共鳴周波数の高信頼な測定が保証されることができる。
【0012】
ここで、特に、異方性磁界の異方性磁界強度または一軸異方性磁界強度よりも小さい保磁力場強度を有する軟磁性強磁性要素が選択されてよい。保磁力場強度は、好ましくは最大で異方性磁界強度の2/3、より好ましくは最大で異方性磁界強度の1/3の値、および/または、好ましくは少なくとも異方性磁界強度の1/5、より好ましくは少なくとも異方性磁界強度の1/4の値を有してよい。よって、少なくとも1つの軟磁性強磁性要素は、例えば3000A/mの異方性磁界強度において1000A/m未満の保磁力場強度を有するように選択されてよい。
【0013】
少なくとも1つの強磁性要素は、特に、少なくとも1つの強磁性磁歪要素として設計されてよい。ここで、磁歪材料は、その磁化を変化させることにより、特にビラリ効果に従って、印加された機械的張力に反応することができる。
【0014】
さらに、特に少なくとも1つの永久磁石および/または少なくとも1つの電磁石が、少なくとも1つの強磁性要素に一体化されてよい。さらに、特に少なくとも1つの永久磁石および/または少なくとも1つの電磁石が、トルク伝達デバイスに一体化されてよい。特に、少なくとも1つの永久磁石をトルク伝達デバイスに一体化することにより、トルク伝達デバイス内の電源デバイスが回避されることができる。これにより、少なくとも1つの強磁性要素の異方性が安定化されることができ、および/または、測定デバイスの測定周波数が様々に変えられることができる。
【0015】
ここで、少なくとも1つの強磁性要素は、さらに、トルク伝達デバイスの不均衡が回避されるようにトルク伝達デバイス上に配置されてよい。換言すれば、少なくとも1つの強磁性要素は、トルク伝達デバイス上への少なくとも1つの強磁性要素の配置の前におけるトルク伝達デバイスの回転軸が、トルク伝達デバイス上への少なくとも1つの強磁性要素の配置の後におけるトルク伝達デバイスの回転軸に実質的に対応するように、トルク伝達デバイス上に配置されてよい。さらに、少なくとも1つの強磁性要素は、トルク伝達デバイスの回転軸に関して少なくとも部分的に実質的に軸対称に配置されてよい。これは、トルク伝達デバイスの回転軸の安定的な位置を可能とする。
【0016】
測定デバイスは、少なくとも1つの測定要素を含み、各測定要素は、少なくとも1つの強磁性要素の強磁性共鳴周波数を測定するように構成され、測定デバイスは、測定された強磁性共鳴周波数のシフトに基づいてトルク伝達デバイスのトルクを決定するように構成される。ここで、測定デバイスおよび/または少なくとも1つの測定要素は、例えばストリップ線路による強磁性共鳴(FMR)測定技法および/またはベクトル・ネットワーク・アナライザ(VNA)FMR測定技法および/またはパルス誘導マイクロ波磁気測定(pulsed inductive microwave magnetometry)(PIMM)FMR測定技法を実行するように構成されてよい。
【0017】
ここで、測定された強磁性共鳴周波数のシフトに基づくトルク伝達デバイスのトルクの決定に関する理論的背景が、正方形強磁性要素を例として用いて説明され、正方形強磁性要素は、例示的な円筒形シャフト上に配置される。この目的で、下記で用いられる変数を例示的に示す図8が特に参照される。正方形強磁性要素は、辺長さaを有する。角度φのシャフトの軸周りの回転は、シャフトの変形を引き起こし、それにより、正方形強磁性要素はせん断角γだけせん断変形される。これにより、正方形強磁性要素の第1の対角線dは引き伸ばされ、一方で第2の対角線dは短縮される。
【数1】
【数2】
【0018】
これは、対応する変形をもたらす。
【数3】
【数4】
【0019】
さらに、せん断角γは、角度φ、シャフトの半径rおよびシャフトの長さLに基づいて決定されることができる。
【数5】
【0020】
角度φは、トルクM、シャフトの長さL、せん断弾性率Gおよび慣性モーメントJから求まる。
【数6】
【0021】
ここで、慣性モーメントJは、以下により表されることができる。
【数7】
【0022】
式(6)および(7)を式(5)に入れると、せん断角γが得られる。
【数8】
【0023】
フックの法則および式(3)、(4)および(8)によれば、1つの対角線dに沿った正方形強磁性要素の表面上の機械的張力σについて、以下の公式が求まる。
【数9】
【0024】
高周波電磁界に曝された、膜の平面内に一軸異方性を有する強磁性薄膜の動態は、Landau-Lifschitz-Gilbertの公式により説明される。特に、これは、強磁性共鳴周波数についての周知のKittelの公式をもたらす。
【数10】
【0025】
ここで、
【数11】
は、ジャイロ磁気定数であり、μは磁界定数であり、Jは飽和分極であり、Hは膜の平面内の一軸異方性磁界の量である。
【0026】
特にシャフトに印加されるトルクにより生成された張力によって、正方形強磁性膜に荷重がかけられると、強磁性共鳴周波数が上記張力に依存するようになる。膜の平面内の一軸異方性磁界
【数12】
に加えて、張力により生成される実効的な磁気弾性異方性磁界(magnetoelastic anisotropy field)
【数13】
が考慮されなければならない。
【数14】
【0027】
ここで、
【数15】
は、膜の平面内における実効的な二軸異方性磁界であり、λは飽和磁歪定数である。よって、式に(11)に基づき、以下が得られる。
【数16】
【0028】
このとき、式(10)においてHにHu,effを代入すると、張力依存性の強磁性共鳴周波数が得られる。
【数17】
【0029】
よって、強磁性共鳴周波数の測定または強磁性共鳴周波数のシフトの測定に基づいて、シャフトまたはトルク伝達デバイスに印加されたトルクを決定することが可能である。
【0030】
特に、これは、単一の信号線を用いてリアルタイムで印加トルクを決定することを可能とする。特に、顕著な強磁性共鳴(FMR)、すなわち、FMRの1/5と1/10との間の小さい半値幅ΔfFMRを有する共鳴ピークは、測定信号のより良好な解像度を可能とし、よってより好ましい信号対雑音比を可能とすることができる。センサ装置および/または測定デバイスおよび/または少なくとも1つの測定要素の読出し回路の測定周波数、または産業に関して(特に法的に)指定される周波数は、センサ装置および/または少なくとも1つの強磁性要素により用いられるまたは個々に適合されるべき強磁性共鳴周波数を規定する。よって、特に、センサ装置は、アプリケーションに応じて適合されることができる。
【0031】
特に、強磁性共鳴周波数の外側の低周波数fにおいて、少なくとも1つの強磁性要素の初期透磁率または元の透磁率の、より高いまたは低い値へのシフトが測定されることができる。
【数18】
これにより、データ取得が特により効率的および/またはよりフレキシブルになされることができる。特に、低い測定周波数(f→0)であっても、散乱パラメータS11はまた、機械的張力の関数である実効的な一軸異方性に依存する。結果として、トルク伝達デバイスのトルクはまた、初期透磁率((f→0)における透磁率)の、または(f→0)についての散乱パラメータS11の測定から決定されることができる。
【0032】
特に、少なくとも1つの測定要素は、周波数掃引によって少なくとも1つの強磁性要素の強磁性共鳴周波数を測定または決定するように構成されてよい。ここで、特に、物理的パラメータ、例えば散乱パラメータS11のパラメータ・プロファイルが、測定周波数の周波数間隔にわたって決定されることができ、測定周波数は、周波数間隔の下限閾値と周波数間隔の上限閾値との間で様々に変えられる。強磁性共鳴周波数は、例えば、散乱パラメータS11のパラメータ・プロファイルの最小値により、または、S11データを用いて算出または評価され得る周波数依存性透磁率の虚部(ローレンツ曲線型の共鳴ピークプロファイル)により、決定されることができる。
【0033】
特に、少なくとも1つの強磁性要素は、少なくとも1つの強磁性層を有してよい。ここで、強磁性層は、特に動作状態において、トルク伝達デバイスの表面と平行に形成されてよい。代替的にまたは加えて、少なくとも1つの強磁性層は、実質的に平面であるように設計されてよい。本説明に関して、実質的にとは、総体的に低い製造および環境関連の偏差として理解されるべきである。
【0034】
特に、少なくとも1つの強磁性要素は、2つ以上の強磁性層を有してよく、2つ以上の強磁性層のうち特に複数のもの、好ましくはその各々が、2つ以上の強磁性層の他のものとは異なる強磁性材料から形成されてよい。
【0035】
特に、少なくとも1つの強磁性要素は、2つ以上の強磁性層および少なくとも1つの絶縁性非導電性分離層を有してよく、少なくとも1つの絶縁性非導電性分離層のうちの少なくとも1つは、2つ以上の強磁性層のうちの2つの隣接する強磁性層の間に配置される。ここで、少なくとも1つの絶縁性非導電性分離層の各々は、特に、2つ以上の強磁性層のうちのそれぞれの2つの隣接する強磁性層を互いに磁気的に分離する、またはそれぞれの隣接する強磁性層の間の磁気的相互作用を防止または低減するように構成されてよい。ここで、少なくとも1つの絶縁性非導電性分離層は、例えば非導電性または低導電性材料から形成されてよく、それにより、2つ以上の強磁性層のうちのそれぞれの2つの隣接する強磁性層が互いに磁気的に実質的に分離される、またはそれぞれの隣接する強磁性層の間の磁気的相互作用が防止または低減される。
【0036】
特に、2つ以上の強磁性層は、少なくとも第1の強磁性層および第2の強磁性層を有してよい。特に、第1の強磁性層は、少なくとも第1の強磁性材料から製造されてよく、第2の強磁性層は、少なくとも第2の強磁性材料から製造されてよい。さらに、上述のように、第1の強磁性層は、少なくとも1つの絶縁性非導電性分離層により第2の強磁性層から分離されてよい。換言すれば、少なくとも1つの強磁性要素は、第1の強磁性層と第2の強磁性層との間に配置された少なくとも1つの絶縁性非導電性分離層を有してよい。少なくとも1つの絶縁性非導電性分離層は、特に、第1の強磁性層および第2の強磁性層を互いに磁気的に分離する、またはこれらの強磁性層の間の磁気的相互作用を防止または低減するように構成されてよい。
【0037】
特に、少なくとも第1の強磁性材料から形成される第1の強磁性層、および少なくとも第2の強磁性材料から形成される第2の強磁性層は、異なる強磁性共鳴周波数を有してよい。特に、少なくとも1つの測定要素は、2つ以上の強磁性層の各々についてそれぞれの強磁性共鳴周波数を測定または決定するように構成されてよい。ここで、少なくとも1つの測定要素は、特に、少なくとも1つの強磁性要素の第1の強磁性層の第1の強磁性共鳴周波数および第2の強磁性層の第2の強磁性共鳴周波数を測定または決定するように構成されてよい。例えば、少なくとも1つの強磁性要素の周波数依存性透磁率が少なくとも1つの測定要素によって測定された場合に、2つの共鳴極大が観測され得る。
【0038】
特に、測定デバイスは、2つ以上の強磁性層の各々について測定された強磁性共鳴周波数のうちの少なくとも1つのシフトに基づいて、トルク伝達デバイスのトルクを決定するように構成されてよい。特に、測定デバイスは、測定された第1の強磁性共鳴周波数および/または測定された第2の強磁性共鳴周波数のシフトに基づいて、トルク伝達デバイスのトルクを決定するように構成されてよい。特に、測定デバイスは、それぞれの測定された強磁性共鳴周波数のシフトに基づいて、2つ以上の強磁性層の各々についてトルク伝達デバイスのそれぞれのトルクを決定するように構成されてよい。例えば、測定デバイスは、測定された第1の強磁性共鳴周波数のシフトに基づいてトルク伝達デバイスの第1のトルクを決定し、測定された第2の強磁性共鳴周波数のシフトに基づいてトルク伝達デバイスの第2のトルクを決定するように構成されてよい。測定デバイスは、さらに、第1のトルクおよび第2のトルクの算術平均に基づいてトルク伝達デバイスのトルクを決定するように構成されてよく、測定デバイスは、このようなトルクの決定に限定されない。特に、測定デバイスは、2つ以上の強磁性層の各々について測定された強磁性共鳴周波数のうちの少なくとも1つのシフトに基づいてトルクを決定するための任意のアルゴリズムを用いてよい。例えば、それぞれに決定されたトルクの算術平均または重み付け平均が、2つ以上の強磁性層の各々について決定されることができる。代替的にまたは加えて、測定デバイスは、2つ以上の強磁性層の各々について測定された強磁性共鳴周波数の少なくともサブセットのシフトに基づいてトルクを決定するための任意のアルゴリズムを適用するように構成されてよい。
【0039】
特に、少なくとも1つの強磁性要素は、少なくとも第1の強磁性層、第2の強磁性層および第3の強磁性層と、少なくとも2つの絶縁性非導電性分離層とを有してよい。ここで、特に、少なくとも2つの絶縁性非導電性分離層のうちの第1のものは、第1の強磁性層と第2の強磁性層との間に配置されてよい。さらに、特に少なくとも2つの絶縁性非導電性分離層のうちの第2のものは、第2の強磁性層と第3の強磁性層との間に配置されてよい。第2の強磁性層は、好ましくは、第1の強磁性層と第3の強磁性層との間に配置される。
【0040】
特に、第1の強磁性層は第1の強磁性材料から形成されてよく、第2の強磁性層は第2の強磁性材料から形成されてよく、第3の強磁性層は第3の強磁性材料から形成されてよく、第1、第2および第3の強磁性層は、異なる強磁性共鳴周波数を有する。特に、第1の強磁性層は第1の強磁性共鳴周波数を有し、第2の強磁性層は第2の強磁性共鳴周波数を有し、第3の強磁性層は第3の強磁性共鳴周波数を有する。
【0041】
特に、第3の強磁性層は、多層として設計されてもよい。多層は、例えば、第1の強磁性材料から製造された少なくとも第1のサブ層と、第2の強磁性材料から製造された少なくとも第2のサブ層とを含んでよく、これらは互いの上に直接適用または配置される。好ましくは、さらなる絶縁性非導電性分離層が第1のサブ層と第2のサブ層との間に配置されず、それにより、第1のサブ層および第2のサブ層が互いに磁気的に分離されず、または第1のサブ層と第2のサブ層との間の磁気的相互作用が可能である。結果として、多層は、特に第1の強磁性層の第1の強磁性共鳴周波数と第2の強磁性層の第2の強磁性共鳴周波数との間の、第3の強磁性共鳴周波数を有する。ここで、しかしながら、多層は、2つのサブ層に制限されず、特に2つ以上のサブ層を有してもよい。
【0042】
ここで、しかしながら、本開示は、第3の強磁性層が多層として設計されることに制限されない。代わりに、少なくとも1つの強磁性層の各々が、多層として設計され、異なる強磁性材料から製造された少なくとも2つのサブ層を含んでよい。
【0043】
少なくとも1つの測定要素は、特に、少なくとも1つの強磁性要素の第1の強磁性層の第1の強磁性共鳴周波数、第2の強磁性層の第2の強磁性共鳴周波数、および第3の強磁性層の第3の強磁性共鳴周波数を測定または決定するように構成されてよい。
【0044】
特に、測定デバイスは、測定された第1の強磁性共鳴周波数および/または測定された第2の強磁性共鳴周波数および/または測定された第3の強磁性共鳴周波数のシフトに基づいて、トルク伝達デバイスのトルクを決定するように構成されてよい。例えば、測定デバイスは、測定された第1の強磁性共鳴周波数のシフトに基づいてトルク伝達デバイスの第1のトルクを決定し、測定された第2の強磁性共鳴周波数のシフトに基づいてトルク伝達デバイスの第2のトルクを決定し、測定された第3の強磁性共鳴周波数のシフトに基づいてトルク伝達デバイスの第3のトルクを決定するように構成されてよい。測定デバイスは、さらに、例えば第1のトルク、第2のトルクおよび第3のトルクの算術平均に基づいてトルク伝達デバイスのトルクを決定するように構成されてよく、しかしながら、測定デバイスは、このようなトルクの決定に限定されない。
【0045】
1つよりも多くの強磁性共鳴周波数を有する少なくとも1つの強磁性要素を用いる利点は、リアルタイムでの強磁性共鳴周波数の同時測定にある。特に、いくつかの強磁性共鳴周波数を同時に測定することにより、増大された測定効果と、よってより良好な解像度とを実現することが可能である。さらに、これにより、例えば温かいオイル・バス内のギアボックスの場合の、考えられる温度影響の向上された補償が可能とされることができる。さらに、トルクの測定に影響する、トルク伝達デバイス内の軸方向の力が、向上された形で検出されることもできる。
【0046】
特に、少なくとも1つの強磁性層の各々は、各々、最大で約500μm、好ましくは最大で約1μmおよび/または少なくとも約50nm、好ましくは少なくとも約150nmの厚さを有してよい。ここで、特にそれぞれの少なくとも1つの強磁性層の材料に依存して、それぞれの少なくとも1つの強磁性層の厚さのより大きい値またはそれぞれの少なくとも1つの強磁性層のより大きい体積は、より高強度な測定信号をもたらし、信号対雑音比を向上させ得ることが考慮されなくてはならない。よって、それぞれの少なくとも1つの強磁性層の厚さは、例えばセンサ装置のアプリケーションの経済的効率性、測定ユニットの測定精度および/またはトルク伝達デバイスの磁気的特性および/またはトルク伝達デバイスの環境に依存して選択されてよい。しかしながら、各種パラメータのこの列挙は、限定的なものとして解釈されるべきではない。
【0047】
特に、それぞれの少なくとも1つの強磁性層の厚さおよび/または少なくとも1つの強磁性要素の厚さは、実質的に一定であってよい。このような一定の厚さは、高信頼かつ再現可能な測定結果を保証することができる。
【0048】
特に、少なくとも1つの強磁性要素は、動作状態において少なくとも1つの強磁性層とトルク伝達デバイスとの間に配置される少なくとも1つのバッファ層または少なくとも1つの中間層を有してよい。ここで、少なくとも1つの中間層は、動作状態において少なくとも1つの強磁性層およびトルク伝達デバイスを磁気的に分離するように構成される。特に、少なくとも1つの中間層は、非導電性または低導電性材料から形成されてよい。ここで、動作状態において、少なくとも1つの強磁性要素の磁気的特性は、トルク伝達デバイスの考えられる磁気的特性によって影響され得ることが考慮されなくてはならない。例えば、強磁性材料から形成されるトルク伝達デバイスは、少なくとも1つの強磁性要素の強磁性的特性、特に例えば異方性に影響および/または変化を及ぼす場合がある。これは、強磁性共鳴周波数の測定を誤らせ、または不可能にし得る。よって、少なくとも1つの中間層に起因して、測定デバイスの測定結果の信頼性、精度および再現性が向上されることができる。
【0049】
特に、少なくとも1つの中間層は、最大で約500μm、好ましくは最大で約5μmおよび/または少なくとも約200nm、好ましくは少なくとも約750nmの厚さを有してよい。しかしながら、少なくとも1つの中間層の厚さは、このような値に限定されない。代わりに、少なくとも1つの中間層の厚さは、例えばトルク伝達デバイスの磁気的特性に適合されてよい。特に、トルク伝達デバイスが強磁性的特性を有する場合、例えばトルク伝達デバイスがフェライト鋼から製造されたシャフトとして設計される場合、少なくとも1つの中間層の厚さは、必要であれば、動作状態において少なくとも1つの強磁性層およびトルク伝達デバイスを磁気的に分離するために、500μmよりも大きくなるように選択されてもよい。代替的に、少なくとも1つの中間層の厚さは、200nm未満で実現されてもよい。
【0050】
特に、少なくとも1つの強磁性要素は、動作状態において少なくとも1つの強磁性層とトルク伝達デバイスとの間に配置される少なくとも1つの基板層または少なくとも1つの基板を有してよい。少なくとも1つの基板は、特に少なくとも1つの強磁性要素を損傷、例えば引き裂きから保護するように設計されてよい。さらに、少なくとも1つの基板は、少なくとも1つの強磁性要素とトルク伝達デバイスとの間の接続を強化するように設計されてよい。この目的で、例えば、少なくとも1つの基板の材料は、トルク伝達デバイスへの単純な接続が可能とされるように選択されてよい。よって、少なくとも1つの基板およびトルク伝達デバイスの材料を一致させることにより、トルク伝達デバイス上への少なくとも1つの強磁性要素の安定した装着が可能とされることができる。
【0051】
代替的にまたは加えて、少なくとも1つの基板は、少なくとも1つの基板の表面の総面積を増大させるために、表面の構造化、例えば表面の粗面化および/または表面のパターン形成を有してよい。このような、少なくとも1つの基板の表面の総面積の増大は、動作状態における、トルク伝達デバイスと反対向きの側での、少なくとも1つの中間層および/または少なくとも1つの強磁性層への少なくとも1つの基板の安定した接続を可能とすることができる。さらに、このような、動作状態におけるトルク伝達デバイスに面する側での少なくとも1つの基板の表面の総面積の増大は、トルク伝達デバイスへの少なくとも1つの基板の安定した接続を可能とすることができる。
【0052】
少なくとも1つの基板は、さらに、特にキャリア層および/またはキャリアプレートとして設計されてよい。ここで、少なくとも1つの基板は、特に、少なくとも1つの強磁性要素または少なくとも1つの強磁性層を、その輸送中および/またはトルク伝達デバイス上への少なくとも1つの強磁性要素の配置プロセス中における損傷および/または変形から保護する、またはこのような損傷および/または変形を低減するように設計されてよい。少なくとも1つの基板は、好ましくは最大で約1mm、より好ましくは最大で約500μmおよび/または好ましくは少なくとも約1μm、より好ましくは少なくとも約10μmの厚さを有してよい。
【0053】
少なくとも1つの中間層および/または少なくとも1つの基板は、特に、トルク伝達デバイスの機械的張力および/またはトルクを、好ましくは実質的に完全に、少なくとも1つの強磁性層へと伝達するように構成されてよい。
【0054】
特に、少なくとも1つの強磁性要素は、トルクにより引き起こされた機械的張力をトルク伝達デバイスから少なくとも1つの強磁性要素に伝達するために、接着により動作状態におけるトルク伝達デバイスに接続可能であってよい。この目的で、適当な接着剤、例えば二成分型接着剤が用いられてよい。この文脈における適当な接着剤とは、少なくとも1つの強磁性要素、特に少なくとも1つの強磁性要素の材料をトルク伝達デバイス、特にトルク伝達デバイスの材料に接着するのに適当な接着剤として理解されるべきである。接着剤は、好ましくは、少なくとも1つの強磁性要素の磁気的特性、特に少なくとも1つの強磁性要素の異方性磁界に対して実質的に影響または変化を及ぼさないように設計される。
【0055】
特に、少なくとも1つの強磁性要素は、トルクにより引き起こされた機械的張力をトルク伝達デバイスから少なくとも1つの強磁性要素に伝達するために、溶接または材料接続により動作状態におけるトルク伝達デバイスに接続可能であってよい。特に、溶接は、溶接溶加材ありでまたはなしで実行されてよい。例えば、少なくとも1つの強磁性要素は、超音波溶接により動作状態におけるトルク伝達デバイスに接続可能であってよい。溶接は、好ましくは、強磁性要素の平面内における一軸異方性磁界が、不変に保たれる、または制御された形で適合もしくは生成される、のいずれかとなるように、外部静磁界中で行われてよい。
【0056】
特に、少なくとも1つの強磁性要素は、トルクにより引き起こされた機械的張力をトルク伝達デバイスから少なくとも1つの強磁性要素に伝達するために、押圧により動作状態におけるトルク伝達デバイスに接続可能であってよい。
【0057】
特に、少なくとも1つの強磁性要素は、トルクにより引き起こされた機械的張力をトルク伝達デバイスから少なくとも1つの強磁性要素に伝達するために、化学反応させることまたは化学反応により動作状態におけるトルク伝達デバイスに接続可能であってよい。特に、少なくとも1つの強磁性要素は、少なくとも1つの強磁性要素の、動作状態においてトルク伝達デバイス上に配置される側が、例えばイオン結合および/または共有接合を形成することにより、トルク伝達デバイスと化学的に反応するように設計されてよい。
【0058】
特に、少なくとも1つの強磁性要素は、トルクにより引き起こされた機械的張力をトルク伝達デバイスから少なくとも1つの強磁性要素に伝達するために、ラッチ接続または嵌合ロックにより動作状態におけるトルク伝達デバイスに接続可能であってよい。ここで、少なくとも1つの強磁性要素は、少なくとも1つのラッチ接続要素を有してよく、少なくとも1つのラッチ接続要素は、動作状態においてトルク伝達デバイスの少なくとも1つの対応するラッチ接続要素に係合またはラッチ接続するように構成される。
【0059】
特に、測定デバイスは、トルク伝達デバイスと少なくとも1つの強磁性要素との接続を介した、トルクにより引き起こされる機械的張力の不完全な伝達を考慮して、測定された強磁性共鳴周波数のシフトに基づいてトルク伝達デバイスのトルクを決定するように構成されてよい。特に、トルク伝達デバイスと少なくとも1つの強磁性要素との接続は、機械的張力を少なくとも部分的に吸収および/または少なくとも部分的に偏向してよい。式(12)は、好ましくは、少なくとも2つの補正パラメータにより拡張されてよい。
【数19】
【0060】
パラメータαは、接続により引き起こされる少なくとも1つの強磁性要素の予張力を表し、パラメータβは、吸収または減衰因子を表す。このような補正が図15に例示的に示されている。
【0061】
少なくとも1つの強磁性要素が少なくとも1つの中間層および/または少なくとも1つの基板を含むとした場合、予張力αおよび/または減衰因子βの値は、少なくとも基板と少なくとも1つの中間層および/または少なくとも1つの強磁性層との間、および/または少なくとも1つの中間層と少なくとも1つの強磁性層との間の接続を通したトルクの不完全な伝達を考慮するように適合されてよい。
【0062】
測定デバイスは、少なくとも1つの較正ステップにおいてトルク伝達デバイスと少なくとも1つの強磁性要素との間の接続を通した機械的張力の不完全な伝達を決定または指定するように構成されてよい。特に、予張力αおよび/または減衰因子βの値は、測定デバイスにより規定されてよく、および/または少なくとも1つの較正ステップに基づいて指定されてよく、および/またはユーザにより予め決定されてよい。
【0063】
特に、動作状態において、少なくとも1つの測定要素と少なくとも1つの強磁性要素との間の最小距離は、最大で約1500μm、好ましくは最大で約500μm、さらに好ましくは最大で約300μm、最も好ましくは最大で約150μmの値を有してよい。
【0064】
特に、少なくとも1つの強磁性要素の強磁性共鳴周波数の測定の間、少なくとも1つの測定要素の表面と少なくとも1つの強磁性要素との間の測定角度は、少なくとも約0°、好ましくは少なくとも約12°かつ最大で約28°、好ましくは最大で約16°の値を有してよい。ここで、トルク伝達デバイスにトルクが印加されたときに、強磁性要素の少なくとも1つの領域が測定デバイスまたは測定デバイスのHF測定ヘッド(特に、下記でさらに説明するように、トリプレートストリップ線路)により近づいてよく、それにより、この測定角度範囲において、HF力線の少なくとも1つの強磁性要素へのより容易な結合が可能とされる。これは、好ましくは測定信号の増大された強度をもたらすことができ、その理由は、好ましい測定角度を有する測定ヘッドと強磁性要素との間の距離がより小さくなるにつれて、測定ヘッドに向かってのHF力場密度が(したがって吸収または反射される応答信号も)結果として増大するためである。これは、トルク伝達デバイスの回転軸をほぼ連続的に回転させないトルク伝達デバイスに対するトルク測定の場合に特に、増大された測定信号強度をもたらすことができる。
【0065】
特に、トルク伝達デバイスは、シャフトとして設計されてよい。トルク伝達デバイスは、好ましくは、実質的に円筒の形態で、および/またはトルク伝達デバイスの回転軸に関して実質的に軸対称に設計されてよい。
【0066】
特に、少なくとも1つの測定要素のうちの少なくとも1つの測定要素は、高周波トリプレートストリップ線路として設計されてよく、強磁性共鳴周波数の測定は、特に高周波トリプレートストリップ線路の離調に基づく。好ましくは、少なくとも1つの測定要素のうちの少なくとも1つの測定要素が、高周波トリプレートストリップ線路として設計されてよく、少なくとも1つの測定要素のさらなる測定要素が、高周波トリプレートストリップ線路とは異なる測定要素として設計されてよい。少なくとも1つの測定要素は、好ましくは、少なくとも2つの実質的に異なる測定要素を含んでよい。特に、高周波トリプレートストリップ線路は、約50オームのインピーダンスに設計されてよい。さらに、高周波トリプレートストリップ線路は、特に画定された形で導波される高周波電磁波の反射モードにおいて動作されてよい。ここで、インピーダンスまたは高周波トリプレートストリップ線路の離調は、高周波トリプレートストリップ線路の前で生じる異なる電磁波振幅比の部分的またはほぼ完全な吸収によって引き起こされる。特に、高周波トリプレートストリップ線路は、強磁性共鳴周波数を測定するための反射モードにおいて少なくとも1つの反射信号を受信または測定するように構成されてよく、特に少なくとも1つの反射信号は、固定の測定周波数において決定または測定される。固定の測定周波数は、特に、強磁性共鳴周波数に近い、例えば強磁性共鳴周波数の少なくとも0.8倍、好ましくは強磁性共鳴周波数の少なくとも0.9倍および/または最大で強磁性共鳴周波数の1.2倍、好ましくは最大で強磁性共鳴周波数の1.1倍であってよい。固定の測定周波数は、特に、低い周波数、例えば最大で強磁性共鳴周波数の0.25倍、好ましくは最大で強磁性共鳴周波数の0.1倍、より好ましくは最大で強磁性共鳴周波数の0.05倍であってよい。
【0067】
これに対し、従来のストリップ線路においては、強磁性層のHF特性を測定するためには強磁性層がストリップ線路に直接一体化されなければならない。周波数依存性の物理量、例えば周波数依存性透磁率の測定を行うためには、強磁性層および強磁性層が配置されるベース基板がストリップ線路の信号線と接地点との間に位置しなければならないため、これらの測定は非接触ではない。
【0068】
ここで、少なくとも1つの強磁性要素および少なくとも1つの測定要素は、少なくとも1つの測定要素の固有周波数が少なくとも1つの強磁性要素の共鳴周波数を上回るように設計されてよい。少なくとも1つの測定要素の固有周波数は、特に、少なくとも1つの測定要素のサイズまたは長さに依存する。これにより、特に、トルク伝達デバイスのトルクの決定における少なくとも1つの測定要素または少なくとも1つの測定ヘッドの幾何学的影響が、回避または低減されることができる。
【0069】
特に、少なくとも1つの測定要素は、動作状態において測定平面に実質的に沿って配置されてよく、測定平面は、トルク伝達デバイスの表面に対して実質的に正接である。ここで、しかしながら、少なくとも1つの測定要素は、このような形状に制限されず、他の形状を有してもよい。例えば、少なくとも1つの測定要素は、実質的に板状および/または実質的にU字形および/または実質的に少なくとも部分的に環状であってよい。特に、動作状態において、少なくとも1つの測定要素は、少なくとも部分的に、例えば少なくとも45°、好ましくは少なくとも90°および/または最大で360°、好ましくは最大で270°の角度範囲にわたって、例えばトルク伝達デバイスの回転軸に関して周方向に実質的に沿って、トルク伝達デバイスを取り囲んでよい。代替的に、動作状態において、少なくとも1つの測定要素は、完全に、例えば実質的に被覆物のように、例えばトルク伝達デバイスの回転軸に関して周方向に実質的に沿って、トルク伝達デバイスを取り囲んでよい。
【0070】
特に、少なくとも1つの強磁性要素は、少なくとも1つの円周強磁性要素として設計されてよく、動作状態において、少なくとも1つの円周強磁性要素は、トルク伝達デバイスの回転軸に関して周方向に沿ってトルク伝達デバイスを実質的に完全に取り囲む。ここで、少なくとも1つの円周強磁性要素および少なくとも1つの測定要素は、トルク伝達デバイスにトルクがかけられたときに、少なくとも1つの円周強磁性要素の強磁性共鳴周波数の連続的な測定が可能とされるように配置されてよい。
【0071】
例えば、少なくとも1つの強磁性要素は、実質的に板状および/または実質的にU字形/V字形および/または実質的に少なくとも部分的に環状および/または実質的にスリーブ状であってよい。
【0072】
特に、少なくとも1つの強磁性要素は、少なくとも2つの強磁性要素を含んでよく、少なくとも2つの強磁性要素は、トルク伝達デバイスの回転軸に関して周方向にトルク伝達デバイス上に配置される。換言すれば、少なくとも1つの強磁性要素は、好ましくは、少なくとも2つの強磁性要素を含んでよく、少なくとも2つの強磁性要素は、トルク伝達デバイスがその回転軸をほぼ回転させるときに、少なくとも2つの強磁性要素が順次にまたは次々に回転軸と少なくとも1つの測定要素との間を通って移動または回転するように、トルク伝達デバイス上に配置される。
【0073】
特に、少なくとも2つの強磁性要素のうちの少なくとも1つは、実質的に平面または平坦であるように設計されてよく、動作状態において、トルク伝達デバイスの表面の接平面と実質的に平行に向けられてよい。少なくとも1つの平面または平坦な強磁性要素は、特にトルク伝達デバイスの凹部内に配置されてよい。少なくとも1つの平面または平坦な強磁性要素は、特にトルク伝達デバイス上に突出部を少なくとも部分的に形成してよい。
【0074】
特に、少なくとも2つの強磁性要素のうちの少なくとも1つは、部分的に円周強磁性要素として設計され、動作状態において、トルク伝達デバイスの回転軸に関して周方向に沿ってトルク伝達デバイスを少なくとも部分的に取り囲んでよい。例えば、少なくとも1つの強磁性要素のうちの少なくとも1つは、実質的に円筒形シェルの形態で、および/または部分的リングとして、および/または半リングとして設計されてよい。
【0075】
特に、少なくとも1つの強磁性要素のうちの少なくとも2つは、各々、円周強磁性要素として設計され、動作状態において、トルク伝達デバイスの回転軸に関して周方向に沿ってトルク伝達デバイスを完全に取り囲んでよい。少なくとも2つの円周強磁性要素は、互いと平行に設計されてよく、少なくとも2つの平行な円周強磁性要素は、特にトルク伝達デバイスの回転軸に関して軸方向に沿って離隔されてよい。
【0076】
特に、少なくとも1つの強磁性要素は、磁気異方性を有してよい。少なくとも1つの強磁性要素の磁気異方性または好適な方向は、特に、外部静磁界中で少なくとも1つの強磁性要素をアニールすることにより生成されたものであってよい。アニールは、特に、例えば高温および/または少なくとも1つの強磁性要素および/または少なくとも1つの強磁性層の材料の融点付近での、少なくとも1つの強磁性要素の熱処理を含んでよい。
【0077】
特に、測定デバイスは、少なくとも1つの磁界要素をさらに含んでよく、少なくとも1つの磁界要素は、少なくとも1つの強磁性要素に磁気異方性を生成するまたはそれに影響を及ぼすために、動作状態において磁界を生成するように構成される。ここで、少なくとも1つの磁界要素は、少なくとも1つの永久磁石および/または少なくとも1つの電磁石を有してよい。特に、少なくとも1つの磁界要素は、特に少なくとも1つの強磁性要素の強磁性共鳴周波数の測定中に、少なくとも1つの強磁性要素の平面内における磁気異方性を生成するように構成されてよい。少なくとも1つの磁界要素により生成される磁界は、特に、最大で50mT、好ましくは最大で10mT、特に好ましくは最大で5mTの磁束密度を有してよい。
【0078】
1つの態様は、トルク伝達デバイスのトルクを決定するための方法であって、少なくとも1つの強磁性要素をトルク伝達デバイス上に配置することと、少なくとも1つの強磁性要素の強磁性共鳴周波数を測定することと、測定された強磁性共鳴周波数のシフトに基づいてトルク伝達デバイスのトルクを決定することとを含む方法に関する。
【0079】
方法は、特に、センサ装置の上記されている特徴の任意の組み合わせに係る特徴を含んでよい。
【0080】
特に、少なくとも1つの強磁性要素を配置することは、少なくとも1つの強磁性要素のトルク伝達デバイスへの接着、溶接、押圧、化学反応および/またはラッチ接続を含んでよい。
【0081】
特に、トルク伝達デバイスのトルクを決定することは、トルク伝達デバイスと少なくとも1つの強磁性要素との間の接続を通した機械的張力の不完全な伝達を考慮することを含んでよい。方法は、特に、トルク伝達デバイスと少なくとも1つの強磁性要素との間の接続を通した機械的張力の不完全な伝達を決定することまたは機械的張力の不完全な伝達の物理的パラメータを決定することをさらに含んでよい。物理的パラメータは、例えば、特に式(14)に記載されるような、接続により引き起こされる少なくとも1つの強磁性要素の予張力αおよび吸収または減衰因子βを含んでよい。
【0082】
特に、方法は、少なくとも1つの強磁性層を製造することを含んでよい。特に、少なくとも1つの強磁性層は、特にスパッタ、好ましくはマグネトロン・スパッタにより、少なくとも1つの強磁性層の材料を堆積させることにより製造されてよい。
【0083】
特に、少なくとも1つの強磁性層を製造することは、少なくとも、第1の強磁性層を製造することと、第1の絶縁性非導電性分離層を第1の強磁性層上に製造することと、第2の強磁性層を第1の絶縁性非導電性分離層上に製造することとをさらに含んでよい。特に、少なくとも1つの強磁性要素の強磁性共鳴周波数を測定することは、少なくとも、第1の強磁性層の第1の強磁性共鳴周波数を測定または決定することと、第2の強磁性層の第2の強磁性共鳴周波数を測定または決定することとをさらに含んでよい。特に、トルク伝達デバイスのトルクを決定することは、少なくとも、測定された第1の強磁性共鳴周波数および/または測定された第2の強磁性共鳴周波数のシフトに基づいて、トルク伝達デバイスのトルクを決定することを含んでよい。
【0084】
特に、方法は、基板を製造することと、中間層を基板上に製造することとをさらに含んでよく、少なくとも1つの強磁性層の強磁性層が中間層上に製造され、中間層は、センサ装置の動作状態において少なくとも1つの強磁性層およびトルク伝達デバイスを磁気的に分離するように構成される。
【0085】
特に、少なくとも1つの強磁性層および/または中間層および/または基板は、トルク伝達デバイスに直接適用されてよい。
【0086】
特に、方法は、少なくとも1つの強磁性要素の磁気異方性を生成するために、外部静磁界中での少なくとも1つの強磁性要素のアニール(上記参照)をさらに含んでよい。特に、外部静磁界を指定することにより、少なくとも1つの強磁性要素の所望の磁気異方性が設定されることができる。
【0087】
さらに、2つの例示的な強磁性要素が、各々例示的な製造方法とともに説明される。
【0088】
実施例1
第1の実施例の一部として、例示的な強磁性要素および例示的な強磁性要素の例示的な製造方法が説明される。
【0089】
この目的で、特に、研磨済み炭化タングステン-コバルト(WC-Co)硬質金属基板が提供される。ここでのWC-Co基板は、10.5重量%のコバルトを有し、12.7mm×12.7mm×0.4mm(長さ×幅×厚さ)の寸法を有する。
【0090】
シリコン酸化物中間層が、0.2Paにおける純アルゴン雰囲気中での非反応性RFマグネトロン・スパッタにより、WC-Co基板に適用される。シリコン酸化物中間層は、300Wの電力で6インチのSiOスパッタリング・ターゲットを用いて適用される。結果として、厚さ約3μmのシリコン酸化物中間層がWC-Co基板に適用され、シリコン酸化物中間層は、約1:2(Si:O)の化学的組成を有する。この文脈において、約とは、15%までの偏差を含むことを意味する。
【0091】
軟磁性強磁性の鉄-コバルト-ハフニウム-窒素(Fe-Co-Hf-N)層が、0.2Paにおけるアルゴン/窒素(Ar/N)雰囲気中での反応性RFマグネトロン・スパッタにより、中間層に適用される。Ar/Nの気体流量比は、100sccm/3sccmに保たれる。Fe-Co-Hf-N層は、250Wの電力で6インチのFe37Co46Hf17スパッタリング・ターゲットを用いて適用される。これにより、厚さ約200nmのFe-Co-Hf-N層がWC-Co基板上に適用され、Fe-Co-Hf-N層は、約32:45:11:12(Fe:Co:Hf:N)の化学的組成を有する。この文脈において、約とは、各場合において約25%までの偏差を含むことを意味する。
【0092】
シリコン中間層およびFe-Co-Hf-N層が適用された後、強磁性要素は、1時間にわたって50mTの静磁界中において400℃でアニールされる(上記参照)。ここ、アニールは、p<10-7mbarの圧力の真空中で行われ、アニールは、強磁性層の一軸磁気異方性を生成する。
【0093】
アニールされた強磁性要素は、トルク伝達デバイスに接続され、例えばシャフトに接着されてもよい。
【0094】
実施例2
第2の実施例の一部として、さらなる例示的な強磁性要素および例示的な強磁性要素のさらなる例示的な製造方法が説明される。
【0095】
この目的で、特にシリコン(Si(1 0 0))基板が提供される。Si基板は、9.9mm×9.9mm×0.4mm(長さ×幅×厚さ)の寸法を有する。Si基板は、さらに熱酸化され、熱酸化されたシリコンの1μm中間層を有する。
【0096】
強磁性の鉄-コバルト-ジルコニウム-窒素(Fe-Co-Zr-N)層が、0.2Paにおけるアルゴン/窒素(Ar/N)雰囲気中での反応性RFマグネトロン・スパッタにより、中間層に適用される。Ar/Nの気体流量比は、100sccm/3sccmに保たれる。Fe-Co-Zr-N層は、250Wの電力で6インチのFe37Co46Zr17スパッタリング・ターゲットを用いて適用される。これにより、厚さ約788nmのFe-Co-Zr-N層が中間層上に適用され、Fe-Co-Hf-N層は、約40:37:11:12(Fe:Co:Zr:N)の化学的組成を有する。この文脈において、約とは、各場合において約25%までの偏差を含むことを意味する。
【0097】
Fe-Co-Zr-N層が適用された後、強磁性要素は、1時間にわたって50mTの静磁界中において400℃でアニールされる。ここ、アニールは、p<10-7mbarの圧力の真空中で行われ、アニールは、強磁性層の一軸磁気異方性を生成する。
【0098】
アニールされた強磁性要素は、さらに、トルク伝達デバイスに接続され、例えばシャフトに接着されてよい。
【0099】
図面に示される例示的実施形態に基づいて、本発明が以下でさらに説明される。例示的実施形態は、ここでは限定的なものとして解釈されてはならない。図面は、以下を示す。
【図面の簡単な説明】
【0100】
図1】動作状態における第1の例示的なセンサ装置の斜視図である。
図2図1のセンサ装置の断面図である。
図3】動作状態における第2の例示的なセンサ装置の斜視図である。
図4図3のセンサ装置の断面図である。
図5】動作状態における第3の例示的なセンサ装置の断面図である。
図6図5のセンサ装置の側面図である。
図7】例示的な強磁性要素の斜視断面図である。
図8】トルク伝達デバイスおよびその上に配置される強磁性要素の留め付けの模式的表現である。
図9】実施例2で製造される強磁性要素についての強磁性共鳴周波数の6つの測定シリーズである。
図10図9に示される測定シリーズの強磁性遮断共鳴周波数(ferromagnetic cut-off resonance frequency)のグラフ表現である。
図11】測定位置における測定要素と強磁性要素との間の距離に応じた強磁性共鳴周波数の複数の測定シリーズのグラフ表現である。
図12】測定位置における測定要素と強磁性要素との間の測定角度に応じた強磁性共鳴周波数の複数の測定シリーズのグラフ表現である。
図13A】強磁性共鳴周波数を決定するための例示的な実験用測定デバイス、および例示的なセンサ装置の拡大図である。
図13B】強磁性共鳴周波数を決定するための例示的な実験用測定デバイス、および例示的なセンサ装置の拡大図である。
図14A】実施例1で製造される強磁性要素と実施例2で製造される強磁性要素との強磁性共鳴周波数の測定シリーズの比較である。
図14B】実施例1で製造される強磁性要素と実施例2で製造される強磁性要素との強磁性共鳴周波数の測定シリーズの比較である。
図15】式12を用いた式13と、式14を用いた式13とに基づく、強磁性共鳴周波数の理論値の比較である。
図16】シャフト上の例示的なセンサ装置の模式的表現である。
図17図16に示される例示的なセンサ装置に係る強磁性共鳴周波数の測定シリーズのスクリーンショットである。
図18A】例示的な強磁性要素の斜視断面図である。
図18B】例示的な強磁性要素の斜視断面図である。
図18C】例示的な強磁性要素の斜視断面図である。
図18D】例示的な強磁性要素の斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0101】
図1は、動作状態における第1の例示的なセンサ装置の斜視図を示す。
【0102】
ここで、トルク伝達デバイス1は、円筒形シャフトとして設計され、トルク伝達デバイス1は、トルクを伝達するために回転軸Aをほぼ回転させることが可能である。
【0103】
6つの強磁性要素4がトルク伝達デバイス1上に配置され、斜視図であるためにそのうち3つの強磁性要素4がトルク伝達デバイス1により隠されている。6つの強磁性要素4は、対にして配置され、対にして配置された強磁性要素4は、各々、トルク伝達デバイス1の回転軸Aに関して反対側に配置される。強磁性要素4は、特に、互いに等距離を空けて回転軸A周りの周方向に配置される。これにより、ほぼ回転軸Aの回転運動に関するトルク伝達デバイス1における不均衡の形成が回避されることができる。
【0104】
6つの強磁性要素4は、好ましくは、各々、少なくとも1つの強磁性、特に軟磁性強磁性材料を含む。
【0105】
強磁性要素4は、各々、実質的に正方形に形成され、または強磁性要素4は、特に回転軸Aに関して径方向に垂直なそれぞれの平面内において、実質的に正方形の断面積を有する。強磁性要素4は、各々、実質的に平坦または平面または板状であるように設計されてよい。特に、トルク伝達デバイス1は、トルク伝達デバイス1の周面上の対応する凹部を有し、1つの強磁性要素4が、対応する凹部の各々に収容される。
【0106】
トルク伝達デバイス1にトルクを印加することにより、強磁性要素4は、機械的張力またはせん断力を受ける。換言すれば、強磁性要素4は、トルク伝達デバイス1へのトルクの印加により予張力をかけられる。結果として、強磁性要素4の平面に沿った磁気異方性または異方性磁界が乱されまたは変化され、その結果、強磁性要素4の強磁性共鳴周波数がシフトされる。
【0107】
強磁性要素4の強磁性共鳴周波数のこのシフトは、測定デバイスの測定要素3により測定される。特に、測定要素3は、トルク伝達デバイス1が回転するときに、強磁性要素4が回転軸Aと測定要素3との間を通って回転するまたは回転軸Aの周囲を通って移動するように、トルク伝達デバイス1の上方に配置される。
【0108】
測定要素3は、特に、高周波トリプレートストリップ線路として設計されてよい。
【0109】
測定デバイスの測定要素3は、強磁性共鳴周波数における測定されたシフトまたは測定された強磁性共鳴周波数に直接基づいて、トルク伝達デバイス1に印加されたトルクを決定すること、または強磁性共鳴周波数のシフトまたは強磁性共鳴周波数についての測定されたデータを転送すること、のいずれかを行ってよい。特に、測定要素3は、接続要素5に接続されてよい。接続要素5は、特に、データおよび/または電力を伝達するように構成されてよい。さらに、制御信号が、接続要素5を通して、測定要素3または測定デバイスおよび/または磁界要素2に伝達されてよい。
【0110】
図1は、さらに磁界要素2を示し、磁界要素2は、動作状態において、特に測定要素3とトルク伝達デバイス1との間に、磁界を生成するように構成される。トルク伝達デバイス1の回転運動の間、強磁性要素4は、特に測定要素3とトルク伝達デバイス1との間の測定位置へと、次々に回転し、磁界要素2は、特に、測定位置における強磁性要素4に磁気異方性を生成するまたはそれに影響を及ぼすように構成される。これにより、磁界要素2は、特にそれぞれの強磁性要素4の強磁性共鳴周波数の測定中に、特に、それぞれの強磁性要素4の平面内における磁気異方性を生成するまたはそれに影響を及ぼすことができる。
【0111】
図1において、測定要素3も示すために、磁界要素2は一部のみ示されている。磁界要素2の断面図が、特に図2に示されている。ここで、磁界要素2は例示的に、電磁石として設計され、電磁石は、実質的にU字形の磁心および磁心上に配置されたコイルを有する。しかしながら、電磁石は、このような設計に限定されない。代替的に、磁気要素2は、例えば永久磁石として設計されてよい。
【0112】
図2は、測定要素3、磁界要素2、強磁性要素4、およびトルク伝達デバイス1を通る回転軸Aに垂直な断平面に沿った、図1に示される例示的なセンサ装置の断面図を示す。ここで、図1に関して上記で既に述べられているような強磁性要素4の対にした配置および磁界要素2の形成が、より明確に示されている。特に、ある強磁性要素4が測定位置にあるように示されている。
【0113】
図3は、センサ装置の第2の例示的実施形態の斜視図を示す。ここで、磁界要素2、接続要素5、測定要素3および回転軸Aを有するトルク伝達デバイス1は、同じ参照符号で識別される図1および図2の各要素に実質的に対応する。
【0114】
円周強磁性要素4が、トルク伝達デバイス1上に配置され、この要素は、完全に回転軸Aに関して周方向に沿ってトルク伝達デバイス1を取り囲む。これにより、ほぼ回転軸Aの回転運動に関するトルク伝達デバイス1における不均衡の形成が回避されることができる。さらに、円周強磁性要素4は、特に少なくとも1つの強磁性、特に軟磁性強磁性材料を含む。
【0115】
円周強磁性要素4は、回転軸Aと平行な方向に沿って実質的に一定の直径を有する。特に、トルク伝達デバイス1は、トルク伝達デバイス1の周面上の対応する凹部を有してよく、円周強磁性要素4が、対応する凹部に収容される。
【0116】
トルク伝達デバイス1にトルクが印加されると、円周強磁性要素4は機械的張力を受ける。これにより、磁気異方性または異方性磁界が、回転軸Aに関して円周上の強磁性要素4の表面に沿った円周強磁性要素4の一部分において乱されまたは変化され、それにより、円周強磁性要素4の強磁性共鳴周波数がシフトされる。
【0117】
磁界要素2は、好ましくは、動作状態において、特に測定要素3とトルク伝達デバイス1との間に、磁界を生成するように構成される。トルク伝達デバイス1の回転運動の間、円周強磁性要素4の部分は、少なくとも部分的に測定要素3とトルク伝達デバイス1との間の測定位置を通って回転し、磁界要素2は、測定位置に位置付けられた円周強磁性要素4のそれぞれの部分に磁気異方性を生成するまたはそれに影響を及ぼすように構成される。これにより、磁界要素2は、特に円周強磁性要素4の強磁性共鳴周波数の測定中に、円周強磁性要素4のそれぞれの部分の磁気異方性を生成するまたはそれに影響を及ぼすことができる。
【0118】
図1と同様に、磁界要素2は、測定要素3も示すために、部分的にのみ図3に示されている。磁界要素2の断面図が、図4に示されている。ここで、磁界要素2は、例えば電磁石として設計され、電磁石は、実質的にU字形の磁心および磁心上に配置されたコイルを有する。しかしながら、電磁石は、このような設計に限定されない。代替的に、磁気要素2は、例えば永久磁石として設計されてよい。
【0119】
図4は、測定要素3、磁界要素2、円周強磁性要素4、およびトルク伝達デバイス1を通る回転軸Aに垂直な断平面に沿った、図3に示される例示的なセンサ装置の断面図を示す。ここで、図3に関して上記で既に述べられているような円周強磁性要素4の円周上の配置および磁界要素2の設計が、より明確に示されている。特に、トルク伝達デバイス1のほぼ回転軸Aの各回転運動に伴って、円周強磁性要素4の一部分が測定位置に配置されることが示されている。
【0120】
図5は、センサ装置の第3の例示的実施形態の断面図を示す。ここで、回転軸Aを有するトルク伝達デバイス1、円周強磁性要素4および接続要素5は、図3および図4において同じ参照符号で識別される各要素に実質的に対応する。
【0121】
トルク伝達デバイス1へのトルクの印加により、円周強磁性要素4は機械的張力を受ける。結果として、磁気異方性または異方性磁界が、回転軸Aに関して円周上の強磁性要素4の表面に沿った円周強磁性要素4の一部分において乱されまたは変化され、それにより、円周強磁性要素4の強磁性共鳴周波数がシフトされる。
【0122】
円周強磁性要素4の強磁性共鳴周波数のこのシフトは、測定デバイスの測定要素3により測定される。測定要素3は、好ましくは、トルク伝達デバイス1の回転運動のときに、円周強磁性要素4の部分が少なくとも部分的に回転軸Aと測定要素3との間を通って回転する、または回転軸Aの周囲を周方向に通って移動するように、トルク伝達デバイス1の上方に配置される。
【0123】
さらに、測定要素3は、円周測定要素3として設計され、少なくとも部分的に回転軸Aに関して周方向に沿って、トルク伝達デバイス1を取り囲むように構成される。特に、円周測定要素3は、実質的に約50%の程度まで、周方向に沿ってトルク伝達デバイス1を取り囲む。しかしながら、円周測定要素3は、約50%に制限されず、実質的に50%よりも小さいまたは大きい程度まで、周方向に沿ってトルク伝達デバイス1を取り囲んでもよい。さらに、円周測定要素3は、動作状態において、回転軸Aに関しての円周測定要素3と円周強磁性要素4との間の径方向距離が実質的に一定であるように構成される。
【0124】
円周測定要素3は、例えば高周波トリプレートストリップ線路として、特に湾曲された高周波トリプレートストリップ線路として設計されてよい。
【0125】
測定デバイスの円周測定要素3は、強磁性共鳴周波数における測定されたシフトまたは測定された強磁性共鳴周波数に直接基づいて、トルク伝達デバイス1に印加されたトルクを決定すること、または強磁性共鳴周波数のシフトまたは強磁性共鳴周波数の測定されたデータを転送すること、のいずれかを行ってよい。ここで、測定要素3は、接続要素5に接続されてよい。接続要素5は、好ましくは、データおよび/または電力を伝達するように構成されてよい。さらに、制御信号が、接続要素5を通して、測定要素3または測定デバイスに伝達されてよい。
【0126】
測定要素3が円周測定要素3として設計されるため、磁界要素2によって外部磁界を生成することは難しいまたは不可能である。強磁性共鳴周波数のシフトまたは強磁性共鳴周波数は、例えば円周強磁性要素4において印加トルクにより生成される形状異方性に基づいて、円周測定要素3により測定されてよい。円周強磁性要素4は、好ましくは、回転軸Aと平行な方向に沿って測定された場合に、小さい幅を有してよい。特に、円周強磁性要素4の幅は、回転軸Aと平行な方向に沿って測定された場合に、円周測定要素3の幅よりも小さい値を有してよい。例えば、円周強磁性要素4の幅は、円周測定要素3の幅の値の最大で90%、好ましくは最大で80%、より好ましくは最大で50%および/または少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%の値を有してよい。
【0127】
図6は、図5に示される例示的実施形態の側面図を示し、図5に関して上記で述べられているような円周強磁性要素4および円周測定要素3の相対的設計が特に示されている。
【0128】
図7は、例示的な強磁性要素4の斜視断面図を示す。強磁性要素4は、実質的に平面または平坦であるものとして示されており、この形態は限定的なものではない。代わりに、強磁性要素4は、異なる形状、例えば湾曲された形状を有してよい。
【0129】
強磁性要素4は、特に、正方形の底面を有する立方体として示されている。
【0130】
強磁性要素4は、強磁性層4Aを有する。強磁性層4Aは、強磁性要素4の平面内のまたはそれと平行な磁気異方性または異方性磁界を有する。ここで、強磁性要素4の平面は、少なくとも強磁性層4Aと平行な平面である。代替的にまたは加えて、強磁性層4Aは、磁気異方性または異方性磁界が外部磁界により強磁性要素4の平面内にまたはそれと平行に生成され得るように構成されてよい。
【0131】
強磁性層4Aは、少なくとも1つの強磁性材料、好ましくは少なくとも1つの軟磁性強磁性材料を含む。少なくとも1つの強磁性材料は、特に、Fe-Co-Hf-N、Fe-Co-Zr-N、Fe-Co-Ta-N、Fe-Co-B、および/またはFe-Co-B-Siをベースとした材料を含んでよい。さらに、合金添加物としての高磁歪性の希土類元素(例えばTb、Dy、Sm)は、強磁性層4Aまたは少なくとも1つの強磁性要素4の強磁性共鳴の減衰を増大し得る。
【0132】
強磁性要素4はまた、強磁性層4Aと基板4Cおよび/またはトルク伝達デバイス1との間に配置される中間層4Bを有する。中間層4Bは、強磁性層4Aを基板4Cおよび/またはトルク伝達デバイス1から隔離および/または磁気的に分離するように構成される。中間層4Bは、好ましくは、強磁性要素4の平面に沿って強磁性層4Aと実質的に同じ寸法またはサイズを有し、これは均一な磁気的分離を可能とする。しかしながら、中間層4Bは、このような寸法に限定されず、例えば、強磁性層4Aよりも少なくとも部分的に大きい寸法を有してもよく、それにより、強磁性層4Aの周縁に沿った磁気的エッジ効果が回避または低減されることができる。
【0133】
さらに、中間層4Bは、強磁性層4Aを基板4Cおよび/またはトルク伝達デバイス1から化学的および/または物理的に隔離するように構成されてよい。これにより、例えば、強磁性層4Aと基板4Cおよび/またはトルク伝達デバイス1との間の化学反応および/または拡散プロセスが回避または低減されることができる。さらに、中間層4Bは、特に、強磁性層4Aと基板4Cとの間の接着促進剤として働くように構成されてよい。中間層4Bは、特に、Siおよび/またはAlNおよび/または高い固有抵抗を有する層材料(例えばTiNおよび/またはTi-Al-Nおよび/またはTaN)を含んでよい。
【0134】
強磁性要素4はまた、強磁性層4Aとトルク伝達デバイス1との間、特に中間層4Bとトルク伝達デバイス1との間に配置される基板4Cを有する。上述のように、基板4Cは、特にキャリアプレートとして設計されてよい。基板4Cは、特に、ガラスまたはシリコン酸化物、シリコン、金属、プラスチックおよび/または複合材料を含んでよい。
【0135】
基板4Cは、その製造プロセスの間における強磁性要素4のベース層として設計されてよく、必要とされる場合には中間層4B、および/または強磁性層4Aが、基板4Cに適用される。
【0136】
基板4Cは、さらに、強磁性層4Aに面する側において、強磁性層4Aと反対向きの側とは異なる化学的組成を有してよい。例えば、基板4Cはシリコンから形成されてよく、強磁性層4Aに面する側はシリコン酸化物層を有する。シリコン酸化物層は、好ましくは、基板4Cの熱酸化により製造されてよく、シリコン酸化物層は、中間層4Bと同じ機能を果たしてよい。したがって、用いられる基板4Cによっては、別個の中間層4Bの使用または提供は不要とされることができる。
【0137】
図8は、トルク伝達デバイスおよびその上に配置される強磁性要素の留め付けの模式的表現を示す。特に留め付けの理論的背景がより詳細に説明されている式(1)から(12)に関して、上記の説明が特に参照される。
【0138】
図9は、実施例2において製造される強磁性要素についての強磁性共鳴周波数の6つの測定シリーズを示し、各測定シリーズは、トルク伝達デバイスに印加される異なるトルクとともに決定される。強磁性共鳴周波数は、測定デバイスのS11パラメータ・プロファイル(S11の最小値)により、またはS11データを用いて算出または評価され得る周波数依存性透磁率の虚部(ローレンツ曲線型の共鳴ピークプロファイル)により、決定されることができる。特に、強磁性参照周波数のシフトが、印加トルクが増大するにつれて引き起こされることがわかる。
【0139】
図10は、図9に示される測定シリーズの強磁性遮断共鳴周波数のグラフ表現を示す。ここで、約20Nmの印加トルク以降、強磁性遮断共鳴周波数は、増大する印加トルクに伴って実質的に線形的に増大することがわかる。
【0140】
図11は、測定位置における測定要素と強磁性要素との間の距離に応じた散乱パラメータS11の複数の測定シリーズのグラフ表現を示す。ここで、測定される強磁性共鳴周波数の信号強度は、減少する距離に伴って増大する。
【0141】
図12は、測定位置における測定要素と強磁性要素との間の測定角度に応じた強磁性共鳴周波数の複数の測定シリーズのグラフ表現を示す。ここで、特に、測定される強磁性共鳴の最大または最適な信号強度が、12°から16°の間の測定角度において実現されることがわかる。
【0142】
図13Aおよび図13Bは、強磁性共鳴周波数を決定するための例示的な実験用測定デバイスと、例示的なセンサ装置の拡大図とを示す。例示的なセンサ装置を有するトルク伝達デバイス1またはシャフトは、締め付けジョーによってシャフトの一端に固定され、一方でシャフトの他端はエンドピースに回転可能に支持される。レバーによってトルクがシャフトに印加され、印加されたトルクにより、強磁性要素4が留め付けられる。測定要素3、この場合には高周波トリプレートストリップ線路(図13B参照)は、VNA(ベクトル・ネットワーク・アナライザ)を利用して、強磁性共鳴周波数または強磁性共鳴周波数のシフトを測定または決定するために用いられる。図13Bに示される測定要素3は、特に50MHzから5GHzまでの周波数範囲において用いられてよい。測定要素3、例えば図13Bに示される高周波トリプレートストリップ線路の幾何学的寸法は、特にそのインピーダンスに依存する。それは、図13Bの高周波トリプレートストリップ線路については特に50オームに設定された。この結果、高周波トリプレートストリップ線路の接地プレートと信号線との間の距離が0.7mmとなり、高周波トリプレートストリップ線路の長さが10mmとなる。
【0143】
図14は、強磁性共鳴周波数の測定シリーズの比較を示す。図14Aにおいて、実施例1のように製造された強磁性要素の、0Nm、20Nm、40Nm、60Nm、80Nm、および100Nmの印加トルクによる測定シリーズが示されている。図14Bにおいて、実施例2のように製造された強磁性要素の、0Nm、20Nm、40Nm、60Nm、80Nm、および100Nmの印加トルクによる測定シリーズが示されている。実施例2において製造される強磁性要素の測定シリーズは、図14Aに示される測定シリーズと比較して、著しくより平滑であり、またはより良好な信号対雑音比を有し、かつ増大された信号強度を呈する。これは、特に、実施例2において製造される強磁性要素のより大きな厚さと、したがってそのより大きな磁気的体積とに起因する。
【0144】
図15は、式12による式13(強磁性要素とトルク伝達デバイスとの間の接続を通したトルクの不完全な伝達を考慮しない強磁性共鳴周波数)と、式14による式13(強磁性要素とトルク伝達デバイスとの間の接続を通したトルクの不完全な伝達を考慮した強磁性共鳴周波数)とに基づく、強磁性共鳴周波数の理論値の比較を示す。実施例1および2において製造される強磁性要素の強磁性共鳴周波数の測定値の比較は、式(14)による式(13)に係る理論的な強磁性共鳴周波数が、式(12)による式(13)に係る理論的な強磁性共鳴周波数よりも良好に測定値を反映していることを示す。
【0145】
図16は、シャフト上の例示的なセンサ装置の模式的表現を示す。図16は、特にシャフトの回転軸Aと直線的に平行に配置された複数の強磁性要素4を示す。ここで、強磁性要素4は、互いに同じまたは異なる距離を空けて配置されてよい。これにより、例えば、センサ装置が、複数の強磁性要素4に対する強磁性共鳴周波数の測定を可能とするために、シャフトに沿って移動されることができる。特に、これにより複数のセンサ装置が、複数の強磁性要素4における強磁性共鳴周波数を決定または測定するために、追加的にまたは代替的にシャフト上に配置されることができる。これにより、例えば、測定値を比較することにより、決定されるトルクの信頼性が増大されることができ、および/または、不良な可能性のある強磁性要素4および/または不良な可能性のある測定要素3が決定および/または特定されることができる。
【0146】
図17は、図16に示される例示的なセンサ装置に係る強磁性共鳴周波数の測定シリーズのスクリーンショットを示す。
【0147】
図18Aは、例示的な強磁性要素40の斜視断面図を示す。強磁性要素40は、実質的に平面または平坦であるものとして模式的に示されており、この形態は限定的なものではない。代わりに、強磁性要素40は、異なる形状、例えば湾曲された形状を有してよい。
【0148】
ここで、強磁性要素40は特に、図18Aにおいて要素40Aとしてまとめて示され、図18B図18Dにおいてさらに説明される2つ以上の強磁性層を有する。2つ以上の強磁性層は、各々、強磁性要素40の平面内のまたはそれと平行な磁気異方性または異方性磁界を有してよい。ここで、強磁性要素40の平面は、少なくとも2つ以上の強磁性層と平行な平面である。代替的にまたは加えて、2つ以上の強磁性層は、磁気異方性または異方性磁界が外部磁界により強磁性要素40の平面内にまたはそれと平行に生成され得るように構成されてよい。
【0149】
強磁性要素40はさらに、2つ以上の強磁性層と基板40Cおよび/またはトルク伝達デバイス1との間に配置される中間層40Bを有してよい。中間層40Bは、2つ以上の強磁性層40Aを基板40Cおよび/またはトルク伝達デバイス1から隔離および/または磁気的に分離するように構成される。中間層40Bは、特に、中間層4Bの特徴の任意の組み合わせを有してよい。しかしながら中間層40Bは、中間層4Bと同様に、任意選択的なものであり、好ましくは、例えば2つ以上の強磁性層と磁気的に相互作用することができないトルク伝達デバイス1においては、設けられなくてよい。
【0150】
強磁性要素40はまた、2つ以上の強磁性層とトルク伝達デバイス1との間、特に中間層40Bとトルク伝達デバイス1との間に配置される基板40Cを有する。この場合、基板40Cは、特に、基板4Cの特徴の任意の組み合わせを有してよい。
【0151】
図18Bは、2つの強磁性層41、42を含む強磁性要素40の例示的要素40Aの斜視断面図を示す。
【0152】
ここで、要素40Aは、特に少なくとも第1の強磁性層41を有する。第1の強磁性層41は、特に、少なくとも第1の強磁性材料から形成されてよい。要素40Aはまた、特に少なくとも1つの第2の強磁性層42を有する。第2の強磁性層42は、特に、少なくとも1つの第2の強磁性材料から形成されてよい。
【0153】
さらに、第1の強磁性層41は、少なくとも1つの絶縁性非導電性分離層40Tにより第2の強磁性層42から分離される。絶縁性非導電性分離層40Tは、特に、第1の強磁性層41および第2の強磁性層42を磁気的に分離する、または第1の強磁性層41と第2の強磁性層42との間の磁気的相互作用を防止または低減するように設計される。特に、よって、第1の強磁性層41は第1の強磁性共鳴周波数を有し、第2の強磁性層42は第2の強磁性共鳴周波数を有し、これは少なくとも1つの測定要素3により測定または決定されてよい。
【0154】
図18Cは、3つの強磁性層41、42、43を含む強磁性要素40のさらなる例示的要素40Aの斜視断面図を示す。
【0155】
特に、要素40Aは、少なくとも第1の強磁性層41、第2の強磁性層42、および第3の強磁性層43、ならびに少なくとも2つの絶縁性非導電性分離層40Tを有する。ここで、特に少なくとも2つの絶縁性非導電性分離層40Tのうちの第1のものは、第1の強磁性層41と第2の強磁性層42との間に配置される。さらに、特に少なくとも2つの絶縁性非導電性分離層40Tのうちの第2のものは、第2の強磁性層42と第3の強磁性層43との間に配置される。特に、第2の強磁性層42は、第1の強磁性層41と第3の強磁性層43との間に配置される。しかしながら2つ以上、この場合は3つの強磁性層のこのような順序は、限定的なものとして見なされるべきではない。代わりに、2つ以上の強磁性層の任意の順序が提供されてよく、例えば2つ以上の強磁性層のそれぞれの材料に基づいて、提供されてよい。
【0156】
第1の強磁性層41は、特に、少なくとも第1の強磁性材料から形成される。第2の強磁性層42は、特に、少なくとも1つの第2の強磁性材料から形成される。結果として、第1の強磁性層41は第1の強磁性共鳴周波数を有し、第2の強磁性層42は第2の強磁性共鳴周波数を有する。
【0157】
特に、第3の強磁性層43は、多層として設計される。ここで、多層は、第1の強磁性材料から製造された少なくとも第1のサブ層41Aと、第2の強磁性材料から製造された少なくとも第2のサブ層42Aとを含み、これらは互いの上に直接適用または配置される。ここで、さらなる絶縁性非導電性分離層40Tが第1のサブ層41Aと第2のサブ層42Aとの間に配置されず、その結果、第1のサブ層41Aおよび第2のサブ層42Aが互いに磁気的に分離されず、または第1のサブ層41Aと第2のサブ層42Aとの間の磁気的相互作用が可能である。結果として、多層は、第1の強磁性層41の第1の強磁性共鳴周波数と第2の強磁性層42の第2の強磁性共鳴周波数との間の第3の強磁性共鳴周波数を有する。
【0158】
少なくとも2つのサブ層41A、42Aの順序は、ここでは単に例として示されている。特に、少なくとも2つのサブ層41A、42Aの任意の順序が、例えば第1の強磁性層41および第2の強磁性層42を考慮して、自由に選ばれてよい。さらに、多層は、例えば2つ以上のサブ層、特に2つよりも多くのサブ層を有してよい。
【0159】
特に、第1の強磁性層41は第1の強磁性共鳴周波数を有し、第2の強磁性層42は第2の強磁性共鳴周波数を有し、第3の強磁性層43は第3の強磁性共鳴周波数を有し、これは少なくとも1つの測定要素3により測定または決定されることができる。
【0160】
図18Dは、3つの強磁性層41、42、43を含む強磁性要素40のさらなる例示的要素40Aの斜視断面図を示す。
【0161】
特に、要素40Aは、少なくとも第1の強磁性層41、第2の強磁性層42、および第3の強磁性層43、ならびに少なくとも2つの絶縁性非導電性分離層40Tを有する。ここで、特に、少なくとも2つの絶縁性非導電性分離層40Tのうちの第1のものは、第1の強磁性層41と第2の強磁性層42との間に配置される。さらに、特に少なくとも2つの絶縁性非導電性分離層40Tのうちの第2のものは、第2の強磁性層42と第3の強磁性層43との間に配置される。特に、第2の強磁性層42は、第1の強磁性層41と第3の強磁性層43との間に配置される。
【0162】
ここで、第1の強磁性層41は、特に、少なくとも第1の強磁性材料から形成される。第2の強磁性層42は、特に、少なくとも1つの第2の強磁性材料から形成される。第3の強磁性層43は、特に、少なくとも1つの第3の強磁性材料から形成される。特に、第1の強磁性層41は第1の強磁性共鳴周波数を有し、第2の強磁性層42は第2の強磁性共鳴周波数を有し、第3の強磁性層43は第3の強磁性共鳴周波数を有し、これは少なくとも1つの測定要素3により測定または決定されることができる。
【0163】
説明および図面において議論され示されている例示的実施形態は、限定的なものとして解釈されるべきではない。代わりに、センサ装置および/または方法は、説明において言及され図面に示されている特徴の任意の組み合わせを有してよい。
【符号の説明】
【0164】
1 トルク伝達デバイス
2 磁界要素
3 測定要素
4 強磁性要素
4A 強磁性層
40A 要素
41 第1の強磁性層
42 第2の強磁性層
43 第3の強磁性層
4B、40B 中間層
4C、40C 基板
40T 絶縁性非導電性分離層
41A、42A サブ層
5 接続要素
A トルク伝達デバイスの回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図15
図16
図17
図18A
図18B
図18C
図18D
【国際調査報告】