(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-28
(54)【発明の名称】非対称構造を有する有機高分子およびその光電材料としての使用
(51)【国際特許分類】
C08G 61/12 20060101AFI20220318BHJP
H01L 51/46 20060101ALI20220318BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220318BHJP
【FI】
C08G61/12
H01L31/04 154B
H01L31/04 154C
H01L31/04 168
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021536297
(86)(22)【出願日】2020-11-10
(85)【翻訳文提出日】2021-06-21
(86)【国際出願番号】 CN2020127809
(87)【国際公開番号】W WO2021143316
(87)【国際公開日】2021-07-22
(31)【優先権主張番号】202010051644.9
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520414480
【氏名又は名称】中国長江三峡集団有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】劉 冬雪
【テーマコード(参考)】
4H039
4J032
5F151
【Fターム(参考)】
4H039CA42
4H039CD20
4H039CD90
4H039CL25
4J032BA02
4J032BA04
4J032BA05
4J032BA12
4J032BA15
4J032BA18
4J032BB03
4J032BC03
4J032BC12
4J032BD07
4J032CG01
5F151AA11
5F151AA20
5F151BA12
5F151BA15
5F151BA17
5F151BA18
5F151CB13
5F151CB14
5F151CB24
5F151CB27
5F151DA20
5F151FA04
5F151FA06
5F151GA03
(57)【要約】
本発明は、非対称構造を有する有機高分子、製造方法、及び光電材料の使用を開示している。非対称構造の有機高分子は、電子供与性D単位と電子求引性A単位とを、溶媒および触媒の存在下、Stilleカップリング反応させて重合することにより得られるものである。本出願の化合物は、優れた熱安定性を有し、吸収準位が制御可能であり、高効率、良好な安定性、柔軟性、大面積を有する高性能ペロブスカイト電池正孔材料及び有機太陽電池ドナー材料の製造に適する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式のうちのいずれか1つを含むことを特徴とする、化合物1-1~5-1から選択される、電子供与性単位と電子求引性単位とを含む非対称有機高分子。
【化1】
【請求項2】
R
1は、それぞれ独立してC
1~C
30のアルキル基、C
3~C
30のシクロアルキル基、C
1~C
30のアルコキシ基からなる群から選択されるいずれか1つであることを特徴とする、請求項1に記載の非対称有機高分子。
【請求項3】
R
2は、それぞれ独立して基7~基12からなる群から選択されるいずれか1つであることを特徴とする、請求項2に記載の非対称有機高分子。
【化2】
(式中、Rは、C
1~C
30のアルキル基、C
3~C
30のシクロアルキル基、C
1~C
30のアルコキシ基からなる群から選択されるいずれか1つであり、n>4である。)
【請求項4】
R
3は、それぞれ独立してC
6~C
30のアルキル基、C
3~C
30のシクロアルキル基、C
6~C
30のアルコキシ基及び酸素含有エーテル鎖からなる群から選択されるいずれか1つであることを特徴とする、請求項3に記載の非対称有機高分子。
【請求項5】
非対称有機高分子の構造式は下記の通りであることを特徴とする、請求項4に記載の非対称有機高分子。
【化3】
【請求項6】
前記非対称有機高分子は、電子供与性D単位と電子求引性A単位とを、溶媒および触媒の存在下、Stilleカップリング反応させて重合することにより得られるものであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の非対称有機高分子の製造方法。
【請求項7】
電子供与性D単位は、それぞれ独立して下記の式で表される基13~基17から選択され、電子求引性A単位は、それぞれ独立して下記の式で表される基18および基19から選択されることを特徴とする、請求項6に記載の非対称有機高分子の製造方法。
【化4】
(式中、R
1は、それぞれ独立してC
1~C
30のアルキル基、C
3~C
30のシクロアルキル基、C
1~C
30のアルコキシ基からなる群から選択されるいずれか1つであり、
R
2は、それぞれ独立して基7~基12からなる群から選択されるいずれか1つであり、
【化5】
式中、Rは、C
1~C
30のアルキル基、C
3~C
30のシクロアルキル基、C
1~C
30のアルコキシ基からなる群から選択されるいずれか1つであり、n>4であり、
R
3は、それぞれ独立してC
6~C
30のアルキル基、C
3~C
30のシクロアルキル基、C
6~C
30のアルコキシ基及び酸素含有エーテル鎖からなる群から選択されるいずれか1つである。)
【請求項8】
前記溶媒は、混合溶媒であり、好ましくはトルエンとN,N-ジメチルホルムアミドとの混合溶媒であり、溶媒の体積比はトルエン:N,N-ジメチルホルムアミド混合溶媒=6~10:1であることを特徴とする、請求項6に記載の非対称有機高分子の製造方法。
【請求項9】
前記触媒はPd
2(dba)
3またはPd(PPh
3)
4であることを特徴とする、請求項7に記載の非対称有機高分子の製造方法。
【請求項10】
前記製造方法は保護ガス下で行われ、前記保護ガスは窒素またはアルゴンが好ましいことを特徴とする、請求項8に記載の非対称有機高分子の製造方法。
【請求項11】
請求項1~5のいずれか一項に記載の非対称有機高分子のペロブスカイト太陽電池の製造における使用。
【請求項12】
前記非対称有機高分子はペロブスカイト電池の光活性層における正孔輸送層の製造に使用されることを特徴とする、請求項11に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、材料化学分野に関する。より具体的には、本願は、光電材料分野に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機無機ハイブリッドペロブスカイト太陽電池の発展が急速に進み、光電変換効率は2009年の3.8%から現在の25.2%にも向上した。ペロブスカイト電池は、高効率だけでなく、低コスト、溶液加工可能の特徴をも兼ね備える。また、ペロブスカイト材料は、吸収が強く、移動度が高く、キャリア寿命が長く、バンドギャップが調整可能である等の利点を有する。ペロブスカイト材料と金属電極との間に適当な正孔輸送材料を挿入することにより、機能層界面での電子と正孔の分離を促進し、電荷再結合を低減すると同時に、正孔輸送を容易にし、電池効率を向上させ、デバイスの安定性を向上させることができる。現在広く用いられている正孔輸送材料(Spiro―OMeTADやPTAA(poly(triarylamine))は、一般に高価であり、また、デバイスの安定性を犠牲にしながら、水を吸収しやすい添加剤をドーピングすることによって高い効率を達成する必要がある。従って、コストが安価で性能に優れた新規な正孔輸送材料を開発し、ペロブスカイト電池の効率及びデバイス安定性を向上させ、更にペロブスカイト電池の商業的応用を推進する意義が大きい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一態様において、本願は、化合物(1)~(5)から選択される非対称高分子に関する。
【化1】
式中、R
1は、それぞれ独立してC
1~C
30のアルキル基、C
3~C
30のシクロアルキル基、C
1~C
30のアルコキシ基からなる群から選択され、
R
2は、それぞれ独立して基7~基12からなる群から選択され、
【化2】
式中、Rは、C
1~C
30のアルキル基、C
3~C
30のシクロアルキル基、C
1~C
30のアルコキシ基からなる群から選択され、n>4であり、
R
3は、それぞれ独立してC
6~C
30のアルキル基、C
3~C
30のシクロアルキル基、C
6~C
30のアルコキシ基及び酸素含有エーテル鎖から選択される。
【0004】
好ましい態様として、前記非対称有機高分子の構造式は次の通りである。
【化3】
【0005】
一態様において、非対称有機高分子は、電子供与性単位と電子求引性単位とを、溶媒および触媒の存在下、Stilleカップリング反応させて重合することにより得られるものである。
【0006】
前記溶媒は、混合溶媒であり、好ましくはトルエンとN,N-ジメチルホルムアミドとの混合溶媒であり、溶媒の体積比はトルエン:N,N-ジメチルホルムアミド混合溶媒=6~10:1である。
【0007】
前記触媒はPd2(dba)3またはPd(PPh3)4である。
【0008】
前記製造方法は保護ガス下で行われ、前記保護ガスは窒素またはアルゴンが好ましい。
【0009】
さらに別の態様において、本発明は、一般式(1)~一般式(6)を有する非対称高分子のペロブスカイト太陽電池の製造における使用に関する。
【0010】
さらに別の態様において、本発明は、一般式(1)~一般式(6)を有する非対称高分子のペロブスカイト電池の正孔輸送層における使用に関する。
【0011】
さらに別の態様において、Spiro-OMeTADは正孔輸送材料として、ドーパントとしてLiTFSIとt-BPを備える必要があるが、ドーパントは吸水性が強く、電池の安定性に影響を与える。したがって、新規な非ドープ正孔輸送材料を開発し、電池の製造コストを低下させ、デバイスの安定性を向上させることは、ペロブスカイト電池の産業化を推進することに重要な意味を持つ。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例による化合物10の熱重量曲線である。
【
図2】本発明の実施例による化合物10の分子量分布曲線である。
【
図3】本発明の実施例による化合物10の紫外線吸収曲線である。
【
図4】本発明の実施例による化合物10のサイクリックボルタンメトリ曲線である。
【
図5】本願の実施例による化合物10をペロブスカイト電池の正孔輸送層に用いた電池構造を示す図である。
【
図6】本発明の実施例による化合物10の電流密度-電圧曲線である。
【
図7】本願の実施例による化合物10のUV-Visでの吸収スペクトルである。
【
図8】本発明の実施例による化合物10のアルゴンガス保護下でのサイクリックボルタンメトリー曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明では、開示された実施形態のそれぞれの完全な理解を提供するために、特定の具体的な詳細が含まれる。しかしながら、当業者は、これらの具体的な詳細の1つ以上を用いることなく、他の方法、構成要素、材料などを用いなくても実施形態を実現できることを認識するであろう。
【0014】
本発明において特に要求がない限り、明細書全体およびその特許請求の範囲には、用語「備える」および「含む」は、非限定的な包括的意味、すなわち「含むが、これらに限定されない」と解釈されるべきである。
【0015】
本明細書全体に言及された「一実施形態」または「別の実施形態では」または「ある実施形態では」は、その実施形態に記載される特定の参照要素、構造または特徴が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、明細書全体の異なる位置で現れる「一実施形態では」、「実施形態では」、「別の実施形態では」または「ある実施形態では」は、必ずしも全てが同じ実施形態を指すわけではない。さらに、特定の要素、構造、または特徴は、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わされてもよい。
【0016】
【0017】
ある実施形態では、一般式(1)の非対称高分子の製造方法は、以下に示す通りである。
【化5】
【化6】
【0018】
[化合物7の合成]
窒素保護下、100mL三口フラスコに1-ブロモ-4-ヘキシルベンゼン(1.06g、4.49mmol)と、無水テトラヒドロフラン30mLとを入れ、-78℃まで降温し、n-BuLi(2.8mL、1.6Mのn-ヘキサン溶液)をゆっくり滴下し、-78℃で30分間反応させた後、エチル2-ブロモ-3-チオフェンカルボキシレート(0.5g、1.12mmol)を滴下して4h反応させた。反応終了後、水でクエンチし、酢酸エチル(3×50mL)で抽出し、有機相を合わせ、有機相を水、飽和NaClで順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、黄色液体粗生成物中間体を得た。
【0019】
黄色液体粗生成物中間体を50mLの無水トルエンに溶解し、窒素を15分間バブリングし、Amberlyst15を加え、110℃に昇温して2h反応させた後、溶媒を蒸発し、残渣を石油エーテル:ジクロロメタン(v/v=16:1)を溶離液としてカラムクロマトグラフィーで精製し、淡黄色固体化合物7を得た(0.3g、2ステップ反応による合計収率37%)。
1H NMR(400MHz,CDCl3),δ(ppm):7.28(dd,J=13.9,6.1Hz,4H),7.12-7.03(m,6H),6.99(d,J=4.9Hz,1H),6.96(d,J=5.3Hz,1H),3.71(d,J=8.1Hz,2H),2.58(t,J=7.8Hz,4H),1.59(dd,J=8.1,4.3Hz,6H),1.38-1.27(m,15H),1.11-1.03(m,2H),0.91(d,J=6.7Hz,6H),0.77(t,J=7.3Hz,3H),0.57(d,J=4.4Hz.6H).13C NMR(101MHz,CDCl3)δ144.94,144.56,141.69,141.47,141.08,136.89,135.61,135.17,134.21,133.53,133.50,131.84,131.24,131.04,129.10,128.33,128.16,127.89,126.04,122.91,122.87,122.76,122.70,114.70,114.63,114.55,110.89,110.83,110.32,110.04,108.68,77.32,77.00,76.68,51.19,51.11,40.38,40.33,35.68,35.57,32.02,31.81,31.71,31.68,31.32,30.60,29.03,28.64,24.03,23.96,22.96,22.93,22.85,22.74,22.58,22.48,14.08,14.01,13.96,13.93,10.65,10.60.。
【0020】
[化合物8の合成]
100mLの三口フラスコに7(0.20g、0.28mmol)および30mLの乾燥クロロホルムを加え、窒素を吸引して0℃に降温し、NBS(79.6mg、0.62mmol)のDMF溶液(2mL)に加え、0℃で30分間避光反応を行った。有機溶媒を減圧留去し、石油エーテルを溶離液として直接カラムクロマトグラフィーで分離し、黄色固体8(0.19g、78.8%)を得た。
1H NMR(CDCl3,400MHz),δ(ppm):δ7.29(s,1H),7.12(d,J=8.3Hz,4H),6.96(d,J=7.1Hz,4H),6.79(s,1H),3.90(t,J=7.6Hz,2H),2.58(t,J=7.8Hz,4H),2.04(t,J=7.4Hz,3H),1.59(q,J=7.3Hz,6H),1.33-1.27(m,24H),0.88(dd,J=8.1,2.3Hz,14H),0.55(ddt,J=12.3,7.2,4.0Hz,2H).;13C NMR(100MHz,CDCl3),δ(ppm):143.64,142.63,142.03,137.41,136.08,135.89,134.68,133.57,132.59,132.53,129.06,128.48,128.43,128.01,126.03,114.66,114.27,114.22,110.21,109.85,109.62,108.75,77.32,77.00,76.68,53.40,51.24,40.30,35.56,32.05,31.69,31.32,30.55,29.01,28.60,23.93,22.92,22.58,22.41,14.07,13.98,13.90,10.57.
【0021】
[化合物10の合成]
25mL三口フラスコ中で、化合物8(80mg,0.113mmol)および化合物9(137mg,0.113mmol)を、トルエン4.5mLとN,N-ジメチルホルムアミド0.5mLとの混合溶媒に溶解させ、窒素を15分間バブリングした。Pd2(dba)3を5.17mg及びp-(o-tol)6mg加え、4時間加熱還流し、溶液が粘稠になったところで直ちに加熱を停止し、冷却後、無水メタノール100mL中に導入して沈降し、吸引濾過し、ソックスレー抽出器で精製した後、カラムクロマトグラフィーで2次精製を行い、青黒色固体100.1gを得た。
【0022】
[化合物10の熱安定性試験]
化合物10の熱安定性は、TA instrument SDT-TG Q600熱重量分析装置上で、
図5および6に示されるように、窒素流下加熱走査速度10℃/分で、熱重量分析(TG)によって行った。
【0023】
[化合物10の紫外線吸収試験]
本発明は、化合物10の溶液及び薄膜状態での吸収スペクトルをUV-Visを用いて測定した結果を
図7に示す。
【0024】
[化合物10のエネルギー準位試験]
電気化学的特性の試験は、上海華晨CHI600E電気化学分析器の電気化学的ステーションを用いて行い、電解セルは三電極系(グラッシーカーボン電極が作用極、白金ワイヤー電極が補助電極、カロメル電極が参照電極)であり、内部標準としてフェロセンを用い、0.1Mのテトラブチルヘキサフルオロホスホラミン(n-Bu
4NPF
6)を支持電解質として、走査速度は100mVs
-1である。アルゴン保護下でのそのサイクリックボルタンメトリ曲線を
図8及び表1に示す。
【0025】
【0026】
[実施例化合物10を正孔輸送層とするペロブスカイト太陽電池素子の製造]
[光起電力素子の作製]
図9に示すように、素子構造はITO/SnO
2/Perovskite/HTM/MoO
3/Agである。具体的な手順は以下の通りである。
【0027】
(1)基板を洗浄する。エッチング後のITOガラス基板を、洗浄水、脱イオン水、アセトン及びイソプロピルアルコールの順に15分間超音波洗浄し、洗浄したITOガラスを高純度窒素ガスで乾燥した後、UV/O3で20分間処理して表面の有機汚染物質を洗浄し、表面の濡れ性を向上させた。
【0028】
(2)電子輸送層及びペロブスカイト活性層を製造した。まず、ITO基板上にSnO2輸送層をスピンコートし、0.22μmのPES材質水系フィルターで濾過した後、3000rpmで30秒間スピンコートし、ホットプレート上に移して150℃で30分間アニールした。次にITO/SnO2基板を窒素グローブボックスに移し、冷却した後、1.1MのPbI2のDMF溶液をスピンコートし、スピン速度1500rpmで30秒間、70℃で15分間加熱した後、FAI:MAI:MACl=51:9:12の塩のイソプロパノール溶液をスピンコートし、スピン速度2000rpmで30秒間スピンコートした。グローブボックス外に移し、100℃で30分間アニールした。ペロブスカイトでスピンコーティングした基板を、窒素グローブボックス内で、化合物10のジクロロベンゼン溶液(8mg/ml、CB)でスピンコーティングし、1500rpmで40秒間スピンコートした。
【0029】
(3)金属電極を蒸着した。高真空下(<1×10-4Pa)でMoO3を15nmの厚さで蒸着し、Ag電極をさらに蒸着した。なお、電池1個当たりの有効面積は0.1cm2である。電流密度-電圧グラフ10に示す。
【0030】
化合物11~14を、上記の化合物10の手順を用いて合成し、得られた化合物を以下に示す。
【0031】
【0032】
【0033】
このことから、本発明の化合物は、優れた熱安定性を有し、吸収準位が制御可能であり、高効率、良好な安定性、柔軟性、大面積を有する高性能ペロブスカイト電池正孔材料及び有機太陽電池ドナー材料の製造に適することが分かる。
【0034】
以上の説明から、本発明の特定の実施形態が例示的な説明の目的で説明されているが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者は様々な変形又は改良を行うことができることが理解されるであろう。これらの変形及び変更は、添付の特許請求の範囲に含まれるべきである。
【0035】
(付記)
(付記1)
下記構造式のうちのいずれか1つを含むことを特徴とする、化合物1-1~5-1から選択される、電子供与性単位と電子求引性単位とを含む非対称有機高分子。
【化8】
【0036】
(付記2)
R1は、それぞれ独立してC1~C30のアルキル基、C3~C30のシクロアルキル基、C1~C30のアルコキシ基からなる群から選択されるいずれか1つであることを特徴とする、付記1に記載の非対称有機高分子。
【0037】
(付記3)
R
2は、それぞれ独立して基7~基12からなる群から選択されるいずれか1つであることを特徴とする、付記2に記載の非対称有機高分子。
【化9】
(式中、Rは、C
1~C
30のアルキル基、C
3~C
30のシクロアルキル基、C
1~C
30のアルコキシ基からなる群から選択されるいずれか1つであり、n>4である。)
【0038】
(付記4)
R3は、それぞれ独立してC6~C30のアルキル基、C3~C30のシクロアルキル基、C6~C30のアルコキシ基及び酸素含有エーテル鎖からなる群から選択されるいずれか1つであることを特徴とする、付記3に記載の非対称有機高分子。
【0039】
(付記5)
非対称有機高分子の構造式は下記の通りであることを特徴とする、付記4に記載の非対称有機高分子。
【化10】
【0040】
(付記6)
前記非対称有機高分子は、電子供与性D単位と電子求引性A単位とを、溶媒および触媒の存在下、Stilleカップリング反応させて重合することにより得られるものであることを特徴とする、付記1~5のいずれか一つに記載の非対称有機高分子の製造方法。
【0041】
(付記7)
電子供与性D単位は、それぞれ独立して下記の式で表される基13~基17から選択され、電子求引性A単位は、それぞれ独立して下記の式で表される基18および基19から選択されることを特徴とする、付記6に記載の非対称有機高分子の製造方法。
【化11】
(式中、R
1は、それぞれ独立してC
1~C
30のアルキル基、C
3~C
30のシクロアルキル基、C
1~C
30のアルコキシ基からなる群から選択されるいずれか1つであり、
R
2は、それぞれ独立して基7~基12からなる群から選択されるいずれか1つであり、
【化12】
式中、Rは、C
1~C
30のアルキル基、C
3~C
30のシクロアルキル基、C
1~C
30のアルコキシ基からなる群から選択されるいずれか1つであり、n>4であり、
R
3は、それぞれ独立してC
6~C
30のアルキル基、C
3~C
30のシクロアルキル基、C
6~C
30のアルコキシ基及び酸素含有エーテル鎖からなる群から選択されるいずれか1つである。)
【0042】
(付記8)
前記溶媒は、混合溶媒であり、好ましくはトルエンとN,N-ジメチルホルムアミドとの混合溶媒であり、溶媒の体積比はトルエン:N,N-ジメチルホルムアミド混合溶媒=6~10:1であることを特徴とする、付記6に記載の非対称有機高分子の製造方法。
【0043】
(付記9)
前記触媒はPd2(dba)3またはPd(PPh3)4であることを特徴とする、付記7に記載の非対称有機高分子の製造方法。
【0044】
(付記10)
前記製造方法は保護ガス下で行われ、前記保護ガスは窒素またはアルゴンが好ましいことを特徴とする、付記8に記載の非対称有機高分子の製造方法。
【0045】
(付記11)
付記1~5のいずれか一つに記載の非対称有機高分子のペロブスカイト太陽電池の製造における使用。
【0046】
(付記12)
前記非対称有機高分子はペロブスカイト電池の光活性層における正孔輸送層の製造に使用されることを特徴とする、付記11に記載の使用。
【国際調査報告】