IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エス・エム・エス・ジーマーク・アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

特表2022-520074熱間ストリップ又は厚板トレイン内の冷却区間のストリップ幅にわたる圧延材の異なる冷却プロセスを設定するための方法
<>
  • 特表-熱間ストリップ又は厚板トレイン内の冷却区間のストリップ幅にわたる圧延材の異なる冷却プロセスを設定するための方法 図1
  • 特表-熱間ストリップ又は厚板トレイン内の冷却区間のストリップ幅にわたる圧延材の異なる冷却プロセスを設定するための方法 図2
  • 特表-熱間ストリップ又は厚板トレイン内の冷却区間のストリップ幅にわたる圧延材の異なる冷却プロセスを設定するための方法 図2a
  • 特表-熱間ストリップ又は厚板トレイン内の冷却区間のストリップ幅にわたる圧延材の異なる冷却プロセスを設定するための方法 図2b
  • 特表-熱間ストリップ又は厚板トレイン内の冷却区間のストリップ幅にわたる圧延材の異なる冷却プロセスを設定するための方法 図3
  • 特表-熱間ストリップ又は厚板トレイン内の冷却区間のストリップ幅にわたる圧延材の異なる冷却プロセスを設定するための方法 図3a
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-28
(54)【発明の名称】熱間ストリップ又は厚板トレイン内の冷却区間のストリップ幅にわたる圧延材の異なる冷却プロセスを設定するための方法
(51)【国際特許分類】
   B21B 37/74 20060101AFI20220318BHJP
   B21B 45/02 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
B21B37/74 A
B21B45/02 320F
B21B45/02 320U
B21B45/02 320T
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021546743
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(85)【翻訳文提出日】2021-08-10
(86)【国際出願番号】 EP2020054366
(87)【国際公開番号】W WO2020169669
(87)【国際公開日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】102019104419.7
(32)【優先日】2019-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390035426
【氏名又は名称】エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】シュプロック・アウグスト
(72)【発明者】
【氏名】ハセル・クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】クライン・カルステン・アンドレアス
【テーマコード(参考)】
4E124
【Fターム(参考)】
4E124AA02
4E124AA05
4E124BB02
4E124BB08
4E124EE12
4E124EE14
(57)【要約】
1.熱間ストリップ又は厚板トレイン内の冷却区間のストリップ幅にわたる異なった冷却速度を設定するための方法。2.1.熱間ストリップ又は厚板トレイン内の冷却区間のストリップ幅にわたる金属ストリップ又は金属板(圧延材)の異なった冷却速度を設定するための方法。2.2,この方法は、冷却速度の計算のために、冷却前の圧延材の材料幅にわたる初期エンタルピー分布が特定され、それに基づいて、目標エンタルピー分布が、圧延材の幅及び縦方向の組織モデルによる平坦度及び機械的特性の計算を考慮して設定され、次いで、冷却区間の冷却剤量及び冷却剤曲線が設定されること、を企図する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱間ストリップ又は厚板トレイン内の冷却区間のストリップ幅にわたる金属ストリップ又は金属板(圧延材)の冷却プロセスを設定するためのするための又は連続焼鈍/熱処理において冷却をするための方法において、
冷却前の圧延材の材料幅にわたる初期エンタルピー分布が特定され、それに基づいて、目標エンタルピー分布が、圧延材の幅及び縦方向の組織モデルによる平坦度及び/又は機械的特性の計算を考慮して決定され、次いで、冷却区間の冷却剤量及び冷却剤曲線が設定されること、を特徴とする方法。
【請求項2】
初期エンタルピー分布に基づいて、目標エンタルピー分布が、幅にわたって不均一に設定されること、を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ストリップ走行中に動的に、初期エンタルピー分布が変更され、相応に及び次いで、冷却剤量が再計算されること、を特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
制御が、圧延材走行中に、幅にわたる圧延材内の目標エンタルピー分布を動的に変更すること、を特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
エンタルピー計算が、ギブスエネルギーに基づいて行なわれること、を特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ギブスエネルギーを決定するため、SGTE(Scientific Group on Thermodata Europe)のデータベースが使用され、これにより、圧延材内の組織構成が提示され、冷却が、圧延材のストリップ幅にわたって均一に分布した一定の組織相比率に、目標エンタルピー分布に依存して調整及び制御されること、を特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
測定箇所を介して、組織モデルで計算した機械的特性との即時の比較が行なわれ、これにより、目標エンタルピー分布の可能な偏差が、冷却の起動又は停止によって直ちに修正されること、を特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
熱間ストリップ又は厚板トレイン内の冷却区間のストリップ幅にわたる金属ストリップ又は金属板(圧延材)の幅座標xに対して異なるエンタルピー曲線H(x)の設定のため又は連続焼鈍/熱処理での冷却が行なわれ、この冷却は、冷却前の圧延材の材料幅にわたる初期エンタルピー分布が特定され、それに基づいて、目標エンタルピー分布が、圧延材の幅及び縦方向の組織モデルによる平坦度及び/又は機械的特性の計算を考慮して決定され、次いで、冷却区間の冷却剤量及び冷却剤曲線が設定されることによって行なわれること、を特徴とする請求項2~7のいずれか1項又は複数項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば熱間ストリップ又は厚板トレイン内の冷却区間のストリップ幅にわたる金属ストリップ又は金属板(圧延材)の冷却プロセスを設定するための又は連続焼鈍/熱処理での冷却をするための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱間ストリップ又は厚板の品質を改善するため、冷却は、重要な役割を果たす。このため、例えばストリップ又は板のエッジ形成及び/又は膨らみ形成を回避するために、冷却のコンピュータに支援された適切な制御が知られている。温度の管理及び制御が不足している場合、もはや所望の品質を設定することはできない。従って、ストリップ又は板のエッジ形成又は膨らみ形成が強すぎると、ストリップ又は板は、後続のローラテーブルで品質を確保するために修正することができなくなる。その結果、ストリップに欠陥が生じ、これと結びついたスクラップが増大する。
【0003】
これを回避するため、圧延材用の制御装置が、冷却区間を通過するために最適な冷却剤量及び冷却剤量曲線を特定及び設定する圧延材を冷却するための方法が知られている。これにより、冷却すべき圧延材の最適な平坦度と均一性が保証される。
【0004】
この場合の欠点は、ストリップ又は板の平坦度を改善するために、ストリップ幅領域が適切に異なるように冷却されることである。これは、測定された温度を考慮して行なわれるが、これら温度は、上面から採取される。冷却後、ストリップ又は板内の温度分布は、均一でなく、従って、材料内の実際のエネルギー含有量に関しては意味がない。
【0005】
独国特許第102008011303号明細書によれば、適切に所定の熱量を圧延材から導出するために、冷却区間を制御するため及び冷却剤量を決定するための入力変数として、冷却すべき圧延材のエネルギー含有量が考慮される。ここでは、常に、1つの固定値が開始及び目標変数であると仮定される。更に、どのように目標変数が確定され得るかの指摘は与えられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許第102008011303号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それに基づいて、本発明の課題は、熱間ストリップ及び厚板トレイン内の圧延材の平坦度もしくは平面度及び/又は機械的特性の管理及び設定をするための改善された方法を提供することである。有利な別の措置は、従属請求項の対象である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1の上位概念に基づいて、冷却の計算のために、冷却前の圧延材の材料幅にわたる初期エンタルピー分布が特定され、それに基づいて、目標エンタルピー分布が、圧延材の幅及び縦方向の組織モデルによる平坦度及び機械的特性の計算を考慮して決定され、次いで、冷却区間の冷却剤量及び冷却剤曲線が設定されること、によって解決される。
【0009】
冷却区間の発端での幅にわたるエンタルピー分布に基づいて、冷却区間の下流の幅にわたる目標エンタルピー分布が確定される。この場合、入力エンタルピー分布は、例えばコンピュータプログラムから特定することができる。基本的に、エンタルピーの代わりに、他の熱力学的ポテンシャルを考慮することもできる。
【0010】
目標エンタルピー分布は、種々のパラメータにより確定することができる。これは、例えば、冷却区間の下流のストリップの平面度の数値計算であり、この平面度は、目標値により最適化することができる。この場合、モデリングにより、低温の状態での(即ちコイルの冷却後の)完成した製品の平面度を計算することも基本的に可能である。これは、高温状態の測定機器によっては可能でない。別の可能性は、目標を維持し得るようにこれを組織モデルを介して確定し、幅にわたる均一な機械的特性を設定することである。これは、冷却が均等な場合に無条件に与えられているのではなく、これは、また、幅にわたってエンタルピー分布が均等な場合に無条件に与えられているのではない。更に、品質変数を幅の関数として測定する種々の測定機器の結果を制御パラメータとして利用することができる。これは、例えば、平坦度測定ローラ又は他の平坦度測定機器であり得るが、機械的特性を検出するための測定機器(例えばImpoc又はその他)でもあり得る。
【0011】
この場合、冷却区間内のアクチュエータとして、幅に依存して異なるエンタルピーを達成することを可能にする種々の措置を使用することができる。これは、例えば、エッジマスキング、エッジの加熱、幅にわたる複数の制御回路による適切な冷却等であり得る。
【0012】
目標エンタルピーは、他のパラメータの最適化を介して確定することも、冷却後の測定により経験的に確定することもできる。この場合、初期エンタルピー分布に基づいて、目標エンタルピー分布を、幅にわたって不均一に設定することができる。この場合、制御は、冷却区間を経る圧延材走行中に、幅にわたる圧延材内の目標エンタルピー分布を動的に変更することができる。この場合、エンタルピー計算は、例えば、ギブスエネルギーに基づいて行なうことができる。
【0013】
ギブスエネルギーを決定するため、SGTE(Scientific Group on Thermodata Europe及びMatCalc データバンク)のデータベースが使用され、これにより、例えば、圧延材内の組織構成が提示され、冷却が、圧延材のストリップ幅にわたって均一に分布した一定の組織相比率に設定され、これにより、機械的特性が、目標エンタルピー分布に依存して調整及び制御される。
【0014】
冷却後に配置された測定箇所を介して、組織モデルで計算した機械的特性との即時の比較を行なうことができ、これにより、目標エンタルピー分布の可能な偏差が、冷却の起動又は停止によって直ちに修正される。
【0015】
本発明を、以下で図面に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】設備及び流れコンセプトの概略図
図2】圧延材の幅にわたって見た、入ってくるエンタルピー分布の図
図2a】圧延材の幅にわたって見た、目標エンタルピー分布の図
図2b】圧延材の幅にわたって見た、両エンタルピー分布の差の図
図3】幅にわたって見た、機械的特性のための可能な目標分布の図
図3a】幅にわたって見た、平坦度の図
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、金属ストリップ及び/又は金属板を処理するための可能な熱間ストリップ又は厚板設備の一部を概略的に示す。熱間ストリップ又は厚板設備の最後のスタンド1の下流に、測定機器2が配置されている。測定機器2は、平坦度ローラ等であり得、本来の冷却区間3の上流に配置されている。測定機器は、冷却区間3の上流の圧延材6の実績値を検出する。
【0018】
冷却区間3は、ラミナ冷却、強化冷却又はコンパクト冷却を有することができる。冷却区間3の下流に、冷却区間3を通過した後の熱間ストリップ/圧延材6の実績値、例えば平坦度を測定する少なくとも1つの別の測定機器、例えば平坦度ローラ等が配置されている。
【0019】
計算モデル5は、測定機器2及び4の測定データを受け取り、目標エンタルピー分布を設定するために相応に冷却区間3の使用すべき冷媒量を設定する。これにより、いわばオンラインで、圧延材/熱間ストリップ6の所望の品質を調整し、次処理のためにその直後にコイル7に巻き取ることを保証することができる。別のユニット、例えば多くの測定機器、デスケーラ、断熱フード、シャー等を、冷却3の上流及び下流の領域に配置することができる。
【0020】
図2,2a,2bは、検出の開始時と検出の終了時の幅にわたって見た熱間ストリップ内のエンタルピー分布と、開始時と終了時の両エンタルピーの差を示す。
【0021】
図3は、熱間ストリップの幅にわたる機械的特性、即ち降伏点と引張強さ(Rp及びRm)を示す。図3aは、幅にわたって見た圧延材の平坦度を示す。
【符号の説明】
【0022】
1 最後のスタンド
2 冷却区間の上流の測定機器
3 冷却区間
4 冷却区間の下流の測定機器
5 モデル(計算モデル)
6 圧延材/熱間ストリップ
7 コイル/コイラ
図1
図2
図2a
図2b
図3
図3a
【国際調査報告】