(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-28
(54)【発明の名称】精製方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/28 20060101AFI20220318BHJP
C12N 15/10 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
C12M1/28
C12N15/10 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547216
(86)(22)【出願日】2020-02-14
(85)【翻訳文提出日】2021-10-11
(86)【国際出願番号】 GB2020050348
(87)【国際公開番号】W WO2020165602
(87)【国際公開日】2020-08-20
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517328251
【氏名又は名称】レボリュジェン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パツォス ゲオルギオス
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA09
4B029BB20
4B029CC01
4B029DG08
4B029GA08
4B029GB05
4B029HA05
4B029HA06
(57)【要約】
核酸をサンプルから単離するためのフィルター、並びに核酸をサンプルから単離及び精製する方法を記載する。フィルターは、第1の多孔質領域と第2の多孔質領域とを有する。第1の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の前にサンプルに接触するように配置され、第1の多孔質領域は、第2の多孔質領域よりも大きい公称孔径を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸をサンプルから単離するためのフィルターであって、少なくとも第1の多孔質領域と第2の多孔質領域とを含み、該第1の多孔質領域が使用時に該第2の多孔質領域の前に前記サンプルに接触するように配置され、該第1の多孔質領域が該第2の多孔質領域よりも大きな公称孔径を有する、フィルター。
【請求項2】
前記第2の多孔質領域の公称孔径が0.5μm~1.8μmである、請求項1に記載のフィルター。
【請求項3】
前記第2の多孔質領域の公称孔径が0.5μm~1.3μmである、請求項1又は2に記載のフィルター。
【請求項4】
前記第1の多孔質領域の公称孔径が2μm~3μmである、請求項1~3のいずれか一項に記載のフィルター。
【請求項5】
フィルター装置が複数の第1の多孔質領域を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のフィルター。
【請求項6】
前記フィルターが第3の多孔質領域を更に含み、該第3の多孔質領域が使用時に前記第2の多孔質領域の後に前記サンプルに接触するように配置され、該第3の多孔質領域が該第2の多孔質領域よりも大きな公称孔径を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のフィルター。
【請求項7】
前記第3の多孔質領域の公称孔径が、実質的に前記第1の多孔質領域の公称孔径に等しい、請求項6に記載のフィルター。
【請求項8】
ケイ酸塩を含み、任意に前記第1、第2及び任意に第3の多孔質領域の少なくとも1つがケイ酸塩を含み、さらに、任意に前記フィルターがケイ酸塩から構成される、請求項1~7のいずれか一項に記載のフィルター。
【請求項9】
前記ケイ酸塩がケイ酸塩ガラスを含む、請求項8に記載のフィルター。
【請求項10】
前記ケイ酸塩ガラスが、ホウケイ酸塩ガラスを含むか又はホウケイ酸塩ガラスである、請求項9に記載のフィルター。
【請求項11】
前記第1の多孔質領域及び前記第2の多孔質領域が繊維状材料から形成される、請求項1~10のいずれか一項に記載のフィルター。
【請求項12】
前記第1の多孔質領域及び前記第2の多孔質領域が各々異なる繊維状材料から形成される、請求項11に記載のフィルター。
【請求項13】
サンプルが前記フィルターを通って流れる方向に測定される該フィルターの厚さが1000μm~2000μmである、請求項1~12のいずれか一項に記載のフィルター。
【請求項14】
サンプルが前記フィルターを通って流れる方向に測定される該フィルターの厚さが1500μm~2000μmである、請求項1~13のいずれか一項に記載のフィルター。
【請求項15】
核酸をサンプルから単離するための請求項1~14のいずれか一項に記載のフィルターを備える核酸抽出カラム。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか一項に記載のフィルターを用いて核酸をサンプルから単離する方法であって、任意に、
(i)核酸を含むサンプルをアルコール及び塩と接触させることと、
(ii)請求項1~14のいずれか一項に記載のフィルターを、工程(i)の後に得られる核酸を含む組成物と接触させ、核酸が結合したフィルターを得ることと、
(iii)好ましくは、前記核酸が結合したフィルターを、アルコールを含む洗浄溶液で処理することと、
(iv)前記核酸の少なくとも一部を前記フィルターから溶出させることと、
を含む、方法。
【請求項17】
工程(iv)が、10℃~100℃、好ましくは90℃を超えない温度にて溶出バッファー中で前記フィルターをインキュベートすることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記温度が70℃~90℃である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
工程(iv)におけるインキュベーションが30秒間~2分間にわたる、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
工程(iv)において、前記核酸を遠心分離によって前記フィルターから溶出させる、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
遠心分離のg力が600g~800gである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記塩がカオトロピック剤、任意にグアニジニウム塩を含む、請求項16~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記フィルターを核酸抽出カラムの構成要素として提供する、請求項16~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
核酸をサンプルから単離する方法であって、
(i)核酸を含むサンプルをアルコール及び塩と接触させることと、
(ii)フィルターを、工程(i)の後に得られる核酸を含む組成物と接触させ、核酸が結合したフィルターを得ることと、
(iii)好ましくは、前記核酸が結合したフィルターを、アルコールを含む洗浄溶液で処理することと、
(iv)前記核酸の少なくとも一部を前記フィルターから溶出させることと、
なお、溶出は、70℃~90℃の温度にて溶出バッファー中で前記フィルターをインキュベートすることを含む;
を含む、方法。
【請求項25】
工程(iv)におけるインキュベーションを75℃~85℃の温度で行う、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
工程(iv)におけるインキュベーションが30秒間~2分間にわたる、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
工程(iv)における前記フィルターからの前記核酸の溶出が遠心分離を含む、請求項24~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
遠心分離のg力が600g~800gである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
(v)前記フィルターからの核酸の2回目の溶出を行うことを更に含み、溶出が、90℃を超えない温度にて溶出バッファー中で該フィルターをインキュベートし、任意に続いて該フィルターの遠心分離を行うことを含む、請求項24~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
サンプルから単離された核酸を精製する方法であって、
(i)前記核酸をアルコール及び塩と接触させることと、
(ii)フィルターを、工程(i)の後に得られる核酸を含む組成物と接触させ、核酸が結合したフィルターを得ることと、
(iii)好ましくは、前記核酸が結合したフィルターを、アルコールを含む洗浄溶液で処理することと、
(iv)前記フィルターからの核酸の1回目の溶出を行うことと、
なお、溶出は、70℃~90℃の温度にて溶出バッファー中で前記フィルターをインキュベートし、任意に続いて該フィルターの遠心分離を行うことを含む;
(v)前記フィルターからの核酸の2回目の溶出を行うことと、
なお、溶出は、90℃を超えない温度にて溶出バッファー中で前記フィルターをインキュベートし、任意に続いて該フィルターの遠心分離を行うことを含む;
を含む、方法。
【請求項31】
工程(v)のインキュベーション温度が工程(iv)のインキュベーション温度よりも低い、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
工程(v)のインキュベーション温度が20℃~65℃である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
工程(i)における前記塩がカオトロピック剤、任意にグアニジニウム塩を含む、請求項24~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
工程(i)における前記塩を、工程(i)により形成される前記核酸を含む組成物が0.05M~10M、任意に0.1M~3M、好ましくは0.1M~2M、より好ましくは0.5M~0.9M、更により好ましくは0.6M~0.7Mの濃度の該塩を含有するような量で提供する、請求項16~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
工程(i)における前記アルコールがC
1~3アルカノール、好ましくはイソプロパノール又はエタノールを含む、請求項16~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記アルコールを、工程(i)により形成される前記核酸を含む組成物が25体積%~40体積%、任意に25体積%~30体積%の該アルコールを含有するような量で提供する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記フィルターが請求項1~14のいずれか一項に記載のフィルターである、請求項24~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記フィルターを核酸抽出カラムの構成要素として提供する、請求項24~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
核酸をサンプルから単離するためのキットであって、
(i)請求項1~14のいずれか一項に記載のフィルターと、
(ii)塩(好ましくはカオトロピック剤、例えばグアニジニウム塩)と、
(iii)任意にリチウムを含む洗浄剤と、
(iii)任意に、溶出バッファーと、
任意に溶解剤と、
を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸をサンプルから単離するためのフィルターに関する。本発明は、核酸をサンプルから単離する方法、サンプルから単離された核酸を精製する方法及び核酸をサンプルから単離するためのキットにも関する。
【背景技術】
【0002】
生体サンプル(例えば細胞)からのDNAを含む純粋な無傷の核酸の単離は、多数の分野で重要である。
【0003】
例えば、患者からの臨床細胞含有サンプルを、DNAを含む核酸を単離する手順(細胞溶解の工程を含む)に供することができ、この核酸を続いて当該技術分野で既知の手順によって分析する。かかる分析は、例えば特定の微生物、例えば細菌に由来するDNAを特定すること(患者がその微生物に感染しているか否かを決定するため)を目的とする場合も、又は例えば患者のDNAが医学的状態に関与する1つ以上の点突然変異を有するか否かを決定することを目的とする場合もある。
【0004】
既知のDNA単離の方法は概して、少なくとも以下の工程:
(a)細胞含有サンプルを緩衝溶解組成物で溶解させる工程と、
(b)(a)のサンプルと濃厚塩溶液とを混合する工程と、
(c)(b)からのサンプルとアルコール(例えばメタノール、エタノール又はイソプロパノール)とを混合する工程と、
(d)得られた混合物を固体支持体(すなわちフィルター)と接触させ、溶解物質からDNAを固定化する工程と、
(e)支持体を、アルコールを含有する洗浄液で洗浄する工程と、
(f)DNAを溶出させる工程と、
を含む。
【0005】
かかる既知の単離方法は、比較的短いDNAフラグメント、例えば50000塩基対(bp)未満のフラグメントの抽出をもたらすことが多い。これらのフラグメントを、続いてショートリードシークエンシング技術(例えばIlluminaによって販売されるもの)、又はOxford Nanopore Technologies(ONT)によって提供されるようなロングリードシークエンシング技術、例えばMinION、GridION X5、PromethION等で動作するフローセル、若しくはPacific BiosciencesのSequel Systemで動作する(Pacbio) Single Molecule Real Time(SMRT)のいずれかによってシークエンシングすることができる。ショートリードシークエンシング技術は、100bp~500bpのようなDNAの比較的短いフラグメントのコードのシークエンシングに適している。次いで、これらの配列を用いて、重複配列フラグメントに基づきゲノムを構築する。しかしながら、多くの場合、このタイプの技術は、反復配列又は組み換え染色体セグメントのコードを解読するために用いることはできない。また、この技術は多くの場合、アラインメントされた配列が同じ鎖(染色体)若しくは細胞に由来するか、又は構築されたゲノムが代わりに異なる鎖及び細胞に由来する小さなリードからなるかを決定するために用いることはできない。
【0006】
ロングリードシークエンシング技術は、数万又は数十万の塩基長である配列を読み取ることができるため、配列が同じ鎖に由来することを示すために用いることができる。臨床的に関連する一例では、ロングリードシークエンシングを用いて、BCR-ABL1融合遺伝子転写産物上の突然変異を首尾よくマッピングした。これらのタイプの突然変異は、慢性骨髄性白血病(CML)患者をチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)療法に抵抗性とするため、薬物耐性に関与するこれらの突然変異を特性評価、スクリーニング及び調査するのに重要である。約1600bp(ショートリード技術による100bp~500bpのリードよりもはるかに大きい)の遺伝子標的に対するロングリードの使用によって、同じ鎖上に見られる突然変異を特定し、それらを他の鎖又は他の転写産物アイソフォーム上に見られるランダム変化と区別することが可能であった。これによりCML突然変異クローン分布に関する情報も得られた。これらの研究結果は、患者に施す療法に関する決定を裏付けることができる(非特許文献1)。
【0007】
多くのロングリード技術は、平均100キロベース(kb)以上の長いDNAを必要とする。その場合にも、ロングリード技術は、より小さなDNAフラグメント(10kb未満)が、より長いフラグメントを含むサンプル中に存在する場合に、かかるフラグメントの読取りに偏る傾向がある。これがシークエンシングエラー及び配列のマッピングの難しさにつながる可能性がある。短いDNAフラグメントへの偏りは、ヒトゲノム等の複雑なゲノムの遺伝子の標的化又は読取りをより困難にする可能性もある。
【0008】
また、1)シークエンシングに適した長いDNAフラグメントを含有し、2)より短いDNAフラグメントを含有しないか、又はその量が減少した、高品質のDNAを得ることが困難な場合がある。
【0009】
特定の核酸の所与のサンプルを提供する所与の方法の能力に影響する要因としては、所望の核酸を保持する固体支持体(すなわちフィルター)の能力、更には関連の捕捉核酸を捕捉後に、すなわちフィルター/カラムからの溶出によって固体支持体/フィルターから取り出すユーザーの能力が挙げられる。
【0010】
幾つかの核酸単離方法では、核酸を単離し、及び/又は不純物を除去するために遠心力が用いられる(スピン法)。スピン法では、遠心力のためにより迅速な精製時間が得られる可能性がある。しかしながら、かかる方法は通例、長鎖核酸の単離には用いられない。これは、シークエンシング又は他の下流のアッセイに適した収率及び純度の核酸を抽出するために必要とされる遠心力によって核酸が断片化され、鎖長が減少する傾向があるためである。他の核酸単離方法では、核酸を単離し、及び/又は不純物を除去するために陰イオン交換樹脂及び重力を利用する。これはスピン法よりも穏やかであるが、処理に相当な時間がかかる場合があるため、ユーザーにとって特に利用しやすいものではない。これにより、かかる方法を治療現場の状況で用いる能力が妨げられる。加えて、陰イオン交換樹脂では、短い核酸フラグメント及び長い核酸フラグメントが同じ混合物中で単離される。
【0011】
スピニング工程を回避する代替的なDNAの抽出方法としては、磁気ビーズ又は磁気平面技術が挙げられる。かかる技術では、ユーザーは液体の吸引時にビーズペレットを乱さないよう細心の注意を払う必要がある。このため、抽出プロトコルは、ユーザー集約的であり、多重化することができない。加えて、磁気ビーズ及び磁気平面技術は、DNA抽出プロセス中のサイズ排除の能力を与えない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Cavalier, et al. 2015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、より長い核酸フラグメントのより高い収率及び/又はより高い純度をもたらし、及び/又はより短いフラグメントに対するより長いフラグメントの比率がより大きいサンプルを提供する、核酸をサンプルから抽出するための新たなフィルター及びプロセスが必要とされている。より迅速かつユーザーが利用しやすい方法におけるより長い核酸フラグメントの提供の改善も必要とされている。
【0014】
本発明は、上述の課題の1つ以上に対処しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
最も一般的には、本開示は、より短い核酸フラグメントに対するより長い核酸フラグメントの比率がより高く、及び/又は核酸フラグメントの平均塩基対長が増加した生成物サンプルを提供する上で特に有用な、核酸をサンプルから単離するための新たなフィルターを提案する。本発明のフィルターは、核酸をサンプルから単離する方法において幅広い適用性を有するため、スピン精製(spin purification)又は従来の重力精製(gravity purification)の方法に用いることができるが、スピン精製法に特に有利に適用される。これに関連したフィルターは、フィルターと接触した(通常はフィルターを通過した)流体サンプルから所望の核酸を捕捉/保持するために当該技術分野において、本発明の方法/使用に従って使用され、配合物の望ましくない成分(望ましくない核酸のフラグメント又は他の望ましくないサンプルの成分、例えば他の生体生成物を含み得る)は、濾液中でフィルターを通過する。この点で、本発明は、より短い核酸のフラグメントに対するより長い核酸のフラグメントの単離の改善をもたらすことができる。本開示は、核酸を単離する新たなプロセスも提案する。このプロセスは、上記の本発明のフィルター及び当該技術分野で使用される従来のフィルターに対して一般に適用される。本発明の新たなプロセスは特に、精製核酸(特により長い鎖長の精製核酸)の回収収率の増加、より短鎖の核酸に対するより長鎖の核酸の比率の増加及び単離核酸の平均塩基対長の増加の1つ以上をもたらすことができる。
【0016】
このため、本開示は、本発明の以下の態様を提供する。これらの態様、並びにこれらの態様の一般的及び具体的な実施の形態は、以下の発明を実施するための形態の節において更に説明される。
【0017】
本発明の第1の態様によると、核酸をサンプルから単離するためのフィルターであって、少なくとも第1の多孔質領域と第2の多孔質領域とを含み、第1の多孔質領域が使用時に第2の多孔質領域の前にサンプルに接触するように配置され、第1の多孔質領域が第2の多孔質領域よりも大きな公称孔径を有する、フィルターが提供される。
【0018】
本発明の第2の態様によると、第1の態様によるフィルターを備える核酸抽出カラムが提供される。
【0019】
本発明の第3の態様によると、本発明の第1の態様によるフィルターを用いて核酸をサンプルから単離する方法が提供される。言い換えると、本発明は、核酸をサンプルから単離する方法における本発明の第1の態様によるフィルターの使用も提供する。実施の形態において、方法は、
(i)核酸を含むサンプルをアルコール及び塩と(任意にサンプルを、アルコール及び塩を含有する溶液と接触させることによって)接触させること(すなわち核酸、アルコール及び塩を含有する組成物を得ること)であって、塩を任意に0.05M~10Mの濃度の塩溶液として提供することと、
(ii)本発明の第1の態様によるフィルターを工程(i)の得られる組成物と接触させ、核酸が結合したフィルターを得ることと、
(iii)好ましくは、核酸が結合したフィルターを、アルコールを含む洗浄溶液で処理することと、
(iv)核酸の少なくとも一部をフィルターから溶出させることと、
を含む。
【0020】
本発明の第4の態様によると、核酸をサンプルから単離する方法であって、
(i)核酸を含むサンプルをアルコール及び塩(任意にアルコール及び塩を含む溶液)と接触させること(すなわち核酸、アルコール及び塩を含有する組成物を得ること)であって、塩を任意に0.05M~10Mの濃度の塩溶液として提供することと、
(ii)フィルターを、工程(i)の後に得られる核酸を含む組成物と接触させ、核酸が結合したフィルターを得ることと、
(iii)好ましくは、核酸が結合したフィルターを、アルコールを含む洗浄溶液で処理することと、
(iv)核酸の少なくとも一部をフィルターから溶出させることと、
なお、溶出は、フィルターを70℃~90℃の温度にて溶出バッファー中でインキュベートすることを含む;
を含む、方法が提供される。
【0021】
本発明の第5の態様によると、サンプルから単離された核酸を精製する方法であって、
(i)核酸をアルコール及び塩(任意にアルコール及び塩を溶液中で提供する)と接触させること(すなわち核酸、アルコール及び塩を含有する組成物を得ること)であって、塩を任意に0.05M~10Mの濃度で提供することと、
(ii)フィルターを、工程(i)の後に得られる核酸を含む組成物と接触させ、核酸が結合したフィルターを得ることと、
(iii)好ましくは、核酸が結合したフィルターを、アルコールを含む洗浄溶液(アルコール溶液は、任意にリチウム塩等の塩を、任意に0.05M~10Mの濃度で更に含有する)で処理することと、
(iv)フィルターからの核酸の1回目の溶出を行うことと、
なお、溶出は、70℃~90℃の温度にて溶出バッファー中でフィルターをインキュベートし、続いてフィルターの遠心分離を行うことを含む;
(v)フィルターからの核酸の2回目の溶出を行うことと、
なお、溶出は、90℃を超えない温度(例えば10℃~90℃)にて溶出バッファー中でフィルターをインキュベートし、続いてフィルターの遠心分離を行うことを含む;
を含む、方法が提供される。
【0022】
本発明の別の態様によると、核酸をサンプルから単離するためのキットであって、
(i)第1の態様によるフィルターと、
(ii)塩(好ましくはカオトロピック剤、例えばグアニジニウム塩)と、
(iii)任意にリチウムを含む洗浄剤と、
(iv)任意に、溶出バッファーと、
任意に溶解剤と、
を含む、キットが提供される。
【0023】
ここで、以下の非限定的な実施例1~実施例6及び添付の図面の
図1~
図8を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明のフィルターを用いて単離された、より短い核酸に対するより長い核酸の比率の比較を示す図である。
【
図2A】室温のインキュベーション温度でのDNeasyフィルター及び方法との本発明のフィルター及び/又は本発明の方法を用いて得られた短いDNAに対する長いDNAの比率の比較を示す図である。
【
図2B】室温のインキュベーション温度でのDNeasyフィルター及び方法との本発明のフィルター及び/又は本発明の方法を用いて得られたDNAの平均塩基対長の比較を示す図である。
【
図2C】80℃のインキュベーション温度でのDNeasyフィルター及び方法との本発明のフィルター及び/又は本発明の方法を用いて得られた短いDNAに対する長いDNAの比率の比較を示す図である。
【
図2D】80℃のインキュベーション温度でのDNeasyフィルター及び方法との本発明のフィルター及び/又は本発明の方法を用いて得られたDNAの平均塩基対長の比較を示す図である。
【
図3】本発明による方法を用いて得られた小さなDNAに対する大きなDNAの比率へのLiClの濃度の影響を示す図である。
【
図4】本発明による方法を用いて得られた小さなDNAに対する大きなDNAの比率への種々のアルコールの影響を示す図である。
【
図5】本発明による方法及びフィルターを用いて得られた短いDNAフラグメントに対する長いDNAフラグメントの比率への2回のうち2回目の溶出工程の温度の影響を示す図である。
【
図6】本発明による方法を用いて種々のフィルター上で得られた短いDNAフラグメントに対する長いDNAフラグメントの比率への2回のうち2回目の溶出工程の温度の影響を示す図である。各フィルターについて65℃及び80℃を試験した。(A)は4Fフィルターについての比率を示し、(B)は2Fフィルターについての比率を示し、(C)はDFフィルターについての比率を示し、(D)は2DFフィルターについての比率を示し、(E)はF2Dフィルターについての比率を示し、(F)はDFDフィルターについての比率を示す。
【
図7】種々のフィルターを用いて得られた短いDNAに対する長いDNAの比率への80℃のインキュベーション温度を有する2回の溶出工程の影響を示す図である。
【
図8】既知のサイズ排除プロトコルと比べてより長いDNAを精製する本発明のフィルターの能力を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の第1の態様によると、核酸をサンプルから単離するためのフィルターであって、少なくとも第1の多孔質領域と第2の多孔質領域とを含み、第1の多孔質領域が使用時に第2の多孔質領域の前にサンプルに接触するように配置され、第1の多孔質領域が第2の多孔質領域よりも大きな公称孔径を有する、フィルターが提供される。
【0026】
本発明者は、驚くべきことに、フィルター内の多孔質領域のこの組合せが、フィルター上のより短いフラグメントに対するより長い核酸フラグメントの保持の大幅な改善をもたらすことを見出した。本発明の実施形態は、全単離核酸の収率の増加、単離核酸の平均塩基対長の増加をもたらし、及び/又は濾過プロセス後にフィルターから溶出し得るサンプル(複数の場合もある)中のより短い核酸に対するより長い核酸の比率の増加をもたらすことができる。
【0027】
核酸は、任意の形態の核酸(RNA及び/又はDNA等)とすることができ、好ましくはDNAである。実施形態において、フィルターは、より短い長さの核酸に対する、例えば10kb未満の長さのフラグメントに対する10kb以上、例えば10kb~165.5キロベース(kb)の長さの核酸フラグメントの保持を増大させることができる。実施形態において、本発明のフィルターは、より短いフラグメントに対する、例えば40kb未満の長さのフラグメントに対する40kb以上、例えば40kb~165.5kbの長さの核酸フラグメントの保持の増大を示すことが可能であり得る。
【0028】
フィルターは、本発明のものではないフィルターと比べて増加した平均塩基対長を有する核酸フラグメントの保持を増大させることができる。
【0029】
より小さな公称孔径を有する多孔質領域が任意の長さの核酸フラグメントの単離に有益であると理解されるが、得られる単離核酸フラグメントは、より小さなフラグメント及びより長いフラグメントを含む様々な長さとなる。単離核酸中のより小さなフラグメントは、より大きなフラグメントが望ましい、シークエンシング等の下流の処理を妨げる可能性がある。
【0030】
より小さな孔径を有する多孔質領域は、あらゆるサイズのフラグメントを保持するのに有益であるため、より小さな公称孔径を有する多孔質領域を含む本発明のフィルターが、様々な長さの単離核酸フラグメントを同様に保持し、提供することが当業者には予期される。したがって、本発明のフィルターが単離核酸の平均塩基対長の増加をもたらし、及び/又は単離サンプル(複数の場合もある)中のより短い核酸に対するより長い核酸の比率の増加をもたらすことは驚くべきことである。
【0031】
また、より小さな公称孔径は、潜在的には、完全に変性していない可能性があるタンパク質、脂質及び/又は炭水化物等の生体サンプル中の他の分子による孔の閉塞のために、より長い核酸フラグメントの単離への効果がより低いと考えられる。これは、より小さな公称孔径を有する多孔質領域の断裂を引き起こす恐れがあり、多孔質領域上に保持される核酸フラグメントの喪失を引き起こし得る。これは、付加的又は代替的には、他の分子による多孔質領域の被覆を引き起こす恐れがあり、より長い核酸フラグメントが結合する多孔質領域の表面積をなくす可能性がある。
【0032】
このため、より大きな孔の公称孔径を有する第1の多孔質領域と、第1の領域の下流のより小さな公称孔径を有する第2の多孔質領域との組合せが、全単離核酸の収率の増加、単離核酸の平均塩基対長の増加、及び単離サンプル(複数の場合もある)中のより短い核酸に対するより長い核酸の比率の増加の少なくとも1つをもたらすことは特に驚くべきことである。
【0033】
より大きな公称孔径を有する多孔質領域は従来、長い核酸フラグメントの単離により有益であると考えられているが、より大きな孔径を有する多孔質領域が、より弱い構造的完全性を示す傾向があり、より小さな孔径を有する多孔質領域と比較して保持される核酸フラグメントの破損、漏出及び喪失の傾向がより高いことが本発明者により観察された。したがって、かかる精製方法に使用される多孔質領域を含む核酸フィルターについて、核酸単離に関してより大きな孔を設けることの利点が、構造的完全性の低下による負の影響を受け、すなわちフィルターに保持される核酸の全収率及びより長いフラグメントに対する選択性の両方が影響を受ける可能性があることが当業者には理解される。
【0034】
本発明者は、本発明のフィルターが、比較用フィルターと比べて構造的完全性の改善をもたらすことを以前に見出した。本発明のフィルターは、本発明のフィルターの第2の領域が第1の領域と比べてより小さな孔を有することを除いて比較用フィルターと同一である。この完全性の改善により、本発明のフィルターを実際に取り扱い、使用することがより容易となる。加えて、本発明のフィルターは、断裂の傾向がより低い。
【0035】
本発明者は驚くべきことに、より大きな孔径の第1の(上流の)領域を、より小さな孔径の第2の(下流の)領域と組み合わせて有するフィルターを設けることで、より長鎖のフラグメントを含有する溶出バッチを得ることに関して、例えば収率及び/又はかかる溶出バッチ中の短いフラグメントに対する長いフラグメントの比率のために改善された結果が観察されることを発見した。
【0036】
本発明者はまた、驚くべきことに、より大きな孔径の第1の(上流の)領域を、第1の(上流の)領域と比べてより小さな孔径の第2の(下流の)領域と組み合わせ、第2の(下流の)領域と比べてより大きな孔径の第3の(第1及び第2の領域の下流の)領域と更に組み合わせて有するフィルターを設けることで、より長鎖のフラグメントを含有する溶出バッチを得ることに関して、例えば収率及び/又はかかる溶出バッチ中の短いフラグメントに対する長いフラグメントの比率のために特に改善された結果が観察されることを発見した。第3の(第1及び第2の領域の下流の)領域は、第1の(上流の)領域と実質的に等しい(例えば同一の)孔径を有し得る。
【0037】
理論に束縛されることを望むものではないが、本発明者は、本発明のフィルターによって観察される改善が、第2の多孔質領域が第1の領域及び/又は第3の領域に対して付加的な構造的完全性を与えるためであると考える。これにより、第1の多孔質領域及び/又は第3の多孔質領域が、完全性の付加的な改善を有しない比較用フィルターと比較して、より長い核酸フラグメントに結合する機能的能力をより良好に保持し得ることが確実となる。
【0038】
驚くべきことに、本発明者は、多孔質領域の順序が単離される核酸フラグメントの収率、比率及び平均塩基対長に影響を及ぼし、第1の多孔質領域(より大きな公称孔径を有する)を使用時に第2の多孔質領域(より小さな公称孔径を有する)の前にサンプルに接触するように配置することで、全単離核酸の収率の改善がもたらされることも見出した。得られる短い核酸に対する長い核酸の比率及び平均塩基対長も改善する。このことは、より小さな孔の領域が収率及び/又はより長い核酸に対するフィルターの選択性に負の影響を与え得ると当業者が考える傾向から驚くべきことであるが、本発明者は、これが事実ではないことを見出した。
【0039】
理論に束縛されることを望むものではないが、本発明者は、より短い核酸フラグメントがより長い核酸フラグメントよりも迅速に多孔質領域に結合すると考える。より大きな孔径を有する多孔質領域を初めに(サンプルが第2の領域を通過する前にこの領域がサンプルに接触するように)配置することで、より大きな核酸フラグメントを、短い核酸フラグメントに対して選択的に捕捉することができ、より短い核酸フラグメントは、代わりに結合せずにフィルター装置を通過する可能性が高い。
【0040】
他に指定のない限り、本明細書(任意の添付の特許請求の範囲及び図面を含む)に記載される特徴のいずれかを、下記の態様のいずれかと任意の組合せで組み合わせることができることが理解される。
【0041】
当業者には理解されるように、公称孔径は、当該技術分野で既知の用語である。公称孔径の値は、その孔径値以上を有する粒子を濾別する多孔質領域の能力を示す。例えば、0.20μmの公称孔径は、その孔径を有する多孔質領域が、0.20μm以上の粒子が多孔質領域を通過するのを防ぐことができることを示すために用いられる。通例、公称孔径は最小パーセンテージを有し、すなわち、公称孔径は、その孔径値以上を有する粒子の最小パーセンテージを濾別する多孔質領域の能力に関する。実施形態において、公称孔径は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%の最小パーセンテージ、すなわち特定の公称孔径を有する多孔質領域が濾別する所与の孔径値以上の粒子のパーセンテージを有し得る。実施形態において、公称孔径は、少なくとも95%の最小パーセンテージを有し得る。実施形態において、公称孔径は、少なくとも98%の最小パーセンテージを有し得る(すなわち、多孔質領域は、所与の粒径を有する粒子の少なくとも95%又は少なくとも98%をそれぞれ濾別することができる)。
【0042】
様々な方法が多孔質領域の公称孔径の決定に適している。実施形態において、多孔質領域の公称孔径を決定する方法は、ポロシメトリーを含み得る。この方法は、表面張力及び毛細管力によって多孔質領域の孔内に保持される液体に基づく。液体の表面張力の対立する力に逆らって液体を孔から押し出すのに必要とされる最小圧力は、孔の直径の尺度として用いることができる。方法は概して、真空内、例えばポロシメーターにおいて圧縮ガスの形態で漸増する力を加えて行われる。多数のポロシメーターが市販されており、当業者には容易に入手可能である。
【0043】
概して、水銀等の非湿潤液体がポロシメトリーにおいて液体として使用される。
【0044】
ポロシメトリー法において力平衡を決定するために、ウォッシュバーンの式が一般に用いられる。これは以下の通りである:
PL-PG=-4σcosθ/DP
PL=液体の圧力
PG=気体の圧力
σ=液体の表面張力
θ=液体の接触角
Dp=孔の直径
【0045】
殆どの固体との水銀の接触角は、およそ140°であり、真空下にて20℃での水銀の表面張力は、480mN/mである。これらの値に基づくと、式は以下のようになる:
DP=1470kPa・μm/PL
【0046】
孔径を決定する他の好適な試験としては、走査電子顕微鏡法を用いた目視検査が挙げられる。このため、実施形態において、多孔質領域の公称孔径を決定する方法は、走査電子顕微鏡法を含み得る。かかる試験では、多孔質領域の少なくとも一部を走査電子顕微鏡(SEM)下で観察し、その部分のSEM画像を得る。次いで、これらの画像を、例えばImageJ(NIH,US)等のイメージングソフトウェアを用いて定量的に分析し、孔径を測定することができる。次いで、平均又は中央孔径を算出することができる。これにより、当業者は続いて、どのサイズの粒子がこの孔径を通過し得るか、ひいては公称孔径を決定することができる。
【0047】
実施形態において、粒子チャレンジ(particle challenge)を用いて多孔質領域の公称孔径を決定することができる。この方法では、「チャレンジ粒子」と称されることが多い既知のサイズの粒子を多孔質領域に適用する。次いで、粒子の粒径及び存在量を多孔質領域の上流及び下流で測定する。測定は、粒子のサイズ及び粒子が検出マーカー、例えば蛍光マーカーで標識されているか否かに応じて、顕微鏡法、自動化粒子計数器、比濁法、フローサイトメトリー、サブミクロン粒子計数器又は他の光散乱に基づく手法によるものであり得る。
【0048】
実施形態において、第1の領域に、第1の多孔質領域の公称孔径と異なる又は実質的に等しい、例えば同一の公称孔径を有し得る、更なる多孔質領域が先行していてもよい。先行する更なる多孔質領域が第1の多孔質領域の公称孔径と実質的に等しい(例えば同一の)公称孔径を有する実施形態において、先行する多孔質領域は、第1の多孔質領域、例えば第1の多孔質領域の一部と理解され得る。幾つかの実施形態において、第1の領域に更なる多孔質領域が先行しない(すなわち、第1の多孔質領域は、使用時に核酸組成物と接触するフィルターの最初の多孔質領域である)。
【0049】
このため、幾つかの実施形態において、フィルター装置は、複数の第1の多孔質領域を含む。かかる実施形態において、複数の第1の多孔質領域は、流体が流れる方向に互いに隣り合うことが理解される。この配置は、より短い核酸フラグメントに対するより長い核酸フラグメントの改善された比率での単離に特に有益であると見出された(例えば
図1Cを参照されたい)。
【0050】
実施形態において、先行する更なる多孔質領域は、第1の多孔質領域の公称孔径よりも小さな公称孔径を有し得る。任意に、先行する更なる多孔質領域は、第2の多孔質領域の公称孔径と実質的に等しい、例えば同一の公称孔径を有し得る。
【0051】
実施形態において、フィルターは、使用時に第2の多孔質領域の後にサンプルに接触するように配置される(例えば第1の多孔質領域及び第2の多孔質領域の下流にある)更なる多孔質領域(例えば第3の多孔質領域)を含み得る。第3の多孔質領域が第2の多孔質領域と実質的に等しい(例えば同一の)又は異なる公称孔径を有し得ることが理解される。
【0052】
第3の多孔質領域は、第1の多孔質領域と実質的に等しい(例えば同一の)又は異なる公称孔径を有し得る。
【0053】
実施形態において、第3の多孔質領域は、第2の多孔質領域よりも大きな公称孔径、任意に第1の多孔質領域の公称孔径と実質的に等しい(例えば同一の)公称孔径を有し得る。本発明者は、実質的に等しい(例えば同一の)公称孔径を有する第3及び第1の多孔質領域の配置が、より短い核酸フラグメントに対するより長い核酸フラグメントの比率が増加し、単離核酸フラグメントの平均塩基対長が増加した単離に特に有益であると見出した。
【0054】
実施形態において、第1の多孔質領域の公称孔径は、少なくとも2μmであり得る。第1の多孔質領域の公称孔径は、実施形態において3μm以下であり得る。任意に、第1の多孔質領域の公称孔径は、2μm~3μmである。この公称孔径範囲は、より長い核酸フラグメント、例えば40kb以上、例えば40kb~165.5kbの核酸フラグメントの保持に有利であることが本発明者によって見出された。実施形態において、第1の領域の公称孔径は、2.5μm~2.8μm、任意におよそ2.7μm、例えば2.7μmであり得る。
【0055】
第2の多孔質領域の公称孔径は、少なくとも0.5μmであり得る。実施形態において、第2の多孔質領域の公称孔径は、1.8μm以下であり得る。任意に、第2の多孔質領域の公称孔径は、0.5μm~1.8μmである。実施形態において、第2の多孔質領域の公称孔径は、0.5μm~1.3μmであり得る。
【0056】
実施形態において、第2の多孔質領域の公称孔径は、0.6μm~1μmであり得る。第2の多孔質領域の公称孔径は、およそ0.7μm、例えば0.7μmであり得る。
【0057】
幾つかの実施形態において、第1の多孔質領域の公称孔径は、少なくとも2μm(任意に3μm以下)であり、第2の多孔質領域の公称孔径は、1.8μm以下、例えば任意に0.5μm~1.8μmである。例えば、幾つかの実施形態において、第1の領域の公称孔径は、2.5μm~2.8μm、好ましくはおよそ2.7μmであり、第2の多孔質領域の公称孔径は、0.5μm~1.8μm、任意に0.6μm~1μm、好ましくはおよそ0.7μmである。
【0058】
実施形態において、第3の多孔質領域の公称孔径は、少なくとも2μmであり得る。第3の多孔質領域の公称孔径は、実施形態において3μm以下であり得る。任意に、第3の多孔質領域の公称孔径は、2μm~3μmであり得る。この公称孔径範囲は、より長い核酸フラグメント、例えば40kb以上、例えば40kb~165.5kbの核酸フラグメントの保持に有利であることが本発明者によって見出された。実施形態において、第3の多孔質領域の公称孔径は、2.5μm~2.8μm、任意におよそ2.7μm、例えば2.7μmであり得る。
【0059】
幾つかの実施形態において、第1の多孔質領域の公称孔径は、少なくとも2μm(任意に3μm以下)であり、第2の多孔質領域の公称孔径は、1.8μm以下(例えば任意に0.5μm~1.8μm)であり、第3の多孔質領域の公称孔径は、少なくとも2μm(任意に3μm以下)である。例えば、幾つかの実施形態において、第1の領域の公称孔径は、2.5μm~2.8μm(好ましくはおよそ2.7μm)であり、第2の多孔質領域の公称孔径は、0.5μm~1.8μm(任意に0.6μm~1μm、好ましくはおよそ0.7μm)であり、第3の多孔質領域の公称孔径は、2.5μm~2.8μm(好ましくはおよそ2.7μm)である。
【0060】
本発明の様々な実施形態は、およそ0.7μm(例えば0.7μm)の第2の領域の公称孔径及びおよそ2.7μm(例えば2.7μm)の第1の領域の公称孔径を有する。本発明の様々な実施形態は、およそ0.7μm(例えば0.7μm)の第2の領域の公称孔径並びにおよそ2.7μm(例えば2.7μm)の第1及び第3の領域の公称孔径を有する。
【0061】
本明細書に記載されるフィルターは、核酸の保持に有用であることが当業者に知られる任意の好適な材料を含み得る。この目的で知られる好適な材料としては、ケイ酸塩が挙げられる。このため、実施形態において、第1及び第2の多孔質領域の少なくとも一方がケイ酸塩又はシリカ系材料を含み得る(例えばそれのみからなる)。第3の及び/又は更なる多孔質領域を含む実施形態において、第3の及び/又は更なる多孔質領域は、ケイ酸塩又はシリカ系材料を含み得る(例えばそれからなり得る)。好適な実施形態において、それぞれの多孔質領域が全て、ケイ酸塩又はシリカ系材料を含み得る(例えばそれからなり得る)。好ましいケイ酸塩又はシリカ系材料としては、ケイ酸塩ガラス、例えばホウケイ酸塩又は石英ガラス、最も好ましくはホウケイ酸塩ガラスが挙げられる。
【0062】
本発明のフィルター内の孔は、当業者に既知の多数の方法によって設けることができる。しかしながら、孔は通例、例えば圧縮繊維メッシュの形態で充填された繊維状材料の粒子間に形成される開口部として設けられる。実施形態において、フィルターは、繊維状材料、例えば前段階で言及した材料、例えばケイ酸塩ガラス繊維、例えばホウケイ酸塩ガラス繊維又は石英ガラス繊維、好ましくはホウケイ酸塩ガラスのいずれかを含み得る(例えばそれから構成される又はそれのみからなる)。そのため、第1の多孔質領域及び/又は第2の多孔質領域は、任意にシリカ又はシリカ系材料の繊維、例えばケイ酸塩ガラス繊維、例えばホウケイ酸塩ガラス繊維又は石英ガラス繊維を含む(またはそれのみからなる)繊維状材料から形成され得る。実施形態において、第1及び第2の多孔質領域の少なくとも一方がホウケイ酸塩ガラス繊維を含み得る。第1の多孔質領域及び第2の多孔質領域は、同じ又は異なる繊維状材料、例えばホウケイ酸塩ガラス繊維又は石英ガラス繊維、例えばQM-A石英ガラス極細繊維から形成され得る。実施形態において、本発明のフィルターのそれぞれの多孔質領域は、各々が繊維状材料、例えば前段階で言及した材料、例えばケイ酸塩ガラス繊維、例えばホウケイ酸塩ガラス繊維又は石英ガラス繊維、好ましくはホウケイ酸塩ガラスのいずれかを含む(例えばそれから構成される又はそれのみからなる)。
【0063】
第3の及び/又は更なる多孔質領域を含む実施形態において、第3の及び/又は更なる多孔質領域は、繊維状材料、任意にシリカ又はシリカ系材料の繊維、例えばケイ酸塩ガラス繊維、例えばホウケイ酸塩ガラス繊維又は石英ガラス繊維を含む(またはそれのみからなる)繊維状材料から形成され得る。第3の及び/又は更なる多孔質領域は、第2及び/又は第1の多孔質領域と同じ及び/又は異なる繊維状材料から形成され得る。
【0064】
実施形態において、フィルターは石英ガラス繊維、例えばQM-A石英ガラス極細繊維を含み得る。
【0065】
実施形態において、第1及び第2の多孔質領域は、各々が多孔質材料のメンブレン又はシートを含み得る。
【0066】
Whatman Glass Microfibreフィルター(GF)の名称で入手可能なタイプのフィルターは、本発明への使用に適している。かかるフィルターの例としては、グレードA、B、D及びFのGFフィルターが挙げられる。グレードAのフィルターは、1.6μmの公称孔径を有する。グレードBのフィルターは、1.0μmの公称孔径を有する。グレードDのフィルターは、2.7μmの公称孔径を有する。グレードFのフィルターは、0.7μmの公称孔径を有する。GFフィルターは、ホウケイ酸塩ガラス繊維から形成される。幾つかの実施形態において、フィルターは、少なくともグレードD及びグレードFのフィルターを含む。幾つかの実施形態において、フィルターは、2つのグレードDのフィルター間に配置された少なくともグレードFのフィルターを含む。幾つかの実施形態において、フィルターは、2つのグレードDのフィルター間に配置されたグレードFのフィルターからなる。他の好適なフィルターが当業者に既知である。
【0067】
実施形態において、サンプルがフィルターを通って流れる方向に測定されるフィルターの最大厚さは、1000μm~2000μmであり得る。実施形態において、サンプルが流れる方向に測定されるフィルター装置の最大厚さは、1500μm~2000μmであり得る。実施形態において、第1の多孔質領域は、第2の多孔質領域の厚さ(流体が流れる方向に対する)の少なくとも2倍であり得る。第1の多孔質領域は、500μm~600μmの最大厚さ(流体が流れる方向に対する)を有し得る。第2の多孔質領域は、250μm~480μmの最大厚さ(流体が流れる方向に対する)を有し得る。実施形態において、第1の多孔質領域は、500μm~600μmの最大厚さ(流体が流れる方向に対する)を有し、第2の多孔質領域は、250μm~480μmの最大厚さ(流体が流れる方向に対する)を有する。かかる多孔質領域が通例、領域の幅にわたって均一の厚さ(流体が流れる方向に対する)を有することが理解される。これは、フィルターを通る流体の全ての部分について一貫した流路の長さを確実にするという利点を有する。
【0068】
実施形態において、第1の領域に、第1の多孔質領域の厚さと異なる又は実質的に等しい(例えば同一の)、サンプルが流れる方向に測定される厚さを有し得る、更なる多孔質領域が先行していてもよい。先行する更なる多孔質領域が、第1の多孔質領域のサンプルが流れる方向に測定される厚さと実質的に等しい(例えば同一の)厚さを有する実施形態において、先行する多孔質領域は、第1の多孔質領域、例えば第1の多孔質領域の一部と理解され得る。実施形態において、先行する多孔質領域及び第1の多孔質領域は、各々が500μm~600μmの最大厚さ(流体が流れる方向に対する)を有する。第2の多孔質領域は、250μm~480μmの最大厚さ(流体が流れる方向に対する)を有し得る。
【0069】
実施形態において、第3の多孔質領域は、500μm~600μmの最大厚さ(流体が流れる方向に対する)を有し得る。
【0070】
厚さは、特段の記載がない限り、流体が流れる方向の多孔質領域の長さを指すことが理解される。
【0071】
フィルターが通例、少なくとも2つの対向する面を含むことができ、第1の面が使用時に初めに流体サンプル接触するように配置され、続いて流体サンプルが第2の面からフィルターを通過する(ここでサンプルの少なくとも一部がフィルター上に保持される)ことが理解される。
【0072】
第1の多孔質領域は、第2の面よりも第1の面に近い。実施形態において、第1の面は、第1の多孔質領域を含み得る。実施形態において、第2の面は、第2の多孔質領域を含み得る。第2の領域は、一方で、第2の面が第2の領域と比較して異なる公称空隙率の更なる(例えば第3の)領域を含み、例えばそれが第1の多孔質領域と同じ空隙率を有し得るようにフィルターの本体内に配置され得る。かかる実施形態において、第2の多孔質領域は、第1の多孔質領域と更なる(例えば第3の)多孔質領域との間に位置する。
【0073】
第1の多孔質領域は、同じフィルター内の第2の領域と一体である(例えば共に形成される)か、又はそれに付着していてもよい。通例、好都合には、第1の多孔質領域は、所与の(より大きな)公称孔径を有する別個のフィルター(すなわち第1のフィルター)に相当し、第2の多孔質領域は、第2の(より小さな)公称孔径を有する第2の別個のフィルターに相当し得る。すなわち、装置を通って流れる流体について下流の第2のフィルターに対し、第1のフィルターは、装置を通って流れる流体について上流である。別個のフィルターを結合しても又は結合しなくてもよい(例えば、それらを単に分離可能に接触させ、例えば流体が流れる方向に対して互いに積み重ねてもよい)。別個のフィルター又は多孔質領域の組合せは、フィルターを通した流体の流れに対して積み重ねた配置で提供され得る。重力カラムについては、通常は垂直に積み重ねた配置であるが、スピン装置等の一部の装置では、フィルターを通した流体の流れが垂直でない場合もあることが理解される。スピン装置における流体の流れの場合、加えられる遠心力のために垂直である必要はなく、かかる配置では、装置を通って流れる流体について下流の第2のフィルター又は領域に対し、第1のフィルター又は領域が装置を通って流れる流体について上流であるという限りにおいて、これに関連した積重ねが垂直の関係である必要はない。
【0074】
幾つかの実施形態において、フィルターは、第1の多孔質領域と第2の多孔質領域とを含み(又は特定の実施形態において、それらからなり)、第1の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の前にサンプルに接触するように配置され、第1の多孔質領域の公称孔径は、2μm~3μmであり、第2の多孔質領域の公称孔径は、0.5μm~1.8μmであり、フィルターは、ケイ酸塩又はシリカ系材料、任意にホウケイ酸塩ガラス(好ましくはホウケイ酸塩ガラス繊維)を含む。
【0075】
幾つかの実施形態において、フィルターは、第1の多孔質領域と第2の多孔質領域とを含み(又は特定の実施形態において、それらからなり)、第1の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の前にサンプルに接触するように配置され、第1の多孔質領域の公称孔径は、2μm~3μmであり、第2の多孔質領域の公称孔径は、0.5μm~1.8μmであり、サンプルがフィルターを通って流れる方向に測定されるフィルターの最大厚さは、1000μm~2000μm、任意に1500μm以下である。
【0076】
幾つかの実施形態において、フィルターは、第1の多孔質領域と第2の多孔質領域とを含み(又は特定の実施形態において、それらからなり)、第1の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の前にサンプルに接触するように配置され、第2の領域の公称孔径は、およそ0.7μm(例えば0.7μm)であり、第1の領域の公称孔径は、およそ2.7μm(例えば2.7μm)であり、サンプルがフィルターを通って流れる方向に測定されるフィルターの最大厚さは、1000μm~2000μm、任意に1500μm以下である。
【0077】
幾つかの実施形態において、フィルターは、第1の多孔質領域と第2の多孔質領域とを含み(又は特定の実施形態において、それらからなり)、第1の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の前にサンプルに接触するように配置され、第1の多孔質領域の公称孔径は、2μm~3μmであり、第2の多孔質領域の公称孔径は、0.5μm~1.8μmであり、サンプルがフィルターを通って流れる方向に測定されるフィルターの最大厚さは、1000μm~2000μm、任意に1500μm以下であり、フィルターは、ケイ酸塩又はシリカ系材料、任意にホウケイ酸塩ガラス(好ましくはホウケイ酸塩ガラス繊維)を含む。
【0078】
フィルターは、複数(例えば2つ)の第1の多孔質領域と第2の多孔質領域とを含んでいてもよく(又は特定の実施形態において、それらからなっていてもよく)、第1の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の前にサンプルに接触するように配置され、第1の多孔質領域の各々の公称孔径は、2μm~3μmであり、第2の多孔質領域の公称孔径は、0.5μm~1.8μmである。
【0079】
幾つかの実施形態において、フィルターは、複数(例えば2つ)の第1の多孔質領域と第2の多孔質領域とを含み(又は特定の実施形態において、それらからなり)、第1の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の前にサンプルに接触するように配置され、第1の多孔質領域の各々の公称孔径は、2μm~3μmであり、第2の多孔質領域の公称孔径は、0.5μm~1.8μmであり、フィルターは、ケイ酸塩又はシリカ系材料、任意にホウケイ酸塩ガラス(好ましくはホウケイ酸塩ガラス繊維)を含む。
【0080】
幾つかの実施形態において、フィルターは、複数(例えば2つ)の第1の多孔質領域と第2の多孔質領域とを含み(又は特定の実施形態において、それらからなり)、第1の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の前にサンプルに接触するように配置され、第1の多孔質領域の各々の公称孔径は、およそ2.7μm(例えば2.7μm)であり、第2の多孔質領域の公称孔径は、およそ0.7μm(例えば0.7μm)である。
【0081】
幾つかの実施形態において、フィルターは、複数(例えば2つ)の第1の多孔質領域と第2の多孔質領域とを含み(又は特定の実施形態において、それらからなり)、第1の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の前にサンプルに接触するように配置され、第1の多孔質領域の各々の公称孔径は、およそ2.7μm(例えば2.7μm)であり、第2の多孔質領域の公称孔径は、およそ0.7μm(例えば0.7μm)であり、フィルターは、ケイ酸塩又はシリカ系材料、任意にホウケイ酸塩ガラス(好ましくはホウケイ酸塩ガラス繊維)を含む。
【0082】
フィルターは、複数(例えば2つ)の第1の多孔質領域と第2の多孔質領域とを含んでいてもよく(又は特定の実施形態において、それらからなっていてもよく)、第1の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の前にサンプルに接触するように配置され、第1の多孔質領域の各々の公称孔径は、2μm~3μmであり、第2の多孔質領域の公称孔径は、0.5μm~1.8μmであり、サンプルがフィルターを通って流れる方向に測定されるフィルターの最大厚さは、1000μm~2000μmである。
【0083】
幾つかの実施形態において、フィルターは、複数(例えば2つ)の第1の多孔質領域と第2の多孔質領域とを含み(又は特定の実施形態において、それらからなり)、第1の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の前にサンプルに接触するように配置され、第1の多孔質領域の各々の公称孔径は、およそ2.7μm(例えば2.7μm)であり、第2の多孔質領域の公称孔径は、およそ0.7μm(例えば0.7μm)であり、サンプルがフィルターを通って流れる方向に測定されるフィルターの最大厚さは、1000μm~2000μmである。
【0084】
フィルターは、複数(例えば2つ)の第1の多孔質領域と第2の多孔質領域とを含んでいてもよく(又は特定の実施形態において、それらからなっていてもよく)、第1の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の前にサンプルに接触するように配置され、第1の多孔質領域の各々の公称孔径は、2μm~3μmであり、第2の多孔質領域の公称孔径は、0.5μm~1.8μmであり、サンプルがフィルターを通って流れる方向に測定されるフィルターの最大厚さは、1500μm~2000μmである。
【0085】
フィルターは、複数(例えば2つ)の第1の多孔質領域と第2の多孔質領域とを含んでいてもよく(又は特定の実施形態において、それらからなっていてもよく)、第1の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の前にサンプルに接触するように配置され、第1の多孔質領域の各々の公称孔径は、2μm~3μmであり、第2の多孔質領域の公称孔径は、0.5μm~1.8μmであり、サンプルがフィルターを通って流れる方向に測定されるフィルターの最大厚さは、1500μm~2000μmであり、フィルターは、ケイ酸塩又はシリカ系材料、任意にホウケイ酸塩ガラス(好ましくはホウケイ酸塩ガラス繊維)を含む。
【0086】
幾つかの実施形態において、フィルターは、複数(例えば2つ)の第1の多孔質領域と第2の多孔質領域とを含み(又は特定の実施形態において、それらからなり)、第1の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の前にサンプルに接触するように配置され、第1の多孔質領域の各々の公称孔径は、およそ2.7μm(例えば2.7μm)であり、第2の多孔質領域の公称孔径は、およそ0.7μm(例えば0.7μm)であり、サンプルがフィルターを通って流れる方向に測定されるフィルターの最大厚さは、1500μm~2000μmである。
【0087】
フィルターは、複数(例えば2つ)の第1の多孔質領域と第2の多孔質領域とを含んでいてもよく(又は特定の実施形態において、それらからなっていてもよく)、第1の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の前にサンプルに接触するように配置され、第1の多孔質領域の各々の公称孔径は、2μm~3μmであり、第2の多孔質領域の公称孔径は、0.5μm~1.8μmであり、サンプルがフィルターを通って流れる方向に測定されるフィルターの最大厚さは、1000μm~2000μmであり、フィルターは、ケイ酸塩又はシリカ系材料、任意にホウケイ酸塩ガラス(好ましくはホウケイ酸塩ガラス繊維)を含む。
【0088】
幾つかの実施形態において、フィルターは、複数(例えば2つ)の第1の多孔質領域と第2の多孔質領域とを含み(又は特定の実施形態において、それらからなり)、第1の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の前にサンプルに接触するように配置され、第1の多孔質領域の各々の公称孔径は、およそ2.7μm(例えば2.7μm)であり、第2の多孔質領域の公称孔径は、およそ0.7μm(例えば0.7μm)であり、サンプルがフィルターを通って流れる方向に測定されるフィルターの最大厚さは、1500μm~2000μmであり、フィルターは、ケイ酸塩又はシリカ系材料、任意にホウケイ酸塩ガラス(好ましくはホウケイ酸塩ガラス繊維)を含む。
【0089】
複数の第1の多孔質領域は、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つの第1の多孔質領域を含んでいてもよい(又は特定の実施形態において、それらからなっていてもよい)。幾つかの実施形態において、複数の第1の多孔質領域は、2つの第1の多孔質領域を含む(又は特定の実施形態において、それらのみからなる)。
【0090】
幾つかの実施形態において、フィルターは、2つの第1の多孔質領域と第2の多孔質領域とを含み(又は特定の実施形態において、それらからなり)、第1の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の前にサンプルに接触するように配置され、第1の多孔質領域の各々の公称孔径は、およそ2.7μm(例えば2.7μm)であり、第2の多孔質領域の公称孔径は、およそ0.7μm(例えば0.7μm)であり、第1の多孔質領域の各々の厚さは、500μm~600μmであり、第2の多孔質領域の厚さは、250μm~480μmであるが、但し、サンプルがフィルターを通って流れる方向に測定されるフィルターの最大厚さは、1500μm~2000μmであり、フィルターは、ケイ酸塩又はシリカ系材料、任意にホウケイ酸塩ガラス(好ましくはホウケイ酸塩ガラス繊維)を含む。
【0091】
フィルターは、第1の多孔質領域と、第2の多孔質領域と、第3の多孔質領域とを含んでいてもよく(又は特定の実施形態において、それらからなっていてもよく)、第1の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の前にサンプルに接触するように配置され、第3の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の後にサンプルに接触するように配置され、第1及び第3の多孔質領域の公称孔径は、2μm~3μmであり、第2の多孔質領域の公称孔径は、0.5μm~1.8μmである。
【0092】
幾つかの実施形態において、フィルターは、第1の多孔質領域と、第2の多孔質領域と、第3の多孔質領域とを含み(又は特定の実施形態において、それらからなり)、第1の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の前にサンプルに接触するように配置され、第3の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の後にサンプルに接触するように配置され、第1及び第3の多孔質領域の公称孔径は、およそ2.7μm(例えば2.7μm)であり、第2の多孔質領域の公称孔径は、およそ0.7μm(例えば0.7μm)である。
【0093】
フィルターは、第1の多孔質領域と、第2の多孔質領域と、第3の多孔質領域とを含んでいてもよく(又は特定の実施形態において、それらからなっていてもよく)、第1の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の前にサンプルに接触するように配置され、第3の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の後にサンプルに接触するように配置され、第1及び第3の多孔質領域の公称孔径は、2μm~3μmであり、第2の多孔質領域の公称孔径は、0.5μm~1.8μmであり、サンプルがフィルターを通って流れる方向に測定されるフィルターの最大厚さは、1000μm~2000μmである。
【0094】
幾つかの実施形態において、フィルターは、第1の多孔質領域と、第2の多孔質領域と、第3の多孔質領域とを含み(又は特定の実施形態において、それらからなり)、第1の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の前にサンプルに接触するように配置され、第3の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の後にサンプルに接触するように配置され、第1及び第3の多孔質領域の公称孔径は、およそ2.7μm(例えば2.7μm)であり、第2の多孔質領域の公称孔径は、およそ0.7μm(例えば0.7μm)であり、サンプルがフィルターを通って流れる方向に測定されるフィルターの最大厚さは、1000μm~2000μmである。
【0095】
フィルターは、第1の多孔質領域と、第2の多孔質領域と、第3の多孔質領域とを含んでいてもよく(又は特定の実施形態において、それらからなっていてもよく)、第1の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の前にサンプルに接触するように配置され、第3の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の後にサンプルに接触するように配置され、第1及び第3の多孔質領域の公称孔径は、2μm~3μmであり、第2の多孔質領域の公称孔径は、0.5μm~1.8μmであり、サンプルがフィルターを通って流れる方向に測定されるフィルターの最大厚さは、1500μm~2000μmである。
【0096】
幾つかの実施形態において、フィルターは、第1の多孔質領域と、第2の多孔質領域と、第3の多孔質領域とを含み(又は特定の実施形態において、それらからなり)、第1の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の前にサンプルに接触するように配置され、第3の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の後にサンプルに接触するように配置され、第1及び第3の多孔質領域の公称孔径は、およそ2.7μm(例えば2.7μm)であり、第2の多孔質領域の公称孔径は、およそ0.7μm(例えば0.7μm)であり、サンプルがフィルターを通って流れる方向に測定されるフィルターの最大厚さは、1500μm~2000μmである。
【0097】
フィルターは、第1の多孔質領域と、第2の多孔質領域と、第3の多孔質領域とを含んでいてもよく(又は特定の実施形態において、それらからなっていてもよく)、第1の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の前にサンプルに接触するように配置され、第3の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の後にサンプルに接触するように配置され、第1及び第3の多孔質領域の公称孔径は、2μm~3μmであり、第2の多孔質領域の公称孔径は、0.5μm~1.8μmであり、フィルターは、ケイ酸塩又はシリカ系材料、任意にホウケイ酸塩ガラス(好ましくはホウケイ酸塩ガラス繊維)を含む。
【0098】
幾つかの実施形態において、フィルターは、第1の多孔質領域と、第2の多孔質領域と、第3の多孔質領域とを含み(又は特定の実施形態において、それらからなり)、第1の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の前にサンプルに接触するように配置され、第3の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の後にサンプルに接触するように配置され、第1及び第3の多孔質領域の公称孔径は、およそ2.7μm(例えば2.7μm)であり、第2の多孔質領域の公称孔径は、およそ0.7μm(例えば0.7μm)であり、フィルターは、ケイ酸塩又はシリカ系材料、任意にホウケイ酸塩ガラス(好ましくはホウケイ酸塩ガラス繊維)を含む。
【0099】
フィルターは、第1の多孔質領域と、第2の多孔質領域と、第3の多孔質領域とを含んでいてもよく(又は特定の実施形態において、それらからなっていてもよく)、第1の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の前にサンプルに接触するように配置され、第3の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の後にサンプルに接触するように配置され、第1及び第3の多孔質領域の公称孔径は、2μm~3μmであり、第2の多孔質領域の公称孔径は、0.5μm~1.8μmであり、サンプルがフィルターを通って流れる方向に測定されるフィルターの最大厚さは、1000μm~2000μmであり、フィルターは、ケイ酸塩又はシリカ系材料、任意にホウケイ酸塩ガラス(好ましくはホウケイ酸塩ガラス繊維)を含む。
【0100】
幾つかの実施形態において、フィルターは、第1の多孔質領域と、第2の多孔質領域と、第3の多孔質領域とを含み(又は特定の実施形態において、それらからなり)、第1の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の前にサンプルに接触するように配置され、第3の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の後にサンプルに接触するように配置され、第1及び第3の多孔質領域の公称孔径は、およそ2.7μm(例えば2.7μm)であり、第2の多孔質領域の公称孔径は、およそ0.7μm(例えば0.7μm)であり、サンプルがフィルターを通って流れる方向に測定されるフィルターの最大厚さは、1000μm~2000μmであり、フィルターは、ケイ酸塩又はシリカ系材料、任意にホウケイ酸塩ガラス(好ましくはホウケイ酸塩ガラス繊維)を含む。
【0101】
フィルターは、第1の多孔質領域と、第2の多孔質領域と、第3の多孔質領域とを含んでいてもよく(又は特定の実施形態において、それらからなっていてもよく)、第1の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の前にサンプルに接触するように配置され、第3の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の後にサンプルに接触するように配置され、第1及び第3の多孔質領域の公称孔径は、2μm~3μmであり、第2の多孔質領域の公称孔径は、0.5μm~1.8μmであり、サンプルがフィルターを通って流れる方向に測定されるフィルターの最大厚さは、1500μm~2000μmであり、フィルターは、ケイ酸塩又はシリカ系材料、任意にホウケイ酸塩ガラス(好ましくはホウケイ酸塩ガラス繊維)を含む。
【0102】
幾つかの実施形態において、フィルターは、第1の多孔質領域と、第2の多孔質領域と、第3の多孔質領域とを含み(又は特定の実施形態において、それらからなり)、第1の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の前にサンプルに接触するように配置され、第3の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の後にサンプルに接触するように配置され、第1及び第3の多孔質領域の公称孔径は、およそ2.7μm(例えば2.7μm)であり、第2の多孔質領域の公称孔径は、およそ0.7μm(例えば0.7μm)であり、サンプルがフィルターを通って流れる方向に測定されるフィルターの最大厚さは、1500μm~2000μmであり、フィルターは、ケイ酸塩又はシリカ系材料、任意にホウケイ酸塩ガラス(好ましくはホウケイ酸塩ガラス繊維)を含む。
【0103】
幾つかの実施形態において、フィルターは、第1の多孔質領域と、第2の多孔質領域と、第3の多孔質領域とを含み(又は特定の実施形態において、それらからなり)、第1の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の前にサンプルに接触するように配置され、第3の多孔質領域は、使用時に第2の多孔質領域の後にサンプルに接触するように配置され、第1及び第3の多孔質領域の公称孔径は、およそ2.7μm(例えば2.7μm)であり、第2の多孔質領域の公称孔径は、およそ0.7μm(例えば0.7μm)であり、第1の多孔質領域の厚さは、500μm~600μmであり、第2の多孔質領域の厚さは、250μm~480μmであり、第3の多孔質領域の厚さは、500μm~600μmであるが、但し、サンプルがフィルターを通って流れる方向に測定されるフィルターの最大厚さは、1500μm~2000μmであり、フィルターは、ケイ酸塩又はシリカ系材料、任意にホウケイ酸塩ガラス(好ましくはホウケイ酸塩ガラス繊維)を含む。
【0104】
本発明のフィルターは、核酸抽出カラムへの使用に最適である。このため、好都合には、フィルター装置を、当業者に既知のような核酸抽出カラム、例えば国際公開第2016/147004号に記載されるスピンカラム内に設けることができる。スピンカラム内のフィルターは、ホウケイ酸塩繊維を含む少なくとも1つのシート又はメンブレンの形態で設けるのが好ましい。
【0105】
このため、本発明の第2の態様によると、第1の態様又は本明細書に記載されるその任意の実施形態によるフィルターを備える、核酸をサンプルから単離するための核酸抽出カラムが提供される。
【0106】
通例、核酸抽出カラムは、マイクロチューブ、例えばエッペンドルフチューブへの挿入に適したチューブの形態である。フィルターは、カラムの基部を形成していてもよい。使用時に、サンプルがフィルターを通って流れ、及び/又はフィルターに保持されるようにサンプルをカラムに添加することができる。フィルターを通って流れる全てのサンプルが、続いてマイクロチューブに保持され得る。
【0107】
フィルターを除く核酸抽出カラムの本体がプラスチックから形成され得ることが理解される。他の好適な材料が当業者によって想定され得る。
【0108】
本発明の第3の態様によると、本発明の第1の態様によるフィルターを用いて核酸をサンプルから単離する方法が提供される。言い換えると、本発明は、核酸をサンプルから単離する方法における本発明の第1の態様によるフィルターの使用も提供する。実施の形態において、方法は、
(i)核酸を含むサンプル(例えば溶解サンプル)をアルコール及び塩(任意にアルコール及び塩を含む溶液)と接触させること(すなわち核酸、アルコール及び塩を含む組成物を得ること)であって、塩を任意に0.05M~10Mの濃度の溶液にて提供することと、
(ii)本明細書に記載される本発明の第1の態様によるフィルターを工程(i)の後に得られる核酸を含む組成物と接触させ、核酸が結合したフィルターを得ることと、
(iii)好ましくは、核酸が結合したフィルターを、アルコール及び任意に塩を含む洗浄溶液で処理することと、
(iv)核酸の少なくとも一部をフィルターから溶出させることと、
を含む。
【0109】
方法は、任意に、(v)工程(iv)の後にフィルターからの核酸の2回目の溶出を行うことであって、例えば溶出が90℃を超えない温度にて溶出バッファー中でフィルターをインキュベートし、任意に続いてフィルターの遠心分離を行うことを更に含み得る。
【0110】
上記の方法は、核酸フラグメントを単離する改善された方法を提供する。特に、本発明のフィルターを用いて得られた単離核酸は概して、本発明のフィルターを用いない対応する方法と比較して、より純粋かつより無傷である(実施例及び対応する図面を参照されたい)。加えて、全核酸フラグメントの収率、及び得られる短い核酸フラグメントに対する長い核酸フラグメントの比率が改善される(例えば
図1C)。
【0111】
実施形態において、サンプルは、精製核酸を含み得る。他の実施形態において、サンプルは、溶解生体サンプルを含み得るか、又は溶解生体サンプルである。
【0112】
実施形態において、方法は、核酸を含む生体サンプルを溶解させる工程を含む。溶解は、上記の接触工程(i)の前に又は上記の接触工程(i)と同時に行うことができる。上記の工程(i)の前に行う場合、溶解生体サンプルが続いて工程(i)において言及されるサンプルを形成し得る。溶解を工程(i)と同時に行う場合、核酸を含む、得られる組成物が溶解組成物であり、これを続いて工程(ii)に供することができる。
【0113】
当業者は、本発明による濾過の前に核酸をサンプル中の生体物質から放出させるのに適した溶解条件を認識している。通例、溶解は、生体サンプルを塩、界面活性剤、キレート剤及び/又は酵素の1つ以上で処理することによってもたらされる。このため、かかる溶解成分を、核酸を含有するサンプルに工程(i)のアルコール及び/又は塩の前に添加しても、又は工程(i)のアルコール及び/又は塩と同じ混合物の一部として添加してもよい。溶解後に形成される得られる組成物は、組成物を方法の工程(i)に供する前に浄化してもよい(例えば不要な生体成分を除去するため)。得られる溶解組成物を、代替的には全く浄化することなく工程(i)に供してもよい(この場合、得られる組成物は、方法の工程(ii)に直接供する核酸を含有する組成物であり得る)。溶解を工程(i)の一部として行う場合、得られる溶解サンプルが溶解組成物であり、これを続いて方法の工程(ii)に直接供することができることが理解される。
【0114】
生体サンプルを溶解させる工程を含む実施形態において、溶解は、サンプル中の生体物質を水溶液で溶解させ、工程(i)のサンプルを形成するための水性溶解組成物を作製することを含み得る。水溶液(溶解に使用される)は、表面活性剤を含み得る。水溶液は、付加的又は代替的にはプロテイナーゼ、例えばプロテイナーゼK、好ましくはキレート剤を含み得る。実施形態において、溶液は塩を含有し得る。このため、溶解工程は、付加的又は代替的には塩を含む水溶液を添加することを含み得る。塩は、無機塩又は有機塩であり得る。塩は例えば、アルカリ金属塩、例えばリチウム塩等の金属塩であり得る。それぞれの塩は、ハロゲン化物、例えば金属ハロゲン化物、例えばハロゲン化リチウム、好ましくは塩化リチウムのように任意の好適な対イオンと共に提供してもよい。塩は、溶液の形態(例えば0.05M~10M、例えば0.5M~1.0M、例えばおよそ0.8Mの溶液の形態)で提供してもよい。塩は、0.1M~0.5M、例えば0.2M~0.3M、例えば0.23Mの工程(i)の後に得られる組成物中の濃度がもたらされるように提供され得る。実施形態において、水溶液はアルコールを含み得る。アルコールは、C1~3アルカノール、例えばエタノール又はイソプロパノールを含み得る。C1~3アルカノールは、少なくとも75%、任意に少なくとも95%のエタノール又はイソプロパノールを含み得る。実施形態において、水溶液は塩、例えば塩化リチウムを含み得る。塩は、好ましくは約0.8M、例えば0.8Mの溶液中の濃度で提供され得る塩化リチウムであり得る。
【0115】
生体サンプル(例えば細胞)を水溶液と十分に混合し(例えばピペッティングによる)、溶解を好適な時間にわたって常温で行うことができる。15分~25分、例えば約20分の時間が概して好適である。実施形態において、溶解は40℃~60℃の温度で行われ得る。例えば、水溶液がプロテイナーゼKを含む実施形態において、溶解をこの温度で行うことができる。溶解は、溶解組成物の形成をもたらす。
【0116】
溶解組成物を遠心分離してペレットを形成することができる。ペレットを溶液に再懸濁し、工程(i)のサンプルを形成することができる。
【0117】
最も好ましくはEDTA又はアルカリ金属(例えばナトリウム)塩等のその塩であるキレート剤を、水溶液として提供することができ、例えば溶液中のEDTA又はその塩の濃度は、1mM/リットル~20mM/リットル、より好ましくは8ミリモル/リットル~15ミリモル/リットル、より好ましくは9ミリモル/リットル~11ミリモル/リットル、最も好ましくは約10ミリモル/リットルである。キレート剤の量は、核酸を含む得られる組成物(例えば続いて工程(ii)においてフィルターと接触する組成物)が0.5mmol~5mmol、例えば2mmol~4mmol、例えばおよそ2.85mmolのEDTAを含有するような量であるのが好ましい。
【0118】
表面活性剤は、非イオン界面活性剤であり得るが、より好ましくは陰イオン界面活性剤、最も好ましくはSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)である。水溶液は、0.1重量%~1.5重量%、好ましくは約0.2重量%~0.8重量%、最も好ましくは約0.5重量%の量で界面活性剤を含み得る。界面活性剤の量は、核酸を含む得られる組成物(例えば続いて工程(ii)においてフィルターと接触する組成物)が0.05%~0.5%(w/v)の界面活性剤(例えばSDS)、例えば0.1%~0.2%(w/v)、例えばおよそ0.14%(w/v)の界面活性剤(例えばSDS)を含有するような量であるのが好ましい。
【0119】
水溶液は、7~8のpHを有し得るが、実施形態において、必ずしもこの範囲のpHに緩衝化されるわけではない。このため、水溶液は非緩衝化組成物であってもよい。
【0120】
或る特定の実施形態において(例えばグラム陰性菌の溶解のため)、溶解は、細胞をプロテアーゼ酵素(例えばプロテイナーゼK)で処理することなく、加熱工程の必要なしに行うことができる。他の実施形態において(例えば全血球を溶解させる目的での血液等の組織の処理のため)、サンプルを工程(i)の前にプロテアーゼ酵素(例えばプロテイナーゼK)で処理してもよい。後者の実施形態において、プロテアーゼ酵素(プロテイナーゼK)での処理は、塩、例えばリチウム塩を含む溶解溶液での処理と同時に行われ得る。
【0121】
例示的な溶解工程では、核酸を含有する生体サンプル(例えば細胞サンプル)を金属塩(好ましくはLiCl、より好ましくはおよそ0.8Mの濃度のLiCl)、キレート剤(好ましくはSDS、例えばおよそ0.5%(w/v)の濃度のSDS)、酵素(好ましくはプロテイナーゼK等のプロテアーゼ)及びキレート剤(好ましくはEDTA、例えば溶液中およそ10mMの濃度のEDTA)を含む溶解溶液と接触させ、組成物を混合してサンプルを溶解させる。次いで、得られるサンプルを任意に遠心分離し、核酸を他の生体物質から分離することができる。次いで、溶解後に得られる核酸を含有するサンプルを工程(i)に従ってアルコール及び塩と接触させることができる。アルコール及び塩は、同時又は順次に供給され得る。
【0122】
工程(i)では、アルコール及び塩を同時又は順次に核酸と接触させることができる。例えば、塩を塩溶液の形態で添加した後にアルコールを添加しても、又はその逆であってもよい。代替的には、塩及びアルコールを同じ組成物(例えば溶液)内の成分として提供し、組成物を核酸に添加しても、又はその逆であってもよい。溶解工程を行う場合、塩及びアルコールは溶解工程後に、例えば溶解混合物の成分として既に存在していてもよい。
【0123】
工程(i)による塩は、任意の好適な無機又は有機塩であり得る。塩はカオトロピック剤を含み得る(又は実施形態において、カオトロピック剤であり得る)。カオトロピック剤は、好ましくはグアニジニウム塩(例えばハロゲン化グアニジニウム、例えばグアニジニウム塩酸塩又はグアニジン塩酸塩としても知られ、本明細書の他の部分では「GuHCl」と称される塩化グアニジニウム)を含むか、又はグアニジニウム塩である。グアニジニウム塩は、溶液中で0.05M~10M、好ましくは0.1M~3M、好ましくは0.1M~2M、より好ましくは0.5M~0.9M、最も好ましくは0.6M~0.7Mの範囲、最も好ましくは0.67Mという核酸、アルコール及び塩を含有する組成物(工程(i)の後に得られる)中の濃度を有するように提供され得る。例としては、塩(例えばグアニジニウム塩)を、核酸を含有するサンプルに添加した後に上記の濃度をもたらす濃度を有する溶液として添加することができる。例えば、塩(例えばグアニジニウム塩)を1M~5M、例えばおよそ2Mの溶液として提供することができる。これは通例、下記のようにアルコール溶液として提供される。
【0124】
カオトロピック剤をC1~3アルカノール、例えばエタノール又はイソプロパノールに溶解してもよい。C1~3アルカノールは、少なくとも75%(v/v)、任意に少なくとも95%(v/v)のエタノール又はイソプロパノールを含み得る。
【0125】
誤解を避けるために、アルコールのパーセンテージ、例えば96%のエタノールへの言及が、96%(v/v)エタノール(例えば、更に最大4%(v/v)の水)を含有する水性液体組成物を指すことが理解される。
【0126】
工程(i)において提供されるアルコールは、C1~3アルカノール、例えばイソプロパノール又はエタノールを含み得る(又はそれであり得る)。C1~3アルカノールは、工程(i)によって得られる、すなわち工程(ii)に供される核酸を含む組成物が少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%又は少なくとも40%(v/v)のアルコールを含有するような量で提供され得る。通例、工程(i)において形成される組成物のアルコール含有量は、約60%(v/v)のアルコールを超えない。好ましい実施形態において、工程(i)の後に形成され、工程(ii)に供される組成物中のアルコール濃度は、約35%(v/v)を超えず、例えばおよそ30%(v/v)を超えない。C1~3アルカノールは、工程(i)により形成される、すなわち工程(ii)に供される核酸を含む組成物が25体積%~40体積%、任意に25体積%~30%体積%を含有するような量で提供され得る。
【0127】
上記の方法では、方法は、好ましくは(必ずしもそれを要するわけではない)、洗浄工程(iii)を含む。すなわち、方法は工程(i)、(ii)及び(iv)を含み、好ましくは洗浄工程(iii)も含む。洗浄工程(iii)が、洗浄工程を省いた場合と比較して、より純粋な核酸物質を提供するのに役立つことが当業者には理解される。このため、洗浄工程(iii)を含むことが望ましい。洗浄溶液は通例、アルコールを含有し、これは上記のアルコールであり得る。実施形態において、洗浄溶液は塩を更に含み得る。塩は、好ましくはハロゲン化リチウム又はハロゲン化グアニジニウム、例えば塩化リチウム又は塩化グアニジニウムである。洗浄溶液での処理は、不純物を除去し、実質的に純粋な核酸をフィルターに固定化したままにすることを意図する。次いで、フィルターを任意に遠心分離によって液体から分離する。
【0128】
塩は、洗浄溶液中に0.05モル/リットル~10モル/リットル未満、好ましくは0.05モル/リットル~1モル/リットル未満、好ましくは0.1モル/リットル~0.9モル/リットル、より好ましくは0.6モル/リットル~0.9モル/リットル、更により好ましくは0.75モル/リットル~0.85モル/リットル、最も好ましくは約0.8モル/リットルの濃度で存在し得る。実施形態において、洗浄溶液は、塩を0.2M~0.9Mの濃度で含み得る。
【0129】
フィルターを複数の洗浄溶液で処理してもよい。第1の洗浄溶液は、アルコール及び塩(例えばハロゲン化リチウム又はハロゲン化グアニジニウム、例えば塩化リチウム又は塩化グアニジニウム)を、任意に0.05M~10Mの濃度で含み得る。フィルターを各洗浄の後に、任意に遠心分離によって液体から分離することができることが理解される。
【0130】
第2の洗浄溶液を含む実施形態において、第2の洗浄液はアルコールを含有し得る。実施形態において、第2の洗浄液は、アルコール及び塩(例えばハロゲン化リチウム又はハロゲン化グアニジニウム、例えば塩化リチウム又は塩化グアニジニウム)を含み、これらの成分を第1の洗浄溶液とは異なる塩濃度で提供することができる。例えば、第1の洗浄溶液が0.05M~1Mの塩濃度を有する場合、実施形態において、第2の洗浄を0.05M~1Mではない、すなわち第1の洗浄溶液よりも低いか又は高い濃度で行うことができる。
【0131】
アルコールは、C1~3アルカノール、例えばイソプロパノール又はエタノールを含み得る。C1~3アルカノールは、少なくとも30%、少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%(v/v)であり得る。実施形態において、C1~3アルカノールは、75%~100%(v/v)のエタノールを含み得る。実施形態において、C1~3アルカノールは、90%(v/v)のエタノールを含み得る。
【0132】
本発明の第3の態様の方法は、DNA(特にゲノムDNA)等の核酸を広範な生体起源の核酸含有サンプルから単離するために用いることができる。核酸(例えばDNA)が単離されるサンプルは、細胞、例えば動物(哺乳動物を含む)細胞、植物細胞、細菌細胞、又は酵母若しくは他の真菌細胞であり得るか又はそれを含み得る。代替的には、核酸(例えばDNA)が単離されるサンプルは、1つ以上のウイルスであり得るか又はそれを含み得る。核酸(例えばDNAを含む)が単離される細胞、ウイルス(複数の場合もある)又は他の核酸含有サンプルは、組織サンプル、又は血液、痰、尿若しくはCSF等の体液に由来するものであっても又はその中に存在していたものであってもよい。サンプルは、生体サンプルに由来する単離流体サンプルであり得る。例えば、細胞等の生体サンプルを遠心分離し、細胞ペレットを形成することができる。得られるペレット及び/又は上清を単離し、再懸濁して、本方法に使用されるサンプルを形成することができる。実施形態において、サンプルは精製核酸を含み得る。他の実施形態において、サンプルは、本明細書に記載されるように生体起源の核酸含有サンプルに由来する溶解生体サンプルを含み得る。本発明の方法によって得られる核酸、例えばDNAは、当該技術分野で既知の手法による更なる分析の目的で使用するのに十分に純粋である。核酸、例えばDNAは、必要に応じて、例えば研究目的で又は医学的状態の診断に使用することができる。
【0133】
フィルターを液体及び/又は溶液と接触させると、液体及び/又は溶液がフィルターを通って流れ得ることが理解される。例えば遠心分離等のスピン法又は重力によって流れを達成することができる。次いで、工程間に液体及び/又は溶液をフィルターから分離することができる。このようにして、核酸をフィルターから単離する工程(iv)まで、核酸をフィルター上に保持することができ、残りの液体は、フィルターを通って流れる。流体が流れる間に、核酸(最終的に単離される)がフィルター装置に結合し、不純物(タンパク質等)の大部分が液体中でフィルターを通過し、これを続いて回収し、捨てることができる。
【0134】
核酸をフィルターから溶出させるとは、フィルターに結合した核酸の溶離液への移動を指すことが理解される。当業者には理解されるように、溶離液は、単離核酸を含有する溶液を指す。したがって、溶出は、フィルターを溶出バッファーと接触させることを含む。
【0135】
溶出バッファーは、EDTA又はその塩の緩衝溶液を含み得る(それから本質的になる又はそれのみからなる)。特定の好適な溶出溶液は、約10mMの濃度のTris-HCl及び約0.5mMの濃度のEDTA二ナトリウム塩二水和物を含み、溶液は8~9のpHを有する。別の好適な溶出溶液は、DNase及びRNaseフリー水を含み得る。
【0136】
実施形態において、工程(iv)は、室温~100℃の温度、任意に65℃~90℃、任意に70℃~90℃の温度にて溶出バッファー中でフィルターをインキュベートすることを含み得る。理論に束縛されることを望むものではないが、本発明者は、室温よりも高い温度により、得られる短いDNAに対する長いDNAの比率及び/又は得られるDNAの収率が改善されると考える。実施例に、70℃以上の温度を用いた場合の特に有利な結果を実証する。実施形態において、工程(iv)は、80℃の温度にて溶出バッファー中でフィルターをインキュベートすることを含み得る。実施形態において、工程(iv)は、65℃の温度にて溶出バッファー中でフィルターをインキュベートすることを含み得る。本発明との関連では、室温は、10℃~20℃の温度と理解される。工程(iv)におけるインキュベーションは、30秒間~2分間、任意に1分間にわたり得る。
【0137】
核酸は、遠心分離によってフィルターから溶出バッファーへと溶出させることができ、遠心力により核酸がフィルターから溶出バッファーへと移動する。溶出バッファーがフィルターを通って流れ、核酸が捕捉されることで、溶出液が形成される。
【0138】
実施形態において、核酸は、2回の遠心分離工程によってフィルターから溶出バッファーへと溶出させることができる。かかる実施形態において、溶出バッファーが2回フィルターに適用され、流れることが理解される。溶離液は、遠心分離した後の(したがって単離核酸を含有する)第2の溶出バッファーを含み得る。
【0139】
遠心分離は、600g~8000gのg力をもたらすような速度であり得る。工程(iv)では、遠心分離は600g~2000g、任意に1000g~2000g、例えば1180gに相当する速度で行うことができる。遠心分離は、少なくとも2600gかつ8000g以下に相当する速度で達成され得る。実施形態において、遠心分離は4000g~5000g、任意に4722gに相当する速度で達成され得る。
【0140】
小さな核酸フラグメントに対する大きな核酸フラグメントの高い比率を生じさせる本方法の能力は、任意の遠心分離工程が、この比率にいかなる悪影響も与えることなく高いg力で達成され得ることを考えると、特に驚くべきことである。
【0141】
フィルターを、本明細書にて規定されるように核酸抽出カラムの構成要素として提供することができる。
【0142】
本発明の方法を、核酸が固定化されるフィルターを有する核酸抽出カラム、任意にスピンカラムを用いて実施する場合、溶出バッファーを核酸抽出カラムに添加し、これを続いて遠心分離して、溶出バッファーにより回収のために核酸をフィルターから溶出させることができる。
【0143】
次いで、回収した核酸を必要に応じて更に分析又は処理することができる。
【0144】
実施形態において、方法は、工程(iv)に従う核酸の単離後にシークエンシング工程を更に含む。
【0145】
本発明の第4の態様によると、核酸をサンプルから単離する方法であって、
(i)核酸を含むサンプルをアルコール及び塩(任意にアルコール及び塩を含む溶液)と接触させること(すなわち核酸、アルコール及び塩を含有する組成物を形成すること)であって、塩を任意に0.05M~10Mの濃度の溶液にて提供することと、
(ii)フィルターを、工程(i)の後に得られる核酸を含む組成物と接触させ、核酸が結合したフィルターを得ることと、
(iii)好ましくは、核酸が結合したフィルターを、アルコールを含む洗浄溶液で処理することと、
(iv)核酸の少なくとも一部をフィルターから溶出させることと、
なお、溶出は、70℃~90℃の温度にて溶出バッファー中でフィルターをインキュベートすることを含む;
を含む、方法が提供される。
【0146】
方法は、実施形態において、(v)フィルターからの核酸の2回目の溶出を行うことを更に含み得るが、例えば溶出は、10℃~90℃の温度にて溶出バッファー中でフィルターをインキュベートし、任意に続いてフィルターの遠心分離を行うことを含む。
【0147】
本明細書に記載される第3の態様の実施形態のそれぞれの方法条件及び構成要素の定義が、下記の本発明の第4の態様及び第5の態様にも当てはまることが理解される。
【0148】
このため、溶解工程は、本発明の第3の態様に従って説明されるように、工程(i)の前又は工程(i)と同時に行われ得る。このため、本明細書に記載される溶解工程の任意の定義又は溶解工程を含む実施形態は、本発明の第4の態様にも当てはまる。
【0149】
工程(i)では、アルコール及び塩を同時又は順次に核酸と接触させることができる。例えば、塩を塩溶液の形態で添加した後にアルコールを添加しても、又はその逆であってもよい。代替的には、塩及びアルコールを同じ組成物(例えば溶液)内の成分として提供し、組成物を核酸に添加しても、又はその逆であってもよい。溶解工程を行う場合、塩及びアルコールは溶解工程後に、例えば溶解工程の成分として既に存在していてもよい。
【0150】
工程(i)において提供される塩は、任意の好適な無機又は有機塩であり得る。塩はカオトロピック剤を含み得る(又は実施形態において、カオトロピック剤であり得る)。カオトロピック剤は、好ましくはグアニジニウム塩(例えばハロゲン化グアニジニウム、例えばグアニジニウム塩酸塩又はグアニジン塩酸塩としても知られる塩化グアニジニウム)を含むか、又はグアニジニウム塩である。グアニジニウム塩は、溶液中で0.05M~10M、好ましくは0.1M~3M、好ましくは0.1M~2M、より好ましくは0.5M~0.9M、最も好ましくは0.6M~0.7Mの範囲という核酸、アルコール及び塩を含有する組成物(工程(i)の後に得られる)中の濃度を有するように提供され得る。例としては、塩(例えばグアニジニウム塩)を、核酸を含有するサンプルに添加した後に上記の濃度をもたらす濃度を有する溶液として添加することができる。例えば、塩(例えばグアニジニウム塩)を1M~5M、例えばおよそ2Mの溶液として提供することができる。これは通例、下記のようにアルコール溶液として提供される。
【0151】
カオトロピック剤をC1~3アルカノール、例えばエタノール又はイソプロパノールに溶解してもよい。C1~3アルカノールは、少なくとも75%、任意に少なくとも95%のエタノール又はイソプロパノールを含み得る。
【0152】
工程(i)において提供されるアルコールは、C1~3アルカノール、例えばイソプロパノール又はエタノールを含み得る(又はそれであり得る)。C1~3アルカノールは、工程(i)により形成される、すなわち工程(ii)に供される核酸を含む組成物が少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%又は少なくとも40%(v/v)のアルコールを含有するような量で提供され得る。通例、工程(i)において形成される組成物のアルコール含有量は、約60%(v/v)のアルコールを超えない。C1~3アルカノールは、工程(i)により形成される、すなわち工程(ii)に供される核酸を含む組成物が25体積%~40体積%、任意に25体積%~30%体積%、例えば28%(v/v)を含有するような量で提供され得る。
【0153】
上記の方法では、方法は、好ましくは(必ずしもそれを要するわけではない)、洗浄工程(iii)を含む。すなわち、方法は工程(i)、(ii)及び(iv)を含み、好ましくは洗浄工程(iii)も含む。洗浄工程(iii)が、洗浄工程を省いた場合と比較して、より純粋な核酸物質を提供するのに役立つことが当業者には理解される。このため、洗浄工程(iii)を含むことが望ましい。洗浄溶液は通例、アルコールを含有し、これは上記のアルコールであり得る。洗浄溶液は塩を更に含み得る。塩は、第3の態様に関して定義されるものであり得る。例えば塩は、好ましくはハロゲン化リチウム又はハロゲン化グアニジニウム、例えば塩化リチウム又は塩化グアニジニウムである。洗浄溶液での処理は、不純物を除去し、実質的に純粋な核酸をフィルターに固定化したままにすることを意図する。次いで、フィルターを、任意に遠心分離によって液体から分離する。塩は、洗浄溶液中に0.05モル/リットル~10モル/リットル未満、好ましくは0.05モル/リットル~1モル/リットル未満、好ましくは0.1モル/リットル~0.9モル/リットル、より好ましくは0.6モル/リットル~0.9モル/リットル、更により好ましくは0.75モル/リットル~0.85モル/リットル、最も好ましくは約0.8モル/リットルの濃度で存在し得る。実施形態において、洗浄溶液は、塩を0.2M~0.9Mの濃度で含み得る。
【0154】
フィルターを複数の洗浄溶液で処理してもよい。第1の洗浄溶液は、アルコール及び任意に更には塩(例えばハロゲン化リチウム又はハロゲン化グアニジニウム、例えば塩化リチウム又は塩化グアニジニウム)を、任意に0.05M~10Mの濃度で含み得る。フィルターを各洗浄の後に、任意に遠心分離によって液体から分離することができることが理解される。
【0155】
第2の洗浄溶液を含む実施形態において、第2の洗浄液はアルコールを含有し得る。実施形態において、第2の洗浄液は、アルコール及び塩(例えばハロゲン化リチウム又はハロゲン化グアニジニウム、例えば塩化リチウム又は塩化グアニジニウム)を含み、これらの成分を第1の洗浄溶液とは異なる塩濃度で提供することができる。例えば、第1の洗浄溶液が0.05M~1Mの塩濃度を有する場合、実施形態において、第2の洗浄を0.05M~1Mではない、すなわち第1の洗浄溶液よりも低いか又は高い濃度で行うことができる。
【0156】
洗浄溶液中のアルコールは、C1~3アルカノール、例えばイソプロパノール又はエタノールを含み得る。C1~3アルカノールは、溶液中で少なくとも30%、少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%(v/v)であり得る。実施形態において、C1~3アルカノールは、75%~100%(v/v)のエタノールを含み得る。実施形態において、C1~3アルカノールは、90%(v/v)のエタノールを含み得る。
【0157】
溶出バッファーは、EDTA又はその塩の緩衝溶液を含み得る(又はそれから本質的になり得る又はそれからなり得る)。特定の好適な溶出溶液は、約10mMの濃度のTris-HCl及び約0.5mMの濃度のEDTA二ナトリウム塩二水和物を含み、溶液は8~9のpHを有する。別の好適な溶出溶液は、DNase及びRNaseフリー水を含む。
【0158】
実施形態において、工程(iv)のインキュベーション温度は75℃~85℃、任意に80℃であり得る。80℃が特に有利であることが発見された。工程(iv)におけるインキュベーションは、30秒間~2分間、任意に1分間にわたり得る。
【0159】
核酸は、遠心分離によってフィルターから溶出バッファーへと溶出させることができ、遠心力により核酸がフィルターから溶出バッファーへと移動する。溶出バッファーがフィルターを通って流れ、核酸が捕捉されることで、溶離液が形成される。
【0160】
実施形態において、核酸は、2回の遠心分離工程によってフィルターから溶出バッファーへと溶出させることができる。かかる実施形態において、溶出バッファーが2回フィルターに適用され、流れることが理解される。溶離液は、遠心分離した後の(したがって単離核酸を含有する)第2の溶出バッファーを含み得る。
【0161】
遠心分離は、600g~8000gのg力に相当する速度であり得る。工程(iii)では、遠心分離は600g~2000g、任意に1000g~2000g、例えばおよそ1180gに相当する速度であり得る。遠心分離は、少なくとも2000gかつ8000g以下に相当する速度で達成され得る。実施形態において、遠心分離は4000g~5000g、任意におよそ4722gに相当する速度で達成され得る。
【0162】
フィルターを、本明細書にて規定されるように核酸抽出カラムの構成要素として提供することができる。
【0163】
上記の態様の方法に使用されるフィルターは、シリカ又はシリカ系材料であり得る。シリカ又はシリカ系材料はガラス、好ましくはホウケイ酸塩ガラスであり得る。フィルターは、繊維状材料を含むことができ、好ましくはシリカ又はシリカ系材料の繊維を含む。フィルターは、好ましくはホウケイ酸塩ガラス繊維を含む。フィルターが繊維状シート又はメンブレンの形態であることが好ましく、繊維はホウケイ酸塩ガラスである。好ましい実施形態において、フィルター(すなわち工程(ii)において提供される)は、本発明の第1の態様又はその任意の実施形態に従って説明される任意のフィルターであり得る。
【0164】
本発明の方法を、核酸が固定化されるフィルターを備える核酸抽出カラム、任意にスピンカラムを用いて実施する場合、溶出バッファーを核酸抽出カラムに添加し、これを続いて遠心分離することができる。好ましい実施形態において、カラムは、本発明の第2の態様又はその実施形態に従って説明されるカラムであり得る。
【0165】
実施形態において、方法は、工程(iv)から得られる核酸の単離後にシークエンシング工程を更に含む。
【0166】
本発明の第5の態様によると、サンプルから単離された核酸を精製する方法であって、
(i)核酸をアルコール及び塩(任意にアルコール及び塩を含む溶液)と接触させること(すなわち核酸、アルコール及び塩を含有する組成物を得ること)であって、塩を任意に0.05M~10Mの濃度で、溶液中で提供することと、
(ii)フィルターを、工程(i)の後に得られる核酸を含む組成物と接触させ、核酸が結合したフィルターを得ることと、
(iii)好ましくは、核酸が結合したフィルターを、アルコール(及び任意に塩)を含む洗浄溶液で処理することと、
(iv)フィルターからの核酸の1回目の溶出を行うことと、
なお、溶出は、70℃~90℃の温度にて溶出バッファー中でフィルターをインキュベートし、任意に続いてフィルターの遠心分離を行うことを含む;
(v)フィルターからの核酸の2回目の溶出を行うことと、
なお、溶出は、90℃を超えない温度(例えば10℃~90℃)にて溶出バッファー中でフィルターをインキュベートし、続いてフィルターの遠心分離を行うことを含む;
を含む、方法が提供される。
【0167】
溶出工程については、遠心分離後に、溶出したバッファー(核酸を含有する)を更なる分析のために必要に応じて回収し、保管/使用することができることが理解される。
【0168】
工程(i)では、アルコール及び塩を同時又は順次に核酸と接触させることができる。例えば、塩を塩溶液の形態で添加した後にアルコールを添加しても、又はその逆であってもよい。代替的には、塩及びアルコールを同じ組成物(例えば溶液)内の成分として提供し、組成物を核酸に添加しても、又はその逆であってもよい。
【0169】
塩は、本発明の第3又は第4の態様に関して上に定義されるようなものであり得る。塩は例えば、本発明の第3又は第4の態様に関して本明細書に定義されるカオトロピック剤を含み得る。
【0170】
工程(i)及び(iii)におけるアルコールは、本発明の第3又は第4の態様に関して上に記載される対応するアルコールであり得る。
【0171】
上記の方法では、方法は、好ましくは(必ずしもそれを要するわけではない)、洗浄工程(iii)を含む。すなわち、方法は工程(i)、(ii)、(iv)及び(v)を含み、好ましくは洗浄工程(iii)も含む。洗浄工程(iii)が、洗浄工程を省いた場合と比較して、より純粋な核酸物質を提供するのに役立つことが当業者には理解される。このため、洗浄工程(iii)を含むことが望ましい。洗浄溶液は通例、アルコールを含有し、これは本発明の第3又は第4の態様に関して上に記載されるアルコールであり得る。
【0172】
洗浄溶液は塩を更に含み得る。塩は、第3又は第4の態様に関して定義されるものであり得る。例えば、塩は、好ましくはハロゲン化リチウム又はハロゲン化グアニジニウム、例えば塩化リチウム又は塩化グアニジニウムである。洗浄溶液での処理は、不純物を除去し、実質的に純粋な核酸をフィルターに固定化したままにすることを意図する。次いで、フィルターを、任意に遠心分離によって液体から分離する。塩は、洗浄溶液中に0.05モル/リットル~10モル/リットル未満、好ましくは0.05モル/リットル~1モル/リットル未満、好ましくは0.1モル/リットル~0.9モル/リットル、より好ましくは0.6モル/リットル~0.9モル/リットル、更により好ましくは0.75モル/リットル~0.85モル/リットル、最も好ましくは約0.8モル/リットルの濃度で存在し得る。実施形態において、洗浄溶液は、塩を0.2M~0.9Mの濃度で含み得る。
【0173】
本発明の第3及び第4の態様に関して上でより詳細に説明されるように、フィルターを工程(iii)において複数の洗浄溶液で処理してもよい。洗浄溶液は、第3又は第4の態様のいずれかに従って定義され得る。
【0174】
本発明の第5の態様の精製方法は、サンプルからの核酸の抽出と精製とを有利に組み合わせたものである。これにより、当該技術分野で一般に知られるような別個の精製工程の必要がなくなり、実質的に純粋な核酸の調製に必要とされる時間が短縮される。
【0175】
使用の容易さは、必要とされる手作業の工程が少なくなることでも改善される。手作業の工程の減少は、長い核酸が破壊される可能性を下げるのにも有利であり得る。
【0176】
工程(v)のインキュベーション温度は、好ましくは10℃~90℃であり、実施形態において、工程(iv)のインキュベーション温度よりも低い。実施形態において、工程(v)のインキュベーション温度は、10℃~65℃、任意に20℃~65℃、任意に室温であり得る。実施形態において、工程(iv)における温度は、75℃~85℃、任意に80℃であり得る。90℃を超えるインキュベーション温度が核酸の顕著な変性を引き起こし得ることが理解される。
【0177】
この分野との関連で、精製という用語は概して、例えば溶液又はゲル切片からの核酸の精製における核酸サンプルからの不純物の除去を説明するために使用される。有利には、本発明者は、上記の態様の方法を用いて、核酸の小さなフラグメントをフィルター装置から選択的に枯渇させることによって核酸を「浄化」し得ることを見出した。このようにして、より大きな割合の長い核酸フラグメントがフィルター装置上に保持され、これらの長い核酸フラグメントを続いて溶出させる。理論に束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、溶出工程に用いられる温度の改善を発見し、1回目の溶出工程の温度が小さなフラグメントを枯渇させるのに役立つと考える。
【0178】
本明細書に記載される本発明の方法の実施形態において、1.3kb~10kbの長さを有するサンプル中の核酸フラグメントの数で除算した10kb~165.5kbの長さを有する溶出工程後に得られるサンプル中の核酸フラグメントの数(すなわち比率として)は少なくとも1.5、例えば少なくとも1.6及び/又は最大5、例えば1.6~3.2である。
【0179】
本発明の別の態様によると、核酸をサンプルから単離するためのキットであって、
(i)第1の態様によるフィルターと、
(ii)塩(好ましくはカオトロピック剤、例えばグアニジニウム塩)と、
(iii)任意にリチウム塩を含む洗浄剤と、
(iii)任意に、溶出バッファーと、
任意に溶解剤と、
を含む、キットが提供される。
【0180】
溶出バッファーは、EDTA又はその塩の緩衝溶液を含み得る(それから本質的になる又はそれのみからなる)。特定の好適な溶出溶液は、約10mMの濃度のTris-HCl及び約0.5mMの濃度のEDTA二ナトリウム塩二水和物を含み、溶液は8~9のpHを有する。別の好適な溶出溶液は、DNase及びRNaseフリー水を含む。
【0181】
カオトロピック剤は、グアニジニウム塩酸塩又はグアニジン塩酸塩としても知られる塩化グアニジニウムを含み得る。
【0182】
リチウム塩は、本明細書の他の部分に記載されるような任意のリチウム塩であり得る。塩は、塩化リチウムであるのが好ましい。
【0183】
フィルターを、本明細書にて規定されるように核酸抽出カラムの構成要素として提供することができる。作用物質は、本明細書にて規定される他の態様のいずれかに関して記載されるようなものであり得る。
【実施例】
【0184】
実験方法及び性能分析
実施例1
抽出されたDNAの比率
本発明者は、DNA単離プロトコルにおいて得られる短いDNAに対する長いDNAの比率に対する本発明についてのフィルターの影響を研究することにした。本発明のフィルターの影響を第1の態様に従わないフィルターと比較した。
【0185】
本実施例は、その他の点では本発明の第3の態様に従う方法を用いて行った。簡潔に述べると、白血球をウマ血液の1mlサンプルから単離し、以下の手順に従った:
(a)氷冷高張溶液をサンプルに添加し、サンプルを室温で5分間~10分間インキュベートして赤血球を破壊する;
(b)サンプルを250×Gの速度で3分間遠心分離し、ペレット(白血球を含有する)を乱すことなく上清(不要な赤血球物質を含有する)を捨てる;
(c)サンプル(白血球物質を含有するペレット)を0.8M LiCl、0.5%SDS、プロテイナーゼK及び10mM EDTAを含む溶解溶液と接触させ、ピペッティングにより混合してサンプルを溶解させる;
(d)サンプルをカオトロピック剤GuHClの2M溶液と接触させ、ボルテックスする;
(e)75%イソプロパノールを添加し、ボルテックスする;
(f)サンプルを核酸抽出カラム、本実施形態においてフィルターを備えるスピンカラムに移す;
(g)4722×gで1分間スピンする;
(h)フロースルーを捨てる;
(i)LiClと50%エタノールとを含む洗浄溶液をスピンカラムに添加し、4722gで1分間遠心分離する。フロースルーを捨てる;
(j)90%エタノールをスピンカラムに添加し、14462×gで3分間遠心分離する。フロースルーを捨てる;
(k)スピンカラムを14462×gで1分間遠心分離する。フロースルーを捨てる;
(l)溶出バッファー(10mM Tris HCL、0.5mM EDTA)をスピンカラムに添加し、室温で1分間インキュベートする。1180gで2分間溶出させて画分Aを得る;並びに、
(m)任意に(l)を繰り返し、画分Bを得る。
【0186】
工程(a)及び(b)は、赤血球を全血サンプルから取り出すために用いられる任意の工程である。これは、本質的にサンプルから白血球をペレット化するように作用する。次いで、白血球を工程(c)において溶解させる。当業者には理解されるように、サンプルの溶解が必要とされない場合、工程(c)も任意である。
【0187】
本発明への使用に好適な多孔質領域を表1に詳述する。表1の多孔質領域は全て、GE Life Sciences(USA)から入手可能である。例えばフィルターシートの形態の他の好適な多孔質領域が、当業者には商業的に入手可能である。
【0188】
【0189】
各々のフィルターは、必要とされる大きさに切断することができ、ホウケイ酸塩ガラスから形成される。
【0190】
各フィルターを形成するために、様々な異なる多孔質領域の組合せを試験した(各多孔質領域に関する情報については表1、試験したフィルターに関する情報については表2を参照されたい)。簡潔に述べると、各々の多孔質領域をスピンカラムへの挿入のために直径0.38cm2に切断した。多孔質領域がメンブレン形態であることから、各フィルターを形成するために、Purell HP570R(Lyondellbasell,Milton Keynes,UK)から形成されるOリングを用いて多孔質領域を組み合わせ、フィルターの周囲を共に固定した。
【0191】
使用される名称は、使用時のサンプルの接触に関する各多孔質領域の位置決めを示す。このため、DFフィルターについては、D多孔質領域が「最上部」の多孔質領域、すなわちスピンカラムの開口端に最も近い多孔質領域、したがって使用時にサンプルに最初に接触する多孔質領域であり、F多孔質領域はD多孔質領域の下にある。F2Dフィルターについては、F多孔質領域が「最上部」の多孔質領域であり、2D多孔質領域が下にある。
【0192】
本実験のために、F多孔質領域をPorex Corporation(Aachen,Germany)から入手し、D多孔質領域をWhatman(GE Life Sciences(USA))から入手した。しかしながら、同等の多孔質領域が多数の他の商業的供給業者から入手可能であることが当業者には理解される。
【0193】
【0194】
図1に、上記のプロトコルを用いて得られた短いDNAフラグメントに対する長いDNAフラグメントの比率に対する表2のフィルターの影響を示す。
【0195】
溶出工程(l)において抽出された特定のサイズのDNA分子の数を、FEMTO Pulse並列キャピラリー電気泳動装置(Advanced Analytical Technologies, Inc.,Milton Keynes,UK)を用いて分析した。この装置により、種々の群のDNAスメアについてナノモル/Lが算出される。
【0196】
分析により、スメア範囲(brackets):1.3kb~10kb及び10kb~165.5kbについてのDNAフラグメントの数が算出された。次いで、10kb~165.5kb範囲を1.3kb~10kb範囲で除算し、
図1に示す比率を得た。したがって、比率が「10kbカットオフ」に関することが理解される。二連サンプルによる平均値を標準偏差と共に示す。
【0197】
これらの比率は、特定のサイズの分子の相対存在量の指標となる。1.3kb及び165.5kbのサイズを、これらがFemtoPulseラダーのより低い及びより高いマーカーとなることから選んだ。10kbのカットオフを、そのサイズまでの分子がロングリードシークエンシングの読出しで極めて圧倒的であり得ることから選んだ。10kb~165.5kbの群を、非常に長いとみなされる50kb~165.5kbのフラグメントと共に外部検証されるロングリードシークエンシングの通常の範囲(25kb~35kb)をカバーすることから選んだ。
【0198】
当業者には理解されるように、1を上回る比率は、より長いDNAフラグメントの数がより短いDNAフラグメントと比較して多いことを示す。1未満の比率は、より短いDNAフラグメントの数がより長いDNAフラグメントと比較して多いことを示す。
【0199】
図1Aに、本発明のフィルターDF、すなわちより小さな公称孔径を有する多孔質領域の上により大きな公称孔径を有する多孔質領域を有するフィルターと比較した、比較用フィルター4F及び2Fについて得られた比率を示す。この図から、DFフィルターを使用することで、より短いDNAフラグメントに対するより長いDNAフラグメントの比率が増加したことが明らかに示される(4Fの1.10及び2Fの0.76と比較して1.91)。
【0200】
図1Bに、本発明のフィルターDFと比較した、比較用フィルターFDについて得られた比率を示す。
図1Aと同様、DFフィルターを用いて得られた、より短いDNAフラグメントに対するより長いDNAフラグメントの比率(1.96)は、FDフィルターについて得られた比率(1.10)よりも大幅に大きかった。
【0201】
図1Cに、本発明のフィルター2DF及びDFDと比較した、比較用フィルター2F及びF2Dについて得られた比率を示す。2DF(2.84)及びDFD(3.03)の両方が、比較用フィルター(2Fの1.17及びF2Dの0.91)よりも大幅に大きな比率をもたらし、DFDにより最大の比率が得られた。
【0202】
これらのデータから、本発明のフィルターが、核酸単離プロトコルに使用した場合に、より短い核酸フラグメントに対するより長い核酸フラグメントの比率の改善をもたらすことが実証される。全てのデータは、65℃(工程lにおいて指定される室温ではない)で1分間のプレインキュベーション後の2回のうち1回目の溶出によるものである。
【0203】
実施例2
DNeasyフィルターとの抽出されたDNAの比率及び長さの比較
次いで、本発明のフィルター、本実施形態において実施例1に記載のDFDフィルター及び実施例1に記載の方法を、DNeasy DNA血液及び組織抽出プロトコル及びキット(Qiagen,Germantown,MD,US)の既知のフィルター及び方法と比較した。実施例1と同様、FEMTO Pulse機器を用いてサンプルを分析した。
【0204】
サンプルは、1mlのウマ血液から単離された白血球であった。
【0205】
本発明者は、本発明のフィルターが、フィルターと共に用いられるプロトコルに関わらず、より長いDNAの単離の改善をもたらすかを決定することを望んだ。結果を
図2に示す。これらの結果は、溶出液中の単離された短いDNAに対する長いDNAの比率(
図2A及び
図2C)及び単離されたDNAフラグメントの平均塩基対長(
図2B及び
図2D)を示す。この分析については、比率の「カットオフ」は20KBであった。すなわち、この場合、20kb~165.5kb範囲を1.3kb~20kb範囲で除算し、示される比率を得た。平均塩基対長は、20kb~165.5kb範囲内の単離DNA集団について算出した。
【0206】
全てのプロトコルについて、溶出工程は、室温(
図2A及び
図2B)又は80℃(
図2C及び
図2D)のいずれかの溶出前インキュベーション工程を用いて行った。2回目の溶出の結果を提示する。
【0207】
x表示は、以下の条件を定義する:
FM/FM=実施例1による方法/DFDフィルター
DN/DN=DNeasyプロトコル及びキットの試薬/キットのDNeasyフィルター
DN/FM=DNeasyプロトコル及びキットの試薬/DFDフィルター
【0208】
結果から、使用したインキュベーション温度又はプロトコル及び試薬に関わらず、DFDフィルターが、DNeasyフィルターと比較して、単離された短いDNAフラグメントに対する長いDNAフラグメントの比率の改善及び平均塩基対長の増加をもたらしたことが示される。これにより、本発明のフィルターが様々な単離方法による結果の改善をもたらすことが示される。実施例1に例示されるようにDFDフィルターを本発明の方法と共に使用した場合、比率及び平均塩基対長が更に改善された。
【0209】
全てのフィルター及び方法について、得られた比率及び平均塩基対長は、室温と比較して80℃の溶出前インキュベーション温度を用いることで改善された。
【0210】
実施例3
条件
次いで、本プロトコルにおける異なるバッファーの影響を考察した。
図3に、単離されるDNAの比率に対する提供される塩化リチウムの影響を示す。この図については、DNA抽出プロトコルを、0M LiCl又は0.8M LiClのいずれかの濃度を工程(c)の溶液に用い、工程(l)におけるインキュベーションを65℃で行った以外は実施例1のプロトコルに従い、ウマ血液の1mlサンプルに対して行った。このプロトコルでは、4Fフィルター(すなわち比較用フィルター)を使用した。このようにして、方法単独の影響を評価することができた。
【0211】
【0212】
図3から、LiClを本発明の方法の溶液に加えることで、得られる短いDNAフラグメントに対する長いDNAフラグメントの比率が増加することが実証される。これにより、本発明の方法が短いDNAフラグメントに対する長いDNAフラグメントの比率の改善を、本発明のフィルターとは独立してもたらし得ることが実証される。全てのデータが二連サンプル(1mlのウマ血液に由来する白血球)によるものであり、65℃で1分間のプレインキュベーション後の10kbのカットオフでの1回目の溶出による結果を示す。
【0213】
図4に、単離されるDNAの比率に対する種々のアルコール及びアルコールのパーセンテージの影響を示す。
図3と同様、この図については、DNA抽出プロトコルを、インキュベーション工程(l)を65℃で行った以外は実施例1のプロトコルに従い、ウマ血液の1mlサンプルに対して行った。また、75%イソプロパノール、75%エタノール、100%イソプロパノール及び100%エタノールをプロトコルの工程(e)において試験した。比率は、
図1と同じカットオフを用いて決定した。提供されるアルコールが100%イソプロパノール又は100%エタノールである場合、得られる濾過に供した組成物中のアルコールの濃度は、37%(v/v)であった。使用したアルコールが75%イソプロパノール又は75%エタノールである場合、得られる濾過に供した核酸組成物中のアルコールの濃度は、約28.57体積%であった。
【0214】
75%エタノールの使用は、最大の比率(1.26)をもたらし、これに75%イソプロパノール(1.23)、100%エタノール(1.03)及び100%イソプロパノール(0.57)が続いた。これにより、本発明の方法のパラメーターが本発明のフィルターとは独立して得られる比率に影響を及ぼすことも実証される。全てのデータが二連サンプル(1mlのウマ血液に由来する白血球)によるものであり、65℃で1分間のプレインキュベーション後の10kbのカットオフでの1回目の溶出による結果を示す。
【0215】
実施例4
温度
次いで、DNAを単離する方法の溶出工程におけるインキュベーション温度の影響を考察した。
【0216】
実施例1に詳述するプロトコルを、長いフラグメントと短いフラグメントとの既知の混合物のDNAの3μgのサンプルに対して用いた。このようにして、より長いフラグメントの保持の改善の効率をインプットサンプル中のDNAの比率と直接比較することができた。使用したフィルターは、DFDフィルターであった。
【0217】
本実施例では、2回の溶出工程を行った。各溶出工程は、
図5に示す温度で1分間の溶出前インキュベーションを含んでいた。次いで、2回目の溶出液中のDNA分子の数を、FEMTO Pulse並列キャピラリー電気泳動装置を用いて分析した。実施例2に記載のように20KBのカットオフを用いて比率を算出した。
【0218】
図5に得られた比率を示す。本発明による方法では、全ての溶出前温度でインプットと比較して短いDNAに対する長いDNAの比率が改善されたが、短いDNAに対する長いDNAの比率の増加は、80℃の溶出前温度を用いた場合に最も大きかった。
【0219】
次いで、80℃の溶出前温度の影響を本発明のフィルター及び比較用フィルターについて試験した。結果を
図6に示す。これらのデータについては、実施例1による方法をウマ血液の1mlサンプルに由来する白血球に対して行った。また、それぞれ65℃又は80℃のいずれかで1分間の溶出前インキュベーションを伴う2回の溶出工程を行った。次いで、2回目の溶出液のDNA含有量を、FEMTO Pulse並列キャピラリー電気泳動装置を用いて分析した。20kbのカットオフを用いた。
【0220】
(A)は4Fフィルターについての比率を示し、(B)は2Fフィルターについての比率を示し、(C)はDFフィルターについての比率を示し、(D)は2DFフィルターについての比率を示し、(E)はF2Dフィルターについての比率を示し、(F)はDFDフィルターについての比率を示す。全てのフィルターについて、80℃のインキュベーション工程が得られるより長いDNAフラグメントの比率を大幅に増加させ、溶出前のインキュベーションに上昇させた温度を用いる本発明の方法が、使用するフィルターに関わらず改善された結果をもたらすことが示された。この影響は、特にDFDフィルターで顕著である(F)。
【0221】
図7に、80℃での2回の溶出前(pre-eluate)インキュベーション後に種々のフィルターを用いて2回目の溶出液から得られる短いDNAに対する長いDNAの比率を示す。このデータについては40kbのカットオフを用いた。すなわち、40kb~165.5kb範囲を1.3kb~40kb範囲で除算することによって比率を算出した。カットオフ比率を増加させることは、どのフィルターが特に長いDNAフラグメントの単離に最も有用であるかを示すのに役立つ。その他の点では実施例1の方法を用いた。
【0222】
図7から、本発明のフィルターであるDFD(1.48)及び2DF(1.16)が、比較用フィルター4F(0.62)及びF2D(0.67)と比較して比率の増加をもたらしたことが示される。これにより、本発明のフィルターが、
図1に示されるように80℃の温度及びより低い65℃の温度で比較用フィルターに対して比率の改善をもたらすことが実証される。
【0223】
実施例5
核酸の精製における本発明の方法の有用性
得られる長いDNAフラグメントの割合の改善に加えて、或る特定の、例えば10kbのカットオフ下でDNAフラグメントを枯渇させ得ることが有用である。これにより、ONT及びPacBio等のロングリードシークエンシング技術のためのより長い核酸の最適な抽出にあまり適切でない、既知の核酸単離技術によるライブラリーサンプル又はDNA抽出物等のDNAサンプルの純度及び/又は有用性が更に改善される。
【0224】
既知のサイズ選択SPRI(固相可逆的固定化ビーズ)ビーズプロトコル(Agencourt AMPure XPビーズ、Beckman Coultier)と比較した短いDNAフラグメントを除外する本プロトコル及びフィルターの能力を考察した。SPRIビーズは、最大2kbの枯渇のためのDNAの抽出後の迅速なサイズ選択プロセスとして使用することがONTによって推奨される。
【0225】
SPRIプロトコルは、以下の通りであった:50μl中3μgのDNAを35μlのビーズ(10mM Tris-HCl、1mM EDTA、1.6M NaCl、11%PEG 8000中)と混合し、溶液を室温で10分間上下に反転させる。次いで、これを数秒間にわたって簡単にスピンし、磁石上でペレット化する。上清をピペットで取り、ペレットを200μlの70%EtOHで洗浄する。EtOHを除去した後、EtOH洗浄を繰り返し、ペレットを乾燥させて残留EtOHを全て除去する。ペレットを50μlのTEバッファー(10mM Tris-HCl、pH8、1mM EDTA)に再懸濁し、50℃で1分間及び室温で5分間インキュベートする。次いで、ビーズを磁石上でペレット化し、上清を下流で使用する。
【0226】
DNAを精製する様々なフィルターの能力を、0.7×SPRIサイズ選択システムと比較した。低分子量DNAと高分子量DNAとの3μgの混合物をインプットとして使用した。簡潔に述べると、最大100μlの容量の溶出バッファー中の3μgのDNAを、0.8M LiCl、0.5%SDS、プロテイナーゼK及び10mM EDTAを含む150μlの溶液と、カオトロピック剤GuHCl BSの175μlの2M溶液と、200μlの75%イソプロパノールとのプレミックス溶液と混合し、これを即座に標準スピンプロトコルに従ってカラムにロードした。各溶出の前に(プロトコルは2回の溶出を有する)、溶出バッファーを80℃で1分間インキュベートした。2回目の溶出液を、20kbのカットオフを用いて分析した。
図8に示されるように、全てのフィルターがSPRIよりも良好な性能を示し、DFDフィルターが2.03という最も高い比率をもたらした。溶出前インキュベーション温度の上昇は、マトリックスからのより小さな分子の脱離を促進することによってサイズ選択、ひいては精製の改善に寄与し、したがってそれらはより容易に枯渇され得る。
【0227】
したがって、本発明の方法は、核酸の単離及び/又は精製に用いることができる。核酸サンプルの精製に用いる場合、2回目の溶出を用いることが有益であり得る。これは、理論に束縛されることを望むものではないが、1回目の溶出が、下流のシークエンシング用途にあまり適切でない、より小さな核酸フラグメントを含有する可能性が高いと本発明者が考えるためである。
【0228】
実施例6
シークエンシング分析
実施例1に従うプロトコルを、スピンカラムにおいてDFDフィルター装置を用いて行い、DNAを単離した(溶出液Bを使用する)。
【0229】
次いで、LSK109ライブラリーキット(Oxford Nanopore Technologies,Oxford,UK)を用いて、各DNAセットからシークエンシングライブラリーを作製した。LSK109の方法は、DNA末端の修復及びdAテーリングを引き起こす。次いで、LSK109キットで供給されるシークエンシングアダプターを、作製された末端にライゲートする。その後、MinIONフローセル(Oxford Nanopore Technologies)にDNAライブラリーをロードし、ライブラリーをシークエンシングした。
【0230】
プロトコルの指示によると、MinIONフローセルを用いたシークエンシングは、6時間実行され得る。しかしながら、フローセルがおよそ48時間の実行時間を有することから、フローセルをこの時間にわたって実行し続けることができる。これにより、バイオインフォマティクス分析のための核酸配列がより多く得られる。
【0231】
このため、MinIONフローセルを用いたシークエンシングを48時間行い、最初の6時間及び48時間のシークエンシング概要を、Nanoplotソフトウェア(https://pypi.org/project/NanoPlot/)によって分析し、値を得た。Qスコアは、個々のベースコール精度の尺度を表し、ONTシークエンシングでは、通常はおよそ10である。7のカットオフを分析に使用することがONTによって推奨される。
【0232】
6時間のシークエンシング後に、統計値は平均長さ:27080bp及びN50:47606bpであり、48時間のシークエンシング後に平均長さ:30096bp及びN50:49590bpであった。
【0233】
当業者には理解されるように、N50は、連結性の点でのアセンブリ品質を規定する。N50は、全ゲノム長の50%での最も短いコンティグの配列長として規定される。
【0234】
Oxford Nanopore Technologiesは概して、DNA抽出とライブラリー作製との間に、そうでなければMinIonフローセルに負担をかける2kb未満のDNA鎖を除去するために、SPRIビーズ工程を用いることを推奨する。しかしながら、この工程は、2DF又はDFDフィルターを用いる本方法には、抽出時にDNAを浄化及びサイズ選択する2DF又はDFDフィルターの能力から必要でなかった。
【0235】
更なるシークエンシング分析を、2mlのウマ血液からペレット化した白血球サンプルに対して行った。これらの実験については、実施例1に従うプロトコル(溶出液Bを使用する)を用いてDNAを並行して抽出した。2DF又はDFDフィルター装置のいずれかを使用した。
【0236】
LSK109ライブラリーキットを用いてシークエンシングライブラリーを作製し(抽出後SPRI工程を含まなかった)、続いて60μlの最終容量の20μlのDNA(製造業者の指示に従う)又は60μlの最終容量の47μlのDNAのシークエンシングを、MinIonフローセルを用いて6時間又は48時間のいずれかにわたって行った。
【0237】
結果を下記表3に示す。
【0238】
【0239】
DFDフィルターを用いて得られたDNAは、20μlのインプットを分析した場合に、2DFの約40kbに対して約42kbと、2DFフィルターよりも大きいN50を有していた。47μlのインプットについては、N50は、6時間及び48時間の実行で約48kb及び約50kbまで上がる。
【0240】
これらの結果から、核酸を単離及び精製する本発明の方法の使用が、例えばシークエンシング用途について下流の結果の改善をもたらし得ることが示される。本発明者は、これがサンプル中の短いDNAフラグメントに対する長いDNAフラグメントの比率の増加によると考える。加えて、本発明者は、比率の改善により、より小さなDNAフラグメントによる干渉がより少なく、増加した量のDNAをシークエンシングのインプットに用いることができることを見出した。これがシークエンシング結果の改善をもたらす。
【0241】
参考文献
Cavalier, et al. 2015 - Cavelier L, Ameur A, Haeggqvist S, Hoeijer I, Cahill N, Olsson-Stroemberg U, Hermanson M. (2015) Clonal distribution of BCR-ABL1 mutations and splice isoforms by single-molecule long-read RNA sequencing. BMC Cancer. 15:45. doi: 10.1186/s12885-015-1046-y.
【国際調査報告】