(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-28
(54)【発明の名称】移植診断および治療のための血管形成デバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61L 27/54 20060101AFI20220318BHJP
A61L 27/52 20060101ALI20220318BHJP
A61L 27/38 20060101ALI20220318BHJP
A61L 27/16 20060101ALI20220318BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20220318BHJP
A61L 27/20 20060101ALI20220318BHJP
A61L 27/22 20060101ALI20220318BHJP
A61K 9/00 20060101ALI20220318BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220318BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20220318BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220318BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20220318BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220318BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20220318BHJP
A61K 35/39 20150101ALI20220318BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220318BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20220318BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220318BHJP
A61M 37/00 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
A61L27/54
A61L27/52
A61L27/38
A61L27/38 100
A61L27/16
A61L27/18
A61L27/20
A61L27/22
A61K9/00
A61K47/36
A61K47/34
A61K47/32
A61K47/42
A61K47/38
A61K35/12
A61K35/39
A61P3/10
A61K49/00
A61K45/00
A61M37/00 550
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547360
(86)(22)【出願日】2020-02-17
(85)【翻訳文提出日】2021-09-29
(86)【国際出願番号】 US2020018511
(87)【国際公開番号】W WO2020168327
(87)【国際公開日】2020-08-20
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】510166102
【氏名又は名称】ウィリアム マーシュ ライス ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】WILLIAM MARSH RICE UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】6100 Main Street,Houston,TX 77005, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ヴェイセ オミド
(72)【発明者】
【氏名】グリゴリアン バグラット
(72)【発明者】
【氏名】サザール ダニエル ワレン
(72)【発明者】
【氏名】パークハイデ シアヴァシュ
(72)【発明者】
【氏名】ミラー ジョーダン
(72)【発明者】
【氏名】ムケルジー サディップ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4C084
4C085
4C087
4C267
【Fターム(参考)】
4C076AA94
4C076AA95
4C076BB32
4C076CC09
4C076CC16
4C076EE02A
4C076EE23A
4C076EE31A
4C076EE36A
4C076EE37A
4C076EE42A
4C076FF31
4C076FF68
4C081AB11
4C081AB35
4C081AB38
4C081BA13
4C081CA021
4C081CA101
4C081CA161
4C081CA181
4C081CD021
4C081CD031
4C081CD041
4C081CD061
4C081CD071
4C081CD081
4C081CD151
4C081CD29
4C081CD34
4C081CE02
4C081DC01
4C081DC04
4C084AA17
4C084MA67
4C084NA14
4C085JJ11
4C085KA40
4C085LL07
4C085LL15
4C085LL18
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB51
4C267AA74
4C267BB05
4C267BB13
4C267BB62
4C267CC04
4C267FF10
4C267GG02
4C267GG11
4C267GG12
4C267GG43
(57)【要約】
本開示は、血管形成デバイスのための新しいデバイスおよび方法、ならびに移植された診断および治療のための方法を記載する。本開示は、特定の実施形態では、分解性シェルおよび非分解性コアを含むデバイスを提供する。特定の実施形態では、非分解性コアは、カプセル化された治療用細胞および/またはバイオセンサーを含むことができ、分解性シェルは、血管増殖のためのスキャフォールドとして機能し、細胞および/またはバイオセンサーへの血流を増強する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分解性ポリマーを含む分解性外側ハウジングと、非分解性ポリマーを含む内側非分解性部分と
を含む、埋め込み型デバイス。
【請求項2】
前記分解性外側ハウジングが、前記埋め込み型デバイスの血管形成を促進するパターン化されたアーキテクチャを含む、請求項1に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項3】
前記非分解性部分が、天然ヒドロゲルまたは合成ヒドロゲルを含む、請求項1または2に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項4】
前記合成ヒドロゲルが、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEDGA)である、請求項3に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項5】
ゲルメタクリレート(GelMA)をさらに含む、請求項3または4に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項6】
前記ヒドロゲルが、80%超の水を含む、請求項3~5のいずれか一項に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項7】
前記ヒドロゲルが、約10%のGelMAと、約3.4kDaの分子量を有する約3~4%のPEDGAとを含む、請求項4~6のいずれか一項に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項8】
前記ヒドロゲルが、アクリレート-(PEG-タンパク質)
n-PEG-アクリレートのモノマーを含み、任意選択的に、PEGが2~35kDaであり、タンパク質が100Da超であり、総MWが少なくとも500kDaまたはn=2~500繰り返し単位である、請求項1~3のいずれか一項に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項9】
前記ヒドロゲルが、アクリルアミド、ビニルスルホン、ノルボルネン置換アクリレート基、アルギネート、絹、デキストラン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、セルロース、ヘパリン、ポリ(カプロラクトン)、またはそれらの多成分バージョンを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項10】
前記内側非分解性部分に、細胞、薬物(すなわち、小分子治療薬または生物学的治療薬(ペプチド、抗体など))、または結晶が負荷されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項11】
前記細胞が、異種組織由来の細胞、死体由来の細胞、幹細胞、幹細胞に由来する細胞、細胞株由来の細胞、初代細胞、再プログラム化された細胞、再プログラム化された幹細胞、再プログラム化された幹細胞に由来する細胞、遺伝子操作された細胞、またはそれらの組み合わせを含む、請求項10に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項12】
前記細胞が、ヒト細胞である、請求項10に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項13】
前記細胞が、インスリン産生細胞である、請求項10に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項14】
前記細胞が、膵島細胞である、請求項10に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項15】
前記分解性外側ハウジングまたは内側非分解性部分に、CaO
2などの酸素放出化合物が負荷されている、請求項1~14のいずれか一項に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項16】
前記分解性外側ハウジングまたは内側非分解性部分に、薬物(すなわち、小分子治療薬または生物学的治療薬(ペプチド、抗体など))、結晶(VEGFなどの、非結晶化、結晶化、および/またはカプセル化された血管新生促進因子を有するもの)、血管新生促進細胞などの細胞(内皮細胞、間葉系幹細胞、内皮前駆細胞、血管新生促進マクロファージなど)が負荷されている、請求項1~15のいずれか一項に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項17】
前記内側非分解性部分に、バイオセンサーが負荷されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項18】
前記バイオセンサーが、他の可能な診断指標の中でも、血中酸素、血糖、腫瘍抗原、コレステロール、クレアチニン、ヘモグロビンA1C、インスリン、グルカゴン、ホルモンレベル、小分子薬物のレベル、DNA、RNA、サイトカイン、循環腫瘍細胞を測定することができる、請求項17に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項19】
前記分解性外側ハウジングおよび/または前記内側非分解性部分が、パターン化されている、例えば、前記内側非分解性部分がパターン化されて、一度移植されると血管形成が可能になる、請求項1~18のいずれか一項に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項20】
前記パターン化された部分が、直径が数十から数百マイクロメートルの範囲のサイズの複数の分岐血管などの血管の幾何学的形状を含み、流体が流れる際の摩擦抵抗および乱流を最小限に抑えるために実質的に滑らかな内壁を有する、請求項19に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項21】
前記デバイスが、複数の層のヒドロゲルを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項22】
対象の状態(state)または状態(condition)を監視する方法であって、請求項1に記載のデバイスを、前記対象に移植することを含み、前記デバイスが、センサーまたはバイオセンサーを含む、方法。
【請求項23】
対象において医学的状態または疾患を治療する方法であって、請求項1に記載のデバイスを、前記対象に移植することを含み、デバイスが、治療剤を含む、方法。
【請求項24】
対象において血管形成デバイスを作製する方法であって、請求項1に記載のデバイスを、前記対象に移植することを含む、方法。
【請求項25】
対象において移植片または補綴物の周囲に血管形成組織を作製する方法であって、請求項1に記載のデバイスを、前記対象に移植することを含み、前記移植片または補綴物が神経インターフェースデバイスである、方法。
【請求項26】
対象において移植片または補綴物の周囲に増量組織を作製する方法であって、請求項1に記載のデバイスを、前記対象に移植することを含み、前記移植片または補綴物が乳房インプラントまたは組織充填材である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
優先権の主張
この出願は、2019年2月15日に出願された米国仮出願シリアル番号第62/806,496号に優先権の利益を主張し、その内容の全体は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
政府支援条項
本発明は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)によって授与された助成金番号第R01DK120459号の下で政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
A.分野
この開示は、生物学、医学、医療機器および免疫学の分野に関する。より具体的には、それは、移植診断および治療としてのそれらの使用のための血管形成デバイスおよび方法に関する。
【背景技術】
【0004】
B.関連技術
組織工学の分野は、細胞、生体材料、ならびに生化学的および物理化学的な要因の組み合わせを組み込むことによって、人間の病気または傷害からの再生を促進する技術およびプロセスの開発に対する大きな臨床的ニーズを満たすことを目的としている。実際に、皮膚、角膜、および膀胱などの埋め込み型血管形成構造を構築するために、過去数十年間にわたって、膨大な研究がなされてきた。しかしながら、厚い構築物において栄養素を供給し、老廃物を除去するために血管系が必要であるため、機能的で生理学的に適切な組織を得ることは、この分野では依然として大きな課題である。この課題は、拡散輸送の限界に起因し得、栄養素への不十分なアクセスによって壊死細胞がもたらされる。さらに、制御された形状とアーキテクチャを備えた構築物を得るために、細胞およびマトリックスの不均一なパターンを再現する能力の欠如は、臓器置換への進歩を妨げてきた。
【0005】
操作組織への栄養素の輸送を促進するために、いくつかのアプローチが研究されてきた。最も一般的なアプローチの1つは、様々な材料処理ステップ(臨界点乾燥、ガス発泡と塩浸出、またはエレクトロスピニングなど)を利用して、組織培養のためにインビトロで灌流することができるマクロポーラス構造を形成する。これらのプロセスで、天然組織の機械的順応性が合致し、栄養素および酸素の送達のための高表面積を有する機能性組織を構築するための鋳型が得られたが、これらの構築物が、血管網ではなく、開口的で多孔質の空隙容量を含むことを考慮すると、スキャフォールドアーキテクチャの正確な空間的制御は、これらの方法論では容易に達成されない。さらに、これらの操作組織の製作中に含まれる処理ステップのほとんどは、細胞毒性のある試薬または条件を必要とし、生細胞の存在下でのそれらの使用をさらに制限する。
【0006】
さらに、針ベースのモデリング技術を利用して、天然材料および合成材料による直線状で灌流可能なチャネルが得られた。しかしながら、直線状の針を使用するため、この手法では、組織の不均一性と複雑さに非常に似ている高度な構築物が得られない。
【0007】
別のアプローチは、マイクロプロセッサ業界から採用された一連の技術であるソフトリソグラフィーを利用する。これは、フォトリソグラフィーによる光パターン形成を通して、スキャフォールドアーキテクチャの空間的制御を提供し、マイクロ流体ネットワークが得られる。しかしながら、これらの技術は、マイクロメートルスケールの解像度に到達するために高価な専売機器を必要とし、この製作モードは、臓器血管構造の大きなモデルを効率的に作製するには遅すぎる。さらに、リソグラフィは、典型的には、デカルト座標で行われ、長方形の横断面を有するチャネルが得られる。しかしながら、天然の血管系が直線状のx、y、またはzベクトルに従うことはまれであり、血管は、円形の断面を有する。多層の操作組織を得るために、フォトリソグラフィープロセスとレイヤー・バイ・レイヤーラミネーション法を組み合わせた戦略が追求されてきた。残念ながら、過酷な製作プロセスおよび連続する層を高精度で位置合わせすることの難しさ、およびエッジ・トゥ・エッジのアーティファクトの存在により、複雑な3次元(3D)相互接続マイクロ流体ネットワークを得るには、このアプローチの使用が制限される。
【0008】
層の手動の位置合わせに関連する課題を回避するために、多層3D構造は、手動または自動のいずれかで、レイヤー・バイ・レイヤーの様式で製作され、3D投影ステレオリソグラフィーを使用して、1回の露光で層全体が製作されるか(Lin et al.,2013)、または成膜技術を使用して、不均一な3D組織構築物が製作される(Kolesky et al.,2014)。これらの努力によって、空間的にパターン化された細胞を含む操作組織が得られたが(Gauvin et al.,2012)、それらは複雑で生理学的に適切な血管構造に似ていない。さらに、これまでのところ、数層のヒドロゲルのみが製作されている。
【0009】
生体の血管系は、数センチメートルから(大動脈など)、数ミクロンまで(毛細血管など)の流体ネットワークからなっているが、現在利用可能な技術では、多細胞生物にとって重要な全範囲の輸送ネットワークを完全にとらえることができない。さらに、現在のインビトロモデルのほとんどは、1つの入口と1つの出口を含む単一の血管網を有する3D構築物が含まれている。しかしながら、複雑な生物学的システムの重要な特徴である相互貫入血管網の存在は、現在の文献にはないものの、栄養素の十分な輸送のための哺乳類の生理学の中心である。例えば、肺胞は、酸素の受動輸送の性質から、赤血球の酸素負荷を確実にするために、肺毛細血管網のすぐ近くに配置されなければならない。
【0010】
したがって、細胞療法を成功させる上で、根本的な障壁は、生体適合性の移植デバイスの欠如である。移植された生体材料は、異物反応(FBR)を引き起こす。これは、炎症イベントと創傷治癒プロセスのカスケードであり、線維症(仕切り形成)およびその後の移植の失敗につながる(Harding and Reynolds,2014、Langer,2009、Williams,2008)。この反応は、天然に存在するポリマーから合成材料まで、多くの材料について記載されている(Ratner,2002、Ward,2008、Zhang et al.,2013)。したがって、生体材料の移植に関連するFBRを排除するというこの重要な課題を克服する生体材料を開発するための重要な医学的ニーズが存在する。本発明者らは、コンビナトリアルケミストリーおよびハイスループットスクリーニングによる免疫調節性小分子の同定を通してこの課題を解決し(Vegas et al.,2016b)、非ヒト霊長類での線維症の予防および細胞の長期生存におけるこれらの小分子の長期有効性を検証した。
【0011】
島カプセル化療法で最も一般的に研究されている方法は、単離された島(islet)をアルギネートマイクロスフェアに製剤化することである(Lum et al.,1991、Scharp and Marchetti,2014、Schneider et al.,2005)。アルギネートは、ジカチオン性(Ca2+、Ba2+)水溶液でヒドロゲルを形成する多用途の生体材料であり、薬物送達、組織再生、埋め込み型センサー、カプセル化などのいくつかの生物医学的用途に使用されている(Kearney and Mooney,2013、Lee and Mooney,2012)。コーティングおよびカプセル化技術に対する人気は、その低コスト性、低毒性、細胞に無害な穏やかなゲル化、および持続性にある。しかし、残念ながら、空のアルギネートマイクロスフェアでさえ免疫認識はFBRを誘発し、カプセル化された同種または異種のドナー組織の存在によってさらに悪化し得る(de Vos et al.,2006、Robitaille et al.,2005、King et al.,2001)。アルギネートに対するこの線維性反応は、C57BL/6マウスおよび非ヒト霊長類(NHP)の実験的研究(Jacobs-Tulleneers-Thevissen et al.,2013、Scharp and Marchetti,2014、King et al.,2001)、ならびにヒト臨床試験において観察されている。
【0012】
さらに、特にインスリン分泌中の膵島細胞の高い酸素要求量と相まって、上に記載の血糖値に迅速に応答するために、血流の近くに同種島細胞を配置する要件(Sato et al.,2011)は、臓器全体のスケールで正常な膵臓機能を再現することに、さらなる課題を追加する。これらの血管形成の課題は明確に定義されているが、血管形成デバイスの開発に使用され得る生体材料技術は、不明のままである。
【発明の概要】
【0013】
概要
簡単には、本開示は、移植診断および治療のための血管形成デバイスおよび方法を提供する。本発明者らは、最新の3Dバイオプリンティング技術を適用して、長期の生存および機能性のために免疫隔離された治療用細胞構築物の血管形成を誘導し、より高い密度の治療用細胞の生着を可能にした。
【0014】
効果的な血管網の要件に照らして、血管の幾何学的形状を模倣する製作組織の設計基準としては、これらに限定されないが、直径が数十から数百マイクロメートルの範囲のサイズの複数の分岐血管、ならびに流体が流れる際の摩擦抵抗および乱流を最小限に抑えることができる実質的に滑らかな内壁が挙げられる。
【0015】
本開示は、特定の実施形態では、分解性シェルおよび非分解性コアを含むデバイスを提供する。特定の実施形態では、非分解性コアは、カプセル化された治療用細胞および/またはバイオセンサーを含むことができ、分解性シェルは、血管増殖のためのスキャフォールドとして機能し、細胞および/またはバイオセンサーへの血流を増強する。
【0016】
より具体的には、分解性ポリマーを含む分解性の外側ハウジングと、分解性ポリマーを含む内側の非分解性部分とを含む、埋め込み型デバイスが提供される。分解性の外側ハウジングは、当該埋め込み型デバイス(すなわち、血管形成床)の血管形成を促進するパターン化アーキテクチャを含み得、かつ/または非分解性部分は、天然もしくは合成のヒドロゲルを含み得る。合成ヒドロゲルは、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEDGA)であり得る。デバイスは、ゲルメタクリレート(GelMA)、天然および化学的に修飾されたヒアルロン酸、および天然および化学的に修飾されたアルギネートをさらに含み得る。
【0017】
ヒドロゲルは、80%超の水を含み得る。ヒドロゲルは、約10%のGelMAおよび約3%のPEDGAを含み得る。ヒドロゲルは、アクリレート-(PEG-タンパク質)n-PEG-アクリレートのモノマーを含み得、任意選択的に、PEGは、2~35kDaであり、タンパク質は、100Da超であり、総分子量は、少なくとも500kDaまたはn=2~500繰り返しユニットである。ヒドロゲルは、アクリルアミド、ビニルスルホン、ノルボルネン置換アクリレート基、アルギネート、絹、デキストラン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、セルロース、ヘパリン、ポリ(カプロラクトン)またはそれらの多成分バージョンを含み得る。
【0018】
内側の非分解性部分には、薬物、すなわち、小分子治療薬または生物学的治療薬(ペプチド、抗体など)、結晶、細胞(異種組織由来の細胞、死体由来の細胞、幹細胞、幹細胞に由来する細胞、細胞株由来の細胞、初代細胞、再プログラム化された細胞、再プログラム化された幹細胞、再プログラム化された幹細胞に由来する細胞、遺伝子操作された細胞など)、またはそれらの組み合わせが負荷され得る。細胞は、ヒト細胞および/またはインスリン産生細胞および/または膵島細胞であり得る。内側の非分解性部分は、パターン化されていてもよい。デバイスは、複数の層のヒドロゲルを含み得る。
【0019】
分解性の外側ハウジングまたは内側の非分解性部分は、薬物、すなわち、小分子治療薬もしくは生物学的治療薬(ペプチド、抗体など)、結晶、またはCaO2などの酸素放出化合物を負荷することができる。分解性の外側ハウジングまたは内側の非分解性部分には、非結晶化、結晶化、および/もしくはカプセル化血管新生促進因子(VEGFなど)、または血管新生促進細胞(内皮細胞、間葉系幹細胞、内皮前駆細胞、血管新生促進マクロファージなど)が負荷される。内側の非分解性部分には、数ある可能な診断指標の中でも、血中酸素、血中グルコース、腫瘍抗原、コレステロール、クレアチニン、ヘモグロビンA1C、インスリン、グルカゴン、ホルモンレベル、小分子薬のレベル、DNA、RNA、サイトカイン、循環腫瘍細胞を測定することができるバイオセンサーなどのバイオセンサーを負荷してもよい。非分解性の外側ハウジングおよび/または内側非分解性部分は、パターン化され得(一度移植されると、血管形成を可能にするように内側非分解性部分がパターン化される場合など)、パターン化されたアーキテクチャは、直径が数十から数百マイクロメートルの範囲のサイズの複数の分岐血管などの血管の幾何学的形状を含み得、流体が流れる際の摩擦抵抗および乱流を最小限に抑えるために実質的に滑らかな内壁を有し得る。
【0020】
また、対象の状態(state)または状態(condition)を監視する方法を提供し、本明細書に記載のデバイスを当該対象に移植することを含み、当該デバイスは、センサーまたはバイオセンサーを含み、対象において医学的状態または疾患を治療する方法は、本明細書に記載されるデバイスを当該対象に移植することを含み、デバイスは、治療薬を含み、対象において血管形成デバイスを作製する方法は、本明細書に記載されるデバイスを当該対象に移植することを含み、対象において移植片または補綴物の周囲に血管形成組織を作製する方法は、本明細書に記載されるデバイスを当該対象に移植することを含み、当該移植片または補綴物は、神経インターフェースデバイスなどであり、対象において移植片または補綴物の周囲に増量組織を作製する方法は、本明細書に記載されるデバイスを当該対象に移植することを含み、当該移植片または補綴物は、乳房インプラントまたは組織充填材などである。
【0021】
本デバイス、方法、組成物、キット、およびシステムのいずれかの任意の実施形態は、記載されたステップおよび/または特徴を、含む(comprise)/含む(include)/含む(contain)/有する(have)よりもむしろ、それからなる(consist of)またはそれから本質的になる(consist essentially of)ことができる。したがって、特許請求の範囲のいずれにおいても、「からなる(consist of)」または「本質的にからなる(consist essentially of)」という用語は、所与の特許請求の範囲を、別途オープンエンドの連結動詞が使用されるであろう範囲から変更するために、上記のオープンエンドの連結動詞のいずれかを置き換えることができる。
【0022】
特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、代替物のみを指すように明示的に示されない限り、または代替物が相互に排他的である場合を除いて、「および/または」を意味するように使用されるが、本開示は、代替物のみおよび「および/または」のみを指す定義も支持する。本出願全体を通して、「約」または「およそ」という用語は、値が、値を決定するために使用されているデバイスまたは方法の誤差の標準偏差を含むことを示すために使用される。長年の特許法に従い、「a」および「an」という単語は、特許請求の範囲または明細書で「含む(comprising)」という単語と併用される場合、特に明記しない限り、1つまたは複数を示す。
【0023】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明から、本発明の趣旨および範囲内の様々な変更および修正が当業者に明らかになるため、詳細な説明および特定の実施例は、本発明の特定の実施形態を示しながら、例示としてのみ与えられることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明の特定の態様をさらに実証するために含まれている。本発明は、本明細書に提示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて、これらの図面の1つ以上を参照することによって、よりよく理解され得る。特許または出願ファイルには、少なくとも1つのカラー図面が含まれている場合がある。カラー図面を含む本特許または特許出願公開とのコピーは、請求により、および必要費の納付に応じて、特許庁から提供される。
【0025】
【
図1】分解性ポリマーに包まれた非分解性部分を含む実施形態の概略図を示す。
【
図2】デバイスの非分解性部分に負荷された治療用細胞、バイオセンサー、または他の移植片を含む実施形態の概略図を示す。
【
図3】デバイスの分解性部分および/または非分解性部分に負荷することができる、酸素、血管新生促進物質または他の関連する化合物の制御放出をもたらす、方法および材料を含む実施形態の概略図を示す。
【
図4】様々な長さのポリマー鎖を使用して、濃度、剛性、および抗線維化特性を改変することができる分解性部分を含む実施形態の概略図を示す。
【
図5】多くの可能なトポロジーを有する血管構造を含む実施形態の概略図を示す。
【
図6】デバイスの非分解性部分と分解性部分を一緒に保持することができるアンカーを含む実施形態の概略図を示す。
【
図7】血管スキャフォールドを裏打ちする内皮細胞がある場合とない場合の実施形態の概略図を示す。
【
図8】治療用細胞構築物の迅速な血管形成のためのヒドロゲルを示す。
【
図9】マクロデバイス開発用に最適化されたシェル化学の開発を示す。
【
図10】インビボで試験されたデバイスの2つの実施形態を示す:中空血管を有するデバイス(左)、および内皮化血管を有するデバイス(右)。
【
図11】灌流可能なヒドロゲルの血管効率を調査するための血管設計を示す。
【
図12】内側ハウジングと外側ハウジングの両方についての様々な幾何学的形状のデバイスを示す。
【
図13】免疫隔離された島の移植のための血管形成デバイス。内皮細胞およびヒト間葉系幹細胞などの血管新生促進細胞は、3Dプリントされた分解性シェルにカプセル化され、膵島は、TMTDアルギネートの非分解性コアに流し込まれる。カプセル化された血管新生促進細胞は、血管浸潤を動員し、3Dプリントされた血管チャネルは、血管浸潤の誘導を助ける。時間とともに、血管網が残り、免疫隔離された膵島に栄養素を供給する。
【
図14】
図14A~B。ゲルの調製と設計。ゲルは、次のように調製される:感光性のプレヒドロゲル溶液を所望の細胞型と組み合わせて、複雑なアーキテクチャおよび設計を有するパターン化されたヒドロゲルに細胞をカプセル化する。内皮細胞は、バイオプリントされたゲルの内腔に播種することができ、灌流培養が内皮細胞の血管新生表現型を高めることを可能にする。最後に、治療用細胞、この場合は膵島を、3Dプリントされたデバイスのチャンバーに流し込むことができる(
図14A)。これによって、治療用細胞が1つのチャンバーに配置され、血管新生促進細胞がバルクゲルに配置されたコアシェル血管形成デバイスが得られる。この例では、膵島は、TMTDアルギネート(非分解性)にカプセル化され、HUVECおよびhMSCは、バルクPEG/GelMAゲルにカプセル化され、内皮細胞が内腔を裏打ちする(
図14B)。
【
図15】血管形成ゲルの生体材料組成物。ゲルは、複雑なゲルアーキテクチャ中の生物活性な細胞のバルクカプセル化を作製するために、生物活性な細胞と混合されたモノマーのステレオリソグラフィーによって調製される。ゲルの内腔に内皮細胞を播種することもでき、内皮細胞は、灌流培養で維持され、これらの細胞の血管新生能を高めることができる。この例では、PEGジアクリレートおよびGelMAを利用してゲル構造を作製し、MSCおよび内皮細胞をバルクでカプセル化して、血管新生因子を分泌し、ゲルの分解を助ける。また、内皮細胞も内腔に播種されて、血管形成を助ける。所望のインビボ応答を標的化するために、生体材料の特性および細胞組成を修飾することによって、生体材料の特性を微調整することが可能になる。
【
図16】
図16A~D。光開始剤(LAP)、光反応性ポリマー(PEGDAおよびGelMA)、および小分子修飾3Dプリントゲルの合成のための反応スキーム。(
図16A)LAPおよびPEGDAの合成。(
図16B)GelMAの合成。(
図16C)免疫調節性小分子であるMet-RZA15の合成。(
図16D)PEGDAおよびGelMAをMet-RZA15と光架橋して、ペンダントMet-RZA15を有するヒドロゲルネットワークが形成される。
【
図17】
図17A~B。ヒドロゲル構造は、コラゲナーゼ分解速度と剪断剛性との間に逆相関を示す。(
図17A)0.2mg/mLのコラゲナーゼ中の様々なヒドロゲル製剤の分解動態。本発明者らは、ポリマー濃度が増加するにつれて、分解速度が減少するという一般的な傾向を観察している。さらに、PEGDAを添加すると、酵素的に切断可能なペプチド配列がないため、特に強い減衰効果を有するように見える。(
図17B)PEGDAを添加すると、純粋なGelMAゲルと比較した場合、剪断剛性が劇的に増加する。
【
図18】
図18A~D。プリントされたゲルのTOF-SIMS表面分析により、Met-RZA小分子とのコンジュゲーションが検証される。(
図18A)Met-RZAとコンジュゲートされたゲル(下のトレース)と比較したブランクゲル基質(上のトレース)のTOF-SIMS測定。(
図18B)RZA15の質量範囲におけるパート(a)からのブランクゲルトレースとMet-RZAゲルトレースの重ね合わせ。(
図18C)Met-RZAの質量範囲におけるパート(a)からのブランクゲルトレースとMet-RZAゲルトレースの重ね合わせ。(
図18D)未修飾ゲルと小分子修飾ゲルの両方のTOF-SIMSデータの定量。
【
図19】
図19A~D。中空血管チャネルは、生体適合性の3Dプリントヒドロゲル内にプリントされ得る。(
図19A)3Dモデルは、最初に一連の2Dパターンにスライスされる。(
図19A)2Dパターンは、UVフォトマスクとして感光性ポリマー溶液に順次投影され、パターン化されたアーキテクチャを有する固体ヒドロゲル構造が得られる。(
図19C)血管網の最小単位である単一チャネルのゲルの概略的な幾何学的形状。(
図19D)プリント層の高さをより減少させることによって、真円度がより増加した中空血管チャネルが得られる(スケールバー=1mm)。ゲルは、蛍光可視化を可能にするため、1mg/mLのFITC-デキストラン(150kDa)を含む20重量%のPEGDA(6kDa)で構成される、単一チャネルヒドロゲルの3Dプリントは、バイオファブリケーションの分野では依然として重要な課題である。円形の特徴であるオーバーハングの性質により、押し出しと光ベースのプリント方法の両方で、材料が誤って中空チャネルを詰まらせてしまう可能性がある。
【
図20】
図20A~B。完全に灌流可能なアーキテクチャモデルは、投影ステレオリソグラフィーで忠実に製作される。本発明者らは、(
図20A)ヘビ状および(
図20B)分岐状の血管アーキテクチャを、オープンソースの3DコンピューターグラフィックスソフトウェアであるBlender(Blender Foundation、Amsterdam,Netherlands)を用いて設計した。本発明者らは、完全に灌流可能な中空の内腔を特徴とするPEGDA:GelMA(3.25重量%の3.4kDa PEGDA/10重量%のGelMA)ヒドロゲルにおいて、これらの設計された血管アーキテクチャを生成した。以下を灌流することによって、それらの内腔の開存性が検証される:(
図20A)1μmの赤色蛍光ビーズ(PBS+10%グリセロール中に1:800)ならびに(
図20B)H2B-mVenus(図示せず)およびmCherryを発現するヒト肺胞基底上皮腺癌細胞(A549)。これらは、本発明者らが設計した血管アーキテクチャ全体を流れる。
【
図21】
図21A~F。プリントされたヒドロゲルは、望ましいフローパターンを示す。(
図21A)直径1μmの蛍光ビーズ(ビーズ対PBS+10%グリセロールの比率が1:800)を、ヘビ状アーキテクチャのヒドロゲルを通して灌流した。ビデオデータは、Nikon Eclipse Ti落射蛍光顕微鏡(24.6msのフレームレート)を使用してキャプチャした。入口の流速は、2.0μL/分に設定され、流れの方向は、白い矢印で示されている。蛍光ビーズの動きに関する粒子画像流速計(PIV)データを、MATLABのオープンソースアプリケーションであるPIVlabを使用して分析した(Theilicke and Stamhuis,2014)。(
図21B)PIVlabでの分析に続いて、速度ベクトルのヒートマップを生成した。
図21Aおよび21Dのより明るい領域は、動いていない粒子を含むヒドロゲルの領域を表し、画像処理の前に手動でマスキングされ、矢印は、速度ベクトルを表す。速度ベクトルを、流れの方向に対して垂直な線上で調べることで(
図21Bおよび21Eの矢印)、このアーキテクチャ内のフロー特性を決定する。(
図21C)線に沿った各ポイントの速度プロファイルデータ。個々のデータポイント(丸印)は、すべてのビデオフレームについてコンパイルし、同じグラフにプロットした。プロファイルラインに沿って、距離ごとに、すべてのフレーム間で速度を平均化した。各距離に関連付けられた平均速度を使用して、放物線状のベストフィット曲線(オレンジ色で示す)を生成した(r2=0.855)。(
図21D~F)分岐状アーキテクチャのヒドロゲルについて実験を繰り返した。この設計では、蛍光ビーズの濃度は、1:200のビーズ:PBSであり、入口の流速は5μL/分に設定された。この速度プロファイルのベストフィット曲線では、r2=0.966である。
【
図22】
図22A~B。3Dプリントされた血管は、収縮期圧と拡張期圧の間の動的な流体サイクルの下で、非常に順応性(compliant)である。(
図22A)血管の拡張は、含気的な空気圧を適用して測定した(ヒドロゲル組成:20重量%の6kDa PEGDA、チャネル直径:1.5mm、チャネル長:20mm)白色の破線は、画像化されたチャネルの壁を表す(スケールバー=1mm)。(
図22B)順応性は、ポリマーパラメータ空間内で高度に調整可能であり、分子量と直接相関するが、ポリマー濃度とは逆相関することがわかった(n≧4)。プリントされたゲルを、オープンソースの空気ポンプ(MillerLab Pneumatic System,2016)に接続し、拡張期圧(80mmHg)と収縮期圧(120mmHg)間の動的な流体循環を提供した。直径の変化は、光学実体顕微鏡およびsCMOSカメラでキャプチャした。画像を、毎秒50フレーム超の速度でキャプチャすることで、高い空間解像度で、直径の最大変化を決定することができる。順応性は、組織工学の血管に関して以前に報告されているように測定した(L’Heureux et al.,2006)。
【
図23】
図23A~D。完全に内皮化された血管網がチャネル壁を覆い、内腔の開存性を維持する。本発明者らの最適化されたヒドロゲル製剤(3.25重量%の3.4kDa PEGDA、10重量%のGelMA)は、ヒト内皮細胞の付着を支持する。本発明者らは、10~30x10
6細胞/mLの構成的に発現するGFPヒト臍帯静脈内皮細胞(GFP-HUVECs,Angioproteomie、Boston,MA)を血管の入口に注入し、細胞が内腔壁に付着することを可能にする。最初の細胞注入に続いて、本発明者らは、ゲルを、合計2時間、15分ごとに90度ずつ、血管軸の周りで回転させる。次に、ゲルを、Vasculife培地(Lifeline Technologies,LL-0003、Frederick,MD)を用いて培養し、蠕動ポンプを介してチューブを血管網の入口に流体的に接続して、5μl/分の流量を正確に制御する。画像は、Nikon Eclipse Ti落射蛍光顕微鏡(
図23A、23B、および23D)またはZeiss LSM 780共焦点顕微鏡(
図23C)で取得した。
【
図24】HUVECの85%超が、7日間の灌流後も血管網で生存し続ける。内皮化ヘビ状チャネルを、5μl/分で7日間灌流し、細胞生存率について染色した。本発明者らは、1μMのカルセインバイオレットAM溶液(ThermoFisher Scientific)およびLIVE/DEADイメージングキット(Invitrogen,R37601)の1μl/mLのDEAD(Ethidium Homodimer-1)成分を、PBS中に調製した。染色液をチャネルに注入し、37℃で30分間インキュベートした後、イメージングを行った(Nikon Eclipse Ti落射蛍光顕微鏡)。4つの関心領域をランダムに選択して、細胞生存率の出力用に、生細胞と死細胞を手動でカウントした。
【
図25】
図25A~C。TMTDアルギネートのブロックは、3Dプリントされたゲルに流し込むことができる。(
図25A)プリントされたゲルの透視写真。(
図25B)拡大して基礎となる血管構造を強調表示し、3Dプリントされたアンカーでアルギネートブロックを保持する(
図25C)プリントされたゲルの断面。
【
図26】
図26A~D。島は、血管スキャフォールドへの流し込み後、90%超の生存率と2超の刺激指数を示す。(
図26A)TMTDアルギネート中の島が、3Dプリントされた血管スキャフォールドに流し込んだ。流し込み後、ゲルを1:200のカルセインAMおよび1:200のエチジウムホモダイマー1を含む完全CMRL-1066とともに30分間インキュベートした後、固定し、画像化した。スケールバー=100μm。(
図26B)カプセル化後、5つの島について、島細胞の生存率を定量した。(
図26C)ゲルをGSISアッセイに供し、n=5の独立した試料で、3.35の平均刺激指数を示した。(
図26D)GSISアッセイからの刺激指数が2超。すべてのプロットについて、平均値+/-S.D.が示されている。
【
図27】
図27A~E。インビボでの性腺脂肪パッドの移植は、3Dプリントされたチャネル中の血液および密接に関連した宿主血管構造を実証する。(
図27A)3Dプリントデバイスの脂肪パッド移植の外科的方法。(
図27B)灌流培養で6日後の内皮化ゲルは、付着性GFP-HUVECによる裏打ちを示す。スケールバー=1mm。(
図27C)脂肪パッドに縫合されたゲル。(
図27D~E)外植されたゲルは、チャネル内の血液(白色の矢じり)および密接に関連する宿主血管系(黒色の矢じり)を示す。移植前の(左の挿入図)、ヘビ状チャネルを有する内皮化ゲル4(
図27D)および内皮化ゲル5(
図27E)。左の挿入図、スケールバー=1mm。
【
図28】
図28A~C。パターン化された生体材料は、血管浸潤をもたらす。免疫隔離された島のための血管形成デバイスの3Dモデル(
図28A、左)。S字形の血管チャネル中の灌流で刺激されたGFP内皮細胞およびゲルの大部分に赤い内皮細胞を含むバイオプリントゲル(
図28A、右)。本発明者らは、ヘビ状構造中に、内皮成熟の兆候である、単層の細胞が得られたことに注目する。ゲルは、雄のSCID-beigeマウス(Charles River Labs)の精巣上体脂肪パッドに縫合され(
図28B、左)、その同じ部位から回収された(
図28B、右)。静脈内注射された蛍光デキストランで、ゲルに浸潤したすべての血管構造が照らし出され、共焦点顕微鏡で視覚化することができる(
図28C)。
【
図29】主要な血管パラメータを特定するための画像分析パイプライン。本発明者らは、画像分析法を活用して、ヒドロゲル中の主要な血管パラメータを特定することができる。静脈内の蛍光デキストランの共焦点イメージングにより、ヒドロゲル中の血管網(共焦点)が照らし出される。16ビットの色深度のこの画像は、最初に、ImageJ(Binarize)でバイナリ化される。バイナリ画像は、背景(白色のピクセル)と比較して、血管構造(黒色のピクセル)の位置を示す。このバイナリ画像は、画像内の全ピクセル数に対する血管(黒色のピクセル)の割合を特定するために定量化される。これにより、血液が占めるゲルの面積分率が定量される。次に、バイナリ画像がImageJでスケルトン化される。ImageJスケルトン化プラグインを使用すると、接合部の数、分岐の数、および分岐の全長(ここに図示せず)を定量することができる。試料のROIの接合部および分岐を以下に示す。
【
図30】
図30A~F。インビボ血管形成を達成するための生体材料の設計。3Dプリントされた血管形成デバイスは、様々なヒドロゲル化学物質、バルクゲル内の細胞、およびチャネル内の細胞を用いて作製することができる。3つのかかる製剤が選択され、SCID-beigeマウスの精巣上体脂肪パッドへの移植および縫合を介して、インビボで評価された(
図30A)。ヒドロゲルはインビトロで調製され、落射蛍光顕微鏡で画像化された。すべてのゲルの大部分でRFP-HUVECが存在し、収縮したコラーゲンコード(条件1のGFP-HUVEC、移植前)およびコンフルエントな内皮単層(条件2および3のGFP-HUVEC、移植前)が存在することが実証された(
図30Bを参照)。回収する前に、CF633コンジュゲートデキストラン(Biotium)を尾静脈から注入し、15分間循環させた。マウスを安楽死させ、ゲルを固定した。血管浸潤の重要なパラメータを定量した(
図30C~F、グループ当たりn=4~6回の反復)。
【
図31】
図31A~B。血管発生の動態研究。島移植の血管形成における重要な要素は、血管発生の動態である。本発明者らは、様々な時点でゲルを外植することによって、動態を精査した。ゲルを、インビトロで調製し、移植前に適切な内皮形態についてアッセイした(
図31A、移植前の落射蛍光)。ゲルを移植し、様々な時点で回収した。本発明者らは、4~8週間の間に生じる血管浸潤に注目する(
図31B)。画像は、グループごとにn=4~6回の反復を表す。
【
図32】
図32A~G。パターン化された血管網における流体の流れの評価およびインビトロでの単一チャネル血管網の初期試験。様々な血管アーキテクチャを有するゲルを、インビトロで調製することができる(
図32A)。速度の大きさは、蛍光ビーズの追跡(Nikon Ti落射蛍光顕微鏡、
図32Bを参照)を介して定量することができる。線に沿った各ポイントの速度プロファイルのデータ。個々のデータポイント(青色の円)は、すべてのビデオフレームに対してコンパイルされ、同じグラフにプロットされた。プロファイルラインに沿って、距離ごとに、すべてのフレーム間で速度を平均化した。各距離に関連付けられた平均速度を使用して、放物線状のベストフィット曲線(オレンジ色で示す)を生成した(r2=0.855、
図32C)。細胞機能および栄養素送達に対する血管アーキテクチャの影響を研究するために、本発明者らは、カプセル化されたルシフェラーゼ発現細胞および完全培地中のD-ルシフェリンの灌流を利用してインビトロアッセイを実施した。ATP、酸素、およびルシフェリンの存在下、ルシフェラーゼ酵素で照らし出され、複雑なヒドロゲルにおける栄養素送達および細胞機能を定量することが可能になる。栄養素送達および細胞活性を研究するために、様々な血管構造を有するゲルに、アルギネートマトリックス中のルシフェラーゼ発現細胞を流し込んだ(
図32D)。これらのゲルは、完全培地(0.15mg/mL最終濃度、PerkinElmer)中のD-ルシフェリンで灌流された。生体内イメージング(PerkinElmer IVIS KineticIII)による、灌流の0時間(
図32E)および2時間(
図32F)における代表的なゲルのデータを示す。細胞発光の動態は、Living Imageソフトウェアを介して定量し、Prism 8にプロットした(
図32G、n=4+/-s.d.)。
【
図33】
図33A~D。栄養素送達のための血管アーキテクチャのスクリーニング。様々な血管アーキテクチャを有するゲルをプリントし、血管網の周りの空間に、ルシフェラーゼ発現HEK293細胞(アルギネート1mL当たり2500万細胞)を含むアルギネートを流し込んだ(
図33A)。次いで、これらのヒドロゲルは、血管内腔を通してD-ルシフェリン含有培地で灌流され、バルクゲルを通してルシフェリンおよび酸素が送達される。生体内イメージング(IVIS Kinetic III)を介して、本発明者らは、操作されたヒドロゲルにおける栄養素送達および細胞機能に起因する発光を定量することができる。3つの異なる血管アーキテクチャを調製し、栄養素送達について分析した(
図33B)。発光を、5分ごとに120分間定量した(
図33C、六角形状およびヘビ状のアーキテクチャ、n=1、単一チャネルアーキテクチャ、n=9、平均+/-s.e.m)。発明者らは、これまでの研究で、動態分析を通して(
図33C)および研究のエンドポイントで(
図33D)、六角形状アーキテクチャが、単一チャネルまたはヘビ状アーキテクチャと比較して、より効果的な栄養素送達を有していたことに注目している。
【
図34】
図34A~D。高密度カプセル化島の評価および将来の糖尿病研究。糖尿病研究では、TMTD-アルギネートカプセル化島を実験群、すなわち、最適化された生体材料製剤および最適化された栄養素送達のための血管アーキテクチャを有するヒドロゲルと比較する(
図34A)。本発明者らはまた、血管新生促進細胞との島の同時移植の効果について対照をとるために、細胞型対照を行うことも計画する(
図34A)。アルギネートブロックに、750IEQの新鮮なラット島を流し込み、5匹のSTZ誘発C57Bl6マウス(Jackson Labs、
図34B)に移植した。200mg/dL未満のマウスは、治癒したものとみなした。治癒したマウスの割合は、7週間の試験にわたって0%から60%の間で変動し、不安定な血糖コントロールを示した(
図34C)。外植時、アルギネートブロックを、島の生存率について染色した(Live/Dead Assay,Thermo Fisher)。島が死んでいることがわかった(
図34D)。これは、血管系がないと、高密度のカプセル化島では、正常血糖が十分に回復されないことを示す。この研究は、血管形成ゲルと比較するためのベースラインとして機能する。
【
図35】組織学的検査は、ゲル中の血管の形成を実証する。血管浸潤が生物工学ゲルで生じたことを検証するために、試料を組織学的検査に供した。内腔にコラーゲンコードでパターン化され、ゲルの大部分にhMSCおよびHUVECを含む、3DプリントされたPEG/GelMAゲルを、免疫不全マウスに8週間移植した。次いで、ゲルを回収し、組織学的分析に供した。組織学的検査は、ホルマリン固定、パラフィン包埋(FFPE)によって行った。ゲルを6ミクロンの厚さに切片化し、H&E染色を行った。ゲル全体(左、EVOS XL、カラーCCD、倍率2X、スケール=2000μm)、ならびに挿入図(右、Nikon A1 RSI、水浸40X、Di-F3カラーカメラ、スケール=10μm)を画像化した。挿入図の複数の領域で、赤血球と毛細血管様の構造が見られる(右)。
【
図36】様々な生体材料特性を有する多層ヒドロゲル構築物のプリント。この例では、ステレオリソグラフィー3Dプリントシステムを、次のように利用することができる:プリントは、製剤1と表記される1つのプレヒドロゲル溶液を用いて行うことができ、これは、ノルボルネン修飾ヒアルロン酸(NorHA)、チオール末端細胞接着ペプチドCGRGDS(配列番号2)、およびジチオール末端分解性ペプチドCGPQGIWGQGCR(配列番号1)で構成される。これにより、デバイスの成分が分解性の生体材料製剤としてプリントされる。次いで、プリントを一時停止し、プリント溶液を、非分解性のPEG-ジアクリレートなどの異なる特性を有する溶液と交換する。これは、LAPの存在下で光重合し、デバイスの第2の成分を生成し、製剤2と表記される。最後に、このプリント溶液を、分解性の製剤1などの別の溶液と交換して、デバイスの最終成分をプリントすることができる。これにより、最終的には、空間的に分離された様々な生体材料特性を有する3Dプリントデバイスが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明
輸送および拡散の制限は、高度に細胞化された構築物の開発において、主要な障害のままである。課題は明確に定義されているが、血管形成デバイスを開発するための技術はとらえどころのないままである。生体材料の移植に関連するFBRを排除する課題を克服する生体材料を開発する重要な医学的ニーズが存在する。本発明者らは、コンビナトリアルケミストリーおよびハイスループットスクリーニングによる免疫調節性小分子の同定を通して、この課題を解決し(Vegas et al.2016b)、非ヒト霊長類での線維症の予防および細胞の長期生存におけるこれらの小分子の長期有効性を検証した。
【0027】
一態様では、本発明者らは、操作組織および埋め込み型デバイスにおける血管形成の課題に明確に対処するために、生体材料化学および高度な三次元プリントなどの新しい製造戦略を開発した(Miller,2014)。彼らは、何百もの材料およびプロトタイプデバイスの合成および評価のためのハイスループットパイプラインを開発し、細胞カプセル化とデバイス製造の両方への新しいアプローチを模索してきた。アルギネートベースの材料に関して、低レベルの炎症を示す新規のリード化合物が特定されているが、さらなる開発を必要としている(以下を参照)。安全性と有効性を改善するために、本発明者らは、奇形腫形成の場合にすべての移植細胞の完全な除去を容易にする封じ込めユニットとしてのアルギネートシートを組み合わせて、半透性で低線維化の血管形成デバイスの使用を調査している。この研究は、大型動物の糖尿病モデルおよび最終的にはヒトにおいて血糖コントロールを回復し得る、機能的で拡張可能な同種置換組織のために重要な基礎を築く。
【0028】
本開示のこれらの態様および他の態様は、以下に詳細に記載されている。
【0029】
I.3Dプリント可能なデバイス
A.デバイス成分
本発明者らは、以前に、生物学に着想を得た設計基準で3D操作組織を製作することができる3Dプリントプロセスを記載し、設計基準には、マレーの法則、直径が数十から数百マイクロメートルのマルチスケールの分岐血管、滑らかな内壁、円形断面、および複数の入口/出口が含まれるが、これらに限定されない。実際、プリントパラメータの最適化により、製作できるものは、モデル化できるものによって制限されている。さらに、単一の層または複数の層で不均一な特性を含むより複雑な設計を製作することができる。例えば、予め定義された勾配を有するグレースケールフォトマスクを組み込んで、同じバットおよび溶液をなおも使用しながら、様々な剛性の層、または生体分子および細胞の固定化が制御された層を得ることができる。さらに、フラクタル空間充填モデルを利用して、既存の血管網の周囲およびそれを介して、または天然組織のアーキテクチャに従って、血管網を計算的に成長させることは、さらにより複雑で生理学的に適切な3Dモデルのコンピューター成長モデルによって達成することができる。これらの数学的フラクタル空間充填モデルは、例えば、結び目理論、ヒルベルト曲線、およびLシステムから導出することができる。理想化された血管網を予測するためのそのような数学的フラクタル空間充填モデルとしては、結び目理論、配管工の悪夢、ペアノ曲線、ヒルベルト曲線、ピタゴラスの木、およびブラウンの木モデルが挙げられるが、これらに限定されない。例として、配管工の悪夢モデルは、基本的に、真っ直ぐな垂直シリンダーによって相互に接続された2つの血管ラダーモデルで構成されている。複数の配管工の悪夢モデルは、それらが相互貫入するように挿入され得る。血管ラダーモデルは、1つの入口と1つの出口で構成され、2つの水平シリンダーが対角シリンダーで接続されているため、チャネル間の接合部が生じる。
【0030】
ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA)などの光重合性ヒドロゲル材料は、リチウムアシルホスフィネート(LAP)などの光開始剤システムを使用して架橋することができ(Fairbanks et al.2009)、これはUVから可視光の範囲の波長を吸収する。例えば、低濃度のカーボンブラック(すべてのUV-可視光スペクトルにわたって光を吸収できる)または低濃度のタートラジン(500nm付近に光吸収のピークがある)を追加することにより、本発明者らは光の透過の深さを制限することができる。このプロセスを定量化するために、本発明者らは、光の線量および試料の厚さの関数としてヒドロゲルの重合および剛性の変化を監視するためのフォトレオロジーアッセイを開発した。実際、タートラジンなどの添加剤の添加は、ゲル化の動態および最終的なゲルのレオロジー特性に影響を与えることによって、前重合(prepolymerization)混合物のゲル化の程度を制御する。他の材料には、光重合することができる-エン(-ene)修飾された天然材料および合成材料(例えば、アルギネート、絹、デキストラン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、セルロース、ヘパリン、ならびにポリ(カプロラクトン)およびこれらの多成分バージョン)が含まれる。
【0031】
数センチメートルのオーダーで、パターン忠実度が高く、多層ヒドロゲルの複雑なパターン化を実現するために、プリントプロセス中の露光が制御され、ビルドプラットフォーム上に投影された光が、いずれか部分的にまたは完全にゲル化を起こす層と主に相互作用するようになる。ヒドロゲルのラジカル媒介性光重合は、光開始剤(光吸収時に分子が崩壊してヒドロゲル重合を触媒することができるフリーラジカルを放出する特定の波長範囲に感受性の分子)を利用する。これには、光開始剤の波長感度を定量することが不可欠である。高濃度の光開始剤は、より多くの光を吸収し、入射光の透過度(penetration depth)を制限することによって、より高いz解像度を提供する。しかしながら、高濃度の光開始剤は、光重合反応を妨害し(フリーラジカルがより多いほど、互いに消滅する可能性がより高くなる)、高濃度の光開始剤は細胞毒性を示す。さらに、プロジェクターからの高いx-y解像度では、以前にプリントされた層のz方向から光が当たり、複雑なオーバーハング構造(血管系に見られるような)を形成する能力が制限される可能性があり、閉じ込められた細胞に光毒性を引き起こし得る。
【0032】
したがって、高解像度のプリントを達成するために、本開示は、高い細胞生存率を維持しながら、バイオプリントされた組織において高いz解像度を提供する光化学的手段を初めて提供する。上で概説した懸念に対処するために、本発明者らは、生体適合性の材料または化学物質を前重合溶液に添加して、より高いz解像度を提供する一般的な戦略を特定した。添加材料は、次の3つの基準に基づいて選択される:1)光開始剤の感光性の波長範囲を完全に包含する光波長を吸収する能力、2)光重合反応の限定された関与または限定された阻害、および3)所望の濃度での生体適合性。この添加材料は、本明細書では、光の透過を制御するのに好適な生体適合性の光吸収添加材料と呼ぶ。光を吸収し、すでに形成された層への光の透過度を制限する複数の分子がスクリーニングされている。好適な分子は、前重合溶液で使用される光開始剤と同じ領域で吸収する。光透過を制御することができ、したがって生体適合性の光吸収添加材料として使用するのに好適な分子の例としては、カーボンブラック、黄色の食品着色料、タートラジン、ナノ粒子、微小粒子、金ナノ粒子、リボフラビン、フェノールレッド、β-カロチン、クルクミン、サフラン、およびターメリックが挙げられる。タンパク質はまた、それらのピーク吸収が、光開始剤のピーク吸収と重なり、入射光源と一致する限り、好適な生体適合性の光吸収添加材料として機能し得る。さらに、本発明者らは、シアン蛍光タンパク質(CFP)または緑色蛍光タンパク質(GFP)などの光開始剤と同じ領域で吸収するタンパク質でトランスフェクトもしくは形質導入された細胞を、低減された添加剤とともにまたは添加剤なしで、高濃度で使用することができ、細胞内に存在する光吸収分子による側方の過硬化が減少することを認識している。さらに、本発明者らの方法論は、投影された光の透過を厳密に制御することにより、水平チャネルと垂直チャネルの両方を有するヒドロゲルをプリントすることを可能にする。
【0033】
この方法で操作組織を製作するための長いプリント時間に関連する潜在的な細胞生存率の懸念に対処するために、複数の方法で細胞生存率を維持または強化することができる。1つの方法は、低温条件でプリントすることによって、細胞の代謝活性を低下させることを伴う。移植臓器の長期保存のための固形臓器の低温保存(通常は4℃で行われる)と同様に、細胞がプリントされる温度を下げると、細胞代謝が大幅に低下する。例えば、本発明者らは、低温室(4℃)を利用して低温バイオプリンティングを達成できることを実証した。さらに、ビタミン、増殖因子、または血清を前重合溶液に組み込んで、栄養素を容易に供給できるようにして、細胞の生存率を維持または強化することができる。重要なことに、光重合は温度の低下に対して非常に耐性であり、必要な露光時間がわずかに増加するだけである。さらに、3Dプリントデバイスおよび試薬全体の温度を下げると、入射光または光重合プロセスから発生する熱を抑えるのに役立つ場合がある。さらに、PEGやグリセロールなどの分子は、細胞培養の凍結保護剤として広く使用されている。したがって、低温プリントプロセス中にPEGなどのポリマーを使用すると、細胞の生存率が向上する可能性がある。
【0034】
分岐したマルチスケールの輸送システムは、すべての多細胞生物に見られる。血管網の非常に複雑な分岐構造と同様に、呼吸樹も、肺の遠位領域に十分な空気を供給するための複雑な分岐構造で構成されている。内皮細胞が肺上皮の分枝を助け得ることが示されている。しかしながら、現在の製造技術では、天然の肺組織の解剖学的な複雑さを模倣する構造は不可能である。3Dプリントを使用することによって、天然の肺組織および血管系の解剖学的な複雑さを模倣する構造を生成することが可能になるはずである。提案されたアプローチは、そのような構造をプリントすることを可能にし、血管および呼吸のネットワークを模倣するために、チャネル内腔に内皮および上皮の細胞型を埋め込むことを可能にすることができる。達成可能な円形断面は、チャネル内腔に沿ったコンフルエントな細胞層の発達を可能にする。提案されたアプローチの下でより高いz解像度を考慮すると、チャネルは、血管および呼吸のネットワークをより厳密に模倣することができる。開示された方法および材料は、複数のネットワークの幾何学的形状およびアーキテクチャの微調整を可能にすることができる。生理学的な血管網に類似したフラクタル空間充填モデルを使用することによって、このテクノロジーは、相互貫入するチャネルを有する関連する3D構築物の設計と製作を可能にする。
【0035】
さらに、提案されたアプローチは、ポロゲン浸出または表面コーティングなどの他のスキャフォールド製作技術と組み合わせて、修飾された内部マイクロアーキテクチャまたは表面特性を有する生理学的に関連する複雑な構築物をもたらすことができる。さらに、提案されたアプローチは、生体機能チップ(Organ-on-a-chipまたはhuman-on-a-chip)アプリケーション用のマイクロ流体デバイスの製作に使用することができる。さらに、より正確な層厚のプリントを確実にするために、特定のセンサーを含むようにプリンターを改変することができる。
【0036】
特定の実施形態では、前重合溶液が提供される。前重合溶液は、2,000ダルトンを超える分子量を有する感光性ポリマー、光開始剤、および光透過を制御するのに好適な生体適合性の光吸収添加材料を含む。一部の実施形態にでは、前重合溶液はまた、1つ以上の生細胞(本明細書では単に細胞と呼ぶ)を含むことができる。一部の態様では、前重合溶液は、低分子量PEG、グリセロール、エチレングリコール、スクロース、プロピレングリコール、トレハロース、ラフィノース、グアーガム、キサンタンガム、およびD-マンニトールなどの凍結保護剤を含み得る。凍結保護剤は、浸透性または非浸透性であり得る。これらの成分の各々は、本明細書でさらに詳細に説明されている。前重合溶液はまた、10重量%から約99.5重量%の含水量を含み得る。前重合溶液は、80重量%から約90重量%の含水量を含み得る。一部の態様では、前重合は、DMEM培地、血清、タンパク質、増殖因子、増粘剤および/または抗凝集剤の成分をさらに含み得る。かかる成分は、前重合溶液中の細胞に栄養および/または中性浮力を提供することができる。
【0037】
特定の実施形態では、分子量が2,000ダルトンを超える感光性ポリマーを使用することができる。感光性ポリマーは、ポリマーの分子当たり少なくとも2つのビニル基を含み得る。かかるビニル基としては、アクリレート、アクリルアミド、およびメタクリレートを挙げることができる。使用することができる感光性ポリマーとしては、例として、これらに限定されないが、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEDGA)、細胞接着性ポリ(エチレングリコール)、MMP感受性ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリレート(PEGDMA)、ポリ(エチレングリコール)ジアクリルアミド(PEGDAAm)、ゼラチンメタクリレート(GelMA)、メタクリル化ヒアルロン酸(MeHA)、およびPEG化フィブリノーゲンが挙げられる。感光性ポリマーはまた、CGRGDS(配列番号2)などの細胞接着性ペプチドのコンジュゲーションによって修飾することもできる。
【0038】
特定の実施形態では、光開始剤を使用することができる。光開始剤は、特定の波長範囲に感受性の分子であり、光を吸収すると、分子が崩壊してフリーラジカルを放出し、ヒドロゲルの重合を触媒することができる。かかる光開始剤としては、例として、限定されないが、リチウムアシルホスフィネート、Irgacure2959、エオシンYシステム(エオシンY、1-ビニル-2-ピロリジノン(NVP)、およびトリエタノールアミン(TEA)、トリス(トリフェンホスフィン)ルテニウム(II)、および典型的にはエチル4-N、N-ジメチルアミノ安息香酸エチルまたはTEAのいずれかとともに使用されるカンファーキノン、ならびにイソプロピルチオキサントン光増感剤を挙げることができる。高濃度の光開始剤を使用して、入射光の透過度を制限することにより、向上したz解像度を達成することができるが、これらの高濃度は、光重合反応を妨害し、細胞毒性であり得る。さらに、以前にプリントされた層を通して光が当たる可能性があるため、高濃度の光開始剤を使用すると、複雑なオーバーハング構造をプリントする能力が制限され、閉じ込められた細胞に光毒性を引き起こし得る。
【0039】
特定の実施形態では、生体適合性の光吸収添加材料を使用することができる。生体適合性の光吸収添加材料は、次の3つの基準に基づいて選択される:1)光開始剤の感光性の波長範囲を完全に包含する光波長を吸収する能力、2)光重合反応の限定された関与または限定された阻害、および3)所望の濃度での生体適合性。生体適合性の光吸収添加材料は、有機物であり得る。生体適合性の光吸収添加材料には、例として、カーボンブラック、黄色の食品着色料、タートラジン、ナノ粒子、微小粒子、金ナノ粒子、リボフラビン、フェノールレッド、β-カロチン、クルクミン、サフラン、およびターメリックが含まれ得るが、これらに限定されない。さらに、シアン蛍光タンパク質(CFP)または緑色蛍光タンパク質(GFP)などの光開始剤と同じ領域で吸収するタンパク質でトランスフェクトもしくは形質導入された細胞を、低減された添加剤とともにまたは添加剤なしで、高濃度で使用することができ、細胞内に存在する光吸収分子による側方の過硬化が減少する。生体適合性の光吸収添加材料は、投影された光の透過を厳密に制御することにより、水平チャネルと垂直チャネルの両方を有するヒドロゲルのプリントを可能に、すでにプリントされた層への光の透過が減少するため、高いz解像度が可能になる。
【0040】
一部の実施形態では、ヒドロゲルマトリックスが提供される。ヒドロゲルマトリックスは、第1の管状チャネルおよび第2の管状チャネルを含み得る。ヒドロゲルマトリックスは、多孔性であり得る。ヒドロゲルマトリックスはまた、その中に埋め込まれた第1の細胞型および第2の細胞型を含み得る。特定の態様では、ヒドロゲルマトリックスは、その中に埋め込まれた第1の細胞型を含み得る。
【0041】
ヒドロゲルマトリックスは、1つ以上の層で生成され得、特定の実施形態では、1,000層超、約10層~約2,000層、約10層~約1,000層、約10~約500層、約10~約100層、約100~約2,000層、約100~約1,000層、約100層~500層、約100層~約300層、約500層~約1,000層、約500層~約2,000層、約1,000層~約2,000層、および上記のそれらの間の任意の範囲を含む。特定の実施形態では、各層は、約25ミクロン~約100ミクロン、約50ミクロン~約100ミクロン、約25ミクロン~約50ミクロン、およびそれらの間の任意の範囲の厚さを有し得る。特定の他の態様では、各層は、50ミクロンの厚さを有し得る。さらに他の態様では、各層は、50ミクロン未満の厚さを有し得る。一部の実施形態では、各層は、25ミクロンの厚さを有し得る。特定の態様では、各層は、100ミクロンの厚さを有し得る。特定の態様では、1つ以上の層のヒドロゲルマトリックスは、第1の細胞型を含むことができ、他の1つ以上の層のヒドロゲルマトリックスは、第2の細胞型を含むが、第1の細胞型は含まない。
【0042】
1つ以上の層のヒドロゲルマトリックスは、その中に埋め込まれた細胞を有し得る。特定の態様では、細胞が埋め込まれた1つ以上の層のヒドロゲルマトリックスに隣接する1つ以上の層のヒドロゲルマトリックスは、細胞外マトリックスタンパク質を含む。
【0043】
1つ以上の層のヒドロゲルマトリックスは、感光性ポリマーから形成することができる。特定の態様では、1つ以上の層のヒドロゲルマトリックスは、第2の感光性ポリマーから形成することができる。1つ以上の層のヒドロゲルマトリックスは、各々、第1の部分および第2の部分を含み得る。特定の態様では、第1の部分は、感光性ポリマーから形成され、第2の部分は、2,000ダルトン超の分子量を有する第2の感光性ポリマーから形成される。特定の態様では、第1の部分は、その中に埋め込まれる第1の細胞型を含むことができ、第2の部分は、その中に埋め込まれた第2の細胞型を含むことができ、第1の細胞型は、第2の細胞型とは異なる。特定の態様では、第1の部分は、第1のフルオロフォアを含むことができ、第2の部分は、第2のフルオロフォアを含むことができ、第1のフルオロフォアは、第2のフルオロフォアとは異なる。
【0044】
一部の実施形態では、ヒドロゲルは、第1の管状チャネルおよび第2の管状チャネルを含むことができる。特定の態様では、第1の管状チャネルおよび第2の管状チャネルは、各々、複数の層のバルクヒドロゲルマトリックスと交差する水平セグメントを含むことができる。第2の管状チャネルは、第1のチャネルを相互貫入することができ、相互貫入は、2つのチャネル間の空間的関係として定義され、一方のチャネルは、他方のチャネルの2つの別個の部分間の平面を、少なくとも1回交差する。管状チャネルはまた、分岐することもできる。例えば、トーラスノットモデルで観察されるように、管状チャネルは分岐してもよく、管状チャネルは、ヒドロゲル内の別の点で再収束する。しかしながら、分岐構造はまた、第1の管状チャネルおよび/または第2の管状チャネルから延出し、ヒドロゲル内で終結するチャネルを含み得る。例えば、樹状構造は、現在のアプローチを使用して設計および生成することができる。特定の実施形態では、管状チャネルは、300~500ミクロン、500ミクロン以下、400ミクロン以下、または300ミクロン以下の直径を有する。管状チャネルも灌流可能であり得る。さらに、管状チャネルはまた、その中の圧力の増加に応答して拡張可能であり得る。管状チャネルは、上皮細胞および内皮細胞を含む細胞で裏打ちされ得る。特定の態様では、第1の管状チャネルは、内皮細胞で裏打ちされている。特定の態様では、第2の管状チャネルは、上皮細胞で裏打ちされている。
【0045】
第1の管状チャネルはまた、ヒドロゲルマトリックスの表面上に第1の管状入口および第1の管状出口を含むことができる。第2の管状チャネルはまた、ヒドロゲルマトリックスの表面上に第2の管状入口および第2の管状出口を含むことができる。第1の管状チャネルは、弁または他の正の特徴を含むことができる。管状チャネルはまた、そこからヒドロゲルマトリックスに延びるスパイクを含み得る。管状チャネルは、任意の適切な流体またはガスで満たすことができる。かかる流体またはガスは、例として、限定されないが、体液および酸素を含み得る。特定の態様では、第1の管状チャネルは、流体で満たすことができる。
【0046】
特定の他の態様では、第1の管状チャネルは、培養培地、赤血球、血液、尿、胆汁、および/またはガス(窒素および/または酸素など)で満たすことができる。特定の態様では、第2の管状チャネルは、培養培地、赤血球、血液、尿、胆汁、および/またはガス(窒素および/または酸素など)で満たすことができる。管状チャネルはまた、1つ以上の異なる流体および/またはガスで満たすことができる。
【0047】
本開示のヒドロゲルは、3つ以上の管状チャネルを含むことができる。例えば、ヒドロゲルは、第3の管状チャネルおよび第4の管状チャネルを含むことができる。管状チャネルは、他の複数の管状チャネルを相互貫入することができる。例えば、第3の管状チャネルは第4の管状チャネルを相互貫入することができる。同様に、第2の管状チャネルは、第1の管状チャネルおよび第3の管状チャネルを相互貫入することができる。複数の管状チャネルを含む管状チャネルネットワークはまた、少なくとも1つの管状チャネルネットワークまたは少なくとも1つの他の管状チャネルネットワークを相互貫入することができる。例えば、第3の管状チャネルは、第2の管状チャネルによっても相互貫入される第1の管状チャネルを相互貫入し得る。別の例として、第3の管状チャネルおよび第4の管状チャネルは、第1の管状チャネルを、または第1の管状チャネルおよび第2の管状チャネルを含む相互貫入ネットワークを、相互貫入しているおよび相互貫入することができる。このようにして、管状チャネルと管状チャネルネットワークとの間の複雑な相互作用を可能にする複雑なモデルを構築することができる。複数の管状チャネルの前述の例は、例示的な目的のみであり、本開示を限定することを意図するものではない。
【0048】
本デバイスの様々な特徴に関するポリマーのリストは、任意の所与のポリマーへの潜在的な修飾が、分解性部分または非分解性部分にとって有用である可能性があるため、重複する場合があることに留意されたい。分解性部分は、多くの目的に役立ち、血管新生促進化合物、酸素放出化合物、免疫調節化合物、または他の生物学的に活性な化合物、ならびに細胞(内皮細胞を含む)を含むことを含む。分解性物質は、これらに限定されないが、それが移植される局所部位に影響を及ぼし(血管形成、免疫調節、および他の化合物の制御放出を含む)、かつ/またはこれらおよび他の関連手段を通してデバイスの非分解性部分に有用な利点を付与することができる。
【0049】
B.多層ヒドロゲルマトリックス構築物を製造するためのプロセス
特定の実施形態では、多層ヒドロゲルマトリックス構築物を製造するためのプロセスが提供される。最初に、多層ヒドロゲルマトリックス構築物の3Dモデルは、設計ソフトウェアを使用して作製され、多層ヒドロゲルマトリックス構築物の3Dモデルは、多層ヒドロゲルマトリックス構築物において第1の細長いボイドを生成して第1の管状チャネルを提供する第1の計算アルゴリズムと、多層ヒドロゲルマトリックス構築物において第2の細長いボイドを生成して第2の管状チャネルを提供する第2の計算アルゴリズムとを含み、第2の計算アルゴリズムは、第1の管状チャネルを相互貫入する第2の管状チャネルをもたらす。次いで、3Dモデルは、3Dプリントソフトウェアでの使用に好適な形式に変換され、フォーマットされた3Dモデルが生成される。次いで、フォーマットされた3Dモデルが、3Dプリントソフトウェアにインポートされ、3Dプリントソフトウェアは、3Dモデルを複数の2次元(2D)xy画像にスライスするようにプログラムされている。前重合溶液は、3Dプリンターの構築プラットフォームに付随するバットに供給され、バットは透明であり、前重合溶液は、2000ダルトン超の分子量および1分子当たり少なくとも2つのビニル基を有する感光性ポリマー、光の透過を制御するための光吸収添加材料、および光開始剤を含む。バットはまた、疎水性コーティングなどのヒドロゲルが付着しないコーティングを含み得る。例えば、コーティングはポリジメチルシロキサン(PDMS)であり得る。これにより、ヒドロゲルを、付着することなくバットから分離することができる。3Dプリンターの可動Z軸ステージは、バットから離して配置され、Z軸ステージは、ゲル化材料がそれに付着するのに十分な表面を含み、表面とバットの内側の底面との間の距離は、組織構築物の所望の層厚に相当する。次いで、パターンが、バットの内側の底面に投影される。例えば、光源は、パターンを生成するために、DLPシステムなどの光学構成を介して投影され得る。次いで、多層ヒドロゲルマトリックス構築物の層が重合される。前重合溶液を供給するステップ、可動Z軸ステージを配置するステップ、光源を投射するステップ、および層を重合するステップは、1回以上繰り返すことができ、可動Z軸ステージは、移動距離が後続の各層の所望の厚さに相当し、同じまたは異なるパターンが後続の各層に対して表示される。特定の態様では、少なくとも前重合溶液をバットに供給するステップ、可動Z軸ステージを配置するステップ、光学構成を通して光源を投射するステップ、および多層組織構築物の層を重合するステップは、低温条件下で行われる。低温条件には、4℃の温度が含まれ得る。光学構成には、コリメーター、コンデンサー、フィルター、およびDMDアレイが含まれ得る。例えば、光学構成は、デジタル光処理システムの一部であり得る。
【0050】
特定の態様では、距離は、50ミクロン~100ミクロンである。特定の他の態様では、距離は50ミクロンである。光学構成は、ミラーを含むことができ、ミラーは、バットの内側の底面に、パターンを提供するように配置される。ミラーを前後にスライドさせて、投影を中央に配置し、多層ヒドロゲルマトリックス構造の層の位置合わせを行うことができる。
【0051】
一部の実施形態では、繰り返しステップは、第2の層を生成するために少なくとも1回行われ、第2の層に使用される前重合溶液は、第1の層を製作するために使用される感光性ポリマーとは異なる第2の感光性ポリマーを含む。特定の態様では、第2の感光性ポリマーは、感光性ポリマーとは異なる分子量を有し得る。繰り返しステップは、第1の管状チャネルおよび第2の管状チャネルを有する多層ヒドロゲルマトリックス構築物を生成するのに十分な回数行うことができる。
【0052】
特定の実施形態では、第1の計算アルゴリズムは、結び目理論から導出され得る。特定の態様では、第1の計算アルゴリズムおよび/または第2の計算アルゴリズムは、ヒルベルト曲線であり得る。第1の計算アルゴリズムおよび第2の計算アルゴリズムは、マレーの法則に準拠し得る。特定の態様では、第1の計算アルゴリズムは、第1の管状チャネルの分岐をもたらし得る。第1の計算アルゴリズムおよび第2の計算アルゴリズムは、数学的空間充填モデルを含むことができる。数学的空間充填モデルには、配管工の悪夢、ペアノ曲線、ヒルベルト曲線、ピタゴラスの木、およびブラウンの木のモデルが含まれ得る。
【0053】
組み立てられた3Dプリンターは、自動化されたコンピューター支援3Dプロトタイピングデバイスであり、積層造形(additive manufacturing)を利用して、感光性生体材料を1層ずつ選択的にパターン化し、3D組織工学構築物を生成する。プリンターには、可動Z軸ステージが含まれ、バットを含むビルドプラットフォームに下げられる。バットには、,感光性ポリマーおよび光開始剤を含む前重合溶液が含まれている。Z軸ステージに取り付けられているものは、ゲル化材料が付着する表面である。さらに、プリンターのベースには45度のミラーがあり、透明なバットの内側の底面に、水平方向の投影を反射する。組み立てられたプリンターには、マイクロエレクトロニクスも搭載され、プリントプロセスが自動化される。
【0054】
構造をプリントするために、3Dモデルがコンピューター支援設計(CAD)ソフトウェアで作製され、ステレオリソグラフィー(.stl)形式にエクスポートされる。.stlファイルは、プリントパラメータが入力されるソフトウェアにインポートされる。次いで、ソフトウェアは、3Dモデルを2次元(2D)xy画像へと計算的にスライシングする。これは動的フォトマスクとして機能し、入力されたプリントパラメータを使用して、制御された自動プリント用のコマンドを生成する。透明なバットが前重合混合物で満たされると、バットの表面と内側の底面との間の距離が所望の層厚になるように、Z軸ステージがバットに下げられる。次いで、光源は、コリメーター、コンデンサー、フィルター(特定の波長を選択するためのダイクロイックまたはバンドパスなど)、およびDMDアレイ(市販のプロジェクターまたはピコプロジェクターなど)の組み合わせを含む光学セットアップを介して光を投影し、パターン(3Dモデルの最初の層)で、バットの内側の底面に、特定の3Dパターン化された層が得られる。材料がゲル化した後、Z軸ステージは自動的に次の層の高さまで移動し、プロセスは、最終的な3D構築物が得られるまで、連続した自動投影/Z軸ステージ移動が自動的に継続する。
【0055】
さらに、プロジェクターデバイスからの出力は均一でない場合がある。したがって、本発明者らは、投影パターンが意図しない不均一な特性を有しないように、出力またはフラットフィールドを均質化する。この目的のために、リン光物質のフィルムにブランク露光を投影し、次いで発光画像を得た。この画像には、MATLABなどの数値計算プログラムで基本的に正規化され、反転された強度値の2Dマトリックスが含まれる。反転画像は本質的にフィルターとして機能し、より均一な出力をもたらし、投影された層全体にわたって材料のゲル化が均一になるようにする。
【0056】
このアセンブリの変更は、必要に応じて、プリントプロセス中により多くの前重合溶液を自動的に分配するために、シリンジセットアップの追加を伴い得る。異なる材料でより不均一な構築物を実現するために、アセンブリの変更は、ビルドプラットフォーム、バット、および/またはZ軸ステージの変更が含まれ、この手法で、複数の材料を自動的にプリントすることができる。例えば、ビルドプラットフォームは、複数のバットを収容するように設計され得、バットには、複数の材料で3Dヒドロゲルをプリントするための異なる材料が含まれる。
【0057】
相互貫入気道ネットワークを有するマルチスケールの分岐血管網は、その基本構成でバイオプリンターを使用することによって製作することができる。このモデルは、CADソフトウェアで作製され、「.stl」形式にエクスポートされる。エクスポートされたファイルがソフトウェアにアップロードされ、プリントパラメータが入力される。前重合溶液が調製されると、ビルドプラットフォームに収容されるバットに移される。次いで、Z軸ステージを下げて、所望の層厚を得る。3Dモデルの一連の自動投影とZステージ変換により、最終的な3Dプリントされたヒドロゲルが得られる。次いで、3Dバイオプリントヒドロゲルを、Zプラットフォームから取り外すことができる。3Dプリントモデルの血管チャネルは、内皮細胞の灌流によって内皮化することができ、気道チャネルは、上皮細胞の灌流によって上皮化することができる。血管網は、血液供給として機能し、ヒドロゲルの大部分の細胞に酸素および栄養素を送達し、気道網は、血管網に酸素を供給する手段を提供する。
【0058】
しかしながら、入口の圧力が出口の圧力よりも低くなると、バルブが閉じて、リーフレットを通る流体の逆流がブロックされる。鋭い先端を有するスパイクなどの負の特徴を利用して、播種された内皮細胞のバルクヒドロゲル領域への空間的な出芽を制御することができる。
【0059】
線維芽細胞の外層、平滑筋細胞の内層、および内皮化された内腔からなる多層の血管は、複数の材料を用いてプリントされ得る構成でバイオプリンターを使用することによって、製作することができる。線維芽細胞、平滑筋細胞、および内皮細胞は、適切な培養条件で別々に培養される。線維芽細胞および平滑筋細胞は、フォトポリマーおよび光開始剤を含む前重合溶液と、所望の密度で個別に混合される。次いで、細胞を含む前重合溶液を、ビルドプラットフォーム上のバットに入れる。
【0060】
さらに、ビルドプラットフォームには、3Dモデルのベースをプリントするために使用される無細胞前重合混合物を含むバットが収容されてもよい。Z軸ステージは、所望の層厚で無細胞前重合混合物に下げられ、プリントプロセスが開始される。十分なベース層がプリントされると、Z軸ステージがベースバットから後退し、次の層の高さで、平滑筋細胞を含む前重合混合物を含む第2の材料の位置に下げられる。その層のゲル化後、Z軸ステージは、第2のバットから移動し、汚染を減らすために無細胞前重合混合物ですすがれ、以前の投影と同じ層の高さで、線維芽細胞を含む前重合混合物を含む第3のバットに下げられる。この層がゲル化した後、得られた層は、2つの異なる細胞型のパターンからなる。Z軸ステージは、第3のバットから移動し、すすがれ、第2のバットに戻り、最終的な多層マルチマテリアル3Dヒドロゲルがバイオプリントされるまで、このプロセスが繰り返される。次いで、3Dバイオプリントされたヒドロゲルが取り外され、チャネルを内皮細胞で灌流することによって内皮化される。
【0061】
II.生物学的材料
開示されたデバイスは、1つ以上の生物学的材料を含むことができる。材料は、疾患、障害、状態、症状などを診断または治療するために使用することができる任意の化合物、組成物、コンジュゲート、または構築物である。そのような材料剤の例としては、細胞、組織、細胞産物、組織産物、タンパク質、抗体、ワクチン、ワクチン成分、抗原、エピトープ、薬物、塩、栄養素、緩衝剤、酸、および塩基が挙げられる。
【0062】
開示されたデバイスに含めるための生物学的材料は、任意の生物学的物質であり得る。例えば、生物学的材料は、組織、細胞、生体小分子、または生体高分子であり得る。生体高分子の例としては、ヌクレオチド、アミノ酸、補因子、およびホルモンが挙げられる。生体高分子の例としては、核酸、ポリペプチド、タンパク質、および多糖類が挙げられる。
【0063】
タンパク質の例としては、酵素、受容体、分泌タンパク質、構造タンパク質、シグナル伝達タンパク質、ホルモン、およびリガンドが挙げられる。任意のクラス、タイプ、形態、または特定の生物学的材料を、他のクラス、タイプ、形態、または特定の生物学的材料と一緒に使用することができる。
【0064】
A.細胞
一部の実施形態では、デバイスは、細胞または組織(例えば、生きた細胞または組織)を含むことができ、これは、一部の実施形態では、ポリマーにカプセル化されるか、またはポリマーでコーティングされる。かかる実施形態では、ポリマーカプセル化またはポリマーコーティングの表面は、本明細書に開示の部分または化合物で修飾される。一部の実施形態では、細胞は、治療用または診断用ポリペプチドをコードする外因性核酸を含み得る。
【0065】
開示されたデバイスに含めるために選択される細胞型は、所望の治療効果に依存する。細胞は、患者(自己細胞)、同じ種の別のドナー(同種細胞)、または別の種(異種)に由来してもよい。異種細胞は簡単に入手可能であるが、拒絶反応の可能性および患者へのありうるウイルス伝染の危険性により、臨床応用が制限される。これらのタイプの細胞はいずれも、天然源、幹細胞、派生細胞、または遺伝子操作された細胞に由来し得る。
【0066】
一部の実施形態では、細胞は、疾患または他の状態を治療するためのタンパク質またはホルモンなどの治療薬を分泌する遺伝子操作された細胞である。一部の実施形態では、細胞は、診断薬を分泌する遺伝子操作された細胞である。一部の実施形態では、細胞は、幹細胞、例えば、胚性幹細胞、間葉系幹細胞、肝幹細胞、または骨髄幹細胞である。
【0067】
開示されたデバイスに含めるための細胞のタイプには、天然源由来の細胞(異種組織由来の細胞、死体由来の細胞、および初代細胞)、幹細胞(胚性幹細胞、間葉系幹細胞、および誘導多能性幹細胞、派生細胞(幹細胞に由来する細胞、細胞株由来の細胞、再プログラム化された細胞、再プログラム化された幹細胞、および再プログラム化された幹細胞に由来する細胞など)、ならびに遺伝子操作された細胞(タンパク質または核酸を発現するように遺伝子操作された細胞、代謝産物を産生するように遺伝子操作された細胞、および毒性物質を代謝するように遺伝子操作された細胞など)が含まれる。
【0068】
開示されたデバイスに含めるための細胞のタイプには、肝細胞(例えば、肝芽細胞、肝星状細胞、胆管細胞、または肝細胞)、インスリン産生細胞(例えば、膵島細胞、単離された膵臓β細胞、またはインスリノーマ細胞)、腎細胞、表皮細胞、上皮細胞、神経系細胞(ニューロンおよびグリア細胞(例えば、星状細胞))、神経節細胞、網膜上皮細胞、副腎髄質細胞、肺細胞、心筋細胞、骨芽細胞、破骨細胞、骨髄細胞、脾臓細胞、胸腺細胞、腺細胞、血液細胞(例えば、T細胞、B細胞、マクロファージ系細胞、リンパ球、または単球)、内分泌ホルモン産生細胞(例えば、副甲状腺細胞、甲状腺細胞、または副腎細胞)、腸起源の細胞および主に物質を合成および分泌または代謝するように作用する他の細胞、内皮細胞(例えば、毛細血管内皮細胞)、線維芽細胞(例えば、皮膚線維芽細胞)、筋芽細胞、ケラチノサイト、平滑筋細胞、前駆細胞(例えば、骨髄前駆細胞、脂肪前駆細胞、肝前駆細胞、内皮前駆細胞、末梢血前駆細胞、または筋肉・皮膚由来の前駆細胞)、骨髄間質細胞、細胞株(例えば、CHO細胞、MDCK細胞、およびPC12細胞)が含まれる。
【0069】
特定の細胞型は、膵島細胞または他のインスリン産生細胞である。ホルモン産生細胞は、インスリン、副甲状腺ホルモン、抗利尿ホルモン、オキシトシン、成長ホルモン、プロラクチン、甲状腺刺激ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、チロキシン、カルシトニン、アルドステロン、コルチゾール、エピネフリン、グルカゴン、エストロゲン、プロゲステロン、およびテストステロンなどの1つ以上のホルモンを産生することができる。遺伝子操作された細胞もまた、開示されたデバイスに含めるのに好適である。一部の実施形態では、細胞は、インスリン、副甲状腺ホルモン、抗利尿ホルモン、オキシトシン、成長ホルモン、プロラクチン、甲状腺刺激ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、チロキシン、カルシトニン、アルドステロン、コルチゾール、エピネフリン、グルカゴン、エストロゲン、プロゲステロン、およびテストステロンなどの1つ以上のホルモンを産生するように操作される。一部の実施形態では、細胞は、血液凝固因子を分泌するように(例えば、血友病治療のために)、または成長ホルモンを分泌するように操作される。一部の実施形態では、細胞は、天然または生体工学的組織に含まれる。例えば、開示されたデバイスに含めるための細胞は、一部の実施形態では、バイオ人工腎糸球体である。一部の実施形態では、細胞は、神経変性疾患の治療のための中枢神経系への移植に好適である。
【0070】
特定の実施形態では、細胞は、前重合溶液および/またはヒドロゲルに含まれ得る。このような細胞には、内皮細胞型および上皮細胞型が含まれ得る。このような細胞は、ヒト間葉系幹細胞(hMSC)であり得る。例として、限定されないが、上皮細胞は、ヒト気管支上皮細胞(HBEC)、円柱繊毛上皮細胞、粘膜細胞、漿液細胞、基底細胞、クララ細胞、神経内分泌細胞、I型およびII型の肺胞細胞、ならびにA549腺癌ヒト肺胞基底上皮細胞を含み得る。例として、限定されないが、上皮細胞は、E-カドヘリン、サーファクタントタンパク質A、CおよびD、基底マーカーケラチン14、およびTTF-1に対する染色に基づいて特徴付けることができる。同様に、例として、限定されないが、内皮細胞は、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)、ヒト肺微小血管内皮細胞、および誘導多能性内皮細胞を含み得る。例として、限定されないが、内皮細胞は、血小板内皮細胞接着分子(PECAM/CD31)および血管内皮(VE)カドヘリンの染色に基づいて特徴付けることができる。
【0071】
細胞は、ドナーから直接得るか、ドナー由来の細胞の細胞培養から得るか、または確立された細胞培養株から得ることができる。特定の実施形態では、細胞はドナーから直接得られ、洗浄され、ポリマー材料と組み合わせて直接移植される。細胞は、組織培養の分野の当業者に既知の技術を使用して、培養される。
【0072】
細胞の生存率は、組織学的検査および蛍光顕微鏡などの標準的な手法を使用して評価することができる。移植された細胞の機能は、これらの技術と機能アッセイの組み合わせを使用して決定することができる。例えば、肝細胞の場合、カニューレをレシピエントの総胆管に配置することによって、インビボの肝機能試験を行うことができる。その後、胆汁を段階的に採取することができる。胆汁色素は、誘導体化されていないテトラピロールを検出する高圧液体クロマトグラフィーによって、またはP-グルクロニダーゼの有無のいずれかで、ジアゾ化アゾジピロールのアントラニル酸エチルとの反応によってアゾジピロールに変換した後で、薄層クロマトグラフィーによって分析することができる。二抱合型および一抱合型のビリルビンは、抱合胆汁色素のアルカリ性メタノリシス後、薄層クロマトグラフィーによっても測定することができる。一般に、機能している移植肝細胞の数が増えると、抱合型ビリルビンのレベルが上がる。簡単な肝機能検査(アルブミン産生など)は、血液試料でも行うことができる。類似の臓器機能試験は、移植後の細胞機能の程度を決定するために必要とされるように、当業者に既知の技術を使用して実施することができる。例えば、膵島細胞および他のインスリン産生細胞を移植して、インスリンの適切な分泌によってグルコース調節を達成することができる。他の内分泌組織や細胞も移植することができる。
【0073】
細胞が移植される1つまたは複数の部位は、必要な細胞数と同様に、個々の必要性に基づいて決定される。臓器または腺の機能を置換もしくは補完する細胞(例えば、肝細胞または膵島細胞)の場合、混合物を腸間膜、皮下組織、後腹膜、腹膜前腔、および筋肉内腔に注入することができる。
【0074】
開示されたデバイスに含まれる細胞の量および密度は、細胞の選択および移植の部位に応じて変化するであろう。一部の実施形態では、単一の細胞は、0.1×106~4×106細胞/ml、より具体的には、0.5×106~2×106細胞/mlの濃度でヒドロゲルカプセル内に存在する。他の実施形態では、細胞は、細胞凝集体として存在する。例えば、島細胞凝集体(または島全体)は、好ましくは、直径150μmの各凝集体当たり約1500~2000細胞を含み、これは、1島当量(islet equivalent、IEQ)として定義される。したがって、一部の実施形態では、膵島細胞は、100~10000IE/ml、特に200~3,000IE/ml、より具体的には500~1500IEQ/mlの濃度で存在する。
【0075】
1.島細胞および他のインスリン産生細胞
特定の実施形態では、開示された組成物は、島細胞または他のインスリン産生細胞を含む。膵島細胞を単離する方法は当該技術分野で既知である。Field et al.,Transplantation 61:1554(1996)、Linetsky et al.,Diabetes 46:1 120(1997).新鮮な膵臓組織は、刻む、裂く、粉砕する、かつ/またはコラゲナーゼで消化することによって分割することができる。次いで、洗浄、濾過、遠心分離、または選択の手順によって、混入した細胞および材料から島を単離することができる。島細胞を単離および精製するための方法および装置は、米国特許第5,447,863号、同第5,322,790号、同第5,273,904号、および同第4,868,121号に記載されている。単離された膵臓細胞は、当該技術分野で既知のように、膵島細胞を培養する任意の好適な方法を使用して、ヒドロゲルカプセルに含める前に、任意選択的に培養することができる。例えば、米国特許第5,821,121号を参照されたい。単離された細胞は、抗原性成分を排除するのに役立つ条件下で、培地中で培養され得る。また、インスリン産生細胞は、幹細胞および細胞株に由来し得、インスリンを産生するように遺伝子操作された細胞であり得る。
【0076】
2.遺伝子操作された細胞
一部の実施形態では、開示された組成物は、タンパク質または核酸(例えば、治療用タンパク質または核酸)を産生するように遺伝子操作された細胞を含む。これらの実施形態では、細胞は、例えば、幹細胞(例えば、多能性(pluripotent))、前駆細胞(例えば、多能性(multipotent)または少能性(oligopotent))、または最終分化細胞(すなわち、単能性)であり得る。開示された細胞型のいずれも、遺伝子操作することができる。細胞は、例えば、miRNAもしくはRNAiなどのポリヌクレオチド、またはタンパク質をコードするポリヌクレオチドをコードする核酸を含むように操作することができる。核酸は、例えば、安定した発現のために細胞のゲノムDNAに組み込まれ得るか、または例えば、発現ベクター(例えば、プラスミドDNA)に組み込まれ得る。ポリヌクレオチドまたはタンパク質は、治療される疾患(もしくは達成される効果)、および移植(transplantation)もしくは移植(implantation)の部位に基づいて選択することができる。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドまたはタンパク質は、抗悪性腫瘍性である。他の実施形態では、ポリヌクレオチドまたはタンパク質は、ホルモン、増殖因子、または酵素である。
【0077】
B.非細胞材料
一部の実施形態では、細胞は、タンパク質または核酸などの治療上有効な物質を分泌する。一部の実施形態では、細胞は、代謝産物を産生する。一部の実施形態では、細胞は、毒性物質を代謝する。一部の実施形態では、細胞は、皮膚、骨、軟骨、血管、または筋肉などの構造組織を形成する。一部の実施形態では、細胞は、インスリンを自然に分泌する島細胞、または自然に解毒する肝細胞などの天然の細胞である。一部の実施形態では、細胞は、異種のタンパク質もしくは核酸を発現するように、および/または内因性のタンパク質もしくは核酸を過剰発現するように遺伝子操作される。一部の実施形態では、細胞は、新しい産物または異なる産物を産生するように遺伝子操作され、それらは、操作された遺伝子の発現産物または操作された遺伝子のために産生された代謝産物などの別の産物であり得る。
【0078】
デバイスに含まれ得る治療剤、またはデバイスに含まれる細胞へと操作され得る治療剤には、例えば、甲状腺刺激ホルモン、Apolなどの有益なリポタンパク質、プロスタサイクリンおよび他の血管作動性物質、抗酸化剤およびフリーラジカルスカベンジャー、可溶性サイトカイン受容体(例えば、可溶性トランスフォーミング増殖因子(TGF)受容体)、またはサイトカイン受容体アンタゴニスト(例えば、IL1ra))、可溶性接着分子(例えば、ICAM-1)、ウイルスの可溶性受容体(例えば、HIVのCD4、CXCR4、CCR5)、サイトカイン、エラスターゼ阻害剤、骨形成タンパク質(BMP)およびBMP受容体1および2、エンドグリン、セロトニン受容体、組織性メタロプロテアーゼ阻害物質、カリウムチャネルまたはカリウムチャネルモジュレーター、抗炎症因子、血管新生因子(血管内皮増殖因子(VEGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、肝増殖因子、および低酸素誘導因子(HIF))、神経栄養および/または抗血管新生活性を有するポリペプチド(毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア由来神経栄養因子(GDNF)、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3、nurturin、線維芽細胞増殖因子(FGF)、エンドスタチン、ATF、トロンボスポンジンの断片、それらのバリアントなど)が含まれる。より具体的なポリペプチドは、酸性FGF(aFGF)、塩基性FGF(bFGF)、FGF-1およびFGF-2、ならびにエンドスタチンなどのFGFである。
【0079】
一部の実施形態では、活性剤は、タンパク質またはペプチドである。タンパク質活性剤の例としては、これらに限定されないが、サイトカインおよびそれらの受容体、ならびにサイトカインまたはそれらの受容体を含むキメラタンパク質(例えば、腫瘍壊死因子αおよびβ、それらの受容体およびそれらの誘導体が含まれる)、レニン、リポタンパク質、コルヒチン、プロラクチン、コルチコトロピン、バソプレシン、ソマトスタチン、リプレシン、パンクレオザイミン、ロイプロリド、α-1-アンチトリプシン、凝固因子(第VIIIC因子、第IX因子、組織因子、およびフォン・ウィルブランド因子など)、抗凝固因子(プロテインCなど)、心房性ナトリウム利尿因子;肺サーファクタント;組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)以外のプラスミノーゲン活性化因子(例えば、ウロキナーゼ)、ボンベシン、トロンビン、造血成長因子、エンケファリナーゼ、RANTES(通常はT細胞が発現および分泌する活性化で調節される)、ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP-1-α)、血清アルブミン(ヒト血清アルブミンなど)、ミュラー管抑制因子、リラキシンA鎖、リラキシンB鎖、プロレラキシン、マウスゴナドトロピン関連ペプチド、絨毛性ゴナドトロピン、微生物タンパク質(βラクタマーゼなど)、DNase、インヒビン、アクチビン、ホルモンまたは増殖因子の受容体、インテグリン、プロテインAまたはD、リウマトイド因子、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮増殖因子(EGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)(TGF-aおよびTGF-βなど、TGF-β1、TGF-2、TGF-3、TGF-4、またはTGF-5を含む)、インスリン様増殖因子-Iおよび-II(IGF-IおよびIGF-II)、des(l-3)-IGF-I(脳IGF-I)、インスリン様増殖因子結合タンパク質、CDタンパク質(CD-3、CD-4、CD-8、およびCD-19など)、エリスロポエチン、骨誘導因子、免疫毒素、インターフェロン(インターフェロンα(例えば、インターフェロンα2A)、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、インターフェロン-λ、およびコンセンサスインターフェロンなど)、コロニー刺激因子(CSF)(例えば、M-CSF、GM-CSF、およびG-CSF)、インターロイキン(IL)(例えば、IL-1からIL-10)、スーパーオキシドジスムターゼ、T細胞受容体、表面膜タンパク質、崩壊促進因子、輸送タンパク質、ホーミング受容体、アドレシン、生殖能抑制因子(プロスタグランジンなど)、生殖能促進因子、調節タンパク質、抗体(そのフラグメントを含む)およびキメラタンパク質(イムノアドヘシンなど)、これらの化合物の前駆体、誘導体、プロドラッグおよび類似体、ならびにこれらの化合物の薬学的に許容される塩、またはそれらの前駆体、誘導体、プロドラッグおよび類似体、が挙げられる。好適なタンパク質またはペプチドは、天然または組換えであり得、例えば、融合タンパク質を含み得る。
【0080】
また、タンパク質活性剤の例としては、CCL1、CCL2(MCP-1)、CCL3(ΜΙΡ-Ια)、CCL4(MIP-Ιβ)、CCL5(RANTES)、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9(CCL10)、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CCL28、CXCL1(KC)、CXCL2(SDFla)、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8(IL8)、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCL17、CX3CL1、XCL1、XCL2、TNFA、TNFB(LTA)、TNFC(LTB)、TNFSF4、TNFSF5(CD40LG)、TNFSF6、TNFSF7、TNFSF8、TNFSF9、TNFSF10、TNFSF11、TNFSF13B、EDA、IL2、IL15、IL4、IL13、IL7、IL9、IL21、IL3、IL5、IL6、IL11、IL27、IL30、IL31、OSM、LIF、CNTF、CTF1、IL12a、IL12b、IL23、IL27、IL35、IL14、IL16、IL32、IL34、IL10、IL22、IL19、IL20、IL24、IL26、IL29、IFNL1、IFNL2、IFNL3、IL28、IFNA1、IFNA2、IFNA4、IFNA5、IFNA6、IFNA7、IFNA8、IFNA10、IFNA13、IFNA14、IFNA16、IFNA17、IFNA21、IFNB1、IFNK、IFNW1、IFNG、ILIA(IL1F1)、IL1B(IL1F2)、ILIRa(IL1F3)、IL1F5(IL36RN)、IL1F6(IL36A)、IL1F7(IL37)、IL1F8(IL36B)、IL1F9(IL36G)、ILIFIO(IL38)、IL33(IL1F11)、IL18(IL1G)、IL17、KITLG、IL25(IL17E)、CSF1(M-CSF)、CSF2(GM-CSF)、CSF3(G-CSF)、SPP1、TGFB1、TGFB2、TGFB3、CCL3L1、CCL3L2、CCL3L3、CCL4L1、CCL4L2、IL17B、IL17C、IL17D、IL17F、AIMP1(SCYE1)、MIF、Areg、BC096441、Bmp1、Bmp1O、Bmp15、Bmp2、Bmp3、Bmp4、Bmp5、Bmp6、Bmp7、Bmp8a、Bmp8b、Clqtnf4、Ccl21a、Ccl27a、Cd70、Cerl、Cklf、Clcf1、Cmtm2a、Cmtm2b、Cmtm3、Cmtm4、Cmtm5、Cmtm6、Cmtm7、Cmtm8、Crlf1、Ctf2、Ebi3、Edn1、Fam3b、Fas1、Fgf2、Flt31、GdflO、Gdfll、Gdfl5、Gdf2、Gdf3、Gdf5、Gdf6、Gdf7、Gdf9、Gml2597、Gml3271、Gml3275、Gml3276、Gml3280、Gml3283、Gm2564、Gpi1、Grem1、Grem2、Grn、Hmgb1、Ifnal1、Ifnal2、Ima9、Ifnab、Ifne、1117a、1123a、1125、1131、Iltifb,Inhba、Lefty1、Lefty2、Mstn、Nampt、Ndp、Nodal、Pf4、Pglyl、Prl7dl、Scg2、Scgb3al、Slurp1、Spp1、Thpo、TnfsflO、Tnfsfl1、Tnfsfl2、Tnfsfl3、Tnfsfl3b、Tnfsfl4、Tnfsfl5、Tnfsfl8、Tnfsf4、Tnfsf8、Tnfsf9、Tslp、Vegfa、Wnt1、Wnt2、Wnt5a、Wnt7a、Xcl1、エピネフリン、メラトニン、トリヨードチロニン、チロキシン、プロスタグランジン、ロイコトリエン、プロスタサイクリン、トロンボキサン、膵島アミロイドポリペプチド、ミュラー管抑制因子またはホルモン、アディポネクチン、コルチコトロピン、アンジオテンシン、バソプレシン、アルギニンバソプレシン、アトリオペプチン、脳性ナトリウム利尿ペプチド、カルシトニン、コレシストキニン、コルチスタチン、エンケファリン、エンドセリン、エリスロポエチン、濾胞刺激ホルモン、ガラニン、胃抑制ポリペプチド、ガストリン、グレリン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド-1、ゴナドトロピン放出ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、ヘプシジン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、ヒト胎盤ラクトゲン、成長ホルモン、インヒビン、インスリン、ソマトメジン、レプチン、リポトロピン、黄体形成ホルモン、メラニン細胞刺激ホルモン、モチリン、オレキシン、オキシトシン、膵臓ポリペプチド、副甲状腺ホルモン、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド、プロラクチン、プロラクチン放出ホルモン、レラキシン、レニン、セクレチン、ソマトスタチン、トロンボポエチン、サイロトロピン、サイロトロピン放出ホルモン、血管作用性腸ペプチド、アンドロゲン、アンドロゲン、酸性マルターゼ(α-グルコシダーゼ)、グリコーゲンホスホリラーゼ、グリコーゲン脱分枝酵素、ホスホフルクトキナーゼ、ホスホグリセリン酸キナーゼ、ホスホグリセリン酸ムターゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ、カルニチン、およびミオアデニル酸デアミナーゼが挙げられる。
【0081】
開示されたデバイスに含まれるホルモン、またはデバイスに含まれる細胞から産生されるホルモンは、任意の目的のホルモンであり得る。内分泌ホルモンの例には、抗利尿ホルモン(ADH)(下垂体後葉によって産生され、腎臓を標的とし、水分バランスおよび血圧に影響を与えるが含まれる)、オキシトシン(下垂体後葉によって産生され、子宮、乳房を標的とし、子宮収縮および乳汁分泌を刺激する)、成長ホルモン(GH)(下垂体前葉によって産生され、身体の細胞、骨、筋肉を標的とし、成長と発達に影響を与える)、プロラクチン(下垂体前葉によって産生され、乳房を標的とし、乳汁分泌を維持する)、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)(GHの放出ホルモンであり、視床下部の弓状核で産生される)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)(下垂体前葉によって産生されるは、甲状腺を標的とし、甲状腺ホルモンを調節する)、サイロトロピン放出ホルモン(TRH)(視床下部によって産生され、下垂体前葉からのTSHおよびプロラクチンの放出を刺激する)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)(下垂体前葉によって産生され、副腎皮質を標的とし、副腎皮質ホルモンを調節する)、卵胞刺激ホルモン(FSH)(下垂体前葉によって産生され、卵巣/精巣を標的とし、卵子および精子の産生を刺激する)、黄体形成ホルモン(LH)(下垂体前葉によって産生され、卵巣/精巣を標的とし、排卵と性ホルモンの放出を刺激する)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)(別名ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)は、視床下部内のGnRHニューロンで合成およびそれより放出され、FSHおよびLHの放出に関与する栄養ペプチドホルモン)、チロキシン(甲状腺によって産生され、体細胞を標的とし、代謝を調節する)、カルシトニン(甲状腺によって産生され、副腎皮質を標的とし、血中カルシウムを低下させる)、副甲状腺ホルモン(副甲状腺によって生成され、骨基質を標的とし、血中カルシウムを上昇させる)、アルドステロン(副腎皮質によって産生され、腎臓を標的とし、水分バランスを調節する)、コルチゾール(副腎皮質によって産生され、体細胞を標的とし、免疫系およびストレス反応を弱める)、エピネフリン(副腎髄質によって産生され、心臓、肺、肝臓、および体細胞を標的とし、主に「戦うか逃げるか」の反応に影響を及ぼす)、グルカゴン(膵臓によって産生され、肝臓、身体を標的とし、血糖値を上昇させる)、インスリン(膵臓によって産生され、体細胞を標的とし、血糖値を下げる)、エストロゲン(卵巣によって産生され、生殖器系を標的とし、思春期、月経、性腺の発達に影響を及ぼす)、プロゲステロン(卵巣によって産生され、生殖器系を標的とし、思春期、月経周期、および性腺の発達に影響を及ぼす)、テストステロン(副腎、精巣によって産生され、生殖器系を標的とし、思春期、性腺の発達、および精子に影響を与える)。
【0082】
一部の実施形態では、タンパク質は、成長ホルモン(ヒト成長ホルモン(hGH)、組換えヒト成長ホルモン(rhGH)、ウシ成長ホルモン、メチオン-ヒト成長ホルモン、デス-フェニルアラニンヒト成長ホルモン、およびブタ成長ホルモンなど)、インスリン、インスリンA鎖、インスリンB鎖、およびプロインスリン、または増殖因子(血管内皮増殖因子(VEGF)、神経成長因子(NGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮増殖因子(EGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、ならびにインスリン様増殖因子-Iおよびインスリン様増殖因子-II(IGF-IおよびIGF-II))である。
【0083】
III.アルギネートの免疫隔離
細胞療法を成功させる上での基本的な障壁は、埋め込み型デバイスの文脈を含めて、生体適合性の移植デバイスの欠如である。移植された生体材料は、異物反応(FBR)を引き起こす。これは、炎症イベントと創傷治癒プロセスのカスケードであり、線維症(仕切り形成)およびその後の移植の失敗につながる(12~14)。この反応は、天然に存在するポリマーから合成材料まで、多くの材料について記載されている(15~17)。したがって、FBRを排除するというこの重要な課題を克服する生体材料を開発するための重要な医学的ニーズが存在する。
【0084】
この問題に対処するために、本発明者らは、免疫隔離アルギネートを使用して、本出願のデバイスに含まれる細胞の保護コーティングを作製することを企図する。コンビナトリアルケミストリーおよびハイスループットスクリーニングを使用して免疫調節性小分子を同定し(Vegas et al.,2016b)、非ヒト霊長類での線維症の予防および細胞の長期生存におけるこれらの小分子の長期有効性を検証した。
【0085】
本開示は、特定の実施形態では、分解性シェルおよび非分解性コアを含むデバイスを提供する。特定の実施形態では、非分解性コアは、カプセル化された治療用細胞および/またはバイオセンサーを含むことができ、分解性シェルは、血管増殖のためのスキャフォールドとして機能し、細胞および/またはバイオセンサーへの血流を増強する。本発明者らは、最新の3Dバイオプリンティング技術を適用して、長期の生存および機能性のために免疫隔離された治療用細胞構築物の血管形成を誘導し、より高い密度の治療用細胞の生着を可能にした。
【0086】
一実施形態は、細胞含有デバイスの構築における修飾アルギネートポリマーの使用を提供する。修飾アルギネートポリマーは、任意の所望の分子量のポリマーであり得る。アルギネートの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定した場合、好ましくは、1,000~1,000,000ダルトン、より好ましくは、10,000~500,000ダルトンである。
【0087】
修飾されたアルギネートポリマーは、任意の比率のマンヌロン酸モノマー、グルロン酸モノマー、および共有結合的に修飾されたモノマーを含むことができる。一部の実施形態では、修飾アルギネートポリマー中の2.5%、5%、7.5%、10%、12%、14%、15%、16%、18%、20%、22%、24%、25%、26%、28%、30%、32.5%、35%、37.5%、40%、45%、50%、55%、または60%のモノマーは、共有結合的に修飾されたモノマーである。修飾アルギネートポリマー中のモノマーの10%超、20%超、または30%超は、共有結合的に修飾されたモノマーである。
【0088】
修飾アルギネートポリマーは、様々な異なる水素結合ポテンシャル、疎水性/親水性、および電荷状態を有する共有結合的に修飾されたモノマーを組み込んで生成され得る。アルギネートポリマーに共有結合的に修飾されたモノマーを含めると、アルギネートポリマーの生理化学的特性が変化する。したがって、アルギネートの生理化学的特性は、共有結合的に修飾されたモノマーを選択的に組み込むことによって、所望の用途に合わせて調整することができる。
【0089】
例えば、ガラス転移温度(Tg)は、共有結合的に修飾されたモノマーを組み込むことによって変わり得る。一部の実施形態では、修飾アルギネートポリマー粉末は、示差走査熱量測定(DSC)によって測定した場合、50℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃、125℃、130℃、135℃、140℃、145℃、150℃、160℃、175℃、190℃、または200℃超のTgを有する。
【0090】
アルギネートの疎水性/親水性は、疎水性および/または親水性の共有結合的に修飾されたモノマーを組み込むことによって変わり得る。特定の実施形態では、修飾アルギネートポリマーは、1つ以上の疎水性共有結合的に修飾されたモノマーを含む。修飾アルギネートの相対的な疎水性/親水性は、角度計を使用して修飾アルギネートポリマーのフィルム上の水滴の接触角を測定することによって、定量的に評価することができる。一部の実施形態では、修飾アルギネートは、90度未満の接触角を有する(すなわち、それは親水性である)。特定の実施形態では、修飾アルギネートは、90度超の接触角を有する(すなわち、それは疎水性である)。一部の実施形態では、修飾アルギネートは、95度、100度、105度、110度、115度、または120度超の接触角を有する。
【0091】
細胞のカプセル化に使用される実施形態では、修飾アルギネートポリマーは、Ca2+、Sr2+、またはBa2+などの多価カチオンによってイオン的に架橋されて、ヒドロゲルを形成することができる。
【0092】
一部の実施形態では、修飾されたアルギネートポリマーは、本明細書に記載のハイスループットヒドロゲル形成アッセイを使用して測定された蛍光強度が、10,000、15,000、20,000、25,000、30,000、35,000、40,000、45,000、50,000、または55,000超であるように、ヒドロゲルを形成する。特定の実施形態では、修飾アルギネートポリマーは、本明細書に記載のハイスループットヒドロゲル形成アッセイを使用して測定された蛍光強度が、15,000超であるように、ヒドロゲルを形成する。特定の実施形態では、修飾アルギネートポリマーは、本明細書に記載のハイスループットヒドロゲル形成アッセイを使用して測定される蛍光強度が、15,000~55,000、好ましくは、20,000~55,000、より好ましくは、25,000~55,000であるように、ヒドロゲルを形成する。
【0093】
細胞のカプセル化に使用される実施形態では、修飾アルギネートポリマーは、ゲルマトリックスへの免疫細胞の侵入を防止しながら、同時に、栄養素、老廃物、ならびにカプセル化された細胞から分泌されるホルモンおよび/またはタンパク質をカプセル内外に自由に拡散させるのに十分な多孔性を有する、修飾ヒドロゲルを形成する。修飾アルギネートヒドロゲルの多孔性および表面積は、BET分析を使用して測定することができる。BET分析の前に、溶媒および揮発性不純物は、真空下で修飾アルギネートゲルを長時間加熱することによって、除去される。続いて、ヒドロゲル試料は、例えば、液体窒素によって真空下で冷却され、特定の圧力でヒドロゲルに吸収されたガス(典型的には、N2、Kr、CO2、またはArガス)の体積を測定することによって、分析される。異なる圧力でのガスの物理吸着の分析は、修飾アルギネートポリマーによって形成されたゲルの総表面積および多孔性を特徴付けるために使用される。ヒドロゲルの多孔性を決定する特定の方法は、BET分析である。
【0094】
特定の実施形態では、修飾アルギネートは、ゲルマトリックスへの免疫細胞の侵入を防止しながら、同時に、栄養素、老廃物、ならびにカプセル化された細胞から分泌されるホルモンおよび/またはタンパク質をカプセル内外に自由に拡散させるのに十分な多孔性を有する、修飾ヒドロゲルを形成する。一部の実施形態では、修飾アルギネートポリマーによって形成されたヒドロゲルの多孔性は、未修飾アルギネートポリマーから形成されたヒドロゲルの多孔性と比較して、5%、10%、15%、または20%増加する。代替の実施形態では、修飾アルギネートポリマーによって形成されたヒドロゲルの多孔性は、未修飾アルギネートポリマーから形成されたヒドロゲルの多孔性と比較して、5%、10%、15%、または20%減少する。
【0095】
細胞のカプセル化に使用される特定の実施形態では、修飾アルギネートは、生体適合性である。修飾アルギネートの生体適合性は、実施例5に記載されている蛍光ベースのインビボ生体適合性アッセイを使用して、定量的に決定することができる。このアッセイでは、カテプシン活性は、修飾アルギネートに対する異物反応を定量するために、インビボ蛍光アッセイを使用して測定された。
【0096】
一部の実施形態では、修飾アルギネートポリマーは、本明細書に記載のインビボ生体適合性アッセイを使用して測定された未修飾アルギネートに対して正規化された蛍光応答が、100%、95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、または40%未満であるように、生体適合性である。特定の実施形態では、修飾アルギネートポリマーは、未修飾アルギネートよりも低い異物反応を誘発する。これは、100%未満の未修飾アルギネートに対して正規化された蛍光応答によって示される。一部の実施形態では、修飾アルギネートポリマーは、本明細書に記載のインビボ生体適合性アッセイを使用して測定された未修飾アルギネートに対して正規化された蛍光応答が、75%未満、より好ましくは65%未満、最も好ましくは50%未満であるように、生体適合性である。
【0097】
修飾アルギネートは、本明細書に記載されるように、任意の所望の修飾の密度に、化学的に修飾され得る。修飾の密度は、修飾アルギネートを含むカプセルまたは製品の所与の重量、体積、または表面積当たりの修飾(すなわち、付着した化合物)の平均数である。一般に、閾値密度以上の密度は、異物反応の低下などの有益な効果を提供し得る。一部の実施形態では、高密度は必要とされない。いずれの特定の動作理論にも拘束されるものではないが、化学修飾が、1つ以上の免疫系または他の体の構成要素にシグナルを伝達し、それらを示し、またはそれらによって特定され、より低い異物反応などの有益な効果をもたらすと考えられている。一部の実施形態では、より低密度の修飾が、この目的に対して効果的であり得る。
【0098】
有用な密度は、1平方μm当たり、1μg当たり、または11立方μm当たり、少なくとも、未満の、約、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、320、340、360、380、400、420、440、460、480、500、550、600、650、700、750、800、850、900、および1000個の修飾を含む。これらの密度の任意のペアによって定義されるすべての範囲も、具体的に企図され、開示される。
【0099】
一部の実施形態では、製品が対象に投与された場合(例えば、対象の体内に移植される)、対象の身体の流体、細胞、組織、他の構成要素、またはそれらの組み合わせと接触するであろう、カプセルまたは製品の表面、または表面の一部での修飾の密度は、製品の他の表面の修飾の密度よりも大きい。
【0100】
また、密度は、X線光電子分光法(XPS)で測定された表面修飾の濃度で表すこともできる。XPSは、表面に敏感な定量的分光技術であり、材料内に存在する元素の1000分の1の範囲で元素組成を測定する。
【0101】
XPSスペクトルは、材料にX線ビームを照射すると同時に、分析対象の材料の上部0~10nmから放たれる運動エネルギーと電子数を測定することによって得られる。表面に存在するすべての元素を測定することによって、表面修飾に由来する元素の割合を計算することができる。これは、例えば、測定された全元素シグナル中の窒素(および/または表面修飾中の他の元素)の割合をとることによって達成することができる。カプセルまたは製品を形成する多くの基質および材料には窒素がほとんど含まれていないため、窒素は表面修飾の有用な指標である。便宜上、表面修飾を示すために使用される要素のパーセントは、表面修飾のパーセントとして表すことができる。また、便宜上、パーセント表面修飾は、表面修飾の濃度と呼ばれることもある。
【0102】
有用なパーセント表面修飾は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、および100パーセントの表面修飾の濃度を含む。これらの濃度の任意のペアによって定義されるすべての範囲も、具体的に企図され、開示される。
【0103】
また、有用なパーセント表面修飾は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、および100パーセント未満の表面修飾の濃度も含む。これらの濃度の任意のペアによって定義されるすべての範囲も、具体的に企図され、開示される。
【0104】
また、有用なパーセント表面修飾は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、および100パーセント表面修飾の濃度も含む。これらの濃度の任意のペアによって定義されるすべての範囲も、具体的に企図され、開示される。
【0105】
一態様では、アルギネートを使用してカプセルを形成することができる。カプセルは、平均直径が約150μm~約5cmの粒子である。開示されたカプセルは、架橋ヒドロゲルから形成することができる。カプセル化された材料以外に、カプセルは、例えば、架橋ヒドロゲルのみで形成することができ、1つ以上のポリマーシェルに囲まれた架橋ヒドロゲルコアを有することができ、1つ以上の架橋ヒドロゲル層を有することができ、架橋ヒドロゲルコーティングを有することができ、またはそれらの組み合わせを有することができる。カプセルは、例えば、細胞カプセル化に好適な任意の形状を有し得る。カプセルは、架橋ヒドロゲルに分散された1つ以上の細胞を含み得、それにより、細胞を「カプセル化」する。特定のカプセルは、1つ以上の開示された修飾アルギネートから形成されるか、またはそれらを含む。
【0106】
カプセルの平均直径は約150μm、約8mmである。カプセルは、約150μM~約5cmの任意の平均直径を有し得る。特に、カプセルは、1mm超、より具体的には1.5mm以上の平均直径を有する。一部の実施形態では、カプセルは、直径が約8mmにも大きくなり得る。例えば、カプセルは、約1mm~8mm、1mm~6mm、1mm~5mm、1mm~4mm、1mm~3mm、1mm~2mm、1mm~1.5mm、1.5mm~8mm、1.5mm~6mm、1.5mm~5mm、1.5mm~4mm、1.5mm~3mm、または1.5mm~2mmのサイズ範囲であり得る。
【0107】
細胞の生存に必要な分子がカプセルに入る速度、および治療薬および老廃物がカプセル膜を出る速度は、カプセルの透過性を調節することによって選択することができる。カプセルの透過性を変更して、免疫細胞、抗体、およびサイトカインのカプセルへの侵入を制限することもできる。一般に、実施例によって示されるように、ヒドロゲルカプセルを形成する既知の方法は、その透過性で、免疫細胞、抗体、およびサイトカインのカプセルへの侵入が制限されるカプセルを生成することができる。異なる細胞型では代謝要件も異なるため、ヒドロゲル中にカプセル化された細胞型に基づいて、膜の透過性を最適化することができる。カプセルの直径は、細胞カプセルに対する免疫応答ならびにカプセル膜を通過する物質移動の両方に影響を与える重要な要因である。
【0108】
インビボで線維症を駆動するパラメータの認識の高まりは、修飾アルギネートの性能の分析に適用されてきた。修飾アルギネートカプセルの腹腔内(IP)移植により、修飾アルギネートは、未修飾アルギネートに対して定義された条件を使用して架橋されると、異常な形状のカプセルをもたらし得ることが明らかになった。これらの異常な形状のカプセルは、IP移植された修飾アルギネートカプセルの実施および解釈を複雑にする可能性がある。カプセルの形態を改善するために、修飾アルギネートを少量の高分子量アルギネートとブレンドされた修飾アルギネートの微小粒子を用いた使用のための配合方法が開発された。この混合物から調製された粒子は、改善された形態および安定性を有する粒子をもたらした。
【0109】
未修飾アルギネートは、通常、約50,000ダルトン~約500,000ダルトンの重量平均分子量を有する。しかしながら、分子量を有する未修飾のアルギネートも使用することができる。一部の実施形態では、重量平均分子量は、約50,000~約250,000ダルトン、より好ましくは、約50,000~約150,000ダルトンである。一部の実施形態では、重量平均分子量は、約100,000ダルトンである。
【0110】
他の実施形態では、1つ以上の追加のヒドロゲル形成ポリマーが、未修飾アルギネートと組み合わせて、または未修飾のアルギネートの代わりに使用される。かかるポリマーは、当該技術分野で既知である。例として、これらに限定されないが、PEG、キトサン、デキストラン、ヒアルロン酸、絹、フィブリン、ポリ(ビニルアルコール)およびポリ(ヒドロキシルエチルメタクリレート)が含まれる。
【0111】
一部の実施形態では、アルギネートは、一緒に連結されたβ-D-マンヌロン酸(M)およびa-L-グルロン酸(G)から構成される。一部の実施形態では、アルギネートは、高グルロン酸(G)アルギネートである。一部の実施形態では、アルギネートは、高マンヌロン酸(M)アルギネートである。一部の実施形態では、M:Gの比は、約1である。一部の実施形態では、M:Gの比は、1未満である。一部の実施形態では、M:Gの比は、1超である。
【0112】
修飾アルギネートと未修飾アルギネートの混合物から調製された粒子は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって評価した場合、形状およびサイズの点でより均質な微小粒子集団を生成した。
【0113】
一部の実施形態では、ヒドロゲルカプセルは、任意の好適な形状を有し得る。有用な形状には、球、球状の形状、回転楕円体、回転楕円体状の形状、楕円体、楕円体状の形状、スタジアム型(stadiumoid)、スタジアム型状の形状、ディスク、ディスク状の形状、円柱、円柱状の形状、桿体、桿体状の形状、立方体、立方体状の形状、直方体、直方体状の形状、トーラス、トーラス状の形状、ならびに平面および曲面が含まれるコーティングされた、もしくはコーティングされる製品、デバイス、および表面は、これらの形状のいずれか、または製品もしくはデバイスに好適な任意の形状を有することができる。
【0114】
球、回転楕円体、および楕円体は、円、楕円、または組み合わせの3つの直交軸a、b、cの各々の周りの回転によって定義され得る曲面を有する形状である。球の場合、3つの軸は同じ長さである。扁球(回転扁平楕円体とも呼ばれる)の場合、軸の長さはa=b>cである。長球(回転扁長楕円体とも呼ばれる)の場合、軸の長さはa=b<cである。3軸楕円体(不等辺楕円体とも呼ばれる)の場合、軸の長さはa>b>cである。スタジアム型は、スタジアム形の回転形状である。円柱は、長軸の周りに回転する長方形の回転形状である。円盤は、直径が高さよりも大きく、押しつぶされた円柱である。桿体は、長軸が直径の10倍以上の細長い円柱である。
【0115】
「球状の形状」、「回転楕円体の形状」、「楕円体状の形状」、「スタジアム型状の形状」、「円柱状の形状」、「桿体状の形状」、「立方体状の形状」、「直方体状の形状」および「トーラス状の形状」は、それぞれ球、回転楕円体、楕円形、スタジアム型、円柱、桿体、立方体、直方体、またはトーラスを大まかに形成する表面を有する物体を指す。形の完全または古典的な形を超えて、球状の形状、球状の形状、楕円体状の形状、スタジアム型状の形状、円柱状の形状、桿体状の形状、立方体状の形状、直方体状の形状、およびトーラス状の形状は、波とうねりを有し得る。
【0116】
一般に、球状の形状は、半軸・主軸が互いに10%以内にある、(平均化された表面の)楕円体である。球または球状の形状の直径は、半軸・主軸の平均などの平均直径である。一般に、回転楕円体状の形状は、半軸・主軸が互いに100%以内にある、(平均化された表面の)楕円体である。回転楕円体または回転楕円体状の形状の直径は、半軸・主軸の平均などの平均直径である。一般に、楕円体状の形状は、半軸・主軸が互いに100%以内にある、(平均化された表面の)楕円体である。楕円体または楕円体状の形状の直径は、半軸・主軸の平均などの平均直径である。一般に、スタジアム型状の形状は、両端の半軸・主軸が互いに20%以内にある、(平均化された表面の)スタジアム型である。スタジアム型またはスタジアム型状の形状の直径は、半軸・主軸の平均などの平均直径である。あるいは、スタジアム型またはスタジアム型状の形状のサイズを、長軸の平均として与えることができる。一般に、円柱状の形状は、半軸・主軸が互いに20%以内にある、(平均化された表面の)円柱である。円柱または円柱状の形状の直径は、半軸・主軸の平均などの平均直径である。
【0117】
あるいは、円柱または円柱状の形状のサイズを、長軸の平均として与えることができる。一般に、桿体状の形状は、半軸・主軸が互いに10%以内にある、(平均化された表面の)桿体である。桿体または桿体状の形状の直径は、半軸・主軸の平均などの平均直径である。あるいは、桿体または桿体状の形状のサイズを、長軸の平均として与えることができる。一般に、立方体状の形状は、辺が互いに10%以内にある、(平均化された表面の)立方体である。立方体または立方体状の形状の直径は、平均的な辺の長さである。一般に、直方体状の形状は、一致する辺が互いに10%以内にある、(平均化された表面の)直方体である。直方体または直方体状の形状の直径は、平均的な辺の長さである。
【0118】
一般に、トーラス状の形状は、半軸・主軸が互いに10%以内にある、(平均化された表面の)トーラスである。トーラスまたはトーラス状の形状の直径は、半軸・主軸の平均などの平均直径である。あるいは、トーラスまたはトーラス状の形状のサイズを、リング全体の直径として与えることができる。
【0119】
「平面」とは、曲率が0の面の5%超の連続領域を指する。「鋭角」とは、面の円周の2%以下の距離で、面の接線が10%超変化する面上の位置を指す。面における辺、頂点、溝、および稜はすべて、鋭角の形である。
【0120】
特定のカプセルは、生体適合性材料で作ることができ、直径が少なくとも1mmかつ10mm未満であり、回転楕円体状の形状を有し、次の1つ以上の追加の特徴を有する:カプセルの表面の細孔が0nm超かつおよび10μm未満、カプセルの表面が中性または親水性、カプセルの表面のすべての点における表面の曲率が少なくとも0.2かつ2以下、カプセルの表面には平坦な面、鋭角、溝、または稜がない。一般に、カプセルは、カプセル上に存在するこれらの特徴のうちの1つ以上を欠いている同じカプセルよりも、移植後に線維化反応を誘発することが少ない。
【0121】
一部の実施形態では、カプセルは、調製物として提供され、調製物中のカプセルの少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%は、本明細書に記載の形状特性を有し、例えば、回転楕円体状の形状を有するか、または表面のすべての点で少なくとも0.2~2.0の表面の曲率を有する。
【0122】
一部の実施形態では、ヒドロゲルカプセルは、1mm超、特に、1.5mm以上の平均直径を有する。一部の実施形態では、カプセルは、直径が8mmにも大きくなり得る。例えば、ヒドロゲルカプセルは、1mm~8mm、1mm~6mm、1mm~5mm、1mm~4mm、1mm~3mm、1mm~2mm、1mm~1.5mm、1.5mm~8mm、1.5mm~6mm、1.5mm~5mm、1.5mm~4mm、1.5mm~3mm、1.5mm~2mm、2mm~8mm、2mm~7mm、2mm~6mm、2mm~5mm、2mm~4mm、2mm~3mm、2.5mm~8mm、2.5mm~7mm、2.5mm~6mm、2.5mm~5mm、2.5mm~4mm、2.5mm~3mm、3mm~8mm、3mm~7mm、3mm~6mm、3mm~5mm、3mm~4mm、3.5mm~8mm、3.5mm~7mm、3.5mm~6mm、3.5mm~5mm、3.5mm~4mm、4mm~8mm、4mm~7mm、4mm~6mm、4mm~5mm、4.5mm~8mm、4.5mm~7mm、4.5mm~6mm、4.5mm~5mm、5mm~8mm、5mm~7mm、5mm~6mm、5.5mm~8mm、5.5mm~7mm、5.5mm~6mm、6mm~8mm、6mm~7mm、6.5mm~8mm、6.5mm~7mm、7mm~8mm、または7.5mm~8mmのサイズ範囲にある。一部の実施形態では、カプセルは、1mm~8mmの平均直径またはサイズを有する。一部の実施形態では、カプセルは、1mm~4mmの平均直径またはサイズを有する。一部の実施形態では、カプセルは、1mm~2mmの平均直径またはサイズを有する。一部の実施形態では、カプセルは、調製物として提供され、調製物中の少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%のヒドロゲルカプセルが、本明細書に記載のサイズ範囲の直径を有する。
【0123】
好適なアルギネートおよび修飾アルギネートは、US2016/0030360A1、US2017/0239397A1、WO2012/167223、およびWO2017/075631に記載されている(これらの各々は、参照により本明細書に援用される)。
【0124】
IV.治療用途
治療用途には、マイクロデバイスによってカプセル化された治療用細胞によって免疫調節タンパク質が産生され得る場合などの、癌の治療が含まれる。FVIIIまたはFIXなどの血液因子の治療薬産生は、血友病を緩和するために使用され得る。これらのタンパク質は、マイクロデバイスにカプセル化された治療用細胞によって産生され得る。
【0125】
本開示の特定の実施形態は、世界中で2億8500万人以上を苦しめている世界的流行病である糖尿病の治療を含み得る(Veiseh et al.,2015)。I型糖尿病(TID)に罹患している人々の現在の標準的なケアは、血糖モニタリングとともに外因性インスリンの毎日の投与および糖尿病食の厳格なレジメンからなっているが、これらの個人は今なお、部分的には日々の行い(daily compliance issue)の結果である病気の厄介な副作用の課題に直面している(Veiseh et al.,2015、Pickup,2012)。さらに、膵臓ランゲルハンス島のβ細胞が血糖の変動に応答してインスリンを分泌するプロセスは、定期的なインスリン注射によって不完全にシミュレートされている(Veiseh et al.,2015、Robertson,2004)。したがって、糖尿病治療研究の「聖杯」は、外因性ドナーの島組織または細胞の移植によって、TID患者のインスリン非依存性を達成しようとしている。この目標の当然の結果は、臨床診療でこのアプローチを完全に実施するために、同種移植または異種移植の結果として必要とされ、それ自体が合併症を伴う生涯にわたる免疫抑制の必要性を取り除く方法を開発することである(Hirshberg,2007、Pagliuca et al.,2014)。
【0126】
最近、ヒト多能性幹細胞(hPSC)が、インビトロで機能的な膵臓β細胞に分化することが報告され、ヒトインスリン産生組織を無制限に供給する道筋が初めて提供された(Pagliuca et al.,2014、Vegas et al.,2016a)。生涯にわたる免疫抑制の必要性を軽減する方法は、この新しい組織源の広範な臨床実施を可能にするために不可欠である(Hirshberg,2007、Shapiro,2012、Vogel,2014)。細胞または組織のカプセル化は、理論的には、移植片を宿主の免疫認識とその後の移植片の拒絶反応から保護することによって、免疫抑制の必要性を克服することができる(Dolgin,2014、Jacobs-Tulleneers-Thevissen,2013)。
【0127】
V.バイオセンサー
本開示の別の態様は、バイオセンサーに関する。真核生物と原核生物の両方の細胞は、多くの分析物を結合および認識するための生物学的システムを有している。膜タンパク質は、細胞を介して情報を中継し、操作された細胞バイオセンサーは、医療画像診断を介して、かつ/または血液中で検出可能なフィードバックまたは分析応答を提供することができる。
【0128】
連続したグルコースモニターを含む様々な非細胞バイオセンサーは、血流への一貫したアクセスに依存している。バイオセンサーの血管形成は、分析物に対して、より高い時間解像度とより高いシグナルレベルをもたらし得る。抗線維化材料を介したバイオセンサーの長期的な受容は、長期的な有効性を提供することができる。
【0129】
VI.例示的なデバイスのアーキテクチャ、構成要素、およびそれらのバリエーション
本発明の実施形態は、血管形成のための、および血管形成から利益を得る可能性のある治療用細胞、バイオセンサー、および他のインプラントの免疫隔離のための、高度な3Dバイオプリンティングに基づくモジュラーデバイスを含む。ここで、
図1を参照する。例示的な実施形態は、非分解性ポリマーを包む分解性ポリマーを示す。本発明者らは、3Dプリントヒドロゲル内の単純な平面的な血管構造を開発した。これは、免疫隔離アルギネートヒドロゲルにカプセル化された治療用細胞を播種するための空の空洞を有する。このアプローチにより、血管アーキテクチャ、免疫隔離、および免疫調節(線維化応答の予防)を、独立して制御することができる。本発明者らの3Dプリントされたチャンバーは、生体適合性であり、ヒドロゲル製剤(ポリ(エチレングリコール)ジアクリレートとMMP分解性ペプチド-メタクリレートの組み合わせ)の個別の最適化を通して、生分解のために調整することができる。生分解性チャンバーは、パターン化された吻合と宿主組み込みを促進する暫定的なマトリックスであると同時に、移植およびインビボでのリモデリングの初期段階で、非分解性アルギネート内の免疫隔離された治療用細胞を支持する。この拡張可能な設計は、血管の多層構造へと積層または設計することができ、最終的には、膵臓機能の回復、遺伝性疾患に罹患している患者への凝固因子または酵素の提供、およびバイオセンサーの効果的な血管形成を可能にする。
【0130】
A.生体適合性ヒドロゲルの高度な3Dバイオプリンティング
生物工学におけるこれまでの研究では、様々な細胞型(Finkenzeller et al.,2006、Lovett et al.,2009、Wenger et al.,2005)、増殖因子、またはマイクロ流体ネットワーク(Andrae et al.,2008、Bauer et al.,2005)を組み込むことによって、操作組織に物質移動を提供するように模索されてきたが、これらの技術のほとんどは、細胞環境にわたって定量的な非侵襲的メトリックを提供する一方で、複雑な階層的血管構造を有する血管形成組織を生成する能力を欠いている。三次元(3D)プリントは、この技術で、研究者がプリント容積内のすべての(x、y、z)座標を制御できるようになるため、組織工学の分野に大きな期待を寄せる。
【0131】
そこで、本発明者らは、生体適合性ヒドロゲルの製作における新しいアプローチ、すなわち、本発明者らが開発した低コストのステレオリソグラフィーシステムを用いた血管形成ヒドロゲルの自動製造を導入する。本発明者らは、この提案に記載される研究のために、典型的には直径0.5~1mmのオーダーの血管チャネルを用いて、高度に定義された血管形成構造(50μmのx、y、z特徴解像度)を生成し、1日当たり数十ものスキャフォールドを容易に生成できることを、初めて実証する。ここで、本発明者らは、生きた組織を操作し、治療用細胞の位置および周囲の細胞外マトリックス(ECM)の組成に対する制御を維持しようと努める。本発明者らは、本明細書に記載の研究のために、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA)およびMMP感受性ペプチドに基づく、80%超の含水量を有する光重合性合成ヒドロゲルを利用する。PEGDAは親水性で生体適合性の材料であり、アクリレート-TMTD小分子による機能化を容易にし、宿主の免疫応答を調節する(39、40)。
【0132】
B.治療用細胞を支持する高度な血管トポロジー
灌流可能な血管アーキテクチャは、3Dゲル中の治療用細胞の恒常性および機能を安定化し、その対流により、高密度の治療用細胞の培養が可能になり、かかる操作組織の治療可能性が最大化される。発明者のヒドロゲル材料は、施設内で合成され、ステレオリソグラフィーシステムによるカスタム3Dバイオプリンティングを使用して製作され、発明者は、エクスビボのヒドロゲル内に多様な3D血管網を生成することができるようになった。
【0133】
閉じ込められた治療用細胞への対流および拡散を改善するために、本発明者らは、血管構造の隣に正確に配置され、閉じ込められた治療用細胞を含むヒドロゲルチャンバーをさらに開発する。本発明者らの3Dプリントステレオリソグラフィーシステムは、閉じ込められた治療細胞を有する第2のアルギネートヒドロゲルの播種のための空の空洞の構築を可能にし、そして重要なことに、基礎となる灌流可能な血管構造の製作を可能にする。本発明者らは、治療用細胞への栄養素および酸素の送達を促進することによって、インビボで、それらの機能が改善されるであろうと仮定する。
【0134】
ヒドロゲルチャンバーはまた、血管の開存性を維持しながら、血管壁へのヒト内皮細胞の付着を支持するPEGDA:ペプチドMAの混合物、すなわち、最適な10重量%のペプチドMAおよび3重量%のPEGDA(3.4kDa)の製剤を用いて、製作することができる(
図8E)。内皮細胞を、培地中に25e6細胞/mLで血管網に注入し、ゲルを、血管軸の周りに、4時間かけて15分ごとに180度ずつ回転させて、内皮細胞をすべての血管表面に付着させる。安定した内皮単層を形成するために、ゲルを一晩から最大7日間培養する。
【0135】
内皮単層は、VE-カドヘリン、ZO-1、およびCD31の染色を用いた共焦点顕微鏡を使用して、健常な玉石状の形態について特徴付けされ得る。内皮のバリア機能は、以前に記載されているように(Chrobak et al.,2006)、ヒスタミンおよびトロンビンを用いて評価することができる。本発明者らは、パターン化された内皮ネットワークが、宿主血管構造との吻合を誘導し、ハイブリッドのヒト/マウス血管を形成し得ることを以前に示した。そこで、本発明者らは、PEGDA:ペプチドMAの混合物から作製されたチャンバー(0.4mg/mLコラゲナーゼを含む)の分解速度をさらに特徴付ける。本発明者らは、アルギネートでカプセル化された初代治療用細胞の周りで、血管発生が促進されるであろうと仮定する。
【0136】
C.TMTDアルギネートゲル内にカプセル化された治療用細胞の血管形成デバイスへの組み込み
典型的な細胞のカプセル化には、次の手順を伴う。治療用細胞のクラスターをCa不含クレブス・ヘンゼライト緩衝液(4.7mMのKCl、25mMのHEPES、1.2mMのKH2PO4、1.2mMのMgSO-4×7H2O、135mMのNaCl、約pH7.4、約290mOsm)で洗浄する。洗浄後、治療用細胞を再度遠心分離し、すべての上清を吸引する。次に、治療用細胞のペレットは、様々なクラスター密度で、TMTDアルギネート溶液に再懸濁され、以前に記載されているように(Vegas et al.,2016a)合成される。溶液を、上に記載の分解性3Dプリントヒドロゲルのチャンバーに注ぎ、BaCl-2ゲル化溶液を使用してゲルを架橋する。Ca2+、Sr2+溶液を含む、任意の2価カチオンを架橋に使用することができる。架橋の直後に、デバイスを、移植の直前まで、細胞培養培地でインキュベートする。
【0137】
D.インビボ性能
本発明者らは、パターン化された内皮細胞が宿主血管構造と吻合し、14日後にハイブリッドヒト/マウス血管を形成できることを以前に示した(Baranski et al.,2013)。本発明者らの以前の研究に基づいて、本発明者らは、デバイスの吻合が、内皮化デバイスで2週間以内に起こるはずであり、4週間後には、本発明者らは、PEGDA:ペプチドMAゲルネットワークが完全に分解されていると予想する。
【0138】
VII.代替用途
A.治療用細胞および/またはバイオセンサー用のデバイスの使用
連続したグルコースモニターを含むバイオセンサーならびに治療用細胞は、強力な血管供給の恩恵を受けるであろう。ここで、
図2を参照する。治療用細胞、バイオセンサー、または他の移植片は、デバイスの非分解性部分に負荷することができる。このデバイスは、あらゆる種類の移植片の血管形成を改善するために使用することができ、バイオセンサーのより良好なデータ取得およびより長期の性能、ならびに治療用細胞の優れた生存率および機能性が得られる。
【0139】
B.化合物の持続放出
酸素の持続放出は、長期的な治療用細胞の生存率を改善する可能性がある。ここで、
図3を参照する。酸素および/または血管新生促進化合物の制御放出をもたらす方法および材料は、デバイスの分解性部分および/または非分解性部分に負荷することができる。CaO
2などの酸素放出化合物、およびVEGFなどの血管新生促進化合物は、デバイスの分解性部分の大きくて複雑なスキャフォールドの血管形成を促進することができる。CaO
-2は、酸素発生化合物である。血管新生促進化合物の持続放出は、デバイスの血管形成を改善し得る。結晶化VEGFおよびVEGFを構成的に分泌する細胞は、これらの化合物の持続放出を提供するために考えられる方法である。化合物の持続放出のための方法および材料は、デバイスの分解性部分および/または非分解性部分に組み込むことができる。
【0140】
C.分解プロファイルおよび分解性部分の剛性の修飾
ゲルの分解プロファイルおよび剛性は、次のパラメータによって制御され得る:異なる分子量(例えば、6kDa)のPEGDAを使用して、分解プロファイルを変更することもできる。ここで、
図4を参照する。分解性部分は、様々な長さのポリマー鎖を使用して修飾することができる。これにより、様々な生分解プロファイルが可能になる。より大きなまたはより複雑な構造は、インビボ効果を成功させるために微調整された分解プロファイルを必要とする場合がある。PEGDA、GelMA、光開始剤、および光吸収剤の量を変更する(
図9)。非常に大きく複雑な血管スキャフォールドを有するデバイスでは、より遅い分解が必要になる場合がある。UV架橋の強度と持続時間は、ゲルの分解と剛性に影響を与える可能性がある。
【0141】
D.デバイスの分解性部分と非分解性部分を連結するための様々な形状のアンカー
構造が複雑になるにつれて、アンカーは分解性部分と非分解性部分の間の連結を提供する。これにより、デバイスの構造的破損なしに外科的操作および移植が可能になる。ここで、
図6を参照する。アンカーは、デバイスの非分解性部分と分解性部分を一緒に保持することができる。複雑な構造および大きな非分解性部分は、外科的操作および移植のために、それらの完全性を維持するために物理的結合を必要とする場合がある。アンカーは、両方のセグメントをうまく連結する。
【0142】
E.デバイスの積み重ね可能な性質
このデバイスは、積み重ね可能な性質を備え、層状の血管構造を可能にする。複数のデバイスを積み重ねるだけで、より大きな治療用構築物を開発することができる。ここで、
図18A~Fを参照する。3DプリントされたPEGDAヒドロゲルチャンバーは、治療用細胞の構築物の迅速な血管形成のために示されている。
図8Aは、プリントされたチャンバーには、アルギネート(青)中に懸濁された初代島(緑)が収容され、基礎となるパターン化された血管網(赤)を有することを示す。チャンバーは、スケールアップを考慮して積み重ねることができる。
図8Bは、3Dプリントされたチャンバーを示し、灌流可能な血管構造(赤)、および島を含むアルギネートヒドロゲルを物理的に捕捉するヒドロゲルアンカーを実証する。スケールバー=1mm。(未公開の結果)。
図8Cは、
図8Bからの強調表示された領域の拡大図を示す。ヒドロゲルアンカーおよび基礎となる灌流可能な血管構造(赤)を示す。スケールバー=1mm。(未公開の結果)。
図8Dは、250μmの断面図を示し、アルギネートの播種量(青)および基礎となる血管構造(赤)を示している。スケールバー=1mm。(未公開の結果)。
図8Eは、血管系に注入された内皮細胞が、上面図(左)に見られるように血管を迅速に裏打ちし、中空の内腔を形成する(共焦点仮想断面、右)ことを示す(未公開の結果)。
図8Fでは、本発明者らは、14日後に、パターン化された内皮細胞が宿主血管構造と吻合し、ハイブリッドのヒト/マウス血管が形成され得ることを以前に示した(Baranski et al.,2013)。
【0143】
F.免疫調節特性の修飾および分解性部分の誘導性分解
図9に示されるように、ヒドロゲル前駆体を変化させることができる。抗線維化小分子の量および/または種類は、異なるレベルの免疫調節活性に合わせて変更することができる。細胞接着性ペプチドは、ヒドロゲルの血管スキャフォールドへの内皮細胞の接着を改善するために修飾することができる。「MMP感受性PEG-ジアクリレート」のペプチドは、他の誘導性の分解メカニズム(酸化物駆動分解、pH駆動分解、超音波駆動分解、熱駆動分解など)を可能にするように選択され得る。
【0144】
G.生体適合性ヒドロゲルの高度な3Dバイオプリンティング
そこで、本発明者らは、生体適合性ヒドロゲルの製作における新規のアプローチ、すなわち、本発明者らが開発した低コストのステレオリソグラフィーシステムを用いた血管形成ヒドロゲルの自動製造を導入する。本発明者らは、この提案に記載される研究のために、典型的には直径0.5~1mmのオーダーの血管チャネルを用いて、高度に定義された血管形成構造(50μmのx、y、z特徴解像度)を生成し、1日当たり数十ものスキャフォールドを容易に生成できることを、初めて実証する。ここで、本発明者らは、生きた組織を操作し、β細胞の位置および周囲の細胞外マトリックス(ECM)の組成に対する制御を維持しようと努める。本発明者らは、本明細書に記載の研究のために、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA)およびMMP感受性ペプチドに基づく、80%超の含水量を有する光重合性合成ヒドロゲルを利用する。PEGDAは、親水性で生体適合性のFDA承認済の材料であり、基本的な細胞-マトリックス相互作用の探索で幅広い有用性が見られ、宿主の免疫応答を調節するためのアクリレート-TMTD小分子による機能化の容易さを示す(Burdick and Anseth,2002、Lutolf et al.,2003)。
【0145】
H.3Dβ細胞培養を支持する高度な血管トポロジー
閉じ込められたβ細胞への対流および拡散を改善するために、本発明者らは、血管構造の隣に正確に配置され、閉じ込められたβ細胞を含むヒドロゲルチャンバーをさらに開発する。本発明者らの3Dプリントステレオリソグラフィーシステムは、閉じ込められ初代島を有する第2のアルギネートヒドロゲルの播種のための空の空洞の構築を可能にし、そして重要なことに、基礎となる灌流可能な血管構造の製作を可能にする。本発明者らは、島への栄養素および酸素の送達を促進することによって、インビボで、それらの機能が改善されるであろうと仮定する。ヒドロゲルチャンバーはまた、血管の開存性を維持しながら、血管壁へのヒト内皮細胞の付着を支持するPEGDA:ペプチドMAの混合物、すなわち、最適な10重量%のペプチドMA/3重量%のPEGDA(3.4kDa)の製剤を用いて、製作することができる(
図8E)。内皮細胞を、培地中に25e6細胞/mLで血管網に注入し、ゲルを、血管軸の周りに、4時間かけて15分ごとに180度ずつ回転させて、内皮細胞をすべての血管表面に付着させる。安定した内皮単層を形成するために、ゲルを一晩から最大7日間培養する。本発明者らは、内皮単層を、VE-カドヘリン、ZO-1、およびCD31の染色を用いた共焦点顕微鏡を使用して、健常な玉石状の形態について特徴付ける。内皮のバリア機能は、以前に記載されているように(Chrobak et al.,2006)、ヒスタミンおよびトロンビンを用いて評価される。本発明者らは、パターン化された内皮ネットワークが、宿主血管構造との吻合を誘導し、ハイブリッドのヒト/マウス血管を形成し得ることを以前に示した。本発明者らは、パターン化された血管構造が、宿主生着を支持するであろうと仮定する。そこで、本発明者らは、PEGDA:ペプチドMAの混合物から作製されたチャンバー(0.4mg/mLコラゲナーゼを含む)の分解速度をさらに特徴付ける。本発明者らは、アルギネートでカプセル化された初代島の周りで、血管発生が促進されるであろうと仮定する。
【0146】
I.TMTDアルギネートゲル内にカプセル化された島を血管形成デバイスに組み込む方法
典型的な細胞カプセル化には、次の手順を伴う。CellTrans Inc.Chicago,ILから購入した同系マウス島クラスターを、1,400rpmで1分間遠心分離し、Ca不含クレブス・ヘンゼライト緩衝液(4.7mMのKCl、25mMのHEPES、1.2mMのKH2PO4、1.2mMのMgSO4
2-×7H2O、135mMのNaCl、約pH7.4、約290mOsm)で洗浄する。洗浄後、膵島細胞を再度遠心分離し、すべての上清を吸引する。次に、島ペレットは、様々なクラスター密度で、TMTDアルギネート溶液に再懸濁され、以前に記載されているように(Vegas et al.,2016a)、0.5mLのアルギネート溶液当たり500クラスターの様々なクラスター密度で合成される。溶液を型に流し込み、BaCl2ゲル化溶液を使用してゲルを架橋する。架橋直後に、カプセル化された島クラスターを50mLのCMRL1066改変培地で4回洗浄し、移植直前となる37℃のスピナーフラスコで一晩培養する。カプセル化プロセス中に島クラスターが失われることは避けられないため、カプセル化されたクラスターの総数はカプセル化後に再カウントされる。
【0147】
カプセル化後、細胞の生存率および機能が特徴付けられる。細胞の生存率は、蛍光顕微鏡ベースのアッセイを使用して測定され、細胞が、二酢酸フルオレセイン(生)とヨウ化プロピジウム(死)の組み合わせで染色される。細胞生存率のパーセンテージは、100個の島クラスターをサンプリングし、生細胞と死細胞の比率を分析することによって決定される。本発明者らはさらに、インビトロでグルコース刺激インスリン分泌アッセイを実施する(Vegas et al.,2016a)。
【実施例】
【0148】
VIII.実施例
以下の実施例は、本開示の好ましい実施形態を実証するために含まれている。以下の実施例に開示される技術は、本開示の実施において十分に機能することが発明者によって発見された技術を表し、したがって、その実施のための好ましい態様を構成するとみなすことができることを当業者に理解されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、開示される特定の実施形態において多くの変更を行うことができ、それでも本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく類似または同様の結果を得ることができることを理解すべきである。
【0149】
仮想実施例1
血管形成デバイスのインビボ生体適合性および血管機能の評価。本発明者らは、パターン化された内皮細胞が宿主血管構造と吻合し、14日後にハイブリッドヒト/マウス血管を形成できることを以前に示した(Baranski et al.,2013)。本発明者らは、健常な非糖尿病C57/BL6 nu/nuマウスT細胞欠損マウスを使用して、上に記載のヒドロゲルチャンバーの生体適合性および血管形成を評価する。また、ゲルの免疫調節化学物質との生体適合性も評価する。これらの研究のために、本発明者らは、非糖尿病C57/BL6ヌードマウス(Jackson Laboratories、Bar Harbor Maine)を使用する。デバイスの3つの反復(TMTDアルギネートのみ、中空血管を有するチャンバーゲル内のTMTDアルギネート、および内皮化血管を有するTMTDアルギネートチャンバーゲル)を使用して、本発明者らはインビボで2週間および4週間試験する。
【0150】
本発明者らは、灌流可能な血管網を有するヒドロゲル投影3Dプリントヒドロゲルチャンバーのインビボ生体適合性および血管機能評の価を検証し、高密度3Dβ細胞培養を支持する。デバイスの3回の反復は、健常なC57/BL6 nu/nuマウス、TMTDアルギネートのみ(時点当たりN=5マウス)(左)中空血管を有するチャンバーゲル中のTMTDアルギネート(時点当たりN=5マウス)(中央)、および内皮化血管を有するチャンバーゲル中のTMTDアルギネート(時点当たりN=5マウス)(右)を使用して、インビボでテストされる。2週間と4週間の2つの回収時点が評価に使用される。
【0151】
健常なC57/BL6 nu/nuマウスを使用して、空の(島なし)血管形成デバイスをインビボでテストする。
図8A~Fに概説されているデバイスの反復は、C57/BL6 nu/nuマウスの腹腔内の部位に移植される(Vegas et al.,2016a)。この研究では、TMTDアルギネート単独が、対照の非血管形成システムとして組み込まれ、中空の血管を有するチャンバーゲル中のTMTDアルギネートが、第2の対照システムであり、宿主内皮細胞との吻合が促進されない。各マウスは、単一のデバイス移植片を受容する。デバイスの反復当たり、および回収時点当たりN=5マウスである。移植後2週間および4週間でマウスを犠牲にする。以前の研究に基づいて、本発明者らは、デバイスの吻合が、内皮化デバイスで2週間以内に起こるはずであり、4週間後には、本発明者らは、PEGDA:ペプチドMAゲルネットワークが完全に分解されていることを予想する。これらの定義された2週目および4週目の時点で、マウスを犠牲にし、デバイスを顕微解剖によって注意深く外植して、残っているアルギネートゲルブロックの周りの血管網を破壊しないようにする。回収された組織とゲルはパラホルムアルデヒドで保存され、標準的な組織学的処理技術を使用してさらに処理される。
【0152】
組織学を介した空の(島なし)血管形成デバイス周辺の生体適合性および血管網完全性のエクスビボ分析。次いで、血管形成および生体適合性を評価するために、回収されたデバイスに対して次の評価が実行される。1)位相差顕微鏡および共焦点蛍光顕微鏡による線維性異常増殖(FO)の定量化、2)FACS分析では、以下に由来する単一細胞懸濁液中の炎症性細胞(CD68染色マクロファージ、Ly6Gr+染色好中球、平滑筋アクチン染色筋線維芽細胞、およびCD31内皮細胞)の量を評価する:i)回収溶液のIP洗浄、ii)回収されたデバイスの表面から解離された細胞、ならびに3)FOの厚さ、組織の炎症状態および血管形成を評価するためのデバイスの組織学的分析。組織試料は、線維症および拒絶反応の証拠について検査される。マッソン・トリクローム染色は、線維症に関連するコラーゲン沈着を監視するために使用される。さらに、切片は、本発明者らが以前に開発した方法を使用して、線維芽細胞、好中球、およびマクロファージ、ならびに内皮細胞について免疫染色される(Vegas et al.,2016a;2016b、Veiseh et al.,2015a)。
【0153】
デバイス周辺の血管形成の密度は、組織学によって検証され、本発明者らは、プリントされたチャネルの表面積の90%超が宿主内皮細胞によってコロニー形成されるべきであると予想している。宿主血管構造による内皮細胞の吻合には1~2週間かかり、吻合が起きている間、マトリックスPEGDA:PeptideMAが無傷のままである必要があった。以前の経験に基づくと、PEGDA:PeptideMAの比率は2週間続くはずである。しかしながら、ゲルの分解が遅すぎる場合、本発明者らは、これらの2種類のモノマーの比率を単に変更して、所望の分解速度を達成することができる。PEGDA:PeptideMAの比率を上げると分解速度が低下し、比率を下げると分解速度が向上する。例えば、PEGDAのみから作製されたチャンバーは、インビボでは非分解性である。
【0154】
ストレプトゾトシン誘発(STZ誘発)における島細胞負荷血管網のインビボ試験。同系移植モデルを使用して、本発明者らは、STZ処置C57/BL6 nu/nuマウスにおける血管形成デバイスへの膵島負荷TMTDアルギネートゲルの有効性を評価する。TMTDゲルの周囲の血管形成は、細胞生存率の改善およびグルコース刺激インスリン分泌動態の強化を促進するはずである。
【0155】
血管のスキャフォールドに内皮細胞を播種する。血管スキャフォールドには、VEGFを分泌する内皮細胞を播種することができ、デバイスのインビボ応答を改善することができる。ここで、
図7を参照する。内皮細胞は、血管スキャフォールドを裏打ちするために使用することができる。内皮細胞はVEGFを分泌して、デバイスの血管形成を促進する。内皮細胞の様々な供給源(既製のものと患者由来のもの)を使用しても、細胞をまったく使用しなくてもよい。これにより、デバイスのインビボでの生着が異なる場合がある。デバイスには任意の起源の内皮細胞を播種することができるため、患者由来の内皮細胞を使用して最大の安全性が確保され得る。
【0156】
ここで、
図10を参照する。デバイスの2つの反復がインビボで試験され得る:中空の血管を有するデバイス(左)、および内皮化血管を有するデバイス(右)。反復は、糖尿病ヌードマウスにおけるパターン化された血管網とともにチャンバー化された膵島負荷TMTDアルギネートのインビボ機能を検証するために使用され得る。デバイスの2つの反復は、STZ処理C57/BL6 nu/nuマウス、中空血管を有するチャンバーゲル中の同系島負荷TMTDアルギネート(N=5マウス)(左)、および内皮化血管を有するゲルチャンバー中の同系島負荷TMTDアルギネート(各時点でN=5匹のマウス)(右)を使用して、インビボで試験される。
【0157】
本発明者らは、同系島細胞を、血管形成デバイスのTMTDアルギネートゲルにカプセル化して(デバイス当たり500)、細胞、形態、生存率、グルコース応答性インスリン分泌を評価する。ゲルアセンブリ内にカプセル化された島の機能性および生存率は、Live-Dead細胞生存率アッセイおよびグルコースチャレンジに応答したインスリン産生のテストの組み合わせを使用して監視される。
【0158】
移植同系島は、STZ-B6 nu/nuマウスの血管網に負荷され、血糖値が最大100日間毎日監視される。6匹の糖尿病ヌードマウスは、中空血管を有するチャンバーゲル中の同系膵島負荷TMTDアルギネートがIP移植され、6匹の糖尿病ヌードマウスは、内皮化血管を有するチャンバーゲル中の同系膵島負荷TMTDアルギネートがIP移植される。マウスは、100日間監視される。血糖値は、毎日測定される。移植後14、28、および100日目に、経口糖負荷試験(OGTT)が動物に対して実施され、血糖矯正とc-ペプチド分泌の両方のインビボ動態が監視される。治癒は、移植後1週間および100日間の監視期間全体で220mg/dL未満の血糖値として決定される。次いで、カプセル化の有効性は、長期生存率およびグルコース応答性インスリン分泌の動態に基づいて決定される。インビボ正常血糖実験が終了すると、移植が行われ、組織病理学的分析が行われる。移植失敗の潜在的な原因が決定され、島の生存率(生/死アッセイ)、機能性(エクスビボ糖負荷アッセイ)、および生体適合性(潜在的な免疫応答および線維症を特徴付ける免疫染色)が調べられる。
【0159】
血管形成デバイスにおけるTMTDカプセル化島の有効性は、糖尿病ヌードマウスモデルで決定される。以前の研究では、STZ STZ-B6 nu/nuマウスで正常血糖の矯正を達成するには、マウス当たり500個の島で十分であることが示されている。しかしながら、1週間後に糖尿病マウスのグルコース矯正が達成されない場合、本発明者らは、より大量の膵島(1000個および2000個)が負荷されたデバイスを、追加のマウスに移植する。
【0160】
本発明者らは、灌流可能な血管構造を含む3Dゲル内のβ細胞の次世代3D培養を開発および検証する。本発明者らは、灌流可能な血管アーキテクチャは、3Dゲル中のβ細胞の恒常性および機能を安定化し、その対流により、高密度の治療用細胞の培養が可能になり、かかる操作組織の治療可能性が最大化されると仮定する。ヒドロゲル材料は社内で合成され、ステレオリソグラフィーシステムによるカスタム3Dバイオプリンティングを使用して製造され、こうして発明者は、エクスビボヒドロゲル内に多様な3D血管網を生成することができるようになった。
図11A~Fに示されるように、本発明者らは、多様な血管トポグラフィーをスクリーニングして、インビボで最高密度の細胞の生存率および機能性を支持するリード製剤を同定する。
【0161】
血管トポロジーのバリエーション。血管トポロジーは、高密度の治療用細胞の培養に大きな影響を与える可能性がある。ここで、
図5を参照する。3D血管構造は、多くの可能なトポロジーでプリントされ得る。3D血管構造のトポロジーは、カプセル化された治療用細胞およびバイオセンサーの長期的な生存率および性能に重要な影響を与える可能性がある。本明細書に開示される3Dプリントのアプローチは、非常に多様で複雑な血管構造の迅速な合成を可能にする。
図11A~Fに示されるように、3Dプリントのアプローチは、非常に複雑な血管トポロジーの開発を可能にする。
【0162】
アルギネートの抗線維化特性および剛性を修飾する。非分解性部分で使用されるアルギネートは、様々な方法で修飾することができ、選択された抗線維化小分子を、選択された投与量のアルギネートにコンジュゲートすることができる。さらに、アルギネートの剛性は、修飾アルギネートとSLG100の比率を変更するか、架橋緩衝液を変更することによって修飾され得る(Ca2+またはSr2+を使用)。これにより、異なる移植部位での生体力学的応答が改善される可能性がある。
【0163】
図11A~Fは、灌流可能なヒドロゲルにおける血管効率を調査するための血管設計を示している。3D血管の幾何学的形状は、反復的な複雑性を伴う空間充填アルゴリズムを使用して計算的に生成される。
図11Aは、明確にするために、試料の血管トポロジー成長アルゴリズムを2D形式で示している。
図11Bは、本発明者らが、灌流可能な血管トポロジーを構築するための良好な候補として、計算空間充填アルゴリズムを特定したことも示している。
図11Cは、娘枝の直径のスケーリングに関するマレーの法則に従う3D血管に着想を得たアーキテクチャは、バウンディングボリュームからのブール減算によって3Dプリントのトポロジーに変換することができる。
図11D~Fは、ラベルされているように、マクロ写真またはμCT分析によって示される灌流可能なヒドロゲルで製作された血管トポロジーを示している。本発明者らはさらに、3D血管網が、
図11D~Eに示される(赤、青)相互貫入ネットワークを可能にし得ることを実証する。
【0164】
実施例2-実施例3の材料と方法
GelMA、PEGDA、およびLAP合成。LAPは、アルゴン下、室温で一晩、等モル量のジメチルフェニルホスフィナイトと2,3,6-トリメチルベンゾイルクロリドを使用して、以前に記載されているように調製した(Fairbanks et al.,2009)。次のステップでは、3.4kDa、6kDa、10kDa、20kDa、および35kDaのポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA)を、ポリ(エチレングリコール)アクリロイルクロリド間の反応(トリエチルアミンの存在下で一晩)によって合成した(
図16A)(Miller et al.,2010)。ゼラチンメタクリレート(GelMA)は、50℃で4時間、100mMの炭酸塩/重炭酸緩衝液(pH=9.5)に溶解したゼラチン(タイプA、ブルーム300)の混合物にメタクリル酸無水物(1.0gゼラチン当たり0.1mL)を滴下して合成した(Shirahama et al.,2016)。
【0165】
投影ステレオリソグラフィーによるヒドロゲルの製作。一体化ヒドロゲルは、フォトマスクの投影を介して層ごとに感光性ポリマーを順次架橋して、3Dボリュームを作製する投影ステレオリソグラフィー(pSLA)で製作された(Arcaute,K.Ann.Biomed.Eng.,34:1429-41,2006)。発明者の研究室は、カスタムpSLA 3Dプリンターを開発し、これは、商用デジタル光処理(DLP)プロジェクター、zステージ用のステッピングモーターおよび軸、RepRap Arduinoメガボード(RAMBo)、および3Dプリントされたハウジングコンポーネント(Ultimaker 2(Ultimaker、Netherlands)を使用し、消費者向けのポリ(乳酸)(PLA)プラスチックフィラメントから製作)で構成されている。完全なセットアップは、以前に記載されている(Grigoryan,B.Science 364(6439):458-464,2019).ヒドロゲルは、プレポリマー溶液のポリ(ジムセイルシロキサン)(PDMS)でコーティングされた(6:1ベース:触媒)バットに浸されているzステージ上のガラススライド表面に結合させることによって、層ごとに製作される。XYビルドサイズは64x40mmであり、XYZ解像度は50μmであり、プロジェクター光学系(XY)および使用する光吸収剤(Z)によって決定される。光源は、405nmであり、コンピューターに接続することで、モーター、加熱素子、フォトマスクの投影が制御される。
【0166】
3.25重量%の3.4kDa PEGDA、10重量%のGelMA、17mMのLAP、10%のグリセロール、および2.255mMのタートラジンを含むプレヒドロゲル混合物を調製した。タートラジン(黄色の食品着色料FD&C Yellow 5,E102)は、光吸収剤として使用され、それが低毒性染料として機能することを本発明者らが以前に確立しており、容易に洗い流されて、透明なヒドロゲルが得られ、イメージングが容易になる(Grigoryan,B.Science 2019)。細胞がヒドロゲルの大部分にカプセル化されている場合、望ましい濃度と共培養比の細胞が含まれ、プレヒドロゲル溶液に再懸濁される(5x106内皮細胞~1x106間葉系幹細胞)。プレヒドロゲル混合物は、PDMSコーティングされた皿の中に負荷され、ビルドプラットフォームが最初の層の位置まで下げられる。Creation Workshopソフトウェア(envisionlabs.net/のワールドワイドウェブ)は、GCodeコマンドを用いてプリンターを制御することができ、zステージの垂直移動、フォトマスクシーケンスの投影、および加熱素子の加熱制御用に送信される。GelMAは熱ゲル化に敏感であるため、バットは37℃に維持され、架橋されるまで水性プレヒドロゲル混合物を維持する。各層の高さを50μmに設定し、露光時間は19.5mW/cm2の出力で、GelMAの各バッチ(典型的には、1層当たり10~15秒)に適合させた。プリントされた構築物が完成した後、3Dヒドロゲルは、ヒドロゲルとスライドの間にかみそりを適用することによってガラススライドから取り外され、複数回洗浄しながらPBS中で一晩膨潤させる。
【0167】
長期灌流のための細胞培養および内皮化。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を、VascuLife培地およびサプリメント(LifeLine Technologies、Frederick,MD)中で、37℃、5%CO2で培養した。内皮化チャネルに使用されたすべてのHUVECは、4~8回継代された。ヒドロゲルは、カスタムPLAガスケット内に配置されて、灌流チャンバーとして機能し、ゲルにぴったり合い、ならびに入口と出口に18ゲージの針先を配置した。ヒドロゲルを入れる前に、チャンバーをガラススライドに付け、エタノールで15分間滅菌し、完全に乾燥させた。ヒドロゲルをチャンバー内に入れ、入口と出口に18ゲージの針を取り付けたら、チャンバーの上部を別のスライドガラスで密封した。このセットアップにより、内腔化されたアーキテクチャを介して流体的に密閉された灌流が可能になった。
【0168】
HUVECは、チャネルの入口にある18ゲージの柔軟な針に接続されたNormjectの1mLシリンジを使用して、30e6細胞/mLの濃度で、ヒドロゲルのマイクロチャネルの内腔に負荷された。同様に、出口に18ゲージの柔軟な針をカテーテルで挿入して、チャネルを流体的に密閉した。懸濁液を注入した後、細胞を円柱状の表面の底部に15分間付着させた。その後6時間、15分ごとにゲルを90度回転させて、付着したHUVECの円柱状コーティングを確立した。灌流のセットアップ中、付着していない細胞を、新鮮な培地で洗い流した。
【0169】
高精度のマルチチャンネル蠕動ポンプISMATEC(Cole Parmer)を使用して、5μl/分で灌流培養を維持した。チューブは、IVメディアバッグから、蠕動チューブを介して、灌流チャンバーの入口まで、ルアーロックフィッティングで接続された。2つの0.22μmフィルターを、ヒドロゲルに至る前で、流れに沿って配置した。1つは、入口の直前に配置され、もう1つは、メディアバッグと蠕動ポンプの間のY字型活栓に配置された。長期の灌流培養中、必要に応じて、培地を、この接合部を通してバッグに追加した。灌流チャンバーにつながる入口までのチューブをずっと予め濡らすことによって、すべての気泡を排出した。
【0170】
落射蛍光イメージング。つなぎ合わせた画像(stitched image)は、Nikon Eclipse Ti倒立落射蛍光顕微鏡(Nikon instruments Inc.、Melville,NY)およびZyla 4.2 sCMOSカメラ(Andor、South Windsor,CT)を使用して取得した。オーバーラップの程度は、30%に指定されている。
【0171】
血管形成ゲルの脂肪パッド移植。動物を伴うすべての作業は、ライス大学IACUCによって承認されたプロトコルに記載されているように実行した。オスのSCID/bgマウス(6~10週齢、Charles River、系統コード250)は、血管形成ゲルの脂肪パッド移植を受けた。簡単には、マウスを2~4%イソフルランで麻酔し、腹部を剃毛し、ベタジンおよびイソプロパノールで滅菌した。マウスに1mg/kgのブプレノルフィンSR lab(Zoopharm)を投与し、脱水を防ぐために1mLの0.9%生理食塩水を投与した。メスとハサミを使用して白線の位置で切開し、アドソン鉗子を使用して左右の性腺脂肪パッドを摘出した。血管形成ヒドロゲルを、移植前にPBSで穏やかにすすぎ、性腺脂肪パッドを、血管形成ヒドロゲルのいずれかの側に縫合した。滅菌0.9%生理食塩水を使用して、移植中、ゲルを穏やかに洗浄し、水分補給を維持した。脂肪パッドに縫合した後、ゲルを腹腔に導入し、筋肉と皮膚を閉じた。手術後、マウスを監視し、必要に応じてケアと飼育を行った。
【0172】
デキストラン注入。一部の試料では、テキサスレッドにコンジュゲートされた固定可能なデキストラン70kDa(D1864、ThermoFisher)を、PBS中25mg/mLで調製した。他の試料では、CF680にコンジュゲートされたの固定可能なデキストラン70kDa(Biotium、カタログ番号80129)をPBS中2.5mg/mLで調製した。安楽死の15分前、100μLのデキストラン溶液を、尾静脈から注入した。ゲルを外科的に外植し、Sony A7R3カメラ(Sony)およびCanonマクロレンズEF 100mm 1:2.8L IS USM(Canon)で撮影した。次いで、ゲルを氷冷した4%のPFAに浸し、4℃で48時間固定した。固定後、ゲルをPBSで3回、各20分間洗浄し、イメージング用にPBS中で4℃に維持した。
【0173】
島の単離。ライス大学IACUCによって承認されたプロトコルによって説明されているように、雌のSprague-Dawleyラット(251~275g、Charles River、系統コード400)を島の分離に利用した。ラットは、最初に人道的に安楽死させた。次に、V字型にカットして開腹し、横隔膜をカットし、肝臓を裏返して総胆管を露出させた。1.5mg/mLのコラゲナーゼXI(C7657,Millipore Sigma)を含む15~20mLの島分離緩衝液(緩衝液製剤)を総胆管に注入した後、膵臓を外科的に摘出し、ラット島の酵素消化のために処理した。消化には、37℃での14分間のインキュベーション、10%のBSA(50-253-923、Fisher Scientific)による数回の洗浄、および勾配密度分離(Products 99-690-CIS、99-815-CIS、99-691-CIS、99-692-CIS、Corning)が含まれた。島は、10%のFBSおよび1%のペニシリン/ストレプトマイシンを含むRPMI-1640(10-040-CM、Corning)中で維持された。
【0174】
糖尿病の誘発。雄のSCID/bgマウス(6~10週齢、Charles River、系統コード250)は、ライス大学IACUCによって承認された動物プロトコルで説明されているように、糖尿病の誘発を受けた。クエン酸緩衝液に溶解された70mg/kgのストレプトゾトシン(572201,Millipore Sigma)を5日間連続してマウスに投与した。
【0175】
グルコースモニタリング。血糖ストリップと血糖測定器(BG1000,Clarity Diagnostics)を使用して、尾穿刺によって生成された一滴の血液中の血糖を定量した。400mg/dL超の1時間空腹時血糖の測定値が2日間続いたら、マウスを糖尿病とみなした。250mg/dL以下の非空腹時血糖の測定値であった場合、マウスを正常血糖とみなした。
【0176】
アルギネートブロックにおける島のカプセル化。TMTDアルギネートおよびSLG100(Pronova、Sandikva,Norway)は、2つの別々の0.8%の生理食塩水の溶液に、5%および3%になるように溶解した。これらの溶液は、UPVLVG対SLG100の比率が、80:20v/vで組み合わされた。アルギネートを0.2ミクロンのシリンジフィルターで滅菌ろ過し、新たに単離されたラット島を再懸濁するために使用した。流し込みは、アルギネートと島をピペッティングして、架橋溶液:20mMのBaCl2(Sigma-Aldrich 342920)、5重量%のマンニトール(Thermo Fisher 33342)に予め浸された20重量%の滅菌PEGDAの型に入れることによって行った。薄いポリカーボネート膜(Sterlitech 0.01ミクロン、62x22mm、PCT00162X22100)を架橋溶液に浸し、型の側面に折りたたんで、上部を覆い、底部の下まで延ばせるようにした。長方形の膜の端をピンセットでつまんで膜をぴんと張り、型を持ち上げ、高さが2~3cmの架橋剤の浴中(100mmx50mmの結晶皿、PYREX)で保持した。これを架橋剤中で20秒間保持した後、浴から取り出し、綺麗な非吸収性の表面に置いた。膜の包装を解き、型を、ガラススライド(Thermo Fisher、カタログ番号12-544-7)の上に穏やかに貼り付けた。次いで、スライドを穏やかに下ろして浴中に戻し、型を皿とスライドの間に固定した。次に、重し(水で満たされたVWR 50mLコニカルチューブ)をスライドの上に置いて、型を押し下げ、架橋を1時間続けた。1時間経過後、浴から型を取り出し、ブロックを穏やかに剥がした。次いで、ブロックを、20mLのHEPES緩衝液を含む50mLコニカルで洗浄し、20mLを追加し、15mLを排出し、その後の洗浄ごとに15mLの新しい緩衝液を追加した。ブロックを、完全培地で同じように3回洗浄した後、インキュベーターに保存するために10mLの培地に添加した。
【0177】
島の生存率。生/死染色溶液は、Live/Deadキット(L3224、Thermo Fisher)のカルセインAMを1:200v/vに、エチジウムホモダイマー-1を1:200v/vに、完全RMPI-1640で希釈することによって調製した。この染色液を、カプセル化された島を含むウェルの培地に、1:1v/vで加えた。カプセル化された島を、37℃、5%CO2で30分間維持し、その後、4℃で24時間、4%のPFAで固定した。染色および固定された島は、EVOS FL(Thermo Fisher)およびNikon Eclipse Ti落射蛍光顕微鏡(Nikon)を使用してイメージングした。
【0178】
グルコース刺激によるインスリンの放出。クレブス緩衝液(KRB)は、(Veiseh et al.,Nature Medicine 22:306-311,2016)に記載されているように調製した。KRBは、2mMのグルコース(Sigma;G7528)(KR2)および18mMのグルコース(KR18)で調製した。カプセル化された島を、KR2(洗浄)中で30分間、KR2(低)中で1時間、次いでKR18(高)中で1時間インキュベートした。次いで、低(KR2)ウェルおよび高(KR20)ウェルから上清を回収し、試料を希釈せずに、超高感度ラットインスリンELISA(ALPCO)によってインスリン濃度を2重で定量した。
【0179】
統計分析。統計分析は、GraphPad Prism 8ソフトウェア(GraphPadソフトウェア)を使用して行った。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、および****P<0.0001。
【0180】
実施例3-結果
免疫調節性の小分子で修飾された3Dプリント可能で分解性のコポリマーゲル基質を開発するために、本発明者らは確立された方法を使用して、PEGDA、GelMA、およびMet-RZA15を合成した。LAPは、アルゴン下、室温で一晩、等モル量のジメチルフェニルホスフィナイトと2,3,6-トリメチルベンゾイルクロリドを使用して、以前に記載されているように調製した(
図16A)(Fairbanks et al.,2009)。次のステップでは、3.4kDa、6kDa、10kDa、20kDa、および35kDaのポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA)を、ポリ(エチレングリコール)アクリロイルクロリド間の反応(トリエチルアミンの存在下で一晩)によって合成した(
図16A)(Miller et al.,2010)。ゼラチンメタクリレート(GelMA)は、50Cで4時間、100mMの炭酸/重炭酸緩衝液(pH=9.5)に溶解したゼラチン(タイプA、ブルーム300)の混合物に、メタクリル酸無水物(1.0gのゼラチン当たり0.1mL)を滴下して合成した(
図16B)(Shirahama et al.,2016)。免疫調節性の小分子であるMet-RZA15は、2ステップの方法で合成した(
図16C)。最初のステップでは、RZA15は、触媒としてのヨウ化銅の存在下、クリック化学反応によって合成した(Vegas et al.,2016b)。次のステップでは、メタクリロイル修飾RZA15(Met-RZA15)を、アルゴン下、トリエチルアミンの存在下で、RZA15とメタクリロイルクロリドとの間の反応によって合成した(
図16C)。中間体および生成物は、質量および純度を決定するために、ESIおよび/またはNMR(
1Hおよび
13C)分析によって特徴付けた。小分子修飾ゲルは、0.5Mの水性Met-RZA15をPEGDA(3.25重量%)、GelMA(10重量%)、および17mMのLAPに光重合することによって生成した(
図16D)。これらの試薬のバッチサイズは、これらの研究に必要な大量の材料を満たすのに十分な大きさである。
【表A】
【0181】
ポリマーのアクリル化の程度は一貫しており、文献全体で見られるものと同等である。官能基が各直鎖の末端にのみ存在するPEGDAなどの二官能性ポリマーの場合、ヒドロゲルメッシュ内に各分子を完全に組み込むには、高度なアクリル化が必要である。85%超のアクリル化により、施設内合成は、この分野の他の専門化学者に匹敵し、高品質のゲルの3Dプリントを支持する。官能基が主鎖全体にアミノ酸側鎖として存在するGelMAなどの多機能ポリマーの場合、望ましい程度のアクリル化は用途に依存する。アクリル化が徐々に高まると、ゲルの剛性が増し、取り扱いが改善される。しかし、孔径が小さくなり、細胞が広がるのを阻害し、コラゲナーゼの分解速度を遅くする。このため、すべての研究は中程度のアクリル化(53.4±8.3%)のGelMAを使用して実施された。アクリル化は、一級アミン置換を有するゼラチンのリジン残基のパーセンテージを測定することによって、1H NMRで確認された。生体適合性ポリマーの大規模なバッチ(350g PEGDA、45g GelMA)に最適なアクリル化度により、合成パイプラインは、インビトロおよびインビボでの並行研究のために数百の血管形成デバイスの3Dプリントを支持する。このスケールは、これまでこの分野では報告されておらず、移植された島構造の血管組み込みを追求する上で、本発明者らのグループの成功の可能性を高めている。
【表B】
【0182】
ポリマー力学の分析は、バッチ間の変動が少ないことを実証する。再現性のあるアクリル化のNMR確認に加えて、剪断変形(貯蔵弾性率)下で一貫して挙動する異なるポリマーバッチの能力を定量することによって、再現性をさらに実証する。このメトリックは、AR-G2平行板レオメーターを使用して得られた。各反復について、ポリマー溶液の45μL試料(0.05重量%のIrgacure2959を含む)を底板に加え、天板を下げてギャップサイズを50μmにした。5rad/sの角周波数および10%のひずみを使用して、ポリマー溶液を30秒間事前調整し、次いで、365nmランプの10mW/cm2の光に曝露した。光架橋反応の進行の際の貯蔵弾性率の変化を監視し、最終的に他の試料と比較され得るプラトー値が得られた。
【0183】
臨床標的を考慮して、移植可能なゲル構造は、体内で分解できなければならない。しかし、吻合が起こる前にこれらのゲルが完全に分解すると、外因性の島は、本来の循環と相互作用することができないようになる。ゲル力学に関しても同様のバランスが存在し、ゲルは外科的に操作するのに十分な硬さでなければならない。ここで、発明者らは、小さな(150μL)10%のGelMAゲルが、0.2mg/mLのコラゲナーゼの存在下で急速に分解し、PEGDAを組み込むことによって分解速度が調整できることを発見した。ゲル製剤に比較的少量のPEGDAを添加することによって、コラゲナーゼの分解に4倍長く時間がかかり、UV露光中に平行板レオメーターを使用して測定した場合、剪断剛性が3倍に増加する。これらのデータは、現在の製剤である10%のGelMA、3.25%の3.4kDa PEGDAが、酵素的および機械的な要件(吻合を支持するための中程度の分解速度、および外科的操作を支持するための十分な剛性)を満たし得ることを示唆している。さらに、これらの特性を調整する機能は、外因性間質細胞または増殖因子を必要とせずに、インビボで血管形成を最適化する独特な機会を提供する。
図17A~Bを参照されたい。
【0184】
本発明者らは、抗線維化分子Met-RZAを組み込んで、3Dプリントされたゲルの線維化を防止する。ゲルの表面にMet-RZAが存在することを確認するために、TOF-SIMS分析を使用して、ゲル表面を特徴付けた。負の高質量解像度深度プロファイルは、TOF-SIMS機器(ION-TOF GmbH、Munster,Germany)とインサイツ走査型プローブ顕微鏡(NanoScan、Switzerland)を組み合わせたTOF-SIMS NCS機器を使用して得られた。束になった30keVのBi
3+イオン(測定電流が0.2pA)を、64x64ピクセルのラスターで分析用のプライマリプローブ(スキャン領域100×10μm
2)として使用した。電荷効果の調整は、-10Vの表面電位を使用して操作された。サイクルタイムは、200μsに固定された(m/z=0~3649a.m.uの質量範囲に対応する)。TOF-SIMS分析では、小分子(Met-RZAおよびRZA15)の存在について、ゲル表面が分析された(
図18B~D)。負極性TOF-SIMSデータは、Met-RZA小分子でプリントされたゲルでは、プリントされていないゲルと比較して、高いレベルのMet-RZA(質量=459.26、1.6倍)および断片化されたRZA15(質量=390.98、5.6倍)を示す。これは、3Dプリントされたゲルの表面に免疫保護性の小分子が存在することを示しており、移植されたゲルの線維化を軽減するであろう。
【0185】
本発明者らは、開存血管チャネルをプリントするだけでなく、内皮の被覆、適切な血行動態、および漏れ防止のカテーテル法にとって重要である真円度を制御するそれらの能力を実証する。この性能により、血管網の様々なトポロジーを含む、複雑な3Dアーキテクチャを備えたヒドロゲル血管網の実現が可能になる。
図19A~Dを参照されたい。
【0186】
設計通りに製作された本発明者らの実証されたチャネル開存性により、本発明者らは、生体適合性血管形成デバイス内の対流を支持するための灌流可能な血管網を首尾よく作製できることを示す。これはまた、様々な血管設計が血管形成デバイス内の島の長期生存により適していると発明者が考える場合、この3Dバイオプリンティング技術が、任意の血管アーキテクチャに対応し得ることを意味する。
【0187】
両方のヒドロゲルアーキテクチャの速度プロファイルから、灌流可能なボリュームのいずれかのエッジにおける速度がほぼゼロであるため、滑りなし境界条件が有効な仮定であるように見える。高いr2値で示されるように、ベストフィット曲線はデータをよく表している。これらのゲルアーキテクチャの流体力学にはわずかな変動があるが、概して、流れには障害がないように見える。したがって、これらのヒドロゲルは、インビボで吻合が生じた場合に血流に適応することが可能であり、島細胞を支持するための血管組み込みを支持するであろう。
図21A~Gを参照されたい。
【0188】
本発明者らは、それらの血管形成デバイスが、宿主の循環系に完全に組み込まれることを期待しているため、心周期の圧力変化の最中で血管が破裂しないことが重要である。さらに、血管の周期的な拡張は、健常な血行動態を支持し、恒常性を促進する基礎となる細胞集団(例えば、内皮、筋肉、間質)に機械的な手がかりを提供する。
【0189】
本発明者らは、それらの血管網が、それらの内腔を保持しながら完全に内皮化され得ることを実証する(
図23C、挿入図断面)。さらに、HUVECが能動的にゲルを分解してゲルに浸潤し得る証拠がある。本発明者らまた、単一細胞の遊走(
図23A、挿入図、矢印は遊走する単一の細胞を示す)および血管新生の出芽(
図23D)を示す、実質ゲル空間で遊走するHUVECを観察した。内皮細胞は、流れの方向に並んでおり(
図23B)、古典的な玉石状の形態を想定する(
図23C、挿入図)。数日間かけて、HUVECは広がり、円筒形の内腔の中にコンフルエントな単層を形成する。これらの内皮化ゲルは、長期間の灌流下で安定して維持することができ、この内皮単層が、静止状態に達し、インビボ移植の準備が整うまで持続され得ると考えられる。本発明者らは、血管形成デバイス内の内皮化ネットワークの組み込みが、長期の生存および機能性のための宿主血管構造の組み込みを促進しながら、インビボにおける島の生存を支持すると考えている。
【0190】
数日間の灌流後の内皮細胞の高い生存率は、内皮化された血管網が長期間堅固なままであることを示唆し、さらに内皮単層が成熟したことも示唆している。内皮単層は、生存能力を失うことなく、この静止状態で数日間維持され得る。これにより、移植片を事前に準備し、ドナー島が利用可能になったときに播種することができる。
【0191】
3Dプリントされたゲルに内皮細胞をうまく播種した後、アルギネートを流し込むことによって、島をゲルに導入した(
図25A)。流し込みの方法を開発し、架橋アルギネートがアンカーを確実に取り囲み(
図25B)、アルギネートおよび島が所定の位置に保持されるようにした。無菌環境で、2種類のアルギネート、RZA15で修飾されたUP VLVGおよびSLG100(NovoMatrix、Sandvika,Norway)を、60:40の比率で混合し、ろ過して、TMTDアルギネートを生成した。60μlのTMTDアルギネートを、ピペットでゲルチャンバーに入れ、100mMのCaCl
2および1mMのBaCl
2溶液で30分間架橋した。このプロセスを繰り返して、チャンバーを、アルギネートおよび島で満たした。架橋が成功したことは、ブロック全体にわたって固体アルギネートを示すビブラトームのクロスセクションによって確認された。上記の手順に従うことによって、TMTDを流し込んだゲルが一貫して生成され得る。このアルギネートの流し込み手順により、バラバラになることなくしっかりと取り扱うことができる構造がもたらされる。アルギネートの流し込みが成功すると、膵島のカプセル化が可能になる。
【0192】
TMTDアルギネートを調製し、ヒト膵島と混合した。アルギネートおよび島を含むゲルを、Live/Dead染色(完全CMRL-1066中、1:200のカルセインAM、1:200のエチジウムホモダイマー)とともに30分間インキュベートした。次いで、島を含むゲルを固定し、Nikon Ti Eclipse落射蛍光顕微鏡で画像化した。
【0193】
GSISの場合、3Dプリントされた血管形成デバイスに、TMTDアルギネートおよびヒト膵島を流し込んだ。3Dプリントされた血管形成デバイスを、2mMのクレブス緩衝液で30分間(前洗浄)、60分間(洗浄)、および60分間(低グルコース)インキュベートした。次いで、それらを18mMのクレブス緩衝液で60分間インキュベートした(高グルコース)。低グルコースおよび高グルコースの上清を、超高感度ヒトELISA(Alpco,Salem,NH)によって2重に分析した。刺激指数は、高グルコース中で産生されたインスリンを、低グルコース中で産生されたインスリンで割った比率として計算された。
【0194】
90%超の生存率かつ2超の刺激指数の実証は、本発明者のデバイスおよび島カプセル化の方法が、脆弱な島生物学と互換的であり、同種および異種の島移植に対するこのアプローチの橋渡し的な価値を高めることを示している。
【0195】
本発明者らは、パターン化された血管構造を有するゲルのインビボでの吻合を評価するために、GFP-HUVECで内皮化されたゲルを移植した(
図26A)。ゲルにGFP-HUVECを播種し、灌流培養で6日間維持した(
図26B)。血管吻合を促進するために、高度に血管形成された性腺脂肪パッドでゲルの周りを包み、ゲルに縫合した(
図26C)。安楽死の前に、マウスは、尾静脈注入を介して、ヒト特異的レクチンおよびマウス特異的レクチンを投与された。ゲルは3週間で外植され、固定され、分析用に4Cで維持された。3Dプリントされたチャネルは、インビボでの移植中も、ヘビ状のトポロジーを保持し、開存性を保持したままである。これは、インビトロで独自にパターン化された血管構造が、インビボでも同様のパターンに変換されることを示している。ゲルのチャネル中の血液の視覚化(
図26D)は、ゲルを用いた血管組み込みの有望な兆候である。密接に関連する血管(
図26D)は、ゲルが分解性であり、宿主との血管組み込みが可能であることを示している。これらの発見は、カプセル化された島移植のためのインビボでパターン化された血管構造をもたらすこのアプローチの可能性を勇気づける。
【0196】
実施例4
様々な生体材料特性を有するパターン化された多層ヒドロゲルの開発。パターン化ヒドロゲルは、次のように開発される。複数のヒドロゲル製剤を利用して、分解性、剛性、細胞成分、細胞接着特性などの様々な生体材料特性を有する多層パターン化ヒドロゲルを作製することができる。
【0197】
分解性の底層および上層とともに、非分解性の中層を有する3層ヒドロゲルは、次のように開発することができる:ノルボルネン官能基(norHA)で修飾されたヒアルロン酸、光開始剤(例えば、LAP)と組み合わせたもの、および分解性ペプチド架橋剤(例えば、CGPQGIWGQGCR(配列番号1))は、分解可能なペプチド架橋を有するパターン化された完全合成ヒドロゲル製剤をもたらし、分解プロファイルを指定することが可能になる。
【0198】
非分解性部分が、例えば、ステレオリソグラフィーアプローチを使用してプリントされた後、プリント溶液は、非分解性のもの、例えば、6.0kDaのPEG-ジアクリレートと交換することができる。非分解性PEG-ジアクリレートのパターン化された成分は、同じデバイスでプリントすることができる。
【0199】
最後に、非分解性ゲル製剤は、分解性ゲル製剤、例えば、norHA+LAP+CGPQGIWGQGCR(配列番号1)ペプチド架橋と交換することができる。これにより、異なる生体材料特性を有する多層生体材料の作製が可能になる。
【0200】
ヒアルロン酸をノルボルネンで官能化して、Boc2O、DMAP、およびDMSOの存在下で、ノルボルネンとヒアルロン酸を混合し、45Cで20時間撹拌することによって、ノルボルネン修飾ヒアルロン酸(NorHA)を生成した。ヒアルロン酸ゲルは、ペンダント細胞接着性ペプチドで印刷され(青色の405nm光への曝露)、リチウムアシリルホスフィネート(LAP)とともに、細胞接着性チオール末端ペプチド(CGRGDS(配列番号2))およびMMP感受性ジチオール架橋ペプチド(CGPQGIWGQGCR(配列番号1))の添加による分解性ペプチドの架橋を有する。ペプチド配列CGPQGIWGQGCR(配列番号1)(高度に分解性、HD、1261.42g/mol)およびCGRGDS(配列番号2)(チオール末端細胞接着ペプチド)は、Aapptec(Louisville,KY)によってカスタム合成された。ペプチドは、95%超の純度でトリフルオロ酢酸塩として供給された。ペプチドは、空気が除かれ、必要になるまで(ジスルフィド形成を最小限に抑えるために)、アルゴン下、-80℃で保存した(Miller et al.,Biomaterials,31(13:3736-43,2010)。
【0201】
ゲルは、次のように精製された。NorHAおよび6kDa PEG-ジアクリレートを、各々4重量%でPBSに溶解した。チオール末端分解性架橋ペプチドCGPQGIWGQGCR(配列番号1)を、10mMで加えた。LAPを、34mMで加えた。光吸収剤のタートラジンを、2.25mMで加えた。
【0202】
本明細書に開示および請求されるすべての方法は、本開示に照らして、過度の実験なしに作製および実施することができる。本発明の組成物および方法は、好ましい実施形態に関して説明されてきたが、当業者には、本明細書に記載の方法およびステップまたは方法の一連のステップに、本発明の概念、趣旨および範囲から逸脱することなく、変形例が適用され得ることが明らかであろう。より具体的には、化学的および生理学的の両方に関連する特定の薬剤が、同じまたは同様の結果が達成されるとともに、本明細書に記載の薬剤と置き換えられ得ることが明らかであろう。当業者に明らかなかかる類似の置換および変更はすべて、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨、範囲および概念の範囲内であるとみなされる。
【0203】
IX.参考文献
以下の参考文献は、それらが本明細書に記載されたものを補足する例示的な手順または他の詳細を提供する範囲で、参照により本明細書に具体的に援用される。
【配列表】
【国際調査報告】