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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-28
(54)【発明の名称】歯科装置
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/00 20060101AFI20220318BHJP
【FI】
A61C19/00 M
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547802
(86)(22)【出願日】2020-02-13
(85)【翻訳文提出日】2021-10-08
(86)【国際出願番号】 US2020018059
(87)【国際公開番号】W WO2020168041
(87)【国際公開日】2020-08-20
(31)【優先権主張番号】16/277,663
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521359117
【氏名又は名称】フアン、スティーブン・ウェン-クー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】フアン、スティーブン・ウェン-クー
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA20
(57)【要約】
マウスガードは、歯列弓の少なくとも前方歯を包含するように構成されたトレイを含む。トレイは、トレイから離れるように延在する一対の突出部を含み、各突出部は、歯列弓の犬歯の上に概ね重なるように構成される。突出部は、歯列弓の1本以上の前方歯に係合するように構成され、それによって、歯列弓の少なくとも前方歯への損傷が低減又は防止される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マウスガードであって、
上顎骨弓の少なくとも前方歯を包含するように構成されたトレイを備え、
前記トレイは、前記トレイから離れるように延在する一対の突出部を含み、各突出部は、前記上顎骨弓の少なくとも1本の前方歯の一部分の上に概ね重なるように構成され、
それによって、前記突出部は、下顎骨弓の少なくとも1本の歯に係合するように構成され、
それによって、前記上顎骨弓の前記少なくとも前方歯に対する損傷が低減又は防止される、マウスガード。
【請求項2】
前記トレイは、前記上顎骨弓の少なくとも1本の後方歯を更に包含するように構成される、請求項1に記載のマウスガード。
【請求項3】
各突出部は、前記上顎骨弓の少なくとも口蓋側上に傾斜される、請求項1に記載のマウスガード。
【請求項4】
各突出部は、前記上顎骨弓の少なくとも唇側上に傾斜される、請求項1に記載のマウスガード。
【請求項5】
マウスガードであって、
下顎骨弓の少なくとも前方歯を包含するように構成されたトレイを備え、
前記トレイは、前記トレイから離れるように延在する一対の突出部を含み、各突出部は、前記下顎骨弓の少なくとも1本の前方歯の一部分の上に概ね重なるように構成され、
それによって、前記突出部は、上顎骨弓の少なくとも1本の歯に係合するように構成され、
それによって、前記下顎骨弓の前記少なくとも前方歯に対する損傷が低減又は防止される、マウスガード。
【請求項6】
前記トレイは、前記下顎骨弓の少なくとも1本の後方歯を更に包含するように構成される、請求項5に記載のマウスガード。
【請求項7】
各突出部は、前記下顎骨弓の少なくとも口蓋側上に傾斜される、請求項5に記載のマウスガード。
【請求項8】
各突出部は、前記下顎骨弓の少なくとも唇側上に傾斜される、請求項5に記載のマウスガード。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0001]本発明は、一般に、マウスガードに関する。より具体的には、本発明は、睡眠中の歯の損傷を低減するためのマウスガードに関する。
【0002】
[0002]人間には、2つの歯列弓:下顎骨弓(即ち下顎骨(一般に下顎と呼ばれる)又は下弓に沿った歯の弓)及び上顎骨弓(即ち上顎骨(一般に上顎と呼ばれる)又は上弓に沿った歯の弓)がある。下顎骨弓又は下弓に沿った歯は、一般に「下歯」と呼ばれ、上顎骨弓又は上弓に沿った歯は、一般に「上歯」と呼ばれる。
【0003】
[0003]歯ぎしり(ブラキシズム)は、過剰な歯の擦り合わせ(グラインディング)又は顎の噛み締め(クレンチング)である。咀嚼(即ち食物を噛むこと)の通常のプロセス中、食物が咀嚼される(即ち噛まれる)につれて、1本以上の下歯が1本以上の上歯と接触する。一般に、噛んでいる間、食物は、下歯及び上歯のうちのわずか数本のみの間に配置される。食物を噛む人々は、食物が位置する特定の歯だけで食物を磨り潰すことに集中し、噛む食物がない場所で他の歯を不必要に共に擦り合わせることを避ける傾向がある。しかしながら、一部の人々は、食物を噛むとき以外のときに歯を擦り合わせるか又は噛み締める。歯ぎしりは、過剰な歯の擦り合わせ又は顎の噛み締めであり、睡眠中に生じる可能性がある。睡眠中の歯ぎしりは、夜間歯ぎしりと呼ばれる。夜間歯ぎしりの原因は完全には理解されていないが、人格、ストレス、及び感情を含むがこれらに限定されない様々な要因に起因する可能性が高い。夜間歯ぎしりをしている人々の大多数は、睡眠中に歯を擦り合わせているか又は噛み締めている間に雑音を発しない。しかしながら、睡眠中に歯を擦り合わせるか又は噛み締めることによって雑音(例えば、キーキー音)を生じさせる多くの人々が存在する。
【0004】
[0004]歯ぎしりによって引き起こされる歯の摩耗は、歯の咬合面(即ち噛み合わせ面)に影響を及ぼす。歯の摩耗の正確な位置及びパターンは、歯ぎしりがどのように生じるかに依存する(例えば、対向する下顎骨弓及び上顎骨弓の犬歯及び切歯が互いに対して横方向に動かされるとき、これは、歯の切歯縁の摩耗につながる可能性がある)。歯ぎしりをする人々は、前方歯(即ち前歯)を擦り合わせ得、また、後方歯(即ち奥歯)を擦り合わせ得る。成人前方歯は、中切歯及び側切歯並びに犬歯を含み、6本の上前歯及び6本の下前歯を構成する。成人の後方歯は、3本の大臼歯及び2本の小臼歯(即ち双頭歯)を含み、10本の上奥歯及び10本の下奥歯を構成する。歯のこの擦り合わせ及び噛み締めは、共に噛み締められているか又は擦り合わされている歯に大量の力を加える可能性がある。歯のこの擦り合わせ及び噛み締めの力は、1本以上の歯のエナメル質層を摩耗させ、これらの歯の象牙質層を擦り合わせ及び噛み締めに曝す可能性がある。象牙質層は、エナメル質層よりも軟らかく、摩耗及び齲蝕に対してより脆弱である。十分な歯が摩耗又は齲蝕した場合、歯は、効果的に弱体化され、歯ぎしりで生じる増大された力の下で破折し得る。この擦り合わせ及び噛み締めは、その後、歯痛、虫歯、歯周炎、及び歯の喪失を含むがこれらに限定されない様々な口腔衛生問題を引き起こす可能性がある。
【0005】
[0005]人がストレスを有し睡眠に入るとき、その人は、無意識に頭、首、及び肩の筋肉を使用して下顎を収縮させる可能性があり、そのため、下顎が口に対して横方向及び突出方向に動くときに、下歯のうちの1本以上(即ち下顎骨弓の1本以上の歯)が上歯のうちの1本以上(即ち上顎骨弓の1本以上の歯)と接触する。これは、次に、その人の上歯及び下歯に対して横方向の力を引き起こすであろう。1本の歯は、通常、対向する歯によってこの特定の歯に加えられる横方向の力の量が非常に大きいことに起因して、最も弱いリンクである。この横方向の力は、対向する歯がより強いこと、及びこの特定の歯が耐えることができる力の量よりも遙かに大きい除荷力に起因して、この特定の歯を左右にシフトさせるであろう。特に擦り合わせによってこの歯にこの力が何晩も加えられた後、人は、擦り合わせ及び噛み締めの結果として、歯痛、虫歯、歯周炎、及び歯の喪失を含むがこれらに限定されない様々な症状を経験する可能性がある。
【0006】
[0006]歯ぎしりの影響から歯を保護するために、異なるタイプの歯科装置(例えば、マウスガード)が提案されている。しかしながら、そのような歯科装置には限界があり、常に改良することができる。
【0007】
[0007]それ故に、マウスガードの形態の改良された歯科装置が必要とされている。睡眠中に歯ぎしりの影響から歯を保護するマウスガードも必要とされている。製造、組み立て、調整、及び維持がより容易なマウスガードが加えて必要とされている。本発明はこれらの必要性を満たし、他の関連する利点を提供する。
【発明の概要】
【0008】
[0008]本明細書に例示するマウスガードアセンブリは、改良されたマウスガードを提供する。本明細書に例示するマウスガードアセンブリは、睡眠中の歯ぎしりの影響から歯を保護するための改良されたマウスガードを提供する。本明細書に例示するマウスガードアセンブリは、製造、組み立て、調整、及び維持がより容易なマウスガードアセンブリを提供する。
【0009】
[0009]例示的な実施形態では、マウスガードは、上顎骨弓の少なくとも前方歯を包含するように構成されたトレイを含む。トレイは、トレイから離れるように延在する一対の突出部を含み、各突出部は、上顎骨弓の少なくとも1本の前方歯の一部分の上に概ね重なるように構成される。突出部は、下顎骨弓の少なくとも1本の歯に係合するように構成され、それによって、上顎骨弓の少なくとも前方歯への損傷が低減又は防止される。
【0010】
[0010]更なる例示的な実施形態では、トレイは、上顎骨弓の少なくとも1本の後方歯を更に包含するように構成される。
【0011】
[0011]追加の例示的な実施形態では、各突出部は、上顎骨弓の少なくとも口蓋側上に傾斜される。
【0012】
[0012]追加の例示的な実施形態では、各突出部は、上顎骨弓の少なくとも唇側上に傾斜される。
【0013】
[0013]別の例示的な実施形態では、マウスガードは、下顎骨弓の少なくとも前方歯を包含するように構成されたトレイを含む。トレイは、トレイから離れるように延在する一対の突出部を含み、各突出部は、下顎骨弓の少なくとも1本の前方歯の一部分の上に概ね重なるように構成される。突出部は、上顎骨弓の少なくとも1本の歯に係合するように構成され、それによって、下顎骨弓の少なくとも前方歯への損傷が低減又は防止される。
【0014】
[0014]更なる例示的な実施形態では、トレイは、下顎骨弓の少なくとも1本の後方歯を更に包含するように構成される。
【0015】
[0015]追加の例示的な実施形態では、各突出部は、下顎骨弓の少なくとも口蓋側上に傾斜される。
【0016】
[0016]追加の例示的な実施形態では、各突出部は、下顎骨弓の少なくとも唇側上に傾斜される。
【0017】
[0017]本発明の他の特徴及び利点は、例として本発明の原理を例示する添付の図面と併せて読むと、以下のより詳細な説明から明らかになるであろう。
【0018】
[0018]ここで、様々な実施形態の図面を参照しながら、有利な特徴を強調することに重点を置いて、様々な本実施形態を詳細に議論する。例示する実施形態は、本発明を例示することを意図するが、限定することを意図しない。これらの図面は以下の図を含み、それらにおいて、同様の数字は同様の部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】[0019]本発明の実施形態による、使用者の開いた口の正面図を例示し、上側マウスガードトレイが、使用者の上歯の少なくとも一部分を覆い、下側マウスガードトレイが、使用者の下歯の少なくとも一部分を覆っている。
図2】[0020]図1の上側及び下側マウスガードトレイを例示し、使用者の下顎が、使用者が歯を擦り合わせるときに使用者の右に横方向に動かされる。
図3】[0021]図1の上側及び下側マウスガードトレイを例示し、使用者の下顎が、使用者が歯を擦り合わせときに使用者の左に横方向に動かされる。
図4】[0022]図1の下側マウスガードトレイのみを装着している使用者を例示し、使用者の下顎が、使用者の右に横方向に動かされている。
図5】[0023]図1の上側マウスガードトレイのみを装着している使用者を例示し、使用者の下顎が、使用者の左に横方向に動かされている。
図6】[0024]図1の上側マウスガードトレイの頂部側の正面上面図を例示する。
図7】[0025]図1の上側マウスガードトレイの底部側の背面上面図を例示する。
図8】[0026]図1の下側マウスガードトレイの頂部側の正面上面図を例示する。
図9】[0027]図1の下側マウスガードトレイの底部側の背面上面図を例示する。
図10】[0028]擦り合わせ中の上側及び下側マウスガードトレイの突出部間の接触を例示する断面図を例示する。
図11】[0029]擦り合わせ中の下側マウスガードトレイの突出部と上歯列との間の接触を例示する断面図を例示する。
図12】[0030]擦り合わせ中の上側マウスガードトレイの突出部と下歯列との間の接触を例示する断面図を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[0031]以下の詳細な説明は、図面を参照して本実施形態を説明する。図面では、参照番号は、本実施形態の要素をラベリングする。これらの参照番号は、対応する図面の特徴の議論に関連して以下に再現される。
【0021】
[0032]本発明の図面及び説明は、明確にする目的で、マウスガードに見られる多くの他の要素を排除しながら、本発明の明確な理解に関連する要素を示すために簡略化されていることが理解されるべきである。当業者は、他の要素及び/又はステップが、本発明を実装する際に望ましい及び/又は必要とされることを認識し得る。しかしながら、そのような要素及びステップは当技術分野で良く知られており、それらは本発明のより良好な理解を促進しないので、そのような要素及びステップの議論は本明細書では提供されない。本明細書での開示は、当業者に知られているそのような要素及び方法に対する全てのそのような変形及び修正を対象とする。
【0022】
[0033]例示の目的で図1~12に示すように、本発明の実施形態は、使用者の上歯列弓の歯用のマウスガードトレイ30(即ち上側ガードトレイ30)と、使用者の下歯列弓の歯用のマウスガードトレイ40(即ち下側ガードトレイ40)とを含むマウスガードアセンブリ20に属する。各ガードトレイ30、40は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)材料を使用して作製される。ガードトレイ30、40を形成するために使用されるTPU材料の例は、Astron Dental(https://www.astrondental.com/)からのCLEARSPLINTである。TPU材料は、光学的に透き通っている(即ち概ね透明)、半透明、又は不透明であり得る。TPU材料は、着色され得るか、又は着色されないことがある。
【0023】
[0034]両方のマウスガードトレイ30、40は、同時に装着することができる。代替として、マウスガードトレイ30、40のうちの一方だけを装着することができる。例えば、上側ガードトレイ30は、下弓上にマウスガードトレイがない状態で上弓上に装着することができる(又は下側ガードトレイ40は、上弓上にマウスガードトレイがない状態で下弓上に装着することができる)。両方の歯列弓上又は歯列弓のうちの一方上だけに装着された場合、結果は、両方の弓上の歯が保護されるということになる。マウスガードトレイが1つの弓上だけに装着される場合、マウスガードトレイは、その弓上に存在する全ての歯を覆うように設計されるであろう。覆われる歯の数は、各個々の患者の固有の歯列に依存するであろう。少なくとも、マウスガード30、40は、口の前部における切歯から患者の口の各側上の小臼歯のうちの少なくとも1本に向かって後方に延在し、それを概ね覆う。擦り合わせる力を分散させるために、全ての歯がマウスガード30、40によって覆われていることが好ましい。大臼歯の被覆は、例えば、特に、患者が他方の歯列弓上の大臼歯に通常対向する歯列弓のうちの一方上の大臼歯を欠損している場合、患者の大臼歯のうちの1本以上が上方に萌出する可能性を低減することができるマウスガードトレイ30、40がどの程度後方に延在するかは、各個々の患者の歯列が固有であるため、患者によって異なる可能性がある。
【0024】
[0035]マウスガード30、40の各々は、使用者の犬歯上のエリアを概ね覆う一対の突出部32、42を含むように設計されるが、使用者の側切歯、犬歯、及び第1小臼歯の間に延在する側方エリアも概ね覆うことができる。各個人の固有性に起因して、突出部32、42は、使用者の側切歯及び犬歯の一部分上のエリア、一般に使用者の犬歯上のエリア、及び一般に使用者の犬歯及び第1小臼歯上のエリアを概ね覆い得る。突出部32、42を前方歯上だけに配置することは、切歯のような前方歯はより短い歯根及びより少ない歯周靱帯を有するため、犬歯ほど強くなく、擦り合わせる力に対してより脆弱であるので、避けるべきである。突出部32、42が、中切歯又は側切歯などの前方歯上だけに配置される場合、擦り合わせによる力は、これらの特定の前方歯を外側にシフトさせ、より突出させる可能性がある。中切歯又は側切歯が突出すると、側切歯と犬歯との間に隙間が形成される可能性があり、これは、切歯が歯周病の危険により曝されることをもたらす可能性がある。
【0025】
[0036]突出部32は、下顎骨弓の犬歯又は第1小臼歯に係合するように構成され、突出部32は、下顎骨即ち下顎が擦り合わせ運動中に概ね横方向(即ち概ね左右)に動くときの運動である側方偏位中に、下顎骨犬歯又は小臼歯に対して擦り合わされる。上顎骨犬歯(又は上犬歯)は、犬歯が最も長い歯根を有し、擦り合わせる力に耐えることができるため、他の歯よりも好ましい。また、犬歯は、大臼歯又は小臼歯と比較して、顎関節(TMJ)から最も遠位に位置する。歯がTMJに近ければ近いほど、TMJ筋によって生成される力が強くなり、それは歯への損傷を引き起こすであろう。それらの長い歯根及び位置は、擦り合わせ又は噛み締め中にTMJ筋によって引き起こされる力に耐えるために、大臼歯及び小臼歯に勝る利点を犬歯に与える。
【0026】
[0037]突出部32、42は、概ね牙のような外観を有する。代替では、突出部32、42は、特定の使用者の固有の歯列を収容するように所望に応じて形成することができる。例えば、突出部32の下側は、鋭利な牙のような底部ではなく、平坦な形状の底部を有することができる。同様に、突出部42の上側は、「鋭利な」牙のような頂部ではなく、平坦な形状の頂部を有することができる。上側トレイ30の突出部の平坦な形状の底部は、依然として、下顎骨犬歯に対する擦り合わせ接触点として機能し、突出部32の「鋭利な」牙のような底部と同様に効果的であることができる。同様に、下側トレイ40の突出部の平坦な形状の頂部に関しては、依然として、上顎骨犬歯に対する擦り合わせ接触点として機能し、突出部42の「鋭利な」牙のような頂部と同様に効果的であること可能である。
【0027】
[0038]突出部32、42の傾斜の角度もまた、平坦な頂部の0(0)度から、犬歯の解剖学的構造を模倣する75(75)度まで変動する。この角度は、顎の側方運動によって決定され、故に、下顎骨前方歯及び後方歯は、擦り合わせ運動中に上顎骨マウスガード30と接触しない。
【0028】
[0039]各個人の歯列の固有性に起因して、突出部32、42の長さは、5ミリメートルから20ミリメートル(5mmから20mm)まで人によって異なり得るが、最も最適な長さは、一般に10ミリメートル(10mm)である。例えば、突出部32の長さが短すぎると、下顎骨第2小臼歯及び大臼歯などの下後方歯は、擦り合わせの側方偏位中に依然としてマウスガード30と接触する可能性がある。突出部32が長すぎる場合、突出部32は、擦り合わせ中に破折し得る。マウスガード30の他のエリアは、下顎骨歯との接触を避けて前方歯及び後方歯への損傷を防止するために薄くなければならない。図10~12に見られるように、突出部32、42は、一般に、歯列の冠状部分から突出部32、42の冠状部分までの長手方向長に沿って10ミリメートル(10mm)の厚さである。例えば、図10に見られるように、患者が上側及び下側マウスガード30、40の両方を装着している状態で、突出部32は、一般に、上顎骨弓上の使用者の歯のうちの1本(例えば犬歯)36の先端から10ミリメートル(10mm)の長さであり得、突出部42は、一般に、下顎骨弓上の使用者の歯のうちの1本(例えば側切歯)46の先端から10ミリメートル(10mm)の長さであり得、突出部32、42の傾斜部分は、互いに偏向する。この特定の事例では、マウスガード30、40の突出部32、42は、それらのそれぞれの10ミリメートル(10mm)の長さに沿って互いに接触していることが分かる。しかしながら、突出部32、42は、任意の数の場所で互いに又はそれらの対向するマウスガードの他の一部分と接触し得る。図11では、例は、下側マウスガードトレイ40のみを装着している患者を示し、突出部42が、一般に、下顎骨弓上の使用者の歯のうちの1本(例えば側切歯)46の先端から10ミリメートル(10mm)の長さであり、突出部42が、上顎骨弓上の使用者の歯のうちの1本(例えば犬歯)36と接触している。図12では、例は、上側マウスガードトレイ30のみを装着している患者を示し、突出部32は、一般に、上顎骨弓上の使用者の歯のうちの1本(例えば犬歯)36の先端から10ミリメートル(10mm)の長さであり、突出部32は、下顎骨弓上の使用者の歯のうちの1本(例えば側切歯)46に接触している。10ミリメートル(10mm)は、上顎骨歯列と下顎骨歯列との間に必要なほぼ最小距離である。2ミリメートル(2mm)は、中切歯と、下側マウスガードトレイ40と接触する上側マウスガードトレイ30の底側との間の上側マウスガードトレイ30の材料のほぼ最小厚さT1である。各個人は固有であるので、中切歯と上側マウスガードトレイ30の底側との間の上側マウスガードトレイ30の厚さT1は、個人によって異なる可能性がある。同様に、2ミリメートル(2mm)は、中切歯と、上側マウスガードトレイ30と接触する下側マウスガードトレイ40の頂部側との間の下側マウスガードトレイ40の材料のほぼ最小厚さT2である。各個人は固有であるため、中切歯と下側マウスガードトレイ40の頂部側との間の下側マウスガードトレイ40の厚さT2は、個人によって異なる可能性がある。マウスガードトレイ30、40上の前方及び後方歯列エリアは、対向する歯列がこれらの2つのエリアと接触しない場所で最小となるであろう。突出部32、42のために、前方及び後方歯列は、擦り合わせ又は噛み締め中に直接力を受けないであろう。各突出部32、42は、使用者が概ね横方向に(即ち横向きに)擦り合わせているときに上歯列と下歯列との間に間隙を作る湾曲した傾斜を突出部32、42の口蓋側上に含む。各突出部32、42は、突出部32、42の唇側上に湾曲した傾斜を含む。代替では、突出部32、42の口蓋側及び唇側上の傾斜は、角度を有し得るか、又は角度と湾曲との組み合わせであり得る。突出部32、42の形状は、一般に、犬歯の解剖学的構造を模倣するが、突出部32、42の口蓋側及び唇側上の傾斜は、特定の使用者の固有の歯列を収容するように必要に応じて形成され得る。突出部32、42は、ガードトレイ30、40を互いから離れるように案内し、ガードトレイ30、40間の接触を緩衝することによって、擦り合わせによって引き起こされる側方偏位中に前方歯と大臼歯とが接触することを防止する。ガードトレイ30、40が接触する場所にはどこでも、TPU材料は、擦り合わせ力の緩衝及び消散を提供する。
【0029】
[0040]使用者が睡眠中に歯を擦り合わせする間の下顎の側方偏位又は側方運動中に、突出部32、42は、前方及び後方の上顎骨歯と下顎骨歯との間の距離を増大させるであろう。この増大のために、前方歯及び後方歯は直接接触せず、故に、これらの歯に及ぼされる力は減少され、これらの歯の寿命を延ばすであろう。突出部32、42によって覆われた犬歯及び小臼歯に関して、10ミリメートル(10mm)の厚さはまた、これらの歯に直接加えられる力を減少させるであろう。両方の弓間の距離が増大するにつれて、使用者の頭、首、及び肩の筋肉によって及ぼされる力の影響は、減少されるであろう。犬歯は、歯列の両方の弓における最も長い歯であり、犬歯はまた、擦り合わせ中に前方切歯が許容することができるよりも多くの力を許容することができるより多くの歯周線維を有する。後方領域中の大臼歯に関して、擦り合わせによる大臼歯への力は、大臼歯が顎関節(TMJ)により近いので、犬歯、小臼歯、及び切歯への力よりも何倍も大きい。
【0030】
[0041]上側及び下側ガード30、40を作製するための第1の方法は、歯科医又は他の歯科専門家が、患者の歯列の上弓及び下弓の印象、並びに咬合採得を取り、次いでそれらを歯科技工所に送るためのものである。代替では、マウスガードが歯列の弓のうちの一方のみに必要であると判断された場合、歯列の弓のうちの一方だけの印象を取ることができる。歯科技工所において、患者の歯列の上弓及び下弓の型が印象から作成される。歯科技工所の技術者は、次いで、加熱機でTPU材料のシートを加熱して、ガードトレイを作成する。このTPU材料のシートは軟らかくなり、患者の歯列の型のうちの選択された1つの周りに形成することができる(例えば歯列の上弓)。材料がまだ軟らかい間に、技術者は、材料を切断及び形成して、上側マウスガードトレイ30及び突出部32を形成する。このプロセスを繰り返して、下側マウスガードトレイ40及び突出部42を作る。突出部32、42は、各突出部32、42が上顎骨弓及び下顎骨弓の口蓋側及び唇側上で傾斜するように形成される。各個人の歯列は固有であるので、突出部32、42は、各個人の固有のニーズを満たすように傾斜される。技術者は、突出部32、42の傾斜を患者の犬歯、切歯、及び/又は双頭歯の自然な傾斜(複数可)に概ね一致させるために、患者の歯列の上弓及び下弓の型を使用するであろう。ここでも、各個人の歯列の固有の性質が考慮される。上側マウスガードトレイ30の上縁34は、歯の冠状部分の少なくとも上半分まで延在すべきであるが、患者の歯肉線より上に延在すべきではない。同様に、下側マウスガードトレイ40の下縁44は、歯の冠状部分の少なくとも下半分まで延在すべきであるが、患者の歯肉線より下に延在すべきではない。代替方法は、沸騰水によって軟らかくさせ、歯列の上弓及び下弓の周りに形成することができるTPU材料から作成される事前作製されたマウスガードのためのものである。更なる代替では、歯科用CAD/CAM機械が使用される場合、ガードトレイ30、40は、患者の歯列のデジタル印象が取られ、次いで、CAD/CAM機械を使用してガードトレイ30、40を形成することによって作ることができる。
【0031】
[0042]マウスガードトレイ30、40のTPU材料は、擦り合わせが始まるとガード30、40が互いに接触するので、上歯列と下歯列との間の接触を防止するのに十分に硬い。時折、個人は口を開けて眠ることがあり、擦り合わせが始まると上歯列と下歯列とが接触するであろう。例えば、マウスガードトレイ30、40及び歯列が接触すると、マウスガードトレイ30、40のTPU材料の硬度は、対向する歯列が直接接触することを防止し、患者の頭、首、及び/又は肩の筋肉からの擦り合わせ力又は噛み締め力の影響を減少させる。軟質材料(即ち、TPUよりも軟らかい材料)を使用することは、擦り合わせが始まったときの上側ガードトレイ30と下側ガードトレイ40との間の最初の接触で上歯列及び下歯列がマウスガードトレイ30、40(即ち、TPUよりも軟らかい材料から作成されたマウスガードトレイ)に対して押し付けられるときに患者がTPUよりも軟らかい材料を「噛み切る」ことが可能であり得るほど効果的ではないか、又は上歯列及び/又は下歯列が擦り合わせ中に軟質材料を突き破っていない場合でさえ、軟質材料は、擦り合わせ及び噛み締め中に対向する歯列の接触から1本以上の歯への力を消散させるのに、良く噛まれたチューインガムのスティックと同様に効果的ではない。
【0032】
[0043]擦り合わせ及び噛み締め中にマウスガードトレイ30、40を装着することによって、頭、首、及び肩の筋肉からの力が減少されるであろう。故に、歯周線維上の損傷がより少なくなり、各個々の歯列の寿命が延びる。これらの歯周線維に加えられる力がより少ないとき、歯痛、虫歯、歯周炎、及び歯の損失がより少なくなるであろう。
【0033】
[0044]使用中、使用者は、夜間に眠りに入るより前に、マウスガードトレイ30、40を口の下弓及び上弓上に配置する。下顎の突出運動中に、切歯及び前方歯列に力を加えながら下顎を前後に動かすと、突出部32、42はまた、上弓及び下弓の両方上の前方歯列を直接接触させず、それは、擦り合わせ又は噛み締めによって引き起こされる力を軽減するであろう。
【0034】
[0045]上記で議論したように、マウスガードトレイ30、40は、同時に使用することができる。代替として、各マウスガードトレイ30、40は、他方なしで使用することができる。いずれにしても、各マウスガードトレイ30、40の機能は、単独で又は共に使用される場合には変化しない(ただし、覆われる歯の数は、各個人の歯列の固有の性質に起因して異なり得る)。
【0035】
[0046]本明細書全体を通して、「対向する(opposing)」という用語は、マウスガードトレイ30、40によって覆われていない対向する弓を指すことが理解されるべきである。例えば、上側ガードトレイ30の文脈では、「対向する弓(opposing arch)」という用語は、上側ガードトレイ30が上顎骨弓の歯上に配置されたときの下顎骨弓を指す。別の例では、下側ガードトレイ40の文脈では、「対向する弓」という用語は、下側ガードトレイ40が下顎骨弓の歯上に配置されたときの上顎骨弓を指す。
【0036】
[0047]本発明は、人間の口での使用に関連して上記で議論したが、本発明は、その環境に限定されず、他の種の口でも使用され得る。
【0037】
[0048]加えて、特許請求の範囲に記載された発明は、サイズが限定されず、小型バージョンで構成され得るか、又は上記で説明した運動及び摩擦制御の同じ若しくは同様の原理が適用されるであろう非常に大規模な用途での使用のために構成され得る。同様に、マウスガードの長さ及び幅は、縮尺通りに描かれていると解釈されるべきではなく、マウスガードの長さ/幅は、人間の口の寸法が個人によって異なり得るので、その配置に利用可能なエリアに合わせて調整され得る。更に、本明細書の図面(及びそれに示す様々な構成要素)は、縮尺通りに描かれていると解釈されるべきではない。
【0038】
[0049]本明細書全体を通して、「備える(comprise)」という単語、又は「備える(comprises)」若しくは「備えている(comprising)」などの変形は、記載された要素、整数若しくはステップ、又は要素、整数若しくはステップのグループの包含を暗示するが、任意の他の要素、整数若しくはステップ、又は要素、整数若しくはステップのグループの除外を暗示しないことが理解されるであろう。
【0039】
[0050]「少なくとも(at least)」又は「少なくとも1つ(at least one)」という表現の使用は、その使用が本開示の実施形態において所望の目的又は結果のうちの1つ以上を達成するためのものであり得るので、1つ以上の要素又は成分又は量の使用を示唆する。
【0040】
[0051]様々な物理的パラメータ、寸法、又は量について言及された数値は近似値に過ぎず、パラメータ、寸法、又は量に割り当てられた数値よりも高い/低い値は、それとは反対の記載が本明細書にない限り、本開示の範囲内に入ることが想定される。
【0041】
[0052]本明細書で使用する専門用語は、特定の実例的な実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図しない。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈がそうではないと明確に示さない限り、複数形も含むことを意図し得る。「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」、「含んでいる(including)」、及び「有している(having)」という用語は、包括的であり、従って、記載された特徴、整数、ステップ、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/又はそれらのグループの存在又は追加を除外しない。本明細書で説明した方法ステップ、プロセス、及び動作は、実行の順序として具体的に識別されない限り、議論又は例示した特定の順序でのそれらの実行を必ずしも必要とすると解釈されるべきではない。追加の又は代替のステップが用いられ得ることも理解されるべきである。
【0042】
[0053]要素又は層が別の要素又は層の「上に(on)」ある、「係合される(engaged to)」、「接続される(connected to)」、又は「結合される(coupled to)」ものとして言及されるとき、それは、他の要素若しくは層の直接上にあり得る、係合され得る、接続され得る、若しくは結合され得るか、又は介在する要素若しくは層が存在し得る。対照的に、要素が別の要素又は層の「直接上に(directly on)」ある、「直接係合される(directly engaged to)」、「直接接続される(directly connected to)」、又は「直接結合される(directly coupled to)」ものとして言及されるとき、介在する要素又は層は存在しないことがある。要素間の関係を説明するために使用される他の単語は、同様に解釈されるべきである(例えば、「間(between)」対「直接間(directly between)」、「隣接(adjacent)」対「直接隣接(directly adjacent)」、等)。本明細書で使用される場合、「及び/又は(and/or)」という用語は、関連する列挙した項目のうちの1つ以上の任意の及び全ての組み合わせを含む。
【0043】
[0054]「前(front)」、「後(rear)」、「左(left)」、「右(right)」、「内側(inner)」、「外側(outer)」、「真下(beneath)」、「下(below)」、「下側(lower)」、「上(above)」、「上側(upper)」、「水平(horizontal)」、「垂直(vertical)」、及び同様の用語などの空間的に相対的な用語は、本明細書では、1つの要素又は特徴の、図に例示する別の要素(複数可)又は特徴(複数可)との関係を説明するための説明を容易にするために使用され得る。空間的に相対的な用語は、図に図示する向きに加えて、使用中又は動作中のデバイスの異なる向きを包含することを意図し得る。例えば、図のデバイスがひっくり返された場合、他の要素又は特徴の「下(below)」又は「真下(beneath)」として説明される要素は、他の要素又は特徴の「上(above)」に向けられるであろう。このことから、「下(below)」という実例的な用語は、上及び下の両方の向きを包含することができる。デバイスは、別様に向けられ得(90度回転される又は他の向きにある)、本明細書で使用される空間的に相対的な記述語は、それに応じて解釈される。
【0044】
[0055]上記の説明は、本発明を実施するために企図される最良のモード、並びにそれを作成及び使用する様式及びプロセスを、それが関係する当業者が本発明を作成及び使用することを可能にするような完全な、明確な、簡潔な、及び正確な用語で提示する。本発明は、しかしながら、完全に等価である上記で議論したものからの修正及び代替構成を受け入れる余地がある。その結果として、本発明は、開示した特定の実施形態に限定されない。それとは反対に、本発明は、以下の特許請求の範囲によって一般に表される本発明の趣旨及び範囲内に入る全ての修正及び代替構成を網羅し、以下の特許請求の範囲は、本発明の主題を特に指摘し、明確に特許請求する。
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【国際調査報告】