(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-28
(54)【発明の名称】α-オレフィンを製造するための方法及び設備
(51)【国際特許分類】
C07C 2/10 20060101AFI20220318BHJP
C07C 7/04 20060101ALI20220318BHJP
C07C 11/02 20060101ALI20220318BHJP
C07C 11/107 20060101ALI20220318BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220318BHJP
【FI】
C07C2/10
C07C7/04
C07C11/02
C07C11/107
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021566365
(86)(22)【出願日】2020-01-28
(85)【翻訳文提出日】2021-07-26
(86)【国際出願番号】 EP2020051988
(87)【国際公開番号】W WO2020157036
(87)【国際公開日】2020-08-06
(32)【優先日】2019-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521329305
【氏名又は名称】リンデ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンクラー,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー,リヒャルト
(72)【発明者】
【氏名】ミュンドル,フロリアン
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC21
4H006AD11
4H006BA09
4H006BA30
4H006BA85
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC18
4H039CA29
4H039CF10
(57)【要約】
供給材料混合物中のエチレンを触媒オリゴマー化(1)で処理して、異なる鎖長のα-オレフィンと副化合物とを含む生成物混合物を得る、線状α-オレフィンを製造するための方法(100)が提案される。一次分留(2)では、生成物混合物の少なくとも一部を用いて一次留分が生成し、二次分留(4)では、一次留分の少なくとも一部を用いて二次留分が生成する。一次分留(2)及び二次分留(4)は、一次留分及び二次留分がα-オレフィンの1つを主成分として含み、他のα-オレフィンは少ないか又は含まず、一次留分は1つ以上の副化合物を含み、二次留分は一次留分と比較して1つ以上の副化合物が少ないか又は含まれないように、実施する。一次分留(2)と二次分留(4)との間の中間工程(3)において、一次留分の少なくとも一部が処理され、1つ以上の副化合物は少なくとも部分的に1つ以上の二次化合物に変換され、1つ以上の二次化合物は、二次分留(4)で少なくとも部分的に分離される。中間工程(3)は、中間工程で処理される、一次留分又はその一部に主成分として含まれるα-オレフィンの0.8%以下が反応するように実施する。中間工程は、アルミナ系触媒を使用して実施する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状α-オレフィンを製造する方法(100)であって、
-供給材料混合物中のエチレンを触媒オリゴマー化(1)で処理して、異なる鎖長のα-オレフィンと副化合物とを含む生成物混合物を得、
-一次留分は、前記生成物混合物の少なくとも一部を使用して一次分留(2)で生成し、二次留分は、前記一次留分の少なくとも一部を使用して二次分留(4)で生成し、
-前記一次分留(2)及び前記二次分留(4)は、前記一次留分及び前記二次留分が前記α-オレフィンの1つを主成分として含み、他のα-オレフィンは少ないか又は含まず、前記一次留分は1つ以上の副化合物を含み、前記二次留分は前記一次留分と比較して前記1つ以上の副化合物が少ないか又は含まれないように実施され、且つ
-前記一次分留と前記二次分留との間の中間工程(3)において、前記一次留分の少なくとも一部を処理し、前記1つ以上の副化合物は少なくとも部分的に1つ以上の二次化合物に変換され、前記1つ以上の二次化合物は、前記二次分留で少なくとも部分的に分離され、
-前記中間工程(3)は、前記中間工程で処理される前記一次留分又はその一部に主成分として含まれるα-オレフィンの0.8%以下が変換されるように実施され、
-前記中間工程は、アルミナ系触媒を使用して実施されること
を特徴とする、方法。
【請求項2】
前記アルミナ系触媒は、χ型及びγ型三酸化二アルミニウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルミナ系触媒は、450~460m
2/gの表面積を有する、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記中間工程は、1~12h
-1のベッド速度で実施される、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記中間工程で処理される前記一次留分又はその一部に主成分として含まれる前記α-オレフィンの0.2%未満が反応する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記中間工程は、60℃~100℃の温度レベルで実施され、及び/又は1.0~4.0bar(絶対圧)の圧力レベルで実施される、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記生成物混合物は、主成分として、1-ヘキセン及び/又は1-オクテンを、50、60、70、80又は90重量%超の含有量で含む、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記一次留分及び前記二次留分が主成分として含む前記α-オレフィンは1-ヘキセンであり、1-ヘキセンの含有量は90重量%超である、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記副化合物若しくは複数の前記副化合物の1つは2-エチル-1-ブテンであり、及び/又は前記二次化合物若しくは複数の前記二次化合物は3-メチル-2-ペンテンである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記一次留分及び前記二次留分が主成分として含む前記α-オレフィンは1-オクテンであり、1-オクテンの含有量は90重量%超である、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記副化合物若しくは複数の前記副化合物の1つは2-エチル-1-ヘキセンであり、及び/又は前記二次化合物若しくは複数の前記二次化合物の1つは3-メチル-1-ペンテンである、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項のプリアンブルに記載のα-オレフィンを調製するための方法及び対応する設備に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレンのオリゴマー化によるアルファ-オレフィン(α-オレフィン)の製造は周知であり、文献、例えば非特許文献1(D.Steinborn,Fundamentals of Organometallic Catalysis,Wiley-VCH,2012)、特に第8章「Oligomerization of Olefins」に記載されている。重要なプロセスの変形は、例えば、Steinbornが8.4.1項及び8.4.2項で説明しているシェル高級オレフィンレプロセス(SHOP)及びAlpha-SABLINプロセスである。
【0003】
上記のプロセスでは、偶数のα-オレフィンが、典型的なSchulz-Flory分布で生成し、典型的には、その中心は1-ブテン及び1-ヘキセンの生成である。
【0004】
エチレンをオリゴマー化してα-オレフィンを生成する方法は、特許文献1から公知であり、エチレンオリゴマー化工程、触媒失活工程、及び生成物分離工程を含み、その際、反応器には冷却回路が装備され、それにより、反応排水の少なくとも一部が少なくとも2台の互換可能な熱交換器を通って循環し、上記熱交換器は、内蔵された清掃デバイスによって交互に清掃される。
【0005】
特許文献2に記載されている課題は、エチレンをオリゴマー化した後、反応溶媒から蒸留によって1-ヘキセンを分離し、反応溶媒を反応系に再循環することによって、1-ヘキセンを工業規模で、低コストで製造する方法を提供することである。解決策として、反応溶媒中でのエチレンのオリゴマー化によって1-ヘキセンを調製し、少なくとも50重量%の1-ヘキセンを含むα-オレフィンオリゴマー組成物を得ることが提案されている。反応溶媒とα-オレフィンオリゴマー組成物とを含む反応液からの1-ヘキセン及び反応溶媒の分離は、蒸留によって実施され、回収した反応溶媒は反応系に再循環される。
【0006】
特許文献3によると、ノルマルα-オレフィンとビニリデンとを含む混合物を、マクロ網状構造の酸形態のスルホン酸カチオン交換樹脂で処理して、ノルマルα-オレフィンがより多く、ビニリデンがより少ない生成組成物を得る。得られた組成物は、生分解性洗剤の調製において、芳香族化合物のアルキル化に有用であると考えられる。
【0007】
特許文献4は、6~8個の炭素原子を有する少なくとも1つのノルマルα-オレフィンを主成分として含み、少量の少なくとも1つのビニリデンを含む、本質的に炭化水素からなる混合物を、約-50℃~約100℃の温度で、塩化第二鉄、三フッ化ホウ素又は三フッ化ホウ素エ-テル化物からなる群から選択されるフリ-デルクラフト触媒と接触させることで、ビニリデンを選択的に重合する方法を保護している。
【0008】
特許文献5によると、オレフィン混合物を硫化水素又はヒドロカルビルメルカプタンのいずれかと反応させた後、得られた混合物を蒸留して、ビニリデンを実質的に含まない生成物を得ることによって、オレフィン混合物からビニリデンが選択的に除去される。
【0009】
沸点が近い2-アルキル置換異性体を不純物として含む中鎖長オレフィンは、特許文献6に従い、(i)該オレフィンを、温和な条件下で固体酸触媒上に通し、不純物を二重結合で選択的に異性化すること、及び(ii)異性化オレフィンを蒸留によって分離すること、によって精製される。
【0010】
上記のオリゴマー化プロセス、特にΑlpha-SABLINプロセスは、生成物の分布に関してかなり柔軟性がある。したがって、例えば1-ブテン及び1-ヘキセンの収率が30~40重量%の分布を設定できる。この場合、各事例で生成する留分は、通常は、異物に関する市場の製品品質要件に適合する。
【0011】
他方、より高い収率、例えば、40~70重量%の1-ブテン及び1-ヘキセンが設定された場合、個々の留分中の分岐状オレフィンの割合が高くなるため、留分に対する市場の要件が満足されない。それでもやはり、それ相応の高収率が望ましい。したがって、このような場合、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン及び/又は1-デセン留分のいわゆる超分留(superfractionation)及び分岐状オレフィンの分離を、特に実施しなければならない。
【0012】
例えば、分布設定に応じて、上記の事例の1-ヘキセン留分は、0.5~2重量%の、やや沸点の低い成分2-エチル-1-ブテンで汚染され得る。
【0013】
1-オクテン及び1-デセン留分は、典型的には、それぞれのα-オレフィンに非常に近い温度で沸騰する低沸点成分、すなわち2-エチル-1-ヘキセン及び2-エチル-1-オクテン分で各々汚染されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3338884(A1)号明細書
【特許文献2】特開平07-149672号公報
【特許文献3】米国特許第3424810号明細書
【特許文献4】米国特許第3367987号明細書
【特許文献5】米国特許第4511753号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第0648721(A1)号明細書
【特許文献7】ロシア国特許第2206557(C1)号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】D.Steinborn,Fundamentals of Organometallic Catalysis,Wiley-VCH,2012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
この背景に対し、本発明は、純粋な、又は仕様に準拠するα-オレフィン留分の製造の可能性を改善するという特定の課題を有する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この背景に対し、独立請求項のプリアンブルに記載のα-オレフィンの1つを調製するための方法及び対応する設備を提案する。実施形態は、従属特許請求項及び以下の記載の主題である。
【0018】
本発明の特徴を説明する前に、本発明の更なる原理を説明し、使用する用語を定義する。
【0019】
一般に、本明細書で使用するとき、α-オレフィンの混合物の「一次分留」は、特定の炭素数の線状α-オレフィンを含むが他の炭素数の線状α-オレフィンは少ない又は含まない、成分混合物を生成することであると理解される。かかる成分混合物は、以後、対応する線状α-オレフィンの「一次留分」、例えば1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン又は1-デセン一次留分と称する。各事例において、特徴的な線状α-オレフィンは、大きな割合を占めることから、以下の各事例において対応する一次留分の「主成分」とも称する。
【0020】
対応する一次留分は、それぞれの主成分に加えて、より高沸点及び/又はより低沸点の成分を含み得る。これは、本発明により提案された方法に当てはまる。ただし、定義により、これらは他の線状α-オレフィンではなく、例えば、分岐状オレフィン、パラフィン、又は末端二重結合のない線状オレフィンである。上記オレフィンはそれぞれ、主成分の沸点とは異なる沸点を有し、この差は、主成分よりも2個多い又は2個少ない炭素を有する線状α-オレフィンの沸点と主成分の沸点との差よりも小さい。
【0021】
上記の高沸点及び/又は低沸点成分は、いわゆる超分留(以後「二次分留」とも称する)で分離される。二次分留で生成した留分は、本明細書で以後「二次留分」とも称し、対応する一次留分と比較して高沸点及び/又は低沸点成分をほとんど含まないが、技術的理由から、通常は該成分を完全に含まないわけではない。高沸点成分の含有量は、1-ヘキセン二次留分は典型的には0.5重量%以下、1-オクテン二次留分は典型的には3重量%以下、1-デセン二次留分は典型的には3.5~4重量%以下である。ただし、それぞれの一次留分では、対応する軽量及び/又は重量沸点成分は、かなり高い含有量で生じ得る。
【0022】
超分留により、追加の損失、並びに運転コストの増加及び投資コストの増加が生じる。これは、軽量及び/又は重量成分の沸点がそれぞれの主成分の沸点に近いほど、結果として分離がより困難になることから、一層当てはまる。1-ヘキセン留分では、留分内の超近沸点成分の2-エチル-1-ブテンは、調節すべき残留物含有量に相当するか又はそれを超えることから、特に影響を受ける。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態による線状α-オレフィンの調製方法を、概略的フローチャートの形態で示し、全体を100と表記している。
【
図2】Lewatit K-2649を触媒として用いて、異なる量の水を減速剤として使用して実施した一連の実験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
特許文献7から、成分混合物中の2-エチル-1-ブテンを、触媒上での選択的異性化によって1-ヘキセンと反応させ、3-メチル-2-ペンテンを生成する方法が公知である。触媒は、3.5~4.5mg×equ.H+/gの体積容量のマクロ多孔質スルホカチオナイトである。この方法は、1~10h-1の速度及び40~80℃の温度で実施される。成分混合物中の2-エチル-1-ブテンの含有量は1重量%超であり、上記の具体例では4.3重量%である。1-ヘキセンの含有量は95重量%超である。含有される2-エチル-1-ブテンは、86~97%まで変換され、1~2.6%の1-ヘキセンが変換で失われる。
【0025】
これに関連する条件下で、1-ヘキセンの沸点は63~64℃であり、2-エチル-1-ブテンの沸点は64~65℃であることから、これらの成分を互いに分離することは極めて困難である。一方、シス/
トランス-3-メチル-2-ペンテンは沸点が67~72℃であることから、分離がはるかに容易である。したがって、対応する中間工程は、超分留又は二次分留をはるかに容易にする。
【0026】
本発明によると、驚くべきことに、かかる中間工程は、1-ヘキセン又は別のα-オレフィンの変換率がかなり低い状態で実施できることも確認された。こうして、生成物の損失がかなり低減される方法を開発できる。1-ヘキセンの望ましくない変換は、シス/トランス-2-ヘキセン及び/又はシス/トランス-3-ヘキセンが生成する副反応である。
【0027】
これに関して、望ましくない反応を低減する手段として、反応減速剤(例えば、水)の使用が挙げられる。これについても、本発明に該当しない実施形態に関して以下に記載する。本発明は、対照的に、以下に更に説明するように、酸性度の低い触媒の使用を含む。
【0028】
全体として、本発明は、供給材料混合物中でエチレンを触媒オリゴマー化で処理して、異なる鎖長のα-オレフィンと副化合物とを含む生成物混合物を得る、線状α-オレフィンの製造方法を提案する。
【0029】
本発明の範囲内で、従来技術で公知のエチレンの触媒オリゴマー化の方法は、基本的に全て使用できる。したがって、上記の説明を参照する。特に、触媒オリゴマー化は、最初にも説明した公知のSABLINプロセスの形態で実施できる。特に、触媒オリゴマー化は、1-ブテン及び1-ヘキセンの収率40~70重量%で実施できる。
【0030】
本発明の範囲内で、特に、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン及び/又は1-デセンが、線状α-オレフィンとして生成し得る。特に、副化合物は、2-エチル-1-ブテン及び2-エチル-1-ヘキセンとなり得、より一般的には、標的生成物として生成したそれぞれの線状α-オレフィンと同じ炭素数を有する2-エチル-1-オレフィンとなり得る。対応する方法で生成する可能性のある副化合物としては、シス/トランス-3-ヘキセン、n-ヘキサン、シス/トランス-2-ヘキセン、シス/トランス-3-オクテン、シス/トランス-4-オクテン、トランス-2-オクテン、n-オクタン及びシス-2-オクテンが挙げられる。副化合物は、線状α-オレフィンではない。
【0031】
一次分留では、本発明の状況において、触媒オリゴマー化からの生成物混合物の少なくとも一部を用いて一次留分が生成し、二次分留では、一次留分の少なくとも一部を用いて二次留分が生成する。一次留分及び二次留分又は対応する分留工程の用語に関しては、上記の説明を参照する。二次分留は、特に、公知の超分留の形態で実施できる。一次分留及び二次分留は、特に、熱分離工程の形態、特に精留の形態で実施できる。
【0032】
本発明の特に好ましい実施形態では、一次留分を、二次分留で処理する前に乾燥してもよい。全ての公知の方法を乾燥に使用でき、例えば、好適な吸着材料を使用した吸着乾燥を使用できる。本発明の範囲内で、又は本発明に該当しない実施形態の範囲内で、方法工程における特定の水が有利である、又は少なくとも許容可能である場合、乾燥を、この方法工程の下流のみで実施することもでき、完全に省くこともできる。
【0033】
本発明の範囲内で、一次分留及び二次分留は、一次留分及び二次留分が線状α-オレフィンの1つを主成分として含み、他のα-オレフィンは少ないか又は含まず、一次留分は1つ以上の副化合物を含み、二次留分は一次留分と比較して1つ以上の副化合物が少ないか又は含まれない(技術的に妥当且つ可能な限り)ように、実施する。換言すると、各事例において、一次留分は、線状α-オレフィンの形態のそれぞれの主成分に加えて、他の線状α-オレフィンを全く含まないか又はごく少量のみ含むことが好ましい。
【0034】
本明細書で「1つの」一次留分の生成、と言うとき、これは当然、対応する他の線状α-オレフィンを主成分として有する更なる一次留分の生成を除外するものではない。例えば、1-ヘキセン一次留分、1-オクテン一次留分、1-デセン一次留分及び/又は1-ドデセン一次留分は、各々対応する副化合物を含んで、一次留分として生成する可能性がある。
【0035】
本発明によると、一次分留と二次分留との間の中間工程において、一次留分の少なくとも一部が処理され、1つ以上の副化合物は少なくとも部分的に1つ以上の二次化合物に変換され、1つ以上の二次化合物は、続いて、二次分留で少なくとも部分的に分離される。
【0036】
説明したように、特に2-エチル-1-ブテンは、1-ヘキセン一次留分中に副化合物として含まれる可能性があり、これは、上記のように、沸点が1-ヘキセンとわずかしか違わない。中間工程における反応により、2-エチル-1-ブテンからシス/トランス-3-メチル-2-ペンテンを生成でき、これは沸点がより高いことから、はるかに容易に分離できる。
【0037】
1-オクテン一次留分には、例えば、2-エチル-1-ヘキセンが副化合物として存在し得る。1-オクテンの沸点は121℃であり、2-エチル-1-ヘキセンの沸点は120℃である。2-エチル-1-ヘキセンを、沸点が122~126℃のシス/トランス-3-メチル-2-へプテンに変換することで、この副化合物の分離も容易になる。この副化合物は、上記の反応により、他のオクテン異性体の沸騰部分にシフトすることから、副化合物を異性体と一緒に分離できる。このように、2-オクテン及び3-オクテンも122℃超で沸騰する。同じことは、他の副化合物にも、同様又はほぼ同様に当てはまる。
【0038】
ここで、本発明は、中間工程が、中間工程で処理される一次留分又はその一部に主成分として含まれるα-オレフィンのうち、重量、体積又はモル基準で0.8%以下、特に0.5%又は0.2%以下が反応するように実施されることを特徴とする。
【0039】
特に、本発明の状況において、1つ以上の副化合物は、残留物含有量が、重量、モル又は体積基準で、多くとも0.4%、特に多くとも0.2%又は0.1%に低下するまで中間工程で反応し得る。この残留物含有量は、例えば、一次留分及び二次留分に主成分として含まれる線状α-オレフィンと同じ炭素数を有する2-エチル-1-オレフィンを指し、特に中間工程における反応後の一次留分中の含有量を指す。中間工程における2-エチル-1-オレフィンの変換は、具体的には、同じ炭素数を有するシス/トランス-3-メチル-2-オレフィンへの変換である。
【0040】
換言すると、本発明の範囲内で、有利には、同じ炭素数の2-エチル-オレフィンは可能な限り完全に変換される(すなわち、留分に応じて、2-エチル-1-ブテン、2-エチル-1-ヘキセン又はエチル-1-オクテン)。特に、反応は、既に上に示した範囲の残留物含有量になるまで実施する。
【0041】
既に述べたように、それぞれの線状α-オレフィンの望ましくない変換を低減するための手段としては、本明細書において、以下に説明するように、特に反応減速剤(例えば、水)の使用、及び/又は酸性の低い触媒の使用が挙げられる。
【0042】
本発明に該当しない実施形態では、説明したように、中間工程は、反応減速剤の存在下で実施してもよく、減速剤は具体的には水であってもよい。これは、特に1-ヘキセン一次留分に当てはまる。水は、本発明に該当しないこの実施形態で、特に20又は30重量ppm~150重量ppm又は200重量ppm、特に50重量ppm~100重量ppmの含有量で使用できる。水は、一次分留で処理される生成物混合物中に既に存在する場合もあり、別途添加される場合もある。本発明に該当しないこの方法変形により、触媒の酸強度を選択的に低減し、それによりαオレフィンの望ましくない異性化を大幅に低減できる。一方で、標的成分の望ましい異性化は、充分に維持される。特に、高級αオレフィンで、減速剤を省くことができる。
【0043】
本発明に該当しないこの実施形態によると、方法は特に、強酸性イオン交換樹脂を中間工程で用いて実施できる。特に、マクロ多孔質スルホカチオナイトを強酸性イオン交換樹脂として使用してもよく、その例は、市販のマクロ多孔質スルホカチオナイトである。
【0044】
本発明が該当しない実施形態では、強酸性イオン交換樹脂は、特に少なくとも4eq/kgの体積基準容量を有することができ、及び/又は中間工程は、この事例において、5~40h-1のベッド速度、30~60℃、特に40~50℃の温度で実施できる。これらの反応条件下で、反応減速剤の使用によって達成できる利点が、特別な形で表れる。
【0045】
本発明が該当しない該発明の実施形態では、中間工程で処理される一次留分又はその一部に主成分として含まれるα-オレフィンの穏やかな変換、具体的にはわずか0.1~0.5又は0.8%の変換率が得られ、異性化される副化合物の変換率は85~95%である。したがって、本発明に該当しない実施形態による方法は、従来技術と比較して、収率をかなり増加する。
【0046】
本発明は、本発明に該当しない実施形態とは異なる経路に従う。本発明の全ての実施形態において、中間工程は、特にχ型及びγ型の三酸化二アルミニウムを含むアルミナ系触媒を使用して実施される。この方法変形は、酸強度がすでに減速剤を必要としない範囲にあり、そのため2-エチル-1-オレフィンの変換率と比較して、低いα-オレフィン変換率が達成されるという特別な利点を有する。したがって、水の添加は、本発明の状況において、なくすことができる。
【0047】
特に、アルミナ系触媒は、この本発明の状況において、450~460m2/gの表面積を有し、中間工程は、1~12h-1のベッド速度を用いて実施され得る。これらの反応条件下では、本発明の利点が、特別な形で表れる。
【0048】
本発明の範囲内で、中間工程で処理される一次留分又はその一部に主成分として含まれるα-オレフィンの特に低い変換率、具体的には0.1%未満の変換率の結果、異性体化される副化合物の変換率は85~95%となり、収率増加が更に改善される。
【0049】
本発明の範囲内であるが、水を減速剤として用いる本発明に該当しない上記実施形態においても、中間工程は、60~100℃、特に70~90℃の温度レベル、及び1.0~4.0bar(絶対圧)の圧力レベルで実施することが特に有利であることが判明した。本発明の全ての実施形態及び本発明に該当しない実施形態において、使用した触媒の再生を更に実施することができ、それにより、例えば、数個の反応器を交互運転で使用することもでき、そのうちの少なくとも1つを各事例で中間工程に使用できる。
【0050】
全ての事例において、本発明は、生成物混合物が主成分として1-ヘキセン及び/又は1-オクテンを、50、60、70、80又は90重量%を超える含有量で含む場合に、特別な利点を示す。
【0051】
有利には、一次留分及び二次留分が主成分として含むα-オレフィンは、1-ヘキセンであり、1-ヘキセンの含有量は90重量%超である。このような場合の副化合物又は複数の副化合物の1つは、具体的には2-エチル-1-ブテンであり、及び/又はこのような場合の二次化合物又は複数の二次化合物の1つは、具体的には3-メチル-2-ペンテンである。
【0052】
しかし、本発明は、一次留分及び二次留分が主成分として含むα-オレフィンが1-オクテンであり、1-オクテン含有量が90重量%超である場合に、特に有利に使用できる。このような場合の副化合物又は副化合物の1つは、具体的には2-エチル-1-ヘキセンであり、及び/又はこのような場合の二次化合物又は複数の二次化合物の1つは、具体的には3-メチル-1-へプテンである。
【0053】
説明した実施形態は、沸点の差がより大きいことで、その実施により簡易な分離が達成され、その利点は上に詳細に説明されている。
【実施例】
【0054】
上記の特許文献7に開示されている方法(「参照」)を、ここで3つの実施例(「実施例1」~「実施例3」)と比較した。この比較の結果並びに各事例で使用した触媒及び更なる反応条件を表1にまとめる。
【0055】
参照並びに実施例1及び2において、マクロ多孔質スルホカチオナイトを触媒として使用し、実施例1及び2のそれぞれにおいて、参照と同様に、市販の製品を使用した。実施例1と実施例2は、反応減速剤として使用する水の量が本質的に異なり、実施例2は、本発明に該当しない実施形態の特徴を実証する。
【0056】
対照的に、実施例3は、非晶質χ型及びγ型三酸化二アルミニウムを触媒として使用し、ここでも市販製品を使用した。しかし、実施例1と同様に、明らかに少量の水を使用した。したがって、実施例3は、本発明に該当しない実施例1及び2と比較して、本発明の一実施形態の利点を実証する。
【0057】
【0058】
結果の比較からわかるように、1-ヘキセンの変換に関して、実施例1(参照と同様の触媒と、反応減速剤として少量の水とを使用した)では、参照と比較して顕著な改善は達成できない。しかし、実施例2による、より多くの水を使用したとき(すなわち、本発明に該当しない比較例)と、実施例3によるχ型及びγ型三酸化二アルミニウムを触媒として使用したとき(すなわち、本発明による実施形態)では、大きな改善が生じた。
【0059】
別の実施例(「実施例4」)では、非晶質χ型及びγ型三酸化二アルミニウムを触媒として同様に使用し、ここでも市販製品を使用した。本発明の実施形態の特徴もここに示す。
【0060】
触媒の失活は、反応供給材料中の水分によって起こり、可逆的でもあることが明らかとなった。一般的な再生方法により、異性化特性を、完全に初期活性に戻すことができる。再生の頻度は、予備乾燥機を上流に使用することによって回避及び/又は低減できる。実施例4では、12h-1のベッド速度を、温度90℃、圧力4bar(ゲージ圧)、3.8gの触媒、反応供給材料中の水分40重量ppmで使用した。予備乾燥機は、7gのSelexsorb CDXを用いて約20℃で運転した。結果を表2にまとめる。この表で、2列目と3列目は、反応供給材料中の2-エチル-1-ブテン及び1-ヘキセンの含有量を示す。
【0061】
【0062】
別の実施例(「実施例5」)では、非晶質χ型及びγ型三酸化二アルミニウムを触媒として同様に使用し、ここでも市販製品を使用した。本発明に該当しない実施形態の特徴もここに示す。1-ヘキセンの損失は、このベッド速度により最小限に抑えられることが明らかとなった。90℃の温度、4bar(ゲージ圧)の圧力、及び3.8gの触媒を使用した。反応供給材料中の水分は20重量ppm未満であった。結果を下の表3に示す。
【0063】
【0064】
図面
図1は、本発明の一実施形態による線状α-オレフィンの調製方法を、概略的フローチャートの形態で示し、全体を100と表記している。
【0065】
方法100において、供給材料混合物A中のエチレンを触媒オリゴマー化1で処理して、異なる鎖長のα-オレフィンと副化合物とを含む生成物混合物Bが得られる。
【0066】
一次分留2では、生成物混合物Bの少なくとも一部を用いて一次留分Cが生成し、二次分留4では、一次留分Cの少なくとも一部を用いて二次留分が生成する。
【0067】
一次分留2及び二次分留4は、一次留分及び二次留分のα-オレフィンの1つを主成分として含み、他のα-オレフィンは少ないか又は含まず、一次留分は1つ以上の副化合物を含み、且つ二次留分は一次留分と比較して1つ以上の副化合物が少ないか又は含まれないように、実施する。
【0068】
一次分留2と二次分留4との間の中間工程3において、一次留分Cの少なくとも一部が処理され、1つ以上の副化合物は、少なくとも部分的に1つ以上の二次化合物に変換される。
【0069】
中間工程3で生成した1つ以上の二次化合物は、二次分留4で少なくとも部分的に分離される。中間工程3は、中間工程で処理される一次留分又はその一部に主成分として含まれるα-オレフィンの0.8%以下が変換するように実施する。
【0070】
図2は、Lewatit K-2649(すなわち、上記実施例2及び3のとおり、マクロ多孔質スルホカチオナイト)を触媒として用いて、異なる量の水を減速剤として使用して実施した一連の実験の結果を示し、その結果、本発明に該当しない実施形態の特徴がここで実証されている。
図2のグラフは、(望ましい)2-エチル-1-ブテンの変換を横軸、(望ましくない)1-ヘキセンの変換を縦軸に、それぞれパーセント単位で示す。
【0071】
データポイントが四角の実線は、水なしで得られた値を示す。データポイントが丸の破線は、60重量ppmの水分量で得られた値を示す。データポイントが三角の点線は、100重量ppmの水分量で得られた値を示す。データポイントが星形の鎖線は、130重量ppmの水分量で得られた値を示す。
【0072】
図2に示す値から、単なる乾燥の適用が、1-ヘキセンの高い損失を招くことは明らかである。約100~130重量ppmの水を反応器出口で適用することで、本発明に該当しない一実施形態で生じ得るように、上記の損失に関してかなりの改善が得られる。
【手続補正書】
【提出日】2020-11-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状α-オレフィンを製造する方法(100)であって、
-供給材料混合物中のエチレンを触媒オリゴマー化(1)で処理して、異なる鎖長のα-オレフィンと副化合物とを含む生成物混合物を得、
-一次留分は、前記生成物混合物の少なくとも一部を使用して一次分留(2)で生成し、二次留分は、前記一次留分の少なくとも一部を使用して二次分留(4)で生成し、
-前記一次分留(2)及び前記二次分留(4)は、前記一次留分及び前記二次留分が前記α-オレフィンの1つを主成分として含み、他のα-オレフィンは少ないか又は含まず、前記一次留分は1つ以上の副化合物を含み、前記二次留分は前記一次留分と比較して前記1つ以上の副化合物が少ないか又は含まれないように実施され、且つ
-前記一次分留と前記二次分留との間の中間工程(3)において、前記一次留分の少なくとも一部を処理し、前記1つ以上の副化合物は少なくとも部分的に1つ以上の二次化合物に変換され、前記1つ以上の二次化合物は、前記二次分留で少なくとも部分的に分離され、
-ここで、前記一次留分及び前記二次留分が主成分として含むα-オレフィンは1-ヘキセンであり、前記副化合物又は複数の前記副化合物の1つは2-エチル-1-ブテンであり、前記二次化合物又は複数の前記二次化合物の1つは3-メチル-2-ペンテンである、又は、前記一次留分及び前記二次留分が主成分として含むα-オレフィンは1-オクテンであり、前記副化合物又は複数の前記副化合物の1つは2-エチル-1-ヘキセンであり、前記二次化合物又は複数の前記二次化合物の1つは3-メチル-1-へプテンであり、
-前記中間工程(3)は、前記中間工程で処理される前記一次留分又はその一部に主成分として含まれる前記α-オレフィンの0.8%以下が変換されるように、χ型及びγ型三酸化二アルミニウムを触媒として用いて実施されること
を特徴とする、方法。
【請求項2】
前記触媒は、450~460m
2/gの表面積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記中間工程は、1~12h
-1のベッド速度で実施される、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記中間工程は、60℃~100℃の温度レベルで実施され、及び/又は1.0~4.0bar(絶対圧)の圧力レベルで実施される、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記生成物混合物は、前記1-ヘキセン及び/又は前記1-オクテンを、50、60、70、80又は90重量%超の含有量で含む、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記一次留分及び前記二次留分が主成分として含むα-オレフィンは1-ヘキセンであり、1-ヘキセンの含有量は90重量%超である、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記一次留分及び前記二次留分が主成分として含むα-オレフィンは1-オクテンであり、1-オクテンの含有量は90重量%超である、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の方法。
前記中間工程は、60℃~100℃の温度レベルで実施され、及び/又は1.0~4.
【国際調査報告】