(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-29
(54)【発明の名称】オリゴペプチドリンカー中間体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07K 4/00 20060101AFI20220322BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20220322BHJP
C07F 7/10 20060101ALN20220322BHJP
【FI】
C07K4/00
A61K47/68
C07F7/10 A
C07F7/10 L
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2019572784
(86)(22)【出願日】2019-10-23
(85)【翻訳文提出日】2020-01-20
(86)【国際出願番号】 CN2019112671
(87)【国際公開番号】W WO2021077317
(87)【国際公開日】2021-04-29
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519463064
【氏名又は名称】煙台邁百瑞国際生物医薬股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】MabPlex International Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.60, Beijing Middle Road, Yantai Development Zone, Yantai District, China(Shandong) Pilot Free Trade Zone Yantai, Shandong 264006 China
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 楽楽
(72)【発明者】
【氏名】黄 長江
【テーマコード(参考)】
4C076
4H045
4H049
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC41
4C076EE59
4C076FF68
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045DA76
4H045EA20
4H049VN01
4H049VP01
4H049VQ38
4H049VR24
4H049VU06
(57)【要約】
本発明は、新たなオリゴペプチド類リンカー中間体及びその製造方法を提供し、当該オリゴペプチド類中間体の製造方法は、反応条件が温和で、容易に実現され、反応において副反応がほとんどなく、不純物が少なく、生成物が純粋で精製しやすく、予想外の技術効果がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式(1)~(4)で表されるオリゴペプチドリンカー中間体。
【化1】
(式中、前記AA
1、AA
2、AA
3、AA
4は、任意のアミノ酸である。)
【請求項2】
前記AA
1、AA
2、AA
3、AA
4は、それぞれ独立に、-バリン-(-Val-)、-シトルリン-(-Cit-)、-アラニン-(-Ala-)、-リシン-(-Lys-)、-リシン(トリチル)-(-Lys(Trt)-)、-リシン(モノメトキシトリチル)-(-Lys(Mmt)-)、-リシン(フルオレニルメチルオキシカルボニル)-(-Lys(Fmoc)-)、-アルギニン-(-Arg-)、-フェニルアラニン-(-Phe-)、-グリシン-(-Gly-)、-ロイシン-(-Leu-)、-イソロイシン-(-Ile-)から選ばれる、ことを特徴とする請求項1に記載のオリゴペプチドリンカー中間体。
【請求項3】
前記-AA
1-AA
2-は、-バリン-シトルリン-(-Val-Cit-)、-バリン-アラニン-(-Val-Ala-)、-バリン-リシン-(-Val-Lys-)、-バリン-リシン(トリチル)-(-Val-Lys(Trt)-)、-バリン-リシン(モノメトキシトリチル)-(-Val-Lys(Mmt)-)、-バリン-リシン(フルオレニルメチルオキシカルボニル)-(-Val-Lys(Fmoc)-)、-バリン-アルギニン-(-Val-Arg-)、-フェニルアラニン-シトルリン-(-Phe-Cit-)、-フェニルアラニン-リシン-(-Phe-Lys-)、-フェニルアラニン-リシン(トリチル)-(-Phe-Lys(Trt)-)、-フェニルアラニン-リシン(モノメトキシトリチル)-(-Phe-Lys(Mmt)-)、-フェニルアラニン-リシン(フルオレニルメチルオキシカルボニル)-(-Phe-Lys(Fmoc)-)、ロイシン-シトルリン-(-Leu-Cit-)、イソロイシン-シトルリン-(-Ile-Cit-)、-フェニルアラニン-アルギニン-(-Phe-Arg-)から選ばれ、前記-AA
1-AA
2-AA
3-は、-フェニルアラニン-アルギニン-アルギニン-(-Ala-Arg-Arg-)から選ばれ、前記-AA
1-AA
2-AA
3-AA
4-は、-グリシン-グリシン-フェニルアラニン-グリシン-(-Gly-Gly-Phe-Gly-)、-グリシン-フェニルアラニン-ロイシン-グリシン-(-Gly-Phe-Leu-Gly-)、-アラニン-ロイシン-アラニン-ロイシン(-Ala-Leu-Ala-Leu-)から選ばれる、ことを特徴とする請求項2に記載のオリゴペプチドリンカー中間体。
【請求項4】
前記オリゴペプチドリンカー中間体は、以下の構造を含む、ことを特徴とする請求項3に記載のオリゴペプチドリンカー中間体。
【化2】
【化3】
【請求項5】
抗体薬物複合体に用いられるリンカーの前駆体が請求項1~4のいずれか1項に記載のオリゴペプチドリンカー中間体である、抗体薬物複合体。
【請求項6】
請求項1に記載の構造式(1)~(3)で表されるオリゴペプチドリンカー中間体の製造方法であって、反応経路は、
1)カルボニル化試薬及び2-(トリメチルシリル)エタノールを順にアミノ酸AA
1、アミノ酸AA
2と、又は順にアミノ酸AA
1、アミノ酸AA
2、アミノ酸AA
3と、又は順にアミノ酸AA
1、アミノ酸AA
2、アミノ酸AA
3、アミノ酸AA
4と縮合反応させて2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-オリゴペプチド縮合物を得、
2)反応で得られた2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-オリゴペプチド縮合物をp-アミノベンジルアルコールと反応させて2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-オリゴペプチド-p-アミノベンジルアルコール縮合物を得ることであり、
ここで、前記カルボニル化試薬は、任意のカルボニル基を含む化合物である、製造方法。
【請求項7】
前記構造式(1)で表されるオリゴペプチドリンカー中間体の反応経路は、以下の通りであり、
【化4】
前記製造方法は、
1)カルボニル化試薬を2-(トリメチルシリル)エタノール及びアミノ酸AA
1と縮合反応させて2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-アミノ酸縮合物を得るステップと、
2)2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-アミノ酸縮合物とアミノ酸AA
2とを縮合反応させて2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-ジペプチド縮合物を得るステップと、
3)2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-ジペプチド縮合物とp-アミノベンジルアルコールとを縮合反応させて2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-ジペプチド-p-アミノベンジルアルコール縮合物を得るステップとを含む、ことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記構造式(2)で表されるオリゴペプチドリンカー中間体の反応経路は、以下の通りであり、
【化5】
前記製造方法は、
1)カルボニル化試薬を2-(トリメチルシリル)エタノール及びアミノ酸AA
1と縮合反応させて2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-アミノ酸縮合物を得るステップと、
2)2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-アミノ酸縮合物とアミノ酸AA
2とを縮合反応させて2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-ジペプチド縮合物を得るステップと、
3)2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-ジペプチド縮合物とアミノ酸AA
3とを縮合反応させて2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-トリペプチド縮合物を得るステップと、
4)2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-トリペプチド縮合物とp-アミノベンジルアルコールとを縮合反応させて2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-トリペプチド-p-アミノベンジルアルコール縮合物を得るステップとを含む、ことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項9】
前記構造式(3)で表されるオリゴペプチドリンカー中間体の反応経路は、以下の通りであり、
【化6】
前記製造方法は、
1)カルボニル化試薬を2-(トリメチルシリル)エタノール及びアミノ酸AA
1と縮合反応させて2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-アミノ酸縮合物を得るステップと、
2)2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-アミノ酸縮合物とアミノ酸AA
2とを縮合反応させて2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-ジペプチド縮合物を得るステップと、
3)2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-ジペプチド縮合物とアミノ酸AA
3とを縮合反応させて2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-トリペプチド縮合物を得るステップと、
4)2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-トリペプチド縮合物とアミノ酸AA
4とを縮合反応させて2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-テトラペプチド縮合物を得るステップと、
5)2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-テトラペプチド縮合物とp-アミノベンジルアルコールとを縮合反応させて2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-テトラペプチド-p-アミノベンジルアルコール縮合物を得るステップとを含む、ことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載の構造式(4)で表されるオリゴペプチドリンカー中間体の製造方法であって、反応経路は、カルボニル化試薬及び2-(トリメチルシリル)エタノールを順にアミノ酸AA
1、アミノ酸AA
2、アミノ酸AA
3、アミノ酸AA
4と縮合反応させて2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-テトラペプチド縮合物を得ることであり、ここで、前記カルボニル化試薬は、カルボニル基を含む任意の化合物である、製造方法。
【請求項11】
前記構造式(4)で表されるオリゴペプチドリンカー中間体の反応経路は、以下の通りであり、
【化7】
前記製造方法は、
1)カルボニル化試薬を2-(トリメチルシリル)エタノール及びアミノ酸AA
1と縮合反応させて2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-アミノ酸縮合物を得るステップと、
2)2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-アミノ酸縮合物とアミノ酸AA
2とを縮合反応させて2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-ジペプチド縮合物を得るステップと、
3)2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-ジペプチド縮合物とアミノ酸AA
3とを縮合反応させて2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-トリペプチド縮合物を得るステップと、
4)2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-トリペプチド縮合物とアミノ酸AA
4とを縮合反応させて2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-テトラペプチド縮合物を得るステップとを含む、ことを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記カルボニル化試薬は、式(5)で表される構造を持つ、ことを特徴とする請求項6~11のいずれか1項に記載の製造方法。
【化8】
【請求項13】
前記カルボニル化試薬は、
【化9】
から選ばれる、ことを特徴とする請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記のAA
1、AA
2、AA
3、AA
4は、それぞれ独立に、-バリン-(-Val-)、-シトルリン-(-Cit-)、-アラニン-(-Ala-)、-リシン-(-Lys-)、-リシン(トリチル)-(-Lys(Trt)-)、-リシン(モノメトキシトリチル)-(-Lys(Mmt)-)、-リシン(フルオレニルメチルオキシカルボニル)-(-Lys(Fmoc)-)、-アルギニン-(-Arg-)、-フェニルアラニン-(-Phe-)、-グリシン-(-Gly-)、-ロイシン-(-Leu-)、-イソロイシン-(-Ile-)から選ばれる、ことを特徴とする請求項6~11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項15】
前記-AA
1-AA
2-は、-バリン-シトルリン-(-Val-Cit-)、-バリン-アラニン-(-Val-Ala-)、-バリン-リシン-(-Val-Lys-)、-バリン-リシン(トリチル)-(-Val-Lys(Trt)-)、-バリン-リシン(モノメトキシトリチル)-(-Val-Lys(Mmt)-)、-バリン-リシン(フルオレニルメチルオキシカルボニル)-(-Val-Lys(Fmoc)-)、-バリン-アルギニン-(-Val-Arg-)、-フェニルアラニン-シトルリン-(-Phe-Cit-)、-フェニルアラニン-リシン-(-Phe-Lys-)、-フェニルアラニン-リシン(トリチル)-(-Phe-Lys(Trt)-)、-フェニルアラニン-リシン(モノメトキシトリチル)-(-Phe-Lys(Mmt)-)、-フェニルアラニン-リシン(フルオレニルメチルオキシカルボニル)-(-Phe-Lys(Fmoc)-)、ロイシン-シトルリン-(-Leu-Cit-)、イソロイシン-シトルリン-(-Ile-Cit-)、-フェニルアラニン-アルギニン-(-Phe-Arg-)から選ばれ、前記-AA
1-AA
2-AA
3-は、-フェニルアラニン-アルギニン-アルギニン-(-Ala-Arg-Arg-)から選ばれ、前記-AA1-AA2-AA3-AA4-は、-グリシン-グリシン-フェニルアラニン-グリシン-(-Gly-Gly-Phe-Gly-)、-グリシン-フェニルアラニン-ロイシン-グリシン-(-Gly-Phe-Leu-Gly-)、-アラニン-ロイシン-アラニン-ロイシン(-Ala-Leu-Ala-Leu-)から選ばれる、ことを特徴とする請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記-AA
1-AA
2-は、以下の構造から選ばれる、ことを特徴とする請求項15に記載の製造方法。
【化10】
【請求項17】
前記-AA
1-AA
2-AA
3-は、以下の構造から選ばれる、請求項15に記載の製造方法。
【化11】
【請求項18】
前記-AA
1-AA
2-AA
3-AA
4-は、以下の構造から選ばれる、ことを特徴とする請求項15に記載の製造方法。
【化12】
【請求項19】
前記縮合反応で用いられる溶媒は、任意の極性溶媒又は非極性溶媒であり、好ましくは、前記溶媒が、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、DMF、DMSO、DMAc、DMPU、HMPA、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、t-ブタノール、水、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素から選ばれる1種又は複数種であり、さらに好ましくは、前記溶媒が、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、DMF、DMSO、水、メタノール、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、エタノールから選ばれる1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項6~18のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項20】
請求項1~4のいずれか1項に記載の中間体の、抗体薬物複合体の調製における応用。
【請求項21】
請求項6~19のいずれか1項に記載の製造方法の、抗体薬物複合体の調製における応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体薬物複合体の分野に関し、具体的には、オリゴペプチドリンカーの製造方法及びその中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
抗体薬物複合体(Antibody-Drug Conjugate、ADC)は、新たなタイプの生物医薬品として、モノクローナル抗体のターゲティング能力と低分子薬物の細胞毒性との強力な組み合わせを達成し、腫瘍標的療法の最も急速に成長している分野の1つになっている。ADCの三つのコンポーネント(抗体、細胞毒素及びリンカー)はともに標的薬物送達システムを構成し、中でも、リンカーの構築及び最適化は、この種の医薬品開発の鍵となる。リンカーは、ADCが細胞毒性薬を効果的に送達するための基盤であり、ADC製品の毒性を決定する重要な要因でもあり、血液循環における薬物の早期放出は、全身毒性と治療指数の低下につながる可能性がある。既存のカップリング技術を最適化し、安定したリンカーを開発し、新たな毒素放出メカニズムを探索するなどにより、ADCに一般的に存在する、細胞毒素のオフターゲット及び薬剤耐性といった問題を解決するので、その薬効及び安全性をさらに向上させることが期待される。
【0003】
現在の段階では、オリゴペプチドを基づいて設計された分解可能なADCsは、主流を占めており(文献1:Wang Y、 Fan S、 Zhong W、 et al. Development and properties of valine-alanine based antibody-drug conjugates with monomethyl auristatin e as the potent payload[J]. International journal of molecular sciences、 2017、 18(9): 1860.)、それは標的細胞リソソームのカテプシンBにより分解して毒素を放出し、最終的に腫瘍を殺す。なお、オリゴペプチドリンカー(例えば、バリン-シトルリンジペプチド(Val-Cit、VC))は、各種のADC薬のリンカーに広く使用されている。現在(2019年7月まで)、世界で承認されている5つの抗体薬物複合体(表1)において、シアトルジェネティクス社(Seattle)と武田薬品工業社のBrentuximab vedotin及びジェネンテック(Genentech)のPolatuzumab vedotin-piiqのリンカーはいずれもオリゴペプチドリンカー(バリン-シトルリンジペプチド類リンカー)である。
【0004】
【0005】
現在、オリゴペプチド類リンカーの合成方法は、主に3種があり(文献2:Mondal D、 Ford J、 Pinney K G. Improved Methodology for the Synthesis of a Cathepsin B Cleavable Dipeptide Linker、 Widely Used in Antibody-Drug Conjugate Research[J]. Tetrahedron letters、 2018、 59(40): 3594-3599.)、第一種は、Fmoc保護基の使用、第二種は、Cbz保護基の使用、第三種は、Boc保護基の使用である。
【0006】
以下、バリン-シトルリンジペプチド類リンカーを例として上記3種の調製プロセスを述べる。
(1)Fmoc保護基の使用
【0007】
【0008】
当該方法は、まず、Fmoc-ValをCitと縮合させてFmoc-Val-Citを生成し、さらに、p-アミノベンジルアルコールと縮合してFmoc- Val-Cit-PABを得、次にFmocを除去してVal-Cit-PABを得る。但し、当該方法は、Fmoc保護基を除去する場合に、一般的に低級アミン類を選択し、副生成物を容易に生成し、完全な除去が困難である。また、Fmocの強い紫外吸収は非常に強く、痕跡量で残留しても製品の純度測定に大きな影響を与える。
【0009】
【0010】
当該方法は、まず、Cbz-ValをCitと縮合させてCbz-Val-Citを生成し、さらに、p-アミノベンジルアルコールと縮合してCbz- Val-Cit-PABを得、次にCbzを除去してVal-Cit-PABを得る。但し、当該方法は、Cbz保護基を除去する場合には、遷移金属による触媒が必要であり、最も一般的に使用される金属はPdであり、人体に有害であり、重金属の残留をもたらしやすく、除去しにくい。また、水素源を使用する必要もあり、最も一般的に使用されるのは水素ガスであり、爆発しやすく、事故リスクが高く、大規模な使用に不便である。他の水素源も用いられるが、使用中では、一部の水素ガスも放出し、安全性リスクが存在する。
【0011】
(3)Boc保護基の使用
【0012】
【0013】
当該方法は、まず、Boc-ValをCitと縮合してBoc-Val-Citを生成し、さらに、p-アミノベンジルアルコールと縮合してBoc- Val-Cit-PABを得、次いでBocを除去してVal-Cit-PABを得る。但し、当該方法は、Boc保護基を除去する場合には、強酸を使用する必要があり、HCl溶液及びトリフルオロ酢酸が最も一般的に使用される。Boc-Val-Cit-PABの分子中には、ベンジル位でのアルコール性ヒドロキシル基を有し、HClの使用際に、アルコール性ヒドロキシル基の塩素化反応が起こり、対応する塩化ベンジルを生成し、製品の品質に影響を与える。トリフルオロ酢酸を使用する場合には、ベンジル位でのアルコールがエステル化反応を起こし、対応するトリフルオロ酢酸エステルを生成し、Val-Cit-PABを得るように追加の加水分解反応が必要であり、別に工程を増加し、また、塩基性加水分解はアミノ酸単位でのキラル中心をラセミ化するリスクがある。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、上記の問題を解決するために、オリゴペプチド類リンカーを調製するための新しい方法を提供し、本発明で提供された、Teocを保護基としてVal-Cit-PABを調製する方法は、反応条件が温和で、容易に実現され、反応において副反応がほとんどなく、不純物が少なく、生成物が純粋で精製しやすく、予想外の技術効果がある。
【0015】
具体的には、本発明は、構造式(1)~(4)で表されるオリゴペプチドリンカー中間体を提供する。
【0016】
【化4】
式中、前記のAA
1、AA
2、AA
3、AA
4は、任意のアミノ酸である。
【0017】
さらに、前記のAA1、AA2、AA3、AA4は、それぞれ独立に、-バリン-(-Val-)、-シトルリン-(-Cit-)、-アラニン-(-Ala-)、-リシン-(-Lys-)、-リシン(トリチル)-(-Lys(Trt)-)、-リシン(モノメトキシトリチル)-(-Lys(Mmt)-)、-リシン(フルオレニルメチルオキシカルボニル)-(-Lys(Fmoc)-)、-アルギニン-(-Arg-)、-フェニルアラニン-(-Phe-)、-グリシン-(-Gly-)、-ロイシン-(-Leu-)、-イソロイシン-(-Ile-)から選ばれる。
【0018】
さらに、前記-AA1-AA2-は、-バリン-シトルリン-(-Val-Cit-)、-バリン-アラニン-(-Val-Ala-)、-バリン-リシン-(-Val-Lys-)、-バリン-リシン(トリチル)-(-Val-Lys(Trt)-)、-バリン-リシン(モノメトキシトリチル)-(-Val-Lys(Mmt)-)、-バリン-リシン(フルオレニルメチルオキシカルボニル)-(-Val-Lys(Fmoc)-)、-バリン-アルギニン-(-Val-Arg-)、-フェニルアラニン-シトルリン-(-Phe-Cit-)、-フェニルアラニン-リシン-(-Phe-Lys-)、-フェニルアラニン-リシン(トリチル)-(-Phe-Lys(Trt)-)、-フェニルアラニン-リシン(モノメトキシトリチル)-(-Phe-Lys(Mmt)-)、-フェニルアラニン-リシン(フルオレニルメチルオキシカルボニル)-(-Phe-Lys(Fmoc)-)、ロイシン-シトルリン-(-Leu-Cit-)、イソロイシン-シトルリン-(-Ile-Cit-)、-フェニルアラニン-アルギニン-(-Phe-Arg-)から選ばれ、前記-AA1-AA2-AA3-は、-フェニルアラニン-アルギニン-アルギニン-(-Ala-Arg-Arg-)から選ばれ、前記-AA1-AA2-AA3-AA4-は、-グリシン-グリシン-フェニルアラニン-グリシン-(-Gly-Gly-Phe-Gly-)、-グリシン-フェニルアラニン-ロイシン-グリシン-(-Gly-Phe-Leu-Gly-)、-アラニン-ロイシン-アラニン-ロイシン(-Ala-Leu-Ala-Leu-)から選ばれる。
【0019】
好ましくは、前記オリゴペプチドリンカー中間体は、以下の構造を含む。即ち、
【0020】
【0021】
【0022】
本発明は、さらに、上記構造式(1)~(3)で表されるオリゴペプチドリンカー中間体の製造方法を提供し、前記方法の反応経路は、以下の通りであり、即ち、
1)カルボニル化試薬及び2-(トリメチルシリル)エタノールを、順にアミノ酸AA1、アミノ酸AA2と、又は順にアミノ酸AA1、アミノ酸AA2、アミノ酸AA3と、又は順にアミノ酸AA1、アミノ酸AA2、アミノ酸AA3、アミノ酸AA4と縮合反応させて2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-オリゴペプチド縮合物を得、
2)反応で得られた2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-オリゴペプチド縮合物とp-アミノベンジルアルコールとを反応させて2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-オリゴペプチド-p-アミノベンジルアルコール縮合物を得、
ここで、前記カルボニル化試薬は、カルボニル基を含む任意の化合物である。
【0023】
さらに、前記構造式(1)で表されるオリゴペプチドリンカー中間体の反応経路は、以下の通りである。
【0024】
【0025】
前記製造方法は、
1)カルボニル化試薬を2-(トリメチルシリル)エタノール及びアミノ酸AA1と縮合反応させて2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-アミノ酸縮合物を得るステップと、
2)2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-アミノ酸縮合物とアミノ酸AA2を縮合反応させて2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-ジペプチド縮合物を得るステップと、
3)2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-ジペプチド縮合物とp-アミノベンジルアルコールとを縮合反応させて2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-ジペプチド-p-アミノベンジルアルコール縮合物を得るステップと、を含む。
【0026】
さらに、前記構造式(2)で表されるオリゴペプチドリンカー中間体的反応経路は、以下の通りである。
【0027】
【0028】
前記製造方法は、
1)カルボニル化試薬を2-(トリメチルシリル)エタノール及びアミノ酸AA1と縮合反応させて2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-アミノ酸縮合物を得るステップと、
2)2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-アミノ酸縮合物とアミノ酸AA2とを縮合反応させて2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-ジペプチド縮合物を得るステップと、
3)2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-ジペプチド縮合物とアミノ酸AA3とを縮合反応させて2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-トリペプチド縮合物を得るステップと、
4)2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-トリペプチド縮合物とp-アミノベンジルアルコールとを縮合反応させて2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-トリペプチド-p-アミノベンジルアルコール縮合物を得るステップと、を含む。
【0029】
さらに、前記構造式(3)で表されるオリゴペプチドリンカー中間体的反応経路は、以下の通りである。
【0030】
【0031】
前記製造方法は、
1)カルボニル化試薬を2-(トリメチルシリル)エタノール及びアミノ酸AA1と縮合反応させて2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-アミノ酸縮合物を得るステップと、
2)2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-アミノ酸縮合物とアミノ酸AA2とを縮合反応させて2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-ジペプチド縮合物を得るステップと、
3)2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-ジペプチド縮合物とアミノ酸AA3とを縮合反応させて2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-トリペプチド縮合物を得るステップと、
4)2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-トリペプチド縮合物とアミノ酸AA4とを縮合反応させて2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-テトラペプチド縮合物を得るステップと、
5)2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-テトラペプチド縮合物とp-アミノベンジルアルコールとを縮合反応させて2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-テトラペプチド-p-アミノベンジルアルコール縮合物を得るステップと、を含む。
【0032】
本発明は、さらに、前記構造式(4)で表されるオリゴペプチドリンカー中間体の製造方法を提供し、前記方法の反応経路は、カルボニル化試薬及び2-(トリメチルシリル)エタノールを、アミノ酸AA1、アミノ酸AA2、アミノ酸AA3、アミノ酸AA4と順に縮合反応させて2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-テトラペプチド縮合物を得ることであり、ここで、前記カルボニル化試薬はカルボニル基を含む任意の化合物である。
【0033】
さらに、前記構造式(4)で表されるオリゴペプチドリンカー中間体の反応経路は、以下の通りである。
【0034】
【0035】
1)カルボニル化試薬を2-(トリメチルシリル)エタノール及びアミノ酸AA1と縮合反応させて2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-アミノ酸縮合物を得るステップと、
2)2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-アミノ酸縮合物とアミノ酸AA2とを縮合反応させて2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-ジペプチド縮合物を得るステップと、
3)2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-ジペプチド縮合物とアミノ酸AA3とを縮合反応させて2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-トリペプチド縮合物を得るステップと、
4)2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-トリペプチド縮合物とアミノ酸AA4とを縮合反応させて2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-テトラペプチド縮合物を得るステップと、を含む。
【0036】
さらに、前記カルボニル化試薬は、式(5)で表される構造を持つ。
【0037】
【0038】
から選ばれる。
【0039】
さらに、前記カルボニル化試薬は、
【0040】
【0041】
から選ばれる。
【0042】
さらに、前記のAA1、AA2、AA3、AA4は、それぞれ独立に、-バリン-(-Val-)、-シトルリン-(-Cit-)、-アラニン-(-Ala-)、-リシン-(-Lys-)、-リシン(トリチル)-(-Lys(Trt)-)、-リシン(モノメトキシトリチル)-(-Lys(Mmt)-)、-リシン(フルオレニルメチルオキシカルボニル)-(-Lys(Fmoc)-)、-アルギニン-(-Arg-)、-フェニルアラニン-(-Phe-)、-グリシン-(-Gly-)、-ロイシン-(-Leu-)、-イソロイシン-(-Ile-)から選ばれる。
【0043】
さらに、前記-AA1-AA2-は、-バリン-シトルリン-(-Val-Cit-)、-バリン-アラニン-(-Val-Ala-)、-バリン-リシン-(-Val-Lys-)、-バリン-リシン(トリチル)-(-Val-Lys(Trt)-)、-バリン-リシン(モノメトキシトリチル)-(-Val-Lys(Mmt)-)、-バリン-リシン(フルオレニルメチルオキシカルボニル)-(-Val-Lys(Fmoc)-)、-バリン-アルギニン-(-Val-Arg-)、-フェニルアラニン-シトルリン-(-Phe-Cit-)、-フェニルアラニン-リシン-(-Phe-Lys-)、-フェニルアラニン-リシン(トリチル)-(-Phe-Lys(Trt)-)、-フェニルアラニン-リシン(モノメトキシトリチル)-(-Phe-Lys(Mmt)-)、-フェニルアラニン-リシン(フルオレニルメチルオキシカルボニル)-(-Phe-Lys(Fmoc)-)、ロイシン-シトルリン-(-Leu-Cit-)、イソロイシン-シトルリン-(-Ile-Cit-)、-フェニルアラニン-アルギニン-(-Phe-Arg-)から選ばれ、前記-AA1-AA2-AA3-は、-フェニルアラニン-アルギニン-アルギニン-(-Ala-Arg-Arg-)から選ばれ、前記-AA1-AA2-AA3-AA4-は、-グリシン-グリシン-フェニルアラニン-グリシン-(-Gly-Gly-Phe-Gly-)、-グリシン-フェニルアラニン-ロイシン-グリシン-(-Gly-Phe-Leu-Gly-)、-アラニン-ロイシン-アラニン-ロイシン(-Ala-Leu-Ala-Leu-)から選ばれる。
【0044】
好ましくは、前記-AA1-AA2-は、以下の構造から選ばれる。
【0045】
【0046】
好ましくは、前記-AA1-AA2-AA3-は、以下の構造から選ばれる。
【0047】
【0048】
好ましくは、前記-AA1-AA2-AA3-AA4-は、以下の構造から選ばれる。
【0049】
【0050】
本発明は、さらに、上記のいずれか1項に記載の中間体の、抗体薬物複合体の調製における応用を提供する。
【0051】
さらに、上記のいずれか1項に記載の縮合反応で用いられる溶媒は、任意の極性溶媒又は非極性溶媒であり、好ましくは、前記溶媒が、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、DMF、DMSO、DMAc、DMPU、HMPA、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、tert-ブタノール、水、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素から選ばれる1種又は複数種であり、さらに好ましくは、前記溶媒が、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、DMF、DMSO、水、メタノール、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、エタノールから選ばれる1種又は複数種である。
【0052】
幾つかの具体的な実施例において、カルボニル化試薬が2-(トリメチルシリル)エタノール及びアミノ酸AA1と縮合反応する場合には、前記縮合反応で用いられる試薬は、好ましくは、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、DMF、DMSO、DMAc、DMPU、HMPA、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、tert-ブタノール、水、酢酸エチルの1種又は複数種であり、さらに好ましくは、前記試薬は、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、DMF、DMSO、水の1種又は複数種である。
【0053】
他の幾つかの具体的な実施例において、カルボニル化試薬と2-(トリメチルシリル)エタノール及びアミノ酸AA1との反応後の2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-アミノ酸縮合物とAA2との縮合反応、及び他の幾つかの実施例においてさらにAA3、AA4との縮合反応で用いられる試薬は、好ましくは、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、DMF、DMSO、DMAc、DMPU、HMPA、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、t-ブタノール、水、酢酸エチルの1種又は複数種であり、さらに好ましくは、前記試薬が、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、DMF、DMSO、水、メタノールの1種又は複数種である。
【0054】
他の幾つかの具体的な実施例において、上記反応後のポリペプチド縮合物(即ち、2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-ジペプチド縮合物、2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-トリペプチド縮合物、2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-テトラペプチド縮合物)がp-アミノベンジルアルコールと縮合反応する際に用いられる試薬は、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、DMF、DMSO、DMAc、DMPU、HMPA、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、t-ブタノール、酢酸エチルの1種又は複数種であることが好ましく、前記試薬は、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、メタノール、エタノール、DMFの1種又は複数種であることがさらに好ましい。
【0055】
本発明は、さらに、上記のいずれか1項に記載の製造方法の、抗体薬物複合体の調製における応用を提供する。
【0056】
抗体薬物複合体の調製中には、さらに、以下のTeoc保護基除去工程を含む。
【0057】
【0058】
上記Teoc保護基除去後の生成物は、リンカーの一部とすることが大きく、抗体薬物複合体の調製中に、薬物部分に共有結合している。抗体部分との共有結合を達成するために、リンカー部分とカップリングする必要があることが多く、具体的には、反応経路は、以下の通りである。
【0059】
【化17】
式中、前記L、L’は、リンカー部分であり、いずれも任意の連結基である。
【0060】
ある実施例において、前記リンカーLは、
【0061】
【0062】
から選ばれる。
【0063】
対応して、前記連結基L’は、
【0064】
【0065】
から選ばれる。
特定の実施例において、前記オリゴペプチドリンカーは、
【0066】
【0067】
【0068】
から選ばれる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【
図1】Teoc保護基法で調製されたVal-Cit-PABに関連する、液体クロマトグラフィー質量分析法による分析チャートを示し、
図1は、MSによるブラックコントロールチャートである。
【0070】
【
図2】Teoc保護基法で調製されたVal-Cit-PABに関連する、液体クロマトグラフィー質量分析法による分析チャートを示し、
図2は、HPLCによるブラックコントロールチャートである。
【0071】
【
図3】Teoc保護基法で調製されたVal-Cit-PABに関連する、液体クロマトグラフィー質量分析法による分析チャートを示し、
図3は、Teoc保護基法で調製されたVal-Cit-PABのマススペクトルである。
【0072】
【
図4】Teoc保護基法で調製されたVal-Cit-PABに関連する、液体クロマトグラフィー質量分析法による分析チャートを示し、
図4は、生成物のHPLCによるクロマトグラムである。
【0073】
【
図5】Teoc保護基法で調製されたVal-Cit-PABに関連する、液体クロマトグラフィー質量分析法による分析チャートを示し、
図5は、生成物の正イオン質量スペクトルである。
【0074】
【
図6】Teoc保護基法で調製されたVal-Cit-PABに関連する、液体クロマトグラフィー質量分析法による分析チャートを示し、
図6は、生成物の負イオン質量スペクトルである。
【0075】
【
図7】Cbz保護基法で調製されたVal-Cit-PABに関連する、液体クロマトグラフィー質量分析法による分析チャートを示し、
図7は、ブランクの質量スペクトルである。
【0076】
【
図8】Cbz保護基法で調製されたVal-Cit-PABに関連する、液体クロマトグラフィー質量分析法による分析チャートを示し、
図8は、HPLCによるブラックコントロールチャートである。
【0077】
【
図9】Cbz保護基法で調製されたVal-Cit-PABに関連する、液体クロマトグラフィー質量分析法による分析チャートを示し、
図9は、Cbz保護基法で調製されたVal-Cit-PABのマススペクトルである。
【0078】
【
図10】Cbz保護基法で調製されたVal-Cit-PABに関連する、液体クロマトグラフィー質量分析法による分析チャートを示し、
図10は、生成物のHPLCによるクロマトグラムである。
【0079】
【
図11】Cbz保護基法で調製されたVal-Cit-PABに関連する、液体クロマトグラフィー質量分析法による分析チャートを示し、
図11は、生成物の正イオン質量スペクトルである。
【0080】
【
図12】Cbz保護基法で調製されたVal-Cit-PABに関連する、液体クロマトグラフィー質量分析法による分析チャートを示し、
図12は、生成物の負イオン質量スペクトルである。
【0081】
【
図13】Cbz保護基法で調製されたVal-Cit-PABに関連する、液体クロマトグラフィー質量分析法による分析チャートを示し、
図13は、不純物の正イオン質量スペクトルである。
【0082】
【
図14】Cbz保護基法で調製されたVal-Cit-PABに関連する、液体クロマトグラフィー質量分析法による分析チャートを示し、
図14は、不純物の負イオン質量スペクトルである。
【0083】
【
図15】Boc保護基法で調製されたPhe-Cit-PAB(塩酸脱保護法)に関連する、液体クロマトグラフィー質量分析法による分析チャートを示し、
図15は、Boc保護基法で調製されたPhe-Cit-PABのマススペクトルである。
【0084】
【
図16】Boc保護基法で調製されたPhe-Cit-PAB(塩酸脱保護法)に関連する、液体クロマトグラフィー質量分析法による分析チャートを示し、
図16は、生成物のHPLCによるクロマトグラムである。
【0085】
【
図17】Boc保護基法で調製されたPhe-Cit-PAB(塩酸脱保護法)に関連する、液体クロマトグラフィー質量分析法による分析チャートを示し、
図17は、正イオン質量スペクトルである。
【0086】
【
図18】Boc保護基法で調製されたPhe-Cit-PAB(塩酸脱保護法)に関連する、液体クロマトグラフィー質量分析法による分析チャートを示し、
図18は、負イオン質量スペクトルである。
【0087】
【
図19】Boc保護基法で調製されたPhe-Cit-PAB(トリフルオロ酢酸脱保護法)に関連する、液体クロマトグラフィー質量分析法による分析チャートを示し、
図19は、Boc保護基法で調製されたPhe-Cit-PABのマススペクトルである。
【0088】
【
図20】Boc保護基法で調製されたPhe-Cit-PAB(トリフルオロ酢酸脱保護法)に関連する、液体クロマトグラフィー質量分析法による分析チャートを示し、
図20は、生成物のHPLCによるクロマトグラムである。
【0089】
【
図21】Boc保護基法で調製されたPhe-Cit-PAB(トリフルオロ酢酸脱保護法)に関連する、液体クロマトグラフィー質量分析法による分析チャートを示し、
図21は、正イオン質量スペクトルである。
【0090】
【
図22】Boc保護基法で調製されたPhe-Cit-PAB(トリフルオロ酢酸脱保護法)に関連する、液体クロマトグラフィー質量分析法による分析チャートを示し、
図22は、負イオン質量スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【略語】
【0091】
本発明で使用されるすべての略語は、断りがない限り、当業者によって理解されるのと同じ意味を有する。本発明で使用されるように、よく用いられる略語及びその定義は、下表に示される。
【0092】
【定義】
【0093】
明細書の各側面に関連するさまざまな用語は、明細書及び特許請求の範囲に広く使用されている。その用語は、断りがない限り、当技術分野における通常の意味が与えられている。他の具体的に定義された用語は、本明細書で提供される定義と一致して理解すべきである。
【0094】
本明細書で使用されるように、用語「1つ」、「1種」、及び「前記」とは、文脈で特に指示がない限り、標準的な慣行に従って使用されるものであり、1つ又は複数を意味する。従って、例えば、「抗体薬物複合体」への言及には、2つ又は2つ以上の抗体薬物複合体の組み合わせなどを含む。
【0095】
「含む」という言葉を用いて本明細書で態様が説明された以外は、類似する態様を「からなる」及び/または「基本的に、…からなる」という言葉を用いて説明することも提供することを理解すべきである。
【0096】
本発明は数値範囲及びパラメータの近似値が広い範囲に示されるが、具体的な実施例に示される数値は可能な限り正確に記載されている。しかしながら、いずれの数値には元々、一定の誤差が必然として含まれることは、それぞれの測定値に存在する標準偏差によるものである。また、本明細書に開示されるすべての範囲は、そこに含まれる任意及びあらゆる部分範囲を網羅すると理解すべきである。例えば、記載された「1~10」という範囲は、最小値1と最大値10との間(端点を含む)にある任意及びあらゆる部分範囲を含むことを理解すべきであり、つまり、最小値1又はそれ以上で始まるすべてのサブ範囲、例えば、1乃至6.1、並びに最大値10又はそれ以下で終わるサブ範囲、例えば、5.5乃至10である。なお、「本明細書に組み込まれる」と呼ばれる参照文献は、その全体が組み込まれると理解されるべきである。
【0097】
本発明で使用される
【0098】
【0099】
を含む基がここで化学結合によって他の基に連結されていることを意味する。
【0100】
本発明に係る用語「連結基」とは、それぞれタンパク質/抗体分子及びジペプチドリンカーと反応することができる、二官能基または多官能基を持つ分子を意味するため、「ブリッジ」としてタンパク質/抗体をジペプチドリンカーに連結している。
【0101】
本発明に係る用語「オリゴペプチドリンカー」とは、2つ又は2つ以上のアミノ酸残基を含む連結構造を広く指し、p-ベンジルアルコール残基の構造も含まれる。前記2つのアミノ酸は脱水縮合により連結し、ここでいうアミノ酸は、アミノ基及びカルボキシル基を含む有機化合物を広く指し、すべての必須アミノ酸及び非必須アミノ酸を含む。好ましくは、前記アミノ酸は、-バリン-(-Val-)、-シトルリン-(-Cit-)、-アラニン-(-Ala-)、-リシン-(-Lys-)、-リシン(トリチル)-(-Lys(Trt)-)、-リシン(モノメトキシトリチル)-(-Lys(Mmt)-)、-リシン(フルオレニルメチルオキシカルボニル)-(-Lys(Fmoc)-)、-アルギニン-(-Arg-)、-フェニルアラニン-(-Phe-)、-グリシン-(-Gly-)、-ロイシン-(-Leu-)、-イソロイシン-(-Ile-)を含むが、これらに限定されない。
【実施例】
【0102】
以下、具体的な実施例により本発明をさらに説明する。これらの実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するものではないことを理解すべきである。次の実施例に具体的な条件が明示されていない実験方法は、一般的に、通常の条件又はメーカーが推奨する条件に従って実行し、具体的な来源が明示されていない試薬は、市販として購入された通常の試薬である。すべての百分率、比率、割合又は部は、断りがない限り、重量によるものである。
【0103】
本発明における重量体積百分率の単位は、当業者に周知である、例えば、100ml溶液中の溶質の重量を指す。
【0104】
本明細書で用いられるすべての専門及び科学的用語は、断りがない限り、当業者に周知である意味と同じである。なお、記載された内容に類似または等しい任意の方法及び材料は、本発明の方法に使用されることができる。本明細書に記載されている好ましい実施形態及び材料は、例示としてのみ使用される。
【0105】
実施例1 Teoc保護基法によるVal-Cit-PABの調製
【0106】
(1)Teoc-Val-Citの調製
【0107】
【0108】
500mLの一口フラスコに、順に2-(トリメチルシリル)エタノール(120mmol)14.16g、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(300mmol)38.7g、炭酸ビス(4-ニトロフェニル)(100mmol)30.4g、アセトニトリル400mLを加えた後、室温に維持しながら16h撹拌し、反応液1を形成した。L-バリン(120mmol)14.08g、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(200mmol)25.8gを1Lの一口フラスコに加え、水400mLで溶解させ、反応液2を形成した。反応液1を撹拌しながら反応液2に加え、室温で16h撹拌した後、反応液について、反応の終了をLC-MS法によって検出した。検出に合格した後、反応液の溶媒をロータリーエバポレータにより蒸発し、乾固させた後に水500mLを加え、撹拌しながら1mol/Lの塩酸を滴下してpH値を1に調整した後、各回300mLの酢酸エチルで水相を2回抽出した。抽出液を合わせ、各回300mLの水で2回水洗した。水洗後に、抽出液に無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、乾燥後の溶媒をロータリーエバポレータにより蒸発し、淡黄色の粘稠固体として生成物(即ち、p-ニトロフェノールを含む2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-L-バリン混合物(単に2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-L-バリン混合物と称され))54gを得た。LC-MS(M-H)-:260.1。2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-L-バリンの混合物は、精製せずに、次の反応に直接使用される。
【0109】
500mLの一口フラスコに、順に上記調製された2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-L-バリン混合物(40mmol)10.5g、N,N,N’,N’-テトラメチル-O-(N-スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボラート(80mmol)24.3g、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(200mmol)25.8g、N,N-ジメチルホルムアミド200mLを加え、その後、室温で6h撹拌し、反応液3を形成した。L-シトルリン(120mmol)21gを1Lの一口フラスコに加え、水400mLを加え、完全に溶解させるまで撹拌し、反応液4を形成した。500mLのビーカーにN,N-ジイソプロピルエチルアミン(120mmol)15.5g、N,N-ジメチルホルムアミド200mLを加え、反応液5を形成した。反応液5を反応液4に加えた後、低温浴槽に移し、-10℃で0.5h撹拌した。その後、-10℃で撹拌しながら上記反応系に反応液3を徐々に滴下し、2h程度かけて滴下し、滴下完了後に-10℃で16h撹拌した後、LC-MS法により反応の終了を検出した。検出に合格した後、系における溶媒をロータリーエバポレータにより蒸発した。乾固させた後、0.1mol/Lの塩酸500mLを加えて十分に撹拌し、各回300mLの酢酸エチルで水相を2回抽出した。抽出液を合わせ、各回300mLの0.1mol/L塩酸で2回酸洗し、さらに、各回300mLの水で2回水洗した。水洗後に、抽出液に無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、乾燥後の溶媒をロータリーエバポレータにより蒸発し、酢酸エチル100mL、トルエン1000mLを加えて16h撹拌した後、ろ過し、ケーキをTHF50mLで溶解させた後、メチルt-ブチルエーテル:n-ヘキサン=1:1の配合液1Lを加え、室温で16h撹拌した後、ろ過し、ケーキをTHF50mLで溶解させた後、トルエン 1Lを加え、室温で6h撹拌した後、ろ過し、ケーキを乾燥させ、類白色の粉末状固体として生成物11.1g(収率68%)を得た。LC-MS(M+H)+: 418.7、LC-MS(M-H)-:416.7。
【0110】
(2)Teoc-Val-Cit-PABの調製
【0111】
【0112】
500mLの一口フラスコに、順に2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-L-バリニル-L-シトルリン(18mmol)7.5g、N-エトキシカルボニル-2-エトキシ-1,2-ジヒドロキノリン(36mmol)9g、p-アミノベンジルアルコール(36mmol)4.5g、ジクロロメタン 150mL、メタノール 75mLを加え、その後、室温で16h撹拌した後、LC-MS法により反応の終了を検出した。検出に合格した後、反応液をロータリーエバポレータにより濃縮乾固させた後、ジクロロメタン 200mL、酢酸エチル 200mLを加えて16h撹拌した後、ろ過した。ケーキにジクロロメタン 100mL、酢酸エチル 100mL、n-ヘキサン 200mLを加え、16h撹拌した後、ろ過した。ケーキを乾燥させ、類白色の粉末状固体として生成物7.5g(生成物は2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-L-バリニル-L-シトルルアミド-p-ベンジルアルコール、即ち、Teoc-Val-Cit-PABである)(収率80%)を得た。LC-MS(M+H)+:523.5、LC-MS(M-H)-:522。
【0113】
(3)Val-Cit-PAB(相対分子量:379.46)の調製
【0114】
【0115】
500mLの一口フラスコに、順に2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル-L-バリニル-L-シトルルアミド-p-ベンジルアルコール(6.2mmol)3.15g、フッ化カリウム(37.2mmol)2.16g、1.0mol/L フッ化テトラブチルアンモニウムのテトラヒドロフラン溶液12.4mL、N,N-ジメチルホルムアミド100mLを加え、その後、室温で24h撹拌した後、LC-MS法により反応の終了を検出した。反応終了後、反応液をろ過し、濾液の溶媒をロータリーエバポレータにより蒸発した後、無水エタノール100mLを加えて十分に溶解させ、1mol/L希塩酸溶液18mLを加えて充分に撹拌した後、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、乾燥後、ろ過した。濾液をロータリーエバポレータにより濃縮乾固させた後、エタノール30mLを加えて完全に溶解させた後、室温で撹拌しながらメチルt-ブチルエーテル200mLとジクロロメタン200mLとの混合溶液を加えて1h撹拌した後、ろ過した。ケーキを乾燥させ、類白色の粉末状固体として生成物1.83g(生成物はL-バリニル-L-シトルルアミド-p-ベンジルアルコール、即ち、Val-Cit-PABである)(収率80%)を得た。
【0116】
液体クロマトグラフィー質量分析において、
図1は、MSによるブラックコントロールチャートであり、
図2は、HPLCによるブラックコントロールチャートであり、
図3は、Teoc保護基法で調製されたVal-Cit-PAB(本実施例の生成物)のマススペクトルであり、
図4は、生成物のHPLCによるクロマトグラムであり、
図5は、生成物の正イオン質量スペクトルであり、
図6は、生成物の負イオン質量スペクトルである。
図1と
図3とを比較して、時間が2.87minであるピークは生成物の分子イオンピークであることが分かり、
図2と
図4とを比較しては、生成物が強いHPLC検出シグナルを持つことが分かり、
図1及び
図3と結合し、Teoc保護基法で調製されたVal-Cit-PABは、不純物が少なくなることが分かった。2.87minにある正イオン質量スペクトル(2.849min)及び負イオン質量スペクトル(2.866min)の解析により分かるように、LC-MS(M+H)
+:379.6、LC-MS(M-H)
-:378.0である。
【0117】
実施例2 Cbz保護基法によるVal-Cit-PABの調製
【0118】
(1)Cbz-Val-Citの調製
【0119】
【0120】
1Lの一口フラスコに、順にN-ベンジルオキシカルボニル-L-バリン(即ち、Cbz-Val)(40mmol)10g、N,N,N’,N’-テトラメチル-O-(N-スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボラート(60mmol)18.2g、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(120mmol)15.5g、アセトニトリル300mLを加え、その後、室温で4h撹拌した。L-シトルリン(44mmol)7.7gを水300mLに溶解させた後、上記反応系に加え、室温で16h撹拌し、サンプルを採取してLC-MSで検出し、反応が完了した。撹拌しながら0.1mol/L 塩酸を滴下してpH値を1に調整し、溶媒をロータリーエバポレータにより蒸発した後、水800mLを加え、室温で16h撹拌し、ろ過した。ケーキを真空乾燥させた後、酢酸エチル 400mL、ジクロロメタン 400mLを加えて16h撹拌した後、ろ過した。ケーキを真空乾燥させた後、酢酸エチル 200mL、ジクロロメタン 200mL、n-ヘキサン 400mLを加え、16h撹拌した後、ろ過し、ケーキを乾燥させ、類白色の粉末状固体として生成物12.65g(即ち、N-ベンジルオキシカルボニル-L-バリニル-L-シトルリン、Cbz-Val-Cit)(収率77%)を得た。LC-MS(M+H)+: 408.7、LC-MS(M-H)-:406.9。
【0121】
(2)Cbz-Val-Cit-PABの調製
【0122】
【0123】
500mLの一口フラスコに、順にN-ベンジルオキシカルボニル-L-バリニル-L-シトルリン(31mmol)12.65g、N-エトキシカルボニル-2-エトキシ-1,2-ジヒドロキノリン(62mmol)15.74g、p-アミノベンジルアルコール(62mmol)7.53g、ジクロロメタン200mL、メタノール100mLを加え、室温で16h撹拌した後、サンプルを採取してLC-MSで検出し、反応が完了した。反応液をロータリーエバポレータにより濃縮乾固させた後、ジクロロメタン200mL、酢酸エチル200mLを加え、16h撹拌し、ろ過した。ケーキにジクロロメタン100mL、酢酸エチル100mL、n-ヘキサン200mLを加え、16h撹拌し、ろ過した。ケーキを乾燥させ、類白色の粉末状固体として生成物9.1g(収率60%)を得た。LC-MS(M+H)+:513.6。
【0124】
(3)Val-Cit-PAB(相対分子量:379.46)の調製
【0125】
【0126】
250mLの一口フラスコに、順にN-ベンジルオキシカルボニル-L-バリニル-L-シトルルアミド-p-ベンジルアルコール(2mmol)1.12g、パラジウム炭素0.3g、メタノール100mLを加え、10℃で撹拌した。水素ガスで満たされたバルーンを反応系上にセットし、10℃で16h撹拌し、サンプルを採取してLC-MSで検出し、反応が終了した。反応液をろ過し、濾液をロータリーエバポレータにより濃縮乾固させた後、n-ヘキサン400mLを加えて16h撹拌した後、ろ過した。ケーキを乾燥させ、類白色の粉末状固体として生成物0.69g(収率91%)を得た。
【0127】
液体クロマトグラフィー質量分析において、
図7は、MSによるブラックコントロールチャートであり、
図8は、HPLCによるブラックコントロールチャートであり、
図9は、Cbz保護基法で調製されたVal-Cit-PAB(本実施例の生成物)のマススペクトルであり、
図10は、生成物のHPLCによるクロマトグラムであり、
図11は、生成物の正イオン質量スペクトルであり、
図12は、生成物の負イオン質量スペクトルであり、
図13は、不純物の正イオン質量スペクトルであり、
図14は、不純物の負イオン質量スペクトルである。
図7と
図9とを比較して、4.33min及び6.54minにある2つの強いイオンピークが認められ、
図8と
図10とを比較して、4.12min及び5.39minに強いHPLC検出シグナルを持つ2つのピークが認められ、
図7及び
図9を結合し、これらの2つのピークのうちの1つは、生成物のピークであり、もう1つは不純物のピークであり、且つ不純物の含有量が多いと推測できる。4.33min及び5.54minにある正イオン質量スペクトル及び負イオン質量スペクトルを分析することにより、4.33minにあるピークは、生成物のピーク(LC-MS(M+H)
+:379.6、LC-MS(M-H)
-:378.0)であり、5.54minにあるピークは、不純物のピーク(LC-MS(M+H)
+:363.6)であることが分かり、Val-Cit-PAB脱ヒドロキシル化の副生成物(分子量の相違が僅かに16になる)であると推測された、且つその含有量は多い。副生成物は化学的性質が生成物と非常に類似しているため、除去されることは困難で、後の反応及び製品品質のいずれにも大きな影響を与える。さらに、脱保護プロセスで水素ガスを反応物として使用し、安全性リスクが存在する。
【0128】
実施例3 Boc保護基法によるPhe-Cit-PABの調製
【0129】
(1)Boc-Phe-Citの調製
【0130】
【0131】
250mLの一口フラスコに、順にN-(tert-ブトキシカルボニル)-L-フェニルアラニン(10mmol)(即ち、Boc-Phe)2.65g、N,N,N’,N’-テトラメチル-O-(N-スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボラート(12mmol)3.61g、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(30mmol)3.87g、N,N-ジメチルホルムアミド50mLを加え、室温で4h撹拌した。
【0132】
L-シトルリン(10mmol)1.75gを水50mLに溶解させ、上記反応系に加え、室温で16h撹拌し、サンプルを採取してLC-MSで検出し、反応が完了した。撹拌しながら0.1mol/L塩酸を滴下してpH値を1に調整した。系における溶媒をロータリーエバポレータにより蒸発した後、水200mLを加えて室温で16h撹拌し、ろ過した。ケーキを乾燥させた後、酢酸エチル100mL、ジクロロメタン100mLを加え、16h撹拌し、ろ過し、ケーキを乾燥させ、粉末状の黄色固体として生成物3g(即ち、N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-フェニルアラニル-L-シトルリン、Boc-Phe-Cit)(収率71%)を得た。LC-MS(M-H)-:421.4。
【0133】
(2)Boc-Phe-Cit-PABの調製
【0134】
【0135】
250mLの一口フラスコに、順にN-(tert-ブトキシカルボニル)-L-フェニルアラニル-L-シトルリン(即ち、Boc-Phe-Cit)(7.1mmol)3g、N-エトキシカルボニル-2-エトキシ-1,2-ジヒドロキノリン(14.2mmol)3.5g、p-アミノベンジルアルコール(14.2mmol)1.75g、ジクロロメタン60mL、メタノール30mLを加え、室温で16h撹拌し、サンプルを採取してLC-MSで検出し、反応が完了した。反応液をロータリーエバポレータにより濃縮乾固させた後、ジクロロメタン100mL、酢酸エチル100mLを加えて16h撹拌し、遠心した。下層の白色固体にn-ヘキサン100mLを加え、2h撹拌し、遠心した。下層の白色固体を乾燥させ、類白色の粉末状固体として生成物2.3g(即ち、N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-フェニルアラニル-L-シトルルアミド-p-ベンジルアルコール、Boc-Phe-Cit-PAB)(収率62%)を得た。LC-MS(M-H)-:526.2。
【0136】
(3)Phe-Cit-PAB(相対分子量:427.51)の調製
【0137】
以下、それぞれ塩酸による脱保護法及びトリフルオロ酢酸による脱保護法を使用してBoc保護基を除去した。
【0138】
【0139】
(a)塩酸による脱保護法
【0140】
10mLの一口フラスコに、順にN-(tert-ブトキシカルボニル)-L-フェニルアラニル-L-シトルルアミド-p-ベンジルアルコール(即ち、Boc-Phe-Cit-PAB)(1mmol)0.5g、4mol/L 塩化水素・ジオキサン溶液3mL、ジオキサン3mLを加え、その後、室温で3h撹拌し、サンプルを採取してLC-MSで検出し、反応が完了した。
【0141】
液体クロマトグラフィー質量分析において、
図15は、Boc保護基法で調製されたPhe-Cit-PAB(本実施例の生成物)のマススペクトルであり、
図16は、生成物のHPLCによるクロマトグラムであり、
図17は、正イオン質量スペクトルであり、
図18は、負イオン質量スペクトルである。
図15より、5.39minに強いイオンピークが現れることが認められ、ここでの正イオン質量スペクトル(5.390min)及び負イオン質量スペクトル(5.403min)を分析することにより、LC-MS(M+H)
+:446.2、LC-MS(M-H)
-:444.1であることが明らかになり、当該方法で調製された生成物において大部分の生成物はベンジル位のヒドロキシル基が塩素で置換された副成物であると推測された。
【0142】
(b)トリフルオロ酢酸による脱保護法
【0143】
10mLの一口フラスコに、順にN-(tert-ブトキシカルボニル)-L-フェニルアラニル-L-シトルルアミド-p-ベンジルアルコール(1mmol)0.5g、トリフルオロ酢酸3mLを加え、その後、室温で2h撹拌した後、LC-MS法により反応の終了を検出した。
【0144】
液体クロマトグラフィー質量分析において、
図19は、Boc保護基法で調製されたPhe-Cit-PAB(本実施例の生成物)のマススペクトルであり、
図20は、生成物のHPLCによるクロマトグラムであり、
図21は、正イオン質量スペクトルであり、
図22は、負イオン質量スペクトルである。
図19より、5.77minに強いイオンピークが現れることが分かり、ここでの正イオン質量スペクトル(5.768min)及び負イオン質量スペクトル(5.781min)を分析することにより、LC-MS(M+H)
+:524.4、LC-MS(M-H)
-:522.1であることが明らかになり、当該方法で調製された生成物において大部分の生成物はベンジル位のヒドロキシル基がトリフルオロ酢酸エステルになった副生成物であると推測された。
【0145】
以上より、本発明で提供された、保護基としてTeocによりVal-Cit-PABを調製する方法は、反応条件が温和で、容易に実現され、反応においてには副反応がほとんどなく、不純物が少なく、生成物が純粋で精製しやすく、保護基としてCbzによりVal-Cit-PABを調製する方法は、脱ヒドロキシル化された副生成物が生成し、且つその含有量が大きくなる。副生成物は化学的性質が生成物と非常に類似しているため、除去されることは困難で、後の反応及び製品品質のいずれにも大きな影響を与える。さらに、その方法は、脱保護プロセスで水素ガスを反応物として使用し、安全性リスクが存在する。保護基としてBocによりVal-Cit-PABを調製する方法は、ベンジル位のヒドロキシル基が塩素で置換され、ベンジル位のヒドロキシル基がトリフルオロ酢酸エステルになるなどの問題が存在し、変換率が非常に高くなる。従って、他の2つの方法と比較して、本発明で提供されたTeoc方法は、容易に実現され、且つ不純物が少なく、予想外の技術効果がある。
【0146】
【0147】
本発明は、具体的な各実施例を例示して説明している。しかし、当業者にとっては、本発明が具体的な各実施例に限定されなく、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく本発明の範囲で様々な改良又は変更を加え、且つ本明細書に言及される各技術的特徴を組み合わせることができる。このような改良及び変更はいずれも本発明の範囲に含まれている。
【国際調査報告】