(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-29
(54)【発明の名称】パルスX線撮像
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20220322BHJP
【FI】
A61B6/03 330Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021523961
(86)(22)【出願日】2019-10-29
(85)【翻訳文提出日】2021-06-10
(86)【国際出願番号】 CA2019051521
(87)【国際公開番号】W WO2020093140
(87)【国際公開日】2020-05-14
(32)【優先日】2018-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521185608
【氏名又は名称】ソクプラ サイエンシズ エ ジェニ エス.ウー.セー
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【氏名又は名称】齊藤 智和
(74)【代理人】
【識別番号】100217467
【氏名又は名称】鶴崎 一磨
(72)【発明者】
【氏名】フォンテーヌ、レジャン
(72)【発明者】
【氏名】ロシニョル、ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】ベルベーロージェル、イブ
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093CA06
4C093EA02
4C093EA07
4C093EA20
4C093EB30
4C093FF42
(57)【要約】
X線イメージャは、パルスX線源を時間感受性X線検出器と組み合わせて、散乱光子の低減を伴う弾道光子の測定値を提供する。イメージャは、従来のX線イメージャよりも著しく少ない放射線曝露、特に約半分の放射線を使用して、同等のコントラスト対ノイズX線画像を提供することができる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線撮像装置であって、
制御信号を有するパルスX線源と、
時間依存性X線光子検出信号出力を有する時間感受性X線検出器と、
前記制御信号および前記時間依存性X線光子検出信号出力に接続され、前記時間感受性検出器によって受け取られた散乱光子を低減して弾道光子の測定値を提供するように構成された、プロセッサと、
を備える、X線撮像装置。
【請求項2】
前記パルスX線源が、高電圧源と、電子を加速するように前記高電圧源に接続された電極と、X線のパルスを生成するように、前記電極による加速後に前記電子を受け取るように配置されたX線放出ターゲット材料と、を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記パルスX線源が、
前記制御信号に応答するパルスレーザ源と、
前記パルスレーザ源から光パルスを受け取り、それに応答して電子のバーストを放出するように配置された光電材料と、
を備え、
前記電子のバーストを加速するように電極が配置されている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記光電材料が、前記電極のカソードの少なくとも一部である、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記パルスX線源が、前記高電圧源に接続された前記電極によって加速された前記電子を操縦して前記X線放出ターゲット材料に制御可能に衝突させる偏向電極を含む、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記高電圧源に接続された前記電極が、ゲート付きカーボンナノチューブカソードを含む、請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記時間感受性X線検出器が、各画素要素で検出された各光子に対して検出信号の時間を提供する、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記時間感受性X線検出器が、光子検出が可能になる時間を制御するゲート信号に応答する、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記時間感受性X線検出器が、光子検出が不可能になる時間を制御するゲート信号に応答する、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記プロセッサが、前記制御信号に関して異なる時間フレーム内に検出されたX線光子を収集し、異なる時間フレーム内に検出された前記X線光子の減算によって前記時間感受性検出器によって受け取られた散乱光子の低減によって弾道光子の前記測定値を決定するように構成される、請求項8または9に記載の装置。
【請求項11】
前記時間感受性X線検出器が、光子検出が可能になる時間窓を制御するパルスゲート信号に応答する、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記時間感受性X線検出器が、前記時間感受性X線検出器内の画素位置の関数として前記弾道光子に異なる飛行時間を提供するように、前記パルスX線源に対して配置され、前記プロセッサは、前記画素の位置の関数として異なるタイミングを使用して、前記時間感受性検出器によって受け取られた散乱光子の前記低減と共に弾道光子の前記測定値を提供する、請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記時間感受性X線検出器が、X線感受性シンチレータと、前記シンチレータにおけるX線検出事象を測定するように前記シンチレータと結合された光センサアレイと、を備える、請求項1から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記時間感受性X線検出器が、前記検出器内のX線事象を測定するように光子の電子への直接変換に基づくX線感受性検出器を備える、請求項1から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記プロセッサが、二次元画像を提供するように構成される、請求項1から14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
撮像される対象物または被検体に対して前記パルスX線源および前記時間感受性X線検出器を移動させる電動マウントをさらに備え、前記プロセッサが、三次元画像を提供するように構成される、請求項1から14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記装置が、同じエネルギーの連続X線が同様の構造の連続X線撮像装置で使用される場合よりも低い線量のX線を少なくとも20cmの厚さの典型的なヒトの腹部領域に送達しながら、所与のコントラスト対ノイズ比(CNR)で画像を取得するように動作する、請求項1から16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記より低い線量が、少なくとも50%低い、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記より低い線量が、少なくとも60%である、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記パルスX線源がコーンビームを生成し、前記時間感受性X線検出器が画素の2Dアレイを検出するように配置される、請求項1から19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
前記パルスX線源と前記時間感受性検出器との組み合わせの応答時間が、0.9ナノ秒未満である、請求項1から20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項22】
前記応答時間が、0.3ナノ秒未満である、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記パルスX線源によって放射されるパルスの立ち上がり時間が、0.15ナノ秒未満である、請求項21または22に記載の装置。
【請求項24】
前記プロセッサが、前記パルスX線源と前記時間感受性検出器との組み合わせのインパルス応答時間を測定して、前記パルスX線源と前記時間感受性検出器との間の対象物または患者なしで弾道光子の測定値を得て、その後散乱を提供する対象物または患者を測定するときに、前記時間感受性検出器によって受け取られた散乱光子の低減を伴う弾道光子の前記測定値のゲートパラメータを導出し、メモリに格納するように構成される、請求項1から23のいずれか一項に記載の装置。
【請求項25】
ヒト患者の医療診断画像を取得する方法であって、請求項1から24のいずれか一項に記載の装置を使用して関心領域の画像を取得することと、所与のエネルギーのX線を使用してコントラスト対ノイズ比を有することと、を含み、前記患者に送達される放射線の量は、前記所与のエネルギーのX線を使用した前記関心領域の連続多色X線撮像のために同じ患者に送達される放射線の量の約60%以下である、方法。
【請求項26】
前記患者に送達される前記放射線の量が、前記所与のエネルギーのX線を使用した前記関心領域の連続多色X線撮像のために同じ患者に送達される放射線の量の約30%以下である、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線およびコンピュータ断層撮影(CT)撮像装置および方法に関する。
【0002】
本出願は、2018年11月5日に出願された米国仮特許出願第62/755,813号の優先権を主張し、その明細書は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
X線撮像は、1895年のレントゲン博士(Roentgen)によるX線の発見から始まった。X線撮像は、数ミクロン程度の空間分解能を得ることができるより複雑な機構に向けて大きく発展してきた。X線撮像の基礎となる原理は、源によって生成されたX線を一方の側で被検体に照射し、他方の側で被検体を通過したX線光子を写真プレートまたはデジタルレコーダに収集することに依存している。
【0004】
X線撮像では、画像は被検体内のX線光子の吸収によって形成される。吸収された光子の強度は、源と検出器との間の物質密度の指標を与える。したがって、X線撮像は、被検体内の物質の密度の2D画像を与える。生の画像データは、源から検出器に伝播するときに吸収されない光子に基づく。撮像されている対象物がほとんどすべての光子を吸収する場合、撮像は不可能であるか、または使用されるX線エネルギーの大部分が患者に残されており、同様に、撮像されている対象物がかなりの量の光子を吸収できない場合、撮像は不可能である。組織に害の少ない低エネルギーX線光子は、所与の組織の厚さによって容易に吸収される。組織にとってより有害な高エネルギーX線光子は、所与の組織の厚さによって吸収されにくい。したがって、光子のエネルギーは、吸収による光子の相対損失が有用な撮像データを提供できることを確実にするために、撮像される対象物のために選択される。
【0005】
多くの場合、3D画像は、解剖学的異常のより良い理解を得て、正確な医学的診断を実行するために重要である。その場合、原理は、その周囲の異なる角度で被写体にX線を照射し、
図1に示すように適切な画像再構成アルゴリズムで被写体のスライスを再構成するのに必要な数の投影を取得することに依存する。コンピュータ断層撮影(CT)と呼ばれるこの原理は、磁気共鳴画像法(MRI)などの他のモダリティと比較して低コストであり、取得速度が速いため、よく使用されている。CTは世界中で非常に利用可能であり、その全体的な性能を最適化するために多くの改善が加えられている。
【0006】
生体に対するX線の潜在的な有害性のより良い理解のために、X線およびCTの改善は、主に、線量のトレードオフに対するコントラスト対ノイズ比(CNR)に対処する。X線の有害作用は、子供が罹患する可能性がより高い放射線誘発癌を発症する可能性を実証する最近の研究によってさらに重要になっている。さらに、子供はまた、放射線誘発性の遺伝的欠陥を次世代に渡すリスクが高い。小児に対する撮像プロトコルは常に可能な限り低い線量を考慮しなければならず、撮像される身体の部分に応じて可能な限り特別な考慮事項を考慮しなければならない。CTスキャンは現在、すべての電離放射線ベースの撮像モダリティの10%にすぎないが、診断撮像のための総線量の>50%を送達する。ここで、小児CT撮像が絶対的に必要な場合にのみ行われる理由を理解しなければならない。小動物の前臨床撮像は、CTの別の重要な用途である。このレベルでは、ラットおよび遺伝子改変マウスは、ヒトとの高い遺伝的類似性および低コストで同一の被検体を再現する能力のために選択される。これらの小動物における組織密度の変動は、成人ヒトの場合よりもはるかに小さく、軟骨/骨を脂肪および筋肉から区別するのに十分高いCNRを生成するためには、高X線量が必須である。したがって、使用される線量は、放射線誘発癌、遺伝的放射線誘発癌またはさらに悪いものを回避し、そのような実験動物において研究中の病変に対して治療効果をもたらすように慎重に選択されなければならない。
画像コントラスト
【0007】
全体として、X線吸収は、単純な方程式、すなわち、Beer-Lambertの法則によって記載される。
【数1】
ここで、L
0は光子の初期量、μlは線形減衰係数、およびxは光子が媒体内を移動した距離である。より正確には、吸収μlは3つの物理現象から生じ、以下によって与えられる。
【数2】
【0008】
ここで、μphotoelectricは、原子によって全体的に吸収されたX線光子の部分を表す。光子が核に近い電子と衝突し、原子をイオン化すると、全吸収が起こる(したがって、光電という名称が付けられている)。その結果、光子が消滅し、電子が放出され、周囲の物質でそのエネルギーを失う。この係数は、式μphotoelectric=Zeff
3/E3に従い、式中、Zeffは有効核電荷であり、Eは吸収された光子のエネルギーである。光電効果は、低X線エネルギーで支配的である。この係数μComptonは、光子が外殻内の電子と相互作用するとき、または核に弱く結合しているときに生じるコンプトン散乱を説明する。この効果は、衝突するX光子がそのエネルギーの一部を電子に伝達するが、異なる角度(光子は失われない;リダイレクトされただけである)でその経路を継続する弾性衝突のように見える。物質の観点からは、エネルギー伝達は部分吸収と見なすことができるが、画像の観点からは、散乱光子は誤った検出器に当たり、フロアノイズを増加させることによって信号に悪影響を及ぼす可能性がある。コンプトン散乱効果は、高Z物質または1MeV未満の高エネルギー光子に対して支配的である。減衰の最後の部分は、係数μRayleighに関連するレイリー散乱に由来する。レイリー散乱は、全体としてX線と原子との相互作用から生じる。相互作用は、同じ波長で放射する原子の電場を変化させる。X線の場合に発生する確率が低いため、この効果はここではあまり重要ではない。
【0009】
ヒト組織がZ≒7.4を有するため、光電効果は最大30keVで支配的であるが、コンプトン散乱は100keVを超えるX線エネルギーで支配的である。被写体体積を考慮すると、画像を作成するために最小量のX光子エネルギーが必要であり、これはヒトでは60~120keV、小動物では30~80keVの範囲である。これらの範囲は、(撮像に有用な情報を提供する)光電効果が終了し、コンプトン散乱が増加する谷にある。この問題は、光電吸収の確率が低下する一方でコンプトン散乱の確率が同じままである120keVを超えるX線エネルギーを増加させる場合にも増幅される。この二重の効果は、高エネルギー光子が蓄積エネルギーにより寄与する一方で、不十分な組織吸収情報を提供し、散乱光子が画像のノイズフロアを増加させるため、積分ベースのX線検出器のノイズを増加させる。線量の増加は、画像のコントラストを改善するための積分ベースのX線撮像における唯一の方法である。
【0010】
この現象をよりよく説明するために、
図2Aは、30から120keVの範囲のX光子エネルギーの関数としての骨および軟部組織の光電吸収およびコンプトン散乱を概略的に示す。低エネルギー光子の吸収は非常に高く、より高いエネルギーで著しく減少することが分かる。60keVでは、全体的な質量減衰係数μlは、コンプトン散乱によって支配され始める。
図2Bは、所与の許容可能なCNR内の画像を得るために、X光子エネルギーの関数として異なる組織厚で所与の患者に送達される相対線量を概略的に示す。図から分かるように、より厚い組織は、可能な限り最良の線量対コントラスト比を達成するために、より高いエネルギーの光子を必要とする。140keVでは、光電効果と比較して、より高いコンプトン散乱寄与がコントラストを低下させ、
図2Aに見られるように、同じCNRに対して、より薄い組織よりも長い曝露時間を必要とする。したがって、肥満患者の腹部などのより厚い組織を撮像するためには、線量を低減するためにCNRに対する散乱ノイズの悪影響を低減することが必要である。さらに、所与のCNRに対して、最小量の電離放射線を組織に送達して画像を得る光子エネルギーが存在する。
【0011】
被検体に蓄積される線量を低減するための多くのアプローチが提案されている。その中で、患者の体重または年齢に応じてX線エネルギーを最小限に低減し、より小さな領域のスキャンを行い、適切な診断を可能にするために丁度許容可能なノイズのレベルを決定し(「本検査表示」)、多相撮像(毎回異なる詳細を見るための複数回の撮像)を回避し、スライスの重複を低減することができる。他のアプローチは、管電流変調、有機ベースの線量変調、反復再構成、スペクトル撮像(2つ以上のX線エネルギー)、造影剤の使用、ゲーティングおよびエネルギー測定を伴う光子計数に頼ることである。光子計数技術を除いて、前述の問題が依然として存在するため、他のすべてのアプローチは線量低減に最適ではない。エネルギー測定を伴うまたは伴わない光子計数法は、コンプトン散乱(コンプトン散乱光子はより少ないエネルギーを有する)を排除するために各消滅ガンマ線光子がエネルギー測定と共にタイムスタンプされる陽電子放射断層撮影法(PET)において既に使用されている技術である。供給源はPET(511keV)では単色であるため、エネルギー閾値を適用することによってコンプトン拡散を排除することができる。X線源は広いエネルギースペクトルを有するため、これはX線およびCTには当てはまらない。さらに、PETシステムは、0.5×0.5mm2を超える大きな画素を使用し、X線CTの空間分解能が不十分であり、計数率が制限される。
【0012】
図3に示すカップアーチファクトは、CT撮像における周知の問題である。これは、被写体の中央領域を横切るX線が、周辺を通過するX線よりも吸収される機会が多いため発生する。同様に、より多くの組織を通過するX線は、コンプトン散乱を受ける可能性がより高く、したがって画像にノイズを追加する。カップアーチファクトは、異なる厚さ/直径の被検体を撮像するときに観察することができる。このレベルでは、肥満患者は、同一の撮像手順に対して正常な患者よりも多くのカップアーチファクトを有する。
【発明の概要】
【0013】
本出願人は、散乱光子のバックグラウンド寄与なしに弾道光子を検出できるように、時間感受性のある検出器と結合されたX線のパルス源を使用して、X線画像のノイズに対するコントラストを改善できることを発見した。
【0014】
いくつかの実施形態では、X線イメージャは、パルスX線源を時間感受性X線検出器と組み合わせて、散乱光子の低減を伴う弾道光子の測定値を提供する。イメージャは、従来のX線イメージャよりも著しく少ない放射線曝露、例えば、約半分未満の放射線を使用して、同等のコントラスト対ノイズX線画像を提供することができる。
【0015】
撮像装置の時間分解能は、X線源の立ち上がり時間の鋭さおよび時間感受性検出器の時間分解能に依存する。より具体的には、時間分解能が約0.9ナノ秒未満である場合、本出願人は、ほとんどのヒト患者撮像のためにコントラスト対ノイズ比(CNR)が連続X線源よりも改善され得ることを見出した。X線パルスの立ち上がりエッジは、好ましくは0.15ナノ秒未満であるが、約0.5ナノ秒までの立ち上がりエッジでコントラストの改善を達成できることが理解されよう。パルスX線源は、0.1ナノ秒未満から約0.5ナノ秒までの範囲の半値全幅(FWHM)値を有するガウスパルス形状を有することができる。
【0016】
一例として、撮像装置から被検体または対象物を取り出し、検出器を直接使用して1つまたは複数のパルスを検出することによって、装置の時間分解能を測定することができる。これは、散乱光子が存在してはならないため、通常の測定における弾道光子の応答にも対応する撮像装置の「インパルス応答」の測定値と言える。次いで、すべての弾道光子を受け入れることによって信号対雑音比(SNR)を改善するために、またはより多くの散乱光子を除去するために弾道光子の一部を切断することによってさらなるCNRを改善するために、取得の必要性に応じてより多くのまたはより少ない弾道/散乱光子を受け入れるように時点または窓パラメータを選択することができる。散乱光子のかなりの部分が生の画像データから除去され、より大きな割合の弾道光子を検出する利点が得られると、撮像品質を向上させることができる。
【0017】
システムの全体的なタイミング分解能が約300ピコ秒よりも良好である場合、CNRは、組織の典型的な厚さ20cmを撮像する場合、同じ線量の放射線に対して少なくとも約2倍にすることができる。約100ピコ秒よりも良好な時間分解能では、腹部撮像において患者に送達される放射線の量は、連続多色X線撮像のために患者に送達される放射線の量の約30%以下であり得る。
【0018】
本明細書に記載の技術革新は、線量を大幅に低減しながら、制限された計数率および空間分解能の両方に対する解決策を提示する。本明細書に記載の技術革新は、肥満のヒト患者におけるカップアーチファクトの問題を改善するための解決策を提示する。
【0019】
本出願人は、X線撮像装置が、パルスタイミングおよび/またはパルス立ち上がり時間を決定する制御信号を有するパルスX線源を有することができることを見出した。時間依存性X線光子検出信号出力を有する時間感受性X線検出器を装置に含めることができる。制御信号および時間依存性X線光子検出信号出力に接続することができるプロセッサは、時間感受性検出器によって受信された散乱光子を低減して弾道光子の測定値を提供するように構成することができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、パルスX線源は、高電圧源と、電子を加速するように高電圧源に接続された電極と、X線のパルスを生成するように、電極による加速後に電子を受け取るように配置されたX線放出ターゲット材料と、を含み得る。
【0021】
いくつかの実施形態では、パルスX線源は、制御信号に応答するパルスレーザ源と、パルスレーザ源から光パルスを受け取り、それに応答して電子のバーストを放出するように配置された光電材料と、を備え得、電子のバーストを加速するように電極が配置されている。光電材料は、電極のカソードの少なくとも一部であってもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、パルスX線源は、高電圧源に接続された電極によって加速された電子を操縦してX線放出ターゲット材料に制御可能に衝突させる偏向電極を含み得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、高電圧源に接続された電極は、ゲート付きカーボンナノチューブカソードを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、時間感受性X線検出器は、各画素要素で検出された各光子に対して検出信号の時間を提供する。
【0025】
いくつかの実施形態では、時間感受性X線検出器は、光子検出が可能になる時間を制御するゲート信号に応答する。
【0026】
いくつかの実施形態では、時間感受性X線検出器は、光子検出が不可能になる時間を制御するゲート信号に応答する。
【0027】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、制御信号に関して異なる時間フレーム内に検出されたX線光子を収集し、異なる時間フレーム内に検出されたX線光子の減算によって時間感受性検出器によって受け取られた散乱光子の低減によって弾道光子の測定値を決定するように構成される。
【0028】
いくつかの実施形態では、時間感受性X線検出器は、光子検出が可能になる時間窓を制御するパルスゲート信号に応答する。
【0029】
いくつかの実施形態では、時間感受性X線検出器は、時間感受性X線検出器内の画素位置の関数として弾道光子に異なる飛行時間を提供するように、パルスX線源に対して配置され、プロセッサは、画素の位置の関数として異なるタイミングを使用して、時間感受性検出器によって受け取られた散乱光子の低減と共に弾道光子の測定値を提供する。
【0030】
いくつかの実施形態では、時間感受性X線検出器は、X線感受性シンチレータと、シンチレータにおけるX線検出事象を測定するようにシンチレータと結合された光センサアレイと、を備える。
【0031】
いくつかの実施形態では、時間感受性X線検出器は、検出器内のX線事象を測定するように光子の電子への直接変換に基づくX線感受性検出器を備える。
【0032】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、二次元画像を提供するように構成される。
【0033】
いくつかの実施形態では、装置は、撮像される対象物または被検体に対してパルスX線源および時間感受性X線検出器を移動させる電動マウントをさらに備え、プロセッサが、三次元画像を提供するように構成される。
【0034】
いくつかの実施形態では、装置が、同じエネルギーの連続X線が同様の構造の連続X線撮像装置で使用される場合よりも低い線量のX線を少なくとも20cmの厚さの典型的なヒトの腹部領域に送達しながら、所与のコントラスト対ノイズ比(CNR)で画像を取得するように動作する。より低い線量は、少なくとも50%低くてもよく、好ましくは少なくとも60%低くてもよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、パルスX線源がコーンビームを生成し、時間感受性X線検出器が画素の2Dアレイを検出するように配置される。
【0036】
いくつかの実施形態では、パルスX線源と時間感受性検出器との組み合わせの応答時間は、0.9ナノ秒未満である。好ましくは、応答時間は、0.3ナノ秒未満である。好ましくは、当該パルスX線源によって放射されるパルスの立ち上がり時間は、0.15ナノ秒未満である。
【0037】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、パルスX線源と時間感受性検出器との組み合わせのインパルス応答時間を測定して、パルスX線源と時間感受性検出器との間の対象物または患者なしで弾道光子の測定値を得て、その後散乱を提供する対象物または患者を測定するときに、時間感受性検出器によって受け取られた散乱光子の低減を伴う弾道光子の測定値のゲートパラメータを導出し、メモリに格納するように構成される。
【0038】
本出願人はまた、ヒト患者の医療診断画像を取得する方法は、本明細書に記載の装置を使用して関心領域の画像を取得することと、所与のエネルギーのX線を使用してコントラスト対ノイズ比を有することと、を含み得、患者に送達される放射線の量は、所与のエネルギーのX線を使用した関心領域の連続多色X線撮像のために同じ患者に送達される放射線の量の約60%以下である。
【0039】
いくつかの実施形態では、患者に送達される放射線の量は、所与のエネルギーのX線を使用した関心領域の連続多色X線撮像のために同じ患者に送達される放射線の量の約30%以下である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
本発明は、添付の図面を参照した本発明の実施形態の以下の詳細な説明によってよりよく理解されるであろう。
【0041】
【
図1A】撮像される対象物が患者部分として示されている、CTスキャナ用のX線源、X線検出器のアレイの従来の配置の概略断面図である(Webb 1988)。
【0042】
【
図1B】
図1Aのスキャナを使用して取得された画像強度プロファイルの概略図である(Webb 1988)。
【0043】
【
図2A】骨および軟部組織のコンプトンおよび光電減衰対エネルギーを示すプロットである(Martin 2007)。
【0044】
【
図2B】管電位および組織の厚さに対する一定の放射線曝露で得られた正規化CNRを示すプロットである(Ruiら、2014)。
【0045】
【
図3A】重いカップアーチファクトのために重ね合わせられた強度ラインプロファイルを有するカップアーチファクトを示す画像である(Barrett&Keat,2004)。
【0046】
【
図3B】カップアーチファクトがない重ね合わせられた強度ラインプロファイルを有するカップアーチファクトを示す画像である(Barrett&Keat,2004)。
【0047】
【
図4】コンピュータ断層撮影(CT)のための弾道光子および散乱光子の移動を示すX線画像取得を示す概略図である。
【0048】
【
図5】飛行時間(TOF)CT取得チェーンのブロック図である。
【0049】
【
図6】ゲーティングを伴うTOF-CT取得チェーンの詳細なブロック図である。
【0050】
【
図7】タイムスタンプを伴うTOF-CT取得チェーンの詳細なブロック図である。
【0051】
【
図8】異なる物体厚さ(50mm、100mm、150mm、および200mm)についての総時間分解能によるTSR前のSPRの関数としてのToF散乱除去(TSR)後の散乱対一次放射比(SPR)を示すプロットである。
【0052】
【
図9A】異なる物体厚さ(50mm、100mm、150mm、および200mm)ならびに源から検出器までの距離、すなわち250mm、500mm、800mm、1200mm、および1650mmについてのTSR前のSPRの関数としてのTSR後のSPRを示すプロットである。
【0053】
【
図9B】異なる物体厚さ(50mm、100mm、150mm、および200mm)ならびにX光子エネルギー、すなわち20keV、40keV、60keV、80keV、100keV、および120keVについてのTSR前のSPRの関数としてTSR後のSPRを示すプロットである。
【0054】
【
図10】散乱ノイズによって引き起こされるCNR劣化を補正するために必要な線量増倍係数をSPRの関数として示すグラフである(Siewerdsen and Jaffray 2001)。
【0055】
【0056】
【
図11B】コントラストに対するTSRの効果を示すシミュレートされた再構成画像である。
【0057】
【
図12】
図11Aの画像内のTSRによって除去された散乱光子のみを示すシミュレートされた画像である。
【0058】
【
図13】ファントム構造に基づく期待値も示す、TSRなしおよびTSRありの
図11Aの再構成画像の水平線プロファイルである。
【0059】
【
図14A】源トリガとランダウ分布を用いてフィットさせた検出との間の時間に従って、源と検出器との間に何もない状態で実験的に測定された光子数のヒストグラムである。
【0060】
【
図14B】源トリガとランダウ分布を用いてフィットさせた検出との間の時間に従って、源と検出器との間の厚さ4cmのビームブロッカーを用いて実験的に測定された光子数のヒストグラムである。
【0061】
【
図15】水冷されたアノードおよび高温フィラメント型カソードを有する従来のサイドウィンドウ型のX線管の概略側断面図である(Wikimedia Commons 2010)。
【0062】
【
図16】レーザパルスカソードサイドウィンドウ型のX線管の概略側断面図である。
【0063】
【
図17】カーボンナノチューブ(CNT)ゲート付きカソードサイドウィンドウ型のパルスX線管の概略側断面図である。
【0064】
【
図18】ナノ秒単位の許容される飛行時間差の関数として除去される一次光子のパーセンテージの減少、およびナノ秒単位の許容される飛行時間差の関数としてのSPRの増加を示す二重グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0065】
本発明は、光子飛行時間(放出から検出までの経過時間)測定を使用することによって、拡散光子を弾道光子から分離することに関する。現在、X線およびCT撮像は、主に、X線光子のエネルギーを画素に蓄積して、2D画像または3D画像のスライスを作成することに基づいている。これらのアプローチは、バックグラウンドから有用な信号を抽出するために無視できない用量を必要とする。本発明は、X光子の飛行時間を測定し、散乱光子を弾道光子から直接分類することを提案する。これにより、画像のバックグラウンドノイズに関与するかなりの量の光子を除去することができ、CT画像に存在するカップアーチファクトを大幅に減衰させることができる。同様のコントラストで有意な線量減少も得ることができ、これは、CTのいくつかの臨床用途で重要である。
【0066】
前述の問題を解決するためのアプローチは、光子が直線弾道軌道をたどったか散乱したかを判定するために、各個々の光子(または光子のバースト)の飛行時間(TOF)を測定することからなる。TOFは、X線源による光子の放出と、電気信号に変換される検出システムへの光子の到達との間の時間の長さとして定義される。X線波長範囲では、屈折率が1に近く、したがってすべての光子が真空中の光速に近い速度を有するので、光子が移動した距離はそのTOFに直接関係する。TOFを測定するには、X光子がいつ光源を離れ、いつ検出システムに到達するかを知る必要がある。そのような条件を作り出す方法は、X光子の超短パルスを使用して、正確な放出時間を取得し、各個々の光子または時間的に分解された光子のバーストの到着時間を測定することであり得る。ヒト被験体において遭遇する組織体積の種類(例えば、小児から肥満成人までの腹部スキャン)について、画像コントラストの改善は、時間分解能が約0.5ナノ秒より良好である場合に達成することができ、利用可能な技術を使用して少なくとも約0.2ナノ秒の時間分解能が実現可能であるため、所与の線量に対するコントラストの改善および/または所与のコントラストに対する線量の減少の改善は有意である。
【0067】
散乱光子はX線源から検出器まで直線状に直接移動しないため、それらの飛行距離、したがってTOFは、
図4に示すように弾道光子の飛行距離よりも長い。これは、コンプトン散乱光子およびレイリー散乱光子の両方に当てはまる。検出システム内の各画素について、弾道光子の最大TOFは、画素内の任意の点からX線源までの最長距離を真空中の光の速度で割ることによって計算される。次に、スキャン中に、検出システムは、以下の条件が真である場合、個々の光子ごとに決定する。
【数3】
ここで、T
detectionは検出時間であり、T
emissionは放出時間であり、d
maxおよびd
minはそれぞれ、X線源から光子が検出される検出器画素までの最大距離および最小距離であり、cは真空中の光の速度であり、Wおよびεは、それぞれ後期光子および初期光子の許容される時間窓の限界を形成する。前の条件が真である場合、光子は弾道であると宣言され、そうでない場合、散乱されていると宣言される。時間窓の長さ(W+ε)は、検出システムの時間分解能、X線源の時間ジッタ、および用途の必要性を含む測定値の空間的不確実性に従って選択されなければならない。最適な時間窓幅を選択するために、通常の測定における弾道光子の応答にも対応するシステムのインパルス応答を抽出するために、スキャナ内の被検体なしで取得を行うことができる。次いで、すべての弾道光子を受け入れることによってSNR、またはより多くの散乱光子を除去するために弾道光子の一部を切断することによってCNRを改善するために、取得の必要性に応じてより多くのまたはより少ない弾道/散乱光子を受け入れるように窓を選択することができる。窓最適化については後述する。
【0068】
(2Dまたは3Dにかかわらず)TOF-X線撮像の最も有望な用途の1つは、散乱ノイズおよび画質への悪影響を低減するために、測定から散乱光子として識別された光子を除去することである。飛行時間型散乱除去(TSR)と呼ばれるこの技術は、検出システム内の光子をゲーティングすることによって実施することができる。パルスおよび検出システムの両方に使用されるトリガが受信されると、検出システムは、選択された時間窓内のある期間に各画素に到達する光子をタイムスタンプおよび/またはカウントする。(時間窓の外側に)遅く到着する散乱光子は、測定値から破棄することができる。
【0069】
時間的なX線パルス幅は、線量を最小限に抑えるために、できるだけ狭いことが好ましい。しかしながら、実施形態は、注入された線量を損なうより長いパルスで動作することができる。この場合、後期散乱光子は、パルス後の最初の数十分の1ピコ秒に放出された弾道光子の大部分と共に、TSRによって廃棄されている。したがって、結果として生じる信号は、ほとんどが除去されているにもかかわらず、ほとんどが弾道光子から構成される。これにより、より高い線量を犠牲にしてCNRを改善することが可能になる。すべての場合において、X線パルスの立ち上がりエッジは、X線源に関連するタイミングジッタを低減するために可能な限り鋭くなければならない。
【0070】
TOF-X線撮像(2Dまたは3Dにかかわらず)に必要なシステムは、
図5に示すように、パルスX線源、検出器、ゲート付き電子読み出しシステム、および同期機構またはトリガの4つの部分から本質的に構成される。
【0071】
検出器の読み出し電子機器と同期したパルス源によって放出されたX光子の到達時間を正確に検出することができる任意のシステムは、(2Dまたは3Dにかかわらず)TOF-X線撮像を実施することができる。本明細書では、
図6および
図7に詳述されているような、TSRを使用して被検体を首尾よくスキャンするのに十分な高い時間分解能およびデータスループットを達成するためのそのようなシステムの例を提案する。一例として、
図6および
図7に詳述されているシステムは、パルスレーザおよびトリガの両方として作用する、同じ会社からのPicosecond光パルスPLP-10によって励起された浜松ホトニクス株式会社製のN5084パルスX線管で実施することができる。検出システムは、500μm厚のLYSO結晶および同じく浜松ホトニクス株式会社製のS12571-015C SiPMを使用して実施することができる。読み出し回路は、特定用途向け集積回路(ASIC)として設計することができる。
【0072】
読み出し電子機器の出力は、事象の重心の発見、データのソートおよびマージ、データ補正、暗雑音フィルタリングなどの追加のデジタル処理を受けることができる。出力はTSR画素データである。しかしながら、画像プロセッサは、従来採用され得るコントラスト改善フィルタを必要とせずに、当技術分野で知られている従来の技術を使用して画素データから2Dまたは3D画像を生成する。そのような医療画像は、当技術分野で知られているように、画像閲覧ワークステーションで見ることができる。
【0073】
各画素で検出される散乱光子の数は、弾道光子移動経路の外側の対象物の散乱能力の関数であるため、これらの光子はバックグラウンドノイズと見なすことができる。散乱光子を含む再構成画像(
図12)が示すように、画像へのこれらの光子の寄与は、カップアーチファクトの影響を受ける。さらに、骨インサートはこの画像では区別できないため、散乱光子は画像コントラストに負に寄与する。CNRは、バックグラウンドを超える弾道光子の統計的に実行可能な測定に依存する。バックグラウンドが空間的に依存しない(そうである)と仮定すると、弾道光子と散乱光子の両方のより多くの光子を収集することによってコントラストが改善され、その結果、弾道光子の空間的変動は、バックグラウンド減算後により良好なCNRを提供する。理解され得るように、TSRを使用して散乱光子の少なくとも一部を除去することは、より多くの光子を収集する必要性を低減し、散乱光子の不均一な空間分布に起因して画質を改善する。
【0074】
以下に説明するX線源の複数の実装は、X光子の適切に短いパルスを生成して線量を低減しながら、弾道光子の検出を可能にするのに十分に短い強度の立ち上がり時間を有し、それに応じてコントラストの改善を提供することができる。一例として、トリガを使用して、X線管の光カソードに向けられた超短レーザパルスを生成し、電界によって管で加速された電子のパルスを生成することができる。同様に、電子銃またはキャノンは、X線エミッタターゲット上で偏向されたまたは偏向されていない電子の連続的な流れを生成することができる。加速された電子がターゲットに当たると、開口を使用して関心体積に向かってX線パルスが生成され、扇形または円錐形のビームが形成される。
【0075】
X線検出器は光子を電気パルスに変換する。検出器は、良好なX光子阻止能を有し、低ジッタ電気パルスを生成することができる物質から構成される。検出器は、シンチレーション結晶/デジタルケイ素光電子増倍管の組み合わせが良好な候補である任意の材料、あるいは所望の時間感度でゲート制御することができる直接X光子検出器であってもよい。
【0076】
トリガの総当たり手法は、すべての検出器画素が各個々のX光子の到着時間を個別にタイムスタンプすることができる実装であり得る(
図7)。次いで、デジタル信号プロセッサは、関連情報を抽出するためにデータをソートおよび計算することができる。別の手法は、プログラム可能なまたは固定された時間窓を検出器内で直接電子的に開くことである。プログラム可能または固定遅延線を介して各画素の読み出し電子機器に送信されたトリガが取得を開始する。次いで、タイミング窓を調整して弾道光子のみを計数し、散乱光子を除去することができる(
図6)。これは、ゲーティングが時間的点広がり関数(TPSF)全体を捕捉するように設定されているいくつかのX線パルス中に検出された光子をカウントおよび局在化し、続いてゲーティングがTPSFの後半部分、すなわち非弾道光子のみを捕捉するように設定されているいくつかの異なるX線パルス中に検出された光子をカウントおよび局在化することによって行うことができ、弾道光子強度は、完全なTPSFとTPSFの後半部分との間の差によって計算される。これは、光子検出をオフに切り替えるための高速応答時間を有する必要なしに、取得をオンに切り替えるための高速タイミングを必要とする。
【0077】
各画素の光子計数は、コンピュータ断層撮影の場合には画像再構成を実行するために、または2D画像の場合には任意の所望の画像処理を実行するために、データをコンピュータに送信する前に、必要に応じて追加のデジタル信号処理を実行する集中ユニットに最終的に送信される。
【0078】
この革新の一例として、モンテカルロシミュレータGATEを使用して、フラットパネル検出器システムを備えたコーンビームCTスキャナをシミュレートした。すべてのシミュレーションにおいて、点源は、検出器の正方形フラットパネルアレイに向かって等方性円錐パターンの光子の連続単色ビームを放射する。
【0079】
個々の光子についてエネルギー測定は行わなかったが、10keV未満のものはシミュレーションから自動的に除去された。放出時間およびシミュレータによって提供される検出時間の両方を使用して、各光子のTOFを測定し、パルスX線源を模倣した。パルス幅の影響は、経時的な源の放出の確率分布関数を用いてランダムにオフセットを生成することによって放出時間に加えた。GATEは、単一光子に関連する特定の画素における第1の事象のタイムスタンプに従って検出時間を計算するように設定された。この時点で、これは、常にガウスであると仮定される検出器システムの時間分解能の効果を加える。
【0080】
本出願人のシミュレーションでは、TSRアルゴリズムの性能を測定するために、透過光子の少なくとも99.5%を維持するために、窓を常に総タイミング分解能(ガウスと仮定)の3標準偏差(3σ)内に配置した。TSR検証のための単一投影測定の場合、源は、8°の角度を有するX光子の120keVコーンを放出する。ファントムを源から102cm離して配置し、1×1mm2画素検出器の256×256アレイをファントムの63cm後方に配置した。
【0081】
散乱対一次放射比(SPR)は、散乱放射(S)のエネルギーを撮像デバイス上の同じ点に当たる一次ビーム(P)のエネルギーで割ったものである)。50、100、150および200mm厚のファントムで得られた、初期SPRを増加させるためのTSRを適用した後のSPRを
図8に示す。1n秒の総時間分解能であっても、高い入射光子エネルギーと大きな源-検出器間距離の両方を有するいくつかのシステムで改善が見られる。しかしながら、10ps未満の総タイミング分解能を改善することは、著しく良好な結果をもたらさない。予想されるように、達成されたSPRは、それぞれ
図9Aおよび
図9Bに見られるように、より低いエネルギーおよびより小さい源-検出器間距離で悪化する。
【0082】
TSRを適用する前後の2つの骨インサートを有する幅288mmのウォーターシリンダの再構成画像のスライスを、それぞれ
図11Aおよび
図11Bに示す。画像を正規化し、次いで、サイノグラムを再構築ツールキット(RTK)Feldkamp,Davis and Kressアルゴリズム(FDK)に追加の処理なしで直接供給することによって再構築した。完全なタイミング分解能、100keV光子エネルギーおよび165cmの源-検出器間距離により、SPRは検出システムの中心で300%から約4%に減少した。骨インサートは、除去された散乱光子画像において区別できず(
図12)、カップアーチファクトが存在する。これは、それらの光子が再構成データから除去されるとコントラストが増加することを説明する。
【0083】
図13の画像の中央の水平線プロファイルによって示されるように、CNRは倍増し、カップアーチファクトは大幅に低減される。散乱ノイズに固有の再構成値の不正確さも低減される。4倍小さい線量で画像を再構成し、TSR後のCNRは、元の画像と同じ全線量であり、カップアーチファクトは依然として減少したが、光子欠乏アーチファクトが出現した。
【0084】
散乱光子を除去するためにTSRを実施した場合の、SPR低減の関数としての予想される線量低減を
図10に示す。CNRの劣化は、
図10にa
zとして示されているように、線量の増加または画素サイズの増加のいずれかによって補正することができるが、そのような増加は空間分解能も低下させる。したがって、100%のSPRの散乱ノイズを補正し、同じ空間分解能を維持するためには、線量の4倍の増加が必要である。総時間分解能が散乱ノイズの影響を完全に緩和するのに十分に短い場合、線量を4で割ることが可能であり得る。約100psの時間分解能では、腹部スキャンで予想される線量減少は50%を超える。
【0085】
散乱光子と透過光子との間のTOF差を観察する可能性を確認するために実験を行った。厚さ500μmのルテチウム-イットリウムオキシオルトシリケート(LYSO)結晶で覆われた3×3mm
2のシリコン光電子増倍管(SiPM)を、パルスX線源(浜松ホトニクス株式会社の平均光子エネルギー15keV、パルス幅60psの前方38cmに配置した。2つの測定を行った:源と検出器との間に何もないものと、40mm厚のアルミニウムビームブロッカーを備えたもの。
図14Aは、ブロッカーなしのトリガと検出との間の時間(TPSF)を示し、
図14Bは、ブロッカーありのトリガと検出との間の時間を示す。36時間の取得後に657個の光子が検出された。ランダウ分布をフィットさせると、ビームブロッカーを備えたTOFの最も可能性の高い値(MPV)は、ビームブロッカーを備えないMPVよりも390ps遅く、これは約12cmの移動経路の増加に対応する。これは、X線エンクロージャ上の散乱によってビームブロッカーを一周するのに必要な移動経路の予想される増加に適合する。検出された光子のエネルギーに対してTOF補正は行われなかった。より高いエネルギーの光子が早期に検出されたが、散乱光子のTOFの増加は、約400psのすべてのエネルギーレベルで観察される。暗計数および二重検出を両方の測定から除外した。
【0086】
X線源は、X線の放出を担う。第1のX線源は、真空管(いわゆるX線管)であった。このようなデバイスによって、Roentgenは偶然X線を発見した。それらの構造は、
図15に概略的に示されているようにかなり単純である。真空管の一端には、電流(電圧Uh)によって高温に加熱されたフィラメントがある。熱電子放出の物理的プロセスにより、電子がフィラメントから放出される(金属、典型的にはタングステンから作られる、いわゆる高温カソード)。管の他端には、電子が向けられる小さなプレート(アノードもタングステンで作られることが多い)がある。カソードからアノードへの電子を加速するために、カソードとアノードとの間に高電圧(Ua)電場が確立される。電子がアノードに衝突すると、電子は金属中で減速するにつれて急速に減速し、X線光子はBremsstrahlung(ドイツ語の文字通り制動放射を意味する)のプロセスを通して放出される。荷電粒子が加速(または減速)されると、放射、この場合はX線放射を放出することは、電磁気の法則の結果である。カソードとアノードとの間の所与の高電圧では、放出されたX光子は、所与の範囲に及ぶエネルギー、いわゆる源のエネルギースペクトルを有する。1つのエネルギーのみのX光子を放出する源は単色と呼ばれ、そうでなければ多色と呼ばれる(この用語は、異なるエネルギーが異なる色-彩度に対応する可視光子と類似している)。
【0087】
X線を生成する別の手段は、電子ビームを半径方向に曲げること、すなわち電子がその速度に対して垂直に加速するときである。これは、例えば、偏向磁石を使用するシンクロトロンで発生する。電子が非相対論的速度で移動する場合、放射線はサイクロトロン放射線と呼ばれ、電子が相対論的速度で移動する場合、放射線はシンクロトロン放射線と呼ばれる。シンクロトロンにおける加速の大きな制御のために、これらは高度に単色のX線を生成することができる。しかしながら、シンクロトロンおよびサイクロトロンは大きなインフラストラクチャであり、市販の医療撮像デバイスに組み込むには実行可能ではない。
【0088】
従来のX線管では、X光子の流れは連続的であるが、本発明の目的のためには、最大で数十ピコ秒程度の非常に短いX線パルス(またはバースト)が必要である。シンクロトロンはそのようなパルスを生成することができるが、これらは上記のように市販の撮像デバイスにとってはあまりにも大規模なインフラストラクチャである。短いX線パルスを得るための代替案は、固体表面上のフェムト秒レーザ生成プラズマからのX線放射によるものである(Von Der Lindeら、2001)。この手法では、超短高強度レーザパルスが金属ターゲットに集束され、金属から電子を運び、電子を加速して金属ターゲットに向かって戻し、そこで電子を減速させ、それによって短いX線バーストを生成する。別の手法は、ガス中の高次高調波発生によるものであり、これは、強力な超短レーザパルスに頼っている。この手法は、ガス充填中空繊維中で行うことができる(Von Der Lindeら、2001)。これらの手法は、超短パルスレーザ技術が今日では非常にコンパクトであるため、医療撮像デバイスに統合するための合理的なサイズに適していると予測することができる。
【0089】
超短X線パルスを生成するための別の手法は、蛍光寿命測定のために開発されたものであり、蛍光はX線励起によって誘導される(Derenzoら、1994;Mosesら、1995)。そのようなパルスX線源では、パルスレーザダイオードによって放出された光の短パルス(<100ps半値全幅-FWHM)は、各光パルスがそれに衝突する状態で電子の短いバーストを放出する光感受性光カソードに向けられる(
図16)。次いで、電子は、増幅されるかまたは増幅されず、上記の従来のX線管のようにアノードに向かって加速される。短いX線パルスを生成するためのさらに別の手法は、電子ビームをストリークカメラのように非常に迅速に偏向させることができるX線管を使用することであり、制動放射X線を生成することができる非常に短い時間間隔でアノードに当たるように、電界パルス電界を有する。
【0090】
X線パルスを発生させる別の解決策は、(Parmeeら、2015)に記載されているように、光カソードをカーボンナノチューブ(CNT)で置き換えることである。CNTは、電子エミッタとしてカソードの上部にめっきされ、電気信号によってカソードのみよりも直接より速くゲート制御される能力を有し(
図17)、より低い温度で動作する。
【0091】
異なる技術構成は、本発明の実施形態をサポートすることができ、以下に説明する例に限定されない。
【0092】
検出器は、本技術の展開において考慮すべき重要な構成要素の1つである。2つの主な検出原理がある:直接変換および間接変換。ゲルマニウムまたはケイ素などの物質中のX光子の直接変換は高エネルギー分解能にとって非常に魅力的であるが、間接変換は、その低い動作電圧およびその証明されたより良好なタイミング分解能のおかげで好ましい手段となり得る。検出器の厚さに結合された直接変換検出器における電子/正孔移動度は、現在、所望に応じて数十ピコ秒のタイミング性能を得ることができない。あるいは、シリコン光電子増倍管(SiPM)またはそのすべてのデジタル微分などの高速光検出器に結合されたX光子を停止することができる薄いシンチレータの使用は、100ps未満のタイミング性能を有する完全なシステムの良好な候補である。
【0093】
間接変換機構が好ましいが、適切なゲート機構に密接に結合されなければならない。総当たり手法は、すべての個々の光子ごとにタイムスタンプを付け、画像再構成のために関連情報をリアルタイムで処理することができるデジタル信号プロセッサに情報を提供することである。このプロセッサは、光検出器と共に2.5Dまたは3D電子機器に統合され得るか、またはスキャナの外側に遠隔に配置され得る。処理アルゴリズムは、ゲーティング、フィルタリングから、機械学習までの任意の形態とすることができる。しかしながら、この手法は、大きなデータ帯域幅を必要とし、他の手法を使用することができる。
【0094】
帯域幅を低減するために、調整可能な遅延トリガをスキャナ内に分散させることができる。このトリガは、時間窓内の検出器に衝突するすべての光子がタイムスタンプまたはカウントされる時間窓を開くことができる。情報は、画像再構成アルゴリズムに供給される関連情報を抽出する目的で、ローカルまたはリモートのデジタルプロセッサに依然として送信することができる。トリガは、検出器パネルの中心から周辺まで自己調整するか、プログラム可能または固定の遅延線を使用して手動で調整し、中心から周辺までの源からフラットパネルまでの距離変動を考慮に入れることができる。前者の場合、各画素は隣接する画素との通信リンクを有するが、後者の場合、システムキャリブレーションが必須である。
【0095】
エネルギー積分検出器を使用して、時間窓に従ってエネルギー積分をオンおよびオフにすることによって、または時間窓の開始時および終了時にそのような検出器を読み取って弾道光子のエネルギーのみを測定することによって、弾道光子と散乱光子との間の識別を実施することも可能である。
【0096】
(2Dまたは3Dにかかわらず)TOF-X線撮像を最適化することは、1つの中心的な考え、すなわち正しいゲート幅を有することを中心としている。理想的には、ゲート幅は、ほとんどすべての弾道光子を可能にするが散乱光子の最大数を除去するのに十分に狭くなるように選択される。これを達成するために、ゲート幅に対するシステムのすべての構成要素の影響を考慮しなければならない。理想的には、ゲート幅はほぼ0であるが、その場合、源パルス幅は、弾道光子の除去を回避するのに十分に短くなければならない。X線源のパルス幅(および場合によってはパルスの立ち上がりエッジの鋭さ)または検出器のタイミング分解能など、TOF測定の誤差につながるパラメータは、弾道光子に対するシステムの応答を広げる。ほとんどすべての弾道光子を保持するために、誤差が増加してもゲートを広くしなければならないが、これを行うと、除去される散乱光子の割合が減少する。しかしながら、弾道光子の一部を除去するとSNRが低下し、より多くの散乱光子を除去するとCNRが増加するため、SNRまたはCNRが線量を駆動しているかどうかに応じて、ゲート幅をより控えめにまたはより積極的に選択することができる。一方で、SNRを増加させることは、非常に低線量の用途において、および無機撮像などの自然に高いコントラストを有する撮像システムにおいて特に重要である。他方で、CNRは、乳房撮像などのわずかな密度差による生体組織撮像において線量を増加させる。100psの総時間分解能を有するシステムにおいて選択されたゲートに従って除去され、一次比まで散乱された弾道光子の量が
図18に示されている。
【0097】
総時間分解能を低減することは、(2Dまたは3Dにかかわらず)TOF-X線撮像の最も重要な設計態様の1つである。システムの各構成要素によって引き起こされる誤差は、直交で加算される。したがって、検出器のパルス幅およびタイミング分解能を低減することは、識別効率を高めるために等しく重要である。両方の効果が10ps未満に低減される場合、発光(源の焦点のサイズ)および検出(検出器のサイズおよび位置決めの誤差)の空間的不確実性もまた、これが識別のための比較として使用される弾道光子の予想されるTOFに影響を及ぼすので、最適化されなければならない。検出器間のジッタはまた、測定値の誤差を増加させ、最小限に抑える必要がある。
【0098】
本方法は、弾道光子および散乱X光子を識別するために、源と画素との間の可能な最大TOFを使用する。しかしながら、この方法をさらに最適化するために、大きな画素サイズのシステムでは、窓の最も可能性の高い検出深度を使用することが有用であり得る。これを行うと、保持される弾道光子の数が減少するが、測定されるSPRは減少するはずである。
【0099】
実施形態は、様々なシステムで実施することができる。以下は、(2Dまたは3Dにかかわらず)TOF-X線撮像の潜在的な興味深い用途として特定されている。
1.小児(放射線の線量を許容可能なレベルまで低下させることができる場合)
2.前臨床(CNRの減少により空間分解能を向上させることができる場合)
3.歯科医療(線量および形態因子が重要である場合)
4.肥満患者(コントラストが問題となる場合)
5.四肢(形態因子および線量)
6.介入放射線学(形態因子、線量、および分解能)
7.ゲーティング撮像。
【0100】
これらのシステムは、上の括弧で示されているように、線量、空間分解能、コントラスト、および形態因子の設計オプション(または最適化)において異なる調整を必要とする。X線撮像(2Dまたは3Dにかかわらず)は、現在のX線撮像手順に関連する高放射線量のために小児患者にはほとんど使用されない。本明細書に提示される方法は、線量を低減することによって、この用途のための技術の使用を可能にする。四肢のスキャン、歯科医療および介入放射線学はまた、それらの用途によって必要とされる反復使用の影響を低減するために線量に対して最適化することができる。このために、システムは、特にCNRおよびSNR要件に従ってゲートサイズを低減することによって線量をさらに低減し、感度を高めるように設計することができる。歯科医療などにおける高コントラスト容積の自然な撮像は、一般にSNRの最適化を必要とし、乳房撮像などの低コントラスト撮像は、CNRの最適化を必要とする。窓は、必要なニーズに応じて変更することができ、例えば、骨折を探すにはSNRを増加させるために大きな窓が必要であるが、潜在的な腫瘍について同じ領域をスキャンするにはCNRを増加させるために小さな窓が必要である。
【0101】
空間分解能は、前臨床および介入放射線学の両方にとって特に重要である。X線と検出器との相互作用の位置を正確に特定するために、単一光子アバランシェダイオード(SPAD)検出器と共に本明細書に記載の実施形態を使用することによって、著しく高い空間分解能を得ることができる。識別の品質は、空間分解能と共に、関心体積と検出器システムとの間の距離を増加させるなどの拡大プロセスを使用することによっても改善することができる。
【0102】
肥満患者のスキャンは、X線撮像(2Dまたは3Dにかかわらず)で使用される標準的なエネルギー範囲よりも高いエネルギーの光子を必要とし、より低いコントラスト画像をもたらす。TSRは、体積が大きいほど散乱ノイズが多くなり、このような場合、光子は一般に被検体内で複数回散乱するため、このアプローチでは簡単に除去できるので、肥満患者のスキャンに特に有用である。特にシステムの総時間分解能よりも小さい積極的なゲートを選択することによってコントラストを最適化することは、肥満患者をスキャンするのにさらに役立つ可能性がある。
【0103】
本明細書に記載の実施形態は、さらに大きな体積のコーンビームコンピュータ断層撮影の使用を可能にすることができる。コーンビームCTは、患者の直線移動を必要としないため、現在主に使用されている標準的な螺旋状ファンビームCTよりも大きな利点を有する。コーンビームCTの機械部品の単純さは、スキャナの形態因子を低減し、手術室でそのようなシステムを直接使用する必要性を低減する。
【0104】
最後に、本発明の実施形態は、モーションアーチファクトを回避し、器官をより良好に視覚化するために、呼吸ゲーティングまたは心臓などの外部信号に従ってX線源をオンおよびオフすることができるゲート付き撮像によく適し得る。その場合、CNRは、そのような状況においてより良好に改善され得る。
【参考文献】
【0105】
【国際調査報告】