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特表2022-520149新規なテトラアリールボレート化合物、これを含む触媒組成物、およびこれを用いたエチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-29
(54)【発明の名称】新規なテトラアリールボレート化合物、これを含む触媒組成物、およびこれを用いたエチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 5/02 20060101AFI20220322BHJP
   C08F 4/64 20060101ALI20220322BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20220322BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20220322BHJP
   C08F 210/00 20060101ALI20220322BHJP
   C07C 211/46 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
C07F5/02 A CSP
C08F4/64
C08F4/6592
C08F10/00 510
C08F210/00 510
C07C211/46
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021532373
(86)(22)【出願日】2020-02-24
(85)【翻訳文提出日】2021-06-08
(86)【国際出願番号】 IB2020051519
(87)【国際公開番号】W WO2020174346
(87)【国際公開日】2020-09-03
(31)【優先権主張番号】10-2019-0024356
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0020828
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520241004
【氏名又は名称】サビック エスケー ネクスレーン カンパニー プライベート リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SABIC SK NEXLENE COMPANY PTE. LTD.
【住所又は居所原語表記】One Temasek Avenue #09-04 Millenia Tower, Singapore 039192 Singapore
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】シン, ドンチョル
(72)【発明者】
【氏名】オ, ヨノク
(72)【発明者】
【氏名】キム, ミジ
【テーマコード(参考)】
4H006
4H048
4J128
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB40
4H048AA01
4H048AA03
4H048AB40
4H048VA75
4H048VB10
4J128AA01
4J128AC01
4J128AC10
4J128AC20
4J128AC28
4J128AD02
4J128AD05
4J128AD11
4J128AD13
4J128BA00A
4J128BA02B
4J128BB00A
4J128BB01B
4J128BC12B
4J128BC14B
4J128BC15B
4J128BC16B
4J128BC17B
4J128BC25B
4J128BC27B
4J128EA01
4J128EB02
4J128EB03
4J128EB04
4J128EB05
4J128EB07
4J128EB08
4J128EB09
4J128EB10
4J128EB12
4J128EB13
4J128EB17
4J128EB18
4J128EC01
4J128EC02
4J128FA02
4J128FA07
4J128GA05
4J128GA08
4J128GB01
(57)【要約】
本発明は、新規なテトラアリールボレート化合物、これを含む触媒組成物、およびこれを用いたエチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体の製造方法に関する。具体的には、熱安定性に優れ、脂肪族炭化水素系溶媒でも完全に溶解が可能であり、商業工程の運転を容易にし、効果的に単一活性点触媒の活性化を誘導することができるテトラアリールボレート化合物が、触媒活性化剤として使用され、高い触媒活性と高分子量のエチレン単独重合体およびエチレンとα‐オレフィンの共重合体などから選択されるエチレン系共重合体を提供することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表されるテトラアリールボレート化合物。
[化学式1]
【化25】
前記化学式1中、
Bは、ホウ素原子であり、
Arは、(C6‐C30)アリールであり、前記Arのアリールは、(C1‐C30)アルキル、ハロ(C1‐C30)アルキルおよび(C6‐C30)アリール(C1‐C30)アルキルなどから選択される一つ以上の置換体でさらに置換されてもよく、
Arは、フッ素置換の(C6‐C30)アリールであり、
は、水素または(C1‐C30)アルキルであり、
は、(C1‐C30)アルキルであるか、前記Rと連結されて環を形成してもよく、前記環は、(C1‐C30)アルキル、(C1‐C30)アルコキシ、ハロ(C1‐C30)アルキル、(C3‐C30)シクロアルキル、(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリール、(C6‐C30)アリール、(C6‐C30)アリールオキシ、(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリールオキシ、(C6‐C30)アリール(C1‐C30)アルキルおよび((C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリール)(C1‐C30)アルキルから選択される一つ以上の置換体でさらに置換されてもよい。
【請求項2】
下記化学式2で表される、請求項1に記載のテトラアリールボレート化合物。
[化学式2]
【化26】
前記化学式2中、
前記B、RおよびRは、請求項1の化学式1での定義と同一であり、
11~R15は、それぞれ独立して、水素、(C1‐C30)アルキル、ハロ(C1‐C30)アルキルまたは(C6‐C30)アリール(C1‐C30)アルキルである。
【請求項3】
下記化学式3で表される、請求項1に記載のテトラアリールボレート化合物。
[化学式3]
【化27】
前記化学式3中、
前記Bは、請求項1の化学式1での定義と同一であり、
11~R15は、それぞれ独立して、水素、(C1‐C30)アルキル、ハロ(C1‐C30)アルキルまたは(C6‐C30)アリール(C1‐C30)アルキルであり、
nは、2~6から選択される整数であり、
21およびR22は、それぞれ独立して、水素、(C1‐C30)アルキル、(C1‐C30)アルコキシ、ハロ(C1‐C30)アルキル、(C3‐C30)シクロアルキル、(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリール、(C6‐C30)アリール、(C6‐C30)アリールオキシ、(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリールオキシ、(C6‐C30)アリール(C1‐C30)アルキルまたは((C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリール)(C1‐C30)アルキルである。
【請求項4】
前記RおよびRから選択される少なくとも一つ以上は、(C8‐C30)アルキルである、請求項1に記載のテトラアリールボレート化合物。
【請求項5】
前記RおよびRは、それぞれ独立して、(C12‐C30)アルキルである、請求項1に記載のテトラアリールボレート化合物。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のテトラアリールボレート化合物と、
第4族遷移金属を含む単一活性点触媒と、
アルミニウム化合物とを含むエチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体製造用の遷移金属触媒組成物。
【請求項7】
前記遷移金属触媒組成物は、
前記テトラアリールボレート化合物の製造ステップで使用された有機溶媒を分離せずに含む、請求項7に記載のエチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体製造用の遷移金属触媒組成物。
【請求項8】
前記単一活性点触媒は、
メタロセン触媒である、請求項6に記載のエチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体製造用の遷移金属触媒組成物。
【請求項9】
前記単一活性点触媒は、
下記化学式Aで表されるインデン系遷移金属化合物である、請求項6に記載のエチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体製造用の遷移金属触媒組成物。
[化学式A]
【化28】
前記化学式A中、
Mは、周期表上の第4族の遷移金属であり、
は、(C1‐C30)アルキルまたは(C2‐C20)アルケニルであり、前記Rのアルキルまたはアルケニルは、ハロゲン、(C6‐C30)アリールおよび(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリールから選択される一つ以上の置換体でさらに置換されてもよく、
Arは、(C6‐C30)アリールであり、前記Arのアリールは、(C1‐C30)アルキル、ハロ(C1‐C30)アルキルおよび(C6‐C30)アリール(C1‐C30)アルキルから選択される一つ以上の置換体でさらに置換されてもよく、
~Rは、それぞれ独立して、水素、(C1‐C30)アルキル、(C1‐C30)アルコキシ、ハロ(C1‐C30)アルキル、(C3‐C20)シクロアルキル、(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリール、(C6‐C30)アリール、(C6‐C30)アリールオキシ、(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリールオキシ、(C6‐C30)アリール(C1‐C30)アルキルまたは((C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリール)(C1‐C30)アルキルであるか、前記R~Rは、隣接した置換体と連結されて縮合環を形成してもよく、前記縮合環は、(C1‐C30)アルキル、(C1‐C30)アルコキシ、ハロ(C1‐C30)アルキル、(C3‐C20)シクロアルキル、(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリール、(C6‐C30)アリール、(C6‐C30)アリールオキシ、(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリールオキシ、(C6‐C30)アリール(C1‐C30)アルキルおよび((C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリール)(C1‐C30)アルキルから選択される一つ以上の置換体でさらに置換されてもよく、
は、(C1‐C30)アルキル、(C3‐C20)シクロアルキルまたは(C6‐C30)アリール(C1‐C30)アルキルであり、
およびRは、それぞれ独立して、(C1‐C30)アルキル、ハロ(C1‐C30)アルキル、(C3‐C20)シクロアルキル、(C6‐C30)アリール、(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリール、(C1‐C30)アルコキシ(C6‐C30)アリールまたは(C6‐C30)アリール(C1‐C30)アルキルであるか、前記RとRは、互いに連結されて環を形成してもよく、前記環は、(C1‐C30)アルキル、ハロ(C1‐C30)アルキル、(C6‐C30)アリール(C1‐C30)アルキル、(C1‐C30)アルコキシ、(C3‐C20)シクロアルキル、(C6‐C20)アリール、(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリールおよび(C6‐C20)アリールオキシから選択される一つ以上の置換体でさらに置換されてもよく、
は、水素または(C1‐C30)アルキルであり、
およびXは、それぞれ独立して、ハロゲン、(C1‐C30)アルキル、(C2‐C20)アルケニル、(C3‐C20)シクロアルキル、(C6‐C30)アリール、(C6‐C30)アリール(C1‐C30)アルキル、((C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリール)(C1‐C30)アルキル、(C1‐C30)アルコキシ、(C6‐C30)アリールオキシ、(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリールオキシ、(C1‐C30)アルコキシ(C6‐C30)アリールオキシ、‐OSiR、‐SR、‐NR、‐PRまたは(C1‐C30)アルキリデンであり、
前記R~Rは、それぞれ独立して、(C1‐C30)アルキル、(C6‐C20)アリール、(C6‐C20)アリール(C1‐C30)アルキル、(C1‐C30)アルキル(C6‐C20)アリールまたは(C3‐C20)シクロアルキルであり、
~Rは、それぞれ独立して、(C1‐C30)アルキル、(C6‐C20)アリール、(C6‐C20)アリール(C1‐C30)アルキル、(C1‐C30)アルキル(C6‐C20)アリール、(C3‐C20)シクロアルキル、トリ(C1‐C30)アルキルシリルまたはトリ(C6‐C20)アリールシリルであり、
ただし、XまたはXのうち一つが(C1‐C30)アルキリデンである場合、残りの一つは無視される。
【請求項10】
前記アルミニウム化合物は、
アルキルアルミノキサンおよび有機アルミニウムから選択される一つまたは二つ以上の混合物として、メチルアルミノキサン、修飾メチルアルミノキサン、テトライソブチルアルミノキサン、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムおよびトリイソブチルアルミニウムから選択される一つまたは二つ以上の混合物である、請求項6に記載のエチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体製造用の遷移金属触媒組成物。
【請求項11】
前記単一活性点触媒とテトラアリールボレート化合物の比率は、
遷移金属(M):ホウ素原子(B)のモル比として1:0.1~100の範囲である、請求項6に記載のエチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体製造用の遷移金属触媒組成物。
【請求項12】
前記単一活性点触媒と、テトラアリールボレート化合物と、アルミニウム化合物との比率は、
遷移金属(M):ホウ素原子(B):アルミニウム原子(Al)のモル比として1:0.1~100:1~2,000の範囲である、請求項6に記載のエチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体製造用の遷移金属触媒組成物。
【請求項13】
前記単一活性点触媒と、テトラアリールボレート化合物と、アルミニウム化合物との比率は、
遷移金属(M):ホウ素原子(B):アルミニウム原子(Al)のモル比として1:0.5~5:10~500の範囲である、請求項12に記載のエチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体製造用の遷移金属触媒組成物。
【請求項14】
請求項6に記載の遷移金属触媒組成物を用いたエチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体の製造方法。
【請求項15】
前記α‐オレフィンは、
プロピレン、1‐ブテン、1‐ペンテン、1‐ヘキセン、1‐ヘプテン、1‐オクテン、1‐デセン、1‐ウンデセン、1‐ドデセン、1‐テトラデセン、1‐ヘキサデセン、1‐アイトセン、3‐ブタジエン、1,4‐ペンタジエンおよび2‐メチル‐1,3‐ブタジエンから選択される一つまたは二つ以上の混合物であり、前記エチレンとα‐オレフィンの共重合体のうちエチレン含量は30~99重量%である、請求項14に記載のエチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体の製造方法。
【請求項16】
前記エチレンと重合される共単量体として、
シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルネン、5‐ビニリデン‐2‐ノルボルネン、5‐メチレン‐2‐ノルボルネン、5‐エチリデン‐2‐ノルボルネンおよびスチレンから選択される一つまたは二つ以上の混合物をさらに含む、請求項15に記載のエチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体の製造方法。
【請求項17】
前記エチレン単独重合またはエチレンとα‐オレフィンの共重合反応器内の圧力は、6~150気圧であり、重合反応温度は、50~200℃である、請求項14に記載のエチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体の製造方法。
【請求項18】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のテトラアリールボレート化合物および前記テトラアリールボレート化合物の製造ステップで使用された有機溶媒を分離せずに含む触媒活性化剤組成物を注入するステップと、
第4族遷移金属を含む単一活性点触媒溶液を注入するステップと、
アルミニウム化合物溶液を注入するステップと、
エチレンを注入するステップとを含むエチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体の製造方法。
【請求項19】
α‐オレフィンを注入するステップをさらに含む、請求項18に記載のエチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラアリールボレート化合物、これを含む触媒組成物、およびこれを用いたエチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エチレンの単独重合体またはα‐オレフィンとの共重合体の製造には、一般的に、チタンまたはバナジウム化合物の主触媒成分とアルキルアルミニウム化合物の助触媒成分から構成される、いわゆる、チーグラー・ナッタ触媒系が使用されてきた。しかし、チーグラー・ナッタ触媒系は、エチレン重合に対して高活性を示すが、不均一な触媒活性点のため、一般的に生成重合体の分子量分布が広く、特に、エチレンとα‐オレフィンの共重合体においては、組成分布が均一でないという欠点があった。
【0003】
最近、チタン、ジルコニウム、ハフニウムなど周期表第4族遷移金属のメタロセン化合物と助触媒であるメチルアルミノキサン(methylaluminoxane)から構成される、いわゆる、メタロセン触媒系が開発された。メタロセン触媒系は、単一種の触媒活性点を有する均一系触媒であるため、既存のチーグラー・ナッタ触媒系に比べて、分子量分布が狭く、組成分布が均一なポリエチレンを製造することができる特徴がある。例えば、特許文献1~特許文献10などにおいて、メタロセン化合物を助触媒メチルアルミノキサンで活性化させることで、エチレンを高活性に重合させて、分子量分布(Mw/Mn)が1.5~2.0の範囲であるポリエチレンを製造することができると発表している。しかし、前記触媒系では、高分子量の重合体を得ることが難しい。特に、100℃以上の高温で実施される溶液重合法に適用する場合、重合活性が急激に減少し、β‐脱水素反応が優勢で、重量平均分子量(Mw)が100,000以上の高分子量重合体を製造するには適しないと知られている。
【0004】
一方、溶液重合条件で、エチレン単独重合またはエチレンとα‐オレフィンなどとの共重合で、高い触媒活性と高分子量の重合体を製造することができる触媒系として、遷移金属を環状に連結した、いわゆる、幾何拘束型非メタロセン系触媒(いわゆる、単一活性点触媒)が発表されている。特許文献11と特許文献12では、一つのシクロペンタジエンリガンドにアミド基を環状に連結した例を提示しており、特許文献13では、電子供与体化合物としてフェノール系リガンドをシクロペンタジエンリガンドと環状に連結した触媒の例を示している。かかる幾何拘束型触媒の場合、触媒自体の低くなった立体障害効果によって、高級アルファ‐オレフィンとの反応性が著しく改善したが、商業的に高温で優れた活性と優れた共重合特性などを提供する触媒およびこれを活性化するための方法に関する研究が重要視されている。
【0005】
また、溶液重合条件で、エチレン単独重合またはエチレンとα‐オレフィンなどとの共重合で、高い触媒活性と高分子量の重合体を製造することができる触媒系に関する研究の一環として、特許文献14~特許文献17には、分散またはスラリー状に提供される助触媒を含む触媒系を開示している。これらに開示されている助触媒は、トルエン溶液などを含む助触媒溶液として反応器に供給され、メタロセン化合物と連続または非連続的に反応器に供給される。固体状に提供される触媒系を採用する場合、大量スケールで実施される生産工程で使用されるポンプなどの供給装置に障害を引き起こし、安定した運転を邪魔し得る。また、触媒系の溶解度問題でトルエンなどの芳香族炭化水素系溶媒を使用しなければならないため、最終生成物であるエチレン単独重合またはエチレンとα‐オレフィンなどとの共重合体などに残留してにおいを誘発し、その除去のために追加の工程が伴われるなどの問題があった。かかる研究の背景の下で、上述の触媒系の問題を解決し、溶液重合条件で、エチレン単独重合またはエチレンとα‐オレフィンなどとの共重合で、高い触媒活性と高分子量の重合体を製造することができる触媒系を提供するための研究は求められ続けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第320,762号明細書(1989.06.21)
【特許文献2】欧州特許出願公開第372,632号明細書(1990.06.13)
【特許文献3】特開昭63‐092621号公報(1988.04.23)
【特許文献4】特開平02‐084405号公報(1990.03.26)
【特許文献5】特開平03‐002347号公報(1991.01.08)
【特許文献6】欧州特許第0416815号明細書(1991.03.13)
【特許文献7】欧州特許第0420436号明細書(1991.04.03)
【特許文献8】欧州特許第0842939号明細書(1998.05.20)
【特許文献9】国際公開第98/06728号(WO98/06728(1998.02.19))
【特許文献10】国際公開第01/42315号(PCT01/42315(2001.06.14))
【特許文献11】欧州特許第0416815号明細書(1997.08.13)
【特許文献12】欧州特許第0420436号明細書(1996.08.14)
【特許文献13】欧州特許第0842939号明細書(1998.05.20)
【特許文献14】欧州特許第0889062号明細書(1999.01.07)
【特許文献15】欧州特許第0887355号明細書(1998.12.30)
【特許文献16】米国特許第6613850号明細書(2003.09.02)
【特許文献17】米国特許第6660816号明細書(2001.07.19)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の従来技術の問題点を解消するために、本発明者らは、広範な研究を行った結果、アルキリデンアニリニウム構造のカチオンを含むテトラアリールボレート化合物を助触媒として使用することで、脂肪族炭化水素系溶媒に対する溶解度を高め、単一活性点触媒の活性を効果的に向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の一目的は、エチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体の製造用助触媒として有用な新規なテトラアリールボレート化合物を提供し、また、これと単一活性点触媒を含む触媒組成物を提供することにある。
【0009】
本発明の一目的は、前記触媒組成物を用いて、エチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体を商業的な観点から経済的に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、下記化学式1で表されるテトラアリールボレート化合物が提供される。
[化学式1]
【化1】
[前記化学式1中、
Bは、ホウ素原子であり、
Arは、(C6‐C30)アリールであり、前記Arのアリールは、(C1‐C30)アルキル、ハロ(C1‐C30)アルキルおよび(C6‐C30)アリール(C1‐C30)アルキルなどから選択される一つ以上の置換体でさらに置換されてもよく、
Arは、フッ素置換の(C6‐C30)アリールであり、
は、水素または(C1‐C30)アルキルであり、
は、(C1‐C30)アルキルであるか、前記Rと互いに連結されて環を形成してもよく、前記環は、(C1‐C30)アルキル、(C1‐C30)アルコキシ、ハロ(C1‐C30)アルキル、(C3‐C30)シクロアルキル、(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリール、(C6‐C30)アリール、(C6‐C30)アリールオキシ、(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリールオキシ、(C6‐C30)アリール(C1‐C30)アルキルおよび((C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリール)(C1‐C30)アルキルなどから選択される一つ以上の置換体でさらに置換されてもよい。]また、本発明では、前記化学式1のテトラアリールボレート化合物と、第4族遷移金属を含む単一活性点触媒と、アルミニウム化合物とを含むエチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体製造用の遷移金属触媒組成物が提供される。
【0011】
また、本発明では、前記エチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体製造用の遷移金属触媒組成物を用いたエチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体の製造方法が提供される。
【0012】
また、本発明では、前記化学式1のテトラアリールボレート化合物および前記テトラアリールボレート化合物の製造ステップで使用された有機溶媒を分離せずに含む触媒活性化剤組成物を注入するステップと、第4族遷移金属を含む単一活性点触媒溶液を注入するステップと、アルミニウム化合物溶液を注入するステップと、エチレンを注入するステップとを含むエチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるテトラアリールボレート化合物は、炭化水素系溶媒に対する溶解度が高く、熱安定性に優れ、高温でも単一活性点触媒を活性化する。特に、前記テトラアリールボレート化合物は、脂肪族炭化水素系溶媒に対して完全に溶解が可能で、溶解度による使用量の制限を受けないことができる。また、これにより提供される溶液型助触媒は、商業工程の運転を容易にするだけでなく、従来技術の問題点として指摘されている分散またはスラリー状に提供される助触媒の使用に伴う問題点を解決する手段になることができる。
【0014】
また、高温でも高い触媒活性を維持することができ、エチレン、α‐オレフィン、他の共単量体などとの共重合反応性に優れ、高分子量の重合体を高い収率で製造することができることから、様々なメタロセンまたは非メタロセンなどの単一活性点触媒との組み合わせから、その商業的実用性が高い。
【0015】
また、高温で実施される溶液重合の際、C4以上のα‐オレフィンの異性化度を制限し、α‐オレフィンなど共単量体の消費量を効果的に低減することができる。これにより、より経済的に様々な物性を有する高分子量のエチレン系重合体、すなわち、エチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体などのエチレン系重合体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明をより具体的に説明する。この際、使用される技術用語および科学用語において他の定義がなければ、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が通常理解している意味を有し、下記の説明で本発明の要旨を不明瞭にし得る公知の機能および構成に関する説明は省略する。
【0017】
本明細書に記載の用語「アルキル」は、炭素および水素原子のみから構成された1価の直鎖または分岐鎖飽和炭化水素ラジカルを意味し、かかるアルキルの一例は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシルなどを含むが、これに限定されない。
【0018】
本明細書に記載の用語「アリール」は、一つの水素除去によって芳香族炭化水素から誘導された有機ラジカルであり、各環に、適切には4~7個、好ましくは5または6個の環原子を含む単一または縮合環系を含み、多数個のアリールが単一結合で連結されている形態まで含む。縮合環系は、飽和または部分的に飽和された環のような脂肪族環を含むことができ、必ず一つ以上の芳香族環を含んでいる。また、前記脂肪族環は、窒素、酸素、硫黄、カルボニルなどを環内に含むこともできる。前記アリールラジカルの一例は、フェニル、ナフチル、ビフェニル、インデニル、フルオレニル、フェナントレニル、アントラセニル、トリフェニレニル、ピレニル、クリセニル、ナフタセニル、9,10‐ジヒドロアントラセニルなどを含むが、これに限定されない。
【0019】
本明細書に記載の用語「シクロアルキル」は、一つ以上の環から構成された1価の飽和カルボサイクリックラジカルを意味する。シクロアルキルラジカルの例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどを含むが、これに限定されない。
【0020】
本明細書に記載の用語「ハロ」または「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子などを意味する。
【0021】
本明細書に記載の用語「ハロアルキル」は、一つ以上のハロゲンで置換されたアルキルを意味し、一例として、トリフルオロメチルなどが挙げられるが、これに限定されない。
【0022】
本明細書に記載の用語「フッ素置換のアリール」は、一つ以上のフッ素原子で置換されたアリールを意味し、ここで、「アリール」は、前記定義したとおりである。
【0023】
本明細書に記載の用語「アリールアルキル」は、一つ以上のアリールで置換されたアルキルを意味し、一例として、ベンジルなどが挙げられるが、これに限定されない。
【0024】
本明細書に記載の用語「アルコキシ」および「アリールオキシ」は、それぞれ*‐O‐アルキルラジカルおよび*‐O‐アリールラジカルを意味し、ここで、「アルキル」および「アリール」は、前記定義したとおりである。
【0025】
本明細書に記載の用語「触媒活性化剤」は、助触媒と同じ意味に解釈されてもよく、本明細書内で具体的に記載している触媒活性化剤は、下記化学式1で表される化合物であり得る。
【0026】
単一活性点触媒の活性化のための、イオン性塩を含む触媒活性剤は、通常、イオン性塩の形態を有する。かかる構造的特徴から、これらは、脂肪族炭化水素系溶媒において非常に不溶性であり、芳香族炭化水素系溶媒内で単に少ない程度にだけ溶解される。
【0027】
さらに、エチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体などのエチレン系重合体の製造のための単量体は、溶媒との混和性と、生成されたエチレン系重合体内の芳香族炭化水素の含量を減少させるために、脂肪族炭化水素系溶媒下で重合が行われることが好ましいが、上述の問題によって芳香族炭化水素系溶媒を使用するしかなかった。
【0028】
さらに、トルエンなどの芳香族炭化水素系溶媒を使用する場合、生成された高分子量のエチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体に残留し、劣った重合体特性または不快なにおいを誘発する。
【0029】
本出願人は、かかる従来技術の問題に着目し、脂肪族炭化水素系溶媒下で溶液重合が可能なイオン性塩を含む触媒活性剤に関する研究を重ねたところ、アルキリデンアニリニウム構造のカチオンを有する新規なテトラアリールボレート化合物を考案するに至った。
【0030】
かかるアルキリデンアニリニウム構造のカチオンを有するテトラアリールボレート化合物は、直鎖状脂肪族炭化水素系溶媒は言うまでもなく、環状脂肪族炭化水素系溶媒に対する溶解度も高い。そのため、触媒活性化剤の特定量を調節する必要がある連続溶液工程への使用に適する。特に、これを含む場合、α‐オレフィンの異性化反応を効果的に制限する。
【0031】
また、アルキリデンアニリニウム構造のカチオンを有するテトラアリールボレート化合物は、高温安定性に優れ、160℃以上の高温重合温度でも触媒活性化に卓越した効果を発揮し、その商業的運転を可能とし、産業的に活用価値が高い。
【0032】
以下、本発明によるテトラアリールボレート化合物およびこれを含む触媒組成物について具体的に説明する。
【0033】
本発明の一実施形態によるテトラアリールボレート化合物は、下記化学式1で表され得る。
【0034】
[化学式1]
【化2】
【0035】
[前記化学式1中、
Bは、ホウ素原子であり、
Arは、(C6‐C30)アリールであり、前記Arのアリールは、(C1‐C30)アルキル、ハロ(C1‐C30)アルキルおよび(C6‐C30)アリール(C1‐C30)アルキルなどから選択される一つ以上の置換体でさらに置換されてもよく、
Arは、フッ素置換の(C6‐C30)アリールであり、
は、水素または(C1‐C30)アルキルであり、
は、(C1‐C30)アルキルであるか、前記Rと互いに連結されて環を形成してもよく、前記環は、(C1‐C30)アルキル、(C1‐C30)アルコキシ、ハロ(C1‐C30)アルキル、(C3‐C30)シクロアルキル、(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリール、(C6‐C30)アリール、(C6‐C30)アリールオキシ、(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリールオキシ、(C6‐C30)アリール(C1‐C30)アルキルおよび((C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリール)(C1‐C30)アルキルなどから選択される一つ以上の置換体でさらに置換されてもよい。]
【0036】
上述のとおり、前記テトラアリールボレート化合物は、エチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体の製造のための主触媒の活性化のための触媒活性化剤の用途を有する。具体的には、前記テトラアリールボレート化合物は、アルキリデンアニリニウム構造のカチオンを含むことによって、改善した脂肪族炭化水素系溶媒に対する溶解度を具現する。これにより、エチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体の製造のための脂肪族炭化水素系溶媒下での溶液重合条件、特に、連続溶液重合条件の下で向上した触媒活性を示す。
【0037】
具体的には、前記テトラアリールボレート化合物は、下記化学式2または化学式3で表され得る。
【0038】
[化学式2]
【化3】
【0039】
[前記化学式2中、
前記B、RおよびRは、請求項1の化学式1での定義と同一であり、
11~R15は、それぞれ独立して、水素、(C1‐C30)アルキル、ハロ(C1‐C30)アルキルまたは(C6‐C30)アリール(C1‐C30)アルキルである。]
【0040】
[化学式3]
【化4】
【0041】
[前記化学式3中、
前記Bは、請求項1の化学式1での定義と同一であり、
11~R15は、それぞれ独立して、水素、(C1‐C30)アルキル、ハロ(C1‐C30)アルキルまたは(C6‐C30)アリール(C1‐C30)アルキルであり、
nは、2~6から選択される整数であり、
21およびR22は、それぞれ独立して、水素、(C1‐C30)アルキル、(C1‐C30)アルコキシ、ハロ(C1‐C30)アルキル、(C3‐C30)シクロアルキル、(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリール、(C6‐C30)アリール、(C6‐C30)アリールオキシ、(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリールオキシ、(C6‐C30)アリール(C1‐C30)アルキルまたは((C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリール)(C1‐C30)アルキルである。]
【0042】
より具体的には、前記化学式1中、前記RおよびRから選択される少なくとも一つ以上は、長鎖のアルキル、すなわち、(C8‐C30)アルキルであってもよい。
【0043】
一例として、前記化学式2中、前記R11~R15は、それぞれ独立して、水素または(C1‐C30)アルキルであり、前記RおよびRから選択される少なくとも一つ以上は、長鎖のアルキルであるが、前記Rは、水素または(C8‐C30)アルキルであり、前記Rは、(C1‐C30)アルキルであってもよい。
【0044】
一例として、前記化学式2中、前記R11~R15は、それぞれ独立して、水素または(C1‐C7)アルキルであり、前記RおよびRから選択される少なくとも一つ以上は、長鎖のアルキルであるが、前記Rは、水素または(C8‐C30)アルキルであり、前記Rは、(C8‐C30)アルキルであってもよい。
【0045】
一例として、前記化学式2中、前記R11~R15は、それぞれ独立して、水素、メチルまたはエチルであり、前記RおよびRから選択される少なくとも一つ以上は、長鎖のアルキルであるが、前記Rは、水素または(C8‐C30)アルキルであり、前記Rは、(C8‐C30)アルキルであってもよい。
【0046】
一例として、前記化学式3中、前記R11~R15は、それぞれ独立して、水素または(C1‐C30)アルキルであり、前記nは、2~4から選択される整数であり、前記R21およびR22は、それぞれ独立して、水素または(C8‐C30)アルキルであってもよい。
【0047】
一例として、前記化学式3中、前記R11~R15は、それぞれ独立して、水素または(C1‐C7)アルキルであり、前記nは、3または4の整数であり、前記R21およびR22は、それぞれ独立して、水素または(C8‐C30)アルキルであってもよい。
【0048】
一例として、前記化学式3中、前記R11~R15は、それぞれ独立して、水素または(C1‐C7)アルキルであり、前記nは、3または4の整数であり、前記R21およびR22は、それぞれ独立して、水素または(C1‐C7)アルキルであってもよい。
【0049】
一例として、前記化学式3中、前記R11~R15は、それぞれ独立して、水素、メチルまたはエチルであり、前記nは、3または4の整数であり、前記R21およびR22は、それぞれ独立して、水素または(C8‐C30)アルキルであってもよい。
【0050】
最も具体的には、前記化学式1中、前記RおよびRは、それぞれ独立して、(C12‐C30)アルキルであってもよい。
【0051】
一例として、前記化学式2中、前記R11~R15は、それぞれ独立して、水素、メチルまたはエチルであり、前記RおよびRは、(C12‐C30)アルキルであってもよい。
【0052】
一例として、前記化学式3中、前記R11~R15は、それぞれ独立して、水素、メチルまたはエチルであり、前記nは、3または4の整数であり、前記R21およびR22は、それぞれ独立して、水素または(C12‐C30)アルキルであり、前記R21およびR22の少なくとも一つ以上は、(C12‐C30)アルキルであってもよい。
【0053】
一例として、前記化学式1中、前記Rは、(C15‐C25)であり、前記Rは、(C16‐C26)アルキルであってもよい。
【0054】
一例として、前記化学式1中、前記Rは、(C15‐C17)であり、前記Rは、(C16‐C18)アルキルであってもよい。
【0055】
また、前記化学式1で表されるテトラアリールボレート化合物の具体的な一様態の化合物は、N‐メチル‐N‐メチリデンアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4‐メチル‐N‐オクタデシル‐N‐オクタデシリデンアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N‐ブチル‐N‐ブチリデンアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N‐テトラデシル‐N‐テトラデシリデンアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N‐ヘキサデシル‐N‐ヘキサデシリデンアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートおよびN‐オクタデシル‐N‐オクタデシリデンアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0056】
好ましくは、N‐テトラデシル‐N‐テトラデシリデンアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N‐ヘキサデシル‐N‐ヘキサデシリデンアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4‐メチル‐N‐オクタデシル‐N‐オクタデシリデンアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートおよびN‐オクタデシル‐N‐オクタデシリデンアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが挙げられ、より好ましくは、N‐テトラデシル‐N‐テトラデシリデンアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N‐ヘキサデシル‐N‐ヘキサデシリデンアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートおよびN‐オクタデシル‐N‐オクタデシリデンアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが挙げられる。
【0057】
本発明の一実施形態によるテトラアリールボレート化合物は、エチレン単独重合体およびエチレンとα‐オレフィンの共重合体などから選択されるエチレン系共重合体を製造するための触媒活性化剤として使用され得る。前記テトラアリールボレート化合物は、芳香族炭化水素系溶媒は言うまでもなく、脂肪族炭化水素系溶媒に対する溶解度が著しく高い。さらに、脂肪族炭化水素系溶媒下でも均一に溶解して使用され得ることから、より向上した触媒活性の具現は言うまでもなく、生産工程の安定した運転が可能である。
【0058】
また、100℃以上の高温で実施される溶液重合法に適用する場合であっても、安定した触媒活性で、高分子量の重合体の製造に有利であり得る。
【0059】
また、本発明の一実施形態によるテトラアリールボレート化合物は、炭化水素系溶媒下、下記化学式4で表される化合物と下記化学式5で表される化合物を反応させて製造され得る。この際、前記テトラアリールボレート化合物は、分離精製なしに触媒活性化剤として使用され得る。
【0060】
[化学式1]
【化5】
【0061】
[化学式4]
【化6】
【0062】
[化学式5]
【化7】
【0063】
[前記化学式1、化学式4および化学式5中、
Bは、ホウ素原子であり、
Arは、(C6‐C30)アリールであり、前記Arのアリールは、(C1‐C30)アルキル、ハロ(C1‐C30)アルキルおよび(C6‐C30)アリール(C1‐C30)アルキルなどから選択される一つ以上の置換体でさらに置換されてもよく、
Arは、フッ素置換の(C6‐C30)アリールであり、
は、水素または(C1‐C30)アルキルであり、
Rは、(C1‐C30)アルキルであるが、前記Rの炭素数は、前記Rの炭素数より一つ大きい炭素数を有し、前記Rが水素の場合、その炭素数は0であり、
は、(C1‐C30)アルキルであるか、前記Rと連結されて環を形成してもよく、前記環は、(C1‐C30)アルキル、(C1‐C30)アルコキシ、ハロ(C1‐C30)アルキル、(C3‐C30)シクロアルキル、(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリール、(C6‐C30)アリール、(C6‐C30)アリールオキシ、(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリールオキシ、(C6‐C30)アリール(C1‐C30)アルキルおよび((C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリール)(C1‐C30)アルキルなどから選択される一つ以上の置換体でさらに置換されてもよい。]
【0064】
一例として、前記炭化水素系溶媒は、n‐ペンタン、i‐ペンタン、n‐ヘキサン、i‐ヘキサン、n‐ヘプタン、i‐ヘプタン、n‐オクタン、i‐オクタン、n‐ノナン、i‐ノナン、n‐デカンおよびi‐デカンなどから選択される直鎖状脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、p‐メンタンおよびデカヒドロナフタレンなどから選択される環状脂肪族炭化水素系溶媒;およびベンゼン、トルエンおよびキシレンなどから選択される芳香族炭化水素系溶媒;などから選択される一つまたは二つ以上の混合溶媒であってもよい。
【0065】
一例として、前記反応は、0~50℃の温度条件下で行われ得る。
【0066】
一例として、前記反応は、10分~120分間行われ得るが、反応中に分散またはスラリー状態の溶液が完全に溶解される時点であれば制限されない。
【0067】
上述のように、本発明の一実施形態によるテトラアリールボレート化合物は、単一活性点触媒を活性化することに卓越した効果を発揮する。具体的には、前記単一活性点触媒は、メタロセン触媒であり得る。
【0068】
一例として、前記単一活性点触媒は、周期表上、第4族の遷移金属を含んでもよく、これら遷移金属は+2、+3または+4形式酸化状態で存在することもできる。
【0069】
一例として、前記単一活性点触媒に適するリガンドは、アニオン性非局在されたπ‐結合されたグループを含んでもよく、前記アニオン性非局在されたπ‐結合された基は、シクロペンタジエニル誘導体、インデニル誘導体およびフルオレニル誘導体などから選択される環系化合物を含んでもよい。
【0070】
具体的には、本発明の一実施形態によるエチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体製造用の遷移金属触媒組成物は、上述のテトラアリールボレート化合物;第4族遷移金属を含む単一活性点触媒;およびアルミニウム化合物;などを含んでもよい。
【0071】
より具体的には、前記単一活性点触媒は、下記化学式Aで表され得る。これは、窒素含有置換体が導入されたインデニル(indenyl)基に基づく遷移金属化合物であり、中心金属として、周期表上の第4族遷移金属が堅い(rigid)平面構造を有し、且つ電子が豊富で広く非局在化されているとともに、窒素含有置換体が導入されたインデンまたはその誘導体基と、シリル基で置換されたアミド基とによって連結された構造を有する。特に、窒素含有置換体が導入されたインデンまたはその誘導体基とアミド基を連結するシリル基に、一般的な炭化水素系溶媒に対して溶解度の向上と高温活性の大きな増加と部分立体異性体の欠点である広い分子量分布ではなく、狭い分子量分布を誘導するアルキル基またはアルケニル基とアリール基を同時に含む構造的特徴を有しており、本発明による触媒活性化剤または触媒活性化剤組成物と組み合わされて、上昇した触媒効率および高分子量のエチレン系共重合体を高温で取得するのに有利である。
【0072】
[化学式A]
【化8】
[前記化学式A中、
Mは、周期表上の第4族の遷移金属であり、
は、(C1‐C30)アルキルまたは(C2‐C20)アルケニルであり、前記Rのアルキルまたはアルケニルは、ハロゲン、(C6‐C30)アリールおよび(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリールなどから選択される一つ以上の置換体でさらに置換されてもよく、
Arは、(C6‐C30)アリールであり、前記Arのアリールは、(C1‐C30)アルキル、ハロ(C1‐C30)アルキルおよび(C6‐C30)アリール(C1‐C30)アルキルなどから選択される一つ以上の置換体でさらに置換されてもよく、
~Rは、それぞれ独立して、水素、(C1‐C30)アルキル、(C1‐C30)アルコキシ、ハロ(C1‐C30)アルキル、(C3‐C20)シクロアルキル、(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリール、(C6‐C30)アリール、(C6‐C30)アリールオキシ、(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリールオキシ、(C6‐C30)アリール(C1‐C30)アルキルまたは((C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリール)(C1‐C30)アルキルであるか、前記R~Rは、隣接した置換体と連結されて縮合環を形成してもよく、前記縮合環は、(C1‐C30)アルキル、(C1‐C30)アルコキシ、ハロ(C1‐C30)アルキル、(C3‐C20)シクロアルキル、(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリール、(C6‐C30)アリール、(C6‐C30)アリールオキシ、(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリールオキシ、(C6‐C30)アリール(C1‐C30)アルキルおよび((C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリール)(C1‐C30)アルキルなどから選択される一つ以上の置換体でさらに置換されてもよく、
は、(C1‐C30)アルキル、(C3‐C20)シクロアルキルまたは(C6‐C30)アリール(C1‐C30)アルキルであり、
およびRは、それぞれ独立して、(C1‐C30)アルキル、ハロ(C1‐C30)アルキル、(C3‐C20)シクロアルキル、(C6‐C30)アリール、(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリール、(C1‐C30)アルコキシ(C6‐C30)アリールまたは(C6‐C30)アリール(C1‐C30)アルキルであるか、前記RとRは、互いに連結されて環を形成してもよく、前記環は、(C1‐C30)アルキル、ハロ(C1‐C30)アルキル、(C6‐C30)アリール(C1‐C30)アルキル、(C1‐C30)アルコキシ、(C3‐C20)シクロアルキル、(C6‐C20)アリール、(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリールおよび(C6‐C20)アリールオキシなどから選択される一つ以上の置換体でさらに置換されてもよく、
は、水素または(C1‐C30)アルキルであり、
およびXは、それぞれ独立して、ハロゲン、(C1‐C30)アルキル、(C2‐C20)アルケニル、(C3‐C20)シクロアルキル、(C6‐C30)アリール、(C6‐C30)アリール(C1‐C30)アルキル、((C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリール)(C1‐C30)アルキル、(C1‐C30)アルコキシ、(C6‐C30)アリールオキシ、(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリールオキシ、(C1‐C30)アルコキシ(C6‐C30)アリールオキシ、‐OSiR、‐SR、‐NR、‐PRまたは(C1‐C30)アルキリデンであり、
前記R~Rは、それぞれ独立して、(C1‐C30)アルキル、(C6‐C20)アリール、(C6‐C20)アリール(C1‐C30)アルキル、(C1‐C30)アルキル(C6‐C20)アリールまたは(C3‐C20)シクロアルキルであり、
~Rは、それぞれ独立して、(C1‐C30)アルキル、(C6‐C20)アリール、(C6‐C20)アリール(C1‐C30)アルキル、(C1‐C30)アルキル(C6‐C20)アリール、(C3‐C20)シクロアルキル、トリ(C1‐C30)アルキルシリルまたはトリ(C6‐C20)アリールシリルであり、
ただし、XまたはXのうち一つが(C1‐C30)アルキリデンである場合、残りの一つは無視される。]
【0073】
本発明のインデン系遷移金属化合物は、窒素含有置換体が導入されたインデニル基とアミド基を連結するシリル基にアルキル基またはアルケニル基とアリール基を同時に含む構造的特徴を有する単一活性点触媒であり、活性および溶解度の面で有利なアルキル基またはアルケニル基と高級アルファ‐オレフィンの注入性が良好なアリール基の利点を同時に有する構造的特徴を有する。また、シリル基にアルキル基またはアルケニル基とアリール基を同時に含む構造的特徴に2種の部分立体異性体が存在することをH‐NMRで確認した。本発明で開発した触媒は、1:1~1:8の比率で部分立体異性体が存在するにもかかわらず分子量分布の狭い高分子が製造され、高温でも高い活性を示すなどの特性を示し、上述の本発明の触媒活性化剤または触媒活性化剤組成物と組み合わされて、さらなるシナジーを示す。従来、インデニル基とアミド基がシリル基によって連結された部分立体異性体を有する触媒の場合、分子量分布が広い特徴を有するとすでに報告されている。しかし、本発明のインデン系遷移金属化合物と触媒活性化剤または触媒活性化剤組成物を組み合わせて使用する場合、分子量分布がより狭いエチレン系共重合体を高温で高効率で取得することができた。特に、上述の触媒活性化剤または触媒活性化剤組成物との様々な組み合わせによって、重合制御を難しくする異性体の生成を抑制し、分子量分布が狭いとともに組成分布が狭い特性を有する高分子量のエチレン系共重合体を得ることもでき、分子量分布が狭いとともに化学組成分布(Chemical Composition Distribution)は広い特性を有するエチレン系共重合体を得ることができ、商業的に価値が大きいと言える。
【0074】
本発明の一実施形態によるエチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体製造用の遷移金属触媒組成物において、前記化学式Aのインデン系遷移金属化合物は、下記化学式Bで表され得る。
【0075】
[化学式B]
【化9】
【0076】
[前記化学式B中、
M、R、R、R、R、XおよびXは、前記化学式Aでの定義と同一であり、
~Rは、それぞれ独立して、水素、(C1‐C30)アルキル、(C1‐C30)アルコキシ、ハロ(C1‐C30)アルキル、(C3‐C20)シクロアルキル、(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリール、(C6‐C30)アリール、(C6‐C30)アリールオキシ、(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリールオキシ、(C6‐C30)アリール(C1‐C30)アルキルまたは((C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリール)(C1‐C30)アルキルであるか、前記R~Rは、隣接した置換体と芳香族環を含むか含まない(C3‐C7)アルキレン、(C3‐C7)アルケニレンまたは(C4‐C7)アルカジエニレンで連結されて縮合環を形成してもよく、前記縮合環は、(C1‐C30)アルキル、(C1‐C30)アルコキシ、ハロ(C1‐C30)アルキル、(C3‐C20)シクロアルキル、(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリール、(C6‐C30)アリール、(C6‐C30)アリールオキシ、(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリールオキシ、(C6‐C30)アリール(C1‐C30)アルキルおよび((C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリール)(C1‐C30)アルキルなどから選択される一つ以上の置換体でさらに置換されてもよく、
11~R15は、それぞれ独立して、水素、(C1‐C30)アルキル、ハロ(C1‐C30)アルキルまたは(C6‐C30)アリール(C1‐C30)アルキルである。]
【0077】
本発明の一実施形態によるエチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体製造用の遷移金属触媒組成物において、前記化学式Aのインデン系遷移金属化合物は、前記Mが、周期表上の第4族の遷移金属であり、具体的には、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)またはハフニウム(Hf)などであってもよく、より具体的には、チタン(Ti)またはジルコニウム(Zr)であってもよい。
【0078】
前記(C1‐C30)アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、n‐プロピル基、イソプロピル基、n‐ブチル基、イソブチル基、sec‐ブチル基、tert‐ブチル基、n‐ペンチル基、ネオペンチル基、アミル基、n‐ヘキシル基、n‐オクチル基、n‐デシル基、n‐ドデシル基またはn‐ペンタデシル基であり、前記(C2‐C20)アルケニル基は、例えば、ビニル基またはアリール基であり、前記(C3‐C20)シクロアルキル基は、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基またはシクロドデシル基であり、前記(C6‐C30)アリール基または(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリール基は、例えば、フェニル基、2‐トリル基、3‐トリル基、4‐トリル基、2,3‐キシリル基、2,4‐キシリル基、2,5‐キシリル基、2,6‐キシリル基、3,4‐キシリル基、3,5‐キシリル基、2,3,4‐トリメチルフェニル基、2,3,5‐トリメチルフェニル基、2,3,6‐トリメチルフェニル基、2,4,6‐トリメチルフェニル基、3,4,5‐トリメチルフェニル基、2,3,4,5‐テトラメチルフェニル基、2,3,4,6‐テトラメチルフェニル基、2,3,5,6‐テトラメチルフェニル基、ペンタメチルフェニル基、エチルフェニル基、n‐プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、n‐ブチルフェニル基、sec‐ブチルフェニル基、tert‐ブチルフェニル基、n‐ペンチルフェニル基、ネオペンチルフェニル基、n‐ヘキシルフェニル基、n‐オクチルフェニル基、n‐デシルフェニル基、n‐ドデシルフェニル基、n‐テトラデシルフェニル基、ビフェニル(biphenyl)基、フルオレニル基、トリフェニル基、ナフチル基またはアントラセニル基であり、前記(C6‐C30)アリール(C1‐C10)アルキル基または((C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリール)(C1‐C30)アルキル基は、例えば、ベンジル基、(2‐メチルフェニル)メチル基、(3‐メチルフェニル)メチル基、(4‐メチルフェニル)メチル基、(2,3‐ジメチルフェニル)メチル基、(2,4‐ジメチルフェニル)メチル基、(2,5‐ジメチルフェニル)メチル基、(2,6‐ジメチルフェニル)メチル基、(3,4‐ジメチルフェニル)メチル基、(4,6‐ジメチルフェニル)メチル基、(2,3,4‐トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,5‐トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,6‐トリメチル‐フェニル)メチル基、(3,4,5‐トリメチルフェニル)メチル基、(2,4,6‐トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,4,5‐テトラメチルフェニル)メチル基、(2,3,4,6‐テトラメチルフェニル)メチル基、(2,3,5,6‐テトラメチルフェニル)メチル基、(ペンタメチルフェニル)メチル基、(エチルフェニル)メチル基、(n‐プロピルフェニル)メチル基、(イソプロピルフェニル)メチル基、(n‐ブチルフェニル)メチル基、(sec‐ブチルフェニル)メチル基、(tert‐ブチルフェニル)メチル基、(n‐ペンチルフェニル)メチル基、(ネオペンチルフェニル)メチル基、(n‐ヘキシルフェニル)メチル基、(n‐オクチルフェニル)メチル基、(n‐デシルフェニル)メチル基、(n‐デシルフェニル)メチル基、(n‐テトラデシルフェニル)メチル基、ナフチルメチル基またはアントラセニルメチル基であり、前記(C1‐C30)アルコキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n‐プロポキシ基、イソプロポキシ基、n‐ブトキシ基、sec‐ブトキシ基、tert‐ブトキシ基、n‐ペントキシ基、ネオペントキシ基、n‐ヘキソキシ基、n‐オクトキシ基、n‐ドデソキシ基、n‐ペンタデソキシ基またはn‐エイコソキシ基が挙げられる。
【0079】
本発明の一実施形態によるエチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体製造用の遷移金属触媒組成物において、前記化学式Bのインデン系遷移金属化合物において、前記RおよびRは、それぞれ独立して、(C1‐C30)アルキル、(C3‐C20)シクロアルキルまたは(C6‐C30)アリールであるか、前記RとRは、芳香族環を含むか含まない(C3‐C7)アルキレンで連結されて環を形成してもよく、前記形成された環は、(C1‐C30)アルキル、(C6‐C30)アリール(C1‐C30)アルキル、(C1‐C30)アルコキシ、(C3‐C20)シクロアルキル、(C6‐C20)アリール、(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリールおよび(C6‐C20)アリールオキシなどからなる群から選択される一つ以上でさらに置換されてもよい。
【0080】
本発明の一実施形態によるエチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体製造用の遷移金属触媒組成物において、前記化学式Aのインデン系遷移金属化合物において、前記Rは、(C1‐C30)アルキル、(C2‐C20)アルケニルまたは(C6‐C30)アリール(C1‐C30)アルキルであり得、Arは、(C6‐C30)アリールまたは(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリールであってもよく、前記R~Rは、それぞれ独立して、水素、(C1‐C30)アルキル、(C1‐C30)アルコキシ、(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリール、(C6‐C30)アリール、(C6‐C30)アリールオキシ、(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリールオキシまたは(C6‐C30)アリール(C1‐C30)アルキルであるか、前記R~Rは、隣接した置換体と芳香族環を含むか含まない(C3‐C7)アルキレン、(C3‐C7)アルケニレンまたは(C4‐C7)アルカジエニレンで連結されて縮合環を形成してもよく、前記縮合環は、(C1‐C30)アルキル、(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリール、(C6‐C30)アリール、(C6‐C30)アリール(C1‐C30)アルキルおよび((C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリール)(C1‐C30)アルキルなどから選択される一つ以上の置換体でさらに置換されてもよく、前記Rは、(C1‐C30)アルキル、(C3‐C20)シクロアルキルまたは(C6‐C30)アリール(C1‐C30)アルキルであり、前記RおよびRは、それぞれ独立して、(C1‐C30)アルキル、(C3‐C20)シクロアルキル、(C6‐C30)アリール、(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリール、(C1‐C30)アルコキシ(C6‐C30)アリールまたは(C6‐C30)アリール(C1‐C30)アルキルであるか、前記RとRは、芳香族環を含むか含まない(C3‐C7)アルキレンで連結されて環を形成してもよく、前記環は、(C1‐C30)アルキル、(C6‐C30)アリール(C1‐C30)アルキル、(C1‐C30)アルコキシ、(C3‐C20)シクロアルキル、(C6‐C20)アリール、(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリールおよび(C6‐C20)アリールオキシなどから選択される一つ以上の置換体でさらに置換されてもよく、前記Rは、水素または(C1‐C30)アルキルであってもよい。
【0081】
本発明の一実施形態によるエチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体製造用の遷移金属触媒組成物において、前記化学式Aのインデン系遷移金属化合物において、前記Rは、より具体的には、メチル基、エチル基、n‐プロピル基、イソプロピル基、n‐ブチル基、ビニル基、アリール基またはベンジル基であってもよく、前記Arは、より具体的には、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、トリル基、トリメチルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、オクチルフェニル基、デシルフェニル基、ドデシルフェニル基またはテトラデシルフェニル基であってもよく、前記R~Rは、それぞれ独立して、水素、メチル基、エチル基、n‐プロピル基、イソプロピル基、n‐ブチル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、2‐イソプロピルフェニル基、3,5‐キシリル基、2,4,6‐トリメチルフェニル基、ベンジル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、フェノキシ、4‐tert‐ブチルフェノキシ基またはナフトキシ基であるか、前記R~Rは、隣接した置換体と
【化10】
または
【化11】
で連結されて縮合環を形成してもよく、前記R21~R24は、それぞれ独立して、水素、メチル基、エチル基、n‐プロピル基、イソプロピル基、n‐ブチル基、イソブチル基、2‐メチルブチル基、sec‐ブチル基、tert‐ブチル基、n‐ペンチル基、ネオペンチル基、アミル基、n‐ヘキシル基、n‐オクチル基、n‐デシル基、n‐ドデシル基、n‐ペンタデシル基、フェニル基、2‐トリル基、3‐トリル基、4‐トリル基、2,3‐キシリル基、2,4‐キシリル基、2,5‐キシリル基、2,6‐キシリル基、3,4‐キシリル基、3,5‐キシリル基、2,3,4‐トリメチルフェニル基、2,3,5‐トリメチルフェニル基、2,3,6‐トリメチルフェニル基、2,4,6‐トリメチルフェニル基、3,4,5‐トリメチルフェニル基、2,3,4,5‐テトラメチルフェニル基、2,3,4,6‐テトラメチルフェニル基、2,3,5,6‐テトラメチルフェニル基、ペンタメチルフェニル基、エチルフェニル基、n‐プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、n‐ブチルフェニル基、sec‐ブチルフェニル基、tert‐ブチルフェニル基、n‐ペンチルフェニル基、ネオペンチルフェニル基、n‐ヘキシルフェニル基、n‐オクチルフェニル基、n‐デシルフェニル基、n‐ドデシルフェニル基、n‐テトラデシルフェニル基、ビフェニル基、フルオレニル基、トリフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ベンジル基、(2‐メチルフェニル)メチル基、(3‐メチルフェニル)メチル基、(4‐メチルフェニル)メチル基、(2,3‐ジメチルフェニル)メチル基、(2,4‐ジメチルフェニル)メチル基、(2,5‐ジメチルフェニル)メチル基、(2,6‐ジメチルフェニル)メチル基、(3,4‐ジメチルフェニル)メチル基、(4,6‐ジメチルフェニル)メチル基、(2,3,4‐トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,5‐トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,6‐トリメチルフェニル)メチル基、(3,4,5‐トリメチルフェニル)メチル基、(2,4,6‐トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,4,5‐テトラメチルフェニル)メチル基、(2,3,4,6‐テトラメチルフェニル)メチル基、(2,3,5,6‐テトラメチルフェニル)メチル基、(ペンタメチルフェニル)メチル基、(エチルフェニル)メチル基、(n‐プロピルフェニル)メチル基、(イソプロピルフェニル)メチル基、(n‐ブチルフェニル)メチル基、(sec‐ブチルフェニル)メチル基、(tert‐ブチルフェニル)メチル基、(n‐ペンチルフェニル)メチル基、(ネオペンチルフェニル)メチル基、(n‐ヘキシルフェニル)メチル基、(n‐オクチルフェニル)メチル基、(n‐デシルフェニル)メチル基、(n‐デシルフェニル)メチル基、(n‐テトラデシルフェニル)メチル基、ナフチルメチル基またはアントラセニルメチル基であってもよく、前記Rは、イソプロピル基、n‐ブチル基、イソブチル基、2‐メチルブチル基、sec‐ブチル基、tert‐ブチル基、n‐ペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、ベンジル基またはジフェニルメチル基であってもよく、前記RおよびRは、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、n‐プロピル基、イソプロピル基、n‐ブチル基、イソブチル基、2‐メチルブチル基、sec‐ブチル基、tert‐ブチル基、n‐ペンチル基、ネオペンチル基、アミル基、n‐ヘキシル基、n‐オクチル基、n‐デシル基、n‐ドデシル基、n‐ペンタデシル基、フェニル基、2‐トリル基、3‐トリル基、4‐トリル基、2,3‐キシリル基、2,4‐キシリル基、2,5‐キシリル基、2,6‐キシリル基、3,4‐キシリル基、3,5‐キシリル基、2,3,4‐トリメチルフェニル基、2,3,5‐トリメチルフェニル基、2,3,6‐トリメチルフェニル基、2,4,6‐トリメチルフェニル基、3,4,5‐トリメチルフェニル基、2,3,4,5‐テトラメチルフェニル基、2,3,4,6‐テトラメチルフェニル基、2,3,5,6‐テトラメチルフェニル基、ペンタメチルフェニル基、エチルフェニル基、n‐プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、n‐ブチルフェニル基、sec‐ブチルフェニル基、tert‐ブチルフェニル基、n‐ペンチルフェニル基、ネオペンチルフェニル基、n‐ヘキシルフェニル基、n‐オクチルフェニル基、n‐デシルフェニル基、n‐ドデシルフェニル基、n‐テトラデシルフェニル基、ビフェニル、フルオレニル、トリフェニル、ナフチル基、アントラセニル基、ベンジル基、ナフチルメチル基、アントラセニルメチル基または
【化12】
【化13】
または
【化14】
で連結されて環を形成してもよく、前記R31~R35、R41およびR42は、それぞれ独立して、水素、メチル基、エチル基、n‐プロピル基、イソプロピル基、n‐ブチル基、イソブチル基、2‐メチルブチル基、sec‐ブチル基、tert‐ブチル基、n‐ペンチル基、ネオペンチル基、アミル基、n‐ヘキシル基、n‐オクチル基、n‐デシル基、n‐ドデシル基、n‐ペンタデシル基、フェニル基、2‐トリル基、3‐トリル基、4‐トリル基、2,3‐キシリル基、2,4‐キシリル基、2,5‐キシリル基、2,6‐キシリル基、3,4‐キシリル基、3,5‐キシリル基、2,3,4‐トリメチルフェニル基、2,3,5‐トリメチルフェニル基、2,3,6‐トリメチルフェニル基、2,4,6‐トリメチルフェニル基、3,4,5‐トリメチルフェニル基、2,3,4,5‐テトラメチルフェニル基、2,3,4,6‐テトラメチルフェニル基、2,3,5,6‐テトラメチルフェニル基、ペンタメチルフェニル基、エチルフェニル基、n‐プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、n‐ブチルフェニル基、sec‐ブチルフェニル基、tert‐ブチルフェニル基、n‐ペンチルフェニル基、ネオペンチルフェニル基、n‐ヘキシルフェニル基、n‐オクチルフェニル基、n‐デシルフェニル基、n‐ドデシルフェニル基、n‐テトラデシルフェニル基、ビフェニル基、フルオレニル基、トリフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ベンジル基、ナフチルメチル基またはアントラセニルメチル基であってもよく、前記mおよびnは、それぞれ独立して、1~4の整数であり、前記Rは、水素、メチル基、エチル基、n‐プロピル基、イソプロピル基、n‐ブチル基、イソブチル基、2‐メチルブチル基またはsec‐ブチル基であってもよい。
【0082】
前記XおよびXの定義のうち、ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子で例示され得、前記(C1‐C30)アルキル基は、メチル基、エチル基、n‐プロピル基、イソプロピル基、n‐ブチル基、sec‐ブチル基、tert‐ブチル基、n‐ペンチル基、ネオペンチル基、アミル基、n‐ヘキシル基、n‐オクチル基、n‐デシル基、n‐ドデシル基、n‐ペンタデシル基またはn‐エイコシル基に例示され得、前記(C3‐C20)シクロアルキル基は、シクロプロパン基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロロヘキシル基、シクロロヘプチル基またはアダマンチル基で例示され得、前記(C6‐C30)アリール基は、フェニル基またはナフチル基で例示され得、前記(C6‐C30)アリール(C1‐C30)アルキル基または((C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリール)(C1‐C30)アルキル基は、ベンジル基、(2‐メチルフェニル)メチル基、(3‐メチルフェニル)メチル基、(4‐メチルフェニル)メチル基、(2,3‐ジメチルフェニル)メチル基、(2,4‐ジメチルフェニル)メチル基、(2,5‐ジメチルフェニル)メチル基、(2,6‐ジメチルフェニル)メチル基、(3,4‐ジメチルフェニル)メチル基、(4,6‐ジメチルフェニル)メチル基、(2,3,4‐トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,5‐トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,6‐トリメチル‐フェニル)メチル基、(3,4,5‐トリメチルフェニル)メチル基、(2,4,6‐トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,4,5‐テトラメチルフェニル)メチル基、(2,3,4,6‐テトラメチルフェニル)メチル基、(2,3,5,6‐テトラメチルフェニル)メチル基、(ペンタメチルフェニル)メチル基、(エチルフェニル)メチル基、(n‐プロピルフェニル)メチル基、(イソプロピルフェニル)メチル基、(n‐ブチルフェニル)メチル基、(sec‐ブチルフェニル)メチル基、(tert‐ブチルフェニル)メチル基、(n‐ペンチルフェニル)メチル基、(ネオペンチルフェニル)メチル基、(n‐ヘキシルフェニル)メチル基、(n‐オクチルフェニル)メチル基、(n‐デシルフェニル)メチル基、(n‐デシルフェニル)メチル基、(n‐テトラデシルフェニル)メチル基、ナフチルメチル基またはアントラセニルメチル基で例示され得、前記(C1‐C30)アルコキシは、メトキシ基、エトキシ基、n‐プロポキシ基、イソプロポキシ基、n‐ブトキシ基、sec‐ブトキシ基、tert‐ブトキシ基、n‐ペントキシ基、ネオペントキシ基、n‐ヘキソキシ基、n‐オクトキシ基、n‐ドデソキシ基、n‐ペンタデソキシ基またはn‐エイコソキシ基で例示され得、前記(C6‐C30)アリールオキシは、フェノキシ基、4‐tert‐ブチルフェノキシ基または4‐メトキシフェノキシ基で例示され得、前記‐OSiRの例としては、トリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基、トリ‐n‐プロピルシロキシ基、トリイプロピルシロキシ基、トリ‐n‐ブチルシロキシ基、トリ‐sec‐ブチルシロキシ基、トリ‐tert‐ブチルシロキシ基、トリ‐イソブチルシロキシ基、tert‐ブチルジメチルシロキシ基、トリ‐n‐ペンチルシロキシ基、トリ‐n‐ヘキシルシロキシ基またはトリシクロヘキシルシロキシ基が挙げられ、前記‐NRの例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ‐n‐プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジ‐n‐ブチルアミノ基、ジ‐sec‐ブチルアミノ基、ジ‐tert‐ブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、tert‐ブチルイソプロピルアミノ基、ジ‐n‐ヘキシルアミノ基、ジ‐n‐オクチルアミノ基、ジ‐n‐デシルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジベンジルアミノ基、メチルエチルアミノ基、メチルフェニルアミノ基、ベンジルヘキシルアミノ基、ビストリメチルシリルアミノ基またはビス‐tert‐ブチルジメチルシリルアミノ基が挙げられ;前記‐PRの例としてはジメチルホスフィン基、ジエチルホスフィン基、ジ‐n‐プロピルホスフィン基、ジイソプロピルホスフィン基、ジ‐n‐ブチルホスフィン基、ジ‐sec‐ブチルホスフィン基、ジ‐tert‐ブチルホスフィン基、ジイソブチルホスフィン基、tert‐ブチルイソプロピルホスフィン基、ジ‐n‐ヘキシルホスフィン基、ジ‐n‐オクチルホスフィン基、ジ‐n‐デシルホスフィン基、ジフェニルホスフィン基、ジベンジルホスフィン基、メチルエチルホスフィン基、メチルフェニルホスフィン基、ベンジルヘキシルホスフィン基、ビストリメチルシリルホスフィン基またはビス‐tert‐ブチルジメチルシリルホスフィン基が挙げられ、前記‐SRの例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、1‐ブチルチオ基またはイソペンチルチオ基が挙げられる。
【0083】
本発明の一実施形態によるエチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体製造用の遷移金属触媒組成物において、前記化学式Bのインデン系遷移金属化合物において、具体的には、前記XおよびXは、それぞれ独立して、ハロゲン、(C1‐C30)アルキル、(C3‐C20)シクロアルキル、(C6‐C30)アリール、(C6‐C30)アリール(C1‐C30)アルキル、(C1‐C30)アルコキシ、(C6‐C30)アリールオキシ、(C1‐C30)アルキル(C6‐C30)アリールオキシ、‐OSiR、SR、‐NRまたは‐PRであり、前記R~Rは、それぞれ独立して、(C1‐C30)アルキルまたは(C6‐C20)アリールであってもよい。
【0084】
本発明の一実施形態によるエチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体製造用の遷移金属触媒組成物において、前記化学式Bのインデン系遷移金属化合物において、より具体的には、前記XおよびXは、それぞれ独立して、フッ素、塩素、臭素、メチル基、エチル基、イソプロピル基、アミル基、ベンジル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert‐ブトキシ基、フェノキシ基、4‐tert‐ブチルフェノキシ基、トリメチルシロキシ基、tert‐ブチルジメチルシロキシ基、ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジメチルホスフィン基、ジエチルホスフィン基、ジフェニルホスフィン基、エチルチオ基またはイソプロピルチオ基であってもよい。
【0085】
本発明の一実施形態によるエチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体製造用の遷移金属触媒組成物において、前記化学式Bのインデン系遷移金属化合物において、最も具体的には、前記Mは、4価のチタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、前記Rは、(C1‐C30)アルキルであり、前記R11~R15は、それぞれ独立して、水素または(C1‐C30)アルキルであり、前記R~Rは、それぞれ独立して、水素または(C1‐C30)アルキルであるか、前記R~Rは、隣接した置換体と
【化15】
または
【化16】
で連結されて縮合環を形成してもよく、前記R21~R24は、それぞれ独立して、水素または(C1‐C30)アルキルであり、前記RおよびRは、それぞれ独立して、(C1‐C30)アルキルであるか、前記RとRは、
【化17】
【化18】
【化19】
または
【化20】
で連結されて環を形成してもよく、前記R31~R35、R41およびR42は、それぞれ独立して、水素または(C1‐C30)アルキルであり、前記mおよびnは、それぞれ独立して、1~4の整数であり、前記Rは、(C1‐C30)アルキルまたは(C3‐C20)シクロアルキルであり、前記XおよびXは、前記段落に記載のとおりであり、前記R~Rは、それぞれ独立して、(C1‐C30)アルキルまたは(C6‐C20)アリールであり得る。
【0086】
本発明の一実施形態によるエチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体製造用の遷移金属触媒組成物において、前記化学式Bのインデン系遷移金属化合物は、下記構造の化合物から選択されてもよく、これに限定されるものではない。
【0087】
【化21】
【0088】
[前記構造において、
Mは、4価のチタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、
およびXは、それぞれ独立して、フッ素、塩素、臭素、メチル基、エチル基、イソプロピル基、アミル基、ベンジル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert‐ブトキシ基、フェノキシ基、4‐tert‐ブチルフェノキシ基、トリメチルシロキシ基、tert‐ブチルジメチルシロキシ基、ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジメチルホスフィン基、ジエチルホスフィン基、ジフェニルホスフィン基、エチルチオ基またはイソプロピルチオ基である。]
【0089】
一方、本発明によるインデン系遷移金属化合物は、エチレン単独重合体およびエチレンおよびα‐オレフィンの共重合体から選択されるエチレン系重合体の製造に使用される活性触媒成分になるために、好ましくは、遷移金属錯体中のXあるいはXリガンドを抽出して中心金属をカチオン化して、弱い結合力を有する対イオン、すなわち、アニオンとして作用し得るアルミニウム化合物、ホウ素化合物、またはこれらの混合物を助触媒としてともに作用することができ、上述のインデン系遷移金属化合物と、触媒活性化剤または触媒活性化剤組成物と、アルミニウム化合物、ホウ素化合物またはこれらの混合物の様々な組み合わせも本発明の範囲内である。
【0090】
本発明の一実施形態によるエチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体製造用の遷移金属触媒組成物において、前記アルミニウム化合物は、助触媒として使用され得、具体的には、下記化学式Cまたは化学式Dのアルミノキサン化合物;化学式Eの有機アルミニウム化合物;および化学式Fまたは化学式Gの有機アルミニウムオキシド化合物;などから選択される一つまたは二つ以上であってもよい。
【0091】
[化学式C]
(‐Al(R51)‐O‐)
【0092】
[化学式D]
(R51Al‐O‐Al(R51
【0093】
[化学式E]
(R523‐rAl(E)
【0094】
[化学式F]
(R53AlOR54
【0095】
[化学式G]
53Al(OR54
【0096】
[前記化学式C~化学式G中、
51は、(C1‐C30)アルキルであり、好ましくはメチル基またはイソブチル基であり、pは、5~20から選択される整数であり、R52およびR53は、それぞれ独立して、(C1‐C30)アルキルであり、Eは、水素または、ハロゲンであり、rは、0~3から選択される整数であり、R54は、(C1‐C30)アルキルまたは(C6‐C30)アリールである。]
【0097】
前記アルミニウム化合物は、具体的には、アルキルアルミノキサンおよび有機アルミニウムから選択される一つまたは二つ以上の混合物であってもよい。
【0098】
前記アルミニウム化合物として使用可能な具体的な例として、アルキルアルミノキサンとして、メチルアルミノキサン、修飾メチルアルミノキサンまたはテトライソブチルアルミノキサンなどが挙げられ、有機アルミニウムとして、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムおよびトリヘキシルアルミニウムを含むトリアルキルアルミニウム;ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジプロピルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリドおよびジヘキシルアルミニウムクロリドを含むジアルキルアルミニウムクロリド;メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、イソブチルアルミニウムジクロリドおよびヘキシルアルミニウムジクロリドを含むアルキルアルミニウムジクロリド;ジメチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジプロピルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリドおよびジヘキシルアルミニウムヒドリドを含むジアルキルアルミニウムヒドリド;などが挙げられる。
【0099】
前記アルミニウム化合物は、より具体的には、アルキルアルミノキサンおよび有機アルミニウムから選択される一つまたは二つ以上の混合物、最も具体的には、メチルアルミノキサン、修飾メチルアルミノキサン、テトライソブチルアルミノキサン、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムおよびトリイソブチルアルミニウムなどから選択される一つまたは二つ以上の混合物であってもよい。
【0100】
一方、前記アルミニウム化合物は、反応物のうち触媒に毒として作用する不純物を除去する捕捉剤(scavenger)の役割を果たすことができる。
【0101】
本発明の一実施形態によるエチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体製造用の遷移金属触媒組成物において、本発明のインデン系遷移金属化合物と触媒活性化剤であるテトラアリールボレート化合物との比率の好ましい範囲は、遷移金属(M):ホウ素原子(B)のモル比として1:0.1~100であり得る。
【0102】
本発明の一実施形態によるエチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体製造用の遷移金属触媒組成物において、本発明のインデン系遷移金属化合物と助触媒であるアルミニウム化合物との比率の好ましい範囲は、遷移金属(M):アルミニウム原子(Al)の比が、モル比基準で1:1~2,000であり得る。
【0103】
具体的には、本発明の一実施形態によるエチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体製造用の遷移金属触媒組成物において、本発明のインデン系遷移金属化合物と、テトラアリールボレート化合物と、アルミニウム化合物との比率の好ましい範囲は、中心金属(M):ホウ素原子(B):アルミニウム原子(Al)のモル比基準で、1:0.1~100:1~2,000の範囲であり得、好ましくは1:0.5~30:10~1,000の範囲であり得、より好ましくは1:0.5~5:10~500の範囲であり得る。
【0104】
上述の本発明のインデン系遷移金属化合物と、テトラアリールボレート化合物と、アルミニウム化合物との比率が前記範囲から逸脱する場合、助触媒の量が相対的に少なくて遷移金属化合物の活性化が完全に行われることができず、インデン系遷移金属化合物の触媒活性度が十分でないことがあるか、必要以上の助触媒が使用されて生産コストが大幅に増加する問題が発生し得る。前記範囲内で、エチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体を製造するための優れた触媒活性を示すが、反応の純度によって、前記範囲内で比率の範囲が変わることもある。
【0105】
前記目的を達成するための本発明のさらに他の一側面は、前記エチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体製造用の遷移金属触媒組成物を用いて、エチレン単独重合体およびエチレンとα‐オレフィンの共重合体から選択されるエチレン系重合体の製造方法に関する。
【0106】
前記エチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体製造用の遷移金属触媒組成物を用いたエチレン系重合体の製造方法は、適切な有機溶媒の存在下で、前記のインデン系遷移金属触媒、触媒活性化剤、助触媒、およびエチレンまたはα‐オレフィン共単量体を接触させて行われ得る。この際、前記インデン系遷移金属触媒と触媒活性化剤と助触媒成分などは、別に反応器内に投入するか、または各成分を予め混合して反応器に投入してもよく、投入順序、温度または濃度などの混合条件は、特に制限されない。また、前記触媒活性化剤は、前記化学式1で表されるテトラアリールボレート化合物を含んでもよく、前記助触媒は、上述のアルミニウム化合物およびホウ素化合物などから選択される一つまたは二つ以上の混合物であってもよい。
【0107】
本発明の一実施形態によるエチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体の製造方法は、具体的には、a)前記化学式1で表されるテトラアリールボレート化合物および前記テトラアリールボレート化合物の製造ステップで使用された有機溶媒を分離せずに含む触媒活性化剤組成物を注入するステップと、b)第4族遷移金属を含む単一活性点触媒溶液を注入するステップと、c)アルミニウム化合物溶液を注入するステップと、d)エチレンを注入するステップとを含んでもよい。
【0108】
本発明の一実施形態によるエチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体の製造方法は、上述のように、前記テトラアリールボレート化合物は、製造ステップで使用された有機溶媒に溶解された状態で注入されることから、連続溶液工程に有利であり、固形触媒活性化剤からもたらされる欠点を解決することができる。また、トルエンのような芳香族炭化水素系溶媒を使用しないこともある。
【0109】
本発明の一実施形態によるエチレン単独重合体またはエチレンとα‐オレフィンの共重合体の製造方法は、e)α‐オレフィンを注入するステップをさらに含むことができる。
【0110】
前記製造方法に使用され得る好ましい有機溶媒は、脂肪族炭化水素系溶媒であってもよく、(C3‐C20)炭化水素であり、その具体的な例としては、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、ドデカンなどの直鎖状脂肪族炭化水素系溶媒;およびシクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの環状脂肪族炭化水素系溶媒;から選択される一つまたは二つ以上の混合溶媒であってもよい。
【0111】
前記製造方法に使用され得る有機溶媒は、芳香族炭化水素系溶媒であってもよい。
【0112】
具体的には、エチレン単独重合体の製造時には、単量体としてエチレンを単独で使用し、この際、適するエチレンの圧力は、1~1,000気圧であり、さらに好ましくは、6~150気圧であり得る。また、重合反応温度は、25℃~220℃であり、好ましくは70℃~220℃、より好ましくは100℃~220℃で行われることが効果的である。
【0113】
また、エチレンとα‐オレフィンの共重合体の製造時には、エチレンとともに、共単量体として、C3~C18のα‐オレフィン;C4~C20のジオレフィン(Diolefin);C5~C20のシクロオレフィンまたはシクロジオレフィン;スチレンおよびその誘導体;などを使用することができる。また、前記C3~C18のα‐オレフィンの好ましい例としては、プロピレン、1‐ブテン、1‐ペンテン、4‐メチル‐1‐ペンテン、1‐ヘキセン、1‐オクテン、1‐デセン、1‐ドデセン、1‐ヘキサデセンおよび1‐オクタデセンなどから選択され得、前記C4~C20のジオレフィン(Diolefin)の好ましい例としては、1,3‐ブタジエン、1,4‐ペンタジエンおよび2‐メチル‐1,3‐ブタジエンなどから選択され得、前記C5~C20のシクロオレフィンまたはシクロジオレフィンの好ましい例としては、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルネン(Norbonene)、5‐ビニリデン‐2‐ノルボルネン(VNB)、5‐メチレン‐2‐ノルボルネン(MNB)および5‐エチリデン‐2‐ノルボルネン(ENB)などから選択され得る。本発明では、上記のオレフィンを単独重合させるか2種類以上のオレフィンを共重合させることができる。この場合、好ましいエチレンの圧力および重合反応温度は、前記エチレン単独重合体の製造の場合と同一であってもよく、本発明の方法にしたがって製造されたエチレン系共重合体は、普通、エチレン30重量%以上を含み、好ましくは60重量%以上、より好ましくは60~99重量%の範囲で含む。
【0114】
上述のように、本発明の遷移金属触媒組成物を使用すると、エチレンと共単量体としてC3~C10のα‐オレフィンを適切に使用し、0.850g/cc~0.960g/ccの密度を有し、0.001~2,000dg/分の溶融流量を有するエラストマーから高密度ポリエチレン(HDPE)領域まで容易且つ経済的に製造することができる。
【0115】
また、本発明の遷移金属触媒組成物を使用すると、エチレン/プロピレン(EP)エラストマーとエチレン/プロピレン/ジエン(EPDM)エラストマーを良好に製造することができる。特に、高価のジエンの注入が容易で、経済的な方法で、ムーニー粘度(ASTM D1646‐94、ML1+4@125℃)が、1~250、好ましくは10~200に調節されたEPDM製品を容易に製造することができる特徴を有している。
【0116】
また、本発明によるエチレン単独重合体または共重合体の製造時に、分子量を調節するために、水素を分子量調節剤として使用することができ、通常、5,000~1,000,000g/mol範囲の重量平均分子量(Mw)を有する。
【0117】
本発明で提示された遷移金属触媒組成物は、重合反応器内で均一な形態で存在するため、当該重合体の溶融点以上の温度で実施する溶液重合工程に適用することが好ましい。しかし、米国特許第4,752,597号に開示されているように、多孔性金属オキシド支持体に前記インデン系遷移金属化合物、触媒活性化剤および助触媒などを支持させて、非均一触媒系としてスラリー重合や気相重合工程に用いられることもあることは言うまでもない。
【実施例
【0118】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、下記の実施例によって本発明の範疇が本発明を限定するものではない。
【0119】
別に言及される場合以外のすべてのリガンドおよび触媒合成実験は、窒素雰囲気下で標準シュレンク(Schlenk)またはグローブボックス技術を使用して行われ、反応に使用される有機溶媒は、ナトリウム金属とベンゾフェノンの下で還流させて水分を除去し、使用直前に蒸留して使用した。合成された化合物のH‐NMR分析は、常温(25℃)でBrucker 500MHzを使用して行った。
【0120】
重合溶媒であるシクロヘキサンは、分子ふるい5Åの活性アルミナが充填された管を通過させ、高純度の窒素でバブリングさせて、水分、酸素およびその他の触媒毒物質を充分に除去してから使用した。重合された重合体は、以下に説明されている方法にしたがって分析された。
【0121】
1.溶融流動指数(MI)
ASTM D 2839に準じて測定した。
【0122】
2.密度
ASTM D 1505に準じて、密度勾配管を使用して測定した。
【0123】
3.C2転化率(%)分析
未反応のエチレンと標準物質である窒素の含量比をガスクロマトグラフィー(GC)を使用して測定した。
【0124】
4.分子量および分子量分布
PL Mixed‐BX2+preColが装着されたPL210 GPCを用いて、135℃で1.0mL/minの速度で、1,2,3‐卜リクロロベンゼン溶媒下で測定し、PLポリスチレン標準物質を使用して分子量を補正した。
【0125】
(製造例1)錯体1の製造
化合物1‐aの製造
【化22】
【0126】
(製造例1)錯体1の製造
化合物1‐aの製造
【化23】
【0127】
窒素雰囲気で250mL丸底フラスコに化合物1‐a(6.00g、31.4mmol)を入れ、無水テトラヒドロフラン(THF)150mLを入れて撹拌する。N‐tert‐ブチル‐1‐クロロ‐1‐メチル‐1‐フェニルシルランアミン(7.16g、31.4mmol)をテトラヒドロフラン(THF)(50mL)に溶解して添加した後、常温で12時間撹拌した。溶媒を真空で除去し、ノルマルヘキサン(150mL)を添加して溶解した後、乾燥したセライト(celite)を満たしたフィルタで固形分を除去した。溶媒をすべて除去し、粘性のオイルである化合物1‐bを取得した(10.8g、収率91.0%、部分立体異性体比1:1)。
【0128】
1H-NMR (500MHz, C6D6,ppm): δ 0.156(d, 3H), 0.703-0.830(m, 1H), 0.976(d, 9H), 1.501-1.528(m, 4H), 3.089-3.217(m, 4H), 3.501-3.604(m, 1H), 5.259(d, 1H), 7.034-7.652(m, 9H).
【0129】
錯体1の製造
【化24】
【0130】
窒素雰囲気で250mL三口丸底フラスコに化合物1‐b(4.14g、11.0mmol)をジエチルエーテル(50mL)で溶解した後、-78℃に温度を下げた後、1.5Mメチルリチウム(29.4mL、44.2mmol)を徐々に注入した後、常温に温度を上げて6時間撹拌した。また、反応物を-78℃に温度を下げた後、テトラクロロチタン(TiCl)(2.1g、11.0mmol)を無水ノルマルヘキサン(30mL)に希釈した溶液を-78℃で徐々に添加した。常温で3時間撹拌した後、溶媒を真空で除去した。また、ノルマルヘキサン(100mL)に溶解した後、乾燥したセライト(celite)を満たしたフィルタで固形分を除去した。溶媒をすべて除去し、赤色の錯体1を得た(4.14g、収率83.2%;部分立体異性体比~1:3)。
【0131】
1H-NMR (500MHz, C6D6,ppm): δ 0.153(d, 3H), 0.702-0.950(m, 6H), 1.490(d, 9H), 2.951-3.442(m, 8H), 5.360(d, 1H), 6.698-7.890(m, 9H).
【0132】
(実施例1)
N‐オクタデシル‐N‐オクタデシリデンアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[C1735-C=N(C1837)(C)B(C ]の製造
グローブボックス内で1L丸底フラスコにトリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート3g(3.25mmol)を入れた。次に、シクロヘキサン300gを前記丸底フラスコに入れ、常温で撹拌して黄色の懸濁液を製造した。懸濁した溶液に固形分のジオクタデシルアニリン1.95g(3.26mmol)を入れ、常温で30分間撹拌した。懸濁した溶液が清く変化すると、それ以上分離過程を行わず、以降、共重合反応に使用した。
【0133】
1H-NMR (500MHz, CDCl3,ppm): δ 0.86-0.89(m, 6H), 1.22-1.32(m, 62H), 1.44-1.51(m, 2H), 3.43-3.47(m, 2H), 7.05-7.58 (m, 5H), 7.64-7.68 (m, 1H).
【0134】
連続溶液工程によるエチレンと1‐オクテン共重合
【0135】
連続式重合装置を使用して、次のように、エチレンと1‐オクテンとの共重合を行った。単一活性点触媒として前記製造例1で合成された錯体1を使用し、溶媒は、シクロヘキサンを使用し、触媒使用量は、下記表1に記載のとおりである。Ti投入量は、前記製造例1で合成された錯体1の投入量、Al投入量は、トリイソブチルアルミニウムの投入量、触媒活性化剤投入量は、前記実施例1で合成されたN‐オクタデシル‐N‐オクタデシリデンアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの投入量のそれぞれ示す。錯体1は、シクロヘキサンに0.3g/Lの濃度で溶解して注入し、トリイソブチルアルミニウムをシクロヘキサンに3g/Lの濃度で注入し、N‐オクタデシル‐N‐オクタデシリデンアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートをシクロヘキサンに3g/Lの濃度で溶解して注入し、共単量体として1‐オクテンを使用して合成を実施した。反応器のC2転化率は、それぞれの反応条件で一つ重合体で重合する時の反応条件および反応器内の温度勾配から推測することができた。分子量は、反応器温度および1‐オクテン含量の関数で制御し、下記表1にその条件と結果を記載した。
【0136】
(比較例1)
連続溶液工程によるエチレンと1‐オクテン共重合
連続式重合装置を使用して、以下のように、エチレンと1‐オクテンとの共重合を行った。単一活性点触媒として、製造例1で合成された錯体1を使用し、溶媒は、シクロヘキサンを使用し、触媒使用量は、下記表1に記載したとおりである。Ti投入量は、前記製造例1で合成された錯体1の投入量、Al投入量は、トリイソブチルアルミニウムの投入量、触媒活性化剤の投入量は、トリチルテトラキス(ペンタフルオルフェニル)ボレート(TTB)の投入量をそれぞれ示す。錯体1は、トルエンに0.1g/Lの濃度で溶解して注入し、トリイソブチルアルミニウムおよびTTBを下記表1の組成でトルエンに1g/Lの濃度で製造して注入し、共単量体として1‐オクテンを使用して合成を実施した。反応器のC2転化率は、それぞれの反応条件で一つの重合体で重合する時の反応条件および反応器内の温度勾配から推測することができた。分子量は、反応器温度および1‐オクテン含量の関数で制御し、下記表1にその条件と結果を記載した。
【0137】
【表1】
【0138】
前記表1に図示されているように、本発明による触媒組成物を用いて重合した実施例2は、高温(180℃以上)の条件でもエチレンの高い転化率を示しており、低密度と高い分子量を意味する低いMI値を有する高分子量のエチレン系共重合体を容易に製造することができることを確認した。また、実施例2は、比較例1と比較して、少量の触媒の使用にもかかわらず、同等水準のエチレン転化率を示し、本発明による触媒組成物は、単一活性点触媒の活性化に卓越した効果を発揮することを確認した。
【0139】
特に、本発明による新規のテトラアリールボレート化合物は、アルキリデンアニリニウム構造のカチオンの選択にしたがって、芳香族炭化水素系溶媒でなく、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶媒への溶解が可能である。かかる溶解度によって、本発明による遷移金属触媒組成物は、脂肪族炭化水素系溶液を含む溶液型触媒活性化剤を提供することで、商業工程の運転を容易にするだけでなく、固形触媒活性化剤から引き起こされる欠点を解決する手段になることができる。
【0140】
以上で説明したように、本発明の実施例について詳細に記述されているが、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、添付の請求の範囲に定義された本発明の思想および範囲から逸脱することなく、本発明を様々に変形して実施することができる。
【国際調査報告】