(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-29
(54)【発明の名称】癌抗原を標的とするDNAコード化二重特異性T細胞エンゲージャーおよび癌治療薬における使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20220322BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20220322BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20220322BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220322BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220322BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220322BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/13
A61K39/00 H
A61K39/395 N
A61K48/00
A61P35/00
A61P37/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021543429
(86)(22)【出願日】2020-01-30
(85)【翻訳文提出日】2021-07-27
(86)【国際出願番号】 US2020015942
(87)【国際公開番号】W WO2020160310
(87)【国際公開日】2020-08-06
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】516142001
【氏名又は名称】ザ ウィスター インスティテュート オブ アナトミー アンド バイオロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100170852
【氏名又は名称】白樫 依子
(72)【発明者】
【氏名】カー ムツマニ
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ウェイナー
(72)【発明者】
【氏名】アルフレド ペラレス-プチャルト
(72)【発明者】
【氏名】エリザベス デュペレット
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZB021
4C084ZB022
4C084ZB051
4C084ZB052
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB261
4C084ZB271
4C085AA02
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
(57)【要約】
二重特異性免疫細胞エンゲージ抗体(DICE)をコードする組換え核酸配列、二重特異性T細胞エンゲージ(DBiTE)抗体をコードする組換え核酸配列、それらの断片、それらのバリアント、またはそれらの組み合わせを含む組成物が本明細書に開示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の合成DNAコード化二重特異性免疫細胞エンゲージャーをコードする核酸分子であって、前記より合成DNAコード化二重特異性免疫細胞エンゲージャーが、少なくとも1つ少なくとも1つの抗原結合ドメイン、および少なくとも1つの免疫細胞エンゲージドメインを含む、核酸分子。
【請求項2】
前記抗原結合ドメインが、CD19、B細胞成熟抗原(BCMA)、CD33、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)、上皮成長因子受容体(EGFR)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、CD123、およびヒト上皮成長因子受容体2(Her2)からなる群から選択される少なくとも1つの抗原を標的とする、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
前記免疫細胞エンゲージドメインが、T細胞、抗原提示細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、およびマクロファージからなる群から選択される細胞を標的とする、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項4】
前記免疫細胞エンゲージドメインが、CD3、T細胞受容体(TCR)、CD28、CD16、NKG2D、Ox40、4-1BB、CD2、CD5、CD40、FcgR、FceR、FcaR、およびCD95からなる群から選択される少なくとも1つのT細胞特異的受容体分子を標的とする、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項5】
前記免疫細胞エンゲージドメインが、CD3を標的とする、請求項4に記載の核酸分子。
【請求項6】
a)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号70、配列番号72、配列番号74または配列番号76からなる群から選択されるアミノ酸配列に対してアミノ酸配列の全長にわたって少なくとも約90%の同一性を有するアミノ酸配列と、
b)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号70、配列番号72、配列番号74または配列番号76からなる群から選択されるアミノ酸配列に対してアミノ酸配列の少なくとも65%にわたって少なくとも約90%の同一性を有するアミノ酸配列の断片と、
c)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号70、配列番号72、配列番号74または配列番号76からなる群から選択されるアミノ酸配列と、
d)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号70、配列番号72、配列番号74または配列番号76からなる群から選択されるアミノ酸配列の少なくとも65%を含むアミノ酸配列の断片と、からなる群から選択される1つ以上の配列をコードするヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項7】
a)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号69、配列番号71、配列番号73、および配列番号75からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して核酸配列の全長にわたって少なくとも約90%の同一性を有するヌクレオチド配列と、
b)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号69、配列番号71、配列番号73、および配列番号75からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して核酸配列の少なくとも65%にわたって少なくとも約90%の同一性を有するヌクレオチド配列の断片と、
c)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号69、配列番号71、配列番号73、および配列番号75からなる群から選択されるヌクレオチド配列と、
d)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号69、配列番号71、配列番号73、および配列番号75からなる群から選択されるヌクレオチド配列の少なくとも65%を含むヌクレオチド配列の断片と、からなる群から選択される、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項8】
前記ヌクレオチド配列が、IgEリーダー配列をコードする核酸配列に作動可能に連結されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項9】
前記核酸分子が、発現ベクターを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の核酸分子を含む組成物。
【請求項11】
薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
対象における疾患または障害を予防または治療する方法であって、請求項1~9のいずれか一項に記載の核酸分子または請求項10~11のいずれか一項に記載の組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項13】
前記疾患が、良性腫瘍、癌、および癌関連疾患からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
1つ以上の合成抗体をコードする核酸分子であって、
a)抗ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)合成抗体をコードするヌクレオチド配列と、
b)抗HER2合成抗体の断片をコードするヌクレオチド配列と、
c)ScFv抗HER2合成抗体をコードするヌクレオチド配列と、
d)ScFv抗HER2合成抗体の断片をコードするヌクレオチド配列と、からなる群から選択される少なくとも1つを含む、核酸分子。
【請求項15】
a)配列番号62、配列番号64、および配列番号66からなる群から選択されるアミノ酸配列に対してアミノ酸配列の全長にわたって少なくとも約90%の同一性を有するアミノ酸配列と、
b)配列番号62、配列番号64、および配列番号66からなる群から選択されるアミノ酸配列に対してアミノ酸配列の少なくとも65%にわたって少なくとも約90%の同一性を有するアミノ酸配列の断片と、
c)配列番号62、配列番号64、および配列番号66からなる群から選択されるアミノ酸配列と、
d)配列番号62、配列番号64、および配列番号66からなる群から選択されるアミノ酸配列の少なくとも65%を含むアミノ酸配列の断片と、からなる群から選択される1つ以上の配列をコードするヌクレオチド配列を含む、請求項14に記載の核酸分子
【請求項16】
a)配列番号61、配列番号63、および配列番号65からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して核酸配列の全長にわたって少なくとも約90%の同一性を有するヌクレオチド配列と、
b)配列番号61、配列番号63、および配列番号65からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して核酸配列の少なくとも65%にわたって少なくとも約90%の同一性を有するヌクレオチド配列の断片と、
c)配列番号61、配列番号63、および配列番号65からなる群から選択されるヌクレオチド配列と、
d)配列番号61、配列番号63、および配列番号65からなる群から選択されるヌクレオチド配列の少なくとも65%を含むヌクレオチド配列の断片と、からなる群から選択される、請求項14に記載の核酸分子。
【請求項17】
前記ヌクレオチド配列が、IgEリーダー配列をコードする核酸配列に作動可能に連結されている、請求項14~16のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項18】
前記核酸分子が、発現ベクターを含む、請求項14~17のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項19】
請求項14~18のいずれか一項に記載の核酸分子を含む、組成物。
【請求項20】
薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
対象における疾患を予防または治療する方法であって、請求項14~18のいずれか一項に記載の核酸分子または請求項19~20のいずれか一項に記載の組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項22】
前記疾患が、HER2発現に関連する癌である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記疾患が、卵巣癌または乳癌である、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年1月30日に出願された米国仮出願第62/798,626号、および2019年4月1日に出願された米国仮出願第62/827,265号に対する優先権を主張し、それらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、インビボで1つ以上の合成DNAコード化二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)およびその機能的断片を生成するための組換え核酸配列を含む組成物、ならびに該組成物を投与することによって対象における癌を予防および/または治療する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
モノクローナル抗体療法は、癌治療学におけるゲームチェンジャーとなっているが、この治療は、繰り返し投与の必要性、より限定された安定性、およびコストを含むいくつかの制限を有する。モノクローナル技術のさらなる進歩は、モノクローナル抗体の特異性とT細胞の細胞毒性の可能性を組み合わせた二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)の開発である。BiTEは、白血病の臨床試験において有望な結果を示している(Viardot et al.,2016,Blood,127(11):1410-6、Goebeler et al.,2016,J Clin Oncol,34(10):1104-11)が、しかし、この療法は、1サイクル当たり4~8週間の継続的な静脈内注入を必要とし(Zhu et al.,2016,Clin Pharmacokinet,55(10):1271-88)、その産生に制限がある可能性があるため、適用性が限られる。抗体ベースの産物のより長寿命でより単純な産生方法は、癌免疫療法のための重要な新しいツールであり得る。
【0004】
したがって、当該技術分野において、癌免疫療法のための、より長寿命で、より単純な産生、抗体ベースの産物のニーズが存在する。本発明は、このニーズを満たす。
【発明の概要】
【0005】
一実施形態において、本発明は、1つ以上の合成DNAコード化二重特異性免疫細胞エンゲージャーをコードする核酸分子に関し、合成DNAコード化二重特異性免疫細胞エンゲージャーは少なくとも1つ少なくとも1つの抗原結合ドメイン、および少なくとも1つの免疫細胞エンゲージドメインを含む。
【0006】
一実施形態において、抗原結合ドメインは、CD19、B細胞成熟抗原(BCMA)、CD33、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)、上皮成長因子受容体(EGFR)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、CD123またはHer2を標的とする。
【0007】
一実施形態において、免疫細胞エンゲージドメインは、T細胞、抗原提示細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、またはマクロファージを標的とする。
【0008】
一実施形態において、免疫細胞エンゲージドメインは、CD3、T細胞受容体(TCR)、CD28、CD16、NKG2D、Ox40、4-1BB、CD2、CD5、CD40、FcgR、FceR、FcaR、またはCD95を標的とする。一実施形態において、免疫細胞エンゲージドメインは、CD3を標的とする。
【0009】
一実施形態において、核酸分子は、以下から選択される1つ以上の配列をコードするヌクレオチド配列を含む:a)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号70、配列番号72、配列番号74または配列番号76から選択されるアミノ酸配列に対してアミノ酸配列の全長にわたって少なくとも約90%の同一性を有するアミノ酸配列、b)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号70、配列番号72、配列番号74または配列番号76から選択されるアミノ酸配列に対してアミノ酸配列の少なくとも65%にわたって少なくとも約90%の同一性を有するアミノ酸配列、c)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号70、配列番号72、配列番号74または配列番号76のアミノ酸配列、およびd)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号70、配列番号72、配列番号74または配列番号76から選択されるアミノ酸配列の少なくとも65%を含むアミノ酸配列の断片。
【0010】
一実施形態において、核酸分子は、以下を含む:a)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号69、配列番号71、配列番号73、および配列番号75から選択されるヌクレオチド配列に対して核酸配列の全長にわたって少なくとも約90%の同一性を有するヌクレオチド配列、b)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号69、配列番号71、配列番号73、および配列番号75から選択されるヌクレオチド配列に対して核酸配列の少なくとも65%にわたって少なくとも約90%の同一性を有するヌクレオチド配列の断片、c)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号69、配列番号71、配列番号73、および配列番号75のヌクレオチド配列、またはd)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号69、配列番号71、配列番号73、および配列番号75から選択されるヌクレオチド配列の少なくとも65%を含むヌクレオチド配列の断片。
【0011】
一実施形態において、ヌクレオチド配列は、IgEリーダー配列をコードする核酸配列に作動可能に連結している。
【0012】
一実施形態において、核酸分子は、発現ベクターを含む。
【0013】
一実施形態において、本発明は、1つ以上の合成DNAコード化二重特異性免疫細胞エンゲージャーをコードする核酸分子を含む組成物に関し、合成DNAコード化二重特異性免疫細胞エンゲージャーは少なくとも1つ少なくとも1つの抗原結合ドメイン、および少なくとも1つの免疫細胞エンゲージドメインを含む。一実施形態において、組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。
【0014】
一実施形態において、本発明は、対象における疾患または障害を予防または治療する方法であって、1つ以上の合成DNAコード化二重特異性免疫細胞エンゲージャーをコードする核酸分子、または1つ以上の合成DNAコード化二重特異性免疫細胞エンゲージャーをコードする核酸分子を含む組成物を対象に投与することを含む方法に関し、合成DNAコード化二重特異性免疫細胞エンゲージャーは少なくとも1つ少なくとも1つの抗原結合ドメイン、および少なくとも1つの免疫細胞エンゲージドメインを含む。一実施形態において、疾患は、良性腫瘍、癌、または癌関連疾患である。
【0015】
一実施形態において、本発明は、1つ以上の合成抗体をコードする核酸分子に関し、核酸分子は、抗ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)合成抗体をコードするヌクレオチド配列、抗HER2合成抗体の断片をコードするヌクレオチド配列、ScFv抗HER2合成抗体をコードするヌクレオチド配列、またはScFv抗HER2合成抗体の断片をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0016】
一実施形態において、ヌクレオチド配列は、配列番号62、配列番号64、または配列番号66に対してアミノ酸配列の全長にわたって少なくとも約90%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする。一実施形態において、ヌクレオチド配列は、配列番号62、配列番号64、または配列番号66に対してアミノ酸配列の少なくとも65%にわたって少なくとも約90%の同一性を有するアミノ酸配列の断片をコードする。一実施形態において、ヌクレオチド配列は、配列番号62、配列番号64、または配列番号66のアミノ酸配列をコードする。一実施形態において、ヌクレオチド配列は、配列番号62、配列番号64、または配列番号66の少なくとも65%を含むアミノ酸配列の断片をコードする。
【0017】
一実施形態において、核酸分子は、配列番号61、配列番号63、または配列番号65の全長にわたって少なくとも約90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。一実施形態において、核酸分子は、配列番号61、配列番号63、または配列番号65のヌクレオチド配列に対して核酸配列の少なくとも65%にわたって少なくとも約90%の同一性を有するヌクレオチド配列の断片を含む。一実施形態において、核酸分子は、配列番号61、配列番号63、または配列番号65の選択されたヌクレオチド配列を含む。一実施形態において、核酸分子は、配列番号61、配列番号63、または配列番号65のヌクレオチド配列の少なくとも65%を含むヌクレオチド配列の断片を含む。
【0018】
一実施形態において、ヌクレオチド配列は、IgEリーダー配列をコードする核酸配列に作動可能に連結している。
【0019】
一実施形態において、核酸分子は、発現ベクターを含む。
【0020】
一実施形態において、本発明は、1つ以上の合成抗体をコードする核酸分子を含む組成物に関し、核酸分子は、抗ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)合成抗体をコードするヌクレオチド配列、抗HER2合成抗体の断片をコードするヌクレオチド配列、ScFv抗HER2合成抗体をコードするヌクレオチド配列、またはScFv抗HER2合成抗体の断片をコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態において、組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。
【0021】
一実施形態において、本発明は、対象における疾患を予防または治療する方法であって、1つ以上の合成抗体をコードする核酸分子を対象に投与することを含む方法に関し、核酸分子は、抗ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)合成抗体をコードするヌクレオチド配列、抗HER2合成抗体の断片をコードするヌクレオチド配列、ScFv抗HER2合成抗体をコードするヌクレオチド配列、またはScFv抗HER2合成抗体の断片をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0022】
一実施形態において、本発明は、対象における疾患を予防または治療する方法であって、1つ以上の合成抗体をコードする核酸分子を対象に投与することを含む方法に関し、核酸分子は、抗ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)合成抗体をコードするヌクレオチド配列、抗HER2合成抗体の断片をコードするヌクレオチド配列、ScFv抗HER2合成抗体をコードするヌクレオチド配列、またはScFv抗HER2合成抗体の断片をコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態において、疾患は、HER2発現に関連する癌である。一実施形態において、疾患は、卵巣癌または乳癌である。
【0023】
一実施形態において、本発明は、対象における疾患を予防または治療する方法であって、1つ以上の合成抗体をコードする核酸分子を含む組成物を対象に投与することを含む方法に関し、核酸分子は、抗ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)合成抗体をコードするヌクレオチド配列、抗HER2合成抗体の断片をコードするヌクレオチド配列、ScFv抗HER2合成抗体をコードするヌクレオチド配列、またはScFv抗HER2合成抗体の断片をコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態において、疾患は、HER2発現に関連する癌である。一実施形態において、疾患は、卵巣癌または乳癌である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】BCMADBiTE、CD33DBiTE、およびCD123DBiTEでトランスフェクトされた293T細胞の上清の例示的なウェスタンブロットを示す。
【
図2】EGFRvIIIDBiTE、FSHRDBiTE、PSMADBiTE、およびCD19DBiTEでトランスフェクトされた293T細胞の上清の例示的なウェスタンブロットを示す。
【
図3】実験設計の図を示す。3つの独立したドナー由来のPBMCを、5μlのCD19DBiTEまたは対照DBiTE(EGFRvIIIDBiTE)の上清の存在下で、三重で5時間培養した。インキュベーション後、細胞は、B細胞およびT細胞マーカーについて染色され、B細胞(CD19+細胞)およびT細胞の早期活性化に対する潜在的な細胞溶解活性を決定した。
【
図4】3つ全てのドナーが、CD19DBiTEの存在下でB細胞(PBMC混合物におけるCD19+細胞)の枯渇を示し、対照DBiTEの存在下では示さなかったことを示す例示的な実験結果を示す。
【
図5】3つ全てのドナーが、CD19DBiTEの存在下でT細胞における初期活性化マーカーCD69の増加を示し、対照DBiTEの存在下では示さなかったことを示す例示的な実験結果を示す。
【
図6】
図6A~
図6Fを含み、HER2 DNAコード化モノクローナル抗体(DMAb)の設計、発現および結合を示す。
図6Aは、HER2DMAbをコードするDNA構築物の概略図を示す。
図6Bは、293T細胞で発現したHER2DMAbまたはFSHR構築物のウェスタンブロットを示す。
図6Cは、DNA注射およびエレクトロポレーションの64日後にHER2DMAbまたはpVax単独でエレクトロポレーションされたマウス血清由来のヒトIgGのウェスタンブロットを示す(群あたりn=5マウス)。
図6Dは、HER2DMAbでエレクトロポレーションされたヌードマウスの血清由来の、ELISAによって定量されたヒトIgGの発現レベルを示す(群あたりn=5匹のマウス、2つの独立した実験)。
図6Eは、プレートをヒトHER2タンパク質でコーティングした後の、HER2DMAbまたはpVaxを発現するマウス由来の血清の結合ELISAを示す。
図6Fは、ヒトHER2発現を伴う、および伴わないマウス乳癌細胞株へのHER2DMAbの結合を示すフローサイトメトリープロットを示す。
【
図7】
図7A~
図7Fを含み、HER2DNAコード化モノクローナル抗体(DMAb)のインビトロ発現および抗腫瘍活性を示す。
図7Aは、DNAトランスフェクションの48時間後の293TまたはRD細胞の上清由来の定量化されたHER2DMAbの発現レベルを示す(n=3/群)。
図7Bは、HER2DMAbまたはpVax血清または陽性対照としてのHu4D5抗体の存在下でのOVCAR3-ルシフェラーゼ(10,000)細胞でのヒトPBMC(50万)の培養から結果として生じるインビトロ細胞毒性を示す(三重)。
図7Cは、HER2DMAbまたはpVax注射マウス由来の血清の存在下でのHER2陰性細胞株MDA-MD-231(10,000)細胞とヒトPBMC(50万)との共培養から結果として生じるインビトロ細胞毒性を示す(三重)。
図7Dは、HER3DMAb、pVax血清存在下、または血清の添加なしで、マクロファージによって食作用されたOVCAR3細胞のパーセンテージおよび代表的なフローサイトメトリープロットを示す(三重)。
図7Eは、HER2DMAbまたはpVax注射マウス由来の血清の存在下でのOVCAR3(10,000)細胞とNu/Jマウス由来の脾細胞(50万)との共培養から結果として生じるインビトロ細胞毒性を示す(三重)。
図7Fは、Nu/J血清における0日目および252日目のマウス抗HER2DMAb IgGを表す(三重)。ANOVA。T検定。***p<0.001。ns:有意ではない。
【
図8】
図8A~
図8Cを含み、卵巣癌においてHER2DMAbがHER2に結合することを示す。
図8Aは、抗HER2抗体24D2を使用したフローサイトメトリーによる卵巣癌細胞株OVCAR3、SKOV3、CAOV3、TOV-21GおよびRNG1におけるHER2発現を示す。
図8Bは、HER2DMAbを発現するマウス由来の血清におけるHER2発現を示す。
図8Cは、HER2DMAb発現マウス由来の血清で染色されたOVCAR3腫瘍の免疫蛍光イメージングを示す。スケールバー10μm。
【
図9】
図9A~
図9Fを含み、HER2DMAbがHER2シグナル伝達をブロックし、ADCCを誘導し、インビボで癌進行を遅延させることを示す。
図9Aは、HER2DMAbまたは対照血清の存在下でHER2-HER3アゴニストHRGで処理されたOVCAR3細胞由来の総およびリン酸化Aktならびにβ-アクチンを示すウェスタンブロットを示す。
図9Bは、OVCAR3でのHER2DMAbまたは無関係なIgGのADCCアッセイを示すヒストグラムを示す。
図9Cは、HER2DMAbまたは空のベクターで処理されたヌードマウスに移植されたOVCAR3腫瘍の成長曲線を示す(群あたりn=5匹のマウスの2つの独立した実験)。
図9Dは、HER2DMAbまたは空のベクターで処理されたOVCAR3を保有するマウスの血清におけるHER2DMAbのレベルを示す(群あたりn=5匹のマウスの代表する2つの独立した実験)。
図9Eは、OVCAR3、Brpkp110、およびBrpkp110-hHER2腫瘍細胞によるHER2の発現を示すフローサイトメトリープロットを示す。
図9Fは、HER2DMAbまたは空のpVaxプラスミドで処理されたC57Bl/6マウスに移植されたBrpkp110-hHER2腫瘍の成長曲線を示す(群あたりn=5匹のマウスの代表する2つの独立した実験)。二元配置ANOVA、t検定、ログランク。*p<0.05、****p<0.001。
【
図10】
図10A~
図10Jを含み、HER2DBiTEの結合、細胞毒性、活性化、およびインビボ有効性を示す。
図10Aは、ELISAの結合によって測定された組換えHER2タンパク質へのHER2DBiTE結合を示す(三重)。
図10Bは、ELISAの結合によって測定された組換えCD3タンパク質へのHER2DBiTE結合を示す(三重)。
図10Cは、HER2DBiTEまたはpVax血清の存在下でのT細胞とOVCAR3とのコインキュベーションの24時間後にウェル中に存在するT細胞の数を示す(三重)。
図10Dは、OVCAR3細胞の存在下でのHER2DBIiTEまたはpVax血清でのT細胞の活性化の5日後のアポトーシス(アネキシンV+)細胞の存在を示す。抗CD3/抗CD28ビーズが陽性対照として使用された(三重)。
図10Eは、HER2DBIiTEまたはpVax血清およびOVCAR3細胞の存在下で24時間培養したT細胞の上清におけるIFNγとして測定されたT細胞活性化を示す。抗CD3/抗CD28ビーズが陽性対照として使用され、T細胞単独が陰性対照として使用された(三重)。
図10Fは、HER2DBIiTEまたはpVax血清およびOVCAR3細胞の存在下で72時間培養されたT細胞におけるCD69の発現として測定されたT細胞活性化を示す。抗CD3/抗CD28ビーズが陽性対照として使用され、T細胞のみが陰性対照として使用された(三重)。
図10Gは、HER2DBIiTEまたはpVax血清およびOVCAR3細胞の存在下で72時間培養されたT細胞におけるPD-1の発現として測定されたT細胞活性化を示す。抗CD3/抗CD28ビーズが陽性対照として使用され、T細胞単独が陰性対照として使用された(三重)。
図10Hは、HER2DBiTEまたはpVaxマウス由来の血清の存在下、異なる比率でのT細胞とOVCAR3細胞との共培養から結果として生じるインビトロ細胞毒性を示す(三重で2つの独立した実験)。
図10Iは、Nu/J血清における0日目および64日目のマウス抗HER2DBiTE IgGを示す(三重)。
図10Jは、HER2DBiTE、またはPBMCなしの空のベクターおよびPBMCを伴うHER2DBiTEで処理されたNSGマウスに移植したOVCAR3腫瘍の平均成長曲線、および腫瘍の画像を示す(群あたりn=5匹のマウス、Xは腫瘍なしを示す(完全拒絶))。T検定、ANOVA、二元配置ANOVA。*p<0.05、**p<0.01***p<0.001。ns:有意ではない。
【
図11】
図11A~
図11Fを含み、HER2DBiTEの生成、発現、および抗腫瘍活性を示す。
図11Aは、HER2DMAbをコードするDNA構築物の概略図、ならびにHER2およびTCRをエンゲージするBiTEの漫画を示す。
図11Bは、DNA注射およびエレクトロポレーションの21日後および28日後にHER2DBiTEまたはpVax空のベクターでエレクトロポレーションした1μlのマウス血清由来のヒトIgGのウェスタンブロットを示す(代表の群あたりn=5匹のマウス)。
図11Cは、HER2DBiTEまたはpVaxマウス由来の血清の存在下、異なる比率でT細胞とOVCAR3細胞との共培養から結果として生じるインビトロ細胞毒性を示す(三重で2つの独立した実験)。
図11Dは、標的としてOVCAR3を使用したエフェクター:標的の比が5:1で100μgの注射およびエレクトロポレーションの前およびその後の種々の時点でのHER2DBiTEで処理されたマウス由来の血清のインビトロ細胞毒性を示す(三重)。
図11Eは、HER2DBiTEまたは空のベクターで処理されたNSGマウスに移植されたOVCAR3腫瘍の平均成長曲線を示す(群あたりn=10匹のマウス)。
図11Fは、HER2DBiTEまたは空のベクターで処理されたNSGマウスに移植されたOVCAR3腫瘍の個々の成長曲線を示す(群あたりn=10匹のマウス)。二元配置ANOVA。***p<0.001。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、二重特異性免疫細胞エンゲージ抗体(DICE)をコードする組換え核酸配列、二重特異性T細胞エンゲージ(DBiTE)抗体をコードする組換え核酸配列、それらの断片、それらのバリアント、またはそれらの組み合わせを含む組成物に関する。組成物は、DICEまたはDBiTEのインビボ発現および形成を促進するために、それを必要とする対象に投与され得る。
【0026】
一実施形態において、DICEまたはDBiTEは、少なくとも1つの抗原結合ドメイン、および少なくとも1つの免疫細胞エンゲージドメインを含む。一実施形態において、免疫細胞エンゲージドメインは、免疫細胞の表面上で発現される抗原に特異的である。免疫細胞は、T細胞、抗原提示細胞、NK細胞、好中球、およびマクロファージを含むが、これらに限定されない。
【0027】
様々な実施形態において、免疫細胞エンゲージドメインは、免疫細胞特異的受容体分子への結合に特異的な抗体、その断片、またはそのバリアントをコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態において、免疫細胞特異的受容体分子は、T細胞表面抗原である。一実施形態において、T細胞特異的受容体分子は、CD3、TCR、CD28、CD16、NKG2D、Ox40、4-1BB、CD2、CD5、CD40、FcgR、FceR、FcaR、およびCD95のうちの1つである。
【0028】
様々な実施形態において、抗原結合ドメインは、抗原への結合に特異的な抗体、その断片、またはそのバリアントをコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態において、抗体またはその断片は、DNAコード化モノクローナル抗体(DMAb)またはその断片もしくはバリアントである。
【0029】
一実施形態において、DICEまたはDBiTEの抗原結合ドメインは、標的抗原への結合、およびT細胞を標的抗原に動員するのに特異的である。一実施形態において、標的抗原は、腫瘍抗原である。一実施形態において、抗原は、CD19、B細胞成熟抗原(BCMA)、CD33、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)、上皮成長因子受容体(EGFR)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、CD123、およびヒト上皮成長因子受容体2(Her2)である。したがって、一実施形態において、本発明は、1つ以上のDICEまたはDBiTEを含む組成物、および対象における癌または癌に関連する疾患もしくは障害を治療または予防に使用するための方法を提供する。
【0030】
定義
別段に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先するであろう。本発明の実施または試験において本明細書に記載されるものと類似または同等の方法および材料を使用することができるが、好ましい方法および材料が以下に記載される。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、それらの全体において参照により組み込まれる。本明細書に開示される材料、方法、および例は、例示的のみであり、限定的であることを意図しない。
【0031】
「含む(comprise(s))」、「含む(include(s))」、「有すること」、「有する」、「できる」、「含有する」という用語およびそれらの変形は、本明細書で使用される場合、追加の行為または構造の可能性を妨げない、オープンエンドな移行句、用語、または語であることを意図する。「a」、「and」、および「the」という単数形は、文脈が別段に明示しない限り、複数の参照物を含む。本開示はまた、明示的に記載されるか否かにかかわらず、本明細書で提示される実施形態またはエレメント「を含む」、「からからなる」、および「から本質的になる」他の実施形態を企図する。
【0032】
「抗体」とは、クラスIgG、IgM、IgA、IgD、もしくはIgEの抗体、または断片、Fab、F(ab’)2、Fdを含む、その断片もしくは誘導体、ならびに一本鎖抗体、およびそれらの誘導体を意味し得る。抗体は、哺乳動物の血清試料から単離された抗体、ポリクローナル抗体、親和性精製抗体、またはそれらの混合物であり得、これは、所望のエピトープまたはそれに由来する配列に対する十分な結合特異性を示す。
【0033】
本明細書で互換的に使用される「抗体断片」または「抗体の断片」とは、抗原結合部位または可変領域を含む無傷の抗体の一部分を指す。部分は、無傷の抗体のFc領域の定常重鎖ドメイン(すなわち、抗体アイソタイプに応じて、CH2、CH3、またはCH4)を含まない。抗体断片の例は、これらに限定されないが、Fab断片、Fab’断片、Fab’-SH断片、F(ab’)2断片、Fd断片、Fv断片、ダイアボディ、一本鎖Fv(scFv)分子、1つの軽鎖可変ドメインのみを含む一本鎖ポリペプチド、軽鎖可変ドメインの3つのCDRを含む一本鎖ポリペプチド、1つの重鎖可変領域のみを含む一本鎖ポリペプチド、および重鎖可変領域の3つのCDRを含む一本鎖ポリペプチドを含む。
【0034】
「抗原」とは、宿主において免疫応答を生成する能力を有するタンパク質を指す。抗原は、抗体によって認識され、結合され得る。抗原は、体内から、または外部環境が起源であり得る。
【0035】
本明細書で使用される「コード配列」または「コード核酸」とは、本明細書に示されるように、抗体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸(RNAまたはDNA分子)を指すことを意味し得る。コード配列は、プロモーターを含む制御エレメントに作動可能に連結した開始および終結シグナル、ならびに核酸を投与される個体または哺乳動物の細胞における発現を誘導することができるポリアデニル化シグナルをさらに含み得る。コード配列は、シグナルペプチドをコードする配列をさらに含み得る。
【0036】
本明細書で使用される「補体」または「相補的」とは、核酸が核酸分子のヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体間のワトソン-クリック(例えば、A-T/UおよびC-G)またはフーグスティーン塩基対合を意味し得ることを意味し得る。
【0037】
本明細書で使用される「定電流」とは、組織、または当該組織を画定する細胞が、電気パルスが同組織に送達される期間にわたって受けるか、または経験する電流を定義する。電気パルスは、本明細書に記載されるエレクトロポレーションデバイスから送達される。本明細書で提供されるエレクトロポレーションデバイスは、好ましくは、即時フィードバックを有する、フィードバックエレメントを有するため、この電流は、電気パルスの寿命にわたって当該組織において定アンペア数に留まる。フィードバックエレメントは、パルスの持続期間を通して組織(または細胞)の抵抗を測定し、エレクトロポレーションデバイスにその電気エネルギー出力を変更させる(例えば、電圧を増加させる)ことができ、したがって同じ組織における電流は、電気パルス(マイクロ秒台)を通して、およびパルス間で一定のままである。いくつかの実施形態において、フィードバックエレメントは、コントローラを含む。
【0038】
本明細書で使用される「電流フィードバック」または「フィードバック」とは、互換的に使用され得、提供されたエレクトロポレーションデバイスの活性応答を意味し得、これは、電流を一定のレベルで維持するために、電極間の組織における電流を測定し、適宜にEPデバイスによって送達されるエネルギー出力を変更することを含む。この一定のレベルは、パルス配列または電気処理の開始前にユーザによって予め設定される。その中の電気回路が、電極間の組織における電流を連続的に監視し、その監視された電流(または組織内の電流)を予め設定された電流と比較し、エネルギー出力調節を連続的に行って、監視される電流を予め設定されたレベルに維持することができるように、フィードバックは、エレクトロポレーションデバイスのエレクトロポレーション構成要素、例えば、コントローラによって達成され得る。フィードバックループは、アナログ閉ループフィードバックであるため、即時であり得る。
【0039】
本明細書で使用される「分散電流」とは、本明細書に記載されるエレクトロポレーションデバイスの様々な針電極アレイから送達される電流のパターンを意味し得、パターンは、エレクトロポレートされる組織の任意の領域上でのエレクトロポレーション関連熱ストレスの発生を最小化するか、または好ましくは排除する。
【0040】
本明細書で互換的に使用される「エレクトロポレーション」、「電気透過化」、または「電気運動向上」(「EP」)とは、生体膜において微視的経路(細孔)を誘導するための膜貫通電場パルスの使用を指し得、それらの存在は、プラスミド、オリゴヌクレオチド、siRNA、薬物、イオン、および水などの生体分子が細胞膜の一方の側から他方へと通過することを可能にする。
【0041】
本明細書で使用される「内因性抗体」とは、体液性免疫応答の誘導のために有効用量の抗原が投与される対象において生み出された抗体を指し得る。
【0042】
本明細書で使用される「フィードバックメカニズム」とは、ソフトウェアまたはハードウェア(ファームウェア)のいずれかによって実行されるプロセスを指し得、そのプロセスは、(エネルギーのパルスの送達の前、その間、および/またはその後)所望の組織のインピーダンスを受け、現在値、好ましくは電流と比較し、予め設定された値を達成するために送達されるエネルギーのパルスを調節する。フィードバックメカニズムは、アナログ閉ループ回路によって実行され得る。
【0043】
「断片」は、機能している、すなわち、所望の標的と結合し得、全長抗体と同じ意図される効果を有する抗体のポリペプチド断片を意味し得る。抗体の断片は、N末端および/またはC末端から少なくとも1つのアミノ酸が欠損している場合を除いて、完全長と100%同一であってもよく、各場合において、1位にシグナルペプチドおよび/またはメチオニンが存在するかまたは存在しない。断片は、追加される任意の異種シグナルペプチドを除く、特定の完全長抗体の長さの20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上のパーセントを含み得る。断片は、抗体と95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上同一であるポリペプチドの断片を含み得、加えて、同一性パーセントを計算する時に含まれないN末端メチオニンまたは異種シグナルペプチドを含み得る。断片は、N末端メチオニンおよび/または免疫グロブリンシグナルペプチド、例えば、IgEもしくはIgGシグナルペプチドなどのシグナルペプチドをさらに含み得る。N末端メチオニンおよび/またはシグナルペプチドは、抗体の断片に連結され得る。
【0044】
抗体をコードする核酸配列の断片は、5’末端および/または3’末端から少なくとも1つのヌクレオチドを欠損している場合を除いて、完全長と100%同一であり得、各場合において、1位にシグナルペプチドおよび/またはメチオニンをコードする配列が存在するかまたは存在しない。断片は、追加される任意の異種シグナルペプチドを除く、特定の完全長コード配列の長さの20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上のパーセントを含み得る。断片は、抗体と95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上同一であるポリペプチドをコードする断片を含み得、加えて、任意に、同一性パーセントを計算する時に含まれないN末端メチオニンまたは異種シグナルペプチドをコードする配列を含み得る。断片は、N末端メチオニンおよび/または免疫グロブリンシグナルペプチド、例えば、IgEもしくはIgGシグナルペプチドなどのシグナルペプチドのコード配列をさらに含み得る。N末端メチオニンおよび/またはシグナルペプチドをコードするコード配列は、コード配列の断片に連結され得る。
【0045】
本明細書で使用される「遺伝子構築物」は、抗体などのタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むDNAまたはRNA分子を指す。コード配列は、核酸分子が投与される個体の細胞における発現を誘導することができるプロモーターおよびポリアデニル化シグナルを含む調節エレメントに作動可能に連結された開始および終結シグナルを含む。本明細書で使用される場合、「発現可能な形態」という用語は、個体の細胞に存在する時に、コード配列が発現されるように、タンパク質をコードするコード配列に作動可能に連結した必要な制御エレメントを含む遺伝子構築物を指す。
【0046】
2つ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈において本明細書で使用される「同一」または「同一性」は、配列が特定された領域にわたって同じである残基の特定されたパーセントを有することを意味し得る。パーセンテージは、2つの配列を最適に整列させ、指定された領域で2つの配列を比較し、両方の配列で同一の残基が発生する位置の数を決定して、一致する位置の数を算出し、一致する位置の数を指定された領域内の位置の総数で割り、結果に100を掛けて、配列同一性のパーセンテージを得ることによって計算できる。2つの配列の長さが異なる場合、またはアラインメントが1つ以上の付着末端を生成し、指定された比較領域に単一の配列のみが含まれる場合、単一の配列の残基は、計算の分母に含まれるが分子には含まれない。DNAとRNAを比較する時、チミン(T)とウラシル(U)は同等とみなされる場合がある。同一性は、手動で、またはBLASTもしくはBLAST2.0などのコンピュータ配列アルゴリズムを使用することによって、実行され得る。
【0047】
本明細書で使用される「インピーダンス」とは、フィードバックメカニズムを議論する時に使用され得、オームの法則に従って電流値に変換することができ、したがって、予め設定された電流との比較を可能にする。
【0048】
本明細書で使用される「免疫応答」は、1つ以上の核酸および/またはペプチドの導入に応答した、宿主の免疫系、例えば、哺乳動物の免疫系の活性化を意味し得る。免疫応答は、細胞性もしくは体液性応答、または両方の形態であり得る。
【0049】
本明細書で使用される「核酸」または「オリゴヌクレオチド」または「ポリヌクレオチド」は、一緒に共有結合した少なくとも2つのヌクレオチドを意味し得る。一本鎖の描写はまた、相補鎖の配列を定義する。したがって、核酸はまた、描写された一本鎖の相補鎖も包含する。核酸の多くのバリアントは、所与の核酸と同じ目的で使用することができる。したがって、核酸はまた、実質的に同一の核酸およびその相補体を包含する。一本鎖は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で標的配列にハイブリダイズし得るプローブを提供する。したがって、核酸はまた、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするプローブを包含する。
【0050】
核酸は、一本鎖または二本鎖であり得るか、または二本鎖と一本鎖配列の両方の部分を含み得る。核酸は、DNA、ゲノムおよびcDNAの両方、RNA、またはハイブリッドであり得、核酸は、デオキシリボ-およびリボ-ヌクレオチドの組み合わせ、ならびにウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、イソシトシン、およびイソグアニンを含む塩基の組み合わせを含み得る。核酸は、化学合成方法によって、または組換え方法によって得られ得る。
【0051】
本明細書で使用される「作動可能に連結」とは、遺伝子の発現が、これによって空間的に接続される、プロモーターの制御下にあることを意味し得る。プロモーターは、その制御下で遺伝子の5’(上流)または3’(下流)に配置され得る。プロモーターと遺伝子との間の距離は、プロモーターが由来する遺伝子においてそれが制御するプロモーターと遺伝子との間の距離とおよそ同じであり得る。当該技術分野で既知であるように、この距離における変動は、プロモーター機能の喪失なしに順応され得る。
【0052】
本明細書で使用される「ペプチド」、「タンパク質」、または「ポリペプチド」は、アミノ酸の連結配列を意味することができ、天然、合成、または天然および合成の修飾もしくは組み合わせであり得る。
【0053】
本明細書で使用される「プロモーター」は、細胞における核酸の発現を与え、活性化し、または向上させることができる合成または天然由来分子を意味し得る。プロモーターは、その発現をさらに向上させるため、ならびに/または空間的発現および/もしくは時間的発現を変更するために、1つ以上の特異的転写制御配列を含み得る。プロモーターはまた、転写の開始部位から数千塩基対ほどに配置することができる、遠位エンハンサーまたはリプレッサーエレメントを含み得る。プロモーターは、ウイルス、細菌、真菌、植物、昆虫、および動物を含む源に由来し得る。プロモーターは、構成的に、あるいは細胞、発現が起こる組織もしくは器官に対して、または発現が起こる発生段階に対して、または生理学的ストレス、病原体、金属イオン、もしくは誘導剤などの外部刺激に応答して差別的に、遺伝子構成要素の発現を制御し得る。プロモーターの代表的な例には、バクテリオファージT7プロモーター、バクテリオファージT3プロモーター、SP6プロモーター、lacオペレータ-プロモーター、tacプロモーター、SV40後期プロモーター、SV40初期プロモーター、RSV-LTRプロモーター、CMV IEプロモーター、SV40初期プロモーターまたはSV40後期プロモーター、およびCMV IEプロモーターが挙げられる。
【0054】
「シグナルペプチド」および「リーダー配列」は、本明細書で互換的に使用され、本明細書に記載されるタンパク質のアミノ末端で連結することができるアミノ酸配列を指す。シグナルペプチド/リーダー配列は、典型的には、タンパク質の局在化を誘導する。本明細書で使用されるシグナルペプチド/リーダー配列は、好ましくは、それが産生される細胞からのタンパク質の分泌を容易にする。シグナルペプチド/リーダー配列は、多くの場合、タンパク質の残部から開裂され、多くの場合、細胞からの分泌後、成熟タンパク質と称される。シグナルペプチド/リーダー配列は、タンパク質のN末端で連結される。
【0055】
本明細書で使用される「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、第1の核酸配列(例えば、プローブ)が第2の核酸配列(例えば、標的)に、核酸の複合体混合物のようにハイブリダイズするであろう平均条件を意味し得る。ストリンジェントな条件は、配列依存的であり、異なる状況では異なるであろう。ストリンジェントな条件は、定義されたイオン強度pHでの特定の配列についての熱融解点(Tm)よりも約5~10℃低くなるように選択され得る。Tmは、標的に相補的なプローブの50%が平衡状態で標的配列にハイブリダイズする温度(定義されたイオン強度、pH、および核酸濃度下)であり得る(標的配列が過剰に存在するため、Tmでは、プローブの50%は平衡状態で占められる)。ストリンジェントな条件は、塩濃度が、pH7.0~8.3で約0.01~1.0Mナトリウムイオン濃度(または他の塩)などの、約1.0Mナトリウムイオン未満であり、温度が、短いプローブ(例えば、約10~50ヌクレオチド)について少なくとも約30°Cおよび長いプローブ(例えば、約50ヌクレオチド超)について少なくとも約60°Cであるものであり得る。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドなどの不安定化剤の添加で達成され得る。選択的または特異的ハイブリダイゼーションについて、正のシグナルは、バックグラウンドハイブリダイゼーションの少なくとも2~10倍であり得る。例示的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、以下を含む:50%ホルムアミド、5×SSC、および1%SDS、42℃でインキュベート、または5×SSC、1%SDS、65℃でインキュベート、0.2×SSCおよび0.1%SDS中で65℃で洗浄。
【0056】
本明細書で使用される「対象」および「患者」は、これらに限定されないが、哺乳動物(例えば、ウシ、ブタ、ラクダ、ラマ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、ネコ、イヌ、ラット、およびマウス、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザルまたはアカゲザルなどのサル、チンパンジーなど)、ならびにヒト)を含む、任意の脊椎動物を互換的に指す。いくつかの実施形態において、対象は、ヒトまたは非ヒトであり得る。対象または患者は、他の形態の治療を受けていてもよい。
【0057】
本明細書で使用される「実質的に相補的」とは、第1の配列が、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、またはそれ以上のヌクレオチドもしくはアミノ酸の領域にわたって、第2の配列の補体に少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一であること、または2つの配列がストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズすることを意味し得る。
【0058】
本明細書で使用される「実質的に同一」とは、第1の配列が、第2の配列の補体に実質的に相補的である場合、第1および第2の配列が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100以上のヌクレオチドもしくはアミノ酸の領域にわたって、または核酸に関して、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%であることを意味し得る。
【0059】
本明細書で使用される「合成抗体」は、本明細書に記載される組換え核酸配列によってコードされ、かつ対象において生成される抗体を指す。
【0060】
本明細書で使用される「治療」または「治療すること」は、疾患を予防、抑制、抑圧、または完全に排除する手段を通した疾患からの対象の保護を意味し得る。疾患を予防することは、本発明の抗体を、疾患の発症前に対象に投与することを含む。疾患を抑制することは、本発明の抗体を、疾患の誘発後だがその臨床的出現前に対象に投与することを含む。疾患を抑圧することは、本発明の抗体を、疾患の臨床的出現後に対象に投与することを含む。
【0061】
核酸に関して本明細書で使用される「バリアント」は、(i)参照されたヌクレオチド配列の部分もしくは断片、(ii)参照されたヌクレオチド配列もしくはその部分の補体、(iii)参照された核酸もしくはその補体に実質的に同一である核酸、または(iv)参照された核酸、その補体、もしくはそれに実質的に同一である配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸を意味し得る。
【0062】
アミノ酸の挿入、欠失、または保存的置換によってアミノ酸配列が異なるペプチドまたはポリペプチドに対する「バリアント」は、少なくとも1つの生物学的活性を保持する。バリアントはまた、少なくとも1つの生物学的活性を保持するアミノ酸配列を有する参照されたタンパク質と実質的に同一であるアミノ酸配列を有するタンパク質を意味し得る。アミノ酸の保存的置換、すなわち、アミノ酸を類似の特性(例えば、親水性、荷電領域の程度および分布)の異なるアミノ酸で置き換えることは、典型的には小さな変更を含むものとして当該技術分野で認識される。これらの小さな変更は、当該技術分野で理解されるように、部分的に、アミノ酸のハイドロパシーインデックスを考慮することによって特定することができる。Kyte et al.,J.Mol.Biol.157:105-132(1982)。アミノ酸のハイドロパシーインデックスは、その疎水性および電荷の考慮に基づく。類似のハイドロパシーインデックスのアミノ酸は、置換され、依然としてタンパク質機能を保持し得ることが当該技術分野で既知である。一態様では、±2のハイドロパシーインデックスを有するアミノ酸が置換される。アミノ酸の親水性はまた、生物学的機能を保持するタンパク質をもたらすであろう置換を明らかにするために使用することができる。ペプチドの文脈におけるアミノ酸の親水性の考慮は、そのペプチドの最も大きな局所平均親水性、抗原性および免疫原性と十分に相関することが報告されている有用な尺度の計算を可能にする。米国特許第4,554,101号は、参照によって本明細書に完全に組み込まれる。類似の親水性値を有するアミノ酸の置換は、当該技術分野で理解されるように、生物学的活性、例えば、免疫原性を保持するペプチドをもたらすことができる。置換は、互いに±2以内の親水性値を有するアミノ酸で実行され得る。アミノ酸の疎水性インデックスおよび親水性値の両方は、そのアミノ酸の特定の側鎖によって影響される。その観察と一貫して、生物学的機能と適合性であるアミノ酸置換は、疎水性、親水性、電荷、サイズ、および他の特性によって明らかになるように、アミノ酸、および特にそれらのアミノ酸の側鎖の相対類似性に依存することが理解される。
【0063】
バリアントは、完全遺伝子配列またはその断片の完全長にわたって実質的に同一である核酸配列であり得る。核酸配列は、遺伝子配列またはその断片の完全長にわたって80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であり得る。バリアントは、アミノ酸配列またはその断片の完全長にわたって実質的に同一であるアミノ酸配列であり得る。アミノ酸配列は、アミノ酸配列またはその断片の完全長にわたって80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であり得る。
【0064】
本明細書で使用される「ベクター」は、複製起点を含む核酸配列を意味し得る。ベクターは、プラスミド、バクテリオファージ、細菌人工染色体、または酵母人工染色体であり得る。ベクターは、DNAまたはRNAベクターであり得る。ベクターは、自己複製染色体外ベクターまたは宿主ゲノムに統合するベクターのいずれかであり得る。
【0065】
本明細書における数値範囲の列挙について、同じ精度でその間に介在する各数が明示的に企図される。例えば、6~9の範囲について、6および9に加えて数7および8が企図され、6.0~7.0の範囲について、数6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、および7.0が明示的に企図される。
【0066】
組成物
一実施形態において、本発明は、DICEまたはDBiTE、それらの断片、それらのバリアント、またはその組み合わせをコードする組換え核酸配列を含む組成物に関する。組成物は、それを必要とする対象に投与される場合、対象における合成DNAコード化二重特異性免疫細胞エンゲージャーの生成をもたらし得る。
【0067】
一実施形態において、DICEまたはDBiTEは、少なくとも1つの抗原結合ドメイン、および少なくとも1つの免疫細胞エンゲージドメインを含む。一実施形態において、免疫細胞エンゲージドメインは、免疫細胞の表面上で発現される抗原に特異的である。免疫細胞は、T細胞、抗原提示細胞、NK細胞、好中球、およびマクロファージを含むが、これらに限定されない。
【0068】
様々な実施形態において、免疫細胞エンゲージドメインは、免疫細胞特異的受容体分子への結合に特異的な抗体、その断片、またはそのバリアントをコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態において、免疫細胞特異的受容体分子は、T細胞表面抗原である。一実施形態において、T細胞特異的受容体分子は、CD3、TCR、CD28、CD16、NKG2D、Ox40、4-1BB、CD2、CD5、CD40、FcgR、FceR、FcaR、およびCD95のうちの1つである。
【0069】
様々な実施形態において、抗原結合ドメインは、抗原への結合に特異的な抗体、その断片、またはそのバリアントを含む。一実施形態において、抗原は、腫瘍抗原である。一実施形態において、抗原は、CD19、B細胞成熟抗原(BCMA)、CD33、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)、上皮成長因子受容体(EGFR)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、CD123、またはヒト上皮成長因子受容体2(Her2)である。
【0070】
一実施形態において、CD19DBiTEをコードするヌクレオチド配列は、配列番号2、配列番号4、もしくは配列番号6のアミノ酸配列、またはそれらの断片もしくはバリアントをコードする。一実施形態において、CD19DBiTEをコードするヌクレオチド配列は、配列番号1、配列番号3、もしくは配列番号5のヌクレオチド配列、またはそれらの断片もしくはバリアントを含む。
【0071】
一実施形態において、BCMADBiTEをコードするヌクレオチド配列は、配列番号8、配列番号10、もしくは配列番号12のアミノ酸配列、またはそれらの断片もしくはバリアントをコードする。一実施形態において、BCMADBiTEをコードするヌクレオチド配列は、配列番号7、配列番号9、もしくは配列番号11のヌクレオチド配列、またはそれらの断片もしくはバリアントを含む。
【0072】
一実施形態において、CD33DBiTEをコードするヌクレオチド配列は、配列番号14、配列番号16、もしくは配列番号18のアミノ酸配列、またはそれらの断片もしくはバリアントをコードする。一実施形態において、CD33DBiTEをコードするヌクレオチド配列は、配列番号13、配列番号15、もしくは配列番号17のヌクレオチド配列、またはそれらの断片もしくはバリアントを含む。
【0073】
一実施形態において、FAPBiTEをコードするヌクレオチド配列は、配列番号20、配列番号22、もしくは配列番号24のアミノ酸配列、またはそれらの断片もしくはバリアントをコードする。一実施形態において、FAPDBiTEをコードするヌクレオチド配列は、配列番号19、配列番号21、もしくは配列番号23のヌクレオチド配列、またはそれらの断片もしくはバリアントを含む。
【0074】
一実施形態において、FSHRDBiTEをコードするヌクレオチド配列は、配列番号26、配列番号28、もしくは配列番号30のアミノ酸配列、またはそれらの断片もしくはバリアントをコードする。一実施形態において、FSHRDBiTEをコードするヌクレオチド配列は、配列番号25、配列番号27、もしくは配列番号29のヌクレオチド配列、またはそれらの断片もしくはバリアントを含む。
【0075】
一実施形態において、EGFRDBiTEをコードするヌクレオチド配列は、配列番号32、配列番号34、もしくは配列番号36のアミノ酸配列、またはそれらの断片もしくはバリアントをコードする。一実施形態において、EGFRDBiTEをコードするヌクレオチド配列は、配列番号31、配列番号33、もしくは配列番号35のヌクレオチド配列、またはそれらの断片もしくはバリアントを含む。
【0076】
一実施形態において、PSMADBiTEをコードするヌクレオチド配列は、配列番号38、配列番号40、もしくは配列番号42のアミノ酸配列、またはそれらの断片もしくはバリアントをコードする。一実施形態において、PSMADBiTEをコードするヌクレオチド配列は、配列番号37、配列番号41、もしくは配列番号43のヌクレオチド配列、またはそれらの断片もしくはバリアントを含む。
【0077】
一実施形態において、CD123DBiTEをコードするヌクレオチド配列は、配列番号44、配列番号46、もしくは配列番号48のアミノ酸配列、またはそれらの断片もしくはバリアントをコードする。一実施形態において、CD123DBiTEをコードするヌクレオチド配列は、配列番号43、配列番号45、もしくは配列番号47のヌクレオチド配列、またはそれらの断片もしくはバリアントを含む。
【0078】
一実施形態において、HER2DBiTEをコードするヌクレオチド配列は、配列番号50、配列番号52、配列番号55、配列番号56、配列番号58、もしくは配列番号60のアミノ酸配列、またはそれらの断片もしくはバリアントをコードする。一実施形態において、HER2DBiTEをコードするヌクレオチド配列は、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、もしくは配列番号67のヌクレオチド配列、またはそれらの断片もしくはバリアントを含む。
【0079】
一実施形態において、EGFRvIII2DICEをコードするヌクレオチド配列は、配列番号70もしくは配列番号72のアミノ酸配列、またはそれらの断片もしくはバリアントをコードする。一実施形態において、EGFRvIII2DICEをコードするヌクレオチド配列は、配列番号69もしくは配列番号71のヌクレオチド配列、またはそれらの断片もしくはバリアントを含む。
【0080】
一実施形態において、HER2DICEをコードするヌクレオチド配列は、配列番号74、もしくは配列番号76のアミノ酸配列、またはそれらの断片もしくはバリアントをコードする。一実施形態において、HER2DICEをコードするヌクレオチド配列は、配列番号73もしくは配列番号75のヌクレオチド配列、またはそれの断片もしくはバリアントを含む。
【0081】
一実施形態において、組成物は、抗Her2抗体(HER2DMAb)をコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態において、HER2DMAbをコードするヌクレオチド配列は、配列番号62、配列番号64、またはそれらの断片もしくはバリアントをコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態において、HER2DMAbをコードするヌクレオチド配列は、配列番号61、配列番号63、またはそれの断片もしくはバリアントを含む。
【0082】
一実施形態において、組成物は、scFv抗Her2抗体を含む。一実施形態において、scFv抗Her2抗体をコードするヌクレオチド配列は、配列番号66またはその断片もしくはバリアントをコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態において、scFv抗Her2抗体をコードするヌクレオチド配列は、配列番号65、またはその断片もしくはバリアントを含む。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0083】
ある特定の実施形態において、組成物は、本発明の合成抗体(例えば、DMAb、ScFv抗体断片、DICEまたはDBiTE)が結合する抗原に関連する疾患または障害を治療、予防、および/またはそれに対して保護し得る。一実施形態において、本発明の組成物は、標的抗原の発現に関連する任意の疾患、障害、または状態を治療、予防、および/またはそれに対して保護し得る。ある特定の実施形態において、組成物は、癌を治療、予防、および/またはそれに対して保護し得る。
【0084】
合成抗体(例えば、DMAb、ScFv抗体断片、DICEまたはDBiTE)は、組成物を投与された対象において疾患を治療、予防、および/またはそれに対して保護し得る。合成抗体(例えば、DMAb、ScFv抗体断片、DICEまたはDBiTE)は、組成物を投与された対象において疾患の生存期間を促進することができる。合成抗体(例えば、DMAb、ScFv抗体断片、DICEまたはDBiTE)は、組成物を投与された対象において疾患の少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%生存期間を提供し得る。他の実施形態において、合成抗体(例えば、DMAb、ScFv抗体断片、DICEまたはDBiTE)は、組成物を投与された対象において疾患の少なくとも約65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、または80%の生存期間を提供することができる。
【0085】
組成物は、組成物の対象への投与の少なくとも約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、20時間、25時間、30時間、35時間、40時間、45時間、50時間、または60時間以内に、対象における合成抗体(例えば、DMAb、ScFv抗体断片、DICEまたはDBiTE)の生成をもたらし得る。組成物は、対象への組成物の投与の少なくとも約1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、または10日以内に、対象における合成抗体(例えば、DMAb、ScFv抗体断片、DICEまたはDBiTE)の生成をもたらし得る。組成物は、対象への組成物の投与の約1時間~約6日、約1時間~約5日、約1時間~約4日、約1時間~約3日、約1時間~約2日、約1時間~約1日、約1時間~約72時間、約1時間~約60時間、約1時間~約48時間、約1時間~約36時間、約1時間~約24時間、約1時間~約12時間、約1時間~約6時間以内に、対象における合成抗体(例えば、DMAb、ScFv抗体断片、DICEまたはDBiTE)の生成をもたらし得る。
【0086】
組成物は、それを必要とする対象に投与される場合、体液性免疫応答を誘導するために抗原を投与される対象における内因性抗体の生成よりも、対象における合成抗体(例えば、DMAb、ScFv抗体断片、DICEまたはDBiTE)の生成をより迅速にもたらし得る。組成物は、体液性免疫応答を誘導するために抗原を投与された対象における内因性抗体の生成の少なくとも約1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、または10日前に合成抗体(例えば、DMAb、ScFv抗体断片、DICEまたはDBiTE)の生成をもたらし得る。
【0087】
本発明の組成物は、組成物が病気または死を引き起こさないように安全である、病気に対して保護的である、ならびに投与の容易さ、少ない副作用、生物学的安定性、および用量あたりの費用の低さを提供するなどの、有効な組成物に必要な特徴を有し得る。
【0088】
組換え核酸配列
上に記載されるように、組成物は、組換え核酸配列を含み得る。組換え核酸配列は、合成抗体(例えば、DMAb、ScFv抗体断片、DICEまたはDBiTE)、その断片、そのバリアント、またはその組み合わせをコードし得る。抗体は、以下でより詳細に記載される。
【0089】
組換え核酸配列は、異種核酸配列であり得る。組換え核酸配列は、少なくとも1つの異種核酸配列または1つ以上の異種核酸配列を含み得る。
【0090】
組換え核酸配列は、最適化核酸配列であり得る。そのような最適化は、抗体の免疫原性を増加または変化させることができる。最適化はまた、転写および/または翻訳を改善することができる。最適化は、以下、転写を増加させるための低GC含量リーダー配列、mRNA安定性およびコドン最適化、増加した翻訳のためのkozak配列(例えば、GCCACC)の付加、シグナルペプチドをコードする免疫グロブリン(Ig)リーダー配列の付加、ならびに可能な限りのcis作用配列モチーフ(すなわち、内部TATAボックス)の排除、のうちの1つ以上を含み得る。
【0091】
組換え核酸配列は、1つ以上の組換え核酸配列構築物を含み得る。組換え核酸配列構築物は、以下でより詳細に記載される1つ以上の構成要素を含み得る。
【0092】
組換え核酸配列構築物は、重鎖ポリペプチド、その断片、そのバリアント、またはその組み合わせをコードする異種核酸配列を含み得る。組換え核酸配列構築物は、軽鎖ポリペプチド、その断片、そのバリアント、またはその組み合わせをコードする異種核酸配列を含み得る。組換え核酸配列構築物はまた、プロテアーゼまたはペプチダーゼ切断部位をコードする異種核酸配列も含み得る。組換え核酸配列構築物はまた、内部リボソーム進入部位(IRES)をコードする異種核酸配列も含み得る。IRESは、ウイルスIRESまたは真核IRESのいずれかであり得る。組換え核酸配列構築物は、各リーダー配列がシグナルペプチドをコードする1つ以上のリーダー配列を含み得る。組換え核酸配列構築物は、1つ以上のプロモーター、1つ以上のイントロン、1つ以上の転写終結領域、1つ以上の開始コドン、1つ以上の終結もしくは停止コドン、および/または1つ以上のポリアデニル化シグナルを含み得る。組換え核酸配列構築物はまた、1つ以上のリンカーまたはタグ配列を含み得る。タグ配列は、ヘマグルチニン(HA)タグをコードすることができる。
【0093】
重鎖ポリペプチド
組換え核酸配列構築物は、重鎖ポリペプチド、その断片、そのバリアント、またはその組み合わせをコードする異種核酸を含み得る。重鎖ポリペプチドは、可変重鎖(VH)領域および/または少なくとも1つの定常重鎖(CH)領域を含み得る。少なくとも1つの定常重鎖領域は、定常重鎖領域1(CH1)、定常重鎖領域2(CH2)、および定常重鎖領域3(CH3)、ならびに/またはヒンジ領域を含み得る。
【0094】
いくつかの実施形態において、重鎖ポリペプチドは、VH領域およびCH1領域を含み得る。他の実施形態において、重鎖ポリペプチドは、VH領域、CH1領域、ヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域を含み得る。
【0095】
重鎖ポリペプチドは、相補性決定領域(「CDR」)セットを含み得る。CDRセットは、VH領域の3つの超可変領域を含み得る。重鎖ポリペプチドのN末端から進行すると、これらのCDRはそれぞれ、「CDR1」、「CDR2」、および「CDR3」と表される。重鎖ポリペプチドのCDR1、CDR2、およびCDR3は、抗原の結合または認識に寄与し得る。
【0096】
軽鎖ポリペプチド
組換え核酸配列構築物は、軽鎖ポリペプチド、その断片、そのバリアント、またはその組み合わせをコードする異種核酸配列を含み得る。軽鎖ポリペプチドは、可変軽鎖(VL)領域および/または定常軽鎖(CL)領域を含み得る。
【0097】
軽鎖ポリペプチドは、相補性決定領域(「CDR」)セットを含み得る。CDRセットは、VL領域の3つの超可変領域を含み得る。軽鎖ポリペプチドのN末端から進行すると、これらのCDRはそれぞれ、「CDR1」、「CDR2」、および「CDR3」と表される。軽鎖ポリペプチドのCDR1、CDR2、およびCDR3は、抗原の結合または認識に寄与し得る。
【0098】
プロテアーゼ切断部位
組換え核酸配列構築物は、プロテアーゼ切断部位をコードする異種核酸配列を含み得る。プロテアーゼ切断部位は、プロテアーゼまたはペプチダーゼによって認識され得る。プロテアーゼは、エンドペプチダーゼまたはエンドプロテアーゼ、例えば、これらに限定されないが、フリン、エラスターゼ、HtrA、カルパイン、トリプシン、キモトリプシン、トリプシン、およびペプシンであり得る。プロテアーゼは、フリンであり得る。他の実施形態において、プロテアーゼは、セリンプロテアーゼ、トレオニンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ、または内部ペプチド結合を切断する(すなわち、N末端またはC末端ペプチド結合を切断しない)任意のプロテアーゼであり得る。
【0099】
プロテアーゼ切断部位は、切断の効率を促進または増加させる1つ以上のアミノ酸配列を含み得る。1つ以上のアミノ酸配列は、別個のポリペプチドを形成または生成する効率を促進または増加させることができる。1つ以上のアミノ酸配列は、2Aペプチド配列を含み得る。
【0100】
リンカー配列
組換え核酸配列構築物は、1つ以上のリンカー配列を含み得る。リンカー配列は、本明細書に記載される1つ以上の構成要素を空間的に分離または連結することができる。他の実施形態において、リンカー配列は、2つ以上のポリペプチドを空間的に分離または連結するアミノ酸配列をコードすることができる。一実施形態において、リンカー配列は、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号68)のアミノ酸配列を有するG4Sリンカー配列である。
【0101】
プロモーター
組換え核酸配列構築物は、1つ以上のプロモーターを含み得る。1つ以上のプロモーターは、遺伝子発現を駆動し、かつ遺伝子発現を調節することができる任意のプロモーターであり得る。そのようなプロモーターは、DNA依存性RNAポリメラーゼを介した転写に必要なシス作用配列エレメントである。遺伝子発現を誘導するために使用されるプロモーターの選択は、特定の用途に依存する。プロモーターは、組換え核酸配列構築物における転写開始から、その天然設定における転写開始部位からのほぼ同じ距離に配置され得る。しかしながら、この距離における変動は、プロモーター機能の喪失なしに順応され得る。
【0102】
プロモーターは、重鎖ポリペプチドおよび/または軽鎖ポリペプチドをコードする異種核酸配列に作動可能に連結され得る。プロモーターは、真核細胞における発現に有効であると示されるプロモーターであり得る。コード配列に作動可能に連結されたプロモーターは、CMVプロモーター、SV40早期プロモーターおよびSV40後期プロモーターなどのシミアンウイルス40(SV40)由来のプロモーター、マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーター、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)長鎖末端反復(LTR)プロモーターなどのヒト免疫不全ウイルス(HIV)プロモーター、モロニーウイルスプロモーター、鳥白血病ウイルス(ALV)プロモーター、CMV即時早期プロモーターなどのサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、エプスタインバーウイルス(EBV)プロモーター、またはラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーターであり得る。プロモーターはまた、ヒトアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチン、ヒトポリヘドリン、またはヒトメタロチオネインなどのヒト遺伝子由来のプロモーターであり得る。
【0103】
プロモーターは、構成的プロモーターまたは宿主細胞が何らかの特定の外部刺激に曝露された時のみ転写を開始する誘導性プロモーターであり得る。多細胞生物の場合、プロモーターはまた、特定の組織または器官または発達段階に特異的であり得る。プロモーターはまた、天然または合成の筋肉または皮膚特異的プロモーターなどの組織特異的プロモーターであってもよい。そのようなプロモーターの例は、米国特許出願公開第2004/0175727号に記載されており、その内容は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0104】
プロモーターは、エンハンサーと関連し得る。エンハンサーは、コード配列の上流に位置することができる。エンハンサーは、ヒトアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチン、またはCMV、FMDV、RSV、またはEBVからの1つなどのウイルスエンハンサーであり得る。ポリヌクレオチド機能増強は、米国特許第5,593,972号、第5,962,428号、およびW094/016737に記載されており、各々の内容は、参照により完全に組み込まれる。
【0105】
転写終結領域
組換え核酸配列構築物は、1つ以上の転写終結領域を含み得る。転写終端領域は、効率的な終結を提供するために、コード配列の下流にあり得る。転写終結領域は、上に記載されるプロモーターと同じ遺伝子から得ることができるか、または1つ以上の異なる遺伝子から得ることができる。
【0106】
開始コドン
組換え核酸配列構築物は、1つ以上の開始コドンを含み得る。開始コドンは、コード配列の上流に位置することができる。開始コドンは、コード配列とフレーム内にあり得る。開始コドンは、効率的な翻訳開始に必要な1つ以上のシグナル、例えば、これらに限定されないが、リボソーム結合部位と関連し得る。
【0107】
終結コドン
組換え核酸配列構築物は、1つ以上の終結または停止コドンを含み得る。終結コドンは、コード配列の下流であり得る。終結コドンは、コード配列とフレーム内にあり得る。終結コドンは、効率的な翻訳終結に必要な1つ以上のシグナルと関連し得る。
【0108】
ポリアデニル化シグナル
組換え核酸配列構築物は、1つ以上のポリアデニル化シグナルを含み得る。ポリアデニル化シグナルは、転写産物の効率的なポリアデニル化に必要な1つ以上のシグナルを含み得る。ポリアデニル化シグナルは、コード配列の下流に位置することができる。ポリアデニル化シグナルは、SV40ポリアデニル化シグナル、LTRポリアデニル化シグナル、ウシ成長ホルモン(bGH)ポリアデニル化シグナル、ヒト成長ホルモン(hGH)ポリアデニル化シグナル、またはヒトβ-グロビンポリアデニル化シグナルであり得る。SV40ポリアデニル化シグナルは、pCEP4プラスミド(Invitrogen、San Diego,CA)からのポリアデニル化シグナルであり得る。
【0109】
リーダー配列
組換え核酸配列構築物は、1つ以上のリーダー配列を含み得る。リーダー配列は、シグナルペプチドをコードし得る。シグナルペプチドは、免疫グロブリン(Ig)シグナルペプチド、例えば、これらに限定されないが、IgGシグナルペプチドおよびIgEシグナルペプチドであり得る。
【0110】
組換え核酸配列構築物からの発現
上に記載されるように、組換え核酸配列構築物は、1つ以上の構成要素の中に、重鎖ポリペプチドをコードする異種核酸配列および/または軽鎖ポリペプチドをコードする異種核酸配列を含み得る。したがって、組換え核酸配列構築物は、重鎖ポリペプチドおよび/または軽鎖ポリペプチドの発現を容易にすることができる。
【0111】
上に記載されるような配置1が利用される時、第1の組換え核酸配列構築物は、重鎖ポリペプチドの発現を容易にすることができ、第2の組換え核酸配列構築物は、軽鎖ポリペプチドの発現を容易にすることができる。上に記載されるような配置2が利用される時、組換え核酸配列構築物は、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドの発現を容易にすることができる。
【0112】
発現すると、例えば、これらに限定されないが、細胞、生物、または哺乳動物において、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドは、合成抗体(例えば、DMAb、ScFv抗体断片、DICEまたはDBiTE)に集合し得る。特に、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドは、集合が抗原に結合することができる合成抗体(例えば、DMAb、ScFv抗体断片、DICEまたはDBiTE)をもたすように互いに相互作用し得る。他の実施形態において、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドは、集合が本明細書に記載されるように集合していない抗体と比較してより免疫原性である合成抗体(例えば、DMAb、ScFv抗体断片、DICEまたはDBiTE)をもたらすように互いに相互作用し得る。さらに他の実施形態において、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドは、集合が抗原に対する免疫応答を誘発または誘導することができる合成抗体(例えば、DMAb、ScFv抗体断片、DICEまたはDBiTE)をもたらすように互いに相互作用することができる。
【0113】
ベクター
上に記載される組換え核酸配列構築物は、1つ以上のベクターに配置することができる。1つ以上のベクターは、複製起点を含み得る。1つ以上のベクターは、プラスミド、バクテリオファージ、細菌人工染色体、または酵母人工染色体であり得る。1つ以上のベクターは、自己複製染色体外ベクター、または宿主ゲノムに統合するベクターのいずれかであり得る。
【0114】
1つ以上のベクターは、異種発現構築物であり得、これは一般的には、特定の遺伝子を標的細胞に導入するために使用されるプラスミドである。発現ベクターが細胞内に入ると、組換え核酸配列構築物によってコードされる重鎖ポリペプチドおよび/または軽鎖ポリペプチドが、細胞転写および翻訳機構リボソーム複合体によって産生される。1つ以上のベクターは、多量の安定したメッセンジャーRNA、およびしたがってタンパク質を発現することができる。
【0115】
発現ベクター
1つ以上のベクターは、環状プラスミドまたは線状核酸であり得る。環状プラスミドおよび線状核酸は、適切な対象細胞における特定のヌクレオチド配列の発現を誘導することができる。組換え核酸配列構築物を含む1つ以上のベクターは、キメラであり得、その構成要素のうちの少なくとも1つが、その他の構成要素のうちの少なくとも1つに対して異種であることを意味する。
【0116】
プラスミド
1つ以上のベクターは、プラスミドであり得る。プラスミドは、細胞を組換え核酸配列構築物でトランスフェクトするために有用であり得る。プラスミドは、組換え核酸配列構築物を対象に導入するために有用であり得る。プラスミドはまた、プラスミドが投与される細胞における遺伝子発現に十分に適し得る、制御配列を含み得る。
【0117】
プラスミドはまた、プラスミドを染色体外に維持し、細胞においてプラスミドの複数のコピーを産生するために、哺乳動物の複製起点を含み得る。プラスミドは、Invitrogen(San Diego,CA)からのpVAX1、pCEP4、またはpREP4であり得、これは、Epstein Barrウイルス複製起点および核抗原EBNA-1コード領域を含み得、これは、統合なしに高コピーエピソーム複製を産生し得る。プラスミドの骨格は、pAV0242であり得る。プラスミドは、複製欠損アデノウイルス5型(Ad5)プラスミドであり得る。
【0118】
プラスミドは、Escherichia coli(E.coli)におけるタンパク質産生に使用され得る、pSE420(Invitrogen、San Diego,Calif.)であり得る。プラスミドはまた、酵母のSaccharomyces cerevisiae株におけるタンパク質産生に使用され得る、p YES2(Invitrogen、San Diego,Calif.)であり得る。プラスミドは、昆虫細胞におけるタンパク質産生に使用され得る、MAXBAC(商標)完全バキュロウイルス発現システム(Invitrogen、San Diego,Calif.)のものでもあり得る。プラスミドはまた、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの哺乳動物細胞におけるタンパク質産生に使用され得る、pcDNAIまたはpcDNA3(Invitrogen、San Diego,Calif.)であり得る。
【0119】
RNA
一実施形態において、核酸は、RNA分子である。一実施形態において、RNA分子は、DNA配列から転写される。したがって、一実施形態において、本発明は、本発明の合成抗体のうちの1つ以上をコードするRNA分子を提供する。RNAは、プラス鎖であり得る。したがって、いくつかの実施形態において、RNA分子は、逆転写などの任意の介在複製ステップを必要とすることなく細胞によって翻訳することができる。本発明で有用なRNA分子は、5′キャップ(例えば、7-メチルグアノシン)を有し得る。このキャップは、RNAのインビボ翻訳を向上させることができる。本発明で有用なRNA分子の5′ヌクレオチドは、5′三リン酸基を有し得る。キャップRNAでは、これは、5′-5′架橋を介して7-メチルグアノシンに連結され得る。RNA分子は、3′ポリ-Aテールを有し得る。それはまた、その3′末端近くにポリ-Aポリメラーゼ認識配列(例えば、AAUAAA)を含み得る。本発明で有用なRNA分子は、一本鎖であり得る。本発明で有用なRNA分子は、合成RNAを含み得る。いくつかの実施形態において、RNA分子は、裸RNA分子である。一実施形態において、RNA分子は、ベクター内に含まれる。
【0120】
一実施形態において、RNAは、5’および3’UTRを有する。一実施形態において、5’UTRは、0~3000ヌクレオチド長である。コード領域に付加される5’および3’UTR配列の長さは、これらに限定されないが、UTRの異なる領域にアニールするPCRのプライマーを設計することを含む、異なる方法によって変更することができる。このアプローチを用いて、当業者は、転写RNAのトランスフェクション後の最適な翻訳効率を達成するために必要な5’および3’UTR長を修飾することができる。
【0121】
5’および3’UTRは、目的の遺伝子についての天然発生型、内因性5’および3’UTRであり得る。あるいは、目的の遺伝子に内因性ではないUTR配列は、UTR配列をフォワードおよびリバースプライマーに組み込むことによって、またはテンプレートの任意の他の修飾によって付加することができる。目的の遺伝子に内因性ではないUTR配列の使用は、RNAの安定性および/または翻訳効率を修飾するために有用であり得る。例えば、3’UTR配列におけるAU富化エレメントは、RNAの安定性を増加させることができることが知られている。したがって、3’UTRは、当該技術分野において周知であるUTRの特性に基づいて転写されたRNAの安定性を増加させるように選択または設計することができる。
【0122】
一実施形態において、5’UTRは、内因性遺伝子のKozak配列を含み得る。あるいは、目的の遺伝子に内因性ではない5’UTRが、上記のPCRによって付加されている時、コンセンサスKozak配列は、5’UTR配列を付加することによって再設計することができる。Kozak配列は、いくつかのRNA転写物の翻訳の効率を増加させることができるが、全てのRNAについて効率的な転写を可能にするために必要とされるわけではないようである。多くのRNAのKozak配列の要件は、当該技術分野において既知である。他の実施形態において、5’UTRは、RNAウイルスに由来し得、このRNAゲノムは、細胞において安定である。他の実施形態において、様々なヌクレオチド類似体は、RNAのエキソヌクレアーゼ分解を妨げるために3’または5’UTRにおいて使用することができる。
【0123】
一実施形態において、RNAは、5’末端および3’ポリ(A)テールの両方にキャップを有し、これは、リボソーム結合、翻訳の開始、および細胞におけるRNAの安定性を決定する。
【0124】
一実施形態において、RNAは、ヌクレオシド修飾RNAである。ヌクレオシド修飾RNAは、例えば、安定性の増加、自然免疫原性の低さまたは不在、および翻訳の向上を含む、非修飾RNAに対する特定の利点を有する。
【0125】
環状および線状ベクター
1つ以上のベクターは、細胞ゲノムへの統合によって標的細胞を形質転換するか、または染色体外に存在し得る、環状プラスミド(例えば、複製起点を有する自律複製プラスミド)であり得る。ベクターは、pVAX、pcDNA3.0、もしくはprovaxであるか、または組換え核酸配列構築物によってコードされる重鎖ポリペプチドおよび/もしくは軽鎖ポリペプチドを発現することができる任意の他の発現ベクターであり得る。
【0126】
エレクトロポレーションを介して対象に効率的に送達し、かつ組換え核酸配列構築物によってコードされる重鎖ポリペプチドおよび/または軽鎖ポリペプチドを発現することができる、線状核酸、または線状発現カセット(「LEC」)もまた本明細書に提供される。LECは、リン酸骨格が全くない任意の線状DNAであり得る。LECは、任意の抗生物質耐性遺伝子および/またはリン酸骨格を含まない場合がある。LECは、所望の遺伝子発現に関連していない他の核酸配列を含まない場合がある。
【0127】
LECは、線状化することができる任意のプラスミドに由来し得る。プラスミドは、組換え核酸配列構築物によってコードされる重鎖ポリペプチドおよび/または軽鎖ポリペプチドを発現することができる場合がある。プラスミドは、pNP(Puerto Rico/34)またはpM2(New Caledonia/99)であり得る。プラスミドは、WLV009、pVAX、pcDNA3.0、もしくはprovaxであるか、または組換え核酸配列構築物によってコードされる重鎖ポリペプチドおよび/もしくは軽鎖ポリペプチドを発現することができる任意の他の発現ベクターであり得る。
【0128】
LECは、pcrM2であり得る。LECは、pcrNPであり得る。pcrNPおよびpcrMRは、それぞれ、pNP(Puerto Rico/34)およびpM2(New Caledonia/99)に由来し得る。
【0129】
ベクターを調製する方法
組換え核酸配列構築物が配置されている1つ以上のベクターを調製するための方法が本明細書に提供される。最終サブクローニングステップ後、ベクターは、当該技術分野における既知の方法を用いて、大規模発酵タンクにおける細胞培養物を接種するために使用することができる。
【0130】
他の実施形態において、最終サブクローニングステップ後、ベクターは、1つ以上のエレクトロポレーション(EP)デバイスで使用することができる。EPデバイスは、以下でより詳細に記載される。
【0131】
1つ以上のベクターは、既知のデバイスおよび技法の組み合わせを用いて製剤化または製造することができるが、好ましくは、それらは、2007年5月23日に出願された、許諾され、同時係属中の米国仮特許出願第60/939,792号に記載されるプラスミド製造技法を用いて製造される。いくつかの例では、本明細書に記載されるDNAプラスミドは、10mg/mL以上の濃度で製剤化することができる。製造技法はまた、2007年7月3日に発行された許諾対象特許である米国特許第7,238,522号に記載されるものを含む、米国特許出願第60/939792号に記載されるものに加えて、当業者に一般に既知である様々なデバイスおよびプロトコルを含むか、または組み込む。上記の出願および特許、それぞれ米国特許出願第60/939,792号および米国特許第7,238,522号は、それらの全体において本明細書に組み込まれる。
【0132】
抗体
いくつかの実施形態において、本発明は、抗体、その断片、そのバリアント、またはその組み合わせをコードする組換え核酸配列に関する。抗体は、以下でより詳細に記載される抗原と結合または反応し得る。いくつかの実施形態において、抗体は、DNAコード化モノクローナル抗体(DMAb)、その断片、またはそのバリアントである。いくつかの実施形態において、断片は、ScFv断片である。いくつかの実施形態において、抗体は、DNAコード化二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)、その断片、またはそのバリアントである。
【0133】
いくつかの実施形態において、抗体は、重鎖および軽鎖相補性決定領域(「CDR」)セットを含み得、それぞれ、CDRに支持を提供し、互いに対してCDRの空間関係を画定する重鎖および軽鎖フレームワーク(「FR」)セットの間に挿入される。CDRセットは、重鎖V領域または軽鎖V領域の3つの超可変領域を含み得る。重鎖または軽鎖のN末端から進行すると、これらの領域は、それぞれ、「CDR1」、「CDR2」、および「CDR3」と表される。したがって、抗原結合部位は、重鎖V領域および軽鎖V領域の各々からのCDRセットを含む6つのCDRを含み得る。
【0134】
タンパク質分解酵素パパインは、IgG分子を優先的に切断していくつかの断片を得、そのうちの2つ(F(ab)断片)はそれぞれ、無傷の抗原結合部位を含む共有ヘテロ二量体を含む。酵素ペプシンは、IgG分子を切断して、両方の抗原結合部位を含むF(ab’)2断片を含むいくつかの断片を提供し得る。したがって、抗体は、FabまたはF(ab’)2であり得る。Fabは、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドを含み得る。Fabの重鎖ポリペプチドは、VH領域およびCH1領域を含み得る。Fabの軽鎖は、VL領域およびCL領域を含み得る。
【0135】
抗体は、免疫グロブリン(Ig)であり得る。Igは、例えば、IgA、IgM、IgD、IgE、およびIgGであり得る。免疫グロブリンは、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドを含み得る。免疫グロブリンの重鎖ポリペプチドは、VH領域、CH1領域、ヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域を含み得る。免疫グロブリンの軽鎖ポリペプチドは、VL領域およびCL領域を含み得る。
【0136】
抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり得る。抗体は、キメラ抗体、一本鎖抗体、親和性成熟抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、または完全ヒト抗体であり得る。ヒト化抗体は、非ヒト種由来の1つ以上の相補性決定領域(CDR)およびヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域を有する所望の抗原と結合する非ヒト種由来の抗体であり得る。
【0137】
抗体は、以下でより詳細に記載される二重特異性抗体であり得る。抗体は、また以下でより詳細に記載される二機能性抗体であり得る。
【0138】
上に記載されるように、抗体は、組成物を対象に投与すると、対象において生成され得る。抗体は、対象内で半減期を有し得る。いくつかの実施形態において、抗体は、対象内のその半減期を延長または短縮するように修飾されてもよい。そのような修飾は、以下でより詳細に記載される。
【0139】
抗体は、以下でより詳細に記載されるように脱フコシル化され得る。
【0140】
ScFv抗体
一実施形態において、本発明のDMAbは、ScFv DMAbである。一実施形態において、ScFv DMAbは、CH1およびCL領域のものを含まないFab断片に関する。したがって、一実施形態において、ScFv DMAbは、VHおよびVLを含むFab断片DMAbに関する。一実施形態において、ScFv DMAbは、VHとVLとの間にリンカーを含む。一実施形態において、ScFv DMAbは、ScFv-Fc DMAbである。一実施形態において、ScFv-Fc DMAbは、VH、VL、ならびにCH2およびCH3領域を含む。一実施形態において、ScFv-Fc DMAbは、VHとVLとの間にリンカーを含む。一実施形態において、本発明のScFv DMAbは、親DMAbと比較して、修飾発現、安定性、半減期、抗原結合、重鎖-軽鎖対合、組織浸透、またはそれらの組み合わせを有する。
【0141】
一実施形態において、本発明のScFv DMAbは、親DMAbより、少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも1.9倍、少なくとも2倍、少なくとも2.1倍、少なくとも2.2倍、少なくとも2.3倍、少なくとも2.4倍、少なくとも2.5倍、少なくとも2.6倍、少なくとも2.7倍、少なくとも最低2.8倍、最低2.9倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5倍、少なくとも5.5倍、少なくとも6倍、少なくとも6.5倍、少なくとも7倍、少なくとも7.5倍、少なくとも8倍、少なくとも8.5倍、少なくとも9倍、少なくとも9.5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、または50倍超高い発現を有する。
【0142】
一実施形態において、本発明のScFv DMAbは、親DMAbより、少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも1.9倍、少なくとも2倍、少なくとも2.1倍、少なくとも2.2倍、少なくとも2.3倍、少なくとも2.4倍、少なくとも2.5倍、少なくとも2.6倍、少なくとも2.7倍、少なくとも最低2.8倍、最低2.9倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5倍、少なくとも5.5倍、少なくとも6倍、少なくとも6.5倍、少なくとも7倍、少なくとも7.5倍、少なくとも8倍、少なくとも8.5倍、少なくとも9倍、少なくとも9.5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、または50倍超高い抗原結合を有する。
【0143】
一実施形態において、本発明のScFv DMAbは、親DMAbより、少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも1.9倍、少なくとも2倍、少なくとも2.1倍、少なくとも2.2倍、少なくとも2.3倍、少なくとも2.4倍、少なくとも2.5倍、少なくとも2.6倍、少なくとも2.7倍、少なくとも最低2.8倍、最低2.9倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5倍、少なくとも5.5倍、少なくとも6倍、少なくとも6.5倍、少なくとも7倍、少なくとも7.5倍、少なくとも8倍、少なくとも8.5倍、少なくとも9倍、少なくとも9.5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、または50倍超長い半減期を有する。
【0144】
一実施形態において、本発明のScFv DMAbは、親DMAbより、少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも1.9倍、少なくとも2倍、少なくとも2.1倍、少なくとも2.2倍、少なくとも2.3倍、少なくとも2.4倍、少なくとも2.5倍、少なくとも2.6倍、少なくとも2.7倍、少なくとも最低2.8倍、最低2.9倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5倍、少なくとも5.5倍、少なくとも6倍、少なくとも6.5倍、少なくとも7倍、少なくとも7.5倍、少なくとも8倍、少なくとも8.5倍、少なくとも9倍、少なくとも9.5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、または50倍超高い安定性を有する。
【0145】
一実施形態において、本発明のScFv DMAbは、親DMAbより、少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも1.9倍、少なくとも2倍、少なくとも2.1倍、少なくとも2.2倍、少なくとも2.3倍、少なくとも2.4倍、少なくとも2.5倍、少なくとも2.6倍、少なくとも2.7倍、少なくとも最低2.8倍、最低2.9倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5倍、少なくとも5.5倍、少なくとも6倍、少なくとも6.5倍、少なくとも7倍、少なくとも7.5倍、少なくとも8倍、少なくとも8.5倍、少なくとも9倍、少なくとも9.5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、または50倍超の組織透過率を有する。
【0146】
一実施形態において、本発明のScFv DMAbは、親DMAbより、少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも1.9倍、少なくとも2倍、少なくとも2.1倍、少なくとも2.2倍、少なくとも2.3倍、少なくとも2.4倍、少なくとも2.5倍、少なくとも2.6倍、少なくとも2.7倍、少なくとも最低2.8倍、最低2.9倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5倍、少なくとも5.5倍、少なくとも6倍、少なくとも6.5倍、少なくとも7倍、少なくとも7.5倍、少なくとも8倍、少なくとも8.5倍、少なくとも9倍、少なくとも9.5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、または50倍超の重鎖-軽鎖対合を有する。
【0147】
一実施形態において、抗HER2scFv抗体は、配列番号66のアミノ酸配列に対して少なくとも90%相同であるアミノ酸配列、または配列番号66のアミノ酸配列に対して少なくとも90%相同であるアミノ酸配列の断片を含む。一実施形態において、抗HER2scFv抗体は、配列番号66のアミノ酸、または配列番号66のアミノ酸配列の断片を含む。一実施形態において、抗HER2scFv抗体は、配列番号65によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも90%相同であるアミノ酸配列、または配列番号65のうちの1つによってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも90%相同であるアミノ酸配列の断片を含む。一実施形態において、抗HER2scFv抗体は、配列番号65によってコードされるアミノ酸配列、または配列番号65によってコードされるアミノ酸配列の断片を含む。
【0148】
モノクローナル抗体
一実施形態において、本発明は、抗HER2抗体を提供する。抗体は、完全なままのモノクローナル抗体、および免疫学的に活性な断片(例えば、Fabまたは(Fab)2断片)、モノクローナル抗体重鎖、またはモノクローナル抗体軽鎖であり得る。
【0149】
抗体は、重鎖および軽鎖相補性決定領域(「CDR」)セットを含み得、それぞれ、CDRに支持を提供し、互いに対してCDRの空間関係を画定する重鎖および軽鎖フレームワーク(「FR」)セットの間に挿入される。CDRセットは、重鎖V領域または軽鎖V領域の3つの超可変領域を含み得る。重鎖または軽鎖のN末端から進行すると、これらの領域は、それぞれ、「CDR1」、「CDR2」、および「CDR3」と表される。したがって、抗原結合部位は、重鎖V領域および軽鎖V領域の各々からのCDRセットを含む6つのCDRを含み得る。
【0150】
抗体は、免疫グロブリン(Ig)であり得る。Igは、例えば、IgA、IgM、IgD、IgE、およびIgGであり得る。免疫グロブリンは、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドを含み得る。免疫グロブリンの重鎖ポリペプチドは、VH領域、CH1領域、ヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域を含み得る。免疫グロブリンの軽鎖ポリペプチドは、VL領域およびCL領域を含み得る。
【0151】
一実施形態において、抗HER2抗体は、ヒトにおける発現のために最適化される。一実施形態において、抗HER2抗体は、配列番号62のアミノ酸配列に対して少なくとも90%相同であるアミノ酸配列、または配列番号62のアミノ酸配列に対して少なくとも90%相同であるアミノ酸配列の断片を含む。一実施形態において、抗HER2抗体は、配列番号62のアミノ酸、または配列番号62のアミノ酸配列の断片を含む。一実施形態において、抗HER2抗体は、配列番号61によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも90%相同であるアミノ酸配列、または配列番号61のうちの1つによってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも90%相同であるアミノ酸配列の断片を含む。一実施形態において、抗HER2抗体は、配列番号61によってコードされるアミノ酸配列、または配列番号61によってコードされるアミノ酸配列の断片を含む。
【0152】
一実施形態において、抗HER2抗体は、マウスにおける発現のために最適化される。一実施形態において、抗HER2抗体は、配列番号64のアミノ酸配列に対して少なくとも90%相同であるアミノ酸配列、または配列番号64のアミノ酸配列に対して少なくとも90%相同であるアミノ酸配列の断片を含む。一実施形態において、抗HER2抗体は、配列番号64のアミノ酸、または配列番号64のアミノ酸配列の断片を含む。一実施形態において、抗HER2抗体は、配列番号61によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも90%相同であるアミノ酸配列、または配列番号63のうちの1つによってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも90%相同であるアミノ酸配列の断片を含む。一実施形態において、抗HER2抗体は、配列番号63によってコードされるアミノ酸配列、または配列番号63によってコードされるアミノ酸配列の断片を含む。
【0153】
二重特異性T細胞エンゲージャー
上に記載されるように、組換え核酸配列は、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)、その断片、そのバリアント、またはその組み合わせをコードし得る。BiTEの抗原標的ドメインは、以下でより詳細に記載される抗原と結合または反応し得る。
【0154】
BiTEの抗原標的ドメインは、抗体、その断片、そのバリアント、またはその組み合わせを含み得る。BiTEの抗原標的ドメインは、重鎖および軽鎖相補性決定領域(「CDR」)セットを含み得、それぞれ、CDRに支持を提供し、互いに対してCDRの空間関係を画定する重鎖および軽鎖フレームワーク(「FR」)セットの間に挿入される。CDRセットは、重鎖V領域または軽鎖V領域の3つの超可変領域を含み得る。重鎖または軽鎖のN末端から進行すると、これらの領域は、それぞれ、「CDR1」、「CDR2」、および「CDR3」と表される。したがって、抗原結合ドメインは、重鎖V領域および軽鎖V領域の各々からのCDRセットを含む6つのCDRを含み得る。
【0155】
タンパク質分解酵素パパインは、IgG分子を優先的に切断していくつかの断片を得、そのうちの2つ(F(ab)断片)はそれぞれ、無傷の抗原結合部位を含む共有ヘテロ二量体を含む。酵素ペプシンは、IgG分子を切断して、両方の抗原結合部位を含むF(ab’)2断片を含むいくつかの断片を提供し得る。したがって、BiTEの抗原標的ドメインは、FabまたはF(ab’)2であり得る。Fabは、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドを含み得る。Fabの重鎖ポリペプチドは、VH領域およびCH1領域を含み得る。Fabの軽鎖は、VL領域およびCL領域を含み得る。
【0156】
BiTEの抗原標的ドメインは、免疫グロブリン(Ig)であり得る。Igは、例えば、IgA、IgM、IgD、IgE、およびIgGであり得る。免疫グロブリンは、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドを含み得る。免疫グロブリンの重鎖ポリペプチドは、VH領域、CH1領域、ヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域を含み得る。免疫グロブリンの軽鎖ポリペプチドは、VL領域およびCL領域を含み得る。
【0157】
BiTEの抗原標的ドメインは、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体であり得る。抗体は、キメラ抗体、一本鎖抗体、親和性成熟抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、または完全ヒト抗体であり得る。ヒト化抗体は、非ヒト種由来の1つ以上の相補性決定領域(CDR)およびヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域を有する所望の抗原と結合する非ヒト種由来の抗体であり得る。
【0158】
一実施形態において、本発明のDBiTEの抗原結合ドメインおよび免疫細胞エンゲージドメインのうちの少なくとも1つは、上に詳細に記載されるような、ScFv DNAコード化モノクローナル抗体(ScFv DMAb)である。
【0159】
二重特異性抗体
組換え核酸配列は、二重特異性抗体、その断片、そのバリアント、またはその組み合わせをコードし得る。二重特異性抗体は、2つの抗原、例えば、以下でより詳細に記載される2つの抗原と結合または反応することができる。二重特異性抗体は、本明細書に記載される抗体のうちの2つの断片から構成され得、それによって、二重特異性抗体が、以下でより詳細に記載される抗原、受容体のためのリガンドを含むリガンド、受容体上のリガンド結合部位を含む受容体、リガンド受容体複合体、およびマーカーを含み得る2つの所望の標的分子と結合または反応することを可能にする。
【0160】
本発明は、第1の標的に特異的に結合する第1の抗原結合部位と、第2の標的に特異的に結合する第2の抗原結合部位とを含む新規の二重特異性抗体を提供し、生産可能性、安定性、結合親和性、生物学的活性、ある特定のT細胞の特異的標的化、標的化効率、および毒性の低減などの特に有利な特性を有する。いくつかの例では、二重特異性抗体があり、二重特異性抗体は、高親和性で第1の標的と結合し、低親和性で第2の標的と結合する。他の例では、二重特異性抗体があり、二重特異性抗体は、低親和性で第1の標的と結合し、高親和性で第2の標的と結合する。他の例では、二重特異性抗体があり、二重特異性抗体は、所望の親和性で第1の標的と結合し、所望の親和性で第2の標的と結合する。
【0161】
一実施形態において、二重特異性抗体は、a)第1の抗原と特異的に結合する抗体の第1の軽鎖および第1の重鎖、ならびにb)第2の抗原と特異的に結合する抗体の第2の軽鎖および第2の重鎖を含む二価抗体である。
【0162】
本発明による二重特異性抗体分子は、任意の所望の特異性の2つの結合部位を有し得る。いくつかの実施形態において、結合部位のうちの1つは、腫瘍抗原を可能とする。いくつかの実施形態において、Fab断片に含まれる結合部位は、腫瘍抗原に特異的な結合部位である。いくつかの実施形態において、一本鎖Fv断片に含まれる結合部位は、CD19、BCMA、CD33、FAP、FSHR、EGFR、PSMA、CD123またはHer2などの腫瘍抗原に特異的な結合部位である。
【0163】
いくつかの実施形態において、本発明による抗体分子の結合部位のうちの1つは、T細胞特異的受容体分子および/またはナチュラルキラー細胞(NK細胞)特異的受容体分子と結合することができる。T細胞特異的受容体は、T細胞が、抗原提示細胞またはAPCと称される別の細胞によって提示されるエピトープ/抗原に結合し、追加のシグナルが存在する場合、それによって活性化され、かつそれに応答することを可能にする、いわゆる「T細胞受容体」(TCR)である。T細胞受容体は、天然発生型免疫グロブリンのFab断片に似ていることが知られている。一般に、アルファ鎖およびベータ鎖を包含する一価であり、いくつかの実施形態において、ガンマ鎖およびデルタ鎖(上記参照)を包含する。したがって、いくつかの実施形態において、TCRは、TCR(アルファ/ベータ)であり、いくつかの実施形態において、TCR(ガンマ/デルタ)である。T細胞受容体は、CD3 T細胞共受容体と複合体を形成する。CD3は、タンパク質複合体であり、4つの異なる鎖からなる。哺乳動物において、複合体は、CD3γ鎖、CD36鎖、および2つのCD3E鎖を含む。これらの鎖は、T細胞受容体(TCR)およびζ鎖として知られる分子と会合して、Tリンパ球内で活性化シグナルを生成する。したがって、いくつかの実施形態において、T細胞特異的受容体は、CD3 T細胞共受容体である。いくつかの実施形態において、T細胞特異的受容体は、T細胞上でも発現されるタンパク質CD28である。CD28は、T細胞活性化に必要とされる共刺激シグナルを提供することができる。CD28は、T細胞増殖および生存、サイトカイン産生、ならびに2型Tヘルパー発生において重要な役割を果たす。T細胞特異的受容体のさらなる例は、Ox40とも称されるCD134である。CD134/OX40は、活性化後24~72時間後に発現しており、二次共刺激分子を画定するために取ることができる。T細胞受容体の別の例は、抗原提示細胞(APC)上の4-1 BB-リガンドと結合することができる4-1 BBであり、それによってT細胞の共刺激シグナルが生成される。主にT細胞上に見出される受容体の別の例は、CD5であり、CD5は、B細胞上にも低レベルで見出される。T細胞機能を修飾する受容体のさらなる例は、他の細胞の表面に発現するFas-リガンドによるアポトーシスシグナル伝達を媒介する、Fas受容体としても知られるCD95である。CD95は、休止Tリンパ球におけるTCR/CD3駆動シグナル伝達経路を調節することが報告されている。
【0164】
NK細胞特異的受容体分子の一例は、CD16、低親和性Fc受容体、およびNKG2Dである。T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞の両方の表面に存在する受容体分子の一例は、CD2およびCD2-スーパーファミリーのさらなるメンバーである。CD2は、T細胞およびNK細胞上で共刺激分子として作用することができる。
【0165】
いくつかの実施形態において、抗体分子の第1の結合部位は、腫瘍抗原と結合し、第2の結合部位は、T細胞特異的受容体分子および/またはナチュラルキラー(NK)細胞特異的受容体分子と結合する。
【0166】
いくつかの実施形態において、抗体分子の第1の結合部位は、CD19、BCMA、CD33、FAP、FSHR、EGFR、PSMA、CD123またはHer2と結合し、第2の結合部位は、T細胞特異的受容体分子および/またはナチュラルキラー(NK)細胞特異的受容体分子と結合する。いくつかの実施形態において、抗体分子の第1の結合部位は、CD19、BCMA、CD33、FAP、FSHR、EGFR、PSMA、CD123、またはHer2と結合し、第2の結合部位は、CD3、TCR、CD28、CD16、NKG2D、Ox40、4-1BB、CD2、CD5、CD40、FcgR、FceR、FcaR、およびCD95のうちの1つと結合する。いくつかの実施形態において、抗体分子の第1の結合部位は、CD19、BCMA、CD33、FAP、FSHR、EGFR、PSMA、CD123、またはHer2と結合し、第2の結合部位は、CD3と結合する。
【0167】
いくつかの実施形態において、抗体分子の第1の結合部位は、T細胞特異的受容体分子および/またはナチュラルキラー(NK)細胞特異的受容体分子と結合し、第2の結合部位は、腫瘍抗原と結合する。いくつかの実施形態において、抗体の第1の結合部位は、T細胞特異的受容体分子および/またはナチュラルキラー(NK)細胞特異的受容体分子と結合し、第2の結合部位は、CD19、BCMA、CD33、FAP、FSHR、EGFR、PSMA、CD123、またはHer2と結合する。いくつかの実施形態において、抗体の第1の結合部位は、CD3、TCR、CD28、CD16、NKG2D、Ox40、4-1BB、CD2、CD5、CD40、FcgR、FceR、FcaR、およびCD95のうちの1つと結合し、第2の結合部位は、CD19、BCMA、CD33、FAP、FSHR、EGFR、PSMA、CD123、またはHer2と結合する。いくつかの実施形態において、抗体の第1の結合部位は、CD3と結合し、第2の結合部位は、CD19、BCMA、CD33、FAP、FSHR、EGFR、PSMA、CD123、またはHer2と結合する。
【0168】
一実施形態において、本発明の二重特異性抗体は、本明細書に記載される1つ以上のscFv抗体断片を含むDBiTEを含み、それによって、DBiTEが所望の標的分子と結合または反応することを可能にする。
【0169】
一実施形態において、DBiTEは、T細胞特異的受容体分子との結合に特異的な第2のscFvと連結した標的疾患特異的抗原との結合に特異的な第1のscFvをコードする核酸分子を含む。連結は、任意の順序で第1および第2のドメインを配置し得、例えば、一実施形態において、標的疾患特異的抗原への結合に特異的なscFvをコードするヌクレオチド配列は、T細胞特異的受容体分子への結合に特異的なscFvをコードするヌクレオチド配列に5’(または上流)配向される。別の実施形態において、標的疾患特異的抗原との結合に特異的なscFvをコードするヌクレオチド配列は、T細胞特異的受容体分子への結合に特異的なscFvをコードするヌクレオチド配列に3’(または下流)配向される。
【0170】
二機能性抗体
組換え核酸配列は、二機能性抗体、その断片、そのバリアント、またはその組み合わせをコードし得る。二機能性抗体は、以下に記載される抗原と結合または反応し得る。二機能性抗体はまた、抗原の認識および抗原への結合を超えて抗体に追加の機能性を付与するように修飾され得る。そのような修飾は、これらに限定されないが、第H因子またはその断片に結合することを含み得る。第H因子は、補体活性化の可溶性調節因子であり、したがって、補体媒介性溶解(CML)を介して免疫応答に寄与し得る。
【0171】
抗体半減期の延長
上に記載されるように、合成抗体(例えば、DMAb、ScFv抗体断片、DICEまたはDBiTE)は、対象における抗体の半減期を延長または短縮するように修飾され得る。修飾は、対象の血清中の抗体の半減期を延長または短縮し得る。
【0172】
修飾は、抗体の定常領域に存在し得る。修飾は、1つ以上のアミノ酸置換を含まない抗体の半減期と比較して、抗体の半減期を延長する抗体の定常領域内の1つ以上のアミノ酸置換であり得る。修飾は、1つ以上のアミノ酸置換を含まない抗体の半減期と比較して、抗体の半減期を延長する抗体のCH2ドメイン内の1つ以上のアミノ酸置換であり得る。
【0173】
いくつかの実施形態において、定常領域内の1つ以上のアミノ酸置換は、定常領域内のメチオニン残基をチロシン残基で、定常領域内のセリン残基をトレオニン残基で、定常領域内のトレオニン残基をグルタミン残基で、またはこれらの任意の組み合わせで置き換え、それによって抗体の半減期を延長することを含み得る。
【0174】
他の実施形態において、定常領域内の1つ以上のアミノ酸置換は、CH2ドメイン内のメチオニン残基をチロシン残基で、CH2ドメイン内のセリン残基をトレオニン残基で、CH2ドメイン内のトレオニン残基をグルタミン残基で、またはこれらの任意の組み合わせで置き換え、それによって抗体の半減期を延長することを含み得る。
【0175】
脱フコシル化
組換え核酸配列は、フコシル化されていない抗体(すなわち、脱フコシル化抗体または非フコシル化抗体)、その断片、そのバリアント、またはそれらの組み合わせをコードし得る。フコシル化は、分子への糖フコースの添加、例えば、N-グリカン、O-グリカン、および糖脂質へのフコースの結合を含む。したがって、脱フコシル化抗体において、フコースは、定常領域の炭水化物鎖に結合されない。次いで、このフコシル化の欠如は、フコシル化抗体と比較して、抗体によるFcγRIIIa結合および抗体指向性細胞傷害性(ADCC)活性を改善し得る。したがって、いくつかの実施形態において、非フコシル化抗体は、フコシル化抗体と比較して増加したADCC活性を呈し得る。
【0176】
抗体は、抗体のフコシル化を防止または阻害するように修飾され得る。いくつかの実施形態において、そのような修飾抗体は、非修飾抗体と比較して増加したADCC活性を呈し得る。修飾は、重鎖、軽鎖、またはこれらの組み合わせであり得る。修飾は、重鎖における1つ以上のアミノ酸置換、軽鎖における1つ以上のアミノ酸置換、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0177】
抗原
一実施形態において、合成抗体(例えば、DMAb、ScFv抗体断片、DICEまたはDBiTE)は、抗原またはその断片もしくはバリアントを対象とする。抗原は、核酸配列、アミノ酸配列、多糖類、またはこれらの組み合わせであり得る。核酸配列は、DNA、RNA、cDNA、それらのバリアント、それらの断片、またはそれらの組み合わせであり得る。アミノ酸配列は、タンパク質、ペプチド、それらのバリアント、それらの断片、またはそれらの組み合わせであり得る。多糖類は、核酸コード多糖類であり得る。
【0178】
抗原は、腫瘍抗原であり得る。抗原は、癌発生または進行のリスクの増加に関連し得る。一実施形態において、抗原は、CD19、BCMA、CD33、FAP、FSHR、EGFR、PSMA、CD123、またはHer2であり得る。
【0179】
一実施形態において、本発明の合成DNAコード化二重特異性免疫細胞エンゲージャーは、2つ以上の抗原を標的とする。一実施形態において、二重特異性抗体の少なくとも1つの抗原は、腫瘍抗原である。一実施形態において、二重特異性抗体の少なくとも1つの抗原は、T細胞活性化抗原である。
【0180】
腫瘍抗原
本発明の合成抗体(例えば、DMAb、ScFv抗体断片、DICEまたはDBiTE)の抗原結合ドメインは、腫瘍抗原と相互作用し得る。本発明の文脈において、「腫瘍抗原」または「過剰増殖性障害抗原」または「過剰増殖性障害に関連する抗原」は、癌などの特定の過剰増殖性障害に共通の抗原を指す。
【0181】
本発明で言及される腫瘍抗原の種類は、腫瘍特異的抗原(TSA)または腫瘍関連抗原(TAA)であり得る。TSAは、腫瘍細胞に固有であり、体内の他の細胞では発生しない。TAA抗原は、腫瘍細胞に固有ではなく、代わりに、抗原に対する免疫学的耐性の状態を誘導することができない条件下で、正常細胞上でも発現される。腫瘍上の抗原の発現は、免疫系が抗原に応答することを可能にする条件下で生じ得る。TAAは、免疫系が未熟で応答できない時に胎児発達中に正常細胞上に発現される抗原であってもよく、または正常細胞上に通常極めて低いレベルで存在するが、腫瘍細胞上ではるかに高いレベルで発現される抗原であってもよい。
【0182】
本明細書で論じられる抗原は、単に例として含まれる。リストは排他的であることを意図するものではなく、さらなる実施例は、当業者には容易に明らかになるであろう。
【0183】
腫瘍抗原は、免疫応答、特にT細胞媒介免疫応答を誘発する腫瘍細胞によって産生されるタンパク質である。本発明の抗原結合部分の選択は、治療される癌の特定の種類に依存する。腫瘍抗原は当技術分野において周知であり、例えば、神経膠腫関連抗原、癌胚性抗原(CEA)、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、アルファフェトプロテイン(AFP)、レクチン反応性AFP、チログロブリン、RAGE-1、MN-CAIX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、プロスターゼ、前立腺特異的抗原(PSA)、PAP、NY-ESO-1、LAGE-1a、p53、プロステイン、PSMA、Her2、サバイビンおよびテロメラーゼ、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、MAGE、ELF2M、好中球エラスターゼ、エフリンB2、CD22、インスリン成長因子(IGF)-I、IGF-II、IGF-I受容体、およびメソセリンを含む。
【0184】
腫瘍関連表面抗原の例示的な例は、CD10、CD19、CD20、CD22、CD33、CD123、B細胞成熟抗原(BCMA)、Fms様チロシンキナーゼ3(FLT-3、CD135)、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4、黒色腫関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン)、上皮成長因子受容体(EGFR)、Her2、Her3、IGFR、CD133、IL3R、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、CDCP1、Derlin1、テネイシン、frizzled1-10、血管抗原VEGFR2(KDR/FLK1)、VEGFR3(FLT4、CD309)、PDGFR-α(CD140a)、PDGFR-ベータである。(CD140b)エンドグリン、CLEC14、Tem1-8、およびTie2。さらなる例としては、A33、CAMPATH-1(CDw52)、癌胚性抗原(CEA)、カルボアンヒドラーゼIX(MN/CAIX)、CD21、CD25、CD30、CD34、CD37、CD44v6、CD45、CD133、de2-7EGFR、EGFRvIII、EpCAM、Ep-CAM、葉酸結合タンパク質、G250、Fms様チロシンキナーゼ3(FLT-3、CD135)、卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)、c-Kit(CD117)、CSF1R(CD115)、HLA-DR、IGFR、IL-2受容体、IL3R、MCSP(黒色腫関連細胞表面コンドロイチン硫酸プロテオグリカン)、Muc-1、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的抗原(PSA)、およびTAG-72を含み得る。腫瘍の細胞外マトリックスに発現される抗原の例は、テナシンおよび線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)である。
【0185】
一実施形態において、腫瘍抗原は、特定の受容体を標的にするために使用することができるホルモンまたはその断片である。例には、FSHホルモン、LHホルモン、TSHホルモン、またはそれらの断片を含むが、これらに限定されない。
【0186】
TSAまたはTAA抗原の非限定的な例は、以下を含む:MART-1/MelanA(MART-I)、gp100(Pmel17)、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、および腫瘍特異的多系統抗原、例えばMAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、p15など;過剰発現胚抗原、例えばCEA;過剰発現癌遺伝子および変異腫瘍抑制遺伝子、例えばp53、Ras、HER-2/neuなど;染色体転座から生じる独自の腫瘍抗原;例えばBCR-ABL、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RAR;ならびにウイルス抗原、例えばエプスタインバーウイルス抗原EBVAおよびヒト乳頭腫ウイルス(HPV)抗原E6およびE7などの分化抗原。他の大きなタンパク質ベースの抗原は、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、RAGE、NY-ESO、p185erbB2、p180erbB-3、c-met、nm-23H1、PSA、TAG-72、CA 19-9、CA 72-4、CAM 17.1、NuMa、K-ras、ベータ-カテニン、CDK4、Mum-1、p 15、p 16、43-9F、5T4、791Tgp72、アルファ-フェトタンパク質、ベータ-HCG、BCA225、BTAA、CA 125、CA 15-3\CA27.29\BCAA、CA 195、CA 242、CA-50、CAM43、CD68\P1、CO-029、FGF-5、G250、Ga733\EpCAM、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB/70K、NY-CO-1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90\Mac-2結合タンパク質\サイクロフィンC関連タンパク質、TAAL6、TAG72、TLP、およびTPSを含む。
【0187】
本発明の態様は、対象において免疫応答を生成することができる合成抗体(例えば、DMAb、ScFv抗体断片、DICEまたはDBiTE)、またはその生物学的機能的断片もしくはバリアントを含み、それを必要とする対象において抗原に対する免疫応答を増強するための組成物を含む。いくつかの実施形態において、抗原は、CD19、BCMA、CD33、FAP、FSHR、EGFR、PSMA、CD123、またはHer2である。いくつかの実施形態において、本発明の合成抗体は、CD19、BCMA、CD33、FAP、FSHR、EGFR、PSMA、CD123またはHer2を標的とするscFvを含むDBiTEである。
【0188】
T細胞特異的受容体
一実施形態において、本発明のDBiTEまたはDICEは、T細胞特異的受容体のscFvを含む。T細胞特異的受容体には、CD3、TCR、CD28、CD16、NKG2D、Ox40、4-1BB、CD2、CD5、CD40、FcgR、FceR、FcaR、およびCD95を含むが、これらに限定されない。
【0189】
組成物の賦形剤および他の構成成分
組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含み得る。薬学的に許容される賦形剤は、ビヒクル、担体、または希釈剤などの機能的分子であり得る。薬学的に許容される賦形剤は、トランスフェクション促進剤であり得、これは、免疫刺激複合体(ISCOMS)などの表面活性剤、フロイント不完全アジュバント、モノホスホリル脂質Aを含むLPS類似体、ムラミルペプチド、キノン類似体、スクアレンおよびスクアレンなどの小胞、ヒアルロン酸、脂質、リポソーム、カルシウムイオン、ウイルスタンパク質、ポリアニオン、ポリカチオン、もしくはナノ粒子、または他の既知のトランスフェクション促進剤を含み得る。
【0190】
トランスフェクション促進剤は、ポリアニオン、ポリ-L-グルタミン酸(LGS)を含むポリカチオン、または脂質である。トランスフェクション促進剤は、ポリ-L-グルタミン酸であり、ポリ-L-グルタミン酸は、組成物中に6mg/ml未満の濃度で存在し得る。トランスフェクション促進剤はまた、免疫刺激複合体(ISCOMS)などの表面活性剤、フロイント不完全アジュバント、モノホスホリル脂質Aを含むLPS類似体、ムラミルペプチド、キノン類似体ならびにスクアレンおよびスクアレンなどの小胞を含み得、ヒアルロン酸はまた、組成物とともに投与されて使用され得る。組成物はまた、脂質などのトランスフェクション促進剤、レシチンリポソームもしくは、DNA-リポソーム混合物(例えば、W09324640を参照されたい)として、当該技術分野において既知の他のリポソームを含む、リポソーム、カルシウムイオン、ウイルスタンパク質、ポリアニオン、ポリカチオン、またはナノ粒子、または他の既知のトランスフェクション促進剤を含み得る。トランスフェクション促進剤は、ポリアニオン、ポリ-L-グルタミン酸(LGS)を含むポリカチオン、または脂質である。組成物中のトランスフェクション剤の濃度は、4mg/ml未満、2mg/ml未満、1mg/ml未満、0.750mg/ml未満、0.500mg/ml未満、0.250mg/ml未満、0.100mg/ml未満、0.050mg/ml未満、または0.010mg/ml未満である。
【0191】
組成物は、参照により完全に組み込まれる、1994年4月1日に出願された米国特許出願第021,579号に記載される遺伝子促進剤をさらに含み得る。
【0192】
組成物は、DNAを約1ナノグラム~100ミリグラム、約1マイクログラム~約10ミリグラム、または好ましくは約0.1マイクログラム~約10ミリグラム、またはより好ましくは約1ミリグラム~約2ミリグラムの量で含み得る。いくつかの好ましい実施形態において、本発明による組成物は、約5ナノグラム~約1000マイクログラムのDNAを含む。いくつかの好ましい実施形態において、組成物は、約10ナノグラム~約800マイクログラムのDNAを含み得る。いくつかの好ましい実施形態において、組成物は、約0.1~約500マイクログラムのDNAを含み得る。いくつかの好ましい実施形態において、組成物は、約1~約350マイクログラムのDNAを含み得る。いくつかの好ましい実施形態において、組成物は、約25~約250マイクログラム、約100~約200マイクログラム、約1ナノグラム~100ミリグラム、約1マイクログラム~約10ミリグラム、約0.1マイクログラム~約10ミリグラム、約1ミリグラム~約2ミリグラム、約5ナノグラム~約1000マイクログラム、約10ナノグラム~約800マイクログラム、約0.1~約500マイクログラム、約1~約350マイクログラム、約25~約250マイクログラム、約100~約200マイクログラムのDNAを含み得る。
【0193】
組成物は、使用される投与の様式に従って製剤化され得る。注射可能な薬学的組成物は、滅菌、パイロジェンフリー、および無粒子であり得る。等張性製剤または溶液が使用され得る。等張性のための添加剤は、塩化ナトリウム、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、およびラクトースを含み得る。組成物は、血管収縮剤を含み得る。等張性溶液は、リン酸緩衝生理食塩水を含み得る。組成物は、ゼラチンおよびアルブミンを含む安定化剤をさらに含み得る。安定化剤は、LGSまたはポリカチオンもしくはポリアニオンを含む製剤が室温または周囲温度で長時間にわたって安定であることを可能にし得る。
【0194】
合成抗体の生成方法
本発明はまた、合成抗体の生成方法に関する。方法は、組成物を、それを必要とする対象に、以下でより詳細に記載される送達方法を使用することによって投与することを含み得る。したがって、合成抗体は、対象に組成物を投与すると、対象においてまたはインビボで生成される。
【0195】
方法はまた、組成物を1つ以上の細胞に導入することを含み得、したがって、合成抗体は、1つ以上の細胞内で生成または産生され得る。方法は、組成物を1つ以上の組織、例えば、これらに限定されないが、皮膚および筋肉に導入することをさらに含み得、したがって、合成抗体は、1つ以上の組織において生成または産生され得る。
【0196】
組成物の送達方法
本発明はまた、組成物をそれを必要とする対象に送達する方法に関する。送達方法は、組成物を対象に投与することを含み得る。投与は、これらに限定されないが、インビボエレクトロポレーションを伴う、および伴わないDNA注入、リポソーム媒介送達、ならびにナノ粒子促進送達を含み得る。
【0197】
組成物の送達を受ける哺乳動物は、ヒト、霊長類、非ヒト霊長類、ウシ(cow)、ウシ(cattle)、ヒツジ、ヤギ、アンテロープ、バイソン、スイギュウ、バイソン、ウシ(bovid)、シカ、ハリネズミ、ゾウ、ラマ、アルパカ、マウス、ラット、およびニワトリであり得る。
【0198】
組成物は、経口、非経口、舌下、経皮、直腸、経粘膜、局所、吸入を介した、口腔内投与を介した、胸腔内、静脈内、動脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、鼻腔内、髄腔内および関節内、またはそれらの組み合わせを含む、異なる経路によって投与され得る。獣医学的使用のために、組成物は、通常の獣医学的診療に従って、適切に許容される製剤として投与され得る。獣医は、特定の動物に最も適切な投与レジメンおよび投与経路を容易に決定することができる。組成物は、従来のシリンジ、無針注射デバイス、「微粒子衝撃遺伝子銃(microprojectile bombardment gone gun)」、またはエレクトロポレーション(「EP」)、「流体力学的方法」、または超音波などの他の物理的方法によって投与されてもよい。
【0199】
エレクトロポレーション
エレクトロポレーションを介した組成物の投与は、可逆的な孔を細胞膜内に形成させるのに有効なエネルギーパルスを、哺乳動物の所望の組織に送達するように構成され得るエレクトロポレーションデバイスを使用して達成することができ、好ましくは、エネルギーパルスは、使用者による予め設定された電流入力と同様の定電流である。エレクトロポレーションデバイスは、エレクトロポレーション構成要素および電極アセンブリまたはハンドルアセンブリを備え得る。エレクトロポレーション構成要素は、コントローラ、電流波形発生器、インピーダンステスタ、波形ロガー、入力エレメント、状態報告エレメント、通信ポート、メモリ構成要素、電源、および電源スイッチを含む、エレクトロポレーションデバイスの様々なエレメントのうちの1つ以上を含み、組み込み得る。エレクトロポレーションは、プラスミドによる細胞のトランスフェクションを容易にするために、インビボエレクトロポレーションデバイス、例えば、CELLECTRA EPシステム(Inovio Pharmaceuticals、Plymouth Meeting,PA)またはElgenエレクトロポレータ(Inovio Pharmaceuticals、Plymouth Meeting,PA)を使用して達成され得る。
【0200】
エレクトロポレーション構成要素は、エレクトロポレーションデバイスの1つのエレメントとして機能し得、他のエレメントは、エレクトロポレーション構成要素と通信する別個のエレメント(または構成要素)である。エレクトロポレーション構成要素は、エレクトロポレーションデバイスの2つ以上のエレメントとして機能し得、エレクトロポレーション構成要素とは別個のエレクトロポレーションデバイスのさらに他のエレメントと通信し得る。1つの電気機械デバイスまたは機械デバイスの一部として存在するエレクトロポレーションデバイスのエレメントは、エレメントが1つのデバイスとして、または互いに通信する別個のエレメントとして機能することができるため、限定されなくてもよい。エレクトロポレーション構成要素は、所望の組織内に定電流を生成するエネルギーパルスを送達することが可能であってもよく、フィードバックメカニズムを含む。電極アセンブリは、空間的に配置された複数の電極を有する電極配列を含んでよく、電極アセンブリは、エレクトロポレーション構成要素からエネルギーパルスを受信し、電極を通じて所望の組織にそれを送達する。複数の電極のうちの少なくとも1つは、エネルギーのパルスの送達中に中性であり、所望の組織のインピーダンスを測定し、そのインピーダンスをエレクトロポレーション構成要素に伝達する。フィードバックメカニズムは、測定されたインピーダンスを受信し得、エレクトロポレーション構成要素によって送達されるエネルギーパルスを調節して、定電流を維持することができる。
【0201】
複数の電極は、分散パターンでエネルギーのパルスを送達し得る。複数の電極は、プログラムされたシーケンス下で電極の制御を通じて分散パターンのエネルギーパルスを送達し得、プログラムされたシーケンスは、使用者によってエレクトロポレーション構成要素に入力される。プログラムされた配列は、配列中に送達される複数のパルスを含んでもよく、複数のパルスの各パルスは、インピーダンスを測定する1つの中性電極を有する少なくとも2つの活性電極によって送達され、複数のパルスのその後のパルスは、インピーダンスを測定する1つの中性電極を有する少なくとも2つの活性電極のうちの異なる1つによって送達される。
【0202】
フィードバックメカニズムは、ハードウェアまたはソフトウェアのいずれかによって実行され得る。フィードバックメカニズムは、アナログ閉ループ回路によって実行され得る。フィードバックは、50μs、20μs、10μs、または1μs毎に発生するが、好ましくは、リアルタイムフィードバックまたは即時(すなわち、応答時間を決定するための利用可能な技法によって決定されるように実質的に即時)である。中性電極は、所望の組織内のインピーダンスを測定し、フィードバックメカニズムにインピーダンスを伝達し得、フィードバックメカニズムは、インピーダンスに応答し、定電流を予め設定された電流と同様の値に維持するためにエネルギーパルスを調節する。フィードバックメカニズムは、エネルギーのパルスの送達中に連続的かつ即時的に定電流を維持し得る。
【0203】
本発明の組成物の送達を促進し得るエレクトロポレーションデバイスおよびエレクトロポレーション方法の例には、Draghia-Akliらによる米国特許第7,245,963号、Smithらによって提出された米国特許公開第2005/0052630号に記載されるものを含み、それらの内容は、それらの全体において参照により本明細書に組み込まれる。組成物の送達を促進するために使用され得る他のエレクトロポレーションデバイスおよびエレクトロポレーション方法は、米国特許法第119条(e)下で、2006年10月17年に出願された、米国仮特許出願第60/852,149号、および2007年10月10日に出願された、同第60/978,982号の優先権を主張する、2007年10月17日に出願された、同時係属中の、共同所有される米国特許出願第11/874072号に提供されるものを含み、これらの全ては、それらの全体において本明細書に組み込まれる。
【0204】
Draghia-Akliらによる米国特許第7,245,963号は、モジュラー電極システムと、生体または植物の選択された組織の細胞への生体分子の導入を促進するためのそれらの使用について記載している。モジュラー電極システムは、複数の針電極、皮下針、プログラム可能な定電流パルスコントローラから複数の針電極までの導電リンクを提供する電気コネクタ、および電源を含み得る。オペレータは、支持構造に取り付けられた複数の針電極をつかみ、それらを生体または植物の選択された組織にしっかりと挿入することができる。次いで、生体分子は皮下注射針を介して選択された組織に送達される。プログラム可能な定電流パルスコントローラが作動し、定電流電気パルスが複数の針電極に印加される。印加された定電流電気パルスは、複数の電極間の細胞への生体分子の導入を促進する。米国特許第7,245,963号の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0205】
Smithらによって提出された米国特許公開第2005/0052630号は、体内または植物内の選択された組織の細胞への生物分子の導入を効果的に容易にするために使用され得るエレクトロポレーションデバイスを記載している。エレクトロポレーションデバイスは、動作がソフトウェアまたはファームウェアによって指定される動電学的デバイス(「EKDデバイス」)を含む。EKDデバイスは、ユーザ制御とパルスパラメータの入力に基づいて、アレイ内の電極間に一連のプログラム可能な定電流パルスパターンを生成し、電流波形データの保存と取得を可能にする。エレクトロポレーションデバイスはまた、針電極のアレイを有する交換可能な電極ディスク、注射針用の中央注射チャネル、および取り外し可能なガイドディスクを含む。米国特許公開第2005/0052630号の全体の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0206】
米国特許第7,245,963号および米国特許公開第2005/0052630号に記載される電極配列および方法は、筋肉などの組織だけでなく、他の組織または器官への深部浸透のために適合され得る。電極アレイの構成のため、注射針(選択した生体分子を送達するため)も標的器官中に完全に挿入され、注射は、電極によって予め線引きされた領域で標的組織に垂直に投与される。米国特許第7,245,963号および米国特許第2005/005263号に記載される電極は、好ましくは長さ20mmおよび21ゲージである。
【0207】
加えて、エレクトロポレーションデバイスおよびその使用を組み込むいくつかの実施形態において、以下の特許:1993年12月28日に発行された米国特許第5,273,525号、2000年8月29日に発行された米国特許第6,110,161号、2001年7月17日に発行された米国特許第6,261,281号、および2005年10月25日に発行された米国特許第6,958,060号、ならびに2005年9月6日に発行された米国特許第6,939,862号に記載されるものであるエレクトロポレーションデバイスが存在することが企図される。さらに、様々なデバイスのうちのいずれかを用いるDNAの送達に関する、2004年2月24日に発行された米国特許第6,697,669号、およびDNAを注射する方法に注目した、2008年2月5日に発行された米国特許第7,328,064号で提供される主題を包含する特許が、本明細書において企図される。上記の特許は、それらの全体が参照により組み込まれる。
【0208】
治療方法
対象において合成抗体(例えば、DMAb、scFv断片またはDBiTE)を生成することによって、それを必要とする対象における疾患を治療、それに対して保護、および/または予防する方法もまた本明細書に提供される。方法は、組成物を対象に投与することを含み得る。対象への組成物の投与は、上に記載される送達方法を使用して行われ得る。
【0209】
ある特定の実施形態において、本発明は、癌を治療、それに対して保護、および/または予防する方法を提供する。一実施形態において、方法は、腫瘍成長を治療、それに対して保護、および/または予防する。一実施形態において、方法は、癌進行を治療、それに対して保護、および/または予防する。一実施形態において、方法は、癌転移を治療、それに対して保護、および/または予防する。
【0210】
一実施形態において、本発明は、子宮筋腫などであるがこれに限定されない良性腫瘍の成長を防止するための方法を提供する。方法は、有効量の本発明の組成物のうちの1つ以上を、良性腫瘍と診断された対象に投与することを含む。
【0211】
対象において合成抗体(例えば、DMAb、scFv断片、またはDBiTE)が生成されると、合成抗体(例えば、DMAb、scFv断片、またはDBiTE)は、抗原に結合または抗原と反応し得る。そのような結合は、抗原を中和し、別の分子、例えば、タンパク質または核酸による抗原の認識をブロックし、抗原に対する免疫応答を誘発または誘導し、それによって対象における抗原に関連する疾患を治療、それに対して保護、および/または予防することができる。
【0212】
組成物用量は、1μg~10mgの活性成分/kg体重/回であり得、20μg~10mgの成分/kg体重/回であり得る。組成物は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、または31日毎に投与され得る。有効な治療のための組成物用量の数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であり得る。
【0213】
癌治療
本発明は、癌を治療もしくは予防する方法、または腫瘍の成長もしくは転移を治療および予防する方法を提供する。本発明の関連する態様は、個体における過形成または腫瘍細胞の転移を予防、予防を補助、および/または低減する方法を提供する。
【0214】
本発明の一態様は、それを必要とする個体において転移を阻害する方法であって、有効量の本発明の組成物を個体に投与することを含む方法を提供する。本発明は、それを必要とする個体において転移を阻害する方法であって、転移を阻害する有効な量の本明細書に記載の組成物のうちのいずれか1つを個体に投与することを含む方法をさらに提供する。
【0215】
それを必要とする個体における癌を治療もしくは予防する、または腫瘍の転移を治療および予防するいくつかの実施形態において、抗腫瘍剤などの第2の薬剤が個体に投与される。いくつかの実施形態において、第2の薬剤は、プラスミノーゲンアンタゴニスト、またはアデノシンデアミナーゼアンタゴニストなどの第2の転移阻害剤を含む。他の実施形態において、第2の薬剤は、血管新生阻害剤である。
【0216】
本発明の組成物は、ヒトおよび動物における癌を予防、減少(abate)、最小化、制御、および/または軽減(lessen)するために使用され得る。本発明の組成物は、原発性腫瘍成長速度を遅らせるためにも使用され得る。本発明の組成物は、治療を必要とする対象に投与される場合、癌細胞の拡散を停止するために使用され得る。したがって、本発明の組成物は、1つ以上の薬物または他の薬剤との併用療法の一部として投与され得る。併用療法の一部として使用される場合、本発明の組成物によって得られる転移の減少および原発性腫瘍成長の減少は、患者を治療するために使用される任意の薬学的または薬物療法のより効果的かつ効率的な使用を可能にする。加えて、本発明の組成物による転移の制御は、対象に疾患を1つの場所に集中させるより大きな能力を与える。
【0217】
一実施形態において、本発明は、悪性腫瘍または他の癌細胞の転移を予防するための方法、ならびに腫瘍成長速度を低減するための方法を提供する。方法は、有効量の本発明の組成物のうちの1つ以上を、悪性腫瘍もしくは癌性細胞と診断された対象、または腫瘍もしくは癌細胞を有する対象に投与することを含む。
【0218】
以下は、本発明の方法および組成物によって治療され得る癌の非限定的な例である:急性リンパ芽球性;急性骨髄性白血病;副腎皮質癌;副腎皮質癌、小児期;虫垂癌;基礎細胞癌;胆管癌、肝外性;膀胱癌;骨癌;骨肉腫および悪性線維組織球腫;脳幹神経膠腫、小児期;脳腫瘍、成人期;脳腫瘍、脳幹神経膠腫、小児期;脳腫瘍、中枢神経系非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、小児期;中枢神経系胚芽腫;小脳星状細胞腫;脳星状細胞腫/悪性神経膠腫;頭蓋咽頭腫;上衣芽細胞腫;上衣腫;髄芽細胞腫;髄上皮腫;中間分化の松果体実質腫瘍;テント上原始神経外胚葉性腫瘍および松果体芽細胞腫;視覚路および視床下部膠腫;脳および脊髄腫瘍;乳癌;気管支腫瘍;バーキットリンパ腫;カルチノイド腫瘍;カルチノイド腫瘍、胃腸性;中枢神経系非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍;中枢神経系胚芽腫;中枢神経系リンパ腫;小脳星状細胞腫脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、小児期;子宮頸癌;脊索腫、小児期;慢性リンパ球性白血病;慢性骨髄性白血病;慢性骨髄増殖性疾患;結腸癌;結腸直腸癌;頭蓋咽頭腫;皮膚T細胞リンパ腫;食道癌;腫瘍のユーイングファミリー;性腺外胚細胞腫瘍;肝外胆管癌;眼癌、眼内黒色腫;眼癌、網膜芽細胞腫;胆嚢癌;胃(Gastric)(胃(Stomach))癌;消化管カルチノイド腫瘍;消化管間質腫瘍(GIST);胚細胞腫瘍、頭蓋外性;胚細胞腫瘍、性腺外性;胚細胞腫瘍、卵巣性;妊娠性絨毛腫瘍;神経膠腫;神経膠腫、小児脳幹;神経膠腫、小児脳星状細胞腫;神経膠腫、小児視覚路および視床下部性;有毛細胞白血病;頭頸部癌;肝細胞(肝臓)癌;組織球症、ランゲルハンス細胞;ホジキンリンパ腫;下咽頭癌;視床下部および視覚路神経膠腫;眼内黒色腫;島細胞腫瘍;腎臓(腎細胞)癌;ランゲルハンス細胞組織球症;喉頭癌;白血病、急性リンパ芽球性;白血病、急性骨髄性;白血病、慢性リンパ球性;白血病、慢性骨髄性;白血病、有毛細胞;口唇および口腔癌;肝臓癌;肺癌、非小細胞;肺癌、小細胞;リンパ腫、AIDS関連;リンパ腫、バーキット;リンパ腫、皮膚T細胞性;リンパ腫、ホジキン;リンパ腫、非ホジキン;リンパ腫、原発性中枢神経系;マクログロブリン血症、ワルデンストレーム;骨および骨肉腫の悪性線維性組織球腫;髄芽腫;黒色腫;黒色腫、眼内(眼);メルケル細胞癌;中皮腫;潜在性原発性を伴う転移性頸部扁平上皮癌;口腔癌;多発性内分泌腺腫症症候群、(小児期);多発性骨髄腫/形質細胞新生物;真菌症;菌状腫;骨髄異形成症候群;骨髄異形成/骨髄増殖性疾患;骨髄性白血病、慢性;骨髄性白血病、成人急性;骨髄性白血病、小児急性;骨髄腫、多発性;骨髄増殖性疾患、慢性;鼻腔および副鼻腔癌;鼻咽頭癌;神経芽細胞腫;非小細胞肺癌;口腔癌(Oral Cancer);口腔癌(Oral Cavity Cancer);中咽頭癌;骨肉腫および骨の悪性線維性組織球腫;卵巣癌;卵巣上皮癌;卵巣胚細胞腫瘍;卵巣低悪性度腫瘍;膵臓癌;膵臓癌、島細胞腫瘍;乳頭腫症;副甲状腺癌;陰茎癌;咽頭癌;褐色細胞腫;中間分化の松果体実質腫瘍;松果体芽細胞腫およびテント上原始神経外胚葉性腫瘍;下垂体腫瘍;血漿ケルト新生物/多発性骨髄腫;胸膜肺芽腫;原発性中枢神経系リンパ腫;前立腺癌;直腸癌;腎細胞(腎臓)癌;腎盂および尿管、移行細胞癌;染色体15上のNUT遺伝子に関与する呼吸器系癌;網膜芽細胞腫;横紋筋肉腫;唾液腺癌;肉腫、腫瘍のユーイングファミリー;肉腫、カポジ;肉腫、軟部組織;肉腫、子宮;セザリー症候群;皮膚癌(非黒色腫);皮膚癌(黒色腫);皮膚癌、メルケル細胞癌;小細胞肺癌;小腸癌;軟部組織肉腫;扁平上皮癌、潜在性原発性を伴う頸部扁平上皮癌、転移性;胃(Stomach)(胃(Gastric))癌;テント上原始神経外胚葉性腫瘍;T細胞リンパ腫、皮膚性;精巣癌;咽喉癌;胸腺腫および胸腺癌;甲状腺癌;腎盂および尿管の移行細胞癌;絨毛性腫瘍、妊娠性;尿道癌;子宮癌、子宮内膜性;子宮肉腫;膣癌;外陰癌;ワルデンストレームマクログロブリン血症、ならびにウィルムス腫瘍。
【0219】
一実施形態において、本発明は、本発明の組成物での治療の前、同時に、またはその後に、手術、化学療法、化学療法剤、放射線療法、またはホルモン療法、またはそれらの組み合わせなどの癌の補完療法で対象を治療することを含む、癌転移を治療するための方法を提供する。
【0220】
化学療法剤としては、細胞毒性剤(例えば、5-フルオロウラシル、シスプラチン、カルボプラチン、メトトレキサート、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、オキソルビシン、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、シタラビンUSP、シクロホスファミド、エストラムシンリン酸ナトリウム、アルトレタミン、ヒドロキシ尿素、イホスファミド、プロカルバジン、マイトマイシン、ブスルファン、シクロホスファミド、ミトキサントロン、カルボプラチン、シスプラチン、インターフェロンアルファ-2a組換え体、パクリタキセル、テニポシド、およびストレプトゾシ)、細胞毒性アルキル化剤(例えば、ブスルファン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、またはエチルスルホン酸)、アルキル化剤(例えば、アサレー、AZQ、BCNU、ブスルファン、ビスルファン、カルボキシフタラトプラチナ、CBDCA、CCNU、CHIP、クロラムブシル、クロロゾトシン、シスプラチナ、クロメソン、シアノモルホリノドキソルビシン、シクロジソン、シクロホスファミド、ジアンヒドロガラクチトール、フルオロドパン、ヘプスルファム、ヒカントン、イホスファミド、メルファラン、メチルCCNU、マイトマイシンC、ミトゾラミド、ナイトロジェンマスタード、PCNU、ピペラジン、ピペラジンジオン、ピポブロマン、ポルフィロマイシン、スピロヒダントインマスタード、ストレプトゾトシン、テロキシロン、テトラプラチン、チオテパ、トリエチレンメラミン、ウラシルナイトロジェンマスタード、およびYoshi-864)、抗有糸分裂剤(例えば、アロコルヒチン、ハリコンドリンM、コルヒチン、コルヒチン誘導体、ドラスタチン10、マイタンシン、リゾキシン、パクリタキセル誘導体、パクリタキセル、チオコルヒチン、トリチルシステイン、硫酸ビンブラスチン、および硫酸ビンクリスチン)、植物アルカロイド(例えば、アクチノマイシンD、ブレオマイシン、L-アスパラギナーゼ、イダビシン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ダウノルビシン、VP-16-213、VM-26、ナベルビンおよびタキソテール)、生物学的製剤(例えば、アルファインターフェロン、BCG、G-CSF、GM-CSF、およびインターロイキン-2)、トポイソメラーゼI阻害剤(例えば、カンプトテシン、カンプトテシン誘導体、およびモルホリノドキソルビシン)、トポイソメラーゼII阻害剤(例えば、ミトキサントロン、アモナフィド、m-AMSA、アントラピラゾール誘導体、ピラゾロアクリジン、ビサントレンHCL、ダウノルビシン、デオキシドキソルビシン、メノガリル、N,N-ジベンジルダウノマイシン、オキサントラゾール、ルビダゾン、VM-26およびVP-16)、ならびに合成物(例えば、ヒドロキシ尿素、プロカルバジン、o,p’-DDD、ダカルバジン、CCNU、BCNU、シス-ジアミンジクロロプラチナ、ミトキサントロン、CBDCA、レバミゾール、ヘキサメチルメラミン、オールトランスレチノイン酸、グリアデルおよびポルフィマーナトリウム)が挙げられる。
【0221】
抗増殖剤は、細胞の増殖を減少させる化合物である。抗増殖剤は、アルキル化剤、代謝拮抗剤、酵素、生物学的応答修飾剤、その他の剤、ホルモンおよびアンタゴニスト、アンドロゲン阻害剤(例えば、フルタミドおよび酢酸ロイプロリド)、抗エストロゲン(例えば、クエン酸タモキシフェンおよびその類似体、トレミフェン、ドロロキシフェン、およびロロキシフェン)を含み、特定の抗増殖剤の追加の例には、レバミゾール、硝酸ガリウム、グラニセトロン、サルグラモスチム塩化ストロンチウム-89、フィルグラスチム、ピロカルピン、デキストラゾキサン、およびオンダンセトロンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0222】
本発明の化合物は、単独で、または細胞毒性/抗腫瘍剤および抗血管新生剤を含む他の抗腫瘍剤と組み合わせて投与され得る。細胞毒性/抗腫瘍剤は、癌細胞を攻撃して死滅させる薬剤として定義される。いくつかの細胞毒性/抗腫瘍剤は、腫瘍細胞の遺伝物質をアルキル化するアルキル化剤、例えば、シスプラチン、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、トリメチレンチオホスホルアミド、カルムスチン、ブスルファン、クロラムブシル、ベルスチン、ウラシルマスタード、クロマファジン、およびダカルバジンである。他の細胞毒性/抗腫瘍剤は、腫瘍細胞の代謝拮抗剤、例えば、シトシンアラビノシド、フルオロウラシル、メトトレキサート、メルカプトプリン、アザチオプライム、およびプロカルバジンである。他の細胞毒性/抗腫瘍剤は、抗生物質、例えば、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ミトラマイシン、マイトマイシン、マイトマイシンC、およびダウノマイシンである。これらの化合物について市販されている多数のリポソーム製剤が存在する。さらに他の細胞毒性/抗腫瘍剤は、有糸分裂阻害剤(ビンカアルカロイド)である。これらは、ビンクリスチン、ビンブラスチン、およびエトポシドを含む。その他の細胞毒性/抗腫瘍剤は、タキソールおよびその誘導体、L-アスパラギナーゼ、抗腫瘍抗体、ダカルバジン、アザシチジン、アムサクリン、メルファラン、VM-26、イホスファミド、ミトキサントロン、ならびにビンデシンを含む。
【0223】
抗血管新生剤は、当業者に周知である。本発明の方法および組成物における使用に好適な抗血管新生剤は、ヒト化およびキメラ抗体を含む抗VEGF抗体、抗VEGFアプタマー、ならびにアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。血管新生の他の既知の阻害剤としては、アンジオスタチン、エンドスタチン、インターフェロン、インターロイキン1(アルファおよびベータを含む)インターロイキン12、レチノイン酸、およびメタロプロテイナーゼの組織阻害剤-1および-2(TIMP-1および-2)を含む。ラゾキサン、抗血管新生活性を有するトポイソメラーゼII阻害剤などのトポイソメラーゼを含む小分子もまた使用され得る。
【0224】
本発明の組成物と組み合わせて使用することができる他の抗癌剤は、以下を含むが、これらに限定されない:アシビシン、アクラルビシン、塩酸アコダゾール、アクロニン、アドゼレシン、アルデスロイキン、アルトレタミン、アンボマイシン、酢酸アメタントロン、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、アントラマイシン、アスパラギナーゼ、アスペルリン、アザシチジン、アゼテパ、アゾトマイシン、バチマスタット、ベンゾデパ、ビカルタミド、塩酸ビサントレン、ジメシル酸ビスナフィド、ビゼレシン、硫酸ブレオマイシン、ブレキナルナトリウム、ブロピリミン、ブスルファン、カクチノマイシン、カルステロン、カラセミド、カルベチマー、カルボプラチン、カルムスチン、カルビシン塩酸塩、カルゼレシン、セデフィンゴル、クロラムブシル、シロレマイシン、シスプラチン、クラドリビン、メシル酸クリスナトール、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、塩酸ダウノルビシン、デシタビン、デキソルマプラチン、デザグアニン、メシル酸デザグアニン、ジアジクオン、ドセタキセル、ドキソルビシン、塩酸ドキソルビシン、ドロロキシフェン、クエン酸ドロロキシフェン、プロピオン酸ドロモスタノロン、デュアゾマイシン、エダトレキサート、塩酸エフロルニチン、エルサミトルシン、エンロプラチン、エンプロマート、エピプロピジン、塩酸エピルビシン、エルブロゾール、塩酸エソルビシン、エストラムスチン、エストラムスチンリン酸エステルナトリウム、エタニダゾール、エトポシド、エトポシドリン酸エステル、エトプリン、塩酸ファドロゾール、ファザラビン、フェンレチニド、フロクスウリジン、フルダラビンリン酸エステル、フルオロウラシル、フルオロシタビン、ホスキドン、ホストリエシンナトリウム、ゲムシタビン、ゲムシタビン塩酸塩、ヒドロキシウレア、イダルビシン塩酸塩、イホスファミド、イルモホシン、インターロイキンII(組換えインターロイキンII、またはrIL2を含む)、インターフェロンアルファ-2a、インターフェロンアルファ-2b、インターフェロンアルファ-n1、インターフェロンアルファ-n3、インターフェロンベータ-Ia、インターフェロンガンマ-Ib、イプロプラチン、塩酸イリノテカン、酢酸ランレオチド、レトロゾール、酢酸リュープロリド、塩酸リアロゾール、ロメトレキソールナトリウム、ロムスチン、塩酸ロソキサントロン、マソプロコール、メイタンシン、塩酸メクロレタミン、酢酸メゲストロール、酢酸メレンゲストロール、メルファラン、メノガリル、メルカプトプリン、メトトレキサート、メトトレキサートナトリウム、メトプリン、メツレデパ、ミチンドミド、ミトカルシン、ミトクロミン、ミトギリン、ミトマルシン、マイトマイシン、ミトスペル、ミトタン、塩酸ミトキサントロン、ミコフェノール酸、ノコダゾール、ノガラマイシン、オルマプラチン、オキシスラン、パクリタキセル、ペグアスパラガーゼ、ペリオマイシン、ペンタムスチン、硫酸ペプロマイシン、ペルホスファミド、ピポブロマン、ピポスルファン、塩酸ピロキサントロン、プリカマイシン、プロメスタン、ポルフィマーナトリウム、ポルフィロマイシン、プレドニムスチン、塩酸プロカルバジン、ピューロマイシン、塩酸ピューロマイシン、ピラゾフリン、リボプリン、ログレチミド、サフィンゴール、サフィンゴール塩酸塩、セムスチン、シムトラゼン、スパルフォセートナトリウム、スパルソマイシン、塩酸スピロゲルマニウム、スピロムスチン、スピロプラチン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、スロフェヌル、タリソマイシン、テコガランナトリウム、テガフール、塩酸テロキサントロン、テモポルフィン、テニポシド、テロキシロン、テストラクトン、チアミプリン、チオグアニン、チオテパ、チアゾフリン、チラパザミン、クエン酸トレミフェン、酢酸トレストロン、リン酸トリシリビン、トリメトレキサート、トリメトレキサートグルクロネート、トリプトレリン、塩酸ツブロゾール、ウラシルマスタード、ウレデパ、バプレオチド、ベルテポルフィン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ビンデシン、硫酸ビンデシン、硫酸ビネピジン、硫酸ビングリシナート、硫酸ビンロイロシン、酒石酸ビノレルビン、硫酸ビンロシジン、硫酸ビンゾリジン、ボロゾール、ゼニプラチン、ジノスタチン、塩酸ゾルビシン。他の抗癌剤は、以下を含むが、これらに限定されない:20-エピ-1,25ジヒドロキシビタミンD3、5-エチニルウラシル、アビラテロン、アクラルビシン、アシルフルベン、アデシペノール、アドゼレシン、アルデスロイキン、ALL-TKアンタゴニスト、アルトレタミン、アンバムスチン、アミドックス、アミホスチン、アミノレブリン酸、アムルビシン、アムサクリン、アナグレリド、アナストロゾール、アンドログラフォリド、血管新生阻害剤、アンタゴニストD、アンタゴニストG、アンタレリクス、抗背側化形態形成タンパク質-1、抗アンドロゲン、前立腺癌、抗エストロゲン、抗新生物薬、アンチセンスオリゴヌクレオチド、グリシン酸アフィジコリン、アポトーシス遺伝子調節物質、アポトーシス調節物質、アプリン酸、ara-CDP-DL-PTBA、アルギニンデアミナーゼ、アスラクリン、アタメスタン、アトリムスチン、アキシナスタチン1、アキシナスタチン2、アキシナスタチン3、アザセトロン、アザトキシン、アザチロシン、バッカチンIII誘導体、バラノール、バチマスタット、BCR/ABLアンタゴニスト、ベンゾクロリン、ベンゾイルスタウロスポリン、ベータラクタム誘導体、ベータアレチン、ベータクラマイシンB、ベツリン酸、bFGF阻害剤、ビカルタミド、ビサントレン、ビスアジリジニルスペルミン、ビスナフィド、ビストラテンA、ビゼレシン、ブレフラート、ブロピリミン、ブドチタン、ブチオニンスルホキシミン、カルシポトリオール、カルホスチンC、カンプトテシン誘導体、カナリア痘IL-2、カペシタビン、カルボキサミド-アミノ-トリアゾール、カルボキシアミドトリアゾール、CaRest M3、CARN700、軟骨由来阻害剤、カルゼレシン、カゼインキナーゼ阻害剤(ICOS)、カスタノスペルミン、セクロピンB、セトロレリックス、塩素、クロロキノキサリンスルホンアミド、シカプロスト、シス-ポルフィリン、クラドリビン、クロミフェン類似体、クロトリマゾール、コリスマイシンA、コリスマイシンB、コンブレタスタチンA4、コンブレタスタチン類似体、コナゲニン、クランベシジン816、クリスナトール、クリプトフィシン8、クリプトフィシンA誘導体、キュラシンA、シクロペンタントラキノン、シクロプラタム、シペマイシン、シタラビンオクホスフェート、細胞溶解因子、シトスタチン、ダクリキシマブ、デシタビン、デヒドロジムデニンB、デスロレリン、デキサメタゾン、デキシホスファミド、デキスラゾキサン、デキスベラパミル、ジアジクオン、ジデムニンB、ジドックス、ジエチルノルスペルミン、ジヒドロ-5-アザシチジン、ジヒドロタキソール,9-、ジオキサマイシン、ジフェニルスピロムスチン、ドセタキセル、ドコサノール、ドラセトロン、ドキシフルリジン、ドロロキシフェン、ドロナビノール、デュオカルマイシンSA、エブセレン、エコムスチン、エデルホシン、エドレコロマブ、エフロルニチン、エレメン、エミテフル、エピルビシン、エプリステリド、エストラムスチン類似体、エストロゲンアゴニスト、エストロゲンアンタゴニスト、エタニダゾール、エトポシドリン酸エステル、エキセメスタン、ファドロゾール、ファザラビン、フェンレチニド、フィルグラスチム、フィナステリド、フラボピリドール、フレゼラスチン、フルアステロン、フルダラビン、フルオロダウノルニシン塩酸塩、ホルフェニメクス、ホルメスタン、ホストリエシン、ホテムスチン、ガドリニウムテキサフィリン、硝酸ガリウム、ガロシタビン、ガニレリックス、ゼラチナーゼ阻害剤、ゲムシタビン、グルタチオン阻害剤、ヘプスルファム、ヘレグリン、ヘキサメチレンビスアセトアミド、ヒペリシン、イバンドロン酸、イダルビシン、イドキシフェン、イドラマントン、イルモホシン、イロマスタット、イミダゾアクリドン、イミキモド、免疫刺激ペプチド、インスリン様成長因子-1受容体阻害剤、インターフェロンアゴニスト、インターフェロン、インターロイキン、ヨーベングアン、ヨードドキソルビシン、イポメアノール,4-、イロプラクト(iroplact)、イルソグラジン、イソベンガゾール、イソホモハリコンドリンB、イタセトロン、ジャスプラキノリド、カハラリドF、ラメラリン-Nトリアセテート、ランレオチド、レイナマイシン、レノグラスチム、レンチナン硫酸塩、レプトルスタチン、レトロゾール、白血病抑制因子、白血球アルファインターフェロン、リュープロリド+エストロゲン+プロゲステロン、リュープロレリン、レバミゾール、リアロゾール、直鎖ポリアミン類似体、親油性二糖化ペプチド、親油性白金化合物、リソクリナミド7、ロバプラチン、ロンブリシン、ロメトレキソール、ロニダミン、ロソキサントロン、ロバスタチン、ロキソリビン、ルートテカン、ルテチウムテキサフィリン、リソフィリン、溶解ペプチド、マイタンシン、マンノスタチンA、マリマスタット、マソプロコール、マスピン、マトリライシン阻害剤、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、メノガリル、メルバロン、メテレリン、メチオニナーゼ、メトクロプラミド、MIF阻害剤、ミフェプリストン、ミルテホシン、ミリモスチム、ミスマッチ二本鎖RNA、ミトグアゾン、ミトラクトール、マイトマイシン類似体、ミトナフィド、ミトトキシン線維芽細胞増殖因子-サポリン、ミトキサントロン、モファロテン、モルグラモスチム、モノクローナル抗体,ヒト絨毛性ゴナドトロピン、モノホリル脂質A+ミオバクテリウム細胞壁sk、モピダモール、多剤耐性遺伝子阻害剤、複数の腫瘍抑制剤1ベース療法、マスタード抗癌剤、ミカペロキシドB、マイコバクテリア細胞壁抽出物、ミリアポロン、N-アセチルジナリン、N-置換ベンズアミド、ナファレリン、ナグレスチップ、ナロキソン+ペンタゾシン、ナパビン、ナフテルピン、ナルトグラスチム、ネダプラチン、ネモルビシン、ネリドロン酸、中性エンドペプチダーゼ、ニルタミド、ニサマイシン、一酸化窒素調節物質、ニトロキシド酸化防止剤、ニトルリン、O6-ベンジルグアニン、オクトレオチド、オキセノン、オリゴヌクレオチド、オナプリストン、オンダンセトロン、オンダンセトロン、オラシン、経口サイトカイン誘導剤、オルマプラチン、オサテロン、オキサリプラチン、オキサウノマイシン、パクリタキセル、パクリタキセル類似体、パクリタキセル誘導体、パラウアミン、パルミトイルリゾキシン、パミドロン酸、パナキシトリオール、パノミフェン、パラバクチン、パゼリプチン、ペグアスパラガーゼ、ペルデシン、ペントサンポリサルフェートナトリウム、ペントスタチン、ペントロゾール、ペルフルブロン、ペルホスファミド、ペリリルアルコール、フェナジノマイシン、フェニルアセテート、ホスファターゼ阻害剤、ピシバニル、ピロカルピン塩酸塩、ピラルビシン、ピリトレキシム、プラセチンA、プラセチンB、プラスミノーゲンアクチベーター阻害剤、白金複合体、白金化合物、白金トリアミン複合体、ポルフィマーナトリウム、ポルフィロマイシン、プレドニゾン、プロピルビス-アクリドン、プロスタグランジンJ2、プロテアソーム阻害剤、タンパク質Aベース免疫調節物質、プロテインキナーゼC阻害剤、プロテインキナーゼC阻害剤,微細藻類、プロテインチロシンホスファターゼ阻害剤、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤、プルプリン、ピラゾロアクリジン、ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレンコンジュゲート、rafアンタゴニスト、ラルチトレキセド、ラモセトロン、rasファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、ras阻害剤、ras-GAP阻害剤、脱メチル化レテリプチン、レニウムRe186エチドロネート、リゾキシン、リボザイム、RIIレチナミド、ログレチミド、ロヒツカイン、ロムルチド、ロキニメックス、ルビギノンB1、
ルボキシル、サフィンゴール、サントピン、SarCNU、サルコフィトールA、サルグラモスチム、Sdi1模倣物、セムスチン、老化由来阻害剤1、センスオリゴヌクレオチド、シグナル伝達阻害剤、シグナル伝達調節物質、一本鎖抗原結合タンパク質、シゾフラン、ソブゾキサン、ボロカプテートナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、ソルベロール、ソマトメジン結合タンパク質、ソネルミン、スパルフォシン酸、スピカマイシンD、スピロムスチン、スプレノペンチン、スポンジスタチン1、スクアラミン、幹細胞阻害剤、幹細胞分裂阻害剤、スチピアミド、ストロメリシン阻害剤、スルフィノシン、超活性腸管ペプチドアンタゴニスト、スラジスタ、スラミン、スワインソニン、合成グリコサミノグリカン、タリムスチン、タモキシフェンメチオダイド、タウロムスチン、タザロテン、テコガランナトリウム、テガフール、テルラピリリウム、テロメラーゼ阻害剤、テモポルフィン、テモゾロミド、テニポシド、テトラクロロデカオキシド、テトラゾミン、タリブラスチン、チオコラリン、トロンボポエチン、トロンボポエチン模倣物、チマルファシン、チモポイエチン受容体アゴニスト、チモトリナン、甲状腺刺激ホルモン、スズエチルエチオプルプリン、チラパザミン、チタノセン二塩化物、トプセンチン、トレミフェン、全能性幹細胞因子、翻訳阻害剤、トレチノイン、トリアセチルウリジン、トリシリビン、トリメトレキサート、トリプトレリン、トロピセトロン、ツロステリド、チロシンキナーゼ阻害剤、チルホスチン、UBC阻害剤、ウベニメクス、尿生殖洞由来成長阻害因子、ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト、バプレオチド、バリオリンB、ベクター系、赤血球遺伝子療法、ベラレソール、ベラミン、ベルジン、ベルテポルフィン、ビノレルビン、ビンキサルチン、ビタキシン、ボロゾール、ザノテロン、ゼニプラチン、ジラスコルブ、およびジノスタチン刺激剤。一実施形態において、抗癌薬は、5-フルオロウラシル、タキソール、またはロイコボリンである。
【0225】
インビトロおよびエクスビボでの合成抗体の生成
一実施形態において、合成抗体(例えば、DMAb、ScFv断片またはDBiTE)は、インビトロまたはエクスビボで生成される。例えば、一実施形態において、合成抗体(例えば、DMAb、ScFv断片またはDBiTE)をコードする核酸は、インビトロまたはエクスビボ細胞において導入および発現され得る。遺伝子を細胞に導入および発現するための方法は、当該技術分野で既知である。発現ベクターの文脈において、ベクターは、当該技術分野における任意の方法によって、宿主細胞、例えば、哺乳動物、細菌、酵母、または昆虫細胞に容易に導入され得る。例えば、発現ベクターは、物理的、化学的、または生物学的手段によって宿主細胞に導入され得る。
【0226】
宿主細胞にポリヌクレオチドを導入するための物理的方法としては、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、パーティクルボンバードメント、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどが挙げられる。ベクターおよび/または外来性核酸を含む細胞を産生するための方法は当該技術分野において周知である。例えば、Sambrook et al.(2012,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York)を参照されたい。ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための好ましい方法は、リン酸カルシウムトランスフェクションである。
【0227】
目的のポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための生物学的方法としては、DNAベクターおよびRNAベクターの使用が挙げられる。ウイルスベクター、および特にレトロウイルスベクターは、哺乳動物、例えば、ヒト細胞に遺伝子を挿入するための最も広く使用される方法となっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI、アデノウイルスおよびアデノ関連ウイルスなどに由来し得る。例えば、米国特許第5,350,674号および5,585,362号を参照されたい。
【0228】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための化学的手段としては、巨大分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフィア、ビーズ、ならびに水中油型乳剤、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含む脂質系などのコロイド分散系が挙げられる。インビトロおよびインビボで送達ビヒクルとして使用するための例示的なコロイド系は、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。
【0229】
非ウイルス送達系が利用される場合では、例示的な送達ビヒクルはリポソームである。脂質製剤の使用は、(インビトロ、エクスビボ、またはインビボでの)宿主細胞への核酸の導入のために企図される。別の態様では、核酸は、脂質と関連し得る。脂質に関連する核酸は、リポソームの水性内部に封入され、リポソームの脂質二重層内に分散され、リポソームおよびオリゴヌクレオチドの両方に関連する連結分子を介してリポソームに結合され、リポソームに捕捉され、リポソームと複合体形成され、脂質を含有する溶液中に分散され、脂質と混合され、脂質と組み合わされ、脂質中に懸濁液として含有され、ミセルに含有されるか、またはミセルと複合体形成され、またはそれ以外の方法で脂質と関連し得る。脂質、脂質/DNA、または脂質/発現ベクター関連組成物は、溶液中のいかなる特定の構造にも限定されない。例えば、それらは、ミセルとして二層構造に存在し得るか、または「崩壊」構造を有し得る。これらはまた、溶液中に単純に分散されてもよく、サイズまたは形状が均一ではない凝集体を形成する可能性もある。脂質は、天然発生型または合成脂質であり得る脂肪物質である。例えば、脂質としては、細胞質内で天然に発生する脂肪滴、ならびに長鎖脂肪族炭化水素およびそれらの誘導体、例えば、脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、およびアルデヒドを含む化合物のクラスが挙げられる。
【実施例】
【0230】
本発明は、以下の実施例においてさらに示される。これらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しながら、例示としてのみ与えられることが理解されるべきである。上記議論およびこれらの実施例から、当業者は、本発明の本質的な特徴を確認することができ、その趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な使用および条件に適合するように本発明の様々な変更および修飾を行うことができる。したがって、本明細書に示され、記載されるものに加えて、本発明の様々な修飾は、前述の説明から当業者には明らかであろう。そのような修飾はまた、添付の特許請求の範囲内にあることが意図される。
【0231】
実施例1
本明細書に提示される研究は、CD19、BCMA、CD33、FAP、FSHR、EGFR、PSMA、またはCD123を標的とするDNAコード化二重特異性T細胞エンゲージャー(DBiTE)の開発を実証する。DBiTE構築物はインビボで、高レベルで発現する。
図1は、BCMADBiTE、CD33DBiTE、およびCD123DBiTEの発現を示す。
図2は、EGFRvIIIDBiTE、FSHRDBiTE、PSMADBiTE、およびCD19DBiTEの発現を示す。これらの新規のDBiTEは、癌の免疫療法のための新しいツールを表す。
【0232】
図3~5は、CD19DBiTEがB細胞枯渇およびT細胞活性化の両方に対して機能することを示すデータを提供する。3つの独立したドナーからのPBMCは、5μlのCD19DBiTEまたは対照DBiTE(EGFRvIIIDBiTE)の上清の存在下で、三重で5時間培養された。インキュベーション後、細胞は、B細胞およびT細胞マーカーについて染色され、B細胞(CD19+細胞)およびT細胞の早期活性化に対する潜在的な細胞溶解活性を決定した。
図4は、3つ全てのドナーが、CD19DBiTEの存在下でB細胞(PBMC混合物におけるCD19+細胞)の枯渇を示し、対照DBiTEの存在下では示さなかったことを示すデータを提供する。
図5は、3つ全てのドナーが、CD19DBiTEの存在下でT細胞における初期活性化マーカーCD69の増加を示し、対照DBiTEの存在下では示さなかったことを示すデータを提供する。
【0233】
さらに、BCMADBiTEの細胞毒性を実証するために実験が行われた。BCMADBiTE上清またはCD33DBiTE上清は、RPMI8226細胞株とともに5時間インキュベートされ、由来のT細胞は、1:0、1:3、および1:7の腫瘍対T細胞比(ウェル当たり10,000個の腫瘍細胞)で1つのドナーを形成した。5時間インキュベーションすると、BCMAdBiTEは、1:1、1:3、および1:7の比率で細胞を溶解することができたが、T細胞の不在下では溶解することはできず、CD33DBiTEの存在下では、いかなる条件下でも死滅は生じなかった。
【0234】
実施例2
本明細書に提示される研究は、HER2(HER2DMAbおよびHER2DBiTE)を標的とするDNAモノクローナル抗体およびBiTEの開発、ならびに卵巣および乳癌の治療のための治療薬としてのそれらの使用を実証する。DMAbおよびDBiTE構築物の両方は、約4ヶ月間インビトロおよびインビボで、高レベルで発現する。HER2DMAbは、HER2に結合し、HER2シグナル伝達遮断および抗体依存性細胞毒性を誘導する。HER2DBiTEは、HER2+腫瘍細胞に対するT細胞の細胞毒性を効果的に誘導する。これらの新規DNA技術は、癌の免疫療法のためのさらなる研究のための新しいツールを表す。
【0235】
材料および方法をここで説明する。
動物および細胞株
C57Bl/6およびNu/JマウスはJackson labsから購入された。NSGマウスはWistar Institute Animal Facilityから購入された。
【0236】
OVCAR3、SKOV3、およびBrpkp110細胞は、J.R.Conejo-Garcia(Department of Immunology,Moffitt Cancer Center,FL)によって提供された。TOV-21GおよびRNG1は、R.Zhang(The Wistar Institute)によって提供された。OVCAR3腫瘍が、前述のように、PBS/マトリゲル(50/50)中300万個の細胞を脇腹に注射することによって生成された(Perales-Puchalt et al.,2017,Clin Cancer Res,23(2):441-53)。RDおよび293T細胞は、ATCCから購入された。
【0237】
マウスは、80μlの水に再懸濁した100μgのDNAを、200IU/mlのヒアルロニダーゼ(Sigma)で前脛骨筋(脚当たり40μl)に注入し、注射の1分後にCELLECTRAデバイスでのエレクトロポレーションによって処理された。
【0238】
HER2DMAbおよびHER2DBiTEの設計
抗HER2モノクローナル抗体ペルツズマブの重および軽鎖のコドン最適化配列をコードするHER2DMAbが設計され、生成された。両方の抗体鎖は、P2Aおよびフリン切断部位によって分離された配列で位置決めされた。IgEリーダー配列が、元のリーダー配列と置換された。HER2DBiTEは、HER2DMAbのコドン最適化scFv、続いてOKT3抗ヒトCD3抗体のscFvをコードし、IgEリーダー配列を添加することによって設計された。両方の構築物は、改変pVAX1発現ベクターにサブクローニングされた(
図6Aおよび
図11A)。
【0239】
空の改変pVAX1プラスミドが陰性対照として使用された。
【0240】
インビトロDMAb発現
100万個の293T細胞が、6ウェルプレートの各チャンバーに播種された。翌日、細胞を、1μgのHER2DMAbプラスミドをLipofectamin2000(Invitrogen)でトランスフェクトされた。上清は、トランスフェクションの48時間後に回収された。
【0241】
フローサイトメトリー
使用した抗ヒト抗体は、直接蛍光色素コンジュゲートされた。HER2(24D2)、CD45(HI30)、CD3(HIT3A)、CD69(FN50)、PD-1(EH12.2H7)、および二次抗ヒトIgGAPC(ポリクローナル)をBiolegendから得た。生/死の除外は、7AAD(Invitrogen)およびAnnexin V(Biolegend)で行われた。
【0242】
免疫ブロット
タンパク質抽出、変性およびウェスタンブロットは、前述のように行われた(Perales-Puchalt et al.,2017,Clin Cancer Res,23(2):441-53)。膜は、ポリクローナル抗ヒトIgG(H+L)(Bethyl)および抗β-アクチン(a5441、Sigma-Aldrich)でブロットされた。画像は、ImageQuantLAS4000(GE Healthcare Life Sciences)で捕捉された。
【0243】
シグナル伝達遮断実験のために、200,000個のOVCAR3細胞が6ウェルプレートに播種され、無血清培地で一晩飢餓状態にされた。翌日、10μgの精製HER2DMAbまたはPBSが、適切なウェルに1時間添加され、続いて10ng/mlのHRG(Peprotech)が30分間添加された。
【0244】
HER2結合ELISA
ELISAプレートは、4℃で一晩、1μg/mlのヒトHER2組換えタンパク質(abcam)でコーティングされた。ブロッキングは、PBST-10%FBSで1時間行われた。異なる希釈のHER2DMAb発現マウスまたは対照(空のpVaxプラスミドでエレクトロポレーションされた)由来の血清が、一次抗体として使用され、インキュベートは室温で1時間行われた。二次抗体は、ヤギ抗ヒトIgG Fc HRPコンジュゲート(Bethyl)であった。1時間のインキュベーション後、現像は、SIGMAFAST OPD(Sigma Aldrich)で実施され、450nmで読み取られた。
【0245】
DMAb定量ELISA
ELISAプレートは、4℃で一晩、1μg/mlのヤギ抗ヒトIgG-Fc断片抗体(Bethyl)でコーティングされた。翌日、それらは、室温で1時間、PBST-10%FBSでブロッキングされ、洗浄され、PBST-1%FBS中で希釈した試料とともに室温で1時間、インキュベートされ、洗浄され、HRP共役ヤギ抗ヒトカッパ軽鎖抗体(Bethyl)とともに室温でインキュベートされた。1時間のインキュベーション後、それらはSIGMAFAST OPD(Sigma Aldrich)で現像され、450nmで読み取られた。標準曲線は、精製されたヒトIgG/カッパ(Bethyl)を使用して生成された。
【0246】
CD3およびHER2結合ELISA(DBiTE)
ELISAプレートは、4℃で一晩、1μg/mlのヒトHER2組換えタンパク質(abcam)またはヒトCD3イプシロン(Acrobiosystems)でコーティングされた。それらはPBST-10%FBSで1時間、ブロッキングされた。HER2DBiTE発現マウスまたは対照(空のpVaxプラスミドでエレクトロポレーションされた)由来の血清が、一次抗体として使用された。それらは室温で1時間インキュベートされた。二次抗体は、ヤギ抗ヒトIgG H+L HRPコンジュゲート(Bethyl)であった。1時間のインキュベーション後、プレートはSIGMAFAST OPD(Sigma Aldrich)で現像され、450nmで読み取られた。
【0247】
抗HER2DMAbおよびHER2DBiTE抗体の検出
ELISAプレートは、4℃で一晩、1μg/mlの精製HER2DMAbまたはHER2DBiTEでコーティングされた。翌日、プレートは、室温で1時間、PBST-10%FBSでブロッキングされ、洗浄され、PBST-1%FBS中に希釈した試料とともに室温で1時間、インキュベートされ、洗浄され、HRP共役ヤギ抗マウスIgG抗体(Abcam)とともに室温でインキュベートされた。1時間のインキュベーション後、プレートはSIGMAFAST OPD(Sigma Aldrich)で現像された。
【0248】
HER2DBiTEによるT細胞活性化およびアポトーシスの検出
96ウェルプレートは、5,000個のOVCAR3を4℃で一晩播種された。翌日、HER2DBiTE発現マウスまたはpVax対照(PBSで1:20希釈、100μl)由来の血清および50,000個のT細胞が添加され、プレートは、37℃でインキュベートされた。24時間後、IFNγ ELISAのために上清が取られ、新鮮な上清が添加された。72時間後、フローサイトメトリーが実施され、T細胞アポトーシスおよび活性化(CD3、CD69、PD-1、アネキシンV)を測定した。細胞数については、5,000個のOVCAR3が100,000個のT細胞とともに播種され、生T細胞数は、死細胞排除染料Trypan Blue(ThermoFisher)およびCountess II自動細胞カウンタ(ThermoFisher)を使用してカウントされた。
【0249】
インターフェロンガンマ ELISA
上清由来のヒトインターフェロンガンマの決定は、製造業者の説明書に従って、ヒトIFNg ELISA MAX(Biolegend)を使用して行われた。
【0250】
インビトロ細胞毒性
ウェル当たり10,000個のOVCAR3細胞が、96ウェルプレートに播種され、18時間後、HER2DMAbの存在下または非存在下で、健康なドナー(ペンシルバニア大学ヒト免疫学コアによって提供された)由来の500,000個のヒトPBMCまたはヌードマウス由来の500,000個の脾細胞と4時間共インキュベートされた。4時間後、上清が回収され、細胞はトリプシン処理され、7AAD(Invitrogen)、アネキシンV(Biolegend)および抗ヒトCD45(Biolegend)について染色され、フローサイトメトリベースの細胞毒性アッセイが、前述のように行われた(Perales-Puchalt et al.,2017,Clin Cancer Res,23(2):441-53)。あるいは、ルシフェラーゼを発現するOVCAR3またはMDA-MB-231を使用し、共培養後にルシフェラーゼ発現を測定した。BiTE死滅アッセイのために、10,000個のOVCAR3-ルシフェラーゼ細胞が異なる比率のT細胞と5時間インキュベートされ、PBSで洗浄され、溶解され、ルシフェラーゼ発現が測定された。
【0251】
抗体依存性細胞食作用
マクロファージは、T25当たり100万個の単球を50ng/mlのヒトM-CSF(Peprotech)で播種することによって、ヒト単球から分化させた。サイトカインを有する培地が、3日目および6日目に変更された。6日目に、マクロファージは、トリプシン処理され、製造業者の指示に従って細胞トレースバイオレット(Invitrogen)で染色され、96ウェルプレートに5万/ウェルで播種され、それらを20ng/mlのM-CSFで一晩放置した。7日目に、OVCAR3細胞は、CFSE(Invitrogen)で染色され、10,000個のOVCAR3細胞は、HER2DMAbまたはpVax血清を伴うマクロファージとともにウェル上に播種された。24時間後、細胞はトリプシン処理され、フローサイトメトリーが実施された。食作用は二重陽性染色細胞として測定された。
【0252】
免疫蛍光
マウス腫瘍は、OCT(TissueTek)中で凍結され、凍結切片を切断した。次いでスライドは、4%パラホルムアルデヒドで固定され、PBS中0.5%Triton X-100で透過された。切片は、5%の正常なヤギ血清を使用してブロッキングされ、続いてHER2DMAb抗体および抗ヒトAF488コンジュゲート二次(Invitrogen)で染色した。
【0253】
スライドは、Leica TCS SP5 II共焦点顕微鏡およびLASソフトウェア(Leica)を使用して観測された。
【0254】
統計学
実験群の平均間の差は、両側の対応のないスチューデントのt検定または一元配置ANOVAを使用して計算され、ここでは、2つのカテゴリ変数が測定された。反復測定は、二元配置ANOVAを使用して分析された。エラーバーは平均値の標準偏差を表す。生存率は、ログランク検定を使用して比較された。全ての統計分析は、Graph Pad Prism7.0を使用して行われた。p<0.05は統計的に有意であるとみなされた。
【0255】
実験の結果をここで記載する。
【0256】
HER2 DNAコード化モノクローナル抗体(DMAb)の設計および発現
DNAコード化抗体(DMAb)は、従来のタンパク質抗体よりも一連の利点を有する。まず、DNAはタンパク質よりも安定している。このより高い安定性は、治療費を増加させ、生成物半減期を制限する、抗体の鎖を厳密に冷すこと維持する必要がない(Hernandez et al.,2018,Am J Manag Care,24(2):109-12)。さらに、これらの抗体コードDNAプラスミドの細胞内送達は、大幅な期間にわたって安定した血漿抗体濃度を達成し、複数回投与の必要性を制限し、癌の免疫療法のための新規ツールを提供する。
【0257】
HER2DMAbは、ペルツズマブの重および軽鎖のコドンおよびRNA最適化配列をpVAX1プラスミド発現ベクターにコードすることによって生成された(
図6A)。これらの配列は、IgEシグナルペプチドが先行し、重および軽鎖はP2Aおよびフリン切断部位によって分離された。抗体発現は、HER2DMAbまたは無関係なタンパク質をコードするDNAを293T細胞にトランスフェクトすることによって、インビトロで試験された。48時間後、上清が回収され、ウェスタンブロットが行われた。重および軽抗体鎖に対応するバンドが、HER2DMAbトランスフェクト293T上清において同定されたが、無関係なタンパク質対照においては同定されなかった(
図6B)。ヒトIgGの量を決定するためにELISAが使用され、HER2DMAbが5~6μg/mlで293Tによって発現されることが観測され、これはRD細胞を使用して検証された(
図7A)。
【0258】
インビトロ発現を確認した後、HER2DMAbの発現はインビボで確認された。200μgのHER2DMAbまたは空のベクターがマウスの前脛骨筋に注射され、続いてCELLECTRA3Pシステムを使用して適応エレクトロポレーションが行われた(Tebas et al.,2017,N Engl J Med,Epub ahead of print)。インビトロ系と同様に、ヒトIgGの存在は、HER2DMAb注射マウス由来の血清において同定されたが、対照においては同定されず(
図6C)、マウス血清における発現レベルは50μg/mlに達し、平均約25μg/mlであった(
図6D)。
【0259】
次に、DNAコード化ヒトIgGのヒトHER2に結合する能力が試験された。プレートは、ヒトHER2タンパク質でコーティングされ、HER2DMAb処置マウス由来の血清または対照の血清とともにインキュベートされた。マウス血清由来のHER2DMAbは、用量依存的にヒトHER2に結合した(
図6E)。タンパク質が細胞表面に存在する場合のHER2結合を確認するために、ヒトHER2がマウス細胞株Brpkp110において過剰発現された。HER2DMAbは、異所的に発現した場合にのみフローサイトメトリーによってヒトHER2に結合した(
図6F)。
【0260】
HER2は、ヒト卵巣癌細胞株において発現される。
ペルツズマブは、トラスツズマブとは異なり、その抗腫瘍活性のために腫瘍細胞におけるHER2過剰発現を必要としない(Agus et al.,2002,Cancer Cell,2(2):127-37)。卵巣癌において、ペルツズマブは、ゲムシタビンおよびパクリタキセルによる併用治療における無増悪生存率の増加傾向が示されている(Kurzeder et al.,2016,J Clin Oncol,34(21):2516-25)。HER2は、卵巣癌のおよそ11.4%において過剰発現される(組織学的スコア2+/3+)(Bookman et al.,2003,J Clin Oncol,21(2):283-90)。HER2が卵巣癌細胞株においても発現されるかどうかを判断するために、市販の24D2抗体を使用してフローサイトメトリーが行われた(
図8A)。HER2DMAbの結合は、これらの同じ細胞に対するフローサイトメトリーを行うことによって検証された(
図8B)。HER2DMAbを使用して、卵巣癌細胞株のインビボ発現および潜在的標的化をさらに検証するために、マウスにおいてOVCAR3腫瘍が生成され、腫瘍凍結切片上で免疫蛍光が行われた。陽性結合は、HER2DMAbトランスフェクトマウス由来の血清を使用して見られたが、対照血清では見られず、HER2のインビボ発現およびHER2DMAbの結合を確認した(
図8C)。
【0261】
HER2DMAbは、HER2シグナル伝達遮断および抗体依存性細胞毒性を仲介する。
異なるメカニズムが、抗癌抗体の抗腫瘍効果に起因している。ペルツズマブは、HER2ヘテロ二量体化およびアゴニスト媒介シグナル伝達を防止することによって作用する(Franklin et al.,2004,Cancer Cell,5(4):317-28)。予想通り、HER2DMAbは、ビヒクル対照と比較したときのAktリン酸化の減少によって証明されるように、OVCAR3細胞におけるHER2-HER3アゴニストのヘレグリン誘導(HRG誘導)シグナル伝達を防止した(
図9A)。
【0262】
MAbが抗腫瘍活性を有する別の機構は、抗体依存性細胞毒性(ADCC)によるものである。HER2DMAbのADCC電位を研究するために、OVCAR3細胞が、末梢血単核細胞(PBMC)の有無とともに、HER2DMAb由来の血清の存在下で、または空のベクター処置マウス由来の血清を使用して共インキュベートされた。HER2DMAb血清は、PBMCの存在下で卵巣癌細胞を効果的に死滅させたが、それらの不在下では死滅させなかった。加えて、対照血清条件(
図9Bおよび
図7B)において、またはMDA-MB-231(
図7C)などのHER2細胞株に対して、殺傷は観察されなかった。同様に、HER2dMAbは、抗体依存性食作用活性を示した(
図7D)。
【0263】
HER2DMAbはインビボで癌進行を遅延させる。
インビボでHER2DMAbの抗腫瘍効果を判断するために、マウスをOVCAR-3卵巣癌細胞株で挑戦した。ヌードマウスは、T細胞を有しないが、NKおよびマクロファージ活性が増強されており、それらの脾細胞は、HER2dMAbの存在下で、インビトロでOVCAR3を溶解し得る(
図7E)。腫瘍が平均50mm3に達したとき、100μgのHER2DMAbまたは空のベクターがEPによって筋肉に送達された。HER2DMAb注射動物は、腫瘍成長の著しい遅延を示し、生存の改善をもたらした(
図9C)。HER2DMAb抗体レベルは、DMAb注射の2週間後に約20μg/mlのレベルでピークにし、実験の終了まで1ヶ月にわたって約5~10μg/mlのレベルを維持した(
図9D)。臨床投与をよりよく模倣する免疫能のある宿主における抗腫瘍効果を検証するために、マウスヒトHER2乳癌細胞株Brkpk110を使用して腫瘍が生成された。この細胞株は、OVCAR3と同様のHER2レベルを発現させるよう操作された(
図9E)。腫瘍挑戦の5日後、マウスはHER2DMAbまたは空のベクターで処理された。HER2DMAbはまた、この攻撃的な乳癌のモデルにおいて腫瘍進行を遅らせた(
図9F)。
【0264】
HER2dMAbの動態を研究したところ、ほぼ300日間にわたって抗体発現の減少があったことが注目された。この現象を調査するために、マウスにおいて発現されるこのヒト構築物に対する抗体の誘導が評価された。抗HER2dMAb抗体の発生は、HER2dMAbでの処置後に血清において観察され(
図7F)、これは、経時的にその低下に寄与し得る。
【0265】
HER2BiTEの生成、発現および細胞毒性
二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)は、2つの結合抗体断片(scFv)を有し、その一方が腫瘍抗原にエンゲージし、他方がCD3活性化を駆動するT細胞に結合することによって活性化する。抗腫瘍活性が高いにもかかわらず、これらの新しいツールは、およそ2.1時間のインビボ排除半減期に起因して大きな制限を有するため、BiTE療法はゆっくりと進行する。この短い半減期は、1サイクルあたり4~8週間にわたって点滴ポンプを使用して継続的な静脈内注入を投与すべきことをBiTE療法に課す。RNA発現BiTEを用いた最近の実験は、IV注入後最大6日間の発現を示し、かなりの進歩を示している(Stadler et al.,2017,Nat Med,23(7):815-7)。
【0266】
HER2DMAbのscFvを刺激抗体抗CD3(OKT3)のscFvと融合させることによって、最適化されたHER2BiTEが生成された(
図11A)。HER2BiTEは、マウス前脛骨筋への注射およびエレクトロポレーションするとインビボで効率的に発現される(
図11B)。新しいHER2DBiTEは、HER2への結合を保持し、CD3に結合した(
図10Aおよび10B)。重要なことに、UCHT1が提供する刺激は、T細胞を死滅させることができると報告されているが、OKT3細胞をHER2DBiTEと共培養した場合、HER2+細胞の存在下での単なる対照と比較して、増加したアポトーシスの割合またはT細胞数の差は観察されなかった(
図10Cおよび
図10D)。インビボで発現したHER2DBiTEの機能を判断するために、HER2DBiTEまたは空のベクターを注射したマウス由来の血清とHER2+卵巣癌細胞およびT細胞とを培養した。HER2DBiTE処理後のマウス由来の血清は、T細胞活性化(
図10E~
図10G)、ならびにOVCAR3およびCAOV3細胞の効率的な用量依存的細胞毒性を示した。空のベクター処置マウス由来の血清とのインキュベーション時に細胞毒性は認められず、またはT細胞の不在下で細胞毒性は観察されなかった(
図11Cおよび
図10H)。処理したマウス由来の5%血清(100μl中5μl)で、1:5の比率でのT細胞のOVCAR3とインキュベーションは、DBiTEがおよそ4ヶ月間強力な活性を示したことを示した(
図11d)。HER2DBiTEのように、抗HER2DBiTE抗体の生成が観察され、これは、経時的な循環レベルの部分的な原因であり得る(
図10I)。インビボでのDBiTE抗腫瘍活性を判断するために、NOD/SCID-γ(NSG)マウスがOVCAR3で挑戦された。マウスは、腫瘍移植の1日後に200μgのHER2DBiTEまたは空のベクターの単回投与で処理された。腫瘍接種の2週間後、腫瘍がおよそ50mm
3であるとき、10,000,000個のPBMCが各マウスに腹腔内注射された。HER2DBiTE処置は、腫瘍進行に顕著に影響を及ぼし(
図11E)、10個の腫瘍のうち8個において腫瘍退縮または腫瘍排除が観察されたが、対照群において腫瘍影響は観察されなかった(
図11F)。
【0267】
HER2DBiTEのインビボ効果は、PBMCの不在下で観察されなかった(
図10J)。わずか数秒間持続する単純注射によって送達されたHER2DBiTEは、約4ヶ月間インビボで発現され、劇的な抗腫瘍活性を提示した。BiTEの合成DNA送達は、BiTE療法の短い半減期によって生成される負担を軽減し、癌免疫療法におけるこのツールのための新たな用途を提供し得る。
【0268】
まとめると、データは、DMAbがHER2DMAbおよびHER2DBiTEをコードし得、それらが高レベルで、インビボで耐久的に発現され、強力な抗腫瘍活性を駆動することを可能にすることを実証する。このアプローチは、卵巣癌ならびに潜在的な他の癌の治療のための貴重な新しいツールを提供する。
【0269】
実施例3
EGFRvIII標的化DNAコード化免疫細胞エンゲージャー(DICE)は、EGFRvIII陽性腫瘍に対するT細胞媒介性細胞溶解活性を誘導し、GBMマウスモデルにおける腫瘍成長を制御する二重特異性抗体のインビボ発現を生成する。
T細胞および腫瘍関連抗原(TAA)を標的とする二重特異性抗体の開発は、近年、前臨床および臨床の設定の両方で指数関数的に拡大している。2017年に、1つの二重特異性抗体が急性リンパ芽球性白血病を治療することが承認された。しかしながら、その低分子量のため、抗体の血清半減期はわずか約4時間である。その結果、治療は、数日間にわたる抗体の継続的なIV注射を必要とし、これは数週間に及ぶ可能性がある。不十分な薬物動態プロファイルは、製造および分子安定性に関連する他の困難とともに、二重特異性抗体の開発において大きな課題を提示している。これらの問題に対処するために、インビボで二重特異性抗体を発現するように設計された最適化された合成DNAコード化免疫細胞エンゲージャー(DICE)が開発された。HER2-DICEの単回投与を受けたマウスは、120日超間、二重特異性抗体の長期インビボ発現およびHER2発現卵巣細胞株に対するT細胞媒介性細胞溶解活性を示す。同じ研究において、HER2-DICEは、腫瘍進行を制御するだけでなく、卵巣癌マウスモデルにおける多くの動物における腫瘍クリアランスを促進した。同様の戦略を用いて、多形性膠芽腫(GBM)患者の30~50%で発現するTAA、EGFRvIIIを標的とするDICEが開発された。インビトロでEGFRvIII-DICEでトランスフェクトした細胞由来の上清試料は、EGFRvIIIおよびCD3の両方に対して強力な標的特異的結合親和性を示し、EGFRvIIIを過剰発現するGBM細胞株に対するT細胞媒介性細胞溶解活性を誘導した。EGFRvIII-DICE上清の存在下での標的細胞および初代ヒトT細胞の共培養は、堅牢なT細胞応答を刺激し、細胞毒性T細胞集団において顕著なレベルのIFNγ、TNFα、およびCD107aを示した。最後に、GBMマウス挑戦モデルにおいて、ヒトT細胞で再増殖されたNSGマウスへのEGFRvIII-DICEの処理は、腫瘍成長の制御をもたらし、これは、空のベクター対照群では観察されなかった。これらの研究は、二重特異性抗体の合成DNA送達が、細胞毒性T細胞機能を活性化し得、癌免疫療法のための二重特異性抗体の開発の代替アプローチとして研究され得る強力かつ機能的な抗体を生成することを支持する。
【0270】
前述の詳細な説明および添付の例は、単に例示的であり、本発明の範囲に対する限定として解釈されるものではなく、これは、単独で添付の特許請求の範囲およびそれらの同等物によって定義されることが理解される。
【0271】
開示される実施形態に対する様々な変更および修飾は、当業者には明らかであろう。限定なしに、化学構造、置換分、誘導体、中間体、合成物、組成物、製剤、または本発明の使用方法に関連するもの含む、そのような変更および修飾は、その趣旨および範囲から逸脱することなく行われ得る。
【配列表】
【国際調査報告】