(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-29
(54)【発明の名称】抗酸化物質を放出する硝子体代替物及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61L 27/16 20060101AFI20220322BHJP
A61L 27/52 20060101ALI20220322BHJP
A61L 27/44 20060101ALI20220322BHJP
A61L 27/50 20060101ALI20220322BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20220322BHJP
A61L 27/20 20060101ALI20220322BHJP
A61L 27/22 20060101ALI20220322BHJP
A61L 27/54 20060101ALI20220322BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220322BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220322BHJP
A61K 31/375 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
A61L27/16
A61L27/52
A61L27/44
A61L27/50
A61L27/18
A61L27/20
A61L27/22
A61L27/54
A61K45/00
A61P27/02
A61K31/375
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021546361
(86)(22)【出願日】2020-02-10
(85)【翻訳文提出日】2021-10-05
(86)【国際出願番号】 US2020017525
(87)【国際公開番号】W WO2020163872
(87)【国際公開日】2020-08-13
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514137997
【氏名又は名称】オハイオ・ステイト・イノベーション・ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ライリー,ケイトリン エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】ライリー,マシュー アーロン
(72)【発明者】
【氏名】トラム,グエン コイ
【テーマコード(参考)】
4C081
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C081AB21
4C081BA12
4C081BB03
4C081BB06
4C081BB07
4C081CA061
4C081CA081
4C081CA101
4C081CA181
4C081CC01
4C081CD042
4C081CD092
4C081CD152
4C081CE02
4C081DA12
4C084AA17
4C084MA66
4C084NA10
4C084ZA33
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA18
4C086MA03
4C086MA05
4C086NA10
4C086ZA33
(57)【要約】
一態様において、本開示は、ゲル及び抗酸化物質を含む硝子体代替物であって、天然の硝子体液の物理的特性を模倣する前記硝子体代替物、そして、眼科的障害の治療におけるその使用法、に係わる。
【選択図】
図17C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル;及び
少なくとも1つの抗酸化物質、
を含む、硝子体代替物であって;
1未満の損失正接及び約1.33~約1.34の屈折率を有することによって定義される、前記硝子体代替物。
【請求項2】
約0.1~約0.5の範囲の損失正接を有する、請求項1に記載の硝子体代替物。
【請求項3】
約0.1Pa~約1000Paの貯蔵弾性率を有する、請求項1または2のいずれか1項に記載の硝子体代替物。
【請求項4】
約1Pa~約100Paの貯蔵弾性率を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の硝子体代替物。
【請求項5】
約0.01Pa~約1000Paの損失弾性率を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の硝子体代替物。
【請求項6】
約0.1Pa~約100Paの損失弾性率を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の硝子体代替物。
【請求項7】
約0.1Pa~約50Paの損失弾性率を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の硝子体代替物。
【請求項8】
約1.331~約1.339の屈折率を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の硝子体代替物。
【請求項9】
約1.334~約1.337の屈折率を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の硝子体代替物。
【請求項10】
前記ゲルがハイドロゲルを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の硝子体代替物。
【請求項11】
前記ハイドロゲルがポリマー組成物を含む、請求項10に記載の硝子体代替物。
【請求項12】
前記ポリマー組成物が、ホモポリマー、コポリマー、またはその組み合わせを含む、請求項11に記載の硝子体代替物。
【請求項13】
前記ポリマー組成物が、ビニルアルコール残基、アクリレート残基、メタクリレート残基、アクリルアミド残基、官能化ポリエチレングリコールに由来する残基、またはその組み合わせから選択される、1つまたは複数の残基を含む、請求項11または12のいずれか1項に記載の硝子体代替物。
【請求項14】
前記ポリマー組成物が、アクリルアミド、N-オルニチンアクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、N-ビニルピロリドン、N-フェニルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、アクリル酸、ベンジルメタクリルアミド、メチルチオエチルアクリルアミド、またはその組み合わせから選択される、1つまたは複数の残基を含む、請求項11~13のいずれか1項に記載の硝子体代替物。
【請求項15】
前記ポリマー組成物が、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEDGA)、ポリ(エチレングリコール)メタクリレート(PEGMA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、またはその組み合わせから選択される、1つまたは複数の残基を含む、請求項11~14のいずれか1項に記載の硝子体代替物。
【請求項16】
前記ポリマー組成物が1つまたは複数のPEGMA残基を含む、請求項15に記載の硝子体代替物。
【請求項17】
前記1つまたは複数のPEGMA残基の各々が、約100~約500の分子量を有する、請求項16に記載の硝子体代替物。
【請求項18】
前記1つまたは複数のPEGMA残基の各々が、約200~約400の分子量を有する、請求項16に記載の硝子体代替物。
【請求項19】
前記1つまたは複数のPEGMA残基の各々が、約250~約400の分子量を有する、請求項16に記載の硝子体代替物。
【請求項20】
前記1つまたは複数のPEGMA残基の各々が、約280~約300の分子量を有する、請求項16に記載の硝子体代替物。
【請求項21】
前記ポリマー組成物が1つまたは複数のPEGDA残基を含む、請求項15~20のいずれか1項に記載の硝子体代替物。
【請求項22】
前記1つまたは複数のPEGDA残基の各々が、約100~約1000の分子量を有する、請求項21に記載の硝子体代替物。
【請求項23】
前記1つまたは複数のPEGDA残基の各々が、約200~約1000の分子量を有する、請求項21に記載の硝子体代替物。
【請求項24】
前記1つまたは複数のPEGDA残基の各々が、約300~約1000の分子量を有する、請求項21に記載の硝子体代替物。
【請求項25】
前記1つまたは複数のPEGDA残基の各々が、約400~約1000の分子量を有する、請求項21に記載の硝子体代替物。
【請求項26】
前記1つまたは複数のPEGDA残基の各々が、約500~約900の分子量を有する、請求項21に記載の硝子体代替物。
【請求項27】
前記ポリマー組成物がPEGMA:PEGDAコポリマーを含む、請求項15~26のいずれか1項に記載の硝子体代替物。
【請求項28】
前記ポリマー組成物が1つまたは複数のHEMA残基を含む、請求項15~26のいずれか1項に記載の硝子体代替物。
【請求項29】
前記ポリマー組成物がPEGMA:PEGDA:HEMAコポリマーを含む、請求項15~26及び請求項28のいずれか1項に記載の硝子体代替物。
【請求項30】
前記ポリマー組成物が、1つもしくは複数のHEMA残基及び1つもしくは複数のアクリルアミド残基;1つもしくは複数のHEMA残基及び1つもしくは複数のPEGMA残基;1つもしくは複数のHEMA残基及び1つもしくは複数のメタクリル酸残基;1つもしくは複数のHEMA残基及び1つもしくは複数のビニルアルコール残基;または1つもしくは複数のビニルアルコール残基及び1つもしくは複数のアクリルアミド残基を含む、1つまたは複数のポリマーを含む、請求項1~29のいずれか1項に記載の硝子体代替物。
【請求項31】
前記ハイドロゲルが、前記少なくとも1つの抗酸化物質を装填される、請求項1~30のいずれか1項に記載の硝子体代替物。
【請求項32】
さらに粒子を含む、請求項1~31のいずれか1項に記載の硝子体代替物。
【請求項33】
前記粒子がナノ粒子を含む、請求項32に記載の硝子体代替物。
【請求項34】
前記粒子が、キトサン、ゼラチン、アルギン酸塩、またはその組み合わせを含む、請求項32または33のいずれか1項に記載の硝子体代替物。
【請求項35】
前記粒子が、前記少なくとも1つの抗酸化物質をカプセル化する、請求項32~34のいずれか1項に記載の硝子体代替物。
【請求項36】
前記少なくとも1つの抗酸化物質が、アスコルビン酸もしくはその誘導体;N-アセチルシステイン;グルタチオン;N-亜セレン酸;亜セレン酸ナトリウム;L-カルニチン;β-カロテン;ビタミンE;ビタミンC;ルテイン;ゼアキサンチン;亜鉛化合物;銅化合物;ω-3脂肪酸;αリポ酸;またはその組み合わせを含む、請求項1~35のいずれか1項に記載の硝子体代替物。
【請求項37】
前記少なくとも1つの抗酸化物質が、アスコルビン酸もしくはその誘導体、αリポ酸、リボフラビン、タウリン、尿酸、チロシン、トランスフェリン、セレン、亜鉛、スーパーオキシドジスムターゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、カタラーゼ、色素上皮由来因子(PEDF)、またはその組み合わせを含む、請求項1~36のいずれか1項に記載の硝子体代替物。
【請求項38】
前記少なくとも1つの抗酸化物質が、アスコルビン酸またはその誘導体を含む、請求項1~37のいずれか1項に記載の硝子体代替物。
【請求項39】
アスコルビン酸またはその誘導体が、約0.1mM~約5mMの濃度で存在する、請求項38に記載の硝子体代替物。
【請求項40】
アスコルビン酸またはその誘導体が、約0.1mM~約1mMの濃度で存在する、請求項38に記載の硝子体代替物。
【請求項41】
前記少なくとも1つの抗酸化物質がグルタチオンを含む、請求項1~40のいずれか1項に記載の硝子体代替物。
【請求項42】
前記グルタチオンが還元グルタチオン(GSH)を含む、請求項41に記載の硝子体代替物。
【請求項43】
前記グルタチオンが約1mM~約100mMの濃度で存在する、請求項41または42のいずれか1項に記載の硝子体代替物。
【請求項44】
前記グルタチオンが約4mM~約10mMの濃度で存在する、請求項41または42のいずれか1項に記載の硝子体代替物。
【請求項45】
ヒアルロン酸、コラーゲン、ジェラン、絹、フィブリン、アルギン酸塩、キトサン、ポリアクリルアミドもしくはそのメタクリレート誘導体、ポリアクリル酸もしくはそのメタクリレート誘導体、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールもしくはその誘導体、ポリプロピレングリコールもしくはその誘導体、重合アスコルビン酸、ポロキサマー、またはその組み合わせをさらに含む、請求項1~44のいずれか1項に記載の硝子体代替物。
【請求項46】
1つまたは複数の追加の治療剤をさらに含む、請求項1~45のいずれか1項に記載の硝子体代替物。
【請求項47】
前記1つまたは複数の追加の治療剤が抗VEGFの治療剤を含む、請求項46に記載の硝子体代替物。
【請求項48】
前記抗VEGFの治療剤が、ラパチニブ、スニチニブ、ソラフェニブ、アキシチニブ、パゾパニブ、またはその組み合わせから選択される、請求項47に記載の硝子体代替物。
【請求項49】
前記抗VEGFの治療剤が、ベバシズマブ、ラニビズマブ、またはその組み合わせから選択される、請求項47に記載の硝子体代替物。
【請求項50】
前記1つまたは複数の追加の治療剤が、β-アドレナリン作用アンタゴニストを含む、請求項46~49のいずれか1項に記載の硝子体代替物。
【請求項51】
前記β-アドレナリン作用アンタゴニストが、チモロール、ベタキソロール、レボベタキソロール、カルテオロール、またはその組み合わせから選択される、請求項50に記載の硝子体代替物。
【請求項52】
前記1つまたは複数の追加の治療剤が、縮瞳物質、炭酸脱水酵素阻害物質、プロスタグランジン、セロトニン作用物質、ムスカリン作用物質、ドーパミンアゴニスト、アドレナリン作用アゴニスト、抗血管形成剤、抗感染剤、ステロイド、非ステロイド性抗炎症剤、増殖因子、免疫抑制剤、抗アレルギー性剤、またはその組み合わせを含む、請求項46~51のいずれか1項に記載の硝子体代替物。
【請求項53】
前記1つまたは複数の追加の治療剤が、抗炎症剤、カルシニューリン阻害物質、抗生物質、ニコチン性アセチルコリン受容体アゴニスト、抗リンパ管形成剤、またはその組み合わせを含む、請求項46~52のいずれか1項に記載の硝子体代替物。
【請求項54】
治療有効量の請求項1~53のいずれか1項に記載の硝子体代替物をそれを必要とする対象の目の中へ注射することを含む、前記対象の前記目における眼科的障害を治療する方法。
【請求項55】
前記眼科的障害が黄斑変性(MD)を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記MDが、萎縮性(萎縮型)MD、滲出性(滲出型)MD、加齢関連黄斑網膜症(ARM)、脈絡膜血管新生、色素網膜上皮の剥離(PED)、または色素網膜上皮の萎縮(RPE)を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記眼科的障害が、BESTの卵黄様変性、Stargardt病、若年性黄斑変性、Behr病、Sorsbyジストロフィー、またはDoyne蜂巣状網膜ジストロフィーを含む、請求項54に記載の方法。
【請求項58】
前記眼科的障害が網膜裂傷を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項59】
前記眼科的障害が増殖性網膜症を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項60】
前記眼科的障害が、白色-黄色のスポットによって取り囲まれるドルーゼン;組織の黄斑下円盤状瘢痕;脈絡膜血管新生;色素網膜上皮の剥離(PED);色素網膜上皮の萎縮(RPE);脈絡膜血管の異常膨張;視界のぼやけもしくは乱れ;中心部の死点(central dead point);色素異常;Bruch膜の内側上に所在する薄い肉芽の混合層;またはBruch膜の肥厚及び透過性の低下から選択される、黄斑変性に関連する1つまたは複数の症状を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項61】
前記対象が、白内障と診断されているか、または発症するリスクがある、請求項54に記載の方法。
【請求項62】
前記眼科的障害が、老人性白内障、糖尿病性白内障、網膜症、網膜剥離、網膜血管の病理、目の血管の外被(vascular envelope)、視神経障害、中心性及び末梢性の脈絡網膜ジストロフィー、眼内出血、外傷性出血、結膜炎、眼の潰瘍、角膜炎、または緑内障から選択される、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記硝子体代替物が硝子体切除術に続いて投与される、請求項54~62のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年2月8日に出願された米国仮出願第62/803,419号、2019年10月25日に出願された米国仮出願第62/926,267号、及び2019年12月6日に出願された米国仮出願第62/944,679号への優先権の利益を主張し、それらの開示は各々参照することによってその全体が本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、硝子体代替物、ならびに特にゲル及び抗酸化物質を含む硝子体代替物に関する。
【背景技術】
【0003】
硝子体液は、目の体積の80%を占める、水晶体と網膜との間の脆弱で透明な組織である。硝子体は目のための機械的クッションとして役立ち、衝撃を吸収し、水晶体及び網膜を保護する(Swindle-Reilly KE,et al.Biomaterials and regenerative medicine in ophthalmology.Woodhead Publishing.2016)。しかしながら、硝子体は年齢と共に劣化し、それは、ショック吸収体としてのその機能を損ない、合併症(網膜裂傷または網膜剥離等)を引き起こす(Los LI,et al.Invest Ophthalmol Vis Sci.2003;44:2828-2833)。機械的機能の他に、天然の硝子体は、他の化学的機能性(特に酸素恒常性における役割)も有する。硝子体切除手術及びシリコーンオイルを含む代替物による置き換えの両方は、この酸素恒常性を崩壊させ、眼内組織への酸化的損傷を引き起こす。特に、水晶体への酸化的損傷は白内障形成をもたらし、患者の最大95%が硝子体切除術後の24か月以内に水晶体摘出を要求する(Feng H,Adelman RA.Clin Ophthalmol.2014;8:1957-1965)。現行のゴールドスタンダードであるシリコーンオイルも他の実験的硝子体代替物も、この問題に対処しない。
【0004】
治療的に有用な化合物の送達のための硝子体代替物に向けた研究の進歩にもかかわらず、安全且つ有効な材料がまだ不足している。これらの必要性及び他の必要性は本開示によって満たされる。
【発明の概要】
【0005】
本開示の目的(複数可)に従って、本明細書において実施され幅広く記載されるように、本開示は、一態様において、開示される硝子体代替物組成物を含む眼科的組成物であって、硝子体代替物組成物が、開示されるゲル、ハイドロゲル、または粒子、及び治療剤を含み、治療剤が、開示される抗酸化物質である、前記組成物;開示される硝子体代替物を使用して、眼科的障害を治療する方法;ならびにHEMA残基、PEGDA残基、及び/またはPEGMA残基を含むポリマーを含む開示されるハイドロゲルを作製する方法、に係わる。
【0006】
したがって一態様において、硝子体代替物は、ゲル及び少なくとも1つの抗酸化物質を含んで提供され、硝子体代替物は、1未満の損失正接(すなわち損失弾性率の貯蔵弾性率に対する比)(例えば0.1~0.5の範囲の損失正接)、及び約1.33~約1.34の屈折率を有することによって定義される。
【0007】
いくつかの実施形態において、硝子体代替物は、0.1Pa~約1000Pa(例えば1Pa~約100Pa)の範囲の貯蔵弾性率を有する。硝子体代替物は、約0.01Pa~約1000Pa(例えば約0.1Pa~約100Paまたは0.1Pa~約50Pa)の範囲の損失弾性率を有する。
【0008】
いくつかの実施形態において、硝子体代替物は、約1.331~約1.339(例えば約1.334~約1.337)の屈折率を有する。
【0009】
いくつかの実施形態において、ゲルは、ハイドロゲルを含む。いくつかの実施形態において、硝子体代替物は、重量当たりで90%を超える水(例えば重量当たりで95%を超える水)を含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、ハイドロゲルは、ポリマー組成物を含む。いくつかの実施形態において、ポリマー組成物は、ビニルアルコール残基、アクリレート残基もしくはメタクリレート残基、アクリルアミド残基、官能化ポリエチレングリコールに由来する残基、またはその組み合わせから選択される、1つまたは複数の残基を含み得る。いくつかの実施形態において、ポリマー組成物は、アクリルアミド、N-オルニチンアクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、N-ビニルピロリドン、N-フェニルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、アクリル酸、ベンジルメタクリルアミド、メチルチオエチルアクリルアミド、またはその組み合わせから選択される、1つまたは複数の残基を含み得る。
【0011】
いくつかの実施形態において、ポリマー組成物は、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA)、ポリ(エチレングリコール)メタクリレート(PEGMA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、またはその組み合わせから選択される、1つまたは複数の残基を含む。いくつかの実施形態において、ポリマー組成物は、PEGMA:PEGDAコポリマーを含む。いくつかの実施形態において、ポリマー組成物は、PEGMA:PEGDA:HEMAコポリマーを含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、ハイドロゲルは、少なくとも1つの抗酸化物質を装填される。他の実施形態において、硝子体代替物は、粒子(例えばナノ粒子)をさらに含む。いくつかの実施形態において、粒子は、キトサン、ゼラチン、アルギン酸塩、またはその組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、粒子は、少なくとも1つの抗酸化物質をカプセル化する。
【0013】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの抗酸化物質は、アスコルビン酸もしくはその誘導体;N-アセチルシステイン;グルタチオン;N-亜セレン酸;亜セレン酸ナトリウム;L-カルニチン;βカロテン;ビタミンE;ビタミンC;ルテイン;ゼアキサンチン;亜鉛化合物;銅化合物;ω-3脂肪酸(DHAまたはEPA等);αリポイド酸(lipoid acid)、またはその組み合わせを含み得る。
【0014】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの抗酸化物質は、αリポ酸、アスコルビン酸、リボフラビン、グルタチオン、タウリン、尿酸、チロシン、トランスフェリン、セレン、亜鉛、スーパーオキシドジスムターゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、カタラーゼ、色素上皮由来因子(PEDF)、その誘導体、またはその組み合わせを含み得る。
【0015】
いくつかの実施形態において、本開示の硝子体代替物は、本明細書において記載される1つまたは複数の追加の治療剤をさらに含み得る。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の追加の治療剤は、抗VEGF剤、β-アドレナリン作用アンタゴニスト、縮瞳物質、炭酸脱水酵素阻害物質、プロスタグランジン、セロトニン作用物質、ムスカリン作用物質、ドーパミンアゴニスト、アドレナリン作用アゴニスト、抗血管形成剤、抗感染剤、ステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、増殖因子、免疫抑制剤、抗アレルギー剤、またはその組み合わせを含み得る。
【0016】
別の態様において、それを必要とする対象の目における眼科的障害を治療する方法であって、治療有効量の本明細書において記載される硝子体代替物を対象の目の中へ注射することを含む前記方法が、提供される。いくつかの実施形態において、眼科的障害としては、黄斑変性、網膜裂傷、または増殖性網膜症が挙げられ得る。いくつかの実施形態において、対象は、白内障と診断されているか、または発症するリスクがある。いくつかの実施形態において、硝子体代替物は、硝子体切除術に続いて投与される。
【0017】
本開示の他の系、方法、特色、及び利点は、以下の図面及び発明を実施するための形態の検討に際して、当業者に明らかであるかまたは明らかになり得る。すべてのかかる追加の系、方法、特色、及び利点がこの発明を実施するための形態内に包含され、本開示の範囲内であり、添付の特許請求の範囲によって保護されることが意図される。加えて、記載される実施形態のすべての任意選択の好ましい特色及び修飾は、本明細書において教示される本開示のすべての態様において使用可能である。さらに、記載される実施形態のすべての任意選択の好ましい特色及び修飾と同様に、従属請求項の個別の特色も、互いと組み合わせ可能且つ交換可能である。
【0018】
本開示の多くの態様は、以下の図面を参照してより理解され得る。図面中の構成要素は必ずしも一定の比率の縮尺でなく、その代りに本開示の原理を明瞭に例証することに重点が置かれている。さらに、図面中の同様の参照数字は、複数の概観図を通して対応する部分を指定する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】開示されるPHEMA/PVAハイドロゲル硝子体代替物の調製及び使用のための図解表示を示す。
【
図2A】開示されるHEMA:PEGMA:PEGDAハイドロゲル硝子体代替物に係わる代表的な画像及びデータを示す。シリンジ中に装填した開示されるハイドロゲル。HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート;PEGDA:ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート;及びPEGMA:ポリ(エチレングリコール)メタクリレート。
【
図2B】開示されるHEMA:PEGMA:PEGDAハイドロゲル硝子体代替物に係わる代表的な画像及びデータを示す。開示されるハイドロゲルが小さいゲージの針を介する注射後にゲル様の稠度を保持したことを示す代表的な画像を示す。HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート;PEGDA:ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート;及びPEGMA:ポリ(エチレングリコール)メタクリレート。
【
図2C】開示されるHEMA:PEGMA:PEGDAハイドロゲル硝子体代替物に係わる代表的な画像及びデータを示す。平行平板ジオメトリと試験ステージとの間にはさまれたハイドロゲルによるレオロジーの試験装置を示す。リン酸緩衝生理食塩水を充填した湿潤チャンバー(半分のみ示す)を使用して、試験の間のハイドロゲルサンプルの脱水を防止した。HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート;PEGDA:ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート;及びPEGMA:ポリ(エチレングリコール)メタクリレート。
【
図2D】開示されるHEMA:PEGMA:PEGDAハイドロゲル硝子体代替物に係わる代表的な画像及びデータを示す。粘弾性を実証する代表的なレオロジーデータを示す。HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート;PEGDA:ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート;及びPEGMA:ポリ(エチレングリコール)メタクリレート。
【
図2E】開示されるHEMA:PEGMA:PEGDAハイドロゲル硝子体代替物に係わる代表的な画像及びデータを示す。開示されるゼラチン-アルギン酸塩粒子からのアスコルビン酸放出についての代表的なデータを示し、2mMの付近で維持される濃度で30日間を超える持続放出を実証する。HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート;PEGDA:ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート;及びPEGMA:ポリ(エチレングリコール)メタクリレート。
【
図3A】ハイドロゲル硝子体代替物の図解表示を示す。ナノカプセル化アスコルビン酸を備えた剪断流動化ハイドロゲル硝子体代替物の図解の表示を示す。
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図3B】酸素勾配を備えた硝子体液、及び硝子体に対する加齢の影響の図解表示を示す。コラーゲン線維及びヒアルロン酸のネットワークから構成される硝子体液の図解表示を示す。天然の硝子体は、代謝的に活発な網膜及び毛様体の付近で高レベルの酸素及び水晶体の付近で低いレベルの酸素の内部酸素勾配を確立する。しかしながら、硝子体相は年齢と共に分離し、目における保護機能は物理的及び化学的の両方で崩壊する。硝子体分解に起因するいくつかの合併症としては、網膜剥離、網膜裂傷及び白内障形成が挙げられる。
【
図4】開示されるゼラチン-アルギン酸塩品からのアスコルビン酸放出についての代表的なデータを示し、2mMの付近で維持される濃度のバースト放出を実証する。
【
図5】代表的な開示されるハイドロゲルからのアスコルビン酸の放出についての代表的なデータを示す。PEGMAハイドロゲル(20ml、5%v/v、MW500)を合成し、次いでビタミンC溶液(50ml、100mM)中に室温で12時間浸した。ハイドロゲルを透析チューブ中に配置し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、70ml)中に浸した。所定の時間で、PBSの吸光度を265nmで測定して、PEGMAハイドロゲルからのビタミンC放出の濃度を計算した。データから、放出されたビタミンCの濃度が最初の日の内に50mMへ急上昇し、次いでその後数日でほぼ0へ急速に減じたことが示された。
【
図6】開示されるハイドロゲルと共に21G針を介して注射した、ビタミンCを装填したゼラチン-アルギン酸塩粒子からのビタミンCの放出についての代表的なデータを示す。ハイドロゲル/粒子混合物を次いでPBS中に浸し、前述のようにPBS中のビタミンCの濃度を決定した。結果から、示されるような、ビタミンCの放出の小さい急上昇(上記の純粋なハイドロゲルからの放出に比較して)、続いてビタミンCの持続放出の期間があることが示された。
【
図7】アスコルビン酸ナトリウム溶液の分解に係わる代表的なデータを示す。データは、37℃で常時撹拌しながらの、2mMのアスコルビン酸ナトリウム溶液の代表的な分解プロファイル(n=3)及びポリアクリルアミドハイドロゲルからのアスコルビン酸ナトリウム放出プロファイル(n=3)を示す。アスコルビン酸ナトリウムを含むポリマー溶液は18時間以内にゲル化した。しかしながら、アスコルビン酸ナトリウム無しのポリマー溶液は、ゲル化に2倍長くかかった。
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図8】時間0での2mMのアスコルビン酸ナトリウム溶液の濃度(それは1.4mMであった)に比較した、3日にわたってポリアクリルアミドゲルから放出されたアスコルビン酸ナトリウムのパーセントに関して、開示されるポリアクリルアミドゲルからのアスコルビン酸ナトリウムの放出についての代表的なデータを示す。アスコルビン酸ナトリウムは、最初の日の終わりまでに完全に放出されるようであった。3日目のパーセント薬物放出は、アスコルビン酸ナトリウムの分解に起因して減少するようであった。
【
図9】開示されるキトサン粒子組成物からのアスコルビン酸ナトリウムの放出についての代表的なデータを示す。研究を、室温で撹拌しながら行った(旋回振盪機)。キトサン粒子の形成後の後続する洗浄ステップは、粒子中に装填した実際の量のアスコルビン酸ナトリウムを減じる可能性が高かった。データから、ポリアクリルアミドハイドロゲルからの放出プロファイルに比較して、アスコルビン酸ナトリウムが7日後でさえ放出され続ける持続放出が示される。
【
図10A】代表的な開示されるハイドロゲル(n=3)についての代表的なレオロジーデータを示す。ハイドロゲルの線形粘弾性領域が10%未満のひずみであることを示す、振幅掃引実験において得られた代表的なデータを示す。
【
図10B】代表的な開示されるハイドロゲル(n=3)についての代表的なレオロジーデータを示す。ハイドロゲルが天然のヒト硝子体と類似する貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)を有することを示す、周波数掃引実験において得られた代表的なデータを示す。
【
図10C】代表的な開示されるハイドロゲル(n=3)についての代表的なレオロジーデータを示す。両方のハイドロゲルが剪断流動化挙動を有することを示唆する、剪断速度勾配(ramp)実験において得られた代表的なデータを示す。
【
図10D】代表的な開示されるハイドロゲル(n=3)についての代表的なレオロジーデータを示す。大きな変形を受けた後に、両方のハイドロゲルがそれらのゲル様の挙動を回復し得ることを示す、交互振動ステップひずみ(alternating oscillatory step strain)実験においてさらに得られた代表的なデータを示す。これらの結果から、小さいゲージの針を装備したシリンジを使用して、硝子体房(vitreal chamber)の中へハイドロゲルを注射できる可能性があることが示唆される。
【
図11】開示されるハイドロゲルについて得られた透過率データを示す。ハイドロゲルは、天然のヒト硝子体と同じくらい透明であった(n=3)。天然の硝子体は、300~900nmの間の光の90%を透過し、これ未満の範囲は透過しない。ハイドロゲルは、可視光線及び赤外線スペクトル内で90%以上の透明度であった。ハイドロゲルの透過率は紫外線範囲で減少し、230nmで0に低下する。
【
図12】開示されるハイドロゲルについて得られた代表的なフーリエ変換赤外分光(「FTIR」)分光分析データを示す。FTIRデータから、PEGDAハイドロゲル及びPEGDA-co-PEGMAハイドロゲルの合成の成功が示される。メチレン(-CH2-)基、カルボニル(C=O)基、及びエーテル(C-O-C)基は、それぞれ2850、1730、及び945cm
-1で、両方のハイドロゲルスペクトルにおいて見出された。それぞれ3740及び1520cm
-1でのアルコール(-OH)基及びメチル(-CH3)基は、PEGDA-co-PEGMAハイドロゲルスペクトルのみにおいて見出され、PEGDAスペクトルにおいては見出されず、適切なハイドロゲルが合成されたことが確認される。
【
図13】示されるような異なる条件下の代表的な開示されるハイドロゲルについての代表的な安定性データを示す。Aは、開示されるPEGDAハイドロゲルについて得られた安定性データを示す。Bは、開示されるPEGDA-co-PEGMAハイドロゲルについて得られた安定性データを示す。データから、ハイドロゲルの水分含有量がDPBS、リゾチーム、またはトリプシン溶液中で少なくとも28日間変化しなかったことが示される(n=3)。このことから、ハイドロゲルが酵素溶液中で安定的で中~長期的な硝子体代替物として使用され得ることが示された。
【
図14】示されるような開示される代表的なハイドロゲルからのビタミンCの残存量及び放出量vs時間についての代表的なデータを示す。Aは、示されるような開示される代表的なハイドロゲル中の残存ビタミンCの量vs時間を示す。Bは、示されるような開示される代表的なハイドロゲルからの放出ビタミンCの量vs時間を示す。データから、ビタミンCが最初の8時間以内に急速に分解するかまたはハイドロゲルからの放出されたことが示される(n=3)。濃度は7日後に0に接近した。
【
図15】示されるような代表的な開示されるハイドロゲルへ曝露された異なる細胞タイプについての代表的なインビトロの細胞毒性データを示す。Aは、示されるような代表的な開示されるハイドロゲルvs培地のみの対照へ曝露されたARPE-19細胞についての代表的なインビトロの細胞毒性データを示す。Bは、示されるような代表的な開示されるハイドロゲルvs培地のみの対照へ曝露されたLEC細胞についての代表的なインビトロの細胞毒性データを示す。データから、両方のハイドロゲルがARPE-19及びLECへ最少のインビトロ細胞毒性を示したことが示される。過酸化水素処理は、対照に比較して、LECの細胞生存率を有意に減少させた。しかしながら、過酸化水素処理によるARPE-19の細胞生存率は、対照に比較して、等しいかまたはそれを超えた。文字を共有しない平均値は有意に異なる(p<0.001、n=8)。ARPE-19細胞はヒト網膜色素上皮細胞株であり、実施例中でさらに記載される。LEC細胞は不死化ヒト水晶体上皮細胞株であり、実施例中でさらに記載される。
【
図16】活性酸素種(ROS)に対するビタミンCを含む開示されるハイドロゲルの保護的効果に係わる代表的なデータを示す。ハイドロゲル及びビタミンCの存在は、ARPE-19及びLEC中のROS活性の低減に対する相乗効果を有していた。対照に比較して、過酸化水素処理は、ARPE-19におけるROS活性を増加させなかったが、LECにおけるROS活性を統計的に増加させた。文字を共有しない平均値は有意に異なる(p<0.001、n=8)。
【
図17】注射したブタの目の代表的な画像を示す。示されるように、PEGDAハイドロゲル及びPEGDA-co-PEGMAハイドロゲルをブタの目の硝子体房の中へ注射することができ、天然の硝子体に類似するように思われた。使用したブタの目は実施例中で記載される通りである。
【
図18】示されるようなアルギン酸塩、キトサン、及び/またはゼラチンによりコーティングされたアスコルビン酸を装填したキトサン粒子を含む、代表的な開示される粒子からのアスコルビン酸の放出についての代表的なデータを示す。図中の凡例は、粒子の組成物の詳述のために以下の略語を使用する。VCはビタミンCを表わし;CHはキトサンを表わし;ALはアルギン酸塩を表わし;GEはゼラチンを表わし;「GXXX」はグルタチオンを表わし、濃度(μM)は示されるように数「XXX」によって指示される。実施例中で記載されるように、粒子を調製した。
【
図19】
図18中のデータを示すが、ビタミンC濃度を0日目の濃度に正規化したものである。
【
図20】アルギン酸塩及びキトサンによりコーティングされた粒子として安定化されてさらなる添加物無しまたは添加物としてグルタチオン有りのいずれかの、PEGDAハイドロゲル及びPEGDA-co-PEGMAハイドロゲルからのアスコルビン酸の安定性についての代表的なデータを示す。図中の凡例は、組成物の詳述のために以下の略語を使用する。VCはビタミンCを表わし;CHはキトサンを表わし;ALはアルギン酸塩を表わし;PEDGAはポリ(エチレングリコール)ジアクリレートを表わし;PEGMAはポリ(エチレングリコール)メタクリレートを表わし;「GXXX」はグルタチオンを表わし、濃度(μM)は示されるように数「XXX」によって指示される。実施例中で記載されるように、粒子を調製した。
【
図21A】200~400μMの濃度で存在する過酸化水素が、LECを殺傷するが、APRE-19細胞を殺傷しないことを実証する代表的なデータを示す。
【
図21B】ビタミンCが、硝子体液中で見出される生理的濃度(1000~2000μM)で、LEC細胞及びARPE-19細胞へ毒性であることを示す代表的なデータを示す。
【
図22】硝子体液中のビタミンCの提案された濃度勾配を示す。
【
図23A】低い濃度のビタミンCが過酸化水素によって誘導されたROS活性を低減できるが、短い期間にわたってのみであることを実証する代表的なデータを示す。
【
図23B】LECのROS活性は過酸化水素の添加により増加したが、1000μMのビタミンCにより24時間処理した場合に、対照に類似したままであったことを実証する代表的なデータを示す。
【
図23C】APRE-19のROS活性が過酸化水素の添加により変化せず、1000μMのビタミンCにより24時間処理した場合に正常な対照レベルへ戻らなかったことを示す。
【
図24】ハイドロゲルまたは粒子中でビタミンCをカプセル化することが、安定性をわずかに改善したことを実証する代表的なデータを示す。キトサン-アルギン酸塩-キトサン粒子は、ビタミンCに最も高い保護を提供した。印はエラーバーよりも大きい(n=4)。VC:ビタミンC;PEGDA:ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート;PEGMA:ポリ(エチレングリコール)メタクリレート;CH:キトサン;AL:アルギン酸塩;GE:ゼラチン。
【
図25】グルタチオン(G)が、濃度依存的方式で、少なくとも15日間の残存ビタミンCを有効に改善したことを実証する代表的なデータを示す。
【
図26】グルタチオンが、10000μMの高濃度でさえ、LEC及びARPE-19細胞へ毒性ではないことを実証する代表的なデータを示す。
【0020】
本開示の追加の利点は、続く記載において部分的に説明され得、記載から部分的に明白になり得るか、または本開示の実践によって習得され得る。本開示の利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘される要素及び組み合わせを用いて実現及び達成され得る。前述の一般的な記載及び以下の詳細な記載の両方は、例示及び説明のみのためであり、特許請求される本開示を制限しないことを理解すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書において開示される多くの修飾及び他の実施形態は、開示される組成物及び方法に係わり、前述の記載及び添付の図面において提示される教示の恩恵を受ける当業者に、思い浮かぶだろう。したがって、本開示は開示される特定の実施形態に限定されないこと、ならびに修飾及び他の実施形態は添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されることを理解すべきである。当業者は、本明細書において記載される態様の多くの変形及び適合を認識するだろう。これらの変形及び適合は、本開示の教示中に含まれ、本明細書の特許請求の範囲によって網羅されることが意図される。
【0022】
特定の用語が本明細書において用いられるが、それらは一般的且つ記載の意味でのみ使用され、限定の目的のためではない。
【0023】
本開示の読了に際して当業者に明らかになり得るように、本明細書において記載及び図示される各々の個別の実施形態は不連続の構成要素及び特性を有し、それらは本開示の範囲または趣旨から逸脱せずに、他の複数の実施形態のうちの任意のものの特色から容易に分離され得るかまたはそれらと組み合わせられ得る。
【0024】
任意の列挙された方法は、列挙された事象の順序または論理上可能な任意の他の順序で実行され得る。すなわち、別段明確に明示されない限り、本明細書において説明される任意の方法または態様は、そのステップが特定の順序で遂行されることを要求するものとして解釈されるようには一切意図されない。したがって、方法クレームが、ステップが特定の順序に限定されるべきことを、請求項または記載中で具体的に明示しない場合には、いかなる点でも、順序が暗示されることは一切意図されない。これは、解釈のためのあらゆる可能性のある不明確な基準(ステップもしくは動作フローのアレンジに関する論理の問題、文法構成もしくは句読点に由来する平明な意味、または明細書中に記載される態様の数もしくは型が挙げられる)についても当てはまる。
【0025】
本明細書において言及されるすべての出版物は、それらの出版物が引用される方法及び/または材料を開示及び記載するために、参照することによって本明細書に援用される。本明細書において考察される出版物は、本出願の申請日の前のそれらの開示のためにのみ提供される。本明細書におけるいかなるものも、本発明が先行発明のおかげでかかる出版物に先行する権利のないことの承認として解釈されるべきではない。さらに、本明細書において提供される公開日は、実際の公開日とは異なる場合があり、独立した確認を要求し得る。
【0026】
本開示の態様は、特定の法定分類(システム法定分類等)において記載及び請求され得るが、これは便宜上のみのものであり、当業者は、任意の法定分類において各々の本開示の態様が記載及び請求され得ることを理解するだろう。
【0027】
本明細書において使用される用語は、特定の態様を記載するためのみの目的であり、限定することは意図されないことも理解されるべきである。別段定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語及び科学用語は、開示される組成物及び方法が属する技術分野の当業者によって共通して理解されるものと同じ意味を有する。用語(共通して使用される辞書において定義されたもの等)が明細書及び関連技術の文脈中のそれらの意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書において明確に定義されない限り、理想化されたかまたは過度に形式的な意味で解釈されるべきでないことがさらに理解され得る。
【0028】
本開示の様々な態様の記載の前に、以下の定義が提供され、別段の指示のない限り使用されるべきである。追加の用語は、本開示における他の箇所で定義され得る。
【0029】
定義
本明細書において使用される時、「含むこと(comprising)」は、参照されるような明示された特性、整数、ステップ、または構成要素の存在を規定すると解釈されるが、1つまたは複数の特性、整数、ステップ、もしくは構成要素、またはその群の存在または追加を除外するものではない。さらに、「によって(by)」、「含むこと(comprising)」、「含む(comprises)」、「を含む(comprised of)」「包含すること(including)」、「包含する(includes)」、「包含される(included)」、「含むこと(involving)」、「含む(involves)」、「含まれる(involved)」、及び「等(such as)」という用語の各々は、それらのオープンで非限定的な意味で使用され、互換的に使用され得る。さらに、「含むこと(comprising)」という用語は、「~から本質的になること(consisting essentially of)」及び「~からなること(consisting of)」という用語によって網羅される例及び態様を含むことが意図される。同様に、「~から本質的になること」という用語は、「~からなること」という用語によって網羅される例を含むことが意図される。
【0030】
本明細書及び添付の特許請求の範囲中で使用される時、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈による明瞭な別段の定めがない限り、複数の指示物を包含する。したがって例えば、「ハイドロゲル」、「HEMAモノマー」、または「ポリマー」への参照は、2つ以上のかかるハイドロゲル、HEMAモノマー、またはポリマー、及び同種のものを包含するがこれらに限定されない。
【0031】
比、濃度、量、及び他の数値データは、本明細書において範囲のフォーマットで表現され得ることに注目されたい。範囲の各々の端点が、他の端点に関連して、及び他の端点から独立して、有意であることがさらに理解され得る。本明細書において開示される多数の値があり、各々の値が、値それ自体に加えて、「約」その特定の値としても本明細書において開示されることも理解される。例えば、値「10」が開示されるならば、そのとき「約10」も開示される。範囲は、「約」ある特定の値から、及び/または「約」別の特定の値まで、として本明細書において表現され得る。同様に、先行詞「約」の使用によって値が近似として表現される場合に、特定の値がさらなる態様を形成することが理解され得る。例えば、「約10」という値が開示されるならば、そのとき「10」も開示される。
【0032】
範囲が表現される場合に、さらなる態様は、1つの特定の値から、及び/または他方の特定の値までを包含する。例えば、明示された範囲が限界のうちの一方または両方を含む場合に、それらの含まれる限界のいずれかまたは両方を除外する範囲も、本開示中に包含される(例えば語句「x~y」は、「x」から「y」までの範囲と同様に、「x」を超える及び「y」未満の範囲を含む)。範囲は、上限(例えば「約x、y、z、またはそれ未満」)としても表現され得、「約x」、「約y」、及び「約z」の特定の範囲と同様に、「x未満」、「y未満」、及び「z未満」の範囲を含むように解釈されるべきである。同様に、「約x、y、z、またはそれを超える」という語句は、「約x」、「約y」、及び「約z」の特定の範囲と同様に、「xを超える」、「yを超える」、及び「zを超える」範囲を含むように解釈されるべきである。加えて、「『x』~『y』」という語句は、「x」及び「y」が数値である場合に、「約『x』~約『y』」を含む。
【0033】
かかる範囲フォーマットが利便性及び簡潔性のために使用され、したがって、範囲の限界として明示的に列挙された数値を含むだけではなく、あたかも各々の数値及び下位範囲が明示的に列挙されたかのように、その範囲内に網羅されたすべての個別の数値または下位範囲も含むように、柔軟な方式で解釈されるべきであることを理解されたい。例証のために、「約0.1%~5%」の数値範囲は、約0.1%~約5%の明示的に列挙された値を含むだけではなく、示された範囲内の個別の値(例えば約1%、約2%、約3%、約4%)及び下位範囲(例えば約0.5%~約1.1%;約5%~約2.4%;約0.5%~約3.2%、及び約0.5%~約4.4%、ならびに他の可能な下位範囲)も含むように解釈されるべきである。
【0034】
本明細書において使用される時、「約」、「近似で」、「~であるか、または約~である」、及び「実質的に」という用語は、問題になっている量または値が、正確な値、または特許請求の範囲で列挙されるかもしくは本明細書において教示されるものと同等の結果もしくは効果を提供する値であり得ることを意味する。すなわち、量、サイズ、配合、パラメーター、ならびに他の量及び特徴が、正確ではなく、且つ正確である必要がない、が、所望に応じて、反映する耐性、換算係数、四捨五入、測定誤差、及び同種のもの、ならびに同等の結果または効果が得られるような当業者に公知の他の因子を反映して、近似の、及び/またはより大きいかもしくはより小さなものであり得ることが理解される。いくつかの状況において、同等の結果または効果を提供する値は、論理的に決定され得ない。かかる事例において、概して、本明細書において使用される時、別段の指示または暗示のない限り、「約」及び「~であるか、または約~である」は、示される公称値±10%の変動を意味することが理解される。概して、量、サイズ、配合、パラメーター、または他の量もしくは特徴は、「約」、「近似で」、または「~であるか、または約~である」であことが明確に明示されるかどうかにかかわらず、そのようなものである。定量値の前に「約」、「近似で」、または「~であるか、または約~である」が使用される場合に、別段具体的に明示されない限り、パラメーターが特定の定量値それ自体も含むことが理解される。
【0035】
化学種の残基は、本明細書及び最後にある請求項中で使用される時、その部分が化学種から実際に得られるかどうかに関係なく、特定の反応スキームにおける化学種のもたらされた産物、または後続する製剤もしくは化学的製品である、部分を指す。したがって、ポリエステル中のエチレングリコール残基は、エチレングリコールがポリエステルを調製するのに使用されたかどうかに関係なく、ポリエステル中の1つまたは複数の-OCH2CH2O-単位を指す。同様に、ポリエステル中のセバシン酸残基は、この残基が、セバシン酸またはそのエステルを反応させてポリエステルを得ることによって得られるかどうかに関係なく、ポリエステル中の1つまたは複数の-CO(CH2)8CO-部分を指す。
【0036】
本明細書において使用される時、「アスコルビン酸」及び「ビタミンC」は互換的に使用され得、式:
【化1】
によって構造が表わされる化合物を指す。アスコルビン酸またはビタミンCのいずれか用語の使用は、その塩について包括的であり、薬学的に許容される塩を包含する。アスコルビン酸またはビタミンCという用語は、すべての薬学的に許容される誘導体についても包括的である。例えば、アスコルビン酸としては、アスコルビン酸の一般的な無機塩類のうちの任意のものが挙げられ、アスコルビン酸ナトリウム等であり、それは式:
【化2】
によって表わされる構造を有する化合物である。
【0037】
本明細書において使用される時、「有効量」という用語は、組成物または材料の物理的特性の所望される修飾を達成するのに十分な量を指す。例えば、モノマーの「有効量」は、製剤構成要素によって調節される特性における所望される改善(例えば所望される抗酸化物質放出速度または粘弾性)を達成するのに十分な量を指す。有効量として要求される組成物中のwt%に関する具体的なレベルは、モノマーの量及び型、ポリマー(例えばアクリルアミド)の量及び型、抗酸化物質の量、ならびに所望される放出速度論を包含する様々な因子に依存するだろう。
【0038】
本明細書において使用される時、「任意選択の」または「任意選択で」という用語は、後続して記載される事象または状況が起こり得るかまたは起こり得ないこと、ならびに当該記載が、前記事象または状況が起こる実例及びそれが起こらない実例を包含することを意味する。
【0039】
以下の略語は、本明細書を通して使用される。
APS:過硫酸アンモニウム
DHA:ドコサヘキサエン酸
DMEM:Dulbecco改変Eagle培地
DPBS:Dulbeccoリン酸緩衝生理食塩水
EPA:エイコサペンタエン酸
FTIR:フーリエ変換赤外分光法
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
PEGDA:ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート
PEGMA:ポリ(エチレングリコール)メタクリレート
TEMED:N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン
【0040】
別段の定めのない限り、本明細書において参照される温度は、大気圧(すなわち1気圧)に基づく。
【0041】
臨床的背景
目は、光への常時の曝露ならびに非常に高い代謝活性に起因して、フリーラジカルからの酸化的損傷の影響を受けやすい(Wong-Riley M,Eye Brain,2010 2:99-116)。複数の眼の構造は、高レベルの抗酸化物質(例えばビタミンC、ビタミンE、グルタチオン)を含有して、損傷に対して保護する。しかしながら、眼組織の加齢関連変性及び眼科手術の両方はこれらの抗酸化物質の枯渇を導き、視覚を脅かす疾患をもたらす(Holekamp,Am J Ophthalmol.2010,149,32-36)。現在のところ、これらの疾患及び外科手術合併症を予防するために抗酸化物質を局所的に放出することができる治療方法はない。科学的な課題は、送達される抗酸化物質を分解から保護すること、及び局所放出を持続させることである。この課題に対処するために、目の内部での抗酸化物質の局所的且つ持続的な送達を可能にするために、薬物送達リザーバーとして供される永続的で注射可能な硝子体代替物のための組成物及び方法が、本明細書において開示される。水晶体及び他の眼の構造への治療物質の送達によって、眼の健康及び機能は、硝子体切除術後に、患者コンプライアンスに依存せずに劇的に改善され得る。
【0042】
硝子体液の加齢関連劣化が、網膜剥離及び他の視覚を脅かす眼の病理についての主要なリスク因子であるということは知られている。網膜剥離は網膜細胞死及び部分的な失明を引き起こし、もし迅速に修復されなければ、それらは広がり、最終的には完全な失明を導く。これは、経毛様体扁平部硝子体切除術によって通常は治療され、この切除術では、天然の硝子体は除去され、二次的な外科的手順において後に除去されることを必要とする一時的な代替物により置き換えられる。この手順を成功させるには、多くの場合網膜剥離を防止するために患者が最大2週間うつ伏せで横たわることが要求され、>95%の患者で2年以内に白内障が形成される。水晶体摘出は追加の外科的手順であり、費用、疼痛、及び視力の低減を伴う(C.J.Siegfried,et al.,Invest Ophthalmol Vis Sci.2017,58,4003-4014;Brodie FL,et al,Clin Ophthalmol,2016 10:955-60;及びChang JS,Smiddy WE,Ophthalmology,2014 121(9):1720-6)。
【0043】
最も一般的な長期的な硝子体代替物(シリコーンオイル)は、複数の失明性の眼疾患及び合併症を引き起こすことが知られており、白内障、眼内圧(IOP)の増加(緑内障のリスク因子)、網膜変性、及び脈絡膜の厚さの減少が挙げられる。シリコーンオイルの乳化は、増殖性硝子体網膜症、続発性緑内障、及び角膜症を引き起こす。シリコーンオイルは、網膜剥離の超音波に基づく診断を不可能にもする。さらに、網膜裂傷の所在位置に依存して、患者は不快な手術後の姿勢にされる可能性があり、遵守の低下及びさらなる網膜剥離を導く。遵守することができない患者(多くの場合高齢者または障害者)は、外科手術を断念するか、またはより侵襲性の治療(強膜バックル等)を受け、さらなる合併症をもたらす(Brodie FL,et al,Clin Ophthalmol,2016 10:955-60)。その結果として、シリコーンオイルは数か月内に除去されなくてはならず、その後、目は液体の房水により充填される(Chang JS,Smiddy WE,Ophthalmology,2014 121(9):1720-6)。
【0044】
1つの主要な課題は、硝子体切除術それ自体が、白内障、高眼圧症、及び開放隅角緑内障の発症の増加を引き起こすということである(Federman JL,Schubert HD,Ophthalmology,1988 95(7):870-6)。これらの疾患は、外科手術後の硝子体腔中の酸素レベルの増加からもたらされる酸化的損傷によって引き起こされる。水晶体及び周囲の区域は通常低酸素であり、高濃度のアスコルビン酸(ビタミンC)が酸素を消費するために要求される。硝子体切除術後に、アスコルビン酸生成の速度が、酸素輸送の速度の増加によって追い越されるので、酸素勾配の恒常性は破壊され、白内障及び緑内障をもたらす。硝子体の除去後の房水の流出の変更及び小柱網への酸化的損傷も、IOPの上昇を導き、開放隅角緑内障をもたらし得る(C.J.Siegfried,et al.,Invest Ophthalmol Vis Sci.2017,58,4003-4014)。視覚への深刻な脅威及び失明でさえ引き起こすこれらの疾患は、硝子体切除術へ最近結び付けられているが、それにもかかわらず、代替の治療戦略は探索されていなかった。天然の硝子体のゲル様の性質は酸素拡散を遅らせるが、加齢関連液化状態において、または除去後に、目中で酸素レベルは増加し、アスコルビン酸レベルは枯渇する(N.M.Holekamp,Am J Ophthalmol.2010,149,32-36)。ハイドロゲル硝子体代替物は、液体または気体の代替物よりも眼内酸素輸送を有効に遅らせて、酸化的損傷を防止することによって、これらの問題を緩和することができ、手術後の患者姿勢についての必要性をなくすことができた。抗酸化物質(アスコルビン酸等)を取り込むことには酸化的損傷をさらに緩和する可能性があり、硝子体切除術からもたらされる白内障または緑内障を防止する可能性がある。
【0045】
別の重要な対処されていない課題は、永続的な硝子体代替物が現在のところ利用可能ではないということである。FDAが1994年に硝子体代替物としてシリコーンオイルを承認して以来、新たな代替物は市場に導入されていない。気体及び油の代替物を置き換える大きな臨床的な必要性があり、それは、手術後の姿勢についての必要性を除去し、視覚を脅かす合併症を低減させて、代替物除去のための二次的な外科手術についての必要性をなくすものであろう。最も大きな必要性が、下部網膜剥離の事例においてある。シリコーンオイル及び気体は水よりも密度が低いので、網膜の再接近は患者姿勢に頼っており、最大2週間の間の逆向きの患者姿勢(頭部を下に)が要求される。シリコーンオイルは屈折誤差も誘導し、白内障及び緑内障の発症のリスクを増加させる(Federman JL,Schubert HD,Ophthalmology,1988 95(7):870-6;及びShah MA,et al,Pak J Ophthalmol,2017 33(2):74-8)。
【0046】
現行の硝子体代替物は、天然の硝子体の粘弾特性及び物理化学的特性を有していない。この困難を克服すれば、元の硝子体ゲルによって付与される特性を満たす硝子体代替物による、網膜剥離の良好な治療を可能にするだろう。ハイドロゲルの使用は、手術後の患者姿勢についての必要性もなくす可能性を有し、患者遵守及び網膜再接着転帰を改善する。現在のところ、患者の推定18~33%のみが手術後の姿勢を遵守し(Brodie FL,et al,Clin Ophthalmol,10:955-60,2016)、若干の患者は物理的に遵守することができない。材料の膨潤特性は、患者遵守に依存せずに、網膜を再接着させるために軽い浸透圧をかけるように調整され得る。さらに、眼腔中でインタクトなゲルを単純に有することは、網膜からの対流酸素輸送の減少に起因して、外科手術後の水晶体の保護を支援し得る(N.M.Holekamp,Am J Ophthalmol.2010,149,32-36)。永続的な硝子体代替物の開発は、除去のために第2の外科的手順(及び付随する費用)についての必要性もなくすだろう(Federman JL,Schubert HD,Ophthalmology,1988 95(7):870-6)。
【0047】
眼科的組成物
様々な態様において、本開示は、開示される硝子体代替物組成物を含む眼科的組成物であって、硝子体代替物組成物が、本明細書において記載される物理的特性を有するゲル、及び治療剤を含む、前記組成物に係わる。さらなる態様において、本開示は、開示される硝子体代替物組成物を含む眼科的組成物であって、硝子体代替物組成物が、本明細書において記載される物理的特性を有するゲル、及び治療剤を含み、治療剤が、開示される抗酸化物質である、前記組成物に係わる。
【0048】
硝子体代替物
様々な態様において、本開示は、ゲル及び少なくとも1つの抗酸化物質を含む硝子体代替物であって、硝子体代替物が、ヒトまたは別の動物の天然の硝子体液の同じ特性を実質的に模倣する物理的特性を有する、前記代替物を提供する。いくつかの態様において、開示される硝子体代替物は、1未満の損失正接(例えば約0.1~約0.5の範囲の損失正接)、及び約1.33~約1.34の屈折率(例えば約1.331~約1.339または約1.334~約1.337の屈折率)を有することによって定義される。他の実施形態において、硝子体代替物は、約1.4未満の屈折率を有することによって定義される。
【0049】
いくつかの態様において、開示される硝子体代替物は、約0.1Pa~約1000Pa(例えば約1Pa~約100Pa)の貯蔵弾性率を有し得る。いくつかの態様において、開示される硝子体代替物は、約0.01Pa~約1000Pa(例えば約0.1Pa~約100Paまたは約0.1Pa~約50Pa)の損失弾性率を有し得る。
【0050】
いくつかの態様において、硝子体代替物は、約1.005g/cm3~約1.009g/cm3の範囲の密度を有し得る。
【0051】
いくつかの態様において、硝子体代替物は、可視光線範囲中の電磁放射線で約75%~約100%の透明度を有する。いくつかの実施形態において、硝子体代替物は、近赤外線範囲中の電磁放射線に対して少なくとも部分的に透明である。いくつかの実施形態において、硝子体代替物は、紫外線または赤外線領域中の電磁放射線に対して少なくとも部分的に透明である。いくつかの実施形態において、硝子体代替物は、紫外線または赤外線領域中の電磁放射線に対して透明ではない。
【0052】
いくつかの実施形態において、硝子体代替物は、剪断流動化を示し得る(すなわち、剪断速度にともなう粘度の実質的減少を示す)。
【0053】
いくつかの実施形態において、硝子体代替物は、約0.1×106cm2/s~約50×106cm2/s(例えば約1×106cm2/s~約5×106cm2/sまたは約2×106cm2/s~約4×106cm2/s)の範囲の拡散速度によって定義される。
【0054】
いくつかの態様において、硝子体代替物中で使用されるゲルは、ハイドロゲルを含む。いくつかの態様において、硝子体代替物は、硝子体代替物中のすべての構成要素の全重量上に基づいて、90重量%を超える(例えば95重量%を超える)水分含有量を有する。
【0055】
様々な態様において、開示される硝子体代替物は、ハイドロゲルを含む。いくつかの実施形態において、ハイドロゲルは、ポリマー組成物(例えばホモポリマー、コポリマー、またはその組み合わせ)を含む。いくつかの実例において、ハイドロゲルは、コポリマーを含む。コポリマーは、いくつかの態様において、注射に際して可逆的に剪断流動化して、天然の硝子体液に類似する光学的及び機械的な特性を備えた密着性のハイドロゲルを再形成し得る。他の実施形態において、ハイドロゲルは、注射に際して、代わりに他の技法(例えばジスルフィド結合、温度遷移、または自己集合等)によって形成され得る。さらなる態様において、開示されるハイドロゲルは、膨潤特性に関して調整され得る。開示されるハイドロゲルは、生体適合性を改善するために、注射前に透析を経由して精製されて、毒性モノマーを除去することができる。
【0056】
いくつかの実施形態において、開示される硝子体代替物中で見出されるハイドロゲルは、1つまたは複数の親水性ポリマーを含む。親水性ポリマーは、少なくとも0.1wt%の水中での溶解度を有する(例えば少なくとも0.5wt%の溶解度を有する)ポリマーとして定義され得る。いくつかの実施形態において、親水性ポリマーは、水中で少なくとも1mg/mLの溶解度を有する。
【0057】
いくつかの実施形態において、ポリマー組成物は、1つまたは複数のビニルアルコール残基を含む。いくつかの実施形態において、ポリマー組成物は、1つまたは複数のアクリルアミド残基を含む。いくつかの実施形態において、ポリマー組成物は、ポリエチレングリコール誘導体または官能化ポリエチレングリコールから選択される1つまたは複数の残基を含み得る。いくつかの実施形態において、ポリマー組成物は、1つもしくは複数のアクリレート残基または1つもしくは複数のメタクリレート残基を含み得る。いくつかの実施形態において、ポリマー組成物は、アクリルアミド、N-オルニチンアクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、N-ビニルピロリドン、N-フェニルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、アクリル酸、ベンジルメタクリルアミド、メチルチオエチルアクリルアミド、またはその組み合わせから選択される、1つまたは複数の残基を含み得る。
【0058】
いくつかの態様において、開示される硝子体代替物は、コポリマーを含むハイドロゲルである。コポリマーは、本明細書において記載されるHEMA、PEGDA、及び/またはPEGMAに由来する残基を含み得る。
【0059】
いくつかの態様において、開示されるハイドロゲルは、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)及び/またはポリ(エチレングリコール)メタクリレート(PEGMA)のうちの1つまたは複数を利用して調製されたポリマーを含む。ポリマーHEMAは、眼用デバイス(コンタクトレンズ等)中で成功裡に使用されているが、HEMAは、前形成された非注射可能な植込み物として評価されて以来、これまでに硝子体代替物として調査されていない。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、他の親水性モノマーまたはポリマー(PEGMA等)とHEMAをブレンドすることは、透明度及び調整できる膨潤特性をゲルへ追加できると考えられる。
【0060】
他の態様において、開示されるハイドロゲルは、以下のモノマー:2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)及び/またはポリ(エチレングリコール)メタクリレート(PEGMA)のうちの1つまたは複数を利用して調製されたコポリマーを含む。さらなる態様において、コポリマーは、架橋剤(例えばポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA)架橋物質)を利用して調製され得る。
【0061】
さらなる態様において、開示されるハイドロゲルは、HEMA、PEGMA、及びPEGDAのフリーラジカル重合によって調製され得る。簡潔には、HEMA:PEGMAコポリマーハイドロゲルは水中で重合され、PEGDAにより架橋され得る。過硫酸アンモニウム及びN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミンを使用して、反応を開始し触媒する。特定の態様において、8.5:6.3:1のモル比のHEMA:PEGMA(MW360):PEGDA(MW575)が合成され、注射の前後の貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)によって証明されるように、粘弾性を損なうことなく、剪断流動化し小さいゲージ針を介して容易に注射可能である、透明な柔らかいゲルが産生され得る(例えば実施例2を参照)。いくつかの実例において、開示されるハイドロゲルを作製する開示される方法は、出版されたプロトコール(A.Zellander,et al.,PloS one.2014,9,e96709)において記載されるような本明細書における実施例中で記載されるステップ、出版されたプロトコールの修飾(本明細書において記載されるものを包含する)、ならびに本開示の趣旨及び範囲に沿ったその方法の最適化を含む。
【0062】
様々な態様において、開示されるハイドロゲルは、1つまたは複数のPEGDA残基を含むポリマーである。1つまたは複数のPEGDA残基を含むポリマーを含む開示されるハイドロゲルは、約1wt%以上及び約5wt%以下の濃度のPEGDAモノマーを使用して重合が実行される、記載される方法を使用して形成され得る。さらなる態様において、1つまたは複数のPEGDA残基を含むポリマーを含む開示されるハイドロゲルは、約1wt%以上及び約4wt%以下の濃度のPEGDAモノマーを使用して重合が実行される、記載される方法を使用して形成され得る。なおさらなる態様において、1つまたは複数のPEGDA残基を含むポリマーを含む開示されるハイドロゲルは、約1.5wt%以上及び約4wt%以下の濃度のPEGDAモノマーを使用して重合が実行される、記載される方法を使用して形成され得る。なおさらなる態様において、1つまたは複数のPEGDA残基を含むポリマーを含む開示されるハイドロゲルは、約1.5wt%以上及び約3.5wt%以下の濃度のPEGDAモノマーを使用して重合が実行される、記載される方法を使用して形成され得る。さらなる態様において、1つまたは複数のPEGDA残基を含むポリマーを含む開示されるハイドロゲルは、約2wt%以上及び約3wt%以下の濃度のPEGDAモノマーを使用して重合が実行される、記載される方法を使用して形成され得る。他の実施形態において、1つまたは複数のPEGDA残基を含むポリマー組成物を含む開示されるハイドロゲルは、約0.5wt%~約10wt%(例えば約1wt%~約5wt%)の範囲の濃度のPEGDAモノマーを使用して重合が実行される、記載される方法を使用して形成され得る。
【0063】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数のPEDGA残基の各々は、約100~約10000の分子量を独立して有し得る。いくつかの実施形態において、1つまたは複数のPEGDA残基の各々は、約100~約1000の分子量を有し得る。いくつかの実施形態において、1つまたは複数のPEGDA残基の各々は、約100~約1000、約200~約1000、約300~約1000、約400~約1000、約500~約1000、約600~約1000、約700~約1000、約800~約1000、約900~約1000、約100~約900、約200~約900、約300~約900、約400~約900、約500~約900、約600~約900、約700~約900、約800~約900、約100~約800、約200~約800、約300~約800、約400~約800、約500~約800、約600~約800、約700~約800、約100~約700、約200~約700、約300~約700、約400~約700、約500~約700、約600~約700、約100~約600、約200~約600、約300~約600、約400~約600、約500~約600、約100~約500、約200~約500、約300~約500、約400~約500、約100~約400、約200~約400、約300~約400、約100~300、約200~300、または約100~200の分子量を有する。
【0064】
様々な態様において、開示されるハイドロゲルは、1つまたは複数のPEGMA残基を含むポリマーである。1つまたは複数のPEGMA残基を含むポリマーを含む開示されるハイドロゲルは、約3wt%以上及び約8wt%以下の濃度のPEGMAモノマーを使用して重合が実行される、記載される方法を使用して形成され得る。さらなる態様において、1つまたは複数のPEGMA残基を含むポリマーを含む開示されるハイドロゲルは、約4wt%以上及び約8wt%以下の濃度のPEGMAモノマーを使用して重合が実行される、記載される方法を使用して形成され得る。なおさらなる態様において、1つまたは複数のPEGMA残基を含むポリマーを含む開示されるハイドロゲルは、約5wt%以上及び約8wt%以下の濃度のPEGMAモノマーを使用して重合が実行される、記載される方法を使用して形成され得る。なおさらなる態様において、1つまたは複数のPEGMA残基を含むポリマーを含む開示されるハイドロゲルは、約5wt%以上及び約7wt%以下の濃度のPEGMAモノマーを使用して重合が実行される、記載される方法を使用して形成され得る。なおさらなる態様において、1つまたは複数のPEGMA残基を含むポリマーを含む開示されるハイドロゲルは、約5.5wt%以上及び約7.5wt%以下の濃度のPEGMAモノマーを使用して重合が実行される、記載される方法を使用して形成され得る。なおさらなる態様において、1つまたは複数のPEGMA残基を含むポリマーを含む開示されるハイドロゲルは、約6wt%以上及び約7wt%以下の濃度のPEGMAモノマーを使用して重合が実行される、記載される方法を使用して形成され得る。他の実施形態において、1つまたは複数のPEGMA残基を含むポリマー組成物を含む開示されるハイドロゲルは、約0.5wt%~約10wt%(例えば約1wt%~約5wt%)の範囲の濃度のPEGMAモノマーを使用して重合が実行される、記載される方法を使用して形成され得る。
【0065】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数のPEGMA残基の各々は、約100~約8000(例えば約100~約4000)の分子量を独立して有し得る。いくつかの実施形態において、1つまたは複数のPEGMA残基の各々は、約100~約500の分子量を有する。いくつかの実施形態において、1つまたは複数のPEGMA残基の各々は、約100~約500、約150~約500、約200~約500、約250~約500、約280~約500、約300~約500、約380~約500、約400~約500、約450~約500、約100~約450、約150~約450、約200~約450、約250~約450、約280~約450、約300~約450、約380~約450、約400~約450、約100~約400、約150~約400、約200~約400、約250~約400、約280~約400、約300~約400、約380~約400、約100~約380、約150~約380、約200~約380、約250~約380、約280~約380、約300~約380、約100~約300、約150~約300、約200~約300、約250~約300、約280~約300、約100~約280、約150~約280、約200~約280、約250~約280、約100~約250、約150~約250、約200~約250、約100~200、約150~200、または約100~150の分子量を有する。
【0066】
様々な態様において、開示されるハイドロゲルは、PEGDA残基及びPEGMA残基を含むコポリマーである。PEGDA残基及びPEGMA残基を含むポリマーを含む開示されるハイドロゲルは、各々約2.5wt%以上及び約4wt%以下の濃度のPEGDAモノマー及びPEGMAモノマーを使用して重合が実行される、記載される方法を使用して形成され得る。さらなる態様において、PEGDA残基及びPEGMA残基を含むポリマーを含む開示されるハイドロゲルは、各々約3wt%以上及び約3.8wt%以下の濃度のPEGDAモノマー及びPEGMAモノマーを使用して重合が実行される、記載される方法を使用して形成され得る。いくつかの実例において、前述のコポリマーはHEMAを含むことができ、HEMAは、約0.1wt%~約1.0wt%の濃度で重合反応において存在する。
【0067】
様々な態様において、開示されるハイドロゲルは、1つもしくは複数の2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)残基及び1つもしくは複数のアクリルアミド残基;1つもしくは複数のHEMA残基及び1つもしくは複数のポリ(エチレングリコール)メタクリレート(PEGMA)残基;1つもしくは複数のHEMA残基及び1つもしくは複数のメタクリル酸残基;1つもしくは複数のHEMA残基及び1つもしくは複数のポリ(ビニルアルコール)(PVA)残基;または1つもしくは複数のPVA及び1つもしくは複数のアクリルアミド残基から形成されたポリマーを含み得る。いくつかの実施形態において、開示されるハイドロゲルは、ジスルフィド架橋物質(ビスアクリロイルシスタミン等)からさらに形成され得る。
【0068】
生体適合性を改善するために、ゲルは脱イオン水に対して透析され得る。透析後に、製剤は注射され得るか、または乾燥形態で室温での貯蔵のために冷凍乾燥され得る。冷凍乾燥されたポリマーは、水溶液(約7.4のpHが挙げられるがこれらに限定されない生理的な平衡塩類溶液が挙げられる)中で再水和され得る。様々な態様において、再水和のために使用される水溶液は、薬学的に許容されるバッファーを含み得る。眼内分析のために、ゲルは滅菌され得、注射に際して目中で自己集合するだろう(Uesugi K,et al,Invest Ophthalmol Vis Sci,2017 58(10):4068-75;及びK.E.Swindle,P.D.Hamilton,N.Ravi,J.Biomed.Mater.Res.A.2008,87,656-665)。
【0069】
様々な態様において、本明細書において開示されるハイドロゲルは、開示される抗酸化物質の存在下または非存在下のいずれかにおいて、約15分間~約72時間の期間にわたってゲル化し得る。さらなる態様において、ゲル化時間は、約30分間~約24時間であり得る。
【0070】
開示される硝子体代替物は第1のハイドロゲルを含むことができ、第1のハイドロゲルは、本明細書において開示されるHEMA残基、PEGDA残基、及び/またはPEGMA残基、第2のハイドロゲル、ならびに1つまたは複数の開示される抗酸化物質を含む。第2のハイドロゲルは、当業者に公知の任意の好適なハイドロゲルであり得、米国特許出願第20050208102号、同第20050074497号、同第20090252781号、同第20140296158号、同第20130123195号、同第20150250891号、同第20160331738号、同第20160331738号、同第20170112888号、同第20180280688号、同第20180045978号、及び同第20180200340号;ならびに米国特許第5522888号、同第5716633号、同第7939579号、同第9125807号、同第9205181号、同第9775906号、同第9987367号、及び同第10251954号中で開示されるハイドロゲルが挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実例において、第1のハイドロゲル濃度は、本質的に約0wt%である。他の実例において、第2のハイドロゲル濃度は、本質的に約0wt%である。開示される硝子体代替物中で使用され得る第2のハイドロゲルの代表的な例としては、ヒアルロン酸、コラーゲン、ジェラン、絹、フィブリン、アルギン酸塩、キトサン、ポリアクリルアミド及びそのメタクリレート誘導体、ポリアクリル酸及びそのメタクリレート誘導体、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール及びその誘導体、ポリプロピレングリコール及びその誘導体、重合アスコルビン酸、またはその組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。
【0071】
いくつかの実施形態において、硝子体代替物は、1つまたは複数の熱ゲル化剤(例えばポロキサマー等)を含み得る。
【0072】
抗酸化物質
様々な態様において、任意の好適な抗酸化物質は、開示される硝子体代替物中の治療剤として使用され得る。本明細書において使用される時、「抗酸化物質」という用語の使用は、フリーラジカルスカベンジャーを包含し、「フリーラジカルスカベンジャー」と互換的に使用され得ることが理解されるべきである。「フリーラジカルスカベンジャー」という用語は、本明細書において使用される時、フリーラジカルによって引き起こされる損傷から細胞を保護することを支援する物質(抗酸化物質等)を指す。
【0073】
いくつかの実施形態において、抗酸化物質は、目の組織への任意の重要な毒性を示さずに、治療効果を生ずるのに十分な量で存在する。
【0074】
いくつかの態様において、使用される抗酸化物質は、ビタミンA;ビタミンC(アスコルビン酸);N-アセチルシステイン;グルタチオン;亜鉛化合物;銅化合物;ビタミンE及びその誘導体(α、β、γ、及びδトコフェロール、及び/またはα、β、γ、及びδトコトリエノール、ならびにその誘導体が挙げられるがこれらに限定されない);亜セレン酸;亜セレン酸ナトリウム;飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸(6-O-ラウロイルアスコルビン酸、6-O-ミリストイルアスコルビン酸、6-O-オレオイルアスコルビン酸、6-O-パルミトイルアスコルビン酸、6-O-リノレオイルアスコルビン酸、6-O-ステアロイルアスコルビン酸が挙げられるがこれらに限定されない);l-カルニチン及び誘導体(l-酢酸カルニチン等);レチナール;トレチノイン;チモロール;ルテイン;チロキシン;ピロロキノロン;プロブコール;カプトプリル;尿酸;エリソルビン酸(erithorbic acid)及びその塩;α-リポ酸;ヒドララジン;没食子酸;リコピン;アスタキサンチン;ゼアキサンチン;フェルラ酸;ケルセチン;オイゲノール;イソオイゲノール;メラトニン;レスベラトロール;マンニトール;トロロックス;メチルエチルピリジノール(methylethylpiridinol);タウフォン(taufon);チオール抗酸化物質;βカロテン;ならびに前述のもののうちの1つまたは複数の組み合わせを含み得る。
【0075】
さらなる態様において、使用される抗酸化物質は、ビタミンE;ビタミンC(アスコルビン酸);ルテイン;ゼアキサンチン;亜鉛化合物;銅化合物;βカロテン;1つまたは複数のω-3脂肪酸(例えばDHAまたはEPA);またはその組み合わせを含み得る。すなわち、AREDSまたはAREDS2組成物中での使用について知られている構成要素のうちの1つまたは複数である。
【0076】
いくつかの実施形態において、使用される抗酸化物質は、αリポ酸、リボフラビン、タウリン、尿酸、チロシン、トランスフェリング(transferring)、セレン、亜鉛、スーパーオキシドジスムターゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、カタラーゼ、色素上皮由来因子(PEDF)、またはその組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態において、抗酸化物質は、ヒトまたは動物の硝子体中で見出されるような抗酸化物質の正常な濃度を模倣する濃度で存在し得る。かかる濃度の代表的な例は、Ankamah,E.et al.“Vitreous Antioxidants,Degeneration,and Vitreo-Retinopathy:Exploring the Links”Antioxidants 2020,9,7,doi:10,3390/antiox901007(その全体は参照することによって本明細書に援用される)中で見出される。
【0077】
さらなる態様において、チオール抗酸化物質は、グルタチオン(GSH)、酸化型グルタチオンまたは酸化グルタチオン(GSSG)、N-アセチルシステイン、チオクト酸、2-オキソ-チアゾリジン-4-カルボキシル酸、システイン、グルタミルシステイン、エタンチオール、1,4-ブタンチオール、2-メルカプトエチルエーテル、ペンタエリトレトールテトラチオプロピオネート(pentaerythretoltetrathiopropionate)及びアセテート、ポリエチレングリコーリメルカプトアセテート(polyethyleneglycolimercaptoacetate)及びメチルチオグリコレート、アリルメルカプタン、2-メルカプトエタノール、3-メルカプトプロパノール、4-メルカプトブタノール、1-チオグリセロール、チオエリトリトール、2,3-ジメルカプトプロパノール、ペンタエリトレトールモノ(pentaerythretolmono)(ジ;トリ)チオプロピオネートまたはアセテート、チオグリコール酸、チオ酢酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオ乳酸、チオリンゴ酸、チオコハク酸、チオサリチル酸、チオ安息香酸及びそれぞれの水溶性塩、フルフリルメルカプタン、2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプト-3-ピリジノール、ジメチルアミノプロパンチオール、2-メルカプトエチルアミン、2-n-ブチルアミノエタンチオール;前述のものの誘導体;ならびに前述のものの混合物またはそれらを別の開示される抗酸化物質と組み合わせたものから選択され得る。
【0078】
さらなる態様において、チオール抗酸化物質は、N-アセチルシステイン、チオクト酸、2-オキソ-チアゾリジン-4-カルボキシル酸、システイン、グルタミルシステイン、及びその混合物から選択され得る。
【0079】
さらなる態様において、チオール抗酸化物質は、GSH、GSHの眼科的に許容される塩、GSSG、GSSGの眼科的に許容される塩、その前駆体、及びその混合物から選択され得る。なおさらなる態様において、チオール抗酸化物質は、GSH、GSSG、眼科的に許容されるその塩、及びその混合物から選択され得る。なおさらなる態様において、チオール抗酸化物質は、GSH、GSSG、及びその混合物から選択され得る。なおさらなる態様において、チオール抗酸化物質は、GSHを含む。
【0080】
さらなる態様において、抗酸化物質の眼科的に許容される塩中に含まれる眼科的に許容される陰イオンとしては、クロリド、ブロミド、ヨージド、サルフェート、ビサルフェート、ホスフェート、アシッドホスフェート、ナイトレート、アセテート、マレート、フマレート、オキサレート、ラクテート、タルトレート、シトレート、グルコネート、サッカレート、p-トルエンスルホネート、及び同種のものが挙げられる。抗酸化物質として有用な眼科的に許容される誘導体としては、エステル、酸、及び同種のものが挙げられる。
【0081】
他の態様において、開示される硝子体代替物中に存在する抗酸化物質は、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸マグネシウム、アスコルビン酸亜鉛;C2~C20の直鎖、分岐鎖、飽和、及び不飽和の脂肪酸との、アスコルビン酸の6-O-エステル:6-O-ラウロイルアスコルビン酸、6-O-ミリストイルアスコルビン酸、6-O-オレオイルアスコルビン酸、6-O-パルミトイルアスコルビン酸、6-O-リノレオイルアスコルビン酸、6-O-ステアロイルアスコルビン酸;d-α-ヘミコハク酸トコフェロール(tocopheryl hemisuccinate)またはdl-α-ヘミコハク酸トコフェロールとの、アスコルビン酸の6-O-エステル;還元グルタチオン及びd-α-トコフェロールまたはdl-α-トコフェロールとの、アスコルビン酸の6-O-エステル;還元グルタチオン及びd-α-トコフェロールまたはdl-α-トコフェロールとの、還元グルタチオンのグルタチオンエステル;d-トコフェロール及びdl-トコフェロール(α、β、γ、δ異性体)、ならびに前述のトコフェロール異性体のアセテート、ヘミスクシネート、ニコチネート、及びスクシネート-PEGエステル(TPGS)誘導体;スーパーオキシドジスムターゼ;β-カロテン;メラトニン;トランスレスベラトロール;トロロックス;補酵素Q;カタラーゼ;様々なペルオキシダーゼ;システイン、エタノールとのシステインのエステル、エタノールとのシステインのエステルのHCl塩、エタノールとのシステインのエステルによるアスコルビン酸の塩、エタノールとのシステインのエステルのd-α-トコフェロール-ヘミコハク酸塩もしくはdl-α-トコフェロール-ヘミコハク酸塩、d-α-トコフェロールもしくはdl-α-トコフェロールとのシステインのエステル、N-アセチルシステイン、N-アセチルシステインのNa、K、Ca、Mg、Zn塩、エタノールとのN-アセチルシステインのエステルまたはd-α-トコフェロールもしくはdl-α-トコフェロール;l-カルニチン;l-酢酸カルニチン;レチナール;トレチノイン;チモロール;ルテイン;チロキシン;ピロロキノロン;プロブコール;カプトプリル;デスフェラールMn+3;尿酸;エリソルビン酸(erithorbic acid)及びその塩;α-リポ酸;リコピン;アスタキサンチン;ゼアキサンチン;フェルラ酸;ケルセチン;オイゲノール及びイソオイゲノール;プロスタグランジン;ラタノプロスト、ビマトプロスト、トラボプロスト;(-)-エピカテキン;(-)-没食子酸エピガロカテキン;ブチルヒドロキシトルエン;ブチルヒドロキシアニソール;ルチナール(rutinal);フィゼチン;亜硫酸塩及び重亜硫酸塩の塩(Na、K、Ca、Mg)から選択される薬剤のうちの1つまたは複数であり得る。いくつかの実施形態において、抗酸化物質は、L-アスコルビン酸、アスコルビン酸6-パルミテート、またはその組み合わせを含み得る。
【0082】
いくつかの態様において、開示される硝子体代替物中に存在する抗酸化物質は、Macan,A.et al.“Therapeutic Perspective of Vitamin C and Its Derivatives”Antioxidants 2019,8,247,doi:10.3390/antiox8080247(その全体はすべての目的のために参照により本明細書に援用される)中で記載されるアスコルビン酸誘導体のうちの1つまたは複数を含み得る。
【0083】
様々な態様において、抗酸化物質は、約0.001ng/ml~約100mg/ml;約0.001ng/ml~約10mg/ml;約0.001ng/ml~約1mg/ml;約0.01ng/ml~約100mg/ml;約0.01ng/ml~約10mg/ml;約0.01ng/ml~約1mg/ml;約0.1ng/ml~約100mg/ml;約0.1ng/ml~約10mg/ml;約0.1ng/ml~約1mg/ml;約1ng/ml~約100mg/ml;約1ng/ml~約10mg/ml;または前述の範囲内の下位範囲の濃度で、開示される硝子体代替物中に存在し得る。
【0084】
さらなる態様において、アスコルビン酸、または好適なその塩は、約0.001ng/ml~約1mg/mlの濃度で、開示される硝子体代替物中に存在し得る。なおさらなる態様において、アスコルビン酸、または好適なその塩は、約1μg/ml~約1000μg/mlの濃度で、開示される硝子体代替物中に存在し得る。なおさらなる態様において、アスコルビン酸、または好適なその塩は、約100μg/ml~約1000μg/mlの濃度で、開示される硝子体代替物中に存在し得る。なおさらなる態様において、アスコルビン酸、または好適なその塩は、約200μg/ml~約800μg/mlの濃度で、開示される硝子体代替物中に存在し得る。なおさらなる態様において、アスコルビン酸、または好適なその塩は、約300μg/ml~約700μg/mlの濃度で、開示される硝子体代替物中に存在し得る。別の態様において、アスコルビン酸、またはその好適な塩もしくは誘導体は、約0.1mM~約5mM(例えば0.1mM~約1mM)の濃度で、開示される硝子体代替物中に存在し得る。
【0085】
さらなる態様において、トコフェロール、またはその誘導体は、約0.001ng/ml~約1mg/mlの濃度で、開示される硝子体代替物中に存在し得る。なおさらなる態様において、トコフェロール、またはその誘導体は、約1μg/ml~約200μg/mlの濃度で、開示される硝子体代替物中に存在し得る。なおさらなる態様において、トコフェロール、またはその誘導体は、約1μg/ml~約100μg/mlの濃度で、開示される硝子体代替物中に存在し得る。なおさらなる態様において、トコフェロール、またはその誘導体は、約5μg/ml~約75μg/mlの濃度で、開示される硝子体代替物中に存在し得る。なおさらなる態様において、トコフェロール、またはその誘導体は、約5μg/ml~約50μg/mlの濃度で、開示される硝子体代替物中に存在し得る。
【0086】
さらなる態様において、グルタチオン(例えば還元グルタチオン)、またはその誘導体は、約0.001ng/ml~約1mg/mlの濃度で、開示される硝子体代替物中に存在し得る。なおさらなる態様において、グルタチオン(例えば還元グルタチオン)、またはその誘導体は、約1μg/ml~約200μg/mlの濃度で、開示される硝子体代替物中に存在し得る。なおさらなる態様において、グルタチオン(例えば還元グルタチオン)、またはその誘導体は、約1μg/ml~約100μg/mlの濃度で、開示される硝子体代替物中に存在し得る。なおさらなる態様において、グルタチオン(例えば還元グルタチオン)、またはその誘導体は、約5μg/ml~約75μg/mlの濃度で、開示される硝子体代替物中に存在し得る。なおさらなる態様において、グルタチオン(例えば還元グルタチオン)、またはその誘導体は、約5μg/ml~約50μg/mlの濃度で、開示される硝子体代替物中に存在し得る。いくつかの態様において、グルタチオン(例えば還元グルタチオン)、またはその誘導体は、約0.1mM~約100mM、約0.05mM~約10mM、約1mM~約10mM、約2mM~10mM、約2mM~約4mM、または約4mM~約10mMの濃度で、開示される硝子体代替物中に存在し得る。いくつかの態様において、グルタチオン(例えば還元グルタチオン)、またはその誘導体は、約1mM、約2mM、約4mM、約10mM、またはそれ以上の濃度で、開示される硝子体代替物中に存在し得る。
【0087】
さらなる態様において、メラトニン、またはその誘導体は、約0.001ng/ml~約1mg/mlの濃度で、開示される硝子体代替物中に存在し得る。なおさらなる態様において、トコフェロール、またはその誘導体は、約1pg/ml~約200pg/mlの濃度で、開示される硝子体代替物中に存在し得る。なおさらなる態様において、トコフェロール、またはその誘導体は、約1pg/ml~約100pg/mlの濃度で、開示される硝子体代替物中に存在し得る。なおさらなる態様において、トコフェロール、またはその誘導体は、約5pg/ml~約75pg/mlの濃度で、開示される硝子体代替物中に存在し得る。なおさらなる態様において、トコフェロール、またはその誘導体は、約5pg/ml~約50pg/mlの濃度で、開示される硝子体代替物中に存在し得る。
【0088】
いくつかの態様において、アスコルビン酸が抗酸化物質として使用され得る。アスコルビン酸は複数の所望される特徴を有する。それは、硝子体液中に際立って高いレベルで存在する(2mM、比較として血液中で50~60μM;Y.B.Shui,et al.,Arch Ophthalmol.2009,127,475-482を参照)。アスコルビン酸溶液は、硝子体中で見出される組み合わせた他のすべての抗酸化物質と同じ効果を有し、アスコルビン酸の強力な抗酸化効果を示唆する(Chen-Roetling J,et al,Biochem Biophys Res Commun,2018 503(1):152-6)。アスコルビン酸はまた、房水中の抗酸化能力の75%を占める(C.J.Siegfried,et al.,Invest Ophthalmol Vis Sci.2017,58,4003-4014)。白内障に影響する他の因子があるが、アスコルビン酸は、白内障を防止するために水晶体表面の酸素調整を制御することができる重要な構成要素であるように思われる。
【0089】
注射前に抗酸化物質を保護し放出を制御するために、アスコルビン酸はカプセル化され、次いで注射前に硝子体代替物とブレンドされ得る(
図3)。アスコルビン酸をカプセル化するナノ粒子は、約0.001mM~約100mMの濃度の放出を持続させて、硝子体中で見出されるレベルを再現し得る。複数のアスコルビン酸が装填されたナノ粒子及びハイドロゲルの製剤が、本明細書において開示される。カプセル化戦略は、抗酸化物質の迅速な初期の放出(それは硝子体切除術の間及びその後の眼組織の即時の保護のために所望され得る)、続いて、抗酸化物質レベルが毛様体によって目中で回復させられるまでのおよそ1か月間アスコルビン酸濃度を維持する制御放出を容易にすることができる(Sebag J,The Vitreous:Structure,Function,and Pathobiology,1989)。
【0090】
様々な態様において、急速に溶解する天然ポリマー(ゼラチン及びアルギン酸塩等)中でのカプセル化(Lee EM,et al,J Nanomat,2014 124:236)は、眼内注射前に抗酸化物質を保護し安定化させるために利用することができる。あるいは、アスコルビン酸の酸化を防止するために、EDTAは開示されるハイドロゲル組成物の中へ取り込まれ得る。EDTAは、眼用製剤(Rao MVL,et al,J Sci Food Agricul,1959 10(8):436-41)、眼酵素(チオレドキシンレダクターゼ等)による逆酸化(reverse oxidation)(May JM,et al,J Biol Chem,1997 272:22607-10)、またはアスコルビン酸レチニルによる安定化(Das N,et al,Eur J Pharm Sci,2010 41(5):571-88)において使用される。アスコルビン酸に酸化ストレスから水晶体を保護する効果がないならば、他の抗酸化物質が評価され得、それらは、水晶体中で高度に濃縮されるグルタチオン(Wang-Su ST,et al,Invest Ophthalmol Vis Sci,44:4829-36,2003)、または目の健康を保護することが知られているビタミンA、ビタミンE、もしくはルテイン(Chew EY,Ophthalmology,2012 119(11):2282-9;及びZhang J,et al,Biomacromolecules,2016 17(11):3648-58)等である。
【0091】
様々な態様において、抗酸化物質は粒子(ゼラチン-アルギン酸塩ナノ粒子等)中でカプセル化され得、それは修飾した油中水型乳化技法を使用して調製され得る(Lee EM,et al,J Nanomat,2014:124236,2014)。簡潔には、アルギン酸塩及びゼラチンは0.075g/mLで1:2重量比で温水中で溶解され、アスコルビン酸は溶液へ添加され得る。この溶液は、急速に撹拌されているトウモロコシ油の中へ30分間で滴加され得る。粒子はアセトン中で沈殿され、次いで1%のグルタルアルデヒド中で架橋されて、治療物質の放出を遅らせることができる。次いで粒子は遠心分離を使用して収集され、蒸留水により洗浄され得る。薬物放出プロファイル及び粒子サイズは、ゼラチン:アルギン酸間の比、ポリマー濃度、架橋物質濃度、及びアスコルビン酸装填の操作によって制御され得る。数日~数週間の放出を持続させる、200nm~1.5μmのサイズ範囲中のキトサン、アルギン酸塩-キトサン、ゼラチン、及びゼラチン-アルギン酸塩から構成される粒子が合成された。
【0092】
アスコルビン酸装填は、265nmでUV-可視光分光法を使用して吸光度を測定すること、または適切なアッセイ系(例えばSigma-Aldrich Corporation、St.Louis、Missouriから利用可能なアスコルビン酸アッセイキットMAK074またはアスコルビン酸アッセイキットII MAK075等の商業的に入手可能なキット)を使用することによって確認され得る。粒子及び複合ゲルからのアスコルビン酸の放出速度は、37℃のリン酸緩衝生理食塩水中で振盪しながらインキュベーションすることによって評価され得る。溶出液は、1、6、12及び24時間後に、次いで3、5、7、14、21及び28日目に、除去され新鮮な生理食塩水により置き換えられ得る。代表的なデータは、初期バースト、続いて少なくとも7日の間の持続放出を示す(
図4)。
【0093】
いくつかの態様において、開示される硝子体代替物中に存在する抗酸化物質は、グルタチオン(例えば還元グルタチオン(GSH)またはその誘導体)と組み合わせて、アスコルビン酸を含み得る。本明細書において開示される硝子体代替物中でアスコルビン酸と共にグルタチオンをさらに添加することは、他の方法に比較して、アスコルビン酸の安定性を改善し得る。いくつかの態様において、還元グルタチオン(GSH)等のグルタチオンは、約0.01mM~約100mM、約0.05mM~約10mM、約1mM~約10mM、例えば約2mM~約10mM、約4mM~約10mM、約1mM~約4mM、約2mM~約4mM、または約4mM~約10mMの濃度で、開示される硝子体代替物中にアスコルビン酸と組み合わせて存在し得る。いくつかの態様において、還元グルタチオン(GSH)等のグルタチオンは、約1mM、約2mM、約3mM、約4mM、約10mM、またはそれ以上の濃度で、開示される硝子体代替物中にアスコルビン酸と組み合わせて存在し得る。いくつかの実施形態において、アスコルビン酸、またはその好適な塩もしくは誘導体は、約0.1mM~約5mM(例えば約0.1~約1mM)の濃度で(グルタチオンと組み合わせて使用された場合に)、開示される硝子体代替物中に存在し得る。いくつかの実施形態において、アスコルビン酸、またはその好適な塩もしくは誘導体は、約0.1mM、約0.2mM、約0.3mM、約0.4mM、約0.5mM、約0.6mM、約0.7mm、約0.8mm、約0.9mM、またはそれ以上の濃度で(グルタチオンと組み合わせて使用された場合に)、開示される硝子体代替物中に存在し得る。
【0094】
追加の治療剤
いくつかの実施形態において、本開示中で記載される硝子体代替物は、1つまたは複数の追加の治療剤をさらに含み得る。
【0095】
本明細書において使用される時、「治療剤」は、目の医学的条件またはがんを治療するのに使用され得る、1つまたは複数の治療剤、活性成分、または物質を指す。治療剤は、典型的には、眼科的に許容され、本明細書において開示される組成物が目中に配置される場合に、有害反応を引き起こさない形態で提供される。本明細書において論じられるように、治療剤は、生物学的に活性のある形態で開示される組成物から放出され得る。例えば、目の中へ系から放出された場合に、治療剤はそれらの三次元構造を保持し得る。
【0096】
本明細書において使用される時、「治療剤」という用語は、生物体(ヒトまたは非ヒト動物)へ投与された場合に、局所的及び/または全身的な作用によって所望される薬理学、免疫原性、及び/または生理的な効果を誘導する物体の任意の合成のまたは天然に存在する生物学的に活性のある化合物または組成物を包含することがさらに理解される。したがって当該用語は、薬物、ワクチン、及び生物医薬品(タンパク質、ペプチド、ホルモン、核酸、遺伝子コンストラクト、及び同種のもの等の分子を包含する)と伝統的に見なされる、化合物または化学物質を網羅する。治療剤の例は、Merck Index(14th edition),the Physicians’Desk Reference(64th edition)及びThe Pharmacological Basis of Therapeutics(12th edition)等の周知の文献参照中で記載され、当該例としては、医薬品;ビタミン;ミネラルサプリメント;疾患または病気の治療、予防、診断、治癒、または緩和のために使用される物質;身体の構造もしくは機能に影響する物質、または生理的環境に配置された後に生物学的に活性になるかもしくはより活性になるプロドラッグが限定されずに挙げられる。例えば、「治療剤」という用語は、アジュバント;抗感染物質(抗生物質及び抗ウイルス剤等);鎮痛物質及び鎮痛物質の組み合わせ、食欲減退物質、抗炎症剤、抗癲癇物質、局所及び全身の麻酔物質、催眠物質、鎮静物質、抗精神病剤、神経弛緩剤、抗鬱物質、抗不安物質、アンタゴニスト、ニューロン遮断剤、抗コリン作用剤及びコリン様作用剤、抗ムスカリン作用剤及びムスカリン作用剤、抗アドレナリン作用物質、抗不整脈物質、降圧剤、ホルモン及び、栄養物質、抗関節炎物質、抗喘息剤、抗痙攣物質、抗ヒスタミン物質、抗嘔吐物質、抗新生物物質、抗掻痒物質、解熱物質;抗発作物質、循環器官用薬(カルシウムチャンネル遮断物質、β遮断物質、βアゴニスト及び抗不整脈物質が挙げられる)、抗高血圧物質、利尿物質、血管拡張物質;中枢神経興奮物質;感冒薬;充血除去物質;診断用物質;ホルモン;骨成長刺激物質及び骨吸収阻害物質;免疫抑制物質;筋弛緩物質;精神刺激物質;鎮静物質;トランキライザー;タンパク質、ペプチド、及びその断片(天然に存在するか、化学的に合成されるか、または組み換えにより産生されるかにかかわらず);ならびに核酸分子(リボヌクレオチド(RNA)またはデオキシリボヌクレオチド(DNA)のいずれかの2つ以上のヌクレオチドのポリマー形態であり、二本鎖及び一本鎖の分子、遺伝子コンストラクト、発現ベクター、アンチセンス分子、ならびに同種のものが挙げられる)、小分子(例えばドキソルビシン)、及び他の生物学的に活性のあるマクロ分子(例えばタンパク質及び酵素)が挙げられるがこれらに限定されない、主要な治療領域のすべてにおける使用のための、化合物または組成物を包含する。薬剤は、獣医学を含む医学応用、農業(植物によるもの等)、そして他の領域で使用される生物学的活性剤であり得る。治療剤という用語は、医薬品;ビタミン;ミネラルサプリメント;疾患もしくは病気の治療、予防、診断、治癒、もしくは緩和のために使用される物質;または身体の構造もしくは機能に影響する物質;または所定の生理的環境に配置された後に生物学的に活性になるかもしくはより活性になるプロドラッグも限定されずに包含する。
【0097】
いくつかの実施形態において、治療剤は、β遮断物質(チモロール、ベタキソロール、レボベタキソロール、及びカルテオロールが挙げられる);縮瞳物質(ピロカルピンが挙げられる);炭酸脱水酵素阻害物質;セロトニン作用物質;ムスカリン作用物質;ドーパミンアゴニスト;アドレナリン作用アゴニスト(アプラクロニジン及びブリモニジンを包含する);抗血管形成剤;抗感染剤(キノロン(シプロフロキサシン等)及びアミノグリコシド(トブラマイシン及びゲンタミシン等)が挙げられる);非ステロイド性抗炎症剤及びステロイド性抗炎症剤(スプロフェン、ジクロフェナク、ケトロラク、リメキソロン、及びテトラヒドロコルチゾール等);増殖因子(EGF等);免疫抑制剤;及び抗アレルギー剤(オロパタジンが挙げられる);プロスタグランジン(ラタノプロスト等);15-ケトラタノプロスト;トラボプロスト;及びイソプロピルウノプロストン等の眼科的障害または眼疾患の治療に有用な薬剤を含み得る。
【0098】
いくつかの実施形態において、治療剤は、抗炎症剤、カルシニューリン阻害物質、抗生物質、ニコチン性アセチルコリン受容体アゴニスト、及び抗リンパ管形成剤からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、抗炎症剤は、シクロスポリンであり得る。いくつかの実施形態において、カルシニューリン阻害物質は、ボクロスポリンであり得る。いくつかの実施形態において、抗生物質は、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルミシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、テイコプラニン、バンコマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、ナフシリン、ペニシリン、ピペラシリン、チカルシリン、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンB、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン、マフェナイド、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファサラジン、スルフイソキサゾール、トリメトプリム、コトリモキサゾール、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、及びテトラサイクリンからなる群から選択されてもよい。いくつかの実施形態において、ニコチン性アセチルコリン受容体アゴニストは、ピロカルピン、アトロピン、ニコチン、エピバチジン、ロベリン、またはイミダクロプリドのうちの任意のものであり得る。いくつかの実施形態において、抗リンパ管形成剤は、血管内皮増殖因子C(VEGF-C)抗体、VEGF-D抗体、またはVEGF-3抗体であり得る。
【0099】
いくつかの態様において、治療剤は、β遮断物質(レボブノロール(BETAGAN)、チモロール(BETIMOL、TIMOPTIC)、ベタキソロール(BETOPTIC)、及びメチプラノロール(OPTIPRANOLOL)が挙げられる);α-アゴニスト(アプラクロニジン(IOPIDINE)及びブリモニジン(ALPHAGAN)等);炭酸脱水酵素阻害物質(アセタゾラミド、メタゾラミド、ドルゾラミド(TRUSOPT)、及びブリンゾラミド(AZOPT)等);プロスタグランジンまたはプロスタグランジン類似体(ラタノプロスト(XALATAN)、ビマトプロスト(LUMIGAN)、及びトラボプロスト(TRAVATAN)等);縮瞳剤またはコリン作用剤(ピロカルピン(ISOPTO CARPINE、PILOPINE)及びカルバコール(ISOPTO CARBACHOL)等);エピネフリン化合物(ジピベフリン(PROPINE)等);フォルスコリン;または神経保護化合物(ブリモニジン及びメマンチン等);ステロイド誘導体(2-メトキシエストラジオールまたはその類似体もしくは誘導体等);または抗生物質から選択され得る。
【0100】
「VEGF」という用語は、血管形成または血管形成プロセス(透過性の増加が挙げられるがこれらに限定されない)を誘導する血管内皮増殖因子を指す。本明細書において使用される時、「VEGF」という用語は、例えばVEGF-A/VPF遺伝子のオルタナティブスプライシングによって生じるVEGFの様々なサブタイプ(血管透過性因子(VPF)及びVEGF-Aとしても公知である)を包含し、VEGF121、VEGF165、及びVEGF189を包含する。さらに本明細書において使用される時、「VEGF」という用語は、VEGF関連血管形成因子(同族のVEFG受容体(すなわちVEGFR)を介して作用して血管形成または血管形成プロセスを誘導する、PIGF(胎盤増殖因子)、VEGF-B、VEGF-C及びVEGF-D、及びVEGF-E等)を包含する。「VEGF」という用語は、VEGF受容体(VEGFR-1(Flt-1)、VEGFR-2(KDR/Flk-1)、またはVEGFR-3(FLT-4))へ結合する、増殖因子のクラスの任意のメンバーを包含する。「VEGF」という用語は「VEGF」ポリペプチドまたは「VEGF」コード遺伝子もしくは核酸を指すように使用され得る。
【0101】
「抗VEGF剤」という用語は、VEGFの活性または産生を部分的または完全のいずれかで低減または阻害する薬剤を指す。抗VEGF剤は、特異的VEGF(VEGF165等)の活性または産生を直接または間接的に低減または阻害することができる。さらに、「抗VEGF剤」は、VEGFに付随する受容体シグナルを低減または阻害するように、VEGFリガンドまたはその同族の受容体のいずれかに対して作用する薬剤を包含する。「抗VEGF剤」の非限定例としては、VEGF核酸を標的化する、アンチセンス分子、リボザイム、またはRNAi;抗VEGFアプタマー、VEGFそれ自体もしくはその受容体への抗VEGF抗体、またはその同族の受容体へのVEGFの結合を防止する可溶性VEGF受容体デコイ;同族のVEGF受容体(VEGFR)核酸を標的化する、アンチセンス分子、リボザイム、またはRNAi;同族のVEGFR受容体へ結合する、抗VEGFRアプタマーまたは抗VEGFR抗体;及びVEGFRチロシンキナーゼ阻害物質が挙げられる。
【0102】
いくつかの実施形態において、治療剤は、抗VEGF剤を含み得る。抗VEGF剤の代表例としては、ラニビズマブ、ベバシズマブ、アフリベルセプト、KH902 VEGF受容体-Fc、融合タンパク質、2C3抗体、ORA102、ペガプタニブ、ベバシラニブ、SIRNA-027、デクルシン、デクルシノール、ピクロポドフィリン、ググルステロン、PLG101、エイコサノイドLXA4、PTK787、パゾパニブ、アキシチニブ、CDDO-Me、CDDO-Imm、シコニン、β-ヒドロキシイソバレリルシコニン、ガングリオシドGM3、DC101抗体、Mab25抗体、Mab73抗体、4A5抗体、4E10抗体、5F12抗体、VA01抗体、BL2抗体、VEGF関連タンパク質、sFLT01、sFLT02、ペプチドB3、TG100801、ソラフェニブ、G6-31抗体、融合抗体、及びVEGFのエピトープへ結合する抗体が挙げられる。本方法において有用な抗VEGF剤の追加の非限定例としては、ヒト血管内皮増殖因子-A(VEGF-A)、ヒト血管内皮増殖因子-B(VEGF-B)、ヒト血管内皮増殖因子-C(VEGF-C)、ヒト血管内皮増殖因子-D(VEGF-D)、及びヒト血管内皮増殖因子-E(VEGF-E)のうちの1つまたは複数へ特異的に結合する物質、ならびにVEGFのエピトープへ結合する抗体が挙げられる。
【0103】
様々な態様において、抗VEGF剤は、抗体ラニビズマブまたはその薬学的に許容される塩である。ラニビズマブは、商標LUCENTISで商業的に入手可能である。別の実施形態において、抗VEGF剤は、抗体ベバシズマブまたはその薬学的に許容される塩である。ベバシズマブは、商標AVASTINで商業的に入手可能である。別の実施形態において、抗VEGF剤は、アフリベルセプトまたはその薬学的に許容される塩である。アフリベルセプトは、商標EYLEAで商業的に入手可能である。一実施形態において、抗VEGF剤は、ペガプタニブまたはその薬学的に許容される塩である。ペガプチニブ(pegaptinib)は、商標MACUGENで商業的に入手可能である。別の実施形態において、抗VEGF剤は、VEGFのエピトープ(VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、またはVEGF-Eのエピトープ等)へ結合する抗体または抗体断片である。いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニストは、VEGFとVEGFRの結合が阻害されるように、VEGFのエピトープへ結合する。一実施形態において、エピトープは、折りたたまれたVEGF分子の表面上にエピトープが曝露されるように、提示されるVEGFの三次元構造の構成要素を網羅する。一実施形態において、エピトープは、VEGFからの直線状アミノ酸配列である。
【0104】
様々な態様において、治療剤は、VEGF媒介性活性を遮断または阻害する薬剤(例えば1つまたは複数のVEGFアンチセンス核酸)を含み得る。本開示は、VEGFまたはその部分をコードする遺伝子またはcDNAへのアンチセンスである、少なくとも6つのヌクレオチドを含む核酸の治療的または予防的な使用を提供する。本明細書において使用される時、VEGF「アンチセンス」核酸は、VEGFをコードするRNA(好ましくはmRNA)の一部へのいくらかの配列相補性によってハイブリダイズすることが可能な核酸を指す。アンチセンス核酸は、VEGFをコードするmRNAのコーディング領域及び/または非コーディング領域に相補的であり得る。かかるアンチセンス核酸はVEGF発現を防止する化合物としての有用性を有し、糖尿病の治療において使用され得る。本開示のアンチセンス核酸は、二本鎖または一本鎖のオリゴヌクレオチド、RNA、もしくはDNA、またはその修飾物もしくは誘導体であり、直接細胞へ投与されるか、または外来性の導入された配列の転写によって細胞内で産生され得る。
【0105】
VEGFアンチセンス核酸は少なくとも6ヌクレオチドであり、好ましくは6~約50オリゴヌクレオチドの範囲のオリゴヌクレオチドである。特定の態様において、オリゴヌクレオチドは、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも15ヌクレオチド、少なくとも100ヌクレオチド、または少なくとも200ヌクレオチドである。
オリゴヌクレオチドはDNAもしくはRNAまたはキメラ混合物、あるいはその誘導体または修飾バージョンであり得、一本鎖または二本鎖であり得る。加えて、アンチセンス分子は、核酸模倣体(PNA、モルホリノオリゴ、及びLNA等)であるポリマーであり得る。他の型のアンチセンス分子としては、siRNAとして公知の短い二本鎖RNA、及び短いヘアピンRNA、及び長いdsRNA(>50bp、しかし通常≧500bp)が挙げられる。
【0106】
様々な態様において、治療剤は、VEGFをコードする遺伝子mRNAの転写物を触媒的に切断し、標的遺伝子mRNAの翻訳及びしたがって遺伝子産物の発現を防止するようにデザインされた1つまたは複数のリボザイム分子を含み得る。
【0107】
リボザイムは、RNAの特異的切断を触媒することが可能な酵素RNA分子である。リボザイム作用のメカニズムは、リボザイム分子の相補的標的RNAへの配列特異的ハイブリダイゼーション、続いてエンドヌクレアーゼ的切断事象を含む。リボザイム分子の組成物は、標的遺伝子mRNAに相補的な1つまたは複数の配列を含まなくてはならず、mRNAの切断を担う周知の触媒配列を含まなくてはならない。この配列については、例えば米国特許第5,093,246号を参照されたい。部位特異的認識配列でmRNAを切断するリボザイムが、VEGFをコードするmRNAの破壊に使用され得るが、ハンマーヘッド型リボザイムの使用が好ましい。ハンマーヘッド型リボザイムは、標的mRNAと相補的塩基対を形成する隣接領域によって定められた位置でmRNAを切断する。唯一の要求性は、標的mRNAが以下の2塩基の配列:5’-UG-3’を有するということである。ハンマーヘッド型リボザイムの構築及び産生は、当技術分野において周知である。本開示のリボザイムは、Tetrahymena thermophilaにおいて天然に存在するもの(IVSまたはL-19 IVS RNAとして公知である)等のRNAエンドリボヌクレアーゼ(以後「Cech型リボザイム」)も包含する。Cech型リボザイムは、標的RNAの切断が起こった後に、標的RNA配列にハイブリダイズする8つの塩基対活性部位を有する。本開示は、VEGFをコードする遺伝子中に存在する8つの塩基対活性部位配列を標的化するCech型リボザイムを網羅する。
【0108】
さらなる態様において、治療剤は、VEGFを阻害する抗体(ベバシズマブまたはラニビズマブ等)を含み得る。なおさらなる態様において、治療剤は、VEGF活性(VEGFによって刺激されるチロシンキナーゼ等)を阻害する薬剤を含み、その例としては、ラパチニブ、スニチニブ、ソラフェニブ、アキシチニブ、及びパゾパニブが挙げられるがこれらに限定されない。「抗RAS剤」または「抗レニンアンジオテンシン系剤」という用語は、レニンアンジオテンシン系(RAS)の分子の活性または産生を、部分的または完全のいずれかで、低減または阻害する薬剤を指す。「抗RAS」または「抗レニンアンジオテンシン系」の分子の非限定例は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害物質、アンジオテンシン受容体遮断物質、及びレニン阻害物質のうちの1つまたは複数である。
【0109】
いくつかの実施形態において、治療剤は、レニンアンジオテンシン系(RAS)阻害物質を含み得る。いくつかの実施形態において、レニンアンジオテンシン系(RAS)阻害物質は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害物質、アンジオテンシン受容体遮断物質、及びレニン阻害物質のうちの1つまたは複数である。
【0110】
本発明において有用なアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害物質の非限定例としては、アラセプリル、アラトリオプリル、アルチオプリルカルシウム、アンコベニン、ベナゼプリル、塩酸ベナゼプリル、ベナゼプリラート、ベンザゼプリル(benzazepril)、ベンゾイルカプトプリル、カプトプリル、カプトプリルシステイン、カプトプリルグルタチオン、セラナプリル、セラノプリル、セロナプリル、シラザプリル、シラザプリラート、コンベルスタチン(converstatin)、デラプリル、デラプリル二酸、エナラプリル、エナラプリラト、エナルキレン、エナプリル(enapril)、エピカプトプリル、ホロキシミチン、ホスフェノプリル、ホスエノプリル、ホスエノプリルナトリウム、ホシノプリル、ホシノプリルナトリウム、ホシノプリラト、ホシノプリル酸、グリコプリル(glycopril)、ヘモルフィン-4、イダプリル(idapril)、イミダプリル、インドラプリル、インドラプリラト、リベンザプリル、リシノプリル、リシウミン(lyciumin)A、リシウミンB、ミキサンプリル、モエキシプリル、モエキシプリラート、モベルチプリル、ムラセインA、ムラセインB、ムラセインC、ペントプリル、ペリンドプリル、ペリンドプリラート、ピバロプリル(pivalopril)、ピボプリル、キナプリル、塩酸キナプリル、キナプリラト、ラミプリル、ラミプリラート、スピラプリル、塩酸スピラプリル、スピラプリラート、スピロプリル(spiropril)、塩酸スピラプリル、テモカプリル、塩酸テモカプリル、テプロチド、トランドラプリル、トランドラプリラート、ウチバプリル(utibapril)、ザビシプリル、ザビシプリラート(zabiciprilat)、ゾフェノプリル、ゾフェノプリラト、その薬学的に許容される塩、及びその混合物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0111】
本発明において有用なアンジオテンシン受容体遮断物質の非限定例としては、イルベサルタン(米国特許第5,270,317号、その全体は参照することによって本明細書に援用される)、カンデサルタン(米国特許第5,196,444号及び同第5,705,517号、それらの全体は参照することによって本明細書に援用される)、バルサルタン(米国特許第5,399,578号、その全体は参照することによって本明細書に援用される)、及びロサルタン(米国特許第5,138,069号、その全体は参照することによって本明細書に援用される)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0112】
治療剤として使用され得るレニン阻害物質の非限定例としては、アリスキレン、ジテキレン、エナルキレン、レミキレン、テルラキレン、シプロキレン、及びザンキレン、その薬学的に許容される塩及びその混合物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0113】
「ステロイド」という用語は、以下の化合物の例示的なファミリー:コルチコステロイド、ミネラリコステロイド(mineralicosteroid)、及び性ステロイド(例えば可能性としてアンドロゲン性もしくはエストロゲン性、または抗アンドロゲン性及び抗エストロゲン性の分子を包含する)に属するかまたはそれらに関連する化合物を指す。これらの中には、例えばプレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、フルオシノロン、アルドステロン、スピロノラクトン、ダナゾール(他の場合にはOPTINAとして公知である)、及びその他が包含される。いくつかの実施形態において、治療剤は、ステロイドを含み得る。
【0114】
「ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ剤」または「PPAR-γ剤」または「PPARG剤」または「PPAR-γ剤」という用語は、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体に対して直接または間接的に作用する薬剤を指す。この薬剤は、PPAR-α(「PPARA」)活性にも影響を及ぼし得る。
【0115】
いくつかの実施形態において、治療剤は、マクロファージ極性化の調節物質を含み得る。マクロファージ極性化の例示的な調節物質としては、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPAR-g)調節物質が挙げられ、例えばアゴニスト、部分アゴニスト、アンタゴニスト、またはPPAR-γ/αアゴニストの組み合わせを包含する。いくつかの実施形態において、治療剤は、PPARγ調節物質(完全アゴニストまたは部分アゴニストであるPPARγ調節物質を包含する)を含み得る。いくつかの実施形態において、PPARγ調節物質は、チアゾリジンジオン(TZD、またはグリタゾン)の薬物クラスのメンバーである。非限定例として、PPARγ調節物質は、ロシグリタゾン(AVANDIA)、ピオグリタゾン(ACTOS)、トログリタゾン(REZULIN)、ネトグリタゾン、リボグリタゾン、シグリタゾン、ローダニンのうちの1つまたは複数であり得る。いくつかの実施形態において、PPARγ調節物質は、イルベサルタン及びテルメサルタン(telmesartan)のうちの1つまたは複数である。いくつかの実施形態において、PPARγ調節物質は、非ステロイド性抗炎症薬(例えばイブプロフェン等のNSAID)またはインドールである。公知の阻害物質は、実験的薬剤GW-9662を包含する。PPARγ調節物質のさらなる例は、WIPO公開番号WO/1999/063983、WO/2001/000579、Nat Rev Immunol.2011 Oct.25;11(11):750-61中で記載されるもの、またはWO/2002/068386の方法を使用して同定される薬剤である(それらの内容は参照することによってそれらの全体が本明細書に援用される)。
【0116】
いくつかの実施形態において、PPARγ調節物質は、「デュアル」PPAR調節物質または「バランスされた」PPAR調節物質または「汎」PPAR調節物質である。いくつかの実施形態において、PPARγ調節物質は、2つ以上のPPARアイソフォームを結合するグリタザール(例えばムラグリタザール(Pargluva)及びテサグリタザール(Galida)及びアレグリタザール)である。
【0117】
いくつかの実施形態において、治療剤は、Bianchi,et al.(March 1995).Molecular Medicine(Cambridge,Mass.)1(3):254-266(この内容は参照することによってその全体が本明細書に援用される)中で記載されるセマピモド(CNI-1493)を含み得る。
【0118】
いくつかの実施形態において、治療剤は、遊走阻止因子(MIF)阻害物質を含み得る。例示的なMIF阻害物質は、WIPO公開番号WO2003/104203、WO2007/070961、WO2009/117706、ならびに米国特許第7,732,146号及び同第7,632,505号及び同第7,294,753号、同第7,294,753号(それらの内容は参照することによってそれらの全体が本明細書に援用される)中で記載される。いくつかの実施形態において、MIF阻害物質は、(S,R)-3-(4-ヒドロキシフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-イソオキサゾール酢酸メチルエステル(ISO-1)、イソオキサゾリン、p425(J.Biol.Chem.,287,30653-30663)、エポキシアザジラジオン、またはビタミンEである。
【0119】
いくつかの実施形態において、治療剤は、例えば米国特許及び特許公開:米国特許第7,799,824号、米国特許第8,067,415号、US2007/0197590、US2006/0069123、US2006/0058289、及びUS2007/0037794(それらの内容は参照することによってそれらの全体が本明細書に援用される)中で記載されるケモカイン受容体2(CCR2)阻害物質を含み得る。いくつかの実施形態において、CCR2阻害物質は、マラビロク、セニクリビロック、CD192、CCX872、CCX140、2-((イソプロピルアミノカルボニル)アミノ)-N-(2-((cis-2-((4-(メチルチオ)ベンゾイル)アミノ)シクロヘキシル)アミノ)-2-オキソエチル)-5-(トリフルオロメチル)-ベンズアミド、ビクリビロク、SCH351125、TAK779、Teijin、RS-504393、化合物2、化合物14、または化合物19(Plos ONE 7(3):e32864)である。
【0120】
いくつかの実施形態において、治療剤は、オートファジー、ミクロオートファジー、マイトファジー、またはオートファジーの他の形態を調節する薬剤を含み得る。いくつかの実施形態において、治療剤は、シロリムス、タクロリミス(tacrolimis)、ラパマイシン、エベロリムス、バフィロマイシン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、スパウチン-1、メトホルミン、ペリホシン、レスベラトロル、トリコスタチン、バルプロ酸、Z-VAD-FMK、または当技術分野において公知の他のものを含み得る。理論に束縛されることを望むものではないが、オートファジー、ミクロオートファジー、マイトファジー、またはオートファジーの他の形態を調節する薬剤は、細胞内構成要素(例えば細胞器官、ミトコンドリア、小胞体、脂質、または他のものであるがこれらに限定されない)のリサイクルを変更し得る。理論に束縛されることをさらに望むものではないが、この薬剤は、微小管結合タンパク質1A/1B軽鎖3(LC3)を介して作用しても作用しなくてもよい。
【0121】
いくつかの実施形態において、治療剤は、がんの治療に使用される薬剤(すなわち制がん薬または抗がん剤)を含み得る。例示的な制がん薬は、抗代謝抗がん剤及び抗有糸分裂抗がん剤、ならびにその組み合わせから、対象に対して選択され得る。様々な抗代謝抗がん剤及び抗有糸分裂抗がん剤(単一のかかる薬剤またはかかる薬剤の組み合わせを包含する)は、方法及び本明細書において記載される組成物中で用いられ得る。
【0122】
抗代謝抗がん剤は、典型的には天然の代謝物質に構造的に類似し、当該代謝物質は、がん細胞の正常な代謝プロセス(核酸及びタンパク質の合成等)に関与する。しかしながら、抗代謝物質は、それらががん細胞の代謝プロセスを妨害するように、天然の代謝物質とは十分に異なる。細胞中で、抗代謝物質は、類似する代謝物質と間違えられ、正常な化合物に類似する方式で細胞によって加工される。「デコイ」代謝物質の存在は、細胞が生体機能を実行することを防止し、細胞は増殖及び生存することがでない。例えば、抗代謝物質は、細胞DNAの中へこれらの不正なヌクレオチドを置換し、それによって細胞分裂を邪魔することによって、または重要な細胞酵素を阻害し、DNAの複製を防止することによって、細胞毒性活性を発揮し得る。
【0123】
したがって一態様において、抗代謝抗がん剤は、ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体である。ある特定の態様において、例えば抗代謝剤は、結合された糖部分の有無にかかわらず、プリン(例えばグアニンまたはアデノシン)もしくはその類似体、またはピリミジン(シチジンまたはチミジン)もしくはその類似体を含み得る。
【0124】
本開示で使用される好適な抗代謝抗がん剤は、概してそれらが影響する代謝プロセスに従って分類され、当該抗がん剤としては、葉酸、ピリミジン、プリン、及びシチジンの類似体及び誘導体が挙げられ得るがこれらに限定されない。したがって一態様において、抗代謝剤(複数可)は、シチジン類似体、葉酸類似体、プリン類似体、ピリミジン類似体、及びその組み合わせからなる群から選択される。
【0125】
1つの特定の態様において、例えば抗代謝剤は、シチジン類似体である。この態様によれば、例えばシチジン類似体は、シタラビン(シトシンアラビノドシド(arabinodside))、アザシチジン(5-アザシチジン)、ならびにその塩、類似体、及び誘導体からなる群から選択され得る。
【0126】
別の特定の態様において、例えば抗代謝剤は、葉酸類似体である。葉酸類似体または抗葉酸物質は、概してジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)(ヌクレオチドの形成に関与する酵素)を阻害することによって機能する。この酵素が遮断される場合に、ヌクレオチドは形成されず、DNA複製及び細胞分裂を邪魔する。ある特定の態様によれば、例えば葉酸類似体は、デノプテリン、メトトレキサート(アメトプテリン)、ペメトレキセド、プテロプテリン、ラルチトレキセド、トリメトレキサート、ならびにその塩、類似体、及び誘導体からなる群から選択され得る。
【0127】
別の特定の態様において、例えば抗代謝剤は、プリン類似体である。プリンベースの抗代謝剤は、DNA合成を阻害することによって(例えばプリン含有ヌクレオチド(アデニン及びグアニン)の産生を妨害し、その妨害がDNA合成そして細胞分裂を中断することによって)機能する。プリン類似体もDNA合成の間にDNA分子それ自体の中へ取り込まれ、それは細胞分裂を妨害し得る。ある特定の態様によれば、例えばプリン類似体は、アシクロビル、アロプリノール、2-アミノアデノシン、アラビノシルアデニン(アラA)、アザシチジン、アザチプリン(azathiprine)、8-アザ-アデノシン、8-フルオロ-アデノシン、8-メトキシ-アデノシン、8-オキソ-アデノシン、クラドリビン、デオキシコフォルマイシン、フルダラビン、ガンシロビル(gancylovir)、8-アザ-グアノシン、8-フルオロ-グアノシン、8-メトキシ-グアノシン、8-オキソ-グアノシン、グアノシン二リン酸、グアノシン二リン酸-β-L-2-アミノフコース、グアノシン二リン酸-D-アラビノース、グアノシン二リン酸-2-フルオロフコース、グアノシン二リン酸フコース、メルカプトプリン(6-MP)、ペントスタチン、チアミプリン、チオグアニン(6-TG)、ならびにその塩、類似体、及び誘導体からなる群から選択され得る。
【0128】
さらに別の特定の態様において、例えば抗代謝剤は、ピリミジン類似体である。上で考察されたプリン類似体に類似して、ピリミジンベースの抗代謝剤は、ピリミジン含有ヌクレオチド(DNA中のシトシン及びチミン;RNA中のシトシン及びウラシル)の合成を遮断する。「デコイ」として作用することによって、ピリミジンベースの化合物は、ヌクレオチドの産生を防止し得る、及び/または、成長しているDNA鎖の中へ取り込まれ、終結を導き得る。ある特定の態様によれば、例えばピリミジン類似体は、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、ブロモウラシル(例えば5-ブロモウラシル)、カペシタビン、カルモフール、クロロウラシル(例えば5-クロロウラシル)、シタラビン(シトシンアラビノサイド)、シトシン、ジデオキシウリジン、3’-アジド-3’-デオキシチミジン、3’-ジデオキシシチジン-2’-エン、3’-デオキシ-3’-デオキシチミジン-2’-エン、ジヒドロウラシル、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5-フルオロシトシン、2-フルオロデオキシシチジン、3-フルオロ-3’-デオキシチミジン、フルオロウラシル(例えば5-フルオロウラシル(5-FUとしても公知である))、ゲムシタビン、5-メチルシトシン、5-プロピニルシトシン、5-プロピニルチミン、5-プロピニルウラシル、チミン、ウラシル、ウリジン、ならびにその塩、類似体、及び誘導体からなる群から選択され得る。一態様において、ピリミジン類似体は、5-フルオロウラシル以外である。別の態様において、ピリミジン類似体は、ゲムシタビンまたはその塩である。
【0129】
ある特定の態様において、抗代謝剤は、5-フルオロウラシル、カペシタビン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート、ゲムシタビン、シタラビン、フルダラビン、ペメトレキセド、ならびにその塩、類似体、誘導体、及び組み合わせからなる群から選択される。他の態様において、抗代謝剤は、カペシタビン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート、ゲムシタビン、シタラビン、フルダラビン、ペメトレキセド、ならびにその塩、類似体、誘導体、及び組み合わせからなる群から選択される。1つの特定の態様において、抗代謝剤は、5-フルオロウラシル以外である。特に好ましい態様において、抗代謝剤は、ゲムシタビンまたはその塩(例えばゲムシタビンHCl(Gemzar(登録商標)))である。
【0130】
他の抗代謝抗がん剤は、アカンチホリン酸、アミノチアジアゾール、ブレキナルナトリウム、Ciba-Geigy CGP-30694、シクロペンチルシトシン、シタラビンホスフェートステアレート、シタラビンコンジュゲート、Lilly DATHF、Merrel Dow DDFC、デザグアニン、ジデオキシシチジン、ジデオキシグアノシン、ジドックス、Yoshitomi DMDC、Wellcome EHNA、Merck & Co.EX-015、ファザラビン、リン酸フルダラビン、N-(2’-フラニジル)-5-フルオロウラシル、Daiichi Seiyaku FO-152、5-FU-フィブリノーゲン、イソプロピルピロリジン、Lilly LY-188011;とりわけ、Lilly LY-264618、メトベンザプリム、Wellcome MZPES、ノルスペルミジン、NCI NSC-127716、NCI NSC-264880、NCI NSC-39661、NCI NSC-612567、Warner-Lambert PALA、ペントスタチン、ピリトレキシム、プリカマイシン、Asahi Chemical PL-AC、Takeda TAC-788、チアゾフリン、Erbamont TIF、チロシンキナーゼ阻害物質、Taiho UFT、及びウリシチン(uricytin)からなる群から選択され得るがこれらに限定されない。
【0131】
一態様において、抗有糸分裂剤は、微小管阻害物質または微小管安定化物質である。概して、微小管安定化物質(タキサン及びエポチロン等)はβ-微小管鎖の内面に結合し、重合反応の核形成相及び伸長相の増進によって、ならびに微小管のアセンブリに要求されるチューブリンサブユニット臨界濃度を低減させることによって、微小管アセンブリを促進する。微小管アセンブリを防止する微小管阻害物質(ビンカアルカロイド等)とは異なり、微小管安定化物質(タキサン等)はラグタイムを減少させ、チューブリンダイマーと微小管ポリマーとの間の動的平衡を重合に向けて劇的にシフトさせる。したがって一態様において、微小管安定化物質は、タキサンまたはエポチロンである。別の態様において、微小管阻害物質は、ビンカアルカロイドである。
【0132】
いくつかの実施形態において、治療剤は、タキサンまたはその誘導体もしくは類似体を含み得る。タキサンは、天然に由来する化合物、関連形態、または抗新生物性の特質を備えた化学的に合成された化合物もしくはその誘導体であり得る。タキサンは、テルペンのファミリー(パクリタキセル(Taxol(登録商標))及びドセタキセル(Taxotere(登録商標))が挙げられるがこれらに限定されない)であり、それらは主としてタイヘイヨウイチイの木(Taxus brevifolia)に由来し、特定の腫瘍(特に乳房の腫瘍、卵巣腫瘍)に対する活性を有する。一態様において、タキサンは、ドセタキセルまたはパクリタキセルである。パクリタキセルは、好ましいタキサンであり、チューブリンダイマーからの微小管のアセンブリを増進し、脱重合の防止によって微小管を安定化する抗有糸分裂剤と考えられる。この安定性は、生命に関する間期及び有糸分裂細胞機能に必須の微小管ネットワークの正常な動的な再編成の阻害をもたらす。
【0133】
親水性誘導体及び疎水性誘導体の両方を含む、様々な公知のタキサン誘導体も包含される。タキサン誘導体としては、国際特許出願番号WO99/18113中で記載されるガラクトース誘導体及びマンノース誘導体;WO99/14209中で記載されるピペラジノ誘導体及び他の誘導体;WO99/09021、WO98/22451及び米国特許第5,869,680号中で記載されるタキサン誘導体;WO98/28288中で記載される6-チオ誘導体;米国特許第5,821,263号中で記載されるスルフェンアミド誘導体;脱酸素化パクリタキセル化合物(米国特許第5,440,056号中で記載されるもの等);ならびに米国特許第5,415,869号中で記載されるタキソール誘導体が挙げられるがこれらに限定されない。上で指摘されるように、それは、パクリタキセルのプロドラッグをさらに包含し、WO98/58927;WO98/13059;及び米国特許第5,824,701号中で記載されるものが挙げられるがこれらに限定されない。タキサンは、タキサンコンジュゲート(例えばパクリタキセル-PEG、パクリタキセル-デキストラン、パクリタキセル-キシロース、ドセタキセル-PEG、ドセタキセル-デキストラン、ドセタキセル-キシロース、及び同種のもの等)でもあり得る。他の誘導体は、他の参照文献の中でも、表題“New Trends in Natural Products Chemistry”(1986),Atta-ur-Rabman,P.W.le Quesne,Eds.(Elsevier,Amsterdam 1986)の“Synthesis and Anticancer Activity of Taxol Derivatives,”D.G.I.Kingston et al.,Studies in Organic Chemistry,vol.26中で言及される。これらの参照文献の各々は、本明細書において参照することによってその全体が本明細書に援用される。
【0134】
様々なタキサンは、当業者に公知の技法(WO94/07882、WO94/07881、WO94/07880、WO94/07876、WO93/23555、WO93/10076;米国特許第5,294,637号;同第5,283,253号;同第5,279,949号;同第5,274,137号;同第5,202,448号;同第5,200,534号;同第5,229,529;及びEP590,267も参照)(その各々は参照することによってその全体が本明細書に援用される)を利用して容易に調製され得るか、または様々な商業的供給源(例えばSigma-Aldrich Co.、St.Louis、Moを包含する)から得られ得る。
【0135】
代替的に、抗有糸分裂剤は微小管阻害物質であり得る。1つの好ましい態様において、微小管阻害物質は、ビンカアルカロイドである。概して、ビンカアルカロイドは、有糸分裂紡錘体毒である。ビンカアルカロイド剤は、細胞分離の前に、染色体が分配され、極のうちの1つに向けて有糸分裂紡錘体の細管に沿って移動し始める時の有糸分裂の間に作用する。これらの紡錘体毒の作用下で、紡錘体は有糸分裂の間の染色体の分散によって無秩序になり、細胞増殖に影響する。ある特定の態様によれば、例えばビンカアルカロイドは、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、及びビノレルビン、かつその塩、類似体、及び誘導体からなる群から選択される。
【0136】
抗有糸分裂剤は、エポチロンでもあり得る。概して、エポチロンクラスの化合物のメンバーは、タキサンのメカニズムに類似するものに従って微小管機能を安定化する。エポチロンは、G2-M移行期で細胞周期停止も引き起こし、細胞毒性及び最終的にはアポトーシスを導き得る。好適なエピチオロン(epithiolone)としては、エポチロンA、エポチロンB、エポチロンC、エポチロンD、エポチロンE、及びエポチロンF、ならびにその塩、類似体及び、誘導体が挙げられる。1つの特定のエポチロン類似体は、エポチロンB類似体であるイキサベピロン(Ixempra(商標))である。
【0137】
ある特定の態様において、抗有糸分裂の抗がん剤は、タキサン、エポチロン、ビンカアルカロイド、ならびにその塩及び組み合わせからなる群から選択される。したがって例えば、一態様において、抗有糸分裂剤はタキサンである。より好ましくは、この態様において、抗有糸分裂剤は、パクリタキセルまたはドセタキセル、さらにより好ましくはパクリタキセルである。別の態様において、抗有糸分裂剤は、エポチロン(例えばエポチロンB類似体)である。別の態様において、抗有糸分裂剤は、ビンカアルカロイドである。
【0138】
本開示において使用され得る制がん薬の例としては、サリドマイド;白金配位錯体(シスプラチン(cis-DDP)、オキサリプラチン、及びカルボプラチン等);アントラセンジオン(ミトキサントロン等);置換尿素(ヒドロキシ尿素等);メチルヒドラジン誘導体(プロカルバジン(N-メチルヒドラジン、MIH)等);副腎皮質抑制物質(ミトタン(o,p’-DDD)及びアミノグルテチミド等);RXRアゴニスト(ベキサロテン等);及びチロシンキナーゼ阻害物質(スニチミブ(sunitimib)及びイマチニブ等)が挙げられるがこれらに限定されない。追加の制がん薬の例としては、アルキル化薬、抗代謝物質、天然産物、ホルモン及びアンタゴニスト、ならびに様々な薬剤が挙げられる。代替名は丸括弧で示される。アルキル化剤の例としては、ナイトロジェンマスタード[メクロレタミン、シクロホスファニド(cyclophosphainide)及びイホスファミド及びメルファラン(サルコリシン)、及びクロラムブシル等];エチレンイミン及びメチルメラミン[ヘキサメチルメラミン及びチオテパ等];アルキルスルホネート[ブスルファン等];ニトロソウレア[カルムスチン(BCNU)、セムスチン(メチル-CCNU)、ロムスチン(CCNU)、及びストレプトゾシン(ストレプトゾトシン)等];DNA合成アンタゴニスト[リン酸エストラムスチン等];及びトリアジン[ダカルバジン(DTIC、ジメチル-トリアゼノイミダゾールカルボキサミド)、及びテモゾロマイド等]が挙げられる。抗代謝物質の例としては、葉酸類似体[メトトレキサート(アメトプテリン)等];ピリミジン類似体[フルオロウラシン(fluorouracin)(5-フルオロウラシル、5-FU、SFU)、フロクスウリジン(フルオロデオキシウリジン、FUdR)、シタラビン(シトシンアラビノサイド)、及びゲムシタビン等];プリン類似体[メルカプトプリン(6-メルカプトプリン、6-MP)、チオグアニン(6-チオグアニン、TG)及びペントスタチン(2’-デオキシコフォルマイシン、デオキシコフォルマイシン)、クラドリビン及びフルダラビン等];及びトポイソメラーゼ阻害物質[アムサクリン等]が挙げられる。天然産物の例としては、ビンカアルカロイド[ビンブラスチン(VLB)及びビンクリスチン等];タキサン[パクリタキセル、タンパク質結合パクリタキセル(Abraxane)、及びドセタキセル(Taxotere)等];エピポドフィロトキシン[エトポシド及びテニポシド等];カンプトテシン[トポテカン及びイリノテカン等];抗生物質[ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン(ダウノマイシン、ルビドマイシン)、ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン(マイトマイシンC)、イダルビシン、エピルビシン等];酵素[L-アスパラギナーゼ等];及び生物学的応答修飾物質[インターフェロンα及びインターレルキン(interlelukin)2等]が挙げられる。ホルモン及びアンタゴニストの例としては、黄体形成放出ホルモン(luteinizing releasing hormone)アゴニスト[ブセレリン等];副腎皮質ステロイド[プレドニゾン及び関連調製物等];プロゲスチン[カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、及び酢酸メゲストロール等];エストロゲン[ジエチルスチルベストロール及びエチニルエストラジオールならびに関連調製物等];エストロゲンアンタゴニスト[タモキシフェン及びアナストロゾール等];アンドロゲン[プロピオン酸テストステロン及びフルオキシメステロンならびに関連調製物等];アンドロゲンアンタゴニスト[フルタミド及びビカルタミド等];及び性腺刺激ホルモン放出ホルモン類似体[ロイプロリド等]が挙げられる。制がん薬のこれら及び追加の例の代替名及び商標名、ならびに投薬及び投与のレジメンを包含するそれらの使用法は、当業者に公知であろう。
【0139】
いくつかの態様において、抗がん剤は、化学療法剤を含み得る。好適な化学療法剤としては、アルキル化剤、抗生剤、抗代謝剤、ホルモン剤、植物由来剤及びそれらの合成誘導体、抗血管新生剤、分化誘導剤、細胞増殖停止誘導剤、アポトーシス誘導剤、細胞毒性剤、細胞生体エネルギーに影響する(すなわち細胞ATPレベル及びこれらのレベルを調節する分子/活性に影響する)薬剤、生物学的薬剤(例えばモノクローナル抗体)、キナーゼ阻害物質、ならびに増殖因子及びそれらの受容体の阻害物質、遺伝子療法剤、細胞療法(例えば幹細胞)、またはその任意の組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。
【0140】
これらの態様に従って、化学療法剤は、シクロホスファミド、クロラムブシル、メルファラン、メクロレタミン、イホスファミド、ブスルファン、ロムスチン、ストレプトゾシン、テモゾロマイド、ダカルバジン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、プロカルバジン、ウラムスチン、メトトルキサート(methotrxate)、ペメトレキセド、フルダラビン、シタラビン、フルオロウラシル、フロクスウリジン、ゲムシタビン、カペシタビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、エトポシド、パクリタキセル、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、マイトマイシン、ヒドロキシ尿素、トポテカン、イリノテカン、アムサクリン、テニポシド、エルロチニブ塩酸塩、及びその組み合わせからなる群から選択される。各々の可能性は、本発明の分離した態様を表わす。
【0141】
ある特定の態様に従って、治療剤は、生物学的薬物(特に抗体)を含み得る。いくつかの態様によれば、抗体は、セツキシマブ、抗CD24抗体、パニツムマブ、及びベバシズマブからなる群から選択される。
【0142】
治療剤は、本開示において使用される時、ペプチド、タンパク質(ホルモン、酵素、抗体、モノクローナル抗体、抗体断片、モノクローナル抗体断片、及び同種のもの等)、核酸(アプタマー、siRNA、DNA、RNA、アンチセンス核酸または同種のもの、アンチセンス核酸類似体または同種のもの等)、低分子量化合物または高分子量化合物、受容体アゴニスト、受容体アンタゴニスト、部分受容体アゴニスト、及び部分受容体アンタゴニストを含み得る。
【0143】
追加の代表的な治療剤としては、ペプチド薬、タンパク薬、脱感作材、抗原、因子、増殖因子、抗感染剤(抗生物質、抗微生物剤、抗ウイルス物質、抗菌物質、抗寄生虫物質、抗真菌物質、及びその組み合わせ等)、抗アレルギー物質、ステロイド、アンドロゲン性ステロイド、充血除去物質、催眠物質、ステロイド性抗炎症剤、抗コリン作用物質、交感神経興奮物質、鎮静物質、縮瞳物質、精神賦活物質、トランキライザー、ワクチン、エストロゲン、プロゲステロン剤、液性剤(humoral agent)、プロスタグランジン、鎮痛物質、抗発作物質、抗マラリア物質、抗ヒスタミン物質、心臓作用剤、非ステロイド性抗炎症剤、抗パーキンソン病剤、抗アルツハイマー病剤、降圧剤、β-アドレナリン作用遮断剤、α-アドレナリン作用遮断剤、栄養剤、及びベンゾフェナントリジンアルカロイドが挙げられ得るがこれらに限定されない。治療剤はさらに、刺激物質、鎮静物質、催眠物質、鎮痛物質、抗痙攣物質、及び同種のものとして作用することが可能な物質であり得る。
【0144】
追加の治療剤は、CNS活性薬、神経活性薬、炎症薬及び抗炎症薬、腎臓薬及び心臓血管薬、胃腸薬、抗新生物物質、免疫調節物質、免疫抑制物質、造血剤、増殖因子、抗凝固物質、血栓溶解物質、抗血小板剤、ホルモン、ホルモン活性剤、ホルモンアンタゴニスト、ビタミン、眼用薬剤、同化剤、制酸物質、抗喘息剤、抗コレステロール剤及び抗脂質剤、抗痙攣物質、抗下痢物質、制吐物質、抗躁病剤、抗代謝剤、抗催吐物質、抗肥満剤、抗発熱剤及び鎮痛剤、抗痙攣剤、抗血栓剤、鎮咳剤、抗尿酸血症剤、抗狭心症剤、抗ヒスタミン物質、食欲抑制物質、生物学的製剤、大脳拡張物質、冠動脈拡張物質、気管支拡張物質、細胞毒性剤、充血除去物質、利尿物質、診断剤、赤血球造血剤、去痰物質、胃腸鎮静物質、血糖上昇剤、催眠物質、血糖降下剤、緩下剤、ミネラルサプリメント、粘液溶解剤、神経筋薬物、末梢血管拡張物質、向精神物質、刺激物質、甲状剤及び抗甲状剤、組織増殖剤、子宮弛緩物質、ビタミン、抗原性材料等を含み得る。他のクラスの治療剤としては、Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics(McGraw Hill)中で引用されたもの、そしてMerck Index and The Physicians’Desk Reference(Thompson Healthcare)中に包含される治療剤が挙げられる。
【0145】
他の治療剤としては、アンドロゲン阻害物質、多糖類、増殖因子(例えば血管内皮増殖因子-VEGF)、ホルモン、抗血管形成誘導因子、デキストロメトルファン、臭化水素酸デキストロメトルファン、ノスカピン、クエン酸カルベタペンタン、塩酸クロフェジアノール、マレイン酸クロルフェニラミン、酒石酸フェニンダミン、マレイン酸ピリラミン、コハク酸ドキシラミン、クエン酸フェニルトロキサミン、塩酸フェニレフリン、塩酸フェニルプロパノールアミン、塩酸プソイドエフェドリン、エフェドリン、リン酸コデイン、硫酸コデインモルヒネ、ミネラルサプリメント、コレストリラミン(cholestryramine)、N-アセチルプロカインアミド、アセトアミノフェン、アスピリン、イブプロフェン、塩酸フェニルプロパノールアミン、カフェイン、グアイフェネシン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、アミノ酸、ホルモン、インターフェロン、サイトカイン、及びワクチンが挙げられる。
【0146】
治療剤のさらなる例としては、ペプチド薬、タンパク薬、脱感作材、抗原、抗感染剤(抗生物質、抗微生物剤、抗ウイルス物質、抗菌物質、抗寄生虫物質、抗真菌物質、及びその組み合わせ等)、抗アレルギー物質、アンドロゲン性ステロイド、充血除去物質、催眠物質、ステロイド性抗炎症剤、抗コリン作用物質、交感神経興奮物質、鎮静物質、縮瞳物質、精神賦活物質、トランキライザー、ワクチン、エストロゲン、プロゲステロン剤、液性剤(humoral agent)、プロスタグランジン、鎮痛物質、抗発作物質、抗マラリア物質、抗ヒスタミン物質、抗分裂増殖物質(antiproliferative)、抗VEGF剤、心臓作用剤、非ステロイド性抗炎症剤、抗パーキンソン病剤、抗アルツハイマー病剤、降圧剤、β-アドレナリン作用遮断剤、栄養剤、及びベンゾフェナントリジンアルカロイドが挙げられるがこれらに限定されない。薬剤はさらに、刺激物質、鎮静物質、催眠物質、鎮痛物質、抗痙攣物質、及び同種のものとして作用することが可能な物質であり得る。
【0147】
さらなる代表的な治療剤としては、鎮痛物質(アセトアミノフェン、アセチルサリチル酸、及び同種のもの等);麻酔物質(リドカイン、キシロカイン、及び同種のもの等);食欲減退物質(デキサドリン、酒石酸フェンジメトラジン、及び同種のもの等);抗関節炎物質(メチルプレドニゾロン、イブプロフェン、及び同種のもの等);抗喘息物質(硫酸テルブタリン、テオフィリン、エフェドリン、及び同種のもの等);抗生物質(スルフイソキサゾール、ペニシリンG、アンピシリン、セファロスポリン、アミカシン、ゲンタミシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、クリンダマイシン、イソニアジド、リファンピン、及び同種のもの等);抗真菌物質(アンホテリシンB、ナイスタチン、ケトコナゾール、及び同種のもの等);抗ウイルス剤(アシクロビル、アマンタジン、及び同種のもの等);抗がん剤(シクロホスファミド、メトトレキサート、エトレチナート、パクリタキセル、タキソール、及び同種のもの等);抗凝固物質(ヘパリン、ワルファリン、及び同種のもの等);抗痙攣物質(フェニロイン(phenyloin)ナトリウム、ジアゼパム、及び同種のもの等);抗鬱物質(イソカルボキサジド、アモキサピン、及び同種のもの等);抗ヒスタミン物質(ジフェンヒドラミンHCl、マレイン酸クロルフェニラミン、及び同種のもの等);ホルモン(インスリン、プロゲスチン、エストロゲン、コルチコイド、グルココルチコイド、アンドロゲン、及び同種のもの等);トランキライザー(ソラジン、ジアゼパム、クロルプロマジンHCl、レセルピン、クロルジアゼポキシドHCl、及び同種のもの等);抗発作物質(ベラドンナアルカロイド、塩酸ジサイクロミン、及び同種のもの等);ビタミン及びミネラル(必須アミノ酸、カルシウム、鉄、カリウム、亜鉛、ビタミンB12、及び同種のもの等);心血管剤(プラゾシンHCl、ニトログリセリン、プロプラノロールHCl、ヒドララジンHCl、パンクレリパーゼ、コハク酸デヒドロゲナーゼ、及び同種のもの等);ペプチド及びタンパク質(LHRH、ソマトスタチン、カルシトニン、成長ホルモン、グルカゴン様ペプチド、成長ホルモン放出因子、アンジオテンシン、FSH、EGF、骨形態形成タンパク質(BMP)、エリソポエイチン(erythopoeitin)(EPO)、インターフェロン、インターロイキン、コラーゲン、フィブリノーゲン、インスリン、第VIII因子、第IX因子、Enbrel(登録商標)、Rituxam(登録商標)、Herceptin(登録商標)、α-グルコシダーゼ、Cerazyme/Ceredose(登録商標)、バソプレッシン、ACTH、ヒト血清アルブミン、γグロブリン、構造タンパク質、血液産物タンパク質、複合タンパク質、酵素、抗体、モノクローナル抗体、及び同種のもの等);プロスタグランジン;核酸;炭水化物;脂肪;麻薬(モルヒネ、コデイン、及び同種のもの、精神療法等);抗マラリア物質、L-ドーパ、利尿物質(フロセミド、スピロノラクトン、及び同種のもの等);抗潰瘍薬(ランチジン(rantidine)HCl、シメチジンHCl、及び同種のもの等)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0148】
治療剤は、免疫調節物質(例えばサイトカイン、インターロイキン、インターフェロン、コロニー刺激因子、腫瘍壊死因子、及び同種のものが挙げられる);免疫抑制物質(ラパマイシン、タクロリムス、及び同種のもの等);アレルゲン(ネコのふけ、カバの木の花粉、イエダニ、草の花粉、及び同種のもの等);細菌性生物(Streptococcus pneumoniae、Haemophilus influenzae、Staphylococcus aureus、Streptococcus pyrogenes、Corynebacterium diphteriae、Listeria monocytogenes、Bacillus anthracis、Clostridium tetani、Clostridium botulinum、Clostridium perfringens、Neisseria meningitides、Neisseria gonorrhoeae、Streptococcus mutans、Pseudomonas aeruginosa、Salmonella typhi、Haemophilus parainfluenzae、Bordetella pertussis、Francisella tularensis、Yersinia pestis、Vibrio cholerae、Legionella pneumophila、Mycobacterium tuberculosis、Mycobacterium leprae、Treponema pallidum、Leptspirosis interrogans、Borrelia burgddorferi、Campylobacter jejuni、及び同種のもの等)の抗原;ウイルス(天然痘ウイルス、インフルエンザA型及びB型ウイルス、RSウイルス、パラインフルエンザウイルス、はしかウイルス、HIVウイルス、SARSウイルス、水痘-帯状ヘルペスウイルス、単純疱疹ウイルス1型及び2型、サイトメグラウイルス(cytomeglavirus)、エプスタイン-バーウイルス、ロタウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、パピローマウイルス、ポリオウイルス、おたふくかぜウイルス、狂犬病ウイルス、風疹ウイルス、コクサッキーウイルス、ウマ脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、黄熱ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、及び同種のもの等)の抗原;かかる真菌生物、原生動物性生物、及び寄生性生物(Cryptococcus neoformans、Histoplasma capsulatum、Candida albicans、Candida tropicalis、Nocardia asteroids、Rickettsia ricketsii、Rickettsia typhi、Mycoplasma pneumoniae、Chlamydia psittaci、Chlamydia trachomatis、Plasmodium falciparum、Trypanasoma brucei、Entamoeba histolytica、Toxoplasma gondii、Trichomonas vaginalis、Schistosoma mansoni、及び同種のもの等)の抗原でもあり得る。これらの抗原は、死んだ生物体の全体、ペプチド、タンパク質、糖タンパク質、炭水化物、またはその組み合わせの形態であり得る。
【0149】
さらなる特定の態様において、治療剤は、抗生物質を含み得る。抗生物質は、例えばアミカシン、ゲンタミシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルミシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、パロモマイシン、アンサマイシン、ゲルダナマイシン、ハービマイシン、カルバセフェム、ロラカルベフ、カルバペネム、エルタペネム、ドリペネム、イミペネム/シラスタチン、メロペネム、セファロスポリン(第一世代)、セファドロキシル、セファゾリン、セファロチン(Cefalotin)、セファロチン(Cefalothin)、セファレキシン、セファロスポリン(第二世代)、セファクロル、セファマンドール、セフォキシチン、セフプロジル、セフロキシム、セファロスポリン(第三世代)、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セファロスポリン(第四世代)、セフェピム、セファロスポリン(第五世代)、セフトビプロル(ceftobiprole)、糖ペプチド、テイコプラニン、バンコマイシン、マクロライド、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、テリスロマイシン、スペクチノマイシン、モノバクタム、アズトレオナム、ペニシリン、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、メチシリン(meticillin)、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリン、ピペラシリン、チカルシリン、ポリペプチド、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンB、キノロン、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン、スルホンアミド、マフェナイド、プロントジル(古典的)、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファニルイミド(sulfanilimide)(古典的)、スルファサラジン、スルフイソキサゾール、トリメトプリム、トリメトプリム-スルファメトキサゾール(コ-トリモキサゾール)(TMP-SMX)、テトラサイクリン類(デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、及びその他が挙げられる);アルスフェナミン、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リンコマイシン、エタンブトール、ホスホマイシン、フシジン酸、フラゾリドン、イソニアジド、リネゾリド、メトロニダゾール、ムピロシン、ニトロフラントイン、プラテンシマイシン、ピラジンアミド、キヌプリスチン/ダルホプリスチン、リファンピシン(米国ではリファンピン)、チミダゾール(timidazole)、またはその組み合わせのうちの1つまたは複数であり得る。一態様において、治療剤は、リファンピシン(米国ではリファンピン)及びミノサイクリンの組み合わせであり得る。
【0150】
治療剤として有用な増殖因子としては、形質転換増殖因子-α(「TGF-α」)、形質転換増殖因子(「TGF-β」)、血小板由来増殖因子(「PDGF」)、線維芽細胞増殖因子(「FGF」)(FGF酸性アイソフォーム1及び2、FGF塩基型2、ならびにFGF4、8、9、及び10を包含する)、神経増殖因子(「NGF」)(NGF2.5、NGF7.0及びβNGF及びニューロトロフィン、脳由来神経栄養因子を包含する)、軟骨由来因子、骨成長因子(BGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子、インスリン様増殖因子(IGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、果粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インスリン様増殖因子(IGF)I及びII、肝細胞増殖因子、グリア神経栄養増殖因子(GDNF)、幹細胞因子(SCF)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、形質転換増殖因子(TGF)(TGFα、β、β1、β2、β3を包含する)、骨格成長因子、骨マトリックス由来増殖因子、及び骨由来増殖因子、ならびにその混合物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0151】
治療剤として有用なサイトカインとしては、カルディオトロフィン、ストロマ細胞由来因子、マクロファージ由来ケモカイン(MDC)、黒色腫増殖刺激活性(MGSA)、マクロファージ炎症性タンパク質1α(MIP-1α)、2、3α、3β、4、及び5、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、TNF-α、ならびにTNF-βが挙げられるがこれらに限定されない。本開示において有用な免疫グロブリンとしては、IgG、IgA、IgM、IgD、IgE、及びその混合物が挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの好ましい増殖因子としては、VEGF(血管内皮増殖因子)、NGF(神経増殖因子)、PDGF-AA、PDGF-BB、PDGF-AB、FGFb、FGFa、及びBGFが挙げられる。
【0152】
治療剤として有用な他の分子としては、成長ホルモン、レプチン、白血病抑制因子(LIF)、腫瘍壊死因子α及びβ、エンドスタチン、トロンボスポンジン、骨形成タンパク質-1、骨形成タンパク質2及び7、オステオネクチン、ソマトメジン様ペプチド、オステオカルシン、インターフェロンα、インターフェロンαA、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターフェロン1α、ならびにインターロイキン2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、15、16、17、及び18が挙げられるがこれらに限定されない。
【0153】
開示される硝子体代替物を使用する方法
様々な態様において、開示される硝子体代替物は、目の臨床状態、障害、または疾患(すなわち眼科的障害)を治療するのに使用され得、そこで、臨床状態、障害、または疾患は、所望されないレベルの活性酸素種及び/または酸素不均衡、例えば健康な対象よりも高い酸素レベル(硝子体切除術手順に続いて目中で見出されるもの等)が付随する。
【0154】
本開示の抗酸化物質を含む開示される硝子体代替物を「投与する」ことは、当業者に公知の任意の手段によって達成され得る。目の中への液体製剤の注射は、好適なゲージ(比較的小さいゲージ針等、21ゲージ、25ゲージ、27ゲージ、28ゲージ、30ゲージ、31ゲージ、またはより小さいものが挙げられるがこれらに限定されない)を有する注射針を経由して達成される。固体植込み物はトロカール、ニードルトロカール、または当技術分野において公知の他の方法を経由して投与され得る。例えば米国特許第7,906,136号;米国特許第5,869,079号;米国特許第7,625,582号を参照されたい。目の中への外科的植込みは、米国特許第6,699,493号;米国特許第6,726,918号;米国特許第6,331,313号;米国特許第5,824,072号;米国特許第5,766,242号;米国特許第5,443,505号;米国特許第5,164,188号;米国特許第4,997,652号;米国特許第4,853,224号中で記載されるように、当技術分野において公知である。
【0155】
したがって、本開示は、開示される硝子体代替物をそれを必要とする目へ投与することを含む、眼科的障害を治療する方法に係わる。いくつかの態様において、目は、ヒト対象中に存在する目である。他の態様において、目は、非ヒト対象中に存在する。
【0156】
眼科的障害は、急性黄斑神経網膜症;Behcet病;血管新生(脈絡膜血管新生を包含する);糖尿病性ぶどう膜炎;ヒストプラスマ症;感染(真菌またはウイルスが原因の感染等);黄斑変性(滲出型AMD及び非滲出AMD及び滲出AMDを含む、急性黄斑変性(AMD)等);浮腫(黄斑浮腫、類嚢胞黄斑浮腫、及び糖尿病性黄斑浮腫等);多巣性脈絡膜炎;後眼部の部位または位置に影響する眼外傷;眼腫瘍;網膜障害(網膜中心静脈閉塞症、糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病性網膜症を包含する)、増殖性硝子体網膜症(PVR)、網膜動脈閉塞性疾患、網膜剥離、ぶどう膜炎網膜疾患等);交感性眼炎;Vogt Koyanagi-Harada(VKH)症候群;ぶどう膜滲出;眼のレーザー治療によって引き起こされるか、またはそれによって影響を受ける、後眼部病態;光線力学療法、光凝固術、放射線網膜症、網膜上膜障害、網膜静脈分枝閉塞症、前部虚血性視神経症、非網膜症糖尿病性網膜機能不全、網膜色素変性症、がん、及び緑内障によって引き起こされるか、またはそれらによって影響を受ける、後眼部病態であり得る。ある特定の実例において、眼科的障害は、滲出型加齢黄斑変性(滲出型AMD)、がん、血管新生、黄斑浮腫、または浮腫である。さらなる特定の態様において、眼科的障害は、滲出型加齢黄斑変性(滲出型AMD)である。
【0157】
様々な態様において、眼科的障害の治療のための注射は、目の硝子体眼房への注射であり得る。いくつかの事例において、注射は、硝子体内注射、結膜下注射、テノン嚢下注射、球後注射、または脈絡膜上注射である。
【0158】
「眼領域」または「眼部位」は、前眼部及び後眼部を包含する眼球(ocular globe)(眼球(eyeball))のうちの任意の区域を意味し、概して眼球中で見出される任意の機能的な(例えば視覚についての)もしくは構造的な組織、または眼球の内部もしくは外部を部分的にもしくは完全に裏打ちする組織もしくは細胞層が挙げられるがこれらに限定されない。眼領域中の眼球の区域の具体的な例としては、前眼房、後眼房、硝子体腔、脈絡膜、脈絡膜上腔、結膜、結膜下腔、強膜外隙、角膜内腔(intracorneal space)、網膜下腔、テノン嚢下腔、角膜上腔(epicorneal space)、強膜、毛様体扁平部、外科的に誘導された無血管領域、黄斑、及び網膜が挙げられるがこれらに限定されない。
【0159】
「眼科的障害」は、目、または目の部分もしくは領域のうちの1つに影響するかまたは関与する疾患、病気、または病態を意味し得る。大まかに言って、目は、眼球(角膜を包含する)、ならびに眼球を構成する他の組織及び液体、眼周囲の筋肉(斜筋及び直筋等)、ならびに眼球内またはそれに隣接する視神経の部分を包含する。
【0160】
「緑内障」は、原発性緑内障、続発性緑内障、及び/または先天性緑内障を意味する。原発性緑内障としては、開放隅角緑内障及び閉塞隅角緑内障が挙げられ得る。続発性緑内障は、様々な他の病態(傷害、炎症、色素散乱、血管疾患、及び糖尿病等)の合併症として起こり得る。緑内障の眼圧の増加は、目に侵入する視神経を損傷するので、失明を引き起こす。したがって1つの非限定実施形態において、活性酸素種を低下させることによって、STC-1、または増加量のSTC-1を発現するMSCは、緑内障の治療において用いられ、失明の開始を予防または遅延させ得る。
【0161】
眼の病態に関連して「炎症媒介性」は、抗炎症剤による治療から利益を得ることができる目の任意の病態を意味し、ぶどう膜炎、黄斑浮腫、急性黄斑変性、網膜剥離、眼腫瘍、真菌感染またはウイルス感染、多巣性脈絡膜炎、糖尿病性網膜症、ぶどう膜炎、増殖性硝子体網膜症(PVR)、交感性眼炎、Vogt-Koyanagi-Harada(VKH)症候群、ヒストプラスマ症、及びぶどう膜滲出を包含するがこれらに限定されないものが意図される。
【0162】
眼の病態に関して「傷害」または「損傷」は交換可能であり、炎症媒介性病態(例えば炎症等)からもたらされる細胞性及び形態的な兆候及び症状、そして炎症以外の手段(化学的熱傷を包含する化学的傷害等)によって引き起こされる組織傷害、そして感染(細菌感染、ウイルス感染、または真菌感染が挙げられるがこれらに限定されない)によって引き起こされる傷害を指す。
【0163】
「眼内」は、眼組織内または眼組織下を意味する。薬物送達系の眼内投与としては、テノン嚢下、結膜下、脈絡膜上、網膜下、硝子体内、前眼房、及び同種のものの位置への薬物送達系の投与が挙げられる。薬物送達系の眼内投与は、局所的、全身的、筋肉内、皮下、腹腔内、及び同種のものの位置への薬物送達系の投与を除外する。
【0164】
「黄斑変性」は、黄斑が変性するか、または機能活性を喪失した、多数の障害及び病態のうちの任意のものを指す。変性または機能活性の喪失は、例えば細胞死、細胞の分裂増殖の減少、正常な生物学的機能の喪失、または前述のものの組み合わせの結果として生じ得る。黄斑変性は、黄斑の細胞及び/または細胞外マトリックスの構造完全性の変更、正常な細胞マトリックス構築及び/または細胞外マトリックス構築の変更、及び/または黄斑細胞の機能喪失を導き得る、及び/またはそれらのものとして現われ得る。細胞は、RPE細胞、光受容体、及び毛細管内皮細胞を含む、黄斑中にまたは黄斑の付近に、通常存在する任意の細胞タイプであり得る。加齢黄斑変性(またはARMD)は主要な黄斑変性関連病態であるが、多数の他のものが知られており、Best黄斑変性、Stargardt黄斑変性、Sorsby眼底ジストロフィー、Mallatia Leventinese/Doyne蜂巣状網膜ジストロフィー、及びRPEパターンジストロフィーが挙げられるがこれらに限定されない。加齢黄斑変性(AMD)は、「萎縮型」または「滲出型」のいずれかとして記載される。AMDの湿潤した滲出性の血管新生の形態は、AMDに罹患するもののうちの約10~20%に影響し、網膜色素上皮(RPE)下またはそれを介して増殖する異常な血管を特徴とし、出血、浸出、瘢痕化、または漿液性網膜剥離をもたらす。AMD患者のうちの80~90パーセントは萎縮型であり、網膜色素上皮の萎縮及び黄斑光受容体の喪失を特徴とする。ドルーゼンは、黄斑中に存在してもしなくてもよい。視覚喪失の原因となる黄斑中の網膜色素上皮の地区の萎縮もあり得る。現在のところ、AMDのいかなる形態についての治癒はないが、滲出型AMDの弱化のある程度の成功は、光線力学療法及び特に抗VEGF療法により得られている。
【0165】
「ドルーゼン」は、RPEの下に年齢により蓄積する残屑様の材料である。ドルーゼンは、眼底検査を使用して観察される。正常な目はドルーゼンのない黄斑であるが、ドルーゼンは網膜周辺部中に豊富にある場合がある。黄斑中の軟性ドルーゼンの存在は、任意の黄斑視覚の喪失の非存在下において、AMDの早期ステージと判断される。ドルーゼンは、複数のタンパク質、修飾されたタンパク質、またはタンパク質付加体と共に、様々な脂質、多糖類、及びグリコサミノグリカンを含有する。ドルーゼン形成に対処し、それによってAMDの進行性性質を管理する概して容認される治療方法はない。
【0166】
「眼の血管新生」(ONV)は、脈絡膜血管新生もしくは網膜血管新生、または両方を指すように本明細書において使用される。
【0167】
「網膜血管新生」(RNV)は、例えば網膜表面上の網膜血管の異常な発生、分裂増殖、及び/または増殖を指す。
【0168】
「網膜下血管新生」(SRNVM)は、網膜の表面下の血管の異常な発生、分裂増殖、及び/または増殖を指す。
【0169】
「角膜」は、眼球線維膜の前部を形成する透明構造を指す。角膜は5層からなり、具体的には、1)前角膜上皮(結膜と一続き);2)前境界板(Bowman層);3)固有質または間質細胞層;4)後境界板(Descemet膜);及び5)前眼房の内皮または角膜内皮(keratoderma)である。
【0170】
「網膜」は、硝子体を取り囲み、視神経と後方で一続きの、眼球の最内層を指す。網膜は、1)内境界膜;2)神経線維層;3)神経節細胞の層;4)内網状層;5)内顆粒層;6)外網状層;7)外顆粒層;8)外境界膜;9)杆状体・錐状体層を含む層から構成される。
【0171】
「網膜変性」は、網膜及び/または網膜色素上皮の任意の遺伝性変性または後天性変性を指す。非限定例としては、網膜色素変性症、Best病、RPEパターンジストロフィー、及び加齢黄斑変性が挙げられる。
【0172】
様々な態様において、眼科的障害を治療する方法は、眼の網膜の様々な疾患または病態の治療を含み、当該疾患または病態としては、以下の:黄斑症/網膜変性:黄斑変性(非滲出性加齢黄斑変性及び滲出性加齢黄斑変性症等の加齢黄斑変性(ARMD)を包含する);脈絡膜血管新生;網膜症(糖尿病性網膜症、急性黄斑神経網膜症及び慢性黄斑神経網膜症、中心性漿液性脈絡網膜症を包含する);及び黄斑浮腫(類嚢胞黄斑浮腫及び糖尿病性黄斑浮腫を包含する);ぶどう膜炎/網膜炎/脈絡膜炎:急性多発性斑状色素上皮症、Behcet病、散弾状脈絡網膜症、感染性(梅毒、ライム病、結核、トキソプラズマ症)、ぶどう膜炎(中間部ぶどう膜炎(扁平部炎)及び前部ブドウ膜炎を包含する)、多巣性脈絡膜炎、多発性一過性白点症候群(MEWDS)、眼サルコイドーシス、後部強膜炎、匍行性脈絡膜炎、網膜下線維症、ぶどう膜炎症候群、及びVogt-Koyanagi-Harada症候群;血管疾患/滲出性疾患:網膜動脈閉塞性疾患、網膜中心静脈閉塞症、播種性血管内血液凝固症候群、網膜静脈分枝閉塞症、高血圧性変化、眼虚血症候群、網膜動脈微小動脈瘤、Coats病、傍中心窩毛細血管拡張症、半側網膜静脈閉塞、乳頭血管炎、網膜中心動脈閉塞、網膜動脈分枝閉塞症、頚動脈疾患(CAD)、樹氷状血管炎、鎌状赤血球網膜症及び他の異常血色素症、色素線条、家族性滲出性硝子体網膜症、Eales病;外傷性/外科的疾患:交感性眼炎、ぶどう膜炎性網膜疾患、網膜剥離、外傷、レーザー、PDT、光凝固術、外科手術の間の血流低下、放射線網膜症、骨髄移植網膜症;増殖性障害:増殖性硝子体網膜症及び網膜上膜、増殖性糖尿病性網膜症;感染性障害:眼ヒストプラスマ症、眼トキソカラ症、眼ヒストプラスマ症候群(OHS)、眼内炎、トキソプラズマ症、HIV感染症に付随する網膜疾患、HIV感染症に付随する脈絡膜疾患、HIV感染症に付随するぶどう膜炎疾患、ウイルス性網膜炎、急性網膜壊死、進行性網膜外層壊死、真菌性網膜疾患、眼梅毒、眼結核、広汎性片眼性亜急性視神経網膜炎、及び蠅蛆病;遺伝的障害:網膜色素変性症、網膜ジストロフィーに付随する全身性障害、先天性停止性夜盲、錐体ジストロフィー、Stargardt病、黄色斑眼底、Best病、網膜色素上皮のパターンジストロフィー、X連鎖性網膜分離症、Sorsby眼底ジストロフィー、良性中心性黄斑症、Bietti結晶状ジストロフィー、弾性線維性仮性黄色腫;網膜裂傷/網膜裂孔:網膜剥離、黄斑円孔、巨大網膜裂孔;腫瘍:腫瘍に付随する網膜疾患、RPEの先天性肥大、後部ぶどう膜黒色腫、脈絡膜血管腫、脈絡膜骨腫、脈絡膜転移、網膜・網膜色素上皮過誤腫、網膜芽細胞腫、眼底の血管増殖性腫瘍、網膜星状膠細胞腫、眼内リンパ球系腫瘍;その他:点状脈絡膜内層症、急性後部多発性斑状色素上皮症、近視性網膜変性、急性網膜色素上皮炎、及び同種のものが、挙げられる。
【0173】
前眼部病態は、眼の前部(すなわち目の正面)の領域または部位(眼周囲の筋肉、眼瞼、または水晶体嚢の後壁もしくは毛様体筋より前部に位置する眼球の組織もしくは液体等)に影響または関与する疾患、病気、または病態である。したがって、前眼部病態は、主として結膜、角膜、前眼房、虹彩、後眼房(虹彩の後ろであるが水晶体嚢の後壁の前)、水晶体または水晶体嚢、ならびに前眼部領域または部位を血管形成または神経支配する血管及び神経に影響または関与する。
【0174】
したがって、前眼部病態としては、例えば無水晶体;偽水晶体;乱視;眼瞼痙攣;白内障;結膜疾患;結膜炎(アトピー性角結膜炎が挙げられるがこれに限定されない);角膜傷害(角膜間質領域への傷害が挙げられるがこれに限定されない);角膜疾患;角膜潰瘍;ドライアイ症候群;眼瞼疾患;涙器疾患;涙管閉塞;近視;老眼;瞳孔障害;屈折障害及び斜視等の疾患、病気、または病態が挙げられ得る。緑内障治療の臨床目標が、前眼房中の房水の高圧を低減させる(すなわち、眼内圧を低減させる)ことであり得るので、緑内障は前眼部病態であると判断され得る。
【0175】
本発明に従って治療され得る目の他の疾患または障害としては、眼瘢痕性類天疱瘡(OCP)、Stevens Johnson症候群、及び白内障が挙げられるがこれらに限定されない。
【0176】
後眼部病態は、主として後眼部の領域または部位(脈絡膜または強膜(水晶体嚢の後壁を介する面に対して後方の位置の)、硝子体、硝子体眼房、網膜、視神経(すなわち視神経円板)、ならびに後眼部領域または部位を血管形成または神経支配する血管及び神経等)に影響または関与する疾患、病気、または病態である。したがって、後眼部病態としては、例えば急性黄斑神経網膜症;Behcet病;脈絡膜血管新生;糖尿病性網膜症;ぶどう膜炎;眼ヒストプラスマ症;感染(真菌またはウイルスが原因の感染等);黄斑変性(急性黄斑変性、非滲出性加齢黄斑変性、及び滲出性加齢黄斑変性症等);浮腫(黄斑浮腫、類嚢胞黄斑浮腫、及び糖尿病性黄斑浮腫等);多巣性脈絡膜炎;後眼部の部位または位置に影響する眼外傷;眼腫瘍;網膜障害(網膜中心静脈閉塞症、糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病性網膜症を包含する)、増殖性硝子体網膜症(PVR)、網膜動脈閉塞性疾患または網膜静脈閉塞性疾患、網膜剥離、ぶどう膜炎網膜疾患等);交感性眼炎;Vogt-Koyanagi-Harada(VKH)症候群;ぶどう膜滲出;眼のレーザー治療によって引き起こされるか、またはそれによって影響を受ける、後眼部病態;光線力学療法、光凝固術、放射線網膜症、網膜上膜障害、網膜静脈分枝閉塞症、前部虚血性視神経症、非網膜症糖尿病性網膜機能不全、網膜色素変性症、及び緑内障によって引き起こされるか、またはそれらによって影響を受ける、後眼部病態等の疾患、病気、または病態が挙げられ得る。治療目標が、網膜神経節細胞または網膜神経線維への損傷またはそれらの喪失に起因する、視覚の喪失を防止することまたはその喪失の出現を低減させること(すなわち神経保護)であり得るので、緑内障は後眼部病態と判断され得る。
【0177】
いくつかの実施形態において、眼用障害は、例えば虹彩炎、結膜炎、季節性アレルギー性結膜炎、急性及び慢性の眼内炎、前部ブドウ膜炎、全身性疾患に付随するぶどう膜炎、後眼部ぶどう膜炎、脈絡網膜炎、扁平部炎、仮面症候群(眼リンパ腫を包含する)、類天疱瘡、強膜炎、角膜炎、重症の眼アレルギー、角膜剥離、及び血液房水関門破壊からもたらされる眼炎症である。さらに別の実施形態において、眼用障害は、例えばレーザー屈折矯正角膜切除術、白内障除去外科手術、眼内レンズ挿入術、硝子体切除術、角膜移植術、表層角膜切除術の形態(DSEK等)、及び放射状角膜切除術からもたらされる術後眼炎症である。
【0178】
特定の実施形態において、開示される硝子体代替物は、網膜裂傷の治療において使用され得る。他の実施形態において、開示される硝子体代替物は、増殖性網膜症の治療において使用され得る。
【0179】
さらなる態様において、方法は、硝子体切除術に対する補助療法である。すなわち、本開示は、硝子体切除術に続いて開示される硝子体代替物を目へ投与することを含む、眼科的障害を治療する方法に係わる。
【0180】
前述のことから、本明細書における態様が、上で説明されたすべての結末及び目的を達成するように、明白であり構造に固有である他の利点と一緒に、良好に適合されることが、理解され得る。
【0181】
特定のエレメント及びステップが互いに関連して検討されるが、本明細書において提供される任意のエレメント及び/またはステップは、他のエレメント及び/またはステップと組み合わせ可能であるとして、その同じ組み合わせ(それは依然として本明細書において提供される範囲内であるが)の明示的な供与に関係なく、企図されることが理解される。
【0182】
ある特定の特性及び部分的組み合わせが有益であり、他の特性及び部分的組み合わせに関係なく用いられ得ることが理解され得る。これは、特許請求の範囲によって企図され、その範囲内である。
【0183】
その範囲から逸脱せずに、多くの可能な態様が作製され得るので、添付の図面及び発明を実施するための形態中で説明または示される本明細書におけるすべての事項は、限定的ではなく例示的な意味として解釈されるべきであることが理解されよう。
【0184】
本明細書において使用される用語は、特定の態様を記載するためのみの目的であり、限定することは意図されないことも理解されるべきである。当業者は、本明細書において記載される態様の多くの変形及び適合を認識するだろう。これらの変形及び適合は、本開示の教示中に含まれ、本明細書の特許請求の範囲によって網羅されることが意図される。
【0185】
本開示の態様を記載してきており、以下の実施例は、概して本開示のいくつかの追加の態様を記載する。本開示の態様は、以下の実施例ならびに対応するテキスト及び図と関連して記載されるが、本開示の態様を、この記載に限定する意図はない。これとは反対に、本開示の趣旨及び範囲内に包含されるすべての代替物、修飾物、及び同等物をカバーすることが意図される。
【実施例】
【0186】
以下の実施例は、本明細書において請求される化合物、組成物、製品、デバイス、及び/または方法が、どのように作製及び評価されるかについて完全な開示及び記載を当業者に提供するように載せられ、本開示の純粋な例示あることが意図され、本発明者が自身の開示と見なす範囲を限定するようには意図されない。数値(例えば量、温度等)に関して正確性を確実にする取り組みがなされているが、ある程度の誤差及び偏差があるだろう。別段の指示のない限り、部分は重量部であり、温度は℃であるかまたは周囲温度であり、圧力は大気圧または大気圧の近傍である。
【0187】
実施例1。硝子体代替物としてのポリ(HEMA-co-BAC)/PVAハイドロゲル。
HEMAを、ポリビニルアルコール水溶液中でBACを使用して架橋した。HEMA及びPVAの変動するパーセンテージ(重量当たりで100%のHEMAから100%のPVA)及び水/エタノール中のBAC(HEMAに対して1~5%のモル比)を含む組成物を、触媒としての過硫酸アンモニウム及び促進物質としてのテトラメチルエチレンジアミンによるフリーラジカル重合を経由して、合成した。ゲルを組織グラインダーを使用してホモジナイズし、1,4-ジオチトレイトール(DTT)(架橋物質BACに対して10倍のモル比)を使用して激しい撹拌及びN2バブリング下で還元した。還元したゲルをpH4へ調整し、蒸留水(pH4、N2バブリング、ゲルの体積の20倍)中で透析チューブを使用して3日間洗浄して、未反応モノマーを除去した。透析したポリマー溶液を、10倍の過剰体積のメタノール中で沈殿させた。沈殿物を24時間凍結乾燥した。冷凍乾燥したポリマーを、37℃のDulbeccoリン酸緩衝生理食塩水中で再構成し、加湿チャンバー中で酸化してハイドロゲルを再形成した。
【0188】
図1は、インサイチューのゲル化ポリ(HEMA-co-BAC)/PVAハイドロゲルを合成するプロセスを示す。PVAの存在下においてHEMA及びBACをコポリマー化した後に、DTTを使用してハイドロゲルを還元した。ジスルフィド架橋は、大規模な精製及び小さいゲージの針を介する注射のためのハイドロゲルの液化を可能にする。この半相互貫入ハイドロゲルは天然の硝子体液の微細構造に似ており、架橋されたポリ(HEMA-co-BAC)は剛性のコラーゲン様の繊維のネットワークとして供され、ポリ(HEMA-co-BAC)ネットワーク中で散在する親水性PVAポリマー鎖は天然の硝子体液中の膨潤ヒアルロン酸分子を模倣し、後眼房壁を膨張させるタンポナーデ効果を提供する。この注射可能なハイドロゲルは使用が容易であり、それはシームレスに現行の外科的硝子体切除術手順の中へ組み込まれ得る。
【0189】
実施例2。代表的な開示されるハイドロゲルの調製。
ハイドロゲルを、出版されたプロトコールの修飾に基づいて、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ポリ(エチレングリコール)メタクリレート(PEGMA)、及びポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA)のフリーラジカル重合によって調製した(Zellander A,et al.PloS one.2014;9:e96709)。簡潔には、HEMA:PEGMA:PEGDAコポリマーハイドロゲルを水中で重合させた。過硫酸アンモニウム及びN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミンを使用して、反応を開始し触媒した。アスコルビン酸(血液よりも目中で50倍高い濃度である抗酸化物質(Holekamp NM.Am J Ophthalmol.2010;149:32-36))を、以前に記載されるように(Comunian TA,et al.Food Res Int.2013;52:373-37)、ゼラチン-アルギン酸塩粒子中でカプセル化した。簡潔には、Span 80をアスコルビン酸溶液へ添加して、トウモロコシ油とのエマルションを生成した。ゼラチン及びアルギン酸塩を水中で溶解し、水:油エマルションへ撹拌しながら30分間ゆっくり添加した。混合物をpH4.4へ調整し、4℃で12時間保存した。ハイドロゲルの粘度を異なる剪断速度で測定し、Kinexus ultra+レオメーター(Malvern Instruments Ltd、Worcestershire、UK)を使用して、剪断流動化能力を決定した。カプセル化粒子から放出されたアスコルビン酸を、Synergy HTマルチモードマイクロプレートリーダー(BioTek、Winooski、VT)を265nmの波長で使用して決定した。
【0190】
実施例3。PEGMAを含む代表的な開示されるハイドロゲルの特徴評価。
HEMA:PEGMA:PEGDAの予備的製剤を合成し、注射の前後の貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)によって証明されるように、粘弾性を損なうことなく、剪断流動化し小さいゲージ針を介して容易に注射可能である、透明な柔らかいゲルを産生した(
図2D~2E)。ハイドロゲルは、可視光線スペクトル中で>90%の透明度及びUV透過性の減退を有していた。アスコルビン酸のカプセル化は、安定性及び放出プロファイルを成功裡に延長した。粒子は、2mM(目中の正常な濃度;Holekamp NM.Am J Ophthalmol.2010;149:32-36)で、アスコルビン酸を30日間を超えて放出し(
図2E)、注射の間にハイドロゲルにより取り込むことができた。
【0191】
PEGMAハイドロゲル(20ml、5%v/v、MW500)を合成し、次いでビタミンC溶液(50ml、100mM)中に室温で12時間浸した。ハイドロゲルを透析チューブ中に配置し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、70ml)中に浸した。所定の時間で、PBSの吸光度を265nmで測定して、PEGMAハイドロゲルからのビタミンC放出の濃度を計算した。
図5中で示されるように、放出されたビタミンCの濃度は最初の日の内に50mMへ急上昇し、次いでその後数日でほぼ0へ急速に減じた。他の実験において、ビタミンCを装填したゼラチン-アルギン酸塩粒子を、21G針を介してハイドロゲルと共に注射した。ハイドロゲル/粒子混合物を次いでPBS中に浸し、前述のようにPBS中のビタミンCの濃度を決定した。結果から、
図6中で示されるように、ビタミンCの放出の小さい急上昇(上記の純粋なハイドロゲルからの放出に比較して)、続いてビタミンCの持続放出の期間があることが示された。
【0192】
実施例4。代表的な開示されるポリアクリルアミドゲルの調製及び特徴評価。
図7は、37℃で常時撹拌しながらの、2mMのアスコルビン酸ナトリウム溶液の分解プロファイル(n=3)及びポリアクリルアミドハイドロゲルからのアスコルビン酸ナトリウム放出プロファイル(n=3)を示す。PBS中の2mMのアスコルビン酸ナトリウム溶液(それは以前に記載されるように測定前に20×希釈した)は、指数関数様の濃度の減衰を経時的に示す(Y軸が対数スケールでプロットされることに注目されたい)。さらに、時間0でその濃度は、溶液が作製された時と実験が開始された時との間にラグタイムがあったので、作製されたままの2mMではなく1.4mMであった。このラグタイム(約36時間)は、ポリアクリルアミドハイドロゲルのゲル化時間の遅延に起因した。アスコルビン酸ナトリウムを含むポリマー溶液は18時間以内にゲル化した。しかしながら、アスコルビン酸ナトリウム無しのポリマー溶液は、ゲル化に2倍長くかかった。
【0193】
アスコルビン酸ナトリウム有りまたは無しでゲル化させたポリアクリルアミドハイドロゲル(1ml)を、10mlのPBS中に浸した。所定の時間で、1mlのPBS溶液のアリコートを得て、1mlの新鮮なPBSを各々のサンプルへ添加して、シンク条件(飽和溶液(例えばハイドロゲル)の10×体積)を維持した。アスコルビン酸ナトリウム濃度が標準曲線の直線領域内に既にあったので、1mlのアリコートを希釈無しに測定した。
【0194】
アスコルビン酸ナトリウム無しのハイドロゲルの吸光度の読み取りは、経時的に増加する。これらのハイドロゲルへ添加したアスコルビン酸ナトリウムはなかったので、吸光度の増加は、紫外線干渉を引き起こすハイドロゲルから溶脱したポリマーの小片に起因するだろう。アスコルビン酸ナトリウムを含むハイドロゲルは、同じ効果を有する可能性が高い。アスコルビン酸ナトリウム無しのハイドロゲルの吸光度読み取りを、アスコルビン酸ナトリウムの有るものから差し引いて、アスコルビン酸ナトリウムの濃度の変動に起因する真の吸光度読み取りを得ることができる。
【0195】
図8は、時間0での2mMのアスコルビン酸ナトリウム溶液の濃度(それは1.4mMであった)に比較した、3日にわたってポリアクリルアミドゲルから放出されたアスコルビン酸ナトリウムの%を示す。アスコルビン酸ナトリウムは、最初の日の終わりまでに完全に放出されるようであった。3日目の%薬物放出は、アスコルビン酸ナトリウムの分解に起因して減少する。
【0196】
実施例5。代表的な開示される粒子の調製及び特徴評価。
キトサン(Sigma-Aldrich、低分子量、1mg/ml)を、酢酸溶液(1%w/w、500ml)中で500rpmで60分間溶解した。トリポリリン酸ナトリウム(1.75mg/ml、500ml)をキトサン溶液の中へ滴加して、2時間にわたってナノ粒子を形成させた。ナノ粒子を21℃で15分間の4000rpmでの遠心分離によって収集した。粒子を脱イオン水により洗浄し、再び遠心分離した。ビタミンC(10%w/w、10ml、pH5.5)を粒子へ添加し、旋回振盪機上で18時間平衡化させた。アルギン酸ナトリウム(FMC BioPolymer、Protanal PH、1mg/ml、10ml、pH5.5)を、ビタミンC及びキトサン粒子溶液へ添加し、30分間超音波処理した。キトサン(Sigma-Aldrich、低分子量、1%w/wの酢酸溶液、10ml中で1mg/ml)またはゼラチン(bloom 175、1mg/ml、10ml)を、ビタミンc-キトサン-アルギン酸塩粒子へ添加し、30分間超音波処理した。粒子を21℃で15分間の4000rpmでの遠心分離によって収集し、冷凍乾燥した。グルタチオン(1%w/w)を、ビタミンCと共に粒子の中へ取り込むことができる。ビタミンCの濃度vs時間を、実施例中で記載されるような方法を使用して決定した。いくつかの実例において、グルタチオンの存在下におけるビタミンCの安定性を査定した。
【0197】
日付を、上記のように調製された粒子からの抗酸化物質の放出について、
図18~19中で示す。具体的には、
図18は、示されるようなアルギン酸塩、キトサン、及び/またはゼラチンによりコーティングされたアスコルビン酸を装填したキトサン粒子を含む、代表的な開示される粒子からのアスコルビン酸の放出についての代表的なデータを示す。図中の凡例は、粒子の組成物の詳述のために以下の略語を使用する。VCはビタミンCを表わし;CHはキトサンを表わし;ALはアルギン酸塩を表わし;GEはゼラチンを表わし;「GXXX」はグルタチオンを表わし、濃度(μM)は示されるように数「XXX」によって指示される。実施例中で記載されるように、粒子を調製した。
図19は、
図18中のデータを示すが、ビタミンC濃度を0日目の濃度に正規化したものである。データから、グルタチオンの存在下におけるビタミンC濃度の維持の改善が示される。
【0198】
図9は、キトサン粒子からのアスコルビン酸ナトリウム放出についての追加データを示す。研究を、室温で撹拌しながら行った(旋回振盪機)。アスコルビン酸ナトリウムをキトサン粒子合成の間に装填したので、この研究において薬物放出(%)を決定しなかった。キトサン粒子の形成後の後続する洗浄ステップは、粒子中に装填した実際の量のアスコルビン酸ナトリウムを減じる可能性が高かった。それにもかかわらず、放出プロファイルから、ポリアクリルアミドハイドロゲルからの放出プロファイルに比較して、アスコルビン酸ナトリウムが7日後でさえ放出され続けるより持続的な放出が示される。
【0199】
実施例6。代表的な開示されるハイドロゲルの前向き特徴評価。
屈折率をアッベ屈折計を使用して決定し、光透過率を、可視光線範囲中で90%を上回る光透過率を目標として、UV及び可視光線範囲中で評価することができる。代表的なハイドロゲル製剤は、400nmより上で>90%の透過率及びUV透過性の減退を実証し(
図5)、このことは、水晶体(紫外線遮断物)が白内障手術のために除去されるならば、網膜の保護のために所望されるだろう。ナノ粒子のゼータ電位及び粒子サイズを、光散乱及び透過電子顕微鏡法を使用して決定することができる。
【0200】
ハイドロゲルの粘弾性特性を、動的剪断レオメーター(Malvern Instruments Kinexus ultra+)を使用して特徴づけることができる。線形粘弾性領域を決定した後に、振幅、周波数、及び定常剪断掃引を遂行することができる。硝子体の生体力学的特性を以前に特徴づけて精査しており、このデータを使用して、調製した開示されるハイドロゲルの機械的特性を、硝子体のものに一致させることができる(Swindle-Reilly KE,Reilly MA,Ravi N.Current concepts in the design of hydrogels as vitreous substitutes.In Biomaterials and regenerative medicine in ophthalmology,2nd edition.Chirila TV,Harkin D,eds.Ch 5.Woodhead Publishing Limited,2016;及びK.E.Swindle,P.D.Hamilton,N.Ravi,J.Biomed.Mater.Res.A.2008,87,656-665)。代表的なデータ(
図2D)は、これらの特性を備えたゲルを産生する能力を実証する。
【0201】
様々な態様において、開示されるハイドロゲルは、硝子体液に類似する特性:屈折率(1.336±0.002)、弾性率(G’10~20Pa、G”1~10Pa;同上)、及び光透過率(>90%)を有する。視力障害を防止するために、粒子サイズを最小に(好ましくは<300nm)するべきである。
【0202】
開示されるハイドロゲル製剤(ナノ粒子有り及び無しで)のインビトロの細胞毒性を、水晶体上皮細胞(LEC)及びヒト網膜色素上皮(ARPE-19)細胞により査定することができる。標準的な比色定量3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド塩(MTT)アッセイを使用することができる。簡潔には、細胞を24時間5×104細胞/mLの密度で24ウェルプレート中に播種して、密集を達成する。細胞を24~48時間ゲルと共にインキュベーションすることができる。MTT試薬を各々のウェルへ添加し、ヘキスト33342染色を添加して細胞核を可視化することができる。プレートをMTT染色について570nm及び核染色について460~490nmでプレートリーダー上で読み取り、細胞生存率を、無処理対照のパーセンテージとして計算することができる。標準的な生/死の生存率アッセイを使用して、MTTアッセイからの結果を検証することもできる。
【0203】
様々な態様において、開示されるハイドロゲルは、t検定によって決定されるように(p<0.05)、陰性対照と有意に異ならない細胞生存率を有する。開示されるハイドロゲルに、任意の著しい細胞毒性は付随しないと考えられる。
【0204】
ハイドロゲル硝子体代替物(ナノ粒子有り及び無しで)の水晶体中での無害性及び酸化ストレスを緩和する能力を評価するために、初代LECをトランスウェル中で培養することができる(Chandler HL,et al,Mol Vis,2007 13:677-91)。トランスウェルの使用は、より厳密にインビボの環境を反映して直接的接触を生じさせずに、硝子体代替物へのLECの曝露を可能にする。初代LECの使用は、不死化細胞株で観察される形質転換性変化の誘導無しに、重要な上皮性特徴の維持を可能にすることができる(Wang-Su ST,et al,Invest Ophthalmol Vis Sci,2003 44:4829-36)。結果として、初代LECは限定された集団倍加を有し、治療への急性応答の研究において最も有益である。治療のより長期的な効果を評価するために、水晶体全体を使用する同時実験を遂行することができる。水晶体全体はインタクトな水晶体カプセルを有し、水晶体繊維を保持し、これにより、インビボの酸化ストレッサーの効果を正確にモデル化することができる(Kamiya T,Zigler JS,Exp Eye Res,1996 63:425-31)。加えて、水晶体全体を代替物の上で直接培養することができ、これはインビボで観察され得るものに類似する。
【0205】
酸化を防止する抗酸化物質を含む開示されるハイドロゲルの能力を、シリコーンオイルに比較して評価するために、培養されたLEC及び水晶体全体を、酸化ストレスを誘導し、硝子体切除術後の白内障形成に寄与することが知られている環境刺激(すなわち紫外線照射、過酸化水素、超酸化条件)へ曝露することができる。ストレスを受けた細胞を試験材料の存在下においてインキュベーションし、細胞生存率をMTTアッセイを使用して評価することができる。活性酸素種の産生を、標準的なジクロロフルオレセイン(DCF)アッセイを使用して決定することができる。硝子体代替物の抗白内障発生性特性を定量する追加の転帰尺度としては、グルタチオン(GSH)濃度(Harding JJ,Biochem J,117:957-60,1979)、グルタチオンレダクターゼ(GR)活性(Linetsky MD,et al,Biochim Biophys Acta,1724:181-93,2005)、タンパク質に結合されたGSH、カタラーゼ活性(Beers RF,Sizer IW,J Biol Chem,195:133-40,1952)、Na+-K+-ATPアーゼ活性(Akagawa K,Tsukada Y,J Neurochem,32:269-71,1979)、及びアスコルビン酸塩濃度(Okamura M,Clin Chim Acta,103:259-68,1980)を決定することが挙げられる。
【0206】
様々な態様において、開示されるハイドロゲルは、分散分析によって決定されるように、対照(無処理及びシリコーンオイル)に比較して、活性酸素種の有意な低減、及び抗白内障発生性特性についてのアッセイ測定における有意な差(p<0.05)を示す。抗酸化活性を定量し、アスコルビン酸塩濃度を直接測定することができる(同上)。
【0207】
硝子体代替物の安全性及び有効性を、ウサギ硝子体切除術モデルにおいて評価することができる。すべての研究をIACUCに承認されたプロトコールを使用して遂行し、The Association for Research in Vision and Ophthalmology(ARVO)Statement for the Use of Animals in Ophthalmic and Vision Researchを遵守する。硝子体代替物を、ダッチベルテッド種ウサギ(硝子体代替物の評価のための標準的な動物モデル)を使用して評価することができる(Del Amo EM,Urtti A,Exp Eye Res,137:111-24,2015)。購入後に、ウサギを、大学の実験室動物資源施設で5~7日間周囲に順応させる。ウサギを3つの処理群へと分割して、ゲル製剤がシリコーンオイルに比較して損傷を防止し、抗酸化物質の取り込みが、水晶体及び網膜への酸化的損傷を防止するという仮説を評価することができる。経毛様体扁平部硝子体切除術に続いて、1つの目の中の硝子体を、ハイドロゲル硝子体代替物(n=6)、抗酸化物質を装填したナノ粒子を含むハイドロゲル(n=6)、またはシリコーンオイル陽性対照(n=6;例えば方法については、Del Amo EM,Urtti A,Exp Eye Res,137:111-24,2015;及びK.E.Swindle-Reilly,M.Shah,P.D.Hamilton,T.A.Eskin,S.Kaushal,N.Ravi,Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.2009,50,4840-4846を参照)により置き換えることができる。各々のウサギにおける他の眼を無処理対照として供する。生物学的変動を考慮して、等しい数のオス及びメスのウサギを各々の試験群中で評価することができる。硝子体切除術後60日間、以下で詳述されるようにウサギをモニターし、次いで人道的に安楽死させることができる。眼球を組織病理学的評価のために収穫することができる。
【0208】
硝子体切除術前に、すべてのウサギは、IOP測定(Tonovet)、細隙灯生体顕微鏡検査(Kowa SL-15)、及び間接検眼法(Heine Omega 500)を包含する、完全散瞳検査を受けることができる。追加で、網膜電図(ERG)、検影法による屈折(Welch Allyn)、及びOCT(Envisu)を、遂行することができる。前眼部及び眼底の写真を撮ることができる。手術後に、ウサギは、術後1日目に、1週目に、次いで研究の結論まで毎週、上記の完全な眼の検査を受けることができる。細隙灯生体顕微鏡検査を介して同定される任意の臨床的に明らかな前眼部変化(例えば結膜充血、房水フレア、虹彩充血、角膜透明度の喪失)を、修飾されたHackett-McDonaldスコアリング系(Hackett RB,McDonald TO,Dermatotoxicology,1996)により客観的に定量することができる。硝子体混濁または網膜変化を包含する後眼部変化を、後部ブドウ膜炎のためのNussenblattスコアリング系(Sen HN,et al,Ophthalmology,118(4):768-71,2011)を使用して、定量することができる。ERG、検影法による屈折、及びOCTを、中間点(術後1か月)、及び研究の終わりで反復することができる。
【0209】
ウサギに麻酔をかけた後に、1つの目の眼瞼はベタジンにより3回拭き取ることができる。外科用顕微鏡(Zeiss)を使用して、23ゲージのトロカールを、輪部の2.0mm後ろの2時及び10時の位置に配置することができる。次いで硝子体切除術を、角膜上のコンタクトレンズを介して直接的に見て行うことができる。空気-液体交換を、バックフラッシュブラシを使用して行うことができる。その時に、実験的硝子体代替物またはシリコーンオイルを目の中へ注射することができる。外科手術の終わりに、トロカールを除去することができる。創傷が自己シールするので、強膜切開を締め付けるために縫合は要求されない。この手順は、ヒト患者において遂行されるものを模倣する。手術後の治療プロトコールは、疼痛制御のための鎮痛物質、そして外科手術関連炎症及び手術後の感染を防止するための局所用医薬物を含む。
【0210】
新鮮組織を目全体のサブセットから収穫して、抗酸化マーカーを定量することができる。解剖に続いて、水晶体全体を秤量し、さらなる分析まで冷凍することができる。すべての水晶体を滅菌生理食塩水中でホモジナイズし、遠心分離することができる。清澄な上清を、すべての後続する実験のために使用することができる。上記のように、抗酸化活性を定量することができる(例えばGSH濃度、CAT活性)。水晶体、房水、及び硝子体房内の液体中のアスコルビン酸塩の濃度を決定することができる(Okamura M,Clin Chim Acta,103:259-68,1980)。ヘマトキシリン・エオシン(H&E)及び免疫蛍光法を、組織のサブセットで遂行することができる。組織サンプルを、4%のパラホルムアルデヒド中で直ちに固定することができる。肉眼的検査後に、前眼部のカップ及び後眼部カップの両方を解剖し、サブセットを組織学及び免疫組織化学のためのパラフィン中に包埋して、形態及び網膜層の厚さを調査する一方で、残りの組織を追加の分析のために冷凍することができる。3つの連続切片を各々の目の後眼部及び前眼部から得て、獣医学分野の組織学者によってH&Eにより染色することができる。水晶体及び網膜の病理学を、臨床的スコアリングを使用して、白内障及び酸化的損傷について評価することができ、病理学者が切片を精査するだろう。網膜の切片を、ミクログリア活性化を評価するためのGFAP及びCD68、ならびに毒性のための細胞死について評価することができる。ERG、屈折、及び肉眼的形態も使用して、網膜の健康をモニターするだろう。RPE細胞が過剰な酸化ストレスに応答する場合に、それらはTUNEL陽性細胞をもたらす(Sen HN,et al,Ophthalmology,118(4):768-71,2011)。追加の化学的分析は、網膜及び水晶体をマーカーで染色して酸化ストレスを評価することを含むことができる(例えばTNF-α、IL-1-β、TUNEL;方法についてはKim B,et al,Sci Rep,7:14336,2017を参照)。
【0211】
様々な態様において、開示されるハイドロゲルは、インビボの正常なERG、組織学、及びIOP;最少の炎症及び細胞毒性;ならびにシリコーンオイル対照に比較して水晶体及び網膜へのより少ない酸化的損傷を示す。シリコーンオイル及び無処理対照に比較して統計的有意差について評価するための定量化可能な測定値としては、ERGの変化、IOP、ミクログリア、網膜層の厚さ、組織病理学、屈折、白内障の等級付け、及び細隙灯の観察スコアが挙げられ得る。
【0212】
抗酸化物質放出粒子を埋め込んだ剪断流動化ハイドロゲルは、天然の硝子体液の物理的機能及び化学的機能の両方を置き換えることができる新規硝子体代替物として生成された。この硝子体代替物による天然の酸素勾配の維持は、硝子体切除術後の白内障形成を防止する能力を有し、患者及び医療提供者の追加の治療の費用を有意に低減する。
【0213】
実施例7。抗酸化物質放出のための硝子体代替物としての開示されるハイドロゲル。
実験セクション - 材料。ポリ(エチレングリコール)メタクリレート(PEGMA、平均分子量(MW)360)、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA、平均MW 250、575、及び700)及びN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)、過硫酸アンモニウム(APS)、及びDulbeccoリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)を、Sigma-Aldrich(St.Louis、MO、USA)から購入し、さらなる精製無しに使用した。2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を、Monomer Polymer & Dajac Labs(Ambler、PA、USA)から購入した。6~8kDa及び12~14kDaの分子量カットオフ(MWCO)の透析チューブ、Dulbecco改変Eagle/栄養混合物F-12 Ham培地(DME/F-12)、Dulbecco改変Eagle培地(DMEM)、フェノールレッド無しのDMEM、ウシ胎仔血清(FCS)、ペニシリン-ストレプトマイシン(Pen Strep)、トリプシン、リゾチーム、ならびに過酸化水素を、Thermo Fisher Scientific(Waltham、MA、USA)から購入し、受け取ったままで使用した。RPE(ARPE-19 ATCC CRL-2302)を、American Type Culture Collection(Manassas、VA、USA)から購入した。LEC細胞は、不死化ヒト水晶体上皮細胞株(すなわち不死化SRA 01/04ヒトLEC)である。細胞株は、SV40.33のラージT抗原含有プラスミドベクターDNAによるヒト水晶体上皮細胞のトランスフェクションによって産生されたものである(N.Ibaraki,et al.,Exp Eye Res.1998,67,577-585)。CellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assayを、Promega(Madison、WI、USA)から購入した。ジクロロフルオレセイン(二酢酸2,7-ジクロロジヒドロフルオレセイン、DCF)を、Cayman Chemical(Ann Arbor、Michigan、USA)から購入した。
【0214】
開示されるハイドロゲルの調製。HEMA、PEGDA、及びPEGMAの複数のコポリマーを脱イオン水(pH7.4)中で合成し、透明度及び機械的特性に基づいてスクリーニングした(表1)。ハイドロゲルを、以前に出版されたものを修飾したフリーラジカル重合によって形成した。
[31]簡潔には、HEMAモノマー、PEGMAモノマー、及びPEGDAモノマーを脱イオン水中で溶解し、窒素ガスにより大規模にパージして反応を早期に終結させ得る酸素分子を除去した。APS水溶液(10%w/v)及びTEMEDを、それぞれフリーラジカルの開始物質及び促進物質として、1:200及び1:800 v/vで添加した。
[32]溶液を12時間重合させた。ハイドロゲルを、透析チューブ(12~14kDa MWCO)中で7日間脱イオン水に対して精製して、未反応モノマー及び低分子量ポリマー鎖を除去した。最適化された2つの製剤(すなわちPEGDAハイドロゲル及びPEGDA-co-PEGMAハイドロゲル)を生成した(表1)。
【表1】
【0215】
レオロジー決定。測定前に、すべてのハイドロゲルサンプルをDPBS中で7日間浸漬して、平衡膨潤に到達させる。サンプルを、Kinexus ultra+レオメーター(Malvern Instruments Ltd、Worcestershire、UK)のクオーツ試験ステージの上へ注入した。20mmの平行平板ジオメトリを、ハイドロゲルサンプルの上に1mmの作業ギャップまで低下させ、これにより、サンプルを損傷せずに、ジオメトリとハイドロゲルとの間に高い接触を提供することが決定された(ゼロ垂直抗力)。試験ステージを37℃へ設定し、DPBSにより充填された湿潤チャンバーをジオメトリ及び試験ステージの付近に取り付けて、インビボの条件を模倣し、サンプル脱水を防止した(
図2A~2C)。振幅掃引試験を、0.1Hzの周波数、及び0.1~1000%の範囲の振幅で遂行した。1%のひずみ振幅(線形粘弾性領域内であることが分かっている)による周波数掃引試験を、0.01~1Hzの周波数範囲により遂行して、ハイドロゲルの貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)を決定した。剪断速度を0.01~1000s
-1に増加させることによって、剪断粘度を評価した。交互振動ステップひずみを、0.1Hzの固定周波数、ならびに各々のひずみ間隔について100秒で10%、700%、及び1000%のひずみで、ハイドロゲルへ適用した(H.Wang,et al.,Adv.Sci.2018,5,1800711)。
【0216】
ハイドロゲルの特徴評価。
各々のハイドロゲル製剤の平衡含水率を、重量の変化が検出されなくなるまで、60℃のオーブン中で既知の量の水で膨潤させたハイドロゲルを乾燥することによって決定した。ハイドロゲルの屈折率を、屈折計(Sper Scientific、Scottsdale、AZ)を使用して決定した。ハイドロゲルの透過率を、230~900nmの範囲の波長でVarian Cary 50 UV-可視光分光光度計(Agilent Technologies、Santa Clara、CA、USA)を使用して測定した。DPBSをブランクとして使用した。PEGDAハイドロゲル及びPEGDA-co-PEGMAハイドロゲルのフーリエ変換赤外分光スペクトル(FTIR)を、Thermo Nicolet Nexus 870 FTI R分光計(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、USA)を使用して収集した。
【0217】
ハイドロゲル安定性。
ハイドロゲルを、DPBS、リゾチーム(10,000U/mL
-1)、またはトリプシン(0.25%)により37℃で最大4週間インキュベーションした(S.Santhanam,et al.,Acta Biomater.2016,43,327-337)。DPBS、リゾチーム、またはトリプシン(各々1mL)を、PEGDAハイドロゲルまたはPEGDA-co-PEGMAハイドロゲル(0.5g)へ添加した。所定時間(0、1、4、7、14、21、及び28日)で、ハイドロゲルを凍結乾燥し秤量した。ハイドロゲルサンプルの重量安定性を、所与の式によって決定した。
【数1】
式中、W
0は時間0での湿潤ハイドロゲルの初期重量であり、w
tは時間t(日)でのゲルの重量である。
【0218】
ビタミンCの装填、安定性、及び放出。ハイドロゲルを、低分子量カットオフ透析チューブ(MWCO 6~8kDa)中に配置し、ビタミンC溶液(2.2mM、新鮮に調製し、毎日交換した)中に72時間浸漬した。ヒト硝子体中のビタミンCの濃度は2mMである(N.M.Holekamp,Am J Ophthalmol.2010,149,32-36)。ビタミンCの迅速な分解を考慮して、2.2mMのビタミンC濃度を装填濃度に選んだ。ハイドロゲル中のビタミンCの安定性を決定するために、ビタミンCを装填したハイドロゲルを、37℃で維持した。所定時間(0及び30分、1、2、4、8、及び12時間、1、2、3、4、及び7日)で、ハイドロゲル中のビタミンCを、Synergy HTマルチモードマイクロプレートリーダー(BioTek、Winooski、VT)を265nmの波長で使用して決定し、バックグラウンド読み取りとしてのブランクのハイドロゲルと共に既知の濃度を含む標準溶液と比較した。ビタミンC放出を決定するために、前述のようにハイドロゲルにビタミンC溶液(1%w/v)を装填した。より低い装填濃度は、確実に検出するには低すぎるより低い濃度の放出ビタミンCをもたらしたので、1%w/vまたは5.7mMの濃度を放出研究のために選んだ。ビタミンCを装填したハイドロゲル(各々のサンプルについて4mL)を、透析チューブ(MWCO 6~8kDa)中に配置し、DPBS(100mL)中に浸した。上で記載される所定時間で、DPBS溶液(1mL)を採取して放出されたビタミンCの濃度を決定し、新鮮なDPBS(1mL)を添加してシンク条件を維持した。
【0219】
細胞生存率及びROSの活性アッセイ。ARPE-19及びLECを、10%のFCS及び1%のPen Strepを補足した、それぞれDMEM/F-12及びDMEM中で、1ウェル当たり1×104細胞で、96ウェルプレート中に、5%のCO2加湿雰囲気中の37℃で24時間播種した。ハイドロゲルを70%のエタノール中に浸して滅菌し、脱イオン水により3回各々1時間リンスして残存するエタノールを除去し、10%w/vのハイドロゲル濃度で無血清及び無フェノールレッドのDMEMと良く混合した(J.Chang,et al.,J Mater Chem B.2015,3,1097-1105;Y.Tao,et al.,Acta Biomater.2013,9,5022-5030;M.Annaka,et al.,Biomacromolecules.2011,12,4011-4021;及びS.Lamponi,et al.,J.Biomater.Sci.Polym.Ed.2012,23,555-575)。各々のウェル中の培養培地を除去して、ハイドロゲル有り/無し及びビタミンC有り/無し(2.2mM)の培地(100μL)を、各々のウェルへ添加し、24時間インキュベーションした。過酸化水素(10μL、200μMの最終的な濃度)をウェルの半分へ添加し、DPBS(10μL)を対照として残りのウェルへ添加した(A.Heckelen,et al.,Acta Ophthalmol Scand.2004,82,564-568;及びH.S.Lee,et al.,Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.2017,58,1196-1207)。ウェルプレートを30分間インキュベーションした。CellTiter-Glo発光細胞生存率アッセイを製造者のプロトコールに従って遂行した。簡潔には、ウェルプレートを30分間室温へ平衡化した。CellTiter-Glo試薬(100μL)を各々のウェルへ添加し、内容物を旋回振盪機を使用して10分間混合した。ウェルプレートを蛍光シグナル前に室温で10分間インキュベーションし、Synergy HTマルチモードマイクロプレートリーダーを使用して測定した。ROS活性を、DCFを使用して検出した。簡潔には、DCF(100μL、20μMの最終的な濃度)を各々のウェルへ添加し、内容物を室温で30分間インキュベーションした(Y.Ou,et al.,Chem Biol Interact.2009,179,103-109)。TECAN M200プレートリーダー(Mannedorf、Switzerland)を使用して、それぞれ485nm及び525nmの励起波長及び放射波長による蛍光シグナルを測定した。
【0220】
硝子体内ハイドロゲル注射。6か月齢のブタからのブタ眼球(Sioux-Preme Packing Co.、Sioux City、IA)を、氷中にパックした生理食塩水中で一晩かけて運送した。眼球外組織を目から除去した。15G鈍端カニューレを使用して篩板を介して、開口部を作り、それを介して硝子体を除去した。ハイドロゲル(4mL)を、22ゲージまたは30ゲージの皮下注射針を使用して、硝子体房の中へ注射した。眼球を切開して、硝子体房の内部でのハイドロゲルの外観を査定した。
【0221】
統計分析。データを平均±標準誤差(SE)として表現する。統計解析を、Minitabソフトウェア(バージョン18.1;Minitab,Inc.、State College、PA)により実施した。一元配置分散分析(Tukey検定を使用する事後ペアワイズ比較による)を使用して、レオロジーデータ、ハイドロゲル安定性データ、ならびにARPE-19細胞及びLEC細胞の生存率及びROS活性を分析した。帰無仮説から、各々の試験についての群間で差がないことが示された。0.05のアルファ値を統計的有意差のために使用した。
【0222】
結果 - 実施例6の開示されるハイドロゲル。レオロジー実験から、天然の組織に類似するPEGDAハイドロゲル及びPEGDA-co-PEGMAハイドロゲルの粘弾性特性が示された(N.K.Tram,K.E.Swindle-Reilly,Front.Bioeng.Biotechnol.2018,6;及びA.Schulz,et al.,Transl Vis Sci Technol.2019,8,56)。両方のハイドロゲルについての線形粘弾性領域は、10%未満のひずみであると決定された(
図10A)。貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)は、それぞれ粘弾性材料の弾性特性及び粘度特性を表わす。両方の弾性率は10%のひずみより上で減少したが、損失弾性率は貯蔵弾性率よりも大きくなり、ハイドロゲルがより液体様になっていたことを示唆した。したがって、1%のひずみを、後続する周波数掃引実験のために使用した。PEGDAハイドロゲルの弾性率は、PEGDA-co-PEGMAハイドロゲル及びヒト硝子体液のものよりも統計的に大きかった(G’
PEGDA=7.02±0.33Pa>G’
PEGDA-co-PEGMA=3.16±0.22Pa≒G’
ヒト硝子体=2.368±0.17Pa、p<0.0001;G”
PEGDA=0.859±0.038Pa>G”
PEGDA-co-PEGMA=0.378±0.011Pa≒G”
ヒト硝子体=0.482±0.024Pa、p<0.0001)。両方のハイドロゲルの貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)は、天然のヒト硝子体と同じ桁であった(
図10B)。ヒト硝子体の貯蔵弾性率は、1Pa~7Paの範囲であるが、その損失弾性率は0.3Pa~1Paの範囲である(同上)。PEGDAハイドロゲルの貯蔵弾性率及び損失弾性率は天然のヒト硝子体のものよりも統計的に大きく、5~11Paの範囲の貯蔵弾性率、及び約0.9Paの範囲の損失弾性率であった。PEGDA-co-PEGMAハイドロゲルの貯蔵弾性率及び損失弾性率は、ヒト硝子体の報告された特性と統計的な有意差はなく、2~7Paの範囲の貯蔵弾性率、及び約0.4のPaの範囲の損失弾性率であった。剪断速度が増加するにつれて、両方のハイドロゲルは粘性がなくなり、剪断流動化挙動を実証し、それは注射のために好都合である(
図10C)。交互振動ステップひずみ実験から、ハイドロゲルの剪断流動化を引き起こす高いひずみを受けた後に(G”>G’)、両方のハイドロゲルは、より低いひずみでそれらのゲル様の挙動を迅速に回復したことがさらに示された(
図10D)。
【0223】
ハイドロゲルは、可視光線内で許容される透明度(90%超)を有していた(
図11)。PEGDA-co-PEGMAハイドロゲルはPEGDAハイドロゲルよりも透明であったが、両方のハイドロゲルは天然のヒト硝子体に類似する光学的特性を有していた(E.A.Boettner,J.R.Wolter,Invest Ophthalmol Vis Sci.1962,1,776-783)。ハイドロゲルの透過率は紫外線領域中で急速に低下し、230nmでゼロである。各々のハイドロゲル製剤は、1.3349であるヒト硝子体と類似する屈折率も有する(B.P.Gloor,The CV Mosby Co.,St.Louis.1987,246-267)。PEGDAハイドロゲルの屈折率は1.3350±0.0002であり、PEGDA-co-PEGMAハイドロゲルの屈折率は1.3359±0.0002であった。これらの優れた光学的特性は、ハイドロゲルの高含水率に起因する可能性が高い。PEGDAハイドロゲル及びPEGDA-co-PEGMAハイドロゲルの平衡含水率は、それぞれ97.53±0.06%及び96.91±0.01%であった。
【0224】
FTIRから、PEGDAハイドロゲル及びPEGDA-co-PEGMAハイドロゲルの合成の成功が示された(
図12)。メチレン(-CH2-)基、カルボニル(C=O)基、及びエーテル(C-O-C)基は、それぞれ2850、1730、及び945cm
-1で、両方のハイドロゲルスペクトルにおいて見出された。PEGDA-co-PEGMAハイドロゲルスペクトルは、3740及び1520cm
-1で、それぞれアルコール(-OH)基及びメチル(-CH3)基の存在を示した。これらのピークはPEGDAスペクトル中に現われず、適切なハイドロゲルが合成されたことを確認した。
【0225】
ハイドロゲルは、酵素溶液によるインキュベーション後に安定的であることが見出された(
図13A~13B)。ハイドロゲルの重量は、両方のハイドロゲルについて、37℃で少なくとも28日間、DPBS、リゾチーム、またはトリプシン溶液中に統計的に変化しなかった(p>0.05)。
【0226】
ビタミンCを装填したハイドロゲルは、ビタミンC安定性実験においてビタミンCの迅速な分解を示した(
図14A)。2mMから約1.6mMへのビタミンCの最初の迅速な低下は、最初の8時間以内に起こった。その後に、ハイドロゲルの内部のビタミンC濃度は、7日後に0.03mMに減少した。ビタミンCの迅速な放出も、最初の8時間の間にビタミンC放出実験において起こった(
図14B)。ビタミンC濃度は、最初の12時間後に徐々に減少し、7日後に0に接近した。
【0227】
CellTiter-Glo発光細胞生存率アッセイから、ハイドロゲルがインビトロでARPE-19またはLECのいずれにも毒性でなかったことが示された(
図15A~15B)。ハイドロゲルと共に培地中で培養した細胞の生存率は、正常な培地による対照とは統計的な有意差はなかった。対照に比較した場合に、ROSの導入に使用した過酸化水素は、LECの生存率を減少させ、ARPE-19細胞についてはそれほど減少させなかった。過酸化水素により処理したARPE-19細胞の生存率は、非処理群に比較して、ほぼ同じであったか、または高くさえあった。これとは対照的に、過酸化水素により処理されたLECの生存率は、過酸化水素処理無しのLECよりも統計的に低く、これらの培養条件下で、水晶体細胞がARPE-19細胞よりも酸化的損傷により敏感であること示した。
【0228】
DCFアッセイから、ARPE-19及びLECについてのROSに対するハイドロゲル及びビタミンCの保護的効果が示された(
図16)。ROS活性は、対照に比較した場合に、PEGDAハイドロゲルまたはPEGDA-co-PEGMAハイドロゲルのいずれかの存在可において統計的に減少し、ビタミンCの添加によりさらに減少した。この場合もやはり、過酸化水素処理は、ARPE-19細胞のROS活性に影響しなかった。これとは対照的に、LECのROS活性は、対照に比較して、過酸化水素の添加により増加した。これらの結果から、ARPE-19細胞がよりROS感受性の高いLECに対する適切な対照だったことが示唆される。
【0229】
ハイドロゲルを、エクスビボのブタの目の硝子体房の中へ成功裡に注射した(
図17)。注射したハイドロゲルは透明であり、天然の硝子体と類似する稠度及び外観を有していた。
【0230】
実施例8。水素硝子体代替物中でのビタミンC安定性を改善する物理的及び化学的な方法
溶液中のビタミンCの迅速な分解(典型的には1週間未満)に起因して、ビタミンCを安定化する物理的方法(多層性粒子中でのカプセル化)及び化学的方法(グルタチオンとの混合)を、ハイドロゲル硝子体代替物において調査した。
【0231】
ポリ(エチレングリコール)メタクリレート(PEGMA)及びポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA)のコポリマーを、フリーラジカル重合によって調製し、ビタミンC(2mM)を装填した。物理的に保護したビタミンCを調製するために、キトサン(1mg/mL)をトリポリリン酸ナトリウム(1.75mg/mL)により架橋し、ビタミンC(10%w/v)を装填し、アルギン酸塩(1mg/mL)及びキトサンの交互層によりコーティングした。ビタミンCを化学的に保護するために、グルタチオン溶液(1、2、4、または10mM)を代わりに添加して、ビタミンCを化学的にリサイクルした。粒子溶液または化学的に安定化したビタミンC溶液のいずれかを、37℃でハイドロゲル中でインキュベーションした。所定時間(0、1、2、3、4、7、8、9、11、及び14日)で、残存するビタミンCを、バックグラウンド読み取りとしてのブランクの粒子及びグルタチオン溶液と共に既知の濃度を含む標準溶液に比較して、マイクロプレートリーダーを波長265で使用して決定した。
【0232】
図20中で示されるように、PEDGAハイドロゲル及びPEDGA-co-PEGMAハイドロゲルは注射可能であり、天然の硝子体液に類似すると思われた。ビタミンCのみを含有する溶液(ハイドロゲル無し)は、5日目までに0%に迅速に分解した。ハイドロゲル及び粒子は、ビタミンCにある程度の保護を提供し、わずか7日後に分解を導いた。添加物としてのグルタチオンは最長の安定化を提供し、グルタチオン濃度が4mMを超えた場合に70%のビタミンCが14日後に残存していた。ブランクのハイドロゲル、粒子、及びグルタチオン溶液は、ビタミンCについての吸光度読み取りを妨害しなかった。
【0233】
したがって、ビタミンCをグルタチオンと組み合わせることは、少なくとも2週間はビタミンCの安定性を有意に改善した。したがって、グルタチオンは、含まれるビタミンCの安定性を改善するために、ビタミンC装填ハイドロゲル硝子体代替物への有効な添加であることが証明され得る。
【0234】
材料及び方法:アスコルビン酸(VC)、キトサン(CH、低分子量)、アルギン酸塩(AL)、ゼラチン(GE)、グルタチオン(GLU、St.Louis、MO、USA)、トリポリリン酸ナトリウム(TPP、85%)、酢酸、及びDulbeccoリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)を、Sigma-Aldrichから購入し、さらなる精製無しに使用した。ポリ(エチレングリコール)メタクリレート(PEGMA、平均分子量(MW)360)、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA、平均MW 575)及びN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)、過硫酸アンモニウム(APS)、及びDulbeccoリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)を、Sigma-Aldrich(St.Louis、MO、USA)から購入し、ハイドロゲル硝子体代替物の調製のために使用した。6~8kDa及び12~14kDaの分子量カットオフ(MWCO)の透析チューブ、Dulbecco改変Eagle/栄養混合物F-12 Ham培地(DME/F-12)、Dulbecco改変Eagle培地(DMEM)、フェノールレッド無しのDMEM、ウシ胎仔血清(FCS)、ペニシリン-ストレプトマイシン(Pen Strep)、ならびに過酸化水素を、Thermo Fisher Scientific(Waltham、MA、USA)から購入し、受け取ったままで使用した。RPE(ARPE-19 ATCC CRL-2302)を、American Type Culture Collection(Manassas、VA、USA)から購入した。不死化SRA 01/04ヒトLECは、Venkat N.Reddy博士(University of Michigan)によって元々提供され、Marlyn P.Langford博士(Louisiana State University)によって分配された。細胞株は、SV40.33のラージT抗原含有プラスミドベクターDNAによるヒト上皮細胞のトランスフェクションによって産生されたものである(Ibaraki,N.et al.,Exp Eye Res 1998,67,577-585を参照)。CellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assayを、Promega(Madison、WI、USA)から購入した。ジクロロフルオレセイン(二酢酸2,7-ジクロロジヒドロフルオレセイン、DCF)を、Cayman Chemical(Ann Arbor、Michigan、USA)から購入した。
【0235】
キトサン/アルギン酸塩/ゼラチン粒子の調製:キトサン(Sigma-Aldrich、低分子量、1mg/mL)を、酢酸溶液(1%w/w、500mL)中で500rpmで60分間溶解した。トリポリリン酸ナトリウム(1.75mg/mL、500mL)をキトサン溶液の中へ滴加して、2時間の継続期間でナノ粒子を形成させた(Liu,W.et al.,LWT 2017,75-608-615を参照)。ナノ粒子を21℃で15分間の4000rpmでの遠心分離によって収集した。粒子を脱イオン水により洗浄し、もう一度遠心分離した。アスコルビン酸(10%w/w、10mL、pH5.5)を粒子へ添加し、旋回振盪機上で18時間溶解した。アルギン酸ナトリウム(FMC BioPolymer、Protanal PH、1mg/mL、10mL、pH5.5)を、アスコルビン酸及びキトサン粒子溶液へ添加し、30分間超音波処理した。キトサン(Sigma-Aldrich、低分子量、1%w/wの酢酸溶液、10mL中の1mg/mL)を、アスコルビン酸-キトサン-アルギン酸塩粒子へ添加し、30分間超音波処理した。異なる群において、ゼラチン(bloom 175、1mg/mL 10mL)をアスコルビン酸-キトサン-アルギン酸塩粒子へ添加し、30分間超音波処理した。粒子を21℃で15分間の4000rpmでの遠心分離によって収集し、冷凍乾燥した。
【0236】
ハイドロゲルの調製:ハイドロゲルを、以前に出版されたものを修飾したフリーラジカル重合によって形成した(Tram,N.K.et al.,Macromolecular Bioscience 2019,1900305を参照)。簡潔には、PEGMAモノマー及びPEGDAモノマーを脱イオン水中に溶解し、窒素ガスにより大規模にパージして反応を早期に終結させ得る酸素分子を除去した。APS水溶液(10%w/v)及びTEMEDを、それぞれフリーラジカルの開始物質及び促進物質として、1:200及び1:800 v/vで添加した。溶液を12時間重合させた。ハイドロゲルを、透析チューブ(12~14kDa MWCO)中で7日間脱イオン水に対して精製して、未反応モノマー及び低分子量ポリマー鎖を除去した。最適化された2つの製剤(すなわちPEGDAハイドロゲル(100%のPEGDA、2%wtポリマー)及びPEGDA-co-PEGMAハイドロゲル(50%のPEGDA:50%のPEGMA、3%wtポリマー))を生成した。
【0237】
ビタミンC放出研究:作製された様々な溶液は、0.1uM、1uM、10uM、100uM、1mM、2mM、4mM、及び10uMでの、キトサン(CH)、キトサン-アルギン酸塩(CH-AL)、キトサン-アルギン酸塩-キトサン(CH-AL-CH)、キトサン-アルギン酸塩-ゼラチン(CH-AL-GE)、及びグルタチオン濃縮物(GLU)であった。1つの放出研究は、溶液CH-GLU、CH-AL-GLU、CH-AL-CH-GLU、CH-AL-GE-GLU中での粒子及びグルタチオン(1mM)のカプセル化、そして、同じ層状化方法を使用するビタミンC及びグルタチオンの両方のカプセル化の組み合わせを試験した。試験した各々の溶液について、ビタミンCの無い対照群、及びDPBS中のビタミンC単独(1%w/w)の有る試験群が含まれていた。試験したすべての群は、2mMのビタミンCの標的濃度を有していた。他の対照群は、VCのみの溶液(DPBS中で1%w/w)及びグルタチオンのみの溶液(1%w/w)含んでいた。すべての溶液を、放出研究を通して37℃で維持した。溶液中に残存する活性のある(viable)ビタミンCの量を、Synergy HTマルチモードマイクロプレートリーダー(BioTek、Winooski、VT)を265nmの波長で使用して測定し、対照群に比較して溶液中に残った活性のあるビタミンCの量を決定した。ビタミンCの濃度を測定するために、0、1、2、3、4、7、8、9、10、11、及び14日目に、粒子を含む溶液を3220rpmで5分間遠心分離し、溶液(500uL)を取り出し、96ウェルプレートの中へ配置し測定した。2週間後に、ビタミンCが検出不可能になるまで、より高濃度のビタミンCを含む溶液を1日おきに測定した。粒子溶液については、DPBS溶液(500uL)を溶液の中へ戻して添加して、一定の体積を維持した。
【0238】
細胞生存率アッセイを使用する、過酸化水素、ビタミンC、及びグルタチオン濃度のスクリーニング:ARPE-19及びLECを、10%のFCS及び1%のPen Strepを補足した、それぞれDMEM/F-12及びDMEM中で、1ウェル当たり1×104細胞で、96ウェルプレート中に、5%のCO2加湿雰囲気中の37℃で24時間播種した。各々のウェル中の培養培地を除去し、ビタミンC(2000μM、1000μM、500μM、100μM、及び0μM)またはグルタチオン(10000μM、4000μM、2000μM、1000μM、500μM、及び0μM)を含む、様々な培地を、各々のウェルへ添加し(100μL)、24時間インキュベーションした。過酸化水素(600μM、400μM、200μM、100μM、50μM、及び0μM)、及び特殊な事例のビタミンC(2000μM)については、生存率アッセイの遂行30分前に添加した(100μL)。CellTiter-Glo発光細胞生存率アッセイを製造者のプロトコールに従って遂行した。簡潔には、ウェルプレートを30分間室温へ平衡化した。CellTiter-Glo試薬(100μL)を各々のウェルへ添加し、内容物を旋回振盪機を使用して10分間混合した。ウェルプレートを室温で10分間インキュベーションし、その後、蛍光シグナルを、Synergy HTマルチモードマイクロプレートリーダー(BioTek、Winooski、VT)を使用して測定した。
【0239】
DCFアッセイを使用する、活性酸素種(ROS)活性の低減におけるビタミンCの抗酸化活性:ビタミンC(0、100、及び1000μMで30分間または24時間)により処理したARPE-19及びLECの過酸化水素(200μMで30分間)によって誘導されたROS活性を、ジクロロフルオレセインアッセイを使用して決定した。簡潔には、LEC及びARPE-19細胞を前述のように培養した。DCF(100μL、20μMの最終的な濃度)を各々のウェルへ添加し、内容物を室温で30分間インキュベーションした(Ou,Y.et al.Chem Biol Interact.2009,179,103-109を参照)。Synergy HTマルチモードマイクロプレートリーダー(BioTek、Winooski、VT)を使用して、それぞれ485nm及び525nmの励起波長及び放射波長による蛍光シグナルを測定した。
【0240】
統計分析:データを平均±標準誤差(SE)として表現した。統計解析を、Minitabソフトウェア(バージョン18.1;Minitab,Inc.、State College、PA)により実施した。一元配置分散分析(Tukey検定を使用する事後ペアワイズ比較による)を使用して、LEC及びARPE-19細胞の細胞生存率及びROS活性を分析した。帰無仮説から、各々の試験についての群間で差がなかったことが示された。0.05のアルファ値を統計的有意差のために使用した。
【0241】
結果:過酸化水素は、LEC及びARPE-19の両方について、100μM以下で細胞生存率に影響せず、600μMで細胞生存率を有意に減少させた(
図21Aを参照)。中間濃度(200μM及び400μM)のH
2O
2は、LECの細胞生存率を有意に減少させたが、ARPE-19に対して効果がなかった。この結果から、これらの培養条件下で、水晶体細胞がARPE-19細胞よりも酸化的損傷へより敏感であり、ARPE-19細胞がよりROS感受性の高いLECに対する適切な対照になることが示唆された。ビタミンCは、LEC及びARPE-19の両方の細胞生存率に対する有害効果を有していた(
図21Bを参照)。低濃度のビタミンC(100μM及び500μM)が、非毒性である(70%を超える細胞生存率)と判断することができたが、より高い濃度(1000μM及び2000μM)は、低減された曝露時間(2000μM、24時間から30分間へ)でさえ、細胞生存率を有意に減少させた。
【0242】
ビタミンCは、生理的な硝子体濃度(1000μM以上)で、網膜細胞及び水晶体上皮細胞へ毒性であった。以前の研究は提示されたデータを補強し、100μMが酸化的損傷の防止に最適濃度だったことを示した(Goyal,M.M.et al.Indian J Clin Biochem.2009,24,375-380;及びWei,W.et al.Scientific World Journal 2014,750634を参照)。結果から、硝子体コアと硝子体皮質(細胞と接近して)との間に、硝子体液中で以前に確立されていた酸素勾配に相似性があるビタミンC勾配の存在が示唆された(Filas,B.A.et al.Invest Ophthalmol Vis Sci.2013,54,6549-6559を参照)。この考えを
図22中で図示する。
【0243】
ビタミンCは、高濃度(1000μM)で使用した場合に、及び/または過酸化水素と同時にインキュベーションした場合に、細胞のROS活性を低減させることができる(
図23Aを参照)。細胞と共に24時間インキュベーションした低濃度のビタミンC(100μM)は、過酸化水素によって誘導されたROSを低減させることに有効ではなく、その結果としてビタミンCの無い対照と同じROS活性を有していた。過酸化水素(200μM)により処理したLECにおいて、ROS活性の1.5倍の増加があった(
図23Bを参照)。H
2O
2及び高濃度のビタミンC(1000μM)により処理されたLECは、H
2O
2無しビタミンC無しの対照と同じROS活性があった。ARPE-19細胞は、以前に決定されたように、過酸化水素によって誘導された酸化的損傷へ有意に応答しなかった(
図23Cを参照)。高濃度及び低濃度のビタミンCにより細胞を30分間処理することは、ROS活性を15~30%まで有意に低減させた。ROS活性は、H
2O
2により処理しなかった場合に、両方の細胞について、低濃度のビタミンC(100μM)で24時間後に対照(ビタミンC無し)と同じレベルへ戻った。
【0244】
ビタミンCは3日後に10%まで急速に分解する(
図24を参照)。ハイドロゲルは、3日目の残存ビタミンCを20%に改善した。キトサン粒子、キトサン-アルギン酸塩粒子、及びキトサン-アルギン酸塩-ゼラチン粒子中でカプセル化したビタミンCは、30%まで残存パーセントを増加させ、キトサン-アルギン酸塩-キトサン粒子は最も高い保護を提供し、3日後に40%残存していた。すべての製剤は14日後に0%に接近した。
【0245】
ビタミンCをグルタチオンと混合することは、他の物理的方法(ハイドロゲルまたは粒子中でのカプセル化)よりもビタミンCへ良好な保護を提供した。ビタミンCの残存パーセントは、使用したグルタチオンの量と共に増加した(
図25を参照)。高濃度のグルタチオン(4~10mM)と組み合わせた場合に、半分を超えるビタミンCは14日過ぎても残存した。
【0246】
グルタチオンは、高濃度(10000μM)でさえ両方の細胞タイプへ非毒性であり、試験したすべての条件について70%を超える細胞生存率にとどまっていた(
図26を参照)。LEC細胞の生存率は4000μM及び10000μMで減少したが、まだ70%を超えていた。ARPE-19は、100μMを超えるグルタチオン濃度で細胞生存率が増加した。
【0247】
本開示の範囲または趣旨から逸脱せずに、本開示において様々な修飾及び変動が行われ得ることが、当業者に明らかであり得る。本開示の他の実施形態は、本明細書の考慮及び本明細書において開示される本開示の実践から、当業者に明らかであり得る。本明細書及び実施例は単に例示的なものとして考慮され、本開示の真の範囲及び趣旨は以下の特許請求の範囲によって示されることが意図される。
【国際調査報告】