(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-29
(54)【発明の名称】治療物質の眼投与のための薬物送達組成物及びその使用法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/50 20060101AFI20220322BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220322BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220322BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20220322BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220322BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220322BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20220322BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220322BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20220322BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
A61K9/50
A61P27/02
A61K47/36
A61K47/34
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/42
A61K45/00
A61K9/48
A61K39/395 M
A61K39/395 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021546362
(86)(22)【出願日】2020-02-10
(85)【翻訳文提出日】2021-10-05
(86)【国際出願番号】 US2020017523
(87)【国際公開番号】W WO2020163871
(87)【国際公開日】2020-08-13
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514137997
【氏名又は名称】オハイオ・ステイト・イノベーション・ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ポンフェイ
(72)【発明者】
【氏名】ライリー,ケイトリン エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】オー,マシュー ピー
(72)【発明者】
【氏名】ラヌッティ,ジョン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA61
4C076AA62
4C076AA63
4C076AA64
4C076AA67
4C076AA95
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4C076BB24
4C076CC10
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4C076EE23
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4C076GG21
4C084AA17
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4C084ZA331
4C084ZA332
4C084ZC202
4C085AA14
4C085BB11
4C085GG01
(57)【要約】
本開示は、タンパク質治療物質の送達(例えば目へのタンパク質治療物質の硝子体内送達)のための組成物、デバイス、及び方法に関する。特に、本開示は、二層壁及び治療剤を有するカプセルを含み、治療剤がカプセルの内腔空間内に最初に存在する、それを必要とする対象の目の中への注射のための薬物送達デバイスを記載する。これらの薬物送達デバイスを作製及び使用する方法も記載される。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が、閉鎖された2つの末端を備えたチューブ形状を有する1つまたは複数のカプセルであって、前記1つまたは複数のカプセルの各々が二層壁及び少なくとも1つの内腔区画を独立して含む、前記カプセル;及び
各々が、前記少なくとも1つの内腔区画のうちの1つまたは複数内に存在する、1つまたは複数の治療剤、
を含み;
各々の二層壁が、内側層及び外側層を含み;
前記内側層が、生理的条件下で正味の正電荷を有する第1のポリマーを含み;
前記外側層が、前記第1のポリマーとは異なる第2のポリマーを独立して含む、
薬物送達組成物。
【請求項2】
前記組成物が、対象の目の中への注射のために意図される、請求項1に記載の薬物送達組成物。
【請求項3】
前記注射が、目の硝子体眼房の中へのものである、請求項2に記載の薬物送達組成物。
【請求項4】
前記注射が、硝子体内注射、結膜下注射、テノン嚢下注射、球後注射、または脈絡膜上注射である、請求項2に記載の薬物送達組成物。
【請求項5】
前記第1のポリマーが、キトサン、ポリエチレンイミン、プロタミン、ポリプロピルエニミン(polypropylenimine)、ポリ-L-リジン、ポリ-L-アルギニン、ポリ-D-リジン、ポリ-D-アルギニン、セルロース、デキストラン、ポリ(アミドアミン)、ポリ(2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート)、その誘導体、またはその組み合わせを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の薬物送達組成物。
【請求項6】
前記第1のポリマーが、キトサンまたはその誘導体を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の薬物送達組成物。
【請求項7】
前記第2のポリマーが、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、ポリ-乳酸(PLA)、ポリ-グリコール酸(PGA)、ポリ-ラクチド-コ-グリコリド(PLGA)、ポリエステル、ポリ(オテル(other)エステル)、ポリ(ホスファジン)、ポリ(リン酸エステル)、ゼラチン、コラーゲン、ポリエチレングリコール(PEG)、その誘導体、及びその組み合わせを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の薬物送達組成物。
【請求項8】
前記第2のポリマーが、PCLまたはその誘導体を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の薬物送達組成物。
【請求項9】
前記1つまたは複数のカプセルの各々が、約0.1cm~約5cmの長さを有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の薬物送達組成物。
【請求項10】
前記1つまたは複数のカプセルの各々が、約0.5cm~約3cmの長さを有する、請求項9に記載の薬物送達組成物。
【請求項11】
前記1つまたは複数のカプセルの各々が、約1cm~約3cmの長さを有する、請求項9または10のいずれか1項に記載の薬物送達組成物。
【請求項12】
前記1つまたは複数のカプセルの各々が、約100μm~約2000μmの内径を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の薬物送達組成物。
【請求項13】
前記内径が約100μm~約500μmである、請求項12に記載の薬物送達組成物。
【請求項14】
前記内径が約100μm~約300μmである、請求項12または13のいずれか1項に記載の薬物送達組成物。
【請求項15】
前記1つまたは複数のカプセルの各々が、前記内径よりも約50μm~約300μm大きい外径を有する、請求項12~14のいずれか1項に記載の薬物送達組成物。
【請求項16】
前記二層壁が約25μm~約150μmの壁の厚さを有する、請求項1~15のいずれか1項に記載の薬物送達組成物。
【請求項17】
前記壁の厚さが約70μm~約100μmである、請求項16に記載の薬物送達組成物。
【請求項18】
前記壁の厚さが約75μm~約95μmである、請求項16または17のいずれか1項に記載の薬物送達組成物。
【請求項19】
前記壁の厚さが約80μm~約90μmである、請求項16~18のいずれか1項に記載の薬物送達組成物。
【請求項20】
前記外側層が、約100nm~約10000nmの孔直径を有する孔をさらに含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の薬物送達組成物。
【請求項21】
前記孔直径が約350nm~650nmである、請求項20に記載の薬物送達組成物。
【請求項22】
前記外側層が、約100nm~約2000nmの直径を有する繊維を含む、請求項1~21のいずれか1項に記載の薬物送達組成物。
【請求項23】
前記繊維が約500nm~約1000nmの直径を有する、請求項22に記載の薬物送達組成物。
【請求項24】
前記内側層が、約50nm~約1000nmの直径を有する繊維を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の薬物送達組成物。
【請求項25】
前記繊維が約100nm~約400nmの直径を有する、請求項24に記載の薬物送達組成物。
【請求項26】
前記治療剤が、約pH6.0~約pH7.4内の任意のpHで正味の負電荷を有する、請求項1~25のいずれか1項に記載の薬物送達組成物。
【請求項27】
前記治療剤が抗VEGF治療剤である、請求項1~26のいずれか1項に記載の薬物送達組成物。
【請求項28】
前記抗VEGF治療剤が、治療抗体、治療タンパク質、またはその組み合わせである、請求項27に記載の薬物送達組成物。
【請求項29】
前記治療抗体が、ベバシズマブ、ラニビズマブ、IBI305、またはその組み合わせである、請求項28に記載の薬物送達組成物。
【請求項30】
前記治療タンパク質がVEGFデコイ受容体である、請求項28に記載の薬物送達組成物。
【請求項31】
前記VEGFデコイ受容体がアフリベルセプトである、請求項30に記載の薬物送達組成物。
【請求項32】
前記抗VEGF治療剤がチロシンキナーゼ阻害物質である、請求項27に記載の薬物送達組成物。
【請求項33】
前記チロシンキナーゼ阻害物質が、ラパチニブ、スニチニブ、ソラフェニブ、アキシチニブ、パゾパニブ、またはその組み合わせである、請求項32に記載の薬物送達組成物。
【請求項34】
前記抗VEGF治療剤が、VEGFまたはVEGF受容体を標的化するアンチセンス核酸である、請求項27に記載の薬物送達組成物。
【請求項35】
前記治療剤が、約0.01mg~約3mgの量で存在する、請求項1~34のいずれか1項に記載の薬物送達組成物。
【請求項36】
前記治療剤が、約0.5mg~約2mgの量で存在する、請求項35に記載の薬物送達組成物。
【請求項37】
前記治療剤が、約0.5mg~約1.5mgの量で存在する、請求項35または36のいずれか1項に記載の薬物送達組成物。
【請求項38】
前記治療剤が、少なくとも30日の期間にわたってほぼゼロ次放出速度論を示す、請求項1~37のいずれか1項に記載の薬物送達組成物。
【請求項39】
前記治療剤が、少なくとも3か月の期間にわたってほぼゼロ次放出速度論を示す、請求項38に記載の薬物送達組成物。
【請求項40】
前記治療剤が、少なくとも6か月の期間にわたってほぼゼロ次放出速度論を示す、請求項38に記載の薬物送達組成物。
【請求項41】
前記治療剤が、少なくとも9か月の期間にわたってほぼゼロ次放出速度論を示す、請求項38に記載の薬物送達組成物。
【請求項42】
治療有効量の請求項1~41のいずれか1項に記載の薬物送達組成物をそれを必要とする対象の目の中へ注射することを含む、前記対象における眼科的障害を治療する方法。
【請求項43】
前記眼科的障害が、急性黄斑神経網膜症;Behcet病;血管新生(脈絡膜血管新生を包含する);糖尿病性ぶどう膜炎;ヒストプラスマ症;感染(真菌またはウイルスが原因の感染等);黄斑変性(滲出型AMD及び非滲出AMD及び滲出AMDを含む、急性黄斑変性(AMD)等);浮腫(黄斑浮腫、類嚢胞黄斑浮腫、及び糖尿病性黄斑浮腫等);多巣性脈絡膜炎;後眼部の部位または位置に影響する眼外傷;眼腫瘍;網膜障害(網膜中心静脈閉塞症、糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病性網膜症を包含する)、増殖性硝子体網膜症(PVR)、網膜動脈閉塞性疾患、網膜剥離、ぶどう膜炎網膜疾患等);交感性眼炎;Vogt Koyanagi-Harada(VKH)症候群;ぶどう膜滲出;眼のレーザー治療によって引き起こされるか、またはそれによって影響を受ける、後眼部病態;光線力学療法、光凝固術、放射線網膜症、網膜上膜障害、網膜静脈分枝閉塞症、前部虚血性視神経症、非網膜症糖尿病性網膜機能不全、網膜色素変性症、がん、及び緑内障によって引き起こされるか、またはそれらによって影響を受ける、後眼部病態である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記眼科的障害が、滲出型加齢黄斑変性(滲出型AMD)、血管新生、黄斑浮腫、または浮腫である、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記対象の目の中へ注射することが、目の硝子体眼房の中への注射を含む、請求項42~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記対象の目の中へ注射することが、硝子体内注射、結膜下注射、テノン嚢下注射、球後注射、または脈絡膜上注射を含む、請求項42~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
対象の目の中への注射のための薬物送達カプセルを調製する方法であって、
生理的条件下で正味の正電荷を有する第1のポリマーを含む内側層を伝導性ロッド上に形成すること;及び
前記内側層上に外側層を形成し、前記外側層が、前記第1のポリマーとは異なる第2のポリマーを含むこと、
を含み;
前記内側層の前記形成が、前記第1のポリマーの溶液及び、約10kV~約30kVの電圧差を使用する、エレクトロスピニングを含み;
前記第1のポリマーの前記溶液が、少なくとも1つの有機溶媒中で約1w/v%~約10w/v%であり;
前記外側層の前記形成が、前記第2のポリマー及び任意選択でポロゲンを含む溶液を使用して、前記形成された内側層の上へエレクトロスピニングすることを含み;エレクトロスピニングのために使用される前記電圧差が、約10kV~約30kVであり;
前記第2のポリマー及び任意選択で前記ポロゲンを含む前記溶液が、全重量に基づいて、約1w/v%~約10w/v%の前記第2のポリマー及び前記ポロゲンであり;
前記第2のポリマー対前記任意選択のポロゲンの重量比が、約50:50~約100:0である、
前記方法。
【請求項48】
前記第1のポリマーがキトサンまたはその誘導体を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記第2のポリマーがPCLまたはその誘導体を含む、請求項47または48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記第1のポリマーの前記溶液中の少なくとも1つの有機溶媒が、トリフルオロ酢酸及びジクロロメタンの混合物であり;前記トリフルオロ酢酸及び前記ジクロロメタンが、約1:10~約10:1の比で存在する、請求項47~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記トリフルオロ酢酸及び前記ジクロロメタンが、約5:3~約10:3の比で存在する、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記トリフルオロ酢酸及び前記ジクロロメタンが、約7:3の比で存在する、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記第2のポリマー対前記ポロゲンの重量比が、約90:100~約99.9:0.1である、請求項47~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記第2のポリマー対前記ポロゲンの重量比が、約90:100~約95:5である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記第2のポリマー対前記ポロゲンの重量比が、約95:5~約99.9:0.1である、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記第2のポリマー及び前記ポロゲンを含む前記溶液が、全重量に基づいて、約2.5w/v%~約10w/v%の前記第2のポリマー及び前記ポロゲンである、請求項47~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記第2のポリマー及び前記ポロゲンを含む前記溶液が、全重量に基づいて、約5w/v%~約10w/v%の前記第2のポリマー及び前記ポロゲンである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記外側層の形成に続いて、前記薬物送達カプセルを焼結することをさらに含む、請求項47~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
焼結が、約50℃~約150℃の温度での約1分間~約6時間の期間の加熱を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
焼結が、約90℃~約110℃の温度での約30分間~約6時間の期間の加熱を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
焼結に続いて、前記薬物送達カプセルを洗浄することをさらに含む、請求項58~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
洗浄が、塩基性溶液、水溶液、またはその組み合わせにより前記薬物送達カプセルを洗浄することを含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
洗浄が、飽和重炭酸ナトリウム溶液により洗浄すること、続いて脱イオン水により洗浄することを含む、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
洗浄に続いて、前記薬物送達カプセルを乾燥することをさらに含む、請求項61~63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
乾燥が、真空下での約50℃~約150℃の温度の約1分間~約6時間の期間である、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
乾燥が、真空下での約90℃~約110℃の温度の約30分間~約6時間の期間である、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
請求項47~66のいずれか1項に記載の方法によって作製される、薬物送達カプセル。
【請求項68】
治療剤をさらに含む、請求項67に記載の薬物送達カプセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年2月8日に出願された米国仮特許出願第62/803,388号の優先権の利益を主張し、この開示は参照することによってその全体が本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、薬物送達組成物、より具体的には、目への治療剤の送達のための1つまたは複数の多層性薬物送達カプセルを含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
加齢黄斑変性(AMD)は、白内障、早産、及び緑内障に続く、世界で4番目に多い失明の一般的な原因である。米国では1100万を超える人々が滲出型AMDと診断される。この数は30年で2倍になるだろうと推定される。したがって、疾患病因を理解し、治療方法を開発するために多くの研究が行われてきた。加齢に伴う血管内皮増殖因子(VEGF)の過剰発現が脈絡膜中の血管新生を刺激し、そのことが、新しく形成された血管の出血及び瘢痕化の間に、網膜への不可逆的損傷を導くことは広く知られる。滲出型AMDのための現在のゴールドスタンダード治療は、VEGFを阻害し、血管形成を防止するために、抗VEGF(ベバシズマブまたはラニビズマブ等)を月1回硝子体内注射することである。しかしながら、頻繁な注射は、多くの場合感染、眼内圧の上昇、及び裂孔原性網膜剥離、そして患者コンプライアンスの問題を導く。
【0004】
最近、目中での長期的な薬物送達のための植込み物及びマイクロ粒子/ナノ粒子等の新規デバイスの報告があった。残念なことに、かかる植込み物は、植込み及び除去のための外科的手順を要求する。さらに、現時点で公知の植込みデバイスは、オフターゲットであり且つ薬物有効性を低下させる傾向がある。マイクロ粒子またはナノ粒子は30ゲージ針による目の中への注射に適切な比較的小さなサイズを有するが、現在のところ記載されたマイクロ粒子またはナノ粒子は、最初の3か月の既知の粒子組成物の生物分解に起因する急速な放出ウィンドウにわたって、治療剤(抗VEGF治療物質等)を放出する。
【0005】
したがって、AMDまたは他の眼科的障害の治療へ向けられた著しい努力にもかかわらず、現在のところ利用可能な治療レジメンの有害な副作用を最小限にする方法及び組成物の不足が依然として存在する。さらに、生物分解性であり且つ硝子体内注射後に9か月またはそれ以上まで薬物放出を制御することができる、薬物送達系及び組成物についての必要性がある。目への治療剤の直接的な送達を要求するAMD及び他の眼疾患の治療のための改善された治療アプローチについての必要性が、依然として存在する。これらの必要性及び他の必要性は本開示によって満たされる。
【発明の概要】
【0006】
本開示の目的(複数可)によれば、本明細書において実施され幅広く記載されるように、本開示は、一態様において、タンパク質治療物質の送達(例えば目へのタンパク質治療物質の硝子体内送達)のための組成物、デバイス、及びプロセスに関する。開示される薬物送達組成物は、二層壁、及びその中に含有される治療剤を有するカプセルを含む。さらなる態様において、本開示は、眼科的な疾患または障害を治療する方法に関する。
【0007】
したがって一態様において、各々が、閉鎖された2つの末端を備えたチューブ形状を有する1つまたは複数のカプセルであって、1つまたは複数のカプセルの各々が多層壁及び少なくとも1つの内腔区画を独立して含む、前記カプセル;及び
各々が、少なくとも1つの内腔区画のうちの1つまたは複数内に最初に存在する、1つまたは複数の治療剤、
を含み;
各々の多層壁が、少なくとも内側層及び外側層を独立して含み;
各々の内側層が、生理的条件下で正味の正電荷を有する第1のポリマーを含み;
各々の外層が、第1のポリマーとは異なる第2のポリマーを独立して含む、
薬物送達組成物が、提供される。
【0008】
いくつかの実施形態において、薬物送達組成物は、2つ以上のカプセルを含み得る。いくつかの実施形態において、異なる治療剤は、2つ以上のカプセルの各々内に最初に存在する。他の実施形態において、同じ治療剤は、2つ以上のカプセルの各々内に最初に存在する。
【0009】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つまたは1つもしくは複数のカプセルは、2つ以上の内腔区画を含む。いくつかの実施形態において、異なる治療剤は、2つ以上の内腔区画の各々内に最初に存在する。他の実施形態において、同じ治療剤は、2つ以上の内腔区画の各々内に最初に存在する。
【0010】
いくつかの態様において、第1のポリマーは、キトサン、ポリエチレンイミン、プロタミン、ポリプロピルイミン、ポリ-L-リジン、ポリ-L-アルギニン、ポリ-D-リジン、ポリ-D-アルギニン、セルロース、デキストラン、ポリ(アミドアミン)、ポリ(2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート)、その誘導体、またはその組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態において、第1のポリマーは、キトサンまたはその誘導体を含み得る。いくつかの実施形態において、第1のポリマーは、約50nm~約1000nmの平均直径を有する繊維を含む。
【0011】
いくつかの態様において、第2のポリマーは、生物分解性ポリマーを含み得る。いくつかの実施形態において、第2のポリマーは、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、ポリ-乳酸(PLA)、ポリ-グリコール酸(PGA)、ポリ-ラクチド-コ-グリコリド(PLGA)、ポリエステル、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ホスファジン)、ポリ(リン酸エステル)、ゼラチン、コラーゲン、ポリエチレングリコール(PEG)、その誘導体、またはその組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、第2のポリマーは、PCLを含む。他の実施形態において、第2のポリマーは、PLAを含む。いくつかの実施形態において、第2のポリマーは、約100nm~約2000nmの平均直径を有する繊維を含む。
【0012】
いくつかの態様において、1つまたは複数のカプセルは各々、約0.1cm~約5cmの長さを独立して有する。いくつかの実施形態において、1つまたは複数のカプセルは各々、約100μm~約2000μmの内径を独立して有する。いくつかの実施形態において、1つまたは複数のカプセルは各々、同じカプセルの内径よりも約50μm~約300μm大きい外径を独立して有する。いくつかの実施形態において、各々の多層壁は、約25μm~約150μmの壁の厚さを有する。いくつかの実施形態において、各々の外側層は、約100nm~約10000nmの平均孔直径を有する孔をさらに含み得る。
【0013】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数の薬物送達カプセルの各々は、約-25mV~約25mVの、pH7.4でのゼータ電位として測定された表面電荷を有する。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の治療剤は各々、約6.0~約7.4のpH範囲内で正味の負電荷を有する。
【0014】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数の治療剤のうちの少なくとも1つは、抗VEGF剤である。いくつかの実施形態において、抗VEGF剤は、治療抗体(例えばベバシズマブ、ラニビズマブ、IBI305、その組み合わせ)である。いくつかの実施形態において、抗VEGF剤は、VEGFデコイ受容体(例えばアフリベルセプト)である。いくつかの実施形態において、抗VEGF剤は、チロシンキナーゼ阻害物質(例えばラパチニブ、スニチニブ、アキシチニブ、パゾパニブ、またはその組み合わせ)である。
【0015】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数の治療剤は、抗炎症剤(シクロスポリン、ステロイドまたは非ステロイド性抗炎症薬等)、抗微生物剤、免疫調節薬、眼圧降下剤、神経保護剤、遺伝子療法、ウイルスベクター療法、α-アドレナリン作用アゴニスト、β-アドレナリン作用アゴニスト、またはその組み合わせを含み得る。
【0016】
別の態様において、治療有効量の本明細書において記載される薬物送達組成物をそれを必要とする対象の目の中へ注射することを含む、対象における眼科的障害を治療する方法が、提供される。いくつかの実施形態において、眼科的障害は、急性黄斑神経網膜症;Behcet病;血管新生(脈絡膜血管新生を包含する);糖尿病性ぶどう膜炎;ヒストプラスマ症;感染(真菌またはウイルスが引き起こす感染等);黄斑変性(滲出型AMD及び非滲出AMD及び滲出AMDを含む、急性黄斑変性(AMD)等);浮腫(黄斑浮腫、類嚢胞黄斑浮腫、及び糖尿病性黄斑浮腫等);多巣性脈絡膜炎;後眼部の部位または位置に影響する眼外傷;眼腫瘍;網膜障害(網膜中心静脈閉塞症、糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病性網膜症を包含する)、増殖性硝子体網膜症(PVR)、網膜動脈閉塞性疾患、網膜剥離、ぶどう膜炎網膜疾患等);交感性眼炎;Vogt Koyanagi-Harada(VKH)症候群;ぶどう膜滲出;眼のレーザー治療によって引き起こされるか、またはそれによって影響を受ける、後眼部病態;光線力学療法、光凝固術、放射線網膜症、網膜上膜障害、網膜静脈分枝閉塞症、前部虚血性視神経症、非網膜症糖尿病性網膜機能不全、網膜色素変性症、がん、及び緑内障によって引き起こされるか、またはそれらによって影響を受ける、後眼部病態を含み得る。いくつかの実施形態において、眼科的障害は、滲出型加齢黄斑変性(滲出型AMD)、血管新生、または黄斑浮腫を含む。いくつかの実施形態において、対象の目の中へ記載される組成物を注射することは、目の硝子体眼房の中への注射を含む。他の実施形態において、対象の目の中へ記載される組成物を注射することは、硝子体内注射、結膜下注射、テノン嚢下注射、球後注射、または脈絡膜上注射を含む。
【0017】
本明細書において記載される薬物送達組成物中で使用される1つまたは複数のカプセルを生成する方法であって、
第1のポリマーの第1の層を伝導性ロッド上に形成し、第1の層の形成が、少なくとも1つの有機溶媒中で第1のポリマーを含む第1の溶液を使用して、エレクトロスピニングすることを含み、エレクトロスピニングが、約10kV~約30kVの電圧差を使用して遂行されること;ならびに
第2のポリマーの第2の層を第1の層上に形成し、第2の層の形成が、第1のポリマー及び任意選択でポロゲンを含む第2の溶液を形成された第1の層の上へエレクトロスピンすることを含み、エレクトロスピニングが、約10kV~約30kVの電圧差を使用して遂行されること、
を含む、前記方法も提供される。
【0018】
(a)開示される薬物送達組成物;(b)滅菌されたパッケージ中の開示される薬物送達組成物;または(c)開示される薬物送達組成物を含む、前充填されたシリンジもしくは針のうちの1つ、及び本明細書において記載される眼科的な疾患または障害を治療する薬物送達組成物を投与するための指示書を含む、キットも開示する。
【0019】
本開示の他の系、方法、特性、及び利点は、以下の図面及び発明を実施するための形態の検討に際して、当業者に明らかであるかまたは明らかになるだろう。すべてのかかる追加の系、方法、特性、及び利点がこの発明を実施するための形態内に包含され、本開示の範囲内であり、添付の特許請求の範囲によって保護されることが意図される。加えて、記載される実施形態のすべての任意選択の好ましい特性及び修飾は、本明細書において教示される本開示のすべての態様において使用可能である。さらに、記載される実施形態のすべての任意選択の好ましい特性及び修飾と同様に、従属請求項の個別の特性も、互いと組み合わせ可能且つ交換可能である。
【0020】
本開示の多くの態様は、以下の図面を参照してより理解され得る。図面中の構成要素は必ずしも一定の比率の縮尺でなく、その代りに本開示の原理を明瞭に例証することに重点が置かれている。さらに、図面中の同様の参照数字は、複数の概観図を通して対応する部分を指定する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】以下の:a)キトサンナノ繊維及びPCLのナノ繊維の2つの層をエレクトロスピニングを使用して、回転ロッド上に収集するステップ;b)二層コートロッドを真空オーブン中で100℃で約3時間焼結するステップ;c)ロッドを除去して中心部が中空の円筒を生成するステップ;d)多孔質構造を塩類溶脱によってPCL層中に生成するステップ;及びe)治療物質をカプセルへ装填し、後続して末端をシールするステップを含む、代表的な開示されるプロセスを示す。次いで調製した二層カプセルは、37℃の適切なバッファー(例えばPBS)の中への薬物放出(ステップf等)の査定等の研究において利用することができるか;または硝子体内注射を経由する好適な標的(例えば目)への装填した薬物の送達(ステップg等)のために使用することができる。
【
図1B】開示される二層カプセルの図解の横断面の表示、及び開示される二層カプセルの硝子体内注射の図解の表示を示す。
【
図2】開示される技法を使用して形成されたキトサン及びPCL繊維マットの代表的な図解の表示を示す(パネルAを参照)。以下の図は代表的な走査型電子顕微鏡写真(SEM)画像も示す。(パネルB)二層キトサン-PCL繊維マットの横断面の代表的なSEM画像;ならびに(パネルC)それぞれ932.57±399.42nm及び331.61±186.19nmの直径のPCLナノ繊維層及びキトサンナノ繊維層の代表的なSEM画像。
【
図3】開示される二層カプセルの代表的な写真画像を示す。図の左側の枠は、2個のカプセル(1つは1.645mmの直径を有し、他方は260μmの直径を有する)の写真画像を示す。図の中央の枠は、260μmの内径のPCL単層カプセルの代表的なSEM画像を示す。右側の枠は、89.85±4.27μmの膜厚のキトサン-PCLの二層カプセルの代表的なSEM画像を示す。右側の枠中の画像は、この代表的な実例において、キトサン繊維マットの層が外側のPCL層へ付着され、キトサン層が壁の全体の厚さの近似で25%を占めることを示す。
【
図4】示された濃度のHEPES塩を使用して調製した開示されるPCL膜の代表的な画像を示し、画像は、開示されるPCL膜の表面または横断面図を図示されるように示す。画像から、HEPESナトリウム塩の比率の増加が、PCL膜に対してより大きな孔をもたらしたことが示される。孔の相互接続は、5.0%を超える塩濃度により、膜の内部に過剰に供給され得る。矢印:塩類溶脱後のPCLフィルムの内部の特徴的な相互接続する孔。各々の画像は、画像の下方左隅に示されるスカラーバーを有する。
【
図5】開示される二層カプセルの特徴評価に係わる画像及びデータを示す。パネルaは、塩類溶脱及び洗浄後の二層構造の代表的なスキームを示す。パネルbは、塩類溶脱の前後の開示される二層膜の代表的なSEM画像を示す。示されるように、多孔質構造は、塩類溶脱、及び飽和重炭酸ナトリウム溶液による洗浄後に失われたキトサン繊維構造によって生成された。多孔質二層構造が、横断面において観察された。パネルcは、塩類溶脱後のキトサン層及びPCL層の代表的なFTIRスペクトルを示す。示されるように、1752cm
-1の有意なピークはPCL中のカルボニル基へ割り当てられた。3478cm
-1の幅広い群はキトサン中のヒドロキシル基であった。
【
図6】開示される二層カプセルからのタンパク質放出に対する多孔質の二層構造の効果に係わるデータを示す。データは、PBS中のインキュベーションから本明細書において記載されるように決定されて、BSAまたはベバシズマブをカプセル化する、代表的な開示されるキトサン-PCL二層カプセル(グラフ凡例中でCh-PCLとラベルされる)及びPCL単層カプセル(グラフ凡例中でPCLとラベルされる)から本明細書において以下で記載されるように得られた。グラフ凡例中の「Ch-PCL」ラベルまたは「PCL」ラベルと共に示されるパーセント値は、二層カプセルまたは単層カプセルを調製するのに使用されたw/v%を示す。パネルaは、1.645mmの内径の二層カプセルからの代表的なBSA放出プロファイル及び260μmの内径の二層カプセルからの代表的なBSA放出プロファイルを示す。パネルbは、1.645mmの内径の二層カプセルからの代表的なベバシズマブ放出プロファイル及び260μmの内径の二層カプセルからの代表的なベバシズマブ放出プロファイルを示す。薬物送達組成物は、各々のタイムポイントで単層カプセルよりも低い累積放出を示す(#=p≦0.05)。データから、塩濃度を増加させることが、各々のタイムポイントでの累積放出の増加と相関したことも示される(*=p≦0.05)。
【
図7】開示される二層カプセルからのタンパク質放出に対する多孔質の二層構造の効果に係わるデータを示す。この図中で、トレンドラインを、示されるように、フィッティングパラメーターによりデータへフィッティングさせる。データは、PBS中のインキュベーションから本明細書において記載されるように決定されて、BSAまたはベバシズマブをカプセル化する、代表的な開示されるキトサン-PCL二層カプセル(グラフ凡例中でCh-PCLとラベルされる)及びPCL単層カプセル(グラフ凡例中でPCLとラベルされる)から本明細書において以下で記載されるように得られた。グラフ凡例中の「Ch-PCL」ラベルまたは「PCL」ラベルと共に示されるパーセント値は、二層カプセルまたは単層カプセルを調製するのに使用されたw/v%を示す。パネルaは、1.645mmの内径の二層カプセルからの代表的なBSA放出プロファイル及び260μmの内径の二層カプセルからの代表的なBSA放出プロファイルを示す。パネルbは、1.645mmの内径の二層カプセルからの代表的なベバシズマブ放出プロファイル及び260μmの内径の二層カプセルからの代表的なベバシズマブ放出プロファイルを示す。データから、開示される二層カプセルがほぼゼロ次放出速度論を達成できることが示される。
【
図8】開示されるカプセルの潜在毒性を査定するためのアッセイスキーム、及びアッセイから得られたデータを示す。パネルaは、直接的接触方法による、ARPE-19細胞を使用するインビトロの細胞毒性を査定するアッセイスキームを示す。パネルbは、直接的接触方法による、10.0%のHEPES塩、7.5%のHEPES塩、及び5.0%のHEPES塩により調製されたカプセルについてのインビトロの毒性データを示す。パネルcは、抽出物曝露方法による、ARPE-19細胞を使用するインビトロの細胞毒性を査定するアッセイスキームを示す。パネルdは、異なる条件により調製されたカプセルの抽出物のインビトロの細胞毒性を示す。異なるタイムポイント及び塩濃度での各々のバーは、3つの独立したサンプルの平均測定値を表わす。エラーバーは標準偏差を示す。上記のように、データは、代表的な開示されるキトサン-PCL二層カプセル(グラフ凡例中でCh-PCLとラベルされる)及びPCL単層カプセル(グラフ凡例中でPCLとラベルされる)を使用して得られた。データから、PCL抽出物またはキトサン-PCL抽出物により処理した細胞の間で細胞生存率に対する有意差は示されず(p>0.05)、そして、経時的な有意な差は観察されなかった(p>0.05)。
【
図9】PCL単層カプセルまたは開示される二層カプセルを使用して送達されるベバシズマブへ曝露されたVEGF処理HUVEC細胞における細胞-細管の長さの阻害に係わる、代表的な蛍光顕微鏡写真画像及びデータを示す。Calcien AMを使用して細胞を標識した。パネルaは、細胞培養培地中での10mgの元のベバシズマブの非存在(左側)及び存在(右側)下における、5ngのVEGFで処理したHUVECを示す、代表的な蛍光画像を示す。データから、対照群へ比較して、ベバシズマブの存在下における細胞の細胞細管の有意な破壊が示される。パネルbは、示されるように1週間、1か月、3か月、及び9か月間の曝露で、260μmの直径のPCL単層薬物送達デバイス及びキトサン-PCL薬物送達デバイスから放出された10mgのベバシズマブへ曝露された細胞の細胞細管の阻害を示す代表的な蛍光画像を示す。パネルcは、ImageJソフトウェアを使用して定量的に分析した、示された群の平均の管の長さの阻害を示す。データを平均±標準偏差、n=3として提示する。データから、単層カプセルから溶出したベバシズマブにより処理した群のHUVECの管の長さの有意差が、二層カプセルからのものに比較して、認められたことが示される(*=p≦0.05)。データから、溶出したベバシズマブのHUVEC管の阻害能力の有意差が、遊離の元のベバシズマブのものに比較して、経時的に観察されたことも示される(#=p≦0.05)。
【
図10】エクスビボのブタの目のモデルの中への代表的な開示される二層カプセルの注射を査定する研究から得られた結果を示す。パネルaは、皮下注射針を経由する硝子体液の中への二層カプセルの注射の図解表示を示す。パネルbは、21ゲージの針中に前装填したカプセルを示し、当該カプセルは、エクスビボのブタの目の中の輪部の3mm後方に注射された(中央の枠を参照)。注射に続いて、エクスビボのブタの目を解剖し、インタクトカプセルが、エクスビボのブタ目の硝子体液中でインタクトであることが観察された(右側の枠を参照)。
【
図11】PCL単層カプセル及び本明細書において記載される二層カプセルの1年間のインキュベーションにわたる生物分解の比較を示す。パネルaは、異なる塩濃度により調製された代表的な走査型電子顕微鏡写真(SEM)画像を示す。PCL膜上の孔のサイズの増加は、9か月後のすべてのサンプルで観察された。断面像(右側の枠を参照)は、カプセルが1年の期間にわたってインタクトなままであったことを示す。パネルbは、二層カプセルの代表的なSEM画像を示す。繊維フレームワークを多孔質のキトサン層中で観察することができた。インタクトな二層構造が断面像から示される(右側の枠を参照)。
【
図12】異なる濃度でPBS中で希釈したベバシズマブのUV-可視光吸収スペクトルを示す。パネルaは、UV-可視光分光法によって測定した、希釈ベバシズマブの吸光度を示す。パネルbは、プレートリーダーによって測定した、ベバシズマブの標準曲線を示す。UV-可視光分光法及びプレートリーダーによって検出できる最少濃度は、5μg/mLである。
【
図13】ELISAによって査定した、ベバシズマブ放出に対する本明細書において記載されるカプセルの多孔質の二層構造の効果を示す。ベバシズマブをカプセル化する本明細書において記載される二層カプセル及びPCL単層カプセルを、PBS中でインキュベーションした。260μmの内径のカプセルについてのベバシズマブ放出プロファイルを得た。開示される二層カプセルは、カプセルの内部のタンパク質を少なくとも9か月間有効に保持し、各々のタイムポイントで単層カプセルよりも低い累積放出を有する(#=p≦0.05)。塩濃度を増加させることも、各々のタイムポイントでの累積放出を増加させる(*=p≦0.05)。ELISAによって取得した放出プロファイルは、UV-可視光分光法によって決定した結果と一致する。
【
図14】凍結乾燥の前後の遊離の元のベバシズマブ、ならびに最初の3か月にわたる単層カプセル及び本明細書において記載される二層カプセルから溶出したベバシズマブの安定性を示す。パネルaは、遊離の元のベバシズマブ、凍結乾燥したベバシズマブ、及びデバイス中のベバシズマブのSEC-HPLCクロマトグラムを示す。パネルbは、生理的温度で1か月及び3か月間インキュベーションした単層カプセル及び二層カプセルから溶出したベバシズマブのSEC-HPLCクロマトグラムを示す。
【
図15】3週間にわたってPBSへ曝露したキトサン-PCL二層カプセルの生物分解を示す。最も多孔質な構造を表わす、10%のHEPES塩により調製した260μmの内径の二層カプセルの代表的なSEM画像が提供される。横断面及び内側画像から、カプセルがPBSへ曝露された場合に3週間後に内側キトサン層を失ったが、キトサン層がPCLによりコートされた場合に生物分解は有意ではなかったことが示される。二層カプセルの厚さは73.23±3.62μmであった。
【0022】
本開示の追加の利点は、続く記載において部分的に説明され、記載から部分的に明白になるか、本開示の実践によって習得され得る。本開示の利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘される要素及び組み合わせを用いて実現及び達成されるだろう。前述の一般的な記載及び以下の詳細な記載の両方は、例示及び説明のみのためであり、特許請求される本開示を制限しないことを理解すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書において開示される多くの修飾及び他の実施形態は、開示される組成物及び方法に係わり、前述の記載及び添付の図面において提示される教示の恩恵を受ける当業者に、思い浮かぶだろう。したがって、本開示は開示される特定の実施形態に限定されないこと、ならびに修飾及び他の実施形態は添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されることを理解すべきである。当業者は、本明細書において記載される態様の多くの変形及び適合を認識するだろう。これらの変形及び適合は、本開示の教示中に含まれ、本明細書の特許請求の範囲によって網羅されることが意図される。
【0024】
特定の用語が本明細書において用いられるが、それらは一般的且つ記載の意味でのみ使用され、限定の目的のためではない。
【0025】
本開示の読了に際して当業者に明らかになるように、本明細書において記載及び図示される各々の個別の実施形態は不連続の構成要素及び特性を有し、それらは本開示の範囲または趣旨から逸脱せずに、他の複数の実施形態のうちの任意のものの特性から容易に分離され得るかまたはそれらと組み合わせられ得る。
【0026】
任意の列挙された方法は、列挙された事象の順序または論理上可能な任意の他の順序で実行され得る。すなわち、別段明確に明示されない限り、本明細書において説明される任意の方法または態様は、そのステップが特定の順序で遂行されることを要求するものとして解釈されるようには一切意図されない。したがって、方法クレームが、ステップが特定の順序に限定されるべきことを、請求項または記載中で具体的に明示しない場合には、いかなる点でも、順序が暗示されることは一切意図されない。これは、解釈のためのあらゆる可能性のある不明確な基準(ステップもしくは動作フローのアレンジに関する論理の問題、文法構成もしくは句読点に由来する平明な意味、または明細書中に記載される態様の数もしくは型が挙げられる)についても当てはまる。
【0027】
本明細書において言及されるすべての出版物は、それらの出版物が引用される方法及び/または材料を開示及び記載するために、参照することによって本明細書に援用される。本明細書において考察される出版物は、本出願の申請日の前のそれらの開示のためにのみ提供される。本明細書におけるいかなるものも、本発明が先行発明のおかげでかかる出版物に先行する権利のないことの承認として解釈されるべきではない。さらに、本明細書において提供される公開日は、実際の公開日とは異なる場合があり、独立した確認を要求し得る。
【0028】
本開示の態様は、特定の法定分類(システム法定分類等)において記載及び請求され得るが、これは便宜上のみのものであり、当業者は、任意の法定分類において各々の本開示の態様が記載及び請求され得ることを理解するだろう。
【0029】
本明細書において使用される用語は特定の態様を記載するためのみの目的であり、限定することは意図されないことも理解すべきである。別段定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語及び科学用語は、開示される組成物及び方法が属する技術分野の当業者によって共通して理解されるものと同じ意味を有する。用語(共通して使用される辞書において定義されたもの等)が明細書及び関連技術の文脈中のそれらの意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書において明確に定義されない限り、理想化されたかまたは過度に形式的な意味で解釈されるべきでないことがさらに理解されるだろう。
【0030】
本開示の様々な態様の記載の前に、以下の定義が提供され、別段の指示のない限り使用されるべきである。追加の用語は、本開示における他の箇所で定義され得る。
【0031】
定義
本明細書において使用される時、「含むこと(comprising)」は、参照されるような明示された特性、整数、ステップ、または構成要素の存在を規定すると解釈されるが、1つまたは複数の特性、整数、ステップ、もしくは構成要素、またはその群の存在または追加を除外するものではない。さらに、「によって(by)」、「含むこと(comprising)」、「含む(comprises)」、「を含む(comprised of)」「包含すること(including)」、「包含する(includes)」、「包含される(included)」、「含むこと(involving)」、「含む(involves)」、「含まれる(involved)」、及び「等(such as)」という用語の各々は、それらのオープンで非限定的な意味で使用され、互換的に使用され得る。さらに、「含むこと(comprising)」という用語は、「~から本質的になること(consisting essentially of)」及び「~からなること(consisting of)」という用語によって網羅される例及び態様を含むことが意図される。同様に、「~から本質的になること」という用語は、「~からなること」という用語によって網羅される例を含むことが意図される。
【0032】
本明細書及び添付の特許請求の範囲中で使用される時、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈による明瞭な別段の定めがない限り、複数の指示物を包含する。したがって例えば、「薬物送達組成物」、「治療剤」、または「臨床状態」への参照は、2つ以上のかかる薬物送達組成物、治療剤、または臨床状態、及び同種のものを包含するがこれらに限定されない。
【0033】
比、濃度、量、及び他の数値データは、本明細書において範囲のフォーマットで表現され得ることに注目されたい。範囲の各々の端点が、他の端点に関連して、及び他の端点から独立して、有意であることがさらに理解されるだろう。本明細書において開示される多数の値があり、各々の値が、値それ自体に加えて、「約」その特定の値としても本明細書において開示されることも理解される。例えば、値「10」が開示されるならば、そのとき「約10」も開示される。範囲は、「約」ある特定の値から、及び/または「約」別の特定の値まで、として本明細書において表現され得る。同様に、先行詞「約」の使用によって値が近似として表現される場合に、特定の値がさらなる態様を形成することが理解されるだろう。例えば、「約10」という値が開示されるならば、そのとき「10」も開示される。
【0034】
範囲が表現される場合に、さらなる態様は、1つの特定の値から、及び/または他方の特定の値までを包含する。例えば、明示された範囲が限界のうちの一方または両方を含む場合に、それらの含まれる限界のいずれかまたは両方を除外する範囲も、本開示中に包含される(例えば語句「x~y」は、「x」から「y」までの範囲と同様に、「x」を超える及び「y」未満の範囲を含む)。範囲は、上限(例えば「約x、y、z、またはそれ未満」)としても表現され得、「約x」、「約y」、及び「約z」の特定の範囲と同様に、「x未満」、「y未満」、及び「z未満」の範囲を含むように解釈されるべきである。同様に、「約x、y、z、またはそれを超える」という語句は、「約x」、「約y」、及び「約z」の特定の範囲と同様に、「xを超える」、「yを超える」、及び「zを超える」範囲を含むように解釈されるべきである。加えて、「『x』~『y』」という語句は、「x」及び「y」が数値である場合に、「約『x』~約『y』」を含む。
【0035】
かかる範囲フォーマットが利便性及び簡潔性のために使用され、したがって、範囲の限界として明示的に列挙された数値を含むだけではなく、あたかも各々の数値及び下位範囲が明示的に列挙されたかのように、その範囲内に網羅されたすべての個別の数値または下位範囲も含むように、柔軟な方式で解釈されるべきであることを理解されたい。例証のために、「約0.1%~5%」の数値範囲は、約0.1%~約5%の明示的に列挙された値を含むだけではなく、示された範囲内の個別の値(例えば約1%、約2%、約3%、約4%)及び下位範囲(例えば約0.5%~約1.1%;約5%~約2.4%;約0.5%~約3.2%、及び約0.5%~約4.4%、ならびに他の可能な下位範囲)も含むように解釈されるべきである。
【0036】
本明細書において使用される時、「約」、「近似で」、「~であるか、または約~である」、及び「実質的に」という用語は、問題になっている量または値が、正確な値、または特許請求の範囲で列挙されるかもしくは本明細書において教示されるものと同等の結果もしくは効果を提供する値であり得ることを意味する。すなわち、量、サイズ、配合、パラメーター、ならびに他の量及び特徴が、正確ではなく、且つ正確である必要がない、が、所望に応じて、反映する耐性、換算係数、四捨五入、測定誤差、及び同種のもの、ならびに同等の結果または効果が得られるような当業者に公知の他の因子を反映して、近似の、及び/またはより大きいかもしくはより小さなものであり得ることが理解される。いくつかの状況において、同等の結果または効果を提供する値は、論理的に決定され得ない。かかる事例において、概して、本明細書において使用される時、別段の指示または暗示のない限り、「約」及び「~であるか、または約~である」は、示される公称値±10%の変動を意味することが理解される。概して、量、サイズ、配合、パラメーター、または他の量もしくは特徴は、「約」、「近似で」、または「~であるか、または約~である」であことが明確に明示されるかどうかにかかわらず、そのようなものである。定量値の前に「約」、「近似で」、または「~であるか、または約~である」が使用される場合に、別段具体的に明示されない限り、パラメーターが特定の定量値それ自体も含むことが理解される。
【0037】
本明細書において使用される時、「有効量」は、細胞、組織、系、動物、またはヒトの有益なまたは所望される生物学的、情緒的、医学的、または臨床的な応答を達成するのに十分な、開示される化合物または本明細書において提供される医薬組成物の量を指し得る。有効量は、1つまたは複数の投与、適用、または投薬量で投与され得る。当該用語は、実質的に正常な生理機能を促進またはそれに回復するのに有効な量も、その範囲内に包含し得る。
【0038】
本明細書において使用される時、「治療有効量」という用語は、所望される治療結果を達成するか、または所望されない症状に対する効果を有するのに十分であるが、概して有害な副作用を引き起こすには不十分な量を指す。任意の特定の患者のための具体的な治療有効用量レベルは、治療されている障害及び障害の重症度;用いられる具体的な組成物;患者の年齢、体重、全体的な健康、性別、及び食餌;投与の時間;投与の経路;用いられる具体的な化合物の排泄率;治療の継続時間;用いられる具体的な化合物と併用してまたは同時に使用される薬物、ならびに医療従事者の知識及び専門技術内の同様の因子、ならびに医学分野において周知であり得るものを包含する多様な因子に依存するだろう。特定の疾患または病態の治療の事例において、いくつかの実例では、所望される応答は、疾患または病態の進行を阻害することであり得る。これは一時的に疾患の進行を遅らせることのみを含み得る。しかしながら、他の実例において、疾患の進行を恒久的に中断することが所望され得る。これは、任意の特定の疾患について当業者に公知のルーチンの診断方法によってモニターされ得る。疾患または病態の治療への所望される応答は、疾患または病態の発症を遅延させることまたは場合によっては発症を予防することであり得る。
【0039】
例えば、所望される治療効果を達成するために要求されるものよりも低いレベルで化合物の用量を開始し、所望される効果が達成されるまで徐々に投薬量を増加させることは、十分に当業者の技能の範囲内にある。所望されるならば、有効な1日の用量は、投与の目的のために複数の用量へと分割され得る。それゆえ、単回用量組成物はかかる量またはその約数を含有して、1日の用量を構成し得る。投薬量は、任意の禁忌の事象において個別の医師によって調整され得る。本発明の薬理学的薬剤の最大用量(単独でまたは他の治療剤と組み合わせて)、すなわち妥当な医学的判断に従って最も高い安全量が使用されることは、概して好ましい。しかしながら、患者が、医学的理由、精神的理由、または実際上他の理由のために、より低い用量または耐用量を主張し得ることは当業者によって理解されるだろう。
【0040】
開示される薬物送達組成物の治療有効用量への応答は、治療または医薬物の生理的作用(治療または薬理学的薬剤の投与に続く疾患症状の減少または欠如等)の決定によって測定され得る。他のアッセイは当業者に公知であり、応答のレベルの測定のために用いられ得る。治療の量は、例えば開示される化合物及び/または医薬組成物の量を増加または減少させることによって、投与された開示される化合物及び/または医薬組成物を変化させることによって、投与経路を変化させることによって、投薬タイミングを変化させることによって等で、変動され得る。投薬量は変動し得るとともに、1または複数の用量投与で1または複数日間毎日投与され得る。所与のクラスの医薬製品についての適切な投薬量についての文献中で、指針を見出すことができる。
【0041】
本明細書において使用される時、「予防有効量」という用語は、疾患または病態の発症または開始の予防のために有効な量を指す。
【0042】
本明細書において使用される時、「予防する」または「予防」という用語は、何かが起こることを、特に事前の行為によって、排除するか、回避するか、未然に防ぐか、機先を制するか、停止するか、または妨害することを指す。低減する、阻害する、または予防する、が本明細書において使用される場合に、別段具体的に示されない限り、他の2つの言葉の使用も明確に開示されることが理解される。
【0043】
本明細書において使用される時、「任意選択の」または「任意選択で」という用語は、後続して記載される事象または状況が起こり得るかまたは起こり得ないこと、ならびに当該記載が、前記事象または状況が起こる実例及びそれが起こらない実例を包含することを意味する。
【0044】
本明細書において使用される時、「治療剤」は、局所的及び/または全身的な作用で投与される対象に対して、生物学的に活性があり得るか、あるいはそうでなければ、薬理学的、免疫原性、生物学的、及び/または生理的な効果を誘導し得る、任意の物質、化合物、分子、及び同種のものを指し得る。治療剤は、一次活性剤、または、換言すれば、組成物の効果の全体もしくは一部が帰属する組成物の構成要素(複数可)であり得る。治療剤は、二次治療剤、あるいは、換言すれば、組成物の追加の部分及び/または他の効果が帰属する組成物の構成要素(複数可)であり得る。したがって当該用語は、薬物、ワクチン、及び生物医薬品(タンパク質、ペプチド、ホルモン、核酸、遺伝子コンストラクト、及び同種のもの等の分子を包含する)であると伝統的に見なされる、化合物または化学物質を網羅する。治療剤の例は、Merck Index(14th edition),the Physicians’ Desk Reference(64th edition)及びThe Pharmacological Basis of Therapeutics(12th edition)等の周知の文献参照中で記載され、当該例としては、医薬品;ビタミン;ミネラルサプリメント;疾患または病気の治療、予防、診断、治癒、または緩和のために使用される物質;身体の構造もしくは機能に影響する物質、または生理的環境に配置された後に生物学的に活性になるかもしくはより活性になるプロドラッグが限定されずに挙げられる。例えば、「治療剤」という用語は、アジュバント;抗感染物質(抗生物質及び抗ウイルス剤等);鎮痛物質及び鎮痛物質の組み合わせ、食欲減退物質、抗炎症剤、抗癲癇物質、局所及び全身の麻酔物質、催眠物質、鎮静物質、抗精神病剤、神経弛緩剤、抗鬱物質、抗不安物質、アンタゴニスト、ニューロン遮断剤、抗コリン作用剤及びコリン様作用剤、抗ムスカリン作用剤及びムスカリン作用剤、抗アドレナリン作用物質、抗不整脈物質、降圧剤、ホルモン及び、栄養物質、抗関節炎物質、抗喘息剤、抗痙攣物質、抗ヒスタミン物質、抗嘔吐物質、抗新生物物質、抗掻痒物質、解熱物質;抗発作物質、循環器官用薬(カルシウムチャンネル遮断物質、β遮断物質、βアゴニスト及び抗不整脈物質が挙げられる)、抗高血圧物質、利尿物質、血管拡張物質;中枢神経興奮物質;感冒薬;充血除去物質;診断用物質;ホルモン;骨成長刺激物質及び骨吸収阻害物質;免疫抑制物質;筋弛緩物質;精神刺激物質;鎮静物質;トランキライザー;タンパク質、ペプチド、及びその断片(天然に存在するか、化学的に合成されるか、または組み換えにより産生されるかにかかわらず);ならびに核酸分子(リボヌクレオチド(RNA)またはデオキシリボヌクレオチド(DNA)のいずれかの2つ以上のヌクレオチドのポリマー形態であり、二本鎖及び一本鎖の分子、遺伝子コンストラクト、発現ベクター、アンチセンス分子、ならびに同種のものが挙げられる)、小分子(例えばドキソルビシン)、及び他の生物学的に活性のあるマクロ分子(例えばタンパク質及び酵素)が挙げられるがこれらに限定されない、主要な治療領域のすべてにおける使用のための、化合物または組成物を包含する。薬剤は、獣医学を含む医学応用、農業(植物によるもの等)、そして他の領域で使用される生物学的活性剤であり得る。治療剤という用語は、医薬品;ビタミン;ミネラルサプリメント;疾患もしくは病気の治療、予防、診断、治癒、もしくは緩和のために使用される物質;または身体の構造もしくは機能に影響する物質;または所定の生理的環境に配置された後に生物学的に活性になるかもしくはより活性になるプロドラッグも限定されずに包含する。
【0045】
治療剤の本明細書における開示が、治療剤の薬学的に許容される塩、薬学的に許容されるエステル、薬学的に許容されるアミド、プロドラッグ形態、及び誘導体も開示したことが理解される。
【0046】
「薬学的に許容される塩」という用語は、本明細書において使用される時、治療有効量において投与された場合に、生物学的系によって忍容されるか、または対象によって忍容されるか、または生物学的系によって忍容され且つ対象によって忍容される、酸または塩基により調製される、活性のある主剤の塩を意味する。本開示の化合物が比較的酸性の官能基を含有する場合に、塩基付加塩は、液体を加えないで、または好適な不活性溶媒中で、のいずれかで、かかる化合物の中性形態を十分な量の所望される塩基と接触させることによって得ることができる。薬学的に許容される塩基付加塩の例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、有機アミノ塩、マグネシウム塩、リチウム塩、ストロンチウム塩、または類似する塩が挙げられるがこれらに限定されない。本開示の化合物が比較的塩基性の官能基を含有する場合に、酸付加塩は、液体を加えないで、または好適な不活性溶媒中で、のいずれかで、かかる化合物の中性形態を十分な量の所望される酸と接触させることによって得ることができる。薬学的に許容される酸付加塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸(monohydrogencarbonic)、リン酸、一水素リン酸(monohydrogenphosphoric)、二水素リン酸(dihydrogenphosphoric)、硫酸、一水素硫酸(monohydrogensulfuric)、ヨウ化水素酸、または亜リン酸、及び同種のもののような無機酸に由来するもの、そして酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、コルク酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸、及び同種のもののような比較的非毒性の有機酸に由来する塩が挙げられるがこれらに限定されない。アルギニン酸塩及び同種のもの等のアミノ酸の塩、ならびにグルクロン酸またはガラクツノリン酸(galactunoric acid)、及び同種のもののような有機酸の塩も包含される。
【0047】
「薬学的に許容されるエステル」という用語は、インビボで加水分解し、ヒト身体中で容易に分解して親化合物またはその塩を残すものを含む、本開示の化合物のエステルを指す。本開示の薬学的に許容される非毒性エステルの例としては、C1~C6アルキルエステル及びC5~C7シクロアルキルエステルが挙げられるが、C1~C4アルキルエステルが好ましい。開示される化合物のエステルは、従来の方法に従って調製され得る。薬学的に許容されるエステルは、ヒドロキシ基を含有する化合物を、酸及びアルキルカルボキシル酸(酢酸等)、または酸及びアリールカルボキシル酸(安息香酸等)と反応させることによって、ヒドロキシ基へ付加され得る。カルボキシル酸基を含有する化合物の事例において、薬学的に許容されるエステルは、化合物を、トリエチルアミン及びハロゲン化アルキル等の塩基と(例えばヨウ化メチル、ヨウ化ベンジル、ヨウ化シクロペンチル、またはアルキルトリフレートと)、反応させることによって、カルボキシル酸基を含有する化合物から調製される。エステルは、化合物を、酸(塩酸等)及びアルコール(エタノールまたはメタノール等)と反応させることによっても調製され得る。
【0048】
「薬学的に許容されるアミド」という用語は、アンモニアに由来する本開示の非毒性アミド(第一級C1~C6アルキルアミン及び第二級C1~C6ジアルキルアミン)を指す。第二級アミンの事例において、アミンは、1つの窒素原子を含有する5員または6員のヘテロ環の形態でもあり得る。アンモニアに由来するアミド(C1~C3アルキル第一級アミド及びC1~C2ジアルキル第二級アミド)が好ましい。開示される化合物のアミドは、従来の方法に従って調製され得る。薬学的に許容されるアミドは、アミノ基を含有する化合物を、無水アルキル、無水アリール、ハロゲン化アシル、またはハロゲン化アロイルと、反応させることによって、第一級アミン基または第二級アミン基を含有する化合物から調製され得る。カルボキシル酸基を含有する化合物の事例において、薬学的に許容されるアミドは、化合物を、塩基(トリエチルアミン等)、脱水剤(ジシクロヘキシルカルボジイミドまたはカルボニルジイミダゾール等)、及びアルキルアミン(ジアルキルアミン)と(例えばメチルアミン、ジエチルアミン、及びピペリジンと)、反応させることによって、カルボキシル酸基を含有する化合物から調製される。アミドは、化合物を、酸(硫酸等)及びアルキルカルボキシル酸(酢酸等)、または酸及びアリールカルボン酸(モレキュラーシーブを添加する等の脱水条件下の安息香酸等)と、反応させることによっても調製され得る。組成物は、本開示の化合物を薬学的に許容されるプロドラッグの形態で含有し得る。
【0049】
「薬学的に許容されるプロドラッグ」または「プロドラッグ」という用語は、妥当な医学的判断の範囲内で、不適当な毒性、刺激、アレルギー反応、及び同種のもの無しに、ヒト及び下等動物の組織と接触させる使用に好適であり、合理的なベネフィット/リスク比で釣り合い、それらの意図される使用に有効な、本開示の化合物のプロドラッグを表わす。本開示のプロドラッグは、例えば血液中の加水分解によって、開示される化合物の構造を有する親化合物へ、インビボで急速に形質転換され得る。詳細な考察は、T.Higuchi and V.Stella,Pro-drugs as Novel Delivery Systems,V.14 of the A.C.S.Symposium Series、及びEdward B.Roche,ed.,Bioreversible Carriers in Drug Design,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press(1987)中で提供される。
【0050】
本明細書において使用される時、「キット」は、キットを構成する少なくとも2つの構成要素の集合を意味する。構成要素は、一緒に、所与の目的のための機能単位を構成する。個別のメンバーの構成要素は、物理的に一緒にまたは別々にパッケージングされ得る。例えば、キットを使用するための指示書を含むキットは、他の個別のメンバー構成要素と共に指示書を物理的に含んでも含まなくてもよい。その代りに、指示書は、紙形態、またはコンピューター可読メモリーデバイス上に供給され得るか、もしくはインターネットウェブサイトからダウンロードされ得るか、もしくは記録された体裁としての電子形態のいずれかで、分離したメンバー構成要素として供給され得る。
【0051】
本明細書において使用される時、「指示書(複数可)」は、キットへ係わる関連する材料または方法論を記載する文書を意味する。これらの材料は、以下の:背景情報、構成要素及びそれらの入手情報のリスト(購入情報等)、キットの使用のための簡潔なまたは詳細なプロトコール、トラブルシューティング、参照文献、テクニカルサポート、ならびに他の関係書類のうちの任意の組み合わせを含み得る。指示書は、紙形態、またはコンピューター可読メモリーデバイス上に供給され得るか、もしくはインターネットウェブサイトからダウンロードされ得るか、もしくは記録された体裁としての電子形態のいずれかとして、キットと共に、または分離したメンバー構成要素として供給され得る。指示書は1つまたは複数の文書を含むことができ、今後の改訂版を包含するように意図される。
【0052】
本明細書において互換的に使用される時、「対象」、「個体」、または「患者」は、哺乳動物等の脊椎動物生物体(例えばヒト)を指し得る。「対象」は、細胞、細胞の集団、組織、器官、または生物体、好ましくはヒト及びその構成物も指し得る。
【0053】
本明細書において使用される時、「治療すること(treating)」及び「治療(treatment)」という用語は、概して所望される薬理学的効果及び/または生理的効果を得ることを指し得る。効果は、疾患、症状またはその病態(眼科的障害等)を防止すること、または部分的に防止することに関して、予防的であり得るが必ずしもそうである必要はない。効果は、疾患、病態、症状、または疾患、障害、もしくは病態に起因する有害効果の、部分的または完全な治癒に関して治療的であり得る。「治療(treatment)」という用語は、本明細書において使用される時、対象(特にヒト)における眼科的障害の任意の治療を含み得るとともに、以下の:(a)疾患への素因があり得るが、まだそれを有すると診断されていない対象において疾患が起こることを予防すること;(b)疾患を阻害すること、すなわちその発症を阻止すること;ならびに(c)疾患を軽減するここと、すなわち疾患及び/または症状または病態を緩和または寛解することのうちの任意の1つまたは複数を含み得る。「治療(treatment)」という用語は、本明細書において使用される時、治療処置単独、予防処置単独、または治療処置及び予防処置の両方を指し得る。治療を必要とするもの(それを必要とする対象)としては、既に障害の有るもの及び/または障害が予防されるべきものが挙げられ得る。本明細書において使用される時、「治療すること(treating)」という用語は、疾患、障害、または病態を阻害すること(例えばその進行を妨げること);及び疾患、障害、または病態を軽減すること(例えば疾患、障害及び/または病態の退行を引き起こすこと)を包含し得る。疾患、障害、または病態の治療は、たとえ根本にある病態生理が影響されなくても、特定の疾患、障害、または病態の少なくとも1つの症状を寛解すること(例えばたとえかかる薬剤が疼痛の原因を治療しなくても、鎮痛剤の投与によって対象の疼痛を治療すること等)を包含し得る。
【0054】
本明細書において使用される時、「用量」、「単位用量」、または「投薬量」は、対象における使用に好適な物理的に不連続の単位を指し、各々の単位は、その投与に付随して所望される応答(複数可)を産生するように計算された、あらかじめ決定された量の開示される化合物及び/またはその医薬組成物を含有し得る。
【0055】
本明細書において使用される時、「治療の(therapeutic)」は、疾患、障害、病態、または副作用を、治療、治癒、及び/または寛解すること、あるいは疾患、障害、病態、または副作用の進行の速度を減少させることを指し得る。
【0056】
本明細書において使用される時、化合物(有機化合物を包含する)についての命名法は、一般的な名称、IUPAC、IUBMB、またはCASの推奨を命名法について使用して与えられ得る。1つまたは複数の立体化学特性が存在する場合に、立体化学についてのCahn-Ingold-Prelog則は、立体化学的優先順位、E/Z指定、及び同種のものを表記するために用いられ得る。当業者は、名称が与えられれば、命名規則を使用する化合物構造の体系的低減によって、またはCHEMDRAW(商標)(Cambridgesoft Corporation、U.S.A.)等の商業的に入手可能なソフトウェアによって、化合物の構造を容易に確かめることができる。
【0057】
別段の定めのない限り、本明細書において参照される温度は、大気圧(すなわち1気圧)に基づく。
【0058】
治療的または臨床的な有用性を有する薬物送達組成物が、本明細書において記載される。開示される薬物送達組成物を調製または作製する方法も、本明細書において記載される。開示される薬物送達組成物をそれを必要とする対象へ投与する方法も、本明細書において記載される。いくつかの態様において、対象は、臨床状態または病変(眼科的障害等)を有し得る。本開示の他の組成物、化合物、方法、特性、及び利点は、以下の図面、発明を実施するための形態、及び実施例の検討に際して、当業者に明らかであるかまたは明らかになるだろう。すべてのかかる追加の組成物、化合物、方法、特性、及び利点がこの発明を実施するための形態内に包含され、本開示の範囲内であることが意図される。
【0059】
薬物送達組成物
血管内皮増殖因子(VEGF)は異常な血管形成に関与する必須の調節因子であり、それは、迅速な腫瘍増殖及び滲出型加齢黄斑変性(AMD)の形成を支援する(Holmes,D.I.R.and I.Zachary,The vascular endothelial growth factor(VEGF)family:angiogenic factors in health and disease.Genome biology,2005.6(2):p.209-209;Shibuya,M.,Vascular Endothelial Growth Factor(VEGF)and Its Receptor(VEGFR)Signaling in Angiogenesis:A Crucial Target for Anti- and Pro-Angiogenic Therapies.Genes & cancer,2011.2(12):p.1097-1105;及びFerrara,N.,Role of vascular endothelial growth factor in the regulation of angiogenesis.Kidney International,1999.56(3):p.794-814を参照)。抗血管形成の戦略が、滲出型AMDを遅延させるために提案された(Ferrara,N.,et al.,Discovery and development of bevacizumab,an anti-VEGF antibody for treating cancer.2004.3(5):p.391;及びNiu,G.and X.Chen,Vascular endothelial growth factor as an anti-angiogenic target for cancer therapy.Current drug targets,2010.11(8):p.1000-1017を参照)。ヒト化モノクローナル抗体(抗VEGF)は、滲出型AMDの適応外使用の治療のために眼科において使用されている(Ferrara,N.,et al.,Discovery and development of bevacizumab,an anti-VEGF antibody for treating cancer.2004.3(5):p.391;及びPresta,L.G.,et al.,Humanization of an anti-vascular endothelial growth factor monoclonal antibody for the therapy of solid tumors and other disorders.1997.57(20):p.4593-4599を参照)。
【0060】
この加齢関連網膜疾患の治療は、現在のところ進行を遅延または中断するための抗血管形成剤の使用に依存する。抗VEGF治療物質(ベバシズマブ及びラニビズマブ等)の硝子体内注射は、滲出型AMDのための現在のゴールドスタンダード治療を構成し、VEGFによる、網膜下脈絡膜血管新生(CNV)の開始、ならびに新規に形成された血管の出血及び瘢痕化によって引き起こされる不可逆的網膜損傷を予防する(Delplace,V.,S.Payne,and M.J.J.o.C.R.Shoichet,Delivery strategies for treatment of age-related ocular diseases:From a biological understanding to biomaterial solutions.2015.219:p.652-668;及びOhr,M.and P.K.J.E.o.o.p.Kaiser,Intravitreal aflibercept injection for neovascular(wet)age-related macular degeneration.2012.13(4):p.585-591を参照)。ベバシズマブは、費用が比較的低いので、例えば滲出型AMDの治療に広く使用されている。しかしながら、これらのタンパク質治療物質は硝子体液中での半減期が短いので、多くの場合、目中での実効性を維持するために頻繁な(最大月1回の)硝子体内注射を要求する(Hard,A.L.and A.J.A.p.Hellstrom,On safety,pharmacokinetics and dosage of bevacizumab in ROP treatment-a review.2011.100(12):p.1523-1527;及びStewart,M.W.,et al.,Pharmacokinetic rationale for dosing every 2 weeks versus 4 weeks with intravitreal ranibizumab,bevacizumab,and aflibercept(vascular endothelial growth factor Trap-eye).Retina,2012.32(3):p.434-457を参照)。残念なことに、この様式は、頻繁に疼痛、感染、眼内炎、眼内圧の上昇、炎症、網膜剥離、及び白内障形成を包含する副作用をもたらす(Sampat,K.M.and S.J.J.C.o.i.o.Garg,Complications of intravitreal injections.2010.21(3):p.178-183を参照)。治療への主要な障壁は各々の注射に付随する高費用であり、患者及び家族に月1回の治療を受けるという苦労を課す(Heimes,B.,et al.,Compliance von Patienten mit altersabhangiger Makuladegeneration unter Anti-VEGF-Therapie.Der Ophthalmologe,2016.113(11):p.925-932を参照)。したがって、滲出型AMDのためのより容易且つより効率的な治療についての明瞭な必要性が存在する。
【0061】
植込み及び粒子の形態の従来の送達系は、可能なAMD治療のための制御放出を達成するために開発されている(Delplace,V.,S.Payne,and M.J.J.o.C.R.Shoichet,Delivery strategies for treatment of age-related ocular diseases:From a biological understanding to biomaterial solutions.2015.219:p.652-668;Radhakrishnan,K.,et al.,Protein delivery to the back of the eye:barriers,carriers and stability of anti-VEGF proteins.2017.22(2):p.416-423;Imperiale,J.C.,G.B.Acosta,and A.J.J.o.C.R.Sosnik,Polymer-based carriers for ophthalmic drug delivery.2018;及びLee,S.S.,et al.,Biodegradable implants for sustained drug release in the eye.2010.27(10):p.2043-2053を参照)。マイクロ粒子/ナノ粒子ベースの系に比較して、植込みは、より大きなサイズに起因してより高い安定性及び薬物ペイロードを有する(Kim,Y.C.,et al.,Ocular delivery of macromolecules.Journal of Controlled Release,2014.190:p.172-181を参照)。しかしながら、大部分の植込みベースの治療は、注射に関する困難が付随し、非生物分解性の眼内レンズについては、植込み及び除去のための追加の外科手術が要求される(Silva,G.R.d.,et al.,Implants as drug delivery devices for the treatment of eye diseases.Brazilian Journal of Pharmaceutical Sciences,2010.46:p.585-595を参照)。これらには、術後合併症そして費用の増加が付随する。加えて、粒子または植込みのいずれかからの長期的な継続放出は、不十分な物理的及び化学的な薬物保持に起因して難しかった。例えば、(乳酸-グリコール酸)コポリマー(PLGA)(薬物送達のために最も一般的に使用されるポリマーのうちの1つ)は、迅速な加水分解を特徴とし、多くの場合最大90日の治療的放出を導く(Li,F.,et al.,Controlled release of bevacizumab through nanospheres for extended treatment of age-related macular degeneration.2012.6:p.54;及びSousa,F.,et al.,A new paradigm for antiangiogenic therapy through controlled release of bevacizumab from PLGA nanoparticles.2017.7(1):p.3736を参照)。追加の欠点としては、炎症を誘導し、異物反応を悪化させ得る酸性の副産物の形成が挙げられる(Lu,L.,M.J.Yaszemski,and A.G.J.B.Mikos,Retinal pigment epithelium engineering using synthetic biodegradable polymers.2001.22(24):p.3345-3355を参照)。
【0062】
本明細書において、治療剤(例えばベバシズマブ)により装填された注射可能で生物分解性の多層のカプセルを含む薬物送達組成物が、従来から利用可能な注射可能薬物送達デバイスよりも高い薬物装填率及びより長期的な薬物放出継続期間の達成のために開示される。高度に持続可能且つ制御可能な薬物放出を達成するために、例えばナノ多孔性PCL外側シェル及びキトサン内側層を含んで、それぞれ物理的なトラッピング及び静電気のベースの化学吸収を達成する薬物送達組成物が、本明細書において開示される。少なくとも1年の長期的な薬物放出のために十分な治療物質を装填するために、二層ハイブリッドシェルによってカプセル化された中空構造が利用された。より具体的には、全体の薬物送達組成物は、エレクトロスピニング、焼結、及び塩類溶脱を含む材料加工技術を組み合わせることによって調製される。開示される方法は、高アスペクト比を備えた中心部が中空の円筒状マイクロロッドを提供して、硝子体内植込み送達のために21ゲージまたはそれより小さい針を経由する注射実行可能性を可能にする。開示される方法を使用してカプセルの化学的及び物理的な構造を最適化することによって、開示される薬物送達組成物を使用して10か月を上回る間タンパク質治療物質の安定的且つ制御された放出を得ることができる。小さいゲージの針を介する注射の頻度を低減することによって、開示される薬物送達組成物は、滲出型AMDの患者の生活の質を改善し得る可能性がある。
【0063】
したがって一態様において、各々が、閉鎖された2つの末端を備えたチューブ形状を有する1つまたは複数のカプセルであって、1つまたは複数のカプセルの各々が多層壁及び少なくとも1つの内腔区画を独立して含む、前記カプセル;及び
各々が、少なくとも1つの内腔区画のうちの1つまたは複数内に最初に存在する、1つまたは複数の治療剤、
を含み、
各々の多層壁が、少なくとも内側層及び外側層を独立して含み;
各々の内側層が、生理的条件下で正味の正電荷を有する第1のポリマーを独立して含み;
各々の外側層が、第1のポリマーとは異なる第2のポリマーを独立して含む、
薬物送達組成物が、提供される。
【0064】
いくつかの実施形態において、薬物送達組成物は、2つ以上のカプセル(例えば2つのカプセル、3つのカプセル、4つのカプセル、5つのカプセル、6つのカプセル、7つのカプセル、8つのカプセル、9つのカプセル、10のカプセル、またはそれ以上)を含み得る。かかる実施形態において、2つ以上のカプセルは、各々のカプセルの多層壁について同じ組成物を含み得るか、またはそれらの組成物で異なり得る。いくつかの実施形態において、同じ治療剤または異なる治療剤は、2つ以上のカプセルの各々内に最初に存在し得る。
【0065】
いくつかの実施形態において、薬物送達組成物中の各々のカプセルは、2つ以上の内腔区画(例えば2つの内腔区画、3つの内腔区画、4つの内腔区画、またはそれ以上)を独立して含み得る。いくつかの実施形態において、同じ治療剤または異なる治療剤は、単一カプセル内の2つ以上の内腔区画の各々内に最初に存在し得る。
【0066】
いくつかの実施形態において、各々のカプセルは、約0.1cm~約5cm(例えば0.5cm~約3cm、または1cm~約3cm)の長さを独立して有する。いくつかの実施形態において、各々のカプセルは、約0.1cm~5cm、0.5cm~5cm、1cm~5cm、2cm~5cm、3cm~5cm、4cm~5cm、0.1cm~4cm、0.5~4cm、1cm~4cm、2cm~4cm、3cm~4cm、0.1cm~3cm、0.5cm~3cm、1cm~3cm、2cm~3cm、0.1cm~2cm、0.5cm~2cm、1cm~2cm、0.1cm~1cm、0.5~1cm、または0.1~0.5cmの長さを独立して有する。
【0067】
いくつかの実施形態において、多層壁は、約25μm~約150μm(例えば約70μm~約100μm、約75μm~約95μm、または約80μm~約90μm)の壁の厚さを有する。いくつかの実施形態において、多層壁は、約50μm~150μm、約55μm~150μm、約60μm~約150μm、約65μm~約150μm、約70μm~約150μm、約75μm~約150μm、約80μm~約150μm、約90μm~約150μm、約95μm~約150μm、約100μm~約150μm、約110μm~約150μm、約125μm~約150μm、約140μm~約150μm、約50μm~140μm、約55μm~140μm、約60μm~約140μm、約65μm~約140μm、約70μm~約140μm、約75μm~約140μm、約80μm~約140μm、約90μm~約140μm、約95μm~約140μm、約100μm~約140μm、約110μm~約140μm、約125μm~約140μm、約50μm~125μm、約55μm~125μm、約60μm~約125μm、約65μm~約125μm、約70μm~約125μm、約75μm~約125μm、約80μm~約125μm、約90μm~約125μm、約95μm~約125μm、約100μm~約125μm、約110μm~約125μm、約50μm~110μm、約55μm~110μm、約60μm~約110μm、約65μm~約110μm、約70μm~約110μm、約75μm~約110μm、約80μm~約110μm、約90μm~約110μm、約95μm~約110μm、約100μm~約110μm、約50μm~100μm、約55μm~100μm、約60μm~約100μm、約65μm~約100μm、約70μm~約100μm、約75μm~約100μm、約80μm~約100μm、約90μm~約100μm、約95μm~約100μm、約50μm~95μm、約55μm~95μm、約60μm~約95μm、約65μm~約95μm、約70μm~約95μm、約75μm~約95μm、約80μm~約95μm、約90μm~約95μm、約50μm~90μm、約55μm~90μm、約60μm~約90μm、約65μm~約90μm、約70μm~約90μm、約75μm~約90μm、約80μm~約90μm、約50μm~80μm、約55μm~80μm、約60μm~約80μm、約65μm~約80μm、約70μm~約80μm、約75μm~約80μm、約50μm~75μm、約55μm~75μm、約60μm~約75μm、約65μm~約75μm、約70μm~約75μm、約50μm~70μm、約55μm~70μm、約60μm~約70μm、約65μm~約70μm、約50μm~65μm、約55μm~65μm、約60μm~約65μm、約50μm~60μm、約55μm~60μm、及び約50μm~約55μmの壁の厚さを有する。
【0068】
いくつかの実施形態において、内側層の厚さは、約1μm~約100μmの範囲であり得る。いくつかの実施形態において、内側層の厚さは、約100nm~約990nm(例えば約100nm、200nm、300nm、400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、900nm、または990nm)の範囲であり得る。
【0069】
いくつかの実施形態において、外側層の厚さは、約1μm~約100μmの範囲であり得る。いくつかの実施形態において、外側層の厚さは、約100nm~約990nm(例えば約100nm、200nm、300nm、400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、900nm、または990nm)の範囲であり得る。
【0070】
いくつかの実施形態において、薬物送達カプセルのチューブ形状は、約100μm~約1000μm(例えば約100μm~約1000μm、約100μm~約500μm、または100μm~約300μm)の内径を有する。いくつかの実施形態において、薬物送達カプセルのチューブ形状は、約100μm~約2000μm、200μm~約2000μm、約300μm~約2000μm、約400μm~約2000μm、約500μm~約2000μm、約600μm~約2000μm、約700μm~約2000μm、約800μm~約2000μm、約900μm~約2000μm、約1000μm~約2000μm、約1500μm~約2000μm、約100μm~約1500μm、200μm~約1500μm、約300μm~約1500μm、約400μm~約1500μm、約500μm~約1500μm、約600μm~約1500μm、約700μm~約1500μm、約800μm~約1500μm、約900μm~約1500μm、約1000μm~約1500μm、約100μm~約1000μm、200μm~約1000μm、約300μm~約1000μm、約400μm~約1000μm、約500μm~約1000μm、約600μm~約1000μm、約700μm~約1000μm、約800μm~約1000μm、約900μm~約1000μm、約100μm~約900μm、200μm~約900μm、約300μm~約900μm、約400μm~約900μm、約500μm~約900μm、約600μm~約900μm、約700μm~約900μm、約800μm~約900μm、約100μm~約800μm、200μm~約800μm、約300μm~約800μm、約400μm~約800μm、約500μm~約800μm、約600μm~約800μm、約700μm~約800μm、約100μm~約700μm、200μm~約700μm、約300μm~約700μm、約400μm~約700μm、約500μm~約700μm、約600μm~約700μm、約100μm~約600μm、200μm~約600μm、約300μm~約600μm、約400μm~約600μm、約500μm~約600μm、約100μm~約500μm、200μm~約500μm、約300μm~約500μm、約400μm~約500μm、約100μm~約400μm、200μm~約400μm、約300μm~約400μm、約100μm~約300μm、200μm~約300μm、及び約100μm~約200μmの内径を有する。いくつかの実施形態において、チューブ形状は、内径よりも約100μm~約300μm大きい(例えば内径よりも約100μm~約300μm、150μm~約300μm、200μm~約300μm、約250μm~約300μm、約100μm~約250μm、約150μm~約250μm、約200μm~約250μm、約100μm~約200μm、約150μm~約200μm、または約100μm~約150μm大きい)外径を有する。
【0071】
いくつかの実施形態において、第1のポリマーは、キトサン、ポリエチレンイミン、プロタミン、ポリプロピルエニミン(polypropylenimine)、ポリ-L-リジン、ポリ-L-アルギニン、ポリ-D-リジン、ポリ-D-アルギニン、セルロース、デキストラン、ポリ(アミドアミン)、ポリ(2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート)、その誘導体、またはその組み合わせを含み得る。
【0072】
いくつかの実施形態において、第1のポリマーは、キトサンまたはその誘導体を含む。キトサンは、約60%~約90%の脱アセチル化度;少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%の脱アセチル化度を有し得る。
【0073】
いくつかの実施形態において、第1のポリマーは、約50kDa~約500kDa(例えば約100kDa~約500kDa、約100kDa~約400kDa、約200kDa~約400kDa、約300kDa~約400kDa、または約310kDa~約375kDa)の分子量を有する。いくつかの実施形態において、第1のポリマーは、約10kDa以上、(例えば約15kDa以上、約20kDa以上、約30kDa以上、約40kDa以上、約50kDa以上、約60kDa以上、約70kDa以上、約90kDa以上、約90kDa以上、または約100kDa以上)の分子量を有する。
【0074】
いくつかの実施形態において、内側層中で使用される第1のポリマーは、繊維を含む。いくつかの実施形態において、繊維は、約50nm~約1000nm(例えば約100nm~約400nm)の直径を有し得る。いくつかの実施形態において、繊維は、約50nm~約1000nm、約100nm~約1000nm、約200nm~約1000nm、約400nm~約1000nm、約600nm~約1000nm、約800nm~約1000nm、約50nm~約800nm、約100nm~約800nm、約200nm~約800nm、約400nm~約800nm、約600nm~約800nm、約50nm~約600nm、約100nm~約600nm、約200nm~約600nm、約400nm~約600nm、約50nm~約400nm、約100nm~約400nm、約200nm~約400nm、約50nm~約200nm、約100nm~約200nm、または約50nm~約100nmの直径を有し得る。
【0075】
いくつかの実施形態において、第2のポリマーは、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、ポリ-乳酸(PLA)、ポリ-グリコール酸(PGA)、ポリ-ラクチド-コ-グリコリド(PLGA)、ポリエステル、ポリ(オテル(other)エステル)、ポリ(ホスファジン)、ポリ(リン酸エステル)、ゼラチン、コラーゲン、ポリエチレングリコール(PEG)、その誘導体、及びその組み合わせを含み得る。他の実施形態において、第2のポリマーは、PLGA、PCL、PLA、PGA、PEG、ポリソルベート、ポリ(ε-カプロラクトン-チオエチルエチレンホスフェート)(PCLEEP)、ポリビニルアルコール(PVA)、またはその組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態において、第2のポリマーは、PLGA、PCL、PLA、PGA、またはその組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、第2のポリマーは、PLGA、PCK、PLA、またはその組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態において、第2のポリマーは、PLGAを含む。いくつかの実施形態において、第2のポリマーは、PCLを含む。いくつかの実施形態において、第2のポリマーは、PLAを含む。
【0076】
いくつかの実施形態において、第2のポリマーは、約50kDa~約500kDa(例えば約100kDa~約500kDa、約100kDa~約400kDa、約200kDa~約400kDa、約300kDa~約400kDa、または約310kDa~約375kDa)の分子量を有する。いくつかの実施形態において、第2のポリマーは、約10kDa以上、(例えば約15kDa以上、約20kDa以上、約30kDa以上、約40kDa以上、約50kDa以上、約60kDa以上、約70kDa以上、約90kDa以上、約90kDa以上、または約100kDa以上)の分子量を有する。
【0077】
いくつかの実施形態において、第2のポリマーはインビボで生物分解性であり、組成物の存在及び分解の継続期間を通して良好な忍容性を示す。いくつかの実施形態において、生理的条件下で、第2のポリマーは鎖のランダム切断によって分解し、それは二相の分解を生じさせる。最初に、分子量が減少しても、物理的構造は著しく影響されない。分解はポリマー材料の全体にわたって起こり、分解産物が可溶化するのに十分に小さくなる臨界分子量に到達するまで、進行する。この時点で、構造は、著しく多孔質であり水和したようになり始める。いくつかの実施形態において、第2のポリマーは、約90kDa以上の分子量を有し、対象の目中で6か月以上後まで、分解しない。いくつかの実施形態において、生物分解性ポリマーの分子量は、材料の分解時間をインビボで調整するように選択される。
【0078】
いくつかの実施形態において、第2のポリマーは、高分子量ポリマー及び低分子量ポリマーのブレンドを含み得る。いくつかの実施形態において、高分子量ポリマーは、約25kDa以上(例えば約30kDa以上、40kDa以上、50kDa以上、60kDa以上、70kDa以上、80kDa以上、90kDa以上、または100kDa以上)であり得、低分子量ポリマーは、約20kDa以下(例えば15kDa以下、10kDa以下、8kDa以下、6kDa以下、または4kDa以下)であり得る。いくつかの実施形態において、高分子量ポリマー対より低い分子量のポリマーの比は、約1:9~約9:1の間(例えば約2:8~約8:2の間、約2:8~約6:4の間、または約2:8~約1:1の間)である。
【0079】
いくつかの実施形態において、外側層中で使用される第2のポリマーの外側層は、繊維を含む。いくつかの実施形態において、繊維は、約100nm~約2000nm(例えば約500nm~約1000nm)の直径を有し得る。いくつかの実施形態において、繊維は、約100nm~約2000nm、約250nm~約2000nm、約500nm~約2000nm、約750nm~約2000nm、約1000nm~約2000nm、約1500nm~約2000nm、約100nm~約1500nm、約250nm~約1500nm、約500nm~約1500nm、約750nm~約1500nm、約1000nm~約1500nm、約100nm~約1000nm、約250nm~約1000nm、約500nm~約1000nm、約750nm~約1000nm、約100nm~約750nm、約250nm~約750nm、約500nm~約750nm、約100nm~約500nm、約250nm~約500nm、または約100nm~約250nmの直径を有し得る。
【0080】
いくつかの実施形態において、外側層は、孔をさらに含み得る。他の実施形態において、外側層は、孔を含まない。いくつかの実施形態において、外側層は、約1nm~約990nm(例えば約1nm~約100nm、約2nm~約700nm、約3nm~約400nm、約5nm~約200nm、または約7nm~約50nm)の平均孔直径を有する孔を含む。いくつかの実施形態において、外側層は、約100nm~1000nm(例えば350nm~650nm)の平均孔直径を有する孔を含む。いくつかの実施形態において、外側層は、約100nm~約1000nm、200nm~約1000nm、300nm~約1000nm、約400nm~約1000nm、約450nm~約1000nm、約500nm~約1000nm、約550nm~約1000nm、約600nm~約1000nm、約650nm~約1000nm、約700nm~約1000nm、約800nm~約1000nm、約900nm~約1000nm、約100nm~約900nm、200nm~約900nm、300nm~約900nm、約400nm~約900nm、約450nm~約900nm、約500nm~約900nm、約550nm~約900nm、約600nm~約900nm、約650nm~約900nm、約700nm~約900nm、約800nm~約900nm、約100nm~約800nm、200nm~約800nm、300nm~約800nm、約400nm~約800nm、約450nm~約800nm、約500nm~約800nm、約550nm~約800nm、約600nm~約800nm、約650nm~約800nm、約700nm~約800nm、約100nm~約700nm、200nm~約700nm、300nm~約700nm、約400nm~約700nm、約450nm~約700nm、約500nm~約700nm、約550nm~約700nm、約600nm~約700nm、約650nm~約700nm、約100nm~約650nm、200nm~約650nm、300nm~約650nm、約400nm~約650nm、約450nm~約650nm、約500nm~約650nm、約550nm~約650nm、約600nm~約650nm、約100nm~約600nm、200nm~約600nm、300nm~約600nm、約400nm~約600nm、約450nm~約600nm、約500nm~約600nm、約550nm~約600nm、約100nm~約550nm、200nm~約550nm、300nm~約550nm、約400nm~約550nm、約450nm~約550nm、約500nm~約550nm、約100nm~約500nm、200nm~約500nm、300nm~約500nm、約400nm~約500nm、約450nm~約500nm、約100nm~約450nm、200nm~約450nm、300nm~約450nm、約400nm~約450nm、約100nm~約400nm、200nm~約400nm、300nm~約400nm、約100nm~約300nm、約200nm~約300nm、約100nm~約200nmの平均孔直径を有する孔を含む。いくつかの実施形態において、平均孔のサイズは、1つまたは複数の治療剤がナノポアを介して一列縦隊拡散または束縛拡散を経由して拡散するように、治療剤のサイズに類似する。所望される治療剤が十分に小さいサイズ(例えば500未満の分子量を有する)であり、それがカプセルの外側層を介して容易に拡散し得る場合に、孔は必要ではない場合がある。
【0081】
いくつかの実施形態において、第1のポリマーまたは第2のポリマーの組成物は、約50℃~約70℃の間の溶融温度を提供し得る。いくつかの実施形態において、第1のポリマーまたは第2のポリマーの組成物は、約-50℃~約-80℃の間のガラス転移温度(Tg)を提供するように提供される。
【0082】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数のカプセルの各々は、約-25mV~約25mV(例えば約-20mV~約20mV、約-15mV~約15mV、約-10mV~約10mV、約-5mV~約5mV、約-1mV~約1mV、約-0.5mV~約0.5mV、または約-0.1mV~約0.1mV)の、pH7.5でのゼータ電位として、表面電荷測定値を独立して有する。
【0083】
いくつかの実施形態において、第1のポリマー及び第2のポリマーの組成は、生理的条件へさらされた場合に、層のうちの1つまたは複数についての質量の50%が、少なくとも3か月後に残るように選択される。所望されるならば、層のうちの1つまたは複数のいずれかの分解速度は、カプセルの製造におけるかかる態様(層の厚さまたは多孔性等)の調整によって、または1つもしくは複数の層を製造するのに使用されるポリマー組成物の親水性を増加させることによって、加速され得る。
【0084】
治療剤
さらなる態様において、本開示は、本明細書において開示される組成物中で使用され得る、1つまたは複数の治療剤も提供する。
【0085】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数の治療剤は各々、約6.0~約7.4のpH範囲内で正味の負電荷を有する。
【0086】
本明細書において使用される時、「治療剤」は、目の医学的条件またはがんを治療するのに使用され得る、1つまたは複数の治療剤、活性成分、または物質を指す。治療剤は、典型的には、眼科的に許容され、本明細書において開示される組成物が目中に配置される場合に、有害反応を引き起こさない形態で提供される。本明細書において論じられるように、治療剤は、生物学的に活性のある形態で開示される組成物から放出され得る。例えば、目の中へ系から放出された場合に、治療剤はそれらの三次元構造を保持し得る。
【0087】
本明細書において使用される時、「治療剤」という用語は、生物体(ヒトまたは非ヒト動物)へ投与された場合に、局所的及び/または全身的な作用によって所望される薬理学、免疫原性、及び/または生理的な効果を誘導する物体の任意の合成のまたは天然に存在する生物学的に活性のある化合物または組成物を包含することがさらに理解される。したがって当該用語は、薬物、ワクチン、及び生物医薬品(タンパク質、ペプチド、ホルモン、核酸、遺伝子コンストラクト、及び同種のもの等の分子を包含する)と伝統的に見なされる、化合物または化学物質を網羅する。治療剤の例は、Merck Index(14th edition),the Physicians’ Desk Reference(64th edition)及びThe Pharmacological Basis of Therapeutics(12th edition)等の周知の文献参照中で記載され、当該例としては、医薬品;ビタミン;ミネラルサプリメント;疾患または病気の治療、予防、診断、治癒、または緩和のために使用される物質;身体の構造もしくは機能に影響する物質、または生理的環境に配置された後に生物学的に活性になるかもしくはより活性になるプロドラッグが限定されずに挙げられる。例えば、「治療剤」という用語は、アジュバント;抗感染物質(抗生物質及び抗ウイルス剤等);鎮痛物質及び鎮痛物質の組み合わせ、食欲減退物質、抗炎症剤、抗癲癇物質、局所及び全身の麻酔物質、催眠物質、鎮静物質、抗精神病剤、神経弛緩剤、抗鬱物質、抗不安物質、アンタゴニスト、ニューロン遮断剤、抗コリン作用剤及びコリン様作用剤、抗ムスカリン作用剤及びムスカリン作用剤、抗アドレナリン作用物質、抗不整脈物質、降圧剤、ホルモン及び、栄養物質、抗関節炎物質、抗喘息剤、抗痙攣物質、抗ヒスタミン物質、抗嘔吐物質、抗新生物物質、抗掻痒物質、解熱物質;抗発作物質、循環器官用薬(カルシウムチャンネル遮断物質、β遮断物質、βアゴニスト及び抗不整脈物質が挙げられる)、抗高血圧物質、利尿物質、血管拡張物質;中枢神経興奮物質;感冒薬;充血除去物質;診断用物質;ホルモン;骨成長刺激物質及び骨吸収阻害物質;免疫抑制物質;筋弛緩物質;精神刺激物質;鎮静物質;トランキライザー;タンパク質、ペプチド、及びその断片(天然に存在するか、化学的に合成されるか、または組み換えにより産生されるかにかかわらず);ならびに核酸分子(リボヌクレオチド(RNA)またはデオキシリボヌクレオチド(DNA)のいずれかの2つ以上のヌクレオチドのポリマー形態であり、二本鎖及び一本鎖の分子、遺伝子コンストラクト、発現ベクター、アンチセンス分子、及び同種のものが挙げられる)、小分子(例えばドキソルビシン)、及び他の生物学的に活性のあるマクロ分子(例えばタンパク質及び酵素)が挙げられるがこれらに限定されない、主要な治療領域のすべてにおける使用のための、化合物または組成物を包含する。薬剤は、獣医学を含む医学応用、農業(植物によるもの等)、そして他の領域で使用される生物学的活性剤であり得る。治療剤という用語は、医薬品;ビタミン;ミネラルサプリメント;疾患もしくは病気の治療、予防、診断、治癒、もしくは緩和のために使用される物質;または身体の構造もしくは機能に影響する物質;または所定の生理的環境に配置された後に生物学的に活性になるかもしくはより活性になるプロドラッグも限定されずに包含する。
【0088】
いくつかの実施形態において、治療剤は、β遮断物質(チモロール、ベタキソロール、レボベタキソロール、及びカルテオロールが挙げられる);縮瞳物質(ピロカルピンが挙げられる);炭酸脱水酵素阻害物質;セロトニン作用物質;ムスカリン作用物質;ドーパミンアゴニスト;アドレナリン作用アゴニスト(アプラクロニジン及びブリモニジンを包含する);抗血管形成剤;抗感染剤(キノロン(シプロフロキサシン等)及びアミノグリコシド(トブラマイシン及びゲンタミシン等)が挙げられる);非ステロイド性抗炎症剤及びステロイド性抗炎症剤(スプロフェン、ジクロフェナク、ケトロラク、リメキソロン、及びテトラヒドロコルチゾール等);増殖因子(EGF等);免疫抑制剤;及び抗アレルギー剤(オロパタジンが挙げられる);プロスタグランジン(ラタノプロスト等);15-ケトラタノプロスト;トラボプロスト;及びイソプロピルウノプロストン等の眼科的障害または眼疾患の治療に有用な薬剤を含み得る。
【0089】
いくつかの実施形態において、治療剤は、抗炎症剤、カルシニューリン阻害物質、抗生物質、ニコチン性アセチルコリン受容体アゴニスト、及び抗リンパ管形成剤からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、抗炎症剤は、シクロスポリンであり得る。いくつかの実施形態において、カルシニューリン阻害物質は、ボクロスポリンであり得る。いくつかの実施形態において、抗生物質は、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルミシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、テイコプラニン、バンコマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、ナフシリン、ペニシリン、ピペラシリン、チカルシリン、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンB、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン、マフェナイド、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファサラジン、スルフイソキサゾール、トリメトプリム、コトリモキサゾール、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、及びテトラサイクリンからなる群から選択されてもよい。いくつかの実施形態において、ニコチン性アセチルコリン受容体アゴニストは、ピロカルピン、アトロピン、ニコチン、エピバチジン、ロベリン、またはイミダクロプリドのうちの任意のものであり得る。いくつかの実施形態において、抗リンパ管形成剤は、血管内皮増殖因子C(VEGF-C)抗体、VEGF-D抗体、またはVEGF-3抗体であり得る。
【0090】
いくつかの態様において、治療剤は、β遮断物質(レボブノロール(BETAGAN)、チモロール(BETIMOL、TIMOPTIC)、ベタキソロール(BETOPTIC)、及びメチプラノロール(OPTIPRANOLOL)が挙げられる);α-アゴニスト(アプラクロニジン(IOPIDINE)及びブリモニジン(ALPHAGAN)等);炭酸脱水酵素阻害物質(アセタゾラミド、メタゾラミド、ドルゾラミド(TRUSOPT)、及びブリンゾラミド(AZOPT)等);プロスタグランジンまたはプロスタグランジン類似体(ラタノプロスト(XALATAN)、ビマトプロスト(LUMIGAN)、及びトラボプロスト(TRAVATAN)等);縮瞳剤またはコリン作用剤(ピロカルピン(ISOPTO CARPINE、PILOPINE)及びカルバコール(ISOPTO CARBACHOL)等);エピネフリン化合物(ジピベフリン(PROPINE)等);フォルスコリン;または神経保護化合物(ブリモニジン及びメマンチン等);ステロイド誘導体(2-メトキシエストラジオールまたはその類似体もしくは誘導体等);または抗生物質から選択され得る。
【0091】
「VEGF」という用語は、血管形成または血管形成プロセス(透過性の増加が挙げられるがこれらに限定されない)を誘導する血管内皮増殖因子を指す。本明細書において使用される時、「VEGF」という用語は、例えばVEGF-A/VPF遺伝子のオルタナティブスプライシングによって生じるVEGFの様々なサブタイプ(血管透過性因子(VPF)及びVEGF-Aとしても公知である)を包含し、VEGF121、VEGF165、及びVEGF189を包含する。さらに本明細書において使用される時、「VEGF」という用語は、VEGF関連血管形成因子(同族のVEFG受容体(すなわちVEGFR)を介して作用して血管形成または血管形成プロセスを誘導する、PIGF(胎盤増殖因子)、VEGF-B、VEGF-C及びVEGF-D、及びVEGF-E等)を包含する。「VEGF」という用語は、VEGF受容体(VEGFR-1(Flt-1)、VEGFR-2(KDR/Flk-1)、またはVEGFR-3(FLT-4))へ結合する、増殖因子のクラスの任意のメンバーを包含する。「VEGF」という用語は「VEGF」ポリペプチドまたは「VEGF」コード遺伝子もしくは核酸を指すように使用され得る。
【0092】
「抗VEGF剤」という用語は、VEGFの活性または産生を部分的または完全のいずれかで低減または阻害する薬剤を指す。抗VEGF剤は、特異的VEGF(VEGF165等)の活性または産生を直接または間接的に低減または阻害することができる。さらに、「抗VEGF剤」は、VEGFに付随する受容体シグナルを低減または阻害するように、VEGFリガンドまたはその同族の受容体のいずれかに対して作用する薬剤を包含する。「抗VEGF剤」の非限定例としては、VEGF核酸を標的化するアンチセンス分子、リボザイム、またはRNAi;抗VEGFアプタマー、VEGFそれ自体もしくはその受容体への抗VEGF抗体、またはその同族の受容体へのVEGFの結合を防止する可溶性VEGF受容体デコイ;同族のVEGF受容体(VEGFR)核酸を標的化する、アンチセンス分子、リボザイム、またはRNAi;同族のVEGFR受容体へ結合する、抗VEGFRアプタマーまたは抗VEGFR抗体;及びVEGFRチロシンキナーゼ阻害物質が挙げられる。
【0093】
いくつかの実施形態において、治療剤は、抗VEGF剤を含み得る。抗VEGF剤の代表例としては、ラニビズマブ、ベバシズマブ、アフリベルセプト、KH902 VEGF受容体-Fc、融合タンパク質、2C3抗体、ORA102、ペガプタニブ、ベバシラニブ、SIRNA-027、デクルシン、デクルシノール、ピクロポドフィリン、ググルステロン、PLG101、エイコサノイドLXA4、PTK787、パゾパニブ、アキシチニブ、CDDO-Me、CDDO-Imm、シコニン、β-ヒドロキシイソバレリルシコニン、ガングリオシドGM3、DC101抗体、Mab25抗体、Mab73抗体、4A5抗体、4E10抗体、5F12抗体、VA01抗体、BL2抗体、VEGF関連タンパク質、sFLT01、sFLT02、ペプチドB3、TG100801、ソラフェニブ、G6-31抗体、融合抗体、及びVEGFのエピトープへ結合する抗体が挙げられる。本方法において有用な抗VEGF剤の追加の非限定例としては、ヒト血管内皮増殖因子-A(VEGF-A)、ヒト血管内皮増殖因子-B(VEGF-B)、ヒト血管内皮増殖因子-C(VEGF-C)、ヒト血管内皮増殖因子-D(VEGF-D)、及びヒト血管内皮増殖因子-E(VEGF-E)のうちの1つまたは複数へ特異的に結合する物質、ならびにVEGFのエピトープへ結合する抗体が挙げられる。
【0094】
様々な態様において、抗VEGF剤は、抗体ラニビズマブまたはその薬学的に許容される塩である。ラニビズマブは、商標LUCENTISで商業的に入手可能である。別の実施形態において、抗VEGF剤は、抗体ベバシズマブまたはその薬学的に許容される塩である。ベバシズマブは、商標AVASTINで商業的に入手可能である。別の実施形態において、抗VEGF剤は、アフリベルセプトまたはその薬学的に許容される塩である。アフリベルセプトは、商標EYLEAで商業的に入手可能である。一実施形態において、抗VEGF剤は、ペガプタニブまたはその薬学的に許容される塩である。ペガプチニブ(pegaptinib)は、商標MACUGENで商業的に入手可能である。別の実施形態において、抗VEGF剤は、VEGFのエピトープ(VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、またはVEGF-Eのエピトープ等)へ結合する抗体または抗体断片である。いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニストは、VEGFとVEGFRの結合が阻害されるように、VEGFのエピトープへ結合する。一実施形態において、エピトープは、折りたたまれたVEGF分子の表面上にエピトープが曝露されるように、提示されるVEGFの三次元構造の構成要素を網羅する。一実施形態において、エピトープは、VEGFからの直線状アミノ酸配列である。
【0095】
様々な態様において、治療剤は、VEGF媒介性活性を遮断または阻害する薬剤(例えば1つまたは複数のVEGFアンチセンス核酸)を含み得る。本開示は、VEGFまたはその部分をコードする遺伝子またはcDNAへのアンチセンスである、少なくとも6つのヌクレオチドを含む核酸の治療的または予防的な使用を提供する。本明細書において使用される時、VEGF「アンチセンス」核酸は、VEGFをコードするRNA(好ましくはmRNA)の一部へのいくらかの配列相補性によってハイブリダイズすることが可能な核酸を指す。アンチセンス核酸は、VEGFをコードするmRNAのコーディング領域及び/または非コーディング領域に相補的であり得る。かかるアンチセンス核酸はVEGF発現を防止する化合物としての有用性を有し、糖尿病の治療において使用され得る。本開示のアンチセンス核酸は、二本鎖または一本鎖のオリゴヌクレオチド、RNA、もしくはDNA、またはその修飾物もしくは誘導体であり、直接細胞へ投与されるか、または外来性の導入された配列の転写によって細胞内で産生され得る。
【0096】
VEGFアンチセンス核酸は少なくとも6ヌクレオチドであり、好ましくは6~約50オリゴヌクレオチドの範囲のオリゴヌクレオチドである。特定の態様において、オリゴヌクレオチドは、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも15ヌクレオチド、少なくとも100ヌクレオチド、または少なくとも200ヌクレオチドである。オリゴヌクレオチドはDNAもしくはRNAまたはキメラ混合物、あるいはその誘導体または修飾バージョンであり得、一本鎖または二本鎖であり得る。加えて、アンチセンス分子は、核酸模倣体(PNA、モルホリノオリゴ、及びLNA等)であるポリマーであり得る。他の型のアンチセンス分子としては、siRNAとして公知の短い二本鎖RNA、及び短いヘアピンRNA、及び長いdsRNA(>50bp、しかし通常≧500bp)が挙げられる。
【0097】
様々な態様において、治療剤は、VEGFをコードする遺伝子mRNAの転写物を触媒的に切断し、標的遺伝子mRNAの翻訳及びしたがって遺伝子産物の発現を防止するようにデザインされた1つまたは複数のリボザイム分子を含み得る。
【0098】
リボザイムは、RNAの特異的切断を触媒することが可能な酵素RNA分子である。リボザイム作用のメカニズムは、リボザイム分子の相補的標的RNAへの配列特異的ハイブリダイゼーション、続いてエンドヌクレアーゼ的切断事象を含む。リボザイム分子の組成物は、標的遺伝子mRNAに相補的な1つまたは複数の配列を含まなくてはならず、mRNAの切断を担う周知の触媒配列を含まなくてはならない。この配列については、例えば米国特許第5,093,246号を参照されたい。部位特異的認識配列でmRNAを切断するリボザイムが、VEGFをコードするmRNAの破壊に使用され得るが、ハンマーヘッド型リボザイムの使用が好ましい。ハンマーヘッド型リボザイムは、標的mRNAと相補的塩基対を形成する隣接領域によって定められた位置でmRNAを切断する。唯一の要求性は、標的mRNAが以下の2塩基の配列:5’-UG-3’を有するということである。ハンマーヘッド型リボザイムの構築及び産生は、当技術分野において周知である。本開示のリボザイムは、Tetrahymena thermophilaにおいて天然に存在するもの(IVSまたはL-19 IVS RNAとして公知である)等のRNAエンドリボヌクレアーゼ(以後「Cech型リボザイム」)も包含する。Cech型リボザイムは、標的RNAの切断が起こった後に、標的RNA配列にハイブリダイズする8つの塩基対活性部位を有する。本開示は、VEGFをコードする遺伝子中に存在する8つの塩基対活性部位配列を標的化するCech型リボザイムを網羅する。
【0099】
さらなる態様において、治療剤は、VEGFを阻害する抗体(ベバシズマブまたはラニビズマブ等)を含み得る。なおさらなる態様において、治療剤は、VEGF活性(VEGFによって刺激されるチロシンキナーゼ等)を阻害する薬剤を含み、その例としては、ラパチニブ、スニチニブ、ソラフェニブ、アキシチニブ、及びパゾパニブが挙げられるがこれらに限定されない。
【0100】
「抗RAS剤」または「抗レニンアンジオテンシン系剤」という用語は、レニンアンジオテンシン系(RAS)の分子の活性または産生を、部分的または完全のいずれかで、低減または阻害する薬剤を指す。「抗RAS」または「抗レニンアンジオテンシン系」の分子の非限定例は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害物質、アンジオテンシン受容体遮断物質、及びレニン阻害物質のうちの1つまたは複数である。
【0101】
いくつかの実施形態において、治療剤は、レニンアンジオテンシン系(RAS)阻害物質を含み得る。いくつかの実施形態において、レニンアンジオテンシン系(RAS)阻害物質は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害物質、アンジオテンシン受容体遮断物質、及びレニン阻害物質のうちの1つまたは複数である。
【0102】
本発明において有用なアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害物質の非限定例としては、アラセプリル、アラトリオプリル、アルチオプリルカルシウム、アンコベニン、ベナゼプリル、塩酸ベナゼプリル、ベナゼプリラート、ベンザゼプリル(benzazepril)、ベンゾイルカプトプリル、カプトプリル、カプトプリルシステイン、カプトプリルグルタチオン、セラナプリル、セラノプリル、セロナプリル、シラザプリル、シラザプリラート、コンベルスタチン(converstatin)、デラプリル、デラプリル二酸、エナラプリル、エナラプリラト、エナルキレン、エナプリル(enapril)、エピカプトプリル、ホロキシミチン、ホスフェノプリル、ホスエノプリル、ホスエノプリルナトリウム、ホシノプリル、ホシノプリルナトリウム、ホシノプリラト、ホシノプリル酸、グリコプリル(glycopril)、ヘモルフィン-4、イダプリル(idapril)、イミダプリル、インドラプリル、インドラプリラト、リベンザプリル、リシノプリル、リシウミン(lyciumin)A、リシウミンB、ミキサンプリル、モエキシプリル、モエキシプリラート、モベルチプリル、ムラセインA、ムラセインB、ムラセインC、ペントプリル、ペリンドプリル、ペリンドプリラート、ピバロプリル(pivalopril)、ピボプリル、キナプリル、塩酸キナプリル、キナプリラト、ラミプリル、ラミプリラート、スピラプリル、塩酸スピラプリル、スピラプリラート、スピロプリル(spiropril)、塩酸スピラプリル、テモカプリル、塩酸テモカプリル、テプロチド、トランドラプリル、トランドラプリラート、ウチバプリル(utibapril)、ザビシプリル、ザビシプリラート(zabiciprilat)、ゾフェノプリル、ゾフェノプリラト、その薬学的に許容される塩、及びその混合物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0103】
本発明において有用なアンジオテンシン受容体遮断物質の非限定例としては、イルベサルタン(米国特許第5,270,317号、その全体は参照することによって本明細書に援用される)、カンデサルタン(米国特許第5,196,444号及び同第5,705,517号、それらの全体は参照することによって本明細書に援用される)、バルサルタン(米国特許第5,399,578号、その全体は参照することによって本明細書に援用される)、及びロサルタン(米国特許第5,138,069号、その全体は参照することによって本明細書に援用される)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0104】
治療剤として使用され得るレニン阻害物質の非限定例としては、アリスキレン、ジテキレン、エナルキレン、レミキレン、テルラキレン、シプロキレン、及びザンキレン、その薬学的に許容される塩及びその混合物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0105】
「ステロイド」という用語は、以下の化合物の例示的なファミリー:コルチコステロイド、ミネラリコステロイド(mineralicosteroid)、及び性ステロイド(例えば可能性としてアンドロゲン性もしくはエストロゲン性、または抗アンドロゲン性及び抗エストロゲン性の分子を包含する)に属するかまたはそれらに関連する化合物を指す。これらの中には、例えばプレドニゾン、プレドニゾロン、メチル-プレドニゾロン、トリアムシノロン、フルオシノロン、アルドステロン、スピロノラクトン、ダナゾール(他の場合にはOPTINAとして公知である)、及びその他が包含される。いくつかの実施形態において、治療剤は、ステロイドを含み得る。
【0106】
「ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ剤」または「PPAR-γ剤」または「PPARG剤」または「PPAR-γ剤」という用語は、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体に対して直接または間接的に作用する薬剤を指す。この薬剤は、PPAR-α(「PPARA」)活性にも影響を及ぼし得る。
【0107】
いくつかの実施形態において、治療剤は、マクロファージ極性化の調節物質を含み得る。マクロファージ極性化の例示的な調節物質としては、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPAR-g)調節物質が挙げられ、例えばアゴニスト、部分アゴニスト、アンタゴニスト、またはPPAR-γ/αアゴニストの組み合わせを包含する。いくつかの実施形態において、治療剤は、PPARγ調節物質(完全アゴニストまたは部分アゴニストであるPPARγ調節物質を包含する)を含み得る。いくつかの実施形態において、PPARγ調節物質は、チアゾリジンジオン(TZD、またはグリタゾン)の薬物クラスのメンバーである。非限定例として、PPARγ調節物質は、ロシグリタゾン(AVANDIA)、ピオグリタゾン(ACTOS)、トログリタゾン(REZULIN)、ネトグリタゾン、リボグリタゾン、シグリタゾン、ローダニンのうちの1つまたは複数であり得る。いくつかの実施形態において、PPARγ調節物質は、イルベサルタン及びテルメサルタン(telmesartan)のうちの1つまたは複数である。いくつかの実施形態において、PPARγ調節物質は、非ステロイド性抗炎症薬(例えばイブプロフェン等のNSAID)またはインドールである。公知の阻害物質は、実験的薬剤GW-9662を包含する。PPARγ調節物質のさらなる例は、WIPO公開番号WO/1999/063983、WO/2001/000579、Nat Rev Immunol.2011 Oct.25;11(11):750-61中で記載されるもの、またはWO/2002/068386の方法を使用して同定される薬剤である(それらの内容は参照することによってそれらの全体が本明細書に援用される)。
【0108】
いくつかの実施形態において、PPARγ調節物質は、「デュアル」PPAR調節物質または「バランスされた」PPAR調節物質または「汎」PPAR調節物質である。いくつかの実施形態において、PPARγ調節物質は、2つ以上のPPARアイソフォームを結合するグリタザール(例えばムラグリタザール(Pargluva)及びテサグリタザール(Galida)及びアレグリタザール)である。
【0109】
いくつかの実施形態において、治療剤は、Bianchi,et al.(March 1995).Molecular Medicine(Cambridge,Mass.)1(3):254-266(この内容は参照することによってその全体が本明細書に援用される)中で記載されるセマピモド(CNI-1493)を含み得る。
【0110】
いくつかの実施形態において、治療剤は、遊走阻止因子(MIF)阻害物質を含み得る。例示的なMIF阻害物質は、WIPO公開番号WO2003/104203、WO2007/070961、WO2009/117706、ならびに米国特許第7,732,146号及び同第7,632,505号及び同第7,294,753号、同第7,294,753号(それらの内容は参照することによってそれらの全体が本明細書に援用される)中で記載される。いくつかの実施形態において、MIF阻害物質は、(S,R)-3-(4-ヒドロキシフェニル)-4,5-ジヒドロ-5-イソオキサゾール酢酸メチルエステル(ISO-1)、イソオキサゾリン、p425(J.Biol.Chem.,287,30653-30663)、エポキシアザジラジオン、またはビタミンEである。
【0111】
いくつかの実施形態において、治療剤は、例えば米国特許及び特許公開:米国特許第7,799,824号、米国特許第8,067,415号、US2007/0197590、US2006/0069123、US2006/0058289、及びUS2007/0037794(それらの内容は参照することによってそれらの全体が本明細書に援用される)中で記載されるケモカイン受容体2(CCR2)阻害物質を含み得る。いくつかの実施形態において、CCR2阻害物質は、マラビロク、セニクリビロック、CD192、CCX872、CCX140、2-((イソプロピルアミノカルボニル)アミノ)-N-(2-((cis-2-((4-(メチルチオ)ベンゾイル)アミノ)シクロヘキシル)アミノ)-2-オキソエチル)-5-(トリフルオロメチル)-ベンズアミド、ビクリビロク、SCH351125、TAK779、Teijin、RS-504393、化合物2、化合物14、または化合物19(Plos ONE 7(3):e32864)である。
【0112】
いくつかの実施形態において、治療剤は、オートファジー、ミクロオートファジー、マイトファジー、またはオートファジーの他の形態を調節する薬剤を含み得る。いくつかの実施形態において、治療剤は、シロリムス、タクロリミス(tacrolimis)、ラパマイシン、エベロリムス、バフィロマイシン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、スパウチン-1、メトホルミン、ペリホシン、レスベラトロル、トリコスタチン、バルプロ酸、Z-VAD-FMK、または当技術分野において公知の他のものを含み得る。理論に束縛されることを望むものではないが、オートファジー、ミクロオートファジー、マイトファジー、またはオートファジーの他の形態を調節する薬剤は、細胞内構成要素(例えば細胞器官、ミトコンドリア、小胞体、脂質、または他のものであるがこれらに限定されない)のリサイクルを変更し得る。理論に束縛されることをさらに望むものではないが、この薬剤は、微小管結合タンパク質1A/1B軽鎖3(LC3)を介して作用しても作用しなくてもよい。
【0113】
いくつかの実施形態において、治療剤は、がんの治療に使用される薬剤(すなわち制がん薬または抗がん剤)を含み得る。例示的な制がん薬は、抗代謝抗がん剤及び抗有糸分裂抗がん剤、ならびにその組み合わせから、対象に対して選択され得る。様々な抗代謝抗がん剤及び抗有糸分裂抗がん剤(単一のかかる薬剤またはかかる薬剤の組み合わせを包含する)は、方法及び本明細書において記載される組成物中で用いられ得る。
【0114】
抗代謝抗がん剤は、典型的には天然の代謝物質に構造的に類似し、当該代謝物質は、がん細胞の正常な代謝プロセス(核酸及びタンパク質の合成等)に関与する。しかしながら、抗代謝物質は、それらががん細胞の代謝プロセスを妨害するように、天然の代謝物質とは十分に異なる。細胞中で、抗代謝物質は、類似する代謝物質と間違えられ、正常な化合物に類似する方式で細胞によって加工される。「デコイ」代謝物質の存在は、細胞が生体機能を実行することを防止し、細胞は増殖及び生存することがでない。例えば、抗代謝物質は、細胞DNAの中へこれらの不正なヌクレオチドを置換し、それによって細胞分裂を邪魔することによって、または重要な細胞酵素を阻害し、DNAの複製を防止することによって、細胞毒性活性を発揮し得る。
【0115】
したがって一態様において、抗代謝抗がん剤は、ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体である。ある特定の態様において、例えば、抗代謝剤は、結合された糖部分の有無にかかわらず、プリン(例えばグアニンまたはアデノシン)もしくはその類似体、またはピリミジン(シチジンまたはチミジン)もしくはその類似体を含み得る。
【0116】
本開示で使用される好適な抗代謝抗がん剤は、概してそれらが影響する代謝プロセスに従って分類され、当該抗がん剤としては、葉酸、ピリミジン、プリン、及びシチジンの類似体及び誘導体が挙げられ得るがこれらに限定されない。したがって一態様において、抗代謝剤(複数可)は、シチジン類似体、葉酸類似体、プリン類似体、ピリミジン類似体、及びその組み合わせからなる群から選択される。
【0117】
1つの特定の態様において、例えば抗代謝剤は、シチジン類似体である。この態様によれば、例えばシチジン類似体は、シタラビン(シトシンアラビノドシド(arabinodside))、アザシチジン(5-アザシチジン)、ならびにその塩、類似体、及び誘導体からなる群から選択され得る。
【0118】
別の特定の態様において、例えば抗代謝剤は、葉酸類似体である。葉酸類似体または抗葉酸物質は、概してジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)(ヌクレオチドの形成に関与する酵素)を阻害することによって機能する。この酵素が遮断される場合に、ヌクレオチドは形成されず、DNA複製及び細胞分裂を邪魔する。ある特定の態様によれば、例えば葉酸類似体は、デノプテリン、メトトレキサート(アメトプテリン)、ペメトレキセド、プテロプテリン、ラルチトレキセド、トリメトレキサート、ならびにその塩、類似体、及び誘導体からなる群から選択され得る。
【0119】
別の特定の態様において、例えば抗代謝剤は、プリン類似体である。プリンベースの抗代謝剤は、DNA合成を阻害することによって(例えばプリン含有ヌクレオチド(アデニン及びグアニン)の産生を妨害し、その妨害がDNA合成そして細胞分裂を中断することによって)機能する。プリン類似体もDNA合成の間にDNA分子それ自体の中へ取り込まれ、それは細胞分裂を妨害し得る。ある特定の態様によれば、例えばプリン類似体は、アシクロビル、アロプリノール、2-アミノアデノシン、アラビノシルアデニン(アラA)、アザシチジン、アザチプリン(azathiprine)、8-アザ-アデノシン、8-フルオロ-アデノシン、8-メトキシ-アデノシン、8-オキソ-アデノシン、クラドリビン、デオキシコフォルマイシン、フルダラビン、ガンシロビル(gancylovir)、8-アザ-グアノシン、8-フルオロ-グアノシン、8-メトキシ-グアノシン、8-オキソ-グアノシン、グアノシン二リン酸、グアノシン二リン酸-β-L-2-アミノフコース、グアノシン二リン酸-D-アラビノース、グアノシン二リン酸-2-フルオロフコース、グアノシン二リン酸フコース、メルカプトプリン(6-MP)、ペントスタチン、チアミプリン、チオグアニン(6-TG)、ならびにその塩、類似体、及び誘導体からなる群から選択され得る。
【0120】
さらに別の特定の態様において、例えば抗代謝剤は、ピリミジン類似体である。上で考察されたプリン類似体に類似して、ピリミジンベースの抗代謝剤は、ピリミジン含有ヌクレオチド(DNA中のシトシン及びチミン;RNA中のシトシン及びウラシル)の合成を遮断する。「デコイ」として作用することによって、ピリミジンベースの化合物は、ヌクレオチドの産生を防止し得る、及び/または、成長しているDNA鎖の中へ取り込まれ、終結を導き得る。ある特定の態様によれば、例えばピリミジン類似体は、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、ブロモウラシル(例えば5-ブロモウラシル)、カペシタビン、カルモフール、クロロウラシル(例えば5-クロロウラシル)、シタラビン(シトシンアラビノサイド)、シトシン、ジデオキシウリジン、3’-アジド-3’-デオキシチミジン、3’-ジデオキシシチジン-2’-エン、3’-デオキシ-3’-デオキシチミジン-2’-エン、ジヒドロウラシル、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5-フルオロシトシン、2-フルオロデオキシシチジン、3-フルオロ-3’-デオキシチミジン、フルオロウラシル(例えば5-フルオロウラシル(5-FUとしても公知である))、ゲムシタビン、5-メチルシトシン、5-プロピニルシトシン、5-プロピニルチミン、5-プロピニルウラシル、チミン、ウラシル、ウリジン、ならびにその塩、類似体、及び誘導体からなる群から選択され得る。一態様において、ピリミジン類似体は、5-フルオロウラシル以外である。別の態様において、ピリミジン類似体は、ゲムシタビンまたはその塩である。
【0121】
ある特定の態様において、抗代謝剤は、5-フルオロウラシル、カペシタビン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート、ゲムシタビン、シタラビン、フルダラビン、ペメトレキセド、ならびにその塩、類似体、誘導体、及び組み合わせからなる群から選択される。他の態様において、抗代謝剤は、カペシタビン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート、ゲムシタビン、シタラビン、フルダラビン、ペメトレキセド、ならびにその塩、類似体、誘導体、及び組み合わせからなる群から選択される。1つの特定の態様において、抗代謝剤は、5-フルオロウラシル以外である。特に好ましい態様において、抗代謝剤は、ゲムシタビンまたはその塩(例えばゲムシタビンHCl(Gemzar(登録商標)))である。
【0122】
他の抗代謝抗がん剤は、アカンチホリン酸、アミノチアジアゾール、ブレキナルナトリウム、Ciba-Geigy CGP-30694、シクロペンチルシトシン、シタラビンホスフェートステアレート、シタラビンコンジュゲート、Lilly DATHF、Merrel Dow DDFC、デザグアニン、ジデオキシシチジン、ジデオキシグアノシン、ジドックス、Yoshitomi DMDC、Wellcome EHNA、Merck & Co.EX-015、ファザラビン、リン酸フルダラビン、N-(2’-フラニジル)-5-フルオロウラシル、Daiichi Seiyaku FO-152、5-FU-フィブリノーゲン、イソプロピルピロリジン、Lilly LY-188011;とりわけ、Lilly LY-264618、メトベンザプリム、Wellcome MZPES、ノルスペルミジン、NCI NSC-127716、NCI NSC-264880、NCI NSC-39661、NCI NSC-612567、Warner-Lambert PALA、ペントスタチン、ピリトレキシム、プリカマイシン、Asahi Chemical PL-AC、Takeda TAC-788、チアゾフリン、Erbamont TIF、チロシンキナーゼ阻害物質、Taiho UFT、及びウリシチン(uricytin)からなる群から選択され得るがこれらに限定されない。
【0123】
一態様において、抗有糸分裂剤は、微小管阻害物質または微小管安定化物質である。概して、微小管安定化物質(タキサン及びエポチロン等)はβ-微小管鎖の内面に結合し、重合反応の核形成相及び伸長相の増進によって、ならびに微小管のアセンブリに要求されるチューブリンサブユニット臨界濃度を低減させることによって、微小管アセンブリを促進する。微小管アセンブリを防止する微小管阻害物質(ビンカアルカロイド等)とは異なり、微小管安定化物質(タキサン等)はラグタイムを減少させ、チューブリンダイマーと微小管ポリマーとの間の動的平衡を重合に向けて劇的にシフトさせる。したがって一態様において、微小管安定化物質は、タキサンまたはエポチロンである。別の態様において、微小管阻害物質は、ビンカアルカロイドである。
【0124】
いくつかの実施形態において、治療剤は、タキサンまたはその誘導体もしくは類似体を含み得る。タキサンは、天然に由来する化合物もしくは関連形態であり得るか、または抗新生物性の特質を備えた化学的に合成された化合物もしくはその誘導体であり得る。タキサンは、テルペンのファミリー(パクリタキセル(Taxol(登録商標))及びドセタキセル(Taxotere(登録商標))が挙げられるがこれらに限定されない)であり、それらは主としてタイヘイヨウイチイの木(Taxus brevifolia)に由来し、特定の腫瘍(特に乳房の腫瘍、卵巣腫瘍)に対する活性を有する。一態様において、タキサンは、ドセタキセルまたはパクリタキセルである。パクリタキセルは、好ましいタキサンであり、チューブリンダイマーからの微小管のアセンブリを増進し、脱重合の防止によって微小管を安定化する抗有糸分裂剤と考えられる。この安定性は、生命に関する間期及び有糸分裂細胞機能に必須の微小管ネットワークの正常な動的な再編成の阻害をもたらす。
【0125】
親水性誘導体及び疎水性誘導体の両方を含む、様々な公知のタキサン誘導体も包含される。タキサン誘導体としては、国際特許出願番号WO99/18113中で記載されるガラクトース誘導体及びマンノース誘導体;WO99/14209中で記載されるピペラジノ誘導体及び他の誘導体;WO99/09021、WO98/22451及び米国特許第5,869,680号中で記載されるタキサン誘導体;WO98/28288中で記載される6-チオ誘導体;米国特許第5,821,263号中で記載されるスルフェンアミド誘導体;脱酸素化パクリタキセル化合物(米国特許第5,440,056号中で記載されるもの等);ならびに米国特許第5,415,869号中で記載されるタキソール誘導体が挙げられるがこれらに限定されない。上で指摘されるように、それは、パクリタキセルのプロドラッグをさらに包含し、WO98/58927;WO98/13059;及び米国特許第5,824,701号中で記載されるものが挙げられるがこれらに限定されない。タキサンは、タキサンコンジュゲート(例えばパクリタキセル-PEG、パクリタキセル-デキストラン、パクリタキセル-キシロース、ドセタキセル-PEG、ドセタキセル-デキストラン、ドセタキセル-キシロース、及び同種のもの等)でもあり得る。他の誘導体は、他の参照文献の中でも、表題“New Trends in Natural Products Chemistry”(1986),Atta-ur-Rabman,P.W.le Quesne,Eds.(Elsevier,Amsterdam 1986)の“Synthesis and Anticancer Activity of Taxol Derivatives,”D.G.I.Kingston et al.,Studies in Organic Chemistry,vol.26中で言及される。これらの参照文献の各々は、本明細書において参照することによってその全体が本明細書に援用される。
【0126】
様々なタキサンは、当業者に公知の技法(WO94/07882、WO94/07881、WO94/07880、WO94/07876、WO93/23555、WO93/10076;米国特許第5,294,637号;同第5,283,253号;同第5,279,949号;同第5,274,137号;同第5,202,448号;同第5,200,534号;同第5,229,529;及びEP590,267も参照)(その各々は参照することによってその全体が本明細書に援用される)を利用して容易に調製され得るか、または様々な商業的供給源(例えばSigma-Aldrich Co.、St.Louis、Moを包含する)から得られ得る。
【0127】
代替的に、抗有糸分裂剤は微小管阻害物質であり得る。1つの好ましい態様において、微小管阻害物質は、ビンカアルカロイドである。概して、ビンカアルカロイドは、有糸分裂紡錘体毒である。ビンカアルカロイド剤は、細胞分離の前に、染色体が分配され、極のうちの1つに向けて有糸分裂紡錘体の細管に沿って移動し始める時の有糸分裂の間に作用する。これらの紡錘体毒の作用下で、紡錘体は有糸分裂の間の染色体の分散によって無秩序になり、細胞増殖に影響する。ある特定の態様によれば、例えばビンカアルカロイドは、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、かつビノレルビン、ならびにその塩、類似体、及び誘導体からなる群から選択される。
【0128】
抗有糸分裂剤は、エポチロンでもあり得る。概して、エポチロンクラスの化合物のメンバーは、タキサンのメカニズムに類似するものに従って微小管機能を安定化する。エポチロンは、G2-M移行期で細胞周期停止も引き起こし、細胞毒性及び最終的にはアポトーシスを導き得る。好適なエピチオロン(epithiolone)としては、エポチロンA、エポチロンB、エポチロンC、エポチロンD、エポチロンE、及びエポチロンF、ならびにその塩、類似体及び、その誘導体が挙げられる。1つの特定のエポチロン類似体は、エポチロンB類似体であるイキサベピロン(Ixempra(商標))である。
【0129】
ある特定の態様において、抗有糸分裂の抗がん剤は、タキサン、エポチロン、ビンカアルカロイドならびにその塩及び組み合わせからなる群から選択される。したがって例えば、一態様において、抗有糸分裂剤はタキサンである。より好ましくは、この態様において、抗有糸分裂剤は、パクリタキセルまたはドセタキセル、さらにより好ましくはパクリタキセルである。別の態様において、抗有糸分裂剤は、エポチロン(例えばエポチロンB類似体)である。別の態様において、抗有糸分裂剤は、ビンカアルカロイドである。
【0130】
本開示において使用され得る制がん薬の例としては、サリドマイド;白金配位錯体(シスプラチン(cis-DDP)、オキサリプラチン、及びカルボプラチン等);アントラセンジオン(ミトキサントロン等);置換尿素(ヒドロキシ尿素等);メチルヒドラジン誘導体(プロカルバジン(N-メチルヒドラジン、MIH)等);副腎皮質抑制物質(ミトタン(o,p’-DDD)及びアミノグルテチミド等);RXRアゴニスト(ベキサロテン等);及びチロシンキナーゼ阻害物質(スニチミブ(sunitimib)及びイマチニブ等)が挙げられるがこれらに限定されない。追加の制がん薬の例としては、アルキル化薬、抗代謝物質、天然産物、ホルモン及びアンタゴニスト、ならびに様々な薬剤が挙げられる。代替名は丸括弧で示される。アルキル化剤の例としては、ナイトロジェンマスタード[メクロレタミン、シクロホスファニド(cyclophosphainide)及びイホスファミド及びメルファラン(サルコリシン)及びクロラムブシル等];エチレンイミン及びメチルメラミン[ヘキサメチルメラミン及びチオテパ等];アルキルスルホネート[ブスルファン等];ニトロソウレア[カルムスチン(BCNU)、セムスチン(メチル-CCNU)、ロムスチン(CCNU)、及びストレプトゾシン(ストレプトゾトシン)等];DNA合成アンタゴニスト[リン酸エストラムスチン等];及びトリアジン[ダカルバジン(DTIC、ジメチル-トリアゼノイミダゾールカルボキサミド)、及びテモゾロマイド等]が挙げられる。抗代謝物質の例としては、葉酸類似体[メトトレキサート(アメトプテリン)等];ピリミジン類似体[フルオロウラシン(fluorouracin)(5-フルオロウラシル、5-FU、SFU)、フロクスウリジン(フルオロデオキシウリジン、FUdR)、シタラビン(シトシンアラビノサイド)、及びゲムシタビン等];プリン類似体[メルカプトプリン(6-メルカプトプリン、6-MP)、チオグアニン(6-チオグアニン、TG)及びペントスタチン(2’-デオキシコフォルマイシン、デオキシコフォルマイシン)、クラドリビン及びフルダラビン等];及びトポイソメラーゼ阻害物質[アムサクリン等]が挙げられる。天然産物の例としては、ビンカアルカロイド[ビンブラスチン(VLB)及びビンクリスチン等];タキサン[パクリタキセル、タンパク質結合パクリタキセル(Abraxane)、及びドセタキセル(Taxotere)等];エピポドフィロトキシン[エトポシド及びテニポシド等];カンプトテシン[トポテカン及びイリノテカン等];抗生物質[ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン(ダウノマイシン、ルビドマイシン)、ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン(マイトマイシンC)、イダルビシン、エピルビシン等];酵素[L-アスパラギナーゼ等];及び生物学的応答修飾物質[インターフェロンα及びインターレルキン(interlelukin)2等]が挙げられる。ホルモン及びアンタゴニストの例としては、黄体形成放出ホルモン(luteinizing releasing hormone)アゴニスト[ブセレリン等];副腎皮質ステロイド[プレドニゾン及び関連調製物等];プロゲスチン[カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、及び酢酸メゲストロール等];エストロゲン[ジエチルスチルベストロール及びエチニルエストラジオールならびに関連調製物等];エストロゲンアンタゴニスト[タモキシフェン及びアナストロゾール等];アンドロゲン[プロピオン酸テストステロン及びフルオキシメステロンならびに関連調製物等];アンドロゲンアンタゴニスト[フルタミド及びビカルタミド等];及び性腺刺激ホルモン放出ホルモン類似体[ロイプロリド等]が挙げられる。制がん薬のこれら及び追加の例の代替名及び商標名、ならびに投薬及び投与のレジメンを包含するそれらの使用法は、当業者に公知であろう。
【0131】
いくつかの態様において、抗がん剤は、化学療法剤を含み得る。好適な化学療法剤としては、アルキル化剤、抗生剤、抗代謝剤、ホルモン剤、植物由来剤及びそれらの合成誘導体、抗血管新生剤、分化誘導剤、細胞増殖停止誘導剤、アポトーシス誘導剤、細胞毒性剤、細胞生体エネルギーに影響する(すなわち細胞ATPレベル及びこれらのレベルを調節する分子/活性に影響する)薬剤、生物学的薬剤(例えばモノクローナル抗体)、キナーゼ阻害物質、ならびに増殖因子及びそれらの受容体の阻害物質、遺伝子療法剤、細胞療法(例えば幹細胞)、またはその任意の組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。
【0132】
これらの態様に従って、化学療法剤は、シクロホスファミド、クロラムブシル、メルファラン、メクロレタミン、イホスファミド、ブスルファン、ロムスチン、ストレプトゾシン、テモゾロマイド、ダカルバジン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、プロカルバジン、ウラムスチン、メトトレキサート、ペメトレキセド、フルダラビン、シタラビン、フルオロウラシル、フロクスウリジン、ゲムシタビン、カペシタビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、エトポシド、パクリタキセル、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、マイトマイシン、ヒドロキシ尿素、トポテカン、イリノテカン、アムサクリン、テニポシド、エルロチニブ塩酸塩、及びその組み合わせからなる群から選択される。各々の可能性は、本発明の分離した態様を表わす。
【0133】
ある特定の態様によれば、治療剤は、生物学的薬物(特に抗体)を含み得る。いくつかの態様に従って、抗体は、セツキシマブ、抗CD24抗体、パニツムマブ、及びベバシズマブからなる群から選択される。
【0134】
治療剤は、本開示において使用される時、ペプチド、タンパク質(ホルモン、酵素、抗体、モノクローナル抗体、抗体断片、モノクローナル抗体断片、及び同種のもの等)、核酸(アプタマー、siRNA、DNA、RNA、アンチセンス核酸または同種のもの、アンチセンス核酸類似体または同種のもの等)、低分子量化合物または高分子量化合物、受容体アゴニスト、受容体アンタゴニスト、部分受容体アゴニスト、及び部分受容体アンタゴニストを含み得る。
【0135】
追加の代表的な治療剤としては、ペプチド薬、タンパク薬、脱感作材、抗原、因子、増殖因子、抗感染剤(抗生物質、抗微生物剤、抗ウイルス物質、抗菌物質、抗寄生虫物質、抗真菌物質、及びその組み合わせ等)、抗アレルギー物質、ステロイド、アンドロゲン性ステロイド、充血除去物質、催眠物質、ステロイド性抗炎症剤、抗コリン作用物質、交感神経興奮物質、鎮静物質、縮瞳物質、精神賦活物質、トランキライザー、ワクチン、エストロゲン、プロゲステロン剤、液性剤(humoral agent)、プロスタグランジン、鎮痛物質、抗発作物質、抗マラリア物質、抗ヒスタミン物質、心臓作用剤、非ステロイド性抗炎症剤、抗パーキンソン病剤、抗アルツハイマー病剤、降圧剤、β-アドレナリン作用遮断剤、α-アドレナリン作用遮断剤、栄養剤、及びベンゾフェナントリジンアルカロイドが挙げられ得るがこれらに限定されない。治療剤はさらに、刺激物質、鎮静物質、催眠物質、鎮痛物質、抗痙攣物質、及び同種のものとして作用することが可能な物質であり得る。
【0136】
追加の治療剤は、CNS活性薬、神経活性薬、炎症薬及び抗炎症薬、腎臓薬及び心臓血管薬、胃腸薬、抗新生物物質、免疫調節物質、免疫抑制物質、造血剤、増殖因子、抗凝固物質、血栓溶解物質、抗血小板剤、ホルモン、ホルモン活性剤、ホルモンアンタゴニスト、ビタミン、眼用薬剤、同化剤、制酸物質、抗喘息剤、抗コレステロール剤及び抗脂質剤、抗痙攣物質、抗下痢物質、制吐物質、抗躁病剤、抗代謝剤、抗催吐物質、抗肥満剤、抗発熱剤及び鎮痛剤、抗痙攣剤、抗血栓剤、鎮咳剤、抗尿酸血症剤、抗狭心症剤、抗ヒスタミン物質、食欲抑制物質、生物学的製剤、大脳拡張物質、冠動脈拡張物質、気管支拡張物質、細胞毒性剤、充血除去物質、利尿物質、診断剤、赤血球造血剤、去痰物質、胃腸鎮静物質、血糖上昇剤、催眠物質、血糖降下剤、緩下剤、ミネラルサプリメント、粘液溶解剤、神経筋薬物、末梢血管拡張物質、向精神物質、刺激物質、甲状剤及び抗甲状剤、組織増殖剤、子宮弛緩物質、ビタミン、抗原性材料等を含み得る。他のクラスの治療剤としては、Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics(McGraw Hill)中で引用されたもの、そしてMerck Index and The Physicians’Desk Reference(Thompson Healthcare)中に包含される治療剤が挙げられる。
【0137】
他の治療剤としては、アンドロゲン阻害物質、多糖類、増殖因子(例えば血管内皮増殖因子-VEGF)、ホルモン、抗血管形成誘導因子、デキストロメトルファン、臭化水素酸デキストロメトルファン、ノスカピン、クエン酸カルベタペンタン、塩酸クロフェジアノール、マレイン酸クロルフェニラミン、酒石酸フェニンダミン、マレイン酸ピリラミン、コハク酸ドキシラミン、クエン酸フェニルトロキサミン、塩酸フェニレフリン、塩酸フェニルプロパノールアミン、塩酸プソイドエフェドリン、エフェドリン、リン酸コデイン、硫酸コデインモルヒネ、ミネラルサプリメント、コレストリラミン(cholestryramine)、N-アセチルプロカインアミド、アセトアミノフェン、アスピリン、イブプロフェン、塩酸フェニルプロパノールアミン、カフェイン、グアイフェネシン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、アミノ酸、ホルモン、インターフェロン、サイトカイン、及びワクチンが挙げられる。
【0138】
治療剤のさらなる例としては、ペプチド薬、タンパク薬、脱感作材、抗原、抗感染剤(抗生物質、抗微生物剤、抗ウイルス物質、抗菌物質、抗寄生虫物質、抗真菌物質、及びその組み合わせ等)、抗アレルギー物質、アンドロゲン性ステロイド、充血除去物質、催眠物質、ステロイド性抗炎症剤、抗コリン作用物質、交感神経興奮物質、鎮静物質、縮瞳物質、精神賦活物質、トランキライザー、ワクチン、エストロゲン、プロゲステロン剤、液性剤(humoral agent)、プロスタグランジン、鎮痛物質、抗発作物質、抗マラリア物質、抗ヒスタミン物質、抗分裂増殖物質(antiproliferative)、抗VEGF剤、心臓作用剤、非ステロイド性抗炎症剤、抗パーキンソン病剤、抗アルツハイマー病剤、降圧剤、β-アドレナリン作用遮断剤、栄養剤、及びベンゾフェナントリジンアルカロイドが挙げられるがこれらに限定されない。薬剤はさらに、刺激物質、鎮静物質、催眠物質、鎮痛物質、抗痙攣物質、及び同種のものとして作用することが可能な物質であり得る。
【0139】
さらなる代表的な治療剤としては、鎮痛物質(アセトアミノフェン、アセチルサリチル酸、及び同種のもの等);麻酔物質(リドカイン、キシロカイン、及び同種のもの等);食欲減退物質(デキサドリン、酒石酸フェンジメトラジン、及び同種のもの等);抗関節炎物質(メチルプレドニゾロン、イブプロフェン、及び同種のもの等);抗喘息物質(硫酸テルブタリン、テオフィリン、エフェドリン、及び同種のもの等);抗生物質(スルフイソキサゾール、ペニシリンG、アンピシリン、セファロスポリン、アミカシン、ゲンタミシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、クリンダマイシン、イソニアジド、リファンピン、及び同種のもの等);抗真菌物質(アンホテリシンB、ナイスタチン、ケトコナゾール、及び同種のもの等);抗ウイルス剤(アシクロビル、アマンタジン、及び同種のもの等);抗がん剤(シクロホスファミド、メトトレキサート、エトレチナート、パクリタキセル、タキソール、及び同種のもの等);抗凝固物質(ヘパリン、ワルファリン、及び同種のもの等);抗痙攣物質(フェニロイン(phenyloin)ナトリウム、ジアゼパム、及び同種のもの等);抗鬱物質(イソカルボキサジド、アモキサピン、及び同種のもの等);抗ヒスタミン物質(ジフェンヒドラミンHCl、マレイン酸クロルフェニラミン、及び同種のもの等);ホルモン(インスリン、プロゲスチン、エストロゲン、コルチコイド、グルココルチコイド、アンドロゲン、及び同種のもの等);トランキライザー(ソラジン、ジアゼパム、クロルプロマジンHCl、レセルピン、クロルジアゼポキシドHCl、及び同種のもの等);抗発作物質(ベラドンナアルカロイド、塩酸ジサイクロミン、及び同種のもの等);ビタミン及びミネラル(必須アミノ酸、カルシウム、鉄、カリウム、亜鉛、ビタミンB12、及び同種のもの等);心血管剤(プラゾシンHCl、ニトログリセリン、プロプラノロールHCl、ヒドララジンHCl、パンクレリパーゼ、コハク酸デヒドロゲナーゼ、及び同種のもの等);ペプチド及びタンパク質(LHRH、ソマトスタチン、カルシトニン、成長ホルモン、グルカゴン様ペプチド、成長ホルモン放出因子、アンジオテンシン、FSH、EGF、骨形態形成タンパク質(BMP)、エリソポエイチン(erythopoeitin)(EPO)、インターフェロン、インターロイキン、コラーゲン、フィブリノーゲン、インスリン、第VIII因子、第IX因子、Enbrel(登録商標)、Rituxam(登録商標)、Herceptin(登録商標)、α-グルコシダーゼ、Cerazyme/Ceredose(登録商標)、バソプレッシン、ACTH、ヒト血清アルブミン、γグロブリン、構造タンパク質、血液産物タンパク質、複合タンパク質、酵素、抗体、モノクローナル抗体、及び同種のもの等);プロスタグランジン;核酸;炭水化物;脂肪;麻薬(モルヒネ、コデイン、及び同種のもの、精神療法等);抗マラリア物質、L-ドーパ、利尿物質(フロセミド、スピロノラクトン、及び同種のもの等);抗潰瘍薬(ランチジン(rantidine)HCl、シメチジンHCl、及び同種のもの等)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0140】
治療剤は、免疫調節物質(例えばサイトカイン、インターロイキン、インターフェロン、コロニー刺激因子、腫瘍壊死因子、及び同種のものが挙げられる);免疫抑制物質(ラパマイシン、タクロリムス、及び同種のもの等);アレルゲン(ネコのふけ、カバの木の花粉、イエダニ、草の花粉、及び同種のもの等);細菌性生物(Streptococcus pneumoniae、Haemophilus influenzae、Staphylococcus aureus、Streptococcus pyrogenes、Corynebacterium diphteriae、Listeria monocytogenes、Bacillus anthracis、Clostridium tetani、Clostridium botulinum、Clostridium perfringens、Neisseria meningitides、Neisseria gonorrhoeae、Streptococcus mutans、Pseudomonas aeruginosa、Salmonella typhi、Haemophilus parainfluenzae、Bordetella pertussis、Francisella tularensis、Yersinia pestis、Vibrio cholerae、Legionella pneumophila、Mycobacterium tuberculosis、Mycobacterium leprae、Treponema pallidum、Leptspirosis interrogans、Borrelia burgddorferi、Campylobacter jejuni、及び同種のもの等)の抗原;ウイルス(天然痘ウイルス、インフルエンザA型及びB型ウイルス、RSウイルス、パラインフルエンザウイルス、はしかウイルス、HIVウイルス、SARSウイルス、水痘-帯状ヘルペスウイルス、単純疱疹ウイルス1型及び2型、サイトメグラウイルス(cytomeglavirus)、エプスタイン-バーウイルス、ロタウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、パピローマウイルス、ポリオウイルス、おたふくかぜウイルス、狂犬病ウイルス、風疹ウイルス、コクサッキーウイルス、ウマ脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、黄熱ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、及び同種のもの等)の抗原;かかる真菌生物、原生動物性生物、及び寄生性生物(Cryptococcus neoformans、Histoplasma capsulatum、Candida albicans、Candida tropicalis、Nocardia asteroids、Rickettsia ricketsii、Rickettsia typhi、Mycoplasma pneumoniae、Chlamydia psittaci、Chlamydia trachomatis、Plasmodium falciparum、Trypanasoma brucei、Entamoeba histolytica、Toxoplasma gondii、Trichomonas vaginalis、Schistosoma mansoni、及び同種のもの等)の抗原でもあり得る。これらの抗原は、死んだ生物体の全体、ペプチド、タンパク質、糖タンパク質、炭水化物、またはその組み合わせの形態であり得る。
【0141】
さらなる特定の態様において、治療剤は、抗生物質を含み得る。抗生物質は、例えばアミカシン、ゲンタミシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルミシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、パロモマイシン、アンサマイシン、ゲルダナマイシン、ハービマイシン、カルバセフェム、ロラカルベフ、カルバペネム、エルタペネム、ドリペネム、イミペネム/シラスタチン、メロペネム、セファロスポリン(第一世代)、セファドロキシル、セファゾリン、セファロチン(Cefalotin)、セファロチン(Cefalothin)、セファレキシン、セファロスポリン(第二世代)、セファクロル、セファマンドール、セフォキシチン、セフプロジル、セフロキシム、セファロスポリン(第三世代)、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セファロスポリン(第四世代)、セフェピム、セファロスポリン(第五世代)、セフトビプロル(ceftobiprole)、糖ペプチド、テイコプラニン、バンコマイシン、マクロライド、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、テリスロマイシン、スペクチノマイシン、モノバクタム、アズトレオナム、ペニシリン、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、メチシリン(meticillin)、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリン、ピペラシリン、チカルシリン、ポリペプチド、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンB、キノロン、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン、スルホンアミド、マフェナイド、プロントジル(古典的)、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファニルイミド(sulfanilimide)(古典的)、スルファサラジン、スルフイソキサゾール、トリメトプリム、トリメトプリム-スルファメトキサゾール(コ-トリモキサゾール)(TMP-SMX)、テトラサイクリン類(デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、及びその他が挙げられる);アルスフェナミン、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リンコマイシン、エタンブトール、ホスホマイシン、フシジン酸、フラゾリドン、イソニアジド、リネゾリド、メトロニダゾール、ムピロシン、ニトロフラントイン、プラテンシマイシン、ピラジンアミド、キヌプリスチン/ダルホプリスチン、リファンピシン(米国ではリファンピン)、チミダゾール(timidazole)、またはその組み合わせのうちの1つまたは複数であり得る。一態様において、治療剤は、リファンピシン(米国ではリファンピン)及びミノサイクリンの組み合わせであり得る。
【0142】
治療剤として有用な増殖因子としては、形質転換増殖因子-α(「TGF-α」)、形質転換増殖因子(「TGF-β」)、血小板由来増殖因子(「PDGF」)、線維芽細胞増殖因子(「FGF」)(FGF酸性アイソフォーム1及び2、FGF塩基型2、ならびにFGF 4、8、9、及び10を包含する)、神経増殖因子(「NGF」)(NGF 2.5、NGF 7.0及びβNGF及びニューロトロフィン、脳由来神経栄養因子を包含する)、軟骨由来因子、骨成長因子(BGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子、インスリン様増殖因子(IGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、果粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インスリン様増殖因子(IGF)I及びII、肝細胞増殖因子、グリア神経栄養増殖因子(GDNF)、幹細胞因子(SCF)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、形質転換増殖因子(TGF)(TGFα、β、β1、β2、β3 を包含する)、骨格成長因子、骨マトリックス由来増殖因子、及び骨由来増殖因子、ならびにその混合物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0143】
治療剤として有用なサイトカインとしては、カルディオトロフィン、ストロマ細胞由来因子、マクロファージ由来ケモカイン(MDC)、黒色腫増殖刺激活性(MGSA)、マクロファージ炎症性タンパク質1α(MIP-1α)、2、3α、3β、4、及び5、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、TNF-α、ならびにTNF-βが挙げられるがこれらに限定されない。本開示において有用な免疫グロブリンとしては、IgG、IgA、IgM、IgD、IgE、及びその混合物が挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの好ましい増殖因子としては、VEGF(血管内皮増殖因子)、NGF(神経増殖因子)、PDGF-AA、PDGF-BB、PDGF-AB、FGFb、FGFa、及びBGFが挙げられる。
【0144】
治療剤として有用な他の分子としては、成長ホルモン、レプチン、白血病抑制因子(LIF)、腫瘍壊死因子α及びβ、エンドスタチン、トロンボスポンジン、骨形成タンパク質-1、骨形成タンパク質2及び7、オステオネクチン、ソマトメジン様ペプチド、オステオカルシン、インターフェロンα、インターフェロンαA、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターフェロン1α、ならびにインターロイキン2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、15、16、17、及び18が挙げられるがこれらに限定されない。
【0145】
いくつかの実施形態において、治療剤は、開示される薬物送達組成物中で、約10、約20、約30、約40、約45、約50、約55、約60、約65、約70、約75、約80、約85、約90、約95、約100、約110、約120、約130、約140、約150、約160、約170、約180、約190、約200、約210、約220、約230、約240、約250、約260、約270、約280、約290、約300、約310、約320、約330、約340、約350、約360、約370、約380、約390、約400、約410、約420、約430、約440、約450、約460、約470、約480、約490、もしくは約500の量で(開示される薬物送達組成物のうちで、mg体重あたりのμg治療剤で);または前述の値のうちの任意のものによってくくられた治療試薬の量の範囲で;または前述の値の任意の組み合わせで、存在する。
【0146】
いくつかの実施形態において、治療剤は、少なくとも30日(例えば45日、60日、3か月、6か月、9か月、1年、またはそれ以上)の期間にわたってほぼゼロ次放出速度論を示す。治療剤は、薬物送達組成物の植込み時で、またはその後の期間後にほぼゼロ次放出速度論を示し得る(例えば治療剤は、薬物送達組成物の植込みの約30日後にほぼゼロ次放出速度論を示し始める)。他の実施形態において、薬物送達組成物は、ゼロ次速度論を逸脱する速度論を示し得る。
【0147】
開示される薬物送達組成物を調製する方法
様々な態様において、開示される薬物送達デバイスは、本明細書において以下で開示される方法によって、及び続く代表的な実施例の特定の態様において記載されるように、調製される。
【0148】
したがって一態様において、本明細書において記載される薬物送達デバイスを調製する方法は、第1のポリマーを含む第1の層を伝導性ロッド上に形成すること;及び第2のポリマーを含む第2の層を第1の層上に形成すること、を含んで提供される。
【0149】
いくつかの実施形態において、第1の層の形成は、第1のポリマーの溶液及び約10kV~約30kVの電圧差を使用する、エレクトロスピニングを含む。
【0150】
いくつかの実施形態において、第1のポリマー溶液は、少なくとも1つの有機溶媒中で約1w/v%~約10w/v%である。いくつかの実施形態において、第1のポリマー溶液中の少なくとも1つの有機溶媒は、トリフルオロ酢酸、ジクロロメタン、ヘキサフルオロイソプロパノール、またはその組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、トリフルオロ酢酸及びジクロロメタンは、約1:10~約10:1の比(例えば約5:3~約10:3の比)で存在する。いくつかの実施形態において、トリフルオロ酢酸及びジクロロメタンは、約7:3の比で存在する。
【0151】
いくつかの実施形態において、第2の層の形成は、第2のポリマー及び任意選択でポロゲンを含む溶液を使用して、形成された第1の層の上へエレクトロスピニングすることを含み、エレクトロスピニングのために使用される電圧差は、約20kV~約30kVである。
【0152】
いくつかの実施形態において、第2のポリマー及び任意選択でポロゲンを含む溶液は、全重量に基づいて、約1w/v%~約10w/v%(例えば約2.5w/v%~約10w/v%または約5w/v%~約10w/v%)の第2のポリマー及びポロゲンである。いくつかの実施形態において、第2のポリマー及びポロゲンを含む溶液は、1,1,1,3,3,3,-ヘキサフルオロプロパン-2-オール溶液である。
【0153】
いくつかの実施形態において、第2のポリマー対ポロゲンの重量比は、約90:100~約100:1(例えば約90:100~99.9:0.1、約90:100~95:5、または約95:5~99.9:0.1)である。いくつかの実施形態において、第2のポリマー対ポロゲンの重量比は、約99:1、約95:5、約92.5:7.5、または約90:10である。いくつかの実施形態において、第2のポリマー対ポロゲンの重量比は、約50:50~約100:0の範囲である。
【0154】
「ポロゲン」は、本明細書において使用される時、多孔質材料(例えば本明細書において記載されるような多孔質ポリカプロラクトン)を生成するのに使用され得る任意の材料を指す。いくつかの実施形態において、ポロゲンは、水溶性化合物を含み、すなわち薬物送達デバイスを水により洗浄することに際して、ポロゲンが外側層から実質的に除去されるようにする。いくつかの実施形態において、ポロゲンは、([トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]プロパンスルホン酸)(TAPS)、(2-(ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ)酢酸)(ビシン)、(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)または(2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール)(トリス)、(N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン)(トリシン)、(3-[N-トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)(TAPSO)、(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)(HEPES)、(2-[[1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-2-イル]アミノ]エタンスルホン酸)(TES)、(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)(MOPS)、(ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸))(PIPES)、ジメチルヒ酸、(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)(MES)、またはその塩(そのナトリウム塩等)から選択される化合物を含む。いくつかの実施形態において、ポロゲンは、HEPESナトリウム塩を含む。いくつかの実施形態において、ポロゲンは、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンコポリマー、アクリレートコポリマー(第四級アンモニウム基、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ヒアルロナン、及びポリビニルピロリドンを包含する)等の水溶性ポリマーを含む。他の実施形態において、ポロゲンは、ゼラチン、ポリエチレングリコール(PEG)、キトサン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール、またはアガロースを含む。
【0155】
いくつかの実施形態において、方法は、外側層の形成に続いて、薬物送達デバイスを焼結することをさらに含む。いくつかの実施形態において、焼結は、約50℃~約150℃(例えば約90℃~約110℃)の温度で構成される。いくつかの実施形態において、焼結は、約1分間~約6時間(例えば約30分間~約6時間)の期間の加熱を含む。
【0156】
いくつかの実施形態において、方法は、焼結に続いて、薬物送達デバイスを洗浄することをさらに含む。いくつかの実施形態において、薬物送達デバイスは、飽和重炭酸ナトリウム溶液、続いて脱イオン水により洗浄される。いくつかの実施形態において、ポロゲンは、脱イオン水により洗浄することに際して、薬物送達デバイスから実質的に除去される。
【0157】
いくつかの実施形態において、方法は、洗浄に続いて、薬物送達デバイスを乾燥することをさらに含む。いくつかの実施形態において、乾燥は、真空下である。いくつかの実施形態において、乾燥は、約50℃~約150℃(例えば約90℃~110℃)の温度である。いくつかの実施形態において、乾燥は、約1分間~約6時間(例えば約30分間~約6時間)の期間で起こる。
【0158】
他の実施形態において、開示されるカプセルは、当業者によって容易に理解されるような任意の適切な方法によって製造され得る。いくつかの実施形態において、開示されるカプセルは、非対称膜形成によって製造され得る。かかる方法の代表的な例は、Yen,C.et al.“Synthesis and characterization of nanoporous polycaprolactone membranes via thermally- and nonsolvent-induced phase separations for biomedical device application”Journal of Membrane Science 2009,343:180-88(その全体はすべての目的のために本明細書において参照することによって本明細書に援用される)中で提供される。いくつかの実施形態において、開示されるカプセルは、三次元プリンティングを使用して製造され得る。いくつかの実施形態において、開示されるカプセルは、メチルセルロースの周囲に製造され、それは後続して除去されて、内腔区画を形成し得る。いくつかの実施形態において、開示されるカプセルは、WO2015/085251、WO2016/144832、WO2016/196365、WO2017/015604、WO2017/015616、またはWO2017/015675(その各々は、すべての目的のために参照することによってその全体が本明細書に援用される)中でEnvisia Therapeuticsによって記載される方法によって製造され得る。さらに他の実施形態において、開示されるカプセルは、中空繊維膜の製造において使用されたものに類似する方法(非溶媒誘起相反転(NIPS)、(溶媒)蒸発誘起相反転(EIPS)、蒸気吸着誘起相反転(VIPS)、及び熱誘起相反転法(TIPS)を包含する相反転等)によって製造され得る。いくつかの実施形態において、開示されるカプセルは、US2015/232506(その全体はすべての目的のために参照することによって本明細書に援用される)中で記載される方法に類似する方法を使用して製造され得る。いくつかの実施形態において、孔は、代りに、カプセルのレーザー回折によって形成され得る。
【0159】
いくつかの態様において、カプセルのチューブ形状の2つの末端は、閉鎖される。末端は、当業者によって適切に選択されるような任意のシーリング技法によって閉鎖され得る。いくつかの実施形態において、2つの末端は、高周波チューブシーリング技法を使用してシールされる。かかる技法において、高周波は、壁中で渦電流を生成し、それは少なくともポリマー層を加熱する。温度がポリマーの融点に到達した場合に、クランプは閉鎖され、溶融されたポリマーは冷却され、形成される。いくつかの実施形態において、2つの末端はホットジョー(hot-jaw)のチューブシーリングを使用してシールされ、そこでは、加熱されたジョーがチューブ形状の外側へ加熱を適用して、シーリングのために内側を加熱する。いくつかの実施形態において、2つの末端は、超音波チューブシーリングを使用してシールされ得る。かかる技法において、内側層のポリマー組成物は、超音波ホーンから導入される高周波摩擦力によって加熱及び溶融される。クランプは、次いでシールされることが意図されるセクションの周囲で閉鎖され、冷却され、末端をシールするために形成される。いくつかの実施形態において、2つの末端はホットエアシーリングを使用してシールされ、そこでは、系が、カプセルの内部のシール領域をホットエアにより加熱し、次いで後続して次のステーション中で末端をプレスし冷やす。
【0160】
開示される薬物送達デバイスを使用する治療の方法
開示される薬物送達組成物の投与によって臨床状態を治療する方法も、本明細書において提供される。臨床状態は、治療組成物によって寛解され得る臨床的障害、疾患、機能不全、または他の病態であり得る。
【0161】
開示される薬物送達デバイスを対象へ「投与すること」またはその「投与」という用語は、その意図された機能を遂行するためにデバイスを対象へ導入または送達する任意の経路を包含する。投与は、経口、鼻内、非経口(静脈内、筋肉内、腹腔内、または皮下)、または局所を包含する、任意の好適な経路によって実行され得る。投与としては、自己投与及び他者による投与が挙げられる。いくつかの実例において、投与は、目への注射(眼内注射を包含する)を経由する。他の実例において、例えばがんの治療において、投与は、腫瘍またはがん細胞の他の塊内への、それらに接する、それらに隣接する、またはそれらに近位の、開示される薬物送達組成物の注射を経由し得る。
【0162】
記載されるような医学的疾患及び病態の治療または予防の様々なモードが、「実質的」を意味することが意図され、それは全面的そして全面的より少ない治療または予防を包含し、ある程度の生物学的または医学的に意義のある結果が達成されることも認識されよう。治療は、慢性疾患のための連続的な延長治療、または急性病態の治療のための単回もしくは数回の投与であり得る。
【0163】
「分離」投与という用語は、同じ時間または実質的に同じ時間での、異なる経路による、少なくとも2つの活性成分の投与を指す。
【0164】
「連続」投与という用語は、異なる時間での、投与経路が同一かまたは異なる、少なくとも2つの活性成分の投与を指す。より詳細には、連続使用は、他のもの(複数可)の投与が開始する前に活性成分のうちの1つを投与することの全体を指す。したがって、他の活性成分(複数可)の投与の前に、数分間、数時間、または数日にわたって、活性成分のうちの1つを投与することは可能である。したがって「連続」という用語は、「同時」投与とは異なる。
【0165】
「同時」投与という用語は、同じ時間または実質的に同じ時間での、同じ経路による、少なくとも2つの活性成分の投与を指す。
【0166】
「治療的(therapeutic)」という用語は、本明細書において使用される時、治療(treatment)及び/または予防(prophylaxis)を意味する。治療効果は、疾患状態の抑制、寛解、または根絶によって得られる。
【0167】
本開示は、治療有効量の本明細書において記載される組成物の投与によって眼科的な疾患または障害を治療する方法をさらに提供する。いくつかの実施形態において、開示される方法は、治療有効量の開示される組成物を対象の目の中へ注射することを含む、眼科的障害の治療に係わる。対象は患者であり得、患者は眼科的障害と診断され得た。いくつかの態様において、方法は、対象を眼科的障害と診断することをさらに含み得る。
【0168】
眼科的障害は、急性黄斑神経網膜症;Behcet病;血管新生(脈絡膜血管新生を包含する);糖尿病性ぶどう膜炎;ヒストプラスマ症;感染(真菌またはウイルスが原因の感染等);黄斑変性(滲出型AMD及び非滲出AMD及び滲出AMDを含む、急性黄斑変性(AMD)等);浮腫(黄斑浮腫、類嚢胞黄斑浮腫、及び糖尿病性黄斑浮腫等);多巣性脈絡膜炎;後眼部の部位または位置に影響する眼外傷;眼腫瘍;網膜障害(網膜中心静脈閉塞症、糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病性網膜症を包含する)、増殖性硝子体網膜症(PVR)、網膜動脈閉塞性疾患、網膜剥離、ぶどう膜炎網膜疾患等);交感性眼炎;Vogt Koyanagi-Harada(VKH)症候群;ぶどう膜滲出;眼のレーザー治療によって引き起こされるか、またはそれによって影響を受ける、後眼部病態;光線力学療法、光凝固術、放射線網膜症、網膜上膜障害、網膜静脈分枝閉塞症、前部虚血性視神経症、非網膜症糖尿病性網膜機能不全、網膜色素変性症、がん、及び緑内障によって引き起こされるか、またはそれらによって影響を受ける、後眼部病態であり得る。ある特定の実例において、眼科的障害は、滲出型加齢黄斑変性(滲出型AMD)、がん、血管新生、黄斑浮腫、または浮腫である。さらなる特定の態様において、眼科的障害は、滲出型加齢黄斑変性(滲出型AMD)である。
【0169】
様々な態様において、眼科的障害の治療のための注射は、目の硝子体眼房への注射であり得る。いくつかの事例において、注射は、硝子体内注射、結膜下注射、テノン嚢下注射、球後注射、または脈絡膜上注射である。
【0170】
「眼領域」または「眼部位」は、前眼部及び後眼部を包含する眼球(ocular globe)(眼球(eyeball))のうちの任意の区域を意味し、概して眼球中で見出される任意の機能的な(例えば視覚についての)もしくは構造的な組織、または眼球の内部もしくは外部を部分的にもしくは完全に裏打ちする組織もしくは細胞層が挙げられるがこれらに限定されない。眼領域中の眼球の区域の具体的な例としては、前眼房、後眼房、硝子体腔、脈絡膜、脈絡膜上腔、結膜、結膜下腔、強膜外隙、角膜内腔(intracorneal space)、網膜下腔、テノン嚢下腔、角膜上腔(epicorneal space)、強膜、毛様体扁平部、外科的に誘導された無血管領域、黄斑、及び網膜が挙げられるがこれらに限定されない。
【0171】
「眼科的障害」は、目、または目の部分もしくは領域のうちの1つに影響するかまたは関与する疾患、病気、または病態を意味し得る。大まかに言って、目は、眼球(角膜を包含する)、ならびに眼球を構成する他の組織及び液体、眼周囲の筋肉(斜筋及び直筋等)、ならびに眼球内またはそれに隣接する視神経の部分を包含する。
【0172】
「緑内障」は、原発性緑内障、続発性緑内障、及び/または先天性緑内障を意味する。原発性緑内障としては、開放隅角緑内障及び閉塞隅角緑内障が挙げられ得る。続発性緑内障は、様々な他の病態(傷害、炎症、色素散乱、血管疾患、及び糖尿病等)の合併症として起こり得る。緑内障の眼圧の増加は、目に侵入する視神経を損傷するので、失明を引き起こす。したがって1つの非限定実施形態において、活性酸素種を低下させることによって、STC-1、または増加量のSTC-1を発現するMSCは、緑内障の治療において用いられ、失明の開始を予防または遅延させ得る。
【0173】
眼の病態に関連して「炎症媒介性」は、抗炎症剤による治療から利益を得ることができる目の任意の病態を意味し、ぶどう膜炎、黄斑浮腫、急性黄斑変性、網膜剥離、眼腫瘍、真菌感染またはウイルス感染、多巣性脈絡膜炎、糖尿病性網膜症、ぶどう膜炎、増殖性硝子体網膜症(PVR)、交感性眼炎、Vogt-Koyanagi-Harada(VKH)症候群、ヒストプラスマ症、及びぶどう膜滲出を包含するがこれらに限定されないものが意図される。
【0174】
眼の病態に関して「傷害」または「損傷」は交換可能であり、炎症媒介性病態(例えば炎症等)からもたらされる細胞性及び形態的な兆候及び症状、そして炎症以外の手段(化学的熱傷を包含する化学的傷害等)によって引き起こされる組織傷害、そして感染(細菌感染、ウイルス感染、または真菌感染が挙げられるがこれらに限定されない)によって引き起こされる傷害を指す。
【0175】
「眼内」は、眼組織内または眼組織下を意味する。薬物送達系の眼内投与としては、テノン嚢下、結膜下、脈絡膜上、網膜下、硝子体内、前眼房、及び同種のものの位置への薬物送達系の投与が挙げられる。薬物送達系の眼内投与は、局所的、全身的、筋肉内、皮下、腹腔内、及び同種のものの位置への薬物送達系の投与を除外する。
【0176】
「黄斑変性」は、黄斑が変性するか、または機能活性を喪失した、多数の障害及び病態のうちの任意のものを指す。変性または機能活性の喪失は、例えば細胞死、細胞の分裂増殖の減少、正常な生物学的機能の喪失、または前述のものの組み合わせの結果として生じ得る。黄斑変性は、黄斑の細胞及び/または細胞外マトリックスの構造完全性の変更、正常な細胞マトリックス構築及び/または細胞外マトリックス構築の変更、及び/または黄斑細胞の機能喪失を導き得る、及び/またはそれらのものとして現われ得る。細胞は、RPE細胞、光受容体、及び毛細管内皮細胞を含む、黄斑中にまたは黄斑の付近に、通常存在する任意の細胞タイプであり得る。加齢黄斑変性(またはARMD)は主要な黄斑変性関連病態であるが、多数の他のものが知られており、Best黄斑変性、Stargardt黄斑変性、Sorsby眼底ジストロフィー、Mallatia Leventinese/Doyne蜂巣状網膜ジストロフィー、及びRPEパターンジストロフィーが挙げられるがこれらに限定されない。加齢黄斑変性(AMD)は、「萎縮型」または「滲出型」のいずれかとして記載される。AMDの湿潤した滲出性の血管新生の形態は、AMDに罹患するもののうちの約10~20%に影響し、網膜色素上皮(RPE)下またはそれを介して増殖する異常な血管を特徴とし、出血、浸出、瘢痕化、または漿液性網膜剥離をもたらす。AMD患者のうちの80~90パーセントは萎縮型であり、網膜色素上皮の萎縮及び黄斑光受容体の喪失を特徴とする。ドルーゼンは、黄斑中に存在してもしなくてもよい。視覚喪失の原因となる黄斑中の網膜色素上皮の地区の萎縮もあり得る。現在のところ、AMDのいかなる形態についての治癒はないが、滲出型AMDの弱化のある程度の成功は、光線力学療法及び特に抗VEGF療法により得られている。
【0177】
「ドルーゼン」は、RPEの下に年齢により蓄積する残屑様の材料である。ドルーゼンは、眼底検査を使用して観察される。正常な目はドルーゼンのない黄斑であるが、ドルーゼンは網膜周辺部中に豊富にある場合がある。黄斑中の軟性ドルーゼンの存在は、任意の黄斑視覚の喪失の非存在下において、AMDの早期ステージと判断される。ドルーゼンは、複数のタンパク質、修飾されたタンパク質、またはタンパク質付加体と共に、様々な脂質、多糖類、及びグリコサミノグリカンを含有する。ドルーゼン形成に対処し、それによってAMDの進行性性質を管理する概して容認される治療方法はない。
【0178】
「眼の血管新生」(ONV)は、脈絡膜血管新生もしくは網膜血管新生、または両方を指すように本明細書において使用される。
【0179】
「網膜血管新生」(RNV)は、例えば網膜表面上の網膜血管の異常な発生、分裂増殖、及び/または増殖を指す。
【0180】
「網膜下血管新生」(SRNVM)は、網膜の表面下の血管の異常な発生、分裂増殖、及び/または増殖を指す。
【0181】
「角膜」は、眼球線維膜の前部を形成する透明構造を指す。角膜は5層からなり、具体的には、1)前角膜上皮(結膜と一続き);2)前境界板(Bowman層);3)固有質または間質細胞層;4)後境界板(Descemet膜);及び5)前眼房の内皮または角膜内皮(keratoderma)である。
【0182】
「網膜」は、硝子体を取り囲み、視神経と後方で一続きの、眼球の最内層を指す。網膜は、1)内境界膜;2)神経線維層;3)神経節細胞の層;4)内網状層;5)内顆粒層;6)外網状層;7)外顆粒層;8)外境界膜;9)杆状体・錐状体層を含む層から構成される。
【0183】
「網膜変性」は、網膜及び/または網膜色素上皮の任意の遺伝性変性または後天性変性を指す。非限定例としては、網膜色素変性症、Best病、RPEパターンジストロフィー、及び加齢黄斑変性が挙げられる。
【0184】
様々な態様において、眼科的障害を治療する方法は、眼の網膜の様々な疾患または病態の治療を含み、当該疾患または病態としては、以下の:黄斑症/網膜変性:黄斑変性(非滲出性加齢黄斑変性及び滲出性加齢黄斑変性症等の加齢黄斑変性(ARMD)を包含する);脈絡膜血管新生;網膜症(糖尿病性網膜症、急性黄斑神経網膜症及び慢性黄斑神経網膜症、中心性漿液性脈絡網膜症を包含する);及び黄斑浮腫(類嚢胞黄斑浮腫及び糖尿病性黄斑浮腫を包含する);ぶどう膜炎/網膜炎/脈絡膜炎:急性多発性斑状色素上皮症、Behcet病、散弾状脈絡網膜症、感染性(梅毒、ライム病、結核、トキソプラズマ症)、ぶどう膜炎(中間部ぶどう膜炎(扁平部炎)及び前部ブドウ膜炎を包含する)、多巣性脈絡膜炎、多発性一過性白点症候群(MEWDS)、眼サルコイドーシス、後部強膜炎、匍行性脈絡膜炎、網膜下線維症、ぶどう膜炎症候群、及びVogt-Koyanagi-Harada症候群;血管疾患/滲出性疾患:網膜動脈閉塞性疾患、網膜中心静脈閉塞症、播種性血管内血液凝固症候群、網膜静脈分枝閉塞症、高血圧性変化、眼虚血症候群、網膜動脈微小動脈瘤、Coats病、傍中心窩毛細血管拡張症、半側網膜静脈閉塞、乳頭血管炎、網膜中心動脈閉塞、網膜動脈分枝閉塞症、頚動脈疾患(CAD)、樹氷状血管炎、鎌状赤血球網膜症及び他の異常血色素症、色素線条、家族性滲出性硝子体網膜症、Eales病;外傷性/外科的疾患:交感性眼炎、ぶどう膜炎性網膜疾患、網膜剥離、外傷、レーザー、PDT、光凝固術、外科手術の間の血流低下、放射線網膜症、骨髄移植網膜症;増殖性障害:増殖性硝子体網膜症及び網膜上膜、増殖性糖尿病性網膜症;感染性障害:眼ヒストプラスマ症、眼トキソカラ症、眼ヒストプラスマ症候群(OHS)、眼内炎、トキソプラズマ症、HIV感染症に付随する網膜疾患、HIV感染症に付随する脈絡膜疾患、HIV感染症に付随するぶどう膜炎疾患、ウイルス性網膜炎、急性網膜壊死、進行性網膜外層壊死、真菌性網膜疾患、眼梅毒、眼結核、広汎性片眼性亜急性視神経網膜炎、及び蠅蛆病;遺伝的障害:網膜色素変性症、網膜ジストロフィーに付随する全身性障害、先天性停止性夜盲、錐体ジストロフィー、Stargardt病、黄色斑眼底、Best病、網膜色素上皮のパターンジストロフィー、X連鎖性網膜分離症、Sorsby眼底ジストロフィー、良性中心性黄斑症、Bietti結晶状ジストロフィー、弾性線維性仮性黄色腫;網膜裂傷/網膜裂孔:網膜剥離、黄斑円孔、巨大網膜裂孔;腫瘍:腫瘍に付随する網膜疾患、RPEの先天性肥大、後部ぶどう膜黒色腫、脈絡膜血管腫、脈絡膜骨腫、脈絡膜転移、網膜・網膜色素上皮過誤腫、網膜芽細胞腫、眼底の血管増殖性腫瘍、網膜星状膠細胞腫、眼内リンパ球系腫瘍;その他:点状脈絡膜内層症、急性後部多発性斑状色素上皮症、近視性網膜変性、急性網膜色素上皮炎、及び同種のものが、挙げられる。
【0185】
前眼部病態は、眼の前部(すなわち目の正面)の領域または部位(眼周囲の筋肉、眼瞼、または水晶体嚢の後壁もしくは毛様体筋より前部に位置する眼球の組織もしくは液体等)に影響または関与する疾患、病気、または病態である。したがって、前眼部病態は、主として結膜、角膜、前眼房、虹彩、後眼房(虹彩の後ろであるが水晶体嚢の後壁の前)、水晶体または水晶体嚢、ならびに前眼部領域または部位を血管形成または神経支配する血管及び神経に影響または関与する。
【0186】
したがって、前眼部病態としては、例えば無水晶体;偽水晶体;乱視;眼瞼痙攣;白内障;結膜疾患;結膜炎(アトピー性角結膜炎が挙げられるがこれに限定されない);角膜傷害(角膜間質領域への傷害が挙げられるがこれに限定されない);角膜疾患;角膜潰瘍;ドライアイ症候群;眼瞼疾患;涙器疾患;涙管閉塞;近視;老眼;瞳孔障害;屈折障害及び斜視等の疾患、病気、または病態が挙げられ得る。緑内障治療の臨床目標が、前眼房中の房水の高圧を低減させる(すなわち、眼内圧を低減させる)ことであり得るので、緑内障は前眼部病態であると判断され得る。
【0187】
本発明に従って治療され得る目の他の疾患または障害としては、眼瘢痕性類天疱瘡(OCP)、Stevens Johnson症候群、及び白内障が挙げられるがこれらに限定されない。
【0188】
後眼部病態は、主として後眼部の領域または部位(脈絡膜または強膜(水晶体嚢の後壁を介する面に対して後方の位置の)、硝子体、硝子体眼房、網膜、視神経(すなわち視神経円板)、ならびに後眼部領域または部位を血管形成または神経支配する血管及び神経等)に影響または関与する疾患、病気、または病態である。したがって、後眼部病態としては、例えば急性黄斑神経網膜症;Behcet病;脈絡膜血管新生;糖尿病性網膜症;ぶどう膜炎;眼ヒストプラスマ症;感染(真菌またはウイルスが原因の感染等);黄斑変性(急性黄斑変性、非滲出性加齢黄斑変性、及び滲出性加齢黄斑変性症等);浮腫(黄斑浮腫、類嚢胞黄斑浮腫、及び糖尿病性黄斑浮腫等);多巣性脈絡膜炎;後眼部の部位または位置に影響する眼外傷;眼腫瘍;網膜障害(網膜中心静脈閉塞症、糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病性網膜症を包含する)、増殖性硝子体網膜症(PVR)、網膜動脈閉塞性疾患または網膜静脈閉塞性疾患、網膜剥離、ぶどう膜炎網膜疾患等);交感性眼炎;Vogt-Koyanagi-Harada(VKH)症候群;ぶどう膜滲出;眼のレーザー治療によって引き起こされるか、またはそれによって影響を受ける、後眼部病態;光線力学療法、光凝固術、放射線網膜症、網膜上膜障害、網膜静脈分枝閉塞症、前部虚血性視神経症、非網膜症糖尿病性網膜機能不全、網膜色素変性症、及び緑内障によって引き起こされるか、またはそれらによって影響を受ける、後眼部病態等の疾患、病気、または病態が挙げられ得る。治療目標が、網膜神経節細胞または網膜神経線維への損傷またはそれらの喪失に起因する、視覚の喪失を防止することまたはその喪失の出現を低減させること(すなわち神経保護)であり得るので、緑内障は後眼部病態と判断され得る。
【0189】
いくつかの実施形態において、眼用障害は、例えば虹彩炎、結膜炎、季節性アレルギー性結膜炎、急性及び慢性の眼内炎、前部ブドウ膜炎、全身性疾患に付随するぶどう膜炎、後眼部ぶどう膜炎、脈絡網膜炎、扁平部炎、仮面症候群(眼リンパ腫を包含する)、類天疱瘡、強膜炎、角膜炎、重症の眼アレルギー、角膜剥離、及び血液房水関門破壊からもたらされる眼炎症である。さらに別の実施形態において、眼用障害は、例えばレーザー屈折矯正角膜切除術、白内障除去外科手術、眼内レンズ挿入術、硝子体切除術、角膜移植術、表層角膜切除術の形態(DSEK等)、及び放射状角膜切除術からもたらされる術後眼炎症である。
【0190】
様々な態様において、眼科的障害の治療のための注射は、目の硝子体眼房への注射であり得る。いくつかの事例において、注射は、硝子体内注射、結膜下注射、テノン嚢下注射、球後注射、または脈絡膜上注射である。
【0191】
様々な態様において、眼科的障害の治療のための方法は、例えば注射を経由する、約0.01mg~約25mgの治療剤;または約1mg~約15mgの治療剤の量を含有する開示される薬物送達デバイスの投与を含む。いくつかの実施形態において、薬物送達組成物は、約10日~約12か月の期間にわたって目の硝子体内で約10ピコモル~約500ピコモルの濃度を維持する薬物の量を放出し得る。薬物送達組成物中の治療物質の量は、1つまたは複数のカプセル中に存在することができる治療剤の量、そして所望される治療効果を達成するのに必要な量に依存するであろう。
【0192】
いくつかの実施形態において、開示される薬物送達は、12か月までの期間にわたって封入された治療物質の生物活性を保護し得る。生物活性の保護のレベルは、使用される治療剤そして開示されるカプセルの選択された組成物の両方に依存するであろうが、HPLC(目中に存在する薬物の量及び形態の決定のために)、陽性対照(治療剤単独の使用等)に対する活性の細胞性アッセイ、そして他の治療物質の形態を特徴づけるかまたは生物学的活性(転写因子発現等)の変化を査定するELISAのような方法によって定量化され得る。
【0193】
キット
本開示は、(a)本明細書において記載される薬物送達組成物;(b)滅菌されたパッケージ中の本明細書において記載される薬物送達組成物;または(c)本明細書において記載される薬物送達組成物を含む、前充填されたシリンジもしくは針のうちの1つ;及び臨床状態または病理を治療する本明細書において記載される薬物送達組成物を投与するための指示書を含むキットにも係わる。
【0194】
さらなる態様において、開示されるキットは毎日の投薬レジメンでパッケージングされ得る(例えばカード上にパッケージングされる、投薬カードと共にパッケージングされる、ブリスターまたはブローモールド成形されたプラスチック上にパッケージングされる等)。かかるパッケージングは製品を向上させ、ヘルスケア専門家による投与のための使用の容易性を増加させる。かかるパッケージングは、潜在的な医療過誤を低減させることもできる。本発明は、使用指示書をさらに含有するかかるキットも特色とする。
【0195】
さらなる態様において、本開示は、開示される薬物送達組成物を含む1つまたは複数のパッケージを含む医薬用パックまたはキットも提供する。かかるパッケージに付随するものは、医薬品または生物学的製品の製造、使用、または販売を規制する政府機関によって規定された形態での通知であり得、当該通知は、ヒト投与のための製造、使用、または販売の官庁による承認を反映するものである。
【0196】
様々な態様において、開示されるキットは、他の構成要素と共パッケージング、共製剤化、及び/または共送達される、治療剤、化合物、及び/または製品もさらに含み得る。例えば、薬物製造業者、薬物再販業者、医師、調合工場、または薬剤師は、開示される薬物送達組成物、及び患者への送達のための別の構成要素を含むキットを提供することができる。
【0197】
開示されるキットは、開示される組成物を作製する開示される方法、開示される組成物を使用もしくは処理する開示される方法、及び/または開示される組成物と関連して使用され得ることが意図される。
【0198】
前述のことから、本明細書における態様が、上で説明されたすべての結末及び目的を達成するように、明白であり構造に固有である他の利点と一緒に、良好に適合されることが、理解されるだろう。
【0199】
特定のエレメント及びステップが互いに関連して検討されるが、本明細書において提供される任意のエレメント及び/またはステップは、他のエレメント及び/またはステップと組み合わせ可能であるとして、その同じ組み合わせ(それは依然として本明細書において提供される範囲内であるが)の明示的な供与に関係なく、企図されることが理解される。
【0200】
ある特定の特性及び部分的組み合わせが有益であり、他の特性及び部分的組み合わせに関係なく用いられ得ることが理解されるだろう。これは、特許請求の範囲によって企図され、その範囲内である。
【0201】
その範囲から逸脱せずに、多くの可能な態様が作製され得るので、添付の図面及び発明を実施するための形態中で説明または示される本明細書におけるすべての事項は、限定的ではなく例示的な意味として解釈されるべきであることが理解されよう。
【0202】
本明細書において使用される用語は、特定の態様を記載するためのみの目的であり、限定することは意図されないことも理解されるべきである。当業者は、本明細書において記載される態様の多くの変形及び適合を認識するだろう。これらの変形及び適合は、本開示の教示中に含まれ、本明細書の特許請求の範囲によって網羅されることが意図される。
【0203】
本開示の態様を記載してきており、以下の実施例は、概して本開示のいくつかの追加の態様を記載する。本開示の態様は、以下の実施例ならびに対応するテキスト及び図と関連して記載されるが、本開示の態様を、この記載に限定する意図はない。これとは反対に、本開示の趣旨及び範囲内に包含されるすべての代替物、修飾物、及び同等物をカバーすることが意図される。
【実施例】
【0204】
以下の実施例は、本明細書において請求される化合物、組成物、製品、デバイス、及び/または方法が、どのように作製及び評価されるかについて完全な開示及び記載を当業者に提供するように載せられ、本開示の純粋な例示あることが意図され、本発明者が自身の開示と見なす範囲を限定するようには意図されない。数値(例えば量、温度等)に関して正確性を確実にする取り組みがなされているが、ある程度の誤差及び偏差があるだろう。別段の指示のない限り、部分は重量部であり、温度は℃であるかまたは周囲温度であり、圧力は大気圧または大気圧の近傍である。
【0205】
材料
キトサン(DD>75%、Mw310,000~375,000Da)、ポリカプロラクトン(Mn80,000)、トリフルオロ酢酸(TFA)、4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-エタンスルホン酸(HEPES)ナトリウム塩、及びツイーン20を、Sigma-Aldrich Inc.(St.Louis、MO)から購入した。1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFP)をOakwood Products Inc.(Estill、SC)から購入した。ジクロロメタン(DCM)、クロマトグラフィー精製ウシ血清アルブミン(BSA)、及びVEGF組み換えヒトタンパク質を、Fisher Scientific International Inc.(Hampton(NH))から購入した。ベバシズマブ(Avastin)を、Genentech,Inc.(San Francisco、CA)から購入した。ビシンコニン酸(BCA)タンパク質アッセイキット及び比色定量性3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム(MTS)アッセイ、ホースラディシュペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートヤギ抗ヒト免疫グロブリンG(IgG)結晶性断片(Fc)二次抗体、ならびに3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)を、Thermo Fisher Scientific Inc.(Waltham、MA)から購入した。ヒト網膜色素上皮細胞株(ARPE-19細胞、CRL2302)及びDMEM:F-12培地を、American Type Culture Collection(Rockville、MD)から購入した。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)、培地200PRF及び低血清増殖サプリメント及びラクトースデヒドロゲナーゼ上昇ウイルス(LDEV)不含有増殖因子低減基底膜マトリックスを、Thermo Fisher Scientific Inc.(Waltha、MA)から購入した。すべての他の使用された試薬は分析グレードであった。
【0206】
カプセル製作
異なる内径(260μm及び1645μm)を備えた2つのサイズのカプセルを、この研究において製作した。1.645mmサイズのカプセルを、より小さいカプセルのための予備的モデルとして主に供して、加工条件を最適化した。260μmのサイズのカプセルを、後続する研究のために使用した。
【0207】
カプセル製作プロセスを
図1A中で示す。キトサン繊維層を、修飾した以前の研究に基づくエレクトロスピニングを経由して調製した(Gu,B.K.,et al.,Fabrication of sonicated chitosan nanofiber mat with enlarged porosity for use as hemostatic materials.2013.97(1):p.65-73を参照)。簡潔には、7:3の体積比のTFA及びDCMの混合物中で調製した5.0%(w/v)のキトサン溶液を、高電圧直流発電機の陰極に接続された20ゲージのステンレス鋼の針を介して押出した。下地を500rpmのスピードで回転ドラムコレクターに付着させ、そこにエレクトロスピンした繊維を沈着させた。2つの異なる内径を備えたカプセルを得るために、1.645mmまたは260μmのいずれかの直径の315ステンレス鋼ロッドを、繊維収集のために使用した。25.0kVの電圧で、1.645mmのドラムコレクターについては3.0mL/時及び260μmのドラムコレクターについては1.0mL/時のフィード率で、溶液を継続的に供給した。エレクトロスピニングの間の湿度を、窒素充填グローブボックスを使用して30%に制御した。
【0208】
PCLナノ多孔性層を調製するために(Cipitria,A.,et al.,Design,fabrication and characterization of PCL electrospun scaffolds-a review.2011.21(26):p.9419-9453;Chaparro,F.J.,et al.,Sintered electrospun polycaprolactone for controlled model drug delivery.2019;Nam,J.,et al.,Modulation of embryonic mesenchymal progenitor cell differentiation via control over pure mechanical modulus in electrospun nanofibers.2011.7(4):p.1516-1524;及びChaparro,F.J.,etal.,Sintered electrospun poly(ε-caprolactone)-poly(ethylene terephthalate)for drug delivery.Journal of Applied Polymer Science,2019.0(0):p.47731を参照)、PCL及びHEPESナトリウム塩の0.5gの組み合わせを10.0gのHFP中に溶解し、溶液を40℃で一晩継続的に撹拌した。PCL対HEPESナトリウム塩の5つの質量比(100:0;99:1;95:5;92.5:7.5;90:10)を研究して、薬物放出に対するPCLフィルムの塩誘導性多孔質構造の影響を査定した。1.645mmのドラムコレクターについては3.0mL/時及び260μmのドラムコレクターについては1.0mL/時間のフィード率で、シリンジポンプを使用して、PCL溶液を継続的に供給した。高電圧直流発電機を24.0kVに設定して、未延伸キトサン層有りまたは無しで1.645mm及び260μmの直径の315ステンレス鋼ロッド上に堆積するPCLナノ繊維を産生して、それぞれ二層フィルム及び単層フィルムを形成した。
【0209】
エレクトロスピンしたカプセルを、表面の多孔性を除去するために、AccuTempのデジタル真空オーブンを使用して100℃で3時間真空下で焼結し、次いでカプセルをロッドから穏やかに除去した(Chaparro,F.J.,et al.,Sintered electrospun polycaprolactone for controlled model drug delivery.2019を参照)。サンプルを、TFAを中和するために飽和重炭酸ナトリウム溶液、次いでHEPESナトリウム塩を溶解及び除去するために脱イオン水により洗浄した。カプセルを一晩真空乾燥させた。1.645mmのロッドを使用して調製した焼結前後のカプセルの外径を、デジタルマイクロメーター(Keyence)を使用して測定した。フィルムの厚さを、[焼結したカプセルの外径-1.645mm]/2として計算した。光学顕微鏡(Cole-Parmer)を使用して、260μmの直径のロッドを使用して調製したカプセルの画像を取得した。画像をMotic Image Plusによって分析して、カプセルの外径を決定した。フィルムの厚さを、[焼結したカプセルの外径-260μm]/2として計算した。
【0210】
カプセルの特徴評価
カプセルの形態的特徴を、走査電子顕微鏡法(SEM)(FEI、Quanta 200)によって調査した。キトサン繊維層、PCL繊維層、ならびに塩類溶脱の前後の二層フィルム及び単層フィルムの横断面を、アルミニウムスタブマウント上に配置した炭素テープ上に付着させ、金-パラジウムの層をスパッタコーティングした。カプセルを液体窒素中に浸漬し断裂させ、画像化のための横断面を取得した。PCL層及びキトサン層の平均繊維サイズ及び孔サイズを、ImageJ(NIH)を使用して、3つのサンプルのSEM画像から特徴評価し定量した。
【0211】
エレクトロスピンしたサンプルの表面の化学的分析を、減衰全反射(ATR)モードで、フーリエ変換赤外分光(FTIR)分光計(Thermo Scientific、Nicolet Nexus 670)を使用して遂行した。ゲルマニウム結晶をサンプルと接触させて配置し、100スキャンを8cm-1分解能で収集した。1727cm-1及び1590cm-1での標準的なピーク位置を、それぞれPCL(カルボニルピーク)及びキトサン(アミンバンド)を同定するのに使用した(Elzein,T.,et al.,FTIR study of polycaprolactone chain organization at interfaces.Journal of Colloid and Interface Science,2004.273(2):p.381-387;及びOsman,Z.and A.K.Arof,FTIR studies of chitosan acetate based polymer electrolytes.Electrochimica Acta,2003.48(8):p.993-999を参照)。
【0212】
薬物放出プロファイル及び装填/カプセル化有効性
2つの開放末端を備えた中空性の二層カプセルを、ドラムコレクターの除去によって得た。1.645mmの内径のカプセルについて、0.1mg/μLの濃度でリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で溶解した2.0mgのBSA粉末(モデルタンパク質)または2.0mgの凍結乾燥ベバシズマブ粉末(Avastin、抗VEGF)を、チューブシーラー(Doug Care Equipment、TTS-8C)を使用して、末端でシールされたカプセルに装填した(Chaparro,F.J.,et al.,Sintered electrospun polycaprolactone for controlled model drug delivery.2019;及びBernards,D.A.,et al.,Nanostructured thin film polymer devices for constant-rate protein delivery.2012.12(10):p.5355-5361を参照)。260μmの内径のカプセルについて、カプセルの内部の限定的な体積を考慮して、1.0mg/μLの濃度の濃縮された1.0mgのBSAまたは1.0mgのベバシズマブのスラリーを、31ゲージの針を使用して、カプセルの中へ装填した。
【0213】
以下のステップにおいて記載されるように、PCL単層カプセル及びPCL-キトサン二層カプセルからのインビトロのBSA放出プロファイルを取得した。カプセルを1.5mLの低結合遠心チューブ中の1mLのPBS中で浸漬して、溶出したタンパク質への遠心チューブの結合を低減させた。浸漬したカプセルを備えた遠心チューブを37℃でインキュベーションして、生理的条件を模倣した。1時間、3時間、6時間、12時間、24時間、3日、1週間、2週間、1か月、及びその後毎月で、溶出物を収集した(Sousa,F.,et al.,A new paradigm for antiangiogenic therapy through controlled release of bevacizumab from PLGA nanoparticles.2017.7(1):p.3736;Yandrapu,S.K.,et al.,Nanoparticles in Porous Microparticles Prepared by Supercritical Infusion and Pressure Quench Technology for Sustained Delivery of Bevacizumab.Molecular Pharmaceutics,2013.10(12):p.4676-4686;及びTyagi,P.,et al.,Light-activated,in situ forming gel for sustained suprachoroidal delivery of bevacizumab.Molecular pharmaceutics,2013.10(8):p.2858-2867を参照)。次いで、新鮮な1.0mLのPBSを添加し、インキュベーション下で維持した。溶出したBSAの吸収をBCAアッセイによって決定すること及びBSAタンパク質ベースの標準曲線を使用して濃度を定量することによって、BSA放出プロファイルを取得した。PCL単層カプセル及びPCL-キトサン二層カプセルからのインビトロのベバシズマブ放出について、同じプロトコールをベバシズマブ溶出物の取得に適用した。ベバシズマブの特徴的な吸光度をUV-可視光分光法(Agilent、Cary 100 UV-Vis)によって277nmで同定し、カプセルからのベバシズマブの放出率を277nmでマイクロプレートリーダー(BioTek、Synergy HT)によって決定し、異なる濃度でのストックベバシズマブ溶液の標準曲線に基づいて定量した(Li,F.,et al.,Controlled release of bevacizumab through nanospheres for extended treatment of age-related macular degeneration.2012.6:p.54を参照)。実験を三重で行った。
【0214】
260μmの内径のカプセルからの反応性ベバシズマブの放出率を決定するために、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を報告されるように遂行した(Tyagi,P.,et al.,Light-activated,in situ forming gel for sustained suprachoroidal delivery of bevacizumab.Molecular pharmaceutics,2013.10(8):p.2858-2867;及びVarshochian,R.,et al.,Albuminated PLGA nanoparticles containing bevacizumab intended for ocular neovascularization treatment.Journal of Biomedical Materials Research Part A,2015.103(10):p.3148-3156を参照)。簡潔には、100μLの、pH9.6の炭酸ナトリウムバッファー溶液中の1μg/mLのVEGF組み換えヒトタンパク質を、96ウェルNunc maxisorpプレート(Thermo Fisher Scientific)上に4℃で一晩固定化した。プレートを、200μLの、PBS/T(pH7.4のPBS中の0.05%v/vツイーン20)中の2%のBSA溶液によって室温で2時間ブロックし、300μLのPBS/Tにより3回洗浄した。次いで、カプセルから溶出したベバシズマブを、0.1%のBSA-PBS/Tの溶液中で0ng/mL~10ng/mL(標準曲線によって決定した)の間で希釈し、100μLのサンプルを各々のウェルに添加し、さらに室温で2時間インキュベーションした。その後に、プレートをPBS/Tにより3回洗浄し、100μLのHRPヤギ抗ヒトIgG Fc二次抗体PBS/T溶液(1:1000)を各々のウェルへ添加した。プレート全体を室温で1時間暗所でインキュベーションし、PBS/Tにより5回洗浄した。100μLのTMBの添加によって発色させ、100μLの1Nの硫酸によって停止した。各々の試験サンプル中の活性ベバシズマブの濃度を、450nmでの吸光度を標準曲線と比較することによって決定した。
【0215】
薬物ペイロードを、異なるサイズの3つのBSA及びベバシズマブを装填した単層及び二層のカプセルのPBS中での破壊によって決定した。簡潔には、3つのBSA及びベバシズマブを装填した単層及び二層のカプセルを、1mLのPBSの溶液中で破壊及び浸漬した。ボルテックスミキサーを使用して、デバイスを1mLのPBSによって強く5回洗浄した。各々の洗浄は少なくとも10分間かかった。BSA及び反応性ベバシズマブの収集した溶出液を、BCAアッセイ、UV-可視光分光法、及びELISAによって決定した。薬物カプセル化効率を、溶出液中の遊離薬物/全量の薬物*100%として計算した。薬物装填効率を、薬物ペイロード/カプセル重量*100%として計算した。累積放出%を、カプセルから溶出した薬物の累積量/[薬物ペイロード*カプセル化効率]*100%として計算した。
【0216】
カプセルの生物分解
260μmの内径のPCL単層カプセル及びPCL-キトサン二層カプセルの長期的な期間にわたるインビトロの分解及び侵食を、形態変化によって決定した。簡潔には、生理的温度でPBS中で9か月及び3週間にわたってインキュベーションした2つのシールされた末端を備えたカプセル及び2つの開放末端を備えた二層カプセルを、それぞれ回収し、次いで特徴評価のために真空乾燥した。PCL外側層、キトサン内側層、ならびに単層及び二層の両方のカプセルの横断面をSEMを使用して調査した。大きな破壊及び裂目を査定し、HEPESナトリウム塩の異なる比により調製したPCL層の平均孔サイズを、Image Jを使用して、3つの異なる画像を分析することによって定量し、0.05の有意水準で事後Tukey試験による一元配置分散分析によってインキュベーション前のカプセルの初期の孔サイズと比較した。データを平均±標準偏差として提示する。
【0217】
細胞毒性
PCL単層カプセル及びPCL-キトサン二層カプセルのインビトロの細胞毒性を、ヒト網膜色素上皮(ARPE-19)細胞により遂行するMTSアッセイによって査定した(Sur,A.,et al.,Pharmacological protection of retinal pigmented epithelial cells by sulindac involves PPAR-α.2014.111(47):p.16754-16759;Andres-Guerrero,V.,et al.,Novel biodegradable polyesteramide microspheres for controlled drug delivery in ophthalmology.2015.211:p.105-117;及びHuhtala,A.,et al.,In vitro biocompatibility of degradable biopolymers in cell line cultures from various ocular tissues:extraction studies.Journal of Materials Science:Materials in Medicine,2008.19(2):p.645-649を参照)。ARPE-19細胞を、すべての実験について4×104細胞/ウェルの密度で48ウェルプレート中に播種した。細胞毒性アッセイを、直接的接触方法及び抽出物曝露方法の両方によって遂行した。直接的接触方法について、1cmのPCL単層カプセルまたはPCL-キトサン二層カプセルを、細胞を播種したウェルプレート中に24時間配置した。抽出物曝露方法について、PCL単層カプセルまたはPCL-キトサン二層カプセルを、1日、3日、1週間、2週間、及び1か月間1mLの新鮮培地中に浸漬した。各々のタイムポイントで、カプセル馴化培地をARPE-19細胞培養へ移行させ、各々のサンプルを細胞と24時間インキュベーションして、測定を遂行した。細胞毒性アッセイを遂行するために、細胞培養培地を20μLのMTS試薬と混合し、続いて37℃で3時間インキュベーションした。上清の吸光度測定を、490nmでマイクロプレートリーダーを使用して得た。実験群の細胞生存率を対照群(処理無し)に対して正規化した。すべての実験を三重で反復し、データを、0.05の有意水準で事後Tukey試験による一元配置分散分析によって分析した。データを平均±標準偏差として提示する。
【0218】
凝集及び抗血管形成活性の査定
ベバシズマブの安定性を、SEC-1000カラムを使用する超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)3000システム(Thermo Fisher Scientific Inc.、Waltham、MA)によって決定した。凍結乾燥プロセスの間のベバシズマブ安定性を決定するために、500μLの25mg/mLのベバシズマブ(Avastin)を凍結乾燥装置(Labconco)によって冷凍乾燥し、粉末を500μLのPBS中で再希釈した。濃縮されたベバシズマブの不安定性も、デバイスからのベバシズマブスラリーを25mg/mLへPBS中で希釈することによって査定した。凍結乾燥の前後の遊離の元のベバシズマブ、濃縮されたベバシズマブ、ならびに特異的タイムポイントで単層及び二層のカプセルから溶出したベバシズマブを、注射前に0.2μmのWhatman SPARTAN HPLC Syringe Filter(VWR International、Radnor、PA)を介して濾過した。元のベバシズマブモノマー、凝集体、及び断片の画分を、HPLCスペクトラルデコンボリューションによって分析し、個別の溶出ピークへと分離した。モノマー、凝集体、及び断片の積分面積をHPLCピークの全面積へ正規化して、各々の構成要素のパーセンテージを得た。次いで平均分子量を各々の構成要素の画分%及び分子量から計算した。
【0219】
PCL単層カプセル及びPCL-キトサン二層カプセルから放出されたベバシズマブの抗血管形成活性を、毛細血管様細管形成アッセイを使用してさらに査定した(Elsaid,N.,et al.,PLGA microparticles entrapping chitosan-based nanoparticles for the ocular delivery of ranibizumab.2016.13(9):p.2923-2940;Arnaoutova,I.and H.K.J.N.p.Kleinman,In vitro angiogenesis:endothelial cell tube formation on gelled basement membrane extract.2010.5(4):p.628;及びDeCicco-Skinner,K.L.,et al.,Endothelial cell tube formation assay for the in vitro study of angiogenesis.2014(91)を参照)。より具体的には、HUVECを、i)10μg/mLの元のベバシズマブ;ii)PCL単層カプセルから放出された10μg/mLベバシズマブ;ならびにiii)1週間、2週間、1か月、3か月、6か月、及び9か月でPCL-キトサン二層カプセルから放出された10μg/mLベバシズマブ、と混合した血管形成プロモーターのVEGF(5ng/mL)へ、曝露した。6時間後に、カルセインAMを細胞へ添加し、続いて30分間インキュベーションした。次いで細胞を、デジタルカメラ(Qimaging)を装備した蛍光顕微鏡(Nikon、Eclipse TS100)を直接使用して可視化した。Image Jを使用して3つの画像を分析して、形成された毛細管構造の長さを定量した。実験群からの全管長を、各々のサンプルについてのVEGF処理対照群に対して正規化し、すべての実験を3回反復した。データを、0.05の有意水準で事後Tukey試験による一元配置分散分析によって分析した。データを平均±標準偏差として提示する。
【0220】
注射実行可能性
地域の食肉処理場(Delaware Meats、Delaware、Ohio)から得た新鮮なブタの目を、デバイスの注射実行可能性の査定のために使用した(Hoshi,S.,et al.,In Vivo and In Vitro Feasibility Studies of Intraocular Use of Polyethylene Glycol-Based Synthetic Sealant to Close Retinal Breaks in Porcine and Rabbit Eyes.2015.56(8):p.4705-4711を参照)。カプセルを、1mLのシリンジへ接続した21ゲージの皮下注射針の中へ前装填した。この研究において使用した21ゲージの針は、商業化された眼内レンズ注射器(Ozurdexアプリケーター)に類似する内径を有する(Lee,S.S.,et al.,Biodegradable implants for sustained drug release in the eye.2010.27(10):p.2043-2053を参照)。眼内注射物を、注射器針を使用して輪部の3mm後方に配置した。小体積(100μL)のPBSを使用して、ブタの硝子体液の中へカプセルを押出し、眼内圧上昇の影響を低減させた。注射後に、針を除去し、強膜を目の真中の周囲で切断して、硝子体液中のカプセルの配置をチェックした。
【0221】
IBBカプセルのためのビルディングブロックとしてのキトサン及びPCLのナノ繊維のエレクトロスピン
IBBカプセルを製作する開示される戦略は、ロッド形状の鋳型上のキトサン及びPCLのフィルムの2ステップのコーティング、続いて鋳型からの除去に基づく。多孔質の中心部が中空の二層構造を生成するために、エレクトロスピニングを使用し、これにより、タンパク質の化学吸着のための高い表面積対体積比、及び薬物拡散のための調整可能な多孔性を提供して、所望される機能を得ることができる。ナノ繊維製作のための方法としてのエレクトロスピニングは、電気力を使用して、ナノサイズの繊維へ荷電したポリマー溶液を吸引することに基づく。キトサンナノ繊維を合成するために、加工パラメーター(湿度及び電圧を包含する)を最適化した。例えば、高湿度(30%を超える)または低電圧(24kV未満)のいずれかは、スピニングヘッドからの電荷の有意な喪失を引き起こし、キトサン溶液の糸が繊維を形成することを防止した。したがって、低い湿度及び比較的高い電圧を使用した。一方、TFAの添加がより良好にキトサンを溶解し、DCMが溶媒の蒸発を適時に可能にし、その両方がエレクトロスピニングのために要求されるので、キトサン前駆体をTFA及びDCM中に溶解した。鋼ロッド鋳型の上へキトサンナノ繊維を配置するために、キトサンナノ繊維を、回転下の鋼ロッド上に直接収集した。
図2中で示すSEM画像から、キトサン繊維の直径は331.61±186.19nmであり、これらの繊維は高度に相互接続し、高多孔質構造を形成して、効率的な薬物拡散を可能にした。しかしながら、キトサン繊維マットは脆弱なことが見出され、そのことは低い機械的柔軟性についての報告と一致する(Jayakumar,R.,et al.,Biomedical applications of chitin and chitosan based nanomaterials-A short review.2010.82(2):p.227-232を参照)。この目的に向けて、PCLの第2の層を添加し、それは薬物の物理的なトラップを提供しただけでなく、柔軟性の改善も付与した。より具体的には、キトサンナノ繊維の上に、932.57±399.42nmの直径を備えたPCLナノ繊維をコーティングした(Baker,S.R.,et al.,Determining the mechanical properties of electrospun poly-ε-caprolactone(PCL)nanofibers using AFM and a novel fiber anchoring technique.2016.59:p.203-212を参照)。この目的に向けて、高い表面積、高い機械的柔軟性、及び異なる層の間の強い接着を有する、ナノ繊維ベースの円筒を、IBBカプセルのためのビルディングブロックとして構築した。
【0222】
注射可能な二層マイクロカプセルの合成及び特徴評価
ビルディングブロックとして2つのナノ繊維層を利用して、
図3中で示されるようにエレクトロスピニング後に鋼ロッド鋳型を直接除去することによって、中空性カプセル構造を形成した。二層PCL-キトサンナノ繊維構造は、タンパク質治療物質との有意な物理的な及び静電的な相互作用を提供することができるが、タンパク質のサイズに比較してナノ繊維の連続多孔質構造のサイズが有意に大きいことを考慮すると、バースト放出はまだ起こり得る(Chaparro,F.J.,et al.,Sintered electrospun polycaprolactone for controlled model drug delivery.2019を参照)。焼結を使用してPCLナノ繊維層を溶融して、多孔性を低減させ、薬物のバースト放出を低減させた。その一方で、最初のナノ繊維構造でスタートせずに、PCL層を直接コーティングすることは、注射可能な小さいカプセルの作製のために重要である、キトサンの上に薄い層構造を達成することを困難にした。二層構造の焼結ベースの形成のメカニズムは、220℃でのキトサンナノ繊維に比較して、60℃でのPCLの比較的低い融点に基づいていた。したがって、PCLが物理的に薬物を保持するプロセスの間にほとんど非多孔質になったが、キトサンは薬物を静電的に結合するために多孔質のままであった。加えて、このプロセスはまた、溶融プロセスの間に2つの層を良好に統合した。
図3中で示すSEM画像から、PCLナノ繊維の溶融が2つの層の間の接着を増加するので、キトサン繊維層はPCL外側層へ接着し、それは二層構造を安定化した。しかしながら、大きな繊維から構成されるフレームワークは、焼結後にPCLの表面上でまだ観察することができる。焼結プロセスの間に、フィルムの厚さは圧縮及び密度の増加に起因して80%減少し、そのため、エレクトロスピニングプロセスの間にキトサン及びPCLの繊維層の厚さを調節することによって、カプセルサイズを制御することができる。
【0223】
キトサン及びPCLの繊維フィルムを焼結させた後に、中空構造を備えた二層マイクロカプセルを、鋳型戦略によって、及びPCL外側層の機械的堅牢性の利用によって、生成した。鋳型ロッドの形状及びサイズの制御によって、カプセルのサイズ及び構造を有効に制御することができるだろう。概念の証明として、単層PCLカプセル及び二層キトサン-PCLカプセルの2つのサイズ:スキャフォールドとして移植することができる1.645mm(前モデル)のより大きな内径を備えたもの、及び21ゲージの針を介して注射可能な260μm(最終的なモデル)のより小さい内径を備えたものを調製した。鋼ロッドが鋳型である中空構造は、主として薬物装填のために高い体積を可能にしたが、二層膜は物理的なトラッピング及び化学的非共有結合形成を提供して、長い間持続可能な放出を達成した。
【0224】
薬物放出研究のために使用されたデバイスにおいて、1.645mmの内径のカプセルの外径はおよそ1.815mmであり、壁の厚さは89.36±11.52μmであった。同様に、260μmの内径のカプセルの外径はおよそ430μmであり、膜の厚さは89.85±4.27μmであり、21ゲージの針を経由して注射可能であるようにデザインした。カプセルの厚さの増加は、カプセルの機械的特質を促進し、それは注射の間の断裂を防止した。しかしながら、カプセルのサイズの増加は、硝子体内注射を妨げる可能性がある。したがって、80~90μmが、機械的堅牢性そして注射実行可能性のバランスがとれた壁の厚さとして決定された。また、膜の厚さは薬物の拡散率に密接に関連し、そのため、単層カプセルと二層カプセルとの間の厚みの差を制御し最小限にして、薬物放出に対する厚さの影響を低減させた。
【0225】
二層膜のナノ多孔性構造の調節
焼結後に、PCL層は非多孔質になり、薬物放出速度は有意に限定された(Chaparro,F.J.,et al.,Sintered electrospun polycaprolactone for controlled model drug delivery.2019を参照)。しかしながら、焼結無しでは、二層カプセルは高度に多孔質であり、所望されない高い薬物放出速度をもたらすだろう。それゆえ、塩類溶脱方法を用いて二層膜の3次元の多孔質構造を正確に調節して、薬物の長期的な持続可能な放出を可能にした。より具体的には、変動量の水溶性塩(HEPES)を、エレクトロスピニングの間にナノ繊維の中へ混合した。薬物装填前の水中でカプセルのインキュベーションは、フィルムの内部のHEPESの溶出を導き、それによって、二層膜上に再び多孔質構造を形成した。PCLナノ繊維中のHEPESの濃度の調節によって、多孔性を有効に制御することができるだろう。
図4中で示されるように、PCL焼結フィルム中の孔サイズ及び分布は、塩対PCLの質量比に大きく依存した。例えば、孔は、より低い塩濃度では、より小さく、フィルムの表面の全体にわたってより分散する傾向があった。しかしながら、低い量の塩は、大きな分子の拡散及び放出のための相互接続する孔の生成も妨害した。表1は、PCL対HEPESナトリウム塩の異なる比についての分析的孔サイズの結果を示す。この目的に向けて、相互接続する多孔質構造がSEMを介して横断面で観察されたので、5.0%を超える塩濃度により調製したPCLフィルムをカプセル製造及び薬物放出研究において使用した。
【0226】
塩類溶脱の前後の二層構造中の変化を査定するために、SEM画像化を、二層カプセルの内側表面、外側表面、及び横断面を観察するのに使用した。塩類溶脱前に、PCL焼結フィルムは、その中で埋め込まれた若干のHEPESナトリウム塩の結晶により荒かった。塩類溶脱後に、多孔質構造がPCL層中で現われ、キトサン層はその繊維構造を失い、多孔性層を形成した。キトサン層の平均孔サイズは802.47±501.02nmであり、当該サイズは、静電的相互作用を介するタンパク質との相互作用を最大化することによって、持続可能な放出のためのタンパク質の3次元拡散及び当該タンパク質との相互作用を可能にした。内側キトサン層は、25μmの厚さを備えたよりナノ多孔性である構造を示し、それはキトサンの比較的高い融点に起因し得る。これとは対照的に、外側PCL層は、通過するナノチャンネルを備え65μmの全厚さのより緻密な構造を有して、薬物を物理的にトラップする一方でタンパク質拡散を支持した。これらの結果は、PCL及びキトサンの個別の層上に収集された形態と一致する。
【0227】
焼結及び洗浄後に二層カプセルの化学的特質をさらに確認するために、
図5中で示される最終的なカプセルで、FTIR分光法を遂行した。示されたスペクトルにおいて、1727cm
-1の有意なピークがPCL中のカルボニル基へ割り当てられた。2963cm
-1及び2995cm
-1でのピークは、PCLの骨格中のC-H伸縮であった。キトサンの骨格中に豊富なヒドロキシル基からのO-H伸縮振動に起因する3478cm
-1での幅広い群を観察することができるだろう。さらに、1571のcm
-1でのキトサンについての特徴的なピークが、N-H伸張へ割り当てられた。かかるピークは、焼結への曝露後でさえ、キトサン層及びPCL層の化学的特質の強固な証拠を提供する。したがって、陽イオン性キトサンは活性があるままであり、陰イオン性タンパク質(ベバシズマブ)を化学的に非共有結合することが可能である。SEM及びFTIRにより、広く調整可能な孔サイズ、アスペクト比、寸法を有し、薬物装填及びタンパク質治療物質の制御放出に最適な物理的及び化学的な特質を提供し得る、ハイブリッドナノ微細構造カプセルの合成のための開示されるボトムアップアプローチの実行可能性が、証明された。
【0228】
ベバシズマブの高ペイロード及び長期的な持続可能な薬物放出
カプセルの中空構造によって可能にされたタンパク薬の高ペイロードを確認するために、薬物を装填したカプセルの破壊ならびにカプセルから漏出するBSA及びベバシズマブの量のそれぞれの査定によって、薬物カプセル化有効性を決定した。BSAをモデルタンパク薬として使用し、ベバシズマブはAMDの治療のための臨床的に使用される抗VEGF治療物質である。BSA及びベバシズマブが二層カプセルのキトサン層へ吸着し得ることを考慮して、単層カプセル及び二層カプセルの両方を、薬物ペイロードの査定に使用した。薬物ペイロードにおける有意差は、両方のカプセルの間で見出されなかった。当該研究に基づいて、3つの大カプセル及び3つの小カプセルのBSAカプセル化有効性は、それぞれ100.39±6.46%及び69.64±7.15%であった。より低いカプセル化有効性が、大カプセル及び小カプセルの両方のベバシズマブの装填において観察され、それは、
図12中で示されるように、UV-可視光分光法(280nmの周囲の特徴的な吸収を有するタンパク質の濃度を決定する、一般的に使用される機器)によって、52.66±6.47%と査定された。しかしながら、より高い量の反応性ベバシズマブ(729.02±84.67μg)がELISAによって定量され、それはおよそ70%のベバシズマブカプセル化有効性を与えた。より低いカプセル化効率は、より低い濃度のベバシズマブに対してUV-可視光分光法の感度が減少すること及び累積放出がELISAによって有効に検出できることに起因し得るだろう。カプセルの装填能力はおよそ26.60±1.90%w/wであり、それは、10~15%の装填能力の大部分の報告されたデバイスよりも高い(Li,F.,et al.,Controlled release of bevacizumab through nanospheres for extended treatment of age-related macular degeneration.2012.6:p.54;及びBadiee,P.,et al.,Ocular implant containing bevacizumab‐loaded chitosan nanoparticles intended for choroidal neovascularization treatment.Journal of Biomedical Materials Research Part A,2018.106(8):p.2261-2271を参照)。
【0229】
モデル薬物BSAを使用して、
図6中で示されるように、カプセルの表面形態及び多孔性の変更によって薬物放出プロファイルを調節するための例示的なカプセルの能力を示した。概念の証明として、1.645mm及び260μmの内径を備えた一層及び二層のカプセルを調製し、5%、7.5%、及び10%の塩の塩類溶脱条件により調製したサンプルも調査した。
図6は、両方のサイズのための単層及び二層カプセルのBSA放出プロファイルを示す。予想されるように、バースト放出が最初の1か月中に1.645mmの内径PCL単層カプセル中で起こり、装填したBSAの75%超がカプセルから溶出し、それは薬物放出の継続期間を有意に限定した。表面面積対体積の比の増加に起因して、バースト放出の期間は、260μmの内径のカプセルにおいて2週間に短縮し、累積放出パーセンテージは、この期間の間で1.645mmの内径のカプセルのものに類似する。それゆえ、小さいカプセルの薬物拡散率が向上した。しかしながら、両方のカプセルサイズにおいて、安定した放出に続いてバースト放出があった。単層カプセルの最大の薬物放出期間は、10%の塩により調製した、1.645mmの内径のカプセルについておよそ5か月及び260μmの内径のカプセルについて3か月であった。HEPESナトリウム塩の効果も調査した。より高い塩濃度は、孔の相互接続性の増加に起因して、より迅速な放出速度をもたらした。より低い塩濃度によるカプセルにおいて、バースト放出は遅れたが、まだ制御不可能であった。
【0230】
これとは対照的に、PCLキトサン二層カプセルは、バースト放出の明白なエビデンスを示さなかった。二層カプセルは有意にBSA放出を遅らせた。二層カプセルの放出プロファイルは、高い直線性を示し、それは
図7中に要約される。1か月後に、1.645mmの内径の二層カプセルは、装填したBSAのうちのおよそ15%を放出し、それは同じ期間における単層PCLカプセルに比較して60%低い放出であり、デバイスの内部のBSAを保持するより高い能力を示した。同様に、260μmの内径の二層カプセルは、バースト放出を有意に低減させた。BSAのうちの25%のみが、260μmの内径の二層カプセルから溶出し、それは、拡散のための比較的より大きな面積対体積に起因して、1.645mmのカプセルよりも高かった。キトサン層は薬物拡散の限定に有効であり、PCLシェルの多孔性はBSA放出の制御において重大な役割を果たさなかった。単層カプセルと二層カプセルの直径との間に有意差は無く(p>0.05)、そのため、薬物放出に対する厚さの効果はこれらの研究においてごくわずかであった。理論的には、二層構造は、累積放出データに基づいて、両方のサイズのカプセルについて少なくとも1年にわたって薬物放出を制御する能力を有する。
【0231】
二層カプセルの多孔質構造が包括的に調査され最適化された後に、ベバシズマブ(臨床的AMD治療のための標的薬物)の装填及び放出のために、二層構造を備えたカプセルを使用し、10%のHEPESにより溶脱した。BSA薬物放出実験と一致して、明白な初期バースト放出無しの1年9か月にわたる持続可能な放出プロファイルが、1.645mmのカプセル及び260μmのカプセルの両方において成功裡にそれぞれ達成された。興味深いことには、二層カプセルベースの薬物放出の間に、BSAに比較して、ベバシズマブのバースト放出のさらなる低減があった。これは、BSAに比較して、ベバシズマブの分子量の増加及びより低い有効電荷に起因し得る。この条件では、孔サイズがベバシズマブの拡散率を支配する。より高い分子量のベバシズマブが、限定的な多孔質のチャンネルを備えたカプセルから溶出することは難しいだろう。これは、なぜ5%のHEPES塩により調製された単層カプセル及び二層カプセルの両方の全放出が類似する放出速度論を有するのかを説明する。また、膜の内側により大きな孔を備えた他の2つのカプセルに比較して、5%のHEPES塩によって調製したカプセルは、最も低い放出速度を有する。
図7中で示されるように、ベバシズマブを装填した260μmの内径の二層カプセルにより、バースト放出後にほぼゼロ次放出速度論が達成されたことは注目に値する(P<0.05)。
【0232】
単純なUV吸収を使用してベバシズマブの量を査定及び定量化したが、それは、反応性ベバシズマブを特定すること、及び破壊されたポリマーのバックグラウンドとカプセルを経時的に区別することができなかった。したがって、260μmのカプセルから溶出したベバシズマブを、ELISAによって再度決定した。
図13は、ベバシズマブを放出する一般的傾向が、UV-可視光によって決定した以前の結果と一致したことを示す。例えば、5%のHEPES塩によって作製された単層カプセルからのベバシズマブの長期的な累積放出は、UV-可視光によっておよそ160μgと査定され、これは9か月にわたってELISAによって特徴評価したものと同じであった。したがって、UV-可視光及びELISAからの放出結果の比較によって、UV-可視光によって取得した放出プロファイルは信頼でき、それは単層及び二層のカプセルからのベバシズマブ放出の一般的傾向を提供することができた。同様に、5%の塩により調製したカプセルは、7.5%及び10%の塩によるものに比較して、9か月にわたって、比較的より遅い放出速度を有していた。これらの考慮に基づいて、次いでより高い(7.5%及び10%)HEPES塩濃度による二層カプセルを同定し、抗VEGFの長期的な放出のために使用した。それと同時に、高い薬物装填能力及び9か月の期間にわたる安定的な薬物放出プロファイルは、抗VEGF治療物質の送達のための多用性のあるプラットフォームとしての例示的な二層カプセルの可能性を強く示す。
【0233】
カプセルの生物分解
PCL単層カプセル及びキトサン-PCL二層カプセルのインビトロの分解を研究した。2つの閉鎖末端を備えたカプセルを37℃で9か月にわたってPBS中で配置して、カプセルを回収し、SEMによって特徴評価した。全体のデバイスの機械的完全性は、エステル結合での加水分解をゆっくり受けるPCL層によって主に決定される(Darwis,D.,et al.,Enzymatic degradation of radiation crosslinked poly(ε-caprolactone).Polymer Degradation and Stability,1998.62(2):p.259-265を参照)。したがって、PCL層の侵食及び分解を経時的に査定することは重要である。
図11中に示される特徴的なSEM画像から、単層カプセル及び二層カプセルの両方は9か月のインキュベーション後にインタクトなままであった。しかしながら、最初のカプセルに比較して、9か月後に、PCL膜の表面上の孔はより大きくより分散するようになり、それはPCL膜の遅い分解を示した。表2は、HEPES塩の異なる条件でのカプセルの分析的孔サイズを要約する。PCL表面上の孔は、平均で直径およそ180nmだけ有意に増加した(p≦0.05)が、全体のデバイスは、明白な割れ及び破壊無しに完全性を維持した。二層カプセルも特徴評価した。9か月後に、キトサン層はPCL層上にまだ緊密に接着し、繊維はまだ輪郭が明確でインタクトであった。キトサン表面層の繊維フレームワークは、有意な変化無しにまだ明らかであった。さらに、単層カプセル及び二層カプセルの両方の膜の厚さは、80μm~90μmの範囲中であり、それはインキュベーション前のその元の厚さに類似する。しかしながら、
図15中で示されるように、3週間にわたって生理的温度でPBS中で2つの開放末端を備えたカプセルを浸漬する場合に、有意な厚さの減少及びキトサン繊維の喪失が観察された。これはおそらく、長期で水へ直接露出される場合のキトサンの遅い分解によって引き起こされる(Kean,T.and M.Thanou,Biodegradation,biodistribution and toxicity of chitosan.Advanced Drug Delivery Reviews,2010.62(1):p.3-11;及びOnishi,H.and Y.Machida,Biodegradation and distribution of water-soluble chitosan in mice.Biomaterials,1999.20(2):p.175-182を参照)。さらに、キトサンの弱い機械的特質に起因して、内側キトサン繊維膜は水中で長期的なインキュベーションの間の剪断力下で脆弱になり、キトサンの有意な喪失をもたらし得る(Sangsanoh,P.and P.J.B.Supaphol,Stability improvement of electrospun chitosan nanofibrous membranes in neutral or weak basic aqueous solutions.2006.7(10):p.2710-2714;及びChen,Z.,et al.,Mechanical properties of electrospun collagen-chitosan complex single fibers and membrane.Materials Science and Engineering:C,2009.29(8):p.2428-2435を参照)。したがって、疎水性PCL層は分解から内側キトサン層を保護し、デバイス全体の劣化をさらに低減させることが可能である。
【0234】
細胞毒性
任意の薬物送達デバイスについての最も重要な特質のうちの1つは、短期及び長期の両方で、標的の細胞または組織の存在下における許容される生体適合性である。この目的に向けて、例示的な二層カプセルの細胞毒性を網膜色素上皮(ARPE-19)細胞を使用して調査したが、その理由は、それらは網膜における最も優勢な細胞であり、直接的接触方法及び抽出物曝露方法の両方で、毒性材料及び外来性材料に高度に敏感であるからである。標準的なミトコンドリア活性測定アッセイの使用によって、単層及び二層のカプセルの処理有り及び無しで、RPE細胞の細胞生存率を測定した。
図8中で示される結果から、PCL単層カプセル及びPCL-キトサン二層カプセルの両方は、24時間の直接的なインキュベーションの間に、RPE細胞へごくわずかな毒性を示した。PCL及びキトサンの両方は、眼内適用において良好な生体適合性であることが報告された(Kim,J.,et al.,Long-term intraocular pressure reduction with intracameral polycaprolactone glaucoma devices that deliver a novel anti-glaucoma agent.2018.269:p.45-51;及びWassmer,S.,et al.,Chitosan microparticles for delivery of proteins to the retina.Acta Biomaterialia,2013.9(8):p.7855-7864を参照)。同様に、両方のカプセルの抽出物も、
図8中で示されるように、1か月にわたって細胞生存率に影響を及ぼさなかった。1か月の間のタイムポイントでさえ、二層カプセルについて95%を上回る生存率が見出された。これらの結果はまとめると、網膜色素上皮細胞へ無視できる細胞毒性を示し、今後の研究における眼用モデルの前臨床的評価のための二層カプセルの可能性を示唆する。
【0235】
放出されたVEGF阻害物質の安定性及び抗血管形成に対する治療効果
長期的な持続的タンパク質送達系の開発を妨げる1つの主な問題点は、水性環境中のタンパク質の凝集及び分解である。ベバシズマブは生理的条件下で不安定であり、身体中で経時的に分解及び凝集する傾向がある(Courtois,F.,et al.,Rational design of therapeutic mAbs against aggregation through protein engineering and incorporation of glycosylation motifs applied to bevacizumab.mAbs,2016.8(1):p.99-112;Oliva,A.,M.Llabres,and J.B.Farina,Capability measurement of size-exclusion chromatography with a light-scattering detection method in a stability study of bevacizumab using the process capability indices.Journal of Chromatography A,2014.1353:p.89-98;Latypov,R.F.,et al.,Elucidation of acid-induced unfolding and aggregation of human immunoglobulin IgG1 and IgG2 Fc.Journal of Biological Chemistry,2012.287(2):p.1381-1396;及びBakri,S.J.,et al.,Six-month stability of bevacizumab(Avastin)binding to vascular endothelial growth factor after withdrawal into a syringe and refrigeration or freezing.Retina,2006.26(5):p.519-522を参照)。さらに、デバイスに、冷凍乾燥から取得した高濃縮ベバシズマブを装填する。凝集及び活性の喪失が、高濃度でまたは凍結乾燥プロセスの間に起こり得る(Varshochian,R.,et al.,The protective effect of albumin on bevacizumab activity and stability in PLGA nanoparticles intended for retinal and choroidal neovascularization treatments.European Journal of Pharmaceutical Sciences,2013.50(3):p.341-352を参照)。ベバシズマブ凝集体が、モノマーと同じ速度で植込みから放出されない可能性があるので、このことは重要になる。したがって、ベバシズマブ安定性研究は、デバイス製作及び経時的なデバイスインキュベーションの間のベバシズマブの凝集及び断片化をHPLCを使用して査定するために要求された。ベバシズマブの分析的凝集及び断片化を表3中で要約し、HPLCスペクトルを
図14中で示す。凍結乾燥の間のベバシズマブの安定性を確認するために、凍結乾燥ベバシズマブのHPLCスペクトルを、市販のベバシズマブ(Avastin)のものと比較した。16%の凝集体が遊離の元のベバシズマブ中で形成され、ベバシズマブ凝集体のわずかな増加が凍結乾燥サイクルの間に観察された。また、濃溶液中の凝集を、PBS中で希釈し、続いて直ちにHPLC特徴評価を行うことによって査定した。しかしながら、ベバシズマブ凝集体の変化は観察されず、このことはタンパク質が濃溶液中でかなり安定的であると示し、例示的なデバイスがベバシズマブモノマーの放出を遅らせ得ることをさらに証明した。単層カプセル及び二層カプセルから長期に放出されたベバシズマブの効力も査定した。凝集体のパーセンテージは、3か月にわたって両方のカプセルについて11%~16%の間の範囲であり、ベバシズマブが長期的なインキュベーションの間に断片化を受けたことも見出された。しかしながら、ベバシズマブの効力は、表3中で示されるこの期間にわたって高レベルで依然として維持された。260μmの内径のPCL単層カプセルから溶出したベバシズマブのモノマーは、1か月で84%を占め、この数値は3か月で79%へわずかに減少した。同様に、260μmの内径のキトサン-PCL二層カプセルから放出されたベバシズマブモノマーは、最初の3か月にわたって82%であった。この促進された安定性は、糖タンパク質へイオン結合することによるキトサンへの接着、及びその生体利用能の増加に起因し得る。また、疎水性PCL層は、カプセルを横切る液体交換を低減させることによって断片化のプロセスを遅らせた。それゆえ、長期に放出されたベバシズマブの効力は良好に維持され、頻繁な注射無しにAMDの治療のための例示的なカプセルの高い可能性を示唆する。
【0236】
HPLCは例示的なカプセルによって送達されたベバシズマブモノマー及び凝集についての明瞭な情報を提供するが、ELISAは、長期に放出されたVEGFへ反応性のベバシズマブの効力及び量を特徴づけて、血管形成に対するその効果を保証する。したがって、ベバシズマブELISAを遂行して、260μmの内径のカプセルから経時的に放出された反応性ベバシズマブを決定した。1か月後に、活性のあるベバシズマブの放出速度は1か月あたり約20μg/mLで維持され、それはUV-可視光によって決定されたベバシズマブの量に類似する。さらに、溶出したベバシズマブの生物活性パーセンテージも、ELISAによって測定された累積放出パーセンテージをUV/可視光によって決定されたものへ比較することから、計算した。この結果から、単層カプセルから放出されたベバシズマブは、9か月の期間の間に90%を超える生物活性を維持することができ、それはタンパク質の保護における可能性を示す。生物活性の揺らぎは二層カプセルにおいて観察され、それは80%の付近で維持された。前述のようなインキュベーションの長期的な期間にわたる内側層の遅い生物分解によるUV-可視光吸光度効果のバックグラウンドの増加が、より低い生体活性パーセンテージを引き起こし得る。しかしながら、両方の結果は、単層カプセル及び二層カプセルによって保護されたタンパク質の高い生物活性を強く支持する。この点に関して、薬物を物理的に保護する例示的な中空性二層カプセルは、継続放出に対するこの障害を克服する可能性を有する。
【0237】
また、単層PCL及びPCL-キトサン二層カプセルから溶出したベバシズマブを、
図9中で示されるように、HUVECを使用する管形成アッセイにおいて、VEGF誘導性細管増殖に対する阻害効果について査定した。10μg/mLの濃度で、陽性対照の元のベバシズマブは、93.15±1.49%の細管の長さ阻害をもたらした。1か月後の単層カプセル及び二層カプセルから溶出したベバシズマブは、260μmの内径のカプセル及び1.645mmの内径のカプセルでそれぞれおよそ13.33±6.51%及び12.33±4.63%の管形成を導き、それは、元のベバシズマブの従来の注射に比較してより有効であった。管の長さ形成におけるわずかな増加が、生理的温度での長期的なインキュベーションによって引き起こされた生物活性の喪失に起因して、3か月後に現われた。しかしながら、二層カプセルから溶出したベバシズマブ及び単層カプセルから溶出したベバシズマブの抗血管形成誘導特質における有意差はなかった(p>0.05)。遅い薬物拡散が酵素によるベバシズマブ分解のプロセスを遅延させ、そのことがカプセルの内部のタンパク質を有意に保護したことが予想される。全体として、抗血管形成生物活性は、9か月にわたって高レベルで良好に維持され、長期的な薬物放出に向けたカプセルの保護的効果の可能性が示唆される。
【0238】
注射実行可能性
高い薬物装填能力、タンパク質治療物質の持続可能な放出、及び抗VEGFの生物活性の維持に加えて、これらのカプセルは、注射可能にすることもできる。このことを実証するために、
図10中で示されるように、21ゲージの針を経由してエクスビボのブタの硝子体液の中へ10mmの長さのカプセルを強膜を介して送達することによって、注射実行可能性試験を遂行した。430μmの外径を備えたカプセルをこの研究において使用したが、その理由は、それらが、460μmの直径及び6mmの長さで商業化された眼内レンズ(Ozurdex)に類似するサイズだからである。Ozurdexアプリケーターは、22ゲージのTSK針を装備する(Chan,A.,L.-S.Leung,and M.S.Blumenkranz,Critical appraisal of the clinical utility of the dexamethasone intravitreal implant(Ozurdex(登録商標))for the treatment of macular edema related to branch retinal vein occlusion or central retinal vein occlusion.Clinical Ophthalmology(Auckland,NZ),2011.5:p.1043;Arcinue,C.A.,O.M.Ceron,and C.S.Foster,A comparison between the fluocinolone acetonide(Retisert)and dexamethasone(Ozurdex)intravitreal implants in uveitis.Journal of ocular pharmacology and therapeutics,2013.29(5):p.501-507;及びQuerques,L.,et al.,Repeated intravitreal dexamethasone implant(Ozurdex(登録商標))for retinal vein occlusion.Ophthalmologica,2013.229(1):p.21-25を参照)。針の内径はおよそ500μmであり、それは例示的なカプセルをフィッティングさせることができた(Meyer,C.H.,et al.,Penetration force,geometry,and cutting profile of the novel and old Ozurdex needle:the MONO study.Journal of Ocular Pharmacology and Therapeutics,2014.30(5):p.387-391を参照)。より具体的には臨床適用において、典型的には抗VEGF装填カプセルを、類似のアプリケーターによって硝子体内に送達することができ、それは侵襲性切開手術を回避することができる。したがって、例示的な二層カプセルに基づく進歩した薬物送達系は、現在使用される臨床的アプローチとかなり互換性があるだろう。
【0239】
この研究において、滲出型AMD治療のための長期療法の重要な難問に対処するために、ポリマーベースの微細構造送達プラットフォームはインビトロで抗VEGFの持続可能な放出を達成するようにデザインされ開発された。持続可能なタンパク質放出は、複合材化学及び工学的方法の使用によりキトサン-PCL二層マイクロカプセルの構造をデザイン及び最適化することによって達成された。これらのキトサン-PCLマイクロカプセルの重要な特性としては、サイズ、PCLシェルの多孔性、及び単純で手際のいい薬物装填のための中空構造が挙げられる。
【0240】
PCL-キトサンマイクロカプセルは、エレクトロスピニング、焼結、及び塩類溶脱の新規組み合わせによって合成された。予備的研究において、キトサン繊維が塩類溶脱後にそれらの構造を失ったことが示された。繊維調製の間のトリフルオロ酢酸塩の形成が、溶媒としてTFA及びDCMを使用している間のキトサンの溶出のプロセスを加速したと考えられ、そのため、重炭酸ナトリウム溶液による中和の必要なステップが、ベバシズマブの生物活性に対する酸性塩の効果を低減させるために洗浄の間に要求された(Sangsanoh,P.and P.J.B.Supaphol,Stability improvement of electrospun chitosan nanofibrous membranes in neutral or weak basic aqueous solutions.2006.7(10):p.2710-2714を参照)。
【0241】
膜の厚さは、薬物放出期間に相関した。理論的には、より厚い膜は薬物のより遅い拡散をもたらした。たとえ、カプセルのサイズを増加させることがより遅い薬物放出を達成することを支援する可能性があったとしても、マイクロカプセルのサイズを増加させると、小さいゲージの針を介する注射ができなくなるだろう。したがって、カプセルを臨床適用のために注射可能にするために、より薄い膜が要求された。キトサン層は、この問題に対処するために添加された。この研究において、すべてのカプセルは80~95μmの間の厚さを有し、それは、薬物放出速度とキトサン-PCL複合物との間の関係性の探索において、厚さの影響を最小限にした。
【0242】
薬物放出を制御するためにこれらの重要な因子を最適化した後に、マイクロカプセルのパフォーマンスを、抗VEGFの持続可能な放出について評価及び最適化した。ベバシズマブは、2004年以来滲出型AMDの治療において臨床的に使用されている(Michels,S.,et al.,Systemic bevacizumab(Avastin)therapy for neovascular age-related macular degeneration:twelve-week results of an uncontrolled open-label clinical study.2005.112(6):p.1035-1047.e9を参照)。理論的には、ベバシズマブの等電点(pI)は7.8である(Nomoto,H.,et al.,Pharmacokinetics of bevacizumab after topical,subconjunctival,and intravitreal administration in rabbits.2009.50(10):p.4807-4813を参照)。pIから計算されたその正味電荷は、多数の研究によって報告されたようにpH7.4でわずかに正であるはずである。しかしながら、水、及びデバイス製造の間に典型的に使用される他の有機溶媒中のタンパク質凝集体は、生物活性を低減させ、所望されない副作用を引き起こす可能性を有する(Varshochian,R.,et al.,Albuminated PLGA nanoparticles containing bevacizumab intended for ocular neovascularization treatment.Journal of Biomedical Materials Research Part A,2015.103(10):p.3148-3156;Courtois,F.,et al.,Rational design of therapeutic mAbs against aggregation through protein engineering and incorporation of glycosylation motifs applied to bevacizumab.mAbs,2016.8(1):p.99-112;及びVarshochian,R.,et al.,The protective effect of albumin on bevacizumab activity and stability in PLGA nanoparticles intended for retinal and choroidal neovascularization treatments.European Journal of Pharmaceutical Sciences,2013.50(3):p.341-352を参照)。したがって、PBSは、安定性及び生物活性を維持するためにベバシズマブの懸濁に広く使用される。ベバシズマブがpH7.4のPBS中で正味で負に荷電することが報告され、それはキトサンへの結合を示唆し、例示的なカプセルからより持続可能な放出を提供し得る(Li,S.K.,et al.,Effective electrophoretic mobilities and charges of anti-VEGF proteins determined by capillary zone electrophoresis.2011.55(3):p.603-607;及びGarcia-Quintanilla,L.,et al.,Pharmacokinetics of Intravitreal Anti-VEGF Drugs in Age-Related Macular Degeneration.Pharmaceutics,2019.11(8):p.365を参照)。ベバシズマブへのPBS中のバッファーイオンの結合はその親水性を増加させ、それはその安定性をさらに増加させ、タンパク質の理論上正味電荷と実験的正味電荷との間の差を引き起こす(Li,S.K.,et al.,Effective electrophoretic mobilities and charges of anti-VEGF proteins determined by capillary zone electrophoresis.2011.55(3):p.603-607;及びChopra,P.,J.Hao,and S.K.J.I.j.o.p.Li,Iontophoretic transport of charged macromolecules across human sclera.2010.388(1-2):p.107-113を参照)。したがって、ベバシズマブは硝子体及びカプセル中で負電荷を有し、それゆえ、正に荷電したキトサンによって静電引力を経由してこのタンパク質を保持できるという仮説を立てられる。同様に、BSAは4.7付近の等電点を備えた、水中で負に荷電したタンパク質である。BSAは陽イオン性イオンへ結合し、生理的条件下で(PBS中で)その表面電荷を上昇させることができた。しかしながら、以前に報告されたように、これらのイオンがBSAの電荷に対してあまり効果がないので、BSAはPBS中でなお負に荷電したままである(Li,S.K.,et al.,Effective electrophoretic mobilities and charges of anti-VEGF proteins determined by capillary zone electrophoresis.2011.55(3):p.603-607;及びalis,A.,et al.,Measurements and Theoretical Interpretation of Points of Zero Charge/Potential of BSA Protein.Langmuir,2011.27(18):p.11597-11604を参照)。ベバシズマブまたはBSAとキトサンとの間の組み合わせた静電的相互作用及びPCLシェルからの保護的効果を提供することによって、所望される持続性薬物放出プロファイルを達成することができるだろう。
【0243】
この研究において、ベバシズマブの類似のペイロードについての放出速度も有意に改善された。報告されたデバイスの平均ペイロードは500μg~1000μgの範囲であった(Li,F.,et al.,Controlled release of bevacizumab through nanospheres for extended treatment of age-related macular degeneration.2012.6:p.54;及びVarshochian,R.,et al.,Albuminated PLGA nanoparticles containing bevacizumab intended for ocular neovascularization treatment.Journal of Biomedical Materials Research Part A,2015.103(10):p.3148-3156を参照)。しかしながら、これらのデバイスには、注射可能でないことや3か月にわたって放出を持続しないことを包含する限定があった。これらのデバイスの薬物装填能力は予想通りではなかった。また、抗VEGFの生物活性は、溶媒または高温との治療物質の相互作用に起因して、これらのデバイス中で製作プロセスの間に影響を受ける可能性がある。しかしながら、デバイスを製作した後に薬物装填を加工し、それは従来の調製方法(エマルション等)を使用して一般に起こる薬物喪失及び非活性化を回避した。したがって、本明細書においてデザインされたカプセルは、注射可能なカプセル中の狭い空間及びベバシズマブの高分子量に起因して、700μgのベバシズマブの薬物ペイロードを保証した。鋳型ロッドを選択的に増加させて、内側空間を拡大させ、薬物装填を促進することができる。また、医薬用において、顕微鏡下でベバシズマブの乾燥粉末を正確に置き換えて、装填することができ、薬物装填効率及びベバシズマブ安定性をさらに促進することができるだろう。加えて、モデル薬物BSAに匹敵するより低い分子量による他の治療物質は、例示的なデバイスを使用して評価され、薬物ペイロードを有意にさらに増加させる可能性があるだろう(Rosenfeld,P.J.,et al.,Optical coherence tomography findings after an intravitreal injection of bevacizumab(Avastin(登録商標))for neovascular age-related macular degeneration.2005.36(4):p.331-335を参照)。
【0244】
二層カプセルは、タンパク質治療物質とポリマーとの間の静電的相互作用の利用によって薬物放出速度を効率的に制御することができ、滲出型AMDの臨床治療に付随する現在の問題の多くに取り組むことができる。それは、タンパク質治療物質による長期的な治療を要求するいくつかの疾患(結腸直腸癌及び乳癌、そしていくつかの脳腫瘍等)についての代替の方法も提供する。しかしながら、デバイス製造方法は、異なるタンパク質治療物質の要求について最適化されることがまだ必要であり、眼、がん、及び他の生物医学的適用についての大きな可能性があるだろう。
【0245】
結論として、ポリマーベースの送達プラットフォームが抗VEGFの制御放出のために開発され、それは、キトサンと抗VEGFとの間の静電結合を、PCLの保護的疎水性層と相乗的に組み合わせる二層微細構造に基づいて、治療物質の制御放出のためのポリマータンパク質相互作用を調節する有効な手段を提供する。二層構造が詳細に特徴づけられ、タンパク質送達のためのカプセル性能がさらに決定された。最も重要なことには、例示的なデザインされた送達プラットフォームは、最も最近のデバイスに比較して、抗VEGFのインビトロの長期的な放出を有意に改善し、AMDを治療する可能性を支持する。今後の研究において、インビボのAMDモデルで抗VEGF装填デバイスの治療効果を評価及び再度最適化することが要求される。
【0246】
本開示の範囲または趣旨から逸脱せずに、本開示において様々な修飾及び変動が行われ得ることが、当業者に明らかであろう。本開示の他の実施形態は、本明細書の考慮及び本明細書において開示される本開示の実践から、当業者に明らかであろう。本明細書及び実施例は単に例示的なものとして考慮され、本開示の真の範囲及び趣旨は以下の特許請求の範囲によって示されることが意図される。
【国際調査報告】