(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-29
(54)【発明の名称】ナノスケール系(NSS)の物理化学的性質を確認するための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 15/04 20060101AFI20220322BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20220322BHJP
G01N 21/41 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
G01N15/04 A
G01N21/27 Z
G01N21/41 Z
G01N15/04 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021546692
(86)(22)【出願日】2020-02-05
(85)【翻訳文提出日】2021-10-06
(86)【国際出願番号】 EP2020052816
(87)【国際公開番号】W WO2020164983
(87)【国際公開日】2020-08-20
(32)【優先日】2019-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516074322
【氏名又は名称】スマートダイリヴァリー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】エングラート, クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】レーマン, マルク
(72)【発明者】
【氏名】ニスチャン, イヴォ
(72)【発明者】
【氏名】シューベルト, ウルリヒ
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB09
2G059BB12
2G059CC16
2G059DD05
2G059EE01
2G059EE04
2G059EE06
(57)【要約】
本発明は、超遠心分析を用いて、ナノスケール系(NSS)の物理化学的性質を確認する方法であって、対象とするNSSに関連付けられた多次元沈降分析マップを起こすステップと、試料依存パラメータを選択するステップと、その試料において沈降係数値/パラメータを確認するステップと、試料沈降係数値を多次元沈降分析マップに盛り込み、NSS試料マップ値を得るステップと、NSS試料マップ値からNSS試料の物理化学的性質を推測するステップと、を含む、方法に関する。さらに、本発明は、この方法を行う際のシステム、コンピュータプログラム製品、およびコンピュータ可読記憶媒体に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超遠心分析(AUC)を用いて、ナノスケール系(NSS)試料の物理化学的性質を確認する方法であって、
a)対象とする前記NSSに関連付けられた多次元沈降分析マップを起こすステップと、
b)試料依存パラメータを選択するステップと、
c)前記試料において沈降係数値/パラメータを確認するステップと、
d)試料沈降係数値を前記多次元沈降分析マップに盛り込み、NSS試料マップ値を得るステップと、
e)前記NSS試料マップ値から前記NSS試料の前記物理化学的性質を推測するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記ナノスケール系(NSS)がナノスケール薬物送達系(NDDS)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多次元沈降分析マップを起こす前記ステップが、
a)前記対象とするNSSを表すパラメータを選択するステップと、
b)前記NSSおよび任意の個々のNSS成分のAUC沈降係数値/パラメータ/濃度系列を活用して前記多次元沈降分析マップを起こすステップと、を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記パラメータが、密度、吸収/発光、屈折、分解速度を含む群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
パラメータ分解速度は、物理的パラメータ依存分解および/または化学的パラメータ依存分解および/または生物学的パラメータ依存分解を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記多次元沈降分析マップを起こす前記ステップが、前記対象とするNSSを懸濁させるのに使用される溶媒の粘度を確認するステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも3つの異なる試料依存パラメータが、AUCを使用してNSS試料の前記物理化学的性質を確認する前記方法において選択され、少なくとも3つの試料依存パラメータは、密度パラメータ、粘度パラメータ、および光学検出パラメータを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記物理化学的性質が、NSSサイズ、NSS分子量/モル質量、NSS濃度、NSS分散度、NSS凝集体、NSS統合性、およびNSS安定性から成る群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記物理化学的性質NSS統合性は、水、食塩水、生体関連流体を含む群から選択された溶媒中の前記NSSの前記統合性を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記NSSが少なくとも2つの異なる成分を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1回の独立したAUC測定/試料が前記NSSに対処して行われる必要があり、1回の独立した測定/試料が溶媒に対処して行われる必要があるのが好ましい、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
試料ごとに行われる測定回数が、2回に、少なくとも1回の測定/前記対象とするNSSに対して変更された成分、がプラスされる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記NSSが、溶媒由来の物理および/または化学修飾を含む、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記NSSが複合高分子系であり、前記複合高分子系は、生分解性ポリマーおよびカプセル化薬物を含むのが好ましい、請求項10から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記複合高分子系は、標的指向性色素部分および/または安定剤、好ましくは界面活性剤を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ステップd)がコンピュータによって実施され、前記コンピュータが、ステップc)からデータを受信するように適合された手段と、好ましくは重回帰分析によって、前記多次元沈降分析マップに1つまたは複数の前記沈降係数値をマッピングするための手段と、を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
ステップe)がコンピュータによって実施され、前記コンピュータが、前記NSSの前記物理化学的性質を前記NSS試料マップ値から推測するための計算手段を備える、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記対象とするNSSに関連付けられた多次元分析マップを起こすための多次元沈降分析マップ起こし手段と、
試料依存AUCパラメータを選択するための手段と、
前記試料において、沈降係数値/パラメータを確認するための確認手段と、
試料沈降係数値を沈降マップに盛り込んで、NSS試料マップ値を得るための手段と、
前記NSS試料の前記物理化学的性質を前記NSS試料マップ値から推測するための計算手段と、を備える、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法を行うためのシステム。
【請求項19】
プログラムがコンピュータによって実行されると、前記コンピュータに、請求項1から15の方法のステップを実施させる、命令を備えるコンピュータプログラム製品。
【請求項20】
コンピュータによって実行されると、前記コンピュータに、請求項1から15の方法のステップを実施させる、命令を備えるコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の発明の主題による、超遠心分析を用いてナノスケール系(NSS:NanoScale System)の物理化学的性質を確認する方法に関するものである。また、本発明は、請求項18の発明の対象による方法を行う際のシステム、請求項19によるコンピュータプログラム製品、および請求項20によるコンピュータ可読記憶媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療診断や治療の分野では、これまで複数の送達途中の障壁によってその作用部位へのアクセスが妨げられていた薬物を、ナノテクノロジによって広く臨床に活かすことが促進されると考えられている。リポソーム、ポリマー、無機ナノ粒子、カーボンナノチューブなどの生体適合性ナノ担体を使用することによって、例えば、水溶性に限りのある薬物などの送達改善を実現し、それにより生体系でのこれらの薬物の生物学的利用能を向上させることができる。また、ナノ粒子に標的指向性特徴を組み込むことによって、そこに位置する特定の臓器および組織への薬物送達が可能になる。急速に成長し、多様化するナノ医療市場にも関わらず、物理化学的および生物学的レベルでのナノ粒子の特徴付けに関する具体的で標準化されたプロトコルは不足している。ナノ医療製品の品質、安全性、および有効性を確保するための標準的な方法は、これらの製品の資格付与や公的機関または代行機関による承認に欠くことのできないものであるが、同じく欠けている。
【0003】
ナノ医療製品に関連付けられた多数のパラメータに、好ましくは同時にアクセスすることができる1つの技法が求められている。さらに、このようなナノスケール系(NSS)の物質収支保存および無希釈原位置分析(dilution-free in situ analysis)が求められ、好ましくは、pH、緩衝剤条件、血清タンパク質の有無に関してバラツキのある溶液でなど、溶液選択条件下での分析が求められる。
【0004】
このような目的に適した技法として、前世紀初頭に古典的な分析技法として登場した超遠心分析(AUC:Analytical UltraCentrifugation)がある。AUCは、主に生物物理学共同体で、タンパク質の凝集やタンパク質間の相互作用を含む、タンパク質の溶液の状態、形状、サイズの定量的評価に使用されてきた。AUCは、第一原理の流体力学および熱力学の情報に基づいているため、幅広い粒子の濃度およびサイズにわたる多くの種類の粒子の生物物理学的性質を確認するのに適用され得る。AUCは通常、平衡実験および沈降速度実験の2つの基本的なタイプの沈降実験に頼っている。沈降速度実験では、セル底に向かって物質が移動する様子を原位置で観察する。セルの底に向かって移動する沈降境界は、基準(粒子のない溶媒)に対する特定の時間間隔でのそれらの移動のスナップショットによって追跡される。沈降速度は、溶液中の粒子の形状、質量、および相互作用が導出され得るような、粒子の流体力学的性質によって決まってくる。粒子の沈降速度は、pH、イオン強度および温度(例えば、4~40℃)に関してバラツキのある条件下で調べられ得る。平衡実験(通常、低いロータ回転速度で行われる)では、沈降と拡散との釣合いを取ることを目的とする。この種の実験は、モル質量推定に有用であるだけでなく、複合体の性質および粒子の自己会合化、さらには種間の結合親和性/強度の定量化が確認され得る。
【0005】
まとめると、ナノスケール系(NSS)だけでなく、ナノスケール薬物送達系(NDDS:Nanoscale Drug Delivery Systems)を特徴付けるのに、サイズ範囲全体(すなわち、<1nm~μmのサイズ)に対応でき、実際の実験が無希釈である一方で、原位置検出と調整可能な濃度/希釈液を用いて、多様な溶液条件の適用を可能とする適切な技法が求められる。本発明では、この目的を達成するために、AUCを開示する。
【発明の概要】
【0006】
第1の態様において、本発明は、超遠心分析(AUC)を用いて、ナノスケール系(NSS)の物理化学的性質を確認する方法に関するものである。本発明の文脈において、「AUC」という用語は、約1,000rpm~最大回転速度の範囲の市販のAUCデバイスによって起こる回転速度を網羅する超遠心分析を指し、この場合、ロータは、通常、最高60,000rpm以上の回転速度が可能である。この方法は、第1のステップとして、対象とするNSSに関連付けられた多次元沈降分析マップを起こし、続いて、試料に応じてAUCパラメータを選択する第2のステップを含む。第3のステップでは、パラメータごとに沈降係数値が試料で確認され、例えば、各パラメータ(粘度、密度など)がその試料で確認され、第4のステップでは、試料の沈降係数値を多次元沈降分析マップに盛り込み、NSS試料マップ値を得る。具体的には、試料の値が、それぞれのフィンガープリントであるNSSシグネチャを得るために、多次元沈降分析マップにマッピングされる。最終ステップでは、NSS試料マップ値からNSS試料の物理化学的性質が推測され、すなわち、NSS試料のすべての物理化学的性質は、フィンガープリントのようにマップ値から入手可能であり、それぞれ導出することができる。
【0007】
NSSには、リポソーム、固体脂質ナノ粒子、高分子ナノ粒子、デンドリマ、金属粒子、さらにカーボンナノチューブが含まれることが理解される。前述の系は、内側でも外側でも貨物を運ぶことができ(ナノスケール薬物送達系、NDDS)、また、色付けまたは色符号化なども可能である。リポソームは脂質系で、水性コアをカプセル化した脂質二重層で構成されているが、固体脂質ナノ粒子は、固体脂質コアを有する。高分子ナノ粒子には、生分解性/非生分解性、および生体適合性/非生体適合性のポリマーが採用されており、生分解性および生体適合性である代表例として、乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA:poly (lactic-co-glycolic acid))ナノ粒子が挙げられる。PLGA系は、グリコール酸および乳酸を様々な化学量論的比率で含んでいる。NSSは、分岐したまたは超分岐した構造を呈することがあり、有機分子実体の例としては、デンドリマがあり、これは広範囲に分岐している。これらの担体は、調整可能な分子量/モル質量、流体力学的容積、サイズ、形状、密度、安定性などの幅広い様々な性質を可能にし、それらは結晶性でも非結晶性でもあり得、アクセス可能な末端基を有し、またそれらの入り組んだ構造に起因して貨物分子をカプセル化または結合する潜在的な能力を備えているが、例えば、高分子NSSは、遺伝物質を結合することができる(「ポリプレックス系」)。金属粒子は、例えば、球状の金ナノ粒子、金ナノロッド、金ナノケージおよび金ナノスターに見られるように、金属物質、例えば金を配合したものである。これらの粒子は、その外側の表面/構造に貨物を担持し、その解放は、内部(例えば、グルタチオンまたはpH)または外部の刺激(例えば、光、温度)によって引き起こされ得る。カーボンナノチューブは、長さおよび直径がそれぞれ50nmから100nmおよび1~5nmから10~100nmの単層(単層CNT)または複層(多層CNT)のグラフェン層から成るフィブリル系ナノシリンダである。
【0008】
本発明による「NSS」という用語は、ナノスケール系を指すことが理解され、ナノスケール系とは、通常の全体的な寸法が1nm未満~数マイクロメートルの系、またはこの長さ尺度内の特徴を有する系と定義されている。NSSが、その全体的な形状に関して特定の制限を受けないことが理解される。このように、本発明によるNSSは、粒子であり得、粒子とは、体積、密度、または質量などのいくつかの物理的または化学的性質に帰せられ得る小さな限局性物体のことである。NSSには、球状、管状など、如何なる幾何学的形態も採用することができる。「NDDS」という用語は、ナノスケール薬物送達系を指し、ナノスケール薬物送達系とは、さらに薬物を含むNSSである。NSSとNDDSの両方は、溶媒に懸濁した系(または基質)を指すことが理解され、「溶媒」という用語は、この場合、固体、具体的にはNSSを、その化学的または物理的構造を調節するかしないかに関わらず、溶かすまたは希釈することができる物質を指す。本発明の文脈では、活用される溶媒は、有機または水性または有機無機(ハイブリッド)の溶媒またはイオン液体であり、例えば、水、食塩水、細胞培地、または血清および血液などの他の生体関連の溶液が挙げられる。本発明の文脈では、「NSS」という用語には、溶媒によってその化学的または物理的構造に関して調節される「NSS」も含まれる。
【0009】
本発明の文脈における「沈降分析マップ」という用語は、対象とするNSSおよびそのそれぞれの成分に関連付けられた規定個数の特性を含む空間の表現を指し、このような特性は、複数の異なる実験パラメータ条件(「パラメータ」の定義については、以下を参照)下での沈降実験、具体的には超遠心分析の実験から導出されるものである。これにより、特性個数に応じて、マップは、2次元または3次元であり得るが、本発明の文脈では、それは、調整可能な個数の独立変数から構成されている多次元空間である。本発明の方法によれば、「沈降分析マップ」は、AUC導出の測定値と併せて前記NDDSの物理化学的性質を補完するのに使用される、独立したテクノロジによって確認された対象とするNSSおよびNDDSに関連付けられた特性も含み得る。
【0010】
本明細書で使用される際の「パラメータ」という用語は、特定の系の分類を可能にする如何なる特性も指す。具体的には、パラメータとは、系を特定する際、またはその性能、状態、条件などを見極める際に有用である、または決定的である、系の要素である。本発明の文脈では、NSSは、沈降中の対象とするNSSの挙動をモニタするのに使用される光学系、具体的にはAUCに関する、吸光度または屈折などのパラメータによって特徴付けられ、様々な半径値でのセルにわたる吸光度のモニタリングは、当該のNSSの沈降挙動を測定するための最も万能かつ高感度な方法である。屈折検出(例えば、レイリー干渉検出)では、試料セクタ(溶媒中の試料)と基準セクタ(溶媒のみ)との屈折の差が測定される。吸光度検出では、試料セクタ(溶媒中の試料)と基準セクタ(溶媒のみ)との吸光度の差が測定され、別法として、強度モードでは、試料セクタの直接測定が可能である。検出は、濃度に比例するため、それは、適切な濃度の粒子を検出するのに使用され得る。吸光度とは対照的に、屈折は、適切な光吸収中心/性質または発光中心/性質を持たないポリマーなどの物体もモニタすることができる。吸光度および屈折は、本発明の文脈では単純なパラメータと考えられるが、NSSも、最も複雑でありながら最も洞察力のあるパラメータである分解速度によって特徴付けられ得る。
【0011】
「沈降係数値」という用語は、AUC実験において沈降境界が移動する、移動速度の測定から導出された沈降係数(s)の値を指す。前記沈降係数は、粒子の形状によって決まり、その形状が球体から外れている粒子では、摩擦比f/f0が1よりも大きくなる(当該分子の摩擦係数f/同じ無水体積および質量の平滑な球体の摩擦係数f0)。沈降係数はさらに、粒子の分子量/モル質量によって決まり、粒子が大きくなるほど素早く沈降する。この係数sは、適切な時間間隔で沈降する種の個体群を見ることで測定され得るが、上記の通り、沈降中には、時間の経過とともにより大きな半径方向値へと進む境界が作り出される。sが確認される条件は、ロータ回転速度、試料とロータ中心との間隔、温度、溶媒、緩衝剤、遠心分離の時間、検出の際の時間間隔、セクタおよび光学窓の特性、ならびにAUC計装(超遠心分離器および検出装置を含む)に関係している。データ解析が、沈降係数(s)および拡散係数(D)を確認するのに使用され、扇形状セルにおける物質輸送が、偏微分方程式である、以下のLAMM方程式で記述される。
dc/dt=(1/r)/(d/dr)[rDdc/dt-sω2r2c]
【0012】
データ解析は、LAMM方程式の数値解法(解析的な解法は困難なため、分子動力学または数値近似を経る)を採用するか、または、コンピュータおよび/もしくは他の解析手段が使えない場合には、図式解法を用いて行うことができる。
【0013】
「マッピング」という用語は、沈降係数値を、他の考えられるパラメータを状況に当てはめる多次元沈降分析マップに盛り込むことを指す。例えば、重回帰分析または他の如何なる数学的なフィッティング関数の使用も可能である。
【0014】
「物理化学的性質」という用語は、沈降実験、具体的にはAUC実験、または他の物理的手段(粘度、密度など)から導出可能であることが分かっている性質を指すと理解される。この文脈化が本発明の基礎となっている。このような沈降由来の性質とは、対象とする物体のサイズおよび密度、溶液中の物体の濃度および分散度、凝集体、共役体などである。また、NSSなどの複合系に関しては、その統合性および安定性が推測され得、その特定の統合性および安定性は、溶媒環境に関してさらに区別され得る。
【0015】
本発明による方法は、沈降過程、具体的にはAUCを用いて、特に自然のままの関連の生体試料条件下で、多機能NSSの原位置評価を可能にして好都合である。本発明の方法では、物理化学的性質が確認されることになる試料が限られた回数の測定を受け、その結果が多次元沈降分析マップにマッピングされることで、それから試料の物理化学的性質を推測することができる。それにより、NSSを特徴付けるのに、粒子サイズ範囲全体に対応し、分析中に希釈を必要としない多様な溶液条件の適用を可能にする、較正不要、確実で、広く適用可能なうまく特徴付けられた技法を提供する。
【0016】
本方法の好ましい実施形態において、ナノスケール系(NSS)とは、ナノスケール薬物送達系(NDDS)である。
【0017】
本方法の好ましい実装形態において、多次元沈降分析マップを起こすステップには、対象とするNSSに相当するパラメータを選択するステップと、その後に続く、特定のNSSおよび任意の個々のNSS成分のAUC沈降係数値/パラメータ/濃度系列を活用して多次元沈降分析マップを起こすステップと、が含まれ得る。沈降実験において、十分な個数の単純なパラメータ、例えば吸収および/または屈折、また複雑なパラメータ、例えば密度および/または分解速度、ならびに十分な個数の濃度を使用することにより、正確で検証された、物理化学的原理に依拠した、非常に複雑で多次元の正確な沈降分析マップが起こされ得る。
【0018】
さらなる実装形態において、パラメータが、吸収/発光、屈折、密度、分解速度から成る群から選択され得る。粒子の密度は、その部分比容に反比例しており、例えば、様々な溶媒中の粒子の沈降速度実験から導出され得る。粒子の密度は、例えば、D2O/H2Oの混合液など、(分かっている)密度および粘度が異なる2つの溶媒を活用して、その溶媒で測定された沈降係数から部分比容を計算することで確認され得る。粒子の分解速度は、pH、温度、酵素の存在、生体液などに関してバラツキのある様々な周囲条件下でのその安定性に関係している。この文脈では、NSS統合性に影響を与える可能性のある「コロナ」、例えば「タンパク質コロナ」を形成する可能性もある、性質にバラツキのあるタンパク質または他の物質など、これらの流体の成分の相互作用が観察可能である。それにより、コロナは、生体液における特定のNSSの使用に対する適合性を判定するのにも使用され得る。コロナの形態での、または粒子設計方策を通して共有結合での、粒子への成分の結合も、定量的に調べることができる。考えられる一例として、粒子表面にビオチン-ストレプトアビジン抗体を付着させる系が挙げられる。抗体の粒子表面との相互作用、および流体における粒子の統合性に対する影響も見ることができる。これは、NSS系の実用性、適用性、および安全性に重要かつ必要な洞察と考えられる。
【0019】
本発明の方法の好ましい実施形態においては、パラメータ分解速度には、物理的パラメータ依存分解および/または化学的パラメータ依存分解が含まれ得る。ここで言う「物理的パラメータ依存分解」という用語は、試料に供給されるエネルギ、すなわち、熱エネルギ、電流、紫外線、またはX線を変化させることによって生じる分解を指す。例えば、NSS試料における温度依存分解を37℃で測定し、4℃もしくは20℃および/または様々な時間における測定値と比較することができる。一方、「化学的パラメータ依存分解」とは、試料の周囲条件を変えることによって、すなわち、例えば、プロトン濃度(pH)または酸化剤もしくは還元剤の濃度を変えることによって、生じる分解を指す。「生物学的パラメータ依存分解」という用語は、試料中のNSSの分解を引き起こす、溶媒中の例えば酵素の存在を指す。
【0020】
さらなる実装形態において、多次元沈降分析マップを起こすステップには、対象とするNSSを懸濁させるのに使用される溶媒の粘度を確認するステップがさらに含まれ得る。流体の粘度は、流体の流動に対する内部抵抗を描写し、したがって、粒子が前記流体中で動き得る場合の流体摩擦または動きやすさの指標である。粘度を測定するためには、最先端技術において知られている如何なる粘度計も使用することができ、例えば、ガラス毛管粘度計(Ubbelohde)もしくは回転式粘度計(レオメーター)、または単純な毛管/ボール結合体などが挙げられる。このステップにより、多次元沈降分析マップに粘度情報が加えられ、それにより、意図した実生活条件に近い条件下、すなわち、ヒトの体液中での、NSSの原位置評価が可能となる。
【0021】
特に好ましい実装形態において、少なくとも3つの異なる試料依存パラメータが、AUCを使用してNSS試料の物理化学的性質を確認する方法において選択され得る。この少なくとも3つの異なる試料依存パラメータは、NSSの分類を可能にするNSSの特性に関して異なる。最も好ましいのは、パラメータには、密度、粘度、および光学検出が含まれ得ることである。本明細書において、「光学検出」という用語は、吸光度、屈折、発光、蛍光発光、ルミネセンス、散乱などの光学検出方法を指す。多次元沈降分析マップを起こすのに使用されるNSSと同一であるNSS試料を測定する際、対象とする試料に対して3つの異なるパラメータのみを選択し、測定するだけで済む。如何なる所与のNSS試料に対しても少なくとも3つの異なるパラメータを使用すると、限られた回数の沈降ステップのみ、具体的にはAUC沈降ステップのみを使用することによって効率よく、その物理化学的性質が確認され得る。同時に、物理化学的性質を確認する方法が、実験系の量的性質に起因して確実であり繰り返し可能なものとなる。
【0022】
好ましい実施形態において、物理化学的性質が、NSSサイズ、NSS分子量/モル質量、NSS濃度、NSS分散度、NSS凝集体、NSS統合性、およびNSS安定性から成る群から選択され得る。
【0023】
NSSサイズは、流体力学的に等価の球体のサイズに基づき、すなわちそれらの流体力学的直径(d
h)に基づき、確認され得る。流体力学的直径(d
h)は、関係:沈降速度実験からの
、を経て得ることができる。
【0024】
NSSモル質量は、以下のSvedberg式から導出され得る。
s/D=M(1-υρ0)/RT
ここで、Mは粒子モル質量を表し、Rは気体定数を表す(SverbergおよびPedersen、1940年)。沈降係数s(時間に従った沈降境界の移行から得られる)および拡散係数D(時間に従った沈降境界の拡張から得られる)が沈降速度実験から導出される一方、モル質量は、沈降と拡散との得られた釣合い、すなわち平衡条件からも導出され得る。
【0025】
NSS濃度の物理化学的性質とは、完全NSSとその成分種との相対濃度を指す。それは、微分沈降係数分布曲線の下の面積、すなわちユニットSにわたるインバース強度によって、それぞれ、沈降前、沈降中、沈降後の光学的密度または如何なる検出装置信号からも簡単に読み取ることができるものである。角速度の選択により、試料における成分の選択的分別が可能になる。
【0026】
NSS分散度およびNSS凝集体とは、所与の溶媒中のNSSの分布に関係している性質を指し、前記性質は、それぞれの沈降速度プロファイルから直に導出され得る。同じことが、NSS統合性およびNSS安定性の性質にも当てはまる。
【0027】
本発明の方法の特に好ましい実装形態において、NSS統合性には、水、食塩水、有機溶媒、および生体関連流体で構成されている群から選択された溶媒中のNSSの統合性が含まれ得る。本明細書では、溶媒とは、溶液/分散をもたらす、溶質、すなわちNSSを溶かすまたは分散させる物質のことである。本発明の方法の文脈下にある間、溶媒のほとんどが、水性の有機溶媒であり、例えばNSSを保存するのにも適切に使用され得る。「生体関連流体」という用語は、細胞培養または有機体などの、生体系に関係する溶媒を指す。よって、本発明による生体関連流体とは、細胞培地、血清、または血液のことである。
【0028】
さらなる実施形態において、NSSは、少なくとも2つの異なる成分を含み得る。上に述べたように、NSSとは、各実体が1nm未満から数マイクロメートルのサイズの寸法を呈する、またはその長さ尺度内に特徴を有する、少なくとも2つの別々の実体を含む系を指すことが理解される。「NDDS」という用語は、ナノスケール薬物送達系を指し、ナノスケール薬物送達系は、薬物も含むNSSである。NSSには、リポソーム、固体脂質ナノ粒子、高分子ナノ粒子、デンドリマ、金属粒子とともに、構造の観点から見るとカーボンナノチューブも含まれることが理解される。各種のこれらの粒子は、ポリマー、金属および金属酸化物、脂質、タンパク質、DNA、または他の有機化合物から成り得る。さらに、本発明による「NSS」とは、溶媒に懸濁しているナノスケール系を指すことが理解される。このように、その物理化学的性質が本発明の方法によって特徴付けられることになるNSSは、粒子基質および溶媒(媒質)を含み得る。粒子基質は、担持成分、標的指向性部分、添加成分、および薬物成分(ナノスケール薬物送達系(NDDS))などの1つまたは複数の成分を含み得る。好ましい実施形態において、NSSは、このような複合高分子NDDS系であり得る。より好ましい実施形態において、複合高分子系には、生分解性ポリマーおよびカプセル化薬物が含まれ得る。さらに好ましい実施形態において、複合高分子系は、標的指向性色素部分を含み得、それに安定剤、好ましくは界面活性剤が含まれ得ると、それも好ましい。例えば、複合NSSは、標的指向性色素部分によって部分的に官能化された生分解性ポリマー(乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA:poly(lactic-co-glycolic acid))など)で構成され得、それは、カプセル化薬物を担持し得、調製過程に起因して、NSSに部分的に組み込まれた界面活性剤によって溶液中に安定化され得る。
【0029】
特に好ましい実施形態において、NSSに対処して、少なくとも1回の独立したAUC測定/試料が行われる必要があり得、1回の独立した測定/試料が、溶媒に対処して行われる必要があるのが好ましい。例えば、所与の試料において、例えば成分および濃度を確認するのに特有の吸収波長においてAUCを使用して(かつ/または干渉光学系を使用して)沈降係数が測定され得る。これらの測定から、流体力学的直径(dh)を使用してNSSサイズが確認され得る。このように、試料ごとに行われる最小限の測定回数は、1回のAUC測定であり、それにより、較正なしと同時に正確でありながら、本発明の方法を極めて時間効率の良い状態にする。特に好ましい実施形態において、試料ごとに行われる測定回数は2回で、対象とするNSSに対して成分が変更される毎に少なくとも1回の測定がプラスされ得る。例えば、粘度が確認される場合は、試料ごとに行われる測定回数は2回で、既知のNSSに対して変更される各成分によってその回数が決まる、可能で必要な測定、がプラスされ得る。
【0030】
さらなる実装形態において、NSSは、溶媒由来の物理および/または化学修飾を含み得る。流体、例えば、タンパク質、またはNSSの場合は、「タンパク質コロナ」などの「コロナ」を形成する可能性がある、他の物質などの生体液、に含有されている成分の相互作用は、NSS統合性に影響を与える可能性がある。「コロナ」の形態のこの修飾は、生体液における特定のNSSの使用に対し適合性を判定するのに使用され得る。例えば、NSS表面が、ビオチン-ストレプトアビジン抗体(「抗体コロナ」)の付着によって修飾され得る。コロナの形態に、または粒子設計方策を通して共有結合で、成分を粒子に結合することもまた定量的に研究されてもよい。この流体における抗体と粒子表面との相互作用、およびその統合性に対する影響も見ることができる。
【0031】
さらなる実施形態において、本発明の方法は、コンピュータによって実施され得る。具体的には、ステップd)は、先行のステップ、すなわちステップc)からデータを受信するように適合された手段を備える、コンピュータによって実施され得る。コンピュータは、好ましくは重回帰分析によって、多次元沈降分析マップに1つまたは複数の沈降係数値をマッピングするための手段も備え得る。特に好ましい実施形態において、ステップe)は、NSSの物理化学的性質をNSS試料マップ値から推測するための計算手段を備える、コンピュータによって実施され得る。
【0032】
第2の態様において、本発明は、上記の方法を行う際のシステムに関し、システムは、対象とするNSSに関連付けられた多次元沈降分析マップを起こすための多次元沈降分析マップ起こし手段と、試料依存沈降AUCパラメータを選択するための手段と、試料において、沈降係数値/パラメータを確認するための手段と、試料沈降係数値を沈降分析マップに盛り込んで、NSS試料マップ値を得るための手段と、NSS試料に対して、すなわち対象とするNSS試料に対して、物理化学的性質をNSS試料マップ値から推測するための計算手段と、を備える。
【0033】
第3の態様において、本発明は、そのプログラムがコンピュータによって実行されると、コンピュータに、請求項1の方法のステップを実施させる、命令を備えるコンピュータプログラム製品に関する。
【0034】
第4の態様において、本発明は、コンピュータによって実行されると、コンピュータに、請求項1の方法のステップを実施させる、命令を含むコンピュータ可読記憶媒体に関する。
【0035】
本発明は、以下の図および例への参照によって、より十分に理解されるであろう。ただし、それらは、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。本明細書に記載の例および実施形態が単に説明を目的としたものであり、それに照らした様々な修正または変更が当業者に提示されるようになり、この出願の文脈および添付の特許請求の範囲内に含まれるべきであることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の方法のフローチャートを描写する。ここでは、様々なパラメータおよび物理化学的性質に関して不明の複合NSSを特徴付ける際の概要プロトコルを示す。
【
図2(a)-(c)】不明のNSS試料および部分的に分かっているNSS試料の特徴付けに必要とされるステップ(連鎖)を例示する概要プロトコルを示す。
図2(a)では、分かっているが、立証された(「特徴付けされた」)NSSとは部分的にしか同一ではないNSSを含有するNDDS試料を特徴付ける際の概要プロトコルを描写する。
図2(b)では、立証されたNSSに対応するが溶媒に関して異なる新たなNSS試料を特徴付ける際の概要プロトコルを描写するが、
図2(c)では、薬物および標的指向性部分が分かっている成分と同一である一方、NDDSの基質ならびに添加剤および安定化成分が不明である、新たなNDDS試料の場合の概要プロトコルを示す。
【
図3】周囲空気条件下で2週間の保存後のNDDS試料の沈降速度プロファイル(3(a))と、周囲空気条件で10週間の保存後のNDDS試料の沈降速度プロファイル(3(b))と、を描写し、この場合、沈降がλ=462nmにおける吸光度検出によって追跡される。
図3(a)および
図3(b)両方の上部パネルでは、AUCを3,000rpmに加速させた直後の沈降速度プロファイル(黒線)、10,000rpmに加速させる前の52分後の沈降速度プロファイル(黒点線)を描写する。残っている沈降速度プロファイルは、10,000rpmで記録された(灰色四角)。
図3(a)および
図3(b)両方の下部パネルでは、ls-g
*(s)モデルからの対応する残余プロットを示す。
【
図4】DMSO溶液中の標的指向性色素および薬物の正規化UVスペクトル(実線)と、水で希釈した標的指向性色素および薬物の正規化UVスペクトル(点線)と、を描写する。DMSOにおけるλ=660nmから95%水/5%DMSOにおけるλ=635への色素移行の場合の最大値と、DMSOにおけるλ=475nmから95%水/5%DMSOにおけるλ=462nmへの薬物移行の場合の最大値と、を示す。
【
図5】c=6.31mg ml
-1の粒子の質量濃度において2週間間隔で0~12週まで、周囲空気条件において保存されたNDDS
1試料の微分沈降係数分布ls-g
*(s)を描写する。光学検出では、干渉光学検出系(RI)(5(a))が使用され、吸光度がλ=462nmにおいて(5(b))、またλ=660nm(5(c))において追跡された。実験では、保存された在庫試料がc≒1.88mg ml
-1のNDDS
1の濃度に希釈された。(a)~(c)における実線は、10,000rpmにおける最初の測定を指し、点線は、各セルにおいて濃度平衡を回復させる目的で最初の実験実施後にセルを振った後、10,000rpmにおいて行われた測定を指す。(d)は、粒子(ベタ塗りマル)と、遊離薬物に等しいSN(空マル)とにおいてλ=462nmにおける、また調製されたNDDS
1溶液濃度に対して測定日に調製されたNDDS
1試料の場合はλ=660nmにおける(ベタ塗り三角)、RIおよび吸光度の強度のプロットである。
【
図6】c≒1.88mg ml
-1の同様のNDDS
1試料濃度における、水中のNDDS
1試料、培地(CM)中のNDDS
1試料、また血清を加えた培地(CMS)中のNDDS
1料の微分沈降係数分布ls-g
*(s)を描写する。測定は、10,000rpmにおいて行われた。
【
図7】10週間保存後(点線で示される)の、大きな不明瞭な凝集体を含むNDDS
1保存時間にわたる溶液中の様々な成分と、持続性多数派ナノ粒子(NP)個体群中の薬物と、その系の崩壊による上澄み(SN)溶液中の薬物と、のλ=462nmにおけるUV信号強度のプロットを描写する(7(a))。(b)は、NDDS
1製剤(マル)に使用される、純水に溶解した薬物(灰色四角、空四角:最初の測定、ベタ塗り:繰り返し測定)と、界面活性剤PVAを含む水中の薬物(灰色マル、空マル:最初の測定、ベタ塗り:繰り返し測定)と、に対応するλ=462nmにおける吸光度のプロットである。黒塗り四角がNPにおけるカプセル化薬物に対応している間、T=37℃の温度で、図示の濃度範囲で希釈され、7週間c=1.26mg ml
-1において保存された完全分解溶液(黒塗りマル)に対する検出装置応答も示す。
【
図8】NDDS
1のすでに分解した溶液への薬物のスパイク(ベタ塗りマル)と、λ=462nmにおける検出に使用されるそれぞれの波長における回復の確認(空マル)と、を描写する。
【
図9】干渉光学検出系(RI)を使用するとともに、T=4℃およびT=37℃で一晩保存(9(a)、c=4.29mg ml
-1で保存)後にλ=462nmおよびλ=660nmにおける吸光度を追跡した、NDDS
2(c=0.83mg ml
-1)の微分沈降係数分布ls-g
*(s)を描写する。(b)では、ナノ粒子(NP)にある薬物の割合値と、上澄み(SN)にある薬物の割合値とを示す。
【
図10】干渉光学検出系(RI)を使用するとともに、NDDS製剤後の様々な時間尺度において、また様々な保存条件において、λ=462nmおよびλ=660nmにおけるUV吸光度を追跡した、NDDS
2(c=4.29mg ml
-1で保存、c=0.83mg ml
-1で測定)の微分沈降係数分布ls-g
*(s)を描写する。これらの実験では、AUCは、10,000rpmで回転した。(10(a))は、1~15日間、4℃で保存の場合、(10(b))は、1~15日間、37℃で保存の場合を示す。下部グラフでは、実験中に記録されたすべての検出装置強度を示し、特に、42,000rpmにおいて沈降する、上澄み(SN)中のPVAの存在も示す。
【
図11】NDDS製剤で活用されたPVAのRI信号強度を描写する。これらの実験では、沈降速度実験が42,000rpmのロータ回転速度で24時間、またT=20℃の温度で行われた。ls-g
*(s)モデルが溶液濃度に対して干渉縞をプロットすることによってRI検出装置の線形性を確認するのに活用された。
【
図12】干渉光学検出系(RI)を使用するとともに、NDDS製剤、またT=4℃で保存後の様々な時間尺度でのλ=462nmおよびλ=660nmにおけるUV吸光度を追跡した、NDDS
2(c=4.29mg ml
-1で保存、c≒0.83mg ml
―1で測定)の正規化微分沈降係数分布ls-g
*(s)を描写する(12(a))。(b)では、すべての検出装置を対象とする様々な保存時間尺度後の信号強度を示し、(c)では、λ=660nmの波長でヒト血清(40%水/60%血清、w/w)において沈降が起こっている間に観察されたばらつくNDDS
2個体群を示し、(d)では、NDDS
2溶液濃度に対するλ=660nmにおける微分沈降係数分布ls-g
*(s)の下の面積を示す。
【
図13】溶媒の密度および粘度とともに粒子の部分比容も考慮に入れることによって、水中(実線)とヒト血清中(点線)とのNDDS
2(c=4.29mg ml
-1で保存、c≒0.83mg ml
―1で測定)の微分固有沈降係数分布ls-g
*([s])を描写する。
【
図14】水中で測定された2つの異なるNDDSバッチ:SDL_NP4.1(破線)とSDL_NP4.2(黒線)、の固有の沈降係数の微分分布ls-g
*([s])を描写する。これらの粒子は、標的指向性色素(例DY635における)の濃度に関して異なっており、SDL_NP4.1では、33.7μg/mLであり、SDL_NP4.2では、2.6μg/mLに上った。両方のバッチは、それぞれc=1mg/mLで測定され、測定は、T=20℃、n=7500rpmで20時間行われた。
【
図15】λ=369nmにおける吸光度検出による、55w%ヒト血清中のc=0.498mg/mL(灰色破線)、c=0.746mg/mL(灰色線)、c=1.068mg/mL(黒破線)、c=1.531mg/mL(黒線)のSDL_NP4.2の微分沈降係数分布を描写する。太灰色破線で示された、約27Sの沈降係数における際立つ成分とは、その微分沈降係数分布が黒点線で示されている、55w%ヒト血清のことである。
【
図16】
図16Aは、λ=635nmにおける吸光度検出(GC-33)による、55w%ヒト血清中のc=0.498mg/mL(黒線)、c=0.746mg/mL(黒破線)、c=1.068mg/mL(灰色線)、c=1.531mg/mL(灰色破線)のSDL_NP4.2の微分沈降係数分布を描写する。約27Sの沈降係数におけるこの分布の際立つ成分とは、太灰色破線で示された、
図14に図示のような(55w%)ヒト血清のことである。比較として、純水中のc=0.994mg/mLのSDL_NP4.2が黒点線として示されている。
図16Bでは、様々な濃度(mg/mL)に対してプロットされたλ=635nmで測定された光学的密度の対応する線形相関が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1では、様々なパラメータおよび物理化学的性質に関して、不明の複合NSSを特徴付ける際の概要プロトコルを示す。この概要プロトコルは、本発明の方法の初期ステップ、すなわち、多次元沈降分析マップを起こすことに言及する。したがって、「不明のNSS」という用語は、完全系およびそのそれぞれの成分の物理化学的性質がAUC法を活用しても、まだ特徴付けられていない、分かっている濃度の分かっている成分に加えて、PLGAなどの基質を含むNSSを指す。この例では、対象とするNSSは、基質(単独で調べられていない)、薬物、標的指向性部分、安定剤(界面活性剤)、また場合によっては1つまたは複数の添加剤の成分で構成されている複合構造体である。それに加えて、NSSは、溶媒中に懸濁/溶解している。完全NSSの濃度系列およびNSSの各成分の濃度系列は、光学検出(ここでの描写:吸収、屈折率)およびロータ回転速度(rpm)などの様々な測定パラメータを使用して、様々なNSS条件下(複合パラメータ:例えば、温度、pHなどによって決まる分解速度)でAUCを受ける。上に説明したように、密度は、NSSの部分比容と反比例関係にあり、また例えば、溶媒による平衡が得られるまで、NSSが溶媒グラジエントにおいてAUCを受けることによって、AUC沈降平衡手法から導出され得る、複合パラメータ(パラメータ「分解速度」のような)である。別法として、粒子の密度は、例えばD
2O/H
2Oの混合物など、(分かっている)密度および粘度が異なる2つの溶媒中の粒子の沈降係数を活用し、また、その反比例の密度によって、それぞれ、部分比容を計算して確認され得る。溶媒の粘度および懸濁NSSの粘度は、測定値から確認されてもよく、別法として、基準表などから導出されてもよい。特徴付けられていないNSS(「不明の系」)の場合、多次元沈降分析マップを起こすために、完全NSSとその主成分がAUC分析を受ける必要がある。例示的なNSSの完全特徴付けでは、
図1で、実線、破線、および点線として描かれているすべての「連鎖」(19連鎖)が、解かれる必要があり、分解速度、密度、および光学検出などのパラメータに対して、AUCによる実験上の解決策が必然的に求められる。完全NSSとその成分のAUC測定値の希釈系列(例えば、NSSの沈降係数値/パラメータ/濃度系列)から、多次元マップが起こされる。測定結果から、NSSの物理化学的性質、すなわち、サイズ、質量、および濃度に関する、成分に関する、統合性および安定性に関する、またNSSの凝集に関する性質が導出され得る。導出されると、対象となるNSSは、特徴付きNSSとなる(「立証され、有効になっている」)。片側のNSSおよびその成分と、もう一方の側のパラメータとの連鎖を解くには、限られた回数のAUC測定のみで済み、すなわち、1回のAUC実験(「実施」)で複数の連鎖を解くことが可能である。例えば、分解速度は、様々な光学検出条件(吸光、屈折、放出)下で同時に試料を測定することによって見極められ得る。
【0038】
図2(a)~(c)では、不明のNSS試料および部分的に分かっているNSS試料の特徴付けに必要とされるステップを例示する概要プロトコルが描写されている。完全に不明のNSSの場合、
図1の概用プロトコルが行われる必要がある。
【0039】
図2(a)では、NSS試料、具体的にはNDDS試料を特徴付ける際の概要プロトコルを描写し、この場合、「NDDS」とは、追加として薬物を含むNSSであるナノスケール薬物送達系を指す。ただし、描写のNSSD試料は、立証されたNDDSと一部しか同一ではない。具体的には、NDDSは、上の例(
図2(a)参照)で説明したのと同じであるが、薬物および標的指向性部分に関しては異なる主構成成分を含む。このNDDS試料の物理化学的性質を確認するには、すなわち、特定のNDDSを特徴付けるかまたは条件付けるには、限られた個数の連鎖を解くだけで済む(7連鎖、太い実線および点線として示される)。描写のように、片側の新たなNDDSならびに成分薬物および標的指向性部分と、密度、粘度、および光学検出(ここでの描写:吸収および屈折)のパラメータとの連鎖を解く必要があり、結果として、必要とされるAUC測定値の非常に顕著な減少をもたらす。完全NDDSとそのあり得る成分(例えば、薬物、標的指向性部分)の沈降係数値/パラメータ/濃度系列を多次元沈降分析マップにマッピングすることによって、試料に含まれるNDDSの物理化学的性質が、高精度に、時宜を得て確認され得る。
【0040】
図2(b)では、金ナノロッドに基づくNSS(薬物装填なし)試料を特徴付けるのに同じ概要プロトコルが示されている。金ナノロッドを含有する試料は、懸濁媒体に関して立証された金ナノロッドNSSとは異なる。例えば、一般的な適用性の理由で、患者固有のデータを含んでいない、多次元沈降分析マップから物理化学的性質を導出するために、患者固有の媒質(血液またはその希釈物)の特徴付けを必要として、患者由来のNSS試料が特徴付けられ得る。この試料を特徴付けするには、NSSおよびその成分を選択可能なパラメータに紐付ける6連鎖を解くだけで済み、前記連鎖とは、基質(金ナノロッド)および溶媒を指す。したがって、対象とするNSS試料を特徴付けるために、NSS試料の物理化学的性質を確認するのに必要とされる個々のAUC測定の回数は、相当に限られる。
【0041】
それに応じて、
図2(c)の概要プロトコルが、分かっている標的指向性部分を担持し、分かっているカプセル化薬物(=NDDS)の住処となるが、安定化成分(界面活性剤)に関して異なり、また添加成分に関しても異なる、リポソーム系NDDS試料(不明の基質)を例示している。この試料を特徴付けするには、実験パラメータを、立証され有効になっているNDDS(多次元沈降分析マップが基づいている)とは異なる新たな系およびその成分に紐付けている8連鎖を解くだけで済む。さらにまた、対象とするNDDSを含有する試料を特徴付けるには、NDDS試料の物理化学的性質を確認するのに必要とされる個々のAUC測定の回数は、相当に限られる。
【0042】
それにより、本発明の方法は、基盤となるNSS系およびその成分が立証されて有効になった時点で、NSS試料の正確で素早い特徴付けを可能にする。この系は、既存の立証されて有効になっているNSS系の修飾を都合よく調べるのにも使用され得、この修飾とは、NSSの成分のみに関する。このように、本発明の方法は、新たなNSS種の設計および検査にも使用され得る。
実施例
【0043】
計装
沈降速度実験を、12mm光路長のダブルセクタeponセンタピースを使用して、ProteomeLab XL-I分析超遠心分離器(Beckman Coulter Instruments、カリフォルニア州ブレア)により行った。セルをAn-50Ti8穴ロータに置いた。例によって、AUCを3,000rpmに加速させ、52分経った直後に、沈降速度プロファイルスキャンを行った。続いて、10,000rpmのロータ回転速度をNSS沈降速度実験に使用した。場合によっては、42,000rpmのロータ回転速度を使用して、残っている上澄み(SN)、具体的には、同様に42,000rpmにおける沈降速度実験を経て調べたPVAのさらなる詳細を解明した。事実、1,000~60,000rpm以上の回転速度を選ぶことにより、沈降プロトコルを個々のNSSに簡単に適合させることができる。セルに約440μl試料水溶液、また基準として約420μlのH2OまたはD2O/H2Oを満たした。10,000rpmのロータ回転速度で10時間、実験を行い、その後、セルを遠心分離ロータから取り出し、振り、同じ手順を受けさせた。この2回目の遠心分離の後、実験によっては、遠心分離器を42,000rpmに加速させた。沈降実験はすべてT=20℃の温度で行った。沈降プロファイルスキャンを干渉光学系(屈折率(RI))および吸光度検出システム(λ=462nmおよびλ=660nm)により、12分時間間隔で記録した。
【0044】
ヒト血清ならびに沈降速度実験で使用したヒト血清を含有した場合、また含有しない場合の溶媒、溶媒混合物、培地の密度をDMA4100密度計(Anton Paar、オーストリア、グラーツ)によりT=20℃で測定した。
【0045】
(CM)を含有せず、ヒト血清(CMS)と、粒子希釈物によるその濃度に従うヒト血清(HS)とを含有する溶媒、溶媒混合物、培地の粘度を自動化マイクロ粘度計(AMVn、Anton Paar、オーストリア、グラーツ)により、50°の毛管の傾斜角における毛管/ボール組み合わせを介してT=20℃で測定した。
【0046】
データ解析
ls-g*(s)モデルを使用するSEDFITによる、すなわち、Tikhonov-Phillips Regularization手順による最小二乗境界線モデル化により、また非拡散性種を仮定することによって、データ評価に適したスキャンを選択した。このモデルは、沈降係数(s)の見かけの微分分布をもたらす。微分沈降係数分布の積分を経て、この分布のそれぞれの積分を、沈降係数(s)および濃度(c)の信号(重み)平均値を評価するのに使用した。
【0047】
NSSの部分比容(v
NSS)、またはNDDSの部分比容(v
NDDS)、また、それぞれ、それらの密度(ρ
NDDS、またはρ
NSS)を、Machtleら(W.Machtle、L Borger、「Analytical Ultracentrifugation of Polymers and Nanoparticles」、Springer、ベルリン、2006年)が説明する通りに測定した。このために、NDDSの沈降速度実験を行った水とそれぞれのD
2O/H
2O混合物との密度および粘度を測定した。2つの溶媒における固有の沈降係数[s]を等式化して、部分比容(v
NDDS)に分解し、以下の等式を得た:
ここで、s
1は、水で希釈したNDDSの沈降係数であり、η
1は、水の粘度であり、ρ
1は、水の密度である。D
2Oによる希釈物は、水による希釈物と比べた場合にNDDSの同様の溶液濃度を実現することを目的とするものであった。
【0048】
NDDS
細胞培地であるDulbecco’s MEM(DMEM、1.0gL-1D-グルコース含有)をBiochrom(ドイツ、ベルリン)から入手した。Sigma Aldrichからヒト血清(ヒト雄AB血漿から得た、USA起源、滅菌フィルタ処理)を購入した。
【0049】
ナノスケール薬物送達系(NDDS)がSmartDyeLivery GmbH(イェーナ、ドイツ)によって提供された。NDDSは、標的指向性色素単位とカプセル化薬物とで官能化されたポリ(ラクチド-co-グリコライド)(PLGA)コポリマーから成る。提供された際の溶媒中のNDDS担体系は、NDDS製剤過程で使用される界面活性ポリ(ビニルアルコール)(PVA)をさらに含有する。NDDSとNDDS製剤に使用された界面活性剤PVAとを、以下の特性を備える物質移動合意書を経て受け取った。
【0050】
NDDS1(実施例1および実施例2)は、カプセル化薬物を担持している標的指向性色素部分によって部分的に官能化された生分解性高分子ポリ(ラクチド-co-グリコライド)(PLGA)で構成されたもので、またそれらの調製過程に起因してNDDSsに部分的に組み込まれた界面活性剤によって溶液中で安定化する。総NDDS1濃度6.31mg ml-1、総薬物含有量167μg ml-1、総PVA濃度1.90mg ml-1、総容量30mlであった。
【0051】
NDDS2(実施例3および実施例4)は、カプセル化薬物を担持している標的指向性色素部分によって部分的に官能化された生分解性高分子ポリ(ラクチド-co-グリコライド)(PLGA)で構成されたもので、またそれらの調製過程に起因してNDDSsに部分的に組み込まれた界面活性剤によって溶液中で安定化する。総NDDS2濃度4.29mg ml-1、総薬物含有量162μg ml-1、総PVA濃度1.28mg ml-1、総容量30mlであった。
【実施例1】
【0052】
AUCの概念上の安定化
図3は、カプセル化薬物(
図4)に相当する、NDDS
1のλ=462nmにおいてモニタした沈降速度実験中の沈降プロファイルの初期スキャンおよび進展を示す。1,0000rpmで16時間、実験を行った。NDDS
1を2週間、室温で保存し(
図3(a))、また同じ条件下で10週間保存し(
図3(b))、約c≒1.26mg ml
-1の濃度まで希釈した。実験プロファイル(灰色の四角)をls-g
*(s)手法により、すなわち、Tikhonov-Phillips Regularizarion手順による最小二乗境界線モデル化により、また非拡散性種を仮定することにより、分析した。このモデルは、沈降性種の個体群に相当する、沈降係数(s)の見かけの微分分布をもたらす(下記参照)。両方のケースで、実線(上部)として示された沈降速度プロファイルに対する数値解法は、数パーセントの変動しか見せない、それぞれの残余プロット(下部)によって分かるように、この実験を非常にうまく表している。
図3からよく分かるように、NDDS
1の個体群がセル底へ移動した後の吸光度(A)は、同じ保存条件下で2週間のみ保存されたものに比べると10週間室温で保存されたNDDS
1では大きく残っている。また凝集体も見ることができる。この凝集体は、NDDS
1の同一の保存条件下では、2週間起こらない(
図3の黒の実線および点線参照)。
【0053】
このちょうど述べた一連の実験は、調製および精製後にNDDS
1を新たに受け取った後(事実上保存しない)、また室温、c=6.31mg ml
-1の濃度で2週間保存後にNDDS
1を新たに受け取った後、複数検出を経て、すなわち、2つの波長におけるRIおよび吸光度の検出を経て行った。新たな保存された試料を、c=0.63~1.88mg ml
-1の濃度範囲で適切に希釈し、(i)汎用RI検出、(ii)カプセル化薬物に相当する、λ=462nmの波長における吸光度検出(
図3、
図4)、また(iii)標的指向性色素官能性に相当する、λ=660nmの波長における吸光度検出(
図4)を行った。15日目で、1.26mg ml
-1の濃度で調製された1つのNDDS
1試料をT=37℃で保存した。
【0054】
AUC実験には、閉じた扇形状のセル容積において物質収支が保存されるという利点がある。
図5では、2週間保存段階で新たに調製されたNDDS
1試料から始まる、c≒1.88mg ml
-1における粒子に対する、微分沈降係数分布(ls-g
*(s))の進展を示す。RI検出(
図5(a))とともに、カプセル化薬物(
図5(b))に相当する、λ=462nmにおいて、また標的指向性色素官能性(
図5(c))に相当する、λ=660nmにおいて吸光度検出も行った。実線は、10,000rpmにおける最初の沈降周期から、その後、セルを遠心ロータから取り出し、振り、沈降物の再懸濁をもたらす実験に相当する。その後、全く同じ条件下でもう一度沈降速度実験を行い、続いて、それぞれの沈降分析を行った(点線)。実線および点線はすべて、特有の保存時間における溶液で得られた結果の反復性を示して、極めて似ている。事実、RI検出および吸光度検出からのプロファイルはすべて、平均沈降係数分布(ls-g
*(s))の面だけではなくそれらの保存時間への動向の面でも同様の見かけを示す。この実験は、10,000rpmにおける沈降が、NDDS1の粒子統合性と推定信号強度と(実線と点線とを参照)にそれほど影響を及ぼさないことを示して、繰り返し可能であった。それはまた、室温における2日間で(実験を行った時間尺度)、物質収支保存下での溶液性質の変化がほとんど突き止められないことを立証した。さらに明らかなのは、吸光度検出からの分布(
図5(b)および(c))が汎用RI検出から導出した分布(
図5(a))と事実上同一であることから、薬物および標的指向性色素が沈降性粒子の個体群内にあるということだった。別の面白い観察は、室温におけるNDDS
1の2週間の保存後の平均沈降係数の明らかな上昇であった。さらなる保存により、主に、すべての検出モードにおいて、微分沈降係数分布(ls―g
*(s))の曲線の下の見かけ面積が縮小した(下記参照)。
図5(d)では、すべての検出装置が、λ=462nmにおけるNDDS
1中のカプセル化薬物のRI観察、およびλ=660nmにおけるNDDS
1中にある標的指向性色素のRI観察によって、NDDS
1の個体群の分布を含む、NDDS
1濃度に対して線形に対応することを明らかに示す。λ=462nmにある上澄み(SN)に滞留する少量の遊離薬物の存在も確認された。これらの結果は、水中に分散すると、非常に反復的に、NSSs、カプセル化薬物、およびNSSsの標的指向性色素官能性の個々の濃度の定量的評価の本発明の考えを明らかにサポートするものである。
【0055】
通常、溶液中のNSSsは、流体力学的に等価の球体のサイズ、すなわち、その流体力学的直径(d
h,NSS)によって描写される。固体球体概念に基づき、d
h,NSSは、関係:沈降速度実験からの
を経て得ることができ、ここで、υ
NDDSは、NSSsの部分比容であり、最初の概算における溶媒粘度(η
0)および溶媒密度(ρ
0・υ
NSS)で定義された固有の沈降係数[s]=s
NSSη
0/(1-υ
NSSρ
0)は、NSS密度(ρ
NSS)に反比例し、NSSサイズ評価にとっては望ましいものである。水だけではなく、その密度および粘度を確認したD
2Oで希釈した粒子NSS個体群の沈降速度実験によって、NSSサイズを評価した。NDDS
1の部分比容は、υ
NDDS=0.76cm
3g
-1であり、よってその密度はρ
NDDS=1.32gcm
3で、PLGAの分かっている嵩密度に近い値である。
【0056】
図6では、初期NDDS
1調製後にヒト血清(10wt%)を含有する場合と含有しない場合との水で、および培地(CM)で行われた沈降速度実験からのls-g
*(s)分布を示す。λ=462nmにおける吸光度検出を使用して、NDDS
1個体群に対するこれらの溶液条件を調べることも実現可能であることが証明された(
図6)。微分沈降係数分布(ls-g
*(s))は、弱まった全体的な吸光強度においてわずかに大きな値に移り、CMの微分分布とは対照的にCMSではよりそのようになった。同様に、CM単独とは対照的に、NDDS
1沈降に使用される10,000rpmのこの比較的低い回転速度においてさえも、血清タンパク質に由来する、10Sを下回るより小さな沈降係数の見分けのつく個体群が見られた。水による希釈とは対照的に、CMにおける沈降実験後に溶液を振ることは、またCMSではより一層そのようにすることは、完全溶液再構成の難しさを高める。同様に、インスリンなどのCM中のタンパク質成分およびヒト血清アルブミンを含むCMS中のタンパク質成分は、セル底に対して遠心力が作用したNDDSsの圧密をサポートする。NDDS
1性質の知識と、NDDSsの部分比容(υ
NDDS)が様々な流体中で変化しないという仮定とは、CMおよびCMS中の粒子が概してわずかに大きくなることも示し、その後の観察では、ヒト血清(HS)でさらに実験を重ねた別のNDDSsバッチでも再確認された。まとめると、複数検出概念が、定量的考察を可能にする、濃度に対するそれぞれの検出装置(RIおよびA)の望ましい線形性によりNDDSsの沈降性個体群を観察するのに大いに有用であることが証明された(
図5(d))。また、CM媒質およびCMS媒質などのより現実的な条件下でNDDS個体群の沈降速度実験およびそれぞれの挙動が実現可能であることが示された。
【実施例2】
【0057】
粒子の統合性および分解への定量的アクセス
本発明者らはさらに、処置目的でカプセル化薬剤に焦点を当てた。
図7では、それぞれの沈降速度実験後の反復測定を含む3カ月の時間尺度にわたるλ=462nmにおける信号強度の進展を示す(小さな記号で示される)。この目的で、NDDS
1中の薬物だけではなく残っているSN中の薬物(例えば、
図3および5(d))に相当する、
図5(b)の積分分布(ls-g
*(s))を活用した。
図7では、いくつかの特徴がはっきり表れている。正に最初は、SNにおいて観察された遊離薬物量は、NDDS
1と比べると少なかった。保存を受けて、NDDS
1中の薬物量は、SN中の遊離薬物の付随性上昇に従って大幅に減った。例えば、周囲空気温度でのNDDS
1の2週間の保存後、薬物の20%が粒子実体から20%低下した信号強度によって付随する粒子周囲の液体に入った。また、NDDS
1保存の最初の2週間では凝集体がないが(
図3(a)も参照)、ls-g
*(s)分布に見られるような明らかに大きくなった粒子サイズでは、より大きな値の沈降係数に移ることが観察された(
図5(a)~5(c))。室温におけるさらに制御されていないNDDS
1分解を許すと、周囲空気での4週間保存後の凝集体が観察される結果となった。これらは10週間の保存で非常に顕著に現れている。薬物(凝集体、NDDSs、SN)に関連している信号をすべてまとめると、10週間までの保存の複合分解溶液において定量的回復、すなわち、最も不可欠な系成分、すなわち薬物の明らかな損失のない物質収支の全体的な正確さ、を示した。10週間の保存後に、激しくボルテックスさせ、振ることによっても、再懸濁しない可能性がある固体物をNDDS懸濁物の底に観察した。NDDS
1保存のこの時間尺度において、分解により、漠然とした物質ではなく不溶性の物質を形成することによって溶液から析出する、かなりの量のNDDS
1が同一性情報を失った。ナノ析出によって形成されたNDDSsが、溶液中の製剤の変化に起因して、具体的には分解によって、水不溶性の凝集性高分子成分を形成する溶液からのポリマーの析出によって、それらの最低限のエネルギに対処することができる準安定性領域に位置することが分かった。
【0058】
図7(a)によって暗示される見かけの定量的状況の有効化、および薬物が乏しい水溶性を見せるという認識に対処するのに、さらに対照実験を行った。この目標は、NDDS
1製剤に使用された、薬物を界面活性ポリ(ビニルアルコール)(PVA)添加の場合と、添加しない場合とで水に溶かすことにあった。両方のケースとも、AUCセルにおけるλ=462nmでの信号強度は、濃度にそれほど応答しなかった(
図7(b))。これは、AUCセルに充填する前のフラスコの底に析出している固体薬物の視覚的観察を伴った。これらの実験では、
図3(a)および
図7(b)のλ=462nmにおけるSN中の遊離薬物の明らかに高い信号強度が、薬物の高まった溶解性に起因していることも示した。このシナリオにあり得る唯一の起源は、ナノ析出を経て疎水性薬物をカプセル化するのに見事に適するように見えるポリマーである、PLGAの分解生成物の存在であった。NDDSs中の薬物が濃度に線形に対応するが、それは、以下に述べるように、7週間、c=1.26mg ml
-1の濃度、T=37℃の温度で保存された完全に分解した試料でも観察された。濃度に対する応答は、λ=462nmにおける両方のシナリオで薬物の同様の吸光性を示して、極めて似ていた(NDDS中の薬物対完全分解溶液中の薬物、
図7(b))。各スパイク試料においてDMSO対水比を一定に保っている状態で、薬物の濃度が分かっている溶液にジメチル・スルホキシド(DMSO)中に溶けた薬物をスパイクすると、さらなる薬物量の定量的回復を見せた。記録した信号強度を立証された信号強度-濃度関係に実質的に統合した(
図8)。
【0059】
このため、
図7(a)は、既存の薬物(NDDS
1中、またはSN中にカプセル化された凝集体)の定量的表現であり、すなわち、(i)あり得る凝集体に、(ii)NDDS
1中に、(iii)周囲液体(すなわちSN)中の遊離薬物、また(iv)粒子分解における機械的洞察が証明されている、充填された薬物に定量的にアクセスする機会である。この状況はまた、同様の密度における平均サイズのさらなる縮小、すなわち分解が後に続く、NDDS
1サイズの最初のわずかな拡大に相関している可能性がある。これらの洞察はすべて、複数検出AUCの単計装基盤によってもたらされる。
【実施例3】
【0060】
保存条件の研究
記載の発明の目的でのAUCの定量的有用性に対するNDDS
1における上記の実験により、別のNSSs(NDDS
2)バッチを活用して様々な洞察を得た。調製後、この試料をT=4℃とT=37℃との異なる温度、c=4.29mg mL
-1の濃度で保存した。検出装置応答が分かっていれば、λ=462nmにおけるNDDSsおよび周囲液体中にある薬物の濃度の定量的評価が可能になることも示した(
図7)。汎用RI検出が、すべての観察された変化をサポートしている沈降性NDDS個体群の観察に広く適用可能である間、λ=660nmの波長は、標的指向性色素に相当するように見えた(
図4および5)。
【0061】
図9(a)では、冷蔵庫でT=4℃で、およびT=37℃で一晩保存したNDDS
2のアリコートが、すでにそれらの溶液見かけが異なっていることを明確に証明し、すなわち、T=37℃で保存されたNDDS
2の個体群は、T=4℃で保存されたNDDS
2の個体群よりも大きな平均沈降係数を示した。これは、保存および起こり得る分解を受けて、沈降係数の平均値および見かけの流体力学的直径(d
h,NDDS)がNDDS
1の場合で示されるように大きくなる、という状況に当てはまっていた。NDDS
2中およびSN中にある薬物の割合の評価を
図9(b)に示す。この結果ではまた、このNDDS
2バッチの場合、NDDSsからの薬物の付随的放出と、一晩保存後の周囲液体中のその存在とを再確認し、T=4℃とは対照的にT=37℃ではより一層そうであることを再確認した。
【0062】
図10では、すべての検出装置応答を活かして、T=4℃でのNDDS
2保存の15日後でさえも、λ=462nmおよびλ=660nmにおけるRI検出装置およびUV検出装置からの個々の信号が、SN中の遊離薬物のそれを含んで、不変であることを示す。したがって、このような条件は、それらの統合性および薬物充填に影響を与えずに、NSSsの長期保存に適する。沈降実験の16時間後、NDDS
2の個体群を観察し、AUCを42,000rpmまで加速させて、NDDS製剤に使用する、より小さなコロイド種としてPVAを含有しているはずである存在するSNをさらに詳しく述べることを可能にした。この場合も、おそらくPVAに起因する同様のRI強度がT=4℃で見られた。NDDS
2の製剤に使用され、水に溶けるPVAのばらつく濃度の対照実験は、明確にこの考察をサポートした(
図11)。立証された信号強度-濃度関係により、SN中のPVAポリマー濃度を標準規格に合わせることができ、その逆に、PVA量をNDDSsに関連させることも可能になった。
【0063】
T=37℃で15日間保存すると(
図10(b))、当然ながら、激しい分解が生じた。この分解は、RI信号強度の著しい低下、NDDS
2個体群におけるλ=462nmでの吸光度の著しい低下、およびSNにおけるその明白な観察によって明確に確認できるものであり(
図10(b)、下部)、NDDS
1粒子の結果(
図5)にぴったり一致する結果であった。RI強度の著しい低下およびλ=462nmにおける吸光度の著しい低下に、λ=660nmでNDDS
2において測定した色素に関連している信号強度の低下も結び付いたが、これもまたNDDS
1の状況に匹敵する状況である(
図5C)。薬物の最大限の吸光度が、薬物の所在(NDDSs、凝集体、およびSN、
図7b参照)に関係ない状態で、SNにおける圧倒的見かけなしでNDDS
2における色素信号の明らかな喪失を確認した。DMSOにおいて、色素が、λ=660nmにその最大限の吸光度がある状態で、水中でλ=653nmにある最大限の吸光度への波長のソルバトクロミック下方移行を観察した(
図4)。これは、NDDS分解を受けての色素信号の明らかな喪失をサポートしていた。
【0064】
さらに、NDDS2沈降後に42,000rpmで遠心分離器を回転させると、NDDS2が、製剤の間、粒子に部分的に組み込まれるようになり、界面活性剤として作用するようになるとの仮定と相まった状況である、SNにあるPVAの濃度上昇がはっきり示された。それによりまた、NDDSsがタンパク質含有媒質に曝露されると、忍んでいるような効果により凝集を防ぐことによって、全体的なNDDS統合性を維持することが可能になった(下記参照)。NDDS2分解の過程で、追加のPVAが遊離溶液状態に入った。
【実施例4】
【0065】
ヒト血清における実験
図12(a)では、T=4℃、15日間の時間尺度で保存されたNDDS
2の場合の正規化沈降係数分布ls-g
*(s)がすべての方向モード(RI、λ=462nmおよびλ=660nmでの吸光度、)においてほとんど見分けがつかないとともに、極めて似ている絶対信号強度によってサポートされている(
図12(b))ことを浮き彫りにしている。
【0066】
9日後、T=4℃で保存されたNDDS
2試料を、水相と血清との割合(40/60/、w/w)が同一のままであるが、NDDS
2濃度がばらつくようなヒト血清で希釈した。当然、光学的密度の全体的な上昇を観察した。それにも関わらず、λ=660nmの波長において、λ=462nmの波長のNDDS個体群と事実上同一なNDDS個体群の追跡およびRI検出を可能にする波長(NDDS
1の場合は
図5、NDDS
2の場合は
図10)を使用して、NDDS
2個体群を観察した。面白いことに、
図12(c)ではっきり分かるように、NDDS
2濃度上昇は、λ=660nmにおけるより高い信号強度に対応していた。同時に、小さな沈降係数の幾分不明瞭な分布が明らかであった。これらは、10,000rpmの比較的低い回転速度においてもかなり大きな血清成分の沈降に関連している可能性がある。ls-g
*(s)分布の積分は、さらに線形性が高い濃度依存をもたらした(
図12(d))。血清中のすべてのNDDS
2個体群は、水中のNDDS
2個体群よりもわずかにゆっくり沈降する。これは、水と比べるとヒト血清の粘度上昇により十分サポートされる。手元にある液体媒質のそれぞれの密度および粘度により、本発明者らは、固有の沈降スケール[s]を立証することができ、ここで、[s]=sη
0/(1-υρ
0)(
図13参照)であった。υは、NDDSsの部分比容(cm
3g
-1)である(上記参照)。
【0067】
事実、NDDS
2に固有の沈降係数の微分分布(ls-g
*([s]))は、わずかに大きな値に移るが、分布幅に対するある影響によるものである。ls-g
*(s)分布の重み平均沈降係数に基づき計算した流体力学的直径
は、水ではd
h=17nmとして、またヒト血清ではd
h=18nmとしてそれぞれ計算された。これらの結果では、粒子がその統合性を失わないが、その見かけの流体力学的有効サイズがわずかしか大きくならないことを示した。HSにおけるNDDS
2統合性の維持は、NSS製剤で使用されるPVAの「忍んでいるような」効果に端を発するように見えた。これらの本発明の手法および実験結果は、意図した実生活の条件に最も近い条件下、すなわちヒト流体における医療NSSsの原位置の定量的評価の機会および本発明を証明している。
【0068】
ヒト血清におけるさらなる研究を2つの異なるNDDSバッチ:最初に水において特徴付けられ、次に、ヒト血清において原位置で特徴付けられたSDL_NP4.1およびSDL_NP4.2、により行った。全体的に55w%のヒト血清を含有する、0.5~1.5mg/mLのナノ粒子の濃度の試料を調製し、λ=369nmにおける屈折率および吸光度検出の、すなわち水中での実験と同一のAUCにおいて、T=20℃、n=7500rpmで測定した。最初に、2つの異なるNDDSバッチ:SDL_NP4.1およびSDL_NP4.2、の固有の沈降係数の微分分布ls-g*([s])を水において測定/確認した。これらの粒子は、標的指向性色素DY635の濃度の面で異なり、SDL_NP4.1では33.7μg/mLであり、SDL_NP4.2では、2.6μg/mLに上った。
【0069】
【0070】
両方のバッチをそれぞれc=1mg/mLで測定し、またT=20℃、n=7500rpmで20時間、測定を行った(
図14)。明らかに、屈折率検出装置に従って、DY635の濃度が高い方の試料の微分沈降係数分布は、DY635の濃度が低い方の試料に比べて広く分布していた。この状況では、上がったPDIによって反映された、両方の試料の上がった分散度に関してDLS結果を定性的に確認した(表1)。SDL_NP4.1の場合のDLSに従った0.079のPDIは、比較的狭い分布によりAUC結果に反映されていたが、0.138のPDIのSDL_NP4.2(DLSに従う)では、より広い分布を示した。さらに、両方のナノ粒子間のZ-平均DLS結果(表1)に基づく16.9nmのサイズ差は、AUC結果における様々な最大限の微分沈降係数分布により反映されていた。したがって、SDL_NP4.2の分布は、SDL_NP4.1に比べて高い平均沈降係数に移った。
【0071】
λ=369nmにおける吸光度検出により、55w%ヒト血清で測定した、様々な濃度における、すなわちc
1=0.498mg/mL、c
2=0.746mg/mL、c
3=1.068mg/mL、c
4=1.531mg/mL、におけるSDL_NP4.2の微分沈降係数分布を
図15に描写する。SDL_NP4.2の濃度ごとに得られた微分沈降係数分布は、おそらくヒト血清成分に相当する、約27Sを中心とした分布を明らかにした。純粋な55w%ヒト血清の測定は、27Sでの分布のピークも示すことによって確認が取れた。さらに、濃度ごとに、50~300Sのより広い分布が見られた。また、試料の様々な濃度は、λ=396nmにおいて記録された沈降速度から得られた特有のピーク最大値によってその分布ではわずかしか観察できなかった。比較的高い背景光学的密度に起因して、NSSのナノ粒子の調査で十分な信号強度(背景に対して)を可能にする、新たな波長を選ぶ必要があった。標的指向性色素(DY635)では、λ=635nmに特有の吸光度最大値があるので、屈折率および吸光度の測定から確認した分布がDY635担持のナノ粒子にぴったり重なり、より小さな微分沈降係数分布を示すことが立証された。上に挙げた4つの異なる濃度における、すなわちc
1=0.498mg/mL、c
2=0.746mg/mL、c
3=1.068mg/mL、c
4=1.531mg/mL、における、SDL_NP4.2の微分沈降係数分布を、λ=369nmにおける吸光度検出により、55w%ヒト血清において測定した。結果を
図16Aに描写し、この図では、様々なナノ粒子濃度が、吸光度検出を用いて見分けがつくことを示す。吸光強度は、濃度が上がるに従って高くなった。λ=635nmにおける対応する測定光学的密度に対するそれぞれの試料ごとのナノ粒子の濃度をプロットすることによって(上がった検出装置応答から分かるような)、濃度に対する信号強度の線形性およびそれらの依存性が確認される可能性がある(
図16B)。
図15に類似して、30~400Sの沈降係数に及ぶ分布が分析したナノ粒子に対応している一方、約27Sにおけるピークをヒト血清の成分に起因して観察した。λ=635nmにおける吸光度検出を用いることにより、55w%ヒト血清中のナノ粒子を十分に解明した。これらの薬物送達系(すなわちNSS)の適用の際の条件を反映する、様々なナノ粒子濃度を生物流体において検出した。この測定の結果では、医学/薬学における適用に不可欠であるヒト血清含有媒質において分析したナノ粒子の統合性および比較可能性をさらに明らかにした。具体的には、55w%ヒト血清対水における試料の微分沈降係数分布の比較は、適用現実に近いナノ粒子懸濁物の安定性条件が将来テストされてもよいような見かけにおける類似性を立証した。また、ナノ粒子SDL_NP4.1とSDL_NP4.2とのそれらの見かけの微分沈降係数分布に関する同一の性質の証明はまた、例えば、述べたDY635の色素濃度がより低いナノ粒子がヒト血清において同じ統合性を呈する可能性があることも示唆した。
【国際調査報告】