(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-29
(54)【発明の名称】非薬理的に誘発された修正された意識状態のレベルを監視するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/16 20060101AFI20220322BHJP
【FI】
A61B5/16 130
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021546781
(86)(22)【出願日】2020-02-07
(85)【翻訳文提出日】2021-10-07
(86)【国際出願番号】 EP2020053136
(87)【国際公開番号】W WO2020165042
(87)【国際公開日】2020-08-20
(32)【優先日】2019-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521331010
【氏名又は名称】オンコンフォート エスエー
【氏名又は名称原語表記】ONCOMFORT SA
【住所又は居所原語表記】Chaussee de Louvain 172, 1300 Wavre, Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】ジョリス,ディアヌ
(72)【発明者】
【氏名】ユイグ,マリオ
(72)【発明者】
【氏名】トゥーサン,クレメンス
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038PP05
4C038PS03
4C038PS07
(57)【要約】
コンピュータが、意識状態を非薬理的に修正することを含む治療セッションを受けている患者の前記修正された意識状態のレベルを決定および/または監視する方法であって、前記治療セッションに対する前記患者の反応を表す反応データを受領するステップと、前記反応データから、前記患者の前記修正された意識状態のレベルを判定するステップとを備え、前記反応データは、脳波のデータであるEEGデータを含む測定されたデータを備え、前記EEGデータは、患者の前頭葉に相当する頭皮の解剖学的領域に配置された少なくとも1つの前頭部(F)EEG電極、および患者の頭頂葉に相当する頭皮の解剖学的領域に設置された少なくとも1つの頭頂部(P)EEG電極の少なくとも1つから収集されたデータを含む方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが、意識状態を非薬理的に修正することを含む治療セッションを受けている患者の前記修正された意識状態のレベルを決定および/または監視する方法であって、
- 前記治療セッションに対する前記患者の反応を表す反応データを受領するステップと、
- 前記反応データから、前記患者の前記修正された意識状態のレベルを判定するステップとを備え、
前記反応データは、脳波のデータであるEEGデータを含む測定されたデータを備え、
前記EEGデータは、
- 患者の前頭葉に相当する頭皮の解剖学的領域に配置された少なくとも1つの前頭部(F)EEG電極、および
- 患者の頭頂葉に相当する頭皮の解剖学的領域に設置された少なくとも1つの頭頂部(P)EEG電極
の少なくとも1つから収集されたデータを含む方法。
【請求項2】
EEGデータが、少なくとも1つのF-EEG電極から収集されたデータ、さらに任意に少なくとも1つのP-EEG電極から収集されたデータを含み、前記判定するステップが、
- 少なくとも1つのF-EEG電極データから、デルタ・シータ(dt)周波数範囲の帯域に関連するパワーであるFパワーを抽出するステップ、
- さらに任意に、少なくとも1つのP-EEG電極データから、デルタ・シータ(dt)周波数範囲の帯域に関連するパワーであるPパワーを抽出するステップを備え、
- 前記dtの周波数範囲は、デルタ脳波とシータ脳波の両方を包含する範囲の周波数であり、
dt周波数範囲の帯域に関連するFパワー、およびdt周波数範囲の帯域に関連する任意のPパワーは、前記患者の非薬理的に修正された前記意識状態のレベルを示す請求項1に記載の方法。
【請求項3】
- 前記Fパワーが、0Hz以上8Hz以下の周波数範囲、または前記周波数範囲内の帯域に関連付けられ、
- 前記Pパワーが、0Hzより大きく8Hz以下の周波数範囲、または前述の周波数範囲内の帯域に関連付けられている請求項2に記載の方法。
【請求項4】
- dtの周波数範囲内の帯域に関連する前記Fパワーの減少、
- および、dt周波数範囲の帯域に関連する任意の前記Pパワーの減少が、
前記患者の非薬理的に修正された意識状態のレベル低下を示す請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記EEGデータは、少なくとも1つのF-EEG電極から収集されたデータを含み、前記判定するステップは、前記F-EEG電極データから、平均信号ピークツーピーク振幅、F-MSPAを抽出することを含み、前記F-MSPAは、前記患者の非薬理的に修正された意識状態のレベルを示すものである請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記F-MSPAの減少は、前記患者の非薬理的に修正された意識状態のレベルの低下を示す請求項5に記載の方法。
【請求項7】
- 前記患者の解離深度であるDoDが、
- 請求項2または3の何れか1項で定義されるdt周波数範囲の帯域に関連するFパワー、およびdt周波数範囲の帯域に関連する任意のPパワー、
- ならびに、請求項3で定義される任意のF-MSPA、
から決定され、
- 前記DoDが、前記患者の前記非薬理的に修正された意識状態のレベルの判定に用いられる請求項2から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記修正された意識状態のレベルは、意識レベルが非薬理的に、また任意に薬理的に、修正される/されている患者のものである請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記反応データから、状態の深さの指標であるDoSIを決定するステップをさらに備え、前記DoSIは、非薬理的に、任意に薬理的に、修正された(混合された)患者の意識状態の尺度を表すものである請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記反応データから催眠深度指数であるDoHIを決定するステップをさらに備え、前記DoHIは、患者の非薬理的に修飾された意識状態の指標を表すものである請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記反応データから解離深度指標であるDoDIを決定するステップをさらに備え、前記DoDIは、患者の非薬理的に修正された意識状態の指標を表すものである請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
非薬理的に、任意に非薬理的に、誘起された患者の鎮静のレベルを決定するための方法である、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
- 現在のDoS(I)および/またはDoH(I)および/またはDoD(I)、
- DoS(I)、DoH(I)、DoD(I)のうち2つの間の現在の比率、
- トレンド(過去)のDoS(I)および/またはDoH(I)および/またはDoD(I)、
- 予想されるDoS(I)および/またはDoH(I)および/またはDoD(I)、
の1以上、および
任意に、および任意の1以上の現在のデータ成分、好ましくは1以上のEEGデータ成分
を数値および/またはグラフで示す出力を、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)に提供するステップをさらに備える請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
治療セッションを受けている患者の意識レベルを決定および/または監視するためのシステムであって、
- 治療セッション中に患者の測定されたデータを含む反応データを取得するように構成された監視装置と、
- 前記監視装置から測定されたデータを受領するように構成されたコントローラモジュールと、
- 患者の意識レベルを非薬理的に修正するための治療セッションを患者に提示すように構成された任意のメディアレンダラーと、
を備え、
前記監視装置は、前記治療セッション中に前記患者の測定されたデータを取得するために、1以上の
患者の前頭葉に相当する頭皮の解剖学的領域からF-EEG電極データを収集するように構成された前頭部(F)EEG電極、
患者の頭頂葉に対応する頭皮の解剖学的領域からP-EEG電極データを収集するように構成された頭頂部(P)EEG電極、
を備え、
前記コントローラモジュールは、前記反応データから、前記治療セッション中の前記患者の修正された意識レベルを決定するように構成されているシステム。
【請求項15】
請求項1から13のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成されている請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非薬理的な、任意に薬理的な(すなわち、混ざり合った)影響を受けている患者の修正された意識状態を監視し、標準化された測定値を提供する分野に属する。
【背景技術】
【0002】
非薬理的な解決策(例えば、臨床催眠)が存在するにもかかわらず、医療は主に薬理的な解決策(例えば、ベンゾジアゼピン、オピオイド)を提供して、穏やかな状態を作り出し、痛みや不安を管理するために患者を鎮静させている。薬理的な鎮静にはリスクがあり、年齢、呼吸器系や心臓系の疾患、肥満などのいくつかの要因があると、そのリスクは増大する。薬剤による過剰な鎮静(意識的/無意識的鎮静、全身麻酔)は、中等度から重度の有害事象のリスク/発生率を高める。監視システム(BisやEntropyなど)は、薬理的な鎮静のために設計されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
意識下での静脈内鎮静が必要な場合に、任意に局所麻酔(LRA)と組み合わせて、1対1でまたは記録されたセッションの再生を介してもたらされる催眠を用いた非薬理的な鎮静は、何十年も前から行われている(ヒプノセーション/臨床催眠/催眠療法)。薬理的な鎮静の監視システムは、主に非薬理的に誘発される鎮静/麻酔の深さの臨床パラメータとの相関性が低い。催眠状態における脳活性の変化は、脳画像(fMRIおよび/またはEEG)によって客観化されているが、これまでのところ、患者の催眠状態や解離状態を測定し、客観化し、それに基づいて管理するための客観的な定量化はできていない。催眠状態は、客観的に定量化されたことがない。催眠状態/修正された意識状態における、患者の生理的/心理的な解離のレベルを定量化する方法が現存していない。処置による記憶喪失、外科的記憶喪失および患者の解離度を客観的に監視し、傾向を調べ、評価し、予測する方法がない。
当技術分野において、医療従事者や介護者による患者の評価に役立つ標準的な尺度や指標を得るために、患者の修正された意識状態を測定する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書によれば、コンピュータが、意識状態を非薬理的に修正することを含む治療セッションを受けている患者の前記修正された意識状態のレベルを決定および/または監視する方法であって、
- 前記治療セッションに対する前記患者の反応を表す反応データを受領するステップと、
- 前記反応データから、前記患者の前記修正された意識状態のレベルを判定するステップとを備え、
前記反応データは、脳波のデータであるEEGデータを含む測定されたデータを備え、
前記EEGデータは、
- 患者の前頭葉に相当する頭皮の解剖学的領域に配置された少なくとも1つの前頭部(F)EEG電極、および
- 患者の頭頂葉に相当する頭皮の解剖学的領域に設置された少なくとも1つの頭頂部(P)EEG電極
の少なくとも1つから収集されたデータを含む方法が提供される。
【0005】
EEGデータが、少なくとも1つのF-EEG電極から収集されたデータ、さらに任意に少なくとも1つのP-EEG電極から収集されたデータを含み、前記判定するステップが、
- 少なくとも1つのF-EEG電極データから、デルタ・シータ(dt)周波数範囲の帯域に関連するパワーであるFパワーを抽出するステップ、
- さらに任意に、少なくとも1つのP-EEG電極データから、デルタ・シータ(dt)周波数範囲の帯域に関連するパワーであるPパワーを抽出するステップを備え、
前記dtの周波数範囲は、デルタ脳波とシータ脳波の両方を包含する範囲の周波数であり、
dt周波数範囲の帯域に関連するFパワー、およびdt周波数範囲の帯域に関連する任意のPパワーは、前記患者の非薬理的に修正された前記意識状態のレベルを示してもよい。
【0006】
前記Fパワーが、0(ゼロ)Hz以上8Hz以下の周波数範囲、または前記周波数範囲内の帯域に関連付けられていてもよい。前記Pパワーが、0(ゼロ)Hzより大きく8Hz以下の周波数範囲、または前述の周波数範囲内の帯域に関連付けられていていてもよい。dtの周波数範囲内の帯域に関連する前記Fパワーの減少、および、dt周波数範囲の帯域に関連する任意の前記Pパワーの減少が、前記患者の非薬理的に修正された意識状態のレベル低下を示すものであってもよい。
【0007】
前記EEGデータは、少なくとも1つのF-EEG電極から収集されたデータを含み、前記判定するステップは、前記F-EEG電極データから、平均信号ピークツーピーク振幅、F-MSPAを抽出することを含み、前記F-MSPAは、前記患者の非薬理的に修正された意識状態のレベルを示していてもよい。前記F-MSPAの減少は、前記患者の非薬理的に修正された意識状態のレベルが低下していることを示し得る。
【0008】
前記患者の解離深度であるDoDが、
- 本明細書で定義されているようにdt周波数範囲の帯域に関連するFパワー、および任意にdt周波数範囲の帯域に関連するPパワー、
- ならびに、本明細書で定義されているように任意のF-MSPA、
から決定され、
- 前記DoDが、前記患者の前記非薬理的に修正された意識状態のレベルの判定に用いられてもよい。
【0009】
前記修正された意識状態のレベルは、意識レベルが非薬理的に、また任意に薬理的に、修正される/されている患者のものであってもよい。
前記方法は、前記反応データから、状態の深さの指標であるDoSIを決定するステップをさらに備えてもよく、前記DoSIは、非薬理的に、任意に薬理的に、修正された(混合された)患者の意識状態の尺度を表してもよい。
【0010】
前記方法は、前記反応データから催眠深度指数であるDoHIを決定するステップをさらに備え、前記DoHIは、患者の非薬理的に修正された意識状態の指標を表すものであってもよい。
前記反応データから解離深度指標であるDoDIを決定するステップをさらに備えてもよく、前記DoDIは、患者の非薬理的に修正された意識状態の指標を表すものであってもよい。
前記方法は、非薬理的に、任意に非薬理的に、誘起された患者の鎮静のレベルを決定するためのものであってもよい。
【0011】
前記方法は、
- 現在のDoS(I)および/またはDoH(I)および/またはDoD(I)、
- DoS(I)、DoH(I)、DoD(I)のうち2つの間の現在の比率、
- トレンド(過去)のDoS(I)および/またはDoH(I)および/またはDoD(I)、
- 予想されるDoS(I)および/またはDoH(I)および/またはDoD(I)、
の1以上、および
任意に、および任意の1以上の現在のデータ成分、好ましくは1以上のEEGデータ成分
を数値および/またはグラフで示す出力を、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)に提供するステップをさらに備えてもよい。
【0012】
さらに、治療セッションを受けている患者の意識レベルを決定および/または監視するためのシステムであって、
- 治療セッション中に患者の測定されたデータを含む反応データを取得するように構成された監視装置と、
- 前記監視装置から測定されたデータを受領するように構成されたコントローラモジュールと、
- 患者の意識レベルを非薬理的に修正するための治療セッションを患者に提示すように構成された任意のメディアレンダラーと、
を備え、
前記監視装置は、前記治療セッション中に前記患者の測定されたデータを取得するために、1以上の
患者の前頭葉に相当する頭皮の解剖学的領域からF-EEG電極データを収集するように構成された前頭部(F)EEG電極、
患者の頭頂葉に対応する頭皮の解剖学的領域からP-EEG電極データを収集するように構成された頭頂部(P)EEG電極、
を備え、
前記コントローラモジュールは、前記反応データから、前記治療セッション中の前記患者の修正された意識レベルを決定するように構成されたシステムが提供される。
【0013】
治療セッションを受けている患者の非薬理的に-任意に薬理的に-修正された意識状態のレベルを決定および/または監視する方法であって、
- 治療セッションに対する患者の反応を表す反応データを受領するステップと、
- 前記反応データを、状態深度(DoS)の指標(DoSI)および/または催眠深度(DoH)の指標(DoHI)に変換するステップであって、前記DoHIおよび/または前記DoSIは、前記患者の非薬理的に-任意に薬理的に-修正された(混合された)意識状態の尺度を表すステップ
を備える方法が提供される。
【0014】
前記反応データは、測定されたデータおよび/または観察データおよび/または自己報告データを備えていてもよく、好ましくは測定されたデータを備え、
前記測定されたデータは、装置を使用して患者から測定されたデータであり、1以上の電気的活性データ、生理的データ、モーショントラッキングデータ、表情データうちのを備えており
前記観察データは、他の人またはデータベースによって患者について観察または提供されたデータであり、患者の動作/動作の欠如、処置のイベント、臨床観察(肌の色、うめき声や不快感の言葉)、年齢、手術の種類、人種、言語、鎮静剤の投与量のうち1以上のものを備え、
自己報告は、患者によって報告されたデータであって、治療中の解離のレベル、処置の推定持続時間、セッション中のイベントの記憶のうち1以上のものを備えていてもよい。
【0015】
前記電気的活性データは、脳波(EEG)データと、任意に筋電(EMG)データ、皮膚電気活性(EDA)データ、心電図(ECG)データを備えていてもよい。
前記反応データは、評価プロトコルを用いてDoSIおよび/またはDoHIに変換されてもよく、前記評価プロトコルは、数学的(例えば統計的)モデル、学習済みの機械学習モデル、数学的指標、基準データのうち1以上のものの使用を備える。
【0016】
前記評価プロトコルは、前記反応データのデータ成分を等しく、または差をつけて評価するものであってもよく、任意に、高い関連性および精度を有するデータ成分をより高く評価するものであってもよい。
前記評価プロトコルは、
- 治療セッションに対する患者の反応を表す反応データを受領するステップと、
- DoSIおよび/またはDoHIの独自に測定されたデータを受領するステップと、
- 前記評価プロトコルを改良するために、前記反応データおよび独自に測定されたデータを使用するステップと
を備えて改良されてもよい。
前記方法は、催眠治療セッションにおける位置および/または母集団データに基づいて、治療セッションのある時点で予想されるDoSIおよび/またはDoHIを決定するステップをさらに備えていてもよい。
【0017】
前記方法は、
- 現在のDoSIおよび/またはDoHI、
- 現在のDoSIおよびDoHIの二者間の比率、
- DoSIおよび/またはDoHIの傾向(履歴の)、
- DoSIおよびDoHIの間の比率の傾向(履歴の)、
- 予想されるDoSIおよび/またはDoHI、および
- 予想されるDoSIおよびDoHIの間の比率、
および任意に、1以上の現在のデータ成分、好ましくはEEGデータ、EMGデータ、および脈拍数データのうちの1以上、
および任意に1以上の派生指標であって、1以上のデータ成分から、および/またはDoSIから、および/またはDoHIから派生した派生指標、
のうち1以上のものを数値および/またはグラフで示す出力を、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)に提供するステップをさらに備えていてもよい。
【0018】
さらに、治療セッションを受けている患者の非薬理的および/または薬理的に修正された意識状態のレベルを決定および/または監視するシステムであって、
-患者に治療セッションを提示すように構成されたメディアレンダラーと、
-患者の測定されたデータを取得するように構成された監視装置と、
-前記監視装置から測定されたデータを受領し、前記測定されたデータを含む反応データを、状態深度(DoS)の指標(DoSI)および/または催眠深度(DoH)の指標(DoHI)に変換するように構成されたコントローラモジュールであって、前記DoHIおよび/または前記DoSIが、前記患者の非薬理的および/または薬理的に修正された意識状態の指標を表すコントローラモジュール
を備えるシステムが提供される。
【0019】
監視装置は、以下のうち1以上を備えていてもよい。
- 患者の脳から電気的活性データを取得する少なくとも2つ(例えば、2、3、4、5またはより多数)の電極を備え、前記測定されたデータのEEGデータ成分を出力する、脳波(EEG)捕捉ユニット、
- 患者の筋肉組織から電気的活性データを取得する少なくとも1つ(例えば、1,2,3,4,5またはより多数)の電極を備え、前記測定されたデータのEMGデータ成分を出力する筋電(EMG)捕捉ユニット、
- 患者の皮膚から電気的活性データを取得する少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5またはより多く)の電極を備え、前記測定されたデータのEDAデータ成分を出力する皮膚電気活性(EDA)捕捉ユニット、
- 患者の心臓から電気的活性データを取得するための少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5またはより多く)の電極を備え、前記測定されたデータのECGデータ成分を出力する心電図(ECG)、
- 患者の心臓からデータを取得する少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5またはより多く)のセンサーまたは電極を備え、前記測定されたデータの心拍数データを出力する心拍数監視ユニット、
- 脈拍数、心拍変動、血圧、呼吸数、脳内酸素濃度、血中酸素濃度、局所および中枢の血中酸素濃度、皮膚のコンダクタンス、体温などの生理的データを取得する少なくとも1つ(例えば1、2、3、4またはより多数)のセンサーを備え、前記測定されたデータの生理的データ成分を出力する生理監視ユニット、
-頭部、手足(腕、脚、手、膝、肘)の動きなど、患者の体動を取得する少なくとも1つの(例えば、1、2、3、4またはそれより多くの)モーションセンサーを備えていてもよく、測定されたデータの体動追跡データ成分を出力する体動追跡ユニット、
-患者の片目または両目の動きを監視する少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4またはより多数)のカメラを備えていてもよく、前記測定されたデータの視線追跡データ成分を出力する視線追跡ユニット、
-患者の顔の表情を監視するための少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4またはより多数)のカメラを備えていてもよく、前記測定されたデータの表情データ成分を出力する表情捕捉ユニット。
【0020】
メディアレンダラーは、催眠やその他のエビデンスに基づく患者の心理および/または心身への介入を含む治療セッションを提示するスクリーンおよび/または音響変換器を備えていてもよい。
メディアレンダラーと、監視装置の1以上の電極および/または1以上のセンサー、および/または1以上のカメラは、ウェアラブルデバイスにまとめられてもよい。
監視装置の1以上の電極および/または1以上のセンサー、および/または1以上のカメラは、ウェアラブルデバイスのストラップまたはフェイスマスクにまとめられてもよい。
【0021】
前記システムは、
- 現在のDoSIおよび/またはDoHI、
- 現在のDoSIおよびDoHIの二者間の比率、
- DoSIおよび/またはDoHIの傾向(履歴の)、
- DoSIおよびDoHIの間の比率の傾向(履歴の)、
- 予想されるDoSIおよび/またはDoHI、および
- 予想されるDoSIおよびDoHIの間の比率、
および任意に、1以上の現在のデータ成分、好ましくはEEGデータ、EMGデータ、および脈拍数データのうちの1以上、
および任意に1以上の派生指標であって、1以上のデータ成分から、および/またはDoSIから、および/またはDoHIから派生した派生指標、
のうち1以上のものを数値および/またはグラフで示すように構成された、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)をさらに備えていてもよい。
【0022】
さらに、本明細書に記載の方法を実行するように構成されたコンピューティングデバイスまたはシステム、および/または
- コンピューティングデバイスまたはシステムによって実行されると、コンピューティングデバイスまたはシステムに本明細書に記載の方法を実行させる命令を有するコンピュータプログラムまたはコンピュータプログラム製品、および/または
- コンピューティングデバイスまたはシステムによって実行されると、コンピューティングデバイスまたはシステムに本明細書に記載された方法を実行させる命令をその上に格納したコンピュータが読取可能な媒体、および/または
- 計算機またはシステムによって実行されたときに、計算機またはシステムに本明細書に記載された方法を実行させる命令を有するコンピュータプログラムまたはコンピュータプログラム製品を表わすデータストリーム
が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】DoSIおよびDoHIを用いて測定した、4つのフェーズからなる例示的な治療セッションの視覚化例を示す図である。
【
図2】グラフィカルユーザーインタフェースへの出力の例を示す図である。
【
図3】グラフィカルユーザーインタフェースへの出力の例を示す図である。
【
図4】グラフィカルユーザーインタフェースへの出力の例を示す図である。
【
図5】グラフィカルユーザーインタフェースへの出力の例を示す図である。
【
図6】グラフィカルユーザーインタフェースへの出力の例を示す図である。
【
図7】グラフィカルユーザーインタフェースへの出力の例を示す図である。
【
図8】グラフィカルユーザーインタフェースへの出力の例を示す図である。
【
図9】グラフィカルユーザーインタフェースへの出力の例を示す図である。
【
図10A】メディアレンダラー、電極およびセンサーを組み込んだアイマスクを内蔵するウェアラブルデバイスを示す図である。
【
図10B】EEGデータの測定のために正面の(F)EEG電極を含む、
図10Aと同様の図である。
【
図10C】バーチャルリアリティビューアを除いた
図10Bと同様の図であり、ヘッドフォンが存在する。
【
図10D】バーチャルリアリティビューアとヘッドフォンが存在しない
図10Bと同様の図である。
【
図11】電極が配置されたウェアラブルデバイスのアイマスクの縁を示す図である。
【
図12】電極およびセンサーの別の構成で配置されたウェアラブルデバイスのアイマスクの縁を示す図である。
【
図13】レスポンスデータから抽出されたグループ1~2の指標を模式的に示す図である。右は、解離へのリンク(および解離深さの決定への使用)を示しており、これは、非薬理的に誘起され修正された意識状態(SoC non-pharma)にリンクしている。左は、グループ1から2の指標と、非薬理的に誘発される修正された意識状態(SoC non-pharma)との間のリンクを示している。SoC non-pharmaは、催眠の深さにリンクしている。状態の深さは、催眠の深さにリンクし、任意に、薬理的に誘起され修正された意識状態の指標とリンクし、そして任意に、他の治療法によって誘起され修正された意識状態の指標とリンクしている。
【
図14】EEG F電極で測定したMSPAと解離との相関関係を示すグラフである。
【
図15】自己申告した解離と、EEG電極F,Pで計算したdtパワーとの相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のシステムおよび方法を説明する前に、本発明は、そのようなシステムおよび方法および組み合わせはもちろん変化し得るので、説明された特定のシステムおよび方法または組み合わせに限定されないことを理解されたい。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、本明細書で使用される用語は限定を意図したものではないことを理解されたい。
本明細書では、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかに他を指示しない限り、単数および複数の参照語を含む。
【0025】
本明細書で使用される用語「comprising」、「comprising」および「comprised of」は、「including」、「include」または「containing」、「contains」と同義であり、包括的またはオープンエンドであり、追加の、非記録的な部材、要素または方法ステップを除外するものではない。本明細書で使用される用語「comprising」、「comprising」および「comprised of」は、用語「consisting of」、「consists」および「consists of」を含むと理解される。
終点による数値範囲の記載は、記載された終点だけでなく、それぞれの範囲内に包含されるすべての数値および分数を含む。
【0026】
パラメータ、量、時間的持続時間などの測定可能な値に言及する際に本明細書で使用される「約」または「約」という用語は、開示された発明で実行するのに適切な範囲で、指定された値の±10%以下、好ましくは±5%以下、より好ましくは±1%以下、さらにより好ましくは±0.1%以下の変動を包含することを意味する。約」または「約」という修飾語が参照する値は、それ自体も具体的かつ好ましく開示されていることを理解されたい。
メンバーのグループの1以上または少なくとも1つのメンバー(複数可)などの「1以上」または「少なくとも1つ」という用語は、それ自体が明確であるのに対し、さらなる例示によって、この用語は、特に、前記メンバーの任意の1つ、または前記メンバーの任意の2つ以上、例えば、前記メンバーの任意の≧3、≧4、≧5、≧6または≧7などへの言及、およびすべての前記メンバーへの言及を包含する。
【0027】
本明細書で引用されているすべての文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。特に、本明細書で特に言及されているすべての文献の教示は、参照により組み込まれる。
特に定義されていない限り、技術的および科学的用語を含む、本発明の開示に使用されるすべての用語は、本発明が属する技術分野の通常の技術者によって一般的に理解される意味を有する。さらなるガイダンスとして、本発明の教示をよりよく理解するために、用語の定義が含まれている。
以下の文章では、本発明の異なる側面がより詳細に定義されている。このように定義された各態様は、反対に明確に示されない限り、他の態様と組み合わせることができる。特に、好ましいまたは有利であると示された任意の特徴は、好ましいまたは有利であると示された任意の他の特徴または特徴と組み合わせることができる。
【0028】
本明細書において「一実施形態」または「実施形態」とは、実施形態に関連して記載された特定の特徴、構造または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書の様々な場所で「一実施形態で」または「実施形態で」という表現が現れるのは、必ずしもすべてが同じ実施形態を指しているわけではないが、そうであってもよい。さらに、特定の特徴、構造または特性は、本開示から当業者に明らかになるように、1以上の実施形態において、任意の適切な方法で組み合わせることができる。さらに、本明細書に記載された一部の実施形態は、他の実施形態に含まれる一部の特徴を含むが、他の特徴を含まない。異なる実施形態の特徴の組み合わせは、当業者に理解されるように、本発明の範囲内であり、異なる実施形態を形成することを意味する。例えば、添付の特許請求の範囲において、請求の範囲に係る実施形態のいずれも任意の組み合わせで使用できる。
【0029】
本発明の説明において、本明細書の一部を構成し、本発明を実施可能な特定の実施形態を例示するためだけに示されている添付図面を参照する。それぞれの要素に付された括弧付きまたは太字の参照数字は、例として要素を示しているに過ぎず、それぞれの要素を限定することを意図していない。本発明の範囲から逸脱することなく、他の実施形態を利用したり、構造的または論理的な変更を行ったりできることを理解していただきたい。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で捉えられるべきではなく、本発明の範囲は添付の請求項によって定義される。
【0030】
本明細書では、患者の意識状態を修正する治療セッションを受けている患者の修正された意識状態のレベルを決定および/または監視する方法を提供する。患者の意識状態を修正する治療セッションは、非薬理的(例えば、催眠)であってもよい。患者の意識状態を修正する治療セッションは、非薬理的(例えば催眠)および薬理的(すなわち混合治療セッション)であってもよい。前記方法は、治療セッションに対する患者の応答を表す反応データを受領するステップと、反応データから患者の修正された意識状態のレベルを決定するステップとを含む。修正された意識状態のレベルは、リアルタイムで決定される。
【0031】
発明者らは、反応データ、特に前頭部EEG電極、頭頂部EEG電極および中枢EEG電極の少なくとも1つから収集された測定されたデータと、患者の意識状態を修正するための非薬理的治療セッション中の患者の意識状態との間に強い関連性があることを初めて見出した。非薬理的な催眠(解離を引き起こす)において、患者の意識状態が修正された程度をリアルタイムで客観的に測定することが初めて可能になった。これは、例えば、患者が非薬理的な鎮静下で介入を受けている場合など、多くの状況で適用可能である。介入は、治療、改善、および/または診断を含む任意のものであってよい。介入は、侵襲的(外科手術、内視鏡手術、カテーテル治療など)であってもよいし非侵襲的(医用画像取得、放射線治療など)であってもよい。
意識状態とは、患者の自己認識および環境認識の測定であって、患者の存在感、覚醒度(情動反応)、および刺激に対する(身体的)反応を決定するものであり、生理的活性の変化および神経系の信号によって特徴付けられる。刺激は、環境(外部の事象など)からおよび/または内部からのものであってよい。
【0032】
修正された意識常置、即ち、意識レベルが低下した状態では、患者はよりリラックスした状態になり、より解離した状態になり、より暗示にかかりやすくなり、中程度または深いレベルまで鎮静化される。患者の認知機能は特定のタスクに集中し、通常は一緒に行われる脳のプロセスが分離される。患者の生理機能は通常、修正される(嚥下、手足の動き、目のまばたきなどの不随意運動の減少、バイタルサインの安定性の向上、より大きな呼吸パターン、酸素供給率の向上など)。修正された意識状態では、患者は部分的または全体的なカタレプシーを経験するだけでなく、環境から切り離されることがある(例えば、言葉の命令が聞こえない/反応しない)。必要に応じて、感覚を過小/過大に作動させることができる。意識レベルが低い患者は、改善された介入の経験を持つことができる。介入は、治療、改善、および/または診断を含む任意のものであってよい。介入は、侵襲的(例えば、外科手術、内視鏡手術、カテーテル挿入)であってもよいし非侵襲的(例えば、医用画像取得、放射線治療)であってもよい。
非薬理的に誘起される意識状態は、後述するように、治療セッション中の患者の解離深度(DoD)から決定できる。
【0033】
治療セッションは、患者の意識状態を修正するために患者に適用される。治療セッションは、催眠および/または他のエビデンスに基づく心理および/または心身への介入(すなわち、非薬理的治療)、有効な薬理成分の投与(すなわち、薬理的治療)、他の治療(例えば、鍼治療、機械的治療、マインドフルネス、他の非薬理的治療)のうちの1以上を含んでもよい。好ましくは、前記治療戦ションは催眠を含む。催眠は、解離の効果が知られている。患者の意識状態が催眠によって変化した度合いが、催眠深度(depth of hypnosis, DoH)と呼ばれることがある。また、患者の意識状態が、催眠、任意に活性薬理成分、任意に他の治療法によって修正された度合いが、状態の深さ(depth of state, DoS)と呼ばれることがある。
【0034】
特に、非薬理的治療は、主に催眠を含むが、催眠セッションの可能性を高めるために、および/または解離/意識の変化/治療効果を向上させるために使用される他の治療も含まれる。その他の非薬理的治療法としては、鍼治療、タッピング治療、電気刺激、機械的治療、マインドフルネス、眼球運動による脱感作および再処理(EMDR)のうち1以上のものが挙げられる。
薬理的治療の例としては、麻酔薬の投与が挙げられる。麻酔薬の例として、
- デスフルラン、エンフルラン、ハロタン、イソフルラン、メトキシフルラン、亜酸化窒素、セボフルラン(吸入)などの吸入麻酔薬
- バルビツール酸塩、アモバルビタール、メトヘキシタール、チアミラール、チオペンタール、ベンゾジアゼピン、ジアゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、エトミダート、ケタミン、プロポフォールなどの静脈内投与剤
が挙げられる。
【0035】
本明細書では、「患者」という用語は、治療セッションの受益者を意味する。「ユーザー」とは、方法やシステムを操作する人のことである。ユーザーは、患者の医師などのケア提供者、医療補助者、非医療補助者(友人、親戚、ヘルパーなど)であってもよい。状況によっては、ユーザーは、例えば、治療が自宅において自分で行われる場合など、患者であってもよい。
【0036】
催眠療法は、患者の意識を変化させる方法の1つである。催眠療法は、医療用(臨床用)催眠療法、家庭用催眠療法、または任意の治療やウェルネス環境で提供される催眠療法であってもよい。また、催眠療法は、介護施設で提供されない(すなわち、クリニック、病院、ケアセンターで提供されない)学外催眠療法であってもよい。変性意識に浸っている間、患者の自己認識と周辺意識が影響を受け、患者の感覚、知覚、思考の経験が変化し、患者は暗示に従いやすくなる。患者は現実から心を奪われて解離した状態になる。
催眠療法のセッションは、
図1に例示するように、 (i) 導入期、 (ii) 深化期、 (iii) 移行期、 (iv) 再喚起期の4つのフェーズから構成されている。治療セッションに没頭している間、患者の自己認識と周辺意識が影響を受け、没頭の深さは (i) のフェーズで増加し、 (ii) のフェーズで最大になる。 (ii) のフェーズでは、患者は暗示的なコントロールを受けやすくなり、その間、患者は鎮静化されたり、リラックスするように誘導されたりする。その後、 (iii) と (iv) のフェーズを経て、通常の意識状態に戻る。
【0037】
それぞれのフェーズについて、以下に詳しく説明する、即ち、
(i) 誘起フェーズ:患者が変化した状態に浸る準備をするフェーズ。このフェーズでは、典型的には、患者に心地よさ、安全性、リラックス感を与える。
(ii) 深化フェーズ:患者を変容した意識状態に置くフェーズ。この状態は、典型的には、現実からの完全または部分的な解離と、治療で明示的に提案されていない限り動きの欠如または減少を特徴とする。
(iii) 移行フェーズ:患者は暗示的な情報にさらされる。この情報は、治療の特定のイベントを思い出したり忘れたりするのを助けたり、1以上の患者特有の問題に対処したりするのに役立つ(後催眠暗示とも呼ばれる)。
(iv) 再覚醒フェーズ:患者の意識を通常の状態に戻すフェーズである。このフェーズで、患者は通常、正気に戻り、解離状態は終了する。このフェーズは任意であってもよいし、典型的な催眠治療セッションの一部であってもよい。
【0038】
催眠治療セッションは、催眠術師または催眠療法士によって提供されてもよいが、より好ましくは、以下に詳述するように、完全に没入型の効果を得るために、バーチャルリアリティヘッドセットなどのメディアレンダラーを使用して提示される。保存されている催眠治療セッションをメディアレンダラーで再生することができ、治療セッションの内容は治療に固有のものである。催眠セッションは、自己催眠セッションであってもよい。
催眠によって誘発される意識変容状態にある間、患者はより解離しており、薬剤(麻酔薬/鎮痛薬/抗不安薬)がない状態で、または低用量で介入(例えば、侵襲的処置など)を受けてもよい。
【0039】
治療セッションに対する患者の反応を表す反応データは、患者の意識状態、特にレベルまたは修正された意識状態を決定するために使用される。
反応データは、測定されたデータと、任意に観察データおよび/または自己報告データを含んでいてもよい。反応データは、測定されたデータおよび/または観察データおよび/または自己申告データを含んでいてもよい。反応データは、1以上のデータ成分を含み、各成分は、後述するように、単一の測定値(EEG、EMG、EDA、ECG、EOGなど)、単一の観察値(動き、肌の色など)、または単一の自己報告イベントから得られる。
【0040】
測定されたデータは、電極やセンサー(変換器、カメラ、モーションセンサーなど)などの1以上のデバイスを用いて、患者から得られたデータである。観察データは、患者を非自己(ヘテロ)で観察して得られたデータである。自己報告データは、治療中または治療後に患者が報告したデータまたは情報である。測定されたデータは、1以上の測定されたデータ成分を含んでいてもよい(例えば、EEGは、測定されたデータ成分である)。
反応データは、電気的活性データから構成されてもよい。電気的活性データは、測定されたデータである。電気的活性データは、電気電極によって得られた測定値から得られる任意のデータである。電極は、通常、皮膚上に配置される。通常、データは、少なくとも2つの電極(例えば、2、3、4、5またはより多く)によって捕捉される。電極で捕捉されたデータの例としては、脳波(EEG)データ、筋電図(EMG)データ、皮膚電気活性(EDA)データ、心電図(ECG)データ、眼電図(EOG)データなどがある。なお、反応データは、少なくとも1つのEEGデータを含むことが好ましい。任意の電気データ成分(例えばEEGデータ)は、反応データとして使用される前に処理されてもよいし処理されなくてもよい。
【0041】
反応データは、生理的データから構成されていてもよい。生理的データは、測定されたデータである。生理的データは、通常、変換器、カメラ、モーションセンサーを含む装置によって得られる患者の測定値から得られるデータである。生理的データは、上述の電気的活性データを除く。生理的データの例としては、脈拍数データ、心拍数データ(例えば、心拍数、心拍数変動データ)、血圧データ、呼吸(率)データ(例えば、呼吸数、呼吸数変動データ)、脳内酸素データ、血中酸素飽和度データ、局所および/または中枢血中酸素飽和度データ、皮膚コンダクタンスデータ、皮膚ガルバニックデータ(例えば、GSR(galvanic skin response)データ)、体温データ、PPG(photoplethysmogram)データなどがある。血中酸素飽和度は、例えば、SpO2、SvO2などである。任意の生理的データ成分(例えば、脈拍データ)は、反応データとして使用される前に処理されてもよいし処理されなくてもよい。
【0042】
反応データは、モーショントラッキングデータを含んでいてもよい。モーショントラッキングデータは、測定されたデータである。モーショントラッキングデータは、身体の動きまたは身体の一部の動きから得られるデータである。典型的には、モーショントラッキングデータは、1以上のモーションセンサー(例えば、2軸または3軸の加速度計、ジャイロスコープ、1以上のカメラ)によって測定される。モーショントラッキングデータは、体動追跡データ(例えば、頭、手足(腕、脚、手)、体の揺れ)および/または視線追跡データのうち1以上のものから構成されていてもよい。動きは、自発的なものであってもよいし、電気的な刺激の結果であってもよい。
反応データは、顔の表情データで構成されていてもよい。顔の表情データは、測定されたデータである。表情データは、感情および/または侵害受容に関するデータである。通常、顔の表情データは、顔に向けられた1以上のカメラ(またはEMGセンサー)によって測定される。
【0043】
反応データは、観察データを含んでいてもよい。観察データは、他の人が患者について観察したデータである。観察データは、ユーザー(例えば、医師などのケア提供者、医療補助者、非医療補助者(例えば、友人、親戚、ヘルパー))、ユーザーに関連する関係者(例えば、病院)によって観察されたデータ、または、データベース(例えば、医療記録)から取得されたデータである。観察されたデータは、1以上の観察されたデータ成分を含んでいてもよい(例えば、患者の動きは観察されたデータ成分である)。観察データは、患者の動き/動きがないこと、処置のイベント、臨床観察(肌の色、不快感のうめき声や言葉遣い...)、年齢、手術の種類、介入データ、人種、言語、その他の集団統計、鎮静剤および/または他の薬剤の投与量のうち1以上を含んでもよい。
【0044】
反応データは、自己報告データを含んでもよい。自己報告データは、患者が報告したデータである。自己報告データは、セッション中に提供されてもよい。自己報告データは、治療セッションの前、および/または治療セッション中および/または治療セッション後に提供されてもよい。好ましくは、自己報告データは、治療セッションの前および/または後に提供される。自己報告データは、1以上の自己報告データ構成要素(例えば、治療中の解離のレベルは自己報告データ構成要素である)を含んでもよい。自己報告データは、治療中の解離のレベル、全体的な快適さ、処置の推定持続時間、セッション中のイベントの想起、および他の関連する登録事項のうち1以上を含んでもよい。
【0045】
脳波(EEG)は、脳の電気的活性を記録する技術としてよく知られている。頭皮の特定の場所に置かれた電極が、脳(主に大脳皮質)のニューロン内の電気的インパルスによる電圧変動を測定する。脳内ネットワークの異なる神経細胞や神経細胞の集団が、電気的インパルスからどのように相互に通信しているかを反映している。脳波記録によって、脳波図が得られる。脳波図のEEGデータは、上述した前頭葉、頭頂葉、中心部の電極など、特定の電極位置に集約される。
EEGデータは、周波数ベースのパラメータ、および/または、位相ベースのパラメータ、および/または、振幅ベースのパラメータを備えていてもよい。周波数ベースのパラメータは、EEG信号の周波数ベースの解析によって得られてもよい。これは、特定の信号周波数帯域に含まれるパワーを測定するために使用されてもよく、ここで、パワーとは、典型的には特定の周波数範囲内(例えば、デルタ-シータ周波数範囲にまたがるまたは範囲内の帯域、またはシータ-アルファ周波数範囲にまたがるまたは範囲内の帯域)にある周波数領域信号の振幅の二乗を指す。
【0046】
デルタ・シータ(dt)周波数帯域とは、デルタ波とシータ波の両方の脳波を包含する範囲の周波数帯域を意味する。デルタ-シータ(dt)の範囲は、典型的にはゼロHzより大きく、8Hzに等しいかそれ以下である。シータ脳波は、好ましくは低周波シータ脳波(3Hz以上、6Hz以下)である。デルタ・シータ(dt)帯域の幅は、少なくとも2Hzであってもよい。帯域の幅は、「デルタ-シータ」(dt)周波数の全範囲に及んでもよい。最も好ましくは、デルタ-シータ(dt)周波数の帯域は、1Hz以上かつ6Hz以下である。
位相ベースのパラメータは、EEG信号の位相ベースの解析によって得られてもよい。振幅ベースのパラメータは、EEG信号の振幅ベースの解析、例えば、時間領域における平均信号ピーク-ピーク振幅(MSPA)によって得られる。信号のピーク振幅は、信号波のゼロ点からの最大の変位量である。また、信号のピーク間振幅は、負のピークから正のピークまでの距離を表す。
【0047】
EEGデータは、(位置的に)前頭葉と頭頂葉に対応する解剖学的領域の頭皮に配置された1以上のEEG電極を用いて取得できる。
前頭部EEG電極(F-EEG電極)は、前頭葉に対応する頭皮の解剖学的領域に配置されている。F-EEG電極は、前頭葉に対応する頭皮の解剖学的領域に装着または接触するように構成されている。そして、F-EEG電極データを記録する。前頭葉とは、脳の解剖学的な部分を指す。前頭葉の領域は、矢状面に沿っていてもよく、より好ましくは、前頭葉に対応する頭皮の解剖学的領域の中央部で、矢状面に沿っていてもよい。少なくとも1つのF-EEG電極が設けられ、あるいは使用されてもよい。
頭頂部EEG電極(P-EEG電極)は、頭頂葉に対応する頭皮の解剖学的領域に配置される。頭頂葉に対応する頭皮の解剖学的領域に装着または接触するように構成されている。P-EEG電極は、P-EEG電極データを記録する。頭頂葉とは、脳の解剖学的な部分を指す。頭頂葉の領域は、矢状面に沿っていてもよく、より好ましくは、頭頂葉に対応する頭皮の解剖学的領域の中央部で、矢状面に沿っていてもよい。少なくとも1つのP-EEG電極が設けられ、あるいは使用されてもよい。
【0048】
少なくとも1つの局所EEG電極(例えば、F-EEG電極)が使用されてもよい。しかし、第2の電極(グランド電極)が、コモンモード除去、すなわち、関連する情報をノイズから分離するために採用されてもよいと理解されるべきであり、それは、頭皮のどこにでも、例えば頭皮の別の領域に、両側に配置してもよい。第3の電極(基準電極)が、電圧差を計算するために使用されてもよく、それは、電気的に中立な場所など、頭皮のどこにでも設置できる。
心拍数のデータは、2つ以上の心電図(ECG)電極を、末梢または前胸部の皮膚上に配置して取得できる。ECGは心臓の電気的活性を検出する。それに代えて、あるいはそれに加えて、心拍数のデータが、例えば、皮膚上に配置された光電式容積脈波(PPG)センサーを用いて、別のソースから取得されてもよい。PPGは、皮膚の下の血管系の血液量の変化を検出する。心拍データは、心拍数、心拍変動、派生メトリクス、位相ベースのパラメータ、周波数ベースのパラメータを備えていてもよい。
【0049】
呼吸データは、1以上の力/運動変換器(チェストバンドなど)または空気圧センサーを用いて取得されてもよいし、PPGセンサーまたはECGセンサーを用いて取得されてもよい。呼吸器データは、呼吸数、呼吸数変動(呼吸変動とも呼ばれる)、吸気圧、呼気圧、呼吸リズム、呼吸深度、呼吸パターン、および派生する指標のうちの1以上を備えていてもよい。呼吸データは、本明細書で呼吸数データとして知られているものであってもよい。
EMGデータは、好ましくは手足や顔などの皮膚上に配置された2つ以上のEMG電極を用いて取得するか、EEGなどの別のセンサーから取得してもよい。EMGデータは、患者の筋肉組織からの電気的活性データを表す。筋電図は、周波数ベースのパラメータおよび/または位相ベースのパラメータおよび/または振幅ベースのパラメータを備えていてもよい。
【0050】
EOG(Electrooculogram)データは、目の周りの皮膚(例えば、目の上下や左右)に配置された2つ以上のEOG電極を用いて取得されてもよい。EOGは、人間の目の前後に存在する角膜網膜の電位に基づいて眼球運動を記録する。EOGデータは、眼球運動/固視、瞬き、両眼の動きの同期を含んでいてもよい。
皮膚の電気的データは、皮膚上に配置された2つ以上のコンダクタンス測定用電極を用いて取得できる。このデータは皮膚の電気伝導度を表し、交感神経の活性を反映した汗腺の活性の変化と関連している。皮膚の電気的データは、導電率の変動、ピーク振幅/レイテンシー、傾向を含んでいてもよい。
【0051】
SpO2 データは、血中酸素飽和度の指標である。SpO2 データは、パルスオキシメトリなどのいくつかの技術を使用して測定される。SpO2データが時間軸の値を含んでもよい。SpO2 データは、呼吸機能に関連し、組織酸素化を反映するため、麻酔科医にとって重要なパラメータである。
視線追跡データは、瞳孔拡張、眼球固定、まばたき回数または頻度、眼球電気泳動(EOG)、眼球運動、まばたきで眼を閉じている時間、まばたきの不均一、眼球閉鎖率、眼瞼の距離変化(通常の眼瞼距離に対する)の1以上を含んでもよい。瞳孔拡張により、脳内のノルエピネフリン(ストレスホルモン)の主な合成部位である青斑核の活性や、眠気/覚醒の状態などの情報を得ることができる。
【0052】
体の動きを追跡するデータ(例えば、頭、手足(腕、脚、手))は、体の動きの増加または減少を示すものを含んでもよい。頭部の動きの変化は、治療セッションの受動的な「深化」フェーズにおいて、課題への集中力の欠如/熱中度の低さ/注意力の散漫さを示すものであってもよい。
反応データは、EEGデータ、およびEMGデータ、および視線追跡データを含む測定データ、患者の観察された動きや動きのなさ、および投与された薬の量を含む観察データ、解離度を含む自己報告データから構成されていてもよい。好ましくは、反応データはEEGデータを含む。好ましくは、自己申告データ(もしあれば)は解離度を含む。
反応データは、治療セッション中の患者の解離の深さ(DoD)を決定するために使用されてもよい。
【0053】
解離の深さ(DoD)は、患者が、ある時点で実際の環境のリアリティを低下させて、別のリアリティに存在しているような感覚を持つ度合いや、患者が自分の感覚や自己意識から切り離される度合いのことである。これは、患者が催眠状態にある深さの直接的な指標となる。言い換えれば、催眠の深さ(Depth of Hypnosis)の主な原因となる。神経生理的なレベルでは、解離は精神的なプロセスの再優先順位付けによって特徴付けられ、別の現実に優先的な注意が向けられる。解離は、実際の環境からの刺激や内部のイベントに対する無頓着さの度合いを示す指標として用いられることがある。本明細書の別の箇所で述べたように、患者の解離の深さ(DoD)は、グループ1の指標および/またはグループ2の指標から決定されてもよい。DoDは、非薬理的治療セッションに関して測定されてもよい。
【0054】
反応データまたはその反応データから決定された修正された意識状態のレベルは、状態の深さ(DoS)および/または催眠の深さ(DoH)を決定するために使用されてもよい。前記反応データから決定された解離の深さ(DoD)は、状態の深さ(DoS)および/または催眠の深さ(DoH)を決定するために使用されてもよい。
DoHは、非薬理的に(例えば催眠によって)誘起された患者の意識レベルと同じであるか、またはそれを示している。前述のように、意識状態が修正された状態で、患者はよりリラックスし、解離した状態になり、不快なイベントに悩まされることが少なくなり、暗示にかかりやすくなり、任意に鎮静化される。患者の認知機能は特定のタスクに占有され易く、通常は一緒に起こる脳のプロセスが分離され易くなる。この解離状態を作り出すことで、周辺刺激の知覚が低下し、環境の中の自己と自己に対する患者の認識が修正されるようになる。患者のDoHに寄与する指標としては、少なくとも患者が経験した解離の深さ(DoD)が挙げられる。本明細書の他の箇所で述べたように、DoDは、グループ1データおよび/またはグループ2データから決定されてもよい。
【0055】
DoSは、非薬理的(催眠など)および任意に薬理的に誘起された患者の意識レベルを示すものである。DoSは、異なる状態の深さまたは異なる状態の深さの指標から決定されてもよい。例えば、DoSは、異なる状態の深さまたは異なる状態の深さの指標の合計であってもよい。DoSは、DoHおよび薬理的治療によるような状態への他の寄与から決定されてもよい。例えば、DoSは、異なる状態の深さまたは異なる状態の深さの指標の合計であってもよい。特に、治療セッションに催眠のみが含まれる場合、DoSはDoHと等しくてもよい。
【0056】
反応データは、脳波記録、EEGデータを含む測定データを含んでもよく、前記EEGデータが、
- 患者の前頭葉に相当する頭皮の解剖学的領域に配置された前頭部EEG電極(F-EEG電極)、
- 患者の頭頂葉に相当する頭皮の解剖学的領域に設置された頭頂部EEG電極(P-EEG電極)、
- の少なくとも1つから収集されたデータ、
- 前記反応データから、患者の修正された意識状態のレベルを決定するステップを含んでいてもよい。
好ましくは、少なくとも1つのF-EEG電極および少なくとも1つのP-EEG電極を含む。
【0057】
発明者らは、F-EEG電極、およびP-EEG電極の少なくとも1つから収集したデータと、患者の修正された意識状態のレベルとの間に強い関連性があることを見出した。特にそれは、患者の解離の深さ(DoD)を示すために使用できる。患者のDoDは、患者の意識状態と連動している。また、患者の解離の深さは、患者の催眠の深さとリンクしている。
【0058】
好ましくは、EEGデータは、F-EEG電極、および任意にP-EEG電極から収集されたデータを含み、判定は、
- F-EEG電極のデータから、デルタ・シータ,dt,周波数範囲の帯域に関連するパワー(F-power(dt))を抽出するステップと、
- 任意に、P-EEG電極データから、デルタ・シータ,dt,の周波数範囲の帯域に関連するパワー(P-power(dt))を抽出するステップと、
を含み、F-power(dt) および任意でP-power(dt)(グループ1の指標)は、患者の意識状態を示す。特にそれらは、患者がどれだけ解離しているかを示している。解離は、患者の意識状態とリンクしている。
好ましくは、F-power(dt)は、ゼロHzより大きく8Hz以下の周波数範囲、またはその範囲の中のより狭い帯域から抽出される。好ましくは、P-power(dt)は、ゼロHzより大きく8Hz以下の周波数範囲、またはその範囲の中のより狭い帯域から抽出される。好ましくは、少なくとも1つのF-EEG電極と、少なくとも1つのP-EEG電極が含まれる。
【0059】
グループ1の指標であるF-power(dt)、および任意にP-power(dt)は、患者の意識状態の指標である。特に、患者がどれだけ解離しているかにリンクしている。
それぞれの基準値と比較した前記F-power(dt)および任意に前記P-power(dt)の変化は、さらに患者の意識の変化の状態を示す。特に、それぞれの基準値と比較した前記F-power(dt)および任意で前記P-power(dt)の減少は、患者の意識状態の低下を示している。
【0060】
また、それぞれの基準値と比較して、前記F-power(dt)および任意に前記P-power(dt)が減少(低下)すると、より解離した状態であることを示す。
好ましくは、EEGデータは、F-EEG電極およびP-EEG電極から収集されたデータを含み、前記判定するステップは、F-EEG電極データからF-power(dt)を抽出し、P-EEG電極データからP-power(1dt)を抽出するステップを含み、F-power(dt)およびP-power(dt)の組み合わせは、患者の意識の状態を示す。
【0061】
好ましくは、EEGデータは、F-EEG電極から収集されたデータを含み、前記判定するステップは、F-EEG電極データから、平均信号のピーク-ピーク振幅(F-MSPA)を抽出することからなり、F-MSPA(グループ2の指標)は、患者の意識状態を示す。特に、それらは患者がどれだけ解離しているかを示している。解離は、患者の意識状態とリンクしている。
グループ2の指標であるF-MSPAは、患者の意識状態に関連する。特に、解離しているかどうかとリンクしている。
【0062】
基準値と比較した前記F-MSPAの変化はさらに、患者の修正された意識状態のレベルを示している。基準値と比較した前記F-MSPAの減少は、患者の意識状態の減少を示す。複数の基準値のぞれぞれと比較した前記F-MSPAの減少は、より解離した状態を示している。
患者の解離の深さ(DoD)は、患者の意識状態から決定されてもよい。DoDは、患者の意識状態と相関している。特に、解離の深さ(DoD)は、グループ1の指標および/またはグループ2の指標から決定されてもよい。
【0063】
特に、解離の深さ(DoD)は、
- F-power(dt)および任意にP-power(dt)(グループ1の指標)、および/または
- F-MSPA(グループ2の指標)
から決定されてもよい。
好ましくは、患者のDoDは、
- F-power(dt)および任意にP-power(dt)(グループ1の指標)、および
- 任意でF-MSPA(グループ2の指標)
から決定される。
好ましくは、患者のDoDは、
- F-power(dt)および任意にP-power(dt)(グループ1の指標)、および
- F-MSPA(グループ2の指標)
から決定される。
【0064】
患者の状態の深さ(DoS)は、患者の意識状態から決定されてもよい。患者の状態の深さ(DoS)は、DoDから決定されてもよい。患者の状態の深さ(DoS)は、グループ1の指標および/またはグループ2の指標から決定されてもよい。
患者の催眠深度(DoH)は、患者の意識状態から決定されてもよい。患者の催眠深度(DoH)は、DoDから決定されてもよい。患者の催眠深度(DoH)は、グループ1の指標および/またはグループ2の指標から決定されてもよい。
【0065】
本明細書では、患者の意識状態が治療セッションによって修正されたレベルまたは程度を示す標準化された指標である1以上の指標について説明する。一般的に、指標は基準状態と比較して標準化または正規化される。
本明細書に記載の指標は、催眠深度指標(DoHI)、状態深度指標(DoSI)、解離深度指標(DoDI)を含む。
催眠深度指標(DoHI)は、非薬理的(例えば催眠)である治療セッションによって患者の意識状態が、基準状態と比較して修正されたレベルまたは程度を示す催眠深度(DoH)の標準化された指標である。
【0066】
状態の深さ指数(DoSI)は、基準状態と比較して、非薬理的(例えば催眠)治療セッションおよび任意に薬理的である治療セッションによって患者の意識状態が修正されたレベルまたは程度を示す状態の深さ(DoS)の標準化された指数である。
解離深度指標(DoDI)は、患者の解離が治療セッション、特に非薬理的治療セッションによって、基準状態と比較して修正されたレベルまたは程度を示す解離深度(DoD)の標準化された指標である。
【0067】
指標(例えば、DoHI、DoSI、DoDIのうち1以上)は、第1および第2の限度を有する尺度を有してもよい。第1の限度は、修正された意識状態がないことを表し、第2の限度は、最も深い修正された意識状態を表してもよい。第1の限度は、患者の初期(基準)状態を表してもよい。第1の限度は、意識の無/軽度の修正状態を表し、第2の限度は、意識の完全/深い修正状態を表してもよい。第1の限度は、軽いトランス状態を表し、第2の限度は、深いトランス状態を表してもよい。第1の限度および第2の限度は、例えば、それぞれ0~20、20~0、0~60、60~0、0~100、100~0、0~1、1~0のように数値で表されてもよい。第2の限度値は第1の限度値よりも高くてもよいし、第1の限度値は第2の限度値よりも高くてもよい。
第2の限度値に高い数値を選択することは、患者またはユーザーの視点に依存する場合がある。麻酔医は、第1の限度が第2の限度(例えば、0、0%)よりも高いこと(例えば、1、60、100、100%)を好むかもしれない。
【0068】
例えば、指標(特にDoSI、DoHI、DoDI)が第2の限度に向かっている患者は、修正された意識状態が麻酔効果のためのものである場合、外科手術を安全に行うことができる。
指標は、第1の限度と第2の限度との間に目盛りを有していてもよく、目盛りは、線形、対数、その他であってもよい。また、尺度は、連続的、カテゴリー的、離散的、パーセンテージ、比率であってもよい。
【0069】
指標(例えば、DoHI、DoSI、DoDIの1以上)は、患者の意識、催眠(DoHI)、状態(DoSI)、解離(DoDI)の異なるレベルの数を示していてもよい。レベルの数は任意であり、例えば、3~10レベル、好ましくは4~8レベルである。4つ、6つ、8つのレベルがあってもよい。レベルは、第1および第2の限度内で分割されてもよい。分割は、偶数(線形)であっても、対数であっても、他の方式によるものであってもよい。最も低いレベル(例えば、第1レベル)は、第1の限度と相関するか、または第1の限度を含んでいてもよく、最も高いレベル(例えば、第4レベル)は、第2の限度と相関するか、または第2の限度を含んでいてもよい。指標が100(第1の限度)と0(第2の限度)の間の値であり、レベルの数が4である場合、4つのレベルは、100~76(第1のレベル)、75~51(第2のレベル)、50~26(第3のレベル)、25~0(第4のレベル)であってもよい。レベルの終点は、次のレベルとの連続した数値尺度(中断しない)を可能にすることが好ましい。指標が100(第1の限度)と0(第2の限度)の間の値であり、レベルの数が8である場合、8つのレベルは、100~87.5(第1のレベル)、87.5~75(第2のレベル)、75~62.5(第3のレベル)、62.5~50(第4のレベル)、50~37.5(第5のレベル)、37.5~25(第6のレベル)、25~12.5(第7のレベル)、12.5~0~(第8のレベル)であってもよい。当業者であれば、状況に応じて、目盛りの範囲(例えば、100→0、60→0)、目盛り内のレベル数(例えば、4、6、8)、目盛りの種類(例えば、線形、対数)、レベル間の境界を決定できるであろう。
【0070】
指標は、各患者の状態を、その患者自身の基準状態と比較する患者ベースの指標であってもよい。患者ベースの指標は、患者の意識状態が治療セッションによって変化したかどうかについての情報を提供する。指標は、各患者の状態が集団ベースの基準状態と比較される集団ベースの指標であってもよい。母集団ベースの指標では、患者の状態を母集団全体と比較してもよい。それにより、例えば、患者が非薬理的鎮静下で安全に介入(侵襲的手術など)を受けることができるかどうかを客観的に示すことができる。
患者ベースの指標に関しては、治療セッションの前に、患者の基準状態、例えば、DoD、DoH、DoSの1以上の基準値が測定される。治療セッション中に、反応データに基づいて、DoD、DoH、DoSのうちの1以上のリアルタイム値が患者に対して測定される。治療セッション中に、基準値とリアルタイムのDoD、DoH、DoS値との比較に基づいて、DoDI、DoHI、DoSIのうちの1以上のリアルタイム値が算出される。患者ベースの指標と、DoDI、DoHI、DoSIのそれぞれについての例示的な計算については、以下でより詳細に説明する。
【0071】
母集団ベースの指標に関しては、基準状態、例えばDoD、DoH、DoSのうち1以上の基準値がデータベースから引き出される。データベースの基準値は、集団調査に基づいている。基準値は、年齢、性別、人種、介入特性などの特定の要因によって変化する可能性があり、したがって、基準値は患者および/またはユーザーに応じて適応される可能性がある。治療セッション中、反応データに基づいて、患者のDoD、DoH、DoSのうち1以上のリアルタイム値が測定される。治療セッション中に、データベース基準値とリアルタイムのDoD、DoH、DoS値との比較に基づいて、DoDI、DoHI、DoSIのうち1以上のリアルタイム値が算出される。母集団ベースの指標およびDoDI、DoHI、DoSIのそれぞれについての例示的な計算については、以下でより詳細に説明する。
【0072】
本明細書では、治療セッションを受けている患者の、非薬理的に-任意に併せて薬理的に修正された(すなわち組み合わせられた)意識状態のレベルを決定および/または監視する方法であって、
- 治療セッションに対する患者の反応を表す反応データを受領するステップと、
- 前記反応データを、状態深度(DoS)の指標(DoSI)および/または催眠深度(DoH)の指標(DoHI)に変換するステップであって、前記DoHIおよび/または前記DoSIが前記患者の非薬理的にあるいは任意に(非薬理的および薬理的に)組み合わせられた、修正された意識状態の尺度を表すステップと、
を含む方法が提供される。
【0073】
本明細書では、治療セッションを受けている患者の非薬理的に-任意に併せて薬理的に修正された(すなわち、組み合わせられた)意識状態のレベルを決定および/または監視する方法であって、
- 治療セッションに対する患者の反応を表す反応データを受領するステップと、
- 前記反応データから解離の深さ(DoD)の指標(DoDI)を決定するステップと、
- 前記DoDIから、状態深度(DoS)の指標(DoSI)および/または催眠深度(DoH)の指標(DoHI)を決定するステップであって、前記DoHIが前記患者の非薬理的に修正された意識状態の指標を表し、前記DoSIが前記患者の非薬理的にあるいは任意に(非薬理的および薬理的に)組み合わせられた、修正された意識状態の指標を表すステップと、
を含む方法が提供される。
好ましくは、DoSIおよび/またはDoHIは、DoDIから決定される。好ましくは、DoHIはDoDIから決定される。
【0074】
前記方法は、患者の現在のDoSIおよび/またはDoHIの指標を与えることができる。
前記方法は、患者の現在のDoSIおよび/またはDoHI、ならびに治療セッションのその時点での予想されるDoSIおよび/またはDoHIの指標を与えることができる。その時点での予想されるDoSIおよび/またはDoHIは、集団ベースの予想から決定されてもよい。
前記方法は、治療セッション中の患者のDoSIおよび/またはDoHIの傾向を示すことができる。DoSIおよび/またはDoHIの傾向は、集団ベースの予想から決定されてもよい。
【0075】
前記方法は、非薬理的に修正された意識状態のレベルを決定および/または監視してもよい。前記方法は、非薬理的に修正された意識状態と薬理的に修正された意識状態との複合的または混合的な意識状態のレベルを決定および/または監視してもよい。前記方法は、
- 非薬理的に修正された意識状態のレベルと、
- 任意に、非薬理的に修正された意識状態と薬理的に修正された意識状態が組合せられた(複合された)状態のレベルと、
を決定および/または監視してもよい。
DoSIは、異なる深さの状態指標の合計であってもよい。また、DoSIは、DoHIと、状態への薬理的治療などによるその他の寄与との合計であってもよい。特に治療セッションが催眠のみである場合、DoSIはDoHIと等しいこともある。
【0076】
DoSIとDoHIの比(派生指標)は、第1および第2の限度値を有する尺度を有してもよい。第1の限度は、修正されていない意識状態を表し、第2の限度は、最も深い修正された意識状態を表してもよい。第1の限度は、患者の初期(基準)状態を表していてもよい。第1の限度は、修正されていない/経度に修正された意識状態を表し、第2の限度は、意識の完全に/深く修正された意識状態を表してもよい。第1の限度は、軽いトランス状態を表し、第2の限度は、深いトランス状態を表してもよい。第1の限度および第2の限度は、例えば、それぞれ0~100、100~0、0~1、1~0のように数値で表されてもよい。第2の限度値が第1の限度値よりも高くてもよいし、第1の限度値が第2の限度値よりも高くてもよい。第2の限度値をより高い数値にするかどうかは、患者やユーザーの視点に依存する場合がある。例えば、DoSIとDoHIの比率が第2の限度に向かっている患者は、修正された意識状態が麻酔効果のためである場合、外科的介入を受けることができる。麻酔医は、第1の限度値が第2の限度値(例えば、0、0%)よりも高い(例えば、1、100、100%)ことを好むかもしれない。
DoH、DoHI、DoS、DoSIという用語は、本発明の実際の実施において、例えば、地域的な感覚や言語の翻訳のために、他の名称が与えられることがあることを理解されたい。
【0077】
DoSIおよび/またはDoHIは、患者の意識および/または解離のいくつかの異なるレベルを示すことができる。レベルの数は任意でよく、例えば3~10の、好ましくは4~8のレベルである。4つ、6つ、または8つのレベルがあってもよい。レベルは、第1および第2の限度内で分割されてもよい。分割は、偶数(線形)であっても、対数であっても、他の方式によるものであってもよい。最も低いレベル(例えば第1レベル)は、第1の限度と相関するか、または第1の限度を含んでいてもよく、最も高いレベル(例えば第4レベル)は、第2の限度と相関するか、または第2の限度を含んでいてもよい。DoSIおよび/またはDoHIが100(第1の限度)と0(第2の限度)の間の値であり、レベルの数が4である場合、4つのレベルは、100~76(第1のレベル)、75~51(第2のレベル)、50~26(第3のレベル)、25~0(第4のレベル)であってもよい。レベルの終点は、次のレベルへの連続した数値尺度(中断しない)となるようにするのが好ましい。DoSIおよび/またはDoHIが100(第1の限度)と0(第2の限度)の間の値であり、レベルの数が8である場合、8つのレベルは、100~87.5(第1のレベル)、87.5~75(第2のレベル)、75~62.5(第3のレベル)、62.5~50(第4のレベル)、50~37.5(第5のレベル)、37.5~25(第6のレベル)、25~12.5(第7のレベル)、12.5~0~(第8のレベル)であってもよい。当業者であれば、状況に応じて、尺度の範囲(例えば、100~0、60~0)、尺度内のレベル数(例えば、4、6、8)、尺度の種類(例えば、線形、対数)、レベル間の境界を決定できるであろう。
【0078】
DoSIおよび/またはDoHIは、治療セッション中の患者のレベルのうち、少なくとも以下の3つのレベルを示すことができる。
(a)第1のレベル:患者は意識があり、警戒しており、挑発されると興奮する。
(b)第2のレベル、患者は意識があり、落ち着いているが、解離していない。
(c)第3のレベル、患者は軽い解離状態にある。
(d)第4のレベル、患者は深い解離状態/没入状態にある。
【0079】
あるいは、DoSIおよび/またはDoHIは、治療セッション中に、以下のレベルのうち少なくとも3つを示してもよい。
(i)第1のレベル:患者が覚醒しており、注意力があり、認知障害が最小限または全くないことを特徴とする。
(ii)第2のレベル:患者は覚醒しているが、落ち着きがあり、会話レベルの口頭での命令に目的を持って応答できることを特徴とする。
(iii)第3のレベル:患者は眠っているように見えるが、会話レベルの言葉による命令に目的を持って反応できることを特徴とする。
(iv)第4のレベル:眠っているように見えても、より大きな声の命令や眉間への軽打に目的を持って反応できることを特徴とする。
(v)第5のレベル:患者は眠っているか、眠っているように見え、大きな声の命令や眉間への軽打に対して意図的な反応をすることができないことを特徴とする。
(vi)第6のレベル:患者が眠っているか、眠っているように見え、外部からの刺激に対する反応が鈍いことを特徴とする。
(vii)第7のレベル:侵害刺激に対する反射的な反応に対して眠っていることを特徴とする。
(viii)第8のレベル:外部からの刺激(強い圧力や侵害刺激を含む)に反応しないことを特徴とする。
【0080】
本明細書に記載されているのは、状態の深さ(DoS)の指標(DoSI)を決定する方法であり、DoSIは、非薬理的に、任意に薬理的に(組み合わされた)修正された患者の意識状態の尺度を表すものであり、本明細書に記載されている方法に従って意識状態を決定するステップを含んでいる。好ましくは、DoSIが、少なくともDoD/Hから決定される。好ましくは、DoSIが、少なくともDoD/Hから決定される。
【0081】
本明細書に記載されているのは、催眠深度(DoH)の指数(DoHI)を決定する方法であって、DoHIは、患者の非薬理的に修正された意識状態の尺度を表すものであり、本明細書に記載されている方法に従って意識状態を決定するステップを含んでいる。好ましくは、DoHIは、少なくともDoDから決定される。
反応データは、評価プロトコルを用いて、例えば、DoDI、DoHI、DoSIなどの指標に変換されてもよい。評価プロトコルは、数学的(例えば統計的)モデル、学習済みの機械学習モデル、数学的指標、基準データのうち1以上の使用を含んでいてもよい。評価プロトコルは、反応データおよび/またはDoDI、DoHI、DoSIのうち1以上の独自に測定されたデータを入力として、指標を出力する。
【0082】
評価プロトコルは、前記反応データからグループ1の指標、グループ2の指標の1以上を抽出するステップを含んでいてもよい。
測定されたデータは、1以上のデータ成分を含んでいてもよい。そのデータ成分は、単一の測定値(例えば、EEG、EMG、EDA、ECG)、単一の観察値(例えば、動き、肌の色)、または単一の自己報告事象(例えば、解離のレベル)による。
評価プロトコルでは、反応データのデータ成分に等しくまたは異なった重み付けをしてもよい。データ成分に与える重み付けは、特にその成分の関連性と精度に依存する。例えば、評価プロトコルは、EEGデータに、その高い関連性と精度を反映した高い評価を与えてもよい。評価プロトコルは、関連性や精度が低くても、状況に応じて十分な指標となるデータ成分を使用してもよい。いくつかの状況では、反応データは、状況を十分に示す高い関連性と精度を有する、より少ない数のデータ成分から構成されていてもよい。いくつかの状況では、反応データは、状況を十分に示すより低い関連性と精度を有するより多くのデータ成分を含んでいてもよい。
【0083】
評価プロトコルは、より多くの患者が本方法を用いて評価されるにつれて、改良されてもよい。評価プロトコルを精緻化する方法は、
- 治療セッションに対する患者の応答を表す反応データを受領するステップと、
- DoDI、DoHI、DoSIのうち1以上の独自に測定されたデータを受領するステップと、
- 反応データおよび独自に測定されたデータを使用して、評価プロトコルを改良するステップと、
を含んでもよい。
【0084】
評価プロトコルを精緻化する方法は、
- 治療セッションに対する患者の反応を表す、測定された反応データを受領するステップと、
-自己報告のおよび/または観察された尺度のDoSおよび/またはDoHおよび/またはDoDを受領するステップと、
- DoSおよび/またはDoHおよび/またはDoDの独自に測定されたデータを受領するステップと、
- 反応データ、自己報告および/または観察データ、ならびに独自に測定されたデータを使用して、評価プロトコルを改良するステップと、
を含んでもよい。
【0085】
評価プロトコルは、追加的または代替的に、分析を用いて精緻化してもよい。前回の治療セッションで収集されたデータは、評価プロトコルの改良に貢献する可能性がある。
評価プロトコルが作成および/または改良されると、患者の非薬理的-任意に薬理的に(組み合わされた)修正された意識状態のレベルを決定および/または監視する際に、反応データの1以上のデータ成分が冗長になることが明らかになることがある。本発明の一態様では、測定データ、観察データ、および反応データの少なくとも1つ、好ましくはすべてが、評価プロトコルを作成および/または改良するために使用される。また、本発明の一態様によれば、測定データのみが前記方法において用いられる。
【0086】
DoDIを決定するための評価プロトコルの一例を以下に示す。一般的には、5つの主要なステップから構成されている。
ステップ1:F-EEG-電極および任意にP-EEG-電極から治療セッション中の反応データを受領してデジタル化する。
ステップ2:
グループ1の指標、すなわちF-power(dt)、および任意にP-power(dt)をデジタル化された反応データから生成する。
グループ2の指標(F-MSPA)を生成する。
ステップ3:ステップ2)からの1以上の指標値を、例えば統合的な分析を用いて生成する。
ステップ4:ステップ3)の値を基準値(集団ベースの指標または患者ベースの指標)と比較する
ステップ5:ステップ4)から、例えば0から20の尺度の数字、または単語、またはカテゴリーなどのDoDI指標を得る。
【0087】
ステップ2では、デジタル化された反応データは、平均基準値への再参照、低周波および高周波のアーチファクトを除去するための帯域通過および/または帯域素子フィルタリング、エポックと呼ばれる信号へのセグメンテーション、アーチファクト除去(眼球、筋肉など)、ベースライン調整のうち、1以上を含む前処理プロトコルを受けてもよい。エポックへのセグメンテーションとは,連続したEEG信号から特定の時間窓を抽出する手順のことである。これらの時間窓は「エポック」と呼ばれ,通常,電気刺激などのイベントに対して時間的にロックされている。ERPやMSPAは、このエポックに基づいて測定される。EEG信号の時間領域の解析では、通常、ピークの振幅と遅延時間を決定するためのピーク検出(複数のエポックがある場合は時系列の形で)、および数学的な変換(複数のエポックがある場合は平均または変数の変更など)が行われる。EEG信号の周波数領域の解析では、通常、時間から周波数への変換(フーリエ変換など)を行い、関連する周波数帯域(デルタ-シータ(td)など)を抽出し、各周波数帯域(および各エポック)の振幅/パワーおよび位相を決定し、数学的変換を行う(複数のエポックがある場合は平均など)。これにより、少なくとも1つの電極について、デルタ-シータ(td)周波数帯関連の振幅/パワー、デルタ-シータ(td)周波数帯関連の位相、EEG平均信号のピーク-ピーク振幅(MSPA)、EEGのMSPA遅延時間のうち、少なくとも1つの特徴量を得ることができる。また、すべての患者に同様に寄与するように、例えば、介入時間を補正するための正規化ステップがあってもよい。
【0088】
ステップ3では、1以上の指標値が、統合的な分析により生成される。例えば、以下の式である。
【数1】
ここで、α
iは、母集団の大きさや特性に応じて進化する任意のパラメータであり、DoDの反応データおよび/または独自に測定されたデータに基づく学習プロセスを用いて決定されてもよく、f
iは、反応データおよび/または独自に測定されたDoDのデータに基づき学習プロセスを用いて決定される関数であり、F
i,s,[t’,t]は、時刻t’から時刻t(t’<t)までの間に2点から得られた(複数の)特徴量の値であり、患者についての値である。上の[t’-t]区間は、幾つかのF
i,s,t値から抽出した特徴量に基づいて、時刻tにおける解離の値を算出してもよいことを意味する。例えば、過去xミリ秒の平均値と標準偏差を取ることで、より感度が高く、よりロバストなDoDIの決定がもたらされる。
【0089】
ステップ4で、複数の値と基準値との比較が行われる。
指標が患者ベースの指標である場合(各患者に独自の制御)、
【数2】
指標が集団ベース(絶対指標)で、患者sが集団pの一部である場合、
【数3】
【0090】
ここで、Sはスケールアップパラメータ、βは母集団の特性(年齢、性別、人種、...)を考慮したパラメータであって反応データおよび/または独自に測定されたDoDのデータに基づき学習プロセスを用いて決定されたパラメータ、DoD*
s,pは個人/患者ベースの基準状態、DoD*
pは反応データおよび/または独自に測定されたDoDのデータに基づき学習プロセスを用いて決定された絶対/集団ベースの基準状態、Kはユーザーの好みに応じて閾値を調整するための「翻訳」パラメータである。
【0091】
ステップ5において、DoDIの指標が生成される。ステップ4で得られた値は、以下の改良プロトコルに記載されたプロセスに従って(収集された測定された、観察されたおよび自己申告されたデータ/基準データに基づいて、学習された機械学習モデルおよび/または人工知能を用いて)決定された患者/介入の特性に応じて、あらかじめ定義された尺度と比較される。
【0092】
DoDIにおいて、指標は集団ベースの指標であってもよい(絶対尺度で、患者は集団と比較される)。第1の限度値は、「解離なし」、あるいは、実際の環境からの刺激および/または内部事象についての細心の注意を払うこと表していてもよい。第2の限度値は、「最も完全な解離」、あるいは、実際の環境からの刺激および/または内部事象について全く無頓着なことことを表し、患者は代替現実に存在している感覚を完全に持っている。中間の値は、解離の中間的なレベルを表し、それは実際の環境から来る刺激および/または内部事象について無頓着さの中間的なレベルである。
【0093】
DoDIにおいて、指標は患者ベースの指標(相対尺度、各患者は自分自身と比較される)であってもよい。第1の限度値は、患者が初期のように解離した状態(基準状態)であることを示していてもよい。実際の環境からの刺激および/または内部事象について患者の無頓着さの度合いは、治療セッションの前と同じである。第2の限度値は、患者が完全に解離していることを示してもよい。実際の環境からの刺激および/または内部事象に関する患者の無頓着さの度合いが(自分自身に対して)最大であり、患者は代替現実に存在している感覚を完全に持っている。中間の値は、解離の中間的なレベルを表し、それは実際の環境からの刺激および/または内部のイベントに関する無頓着さの中間的なレベルである。
【0094】
DoHIを判定するための評価プロトコルの一例を以下に示す。このプロトコルでは、ステップ1および2が、反応データから1以上のグループ指標1~2を生成する。一般的に、
ステップ1:F-EEG-電極および任意にP-EEG-電極から治療セッション中の反応データを受領してデジタル化するステップ、
ステップ2:グループ指標1~2のうち1以上を生成するステップ、
ステップ3:ステップ2)から1以上の指標値を、例えば統合的な分析を用いて生成するステップ、
ステップ4:ステップ3)の値を基準値(集団ベースの指標または患者ベースの指標)と比較するステップ、
ステップ5:ステップ4)から、DoHIの指標(例えば、0~20の数値、単語またはカテゴリー)を得るステップ、
の5つの主要なステップを備えていてもよい。
【0095】
あるいは、DoHIを決定するための評価プロトコルは、既に生成された1以上のDoDIに基づいてもよい。ステップ1と2は、1以上のDoDIを取得し、それらを正規化する以下のステップに置き換えられてもよい。
ステップ1:DoDIを取得するステップ、
ステップ2:1以上のDoDIを正規化するステップ、
ステップ3:ステップ2)から1以上の指標値を、例えば統合的な分析を用いて生成するステップ、
ステップ4:ステップ3)の値を基準値(集団ベースの指標または患者ベースの指標)と比較するステップ、
ステップ5:ステップ4)からDoHI指標(例えば、0~20の数値、単語またはカテゴリー)を得るステップ。
【0096】
ステップ2において、正規化ステップは、1以上のDoDIを比較可能な尺度にするための変換である。
ステップ3において、1以上の指標値が、例えば式を用いた統合的な分析を用いて生成される。
【数4】
【0097】
ここで、αiは、母集団のサイズや特性とともに進化する任意のパラメータであり、反応データおよび/または計算されたDoD、DoHおよび/またはDoD、DoHの独自に測定されたデータに基づく学習プロセスを用いて決定されてもよい。fiは、反応データおよび/または計算されたDoD、DoHおよび/またはDoD、DoHの独自に測定されたデータに基づく学習プロセスを用いて決定された関数であり、Fi,s,[t’,t]は、時刻t’から時刻t(t’<t)まで、および患者について、2点から得られた(複数の)特徴量の値である。
【0098】
ステップ4において、それらの値と基準値との比較が行われる。
指標が患者ベースの指標である場合(各患者に独自の制御)、
【数5】
指標が集団ベース(絶対値)で、患者sが集団pの一部である場合、
【数6】
【0099】
ここで、Sはスケールアップパラメータ、βは母集団の特性(年齢、性別、人種、...)を考慮したパラメータであって反応データおよび/または計算されたDoD、DoHおよび/または独自に測定されたDoD、DoHのデータに基づき学習プロセスを用いて決定されたパラメータ、DoH*
s,pは個人/患者ベースの基準状態、DoH*
pは反応データおよび/または計算されたDoD、DoHおよび/または独自に測定されたDoD、DoHのデータに基づき学習プロセスを用いて決定された絶対/集団ベースの基準状態、Kはユーザーの好みに応じて閾値を調整するための「翻訳」パラメータである。
【0100】
ステップ5において、DoHI指標が生成される。ステップ4で得られた値は、後述の「評価プロトコルの改良」の項で説明するプロセスに従って(収集された測定された、観察された、および自己申告されたデータ/基準データに基づいて、学習された機械学習モデルおよび/または人工知能を用いて)決定された患者/介入者の特性に応じて、あらかじめ定義された尺度と比較される。
【0101】
DoHIにおいて、指標は、集団ベースの指標であってもよい(絶対尺度で、患者は集団と比較される)。第1の限度値は、患者の意識レベルが、通常の覚醒した患者で一般的に観察される意識レベルと似ていることを示してもよい。第2の限度値は、最も深い修正された意識状態、または完全に低下した周辺刺激の知覚、および自己および環境における自己に対する患者の修正された知覚を示してもよい。中間値は、修正された意識状態の中間レベルを示す。
【0102】
DoHIでは、指標は、患者ベースの指標(相対尺度、各患者が自分と比較される)であってもよい。第1の限度値は、患者の意識状態が基準状態と比較して変化していない(または著しく変化していない)ことを示してもよい。つまり、患者の周辺刺激の知覚、環境中の自己および自己の知覚の両方が基準状態と比較して変化していないことを示してもよい。第2の限度値は、基準状態と比較して、患者の意識状態が完全に/深く修正されていることを示してもよい。中間値は、修正された意識状態の中間レベルを示す。
【0103】
DoSIを決定するための評価プロトコルの一例を以下に示す。このプロトコルでは、ステップ1および2が、反応データから1以上のグループ指標1~2を生成する。一般的には、5つの主要なステップから構成されていると考えられる。
ステップ1:F-EEG-電極と任意にP-EEG電極から治療セッション中の反応データを受領してデジタル化する。
ステップ2:グループ指標1~2のうち1以上を生成する。
ステップ3:ステップ2)から1以上の指標値を、例えば統合的な分析を用いて生成する
ステップ4:ステップ3)の値を基準値(集団ベースの指標または患者ベースの指標)と比較する
ステップ5:ステップ4)から、DoSI指標(0~20の数値、単語、カテゴリなど)を得る
【0104】
あるいは、DoSIを決定するための評価プロトコルは、すでに生成された1以上のDoDIに基づいてもよい。ステップ1と2は、1以上のDoDIを取得し、それらを正規化するステップに置き換えられてもよい。
ステップ1:DoDIを取得する。
ステップ2:1以上のDoDIを正規化する。
ステップ3:ステップ2)から1以上の指標値を、例えば統合的な分析を用いて生成する。
ステップ4:ステップ4)の値を基準値(集団ベースの指標または患者ベースの指標)と比較する。
ステップ5:ステップ3)から、DoSI指標、例えば0~20の数値、単語、カテゴリーを得る。
【0105】
あるいは、DoSIを決定するための評価プロトコルは、すでに生成された1以上のDoDIに基づいてもよい。ステップ1および2は、1以上のDoDIを取得し、それらを正規化するステップに置き換えられてもよい。
ステップ1:薬理的に誘起された意識状態の尺度、他の治療法によって誘起された意識状態の尺度である1以上のDoDIを取得する。
ステップ2:薬理的に誘起される意識状態の尺度、他の治療法によって誘起される意識状態の尺度である1以上のDoDIを正規化する。
ステップ3:ステップ2)から1以上の指標値を、例えば統合的な分析を用いて生成する。
ステップ4:ステップ4)の値を基準値(母集団ベースの指標または患者ベースの指標)と比較する
ステップ5:ステップ3)から、DoSIの指標、例えば、0から20の尺度の数値、または、単語、または、カテゴリーを得る。
【0106】
ステップ2において、正規化ステップは、薬理的に誘発される意識状態の尺度、他の治療法によって誘発される意識状態の尺度である1以上のDoDIを比較可能な尺度にする変換である。
ステップ3では、1以上の指標値が、例えば次の式を用いた統合的な分析を用いて生成される。
【数7】
【0107】
ここで、αiは、母集団のサイズおよび特性とともに進歩する任意のパラメータであり、反応データ、および/または薬理的に誘発される意識状態の尺度、他の治療法によって誘発される意識状態の尺度である1以上の計算されたDoD、DoH、DoS、および/または薬理的に誘発される意識状態の尺度、他の治療法によって誘発される意識状態の尺度である1以上の独自に測定されたデータであるDoD、DoH、DoS、に基づく学習プロセスを用いて進歩するものである。fiは、反応データ、および/または薬理的に誘起された意識状態の尺度、他の治療法によって誘起された意識状態の尺度である1以上の独自に測定されたデータであるDoD、DoHに基づく学習プロセスを用いて決定された関数である。F(i,s,[t’,t])は、時刻t’から時刻t(t’<t)までの間の点2から得られる(複数の)特徴量の値であって、患者に係るものである。
【0108】
ステップ4では、基準値との比較が行われる。
指標が患者ベースの指標(各患者がそれをコントロールする)である場合は、
【数8】
指標が集団ベース(絶対値)で、その患者sが集団pの一部である場合は、
【数9】
である。
【0109】
ここで、Sはスケールアップパラメータ、βは母集団の特性(年齢、性別、人種、…)を考慮したパラメータであって、反応データおよび/または薬理的に誘発される意識状態の尺度、他の治療法によって誘発される意識状態の尺度である計算されたDoD、DoH、DoS、および/または薬理的に誘発される意識状態の尺度、他の治療法によって誘発される意識状態の尺度の独自に測定されたデータであるDoD、DoHに基づく学習プロセスを用いたものであり、DoS*
s,pは、個人/患者ベースの基準状態、DoS*
pは、反応データ、および/または計算されたDoD、DoH、DoS、および/または独自に測定されたデータであるDoD、DoH、Doに基づき学習プロセスを用いて決定された絶対/集団ベースの基準状態であり、Kは、ユーザーの好みに基づいてしきい値を調整できる「翻訳」パラメータである。
【0110】
ステップ5では、DoSIインデックスが生成される。ステップ4で得られた値は、後述の「評価プロトコルの改良」の項で説明するプロセス(収集された測定されたデータ、観察データ、自己申告データ/基準データに基づき学習された機械学習モデルおよび/または人工知能を用いたもの)に従って決定された患者/介入の特性に応じた尺度であって、予め定められた尺度と比較される。
DoSIでは、指標は集団ベースの指標であってもよい(絶対尺度、患者は集団と比較される)。第1の限度値は、「意識状態が変化していない」ことを表していてもよい。第1の限度値は、患者の意識レベルが、通常の覚醒した患者で一般的に観察される意識レベルと同様であることを示してもよい。第2の限度値は、最も深い修正された意識状態、すなわち、周辺刺激の知覚が完全に低下し、環境における自己および自己に対する患者の修正された知覚を表してもよい。中間値は、中間レベルの修正された意識状態を表す。他で述べたように、DoSIは、任意に薬理的に誘起された意識状態の尺度および任意に他の治療によって誘起された意識状態の尺度を備えたDoHIの尺度になり得る。
【0111】
DoSIでは、指標は、患者ベースの指標(相対尺度、各患者が自分と比較される)であってもよい。第1の限度は、患者の意識状態が基準状態と比較して修正されない(または有意に修正されない)ことを示してもよく、患者の周辺刺激の知覚および環境における自己および自己の知覚の両方が基準状態と比較して修正されない。第2の限度値は、基準状態と比較して、患者の意識状態が完全に/深く修正されていることを示す場合がある。中間値は、修正された意識状態の中間レベルを示す。別の場所で述べたように、DoSIは、任意に薬理的に誘起された意識状態の測定値と、任意に他の治療によって誘起された意識状態の測定値とを伴うDoHIの尺度になり得る。
【0112】
より多くの患者が評価された場合、DoDI、DoHI、およびDoSIのそれぞれの評価プロトコルを改良するために使用できるより多くのデータが利用可能になる。ここでは、測定されたデータ、観察データ、および自己報告データの少なくとも1つ、好ましくはすべてを使用して、それぞれの評価プロトコルを改良できる例示的な方法(a)から(c)について述べる。
【0113】
(a)パラメータの増加モデル
モデルパラメータ(αi,fi,β)は、測定されたデータ、自己申告または独自に測定されたDoD(I)、DoH(I)および/またはDoSIに基づいて、数学的におよび/または統計的におよび/または機械学習プロセスを用いて評価される。
評価プロトコルを改良していくと、患者の意識レベル/解離を判定/監視する上で、反応データの1以上のデータ成分が冗長になることが明らかになることがある。このデータは、上述の方法を用いた場合、自動的に(ゼロに近い)重みαiで重み付けされる。
【0114】
(b)DoS/DoD/DoHの計算に関連する新しい特徴の特定と評価プロトコルへの組み込み
新たに入力されたデータにより、反応データの1以上のデータ成分が、患者の意識レベル/解離の決定および/または監視に関連することが明らかになり、それを評価プロトコルに含めるべきであると考えられることがある。それに応じて、新しいモデルのパラメータは上述のように修正される必要がある。
【0115】
(c)母集団に基づく基準状態/閾値の構築
母集団ベースの閾値および/または基準状態は、測定されたデータおよび/または観察データおよび/または自己申告および/または計算されたDoD(I)、DoH(I)、DoS(I)および/または独自に測定されたDoD(I)、DoH(I)、DoSIに基づいて、数学的および/または統計的および/または機械学習プロセスを用いて計算される。さらに、収束性と安定性が検証されるべきである。
反応データは、評価プロトコルを用いて、DoSIおよび/またはDoHIに変換される。評価プロトコルは、数学的(例えば統計的)モデル、学習済みの機械学習モデル、数学的指標、基準データのうちの1以上の使用を含んでいてもよい。
【0116】
測定されたデータは、1以上のデータ成分で構成されてもよい。データ成分は、単一の測定値(EEG、EMG、EDA、ECGなど)、単一の観察値(動き、肌の色など)、または単一の自己報告イベントの属性を有する。評価プロトコルは、反応データのデータ成分に等しいまたは異なった重み付けをしてもよい。データ成分に与える重み付けは、特にその成分の関連性と精度に依存する。例えば、評価プロトコルは、EEGデータに、その高い関連性と精度を反映した高い評価を与えてもよい。評価プロトコルは、関連性や精度が低くても、状況に応じて十分な指標となるデータ成分を使用してもよい。いくつかの状況では、反応データは、状況を十分に示す高い関連性と精度を有する、より少ない数のデータ成分から構成されていてもよい。いくつかの状況では、反応データは、状況を十分に示す低い関連性と精度を有する多数のデータ成分から構成されていてもよい。
【0117】
評価プロトコルは、より多くの患者が本方法を用いて評価されるにつれて、以下の方法を用いて改良されてもよい。評価プロトコルを改良する方法は、
- 治療セッションに対する患者の反応を表す反応データを受領するステップと、
- DoSIおよび/またはDoHIの独自に測定されたデータを受領するステップと、
- 前記反応データおよび独自に測定されたデータを使用して、評価プロトコルを改良するステップと、
を備えていてもよい。
評価プロトコルは、追加的または代替的に、分析を用いて改良されてもよい。前回の治療セッションで収集されたデータが、評価プロトコルの改良に寄与してもよい。
【0118】
評価プロトコルが作成および/または改良されると、患者の非薬理的に、任意に薬理的に修正(混合)された意識状態のレベルを決定および/または監視する際に、反応データの1以上のデータ成分が冗長になることが明らかになることがある。本発明の一態様では、測定されたデータ、観察データ、および反応データの少なくとも1つ、好ましくはすべてが、評価プロトコルを作成および/または改良するために使用される。本発明の一態様として、測定されたデータのみが本方法に使用されてもよい。
【0119】
前記方法およびシステムは、治療セッションにおける位置(および既に行われた治療行為)に基づいて、治療セッションのある時点での予想されるDoSIおよび/またはDoHIおよびDoHI比を決定してもよい。例えば、治療が催眠セッションを含む場合、予想されるDoSIおよび/またはDoHIは、催眠セッションのフェーズ(すなわち、上述の(i)~(iv)のいずれか)およびフェーズ内の位置から決定されてもよい。例えば、治療が薬理的な鎮静セッションを含む場合、予想されるDoSIが鎮静剤の用量から決定されてもよい。予想されるDoSIおよび/またはDoHIは、母集団のデータ、すなわち過去または前例のデータから決定されてもよい。
【0120】
投与された治療は、常に期待される状態の深さにつながるわけではないので、測定された状態の深さと期待される状態の深さとの間の差は、ユーザーに修正措置のためのガイダンスを与える。
前記方法およびシステムは、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)に出力を提供してもよい。システムは、GUIを含んでいてもよい。
【0121】
GUIへの出力は、グラフィカルおよび/または数値であってもよい。GUIへの出力は、以下の1以上を示してもよい。
- 現在の意識レベルまたは修正された意識の状態、
- 現在のDoSIおよび/またはDoHI、
- 現在のDoSおよび/またはDoH、
- 現在のDoDI、
- 現在のDoD、
- 現在のDoSIとDoHIの間の比率(派生指標)、
- 現在のDoSI、DoHI、DoDIのうち2つの間の比率、
- 意識状態の推移、
- 傾向のある(過去の)DoSIおよび/またはDoHI、
- 傾向のある(過去の)DoSIおよび/またはDoHIおよび/またはDoDI、
- 傾向のある(過去の)DoSおよび/またはDoH、
- 傾向のある(過去の)DoSおよび/またはDoHおよび/またはDoD、
- 傾向のある(過去の)DoSIとDoHIの2つの間の比率の推移、
- 傾向のある(過去の)DoSI、DoHI、DoDIの2つの間の比率の推移、
- 予想される意識の状態、
- 予想されるDoSIおよび/またはDoHI、
- 予想されるDoSIおよび/またはDoHIおよび/またはDoDI、
- 予想されるDoSおよび/またはDoH、
- 予想されるDoSおよび/またはDoHおよび/またはDoD、
- 予想されるDoSIおよびDoHIの比率、
- 予想されるDoSI、DoHI、DoDIのうち2つの間の比率。
【0122】
GUIへの出力は、追加的または代替的に、1以上の現在のデータ成分(例えば、1以上の測定されたデータ成分、1以上の観察されたデータ成分、および/または1以上の自己報告されたデータ成分)を示してもよい。現在のデータ成分の例は、本明細書の別の場所に記載されているものが含まれ、好ましくは、EEGデータ、EMGデータ、および脈拍数データのうちの1以上が含まれる。
【0123】
GUIへの出力は、画面上の位置および/または色が、ユーザー(例えば、医師)に患者の状態および必要に応じて取るべき手順を示すグラフィカルなインジケータを含んでいてもよい。例えば、緑の色は、患者の経験を示す信号の意味で、ユーザーにとって良好な状態であることを示すものであってもよい。例えば、赤色は、患者の経験を示す信号の意味で負の状態であることを示すものであってもよい。例えば、左の位置は、ユーザーに患者の経験を示す信号の観点から、肯定的な状態を示すものであってもよい。例えば、右の位置は、ユーザーに患者の経験を示す信号の観点から、負の状態を示すものであってもよい。例えば、上側の位置は、ユーザーに患者の経験を示す信号の観点から、肯定的な状態を示すものであってもよい。例えば、下側の位置は、ユーザーに患者の経験を示す信号の観点から負の状態を示すものであってもよい。
GUIへの出力は、追加的または代替的に、1以上の派生インデックスを示すものであってもよい。派生指標は、1以上のデータ成分から、および/またはDoSIから、および/またはDoHIから派生した指標である。例えば、快適性指標は、皮膚コンダクタンスデータおよびEEGデータに基づいて導出された指標であってもよい。術後健忘指数は、EEGデータとEMGデータの組み合わせに基づいて導出された指数であってもよい。別の派生指標が、DoHIとDoSIの比率に基づいてもよい。これらの派生指標は、患者について観察され収集データに基づいてもよく、任意で分析(すなわち、過去/集団データ)を用いて改良されてもよい。
【0124】
グラフィカルな出力は、タイムラインと、DoSIおよび/またはDoHIおよび/またはその比率を示すタイムライン上のマーカーを含んでいてもよい。DoSIおよび/またはDoHIおよび/またはその比率は、例えば0~1、0~100のように、第1および第2の限度値を持つ尺度であってもよい。
GUIは、現在のDoSIを、第1および第2の限度値の間の1以上の尺度で表示してもよく、尺度は、線形、対数、またはその他であってもよい。また、尺度は、連続的、カテゴリー的、離散的、パーセンテージ、比率であってもよい。
【0125】
GUIの例(200、a~g)を、
図2~9に示す。
図2は、DoSIおよびDoHIの現在のステータスを別々の棒グラフ(それぞれ252、254)としてグラフィカルに表示するGUI(200、a)を示す。DoSIの棒グラフ(252)を参照しているが、DoHIの棒グラフには同等の機能が含まれている(ラベルは付いていない)。表示されているDoSI(Y軸)の棒グラフは、0-25%(224)、26-50%(222)、51-75%(220)、76-100%(218)の4つのゾーンに分かれており、これらは安全度を示すために任意に色分けされてもよい(例えば、76-100%は赤、51-75%はオレンジ、26-50%は薄緑、0-25%は深緑。100~76%(218、赤)のゾーンは、患者が意識を持ち、警戒しており、刺激を受ければ興奮することを示しており、催眠セッションが進むのを待ち、任意で鎮痛を行ってもよい。75-50%(220、オレンジ)のゾーンは、患者の意識があり、落ち着いているが、解離しておらず、まだ準備ができていないことを示していてもよい。50-26%(222、ライトグリーン)ゾーンは、患者が軽い解離状態にあり、まだ準備ができていないことを示していてもよい。0~25%(224、深緑色)のゾーンは、患者が解離状態/没入状態に深く入っていることを示していてもよい。パーセンテージの単位および0~100%の尺度の範囲は例示的なものであり、他の単位(例えば、単位なし)および尺度(例えば、0~1、0~40、0~50、0~60など、線形、対数)は本開示の範囲内であると理解される。バー(256)の高さは、示された時間(261)におけるDoSIを示している。また、数値表示(258)は、DoSIを示す。現在の単位(パーセント)が表示されているが(260)、単位ボタン(262)で変更できてもよい(例えば、単位なしおよび/または他の単位に)。前へボタン(264、a)および後へボタン(264、b)により、現在のDoSIと以前の読み取り値との間でディスプレイを前後にスクロールできる。DoHIをDoDIに置き換えてもよく、上述の情報は、DoSIとは別に、またはDoSIと組み合わせて、この指標にも適用されると理解される。
【0126】
図3Aおよび3Bは、DoSI、EEG、および派生指標-1(DI-1)の現在の状態を別々のスクロールチャート(それぞれ266-a、266-b、266-c)としてグラフィカルに表示するGUI(200、b)を示す。
図3Aでは、DoSIスクロールチャート(266-a)を参照しているが、他のスクロールチャートも同等の機能を含んでいる(ラベルは付いていない)。表示されるDoSIスクロールチャートは、0-25%(224)、26-50%(222)、51-75%(220)、76-100%(218)の4つのゾーンに分かれており、これらのゾーンは、安全性のレベルを示すために任意に色付けされてもよい(例えば、
図2のように、76-100%は赤、51-75%はオレンジ、26-50%は薄緑、0-25%は深緑に)。DoSIスクロールチャート(266-a)は、静止した時間軸(268)を含み、それに沿って、示された時間(261)におけるDoSI読み取り値(210)が(上下に)スライドする。また、数値表示(258)もDoSIを示す。背景は時間の方向(通常は右から左へ)へスクロールしても、時間軸(268)は静止したままである。履歴のまたは傾向的なデータポイント(244)が表示される。現在の単位(パーセント)が表示されており(260)、これは「単位」ボタン(262)で変更(例えば、単位なしおよび/または他の単位に)てきてもよい。前へボタン(264、a)および後へボタン(264、b)により、ディスプレイを現在のDoSIと前の読み取り値との間で前後にスクロールできてもよい。ボタンのパネル(272)でユーザーは、表示するスクロールチャートを選択することができ、DoSI(274)、EEG(276)、DI-1(280)のボタンが選択されると(灰色の背景)、選択されたスクロール・チャートが表示される(それぞれ266-a、266-b、266-c)。選択されていないのは、ECG(278)とDI-2(派生指標-2、272))のボタンである。
【0127】
図3Bでは、
図3Aと同じGUIが示され、ボタン(270)は、
図3Aでは選択されておらず、
図3Bでは選択されており、ボタン(270)は、スクロールチャートに重ねて表示される患者の予想DoSI(216)の表示のオン/オフを切り替え、現在のDoSI(210)および過去のDoSI(214)を予想DoSI(216)と視覚的に比較できてもよい。
図4、4Aおよび4Bは、時間(x軸)経過に伴う治療セッションの進行状況をグラフィカルに表示するGUI(200、c)を示す。
図4AのDoSIグラフを参照しているが、
図4Bのグラフには、同等の機能を含んでいる(ラベル付けはされていない)。現時点における患者の現在のDoSI(210)が、治療セッションが進行するにつれて矢印(213)の方向に進む時間軸(212)に沿った円(210)として示される。表示されたDoSIグラフのY軸は、0-25%(224)、26-50%(222)、51-75%(220)、76-100%(218)の4つのゾーンに分かれており、それらは任意に、安全性のレベルを示すために色分けされてもよい(例えば、
図2のように、76-100% - 赤、51-75% - オレンジ、26-50% - 薄緑、0-25% - 深緑に)。
【0128】
治療セッション中の患者の履歴または傾向のあるDoSIは、破線で示される(214)。現在の単位(パーセント)が表示されており(260)、箱(260)は、異なる単位の間を循環させる(例えば、単位なしおよび/または他の単位へ)ためのボタンとしても機能し得る。
図4Bでは、
図4Aと同じグラフが示されており、ボタン(270)は、
図4Aでは選択されておらず、
図4Bでは選択されている。ボタン(270)は、グラフに重ねて表示される患者の予想DoSI(216)の表示のオン/オフを切り替え、現在のDoSI(210)および過去のDoSI(214)が、予想DoSI(216)と視覚的に比較できてもよい。
【0129】
図5は、ポインタで示された患者の現在のDoSI(210)の「速度計」の尺度を含むGUI(200、d)を示す。現在の尺度の単位(パーセント)が表示されており(260)、これは単位ボタン(262)で変更できる(例えば、単位なしおよび/または他の単位に)。DoSIスピードメーターの目盛りは、0-25%(224)、26-50%(222)、51-75%(220)、76-100%(218)の4つのゾーンに分かれている。これらのゾーンは、安全性のレベルを示すために任意に色分けされてもよい(例えば、
図2のように、76-100% - 赤、51-75% - オレンジ、26-50% - 薄緑、0-25% - 深緑に)。ボタン(234、236、238)が表示され、そこからユーザーは、GUIの表示を変更しさらなる情報を得るための1以上のオプションを選択できてもよい。
【0130】
図6は、患者の現在のDoSI(230)の数値表示を含むGUI(200、b)を示す。現在の単位(パーセント)が表示されており(260)、これは単位ボタン(262)で変更できる(例えば、単位なしおよび/または他の単位に)。ボタン(234、236、238)が表示され、そこからユーザーは、GUIの表示を変更しさらなる情報を得るための1以上のオプションを選択できる。
図7は、異なるインデックスが表現されているGUI(200、e)を示す。各軸の外側の点は、このインデックスの最大の目盛り値を表している。チャートは、異なるインデックスの値の概要を示している。
図8は、治療セッション中の患者(240)の現在のDoSIを経時的に表示するGUI(200、f)を示す。履歴のまたは傾向的なデータポイント(244)も表示されており、履歴のまたは傾向的なデータポイントの平均が破線(242)で表示されている。
図9は、セッションの同じ時点での残りの集団(アナリティクス)と比較した指標(DoSI、鎮痛、快適性)ごとの平均測定値を表示するGUI(200、g)を示す。
【0131】
本明細書に記載の治療セッションを受ける患者の修正された意識状態のレベルを決定および/または監視するためのシステムが提供されてもよく、そのシステムは、患者の測定されたデータを取得するように構成された監視装置を備える。このシステムは、本明細書に記載の方法において使用するように構成されていてもよい。好ましくは、監視装置は、後述のEEG捕捉ユニットを備える。監視装置は、後述するヘッドセットなどのウェアラブルデバイスに組み込まれていてもよい。システムは、後述するように、患者に治療セッションを提示するように構成されたメディアレンダラーをさらに備えてもよいが、必ずしもそうである必要はない。
【0132】
治療セッションを受けている患者の非薬理的および/または薬理的に修正された意識状態のレベルを決定および/または監視するためのシステムが提供されてもよく、そのシステムは
- 任意で、患者に治療セッションを提示するように構成されたメディアレンダラーと、
- 患者の測定されたデータを取得するように構成された監視装置と、
- 前記監視装置から測定されたデータを受領し、前記測定されたデータを含む反応データを、状態深度(DoS)、指標(DoSI)および/または催眠深度(DoH)指標(DoHI)に変換するように構成されたコントローラモジュールであって、前記DoHIおよび/または前記DoSIは、前記患者の非薬理的および/または薬理的に修正された意識状態の指標を表す、コントローラモジュール、
を備える。
【0133】
メディアレンダラーは、患者に治療セッションを提示する。治療セッションは、催眠および/または他の証拠に基づく心理的および/または心/身体の介入を含んでもよい。メディアレンダラーは、動画像が表示されるスクリーン(LED、LCD、プロジェクタなど)を備えていてもよい。その画像は、患者の注意を引きつけ、患者の経験や生理的反応をコントロールする。メディアレンダラーは、音響(音楽、セリフ、効果音など)を流す音響変換器(イヤホン、ヘッドフォン、スピーカーなど)を備えていてもよい。
【0134】
メディアレンダラーは、ヘッドセットなどのウェアラブルデバイスとして統合されてもよい。レンダリングされたメディアは、仮想現実ヘッドセットとして、拡張現実ヘッドセットとして、または複合現実ヘッドセットとして提供されてもよい。最も好ましくは、メディアレンダラーは、仮想現実/拡張現実/複合現実などを提供するウェアラブルデバイスに統合され、そのデバイスは、典型的には、ディスプレイまたはプロジェクタ、ステレオサウンド(モノラル、ステレオ、多次元)、およびヘッドモーショントラッキングセンサー(ジャイロスコープ、加速度計、構造化光システムなど)を含む。適切なヘッドセットの例としては、Oculus(例えば、Oculus Rift、Oculus Go)、LG electronics(例えば、LG 360 VR)、Pico(例えば、G2 4K、G2 Pro)、HTC(例えば、HTC Vive)、Samsung(例えば、Samsung Gear VR)、Google(例えば、Google Cardboard)、Microsoft(Hololens)、およびその他の既製またはカスタマイズされた設計によって供給されるものがある。メディアレンダラーは、振動(例えば、座席に装備された振動モジュール)などの体性感覚コンテンツ、および/または嗅覚コンテンツ(例えば、1以上の香りを鼻腔内に放出する)もレンダリングすることで拡張されてもよい。オプションとして、メディアレンダラーは、データを実行または再生するためのコンピューティングユニットを備えていてもよいし、外部のメディアサーバーからデータを受領してもよい(すなわち、ストリーミング)。
【0135】
メディアレンダラーは、別のデバイス(例えば、別のスマートデバイス、別の音響変換器)として提供されてもよい。別個のデバイスは、本明細書の他の箇所で説明したウェアラブルデバイスと取り外し可能に結合してもよい。
【0136】
監視装置は、患者の反応データ、特に患者の測定されたデータを取得するように構成されていてもよい。監視装置は、1以上のユニットを備え、各ユニットは、ユニットの種類に応じて、測定されたデータを取り込む1以上の電極、センサー、カメラを含む。各ユニットの測定されたデータ成分は、1以上の電極、センサー、カメラによって捕捉された信号の処理の結果であってもよいが、そうでなくてもよい。
監視装置は、EEG(electroencephalogram)捕捉ユニットを含んでもよい。反応データ、すなわち測定されたデータは、出力されたEEGデータからなる。EEG捕捉ユニットは、患者の脳から電気的活性データを取得するように構成された少なくとも2つの(例えば、2、3、4、5またはより大きい)、好ましくは複数の電極を含んでいてもよい。電極は、患者の頭側領域全体の所定の位置、例えば前頭葉、頭頂葉、および/または後頭葉に配置するように構成されていてもよい。例示的な電極構成は、頭部に対して、2つの前頭部電極、2つの側頭部電極、1つの後頭部電極である。
【0137】
好ましい構成では、EEG捕捉ユニットは、
- 前頭葉に相当する頭皮の解剖学的領域に装着または接触するように構成された少なくとも1つの前頭部EEG電極(F-EEG電極)と、
- 頭頂葉に対応する頭皮の解剖学的領域に装着または接触するように構成された少なくとも1つの頭頂部EEG電極(P-EEG電極)と、
を備えていてもよい。
EEG捕捉ユニットは、グランド電極または基準電極をさらに備えていてもよい。この電極は、空間再構成を可能にするために、F-EEG電極またはP-EEG電極から離れた位置に配置される。
【0138】
電極は、ウェアラブルデバイス(ウェアラブルヘッドセットなど)に組み込まれていてもよい。電極は、ウェアラブルデバイスに固定されていてもよいし、ウェアラブルデバイスから着脱可能であってもよい。電極は、乾式の接触電極であってもよい。電極は、重力、力(例えば、バネや弾性体によってかかる)、または接着剤によって所定の位置に保持されてもよい。電極は、再利用可能であってもよいし、1度限りの使用であってもよい。電極は、ヘッドストラップや固定バンドに組み込まれていてもよい。電極は、メディアレンダラーのマスク部分に組み込まれていてもよい。脳波(EEG)捕捉ユニットは、通常、検出された信号の増幅のための増幅器を含む。信号は、処理ユニットによる処理のために、デジタル-アナログ変換器によってデジタル化される。サンプリングレートは、通常、興味のある最高周波数の少なくとも2.5倍である。デジタル-アナログ変換器は、別個のものであっても、処理ユニットに組み込まれていてもよい。
【0139】
監視装置は、筋電図(EMG)捕捉ユニットを備えていてもよい。反応データ、すなわち測定されたデータは、出力された筋電図データを含む。EMG捕捉ユニットは、患者の筋肉組織から電気的活性データを取得するように構成された少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5またはより多く)の、好ましくは複数の電極を備えていてもよい。EEG捕捉ユニットが存在する場合、EMG捕捉ユニットは、EEG捕捉ユニットと電極を共有してもよい。電極は、患者の頭蓋および顔面領域の所定の位置に配置するように構成されていてもよく、好ましくは前頭部に配置される。電極は、ウェアラブルデバイス(例えば、ウェアラブルヘッドセット)に組み込まれていてもよい。電極は、ウェアラブルデバイスに固定されていてもよいし、ウェアラブルデバイスから着脱可能であってもよい。電極は、乾式の接触電極であってもよい。電極は、重力、力(例えば、バネや弾性体によってかかる)、または接着剤によって所定の位置に保持されてもよい。電極は、再利用可能であってもよいし、1度限りの使用であってもよい。電極は、ヘッドストラップや固定バンドに組み込まれていてもよい。電極は、メディアレンダラーのマスク部分に組み込まれていてもよい。
EMG捕捉ユニットは、検出された信号を増幅するための増幅器を含む。信号は、処理ユニットによる処理のために、デジタル/アナログ変換器によってデジタル化される。デジタル-アナログ変換器は、別個のものであってもよいし、処理ユニットに組み込まれていてもよい。
【0140】
監視装置は、呼吸データ(RD)捕捉ユニットを備えていてもよい。反応データ、すなわち測定されたデータは、出力された呼吸データを含む。RD捕捉ユニットは、患者からRDを取得するように構成された少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5またはより多く)のセンサーを備えていてもよい。呼吸データは、呼吸数、呼吸数変動、吸気圧のうちの1以上を含んでいてもよい。RD捕捉ユニットは、1以上の光電式容積脈波(PPG)センサーを備えていてもよい。PPGセンサーは、皮膚の下の血管系における血液量の変化を検出するものであり、センサーは通常、光学式である。呼吸数および呼吸数変動は、PPGセンサーから決定されてもよい。PPGセンサーは、こめかみ部分、および/または額部分、および/または周辺部分に配置されてもよい。周辺部に配置されたセンサーは、有線または無線の通信を用いて、コントローラモジュールおよび/またはRD捕捉ユニットと通信してもよい。呼吸数および呼吸数の変動は、PPGセンサーから決定されてもよい。RD捕捉ユニットは、呼吸数が検出可能な場所に配置された1以上のECG電極からの捕捉信号を利用してもよい。1以上のセンサーは、患者の頭蓋および/または顔面領域の所定の位置に配置するように構成されていてもよい。センサーは、ウェアラブルデバイス(ウェアラブルヘッドセットなど)に組み込まれていてもよい。センサーは、ウェアラブルデバイスに固定されていてもよいし、ウェアラブルデバイスから取り外し可能であってもよい。センサーは、ドライコンタクトセンサーおよび/または電極であってもよい。センサーは、重力、力(例えば、バネや弾性体によってかかる)、または接着剤によって固定されてもよい。センサーは、再利用可能であってもよいし、1度限りの使用であってもよい。センサーは、ヘッドストラップや固定バンドに組み込まれていてもよい。センサーは、例えば、額および/またはこめかみの部分にPPGセンサーを配置するように、メディアレンダラーのマスク部分に組み込まれてもよい。RD捕捉ユニットは、胸の伸縮を測定する力変換器を含むウェアラブルチェストバンドを備えていてもよく、呼吸数および呼吸数変動がウェアラブルチェストバンドセンサーから決定されてもよい。RD捕捉ユニットは、(例えば、吸気時または呼気時の)空気圧を測定する気道空気圧検出器を備えていてもよい。RD捕捉ユニットは、通常、検出された信号を増幅するための増幅器を含む。信号は、処理ユニットによる処理のために、デジタル/アナログ変換器によってデジタル化される。デジタル-アナログ変換器は、別個のものであってもよいし、処理ユニットに組み込まれていてもよい。
【0141】
監視装置は、心拍数(HR)捕捉ユニットを含んでいてもよい。反応データ、すなわち測定されたデータは、出力されたHRデータを含む。HR捕捉ユニットは、患者から心臓データを取得するように構成された少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5またはより多く)のセンサーおよび/または電極を含んでいてもよい。HR捕捉ユニットは、皮膚の下の血管系の血液量の変化を検出する1以上の光電式容積脈波(PPG)センサーを備えていてもよく、このセンサーは通常、光学式である。PPGセンサーは、こめかみの部分および/または額の部分に配置されてもよい。PPG波のピークから心拍数、心拍変動、心拍間隔、血圧(2つのPPGセンサーで)を推定できる。HR捕捉ユニットは、患者の心臓から電気的活性データを取得するように構成された1以上のECG電極を備えていてもよい。EEGまたはEMG捕捉ユニットが存在する場合、HR捕捉ユニットはEEGまたはEMG捕捉ユニットと電極を共有してもよい。1以上のセンサーおよび/または電極は、患者の頭蓋および/または顔面領域の所定の位置に配置されるように構成されていてもよく、それらは左右両側に配置されてもよい。センサーがPPGセンサーの場合は、額および/またはこめかみの部分に配置されるように構成されてもよい。センサーおよび/または電極は、ウェアラブルデバイス(ウェアラブルヘッドセットなど)に組み込まれていてもよい。センサーおよび/または電極は、ウェアラブルデバイスに固定されていてもよいし、ウェアラブルデバイスから着脱可能であってもよい。センサーおよび/または電極は、乾式の接触センサーおよび/または電極であってもよい。センサーおよび/または電極は、重力、力(例えば、バネや弾性体によってかかる)、または接着剤によって所定の位置に保持されてもよい。センサーおよび/または電極は、再利用可能であってもよいし、1度限りの使用であってもよい。センサーおよび/または電極は、ヘッドストラップや固定バンドに組み込まれていてもよい。また、センサーおよび/または電極は、メディアレンダラーのマスク部分に組み込まれ、額および/またはこめかみの部分にPPGセンサーを配置するようになっていてもよい。HR捕捉ユニットは、一般的に、検出された信号を増幅するための増幅器を含む。信号は、処理ユニットでの処理のために、デジタル-アナログ変換器によってデジタル化される。デジタル-アナログ変換器は、別個のものであってもよいし、処理ユニットに組み込まれていてもよい。
【0142】
監視装置は、EOG(electrooculography)捕捉ユニットを備えていてもよい。反応データ、すなわち測定されたデータは、出力されたEOGデータを含む。EOG捕捉ユニットは、患者の眼の周囲から電気的活性データを取得するように構成された少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5またはより多く)の、好ましくは複数の電極を備えていてもよい。EEGまたはEMG捕捉ユニットが存在する場合、EOG捕捉ユニットはEEGまたはEMG捕捉ユニットと電極を共有してもよい。電極は、患者の頭蓋および/または顔面領域、好ましくは眼の周囲(例えば、眼の上と下、右と左)の所定の位置に配置するように構成されてもよい。電極は、ウェアラブルデバイス(ウェアラブルヘッドセットなど)に組み込まれていてもよい。電極は、ウェアラブルデバイスに固定されていてもよいし、ウェアラブルデバイスから着脱可能であってもよい。電極は、乾式の電極であってもよい。電極は、重力、力(例えば、バネや弾性体によってかかる)、または接着剤によって所定の位置に保持されてもよい。電極は、再利用可能であっても、1度限りの使用であってもよい。電極は、ヘッドストラップや固定バンドに組み込まれていてもよい。電極は、メディアレンダラーのマスク部分に組み込まれていてもよい。一般的に、EOG捕捉ユニットは、検出された信号を増幅するための増幅器を含む。信号は、処理ユニットによる処理のために、デジタル/アナログ変換器によってデジタル化される。デジタル-アナログ変換器は、別個のものであってもよいし、処理ユニットに組み込まれていてもよい。
【0143】
監視装置は、電気皮膚活性(EDA)捕捉ユニットを備えていてもよい。反応データ、すなわち測定されたデータは、出力されたEDAデータを含む。EDA捕捉ユニットは、患者の皮膚組織から電気的活性データを取得するように構成された少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5またはより多く)の、好ましくは複数の電極を備えていてもよい。EEGまたはEMG捕捉ユニットが存在する場合、EDA捕捉ユニットはEEGまたはEMG捕捉ユニットと電極を共有してもよい。電極は、患者の頭蓋および/または顔面領域の所定の位置に配置されるように構成されていてもよく、好ましくは前頭部に配置される。
電極は、ウェアラブルデバイス(ウェアラブルヘッドセットなど)に組み込まれていてもよい。電極は、ウェアラブルデバイスに固定されていてもよいし、ウェアラブルデバイスから取り外されていてもよい。電極は、重力、力(例えば、バネや弾性体によってかかる)、または接着剤によって所定の位置に保持されてもよい。電極は、再利用可能であってもよいし、1度限りの使用であってもよい。電極は、ヘッドストラップや固定バンドに組み込まれていてもよい。電極は、メディアレンダラーのマスク部分に組み込まれていてもよい。一般的に、EDA捕捉ユニットには、検出された信号を増幅するための増幅器を含む。信号は、処理ユニットによる処理のために、デジタル/アナログ変換器によってデジタル化される。デジタル-アナログ変換器は、別個のものであってもよいし、処理ユニットに組み込まれていてもよい。
【0144】
EDA捕捉ユニットは、ガルバニック皮膚反応を測定するように構成されていてもよい。反応データ、すなわち測定されたデータは、出力されたGSRデータを含む。EDA捕捉ユニットは、ガルバニック皮膚反応を取得するように構成された少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5またはより多く)の、好ましくは複数のGSR電極を備えていてもよい。EEGまたはEMG捕捉ユニットが存在する場合、EDA捕捉ユニットは、ガルバニック皮膚反応を取得するためにEEGまたはEMG捕捉ユニットと局所電極または基準電極を共有してもよい。電極は、患者の頭蓋および/または顔面領域、好ましくは前頭部または前額部の所定の位置に配置されるように構成されてもよい。GSR電極は、ウェアラブルデバイス(ウェアラブルヘッドセットなど)に組み込まれていてもよい。GSR電極は、ウェアラブルデバイスに固定されていてもよいし、ウェアラブルデバイスから着脱可能であってもよい。GSR電極は、乾式の接触電極であってもよい。GSR電極は、重力、力(例えば、バネや弾性体によってかかる)、または接着剤によって所定の位置に保持されてもよい。GSR電極は、再利用可能であってもよいし、1度限りの使用であってもよい。GSR電極は、ヘッドストラップや固定バンドに組み込まれていてもよい。GSR電極は、メディアレンダラーのマスク部分に組み込まれていてもよい。
【0145】
監視装置は、心電図(ECG)捕捉ユニットを備えていてもよい。反応データ、すなわち測定されたデータは、出力された心拍数またはECGデータを含む。ECG捕捉ユニットは、患者の心臓から電気的活性データを取得するように構成された少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5またはより多く)の、好ましくは複数の電極を備えていてもよい。EEG、EMGまたはEDA捕捉ユニットが存在する場合、ECG捕捉ユニットはEEG、EMGまたはEDA捕捉ユニットと電極を共有してもよい。電極は、患者の胸部の所定の位置に配置されるように構成されている。電極は、ウェアラブルデバイス(例えば、ウェアラブルヘッドセット)に組み込まれていてもよい。電極は、ウェアラブルデバイスに固定されていてもよいし、ウェアラブルデバイスから着脱可能であってもよい。電極は、重力、力(例えば、バネや弾性体によってかかる)、または接着剤によって所定の位置に保持されてもよい。電極は、再利用可能であってもよいし、1度限りの使用であってもよい。電極は、ヘッドストラップや固定バンドに組み込まれていてもよい。電極は、メディアレンダラーのマスク部分に組み込まれていてもよい。
【0146】
監視装置は、生理監視ユニットをさらに備えていてもよい。反応データ、すなわち測定されたデータは、出力された生理的データからなる。生理監視ユニットは、患者の生理的データ、特に生理的データの構成要素を取得するための少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4またはそれより多く)のセンサーを備えていてもよい。生理的データは、脈拍数、心拍数、心拍数変動、血圧、呼吸数、呼吸数変動、吸気圧、呼気圧、脳内酸素、血中O2飽和度(SpO2)、局所および/または中枢血中O2飽和度、皮膚コンダクタンス、ガルバニック皮膚反応、体温のうちの1以上に関するものであってもよい。生理的データは、呼吸数、呼吸数変動、吸気圧、心拍数のうちの1以上に関するものであってもよい。
【0147】
監視装置は、SpO2捕捉ユニットを備えていてもよい。反応データ、すなわち測定されたデータは、出力されたSpO2データを含む。SpO2捕捉ユニットは、患者からSpO2(血中酸素飽和度)データを捕捉するように構成された少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5またはより多く)のセンサーを備えていてもよい。SpO2データ捕捉ユニットは、1以上のセンサー、例えば光電式容積脈波(PPG)センサーを含んでいてもよく、センサーは通常、光学式である。センサーは、こめかみ部分および/または額部分に配置されてもよい。センサーは、額および/またはこめかみの領域に配置されるように構成されていてもよい。センサーは、ウェアラブルデバイス(ウェアラブルヘッドセットなど)に組み込まれていてもよい。センサーは、ウェアラブルデバイスに固定されていてもよいし、ウェアラブルデバイスから着脱可能であってもよい。センサーは、乾式のセンサーであってもよい。センサーは、重力、力(例えば、バネや弾性体によってかかる)、または接着剤によって所定の位置に保持されてもよい。センサーは、再利用可能であっても、1度限りの使用であってもよい。センサーは、ヘッドストラップや固定バンドに組み込まれていてもよい。センサーは、メディアレンダラーのマスク部分に組み込まれ、例えば、額および/またはこめかみの部分にセンサーが配置されるようになっていてもよい。一般的に、SpO2捕捉ユニットは、検出された信号を増幅するための増幅器を含む。信号は、処理ユニットによる処理のために、デジタル-アナログ変換器によってデジタル化される。デジタル-アナログ変換器は、別個のものであってもよいし、処理ユニットに組み込まれていてもよい。
【0148】
前記1以上のセンサーが、ウェアラブルデバイス(例えば、ウェアラブルヘッドセット)に組み込まれてもよい。1以上のセンサーは、ウェアラブルデバイスに固定されていてもよいし、ウェアラブルデバイスから着脱可能であってもよい。1以上のセンサーは、重力、力(例えば、バネや弾性体によってかかる)、または接着剤によって所定の位置に保持されてもよい。1以上のセンサーは、再利用可能であっても、1度限りの使用であってもよい。1以上のセンサーは、ヘッドストラップに組み込まれていてもよい。センサーは、メディアレンダラーのマスク部分に組み込まれてもよい。
【0149】
監視装置は、体動追跡ユニットをさらに備えていてもよい。反応データ、すなわち測定されたデータは、出力された体動追跡データを含む。体動追跡ユニットは、患者の体動、特に体動追跡データの構成要素を取得するための少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4またはそれより多く)のモーションセンサーを備えていてもよい。モーションセンサーの例としては、2軸または3軸の加速度計、ジャイロスコープ、1以上のカメラ、磁気/電磁誘導変換器などがある。体の動きには、頭の動き、手足(腕、脚、手、膝、肘)の動きが含まれる。体動追跡ユニットは、頭部追跡ユニットであってもよい。
1以上のモーションセンサーは、ウェアラブルデバイス(ウェアラブルヘッドセットなど)に組み込まれていてもよい。1以上のモーションセンサーは、ウェアラブルデバイスに固定されていてもよいし、ウェアラブルデバイスから取り外してもよい。1以上のモーションセンサーは、重力、力(例えば、バネや弾性体によってかかる)、または接着剤によって所定の位置に保持されてもよい。1以上のモーションセンサーは、再利用可能であっても、1度限りの使用であってもよい。1以上のモーションセンサーは、ヘッドストラップに組み込まれていてもよい。モーションセンサーは、メディアレンダラーのマスク部分に組み込まれていてもよい。
【0150】
監視装置は、視線追跡ユニットをさらに備えていてもよい。反応データ、すなわち測定されたデータは、出力された視線追跡データを含む。視線追跡ユニットは、患者の片目または両目の動きを監視するための少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4またはそれより多く)のカメラを備えていてもよい。視線追跡ユニットは、眼球を照らすように構成された少なくとも1つの光源(例えば、可視光、赤外線)を備えていてもよい。撮影された画像は、視線追跡ソフトウェアを用いて分析され、患者の注意の集中度、眠気、意識、その他の精神状態が判断されてもよい。
1以上のカメラは、ウェアラブルデバイス(ウェアラブルヘッドセットなど)に組み込まれていてもよい。1以上のカメラは、ウェアラブルデバイスに固定されていてもよいし、ウェアラブルデバイスから着脱可能であってもよい。1以上のカメラは、メディアレンダラーのマスク部分に組み込まれてもよい。
【0151】
監視装置は、表情捕捉ユニットをさらに備えていてもよい。反応データ、すなわち測定されたデータは、出力された顔の表情データ(例えば、感情、侵害受容など)を含む。表情捕捉ユニットは、患者の顔の表情を監視するための少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4またはそれより多く)のカメラを備えていてもよい。表情捕捉ユニットは、顔を照らすように構成された少なくとも1つの光源(例えば、可視光、赤外線)を備えていてもよい。撮影された画像は、表情認識ソフトウェアを用いて分析され、患者の顔の表情や反応を判断が判断されてもよい。1以上のカメラは、ウェアラブルデバイス(ウェアラブルヘッドセットなど)に組み込まれていてもよい。1以上のカメラは、ウェアラブルデバイスに固定されていてもよいし、ウェアラブルデバイスから着脱可能であってもよい。1以上のカメラは、メディアレンダラーのマスク部分に統合されてもよい。
【0152】
監視装置は、EEG捕捉ユニット、EMG捕捉ユニット、EDA捕捉ユニット、ECG捕捉ユニット、生理監視ユニット、頭部追跡ユニット、視線追跡ユニット、および表情捕捉ユニットを含んでいてもよい。監視装置は、EEG捕捉ユニット、EMG捕捉ユニット、HR捕捉ユニット、および呼吸データ捕捉ユニットで構成されていてもよい。
【0153】
監視装置は、ヘッドセットなどのウェアラブルデバイスに組み込まれていてもよい。監視装置の1以上の電極および/または1以上のセンサーおよび/または1以上のカメラは、ウェアラブルデバイスに組み込まれてもよい。好ましくは、監視装置は、少なくとも1つのF-EEG電極と、任意に少なくともP-EEG電極とを有する本明細書に記載のEEG捕捉ユニットを備える。F-EEG電極は、ウェアラブルデバイスのマスク部に配置されてもよいし、ストラップに配置されてもよい。マスク部は、(例えば、バーチャルリアリティビューアを支持するときに)閉じていてもよいし、(例えば、バーチャルリアリティビューアがないときに)開いていてもよい。
【0154】
ウェアラブルデバイスは、音響変換器を備えていなくてもよいし、内蔵スクリーンを備えていなくてもよい。画面および/または音は、例えば、イヤホンおよび/またはスマートデバイスのような別のデバイスを介して提供されてもよい。ウェアラブルデバイスは、スマートデバイス用のカップリングを備えていてもよい。音響変換器がなく、スクリーンが内蔵されていない場合、治療セッションは、催眠術師または催眠療法士によって行われてもよい。
【0155】
ウェアラブルデバイスは、音響変換器(例えば、イヤホン、ヘッドフォン、スピーカー)を備え、スクリーンを内蔵していなくてもよい。スクリーンは、スマートデバイスを介して提供されてもよい。ウェアラブルデバイスは、スマートデバイス用のカップリングを備えていてもよい。
ウェアラブルデバイスは、内蔵の音変換器(例えば、イヤホン、ヘッドフォン、スピーカー)と内蔵のスクリーンとの組み合わせを備えていてもよい。
【0156】
ウェアラブルデバイスの一例を
図10A~Dおよび11に示す。
図10A~10Dは、ウェアラブルデバイス(100)を示す。ウェアラブルデバイス(100)は、ウェアラブルデバイス(100)を患者の頭部(120)の所定の位置に保持する複数のストラップ(102,a,b,c)を備える。ストラップは、弾性を有していてもよいし、弾性を有していなくてもよい。ストラップ(102,a,b,c)はまた、複数の電極および/またはセンサーを患者の頭部(120)の所定の位置に保持する。
図10A~10Dに描かれているのは、EEGデータを測定するための電極(110、a(中央(C)EEG電極)、b(頭頂(P)EEG電極)、c(側頭))と、心拍数、心拍変動、SpO
2を測定するためのセンサー(112)である。
図10AおよびBは、さらに、EEGデータの測定用の電極110、d(右前頭前野)を示している。
図10B~Dは、さらに、EEGデータの測定用の電極g(前頭部(F)EEG電極)を示している。
図10Aおよび10Bに、患者の頭部(120)の位置にバーチャルリアリティビューア(106)およびヘッドフォン(108)(メディアレンダラー)を支持するアイマスク(104)が提供されている。
図10Cでは、バーチャルリアリティビューアは存在しないが、ヘッドフォン(108)(メディアレンダラー)が存在し、ストラップによって患者の耳の上に配置されている。
図10Dにおいては、バーチャルリアリティビューアおよびアイマスクおよびヘッドフォン(108)が存在せず、治療セッションが外部から提供されてもよい。
図11は、EEGデータの測定用の電極(116、a、b、c、d)(110、d、e、f)、皮膚コンダクタンスの測定用の電極(118)が配置されたマスク(104)の顔面接触端の例示的な図である。電極110,eは、矢状面の前頭前部のEEG電極であってもよく、電極110,fは、前頭前部の左のEEG電極であってもよい。
【0157】
図12は、以下が配置されたマスク(104)の顔面接触エッジの異なる例示的な図である。
- EEGデータの測定のための矢状面における前頭前部EEG電極(110e)(任意に、例えばヘッドストラップなどの上方向に延びる延長部に配置されてもよい)、
- EMGデータの測定のためのEMG電極(111a~111d)、
- 呼吸データ、心拍データ、血圧、SpO
2を測定するためのPPGセンサー(113a、113b)、
- EOGデータの測定用のEOG電極(115a~115e)、
- GSRデータを測定するためのGSR電極(117)、
- EEG電極(110e)、EMG電極(111a~111d)、EOG電極(115a~115e)、GSR電極(117)のうちの1以上の電極と組み合わせて基準/接地電極として機能し得る接地電極(119)。
【0158】
コントローラモジュールは、監視装置から測定されたデータを受領し、反応データを患者の修正された意識状態のレベルに変換するように構成されてもよい。
コントローラモジュールは、監視装置から測定されたデータを受領し、測定されたデータを含む反応データをDoDI、DoHI、DoSIの1以上に変換するように構成されてもよい。評価プロトコルは、数学的(例えば統計的)モデル、学習済みの機械学習モデル、数学的指標、基準データのうちの1以上の使用を含んでもよい。
コントローラモジュールは、本明細書の他の箇所に記載されている評価プロトコルを使用して、監視装置から測定されたデータを受領し、測定されたデータを含む反応データを、患者の非薬理的および任意に薬理的に修正された意識状態の尺度を表すDoSIおよび/またはDoHIに変換するように構成されてもよい。評価プロトコルは、数学的(統計的)モデル、学習済みの機械学習モデル、数学的指標、基準データのうちの1以上の使用を含んでもよい。
【0159】
一般的に、コントローラモジュールは、処理ステップを実行するように構成された回路(例えば、マイクロプロセッサ)およびメモリを備える。コントローラモジュールは、ウェアラブルデバイスに組み込まれてもよいが、組み込まれなくてもよい。コントローラは、ウェアラブルデバイスに少なくとも部分的に組み込まれてもよい。コントローラは、スマートデバイス(例えば、スマートフォン、タブレット)に少なくとも部分的に組み込まれていてもよい。
【0160】
前記方法は、コンピュータにより実行されてもよい。本明細書に記載の方法を実行するように構成されたコンピューティングデバイスまたはシステムが提供される。
コンピューティングデバイスまたはシステムにより実行されると、前記コンピューティングデバイスまたはシステムに本明細書に記載の方法を実行させる命令を有するコンピュータプログラムまたはコンピュータプログラム製品が提供される。
コンピューティングデバイスまたはシステムにより実行されると、前記コンピューティングデバイスまたはシステムに本明細書に記載された方法を実行させる命令が格納されたコンピュータ可読媒体が提供される。
【0161】
コンピューティングデバイスまたはシステムにより実行されると、前記コンピューティングデバイスまたはシステムに本明細書に記載された方法を実行させる命令を有するコンピュータプログラムまたはコンピュータプログラム製品を表わすデータストリームが提供される。
【0162】
本明細書に記載の方法およびシステムは、治療者が、患者の状態または催眠状態を定量化し、抗不安薬、…催眠薬の初期用量の最適かつ場合によっては個別的に滴定することを可能にし、非薬理的な最終的に複合された鎮静(VR療法の滴定)を最適化し、定量化、視覚化、傾向付けによってより安全な進行を提供し、場合により臨床、医療または治療介入中の患者の生理的反応/快適さのレベルの予測を提供し、患者の安全性を向上させ、医療介入の患者の記憶喪失を増加させることができる。
【0163】
また、非薬理的に誘発された患者の鎮静のレベルを決定するための、本明細書に記載された、コンピュータによって実行される方法の使用も提供される。鎮静は、例えば、薬理的な麻酔薬を非薬理的な麻酔で置換および/または補強する介入のためのものであってもよい。介入は、治療、改善、診断を含む如何なるものであってよい。介入は、侵襲的(例えば、外科手術、内視鏡手術、カテーテル治療)であっても非侵襲的(例えば、医用画像取得、放射線治療)であってもよい。
また、介入前の不安管理のための、本明細書に記載された、コンピュータにより実行される方法の使用も提供される。
また、慢性的な症状の管理のための、本明細書に記載された、コンピュータにより実行される方法の使用も提供される。
また、術後または介入後の症状の管理のための、本明細書に記載された、コンピュータにより実行される方法の使用も提供される。
【0164】
実験データ
12人の健常者ボランティア(10人が分析対象)を対象とした研究において、催眠治療セッション中の修正された意識状態を、治療セッション後に提示された有効なアンケートを用いた患者の自己申告によって測定した。催眠セッションは,バーチャルリアリティヘッドセットを用いて行われた。使用された催眠パッケージは、Sedakit(臨床催眠と呼吸改変技術を用いた、アクア30分モジュール)であった。催眠治療セッション中のある瞬間に、各患者は経皮的な電気刺激にさらされた。各患者は、催眠療法セッション中に感じた解離を少なくとも評価するよう求められた。催眠治療セッションの間、各患者から脳波の測定されたデータを収集した。脳波の測定には,頭皮を覆うように配置されたEEG電極を用い,脳の局所的な電圧変動を検出するようにした。脳波測定には,256チャンネルの高密度脳波計が使用された。電極は、256チャネルのHydrocel Geodesic Sensor Networkの予め定められたレイアウトに従って配置された。その結果、解離の増加に関して、催眠療法セッションの効果が測定可能かつ統計的に有意であることが示された(表1および2参照)。
【0165】
【0166】
【0167】
rは一般相関係数。rsは、スピアマン相関係数である。rsは、+1~-1の範囲の値をとり得る。ゼロの値は、2つの変数の間には関連性がないことを示す。ゼロより大きい値は、正の相関を示す。つまり、一方の変数の値が大きくなると、他方の変数の値も大きくなる。ゼロより小さい値は、負の関連性を示す。つまり、一方の変数の値が増加すると、他方の変数の値が減少する。pは、統計的検定に関連するp値であって、相関関係が単なる偶然ではなく、統計的に有意であるかどうかを評価する検定の値である。一般的に、p値が0.05より小さい場合、統計的に有意であるとみなされる(ゼロに近いほど良好)。
【0168】
脳波分析の結果、脳の局所的な構造やネットワークと、催眠下での解離との間に関連性が認められた。解離に関連する局所的な構造/ネットワークを特定することで、患者の意識変容のレベルと解離との関連性が明らかになり、催眠治療セッション中の患者の意識変容のレベルを客観的に監視することが可能になる。
【0169】
時間領域の脳波解析は、通常の覚醒した開眼状態に比べて催眠状態の期間はERP(イベント関連の電位)成分が全体に減少することを示す。また、電気刺激の開始時間に連動した全体に渡る平均信号のpeak-to-peak振幅(MSPA)に差がある。催眠療法を行った場合と行わなかった場合の2群間のERP振幅の差は、前頭部(F)の測定位置(前頭部正中矢状面交差部)(「反応にあまり関与していない」)において全体の信号振幅の減少にかなりの差が見られる。本研究は、薬物を使用しない意識状態(催眠術など)と通常の覚醒状態を比較した際に、この特定の場所で有意なMSPAの変化を示した初めての研究である。
具体的には、電極Fの平均信号peak-to-peak振幅(MSPA)を抽出したところ、以下の結果が得られた。
- MSPAは、電極位置Fにおいて、催眠セッション中に有意に低い値を示す(催眠なしの場合:-24.13に対し、催眠ありの場合:-11.16、p値=0.019)、
- 自己報告による解離度の測定値は、電極位置FのMSPAと相関(スピアマン)がある(rs=-0.41,p=0.07)。
図14は、EEG F電極で測定したMSPAと解離の相関関係を示すグラフである。
【0170】
脳内では、複数の処理が同時に行われている(並列処理)。それぞれのプロセスは特定の周波数帯の使用で表現されるので、時間領域の信号を高速フーリエ変換などで周波数領域に変換することで、異なるプロセスを調べることができた。周波数領域の信号から、特定の信号周波数帯のパワーを求めることができる。ここでパワーとは、特定の周波数帯(例えばデルタ・シータ・レンジ)における周波数領域の信号の振幅の二乗を指す。
本研究は、薬物を使わずに催眠術などで意識を変えた状態と通常の覚醒状態を比較したときに、これらの特定の場所で有意なパワーの変化を示した初めての研究である。ある特定の周波数帯のパワーを抽出したところ、修正された意識状態(非薬理的に催眠状態に誘導された状態)の患者と通常の覚醒状態の患者との間に、有意なパワーの違いが見られた。特に、前頭葉(F)と頭頂葉(P)の周辺に位置するデルタ・シータ(dt)周波数帯において、催眠下での減少が確認された(早期成分)。早期成分とは、電気刺激開始後0.1~0.5秒の間に測定されたパワーの減少のことである。
【0171】
今回の結果は、催眠によって引き起こされる脳の周波数帯の違いを場所ごとに特定した初めての例である。
具体的には、F電極とP電極のデルタ・シータ(dt)周波数帯のパワーを抽出したところ、以下のような結果が得られた。
- P(催眠なし:0.84に対して催眠あり:0.44, p=0.027)とF(催眠なし:1.01に対して催眠あり:0.43, p=0.048)の2つの電極で、dt周波数帯に関連するパワーが催眠によって有意に低下した。
- 自己報告による解離の尺度は、電極P(rs=-0.37,p=0.011)および電極F(rs=-0.55,p=0.010)におけるdt周波数帯のパワーと相関(スピアマン)があった。
図15は、自己申告による解離と、EEG電極F、Pにおけるdt周波数帯域の計算パワーとの相関を示す。
【国際調査報告】