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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-29
(54)【発明の名称】積層薄板ロータ
(51)【国際特許分類】
   F16H 33/02 20060101AFI20220322BHJP
   H02K 7/02 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
F16H33/02 A
H02K7/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021546804
(86)(22)【出願日】2020-02-11
(85)【翻訳文提出日】2021-10-08
(86)【国際出願番号】 US2020017787
(87)【国際公開番号】W WO2020167864
(87)【国際公開日】2020-08-20
(31)【優先権主張番号】62/803,892
(32)【優先日】2019-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/787,017
(32)【優先日】2020-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515050068
【氏名又は名称】アンバー キネティクス,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AMBER KINETICS, INC.
【住所又は居所原語表記】32920 Alvarado-Niles Rd.,Suite 250 Union City,CA 94587 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】サンダース セス アール
(72)【発明者】
【氏名】ガイザー カイル ビー
(72)【発明者】
【氏名】オルセン グレック
(72)【発明者】
【氏名】ホロウェー マーク ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ヒッチコック ロジャー ネルソン
(72)【発明者】
【氏名】テネンセン ピーター トマス
(72)【発明者】
【氏名】セネスキー マシュー ケイ
(72)【発明者】
【氏名】チャオ エドワード ヨン
(72)【発明者】
【氏名】コノリー ダレン ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】ローデヴァルト キーナン ウィリアム
【テーマコード(参考)】
5H607
【Fターム(参考)】
5H607CC05
5H607EE42
5H607JJ05
(57)【要約】
本発明は、一方が他方の上部に積み重ねられた、いくつかの隣接する薄板であって、薄板はそれぞれ、同じ形状を有し、かつ中心軸周りを回転可能に対称であり、形状は、実質的に円形であり、かつ円周上に複数の突出部を含み、それぞれが、ボルトの締結時に通過するボルトのための少なくとも1つの孔を含むいくつかの薄板を備える、フライホイールロータである。本発明は一般に、薄板の積層体の各端部にエンドプレートを含み、2つのエンドプレートのうちの1つのエンドプレートは、スタブシャフトに取り付けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フライホイールロータであって、
一方が他方の上部に積み重ねられた、複数の隣接する薄板であって、薄板はそれぞれ、中心軸に対して同じ形状および同じ回転位置を有し、前記形状は実質的に円形であり、かつ円周上に複数の突出部を含み、それぞれが少なくとも1つの貫通孔を含む複数の薄板と、
前記薄板のそれぞれにおける前記少なくとも1つの孔を通過する少なくとも1つのボルトと、を備えるフライホイールロータ。
【請求項2】
前記薄板の軸方向中心を通る貫通孔がない、請求項1に記載のフライホイールロータ。
【請求項3】
前記薄板は、鋼、プラスチック、炭素繊維、複合材料、およびセメントからなる群から選択される材料で作られている、請求項1に記載のフライホイールロータ。
【請求項4】
前記薄板の形状は、円弧八角形、スカラップ状の円、およびオクトスクエアからなる群から選択される、請求項1に記載のフライホイールロータ。
【請求項5】
前記薄板の積層体の各端部に1つずつある、2つのエンドプレートであって、各エンドプレートが、前記積層体における薄板の一方側に接触する底面を有する2つのエンドプレートをさらに備える、請求項1に記載のフライホイールロータ。
【請求項6】
前記少なくとも1つのボルトのそれぞれはまた、各エンドプレートを通過し、かつ各エンドプレートに締め付けられる、請求項5に記載のフライホイールロータ。
【請求項7】
各エンドプレートは、中央領域と、前記中央領域から半径方向に広がる複数のスポークを有する、請求項5に記載のフライホイールロータ。
【請求項8】
前記エンドプレートのうち少なくとも1つのエンドプレートの前記中央領域は、中実鋼で作られている、請求項7に記載のフライホイールロータ。
【請求項9】
前記スポークは、締結機構を介して前記中央領域に取り付けられる各々のスポークである、請求項7に記載のフライホイールロータ。
【請求項10】
前記締結機構は、ボルト、スタッド、および溶接からなる群から選択される、請求項9に記載のフライホイールロータ。
【請求項11】
前記スポークは、円筒形の管である、請求項7に記載のフライホイールロータ。
【請求項12】
前記管は、実質的に中空である、請求項7に記載のフライホイールロータ。
【請求項13】
各スポークの外側末端は、それぞれの貫通ボルトを受け入れるための孔を有する、請求項7に記載のロータのフライホイール。
【請求項14】
前記ロータに取り付けられ、かつ前記ロータと回転対称のスタブシャフトであって、前記2つのエンドプレートのうちの1つのエンドプレートの上面が締め付けられるスタブシャフトをさらに備える、請求項5に記載のフライホイールロータ。
【請求項15】
前記スタブシャフトは、上部の円筒形セクションと、前記エンドプレートに締め付けられる下部の、連結セクションとを有する、請求項14に記載のフライホイールロータ。
【請求項16】
前記連結セクションは、中央セクションと、前記エンドプレートに取り付けられる1つ以上のフランジとを有する、請求項15に記載のフライホイールロータ。
【請求項17】
前記形状は、それぞれが前記薄板の円周から突出する、複数の突起を有し、バランシングフェーズ中に少なくとも1つの突起の質量を減少させることによって、ロータのバランスをとる、請求項1に記載のフライホイールロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般にフライホイールを使用するエネルギ貯蔵に関する。具体的には、積層薄板(ラミネーション)で構成されるフライホイールロータの設計に関連する。
【背景技術】
【0002】
長時間のユーティリティ規模用、および無停電電源装置(UPS)の場面など短時間の給電用にも適用される最近のエネルギ貯蔵ロータは、通常、複合繊維巻回ロータまたは鋼で構築される。このようなユーティリティ用、および一部の商用・工業用の場面で生じる長時間の放電に取り組む際に、ロータのコストを最適化することは、最も重要である。
【0003】
フライホイールロータのコストは、製造システムコストの約50%を構成する場合がある。したがって、他のフライホイール部品が、システムコストの残りの半分を構成する。また、これらのシステムコストの多くは、ロータの体積および/または質量に比例する。したがって、ロータの質量と体積を上げたり下げたりすることは、フライホイールエネルギ貯蔵システムにおいて最大の関心事である。
【0004】
モノリシック鋼ロータは、標準的な鋼の加工プロセス(一次溶融、二次再溶融精製ステップ、鍛造、焼入れ、焼戻し)を利用することによって、達成可能な設計範囲内で設定された所望の形状と材料の機械的特性へ到達できる。一般に、ロータの形状は、「形状係数」kによって特徴付けることができる。
【数1】
ここで、Eは蓄積された運動エネルギ、Vはロータの総体積、σはロータのピーク応力である。形状係数の範囲は0~1である。概して、形状係数はロータ材料の利用率における効用の指標となる。形状係数が高いことは、応力がロータの体積全体にわたってより一様に分布しており、材料利用率が良好であることを示す。形状係数の定義からもわかるように、蓄積されたエネルギはロータのピーク応力に直接比例する。したがって、実際に使用可能なピーク応力は、ロータに貯蔵できるエネルギ量により定義される。最大ピーク応力は、材料の降伏応力または極限応力に関連する故障基準によって定められてもよく、または繰り返し応力の疲労限度によって定められてもよい。
【0005】
一般に、6~20インチのかなりの軸方向厚さを有する大型のマルチトンモノリシック中実円筒状ロータは、約0.55の形状係数を有する。2次元平面応力(軸応力がゼロ)を想定して分析した非常に薄いディスクの場合、形状係数は0.6をわずかに超え、モノリシックロータと比較してこのような薄いディスクが約10%改善したと評価される。
【0006】
適正なエネルギ容量を備えたロータを製造するには、ロータの総体積(または質量)を適切に設定する必要がある。ロータの積層薄板構造体を使用すると、ロータのサイズは、個々の薄板の製造プロセスから分離される。薄板の横方向の寸法は、原材料の利用可能な供給幅、つまりコイル幅によってのみ定められる。また、積層薄板ロータの軸方向の寸法は、積層薄板の数により定義される。したがって、ロータの任意の軸方向寸法を事実上実現することができる。積層薄板方式で達成可能なロータの寸法は、比較的制約がなく、これは一部のロータの設計で使用され得る、中実鍛造品で実現可能な寸法とは対照的である。
【0007】
冷間圧延は、通常、前もって熱間圧延された板材料の厚さをさらに薄くする、標準的な熱間圧延プロセスに続くプロセスである。冷間圧延という用語は、そのプロセスで許容される温度が、金属表面にスケールが形成される温度よりも低いことを表す。冷間圧延は、コイルまたはシート形式で販売されている製品、および多数の金属の組合せに用いられる多くの合金、処理、仕上げ条件とともに、金属製造業界全体で広く使用されている。材料の例としては、成形が容易な車体パネル部品や、バンパや構造パネルで使用される高強度部品など、自動車製造時の多くの部品で使用されているものが挙げられる。変圧器、モータ、および発電機を構築するために電気産業で使用されるケイ素鋼材料も冷間圧延され、求められる厚さ、均一性、および仕上げを達成する。
【0008】
自動車のバンパや構造パネルといった主要部品用として、例えば最大2000Mpaの非常に高い引張強度を有する冷間圧延鋼材を容易に入手できる。このような材料は、通常、世界を先導するサプライヤから約0.5mm~2.0mmの厚さで提供されている。自動光学検査システムで容易に検査が行われているため、材料の品質は通常、優れている。したがって、欠陥は一般に、大きなパネル内では見当たらない。また、このような薄い材料のための焼入れステップにおいては、適正な冷却速度により、低合金鋼でも完全な硬化が容易に達成できるため、非常に基本的な炭素鋼合金を使用して、非常に高い強度を達成することができる。
【0009】
すでに述べたように、積層鋼ロータには、モノリシック鍛造鋼ロータよりもコストと性能において利点がいくつかある。(1)冷間圧延鋼の連続加工は、モノリシックロータに求められる個別加工よりも経済的である。基本的に、ユビキタスで連続的な圧延プロセスが1回限りの鍛造ステップに代替される。(2)モノリシックロータの厚さは、使用する鋼合金の焼入れ性によって定められる。厚さ6インチのロータが厚さ2mmの薄板と同じ強度レベルを達成するには、かなり高価な鋼合金を使用しなければならない。モノリシック鍛造品は、焼入れ性の限界により最大厚さの限界に達するが、冷間圧延薄板で構成されるロータは、各薄板が個別に焼入れおよび焼戻しされるため、必要な厚さを有する組み立てロータに積み重ねることができる。(3)積層鋼ロータは、鋼に存在する欠陥の点でも利点がある。上記のように、冷間圧延プロセスおよび検査プロセスにより、非常に高品質の材料が生成される。また、フライホイールロータにおいて、最大の応力は面内の半径方向とフープ(円周)方向にある。半径方向またはフープ方向に垂直な向きの欠陥は、き裂を形成し、フープ方向および半径方向に平行な欠陥よりも速く進展する。圧延プロセスは、粒子およびあらゆる欠陥 を圧延方向と平行に配向させるが、これは、疲労き裂進展の観点から最適である。モノリシック鍛造ロータは、ロータ軸に平行な向きの欠陥を持っている可能性があり、これは、そのような構造での疲労き裂進展において最も脆弱な配向である。
【0010】
中実鍛造品の検査は、通常、体積による超音波(UT)検査、ならびに表面検査のための磁粉探傷試験および/または浸透探傷試験によって行われる。これらは標準化されたテストプロセスであるが、検査エラーは、突発的に起こり得るため、求められることが多い。これに対し、冷間圧延された材料の検査は、生産現場で大幅に自動化されており、検査のコストと最終製品の品質の点で有利な結果が得られる。
【0011】
それぞれのサイクルが、フライホイールエネルギ貯蔵システムの最大振幅サイクルに対応する、最大振幅の応力サイクルを10,000回繰り返す場合、応力振幅は通常、繰り返し応力の疲労によって実質的に定められる。繰り返し応力の疲労寿命は、欠陥の存在(または不在)と、破壊を引き起こす、限界寸法に達するき裂としての欠陥の進展によって規定される。き裂の進展は、特定の最小レベルと最大レベルの応力を繰り返して受けた直接の結果である。冷間圧延された薄板は、薄板固有の残留欠陥が好適に配置されているため、薄板は繰り返し応力の疲労に対して優れた弾力性を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、積層薄板を使用して、フライホイールエネルギシステムで使用されるロータを製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
特定の実施形態では、ロータによるフライホイール筐体の利用率を最大にすることによって、標準的な円盤形状よりも改善したロータ形状を使用する。
【0014】
積層薄板ロータの薄板が有利に接合可能なロータ形状の実施形態を説明する。特定の実施形態において、スカラップ状の円形と呼ばれる、突出したスカラップを有する円形が開示されている。薄板は、薄板を接合および締結する目的で軸方向ボルトが通過する1つ以上の孔を含む。他の実施形態において、性能を制限する応力集中が発生することなく、各頂点の近くに貫通孔が設けられるオクトスクエア形状が使用される。
【0015】
特定の実施形態は、いずれかの端部で、薄板の積層体を支えるエンドプレートの設計に関するものである。エンドプレートの実施形態は、中央領域と、中央領域から半径方向外側に広がる複数のスポークとを含む。実施形態は、スポークを中央領域に締結するための様々なスポーク形状および機構に関するものである。
【0016】
付加的実施形態は、エンドプレートに取り付けられる連結セクションを含むスタブシャフトに関するものである。特定の実施形態において、連結セクションは、エンドプレートおよび円錐形の中央領域に接続する1つ以上のフランジを含む。
【0017】
さらなる実施形態は、バランシング手順の一部としてロータ質量を追加または除去することによって、ロータのバランスがとれるようにするロータ形状に関するものである。一実施形態では、薄板積層体を締結するために使用される一組のスカラップ状の突出部から等距離にあり、薄板の外周に配置したバランシング突起を追加する。
【0018】
主要な実施形態は、一方が他方の上部に積み重ねられた、いくつかの隣接する薄板であって、薄板はそれぞれ、同じ形状を有し、かつ中心軸に対して同じ配向を有し、形状は、実質的に円形であり、かつその円周に複数の突出部を含むいくつかの薄板を備える、フライホイールロータである。この実施形態は、薄板の積層体の各端部にエンドプレートを含む。スタブシャフトは、各エンドプレートの上部と底部に取り付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明の非限定的かつ非網羅的な実施形態は、以下の図面を参照して説明される。図面において、同一の参照番号は、特段の断りが無い限り、様々な図全体を通して同一の部分を指す。
【0020】
図1図1は、フライホイールユニットとも呼ばれるフライホイールエネルギ貯蔵システムの一実施形態の概略断面図である。
【0021】
図2A図2Aは、八角形よりも薄板材をよりよく利用する、八角形を基準とした積層薄板ロータの形状を示す。
【0022】
図2B図2Bは、一次元の積層薄板ロータ形状における最大長さの概念を示す。
【0023】
図2C図2Cは、回転するロータによって掃引される体積の利用率の概念を示す。
【0024】
図2D図2Dは、スカラップ状の円と呼ばれる非円形の薄板形状の一例を示しており、これは、貫通孔が導入され得る外周近くの低応力領域を含む。
【0025】
図2E図2Eは、オクトスクエアと呼ばれる形状を示しており、これは、正方形の四隅のそれぞれを対称的に切り取ることによって正方形から得られる八角形である。
【0026】
図3図3は、エンドプレートがスポークを有するように、外径の周りから材料を除去するエンドプレートの一実施形態を示す。
【0027】
図4図4は、中央領域に締結される各々のスポークを有するエンドプレートを示す。
【0028】
図5図5は、長方形の断面スポークを備えたエンドプレートの断面を示す。
【0029】
図6図6は、各々のスポークを備えたエンドプレートの別の実施形態を示す。
【0030】
図7A図7Aは、各々のスポークを備えたエンドプレートの別の実施形態を示す。
図7B図7Bは、各々のスポークを備えたエンドプレートの別の実施形態を示す。
【0031】
図8A図8Aは、各々のスポークを備えたエンドプレートの別の実施形態を示す。
図8B図8Bは、各々のスポークを備えたエンドプレートの別の実施形態を示す。
【0032】
図9A図9Aは、各々のスポークを備えたエンドプレートの別の実施形態を示す。
図9B図9Bは、各々のスポークを備えたエンドプレートの別の実施形態を示す。
【0033】
図10図10は、エンドプレートに取り付けられるスタブシャフトの一実施形態を示す。
【0034】
図11図11は、図2Dの形状を参照して説明したスカラップ突出部から等距離にあり、それぞれが外周に配置されたバランシング突起を含む薄板形状を示す。
【0035】
図12図12は、ロータ薄板上の低応力タブの別の実施形態を示す。
【0036】
これらの図は、例示のみを目的として、本発明の実施形態を示している。以下の議論から、本明細書に記載の本発明の趣旨から逸脱することなく、本明細書に示す構造および方法の代替的実施形態を使用できることは、当業者にとって容易に認められるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の一部を形成し、例示として、本発明を実施することができる特定の例示的な実施形態を示す添付の図面を参照して、本発明を詳細に説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が当業者に本発明の範囲を確実にかつ完全に、詳細に伝えるように提供される。とりわけ、本発明は、方法、プロセス、システム、または装置として具体化することができる。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるべきではない。
緒言
【0038】
積層ロータは、多くの薄板を積み重ねることによって構築されるものであり、積層体の各薄板は、同じ形状と中心軸に対して同じ配向を持つ。例えば、300mmの厚さのロータは、それぞれ2mmの厚さの薄板が150枚必要である。単一点の欠陥の場合、隣接する薄板が余分な負荷をサポートできるように、積層体全体の設計を行うことで、単一点の欠陥に対して弾力性のある設計を行うことができ、突発的な故障を回避することができる。
【0039】
したがって、積層した鋼薄板で構成されるロータは、より安価であり、モノリシック鍛造鋼ロータよりも大きい応力振幅を提供できる。これは、ロータの単位コスト利用率あたりの性能の向上に直接つながり、その結果、フライホイールの利用におけるシステムバランスの向上にもつながる。
【0040】
薄板は、スタンピング、レーザ切断、または他の任意の好適なプロセスによって製造することができるので、積層薄板ロータの形状は円形である必要はないことが理解され得る。任意の形状を作成するためにこのようなプロセスを使用することで、薄板は、任意の形状に作成され得る。したがって、積層薄板で作られたロータは、円形の輪郭または円筒形に限定されない。積層薄板ロータとして有利な形状を達成し、関連するサポート要素を提供することが、本発明の主な目的である。
定義
【0041】
本明細書で使用される以下の用語は、以下に示す意味を有する。
【0042】
本明細書で使用されるエネルギ貯蔵システムは、エネルギを貯蔵および放出するシステムを指す。エネルギ貯蔵システムは通常、電力グリッドに連結されており、グリッドにより、必要に応じてエネルギを貯蔵および引き出し可能である。
【0043】
本明細書で使用される、フライホイールエネルギ貯蔵システム、フライホイールユニットまたはフライホイール装置、またはフライホイールは、フライホイールロータに運動エネルギを貯蔵するエネルギ貯蔵システムである。1つ以上のフライホイールユニットは、互いに連結する場合、エネルギ貯蔵システムを構成する。フライホイールユニットとは、フライホイールハウジングまたは筐体、およびそれが収容する任意のロータ、モータ/オルタネータ、その他の要素、およびフライホイール筐体に収容され、かつ取り付けられてもよいパワーエレクトロニクス要素を指す。
【0044】
本明細書で使用されるフライホイールロータまたはロータは一般に、エネルギ貯蔵システムの主要部品であり、スピンする、シリンダやディスクなどの回転対称質量体である。ロータは、モータ/オルタネータに対して直接または間接的に物理的に連結され、モータ/オルタネータ自体は、バックトゥバック(back-to-back)インバータシステムなどのAC-AC変換サブシステムを構成する変換器に電気的に連結される。貯蔵のための動力が受容されると、ロータが駆動され、フライホイールロータの回転速度を上昇させる。フライホイールロータが高速にスピンするほど、より多くのエネルギが貯蔵される。動力が抽出される際に、フライホイールロータは、モータ/オルタネータを駆動させる。
【0045】
本明細書で使用される薄板は、通常、冷間圧延プロセスによって製造される材料の、一般に鋼の、薄肉、滑らかで、平らな片を指す。冷間圧延鋼は、薄板に使用してもよい材料の明白な例であり、他のタイプの材料、とりわけプラスチック、アルミニウム、セメント、ガラス、鋼(冷間圧延以外)を使用してもよい。本明細書で使用される薄板は、ある形状に切断され、上辺と底辺の2つの辺を有する。
【0046】
本明細書で使用される、薄板積層体とも呼ばれる積層薄板ロータは、一方が次の薄板上に積み重ねられた、複数の隣接する薄板として構築されたロータを指す。積層薄板ロータは、上端部と底端部の2つの端部を有する。通常、薄板は同じ形状を有し、互いに隣接して位置し、中心軸に対して同じ回転方向を持ち、ともに接合または保持される。例えば、複数の円形の薄板は、シリンダのように見える。複数の長方形の薄板は、長方形の直方体のように見える。本明細書に記載の積層薄板ロータの主な用途は、フライホイールエネルギ貯蔵のためであるが、本発明はこれに限定されない。例えば、モータおよび他の機械装置で使用されるロータが、本発明を利用することができる。
フライホイールエネルギ貯蔵システム
【0047】
図1は、フライホイールユニット100とも呼ばれるフライホイールエネルギ貯蔵システムの一実施形態の概略断面図である。フライホイールユニット100は、フライホイールロータアセンブリ130または単にフライホイールロータ130、モータおよびオルタネータ140(両方の機能が通常、単一のサブシステムによって実行されるため、モータ/オルタネータ140とも呼ばれる)、フライホイールハウジングまたは筐体110、パワーエレクトロニクスユニット120を含む。
【0048】
エネルギをフライホイールロータ130内に貯蔵できるように、またはエネルギをフライホイールロータ130から引き出せるように、モータ/オルタネータ140は、電気エネルギと機械エネルギとの間で変換を行う。モータ/オルタネータ140は、モータとオルタネータの機能を組み合わせているため、モータおよびオルタネータ140と呼ばれることもある。特定の実施形態において、モータ/オルタネータ140は、フライホイールロータ130の下部ジャーナルに連結されてから下部サポートベアリングにも接続される下部スタブシャフト134を介して、間接的にフライホイールロータ130に連結される。上部スタブシャフト132は、フライホイールロータ130を上部ベアリングに連結する。他の実施形態において、フライホイールロータ130は、モータ/オルタネータ140に連結するシャフトを組み込んでいる。モータ/オルタネータ140は、典型的にはフライホイール筐体110を通る真空フィードスルーを介して動作するワイヤまたは他の電気的連結を介して、パワーエレクトロニクスユニット120に連結される。
【0049】
フライホイールユニット100は、ロータ130の大部分を少なくとも部分的に浮上させる、磁気アンローダとも呼ばれる持ち上げ磁石150をさらに含む。持ち上げ磁石150は、フライホイールロータ130の上方に配置されている。
【0050】
パワーエレクトロニクスユニット120は、DCまたはACのいずれかの入力電流をモータ/オルタネータ140に受け入れられる交流に変換するための電力変換器を含む電気部品を取り囲んで、収容するハウジングを有する。パワーエレクトロニクスユニット120はまた、必要に応じて、センサ、プロセッサ、メモリ、コンピュータストレージ、およびネットワークアダプタを含み、フライホイールユニット100の通信、制御、および状態監視を行ってもよい。
【0051】
フライホイールハウジング110は、単一のフライホイールロータ130および単一のモータ/オルタネータ140を取り囲むように示されているが、他の実施形態では、単一の筐体は、複数のロータおよび複数のモータ/オルタネータを取り囲むようにしてもよい。
個別薄板形状
【0052】
円盤状の薄板は、最も一般的な対称性を有するフライホイールロータの形状として自然に選択されるものであるが、他の形状も実用的であり、実質的に有効である。冷間圧延薄板材は通常、コイル形式で製造業者から供給されるため、戦略的な形状を選択して、薄板材の利用率を向上させることができる。例えば、供給されたままのコイル幅と一致する少なくとも2つの辺または縁部を持つ正多角形は、従来の円よりも高い割合の薄板材を使用する。
【0053】
図2A図2Eは、積層薄板ロータの代替形状の実施形態を示す。これらの実施形態では、形状は中心軸の周りで対称であり、回転対称とも呼ばれる。これらの形状は円形に近いものであるが、形状の外周、外縁、または円周に沿って突出部を有する。突出部は、薄板形状の円周に沿った突出部内に、締結ボルトまたは接合ボルトの配置を目的とした貫通孔を有することができ、これは、貫通孔に関連する応力を最小限に抑える。薄板積層体は、締結機構によって互いに結合される。特定の実施形態において、締結機構は、貫通孔を通過する2つ以上のタイロッドまたはボルトを有する。締結機構は、薄板が締め付けられる際、積層体の各薄板が中心軸に対して同じ向きになることを保証する。エンドプレートは、積層体の各軸方向端部で積層体をさらに固定する。本明細書に開示される形状の実施形態は、すべて回転対称であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、回転対称ではない他の形状も本発明の範囲内に含まれる。
【0054】
参考までに、正方形を基準としてそれに内接する円は、利用可能な材料のπ/4または約0.785の割合を消費する。提供された正方形の各縁部の一部を共有する正八角形は、利用可能な材料の約0.83の割合を消費する。
【0055】
図2Aは、本明細書では円弧八角形と呼ばれる、八角形を基準とした形状200を示しており、八角形よりも薄板材をより良好に利用している。その形状は、八角形の4つの対辺に、それぞれが共通の中心を有する同心の円弧を有する。消費面積の割合は、0.84である。この割合0.84は、同じ正方形の薄板面積から切り取ることができる最大の円よりも7%大きく、これは利用可能なエネルギ貯蔵容量が7%多くなることを表す。
【0056】
上記の式1で紹介したように、形状係数kは、遠心力による応力を受けた際に、板内に応力がどれほど効果的に分布するかを示す指標である。従来の鋼のポアソン比0.3の厚さ2mmを有する薄板の場合、直径43インチの円形は、有限要素解析によれば、2桁の有効数字で0.61になる。これは、極めて薄いディスクの理想的な平面応力解析値と本質的に一致するため、同じ直径の10~14インチの厚さを有するモノリシックロータと比較して約10%改善したことを表す。4つの円弧を持つ形状200に対する同様の分析においても、0.61の形状係数が得られる。したがって、変形した八角形のエネルギ性能は、従来の円形のエネルギ性能と同じであるが、形状200の変形した八角形は、それから切り取られる正方形の0.84の分割面積(および体積)を利用する。多くの同様の非円形形状も、約0.61の本質的に同等の形状係数を示すことがわかる。
【0057】
材料の面積利用率は、A/sの面積比にまとめられる。ここで、Aは、薄板形状の面積であり、sは、形状を含む最小の正方形の辺である。この考えは、冷間圧延コイルの幅sが、薄板形状を切り取ることができる使用可能な正方形の面積を規定するということである。図2Bは、辺sを有する正方形に内接する薄板形状の実施形態を示す。具体的には、辺sを有する正方形に内接する正八角形の薄板形状を示す。
【0058】
全体的な形状に関するもう1つの考慮事項は、設計された形状が筐体の利用可能な掃引体積をどれほど利用するかである。図2Cは、筐体体積の利用率の概念を示す。この場合、回転中心から筐体の最も近い制限境界までの半径方向の距離はRであり、収容できる最大の軸方向の投影面積はπRであり、これは半径Rの境界円に対応する。この意味を考慮すると、境界円面積の最大の部分を占めることができる形状は、筐体体積の利用率において最も効率的である。したがって、最適化の基準は、利用可能な掃引面積を最大限に利用するために、A/πRの比を最大にすることによって、フライホイールユニットの筐体の体積を最大にすることである。
【0059】
図2Aおよび図2Bに示す、薄板形状の最適化のための設計基準は、同時に起こることはなく、これらの基準間においてパレート最適によるトレードオフを表す形状最適化プロセスに従うことができる。したがって、戦略的設計において両方の基準を考慮に入れてもよく、最良の妥協点を選択すべきである。
積層薄板アセンブリおよび接合戦略
【0060】
薄板を互いに接合し、さらにスタブシャフト(またはシャフト)に接合することで、ベアリングにより支持されるようにすることは、形状設計にさらに重要な制約が課せられることを意味する。非円形の薄板形状を使用すると、接合技術を有利に利用できる。
【0061】
薄板は、多くの可能手段によって互いに接合されてもよい。これらには、接着剤による接着、多くの電気機械ロータアセンブリで行われるような中央シャフトへの締まりばめ、多くの可能な溶接プロセスの1つによる外周の溶接、および軸方向ボルトの保持が含まれる。現在までのところ、これまでに知られているすべての接合戦略には課題がある。
【0062】
接着剤は、大きな面内引張荷重に応じてポアソンによって誘発される軸方向の荷重の負荷とともに、高速回転時の大きな遠心負荷によって生じる軸方向および半径方向の応力を考慮すると、強度の制約を持つ。接着剤はまた、熱の制約、および真空筐体での使用における互換性においても課題がある。
【0063】
場合によっては、外周の溶接が可能であるが、溶接は一般に、溶接による熱の影響を受ける領域に起因して、材料の劣化を引き起こす。レーザ溶接は通常、小さな電磁鋼の薄板積層体で使用されるが、これらの軽量溶接は、基本的な構造溶接を意図していない。
【0064】
中央シャフトまたは軸方向保持ボルトを使用するには、貫通孔、つまり、積層薄板ロータの積層薄板を軸方向に通過する孔が必要である。一般に、フープ応力と半径方向応力がほぼ等しいロータの中心近くの領域(2軸応力条件)の場合、必要な貫通孔におけるフープ応力は、一般的な主応力のいずれかの2倍になる。中央領域から離れた領域、例えば円盤の外周では、フープ(円周)方向に単軸応力が生じる。単軸応力の場合、円形の貫通孔により、一般的な応力の3倍の局所的な応力集中が発生する。したがって、円形薄板形状内の貫通孔は、円形薄板では一般に実用的ではない。
【0065】
しかし、薄板形状は、円形である必要がないため、貫通孔が導入できる外周近くの低応力領域を許容する多くの非円形の形状があり、これらは、大部分の薄板に生じる全体的な通常の応力に比べて応力が大幅に増加することはない。図2Dは、スカラップ状の円と呼ばれる非円形の薄板形状220の一例を示しており、これは、貫通孔が導入され得る外周近くの低応力領域を含む。形状220は、その他の円形の形状から突出した「スカラップ」を導入し、その他の円形の外周を超えてわずかに突出する。形状220は、その他の円形の薄板形状の外周に沿って等間隔の8つのスカラップ222を有する。遠心荷重下では、スカラップは一般的なフープ応力から効果的に保護される領域であるため、非常に低い応力状態にある。したがって、応力集中の問題を起こすことなく、各スカラップに1つ以上の貫通孔を簡単に導入することができる。この方式により、軸方向向きのボルトを使用して薄板を接合できる。さらに、軸方向ボルトは、完全に組み立てられたロータの上部および底部にあるそれぞれのスタブシャフトとの相互接続を容易にする末端の上部エンドプレートおよび下部エンドプレートに接合または締結されてもよい。
【0066】
形状220の突出部は、互いに等距離にあり、スカラップの形状を有しているが、本発明はこれに限定されるものではない。他の実施形態において、突出部は互いに等距離になくてもよく、突出部の形状はスカラップ以外の形状を有していてもよい。
【0067】
本発明の一般性を説明するために、図2Eは、オクトスクエアと呼ばれる形状240を示しており、これは、正方形の四隅のそれぞれを対称的に切り取ることによって正方形から得られる八角形のことである。遠心荷重を適用し、「オクトスクエア」薄板の積層体の3Dモデルの有限要素解析を行うと、オクトスクエアの頂点は、大部分の形状の体積に比べてはるかに低い応力レベルの状態であった。有限要素解析において、フォンミーゼス相当応力は、ロータの中央領域の一般的な応力レベルに比べ、頂点近くでは1桁減少する。したがって、各頂点近くの領域では、性能を制限する応力集中を発生させることなく、貫通孔を維持することができる。
【0068】
貫通孔を使用することで、組み立てられた薄板積層体に3次元の剛性を与える一組の構造保持ボルトを簡単に導入できる。このようなアセンブリにおける課題の1つは、可変負荷条件下や、変化する温度などの操作条件全体において、ずれを回避することである。ずれがあるとバランスが崩れる可能性があり、さらに悪いことに、このずれが回転フレームに大きな減衰を与える場合、動的な不安定性につながる可能性がある。ずれは、いずれも事実上破壊モードという結果をもたらす。このずれを防ぐために、スカラップまたは頂点内の貫通孔の近位領域において積層体全体にわたって適正な圧縮面の接触荷重を維持するように、保持貫通ボルトの寸法と張力を特定すべきである。ずれに対する摩擦を考慮し、求められる圧縮面の接触応力を計算した後、貫通ボルトの直径、材料、および張力レベルを計算する。
【0069】
ボルトの張力レベルを確認する便利な方法は、ボルトに張力がかかっているときのボルトの長さの伸びを測定することである。これにより、従来のボルトトルク仕様を使用することとは対照的に、ボルトのひずみと応力状態を直接測定できる。
【0070】
もう1つの考慮事項は、寛容な貫通孔スロットライナを使用して、ボルトの挿入中および動作中のボルトおよび薄板インターフェース(interface)の摩耗を軽減することである。繰り返し遠心荷重が負荷されると、貫通ボルトは、(繰り返して)それぞれのクリアランス孔内で偏り、遠心負荷がかかるとクリアランス孔の側壁によって支持されるようになる場合がある。繰り返し遠心荷重が負荷および除荷されることによる、側壁とのこの周期的な相互作用が摩耗プロセスを形成し、表面の摩耗とそれに続くボルトの信頼性の低下を引き起こす可能性がある。スロットライナは、アルミニウムや黄銅などより柔らかい金属、または有機材料から製造されてもよい。スロットライナは、一体型管またはスロット付き管として製造できる。後者は、例えば、厚さ0.1~1.0mmのアルミニウム素材のシートからスロットライナを曲げ形成することによって製造されてもよい。
スタブシャフトへの接合
【0071】
特定の実施形態において、動作、休止、または輸送中に2つ以上の機械ベアリングによって拘束される回転システムの場合、積層薄板ロータは、ベアリングとインターフェースするために一対のスタブシャフトに接合されなければならない。以下では、積層薄板ロータのいずれかの端部にも同様の接合方式が使用され得ることから、ロータ薄板積層体の一端に焦点を合わせて説明する。
【0072】
上述したものと同様の構造用貫通ボルトを使用して、エンドプレートに接続してもよい。本明細書で使用されるエンドプレートという用語は、とりわけ、単一の中実部品であってもよく、またはいくつかの部品から組み立てられるものであってもよい。エンドプレートの目的は、ロータの外周近くの軸方向の貫通ボルトと中央のスタブシャフトの間に構造的に十分な接続を与えるためである。
【0073】
特定の実施形態において、中実の円形エンドプレートが使用される。スピンするディスクのピーク相当応力は中央で発生する。円筒シャフトまたは他の戦略的に設計されたスタブシャフトを平板に接合するために使用されるいずれの方法も、このピーク応力領域に応力集中部を生成する。さらに、薄板形状の設計を考慮して上述したように、外周近くの円形エンドプレートに貫通孔を導入すると、深刻な局所応力集中が発生する。中心および/または外周におけるこの応力集中は、ロータの最大速度、つまりエネルギ貯蔵容量を制限する。ロータの上部と底部のエンドプレートの形状は、シャフト接続、および構造用貫通ボルトへの接続に対する応力を軽減するように作成されなければならない。
【0074】
特定の実施形態において、本明細書で持ち上げ磁石150と呼ばれる、磁石ベースの除荷システムでは、システムベアリングに課されるであろうその重力負荷を打ち消すためにロータに磁気浮上力を与える。持ち上げ磁石150と相互作用するために、フライホイールロータ130用の強磁性の上部鋼エンドプレートの領域を真密度化および円対称に維持することが望ましい。したがって、磁気浮上を使用すると、上部エンドプレートの設計に1つの制約が課せられる。
【0075】
図3は、プレートがスポーク310を有するように、外径の周りから材料を除去するエンドプレート300の一実施形態を示す。エンドプレート300では、材料が除去され、中央領域320から半径方向外側に延在するスポーク310が作成される。中央領域320は、通常、中実鋼で作られ、持ち上げ磁石と相互作用して、フライホイールロータ130を浮上させる。エンドプレート300の外周において質量を軽減することによって、中央領域320の応力を効果的に減少させ、下部スタブシャフト134への取り付けを可能にする。エンドプレート300は、とりわけ、中心孔330、ボア、ボルトサークル、またはシャフトに接続するための溶接を含む、様々なメカニズムによってスタブシャフト134に取り付けられてもよい。この設計において、使用するスポークは任意の数であってもよい。特定の実施形態において、スポーク310の端部は、前述した貫通ボルトに直接接続することによって、隣接する薄板積層体に接続される。特定の実施形態において、薄板積層体は上部エンドプレートおよび底部エンドプレートにより支えられる。他の実施形態では、薄板積層体の上部または底部に単一のエンドプレートのみがあってもよい。エンドプレート300の中央領域は、通常、中実の強磁性鋼で作られ、持ち上げ磁石と相互作用する。持ち上げ磁石150はロータ130の上部に位置しているため、この制約は、ロータ130上部のエンドプレートにのみ必要である。したがって、特定の実施形態では、下部エンドプレートの中央領域は、強磁性鋼で作られなくてもよい。
【0076】
また、他の機械的接続が使用されてもよい。スポーク310は、スポークの長さ沿いよりもスポークの端部に質量がより多くなるように、外側に向かって先細になってもよく、またはドッグボーン形状であってもよい。スポーク310の端部は、外径の周りのリムを介して接続されてもよい。スポークの端部に質量を追加することによって、スポークの端部が遠心荷重を受けた際に隣接する円形の板と同等の半径方向の変位を経験するように設計でき、これによって、貫通ボルト接合に対してスポークに応力集中が生じることを防ぐ。スポーク310の長さおよび幅は、プレートの中心における最大許容応力およびロータを持ち上げるために使用される除荷磁石の面積によって決定される。
【0077】
特定の実施形態において、エンドプレート300は、上記以外の特性を有してもよい。例えば、エンドプレートは、平坦な外形を有するのではなく、三次元的形状を有していてもよい。中央ハブは任意の直径であればよく、エンドプレート全体の直径は必ずしも薄板積層体の直径と同一である必要はない。スポークが中央ハブと接触するエンドプレート300内のフィレットは、局所的な応力集中を十分に緩和する任意の半径であればよく、スポークの端部の質量は、半径方向の変位が隣接する薄板積層体の変位と一致するように、適正な遠心力が加わる任意の形状にすることができる。スポーク310は、外側に向かって先細になり、スポークの端部に向かって質量が増加してもよく、または内側に向かって先細りになっていてもよい。スポーク310は、図3に示すように、質量を増加させるためにスポークの端部に追加的な特性を有していてもよい。
【0078】
特段の断りが無い限り、エンドプレート300の設計および構造に関する注記は、以下に説明する他のエンドプレートの実施形態にも適用される。
【0079】
モノリシックで中実鋼のエンドプレート、つまり単一の鋼片から作られたエンドプレートを使用することは、材料コスト、機械加工コスト、および応力パターンの点で最適ではない場合がある。中実鋼で作られたエンドプレート300の実施形態では、円形または長方形のいずれかである他の中実のプレートから、製造においてかなりの量の材料の犠牲、すなわち除去を必要とする。また、製造には、かなりの機械加工ステップと仕上げステップを必要とする。また、一体型の中実鋼のスポークを保持している部品であるため、残留遠心荷重によって依然として中央領域に制限的な応力(limiting stresses)が与えられる可能性がある。
【0080】
これらの潜在的な課題を回避するために、エンドプレートの実施形態では、中央領域に締め付けられる各々のスポーク(discrete spokes)を有してもよい。本明細書で使用される、各々のスポークは、とりわけボルト、溶接またはスタッドなどの締結機構を介して、エンドプレートの中央領域に付着または締結される。対照的に、エンドプレート300のスポーク310および中央領域320は、単一の材料片から機械加工される。選択される材料の例としては、とりわけ、アルミニウム、鋼、チタン、および複合材料が挙げられる。
【0081】
図4は、各々のスポーク410を有するエンドプレート400の一実施形態である。スポーク410は、実質的に中空の管412で作られている。中空管412は、断面が長方形または円形であってもよく、高強度および十分に高い強度対重量比を有する任意の好適な材料から製造されてもよい。例えば、炭素繊維複合材料管は、断面形状、寸法、壁の厚さ、および材料の多くの選択肢で商業的に提供されており、かなり好適な選択が可能である。鋼よりも密度の低い特定の材料、例えば炭素繊維の各々のスポークを使用すると、鋼よりも密度が低く、中空の材料であるため、質量は減少するにもかかわらず、高強度鋼と同様の引張強度を保持する。この外周領域の質量が減少すると、中実の中央領域において遠心荷重は小さくなる。このように各々のスポークを設計することにより、中央プレートのみが小さい直径を有するため、材料コストも軽減され、製造時における材料の落下が最小限になる。
【0082】
スポーク410のそれぞれは、エンドプレート400の中央領域420から突出する丸いスタッド414にインターフェースまたは締結される。中空スポーク410は、エンドプレート300を参照して、上記のように多くの可能な材料で作られてもよい。特定の実施形態では、エンドプレート400は、各スポークの外側末端にラグ430を有し、それぞれの貫通ボルトへの構造的インターフェースを与える。
【0083】
図5は、長方形の断面を有する複数の各々のスポーク510を備えたエンドプレート500の断面を示す。注目すべきことに、スポーク510は、中央の中実鋼の中央領域520から機械加工された突出したスタブ530と直接インターフェースすることができる。貫通ボルト540により、エンドプレート500は下部の薄板に接続される。ラグは、貫通ボルト540とともに外側の末端で使用されてもよく、使用されなくてもよい。
【0084】
図6は、スポーク610を備えたエンドプレート600の別の実施形態を示す。エンドプレート600の配置は、エンドプレート400の配置とほとんど同様である。しかしながら、エンドプレート600において、スポークは、中実の金属丸棒(例えば、高強度鋼)から機械加工され、中央領域620のボア612へのねじ込みまたは締まりばめを使用して、エンドプレート600の中央領域620に締め付けられる。スポーク610はまた、それらの遠位端部にラグ630を組み込んで、それぞれの構造用貫通ボルトとのインターフェースを容易にする。
【0085】
図7Aおよび図7Bは、複数のスポーク710を備えたエンドプレート700の別の実施形態を示す。この実施形態では、中央領域720の外径は、一対の放射状のタップ孔を備えた平坦なエリアを有する。次に、スポーク710の近位端部にある対応するフランジ730を、従来の機械ネジ734を使用して中央領域720に締め付けてもよい。
【0086】
図7Cおよび図7Dは、複数のスポーク750を備えたエンドプレート740のさらに別の実施形態を示す。この実施形態では、中央領域760の外径は、ターンバックル取付機構762を有する。
【0087】
図8Aおよび図8Bは、複数のスポーク810を備えたエンドプレート800の別の実施形態を示す。さらに別の実施形態において、中央領域820は、その周りに、1つ以上のせん断ピン830を介してスポーク810を接続するために使用される軸方向の孔を有する。エンドプレート800は、スポーク810ごとに2つの軸方向ピン830および2つの孔(それらはピン830で埋まっているので見えない)を有する。エンドプレート800の別の実施形態では、スポークごとに1つの軸方向ピン830、またはスポークごとに2つ以上の軸方向ピンがあってもよい。さらに別の実施形態では、軸方向せん断ピン830は、貫通ボルトに置き換えることによって、各スポークを中央プレートに摩擦的に挟持してもよい。
【0088】
図9Aおよび9Bは、複数のスポーク910を備えたエンドプレート900の別の実施形態を示す。この実施形態では、中央領域920は、スポーク910の端部に、対応する特性(feature)とインターフェースするモミの木スタイルの切欠き930を有する。別の実施形態では、切欠き930は、スポーク910と中央領域920との間の拘束接合部を維持する、球状および根状などの代替の幾何学模様を有することができる。モミの木は、航空宇宙産業で一般的に使用されている概念であり、耐久性および自動ロック機能を持つ。さらに、ロック機構、とりわけ、ロックワイヤ、止めねじ、ピーニング、ピン、またはキーを使用して、組み立て後にスポークを適した位置に保持してもよい。
【0089】
図3図9に示すエンドプレートの実施形態はすべて、前述の理由により、スポークを含む。一般に、本発明は、回転対称であり、中央領域を有し、かつ中央領域から半径方向外側に広がるスポークを有するエンドプレートを包含する。スポークを中央領域に締め付けるための様々なスポーク形状および機構を使用してもよい。また、スポークおよび中央領域は、とりわけ鋼、プラスチック、および炭素繊維を含む様々な材料で作られてもよい。また、エンドプレートは、ボルトを使用可能にするために中央領域に1つ以上の孔を有していてもよい。また、スポークの遠位端部は、エンドプレートを薄板積層体に締め付けるボルトを使用可能にするための貫通孔を有していてもよい。
【0090】
図10は、エンドプレートに取り付けられるスタブシャフト1000の一実施形態を示す。スタブシャフト1000は、フライホイール130と回転対称である。スタブシャフト1000は、上部の、円筒形セクション1010と、連結セクション1015と呼ばれる底端部とを有し、これは、エンドプレート300、400、500、600、700、800、900などのエンドプレートに取り付けられる。
【0091】
連結セクション115は、1つ以上のフランジ1030および中央領域1020を含む。スタブシャフト1000の底部にあるフランジ1030は、溶接、またはねじボルトなどの機械的取り付けを介してエンドプレートに接続される。特定の実施形態において、中央領域1020が円錐形状を有することによって、中央領域1020が撓むことを可能にし、フランジ1030が十分な軸方向剛性を維持しながら半径方向に容易に移動する。この設計は、エンドプレートへの接続部でのロータ130による半径方向の膨張および収縮を収容する。
【0092】
スタブシャフト1000は、横方向の曲げコンプライアンスが付与されてもよい。フライホイールユニット100のサスペンション機能として、このような曲げコンプライアンスを使用することによって、共振モードを管理してもよい。多くの場合において、通常の動作中にこのような共振を引き起こすのを避けるために、このようなモーダル周波数を作動速度範囲より低く設計することは戦略的である。
バランシング
【0093】
積層薄板ロータは、いくつかの部品から組み立てられるため、組み立てられる際に、ロータが静不釣合いおよび動不釣合いの両方の状態になり得ると予想される。本明細書で使用される静不釣合いは、ロータのベアリングジャーナルによって定義されるように、その回転軸に対するロータの質量中心のオフセットを指す。動不釣合いとは、ベアリングジャーナルによって定義された回転軸に対する極慣性モーメントの主軸の傾斜角を指す。標準のバランシングマシンを使用して、静釣合いおよび動釣合いを評価および微調整できる、つまり、2面釣り合わせを提供できる。
【0094】
バランスをとるには、通常、特定位置においてロータの質量を追加または除去する必要がある。例えば、形状220の積層薄板ロータとともに、ロータのバランスを調整するために段階的に研磨できる犠牲材料を設計することができる。図11は、形状220を参照して説明したスカラップ突出部から等距離にあり、それぞれが外周に配置された追加的なバランシング突起を含む薄板形状1100を示す。特定の実施形態では、各スカラップ1110に対して、バランシング突起1120が存在する。バランシング突起1120は、形状1100に示されるように、標準のスカラップ1110とは異なるサイズを有すればよい。バランシング突起1120は、低応力の領域に位置しているので、ロータシステムにおいて重要な構造的役割を果たすことはない。ロータがバランシングマシンに取り付けられている場合、突起1120を研磨することでバランス調整し、適切なバランスをとることができる。
【0095】
動不釣合いまたは静不釣合いを修正するために、ロータの薄板またはエンドプレートとスタブシャフトアセンブリに質量を追加することもできる。図12は、ロータ薄板上の低応力タブ1220の別の実施形態を示す。タブ1220は、形状1100の同等のタブよりも大きく、さらにタブ1220は、孔1230を含む。ロータ薄板が積み重ねられている際に、必要なバランシング修正に応じて、ロータの厚さ全体または部分的に、様々な密度の材料を貫通孔である孔1230に追加することができる。この概念は、エンドプレートにも適用できる。
【0096】
形状1200は、4つの平面のタブと4つの円弧のタブを有し、これは特定の正方形シートについて材料利用率と掃引体積を最適化する。面積率は、0.81であり、掃引体積率は、0.95である。
【0097】
別の実施形態では、これらの同じバランシング突起は、例えば、既知の質量を増加させるねじ付き金具または圧入ピンを介して、質量を追加するための位置として使用されてもよい。質量の除去と比べると、質量の追加は、バランス調整時の微調整のため簡単に元に戻すことができるという利点がある。また、研磨よりも予測可能な結果が得られる。
【0098】
その他、このような犠牲的なバランシング突起または外周の質量体を実現するために、多くの可能な類似の配置も可能である。例えば、多角形の場合、各頂点は通常、応力の低い局所領域である。したがって、各頂点は、貫通孔のために、またはバランシング突起として使用されてもよい。
【0099】
この開示を読むにあたって、当業者は、本明細書に開示された趣旨を通じて、さらに追加の代替の構造的および機能的設計を理解するであろう。したがって、特定の実施形態および応用を例示および説明したが、開示した実施形態は、本明細書に開示した正確な構造および構成要素に限定されないことが理解されるべきである。当業者に明らかである様々な修正、変更および変形は、添付の特許請求の範囲で定義される精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に開示される方法および装置の配置、操作および詳細においてなされ得る。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12
【国際調査報告】