(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-29
(54)【発明の名称】組換えワクシニアウイルスおよびその使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 7/01 20060101AFI20220322BHJP
A61K 35/768 20150101ALI20220322BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220322BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220322BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220322BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220322BHJP
A61K 31/522 20060101ALI20220322BHJP
C12N 15/54 20060101ALN20220322BHJP
C12N 15/39 20060101ALN20220322BHJP
C12N 9/12 20060101ALN20220322BHJP
C07D 473/18 20060101ALN20220322BHJP
【FI】
C12N7/01
A61K35/768
A61P35/00
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K9/08
A61K31/522
C12N15/54
C12N15/39
C12N9/12
C07D473/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021546834
(86)(22)【出願日】2020-02-10
(85)【翻訳文提出日】2021-09-29
(86)【国際出願番号】 IB2020051025
(87)【国際公開番号】W WO2020165730
(87)【国際公開日】2020-08-20
(32)【優先日】2019-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521353687
【氏名又は名称】イグナイト イミュノセラピー インク
(74)【代理人】
【識別番号】100133927
【氏名又は名称】四本 能尚
(74)【代理人】
【識別番号】100147186
【氏名又は名称】佐藤 眞紀
(74)【代理人】
【識別番号】100174447
【氏名又は名称】龍田 美幸
(74)【代理人】
【識別番号】100185960
【氏名又は名称】池田 理愛
(72)【発明者】
【氏名】デヴィッド エイチ. キルン
(72)【発明者】
【氏名】リリアナ マルリ アヴィダル
(72)【発明者】
【氏名】プラジット リムシリチャイ
【テーマコード(参考)】
4B050
4B065
4C076
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B050CC04
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4C087ZB26
4C087ZC75
(57)【要約】
本開示は、複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス、ワクシニアウイルスを含む組成物、および腫瘍を有する個体において腫瘍溶解を誘導するためのワクシニアウイルスまたは組成物の使用を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異種チミジンキナーゼ(TK)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、異種TKポリペプチドは、デオキシグアノシンのリン酸化を触媒しうる、複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス。
【請求項2】
チミジンキナーゼ発現または機能の欠如をもたらす改変を含む、請求項1に記載の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス。
【請求項3】
異種TKポリペプチドが、変異体単純ヘルペスウイルス(HSV)TKポリペプチドである、請求項1または請求項2に記載の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス。
【請求項4】
変異体HSV TKポリペプチドが、野生型HSV TKに対して少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、配列番号1の野生型HSV TKアミノ酸配列のアミノ酸番号表記に準拠して、L159、I160、F161、A168、およびL169の1つまたは複数の置換を含む、請求項3に記載の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス。
【請求項5】
変異体HSV TKポリペプチドが、A168H置換を含む、請求項4に記載の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス。
【請求項6】
変異体HSV TKポリペプチドが、L159I置換、I160L置換、F161A置換、A168Y置換、およびL169F置換を含む、請求項4に記載の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス。
【請求項7】
変異体HSV TKポリペプチドが、L159I置換、I160F置換、F161L置換、A168F置換、およびL169M置換を含む、請求項4に記載の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス。
【請求項8】
変異体HSV TKポリペプチドが、配列番号2、3、または4のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス。
【請求項9】
コペンハーゲン株ワクシニアウイルスである、請求項1から8のいずれか一項に記載の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス。
【請求項10】
WR株ワクシニアウイルスである、請求項1から8のいずれか一項に記載の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス。
【請求項11】
ワクシニアウイルス遺伝子の全部または一部分の欠失を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス。
【請求項12】
細胞外エンベロープウイルスの生成を強化する1つまたは複数のアミノ酸置換を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス。
【請求項13】
K151E置換を含むA34ポリペプチドをコードするA34R遺伝子を含む、請求項12に記載の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス。
【請求項14】
免疫調節性ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス。
【請求項15】
a)請求項1から14のいずれか一項に記載のワクシニアウイルスと、
b)薬学的に許容できる賦形剤と
を含む組成物。
【請求項16】
腫瘍を有する個体において腫瘍溶解を誘導する方法であって、個体に、請求項1から14のいずれか一項に記載のワクシニアウイルスまたは請求項15に記載の組成物を有効量投与するステップを含む方法。
【請求項17】
前記投与するステップが、単一用量のウイルスまたは組成物の投与を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
単一用量が、少なくとも10
6プラーク形成単位(pfu)のワクシニアウイルスを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
単一用量が、10
9~10
12pfuのワクシニアウイルスを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記投与するステップが、複数回用量のワクシニアウイルスまたは組成物の投与を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
ワクシニアウイルスまたは組成物が、1日おきに投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ワクシニアウイルスまたは組成物が、週1回投与される、請求項16から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
ワクシニアウイルスまたは組成物が、1週間おきに投与される、請求項16から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
腫瘍が、脳腫瘍、頭頸部がんの腫瘍、食道がんの腫瘍、皮膚がんの腫瘍、肺がんの腫瘍、胸腺がんの腫瘍、胃がんの腫瘍、結腸がんの腫瘍、肝臓がんの腫瘍、卵巣がんの腫瘍、子宮がんの腫瘍、膀胱がんの腫瘍、精巣がんの腫瘍、直腸がんの腫瘍、乳がんの腫瘍、または膵臓がんの腫瘍である、請求項16から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
腫瘍が結腸直腸腺癌である、請求項16から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
腫瘍が非小細胞肺癌である、請求項16から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
腫瘍がトリプルネガティブ乳がんである、請求項16から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
腫瘍が固形腫瘍である、請求項16から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
腫瘍が液状腫瘍である、請求項16から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
腫瘍が再発性である、請求項16から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
腫瘍が原発腫瘍である、請求項16から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
腫瘍が転移性である、請求項16から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
個体に第2のがん療法を施すステップをさらに含む、請求項16から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
第2のがん療法が、化学療法、生物学的療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、抗血管新生療法、寒冷療法、毒素療法、腫瘍溶解性ウイルス療法、細胞療法、および手術から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
第2のがん療法が、抗PD1薬または抗PD-L1薬を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
個体が免疫不全である、請求項16から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
ワクシニアウイルスまたは組成物の前記投与が腫瘍内である、請求項16から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
ワクシニアウイルスまたは組成物の前記投与が腫瘍周囲である、請求項16から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
ワクシニアウイルスまたは組成物の前記投与が静脈内である、請求項16から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
ワクシニアウイルスまたは組成物の前記投与が、動脈内、腹腔内、膀胱内、またはくも膜下腔内である、請求項16から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
ワクシニアウイルスと組み合わせて、ワクシニアウイルスの有害な副作用を低減するのに有効である量のガンシクロビルを個体に投与するステップを含む、請求項16から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
副作用が皮膚病変である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
配列番号2、3、または4のアミノ酸配列を含む変異体単純ヘルペスウイルス(HSV)TKポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス。
【請求項44】
配列番号2、3、または4のアミノ酸配列を含む変異体単純ヘルペスウイルス(HSV)TKポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、コペンハーゲン株ワクシニアウイルスであり、K151E置換を含むA34R遺伝子を含む複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス。
【請求項45】
配列番号11、12、または13を含む変異体単純ヘルペスウイルス(HSV)TKポリペプチドヌクレオチド配列を含む複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス。
【請求項46】
(i)請求項43~45のいずれか一項に記載のワクシニアウイルスと、(ii)薬学的に許容できる担体とを含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
テキストファイルとして提供する配列表の参照による組込み
配列表は、2020年1月24日に作成され、サイズが21KBであるテキストファイル「PC40317_SequenceListing_ST25.txt」として本文書と共に提出する。テキストファイルの内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
序文
腫瘍溶解性ウイルス(OV)は、がん細胞において選択的に複製するウイルスである。生の複製OVが、様々なヒトがんにおいて、臨床試験で試験されている。OVは、腫瘍細胞を直接溶解させるだけでなく、抗腫瘍免疫応答を引き起こしうる。一般的なOVには、単純ヘルペスウイルス(HSV)、アデノウイルス(Ad)、麻疹ウイルス(MV)、コクサッキーウイルス(CV)、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、およびワクシニアウイルス(VV)の弱毒化株が含まれる。
【0003】
ワクシニアウイルスは、宿主細胞の細胞質において複製する。広大なワクシニアウイルスゲノムは、ウイルスDNA複製に使用される種々の酵素およびタンパク質をコードする。ワクシニアは、複製の際、その外膜が異なるいくつかの感染性形態、すなわち、細胞内成熟ビリオン(IMV)、細胞内エンベロープビリオン(IEV)、細胞結合性エンベロープビリオン(CEV)、および細胞外エンベロープビリオン(EEV)を生じる。IMVは、最も豊富な感染性形態であり、宿主間の伝播の一因になると考えられ、CEVは、細胞から細胞への伝播において役割を果たすと考えられ、EEVは、宿主生物内での長距離播種にとって重要であると考えられる。
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示では、異種チミジンキナーゼポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス、および複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスを含む組成物が提供される。本開示では、腫瘍を有する個体において腫瘍溶解を誘導する方法であって、個体に、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスまたは本開示の組成物を有効量投与するステップを含む方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】野生型単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ(TK)(HSV-TK)(配列番号1)およびHSV-TK変異体(配列番号2、3、4)のアミノ酸配列の配列比較を示す図である。
【
図2】HSV-TKのアミノ酸151~175(配列番号5)およびHSV-TK変異体の対応する領域(配列番号6、7、8)の配列比較を示す図である。
【
図3】HSV-TKが、ガンシクロビルに対するワクシニアウイルスの感受性に与える影響を、ウイルス複製の観点から示すグラフである。
【
図4A】代表的なヒトがん細胞株および正常一次ヒト細胞における、HSV-TK発現のワクシニアウイルス複製に対する影響を示すグラフである。
【
図4B】代表的なヒトがん細胞株および正常一次ヒト細胞における、HSV-TK発現のワクシニアウイルス複製に対する影響を示すグラフである。
【
図4C】代表的なヒトがん細胞株および正常一次ヒト細胞における、HSV-TK発現のワクシニアウイルス複製に対する影響を示すグラフである。
【
図4D】代表的なヒトがん細胞株および正常一次ヒト細胞における、HSV-TK発現のワクシニアウイルス複製に対する影響を示すグラフである。
【
図4E】代表的な正常一次ヒト細胞および正常一次ヒト細胞における、HSV-TK発現のワクシニアウイルス複製に対する影響を示すグラフである。
【
図4F】代表的な正常一次ヒト細胞および正常一次ヒト細胞における、HSV-TK発現のワクシニアウイルス複製に対する影響を示すグラフである。
【
図5A】in vitro細胞傷害性アッセイによって評価される、ヒトがん細胞を死滅させるワクシニアウイルスの能力に対するHSV-TK発現の影響を示すグラフである。
【
図5B】in vitro細胞傷害性アッセイによって評価される、ヒトがん細胞を死滅させるワクシニアウイルスの能力に対するHSV-TK発現の影響を示すグラフである。
【
図5C】in vitro細胞傷害性アッセイによって評価される、ヒトがん細胞を死滅させるワクシニアウイルスの能力に対するHSV-TK発現の影響を示すグラフである。
【
図6A】in vitro細胞傷害性アッセイによって評価される、ヒト正常一次細胞を死滅させるワクシニアウイルスの能力に対するHSV-TK発現の影響を示すグラフである。
【
図6B】in vitro細胞傷害性アッセイによって評価される、ヒト正常一次細胞を死滅させるワクシニアウイルスの能力に対するHSV-TK発現の影響を示すグラフである。
【
図7A】肺患者由来異種移植(PDX)腫瘍モデルにおける、変異体HSV-TKを発現する腫瘍溶解性ワクシニアウイルスのin vivoでの有効性に関する図である。
【
図7B】肺患者由来異種移植(PDX)腫瘍モデルにおける、変異体HSV-TKを発現する腫瘍溶解性ワクシニアウイルスのin vivoでの有効性に関するグラフである。
【
図7C】肺患者由来異種移植(PDX)腫瘍モデルにおける、変異体HSV-TKを発現する腫瘍溶解性ワクシニアウイルスのin vivoでの有効性に関するグラフである。
【
図8A】結腸直腸PDX腫瘍モデルにおける、変異体HSV-TKを発現する腫瘍溶解性ワクシニアウイルスのin vivoでの有効性に関する図である。
【
図8B】結腸直腸PDX腫瘍モデルにおける、変異体HSV-TKを発現する腫瘍溶解性ワクシニアウイルスのin vivoでの有効性に関するグラフである。
【
図8C】結腸直腸PDX腫瘍モデルにおける、変異体HSV-TKを発現する腫瘍溶解性ワクシニアウイルスのin vivoでの有効性に関するグラフである。
【
図9A】本開示の腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスで処置したマウスにおける病変に対する局所ガンシクロビル投与の効果を示す像である。
【
図9B】本開示の腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスで処置したマウスにおける病変に対する局所ガンシクロビル投与の効果を示すグラフである。
【
図9C】本開示の腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスで処置したマウスにおける病変に対する局所ガンシクロビル投与の効果を示すグラフである。
【
図10A】本開示の腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスの複製に対する全身ガンシクロビル投与のin vivoでの効果を示すグラフである。
【
図10B】本開示の腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスの複製に対する全身ガンシクロビル投与のin vivoでの効果を示す像である。
【
図11A】肺患者由来異種移植(PDX)腫瘍モデルにおける、変異体HSV-TKを発現する腫瘍溶解性ワクシニアウイルスのin vivoでの有効性に関する図である。
【
図11B】肺患者由来異種移植(PDX)腫瘍モデルにおける、変異体HSV-TKを発現する腫瘍溶解性ワクシニアウイルスのin vivoでの有効性に関するグラフである。
【
図12A】結腸直腸がん異種移植腫瘍モデルにおける、変異体HSV-TKを発現する腫瘍溶解性ワクシニアウイルスのin vivoでの有効性に関する図である。
【
図12B】結腸直腸がん異種移植腫瘍モデルにおける、変異体HSV-TKを発現する腫瘍溶解性ワクシニアウイルスのin vivoでの有効性に関するグラフである。
【
図13A】結腸直腸がん異種移植腫瘍モデルにおける、変異体HSV-TKを発現する腫瘍溶解性ワクシニアウイルスのin vivoでのリアルタイム分布および複製を検出するための放射標識TK基質の使用に関する像である。
【
図13B】結腸直腸がん異種移植腫瘍モデルにおける、変異体HSV-TKを発現する腫瘍溶解性ワクシニアウイルスのin vivoでのリアルタイム分布および複製を検出するための放射標識TK基質の使用に関する像である。
【
図13C】結腸直腸がん異種移植腫瘍モデルにおける、変異体HSV-TKを発現する腫瘍溶解性ワクシニアウイルスのin vivoでのリアルタイム分布および複製を検出するための放射標識TK基質の使用に関するグラフである。
【
図13D】結腸直腸がん異種移植腫瘍モデルにおける、変異体HSV-TKを発現する腫瘍溶解性ワクシニアウイルスのin vivoでのリアルタイム分布および複製を検出するための放射標識TK基質の使用に関するグラフである。
【
図13E】結腸直腸がん異種移植腫瘍モデルにおける、変異体HSV-TKを発現する腫瘍溶解性ワクシニアウイルスのin vivoでのリアルタイム分布および複製を検出するための放射標識TK基質の使用に関するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
定義
本明細書で使用するとき、「腫瘍溶解性」ワクシニアウイルスとは、正常(非がん性)細胞に比べてがん細胞に優先的に感染し、がん細胞を死滅させるワクシニアウイルスである。
【0009】
本明細書で使用する「異種」とは、それぞれ、所与の生物の未変性核酸またはタンパク質中に見出されないヌクレオチドまたはポリペプチド配列を意味する。たとえば、本開示の組換えワクシニアウイルスという文脈で、「異種」チミジンキナーゼ(TK)(ここで、異種TKは、変異体(TKv)ポリペプチドである)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸は、ワクシニアウイルスには本来見出されない核酸であり、すなわち、コードされているTKvポリペプチドは、自然に存在するワクシニアウイルスによってコードされない。
【0010】
本明細書において区別なく使用される用語「ポリヌクレオチド」および「核酸」とは、いずれかの長さであり、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのいずれかである、重合体の形のヌクレオチドを指す。したがって、この用語は、限定はしないが、一本鎖、二本鎖、もしくは多重鎖DNAもしくはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、またはプリンおよびピリミジン塩基、もしくは他の天然、化学もしくは生化学修飾、非天然、もしくは誘導体化ヌクレオチド塩基を含む重合体を包含する。
【0011】
本明細書で使用するとき、用語「処置」、「処置する」などとは、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを指す。効果は、疾患もしくはその症状を完全もしくは部分的に予防するという点で、予防的な場合もあり、かつ/または疾患および/もしくは疾患に起因する有害作用の部分的もしくは完全な治癒という観点から、治療的である場合もある。本明細書で使用する「処置」は、哺乳動物、たとえばヒトにおける疾患のいずれの処置も範囲に含み、(a)疾患の素因がありうるが疾患を有するとまだ診断されていない対象において疾患が生じるのを予防すること、(b)疾患を抑制する、すなわち、その進展を阻止すること、および(c)疾患を軽減する、すなわち、疾患を後退させることを包含する。
【0012】
本明細書において区別なく使用される用語「個体」、「対象」、「宿主」、および「患者」とは、限定はしないが、ネズミ(たとえば、ラット、マウス)、ウサギ目動物(たとえば、ウサギ)、非ヒト霊長類、ヒト、イヌ、ネコ、有蹄類(たとえば、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ)などを始めとする哺乳動物を指す。
【0013】
「治療有効量」または「有効量」とは、疾患を処置するために哺乳動物または他の対象に投与されたとき、疾患のそのような処置を実現するのに十分である、薬剤(たとえば、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス)の量、または2種の薬剤(たとえば、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスと第2の治療薬)を合わせた量を指す。「治療有効量」は、薬剤、疾患およびその重症度、ならびに処置を受ける対象の年齢、体重などに応じて様々となる。
【0014】
本発明についてさらに述べる前に、本発明は、記載される特定の実施形態に限定されず、そのため、当然様々となりうることが理解される。また、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、文書で使用する術語は、特定の実施形態について述べる目的のものにすぎない。
【0015】
値の範囲が示されている場合では、その範囲の上限と下限の間にある、文脈からそうでないことが明らかに規定されない限り10分の1の単位の下限までの各介在値、およびその明示された範囲における他のいずれかの明示または介在値が、本開示内に包含されると理解される。こうしたより小さい範囲の上限および下限は、独立に、より小さい範囲に含まれる場合もあり、明示された範囲に詳細に除外される境界があることを仮定して、本発明の範囲内に包含される。明示された範囲が境界の一方または両方を含む場合では、含まれるそうした境界のいずれかまたは両方を除外する範囲も、本発明に含まれる。
【0016】
別段定義しない限り、本明細書で使用するすべての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の技術者が一般に理解しているのと同じ意味を有する。本発明を実施または試験する際は、本明細書に記載するものと同様または同等ないずれの方法および材料を使用してもよいが、好ましい方法および材料についてここで述べる。本明細書で言及するすべての公表文献は、参照により本明細書に組み込まれて、公表文献の引用と関係のある方法および/または材料が開示および記載される。
【0017】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用するとき、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈からそうでないことが明らかに規定されない限り、複数の指示対象を包含することを指摘しなければならない。したがって、たとえば、「ワクシニアウイルス」への言及は、複数のそうしたワクシニアウイルスを包含し、「変異体チミジンキナーゼポリペプチド」への言及は、1種または複数の変異体チミジンキナーゼポリペプチドおよび当業者に知られているその均等物への言及を包含する、などである。請求項は、取捨選択できるいずれかの要素が除外されるように起草される場合があることもさらに指摘される。そのため、この言明は、請求項要素の列挙と併せた「のみ」、「だけ」などの排他的用語法の使用、または「否定的」限定の使用について、先行根拠(antecedent basis)となるものとする。
【0018】
明確にするために、別個の実施形態という状況で記載されている、本発明のある特定の特色は、単一の実施形態として組み合わせて提供されてもよいと認識される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態という状況で記載されている、本発明の種々の特色は、別々に、または適切ないずれかの下位組合せとして提供されてもよい。本発明に関係する実施形態の組合せはすべて、本発明に明確に包含され、ありとあらゆる組合せが個々にかつ明示的に開示されたかの如く、本明細書において開示される。加えて、種々の実施形態およびその要素の下位組合せもすべて、本発明に明確に包含され、ありとあらゆるそうした下位組合せが個々にかつ明示的に本明細書で開示されたかの如く、本明細書において開示される。
【0019】
本明細書で開示する公表文献は、本出願の出願日より前のその開示についてのみ提供される。本明細書には、本発明が、先行発明のせいで、そうした公表文献に先行する権利を与えられないことを容認すると解釈されるものは何もない。さらに、示した公表の日付は、実際の公表日と異なる場合があり、個々に確認する必要があることもある。
【0020】
詳細な説明
本開示では、異種チミジンキナーゼ(TK)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、異種TKポリペプチドは、単純ヘルペスウイルス(HSV)TKの変異体である、複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス、および複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスを含む組成物が提供される。本開示では、腫瘍を有する個体において腫瘍溶解を誘導する方法であって、個体に、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスまたは本開示の組成物を有効量投与するステップを含む方法が提供される。
【0021】
腫瘍溶解性ワクシニアウイルス
本開示では、異種TKポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、異種TKポリペプチドは、単純ヘルペスウイルスTK(HSV-TK)ポリペプチドの変異体である、複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスが提供される。野生型HSV-TKの変異体である異種TKポリペプチドを、本明細書では、「HSV-TKvポリペプチド、「TKvポリペプチド」、または簡潔に「TKv」と呼ぶ。
【0022】
本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、宿主細胞中に存在するとき、ワクシニアウイルスチミジンキナーゼの産生を実質的にもたらさない、または代わりにワクシニアウイルスチミジンキナーゼ活性が欠如している。内因性ワクシニアウイルスチミジンキナーゼ活性が欠如しているウイルスを、「チミジンキナーゼ陰性」、「TK陰性」、「チミジンキナーゼ欠損」、または「TK欠損」であると呼ぶことができる。ある場合では、TK座に別の遺伝子を挿入することにより、ウイルスをTK欠損にすることができる。ある場合では、TKコード領域の一部分または全TKコード領域を欠失させることにより、本開示の組換えワクシニアウイルスをTK欠損にすることもできる。たとえば、ある場合では、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、J2R欠失を含む。たとえば、Mejia-Perezら(2018) Mol.Ther.Oncolytics 8:27を参照されたい。ある場合では、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、J2R領域への挿入を含み、その結果、ワクシニアウイルスTK活性が低下し、またはゼロになる。野生型ワクシニアウイルスでは、J2R領域がワクシニアウイルスTKをコードする。一部の例では、TKvコード化ヌクレオチド配列によって、ワクシニアウイルスTKコード化ヌクレオチド配列のすべてまたは一部が置き換えられる。たとえば、ある場合では、異種TKポリペプチドコード化ヌクレオチド配列によって、ワクシニアウイルスのJ2R領域の少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも75%、または100%が置き換えられる。ある場合では、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、内因性(ワクシニアウイルスにコードされている)TKコード化遺伝子の転写が低減または消去されるような改変を含む。たとえば、ある場合では、内因性(ワクシニアウイルスにコードされている)TKコード化遺伝子の転写が、改変なしでの内因性(ワクシニアウイルスにコードされている)TKコード化遺伝子の転写に比べて、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または90%より高く、または100%低減される。
【0023】
ある場合では、複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスの複製が、野生型HSV-TKポリペプチドをコードする複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスの複製が阻害される濃度より低い濃度のガンシクロビルによって阻害される。たとえば、野生型HSV-TKの変異体をコードする本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスの複製が最大の50%(IC50)阻害されるガンシクロビル阻害濃度は、野生型HSV-TKポリペプチドをコードする複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスの複製の阻害についてのガンシクロビルIC50より少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも80%低い。ある場合では、前記IC50は、実施例1(ウイルス複製のガンシクロビルに対する感受性)において開示する条件でHeLa細胞を使用してin vitroで求められる。
【0024】
異種TKポリペプチド
上で指摘したとおり、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、TKvポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。TKvポリペプチドは、ある場合では、I型TKポリペプチドである。ある場合では、TKポリペプチドは、デオキシグアノシン(dG)一リン酸を生じるdGのリン酸化を触媒しうる。ある場合では、それぞれ、デオキシチミジン(dT)一リン酸およびデオキシグアノシン(dG)一リン酸を生じる、dTとdG両方のリン酸化を触媒しうるTKポリペプチド。
【0025】
本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス中に存在するヌクレオチド配列によってコードされている異種TKポリペプチドは、野生型HSV-TKの変異体であり、TKvポリペプチドは、野生型HSV-TK(配列番号1)に対して1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。したがって、たとえば、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス中に存在するヌクレオチド配列によってコードされているTKポリペプチドは、野生型HSV-TKに対して1~40のアミノ酸置換を含む。たとえば、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス中に存在するヌクレオチド配列によってコードされているTKポリペプチドは、野生型HSV-TK(配列番号1)に対して、1~5、5~10、10~15、15~20、20~25、25~30、30~35、または35~40のアミノ酸置換を含む。
【0026】
異なるHSV株または分離株からの多数のヒト野生型HSV TKのアミノ酸配列が当業界で知られている。たとえば、SC16株(受入番号P06479、配列番号1としても明記している)、HFEM株(受入番号P08333)、KOS株(受入番号P17402)、17株(受入番号P03176)、およびCL101株(受入番号P06478)について、GenBankにおいてHSV-TKアミノ酸配列が入手可能である。これらの配列は、高度な相同性を示し、配列番号1の配列との配列同一性が少なくとも98.67%である。野生型HSV-TK配列の高度な相同性を考慮すると、本開示の組換えワクシニアウイルスに含めることのできるHSV-TK変異体は、配列番号1の配列に関して本明細書に記載する詳細な突然変異を導入することにより、今日知られているまたは将来発見される野生型HSV-TKのいずれから構築してもよい。
【0027】
本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス中に存在する異種TKポリペプチドは、次の野生型HSV-TKアミノ酸配列:
MASYPGHQHASAFDQAARSRGHSNRRTALRPRRQQEATEVRPEQKMPTLLRVYIDGPHGMGKTTTTQLLVALGSRDDIVYVPEPMTYWRVLGASETIANIYTTQHRLDQGEISAGDAAVVMTSAQITMGMPYAVTDAVLAPHIGGEAGSSHAPPPALTLIFDRHPIAALLCYPAARYLMGSMTPQAVLAFVALIPPTLPGTNIVLGALPEDRHIDRLAKRQRPGERLDLAMLAAIRRVYGLLANTVRYLQGGGSWREDWGQLSGTAVPPQGAEPQSNAGPRPHIGDTLFTLFRAPELLAPNGDLYNVFAWALDVLAKRLRPMHVFILDYDQSPAGCRDALLQLTSGMIQTHVTTPGSIPTICDLARTFAREMGEAN(配列番号1)に対するアミノ酸配列同一性が少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%であるアミノ酸を含む場合があり、TKvポリペプチドは、配列番号1に対して1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。
【0028】
ある場合では、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス中に存在する異種TKポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、次の野生型HSV-TKヌクレオチド配列:
ATGGCCTCATATCCTGGTCATCAACACGCTAGTGCCTTCGACCAGGCGGCGAGATCTCGAGGACATTCGAATAGACGAACAGCATTACGTCCACGAAGACAACAGGAGGCGACAGAGGTCCGACCTGAACAGAAAATGCCTACACTTTTGCGAGTCTACATAGATGGTCCCCACGGAATGGGTAAAACTACCACTACCCAGTTGTTAGTCGCCTTAGGTTCTCGAGACGATATTGTCTATGTGCCCGAGCCCATGACTTACTGGCGAGTCCTAGGTGCATCGGAAACGATAGCGAACATCTATACGACACAGCATCGTTTGGACCAGGGAGAGATCTCGGCCGGTGACGCAGCAGTCGTAATGACAAGTGCTCAAATTACGATGGGTATGCCTTATGCGGTAACTGACGCAGTCTTGGCTCCGCATATCGGTGGAGAGGCCGGATCGTCACACGCTCCCCCTCCAGCGTTAACTCTAATTTTCGACCGACACCCAATTGCTGCGCTTTTATGTTACCCCGCGGCAAGATATTTAATGGGATCAATGACCCCGCAAGCTGTGTTAGCTTTTGTGGCATTGATTCCGCCAACCTTACCTGGAACGAATATAGTCCTTGGTGCATTACCAGAGGATAGACATATTGACAGACTTGCTAAGCGACAGCGACCGGGAGAGAGATTGGACTTAGCAATGTTGGCGGCCATAAGACGAGTCTACGGACTTTTGGCTAATACGGTTAGATATTTGCAAGGAGGAGGAAGTTGGCGAGAGGATTGGGGTCAGTTGTCTGGTACTGCTGTGCCTCCGCAGGGAGCTGAGCCTCAGTCTAACGCTGGACCACGACCTCACATCGGAGATACGTTATTTACCCTATTCCGTGCGCCGGAATTATTAGCACCCAACGGTGATCTATACAACGTCTTTGCGTGGGCCTTGGACGTACTTGCAAAGCGTCTACGTCCTATGCATGTCTTCATCCTAGACTACGACCAGTCGCCCGCGGGATGTCGAGACGCCTTGCTACAGTTGACCTCGGGAATGATTCAGACACACGTCACCACCCCGGGATCCATACCCACTATTTGTGACTTAGCAAGAACATTTGCCCGAGAAATGGGTGAAGCTAAC(配列番号10)に対する少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む場合がある。この配列は、ワクシニアウイルス向けにコドン最適化されている。ある場合では、異種TKポリペプチドは、野生型HSV-TKアミノ酸配列(上で明記、配列番号1)に対して1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。たとえば、ある場合では、異種TKポリペプチドは、L159、I160、F161、A168、およびL169の1つまたは複数の置換を含む。
【0029】
ある場合では、異種TKポリペプチドは、上で明記した野生型HSV-TKアミノ酸配列(配列番号1)に対するアミノ酸配列同一性が少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%であるアミノ酸配列を含むが、L159において置換を有する、すなわち、アミノ酸159がLeu以外である。たとえば、アミノ酸159は、Gly、Ala、Val、Ile、Pro、Phe、Tyr、Trp、Ser、Thr、Cys、Met、Gln、Asn、Lys、Arg、His、Asp、またはGluである。ある場合では、置換は、L159I置換である。ある場合では、置換は、L159A置換である。ある場合では、置換は、L159V置換である。
【0030】
ある場合では、異種TKポリペプチドは、上で明記した野生型HSV-TKアミノ酸配列(配列番号1)に対するアミノ酸配列同一性が少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%であるアミノ酸配列を含むが、I160において置換を有する、すなわち、アミノ酸160がIle以外である。たとえば、アミノ酸160は、Gly、Ala、Val、Leu、Pro、Phe、Tyr、Trp、Ser、Thr、Cys、Met、Gln、Asn、Lys、Arg、His、Asp、またはGluである。ある場合では、置換は、I160L置換である。ある場合では、置換は、I160V置換である。ある場合では、置換は、I160A置換である。ある場合では、置換は、I160F置換である。ある場合では、置換は、I160Y置換である。ある場合では、置換は、I160W置換である。
【0031】
ある場合では、異種TKポリペプチドは、上で明記した野生型HSV-TKアミノ酸配列(配列番号1)に対するアミノ酸配列同一性が少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%であるアミノ酸配列を含むが、F161において置換を有する、すなわち、アミノ酸161がPhe以外である。たとえば、アミノ酸161は、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Tyr、Trp、Ser、Thr、Cys、Met、Gln、Asn、Lys、Arg、His、Asp、またはGluである。ある場合では、置換は、F161A置換である。ある場合では、置換は、F161L置換である。ある場合では、置換は、F161V置換である。ある場合では、置換は、F161I置換である。
【0032】
ある場合では、異種TKポリペプチドは、上で明記した野生型HSV-TKアミノ酸配列(配列番号1)に対するアミノ酸配列同一性が少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%であるアミノ酸配列を含むが、A168において置換を有する、すなわち、アミノ酸168がAla以外である。たとえば、アミノ酸168は、Gly、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Tyr、Trp、Ser、Thr、Cys、Met、Gln、Asn、Lys、Arg、His、Asp、またはGluである。ある場合では、置換は、A168Hである。ある場合では、置換は、A168Rである。ある場合では、置換は、A168Kである。ある場合では、置換は、A168Yである。ある場合では、置換は、A168Fである。ある場合では、置換は、A168Wである。ある場合では、TKvポリペプチドは、A168の置換以外の他のいずれの置換も含まない。
【0033】
ある場合では、異種TKポリペプチドは、上で明記した野生型HSV-TKアミノ酸配列(配列番号1)に対するアミノ酸配列同一性が少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%であるアミノ酸配列を含むが、L169において置換を有する、すなわち、アミノ酸169がLeu以外である。たとえば、アミノ酸169は、Gly、Ala、Val、Ile、Pro、Phe、Tyr、Trp、Ser、Thr、Cys、Met、Gln、Asn、Lys、Arg、His、Asp、またはGluである。ある場合では、置換は、L169Fである。ある場合では、置換は、L169Mである。ある場合では、置換は、L169Yである。ある場合では、置換は、L169Wである。
【0034】
ある場合では、異種TKポリペプチドは、上で明記した野生型HSV-TKアミノ酸配列(配列番号1)に対するアミノ酸配列同一性が少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%であり、i)アミノ酸159がLeu以外であり、ii)アミノ酸160がIle以外であり、iii)アミノ酸161がPhe以外であり、iv)アミノ酸168がAla以外であり、v)アミノ酸169がLeu以外であるアミノ酸配列を含む。ある場合では、異種TKポリペプチドは、アミノ酸159がIleであり、アミノ酸160がLeuであり、アミノ酸161がAlaであり、アミノ酸168がTyrであり、アミノ酸169がPheである次のアミノ酸配列:
MASYPGHQHASAFDQAARSRGHSNRRTALRPRRQQEATEVRPEQKMPTLLRVYIDGPHGMGKTTTTQLLVALGSRDDIVYVPEPMTYWRVLGASETIANIYTTQHRLDQGEISAGDAAVVMTSAQITMGMPYAVTDAVLAPHIGGEAGSSHVPPPALTILADRHPIAYFLCYPAARYLMGSMTPQAVLAFVALIPPTLPGTNIVLGALPEDRHIDRLAKRQRPGERLDLAMLAAIRRVYGLLANTVRYLQGGGSWREDWGQLSGTAVPPQGAEPQSNAGPRPHIGDTLFTLFRAPELLAPNGDLYNVFAWALDVLAKRLRPMHVFILDYDQSPAGCRDALLQLTSGMIQTHVTTPGSIPTICDLARTFAREMGEAN(「dm30」;配列番号2)に対するアミノ酸配列同一性が少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%であるアミノ酸配列を含む。
【0035】
ある場合では、異種TKポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、コードされているアミノ酸159がIleであり、アミノ酸160がLeuであり、アミノ酸161がAlaであり、アミノ酸168がTyrであり、アミノ酸169がPheである次のヌクレオチド配列:
ATGGCCTCATATCCTGGTCATCAACACGCTAGTGCCTTCGACCAGGCGGCGAGATCTCGAGGACATTCGAATAGACGAACAGCATTACGTCCACGAAGACAACAGGAGGCGACAGAGGTCCGACCTGAACAGAAAATGCCTACACTTTTGCGAGTCTACATAGATGGTCCCCACGGAATGGGTAAAACTACCACTACCCAGTTGTTAGTCGCCTTAGGTTCTCGAGACGATATTGTCTATGTGCCCGAGCCCATGACTTACTGGCGAGTCCTAGGTGCATCGGAAACGATAGCGAACATCTATACGACACAGCATCGTTTGGACCAGGGAGAGATCTCGGCCGGTGACGCAGCAGTCGTAATGACAAGTGCTCAAATTACGATGGGTATGCCTTATGCGGTAACTGACGCAGTCTTGGCTCCGCATATCGGTGGAGAGGCCGGATCGTCACACGTGCCCCCTCCAGCGTTAACTATTTTAGCGGACCGACACCCAATTGCTTACTTCTTATGTTACCCCGCGGCAAGATATTTAATGGGATCAATGACCCCGCAAGCTGTGTTAGCTTTTGTGGCATTGATTCCGCCAACCTTACCTGGAACGAATATAGTCCTTGGTGCATTACCAGAGGATAGACATATTGACAGACTTGCTAAGCGACAGCGACCGGGAGAGAGATTGGACTTAGCAATGTTGGCGGCCATAAGACGAGTCTACGGACTTTTGGCTAATACGGTTAGATATTTGCAAGGAGGAGGAAGTTGGCGAGAGGATTGGGGTCAGTTGTCTGGTACTGCTGTGCCTCCGCAGGGAGCTGAGCCTCAGTCTAACGCTGGACCACGACCTCACATCGGAGATACGTTATTTACCCTATTCCGTGCGCCGGAATTATTAGCACCCAACGGTGATCTATACAACGTCTTTGCGTGGGCCTTGGACGTACTTGCAAAGCGTCTACGTCCTATGCATGTCTTCATCCTAGACTACGACCAGTCGCCCGCGGGATGTCGAGACGCCTTGCTACAGTTGACCTCGGGAATGATTCAGACACACGTCACCACCCCGGGATCCATACCCACTATTTGTGACTTAGCAAGAACATTTGCCCGAGAAATGGGTGAAGCTAAC(配列番号11)に対するヌクレオチド配列同一性が少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%であるヌクレオチド配列を含む。この配列は、ワクシニアウイルス向けにコドン最適化されている。ある場合では、異種TKポリペプチドは、上で明記した野生型HSV-TKアミノ酸配列(配列番号1)に対するアミノ酸配列同一性が少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%であり、i)アミノ酸159がLeu以外であり、ii)アミノ酸160がIle以外であり、iii)アミノ酸161がPhe以外であり、iv)アミノ酸168がAla以外であり、v)アミノ酸169がLeu以外であるアミノ酸配列を含む。ある場合では、異種TKポリペプチドは、アミノ酸159がIleであり、アミノ酸160がPheであり、アミノ酸161がLeuであり、アミノ酸168がPheであり、アミノ酸169がMetである次のアミノ酸配列:
MASYPGHQHASAFDQAARSRGHSNRRTALRPRRQQEATEVRPEQKMPTLLRVYIDGPHGMGKTTTTQLLVALGSRDDIVYVPEPMTYWRVLGASETIANIYTTQHRLDQGEISAGDAAVVMTSAQITMGMPYAVTDAVLAPHIGGEAGSSHAPPPALTIFLDRHPIAFMLCYPAARYLMGSMTPQAVLAFVALIPPTLPGTNIVLGALPEDRHIDRLAKRQRPGERLDLAMLAAIRRVYGLLANTVRYLQGGGSWREDWGQLSGTAVPPQGAEPQSNAGPRPHIGDTLFTLFRAPELLAPNGDLYNVFAWALDVLAKRLRPMHVFILDYDQSPAGCRDALLQLTSGMIQTHVTTPGSIPTICDLARTFAREMGEAN(「SR39」;配列番号3)に対するアミノ酸配列同一性が少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%であるアミノ酸配列を含む。
【0036】
ある場合では、異種TKポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、コードされているアミノ酸159がIleであり、アミノ酸160がPheであり、アミノ酸161がLeuであり、アミノ酸168がPheであり、アミノ酸169がMetである次のヌクレオチド配列:
ATGGCCTCATATCCTGGTCATCAACACGCTAGTGCCTTCGACCAGGCGGCGAGATCTCGAGGACATTCGAATAGACGAACAGCATTACGTCCACGAAGACAACAGGAGGCGACAGAGGTCCGACCTGAACAGAAAATGCCTACACTTTTGCGAGTCTACATAGATGGTCCCCACGGAATGGGTAAAACTACCACTACCCAGTTGTTAGTCGCCTTAGGTTCTCGAGACGATATTGTCTATGTGCCCGAGCCCATGACTTACTGGCGAGTCCTAGGTGCATCGGAAACGATAGCGAACATCTATACGACACAGCATCGTTTGGACCAGGGAGAGATCTCGGCCGGTGACGCAGCAGTCGTAATGACAAGTGCTCAAATTACGATGGGTATGCCTTATGCGGTAACTGACGCAGTCTTGGCTCCGCATATCGGTGGAGAGGCCGGATCGTCACACGCTCCCCCTCCAGCGTTAACTATTTTCTTAGACCGACACCCAATTGCTTTCATGTTATGTTACCCCGCGGCAAGATATTTAATGGGATCAATGACCCCGCAAGCTGTGTTAGCTTTTGTGGCATTGATTCCGCCAACCTTACCTGGAACGAATATAGTCCTTGGTGCATTACCAGAGGATAGACATATTGACAGACTTGCTAAGCGACAGCGACCGGGAGAGAGATTGGACTTAGCAATGTTGGCGGCCATAAGACGAGTCTACGGACTTTTGGCTAATACGGTTAGATATTTGCAAGGAGGAGGAAGTTGGCGAGAGGATTGGGGTCAGTTGTCTGGTACTGCTGTGCCTCCGCAGGGAGCTGAGCCTCAGTCTAACGCTGGACCACGACCTCACATCGGAGATACGTTATTTACCCTATTCCGTGCGCCGGAATTATTAGCACCCAACGGTGATCTATACAACGTCTTTGCGTGGGCCTTGGACGTACTTGCAAAGCGTCTACGTCCTATGCATGTCTTCATCCTAGACTACGACCAGTCGCCCGCGGGATGTCGAGACGCCTTGCTACAGTTGACCTCGGGAATGATTCAGACACACGTCACCACCCCGGGATCCATACCCACTATTTGTGACTTAGCAAGAACATTTGCCCGAGAAATGGGTGAAGCTAAC(配列番号12)に対するヌクレオチド配列同一性が少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%であるヌクレオチド配列を含む。この配列は、ワクシニアウイルス向けにコドン最適化されている。
【0037】
ある場合では、異種TKポリペプチドは、上で明記した野生型HSV-TKアミノ酸配列(配列番号1)に対するアミノ酸配列同一性が少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%であり、アミノ酸168がAla以外である、たとえば、アミノ酸168が、Gly、Val、Ile、Leu、Pro、Phe、Tyr、Trp、Ser、Thr、Cys、Met、Gln、Asn、Lys、Arg、His、Asp、またはGluである、アミノ酸配列を含む。ある場合では、アミノ酸168は、Hisである。ある場合では、アミノ酸168は、Argである。ある場合では、アミノ酸168は、Lysである。ある場合では、異種TKポリペプチドは、アミノ酸168がHisである次のアミノ酸配列:
MASYPGHQHASAFDQAARSRGHSNRRTALRPRRQQEATEVRPEQKMPTLLRVYIDGPHGMGKTTTTQLLVALGSRDDIVYVPEPMTYWRVLGASETIANIYTTQHRLDQGEISAGDAAVVMTSAQITMGMPYAVTDAVLAPHIGGEAGSSHAPPPALTLIFDRHPIAHLLCYPAARYLMGSMTPQAVLAFVALIPPTLPGTNIVLGALPEDRHIDRLAKRQRPGERLDLAMLAAIRRVYGLLANTVRYLQGGGSWREDWGQLSGTAVPPQGAEPQSNAGPRPHIGDTLFTLFRAPELLAPNGDLYNVFAWALDVLAKRLRPMHVFILDYDQSPAGCRDALLQLTSGMIQTHVTTPGSIPTICDLARTFAREMGEAN(「TK.007」;配列番号4)に対するアミノ酸配列同一性が少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%であるアミノ酸配列を含む。
【0038】
ある場合では、異種TKポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、コードされているアミノ酸168がHisである次のヌクレオチド配列:
ATGGCCTCATATCCTGGTCATCAACACGCTAGTGCCTTCGACCAGGCGGCGAGATCTCGAGGACATTCGAATAGACGAACAGCATTACGTCCACGAAGACAACAGGAGGCGACAGAGGTCCGACCTGAACAGAAAATGCCTACACTTTTGCGAGTCTACATAGATGGTCCCCACGGAATGGGTAAAACTACCACTACCCAGTTGTTAGTCGCCTTAGGTTCTCGAGACGATATTGTCTATGTGCCCGAGCCCATGACTTACTGGCGAGTCCTAGGTGCATCGGAAACGATAGCGAACATCTATACGACACAGCATCGTTTGGACCAGGGAGAGATCTCGGCCGGTGACGCAGCAGTCGTAATGACAAGTGCTCAAATTACGATGGGTATGCCTTATGCGGTAACTGACGCAGTCTTGGCTCCGCATATCGGTGGAGAGGCCGGATCGTCACACGCTCCCCCTCCAGCGTTAACTCTAATTTTCGACCGACACCCAATTGCTCACCTTTTATGTTACCCCGCGGCAAGATATTTAATGGGATCAATGACCCCGCAAGCTGTGTTAGCTTTTGTGGCATTGATTCCGCCAACCTTACCTGGAACGAATATAGTCCTTGGTGCATTACCAGAGGATAGACATATTGACAGACTTGCTAAGCGACAGCGACCGGGAGAGAGATTGGACTTAGCAATGTTGGCGGCCATAAGACGAGTCTACGGACTTTTGGCTAATACGGTTAGATATTTGCAAGGAGGAGGAAGTTGGCGAGAGGATTGGGGTCAGTTGTCTGGTACTGCTGTGCCTCCGCAGGGAGCTGAGCCTCAGTCTAACGCTGGACCACGACCTCACATCGGAGATACGTTATTTACCCTATTCCGTGCGCCGGAATTATTAGCACCCAACGGTGATCTATACAACGTCTTTGCGTGGGCCTTGGACGTACTTGCAAAGCGTCTACGTCCTATGCATGTCTTCATCCTAGACTACGACCAGTCGCCCGCGGGATGTCGAGACGCCTTGCTACAGTTGACCTCGGGAATGATTCAGACACACGTCACCACCCCGGGATCCATACCCACTATTTGTGACTTAGCAAGAACATTTGCCCGAGAAATGGGTGAAGCTAAC(配列番号13)に対するヌクレオチド配列同一性が少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%であるヌクレオチド配列を含む。この配列は、ワクシニアウイルス向けにコドン最適化されている。
【0039】
本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスの構築に使用されるワクシニアウイルスには、弱毒化および/または腫瘍選択的ワクシニアウイルスが含まれうる。本明細書で使用するとき、「弱毒化」とは、正常細胞(たとえば、非腫瘍細胞)に対する低い毒性(たとえば、弱いウイルス複製、低い細胞溶解活性、低い細胞障害活性)を意味する。本明細書で使用するとき、「腫瘍選択的」とは、腫瘍細胞に対する毒性(たとえば、腫瘍溶解性)が正常細胞(たとえば、非腫瘍細胞)に対するものより高いことを意味する。特定のタンパク質の機能が欠損を有するように、または特定の遺伝子もしくはタンパク質の発現が抑制されるように遺伝子改変されたワクシニアウイルス(Guseら(2011) Expert Opinion on Biological Therapy 11:595)を、本開示の腫瘍溶解性ウイルスにおいて使用することができる。たとえば、ワクシニアウイルスの腫瘍選択性を高めるために、ワクシニア増殖因子(VGF)の機能に欠損を有するワクシニアウイルス(McCartら(2001) Cancer Research 61:8751)、改変ワクシニアウイルスTK遺伝子、改変血球凝集素(HA)遺伝子、および改変F3遺伝子もしくはF3座中断を有するワクシニアウイルス(WO2005/047458)、VGFおよびO1Lの機能に欠損を有するワクシニアウイルス(WO2015/076422)、がん細胞において発現が減少する標的マイクロRNA配列がB5R遺伝子の3’非コード領域に挿入されているワクシニアウイルス(WO2011/125469)、HAおよびF14.5Lの機能に欠損を有するワクシニアウイルス(Zhangら(2007) Cancer Research 67:10038)、リボヌクレオチド還元酵素の機能に欠損を有するワクシニアウイルス(Gammonら(2010) PLoS Pathogens 6:e1000984)、セリンプロテアーゼインヒビター(たとえば、SPI-1、SPI-2)の機能に欠損を有するワクシニアウイルス(Guoら(2005) Cancer Research 65:9991)、SPI-1およびSPI-2の機能に欠損を有するワクシニアウイルス(Yangら(2007) Gene Therapy 14:638)、リボヌクレオチド還元酵素遺伝子F4LもしくはI4Lの機能に欠損を有するワクシニアウイルス(Childら(1990) Virology 174:625、Pottsら(2017) EMBO Mol Med 9:638)、B18R(コペンハーゲン株ではB19R)の機能に欠損を有するワクシニアウイルス(Symonsら(1995) Cell 81:551、Kirnら(2008) PLoS Medicine 4:e353)、A48Rの機能に欠損を有するワクシニアウイルス(Hughesら(1991) Journal of Biological Chemistry 266:20103)、B8Rの機能に欠損を有するワクシニアウイルス(Verardiら(2001) Journal of Virology 75:11)、B15R(コペンハーゲン株ではB16R)の機能に欠損を有するワクシニアウイルス(Spriggsら(1992) Cell 71:145)、A41Rの機能に欠損を有するワクシニアウイルス(Ngら(2001) Journal of General Virology 82:2095)、A52Rの機能に欠損を有するワクシニアウイルス(Bowieら(2000) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:10162)、F1Lの機能に欠損を有するワクシニアウイルス(Gerlicら(2013) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 110:7808)、E3Lの機能に欠損を有するワクシニアウイルス(Changら(1992) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:4825)、A44R-A46Rの機能に欠損を有するワクシニアウイルス(Bowieら(2000) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:10162)、K1Lの機能に欠損を有するワクシニアウイルス(Bravo Cruzら(2017) Journal of Virology 91:e00524)、A48R、B18R、C11R、およびTKの機能に欠損を有するワクシニアウイルス(Mejias-Perezら(2017) Molecular Therapy:Oncolytics 8:27)、またはE3LおよびK3L領域に突然変異を有するワクシニアウイルス(WO2005/007824)を使用することができる。さらに、O1Lの機能に欠損を有するワクシニアウイルスを使用してもよい(Schwenekerら(2012) Journal of Virology 86:2323)。さらに、B5R細胞外領域に欠損を有するワクシニアウイルス(Bellら(2004) Virology 325:425)またはA34R領域に欠損を有するワクシニアウイルス(Thirunavukarasuら(2013) Molecular Therapy 21:1024)を使用してもよい。さらに、インターロイキン-1b(IL-1b)受容体に欠損を有するワクシニアウイルス(WO2005/030971)を使用してもよい。このような、外来遺伝子の挿入または遺伝子の欠失もしくは突然変異は、たとえば、既知の相同組換えまたは部位特異的突然変異誘発によってなされうる。さらに、そうした遺伝子改変の2つ以上の組合せを有するワクシニアウイルスを、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスにおいて使用してもよい。
【0040】
本明細書で使用するとき、「欠損を有する」は、この用語によって詳細に記される遺伝子領域が機能の低下または喪失を有することを意味し、i)この用語によって詳細に記される遺伝子領域の突然変異(たとえば、置換、逆位など)および/または切り詰めおよび/または欠失、ii)遺伝子領域の発現を制御するプロモーター領域の突然変異および/または切り詰めおよび/または欠失、ならびにiii)遺伝子領域によってコードされているポリペプチドの翻訳が低減または消去されるようなポリアデニル化配列の突然変異および/または切り詰めおよび/または欠失の1つまたは複数の結果として生じる欠損を包含する。複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスが所与のワクシニアウイルス遺伝子の「欠損を有する」結果となるような遺伝子変化を含む本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、遺伝子の遺伝子産物(たとえば、mRNA遺伝子産物、ポリペプチド遺伝子産物)の産生および/または活性の低下を示し、たとえば、遺伝子産物の量および/または活性が、野生型ワクシニアウイルスまたは遺伝子変化を含まない対照ワクシニアウイルスによって産生される同じ遺伝子産物の量および/または活性の75%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、または1%未満である。たとえば、「欠損を有する」は、詳細に記された遺伝子領域からなる領域の欠失、または詳細に記された遺伝子領域を含む隣接する遺伝子領域の欠失の結果である場合がある。一例として、遺伝子領域の転写を低減するプロモーター領域の突然変異および/または切り詰めおよび/または欠失が欠損をもたらす場合がある。遺伝子領域によってコードされているポリペプチドの翻訳が低減または消去されるような転写終結エレメントの組込みによって、遺伝子領域に欠損を与えることもできる。遺伝子編集酵素または遺伝子編集複合体(たとえば、ガイドRNAと複合体形成したCRISPR/Casエフェクターポリペプチド)を使用して遺伝子領域の転写を低減または消去することにより、遺伝子領域に欠損を与えることもできる。競合的な逆プロモーター/ポリメラーゼ占有を使用して遺伝子領域の転写を低減または消去することにより、遺伝子領域に欠損を与えることもできる。核酸を遺伝子領域に挿入し、それによって遺伝子領域をノックアウトさせることにより、遺伝子領域に欠損を与えることもできる。
【0041】
上で指摘したとおり、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、一部の例では、内因性ワクシニアウイルスチミジンキナーゼ(TK)活性が欠如している。ある場合では、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、ワクシニアウイルスTKコード領域の全体または一部分の欠失を含む結果、複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、TK欠損となる。たとえば、ある場合では、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、J2R欠失を含む。たとえば、Mejia-Perezら(2018) Mol.Ther.Oncolytics 8:27を参照されたい。
【0042】
本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、一部の例では、細胞外エンベロープウイルス(EEV)の生成を強化する1つまたは複数の改変を含む。たとえば、ある場合では、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、コードされている(以前は「gp22-24」として知られた)A34タンパク質にK151E置換をもたらす、ワクシニアウイルスA34R遺伝子の改変を含む。たとえば、Blascoら(1993) J.Virol.67(6):3319-3325、およびThirunavukarasuら(2013) Mol.Ther.21:1024を参照されたい。A34R遺伝子は、ワクシニアウイルスgp22-24をコードしている。
【0043】
本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、様々なワクシニアウイルス株のいずれから構築してもよい。使用に適するワクシニアウイルス株には、限定はしないが、Lister、New York City Board of Health(NYBH)、Wyeth、コペンハーゲン、Western Reserve(WR)、改変ワクシニアアンカラ(MVA)、EM63、池田、Dalian、LIVP、Tian Tan、IHD-J、タシケント、ベルン、パリ、大連株、および同様の派生株が含まれる。ある場合では、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、コペンハーゲン株ワクシニアウイルスである。ある場合では、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、WR株ワクシニアウイルスである。
【0044】
種々の株のワクシニアウイルスのゲノムのヌクレオチド配列が、当業界で知られている。たとえば、Goebelら(1990) Virology 179:247、Goebelら(1990) Virology 179:517を参照されたい。コペンハーゲン株ワクシニアウイルスのヌクレオチド配列は、既知であり、たとえば、GenBank受入番号M35027を参照されたい。WR株ワクシニアウイルスのヌクレオチド配列は、既知であり、たとえば、GenBank受入番号AY243312およびGenBank受入番号NC_006998を参照されたい。ワクシニアウイルスのWR株は、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)から入手可能である(ATCC VR-1354)。
【0045】
本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、腫瘍溶解活性を示す。所与のウイルスが腫瘍溶解活性を示すかどうかを評価する方法の例としては、ウイルスを加えることによるがん細胞の生存率の低下を評価する方法が挙げられる。評価に使用されるがん細胞の例としては、悪性黒色腫細胞RPMI-7951(たとえば、ATCC HTB-66)、肺腺癌HCC4006(たとえば、ATCC CRL-2871)、肺癌A549(たとえば、ATCC CCL-185)、肺癌HOP-62(たとえば、DCTD Tumor Repository)、肺癌EKVX(たとえば、DCTD Tumor Repository)、小細胞肺がん細胞DMS53(たとえば、ATCC CRL-2062)、肺扁平上皮癌NCI-H226(たとえば、ATCC CRL-5826)、腎臓がん細胞Caki-1(たとえば、ATCC HTB-46)、膀胱がん細胞647-V(たとえば、DSMZ ACC 414)、頭頚部がん細胞Detroit562(たとえば、ATCC CCL-138)、乳がん細胞JIMT-1(たとえば、DSMZ ACC 589)、乳がん細胞MDA-MB-231(たとえば、ATCC HTB-26)、乳がん細胞MCF7(たとえば、ATCC HTB-22)、乳がんHS-578T(たとえば、ATCC HTB-126)、乳管癌T-47D(たとえば、ATCC HTB-133)、食道がん細胞OE33(たとえば、ECACC 96070808)、神経膠芽腫U-87MG(たとえば、ECACC 89081402)、神経芽細胞腫GOTO(たとえば、JCRB JCRB0612)、骨髄腫RPMI8226(たとえば、ATCC CCL-155)、卵巣がん細胞SK-OV-3(たとえば、ATCC HTB-77)、卵巣がん細胞OVMANA(たとえば、JCRB JCRB1045)、子宮頚がん細胞株HeLa(たとえば、ATCC CCL-2)、結腸がん細胞RKO(たとえば、ATCC CRL-2577)、結腸がん細胞HT-29(たとえば、ATCC HTB-38)、結腸がんColo205(たとえば、ATCC CCL-222)、結腸がんSW620(たとえば、ATCC CCL-227)、結腸直腸癌HCT116(たとえば、ATCC CCL-247)、膵臓がん細胞BxPC-3(たとえば、ATCC CRL-1687)、骨肉腫U-2 OS(たとえば、ATCC HTB-96)、前立腺がん細胞LNCaPクローンFGC(たとえば、ATCC CRL-1740)、肝細胞癌JHH-4(たとえば、JCRB JCRB0435)、中皮腫NCI-H28(たとえば、ATCC CRL-5820)、子宮頚がん細胞SiHa(たとえば、ATCC HTB-35)、および胃がん細胞Kato III(たとえば、理研BRC RCB2088)が挙げられる。
【0046】
TKvポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸は、確立された技術を使用してワクシニアウイルスに導入することができる。そのような技術の一例は、相同組換えと再活性化である(YaoおよびEvans(2003) J Virol 77(13):7281~90)。たとえば、TKvポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸が挿入されている(移入ベクタープラスミドDNAとも呼ばれる)プラスミドを生じさせ、組換え移入ベクターを生成することができ、ワクシニアウイルスからの消化されたゲノムDNAが形質移入され、ヘルパーウイルスを感染させた細胞に、組換え移入ベクターを導入することができる。次いで、TKvポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸が、組換え移入ベクターから、相同組換えによってワクシニアウイルスに導入される。TKvポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸が導入される領域は、内因性ワクシニアウイルスTKをコードする遺伝子、たとえば、J2Rでよい。TKvポリペプチドをコードする核酸によって、ワクシニアウイルスJ2Rの全体または一部分が置き換えられる場合がある。TKvポリペプチドをコードする核酸によって、限定はしないが、B15R、B16R、B8R、B18R、C11R、C12L、B19R、A41L、A44L、A45R、A46R、A52Rなどを始めとする、複製に必要とならないいずれかのワクシニア遺伝子の全部または一部分も置き換えられる場合がある。TKvポリペプチドをコードする核酸は、2種のウイルス遺伝子の間、たとえば、B15R遺伝子とB17L遺伝子の間の遺伝子間領域に導入される場合もある。
【0047】
ある場合では、TKvポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、転写制御エレメント、たとえば、プロモーターに、動作可能に連結される。ある場合では、プロモーターは、腫瘍細胞においてTKvポリペプチドの発現をもたらす。適切なプロモーターには、限定はしないが、pSELプロモーター、PSFJ1-10プロモーター、PSFJ2-16プロモーター、pHybプロモーター、後期-初期最適化プロモーター、p7.5Kプロモーター、p11Kプロモーター、T7.10プロモーター、CPXプロモーター、改変H5プロモーター、HFプロモーター、H6プロモーター、H5プロモーター、H4プロモーター、F17プロモーター、およびT7ハイブリッドプロモーターが含まれる。
【0048】
ある場合では、TKvポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、調節可能なプロモーターに、動作可能に連結される。ある場合では、調節可能なプロモーターは、可逆的プロモーターである。ある場合では、TKvポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、テトラサイクリンによって調節されるプロモーター(たとえば、TetActivator、TetON、TetOFF、Tet-On Advanced、Tet-On 3Gなどのプロモーター系)に、動作可能に連結される。ある場合では、TKvポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、抑制可能なプロモーターに、動作可能に連結される。ある場合では、TKvポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、テトラサイクリンによって抑制可能である、たとえば、テトラサイクリンまたはテトラサイクリン類似体もしくは誘導体の存在下で抑制されるプロモーターに、動作可能に連結される。ある場合では、TKvポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、TetOFFプロモーター系に、動作可能に連結される。BujardおよびGossen(1992) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5547。たとえば、TetOFFプロモーター系は、テトラサイクリン(または適切な類似体もしくは誘導体、たとえば、ドキシサイクリン)の存在下では抑制され(不活性であり)、テトラサイクリンが取り除かれると、プロモーターは、活性を有し、TKvポリペプチドの発現の動因となる。ある場合では、TKvポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、テトラサイクリンによって活性化可能である、たとえば、テトラサイクリンまたはテトラサイクリン類似体もしくは誘導体の存在下で活性化されるプロモーターに、動作可能に連結される。
【0049】
組成物
本開示は、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスを含む、医薬組成物としてもよい、組成物を提供する。ある場合では、組成物は、医薬組成物である。ある場合では、医薬組成物は、それを必要とする個体への投与に適しており、個体は、ヒトである。
【0050】
本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスを含む医薬組成物は、活性成分の薬学的に許容できる組成物への加工処理を容易にする、薬学的に許容できる担体を場合により含んでもよい。本明細書で使用するとき、用語「薬理学的に許容できる担体」とは、投与されたとき、長期的または永続的な有害作用を実質的に及ぼさない、いずれかの担体を指し、「薬理学的に許容できる媒体、安定剤、希釈剤、鎖剤、または賦形剤」などの用語を包含する。このような担体は、一般に、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスと混合され、固体、半固体、または液体薬剤である場合がある。本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、可溶性になる場合もあり、または所望の担体もしくは希釈剤中の懸濁液として送達される場合もあると理解される。限定はせず、たとえば蒸留脱イオン水、食塩水などの水性媒質、溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌および抗カビ剤、等張剤および吸収遅延剤、または他のいずれかの不活性成分を始めとする、様々な薬学的に許容できる担体のいずれを使用してもよい。薬学的に許容できる担体の選択は、投与方式次第となりうる。薬学的に許容できる担体は、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスと適合しないということでない限り、薬学的に許容できる組成物へのその使用が企図される。そのような薬学担体の詳細な使用の非限定的な例は、「Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems」(Howard C.Anselら共編、Lippincott Williams&Wilkins Publishers、第7版、1999);「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」(Alfonso R.Gennaro編、Lippincott,Williams&Wilkins、20th 2000);「Goodman&Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics」、Joel G.Hardmanら共編、McGraw-Hill Professional、第10版、2001);および「Handbook of Pharmaceutical Excipients」(Raymond C.Roweら、APhA Publications、第4版、2003)において見ることができる。
【0051】
対象医薬組成物は、限定はせず、緩衝剤、保存剤、等張化剤、塩、酸化防止剤、生理物質、薬理物質、増量剤、乳化剤、湿潤剤などを始めとする薬学的に許容できる他の成分を、限定はせず、場合により含んでもよい。得られる調製物が薬学的に許容できるものであるという前提で、種々の緩衝剤およびpH調整手段を、本明細書で開示する医薬組成物の調整に使用することができる。そのような緩衝剤には、限定はせず、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、中性緩衝食塩水(neutral buffered saline)、リン酸緩衝溶液、およびホウ酸緩衝液が含まれる。組成物のpHを調整するために、必要に応じて酸または塩基を使用してよいと理解される。薬学的に許容できる酸化防止剤には、限定はせず、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、ブチルヒドロキシアニソール、およびブチルヒドロキシトルエンが含まれる。有用な保存剤には、限定はせず、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、および安定化されたオキシクロロ組成物、たとえば、PURITE(商標)が含まれる。対象医薬組成物に含めるのに適する等張化剤には、限定はせず、たとえば塩化ナトリウム、塩化カリウムなどの塩、マンニトール、グリセリン、および薬学的に許容できる他の等張化剤が含まれる。薬理学の分野で知られているこれらおよび他の物質を、対象医薬組成物に含めることができると理解される。
【0052】
薬学的に許容できる担体となりうる材料のいくつかの例として、(1)糖、たとえば、ラクトース、グルコース、スクロース、(2)デンプン、たとえば、コーンスターチやバレイショデンプン、(3)セルロースおよびその誘導体、たとえば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、酢酸セルロース、(4)粉末状トラガカント、(5)麦芽、(6)ゼラチン、(7)タルク、(8)賦形剤、たとえば、カカオ脂や坐剤ワックス、(9)油、たとえば、ラッカセイ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、大豆油、(10)グリコール、たとえば、プロピレングリコール、(11)ポリオール、たとえば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、(12)エステル、たとえば、オレイン酸エチルやラウリン酸エチル、(13)寒天、(14)緩衝剤、たとえば、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム、(15)アルギン酸、(16)無パイロジェン水、(17)等張食塩水、(18)リンガー液、(19)エチルアルコール、(20)pH緩衝溶液、(21)ポリエステル、ポリカーボネート、および/またはポリ酸無水物、ならびに(22)医薬品製剤に用いられる他の適合する非毒性物質が挙げられる。
【0053】
本開示の医薬組成物は、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスを、1mlあたり約102プラーク形成単位(pfu)(pfu/ml)~約104pfu/ml、約104pfu/ml~約105pfu/ml、約105pfu/ml~約106pfu/ml、約106pfu/ml~約107pfu/ml、約107pfu/ml~約108pfu/ml、約108pfu/ml~約109pfu/ml、約109pfu/ml~約1010pfu/ml、約1010pfu/ml~約1011pfu/ml、または約1011pfu/ml~約1012pfu/mlの量で含む場合がある。
【0054】
腫瘍溶解を誘導する方法
本開示では、腫瘍を有する個体において腫瘍溶解を誘導する方法であって、個体に、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスまたは本開示の組成物を有効量投与するステップを含む方法が提供される。
【0055】
ある場合では、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスの「有効量」とは、それを必要とする個体に1または複数の用量で投与されたとき、個体におけるがん細胞の数を減少させる量である。たとえば、ある場合では、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスの「有効量」は、それを必要とする個体に1または複数の用量で投与されたとき、個体におけるがん細胞の数を、複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスの投与前、または複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスの投与なしでの個体におけるがん細胞の数に比べて、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%減少させる量である。ある場合では、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスの「有効量」とは、それを必要とする個体に1または複数の用量で投与されたとき、個体におけるがん細胞の数を検出不可能なレベルに減少させる量である。ある場合では、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスの「有効量」とは、それを必要とする個体に1または複数の用量で投与されたとき、個体における腫瘍量を減少させる量である。たとえば、ある場合では、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスの「有効量」は、それを必要とする個体に1または複数の用量で投与されたとき、個体における腫瘍量を、複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスの投与前、または複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスの投与なしでの個体における腫瘍量に比べて、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%減少させる量である。
【0056】
ある場合では、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスの「有効量」とは、それを必要とする個体に1または複数の用量で投与されたとき、個体の生存期間を伸ばす量である。たとえば、ある場合では、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスの「有効量」とは、それを必要とする個体に1または複数の用量で投与されたとき、個体の生存期間を、複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスの投与なしでの個体の予測生存期間に比べて、少なくとも1か月、少なくとも2か月、少なくとも3か月、3か月~6か月、6か月~1年、1年~2年、2年~5年、5年~10年、または10年より長く伸ばす量である。
【0057】
ある場合では、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスの「有効量」とは、それを必要とする個体に1または複数の用量で投与されたとき、耐久性のある抗腫瘍免疫応答、たとえば、腫瘍細胞数および/または腫瘍量および/または腫瘍成長の低減を少なくとも1か月、少なくとも2か月、少なくとも6か月、または少なくとも1年間もたらす抗腫瘍免疫応答を誘導する量である。
【0058】
適切な投与量は、種々の臨床的要素に基づき、担当医または他の有資格医療従事者が決定してよい。医療分野でよく知られているとおり、いずれか1人の患者のための投与量は、患者のサイズ、体表面積、年齢、腫瘍負荷、および他の該当する要素を始めとする多くの要素に応じて決まる。
【0059】
本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、1用量あたり約102プラーク形成単位(pfu)~約104pfu、約104pfu~約105pfu、約105pfu~約106pfu、約106pfu~約107pfu、約107pfu~約108pfu、約108pfu~約109pfu、約109pfu~約1010pfu、約1010pfu~約1011pfu、または約1011~約1012pfuの量で投与される場合がある。
【0060】
ある場合では、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、約1×109pfu~5×1011pfuの合計量で投与される。ある場合では、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、約1×109pfu~約5×109pfu、約5×109pfu~約1010pfu、約1010pfu~約5×1010pfu、約5×1010pfu~約1011pfu、約1011pfu~約5×1011pfu、または約5×1011pfu~約1012pfuの合計量で投与される。ある場合では、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、約2×1010pfuの合計量で投与される。
【0061】
ある場合では、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、約1×108pfu/患者体重kg~約5×109pfu/患者体重kgの量で投与される。ある場合では、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、約1×108pfu/患者体重kg~約5×108pfu/患者体重kg、約5×108pfu/患者体重kg~約109pfu/患者体重kg、または約109pfu/患者体重kg~約5×109pfu/患者体重kgの量で投与される。ある場合では、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、1×108pfu/患者体重kgの量で投与される。ある場合では、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、2×108pfu/患者体重kgの量で投与される。ある場合では、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、3×108pfu/患者体重kgの量で投与される。ある場合では、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、4×108pfu/患者体重kgの量で投与される。ある場合では、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、5×108pfu/患者体重kgの量で投与される。
【0062】
ある場合では、複数回用量の本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスが投与される。本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスの投与の頻度は、様々な要素、たとえば、症状の重症度などのいずれによっても変化しうる。たとえば、一部の実施形態では、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、1か月に1回、1か月に2回、1か月に3回、1週間おき(qow)、週1回(qw)、週2回(biw)、週3回(tiw)、週4回、週5回、週6回、1日おき(qod)、毎日(qd)、1日2回(qid)、または1日3回(tid)投与される。
【0063】
本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスの投与の継続期間、たとえば、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスの投与が行われる期間は、様々な要素、たとえば、患者応答などのいずれによっても変化しうる。たとえば、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、約1日~約1週間、約2週間~約4週間、約1か月~約2か月、約2か月~約4か月、約4か月~約6か月、約6か月~約8か月、約8か月~約1年、約1年~約2年、もしくは約2年~約4年に及ぶ期間、またはより長期間にわたって投与される場合がある。
【0064】
本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、in vivoおよびex vivo法、ならびに全身および局所的投与経路を含む、薬物送達に適する利用可能ないずれかの方法および経路を使用して、個体に投与される。
【0065】
慣例的で薬学的に許容できる投与経路には、腫瘍内、腫瘍周囲、筋肉内、気管支内、くも膜下腔内、頭蓋内、皮下、皮内、局所適用、静脈内、動脈内、腹腔内、膀胱内、直腸、経鼻、経口、ならびに他の経腸および非経口投与経路が含まれる。投与経路は、所望なら、複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスおよび/もしくは所望の効果に応じて組み合わせ、または調整してもよい。本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、単一用量または複数回用量で投与される場合がある。
【0066】
ある場合では、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、静脈内投与される。ある場合では、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、筋肉内投与される。ある場合では、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、局所投与される。ある場合では、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、腫瘍内投与される。ある場合では、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、腫瘍周囲に投与される。ある場合では、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、頭蓋内投与される。ある場合では、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、皮下投与される。ある場合では、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、動脈内投与される。ある場合では、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、腹腔内投与される。ある場合では、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、膀胱内投与経路によって投与される。ある場合では、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、くも膜下腔内投与される。
【0067】
本開示は、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスを医薬として使用するために提供する。
【0068】
本開示は、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスを、腫瘍を有する個体において腫瘍溶解を誘導する方法において使用するために提供する。
【0069】
組合せ
ある場合では、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、標準がん療法に対する補助療法として投与される。標準がん療法には、手術(たとえば、がん性の組織の外科的除去)、放射線療法、骨髄移植、化学療法処置、抗体処置、生体応答修飾物質処置、免疫療法処置、および前述のもののある特定の組合せが含まれる。ある場合では、本開示の方法は、a)それを必要とする個体に、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスまたはそれを含む組成物を投与するステップと、b)個体に第2のがん療法を施すステップとを含む。ある場合では、第2のがん療法は、化学療法、生物学的療法、放射線療法、免疫療法(腫瘍溶解性ワクチンを含む)、ホルモン療法、抗血管新生療法(anti-vascular therapy)、寒冷療法、毒素療法、腫瘍溶解性ウイルス療法(たとえば、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス以外の腫瘍溶解性ウイルス)、細胞療法、および手術から選択される。
【0070】
放射線療法には、限定はしないが、ビームなどの外部から適用される線源から、または小型放射線源の埋め込みによって送達される、X線またはガンマ線が含まれる。
【0071】
がん処置における使用に適する抗体として、限定はしないが、たとえば、アベルマブ(Bavencio(登録商標)、抗PD-L1抗体)、トラスツズマブ(Herceptin)、ベバシズマブ(Avastin(商標))、セツキシマブ(Erbitux(商標))、パニツムマブ(Vectibix(商標))、イピリムマブ(Yervoy(商標))、リツキシマブ(Rituxan)、アレムツズマブ(Lemtrada(商標))、オファツムマブ(Arzerra(商標))、オレゴボマブ(OvaRex(商標))、ランブロリズマブ(MK-3475)、ペルツズマブ(Perjeta(商標))、ラニビズマブ(Lucentis(商標))など、および複合化抗体、たとえば、ゲムツズマブオゾガマイシン(Mylortarg(商標))、ブレンツキシマブベドチン(Adcetris(商標))、90Y標識イブリツモマブチウキセタン(Zevalin(商標))、131I標識トシツモマブ(Bexxar(商標))などが挙げられる。がん処置における使用に適する抗体として、限定はしないが、たとえば、CTLA-4を標的とするイピリムマブ(黒色腫、前立腺がん、RCCの処置において使用される)、CTLA-4を標的とするトレメリムマブ(CRC、胃、黒色腫、NSCLCの処置において使用される)、PD-1を標的とするニボルマブ(黒色腫、NSCLC、RCCの処置において使用される)、PD-1を標的とするMK-3475(黒色腫の処置において使用される)、PD-1を標的とするピディリズマブ(血液悪性腫瘍の処置において使用される)、PD-L1を標的とするBMS-936559(黒色腫、NSCLC、卵巣、RCCの処置において使用される)、PD-L1を標的とするMEDI4736、PD-L1を標的とするMPDL33280A(黒色腫の処置において使用される)、CD20を標的とするリツキシマブ(非ホジキンリンパ腫の処置において使用される)、イブリツモマブチウキセタンおよびトシツモマブ(リンパ腫の処置において使用される)、CD30を標的とするブレンツキシマブベドチン(ホジキンリンパ腫の処置において使用される)、CD33を標的とするゲムツズマブオゾガマイシン(急性骨髄性白血病の処置において使用される)、CD52を標的とするアレムツズマブ(慢性リンパ球性白血病の処置において使用される)、EpCAMを標的とするIGN101およびアデカツムマブ(adecatumumab)(上皮性腫瘍(乳房、結腸、および肺)の処置において使用される)、CEAを標的とするラベツズマブ(乳房、結腸、および肺腫瘍の処置において使用される)、gpA33を標的とするhuA33(結腸直腸癌の処置において使用される)、ムチンを標的とするペムツモマブ(Pemtumomab)およびオレゴボマブ(乳房、結腸、肺、および卵巣腫瘍の処置において使用される)、TAG-72を標的とするCC49(ミンレツモマブ(minretumomab))(乳房、結腸、および肺腫瘍の処置において使用される)、CAIXを標的とするcG250(腎細胞癌の処置において使用される)、PSMAを標的とするJ591(前立腺癌の処置において使用される)、葉酸結合タンパク質を標的とするMOv18およびMORAb-003(ファーレツズマブ)(卵巣腫瘍の処置において使用される)、ガングリオシド(GD2、GD3、GM2など)を標的とする3F8、ch14.18、およびKW-2871(神経外胚葉腫瘍および一部の上皮性腫瘍の処置において使用される)、Le yを標的とするhu3S193およびIgN311(乳房、結腸、肺、および前立腺腫瘍の処置において使用される)、VEGFを標的とするベバシズマブ(腫瘍脈管構造の処置において使用される)、VEGFRを標的とするIM-2C6およびCDP791(上皮由来固形腫瘍の処置において使用される)、インテグリン_V_3を標的とするエタラシズマブ(Etaracizumab)(腫瘍脈管構造の処置において使用される)、インテグリン_5_1を標的とするボロシキシマブ(腫瘍脈管構造の処置において使用される)、EGFRを標的とするセツキシマブ、パニツムマブ、ニモツズマブ、および806(神経膠腫、肺、乳房、結腸、および頭頚部腫瘍の処置において使用される)、ERBB2を標的とするトラスツズマブおよびペルツズマブ(乳房、結腸、肺、卵巣、および前立腺腫瘍の処置において使用される)、ERBB3を標的とするMM-121(乳房、結腸、肺、卵巣、および前立腺腫瘍の処置において使用される)、METを標的とするAMG102、METMAB、およびSCH900105(乳房、卵巣、および肺腫瘍の処置において使用される)、IGF1Rを標的とするAVE1642、IMC-A12、MK-0646、R1507、およびCP751871(神経膠腫、肺、乳房、頭頚部、前立腺、および甲状腺がんの処置において使用される)、EPHA3を標的とするKB004およびIIIA4(肺、腎臓、および結腸腫瘍、黒色腫、神経膠腫、ならびに血液悪性腫瘍の処置において使用される)、TRAILR1を標的とするマパツムマブ(HGS-ETR1)(結腸、肺、および前立腺腫瘍、ならびに血液悪性腫瘍の処置において使用される)、TRAILR2を標的とするHGS-ETR2およびCS-1008、RANKLを標的とするデノスマブ(前立腺がんおよび骨転移の処置において使用される)、FAPを標的とするシブロツズマブ(Sibrotuzumab)およびF19(結腸、乳房、肺、膵臓、および頭頚部腫瘍の処置において使用される)、テネイシンを標的とする81C6(神経膠腫、乳房および前立腺腫瘍の処置において使用される)、CD3を標的とするブリナツモマブ(Blincyto、Amgen)(ALLの処置において使用される)、がん免疫療法において使用されるPD-1を標的とするペンブロリズマブ、c-Mycを標的とする9E10抗体などが挙げられる。
【0072】
ある場合では、本開示の方法は、a)有効量の本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスと、b)抗PD-1抗体を投与するステップを含む。ある場合では、本開示の方法は、a)有効量の本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスと、b)抗PD-L1抗体を投与するステップを含む。適切な抗PD-1抗体としては、限定はしないが、ペンブロリズマブ(Keytruda(登録商標)、MK-3475)、ニボルマブ(Opdivo(登録商標)、BMS-926558、MDX1106)、ピディリズマブ(CT-011)、AMP-224、AMP-514(MEDI-0680)、ならびにPDR001およびPF-06801591が挙げられる。適切な抗PD-L1抗体としては、限定はしないが、BMS-936559(MDX1105)、デュルバルマブ(MEDI4736、Imfinzi)、アテゾリズマブ(MPDL33280A、Tecentriq)、MSB0010718C、およびアベルマブ(Bavencio、MSB0010718C)が挙げられる。たとえば、SunshineおよびTaube(2015) Curr.Opin.Pharmacol.23:32;Heeryら(2017) The Lancet Oncology 18:587;Iwaiら(2017) J.Biomed.Sci.24:26;Hu-Lieskovanら(2017) Annals of Oncology 28:増刊号5、mdx376.048;および米国特許公開第2016/0159905を参照されたい。
【0073】
ある場合では、適切な抗体は、二重特異性抗体、たとえば、二重特異性モノクローナル抗体である。カツマキソマブ、ブリナツモマブ、ソリトマブ(solitomab)、パソツキシズマブ(pasotuxizumab)、およびフロテツズマブ(flotetuzumab)が、がん療法における使用に適する二重特異性抗体の非限定的な例である。たとえば、ChamesおよびBaty(2009) MAbs 1:539;およびSedykhら(2018) Drug Des.Devel.Ther.12:195を参照されたい。
【0074】
本開示の方法と共に使用するのに適する生体応答修飾物質には、限定はしないが、(1)チロシンキナーゼ(RTK)活性の阻害薬、(2)セリン/スレオニンキナーゼ活性の阻害薬、(3)腫瘍関連抗原拮抗薬、たとえば、腫瘍抗原に特異的に結合する抗体、(4)アポトーシス受容体作動薬、(5)インターロイキン2、(6)インターフェロンα、(7)インターフェロンγ、(8)コロニー刺激因子、(9)血管新生の阻害薬、および(10)腫瘍壊死因子の拮抗薬が含まれる。
【0075】
化学療法薬は、がん細胞の増殖を減少させる非ペプチド(すなわち、非タンパク質)化合物であり、細胞傷害薬および細胞分裂阻害薬を包含する。化学療法薬の非限定的な例には、アルキル化薬、ニトロソ尿素、代謝拮抗薬、抗腫瘍抗生物質、植物(ビンカ)アルカロイド、およびステロイドホルモンが含まれる。
【0076】
細胞増殖を低減する働きをする薬剤は、当業界で知られており、広く使用されている。そのような薬剤には、限定はしないが、メクロレタミン、シクロホスファミド(Cytoxan(商標))、メルファラン(L-サルコリシン)、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、セムスチン(メチル-CCNU)、ストレプトゾシン、クロロゾトシン、ウラシルマスタード、クロルメチン、イホスファミド、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレンメラミン、トリエチレンチオホスホラミン、ブスルファン、ダカルバジン、およびテモゾロミドを始めとする、ナイトロジェンマスタード、ニトロソ尿素、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、トリアゼンなどのアルキル化薬が含まれる。
【0077】
代謝拮抗薬には、限定はしないが、シタラビン(CYTOSAR-U)、シトシンアラビノシド、フルオロウラシル(5-FU)、フロクスウリジン(FudR)、6-チオグアニン、6-メルカプトプリン(6-MP)、ペントスタチン、5-フルオロウラシル(5-FU)、メトトレキセート、10-プロパルギル-5,8-ジデアザホレート(PDDF、CB3717)、5,8-ジデアザテトラヒドロ葉酸(DDATHF)、ロイコボリン、リン酸フルダラビン、ペントスタチン、およびゲムシタビンを始めとする、葉酸類似体、ピリミジン類似体、プリン類似体、およびアデノシンデアミナーゼ阻害薬が含まれる。
【0078】
適切な天然産物およびその誘導体(たとえば、ビンカアルカロイド、抗腫瘍抗生物質、酵素、リンホカイン、エピポドフィロトキシン)としては、限定はしないが、Ara-C、パクリタキセル(Taxol(登録商標))、ドセタキセル(Taxotere(登録商標))、デオキシコホルマイシン、マイトマイシン-C、L-アスパラギナーゼ、アザチオプリン、ブレキナル;アルカロイド、たとえば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン他;ポドフィロトキシン、たとえば、エトポシド、テニポシド他;抗生物質、たとえば、アントラサイクリン、ダウノルビシン塩酸塩(ダウノマイシン、ルビドマイシン、セルビジン(cerubidine))、イダルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、モルホリノ誘導体他;フェノキシゾンビスシクロペプチド、たとえば、ダクチノマイシン;塩基性グリコペプチド、たとえば、ブレオマイシン;アントラキノングリコシド、たとえば、プリカマイシン(ミトラマイシン);アントラセンジオン、たとえば、ミトキサントロン;アジリノピロロインドールジオン、たとえば、マイトマイシン;大環状免疫抑制薬、たとえば、シクロスポリン、FK-506(タクロリムス、prograf)、ラパマイシン他;などが挙げられる。
【0079】
他の抗増殖性細胞傷害薬は、ナベルベン(navelbene)、CPT-11、アナストラゾール(anastrazole)、レトラゾール(letrazole)、カペシタビン、レロキサフィン(reloxafine)、シクロホスファミド、イホスアミド(ifosamide)、およびドロロキサフィン(droloxafine)である。
【0080】
抗増殖活性を有する微小管作用薬も、使用に適しており、限定はしないが、アロコルヒチン(allocolchicine)(NSC406042)、ハリコンドリンB(NSC609395)、コルヒチン(NSC 757)、コルヒチン誘導体(たとえば、NSC33410)、ドルスタチン10(dolstatin10)(NSC376128)、メイタンシン(NSC153858)、リゾキシン(NSC332598)、パクリタキセル(Taxol(登録商標))、Taxol(登録商標)誘導体、ドセタキセル(Taxotere(登録商標))、チオコルヒチン(thiocolchicine)(NSC361792)、トリチルシステリン(trityl cysterin)、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン;限定はしないが、エポチロンA、エポチロンB、ディスコデルモリドを始めとする天然および合成エポチロン;エストラムスチン、ノコダゾールなどが含まれる。
【0081】
使用に適するホルモンモジュレーターおよびステロイド(合成類似体を含める)としては、限定はしないが、副腎皮質ステロイド、たとえば、プレドニゾン、デキサメタゾンなど;エストロゲンおよびプロゲスチン、たとえば、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、エストラジオール、クロミフェン、タモキシフェンなど;副腎皮質抑制薬、たとえば、アミノグルテチミド;17α-エチニルエストラジオール、ジエチルスチルベストロール、テストステロン、フルオキシメステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、テストラクトン、メチルプレドニゾロン、メチル-テストステロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、クロロトリアニセン、ヒドロキシプロゲステロン、アミノグルテチミド、エストラムスチン、酢酸メドロキシプロゲステロン、リュープロリド、フルタミド(Drogenil)、トレミフェン(Fareston)、およびZoladex(登録商標)が挙げられる。エストロゲンは、増殖および分化を刺激し、したがって、この活性をブロックするのに、エストロゲン受容体に結合する化合物が使用される。コルチコステロイドは、T細胞増殖を阻害しうる。
【0082】
他の化学療法薬には、金属錯体、たとえば、シスプラチン(cis-DDP)、カルボプラチンなど;尿素、たとえば、ヒドロキシ尿素;ヒドラジン、たとえば、N-メチルヒドラジン;エピドフィロトキシン(epidophyllotoxin)、トポイソメラーゼ阻害薬、プロカルバジン、ミトキサントロン、ロイコボリン、テガフールなどが含まれる。該当する他の抗増殖薬として、免疫抑制薬、たとえば、ミコフェノール酸、サリドマイド、デスオキシスパガリン(desoxyspergualin)、アザスポリン(azasporine)、レフルノミド、ミゾリビン、アザスピラン(SKF105685);Iressa(登録商標)(ZD1839、4-(3-クロロ-4-フルオロフェニルアミノ)-7-メトキシ-6-(3-(4-モルホリニル)プロポキシ)キナゾリン)などが挙げられる。
【0083】
「タキサン」は、活性のあるいずれかのタキサン誘導体またはプロドラッグだけでなく、パクリタキセルを包含する。「パクリタキセル」(本明細書では、たとえば、ドセタキセル、TAXOL(商標)、TAXOTERE(商標)(ドセタキセルの製剤)、パクリタキセルの10-デスアセチル類似体、パクリタキセルの3’N-デスベンゾイル-3’N-t-ブトキシカルボニル類似体などの、類似体、製剤、および誘導体を包含すると理解すべきである)は、当業者に知られている技術を利用して容易に調製することもでき(WO94/07882、WO94/07881、WO94/07880、WO94/07876、WO93/23555、WO93/10076;米国特許第5,294,637号、第5,283,253号、第5,279,949号、第5,274,137号、第5,202,448号、第5,200,534号、第5,229,529号、およびEP590,267も参照されたい)、または、たとえば、Sigma Chemical Co.、ミズーリ州セントルイス(太平洋イチイ(Taxus brevifolia)起源のT7402、または雲南紅豆杉(Taxus yannanensis)起源のT-1912)を始めとする様々な市販品供給元から入手することもできる。
【0084】
パクリタキセルは、パクリタキセルの化学的に入手可能な一般形態だけでなく、類似体および誘導体(たとえば、上で指摘したとおりのTaxotere(商標)ドセタキセル)ならびにパクリタキセルコンジュゲート(たとえば、パクリタキセル-PEG、パクリタキセル-デキストラン、パクリタキセル-キシロース)も指すと理解されるべきである。
【0085】
細胞療法には、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法(CAR-T療法)、ナチュラルキラー(NK)細胞療法、樹状細胞(DC)療法(たとえば、DC系ワクチン)、T細胞受容体(TCR)操作T細胞基盤療法などが含まれる。
【0086】
2’-デオキシグアノシンの合成類似体
本開示の方法は、a)本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスを有効量投与するステップと、b)2’-デオキシ-グアノシンの合成類似体を有効量投与するステップとを含む場合がある。
【0087】
ある場合では、2’-デオキシ-グアノシンの合成類似体の有効量は、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスの投与の有害な副作用を軽減するのに有効である量である。たとえば、考えられる有害な副作用は、皮膚病変である。ある場合では、2’-デオキシ-グアノシンの合成類似体の有効量は、個体に1または複数の用量で投与されたとき、個体におけるワクシニアウイルスを誘因とする皮膚病変の数および/または重症度および/または存続期間を減らすのに有効である量である。たとえば、2’-デオキシ-グアノシンの合成類似体の有効量は、個体に1または複数の用量で投与されたとき、個体におけるワクシニアウイルスを誘因とする皮膚病変の数および/または重症度および/または存続期間を、2’-デオキシ-グアノシンの合成類似体が投与される前または2’-デオキシ-グアノシンの合成類似体の投与なしでの個体におけるワクシニアウイルスを誘因とする皮膚病変の数および/または重症度および/または存続期間と比較して、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、または75%より大きく減らすのに有効である量とされる場合がある。ある場合では、2’-デオキシ-グアノシンの合成類似体の有効量は、個体に1または複数の用量で投与されたとき、ワクシニアウイルスを誘因とする皮膚病変からのウイルスの排出(shedding)を減らすのに有効である量である。たとえば、ある場合では、2’-デオキシ-グアノシンの合成類似体の有効量は、個体に1または複数の用量で投与されたとき、ワクシニアウイルスを誘因とする皮膚病変からのウイルスの排出を、2’-デオキシ-グアノシンの合成類似体が投与される前または2’-デオキシ-グアノシンの合成類似体の投与なしでの個体におけるワクシニアウイルスを誘因とする皮膚病変からのウイルス排出のレベルまたは程度と比較して、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、または75%より大きく減らすのに有効である量である。有害な副作用が皮膚病変である場合において、ある場合では、2’-デオキシ-グアノシンの合成類似体は、好都合ないずれの投与経路(たとえば、局所、経口、静脈内など)によって投与してもよい。たとえば、有害な副作用が皮膚病変である場合において、ある場合では、2’-デオキシ-グアノシンの合成類似体を局所投与することができる。
【0088】
2’-デオキシ-グアノシンの合成類似体の投与によって、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスの複製は減少する。本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスの複製のそのような減少は、たとえば、個体における複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスのレベルの制御、複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスの効果の制御などに望ましい場合がある。ある場合では、2’-デオキシ-グアノシンの合成類似体の有効量は、個体に1または複数の用量で投与されたとき、個体における本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスの複製を、2’-デオキシ-グアノシンの合成類似体が投与される前または2’-デオキシ-グアノシンの合成類似体の投与なしでの個体における複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスの複製のレベルと比較して、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、または75%より大きく減少させるのに有効である量である。
【0089】
2’-デオキシ-グアノシンの合成類似体は、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスが投与された後に投与することができる。たとえば、複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスを投与してから1日~7日、7日~2週間、2週間~1か月、1か月~3か月、または3か月より長期間後に、2’-デオキシ-グアノシンの合成類似体を投与することができる。
【0090】
ある場合では、2’-デオキシ-グアノシンの合成類似体は、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスによって誘導された、腫瘍成長の緩慢化が起こった時点、および/またはウイルス複製がそのピークもしくはピーク直後に達した時点、および/またはワクシニアウイルスタンパク質に対する循環抗体がそのピークもしくはピーク直後に達した時点で、個体に投与することができる。本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスが投与された後に腫瘍成長の緩慢化が起こったかどうかは、確立されている様々な方法のいずれかを使用して腫瘍成長および/またはがん細胞数を測定して明らかにすることができる。個体における本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスの複製がそのピークまたはそのピーク直後にあるかどうかは、本明細書に記載するように、個体におけるTKvポリペプチドのレベルを検出および/または測定することにより明らかにすることができ、適切な方法の非限定的な例は、PETである。本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスに対する循環抗体がそのピークまたはピーク直後にあるかどうかは、抗体のレベルを測定する標準の方法を使用して測定することができ、そのような方法としては、たとえば、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)などが挙げられる。
【0091】
一例として、本開示の方法は、a)それを必要とする個体に、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスを有効量投与するステップと、b)i)個体における腫瘍サイズおよび/もしくはがん細胞数、および/またはii)個体におけるTKvポリペプチドのレベル、および/またはiii)個体における複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスに対する抗体のレベルを測定するステップと、c)測定ステップによって、i)複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスが投与される前の腫瘍成長および/またはがん細胞の数に比べて、腫瘍成長が緩慢化し、かつ/またはがん細胞の数が減少していること、および/またはii)個体におけるTKvポリペプチドのレベルがそのピークにあるまたはそのピークを過ぎたばかりであること、および/またはiii)個体における複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスに対する循環抗体のレベルがそのピークにあるまたはそのピークを過ぎたばかりであることが示される場合において、2’-デオキシ-グアノシンの合成類似体を投与するステップとを含む場合がある。たとえば、本開示の方法は、a)それを必要とする個体に、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスを有効量投与するステップと、b)個体に、2’-デオキシ-グアノシンの合成類似体を有効量投与するステップとを含む場合があり、投与ステップ(b)は、ステップ(a)から5日~20日(たとえば、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、または20日)後に実施される。
【0092】
2’-デオキシ-グアノシンの適切な合成類似体としては、たとえば、アシクロビル(アシクログアノシン)、5’-ヨードデオキシウリジン(「イドクスウリジン」とも呼ばれる)、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、ファムシクロビル、バラシクロビル、2’-フルオロ-2’-デオキシ-5-ヨード-1-ベータ-d-アラビノフラノシルウラシル(FIAU)などが挙げられる。2’-デオキシ-グアノシンの適切な合成類似体の構造を以下に示す。
ガンシクロビル:
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
ある場合では、2’-デオキシ-グアノシンの合成類似体は、1日に4000mg未満の用量で、経口的に投与される。ある場合では、2’-デオキシ-グアノシンの合成類似体の適切な経口用量は、1日に約50mg~1日に約2500mg、たとえば、1日に約50mg~1日に約100mg、1日に約100mg~1日に約200mg、1日に約200mg~1日に約300mg、1日に約300mg~1日に約400mg、1日に約400mg~1日に約500mg、1日に約500mg~1日に約600mg、1日に約600mg~1日に約700mg、1日に約700mg~1日に約800mg、1日に約800mg~1日に約900mg、1日に約900mg~1日に約1000mg、1日に約1000mg~1日に約1250mg、1日に約1250mg~1日に約1500mg、1日に約1500mg~1日に約1750mg、1日に約1750mg~1日に約2000mg、1日に約2000mg~1日に約2250mg、または1日に約2250mg~1日に約2500mgの範囲にある。ある場合では、2’-デオキシ-グアノシンの合成類似体の適切な経口用量は、1日に約2500mg~1日に約3000mg、1日に約3000mg~1日に約3500mg、または1日に約3500mg~1日に約4000mgの範囲にある。
【0098】
非限定的な一例として、3000mgの合計日用量が1000mgの用量で1日3回投与されるガンシクロビル。ガンシクロビルは、3000mg未満の合計日用量(たとえば、1日に約50mg~1日に約2500mg、たとえば、1日に約50mg~1日に約100mg、1日に約100mg~1日に約200mg、1日に約200mg~1日に約300mg、1日に約300mg~1日に約400mg、1日に約400mg~1日に約500mg、1日に約500mg~1日に約600mg、1日に約600mg~1日に約700mg、1日に約700mg~1日に約800mg、1日に約800mg~1日に約900mg、1日に約900mg~1日に約1000mg、1日に約1000mg~1日に約1250mg、1日に約1250mg~1日に約1500mg、1日に約1500mg~1日に約1750mg、1日に約1750mg~1日に約2000mg、1日に約2000mg~1日に約2250mg、または1日に約2250mg~1日に約2500mg)で投与される場合がある。ある場合では、ガンシクロビルは、経口投与で投与される。
【0099】
別の非限定的な一例として、アシクロビルを、1000mg~4000mgの合計日用量で投与することができる。アシクロビルは、4000mg未満の合計日用量(たとえば、1日に約50mg~1日に約2500mg、たとえば、1日に約50mg~1日に約100mg、1日に約100mg~1日に約200mg、1日に約200mg~1日に約300mg、1日に約300mg~1日に約400mg、1日に約400mg~1日に約500mg、1日に約500mg~1日に約600mg、1日に約600mg~1日に約700mg、1日に約700mg~1日に約800mg、1日に約800mg~1日に約900mg、1日に約900mg~1日に約1000mg、1日に約1000mg~1日に約1250mg、1日に約1250mg~1日に約1500mg、1日に約1500mg~1日に約1750mg、1日に約1750mg~1日に約2000mg、1日に約2000mg~1日に約2250mg、または1日に約2250mg~1日に約2500mg)で投与される場合がある。ある場合では、アシクロビルは、経口投与で投与される。
【0100】
別の一例としては、バルガンシクロビルが、約900mg~約1800mgの合計日用量で投与される。バルガンシクロビルは、1800mg未満の合計日用量(たとえば、約500mg/日~約600mg/日、約600mg/日~約700mg/日、約700mg/日~約800mg/日、約800mg/日~約900mg/日、約900mg/日~約1000mg/日、約1000mg/日~約1200mg/日、約1200mg/日~約1400mg/日、または約1400mg/日~約1600mg/日)で投与される場合がある。ある場合では、バルガンシクロビルは、経口投与で投与される。
【0101】
別の一例としては、ファムシクロビルが、約2000mg/日~約4000mg/日の合計日用量で投与される。ファムシクロビルは、4000mg未満の合計日用量(たとえば、1日に約50mg~1日に約2500mg、たとえば、1日に約50mg~1日に約100mg、1日に約100mg~1日に約200mg、1日に約200mg~1日に約300mg、1日に約300mg~1日に約400mg、1日に約400mg~1日に約500mg、1日に約500mg~1日に約600mg、1日に約600mg~1日に約700mg、1日に約700mg~1日に約800mg、1日に約800mg~1日に約900mg、1日に約900mg~1日に約1000mg、1日に約1000mg~1日に約1250mg、1日に約1250mg~1日に約1500mg、1日に約1500mg~1日に約1750mg、1日に約1750mg~1日に約2000mg、1日に約2000mg~1日に約2250mg、または1日に約2250mg~1日に約2500mg)で投与される場合がある。ある場合では、ファムシクロビルは、経口投与で投与される。
【0102】
別の一例としては、バラシクロビルが、約2000mg~約4000mgの合計日用量で投与される。バラシクロビルは、4000mg未満の合計日用量(たとえば、1日に約50mg~1日に約2500mg、たとえば、1日に約50mg~1日に約100mg、1日に約100mg~1日に約200mg、1日に約200mg~1日に約300mg、1日に約300mg~1日に約400mg、1日に約400mg~1日に約500mg、1日に約500mg~1日に約600mg、1日に約600mg~1日に約700mg、1日に約700mg~1日に約800mg、1日に約800mg~1日に約900mg、1日に約900mg~1日に約1000mg、1日に約1000mg~1日に約1250mg、1日に約1250mg~1日に約1500mg、1日に約1500mg~1日に約1750mg、1日に約1750mg~1日に約2000mg、1日に約2000mg~1日に約2250mg、または1日に約2250mg~1日に約2500mg)で投与される場合がある。ある場合では、バラシクロビルは、経口投与で投与される。
【0103】
別の一例としては、ガンシクロビルが、約10mg/kgの合計日用量で投与される。ガンシクロビルは、10mg/kg未満の合計日用量(たとえば、約1mg/kg~約2mg/kg、約2mg/kg~約3mg/kg、約3mg/kg~約4mg/kg、約4mg/kg~約5mg/kg、約5mg/kg~約6mg/kg、約6mg/kg~約7mg/kg、約7mg/kg~約8mg/kg、または約8mg/kg~約9mg/kg)で投与される場合がある。ある場合では、ガンシクロビルは、注射(たとえば、筋肉内注射、静脈内注射、または皮下注射)によって投与される。
【0104】
別の一例としては、アシクロビルが、約15mg/kg~約30mg/kgまたは約30mg/kg~約45mg/kgの合計日用量で投与される。アシクロビルは、45mg/kg未満の合計日用量(たとえば、約5mg/kg~約7.5mg/kg、約7.5mg/kg~約10mg/kg、約10mg/kg~約12.5mg/kg、約12.5mg/kg~約15mg/kg、約15mg/kg~約20mg/kg、約20mg/kg~約25mg/kg、約25mg/kg~約30mg/kg、または約30mg/kg~約35mg/kg)で投与される場合がある。ある場合では、アシクロビルは、注射(たとえば、筋肉内注射、静脈内注射、または皮下注射)によって投与される。
【0105】
別の一例としては、バルガンシクロビルが、約10mg/kgの合計日用量で投与される。バルガンシクロビルは、10mg/kg未満の合計日用量(たとえば、約1mg/kg~約2mg/kg、約2mg/kg~約3mg/kg、約3mg/kg~約4mg/kg、約4mg/kg~約5mg/kg、約5mg/kg~約6mg/kg、約6mg/kg~約7mg/kg、約7mg/kg~約8mg/kg、または約8mg/kg~約9mg/kg)で投与される場合がある。ある場合では、バルガンシクロビルは、注射(たとえば、筋肉内注射、静脈内注射、または皮下注射)によって投与される。
【0106】
ある場合では、2’-デオキシ-グアノシンの合成類似体は、局所投与される。局所投与に適する製剤には、たとえば、皮膚科製剤(たとえば、液体、クリーム、ゲルなど)および眼科製剤(たとえば、クリーム、液体、ゲルなど)が含まれる。ガンシクロビルの局所用量は、たとえば、眼科適応症については、たとえば、0.15%製剤1滴を1日5回とすることができる。アシクロビルの局所用量は、たとえば、5%製剤を、皮膚病変を覆うのに十分な量で、1日6回適用とすることができる。イドクスウリジンの局所用量は、0.5%軟膏または0.1%クリーム1滴を4時間毎に適用とすることができる。
【0107】
ある場合では、2’-デオキシ-グアノシンの合成類似体は、10mg/体重kg未満の用量で静脈内に投与される。ある場合では、2’-デオキシ-グアノシンの合成類似体の適切な静脈内用量は、約1mg/体重kg~約2.5mg/体重kg、約2.5mg/体重kg~約5mg/体重kg、約5mg/体重kg~約7.5mg/体重kg、または約7.5mg/体重kg~約10mg/体重kgの範囲にある。
【0108】
がん
本開示の方法および組成物によって処置することのできるがん細胞には、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳房、結腸、食道、胃腸、歯肉、頭部、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、首、卵巣、前立腺、皮膚、胃、脊髄、精巣、舌、または子宮からの細胞が含まれる。加えて、がんは、詳細には、次の組織学的タイプのもの、すなわち、新生物、悪性;癌腫;癌腫、未分化;巨細胞および紡錘体細胞癌;小細胞癌;乳頭状癌;扁平上皮癌;リンパ上皮癌;基底細胞癌;毛母癌;移行上皮癌;乳頭状移行上皮癌;腺癌;ガストリノーマ、悪性;胆管癌;肝細胞癌;肝細胞癌・胆管癌の混合型;索状腺癌;腺様嚢胞癌;腺腫性ポリープ内腺癌;腺癌、家族性結腸ポリポーシス;固形癌;カルチノイド腫瘍、悪性;細気管支肺胞腺癌;乳頭状腺癌;嫌色素性癌;好酸性癌;好酸性腺癌;好塩基性癌;明細胞腺癌;顆粒細胞癌;濾胞状腺癌;乳頭状・濾胞腺癌;非被包性硬化癌;副腎皮質癌;類内膜癌;皮膚付属器癌;アポクリン腺癌;脂腺癌;耳垢腺癌;粘表皮癌;嚢胞腺癌;乳頭状嚢胞腺癌;乳頭状漿液性嚢胞腺癌;粘液性嚢胞腺癌;粘液性腺癌;印環細胞癌;浸潤性導管癌;髄様癌;小葉癌;炎症性癌;パジェット病、乳房;腺房細胞癌;腺扁平上皮癌;扁平上皮化生を伴う腺癌;胸腺腫、悪性;卵巣間質腫瘍、悪性;莢膜細胞腫、悪性;顆粒膜細胞腫瘍、悪性;アンドロブラストーマ、悪性;セルトリ細胞癌;ライディッヒ細胞腫瘍、悪性;脂質細胞腫瘍、悪性;傍神経節腫、悪性;乳房外傍神経節腫、悪性;褐色細胞腫;グロムス血管肉腫;悪性黒色腫;無色素性黒色腫;表層拡大性黒色腫;巨大色素性母斑における悪性黒色腫;類上皮細胞黒色腫;青色母斑、悪性;肉腫;線維肉腫;線維性組織球腫、悪性;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎芽性横紋筋肉腫;胞巣状横紋筋肉腫;間質肉腫;混合腫瘍、悪性;ミュラー管混合腫瘍;腎芽腫;肝芽腫;癌肉腫;間葉腫、悪性;ブレンナー腫瘍、悪性;葉状腫瘍、悪性;滑膜肉腫;中皮腫、悪性;未分化胚腫;胎芽性癌;奇形腫、悪性;卵巣甲状腺腫、悪性;絨毛癌;中腎腫、悪性;血管肉腫;血管内皮腫、悪性;カポジ肉腫;血管外皮腫、悪性;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍皮質骨肉腫;軟骨肉腫;軟骨芽腫、悪性;間葉性軟骨肉腫;骨巨細胞腫瘍;ユーイング肉腫;歯原性腫瘍、悪性;エナメル上皮歯牙肉腫;エナメル上皮腫、悪性;エナメル上皮線維肉腫;松果体腫、悪性;脊索腫;グリオーマ、悪性;上衣腫;アストロサイトーマ;原形質性アストロサイトーマ;細線維性アストロサイトーマ;星芽腫;膠芽腫;希突起膠腫;希突起芽腫;原始神経外胚葉性;小脳肉腫;神経節神経芽腫;神経芽腫;網膜芽腫;嗅神経原腫瘍;髄膜腫、悪性;神経線維肉腫;神経鞘腫、悪性;顆粒細胞性腫瘍、悪性;悪性リンパ腫;ホジキン病;ホジキン側肉芽腫;悪性リンパ腫、小リンパ球性;悪性リンパ腫、大細胞、びまん性;悪性リンパ腫、濾胞性;菌状息肉症;他の指定された非ホジキンリンパ腫;悪性組織球症;多発性骨髄腫;肥満細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ性白血病;形質細胞性白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞白血病;骨髄性白血病;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;肥満細胞白血病;巨核芽球性白血病;骨髄性肉腫;膵臓がん;直腸がん;およびヘアリー細胞白血病でよいが、これらに限定されない。
【0109】
本開示の方法を使用して処置することのできる腫瘍には、たとえば、脳腫瘍、頭頸部がんの腫瘍、食道がんの腫瘍、皮膚がんの腫瘍、肺がんの腫瘍、胸腺がんの腫瘍、胃がんの腫瘍、結腸がんの腫瘍、肝臓がんの腫瘍、卵巣がんの腫瘍、子宮がんの腫瘍、膀胱がんの腫瘍、精巣がんの腫瘍、直腸がんの腫瘍、乳がんの腫瘍、または膵臓がんの腫瘍が含まれる。
【0110】
ある場合では、腫瘍は、結腸直腸腺癌である。ある場合では、腫瘍は、非小細胞肺癌である。ある場合では、腫瘍は、トリプルネガティブ乳がんである。ある場合では、腫瘍は、固形腫瘍である。ある場合では、腫瘍は、液状腫瘍である。ある場合では、腫瘍は、再発性である。ある場合では、腫瘍は、原発腫瘍である。ある場合では、腫瘍は、転移性である。
【0111】
検出
本開示は、個体において、組織、臓器、または体液中の本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスを検出する方法を提供する。たとえば、本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスは、個体において、個体にワクシニアウイルスが投与された後、検出される場合がある。検出を行って、複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスが、意図した標的の場所またはその付近(たとえば腫瘍の場所またはその付近)に存在するかどうかを明らかにすることができる。検出を行って、個体の種々の組織、臓器、および体液における複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスの分布を明らかにすることもできる。検出を行って、投与された複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスが複製しているかどうか、および/またはどの程度複製しているかを明らかにすることもできる。
【0112】
本開示の検出方法は、a)本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスが投与されている個体に、2’-デオキシ-グアノシンの検出可能に標識された合成類似体を投与するステップと、b)個体において、検出可能に標識された合成類似体をin vivoで検出するステップとを含む場合がある。本開示の検出方法は、a)本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスが投与されている個体に、2’-デオキシ-グアノシンの検出可能に標識された合成類似体を投与するステップと、b)個体から取得された生体サンプル(たとえば、組織、臓器、または体液)において、検出可能に標識された合成類似体を検出するステップとを含む場合がある。本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスの検出は、ワクシニアウイルスによってコードされている変異体TKの活性を検出することを含みうる。
【0113】
2’-デオキシ-グアノシンの検出可能に標識された合成類似体としては、2’-デオキシ-グアノシンのいずれかの合成類似体の放射標識されたタイプが挙げられる。適切な放射標識には、たとえば、131I、14C、18F、64Cu、99mTe、11C、124I、123I、15O、13N、82RbClなどが含まれる。たとえば、適切な、検出可能に標識された類似体は、放射標識(たとえば、131I標識)2’-フルオロ-2’-デオキシ-5-ヨード-1-ベータ-d-アラビノフラノシルウラシル(FIAU)である。別の一例として、適切な、検出可能に標識された類似体は、9-[(3-[18F]フルオロ-1-ヒドロキシ-2-プロポキシ)メチル]グアニン([18F]FHPGである。別の一例として、適切な、検出可能に標識された類似体は、放射性ヨウ素標識(E)-5-(2-ヨードビニル)-2’-フルオロ-2’-デオキシウリジン(IVFRU)である。
【0114】
検出可能に標識されたHSV-TK基質は、FHBG(9-[4-フルオロ-3-(ヒドロキシメチル)ブチル]グアニン)、FHPG(9-([3-フルオロ-1-ヒドロキシ-2-プロポキシ]メチル)グアニン)、FGCV(フルオロガンシクロビル)、FPCV(フルオロペンシクロビル)、FIAU(1-(2’-デオキシ-2’-フルオロ-1-β-D-アラビノフラノシル)-5-ヨードウラシル)、FEAU(フルオロ-5-エチル-1-ベータ-D-アラビノフラノシルウラシル)、FMAU(フルオロ-5-メチル-1-ベータ-D-アラビノフラノシルウラシル)、FHOMP(6-((1-フルオロ-3-ヒドロキシプロパン-2-イルオキシ)メチル)-5-メチルプリルイミジン-2,4(1H,-3H)-ジオン)、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、アシクロビル、バラシクロビル、ペンシクロビル、N-1に4-ヒドロキシ-3-(ヒドロキシメチル)ブチル側鎖を有する放射標識ピリミジン(HHG-5-FEP)、または2,3-ジヒドロキシプロピル、アシクロビル、ガンシクロビル、およびペンシクロビル様側鎖を有する5-(2-)ヒドロキシエチル)および5-(3-ヒドロキシプロピル)置換されたピリミジン誘導体から選択される化合物の検出可能に標識されたタイプでよい。
【0115】
個体において、検出可能に標識された合成類似体をin vivoで検出するのに適する方法には、たとえば、陽電子放射トポグラフィー(PET)、磁気共鳴イメージング(MRI)、単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)、コンピュータ断層撮影(CT)などが含まれる。
【0116】
上で指摘したとおり、ある場合では、検出は、個体から取得された生体サンプルにおいて複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスを検出する(たとえば、変異体TK活性を検出する)ことを含む。
【0117】
適切な生体サンプルには、限定はしないが、唾液、血液、血清、血漿、尿、吸引液、および生検サンプルが含まれる。したがって、患者に関しての用語「生体サンプル」は、血液および他の生体起源液状サンプル、生検材料などの固形組織サンプル、または組織培養物もしくはそれから得られる細胞およびその後代を包含する。この定義は、たとえば、試薬での処理、洗浄、またはがん細胞などのある特定の細胞集団の富化により、調達後にいずれかの方法で操作されているサンプルも包含する。この定義は、特定のタイプの分子が富化されているサンプルも包含する。用語「生体サンプル」は、臨床サンプル、たとえば、血液、血漿、血清、吸引液、脳脊髄液(CSF)、硝子体液、房水、滑液などの生体サンプルを包含し、外科的切除によって得られた組織、生検によって得られた組織、培養物中の細胞、細胞上清、細胞可溶化物、組織サンプル、臓器、骨髄なども含む。「生体サンプル」は、細胞、臓器、または組織から得られた生体液(たとえば、がん細胞、腫瘍などから得られた生体液)を包含する。適切な生体サンプルとしては、たとえば、腫瘍生検材料、腫瘍を取り囲む液体、血液、血清、血漿、胸水、腹水、臓器、組織などが挙げられる。生体サンプルは、細胞を含む場合もあり、または無細胞であることもある。
【0118】
個体における(in vivo)または個体から取得された生体サンプルにおける本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスの検出は、複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスが個体に投与された後のいずれの時期に行ってもよい。たとえば、個体における(in vivo)または個体から取得された生体サンプルにおける本開示の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスの検出は、複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルスが個体に投与されてから1日~7日後、1週間~4週間後、4週間~1か月後、1か月~3か月後、3か月~6か月後、6か月~1年後、または1年を超えた後に行われる場合がある。
【0119】
処置に適する対象
様々な対象が、本がん処置法による処置に適する。適切な対象には、いずれかの個体、たとえば、がんを有する、がんと診断されている、がんになるリスクがある、がんになったことがあり、がんが再発するリスクがある、本開示の腫瘍溶解性ワクシニアウイルス以外の薬剤によるがんの処置を受け、そのような処置に応答しなかったことがある、または本開示の腫瘍溶解性ワクシニアウイルス以外の薬剤によるがんの処置を受けたが、そのような処置に最初に応答した後に再発してしまった、ヒトまたは非ヒト動物が含まれる。
【0120】
本開示の非限定的な態様の例
上述の本主題についての、実施形態を含めた態様は、単独でも、または他の1つもしくは複数の態様もしくは実施形態と組み合わせても、有益となりうる。前述の説明を限定することなく、1~41の番号を付けた本開示のある特定の非限定的な態様を以下に提供する。本開示を読めば当業者には明白であるように、個々に番号が付けられた態様はそれぞれ、個々に番号が付けられた先行または後続の態様のいずれかと一緒に使用してもよいし、またはそれらと組み合わせてもよい。これは、態様のそのような組合せすべてについての支持を示すものであり、以下で明確に示す態様の組合せに限定されない。
【0121】
態様1.異種チミジンキナーゼ(TK)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、異種TKポリペプチドは、デオキシグアノシンのリン酸化を触媒しうる、複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス。
【0122】
態様2.チミジンキナーゼ発現または機能の欠如をもたらす改変を含む、態様1の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス。
【0123】
態様3.異種TKポリペプチドが、変異体単純ヘルペスウイルス(HSV)TKポリペプチドである、態様1または2の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス。
【0124】
態様4.変異体HSV TKポリペプチドが、野生型HSV TKに対して少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、配列番号1の野生型HSV TKアミノ酸配列のアミノ酸番号表記に準拠して、L159、I160、F161、A168、およびL169の1つまたは複数の置換を含む、態様3の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス。
【0125】
態様5.変異体HSV TKポリペプチドが、A168H置換を含む、態様4の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス。
【0126】
態様6.変異体HSV TKポリペプチドが、L159I置換、I160L置換、F161A置換、A168Y置換、およびL169F置換を含む、態様4の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス。
【0127】
態様7.変異体TKポリペプチドが、L159I置換、I160F置換、F161L置換、A168F置換、およびL169M置換を含む、態様4の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス。
【0128】
態様8.変異体HSV TKポリペプチドが、配列番号2、3、または4のアミノ酸配列を含む、態様3の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス。
【0129】
態様9.コペンハーゲン株ワクシニアウイルスである、態様1~8のいずれか1つの複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス。
【0130】
態様10.WR株ワクシニアウイルスである、態様1~8のいずれか1つの複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス。
【0131】
態様11.ワクシニアウイルス遺伝子の全部または一部分の欠失を含む、態様1~10のいずれか1つの複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス。
【0132】
態様12.細胞外エンベロープウイルスの生成を強化する1つまたは複数のアミノ酸置換を含む、態様1~11のいずれか1つの複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス。
【0133】
態様13.K151E置換を含むA34ポリペプチドをコードするA34R遺伝子を含む、態様10の複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス。
【0134】
態様14.免疫調節性ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を含む、態様1~13のいずれか1つの複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス。
【0135】
態様15.a)態様1~12のいずれか1つのワクシニアウイルスと、b)薬学的に許容できる賦形剤とを含む組成物。
【0136】
態様16.腫瘍を有する個体において腫瘍溶解を誘導する方法であって、個体に、態様1~14のいずれか1つのワクシニアウイルスまたは態様15の組成物を有効量投与するステップを含む方法。
【0137】
態様17.前記投与するステップが、単一用量のウイルスまたは組成物の投与を含む、態様16の方法。
【0138】
態様18.単一用量が、少なくとも106プラーク形成単位(pfu)のワクシニアウイルスを含む、態様17の方法。
【0139】
態様19.単一用量が、109~1012pfuのワクシニアウイルスを含む、態様17の方法。
【0140】
態様20.前記投与するステップが、複数回用量のワクシニアウイルスまたは組成物の投与を含む、態様16の方法。
【0141】
態様21.ワクシニアウイルスまたは組成物が、1日おきに投与される、態様20の方法。
【0142】
態様22.ワクシニアウイルスまたは組成物が、週1回投与される、態様16~21のいずれか1つの方法。
【0143】
態様23.ワクシニアウイルスまたは組成物が、1週間おきに投与される、態様16~21のいずれか1つの方法。
【0144】
態様24.腫瘍が、脳腫瘍、頭頸部がんの腫瘍、食道がんの腫瘍、皮膚がんの腫瘍、肺がんの腫瘍、胸腺がんの腫瘍、胃がんの腫瘍、結腸がんの腫瘍、肝臓がんの腫瘍、卵巣がんの腫瘍、子宮がんの腫瘍、膀胱がんの腫瘍、精巣がんの腫瘍、直腸がんの腫瘍、乳がんの腫瘍、または膵臓がんの腫瘍である、態様16~23のいずれか1つの方法。
【0145】
態様25.腫瘍が結腸直腸腺癌である、態様16~23のいずれか1つの方法。
【0146】
態様26.腫瘍が非小細胞肺癌である、態様16~23のいずれか1つの方法。
【0147】
態様27.腫瘍がトリプルネガティブ乳がんである、態様16~23のいずれか1つの方法。
【0148】
態様28.腫瘍が固形腫瘍である、態様16~23のいずれか1つの方法。
【0149】
態様29.腫瘍が液状腫瘍である、態様16~23のいずれか1つの方法。
【0150】
態様30.腫瘍が再発性である、態様16~29のいずれか1つの方法。
【0151】
態様31.腫瘍が原発腫瘍である、態様16~29のいずれか1つの方法。
【0152】
態様32.腫瘍が転移性である、態様16~29のいずれか1つの方法。
【0153】
態様33.個体に第2のがん療法を施すステップをさらに含む、態様16~32のいずれか1つの方法。
【0154】
態様34.第2のがん療法が、化学療法、生物学的療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、抗血管新生療法、寒冷療法、毒素療法、腫瘍溶解性ウイルス療法、細胞療法、および手術から選択される、態様33の方法。
【0155】
態様35.第2のがん療法が、抗PD1薬または抗PD-L1薬を含む、態様33の方法。
【0156】
態様36.個体が免疫不全である、態様16~35のいずれか1つの方法。
【0157】
態様37.ワクシニアウイルスまたは組成物の前記投与が腫瘍内である、態様16~35のいずれか1つの方法。
【0158】
態様38.ワクシニアウイルスまたは組成物の前記投与が腫瘍周囲である、態様16~35のいずれか1つの方法。
【0159】
態様39.ワクシニアウイルスまたは組成物の前記投与が静脈内である、態様16~35のいずれか1つの方法。
【0160】
態様40.ワクシニアウイルスまたは組成物の前記投与が、動脈内、腹腔内、膀胱内、またはくも膜下腔内である、態様16~35のいずれか1つの方法。
【0161】
態様41.ワクシニアウイルスと組み合わせて、ワクシニアウイルスの有害な副作用を低減するのに有効である量のガンシクロビルを個体に投与するステップを含む、態様16~40のいずれか1つの方法。
【0162】
態様42.副作用が皮膚病変である、態様41の方法。
【0163】
態様43.配列番号2、3、または4のアミノ酸配列を含む変異体単純ヘルペスウイルス(HSV)TKポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス。
【0164】
態様44.配列番号2、3、または4のアミノ酸配列を含む変異体単純ヘルペスウイルス(HSV)TKポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、コペンハーゲン株ワクシニアウイルスであり、K151E置換を含むA34R遺伝子を含む複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス。
【0165】
態様45.配列番号11、12、または13を含む変異体単純ヘルペスウイルス(HSV)TKポリペプチドヌクレオチド配列を含む複製コンピテント腫瘍溶解性組換えワクシニアウイルス。
【0166】
態様46.(i)態様43~45のいずれか1つのワクシニアウイルスと、(ii)薬学的に許容できる担体とを含む組成物。
【実施例】
【0167】
以下の実施例は、本発明の製造法および使用法についての完全な開示および説明が当業者に提供されるように掲げており、本発明者らが自らの発明であるとみなすものの範囲を限定するものでもなければ、以下の実験が、実施されたすべてまたは唯一の実験であることを表すものでもない。使用した数字(たとえば、量、温度など)に関しては、精度を確実にするように努めているが、多少の実験誤差およびずれが見込まれるはずである。別段指摘しない限り、部は、重量部であり、分子量は、重量平均分子量であり、温度は、摂氏度であり、圧力は、大気圧またはほぼ大気圧である。標準的な略語、たとえば、bp:塩基対、kb:キロベース、pl:ピコリットル、sまたはsec:秒、min:分、hまたはhr:時間、aa:アミノ酸、nt:ヌクレオチド、i.m.:筋肉内、i.p.:腹腔内、s.c.:皮下などを使用する場合がある。
【0168】
(実施例1)
材料および方法
プラスミド構築
遺伝子合成技術を使用して、WT HSV-TK、dm30 HSV-TK変異体、SR39 HSV-TK変異体、またはTK.007 HSV-TK変異体を含んでいるプラスミドを生成した。pSELプロモーターによって制御される、WT HSV-TK、dm30 HSV-TK、SR39 HSV-TK、またはTK.007 HSV-TKをコードする配列を、ワクシニアウイルス発現用にコドン最適化し、遺伝子合成についてはGenScriptに寄託し、pUC57-miniベクターに挿入した。WT HSV-TK、dm30 HSV-TK、SR39 HSV-TK、またはTK.007のアミノ酸配列は、
図1において、それぞれ、配列番号1、2、3、および4の注釈が付けられている。WT HSV-TK、dm30 HSV-Tk、SR39 HSV-TK、またはTK.007のアミノ酸151~175の並びは、
図2において、それぞれ、配列番号5、6、7、および8の注釈が付けられている。pSELプロモーターは、次のヌクレオチド配列:aaaaattgaaattttattttttttttttggaatataaata(配列番号9)を有する。
【0169】
以下に示す実施例と関連して生成されたある特定のワクシニアウイルス構築物の特色を、以下で表1に要約する。
【0170】
【0171】
ウイルスおよび細胞
野生型ポックスウイルスコペンハーゲン株を、さらなる改変のための最初のベクターとして使用した。pSELプロモーターの制御下にあるルシフェラーゼ-2A-緑色蛍光タンパク質(GFP)カセットを、ワクシニアウイルスコペンハーゲン株のチミジンキナーゼ遺伝子(J2R領域)に挿入することにより、ワクシニアウイルスIGV-006を構築した。ルシフェラーゼレポーター遺伝子の発現は、Bright-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイシステム(Promega)およびSpectramaxM5(Molecular Devices)を使用して、発光によって確認した。GFP発現を蛍光顕微鏡で確認した。
【0172】
pSELプロモーターの制御下にある合成されたHSV-TK遺伝子をIGV-006のチミジンキナーゼ領域に入れて組み換えることにより、WT HSV-TK(IGV-023)、TK.007 HSV-TK(IGV-035)、SR39 HSV-TK(IGV-034)、およびdm30 HSV-TK(IGV-033)を発現するワクシニア株を構築した。IGV-006チミジンキナーゼ領域へのHSV-TK遺伝子の挿入の成功を、サンガー配列決定およびガンシクロビルに対する感受性によって検証した。ウイルスを、以下に記載するとおりに増幅および精製した。
【0173】
HeLaおよびBSC-40細胞は、ATCCから入手した。A549、Colo205、およびMDA MB231細胞は、腫瘍および腫瘍細胞株のNCI DCTD Repositoryから入手した。HMECおよびSAEC細胞は、Lonzaから入手した。HeLaS3およびVeroB4細胞は、DSMZから入手した。
【0174】
ウイルス増幅および精製
ウイルスを加え、1時間インキュベートすることにより、HeLaS3細胞(DSMZ)を感染させた。感染させた後、培地を新たな培地と入れ替え、48時間インキュベートして、ウイルス増幅を可能にした。インキュベートした後、遠心分離によって細胞を回収および収集した。Dounceホモジナイザー(Wheaton)を用いた機械的破砕によって細胞を溶解させた。24%~40%のスクロース勾配および超遠心分離法によってウイルス精製を実施した。精製ウイルスを-80℃で保管し、以前に記載されているとおりに、精製ウイルスの段階希釈物をBSC-40細胞(ATCC)に加えることにより、二通りに滴定した(Cotterら(2015) Current Protocols in Microbiology 39:14A.3.1-14A.3.18)。
【0175】
プラークアッセイによるウイルス滴定
保存濃縮された精製ウイルスの最終希釈度を10-9とした10倍段階希釈によって、ウイルス力価を決定した。ウイルス希釈物を使用してBSC-40細胞を感染させて、1mLあたりのプラーク形成単位(PFU/mL)の数字を求めた。標準の6ウェルマイクロプレート(BD Falcon)において、BSC-40細胞の集密単層を含んでいるウェルに、各段階希釈物1mLを二通りに適用した。細胞を1時間感染させ、新たな培地で洗浄し、1.5%のカルボキシメチルセルロースを含有する新たな培地の溶液(Teknova)で表面を覆った。48時間インキュベートした後、培地を除去し、細胞を固定し、0.1%のクリスタルバイオレットを含有する20%エタノール溶液(Sigma)で染色した。次いで、各ウェルにおけるプラークの数を計数し、二通りの力価の平均をとり、希釈倍率について調整することにより、保存力価を決定した。
【0176】
一段増殖曲線
HeLa細胞(ATCC)の単層を、感染多重度(MOI)3で1時間、三通りにウイルス感染させることにより、ウイルス複製を明らかにした。感染させた後、ウイルス接種材料を新たな培地と入れ替えた。感染後12、18、24、48、および72時間の時点で、細胞を培地中に回収し、-80℃で凍結させた。各サンプルのウイルス力価を、ウイルスプラークアッセイによって、二通りに決定した。
【0177】
ウイルス複製のガンシクロビルに対する感受性
HeLa細胞の単層をMOI3で1時間、三通りにウイルス感染させることにより、HSV-TKを発現するウイルスについての、ガンシクロビル存在下でのウイルス複製の阻害を明らかにした。感染させた後、ウイルス接種材料を新たな培地と入れ替えた。感染したHeLa細胞に、0μM、0.05μM、0.1μM、0.25μM、0.5μM、0.75μM、または1μMのガンシクロビル(Calbiochem)を投与した。感染後48時間の時点で、細胞を培地中に回収し、-80℃で凍結させた。各サンプルのウイルス力価を、ウイルスプラークアッセイによって、二通りに決定した。
【0178】
腫瘍および正常一次ヒト細胞におけるウイルス複製
腫瘍細胞株A549(NCI)、Colo205(NCI)、MDA MB231(NCI)、およびHeLa、ならびに一次ヒト細胞であるHMEC(Lonza)およびSAEC(Lonza)におけるウイルス複製を、細胞の単層をMOI1で1時間、三通りにウイルス感染させることにより明らかにした。感染させた後、ウイルス接種材料を新たな培地と入れ替えた。感染後24および48時間の時点で、細胞を培地中に回収し、-80℃で凍結させた。各サンプルのウイルス力価を、ウイルスプラークアッセイによって、二通りに決定した。
【0179】
腫瘍および正常一次ヒト細胞における細胞傷害性アッセイ
腫瘍細胞株A549(NCI)、Colo205(NCI)、およびMDA MB231(NCI)、ならびに一次ヒト細胞であるHMEC(Lonza)およびSAEC(Lonza)における細胞死滅を、細胞の単層を種々のMOIのウイルスに1時間かけて四通りに感染させることにより明らかにした。感染させた後、ウイルス接種材料を新たな培地と入れ替えた。感染後48時間の時点で、Cytotox96アッセイ(Promega)およびSpectramaxM5(Molecular Devices)を490nmで使用して、細胞傷害性をLDH放出によって明らかにした。Prism7ソフトウェアを用いてデータ解析を行った。
【0180】
動物モデル、腫瘍モデル準備、および試験薬剤準備
ヌードBALB/cマウス(Charles River Laboratories)を温度(68~79°F)および湿度(30~70%)制御された設備に収容した。動物の部屋は、12時間で交替する明暗サイクルで維持した。順化および研究の生物学的段階の間は終始、乾燥食(5053 Irradiated Pico Lab Rodent Diet 20)に自由に有り付けるようにした。HCT-116細胞を培養し、各マウスの右前側腹部に移植した(100μL中に100万個の細胞)。HCT116腫瘍体積が150~250mm3に到達したとき、各動物に、ウイルス性試験薬剤(100μL中3000万PFU)を静脈内投与した。
【0181】
in vivoイメージング
試験薬剤投与から3または4日および7日後に、生物発光イメージング(BLI)および陽電子放射断層撮影(PET)イメージングを使用して動物を評価した。BLIについては、動物に腹腔内注射し、次いで、BLIのために酸素中のイソフルランガスで直ちに麻酔した。IVIS Spectrum(Perkin-Elmer)を用いてイメージングを実施した。各撮像時点において、遮蔽および非遮蔽の、うつ伏せおよび仰向けに配置された動物について、VivoQuant(Invicro)を用いて2つの倍率変更された被写体像を生成し、当該領域について、ルシフェリン放射輝度を求めた。画像は、分析のために、放射輝度の単位(フォト/秒/ミリメートル2/ステラジアン)で生成され、解剖学的照合用の白色光画像に同時記録された。
【0182】
PETイメージングについては、動物に、覚醒状態で18F-FHBGを静脈内注射してから、105分後に、酸素中のイソフルランガスで麻酔し、18F-FHBG取込み時間の120分が経過後に撮像した。Inveon(Siemens)多モードPET/SPECT/CT撮像装置を用いてイメージングを実施した。VivoQuantソフトウェアを使用して、最大強度投影(MIP)像を生成した。詳細には、同時記録されたPET/CT MIPを、各時点において各動物について生成し、0.1~10%の注射用量/g(ID/g)の固定範囲に合わせて調整した。さらに、他の領域全体にわたって少なめの取込みがより良好に示されるように胃腸シグナルが手作業で除去された、同時記録されたPET/CT MIPを生成した。これらのMIPは、0.5~3%ID/gの固定範囲に合わせて調整され、各撮像時点において生成された。
【0183】
解析する前に、活性を単位にして再生像を生成し、互いに同時記録し、0.2mm3ボクセルに再サンプリングし、一様なサイズにトリミングした。18F-FHBGの組織取込みを予測するために、筋肉(上腕)、下顎(左右)、および肝臓(左葉および右葉)についての関心領域(ROI)が、一定体積の球形ROIを、各臓器それぞれの全域を代表する濃淡の範囲を取り囲むように組織の中心に置くことにより生成された。手動および自動分割閾値の組合せをCTに適用することにより、全身のROIを生成した。腸および胆嚢についてのROIは、適切な領域における該当PETシグナルの連続閾値化を使用することにより生成した。尾および腫瘍ROIは、これらの領域に対象間で解剖学的なばらつきがあるため、手作業で分割した。
【0184】
臓器サンプル採取
試験薬剤投与から7日後、さらなるex vivo分析のために、すべての動物を人道的に安楽死させ、組織を切除した。頭部、心臓、左右の後肢、左右の腎臓、大腸、肝臓、肺、左右の卵巣、小腸、脾臓、尾、および腫瘍組織を各動物から切除した。ex vivo分析の後、組織サンプルは、液体窒素中で瞬間凍結し、-80℃で保管した。
【0185】
組織サンプルからのウイルス滴定
臓器サンプルを室温の水浴で解凍し、秤量し、BeadRuptor Eliteホモジナイザー(Omni)を使用して、作動期間の間に氷浴上で5分間静止させる間隔を挟んで2回、6,000RPMで20秒間均質化した。サンプルの均質化には、1.4mmまたは2.8mmのセラミックビーズを含んだ補強されたプラスチックチューブが使用された。次いで、サンプルを2分間の遠心分離によって清澄化し、音波処理し、上清を直ちに滴定に使用した。最終希釈度を10-6までとした10倍段階希釈によって、ウイルス力価を決定した。ウイルス希釈物を使用して、6ウェルプレート(BD Falcon)中のU-2 OS細胞を感染させた。細胞は、各段階希釈物1mLで1時間感染させ、新たな培地で洗浄し、1.5%のカルボキシメチルセルロースを含有する新たな培地の溶液(Teknova)で表面を覆った。48時間インキュベートした後、培地を除去し、細胞を固定し、0.1%のクリスタルバイオレットを含有する20%エタノール溶液(Sigma)で染色した。次いで、各ウェルにおけるプラークの数を計数し、二通りの力価の平均をとり、希釈倍率について調整することにより、力価を決定した。データは、組織1グラムあたりのプラーク形成単位(PFU/グラム)の数字で示される。
【0186】
(実施例2)
HSV-TK発現およびガンシクロビル感受性がワクシニアウイルス複製に与える影響を、HeLa細胞を使用してin vitroで評価した。TK.007 HSV-TK変異体(IGV-035)、SR39 HSV-TK変異体(IGV-034)、dm30 HSV-TK変異体(IGV-033)、野生型HSV-TK(IGV-023)、または無HSV-TK対照(IGV-006)を発現するワクシニアウイルスを、実施例1に記載したとおりに生成および製造した。HeLa細胞に、TK.007 HSV-TK変異体(IGV-035)、SR39 HSV-TK変異体(IGV-034)、dm30 HSV-TK変異体(IGV-033)、野生型HSV-TK(IGV-023)、または無HSV-TK対照(IGV-006)を発現するワクシニアウイルスを、37℃で1時間かけて感染させた。インキュベート時間経過後、感染細胞を洗浄し、0μM、0.05μM、0.1μM、0.25μM、0.5μM、0.75μM、および1μMの濃度の漸増する量のガンシクロビルを有する新たな培地で表面を覆った。感染後48時間の時点で、実施例1に記載したとおりのワクシニアウイルス力価についてのプラークアッセイによってウイルス複製を定量して、各条件におけるウイルス複製の量を表す、細胞あたりのウイルスプラーク形成単位の数字を求めた。無HSV-TK対照(IGV-006)に比べて、TK.007 HSV-TK変異体(IGV-035)、SR39 HSV-TK変異体(IGV-034)、dm30 HSV-TK変異体(IGV-033)、および野生型HSV-TK(IGV-023)では、ガンシクロビル存在下でのワクシニアウイルス複製が有意に減少した(
図3)。特に、TK.007 HSV-TK変異体の発現によって、低めのガンシクロビル濃度でのワクシニアウイルス複製が、変異体または野生型HSV-TKを発現するワクシニアウイルスに比べて有意に減少し、TK.007 HSV-TK変異体は、ガンシクロビルに対する感受性が最も高かったことが示された(
図3)。この研究は、HSV-TKの組込みによって、ワクシニアウイルスにガンシクロビルに対する感受性がもたらされることの例証となる。
【0187】
図3に、ワクシニアウイルス複製という観点から、ガンシクロビルに対する感受性を付与するHSV-TKに関するデータを提供する。HeLa細胞に、TK.007 HSV-TK変異体(IGV-035)、SR39 HSV-TK変異体(IGV-034)、dm30 HSV-TK変異体(IGV-033)、野生型HSV-TK(IGV-023)、または無HSV-TK対照(IGV-006)を発現するワクシニアウイルスを、MOIを1として感染させた。感染から2時間後、感染HeLa細胞を新たな培地で1回洗浄し、0μM、0.05μM、0.1μM、0.25μM、0.5μM、0.75μM、および1μMの濃度のガンシクロビルを投与した。感染後48時間の時点で、プラークアッセイによってワクシニアウイルス複製を定量した。漸増するガンシクロビル投与濃度によって、HSV-TK WTまたはHSV-TK変異体を発現するワクシニアウイルスについては、ワクシニアウイルス複製が減少する結果となった。TK.007 HSV-TK変異体を発現するワクシニアウイルスは、最も低いガンシクロビル濃度でワクシニアウイルス産生が最も少なくなり、したがって、試験したHSV-TK WTまたはHSV-TK変異体を発現するワクシニアウイルスの中で最も高いガンシクロビルに対する感受性を示した。誤差バーは、SD(n=3)を示す。データは、二元配置分散分析(ANOVA)に続いて、無HSV-TK対照(IGV-006)に対するTukeyの多重比較検定によって分析した。(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001)。
【0188】
(実施例3)
HSV-TK変異体発現がワクシニアウイルス複製に及ぼす影響を、代表的なヒトがん細胞株および正常一次ヒト細胞を使用して、in vitroで評価した。野生型HSV-TK(IGV-023)、TK.007 HSV-TK変異体(IGV-035)、無TK対照(IGV-006)、およびHSV-TKなしの野生型ワクシニアTK(IGV-059)を発現するワクシニアウイルスを、実施例1に記載したとおりに生成および製造した。HeLa(子宮頚がん)、A549(肺腺癌)、Colo205(結腸がん)、およびMDA-MB-231(乳がん)がん細胞、ならびに正常一次ヒト乳腺上皮細胞(HMEC)および小気道上皮細胞(SAEC)に、野生型HSV-TK(IGV-023)、TK.007 HSV-TK変異体(IGV-035)、無TK対照(IGV-006)、およびHSV-TKなしの野生型ワクシニアTK(IGV-059)を発現するワクシニアウイルスを感染させた。感染後24および48時間の時点で、実施例1に記載したとおりに、ウイルスプラークアッセイを行い、プラークを計数して、細胞1個あたりに生じたウイルスプラーク形成単位の数を求めることにより、ウイルス複製を定量した。正常一次ヒト細胞1個あたりに生じたウイルスプラーク形成単位は、がん細胞1個あたりに比べて少なかった。さらに、HSV-TK変異体を発現するウイルスは、野生型ワクシニアTKを発現するウイルスより有意に多くは複製しない。
図4A~4Fに、代表的なヒトがん細胞株および正常一次ヒト細胞における、HSV-TK発現のワクシニアウイルス複製に対する影響に関するデータを提供する。がん細胞株A)A549(肺腺癌)、B)HeLa(子宮頚がん)、C)Colo-205(結腸がん)、およびD)MDA MB231(乳がん)、ならびにE)正常一次ヒト乳腺上皮細胞(HMEC)およびF)小気道上皮細胞(SAEC)に、野生型HSV-TK(IGV-023)、TK.007 HSV-TK変異体(IGV-035)、無HSV-TKもしくはJ2RワクシニアTK(IGV-006)、またはHSV-TKなしの野生型J2RワクシニアTK(IGV-059)を発現するワクシニアウイルスを、MOIを1として感染させた。感染後24および48時間の時点で、感染細胞を回収した。ウイルスプラークアッセイによって各サンプルのウイルス力価を決定し、細胞1個あたりに生じたプラーク形成単位(pfu)によって表した。ワクシニアウイルス複製の正常細胞ではなく腫瘍細胞に対する選択性が、TK.007 HSV-TK変異体(IGV-035)を発現するワクシニアウイルスで維持され、このウイルスは、試験した種々のがんおよび正常ヒト細胞において、J2RワクシニアTKなしのワクシニアウイルス(IGV-006)と非常に似通ったウイルス複製を示している。誤差バーは、SD(n=3)を示す。アステリスクは、無HSV-TK対照(IGV-006)に対する統計的有意性を示す(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001,*****p<0.00001 スチューデントt検定)。
【0189】
(実施例4)
HSV-TK変異体発現が、正常ヒト細胞を標的とせずにがん細胞を標的とするワクシニアウイルス死滅効力に及ぼす影響を、代表的なヒトがん細胞株および正常一次ヒト細胞を使用して、in vitroで評価した。野生型HSV-TK(IGV-023)、TK.007 HSV-TK変異体(IGV-035)、および無TK対照(IGV-006)を発現するワクシニアウイルスを、実施例1に記載したとおりに生成および製造した。A549(肺腺癌)、Colo 205(結腸がん)、およびMDA-MB-231(乳がん)ヒトがん細胞、ならびにSAECおよびHMEC正常一次ヒト細胞に、野生型HSV-TK(IGV-023)、TK.007 HSV-TK変異体(IGV-035)、または無TK対照(IGV-006)を発現するワクシニアウイルスを感染させた。感染後48時間の時点で、実施例1に記載したとおりに、490nmでのCytotox96アッセイ読み出し情報を使用して、LDH放出によって細胞傷害性を明らかにした。ヒトがん細胞において、TK.007 HSV-TK変異体(IGV-035)を発現するウイルスの、無HSV-TK(IGV-006)と比較して同様の細胞傷害性が観察された(
図5A~5C)。しかし、野生型(HSV-TK)を発現するウイルスは、すべてのがん細胞において、他の2種のウイルスほど死滅効力を付与しなかった(
図5A~5C)。正常細胞では、試験したすべてのウイルスがより低い細胞傷害性を示す(
図6A~6B)。これらの結果から、TK.007 HSV-TK変異体が、ヒトがん細胞株において、TKを発現しないワクシニアウイルスと同様の死滅効力を有することが証明される(
図5A~5C)。さらに、TK.007 HSV-TK変異体は、複製して腫瘍細胞株を死滅させ、一方、正常細胞は死滅させないワクシニアウイルス特異性を変化させない。
【0190】
図5A~5Cに、in vitro細胞傷害性アッセイによって評価される、ヒトがん細胞を死滅させるワクシニアウイルス効力に対するHSV-TK発現の影響に関するデータを提供する。A)A549(肺腺癌)、B)MDA MB231(乳がん)、およびC)Colo-205(結腸がん)がん細胞に、野生型HSV-TK(IGV-023)、TK.007 HSV-TK変異体(IGV-035)を発現するワクシニアウイルス、またはHSV-TKもしくはJ2RワクシニアTKを発現しない対照ウイルス(IGV-006)を、異なるMOIの範囲で感染させた。1時間吸収させた後、感染細胞を洗浄し、48時間インキュベートした。上清を収集し、Cytotox96非放射性細胞傷害性アッセイ緩衝液(Promega)と共に30分間インキュベートし、プレートリーダーで490nmの吸収を読み取った。MDA-MB-231およびColo-205細胞株では、TK.007 HSV-TKを発現するウイルスと、J2RワクシニアTKなしのウイルスとに同様の細胞傷害性が認められる。しかし、A549ヒト腫瘍細胞株では、高めのMOIにおいて、TK.007 HSV-TK変異体または野生型HSV-TKを発現するワクシニアウイルスで、J2Rなしのワクシニアウイルスに比べて低い細胞傷害性が認められる。野生型HSV-TKを発現するワクシニアウイルスに感染したすべてのヒトがん細胞株において、より低い細胞傷害性が認められる。これは、N=3からの代表的な実験であり、誤差バーは、SD(n=4)を示す。
【0191】
図6Aおよび6Bに、in vitro細胞傷害性アッセイによって評価される、ヒト正常一次細胞を死滅させるワクシニアウイルス効力に対するHSV-TK発現の影響に関するデータを提供する。A)SAECおよびB)HMEC正常一次ヒト細胞に、野生型HSV-TK(IGV-023)、TK.007 HSV-TK変異体(IGV-035)を発現するワクシニアウイルス、またはHSV-TKもしくはJ2RワクシニアTKを発現しない対照ウイルス(IGV-006)を、異なるMOIの範囲で感染させた。1時間吸収させた後、感染細胞を洗浄し、48時間インキュベートした。上清を収集し、Cytotox96非放射性細胞傷害性アッセイ緩衝液(Promega)と共に30分間インキュベートし、プレートリーダーで490nmの吸収を読み取った。両方の正常一次ヒト細胞型において、試験したすべてのウイルスで同様の、低い細胞傷害性が認められる。有意差は認められなかった。誤差バーは、SD(n=4)を示す。
【0192】
(実施例5)
TK.007 HSV-TK変異体を発現するワクシニアウイルスは、非小細胞肺がんおよび結腸直腸腫瘍モデルの皮下の患者由来異種移植片(PDX)において有効性を示す。ワクシニアウイルスTK.007 HSV-TK変異体(IGV-038)を、実施例1に記載したとおりに生成および製造した。NOD/SCID雌マウスに、両方の側腹部において、肺(LU5191)または結腸直腸(CR5043)PDXモデルのいずれかを皮下に移植した。腫瘍が50mm
3~100mm
3の間の体積範囲に達した後、動物を2つの群に無作為化し、研究の1日目および3日目に、TK.007 HSV-TK変異体(IGV-038)を発現するワクシニアウイルスまたは媒体を、(LU5191については)1×10
8pfuまたは(CR5043については)1×10
7pfuで2回投与した。実験の過程において、LU5191については36日日間、CR5043については33日日間、腫瘍サイズおよび動物体重を週2回測定し、腫瘍体積および体重の百分率変化を求めた(それぞれ、
図7A~7Cおよび
図8A~8C)。両方のPDXモデルにおいて、TK.007 HSV-TK変異体を含有するワクシニアウイルスの投与により、媒体のみに比べて、腫瘍体積が有意に縮小された。この研究によって、変異体TK.007 HSV-TKを発現するワクシニアウイルスの、2種の異なるPDXモデルにおける有効性が証明される。
【0193】
図7A~7Cに、肺患者由来異種移植(PDX)腫瘍モデルにおける、HSV-TKを発現する腫瘍溶解性ワクシニアウイルスのin vivoでの有効性に関するデータを提供する。A)研究計画概略図。雌NOD/SCIDマウスに、LU5191を、各マウスの左右の側腹部において皮下移植した。腫瘍が50mm
3~100mm
3の間の体積範囲に達した後、マウスを2つの群に無作為化し、研究の1日目および3日目に、TK.007 HSV-TK変異体(IGV-038)を発現するワクシニアウイルスまたは媒体を、1×10
8pfuで2回投与した。B)すべての動物について、腫瘍を週2回測定した。C)動物を週2回秤量し、両方の群について、投与前体重に対する百分率を算出した。誤差バーは、SEMを示す。データは、一元配置分散分析(ANOVA)に続いて、ダネットの多重比較検定によって分析した。(****p<0.0001)。
【0194】
図8A~8Cに、結腸直腸PDX腫瘍モデルにおける、HSV-TKを発現する腫瘍溶解性ワクシニアウイルスのin vivoでの有効性に関するデータを提供する。A)研究計画概略図。雌NOD/SCIDマウスに、CR5043を、各マウスの左右の側腹部において皮下移植した。腫瘍が50mm
3~100mm
3の間の体積範囲に達した後、動物を2つの群に無作為化し、研究の1日目および3日目に、TK.007 HSV-TK変異体(IGV-038)を発現するワクシニアウイルスまたは媒体を、1×10
7pfuで2回投与した。B)すべての動物について、腫瘍を週2回測定した。C)動物を週2回秤量し、両方の群について、投与前体重に対する百分率を算出した。誤差バーは、SEMを示す。データは、一元配置分散分析(ANOVA)に続いて、ダネットの多重比較検定によって分析した。(*p<0.01、**p<0.001、***p<0.0001)。
【0195】
(実施例6)
TK.007 HSV-TK変異体を発現するワクシニアウイルスの、局所ガンシクロビル投与に対する感受性の評価を、BALB/cマウスにおいて尾乱切モデルを使用してin vivoで実施した。TK.007 HSV-TK変異体を発現するワクシニアウイルスを、実施例1に記載したとおりに生成および製造した。マウス尾乱切モデルにおいてウイルスを誘因とする病変の重症度がガンシクロビル処置によって軽減されうるかを試験することにより、ガンシクロビル感受性を評価した。尾の基部における、TK.007 HSV-TK変異体(IGV-035)を発現するワクシニアウイルス1.5×10
7pfuの乱切によって、マウス尾病変を生成させた。動物は、3つの群に分けた。すなわち、1つの群には、媒体(ワクシニアウイルスなし)を与え、1つの群には、病変の範囲に、10μLの0.15%ガンシクロビルゲルを、ワクシニアの投与から4時間後に出発して、乱切後6日間毎日、1日に4回与え、1つの群には、ガンシクロビルを与えなかった。投与後6日目に、両方の群において、ウイルス排出を定量した。乱切後の合計18日間、6日毎に病変進行を観察および測定した。病変長さを、6日目、12日目、および18日目に測定し、写真撮影した。ガンシクロビルで処置された群では、非処置群に比べて、ワクシニアウイルスによって引き起こされた局所病変がより速く治癒し、病変は、有意に小さかった(
図9Aおよび9B)。ガンシクロビルで処置した群における平均病変サイズは、媒体で処置した群と互角であった(
図9Aおよび9B)。ガンシクロビルで処置した群における病変重症度は、媒体で処置した群と同様であった。ガンシクロビル処置なしでは、乱切を受けたすべての動物が、時間と共に増悪する重度の病変を示した(
図9A)。最後に、局所ガンシクロビル処置によって、投与後6日目には、尾乱切部位からのウイルス排出が減少した(
図9C)。この研究によって、ガンシクロビルでの局所処置が、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの投与後早期に適用されると、病変進展、病変サイズ、病変重症度、およびウイルス排出に効果を示すことが証明される。加えて、ガンシクロビルで処置した動物では、病変がより速く治癒し、解消した。
【0196】
図9A~9Cに、変異体HSV-TKを発現するワクシニアウイルスの局所ガンシクロビル投与に対する感受性、および病変進展の減衰に関するデータを提供する。TK.007 HSV-TK変異体(IGV-035)を発現するワクシニアウイルスを、局所ガンシクロビル(GCV)処置の非存在下または存在下で、尾乱切によって投与した。A)尾病変の代表的な像、B)局所0.15%ガンシクロビルゲル処置の存在下または非存在下での、ウイルス乱切後6、12、および18日目における病変サイズの定量化、およびC)局所0.15%ガンシクロビルゲル処置の存在下または非存在下での、ウイルス乱切後6日目における尾乱切部位からの感染性ウイルス排出の定量化。誤差バーは、SEMを示す。データは、二元配置分散分析(ANOVA)に続いて、Tukeyの多重比較検定によって分析した。(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。
【0197】
(実施例7)
皮下の非小細胞肺がん患者由来異種移植(PDX)モデルにおいて腫瘍におけるウイルス複製を評価することにより、全身に送達されたTK.007 HSV-TK変異体発現ワクシニアウイルスに対するガンシクロビルの影響をin vivoで推定した。TK.007 HSV-TK変異体を発現するワクシニアウイルスを、実施例1に記載したとおりに生成および製造した。マウスに、右側腹部において、非小細胞肺がん(LU5191)PDX細胞を皮下移植した。腫瘍体積が100mm
3~200mm
3の間の体積範囲に達した時点で(移植後およそ3週間)、マウスを4つの処置群に無作為化した。1群のマウスには、媒体を投与し、2、3、および4群のマウスには、研究の1日および3日目に、TK.007 HSV-TK変異体(IGV-077)を発現するワクシニアウイルスを、処置日あたり1×10
7pfuで、2回静脈内投与した。ガンシクロビル50mg/kgを、3群には研究の1~5日目に、4群には研究の4~8日目に、腹腔内投与した。2群には、ガンシクロビルの代わりに媒体を与えた。研究の8日目に、各群における動物を屠殺し、腫瘍を採取し、腫瘍全域にわたるウイルス複製およびウイルスを介した導入遺伝子発現を、プラークアッセイおよび免疫組織化学によって明らかにした。ガンシクロビルが研究の4~8日目に投与されたとき、腫瘍におけるウイルス複製が有意に減少し、ガンシクロビルが研究の1~5日目に投与されたとき、ウイルス複製は完全に阻害された(
図10A)。加えて、卵巣、脾臓、肺、および肝臓を含む正常臓器では、いずれの群についても、複製するウイルスが検出されなかった。ガンシクロビルが研究の4~8日目に投与されたとき、8日目に、免疫組織化学によって、ウイルスを介したGFP発現が低レベルで検出され、ガンシクロビルが研究の1~5日に投与されたとき、ウイルスを介したGFP発現は検出されなかった(
図10B)。この研究は、ワクシニアウイルスへのTK.007 HSV-TK変異体の組込みによって、このウイルスがガンシクロビル全身処置による複製阻害およびクリアランスを被りやすくなることの例証となる。さらに、腫瘍溶解性ウイルスの活性を加減する方法として、ウイルス複製が減少するが完全に阻害されないように、ガンシクロビル処置のタイミングを調整することができる。
【0198】
図10Aおよび10Bに、変異体HSV-TK発現ワクシニアウイルスの、ガンシクロビル全身投与による全身性阻害に関するデータを提供する。TK.007 HSV-TK変異体(IGV-077)を発現するワクシニアウイルスを、2種の異なるガンシクロビル処置タイムラインを使用する全身ガンシクロビル(GCV)処置の非存在下または存在下で静脈内投与した。A)投与後8日目の腫瘍におけるウイルス複製(感染性ウイルス)の定量化。誤差バーは、95%CIを示す。 *** ANOVAによるp<0.001。B)腫瘍における、ワクシニアウイルスを介したGFP導入遺伝子発現の代表的な像。
【0199】
(実施例8)
ヌードマウスにおいてヒトPDXおよびヒト腫瘍細胞株異種移植片の腫瘍成長阻害を評価することにより、置換変異体の影響をin vivoで推定した。ワクシニアウイルスTKをもたず、ルシフェラーゼ-2A-GFP(VV07)またはTK.007 HSV-TK変異体(IGV-077)のいずれかを含んでいるコペンハーゲンワクシニアウイルスを、実施例1に記載したとおりに生成および製造した。第1の研究では、NOD/SCID雌マウスに、後方側腹部において、肺(LU5191)PDX組織を皮下移植した。腫瘍が50mm
3~85mm
3の間の体積範囲に達した後、動物を3つの群に無作為化した。1日目に、1群のマウスには、媒体を投与し、2~3群のマウスには、ワクシニアウイルスTKをもたず、ルシフェラーゼ-2A-GFP(VV07)またはTK.007HSV-TK変異体(IGV-077)のいずれかを含んでいる組換えコペンハーゲンワクシニアウイルス3×10
6PFUを静脈内投与した(
図11A)。腫瘍体積を、終点(2000mm
3を超過する腫瘍体積)まで週2回測定した。IGV-077およびVV07が投与されたマウスは、媒体に比べて統計的に有意に増した腫瘍成長阻害を示した(
図11B)。第2の研究では、マウスに、右前方側腹部において、ヒトHCT-116結腸直腸細胞を皮下移植した。腫瘍が50mm
3~85mm
3のサイズ範囲に達した時点で、マウスを3つの処置群に無作為化した。1日目に、1群のマウスには、媒体を投与し、2~3群のマウスには、ワクシニアウイルスTKをもたず、ルシフェラーゼ-2A-GFP(VV07)またはTK.007HSV-TK変異体(IGV-077)のいずれかを含んでいる組換えコペンハーゲンワクシニアウイルス3×10
6PFUを静脈内投与した(
図12A)。腫瘍体積を、終点(腫瘍体積が2000mm
3を超過)まで週2回測定した。IGV-077およびVV07が投与されたマウスは、媒体に比べて有意に増した腫瘍成長阻害を示した(
図12B)。これらの研究は、変異体HSV-TKの組込みが、腫瘍成長阻害における腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの有効性、したがってin vivoでの生存に有害な影響を及ぼさないことの例証となる。
【0200】
図11Aおよび11Bに、肺PDX腫瘍モデルにおける、HSV-TKを発現する腫瘍溶解性ワクシニアウイルスのin vivoでの有効性に関するデータを提供する。A)研究計画概略図。雌NOD/SCIDマウスに、各マウスの後方側腹部において、ヒトLU5191 PDX組織を皮下移植した。腫瘍が56.5mm
3~84.3mm
3の間の体積範囲に達した後、マウスを3つの群に無作為化し、研究の1日目に、ルシフェラーゼ-2A-GFP(VV007)を発現するワクシニアウイルス、TK.007 HSV-TK変異体(IGV-077)を発現するワクシニアウイルス、または媒体を、3×10
6pfuで1回投与した。B)すべての動物について、腫瘍を週2回測定した。
【0201】
図12Aおよび12Bに、結腸直腸がん異種移植腫瘍モデルにおける、HSV-TKを発現する腫瘍溶解性ワクシニアウイルスのin vivoでの有効性に関するデータを提供する。A)研究計画概略図。マウスに、各マウスの右前方側腹部において、HCT-116を皮下移植した。腫瘍が56.5mm
3~84.3mm
3の間の体積範囲に達した後、マウスを3つの群に無作為化し、研究の1日目に、ルシフェラーゼ-2A-GFP(VV007)を発現するワクシニアウイルス、TK.007 HSV-TK変異体(IGV-077)を発現するワクシニアウイルス、または媒体を、3×10
6pfuで1回投与した。B)すべての動物について、腫瘍を週2回測定した。
【0202】
(実施例9)
腫瘍溶解性ワクシニアのin vivoでの分布および複製のリアルタイム像を検出できるかどうかを、放射標識ガンシクロビルおよび陽電子放射断層撮影法(PET-CT)の使用によって判定した。ワクシニアウイルスTKをもたず、ルシフェラーゼ-2A-GFP(IGV-006)またはTK.007 HSV-TK変異体(IGV-035)のいずれかを含んでいるコペンハーゲンワクシニアウイルスを、実施例1に記載したとおりに生成および製造した。マウスに、右前方側腹部において、HCT-116ヒト結腸直腸細胞を皮下移植した。腫瘍が90mm
3~220mm
3のサイズ範囲に達した時点で、マウスを2つの処置群に無作為化した。マウスには、1日目に、ワクシニアウイルスTKをもたず、TK.007 HSV-TK変異体(IGV-035、1群)またはルシフェラーゼ-2A-GFP(IGV-006、2群)のいずれかを含んでいる組換えコペンハーゲンワクシニアウイルス3×10
7PFUを静脈内投与した。5日目および8日目に、放射標識
18F-フルオロ-3-[ヒドロキシメチル]ブチル)グアニン(
18F-FHBG)をマウスに投与し、PET-CTを使用して撮像した。IGV-035が投与されたマウスは、8日目に、腫瘍特異的シグナルの増加を示した(
図13A)。比較として、2群に投与されたIGV-006腫瘍溶解性ワクシニアウイルスにはHSV-TKが存在しないため、予想されたとおり、IGV-006が投与されたマウスは、腫瘍特異的シグナルを示さなかった(
図13B)。
18F-FHBGシグナルを定量化し、腫瘍において検出された注射された
18F-FHGB活性の百分率を(グラムでの)組織重量に対して正規化したものとして報告した。IGV-035が投与されたマウスは、IGV-006が投与されたマウスに比べて有意に高い
18F-FHBGシグナルを示し(
図13C)、HSV-TKの発現を、in vivoでの腫瘍溶解性ウイルス複製の画像化に使用できる可能性があることが示された。組織重量あたりのウイルス力価は、IGV-035(
図13D)およびIGV-006(
図13E)の両方について、肝臓および肺組織に比べて腫瘍において桁違いに高かった。他の組織に比べて腫瘍においてウイルス力価が高いことから、観察されたIGV-035からのシグナルが、腫瘍組織に特異的に局在化していることがさらに証明される。腫瘍組織重量あたりの平均ウイルス力価は、IGV-035とIGV-006について同様であったが、これは、IGV-006ではなくIGV-035で腫瘍組織におけるシグナルが存在したことは、変異体HSV-TKの存在によるものであり、ウイルス力価の違いによるものではないことを示している。これらの研究は、変異体HSV-TKの組込みが、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスのin vivoでの分布および複製のイメージング検出を容易にしうることの例証となる。
【0203】
図13A~13Eに、変異体HSV-TKを発現する腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの、ヒト結腸直腸がん異種移植腫瘍モデルにおけるin vivoでの分布および複製のリアルタイム像検出への、放射標識基質の使用に関するデータを提供する。A)変異体HSV-TK(IGV-035)を発現する腫瘍溶解性ワクシニアウイルス3×10
7pfuおよび放射標識基質が静脈内投与されたマウスの全身PET-CTイメージング。マウスに、各マウスの右前方側腹部において、ヒトHCT-116結腸直腸細胞を皮下移植した。B)ルシフェラーゼ-2A-GFP(IGV-006)を含んでいる腫瘍溶解性ワクシニアウイルス3×10
7pfuおよび放射標識基質(
18F-FHBG)が静脈内投与されたマウスの全身PET-CTイメージング。マウスに、各マウスの右前方側腹部において、ヒトHCT-116結腸直腸細胞を皮下移植した。C)組織重量1グラムあたりの注射用量の
18F-FHGB活性に対する百分率として示す、腫瘍における
18F-FHBG活性の定量化。D)変異体HSV-TK(IGV-035)を発現する腫瘍溶解性ワクシニアウイルス3×10
7pfuが投与されたマウスの腫瘍および非腫瘍組織におけるウイルス力価の定量化。E)ルシフェラーゼ-2A-GFP(IGV-006)を含んでいる腫瘍溶解性ワクシニアウイルス3×10
7pfuが投与されたマウスの腫瘍および非腫瘍組織におけるウイルス力価の定量化。A)およびB)については、腸において認められた非特異的シグナルを、すべての像から削除している。C)、D)、およびE)について、誤差バーはSEMを示す。データは、C)についてはスチューデントt検定、またはD)およびE)については二元配置ANOVAによって分析した。アステリスクは、c)についてはIGV-006と比較した有意性、またはD)およびE)については腫瘍組織力価と比較した有意性を示す(*p<0.05、**p<0.01、**p<0.001)。
【0204】
本発明について、その詳細な実施形態に関連して述べてきたが、本発明の真意および範囲から逸脱することなく、種々の変更がなされてもよく、均等物を代用してもよいことは、当業者に理解されるはずである。加えて、特定の状況、材料、物体の組成、工程、1または複数の工程ステップが、本発明の目的、意図、および範囲に適合するように、多くの改変を行うことができる。そうしたすべての改変は、本明細書に添付される請求項の範囲内にあるものとする。
【配列表】
【国際調査報告】