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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-29
(54)【発明の名称】合成鉱物の作製方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/22 20060101AFI20220322BHJP
   C01B 33/38 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
C01B33/22
C01B33/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547088
(86)(22)【出願日】2020-02-11
(85)【翻訳文提出日】2021-09-06
(86)【国際出願番号】 EP2020053449
(87)【国際公開番号】W WO2020165157
(87)【国際公開日】2020-08-20
(31)【優先権主張番号】19305176.0
(32)【優先日】2019-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319006807
【氏名又は名称】イメルテック ソシエテ パル アクシオン サンプリフィエ
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】509169549
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ポール サバティエ トゥールーズ トロワジエム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】クラヴリー マリー
(72)【発明者】
【氏名】アイモニエ シリル
(72)【発明者】
【氏名】カレム クリステル
(72)【発明者】
【氏名】マルタン フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】ル ルー クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ポワリエ マチルド
(72)【発明者】
【氏名】ミクー ピエール
【テーマコード(参考)】
4G073
【Fターム(参考)】
4G073BA04
4G073BA10
4G073BA52
4G073BA63
4G073BA75
4G073BB34
4G073BD01
4G073BD21
4G073CC03
4G073CM12
4G073FA30
4G073FB19
4G073FB50
4G073FC03
4G073FC25
4G073FC26
4G073GA03
4G073GB02
4G073GB05
4G073GB07
(57)【要約】
合成鉱物の作製方法及び合成鉱物前駆体の作製方法並びに前記方法の生成物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成鉱物の作製方法であって、
金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩と、
二価又は三価金属塩との
間の沈降反応によって合成鉱物前駆体を作製することを含み、
前記沈降反応は、前記沈降反応を化学的に平衡化させるための酸又は水酸化物塩基試薬の添加を含まない、前記方法。
【請求項2】
前記合成鉱物が、合成フィロケイ酸塩等の合成ケイ酸塩であり、例えば前記合成フィロケイ酸塩が合成タルクである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩中の金属原子とケイ素及び/又はゲルマニウム原子のモル比が、約2未満、例えば約1以下である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩が、金属二ケイ酸塩又は二ゲルマニウム酸塩、例えば二ケイ酸ナトリウム及び/又はメタケイ酸ナトリウムである、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記二価又は三価金属塩が、マグネシウム塩又は亜鉛塩である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記二価又は三価金属塩が、ケイ酸塩又はゲルマニウム酸塩でない、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記二価又は三価金属塩が、カルボン酸塩(例えば酢酸塩)、硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、硫化物塩、亜硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸水素塩、ハロゲン化物塩、炭酸塩、炭酸水素塩、塩素酸塩、クロム酸塩、二クロム酸塩、リン酸塩、水酸化物塩、チオ硫酸塩、過塩素酸塩又はこれらの組み合わせである、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記沈降反応が、式(R-COO)M’(式中、Rは、水素(-H)及び5個未満の炭素原子を含むアルキル基から選択され、M’は、一価金属である)の金属カルボン酸塩の存在下で行なわれる、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記式(R-COO)M’の金属カルボン酸塩が酢酸塩である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
M’が、前記金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩中の金属と同じ金属である、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
M’がナトリウム又はカリウムである、請求項8~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
熱処理プロセス、例えば水熱処理プロセスをさらに含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記熱処理プロセスが、約100℃以上の温度で行なわれ、及び/又は前記熱処理プロセスが、約5バール以上の圧力で行なわれる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記熱処理プロセスが超臨界条件下で行なわれる、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の方法によって得られた及び/又は得ることができる合成鉱物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、合成鉱物、例えば合成タルク等の合成フィロケイ酸塩の作製方法に関する。本発明は、さらに前記方法の生成物及び中間生成物並びに前記生成物の種々の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲルマニウム酸塩、シリコゲルマニウム酸塩及びゲルマノケイ酸塩等のケイ酸塩を含む鉱物粒子は、種々の工業分野で多岐にわたる応用に使用可能である。例えば、熱可塑性プラスチック、エラストマー、紙、塗料、ワニス、織物、冶金、薬学、化粧品、肥料等に鉱物粒子を使用し得る。不活性フィラー(例えば組成物中の他のより高価な活性成分を希釈するため)として又は1以上の有利な特性を与えるため(例えば物質の機械特性を増強するため)の機能性フィラーとして鉱物粒子を使用することができる。天然源からケイ酸塩を得てから粉砕して、種々の工業的応用に用いられるケイ酸塩製品を作製することができる。しかしながら、天然由来のケイ酸塩製品は、ある一定レベルの不純物を含む可能性がある。さらに、天然由来のケイ酸塩は、所望の粒径分布を得るために複数の加工工程を経る必要があり得る。対照的に、合成ケイ酸塩粒子及び合成ゲルマニウム酸塩粒子は、一般的に、対応する天然製品より高レベルの純度及び狭い粒径分布を有する。従って、ケイ素及び/又はゲルマニウムを含む合成鉱物粒子を作製するための代替法及び/又は改良法を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様により、合成鉱物の作製方法であって、
金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩と、一価又は二価金属塩との間の沈降反応によって合成鉱物前駆体を形成することを含み、
前記沈降反応は、前記沈降反応を化学的に平衡化させるための酸又は水酸化物塩基試薬の添加を含まない、前記方法を提供する。
本発明の代替態様により、合成鉱物の作製方法であって、
金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩と、一価又は二価金属塩との間の沈降反応によって合成鉱物前駆体を形成することを含み、
金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩中の金属原子とケイ素及び/又はゲルマニウム原子のモル比が約2未満である、前記方法を提供する。
本発明のさらなる代替態様により、合成鉱物の作製方法であって、金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩と、一価又は二価金属塩との間の沈降反応によって合成鉱物前駆体を形成した後、この合成鉱物前駆体を超臨界条件下で熱処理することを含む、前記方法を提供する。
本発明のさらなる代替態様により、合成鉱物の作製方法であって、
金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩と、一価又は二価金属塩との間の沈降反応によって合成鉱物前駆体を形成することを含み、
金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩が、金属二ケイ酸塩及び/又は二ゲルマニウム酸塩を金属メタケイ酸塩及び/又はメタゲルマニウム酸塩と共に含む、方法を提供する。特定実施形態では、金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩は、金属二ケイ酸塩及び金属メタケイ酸塩を含む。
【0004】
本発明の第2の態様により、合成鉱物前駆体の作製方法であって、
金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩と、一価又は二価金属塩との間の沈降反応を含み、
前記沈降反応が、前記沈降反応を化学的に平衡化させるための酸又は水酸化物塩基試薬の添加を含まないか;又は
金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩中の金属原子とケイ素及び/又はゲルマニウム原子のモル比が約2未満であるか;又は
金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩が、金属メタケイ酸塩及び/又はメタゲルマニウム酸塩であり、かつ沈降反応の後に合成鉱物前駆体を超臨界条件下で熱処理するか;又は
金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩が、金属二ケイ酸塩及び/又は二ゲルマニウム酸塩を金属メタケイ酸塩及び/又はメタゲルマニウム酸塩と共に含む、前記方法を提供する。
【0005】
本発明の第3の態様により、合成鉱物の作製方法であって、本発明のいずれかの態様若しくは実施形態の合成鉱物前駆体又は本発明のいずれかの態様若しくは実施形態により作製された合成鉱物前駆体の熱処理を含む前記方法を提供する。
本発明の第4の態様により、本発明のいずれかの態様若しくは実施形態の方法によって得られた及び/又は該方法によって得ることができる合成鉱物を提供する。
本発明の第5の態様により、本発明のいずれかの態様若しくは実施形態の方法によって得られた合成鉱物前駆体及び/又は該方法によって得ることができる合成鉱物前駆体を提供する。
特定実施形態では、合成鉱物又は合成鉱物前駆体は、それぞれ合成ケイ酸塩又は合成ケイ酸塩前駆体である。特定実施形態では、合成鉱物又は合成鉱物前駆体は、それぞれ合成フィロケイ酸塩又は合成フィロケイ酸塩前駆体である。特定実施形態では、合成フィロケイ酸塩又は合成フィロケイ酸塩前駆体は、それぞれ合成タルク又は合成タルク前駆体である。
【0006】
特定実施形態では、金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩は、ケイ酸ナトリウム、例えば二ケイ酸ナトリウム及び/又はメタケイ酸ナトリウムである。
特定実施形態では、金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩は、酸若しくは水酸化物塩基試薬の外部添加がなく及び/又は沈降反応の生成物として酸若しくは塩基を生成することなく平衡沈降反応をもたらすのに十分な比率の二ケイ酸塩及び/又は二ゲルマニウム酸塩とメタケイ酸塩/メタゲルマニウム酸塩の組み合わせである。
特定実施形態では、二価又は三価金属塩は、マグネシウム塩及び/又は亜鉛塩である。特定実施形態では、二価又は三価金属塩は、酢酸塩又は硫酸塩である。
特定実施形態では、合成鉱物前駆体は、合成鉱物を作製するため、熱処理プロセス、例えば水熱処理プロセスを受ける。特定実施形態では、熱処理プロセスは、超臨界条件下で行なわれる。特定実施形態では、金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩はメタケイ酸塩であり、かつ熱処理プロセスは超臨界条件下で行なわれる。
特定実施形態では、沈降反応は、式R-COOM’の金属カルボン酸塩の存在下で行なわれ、式中、Rは、水素(-H)及び5個未満の炭素原子を含むアルキル基から選択され、Mは一価金属である。特定実施形態では、金属カルボン酸塩は、ナトリウム塩又はカリウム塩等の一価金属塩である。特定実施形態では、金属カルボン酸塩は酢酸塩である。
【0007】
本発明のいずれかの態様の特定実施形態は、下記利点の1つ以上をもたらすことができる。
・より少ない必要反応物;
・より安価な使用反応物;
・より経済的/環境に優しいプロセス;
・合成生成物が高純度を有する;
・合成生成物が高結晶化度を有する;
・合成生成物が高ラメラリティー(lamellarity)を有する;
・望ましい粒径分布
・沈降反応の生成物として酸及び/又は塩基が生成されない。
【0008】
本明細書では、本発明の上記態様のいずれかの特定の1つ以上に関して与えた詳細、例及び選好についてさらに述べ、これらは本発明の全ての態様に等しく当てはまる。本明細書に記載の実施形態、例及び選好の全ての可能なバリエーションのいずれの組み合わせも、本明細書に別段の指示がない限り、或いは文脈上明白に矛盾する場合を除き、本発明に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1(24時間処理)の方法で作製された合成タルクのX線ディフラクトグラムを示す。
図2】実施例1(6時間処理)の方法で作製された合成タルクのX線ディフラクトグラムを示す。
図3】実施例1(6時間処理)の方法で作製された合成タルクの赤外スペクトルを示す。
図4】実施例1(6時間処理)の方法で作製された合成タルクの電子顕微鏡写真を示す。
図5】実施例6の方法で作製された合成ケイ酸亜鉛鉱のX線ディフラクトグラムを示
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書により合成鉱物の作製方法を提供する。本発明の方法は、1種以上の金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩と、1種以上の二価又は三価金属塩との間の沈降反応によって合成鉱物前駆体を作製することを含む。
驚いたことにかつ有利なことに、以前は沈降反応を化学的に平衡化させるために使用されていたいずれの試薬、特に酸試薬(例えば酢酸)又は水酸化物塩基試薬の、沈降反応混合物への外部添加なしで合成鉱物を作製できることが分かった。特定実施形態では、さらに驚いたことにかつ有利なことに、沈降反応の生成物として酸又は塩基を生成することなく合成鉱物を作製できることが分かった。これは、例えば、外部から酸又は水酸化物塩基試薬を沈降反応に添加しないことの結果であり得る。特に、特定実施形態では、1種以上の金属ケイ酸塩及び/若しくはゲルマニウム酸塩は、金属メタケイ酸塩及び/若しくは金属メタゲルマニウム酸塩を含むか、又は本質的に金属メタケイ酸塩及び/若しくは金属メタゲルマニウム酸塩から成るか、又は金属メタケイ酸塩及び/若しくは金属メタゲルマニウム酸塩から成り、かつ方法はさらに超臨界条件下での水熱処理を含む。
【0011】
さらに驚いたことにかつ有利なことに、金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩中の金属原子とケイ素及び/又はゲルマニウム原子のモル比が約2である金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩を用いて合成鉱物を作製できることが分かった。従って、特定実施形態では、1種以上の金属ケイ酸塩及び/若しくはゲルマニウム酸塩は、金属二ケイ酸塩及び/若しくは二ゲルマニウム酸塩を含むか、又は本質的に金属二ケイ酸塩及び/若しくは二ゲルマニウム酸塩から成るか、又は金属二ケイ酸塩及び/若しくは二ゲルマニウム酸塩から成る。例えば、1種以上の金属ケイ酸塩及び/若しくはゲルマニウム酸塩は、金属二ケイ酸塩を含むか、又は本質的に金属二ケイ酸塩から成るか、又は金属二ケイ酸塩から成ることがある。
さらに驚いたことにかつ有利なことに、二ケイ酸塩及び/又は二ゲルマニウム酸塩とメタケイ酸塩及び/又はメタゲルマニウム酸塩の組み合わせを用いて合成鉱物を作製できることが分かった。従って、特定実施形態では、1種以上の金属ケイ酸塩及び/若しくはゲルマニウム酸塩は、1種以上の二ケイ酸塩及び/若しくは二ゲルマニウム酸塩と1種以上のメタケイ酸塩及び/若しくはメタゲルマニウム酸塩の組み合わせを含むか、又は本質的に該組み合わせから成るか、又は該組み合わせから成る。例えば、1種以上の金属ケイ酸塩及び/若しくはゲルマニウム酸塩は、二ケイ酸塩とメタケイ酸塩の組み合わせを含むか、又は本質的に該組み合わせから成るか、又は該組み合わせから成る。
【0012】
特定実施形態では、沈降反応は、沈降反応を化学的に平衡化させるための酸又は水酸化物塩基試薬の添加を含まない。特定実施形態では、沈降反応は、沈降反応を平衡化させるかどうかに関わりなく、酸又は水酸化物塩基の添加を含まない。特定実施形態では、沈降反応は、沈降反応を化学的に平衡化させるためのいずれの試薬の添加をも含まない。これとは別に又はこれに加えて、特定実施形態では、金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩中の金属原子とケイ素及び/又はゲルマニウム原子のモル比が約2である。これとは別に又はこれに加えて、特定実施形態では、金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩は、例えば、水酸化物試薬の外部滴加なしで及び/又は沈降反応の生成物として酸若しくは塩基を生成することなく平衡沈降反応を得るのに十分な相対的比率で、金属二ケイ酸塩及び金属メタケイ酸塩を含む。特定実施形態では、本明細書に記載の方法は、沈降反応の生成物として酸又は塩基を形成しない。
【0013】
本明細書に記載の方法で作製される合成鉱物は、合成ケイ酸塩、合成ゲルマニウム酸塩又はケイ素及び/若しくはゲルマニウムを含有する任意の他の合成鉱物、例えばシリコゲルマニウム酸塩及びゲルマノケイ酸塩等であり得る。ゲルマノケイ酸塩という用語は、ケイ素の50%未満がゲルマニウムによって置換されているケイ酸塩を指す。シリコゲルマニウム酸塩という用語は、ゲルマニウムの50%未満がケイ素によって置換されているゲルマニウム酸塩を指す。
ゲルマニウム酸塩という用語は、ゲルマニウム酸基(ゲルマニウムを含有するアニオン性基)を含む物質を指す。ケイ酸塩という用語は、ケイ酸基(ケイ素を含有するアニオン性基)を含む物質を指す。ケイ酸塩は、例えば、フィロケイ酸塩であり得る。ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩は、例えば、三方晶系、斜方晶系、単斜晶系、三斜晶系、六方晶系、正方晶系又は立方晶系結晶構造を有し得る。例えば、ケイ酸塩はケイ酸亜鉛鉱であり得る。ゲルマニウムは、例えば、ケイ酸塩鉱物中のケイ素に部分的又は全体的に取って代わることができ、その結果としてゲルマニウム酸塩鉱物、シリコゲルマニウム酸塩及びゲルマノケイ酸塩鉱物は、伝統的なケイ酸塩の結晶構造に相当する結晶構造を持つことができる。
【0014】
フィロケイ酸塩という用語は、ケイ酸基(ケイ素を含有するアニオン性基)を含み、かつ少なくとも1つの四面体層及び少なくとも1つの八面体層を含む結晶構造を有する物質を指す。層数は、数単位から数千単位まで幅があり得る。フィロケイ酸塩は、例えば、2つの四面体層が八面体層の両側にある2:1フィロケイ酸塩であり得る。
合成フィロケイ酸塩又は合成フィロケイ酸塩前駆体は、例えば、合成タルク、合成パイロフィライト、合成マイカ、合成スメクタイト(例えばベントナイト、モンモリロナイト、ノントロナイト、バイデライト、サポナイト)、合成カオリナイト、合成蛇紋石、合成緑泥石及びこれらの1種以上の混合物から選択され得る。特定実施形態では、合成フィロケイ酸塩又は合成フィロケイ酸塩前駆体は合成タルク(式Mg3Si410(OH)2)のヒドロキシル化ケイ酸マグネシウム)である。本発明は、合成タルクに関して論じる傾向があり得る。しかしながら、本発明をそのようなものとして限定して解釈すべきでない。
【0015】
合成ケイ酸塩及び/又は合成ゲルマニウム酸塩(例えば合成フィロケイ酸塩)は、例えば非膨張性であってよい。これは、その(001)回折線が、エチレングリコール又はグリコールと接触して置くことによる処理によって影響されない、すなわち、(001)(x線)回折線に対応するその原子間距離が、エチレングリコール又はグリコールと接触して置かれた後に増加しないことを意味する。スメクタイト以外の2:1フィロケイ酸塩、例えば、タルク及びマイカ、例えば白雲母等は、非膨張性である。
金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩は、ケイ酸イオン及び/又はゲルマニウム酸イオンを含む。金属ケイ酸塩は、金属カチオンと、ケイ素を含むアニオン、例えば、オルトケイ酸イオン(SiO4 4-)、[SiO2+n2n-、{[SiO32-n又は{[SiO2.5 -]}n等のオキシアニオンとを含む化合物である。金属ゲルマニウム酸塩は、金属カチオンと、ゲルマニウムを含むアニオン、例えばオルトゲルマニウム酸イオン(GeO4 4-)等のオキシアニオンとを含む化合物である。特定実施形態では、金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩は金属ケイ酸塩である。特定実施形態では、金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩は金属ゲルマニウム酸塩である。特定実施形態では、金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩は、金属ケイ酸塩と金属ゲルマニウム酸塩の混合物である。本発明は、金属ケイ酸塩、特に金属二ケイ酸塩及び/又は金属メタケイ酸塩に関して論じる傾向があり得る。特定実施形態では、金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩は、金属メタケイ酸塩と金属二ケイ酸塩の混合物である。しかしながら、本発明をそのようなものとして限定して解釈すべきでない。
【0016】
金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩中の金属原子とケイ素及び/又はゲルマニウム原子のモル比は、例えば、約2未満であってよい。例えば、金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩中の金属原子とケイ素及び/又はゲルマニウム原子のモル比は、例えば、約1.5以下又は約1以下であり得る。例えば、金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩中の金属原子とケイ素及び/又はゲルマニウム原子のモル比は、例えば、0より大きく、例えば約0.5以上であり得る。例えば、金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩中の金属原子とケイ素及び/又はゲルマニウム原子のモル比は、約1であり得る(例えば金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩が二ケイ酸ナトリウムNa2Si25である場合)。
【0017】
金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩は、例えば、金属一ケイ酸塩及び/若しくは一ゲルマニウム酸塩又は金属二ケイ酸塩及び/若しくは二ゲルマニウム酸塩であってよい。金属一ケイ酸塩としては、例えば、メタケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)、メタケイ酸ナトリウム五水和物(Na2SiO3.5H2O又はNa2SiO2(OH)2.4H2O)、メタケイ酸ナトリウム六水和物(Na2SiO3.6H2O)、メタケイ酸ナトリウム八水和物(Na2SiO3.8H2O)又はメタケイ酸ナトリウム九水和物(Na2SiO3.9H2O又はNa2SiO2(OH)2.8H2O)が挙げられる。金属二ケイ酸塩としては、例えば、二ケイ酸ナトリウム(Na2Si26.xH2O、例えばxは約1に近いか又は等しい)が挙げられる。特定実施形態では、金属ケイ酸塩及び/若しくはゲルマニウム酸塩は、金属一ケイ酸塩でなく、及び/又は金属一ゲルマニウム酸塩でない。特定実施形態では、金属ケイ酸塩及び/若しくはゲルマニウム酸塩は、金属メタケイ酸塩でないか又はメタケイ酸ナトリウムでない。特定実施形態では、金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩は金属メタゲルマニウム酸塩でない。
【0018】
特定実施形態では、金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩は、金属二ケイ酸塩及び/又は二ゲルマニウム酸塩である。特定実施形態では、金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩は、金属二ケイ酸塩、例えば二ケイ酸ナトリウム及び/又は二ケイ酸カリウムである。金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩は、水和されていてもいなくてもよい。例えば、金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩は、五水和物、六水和物、八水和物又は九水和物であってよい。
金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩は、例えば、一価金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩、例えばケイ酸ナトリウム及び/若しくはゲルマニウム酸ナトリウム又はケイ酸カリウム及び/若しくはゲルマニウム酸カリウムであり得る。金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩は、例えば、メタケイ酸カリウム(K2SiO3)の水和物又は非水和物であってよい。ケイ酸ナトリウム及び/又はケイ酸カリウムは、例えば、水溶液中にあってよい。
特定実施形態では、金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩は、金属メタケイ酸塩及び/又は金属二ケイ酸塩である。特定実施形態では、金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩は、メタケイ酸ナトリウム及び/又は二ケイ酸ナトリウムである。
【0019】
沈降反応に用いる二価又は三価金属塩は、例えば、いずれの二価又は三価金属を含んでもよい。例えば、二価又は三価金属塩は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、コバルト、亜鉛、銅、マンガン、鉄、ニッケル、クロム又はこれらの1つ以上の組み合わせを含み得る。本発明は、二価金属塩、特にマグネシウム塩又は亜鉛塩に関して述べる傾向があり得る。しかしながら、本発明をそのようなもとして限定して解釈すべきでない。
二価又は三価金属塩は、例えば、ケイ酸塩でなく及び/又はゲルマニウム酸塩でない可能性がある。二価又は三価金属塩は、例えば、カルボン酸塩(例えば酢酸塩)、硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、硫化物塩、亜硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸水素塩、ハロゲン化物塩、炭酸塩、炭酸水素塩、塩素酸塩、クロム酸塩、二クロム酸塩、リン酸塩、水酸化物塩、チオ硫酸塩、過塩素酸塩又はこれらの組み合わせであってよい。特定実施形態では、二価又は三価金属塩は、カルボン酸(例えば酢酸塩)又は硫酸塩であり得る。特定実施形態では、二価又は三価金属塩は、酢酸マグネシウム又は硫酸マグネシウムである。
特定実施形態では、二価又は三価金属塩は水和物であってよい。
特定実施形態では、金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩は二ケイ酸塩、例えば二ケイ酸ナトリウムであり、二価又は三価金属塩は酢酸塩又は硫酸塩、例えば酢酸マグネシウム又は硫酸マグネシウムである。
【0020】
沈降反応は、例えば、1種以上の金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩並びに1種以上の二価又は三価金属塩を使用してよい。沈降反応は、例えば、1種以上の金属ケイ酸塩及び1種以上の二価又は三価金属塩を使用してよい。沈降反応は、例えば、1種の金属ケイ酸塩及び/若しくはゲルマニウム酸塩並びに/又は1種の二価若しくは三価金属塩を使用してよい。特定実施形態では、沈降反応はメタケイ酸塩と二ケイ酸塩の混合物を使用する。
沈降反応は、1種以上の金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩並びに1種以上の二価又は三価金属塩を接触させることによって行なわれる。金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩並びに二価又は三価金属塩は、沈降反応を行なうのに適したいずれの形態であってもよい。例えば、金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩並びに二価又は三価金属塩は、それぞれ独立に液体形態であってよい。例えば、金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩並びに二価又は三価金属塩は、それぞれ独立に溶液中にあり、溶液が混ざり合って沈降反応を開始することができる。金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩並びに二価又は三価金属塩の溶液の溶媒は、例えば、水、アルコール又はこれらの1種以上の混合物であってよい。アルコールとしては、例えば、10個未満又は7個未満の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、プロピレングリコール及びエチレングリコールが挙げられる。特定実施形態では、溶媒は水である(言い換えると、金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩並びに二価又は三価金属塩はそれぞれ独立に水溶液中にあり得る)。
【0021】
反応媒体及び各出発組成物は、少なくとも部分的に水和されていてもよい(従ってこの反応媒体の水熱処理はより一般的にはソルボサーマル処理と呼ばれる)。液体媒体は、例えば、水、アルコール及びその混合物から選択可能である。例えば、アルコールは、10個未満の炭素原子、例えば7個未満の炭素原子を含む直鎖又は分岐アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、プロピレングリコール及びエチレングリコールから選択可能である。例えば、出発組成物の液体媒体及び反応媒体の液体媒体は、例えば、単独で水を用いて或いは水と少なくとも1種のアルコールの混合物を用いて調製可能である。
【0022】
沈降反応は、例えば、室内温度及び圧力若しくはほぼ室内温度及び圧力並びに/又は大気温度及び圧力で行なってよい。例えば、約15℃~約30℃又は約15℃~約25℃の範囲の温度で。例えば、約0.05~約0.5MPaの範囲、例えば約0.09~約0.2MPaの範囲の圧力、例えば約0.1MPaで。これとは別に、水に塩をより迅速に溶かすためにより高い温度及び/又は圧力で、例えば約50℃~約70℃の範囲の温度で、沈降反応を行なってよい。或いは、本明細書に記載の熱処理プロセス直前に沈降反応を行なってよく、従って本明細書に記載の熱処理プロセスに適した温度及び圧力で行なってよい。例えば手動撹拌、磁気撹拌及び/又は超音波によって金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩と二価又は三価金属塩を混合してよい。
各溶液の濃度は、例えば、それぞれ独立に約10-3モル/L~約10モル/L、例えば約10-2モル/L~約5モル/L、例えば約10-1モル/L~約4モル/L、例えば0.5モル/L~約3モル/Lの範囲であってよい。
所望の合成鉱物を得るための化学量論比で金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩と二価又は三価金属塩を組み合わせてよい(金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩と二価又は三価金属塩の比は、所望の合成鉱物中のこれらの元素の比に相当する)。
【0023】
以前に記載されたプロセスでは、沈降反応の生成物としていずれの塩基も出現しないように反応を化学的に平衡化させるために酢酸等の酸試薬を沈降反応に添加した。しかしながら、驚いたことに、沈降反応を化学的に平衡化させるために、試薬、特に酸試薬又は水酸化物塩基試薬を添加せずに合成鉱物を作製できることが分かった。従って、特定実施形態では、反応を平衡化させるのに適した量又は条件下で沈降反応に酸試薬も水酸化物塩基試薬も添加しない。特定実施形態では、沈降反応に酸試薬も水酸化物塩基試薬も添加しない。特定実施形態では、反応を平衡化させるのに適した量又は条件下で沈降反応に追加試薬を添加しない。これは、沈降反応の前又はその間に金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩並びに二価又は三価金属塩に酸若しくは水酸化物塩基試薬を添加しないことを意味する。特定実施形態では、沈降反応後に金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩並びに二価又は三価金属塩に酸若しくは水酸化物塩基試薬を添加しない。この文脈では、添加試薬には、沈降反応に必要な金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩並びに二価又は三価金属塩は含まれない。熱処理中の合成鉱物の合成を促進し及び/又は粒子間の凝集が少なく、改善された粒径を有する前駆体を与えるために添加することがある本明細書に記載の式R-COOM’の金属カルボン酸塩の添加も含まれない。この文脈では、酸及び塩基は、ブレンステッド-ローリー定義の酸及び塩基を指し、そのため酸はプロトンを失うことができる種であり、塩基はプロトンを受け入れることができる種である。水酸化物塩基試薬は、沈降反応用の反応媒体中に存在すると水酸化物を形成するいずれの試薬をも指す。例えば、ナトリウムアルコキシドは水に溶解してアルコール及びNaOHを与え、これらを水酸化物塩基として用いて沈降反応を化学的に平衡化させることができる。
【0024】
特定実施形態では、金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩は金属二ケイ酸塩及び/又は二ゲルマニウム酸塩を含む。特定実施形態では、金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩は、金属二ケイ酸塩/二ゲルマニウム酸塩及び金属メタケイ酸塩/メタゲルマニウム酸塩を含む。金属二ケイ酸塩/二ゲルマニウム酸塩及び金属メタケイ酸塩/メタゲルマニウム酸塩は、酸若しくは水酸化物塩基試薬の外部添加なしで、例えばいずれの追加試薬の外部添加もなしで併用してよい。金属二ケイ酸塩及び/又は二ゲルマニウム酸塩と金属メタケイ酸塩及び/又はメタゲルマニウム酸塩の組み合わせを使用する場合、二ケイ酸塩及び/又は二ゲルマニウム酸塩並びにメタケイ酸塩及び/又はメタゲルマニウム酸塩は、例えば沈降反応の試薬として酸若しくは水酸化物塩基を添加せずに及び/又は沈降反応の生成物として酸若しくは水酸化物塩基を生成せずに所望の合成鉱物生成物を得るのに必要な化学量論比で使用可能である。沈降反応は、例えば、以下のようなものであり得る。
Na2Si25+2Na2SiO3+3Mg(CH3COO)2+n’H2
→Mg3Si411,n’H2O+6(CH3COO)Na
【0025】
特定実施形態では、沈降反応は、式R-COOM’の1種以上の金属カルボン酸塩の添加を含むか又はその存在下で行なわれる。式中、Rは、水素(-H)及び5個未満の炭素原子を含むアルキル基から選択され、M’は一価金属である。これが作用して、熱処理プロセス中の合成鉱物の生成を促進することができる。これとは別に又はこれに加えて、本明細書に記載の熱処理は、本明細書に記載の式R-COOM’の1種以上の金属カルボン酸塩の存在下で行なわれる。特定実施形態では、カルボン酸塩であってよい、沈降反応のための金属源(二価又は三価金属塩)に加えて、式R-COOM’の1種以上の金属カルボン酸塩を使用する。式R-COOM’の金属カルボン酸塩は、合成鉱物のための金属源を与えない。
特定実施形態では、Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチル又はペンチルである。特定実施形態では、Rは、メチル又はエチルである。特定実施形態では、Rはメチルである(R-COOは酢酸である)。
特定実施形態では、M’は一価金属、例えばナトリウム、カリウム又はその1つ以上の組み合わせである。特定実施形態では、M’はナトリウム又はカリウムである。特定実施形態では、M’は金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩中の金属と同じ金属である。
特定実施形態では、金属カルボン酸塩は酢酸ナトリウム又は酢酸カリウムである。
金属カルボン酸塩は、例えば、短縮した持続時間の水熱処理後に合成鉱物を得られるようにする濃度で使用してよい。金属カルボン酸塩は、例えば、約0.1モル/L~約10モル/L、例えば約0.2モル/L~約8モル/L、例えば約0.5モル/L~約6モル/L、例えば約1モル/L~約5モル/L、例えば約1モル/L~約4モル/Lの範囲の濃度で使用してよい。
金属カルボン酸塩とケイ素及び/又はゲルマニウムのモル比は、例えば、約0.05~約25、例えば約0.05~約20、例えば約0.1~約15、例えば約0.1~約10であり得る。
【0026】
沈降反応により合成鉱物前駆体が形成される。合成鉱物前駆体はケイ素及び/又はゲルマニウムを含む。前駆体は、例えば、懸濁液、例えば白色懸濁液であるか、又は例えば、式(Six’Ge1-x’4311,n’H2Oを有するヒドロゲルであり得る。式中、Mは金属であり、x’は0~1(0及び1を含めて)の値であり、n’は、ゲルに付随している水分子の数である。
例えば、合成鉱物前駆体は、例えば遠心分離(例えば5~60分間3000~15,000rpm)及び上澄みの除去後、場合によっては脱塩水で洗浄してから乾燥(例えばオーブン内、例えば60℃で2日間)させた後、又は凍結乾燥によって、又は微粒化によって又はマイクロ波照射によって回収可能である。従って、可能性のあるその後の熱処理を視野に入れて粉末の形態で合成鉱物前駆体を貯蔵してよい。
次に合成鉱物前駆体を処理して合成鉱物粒子を作製する。処理は、例えば、熱処理、例えば水熱処理プロセスを含んでよい。例えば、合成鉱物を作製するために沈降反応の沈降媒体に熱処理、例えば水熱処理プロセスを施してよい。金属ケイ酸塩及び/若しくはゲルマニウム酸塩並びに/又は二価若しくは三価金属塩の溶液を用いて沈降反応を行なう場合、溶媒(例えば水)は、熱処理プロセスを受ける沈降反応媒体であってよい。
【0027】
本明細書に記載の方法は、例えば、熱処理プロセスをバッチ又は連続プロセスで行なうことができる。本明細書に記載の方法は、例えば、合成鉱物前駆体の熱処理を例えば、参照することによりその内容をここに援用するUS2017/0066655、US2014/0205528又はUS2013/0343980に記載されるように行なうことができる。
本明細書に記載の方法に適した連続反応器は、例えば、定容連続反応器、例えば、ピストン反応器若しくはピストンフロータイプの反応器、又は一連の撹拌反応器によってモデル化可能な反応器を含む。それは、例えば、反応媒体の流れが層状、乱流又は中間の型下で起こる管型反応器の場合であり得る。さらに、本明細書に記載の方法で接触して置かれる種々の組成物及び/又は液体媒体の導入並びに接触して置くことに関してはいずれの並流又は逆流反応器をも使用することができる。T又はYインジェクターを用いて注入を行なうこともできる。連続反応器は、反応ゾーンへの反応物の連続導入を可能にするのに適した少なくとも1つの入口及び合成鉱物生成物の連続除去用の少なくとも1つの出口を有する。熱処理は、例えば、オートクレーブ、例えばHastelloy(登録商標)(Haynes International,Kokomo,United Statesにより市販)等のニッケル基合金から形成されたオートクレーブ或いはチタン製オートクレーブ又は水熱処理温度が250℃を超えない場合には内部ポリテトラフルオロエチルレン(PTFE)ライニングを有するスチール製オートクレーブ内で行なってよい。該オートクレーブは、任意の容量、例えば約200ml~約50リットルの範囲の容量を有し得る。熱処理は、例えば、機械的に撹拌しながら行なってよい。従って、オートクレーブは、例えば、内部金属スクリューを備えてよい。
【0028】
圧力及び反応時間の関数として、合成鉱物の形成に適したいずれの温度を使用してもよい。熱処理プロセスは、例えば、約100℃以上の温度で行なってよい。例えば、熱処理プロセスは、約120℃以上又は約140℃以上又は約150℃以上又は約160℃以上又は約170℃以上又は約180℃以上又は約190℃以上又は約200℃以上又は約210℃以上又は約220℃以上又は約230℃以上又は約240℃以上又は約250℃以上又は約260℃以上又は約270℃以上又は約280℃以上又は約290℃以上又は約300℃以上の温度で行なってよい。熱処理プロセスは、例えば、約600℃まで又は約590℃まで又は約580℃まで又は約570℃まで又は約560℃まで又は約550℃まで又は約540℃まで又は約530℃まで又は約520℃まで又は約510℃まで又は約500℃までの温度で行なってよい。特定実施形態では、熱処理プロセスの温度は、約150℃~約600℃又は約200℃~約400℃又は約200℃~約350℃又は約350℃~約450℃又は約250℃~約350℃の範囲である。
【0029】
温度及び反応時間の関数として、合成鉱物の形成に適したいずれの圧力を使用してもよい。熱処理プロセスは、例えば、約5バール(0.5MPa)以上の圧力で行なってよい。例えば、熱処理プロセスは、約10バール(1MPa)以上又は約20バール(2MPa)以上又は約30バール(3MPa)以上又は約40バール(4MPa)以上又は約50バール(5MPa)以上の圧力で行なってよい。熱処理プロセスは、例えば、約300バール(30MPa)まで又は約250バール(25MPa)まで又は約200バール(20MPa)まで又は約150バール(15MPa)までの圧力で行なってよい。熱処理は、例えば、自己圧力(autogenous pressure)下で、すなわち、水の飽和蒸気圧に少なくとも等しい圧力(気相が液相と平衡状態にある圧力)で行なってよい。従って、熱処理中にオートクレーブ内で達する自己圧力は、前記熱処理が行われる温度、オートクレーブの容積及び存在する水の量によって特に左右される。同様に水の飽和蒸気圧より高い圧力又は熱処理が行われている容器内の自己圧力より高い圧力で水熱処理を行なうことができる。その目的で、熱反応に対して化学的に中性であるガスを、例えば、水熱処理が行われているオートクレーブ又は容器に注入することができる。このようなガスは、不活性ガス(希ガス)、特にアルゴン、窒素(N2)、二酸化炭素及び空気(圧縮空気)から形成される群より選択される。例えば、処理温度に至ったオートクレーブ内部で飽和蒸気圧を作り出すのに少なくとも十分である量の水(好ましくは蒸留水)をオートクレーブに添加してよい。
【0030】
熱処理は、例えば、液化され、2~20、特に5~15の液体/固体比(液体の量はcm3で表し、固体の量はグラムで表し、乾燥合成鉱物前駆体のみの量を意味し、すなわち、任意的な金属カルボン酸塩は考慮しない)を有する合成鉱物前駆体を用いて行なってよい。任意に、必要ならば、当該比を達成するために適量の水を前記液化合成鉱物前駆体に添加してよい。
熱処理プロセスは、例えば、亜臨界又は超臨界条件下で行なってよい。熱処理プロセスは、例えば、その中で反応が起こる反応媒体又は液体媒体に対して超臨界条件下で行なってよい。例えば、熱処理プロセスは、水に対して超臨界条件下で行なってよい。例えば、本質的に又は単独で水性反応媒体の存在下で、超臨界条件は、水の臨界点を超える温度及び圧力である(22.1MPa及び374℃)。従って、熱処理プロセスは、例えば、約375℃超の温度及び約22.3MPa超の圧力で行なってよい。特に、金属ケイ酸塩及び/又はゲルマニウム酸塩がメタケイ酸塩及び/又はメタゲルマニウム酸塩、例えば、メタケイ酸ナトリウム及び/又はメタゲルマニウム酸ナトリウムを含むか或いはそのようなものであるときには、熱処理プロセスを超臨界条件下で行なってよい。
熱処理プロセスは、例えば、約5秒~約30日の範囲の期間にわたって行なってよい。例えば、熱処理プロセスは、約1分~約25日又は約5分~約20日又は約10分~約15日又は約1時間~約24時間又は約2時間~約12時間又は約4時間~約8時間の範囲の期間にわたって行なってよい。例えば、熱処理プロセスは、約5秒~約1分又は約10秒~約30秒の範囲の時間にわたって行なってよい。例えば、連続プロセスを利用するとき及び/又は超臨界条件を利用するときには、熱処理プロセスを約60秒未満の時間にわたって行なってよい。
【0031】
合成鉱物前駆体の熱処理の最後に、鉱物粒子を含有し、例えば少なくとも1つの非膨張相を有するコロイド溶液の形態で組成物を得ることができる。溶液中のこれらの合成鉱物粒子は、ほとんど凝集しないか又は全く凝集せずに粒子が相互に十分に個別化されるような状態であってよい。熱処理の最後に、金属カルボン酸塩の水溶液中の懸濁液中に合成鉱物粒子を含むコロイド組成物を回収することができる。次に前記金属カルボン酸塩を少なくとも部分的に除去するため、任意的な水による洗浄工程後に、前記コロイド組成物に乾燥工程を施すことができる。該洗浄工程は、前記コロイド組成物の少なくとも1サイクルの洗浄/遠心分離を含んでよい。
【0032】
本明細書に記載の方法によって得られた合成ケイ酸塩、例えば合成フィロケイ酸塩は、例えば、X線回折において、9.40Å~9.90Åの距離に位置する面(001)に特徴的な少なくとも1つの回折線を有し得る。該回折線の存在は、天然タルクに非常に類似する生成物の特徴である。さらに、合成ケイ酸塩は、X線回折において、葉間カチオン及びおそらく水分子が見られる葉間空隙を有する膨張相の残存を慣例的に示す12.00Å~18.00Åの距離に位置する面に特徴的な回折線を持たない可能性がある。さらに、合成ケイ酸塩は、X線回折において、4.60Å~4.80Åの距離に位置する面(002)に特徴的な少なくとも1つの回折線を有し得る。
合成鉱物は、例えば、X線回折において、約2.75Å~約2.95Åの距離にある面(113)を有し得る。これとは別に又はこれに加えて、合成鉱物は、X線回折において、約6.9Å~約7.1Åの距離にある面(110)及び/又は約4.0Å~約4.2Åの距離にある面(300)及び/又は約3.4Å~約3.6Åの距離にある面(220)及び/又は約2.55Å~約2.75Åの距離にある面(410)及び/又は約2.2Å~約2.4Åの距離にある面(223)及び/又は約1.75Å~約1.95Åの距離にある面(333)を有し得る。
【0033】
合成ケイ酸塩は、X線回折において、下記特徴的回折ピークを有し得る。
9.50Å~10.25Åの距離にある面(001);
4.50Å~4.61Åの距離にある面(020);
3.10Å~3.20Åの距離にある面(003);
1.50Å~1.55Åの距離にある面(060)。
合成フィロケイ酸塩は、X線回折において、下記特徴的回折線を有し得る。
9.40Å~9.90Åの距離に位置する面(001);
4.60Å~4.80Åの距離に位置する面(002);
3.10Å~3.20Åの距離に位置する面(003);
1.51Å~1.53Åの距離に位置する面(060);
面(002)に特徴的な回折線の強度は、4.40Å~4.60Åの距離に位置する面(020)に対応するシグナルの強度より大きく、面(001)に特徴的な回折線の強度と面(003)に特徴的な回折線の強度との間の比は、0.20~5、例えば約0.20~4又は約0.20~約3又は約0.20~約2又は約0.20~約1.5である。
【0034】
特に、長時間の熱処理の場合、及び/又は十分に高い温度で行なう場合、及び/又は無水熱処理後には、該組成物は、X線回折において、4.40Å~4.60Åの距離に位置する面(020)の代表的な回折線の強度よりずっと大きい強度である4.60Å~4.80Åの距離に位置する面(002)に特徴的な回折線を有する可能性があり、面(020)の代表的な回折線が、面(002)に特徴的な回折線に隠れてしまうことがある。
さらに、合成ケイ酸塩の近赤外スペクトルは、天然タルクの振動バンドに特徴的な線を有し得る。有利には、本発明によると、本発明の組成物は、近赤外に、タルクのMg3-OH結合の振動の代表的な7185cm-1の振動バンドを有する。さらに、合成ケイ酸塩の近赤外スペクトルは、合成タルク組成物に特徴的な、5000cm-1~5500cm-1に位置する振動バンドを有することがあり、ラミナエッジでタルクで結合した水分子の存在を明らかにする。従って、合成タルクは、近赤外に、ラミナエッジでタルクに結合した水分子の存在に対応する5000cm-1~5500cm-1、特に5200cm-1~5280cm-1に位置する振動バンドを有し得る。高強度を有する該振動バンドの存在は、合成タルクを天然タルクと区別できるようにする能力があり、合成タルクと天然タルクの他の赤外振動バンドは同様である。
合成鉱物は、例えば、約10nm~約900nm、例えば約10nm~約600nmの粒径を有し得る。
【0035】
合成鉱物を形成するための処理後、任意の粉末乾燥技術によって、例えば凍結乾燥によって又はオーブンを用いて、例えば約60℃~約130℃の範囲の温度で1~48時間にわたって、マイクロ波照射下で、又は微粒子化によって合成鉱物生成物を乾燥させてよい。
さらに、熱処理後に得られる合成鉱物粒子を含む組成物に、空気中で、約350℃より高く、合成鉱物粒子の分解温度より低い温度で、無水熱処理を施すことができる。有利には、本発明に従い、熱処理後に得られる合成鉱物粒子を含む組成物に、約350℃~約850℃、特に約400℃~約750℃、特に約450℃~約600℃の温度で、例えば約30分~約24時間の持続時間にわたって無水熱処理を施す。前記水熱処理後、合成鉱物粒子を含む前記組成物に無水熱処理を施してよい。該熱処理又は「アニーリング」は、得られる粒子の結晶化度をさらに高めることができる。
【実施例
【0036】
実施例
実施例1:二ケイ酸ナトリウム(Si/Na=1)を用いるタルクの合成
第1のビーカー(A)中、磁気撹拌及び超音波下で22.2g(0.1モル)の二ケイ酸ナトリウム水和物を150mLの蒸留水に溶かした。第2のビーカー(B)中、32.17g(0.15モル)の酢酸マグネシウム四水和物を50mLの脱イオン水に磁気撹拌及び超音波下で溶かした。ビーカー(B)の内容物をビーカー(A)の内容物に手で撹拌しながら迅速に加えて白色懸濁液を得た。得られた水性懸濁液を水熱反応器中で24時間又は6時間にわたって300℃で自己圧力(85バール)下にて処理した。水熱処理の最後に、白色ゲルを得、蒸留水で数回洗浄した。得られた白色ペーストをオーブン内で120℃にて数時間乾燥させてよい。得られた固体をめのう乳鉢で粉砕して白色粉末とし、分析を行なった(赤外線(IR)、X線回折(XRD)、核磁気共鳴(NMR)、電界放出銃-走査型電子顕微鏡(FEG-SEM))。結果を図1~4に示す。結果は、反応生成物が合成タルクであることを実証した。図1は、24時間の処理で作製された合成タルクに関し、図2~4は、6時間の処理で作製された合成タルクに関するものである。
【0037】
実施例2:二ケイ酸ナトリウム(Si/Na=1)を、ブースターとしての酢酸ナトリウムと共に用いるタルクの合成
第1のビーカー(A)中、磁気撹拌及び超音波下で22.2g(0.1モル)の二ケイ酸ナトリウム水和物を150mLの蒸留水に溶かした。60gの無水の酢酸ナトリウムを加えた。第2のビーカー(B)中、磁気撹拌及び超音波下で32.17g(0.15モル)の酢酸マグネシウム四水和物を50mLの脱イオン水に溶かした。ビーカー(B)の内容物をビーカー(A)の内容物に手で撹拌しながら迅速に加えて白色懸濁液を得た。得られた水性懸濁液を水熱反応器内で6時間にわたって300℃において自己圧力(85バール)下で処理した。水熱処理の最後に、白色ゲルを得、蒸留水で数回洗浄した。得られた白色ペーストをオーブン内で120℃にて数時間乾燥させてよい。得られた固体をめのう乳鉢で粉砕して白色粉末とし、分析(IR、XRD、NMR、FEG-SEM)を行なった。結果は、生成物が合成タルクであることを実証した。
【0038】
実施例3:二ケイ酸ナトリウム(Si/Na=1)を、ブースターとしての酢酸カリウムと共に用いるタルクの合成
第1のビーカー(A)中、磁気撹拌及び超音波下で22.2g(0.1モル)の二ケイ酸ナトリウム水和物を150mLの蒸留水に溶かした。60gの無水の酢酸ナトリウムを加えた。第2のビーカー(B)中、磁気撹拌及び超音波下で32.17g(0.15モル)の酢酸マグネシウム四水和物を50mLの脱イオン水に溶かした。ビーカー(B)の内容物をビーカー(A)の内容物に手で撹拌しながら迅速に加えて白色懸濁液を得た。得られた水性懸濁液を水熱反応器内で3時間にわたって300℃において自己圧力(85バール)下で処理した。水熱処理の最後に、白色ゲルを得、蒸留水で数回洗浄した。得られた白色ペーストをオーブン内で120℃にて数時間乾燥させてよい。得られた固体をめのう乳鉢で粉砕して白色粉末とし、分析(IR、XRD、NMR、FEG-SEM)を行なった。結果は、生成物が合成タルクであることを実証した。
【0039】
実施例4:ケイ酸ナトリウム(Na2O.xSiO2、x=3.4)の水溶液を用いるタルクの合成;水溶液:乾物36%
第1のビーカー(A)中、磁気撹拌及び超音波下で21.7g(0.1モル)のケイ酸ナトリウムの水溶液を100mLの蒸留水と混合した。第2のビーカー(B)中、磁気撹拌及び超音波下で16.08g(0.075モル)の酢酸マグネシウム四水和物を50mLの脱イオン水に溶かした。ビーカー(B)の内容物をビーカー(A)の内容物に手で撹拌しながら迅速に加えて白色懸濁液を得た。得られた水性懸濁液を水熱反応器内で24時間にわたって300℃において自己圧力(85バール)下で処理した。水熱処理の最後に、白色ゲルを得、蒸留水で数回洗浄した。得られた白色ペーストをオーブン内で120℃にて数時間乾燥させてよい。得られた固体をめのう乳鉢で粉砕して白色粉末とし、分析(IR、XRD、NMR、FEG-SEM)を行なった。結果は、生成物が合成タルクであることを実証した。
【0040】
実施例5:二ケイ酸ナトリウム(Si/Na=1)と硫酸マグネシウムを用いるタルクの合成
第1のビーカー(A)中、磁気撹拌及び超音波下で22.2g(0.1モル)の二ケイ酸ナトリウム水和物を150mLの蒸留水に溶かした。第2のビーカー(B)中、磁気撹拌及び超音波下で36.93g(0.15モル)の硫酸マグネシウム七水和物を50mLの脱イオン水に溶かした。ビーカー(B)の内容物をビーカー(A)の内容物に手で撹拌しながら迅速に加えて白色懸濁液を得た。得られた水性懸濁液を水熱反応器内で96時間にわたって300℃において自己圧力(85バール)下で処理した。水熱処理の最後に、白色ゲルを得、蒸留水で数回洗浄した。得られた白色ペーストをオーブン内で120℃にて数時間乾燥させてよい。得られた固体をめのう乳鉢で粉砕して白色粉末とし、分析(IR、XRD、NMR、FEG-SEM)を行なった。結果は、生成物が合成タルクであることを実証した。
【0041】
実施例6:二ケイ酸ナトリウム(Si/Na=1)を用いるケイ酸亜鉛鉱の合成
第1のビーカー(A)中、磁気撹拌及び超音波下で11.1g(0.05モル)の二ケイ酸ナトリウム水和物を100mLの蒸留水に溶かした。第2のビーカー(B)中、磁気撹拌及び超音波下で43.90g(0.2モル)の酢酸亜鉛二水和物を200mLの蒸留水に溶かした。ビーカー(B)の内容物をビーカー(A)の内容物に手で撹拌しながら迅速に加えて白色懸濁液を得た。得られた水性懸濁液を水熱反応器内で24時間にわたって300℃で自己圧力(85バール)下にて処理した。水熱処理の最後に、白色ゲルを得、蒸留水で数回洗浄した。得られた白色ペーストをオーブン内で120℃にて数時間乾燥させてよい。得られた固体をめのう乳鉢で粉砕して白色粉末とし、X線回折分析を行なった。結果を図5に示す。結果は、反応生成物が合成ケイ酸亜鉛鉱であることを実証した。
【0042】
実施例7:超臨界条件下でメタケイ酸ナトリウムを用いるタルクの合成
最初に1.6084g(0.0075モル)の酢酸マグネシウム四水和物(Mg(CH3COO)2.4H2O)を250mLの蒸留水に添加することによって酢酸マグネシウム溶液を調製する。これとは別に、2.12g(0.01モル)のメタケイ酸ナトリウム五水和物(Na2OSiO2.5H2O)を250mLの蒸留水に添加することによってメタケイ酸ナトリウム溶液を調製する。
蠕動ポンプが、1/4インチ(6.35mm)の外径と2.13mmの内径を有するインコネルパイプによって、2つの溶液を別々に、それぞれ4mL/分の流量、すなわち8mL/分の総流量で、移送した。反応パイプの入口の数センチメートル前で2つの溶液の混合が連続的に行なわれる。チャンバー内で反応パイプ中を循環する反応媒体が水の臨界点(374℃、221バール)を超える条件下となるように、チャンバー内の温度は400℃であり、反応パイプ内の圧力を(圧力調整器を利用して)約25MPaに維持した。
【0043】
このようにして、反応パイプの入口の上流で第3のパイプ部分で起こる2つの溶液の混合及び沈降から得られる前駆体ゲルは、反応チャンバー内で400℃にて水熱処理を受け、この前駆体ゲルを合成タルクの懸濁液に変換できるようにする。入口と出口の間の反応パイプ内の滞留時間は20秒である。
冷却後、反応器の出口から得られる懸濁液は塩の水性媒体(酢酸ナトリウム)中の合成タルク粒子のコロイド懸濁液である。それは、数十分かけて沈殿する乳状白色組成物の外観を有する。セラミック焼結物を用いて懸濁液を濾過することによってタルク粒子を分離した。分離後、一方で、タルク組成物を回収し、他方で、特に酢酸ナトリウムを含む上澄みを回収する。上澄みは、回収してから場合により再循環させることができる。
分離後に回収されたタルク組成物を最後にオーブン内で80℃にて12時間乾燥させる。
生成物をXRDで分析した。結果は、生成物が合成タルクであることを実証した。
【0044】
実施例8:二ケイ酸ナトリウムとメタケイ酸ナトリウムの組み合わせを用いるタルクの合成
第1のビーカー(A)中、磁気撹拌及び超音波下で22.2g(0.1モル)の二ケイ酸ナトリウム水和物及び42.42g(0.2モル)のメタケイ酸ナトリウム五水和物を200mLの蒸留水に溶かした。第2のビーカー(B)中、磁気撹拌及び超音波下で64.34g(0.3モル)の酢酸マグネシウム四水和物を100mLの脱イオン水に溶かした。ビーカー(B)の内容物をビーカー(A)の内容物に手で撹拌しながら迅速に加えて白色懸濁液を得た。得られた水性懸濁液を水熱反応器内で18時間にわたって300℃で自己圧力(85バール)下にて処理した。水熱処理の最後に、白色ゲルを得、蒸留水で数回洗浄した。得られた白色ペーストをオーブン内で数時間120℃において乾燥させてよい。得られた固体をめのう乳鉢で粉砕して白色粉末とし、分析(IR、XRD、NMR、FEG-SEM)を行なった。結果は、生成物が合成タルクであることを実証した。
【0045】
前述の記載は、本発明を限定することなく本発明の特定実施形態を広範に説明する。当業者には容易に分かるであろう変形形態及び変更形態は、添付の特許請求の範囲に規定され、かつそれによって定義される本発明の範囲内にあるよう意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】