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特表2022-520249エタノールから1,3-ブタジエンを製造するための方法及び触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-29
(54)【発明の名称】エタノールから1,3-ブタジエンを製造するための方法及び触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 27/232 20060101AFI20220322BHJP
   B01J 29/40 20060101ALI20220322BHJP
   B01J 29/56 20060101ALI20220322BHJP
   B01J 35/08 20060101ALI20220322BHJP
   C07C 11/167 20060101ALI20220322BHJP
   C07C 1/24 20060101ALI20220322BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220322BHJP
【FI】
B01J27/232 Z
B01J29/40 Z
B01J29/56 Z
B01J35/08 Z
C07C11/167
C07C1/24
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547202
(86)(22)【出願日】2020-02-10
(85)【翻訳文提出日】2021-10-12
(86)【国際出願番号】 EP2020053340
(87)【国際公開番号】W WO2020165097
(87)【国際公開日】2020-08-20
(31)【優先権主張番号】19156924.3
(32)【優先日】2019-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518001405
【氏名又は名称】エスシージー ケミカルズ カンパニー リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】アウンチャナ ワングリヤ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA01A
4G169BA02A
4G169BA02B
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BA12A
4G169BA12B
4G169BB05B
4G169BB06A
4G169BB16B
4G169BC04A
4G169BC09A
4G169BC10A
4G169BC10B
4G169BC16A
4G169BC16B
4G169BC17A
4G169BC18A
4G169BC22A
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169BC35A
4G169BC40A
4G169BC42A
4G169BC50A
4G169BC51A
4G169BC51B
4G169BC54A
4G169BC58A
4G169BC62A
4G169BC66A
4G169BC67A
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169CB25
4G169CB47
4G169CB63
4G169DA06
4G169EC25
4G169EC27
4G169EE01
4G169ZA03A
4G169ZA05A
4G169ZA11A
4G169ZA11B
4G169ZA13A
4G169ZA14A
4G169ZA19A
4G169ZA32A
4G169ZC04
4H006AA02
4H006AC25
4H006BA05
4H006BA06
4H006BA09
4H006BA10
4H006BA21
4H006BA30
4H006BA33
4H006BA71
4H006BA85
4H006BC32
4H006DA12
4H039CA29
4H039CG10
4H039CL25
(57)【要約】
本発明は、ゼオライト、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、又はこれらの何れかの組み合わせから成るリストより選択される成分Aと、混合金属酸化物を含む成分Bcatとを含む、エタノールを1,3-ブタジエンに変換するための触媒、ゼオライト、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、又はこれらの何れかの組み合わせから成るリストより選択される成分Aと、層状複水酸化物(LDH)を含む成分Bpreとを含む、エタノールを1,3-ブタジエンに変換するための触媒を製造するための、触媒前駆体、さらには、前記触媒が用いられる、エタノールを1,3-ブタジエンに変換するための方法、に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)ゼオライト、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、又はこれらの何れかの組み合わせから成るリストより選択される成分A;及び
ii)混合金属酸化物を含む成分Bcat
を含む、エタノールを1,3-ブタジエンに変換するための触媒。
【請求項2】
成分Aの成分Bcatに対する重量比が、1:0.05~1:2.5の範囲内である、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記混合金属酸化物が、層状複酸化物(LDO)である、請求項1に記載の触媒。
【請求項4】
前記触媒が、コアシェル構造を有し、前記コアシェル構造のコアは、成分Aを含み、前記コアシェル構造のシェルは、成分Bcatを含む、請求項1又は2に記載の触媒。
【請求項5】
i)ゼオライト、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、又はこれらの何れかの組み合わせから成るリストより選択される成分A;及び
ii)層状複水酸化物(LDH)を含む成分Bpre
を含む、エタノールを1,3-ブタジエンに変換するための触媒を製造するための触媒前駆体。
【請求項6】
成分Aの成分Bpreに対する重量比が、1:0.1~1:5の範囲内である、請求項5に記載の触媒前駆体。
【請求項7】
前記触媒前駆体が、コアシェル構造を有し、前記コアシェル構造のコアは、成分Aを含み、前記コアシェル構造のシェルは、成分Bpreを含む、請求項5又は6に記載の触媒前駆体。
【請求項8】
前記層状複水酸化物(LDH)が、第一の金属DM及び第二の金属TMを含む、又は前記層状複酸化物(LDO)が、第一の金属DM及び第二の金属TMを含む、請求項1から4の何れか一項に記載の触媒、又は請求項5から7のいずれか一項に記載の触媒前駆体。
【請求項9】
前記第一の金属DMが、Li、Ca、Mg、Zn、Fe、Co、Cu、Ni、及びこれらの組み合わせから成るリストより選択され、好ましくは、Mg、Cu、Ni、Zn、及びこれらの組み合わせから成るリストより選択される、請求項1から4及び8のいずれか一項に記載の触媒、又は請求項5から8の何れか一項に記載の触媒前駆体。
【請求項10】
前記第二の金属TMが、Al、Ga、In、Y、Fe、Co、Mn、Cr、Ti、V、La、Sn、Zr、及びこれらの組み合わせから成るリストより選択され、好ましくは、Al、Zr、及びこれらの組み合わせから成るリストより選択される、請求項1から4及び8から9のいずれか一項に記載の触媒、又は請求項5から9の何れか一項に記載の触媒前駆体。
【請求項11】
成分Aが、ZSM-5、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、USYゼオライト、ベータゼオライト、MCM-22、フェリエライト、チャバザイト、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項1から4及び8から10のいずれか一項に記載の触媒、又は請求項5から10のいずれか一項に記載の触媒前駆体。
【請求項12】
前記ゼオライトのSiのAlに対するモル比は、1:1~5000:1の範囲内である、請求項11に記載の触媒、又は請求項11に記載の触媒前駆体。
【請求項13】
エタノール流を請求項1から4及び8から12の何れか一項に記載の触媒と接触させることを含む、1,3-ブタジエンを製造するための方法。
【請求項14】
エタノールを1,3-ブタジエンに変換するための、請求項1から4及び8から11の何れか一項に記載の触媒の使用。
【請求項15】
エタノールを1,3-ブタジエンに変換するための触媒を製造するための、請求項5から12の何れか一項に記載の触媒前駆体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エタノールを1,3-ブタジエンに変換するための、成分A及び成分Bcatを含む触媒、並びにそのような触媒を製造するための、成分A及び成分Bpreを含む触媒前駆体に関する。さらに本発明は、エタノールから1,3-ブタジエンを製造するための方法、並びにエタノールを1,3-ブタジエンに変換するための前記触媒の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
ブタジエンは、ブタジエンゴム、ブタジエン-ニトリルゴム、ブタジエン-スチレンゴム、及び同種のものなどの合成ゴムの製造におけるモノマーとして用いられることから、ブタジエンに対する需要は高い。現在、世界で製造されているブタジエンの大半は、スチームクラッカーからのエチレン製造の副生物として製造されている。
【0003】
2つの主要な工業的プロセスの1つでは、ブタジエンは、石油熱分解の生成物から抽出される。第二の方法では、ブタジエンは、精製ガス及びケーシングヘッドガス中に含まれているn-ブタン及びブチレンの接触脱水素によって得られ、この方法は1工程又は2工程で行われる。しかし、石油価格が上昇していることから、石油以外の供給原料からブタジエンを製造する代替法が、ますます関心を集めてきている。
【0004】
最も可能性のある非石油供給原料の1つは、エタノールである。エタノールの1,3-ブタジエンへの接触変換は公知である。1920年代から1960年代初期にかけては、エタノールは、一工程プロセスにより、400~450℃で1,3-ブタジエン、水素、及び水に変換されていた。
【0005】
しかし、エタノールを1,3-ブタジエンに変換する機構は、極めて複雑である。この複雑さの主たる理由は、エタノールの1,3-ブタジエンへの変換経路が、複数の反応工程を含み、それには、同時に発生する酸反応、塩基反応、及び酸化還元反応が含まれることである。
【0006】
エタノールの1,3-ブタジエンへの変換の主経路は、5つの重要な反応工程、すなわち、エタノールの脱水素、アセトアルデヒドのアルドール縮合、アセトアルドールの脱水、メールワイン-ポンドルフ-バーレー(MPV)還元、及びクロチルアルコールの脱水、から成る。これらの反応経路において、触媒の酸性と塩基性との間のバランスは、触媒活性、さらには所望される1,3-ブタジエン生成物の選択性及び収率を向上させるための重要な成功因子である。
【0007】
したがって、向上されたターンオーバー数、選択性、及び収率を有する、エタノールを1,3-ブタジエンに変換するための改善された方法及び触媒、さらには前記反応に対する向上された活性及び選択性を有する、エタノールを1,3-ブタジエンに変換するための触媒を見出すことが依然として求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、穏和な条件下でエタノールの1,3-ブタジエンへの変換を触媒し、高い触媒活性、高い収率、及び高い選択性を有する触媒を提供することである。エタノールから1,3-ブタジエンを製造するための、向上された選択性及び収率を有する方法を提供することも、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的は、成分A及び成分Bcatの特定の組み合わせを有する触媒によって達成される。
【0010】
したがって、本発明は、ゼオライト、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、又はこれらの何れかの組み合わせから成るリストより選択される成分A、及び層状複水酸化物(LDH)を含んでいる成分Bpreを含む、エタノールを1,3-ブタジエンに変換するための触媒を製造するための触媒前駆体を提供する。
【0011】
さらに、本発明は、ゼオライト、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、又はこれらの何れかの組み合わせから成るリストより選択される成分A、及び混合金属酸化物を含んでいる成分Bcatを含む、エタノールを1,3-ブタジエンに変換するための触媒を提供する。
【0012】
さらに、本発明はまた、ゼオライト、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、又はこれらの何れかの組み合わせから成るリストより選択される成分A、及び混合金属酸化物を含む成分Bcatを含んでいる触媒を、エタノール流に接触させることを含む、1,3-ブタジエンを製造するための方法も提供する。
【0013】
そして、本発明は、ゼオライト、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、又はこれらの何れかの組み合わせから成るリストより選択される成分A、及び層状複水酸化物(LDH)を含む成分Bpreを含んでいる、エタノールを1,3-ブタジエンに変換するための触媒の製造のための触媒前駆体の使用、並びにゼオライト、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、又はこれらの何れかの組み合わせから成るリストより選択される成分A、及び混合金属酸化物を含む成分Bcatを含んでいる、エタノールを1,3-ブタジエンに変換するための触媒の使用、を提供する。
【0014】
定義
層状複水酸化物(LDH)は、基本層に2種類の金属カチオンを有し、層間ドメインがアニオン種を含有する、合成物又は天然の二次元ナノ構造層状物質の種類である。層状複水酸化物(LDH)の一般的な分子の記述は、化学式(I)で与えられ:
[Mz+ (1-x)M’y+ (OH)a+n- a/n・bHO (I)
式中、
M及びM’は、電荷を有する金属カチオンであり、MはM’と異なっており:
zは、1又は2であり;
yは、3又は4であり;
n-は、層間アニオンであり、n>0、好ましくはn=1~5であり;
0<x<0.9であり、
b=0~10であり、
aは、a=z(1-x)+xy-2であり、0よりも大きい。
【0015】
混合金属酸化物とは、少なくとも2種類以上の金属の混合物の酸化形態、少なくとも2種類以上の金属酸化物の混合物、又はこれらの組み合わせを意味し、いかなる物理的特性、化学的特性、又は製造方法にも限定されない。LDO(層状複酸化物)は、混合金属酸化物の1つの好ましい実施形態である。
【0016】
層状複酸化物(LDO)は、層状複水酸化物(LDH)から誘導され、層状複水酸化物(LDH)は、熱処理されて、層間水分子、アニオン、及びヒドロキシル基が除去される。その結果、層状複水酸化物(LDH)の構造が少なくとも部分的に崩壊して、層状複酸化物(LDO)が形成される。
【0017】
触媒活性は、[g1,3-BDcat -1時間-1]の単位を有し、1時間に製造された1,3-ブタジエン重量の触媒重量に対する比を示す。
【0018】
本明細書で用いられる場合、毎時重量空間速度(WHSV)は、1時間あたり、触媒の単位重量あたりの供給流重量として定義される。
【0019】
流通時間の用語は、触媒がエタノール供給流と接触している時間の長さを示す。
【0020】
ゼオライトの用語は、本明細書で用いられる場合、各々が4つのO原子から成る連結された四面体のフレームワークを特徴とする構造を有する結晶物質を示す。このフレームワークは、チャネル及びケージの形態の開放キャビティを有し、それは通常、一般的には交換可能であるHO分子及びフレームワーク外カチオンで占められている。
【0021】
本発明の記載
本発明は、触媒前駆体、触媒、及び前記触媒を用いたエタノールからの1,3-ブタジエンの製造方法、並びにエタノールから1,3-ブタジエンを製造するための前記触媒の使用、及び前記触媒を製造するための前記触媒前駆体の使用を提供する。
【0022】
A.触媒前駆体
本発明は、エタノールを1,3-ブタジエンに変換するための触媒を製造するための、
i)ゼオライト、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、又はこれらの何れかの組み合わせから成るリストより選択される成分A;及び
ii)層状複水酸化物(LDH)を含む成分Bpre
を含む触媒前駆体を提供する。
【0023】
触媒前駆体の成分Bpre
実施形態では、成分Bpreは、少なくとも70重量%のLDH、好ましくは少なくとも80重量%のLDH、より好ましくは少なくとも90重量%のLDHを含む。好ましい実施形態では、成分Bpreは、層状複水酸化物(LDH)から成る。
【0024】
好ましくは、成分Aの成分Bpreに対する重量比は、1:0.1~1:5、より好ましくは1:0.2~1:5、さらにより好ましくは1:0.3~1:5の範囲内である。成分Aの成分Bpreに対する重量比は、触媒前駆体の酸-塩基性のバランスを保つものであり、その結果、本発明に従う触媒前駆体から誘導される触媒を用いたエタノールの1,3-ブタジエンへの変換の収率及び選択性が向上する。
【0025】
好ましい実施形態では、LDHは、第一の金属DM及び第二の金属TMを含む。第一の金属DMは、少なくとも1つの一価金属カチオン、少なくとも1つの二価金属カチオン、又はこれらの組み合わせである。好ましくは、第一の金属DMは、少なくとも1つの二価金属カチオンである。さらに、第二の金属TMは、少なくとも1つの三価金属カチオン、少なくとも1つの四価金属カチオン、又はこれらの組み合わせである。好ましくは、第二の金属TMは、少なくとも1つの三価金属カチオンである。
【0026】
1つの実施形態では、LDHは、層間アニオンをさらに含む。層間アニオンは、CO 2-、OH、F、Cl、Br、I、SO 2-、NO 、及びPO 3-から成るリストより選択される。好ましい実施形態では、層間アニオンは、CO 2-及びNO から成るリストより選択される。第一の最も好ましい実施形態では、間アニオンは、CO 2-である。第二の最も好ましい実施形態では、間アニオンは、NO である。
【0027】
好ましくは、第一の金属DMの第二の金属TMに対するモル比は、1:1~10:1、より好ましくは2:1~7:1、最も好ましくは2:1~5:1の範囲内である。
【0028】
好ましい実施形態では、第一の金属DMは、Li、Ca、Mg、Zn、Fe、Co、Cu、Ni、及びこれらの組み合わせから成るリストより選択され、好ましくは、Ca、Mg、Zn、Cu、Ni、及びこれらの組み合わせから成るリストより選択され、より好ましくは、Mg、Cu、Ni、Zn、及びこれらの組み合わせから成るリストより選択される。第一の最も好ましい実施形態では、第一の金属DMは、Mgを含み、好ましくはMgから成る。第二の最も好ましい実施形態では、第一の金属DMは、Mg、Cu、及びNiの組み合わせを含み、好ましくはMg、Cu、及びNiの組み合わせから成る。
【0029】
第一の金属DMがMg、Cu、及びNiの組み合わせを含み、好ましくはMg、Cu、及びNiの組み合わせから成る実施形態では、Mg:Cu:Niのモル比が、1~5:0.01~3:0.01~3、好ましくは1.5~4.5:0.02~2.5:0.02~2.5、より好ましくは1.8~4:0.02~1.5:0.02~1.5の範囲内であることが好ましい。
【0030】
好ましい実施形態では、第二の金属TMは、Al、Ga、In、Y、Fe、Co、Mn、Cr、Ti、V、La、Sn、Zr、及びこれらの組み合わせから成るリストより選択され、好ましくは、Al、Ga、In、Fe、Co、Sn、Zr、及びこれらの組み合わせから成るリストより選択され、より好ましくは、Al、Zr、及びこれらの組み合わせから成るリストより選択される。第一の最も好ましい実施形態では、第二の金属TMは、Alを含み、好ましくはAlから成る。第二の最も好ましい実施形態では、第二の金属TMは、Al及びZrの組み合わせを含み、好ましくはAl及びZrの組み合わせから成る。
【0031】
第二の金属TMがAl及びZrの組み合わせを含み、好ましくはAl及びZrの組み合わせから成る実施形態では、Al:Zrのモル比は、0.05~1.5:0.02~1.5、好ましくは0.1~1.2:0.05~1.5、より好ましくは0.25~1.15:0.05~1.15の範囲内である。
【0032】
1つの具体的な実施形態では、第一の金属DMは、Mgを含み、好ましくはMgから成り、第二の金属TMは、Al及びZrを含み、好ましくはAl及びZrから成る。
【0033】
別の具体的な実施形態では、第一の金属DMは、Mg、Cu、及びNiを含み、好ましくはMg、Cu、及びNiから成り、第二の金属TMは、Alを含み、好ましくはAlから成る。
【0034】
第一の金属DM及び第二の金属TMは、異なる金属カチオンから選択されることが好ましい。
【0035】
別の選択肢としての好ましい実施形態では、成分Bpreは、層状複水酸化物(LDH)の面上に堆積した活性金属をさらに含む。例えば、堆積が成されたLDHは、LDHに対して活性金属を含浸させることによって得ることができる。活性金属は、Li、Ca、Zn、Fe、Co、Cu、Ni、Ga、In、Y、Fe、Co、Mn、Cr、Ti、V、La、Sn、Zr、及びこれらの組み合わせから成るリストより選択されてよく、好ましくは、Cu、Ni、Zr、及びこれらの組み合わせから成るリストより選択されてよい。
【0036】
触媒前駆体の成分A
成分Aは、ゼオライト、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、及びこれらの組み合わせから成るリストより選択される。1つの好ましい実施形態では、成分Aは、ゼオライト、二酸化ケイ素、及び酸化アルミニウムから成るリストより選択される。別の好ましい実施形態では、成分Aは、ゼオライト、二酸化ケイ素、及びこれらの組み合わせから成るリストより選択される。第一の最も好ましい実施形態では、成分Aは、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%の二酸化ケイ素を含み、さらにより好ましくは二酸化ケイ素から成る。第二の最も好ましい実施形態では、成分Aは、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%のゼオライトを含み、さらにより好ましくはゼオライトから成る。
【0037】
触媒前駆体の成分Aの二酸化ケイ素(SiO
成分Aが二酸化ケイ素を含む場合、本発明に従うSiOは、いかなる形状、サイズ(径)、及び純度を有していてもよい。好ましい実施形態では、二酸化ケイ素は、75重量%超のSiO、好ましくは85重量%超のSiO、より好ましくは95重量%超のSiO、最も好ましくは98重量%超のSiOを含む。
【0038】
好ましくは、二酸化ケイ素は、球形状を有する。SiO球は、本技術分野で公知のいかなる方法によって製造されてもよい。例えば、SiO球は、本技術分野において公知であるように、エタノールを溶媒として、臭化セチルトリメチルアンモニウムを界面活性剤ポロゲンとして用いたテトラエチルオルソシリケート(TEOS)のアンモニア触媒による加水分解及び縮合を含む改変ストーバー法によって製造することができる。
【0039】
好ましくは、SiO球は、平均径が100~1000nm、好ましくは200~600nm、より好ましくは300~550nmであるSiO球である。
【0040】
触媒前駆体の成分Aのゼオライト
好ましくは、本発明の触媒前駆体の成分Aのゼオライトは、ZSM-5、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、USYゼオライト、ベータゼオライト、MCM-22、フェリエライト、チャバザイト、及びこれらの組み合わせから成るリストより選択され、より好ましくは、ZSM-5、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、USYゼオライト、及びこれらの組み合わせから成るリストより選択される。
【0041】
好ましくは、ゼオライトは、少なくとも100nm、好ましくは少なくとも300nm、より好ましくは少なくとも500nmの平均径を有する粒子として存在する。
【0042】
本発明の好ましい実施形態では、ゼオライトのシリカ対アルミナ(Si:Al)モル比は、1:1~5000:1、好ましくは15:1~2000:1、より好ましくは40:1~1500:1、最も好ましくは250:1~1300:1である。
【0043】
触媒前駆体の成分Aの酸化アルミニウム
酸化アルミニウムは、アルミニウム及び酸素を含む化学化合物である。好ましくは、本発明で用いられる場合の酸化アルミニウムは、酸化アルミニウム(III)(Al)を含み、好ましくは酸化アルミニウム(III)から成る。
【0044】
本発明に従う酸化アルミニウムは、いかなる形状、サイズ(径)、及び純度を有していてもよい。好ましい実施形態では、酸化アルミニウムは、75重量%超のAl、好ましくは85重量%超のAl、より好ましくは95重量%超のAl、最も好ましくは98重量%超のAlを含む。
【0045】
好ましくは、本発明に従う酸化アルミニウムは、球形状を有するAlを含み、好ましくは球形状を有するAlから成る。
【0046】
本発明のさらなる好ましい実施形態では、本発明の酸化アルミニウムは、Al球である。Al球は、本技術分野で公知のいかなる方法によって製造されてもよい。
【0047】
触媒前駆体の構造
本発明に従う触媒前駆体は、成分A及び成分Bpreを含み、成分A及び成分Bpreは、いくつかの方法で構造的に組み合わされていてよい。例えば、成分Aは、成分Bpreと物理的に混合されていてよく、又は成分Aは、成分Bpreに担持されていてもよい。
【0048】
本発明の好ましい実施形態では、触媒前駆体は、コアシェル構造を有し、この場合、コアシェル構造とは、一方の成分(コア)が、他方の成分(シェル)によって実質的に又は完全に封入されていることを意味する。別の選択肢としての説明では、コアシェル構造は、1つの成分(シェル)が、別の成分(コア)の外側境界部分を実質的に又は完全に覆っている構造として定義される。好ましくは、本発明において、コアシェル構造は、コアの外面部分の少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、さらにより好ましくは少なくとも30%がシェルで覆われているコアを有する。
【0049】
本発明の触媒前駆体の好ましい実施形態によると、コアは、成分Aを含み、好ましくは成分Aから成り、シェルは、成分Bpreを含み、好ましくは成分Bpreから成る。本発明の別の好ましい実施形態では、コアは、成分Aから成る。本発明のさらに別の好ましい実施形態では、シェルは、成分Bpreから成る。
【0050】
好ましくは、本発明の触媒前駆体は、透過型電子顕微鏡(TEM)によって測定される一次粒子サイズ(平均径)が200~3000nm、好ましくは300~2500nm、より好ましくは400~2000nmである粒子として存在する。
【0051】
B.触媒
本発明は、エタノールを1,3-ブタジエンに変換するための、
i)ゼオライト、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、又はこれらの何れかの組み合わせから成るリストより選択される成分A;及び
ii)混合金属酸化物を含む成分Bcat
を含む触媒を提供する。
【0052】
触媒の成分Bcat
好ましい実施形態では、成分Bcatは、少なくとも70重量%の混合金属酸化物、好ましくは少なくとも80重量%の混合金属酸化物、より好ましくは少なくとも90重量%の混合金属酸化物を含む。より好ましい実施形態では、成分Bcatは、混合金属酸化物から成る。最も好ましい実施形態では、混合金属酸化物は、層状複酸化物(LDO)である。
【0053】
好ましくは、成分Aの成分Bcatに対する重量比は、1:0.05~1:2.5、より好ましくは1:0.1~1:2.5、さらにより好ましくは1:0.15~1:2.5の範囲内である。成分Aの成分Bcatに対する重量比は、触媒の酸性-塩基性のバランスを保つものであり、その結果、本発明の触媒を用いたエタノールの1,3-ブタジエンへの変換の収率及び選択性が向上する。
【0054】
好ましい実施形態では、混合金属酸化物がLDOを含む場合、好ましくはLDOから成る場合、LDOは、第一の金属DM及び第二の金属TMを含む。第一の金属DMは、少なくとも1つの一価金属カチオン、少なくとも1つの二価金属カチオン、又はこれらの組み合わせである。好ましくは、第一の金属DMは、少なくとも1つの二価金属カチオンである。さらに、第二の金属TMは、少なくとも1つの三価金属カチオン、少なくとも1つの四価金属カチオン、又はこれらの組み合わせである。好ましくは、第二の金属TMは、少なくとも1つの三価金属カチオンである。
【0055】
好ましくは、第一の金属DMの第二の金属TMに対するモル比は、1:1~10:1、より好ましくは2:1~7:1、最も好ましくは2:1~5:1の範囲内である。好ましい実施形態では、LDOは、触媒のLDOが誘導される触媒前駆体のLDHと同じ第一の金属DMの第二の金属DMに対するモル比を有する。
【0056】
好ましい実施形態では、第一の金属DMは、Li、Ca、Mg、Zn、Fe、Co、Cu、及びNi、並びにこれらの組み合わせから成るリストより選択され、好ましくは、Ca、Mg、Zn、Cu、Ni、及びこれらの組み合わせから成るリストより選択され、より好ましくは、Mg、Cu、Ni、Zn、及びこれらの組み合わせから成るリストより選択される。第一の最も好ましい実施形態では、第一の金属DMは、Mgを含み、好ましくはMgから成る。第二の最も好ましい実施形態では、第一の金属DMは、Mg、Cu、及びNiの組み合わせを含み、好ましくはMg、Cu、及びNiの組み合わせから成る。
【0057】
第一の金属DMがMg、Cu、及びNiの組み合わせを含み、好ましくはMg、Cu、及びNiの組み合わせから成る実施形態では、Mg:Cu:Niのモル比が、1~5:0.01~3:0.01~3、好ましくは1.5~4.5:0.02~2.5:0.02~2.5、より好ましくは1.8~4:0.02~1.5:0.02~1.5の範囲内であることが好ましい。
【0058】
好ましい実施形態では、第二の金属TMは、Al、Ga、In、Y、Fe、Co、Mn、Cr、Ti、V、La、Sn、Zr、及びこれらの組み合わせから成るリストより選択され、好ましくは、Al、Ga、In、Fe、Co、Sn、Zr、及びこれらの組み合わせから成るリストより選択され、より好ましくは、Al、Zr、及びこれらの組み合わせから成るリストより選択される。第一の最も好ましい実施形態では、第二の金属TMは、Alを含み、好ましくはAlから成る。第二の最も好ましい実施形態では、第二の金属TMは、Al及びZrの組み合わせを含み、好ましくはAl及びZrの組み合わせから成る。
【0059】
第二の金属TMがAl及びZrの組み合わせを含み、好ましくはAl及びZrの組み合わせから成る実施形態では、Al:Zrのモル比は、0.05~1.5:0.02~1.5、好ましくは0.1~1.2:0.05~1.5、より好ましくは0.25~1.15:0.05~1.15の範囲内である。
【0060】
1つの具体的な実施形態では、第一の金属DMは、Mgを含み、好ましくはMgから成り、第二の金属TMは、Al及びZrを含み、好ましくはAl及びZrから成る。
【0061】
別の具体的な実施形態では、第一の金属DMは、Mg、Cu、及びNiを含み、好ましくはMg、Cu、及びNiから成り、第二の金属TMは、Alを含み、好ましくはAlから成る。
【0062】
第一の金属DM及び第二の金属TMは、異なる金属カチオンから選択されることが好ましい。
【0063】
別の選択肢としての好ましい実施形態では、成分Bcatは、層状複水酸化物(LDO)の面上に堆積した活性金属をさらに含む。例えば、堆積が成されたLDOは、LDOに対して活性金属を含浸させることによって得ることができる。活性金属は、Li、Ca、Zn、Fe、Co、Cu、Ni、Ga、In、Y、Fe、Co、Mn、Cr、Ti、V、La、Sn、Zr、及びこれらの組み合わせから成るリストより選択され、好ましくは、Cu、Ni、Zr、及びこれらの組み合わせから成るリストより選択される。
【0064】
好ましい実施形態では、触媒のLDOは、触媒のLDOが誘導される触媒前駆体のLDHで見られるのと同じ第一の金属DMと第二の金属TMとの組み合わせを有する。
【0065】
触媒の成分A
成分Aは、ゼオライト、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、及びこれらの組み合わせから成るリストより選択される。1つの好ましい実施形態では、成分Aは、ゼオライト、二酸化ケイ素、及び酸化アルミニウムから成るリストより選択される。別の好ましい実施形態では、成分Aは、ゼオライト、二酸化ケイ素、及びこれらの組み合わせから成るリストより選択される。第一の最も好ましい実施形態では、成分Aは、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%の二酸化ケイ素を含み、さらにより好ましくは二酸化ケイ素から成る。第二の最も好ましい実施形態では、成分Aは、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%のゼオライトを含み、さらにより好ましくはゼオライトから成る。好ましくは、触媒の成分Aは、触媒前駆体の成分Aと同一である。
【0066】
触媒の成分Aの二酸化ケイ素(SiO
成分Aが二酸化ケイ素を含む場合、本発明に従うSiOは、いかなる形状、サイズ(径)、及び純度を有していてもよい。好ましい実施形態では、二酸化ケイ素は、75重量%超のSiO、好ましくは85重量%超のSiO、より好ましくは95重量%超のSiO、最も好ましくは98重量%超のSiOを含む。
【0067】
好ましくは、二酸化ケイ素は、球形状を有する。SiO球は、本技術分野で公知のいかなる方法によって製造されてもよい。例えば、SiO球は、本技術分野において公知であるように、エタノールを溶媒として、臭化セチルトリメチルアンモニウムを界面活性剤ポロゲンとして用いたテトラエチルオルソシリケート(TEOS)のアンモニア触媒による加水分解及び縮合を含む改変ストーバー法によって製造することができる。
【0068】
好ましくは、SiO球は、平均径が100~1000nm、好ましくは200~600nm、より好ましくは300~550nmであるSiO球である。
【0069】
触媒の成分Aのゼオライト
好ましくは、本発明の触媒の成分Aのゼオライトは、ZSM-5、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、USYゼオライト、ベータゼオライト、MCM-22、フェリエライト、チャバザイト、及びこれらの組み合わせから成るリストより選択され、より好ましくは、ZSM-5、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、USYゼオライト、及びこれらの組み合わせから成るリストより選択される。
【0070】
好ましくは、ゼオライトは、少なくとも100nm、好ましくは少なくとも300nm、より好ましくは少なくとも500nmの平均径を有する粒子として存在する。
【0071】
本発明の好ましい実施形態では、ゼオライトのシリカ対アルミナ(Si:Al)モル比は、1:1~5000:1、好ましくは15:1:1~2000:1、より好ましくは40:1~1500:1、最も好ましくは250:1~1300:1である。
【0072】
触媒の成分Aの酸化アルミニウム
酸化アルミニウムは、アルミニウム及び酸素を含む化学化合物である。好ましくは、本発明で用いられる場合の酸化アルミニウムは、酸化アルミニウム(III)(Al)を含み、好ましくは酸化アルミニウム(III)から成る。
【0073】
本発明に従う酸化アルミニウムは、いかなる形状、サイズ(径)、及び純度を有していてもよい。好ましい実施形態では、酸化アルミニウムは、75重量%超のAl、好ましくは85重量%超のAl、より好ましくは95重量%超のAl、最も好ましくは98重量%超のAlを含む。
【0074】
好ましくは、本発明に従う酸化アルミニウムは、球形状を有するAlを含み、好ましくは球形状を有するAlから成る。
【0075】
本発明のさらなる好ましい実施形態では、本発明の酸化アルミニウムは、Al球である。Al球は、本技術分野で公知のいかなる方法によって製造されてもよい。
【0076】
触媒の構造
本発明に従う触媒は、成分A及び成分Bcatを含み、成分A及び成分Bcatは、いくつかの方法で構造的に組み合わされていてよい。例えば、成分Aは、成分Bcatと物理的に混合されていてよく、又は成分Aは、成分Bcatに担持されていてもよい。
【0077】
本発明の好ましい実施形態では、触媒は、コアシェル構造を有し、この場合、コアシェル構造とは、一方の成分(コア)が、他方の成分(シェル)によって封入されていることを意味する。別の選択肢としての説明では、コアシェル構造は、1つの成分(シェル)が、別の成分(コア)の外側境界部分を実質的に又は完全に覆っている構造として定義される。好ましくは、本発明において、コアシェル構造は、コアの外面部分の少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、さらにより好ましくは数30%がシェルで覆われているコアを有する。
【0078】
本発明の触媒の好ましい実施形態によると、コアは、成分Aを含み、好ましくは成分Aから成り、シェルは、成分Bcatを含み、好ましくは成分Bcatから成る。本発明の別の好ましい実施形態では、コアは、成分Aから成る。本発明のさらに別の好ましい実施形態では、シェルは、成分Bcatから成る。
【0079】
好ましくは、本発明の触媒は、透過型電子顕微鏡(TEM)によって測定される一次粒子サイズ(平均径)が200~3000nm、好ましくは300~2500nm、より好ましくは400~2000nmである粒子として存在する。
【0080】
C.触媒前駆体の製造
本発明の触媒前駆体は、共沈法によって製造して、好ましいコアシェル構造を形成することができる。共沈法は:
a)成分Aを、i)アニオン塩を含む溶液、ii)成分Bpreの金属イオンを、好ましくは金属イオンDM及びTMを含有する金属前駆体水溶液、並びにiii)塩基と接触させることによって懸濁液を調製する工程、
b)工程a)から得られた懸濁液から固体化合物をろ取し、この固体化合物を脱イオン水で洗浄してウェットケーキを得る工程、並びに
c)工程b)から得られた固体化合物のウェットケーキを乾燥する工程、
を含む。
【0081】
例えば、コアが成分Aを含み、シェルが成分Bpreを含むコアシェル構造を得るためには、以下のプロセスが用いられ得る。成分Aが、超音波処理を用いて、脱イオン水中に粉末として分散される。続いて、アニオン塩、NaCOが、さらなる超音波処理の下で添加される。次に、成分Bpreの金属イオンDM及びTMを含有する金属前駆体水溶液が、脱イオン水と成分AとNaCOとの混合物に、激しい撹拌下、NaOHの添加によって混合物のpHを10に維持しながら、およそ25℃の温度で添加される。次に、得られた懸濁液は、真空ろ過を用いてろ過され、得られた固体化合物は、pH7が達成されるまで脱イオン水で洗浄される。この場合、固体化合物はウェットケーキの形態で存在することになる。固体化合物のウェットケーキは、続いて、少なくとも80℃の温度で加熱しながら一晩乾燥されて、コアシェル構造を有する本発明に従う触媒前駆体の乾燥粉末が得られる。
【0082】
D.触媒の製造
本発明に従う触媒のコアシェル構造は、均一共沈法を含む方法によって製造することができる。好ましい実施形態では、LDHは、成分A上に析出される。したがって、本発明に従う触媒を製造するための方法の第一の工程は、本発明に従う触媒前駆体の製造を含み得る。
【0083】
したがって、好ましくは、本発明に従う触媒は、触媒前駆体の製造及び追加のか焼工程によって製造されることが好ましい。したがって、触媒の成分Bcatに見られる混合金属酸化物、好ましくはLDOは、好ましくは、触媒前駆体の成分Bpreで見られるLDHをか焼することによって得られる。
【0084】
したがって、触媒の製造方法は、本発明で述べる触媒前駆体のための工程a)~工程c)を含む共沈法を含むが、成分Bpreは、触媒では成分Bcatであり、さらに、工程c)の後に実施されることが好ましいか焼工程d)を含む。
【0085】
好ましい実施形態では、触媒の製造方法のか焼工程d)は、300~700℃、好ましくは400~600℃、より好ましくは450~550℃の温度で実施される。
【0086】
本発明のさらにより好ましい実施形態では、触媒の製造方法のか焼工程d)は、少なくとも1時間、好ましくは少なくとも2時間、より好ましくは少なくとも3時間にわたって実施される。好ましくは、か焼工程d)は、1~6時間、より好ましくは2~5.5時間にわたって実施される。
【0087】
最も好ましくは、か焼工程d)は、450~550℃の温度で、少なくとも2時間にわたって実施される。
【0088】
本発明に従う触媒のコアシェル構造は、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、及びX線粉末回折(XRD)によって裏付けることができる。
【0089】
本発明の触媒のコアシェル構造は、連続的に露出した活性成分の層から構成されていることが見出された。
【0090】
実施形態では、本発明に従う触媒の製造方法は、さらに、触媒粉末を市販の反応器に適する形態に成形する工程e)を含む。工程e)は、工程d)の前又は後に実施されてよい。好ましくは、工程e)は工程d)の前、及び工程c)の後に実施される。
【0091】
市販の反応器に適する形態としては、ペレット、押出し物、球、及び同種のものが挙げられ得る。触媒の成形を促進するために、充分なバインダー材料が、エタノール変換触媒組成物にさらに添加されてもよい。特定の形状の触媒を提供することによって、その使用を容易とすることができる。
【0092】
実施形態では、本発明に従う触媒は、比表面積が少なくとも50m/g、好ましくは少なくとも100m/g、より好ましくは少なくとも150m/g、さらにより好ましくは少なくとも200m/gである粒子である。好ましくは、本発明に従う触媒の比表面積は、700m/g未満、より好ましくは600m/g未満、最も好ましくは500m/g未満である。比表面積は、ブルナウアー-エメット-テラー(BET)表面積分析法を用いて、か焼後に測定される。
【0093】
本発明の特に好ましい実施形態では、触媒は、コアシェル構造を有し、コアは、成分Aを含み、好ましくは成分Aから成り、シェルは、成分Bcatを含み、好ましくは成分Bcatから成り、触媒の比表面積は、少なくとも50m/g及び700m/g未満であり、比表面積は、か焼の後に測定されることが好ましい。
【0094】
好ましい実施形態では、コアシェルエタノール変換触媒のシェル厚は、5nm超、好ましくは10nm超、より好ましくは20nm超であり、厚さは、か焼の後に測定されることが好ましい。
【0095】
E.エタノールの1,3-ブタジエンへの変換
1,3-ブタジエンを製造する方法は、エタノール流を本発明に従う触媒と接触させることを含み、この方法は、広い範囲の操作条件下での操作が可能である。しかし、特定の範囲の操作条件では、より良好な1,3-ブタジエンの製造効率という結果を得ることができる。
【0096】
好ましい実施形態では、この方法は、250~500℃の範囲内、好ましくは300~500℃の範囲内、より好ましくは320~450℃の範囲内の温度で行われる。
【0097】
別の好ましい実施形態では、エタノールから1,3-ブタジエンを製造するための方法は、大気圧で行われる。
【0098】
望ましい収率の生成物1,3-ブタジエンを得るために必要とされる接触時間は、操作温度、操作圧力、及び触媒活性などのいくつかの因子に応じて異なる。
【0099】
好ましい実施形態では、方法は、0.1~40時間-1の範囲内、好ましくは0.3~20時間-1の範囲内、より好ましくは0.5~10時間-1の範囲内の毎時重量空間速度(WHSV)で行われる。
【0100】
方法は、バッチ式で又は連続的に行われてよい。商業的スケールの場合、方法は、固定床を用いて連続的に操作されることが有利である。特に好ましくは、方法は、一工程プロセスで及び/又は単一ステージ反応器で、連続的に行われる。
【0101】
1,3-ブタジエンを製造するための方法で用いられる触媒の触媒活性は、好ましくは、少なくとも0.1g1,3-BDcat -1時間-1、より好ましくは少なくとも0.2g1,3-BDcat -1時間-1、最も好ましくは少なくとも0.3g1,3-BDcat -1時間-1である。さらに、1,3-ブタジエンを製造するための方法で用いられる触媒の触媒活性は、好ましくは、10g1,3-BDcat -1時間-1以下である。
【0102】
1,3-ブタジエンを製造するための方法で得られる生成物流は、好ましくは少なくとも12重量%の1,3-ブタジエン、より好ましくは少なくとも15重量%の1,3-ブタジエン、最も好ましくは少なくとも20重量%の1,3-ブタジエンを含む。さらに、1,3-ブタジエンを製造するための方法で得られる生成物流は、好ましくは95重量%以下の1,3-ブタジエンを含み得る。
【0103】
1,3-ブタジエンを製造するための方法で得られる生成物流は、好ましくは20重量%以下のエチレンを、より好ましくは15重量%以下のエチレンを含む。さらに、1,3-ブタジエンを製造するための方法で得られる生成物流は、好ましくは少なくとも0.1重量%のエチレンを含み得る。
【0104】
特に好ましい実施形態では、エタノールを1,3-ブタジエンに変換する方法は、320~400℃、大気圧、及びWHSV 1.55時間-1である反応条件下でエタノール供給流を本発明に従う触媒と接触させることによって行われる。
【0105】
本発明の方法に従うエタノール供給流は、いかなる純度のものであってもよい。好ましい実施形態では、エタノール供給流は、75重量%超のエタノール、好ましくは85重量%超のエタノール、より好ましくは95重量%超のエタノール、最も好ましくは98重量%超のエタノールを含む。
【0106】
本発明の触媒を、考察した操作条件下でエタノール供給流と接触させた後、いくつかの有毒な物質及びコークスが触媒面上に堆積する場合がある。これは、通常、触媒の活性に影響を与えて、経時で次第に活性を低下させる。使用済み触媒に対して適切な再生を実施して、その活性の少なくとも一部を回復させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
図1図1は、純SiO及びコアシェルSiO-MgAl-CO LDH(IE1)のXRDパターンを示す。
図2図2は、SiO球のSEM画像及びTEM画像を示す。
図3図3は、ゼオライトZAのTEM画像を示す。
図4図4は、SiO球をコアとするコアシェルSiO-MgAl-LDH(IE1)のSEM画像及びTEM画像を示す。
図5図5は、ゼオライトZAをコアとするコアシェルゼオライトZA-MgAl-LDH(IE2)のSEM画像及びTEM画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0108】
図1は、純SiO及びコアシェルSiO-MgAl-CO LDHのXRDパターンを示す。この画像から、コアシェルSiO-MgAl-CO LDHサンプルが、良好に合成されたことを示すことができ、なぜなら、2θ=11.50、22.90、34.74、39.13、46.28、60.46、及び61.80でのシャープで強い(003)、(006)、(009)、(015)、(018)、(110)、及び(113)の反射であるMgAl-CO LDHに特徴的なピークを観察することができるからである。SiOは、2θ=22.6に見出すことができる。
【0109】
図4は、SiO球をコアとするコアシェルSiO-MgAl-LDHのSEM画像及びTEM画像を示し、図2に示されるシリカ球コアの上にLDHシェルが形成されていることが示されている。
【0110】
図5は、ゼオライトZAをコアとするコアシェルゼオライトZA-MgAl-LDHのSEM画像及びTEM画像を示し、図3に示されるゼオライトZAコアの上にLDHシェルが形成されていることが示されている。
【0111】
測定方法
a)X線粉末回折(XRD)
サンプルのX線粉末回折(XRD)パターンは、モノクロメータ及びλ=0.15405nmのCu-Kα放射線により、X線粉末回折計(Rikagu TTRAX III)を用いて識別した。2シータは、3°/分のスキャンスピード及び0.02°のスキャンステップにより、5°~80°の範囲とした。
【0112】
b)走査型電子顕微鏡分析(SEM)
走査型電子顕微鏡(SEM)分析は、JEOL JSM 6610走査型電子顕微鏡で実施した。粒子を水に分散し、清浄なシリカウェハ上にキャストした。やはりこの分析機器で行ったエネルギー分散型X線分析(EDX)を用いて、サンプル表面上の構成要素の相対量を特定した。
【0113】
c)透過型電子顕微鏡分析(TEM)
透過型電子顕微鏡(TEM)分析は、JEOL 2100 Plus顕微鏡により、加速電圧200kVで実施した。粒子を、超音波処理を用いて水又はエタノールに分散し、続いて炭素膜でコーティングした銅グリッド上にキャストし、乾燥させた。
【0114】
d)ガスクロマトグラフィ(GC)
気体生成物は、HP-PLOT Alカラム(50m×0.32mm ID及び膜厚20μm)を用い、水素炎イオン化検出器(FID)を備えたガスクロマトグラフィ(Agilent Technologies 6890 Network GCシステム)で分析して、炭化水素ガスの特定を行った。GCの操作条件は以下のように設定した:
初期温度:40℃(10分間の保持時間)
ランプ1:
昇温速度:10℃/分
最終温度:120℃で10分間の保持時間
ランプ2:
昇温速度:5℃/分
最終温度:180℃(10分間の保持時間)
【0115】
e)ガスクロマトグラフィ-質量分析、飛行時間型(GC-TOF)
液体生成物は、飛行時間型の質量分析計を備えたガスクロマトグラフィ(GC×GC-TOF/MS)、Agilent 7890を用いて分析した。キャリアガスとしてヘリウムを用い、冷却システムには窒素を用いた。条件は以下のように設定した:
初期温度:40℃(2分間の保持時間)
昇温速度:2.5℃/分
最終温度:250℃(5分間の保持時間)
スプリット比:1:25
【実施例
【0116】
実験項
物質
ZAは、Si:Al比が250~700のZSM-5ゼオライトである。
ZBは、Si:Al比が800~1300のZSM-5ゼオライトである。
【0117】
比較例1(CE1):MgAl-CO LDH(化学式:Mg0.75Al0.25(OH)(CO0.125
MgAl-CO LDHは、1.575molのMg(NO・6HO及び0.525molのAl(NO・9HOを含有する700mlの金属前駆体水溶液を、700mlの0.315mol NaCO溶液に添加することによって合成した。得られた溶液のpHを、激しく撹拌しながら4M NaOHを滴下することによってpH10に制御した。続いて、得られた溶液を、およそ25℃の温度で3時間にわたってエージングした。エージング後、析出した固体化合物を溶液からろ取し、ろ液のpHが7に到達するまで脱イオン水で洗浄した。その後、固体化合物のウェットケーキを、オーブン中110℃で一晩乾燥した。比較例1は、コアがなく、MgAl-CO LDHのシェルのみを有する例を表している。
【0118】
比較例2(CE2):Cu0.5Ni0.2Mg2.3Al-CO LDH(化学式:Cu0.125Ni0.05Mg0.575Al0.25(OH)(CO0.125
Cu0.5Ni0.2Mg2.3Al-CO LDHは、1.208molのMg(NO・6HO、0.2625molのCu(NO・6HO、0.105molのNi(NO・6HO、及び0.525molのAl(NO・9HOを含有する700mlの金属前駆体水溶液を、700mlの0.315mol NaCO溶液に添加することによって合成した。得られた溶液のpHを、激しく撹拌しながら4M NaOHを滴下することによってpH10に制御した。続いて、得られた溶液を、およそ25℃の温度で3時間にわたってエージングした。エージング後、析出した固体化合物を溶液からろ取し、ろ液のpHが7に到達するまで脱イオン水で洗浄した。その後、固体化合物のウェットケーキを、オーブン中80℃で一晩乾燥した。比較例2は、コアがなく、Cu0.5Ni0.2Mg2.3Al-CO LDHのシェルのみを有する例を表している。
【0119】
発明例1(IE1):コア SiO - シェル MgAl-CO LDH(化学式:Mg0.75Al0.25(OH)(CO0.125
粒径500nmの球形状シリカを、IE1の合成のためのコアとして用いた。IE1は、以下で説明する通りの共沈法によって合成した:球形状のシリカ5gを、30分間の超音波処理を用いて1000mlの脱イオン水に分散した。続いて、27mmolのNaCOを添加し、さらに5分間にわたって超音波処理した。次に、81mmolのMg(NO・6HO及び27mmolのAl(NO・9HOを含有する1000mlの金属前駆体水溶液を、脱イオン水、シリカ、及びNaCOの混合物に激しく撹拌しながら添加し、懸濁液を得た。この懸濁液のpHを、1M NaOHを滴下することによってpH10に制御した。およそ25℃の温度で撹拌しながら120分間エージングした後、得られた固体化合物を、真空ろ過を用いて懸濁液からろ取し、ろ液のpHが7に到達するまで脱イオン水を用いて洗浄した。その後、固体化合物のウェットケーキを、オーブン中110℃で一晩乾燥した。
【0120】
発明例2(IE2):コア ゼオライトZA - シェル MgAl-CO LDH(化学式:Mg0.75Al0.25(OH)(CO0.125
IE2も、共沈法を用いて合成した:5gのゼオライトZAを、30分間の超音波処理を用いて1000mlの脱イオン水に分散した。続いて、27mmolのNaCOを添加し、さらに5分間にわたって超音波処理した。次に、81mmolのMg(NO・6HO及び27mmolのAl(NO・9HOを含有する1000mlの金属前駆体水溶液を、脱イオン水、ゼオライトZA、及びNaCOの混合物に激しく撹拌しながら添加し、懸濁液を得た。この懸濁液のpHを、1M NaOHを滴下することによってpH10に制御した。およそ25℃の温度で撹拌しながら120分間エージングした後、得られた固体化合物を、真空ろ過を用いて懸濁液からろ取し、ろ液のpHが7に到達するまで脱イオン水を用いて洗浄した。その後、固体化合物のウェットケーキを、オーブン中110℃で一晩乾燥した。
【0121】
発明例3(IE3):コア SiO - シェル MgAl0.9Zr0.1-CO LDH(化学式:Mg0.75Al0.225Zr0.025(OH)(CO0.125
粒径500nmの球形状シリカを、IE3の合成のためのコアとして用いた。IE3も、やはり共沈法によって合成した:球形状のシリカ5gを、30分間の超音波処理を用いて1000mlの脱イオン水に分散した。続いて、27mmolのNaCOを添加し、さらに5分間にわたって超音波処理した。次に、81mmolのMg(NO・6HO、24.3mmolのAl(NO・9HO、及び2.7mmolのZrN・9HOを含有する1000mlの金属前駆体水溶液を、脱イオン水、シリカ、及びNaCOの混合物に激しく撹拌しながら添加し、懸濁液を得た。この懸濁液のpHを、1M NaOHを滴下することによってpH10に制御した。およそ25℃の温度で撹拌しながら120分間エージングした後、得られた固体化合物を、真空ろ過を用いて懸濁液からろ取し、ろ液のpHが7に到達するまで脱イオン水を用いて洗浄した。その後、固体化合物のウェットケーキを、オーブン中80℃で一晩乾燥した。
【0122】
発明例4(IE4):コア ゼオライトZB - シェル Cu0.5Ni0.2Mg2.3Al-CO LDH(化学式:Cu0.125Ni0.05Mg0.575Al0.25(OH)(CO0.125
IE4も、共沈法によって合成した:5gのゼオライトZBを、30分間の超音波処理を用いて1000mlの脱イオン水に分散した。続いて、27mmolのNaCO、及びさらに5分間にわたって超音波処理した。次に、13.5mmolのCu(NO・6HO、5.4mmolのNi(NO・6HO、62.1mmolのMg(NO・6HO、及び27mmolのAl(NO・9HOを含有する1000mlの金属前駆体水溶液を、脱イオン水、ゼオライトZB、及びNaCOの混合物に激しく撹拌しながら添加し、懸濁液を得た。この懸濁液のpHを、1M NaOHを滴下することによってpH10に制御した。およそ25℃の温度で撹拌しながら120分間エージングした後、得られた固体化合物を、真空ろ過を用いて懸濁液からろ取し、ろ液のpHが7に到達するまで脱イオン水を用いて洗浄した。その後、固体化合物のウェットケーキを、オーブン中80℃で一晩乾燥した。
【0123】
エタノールの1,3-ブタジエンへの変換
CE1~CE2、及びIE1~IE4で製造した触媒前駆体を、500℃の温度でか焼して、触媒前駆体のLDHをLDOに変換し、続いて350℃での温度の大気圧下、1.55時間-1の毎時重量空間速度(WHSV)でエタノール供給流と接触させた。反応は3時間(流通時間)行った。得られた生成物は、液体生成物と気体生成物とに分割した。液体生成物は、飛行時間型の質量分析計を備えたガスクロマトグラフィ(GC×GC-TOF/MS)を用いて分析した。気体生成物は、HP-PLOT Alカラム(50m×0.32mm ID及び膜厚20μm)を用い、水素炎イオン化検出器(FID)を備えたガスクロマトグラフィ(Agilent Technologies 6890 Network GCシステム)で分析して、炭化水素ガスの特定を行った。
【0124】
流通時間3時間でのエタノールの1,3-ブタジエンへの変換反応の結果を、表1に示す。
【表1】
【0125】
表1において、1,3-ブタジエンの収率%及び反応実施後の触媒活性が、触媒性能を示す上での重要なパラメータである。
【0126】
CE1の触媒は、Mg及びAlから成っており、成分Aは含有していない(すなわち、コアなし)。この触媒は、エタノールを1,3-ブタジエンへ少なくとも変換はするが、1,3-ブタジエンの収率及び触媒活性が、CE2及びIE1~IE4と比較して、CE1では最も低いことが分かる。したがって、CE1の触媒組成物は、残りのすべての例CE2及びIE1~IE4に対するベースラインとして用いる。CE2の触媒は、CE1の触媒と比較して向上された性能を有する。CE2のLDHは、Mg及びAlと共にCu及びNiを含む。さらに、CE2の触媒は、成分Aは含有していない(すなわち、コアなし)。1,3-ブタジエンの収率及び触媒活性は、CE1と比較して僅かに上昇している。
【0127】
IE1~IE4に従う本発明の触媒は、成分A及び成分Bcatの両方を含む。これらの1,3-ブタジエンの収率及び触媒活性は、CE1及びCE2と比較して大きく上昇していることが分かる。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】