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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-30
(54)【発明の名称】関節スペーサー
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/40 20060101AFI20220323BHJP
【FI】
A61F2/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021522058
(86)(22)【出願日】2020-02-10
(85)【翻訳文提出日】2021-04-16
(86)【国際出願番号】 IB2020051000
(87)【国際公開番号】W WO2020165716
(87)【国際公開日】2020-08-20
(31)【優先権主張番号】62/804,800
(32)【優先日】2019-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521166191
【氏名又は名称】アブード、ジョセフ エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100170184
【弁理士】
【氏名又は名称】北脇 大
(72)【発明者】
【氏名】アブード、ジョセフ エー.
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA11
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC05
4C097CC14
4C097DD15
(57)【要約】
ヒト被験者の関節の治療のための関節スペーサー(10)が提供され、該関節スペーサー(10)は、真皮移植片材料(26)を含む壁部(22)を有するポーチ(20)を含んでいる。該関節スペーサー(10)は、関節の空間の中へと挿入されるように構成されており、かつ、ポーチ(20)が空間の中へと挿入され、かつ、充填されたときに、関節に対して機械的支持を提供するような形状である。その他の実施形態もまた、記載されている。
【選択図】図4B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト被験者の関節の治療のための関節スペーサーを有する装置であって、該関節スペーサーは:
真皮移植片材料を有する壁部を有するポーチを有し、
前記関節スペーサーは、前記関節の空間の中へと挿入されるように構成されており、かつ、前記ポーチが前記空間の中へと挿入され、かつ、充填されたときに、前記関節に対して機械的支持を提供するような形状である、
前記装置。
【請求項2】
前記関節スペーサーが、前記ポーチのための充填ポートを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ポーチが、前記充填ポートが封止され、かつ、前記ポーチが前記壁部の塑性変形を伴わずに可能な最大体積まで充填されたときに、前記ポーチよりも大きい2つの剛性である平坦な表面の間で前記ポーチを圧搾することによる400Nの力の印加の際に損なわれないままであるように構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記ポーチが、前記充填ポートが封止され、かつ、前記ポーチが前記壁部の塑性変形を伴わずに可能な前記最大体積まで充填されたときに、前記ポーチよりも大きい2つの剛性である平坦な表面の間で前記ポーチを圧搾することによる1200Nの外部の力の印加の際に損なわれないままではないように構成されている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記ポーチの前記壁部が、いかなる金属または高分子も有さない、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記ポーチの前記壁部が、生物材料のみを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記壁部の平均厚さが、1~4mmである、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記ポーチが、前記壁部の塑性変形を伴わずに可能な最大体積まで充填されたときに、互いに外側を向いた2つの主たる表面を定めるような形状であり、かつ、前記の主たる表面はそれぞれ、前記の2つの主たる表面の間にある平面から離れるように膨らむ、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記ポーチが前記壁部の塑性変形を伴わずに可能な前記最大体積まで充填されたときに、前記の2つの主たる表面が、前記の2つの主たる表面の間にある前記平面に関して略対称である、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記ポーチが、少なくとも充填されていないときには、互いに外側を向いた2つの主たる表面を定める形状であり、前記の主たる表面は、各々の略長方形の外周を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記の主たる表面のそれぞれの前記の略長方形の外周の短辺に対する長辺の比が、1.25:1~1.75:1である、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記の主たる表面のそれぞれの前記の略長方形の外周の長辺が、2.5~7.5cmの長さを有する、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記ポーチが、前記壁部の塑性変形を伴わずに可能な最大体積まで充填されたときに、15~40ccの体積を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記関節スペーサーが肩峰下スペーサーであり、かつ、前記関節が肩関節であり、かつ、前記肩峰下スペーサーは、前記肩関節に対して支持を提供するために、前記肩関節の肩峰下の空間の中へと挿入可能であるように形作られ、かつ、サイズ決めされている、請求項1~13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記ポーチを充填するのに適した、ある体積の脂肪組織をさらに有し、前記関節スペーサーが、前記ポーチが前記のある体積の前記脂肪組織で充填されたときに、前記関節に対して前記機械的支持を提供するような形状である、請求項1~13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
ヒト被験者の関節の治療のための関節スペーサーを有する装置であって、該関節スペーサーは:
ポーチを有し;かつ、
前記ポーチを充填するのに適した、ある体積の脂肪組織を有し、
前記関節スペーサーは、前記関節の空間の中へと挿入されるように構成されており、かつ、前記ポーチが前記空間の中へと挿入され、かつ、前記のある体積の前記脂肪組織で充填されたときに、前記関節に対して機械的支持を提供するような形状である、
前記装置。
【請求項17】
前記関節スペーサーが、前記ポーチのための充填ポートを有する、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記ポーチが、前記充填ポートが封止され、かつ、前記ポーチが前記ポーチの壁部の塑性変形を伴わずに可能な最大体積まで充填されたときに、前記ポーチよりも大きい2つの剛性である平坦な表面の間で前記ポーチを圧搾することによる400Nの力の印加の際に損なわれないままであるように構成されている、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記ポーチが、前記充填ポートが封止され、かつ、前記ポーチが前記壁部の塑性変形を伴わずに可能な前記最大体積まで充填されたときに、前記ポーチよりも大きい2つの剛性である平坦な表面の間で前記ポーチを圧搾することによる1200Nの外部の力の印加の際に損なわれないままではないように構成されている、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記ポーチが、前記ポーチの壁部の塑性変形を伴わずに可能な最大体積まで充填されたときに、互いに外側を向いた2つの主たる表面を定めるような形状であり、かつ、前記の主たる表面はそれぞれ、前記の2つの主たる表面の間にある平面から離れるように膨らむ、請求項16に記載の装置。
【請求項21】
前記ポーチが前記壁部の塑性変形を伴わずに可能な前記最大体積まで充填されたときに、前記の2つの主たる表面が、前記の2つの主たる表面の間にある前記平面に関して略対称である、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記ポーチが、少なくとも充填されていないときには、互いに外側を向いた2つの主たる表面を定める形状であり、前記の主たる表面は、各々の略長方形の外周を有する、請求項16に記載の装置。
【請求項23】
前記の主たる表面のそれぞれの前記の略長方形の外周の短辺に対する長辺の比が、1.25:1~1.75:1である、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記の主たる表面のそれぞれの前記の略長方形の外周の長辺が、2.5~7.5cmの長さを有する、請求項22に記載の装置。
【請求項25】
前記ポーチが、前記ポーチの壁部の塑性変形を伴わずに可能な最大体積まで充填されたときに、15~40ccの体積を有する、請求項16に記載の装置。
【請求項26】
前記脂肪組織の前記体積が、15~40ccである、請求項16に記載の装置。
【請求項27】
前記関節スペーサーが肩峰下スペーサーであり、かつ、前記関節が肩関節であり、かつ、前記肩峰下スペーサーは、前記肩関節に対して支持を提供するために、前記肩関節の肩峰下の空間の中へと挿入可能であるように形作られ、かつ、サイズ決めされている、請求項16~26のいずれか一項に記載の装置。
【請求項28】
前記ポーチが、真皮移植片材料を有する壁部を有する、請求項16~26のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2019年2月13日付けで出願の米国仮出願第62/804,800号(参照によって本明細書に組み込まれる)からの優先権を主張する。
【0002】
本願の分野
本発明は、概して関節を治療するための技術に関し、とりわけ関節スペーサーに関する。
【背景技術】
【0003】
本願の背景
一般的な肩の傷害としては、肩峰下滑液包炎、腱炎および腱断裂(回旋腱板のもののような)が挙げられる。肩峰下滑液包炎は、回旋腱板と肩峰との間にある滑液包の炎症および膨張によって特徴付けられる。
【0004】
Shоhatへの米国特許第8,753,390号明細書には、身体の軟組織への傷害を軽減させるためのプロテーゼが記載されており、該プロテーゼは、自然発生の滑液包のサイズまたは形状のうちの少なくとも1つを模するように適合した、埋め込み可能な部材を含んでおり、該部材は、膨張可能であってもよく、そうでなければ拡張可能、可撓性または剛性であってもよく、かつ、生体適合性、生分解性または非生分解性材料で構成されていてもよい。該部材は、筋骨格接続部位または筋肉と骨との間にある部位に埋め込まれるように適合しており、かつ、該部位への傷害を軽減させるように形作られ、かつ、サイズ決めされている。該プロテーゼはまた、膨張チューブの除去の際に自動的に該プロテーゼを封止するプラグを含んでいてもよい。
【0005】
Mоrrisらへの米国特許出願公開第2016/0256286号明細書には、生体適合性部材を含む組織位置決めデバイスが記載されており、該生体適合性部材は、位置決めされる組織に隣接した空間内への配置に適したサイズおよび形状を有し、かつ、所望の位置で組織を維持するように作用する。該部材は、定められた形状を有する剛性または可撓性スペーサーであってもよく、充填材を受け入れることが可能な、または、充填材によって少なくとも部分的に拡張されることが可能な嚢であってもよい。該デバイスは、必要に応じて種々の材料または材料の複合物から作られ得、かつ、1つ以上の接続手段(それによって、該デバイスが隣接する組織に固定され得、所望の空間的位置で維持されるようになっている)を含んでいてもよい。該充填材は、液体、気体、骨セメントもしくはウレタンフォームのような硬化性液体またはバネを含む、多数の物質のいずれかであり得る。
【0006】
Heneveldらへの米国特許出願公開第2007/0078477号明細書には、しぼんだ位置から膨張した位置へと拡張可能な嚢を含む、解剖学的スペーサーが記載されている。該嚢の対向する表面の間を膜が延びており、かつ、該嚢と連絡するように膨張ポートが配置されている。該膨張ポートは、しぼんだ位置から膨張した位置へと嚢を充填するために、膨張媒体を受け入れるように構成されている。カニューレから解剖学的位置の中へとスペーサーを配備する方法もまた、提供される。
【発明の概要】
【0007】
本願の概要
本発明の実施形態においては、ヒト被験者の関節の治療のための関節スペーサーが提供される。関節スペーサーは、壁部を有するポーチを有する。関節スペーサーは、関節の空間の中へと挿入されるように構成されており、かつ、ポーチが空間の中へと挿入され、かつ、充填されたときに、関節に対して機械的支持を提供するような形状である。いくつかの応用例については、関節スペーサーは、天然の滑液包のサイズまたは形状を模していてもよい。いくつかの応用例については、関節スペーサーは肩峰下スペーサーであり、かつ、関節は肩関節であり、かつ、肩峰下スペーサーは、肩関節に対して支持を提供するために、肩関節の肩峰下の空間の中へと挿入可能であるように形作られ、かつ、サイズ決めされている。
【0008】
いくつかの応用例については、ポーチの壁部は真皮移植片材料を有する。埋め込まれた真皮移植片材料は概して、何か月または何年もの間安定的であり、このことは、関節スペーサーが関節に対して長期間の治療を提供することを可能にする。さらに、真皮移植片材料は、インプラント材料として何年もの間用いられてきており、したがって、長期間の埋め込みについて安全であることが知られている。
【0009】
いくつかの応用例については、関節スペーサーは、ポーチを充填するのに適した、ある体積の脂肪組織を有する。関節スペーサーは、関節の空間の中へと挿入されるように構成されており、かつ、ポーチが空間の中へと挿入され、かつ、ある体積の脂肪組織で充填されたときに、関節に対して機械的支持を提供するような形状である。これらの応用例のいくつかについては、脂肪組織は、自家脂肪組織を得るために本技術分野で知られている技術を用いて被験者から得られた自家脂肪組織を有する。
【0010】
いくつかの応用例については、ポーチは、壁部の塑性変形を伴わずに可能な最大体積まで充填されたときに、互いに外側を向いた2つの主たる表面を定めるような形状である。いくつかの応用例については、ポーチが壁部の塑性変形を伴わずに可能な最大体積まで充填されたときに、主たる表面はそれぞれ、2つの主たる表面の間にある平面から離れるように膨れる。代替的または追加的には、いくつかの応用例については、ポーチが壁部の塑性変形を伴わずに可能な最大体積まで充填されたときに、2つの主たる表面は、2つの主たる表面の間にある平面に関して略対称である。例えば、ポーチは略サッシェ状であってもよい。
【0011】
したがって、本発明の応用例によれば、ヒト被験者の関節の治療のための関節スペーサーを含む装置が提供され、該関節スペーサーは:
真皮移植片材料を含む壁部を有するポーチを含んでおり、
関節スペーサーは、関節の空間の中へと挿入されるように構成されており、かつ、ポーチが空間の中へと挿入され、かつ、充填されたときに、関節に対して機械的支持を提供するような形状である。
【0012】
いくつかの応用例については、関節スペーサーは、ポーチのための充填ポートを含んでいる。
【0013】
いくつかの応用例については、ポーチは、充填ポートが封止され、かつ、ポーチが壁部の塑性変形を伴わずに可能な最大体積まで充填されたときに、ポーチよりも大きい2つの剛性である平坦な表面の間でポーチを圧搾することによる400Nの力の印加の際に損なわれないままであるように構成されている。
【0014】
いくつかの応用例については、ポーチは、充填ポートが封止され、かつ、ポーチが壁部の塑性変形を伴わずに可能な最大体積まで充填されたときに、ポーチよりも大きい2つの剛性である平坦な表面の間でポーチを圧搾することによる1200Nの外部の力の印加の際に損なわれないままではないように構成されている。
【0015】
いくつかの応用例については、ポーチの壁部は、いかなる金属または高分子も含んでいない。
【0016】
いくつかの応用例については、ポーチの壁部は、生物材料のみを含んでいる。
【0017】
いくつかの応用例については、壁部の平均厚さは1~4mmである。
【0018】
いくつかの応用例については、ポーチは、壁部の塑性変形を伴わずに可能な最大体積まで充填されたときに、互いに外側を向いた2つの主たる表面を定めるような形状であり、かつ、主たる表面はそれぞれ、2つの主たる表面の間にある平面から離れるように膨らむ。
【0019】
いくつかの応用例については、ポーチが壁部の塑性変形を伴わずに可能な最大体積まで充填されたときに、2つの主たる表面は、2つの主たる表面の間にある平面に関して略対称である。
【0020】
いくつかの応用例については、ポーチは、少なくとも充填されていないときには、互いに外側を向いた2つの主たる表面を定めるような形状であり、主たる表面は、各々の略長方形の外周を有する。
【0021】
いくつかの応用例については、主たる表面のそれぞれの略長方形の外周の短辺に対する長辺の比は、1.25:1~1.75:1である。
【0022】
いくつかの応用例については、主たる表面のそれぞれの略長方形の外周の長辺は、2.5~7.5cmの長さを有する。
【0023】
いくつかの応用例については、ポーチは、壁部の塑性変形を伴わずに可能な最大体積まで充填されたときに、15~40ccの体積を有する。
【0024】
いくつかの応用例については、関節スペーサーは肩峰下スペーサーであり、かつ、関節は肩関節であり、かつ、肩峰下スペーサーは、肩関節に対して支持を提供するために、肩関節の肩峰下の空間の中へと挿入可能であるように形作られ、かつ、サイズ決めされている。
【0025】
いくつかの応用例については、当該装置はさらに、ポーチを充填させるのに適した、ある体積の脂肪組織を含んでおり、かつ、関節スペーサーは、ポーチがある体積の脂肪組織で充填されたときに、関節に対して機械的支持を提供するような形状である。
【0026】
本発明の応用例によれば、ヒト被験者の関節を治療するための方法がさらに提供され、当該方法は:
関節の空間の中へと、真皮移植片材料を含む壁部を有するポーチを含む関節スペーサーを挿入することを含んでおり;かつ、
関節内でポーチを充填することを含んでおり、関節スペーサーが、関節に対して機械的支持を提供するようになっている。
【0027】
いくつかの応用例については、ポーチの壁部は、いかなる金属または高分子も含んでいない。
【0028】
いくつかの応用例については、ポーチは、充填されたときに、互いに外側を向いた2つの主たる表面を定めるような形状であり、かつ、主たる表面はそれぞれ、2つの主たる表面の間にある平面から離れるように膨らむ。
【0029】
いくつかの応用例については、ポーチが充填されたときに、2つの主たる表面は、2つの主たる表面の間にある平面に関して略対称である。
【0030】
いくつかの応用例については、ポーチは、少なくとも充填されていないときには、互いに外側を向いた2つの主たる表面を定めるような形状であり、主たる表面は、各々の略長方形の外周を有する。
【0031】
いくつかの応用例については、主たる表面のそれぞれの略長方形の外周の短辺に対する長辺の比は、1.25:1~1.75:1である。
【0032】
いくつかの応用例については、主たる表面のそれぞれの略長方形の外周の長辺は、2.5~7.5cmの長さを有する。
【0033】
いくつかの応用例については、ポーチを充填することは、ポーチが15~40ccの体積を有するまでポーチを充填することを含んでいる。
【0034】
いくつかの応用例については、壁部の平均厚さは1~4mmである。
【0035】
いくつかの応用例については、関節スペーサーは肩峰下スペーサーであり、かつ、関節は肩関節であり、かつ、関節スペーサーを挿入することは、肩関節の空間の中へと肩峰下スペーサーを挿入することを含んでいる。
【0036】
いくつかの応用例については、ポーチを充填することは、関節内においてある体積の脂肪組織でポーチを充填することを含んでおり、関節スペーサーが関節に対して機械的支持を提供するようになっている。
【0037】
本発明の応用例によれば、ヒト被験者の関節の治療のための関節スペーサーを含む装置がまださらに提供され、該関節スペーサーは:
ポーチを含んでおり;かつ、
ポーチを充填するのに適した、ある体積の脂肪組織を含んでおり、
関節スペーサーは、関節の空間の中へと挿入されるように構成されており、かつ、ポーチが空間の中へと挿入され、かつ、ある体積の脂肪組織で充填されたときに、関節に対して機械的支持を提供するような形状である。
【0038】
いくつかの応用例については、関節スペーサーは、ポーチのための充填ポートを含んでいる。
【0039】
いくつかの応用例については、ポーチは、充填ポートが封止され、かつ、ポーチがポーチの壁部の塑性変形を伴わずに可能な最大体積まで充填されたときに、ポーチよりも大きい2つの剛性である平坦な表面の間でポーチを圧搾することによる400Nの力の印加の際に損なわれないままであるように構成されている。
【0040】
いくつかの応用例については、ポーチは、充填ポートが封止され、かつ、ポーチが壁部の塑性変形を伴わずに可能な最大体積まで充填されたときに、ポーチよりも大きい2つの剛性である平坦な表面の間でポーチを圧搾することによる1200Nの外部の力の印加の際に損なわれないままではないように構成されている。
【0041】
いくつかの応用例については、ポーチは、ポーチの壁部の塑性変形を伴わずに可能な最大体積まで充填されたときに、互いに外側を向いた2つの主たる表面を定めるような形状であり、かつ、主たる表面はそれぞれ、2つの主たる表面の間にある平面から離れるように膨らむ。
【0042】
いくつかの応用例については、ポーチが壁部の塑性変形を伴わずに可能な最大体積まで充填されたときに、2つの主たる表面は、2つの主たる表面の間にある平面に関して略対称である。
【0043】
いくつかの応用例については、ポーチは、少なくとも充填されていないときには、互いに外側を向いた2つの主たる表面を定めるような形状であり、主たる表面は、各々の略長方形の外周を有する。
【0044】
いくつかの応用例については、主たる表面のそれぞれの略長方形の外周の短辺に対する長辺の比は、1.25:1~1.75:1である。
【0045】
いくつかの応用例については、主たる表面のそれぞれの略長方形の外周の長辺は、2.5~7.5cmの長さを有する。
【0046】
いくつかの応用例については、ポーチは、ポーチの壁部の塑性変形を伴わずに可能な最大体積まで充填されたときに、15~40ccの体積を有する。
【0047】
いくつかの応用例については、脂肪組織の体積は、15~40ccである。
【0048】
いくつかの応用例については、関節スペーサーは肩峰下スペーサーであり、かつ、関節は肩関節であり、かつ、肩峰下スペーサーは、肩関節に対して支持を提供するために、肩関節の肩峰下の空間の中へと挿入可能であるように形作られ、かつ、サイズ決めされている。
【0049】
いくつかの応用例については、ポーチは、真皮移植片材料を含む壁部を有する。
【0050】
本発明の応用例によれば、ヒト被験者の関節を治療するための方法が追加的に提供され、当該方法は:
関節の空間の中へと関節スペーサーを挿入することを含んでおり;かつ、
関節内においてある体積の脂肪組織で関節スペーサーのポーチを充填することを含んでおり、関節スペーサーが、関節に対して機械的支持を提供するようになっている。
【0051】
いくつかの応用例については、脂肪組織は、被験者から得られた自家脂肪組織を含んでいる。
【0052】
いくつかの応用例については、ポーチは、充填されたときに、互いに外側を向いた2つの主たる表面を定めるような形状であり、かつ、主たる表面はそれぞれ、2つの主たる表面の間にある平面から離れるように膨らむ。
【0053】
いくつかの応用例については、ポーチが充填されたときに、2つの主たる表面は、2つの主たる表面の間にある平面に関して略対称である。
【0054】
いくつかの応用例については、ポーチは、少なくとも充填されていないときには、互いに外側を向いた2つの主たる表面を定めるような形状であり、主たる表面は、各々の略長方形の外周を有する。
【0055】
いくつかの応用例については、主たる表面のそれぞれの略長方形の外周の短辺に対する長辺の比は、1.25:1~1.75:1である。
【0056】
いくつかの応用例については、主たる表面のそれぞれの略長方形の外周の長辺は、2.5~7.5cmの長さを有する。
【0057】
いくつかの応用例については、ある体積の脂肪組織でポーチを充填することは、15~40ccの脂肪組織でポーチを充填することを含んでいる。
【0058】
いくつかの応用例については、関節スペーサーは肩峰下スペーサーであり、かつ、関節は肩関節であり、かつ、関節スペーサーを挿入することは、肩関節の空間の中へと肩峰下スペーサーを挿入することを含んでいる。
【0059】
いくつかの応用例については、ポーチは、真皮移植片材料を含む壁部を有する。
【0060】
本発明は、図面とともに考慮される、その実施形態の以下の詳細な説明からいっそう完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1図1は、本発明の応用例による、ヒト被験者の関節の治療のための関節スペーサーの概略図である。
図2図2は、本発明の応用例による、図1の関節スペーサーの概略的な側面図である。
図3図3は、本発明の応用例による、線III-IIIに沿ってとられた図1の関節スペーサーの概略的な断面図である。
図4A図4A~Bは、本発明の応用例による、肩関節の肩峰下の空間の中へと図1の関節スペーサーを配備する方法の概略図である。
図4B図4A~Bは、本発明の応用例による、肩関節の肩峰下の空間の中へと図1の関節スペーサーを配備する方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
応用例の詳細な説明
図1は、本発明の応用例による、ヒト被験者の関節の治療のための関節スペーサー10の概略図である。関節スペーサー10は、壁部22を有するポーチ20を有する。図4A~Bを参照して以下で説明されるように、関節スペーサー10は、関節の空間の中へと挿入されるように構成されており、かつ、ポーチ20が空間の中へと挿入され、かつ、充填されたときに、関節に対して機械的支持を提供するような形状である。いくつかの応用例については、関節スペーサー10は、天然の滑液包のサイズまたは形状を模していてもよい。
【0063】
ポーチ20は、その中に閉じた空間を定めるような形状である。この目的のために、ポーチ20は、縫うこと(例えば、1つ以上の縫合糸24を用いて)、接着剤でつけること、または、アニーリングすることなどによって製造の最中に封止される。いくつかの応用例については、壁部22は、一緒に封止された材料の2つの別個の小片によって、または、折り曲げられ、かつ、3つの辺の上で一緒に封止された材料の単一の小片によって定められている。
【0064】
いくつかの応用例については、壁部22は、0.5mm2より大きい断面積を有するいかなる開口部も定めるような形状ではない。
【0065】
典型的には、壁部22は血液透過性ではない。
【0066】
いくつかの応用例については、壁部22は真皮移植片材料26を有する。例えば、真皮移植片材料26は、ヒトの皮膚を有していてもよい。
【0067】
例えば、真皮移植片材料26は、生体力学的または生化学的特性を傷つけることなく、無細胞の状態にされた同種移植片真皮を有する無細胞真皮細胞外マトリックスである、ArthroFLEX(登録商標)真皮同種移植片(米国フロリダ州ネイプルズ、Arthrex,Inc.)を有していてもよい。状態化プロセスは、真皮マトリックスから宿主DNAを除去しながら、マトリックスが、その増殖因子、天然コラーゲン足場およびエラスチンを保持することを引き起こし、生体適合性の足場を保証する。
【0068】
埋め込まれた真皮移植片材料26は概して、何か月または何年もの間安定的であり、このことは、関節スペーサー10が関節に対して長期間の治療を提供することを可能にする。この長期間の安定性は、いくつかの場合においては、真皮移植片材料26の中への血管新生によって向上するであろう。さらに、真皮移植片材料は、インプラント材料として何年もの間用いられてきており、したがって、長期間の埋め込みについて安全であることが知られている。
【0069】
いくつかの応用例については、関節スペーサー10は、ポーチ20のための充填ポート28を有する。例えば、充填ポート28は、例えばサッカーボールの自己封止弁と同様に自己封止型であってもよい。代替的には、充填ポート28は、自己封止型でなくてもよく、例えば単一の開口部として形作られてもよく、かつ、例えば縫合銃もしくは吸収性ステープルまたは外科分野で知られているその他の閉塞技術を用いて、医師によって封止される。
【0070】
典型的には、ポーチ20の壁部22は、いかなる金属または高分子も有さず、かつ/または、生物材料のみを有する。真皮移植片材料26は典型的には、追加の構造的支持なしでポーチ20に印加される圧力に耐えるほど十分に強い。代替的には、壁部22はさらに、非真皮支持構造を有し、該非真皮支持構造は、例えば、真皮移植片材料26の中へと織り合わされていてもよく、かつ、もしくは、真皮移植片材料に固定された1つ以上の別個の層として形作られてもよい、金属または高分子を有する。
【0071】
いくつかの応用例については、壁部22の平均厚さは、少なくとも1mmであり、4mmを越えず、かつ/または、1~4mmである。
【0072】
いくつかの応用例については、ポーチ20は、壁部22の塑性変形を伴わずに可能な最大体積まで充填されたときに、互いに外側を向いた2つの主たる表面30Aおよび30Bを定めるような形状である。主たる表面30Aおよび30Bは、各々の外周を有する。(真皮移植片材料26は典型的には、いくぶん弾性であり、かつ、典型的には、不可逆的な塑性変形の時点までの過膨張を回避しながら、ポーチ20のいくぶんかの弾性的拡張を引き起こすレベルまで膨張するが、このことは必須ではない。)
【0073】
まだ図1に言及し、かつ、図2および3に追加的に言及する。図2は、本発明の応用例による、関節スペーサー10の概略的な側面図である。図3は、本発明の応用例による、図1の線III-IIIに沿ってとった関節スペーサー10の概略的な断面図である。
【0074】
いくつかの応用例については、ポーチ20が壁部22の塑性変形を伴わずに可能な最大体積まで充填されたときに、主たる表面30Aおよび30Bはそれぞれ、2つの主たる表面の間にある平面34から離れるように膨らむ。代替的または追加的には、いくつかの応用例については、ポーチ20が壁部22の塑性変形を伴わずに可能な最大体積まで充填されたときに、2つの主たる表面30Aおよび30Bは、2つの主たる表面の間にある平面34に関して略対称である。例えば、ポーチ20は略サッシェ状であってもよい。
【0075】
さらに代替的または追加的には、いくつかの応用例については、ポーチ20は、少なくとも充填されていないときには(かつ、任意選択的には充填されたときにも)、2つの主たる表面30Aおよび30Bの各々の外周は、図示されているように略長方形である。例えば、主たる表面30Aおよび30Bのそれぞれの略長方形の外周の短辺36Bに対する長辺36Aの比は、1.25:1~1.75:1(1.4:1~1.6:1(例えば、1.5:1)のように)であってもよい。代替的には(または、任意選択的には上述の比と組み合わせて)、主たる表面30Aおよび30Bのそれぞれの略長方形の外周の長辺36Aは、2.5~7.5cmの長さLを有していてもよい。さらに代替的には(または、任意選択的には上述の比と組み合わせて)、主たる表面30Aおよび30Bのそれぞれの略長方形の外周の短辺36Bは、1.6~5cmの幅Wを有していてもよい。
【0076】
いくつかの応用例については、ポーチ20は、3×2cm(小)、5×3.5cm(中)および6×4cm(大)のように、いくつかの異なるサイズで提供される。例えば、上記のサイズのそれぞれについて少なくとも1つのポーチ20を含むキットが提供されてもよい。
【0077】
いくつかの応用例については、ポーチ20は、壁部22の塑性変形を伴わずに可能な最大体積まで充填されたときに、15~40ccの体積を有する。
【0078】
図4A~Bを参照して以下に記載されるように、いくつかの応用例については、関節スペーサー10は肩峰下スペーサーであり、かつ、関節は肩関節であり、かつ、肩峰下スペーサーは、肩関節に対して支持を提供するために肩関節の肩峰下の空間の中へと挿入可能であるように形作られ、かつ、サイズ決めされている。代替的には、例えば、関節は膝または手首関節であってもよく、かつ、関節スペーサー10は、膝または手首関節に対して各々支持を提供するために、膝または手首関節の中へと各々挿入可能であるように形作られ、かつ、サイズ決めされていてもよい。
【0079】
まだ図1~3に言及する。いくつかの応用例については、関節スペーサー10は、ポーチを充填するのに適した、ある体積の脂肪組織40を有する。これらの応用例では、関節スペーサー10は、上記の関節スペーサー10の特徴を実装していても、していなくてもよい。例えば、ポーチの壁部22は、真皮移植片材料26を有していても、有していなくてもよい。関節スペーサー10は、関節の空間の中へと挿入されるように構成されており、かつ、ポーチ20が空間の中へと挿入され、かつ、ある体積の脂肪組織40で充填されたときに、関節に対して機械的支持を提供するような形状である。
【0080】
代替的には、関節スペーサー10は、生理食塩水、自家血液または骨髄のような別の材料で充填される。
【0081】
ここで図4A~Bを参照すると、該図は、本発明の応用例による、肩関節102の肩峰下の空間100の中へと関節スペーサー10を配備する方法の概略図である。図示された方法では、関節スペーサー10は、例えば肩腱板損傷を治療するために用いられてもよい、肩峰下スペーサー110である。代替的には、関節スペーサー10は、必要な変更を加えてこの方法を用いて、別の関節および/または空間(膝または手首関節のような)の中へと導入される。
【0082】
図4Aに示されているように、肩峰下スペーサー110は、肩峰下スペーサー10のポーチ20が圧縮された構成にある間に肩峰下の空間100の中へと関節鏡で挿入され、典型的には、例えばポーチ20が充填されておらず、かつ、丸められているか、または、折り曲げられている間に、送達チューブ内に取り外し可能に配置される。
【0083】
図4Bに示されているように、ポーチ20は、肩関節102内において充填され、そのことによって、ポーチ20を関節内において充填され、かつ、拡張された構成へと移行させ、肩峰下スペーサー110が関節に対して機械的支持を提供し、そのことによって関節を治療するようになっている。
【0084】
いくつかの応用例については、ポーチ20は、関節102内においてある体積の脂肪組織40で充填され、肩峰下スペーサー110が関節に対して機械的支持を提供するようになっている。これらの応用例のいくつかについては、脂肪組織40は、自家脂肪組織を得るための本技術分野で知られた技術を用いて被験者から得られた自家脂肪組織を有する。いくつかの応用例については、ポーチ20は、15~40ccの脂肪組織40で充填される。
【0085】
代替的には、肩峰下スペーサー110は、生理食塩水、自家血液または骨髄のような別の材料で充填される。
【0086】
典型的には、関節スペーサー10は、少なくとも24か月(少なくとも36か月のように)の間は関節において損なわれないままであるように構成されている。
【0087】
いくつかの応用例については、ポーチ20は、充填ポート28が封止され、かつ、ポーチ20が壁部22の塑性変形を伴わずに可能な最大体積まで充填されたときに、ポーチ20よりも大きい2つの剛性である平坦な表面の間でポーチ20を圧搾することによる400N(500N、700Nまたは1000Nのような)の外部の力の印加の際でさえも損なわれないままであるように構成されている。典型的には、ポーチ20は、ポーチ20よりも大きい2つの剛性である平坦な表面の間でポーチ20を圧搾することによる1200Nの外部の力の印加の際に損なわれないままではないであろう。いくつかの応用例については、ポーチ20が耐え得る最大限の力は、ポーチのサイズに依拠する。例えば、小さい(3×2cm)、中間の(5×3.5cm)および大きい(6×4cm)ポーチ20が、500N、700Nおよび1000Nに各々耐え得るであろう。(上述の2つの剛性である平坦な表面は装置の一部ではなく、むしろポーチ20の物理的特性を記載するために用いられた抽象的な幾何学的形態であることが理解されるべきである。)
【0088】
ポーチ20のいくつかの特徴は、「壁部22の塑性変形を伴わずに可能な最大体積まで充填されたときに」というポーチ20の状態に関して記載および/または請求されている。代替的には、これらの特徴は、壁部22の弾性変形を伴わずに可能な最大体積まで充填されたときのポーチ20の状態に関しても適用可能であろう。
【0089】
本発明は上記でとりわけ示され、かつ、記載されたものに限定されないことが、当業者によって把握されるであろう。むしろ、本発明の範囲は、上記の種々の特徴の組み合わせ、および、部分的組み合わせの両方、ならびに、上記の記載を読んだ際に当業者が想起する先行技術にはないその変形および修正を含んでいる。
図1
図2
図3
図4A
図4B
【国際調査報告】