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特表2022-520297可動荷電粒子検出器システム及び使用済核燃料画像化方法
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  • 特表-可動荷電粒子検出器システム及び使用済核燃料画像化方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-30
(54)【発明の名称】可動荷電粒子検出器システム及び使用済核燃料画像化方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/04 20180101AFI20220323BHJP
   G01N 23/046 20180101ALI20220323BHJP
   G21C 17/00 20060101ALI20220323BHJP
   G21F 9/36 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
G01N23/04
G01N23/046
G21C17/00 500
G21F9/36 511P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021523923
(86)(22)【出願日】2019-11-04
(85)【翻訳文提出日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 US2019059730
(87)【国際公開番号】W WO2020093067
(87)【国際公開日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】62/755,180
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511053621
【氏名又は名称】ディスィジョン サイエンシズ インターナショナル コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボロズディン,コンスタンティン
【テーマコード(参考)】
2G001
2G075
【Fターム(参考)】
2G001AA08
2G001BA11
2G001CA08
2G001DA01
2G001DA02
2G001DA06
2G001DA09
2G001FA04
2G001HA13
2G001HA14
2G001LA08
2G001SA29
2G075DA08
2G075EA03
2G075FA18
(57)【要約】
容積体の内容物を検査及び画像化するためのシステム、装置、及び方法を開示する。開示されたシステム、デバイス及び方法の1つの具体例は、関心容積体の内容物を検査し、画像化する装置であり、この装置は、対象物を通過する入射荷電粒子を受け取り、荷電粒子を通過させながら、対象物を通過する荷電粒子の位置及び方向を測定する第1の粒子追跡検出器ユニットと、第1の粒子追跡検出器ユニット及び検査対象物を収容する容積体に対して設置され、第1の粒子追跡ユニット及び検査対象物を通過する出射荷電粒子を受け取り、出射荷電粒子の位置及び方向を測定するように配置された第2の粒子追跡検出器ユニットとを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
関心容積体の内容物を検査し、画像化する装置であって、
前記関心容積体に収容された検査対象物を更に通過する入射荷電粒子を受け取るように配置された第1の粒子追跡検出器ユニットと、
前記第1の粒子追跡検出器ユニットに対してより低く、且つ前記関心容積体を挟んで前記第1の粒子追跡検出器ユニットの反対側に位置し、前記第1の粒子追跡検出器ユニットを通過し及び前記対象物を通過する荷電粒子を受け取り、各荷電粒子の位置及び方向を測定する第2の粒子追跡検出器ユニットと、
前記第1の粒子追跡検出器ユニット及び前記第2の粒子追跡検出器ユニットの両方を、前記第1及び第2の粒子追跡検出器ユニットが荷電粒子を受け取ることができる位置に維持する機械的支持構造と、
前記第1の粒子追跡検出器ユニット及び前記第2の粒子追跡検出器ユニットの両方に接続され、前記第1及び第2の粒子追跡検出器ユニットからの情報を処理して、前記対象物の原子番号及び密度の空間マップの推定値を生成するプロセッサとを備え、
前記機械的支持構造は、更に、前記第1及び第2の粒子追跡検出器ユニットを移動可能に支持する少なくとも2つの可動アセンブリを含み、前記機械的支持構造は、前記少なくとも2つの可動アセンブリを異なる垂直位置に保持するように略垂直な向きに構成され、前記第1の粒子追跡検出器ユニットは、前記第2の粒子追跡検出器ユニットよりも高い位置に配置され、前記機械的支持構造は、前記検査中に前記少なくとも2つの可動アセンブリに幾何学的剛性を提供する装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、更に、前記少なくとも2つの可動アセンブリを相互接続し、前記機械的支持構造の幾何学的剛性を高める少なくとも1つの剛性金属バーを含む装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置において、前記少なくとも2つの可動アセンブリは、更に、前記検査対象物の周囲に規則的な幾何学的パターンで配置される装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置において、更に、前記少なくとも2つの可動アセンブリの天候保護のための少なくとも1つの可搬式天蓋を含む装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置において、前記2つの可動アセンブリのうちの1つは、前記可動アセンブリ内の第1の粒子追跡ユニットの取り付け高さが機械的に調節可能であるように構成される装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置において、前記2つの可動アセンブリのうちの1つは、前記可動アセンブリ内の第2の粒子追跡感応ユニットの取り付け高さが機械的に調節可能であるように構成される装置。
【請求項7】
請求項1に記載の装置において、同じ可動アセンブリ内の前記第1及び第2の粒子追跡ユニット間の間隔は、機械的に調節可能である装置。
【請求項8】
請求項1に記載の装置において、前記第1及び第2の粒子追跡ユニットは、更に、荷電粒子を検出するためのドリフトチューブを含む装置。
【請求項9】
請求項1に記載の装置において、更に、前記荷電粒子からの信号をガンマ線誘起信号から分離するためのフィルタとしてのコインシデンストリガを含む装置。
【請求項10】
検査装置の操作方法であって、
第1及び第2の可動支持構造を使用して、第1及び第2の粒子追跡感応検出器ユニットをそれぞれ保持することによって、検査対象物の周囲に前記第1及び第2の粒子追跡感応検出器ユニットのアセンブリを配置して、粒子追跡感応ユニットのシステムを形成し、前記第1及び第2の粒子追跡感応検出器ユニットの位置の調整を可能にすることと、
前記第1の粒子追跡感応検出器ユニットにおいて、前記検査対象物を更に通過し、並びに前記第1の粒子追跡検出器及び前記検査対象物を収容する関心容積体よりも下方に位置する第2の粒子追跡感応検出器ユニットを更に通過する入射荷電粒子を受け取ることと、
前記対象物並びに前記第1及び第2の粒子追跡感応ユニットを通過する各荷電粒子の位置及び方向を測定することと、
前記複数の荷電粒子の位置及び方向を収集することと、
前記第1及び第2の粒子追跡感応検出器ユニットにおいて生成された電気信号に基づいて、前記複数の荷電粒子の位置及び方向を数値データとして処理することと、
各荷電粒子と前記第1及び第2の粒子追跡感応検出器ユニットとの相互作用点を判定することと、
前記判定された各荷電粒子と前記第1の粒子追跡感応検出器ユニットとの相互作用点に基づいて、各荷電粒子の入射軌道を直線で近似することと、
前記判定された各荷電粒子と前記第2の粒子追跡感応検出器ユニットとの相互作用点に基づいて、各荷電粒子の出射軌道を直線で近似することと、
前記関心容積体内の前記対象物の密度及び放射長に基づいて、並びに入射及び出射粒子軌道の集合に基づいて、物質特性の空間マップを再構成することとを含む方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、前記システム内のアセンブリの数は、前記検査対象物のサイズに基づいて選択される方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法において、前記第1及び第2の粒子追跡感応検出器ユニットの取り付け高さは、入射宇宙線ミューオンフラックスのモデル及び前記第1及び第2の粒子追跡ユニットに対する前記関心容積体の位置に基づいて選択される方法。
【請求項13】
請求項10に記載の方法において、更に、前記複数の荷電粒子の入射及び出射軌道の収集された測定値に基づく幾何学的較正を含む方法。
【請求項14】
請求項10に記載の方法において、前記第1及び第2の粒子追跡感応検出器ユニットは、複数のドリフトチューブを含み、前記複数のドリフトチューブの各ドリフトチューブについて時間-半径応答関数の反復較正を実行する方法。
【請求項15】
請求項10に記載の方法において、更に、前記測定された荷電粒子に属さない信号をフィルタリングして除外することを含む方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、前記荷電粒子は、更に、前記各アセンブリ内で前記測定された荷電粒子の2つのインジケータに基づいて識別される方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、第1のインジケータは、更に、前記測定された荷電粒子のコインシデンスウィンドウ内のタイミングコインシデンスに基づく方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、前記コインシデンスウィンドウのサイズは、更に、アセンブリ毎に個別に設定できる方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法において、前記コインシデンスウィンドウのサイズは、更に、前記第1及び第2の粒子追跡感応検出器ユニットのタイミング特性と、前記第1及び第2の粒子追跡感応検出器ユニットの位置における周囲放射場とに基づいて最適化される方法。
【請求項20】
請求項16に記載の方法において、第2のインジケータは、更に、前記第1及び第2の粒子追跡感応ユニットの位置に基づく方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法において、前記第2のインジケータは、更に、前記アセンブリ内の選択されたドリフトチューブの位置と、前記検査対象物に対するアセンブリの相対位置とに基づいて最適化される方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権及び関連特許出願の情報
本出願は、本出願の出願人及び譲受人であるディスィジョン サイエンシズ インターナショナル コーポレーションによって2018年11月2日に出願された米国仮出願第62/755,180号、発明の名称「SYSTEM OF MOBILE CHARGED PARTICLE DETECTORS AND METHODS OF SPENT NUCLEAR FUEL IMAGING」の優先権及びその利益を主張する。
【0002】
連邦政府の支援を受けた研究又は開発
本発明のいずれの部分も政府の支援を受けてなされたものではない。政府は、本発明に対していかなる権利も有さない。
【0003】
技術分野
この特許文献は、荷電粒子検出器を用いて様々なアイテムを画像化及び検査する分野に関する。
【背景技術】
【0004】
地球表面に自然に存在する宇宙線ミューオンは、様々な検出及び検査用途に使用できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許文献は、関心容積体(volume of interest)を横断する荷電粒子の多重クーロン散乱及び減衰を測定することによって、以下に限定されるわけではないが、特殊核物質(special nuclear materials)を含む物質を検出するための装置、システム、及び方法を提供するハードウェア及び技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示するハードウェア及び技術の幾つかの具体例では、関心容積体は、使用済み核燃料のキャスクを含むことができる。ここに開示する装置、システム、及び方法は、特定のタイプの対象物に限定されず又はこれに依存するものではなく、したがって、対象物としてのキャスクの使用は、ここに開示するハードウェア及び技術の本質的な要素ではなく、単なる例とみなされるべきである。これを踏まえた上で、この装置、システム、及び方法は、様々な具体例において、乾式貯蔵キャスク(dry storage cask)検査の特定のケースに適合するように構成又は最適化できる。
【0007】
様々な用途において、ここに開示する装置、システム、及び方法を実施することにより、宇宙線の成分である荷電粒子をプローブとして使用して関心容積体を検査し、以下に限定されるものではないが、特殊核物質を含む様々な物質の三次元マッピングを提供できる。宇宙線粒子の使用には幾つかの重要な利点がある。
【0008】
ここに開示する装置の重要な特徴の1つは、人工放射線を発生させる代わりに、自然に発生する宇宙線フラックスをプローブとして使用して関心容積体を画像化することである。これにより、この装置は、人間、他の生物、対象物に対して安全なものとなる。
【0009】
一側面において、ここに開示するハードウェア及び技術は、関心容積体の内容物を検査し、画像化する装置を構成するように実施され、この装置は、関心容積体に収容された検査対象物を更に通過する入射荷電粒子を受け取るように配置された第1の粒子追跡検出器ユニットと、第1の粒子追跡検出器ユニットに対してより低く、且つ関心容積体を挟んで第1の粒子追跡検出器ユニットの反対側に位置し、第1の粒子追跡検出器ユニットを通過し及び対象物を通過する荷電粒子を受け取り、各荷電粒子の位置及び方向を測定する第2の粒子追跡検出器ユニットと、第1の粒子追跡検出器ユニット及び第2の粒子追跡検出器ユニットの両方を、第1及び第2の粒子追跡検出器ユニットが荷電粒子を受け取ることができる位置に維持する機械的支持構造とを備える。また、第1の粒子追跡検出器ユニット及び第2の粒子追跡検出器ユニットの両方に、第1及び第2の粒子追跡検出器ユニットからの情報を処理して、対象物の原子番号及び密度の空間マップの推定値を生成するプロセッサが接続される。この装置の一具体例では、機械的支持構造は、更に、第1及び第2の粒子追跡検出器ユニットを移動可能に支持する少なくとも2つの可動アセンブリを含むことができ、機械的支持構造は、略垂直な向きに構成され、第1の粒子追跡検出器ユニットは、第2の粒子追跡検出器ユニットよりも高い位置に配置され、機械的支持構造は、検査中に少なくとも2つの可動アセンブリに幾何学的剛性を提供する。
【0010】
他の側面として、ここに開示するハードウェア及び技術は、検査装置の操作方法を提供するように実施され、この方法は、第1及び第2の可動支持構造を使用して、第1及び第2の粒子追跡感応検出器ユニットをそれぞれ保持することによって、検査対象物の周囲に第1及び第2の粒子追跡感応検出器ユニットのアセンブリを配置して、粒子追跡感応ユニットのシステムを形成し、第1及び第2の粒子追跡感応検出器ユニットの位置の調整を可能にすることと、第1の粒子追跡感応検出器ユニットにおいて、検査対象物を更に通過し、並びに第1の粒子追跡検出器及び検査対象物を収容する関心容積体よりも下方に位置する第2の粒子追跡感応検出器ユニットを更に通過する入射荷電粒子を受け取ることと、対象物並びに第1及び第2の粒子追跡感応ユニットを通過する各荷電粒子の位置及び方向を測定することとを含む。この方法は、更に、複数の荷電粒子の位置及び方向を収集することと、第1及び第2の粒子追跡感応検出器ユニットにおいて生成された電気信号に基づいて、複数の荷電粒子の位置及び方向を数値データとして処理することと、各荷電粒子と第1及び第2の粒子追跡感応検出器ユニットとの相互作用点を判定することと、判定された各荷電粒子と第1の粒子追跡感応検出器ユニットとの相互作用点に基づいて、各荷電粒子の入射軌道を直線で近似することと、判定された各荷電粒子と第2の粒子追跡感応検出器ユニットとの相互作用点に基づいて、各荷電粒子の出射軌道を直線で近似することと、関心容積体内の対象物の密度及び放射長に基づいて、並びに入射及び出射粒子軌道の集合に基づいて、物質特性の空間マップを再構成することとを含む。
【0011】
ここに開示する装置、システム、及び方法の様々な特徴及び具体例は、図面、説明、及び特許請求の範囲においてより詳細に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】2つの感応検出器ユニット(スーパーモジュール:supermodule)が垂直方向に間隔を設けて設置された可動アセンブリの例示的概念設計を示す図である。
図2】検査対象物の周りへの可動アセンブリの例示的な配置を上方から見た概略図である。
図3】可動アセンブリの垂直方向における例示的な配置を側方から見た概略図である。
図4】ここに開示する技術を実施するために使用できるドリフトチューブの例示的な設計を示す図である。
図5】ここに開示する技術を実施するために使用できる複数のドリフトチューブを含む感応検出器ユニットモジュールの例示的な設計を示す図である。
図6A】検査対象物300の周囲の三方に三角形状に配置された荷電粒子検出器を有する可動アセンブリの例示的な配置を示す図である。
図6B】検査対象物300の周囲の三方に三角形状に配置された荷電粒子検出器を有する可動アセンブリの例示的な配置を異なる視点から示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここに開示する物質を検査するためのハードウェア及び技術は、可動荷電粒子検出器の使用を含み、広範囲の用途に適用できる。そのような用途の1つは、特殊核物質の検出である。
【0014】
世界中の原子炉から大量の放射性重金属が毎年排出され、世界の核廃棄物の量が増加し続けている。この高レベル放射性廃棄物は、通常、厳重に遮蔽された大型キャスク内で長期保管されている。キャスク内に物質を閉じ込めることは、以下の少なくとも2つの理由から極めて重要である。1)放射性廃棄物は、非常に有害な物質であり、放射性成分は、非常に長寿命であり、したがって、閉じ込めなければ公共の安全にとって大きな脅威となる。2)核廃棄物の成分は、核兵器の製造に利用できる特殊核物質である。現在、国際核保障措置査察官(nuclear safeguards inspector)は、密閉されたキャスクに貯蔵されている原子炉燃料の量を検証するためのスタンドアローンの手法を有していない。貯蔵キャスクを通過する宇宙線ミューオンの散乱角を測定することにより、キャスクを開くことなく、キャスク内の特殊核物質の量を測定し、使用済燃料アセンブリが失われていないかを判定できる。ここに開示する装置、システム、及び方法は、国際的な核保障措置におけるこの長年にわたる問題に対する潜在的な解決策を提供し、安全で信頼性があり、効率的で経済的に実行可能な検査方法を提供する。ここに開示する装置、システム、及び方法は、国際的な核保障措置における核の計量管理(nuclear accountancy)に関する長年の問題に対する潜在的な解決策を提供する。更に、これらは、キャスクの構造的完全性(structural integrity)の評価、並びに内部に貯蔵された燃料要素の構造的完全性の評価にも役立つ。
【0015】
ここに開示する技術的特徴を用いて、様々な粒子検出システムを構築できる。例えば、粒子検出システムは、検査される対象物を配置するための対象物保持領域と、対象物保持領域の第1の側に配置され、対象物保持領域に向かう入射ミューオンの位置及び方向を測定する位置感応ミューオン検出器の第1の組と、対象物保持領域の第1の側の反対側である第2の側に配置され、対象物保持領域から出る出射ミューオンの位置及び方向を測定する位置感応ミューオン検出器の第2の組と、例えばマイクロプロセッサを含み、位置感応ミューオン検出器の第1の組からの入射ミューオンの測定信号及び位置感応ミューオン検出器の第2の組からの出射ミューオンの測定信号のデータを受信する信号処理ユニットとを含むことができる。一例として、粒子検出器の第1及び第2の組のそれぞれは、第1の方向における少なくとも3つの荷電粒子位置測定、及び第1の方向とは異なる第2の方向における少なくとも3つの荷電粒子位置測定を可能にするように配置されたドリフトチューブを含むように実現できる。信号処理ユニットは、測定されたミューオンの入射及び出射の位置及び向きに基づいて、対象物保持領域内の物質におけるミューオンの散乱に起因するミューオンの散乱挙動を解析し、トモグラフィックプロファイル又は対象物保持領域内の散乱中心の空間分布を得るように構成されている。得られたトモグラフィックプロファイル又は散乱中心の空間分布を用いて、対象物保持領域内の1つ以上の対象物、例えば、核物質又は核デバイスを含む高い原子番号を有する物質の有無を明らかにできる。各位置感応ミューオン検出器は、ミューオンによってイオン化され得るガスで満たされたドリフトチューブ等のドリフトセルを含む様々な構成で実現できる。このようなシステムを使用することにより、対象物保持領域内の1つ以上の対象物を検出するためのミューオン源として、自然宇宙線によって生成されるミューオンを利用できる。
【0016】
ここに開示する特徴に基づく粒子検出システムの別の例は、検査対象物を配置するための対象物保持領域と、対象物保持領域の第1の側に配置され、対象物保持領域に向かう入射ミューオンを測定し、中性子に応答して中性子を測定する粒子検出器の第1の組と、対象物保持領域の第1の側の反対側である第2の側に配置され、対象物保持領域から出る出射ミューオンを測定し、中性子に応答して中性子を測定する粒子検出器の第2の組とを含むことができる。各粒子検出器は、ミューオンを測定するミューオン受感物質と、中性子を測定する中性子受感物質とを含み、ミューオンと中性子の両方を同時に測定するように動作可能である。このシステムは、検出器の第1及び第2の組からの測定信号のデータを受信して処理し、対象物保持領域内の1つ以上の対象物の測定値を生成する信号処理ユニットを含む。一具体例では、各粒子検出器は、ミューオン受感ガス及び中性子受感ガスの混合物で満たされたドリフトチューブであり、位置感応検出器として動作できる。粒子検出器の各組は、受け取ったミューオンの位置及び方向を測定するための位置感応検出器の組として設計できる。例えば、粒子検出器の第1及び第2の組のそれぞれは、第1の方向における少なくとも3つの荷電粒子位置測定、及び第1の方向とは異なる第2の方向における少なくとも3つの荷電粒子位置測定を可能にするように配置されたドリフトチューブを含むように実現できる。信号処理ユニットは、対象物保持領域内の1つ以上の対象物の物質、例えば、核物質又は核デバイスを含む高い原子番号を有する物質のトモグラフィックプロファイル又は空間分布を得るように構成できる。このようなシステムを使用することにより、対象物保持領域内の1つ以上の対象物を検出するためのミューオン源として、自然宇宙線によって生成されるミューオンを利用できる。幾つかの用途では、このようなシステムは、1つ以上の人工的な粒子源を使用して、対象物保持領域内の1つ以上の対象物を検出するためのミューオン又は中性子を生成するように構成できる。
【0017】
宇宙線トモグラフィーは、高透過性宇宙線生成ミューオンの多重クーロン散乱を利用して、人工放射線を使用することなく物質の非破壊検査を行う技術である。地球には、大部分が陽子である、深宇宙から来るエネルギ安定粒子(energetic stable particles)が常に飛来している。これらの粒子は、上層大気中の原子と相互作用し、寿命が短い多数のパイオンを含む粒子のシャワーを生成し、パイオンは、崩壊して、より寿命が長いミューオンになる。ミューオンは、主にクーロン力を介して物質と相互作用し、核相互作用がなく、電子に比べて遥かに放射が少ない。ミューオンは、電磁相互作用によって徐々にエネルギを失うのみである。この結果、宇宙線生成ミューオンの多くは、透過度が高い荷電放射線として、地球の表面に飛来する。平均海面におけるミューオンフラックスは、毎分1ミューオン/cm↑2↑程度である。ミューオンが物質を通過する際、亜原子粒子の電荷のクーロン散乱がその軌道を曲げる。総合的な偏向は、幾つかの物質特性に依存するが、支配的な要因は、核の原子番号Zである。この軌道は、より日常的な物体を構成する物質、例えば、水、プラスチック、アルミニウム、鋼等に比べて、ガンマ線を良好に遮蔽する物質(例えば、鉛及びタングステン等)、及び特殊核物質(special nuclear material:SNM)、すなわち、ウランやプルトニウムによってより強く影響を受ける。
【0018】
各ミューオンは、そのミューオンが通過した対象物に関する情報を運び、複数のミューオンの散乱を測定することによって、これらの対象物の特性を調べることができる。大きな原子番号Zを有する高密度の物質は、低Z又は中Zの物質内に存在する場合、検出及び特定することができる。荷電粒子が物質を通過する際、原子核からのクーロン散乱の結果、非常に多くの荷電粒子に小さな角度の偏向が生じる。エンリコ・フェルミ(Enrico Fermi)は、このプロセスを良好な近似値によって記述する輸送方程式を発見し、解いた。結果は、物質の密度及び原子電荷に依存する軌道の変位及び角度変化の相関ガウス分布関数である。分布関数の幅は、粒子の運動量の逆数及び放射線長において測定される物質の実際の密度の平方根に比例する。
【0019】
図1図5は、移動荷電粒子検出器の使用を含む、物質を検査するためのここに開示するハードウェア及び技術の様々な特徴の例を示している。技術的特徴の幾つかの側面は、米国特許第7,633,062号、発明の名称「RADIATION PORTAL MONITOR SYSTEM AND METHOD」、米国特許第8,288,721号、発明の名称「IMAGING AND SENSING BASED ON MUON TOMOGRAPHY」、国際特許公開番号WO2008/123892A2、発明の名称「PARTICLE DETECTION SYSTEMS AND METHODS」、国際特許公開番号WO2008/118208A2、発明の名称「DETERMINATION OF TRAJECTORY OF A CHARGED PARTICLE」、国際特許公開番号WO2008/140559A2、発明の名称「MEASURING MOMENTUM FOR CHARGED PARTICLE TOMOGRAPHY」、及び米国特許第8,536,527号、発明の名称「IMAGING BASED ON COSMIC-RAY PRODUCED CHARGED PARTICLES」を含む他の米国特許の例において開示されている。上に列挙した特許及び特許文献のそれぞれの全体は、参照により、本願の一部として援用される。
【0020】
この装置の例示的な実施形態では、荷電粒子検出器は、例えば、図4に示すように、ガス充填ドリフトチューブ400の形態で実現され、荷電粒子410を検出できる。ドリフトチューブは、内部のガス412と相互作用する荷電粒子の位置を測定するための信頼性が高く安価な面積範囲を提供する。この装置の例示的な実施形態では、特殊核物質の存在下での作動に対する安全上の予防措置として、ドリフトチューブは、密閉され、不燃性ガス412で充填される。検出システムの一部として、ドリフトチューブに代えて又はドリフトチューブと組み合わせて、他の検出器技術を使用してもよい。例えば、本装置は、シリコンウェーハ、薄いギャップチャンバ(thin-gap chamber:TGC)、及び厚いガス電子増倍管(Thick Gas Electron Multiplier:THGEM)検出器を使用できる。
【0021】
幾つかの設計で使用されるドリフトチューブベースのシステムの典型的な実施形態では、ドリフトチューブ400は、例えば図5に示すように、ドリフトチューブモジュール500に組み込まれる。モジュール500内のチューブ400は、互いに接着されてもよく、又は他の手段によって機械的に一体化されてもよい。モジュール500として一体化されたチューブ400は、同一の電子ユニットに接続される。例示的な実施形態では、単一のモジュール500は、各層に12本のドリフトチューブ400が配置された2層の24本のドリフトチューブ400を含む。
【0022】
図5に示す実施例は、更に、ドリフトチューブモジュール500が、スーパーモジュール(supermodule)とも呼ばれる検出ユニットとして機械的に統合されることを示している。例示的な実施形態では、スーパーモジュールは、12個のドリフトチューブモジュール500を含み、このうち、6個のドリフトチューブモジュール500がX方向に沿って配向され、6個のドリフトチューブモジュール500がX方向に垂直なY方向に沿って配向される。各方向には、モジュール500毎に垂直方向に分離されたモジュール500の3つの層が配設されている。各モジュール500は、構造的に同一であってもよく、これにより、全てのモジュール500が交換可能になる。このように同一に構成されたモジュール500を使用することによって、製造が容易になり、製造のスケーラビリティが向上する。スーパーモジュール内のモジュール500は、永久的に結合されておらず、モジュール500を分解したり、モジュール500間の接続を切断したりすることなく分離して再結合できる。ここに開示する例示的な実施形態では、各方向に6組のドリフトチューブ層が12個あり、各層に24個のチューブ400がある。この例におけるスーパーモジュールは、288個のチューブ400及び12個の電子ユニット(図示せず)を含む。電子ユニットは、通常、ハブを介して互いに接続され、これによりスーパーモジュールのための外部ケーブル接続の数が削減される。
【0023】
上述の検出器モジュール500を使用する例示的な実施形態では、第1の粒子追跡検出器ユニットは、対象物を通過する入射荷電粒子を受け取り、荷電粒子を通過させながら、対象物を通過する荷電粒子の位置及び方向を測定するように配置される。また、第1の粒子追跡検出器及び検査対象物を含む関心容積体に対して配置された第2の粒子追跡感応検出器ユニットは、第1の粒子追跡感応ユニットを通過して検査対象物を通過する出射荷電粒子を受け取り、出射荷電粒子の位置及び方向を測定するように配置される。
【0024】
第1及び第2の追跡感応ユニットは、アセンブリとして機械的支持構造を含むことができる。アセンブリは、可動であり、各ユニットの位置は、調整可能である。検査対象物の周囲に規則的な幾何学的パターンで2個以上の可動アセンブリを配置できる。第1及び第2の粒子追跡感応検出器ユニットは、更に、荷電粒子を検出できるドリフトチューブ又は他の検出器を備えていてもよい。
【0025】
第1及び第2の粒子追跡感応検出器ユニットの両方に接続されたプロセッサは、これらのユニットからの情報を処理し、対象物の原子番号及び密度の空間マップの推定値を算出する。
【0026】
高放射線場を含む環境では、このシステムは、荷電粒子からの信号をガンマ線誘起信号から分離するためのフィルタとしてコインシデンストリガ(coincidence trigger)を利用する。このトリガは、ドリフトチューブに取り付けられた電子ユニットのファームウェア内で実装される。このトリガは、同じ電子回路基板に接続されたチューブ間の時間ウィンドウ内のコインシデンスを使用する。時間ウィンドウ内に1より多くの信号が存在することが、トリガの第1の荷電粒子インジケータである。モジュール内の選択されたチューブの互いに対する及び関心容積体に対する幾何学的配置が、第2の荷電粒子インジケータである。第1のインジケータ及び第2のインジケータの両方が存在する場合、チューブからの信号は、同じ荷電粒子によって生成されたものとして識別される。第1のインジケータ又は第2のインジケータのいずれかを欠く信号は、電子回路によってフィルタリングされ除外される。
【0027】
ここに開示するシステムは、検査対象物(典型的には、乾式貯蔵キャスク)のサイズ及び検査の要件に応じて異なる数の可動アセンブリを使用することによって実現できる。可動アセンブリの最小数は、2であり、この場合、通常は、検査対象物の両側に取り付けられる。
【0028】
システムの典型的な例示的実施形態では、可動アセンブリは、上から見て規則的な幾何学的形状(三角形、正方形、五角形、又は六角形)を形成する規則的なパターンで検査対象物の周囲に設置される。この配置の後、アセンブリは、データ収集中にこれ以上移動しないように、所定の位置に固定される。
【0029】
典型的な例示的な実施形態では、可動アセンブリは、適切な位置に配置された後に、剛性金属バーを用いて互いに接続され、これにより、データ収集の間のシステム形状の剛性が確保される。また、このシステムは、雪、強風、及び/又は直射日光等の極端な天候に対する保護のために、可搬式天蓋(portable canopy)及びプラスチック筐体を含んでもよい。
【0030】
感応ユニット同士の相対位置は、荷電粒子飛跡の測定に基づく幾何学的較正のプロセスによって決定される。この較正は、データ収集プロセス中に行われ、その結果は、検査対象物の画像化に使用される。
【0031】
ドリフトチューブベースのシステムの実施形態では、収集されたデータに基づく時間-半径変換関数の較正により、粒子飛跡の測定が改善される。この較正は、データ収集プロセス中に繰り返し実行される。
【0032】
ここに開示する例示的な実施形態は、人工的な放射線源を用いることなく、宇宙線荷電粒子を用いて、関心容積体の3D画像を提供するシステム設計を可能にする。
【0033】
本開示における典型的な検査対象物は、内部に使用済核燃料棒を有する密封された乾式貯蔵キャスクである。システムの設計及び具体例は、この特定のタイプの対象物での使用に最適化されているが、他のタイプの対象物の画像化にも使用できる。
【0034】
ここに開示するシステムは、荷電宇宙線粒子と感応検出器との相互作用によって提供される情報を利用し、感応検出器は、荷電粒子と感応検出器の物質との相互作用に対する反応として電気信号を生成する。
【0035】
ここに開示するシステムによって使用される宇宙線は、従来文献では、二次宇宙線(secondary cosmic rays)とも呼ばれている。これらの粒子は、大気中における一次宇宙線の相互作用によって発生する。
【0036】
海面における二次宇宙線の2つの主要な構成要素は、電子とミューオンである。二次宇宙線中に存在する他の荷電粒子は、陽子、イオン、荷電中間子、荷電重バリオン、及びタウオンである。これらの粒子は、全て、感応検出器の物質と相互作用して電気信号を生成できる。しかしながら、これらの粒子は、数が少なく、透過能力が比較的低いため、ここに開示するシステムの開発及び動作では、無視できる。
【0037】
高エネルギ電子は、感応検出器において、ミューオンによって生成される飛跡に類似する飛跡を生成することがあるが、電子は、透過能力が比較的低いために、内部に使用済み燃料棒があるか否かにかかわらず、乾式貯蔵キャスクのような厳重に遮蔽された検査対象物を透過する可能性が非常に低い。全ての電子は、厚い対象物内で停止してしまうため、ここで検討する用途では使用することができない。
【0038】
大気中の一次宇宙線の相互作用によって発生する正及び負に荷電したミューオンは、以下に限定されるわけではないが、特殊核物質を含む様々な物質を検出し、画像化するための高感度のプローブとして使用できる。これらのミューオンと感応検出器の物質との相互作用によって感応検出器内で生成された信号は、ここに開示するシステム内で、前述の目的のために使用される。
【0039】
荷電粒子は、物質を通過すると、主に物質中の原子内電子との相互作用によってエネルギを失う。このエネルギ損失は、物質に横たわる電子雲の有効厚さに単純に比例する。これらの原子内電子の電荷は、原子核内の同数の陽子と均衡しており、また、ほとんどの場合、原子核内の陽子の数は、中性子の数と略等しいため、通過される電子雲の厚さは、通過される物質の質量密度に略比例するといえる。例外として、水素原子は、核内に中性子が存在しない。したがって、この場合、単位質量当たりの電子数は、2倍になる。
【0040】
対象物を通過する荷電粒子を検出し測定することは、多くの用途がある。1つの例示的な用途は、使用済核燃料キャスク内の核物質を検出することである。使用済み核燃料とは、原子炉に動力を供給するために使用された金属棒に包まれたウランのペレットの束をいう。貯蔵キャスクを通過する宇宙線ミューオンの散乱角を測定することにより、キャスクを開くことなく、キャスク内の特殊核物質の量を測定し、使用済燃料アセンブリが失われていないかを判定できる。
【0041】
ここに開示する技術的特徴を実施するための例示的な実施形態では、図3に示すように、2個以上の第1の粒子追跡検出器ユニット110及び120が使用済核燃料キャスク300等の検出対象物の第1の位置の近くに配置され、2個以上の第2の粒子追跡検出器ユニット110及び120が同じ対象物の第2の位置の近くに配置され、検出対象物又は使用済核燃料キャスク300の近くに配置された2個以上の第1及び第2の粒子追跡ユニット110及び120は、一対として使用されて、対象物の入射荷電粒子及び出射荷電粒子を検出し、これにより検査対象物の画像を得ることができる。
【0042】
具体的には、図3に示すように、第1の粒子追跡検出器ユニット110は、使用済核燃料キャスク300等の検出対象物の左上側に配置され、使用済核燃料キャスク300を通過する入射荷電粒子420を受け取る。第1の粒子追跡検出器ユニット110内の検出器400は、例えば、荷電粒子420を通過させながら、燃料ケースを通過する荷電粒子420の位置及び方向を測定できる。使用済核燃料キャスク300等の検出対象物の同じ左側において、第1の粒子追跡検出器ユニット110よりも低い位置に別の第1の粒子追跡検出器ユニット120が配置されている。使用済核燃料(図示せず)を収容する使用済核燃料キャスク300等の関心容積体を挟んだ反対側には、第1の粒子追跡検出器ユニット110及び120を通過してキャスク300及び使用済核燃料を通過する出射荷電粒子420を受け取り、これらの出射荷電粒子420の位置及び方向を測定するように、第2の粒子追跡検出器ユニット110及び120が使用済核燃料キャスク30の近くに配置されている。
【0043】
更に、図3は、追加の粒子追跡検出器ユニットを使用済核燃料キャスク300の周囲に配置して、追加の検出能力を提供できることを示している。幾つかの具体例では、このような追加の粒子追跡検出器ユニットは、各対が使用済核燃料キャスク300の両側に配置された2対の粒子追跡検出器ユニットとして使用済核燃料キャスク300の周囲に配置してもよい。使用済核燃料キャスク300の周囲の異なる位置に所望の空間構成で異なる対を配置して、使用済核燃料キャスク300から出射される放射線の所望の検出範囲を達成してもよい。特に、このような粒子追跡検出器ユニットを可動アセンブリ上に配置することにより、使用済核燃料キャスク300の周囲の粒子追跡検出器ユニットの位置を調整し又はこれを移動させることができ、これによって、様々な検査ニーズ又は目標を満たすことができる。
【0044】
図3は、更に、粒子追跡検出器ユニットのそれぞれと、対象物を挟んで反対側にある複数の粒子追跡検出器ユニットとを対にできることを示している。一例として、図3の右側に示す粒子追跡ユニット120は、図3の左側に示す粒子追跡ユニット110及び粒子追跡ユニット120の両方と対になっている。全ての粒子追跡ユニットは、プロセッサに接続されており、全ての粒子追跡ユニットからの信号は、時間的に同期されており、また、全ての粒子追跡ユニットの位置は、位置較正によって既知であるため、個々の粒子追跡ユニットのそれぞれは、この個々のユニットを通過し、更に、対象物の周りに設置された他の粒子追跡ユニットを通過するミューオンを区別できる。異なる粒子追跡ユニットによって提供される粒子追跡を組み合わせることによって、キャスクの内容物の3Dトモグラフィック画像再構成が可能になる。
【0045】
実際の動作において、粒子追跡検出器ユニットからの出力信号は、画像処理及び再構成モジュールに供給され、このモジュールは、ミューオン等の入射荷電粒子及び出射荷電粒子の測定された位置、方向、及びタイミングの情報を使用して、対象物内部の散乱中心のトモグラフィックプロファイルを再構成して、検査のための対象物内部のトモグラフィック画像を得る。
【0046】
図1は、第1の粒子追跡検出器ユニット110及び第2の粒子追跡検出器ユニット120等の2個以上の粒子追跡検出器ユニットが上述のように機能できるように、これらのユニットを互いに対して所望の位置に維持するための機械的支持構造130の例を示している。機械的支持構造130は、移動のための支持ホイールを有する可動アセンブリであってもよい。このようなホイール又は他の移動機構は、検査対象物の近くの所望の位置に支持構造130を配置するために電動化してもよい。機械的支持構造130は、第1の粒子追跡検出器ユニット110及び第2の粒子追跡検出器ユニット120を取り付けて、これらの高さ等の位置を調整するために調整可能又は移動可能な係合部を含むことができる。
【0047】
再び図1を参照して説明すると、使用済核燃料キャスク300の左側にある2つの粒子追跡検出器ユニット110及び120は、使用済核燃料キャスク300の左側の所望の位置に配置される第1の機械的支持構造130に取り付けてもよく、使用済核燃料キャスク300の右側にある2つの粒子追跡検出器ユニット110及び120は、使用済核燃料キャスク300の右側の所望の位置に(図示のように異なる高さで)配置される第2の機械的支持構造130に取り付けてもよい。第1及び第2の機械的支持構造130は、所望の既知の位置に配置でき、これらの粒子追跡検出器ユニット110及び120は、所望の既知の高さに配置でき、この結果、使用済核燃料キャスク300の両側にある4つの粒子追跡検出器ユニット110及び120は、位置が既知となり、使用済核燃料キャスク300を出入りする荷電粒子の測定された位置及び方向の画像処理を較正するために使用できる。較正された測定位置及び方向(入射角及び出射角)並びに検出された荷電粒子のタイミング情報を用いて、対象物の領域内のトモグラフィック画像が再構成される。
【0048】
第1の粒子追跡感応検出器ユニット110及び第2の粒子追跡感応検出器ユニット120の両方にプロセッサ(図示せず)を接続してもよく、プロセッサは、両方の感応ユニットからの情報を処理して、キャスク内の核燃料の原子番号及び密度の空間マップの推定値を算出する。電子回路におけるデータ処理の方法は、更に、荷電粒子飛跡に属するものとして識別されない信号をフィルタリングして除外することを含むことができる。第1のインジケータは、コインシデンスウィンドウ内の信号のタイミングコインシデンスに基づく。コインシデンスウィンドウサイズは、更に、関連する各電子ユニットのファームウェア内の各モジュールについて個別に設定できる。更に、コインシデンスウィンドウサイズは、モジュール内の感応検出器のタイミング特性及びモジュール配置位置における周囲放射場に基づいて更に最適化される。第2のインジケータは、更に、選択された感応検出器の位置に基づく。第2のインジケータは、更に、モジュール内の選択された感応検出器の位置と、検査対象物に対するモジュールの相対位置とに基づいて最適化される。
【0049】
また、機械的支持構造130は、図1の例示的な実施形態のように、互いの間に垂直方向に間隔を設けて上下に設置された2つの感応検出器ユニット110、120を移動可能に支持する2個以上の可動アセンブリ100を含んでもよい。検査中に可動アセンブリの組に幾何学的剛性を提供する他の機械要素、及び変動する屋外気象条件下でシステム動作を保証するために可動機械アセンブリの天候保護を提供する他の機械要素を設けてもよい。
【0050】
他の機械要素は、更に、システムの幾何学的剛性を高めるために可動アセンブリを相互接続する剛性金属バーを含むことができ、可動アセンブリは、検査対象物の周囲に規則的な幾何学的パターンで配置される。
【0051】
更に、他の機械要素は、可動アセンブリ100の天候保護のための1又は複数の可搬式天蓋を含む。可動アセンブリ内の最上位の感応ユニットの取り付け高さは、機械的に調節可能である。同じ可動アセンブリ100内の2つの感応検出器ユニット間の間隔は、機械的に調節可能である。
【0052】
例えば、図2に示すように、システム内の可動アセンブリ100の数は、検査対象物のサイズ及び他の検査要件に基づいて選択される。可動アセンブリ100は、データ収集の開始前に検査対象物300の周囲に配置される。幾何学的較正は、入射粒子飛跡及び出射粒子飛跡の収集された測定値に基づいて行うことができる。システム内の各ドリフトチューブ検出器について、時間-半径応答関数の反復較正を実施してもよい。他の実施形態は、上述のサブシステムの信頼性のある動作を保証するために必要なサポートサブシステムを含むことができる。
【0053】
例示的な一実施形態では、荷電粒子検出器は、更に、ドリフトチューブ400を含む。感応ユニットの取り付け高さは、入射宇宙線ミューオンフラックスのモデル化と検査要求に基づいて選択される。荷電粒子は、更に、粒子飛跡の2つのインジケータに基づいて、各モジュール内で識別される。
【0054】
他の荷電粒子検出器は、更に、シリコンウェーハ、薄いギャップチャンバ(TGC)、及び厚いガス電子増倍管(THGEM)検出器を含むことができる。
【0055】
高放射場で動作するために、このシステムは、荷電粒子からの信号をガンマ線誘起信号から分離するフィルタとしてコインシデンストリガを利用する。このトリガは、ドリフトチューブに取り付けられた電子ユニットのファームウェア内で実装される。このトリガは、同じ電子回路基板に接続されたチューブ間の時間ウィンドウ内のコインシデンスを使用する。時間ウィンドウ内に1より多くの信号が存在することが、トリガの第1の荷電粒子インジケータである。モジュール内の選択されたチューブの互いに対する及び関心容積体に対する幾何学的配置が、第2の荷電粒子インジケータである。第1のインジケータ及び第2のインジケータの両方が存在する場合、チューブからの信号は、同じ荷電粒子によって生成されたものとして識別される。第1のインジケータ又は第2のインジケータのいずれかがない信号は、電子回路によってフィルタリングされ除外される。
【0056】
コインシデンス時間ウィンドウサイズは、電子回路においてコマンドによって設定される。正確な時間ウィンドウサイズは、ガス特性と周囲放射場強度に基づいて最適化される。一例として、ドリフトチューブに基づく検出システムの場合、コインシデンスウィンドウのサイズは、500nsとしてもよい。コインシデンスウィンドウのサイズは、同じシステム内の異なるドリフトチューブモジュールについて、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0057】
荷電粒子トリガによって使用される第2のインジケータは、構成可能である。これは、モジュール内のチューブの相対的な位置及び関心容積体に対するモジュールの配置に基づいて最適化される。システムの例示的な実施形態として、モジュール内の選択されたチューブは、異なる層からのものであることを要求してもよい。通常は、より複雑な選択基準が設けられる。選択基準は、同じシステム内の異なるモジュールに対して同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0058】
システムの感応ユニット(スーパーモジュール)500は、図1及び図5に示すように、可動プラットフォーム100上に設置され、これにより、関心容積体内の検査対象物(例えば、乾式貯蔵キャスク)を移動させることなく、関心容積体300を検査し、画像化することができる。
【0059】
ここに開示するシステムの各可動プラットフォームは、互いの間に垂直方向に間隔を設け、一方を上に、他方を下にして垂直に設置された2つの感応ユニット(スーパーモジュール)500を搭載している。両方のスーパーモジュール500の高さは、変更可能であり、同様にユニット間の間隔も変更可能である。システムの例示的な一実施形態では、スーパーモジュール500は、断面が略正方形であり、4フィートの長さのチューブで構成されている。スーパーモジュール500間の間隔は、垂直方向に4フィートとしてもよく、可動アセンブリ全体の高さは、12フィート又はそれ以上としてもよい。これらの数値は、一例として示しており、実際の数値は、システムの特定の実施形態に応じて著しく異なる場合がある。
【0060】
取り付け高さは、スーパーモジュール500毎に調整可能である。この高さは、システムの特定の実施形態及び特定の検査対象物に応じて調整又は最適化できる。この最適化は、検査対象物のサイズと、天頂角に対する宇宙線フラックス方向分布のモデル化とに基づいて行われる。
【0061】
ここに開示するシステムは、検査対象物300(例えば、乾式貯蔵キャスク)のサイズ及び検査の要件に応じて異なる数の可動アセンブリ100を含むことができる。可動アセンブリの最小数は、2であり、この場合、通常は、検査対象物の両側に取り付けられる。
【0062】
システムの典型的な例示的実施形態では、可動アセンブリ100は、例えば、図2に示すように、上から見て規則的な幾何学的形状(三角形、正方形、五角形又は六角形)を形成する規則的なパターンで検査対象物の周囲に設置される。この配置の後、アセンブリは、データ収集中にこれ以上移動しないように、所定の位置に固定される。
【0063】
図2は、具体的な3つの異なる例を示している。図2の左上側に示す第1の例では、荷電粒子検出器を備える可動アセンブリ100が検査対象物300の三方に配置されている。この例を2つの異なる視点から見た図を図6A(斜視側面図)及び図6B(上面図)に示す。図2の右上に示す第2の例では、荷電粒子検出器を有する可動アセンブリ100が、検査対象物300の四方に配置されている。図2の下側に示す第3の例では、荷電粒子検出器を有する可動アセンブリ100が、検査対象物300の六方に配置されている。
【0064】
典型的な例示的実施形態では、可動アセンブリ100は、適切な位置に配置された後に剛性金属バーを用いて互いに接続され、これにより、データ収集の間のシステム形状の剛性が確保される。また、このシステムは、雪、強風、及び/又は直射日光等の極端な天候に対する保護のために、可搬式天蓋(portable canopy)及びプラスチック筐体を含んでもよい。
【0065】
感応ユニット同士の相対位置は、荷電粒子飛跡の測定に基づく幾何学的較正のプロセスによって決定される。この較正は、データ収集プロセス中に行われ、その結果は、検査対象物の画像化に使用される。
【0066】
図4を参照すると、システムのドリフトチューブベースの実施形態では、収集されたデータに基づく時間-半径変換関数の較正により、粒子飛跡の測定が改善される。この較正は、データ収集プロセス中に繰り返し実行される。
【0067】
本明細書において、「例示的」という語は、具体例、実例、又は説明の役割を果たすことを意味する。ここで「例示的」と記述される実施形態又は設計は、必ずしも他の実施形態又は設計よりも好ましい又は有利であると解釈されるべきではない。すなわち、例示的とは、具体的な手法で概念を提示することを意図している。移動アセンブリ内の下位の感応ユニットの取り付け高さは、更に機械的に調節可能である。
【0068】
ここに開示した実施形態及び他の実施形態、並びに本明細書に記載する機能的動作は、デジタル電子回路で実現してもよく、本明細書に開示した構造及びこれらの構造的な均等物を含むコンピュータソフトウェア、ファームウェア、又はハードウェアで実現してもよく、これらの1つ以上の組合せで実現してもよい。ここに開示した実施形態及び他の実施形態は、1つ以上のコンピュータプログラム製品、すなわち、データ処理装置によって実行され又はデータ処理装置の動作を制御するためにコンピュータ可読媒体上に符号化されたコンピュータプログラム命令の1つ以上のモジュールとして実現することもできる。コンピュータ可読媒体は、機械可読記憶デバイス、機械可読記憶基板、メモリデバイス、機械可読伝播信号に作用する組成物、又はこれらの1つ以上の組み合わせであってもよい。「データ処理装置」という用語は、データを処理するための全ての装置、デバイス、及び機械を包含し、例としてプログラム可能なプロセッサ、コンピュータ、又は複数のプロセッサ又はコンピュータがこれに含まれる。装置は、ハードウェアに加えて、当該コンピュータプログラムの実行環境を作成するコード、例えば、プロセッサファームウェア、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステム、又はこれらの1つ以上の組み合わせを構成するコードを含むことができる。伝播信号は、人工的に生成された信号、例えば、適切な受信装置に送信するために情報を符号化することによって生成された機械生成電気信号、光学信号、又は電磁信号である。
【0069】
コンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、スクリプト又はコードとも呼ばれる。)は、コンパイラ言語又はインタープリタ言語を含む如何なる形式のプログラミング言語で書いてもよく、例えば、スタンドアロンプログラムとして、若しくはモジュール、コンポーネント、サブルーチン又は演算環境での使用に適する他のユニットとして、如何なる形式で展開してもよい。コンピュータプログラムは必ずしもファイルシステム内のファイルに対応していなくてもよい。プログラムは、他のプログラム又はデータを含むファイル(例えば、マークアップ言語文書内に保存された1つ以上のスクリプト)の一部に保存してもよく、当該プログラムに専用の単一のファイルに保存してもよく、連携する複数のファイル(例えば、モジュール、サブプログラム又はコードの一部を保存する1つ以上のファイル)に保存してもよい。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ上で実行されるように展開してもよく、1つの場所に設けられた又は複数の場所に亘って分散され、通信ネットワークによって相互接続された複数のコンピュータ上で実行されるように展開してもよい。
【0070】
本明細書に開示したプロセス及びロジックフローは、入力データを処理し、出力を生成することによって機能を実現する1つ以上のコンピュータプログラムを実行する1つ以上のプログラミング可能なプロセッサによって実現してもよい。プロセス及びロジックフローは、例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate array:FPGA)又は特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit:ASIC)等の専用論理回路によって実行してもよい。
【0071】
コンピュータプログラムの実行に適するプロセッサとしては、例えば、汎用マイクロプロセッサ及び専用マイクロプロセッサの両方、並びにあらゆる種類のデジタルコンピュータの1つ以上のプロセッサ等が挙げられる。プロセッサは、通常、読出専用メモリ若しくはランダムアクセスメモリ、又はこれらの両方から命令及びデータを受け取る。コンピュータの基本的な要素は、命令を実行するプロセッサと、命令及びデータを保存する1つ以上のメモリデバイスである。また、コンピュータは、通常、データを保存するための1つ以上の大容量記憶装置、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク又は光ディスクを含み、若しくは、大容量記憶装置からデータを受信し、大容量記憶装置にデータを伝送し、又はこの両方の動作を行うように大容量記憶装置に動作的に接続されている。但し、コンピュータは、必ずしもこのような装置を有する必要はない。コンピュータプログラム命令及びデータの格納に適するデバイスには、一例として挙げれば、半導体記憶デバイス、例えば、EPROM、EEPROM及びフラッシュメモリデバイスを含む全ての形式の不揮発性メモリ、磁気ディスク、例えば、内蔵ハードディスク又はリムーバブルディスク、光磁気ディスク、並びにCD-ROMディスク及びDVD-ROMディスク等が含まれる。プロセッサ及びメモリは、専用論理回路によって補ってもよく、専用論理回路に組み込んでもよい。
【0072】
本明細書は、多くの詳細事項を含んでいるが、これらの詳細事項は、特許請求している又は特許請求することができる本発明の範囲を限定するものとは解釈されず、本発明の特定の実施形態の特定の特徴の記述として解釈される。本明細書において、別個の実施形態の文脈で開示した幾つかの特徴を組み合わせて、単一の実施形態として実現してもよい。逆に、単一の実施形態の文脈で開示した様々な特徴は、複数の実施形態に別個に具現化してもよく、適切な如何なる部分的組合せとして具現化してもよい。更に、以上では、幾つかの特徴を、ある組合せで機能するものと説明しているが、初期的には、そのように特許請求している場合であっても、特許請求された組合せからの1つ以上の特徴は、幾つかの場合、組合せから除外でき、特許請求された組合せは、部分的組合せ又は部分的な組合せの変形に変更してもよい。
【0073】
同様に、図面では、動作を特定の順序で示しているが、このような動作は、所望の結果を達成するために、図示した特定の順序又は順次的な順序で行う必要はなく、また、図示した全ての動作を行う必要もない。更に、上述した実施形態における様々なシステムのコンポーネントの分離は、全ての実施形態においてこのような分離が必要であることを意図してはいない。
【0074】
幾つかの具体例及び実施例のみを開示したが、本明細書に記述し例示した内容に基づいて、他の具体例、拡張例及び変形例を想到することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
【国際調査報告】