(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-30
(54)【発明の名称】高信頼性ナビゲーション受信機
(51)【国際特許分類】
G01S 19/20 20100101AFI20220323BHJP
G01S 19/23 20100101ALI20220323BHJP
【FI】
G01S19/20
G01S19/23
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021533486
(86)(22)【出願日】2018-12-12
(85)【翻訳文提出日】2021-06-28
(86)【国際出願番号】 IB2018059973
(87)【国際公開番号】W WO2020121033
(87)【国際公開日】2020-06-18
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501141253
【氏名又は名称】マゼランシステムズジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】リュシン,セルゲイ
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062AA09
5J062AA12
5J062AA13
5J062CC07
5J062CC13
5J062DD23
5J062EE00
5J062FF01
(57)【要約】
GNSS受信機が複数のグローバルナビゲーションサテライトシステムの衛星からのGNSS信号を受信し、そのフロントエンド部が対応するナビゲーション信号を出力する。複数のベースバンド処理チャネルがナビゲーション信号を受信して処理し、複数のナビゲーション測定値を出力し、それは複数のセットに分割されグループ化される。複数の第1アプリケーション処理ブロックの各々が、ナビゲーション測定値の対応するセットを受信してナビゲーション・ソリューションを計算する。一般アプリケーション処理ブロックは、複数の第1アプリケーション処理ブロックから受信した複数のナビゲーション・ソリューションを比較して、他のナビゲーション・ソリューションと一貫性がないか実質的に異なる欠陥ナビゲーション・ソリューションがあるかどうかを判定し、欠陥ナビゲーション・ソリューションを破棄し、残りのナビゲーション・ソリューションあるいは欠陥の無いナビゲーション・ソリューションに基づいて共通ナビゲーション・ソリューションを生成し、欠陥ナビゲーション・ソリューションに対応するナビゲーション測定値の使用を所定期間中断する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
GNSS受信機であって、
複数のグローバルナビゲーションサテライトシステム(GNSS)の衛星からGNSS信号を受信するように構成されたアンテナと、
フィルタ、増幅器、ダウンコンバータ、およびアナログ・デジタルコンバータ(ADC)の1つ以上のチェーンを含み、前記アンテナが受信したGNSS信号を処理し、対応するナビゲーション信号を出力するように構成されたフロントエンド部と、
前記フロントエンド部から出力された前記ナビゲーション信号を受信して処理するように構成された複数のベースバンド処理チャネルであって、各ベースバンド処理チャネルが前記複数のGNSSのうちの特定のシステムの特定の衛星からの特定のナビゲーション信号に対するナビゲーション測定値を出力し、さらに、複数のベースバンド処理チャネルは、各セットが複数のベースバンド処理チャネルを含むように複数のセットに分割されている、複数のベースバンド処理チャネルと、
複数の第1アプリケーション処理ブロックであって、各第1アプリケーション処理ブロックが、前記複数のベースバンド処理チャネルの対応する1つのセットから前記ナビゲーション測定値を受信し、受信したナビゲーション測定値から、位置、速度、およびタイミングのうちの少なくとも1つを含むナビゲーション・ソリューションを計算するように構成されている、複数の第1アプリケーション処理ブロックと、
前記複数の第1アプリケーション処理ブロックから複数の前記ナビゲーション・ソリューションを受信して処理するように構成された一般アプリケーション処理ブロックであって、複数のナビゲーション・ソリューションを比較して、他のナビゲーション・ソリューションと一貫性がないか実質的に異なる欠陥ナビゲーション・ソリューションがあるかどうかを判定し、そのように判定された欠陥ナビゲーション・ソリューションを破棄し、残りのナビゲーション・ソリューションに基づいて共通ナビゲーション・ソリューションを生成し、前記欠陥ナビゲーション・ソリューションに対応するナビゲーション測定値の使用を所定期間中断するように構成されたコントローラを含む、一般アプリケーション処理ブロックと、
を含む、GNSS受信機。
【請求項2】
前記複数のベースバンド処理チャネルの各セットは、特定のGNSSのナビゲーション信号を処理するために専用化されている、請求項1に記載のGNSS受信機。
【請求項3】
前記複数のベースバンド処理チャネルの各セットは、所定の周波数範囲における特定のGNSSのナビゲーション信号を処理するために専用化されている、請求項1に記載のGNSS受信機。
【請求項4】
前記一般アプリケーション処理ブロックは、欠陥ナビゲーション・ソリューションを判定するための追加情報を受信するように構成される、請求項1に記載のGNSS受信機。
【請求項5】
前記追加情報は、センサからのデータを含む、請求項4に記載のGNSS受信機。
【請求項6】
前記第1アプリケーション処理ブロックの各々が、外部ソースから差分補正を取得して前記ナビゲーション・ソリューションを生成するように構成される、請求項1に記載のGNSS受信機。
【請求項7】
前記ベースバンド処理チャネルの各々が、信号品質監視(SQM)モジュールを備える、請求項1に記載のGNSS受信機。
【請求項8】
前記コントローラは、前記ナビゲーション・ソリューション間の不整合が所定の閾値を超えた場合に、警告信号を出力するようにさらに構成されている、請求項1に記載のGNSS受信機。
【請求項9】
前記コントローラは、前記複数のベースバンド処理チャネルのうち、1つを超えるセットに対応するナビゲーション測定値が中断された場合に、警告信号を出力するように構成されている、請求項1に記載のGNSS受信機。
【請求項10】
GNSS受信機においてGNSS信号を処理する方法であって、前記方法は、
複数のグローバルナビゲーションサテライトシステム(GNSS)の衛星からGNSS信号を受信することと、
フィルタ、増幅器、ダウンコンバータ、およびアナログ・デジタルコンバータ(ADC)の1つ以上のチェーンを含むフロントエンド部で、前記GNSS信号を処理し、ナビゲーション信号を出力することと、
前記ナビゲーション信号を複数のベースバンド処理チャネルで処理し、各ベースバンド処理チャネルが、前記複数のGNSSのうちの特定のシステムの特定の衛星からの特定のナビゲーション信号に対するナビゲーション測定値を出力することと、
前記複数のベースバンド処理チャネルからの出力を複数のセットに分割し、各セットが複数のベースバンド処理チャネルから出力されたナビゲーション測定値を含むようにグループ化することと、
前記複数のベースバンド処理チャネルからの出力を、各セット毎に、対応する第1アプリケーション処理ブロックによってナビゲーション測定値を処理し、位置、速度、およびタイミングの少なくとも1つを含むナビゲーション・ソリューションを計算し、それによって、前記複数のセットに対応する複数のナビゲーション・ソリューションを生成することと、
一般アプリケーション処理ブロックによって前記複数のナビゲーション・ソリューションを処理し、前記複数のナビゲーション・ソリューションを比較して、他のナビゲーション・ソリューションと一貫性がない、または実質的に異なる欠陥ナビゲーション・ソリューションがあるかどうかを判定し、そのように判定された欠陥ナビゲーション・ソリューションを破棄し、残りのナビゲーション・ソリューションに基づいて共通ナビゲーション・ソリューションを生成することと、
前記欠陥ナビゲーション・ソリューションに対応するナビゲーション測定値の使用を所定時間中断することと、
を含む、方法。
【請求項11】
前記出力を分割してグループ化することは、前記複数のベースバンド処理チャネルを、各セットが特定のGNSSのナビゲーション信号を処理するために専用化さた複数のセットに分割することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記出力を分割してグループ化することは、前記複数のベースバンド処理チャネルを、各セットが所定の周波数範囲における特定のGNSSのナビゲーション信号を処理するために専用化された複数のセットに分割することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記欠陥ナビゲーション・ソリューションを判定するための追加情報を受信することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記追加情報は、センサからのデータを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ナビゲーション測定値の処理において、外部ソースから差分補正を取得して前記ナビゲーション・ソリューションを生成することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記ナビゲーション信号の処理は、信号品質監視(SQM)モジュールを用いて信号品質を監視することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記ナビゲーション・ソリューション間の不整合が所定の閾値を超えた場合に、警告信号を出力することを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記複数のベースバンド処理チャネルのうち、1つを超えるセットに対応するナビゲーション測定値が中断された場合に、警告信号を出力することを更に含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
本発明は、グローバルナビゲーション衛星システム(GNSS)受信機に関する。より具体的には、本発明は、複数のアプリケーション処理ブロックを含む信頼性の高いGNSS受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術の説明
GNSSを応用した技術の多くは、生命の安全(SoL)に関わる公共事業や、航空、海上、陸上輸送などの重要な任務に関わるため、厳しい信頼性が要求される。これに鑑み、信頼性とサービス完全性の概念は、システムに影響を与える様々なエラー源を考慮した上で、ナビゲーション・ソリューションの信頼レベルに基づいて定義される。また、整合性、完全性には、サービスを使用すべきでない場合に、ユーザにタイムリーな警告を提供する機能も必要である。
【0003】
現在、このような測位における信頼性の向上は、受信機自律完全性監視(RAIM)や信号品質監視(SQM)などの方法を用いて達成されている。例えば、RAIMでは、測定値の冗長性を利用して疑似距離測定値を比較し、それらの間の相対的な整合性をチェックするユーザーアルゴリズムを使用する。不一致が検出された場合、最も可能性の高い「故障した」衛星が決定される。民間航空向けのRAIMアルゴリズムにおいて通常行われる重要な仮定は、故障している衛星の数はごくわずかである、つまり複数の衛星が故障する確率は無視できる、というものである。つまり、この手法は、受信された信号の冗長性が高く、その中に「悪い」信号がわずかしか存在しない場合に、効率的に機能する。SQMでは、衛星ボード上の信号の物理的な歪みや、伝送上の問題のみを監視する。また、SQMやRAIMのような方法を使用するには、ハードウェアやファームウェアが必然的に複雑化する。
【発明の概要】
【0004】
従来のアプローチでは、GNSSナビゲーション受信機によって受信されたすべての衛星信号の測定値およびデータは、単一のアプリケーションブロックで一括して処理され、位置、速度、およびタイミング(PVT)などが計算される。これは、信号の冗長性を利用したRAIMおよびSQMの最も効率的な使用を可能にするからである。しかし、GNSSを構成するナビゲーションシステムの1つが正しく動作しないという状況が発生する場合がある(そして実際に発生した)。例えば、その原因として、特定のナビゲーションシステムの地上管制施設の動作にエラーが発生したことなどが考えられる。この場合、送信される信号の物理的品質が良好であるにもかかわらず、そのナビゲーションシステムのすべての衛星から送信されるナビゲーションデータが正しくない可能性がある。そのような場合、「悪い」信号の数が多すぎるためRAIMでは処理できず、また衛星からの信号の物理的品質が良好なままであるため、SQMも役に立たないであろう。
【0005】
従って、本発明では、各システムのナビゲーション・ソリューション(位置、速度、時間-PVT)を、それぞれのアプリケーション処理ブロックで個別に求め、これらのソリューションを一般(または複合)アプリケーション処理ブロックで共同処理するというアプローチを採用する。この場合、例えば、1つのナビゲーションシステムから得られた1つのソリューションが他のソリューションと著しく異なる場合、そのような著しく異なるソリューションを破棄し、その対応するナビゲーションシステムの使用を一時的に中断することができる。
【0006】
本発明の一実施態様によれば、GNSS受信機は、複数のグローバルナビゲーションサテライトシステム(GNSS)の衛星からGNSS信号を受信するように構成されたアンテナと、フロントエンド部と、複数のベースバンド処理チャネルと、複数の第1アプリケーション処理ブロックと、一般アプリケーション処理ブロックと、を備える。フロントエンド部は、フィルタ、増幅器、ダウンコンバータ、およびアナログ・デジタルコンバータ(ADC)の1つ以上のチェーンを含む。フロントエンド部は、前記アンテナが受信したGNSS信号を処理し、対応するナビゲーション信号を出力するように構成されている。
【0007】
複数のベースバンド処理チャネルは、フロントエンド部から出力された前記ナビゲーション信号を受信して処理するように構成されており、各ベースバンド処理チャネルは前記複数のGNSSのうちの特定のシステムの特定の衛星からの特定のナビゲーション信号に対するナビゲーション測定値を出力する。さらに、複数のベースバンド処理チャネルは、各セットが複数のベースバンド処理チャネルを含むように複数のセットに分割されている。
【0008】
各第1アプリケーション処理ブロックは、前記複数のベースバンド処理チャネルの対応する1つのセットから前記ナビゲーション測定値を受信し、受信したナビゲーション測定値から、位置、速度、およびタイミングのうちの少なくとも1つを含むナビゲーション・ソリューションを計算するように構成されている。
【0009】
一般アプリケーション処理ブロックは、前記複数の第1アプリケーション処理ブロックから複数の前記ナビゲーション・ソリューションを受信して処理するように構成される。一般アプリケーション処理ブロックは、複数のナビゲーション・ソリューションを比較して、他のナビゲーション・ソリューションと一貫性がないか実質的に異なる欠陥ナビゲーション・ソリューションがあるかどうかを判定し、そのように判定された欠陥ナビゲーション・ソリューションを破棄し、残りのナビゲーション・ソリューションに基づいて共通ナビゲーション・ソリューションを生成し、欠陥ナビゲーション・ソリューションに対応するナビゲーション測定値の使用を所定期間中断するように構成されたコントローラを含む。
【0010】
本発明の一実施例によれば、複数のベースバンド処理チャネルの各セットは、特定のGNSSのナビゲーション信号を処理するために専用化されていてもよい。あるいは、複数のベースバンド処理チャネルの各セットは、所定の周波数範囲における特定のGNSSのナビゲーション信号を処理するために専用化されていてもよい。
【0011】
本発明の一実施例によれば、一般アプリケーション処理ブロックは、欠陥ナビゲーション・ソリューションを判定するための追加情報を受信するように構成されている。前記追加情報は、センサからのデータを含んでいてもよい。
【0012】
本発明の一実施例によれば、第1アプリケーション処理ブロックの各々は、外部ソースから差分補正を取得して前記ナビゲーション・ソリューションを生成するように構成される。
【0013】
本発明の一実施例によれば、ベースバンド処理チャネルの各々は、信号品質監視(SQM)モジュールを備えている。
【0014】
本発明の一実施例によれば、一般アプリケーション処理ブロックのコントローラは、前記ナビゲーション・ソリューション間の不整合が所定の閾値を超えた場合に、警告信号を出力するようにさらに構成されている。更に、コントローラは、前記複数のベースバンド処理チャネルのうち、1つを超えるセットに対応するナビゲーション測定値が中断された場合に、警告信号を出力するように構成されていてもよい。
【0015】
本発明のもう一つの実施態様によれば、GNSS受信機においてGNSS信号を処理する方法は、(a)複数のグローバルナビゲーションサテライトシステム(GNSS)の衛星からGNSS信号を受信すること、(b)フィルタ、増幅器、ダウンコンバータ、およびアナログ-デジタル変換器(ADC)の1つ以上のチェーンを含むフロントエンド部で、前記GNSS信号を処理し、ナビゲーション信号を出力すること、(c)前記ナビゲーション信号を複数のベースバンド処理チャネルで処理し、各ベースバンド処理チャネルが、前記複数のGNSSのうちの特定のシステムの特定の衛星からの特定のナビゲーション信号に対するナビゲーション測定値を出力すること、(d)前記複数のベースバンド処理チャネルからの出力を複数のセットに分割し、各セットが複数のベースバンド処理チャネルから出力されたナビゲーション測定値を含むようにグループ化すること、(e)前記複数のベースバンド処理チャネルからの出力を、各セット毎に、対応する第1アプリケーション処理ブロックによってナビゲーション測定値を処理し、位置、速度、およびタイミングの少なくとも1つを含むナビゲーション・ソリューションを計算し、それによって、前記複数のセットに対応する複数のナビゲーション・ソリューションを生成すること、(f)一般アプリケーション処理ブロックによって前記複数のナビゲーション・ソリューションを処理し、前記複数のナビゲーション・ソリューションを比較して、他のナビゲーション・ソリューションと一貫性がない、または実質的に異なる欠陥ナビゲーション・ソリューションがあるかどうかを判定し、そのように判定された欠陥ナビゲーション・ソリューションを破棄し、残りのナビゲーション・ソリューションに基づいて共通ナビゲーション・ソリューションを生成すること、及び(g)欠陥ナビゲーション・ソリューションに対応するナビゲーション測定値の使用を所定時間中断すること、を含む。
【0016】
本発明の一実施例によれば、出力を分割してグループ化することは、前記複数のベースバンド処理チャネルを、各セットが特定のGNSSのナビゲーション信号を処理するために専用化された複数のセットに分割することを含む。また、出力を分割してグループ化することは、前記複数のベースバンド処理チャネルを、各セットが所定の周波数範囲における特定のGNSSのナビゲーション信号を処理するために専用化された複数のセットに分割することを含んでいてもよい。
【0017】
欠陥ナビゲーション・ソリューションを判定するための追加情報を受信することをさらに含んでいてもよい。追加情報は、センサからのデータを含んでいてもよい。
【0018】
本発明は、添付の図面において、限定としてではなく例として示されており、同様の参照番号は同様の構成要素を指している。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態によるGNSS受信機を模式的に示すブロック図である。
【
図2】異なるGNSSシステム(GPS、GLONASS、Galileo、BeiDou、及びQZSS)からの、現在利用可能なGNSS信号とその周波数範囲の例を示す表である。
【
図3】本発明の一実施形態によるGNSS受信機においてGNSS信号を処理する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の一実施形態によるGNSS受信機100を模式的に示す図である。GNSS受信機100は、GNSSアンテナ10と、フロントエンド部12と、複数のベースバンド処理チャネル20と、複数の第1アプリケーション処理ブロック30と、一般アプリケーション処理ブロック40とを含む。アンテナ10は、複数のグローバルナビゲーション衛星システム(GNSS)の衛星からGNSS信号を受信する。GNSSには、米国のGlobal Positioning System(GPS)、ロシアのGlobal Orbiting Navigation Satellite System(GLONASS)、欧州連合のGalileo、中国の地域BeiDou Satellite Navigation System(BDS、旧称Compass)、日本のQuasi-Zenith Satellite System(QZSS)が含まれるが、これらに限定されない。
【0021】
フロントエンド部12は、当業者によく知られているように、フィルタ、増幅器、ダウンコンバータ、およびアナログ-デジタル変換器(ADC)の1つ以上のチェーンを含む。フロントエンド部12は、ハードウェア、任意のタイプの集積回路(IC)、ソフトウェア、およびそれらの任意の組み合わせで実装されてもよく、アンテナ12によって受信されたGNSS信号を処理して、対応するナビゲーション信号14を出力するように構成されている。
【0022】
また、GNSS受信機100の残りの部分は、CPU、RAM、ROMなどを含むコンピュータとして構成されてもよく、
図1に図示されたものを含む様々な機能ブロックを有する。これらの機能ブロックは、それぞれの機能を実現するコンピュータプログラムをインストールすることで、ソフトウェア的に構成することができる。しかし、機能ブロックの一部または全部を、あらゆる種類の集積回路(IC)を含むハードウェアで構成することも可能である。
【0023】
複数のベースバンド処理チャネル20(20-1,20-2,...,20-M)は、フロントエンド部12から出力されるナビゲーション信号14を受信して処理する。ベースバンド処理チャネル20の各々は、複数のGNSSのうち特定のシステムの特定の衛星からの特定のナビゲーション信号14に対するナビゲーション測定値22を出力する。
図1に示すように、複数のベースバンド処理チャネル20は、各セット24が複数のベースバンド処理チャネル20を含むように、複数のセット24(24-1、24-2、...、24-N)に分割されている。本発明の一実施形態によれば、
図1に示すように、ベースバンド処理チャネル20の各々は、各々のベースバンドにおける受信信号の物理的品質を監視するように、信号品質監視(SQM)モジュール26を備えてもよく、特定の基準を満たさないナビゲーション信号14は、測定に不利な影響を与えないように排除または廃棄されてもよい。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、複数のベースバンド処理チャネル20の各セット24は、特定のGNSSに属するナビゲーション信号14を処理するために専用化されてもよい。例えば、第1のセット24-1は、GPSからのナビゲーション信号14を処理するために専用化されてもよく、第2のセット24-2は、GLONASSからのナビゲーション信号14を処理するために専用化されてもよい、などである。あるいは、複数のベースバンド処理チャネル20の各セット24は、特定のGNSSの所定の周波数範囲でナビゲーション信号14を処理する専用のものであってもよい。例えば、第1のセット24-1は、GPSL1のナビゲーション信号14を処理し、第2のセット24-1は、ナビゲーション信号GPSL2を処理する、などであってもよい。
図2は、異なるGNSSシステムからの現在利用可能なGNSS信号とその周波数範囲の例を示している。上述したように、各ベースバンド処理チャネルは、所定のGNSSの特定の衛星からのナビゲーション信号16の測定値(およびその他のデータ)22を生成する。
【0025】
図1に示すように、複数の第1アプリケーション処理ブロック30(30-1、30-2、...、30-N)が複数のセット24(24-1、24-2、...、24-N)に対して提供されており、各第1アプリケーション処理ブロック30は、複数のベースバンド処理チャネル20の対応するセット24からナビゲーション測定値22を受信する。各第1アプリケーション処理ブロック30-nは、位置、速度、およびタイミングの少なくとも1つを含むナビゲーション・ソリューション32-nを計算して出力する(ここで、n=1、2、...N)。例えば、第1アプリケーション処理ブロック30-1は、対応するセット24-1内の複数のベースバンド処理チャネル20-1~20-jを介して得られたナビゲーション測定値22に基づいて、ナビゲーション・ソリューション32-1を算出する。さらに、
図1に示すように、第1アプリケーション処理ブロック30の各々は、外部ソースから差分補正34を取得して、ナビゲーション・ソリューションを生成してもよい。
【0026】
一般アプリケーション処理ブロック40は、複数の第1アプリケーション処理ブロック30から複数のナビゲーション・ソリューション32を受け取り、処理する。一般アプリケーション処理ブロック40は、複数のナビゲーション・ソリューション32を比較し、他のナビゲーション・ソリューション32と矛盾しているか、または実質的に異なっている欠陥ナビゲーション・ソリューション32-iがあるかどうかを決定するコントローラ42を含む。論理的に、または理想的な状況では、各々の第1アプリケーション処理ブロック30によって独立して計算されるナビゲーション・ソリューション32(32-1、32-2、...、32-N)は、同じGNSS受信機100について得られるナビゲーション・ソリューションであるので、所定の条件および状況下で予測可能及び/または統計的な誤差内で互いに一致するであろう。
【0027】
しかしながら、ナビゲーションシステムの1つが、その地上管制施設における作動エラーなどのシステム上の問題があるような状況では、同じナビゲーションシステム内のすべての衛星から送信されるナビゲーションデータが正しくない可能性がある。このようなシステムワイズのエラーは、必ずしも送信される信号の物理的品質を悪化させるとは限らないので、SQMモジュール26は、このような誤った信号を検出及び/または除去することができない。また、特定のナビゲーションシステム用のベースバンド処理チャネル20の特定のセット24で受信された信号のすべてが誤っている可能性があるため、エラーが複数の衛星信号において生じる確率が無視できることを前提としているRAIMアルゴリズムもまた、アプリケーション処理ブロック30で採用された場合に機能しない。
【0028】
従って、そのようなシステムワイズの障害や複数の誤った信号が存在する場合、対応する第1アプリケーション処理ブロック30-iで計算されたナビゲーション・ソリューション32-iは、残りの第1のアプリケーション処理ブロック30で計算された他のナビゲーション・ソリューション32と矛盾するか、または実質的に異なる可能性が高い。従って、一般アプリケーション処理ブロック40のコントローラ42は、そのようなナビゲーション・ソリューション32-iを欠陥ナビゲーション・ソリューションとして判定し、欠陥ナビゲーション・ソリューション32-iを破棄し、残りのナビゲーション・ソリューション32に基づいて共通ナビゲーション・ソリューション44を生成する。コントローラ42は、ナビゲーション・ソリューション32を計算するための第1アプリケーション処理ブロック30-iにおいて、欠陥ナビゲーション・ソリューション32-iに対応する、即ち、それを計算するために使用されたナビゲーション測定値22の使用を、所定の時間、中断する。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、一般アプリケーション処理ブロック40は、欠陥ナビゲーション・ソリューションを判定するための追加情報46を受信してもよい。追加情報46は、慣性センサ、光学センサなどの外部センサ48からのデータを含んでもよい。
【0030】
さらに、コントローラ42は、ナビゲーション・ソリューション32間の不整合が所定の閾値を超えた場合に、警告信号48を出力してもよい。コントローラ42は、さらに、複数のベースバンド処理チャネルの複数のセット24に対応するナビゲーション測定値32の使用が中断されている場合に、警告信号を出力するように構成されてもよい。
【0031】
図2は、本発明の一実施形態による、GNSS受信機でGNSS信号を処理するための方法200を示す。GNSS受信機は、
図1に示すGNSS受信機100であってもよい。本方法は、任意のタイプの集積回路(IC)を含むハードウェア、ソフトウェア(コンピュータプログラム)、およびそれらの任意の組み合わせを用いて実行されてもよい。例えば、本方法は、その中にCPU、RAM、ROMなどを含むGNSS受信機によって実行されてもよく、図示されているような様々な機能ブロックを有する。
【0032】
複数のグローバルナビゲーションサテライトシステム(GNSS)の衛星からの複数のGNSS信号がGNSSアンテナで受信される(202)。受信されたGNSS信号は、次に、一連のフィルタ、増幅器、ダウンコンバータ、およびアナログ・デジタルコンバータ(ADC)を有する1つまたはそれ以上のチェーンを含むフロントエンド部によって処理され、複数のナビゲーション信号が出力される(204)。次に、ナビゲーション信号は、複数のベースバンド処理チャネルを介して処理され、各ベースバンド処理チャネルは、複数のGNSSのうちの特定のシステムの特定の衛星からの特定のナビゲーション信号に対するナビゲーション測定値を出力する(206)。
【0033】
複数のベースバンド処理チャネルからの出力は複数のセットに分割され、各セットが複数のベースバンド処理チャネルから出力されたナビゲーション測定値を含むようにグループ化される(208)。複数のベースバンド処理チャネルからの出力は、各セットが特定のGNSSのナビゲーション信号を含むように、或いは、各セットが所定の周波数範囲の特定のGNSSのナビゲーション信号を含むように、グループ化されてもよい。
【0034】
グループ化されたナビゲーション測定値は、対応する第1アプリケーション処理ブロックを介して各セットごとに処理され、各セットのナビゲーション・ソリューションが計算されることにより、複数のセットに対応する複数のナビゲーション・ソリューションが生成される(210)。ナビゲーション・ソリューションは、位置、速度、およびタイミングの少なくとも1つを含む。
【0035】
第1アプリケーション処理ブロックから複数のナビゲーション・ソリューションは、一般アプリケーション処理ブロックに受け取られ、そこで処理される(212)。複数のナビゲーション・ソリューションを比較することによって、それらの間に欠陥のあるナビゲーション・ソリューションがあるかどうかが判断される(214)。例えば、他のナビゲーション・ソリューションと一貫性がない、または実質的に異なるナビゲーション・ソリューションは、欠陥がある、または誤っていると判断され得る。例えば、任意の統計的計算を使用することにより、ナビゲーション・ソリューション全体に対する特定のナビゲーション・ソリューションの偏差を決定することができる。このような偏差に対する各閾値を用いて、ナビゲーション測定値の特定のセットから得られたナビゲーション・ソリューション(例えば、GNSS受信機の位置、GNSS受信機の速度、またはタイミングソリューション)が不良であるかどうかを判断してもよい。欠陥のあるナビゲーション・ソリューションを決定するプロセスは、例えば、慣性センサ及び/または光学センサなどの外部センサからのデータなど、外部ソースから受信した追加情報を使用してもよい。
【0036】
このようにして決定された欠陥ナビゲーション・ソリューションは廃棄され(216)、残りのナビゲーション・ソリューションに基づいて共通ナビゲーション・ソリューションが生成される(218)。共通ナビゲーション・ソリューション、または最終的なナビゲーション・ソリューションは、残りのナビゲーション・ソリューションの平均値であってもよい。ステップ214において欠陥のあるナビゲーション・ソリューションが見つからない場合、
図3に示すように、複数の第1アプリケーション処理ブロックからのナビゲーション・ソリューションの全てが共通ナビゲーション・ソリューションの生成(216)に使用されてもよく、これにより、最終的なナビゲーション・ソリューションの信頼性を高めることができる。
【0037】
欠陥のあるナビゲーション・ソリューションが見つかった場合には、欠陥ナビゲーション・ソリューションを生成したナビゲーション測定値の使用を、所定の時間、中断してもよい(220)。
【0038】
欠陥ナビゲーション・ソリューションが見つかったということは、システム的なエラーまたは異常な広範囲のエラーが発生したことを示しているので、警告信号を発してもよい。例えば、このような警告信号は、ナビゲーション・ソリューション間の不整合が所定の閾値を超えた場合、または、1つより多くのナビゲーション・ソリューションが不良であると判定され、それに対応するナビゲーション測定値のセットの使用が中断された場合に出力されてもよい。
【0039】
本発明をいくつかの好ましい実施形態によって説明してきたが、代替物、置換物、修正物、及び様々な代用物があり、それらは本発明の範囲内である。また、本発明の方法及び装置を実施する多くの代替な方法があることにも留意すべきである。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の主旨及び範囲内に含まれるものとして、そのようなすべての代替形態、置換形態、及び様々な代替均等物を含むと解釈されることが意図されている。
【国際調査報告】