(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-30
(54)【発明の名称】抗マトリックスメタロプロテイナーゼ-7(MMP-7)阻害抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220323BHJP
C07K 16/40 20060101ALI20220323BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20220323BHJP
A61K 31/7068 20060101ALI20220323BHJP
A61K 31/282 20060101ALI20220323BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220323BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220323BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220323BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/40 ZNA
C12P21/08
A61K31/7068
A61K31/282
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P43/00 121
G01N33/574 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021543346
(86)(22)【出願日】2020-02-10
(85)【翻訳文提出日】2021-09-17
(86)【国際出願番号】 IL2020050158
(87)【国際公開番号】W WO2020161724
(87)【国際公開日】2020-08-13
(32)【優先日】2019-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】516040109
【氏名又は名称】イェダ リサーチ アンド ディベロップメント カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】YEDA RESEARCH AND DEVELOPMENT CO.LTD.
【住所又は居所原語表記】at the Weizmann Institute of Science, P.O.Box 95, 7610002 Rehovot, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】サギ, イリット
(72)【発明者】
【氏名】モーハン, ヴィシュヌ
【テーマコード(参考)】
4B064
4C085
4C086
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA20
4B064DA05
4B064DA14
4C085AA14
4C085AA33
4C085CC22
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA17
4C086MA03
4C086MA04
4C086ZB26
4C206AA01
4C206AA02
4C206JB16
4C206MA03
4C206MA04
4C206ZB26
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA51
4H045FA74
(57)【要約】
抗体の軽鎖上にNからCに向かって順に配置された配列番号3(CDR1)、4(CDR2)及び5(CDR3)、並びに抗体の重鎖上にNからCに順に配置された配列番号6(CDR1)、7(CDR2)及び8(CDR3)で示される相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列を有する、MMP-7の触媒部位に結合する抗原認識領域を含む抗体。
【選択図】
図5B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体の軽鎖上にNからCに向かって順に配置された配列番号3(CDR1)、4(CDR2)及び5(CDR3)、並びに抗体の重鎖上にNからCに順に配置された配列番号6(CDR1)、7(CDR2)及び8(CDR3)で示される相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列を有する、MMP-7の触媒部位に結合する抗原認識領域を含む抗体。
【請求項2】
配列番号1に示されるVLアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
配列番号2に示されるVHアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
検出可能部分又は治療部分に付着している、請求項1~3のいずれかに記載の抗体。
【請求項5】
MMP-7の不均衡な又は異常な活性に関連する疾患の処置を必要とする対象において、MMP-7の不均衡な又は異常な活性に関連する疾患を処置する方法であって、治療有効量の請求項1に記載の抗体を前記対象に投与し、それにより、前記対象におけるMMP-7の不均衡な又は異常な活性に関連する前記疾患を処置することを含む、方法。
【請求項6】
前記疾患が癌である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記癌が膵臓癌である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
対象においてMMP-7の不均衡な又は異常な活性に関連する疾患を診断する方法であって、MMP-7の発現を分析するために前記対象の試料を請求項1に記載の抗体と接触させることを含み、前記MMP-7の発現のアップレギュレーションが、MMP-7の不均衡な又は異常な活性に関連する前記疾患を示す、方法。
【請求項9】
前記疾患が癌である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記癌が膵臓癌である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
癌の処置を必要とする対象において癌を処置する方法であって、
(a)前記対象の試料において、MMP-7の量について分析すること;及び
(b)治療有効量の請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体を、前記MMP-7の前記量が所定のレベルを超えていることを確認した上で前記対象に投与し、それにより、前記癌を処置することを含む、方法。
【請求項12】
癌の処置を必要とする対象において癌を処置する方法であって、
(a)前記対象のサンプルにおいて、請求項1~3のいずれか一項に記載される抗体を使用してMMP-7の量について分析をすること、及び
(b)前記MMP-7の前記量が所定のレベルを超えていることを確認したうえで前記MMP-7の量をダウンレギュレートする治療有効量の薬剤を前記対象に投与し、それによって前記癌を処置することを含む、方法。
【請求項13】
前記分析が抗体を使用して行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記抗体が請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
膵臓癌の処置を必要とする対象において膵臓癌を処置する方法であって、治療有効量のMMP-7の触媒部位に結合する抗原認識領域を含む抗体を前記対象に投与することを含み、前記抗体が、前記MMP-7の活性を阻害し、前記MMP-7に対する前記抗体のKiが、MMP2又はMMP9に対する前記抗体のKiよりも少なくとも5倍低く、それにより、前記膵臓癌を処置する、方法。
【請求項16】
前記抗体が請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
化学療法剤を前記対象に投与することを更に含む、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記化学療法剤がヌクレオシド類縁体である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ヌクレオチド類縁体がゲムシタビンを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記化学療法剤がオキサリプラチンである、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記化学療法剤の用量が、単剤として使用される場合、標準用量未満である、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体を含む医薬組成物。
【請求項23】
請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体と化学療法剤とを含む製造品。
【請求項24】
前記化学療法剤がヌクレオシド類縁体である、請求項23に記載の製造品。
【請求項25】
前記ヌクレオチド類縁体がゲムシタビンを含む、請求項24に記載の製造品。
【請求項26】
前記化学療法剤がオキサリプラチンである、請求項23に記載の製造品。
【請求項27】
前記抗体及び前記化学療法剤が単一の組成物に製剤化される、請求項23に記載の製造品。
【請求項28】
配列番号3、4、5、6、7及び8からなる群より選択される少なくとも1つのCDRアミノ酸配列をコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項29】
配列番号3~5に示されるCDRアミノ酸配列をコードする、請求項28に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項30】
配列番号6~8に示されるCDRアミノ酸配列をコードする、請求項28に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項31】
配列番号3~8に示されるCDRアミノ酸配列をコードする、請求項28に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項32】
癌の処置に使用するための、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項33】
前記癌が膵臓癌である、請求項32に記載の抗体。
【請求項34】
癌の処置に使用するための、請求項23~27のいずれか一項に記載の製造品。
【請求項35】
前記癌が膵臓癌である、請求項34に記載の製造品。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2019年2月10日に出願されたイスラエル特許出願第264768号の優先権の利益を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【配列表の記載】
【0002】
本出願の出願と同時に提出された、81393バイトを含む、2020年2月6日に作成された4,599 Sequence Listing.txtという表題のASCIIファイルは、参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0003】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、MMP-7の触媒部位に結合する抗体に関する。抗体は、癌の処置のために使用することができ、より詳しくは、膵臓癌の処置のために使用することができるが、これに限定されない。
【背景技術】
【0004】
マトリックスメタロプロテイナーゼ7(MMP-7、マトリリシン)は、複数の腫瘍タイプの臨床挙動との関連のために、次世代癌治療薬の開発の重要な標的として浮上している。これは、進行性結腸直腸癌を有する患者における全生存の独立した予後因子である。MMP-7の除去は、多発性腸新生物マウスモデルにおいて腫瘍形成を有意に減少させた。同様に、MMP-7の過剰発現は、MMTV-neuマウス乳癌モデルにおいて腫瘍発生を促進することが見出された。MMP-7が初期腫瘍成長に寄与する機序は、まだ十分に定義されていない。MMP-7ヌルマウスは、膵管結紮後に異形成病変が失われやすく、広域MMP阻害剤によるMMP-7の阻害は腸ポリープの数を減少させることが示されている。
【0005】
MMP-7は、ヘモペキシン様ドメインを欠き、その主な構造がシグナルペプチド、プロペプチド及び亜鉛含有触媒ドメインからなることから、MMPの中でも特有である3。MMP-7は分泌型MMPであり、他のMMPと同様に、プロペプチドの切断後に活性化される。その活性化をもたらすプロテアーゼは、まだ完全には定義されていない。MMP-7は、IV型コラーゲン、ゼラチン、ラミニン、エンタクチン/ニドゲン及びテネイシン-Cのような巨大分子の分解に関与している。これらの古典的な酵素的役割に加えて、MMP-7は、シグナル伝達経路の改変及びサイトカインの活性の調節に関与している。MMP-7の非カノニカルシグナル伝達関連活性において、最もよく特徴づけられた基質としては、Fas-L、Fas-R/CD-95、TNF-α、VEGF、プラスミノーゲン、E-カドヘリン及びインテグリンβ-4が挙げられる。MMP-7は、ErbB4活性の調節、IL-17が介在する上皮から間葉への移行の誘導に関与し、Wnt/β-カテニン経路を介して侵襲促進性エフェクター分子として作用する。これらの効果により、MMP-7は腫瘍細胞並びに間質細胞に作用し、プロテアーゼウェブ及びシグナル伝達カスケードの両方において複数の下流及び上流の意味を持つ興味深い標的となる。膵臓癌において、血清MMP-7は、その発現の増加が切除不能な疾患と相関していたことから、最近、術前予後マーカーであることが示された。以前の証拠は、血清、血漿及び膵液中のMMP-7が、関連する疾患指標と共に、診断マーカーとして有用であることを示した。
【0006】
膵臓癌は、致死的で侵襲性の高い悪性腫瘍であり、2030年までに米国における癌関連死の第2の主因になると推定されている。その発生率は劇的に増加しているが、膵臓癌の処置選択肢は依然として少なく、新規の処置戦略が緊急に必要とされている。
【0007】
背景技術には、MMP-7に対して作製された抗体を開示する国際公開第2012/056455号が含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【0009】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、抗体の軽鎖上にNからCに向かって順に配置された、配列番号3(CDR1)、4(CDR2)及び5(CDR3)、並びに抗体の重鎖上にNからCに順に配置された配列番号6(CDR1)、7(CDR2)及び8(CDR3)で示される相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列を有する、MMP-7の触媒部位に結合する抗原認識領域を含む抗体が提供される。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、MMP-7の不均衡な又は異常な活性に関連する疾患の処置を必要とする対象において、MMP-7の不均衡な又は異常な活性に関連する疾患を処置する方法であって、治療有効量の請求項1に記載の抗体を対象に投与し、それにより、該対象におけるMMP-7の不均衡な又は異常な活性に関連する疾患を処置することを含む、方法が提供される。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、対象においてMMP-7の不均衡な又は異常な活性に関連する疾患を診断する方法であって、MMP-7の発現を分析するために対象の試料を本明細書に記載の抗体と接触させることを含み、MMP-7の発現のアップレギュレーションが、MMP-7の不均衡な又は異常な活性に関連する疾患を示す、方法が提供される。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、癌の処置を必要とする対象において癌を処置する方法であって:
(a)MMP-7の量について対象のサンプルにおいて分析する工程;及び
(b)MMP-7の量が所定のレベルを超えていることを確認したうえで、治療有効量の本明細書に記載の抗体を対象に投与し、それによって癌を処置することを含む、方法が提供される。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、癌の処置を必要とする対象において癌を処置する方法であって:
(a)本明細書中に記載される抗体を使用して、MMP-7の量について対象のサンプルにおいて分析すること;及び
(b)MMP-7の量が所定のレベルを超えていることを確認したうえで、MMP-7の量をダウンレギュレートする治療有効量の薬剤を対象に投与し、それによって癌を処置することを含む、方法が提供される。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、膵臓癌の処置を必要とする対象において膵臓癌を処置する方法であって、治療有効量のMMP-7の触媒部位に結合する抗原認識領域を含む抗体を対象に投与することを含み、抗体が、MMP-7の活性を阻害し、MMP-7に対する抗体のKiが、MMP2又はMMP9に対する抗体のKiよりも少なくとも5倍低く、それにより膵臓癌を処置する、方法が提供される。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、本明細書中に記載される抗体を含む医薬組成物が提供される。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、配列番号3、4、5、6、7及び8からなる群より選択される少なくとも1つのCDRアミノ酸配列をコードする単離されたポリヌクレオチドが提供される。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、本明細書中に記載される抗体及び化学療法剤を含む製造品が提供される。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態によれば、抗体は、配列番号1に示されるVLアミノ酸配列を有する。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態によれば、抗体は、配列番号2に示されるVHアミノ酸配列を有する。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態によれば、抗体は、検出可能部分又は治療部分に付着している。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態によれば、疾患は癌である。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態によれば、癌は膵臓癌である。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態によれば、分析することは、抗体を使用して行われる。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態によれば、抗体は本明細書中に記載される抗体である。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ポリヌクレオチドは、配列番号3~5に示されるCDRアミノ酸配列をコードする。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ポリヌクレオチドは、配列番号6~8に示されるCDRアミノ酸配列をコードする。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ポリヌクレオチドは、配列番号3~8に示されるCDRアミノ酸配列をコードする。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態によれば、方法は、対象に化学療法剤を投与する工程を更に含む。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態によれば、化学療法剤はヌクレオシド類縁体である。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ヌクレオチド類縁体はゲムシタビンを含む。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態によれば、化学療法剤はオキサリプラチンである。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態によれば、化学療法剤の用量は、単剤として使用される場合、標準用量未満である。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態によれば、化学療法剤はヌクレオシド類縁体である。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ヌクレオチド類縁体はゲムシタビンを含む。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態によれば、化学療法剤はオキサリプラチンである。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態によれば、抗体及び化学療法剤は、単一の組成物に製剤化される。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態によれば、製造品は、癌の処置における使用のためのものである。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態によれば、癌は膵臓癌である。
【0039】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び/又は科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと同様又は同等の方法及び材料を本発明の実施形態の実施又は試験に使用することができるが、例示的な方法及び/又は材料を以下に説明する。矛盾する場合は、定義を含む特許明細書が優先される。更に、材料、方法、及び例は例示にすぎず、必ずしも限定することを意図するものではない。
多角的な視点からの図面の簡単な説明
【0040】
添付の図面を参照して、本発明のいくつかの実施形態を例としてのみ本明細書に記載する。ここで詳細に図面を具体的に参照すると、示される詳細は、例として、本発明の実施形態の例示的な議論を目的とすることが強調される。これに関して、図面と共に考慮される説明によれば、本発明の実施形態がどのように実施され得るかは当業者に明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1A】合成Zn三脚(Zn Tripod)又はヒトMMP-7触媒酵素単独での免疫化は、活性化酵素に特異的に結合する抗体候補を生じなかった。免疫応答を、Zn三脚単独で免疫したマウスからの出血において、抗原Zn-三脚-KLH(Zn三脚)、MMP-7活性化型、MMP-7チモーゲン/プロ型及びBSA対照に対するELISAを使用して、血清で調べた。グラフは、様々な抗原希釈物との結合を示す。ELISAは、MMP-7活性化立体構造又はチモーゲン形態に結合する抗体の存在を示さなかった。Zn三脚に対する反応性が観察された。
【
図1B】合成Zn三脚(Zn Tripod)又はヒトMMP-7触媒酵素単独での免疫化は、活性化酵素に特異的に結合する抗体候補を生じなかった。また、組換えヒトMMP-7活性型単独で免疫したマウスからの出血を使用してELISAで免疫応答を確認した。弱い応答は、MMP-7プロ形態及びMMP-7活性型の両方に結合することを特徴とした。特に、Zn三脚コーティングウェルでは結合は観察されなかった。
【
図2A】交互免疫化により、酵素の活性型に対する高い結合親和性及び選択性を有する抗MMP-7抗体が得られる。雌性BALB/cマウスを、完全フロイントアジュバント又は活性型の組換えヒトMMP-7で乳化した合成Zn三脚で3週間間隔で免疫した。進行性の免疫応答が、ELISAを使用する反復注射の関数として観察された。18週目に、高い結合親和性を有する候補からのB細胞をハイブリドーマ生成のために選択した。
【
図2B】交互免疫化により、酵素の活性型に対する高い結合親和性及び選択性を有する抗MMP-7抗体が得られる。ELISAを使用して試験した場合の融合前の選択されたマウスの血清免疫応答は、Zn三脚及びMMP-7の両方に対して二重特異性を示し、様々な希釈でMMP-14との無視できる結合を示した。
【
図2C】交互免疫化により、酵素の活性型に対する高い結合親和性及び選択性を有する抗MMP-7抗体が得られる。MMP-7活性酵素(Kd=43.1±1.43nM)を用いた精製ハイブリドーマモノクローナル抗体GSM-192結合曲線。抗体は、他のMMPのパネルに効果的に結合せず、MMP-7に対するその高い特異性を示した。
【
図2D】交互免疫化により、酵素の活性型に対する高い結合親和性及び選択性を有する抗MMP-7抗体が得られる。ヒトMMP-7の酵素活性に対するGSM-192 Fabの効果を、短い蛍光発生ペプチドを使用してin vitroで調べた。GSM-192 Fabは、Ki=131.98±10.23nMでMMP-7活性を阻害した。MMP-14、MMP--9及びMMP-12等の関連するMMPは、GSM-192の存在下において無視できるほどの効果を示したか、又は全く効果を示さずに、継続した活性を示した。
【
図2E】交互免疫化により、酵素の活性型に対する高い結合親和性及び選択性を有する抗MMP-7抗体が得られる。高度に保存されたMMP活性部位を模倣する合成Zn三脚の構造を示す。この構造では、3つのヒスチジン(赤色で強調表示)とのZn配位は、すべてのMMP活性部位と同様に保存されている。
【
図2F】交互免疫化により、酵素の活性型に対する高い結合親和性及び選択性を有する抗MMP-7抗体が得られる。ドットブロットは、種々の濃度において高い親和性で、活性型の酵素への抗MMP-7 Abの選択的結合を示した。GSM-192はチモーゲン形態に結合しなかった。
【
図3A】GSM-192構造及びドッキングは、酵素の活性化形態内の保存された活性部位に近い結合部位に対する抗体の固有の親和性を示す。リボンダイアグラムで表されるGSM-192のFab断片の結晶構造(2.3Å)。重鎖(薄い緑色)及び軽鎖(濃い緑色)が示されている(PDB:6FBJ)。
【
図3B】GSM-192構造及びドッキングは、酵素の活性化形態内の保存された活性部位に近い結合部位に対する抗体の固有の親和性を示す。活性化ヒトMMP-7に対するGSM-192のドッキングモデルは、酵素活性部位のリム(エキソサイト)への直接結合を明らかにした。MMP-7の表面はベージュ色で示されており、半透明になっている。抗体は、3つの側鎖:Leu固定スポット(紫色)の近くに位置するL100H、R101H及びY33Lを示す濃い緑色で輪郭が描かれている。後者は、エキソサイトを固定する活性部位でMMP-7と相互作用する。アセトヒドロキサム酸(AHA)は、炭素原子が黄色、酸素が赤色、窒素が青色の球棒モデルとして示されている。
【
図3C】GSM-192構造及びドッキングは、酵素の活性化形態内の保存された活性部位に近い結合部位に対する抗体の固有の親和性を示す。MMP-7(ベージュ色)のドッキング構造、GSM-192(緑色)複合体は、優れた表面相補性、及び小さい阻害剤AHAが界面に挿入し、Zn2+イオンに結合することができる小さい「トンネル」を示す。
【
図3D】GSM-192構造及びドッキングは、酵素の活性化形態内の保存された活性部位に近い結合部位に対する抗体の固有の親和性を示す。活性部位亜鉛(灰色)付近の重要な接触を示す球棒モデル。
【
図4A】MMP-7の遺伝子サイレンシング及び阻害性抗体GSM-192の両方による阻害は、in vitroで腫瘍細胞死をもたらす。MMP-7レンチウイルスサイレンシングは、FACSに基づく細胞周期分析において、AsPC-1細胞死のジャンプを示すサブG1ピークの増加をもたらした。2つのベクター、レンチウイルス1(LV-1)及びレンチウイルス2(LV-2)は、サブG1ピークの同様の増加を示した。
【
図4B】MMP-7の遺伝子サイレンシング及び阻害性抗体GSM-192の両方による阻害は、in vitroで腫瘍細胞死をもたらす。MMP-7阻害は、AsPC-1細胞におけるアポトーシスを介して腫瘍細胞死をもたらす。FACS分析は、漸増用量のGSM-192 Fabによる処理後に増大したアネキシンV関連アポトーシス(Q1+Q2)を示した。ここで出力されるFACSデータは、初期アポトーシス細胞をQ1として示し、後期アポトーシス細胞をQ2として示す。アポトーシスを受ける細胞の割合の増加を、平均値±s.e.mを使用してプロットした(灰色棒グラフ)。同じパイプラインを使用して作製したLOXL-2 Fabを処理対照として使用した。
【
図4C】MMP-7の遺伝子サイレンシング及び阻害性抗体GSM-192の両方による阻害は、in vitroで腫瘍細胞死をもたらす。GSM-192 Fab処理の有無にかかわらず、細胞溶解物におけるFasL発現を示すウエスタンブロット。抗MMP-7 Fab処理細胞におけるFasLレベルの全体的な増加が観察された。1.5μM濃度の抗LOXL-2 Fab及びアポトーシス促進性薬物であるスタウロスポリン(STS)を処理対照として使用した。αチューブリンをサンプル調製対照として使用した。グラフ中のデータは、αチューブリン正規化平均値±s.e.m.を表す。
【
図5A】GSM-192処理は、スクラッチアッセイ及びトランスウェルアッセイにおいてそれぞれ細胞遊走を遅延又は減少させる。GSM-192による処理は、標準的なスクラッチアッセイにおいて細胞遊走を遅らせた。処理の7時間後、対照抗体GST(非特異的プールIgG)処理ウェルはスクラッチを閉じるが、GSM-192処理ウェルは閉じない。データは平均値±s.e.m.を表し、有意性を両側t検定で評価した。ケールバー、20μm。**P≦0.01。
【
図5B】GSM-192処理は、スクラッチアッセイ及びトランスウェルアッセイにおいてそれぞれ細胞遊走を遅延又は減少させる。GSM-192は、処理の15時間後にトランスウェルメンブレンを横切って遊走する細胞を有意に減少させる。データは平均値±s.e.m.を表し、有意性を両側t検定で評価した。スケールバー、20μm。***P≦0.001。
【
図6A】MMP-7発現及びGSM-192処理後の細胞生存。様々な膵臓癌細胞株におけるMMP-7発現を示す細胞培養培地のウエスタンブロット分析。
【
図6B】MMP-7発現及びGSM-192処理後の細胞生存。MTT細胞生存アッセイを使用して、用量応答曲線当てはめ分析を生成し、AsPC-1及びCFPAC-1膵管腺癌細胞に対する様々な濃度のGSM-192処理に関するIC50値を得た。これらのIC
50濃度は、AsPC-1については2.33μMであり、CFPAC-1については4.34μMであり、更なる実験のためのAb濃度の選択を示した。
【
図7A】GSM-192を用いたヒトPDAC組織の免疫組織化学染色。市販の抗MMP-7Ab染色は、ヒトPDAC腫瘍の周辺と比較して、コアにおけるMMP-7タンパク質の発現増加を示す。
【
図7B】GSM-192を用いたヒトPDAC組織の免疫組織化学染色。GSM-192及び抗MMP-7市販抗体染色の比較は、差次的な局在化を示す。GSM-192は、細胞表面上の活性酵素を主に染色し、市販の抗体は、チモーゲン及び触媒酵素の両方を核及び細胞質区画で染色した。スケール=20μm。
【
図8】抗MMP-7mAbは、RIP1-Tag2マウス血清中の循環MMPによって捕捉されない。純粋な触媒性MMP-7と比較して、抗体は、進行したインスリノーマを有するマウス(13.5週)に由来する広範囲の総血清タンパク質に結合しない。これは、血液における触媒形態のMMP-7の欠如、及び触媒酵素に対する抗MMP-7抗体の高い特異性を示している。したがって、抗体は、循環酵素の除去又は結合の結果としての除去を受けにくい。
【
図9A】初期段階の処理は全体的に、RIP1-Tag2インスリノーマ(PanNET)モデルにおいて血管新生スイッチを受ける膵島の数を減少させる。GSM-192処理マウスにおける血管新生膵島の数は、対照マウスで見られた総数の半分であった。
【
図9B】in vivoでは、抗MMP-7mAbは、Ki-67及びカスパーゼ-3陽性細胞の数に有意差を示さないが、血管新生を受ける膵島においてCD34+細胞によって覆われる面積を減少させる。
【
図9C】後期処理は、RIP1-Tag2マウスモデルにおける腫瘍体積に対する持続的効果を示す。総腫瘍体積は、示されるように、すべての腫瘍遺伝子座の総体積である。総腫瘍体積は、処理マウスvs.対照マウスで有意に減少する。**P≦0.01、*P≦0.05。
【
図10A】HUVEC細胞による管形成は、1μM GSM-192で処理した場合に破壊された。閉ループ及び分岐点の総数は、GST対照抗体処理群と比較して処理群で有意に減少した。
【
図10B】大動脈リング出芽アッセイ(Aortic ring sprout assay)は、1μMのGSM-192で新生血管芽の著しい減少を示した。血管芽は、ex vivoインキュベーションの7日後にGSM-192処理群において有意に減少した。これらの結果は、GSM-192による処理後の血管新生に対する直接的な影響を実証する。
【
図11A】ゲムシタビン(GEM)濃度のlogの関数としてプロットされ、可変勾配シグモイド回帰モデルに当てはめられたMTT細胞死アッセイ吸光度データは、GEM+PBS群と比較して、GEM+GSM-192群のIC
50の顕著な低下を示す。
【
図11B】3つのそのような独立した実験曲線フィッティング分析の平均IC
50を続いてプロットして、群間の有意差を示した。データは平均値±s.e.m.を表し、有意性を両側t検定で評価した。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、MMP-7の触媒部位に結合する抗体に関する。抗体は、癌の処置のために使用することができ、より詳しくは、膵臓癌の処置のために使用することができるが、これに限定されない。
【0043】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の説明に記載されるか、又は実施例によって例示される詳細に必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であるか、又は様々な方法で実施又は実行され得る。
【0044】
マトリックスメタロプロテアーゼは、細胞外マトリックス(ECM)の細胞増殖、分化及びリモデリングから、血管新生及び細胞遊走に及ぶ多くの生物学的プロセスに関与する。これらのプロセスは、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)及びその天然組織阻害剤(TIMP)の機能の微妙なバランスを必要とする。このバランスの喪失は、転移性腫瘍、神経変性疾患及び骨関節炎を含む多数の病理学的症状の特徴である。
【0045】
ヒドロキソメート、非微生物性テトラサイクリン及びモノクローナル抗体等の小さなペプチド阻害剤を含む多数のMMP阻害剤が当該技術分野で公知である。
【0046】
本発明者らは、メタロエンザイムの触媒部位の電子的及び構造的決定基の両方を認識する抗体がその強力な阻害剤として使用され得ることを以前に発見した。メタロエンザイムの金属結合触媒部位を模倣するハプテンを免疫原として使用することにより、メタロプロテイン活性の上昇を特徴とする臨床症状を処置することができることが示された非常に効率的な治療用抗体の生成が可能になった(国際公開第2004/087042号パンフレット及び国際公開第2008/102359号パンフレットを参照)。
【0047】
本発明者らは現在、高度に特異的なMMP-7抗体を発見するためには追加のスクリーニング工程が不可欠であることを理解している。MMP-7の活性型に結合することができ、チモーゲンに結合できない抗体のみを、更なる開発のために選択しなければならない(すなわち、融合のために選択され、モノクローナル抗体を生成するために開発される)。本発明者らは、様々な濃度の活性MMP-7及びそのチモーゲンでそれぞれコーティングされたニトロセルロース膜を使用してドットブロット分析を行うことによってこの工程を実施した。この追加のアッセイを実施することによって、本発明者らは、チモーゲン形態の酵素ではなく、酵素の触媒ドメインに結合する、本明細書においてGSM-192と称される、MMP-7に対する高度に特異的なモノクローナル抗体を発見した。
【0048】
利用可能なMMP-7構造へのGSM-192のFvドメインのドッキングは、GSM-192が触媒溝領域の結合に有効であり(
図3A~
図3D)、基質分子の進入を阻止する立体障害をもたらすことを示唆した。
【0049】
この抗体の特異性を分析している間に、本発明者らは、関連するMMPと比較した場合、GSM-192が印象的な選択性及び親和性でMMP-7に結合することを見出した(
図2A~
図2F)。GSM-192 Fabを用いたMMP-7の阻害は、膵臓癌細胞の細胞死を濃度依存的に誘導した。PDACヒト細胞のGSM-192による処理は、主要な外因性死経路リガンド-Fasリガンドの濃度依存的安定化をもたらした。したがって、活性なMMP-7の阻害は、in vitroにおいて細胞死を引き起こし、それに伴って、処理群において細胞表面Fasリガンドが増大した(
図4A~
図4C)。理論に拘束されるものではないが、GSM-192によるMMP-7の阻害は、MMP-7の下流機能の1つの妨害、すなわち、FasL誘導性アポトーシスから癌細胞を保護することに起因し得ると結論付けることができる。更に、PDAC細胞(CFPAC-1)のGSM-192処理は、スクラッチアッセイにおいてトランスウェル細孔を通って遊走し、人工創傷を閉鎖する能力を障害した(
図5A~
図5B)。結論として、高親和性新規抗体を使用したMMP-7の特異的阻害は、膵臓癌進行における重要な標的としてのその役割を更に裏付けた。
【0050】
本発明者らは、GSM-192等の抗体が、治療、診断及び研究用途に有意かつ直接的な影響を及ぼし得ることを提案する。具体的には、診断用途のために、MMPの活性な立体構造を認識する抗体は、疾患組織がそれらのチモーゲンにわたって活性型の顕著な差次的発現を示すことから、価値がある。
【0051】
したがって、本発明の第1の態様によれば、抗体の軽鎖上にNからCに向かって順に配置された、配列番号3(CDR1)、4(CDR2)及び5(CDR3)、並びに抗体の重鎖上にNからCに順に配置された配列番号7(CDR1)、8(CDR2)及び9(CDR3)で示される相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列を有する、MMP-7の触媒部位に結合する抗原認識領域を含む抗体が提供される。
【0052】
本発明のこの態様の抗体は、配列番号2に示されるVHアミノ酸配列及び配列番号1に示されるVLアミノ酸配列を含み得る。抗体のCDR配列は、配列番号3~8で提供される。
【0053】
特定の実施形態によれば、抗体は、配列番号1及び2に示されている配列と少なくとも90%相同、少なくとも91%相同、少なくとも92%相同、少なくとも93%相同、少なくとも94%相同、少なくとも95%相同、少なくとも96%相同、少なくとも97%相同、少なくとも98%相同、少なくとも99%相同又は更に100%相同なアミノ酸配列を含む(抗体のCDR配列は、本明細書において上記で提供したものと常に100%相同である)。
【0054】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、無傷の抗体分子を示し、「抗体断片」という句は、その機能的断片、例えば、マクロファージに結合することができるFab、F(ab’)2及びFvを示す。これらの機能的な抗体断片は次のように定義される:(i)抗体全体を酵素パパインで消化して、無傷の軽鎖及び1本の重鎖の一部を生成することによって産生され得る抗体分子の一価の抗原結合断片を含む断片である、Fab;(ii)抗体全体をペプシンで処理し、続いて還元して、無傷の軽鎖及び重鎖の一部を生成することによって得ることができる抗体分子の断片である、Fab’;抗体分子ごとに2つのFab’断片が得られる;(iii)その後に還元を行わずに抗体全体を酵素ペプシンで処理することによって得られる抗体の断片である、(Fab’)2;F(ab’)2は、2つのジスルフィド結合によって結合された2つのFab’断片の二量体である;(iv)軽鎖の可変領域及び2本の鎖として表される重鎖の可変領域を含む遺伝子操作された断片として定義される、Fv;(v)軽鎖の可変領域及び重鎖の可変領域を含み、遺伝子融合された単鎖分子として適切なポリペプチドリンカーによって連結された遺伝子操作された分子である、単鎖抗体(「SCA」);並びに(vi)単一の相補性決定領域(CDR)をコードするペプチド。
【0055】
本明細書で使用される場合、「相補性決定領域」又は「CDR」という用語は、重鎖ポリペプチド及び軽鎖ポリペプチドの可変領域内に見出される抗原結合領域のことを指すために交換可能に使用される。一般に、抗体は、VHのそれぞれに3つのCDR(CDRHI又はHI;CDRH2又はH2;及びCDRH3又はH3)及びVLのそれぞれに3つのCDR(CDRLI又はLI;CDRL2又はL2;及びCDRL3又はL3)を含む。
【0056】
可変領域又はCDRを構成する特定の抗体中のアミノ酸残基の同一性は、当該技術分野で周知の方法を使用して決定することができ、Kabat et al.(例えば、Kabat et al.,1992,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,NIH,Washington D.C.を参照)によって定義される配列可変性、Chothia et al.(例えば、Chothia et al.,Nature 342:877-883,1989参照)によって定義される構造ループ領域の位置、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェア(現在、Accelrys(登録商標)、Martin et al.,1989,Proc.Natl Acad Sci USA.86:9268;及びworld wide web site www(dot)bioinf-org(dot)uk/absを参照)を使用したKabatとChothiaの折衷案、接触の定義(MacCallum et al.,J.Mol.Biol.262:732-745,1996)及び「立体構造の定義」(例えば、Makabe et al.,Journal of Biological Chemistry,283:1156-1166,2008を参照)によって定義される利用可能な複雑な結晶構造等の方法が挙げられる。
【0057】
本明細書で使用される場合、「CDR」及び「可変領域」は、アプローチの組み合わせを含む、当該技術分野で公知の任意のアプローチによって定義される可変領域及びCDRを指し得る。
【0058】
抗体(すなわち、モノクローナル及びポリクローナル)を生成する方法は、当該技術分野で周知である。抗体は、当該技術分野で公知のいくつかの方法のいずれか1つを介して作製され得、これらの方法は、抗体分子のin vivo産生の誘導、開示される免疫グロブリンライブラリ若しくは高特異性結合試薬パネルのスクリーニング[Orlandi D.R.et al.(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.86:3833-3837、Winter G.et al.(1991)Nature 349:293-299]、又は培養中の連続細胞株によるモノクローナル抗体分子の作製を用いることができる。これらとしては、限定されるものではないが、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、及びエプスタイン-バー-ウイルス(EBV)-ハイブリドーマ技術[Kohler G.,et al.(1975)Nature 256:495-497,Kozbor D.,et al.(1985)J.Immunol.Methods 81:31-42,Cote R.J.et al.(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.80:2026-2030,Cole S.P.et al.(1984)Mol.Cell.Biol.62:109-120]が挙げられる。
【0059】
本発明の化合物が、強い免疫原性応答を誘発するには小さすぎる場合、そのような抗原(ハプテン)を、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)又は血清アルブミン[例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)]担体(米国特許第5,189,178号及び第5,239,078号明細書を参照)等の抗原的に中性の担体に結合させることができる。担体へのカップリングは、当該技術分野で周知の方法を用いて行うことができ、例えば、アミノ基への直接カップリングを達成し、必要に応じて、その後に、形成されたイミノ結合の還元を行うことができる。或いは、ジシクロヘキシルカルボジイミド又は他のカルボジイミド脱水剤等の縮合剤を使用して担体を結合することができる。リンカー化合物を使用してカップリングを行うこともでき、ホモ二官能性リンカー及びヘテロ二官能性リンカーはいずれも、Pierce Chemical Company,Rockford,Illから入手可能である。次いで、得られた免疫原性複合体を、マウス、ウサギ等の適切な哺乳動物対象に注射することができる。適切なプロトコルは、血清中の抗体の産生を増強するスケジュールに従って、アジュバントの存在下で免疫原を繰り返し注射することを含む。免疫血清の力価は、当該技術分野で周知の免疫アッセイ手順を使用して容易に測定することができる。
【0060】
得られた抗血清を直接使用することができ、又はモノクローナル抗体を上記のように得ることができる。
【0061】
抗体断片は、当該技術分野で周知の方法(例えば、参照により本明細書に組み入れられる、Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York,1988を参照)を用いて得ることができる。例えば、本発明による抗体断片は、抗体のタンパク質分解加水分解によって、又は断片をコードするDNAの大腸菌(E.coli)若しくは哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞培養又は他のタンパク質発現系)での発現によって調製することができる。
【0062】
或いは、抗体断片は、従来の方法による抗体全体のペプシン又はパパイン消化によって得ることができる。例えば、抗体断片は、ペプシンによる抗体の酵素的切断によって生成されて、F(ab’)2で示される5S断片を提供することができる。この断片は、チオール還元剤、及び任意にジスルフィド結合の切断から生じるスルフヒドリル基のブロッキング基を使用して更に切断され、3.5S Fab’一価断片を生成することができる。或いは、ペプシンを使用した酵素的切断により、2つの一価Fab’断片及びFc断片が直接生成される。これらの方法は、例えばGoldenberg、米国特許第4,036,945号明細書及び同第4,331,647号明細書、並びにそれらに含まれる参考文献に記載されており、これらの特許は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。Porter,R.R.,Biochem.J.,73:119-126,1959.も参照されたい。無傷の抗体によって認識される抗原に断片が結合する限り、抗体を切断する他の方法、例えば、一価の軽重鎖断片を形成するための重鎖の分離、断片の更なる切断、又は他の酵素的、化学的若しくは遺伝的技術も使用され得る。
【0063】
Fv断片は、VH鎖及びVL鎖の会合を含む。Inbar et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 69:2659-62,1972に記載されているように、この会合は非共有結合的であり得る。或いは、可変鎖は、分子間ジスルフィド結合によって連結されるか、又はグルタルアルデヒド等の化学物質によって架橋され得る。好ましくは、Fv断片は、ペプチドリンカーによって接続されたVH及びVL鎖を含む。これらの一本鎖抗原結合タンパク質(sFv)は、オリゴヌクレオチドによって接続されたVH及びVLドメインをコードするDNA配列を含む構造遺伝子を構築することによって調製される。構造遺伝子を発現ベクターに挿入し、続いて大腸菌(E.coli)等の宿主細胞に導入する。組換え宿主細胞は、2つのVドメインを架橋するリンカーペプチドを有する単一のポリペプチド鎖を合成する。sFvを生成するための方法は、例えば、Whitlow and Filpula,Methods,2:97-105,1991;Bird et al.,Science 242:423-426,1988;Pack et al.,Bio/Technology 11:1271-77,1993;及びLadner et al.,米国特許第4,946,778号明細書によって記載されている。
【0064】
CDRペプチド(「最小認識ユニット」)は、目的の抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することによって取得できる。このような遺伝子は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応を使用して、抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成することによって調製される。例えば、Larrick and Fry,Methods,2:106-10,1991を参照されたい。
【0065】
ヒトの治療又は診断のために、ヒト化抗体が好ましく使用されることが理解されるであろう。非ヒト(例えば、マウス)抗体のヒト化形態は、免疫グロブリンのキメラ分子、免疫グロブリン鎖、又は非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含むそれらの断片(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、又は抗体の他の抗原結合サブシーケンス等)である。ヒト化抗体には、残基がレシピエントの相補性決定領域(CDR)を形成するヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)が含まれ、これが所望の特異性、親和性及び能力を有するマウス、ラット、又はウサギ等の非ヒト種(ドナー抗体)のCDRからの残基によって置き換えられる。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が対応する非ヒト残基に置き換えられる。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体にも、インポートされたCDR又はフレームワーク配列にも見られない残基を含み得る。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、CDR領域のすべて又は実質的にすべてが、非ヒト免疫グロブリンの領域及びFR領域のすべて又は実質的にすべてに対応し、これらは、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体はまた、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのFcの少なくとも一部を含むであろう[Jones et al.,Nature,321:522-525(1986);Riechmann et al.,Nature,332:323-329(1988);及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.,2:593-596(1992)]。
【0066】
したがって、本発明の別の一態様によれば、配列番号3、4、5、6、7及び8からなる群より選択される少なくとも1つのCDRアミノ酸配列をコードする単離されたポリヌクレオチドが提供される。ポリヌクレオチドは、軽鎖のCDR(例えば、配列番号3~5)及び/又は重鎖のCDR(例えば、配列番号6~8)をコードし得る。必要に応じて、ポリヌクレオチドは、抗体のCDRの各々をコードし得る。ポリヌクレオチドは、抗体骨格をコードする配列(例えばIgG1、2、3又は4)を更にコードし得る。骨格はヒト配列を含み得る。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態のポリヌクレオチドを、本発明のいくつかの実施形態の形質転換宿主細胞における抗体又は抗体鎖の産生を遺伝的に指示するために、本発明のいくつかの実施形態の核酸コンストラクトに使用することができ、好ましくはクローニングすることができる。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態のポリヌクレオチドは、当該技術分野における種々の公知の方法のいずれか1つによって細胞に導入することができる。そのような方法は、Sambrook et al.,[Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Springs Harbor Laboratory,New York(1989,1992)];Ausubel et al.,[Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Baltimore,Maryland(1989)];Chang et al.,[Somatic Gene Therapy,CRC Press,Ann Arbor,MI(1995)];Vega et al.,[Gene Targeting,CRC Press,Ann Arbor MI(1995)];Vectors [A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses,Butterworths,Boston MA(1988)]及びGilboa et al.[Biotechniques 4(6):504-512(1986)]に一般的に記載され、例えば、安定な又は一過性のトランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーション及び組換えウイルスベクターによる感染が含まれる。
【0069】
本明細書に記載のポリヌクレオチドを発現する細胞も本発明によって企図される。
【0070】
非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当該技術分野でよく知られている。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源からそれに導入された1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしばインポート残基と呼ばれ、通常、インポート可変ドメインから取得される。ヒト化は、基本的には、げっ歯類のCDR又はCDR配列をヒト抗体の対応する配列に置き換えることによる、Winterらの方法に従って実行することができる[Jones et al.,Nature,321:522-525(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323-327(1988);Verhoeyen et al.,Science,239:1534-1536(1988)]。したがって、そのようなヒト化抗体はキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)であり、無傷のヒト可変ドメインよりも実質的に少ないものが、非ヒト種からの対応する配列によって置換されている。実際には、ヒト化抗体は通常、いくつかのCDR残基及びおそらくいくつかのFR残基がげっ歯類抗体の類似部位からの残基で置換されているヒト抗体である。
【0071】
ヒト抗体はまた、ファージディスプレイライブラリを含む当該技術分野で知られている様々な技術を使用して生成することができる[Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581(1991)]。Cole et al.及びBoerner et al.の技術は、ヒトモノクローナル抗体の調製にも利用可能である(Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985)and Boerner et al.,J.Immunol.,147(1):86-95(1991)]。同様に、ヒトは、ヒト免疫グロブリン遺伝子座をトランスジェニック動物、例えば内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的又は完全に不活性化されているマウスに導入することによって作製することができる。抗原刺激を受けたとき、ヒト抗体産生が観察され、これは、遺伝子再編成、アセンブリ及び抗体レパートリーを含むすべての点でヒトに見られるものによく似ている。このアプローチは、例えば、米国特許第5,545,807号明細書;同第5,545,806号明細書;同第5,569,825号明細書;同第5,625,126号明細書;同第5,633,425号明細書;同第5,661,016号明細書、及び以下の科学刊行物:Marks et al.,Bio/Technology 10,779-783(1992);Lonberg et al.,Nature 368 856-859(1994);Morrison,Nature 368 812-13(1994);Fishwild et al.,Nature Biotechnology 14,845-51(1996);Neuberger,Nature Biotechnology 14,826(1996);Lonberg and Huszar,Intern.Rev.Immunol.13 65-93(1995)に記載されている。
【0072】
抗体が得られると、それらをメタロエンザイム阻害活性及び親和性について試験することができる。金属タンパク質阻害活性のための適切なアッセイ条件は、Knight et al.,FEBS Letters 296(3):263-266(1992),Cawston et al.,Anal.Biochem,99:340-345(1979)、Cawston et al.,Methods in Enzymology 80:771 et seq.(1981);Cawston et al.,Biochem.J.,195:159-165(1981)、Weingarten et al.,Biochem.Biophys.Res.Comm.,139:1184-1187(1984)、並びに米国特許第4,743,587号明細書及び同第5,240,958号明細書に記載されている。
【0073】
本発明のこの態様の阻害性抗体は、典型的には、MMP-7に対して非常に高い結合親和性及び特異性を有し、Kdは40~50nM、より典型的には約40~45nMである。本発明のこの態様の抗体は、典型的には、MMP-7に対する緊密な結合阻害パターン(例えば、Ki=1~500nM)を示し、より好ましくは、100~150nMのKiを有し、Kiは、他のMMP、例えばMMP2、MMP9又はMMP14に対する抗体のKiよりも少なくとも2倍、少なくとも5倍又は更には少なくとも10倍低い。
【0074】
抗体は、触媒部位の金属配位イオンに結合し、金属イオン自体には結合しなくてもよく、或いは抗体は、活性部位ポケットに存在する金属イオン及びその配位イオンの両方に結合してもよい。抗体は、触媒部位への結合に加えて、MMP-7の表面上の部位に結合し得ることが理解されるであろう。
【0075】
本発明はまた、そのメタロエンザイム阻害活性(メタロタンパク質の触媒活性の特異的阻害)が保持されている限り、これらの抗体並びにそのホモログ及び断片のCDR配列の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つを含む任意の(ポリ)ペプチド配列を提供する。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態によれば、抗体は、検出可能部分又は治療部分等の機能性部分にコンジュゲートされ得る(「イムノコンジュゲート」とも呼ばれる)。イムノコンジュゲートは、可溶性及び/又は合成分子等の単離された分子であり得る。
【0077】
種々のタイプの検出可能部分又はレポーター部分を本発明の抗体にコンジュゲートさせることができる。これらとしては、限定されるものではないが、放射性同位体([125]ヨウ素等)、リン光化学物質、化学発光化学物質、蛍光化学物質(フルオロフォア)、酵素、蛍光ポリペプチド、アフィニティタグ、及び陽電子放射断層撮影法(PET)又は磁気共鳴画像法(MRI)によって検出可能な分子(造影剤)が挙げられる。
【0078】
適切なフルオロフォアの例としては、限定されるものではないが、フィコエリトリン(PE)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、Cy-クロム、ローダミン、緑色蛍光タンパク質(GFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、テキサスレッド、PE-Cy5等が挙げられる。フルオロフォアの選択に関する更なる指針について、様々な種類の分子にフルオロフォアを連結する方法は、Richard P.Haugland,’’Molecular Probes:Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals 1992-1994’’,5th ed.,Molecular Probes,Inc.(1994);Oncoimmunin Inc.に対する米国特許第6,037,137号明細書;Hermanson,’’Bioconjugate Techniques’’,Academic Press New York,N.Y.(1995);Kay M.et al.,1995.Biochemistry 34:293;Stubbs et al.,1996.Biochemistry 35:937;Gakamsky D.et al.,’’Evaluating Receptor Stoichiometry by Fluorescence Resonance Energy Transfer,’’ in ’’Receptors:A Practical Approach,’’ 2nd ed.,Stanford C.and Horton R.(eds.),Oxford University Press,UK.(2001);Targesome,Inc.に対する米国特許第6,350,466号明細書]に記載されている。蛍光検出可能部分にコンジュゲートしたときに抗体を検出するために使用することができる蛍光検出法としては、例えば、蛍光活性化フローサイトメトリー(FACS)、免疫蛍光共焦点顕微鏡法、蛍光in-situハイブリダイゼーション(FISH)及び蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が挙げられる。
【0079】
多数のタイプの酵素を本発明の抗体に付着させることができ[例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HPR)、β-ガラクトシダーゼ、及びアルカリホスファターゼ(AP)]、酵素結合抗体の検出を、ELISA(例えば、溶液中)、酵素結合免疫組織化学アッセイ(例えば、固定組織において)、酵素結合化学発光アッセイ(例えば、電気泳動的に分離されたタンパク質混合物中で)又は当該技術分野で公知の他の方法を使用して行うことができる[例えば、Khatkhatay MI.and Desai M.,1999.J Immunoassay 20:151-83;Wisdom GB.,1994.Methods Mol Biol.32:433-40;Ishikawa E.et al.,1983.J Immunoassay 4:209-327;Oellerich M.,1980.J Clin Chem Clin Biochem.18:197-208;Schuurs AH.and van Weemen BK.,1980.J Immunoassay 1:229-49を参照)。
【0080】
アフィニティタグ(又は結合対のメンバー)は、対応する抗体によって識別可能な抗原[例えば、抗DIG抗体によって識別されるジゴキシゲニン(DIG))又はタグに対して高い親和性を有する分子[例えば、ストレプトアビジン及びビオチン]であり得る。アフィニティタグに結合する抗体又は分子は、上記のように蛍光標識され得るか、又は酵素にコンジュゲートされ得る。
【0081】
当該技術分野で広く実施されている様々な方法を使用して、ストレプトアビジン又はビオチン分子を本発明の抗体に付着させることができる。例えば、ビオチン分子は、以下の実施例の節及びDenkberg,G.et al.,2000.Eur.J.Immunol.30:3522-3532に記載されているように、ビオチンタンパク質リガーゼ(例えば、BirA)の認識配列を介して本発明の抗体に付着され得る。或いは、ストレプトアビジン分子は、本質的にCloutier SM.et al.,2000.Molecular Immunology 37:1067-1077;Dubel S.et al.,1995.J Immunol Methods 178:201;Huston JS.et al.,1991.Methods in Enzymology 203:46;Kipriyanov SM.et al.,1995.Hum Antibodies Hybridomas 6:93;Kipriyanov SM.et al.,1996.Protein Engineering 9:203;Pearce LA.et al.,1997.Biochem Molec Biol Intl 42:1179-1188)に記載されているように、単鎖Fv等の抗体断片に付着されてもよい。
【0082】
ストレプトアビジンにコンジュゲートしたフルオロフォア等の機能性部分は、免疫蛍光フローサイトメトリー試薬の本質的にすべての主要な供給業者から市販されている(例えば、Pharmingen又はBecton-Dickinson)。
【0083】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ビオチンコンジュゲート抗体をストレプトアビジン分子に結合させて多価組成物(例えば、抗体の二量体形態又は四量体形態)を形成する。
【0084】
表1は、本発明の抗体にコンジュゲートされ得る同定可能な部分の非限定的な例を提供する。
【0085】
【0086】
既に述べたように、抗体は治療部分にコンジュゲートされ得る。治療部分は、例えば、細胞傷害性部分、毒性部分、サイトカイン部分及び本発明の抗体に対する異なる特異性を含む第2の抗体部分であり得る。
【0087】
本発明の抗体にコンジュゲートすることができる治療部分の非限定的な例を以下の表2に提供する。
【0088】
【0089】
機能性部分(本発明の検出可能部分又は治療部分)は、状況、用途及び目的に応じて、様々な方法で本発明の抗体に付着又はコンジュゲートされ得る。
【0090】
機能性部分がポリペプチドである場合、免疫コンジュゲートは、組換え手段によって産生され得る。例えば、毒素(例えば、PE38KDEL)又は蛍光タンパク質[例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)又は黄色蛍光タンパク質(YFP)]をコードする核酸配列は、本発明の抗体をコードする核酸配列とインフレームで連結され、宿主細胞で発現されて組換えコンジュゲート抗体を産生し得る。或いは、機能性部分は、例えば、固相ペプチド合成技術等の規定された順序での1個以上のアミノ酸残基の段階的付加によって化学的に合成され得る。
【0091】
機能性部分はまた、当該技術分野で広く実施されている標準的な化学合成技術[例えば、hypertexttransferprotocol://worldwideweb(dot)chemistry(dot)org/portal/Chemistryを参照)]を使用して、例えば、ペプチド結合(機能性部分がポリペプチドである場合)を介して、又はリンカーペプチド若しくは有機ポリマー等の他の化学的部分等の介在リンカー要素への共有結合を介して、任意の適切な化学結合を直接的又は間接的に使用して、本発明の抗体に付着され得る。キメラペプチドは、ペプチドのカルボキシ(C)末端若しくはアミノ(N)末端での結合を介して、又は直鎖、分枝若しくは環状の側鎖、内部炭素若しくは窒素原子等の内部化学基への結合を介して連結され得る。抗体の蛍光標識の説明は、米国特許第3,940,475号明細書、同第4,289,747号明細書、及び同第4,376,110号明細書に詳細に提供されている。
【0092】
ペプチド部分(治療的又は検出可能部分)を本発明の抗体にコンジュゲートするための例示的な方法を本明細書中下記に記載する。
【0093】
SPDPコンジュゲーション-SPDPコンジュゲーションの方法の非限定的な例は、Cumber et al.(1985,Methods of Enzymology 112:207-224)に記載されている。簡潔には、検出可能部分又は治療部分(例えば、1.7mg/ml)等のペプチドを、10倍過剰のSPDP(エタノール中50mM)と混合し、抗体を20mMリン酸ナトリウム、0.10M NaCl pH7.2中の25倍過剰のSPDPと混合し、各反応液を室温で約3時間インキュベートする。次いで、反応物をPBSに対して透析する。ペプチドを、例えば、50mMのDTTを用いて室温で1時間還元する。還元ペプチドを、50mM KH2PO4 pH6.5を用いたG-25カラム(最大5%試料/カラム体積)での平衡化によって脱塩する。還元されたペプチドを、1:10抗体:ペプチドのモル比でSPDP抗体と組み合わせ、4℃で一晩インキュベートして、ペプチド-抗体コンジュゲートを形成する。
【0094】
グルタルアルデヒドコンジュゲーション-グルタルアルデヒドコンジュゲーションの方法の非限定的な例は、G.T.Hermanson(1996,’’Antibody Modification and Conjugation,in Bioconjugate Techniques,Academic Press、サンディエゴ)に記載されている。簡潔には、抗体及びペプチド(1.1mg/ml)を、0.1Mリン酸塩、0.15M NaCl pH6.8中の0.05%グルタルアルデヒドと10倍過剰で混合し、室温で2時間反応させる。0.01Mリジンを添加して過剰な部位をブロックすることができる。反応の後、PBS(10%v/v試料/カラム体積)で平衡化したG-25カラムを使用して過剰のグルタルアルデヒドを除去する。
【0095】
カルボジイミドコンジュゲーション-ペプチドと抗体とのコンジュゲーションは、カルボジイミド等の脱水剤を使用して、例えば4-ジメチルアミノピリジンの存在下で達成することができる。カルボジイミドコンジュゲーションは、ペプチドのカルボキシル基と抗体のヒドロキシル基との間に共有結合(エステル結合の形成をもたらす)、又は抗体のアミノ基(アミド結合の形成をもたらす)又は抗体のスルフヒドリル基(チオエステル結合の形成をもたらす)を形成するために使用することができる。同様に、カルボジイミドカップリングを使用して、抗体の炭素基とペプチドのヒドロキシル基、アミノ基又はスルフヒドリル基との間に類似の共有結合を形成することができる[J.March,Advanced Organic Chemistry:Reaction’s,Mechanism,and Structure,pp.349-50&372-74(3d ed.),1985を参照]。例えば、ペプチドは、カルボジイミド、例えばジシクロヘキシルカルボジイミドを使用して共有結合を介して抗体にコンジュゲートさせることができる[B.Neises et al.(1978),Angew Chem.,Int.Ed.Engl.17:522;A.Hassner et al.(1978,Tetrahedron Lett.4475);E.P.Boden et al.(1986,J.Org.Chem.50:2394)and L.J.Mathias(1979,Synthesis 561)]。
【0096】
本明細書中上記で述べられるように、MMP-7に対する抗体の1つの具体的な使用は、MMP-7の不均衡な又は異常な活性に関連する疾患の予防又は処置である。
【0097】
そのような疾患の例としては、限定されるものではないが、関節炎疾患、例えば、骨関節炎(OA)、関節リウマチ(RA)、敗血症性関節炎、軟部組織リウマチ、多発性軟骨炎及び腱炎、転移性腫瘍、歯周疾患;アルカリ又は他の熱傷、放射線、ビタミンE若しくはレチノイド欠損症等によって誘発される角膜潰瘍;タンパク尿、栄養障害型表皮水疱症(dytrophobic epidermolysis bullosa)等の糸球体疾患;骨粗鬆症、パジェット病、副甲状腺機能亢進症及びコレステアトーマ等の骨吸収性疾患;排卵又は着床を防止することによる受胎調節;腫瘍成長に関連する血管新生、又は糖尿病性網膜症及び黄斑変性に関連する血管新生;動脈硬化巣破裂に関連する冠動脈血栓症;肺気腫、創傷治癒及びHIV感染症が挙げられる。
【0098】
一実施形態によれば、疾患は癌である。例示的な癌としては、膵臓癌、卵巣癌、腎細胞癌、結腸癌、乳癌、胃癌、直腸癌及び前立腺癌が挙げられる。
【0099】
処置される癌は、初期段階であってもよく、後期段階であってもよい。一実施形態では、癌は転移している。
【0100】
追加の企図される癌としては、限定されるものではないが、遺伝性の副腎皮質癌、膀胱癌;乳癌;乳癌、乳管;乳癌、浸潤性乳管内;乳癌、散発性;乳癌、感受性;乳癌、タイプ4;乳癌、タイプ4;乳癌-1;乳癌-3;乳癌卵巣癌;バーキットリンパ腫;子宮頸癌;結腸直腸腺腫;結腸直腸癌、遺伝性;結腸直腸癌、遺伝性非ポリポーシス、1型;結腸直腸癌、遺伝性非ポリポーシス、2型;結腸直腸癌、遺伝性非ポリポーシス、3型;結腸直腸癌、遺伝性非ポリポーシス、6型;結腸直腸癌、遺伝性非ポリポーシス、7型;隆起性皮膚線維肉腫;子宮内膜癌;食道癌;胃癌、線維肉腫、多形性膠芽腫;グロムス腫瘍、複数;肝芽腫;肝細胞癌;肝細胞癌腫;白血病、急性リンパ芽球性;白血病、急性骨髄性;白血病、急性骨髄性、好酸球増加症を伴う;白血病、急性非リンパ球性;白血病、慢性骨髄性;リー・フラウメニ症候群;脂肪肉腫、肺癌;肺癌、小細胞;リンパ腫、非ホジキン;リンチ症候群II(lynch cancer family syndrome II);雄生殖細胞腫瘍;肥満細胞白血病;甲状腺髄様;髄芽腫;黒色腫、髄膜腫;多発性内分泌腺新生物;骨髄性悪性腫瘍、易罹患性;粘液肉腫、神経芽細胞腫;骨肉腫;卵巣癌;卵巣癌、漿液性;卵巣癌;卵巣性索腫瘍;膵臓癌;膵臓内分泌腫瘍;傍神経節腫、家族性非クロマフィン;毛母腫;下垂体腫瘍、浸潤性;前立腺腺癌;前立腺癌;腎細胞癌、乳頭状、家族性及び散発性;網膜芽細胞腫;ラブドイド易罹患性症候群、家族性;ラブドイド腫瘍;横紋筋肉腫;肺の小細胞癌;軟組織肉腫、扁平上皮癌、頭頸部;T細胞急性リンパ芽球性白血病;膠芽腫を伴うターコット症候群;食道癌を伴う胼胝腫;子宮頸癌、ウィルムス腫瘍、2型;及びウィルムス腫瘍、1型等が挙げられる。
【0101】
特定の実施形態によれば、癌は膵臓癌である。
【0102】
特定の実施形態によれば、膵臓癌は、膵臓腺癌、神経内分泌腫瘍又は膵臓の腺房癌である。
【0103】
したがって、本明細書は、膵臓癌の処置を必要とする対象において膵臓癌を処置する方法であって、治療有効量のMMP-7の触媒部位に結合する抗原認識領域を含む抗体を対象に投与することを含み、抗体が、当該MMP-7の活性を阻害し、当該MMP-7に対する抗体のKiが、MMP2又はMMP9に対する抗体のKiよりも少なくとも5倍低く、それにより膵臓癌を処置する、方法を提供する。
【0104】
そのような抗体の例は、本明細書並びに国際公開第2012/056455号パンフレット及び国際公開第2010/012167号パンフレットに提供されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0105】
抗体の特異性は、当該技術分野で知られているアッセイを使用して確認することができる金属タンパク質阻害活性のための適切なアッセイ条件は、Knight et al.,FEBS Letters 296(3):263-266(1992),Cawston et al.,Anal.Biochem,99:340-345(1979),Cawston et al.,Methods in Enzymology 80:771 et seq.(1981);Cawston et al.,Biochem.J.,195:159-165(1981),Weingarten et al.,Biochem.Biophys.Res.Comm.,139:1184-1187(1984)、並びに米国特許第4,743,587号明細書及び同第5,240,958号明細書に記載されている。
【0106】
別の実施形態によれば、疾患は炎症性腸疾患(IBD)であり、これは、腸の炎症及び組織リモデリングを特徴とする重度の胃腸障害であり、これは頻度を増加させ、患者の障害(disabling)を証明する可能性がある。IBD、潰瘍性大腸炎(UC)及びクローン病の主な形態は、腹痛、下痢、直腸出血及び発熱を臨床的に特徴とする慢性の再発性症状である。
【0107】
処置され得る対象としては、ヒト等の哺乳動物対象が挙げられる。
【0108】
MMP-7に対する抗体の別の用途は、MMP-7の発現のアップレギュレーションに関連する疾患の診断である。
【0109】
したがって、本発明の別の態様によれば、対象においてMMP-7の不均衡な又は異常な活性に関連する疾患を診断する方法であって、MMP-7の発現を分析するために上記対象の試料を本明細書に記載の抗体(例えば、GSM-192)と接触させることを含み、MMP-7の発現のアップレギュレーションが、MMP-7の不均衡な又は異常な活性に関連する疾患を示す、方法が提供される。
【0110】
開示される抗体を使用してMMP-7の発現を分析する方法としては、限定されるものではないが、ウエスタン分析、免疫沈降及び免疫組織化学が挙げられる。
【0111】
サンプルは、尿、唾液、脳脊髄液、血液、血清等の液体;組織、糞便等の固体又は半固体;或いは組織学的診断に一般的に使用される固形組織であり得る。
【0112】
典型的には、MMP-7の量を、対照(健康な対象からの対応する試料)又は健康な対象に対応する既知の量のMMP-7と比較する。
【0113】
診断後、対象に結果を知らせることができる。更に追加の診断試験が、本明細書中に開示されるMMP-7抗体を使用する試験の結果に基づいて行われる場合がある。
【0114】
in vitro(すなわち、対象のサンプルに対して)で診断を行うだけでなく、診断をin vivoで行うこともできることが理解されよう。
【0115】
診断され得る疾患としては、処置され得る疾患について上に列挙したものが挙げられる。
【0116】
診断の結果が陰性である場合、すなわち、MMP-7の発現の有意な増加がなく、患者が癌を有することが確証される場合、癌のタイプに応じて(MMP-7抗体ではない)化学療法剤が処方され得る。
【0117】
診断の結果が陽性である場合、すなわち、MMP-7の発現の増加である場合、本発明者らは、MMP-7の量/活性をダウンレギュレートする薬剤で疾患を処置することを企図する。一実施形態では、疾患を処置するために使用される薬剤は、阻害性MMP-7抗体であり、例えば、本明細書並びに国際公開第2012/056455号パンフレット及び国際公開第2010/012167号パンフレットに開示されており、それらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0118】
MMP-7抗体を生成する方法は当該技術分野で公知である。一実施形態では、この方法は、対象(例えば動物対象)を:
(i)MMP-7の触媒ドメインと同様の構造的及び電子的特性を有する合成亜鉛模倣化合物;並びに
(ii)MMP-7、で免疫することを含む
【0119】
メタロエンザイムの触媒ドメインと同様の構造的及び電子的特性を有する合成亜鉛模倣化合物は、典型的には、キレート化金属イオンを含む化合物である。金属イオンは、典型的には、亜鉛又はその類似のイオンであるコバルト又はカドミウムである。
【0120】
一実施形態によれば、キレート剤はポルフィリンである。
【0121】
亜鉛模倣化合物は、標的ポリペプチド中の実際の触媒ドメインの構造的及び電子的特性に基づいて選択され得る。典型的には、標的ポリペプチドは、遷移金属配位に必要な3つの接触点を提供する3個のアミノ酸を含む。代表的な配位錯体幾何形状は、遷移金属イオンに応じて四面体、正方形平面又は三方晶であり得る。一般に、本発明の模倣組成物は、アミノ酸側鎖構造及び配位の幾何学的形状に基づいて選択される。典型的には、遷移金属結合を調整することができるアミノ酸は、ヒスチジン、アルギニン、グルタミン酸、システイン、メチオニン、トリプトファン、セリン、トレオニン及びチロシンであり、最初の2つが好ましい。
【0122】
例示的な合成亜鉛模倣化合物は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2004/087042号パンフレット及び国際公開第2008/102359号パンフレットに開示されている。
【0123】
一実施形態によれば、合成亜鉛模倣化合物は、一般式(I):
式中、
m及びnは、それぞれ独立して、1~6の整数であり、
X
1~X
3及びY
1~Y
3は、それぞれ独立して、O又はSであり、
R
1~R
3はそれぞれ、水素、アルキル及びシクロアルキルからなる群より独立して選択され;
RはO-(CH
2)x-C(=O)NR’-(CH
2)y-NR’R’’であり、
一方:
x及びyは、それぞれ独立して、1~6の整数であり、
R’及びR’’は、それぞれ独立して、水素、アルキル及びシクロアルキルからなる群より選択される。
【0124】
本発明のこの態様の特定の実施形態によれば、化合物は、一般式(II):
(式中、RはO-CH
2-CH
2-CONH-CH
2-CH
2-NH
2である)を有するImisdpと呼ばれる、[2-(2-ミノエチルカルボモイル)-エトキシメチル]-トリス-[2-(N-(3-イミダゾール-1-イル-プロピル))-エトキシメチル]メタンである。
【0125】
既に述べたように、本発明の方法は、上記の亜鉛模倣化合物及びMMP-7メタロエンザイム自体の両方で免疫することによって行われる。
【0126】
本発明は、全長MMP-7又はその一部による免疫化を意図する。典型的には、この部分は、MMP-7に特異的な抗原決定基(すなわちエピトープ)を含有すべきである。
【0127】
一実施形態によれば、抗原決定基はMMP-7の表面上にある。
【0128】
免疫化に使用されるMMP-7は、そのin vivo環境から精製されてもよく、或いは組換え手段によって生成されてもよい。
【0129】
一実施形態によれば、免疫処理は、亜鉛模倣化合物による初期免疫及びその後(例えば3~12週間後)のMMP-7による免疫を含む。免疫化の正確な時間は、免疫応答が免疫化動物(例えばマウス)に存在するかどうかを調べることによって決定することができる。例えば、血清中の抗体の力価を分析することができる。
【0130】
別の実施形態によれば、免疫化手順は、MMP-7による最初の免疫化と、それに続く(例えば、3~12週間後の)亜鉛模倣化合物による免疫化を含む。
【0131】
更に別の実施形態によれば、免疫化手順は、MMP-7及び亜鉛模倣化合物の両方との同時免疫化(すなわち、同時に)を含む。
【0132】
本発明の抗体を、対象自体に、又は医薬組成物の一部として投与することができる。
【0133】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」は、生理学的に適切な担体及び賦形剤等の他の化学成分を用いた、本明細書に記載の活性成分の1つ以上の調製物を指す。医薬組成物の目的は、生物への化合物の投与を容易にすることである。
【0134】
本明細書では、「有効成分」という用語は、生物学的効果を説明できる抗体を指す。
【0135】
以下、同じ意味で使用され得る「生理学的に許容可能な担体」及び「薬学的に許容可能な担体」という句は、生物に重大な刺激を引き起こさず、投与された化合物の生物学的活性及び特性を無効にしない担体又は希釈剤を指す。これらの句にはアジュバントが含まれる。
【0136】
本明細書では、「賦形剤」という用語は、有効成分の投与を更に容易にするために医薬組成物に添加される不活性物質を指す。賦形剤の例としては、限定されるものではないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖及び様々な種類のデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、並びにポリエチレングリコールが挙げられる。
【0137】
薬物の処方及び投与のための技術は、’’Remington’s Pharmaceutical Sciences,’’Mack Publishing Co.,Easton,PAの最新版に見出すことができ、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0138】
適切な投与経路は、例えば、経口、直腸、経粘膜、特に経鼻、腸、又は筋肉内、皮下及び髄内注射を含む、非経口送達と並んで、くも膜下腔内、直接心室内、心臓内、例えば、右心室若しくは左心室腔、一般的な冠状動脈内、静脈内、腹腔内(inrtaperitoneal)、鼻腔内、又は眼内の注射を含み得る。
【0139】
CNSへの薬物送達のための従来のアプローチとしては以下が挙げられる:脳神経外科戦略(例えば、脳内注射又は脳室内注入);BBBの内因性輸送経路の1つを利用する試みにおける、薬剤の分子操作(例えば、それ自体がBBBを通過することができない薬剤と組み合わせて内皮細胞表面分子に親和性を有する輸送ペプチドを含むキメラ融合タンパク質の産生);薬剤の脂溶性を高めるように設計された薬理学的戦略(例えば、水溶性薬剤の脂質又はコレステロール担体への複合化);及び高浸透圧破壊によるBBBの完全性の一時的な破壊(頸動脈へのマンニトール溶液の注入又はアンギオテンシンペプチド等の生物学的に活性な薬剤の使用に起因する)。しかしながら、これらの戦略のそれぞれには、侵襲的外科手術に関連する固有のリスク、内因性輸送システムに固有の制限によって課されるサイズ制限、中枢神経系の外側で活動する可能性のあるキャリアモチーフで構成されるキメラ分子の全身投与に関連する潜在的に望ましくない生物学的副作用、及びBBBが破壊されている脳の領域内での脳損傷のリスクの可能性等の制限があり、これらは最適ではない送達方法となる。
【0140】
或いは、例えば、医薬組成物を患者の組織領域に直接注射することにより、全身的ではなく局所的な方法で医薬組成物を投与することができる。
【0141】
「組織」という用語は、同様の構造及び/又は共通の機能を有する細胞の凝集体からなる生物の一部を指す。例としては、限定されるものではないが、脳組織、網膜、皮膚組織、肝組織、膵臓組織、骨、軟骨、結合組織、血液組織、筋肉組織、心臓組織、脳組織、血管組織、腎組織、肺組織、性腺組織、造血組織が挙げられる。
【0142】
本発明の医薬組成物は、当該技術分野で周知のプロセスによって、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠形成、研和(levigating)、乳化、カプセル化、封入又は凍結乾燥のプロセスによって製造され得る。
【0143】
そのため、本発明に従って使用するための医薬組成物は、有効成分を薬学的に使用できる調製物に加工することを容易にする賦形剤及び助剤を含む1つ以上の生理学的に許容可能な担体を使用して従来の方法で製剤化され得る。適切な製剤は、選択される投与経路によって異なる。
【0144】
注射の場合、医薬組成物の有効成分は、水溶液、好ましくはハンクス液、リンゲル液、又は生理食塩水等の生理学的に適合性のあるバッファーにおいて製剤化され得る。経粘膜投与では、浸透するバリアに適した浸透剤を製剤化において使用する。そのような浸透剤は、当該技術分野で一般的に知られている。
【0145】
経口投与の場合、医薬組成物は、活性化合物を当該技術分野で周知の薬学的に許容可能な担体と組み合わせることによって容易に製剤化することができる。そのような担体は、患者による経口摂取のために、医薬組成物を錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液等として製剤化することを可能にする。経口使用のための薬理学的調製物は、固体賦形剤を使用して作製でき、任意に、得られた混合物を粉砕し、必要に応じて適切な助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工して、錠剤又は糖衣錠コアを得ることができる。適切な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトール、又はソルビトールを含む糖;例えば、トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、馬鈴薯澱粉、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボメチルセルロース等のセルロース調製物;及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)等の生理学的に許容可能なポリマー等の充填剤である。必要に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、若しくはアルギン酸等の崩壊剤、又はアルギン酸ナトリウム等のそれらの塩を添加することができる。
【0146】
糖衣錠コアには適切なコーティングが施されている。この目的のために、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液、及び適切な有機溶媒又は溶媒混合物を任意に含み得る濃縮糖溶液を使用することができる。染料又は顔料は、識別のために、又は活性化合物の用量の異なる組み合わせを特徴づけるために、錠剤又は糖衣錠コーティングに添加され得る。
【0147】
経口的に使用できる医薬組成物には、ゼラチンで作られたプッシュフィットカプセルと並んで、ゼラチン、及びグリセロール又はソルビトール等の可塑剤で作られた柔らかく密封されたカプセルが含まれる。プッシュフィットカプセルは、ラクトース等の充填剤、デンプン等の結合剤、タルク又はステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤、及び任意に安定剤と混合した有効成分を含み得る。ソフトカプセルでは、有効成分は、脂肪油、流動パラフィン、又は液体ポリエチレングリコール等の適切な液体に溶解又は懸濁され得る。更に、安定剤を加えることができる。経口投与用のすべての製剤は、選択した投与経路に適した投与量でなければならない。
【0148】
頬側投与の場合、組成物は、従来の方法で処方された錠剤又はトローチの形態をとることができる。
【0149】
経鼻吸入による投与の場合、本発明による使用のための有効成分は、適切な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン又は二酸化炭素を使用した、加圧パック又はネブライザーからのエアロゾルスプレー提示の形態で簡便に送達される。加圧エアロゾルの場合、投与単位は、計量された量を送達するためのバルブを提供することによって決定することができる。ディスペンサーで使用するための例えばゼラチンのカプセル及びカートリッジは、化合物の粉末混合物、及びラクトース又はデンプン等の適切な粉末ベースを含むように処方することができる。
【0150】
本明細書に記載の医薬組成物は、例えば、ボーラス注射又は連続注入による非経口投与用に処方することができる。注射用製剤は、単位剤形で、例えば、アンプルで、又は任意に防腐剤を添加した複数回投与容器で提示することができる。組成物は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又は乳濁液であり得、そして懸濁剤、安定剤及び/又は分散剤等の配合剤を含み得る。
【0151】
非経口投与用の医薬組成物には、水溶性形態の活性製剤の水溶液が含まれる。更に、有効成分の懸濁液は、適切な油性又は水ベースの注射懸濁液として調製することができる。適切な親油性溶媒又はビヒクルには、ゴマ油等の脂肪油、又はオレイン酸エチル、トリグリセリド若しくはリポソーム等の合成脂肪酸エステルが含まれる。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール又はデキストラン等の懸濁液の粘度を増加させる物質を含み得る。必要に応じて、懸濁液はまた、高濃度溶液の調製を可能にするために有効成分の溶解度を増加させる適切な安定剤又は薬剤を含み得る。
【0152】
或いは、有効成分は、使用前に、適切なビヒクル、例えば、無菌のパイロジェンフリーの水ベースの溶液により構成するための粉末形態であり得る。
【0153】
本発明の医薬組成物はまた、例えば、カカオバター又は他のグリセリド等の従来の坐剤ベースを使用して、坐剤又は保持浣腸等の直腸組成物に処方され得る。
【0154】
本発明の状況での使用に適した医薬組成物には、有効成分が意図された目的を達成するのに有効な量で含まれる組成物が含まれる。より具体的には、治療有効量とは、障害(例えば、癌/炭疽菌感染症)の症候を予防、緩和若しくは改善するか、又は処置される対象の生存を延長するのに有効な有効成分(抗体)の量を意味する。
【0155】
治療有効量の決定は、特に本明細書で提供される詳細な開示に照らして、当業者の能力の範囲内である。
【0156】
本発明の方法で使用される任意の調製物について、治療有効量又は用量は、最初にin vitro及び細胞培養アッセイから推定することができる。例えば、用量は、所望の濃度又は力価を達成するために動物モデルで処方することができる。このような情報をヒトの有用な用量をより正確に決定するために使用できる。
【0157】
本明細書に記載の有効成分の毒性及び治療効果は、in vitro、細胞培養又は実験動物における標準的な製薬手順によって決定することができる。これらのin vitro及び細胞培養アッセイ、並びに動物実験から得られたデータは、ヒトで使用するための投与量の範囲を策定する際に使用することができる。投与量は、使用される剤形及び利用される投与経路に応じて変化し得る。正確な処方、投与経路、及び投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師が選択することができる。(例えば、Fingl,et al.,1975,in ’’The Pharmacological Basis of Therapeutics’’,Ch.1 p.1を参照)。
【0158】
投与量及び間隔は、生物学的効果(最小有効濃度、MEC)を誘導又は抑制するのに十分な有効成分の組織又は血液レベルを提供するように個別に調整され得る。MECは調製ごとに異なるが、in vitroデータから推定できる。MECするために必要な投与量は、個々の特性及び経路によって異なる。血漿濃度を決定するために検出アッセイを使用することができる。
【0159】
処置される状態の重症度及び応答性に応じて、投薬は、単回又は複数回の投与であり得、処置の過程は、数日から数週間、又は治癒がもたらされるか、若しくは病状の減少が達成されるまで続く。
【0160】
投与される組成物の量は、もちろん、処置される対象、苦痛の重症度、投与の方法、処方する医師の判断等に依存するであろう。
【0161】
本発明者らは、本発明のこの態様の抗体が化学療法剤の感受性を増強することを示した。したがって、本発明者らは、化学療法剤と共に抗体を投与することを企図している。
【0162】
化学療法剤の例としては、限定されるものではないが、アシビシン;アクラルビシン;アコダゾール塩酸塩;アクロニン;アドリアマイシン;アドゼレシン;アルデスロイキン;アルトレタミン;アンボマイシン;酢酸アメタントロン;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バティマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;塩酸ビサントレン;ビスナフィドジメシレート;ビゼレシン;ブレオマイシン硫酸塩;ブレキナールナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カーベタイマー;カルボプラチン;カルムスチン;カルビシン塩酸塩;カルゼレシン;セデフィンゴール;クロラムブシル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;メシル酸クリスナトール;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;ダウノルビシン塩酸塩;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;メシル酸デザグアニン;ジアジクオーネ;ドセタキセル;ドキソルビシン;ドキソルビシン塩酸塩;ドロロキシフェン;クエン酸ドロロキシフェン;プロピオン酸ドロスタノロン;ドゥアゾマイシン;エダトレキサート;エフロルニチン塩酸塩;エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロメート(Enpromate);エピプロピジン;エピルビシン塩酸塩;エルブロゾール;エソルビシン塩酸塩;エストラムスチン;エストラムスチンリン酸塩ナトリウム;エタニダゾール;エトポシド;エトポシドリン酸塩;エトプリン;ファドロゾール塩酸塩;ファザラビン;フェンレチニド;フロクスウリジン;フルダラビンリン酸塩;フルオロウラシル;フルロシタビン;フォスキドン;フォストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;ゲムシタビン塩酸塩;ヒドロキシ尿素;イダルビシン塩酸塩;イホスファミド;イルモフォシン;インターフェロンアルファ-2a;インターフェロンアルファ-2b;インターフェロンアルファ-n1;インターフェロンアルファ-n3;インターフェロンベータ-Ia;インターフェロンガンマ-Ib;イプロプラチン;イリノテカン塩酸塩;ランレオチドアセテート;レトロゾール;酢酸ロイプロリド;リアゾール塩酸塩;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン;ロソキサントロン塩酸塩;マソプロトコル;メイタンシン;メクロレタミン塩酸塩;酢酸メゲストロール;酢酸メレンゲステロール;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキサート;メトトレキサートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドマイド;ミトカルシン;ミトクロミン;ミトギリン;ミトマルシン;マイトマイシン;ミトスパー;ミトタン;ミトキサントロン塩酸塩;ミコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;パクリタキセル;オキサリプラチン;ペグアスパラガーゼ;ペリオマイシン;ペンタムスチン;ペプロマイシン硫酸塩;ペルホスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;ピロキサントロン塩酸塩;プリカマイシン;プロメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;プロカルバジン塩酸塩;ピューロマイシン;ピューロマイシン塩酸塩;ピラゾフリン;リボプリン;ログレチミド;サフィンゴール;サフィンゴール塩酸塩;セムスチン;シムトラゼン;スパルフォセートナトリウム;スパルソマイシン;スピロゲルマニウム塩酸塩;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェヌール;タリソマイシン;タキソール;テコガランナトリウム;テガフール;塩酸テロキサントロン;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストトラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフイリン;チラパザミン;トポテカン塩酸塩;トレミフェンクエン酸塩;酢酸トレストン;トリシリビンホスフェート;トリメトレキサート;トリメトレキサートグルクロネート;トリプトレリン;塩酸ツブロゾール;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン;ビンブラスチン硫酸塩;ビンクリスチン硫酸塩;ビンデシン;ビンデシン硫酸塩;硫酸ビネピジン;硫酸ビングリシネート;ビンロイロシン硫酸塩;ビノレルビン酒石酸塩;硫酸ビンロシジン;ビンゾリジン硫酸塩;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;ゾルビシン塩酸塩が挙げられる。追加の抗新生物剤としては、Goodman and Gilman’s ’’The Pharmacological Basis of Therapeutics’’,Eighth Edition,1990,McGraw-Hill,Inc.(Health Professions Division)の第52章、Antineoplastic Agents(Paul Calabresi and Bruce A.Chabner)及びその序論、1202~1263に開示されているものが挙げられる。
【0163】
特定の実施形態では、化学療法剤はヌクレオシド類縁体であり、その例としては、限定されるものではないが、ゲムシタビン、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、シトシンアラビノシド、ベヘノイルシトシンアラビノシド、テガフール、UFT等が挙げられる。
【0164】
特定の実施形態によれば、ヌクレオチド剤はゲムシタビンである。
【0165】
特定の実施形態によれば、化学療法剤はオキサリプラチンである。
【0166】
併用療法の状況では、化学療法剤は、抗体が投与されるのと同じ投与経路(例えば、肺内、経口、経腸等)によって投与され得る。或いは、化学療法剤は、抗体とは異なる投与経路によって投与され得る。
【0167】
化学療法剤は、抗体の直前(又は直後)、抗体と同日、抗体の1日前(又は後)、1週間前(又は後)、1ヶ月前(又は後)、又は2ヶ月前(又は後)等に投与することができる。
【0168】
化学療法剤及び抗体は同時に投与することができ、すなわち、これらの試薬のそれぞれの投与は、互いに部分的又は完全に重複する時間間隔で行うことができる。化学療法剤及び抗体は、互いに重複しない時間間隔の間に投与することができる。例えば、化学療法剤はt=0~1時間の時間枠内に投与することができ、抗体はt=1~2時間の時間枠内に投与することができる。また、化学療法剤はt=0~1時間の時間枠内で投与することができ、抗体はt=2~3時間、t=3~4時間、t=4~5時間、t=5~6時間、t=6~7時間、t=7~8時間、t=8~9時間、t=9~10時間等の時間枠内のどこかで投与することができる。更に、抗体は、t=マイナス2~3時間、t=マイナス3~4時間、t=マイナス4~5時間、t=5~6マイナス時間、t=マイナス6~7時間、t=マイナス7~8時間、t=マイナス8~9時間、t=マイナス9~10時間の時間枠のどこかで投与することができる。
【0169】
本発明の抗体及び化学療法剤は、典型的には、治療的、予防的及び/又は疼痛緩和の有効性を達成するために合わせた量で提供される。この量は、明らかに、使用のために選択される特定の化合物、他の処置様式の性質及び数、処置、予防及び/又は緩和される症状(複数可)、対象の種、年齢、性別、体重、健康状態及び予後、投与様式、標的化の有効性、滞留時間、クリアランスの様式、医薬組成物の副作用の種類及び重症度、並びに当業者に明らかであろう多くの他の因子に依存する。抗体は、化学療法剤と組み合わせた治療的、予防的及び/又は疼痛緩和の有効性が観察されるレベルで使用される。
【0170】
化学療法剤は、(抗体と共に)単一薬剤としての標準的な投薬量、単一薬剤としての標準用量を下回る投薬量、又は単一薬剤としての標準用量を上回る投薬量で投与され得る。
【0171】
具体的な実施形態によれば、化学療法剤は、単一薬剤として標準容量で投与される。
【0172】
本明細書で使用される場合、「標準用量」という用語は、所与のステージの所与の腫瘍に対して、規制当局(例えば、FDA)によって推奨される投与を指す。
【0173】
他の具体的な実施形態によれば、化学療法剤は、標準容量に関連する少なくとも1種の副作用を発揮しない用量で投与される。化学療法剤処置の副作用の非限定的な例としては、皮膚発疹、下痢、口内炎、爪周囲炎、疲労、高血糖、肝毒性、腎不全、心血管作用、電解質異常及びGI穿孔が挙げられる。
【0174】
したがって、一実施形態では、化学療法剤の量は、単一の治療法として使用される場合(例えば、その最小用量の10~99%、好ましくは25~75%)、治療的、予防的及び/又は疼痛緩和の有効性に必要な最小用量を下回る。これは、化学療法剤によって引き起こされる副作用の軽減を可能にするが、抗体と組み合わせて、組み合わせが全体的に有効であるため、該治療法は有効となる。
【0175】
本発明の一態様では、抗体及び化学療法剤は、それらの投与量に関して相乗的である。すなわち、本発明の抗体によって提供される効果は、別々に使用した場合の化学療法剤及び抗体の相加効果から予想されるよりも大きい。代替の実施形態では、本発明の化学療法剤及び抗体は、それらの副作用に関して相乗的である。すなわち、化学療法剤と組み合わせた抗体によって引き起こされる副作用は、別個に使用した場合に化学療法剤又は抗体のいずれかによって同等の治療効果が提供される場合に予想されるよりも少ない。
【0176】
本発明の組成物は、必要に応じて、有効成分を含む1つ以上の単位剤形を含み得る、FDA承認キット等のパック又はディスペンサーデバイスで提示され得る。パックは、例えば、ブリスターパック等の金属又はプラスチック箔を含み得る。パック又はディスペンサーデバイスには、投与手順が添付されている場合がある。パック又はディスペンサーは、医薬品の製造、使用、又は販売を規制する政府機関によって規定された形式の容器に関連する通知によって適応させることもでき、この通知は、組成物、又はヒト若しくは動物用の投与の形態の機関による承認を反映している。このような通知は、例えば、処方薬について米国食品医薬品局によって承認されたラベル、又は承認された製品挿入物に関するものである可能性がある。適合性のある薬学的担体に処方された本発明の調製物を含む組成物もまた、調製され、適切な容器に入れられ、そして上で更に詳述されるように、指定の状態の処置用に標識され得る。
【0177】
「処置する」という用語は、病状(疾患、障害又は状態)の発症を阻害、予防若しくは阻止すること、及び/又は病状の軽減、寛解若しくは退行を引き起こすことを指す。当業者は、様々な方法論及びアッセイを使用して病状の進展を評価することができ、同様に、様々な方法論及びアッセイを使用して、病状の減少、寛解又は退行を評価できることを理解するであろう。
【0178】
本明細書で使用される場合、「予防する」という用語は、疾患のリスクがある可能性があるが、まだ疾患を有すると診断されていない対象において、疾患、障害又は状態が発生しないようにすることを指す。
【0179】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、哺乳動物、好ましくは病態に罹患している任意の年齢のヒトを含む。好ましくは、この用語は、病態を発症するリスクがある個体を包含する。
【0180】
「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語及びそれらの複合体は、「含むがこれらに限定されない」を意味する。
【0181】
本明細書で使用される場合、「方法」という用語は、所与のタスクを達成するための様式、手段、手法及び手順を指し、限定されるものではないが、化学、薬理学、生物学、生化学及び医学の専門家に知られているか、又は彼らによって既知の様式、手段、手法及び手順から容易に開発されるそれらの様式、手段、手法及び手順を含む。
【0182】
明確にするために、別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴もまた、単一の実施形態で組み合わせて提供され得ることが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で説明される本発明の様々な特徴はまた、別個に、又は任意の適切なサブコンビネーションで、又は本発明の他の任意の説明された実施形態に適したものとして提供され得る。様々な実施形態の文脈で説明される特定の特徴は、実施形態がそれらの要素なしでは動作しない場合を除いて、それらの実施形態の本質的な特徴と見なされるべきではない。
【0183】
上記に描写され、以下の特許請求の範囲に記載されている本発明の様々な実施形態及び態様は、以下の実施例において実験的裏付けを見出す。
【実施例】
【0184】
ここで、以下の実施例を参照すれば、これらの実施例は、上記の説明と共に、本発明のいくつかの実施形態を非限定的な方法で示している。
【0185】
一般に、本明細書で使用される命名法及び本発明で利用される実験手順には、分子的、生化学的、微生物学的及び組換えDNA技術が含まれる。このような手法は、文献で詳しく説明されている。例えば、’’Molecular Cloning:A laboratory Manual’’Sambrook et al.,(1989);’’Current Protocols in Molecular Biology’’Volumes I-III Ausubel,R.M.,ed.(1994);Ausubel et al.,’’Current Protocols in Molecular Biology’’,John Wiley and Sons,Baltimore,Maryland(1989);Perbal,’’A Practical Guide to Molecular Cloning’’,John Wiley&Sons,New York(1988);Watson et al.,’’Recombinant DNA’’,Scientific American Books,New York;Birren et al.(eds)’’Genome Analysis:A Laboratory Manual Series’’,Vols.1-4,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York(1998);米国特許第4,666,828号、同第4,683,202号、同第4,801,531号、同第5,192,659号、及び同第5,272,057号に記載される方法論;’’Cell Biology:A Laboratory Handbook’’,Volumes I-III Cellis,J.E.,ed.(1994);’’Culture of Animal Cells-A Manual of Basic Technique’’by Freshney,Wiley-Liss,N.Y.(1994),Third Edition;’’Current Protocols in Immunology’’Volumes I-III Coligan J.E.,ed.(1994);Stites et al.(eds),’’Basic and Clinical Immunology’’(8th Edition),Appleton&Lange,Norwalk,CT(1994);Mishell and Shiigi(eds),’’Selected Methods in Cellular Immunology’’,W.H.Freeman and Co.,New York(1980);利用可能な免疫アッセイは、特許及び科学文献に広範に記載さており、例えば、米国特許第3,791,932号、同第3,839,153号、同第3,850,752号、同第3,850,578号、同第3,853,987号、同第3,867,517号、同第3,879,262号、同第3,901,654号、同第3,935,074号、同第3,984,533号、同第3,996,345号、同第4,034,074号、同第4,098,876号、同第4,879,219号、同第5,011,771号、及び同第5,281,521号;’’Oligonucleotide Synthesis’’Gait,M.J.,ed.(1984);’’Nucleic Acid Hybridization’’Hames,B.D.,and Higgins S.J.,eds.(1985);’’Transcription and Translation’’Hames,B.D.,and Higgins S.J.,eds.(1984);’’Animal Cell Culture’’Freshney,R.I.,ed.(1986);’’Immobilized Cells and Enzymes’’IRL Press,(1986);’’A Practical Guide to Molecular Cloning’’Perbal,B.,(1984)and’’Methods in Enzymology’’ Vol.1-317,Academic Press;’’PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications’’,Academic Press,San Diego,CA(1990);Marshak et al.,’’Strategies for Protein Purification and Characterization-A Laboratory Course Manual’’CSHL Press(1996)を参照されたい。これらはすべて本明細書に完全に記載されているかのように参照することによって組み込まれる。その他の一般的な参照が、この文書全体で提供されている。その中の手順は当該技術分野でよく知られていると考えられており、読者の便宜のために提供されている。そこに含まれるすべての情報は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0186】
材料及び方法
抗体の生成及び精製:雌性BALB/cマウスを完全フロイントアジュバント(Disco)及び30μgのMMP-7又はZn三脚-KLHの触媒ドメインで免疫し、皮下注射により不完全フロイントアジュバントで2週間ごとに追加免疫した。脾臓を収集し、B細胞をNSOマウス骨髄腫細胞と融合させた。ハイブリドーマをELISAでMMP-7及びZn三脚の触媒ドメインに対する免疫反応性についてスクリーニングし、選択したハイブリドーマをサブクローニングし、組織培養で増殖させた。GSM-192のハイブリドーマ細胞をDCCM(ハイブリドーマ細胞増殖及びモノクローナル抗体産生用に設計された無血清培地、イスラエルのBiological Industriesから購入)中で成長させた。193×3gの遠心分離により細胞を沈殿させ、上清を回収した。上清を20mMリン酸緩衝液(pH8)に対して透析した。1mlのHiTrap protein A high performance columnを100mMリン酸緩衝液(pH8)で平衡化し、上清を1ml/分でロードした。抗体を100mMクエン酸緩衝液(pH6)で溶出し、50mM Tris(pH7.5)及び150mM NaClに対して透析した。
【0187】
ドットブロットを、真空ベースのマニホールド96ウェルドットブロットシステム(GE 10447900ミニフォールドドットブロット)を使用して、TBSTで予め濡らしたニトロセルロース膜上に1μg、1.5μg及び2μgのチモーゲン及び活性化MMP-7組換え酵素を固定化することによって行った。ブロッキングは、TBST中の3%BSAを用いて室温で1時間行った。次いで、一晩インキュベートすることによって、前の工程で溶出した抗体による結合について膜をプローブした。使用した抗MMP-7 mAbは、TBST中2ug/mlの濃度であった。TBSTで3回洗浄した後の膜をヤギ抗マウスHRP抗体とインキュベートし、ECLを使用して発色させて、触媒形態のみに対する結合の選択性を決定した。
【0188】
Fab生成のためのパパインによる抗体消化。パパインを0.5M Tris-HCl(pH8)、10mM EDTA及び5mMジチオスレイトール中で37℃で15分間活性化した。活性パパインを無傷のGSM-192の溶液に1:1,000の比で添加し、消化プロセスを37℃で3時間行った。消化反応を、暗所、室温で30分間、20mMヨードアセトアミドを添加して終了させた。Fab断片をプロテインAカラムによってFcから単離し、Fab断片をフロースルーから回収し、50mM Tris(pH7.5)及び150mM NaClに対して透析した。Fab断片の純度を12%SDS-PAGEゲルによって推定した。
【0189】
MMP-7 Elisa結合アッセイ:96ウェルプレート(Nunc)を5mg/mlのMMPでコーティングした。コーティング後、プレートをGSM-192と共に25℃で1時間インキュベートした。結合したFab断片/全長を、ヤギ抗Fab/抗マウス抗体、続いてペルオキシダーゼ結合ウシ抗ヤギ抗体を標準的な手順に従って使用して検出した。4パラメトリックシグモイド曲線フィッティング解析を使用して、最大半数効果濃度を計算した。
【0190】
MMP-7酵素動力学的アッセイ:GSM-192 Fabの存在下でのMMP-7の酵素活性を、前述のようにλex=340nm及びGSM-192=390nmで蛍光性ペプチドMca-Pro-Leu-Gly-Leu-Dpa-Ala-Arg-NH2(配列番号10)の加水分解を監視することによって37℃で測定した30。様々な濃度のGSM-192 Fab(0~200nM)を、50mM Tris-HCl緩衝液(37℃でpH7.5)、100mM NaCl、5mM CaCl2及び0.05%Brij-35中10nMのMMP-7と共に37℃で2時間インキュベートした。蛍光発生ペプチドを10μMの最終濃度まで添加することによって酵素反応を開始させた。蛍光を直ちに30分間連続して記録した。
【0191】
初期反応速度を測定し、阻害剤の存在下での初期速度をVi、阻害剤の非存在下での初期速度をV0、阻害剤濃度をIとする式にデータをフィッティングすることにより、阻害定数を評価した。阻害のタイプを決定するために、MMP-7の初期速度を、Fab GSM-192のいくつかの固定濃度(0~500nM)での基質濃度(0~30mM)の関数として測定した。見かけのKM及びVmaxの値を線形化によって導出した。
【0192】
抗体配列決定:免疫グロブリンV領域遺伝子をクローニングし、PCRによる増幅後に配列決定した。全RNAを、製造業者のプロトコルに従って、フェノール-グアニジンイソチオシアネート法(peqlab biotechnologieのpeqGOLD TriFast)によって5×106個のハイブリドーマ細胞から調製した。CDNAを取得し、ReverseiTTMワンステップRT-PCR Kit(ABgene)を用いて一段階で増幅を行った。V領域遺伝子を、マウス重鎖及び軽鎖リーダー配列、並びにアンチセンス定常プライマー(Amersham Biosciences)に相同な縮重センスプライマーを使用することによって増幅した。増幅産物を、標準的なプロトコルを用いてpGEM-T Easy Vector(Promega)に連結し、インサートの両方の鎖をDNA配列決定ユニット(Biological Services、Weizmann Institute of Science)の自動配列決定装置で配列決定した。
【0193】
GSM-192軽鎖配列(配列番号1)
D I VT Q S P A S L A V S L G Q R A T I S C R A S E S F D S Y G N T F V H W Y Q Q K P G Q P P K L L I Y L V S N L E S G V P A G F R G R G S R T D F T L T I D P V E A D D A A T Y Y C Q Q N N E D P Y T F G G G T K L E I K R A
【0194】
GSM-192重鎖配列(配列番号2)
E V Q L Q Q S G P E L V K P G A S V K I P C K A S G Y T F T D Y N M D W M K Q S H G K S L E W I G H I N P N N G G T F Y N Q K F K D K A T F I V D K S S N T A Y M E L R S L T S E D T A V Y F C A R G G G L R R G P F A Y W G Q G T L V T V S
【0195】
GSM-192 Fabのタンパク質結晶学:ハンギングドロップ蒸気拡散法を使用して得られた遊離GSM-192 Fabの結晶は、最高で2.3Åの分解能まで回折した。結晶を、0.2M CaCl2、0.1M HEPES pH=7、20%PEG 6000及び0.01Mベタイン塩酸塩から成長させた。三方晶系空間群P3121に形成された結晶は、細胞定数a、b=88.44、c=119.34Å、g=120°であり、軽鎖及び重鎖が1コピーであった。RAXIS IV++検出器を備えたRU-H3R回転アノードを使用して、2.3Å分解能のフルX線データセットを100Kで収集した。HKL2000プログラム31を使用して、回折像を指数化し、積分した。SCALEPACKプログラム31、39を使用して、振動モード及び積分反射で収集されたX線回折データの処理をスケーリングした。CCP4プログラムスイート40からのTRUNCATEを使用して、構造因子振幅を計算した。データ収集の詳細も表3に記載する。抗Aβモノクローナル抗体mAb(PFA1)(タンパク質データバンク(PDB)アクセッションコード2IPU)の精製構造をモデルとして使用して、プログラムPHASER41による分子置換によって構造を解明した。原子リファインメントの全ての工程を、PHENIXプログラム42を用いて実行した。モデルを、COOTプログラム43を使用して2mFobs-DFcalc及びmFobs-DFcalcマップに組み込んだ。リファインメント重量を最適化した。GSM-192 Fabコンストラクトは、重鎖224アミノ酸残基、軽鎖215アミノ酸(439残基)で構成される。最終モデルは、重鎖中の残基1~221及び軽鎖中の残基2~185を含む。Rfree値は27.85%(リファインメントに使用されていない反射の5%について)であり、Rwork値は全データについて2.3Åに対して23.22%である。GSM-192 FabモデルをPROCHECKプログラム44で評価した。GSM-192 Fab構造のリファインメント統計の詳細を表3に記載する。GSM-192 Fabの座標及び構造因子は、IDコード6FBJのもとでPDBに寄託されている。
【0196】
【0197】
計算モデリング及びドッキング:抗体GSM-192のFvドメインをMMP-7に計算的にドッキングした。PDBで入手可能なMMP-7のいくつかの構造の比較は、活性部位溝の幅に影響を及ぼす構造の変動を示した。実験構造に適用されたノーマルモード解析45は、ループの同様の移動度を示した。したがって、MMP-7の実験構造及びいくつかのノーマルモード配座異性体をドッキングに使用した。FFTベースの幾何学的静電疎水性(GEH)バージョンのMolFit46~48を使用して分子をドッキングし、ドッキングした分子の相対回転及び並進の網羅的な段階的走査を実行し、すべての試験位置についてGEHスコアを提供する。得られたポーズを、走査後の傾向及び溶媒和(P&S)フィルタ49を使用してフィルタリングした。
【0198】
フィルタリングされたモデルを更にスクリーニングして、相互作用が抗体CDR中の露出残基を含むモデルのみを含めた。このスクリーニングは、露出したCDR残基と標的分子との間の原子原子接触の数(5Å以下の距離)をカウントした。MolFitのGEHスコアは、分子の相対的な向きの小さな変化に敏感であり50、局所剛体リファインメントは、真に高スコアのドッキングモデルを同定するために非常に有効であることが以前に見出された。したがって、2°刻みの小さな局所回転を可能にすることによって、いくつかのスキャンからのモデルを洗練した。リファインメントは、ドッキング結果において1つのモデルを強調した。このモデルは、構造2y6aによく似たノーマルモード配座異性体を採用したドッキングスキャンにおいて1位にランク付けされ、その精密化されたスコアは、次のモデルより3.1σ上及び平均スコアより9σ上であった(平均スコア及びσは、極値分布関数をGEHスコアの分布に適合させることによって決定された50)。注目すべきことに、MMP-7構造の一部としてAHAを含むスキャン及びAHAなしのスキャンで同じモデルが得られた。後者の場合、AHAの位置は空であり、アクセス可能であった。
【0199】
アンカースポットを使用して、タンパク質の表面上の単一アミノ酸側鎖の好ましい結合位置を同定した。マッピングを、ANCHORSmap
32を用いて行った。UCSF-Chimera
51を構造分析及び比較のために、及び
図3を作成するために使用した。
【0200】
細胞培養:全ての細胞株を、5%CO2を含む37℃の加湿インキュベーター内に維持し、10%ウシ胎児血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、1%L-グルタミン、1%ピルビン酸ナトリウムを補充したDMEM、RPMI培地1640又はIMDMからなる完全培地で培養した。
【0201】
MMP-7レンチウイルスサイレンシング及びFACS分析:市販のshRNAオリゴ(Sigma Aldrich)と組み合わせたViraPower Lentiviral Expression System(Thermo Fisher Scientific)を使用して、MMP-7に対するshRNAによるHIVベースの安定な形質導入によって、AsPC-1膵臓癌細胞におけるMMP-7の安定なノックダウンを達成した。組換えレトロウイルスを標準プロトコル52に従って作製した。AsPC-1細胞を、8μg/mlポリブレンの存在下、10のMOIで形質導入した。形質導入の48時間後、AsPC-1細胞を継代し、6時間接着させた後、40μg/mlピューロマイシンを添加して、形質導入された細胞を積極的に選択した。同じ条件に維持された非形質導入対照細胞の100%が死滅した後、24時間まで抗生物質圧力を維持した。ノックダウン有効性をqRT-PCRによって決定した。RNAを、TRIzol(Life Technologies)を製造業者のプロトコルに従って使用して細胞から単離した。High Capacity RT Kit(Life technologies)を製造業者の説明書に従って使用して逆転写を行った。FACSにおいてヨウ化プロピジウムを使用する細胞周期分析を、80%の細胞密集度に維持された安定なノックダウン細胞に対して行った。
【0202】
MTT細胞増殖アッセイ:MTT溶液(M5655 SIGMA)を全培養体積の10%(フェノールレッドを含まないRPMI/IMDM中0.5mg/ml MTT)で添加し、3時間のインキュベーション後、プレートをPBSで洗浄し、MTT溶媒(無水イソプロパノール中0.1N HCl)を用いて可溶化した。分光光度計プレートリーダーにおいて630~690nmの波長で読み取り値を得た。対照ウェルと比較して、細胞増殖の相対的割合を決定した。IC50のカーブフィッティング分析を、Originソフトウェアv8.5を使用して行った。
【0203】
FACSアネキシンVアポトーシス検出アッセイ:6cmプレート中の70%コンフルエントな細胞を、滅菌GSM-192 Fab断片/コントロール抗LOXL-2 Fab断片により24時間処理し、以前に記載されたように53、アネキシンV FITCアポトーシス検出キット(E Biosciences 88-8005-72)を使用してFACS用に調製した。FACS取得は、Cell Quantソフトウェア(Becton Dickinson)のFACS LSR-II機を使用して行い、FlowJoソフトウェア(Treestar,Inc.、カリフォルニア州サンカルロス)で更に分析した。
【0204】
ウエスタンブロット:処理した細胞を、プロテアーゼ阻害剤を含有するRIPA緩衝液で溶解し、氷中で30分間保存しながら断続的に振盪した。残屑を14,000×gでの遠心分離によって除去し、上清をBCAタンパク質決定アッセイに使用した。或いは、培養上清を0.2μmセントリコンを用いて少なくとも10倍濃縮した。等しいタンパク質含有量に正規化したら、試料緩衝液を添加し、95℃で3分間加熱した。変性した試料を14,000×gで5分間遠心分離した後、25μLをSDS pageゲルにロードし、標準的なブロッティング手順に従った(General Protocol for Western Blotting、BioRad bulletin 6376)。使用した一次Abは、MMP-7(abcam、ab5706)、Fas-L(abcam、ab15285)、αチューブリンAb(sc31779)であった。
【0205】
創傷治癒アッセイ(スクラッチアッセイ):細胞の遊走挙動を、創傷治癒アッセイによって、培養インサート(ibidiGmbH、ドイツ国マルティンスリート、アムクロプファーシュピッ19)を製造業者者の説明書に従って使用してアッセイした。24時間後、培養物インサートを除去し、およそ500μmの無細胞間隙(「創傷と定義される」)を残した。この「創傷領域」への遊走速度を記録し、Carl Zeiss顕微鏡(DeltaVision Microscopy Imaging Systems-GE Healthcare Life Sciences、米国)を用いて測定した。遊走速度を、細胞によって覆われた面積のパーセンテージによって決定した。各分析を3回ずつ行い、2回繰り返した。
【0206】
トランスウエル遊走アッセイ:細胞をアッセイ培地(1%血清のみを含有するIMDM培地)において一晩飢餓状態にした。細胞(1×105)を24ウェルトランスウェルプレート(BD Biosciences;細孔径8μm)の上部チャンバーに添加し、GSM-192を含む又は含まないアッセイ培地を両方のチャンバーに添加した。一晩インキュベートした後、上部ウェルに遊走しなかった細胞を除去し、底部に遊走した細胞を4%PFAで固定し、クリスタルバイオレット(0.05%)で染色した。5視野の細胞数を20倍の倍率で計数し、各チャンバーの平均を決定した。
【0207】
免疫組織化学:OCT(厚さ10μm)中の凍結ヒトPDAC切片をクライオスタットで切断した。切片を室温で30分間ベンチトップ上で乾燥させ、PBS中で10分間再水和させ、PNBブロッキング緩衝液(PerkinElmer Life Sciences)と室温で1時間プレインキュベーションし、次いで、目的の一次抗体、GSM-192 mAb又はMMP-7(abcam、ab5706)と4°Cで一晩インキュベーションした。対応する二次HRP抗体を製造業者の推奨する希釈で使用した。スライドを封入剤にマウントした。マウントした切片の画像を、Carl Zeiss光学顕微鏡を使用して得た。
【0208】
動物モデル
RIP1-Tag2</u></u>:RIP1Tag2(RT2)マウスPanNETモデルは、ラットインスリンIIプロモーター領域と、大型T抗原及び小型t抗原をコードするSV40初期領域との融合によって開発された。癌遺伝子発現は胚発生(E8.5)中に始まるが、膵島は最初は正常な解剖学的及び組織学的外観(「正常」段階)を有する。4~5週齢で始まり、過形成性及び異形成性膵島が現れ始め、10週齢までに全膵島の50%が退行(rending)する。血管新生膵島は6週齢頃から現れ、10.5週齢では全膵島の10%を占める。血管新生膵島は、それらの拡張した血管及び微小出血によって認識される。腫瘍は、9~10週から始まり、14週までに全ての膵島の2~4%を占める。末期の腫瘍の約半分は、周囲の腺房組織への限局性又は広範な浸潤を示す。RIP-Tag2マウスは、主に高インスリン血症のためにおよそ14週齢で死亡する。更に、RIP1-Tag2-Vecad-tdTomatoマウスを使用して死後の血管の崩壊を実証し(n=1)、RIP1-Tag2-CX3CR1を使用して腫瘍嚢のマクロファージを可視化した(n=1)。
【0209】
ゲムシタビン同時処理:10,000個/ウェルのAsPC-1細胞を96ウェル平底プレートに播種し、加湿インキュベーター中、37℃、5%CO2で一晩インキュベートした。ウェル中の培地を、2.33μMのGSM-192又はPBSと、0.05、0.1、0.5、1、5、10、40及び80μMのゲムシタビンとを含有する無血清RPMI培地により交換した。プレートを、加湿インキュベーター中、37℃、5%CO2で72時間更にインキュベートした。MTT溶液(M5655 SIGMA)を全培養体積の10%(フェノールレッドを含まないRPMI/IMDM中0.5mg/ml MTT)で添加し、3時間のインキュベーション後、プレートをPBSで洗浄し、MTT溶媒(無水イソプロパノール中0.1N HCl)を用いて可溶化した。分光光度計プレートリーダーにおいて650nmの波長で読み出しを得て、バックグラウンド読み出しを570nmで行った。細胞死データを、ゲムシタビン濃度の対数の関数としてプロットし、可変勾配シグモイド回帰モデル(GraphPad prism 8.3.0)に当てはめた。更に、3回の実験反復からのIC50の平均及び対応する標準偏差を計算した。
【0210】
統計:すべての代表的な結果について、実験を少なくとも2回繰り返し、反復実験を使用してs.e.m.を計算した。通常の分布データを、2群間の連続変数を比較するために不等分散を用いるスチューデントのt検定によって試験した。統計分析を、GraphPad Prism 7を使用して行った。
【0211】
データの利用可能性:GSM-192 X線構造をアクセッション番号6DBJのタンパク質データバンクに寄託した。
【0212】
結果
Zn三脚又は活性化組換えヒトMMP-7による個々の免疫化は、立体構造選択性をもたらさなかった:メタロエンザイムMMP-7の保存された構造は、酵素活性部位内に存在する触媒性亜鉛-ヒスチジン複合体を含有する。完全フロイントアジュバント単独で乳化した少量の合成Zn三脚-KLHの反復投与による雌性BALB/cマウスの免疫化は、抗MMP-7抗体をもたらさず(
図1A)、MMP-7活性化酵素単独による同様の免疫化も、この形態の酵素に対する固有の特異性を有する親和性成熟抗体をもたらさなかった(
図1B)。抗Zn三脚、抗MMP-7免疫応答を、直接的な酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を使用してマウス血清でそれぞれ調べた。これらの2つの免疫化は、交差反応性又は立体構造選択性のいずれも示すことができなかった。これらの結果は、活性部位模倣分子(Zn三脚)による、又は目的の抗体を生成するために活性化酵素を使用する従来のアプローチによる個々の免疫化を使用して、in vivoで親和性成熟を生成することにおける限界を強調した。
【0213】
交互免疫化戦略により、MMP-7を選択的に標的とする高親和性mAbが得られる:Zn三脚及び組換えヒトMMP-7(hMMP-7)活性酵素によるマウスの代替免疫化を使用して、GSM-192を生成した。雌性BALB/cマウスを、小型のZn三脚及びhMMP-7の触媒ドメインで3週間ごとに免疫した(方法を参照)。抗Zn三脚、抗MMP-7免疫応答を、ELISAを使用してマウス血清で調べた。進行性の応答が、反復注射の関数として観察された(
図2A)。マウス血清中の免疫応答の特異性を、それぞれZn三脚(
図2E)及びMMP-7の触媒ドメイン(
図2B)に対するELISAを使用して調べた。この分析は、Zn三脚とMMP-7の両方を認識する交差反応性抗体の生成を示した(
図2B)。
【0214】
MMP-7の活性型に結合することができ、チモーゲンに結合できない抗体のみを、更なる開発のために選択した(すなわち、融合のために選択され、モノクローナル抗体を生成するために開発された)。これを、様々な濃度の活性MMP-7及びそのチモーゲンでそれぞれコーティングされたニトロセルロース膜を使用してドットブロット分析により行った。GSM-192が、酵素のチモーゲン形態ではなく、酵素の触媒ドメインに結合したことが示された(
図2F)。
【0215】
MMP-7触媒ドメインの選択的結合及び触媒活性の阻害:選択された抗MMP-7 mAb GSM-192の結合定数をELISAを用いて測定した(
図2C)。Kdは43.1±1.43nMであると測定され、抗体は、MMP-9、MMP-14、MMP-12及びMMP-13等の保存された配列相同性及び機能的類似性を有する密接に関連したMMPとの交差反応性を示さなかった。他のMMPのパネルへの結合の欠如は、MMP-7に特異的にユニークなエピトープに対する新規抗体の親和性を測定するのに役立った。
【0216】
注目すべきことに、免疫ブースターが共通の亜鉛モチーフも含んでいたことを考慮すると、抗体はMMP-7に対して完全に選択的である。ヒトMMP-7の酵素活性に対するGSM-192 Fab断片の効果を、標準プロトコルに従って短い蛍光発生ペプチドを使用してin vitroで調べた。組換え活性MMP-7の酵素活性を、漸増濃度のGSM-192のFab断片の存在下で測定した。GSM-192 Fabは、131.98±10.23nMのKiでMMP-7活性を阻害することが見出された。同時に、関連するMMPの触媒活性に対する抗体の効果を測定した。MMP-9、MMP-14及びMMP-12のin vitroでの触媒活性は、抗MMP-7 Fab処理によって影響されなかったか、又はMMP-14の場合、無視できるほどしか影響されなかった(
図2D)。
【0217】
Fab断片結晶構造及び活性MMP-7とのドッキングモデル分析:抗体が結合してMMP-7の触媒活性を阻害している場所を決定するために、GSM-192 FabをX線結晶学を使用して特性評価を行った。結晶構造を2.3Åの分解能で決定した(
図3A)。GSM-192 Fabコンストラクトは、重鎖224アミノ酸残基、軽鎖215アミノ酸(合計439残基)で構成される。最終モデルは、重鎖中の残基1~221及び軽鎖中の残基2~185を含む。Rfree値は27.85%(リファインメントに使用されていない反射の5%について)であり、Rwork値は全データについて2.3Åに対して23.22%である(表1)。抗原結合表面は畳み込まれ、一方は軽鎖CDR1(残基31-DSYGN-35L)からなり、他方は重鎖CDR3(残基101-GLRR-105H)からなる2つの突出要素を示す。この抗原結合表面は特有かつ新規である。GSM-192(Fvドメイン)のMMP-7へのドッキングは、抗体ループCDR-H3が酵素の活性部位の内側に結合するモデルをもたらした(
図3B)。
【0218】
タンパク質データバンク(PDB)は、MMP-7の触媒ドメインのいくつかの構造を含み、重ね合わせると、活性部位付近のループの可動性を示す。同様の可動性がノーマルモード分析で見られ、したがって、抗体GSM-192(FvドメインL2-L112及びQ0-Q116)を、活性部位の異なる開口部を示すいくつかのMMP-7コンフォーマーにドッキングさせた。構造2y6c31に見られるように、活性部位が開いたMMP-7コンフォーマーにドッキングすると、
図3Bに示す次のモデルよりも3σ超の相補性スコアを有する統計的に優れたモデルが生成された。
【0219】
ドッキングモデルは、アミノ酸L181、A216及びY241によって区切られたMMP-7活性部位内のポケットにおけるL100Hの強力な疎水性固定によって結合が安定化されることを意味する。計算固定スポット
32マッピングは、このポケットを疎水性残基、特にLeuの強力な結合物質として同定した(
図3B、
図3D)。別の強い疎水性相互作用は、活性部位ポケットの縁部でのMMP-7の表面上の細長い空洞におけるY33Lの結合である。追加の予測される相互作用は、R105H-N243、T28HY172、Y32H-T180、N33H-P239/T240、N52H-H229、N55H-S101/G99、Y33L-P246/Q247、F37L-Y241、Y54L-G178及びE60L-N179である。
【0220】
注目すべきことに、このモデルは、触媒溝に直接結合する可逆的な亜鉛結合ヒドロキサメートであるアセトヒドロキサム酸(AHA)が、抗体と共に結合部位に収容され得ることを示す。
図3Cは、MMP-7/GSM-192複合体の予測された構造の図を提示し、一方では優れた表面相補性を強調し、他方ではAHAがGSM-192の存在下でMMP-7に挿入及び結合することができる小さな開口部を強調表示している。
【0221】
要約すると、抗体の提案された結合様式は、疎水性固定及び多数の他の接触からなり、Zn2+を含まず、Zn2+へのAHAの同時結合を可能にする。
【0222】
レンチウイルスサイレンシングは、in vitroでの膵臓癌細胞生存におけるMMP-7の重要な役割を明らかにする:ウエスタンブロット分析を使用して、膵臓癌細胞株AsPC-1、Su86.86、BxPC-3、CFPAC-1におけるMMP-7の存在を可視化した。細胞溶解物を膜にブロットし、抗MMP-7市販抗体(モノクローナルマウスIgG2B、R&D systems)でプローブした。活性MMP-7、チモーゲン及び中間形態のタンパク質レベルは、細胞株において変動することがわかった(
図6A)。CFPAC-1及びASPC-1は、すべてのMMP-7形態の高い発現を有していた。本発明者らは、MMP-7の除去が、原則として、単培養膵臓癌細胞の生存にとって重要であるかどうかを試験し、AsPC-1細胞においてMMP-7レンチウイルスサイレンシングを行った。サイレンシングは、ヨウ化プロピジウム(PI)染色及びその後のFACS分析において増大したサブG1ピークを示した細胞をもたらし、非標的化対照と比較して増大した細胞死を示した(
図4A)。したがって、膵臓癌細胞は、MMP-7の除去に対して感受性であることが見出された。
【0223】
抗MMP-7 Fabはアポトーシスを介して膵臓腫瘍細胞死を誘導する:膵臓癌細胞死に対する抗体媒介性MMP-7阻害の影響を試験するために、70%コンフルエント培養物を様々なGSM-192 Ab濃度で24時間処理した。GSM-192処理は、細胞死の誘導をもたらした。細胞をMTT 3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)で処理して細胞の生存率を確認し、その後の試験における標準化処理についてIC50を計算した。CFPAC-1及びAsPC-1 PDAC細胞は、それぞれ4.34μM及び2.33μMのIC50で死滅した(
図6B)。
【0224】
同様のパイプラインで産生された抗LOXL-2(リシルオキシダーゼ様2)mAb33をアイソタイプ対照として使用した。GSM-192 Fabは、アポトーシスを介して細胞死を誘導することが示され、アポトーシスを受ける細胞集団の割合は、漸増濃度の抗MMP-7処理に対応して増大した(
図4B)。アポトーシスの分子マーカーを試験するために、Fasリガンド発現をウエスタンブロット分析によって分析した。AsPC-1細胞を、GSM-192Fabにより、致死濃度未満で24時間処理した。実際、これらの細胞は、未処理対照と比較してFasリガンド(FasL)発現の増加を示した(
図4C)。
【0225】
GSM-192 Fabはin vitroで細胞運動性を低下させる:MMP-7媒介E-カドヘリン切断は細胞遊走を促進する
19ことから、活性化酵素に対する有効な抗MMP-7抗体は遊走に影響を及ぼすことができるはずであると仮定された。標準的なスクラッチアッセイ(
図5A)では、GSM-192処理は、細胞の遊走を完全に停止させなかったが、創傷閉鎖速度の有意な低下を示した(以前の実験においてCFPAC-1細胞に対するマイトマイシンCを使用した抗増殖効果について制御した場合、データは示されていない)。実際、致死濃度未満でのGSM-192処理は、処理の15時間後にトランスウェルメンブレンを横切って遊走することができる細胞の数をほぼ半分に減少させた(
図5B)。
【0226】
RIP1-Tag2マウス血清中の天然MMP7が抗MMP-7抗体に結合する能力を評価する:抗MMP-7 mAbは、低濃度のMMP-7触媒酵素に効果的に結合することがわかった。後期インスリノーマを有するRIP1-Tag2マウスから単離した血清を使用して、抗MMP-7 mAbが循環酵素によって結合及び除去されるかどうかを判断した。ドットブロット膜にロードした非常に高濃度の血清は、抗MMP-7 mAbの結合を何ら示さなかった(
図8)。この実験のためにロードした総血清タンパク質は、純粋なMMP-7触媒対照に使用されたタンパク質濃度の335倍であった。本明細書中上記で実証される触媒形態に対する抗MMP-7抗体の選択的結合は、そのチモーゲン形態で主に存在する循環酵素に対する結合が観察されない理由であり得る。
【0227】
GSM-192処理は、初期処理のRIP1-Tag2(PanNET)マウスにおける進行性腫瘍病変の発生を減少させる:6~8週齢に及ぶ過形成から血管新生段階への移行段階のRIP1-Tag2マウス(n=15)を、毎日3mg/kgの濃度のGSM-192及びGST対照抗体で腹膜内(IP)処理した。処理後8週齢の動物を屠殺し、その膵臓をパラフィンブロックに包埋し、切片にした。組織における異なる深さのいくつかの切片を、その後の組織学的分析又は免疫蛍光染色のために作製した。腫瘍サイズ及び病期分類をRIP1-Tag2マニュアルに従って行った。この処理は、後期血管新生に向かう膵島の進行を減少させることが見出され、換言すれば、血管新生後病変に進行する膵島の割合は、処理群においてほぼ半分に減少した(
図9A)。以前にin vitro細胞培養で観察されたように、組織を、細胞増殖速度(細胞分裂マーカーKi-67を使用)及び細胞アポトーシス速度(エフェクターアポトーシスマーカーカスパーゼ-3を使用)の差について試験した。アポトーシス又は細胞増殖を受ける細胞の数の有意な変化は観察されなかった(
図9B)。CD34+細胞によって被覆される面積の有意な変化が観察され、新生血管形成前駆細胞が、対照Ab群と比較して処理群ではあまり豊富ではなかったことが示された。
【0228】
後期処理は、RIP1-Tag2(PanNET)マウスモデルにおける腫瘍体積に対する持続的な効果を示す:指数増殖期の血管形成後10~12週齢のRIP1-Tag2マウス(n=15)の後期腫瘍を、腹腔内(IP)注射で1日おきに5mg/kgの濃度のGSM-192及びGST対照抗体で処理した。腫瘍体積として計算した総腫瘍量は、GSM-192処理群で有意に減少した(
図9C)。腫瘍体積は、キャリパースケールからのx、y及びzの寸法を使用して測定した。GSM-192処理群における腫瘍体積は、未処理群の半分未満(約60mm
3~24mm
3)に減少した。したがって、MMP-7の役割は、重複する機構又は異なる機構を介して、後期及び初期段階の腫瘍成長にとって重要である。
【0229】
HUVEC細胞による管形成は、GSM-192で処理した場合に破壊された:ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を、血管新生管形成の分析のためにMatrigel
TM又は類似のECM基質上で成長させた。HUVECによる管又は毛細管様構造の形成は、血管形成能の促進又は低下の尺度である。抗MMP-7 mAb GSM-192との8時間のインキュベーションの後、位相差倒立顕微鏡下での分岐点/節の数及び閉ループの数の両方が、対照Ab処理HUVECと比較して有意に減少することが見出された。閉ループの数は、GST対照Ab処理群の平均99ループからGSM-192ウェルの平均78ループに減少した(
図10A)。分岐点の数もまた、処理群において平均107から83の結節に減少した。
【0230】
大動脈リング出芽アッセイは、GSM-192処理による新生血管芽の著しい減少を示した:大動脈リングアッセイは、細胞解離を伴わない血管新生の可能性を研究するためのex vivoアッセイであり、微小血管形成をもたらす複雑な事象のより完全な描写を提供する。1型コラーゲンに埋め込まれた8週齢のマウス大動脈を、GSM-192及び対照GST mAbで7日間処理した。固定した試料をクリスタルバイオレットで染色し、顕微鏡下で撮像した。血管芽の数を定量化した。芽の平均数は、GSM-192処理サンプルよりも対照mAb処理サンプルにおいて有意に高かった(
図10B)。GST処理サンプルの平均約73個の芽からGSM-192サンプルの43個の芽に減少した。
【0231】
GSM-192による同時処理はゲムシタビン(GEM)のIC
50を低下させる:膵管腺癌は本質的に化学療法剤に対する強い耐性が可能である。下流標的遺伝子としてMMP-7をカウントするWnt/β-カテニン経路の調節不全は、この薬物耐性の獲得に関与している。Fas受容体の放出を介したMMP-7は、化学療法薬オキサリプラチンに対する感受性の低下に関与することが示されている。本発明者らは、PDAC AsPC-1細胞をMMP-7媒介薬物耐性から救済することにおけるGSM-192の有効性を確認した。AsPC-1細胞の処理により、126.6±40.5nMのGEM+PBS群のIC
50が得られた。2.33uMのGSM-192及び様々な濃度のGSM-192の同時処理は、14.2±1.52nMまでのGEMのIC
50の著しい低下を示した(
図11A~B)。GSM-192は、MMP-7を不活性化することによって、in vitroでの癌細胞のGEMに対する感受性を増加させる。
REFERENCES
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【0232】
本発明をその特定の実施形態と併せて説明してきたが、多くの代替形態、修正形態及び変形形態が当業者には明らかであることは明らかである。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲の趣旨及び広い範囲内にあるすべてのそのような代替形態、修正形態及び変形形態を包含することが意図されている。
【0233】
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許及び特許出願は、個々の刊行物、特許又は特許出願が参照により本明細書に組み込まれることが具体的かつ個別に示された場合と同程度に、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。更に、本出願における参考文献の引用又は識別は、そのような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることを認めるものと解釈されるべきではない。欄の見出しが使用されている限り、それらは必ずしも限定的であると解釈されるべきではない。
【0234】
更に、本出願の優先権書類(複数可)は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】