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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-30
(54)【発明の名称】真空コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 5/013 20060101AFI20220323BHJP
   H01G 5/014 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
H01G5/013 100
H01G5/014
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544381
(86)(22)【出願日】2021-02-16
(85)【翻訳文提出日】2021-07-29
(86)【国際出願番号】 EP2021053690
(87)【国際公開番号】W WO2021170447
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】20160022.8
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509337160
【氏名又は名称】コメット アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビグラー、ヴァルター
(57)【要約】
本願発明は、真空コンデンサ(1、30)に関し、当該真空コンデンサは、真空誘電体媒質を閉じ込めるエンクロージャー(9)と、真空誘電体媒質によって分離された第1電極(12)および第2電極(13)とを有し、エンクロージャー(9)は、第1電極(12)と電気的に接触する第1導体カラー(2)、および第2電極(13)と電気的に接触する第2導体カラー(3)を有し、第1導体カラー(2)および第2導体カラー(3)は、エンクロージャー(9)の絶縁エレメント(4)によって分離されており、エンクロージャー(9)は、少なくともひとつの突起エッジ(6)を示し、突起エッジ(6)は第1導体カラー(2)または第2導体カラー(3)の最も近い部分と電気的に接触し、真空コンデンサ(1、30)は、真空エンクロージャーの外側において突起エッジ(6)を覆う少なくともひとつの保護手段(7、37)を有し、保護手段(7、37)は、少なくとも部分的にエラストマーから作成されており、保護手段(7、37)の少なくとも外側面(7b、37b)は、電気的に導体であり、かつ、突起エッジ(6)に対して最も近い導体カラーと同じ電気ポテンシャルであり、保護手段(7、37)の外側面(7b、37b)は、突起エッジ(6)の曲率半径より大きい曲率半径を有する、ことを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空コンデンサ(1、30)であって、
真空誘電体媒質を閉じ込めるエンクロージャー(9)と、
前記真空誘電体媒質によって分離された第1電極(12)および第2電極(13)と
を備え、
前記エンクロージャー(9)は、前記第1電極(12)と電気的に接触する第1導体カラー(2)、および前記第2電極(13)と電気的に接触する第2導体カラー(3)を有し、
前記第1導体カラー(2)および前記第2導体カラー(3)は、前記エンクロージャー(9)の絶縁エレメント(4)によって分離されており、
前記エンクロージャー(9)は、少なくともひとつの突起エッジ(6)を示し、前記突起エッジ(6)は前記第1導体カラー(2)または前記第2導体カラー(3)の最も近い部分と電気的に接触し、
前記真空コンデンサ(1、30)は、前記真空エンクロージャーの外側において前記突起エッジ(6)を覆う少なくともひとつの保護手段(7、37)を備え、
前記保護手段(7、37)は、少なくとも部分的にエラストマーから作成されており、
前記保護手段(7、37)の少なくとも前記外側面(7b、37b)は、電気的に導体であり、かつ、前記突起エッジ(6)に対して前記最も近い導体カラーと同じ電気ポテンシャルであり、
前記保護手段(7、37)の前記外側面(7b、37b)は、前記突起エッジ(6)の曲率半径より大きい曲率半径を有する、ことを特徴とする真空コンデンサ(1、30)。
【請求項2】
前記保護手段(7、37)の前記外側表面の前記曲率半径は、少なくとも大きさ1mm、好適には、少なくとも2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、または10mmである、ことを特徴とする請求項1に記載の真空コンデンサ(1、30)。
【請求項3】
2つの突起エッジ(6)を有し、前記突起エッジ(6)の各々は、保護手段(7、37)によって覆われている、ことを特徴とする請求項1または2に記載の真空コンデンサ(1、30)。
【請求項4】
前記突起エッジ(6)は、略環状であり、前記保護手段(7、37)はリング形状である、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の真空コンデンサ(1、30)。
【請求項5】
前記保護手段(7)は円形または楕円形の断面を有する、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の真空コンデンサ(1、30)。
【請求項6】
前記保護手段は前記最も近い導体カラーの方向を向いた前記円錐の前記頂点(37d)、および前記エンクロージャー(9)の前記絶縁エレメント(4)の方向を向いた前記円錐の前記ベースを有する、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の真空コンデンサ(1、30)。
【請求項7】
前記保護手段(7、37)は、覆われる前記突起エッジ(6)を収容するためのリセス(7a、37a)を含む、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の真空コンデンサ(1、30)。
【請求項8】
前記保護手段(7、37)の前記外側表面、および前記エンクロージャー(9)の前記絶縁エレメント(4)の前記外側表面は、接触して90°以下の角度を形成する、ことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の真空コンデンサ(1、30)。
【請求項9】
前記保護手段(7、37)は、2013年UL94標準のV1またはV0分類のいずれかに従う、非可燃性材料から少なくとも部分的に作成される、ことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の真空コンデンサ(1、30)。
【請求項10】
前記保護手段(7、37)は、電気的導体材料によってコーティングされた絶縁材料から作成される、ことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の真空コンデンサ(1、30)。
【請求項11】
前記保護手段(7、37)は、アルミニウムまたは銀によってコーティングされている、ことを特徴とする請求項10に記載の真空コンデンサ(1)。
【請求項12】
前記保護手段(7、37)は、ポリテトラフルオロエチレンエラストマー、シリコンエラストマー、または、エチレンプロピレンジエンモノマーなどのエラストマーマトリクス、および、ニッケルおよび/またはグラファイト粒子からなるパウダーなどの導体マトリクスフィラーを化合した化合物によって少なくとも部分的に作成されている、ことを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の真空コンデンサ(1、30)。
【請求項13】
前記保護手段(7、37)は、接着剤によって前記ハウジングに取り付けられている、ことを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の真空コンデンサ(1、30)。
【請求項14】
前記接着剤は電気的導体である、ことを特徴とする請求項13に記載の真空コンデンサ(1、30)。
【請求項15】
前記コンデンサは、可変真空コンデンサまたは固定真空コンデンサである、ことを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の真空コンデンサ(1、30)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は真空コンデンサに関する。より正確には、本願発明は、真空コンデンサのエンクロージャーの突起部とその付近のコンポーネントとの間での電気的放電を防止する保護手段からなる真空コンデンサに関する。また、保護手段は、コンデンサの真空エンクロージャーが機械的ショックに対して保護され、それによって輸送中またはその後の厳しい動作環境におけるエンクロージャーの変形およびダメージが防止されるように構成される。
【背景技術】
【0002】
真空コンデンサは周知であり、高周波および高電力の両方が要求される応用分野で使用されている。通常の応用は、例えば、高電力無線周波送信で使用するための発振回路、および、半導体、ソーラーパネルおよびフラットパネルディスプレイを製造するのに使用するための高周波電力源を含む。
【0003】
コンデンサは、誘電体によって分離された、通常、電極と呼ばれる2つ以上の導体表面からなる(図1参照)。真空コンデンサの場合、誘電体媒質は真空である。真空コンデンサは、典型的に、高真空(10-6Torr以下)または超高真空(10-9Torr以下)を要求する。真空は、本願においてエンクロージャーとも呼ばれる気密ハウジング内で維持される。典型的なハウジングは、ハーメチックシールを保証する金属カラーとタイトに結合されるしばしばセラミック製シリンダの絶縁エレメントを有してよく、その結果、高真空はコンデンサの動作寿命中、エンクロージャー内部で保持される。容量生成表面、すなわちコンデンサの電極は、エンクロージャー内部で互いに対向して配置され、真空誘電率の良好な特性により、典型的にkV範囲または数十kV範囲の高電圧でかつ比較的小さい体積で真空コンデンサを使用することが可能となる。電極表面は、真空エンクロージャー内部の有効空間を最適に使用するために、交互の同心シリンダまたは絡合らせん形状として構成されるが、基本的に他の形状を有してもよい。コンデンサ内部の各電極(または、より正確には容量生成表面の各セット)はハウジングのひとつの金属カラーと電気的に接触するが、真空誘電体媒質およびコンデンサエンクロージャーの絶縁エレメントによって他の電極および他のカラーから絶縁されている。上述したカラーは、適切に電気的に導体であることを条件に、合金または他の材料からなってもよい。カラーは、真空コンデンサを、高電力給電システムの他の回路エレメントと一体化する接続可能性を与える。しばしば、いくつかの真空コンデンサが整合器内に一体化(一つ以上のコイルと一緒に)される。
【0004】
真空コンデンサは原理的に2つのカテゴリーに含まれる。すなわち、電極間の幾何学的関係が一定のままである固定容量を有するもの、およびひとつまたは両方の電極の形状、方向および/または分離が変化しうる可変容量を有するものである。例えば、ベローズ構成、または、磁石およびコイル、または他の電極に対する一方の電極の動きを許す他の構成が使用されてもよい。
【0005】
上述したように、真空コンデンサは通常、特に27.12MHz、13.56MHz、6.78MHzまたは他の無線周波数電源の電力を使用するような、例えば、プラズマコーティングおよびエッチングプロセスなどの半導体工業分野の応用に使用される。特にしばしば、真空コンデンサは、チューニングエレメントとして使用され、無線周波数生成器(50オームの出力インピーダンスを有する)から動的負荷を有する(すなわち、インピーダンスが変化する)プラズマ処理チャンバへ最適な電力伝達を保証する、整合器または他のイクイップメント内に一体化される。より高い電力でこの整合器を使用して、より高い動作電圧を生じさせることの需要が存在する。より高い電力は、コンデンサのサイズまたはコンデンサが配置されるイクイップメントのサイズを増加させることなく達成されなければならないので、電力密度が増加する。この傾向は、6.78MHz以下および4MHz以下の周波数での電力供給がより増加しているという事実によってさらに顕著となり、それは、これらの周波数でのより高いインピーダンスのため、同じ公称電力アプリケーションに対してそれを使用する場合でも真空コンデンサにより高い電圧を導入する。
【0006】
電力密度を増加させる必要性のため、アーク放電、または、コンデンサとその周囲のエレメントとの間での不所望な他の形式の電流の流れが発生する可能性を最小化するような方法で、コンデンサを設計することが従来から為されてきた。制御不能な放電として周知のアーク放電、コロナ放電または絶縁破壊は、コンデンサと他の導体コンポーネントとの間の任意のポイントでの電場が所定の降伏値を超えたとき発生する。この降伏値は、印加電圧差、コンデンサ内の真空の深度、コンデンサとコンポーネントとの間の(それらが互いに最も近づくところのポイントでの)ギャップ距離、真空コンデンサ周囲の空気組成(例えば、湿度)、およびコンデンサの物理的および電気的特性を含むパラメータの組み合わせに依存する。
【0007】
真空コンデンサの場の強度は、これらの制御不能な放電が発生せずに達成可能な最大許容電場である。場の強度は、所与の電極分離に対するコンデンサの動作電圧を究極的に制限する。場の強度を増加させることにより、特定の幾何学的形状を有する真空コンデンサが高電力アプリケーションに対して使用可能となるので、デバイスにおいて、最大可能場強度を達成することが有利である。代替的に、所与のアプリケーション電圧に対して、高い場強度の真空コンデンサの幾何学的形状(寸法)は、より低い場強度を有するコンデンサの幾何学的形状より小さく作成されうる。
【0008】
最近まで、真空コンデンサの場の強度に対する制限ファクタは、コンデンサの電極間の真空降伏によって概して与えられた。現在、この問題は大きく減少され、制限ファクタはしばしばコンデンサとその周囲のコンポーネントとの間の降伏である。これは特に、電力密度が増加され、かつ、整合器または他の電力給電イクイップメントが同じ物理的寸法のままでなければならない場合に問題である。
【0009】
セラミック製シリンダなどの絶縁エレメントを、カラーと呼ばれるエンクロージャーの導体エレメントと気密に結合することに関連した、真空コンデンサの製造プロセスのために、エンクロージャーの絶縁エレメントはカラーより半径方向にさらに伸長し、したがって、カラーと絶縁(セラミック)エレメントとの間の遷移部に段差が形成される。セラミックとカラーとは典型的に一緒にろう付けされるので、ろう付け処理中に溶解温度に達したとき、ろう材が流れ、上述した段差は最終的に電気導体材料によってコーティングされる。この段差の突起部において非常に高い電場が生成されるため、これが問題である。この効果は電場増強と呼ばれ、突起が鋭いほど、この突起部の電場が強くなり、かつ、コロナ放電のリスクが高くなる。したがって、真空コンデンサとその付近のコンポーネントとの間の不所望な放電が、これらの突起部のエッジとこれらのコンポーネントとの間で発生しうる。
【0010】
この問題を回避するために、いわゆるコロナリングを突起の上または付近に配置することが提案された。このリングの効果は突起をシールドすることであり、コロナ放電のリスクを減少させる。既知の真空コンデンサ用のコロナリングは、バルク金属リングまたはリング形状の金属シートである。この既知のバルクまたはシート状金属コロナリングは、重く、製造するのが高価で、かつ、とりわけフレキシブルではなく、真空コンデンサのエンクロージャーのエッジにそれを載置する際に問題となる。この真空コンデンサの例は、米国特許出願公開第US2511338号に与えられており、それは、コンデンサの外側にコロナ保護手段を有する真空コンデンサを開示する。これおよび他の従来技術の真空コンデンサのコロナ手段は、全体が金属で、コンデンサを機械的ダメージから保護すると同時に、コロナ放電プロセスによるダメージからも保護する。
【0011】
米国特許出願公開第US3270259号は、真空コンデンサの真空エンクロージャー内部でのコロナ放電を防止する問題に関連している。エンクロージャーなどの内部に配置される保護手段は、真空の外側の物体による機械的衝撃によるダメージを防止せず、真空と互換性がある材料から作成されなければならない。
【0012】
中国特許出願公開第CN105185587号は、2つのプレート電極が、コロナ放電を防止するために、円弧形状のエッジを有するポリテトラフルオロエチレン円筒壁によって分離されることを特徴とする直流遮断コンデンサに関する。円筒壁の形状はコロナ放電を防止するのを助けるが、機械的ダメージを防止することはできない。
【0013】
ロシア国特許出願公開第SU1667166号は、真空エンクロージャーと電極との間のアタッチメント手段を有する真空コンデンサに関する。しかし、この手段は真空エンクロージャーの突起エッジより小さい曲率半径を有し、その結果、この手段が電気的導体である場合、コロナ放電を防止するどころか促進してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本願発明の目的は、コロナ放電のリスクが大きく減少し、かつ、同時に真空コンデンサエンクロージャーに対して機械的保護を与えることができる新規な真空コンデンサを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
よって、本願発明のコンポーネントは、既知のシステムの上述した欠点が完全または少なくとも大きく減少する、新規な真空コンデンサを提案するものである。
【0016】
本願発明の構成要素は特に、コンデンサとその付近に配置されたコンポーネントとの間のコロナ放電のリスクを減少させ、同時に、コンデンサの真空エンクロージャーの機械的ダメージのリスクを減少させることができる保護手段を有する真空コンデンサを提案する。
【0017】
本願発明に従い、このコンポーネントは独立項の構成要素によって特に達成される。また、さらなる有利な実施形態は、従属項および詳細な説明から得られる。
【0018】
特に、本願発明の目的は、真空コンデンサによって達成され、当該真空コンデンサは、真空誘電体媒質を閉じ込めるエンクロージャーと、真空誘電体媒質によって分離された第1電極および第2電極とを有し、エンクロージャーは、第1電極と電気的に接触する第1導体カラー、および第2電極と電気的に接触する第2導体カラーを有し、第1導体カラーおよび第2導体カラーは、エンクロージャーの絶縁エレメントによって分離されており、エンクロージャーは、少なくともひとつの突起エッジを示し、突起エッジは第1導体カラーまたは第2導体カラーの最も近い部分と電気的に接触し、真空コンデンサは、真空エンクロージャーの外側において突起エッジを覆う少なくともひとつの保護手段を有し、保護手段は、少なくとも部分的にエラストマーから作成されており、保護手段の少なくとも外側面は、電気的に導体であり、かつ、突起エッジに対して最も近い導体カラーと同じ電気ポテンシャルであり、保護手段の外側面は、突起エッジの曲率半径より大きい曲率半径を有する、ことを特徴とする。
【0019】
この真空コンデンサ、特に、保護手段のおかげで、突起エッジでの電場が減少しうる。真空コンデンサが使用される状況に従う、保護手段の正確な形状および寸法を選択することにより、真空コンデンサとその付近のコンポーネントとの間でのコロナ放電のリスクが減少するかまたは除去される。また、保護手段の変形可能性により、後者は機械的衝撃に対する真空コンデンサの機械的保護を与える。変形可能性はまた、保護手段が真空コンデンサのエッジにより良くフィットすることを可能にする。エンクロージャーの絶縁エレメントの形状の不均一性を収容することができるので、この保護手段は好ましい。焼結セラミックは正確な寸法トレランスで容易に製造することができないので、絶縁エレメントが焼結セラミックエレメントである場合には特に有利である。また、覆われかつ保護される突起エッジへ脱着可能な保護手段を与えることが有利である。コンデンサの特定の応用に対する保護手段の最適な可能寸法が選択され、保護すべき突起エッジに載置される。適切なエラストマーの例は、ポリテトラフルオロエチレンエラストマー、シリコンエラストマー、または、エチレンプロピレンジエンモノマーである。
【0020】
本願発明の第1の好適実施形態において、保護手段の外側表面の曲率半径は、少なくとも大きさ1mm、好適には、少なくとも2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、または10mmである。これは、電場強度がコロナ放電のリスクが高くなる値に対応する閾値以下であることを保証する。
【0021】
本願発明のさらなる好適実施形態において、真空コンデンサは、2つの突起エッジを有し、前記突起エッジの各々は、保護手段によって覆われている。これにより、突起エッジがそれぞれ保護手段によって覆われた通常の形状を有する真空コンデンサを与えることが可能である。
【0022】
本願発明の他の好適実施形態において、突起エッジは、略環状であり、保護手段はリング形状である。これにより、そのハウジングが実質的に円筒形である真空コンデンサを提供することができる。円筒形対称性は、高周波電力信号を含む高周波信号を送信するのに概して好適である。
【0023】
本願発明のさらに他の好適実施形態において、保護手段は円形または楕円形の断面を有する。これにより、保護手段がコロナ放電のリスクを効果的に減少させることができる断面形状を有することが保証される。
【0024】
本願発明のさらに他の好適実施形態において、保護手段は最も近い導体カラーの方向を向いた円錐の頂点、およびエンクロージャーの絶縁エレメントの方向を向いた円錐のベースを有する。この形状により、保護手段は、金属カラーに沿って伸長した接触面により、真空コンデンサへ容易にフィット可能となる。
【0025】
本願発明のさらなる好適実施形態において、保護手段は、覆われる突起エッジを収容するためのリセスを含む。これにより、突起エッジは保護手段の内部に収容可能となる。とりわけ、真空コンデンサの空間を節約することができる。また、リセスを与えることにより、突起エッジを効果的に覆うことが可能になる。
【0026】
本願発明の他の好適実施形態において、保護手段の外側表面、およびエンクロージャーの絶縁エレメントの外側表面は、接触して90°以下の角度を形成する。これにより、保護手段がハウジングの絶縁エレメントと接触しているところで生成される電場は、コロナ放電が発生する閾値より小さい。
【0027】
本願発明のさらに他の好適実施形態において、保護手段は、2013年UL94標準のV1またはV0分類のいずれかに従う、非可燃性材料から少なくとも部分的に作成される。これは、コロナ放電が発生しそうにない場合において、保護手段において発火せず、その状態が保持されることを保証する。
【0028】
本願発明のさらに他の実施形態において、保護手段は、電気的導体材料によってコーティングされた絶縁材料から作成される。これにより、効果的な保護手段を与えるための単純な方法が提供される。
【0029】
本願発明の他の好適実施形態において、保護手段は、アルミニウムまたは銀によってコーティングされている。これにより、保護手段の外側表面が導体であることが保証される。
【0030】
本願発明の他の好適実施形態において、保護手段は、経年変化することなく室温と150℃との間で繰り返し反復可能な材料から作成される。これは、高電力による動作中に真空コンデンサが約125から145℃まで加熱されるため、長寿命の真空コンデンサを与えるのに有利である。
【0031】
本願発明のさらに他の好適実施形態において、保護手段は、ポリテトラフルオロエチレンエラストマー、シリコンエラストマー、または、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)などのエラストマーマトリクス、および、ニッケルおよび/またはグラファイト粒子からなるパウダーなどの導体マトリクスフィラーを化合した化合物によって少なくとも部分的に作成されている。これにより、コンデンサが酸化環境で動作しても、長寿命の動作が保証されるという利点を有する。コーティング済みの保護手段に比べ、これは熱サイクルによるコーティングが剥がれるリスクがない点で付加的な利点を有する。
【0032】
本願発明の他の好適実施形態において、保護手段は、接着剤によってハウジングに取り付けられている。これにより、保護手段が真空コンデンサから脱落しないことが保証される。
【0033】
本願発明のさらに他の好適実施形態において、接着剤は電気的導体である。これにより、保護手段の外側表面を最も近いカラーと電気的に接触させる単純かつ効果的な方法が与えられる。
【0034】
本願発明のさらなる好適実施形態において、コンデンサは、可変真空コンデンサまたは固定真空コンデンサである。可変コンデンサは、電極間の距離、または真空誘電媒質内の電極表面のオーバーラップの程度を変えることにより、容量が調節可能である点で利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、従来技術で既知の真空コンデンサの断面図である。
図2図2は、本願発明に従う真空コンデンサの第1の好適実施形態の断面図である。
図2A図2aは、本願発明の第1の好適実施形態に従う真空コンデンサの保護手段の断面詳細図である。
図3図3は、本願発明に従う真空コンデンサの第2の好適実施形態の断面図である。
図3A図3aは、本願発明の第2の好適実施形態に従う、真空コンデンサの保護手段の断面詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、従来技術の真空コンデンサ20の断面図である。この真空コンデンサは、真空誘電体媒質16を閉じ込めるエンクロージャー9を有し、該エンクロージャーは、エンクロージャー9の絶縁エレメント4によって分離された第1導体カラー2および第2導体カラー3(ここでは金属カラーの形式)を含む。通常、絶縁エレメント4は、円筒形状のセラミック材料から作成されている。製造プロセスのため、および特に、絶縁エレメント4を金属カラー2、3に例えばろう付けすることによる接合に関連した要求のため、絶縁エレメント4はカラーよりも半径方向にさらに伸長している。したがって、絶縁エレメント4は少なくもひとつ、図1の場合には2つの突起エッジ6を示す。上述したように、絶縁エレメント4は、カラー2、3に結合されなければならず、その結果カラーに垂直な絶縁エレメント4の表面は、電気的導体であるろう材によって最終的に覆われる。このろう材、およびカラー2、3と突起エッジ6との間の生成された電気的接続6aにより、真空コンデンサが使用される際に非常に大きな電場が突起エッジ6に生成される。真空コンデンサと突起エッジ6付近のコンポーネントとの間にコロナ放電が生じうるため、この非常に大きな電場は、高電圧での真空コンデンサ応用において故障の原因のひとつとなる。図1に示すように、容量生成表面、すなわち、電極12、13が真空誘電体媒質16内部に配置され、かつ、導体カラー2および3とそれぞれ接触している。図1に示すように、真空コンデンサは、移動機構14および伸長可能ベローズ15を使用することにより、調節可能電極12を有する可変真空コンデンサであってよい。
【0037】
図2は、本願発明に従う真空コンデンサ1の第1好適実施形態の断面図を示す。従来技術の既知の真空コンデンサ20と同様に、真空コンデンサ1は、エンクロージャー9の絶縁エレメント4によって分離された、第1導体カラー2および第2導体カラー3を有する。突起エッジ6での高電場生成による上述した問題を回避するために、真空コンデンサ1は、エッジ6を覆う保護手段7を有する。有利に、各保護手段7は覆われる突起エッジを収容するためのリセス7aを提供する(図2a参照)。また、保護手段7は、好適にリング形式を有する。通常の真空コンデンサの突起エッジが環状形状であるので、これは好適である。例えばリング形状である保護手段7の断面は、例えば円形または楕円形であってよい。保護手段7の断面は、エッジの形状および真空コンデンサ1の構成、特に、エンクロージャー9のカラー2、3および絶縁エレメント4の構成に依存して、他の形状を有してよいことは当業者の理解するところである。保護手段の少なくとも外側表面7bは電気的導体であり、かつ、第1または第2カラー2、3の最も近い部分と接触していることが重要である。電場の減少を達成するために、保護手段7の外側表面7bの曲率半径は、それが覆う突起エッジによって画定される曲率半径より大きくなければならない。しかし、外側表面7bの曲率半径が、突起エッジ6の曲率半径より顕微鏡スケールで大きいだけではなく、保護手段の外側表面は、それが突起エッジより小さい曲率半径を有する微視的な突起部を示さないように十分にスムースであることも重要である。突起部または塊は、電子が電場放射によってより簡単に放出される場所、および/または、吸着した粒子のイオン化および続く加速が開始される場所を提供するため、微視的突起部の形状における表面不均衡、または、表面上での粒子または塊の存在は、電圧降伏の開始を促進する。両方の効果は、真空コンデンサとその付近のコンポーネントとの間の媒質を交差する荷電粒子の制御不能ななだれ現象を導く。
【0038】
図3は、本願発明に従う真空コンデンサ30の第2の好適実施形態の断面図を示す。真空コンデンサ30は、エッジ6を覆いかつ保護手段7とわずかに異なる形状を示す保護手段37を有する点以外は、真空コンデンサ1と同一である。この実施形態において、カラー2の表面に沿って伸長した形状の保護手段37は、保護手段を適所に保持するべく例えば金属接着剤を使用するためのより大きい表面積を提供するので、保護手段37のより簡単な固定を有利に可能とする。この実施形態においておよび図3aに示すように、保護手段の断面は、最も近い金属カラーの方向に向いた円錐の頂点37dおよびエンクロージャーの絶縁エレメント方向を向いたベース37cを有する実質的に半円錐形状である。わかるように、半円錐表面37bのベース37cは完全に平坦ではないが、反対側の金属カラー3の方向に、エンクロージャーの絶縁エレメントの表面に沿った場の降伏に対して付加的な保護を与えるための曲率半径を備える。
【0039】
本願発明に従う保護手段7、37は、少なくとも部分的に、弾性変形可能材料、好適にはエラストマーから作成されている。これにより、機械的な衝撃に対してエンクロージャー9を保護することができる。これは、エンクロージャー9の絶縁縁エレメント4が比較的もろいセラミック材料から作成される場合に特に有利である。したがって、保護手段7、37は、2つの効果を有する。1つ目は、電場強度の減少であり、それにより、真空コンデンサ1とその付近に配置されたコンポーネントとの間のコロナ放電のリスクが最小となることであり、2つ目は、機械的衝撃に対する、真空コンデンサ1、特にハウジング9の保護である。保護手段7の変形可能性は、機械的保護を与えるのに好適であるばかりではなく、エッジ6への保護手段7、37の単純なアセンブリも与える点に注目すべきである。大きな温度変化に関連する焼結または他のプロセスによって通常実行される絶縁エレメント4の製造プロセスのため、後者の寸法を正確に再現することはできない。したがって、エラストマーから作成される保護手段は、絶縁エレメント4の形状の不均一性に適応することができる点で有利である。また、保護手段7、37のエラストマーの変形可能性および弾力性は、保護手段7、37がそれ自身で絶縁エレメント4に保持可能である点でも有利である。保護手段は、例えば接着剤、好適には電気的導体接着剤を使って、絶縁エレメント4またはエンクロージャー9の他のエレメントに代替的にまたは付加的に取り付けることができる。それにより、電極と、保護手段7、37の外側表面7b、37bとの間の単純な電気的接続が可能となる。
【0040】
最後に、上記説明は関連する非制限的な2つの実施形態の概略にすぎない点を指摘したい。本願発明の思想および態様から離れることなく、開示した非制限的実施形態に対する修正を実行することが可能であることは当業者の知るところである。上述した非制限的実施形態は、主要な特徴および応答のいくつかを例示したに過ぎないと考えるべきである。他の有利が結果は、当業者に周知なように、異なる方法で非制限的実施形態を応用しまたは修正することにより実現可能である。すべての実施形態、特に、電場強度の減少を生じさせる保護手段の形状のすべてをここで説明することが不可能であることの指摘は特に重要である。それにも関わらず、当業者は、保護手段の形状を真空コンデンサの形状にどのように適用するか、および、コンデンサが使用される正確な位置へ適用するかを理解する。例えば、コンデンサと最も近いコンポーネントとの間の空間がひとつの方向に特に制限されている状況において、保護手段が他の方向に沿って伸長する長尺形状を有することは有利である。これは、保護手段の外側表面と、この最も近いコンポーネントとの間の電場がクリティカルな値より小さいことを保証する。真空コンデンサの異なるエッジを覆う保護手段が異なる形状であってよいことを指摘するのは重要である。最後に、好適実施形態で与えられる真空コンデンサがすべて可変真空コンデンサであったとしても、本願発明は、エンクロージャーの突起エッジを覆う保護手段を示す固定真空コンデンサにも関連する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0041】
【特許文献1】米国特許出願公開第US2511338A号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第US3270259A号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第CN105185587A号公報
【特許文献4】ロシア国特許出願公開第SU1667166A1号公報
図1
図2
図2a
図3
図3a
【国際調査報告】