IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サン−ゴバン グラス フランスの特許一覧

特表2022-520335電気的に制御可能な光学特性を有している積層ペイン及び積層ペインアセンブリ
<>
  • 特表-電気的に制御可能な光学特性を有している積層ペイン及び積層ペインアセンブリ 図1
  • 特表-電気的に制御可能な光学特性を有している積層ペイン及び積層ペインアセンブリ 図2
  • 特表-電気的に制御可能な光学特性を有している積層ペイン及び積層ペインアセンブリ 図3
  • 特表-電気的に制御可能な光学特性を有している積層ペイン及び積層ペインアセンブリ 図4
  • 特表-電気的に制御可能な光学特性を有している積層ペイン及び積層ペインアセンブリ 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-30
(54)【発明の名称】電気的に制御可能な光学特性を有している積層ペイン及び積層ペインアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20220323BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20220323BHJP
   B60J 3/04 20060101ALI20220323BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20220323BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20220323BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
C03C27/12 N
B60J1/00 J
B60J3/04
B32B7/023
B32B7/025
G02F1/13 505
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544551
(86)(22)【出願日】2020-01-09
(85)【翻訳文提出日】2021-07-30
(86)【国際出願番号】 EP2020050392
(87)【国際公開番号】W WO2020156773
(87)【国際公開日】2020-08-06
(31)【優先権主張番号】19154492.3
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン-ゴバン グラス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100186912
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 淳浩
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ツァイス
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ユーベラッカー
(72)【発明者】
【氏名】ローラン ラムルー
【テーマコード(参考)】
2H088
4F100
4G061
【Fターム(参考)】
2H088EA34
2H088GA10
2H088HA01
2H088HA04
2H088HA14
4F100AA28C
4F100AG00A
4F100AG00B
4F100AK23E
4F100BA05
4F100EJ172
4F100EJ422
4F100GB07
4F100GB31
4F100GB41
4F100JB16C
4F100JB16E
4F100JG01D
4F100JN01D
4G061AA02
4G061AA26
4G061AA33
4G061BA01
4G061BA02
4G061CB03
4G061CD02
4G061CD03
4G061CD18
(57)【要約】
本発明は、電気的に制御可能な光学特性を有する積層ペイン(1)に関する。積層ペインは、熱可塑性中間層(3)を介して互いに結合される、外側ペイン(2a)及び内側ペイン(2b)を備え、電気的に制御可能な光学特性を有する光電子機能要素(4;S)が、中間層(3)に組込まれ、光電子機能要素(4;S)は、活性層(5)を備え、活性層(5)に、透明なシート状制御電極(8、9)が、第一キャリアフィルム(6)と第二キャリアフィルム(7)の間で、両面に割当てられ、光電子機能要素を包囲する中間層(3)、及びキャリアフィルム(6、7)が、それぞれの場合で、熱可塑性材料を含有し、少なくとも一つの静電容量式タッチ要素(T;T1、T2)が、光電子機能要素に統合され、それにより、光電子機能要素の少なくとも一つの制御電極の一部が、分離され、静電容量性タッチ又は接近信号を検出するための信号リード(SL)を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性中間層(3)を介して互いに結合されている、外側ペイン(2a)及び内側ペイン(2b)を備えている、電気的に制御可能な光学特性を有している積層ペイン(1)であって、
電気的に制御可能な光学特性を有している光電子機能要素(4;S)が、前記中間層(3)に組み込まれており、前記光電子機能要素(4;S)は活性層(5)を備えており、前記活性層(5)には、透明なシート状制御電極(8、9)が、第一キャリアフィルム(6)と第二キャリアフィルム(7)との間で、両面に割り当てられており、
前記光電子機能要素を包囲している前記中間層(3)、及び前記キャリアフィルム(6、7)が、それぞれの場合で、熱可塑性材料を含有しており、
少なくとも一つの静電容量式タッチ要素(T;T1、T2)が、前記光電子機能要素に統合されており、それによって、前記光電子機能要素の少なくとも一つの制御電極の一部が、分離され、かつ、静電容量性タッチ又は接近信号を検出するための信号リード(SL)を提供されている、
電気的に制御可能な光学特性を有している積層ペイン(1)。
【請求項2】
前記光電子機能要素(4;S)が、PDLC機能要素又はSPD機能要素である、請求項1に記載の積層ペイン。
【請求項3】
道路の乗物(13)、特に乗用車のウインドシールド(1)又はルーフグレージングとして設計されている、請求項1又は2に記載の積層ペイン。
【請求項4】
建物のグレージングユニットとして設計されている、請求項1又は2に記載の積層ペイン。
【請求項5】
統合されているスイッチング又は制御デバイス(11)を有しており、前記スイッチング又は制御デバイス(11)は、特に前記光電子機能要素(4;S)及び前記タッチ要素(T;T1、T2)の近傍に配置されており、前記スイッチング又は制御デバイス(11)は、入力側で、前記タッチ要素の信号リード(SL)に接続されており、かつ、前記光電子機能要素の機能又はパラメータを、切り替え又は制御するように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層ペイン。
【請求項6】
前記光電子機能要素(4;S)が、サンバイザーデバイス(S)として設計されており、かつ、スイッチング又は制御デバイス(11)が、サンバイザーデバイスを切り替え又は制御するように構成されている、請求項5に記載の積層ペイン。
【請求項7】
前記光電子機能要素(4;S)が、既製の機能多層フィルムを使用して、全表面制御電極(8、9)で構成されており、分離線が、後に前記機能多層フィルムに導入されて、前記タッチ要素(T;T1)を実装している、請求項1~6のいずれか一項に記載の積層ペイン。
【請求項8】
前記光電子機能要素(4;S)が、複数の別個に制御可能な機能領域(S1、S2)を備えており、タッチ要素(T1、T2)が、それぞれの場合で、前記機能領域の少なくとも一つの部分に割り当てられている、請求項1~7のいずれか一項に記載の積層ペイン。
【請求項9】
個々の機能領域の機能又はパラメータを切り替える又は制御するためのタッチ要素(T1、T2)が、光電子機能要素(4;S)の各機能領域(S1、S2)に割り当てられており、特に、個々の機能要素に統合されている、請求項8に記載の積層ペイン。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の積層ペイン(1)、及び
前記光電子機能要素(4;S)の光学特性を制御するための制御ユニット、
を有している、積層ペインアセンブリ、特に、乗物又は建物グレージングユニットであって、
前記制御ユニットが、入力側で、前記光電子機能要素(4;S)に統合されている前記タッチ要素(T;T1、T2)の前記信号リード(SL)に接続されており、かつ、前記タッチ要素によって検出された指のタッチ又は接近に応じて、前記光電子機能要素の機能又はパラメータを切り替え又は制御するために設計されている、
積層ペインアセンブリ。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載の積層ペイン(1)、又は請求項10に記載の積層ペインアセンブリ(12)を有している、道路の乗物(13)、特に乗用車。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか一項に記載の積層ペイン(1)、又は請求項10に記載の積層ペインアセンブリ(12)を有している、建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的に制御可能な光学特性を有している積層ペイン、及びそのような積層ペインを含む積層ペインアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
電気的に制御可能な光学特性を備えた電気光学機能要素は、長い間、多様に知られており、例えば、テレビセット、ラップトップ、携帯電話/スマートフォン、及びタブレット等で、工業的大量生産で用いられている。
【0003】
特に、周知のタッチスクリーンの形態のタッチセンシティブディスプレイは、また、経済的な大量生産製品になっており、今では、ほとんど毎日、すべての人々によって、スマートフォン及びタブレットコンピュータで使用されている。それらの機能は、少なくとも一本の指でそれらに触れると、ディスプレイスクリーン構造内の抵抗、静電容量、又はインダクタンスが局所的に変化し、この変化を、スクリーンの信号出力で、スイッチング又は制御信号に変換できることに基づいている。上記の各タイプのタッチスクリーンは、実用的な使用の準備ができており、シリーズ製品でも使用されているが、今では、所謂「投影型静電容量タッチ」(PCT)スクリーンが、最も広く普及しており、これは、センサ表面が、カバーガラスの裏側に取り付けられており、その結果、特に簡便で、摩耗のない構造を有している。マルチタッチ機能の実装のしやすさは、スマートフォン及びタブレットコンピュータのためにも、重要な役割を果たす。
【0004】
電気的に制御可能な機能要素を備えた積層ペインも、それ自体が周知である。機能素子の光学特性は、印加電圧によって変化することができる。例えば、EP0876608B1及びWO2011033313A1から周知である、SPD機能要素(浮遊粒子デバイス)は、そのような機能要素の例である。SPD機能要素を通過する可視光の透過率は、印加される電圧によって制御することができる。例えば、DE102008026339A1から周知であるPDLC機能要素(ポリマー分散液晶)は、別の例である。活性層は、ポリマーマトリックスに組み込まれた液晶を含有する。電圧が印加されていない場合、液晶は無秩序に整列し、活性層を通過する光の強い散乱をもたらす。平坦な電極に電圧を印加すると、液晶は共通の方向に整列し、活性層を通過する光の透過率が増加する。
【0005】
SPD及びPDLC機能素子は、多層フィルムとして市販されており、ここでは、電圧を印加するために必要な活性層及び平坦な電極が、二つのキャリアフィルムの間に配置されており、キャリアフィルムは、典型的にはPETでできている。積層板の製造において、機能要素は、多層フィルムから所望のサイズ及び形状に切り取られ、中間層のフィルムの間に挿入され、それによって、二つのガラス板が互いに積層されて、積層板が形成される。
【0006】
電気的に制御可能なサンバイザーが、自動車の従来の機械的に回転可能なサンバイザーに取って代わるような機能要素によって実装されている、ウインドシールドが提案されてきた。電気的に制御可能なサンバイザーを備えているウインドシールドは、例えば、DE102013001334A1、DE102005049081B3、DE102005007427A1、及びDE102007027296A1から周知である。
【0007】
出願人のWO2018/188844A1には、機能要素の領域に配置された容量性ボタンによって、積層ペインに埋め込まれた機能要素(具体的にはサンバイザー)を制御することが、僅かではあるが、開示されている。同じく出願人に由来するWO2017/029384A1は、積層ペインを提案しており、タッチスイッチング機能(あるいは、指がペインに近づくときの非接触スイッチング機能までも)は、ペインに統合されている容量性スイッチング要素によって実現されている。後者の公報では、この機能は、積層ペインのいわゆる「low-Eコーティング」、すなわち、入射太陽放射を反射するコーティング、あるいは、加熱されたペインからの長波IR放射が車内に放出されることを低減するコーティングに関連することが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、電気的に制御可能な光学特性を有する改良された積層ペインを提供することであり、その積層ペインは、大部分が従来の構造を有しており、したがって、容易かつ経済的に製造することができ、それにもかかわらず、現代的で、ユーザにとって魅力的な方法で、スイッチング及び制御機能を実現することを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、独立請求項1に記載の積層ペインによって達成される。好ましい実施形態は、従属請求項から生じる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明による積層ペインは、少なくとも外側ペイン及び内側ペインを備えており、それらは、中間層を介して互いに結合されている。積層ペインは、例えば、乗物、建物、又は部屋のウインドウの開口部において、室内を外部環境から分離することを意図としている。本発明の意味するところにおいて、「内側ペイン」は、室内に面しているペインを意味する。「外側ペイン」は、外部環境に面しているペインを意味する。熱可塑性中間層は、二つのペインを結合するのに役立ち、積層ペインで通常行われている。
【0011】
外側ペイン及び内側ペインは、好ましくはガラスでできている。しかし、それらは、原則として、プラスチックでできていてもよい。外側ペインと内側ペインの厚さは大きく異なっていてもよく、個々のケースの要件に適合させてよい。外側ペイン及び内側ペインは、好ましくは0.5mm~5mm、特に好ましくは1mm~3mmの厚さを有している。ウインドシールドが、中央視野で十分な光透過率、好ましくはECE-R43によるメインスルービジョン領域Aで、少なくとも70%を有している限り、ペインは透明であるか、着色又は彩色されていてよい。
【0012】
外側ペイン、内側ペイン、及び/又は中間層は、それ自体が知られている他の適切なコーティング、例えば、反射防止コーティング、焦げ付き防止コーティング、引っかき傷防止コーティング、光触媒コーティング、又は太陽光保護コーティング、又はlow-Eコーティングを有していてもよい。
【0013】
本発明の積層ペインは、電気的に制御可能な光学特性を有している電気光学機能要素を含んでおり、この電気光学機能要素は、中間層に組み込まれている。機能要素は、中間層の熱可塑性材料の少なくとも二つの層の間に配置されており、第一層によって外側ペインに結合されており、第二層によって内側ペインに結合されている。
【0014】
機能要素は、少なくとも一つの活性層を含んでおり、その活性層は、第一キャリアフィルムと第二キャリアフィルムとの間に配置されている。活性層は、活性層に印加される電圧によって制御することができる、可変の光学特性を有している。本発明の意味するところにおいて、「電気的に制御可能な光学特性」は、連続的に制御することができる特性だけでなく、二つ以上の離散状態間で切り替えることができる特性も意味する。前記光学特性は、特に、光透過率及び/又は散乱挙動に関連する。機能要素は、また、活性層に電圧を印加するための平坦な電極(以下、制御電極ともいう。)も含んでおり、これは、好ましくは、キャリアフィルムと活性層との間に配置されている。
【0015】
好ましい実施形態では、機能要素が、PDLC機能要素である。PDLC機能要素の活性層は、ポリマーマトリックスに組み込まれた液晶を含有している。別の好ましい実施形態では、機能要素が、SPD機能要素である。その場合、活性層は、懸濁粒子を含有しており、活性層による光の吸収は、平坦な電極に電圧を印加することによって可変である。しかし、原則として、他のタイプの制御可能な機能要素、例えば、エレクトロクロミック機能要素を使用することも可能である。上述の制御可能な機能要素及びそれらの動作モードは、それ自体、当業者に周知であるため、ここでは、詳細な説明を省略する。
【0016】
平坦な電極及び活性層は、典型的には、外側ペイン及び内側ペインの表面に、実質的に平行に配置されている。平坦な電極は、それ自体が周知の方法で、外部電圧源に電気的に接続されている。制御電圧供給源への電気的接触は、適切な接続導体、例えば、箔導体、所謂バスバー、例えば、導電性材料のストリップ又は導電性インプリントを介して、平坦な電極に任意選択で接続されることによって実現される。機能要素の厚さは、例えば、0.4mm~1mmである。
【0017】
平坦な電極は、好ましくは、透明な導電性層として設計されている。平坦な電極は、好ましくは、少なくとも金属、合金、又は透明導電性酸化物(TCO)を含有している。平坦な電極は、例えば、銀、金、銅、ニッケル、クロム、タングステン、インジウムスズ酸化物(ITO)、ガリウムドープ、又はアルミニウムドープ酸化亜鉛、及び/又はフッ素ドープ若しくはアンチモンドープ酸化錫を含有していてもよい。平坦な電極は、好ましくは10nm~2μm、特に好ましくは20nm~1μm、最も特に好ましくは30nm~500nmの厚さを有している。
【0018】
従来の機能要素構造、特に既存の平坦電極又は制御電極を使用しながら、本発明に従って、積層ペインに、タッチ又は接近検出要素を実装するための準備がなされ、これは、以下、タッチ要素として機能し、物理的な動作原理を参照すると、PCT要素としても機能することを意味する。この目的のために、平坦な電極の少なくとも一つの部分が、残りの部分から分離されており、信号接続線を設けられており、それを介して、タッチ/接近によって生じた分離されたスイッチング要素領域の静電容量の変化を検出することができる。
【0019】
電気光学機能素子の既存の平坦な電極の(排他的)使用により、スイッチング機能の特に簡単で経済的な実装が可能になり、これは、low-Eタイプ(又はその他)の任意の追加ペインコーティングとは独立している。
【0020】
機能要素は、特に、二つの外側キャリアフィルムを有している多層フィルムである。そのような多層フィルムでは、平坦な電極及び活性層は、典型的には、二つのキャリアフィルムの間に配置されている。ここで、「外側キャリアフィルム」という表現は、キャリアフィルムが、多層フィルムの二つの表面を形成することを意味する。その結果、機能要素は、有利にさらに処理することができる積層フィルムとして提供されている。キャリアフィルムは、機能要素を、損傷、特に腐食から有利に保護する。
【0021】
そのような既製の機能要素フィルムの場合、本発明は、特に、実証済みのレーザーパターニング法を用いて、容易に実現することができる。このようにして、特定の機能要素用に事前構成された多層フィルムの一つ以上の領域に、(少なくとも)一方の平坦電極内の一つ以上の分離線によって、一つ以上のPCT要素を提供することができる。
【0022】
もちろん、タッチ要素が配置されている電気光学機能要素の機能又はパラメータを、タッチ要素を介して切り替え又は制御することは、本発明の範囲内であることに留意されたい。しかし、本発明はこれに限定されない;むしろ、空間的に割り当てられた電気光学機能要素の機能以外の機能も、この要素によって、設計又は制御することができる。
【0023】
積層ペインは、好ましくはウインドウペインとして、特に好ましくは乗物、特に自動車、建物、又は部屋のウインドウペインとして提供される。特に有利な実施形態では、積層ペインは、自動車、特に乗用車のウインドシールドであり、それは、機能要素によって実装された電気的に制御可能なサンバイザーを有している。そのような機能要素のサイドエッジ及び上側エッジは、典型的には、ペインのエッジ領域の通常のマスキング印刷によって隠されているが、下側エッジは、ペインの透視領域に配置されており、マスキングされておらず、視認することができる。機能要素のこの下側エッジは、好ましくは、本発明に従って、密封されている。ここでは、視覚的に目立たないシールが特に有利である。
【0024】
電気的に制御可能なサンバイザーは、従来の機械的に回転可能なサンバイザーを不要にすることができる。その結果、乗物の客室内のスペースが確保され、乗物の重量が低減され、急ブレーキ又は事故が発生した場合に、サンバイザーと衝突する危険性が回避される。さらに、サンバイザーの電気的制御は、機械的に下に回転させるよりも便利であると認識される場合がある。
【0025】
ウインドシールドは、上側エッジ及び下側エッジ、並びに上側エッジと下側エッジの間に延在しているサイドエッジを有している。「上側エッジ」という用語は、設置位置で、上向きを指すように意図されているエッジを意味する。「下側エッジ」という用語は、設置位置で、下向きを指すように意図されているエッジを意味する。上側エッジは「ルーフエッジ」とも呼ばれ、下側エッジは「エンジンエッジ」とも呼ばれる。機能要素のエッジは、ウインドシールドの取り付け位置に応じて呼称される。したがって、機能要素の下側エッジは、ウインドシールドの上側エッジから離れ、中央視野に面するサイドエッジの一つである。機能要素の上側エッジは、ウインドシールドの上側エッジに面している。サイドエッジは、上側エッジと下側エッジの間に延在している。
【0026】
ウインドシールドは、視野の中央領域を有しており、その光学品質は、高い要件を満足する必要がある。視野の中央領域は高い光透過率(典型的には70%以上)を有している必要がある。この視野の中央領域は、特に、当業者によって、視野B、視野領域B、又はゾーンBと呼ばれる視野である。視野Bの領域とその技術的要件は、国連欧州経済委員会(UN/ECE)の規則No.43(ECE-R43、「セーフティグレージング材料と乗物へのその設置の承認に関する統一規定」)に規定されている。視野Bは付録18で規定されている。
【0027】
機能要素は、視野の中央領域(視野B)に配置されている。これは、機能要素が、視野の中央領域とウインドシールドの上側エッジの間の領域に配置されていることを意味する。機能要素は、領域全体をカバーする必要はないが、この領域内に完全に配置されており、視野の中央領域に突き出ていない。言い換えれば、機能要素は、ウインドシールドの上側エッジからの距離が、視野の中央領域よりも短い。したがって、視野の中央領域の透過率は、下向きに回転した状態の従来の機械式サンバイザーの位置と同様の場所に位置する機能要素によって、悪影響を受けない。
【0028】
乗物の運転者(又は乗員)の観点から、本発明は、積層ペインのサンバイザー機能に関連して、特に魅力的である。具体的には、積層ペインのサンバイザーセクションに統合されているタッチ要素は、サンバイザー機能を制御するための合理的で快適な選択肢として認識されている。その結果、そのようなデザインは、高いユーザの受け入れを享受しやすく、市場から積極的に受け入れられ易い。タッチ要素の特定の設計に応じて、サンバイザー機能のオン/オフ切り替えを始動させたり、段階的に暗くしたり/明るくしたりすることができる。
【0029】
好ましい実施形態では、機能要素の下側エッジ及び熱可塑性層の着色領域の下側エッジは、ウインドシールドの上側エッジの形状に適合されており、視覚的により魅力的な外観をもたらす。ウインドシールドの上側エッジは、典型的には湾曲しており、特に凹状に湾曲しているため、機能要素及び着色領域の下側もまた、湾曲していることが好ましい。機能要素の下側エッジは、ウインドシールドの上側エッジに、実質的に平行に設計されていることが、特に好ましい。しかし、サンバイザーを、それぞれの場合に、真っ直ぐで、互いに対して、ある角度で配置されており、上側エッジの形状に近似するVを形成する二つの半身から構築することも可能である。
【0030】
本発明の有利なさらなる発展において、機能要素は、絶縁線によって、セグメントに分割することができる。絶縁線は、特に、平坦な電極に導入することができ、それによって、平坦な電極のセグメントは互いに電気的に絶縁されている。個々のセグメントは、互いに独立して電圧源に接続されており、それによって、それらは別々に制御することができる。したがって、サンバイザーの異なる領域を個別に切り替えることができる。絶縁線及びセグメントは、設置位置で、水平に配置されていることが、特に好ましい。これにより、サンバイザーの高さを、ユーザが制御することができる。ここで、「水平方向」という用語は、広義に解釈されるべきであり、ウインドシールドのサイドエッジの間を走る伝播方向を意味する。
【0031】
絶縁線は必ずしも直線である必要はないが、代わりに、僅かに湾曲させることもでき、好ましくはウインドシールドの上側エッジの任意の曲率、特にウインドシールドの上側エッジに、実質的に平行に適合させることができる。もちろん、垂直方向の絶縁線も考えられる。絶縁線は、例えば、5μm~500μm、特に20μm~200μmの幅を有している。セグメントの幅、すなわち、隣接する絶縁線間の距離は、個々のケースの要件に従って、当業者によって適切に選択することができる。スイッチング素子の製造に関連して前述したように、既に積層された多層フィルムは、レーザーアブレーションを使用して後でセグメント化してもよい。
【0032】
セグメント化された機能要素、具体的には複数のバイザーセクションを備えているサンバイザーに関連して、マルチパートタッチ要素又は複数のそのような検出要素も提供されていてよい。この目的のために、光電子機能要素の個々のセグメントに、それぞれ一つのスイッチング要素が配置されていてもよいし、あるいは、機能要素セグメントの一つに複数のスイッチング要素が一緒に配置されていてもよい。どちらの場合も、ユーザが便利で簡単に理解できる方法で、様々なセグメントを個別に切り替えたり、制御したりすることができる。
【0033】
ウインドシールドを通して見るとき、機能要素の上側エッジ及びサイドエッジは、好ましくは不透明なマスキングプリントで覆われている。ウインドシールドは、典型的には、不透明なエナメルでできている周囲マスキングプリントを有しており、ウインドシールドの取り付けに使用される接着剤を、特に紫外線から保護し、視覚的に隠すのに役立つ。この周囲マスキングプリントは、好ましくは、機能要素の上側エッジ及びサイドエッジ、並びに必要な電気的接続をカバーするために使用される。そのとき、サンバイザーはウインドシールドの外観に有利に統合されており、下側エッジのみが潜在的に視聴者に見えるようになっている。好ましくは、外側ペインと内側ペインの両方が、マスキングプリントを有しており、それによって、両側からの透視が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本発明は、図及び例示的な実施形態を参照してより詳細に説明される。図面は概略図であり、原寸に比例していない。これらの図は、決して本発明を制限するものではない。それらは、次を示す。
図1】電気的に制御可能なサンバイザーを有しているウインドシールドとしての、本発明の積層ペインの第一実施形態の平面図。
図2図1のウインドシールドの断面図。
図3図2の領域Zの拡大図。
図4】好ましい実施形態における図1のウインドシールドの詳細図。
図5】提案されたアセンブリのさらなるアセンブリ構成要素に関連する、サンバイザーデバイスを有している、本発明による別のウインドシールド。
【0035】
図1図2、及び図3は、それぞれの場合において、電気的に制御可能なサンバイザーを有しているウインドシールドの詳細を示しており、電気的に制御可能な光学特性を有している本発明の積層ペインの好ましい実施形態である。ウインドシールドは、中間層3を介して、互いに結合された外側ペイン2a及び内側ペイン2bを備えている。外側ペイン2aは、2.1mmの厚さを有しており、緑色のソーダライムガラスでできている。内側ペイン2bは、1.6mmの厚さを有しており、透明なソーダライムガラスでできている。ウインドシールドは、取り付け位置でルーフに面している上側エッジDと、取り付け位置でエンジンコンパートメントに面している下側エッジMを備えている。
【0036】
ウインドシールド1は、(ECE-R43で定義されるように)中央視野Bの上の領域に、電気的に制御可能なサンバイザーSを備えている。サンバイザーSは、機能要素4として、市販のPDLC多層膜で形成されており、中間層3に組み込まれている。サンバイザーの高さは、例えば、21cmである。中間層3は、PVBでできている0.38mmの厚さの熱可塑性フィルムによって、それぞれの場合に形成された、合計三つの熱可塑性層3a、3b、3cを含む。第一熱可塑性層3aは、外側ペイン2aに結合されている。第二熱可塑性層3bは、内側ペイン2bに結合されている。それらの間に挿入されている第三熱可塑性層3cは、切欠きを有しており、そこに、カットされたサイズのPDLC多層フィルムが、実質的に正確にフィットするように、すなわち、すべての面で、ほぼ同一平面で挿入されている。したがって、第三熱可塑性層3cは、いわば、厚さ約0.4mmの機能要素4のための一種のパスパートアウトを形成しており、これは、熱可塑性材料で全体がカプセル化され、保護されている。
【0037】
第一熱可塑性層3aは、機能要素4と外側ペイン1との間に配置されている着色領域3a’を有している。その結果、ウインドシールドの光透過率は、サンバイザー4の領域でさらに低下しており、拡散状態のPDLC機能要素4の乳白色の外観は、トーンダウンされている。したがって、ウインドシールドの外観は、大幅に魅力的になる。第一熱可塑性層3aは、例えば、領域3a’において、30%の平均光透過率を有しており、これにより、良好な結果が達成されている。領域3a’は、均一に着色されていてよい。しかし、機能要素4の下側エッジの方向に色合いが減少する場合、それはしばしば視覚的により魅力的であり、それによって、着色領域と非着色領域が、スムーズに移行する。図示の場合、着色領域3a’の下側エッジ及びPDLC機能要素4は同一平面に配置されている。しかし、これに限られない。着色領域3a’が機能要素4を超えて突出すること、あるいは逆に、機能要素4が着色領域3a’を超えて突出することも可能である。
【0038】
制御可能な機能要素4は、二つの平坦な電極8、9と二つのキャリアフィルム6、7との間の活性層5からなる多層フィルムである。活性層5は、その中に分散された液晶を有するポリマーマトリックスを含有しており、これは、平坦な電極に印加される電圧の機能として、それ自体を整列させ、それによって光学特性を制御することができる。キャリアフィルム6、7は、PETでできており、例えば、0.125mmの厚さを有している。キャリアフィルム6、7は、活性層5に面している厚さ約100nmのITOのコーティングを備えており、平坦な電極8、9を形成している。平坦な電極8、9は、バスバー(図示せず)(例えば、銀を含有するスクリーン印刷上の錫メッキされた銅ストリップ)及び接続ケーブル(図示せず)によって、車載電気システムに接続されていてよい。
【0039】
ウインドシールド1は、通常通り、外側ペイン1及び内側ペイン2の内側面(取り付け位置で乗物の内側に面する)に、不透明なエナメルによって形成された周囲マスキングプリント10を有している。ウインドシールドの上側エッジD及びサイドエッジからの機能要素4の距離は、マスキングプリント10の幅よりも小さく、これによって、機能要素4のサイドエッジは、中央視野Bに面するサイドエッジを除いて、マスキングプリント10によって隠されている。電気接続(図示せず)もまた、マスキングプリント10の領域に適切に設置されており、これによって、隠されている。
【0040】
サンバイザーSの機能を切り替えることができる本発明のタッチ要素Tは、ウインドシールド1の上側エッジDの近く、したがって、サンバイザーSの上側エッジ又はその近くの中央に配置されている。上述したように、タッチ要素Tは、大部分が既存の構造で形成されており、これは、図1~3を参照して上述したとおりである。平坦な電極8、9のうちの(少なくとも)一つだけが、分離線でパターン化されており、分離線は、タッチ要素の電極領域を、サンバイザーの残りの平坦な電極から分離しており、スイッチング要素Tの電極領域には、信号線(図示せず)が提供されている。これは、非常に細い信号線、あるいは、ペインの内側に印刷されている導体トラックであってよく、導体トラックは、ペインのエッジに導かれていてよい。
【0041】
図4は、図1のウインドシールド1のサンバイザー領域の中央の詳細を、スケッチ形式で示しており、サンバイザーS及び上側エッジに配置されているタッチ要素Tが拡大されている。この図は、信号リードSLを概略的に示しており、具体的には、図示の実施形態では、信号リードSLは、タッチ要素Tから、サンバイザーSのスイッチング及び制御要素11の入力に、検出信号をルーティングし、これは、その一部で、サンバイザーの制御回路(ここでは図示せず)とサンバイザーの平坦な電極との間の制御ラインDLに接続されている。スイッチング及び制御要素11は、タッチ要素Tからの検出信号に応答して(タッチ要素並びにスイッチング及び制御要素の設計に応じて)、サンバイザーをオン若しくはオフに切り替え、及び/又はオプションで、その明るさを制御する。
【0042】
図示されているリード及び要素はすべて、積層ペイン内に実装されており、これにより、従来の金属ペーストスクリーン印刷プロセス及び当業者に周知の他の技術によってハイブリッド回路を容易に製造することが可能になる。したがって、この実施形態は、電気光学機能要素の、完全に統合された作動並びにスイッチング及び制御機能を備えている積層ペインを表している。
【0043】
図5は、乗用車13における、上記のタイプの積層ペイン1を備えている、本発明の積層ペインアセンブリ12の必須要素を概略的に示している。図1図4のウインドシールド1と同様に、ここに示されているウインドシールド1もまた、その上部領域にサンバイザーSを含んでいる。しかし、これは、二つの部分で実装されており、右側(運転者から見て)のサンバイザーセクションS1と左側のサンバイザーセクションS2で構成されている。タッチ要素T1又はT2それぞれは、二つのサンバイザーセクションS1、S2のそれぞれに配置されており、運転者又は助手席乗員が、それぞれのサンバイザーセクションを選択的かつ直感的に操作することを可能にする。図において、概略的に示されているように、ここでの関連信号線は、図4の実施形態とは対照的に、積層ペイン1から(従来の配線を介して)サンバイザーSの制御回路14にルーティングされており、右側と左側のサンバイザーセクションS1又はS2に、それぞれ個別のスイッチング又は制御機能を実装するために使用される。
【0044】
したがって、図5のアセンブリに使用される積層ペインは、統合された信号処理電子機器を備えていないが、従来のガラス及び多層フィルムコンポーネントで完全に形成されており、その一方で、信号処理及び制御機能が、乗用車の車載電子機器によって、実装されている。
【0045】
全体として、本発明の実施は、上記で強調された態様及び上記の例に限定されず、添付の特許請求の範囲内で、多数の修正において等しく可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 ウインドシールド
2a 外側ペイン
2b 内側ペイン
3 熱可塑性中間層
3a 中間層3の第一層
3a’ 第一層3aの彩色領域
3b 中間層3の第二層
3c 中間層3の第三層
4 電気的に制御可能な光学特性を有している機能要素
5 機能要素4の活性層
6 機能要素4の第一キャリアフィルム
7 機能要素4の第二キャリアフィルム
8、9 機能要素4の平坦な電極
10 マスキングプリント
11 スイッチング及び制御要素
12 積層ペインアセンブリ
13 乗用車
14 電子光学機能要素の制御回路
B ウインドシールドの視野
D ウインドシールド上側エッジ
DL 制御ライン
M ウインドシールド下側エッジ
S サンバイザー
S1、S2 サンバイザーセクション(機能要素の機能領域)
SL 信号リード
X-X’ 断面線
Z 詳細領域
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】