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特表2022-520424皮膚美白外用剤におけるサリドロシド誘導体の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-30
(54)【発明の名称】皮膚美白外用剤におけるサリドロシド誘導体の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/60 20060101AFI20220323BHJP
   A61K 31/7034 20060101ALI20220323BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20220323BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220323BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220323BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20220323BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20220323BHJP
   C07H 15/18 20060101ALN20220323BHJP
【FI】
A61K8/60
A61K31/7034
A61Q19/02
A61P17/00
A61K9/08
A61K9/107
A61K9/06
C07H15/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547293
(86)(22)【出願日】2020-11-18
(85)【翻訳文提出日】2021-08-12
(86)【国際出願番号】 CN2020129731
(87)【国際公開番号】W WO2021129241
(87)【国際公開日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】201911367032.4
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518343752
【氏名又は名称】上海澄穆生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】朱 才彬
(72)【発明者】
【氏名】李 俊翔
【テーマコード(参考)】
4C057
4C076
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4C057BB02
4C057DD01
4C057JJ19
4C076AA11
4C076AA12
4C076AA14
4C076AA17
4C076BB31
4C076CC18
4C076FF11
4C076FF68
4C083AD391
4C083AD392
4C083CC02
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC07
4C083DD30
4C083DD32
4C083DD33
4C083DD38
4C083DD39
4C083DD41
4C083EE09
4C083EE16
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA04
4C086EA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA22
4C086MA28
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA89
(57)【要約】
本発明によれば、皮膚美白外用剤におけるサリドロシド誘導体の使用が提供され、スキンケア製品の技術分野に属する。本発明では、サリドロシドの美白活性を増強させるとともに、サリドロシドの糖環の保護作用を十分に利用し、サリドロシドのフェノール残基を修飾してサリドロシド-plus(SP-037)、即ち1-(3,5-ジヒドロキシフェニル)エチル-β-D-グルコシド及び/又はその塩を取得し、一連の実験によりその美白効果を評価した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚美白外用剤の製造における式(I-1)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項2】
前記化合物又はその薬学的に許容される塩は、皮膚美白外用剤に占める質量百分率が0.5%-30%であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記外用剤は酸化防止剤、着色剤、脱色素剤、エモリエント、乳化剤、角質除去剤、香料、保湿剤、潤滑剤、薬品活性化剤、増湿剤、光安定剤、防腐剤、スキンケア剤、皮膚浸透促進剤、日焼け止め、安定剤、界面活性剤、又は増粘剤であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記スキンケア剤は化粧水、エマルション、クリーム、美容液、又はフェイシャルマスクであることを特徴とする、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記外用剤は、水含有洗液、油中水型又は水中油型エマルション、オイル又はオレイルアルコール洗液、又はゲルの形態で存在することを特徴とする、請求項3に記載の使用。
【請求項6】
式(I-1)で表される化合物は、
3,5-ジヒドロキシフェニル酢酸とボランテトラヒドロフランとをモル比1:(1.1-1.3)でテトラヒドロフランに溶解し、室温15-25℃の条件下で4-6時間反応させ、反応終了後、回転蒸発により溶媒を除去することで粗生成物が得られ、カラムクロマトグラフィーによって精製することにより、中間体2が得られるステップ1と、
ステップ1で得られた中間体2と塩化ベンジルとを1:(1-1.2)のモル比でアセトン中で撹拌して溶解し、溶解終了後、中間体2と炭酸カリウムとのモル比が1:(1-1.2)、中間体2とヨウ化カリウムとのモル比が1:(0.1-0.2)であるように炭酸カリウム及びヨウ化カリウムを加え、還流下で18-20時間反応させ、溶媒を蒸発除去した後、残留物を水に入れ、塩酸を滴下してpH7に調整し、酢酸エチルで抽出し、有機相から溶媒を蒸発除去した後、無水エタノールで再結晶化することにより、白色固体として中間体3が得られるステップ2と、
ステップ2で得られた中間体3をジクロロメタンに溶解し、撹拌しながら、中間体3と中間体4とのモル比が1:(1.2-1.4)、中間体3と乾燥炭酸銀とのモル比が1:(0.6-0.7)であるように中間体4、分子篩2-3g及び乾燥炭酸銀をこの順で加え、室温15-25℃の条件下で暗所で24-36時間反応させ、反応終了後に濾過し、濾過ケーキをジクロロメタンで洗浄し、濾液を濃縮することにより、中間体5が得られるステップ3と、
ステップ3で得られた中間体5を無水メタノールに溶解し、ナトリウムメトキシドを加え、室温15-25℃で6-8時間撹拌し、酢酸でpH6に調整した後に濾過し、濾液を減圧濃縮することにより、粘稠状物質が得られ、粘稠状物質にさらにメタノール、パラジウム炭素を加え、水素加圧の雰囲気で撹拌しながら4-6時間反応させ、最後にカラムクロマトグラフィーで精製することにより、式(I-1)の構造を有する最終製品が得られるステップ4と、
を含む方法により製造されることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年12月26日に中国国家知識産権局に出願された特許出願(出願番号:2019113670324、発明の名称:サリドロシド誘導体、製造方法及び美白化粧品における使用)の優先権を主張し、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、スキンケアの技術分野に関し、具体的には、皮膚美白外用剤におけるサリドロシド誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
皮膚におけるメラニンの含有量と分布は人間の皮膚の色を決定する。メラニンの産生には、チロシン、チロシナーゼ、活性酸素及びメラニン体が不可欠である。外部刺激、例えば、紫外線照射等によりチロシナーゼは活性化され、チロシンはチロシナーゼの作用下でドーパに酸化され、さらにメラニンに酸化され、皮膚の表面に移動し、肌がくすみ、局所的にシミが発生し、最後に、皮膚の異常な代謝により永久的な色斑を引き起こす。そのため、皮膚美白は紫外線遮断、酸素ラジカルの除去、チロシナーゼの抑制、メラニンの移動遮断等の流れで実現することができる。しかし、メラニンの合成を抑制しすぎると、既存のメラノサイトがひどく破壊されて足りなくなることで、皮膚の色は異常に白くなり、白斑が発生する恐れがある。もちろん、メラニンを科学的に抑制しても、健康を害することがない。
【0004】
現在、人々の高美人度に対する追求はますます顕著になっている。「色の白いは七難隠す」との意識は、人々の心に深く根ざしており、多くの人が皮膚を白皙に保ちたいと思っている。そのため、美白やシミの除去が人気になっており、美白化粧品の種類も増えている。現在市販されている美白製品には、クリーム、エマルション、ゲル、フェイシャルマスク等がある。しかし、これらの製品の多くは、皮膚を異常に白皙にするか又は不快を感じさせる白皙にする問題がある。これは明らかに人々の本来の美白の意図に反している。そのため、肌の健康的な美白を前提とし、皮膚の正常な新陳代謝を破壊することなく、過度に沈着して色斑を形成しないようにメラノサイトの代謝を促進できる新しい成分を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、メラニン生成を抑制し、肌の色を明るくするサリドロシド誘導体、製造方法及びその美白化粧品における使用を提供することである。
【0006】
サリドロシドは、糖環を含むポリフェノール化合物であり、免疫調節、抗低酸素症、抗老化の作用を有するとともに、文献によるとある程度の美白の効果を有する。本発明では、サリドロシドはそのフェノール残基により美白作用を発揮することが推測される。
【0007】
本発明の一態様によれば、式(I)で表される化合物が提供される。
、R、R、R及びRは水素原子又はヒドロキシル基であり、nは1-3個の炭素原子を含むアルキル基である。
【0008】
さらに、nが1、Rが水素原子、Rがヒドロキシル基、Rが水素原子、Rがヒドロキシル基、Rが水素原子である場合、上記化合物は1-(3,5-ジヒドロキシフェニル)エチル-β-D-グルコシドであり、化学式はC1318であり、構造式は下式(I-1)である。
【0009】
本発明の他の態様によれば、以下のステップ1からステップ4を含む式(I-1)で表される化合物の製造方法が提供される。
【0010】
3,5-ジヒドロキシフェニル酢酸とボランテトラヒドロフランとをモル比1:(1.1-1.3)でテトラヒドロフランに溶解し、室温15-25℃の条件下で4-6時間反応させ、反応終了後、回転蒸発により溶媒を除去することで粗生成物が得られ、カラムクロマトグラフィーによって精製することにより、中間体2が得られる。
【0011】
ステップ1で得られた中間体2と塩化ベンジルとをアセトン中で撹拌して溶解する。中間体2と塩化ベンジルとのモル比は1:(1-1.2)であり、撹拌速度は200-300rpmである。溶解終了後、中間体2と炭酸カリウムとのモル比が1:(1-1.2)、中間体2とヨウ化カリウムとのモル比が1:(0.1-0.2)であるように炭酸カリウム及びヨウ化カリウムを加え、還流下で18-20時間反応させ、溶媒を蒸発除去した後、残留物を水に入れ、塩酸を滴下してpH7に調整し、酢酸エチルで抽出し、有機相から溶媒を蒸発除去した後、無水エタノールで再結晶化することにより、白色固体として中間体3が得られる。
【0012】
ステップ2で得られた中間体3をジクロロメタンに溶解し、200-300rpmで中間体4、分子篩及び乾燥炭酸銀をこの順で加え、室温15-25℃、暗所で24-36時間反応させる。中間体3と中間体4とのモル比は1:(1.2-1.4)、分子篩は2-3g、中間体3と乾燥炭酸銀とのモル比は1:(0.6-0.7)である。反応終了後に濾過し、濾過ケーキをジクロロメタンで洗浄し、濾液を濃縮することにより、中間体5が得られる。
【0013】
ステップ3で得られた中間体5を無水メタノールに溶解し、ナトリウムメトキシドを加え、室温15-25℃、200-300rpmで6-8h撹拌し、酢酸でpH6に調整した後に濾過し、濾液を減圧濃縮することにより、粘稠状物質が得られ、粘稠状物質にさらにメタノール、パラジウム炭素を加え、水素加圧の雰囲気で撹拌しながら4-6時間反応させ、最後にカラムクロマトグラフィーで精製することにより、式(I-1)の構造を有する最終製品6が得られる。
【0014】
本発明の他の態様によれば、皮膚美白外用剤の製造における式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の使用がさらに提供される。
【0015】
さらに、上記外用剤は、酸化防止剤、着色剤、脱色素剤、エモリエント、乳化剤、角質除去剤、香料、保湿剤、潤滑剤、薬品活性化剤、増湿剤、光安定剤、防腐剤、スキンケア剤、皮膚浸透促進剤、日焼け止め、安定剤、界面活性剤、増粘剤、又は化粧品であってもよい。
【0016】
さらに、上記スキンケア剤は、化粧水、エマルション、クリーム、美容液、フェイシャルマスク等であってもよい。
【0017】
さらに、上記化合物又はその薬学的に許容される塩は、皮膚美白外用剤における質量百分率が0.5%-30%である。
【0018】
具体的には、式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩は、水含有洗液、油中水型又は水中油型エマルション、オイル又はオレイルアルコール洗液、ゲル等の形態で存在してもよい。
【0019】
本発明は以下の有益な効果を有する。
本発明では、サリドロシドの美白活性を増強させるとともに、サリドロシドの糖環の保護作用を十分に利用し、サリドロシドのフェノール残基を修飾してサリドロシド-plus(SP-037)、即ち1-(3,5-ジヒドロキシフェニル)エチル-β-D-グルコシド及び/又はその塩を取得し、一連の実験によりその美白効果を評価した。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例1で製造された1-(3,5-ジヒドロキシフェニル)エチル-β-D-グルコシドのH-NMRスペクトルである。
図2】実施例1で製造された1-(3,5-ジヒドロキシフェニル)エチル-β-D-グルコシドのC13-NMRスペクトルである。
図3】実施例1で製造された1-(3,5-ジヒドロキシフェニル)エチル-β-D-グルコシドのMSマススペクトルである。
図4】メラニン含有量に対するβ-D-グルコシド誘導体の影響(mean±SD;n=3;**P<0.01)を示す。
図5】メラニン含有量に対するSP-037の影響(mean±SD;n=5;**P<0.01)を示す。
図6】SP-037と美白陽性薬の脱メラニン効果の比較(mean±SD;n=5;**P<0.01)を示す。
図7】マウスの体重変化(対照:生理食塩水塗布群;2.5%:2.5% SP-037の生理食塩水塗布群;5%:5% SP-037の生理食塩水塗布群;10%:10% SP-037の生理食塩水塗布群)を示す。
図8】マウス皮膚監視(対照:生理食塩水塗布群;2.5%:2.5% SP-037の生理食塩水塗布群;5%:5% SP-037の生理食塩水塗布群;10%:10% SP-037の生理食塩水塗布群)である。
図9】SP-037のパッチテストを示す。
図10】皮膚メラニン含有量に対するSP-037の影響の評価(mean±SD;**P<0.01)を示す。
図11】皮膚明度に対するSP-037の影響の評価(mean±SD;*P<0.05,**P<0.01)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
当業者は創造的な努力なしに、上記の図面に基づいて他の関連する図面を得ることができる。
【0022】
当業者が本発明をよりよく理解できるようにするために、以下、実施例により本発明の技術的解決策をさらに説明する。
【0023】
実施例1:1-(3,5-ジヒドロキシフェニル)エチル-β-D-グルコシドの製造
【0024】
1.18gの3,5-ジヒドロキシフェニル酢酸と8.4mlのBH3.THF(THF中で1.0M)とを20mlのTHFに溶解し、室温で4時間反応させた。反応終了後、回転蒸発で溶媒を除去することにより粗生成物が得られた。カラムクロマトグラフィーで精製することにより1.05gの製品が得られた(収率97%)。
【0025】
反応フラスコに16.9g中間体2、塩化ベンジル6.9mL及びアセトン200mLをこの順で加え、撹拌して溶解し、炭酸カリウム8.3g及びヨウ化カリウム0.8gを加え、TLCで監視しながら、還流下で18h反応させた。溶媒を蒸発除去し、残留物を200mL水中に入れ、塩酸を滴下してpH7に調整し、酢酸エチルで抽出し、有機相から溶媒を蒸発除去した後、無水エタノールで再結晶化することにより、色固体210.7gが得られた。回収率は88.6%であった。
【0026】
ステップ2で得られた生成物(中間体3)27.3gを200mLのCHClに溶解し、撹拌しながら、14.8gの中間体4、2gの分子篩及び55gの乾燥炭酸銀をこの順で加え、室温、暗所で1日反応させた。濾過し、濾過ケーキを適量のCHClで洗浄し、濾液を濃縮することにより、中間体5が得られた。
【0027】
ステップ3で得られた中間体5を無水メタノール150mLに溶解し、ナトリウムメトキシド1.6gを加え、室温で6h撹拌し、酢酸でpH6に調整し、濾過し、濾液を減圧濃縮することにより、粘稠状物質が得られた。粘稠状物質にさらに150mlメタノール、0.16gパラジウム炭素を加え、水素ガス雰囲気で撹拌しながら4h反応させた。カラムクロマトグラフィーで精製することにより、最終製品5.6gが得られた。
【0028】
特性データ
図1:H-NMR(CD3OD,400MHz)δ:7.06(2H,d,J=8.4Hz),6.69(2H,d,J=8.4Hz,),4.29(1H,d,J=8.0Hz),4.02(1H,m),3.86(1H,dd,J=1.6,12.4Hz),3.68(2H,overlapped),3.23-3.37(3H,overlapped),3.18(1H,t,J=8.8Hz),2.83(2H,t,J=8.0Hz)。
【0029】
図2:C13-NMR(CD3OD,100MHz)δ:155.4,129.6,129.4,114.7,103.0,76.7,76.6,73.7,70.7,70.3,61.4,35.0。
図3:HRESI-MSm/z[M+Na]+:365.0929。
【0030】
実施例2:インビトロメラノサイトを用いるメラニン合成のシミュレート過程に対するβ-D-グルコシド誘導体の影響の分析
a.メラニン生成に対するβ-D-グルコシド誘導体の抑制活性の測定
測定方法
本実験は、ヒト由来メラノサイト及びツールメラノサイトを用いて行われた。ヒト由来メラノサイト及びメラノサイトを5000個の細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに接種した。細胞が壁に付着した後、培地に神経栄養因子を添加して誘導するとともにUVで誘導することによりインビボメラニンの生成をシミュレートした。その後、測定されるβ-D-グルコシド誘導体を100μMの濃度で加えて細胞をインキュベートした。各群は、3回繰り返した。37℃、5%CO恒温恒湿インキュベータで引き続き60h培養した。細胞を予冷したリン酸緩衝液で洗浄した後、トリプシンで細胞を消化し、ウェルプレートを遠心分離し、上清を捨てた。10%ジメチルスルホキシドを含むNaOH(1mol/L)溶液で細胞を溶解し、65℃水浴でメラニン粒子を完全に溶解し、マイクロプレートリーダにより490nmでの吸光値を測定した。最後に、この値でメラニンの含有量をフィードバックした。
【0031】
結果と考察
実験で測定されるβ-D-グルコシド誘導体は、以下の化学式で表される化合物から選択される。
上記式中、R、R、R、R及びRは水素原子又はヒドロキシル基を示し、1-5個のヒドロキシル基を含み、nは1-3個の炭素原子を含むアルキル基を示す。
SP-001からSP-039を含む39種のβ-D-グルコシド誘導体の化学式は以下の通りである。
【0032】
図4に示すように、測定される39種のβ-D-グルコシド誘導体は、いずれも細胞レベルで顕著なメラニン生成抑制効果を有する。そのうち、番号SP-037の1-(3,5-ジヒドロキシフェニル)エチル-β-D-グルコシドは効果が最も高い。以下、SP-037は1-(3,5-ジヒドロキシフェニル)エチル-β-D-グルコシドを指す。
【0033】
b.メラニン生成に対するSP-037の抑制活性の測定
測定方法
本実験は、ヒト由来メラノサイト及びツールメラノサイトを用いて行われた。ヒト由来メラノサイト及びメラノサイトを5000個の細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに接種した。細胞が壁に付着した後、培地に神経栄養因子を添加して誘導するとともにUVで誘導することによりインビボメラニンの生成をシミュレートした。その後、SP-037を0、12.5、25、50、100、200μMの合計6つの濃度勾配で加えて細胞をインキュベートした。各群は、5回繰り返した。37℃、5%CO恒温恒湿インキュベータで引き続き60h培養した。細胞を予冷したリン酸緩衝液で洗浄した後、トリプシンで細胞を消化し、ウェルプレートを遠心分離し、上清を捨てた。10%ジメチルスルホキシドを含むNaOH(1mol/L)溶液で細胞を溶解し、65℃水浴でメラニン粒子を完全に溶解し、マイクロプレートリーダにより490nmでの吸光値を測定した。最後に、この値でメラニンの含有量をフィードバックした。
【0034】
結果と考察
図5に示すように、SP-037は、細胞レベルで顕著なメラニン生成抑制効果を有し、50μM濃度での効果が理想的であるため、この濃度で引き続き実験を行った。
【0035】
c.SP-037と美白陽性薬の脱メラニン効果の比較
測定方法
本実験は、ヒト由来メラノサイト及びツールメラノサイトを用いて行われた。ヒト由来メラノサイト及びメラノサイトを5000個の細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに接種した。細胞が壁に付着した後、培地に神経栄養因子を添加して誘導するとともにUVで誘導することによりインビボメラニンの生成をシミュレートした。その後、対照、SP-037、VC、コウジ酸及びヒドロキノンの5群を設けた。各群は、5回繰り返した。37℃、5%CO恒温恒湿インキュベータで引き続き60h培養した。細胞を予冷したリン酸緩衝液で洗浄した後、トリプシンで細胞を消化し、ウェルプレートを遠心分離し、上清を捨てた。10%ジメチルスルホキシドを含むNaOH(1mol/L)溶液で細胞を溶解し、65℃水浴でメラニン粒子を完全に溶解し、マイクロプレートリーダにより490nmでの吸光値を測定した。最後に、この値でメラニンの含有量をフィードバックした。
【0036】
結果と考察
図6に示すように、ヒト由来メラノサイトでは、インビトロでのメラニン生成のシミュレート過程に対するSP-037の抑制活性は、陽性薬VC、コウジ酸及びヒドロキノンよりも顕著に高い。ツールメラノサイトでは、メラニン生成に対するSP-037の抑制活性は、VC及びコウジ酸よりも顕著に高いが、ヒドロキノンよりもやや低い。
【0037】
実施例3:SP-037の安全性評価
a.マウスの皮膚に対する長期毒性試験
試験方法
本実験は、昆明マウスを用いて行われた。SP-037は生理食塩水を用いて調製され、濃度はそれぞれ2.5%(質量体積比)、5%(質量体積比)、10%(質量体積比)であった。それぞれ対照群、2.5%用量群、5%用量群、10%用量群を構築した。ブランク群に1匹のマウス、各実験群に2匹のマウスがあった。背部皮膚塗布処理を実施した。具体的には、まず、脱毛クリームを用いてマウスの背部を脱毛し、脱毛して露出した皮膚に対応濃度の薬剤を毎日塗布し、3ヶ月連続して処理し、試験期間において、定期的に写真を取り、マウスの体重を記録し、白斑、その他の皮膚刺激性損傷又は中毒現象を引き起こしたかを観察した。
【0038】
結果と考察
図7、8に示すように、マウス皮膚長期毒性実験では、所定濃度のSP-037を6か月間連続塗布した期間、マウスの体重と皮膚の状況の変化は正常なマウスの成長パターンと同じであり、いずれも白斑、赤い腫れ等の他の皮膚刺激性損傷、又は痙攣、尾立ち、足の突っ張り、仰向け、死亡等の中毒症状が発生しなかった。長期毒性実験は、SP-037が10%(質量体積比)用量下で白斑を引き起こすことがなく、皮膚刺激性及び毒性を有しないことを示している。
【0039】
b.ヒト皮膚刺激性評価
スキンケア分野でのSP-037の応用をさらに開発するために、SP-037の安全性を保証しなければならない。本実験では、まず主成分が10% SP-037のゲル(脱イオン水で調製された2%カルボキシメチルセルロースナトリウム)を調製し、さらにボランティアを募集し、腕の皮膚でパッチテストを行い、その安全性を評価した。
【0040】
結果と考察
図9に示すように、パッチテストの結果から、SP-037が皮膚に対して感作性がないことが分かった。実験過程中、ボランティアが刺激的な痛み、痒み等を感じることがなく、SP-037は非常に高い安全性を有することを示している。
【0041】
実施例4:皮膚美白に対するSP-037の改善効果の分析
分析方法
肌の色が濃いボランティアを合計33人募集した。そのうち、33人の年齢分布は22-38歳の間であった。33人のボランティアをランダムにブランク対照群3人、SP-037群5人、VC群5人、コウジ酸群5人、チアミドール(thiamidol)群5人、ヒドロキノン群5人、及び377群5人の7群に分けた。ブランクゲル、及び主成分がそれぞれSP-037、VC、コウジ酸、アミドール、ヒドロキノン、377のゲルを用意した。各群のボランティアに対して、左腕の内側を洗った後、対応するゲルを均一に塗布し、日に一回で4週間連続した。Dermalab(ダーマラボ)機器を用いてそれぞれ0日目、14日目及び28日目に肌色テストプローブにより腕内側の皮膚の特徴を検出し、メラニン及びL*a*b値を読み取り、最終的にはデータを統計し、各成分の美白効果を分析した。
【0042】
結果と考察
図10及び図11に示すように、皮膚測定試験の結果は、SP-037が皮膚へのメラニン沈着という問題を顕著に改善し、皮膚明度を向上できることを示している。その効果は、市販されている原料VC、コウジ酸、アミドール及びヒドロキノンよりも顕著に高かったが、377(フェニルエチルレゾルシノール)よりもやや低かった。SP-037は安全性が非常に高く、感作性及び刺激性がなく、誘導性メラニンの生成を細胞レベルで効果的に抑制することができる。さらなるボランティア測定実験の結果は、SP-037が皮膚へのメラニン沈着の改善及び皮膚明度の向上に対して理想的な効果を有することを示している。
【0043】
以上、本発明を例示的に説明した。なお、本発明の趣旨から逸脱しない限り、いかなる簡単な変形、修正又は当業者が創造的な努力を費やす必要がない他の同等置換はいずれも本発明の保護範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】