(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-30
(54)【発明の名称】B細胞悪性腫瘍の処置のための併用療法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/519 20060101AFI20220323BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220323BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220323BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
A61K31/519
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K39/395 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547345
(86)(22)【出願日】2020-02-14
(85)【翻訳文提出日】2021-09-07
(86)【国際出願番号】 IB2020051270
(87)【国際公開番号】W WO2020165861
(87)【国際公開日】2020-08-20
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196966
【氏名又は名称】植田 渉
(72)【発明者】
【氏名】バラスブラマニアン,スリラム
【テーマコード(参考)】
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE03
4C085GG02
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB06
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA06
4C086ZB26
4C086ZC20
4C086ZC51
4C086ZC75
(57)【要約】
B細胞悪性腫瘍を処置する方法、及びイブルチニブと抗PD-1抗体との組み合わせを用いたB細胞悪性腫瘍の処置に応答する被験者を特定するために使用することができる遺伝子突然変異が本明細書で提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者においてB細胞悪性腫瘍を処置する方法であって、
前記被験者に治療有効量のイブルチニブと抗PD-1抗体との組み合わせを投与し、それによって前記B細胞悪性腫瘍を処置することを含み、
a)前記B細胞悪性腫瘍がDLBCLであり、前記被験者が、KLHL14、RNF213、CSMD3、BCL2、NBPF1、LRP1B、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有し、前記1つ以上の突然変異が表4又は表6に列挙されており、
b)前記B細胞悪性腫瘍がGCB-DLBCLであり、前記被験者が、RNF213、NBPF1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有し、前記1つ以上の突然変異が表16に列挙されており、
c)前記B細胞悪性腫瘍がFLであり、前記被験者が、BCL2、CREBBP、KMT2D、MUC17、CIITA、FES、NCOA2、TPR、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有し、前記1つ以上の突然変異が表8又は表10に列挙されており、又は
d)前記B細胞悪性腫瘍がRTであり、前記被験者が、IRF2BP2、NBPF1、KLHL6、SETX、SF3B1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有し、前記1つ以上の突然変異が表12又は表14に列挙されている、方法。
【請求項2】
前記B細胞悪性腫瘍がDLBCLであり、前記被験者が、KLHL14、RNF213、CSMD3、BCL2、NBPF1、LRP1B、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有し、前記1つ以上の突然変異が表4又は表6に列挙されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記被験者が、KLHL14、RNF213、又はこれらの組み合わせにおいて1つ以上の突然変異を有し、前記1つ以上の突然変異が表4又は表6に列挙されている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記B細胞悪性腫瘍がGCB-DLBCLであり、前記被験者が、RNF213、NBPF1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有し、前記1つ以上の突然変異が表16に列挙されている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記B細胞悪性腫瘍がFLであり、前記被験者が、BCL2、CREBBP、KMT2D、MUC17、CIITA、FES、NCOA2、TPR、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有し、前記1つ以上の突然変異が表8又は表10に列挙されている、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記被験者が、BCL2において1つ以上の突然変異を有し、前記1つ以上の突然変異が表8又は表10に列挙されている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記B細胞悪性腫瘍がRTであり、前記被験者が、IRF2BP2、NBPF1、KLHL6、SETX、SF3B1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有し、前記1つ以上の突然変異が表12又は表14に列挙されている、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
被験者においてB細胞悪性腫瘍を処置する方法であって、
前記被験者に治療有効量のイブルチニブと抗PD-1抗体との組み合わせを投与し、それによって前記B細胞悪性腫瘍を処置することを含み、
a)前記B細胞悪性腫瘍がDLBCLであり、前記被験者が、TP53、EBF1、ADAMTS20、AKAP9、SOCS1、TNFRSF14、MYD88、NFKB1B、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しておらず、前記1つ以上の突然変異が表4又は表6に列挙されており、
b)前記B細胞悪性腫瘍がGCB-DLBCLであり、前記被験者が、KMT2D、BCL2、CSMD3、CREBBP、EBF1、SGK1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しておらず、前記1つ以上の突然変異が表16に列挙されており、
c)前記B細胞悪性腫瘍がFLであり、前記被験者が、CREBBP、KMT2D、BCL2、STAT6、NBPF1、EZH2、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しておらず、前記1つ以上の突然変異が表8又は表10に列挙されており、又は
d)前記B細胞悪性腫瘍がRTであり、前記被験者が、ROS1、IGLL5、PASK、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しておらず、前記1つ以上の突然変異が表12又は表14に列挙されている、方法。
【請求項9】
前記B細胞悪性腫瘍がDLBCLであり、前記被験者が、TP53、EBF1、ADAMTS20、AKAP9、SOCS1、TNFRSF14、MYD88、NFKB1B、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しておらず、前記1つ以上の突然変異が表4又は表6に列挙されている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記B細胞悪性腫瘍がGCB-DLBCLであり、前記被験者が、KMT2D、BCL2、CSMD3、CREBBP、EBF1、SGK1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しておらず、前記1つ以上の突然変異が表16に列挙されている、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記B細胞悪性腫瘍がFLであり、前記被験者が、CREBBP、KMT2D、BCL2、STAT6、NBPF1、EZH2、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しておらず、前記1つ以上の突然変異が表8又は表10に列挙されている、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記B細胞悪性腫瘍がRTであり、前記被験者が、ROS1、IGLL5、PASK、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しておらず、前記1つ以上の突然変異が表12又は表14に列挙されている、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記被験者が、ROS1において1つ以上の突然変異を有しておらず、前記1つ以上の突然変異が表12又は表14に列挙されている、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記治療有効量のイブルチニブと前記抗PD-1抗体との組み合わせが、560mgの前記イブルチニブと3mg/kgの前記抗PD-1抗体とを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記抗PD-1抗体が静脈内投与され、前記イブルチニブが経口投与される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記抗PD-1抗体が14日間周期で投与され、前記イブルチニブが1日1回投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記抗PD-1抗体がニボルマブである、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記処置することが、前記被験者における完全奏功(CR)又は部分奏功(PR)をもたらす、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記被験者が、
a)DLBCL、FL、又はRT(CLL/SLLからの形質転換のみ)に罹患しており、
b)1回以上の治療歴(FLについては2回以上の治療歴)があるが、以前に4回以下の処置ラインを受けたことがあり、
c)2以下のEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)のパフォーマンスステータスを有しており、
d)測定可能な疾患に罹患しており、かつ
e)以前にイブルチニブ療法も抗PD-1療法も受けたことがない、請求項1~18のいずれか1つに記載の方法。
【請求項20】
B細胞悪性腫瘍に罹患している被験者におけるイブルチニブと抗PD-1抗体との組み合わせに対する応答性の可能性を予測する方法であって、
a)前記B細胞悪性腫瘍がDLBCLであり、前記方法が、KLHL14、RNF213、CSMD3、BCL2、NBPF1、LRP1B、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について前記被験者からの試料を分析することを含み、前記1つ以上の突然変異が表4又は表6に列挙されており、
b)前記B細胞悪性腫瘍がGCB-DLBCLであり、前記方法が、RNF213、NBPF1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について前記被験者からの試料を分析することを含み、前記1つ以上の突然変異が表16に列挙されており、
c)前記B細胞悪性腫瘍がFLであり、前記方法が、BCL2、CREBBP、KMT2D、MUC17、CIITA、FES、NCOA2、TPR、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について前記被験者からの試料を分析することを含み、前記1つ以上の突然変異が表8又は表10に列挙されており、又は
d)前記B細胞悪性腫瘍がRTであり、前記方法が、IRF2BP2、NBPF1、KLHL6、SETX、SF3B1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について前記被験者からの試料を分析することを含み、前記1つ以上の突然変異が表12又は表14に列挙されており、
前記遺伝子における1つ以上の突然変異が、前記組み合わせに対する応答性を示す、方法。
【請求項21】
前記B細胞悪性腫瘍がDLBCLであり、前記方法が、KLHL14、RNF213、CSMD3、BCL2、NBPF1、LRP1B、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について前記被験者からの試料を分析することを含み、前記1つ以上の突然変異が表4又は表6に列挙されており、前記遺伝子における1つ以上の突然変異が、前記組み合わせに対する応答性を示す、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
KLHL14、RNF213、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について前記被験者からの試料を分析することを含み、前記1つ以上の突然変異が表4又は表6に列挙されており、前記遺伝子における1つ以上の突然変異が、前記組み合わせに対する応答性を示す、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記B細胞悪性腫瘍がGCB-DLBCLであり、前記方法が、RNF213、NBPF1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について前記被験者からの試料を分析することを含み、前記1つ以上の突然変異が表16に列挙されており、前記遺伝子における1つ以上の突然変異が、前記組み合わせに対する応答性を示す、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記B細胞悪性腫瘍がFLであり、前記方法が、BCL2、CREBBP、KMT2D、MUC17、CIITA、FES、NCOA2、TPR、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について前記被験者からの試料を分析することを含み、前記1つ以上の突然変異が表8又は表10に列挙されており、前記遺伝子における1つ以上の突然変異が、前記組み合わせに対する応答性を示す、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記方法が、BCL2における1つ以上の突然変異について前記被験者からの試料を分析することを含み、前記1つ以上の突然変異が表8又は表10に列挙されており、前記遺伝子における1つ以上の突然変異が、前記組み合わせに対する応答性を示す、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記B細胞悪性腫瘍がRTであり、前記方法が、IRF2BP2、NBPF1、KLHL6、SETX、SF3B1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について前記被験者からの試料を分析することを含み、前記1つ以上の突然変異が表12又は表14に列挙されており、前記遺伝子における1つ以上の突然変異が、前記組み合わせに対する応答性を示す、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
B細胞悪性腫瘍に罹患している被験者におけるイブルチニブと抗PD-1抗体との組み合わせに対する非応答性の可能性を予測する方法であって、
a)前記B細胞悪性腫瘍がDLBCLであり、前記方法が、TP53、EBF1、ADAMTS20、AKAP9、SOCS1、TNFRSF14、MYD88、NFKB1B、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について前記被験者からの試料を分析することを含み、前記1つ以上の突然変異が表4又は表6に列挙されており、
b)前記B細胞悪性腫瘍がGCB-DLBCLであり、前記方法が、KMT2D、BCL2、CSMD3、CREBBP、EBF1、SGK1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について前記被験者からの試料を分析することを含み、前記1つ以上の突然変異が表16に列挙されており、
c)前記B細胞悪性腫瘍がFLであり、前記方法が、CREBBP、KMT2D、BCL2、STAT6、NBPF1、EZH2、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について前記被験者からの試料を分析することを含み、前記1つ以上の突然変異が表8又は表10に列挙されており、又は
d)前記B細胞悪性腫瘍がRTであり、前記方法が、ROS1、IGLL5、PASK、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について前記被験者からの試料を分析することを含み、前記1つ以上の突然変異が表12又は表14に列挙されており、
前記遺伝子における1つ以上の突然変異が、前記組み合わせに対する非応答性を示す、方法。
【請求項28】
前記B細胞悪性腫瘍がDLBCLであり、前記方法が、TP53、EBF1、ADAMTS20、AKAP9、SOCS1、TNFRSF14、MYD88、NFKB1B、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について前記被験者からの試料を分析することを含み、前記1つ以上の突然変異が表4又は表6に列挙されており、前記遺伝子における1つ以上の突然変異が、前記組み合わせに対する非応答性を示す、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記B細胞悪性腫瘍がGCB-DLBCLであり、前記方法が、KMT2D、BCL2,CSMD3、CREBBP、EBF1、SGK1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について前記被験者からの試料を分析することを含み、前記1つ以上の突然変異が表16に列挙されており、前記遺伝子における1つ以上の突然変異が、前記組み合わせに対する非応答性を示す、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記B細胞悪性腫瘍がFLであり、前記方法が、CREBBP、KMT2D、BCL2、STAT6、NBPF1、EZH2、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について前記被験者からの試料を分析することを含み、前記1つ以上の突然変異が表8又は表10に列挙されており、前記遺伝子における1つ以上の突然変異が、前記組み合わせに対する非応答性を示す、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記B細胞悪性腫瘍がRTであり、前記方法が、ROS1、IGLL5、PASK、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について前記被験者からの試料を分析することを含み、前記1つ以上の突然変異が表12又は表14に列挙されており、前記遺伝子における1つ以上の突然変異が、前記組み合わせに対する非応答性を示す、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記方法が、ROS1における1つ以上の突然変異について前記被験者からの試料を分析することを含み、前記1つ以上の突然変異が表12又は表14に列挙されており、前記1つ以上の突然変異が、前記組み合わせに対する非応答性を示す、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記被験者が、
a)DLBCL、FL、又はRT(CLL/SLLからの形質転換のみ)に罹患しており、
b)1回以上の治療歴(FLについては2回以上の治療歴)があるが、以前に4回以下の処置ラインを受けたことがあり、
c)2以下のEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)のパフォーマンスステータスを有しており、
d)測定可能な疾患に罹患しており、かつ
e)以前にイブルチニブ療法も抗PD-1療法も受けたことがない、請求項20~32のいずれか1つに記載の方法。
【請求項34】
治療有効量のイブルチニブと抗PD-1抗体との組み合わせを前記被験者に投与し、それによって、前記被験者が、前記組み合わせに対する応答性を示す遺伝子における前記1つ以上の突然変異及び/又は前記組み合わせに対する非応答性を示す遺伝子における1つ以上の突然変異の欠失を有する場合、前記B細胞悪性腫瘍を処置することを更に含む、請求項20~33のいずれか1つに記載の方法。
【請求項35】
前記治療有効量のイブルチニブと前記抗PD-1抗体との前記組み合わせが、560mgの前記イブルチニブと3mg/kgの前記抗PD-1抗体とを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記抗PD-1抗体が静脈内投与され、前記イブルチニブが経口投与される、請求項34又は35に記載の方法。
【請求項37】
前記抗PD-1抗体が14日間周期で投与され、前記イブルチニブが1日1回投与される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記抗PD-1抗体がニボルマブである、請求項34~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記処置することが、前記被験者における完全奏功(CR)又は部分奏功(PR)をもたらす、請求項34~38のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年2月15日出願の米国仮出願第62/806,148号の優先権を主張し、その開示が全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
B細胞悪性腫瘍を処置する方法、及びイブルチニブと抗PD-1抗体との組み合わせを用いたB細胞悪性腫瘍の処置に応答する被験者を特定するために使用することができる遺伝子突然変異が本明細書で提供される。
【背景技術】
【0003】
新規の標的療法及び免疫癌薬は、特に再発性/難治性(R/R)疾患に罹患している処置困難患者のための血液学的B細胞悪性腫瘍の処置を革新してきた。しかしながら、濾胞性リンパ腫(FL)、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)、及びRichter形質転換(RT)に罹患している多くの患者は、再発するか、又は標準療法に対して難治性となり、サルベージ療法に十分に応答し損なっている者、又は幹細胞移植に不適格である者の予後は不良である。体細胞突然変異は、B細胞悪性腫瘍の形成につながるだけでなく、B細胞悪性腫瘍の癌を再発させる/難治性にする可能性もある。かなりの前処置を受けた患者には代替選択肢がない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書では、被験者においてB細胞悪性腫瘍を処置する方法であって、被験者に治療有効量のイブルチニブと抗PD-1抗体との組み合わせを投与し、それによってB細胞悪性腫瘍を処置することを含み、
a)B細胞悪性腫瘍がDLBCLであり、被験者が、KLHL14、RNF213、CSMD3、BCL2、NBPF1、LRP1B、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有し、1つ以上の突然変異が表4又は表6に列挙されており、
b)B細胞悪性腫瘍がGCB-DLBCLであり、被験者が、RNF213、NBPF1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有し、1つ以上の突然変異が表16に列挙されており、
c)B細胞悪性腫瘍がFLであり、被験者が、BCL2、CREBBP、KMT2D、MUC17、CIITA、FES、NCOA2、TPR、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有し、1つ以上の突然変異が表8又は表10に列挙されており、又は
d)B細胞悪性腫瘍がRTであり、被験者が、IRF2BP2、NBPF1、KLHL6、SETX、SF3B1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有し、1つ以上の突然変異が表12又は表14に列挙されている、方法が開示されている。
【0005】
また、本明細書では、被験者においてB細胞悪性腫瘍を処置する方法であって、被験者に治療有効量のイブルチニブと抗PD-1抗体との組み合わせを投与し、それによってB細胞悪性腫瘍を処置することを含み、
a)B細胞悪性腫瘍がDLBCLであり、被験者が、TP53、EBF1、ADAMTS20、AKAP9、SOCS1、TNFRSF14、MYD88、NFKB1B、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しておらず、1つ以上の突然変異が表4又は表6に列挙されており、
b)B細胞悪性腫瘍がGCB-DLBCLであり、被験者が、KMT2D、BCL2、CSMD3、CREBBP、EBF1、SGK1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しておらず、1つ以上の突然変異が表16に列挙されており、
c)B細胞悪性腫瘍がFLであり、被験者が、CREBBP、KMT2D、BCL2、STAT6、NBPF1、EZH2、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しておらず、1つ以上の突然変異が表8又は表10に列挙されており、又は
d)B細胞悪性腫瘍がRTであり、被験者が、ROS1、IGLL5、PASK、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しておらず、1つ以上の突然変異が表12又は表14に列挙されている、方法も提供されている。
【0006】
B細胞悪性腫瘍に罹患している被験者におけるイブルチニブと抗PD-1抗体との組み合わせに対する応答性の可能性を予測する方法であって、
a)B細胞悪性腫瘍がDLBCLであり、方法が、KLHL14、RNF213、CSMD3、BCL2、NBPF1、LRP1B、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異が表4又は表6に列挙されており、
b)B細胞悪性腫瘍がGCB-DLBCLであり、方法が、RNF213、NBPF1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異が表16に列挙されており、
c)B細胞悪性腫瘍がFLであり、方法が、BCL2、CREBBP、KMT2D、MUC17、CIITA、FES、NCOA2、TPR、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異が表8又は表10に列挙されており、又は
d)B細胞悪性腫瘍がRTであり、方法が、IRF2BP2、NBPF1、KLHL6、SETX、SF3B1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異が表12又は表14に列挙されており、
遺伝子における1つ以上の突然変異が、組み合わせに対する応答性を示す、方法が更に提供されている。
【0007】
また、B細胞悪性腫瘍に罹患している被験者におけるイブルチニブと抗PD-1抗体との組み合わせに対する非応答性の可能性を予測する方法であって、
a)B細胞悪性腫瘍がDLBCLであり、方法が、TP53、EBF1、ADAMTS20、AKAP9、SOCS1、TNFRSF14、MYD88、NFKB1B、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異が表4又は表6に列挙されており、
b)B細胞悪性腫瘍がGCB-DLBCLであり、方法が、KMT2D、BCL2、CSMD3、CREBBP、EBF1、SGK1、若しくはこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異が表16に列挙されており、
c)B細胞悪性腫瘍がFLであり、方法が、CREBBP、KMT2D、BCL2、STAT6、NBPF1、EZH2、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異が表8又は表10に列挙されており、又は
d)B細胞悪性腫瘍がRTであり、方法が、ROS1、IGLL5、PASK、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異が表12又は表14に列挙されており、
遺伝子における1つ以上の突然変異が、組み合わせに対する非応答性を示す、方法も開示されている。
【0008】
発明の概要、並びに以下の発明を実施するための形態は、添付の図面と併せて読むことで、更に理解される。開示の方法を説明する目的で、図面には、本方法の例示的実施形態が示されている。ただし、本方法は、ここに開示されている特定の実施形態に限定されるものではない。図面は、以下のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本明細書に開示されるLYM1002試験の投与スケジュールを示す図である。
【
図2】DLBCL患者(N=26)におけるIHCに基づくPD-L1発現による無増悪生存期間(PFS)のプロットである。
【
図3】胚中心B細胞(GCB)DLBCL患者(N=17)におけるIHCに基づくPD-L1発現による無増悪生存期間(PFS)のプロットである。
【
図4A】DLBCL及びRichter症候群の被験者における経時的な無増悪生存期間(PFS)率を示す図である。
図4A:TP53変異型(TP53 M)対TP53野生型(TP53 WT)を有するDLBCL被験者におけるPFS(p=0.002)、
図4B:イブルチニブ+ニボルマブ(分子寛解あり、MR+)対分子寛解なし(MR-)の2つのコース後のDLBCL被験者におけるPFS、
図4C:TP53 WT MR+、TP53 WT MR-、TP53 M MR+、及びTP53 M MR-を有する再発性/難治性DLBCL被験者におけるPFS、
図4D:TP53 WT対TP53 Mを有するRichter症候群の被験者におけるPFS、及び
図4E:MR+を有するRichter症候群の被験者対MR-を有するRichter症候群の被験者におけるPFS。
【
図4B】DLBCL及びRichter症候群の被験者における経時的な無増悪生存期間(PFS)率を示す図である。
図4A:TP53変異型(TP53 M)対TP53野生型(TP53 WT)を有するDLBCL被験者におけるPFS(p=0.002)、
図4B:イブルチニブ+ニボルマブ(分子寛解あり、MR+)対分子寛解なし(MR-)の2つのコース後のDLBCL被験者におけるPFS、
図4C:TP53 WT MR+、TP53 WT MR-、TP53 M MR+、及びTP53 M MR-を有する再発性/難治性DLBCL被験者におけるPFS、
図4D:TP53 WT対TP53 Mを有するRichter症候群の被験者におけるPFS、及び
図4E:MR+を有するRichter症候群の被験者対MR-を有するRichter症候群の被験者におけるPFS。
【
図4C】DLBCL及びRichter症候群の被験者における経時的な無増悪生存期間(PFS)率を示す図である。
図4A:TP53変異型(TP53 M)対TP53野生型(TP53 WT)を有するDLBCL被験者におけるPFS(p=0.002)、
図4B:イブルチニブ+ニボルマブ(分子寛解あり、MR+)対分子寛解なし(MR-)の2つのコース後のDLBCL被験者におけるPFS、
図4C:TP53 WT MR+、TP53 WT MR-、TP53 M MR+、及びTP53 M MR-を有する再発性/難治性DLBCL被験者におけるPFS、
図4D:TP53 WT対TP53 Mを有するRichter症候群の被験者におけるPFS、及び
図4E:MR+を有するRichter症候群の被験者対MR-を有するRichter症候群の被験者におけるPFS。
【
図4D】DLBCL及びRichter症候群の被験者における経時的な無増悪生存期間(PFS)率を示す図である。
図4A:TP53変異型(TP53 M)対TP53野生型(TP53 WT)を有するDLBCL被験者におけるPFS(p=0.002)、
図4B:イブルチニブ+ニボルマブ(分子寛解あり、MR+)対分子寛解なし(MR-)の2つのコース後のDLBCL被験者におけるPFS、
図4C:TP53 WT MR+、TP53 WT MR-、TP53 M MR+、及びTP53 M MR-を有する再発性/難治性DLBCL被験者におけるPFS、
図4D:TP53 WT対TP53 Mを有するRichter症候群の被験者におけるPFS、及び
図4E:MR+を有するRichter症候群の被験者対MR-を有するRichter症候群の被験者におけるPFS。
【
図4E】DLBCL及びRichter症候群の被験者における経時的な無増悪生存期間(PFS)率を示す図である。
図4A:TP53変異型(TP53 M)対TP53野生型(TP53 WT)を有するDLBCL被験者におけるPFS(p=0.002)、
図4B:イブルチニブ+ニボルマブ(分子寛解あり、MR+)対分子寛解なし(MR-)の2つのコース後のDLBCL被験者におけるPFS、
図4C:TP53 WT MR+、TP53 WT MR-、TP53 M MR+、及びTP53 M MR-を有する再発性/難治性DLBCL被験者におけるPFS、
図4D:TP53 WT対TP53 Mを有するRichter症候群の被験者におけるPFS、及び
図4E:MR+を有するRichter症候群の被験者対MR-を有するRichter症候群の被験者におけるPFS。
【発明を実施するための形態】
【0010】
開示される方法は、本開示の一部を形成する、添付の図面に関連してなされる以下の詳細な説明を参照することにより、より容易に理解することができる。開示される方法は、本明細書に記載及び/又は示される特定の方法に限定されないこと、更に、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を例によって説明することのみを目的とし、請求項に記載の方法に限定することを意図しないことを理解されたい。
【0011】
特別な記述がない限り、動作に関する可能なメカニズム又は形態、あるいは改善の理由についての記載は、説明のみを意図したものであり、本開示の方法は、提案されている動作に関するメカニズム又は形態、あるいは改善の理由の是非によって制限されない。
【0012】
本明細書において、明確性のために、別々の実施形態の文脈において記載される、開示された方法の複数の特徴はまた、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことを理解されたい。逆に、簡潔さのために単一の実施形態として記載された開示される方法の種々の特徴はまた、別個に、又は任意の部分的組み合わせで提供されてもよい。
【0013】
本明細書で使用する場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は複数を含むものとする。
【0014】
本明細書及び特許請求の範囲を通して本明細書の諸態様に関する種々の用語が使用される。特に指示がない限り、このような用語には、当該技術分野におけるそれらの通常の意味が与えられるものとする。その他の具体的に定義される用語は、本明細書に提供される定義と一致する様式で解釈されるものとする。
【0015】
同様に、用語「を含む(comprising)」とは、用語「から本質的になる(consisting essentially of)」及び用語「からなる(consisting of)」によって包含される例を含むことを意図する。同様に、用語「から本質的になる」は、用語「からなる」によって包含される例を含むことを意図する。
【0016】
Brutonのチロシンキナーゼ(BTK)のファースト・イン・クラスの経口用共有結合阻害剤(covalent inhibitor)であり、米国及び他の国々において、いくつかのB細胞悪性腫瘍に関して承認されているイブルチニブは、悪性B細胞の接着、増殖、ホーミング、及び生存に必須のシグナル伝達経路を中断させる。
【0017】
「処置する」、「処置」、及び同様の用語は、治療処置及び予防処置又は防止処置のいずれもを指し、症状の重症度及び/又は頻度を低減させること、症状及び/又は症状の根本原因を排除すること、症状の頻度若しくは可能性及び/又は症状の根本原因を低減させること、B細胞悪性腫瘍によって直接的に又は間接的に引き起こされた損傷を良くすること又は修復することを含む。処置には、組み合わせ(イブルチニブ及び抗PD-1抗体)に対する完全奏功及び部分奏功が含まれる。処置は、処置を受けていない被験者の予想生存期間と比較して、生存期間を延長させることも含む。処置される被験者には、容態若しくは疾患に罹患している被験者、並びに容態又は疾患に易罹患性の被験者、又は容態若しくは疾患が防止される被験者が含まれる。
【0018】
本明細書で使用する場合、「治療有効量」という句は、本明細書に開示、説明、又は例示される生物学的結果又は治療結果などであるがこれらに限定されない特定の生物学的結果又は治療結果を達成するのに有効である、本明細書に説明されたようなイブルチニブと抗PD-1との組み合わせの量を指す。治療有効量は、個体の病状、齢、性別、及び体重などの要因、並びに被験者に所望の応答を生じる組成物の能力によって変化し得る。治療有効量の例示的な指標としては、例えば、患者の健康状態の改善、腫瘍量の低減、B細胞悪性腫瘍の成長の抑止若しくは遅滞、及び/又は体内の別の場所へのB細胞悪性腫瘍の転移がないことが挙げられる。
【0019】
本明細書で使用する場合の「被験者」という用語は、何らかの動物、特に、哺乳動物を意味することが意図されている。したがって、本開示の方法は、ヒト及び非ヒト動物に適用可能であるが、ヒトに適用可能であるのが最も好ましい。「被検者」と「患者」とは、本明細書では互換可能に用いられる。
【0020】
本明細書で使用する場合、「イブルチニブと抗PD-1抗体との組み合わせ」は、イブルチニブ及び抗PD-1抗体が、実質的に同じ時間に、同時に、又は逐次投与される処置投与計画を指す。したがって、イブルチニブ及び抗PD-1抗体は、被験者に投与される別個の組成物に含まれることができる。
【0021】
以下の略語を本明細書で使用する。再発性又は難治性(R/R)、全奏効率(ORR)、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、濾胞性リンパ腫(FL)、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)、Richter形質転換(RT)、慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL)、遺伝子発現プロファイリング(GEP)、完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、活性化B細胞(ABC)、胚中心B細胞(GCB)、リンパ球増加随伴性部分奏功(PR-L)、進行性疾患(PD)、及び安定(SD)。
【0022】
B細胞悪性腫瘍を処置する方法
本明細書では、被験者においてB細胞悪性腫瘍を処置する方法であって、B細胞悪性腫瘍がびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、又はRichter形質転換(RT)である方法が提供されている。本方法は、被験者に治療有効量のイブルチニブと抗PD-1抗体との組み合わせを投与し、それによってB細胞悪性腫瘍を処置することを含み、被験者は、KLHL14、RNF213、CSMD3、BCL2、NBPF1、LRP1B、CREBBP、KMT2D、MUC17、CIITA、FES、NCOA2、TPR、IRF2BP2、KLHL6、SETX、SF3B1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有する。いくつかの実施形態では、方法は、被験者に治療有効量のイブルチニブと抗PD-1抗体との組み合わせを投与し、それによってB細胞悪性腫瘍を処置することを含み、
a)B細胞悪性腫瘍がDLBCLであり、被験者が、KLHL14、RNF213、CSMD3、BCL2、NBPF1、LRP1B、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有し、1つ以上の突然変異が表4又は表6に列挙されており、
b)B細胞悪性腫瘍がGCB-DLBCLであり、被験者が、RNF213、NBPF1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有し、1つ以上の突然変異が表16に列挙されており、
c)B細胞悪性腫瘍がFLであり、被験者が、BCL2、CREBBP、KMT2D、MUC17、CIITA、FES、NCOA2、TPR、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有し、1つ以上の突然変異が表8又は表10に列挙されており、又は
d)B細胞悪性腫瘍がRTであり、被験者が、IRF2BP2、NBPF1、KLHL6、SETX、SF3B1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有し、1つ以上の突然変異が表12又は表14に列挙されている。
【0023】
また、本明細書では、KLHL14、RNF213、CSMD3、BCL2、NBPF1、LRP1B、CREBBP、KMT2D、MUC17、CIITA、FES、NCOA2、TPR、IRF2BP2、KLHL6、SETX、SF3B1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有する被験者においてB細胞悪性腫瘍を処置する方法であって、被験者に治療有効量のイブルチニブと抗PD-1抗体との組み合わせを投与することを含み、それによってB細胞悪性腫瘍を処置することを含み、
a)B細胞悪性腫瘍がDLBCLであり、被験者が、KLHL14、RNF213、CSMD3、BCL2、NBPF1、LRP1B、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有し、1つ以上の突然変異が表4又は表6に列挙されており、
b)B細胞悪性腫瘍がGCB-DLBCLであり、被験者が、RNF213、NBPF1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有し、1つ以上の突然変異が表16に列挙されており、
c)B細胞悪性腫瘍がFLであり、被験者が、BCL2、CREBBP、KMT2D、MUC17、CIITA、FES、NCOA2、TPR、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有し、1つ以上の突然変異が表8又は表10に列挙されており、又は
d)B細胞悪性腫瘍がRTであり、被験者が、IRF2BP2、NBPF1、KLHL6、SETX、SF3B1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有し、1つ以上の突然変異が表12又は表14に列挙されている、方法も提供されている。
【0024】
いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍はDLBCLであり、被験者は、KLHL14、RNF213、CSMD3、BCL2、NBPF1、LRP1B、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有し、1つ以上の突然変異は表4又は表6に列挙されている。いくつかの態様では、被験者は、KLHL14、RNF213、又はこれらの組み合わせにおいて1つ以上の突然変異を有し、1つ以上の突然変異は表4又は表6に列挙されている。方法は、KLHL14、RNF213、CSMD3、BCL2、NBPF1、及びLRP1Bのうちの1、2、3、4、5、又は6つ全部並びにこれらの種々の組み合わせにおいて、表4又は表6に列挙される1つ以上の突然変異を有する被験者に対して実施することができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍はGCB-DLBCLであり、被験者は、RNF213、NBPF1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有し、1つ以上の突然変異は表16に列挙されている。方法は、RNF213及びNBPF1のいずれか又は両方において、表16に列挙される1つ以上の突然変異を有する被験者に対して実施することができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍はFLであり、被験者は、BCL2、CREBBP、KMT2D、MUC17、CIITA、FES、NCOA2、TPR、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有し、1つ以上の突然変異は表8又は表10に列挙されている。いくつかの態様では、被験者は、BCL2において1つ以上の突然変異を有し、1つ以上の突然変異は表8又は表10に列挙されている。方法は、BCL2、CREBBP、KMT2D、MUC17、CIITA、FES、NCOA2、又はTPRのうちの1、2、3、4、5、6、7、又は8つ全部、及びこれらの種々の組み合わせにおいて、表8又は表10に列挙される1つ以上の突然変異を有する被験者に対して実施することができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍はRTであり、被験者は、IRF2BP2、NBPF1、KLHL6、SETX、SF3B1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有し、1つ以上の突然変異は表12又は表14に列挙されている。方法は、IRF2BP2、NBPF1、KLHL6、SETX、又はSF3B1のうちの1、2、3、4、又は5つ全部及びこれらの種々の組み合わせにおいて、表12又は表14に列挙される1つ以上の突然変異を有する被験者に対して実施することができる。
【0028】
また、被験者においてB細胞悪性腫瘍を処置する方法であって、被験者に治療有効量のイブルチニブと抗PD-1抗体との組み合わせを投与し、それによって、B細胞悪性腫瘍を処置することを含み、被験者が、TP53、EBF1、ADAMTS20、AKAP9、SOCS1、TNFRSF14、MYD88、NFKB1B、KMT2D、BCL2、CSMD3、CREBBP、SGK1、STAT6、NBPF1、EZH2、ROS1、IGLL5、PASK、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しない、方法も開示されている。いくつかの実施形態では、方法は、被験者に治療有効量のイブルチニブと抗PD-1抗体との組み合わせを投与し、それによってB細胞悪性腫瘍を処置することを含み、
a)B細胞悪性腫瘍がDLBCLであり、被験者が、TP53、EBF1、ADAMTS20、AKAP9、SOCS1、TNFRSF14、MYD88、NFKB1B、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しておらず、1つ以上の突然変異が表4又は表6に列挙されており、
b)B細胞悪性腫瘍がGCB-DLBCLであり、被験者が、KMT2D、BCL2、CSMD3、CREBBP、EBF1、SGK1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しておらず、1つ以上の突然変異が表16に列挙されており、
c)B細胞悪性腫瘍がFLであり、被験者が、CREBBP、KMT2D、BCL2、STAT6、NBPF1、EZH2、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しておらず、1つ以上の突然変異が表8又は表10に列挙されており、又は
d)B細胞悪性腫瘍がRTであり、被験者が、ROS1、IGLL5、PASK、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しておらず、1つ以上の突然変異が表12又は表14に列挙されている。
【0029】
TP53、EBF1、ADAMTS20、AKAP9、SOCS1、TNFRSF14、MYD88、NFKB1B、KMT2D、BCL2、CSMD3、CREBBP、SGK1、STAT6、NBPF1、EZH2、ROS1、IGLL5、PASK、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しない被験者においてB細胞悪性腫瘍を処置する方法であって、被験者に治療有効量のイブルチニブと抗PD-1抗体との組み合わせを投与し、それによって、B細胞悪性腫瘍を処置することを含み、
a)B細胞悪性腫瘍がDLBCLであり、被験者が、TP53、EBF1、ADAMTS20、AKAP9、SOCS1、TNFRSF14、MYD88、NFKB1B、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しておらず、1つ以上の突然変異が表4又は表6に列挙されており、
b)B細胞悪性腫瘍がGCB-DLBCLであり、被験者が、KMT2D、BCL2、CSMD3、CREBBP、EBF1、SGK1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しておらず、1つ以上の突然変異が表16に列挙されており、
c)B細胞悪性腫瘍がFLであり、被験者が、CREBBP、KMT2D、BCL2、STAT6、NBPF1、EZH2、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しておらず、1つ以上の突然変異が表8又は表10に列挙されており、又は
d)B細胞悪性腫瘍がRTであり、被験者が、ROS1、IGLL5、PASK、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しておらず、1つ以上の突然変異が表12又は表14に列挙されている、方法が開示されている。
【0030】
いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍はDLBCLであり、被験者は、TP53、EBF1、ADAMTS20、AKAP9、SOCS1、TNFRSF14、MYD88、NFKB1B、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しておらず、1つ以上の突然変異は表4又は表6に列挙されている。方法は、TP53、EBF1、ADAMTS20、AKAP9、SOCS1、TNFRSF14、MYD88、又はNFKB1Bのうちの1、2、3、4、5、6、7、又は8つ全部及びこれらの種々の組み合わせにおいて、表4又は表6に列挙される1つ以上の突然変異を有しない被験者に対して実施することができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍は、GCB-DLBCLであり、被験者は、KMT2D、BCL2、CSMD3、CREBBP、EBF1、SGK1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しておらず、1つ以上の突然変異は表16に列挙されている。方法は、KMT2D、BCL2、CSMD3、CREBBP、EBF1、又はSGK1のうちの1、2、3、4、5、又は6つ全部及びこれらの種々の組み合わせにおいて表16に列挙される1つ以上の突然変異を有していない被験者に対して実施することができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍はFLであり、被験者は、CREBBP、KMT2D、BCL2、STAT6、NBPF1、EZH2、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しておらず、1つ以上の突然変異は、表8又は表10に列挙されている。方法は、CREBBP、KMT2D、BCL2、STAT6、NBPF1、又はEZH2のうちの1、2、3、4、5、又は6つ全部及びこれらの種々の組み合わせにおいて表8又は表10に列挙される1つ以上の突然変異を有していない被験者に対して実施することができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍はRTであり、被験者は、ROS1、IGLL5、PASK、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しておらず、1つ以上の突然変異は表12又は表14に列挙されている。いくつかの態様では、被験者は、ROS1において1つ以上の突然変異を有しておらず、1つ以上の突然変異は表12又は表14に列挙されている。この方法は、ROS1、IGLL5、又はPASKのうちの1、2、又は3つ全部及びこれらの種々の組み合わせにおいて表12又は表14に列挙される1つ以上の突然変異を有していない被験者に対して実施することができる。
【0034】
方法は更に、処置することの前に、表4、6、8、10、12、14、又は16に列挙される1つ以上の突然変異の有無について、被験者からの試料を分析することを含むことができる。方法はまた、分析すること及び処置することの前に、被験者から試料を単離することも含むことができる。いくつかの実施形態では、例えば、方法は、被験者からの試料を単離することと、表4、6、8、10、12、14、又は16に列挙される1つ以上の突然変異の有無について、被験者からの試料を分析することと、被験者を処置することと、を含む。
【0035】
被験者からの適切な試料としては、例えば、血液試料又は腫瘍試料が挙げられる。いくつかの態様では、方法は、処置することの前に、表4、6、8、10、12、14、又は16に列挙される1つ以上の突然変異の有無について、被験者からの血液試料を単離すること及び/又は分析することを含むことができる。いくつかの態様では、方法は、処置することの前に、表4、6、8、10、12、14、又は16に列挙される1つ以上の突然変異の有無について、被験者からの腫瘍試料を単離すること及び/又は分析することを含むことができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、ニボルマブ(商標名OPDIVO(登録商標))を含む。
【0037】
開示される方法で使用するイブルチニブの適切な量としては、約140mg~約840mgが挙げられる。いくつかの実施形態では、イブルチニブの量は、140mg、190mg、240mg、290mg、340mg、390mg、420mg、440mg、490mg、540mg、590mg、640mg、690mg、740mg、790mg、又は840mgを含む。
【0038】
抗PD-1抗体の適切な量としては、約1mg/kg~約5mg/kgが挙げられる。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体の量は、1mg/kg、1.5mg/kg、2mg/kg、2.5mg/kg、3mg/kg、3.5mg/kg、4mg/kg、4.5mg/kg、又は5mg/kgを含む。いくつかの態様では、治療有効量のイブルチニブと抗PD-1抗体との組み合わせは、560mgのイブルチニブと、3mg/kgの抗PD-1抗体とを含む。
【0039】
抗PD-1抗体は静脈内投与することができ、イブルチニブは経口投与することができる。例示的な投与スケジュールとしては、例えば、14日間の周期で投与される抗PD-1抗体、及び1日1回投与されるイブルチニブが挙げられる。
【0040】
いくつかの実施形態では、処置することは、被験者における完全奏功(CR)又は部分奏功(PR)をもたらす。
【0041】
開示される方法を用いた処置に適した被験者としては、以下である被験者が挙げられる。
a)DLBCL、FL、又はRT(CLL/SLLからの形質転換のみ)に罹患している、
b)1回以上の治療歴(FLについては2回以上の治療歴)があるが、以前に4回以下の処置ラインを受けたことがある、
c)2以下のEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)のパフォーマンスステータスを有している、
d)測定可能な疾患に罹患している、及び
e)以前にイブルチニブ療法も抗PD-1療法も受けたことがない。
【0042】
また、本明細書では、被験者においてB細胞悪性腫瘍を処置する上で使用するためのイブルチニブと抗PD-1抗体との組み合わせであって、
a)B細胞悪性腫瘍がDLBCLであり、被験者が、KLHL14、RNF213、CSMD3、BCL2、NBPF1、LRP1B、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有し、1つ以上の突然変異が表4又は表6に列挙されており、
b)B細胞悪性腫瘍がGCB-DLBCLであり、被験者が、RNF213、NBPF1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有し、1つ以上の突然変異が表16に列挙されており、
c)B細胞悪性腫瘍がFLであり、被験者が、BCL2、CREBBP、KMT2D、MUC17、CIITA、FES、NCOA2、TPR、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有し、1つ以上の突然変異が表8又は表10に列挙されており、又は
d)B細胞悪性腫瘍がRTであり、被験者が、IRF2BP2、NBPF1、KLHL6、SETX、SF3B1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有し、1つ以上の突然変異が表12又は表14に列挙されている、組み合わせも提供されている。
【0043】
また、抗PD-1抗体と組み合わせて、被験者においてB細胞悪性腫瘍を処置するための薬剤の製造におけるイブルチニブの使用であって、
a)B細胞悪性腫瘍がDLBCLであり、被験者が、KLHL14、RNF213、CSMD3、BCL2、NBPF1、LRP1B、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有し、1つ以上の突然変異が表4又は表6に列挙されており、
b)B細胞悪性腫瘍がGCB-DLBCLであり、被験者が、RNF213、NBPF1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有し、1つ以上の突然変異が表16に列挙されており、
c)B細胞悪性腫瘍がFLであり、被験者が、BCL2、CREBBP、KMT2D、MUC17、CIITA、FES、NCOA2、TPR、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有し、1つ以上の突然変異が表8又は表10に列挙されており、又は
d)B細胞悪性腫瘍がRTであり、被験者が、IRF2BP2、NBPF1、KLHL6、SETX、SF3B1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有し、1つ以上の突然変異が表12又は表14に列挙されている、使用も提供されている。
【0044】
被験者においてB細胞悪性腫瘍を処置する上で使用するためのイブルチニブと抗PD-1抗体との組み合わせであって、
a)B細胞悪性腫瘍がDLBCLであり、被験者が、TP53、EBF1、ADAMTS20、AKAP9、SOCS1、TNFRSF14、MYD88、NFKB1B、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しておらず、1つ以上の突然変異が表4又は表6に列挙されており、
b)B細胞悪性腫瘍がGCB-DLBCLであり、被験者が、KMT2D、BCL2、CSMD3、CREBBP、EBF1、SGK1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しておらず、1つ以上の突然変異が表16に列挙されており、
c)B細胞悪性腫瘍がFLであり、被験者が、CREBBP、KMT2D、BCL2、STAT6、NBPF1、EZH2、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しておらず、1つ以上の突然変異が表8又は表10に列挙されており、又は
d)B細胞悪性腫瘍がRTであり、被験者が、ROS1、IGLL5、PASK、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しておらず、1つ以上の突然変異が表12又は表14に列挙されている、組み合わせが開示されている。
【0045】
抗PD-1抗体と組み合わせて、被験者においてB細胞悪性腫瘍を処置するための薬剤の製造におけるイブルチニブの使用であって、
a)B細胞悪性腫瘍がDLBCLであり、被験者が、TP53、EBF1、ADAMTS20、AKAP9、SOCS1、TNFRSF14、MYD88、NFKB1B、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しておらず、1つ以上の突然変異が表4又は表6に列挙されており、
b)B細胞悪性腫瘍がGCB-DLBCLであり、被験者が、KMT2D、BCL2、CSMD3、CREBBP、EBF1、SGK1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しておらず、1つ以上の突然変異が表16に列挙されており、
c)B細胞悪性腫瘍がFLであり、被験者が、CREBBP、KMT2D、BCL2、STAT6、NBPF1、EZH2、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しておらず、1つ以上の突然変異が表8又は表10に列挙されており、又は
d)B細胞悪性腫瘍がRTであり、被験者が、ROS1、IGLL5、PASK、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しておらず、1つ以上の突然変異が表12又は表14に列挙されている、使用も開示されている。
【0046】
B細胞悪性腫瘍に罹患している被験者におけるイブルチニブと抗PD-1抗体との組み合わせに対する応答性又は非応答性の可能性を予測する方法
また、B細胞悪性腫瘍に罹患している被験者におけるイブルチニブと抗PD-1抗体との組み合わせに対する応答性の可能性を予測する方法であって、KLHL14、RNF213、CSMD3、BCL2、NBPF1、LRP1B、CREBBP、KMT2D、MUC17、CIITA、FES、NCOA2、TPR、IRF2BP2、KLHL6、SETX、又はSF3B1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の遺伝子における突然変異が、組み合わせに対する応答性を示す、方法も提供されている。いくつかの実施形態では、
a)B細胞悪性腫瘍がDLBCLであり、方法が、KLHL14、RNF213、CSMD3、BCL2、NBPF1、LRP1B、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異が表4又は表6に列挙されており、
b)B細胞悪性腫瘍がGCB-DLBCLであり、方法が、RNF213、NBPF1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異が表16に列挙されており、
c)B細胞悪性腫瘍がFLであり、方法が、BCL2、CREBBP、KMT2D、MUC17、CIITA、FES、NCOA2、TPR、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異が表8又は表10に列挙されており、又は
d)B細胞悪性腫瘍がRTであり、方法が、IRF2BP2、NBPF1、KLHL6、SETX、SF3B1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異が表12又は表14に列挙されており、
遺伝子における1つ以上の突然変異が、組み合わせに対する応答性を示す。
【0047】
いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍はDLBCLであり、方法は、KLHL14、RNF213、CSMD3、BCL2、NBPF1、LRP1B、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異は表4又は表6に列挙されており、遺伝子における1つ以上の突然変異は、組み合わせに対する応答性を示す。いくつかの態様では、B細胞悪性腫瘍はDLBCLであり、方法は、KLHL14、RNF213、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異は表4又は表6に列挙されており、遺伝子における1つ以上の突然変異は、組み合わせに対する応答性を示す。KLHL14、RNF213、CSMD3、BCL2、NBPF1、及びLRP1Bのうちの1、2、3、4、5、又は6つ全部、並びにこれらの種々の組み合わせにおいて、表4又は表6に列挙される1つ以上の突然変異は、組み合わせに対する応答性を示すことができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍はGCB-DLBCLであり、方法は、RNF213、NBPF1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異は表16に列挙されており、遺伝子における1つ以上の突然変異は、組み合わせに対する応答性を示す。RNF213及びNBPF1のいずれか又は両方における表16に列挙される1つ以上の突然変異は、組み合わせに対する応答性を示すことができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍はFLであり、方法は、BCL2、CREBBP、KMT2D、MUC17、CIITA、FES、NCOA2、TPR、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異は表8又は表10に列挙されており、遺伝子における1つ以上の突然変異は、組み合わせに対する応答性を示す。いくつかの態様では、方法は、BCL2において1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異は表8又は表10に列挙されている。BCL2、CREBBP、KMT2D、MUC17、CIITA、FES、NCOA2、又はTPRのうちの1、2、3、4、5、6、7、又は8つ全部及びこれらの種々の組み合わせにおける表8又は表10に列挙される1つ以上の突然変異は、組み合わせに対する応答性を示すことができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍はRTであり、方法は、IRF2BP2、NBPF1、KLHL6、SETX、SF3B1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異は表12又は表14に列挙されている。IRF2BP2、NBPF1、KLHL6、SETX、又はSF3B1のうちの1、2、3、4、又は5つ全部及びこれらの組み合わせにおける1つ以上の突然変異は、組み合わせに対する応答性を示すことができる。
【0051】
B細胞悪性腫瘍に罹患している被験者におけるイブルチニブと抗PD-1抗体との組み合わせに対する非応答性の可能性を予測する方法であって、
a)B細胞悪性腫瘍がDLBCLであり、方法が、TP53、EBF1、ADAMTS20、AKAP9、SOCS1、TNFRSF14、MYD88、NFKB1B、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異が表4又は表6に列挙されており、
b)B細胞悪性腫瘍がGCB-DLBCLであり、方法が、KMT2D、BCL2、CSMD3、CREBBP、EBF1、SGK1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異が表16に列挙されており、
c)B細胞悪性腫瘍がFLであり、方法が、CREBBP、KMT2D、BCL2、STAT6、NBPF1、EZH2、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異が表8又は表10に列挙されており、又は
d)B細胞悪性腫瘍がRTであり、方法が、ROS1、IGLL5、PASK、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異が表12又は表14に列挙されており、
遺伝子における1つ以上の突然変異が、組み合わせに対する非応答性を示す、方法もまた開示されている。
【0052】
いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍はDLBCLであり、方法は、TP53、EBF1、ADAMTS20、AKAP9、SOCS1、TNFRSF14、MYD88、NFKB1B、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異は表4又は表6に列挙され、遺伝子における1つ以上の突然変異は、組み合わせに対する非応答性を示す。TP53、EBF1、ADAMTS20、AKAP9、SOCS1、TNFRSF14、MYD88、又はNFKB1Bのうちの1、2、3、4、5、6、7、又は8つ全部及びこれらの種々の組み合わせにおける表4又は表6に列挙される1つ以上の突然変異は、組み合わせに対する非応答性を示すことができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、B細胞悪性疾患はGCB-DLBCLであり、方法は、KMT2D、BCL2、CSMD3、CREBBP、EBF1、SGK1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異は表16に列挙されており、遺伝子における1つ以上の突然変異は、組み合わせに対する非応答性を示す。KMT2D、BCL2、CSMD3、CREBBP、EBF1、又はSGK1のうちの1、2、3、4、5、又は6つ全部及びこれらの種々の組み合わせにおける表16に列挙される1つ以上の突然変異は、組み合わせに対する非応答性を示すことができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、B細胞悪性疾患はFLであり、方法は、CREBBP、KMT2D、BCL2、STAT6、NBPF1、EZH2、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異は表8又は表10に列挙され、遺伝子における1つ以上の突然変異は、組み合わせに対する非応答性を示す。CREBBP、KMT2D、BCL2、STAT6、NBPF1、又はEZH2のうちの1、2、3、4、5、又は6つ全部及びこれらの種々の組み合わせにおける表8又は表10に列挙される1つ以上の突然変異は、組み合わせに対する非応答性を示すことができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、B細胞悪性腫瘍はRTであり、方法は、ROS1、IGLL5、PASK、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異は表12又は表14に列挙され、遺伝子における1つ以上の突然変異は、組み合わせに対する非応答性を示す。いくつかの態様では、B細胞悪性腫瘍はRTであり、方法は、ROS1における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異は表12又は表14に列挙されている。ROS1、IGLL5、又はPASKのうちの1、2、又は3つ全部及びこれらの種々の組み合わせにおける表12又は表14に列挙される1つ以上の突然変異は、組み合わせに対する非応答性を示すことができる。
【0056】
被験者からの適切な試料としては、例えば、血液試料又は腫瘍試料が挙げられる。
【0057】
開示された方法は、
a)DLBCL、FL、又はRT(CLL/SLLからの形質転換のみ)に罹患しており、
b)1回以上の治療歴(FLについては2回以上の治療歴)があるが、以前に4回以下の処置ラインを受けたことがあり、
c)2以下のEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)のパフォーマンスステータスを有しており、
d)測定可能な疾患に罹患しており、かつ
e)以前にイブルチニブ療法も抗PD-1療法も受けたことがない、被験者における、組み合わせに対する応答性又は非応答性の可能性を予測するために使用することができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、イブルチニブと抗PD-1抗体との組み合わせに対する応答性又は非応答性の可能性を予測する方法は更に、治療有効量のイブルチニブと抗PD-1抗体との組み合わせを被験者に投与し、それによって、被験者が、組み合わせに対する応答性を示す遺伝子における1つ以上の突然変異及び/又は組み合わせに対する非応答性を示す遺伝子における1つ以上の突然変異の欠失を有する場合、B細胞悪性腫瘍を処置することを含み、1つ以上の突然変異は、表4、6、8、10、12、14、及び16に列挙されている。いくつかの態様では、抗PD-1抗体は、ニボルマブ(商標名OPDIVO(登録商標))を含む。
【0059】
適切なイブルチニブの量、抗PD-1抗体の量、及び投与スケジュールとしては、処置方法について先に開示したものが挙げられる。
【実施例】
【0060】
本明細書にて開示した実施形態のいくつかを更に説明するために、以下の実施例を提供する。これらの実施例は、例示を目的とするものであって、本開示の実施形態を制限するものではない。
【0061】
イブルチニブ+ニボルマブで処理された、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、又はRichter形質転換(RT)の再発した被験者の遺伝子分析
再発性又は難治性(R/R)のB細胞悪性腫瘍に罹患している患者における抗PD-1薬ニボルマブと組み合わせたイブルチニブの使用を調べ、応答と相関した、予測性及び機構性のある遺伝子を同定するために、第1/2a相試験(LYM1002と称する)を実施した。
【0062】
方法
患者及び試験設計
この非無作為化非盲検試験には、14日間周期の静脈内(IV)ニボルマブ(3mg/kg)を1日1回の経口イブルチニブ(560mg)と組み合わせて投与される非ホジキンリンパ腫(NHL)患者を登録した(
図1)。主要な適格性基準は、以下の通りとした。
●DLBCL、FL、又はRT(CLL/SLLからの形質変換のみ)、
●1回以上の全身治療歴(FLについては2回以上)があるが、以前に4回以下の処置ラインを受けたことがある、
●2以下のEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)のパフォーマンスステータス、
●測定可能な疾患、及び
●以前にイブルチニブ療法も抗PD-1療法も受けたことがない。
【0063】
イブルチニブの第1の投与の4週間以内の大きな手術、試験中の適応症以外の悪性腫瘍の診断若しくは処置、又はワーファリン若しくは同等のビタミンKアンタゴニスト又は強いCYP3A阻害薬を用いた処置を必要とすることについては、患者を除外した。DLBCL、FL、及びRTに罹患している患者においてバイオマーカー分析を実施した。
【0064】
評価
DLBCLサブタイプ分類-遺伝子発現プロファイリング(GEP)を、AffyMetrix HG-U133+2アレイ(Thermo Fisher Scientific(Carlsbad,CA))及び処置前のアーカイブ生検試料からのRNAを使用して実施した。DLBCLサブタイプ分類は、Wright G,Tan B,Rosenwald A,Hurt EH,Wiestner A,Staudt LM.A gene expression-based method to diagnose clinically distinct subgroups of diffuse large B cell lymphoma.Proc Natl Acad Sci U S A 2003;100(17):9991-6に説明されている分類アルゴリズムを用いたMAS5正規化GEPデータの解析又はHTGシステム(HTG Molecular Diagnostics,Inc.(Tucson,AZ))のいずれかによって行った。
【0065】
処置応答及び生存転帰-予備的な活性及び処置に対する臨床応答は、最初の15か月間についての5周期ごと(14日間周期)、及び疾患の進行までのその後の12周期ごと、処置終了時、及び経過観察期間中6か月間ごとに、放射線評価によって評価した。全奏効率(ORR)の計算については、応答者を治験責任医師の評価によって、完全奏功(CR)又は部分奏功(PR)を達成した患者として定義した。Kaplan-Meier法及びログランク検定を使用して、無増悪生存期間(PFS)及び全生存期間(OS)を推定した。
【0066】
バイオマーカーによる臨床転帰解析
PD-L1発現-臨床転帰についての予測バイオマーカーとしてのPD-L1の発現を評価した。GEPを使用してPD-L1レベルを、またDako PD-L1 IHC 28-8 pharmDxアッセイ(Agilent Technologies(Glostrup,Denmark))を使用して、最低限100個の評価可能な腫瘍細胞における何らかの強度の原形質膜PD-L1染色を実証する腫瘍細胞の百分率としても識別した。GEPは、処置前のアーカイブ生検試料からのAffyMetrix HG-U133+2アレイ及びRNAを使用して、実施した。
【0067】
応答エンドポイント又は生存エンドポイントを用いたKaplan-Meier生存確率を、DLBCL、FL、及びRTに罹患しているPD-L1上昇あり又はPD-L1上昇なしの部分群の患者について、腫瘍細胞における5%以上のPD-L1発現(上昇あり対上昇なし)の免疫組織化学(IHC)HC閾値を使用して計算した。PD-L1と臨床応答との関係を、Fisherの正確検定を用いて評価した。DLBCLサブタイプ分類は、感覚法を使用したMAS5正規化GEPデータの解析によって、又はHTG EdgeSeqシステムを使用することのいずれかによって行った。PD-L1レベルは、Dako 28-8抗体を用いてIHC染色によって測定した(PD-L1上昇=腫瘍細胞の5%以上における発現)。
【0068】
応答者は、完全奏功(CR)又は部分奏功(PR)を達成した患者として定義した。Kaplan-Meier法及びログランク検定を使用して、無増悪生存期間(PFS)及び全生存期間(OS)を評価した。
【0069】
エキソーム分析-エキソームデータは、それぞれ異なる患者からの72のリンパ腫試料のホルマリン固定パラフィン包埋した試料から生成した。構内エキソーム分析パイプラインを、FASTQ配列データファイルを使用してDNAnexusで実行した。有望な体細胞変異体は、SnpEff及びGEMINIソフトウェアで作製されたアノテーションに基づいて定義された。配列決定人為産物及び生殖系列変異体を関連解析に組み込む可能性を低減するために、いくつかの変異体フィルタを定位置に配置した。
【0070】
突然変異の発生率を、Personalis ACE Extended Cancerパネル、DLBCL関連遺伝子(すなわち、ABC/GCB識別遺伝子、新たに定義された4つのサブタイプ間を識別するために使用される遺伝子、DLBCLにおいて過剰突然変異すると予測される遺伝子)、及びJanssen特異的97遺伝子パネルからの遺伝子を含む、関心対象の特定の遺伝子について評価した。
【0071】
処置の応答者(CR+PR+PR-L)と非応答者(応答なし又はSD+SD+PD)との何らかの違い、及び応答が継続中の患者(PFS>24か月間)と応答が継続中でない患者との何らかの違いを、突然変異変異体、遺伝子発現パターン、及び体細胞突然変異量について調べた。単変量遺伝子解析によって、Fisherの正確検定を使用して、応答者対非応答者およびPFS>24か月間対PFS≦24か月間について変異体発生頻度の有意性を調べた。応答者対非応答者及びPFS>24か月間対PFS≦24か月間の差分遺伝子発現解析は、「limma」Rパッケージを使用して実施した。応答者対非応答者及びPFS>24か月間の患者対PFS≦24か月間の患者についての体細胞突然変異計数の全体的な差を、Wilcoxon符号順位検定を用いて評価した。
【0072】
患者及び臨床応答
登録された144人の被験者のうち、141人が処置を受けた。処置を受けた患者については、年齢の中央値は65歳(範囲20~89歳)であり、87人(61.7%)が男性であり、130人(92.2%)は、ECOGパフォーマンスステータスが0~1であり、以前受けた療法ラインの中央値が3であり、68人(48.2%)で疾患が巨大であった(5cm以上)。
【0073】
全体として、DLBCLに罹患している患者45人(9人が形質転換したDLBCLに罹患、36人がデノボDLBCLに罹患)、FLに罹患している患者40人、及びRTに罹患している患者20人を登録した。これらのうち、DLBCLに罹患している患者28人(4人が形質転換)、FLに罹患している25人、及びRTに罹患している17人が、遺伝子についてGEP分析によって評価可能であった。
【0074】
データベースロック時の全体的な経過観察中央値は、19.4か月間(範囲0.4~28.8か月間)であった。
【0075】
GEPデータを有する患者では、全奏効率は、DLBCLについて29.6%、FLについては43.5%、RTについては81.3%であった(表1)。
【0076】
【表1】
ABC=活性化B細胞;GCB=胚中心B細胞
【0077】
サブタイプ分類
患者サブタイプは、GEPマイクロアレイ及びHTG EdgeSeq DLBCL Cell of Origin(COO)Assay(HTG)法によって評価した。28人のDLBCL患者はGEPマイクロアレイ法を用いたサブタイプ分類について評価可能であり、5人の患者は、活性化B細胞(ABC)サブタイプを有しており、19人は胚中心B細胞(GCB)サブタイプを有しており、4人は未分類であった(表1)。13人のDLBCL患者はHTG法を用いたサブタイプ分類について評価可能であり、6人の患者はABCサブタイプを有しており、6人はGCBサブタイプを有しており、1人は未分類であった。GEP法とHTG法との間の一致性は高く、GEPによってGCBとして分類された1人のDLBCL患者のみが、HTGによってABCとしてサブタイプに分類された。
【0078】
PD-L1解析
DLBCL患者におけるPD-L1発現及び臨床転帰
PD-L1の上昇(≧5%腫瘍細胞)は、8人(30.8%)のDLBCL患者(3人のCR、2人のPR)、1人(4.0%)のFL患者、及び3人(20.0%)のRT患者(全員PR)において生じた(表2)。IHC及びGEPの両方のPD-L1が利用可能であるDLBCL患者のうち、17人中4人のGCB(1人のCR、2人のPR、1人のSD)、3人中1人のABC(PD)、及び3人中1人の中間(PD)の患者では、PD-L1が上昇していた。
【0079】
DLBCLでは、非応答者に対して応答者において、PD-L1上昇がより頻繁に観察されたが、これは全体として統計的に有意ではなく(62.5%対18.8%、p=0.06)、PD-L1上昇はまた、CRとも有意に関係していた(37.5%対0;p=0.03[Fisherの正確検定])。
【0080】
DLBCL患者(n=26)では、PD-L1上昇のない患者と比較して、PD-L1上昇のあるGCB-DLBCLサブタイプ(n=17)患者(
図3)と同様、PFSの改善傾向があった(
図2)。
【0081】
【表2】
*患者数は、考慮の下でのアッセイに基づく異なる結果間でわずかに変化した。
【0082】
FL及びRTの患者におけるPD-L1応答及び生存期間
1人のFL患者のみがIHCによってPD-L1に対して陽性であったので、PFSの改善傾向は、FL患者において評価することができなかった。RTでは、16人中13人の評価可能な患者が応答したが、IHCデータを有する15人中3人の患者のみでPD-L1レベルが上昇し、PD-L1が上昇した患者は全員、PRを達成した。これらの患者うちの3人は全員、PFS及びOSが持続可能であり、臨床的カットオフ時に生存していたが、少数であったので、有意な相関は可能ではなかった。
【0083】
結論
この試験では、PD-L1発現が上昇したDLBCL患者は、イブルチニブ及びニボルマブの処置によるより良好な応答及び生存期間に向かう傾向を示したが、患者数が少なかったので、有意性はCRのみについて達した。
【0084】
イブルチニブ及びニボルマブの処置の安全性特性は、イブルチニブ単剤と同等であり、全奏効率(ORR)は、濾胞性リンパ腫(FL)については32.5%、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)については35.6%、及びRichterの形質転換(RT)については65.0%であった。
【0085】
GEPデータ及び応答者/非応答者状態が評価可能なDLBCL患者27人のうち、ORRは29.6%,であったが、これらの大部分はGCBサブタイプ(ORR 33.3%)であり、このうち、5%のORRのみが、イブルチニブ単剤で以前に報告されていた。頑健な解析を可能にするには、ABCサブタイプの患者が少な過ぎた。
【0086】
RT(処置歴上、イブルチニブ単剤又は化学療法による予後が不良)における臨床応答は、期待値を超え、ORRは、スクリーニングされ処置を受けた患者では65.0%であり、GEPデータを有する患者では81.3%であったが、3人の患者のみがIHCによるとPD-L1が上昇しており、3人は全員、PRが持続可能であった。
【0087】
PD-1は、典型的には、Tfh細胞上のCXCR3発現を制限することによって、GC内にTfh細胞を濃縮するのを支援する。本明細書の結果は、GCB-DLBCLが主としてTfh細胞活性によって駆動されるこの疾患の患者の異なる部分セットが存在する可能性があることを示唆している。これらの患者では、抗PD-1療法は、Tfh細胞とB細胞との間のPD-L1/PD-1相互作用を阻害することによって、GC内での悪性B細胞の増殖及び成熟を低下させる可能性が高いであろう。
【0088】
エキソーム及び配列分析
イブルチニブとニボルマブとの組み合わせを受けた被験者からのアーカイブ生検試料を使用して遺伝子分析を実施した。72個のホルマリン固定パラフィン包埋試料からエキソームデータを生成し、配列決定分析を用いて、関心対象の遺伝子における突然変異を同定し、体細胞の突然変異量を評価した。免疫細胞の割合と遺伝子変異体との相関を、各組織学における研究者評価応答によって、及びDLBCL患者における継続中の応答(無増悪生存期間[PFS]>24か月間(n=7)対PFS≦24か月間(n=20))によって評価した。全奏効率(ORR)を評価した。
【0089】
応答者対非応答者
遺伝子変異体および応答データは、DLBCL患者26人(10人の応答者(5人のCR、5人のPR)、16人の非応答者)、GCB DLBCL患者16人(6人の応答者(2人のCR、4人のPR)、10人の非応答者)、FL患者26人(12人の応答者(3人のCR、9人のPR)、14人の非応答者)、及びRT患者17人(13人の応答者(2人のCR、11人のPR)、4人の非応答者)について利用可能であった。結果を表3から表16に示す。
【0090】
以下の表3及び表4は、Fisherの正確検定を使用して有意性が評価された、DLBCLに罹患している応答者又は非応答者のいずれかにおいてより頻繁に突然変異した遺伝子の突然変異頻度及び特異的遺伝子突然変異を記載する。
【0091】
【0092】
【0093】
以下の表5及び表6は、DLBCLに罹患している応答者又は非応答者のいずれかにおける最も頻繁に突然変異した遺伝子の突然変異頻度及び特異的遺伝子突然変異を記載する。
【0094】
【0095】
【表6】
*終止コドンが得られた。
**開始コドンが失われた。
【0096】
応答者対非応答者-DLBCLでは、応答者において観察された最も高頻度の遺伝子変異体には、KLHL14(n=3)、RNF213(n=4)、CSMD3(n=3)、BCL2(n=3)、NBPF1(n=3)、及びLRP1B(n=3)が含まれた。逆に、非応答者において観察された最も高頻度の遺伝子変異体には、TP53(n=3)、EBF1(n=4)、ADAMTS20(n=3)、AKAP9(n=3)、及びSOCS1(n=3)、並びにTNFRSF14(n=3)、MYD88(n=2)、及びNFKB1B(n=2)などのBCR経路における遺伝子が含まれた。応答者と非応答者との間の遺伝子変異体発生頻度の最大差は、KLHL14突然変異(3/10(30.0%)対0/16;オッズ比(OR)(95%信頼区間(CI))inf[0.730-inf];P=0.046)及びRNF213突然変異(4/10(40.0%)対1/16(6.2%);OR(95%CI)9.053(0.711~522.371);P=0.055)について見られた。したがって、DLBCL患者では、RNF213及びKLHL14の突然変異を有するものは、イブルチニブ+ニボルマブに応答する可能性がより高かった。
【0097】
以下の表7及び表8は、Fisherの正確検定を使用して有意性が評価された、FLに罹患している応答者又は非応答者のいずれかにおいてより頻繁に突然変異した遺伝子の突然変異頻度及び特異的遺伝子突然変異を記載する。
【0098】
【0099】
【0100】
以下の表9及び表10は、FLに罹患している応答者又は非応答者のいずれかにおける最も頻繁に突然変異した遺伝子の突然変異頻度及び特異的遺伝子突然変異を記載する。
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
応答者対非応答者-FL患者では、応答者において観察された最も高頻度の遺伝子変異体は、BCL2(n=9)、CREBBP(n=7)、KMT2D(n=6)、MUC17(n=4)、CIITA(n=3)、FES(n=3)、NCOA2(n=3)、及びTPR(n=3)であった。非応答者において観察された最も高頻度の遺伝子変異体は、CREBBP(n=9)、KMT2D(n=5)、BCL2(n=4)、STAT6(n=4)、NBPF1(n=4)、及びEZH2(n=4)であった。応答者と非応答者との間の遺伝子変異体発生頻度の差は、BCL2について有意であった(9/12(75%)対4/14(28.6%);OR(95%CI)6.847(1.019~62.695);P=0.047)。
【0105】
以下の表11及び表12は、Fisherの正確検定を使用して有意性が評価された、RTに罹患している応答者又は非応答者のいずれかにおいてより頻繁に突然変異した遺伝子の突然変異頻度及び特異的遺伝子突然変異を記載する。
【0106】
【0107】
【0108】
以下の表13及び表14は、RTに罹患している応答者又は非応答者のいずれかにおける最も頻繁に突然変異した遺伝子の突然変異頻度及び特異的遺伝子突然変異を記載する。
【0109】
【0110】
【0111】
応答者対非応答者-RTでは、含まれた応答者において観察された最も高頻度の遺伝子変異体は、IRF2BP2、NBPF1、KLHL6、SETX、及びSF3B1(全てn=3)であったのに対し、非応答者において観察された最も高頻度の遺伝子変異体は、ROS1、IGLL5、及びPASKであった(全てn=2)。応答者と非応答者との間の遺伝子変異体発生頻度の差は、ROS1について有意であった(0/13対2/4(50%);OR(95%CI)0.000(0.000~1.431);P=0.044)。
【0112】
以下の表15及び表16は、GCB-DLBCLに罹患している応答者又は非応答者のいずれかにおける最も頻繁に突然変異した遺伝子の突然変異頻度及び特異的遺伝子突然変異を記載する。
【0113】
【0114】
【0115】
応答者対非応答者-GCB-DLBCLでは、応答者(n=6)において観察された最も高頻度の遺伝子突然変異には、RNF213(n=2)及びNBPF1(n=2)が含まれた。非応答者(n=10)では、最も高頻度の遺伝子突然変異は、KMT2D(n=6)、BCL2(n=6)、CSMD3(n=5)、CREBBP(n=4)、EBF1(n=4)、及びSGK1(n=4)であった。GCBサブタイプを有する応答者と非応答者との間の遺伝子変異体発生頻度に有意差はなかった(データ非表示)。
【0116】
体細胞突然変異量-DLBCL、FL、又はRTに罹患している応答者と非応答者との間の全体的な体細胞突然変異計数において有意な差は観察されなかったが、GCB DLBCLでは、計数は非応答者よりも応答者において有意に少なかった(P=0.003)(データ非表示)。DLBCLに罹患しているPFS>24か月間の患者はDLBCLに罹患しているPFS≦24か月間の患者に対して、体細胞突然変異変異体の数は有意に少なかった(P=0.0288)(データ非表示)。
【0117】
24か月間を超えて(>)継続する無増悪生存期間(PFS)
DLBCL患者において>24か月間対≦24か月間継続しているPFSを解析した。結果を以下の表17及び表18に提供する。
【0118】
【0119】
【0120】
【表18-2】
*終止コドンが得られた。
**開始コドンが失われた。
【0121】
DLBCLにおいて24か月間を超えて継続しているPFS対そうではないPFS-DLBCLでは、最も高頻度の遺伝子突然変異は、>24か月間のPFSを有している患者ではRNF213、NBPF1、及びBCL2であり(各3/7[42.9%])、≦24か月間のPFSを有している患者ではKMT2D(8/20[40.0%])及びCSMD3(8/20[40.0%])であった。体細胞突然変異量は、応答者が非応答者に対して、特に、胚中心B細胞-DLBCLにおいて、及びPFS>24か月間のDLBCL患者がPFS≦24か月間のDLBCL患者に対して低かった。
【0122】
上記の解析によって、イブルチニブとニボルマブとの組み合わせを用いた応答又は持続可能なPFSと関係するDLBCL、FL、及びRTの患者の間の遺伝子変異体が特定された。イブルチニブが、Brutonのチロシンキナーゼ依存性経路を阻害する一方で、処置の転帰に影響を及ぼす可能性のある代替的な遺伝子経路変異体が同定された。微小環境への免疫細胞浸潤は、この免疫の組み合わせによる差分処置応答に関しており、組織学的性質に依存性である。
【0123】
ベースラインTP53突然変異及び分子寛解は再発性/難治性DLBCLにおけるイブルチニブ処置からの利益の予後バイオマーカーである
ベースラインTP53突然変異及び2つのコースの化学免疫療法(分子寛解(molecular remission)、MR)の後のctDNA量の2log10の低下はいずれも、未処置のびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)における予後バイオマーカーである。標的指向薬を用いて処置された再発性DLBCLの設定における予後バイオマーカーの予後値は、依然としてほとんど理解されていない。LYM1002試験は、再発性/難治性B細胞悪性腫瘍におけるイブルチニブ+ニボルマブの組み合わせの安全性及び活性を試験することを目的とした前向き第1/2a相試験である。ここで、LYM1002試験内でイブルチニブ+ニボルマブで処置したDLBCLにおけるベースライン突然変異及びMRの予後の影響を、ctDNAを使用することによって試験した。
【0124】
方法
この補助生物学的試験のための組み入れ基準は、ベースライン及びC3D1で収集された血液の利用可能性とした。利用可能な場合、疾患進行時/療法終了時に収集された血液もまた、分析に含めた。CAPP配列をctDNA遺伝子型分類及びctDNA定量に使用した。アッセイ感度は0.3%であった。
【0125】
結果
LYM1002試験に動員された37人の再発性/難治性DLBCL患者のうち、27人は組み入れ基準を満たした。試験コホートにおいてGCB DLBCLが相対的に多いこと(GCB78%対ABC5%対中間17%)と一致して、患者の10%超における非同義的体細胞突然変異によって再発性の影響をもたらされる遺伝子には、HIST1H1E、KMT2D、MEF2B TP53、BCL2、BTG1、EP300、ZNF292、MGA、HIST1H1C、XPO1、BTG1、CARD11、CREBBP、EZH2、PIM1、CIITA、DDX3X、MYC、TNFRSF14が含まれた。症例の10%超において突然変異した遺伝子を考慮した後、TP53突然変異状態のみが、劣悪な無増悪生存期間と有意に関係していた(TP53突然変異症例における12か月間のPFS0%対TP53野生型症例における12か月間のPFS53.6%;p=0.002)(
図4A)。2コースのイブルチニブ+ニボルマブ後のctDNAにおける2log
10の低下(MR)は、より長いPFSと関係していた(66.7%対21.4%%の12か月間のPFS;p=0.05)(
図4B)。ベースライン及び2コースのイブルチニブ+ニボルマブの後のMRにおける、野生型TP53を特徴とする再発性/難治性DLBCLの部分群(症例の19%)は、有望な長く続く寛解を示した(12か月間のPFS:80%;p=0.06)(
図4C)。進行時にctDNAが収集された10人の患者のうち、限られた割合(2つの症例、20%)は、1人の患者におけるBTK及びPLCG2並びに第2の患者におけるFOXO1を含む、B細胞受容体シグナル伝達遺伝子において突然変異を獲得した。DLBCLに罹患している被験者からのctDNA試料において観察されたTP53突然変異を表19に記載する。
【0126】
LYM1002試験において動員された慢性リンパ性白血病(CLL)(Richter症候群としても公知)から形質転換した20人のDLBCLのうち、14人が組み入れ基準を満たした。患者の10%超における非同義的体細胞突然変異によって再発性の影響をもたらされる遺伝子は、TP53、NOTCH1、HIST1H1E、EGR2、SF3B1、ATM、ASXL1、CHEK2、MGA、NRASであった。デノボDLBCLとは異なり、ベースラインTP53突然変異は、イブルチニブ+ニボルマブを用いて処置されたRichter症候群では、PFSに有意に影響を及ぼさなかった(
図4D)が、このことは、イブルチニブがCLLにおけるTP53異常性の負の影響を少なくとも一部克服するという考えと一致している。加えて、イブルチニブがCLLにおける最少残存病変を根絶しないという考えと一致して、1人のRichter症候群患者のみが2コースの療法の後にMRを達成した(
図4E)。
【0127】
結論
ベースラインTP53突然変異状態及び2つのコース後のMRは、再発性/難治性DLBCLにおけるイブルチニブ処置からの利益の予後バイオマーカーであるが、Richter症候群ではそうではない。
【0128】
【0129】
当業者は、本発明の好ましい実施形態に対して、多数の変更及び修正を加えることができ、このような変更及び修正を、本発明の趣旨を逸脱することなく行うことができることを理解するであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨及び範囲に収まる、このような同等の変化を全て網羅することが意図されている。
【0130】
本明細書に引用又は記載されている各特許、特許出願、及び刊行物の開示は、その全体が本明細書に参照として組み込まれる。
【0131】
実施形態
以下の実施形態のリストは、前述の説明に置き換え又は取って代わるものではなく、補完することを意図している。
【0132】
実施形態1.被験者においてB細胞悪性腫瘍を処置する方法であって、
被験者に治療有効量のイブルチニブと抗PD-1抗体との組み合わせを投与し、それによってB細胞悪性腫瘍を処置することを含み、
a)B細胞悪性腫瘍がDLBCLであり、被験者が、KLHL14、RNF213、CSMD3、BCL2、NBPF1、LRP1B、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有し、1つ以上の突然変異が表4又は表6に列挙されており、
b)B細胞悪性腫瘍がGCB-DLBCLであり、被験者が、RNF213、NBPF1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有し、1つ以上の突然変異が表16に列挙されており、
c)B細胞悪性腫瘍がFLであり、被験者が、BCL2、CREBBP、KMT2D、MUC17、CIITA、FES、NCOA2、TPR、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有し、1つ以上の突然変異が表8又は表10に列挙されており、又は
d)B細胞悪性腫瘍がRTであり、被験者が、IRF2BP2、NBPF1、KLHL6、SETX、SF3B1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有し、1つ以上の突然変異が表12又は表14に列挙されている、方法。
【0133】
実施形態2.B細胞悪性腫瘍がDLBCLであり、被験者が、KLHL14、RNF213、CSMD3、BCL2、NBPF1、LRP1B、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有し、1つ以上の突然変異が表4又は表6に列挙されている、実施形態1に記載の方法。
【0134】
実施形態3.被験者が、KLHL14、RNF213、又はこれらの組み合わせにおいて1つ以上の突然変異を有し、1つ以上の突然変異が表4又は表6に列挙されている、実施形態2に記載の方法。
【0135】
実施形態4.B細胞悪性腫瘍がGCB-DLBCLであり、被験者が、RNF213、NBPF1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有し、1つ以上の突然変異が表16に列挙されている、実施形態1に記載の方法。
【0136】
実施形態5.B細胞悪性腫瘍がFLであり、被験者が、BCL2、CREBBP、KMT2D、MUC17、CIITA、FES、NCOA2、TPR、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有し、1つ以上の突然変異が表8又は表10に列挙されている、実施形態1に記載の方法。
【0137】
実施形態6.被験者がBCL2における1つ以上の変異を有し、1つ以上の突然変異が表8又は表10に列挙されている、実施形態5に記載の方法。
【0138】
実施形態7.B細胞悪性腫瘍がRTであり、被験者が、IRF2BP2、NBPF1、KLHL6、SETX、SF3B1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有し、1つ以上の突然変異が表12又は表14に列挙されている、実施形態1に記載の方法。
【0139】
実施形態8.被験者においてB細胞悪性腫瘍を処置する方法であって、
被験者に治療有効量のイブルチニブと抗PD-1抗体との組み合わせを投与し、それによってB細胞悪性腫瘍を処置することを含み、
a)B細胞悪性腫瘍がDLBCLであり、被験者が、TP53、EBF1、ADAMTS20、AKAP9、SOCS1、TNFRSF14、MYD88、NFKB1B、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しておらず、1つ以上の突然変異が表4又は表6に列挙されており、
b)B細胞悪性腫瘍がGCB-DLBCLであり、被験者が、KMT2D、BCL2、CSMD3、CREBBP、EBF1、SGK1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しておらず、1つ以上の突然変異が表16に列挙されており、
c)B細胞悪性腫瘍がFLであり、被験者が、CREBBP、KMT2D、BCL2、STAT6、NBPF1、EZH2、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しておらず、1つ以上の突然変異が表8又は表10に列挙されており、又は
d)B細胞悪性腫瘍がRTであり、被験者が、ROS1、IGLL5、PASK、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しておらず、1つ以上の突然変異が表12又は表14に列挙されている、方法。
【0140】
実施形態9.B細胞悪性腫瘍がDLBCLであり、被験者が、TP53、EBF1、ADAMTS20、AKAP9、SOCS1、TNFRSF14、MYD88、NFKB1B、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しておらず、1つ以上の突然変異が表4又は表6に列挙されている、実施形態8に記載の方法。
【0141】
実施形態10.B細胞悪性腫瘍がGCB-DLBCLであり、被験者が、KMT2D、BCL2、CSMD3、CREBBP、EBF1、SGK1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しておらず、1つ以上の突然変異が表16に列挙されている、実施形態8に記載の方法。
【0142】
実施形態11.B細胞悪性腫瘍がFLであり、被験者が、CREBBP、KMT2D、BCL2、STAT6、NBPF1、EZH2、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しておらず、1つ以上の突然変異が表8又は表10に列挙されている、実施形態8に記載の方法。
【0143】
実施形態12.B細胞悪性腫瘍がRTであり、被験者が、ROS1、IGLL5、PASK、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子において1つ以上の突然変異を有しておらず、1つ以上の突然変異が表12又は表14に列挙されている、実施形態8に記載の方法。
【0144】
実施形態13.被験者が、ROS1において1つ以上の突然変異を有しておらず、1つ以上の突然変異が表12又は表14.に列挙されている、実施形態12に記載の方法。
【0145】
実施形態14.治療有効量のイブルチニブと抗PD-1抗体との組み合わせが、560mgのイブルチニブと3mg/kgの抗PD-1抗体とを含む、先行の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0146】
実施形態15.抗PD-1抗体が静脈内投与され、イブルチニブが経口投与される、先行の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0147】
実施形態16.抗PD-1抗体が14日間周期で投与され、イブルチニブが1日1回投与される、実施形態15に記載の方法。
【0148】
実施形態17.抗PD-1抗体がニボルマブである、先行の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0149】
実施形態18.処置することが、被験者における完全奏功(CR)又は部分奏功(PR)をもたらす、先行の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0150】
実施形態19.被験者が、
a)DLBCL、FL、又はRT(CLL/SLLからの形質転換のみ)に罹患しており、
b)1回以上の治療歴(FLについては2回以上の治療歴)があるが、以前に4回以下の処置ラインを受けたことがあり、
c)2以下のEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)のパフォーマンスステータスを有しており、
d)測定可能な疾患に罹患しており、かつ
e)以前にイブルチニブ療法も抗PD-1療法も受けたことがない、先行の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0151】
実施形態20.B細胞悪性腫瘍に罹患している被験者におけるイブルチニブと抗PD-1抗体との組み合わせに対する応答性の可能性を予測する方法であって、
a)B細胞悪性腫瘍がDLBCLであり、方法が、KLHL14、RNF213、CSMD3、BCL2、NBPF1、LRP1B、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異が表4又は表6に列挙されており、
b)B細胞悪性腫瘍がGCB-DLBCLであり、方法が、RNF213、NBPF1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異が表16に列挙されており、
c)B細胞悪性腫瘍がFLであり、方法が、BCL2、CREBBP、KMT2D、MUC17、CIITA、FES、NCOA2、TPR、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異が表8又は表10に列挙されており、又は
d)B細胞悪性腫瘍がRTであり、方法が、IRF2BP2、NBPF1、KLHL6、SETX、SF3B1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異が表12又は表14に列挙されており、
遺伝子における1つ以上の突然変異が、組み合わせに対する応答性を示す、方法。
【0152】
実施形態21.B細胞悪性腫瘍がDLBCLであり、方法が、KLHL14、RNF213、CSMD3、BCL2、NBPF1、LRP1B、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異が表4又は表6に列挙されており、遺伝子における1つ以上の突然変異が、組み合わせに対する応答性を示す、実施形態20に記載の方法。
【0153】
実施形態22.KLHL14、RNF213、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異が表4又は表6に列挙されており、遺伝子における1つ以上の突然変異が、組み合わせに対する応答性を示す、実施形態21に記載の方法。
【0154】
実施形態23.B細胞悪性腫瘍がGCB-DLBCLであり、方法が、RNF213、NBPF1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異が表16に列挙されており、遺伝子における1つ以上の突然変異が、組み合わせに対する応答性を示す、実施形態20に記載の方法。
【0155】
実施形態24.B細胞悪性腫瘍がFLであり、方法が、BCL2、CREBBP、KMT2D、MUC17、CIITA、FES、NCOA2、TPR、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異が表8又は表10に列挙されており、遺伝子における1つ以上の突然変異が、組み合わせに対する応答性を示す、実施形態20に記載の方法。
【0156】
実施形態25.方法が、BCL2における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異が表8又は表10に列挙されており、遺伝子における1つ以上の突然変異が、組み合わせに対する応答性を示す、実施形態24に記載の方法。
【0157】
実施形態26.B細胞悪性腫瘍がRTであり、方法が、IRF2BP2、NBPF1、KLHL6、SETX、SF3B1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異が表12又は表14に列挙されており、遺伝子における1つ以上の突然変異が、組み合わせに対する応答性を示す、実施形態20に記載の方法。
【0158】
実施形態27.B細胞悪性腫瘍に罹患している被験者におけるイブルチニブと抗PD-1抗体との組み合わせに対する非応答性の可能性を予測する方法であって、
a)B細胞悪性腫瘍がDLBCLであり、方法が、TP53、EBF1、ADAMTS20、AKAP9、SOCS1、TNFRSF14、MYD88、NFKB1B、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異が表4又は表6に列挙されており、
b)B細胞悪性腫瘍がGCB-DLBCLであり、方法が、KMT2D、BCL2、CSMD3、CREBBP、EBF1、SGK1、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異が表16に列挙されており、
c)B細胞悪性腫瘍がFLであり、方法が、CREBBP、KMT2D、BCL2、STAT6、NBPF1、EZH2、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異が表8又は表10に列挙されており、又は
d)B細胞悪性腫瘍がRTであり、方法が、ROS1、IGLL5、PASK、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異が表12又は表14に列挙されており、
遺伝子における1つ以上の突然変異が、組み合わせに対する非応答性を示す、方法。
【0159】
実施形態28.B細胞悪性腫瘍がDLBCLであり、方法が、TP53、EBF1、ADAMTS20、AKAP9、SOCS1、TNFRSF14、MYD88、NFKB1B、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異が表4又は表6に列挙されており、遺伝子における1つ以上の突然変異が、組み合わせに対する応答性を示す、実施形態27に記載の方法。
【0160】
実施形態29.B細胞悪性腫瘍がGCB-DLBCLであり、方法が、KMT2D、BCL2、CSMD3、CREBBP、EBF1、SGK1又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異が表16に列挙されており、遺伝子における1つ以上の突然変異が、組み合わせに対する非応答性を示す、実施形態27に記載の方法。
【0161】
実施形態30.B細胞悪性腫瘍がFLであり、方法が、CREBBP、KMT2D、BCL2、STAT6、NBPF1、EZH2、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異が表8又は表10に列挙されており、遺伝子における1つ以上の突然変異が、組み合わせに対する非応答性を示す、実施形態27に記載の方法。
【0162】
実施形態31.B細胞悪性腫瘍がRTであり、方法が、ROS1、IGLL5、PASK、又はこれらの組み合わせから選択される遺伝子における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異が表12又は表14に列挙されており、遺伝子における1つ以上の突然変異が、組み合わせに対する非応答性を示す、実施形態27に記載の方法。
【0163】
実施形態32.ROS1における1つ以上の突然変異について被験者からの試料を分析することを含み、1つ以上の突然変異が表12又は表14に列挙されており、1つ以上の突然変異が、組み合わせに対する非応答性を示す、実施形態31に記載の方法。
【0164】
実施形態33.被験者が、
a)DLBCL、FL、又はRT(CLL/SLLからの形質転換のみ)に罹患しており、
b)1回以上の治療歴(FLについては2回以上の治療歴)があるが、以前に4回以下の処置ラインを受けたことがあり、
c)2以下のEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)のパフォーマンスステータスを有しており、
d)測定可能な疾患に罹患しており、かつ
e)以前にイブルチニブ療法も抗PD-1療法も受けたことがない、実施形態20~32のいずれか1つに記載の方法。
【0165】
実施形態34.治療有効量のイブルチニブと抗PD-1抗体との組み合わせを被験者に投与し、それによって、被験者が、組み合わせに対する応答性を示す遺伝子における1つ以上の突然変異及び/又は組み合わせに対する非応答性を示す遺伝子における1つ以上の突然変異の欠失を有する場合、B細胞悪性腫瘍を処置することを更に含む、実施形態20から33のいずれか1つに記載の方法。
【0166】
実施形態35.治療有効量のイブルチニブと抗PD-1抗体との組み合わせが、560mgのイブルチニブと3mg/kgの抗PD-1抗体とを含む、実施形態34に記載の方法。
【0167】
実施形態36.抗PD-1抗体が静脈内投与され、イブルチニブが経口投与される、実施形態34又は35に記載の方法。
【0168】
実施形態37.抗PD-1抗体が14日間周期で投与され、イブルチニブが1日1回投与される、実施形態36に記載の方法。
【0169】
実施形態38.抗PD-1抗体がニボルマブである、実施形態34~37のいずれか1つに記載の方法。
【0170】
実施形態39.処置することが、被験者における完全奏功(CR)又は部分奏功(PR)をもたらす、実施形態34~38のいずれか1つに記載の方法。
【国際調査報告】