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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-30
(54)【発明の名称】ドライタイプの粗引き真空ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 25/02 20060101AFI20220323BHJP
【FI】
F04C25/02 K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547372
(86)(22)【出願日】2020-01-22
(85)【翻訳文提出日】2021-10-12
(86)【国際出願番号】 EP2020051542
(87)【国際公開番号】W WO2020164877
(87)【国際公開日】2020-08-20
(31)【優先権主張番号】1901520
(32)【優先日】2019-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511148259
【氏名又は名称】ファイファー バキユーム
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】ポール ドゥコルド
(72)【発明者】
【氏名】アントワーヌ デングレヴィル
(72)【発明者】
【氏名】ピエリック ゴディナ
(72)【発明者】
【氏名】ヤニク グルニエ
(72)【発明者】
【氏名】ティエリ ニール
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ルマルカン
【テーマコード(参考)】
3H129
【Fターム(参考)】
3H129AA06
3H129AA15
3H129AA16
3H129AA24
3H129AB06
3H129BB13
3H129CC22
3H129CC27
3H129CC46
(57)【要約】
本発明のドライタイプの粗引き真空ポンプ(1)は、ステータ(2)に設けられたダクトと、加熱されたパージガスを注入するための装置(15)とを備えている。前記ダクトは、その入口オリフィスが少なくとも1つのパージガス源に接続され、その少なくとも1つの出口オリフィスが、真空ポンプの吐出口(5)と連絡する最終段のポンピングステージ(3e)と連絡するように構成されている。加熱されたパージガスを注入するための装置(15)は、前記ダクトに注入されるパージガスを、少なくとも部分的に40℃より高い温度に加熱するように構成された加熱装置(24)を含んでいる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライタイプの粗引き真空ポンプ(1)であって、
吸気口(4)と、吐出口(5)と、前記吸気口(4)と前記吐出口(5)の間に直列に設けられ少なくとも2段のポンピングステージ(3a)、(3b)、(3c)、(3d)、(3e)を含むステータ(2)と、前記少なくとも2段のポンピングステージ(3a)~(3e)内に配置された2個のロータ(6)とを備え、
前記ロータ(6)は、2つの軸(7)によって支えられ、前記吸気口(4)と前記吐出口(5)の間でポンピングされるガスを同伴するために反対方向に同期して回転するように構成されているものにおいて、
前記ステータ(2)内に設けられたダクト(16)と、前記ダクトに加熱されたパージガスを注入するための装置(15)とを備えており、
前記ダクト(16)は、その入口オリフィス(16a)が少なくとも1つのパージガス源に接続されるように構成され、少なくともその1つの出口オリフィス(16b)、(16b)は、前記吐出口(5)と連通する最終段の前記ポンピングステージ(3e)と連通されており、
前記加熱されたパージガスを注入するための装置(15)は、前記ダクト(16)に注入される前記パージガスを少なくとも部分的に40℃より高い温度に加熱するように構成された加熱装置(24)を含んでいることを特徴とする粗引き真空ポンプ(1)。
【請求項2】
請求項1において、
前記ダクト(16)の前記出口オリフィス(16b)、(16c)は、前記2つの軸(7)と、前記ステータ(2)の軸通路(14a)、(14b)との間のクリアランスを介して、前記最終段のポンピングステージ(3e)と連通している前記ステータ(2)の少なくとも1つの前記軸通路(14a)、(14b)と連通していることを特徴とする粗引き真空ポンプ(1)。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記ダクト(16)は、前記ポンピングステージ(3e)の前記2つの軸通路(14a)、(14b)と連通していることを特徴とする粗引き真空ポンプ(1)。
【請求項4】
請求項3において、
前記ダクト(16)は、前記入口オリフィス(16a)に接続された線形部分(18)を有し、前記線形部分(18)は、前記2つの軸(7)の間に設けられ、2つの月形の空洞(20a)、(20b)と連通しており、前記空洞(20a)、20b)はそれぞれの前記軸通路(14a)、(14b)と連通していることを特徴とする粗引き真空ポンプ(1)。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか1項において、
前記軸通路(14a)、(14b)をシールするために、前記真空ポンプ(1)の潤滑軸受(11)と前記ポンピングステージ(3e)との間に挿入された少なくとも1つのシール装置(13a)、(13b)を備え、
前記ダクト(16)は、前記シール装置(13a)、(13b)と前記ポンピングステージ(3e)との間で前記軸通路(14a)、(14b)と連通していることを特徴とする粗引き真空ポンプ(1)。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項において、
前記加熱されたパージガスを注入するための装置(15)は、さらに、
前記加熱装置(24)によって加熱された前記パージガスと流体的に連通している温度プローブ(28)、及び
前記パージガスの温度を制御するために、前記加熱装置(24)の電源及び前記温度プローブ(28)に接続されたコントローラ(30)を備えていることを特徴とする粗引き真空ポンプ(1)。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項において、
前記加熱装置(24)は、入口(27a)と出口(27b)を有する管(27)内に配置された抵抗加熱要素(26)を含む加熱カートリッジを含み、前記管内で前記パージガスが循環して加熱されるように構成されていることを特徴とする粗引き真空ポンプ(1)。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項において、
前記加熱されたパージガスを注入するための装置(15)は、前記加熱されたパージガスの流量の割合が、前記ダクト(16)に注入される前記パージガスの流量の10%~100%の間であるように構成されていることを特徴とする粗引き真空ポンプ(1)。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項において、
前記加熱されたパージガスを注入するための装置(15)は、加熱された前記パージガスの流量が33.8Pa.m/sより大きくなるように構成されていることを特徴とする粗引き真空ポンプ(1)。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項において、
前記加熱装置(24)は、前記パージガスを200℃より低い温度に加熱するように構成されていることを特徴とする粗引き真空ポンプ(1)。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項において、
前記ステータ(2)に少なくとも部分的に組み込まれ前記ダクト(16)を取り囲む、冷却回路(25)を備えていることを特徴とする粗引き真空ポンプ(1)。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項において、
前記ステータ(2)に設けられ、前記パージガス源に接続されるように構成され、前記真空ポンプ(1)の少なくとも1つの前記軸受(11)に通じる、軸受パージダクト(35)を備えていることを特徴とする粗引き真空ポンプ(1)。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項において、
前記ステータ(2)に設けられ、前記パージガスの吐出源に接続され、前記1つのポンピングステージの出口を次の前記ポンピングステージの入口に接続する前記ステージ間導管(9)に開口するように構成された、少なくとも1段のパージダクト(36)を備えていることを特徴とする粗引き真空ポンプ(1)。
【請求項14】
請求項12又は13において、
分配器(38)を備えており、前記分配器は、一方が前記パージガスの吐出源に、他方が、前記軸受パージダクト(35)、前記ステージパージダクト(36)、及び前記ダクト(16)及び前記加熱装置(24)の出口(27b)に接続されたパイプ(21b)に結合されるように構成されていることを特徴とする粗引き真空ポンプ(1)。
【請求項15】
請求項14において、
前記分配器(38)によって分配された前記パージガスの少なくとも一部を加熱するように構成された追加の加熱装置(39)を備えていることを特徴とする粗引き真空ポンプ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、「ルーツ」又は「クロー」又はスクリュータイプのポンプ等の、ドライタイプの粗引き真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ドライタイプの粗引き真空ポンプは、ポンピングされるガスが、吸気口と吐出口の間を循環する直列の複数段のポンピングステージを備えている。
既知の粗引き真空ポンプは、「ルーツ」ポンプとしても知られている回転ローブを備えるもの、「クロー」ポンプとしても知られている爪を備えるもの、及びスクリュータイプに区別される。これらの真空ポンプは、動作中、ロータがステータ内で、互いに又はステータと機械的に接触することなく回転するため、「ドライ」と呼ばれる。つまり、ポンピングステージでオイルを使用しなくても良い可能性がある。
【0003】
特定の粗引き真空ポンプは、例えば粉末、ペースト、又は破片状の、固体の副産物を生成する化学物質を使用するプロセスにおいて使用される。これは、例えば、半導体、光導電スクリーン、フラットスクリーン、又はLEDの製造に使用される特定のプロセスの場合である。これらの固体又は凝縮性の副産物は、真空ポンプに引き込まれ、特にロータの回転を妨げるか、最悪の場合、ロータの回転を妨げることによって、その動作を損なう可能性がある。特定の用途では、H、SiH、TEOSなど、爆発性及び/又は可燃性の可能性のある副産物又はガスも放出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらのリスクを抑制するために、ポンピングされるガスは通常、真空ポンプに注入されるパージガスで希釈される。窒素ガスは通常、真空ポンプに沿って各ポンピングステージ内に配置された噴射ノズルから噴射される。
これらのガスが真空ポンプの出口で凝縮するのを防ぐために、パイプ又はガス処理システム(除害システムとも呼ばれる)に、時には加熱された、追加のパージガスを注入することによって、真空ポンプの下流に位置するパイプをパージすることが必要になる場合がある。
【0005】
加熱された追加のパージガスの注入は、ガスを効果的に希釈するが、それにもかかわらず、かなりのコストがかかる。さらに、この追加のパージは、パージガスが注入される位置の上流側に設けられた要素に対しては効果がなく、特に、真空ポンプに対しては効果がない。
【0006】
本発明の目的の1つは、真空ポンプのパージの有効性を改善することである。
本発明の他の目的は、ポンピングされるガスのパージに関連するコストを削減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のために、本発明の1つの主題は、
- 吸入口と吐出口の間に直列に設けられたた少なくとも2段のポンピングステージを含むステータと、
- 前記少なくとも2段のポンピングステージ内に配置された2個のロータとを備え、前記ロータは、2つの軸によって支えられ、前記吸気口と前記吐出口の間にポンピングされるガスを同伴するために、反対方向に同期して回転するように構成された、ドライタイプの粗引き真空ポンプであって、
この真空ポンプはさらに、
- 前記ステータに設けられたダクトであって、入口オリフィスが少なくとも1つのパージガス源に接続され、少なくとも1つの出口オリフィスが前記吐出口と連絡するように構成され、最終段の前記ポンピングステージと連絡するダクト、及び
- 前記ダクトに注入されたパージガスの少なくとも一部を40℃より高い温度に加熱するようになっている加熱装置を含む、加熱されたパージガスを注入するための装置とを備えていることを特徴としている。
【0008】
前記吐出ポンピングステージ内に注入されるパージガスの流れの一部を加熱することにより、真空ポンプの熱平衡を変えることなく、注入されるパージガスの流量を大幅に増加させることが可能になる。
前記吐出ポンピングステージで注入されるパージガスは、ポンピングされるガス、特にH、SiH、TEOS等の潜在的に爆発性及び/又は可燃性のガス、又は反応副産物等の凝縮性ガスを効果的に希釈することを可能にする。
【0009】
希釈がこの吐出ポンピングステージで実行されるため、真空ポンプ内における、吐出口の可能な限り近くで、ガスを直接希釈することができる。そのため、従来技術における真空ポンプとこの真空ポンプの下流のパージガス注入点との間の、低温又は不十分に希釈された領域の存在をなくすことができる。
そのため、真空ポンプの下流にあるパイプ、ガス処理システム、及び真空ポンプにおいて、ポンピングされるガスが凝縮するのを防ぐことができ、真空ポンプの寿命を延ばすことができる。
【0010】
さらに、真空ポンプに直接注入されるパージガスは、同じエネルギーで加熱されて、これらの下流のパイプに直接注入される場合よりも、下流に位置するパイプに到達したときに高温になる。
従って、真空ポンプの下流において外部加熱する場合と比較して、パージガスを加熱するための電力消費を削減させることができる。
【0011】
本発明の1つの例示的な実施形態によれば、ダクトの出口オリフィスは、2つの軸と軸通路との間のクリアランスを介して、最終段のポンピングステージと連絡するステータの少なくとも1つの軸通路と連絡している。従って、パージガスは、少なくとも1つの軸の周りで、ポンピングステージ内に拡散される。前記ダクトは、例えば、ポンピングステージの2つの軸通路と連絡している。
【0012】
この真空ポンプは、軸通路をシールするために、真空ポンプの潤滑軸受とポンピングステージとの間に挿入された、少なくとも1つのシール装置をさらに有していても良い。
例示的な一実施形態によれば、前記ダクトは、シール装置とポンピングステージとの間の軸通路と連絡している。このようにシール装置の前に注入されたパージガスは、ポンピングされるガスとシール装置との間にバリアを形成することを可能にし、シール装置の寿命を延ばすことを可能にする。
【0013】
本発明の例示的な一実施形態によれば、前記ダクトは、前記入口オリフィスに接続された線形部分を有し、この線形部分は、2つの軸の間に挿入され、2つの月形の空洞と連絡し、各空洞は、それぞれの軸通路と連絡している。従って、パージガスは、月形の空洞によって、シール装置の前で、2つの軸の周りのポンピングステージ内に拡散される。
【0014】
前記加熱されたパージガスを注入するための装置は、さらに、
- 前記加熱装置によって加熱された前記パージガスと流体連絡する温度プローブ、及び、
- 前記パージガスの温度を制御するために、前記加熱装置の電源と前記温度プローブに接続されたコントローラを含んでいてもよい。
【0015】
これにより、前記電源を、前記温度プローブによって行われた温度測定に従って、特定の温度設定値になるように制御できる。従って、パージガスを加熱する電力は、パージガスの流量及び要求される温度設定値に、自動的に適合させることができる。
このコントローラは、温度の異常を検出した場合、加熱されたパージガスを注入するための装置によるパージガスの注入を遮断することもできる。これは、余剰のパージガスを加熱できない場合には、過希釈しないことが望ましいためである。過希釈は、真空ポンプの熱平衡を変化させ、例えば凝縮性種が堆積するリスクが生じる。
【0016】
加熱されたパージガスを注入するための装置は、例えば手動の、パージガスの流量を調整するための流量調整器、及び、注入されたパージガスの流量を測定するように構成された流量測定装置をさらに備えていてもよい。
この流量測定装置の出口を、さらにコントローラに接続することができ、このコントローラは、例えば、パージガスの流れが無いか、又は流量が少なすぎることを検出した場合、加熱電源を遮断することができる。
【0017】
加熱されたパージガスを注入するための装置は、加熱されたパージガスの流量の割合が、例えば、ダクトに注入されるパージガスの流量の10%~100%の間であるように構成しするのがよい。これにより、非加熱パージガス(0~90%の間)と、加熱パージガス(10~100%の間)との混合物が、ダクトに注入される。加熱されたパージガスを注入するための装置は、加熱されたパージガスの流量が、例えば33.8Pa.m/sを超えるように構成するのがよい。この加熱装置は、パージガスを200℃より低い温度に加熱するように構成することができる。
【0018】
例示的な一実施形態によれば、加熱装置は、加熱されるためにパージガスが循環する管の入口と出口との間の、管内に配置された抵抗加熱要素を含む加熱カートリッジを含んでいる。この加熱カートリッジは、例えば断熱パイプによって、可能な限り、ダクトの入口オリフィスの近くに配置されているのが望ましい。
この真空ポンプは、ステータに少なくとも部分的に組み込まれ、ダクトを取り囲む冷却回路を備えていても良い。これにより、特に冷却回路によって温度制御ができるため、ホットパージガスの注入によってステータが過熱することはない。
【0019】
この真空ポンプは、さらに、ステータに設けられ、パージガス源に接続され、この真空ポンプの少なくとも1つの軸受に開口する軸受パージダクトを有しているのがよい。さらに、この真空ポンプは、ステータに設けられ、パージガスの吐出源に接続され、あるポンピングステージの出口を次のポンピングステージの入口に接続するステージ間導管に開口する、少なくとも1つのステージパージダクトを有していてもよい。
【0020】
例示的な一実施形態によれば、この真空ポンプは、分配器を備えており、この分配器は、一方では、パージガスの吐出源に結合され、他方では、軸受パージダクト、ステージパージダクト、及び、加熱装置の出口に接続されたパイプに結合されるように構成されている。
この真空ポンプは、さらに、前記分配器によって分配されるパージガスの少なくとも一部を加熱するようになっている追加の加熱装置を有していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明によるドライタイプの真空ポンプの要素を示す、長手方向の縦断側面図である。
図2図1の真空ポンプの要素の1つのポンピングステージの横断面図である。
図3図1の真空ポンプの要素を上方から見た概略図である。
図4図1の真空ポンプの要素における、真空ポンプの第1の支持体の横断面図である。
図5】加熱されたパージガスを注入する装置の概略図である。
図6】前記加熱されたパージガスを注入する装置における、加熱装置の長手方向の縦断面の概略図である。
図7】本発明の別の真空ポンプの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のさらなる利点及び特徴は、本発明の1つの特定の、しかし非限定的な実施形態の以下の説明を読み、及び以下の添付の図面を検討することで明らかになると思う。これらの図では、同一の要素には同じ符号を付してある。
この実施形態は例示である。説明は1つ又は複数の実施形態についてのみ言及しているが、それは必ずしも各符号が同じ実施形態に関連すること、又は特徴が単一の実施形態にのみ適用されることを意味するわけではない。様々な実施形態の単純な特徴を組み合わせたり、交換したりして、他の実施形態を提供することもできる。
【0023】
粗引き真空ポンプは、2個のロータを使用して、大気圧でポンピングされるガスを吸入し、移送し、次に吐出するように構成された容積式真空ポンプである。前記ロータは、粗引き真空ポンプのモータによって回転駆動される2つの軸により支えられている。粗引き真空ポンプは、大気圧から始動できる。
「上流」とは、ポンピングされるガスが循環する方向を基準にして、他の要素の前位を意味する。
対照的に、「下流」が意味するのは、ポンピングされるガスが循環する方向に関して後方のことであり、ガスが圧送される方向の上流に位置する要素は、下流に位置する要素よりも圧力が低い。
ドライタイプの粗引き真空ポンプ1は、1つのステータ2を備えており、このステータは、吸気口4と吐出口5との間に直列に設けられた少なくとも2段のポンピングステージ3a~3eと、これらの少なくとも2段のポンピングステージ3a~3e内に配置された2個のロータ6とを含んでいる(図1参照)。
【0024】
ステータ2は、真空ポンプ1の全ての静的構成要素で構成されており、これらは、特に、ポンピングステージ3a~3eのチャンバを形成している。2個のロータ6は、反対方向に同期して回転し、吸気口4と吐出口5との間にポンピングされるガスを同伴するように構成された2つの軸7によって支えられている。これらの軸7は、真空ポンプ1の1つのモータ8によって駆動される。2個のロータ6は、例えば、「ルーツ」タイプ(図2参照)、又は「クロー」タイプの同一のプロファイルを有するローブを有するか、又はスクリュータイプであるか、又は他の同様の容積式真空ポンプのものが採用されている。
【0025】
真空ポンプ1は、例えば5段のポンピングステージ3a、3b、3c、3d、3eを含み、これらの段の間を、ポンピングされるガスは循環することができる。
各ポンピングステージ3a、3b、3c、3d、3eは、2個のロータ6を収容する1つのチャンバによって形成され、各チャンバは、それぞれその入口及び出口を有している。
回転中、入口から引き込まれたガスは、ロータ6とステータ2との間に形成された容積に閉じ込められ、次にロータ6によって、次のステージに向かって送られる。
連続するポンピングステージ3a~3eは、先行するポンピングステージ3a~3dの出口を、次のポンピングステージ3b~3eの入口に結合する、それぞれのステージ間導管9によって、次々に直列に結合されている。
第1段のポンピングステージ3a(低圧ポンピングステージとも呼ばれる)の入口は、真空ポンプ1の吸気口4と連絡している。最終段のポンピングステージ3e(高圧ポンピングステージ、又は吐出ポンピングステージとも呼ばれる)は、吐出口5と連絡している。
高圧ポンピングステージ3eと低圧ポンピングステージ3aとの間に挿入されたポンピングステージ3b、3c、3dは、中間ポンピングステージと呼ばれる。
真空ポンプ1は、大気圧で始動することができ、ポンピングされるガスを大気圧で吐出するように構成された粗引き真空ポンプである。
軸7を駆動するモータ8は、例えば真空ポンプ1の一端、例えば最終段のポンピングステージ3eの側に配置されている。
【0026】
真空ポンプ1は、少なくとも1つの潤滑剤溜め10を有している。グリース及び/又はオイル等の潤滑剤は、特に、2個のロータ6の軸7とこれらの軸を同期させるための2つの歯車12とを支持する2つの軸受11の転がり軸受を潤滑することができる(図3参照)。
例えば、真空ポンプ1は、モータ8と第1又は最終段のポンピングステージ3a又は3eとの間に配置された、1つの潤滑剤溜め10を備えている。
各軸7の軸受11は、真空ポンプ1のもう一方の端において、グリースで、又は第2の潤滑剤溜めを使用して、潤滑される。
【0027】
潤滑剤に対するシールを行う少なくとも1つのシール装置13a、13bを、潤滑軸受11とポンピングステージ3e、3aとの間に挿入して、軸通路14a、14bをシールしてある。
これらのシール装置13a、13bは、2つの回転軸7の周りの軸通路14a、14bにおいて非常に低いコンダクタンスを生成し、これにより、2つの軸7を回転させながら、特に潤滑剤溜め10からドライポンピングステージ3a~3eへの潤滑流体の通過を大幅に制限することが可能である。
各シール装置13a、13bは、例えば、1つの軸7を取り囲む2つのシール等の、少なくとも1つのシールを備えている(図3参照)。このシールは、例えば、リップシール、ラビリンスシール又はラビリンスと呼ばれるラビングシール、あるいはこれらの組み合わせである。
【0028】
図3図4及び図5に示すように、真空ポンプ1は、さらに、加熱されたパージガスを注入するための装置15及びダクト16を備えている。
このダクト16は、ステータ2内に設けられている。ダクト16の入口オリフィス16aは、パージガスの少なくとも1つの吐出源に接続されるように構成されている。このダクト16は、吐出口5と連絡する最終段のポンピングステージ3eと連絡し、窒素等のパージガスを吐出ポンピングステージ3e内に注入するための、少なくとも1つの出口オリフィス16b、16cを有している。
【0029】
このダクトの出口オリフィスは、ステータ2から、例えば、ロータ6(図示せず)を収容するハウジング内の最終段のポンピングステージ3e内に、直接、開口している。別の例示的な実施形態によれば、ダクト16の出口オリフィス16b、16cは、軸7とステータ2の軸通路14a、14bとの間のクリアランスを介して、最終段のポンピングステージ3eと連絡する少なくとも1つの軸通路14a、14bと連絡している。従って、ダクト16は、パージガスを、ステータ2を通過し、少なくとも1つの軸通路14a、14bを経て、ポンピングステージ3eに運ぶ。これにより、パージガスは、ポンピングステージ3e内において、少なくとも1つの軸7の周りに拡散される。
【0030】
ダクト16は、シール装置13a、13bとポンピングステージ3eとの間の少なくとも1つの軸通路14a、14bと連絡している。従って、シール装置13a、13bの前に注入されたパージガスは、ポンピングされるガスとシール装置13a、13bとの間にバリアを形成し、このシール装置の寿命を延ばすことを可能にする。
より具体的には、ダクト16は、高圧ポンピングステージ3eに対して配置されたステータ2の第1の支持体17(又は高圧支持体)内に設けても良い(図1及び図3参照)。ダクト16は、例えば、ポンピングステージ3eの2つの軸通路14a、14bと連絡している(図4参照)。
【0031】
本発明の例示的な一実施形態によれば、ダクト16は、機械加工によって形成される。このダクトは、例えば、入口オリフィス16aに接続された線形部分18を有する。この線形部分18は、軸7の軸線と直交しており、2つの軸7の間に挟まれている。この線形部分18は、この例では月形の2つの空洞20a、20bと連絡している。この月形の空洞の直径は、軸通路14a、14bの直径よりも実質的に小さい。これらの月形は、線形部分18を介して、背中合わせに接続されている。各空洞20a、20bは、ダクト16の出口オリフィス16b、16cの領域内のそれぞれの軸通路14a、14bと連絡している。従って、パージガスは、月形の空洞20a、20bにより、シール装置13a、13bの前で、軸7の周りのポンピングステージ3e内に拡散される。
【0032】
ステータ2の外部に開口する線形部分18の入口オリフィス16aは、例えば、ホース等の少なくとも1つのパイプ21a、21bによって、例えば、真空ポンプ1のシャーシに設けられたカップリング22に結合され、真空ポンプ1の外部のパージガス源に結合されるように構成されている。
加熱されたパージガスを注入するための装置15は、ダクト16に注入されるパージガスを、少なくとも部分的に40℃より高い温度に加熱するように構成された加熱装置24を備えている。加熱温度は、例えば、200℃未満である。設定温度として、例えばパージガスを100℃に加熱するための温度が予想される。
【0033】
ダクト16に注入される加熱されたパージガスの流量の割合は、例えば、10%~100%の間である。
加熱されたパージガスの流量は、例えば、20slm(すなわち、33.8Pa.m/s)より多く、例えば、120slm(すなわち、202.7Pa.m/s)のように、200slm(すなわち338Pa.m/s)より少ない。
【0034】
従って、加熱されたパージガスと加熱されていないパージガスの混合物を、ダクト16に注入することができる。例えば、パージガスの流量が12slmで、パージガスの流量の加熱部分が50%の場合、加熱されたパージガスの流量は、60slm(つまり、101.35Pa.m/s)であり、加熱されていないパージガスの流量も60slmである。ダクト16内に注入される全てのパージガス(100%)を加熱することも可能である。
【0035】
吐出ポンピングステージ3eに注入されるパージガスの流れの一部を加熱することにより、真空ポンプ1の熱平衡を変更することなく、注入されるパージガスの流量を大幅に増加させることが可能になる。
少なくとも1つの軸通路14a、14bに注入される、潜在的に加熱されていないパージガスと加熱されたパージガスの混合物は、ポンピングされるガス、特に、H、SiH、TEOS等の潜在的に爆発性及び/又は可燃性のガス、又は反応副産物等の凝縮性ガスを効果的に希釈するために、パージガスの流量を著しく増加させることを可能にする。
【0036】
吐出ポンピングステージ3eで達成される希釈は、真空ポンプ1内で、吐出口5に可能な限り近くでガスを直接希釈することを可能にする。
大量のパージガスを最終段のポンピングステージ3eに直接注入することにより、真空ポンプ1と真空ポンプの下流にある従来技術のパージガス注入点との間の低温又は不十分に希釈された領域を排除することが可能になる。
これにより、ポンピングされるガスが、真空ポンプ1の下流に位置するパイプ内、又はガス処理システム内、及び真空ポンプ1内で凝縮するのを防ぐことができ、真空ポンプの寿命を延ばすことができる。
【0037】
さらに、真空ポンプ1に直接注入されるパージガスは、同じエネルギーで加熱されて下流のこれらのパイプに直接注入される場合よりも、下流に位置するパイプに到達したときに高温になる。従って、真空ポンプ1の下流にある外部加熱手段と比較して、パージガスを加熱するための電力消費を低減することができる。
【0038】
例示的な一実施形態によれば、真空ポンプ1は、ステータ2を冷却するための冷却回路25を備えている(図4参照)。この冷却回路25は、例えば、水が例えば周囲温度で循環することを可能にする油圧回路を備えている。冷却回路25は、例えば、少なくとも部分的にステータ2内に統合されており、例えば、ダクト16が設けられている第1の支持体17内に統合されている。この冷却回路は、例えば、パイプ16を取り囲むU形状をしている。従って、特に、冷却回路25を使用してステータの温度を制御できるので、高温パージガスの注入の結果として、ステータ2が過熱されることはない。
【0039】
図6に示した1つの例示的な実施形態によれば、加熱装置24は、1本の管27の1つの入口27aと、1つの出口27bとの間の管27内に配置された、1つの抵抗加熱要素26を含む加熱カートリッジを有しており、管内で、パージガスが循環し加熱されるように構成されている。この加熱カートリッジは、可能な限り、ダクト16の入口オリフィス16aの近くに配置されるのが望ましい。
加熱カートリッジの管27の出口27bを真空ポンプ1のダクト16に接続するパイプ21bは、例えば、断熱されている。
【0040】
一つの例示的な実施形態によれば、加熱されたパージガスを注入するための装置15は、加熱装置24によって加熱されたパージガスと流体連絡する温度プローブ28と、加熱装置24の電源と温度プローブ28に接続された電子ボード等のコントローラ30とをさらに備えている。このコントローラ30は、パージガスが加熱される温度を制御するように構成されている。
【0041】
熱電対等の温度プローブ28は、例えば、管27の出口27bの側の一端に配置され、抵抗加熱要素26に対する電源、例えば電流は、管27の他端の入口27aから密閉された通路31を経て供給される。
従って、電源は、温度プローブ28によって行われる温度測定に従って、所与の温度設定値になるように制御することができる。また、加熱カートリッジ内のパージガスを加熱するための電力は、パージガスの流量及び要求される温度設定値に従って自動的に調整することができる。
【0042】
コントローラ30はまた、温度の異常を検出した場合、加熱されたパージガスを注入するための装置15によるパージガスの注入を遮断することができる。これは、余剰のパージガスを加熱できない場合は、過希釈しないことが望ましいためである。加熱すると、真空ポンプ1の熱平衡が変化し、例えば凝縮性種が堆積するリスクがある。
【0043】
加熱されたパージガスを注入するための装置15は、パージガスの流量を調整するための流量調整器32、例えば手動の流量調整器、及び、注入されたパージガスの流量を測定するように構成された流量測定装置33をさらに備えていても良い。流量測定装置33の出口はまた、コントローラ30に接続することができ、このコントローラ30は、例えば、流量が無い又はパージ流量が少なすぎるのを検出した場合、加熱電源を遮断することができる。
流量調整器32及び流量測定装置33は、例えば、加熱装置24の上流に、パージガスがパージガス源から加熱装置24に向かって流れる方向(図5の矢印を参照)に配置されている。遮断弁34は、加熱装置24の上流、例えば、流量調整器32と流量測定装置33との間に配置することができる。加熱されたパージガスを注入するための装置15は、例えば、ステータ2を支持する真空ポンプ1のシャーシに設けられている。
【0044】
真空ポンプ1はまた、ステータ2に設けられた1つの軸受パージダクト35、及び/又は、少なくとも1つのステージパージダクト36を備えていても良い。この軸受パージダクトは、真空ポンプ1の少なくとも1つの軸受11に開口している。また、ステージパージダクトは、ステージ間導管9に開口し、1つのポンピングステージ3a~3dの出口を次のポンピングステージ3b~3eの入口に結合している。これにより、ステージ間導管9の全部又は一部にパージガスを分配する(図1参照)。軸受パージダクト35は、ステータ2を通過して、転がり軸受を収容する少なくとも1つの軸受11にパージガスを搬送する。
【0045】
より具体的には、例えば、軸受パージダクト35は、軸受11が設けられているステータ2の第2の支持体37(又は低圧支持体)に設けられている(図1及び図3参照)。第2の支持体37は、低圧のポンピングステージ3aに対して配置されている。軸受パージダクト35は、例えば、2つの軸受11と連絡している。
この例示的な一実施形態によれば、軸受パージダクト35は、2つの軸7の軸線に直交しており、2つの軸7の間に挿入された第1の線形部分を有する。この第1の線形部分は、端部がそれぞれの軸受11と連絡する第2の線形部分と連絡している(図3参照)。
【0046】
ステージパージダクト36はステータ2を通過して、パージガスを少なくとも1つのステージ間導管9に運ぶ。
真空ポンプ1は、例えば、ポンピングステージ3b~3dの出口の近くで、それぞれのステージ間導管9に開口する、例えば3つのステージパージダクト36を備えている。
軸受パージダクト35、ステージパージダクト36、ダクト16、及び加熱装置24の出口27bに接続されたパイプ21bは、例えば、1つの分配器38を介して、真空ポンプ1の外部のパージガス源に接続されるように構成されている(図7参照)。
【0047】
一つの例示的な実施形態によれば、この分配器38は、第1の分岐38b及び第2の分岐38cに接続された共通の幹38aを備えている。
第1の分岐38bは、共通の幹38aを、ステータ2の第2の支持体37に設けられた軸受パージダクト35に接続している。第2の分岐38cは、ダクト38d、38eによって、ステージパージダクト36及びダクト16に接続されている。
【0048】
共通の幹38aの入口は、窒素等のパージガスの吐出源に結合されるように構成されている。第1の遮断弁及び膨張弁は例えば共通の幹38aに配置され、第2の遮断弁は第1の分岐38bに配置され、第3の遮断弁は第2の分岐38cに配置されている。従って、圧送されるガスの性質に適したパージを実行することが可能である。例えば、ポンピングされるのが非凝縮性及び/又は不燃性ガスの場合、軸受11のみがパージされる。
【0049】
ステージパージダクト36に接続された第1の分岐38b及び3つのダクト38dは、例えば、噴射ノズル又はスプレーインジェクターを備えており、軸受パージダクト35及び各ステージパージダクト36におけるパージ流の流量を規制することを可能にしている。ダクト16に接続されたダクト38eはまた、パージガスの循環方向で加熱装置24の出口に接続された、ダクト38eとパイプ21bとの交差点の上流に配置される噴射ノズル又はスプレーインジェクターを有していても良い。
【0050】
ダクト38e、軸受パージダクト35、及びステージパージダクト36を介して分配器38に注入されたパージガスは、加熱することができない。しかしながら、真空ポンプ1は、分配器38によって分配されたパージガスを、第1の分岐38b及び/又は第2の分岐38c内、及び/又はダクト16とパイプ21bへ接続するダクト38e内で少なくとも部分的に加熱するように構成された、追加の加熱装置39を有している。この追加の加熱装置39は、例えば、ダクト38d、38eに接続された第2の分岐38cに配置されている。
【0051】
この加熱は、加熱装置24によるパージガスの加熱とは独立している。各ポンピングステージ3b~3e及び第2の支持体37の軸受11に関して、流量及び/又は温度は、独立して、制御することができる。あるいはまた、この流量及び/又は温度は、少なくとも、加熱されたパージガスを注入するための装置15によって注入されるパージガスの流量及び温度とは、独立して制御することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 真空ポンプ
2 ステータ
3a、3b、3c、3d、3e ポンピングステージ
4 吸気口
5 吐出口
6 ロータ
7 軸
8 モータ
9 ステージ間導管
10 潤滑剤溜め
11 軸受
12 歯車
13a、13b シール装置
14a、14b 軸通路
15 加熱されたパージガスを注入するための装置
16 ダクト
16a 入口オリフィス
17 第1の支持体
18 線形部分
20a、20b 空洞
21a、21b パイプ
22 カップリング
24 加熱装置
25 冷却回路
26 抵抗加熱要素
27 管
27a 入口
27b 出口
28 温度プローブ
30 コントローラ
32 流量調整器
33 流量測定装置
34 遮断弁
35 軸受パージダクト
36 ステージパージダクト
37 第2の支持体
38 分配器
38a 共通の幹
38b 第1の分岐
38c 第2の分岐
38d ダクト
38e ダクト
39 追加の加熱装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】