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特表2022-520443弱毒生インフルエンザワクチン組成物及びその調製プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-30
(54)【発明の名称】弱毒生インフルエンザワクチン組成物及びその調製プロセス
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/145 20060101AFI20220323BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220323BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20220323BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20220323BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220323BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220323BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20220323BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20220323BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220323BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220323BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20220323BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20220323BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20220323BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20220323BHJP
   C12N 7/00 20060101ALN20220323BHJP
   C12N 7/01 20060101ALN20220323BHJP
   C12N 7/04 20060101ALN20220323BHJP
【FI】
A61K39/145
A61P37/04
A61P31/16
A61K39/39
A61K47/26
A61K47/18
A61K47/42
A61K47/22
A61K47/02
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/20
A61K47/24
A61K47/04
C12N7/00
C12N7/01
C12N7/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547436
(86)(22)【出願日】2020-02-07
(85)【翻訳文提出日】2021-10-07
(86)【国際出願番号】 IN2020050121
(87)【国際公開番号】W WO2020165912
(87)【国際公開日】2020-08-20
(31)【優先権主張番号】201921006071
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BRIJ
(71)【出願人】
【識別番号】514152303
【氏名又は名称】セラム インスティチュート オブ インディア プライベイト リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】デーレー,ラジーブ・ムホーラサカント
(72)【発明者】
【氏名】ヨールッカー,リーナ・ラビンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ガングリー,ミラン・ショメナス
(72)【発明者】
【氏名】ティアギ,パリークシット・ダランパル
(72)【発明者】
【氏名】サーガル,ウメーシュ・ゴーアック
(72)【発明者】
【氏名】ナラーレ,スワプニル・プラバカール
(72)【発明者】
【氏名】アナスプレ,イェショダーン・ディリップ
(72)【発明者】
【氏名】タープ,シャム・ラムダス
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C085
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AB01
4B065BD33
4B065BD36
4B065BD39
4B065CA44
4B065CA45
4C076AA12
4C076AA25
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB25
4C076BB31
4C076CC06
4C076CC35
4C076DD22
4C076DD23
4C076DD24
4C076DD26
4C076DD30
4C076DD37
4C076DD37R
4C076DD38
4C076DD38Q
4C076DD39
4C076DD39R
4C076DD40
4C076DD40R
4C076DD43
4C076DD45
4C076DD45R
4C076DD50
4C076DD51
4C076DD51Q
4C076DD55
4C076DD55R
4C076DD60
4C076DD60Q
4C076DD67
4C076DD67Q
4C076EE42
4C076EE42Q
4C076FF11
4C076FF36
4C076FF63
4C076GG43
4C076GG45
4C085AA03
4C085AA38
4C085BA55
4C085DD14
4C085DD15
4C085DD16
4C085DD23
4C085DD41
4C085DD81
4C085EE01
4C085EE06
4C085EE07
4C085FF02
4C085FF03
4C085FF13
4C085FF14
4C085FF18
4C085FF19
4C085FF20
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG10
(57)【要約】
本開示は、鼻腔内に送達され、インフルエンザウイルス感染に対する防御を提供し得る、弱毒生インフルエンザワクチン(LAIV)組成物を製造及び得るための、組成物及び方法を提供する。前記LAIV株は、野生型流行性又は季節性インフルエンザ株の表面糖タンパク質遺伝子を含有する、マスタードナーウイルス(MDV)の寒冷順応、温度感受性及び弱毒化させた表現型に基づく。また、前記LAIV株は、MDCK細胞(メイディン・ダービー・イヌ腎臓細胞)における増殖にさらに適応される。卵の使用は、大規模ワクチン製造において避けられる。精製プロセスは、クロマトグラフィーステップを欠く。前記LAIV組成物は、1つ又は複数の弱毒生インフルエンザワクチンウイルスを含み、ポリマー及び界面活性剤を欠く。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)1つ又は複数のインフルエンザウイルス;
b)1つ又は複数の糖質;
c)1つ又は複数のアミノ酸;及び
d)ゼラチン
を含む免疫原性組成物。
【請求項2】
前記インフルエンザウイルスが、流行性又は季節性インフルエンザウイルス、弱毒生インフルエンザワクチン(LAIV)ウイルス、不活化インフルエンザウイルス、キメラインフルエンザウイルス、又は組換えインフルエンザウイルスを含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
組成物が、A型又はB型又はC型又はその亜型インフルエンザ由来のインフルエンザウイルスに関して一価である、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
組成物が、A型又はB型又はC型又はその亜型インフルエンザ由来のインフルエンザウイルスに関して多価である、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
インフルエンザウイルスが、1:7、2:6、3:5、4:4、5:3、6:2又は7:1の比で、マスタードナーウイルス(MDV)の寒冷順応、温度感受性及び/又は弱毒化表現型遺伝子断片と野生型流行性又は季節性A型又はB型又はC型インフルエンザウイルス株のヘマグルチニン(HA)及び/又はノイラミニダーゼ(NA)遺伝子断片を含むリアソータントLAIVウイルスである、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
マスタードナーウイルス(MDV)が、A/Leningrad/134/17/57(H2N2)A型インフルエンザ株、B/USSR/60/69 B型インフルエンザ株を含む群から選択される、請求項5に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
前記リアソータントLAIVウイルスが、A型インフルエンザウイルス、又はH1~H18及びN1~N11、並びにその亜型H1N1、H2N2、H3N2、H5N1、H5N3、H9N2、H7N1、H7N3、H7N7、H6N1、H7N9、及びH10N8からのヘマグルチニン(HA)遺伝子及び/又はノイラミニダーゼ(NA)遺伝子を含む、請求項5に記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
前記リアソータントLAIVウイルスが、A型インフルエンザウイルス株pdmH1N1株-A/California/07/2009(A/Calと呼ばれる)様株、又はA/Cal、A/Michigan/45/2015様株、A/South-Africa/3626/2013様株、又はH3N2-A/Hong Kong/4801/2014様株からのヘマグルチニン(HA)遺伝子及び/又はノイラミニダーゼ(NA)遺伝子を含む、請求項5に記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
前記リアソータントLAIVウイルスが、B型インフルエンザウイルス株Victoria系統-B/Brisbane/60/2008様株又は、Yamagata系統-B/Phuket/3073/2013様株からのヘマグルチニン(HA)遺伝子及び/又はノイラミニダーゼ(NA)遺伝子を含む、請求項5に記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
前記1つ又は複数の糖質が、天然の糖質、合成の糖質、単糖、二糖、三糖、オリゴ糖、還元糖、非還元糖、糖アルコール、ポリオール、ポリヒドロキシル化合物、化学修飾糖質、ガラス転移促進剤を含む群から選択され、前記ガラス転移促進剤が、スクロース、マンニトール、マンノース、ラフィノース、ラクチトール、ラクトビオン酸、グルコース、マルツロース、イソ-マルツロース、マルトース、ラクトース、デキストロース、フコース、又はこれらの組合せを含む群から選択される、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
前記1つ又は複数の糖質が、1~10%(w/v)の量で存在するスクロースを含む、請求項10に記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
前記1つ又は複数のアミノ酸が、トリシン、ロイシン、イソロイシン、ヒスチジン、グリシン、グルタミン、アルギニン、リジン、アラニン、又はこれらの組合せを含む群から選択される、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項13】
前記1つ又は複数のアミノ酸が、0.1%~2%(w/v)の量で存在するトリシン、0.1%~2%(w/v)の量で存在するヒスチジン、0.01%~1%(w/v)の量で存在するアラニン、及び0.1%~5%(w/v)の量で存在するアルギニンを含む、請求項10に記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
ゼラチンが、0.1%~5%(w/v)の量で存在する、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
前記組成物が、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、水酸化リン酸アルミニウム、及び硫酸アルミニウムカリウム、又はこれらの混合物の群から選択されるアジュバントをさらに含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項16】
前記組成物が、油と水のエマルジョン、MF-59、リポソーム、リポポリサッカライド、サポニン、リピドA、リピドA誘導体、モノホスホリルリピドA、3-脱アシルモノホスホリルリピドA、AS01、AS03、オリゴヌクレオチド、少なくとも1つの非メチル化CpG及び/又はリポソームを含むオリゴヌクレオチド、フロイントアジュバント、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、CRL-8300アジュバント、ムラミルジペプチド、TLR-4アゴニスト、フラジェリン、グラム陰性細菌由来のフラジェリン、TLR-5アゴニスト、TLR-5受容体に結合することができるフラジェリンの断片、QS-21、ISCOMS、キトサン、サポニン、ステロールと組み合わせたサポニン及び脂質の群から選択される免疫刺激成分をさらに含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項17】
単回投与組成物が、保存剤を含まず、複数回投与組成物が、2-フェノキシエタノール、塩化ベンゼトニウム(フェメロール)、フェノール、チオメルサール、ホルムアルデヒド、メチルパラベン、プロピルパラベン、ベンジルアルコール、又はこれらの組合せの群から選択される1つ又は複数の保存剤を含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項18】
前記組成物が、塩化ナトリウム、炭酸、クエン酸、乳酸、グルコン酸、酒石酸、リン酸緩衝生理食塩水、HEPES、クエン酸-リン酸、又はTRISから選択される緩衝剤を含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項19】
前記組成物が、薬学的に許容される輸送体、賦形剤、結合剤、担体、等張化剤、乳剤、又は湿潤剤を含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項20】
前記組成物が、糖、ポリオール、NaCl、KCl、KHPO、NaHPO.2HO、CaCl、又はMgClを含む塩、アミノ酸、又はpH調節剤の群から選択される薬学的に許容される賦形剤を含む、請求項19に記載の免疫原性組成物。
【請求項21】
前記組成物が、A型インフルエンザウイルス感染若しくはその亜型、B型インフルエンザウイルス感染若しくはその亜型、又はC型インフルエンザウイルス感染若しくはその亜型を含む健康状態の発症を減少させる又は前記健康状態を予防する方法での使用のための、単回投与バイアル若しくは複数回投与バイアル若しくは複数回投与キットとして、又は充填済みシリンジ若しくは経鼻スプレーとして製剤化される、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項22】
前記免疫原性組成物の最終pHが、pH6.5~8を含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項23】
前記インフルエンザウイルスが、限定はされないが、ATCC CCL-34、MDCK 33016細胞株(DSM ACC 2219)、MDCK(ATCC CCL34 MDCK(NBL2))、MDCK 33016(DSM ACC 2219)、DSM ACC3309、ATCC CRL-12042、ATCC PTA-7909、ATCC PTA-7910、ATCC PTA-6500、ATCC PTA-6501、ATCC PTA-6502、ATCC PTA-6503、‘MDCK-S’、‘MDCK-SF101’、‘MDCK-SF102’、‘MDCK-SF103’及びFERM BP-7449から選択されるメイディン・ダービー・イヌ腎臓(MDCK)細胞において増殖される、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項24】
前記インフルエンザウイルスが、メイディン・ダービー・イヌ腎臓(MDCK)細胞(ATCC CCL-34)において増殖される、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項25】
前記B型インフルエンザウイルスが、0.5ml当たり6~7LogEID50;より好ましくは0.5ml当たりNLT 6.5LogEID50の用量で存在する、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項26】
前記A型インフルエンザウイルスが、0.5ml当たり6~7LogEID50;より好ましくは0.5ml当たりNLT 7LogEID50の用量で存在する、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項27】
a)1:100~1:10000の間のMOIで、インフルエンザウイルスによってMDCK細胞培養宿主を感染させるステップ
b)5~25U/mlの範囲のトリプシンを含有するMEM中で、40~70時間のインキュベーション期間後に、インフルエンザウイルスを含む上清を採取するステップ;
c)約6マイクロメートル~約0.45マイクロメートルの間の孔サイズを有する少なくとも1つの清澄化フィルターを通すダイレクトフロー濾過(DFF)によってウイルス採取物を濾過するステップ;
d)30~34℃の間の範囲の温度で、2~6時間、続いて2~8℃の温度で5~15時間、非特異的エンドヌクレアーゼによってCVPを処置するステップ;
e)100KDa~500KDaの分画分子量(MWCO)の膜を使用するタンジェントフロー濾過(TFF)により、エンドヌクレアーゼ処置したCVPを濃縮するステップ;
f)1つ又は複数の糖質、1つ又は複数のアミノ酸及びゼラチンを含む安定剤組成物によってTFF濃縮物を安定化し、安定化したウイルス採取物を形成するステップ;
g)約0.8マイクロメートル~約0.2マイクロメートルの間の孔サイズを有する少なくとも1つの滅菌グレードのフィルターを通すDFFによって安定化したTFF濃縮物を滅菌し、滅菌したCMVPを形成するステップ
を含み、
精製したウイルスの全体的な回収が40%以上である、
免疫原性組成物を調製する方法。
【請求項28】
ステップ(d)が、ウイルス採取物を、非特異的エンドヌクレアーゼ、より具体的には、0.5ユニット/ml~5ユニット/mlの範囲の濃度を有するベンゾナーゼにより、0.1mMと100mMの間の量の、Ca2+、Mg2+、Mn2+、及びCu2+からなる群から選択される二価の陽イオンの存在下で処置するステップを含む、請求項27に記載の免疫原性組成物を製造する方法。
【請求項29】
ステップ(d)が、ウイルス採取物を、非特異的エンドヌクレアーゼ、より具体的には、0.5ユニット/ml~5ユニット/mlの範囲の濃度を有するベンゾナーゼにより、1mM~3mMの濃度の、二価の陽イオンMg2+塩の存在下で処置するステップを含む、請求項27に記載の免疫原性組成物を製造する方法。
【請求項30】
ステップ(e)が、タンジェントフロー濾過(TFF)により、ウイルス採取物を濃縮し、少なくとも4×濃度のウイルス採取物を生じるステップを含む、請求項27に記載の免疫原性組成物を製造する方法。
【請求項31】
ステップ(f)が、1~10%(w/v)の濃度のスクロース、0.1%~2%(w/v)の濃度のヒスチジン、0.01%~1%(w/v)の濃度のアラニン、0.1%~2%(w/v)の濃度のトリシン、0.1~5%(w/v)の濃度のアルギニン、及び0.1~5%(w/v)の濃度のゼラチンを含む安定剤組成物によって、ウイルス採取物を安定化するステップを含む、請求項27に記載の免疫原性組成物を製造する方法。
【請求項32】
ステップ(f)が、3~6%(w/v)の濃度のスクロース、0.1%~1%(w/v)の濃度のヒスチジン、0.05%~0.5%(w/v)の濃度のアラニン、0.1%~0.5%(w/v)の濃度のトリシン、0.1~3%(w/v)の濃度のアルギニン、及び0.1~3%(w/v)の濃度のゼラチンを含む安定剤組成物によって、ウイルス採取物を安定化するステップを含む、請求項27に記載の免疫原性組成物を製造する方法。
【請求項33】
ステップ(f)が、スクロース4%(w/v)、ヒスチジン0.21%(w/v)、アラニン0.1%(w/v)、トリシン0.3%(w/v)、アルギニン2.1%(w/v)、及びゼラチン0.85%(w/v)を含む安定剤組成物によって、ウイルス採取物を安定化するステップを含む、請求項27に記載の免疫原性組成物を製造する方法。
【請求項34】
ステップ(f)が、スクロース4%(w/v)、ヒスチジン0.21%(w/v)、アラニン0.1%(w/v)、トリシン0.3%(w/v)、アルギニン2.1%(w/v)、及びゼラチン1.0%(w/v)を含む安定剤組成物によって、ウイルス採取物を安定化するステップを含む、請求項27に記載の免疫原性組成物を製造する方法。
【請求項35】
ステップ(f)が、スクロース4%(w/v)、ヒスチジン0.21%(w/v)、アラニン0.1%(w/v)、トリシン0.3%(w/v)、アルギニン1.6%(w/v)、及びゼラチン1.0%(w/v)を含む安定剤組成物によって、ウイルス採取物を安定化するステップを含む、請求項27に記載の免疫原性組成物を製造する方法。
【請求項36】
ヒト対象への免疫原性組成物の投与方法が、鼻腔内、筋肉内、静脈内、皮下、経皮、又は皮内経路を含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項37】
a)0.5ml当たり6~7LogEID50の用量の1つ又は複数の弱毒生インフルエンザワクチン(LAIV)ウイルス;
b)スクロース1~10%(w/v);
c)ヒスチジン0.1%~2%(w/v);
d)アラニン0.01%~1%(w/v);
e)トリシン0.1%~2%(w/v);
f)アルギニン0.1~5%(w/v);
g)ゼラチン0.1~5%(w/v)
を含む免疫原性組成物。
【請求項38】
前記組成物が:
a)0.5ml当たり6~7LogEID50の用量の1つ又は複数の弱毒生インフルエンザワクチン(LAIV)ウイルス;
b)スクロース3~6%(w/v);
c)ヒスチジン0.1%~1%(w/v);
d)アラニン0.05%~0.5%(w/v);
e)トリシン0.1%~0.5%(w/v);
f)アルギニン0.1~3%(w/v);
g)ゼラチン0.1~3%(w/v)
を含む、請求項37に記載の免疫原性組成物。
【請求項39】
前記組成物が:
a)0.5ml当たり6~7LogEID50の用量の1つ又は複数の弱毒生インフルエンザワクチン(LAIV)ウイルス;
b)スクロース4%(w/v);
c)ヒスチジン0.21%(w/v);
d)アラニン0.1%(w/v);
e)トリシン0.3%(w/v);
f)アルギニン2.1%(w/v);
g)ゼラチン0.85%(w/v)
を含む、請求項37に記載の免疫原性組成物。
【請求項40】
前記組成物が:
a)0.5ml当たり6~7LogEID50の用量の1つ又は複数の弱毒生インフルエンザワクチン(LAIV)ウイルスNLT;
b)スクロース4%(w/v);
c)ヒスチジン0.21%(w/v);
d)アラニン0.1%(w/v);
e)トリシン0.3%(w/v);
f)アルギニン2.1%(w/v);
g)ゼラチン1%(w/v)
を含む、請求項37に記載の免疫原性組成物。
【請求項41】
前記組成物が:
a)0.5ml当たり6~7LogEID50の用量の1つ又は複数の弱毒生インフルエンザワクチン(LAIV)ウイルス;
b)スクロース4%(w/v);
c)ヒスチジン0.21%(w/v);
d)アラニン0.1%(w/v);
e)トリシン0.3%(w/v);
f)アルギニン1.6%(w/v);
g)ゼラチン1%(w/v)
を含む、請求項37に記載の免疫原性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウイルスワクチン製造の分野に関し、より詳細には、弱毒生インフルエンザワクチン組成物及びそれを調製する方法に関する。本開示は、細胞培養によって産生されるウイルス、又はウイルス抗原を産生する方法、この方法によって得ることができるウイルス又はウイルス抗原、及びそのようなウイルス又はウイルス抗原を含有するワクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書の以下の背景情報は、本開示に関するが、必ずしも先行技術ではない。
感染性因子によって引き起こされる疫病及びパンデミックは、何世紀にもわたって起こり続けており、様々な罹患率及び死亡率を伴って、大きな混乱を引き起こしてきた。インフルエンザウイルスは、パンデミックの歴史の中の主役の1つである。前世紀には、4回のインフルエンザパンデミックが起こり、少なくとも15回のインフルエンザパンデミックが現在までに記録されており、1918~19年だけで5千万人の人々が死亡したと推定されている。
【0003】
ワクチンは、ウイルス拡散の制御に重要な役割を果たし、不活化インフルエンザワクチン(IIV)並びに弱毒生インフルエンザワクチン(LAIV)が長年使用されてきた。広く使用される非経口投与不活化インフルエンザワクチンは、循環する株が、ワクチンと抗原的に適合する場合、インフルエンザ疾患を効果的に予防する血清抗体応答を誘導する。対照的に、弱毒生インフルエンザワクチン(LAIV)は、自然の感染を模倣して、鼻腔内に投与され、局所及び全身の両方で、体液性及び細胞性免疫応答を誘導し、適合した株、並びに浮動株(drifted strain)に対する防御を与える。さらに、針を使用しないLAIVの適用は、ワクチン接種を許容するための閾値を下げ、それによりインフルエンザワクチンの適用範囲を増加し得る。
【0004】
これまで、LAIVは、米国(2003年から)、欧州(2010年から)、ロシア(1980年代から)、及びインド(2010年から)で認可されている。LAIVは、1960年代に米国及びロシアにおいて、独立して、しかし基本的に同じ方法で開発された、弱毒化したA型及びB型インフルエンザマスタードナーウイルス(MDV)に基づく。MedImmune社の季節性及び流行性LAIVウイルスは、現在、逆遺伝学(RG)によって産生される。対照的に、ロシアのLAIVは、発育卵における古典的な遺伝子リアソートメントによって産生される。ロシアのLAIVは、近年、中国及びタイにおける使用のために登録された。
【0005】
ロシアのLAIVは、(MDV)由来の残りの6個の内部タンパク質遺伝子(PB1、PB2、PA、NP、M及びNS)の骨格に、目的の循環している野生型(WT)ウイルスからのヘマグルチニン(HA)及びほとんどの場合でノイラミニダーゼ(NA)遺伝子断片を含有する、リアソータントウイルスからなる。A/Leningrad/134/17/57(H2N2)(Len-MDV)及びB/USSR/60/69MDVが、現在、LAIVのMDVとしてロシアで使用される。MDVは、それらを寒冷順応(ca)、温度感受性(ts)及び弱毒化(att)させる、複数の遺伝子断片における変異を含有する。同時期の株の表面糖タンパク質ヘマグルチニン(HA)及びノイラミニダーゼ(NA)は、リアソートメントによってこれらのMDVに組み込まれる。これらのca、ts及びatt表現型は、LAIVが低温で複製し、高温(>38℃)で複製を停止し、複製を上気道に制限することを示す。米国で使用されるMDVと比較して、ロシアのMDVは、遺伝子断片の異なる部位に存在するより少ない変異を含有し、それらが異なった形で弱毒化され得ることを示している。動物及びヒトにおける直接比較は、ロシアのMDV及びそれ由来の単一株のリアソータントが、等価物よりも免疫原性であることを示した。
【0006】
長年にわたり、ロシアのLAIVは、7500万人より多くの人々に安全に投与され、弱毒化(遺伝子安定性)及び伝染に関して安全であることが示された。毒性の回復(弱毒化した表現型の喪失)は観察されたことがなく、1つより多くの遺伝子断片において複数の変異の復帰を必要とするため、全く起こりそうにない。ロシアのLAIVウイルスの神経毒性は報告されておらず、MDVとそれ由来のリアソータントの両方が神経毒性特性を持たないことが示された。LAVの投与後、まれな症例で報告された自己限定的なインフルエンザ様症状(鼻水、鼻づまり、咽頭痛、咳、頭痛、及び微熱)を除き、免疫付与と関連する深刻な有害事象の報告はない。安全であることに加えて、LAIVは、インフルエンザウイルス感染によって引き起こされる疾患に対する防御に有効であることが示された。LAIVによって誘導される免疫は、幅広く、浮動株に対する防御が示された。特に、小児では、LAIVは、臨床的な防御及び/又は培養により確認されたインフルエンザに対する防御において不活化インフルエンザワクチンより有効であることが示され、また集団免疫を付与することも示された。
【0007】
不活化インフルエンザワクチンのように、ロシアのLAIVは、発育鶏卵を使用して産生され、ワクチン品質及び特定の病原体フリーの卵の供給者が限定される固有の不利益を伴い、卵が大規模ワクチン産生に利用可能になる前に、最低4か月のリードタイムにより先行発注を必要とする。卵のインキュベーション、採取等のための特定施設は、急速に規模拡大する生産能力を制限する。卵依存的なワクチンを産生するために必要とされる長い時間は、2009年に起こったパンデミックなど、パンデミック状況に対抗する、又はひどく病原性のインフルエンザウイルスから生じるパンデミックを止めるには、利用可能な用量が少なすぎるという結果をもたらし得る。したがって、現在のワクチン産生システムは、インフルエンザパンデミックに対応するには不十分であり、そのため新規の緊急ワクチン製造プロセスが必要とされる。理論的には、細胞培養でのインフルエンザワクチンの産生は、パンデミックの場合、重要な利点を提供する。大規模でのワクチンの製造は、他のウイルスワクチンの既存の組織培養製造ユニットを使用して、容易に達成され得る。
【0008】
産生における基質一貫性及び順応性の利用可能性の制御、パンデミックの場合に特に重要である緊急の規模拡大、卵供給及びトリ群の維持に依存しないことは、組織培養方法の主な利点である。卵の殻は、多孔質構造であり、卵は外では非滅菌である。卵でインフルエンザウイルスを増殖させる製造プロセスは、接種のために卵の殻を貫通させること、及び夾雑の特有のリスクを伴う採取のために外での操作する必要がある。さらに、細胞培養は、Good Manufacturing Practice(GMP)に従って、規定された細胞培養培地及び有効な細胞バンクによる、より制御されたシステムである。したがって、卵による産生から細部培養による産生へと移行する試みが行われてきた。
【0009】
いくつかの細胞株は、現在、細胞培養ベースのインフルエンザ産生のための調査下にあり、MRC-5細胞(参照:de Ona et al. (1995) J Clin Microbiol 33:1948-49)、HepG2細胞(参照:Ollier et al. (2004) J Clin Microbiol 42(12):5861-5)、LLC-MK2細胞(参照:Schepetiuk & Kok (1993) J Virol Methods 42(2-3):241-50)、メイディン・ダービー・イヌ腎臓(MDCK)細胞(参照:Tobita et al. (1975) Med Microbiol Immunol (Berl). 162(1):9-14 and 23-27)、アフリカミドリザルVero細胞(参照:Monto et al. (1981) J Clin Microbiol 13(1): 233-235 and Govorkova et al. (1995) J Infect Dis. 172(1):250-3)、及びPER.C6細胞(参照:Cox, R.J.et al.; Vaccine 2009, 27, 1889-1897)の使用が報告された。以前に、MRC-5、WI-38及びFRhL細胞に関しては、5.0log10 TCID50/ml以下の力価を有する低から中力価のウイルスが報告されたが、MDCK細胞に関しては、最大6.7log10 TCID50/mLの力価が報告された。細胞培養由来のインフルエンザワクチン(細胞培養での増殖に適応/最適化した卵単離のインフルエンザウイルス)は、欧州(Optaflu Novartis;2007)及び米国(Flucelvax Novartis;2012)で認可され、市場のほんの少しのインフルエンザワクチンのみが、細胞培養由来である。これは、古典的な精製方法及び面倒な安定化実施と組み合わさった、細胞培養産生システムを使用するインフルエンザワクチンの一貫しない収率のためであり得る。MDCK細胞などの細胞株の連続的な使用に関する理論的な安全性の懸念は、ワクチン製造におけるそれらの使用に関して生じた(VRBPAC、2008)。これらの懸念は、主に、ワクチン薬産生における残存細胞成分(DNA及びタンパク質)に関連し、特に、伝統的な不活化インフルエンザワクチンの場合のように不活化されない、又は広範な生化学精製も受けない弱毒生インフルエンザワクチン(LAIV)産物に関する。これらのリスクを最小限にするために、2つの戦略がとられた:細胞株特徴付け及びワクチン精製処理ステップ。精製プロセスの特定の態様は、ワクチン産物内の残存宿主細胞DNAの量及びサイズを減少させることである。Optaflu Novartis(2007)の製造は、残存宿主細胞DNAを除去するいくつかのステップを含む。これらは、インフルエンザウイルスを結合し、DNAを通過させる、セルロース硫酸イオン交換クロマトグラフィー、及び特にDNAを沈殿する、続くCTAB沈殿ステップを含む。
【0010】
以前に報告された精製プロセスは、ヒドロキシアパタイト、親和性、陰イオン交換及びサイズ排除の1つ又は複数のクロマトグラフィーを用いるため、コスト及び時間がかかる。ウイルスの全体的な回収は、クロマトグラフ法を使用する通常のワクチン産生に最適ではないことが報告された。さらに、循環しているインフルエンザウイルスは、このウイルスにおいて観察される抗原連続変異及び抗原不連続変異により、ウイルス粒子の抗原性が変化する。これらの変化は、ウイルスの理化学特性、次いでクロマトグラフマトリックスへのウイルスの結合能力に影響を与える。これは、連続変異又は不連続変異株の収率に高レベルの変更をもたらし、クロマトグラフィーを通常の産生には不適切にし得る。宿主細胞DNAの除去/減少のために使用する別の方法は、より高濃度のベンゾナーゼ(例えば、50U/ml、100U/ml)を利用し、高価である。
【0011】
医薬製剤で使用される典型的な非イオン性界面活性剤は、Triton(商標)X-100、Pluronic(登録商標)F-68、F-88、及びF-127(ポロキサマー)、Brij 35(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)、ステアリン酸ポリオキシル40、Cremophor(登録商標)EL、及びアルファ-トコフェロールTPGSを含む。これらの界面活性剤の各々は、それらが全てポリオキシエチレン部分を含有するという共通の事実を有し、したがって多かれ少なかれ、ポリオキシエチレン部分が自己酸化して反応性過酸化物を産生し、望まないタンパク質の免疫原性の増加を引き起こすという類似の問題を示す。(参照: Edward T. Maggio et al; Polysorbates, peroxides, protein aggregation, immunogenicity - a growing concern; Journal of Excipients and Food Chemicals 3(2):46-53; 2012)。
【0012】
様々な安定剤が使用され、ワクチン調製物を安定化し、所望の貯蔵期間を達成する。ポリビニルピロリドン(PVP)、トレハロース及びソルビトールなどの安定剤も、ウイルス製剤で使用される。しかしながら、PVPは、弱毒生ウイルス製剤を脱安定化することも報告された。(参照: JA White et al; Development of a stable liquid formulation of live attenuated influenza vaccine; Vaccine Volume 34, Issue 32, 12 July 2016, Pages 3676-3683; 2016)。
【0013】
トレハロースはコストがかかる;トレハロースは、安定性を達成するために、他の糖及びタンパク質添加物(ゼラチン)と組み合される必要がある。また、凍結乾燥ワクチンの貯蔵期間安定性の増加に関しては、他の安定剤がトレハロースより優れている。
【0014】
ソルビトールは、ガラス転移温度が低く(Tg)(-1.6℃)、したがって、主な製剤成分として使用することができない。ソルビトールの低いTgは、その使用を制限する。ソルビトールは、安定性を達成するために、他の糖及びタンパク質添加物(ゼラチン)と組み合される必要がある。
【0015】
産物の安全性への宿主残存DNAの理論的影響は、組織分布及びクリアランス速度が投与様式に基づいて変わり得るため、ワクチン投与経路について考慮されるべきであることが示唆された。研究は、組織からのMDCK DNAの取り込み及びクリアランスが、投与の経路に依存して変わることを実証する。DNAが鼻腔内に投与された場合、筋肉内と比較して、検出可能なDNAレベルは全ての時点で低かった。したがって、ワクチン投与の鼻腔内経路は、細胞培養によって産生された最終ワクチン産物に存在し得る、残存宿主細胞DNAと関連する起こり得るリスクを減少させるようである。(参照:D.E. Tabor et al.; Biologicals 41 (2013) 247-253)。
【0016】
本開示は、前述の制限を克服し、同様に、インフルエンザウイルスに対して防御するための、MDCK(メイディン・ダービー・イヌ腎臓)細胞ベースの鼻腔内送達される弱毒生インフルエンザワクチン(LAIV)を製造するための組成物及び方法を提供することを目的とする。本開示は、低濃度のエンドヌクレアーゼ、より具体的にはベンゾナーゼを利用し、クロマトグラフィーステップを欠き、大規模の細胞培養による産生に適している、改善された製造プロセスをさらに提供する。さらに、本開示は、1つ又は複数の弱毒生インフルエンザワクチンウイルスを含む、ポリマー及び界面活性剤を欠くLAIV製剤を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本開示は:
a)1つ又は複数の弱毒生インフルエンザワクチンウイルスであって、弱毒生インフルエンザワクチンウイルス株が、野生型流行性又は季節性インフルエンザウイルスからのヘマグルチニン(HA)遺伝子及び/又はノイラミニダーゼ(NA)遺伝子、並びにPB1、PB2、PA、NP、M、及びNSタンパク質を発現する遺伝子、並びにいくつかの場合では、マスタードナーウイルス(MDV)、A/Leningrad/134/17/57(H2N2)及び/又はB/USSR/60/69株由来のNAタンパク質から基本的になる、リアソートメントの「古典的」又は「逆遺伝学」方法によって誘導される弱毒生インフルエンザワクチンウイルス;
b)1つ又は複数のアミノ酸、
c)1つ又は複数の糖質、及び
d)ゼラチン
を含む、MDCK細胞ベースの鼻腔内送達される弱毒生インフルエンザワクチン(LAIV)組成物を提供する。
【0018】
本開示は、そのようなワクチン組成物/製剤を製造するための方法をさらに提供する。
目的
本明細書の少なくとも1つの実施形態が満たす、本開示のいくつかの目的は、以下の通りである:
本開示の一目的は、先行技術の1つ又は複数の問題を改善すること、又は少なくとも、有用な代替物を提供することである。
【0019】
本開示の別の目的は、鼻腔内に送達され得る、弱毒生インフルエンザワクチン(LAIV)を製造するためのワクチン組成物及び方法を提供することである。
本開示のさらに別の目的は、卵の使用が完全に避けられる、メイディン・ダービー・イヌ腎臓(MDCK)細胞ベースの弱毒生インフルエンザワクチン(LAIV)組成物を提供することである。
【0020】
本開示のさらに別の目的は、1つ又は複数の弱毒生インフルエンザワクチンウイルスを含み、ポリマー及び界面活性剤を欠く、LAIV組成物を提供することである。
本開示のさらに別の目的は、1つ又は複数の弱毒生インフルエンザワクチンウイルスを含み、LAIV株が、野生型流行性又は季節性インフルエンザ株の1つ又は2つの表面糖タンパク質を含有する、マスタードナーウイルス(MDV)の寒冷順応、温度感受性及び弱毒化させた表現型に基づく、LAIV組成物を提供することである。
【0021】
本開示のさらに別の目的は、組成物が、免疫原性及び安定性を含む、ウイルスの所望の特徴を保持する、MDCK細胞ベースの鼻腔内送達される弱毒生インフルエンザワクチン(LAIV)組成物を提供することである。
【0022】
本開示のさらに別の目的は、インフルエンザウイルス感染を処置又は予防するために好適な、又はその臨床症状の発症又は進行を予防、改善、又は遅延する、MDCK細胞ベースの鼻腔内送達される弱毒生インフルエンザワクチン(LAIV)組成物/製剤を提供することである。
【0023】
本開示のさらに別の目的は、大規模での細胞培養による産生に適しているMDCK細胞ベースの弱毒生インフルエンザワクチン産生の分野における改善された方法論を提供することである。
【0024】
本開示の他の目的及び利点は、以下の説明からより明らかであり、本開示の範囲を制限することを意図しない。
本開示は、以下に列挙した添付の図面を用いてここで記載する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、リアソータントワクチン株を生成する、野生型流行性又は季節性インフルエンザウイルスと弱毒化MDVのリアソートメントの概略図であり、(A)は野生型ウイルス感染性の病原体を表し、(B)は温度感受性(ts)、寒冷順応(ca)、及び弱毒化(at)表現型遺伝子断片を含むマスタードナーウイルスを表し、(C)はリアソータントワクチン株を表す。
図2図2は、表3Bに開示のように安定剤組成物1による、A型インフルエンザ株(A/17/turkey/Turkey/05/133-A/H5N2)ウイルスログ収率力価(EID50/0.5ml)の37℃での安定性を示すグラフである。
図3図3は、表3Aに開示のように安定剤組成物1による、A型インフルエンザ株(A/17/turkey/Turkey/05/133-A/H5N2及びA/17/Anhui/2013/61-A/H7N9)ウイルスログ収率力価(EID50/0.5ml)の2~8℃での安定性を示すグラフである。
図4図4は、表3Bに開示のように安定剤組成物3による、A型インフルエンザ株(A/17/California/2009/38-A/H1N1)及びB型インフルエンザ株(B/Texas/02/13-CDC)ウイルスログ収率力価(EID50/0.5ml)の37℃での安定性を示すグラフである。
図5図5は、表3Aに開示のように安定剤組成物3による、A型インフルエンザ株(A/17/California/2009/38-A/H1N1)及びB型インフルエンザ株(B/Texas/02/13-CDC)ウイルスログ収率力価(EID50/0.5ml)の2~8℃での安定性を示すグラフである。
図6図6は、表3Bに開示のように安定剤組成物4による、A型インフルエンザ株(A/17/California/2009/38-A/H1N1)及びB型インフルエンザ株(B/Texas/02/13-CDC)ウイルスログ収率力価(EID50/0.5ml)の37℃での安定性を示すグラフである。
図7図7は、表3Aに開示のように安定剤組成物4による、A型インフルエンザ株(A/17/California/2009/38-A/H1N1)及びB型インフルエンザ株(B/Texas/02/13-CDC)ウイルスログ収率力価(EID50/0.5ml)の2~8℃での安定性を示すグラフである。
図8図8は、表3Bに開示のように安定剤組成物2による、A型インフルエンザ株(A/SouthAfrica/3626/13-H1N1)及びB型インフルエンザ株(B/Texas/02/13-CDC)ウイルスログ収率力価(EID50/0.5ml)の37℃での安定性を示すグラフである。
図9図9は、表3Aに開示のように安定剤組成物2による、A型インフルエンザ株(A/SouthAfrica/3626/13-H1N1)及びB型インフルエンザ株(B/Texas/02/13-CDC)ウイルスログ収率力価(EID50/0.5ml)の2~8℃での安定性を示すグラフである。
図10図10は、表3Bに開示のように安定剤組成物1による、A型インフルエンザ株(A/SouthAfrica/3626/13-H1N1)及びB型インフルエンザ株(B/Texas/02/13-CDC)ウイルスログ収率力価(EID50/0.5ml)の37℃での安定性を示すグラフである。
図11図11は、表3Aに開示のように安定剤組成物1による、A型インフルエンザ株(A/SouthAfrica/3626/13-H1N1)及びB型インフルエンザ株(B/Texas/02/13-CDC)ウイルスログ収率力価(EID50/0.5ml)の2~8℃での安定性を示すグラフである。
図12図12は、鼻甲介及び肺試料で試験する感染性ウイルスを示す図である。動物は、1又は2用量のH5 LAIV、H7 LAIV、又はプラセボによってワクチン接種した。群1~4は、H5/tk/Tkでチャレンジし、群5及び6は、H5/Vtでチャレンジし、群7~10は、H7/Anでチャレンジした。感染の4日後に回収した鼻甲介試料(a)及び肺試料(b)は、複製可能ウイルス粒子の存在について力価測定した。個々の力価は、黒い実線によって示した群平均によって示す。
図13図13は、免疫付与後のHI及びVN抗体応答を示す図である。相同チャレンジウイルス、H5 LAIV免疫動物ではH5/tk/Tk及びH7 LAIV免疫動物ではH7/Anに対する最後の免疫付与(1用量レジメでは28試験日及び2用量レジメでは56試験日)の28日後の幾何平均抗体応答。(a)HI抗体力価(b)VN抗体力価。群当たりN=6、エラーバーは、平均の標準エラーを表す。統計的有意性は、マン・ホイットニーのU検定によって決定された。p<0.05及び**P<0.01。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示は、異なる実施形態に影響され得るが、特定の実施形態は、本開示が本開示の原理の例証と考えられ、この説明に例示及び開示される本開示の範囲を限定することを意図しないという理解により、図面及び以下の詳細な説明に示される。
【0027】
本開示の実施形態は、ここで、添付の図面に関して記載される。
実施形態は、本開示の範囲を当業者にくまなく及び完全に伝えるように提供される。特定の構成要素及び方法に関する、多くの詳細が記載され、本開示の実施形態の完全な理解を提供する。実施形態に提供される詳細が、本開示の範囲を限定すると解釈されるべきではないことは、当業者には明らかであろう。一部の実施形態では、周知のプロセス、周知の機器構造、及び周知の技術は詳細には記載されない。
【0028】
本開示で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のためだけであり、そのような用語は本開示の範囲を限定すると考えられるべきではない。本開示で使用する場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」形態は、文脈が明確に他に示さない限り、同様に複数の形態を含むことを意図し得る。
【0029】
用語、第1、第2、第3等は、前述の用語が、1つの要素、構成要素、領域、層又は部分を別の構成要素、領域、層又は部分と区別するためだけに使用され得る場合、本開示の範囲を限定すると解釈されるべきではない。第1、第2、第3等の用語は、本明細書で使用する場合、本開示によって明確に示さない限り、特定の並び又は順序を意味しない。
【0030】
本明細書で使用する場合、用語「インフルエンザウイルス」は、オルトミクソウイルス科であるA型、B型、C型、及びD型インフルエンザウイルスを含むRNAウイルスを指す。インフルエンザウイルスは、野生型流行性又は季節性生インフルエンザウイルス、弱毒生インフルエンザワクチンウイルス、不活化インフルエンザウイルス、キメラインフルエンザウイルス、又は組換えインフルエンザウイルスであり得る。
【0031】
本開示は、インフルエンザウイルスによる感染に対する防御のための弱毒生インフルエンザワクチン(LAIV)ウイルスを含む組成物を提供する。本開示は、1つ又は複数のインフルエンザワクチンウイルスを含む組成物を製造するための方法をさらに提供する。
【0032】
本開示の第一の実施形態により、LAIV組成物は、1つ又は複数の弱毒生インフルエンザワクチンウイルス、1つ又は複数のアミノ酸、1つ又は複数の糖質及びゼラチンを含み得る。
【0033】
用語「生」は、その従来の意味で使用され、生ウイルスは、不活化されていないウイルス、すなわち許容細胞で複製することができるウイルスである。弱毒生インフルエンザワクチンウイルスは、動物又はヒトにおいて相当する野生型ウイルスによって引き起こされる疾患を誘導せず、特定の免疫応答を誘導することができるウイルスである。
【0034】
本開示の第2の実施形態により、1つ又は複数の弱毒生インフルエンザワクチンウイルスは、1つ又は複数のインフルエンザウイルス株からの遺伝子断片を含む、リアソートメントの「古典的」又は「逆遺伝学」方法によって誘導され得る。
【0035】
第2の実施形態の第1の態様により、リアソータント弱毒生インフルエンザワクチンウイルスは、1:7、2:6、3:5、4:4、5:3、6:2又は7:1の比で、マスタードナーウイルス(MDV)株の寒冷順応、温度感受性及び/又は弱毒化表現型遺伝子断片(PB1、PB2、PA、NP、M及び/又はNSタンパク質)と野生型流行性又は季節性A型又はB型又はC型インフルエンザウイルス株のヘマグルチニン(HA)及び/又はノイラミニダーゼ(NA)を含むリアソータントLAIVウイルスである。
【0036】
さらに好ましくは、リアソータント弱毒生インフルエンザワクチンウイルスは、マスタードナーウイルス(MDV)株並びに野生型流行性又は季節性インフルエンザウイルス株からの遺伝子断片を、6:2の比で含み得る(図1に示す)。
【0037】
第2の実施形態の第2の態様により、リアソータント弱毒生インフルエンザワクチンウイルスは、任意の亜型のA型インフルエンザウイルス由来のマスタードナーウイルス(MDV)からの遺伝子断片を含み得る、又は任意の亜型のB型インフルエンザウイルスに由来し得る。
【0038】
リアソータント弱毒生インフルエンザワクチンウイルスは、A/Leningrad/134/17/57(H2N2)A型インフルエンザ株、B/USSR/60/69B型インフルエンザ株を含む群から選択されるマスタードナーウイルス(MDV)からの遺伝子断片を含み得る。
【0039】
さらに好ましくは、リアソータント弱毒生A型インフルエンザワクチンウイルスは、A/Leningrad/134/17/57(H2N2)A型インフルエンザ株を含むマスタードナーウイルス(MDV)からの遺伝子断片を含み得る。
【0040】
さらに好ましくは、リアソータント弱毒生A型インフルエンザワクチンウイルス株-A/17/California/2009/38は、A/Leningrad/134/17/57(H2N2)A型インフルエンザ株を含むマスタードナーウイルス(MDV)からの遺伝子断片を含み得る。
【0041】
さらに好ましくは、リアソータント弱毒生A型インフルエンザワクチンウイルス株-A/17/turkey/Turkey/05/133は、A/Leningrad/134/17/57(H2N2)A型インフルエンザを含むマスタードナーウイルス(MDV)からの遺伝子断片を含み得る。
【0042】
さらに好ましくは、リアソータント弱毒生A型インフルエンザワクチンウイルス株-A/17/Anhui/2013/61は、A/Leningrad/134/17/57(H2N2)A型インフルエンザを含むマスタードナーウイルス(MDV)からの遺伝子断片を含み得る。
【0043】
さらに好ましくは、リアソータント弱毒生A型インフルエンザワクチンウイルス株-A/17/New York/15/5364は、A/Leningrad/134/17/57(H2N2)A型インフルエンザを含むマスタードナーウイルス(MDV)からの遺伝子断片を含み得る。
【0044】
さらに好ましくは、リアソータント弱毒生A型インフルエンザワクチンウイルス株-A/17/Hong-Kong/2014/8296は、A/Leningrad/134/17/57(H2N2)A型インフルエンザを含むマスタードナーウイルス(MDV)からの遺伝子断片を含み得る。
【0045】
さらに好ましくは、リアソータント弱毒生A型インフルエンザワクチンウイルス株-A/South-Africa/3626/2013-CDC-LV14Aは、A/Leningrad/134/17/57(H2N2)A型インフルエンザを含むマスタードナーウイルス(MDV)からの遺伝子断片を含み得る。
【0046】
さらに好ましくは、リアソータント弱毒生B型インフルエンザワクチンウイルスは、B/USSR/60/69 B型インフルエンザ株を含むマスタードナーウイルス(MDV)からの遺伝子断片を含み得る。
【0047】
さらに好ましくは、リアソータント弱毒生B型インフルエンザワクチンウイルス株-B/Texas/02/2013-CDC-LV8Bは、B/USSR/60/69 B型インフルエンザ株を含むマスタードナーウイルス(MDV)からの遺伝子断片を含み得る。
【0048】
さらに好ましくは、リアソータント弱毒生B型インフルエンザワクチンウイルス株-B/Phuket/3073/2013は、B/USSR/60/69 B型インフルエンザ株を含むマスタードナーウイルス(MDV)からの遺伝子断片を含み得る。
【0049】
さらに好ましくは、リアソータント弱毒生B型インフルエンザワクチンウイルス株-B/56/Brisbane/60/08は、B/USSR/60/69 B型インフルエンザ株を含むマスタードナーウイルス(MDV)からの遺伝子断片を含み得る。
【0050】
第2の実施形態の第3の態様により、リアソータント弱毒生インフルエンザワクチンウイルスは、A型インフルエンザウイルス又はB型インフルエンザウイルス又はC型インフルエンザウイルスからのヘマグルチニン(HA)遺伝子及び/又はノイラミニダーゼ(NA)遺伝子を含み得る。
【0051】
さらに好ましくは、リアソータント弱毒生A型インフルエンザワクチンウイルス株は、A型インフルエンザウイルスのHA亜型H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、H17若しくはH18、又は任意の他の報告されたHA亜型からのヘマグルチニン(HA)遺伝子、及び/又はA型インフルエンザウイルスのNA亜型N1、N2、N3、N4、N5、N6、N7、N8、N9、N10若しくはN11、又は任意の他の報告されたNA亜型からのノイラミニダーゼ(NA)遺伝子を含み得る。
【0052】
さらに好ましくは、リアソータント弱毒生インフルエンザワクチンウイルスは、流行性インフルエンザウイルス株又は流行性の可能性があるインフルエンザウイルス株からのヘマグルチニン(HA)遺伝子及び/又はノイラミニダーゼ(NA)遺伝子を含み得る。
【0053】
さらに好ましくは、リアソータント弱毒生インフルエンザワクチンウイルスは、季節性インフルエンザウイルス株からのヘマグルチニン(HA)遺伝子及び/又はノイラミニダーゼ(NA)遺伝子を含み得る。
【0054】
さらに好ましくは、リアソータント弱毒生インフルエンザワクチンウイルス株は、A型インフルエンザウイルスの亜型H1N1、H2N2、H3N2、H5N1、H5N2、H9N2、H7N1、H7N3、H7N7、H6N1、H7N9、及びH10N8、又は任意の他の先に報告された若しくは新しく検出されたウイルス株からのヘマグルチニン(HA)遺伝子及び/又はノイラミニダーゼ(NA)遺伝子を含有し得る。
【0055】
さらに好ましくは、リアソータント弱毒生インフルエンザワクチンウイルス株は、A型インフルエンザウイルスpdmH1N1株からのヘマグルチニン(HA)遺伝子及び/又はノイラミニダーゼ(NA)遺伝子を含有し得る。
【0056】
さらに好ましくは、リアソータント弱毒生インフルエンザワクチンウイルス株は、A型インフルエンザウイルスA/California/07/2009(A/Calと呼ばれる)様株からのヘマグルチニン(HA)遺伝子及び/又はノイラミニダーゼ(NA)遺伝子を含有し得る。
【0057】
さらに好ましくは、リアソータント弱毒生インフルエンザワクチンウイルス株は、A型インフルエンザウイルスA/Michigan/45/2015様株からのヘマグルチニン(HA)遺伝子及び/又はノイラミニダーゼ(NA)遺伝子を含有し得る。
【0058】
さらに好ましくは、リアソータント弱毒生インフルエンザワクチンウイルス株は、A型インフルエンザウイルス株-A/South-Africa/3626/2013様株からのヘマグルチニン(HA)遺伝子及び/又はノイラミニダーゼ(NA)遺伝子を含有し得る。
【0059】
さらに好ましくは、リアソータント弱毒生インフルエンザワクチンウイルス株は、A型インフルエンザウイルスH3N2-A/HongKong/4801/2014様株からのヘマグルチニン(HA)遺伝子及び/又はノイラミニダーゼ(NA)遺伝子を含有し得る。
【0060】
さらに好ましくは、リアソータント弱毒生インフルエンザワクチンウイルス株は、Yamagata様又はVictoria様のいずれかの2つの異なる系統に属する、B型インフルエンザウイルスからのヘマグルチニン(HA)遺伝子及び/又はノイラミニダーゼ(NA)遺伝子を含有し得る。
【0061】
さらに好ましくは、リアソータント弱毒生インフルエンザワクチンウイルス株は、B型インフルエンザウイルスのVictoria系統-B/Brisbane/60/2008様株からのヘマグルチニン(HA)遺伝子及び/又はノイラミニダーゼ(NA)遺伝子を含有し得る。
【0062】
さらに好ましくは、リアソータント弱毒生インフルエンザワクチンウイルス株は、B型インフルエンザウイルスのYamagata系統-B/Phuket/3073/2013様株からのヘマグルチニン(HA)遺伝子及び/又はノイラミニダーゼ(NA)遺伝子を含有し得る。
リアソータントの生成のための2つの方法がある
1.リアソートメントの古典的方法
野生型流行性又は季節性インフルエンザワクチンウイルス及びリアソータント株を生成する弱毒MDVのリアソートメントのプロセスは、培養宿主、通常卵と、MDV株及び野生型ウイルス株との同時感染を含む。リアソータントウイルスは、野生型ウイルス株のHA及び/又はNAタンパク質を含有するリアソータントウイルスを選択するために、MDVのHA及び/又はNAタンパク質に特異性を有する抗体を添加することによって選択される。この処置の数回の継代にわたり、野生型流行性又は季節性インフルエンザワクチンウイルス株のHA及び/又はNA断片及びMDVの内部遺伝子を含有する、増殖の速いリアソータントウイルスを選択することができる。
2.リアソートメントの逆遺伝学方法
逆遺伝学は、DNAコピーから感染性ウイルス粒子を生成する方法である。ワクチンへの組入れが推奨されるMDVの6個の内部遺伝子並びに野生型株からのHA及びNA遺伝子が、培養細胞にトランスフェクトされた場合に全長ウイルスRNAを生成することができるプラスミドにクローニングされる。これらのプラスミドは、ウイルスのポリメラーゼサブユニットを発現する4つのプラスミドと共に培養細胞にトランスフェクトされる。ポリメラーゼサブユニットの発現及び全長ウイルスRNAの生成は、ウイルスのアセンブリー及び上清への感染性ウイルス粒子の放出をもたらす。このレスキューされたウイルスは、推奨される株及びMDVのca、ts、att表現型の抗原特徴を示す。
【0063】
リアソータントLAIV株は、ロシア、サンクトペテルブルクの実験医学研究所(IEM)、又はアトランタの疾患予防管理センター(CDC)などのWHO協力センターから産生される。
【0064】
本開示の第3の実施形態により、LAIV組成物は、限定はされないが、天然の糖質、合成の糖質、ポリオール、ガラス転移促進剤、単糖、二糖、三糖、オリゴ糖及びそれらの相当する糖アルコール、糖質の誘導体及び化学修飾糖質などのポリヒドロキシル化合物、ヒドロキシエチルデンプン、並びに糖コポリマーの群から選択される、1つ又は複数の糖質を含み得る。天然糖質及び合成糖質は、両方とも使用に好適である。合成糖質は、限定はされないが、チオール又は炭素結合によって置き換えられるグリコシド結合を有するものを含む。糖質のD体及びL体の両方ともが使用され得る。糖質は、非還元又は還元であり得る。還元糖質が使用される場合、メイラード反応の阻害剤の添加が好ましい。組成物での使用に好適な還元糖質は、当業者に公知のものであり、限定はされないが、グルコース、スクロース、マルトース、ラクトース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、マルツロース、及びラクツロースを含む。非還元糖質は、限定はされないが、糖アルコール及び他の直鎖ポリアルコールから選択されるポリヒドロキシル化合物の非還元グリコシドを含む。他の有用な糖質は、ラフィノース、スタキオース、メレジトース、デキストラン、セリビオース(cellibiose)、マンノビオース及び糖アルコールを含む。糖アルコールグリコシドは、好ましくはモノ配糖体であり、特にラクトース、マルトース、ラクツロース及びマルツロースなどの二糖の還元によって得られる化合物である。ガラス形成剤は、スクロース、マンニトール、トレハロース、マンノース、ラフィノース、ラクチトール、ラクトビオン酸、グルコース、マルツロース、イソ-マルツロース、マルトース、ラクトース、ソルビトール、デキストロース、フルクトース、グリセロール、又はこれらの組合せからなる群から選択される。
【0065】
さらに第3の実施形態の好ましい態様により、LAIV組成物は、1%と20%重量/容積の間、好ましくは1~10%の間、より好ましくは3~6%の間、最も好ましくは4%(w/v)の範囲の好適な糖質安定剤としてスクロースを含み得る。
【0066】
本開示の第4の実施形態により、LAIV組成物は、限定はされないが、トリシン、アルギニン、ロイシン、イソロイシン、ヒスチジン、グリシン、グルタミン、リジン、アラニン、ペプチド、加水分解タンパク質又は血清アルブミンなどのタンパク質の群から選択される、1つ又は複数のアミノ酸を含み得る。
【0067】
さらに第4の実施形態の好ましい態様により、LAIV組成物は、個々に又は組み合わせて好適なアミノ酸として、トリシン、アルギニン、ヒスチジン及びアラニンを含み得る。
【0068】
さらに第4の実施形態の好ましい態様により、1つ又は複数のアミノ酸は、0.1%と2%重量/容積の間、好ましくは0.1~1%の間、より好ましくは0.1~0.5%の間、最も好ましくは0.3%(w/v)の範囲のトリシンを含み得る。
【0069】
さらに第4の実施形態の好ましい態様により、1つ又は複数のアミノ酸は、0.1%~2%(w/v)の間、好ましくは0.1~1%の間、より好ましくは0.1~0.5%の間、最も好ましくは0.21%(w/v)の範囲のヒスチジンを含み得る。
【0070】
さらに第4の実施形態の好ましい態様により、1つ又は複数のアミノ酸は、0.01%と1%重量/容積の間、好ましくは0.05~0.5%の間、より好ましくは0.08~0.2%の間、最も好ましくは0.1%(w/v)の範囲のアラニンを含み得る。
【0071】
さらに第4の実施形態の好ましい態様により、1つ又は複数のアミノ酸は、0.1%と10%重量/容積の間、好ましくは0.1~5%の間、より好ましくは0.1~3%の間、最も好ましくは2.1%(w/v)の範囲のアルギニンを含み得る。
【0072】
本開示の第5の実施形態により、LAIV組成物は、0.1%と10%重量/容積の間、好ましくは0.1~5%の間、より好ましくは0.1~3%の間、最も好ましくは0.85%(w/v)の範囲のゼラチンを含み得る。
【0073】
本明細書で使用する場合、用語「ゼラチン」は、最も一般的には、ウシ、ブタ、及びサカナ起源由来の、動物コラーゲンの部分酸加水分解(Aタイプゼラチン)又は部分アルカリ加水分解(Bタイプゼラチン)によって産生される、滅菌非発熱性のタンパク質調製物(例えば、画分)を意味する。ゼラチンは、様々な分子量範囲で得られる。組換え起源のゼラチンも使用され得る。
【0074】
本開示の第6の実施形態により、LAIV組成物は、HEPES、クエン酸-リン酸、炭酸、リン酸、クエン酸、乳酸、グルコン酸、及び酒石酸緩衝剤、並びに所望のpHを達成するように選択される比で、リン酸ナトリウム及び/又はリン酸カリウムを含有するリン酸緩衝剤を含むより複雑な有機緩衝剤からなる群から選択される緩衝剤をさらに含み得る。別の例では、緩衝剤は、所望のpHを達成するように処方された、Tris(ヒドロキシメチル)アミノメタン、又は「Tris」を含有する。さらに別の例では、緩衝剤は、Hanks塩を含む最小必須培地であり得る。
【0075】
本開示の第7の実施形態により、単回投与の組成物は、保存剤を含まず、複数回投与の組成物は、2-フェノキシエタノール、塩化ベンゼトニウム(フェメロール)、フェノール、m-クレゾール、チオメルサール、ホルムアルデヒド、パラベンエステル(例えば、メチル-、エチル-、プロピル-、又はブチル-パラベン)、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、p-クロロ-m-クレゾール、若しくはベンジルアルコール又はこれらの組合せを含む群から選択される保存剤をさらに含み得る。ワクチン組成物は、単回免疫付与のための物質を含み得る、又は複数回免疫付与のための物質(すなわち、「複数回投与」キット)を含み得る。保存剤を含むことは、複数回投与の配合に好まれる。複数回投与の組成物に保存剤を含むことの代替として(又は加えて)、組成物は、物質の除去のための防腐処置のアダプターを有する容器に含有され得る。
【0076】
本開示の第8の実施形態により、LAIV組成物は、薬学的に許容される輸送体、賦形剤、結合剤、担体、等張化剤、乳剤、又は湿潤剤をさらに含み、ここで、薬学的に許容される賦形剤は、界面活性剤、ポリマー、及び塩からなる群から選択される。界面活性剤の例は、ポリソルベート20、ポリソルベート80等などの非イオン性の界面活性剤を含み得る。ポリマーの例は、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸、シクロデキストリン等を含み得る。塩の例は、NaCl、KCl、KHPO、NaHPO、2HO、CaCl、MgCl等を含み得る。
【0077】
本開示の第9の実施形態により、LAIV組成物は、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、水酸化リン酸アルミニウム、及び硫酸アルミニウムカリウム、又はこれらの混合物をさらに含み得る。
【0078】
本開示の第10の実施形態により、LAIV組成物は、油と水のエマルジョン、MF-59、リポソーム、リポポリサッカライド、サポニン、リピドA、リピドA誘導体、モノホスホリルリピドA、3-脱アシルモノホスホリルリピドA、AS01、AS03、オリゴヌクレオチド、少なくとも1つの非メチル化CpG及び/又はリポソームを含むオリゴヌクレオチド、フロイントアジュバント、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、ポリマー、コポリマー、例えばブロックコポリマーを含むポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー、ポリマーp1005、CRL-8300アジュバント、ムラミルジペプチド、TLR-4アゴニスト、フラジェリン、グラム陰性細菌由来のフラジェリン、TLR-5アゴニスト、TLR-5受容体に結合することができるフラジェリンの断片、アルファ-C-ガラクトシルセラミド、キトサン、インターロイキン-2、OS-21、ISCOMS、ステロールと組み合わせたサポニン及び脂質からなる群から選択される免疫刺激成分をさらに含み得る。
【0079】
本開示の第11の実施形態により、MDCK細胞培養ベースのLAIV組成物を調製する方法は、以下のステップの任意のサブセット又は全てを含み得る:
a)LAIV候補ワクチンウイルスを、先ず、卵ベースのマスターシードウイルス(MSV)を産生するSPF発育鶏卵において継代する。
【0080】
b)卵ベースのマスターシードウイルスを、細胞培養宿主で増殖するように順応させ、細胞ベースのワーキングシードウイルス(WSV)を調製する。この細胞ベースのWSVを、表面積175cmの組織培養フラスコ(TCF)、表面積850cmのローラーボトル(RB)、表面積6320cmのCell Factories(CF)、及び固定床バイオリアクター(例えば、Pall(登録商標)Life Scienses,Port Washington,N.Y.からのiCELLis(登録商標)バイオリアクター、例えばNano及び500/100バイオリアクター)のような、異なる細胞培養器/システムを使用して宿主細胞で継代培養及び増殖する。
【0081】
c)培養したウイルスを採取する。
d)ウイルスの採取物を、少なくとも1つの清澄化フィルターを通すダイレクトフロー濾過(DFF)によって濾過し、清澄化ウイルスプール(CVP)を得る。
【0082】
e)CVPを、非特異的エンドヌクレアーゼによって処置し、細胞DNAを分解する。
f)エンドヌクレアーゼ処置したCVPをタンジェントフロー濾過にかける。
g)1つ又は複数の糖質、1つ又は複数のアミノ酸及びゼラチンを含む安定剤組成物によってTFF濃縮物を安定化し、安定化ウイルス採取物を形成するステップ。
【0083】
h)少なくとも1つの滅菌グレードのフィルターを通すDFFにより、安定化したTFF濃縮物を滅菌して、滅菌の清澄化した一価のウイルスプール(CMVP)を得るステップ。
【0084】
i)滅菌したCMVPを、-60℃以下でポリカーボネートボトルに保存する。
j)滅菌した製剤をバイアルに充填し、2~8℃で保存する。
第11の実施形態の第1の態様により、卵ベースのLAIVウイルス候補を、任意の真核細胞であり得る細胞培養宿主での増殖に順応させた。さらに好ましくは、細胞培養宿主は、哺乳動物又はトリ細胞のいずれかであり得る。好適な哺乳動物細胞は、限定はされないが、ハムスター、ウシ、霊長類(ヒト及びサルを含む)、及びイヌ細胞を含む。様々な細胞型は、限定はされないが、腎臓細胞、線維芽細胞、網膜細胞、及び肺細胞を含む。好適なハムスター細胞の例は、BHK21又はHKCCと名付けられた細胞株である。好適なサル細胞は、例えば、Vero細胞株のような、腎臓細胞などの、アフリカミドリザル細胞である。好適なイヌ細部は、例えば、CLDK及びMDCK細胞株のような、腎臓細胞である。
【0085】
さらに好適な細胞は、限定はされないが:CHO;293T;BHK;MRC 5;PER.C6;FRhl.2;WI-38;等を含む。好適な細胞は、例えば、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)から、コーリエル細胞集積所から、又はヨーロピアン・コレクション・オブ・セル・カルチャー(ECACC:European Collection of Cell Cultures)から広く入手可能である。例えば、ATCCは、カタログ番号CCL 81、CCL 81.2、CRL 1586及びCRL-1587の様々な異なるVero細胞を供給し、カタログ番号CCL 34のMDCK細胞を供給する。PER.C6は、寄託番号96022940でECACCから入手可能である。
【0086】
さらに好ましくは、細胞培養宿主は、限定はされないが、ATCC CCL-34、MDCK 33016細胞株(DSM ACC 2219)、MDCK(ATCC CCL34 MDCK(NBL2))、MDCK 33016(DSM ACC 2219)、DSM ACC3309、ATCC CRL-12042、ATCC PTA-7909、ATCC PTA-7910、ATCC PTA-6500、ATCC PTA-6501、ATCC PTA-6502、ATCC PTA-6503、‘MDCK-S’、‘MDCK-SF101’、‘MDCK-SF102’、‘MDCK-SF103’及びFERM BP-7449から選択されるメイディン・ダービー・イヌ腎臓(MDCK)細胞であり得る。
【0087】
さらに好ましくは、細胞培養宿主は、ATCC CCL 34(NBL2)のメイディン・ダービー・イヌ腎臓(MDCK)細胞であり得る。
第11の実施形態の第2の態様により、MDCK細胞は、10%ウシ胎仔血清(FBS)を含む、最小必須培地(MEM)中で培養され得る。細胞の培養は、37℃±1℃で起こり得る。感染前の細胞の増殖中の培地のpH値は、pH6.8とpH7.6、及びより好ましくは、pH7.0とpH7.4の値の間の範囲であり得る。
【0088】
さらに、MDCK細胞は、血清フリー又はタンパク質フリー培地中で培養され得る。
第11の実施形態の第3の態様により、感染前に、MDCK細胞は、MDMで、続いて5~25U/mlの範囲のプロテアーゼを含有するMEMで洗浄され得る。
【0089】
しかしながら、プロテアーゼは、限定はされないが、トリプシン、キモトリプシン、真菌プロテアーゼ、ペプシン、パパイン、ブロメライン、及びサブチリシンから選択され得る。
【0090】
さらに好ましくは、プロテアーゼは、ブタ起源又はウシ起源又は真菌起源又は細菌起源から得られたトリプシンであり得る。
さらに好ましくは、プロテアーゼは、限定はされないが、アスペルギルス属(Aspergillus spp)、ストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)、トウモロコシ、大腸菌(E.coli)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)から選択される、酵母又は植物又は細菌の宿主細胞において発現される組換えトリプシンであり得る。
【0091】
さらに、好ましいトリプシン濃度は12.5U/mlである。
第11の実施形態の第4の態様により、感染前に、ワーキングシードウイルスは、5~25U/mlの範囲のプロテアーゼを含有するMEMでウイルスを希釈し、10~60分間、31℃~33℃の温度でインキュベートすることによって、活性化され得る。
【0092】
しかしながら、プロテアーゼは、限定はされないが、トリプシン、キモトリプシン、真菌プロテアーゼ、ペプシン、パパイン、ブロメライン、及びサブチリシンから選択され得る。
【0093】
さらに好ましくは、プロテアーゼは、ブタ起源又はウシ起源又は真菌起源又は細菌起源から得られるトリプシンであり得る。
さらに好ましくは、プロテアーゼは、限定はされないが、アスペルギルス属、ストレプトマイセス・グリセウス、トウモロコシ、大腸菌、ピキア・パストリスから選択される、酵母又は植物又は細菌の宿主細胞において発現される組換えトリプシンであり得る。好ましくは、前記組換えトリプシンは、Biogenomics(宿主として大腸菌)、D.K.Bio Pharma Pvt.Ltd(宿主として大腸菌)、Richcore(宿主としてピキア・パストリス)及びGibco(真菌)から選択される。
【0094】
さらに、好ましいトリプシン濃度は12.5U/mlである。
さらに、好ましいトリプシン濃度は、ローラーボトル当たり2000~3000ユニットのトリプシンである。
【0095】
第11の実施形態の第5の態様により、LAIVウイルス候補によるMDCK細胞の感染は、好ましくはTCFでは40~60×10個/TCF、RBでは150~180×10個/RB、及びバイオリアクター(4m)では7000~10000×10個/BR(4m)のMDCK細胞密度で生じ得る。
【0096】
第11の実施形態の第6の態様により、LAIVウイルス候補は、接着培養又は浮遊培養様式で、MDCK細胞で増殖され得る。
第11の実施形態の第7の態様により、卵ベースのLAIVウイルス候補によるMDCK細胞の感染は、1:100~1:10000の間のMOIで起こり得る。
【0097】
第11の実施形態の第8の態様により、感染後、MDCK細胞は、32℃±1℃の温度で、5~25U/mlの範囲のトリプシンを含有する最小必須培地(MEM)中で培養され得る。感染後の培地のpH値は、pH6.8とpH7.6の範囲、最も好ましくは7.2~7.6の範囲であり得る。
【0098】
第11の実施形態の第9の態様により、感染後、細胞上清は、40~70時間のインキュベーション期間後に採取され得る;より好ましくは、54±8時間であり得る。
さらに代わりに、複数回の採取が、インプット物質を捨てる前に約4~5回、適切な時間間隔で行われ、別々に処理され、清澄化した一価のウイルスプール(CMVP)が得られる。
【0099】
採取時、少なくとも7.0~9.2 LogEID50/0.5mlのウイルス収率が達成され得る。
第11の実施形態の第10の態様により、ウイルスを含有する培地は、典型的には、孔サイズが減少するフィルター(例えば、6μ、5μ、0.8μ、0.65μ、0.45μ、0.2μ)を通して、清澄化され得る。好適な市販のフィルター及び濾過装置は、当技術分野で周知であり、当業者によって選択され得る。例示的な濾過装置は、ポリプロピレン又は酢酸セルロース又はポリエーテルスルホンで作製され、市販のフィルターは、Millipak(Millipore)、Kleenpak(Pall)及びSartobran(商標)(Sartorius)濾過装置であり得る。
【0100】
第11の実施形態の第11の態様により、濾過した採取物は、非特異的エンドヌクレアーゼ、最も好ましくは、ベンゾナーゼにより、0.5Units/ml~2Units/mlの間で変動する濃度、30~34℃の間の範囲の温度で、2~6時間、続いて2~8℃の温度で5~15時間処置され得る。
【0101】
さらに代わりに、濾過した採取物は、非特異的エンドヌクレアーゼ、最も好ましくは、ベンゾナーゼにより、0.1mM~100mMの間の量で、Ca2+、Mg2+、Mn2+、及びCu2+からなる群から選択される二価の陽イオンの存在下で処置され得る。
【0102】
さらに代わりに、濾過した採取物は、非特異的エンドヌクレアーゼ、最も好ましくは、ベンゾナーゼにより、1~3mMの濃度で、二価の陽イオン、Mg2+塩の存在下で処置され得る。
【0103】
第11の実施形態の第12の態様により、ベンゾナーゼ処置した採取物は、2×~10×濃度のウイルス採取物を生じ、さらに残存不純物の除去をもたらす、典型的には、100KDa~500KDaの間の範囲の分画分子量(MWCO)のフィルターを通す、タンジェントフロー濾過(TFF)にさらにかけられ得る。
【0104】
さらに好ましい残存不純物は、残存DNA、残存ウシ血清アルブミン(BSA)、及び残存宿主細胞タンパク質を含み得る。
第11の実施形態の第13の態様により、上記のプロセスは、残存細胞DNA(<10ng/用量)、残存BSA(<50ng/用量)、及び残存細胞タンパク質の痕跡を含む、精製及び濃縮したLAIVウイルス採取物を生じ得る。さらに、上記のプロセスにより、精製したウイルスの全体的な回収は、少なくとも40%であり得る。
【0105】
第11の実施形態の第14の態様により、濃縮した一価のウイルスストック(TFF濃縮)は、安定剤組成物によって安定化され、1つ又は複数の糖質、1つ又は複数のアミノ酸、及びゼラチンを含む最終LAIV組成物を得ることができる。
【0106】
さらに好ましくは、濃縮したウイルスストック(TFF濃縮)は、スクロース、ヒスチジン、アラニン、トリシン、アルギニン、及びゼラチンを、その任意の組合せで含む安定剤組成物によって安定化され得る。
【0107】
さらに好ましくは、濃縮したウイルスストック(TFF濃縮)は、1~10%(w/v)の濃度のスクロース、0.1%~2%(w/v)の濃度のヒスチジン、0.01%~1%(w/v)の濃度のアラニン、0.1%~1%(w/v)の濃度のトリシン、0.1~5%(w/v)の濃度のアルギニン、及び0.1~5%(w/v)の濃度のゼラチンを含む安定剤組成物によって安定化され得る。
【0108】
さらに好ましくは、濃縮したウイルスストック(TFF濃縮)は、3~6%(w/v)の濃度のスクロース、0.1%~1%(w/v)の濃度のヒスチジン、0.05%~0.5%(w/v)の濃度のアラニン、0.1%~0.5%(w/v)の濃度のトリシン、0.1~3%(w/v)の濃度のアルギニン、及び0.1~3%(w/v)の濃度のゼラチンを含む安定剤組成物によって安定化され得る。
【0109】
さらに好ましくは、濃縮したウイルスストック(TFF濃縮)は、スクロース4%(w/v)、ヒスチジン0.21%(w/v)、アラニン0.1%(w/v)、トリシン0.3%(w/v)、アルギニン2.1%(w/v)、及びゼラチン0.85%(w/v)を含む安定剤組成物によって安定化され得る。
【0110】
第11の実施形態の第15の態様により、安定化したウイルス採取物は、少なくとも1つの滅菌グレードフィルター、好ましくは0.2μを通して、ダイレクトフロー濾過(DFF)によって滅菌され得る。好適な市販のフィルター及び濾過装置は、当技術分野で周知であり、当業者によって選択され得る。例示的な濾過装置は、ポリプロピレン又は酢酸セルロース又はポリエーテルスルホン又は二フッ化ポリビニリデンで作製され、市販のフィルターは、Millipak(Millipore)、Kleenpak(Pall)及びSartobran(商標)P(Sartorius)濾過装置であり得る。
【0111】
第11の実施形態の第16の態様により、LAIV組成物は、前述の実施形態に開示されたように、1つより多くのLAIVウイルス株又は亜型を含む多価であり得る。LAIV組成物は、二価又は三価又は四価であり得る。
【0112】
さらに代わりに、LAIV組成物は、前述の実施形態に開示されたように、いずれか1つのLAIVウイルス株又は亜型を含む一価であり得る。
第11の実施形態の第17の態様により、LAIV組成物は、0.5ml当たり6~7LogEID50の用量のインフルエンザウイルスを含み得る。
【0113】
さらに好ましくは、LAIV組成物は、0.5ml当たり6~7LogEID50;より好ましくは、0.5ml当たりNLT7 LogEID50の用量のA型インフルエンザウイルス又は任意の亜型を含み得る。
【0114】
さらに好ましくは、LAIV組成物は、0.5ml当たり6~7LogEID50;より好ましくは、0.5ml当たりNLT6.5 LogEID50の用量のB型インフルエンザウイルス又は任意の亜型を含み得る。
【0115】
第12の実施形態により、免疫原性組成物を調製する方法は、以下のステップ:
a)MDCK細胞培養宿主を1:100~1:10000の間のMOIでインフルエンザウイルスによって感染させるステップ;
b)5~25U/mlの範囲のトリプシンを含有するMEM中で、40~70時間のインキュベーション期間後の、インフルエンザウイルスを含む上清を採取するステップ;
c)約6マイクロメートル~約0.45マイクロメートルの間の孔サイズを有する、少なくとも1つの清澄化フィルターを通すダイレクトフロー濾過(DFF)によってウイルス採取物を濾過するステップ;
d)CVPを、30~34℃の間の範囲の温度で2~6時間、続いて2~8℃の温度で5~15時間、非特異的エンドヌクレアーゼによって処置するステップ;
e)エンドヌクレアーゼ処置したCVPを、100KDa~500KDaの分画分子量(MWCO)の膜を使用する、タンジェントフロー濾過(TFF)によって濃縮するステップ;
f)1つ又は複数の糖質、1つ又は複数のアミノ酸及びゼラチンを含む安定剤組成物でTFF濃縮物を安定化し、安定化ウイルス採取物を形成するステップ;
g)約0.8マイクロメートル~約0.2マイクロメートルの間の孔サイズを有する、少なくとも1つの滅菌グレードのフィルターを通すDFFにより、安定化したTFF濃縮物を滅菌して、滅菌のCMVPを形成するステップ;
を含み、
ここで精製したウイルスの全体的な回収は40%以上である。
【0116】
第12の実施形態の第1の態様により、ステップ(d)が、ウイルス採取物を、非特異的エンドヌクレアーゼ、より具体的には、0.5units/ml~5units/mlの範囲の濃度を有するベンゾナーゼにより、0.1mM~100mMの間の量で、Ca2+、Mg2+、Mn2+、及びCu2+からなる群から選択される二価の陽イオンの存在下で処置するステップを含み得る、免疫原性組成物を製造する方法。
【0117】
第12の実施形態の第2の態様により、ステップ(d)が、ウイルス採取物を、非特異的エンドヌクレアーゼ、より具体的には、0.5units/ml~5units/mlの範囲の濃度を有するベンゾナーゼにより、1~3mMの濃度で、二価の陽イオンMg2+塩の存在下で処置するステップを含み得る、免疫原性組成物を製造する方法。
【0118】
第12の実施形態の第3の態様により、ステップ(e)が、ウイルス採取物を、タンジェントフロー濾過(TFF)によって濃縮し、少なくとも4×濃度のウイルス採取物を生じるステップを含み得る、免疫原性組成物を製造する方法。
【0119】
第12の実施形態の第4の態様により、ステップ(f)が、ウイルス採取物を、1~10%(w/v)の濃度のスクロース、0.1%~2%(w/v)の濃度のヒスチジン、0.01%~1%(w/v)の濃度のアラニン、0.1%~2%(w/v)の濃度のトリシン、0.1~5%(w/v)の濃度のアルギニン、及び0.1~5%(w/v)の濃度のゼラチンを含む安定剤組成物によって安定化するステップを含み得る、免疫原性組成物を製造する方法。
【0120】
第12の実施形態の第5の態様により、ステップ(f)が、ウイルス採取物を、3~6%(w/v)の濃度のスクロース、0.1%~1%(w/v)の濃度のヒスチジン、0.05%~0.5%(w/v)の濃度のアラニン、0.1%~0.5%(w/v)の濃度のトリシン、0.1~3%(w/v)の濃度のアルギニン、及び0.1~3%(w/v)の濃度のゼラチンを含む安定剤組成物によって安定化するステップを含み得る、免疫原性組成物を製造する方法。
【0121】
第12の実施形態の第6の態様により、ステップ(f)が、ウイルス採取物を、スクロース4%(w/v)、ヒスチジン0.21%(w/v)、アラニン0.1%(w/v)、トリシン0.3%(w/v)、アルギニン2.1%(w/v)、及びゼラチン0.85%(w/v)を含む安定剤組成物によって安定化するステップを含み得る、免疫原性組成物を製造する方法。
【0122】
第12の実施形態の第6の態様により、ステップ(f)が、ウイルス採取物を、スクロース4%(w/v)、ヒスチジン0.21%(w/v)、アラニン0.1%(w/v)、トリシン0.3%(w/v)、アルギニン2.1%(w/v)、及びゼラチン1.0%(w/v)を含む安定剤組成物によって安定化するステップを含み得る、免疫原性組成物を製造する方法。
【0123】
第12の実施形態の第7の態様により、ステップ(f)が、ウイルス採取物を、スクロース4%(w/v)、ヒスチジン0.21%(w/v)、アラニン0.1%(w/v)、トリシン0.3%(w/v)、アルギニン1.6%(w/v)、及びゼラチン1.0%(w/v)を含む安定剤組成物によって安定化するステップを含み得る、免疫原性組成物を製造する方法。
【0124】
本開示の第13の実施形態により、免疫原性組成物は、a)0.5ml当たり6~7LogEID50の用量の1つ又は複数の弱毒生インフルエンザワクチン(LAIV)ウイルス;b)スクロース1~10%(w/v);c)ヒスチジン0.1%~2%(w/v);d)アラニン0.01%~1%(w/v);e)トリシン0.1%~2%(w/v);f)アルギニン0.1~5%(w/v);g)ゼラチン0.1~5%(w/v)を含み得る。
【0125】
さらに好ましくは、免疫原性組成物は、a)0.5ml当たり6~7LogEID50の用量の1つ又は複数の弱毒生インフルエンザワクチン(LAIV)ウイルス;b)スクロース3~6%(w/v);c)ヒスチジン0.1%~1%(w/v);d)アラニン0.05%~0.5%(w/v);e)トリシン0.1%~0.5%(w/v);f)アルギニン0.1~3%(w/v);g)ゼラチン0.1~3%(w/v)を含み得る。
【0126】
さらに好ましくは、免疫原性組成物は、a)0.5ml当たり6~7LogEID50の用量の1つ又は複数の弱毒生インフルエンザワクチン(LAIV)ウイルス;b)スクロース4%(w/v);c)ヒスチジン0.21%(w/v);d)アラニン0.1%(w/v);e)トリシン0.3%(w/v);f)アルギニン2.1%(w/v);g)ゼラチン0.85%(w/v)を含み得る。
【0127】
さらに好ましくは、免疫原性組成物は、a)0.5ml当たり6~7LogEID50の用量の1つ又は複数の弱毒生インフルエンザワクチン(LAIV)ウイルスNLT;b)スクロース4%(w/v);c)ヒスチジン0.21%(w/v);d)アラニン0.1%(w/v);e)トリシン0.3%(w/v);f)アルギニン2.1%(w/v);g)ゼラチン1%(w/v)を含み得る。
【0128】
さらに好ましくは、免疫原性組成物は、a)0.5ml当たり6~7LogEID50の用量の1つ又は複数の弱毒生インフルエンザワクチン(LAIV)ウイルス;b)スクロース4%(w/v);c)ヒスチジン0.21%(w/v);d)アラニン0.1%(w/v);e)トリシン0.3%(w/v);f)アルギニン1.6%(w/v);g)ゼラチン1%(w/v)を含み得る。
【0129】
本開示の第14の実施形態により、LAIV組成物は、完全に液体であり得る。
さらに代わりに、LAIV組成物は、凍結乾燥又はフリーズドライ組成物であり得る。
本明細書で使用する場合、用語「フリーズドライする(Freeze-drying)」又は「凍結乾燥する(lyophilize)」又は「凍結乾燥(lyophilization)」は、凍結乾燥を含み、それにより懸濁液が凍結され、その後、低圧での昇華によって水が除去されるプロセスを指す。本明細書で使用する場合、用語「昇華」は、組成物の物性の変化を指し、組成物は、液体にならずに固体状態から気体状態へと直接変化する。
【0130】
本開示の第15の実施形態により、LAIV組成物は、鼻腔内又は免疫付与の他の経路を介する、有効量のLAIV組成物のヒト対象への投与を含む、健康状態の発症を減少させる又は健康状態を予防する方法での使用のために製剤化され得る。
【0131】
実施形態の好ましい態様により、LAIV組成物は、鼻腔内経路を介してヒト対象に投与され得る。一実施形態では、エアロゾル(鼻腔内スプレー)又は液滴送達システムの形態の装置など、鼻腔内分注装置である。液体鼻製剤は、点鼻薬、点滴及び鼻のカテーテル、圧縮空気吸入器、スクイーズボトル、計量ポンプスプレー様複数回投与計量スプレーポンプ又は単回/二重投与スプレーポンプ、シリンジに取り付けたスプレー装置を介して送達され得る。他の投与剤型は、経鼻粉末(注入器、乾燥粉末吸入器)、経鼻ゲル、点鼻、溶液、懸濁液、共溶媒システム、微粒子、ナノ粒子、マイクロエマルション、経鼻挿入から選択され得る。
【0132】
鼻腔内送達装置は、限定はされないが、Becton Dickinson(BD)Accuspray(商標)送達装置、Bi-Directional(商標)Optinose経鼻装置、TeleflexによるMAD Intranasal Mucosal Atomization装置、AeroLife(商標)及びAeroVax(商標)(AerovectRx,Inc.,Atlanta,GA)、Jet injector-PharmaJet(登録商標)Stratis(登録商標)Needle-Free Injector、MUNJIs Multi-use-nozzle jet injectors:Aquapuncture装置、Hypospray(登録商標)、MadaJet(登録商標)、GentleJet(登録商標)、Disposable-syringe Jet Injectors:Medi-Jector(登録商標)、J-Tip(登録商標)、Injex(登録商標)、Vitajet(商標)、LectraJet HS、LectraJet(登録商標)M3、ZetaJet(商標)、PharmaJet(登録商標)、Aktiv-Dry PuffHaler(商標)及びNasal spray flu shot装置から選択され得る。
【0133】
本開示の第16の実施形態により、LAIV組成物は、本開示の先の実施形態に開示のA型インフルエンザウイルス感染又はその亜型、本開示の先の実施形態に開示のB型インフルエンザウイルス感染又はその亜型、又は本開示の先の実施形態に開示のC型インフルエンザウイルス感染又はその亜型を含む健康状態の発症を減少させる又は上記健康状態を予防する方法での使用のために製剤化され得る。
【0134】
本開示の第17の実施形態により、LAIV組成物は、防御に有効な用量で、鼻腔内に投与され得る。ワクチンは、投与製剤と一致する方法で、及び予防的に有効であろう量で、投与される。本開示の免疫原性組成物は、感染のリスクのある成人又は小児において一次予防剤として投与され得る。例えば、本明細書に開示の弱毒生インフルエンザワクチン組成物は、インフルエンザウイルス感染のリスクのある成人又は小児において使用され得る。
【0135】
より好ましくは、LAIV組成物は、約0.1~0.5mlの投与容積で、鼻腔内に投与され得る。
本開示の第18の実施形態により、LAIV組成物は、単回投与バイアル若しくは複数回投与バイアル若しくは複数回投与キットとして、又は充填済みシリンジ若しくは経鼻スプレーとして製剤化され、前記LAIV組成物は、単回投与スケジュール、又は好ましくは、ワクチン接種の主な過程が、免疫応答を維持及び/又は補強するために必要とされる次への時間間隔、例えば、2回目の投与のために1~4カ月、必要であれば、数か月若しくは数年後に次の投与、又は年1回のワクチン接種で与えられる1~2回の別々の投与に続く、複数回投与スケジュールで与えられ得る。投与レジメンは、少なくとも一部は、防御免疫を付与するために必要とされるブースター投与の必要性でも決められるであろう。
【0136】
本開示の第19の実施形態により、免疫原性組成物の最終pHは、6.5~8を含み得る。
本明細書に開示の他の実施形態は、凍結乾燥(フリーズドライ)免疫原性組成物を含有する第1の容器、及び凍結乾燥(フリーズドライ)LAIV組成物の再構成のための水溶液、場合により生理食塩水又はWFI(注射用水)を含有する第2の容器を含む、ワクチンキットも包含する。
【0137】
この明細書を通して、単語、「含む(comprise)」、又は「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」などの変化形は、記載した要素、整数若しくはステップ、又は要素、整数若しくはステップの群の包括を意味するが、任意の他の要素、整数若しくはステップ、又は要素、整数若しくはステップの群の除外を意味しないと理解され、「含む(includes)」、「含む(including)」を意味することができ、用語は、制限がなく、列挙されるものの基本又は新規の特徴が、列挙されるものより多くの存在によって変更されない限り、列挙されるものより多くの存在が可能であるが、先行技術の実施形態を除く。
【0138】
この明細書を通して、単語、「免疫原性組成物」は、ベクターから発現された目的の抗原若しくは免疫源に対する免疫応答を引き出す任意の組成物にわたり;例えば、対象への投与後、標的化免疫源又は目的の抗原に対する免疫応答を引き出す。用語「ワクチン組成物」及び「ワクチン」は、目的の抗原に対する防御免疫応答を誘導する、又は抗原に対して有効に防御する任意の組成物にわたり;例えば、対象への投与又は注射後、標的抗原若しくは免疫源に対する防御免疫応答を引き出し、又はベクターから発現される抗原若しくは免疫源に対して有効な防御を提供する。
【0139】
表現「1つ又は複数」又は「少なくとも1つ」の使用は、1つ又は複数の所望の目的又は結果を達成する本発明の実施形態で使用され得る場合、1つ又は複数の要素又は成分又は量の使用を示す。本発明の特定の実施形態が記載されるが、これらの実施形態は例示によってのみ提示され、本発明の範囲を制限することを意図しない。この発明の組成物への変更又は改変は、本発明の範囲内で、本明細書の開示を参照して、当業者には起こり得る。そのような変更又は改変は、十分にこの開示の精神の範囲内である。
【0140】
様々な物理パラメーター、寸法、及び量に与えられた数値は、およその値のみであり、物理パラメーター、寸法、及び量に割り当てられた数値より高い値は、明細書に逆の記述がない限り、本発明の範囲内にあると考えられる。
【0141】
同様に、精製、例えば、フィルター、カラムで使用される成分は、いずれの方法でも制限又は排除を意図せず、他の成分と置き換えられ、医師の裁量で同じ目的を達成することができる。
【0142】
本明細書では、好ましい実施形態の特定の特徴を重視するが、多くのさらなる特徴が加えられ、本開示の原理から逸脱することなく、多くの変更が好ましい実施形態に行われ得ると理解されるであろう。本開示の好ましい実施形態のこれらの及び他の変更が、本明細書の開示から当業者に明らかであり、それにより、前述の説明事項が、制限としてではなく、単に本開示の例示として解釈されるべきであることが明確に理解される。
【0143】
技術的利点
1.現在、製造されるほぼ全てのインフルエンザワクチンは、ウイルスプールの調製のため、宿主として卵を使用する。LAIVの製造のために卵を使用することにはある特定の欠点があるが、これは基質として細胞培養を使用することによって克服され得る。基質として卵を使用することによる制限は以下である:
・ワクチン品質の卵及び特定の病原体フリーの卵の供給の制限。
【0144】
・卵が利用可能になる前に、最低4カ月の先行注文が必要とされる。
・候補流行性株の一部は、家禽に致命的な感染症を引き起こし、ワクチン製造のための基質(卵)が入手不可能になる
・卵ベースの製造は、卵のインキュベーション、採取等に特化した工場を必要とし、次いで急速に規模を拡大することを制限する。
【0145】
2.組織培養ベースの製造は、規模拡大が容易な、完全に制御されたシステムの利点を有する。
3.パンデミックの場合、ラージスケールでのワクチンの製造は、他のウイルスワクチンの既存の組織培養製造ユニットを使用して、容易に達成され得る。
【0146】
4.細胞培養で得られたウイルスは、抗原改変を有し得る卵で生産されたウイルスと比較して、循環する株と高度に類似性を有する。
5.最低限の成分がワクチン組成物に含まれる。
【0147】
6.保存剤、ポリマー、及び界面活性剤がない。
7.精製プロセスは、低濃度のエンドヌクレアーゼ(ベンゾナーゼ)を利用する。
8.精製プロセスは、コストがかかり厄介なクロマトグラフィーステップがない。
【0148】
9.収率の改善をもたらすような安定組成物/製剤を製造する方法の改善。
10.鼻腔内送達は、高レベルの専門的技術を必要とせず、複数回投与が容易なため、免疫付与の最も簡単な経路である。
【0149】
11.ギランバレー症候群との関連が報告されておらず、感染部位における送達により、より防御を提供する。
12.達成することが難しい、ワクチンの液体提示は、凍結乾燥能力の制限、再構成のための希釈剤の供給の必要性、及びワクチンの送達前に必要とされる再構成のさらなるステップの問題の克服を助ける。
【0150】
13.LAIVリアソータントの生成に使用されるMDV骨格は、十分に確立された安全性プロファイルを有し、高レベルの防御をもたらすことが報告された。
【実施例
【0151】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含まれる。本発明者らによって発見された代表的な技術に従い、本発明の実施に十分に機能する、実施例において開示される組成物及び技術が、その実施のための好ましい様式を構成すると考えられ得ることは、当業者によって理解されるはずである。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、多くの変更が開示される特定の実施形態に行われ、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、類似の又は同様の結果を依然として得ることができることを理解するはずである。
【0152】
リアソータントLAIV株は、ロシア、サンクトペテルブルクの実験医学研究所(IEM)、又はアトランタの疾患予防管理センター(CDC)などのWHO協力センターから入手される。
【0153】
実施例1:リアソータントLAIVウイルス免疫原性組成物の安定性データ
構成要素1-弱毒生インフルエンザワクチンウイルス(LAIV)
インフルエンザワクチンウイルスは、6:2又は7:1の比で、マスタードナーウイルス(MDV)の寒冷順応、温度感受性及び/又は弱毒化表現型遺伝子断片と野生型流行性又は季節性A型又はB型又はC型インフルエンザウイルス株のヘマグルチニン(HA)及び/又はノイラミニダーゼ(NA)遺伝子断片を含む、リアソートメントの古典的な方法によって誘導されるリアソータントLAIVウイルスである。
【0154】
【表1】
LAIV免疫原性組成物:
6~7logEID50/0.5mlの用量の範囲のA型ウイルス;より好ましくは、7logEID50/0.5mlの用量
6~7logEID50/0.5mlの用量の範囲のB型ウイルス;より好ましくは、6.5logEID50/0.5mlの用量
LAIV組成物は、これらの任意の組合せで表1に開示のように免疫組成物において使用されるリアソータントLAIVウイルス株に関して、一価又は多価(二価;三価;四価)のいずれかである。
【0155】
【表2】
【0156】
【表3】
【0157】
【表4】
【0158】
【表5】
解釈:
安定剤組成物3(1% w/vゼラチン+5% w/vソルビトール+0.1% w/v L-アラニン+0.21% w/v L-ヒスチジン+0.3% w/vトリシン+1.6% w/v L-アルギニン塩酸塩):
A型/H1N1及びB型インフルエンザワクチン株の、37℃でのストレス安定性と2~8℃の温度でのリアルタイム安定性の両方に関して、許容できない速さの分解が観察された(図4及び5参照)。
【0159】
安定剤組成物4(1% w/vゼラチン+5% w/vソルビトール+0.1% w/v L-アラニン+0.21% w/v L-ヒスチジン+0.9% w/vトリシン+1.6% w/v L-アルギニン塩酸塩):
A型/H1N1及びB型インフルエンザワクチン株の、37℃でのストレス安定性と2~8℃の温度でのリアルタイム安定性の両方に関して、許容できない速さの分解が観察された(図6及び7参照)。
【0160】
安定剤組成物2(0.85% w/vゼラチン+3% w/vスクロース+0.1% w/v L-アラニン+0.21% w/v L-ヒスチジン+0.3% w/vトリシン+2.1% w/v L-アルギニン塩酸塩):
37℃でのストレス安定性と2~8℃の温度でのリアルタイム安定性の両方に関して、許容できない速さの分解が観察された(図8及び9参照)。
【0161】
安定剤組成物1(0.85% w/vゼラチン+4% w/vスクロース+0.1% w/v L-アラニン+0.21% w/v L-ヒスチジン+0.3% w/vトリシン+2.1% w/v L-アルギニン塩酸塩):
37℃でのストレス安定性と2~8℃の温度でのリアルタイム安定性の両方に関して、許容できる速さの分解(値は、許容可能な範囲内である)が観察された(図2、3、10及び11参照)。
【0162】
実施例2:MDCK細胞ベースのLAIVウイルス製造プロセス
MDCK細胞培養ベースのLAIV組成物を調製するプロセスは、以下のステップの任意のサブセット又は全てを含み得る:
k)LAIV候補ワクチンウイルスを、先ず、卵ベースのマスターシードウイルス(MSV)を産生するSPF発育鶏卵において継代する。
【0163】
l)卵ベースのマスターシードウイルスを、細胞ベースのワーキングシードウイルス(WSV)を調製するMDCK細胞培養(ATCC CCL-34)宿主で増殖するように順応させる。この細胞ベースのWSVを使用して、表面積175cmの組織培養フラスコ(TCS)、表面積850cmのローラーボトル(RB)、表面積6320cmのCell Factories(CF)、及び固定床バイオリアクター(例えば、Pall(登録商標)Life Scienses,Port Washington,N.Y.からのiCELLis(登録商標)バイオリアクター、例えばNano及び500/100バイオリアクター)のような、異なる細胞培養器/システムにおいて、1:100~1:10000の間のMOIで、MDCK細胞培養に感染させる。)(MDCK細胞は、FBSを含有するMEMを使用して増殖させ;接種の前にトリプシン5~25U/mlを含有するMEMで洗浄し;WSVを1:10~1:10000の間のMOIで細胞に接種し、48~72時間、31~33℃でインキュベートした。)
m)培養したウイルスを採取する。
【0164】
n)ウイルスの採取物を、少なくとも1つの清澄化フィルターを通すダイレクトフロー濾過(DFF)によって濾過し、清澄化したウイルスプール(CVP)を得る。
o)CVPを、30~34℃の間の範囲の温度で2~6時間、続いて2~8℃の温度で5~15時間、非特異的エンドヌクレアーゼ(例えば、ベンゾナーゼ)によって処置するステップ;
p)エンドヌクレアーゼ処置したCVPを、100KDa~500KDaの分画分子量(MWCO)の膜を使用する、タンジェントフロー濾過(TFF)によって濃縮するステップ;
q)1つ又は複数の糖質、1つ又は複数のアミノ酸及びゼラチンを含む安定剤組成物でTFF濃縮物を安定化し、安定化ウイルス採取物を形成するステップ;
r)約0.2マイクロメートルの孔サイズを有する、少なくとも1つの滅菌グレードのフィルターを通すDFFにより、安定化したTFF濃縮物を滅菌して、滅菌のCMVP(清澄化した一価のウイルスプール)を得るステップ。
【0165】
s)滅菌したCMVPを、-60℃以下でポリカーボネートボトルに保存する。
t)滅菌した製剤をバイアルに充填し、2~8℃で保存する。
【0166】
【表6】
【0167】
【表7】
・細胞培養培地:10% FBSを含むMEM(pHは1N HClで7.0~7.4に合わせた)(追加のグルタミン350mg/L)
・ウイルス培地:FBSを含まないMEM(pHは1N HClで7.2~7.6に合わせた)(追加のグルコース-500mg/L、グルタミン-350mg/L)
追加の0.4%のグルコースが、バイオリアクターシステムのために使用したCM及びVMに追加される。
【0168】
【表8】
【0169】
【表9】
【0170】
【表10】
【0171】
【表11】
【0172】
【表12】
実施例3:ウイルスインプット(MOI)及び接種後のインキュベーション期間の収率への効果
【0173】
【表13】
推論:
A.感染の時間:
最適化検討に基づき、ローラーボトル当たり1憶2千万~1憶8千万個の細胞、及びバイオリアクターシステムでは70億~100億個の細胞の、細胞数の特定の制限が、MDCK細胞由来のインフルエンザワーキングシードウイルスの感染のために選択された。MDCK細胞を含むローラーボトルの顕微鏡観察は、感染手順前に、単層の培養密度で行われた。
【0174】
B.MOI及び接種後のインキュベーション期間:
MOI最適化検討の全ての観察に基づき、A型(H1N1)、A型(H3N2)、及びB型インフルエンザウイルスに関して選択されたMOIの範囲は、1:100~1:10000の間であり、接種後のインキュベーション期間の範囲は、48時間~72時間の間であった。
【0175】
実施例4:異なる濃度のトリプシンの収率への効果
【0176】
【表14】
推論:
トリプシンは、MDCK細胞の接種のためのインフルエンザウイルスの活性化に必要である。上記の結果から、ローラーボトル当たり2000~3000ユニットのトリプシンが、最大効力のウイルスを産生することが観察される。
【0177】
実施例5:ベンゾナーゼ濃度及び温度の、細胞DNA含量及びウイルス力価への効果
異なる濃度のベンゾナーゼが、異なる温度で宿主細胞DNAを分解することを試験した。
【0178】
清澄化したウイルスプール(CVP)を、500(2mM MgClを含む)、500、1000、2500及び5000U/Lの濃度のベンゾナーゼ処置にかけ、処置したCVPは32℃で3時間保ち、2~8℃で終夜さらに続けた。各ステージでサンプリングを行い、以下は、各ステージでのDNA含量の結果である。
【0179】
【表15】
【0180】
【表16】
推論:
結果から、2mM MgClの存在下で500U/Lの濃度のベンゾナーゼによって処置したCVPは、2mM MgCl無しで500U/Lの濃度のベンゾナーゼによって処置したCVPよりも高いDNA分解を示したことが観察された。また、より高いベンゾナーゼ濃度1000U/L、2500U/L、及び5000U/Lが、ベンゾナーゼ濃度500U/L(2mM MgClを含む)と匹敵するDNA分解を示したことが分かる。
【0181】
実施例6:製造の様々なステージでのウイルス収率
【0182】
【表17】
1.CVP:清澄化したウイルスプール(濾過後の採取物)、
2.BCVP:ベンゾナーゼによって処置したCVP、
3.CMVP:清澄化した一価のウイルスプール(TFF、安定剤の添加後、及び0.2μ濾過後)
推論:
ステージ毎のウイルス濃度が、各A型(H1N1)、A型(H3N2)、及びB型季節性インフルエンザウイルスについてチェックされ、採取レベルでの最初のウイルス濃度が最後のステージまでのプロセス、すなわちワクチンバルクの調製(CMVP)を通して維持されたことが観察された。
【0183】
【表18】
推論:
ウイルス回収は、採取が製造の開始点であり、CMVPが製造の終点である、製造中のウイルス保持のパーセントとして計算され得る。結果から、平均ウイルス回収は44.67%であり、これは0.34LogEID50/0.5mlの力価減少と等価であると結論付けられ得る。また、CMVPレベルでの最終ウイルス回収(ウイルス力価)が、許容可能な制限内であり、CMVPが、MDCKベースのLAIVウイルスの最終製品バッチを製造するために使用され得ることが観察される。
【0184】
実施例7:CMVPの製造中の、ステージ毎の宿主細胞DNA濃度の比較データ
異なる株の清澄化したウイルスプール(CVP)を、ベンゾナーゼ処置にかけ、DNA含量のステージ毎のサンプリングが行われた。以下は、各ステージでのDNA含量の結果である。
【0185】
【表19】
推論:
結果から、ベンゾナーゼで処置した場合、CVPがDNAの著しい減少を示したことが観察された。さらに、残存DNAが、TFFプロセス(透析濾過/濃縮)及びCMVP調製プロセス中に、再び効果的に除去されることが観察された。最終CMVPレベルでのDNA含量は、所望の、及び許容可能な制限内の範囲である。
【0186】
実施例8:TFF実験の様々な試験
様々なTFF実験を、TFFプロセスに使用する希釈培地(ウイルス培地及びPBS)、透析濾過、及び濃縮手順のようなパラメーターを考慮して実行した。TFF濃縮試料は、ウイルス濃度を試験した。
【0187】
【表20】
解釈:
上記の実験セットから、進展させ、2×DF及び4×濃度ステージに続くTFFプロセスは、最適なウイルス収率を伴う所望のTFF濃縮物を得るために選択された。VMと比較して、PBSはウイルスにより安定性を与える。
【0188】
実施例9:免疫原性結果
フェレットモデルにおけるワクチンの免疫応答及び有効性について、卵及びMDCK細胞ベースの三価及び四価の季節性インフルエンザワクチンの性能を評価するために研究が行われた。全ての動物は、A/Michigan/45/2015(H1N1)、A/Hong Kong/4801/2015(H3N2)、B/Brisbane/60/2008及びB/Phuket/3073/2013と類似の株を含有する、卵及びMDCK細胞培養ベースの三価又は四価の調製物により0日目に鼻腔内に免疫され、4週間後(28日)にチャレンジされた。
【0189】
【表21】
推論(図12及び図13参照)
A-H1N1を含有する卵ベース及びMDCKベースの三価及び四価のワクチンによるワクチン接種が、相同なA-H1N1ウイルスによってチャレンジされた場合、A-H1N1感染に対して動物を防御し得ると結論付けられた。
【0190】
フェレットモデルにおける免疫応答及び有効性について、卵及びMDCK細胞ベース両方の一価のLAIV(A-H5N2及びA-H7N9)の性能を評価するために、別の研究が行われた。動物の異なる群が、卵及びMDCK細胞培養ベースのA-H5N1及びA-H7N9一価LAIVにより免疫され、それぞれ相同A-H5N1及びA-H7N9ウイルスによってチャレンジされた。結果は、一価のH5N2 LAIVによって免疫した動物が、A-H5N1ウイルスによる相同チャレンジに対して防御されたことを示した。一価のA-H7N9 LAIVによって免疫された動物は、A-H7N9ウイルスによる相同チャレンジに対して防御された。
図1
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【国際調査報告】