(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-30
(54)【発明の名称】圧力センサ及び造影画像に基づく瞬時血流予備量比の計算方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0215 20060101AFI20220323BHJP
A61B 5/029 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
A61B5/0215 C
A61B5/029
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547747
(86)(22)【出願日】2019-05-13
(85)【翻訳文提出日】2021-08-16
(86)【国際出願番号】 CN2019086609
(87)【国際公開番号】W WO2020186611
(87)【国際公開日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】201910206541.2
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520283048
【氏名又は名称】スーチョウ レインメド メディカル テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フォ、インフェイ
(72)【発明者】
【氏名】リウ、クワンツィー
(72)【発明者】
【氏名】ウー、シンユン
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA01
4C017AA11
4C017AB04
4C017AC03
4C017BB12
4C017BC11
(57)【要約】
本発明は、血圧センサにより心臓冠動脈口の圧力をリアルタイムに採集し、圧力数値をデータリンクテーブルに格納し、データリンクテーブルは時間をインデックスとし、時間とリアルタイム圧力のキーバリューペア形式で保存するステップと、造影時間をインデックス値としてデータキューから時間インデックスにより対応するデータを見つけ、4つの無波形圧力値の平均値を無波形圧力値Paとし、1周期の時間インデックスに基づき1周期内の拡張期末期である無波形期の時間Tnを取得するステップと、2つの体位の造影画像から一区間の血管の長さLを取得し、血流速度Vを得るステップと、圧力損失ΔPを計算し、血管遠位圧力をPd=Pa-ΔPにより計算し、さらに瞬時血流予備量比を得るステップとを含む、圧力センサ及び造影画像に基づく瞬時血流予備量比の計算方法を開示する。この方法により、圧力値を正確に得られ、1心周期における血流速度を正確に取得でき、FFRの正確性を大幅に向上させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
S01:血圧センサにより心臓冠動脈口の圧力をリアルタイムに採集し、圧力数値をデータリンクテーブルに格納し、データリンクテーブルは時間をインデックスとし、時間とリアルタイム圧力のキーバリューペア形式で保存するステップと、
S02:造影画像に基づき造影時間を取得し、造影時間をインデックス値としてデータキューから時間インデックスにより対応するデータを見つけ、複数の周期の安定圧力波形を選別し、4つの無波形圧力値の平均値を無波形圧力値Paとし、1周期の時間インデックスに基づき1周期内の拡張期末期である無波形期の時間Tnを取得するステップと、
S03:一体位の造影画像から造影剤がカテーテル口を流れ出た最初のフレームを指定し、一定の時間Tnを経て最後のフレームに位置付けされ、最初のフレームのカテーテル口の位置を血管始点としてマークし、最後のフレームの造影剤が最遠部まで流れた地点を血管の終点としてマークし、この区間の血管を分割し、別体位の造影画像から一区間の血管を取得し、2つの体位を三次元合成した後にこの区間の血管の実際の長さLを得て、血流速度V=L/Tnを得るステップと、
S04:ステップS03における一区間の血管に対して入口血流速度Vで冠動脈入口から冠動脈遠位までの圧力損失ΔPを計算し、血管遠位圧力をPd=Pa-ΔPにより計算し、iFR=Pd/Paに基づき、さらに計算して瞬時血流予備量比を得るステップと、
を含むことを特徴とする圧力センサ及び造影画像に基づく瞬時血流予備量比の計算方法。
【請求項2】
ステップS01はさらに、データリンクテーブルにおける時間及びリアルタイム圧力値に基づき第1点からn個点を累計し、ソートアルゴリズムにより第1点から始まるピーク圧力値、トラフ圧力値及び無波形圧力値を取得し、第n点の計算が完了するまで、ピーク圧力値、トラフ圧力値及び無波形圧力値を連続記録して時間をインデックスとする対応するピーク圧力値、トラフ圧力値及び無波形圧力値のキューを形成し、保存したデータリンクテーブルから時間インデックスの順に後ろへn個点を取って計算し、以下同様に処理する、ことを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ及び造影画像に基づく瞬時血流予備量比の計算方法。
【請求項3】
あるピーク圧力値から次のピーク圧力値を1周期として計算し、4つのピーク圧力値の平均値を収縮圧とし、4つのトラフ圧力値の平均値を拡張圧とし、4つの周期の平均時間Tmを1周期の時間とする、ことを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ及び造影画像に基づく瞬時血流予備量比の計算方法。
【請求項4】
ステップS02において安定圧力波形は連続する複数の周期のピーク値の相対差が4mmHg以内である、ことを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ及び造影画像に基づく瞬時血流予備量比の計算方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冠状動脈画像学評価分野に関し、特に、圧力センサ及び造影画像に基づく瞬時血流予備量比の計算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
瞬時血流予備量比(iFR)は、冠血流予備量比(fractional flow reserve : FFR)(FFR)と同様の冠状動脈内圧力測定方法を提供する。iFRは血管拡張剤を必要とせず、操作が簡単であり、冠状動脈インターベンション治療により多く応用される。ADVISE研究により、心臓拡張期のある時間帯(無波形期と称する)に、冠動脈内微小血管抵抗が相対的に最も安定し、且つ最も低く、アデノシン等の血管拡張薬による冠動脈充血期間において到達する平均抵抗に類似することが分かった。
図1に示されるように、iFR=PdWave-free period/PaWave-free period(PdWave-free period:無波形期における狭窄病変遠位冠動脈平均圧。PaWave-free period:無波形期における大動脉平均圧。瞬時無波形期の演算時間:拡張期内において無波形期開始後25%の時間、収縮期開始前5msで計算を停止する)。
【0003】
現在、従来の瞬時血流予備量比(iFR)の測定方法は主に、圧力ガイドワイヤ安静状態において拡張末期を測定してiFRを特定する、というものである。圧力ガイドワイヤにより測定を行う必要があり、圧力ガイドワイヤ測定時に末梢血管インターベンションが必要であり、難度が高いだけでなく、圧力を採集する過程で誤差が生じるため、計算されたiFRの正確性は高くない。
【発明の概要】
【0004】
上記の技術課題を解決するために、本発明は、造影剤を注入した後に安定した圧力値を正確に得ることができ、圧力波形と造影画像を組み合わせることにより1心周期の平均血流速度を正確に取得できるため、iFRの正確性を大幅に向上させることができる、圧力センサ及び造影画像に基づく瞬時血流予備量比の計算方法を提供することを目的とする。
【0005】
本発明の技術方案は以下のとおり:
S01:血圧センサにより心臓冠動脈口の圧力をリアルタイムに採集し、圧力数値をデータリンクテーブルに格納し、データリンクテーブルは時間をインデックスとし、時間とリアルタイム圧力のキーバリューペア形式で保存するステップと、
S02:造影画像に基づき造影時間を取得し、造影時間をインデックス値としてデータキューから時間インデックスにより対応のデータを見つけ、複数の周期の安定圧力波形を選別し、4つの無波形圧力値の平均値を無波形圧力値Paとし、1周期の時間インデックスに基づき1周期内の拡張期末期である無波形期の時間Tnを取得するステップと、
S03:一体位の造影画像から造影剤がカテーテル口を流れ出た最初のフレームを指定し、一定の時間Tnを経て最後のフレームに位置付けされ、最初のフレームのカテーテル口の位置を血管始点としてマークし、最後のフレームの造影剤が最遠部まで流れた地点を血管の終点としてマークし、この区間の血管を分割し、別体位の造影画像から一区間の血管を取得し、2つの体位を三次元合成した後にこの区間の血管の実際の長さLを得て、血流速度V=L/Tnを得るステップと、
S04:ステップS03における一区間の血管に対して入口血流速度Vで冠動脈入口から冠動脈遠位までの圧力損失ΔPを計算し、血管遠位圧力をPd=Pa-ΔPにより計算し、iFR=Pd/Paに基づき、さらに計算して瞬時血流予備量比を得るステップと、
を含むことをとする圧力センサ及び造影画像に基づく瞬時血流予備量比の計算方法。
【0006】
好ましい技術方案において、ステップS01はさらに、データリンクテーブルにおける時間及びリアルタイム圧力値に基づき第1点からn個点を累計し、ソートアルゴリズムにより第1点から始まるピーク圧力値、トラフ圧力値及び無波形圧力値を取得し、第n点の計算が完了するまで、ピーク圧力値、トラフ圧力値及び無波形圧力値を連続記録して時間をインデックスとする対応するピーク圧力値、トラフ圧力値及び無波形圧力値のキューを形成し、保存したデータリンクテーブルから時間インデックスの順に後ろへn個点を取って計算し、以下同様に処理する、ことを含む。
【0007】
好ましい技術方案において、あるピーク圧力値から次のピーク圧力値を1周期として計算し、4つのピーク圧力値の平均値を収縮圧とし、4つのトラフ圧力値の平均値を拡張圧とし、4つの周期の平均時間Tmを1周期の時間とする。
【0008】
好ましい技術方案において、ステップS02において安定圧力波形は連続する複数の周期のピーク値の相対差が4mmHg以内である。
【0009】
従来技術に比べ、本発明には以下のような長所がある:
造影剤を注入した後に安定した圧力値を正確に得ることができ、圧力波形と造影画像を組み合わせることにより1心周期の平均血流速度を正確に取得できるため、iFRの正確性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
以下に図面及び実施例を合わせて本発明をさらに説明する:
【0011】
【
図1】
図1は瞬時血流予備量比(iFR)の概略図である。
【
図2】
図2は本発明の圧力センサ及び造影画像に基づく瞬時血流予備量比の計算方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の目的、技術方案及び長所をより明確にするために、以下に実施形態と図面を合わせて、本発明をさらに詳細に説明する。これら説明は例示的なものであり、本発明の範囲を限定するものではないと理解されるべきである。この他、以下の説明において、本発明の概念との余計な混同を避けられるよう、公知構造及び技術に関する説明は省略する。
【0013】
図2に示されるように、本発明の圧力センサ及び造影画像に基づく瞬時血流予備量比の計算方法は以下のステップを含む:
【0014】
1、血圧センサにより心臓冠動脈口の圧力をリアルタイムに採集し、圧力センサは圧力管及び手術カテーテルにより大動脈に連通し、圧力センサと心臓水平高さを一致させるように保持する。
【0015】
2、圧力センサの圧力チップは圧力波動を感知して電気信号を発生し、信号はケーブルによりコントロールユニットのキャプチャーチップに送られ、キャプチャーチップは電気信号を圧力数値に変換してフィルタリングして安定した圧力波形を形成する。
【0016】
3、コントロールユニットのデータ処理チップは圧力数値をデータリンクテーブルに格納し、データリンクテーブルは時間をインデックスとし、時間、リアルタイム圧力のキーバリューペア形式で保存する。
【0017】
4、データ処理チップはデータリンクテーブルにおける時間及びリアルタイム圧力値に基づき第1点からn個点を累計し、nの個数は時間インデックスに基づき第1点から少なくとも4秒を経過した位置であり、約4心周期以上とする。ソートアルゴリズムにより第1点から始まるピーク圧力値、トラフ圧力値及び無波形圧力値(無波形期の演算時間:拡張期内において無波形期開始後25%の時間、収縮期開始前5msで計算を停止する)を取得し、第n点の計算が完了するまで、ピーク圧力値、トラフ圧力値及び無波形圧力値を連続記録して時間をインデックスとする対応するピーク圧力値、トラフ圧力値及び無波形圧力値のキューを形成し、ステップ3で保存したデータリンクテーブルから時間インデックスの順に後ろへn個点を取って計算し、以下同様に処理する。
【0018】
5、ステップ4で格納したデータキューから、さらに収縮圧、拡張圧、無波形圧力及び心拍数を計算し、あるピークから次のピークを1周期として計算し、4つのピークの平均を収縮圧とし、4つのトラフ平均値を拡張圧とし、4つの無波形圧力値の平均値を無波形圧力値とする。4つの周期の平均時間Tmで心拍数を計算する。心拍数=60/Tmとする。1周期の時間インデックスに基づき1周期内の拡張期末期である無波形期の時間Tnを取得し、収縮圧、拡張圧、平均圧及び心拍数等のパラメータを取得するために用いることができ、後のステップのために、より正確なデータを提供できる。
【0019】
6、iFR計算時に造影血管の圧力を取得する必要がある。まず造影画像から造影時間を取得し、造影時間をインデックス値としてステップ4のデータキューから時間インデックスにより対応するデータを見つけ、このデータから後に4つの周期の安定圧力波形を選別し、安定圧力の判断基準は連続する4つの周期のピーク値の相対差が4mmHg以内である。ステップ5の方法で無波形圧力値Paを取得できる。なぜなら、造影時刻に造影剤をボーラス注入すると圧力波動が消えるため、ステップ4で連続記録した周期データキューに基づき造影剤のボーラス注入停止後に圧力が波動を回復した安定値を正確に取得できるからである。こうして取得された患者の圧力生理パラメータが造影時刻に対応するパラメータとなることが保証される。
【0020】
7、流速計算時には、ステップ6で取得した心拍数及び無波形期の時間Tnから計算することができる。造影画像から造影剤がカテーテル口を流れ出た最初のフレームを指定し、一定の時間Tnを経て最後のフレームに位置付けされ、最初のフレームのカテーテル口の位置を血管始点としてマークし、最後のフレームの造影剤が最遠部まで流れた地点を血管の終点としてマークし、この区間の血管を分割する。別体位の造影も同様に一区間の血管を取得し、2つの体位を三次元合成した後にこの区間の血管の実際の長さLを得て、血流速度V=L/Tnとする。こうして流速計算時に1心周期の平均血流速度を正確に取得できることを保証する。具体的な三次元合成は201610681191.1を参照できるため、ここでは説明を省略する。
【0021】
8、流体力学計算によりステップ7における一区間の血管の入口血流速度Vで計算したΔPを得る。ΔPは冠動脈入口から冠動脈遠位までの圧力損失である。ステップ6により血管入口圧Paを得て、血管遠位圧力Pd=Pa-ΔPとする。瞬時血流予備量比計算式iFR=Pd/Paにより計算して瞬時血流予備量比を得る。
【0022】
ΔPの具体的な計算方法は201610681191.1を参照できるため、ここでは説明を省略する。
【0023】
本発明の上記発明を実施するための形態は本発明の原理を例示的に説明又は解釈するためのものであり、本発明を限定するものではない。したがって、本発明の思想及び範囲を逸脱しない場合において行われる如何なる修正、均等な差し替え、改良等もみな本発明の保護範囲に含まれ、また、本発明に付属の請求項には、付属の請求項の範囲及び境界、若しくは、この範囲及び境界に入る均等形式内に入る全ての変形及び修正例も含まれると理解されるべきである。
【国際調査報告】