(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-31
(54)【発明の名称】貯蔵安定な抗菌組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 37/40 20060101AFI20220324BHJP
A01N 25/30 20060101ALI20220324BHJP
A01N 25/00 20060101ALI20220324BHJP
A01N 25/02 20060101ALI20220324BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
A01N37/40
A01N25/30
A01N25/00 101
A01N25/02
A01P1/00
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021546009
(86)(22)【出願日】2020-02-05
(85)【翻訳文提出日】2021-10-04
(86)【国際出願番号】 IB2020050932
(87)【国際公開番号】W WO2020161648
(87)【国際公開日】2020-08-13
(32)【優先日】2019-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521349141
【氏名又は名称】ヴィロックス テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】アルダーソン,ファラツ アハマドプール
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA02
4H011BA01
4H011BA05
4H011BB06
4H011BC07
4H011BC18
4H011DA15
(57)【要約】
貯蔵安定な濃縮された抗菌組成物は、約2wt%~約4wt%の量の少なくとも1種の環式カルボン酸および/またはその塩、約22wt%~約32wt%の量の少なくとも1種のアニオン性界面活性剤および/またはその塩、約8wt%~約18wt%の量の少なくとも1種の非界面活性強酸(約2.3未満のpKaを有する)、および約0.1wt%~約2wt%の量の少なくとも1種のキレート剤を含む。本組成物は、貯蔵後に室温で少なくとも5年間にわたってその元の抗菌効力の少なくとも90%を保持しており、かつ過酸化水素、過酸化水素源、精油、パラベン、アルデヒド、アルデヒド放出剤、フェノール、アルコール、ビグアニド、ペルオキシカルボン酸、第四級アンモニウム化合物、塩素系化合物、酵素および腐食液などのさらなる抗菌化合物を実質的に含有していない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約1.5未満のpHを有する貯蔵安定な濃縮された硬質表面用抗菌組成物であって、
a.約2wt%~約4wt%の量の少なくとも1種の環式カルボン酸および/またはその塩、
b.約22wt%~約32wt%の量の少なくとも1種のアニオン性界面活性剤および/またはその塩、
c.約11wt%~約18wt%の量の約2.3未満のpKaを有する少なくとも1種の非界面活性強酸、
d.約0.1wt%~約2wt%の量の少なくとも1種のキレート剤、
e.任意に、約0.1wt%~約2wt%の量の少なくとも1種の腐食阻害剤、
f.任意に、約15wt%~約25wt%の量の少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、
g.任意に、約25wt%~約36wt%の量の少なくとも1種の有機溶媒、および
h.100まで適量の水
を含み、
貯蔵後に室温で少なくとも5年間にわたってその元の抗菌効力の少なくとも90%を保持しており、かつ過酸化水素、過酸化水素源、精油、パラベン、アルデヒド、アルデヒド放出剤、フェノール、アルコール、ビグアニド、ペルオキシカルボン酸、第四級アンモニウム化合物、塩素系化合物、酵素および腐食液を実質的に含有していない組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種の腐食阻害剤が存在している、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の非イオン性界面活性剤が存在している、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1種の有機溶媒が存在している、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記pHは最大で約0.8である、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種の環式カルボン酸は、サリチル酸、フロン酸、マンデル酸、フタル酸、フェニル酢酸および安息香酸からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1種のアニオン性界面活性剤は、C8~C18アルキルベンゼンスルホン酸、C6~C18ジフェニルオキシドジスルホン酸、C6~C22アルキルリン酸エステルおよびそれらの塩からなる群から選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
約2.3未満のpKaを有する前記少なくとも1種の非界面活性強酸は、リン酸、ピロリン酸、ホスホン酸、ポリリン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、スルホサリチル酸およびスルファミン酸からなる群から選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1種の腐食阻害剤はベンゾトリアゾールおよびトリルトリアゾールから選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1種のキレート剤は、エチドロン酸、ニトリロトリメチルホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、ジヘキシレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ヘキサエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、2-ヒドロキシホスホノカルボン酸、N,N-ジカルボキシメチルグルタミン酸、ピコリン酸、ジピコリン酸、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタキスメチレンホスホン酸、シクロヘキサン-1,2-テトラメチレンホスホン酸、アミノ[トリ(メチレンホスホン酸)]およびそれらの塩からなる群から選択される、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1種の非イオン性界面活性剤は、C6~C18エトキシ化および/またはプロポキシ化アルコール、アルキルグルコシドおよびアルキルポリグルコシドからなる群から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項12】
前記有機溶媒は、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールn-ブチルエーテル、ジエチレングリコールn-プロピルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールt-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールtert-ブチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテルおよびトリプロピレングリコールn-ブチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテルおよびプロピレングリコールフェニルエーテルからなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項13】
約1.5未満のpHを有する貯蔵安定な濃縮された硬質表面用抗菌組成物であって、
a.約2.8wt%~約3.3wt%の量の少なくとも1種の環式カルボン酸および/またはその塩、
b.約26wt%~約30wt%の量の少なくとも1種のアニオン性界面活性剤および/またはその塩、
c.約11wt%~約15wt%の量の少なくとも1種の非界面活性強酸、
d.約0.3wt%~約0.8wt%の量の少なくとも1種のキレート剤、
e.約0.2wt%~約0.5wt%の量の少なくとも1種の腐食阻害剤、
f.約17wt%~約22wt%の量の少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、
g.約27wt%~約33wt%の量の少なくとも1種の有機溶媒、および
h.100まで適量の水
を含み、
貯蔵後に室温で少なくとも5年間にわたってその元の抗菌効力の少なくとも90%を保持しており、かつ過酸化水素、過酸化水素源、精油、パラベン、アルデヒド、アルデヒド放出剤、フェノール、アルコール、ビグアニド、ペルオキシカルボン酸、第四級アンモニウム化合物、塩素系化合物、酵素および腐食液を実質的に含有していない組成物。
【請求項14】
微生物により汚染されている硬質表面において微生物負荷を減少させる方法であって、
(a)請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物を提供する工程、
(b)前記組成物を約1:1~約1:512の比で水および有機溶媒のうちの少なくとも一方で希釈して希釈された組成物を形成する工程、および
(c)有効量の前記希釈された組成物を前記表面に最大5分間塗布する工程
を含み、
前記微生物負荷を少なくとも1対数で減少させる方法。
【請求項15】
工程(b)では、前記組成物を約1:32~約1:256の比で水および有機溶媒のうちの少なくとも一方で希釈する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
工程(b)では、前記組成物を水で希釈し、かつ前記希釈された組成物は約1.6~約3.4のpHを有する、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
工程(c)の前に、前記組成物を有効量のペルオキシゲン化合物と組み合わせる、請求項14~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記ペルオキシゲン化合物は過酸化水素である、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年2月6日に出願された米国特許出願第16/268,752号の優先権を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、抗菌組成物およびそれを使用して表面における微生物負荷を減少させるための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ペルオキシゲン化合物、過酸(過酢酸などの過カルボン酸ともいう)、第四級アンモニウム化合物、塩素系漂白剤、アルデヒド(ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドなど)ならびにビグアニドをベースとするような抗菌組成物は典型的に約1~3年の貯蔵寿命を有する。従って、製品は使用前に期限が切れたりそれらの効力を失ったりする可能性があり、これはコストおよび有用性の点で明らかにマイナスの結果を有する。この問題は高温に曝される場所、例えば夏季または温暖気候下での屋外での貯蔵などの不適当な貯蔵条件により増大する恐れがある。
【0004】
従って、向上した貯蔵寿命を有する抗菌組成物が必要とされており、本発明はこの必要性を満たすことを目的としている。
【発明の概要】
【0005】
従って、本発明の第1の態様は、
a.約2wt%~約4wt%または約2.8wt%~約3.3wt%の量の少なくとも1種の環式カルボン酸(例えば、サリチル酸、フロン酸、マンデル酸、フェニル酢酸、フタル酸および安息香酸)および/またはその塩、
b.約22wt%~約32wt%または約26wt%~約30wt%の量の少なくとも1種のアニオン性界面活性剤(例えば、C8~C18アルキルベンゼンスルホン酸、C6~C18ジフェニルオキシドジスルホン酸、C6~C22アルキルリン酸エステルおよび/またはそれらの塩)、
c.約8wt%~約18wt%または約11wt%~約15wt%の量の少なくとも1種の非界面活性強酸、および
d.約0.1wt%~約2wt%または約0.3wt%~約0.8wt%の量の少なくとも1種のキレート剤
を含むか(本質的に)それらからなる貯蔵安定な濃縮された抗菌組成物であって、
貯蔵後に室温で少なくとも5年間にわたってその元の抗菌効力の少なくとも90%を保持しており、かつ過酸化水素、過酸化水素源、精油、パラベン、アルデヒド、アルデヒド放出剤、フェノール、アルコール、ビグアニド、ペルオキシカルボン酸、第四級アンモニウム化合物、塩素系化合物、酵素および腐食液を(実質的に)含んでいない組成物を提供する。
【0006】
本組成物が金属表面または金属物品を除菌または殺菌するために使用される状況では、金属表面または物品の変質を防止するために有効量の少なくとも1種の腐食阻害剤(例えば、ベンゾトリアゾールおよびトリルトリアゾール)を含めることができる。腐食阻害剤は濃縮された組成物中に約0.1wt%~約2wt%または約0.2wt%~約0.5wt%の量で存在していてもよい。
【0007】
例えば洗浄もしくは清浄特性を向上させるために、本組成物を汚れた表面を殺菌または除菌するために使用する場合、本組成物は、C6~C18エトキシ化および/またはプロポキシ化アルコールなどの有効量の少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、以下で考察されている他の非イオン性界面活性剤とを含んでいてもよい。少なくとも1種の非イオン性界面活性剤は約15wt%~約25wt%または約17wt%~約22wt%の量で存在していてもよい。
【0008】
いくつかの実施形態では、本組成物は成分を可溶化し、かつ相安定性および清浄力を高めるために有効量の少なくとも1種の有機溶媒を含んでいてもよい。有機溶媒は約25wt%~約36wt%の量で存在していてもよく、かつ本組成物中の他の成分と適合可能であるように選択する。プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールn-ブチルエーテル、ジエチレングリコールn-プロピルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールt-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールtert-ブチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテルおよびトリプロピレングリコールn-ブチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテルおよびプロピレングリコールフェニルエーテルなどの当業者に公知のあらゆる適合可能な溶媒を使用することができる。
【0009】
本発明に係る組成物は、殺菌技術分野の当業者に知られているような少なくとも1種の非界面活性強酸を有する。「強酸」という用語は、最終的な希釈されたすぐに使える形態の本組成物のpHを本明細書に開示されている希釈比を用いて本明細書に開示されている範囲内まで下げるように機能する酸を意味するものと定義する。一般に、酸は最大で約2.3のpKaを有する。本明細書で使用する場合、「非界面活性酸」という用語は、濃縮された形態であるかすぐに使える形態であるかを問わず本組成物の洗浄力に実質的に影響を与えない酸を意味する。例としては、限定されるものではないが、リン酸、ピロリン酸、ホスホン酸、ポリリン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、スルホサリチル酸およびスルファミン酸が挙げられる。界面活性酸は、殺菌される表面に粘着性の残留物を残す場合があるため望ましくない。
【0010】
本発明の組成物は、エチドロン酸(1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸またはHEDPともいう)、ニトリロトリメチルホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、ジヘキシレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ヘキサエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、2-ヒドロキシホスホノカルボン酸、N,N-ジカルボキシメチルグルタミン酸、ピコリン酸、ジピコリン酸、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタキスメチレンホスホン酸、シクロヘキサン-1,2-テトラメチレンホスホン酸、アミノ[トリ(メチレンホスホン酸)]および/またはそれらの塩などの殺菌組成物において有用であるものとして当業者に公知の少なくとも1種のキレート剤を有する。
【0011】
当業者に知られているような本組成物を調製するために使用される成分の商業的供給源中に水が存在していてもよい。代わりまたは追加として、水を100になるまで適量で添加してもよい。従っていくつかの実施形態では、本組成物はさらに水を含むか(本質的に)それからなる。本水性組成物のpHは、最大で約1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3または0.2であってもよい。
【0012】
本発明に係る組成物は濃縮されており、典型的には使用前に、約1:1、約1:2、約1:4、約1:8または約1:16から約1:32、約1:40、約1:512、約1:256、約1:128または約1:64(組成物:希釈液)までの比で、水、1種以上の有機溶媒またはそれらの組み合わせによる希釈を必要とする。
【0013】
水で希釈されている場合、本組成物は、希釈された形態を抗菌的に有効にさせるのに十分な低いpHを有していなければならない。好ましくは、希釈された組成物のpHは、約1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3または2.4から約3.5、3.4、3.3、3.2、3.1、3.0、2.9、2.8、2.7、2.6または2.5までの範囲である。これは、上記希釈比を十分に考慮して濃縮された組成物中に上記非界面活性強酸を十分に用いることにより達成される。
【0014】
別の態様に従って、本発明は、微生物により汚染された表面における微生物負荷を減少させる方法であって、第1の態様に係る組成物を提供する工程、任意に本組成物を希釈液で希釈して希釈された組成物を得る工程、および本組成物または希釈された組成物を表面に最大5分間塗布する工程を含むか(本質的に)それらからなる方法を提供する。
【0015】
本組成物の抗菌効力をさらに高めるために、使用者は使用前に有効量のさらなる抗菌化合物、例えば過酸化水素などのペルオキシゲン化合物を添加してもよい。従っていくつかの実施形態では、本方法は、第1の態様に係る組成物を提供する工程、任意に本組成物を希釈液で希釈する工程、有効量のさらなる抗菌化合物(例えば過酸化水素)を添加して最終的な生成物を生成する工程、および最終的な生成物を5分間の最大接触時間にわたって殺菌される表面に塗布する工程を含むか(本質的に)それらからなる。
【0016】
用いられる希釈比、接触時間およびあらゆるさらなる抗菌化合物の存在に応じて、本方法は、マイコバクテリア、ウイルス、細菌、真菌および細菌胞子を含む多種多様な微生物の集団を、試験方法ASTM E2197を用いて少なくとも1、2、3、4、5または6対数で減少させるのに有効であり得る。本発明に係る組成物の実施形態は、これらの同因子に応じて除菌剤、殺菌剤、滅菌剤または殺胞子剤として機能することができる。
【0017】
本発明の第1の態様に係る濃縮された組成物は構成要素のキットから調製することができ、ここでは本組成物の構成成分は別個の入れ物、容器またはパッケージに貯蔵されている。次いで、別個の構成成分を使用前に組み合わせて任意に希釈液で希釈してもよい。また、乾燥状の本組成物成分(別々または組み合わせて包装されている)を用いて乾燥組成物を製剤化し、かつ使用前に液体希釈液、例えば水および/または少なくとも1種の有機溶媒と組み合わせてもよい。当然のことながら、乾燥状または液状の濃縮された組成物は、それらの成分が一緒または別々に包装されているか否かを問わず、それらの希釈されたすぐに使える形態よりも貯蔵および輸送するのに経済的である。
【0018】
本濃縮された組成物の実施形態は驚くべきことに、以下にさらに記載するように貯蔵安定である。また本発明の希釈されたすぐに使える実施形態は、比較的より長い貯蔵安定性を有することが予想される。
【0019】
本発明は、本明細書において列挙されているか否かを問わずあらゆる構成成分を省略するという可能性、および本明細書に開示されている化合物のクラスに含まれるがそれらのさらなる構成成分が明示的に列挙されていない場合がある構成成分を含むという可能性も意図している。さらに本発明は複数の機能を行い、かつ複数の請求項の限定を満たす成分を使用することを意図している。例えばいくつかの成分はキレート剤およびサリチル酸などの環式カルボン酸の両方であってもよい。他の成分はキレート剤およびエチドロン酸などの非界面活性強酸の両方であってもよい。
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】6週間の期間にわたって70℃で貯蔵された本発明に係る溶液によって達成される細菌の対数減少およびそれらのpHを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
曖昧さを回避するために、特定の用語を本明細書において以下のとおり定義する。
【0023】
「~を含む(comprise)」という用語は、「~を含むが、それ(ら)に限定されない」ことを意味する。従って列挙された成分を含む組成物は、明示的に列挙されていないさらなる成分を含んでいてもよい。「~からなる(consist of)」という用語は、「列挙されている成分と、天然もしくは市販の不純物または添加剤として存在し得るようなそのようなさらなる成分とを含む」ことを意味する。天然および市販の不純物は当業者に明らかであろう。市販の添加剤の例は、例えば市販の過酸化水素組成物中の微量の安定化剤である。「本質的に~からなる(consist essentially of)という用語は、列挙されている成分(本明細書に定義されているような成分)+本組成物の基本的かつ新規な特性に実質的に悪影響を与えないようなそのようなさらなる成分「からなる」ことを意味する。「基本的かつ新規な特性」は本組成物の貯蔵安定性を意味する。
【0024】
本明細書で使用される「約」という用語は、例えば濃縮物を調製するか使用組成で調製するために使用される典型的な測定および液体/固体取り扱い手順、これらの手順における不注意による誤差、本組成物を調製するか本方法を実施するために用いられる成分の製造、供給源または純度における差異などにより、実世界において何であろうとあらゆる理由のために生じ得る、数として表される量のばらつきを意味する。「約」という用語は、特定の初期の混合により生じる組成物のための異なる平衡条件による異なる量も包含する。「約」という用語によって修正されているか否かを問わず、特許請求の範囲はその量の均等物を含む。確定性および明確性のために、「約」という用語は最大±5%のばらつきを意味する。
【0025】
本発明に係る組成物は「貯蔵安定」である。本明細書で使用される場合、「貯蔵安定」な組成物は、本組成物の元の抗菌効力の少なくとも90%が貯蔵後に室温(約21~23℃)で少なくとも5年間保持されている組成物である。室温で5年間の貯蔵は、以下でさらに考察されているように70℃で5週間の貯蔵によって模倣することができる。当然のことながら本解決法は、貯蔵温度に応じてより長い期間にわたって有効であり得る。
【0026】
本明細書で使用される、ある1種以上の成分を「実質的に含有していない」組成物または組み合わせは、それらの成分をいずれも含まないか微量もしくは付随的な量でのみそれらの成分を含む組成物または組み合わせを意味する。微量もしくは付随的な量の成分は、本組成物の成分の形成または分解時の不純物または副反応の副生成物として別の成分中に存在していてもよい。明確性のために、微量もしくは付随的な量で存在する成分は、本組成物の総重量に基づいて過剰な0.5wt%では存在していない。
【0027】
「wt%」、「重量%」、「%w/w」、「重量パーセント」、「重量で%」、「%w/w」という用語およびそれらの変形は、物質の重量を本組成物の総重量で割って100を掛けた物質の濃度を指す。
【0028】
本明細書で使用される「微生物(microorganism)」という用語は、「微生物(microbe)」という用語と同義で使用される。どちらもあらゆる非細胞もしくは単細胞(コロニーを含む)生物を指すように本明細書で使用される。微生物としては、全ての原核生物、すなわち細菌(バクテリアを含む)、地衣類、酵母、真菌、原生動物、ビリノ、ウイロイド、ウイルス、ファージ、胞子およびいくつかの藻類が挙げられる。
【0029】
「硬質表面」としては、限定されるものではないが、ガラス、セラミックス、金属、天然および合成の岩、木ならびに特定のポリマー、エラストマーおよびプラスチックが挙げられる。「軟質表面」としては、限定されるものではないが、織布および不織布基材、食品(およびその表面)、水または気体(例えば気流)の集合体または流れ、および生き物の体またはその一部、例えばヒトの手が挙げられる。硬質表面および軟質表面はどちらも、ヒトおよび動物の健康管理、ホスピタリティー、農業、食品加工および他の産業部門において遭遇される。
【0030】
化合物の「有効量」という用語は、本開示を読めば当業者には明らかになるような化合物の機能および特性に基づいて化合物の所望の効果を提供する量を意味する。
【0031】
本明細書で使用する場合、組成物は、微生物集団が水または他の抗菌的に不活性な組成物で流すことによって達成される減少と比較した場合に、少なくとも約90%減少する場合に微生物に対して「有効」である。微生物集団におけるより大きい減少は、より大きいレベルの保護を提供する。
【0032】
本明細書で使用される「除菌剤」という用語は、公衆衛生要求によって判断した場合に細菌汚染物質の数を安全なレベルまで減少させる薬剤を指す。一実施形態では、本発明に使用するための除菌剤は、少なくとも99.9%の減少(3対数オーダーの減少)を与える。これらの減少は、Germicidal and Detergent Sanitizing Action of Disinfectants(殺菌剤の殺菌および洗剤消毒作用),Official Methods of Analysis of the Association of Official Analytical Chemists(公認分析化学者協会の公定分析法),段落960.09および適用可能な節,第15版,1990(EPAガイドライン91-2)に記載されている手順を用いて評価することができる。「殺菌剤」は、A.O.A.C. Use Dilution Methods(A.O.A.C.使用希釈法),Official Methods of Analysis of the Association of Official Analytical Chemists(公認分析化学者協会の公定分析法),段落955.14および適用可能な節,第15版,1990(EPAガイドライン91-2)に記載されている手順を用いて大部分の認識されている病原微生物を含む大部分の栄養細胞を死滅させる薬剤を指す。「滅菌剤」は、全ての生存可能な形態の微生物の生命を破壊する薬剤を指す。「殺胞子剤」は、室温で30分以内に枯草菌、クロストリジウム・ディフィシルまたはクロストリジウム・スポロゲネスの胞子の集団の90%超の減少(1対数オーダーの減少)を引き起こす能力を有する物理的もしくは化学的薬剤またはプロセスを指す。
【0033】
本明細書および特許請求の範囲において、単数形の「1つ(種)の(a)」、「1つ(種)の(an)」および「前記」は、文脈が明らかにそうでないことを示していない限り複数の指示対象を含む。従って、例えば「化合物」を含有する組成物についての言及は2種以上の化合物を有する組成物を含む。「または」という用語は、文脈が明らかにそうでないことを示していない限り「および/または」という意味で一般に用いられることにも留意されたい。
【0034】
別段の定めがない限り、「アルキル」または「アルキル基」という用語は、直鎖状アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなど)、環式アルキル基すなわち「シクロアルキル」または「脂環式」もしくは「炭素環式」基(例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなど)、分岐鎖状アルキル基(例えば、イソプロピル、tert-ブチル、sec-ブチル、イソブチルなど)、ならびにアルキルで置換されたアルキル基(例えば、アルキルで置換されたシクロアルキル基およびシクロアルキルで置換されたアルキル基など)を含む、1つ以上の炭素原子を有する炭化水素を指す。
【0035】
また別段の定めがない限り、「アルキル」という用語は、「非置換アルキル」および「置換アルキル」の両方を含む。「置換アルキル」という用語は、炭化水素骨格の1つ以上の炭素上の1つ以上の水素を置き換えている置換基を有するアルキル基を指す。そのような置換基としては、例えばアルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボン酸、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミン、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボン酸、硫酸、アルキルスルフィニル、スルホン酸、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、複素環、アルキルアリールまたは芳香族(ヘテロ芳香族を含む)基が挙げられる。
【0036】
いくつかの実施形態では、置換アルキルは複素環基を含んでいてもよい。本明細書で使用される「複素環基」という用語は、その環内の炭素原子の1つ以上が炭素以外の原子、例えば窒素、硫黄または酸素である、炭素環式基に類似した閉環構造を含む。複素環基は飽和であっても不飽和であってもよい。例示的な複素環基としては、限定されるものではないが、アジリジン、エチレンオキシド(エポキシド、オキシラン)、チイラン(エピスルフィド)、ジオキシラン、アゼチジン、オキセタン、チエタン、ジオキセタン、ジチエタン、ジチエト、アゾリジン、ピロリジン、ピロリン、オキソラン、ジヒドロフランおよびフランが挙げられる。
【0037】
環式カルボン酸およびそれらの塩
【0038】
本発明に係る組成物は、サリチル酸、安息香酸、フロン酸、フタル酸、フェニル酢酸および/またはそれらの塩などの少なくとも1種の環式カルボン酸および/またはその塩を含有する。これらの酸およびそれらの塩は、本組成物の殺菌効力を高めるように機能する。これらの化合物は、約2、2.2、2.4、2.6、2.8または3wt%から約4、3.8、3.6、3.4または3.2wt%までの濃度で濃縮された組成物中に存在している。
【0039】
アニオン性界面活性剤
【0040】
本発明に係る組成物は、本組成物中に抗菌効力を高める少なくとも1種のアニオン性界面活性剤を含む。アニオン性界面活性剤は、アルキルスルホン酸、アルキルアリールスルホン酸、アルキル硫酸、アルキルエーテル硫酸、界面活性剤として機能するそれらのカルボン酸(例えば、アルキルスルホン化カルボン酸、アルキル-(エトキシ/プロポキシ)カルボン酸またはアミノ酸系界面活性剤)、あるいはスルホコハク酸のアルキルもしくはアルケニルエステルまたはジエステルおよびそれらの塩であってもよい。
【0041】
スルホン化カルボン酸およびそれらの塩としては、スルホン化9-オクタデカン酸、2-スルホC12~C18脂肪酸二ナトリウム塩およびメチル-2-スルホC12~C16ナトリウムエステルが挙げられる。
【0042】
例示的な塩としては、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルサルコシン酸塩、直鎖状および分岐鎖状第一級および第二級アルキル硫酸塩、アルキルエトキシ硫酸塩、脂肪オレイルグリセロール硫酸塩、アルキルフェノールエチレンオキシドエーテル硫酸塩、グルカミン硫酸塩およびアルキル多糖の硫酸塩、例えばアルキルポリグルコシドの硫酸塩、アルキルポリ(エチレンオキシ)エーテル硫酸塩および芳香族ポリ(エチレンオキシ)硫酸塩、例えばエチレンオキシドおよびノニルフェノールの硫酸塩(通常は1分子当たり1~6個のオキシエチレン基を有する)、C6~C24アルキルベンゼンスルホン酸塩、C6~C24オレフィンスルホン酸塩、C6~C24パラフィンスルホン酸塩、クメンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、C6~C24アルコール硫酸塩(好ましくはC6~C12アルコール硫酸塩)、ならびに1~約20個のエチレンオキシド基を有するC6~C24アルコールエーテル硫酸塩が挙げられる。
【0043】
カルボン酸界面活性剤およびそれらの塩としては、アルカン酸(およびアルカン酸塩)、エステルカルボン酸、アルキルコハク酸塩、エーテルカルボン酸、アルキルエトキシカルボン酸塩、アルキルアリールエトキシカルボン酸塩、アルキルポリエトキシポリカルボン酸塩界面活性剤および石鹸が挙げられる。本組成物において有用な第二級カルボン酸塩としては、第二級炭素に結合されたカルボキシル単位を含むものが挙げられる。好適な第二級石鹸界面活性剤は典型的には11~13個の総炭素原子を含むが、より多くの炭素原子(例えば最大16個)が存在していてもよい。好適なカルボン酸塩としては、アシルアミノ酸(および塩)、例えばアシルグルタミン酸塩、アシルペプチド、タウリン酸塩(例えば、N-アシルタウリン酸塩およびメチルタウリド(methyl tauride)の脂肪酸アミド)なども挙げられる。好適なアルキルアリールエトキシカルボン酸塩としては、商標または商品名Neodox 23-4、C12~13アルキルポリエトキシ(4)カルボン酸(Shell Chemical社)、およびEmcol CNP-110、C9アルキルアリールポリエトキシ(10)カルボン酸(Witco Chemical社)に関連して市販されているものが挙げられる。カルボン酸塩はClariant社からも、例えば製品Sandopan(登録商標)DTC、C13アルキルポリエトキシ(7)カルボン酸として入手可能である。
【0044】
他の好適なアニオン性界面活性剤としては、アルキルホスホネート、アルキルエーテルホスホネート、アルキルホスフェート、アルキルエーテルホスフェートおよびリン酸エステルが挙げられる。
【0045】
アニオン性界面活性剤は、約22、22.5、23、23.5、24、24.5、25、25.5、26、26.5または27wt%から約32、31.5、31、30.5、30、29.5または29wt%までの量で濃縮された組成物中に存在している。
【0046】
非界面活性強酸および組成物pH
【0047】
本発明に係る水性の濃縮された組成物は、希釈されたすぐに使える形態の本組成物が、最適な抗菌効力を生じると考えられる約1.6~約3.5の範囲のpHを有するように選択された量で少なくとも1種の非界面活性強酸を含有する。典型的には、水性の濃縮された組成物は約0.2~約1.5の範囲のpHを有する。本組成物はアニオン性界面活性剤のそれらの酸形態での使用からその酸性度の一部を得ることもできるが、さらなる酸性化が必要とされ、それは非界面活性強酸を使用することによって達成される。
【0048】
上述のように、当該酸は最大で約2.3のpKaを有し、除菌または殺菌される表面に粘着性の残留物を残すのを回避するために界面活性ではなく、すなわち本組成物の洗浄力に実質的に影響を与えない。
【0049】
界面活性剤として機能しないために当該酸は典型的には、それらの分子中に10個以下の炭素原子を含み、かつ当該分子の任意の直鎖状もしくは分岐鎖状成分中に4個以下の炭素原子を含む。当該分子の炭酸成分は置換されていても置換されていなくてもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。
【0050】
非界面活性酸としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、スルホサリチル酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、クメンスルホン酸、スルホサリチル酸、ナフタレンモノもしくはジスルホン酸、スルホコハク酸、イセチオン酸、およびリン系の酸(例えば、リン酸、ピロリン酸、ホスホン酸、ポリリン酸)、硝酸、硫酸および塩酸を挙げることができる。
【0051】
少なくとも1種の非界面活性酸は、約8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5または12wt%から約18、17.5、17、16.5、16、15.5、15、14.5または14wt%までの濃度で濃縮された形態の本組成物中に存在している。
【0052】
キレート剤
【0053】
本組成物は、金属イオンを水から除去するのを助け、かつ本組成物の全体的抗菌効力をさらに高めると考えられる少なくとも1種のキレート剤を用いる。本発明の文脈において使用することができる例としては、リン酸、スズ酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、第三級アミン系キレート剤およびホスホン酸系キレート剤ならびにそれらの塩が挙げられる。第三級アミン系キレート剤は各分子中に少なくとも1つの第三級アミン基を含む。第三級アミン系キレート剤の例としては、L-グルタミン酸N,N-二酢酸(GLDA)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、ジエチレントリアミン五酢酸(ペンテト酸またはDTPAともいう)、およびニトリロ三酢酸(NTA)が挙げられる。本明細書において用いられるホスホン酸系キレート剤は、各分子中に少なくとも1つのホスホン酸もしくはホスホン酸基を含む。例としては、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸(HEDPまたはエチドロン酸)、アミノトリメチレンホスホン酸(ATMP)、ジエチレントリアミンペンタキスメチレンホスホン酸(DTPMP)、エチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸(EDTMP)、ヘキサメチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸(HDTMP)、シクロヘキサン-1,2-テトラメチレンホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸(PBTC)およびそれらの塩が挙げられる。例示的な塩としては、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルキロイルアミン塩(例えば、モノ、ジもしくはテトラエタノールアミン塩)が挙げられる。当業者であれば、本明細書に定義されているように「強酸」としても機能する特定のキレート剤、例えばリン酸および大部分のホスホン酸系キレート剤のそれらの酸形態も理解しているであろう。
【0054】
少なくとも1種のキレート剤は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7または0.8wt%から約2、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1または0.9wt%までの濃度で濃縮された組成物中に存在している。
【0055】
任意の成分
本発明に係る組成物は、以下のようなさらなる任意の成分を含んでいてもよい。
【0056】
腐食阻害剤
本発明の組成物は、本組成物が金属基材上に使用される場合に、少なくとも1種の腐食阻害剤も含んでいてもよい。好適な腐食阻害剤としては、ベンゾトリアゾールまたはトリルトリアゾールなどのトリアゾールが挙げられる。他の腐食阻害剤としては、モリブデン酸塩およびジチオリン酸亜鉛が挙げられる。腐食阻害剤は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7または0.8wt%以上であって、最大で約2、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1または0.9wt%の量で濃縮された組成物中に存在していてもよい。
【0057】
非イオン性界面活性剤
本組成物は、向上した清浄のために少なくとも1種の非イオン性界面活性剤をさらに含んでいてもよい。好適な非イオン性界面活性剤としては、エチレンオキシド部分、プロピレンオキシド部分またはそれらの混合物を含む界面活性剤と、エチレンオキシド-プロピレンオキシド部分をヘテリック、ブロックまたはランダムヘテリック-ブロック構造(例えばブロックコポリマー)で有する界面活性剤とが挙げられる。例としては、アルキルエチレンオキシド界面活性剤、アルキルプロピレンオキシド界面活性剤、およびアルキルエチレンオキシド-プロピレンオキシド界面活性剤が挙げられる。非イオン性界面活性剤は、アルキル鎖に結合されたエチレンオキシド-プロピレンオキシド部分の任意の組み合わせを有していてもよく、ここではエチレンオキシドおよびプロピレンオキシド部分はあらゆるランダムもしくは規則正しいパターンであってもよく、かつ任意の特定の長さであてもよい。非イオン性部分は、ベンジル、アルコキシまたは短鎖アルキル基でキャップされているか終端していてもよい。
【0058】
非イオン性界面活性剤は、約3~約50モルのエチレンオキシドと共に約6~24個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和の直鎖状もしくは分岐鎖状アルコールの縮合生成物(すなわちアルコールエトキシレート)であってもよい。アルコール部分は上に定められている炭素範囲のアルコールの混合物からなっていてもよく、あるいは、この範囲内の特定の数の炭素原子を有するアルコールからなっていてもよい。このような化学物質の市販界面活性剤の例は、Huntsman社(テキサス州オースティン)によって製造されているSurfonic、BASF社によって製造されているプルロニック(Pluronic)(ニュージャージー州フローラムパーク(Florham Park))およびShell Chemical社(テキサス州ヒューストン)によって製造されているNeodolという商品名で入手可能である。
【0059】
他の有用な非イオン界面活性剤は、アルキルグルコシドおよびアルキルポリグルコシドである。
【0060】
少なくとも1種の非イオン性界面活性剤は、少なくとも約15、17、18または19wt%であって最大で約25、24、23、22、21または20wt%の量で存在していてもよい。
【0061】
希釈液/溶媒
本発明は、液状または乾燥状であってもよい組成物を提供する。液状である場合、本組成物は液体希釈液、例えば水および/または有機溶媒を含む。乾燥状である場合、水および溶媒は省略され、残りの成分はその乾燥形態として存在する。当業者であれば、あらゆる形態の乾燥状化合物を液体希釈液と組み合わせて本発明に係る液体組成物(濃縮されたものであるかすぐに使えるものであるかは問わない)を生成することができることを理解しているであろう。
【0062】
希釈液は、本組成物の他の構成成分を溶解、懸濁または輸送する媒体を提供する。希釈液は、本発明の抗菌組成物を物体上に送達してそこを濡らすように機能することもできる。この目的のために、希釈液はこれらの機能を容易にすることができる任意の1種以上の構成成分を含有していてもよい。
【0063】
特定の実施形態では、本組成物は約25、30、35、40、45、50、65、75、85または90wt%から約99.8、99、97、95、93、90または85wt%までの量で水を含む。例えば特定の実施形態では、本組成物は約1、3、5、7、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65または68wt%の水を含んでいてもよい。
【0064】
例示的な希釈有機溶媒としては、グリコール、グリコールエーテルおよびポリオールが挙げられる。グリコールエーテルの例は、ジエチレングリコールn-ブチルエーテル、ジエチレングリコールn-プロピルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールt-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールtert-ブチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテルおよびトリプロピレングリコールn-ブチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル(Dow Chemical社からDOWANOL EPHとして市販されている)およびプロピレングリコールフェニルエーテル(Dow Chemical社からDOWANOL PPHとして市販されている)など、またはそれらの混合物である。さらなる好適な市販されているグリコールエーテル(それら全てがUnion Carbide社から入手可能)としては、ブトキシエチルPROPASOL、ブチルCARBITOLアセテート、ブチルCARBITOL、ブチルCELLOSOLVEアセテート、ブチルCELLOSOLVE、ブチルDIPROPASOL、ブチルPROPASOL、CARBITOL PM-600、CARBITOL Low Gravity、CELLOSOLVEアセテート、CELLOSOLVE、エステルEEP、FILMER IBT、ヘキシルCARBITOL、ヘキシルCELLOSOLVE、メチルCARBITOL、メチルCELLOSOLVEアセテート、メチルCELLOSOLVE、メチルDIPROPASOL、メチルPROPASOLアセテート、メチルPROPASOL、プロピルCARBITOL、プロピルCELLOSOLVE、プロピルDIPROPASOLおよびプロピルPROPASOLが挙げられる。ポリオールの例はグリセロールおよびソルビトールなどである。
【0065】
使用することができる他の有機溶媒は、メタノール、エタノール、3-ヒドロキシ酪酸ブチル、イソプロピルアルコール、エチルヘキシルグリセロール、分岐鎖状もしくは非分岐鎖状ジオール、荷電もしくは非荷電の非界面活性乳化剤、二塩基性エステル、極性プロトン性溶媒、極性非プロトン性溶媒(例えば炭酸グリセリン)およびそれらの混合物である。
【0066】
本発明に係る組成物は好ましくは、成分(例えばサリチル酸)の溶解性を高め、かつ有機もしくは無機土壌に対する清浄効力を高めるために、少なくとも1種のグリコールエーテル溶媒を含む。例としては、メトキシトリグリコール、エトキシトリグリコール、ブトキシトリグリコール、トリエチレングリコールヘキシルエーテル、プロピレンエチレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルおよびトリプロピレングリコールメチルエーテルが挙げられる。
【0067】
溶媒は、約25、26、27、28または29wt%から約36、35、34、33、32または31wt%までの濃度で存在していてもよい。
【0068】
ヒドロトロープ
本発明の組成物は1種以上のヒドロトロープも含んでいてもよく、そのうちのいくつかも上で考察されている非界面活性強酸であってもよい。ヒドロトロープとしては、限定されるものではないが、アリールおよびアルキルアリールスルホン酸、例えばキシレンスルホン酸、クメンスルホン酸、トルエンスルホン酸およびそれらの塩、ポリエーテルリン酸エステルおよびジフェニルオキシドジスルホン酸塩が挙げられる。これらの成分は、相安定な水性組成物を生成するために有機および無機材料の混和性または溶解性を高めるのに有用である。ヒドロトロープは有機土壌を清浄するのを助けることもできる。
【0069】
濃縮された組成物中で使用する場合、ヒドロトロープは約0.5、1、3、5、10または20wt%から約25、20、15、8、4または1.5wt%までの量で存在していてもよい。
【0070】
他のさらなる成分
本発明の組成物は、湿潤剤、顔料および染料、発泡剤および消泡剤(例えば、脂肪酸またはエステル、植物油、蝋、鉱油およびそれらの硫酸化誘導体、ジメチルシリコーンなどのシリコーン、グリコールポリシロキサン、メチルフェノールポリシロキサン、トリアルキルまたはテトラアルキルシランおよび疎水性シリカ消泡剤)、軟化剤、帯電防止剤、移染防止/着色防止剤、除臭/脱臭剤、ビルダー、光沢剤、撥水剤、抗アレルギー剤、土壌懸濁化剤(soil suspender)、再付着防止剤、不凍剤およびそれらの混合物など、用途によって必要とされる任意の数の他の成分も含有していてもよい。
【0071】
本抗菌組成物を用いる方法
本発明は本抗菌組成物を用いる方法を含む。例えば本発明は、硬質表面または軟質表面における微生物集団を減少させるための方法、皮膚における微生物の集団を減少させるための方法、皮膚の疾患を治療するための方法または臭気を減少させるための方法を含む。濃縮物であるかその希釈された形態である本組成物は、任意の従来の方法によるか抗菌もしくは清浄組成物を物体に塗布するための装置を用いて物体に塗布したり物体と接触させたりしてもよい。接触させることは、本組成物を噴霧すること、本組成物をワイプ(織布もしくは不織織物材料)に含浸させ、かつそのワイプを用いて処理される表面をきれいに拭くこと、物体を本組成物中に浸漬すること、物体を本組成物で泡もしくはジェル処理すること、霧状に吹きかけること、および噴霧散布すること、またはそれらの組み合わせなどの組成物を塗布するための数多くの方法のいずれかを含んでもよい。本組成物を表面全体に流すこともでき、あるいは表面を本組成物の中に漬けてもよい。接触させることは手動であっても機械によるものであってもよい。
【0072】
除外される成分
本組成物は、含まれるものとして明示的に開示されているそれらの化合物以外のさらなる抗菌化合物を(実質的に)含有していない。そのようなさらなる抗菌化合物としては、過酸化水素、過酸化水素源(例えば、過ホウ酸ナトリウム、過炭酸ナトリウム)、精油、パラベン、アルデヒド(例えばホルムアルデヒド)、アルデヒド放出剤、フェノール、アルコール、ビグアニド、ペルオキシカルボン酸、第四級アンモニウム化合物、塩素系化合物(例えば次亜塩素酸塩)、ハロゲン放出剤、芳香族ジアミジン、消毒用アルコール、重金属イオン、アニリド、酵素および腐食液が挙げられる。
【0073】
「腐食液」という用語は、最初にADVANCED TECHNOLOGY MATERIALS社に譲渡された国際公開第2008/080097号に開示されている腐食液を指し、フッ化水素酸(HF)、フルオロケイ酸(H2SiF6)、フルオロホウ酸、フルオロケイ酸アンモニウム塩(NH4hSiF6)、テトラメチルアンモニウムヘキサフルオロホスファート、フッ化アンモニウム塩、重フッ化アンモニウム塩、テトラフルオロホウ酸テトラブチルアンモニウム(TBA-BF4)、約90:10~約99:1、好ましくは約93:7~約98:2の重量比のプロピレングリコール/HF、約75:25~約95:5または約80:20~約90:10の重量比のプロピレングリコール/フッ化テトラアルキルアンモニウム(ここでは、アルキル基は同じであっても互いに異なってもよく、直鎖状もしくは分岐鎖状C1~C6アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル)なる群から選択される)、約75:25~約95:5または約80:20~約90:10の重量比のプロピレングリコール/フッ化テトラブチルアンモニウム、約75:25~約95:5または約80:20~約90:10の重量比のプロピレングリコール/フッ化ベンジルトリメチルアンモニウムなどのフッ化化合物およびそれらの組み合わせを含む。
【0074】
産業的用途
本発明の組成物は、様々な家庭内(例えば住宅)または産業(例えば商業、工業、農業)用途のために使用することができる。それらは滅菌剤、除菌剤、殺菌剤(disinfectant)、防腐剤、脱臭剤、消毒薬、殺真菌剤、殺菌剤(germicide)、殺胞子剤、抗ウイルス剤、界面活性剤ならびに硬質および軟質表面清浄剤などの製品に含めることができる。本組成物は、真菌、カビ、細菌、胞子およびウイルス、例えば白癬菌属種、アスペルギルス属種、ブドウ球菌属種、抗生物質耐性ブドウ球菌属種、大腸菌、連鎖球菌属種、腸球菌属種、レジオネラ属種、シュードモナス属種、マイコバクテリウム属種、クロストリジウム属種、インフルエンザおよび肝炎ウイルスおよびファージなどを含む病原体に対する活性を示すことができる。そのような病原体は、結核、肺および組織感染、敗血性感染、溶血性胃腸炎、インフルエンザおよび肝炎などを含む様々な疾患および障害を引き起こす恐れがある。本組成物は、台所、浴室、工場、病院、歯科医院および食品工場を含む様々な領域に塗布することができる。本抗菌組成物は、哺乳類の皮膚治療薬などの獣医学製品あるいは動物の囲いや水飲み場を除菌または殺菌するための製品、ならびに診察台および手術室などの獣医学的治療領域に使用することもできる。本組成物は、家畜のための抗菌足浴の中または人々のための長靴もしくは靴底浸液として用いてもよい。
【0075】
本発明に係る組成物で処理することができる好適な硬質表面としては、例えば建築表面(例えば、床、壁、窓、洗面台、テーブル、カウンターおよび看板)、食器、硬質表面を有する内科もしくは外科的器具および装置ならびに硬質表面を有する包装が挙げられる。そのような硬質表面は、例えばセラミック、金属、ガラス、木材または硬プラスチックなどの様々な材料から作られていてもよい。好適な軟質表面としては例えば、織物、濾過材、病院および手術用リネンおよび衣服、軟質表面を有する内科もしくは外科的器具および装置ならびに軟質表面を有する包装が挙げられる。そのような軟質表面は、例えば紙、繊維、織布または不織布、軟プラスチックおよびエラストマーなどの様々な材料から作られていてもよい。本発明の組成物を食物、皮膚(例えば手)および動物の他の外面または粘膜面などの軟質表面に塗布してそこにいる微生物集団を減少させることもできる。本組成物は発泡性もしくは非発泡性の環境的除菌剤または殺菌剤として用いてもよい。
【0076】
本抗菌組成物を食物および植物種に使用して表面微生物集団を減少させることもでき、そのような食物および植物種を取り扱う製造もしくは処理場でも使用することができる。例えば本組成物は、食物輸送ライン上で(例えばコンベヤベルトスプレーとして)、長靴および手洗浄浸液容器、食物貯蔵施設、冷凍および冷却機器、飲料冷却装置および加温装置、ブランチャー、まな板、サードシンク領域、および肉冷却装置または肉火傷装置に使用してもよい。本発明の組成物で処理することができる食糧としては、卵、種子、葉、果物および野菜が挙げられる。植物表面としては、収穫された葉および栽培中の葉の両方、根、種子、表皮または外皮、茎、幹、塊茎、穀物および果物などが挙げられる。
【0077】
本発明に係る組成物は、全ての温度範囲、すなわち約-30℃~約80℃において有用である。より高い温度で抗菌接触時間を短縮できることも期待される。
【0078】
本発明は、以下の実施例を参照しながらより良く理解することができる。この実施例は本発明の特定の実施形態の代表であることが意図されており、本明細書に記載され、かつ特許請求されている本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0079】
表2に記載されている成分を用いて組成物1(表1)を調製した。
【表1】
【表2】
【0080】
表2中の成分は全ての場合において100%純粋な化合物ではないため、表3は組成物1中の化学成分の実際の濃度をまとめている。
【表3】
【0081】
上記測定値は通常のバッチごとのばらつきおよび測定誤差を伴うことに留意することが重要である。
【0082】
組成物1を1つの大きいバッチで調製し、次いでこれを4つの等しい部分に分割した。第1の部分を時間=0で即座に試験した。他の3つの部分を容器1、2、および3の中に密閉し、70℃の乾燥器に貯蔵して加速エージングに供した。容器1、2および3の部分をそれぞれ時間=2週間、4週間および6週間で試験した。全ての部分をASTM E2197試験方法を用いてpHおよび抗菌効力について試験し、それらの値を
図1にプロットした。ASTM試験方法は、5wt%の土壌負荷を含む細菌の接種物をブラッシュドステンレス鋼ディスクの上に置き、細菌接種物を乾燥し、かつその後に乾燥した接種物を殺菌剤に2分間曝露し、その後に対数減少を計算するために生き残っている細菌の数を数えることを必要とする。この試験では、それらの部分を1:64(組成物1:水)の比で脱イオン水で希釈した。
【0083】
図1は驚くべきことに、組成物1の抗菌効力が当該試験条件下で6週間の期間にわたって減少しなかったことを示している。アレニウスの式を用いる典型的な化学反応速度の増加の予測によれば、70℃での1週間のインキュベーションは室温(約21~23℃)での1年の貯蔵にほぼ等しい。従って、組成物1は室温で少なくとも6年の貯蔵寿命を有することが分かった。
【0084】
本組成物は表面での微生物負荷を減少させる方法で使用することができ、本方法は、本発明に係る組成物を提供すること、および本組成物を少なくとも1対数、好ましくは少なくとも2対数、より好ましくは少なくとも3対数、最も好ましくは少なくとも4、5または6対数で微生物集団を減少させるのに十分な時間にわたって表面に塗布することを含むか(本質的に)それらからなる。本方法は、本組成物を使用前に水および/または有機溶媒などの希釈液で希釈すること、および/または過酸化水素などのさらなる抗菌剤を添加して溶液の抗菌効力をさらに高めることをさらに含むか(本質的に)それらからなっていてもよい。本発明に係る濃縮された組成物を水で希釈し、かつ過酸化水素を添加することにより調製した例示的な最終組成物が表4に組成物2として以下に示されている。
【表4】
【0085】
組成物4は、1部の組成物1を0.337部の50wt%過酸化水素原液および2.488部の脱イオン水で希釈することにより調製した。
【0086】
実施形態の上記説明は単なる一例としてのものであり、記載および特許請求されている本発明の範囲を限定するように解釈されるべきではない。当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく上に言及されている実施形態の変形が可能であることを理解しているであろう。
【手続補正書】
【提出日】2021-10-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵安定な濃縮され
た抗菌組成物であって、
a.約2wt%~約4wt%の量の少なくとも1種の環式カルボン酸および/またはその塩、
b.約22wt%~約32wt%の量の少なくとも1種のアニオン性界面活性剤および/またはその塩、
c.約11wt%~約18wt%の量の約2.3未満のpKaを有する少なくとも1種の非界面活性強酸、
d.約0.1wt%~約2wt%の量の少なくとも1種のキレート剤、
e.任意に、約0.1wt%~約2wt%の量の少なくとも1種の腐食阻害剤、
f.任意に、約15wt%~約25wt%の量の少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、
g.任意に、約25wt%~約36wt%の量の少なくとも1種の有機溶媒、および
h.
(任意に)100まで適量の水
を含み、
貯蔵後に室温で少なくとも5年間にわたってその元の抗菌効力の少なくとも90%を保持しており、かつ過酸化水素、過酸化水素源、精油、パラベン、アルデヒド、アルデヒド放出剤、フェノール、
除菌用アルコール、ビグアニド、ペルオキシカルボン酸、第四級アンモニウム化合物、塩素化合物、酵素および腐食液を実質的に含有していない組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種の腐食阻害剤はベンゾトリアゾールおよびトリルトリアゾールからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の非イオン性界面活性剤は、C6~C18エトキシ化および/またはプロポキシ化アルコール、アルキルグルコシドおよびアルキルポリグルコシドからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1種の有機溶媒は、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールn-ブチルエーテル、ジエチレングリコールn-プロピルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールt-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールtert-ブチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテルおよびトリプロピレングリコールn-ブチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテルおよびプロピレングリコールフェニルエーテルからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は水を含み、かつ約1.5未満のpHを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種の環式カルボン酸は、サリチル酸、フロン酸、マンデル酸、フタル酸、フェニル酢酸および安息香酸からなる群から選択される、請求項
1に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1種のアニオン性界面活性剤は、C8~C18アルキルベンゼンスルホン酸、C6~C18ジフェニルオキシドジスルホン酸、C6~C22アルキルリン酸エステルおよびそれらの塩からなる群から選択される、請求項
1に記載の組成物。
【請求項8】
約2.3未満のpKaを有する前記少なくとも1種の非界面活性強酸は、リン酸、ピロリン酸、ホスホン酸、ポリリン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、スルホサリチル酸およびスルファミン酸からなる群から選択される、請求項
1に記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1種のキレート剤は、エチドロン酸、ニトリロトリメチルホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、ジヘキシレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ヘキサエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、2-ヒドロキシホスホノカルボン酸、N,N-ジカルボキシメチルグルタミン酸、ピコリン酸、ジピコリン酸、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタキスメチレンホスホン酸、シクロヘキサン-1,2-テトラメチレンホスホン酸、アミノ[トリ(メチレンホスホン酸)]およびそれらの塩からなる群から選択される、請求項
1に記載の組成物。
【請求項10】
約1:1~約1:512の組成物:希釈液比で水および有機溶媒のうちの少なくとも一方で希釈
された、請求項
1に記載の
組成物。
【請求項11】
前記組成物を水で希釈し、かつ前記希釈された組成物は約1.6~約3.4のpHを有する、請求項
10に記載の
組成物。
【請求項12】
微生物により汚染された表面における微生物負荷を減少させる方法であって、有効量の請求項10に記載の組成物を前記表面に最大5分間塗布する工程を含み、前記微生物負荷を少なくとも1対数で減少させる方法。
【国際調査報告】