(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-31
(54)【発明の名称】電力を管理するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/46 20060101AFI20220324BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20220324BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
H02J3/46
H02J3/38 110
H02J3/38 150
H02J3/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547325
(86)(22)【出願日】2020-02-12
(85)【翻訳文提出日】2021-10-08
(86)【国際出願番号】 AU2020050117
(87)【国際公開番号】W WO2020163912
(87)【国際公開日】2020-08-20
(32)【優先日】2019-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521355865
【氏名又は名称】イレクシス アイピー ピーティーワイ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ELEXSYS IP PTY LTD
【住所又は居所原語表記】160 Samford Road, Enoggera, Queensland 4051, AUSTRALIA
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホルコム,ビーヴァン
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066HA15
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA01
5G066JB03
(57)【要約】
本発明は、配電ネットワークにおいて電力を管理するためのシステムを提供する。本システムは、複数のDC電源のうちの1つの出力とDCバスとの間にそれぞれ電気的に結合された複数のDC/DCコンバータであって、これらコンバータは並列にDCバスに電気的に結合され、各コンバータはDC電源からDCバスに電力を転送するように構成されている、複数のDC/DCコンバータと、DCバスに電気的に結合された少なくとも1つのDCエネルギー貯蔵装置と、DCバスに電気的に結合された入力とAC負荷およびAC電源の少なくとも一方に電気的に結合された出力とを有する少なくとも1つのDC/ACインバータと、少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置への電力の転送を選択的に制御するために複数のDC/DCコンバータを選択的に制御する1つ以上の電子処理デバイスと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電ネットワークにおいて電力を管理するためのシステムであって、
a)複数のDC/DCコンバータであって、前記複数のDC/DCコンバータの各DC/DCコンバータは複数のDC電源のうちの1つの出力とDCバスとの間に電気的に結合され、前記複数のDC/DCコンバータは並列に前記DCバスに電気的に結合され、前記各DC/DCコンバータは前記DC電源から前記DCバスに電力を転送するように構成されている、複数のDC/DCコンバータと、
b)前記DCバスに電気的に結合された少なくとも1つのDCエネルギー貯蔵装置と、
c)前記DCバスに電気的に結合された入力と、AC負荷およびAC電源の少なくとも一方に電気的に結合された出力と、を有する少なくとも1つのDC/ACインバータと、
d)前記複数のDC/DCコンバータを選択的に制御することによって前記少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置への電力の転送を選択的に制御する1つ以上の電子処理デバイスと、
を含むシステム。
【請求項2】
前記1つ以上の電子処理デバイスは、DC/DCコンバータの出力電圧およびDCバスの電圧の少なくとも一方に応じて、前記各DC/DCコンバータの出力を独立に制御する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記各DC/DCコンバータの前記出力電圧は、前記各DC/DCコンバータのそれぞれの入力電圧より大きい、請求項1または請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記各DC/DCコンバータの前記出力の制御は、
a)前記少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置の充電限界、
b)前記少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置の放電限界、
c)前記少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置の充電状態(SOC)、および、
d)前記少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置の健全状態(SOH)、
のうちの少なくとも1つに依存する、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記1つ以上の電子処理デバイスは、共通の電圧限界を前記各DC/DCコンバータに送信する、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記共通の電圧限界は、前記少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置の最大充電電圧を示す、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記1つ以上の電子処理デバイスは、前記各DC/DCコンバータに、
a)該DC/DCコンバータの前記出力が前記共通の電圧限界に達するまで、最大電力点追従(MPPT)アルゴリズムを実施させ、および、
b)前記電圧限界に達したら、前記電圧限界を超えないように前記出力を調節させる、
請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記共通の電圧限界は少なくとも600VDCである、請求項5~7の何れか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記複数のDC/DCコンバータのうちの1つ以上が電気的に絶縁される、請求項1~8の何れか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置は、少なくとも600VDCの公称動作電圧を有する電池を1つ以上含む、請求項1~9の何れか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記DC電源は、太陽光起電発電モジュールを含む、請求項1~10の何れか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記複数のDC/DCコンバータは、前記太陽光起電発電モジュールと一体化されている、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記DC/ACインバータは、出力がインピーダンスを介して前記AC電源に結合された双方向DC/ACインバータである、請求項1~12の何れか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記DC/ACインバータは、配電用静止型補償装置(dSTATCOM)を含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記DC/ACインバータは、前記DCバスと前記AC負荷およびAC電源の少なくとも一方との間に電力潮流を選択的に引き起こすために、前記1つ以上の電子処理デバイスによって制御可能である、請求項13または請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記DC/ACインバータの制御は、前記複数のDC/DCコンバータの制御より優先される、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記少なくとも1つ以上の電子処理デバイスと、前記複数のDC/DCコンバータと、前記少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置と、前記DC/ACインバータとの間の無線通信を含む、請求項1~16の何れか一項に記載のシステム。
【請求項18】
配電ネットワークにおいて電力を管理するための方法であって、前記方法は、1つ以上の電子処理デバイスにおいて、
a)システムの1つ以上のパラメータを決定するステップであって、前記システムは、
i)複数のDC/DCコンバータであって、前記複数のDC/DCコンバータの各DC/DCコンバータはそれぞれのDC電源の出力とDCバスとの間に電気的に結合され、前記複数のDC/DCコンバータは並列に前記DCバスに電気的に結合され、前記各コンバータは前記DC電源から前記DCバスに電力を転送するように構成されている、複数のDC/DCコンバータと、
ii)前記DCバスに電気的に結合された少なくとも1つのDCエネルギー貯蔵装置と、
iii)前記DCバスに電気的に結合された入力と、AC負荷およびAC電源の少なくとも一方に電気的に結合された出力と、を有する少なくとも1つのDC/ACインバータと、
を有する、ステップと、および、
b)前記少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置への電力の転送を選択的に制御するために、前記決定されたパラメータに応じて、前記複数のDC/DCコンバータを選択的に制御するステップと、
を含む方法。
【請求項19】
前記各DC/DCコンバータの出力は、コンバータの出力電圧およびDCバスの電圧の少なくとも一方を含む、前記決定されたパラメータに応じて、独立に制御される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記方法は、前記1つ以上の電子処理デバイスにおいて、共通の電圧限界を前記各DC/DCコンバータに送信するステップを含む、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記方法は、前記1つ以上の電子処理デバイスにおいて、
a)前記各DC/DCコンバータにおいて、該DC/DCコンバータの前記出力が前記共通の電圧限界に達するまで、最大電力点追従(MPPT)アルゴリズムを実施するステップと、
b)前記共通の電圧限界に達したら、前記共通の電圧限界を超えないように、前記出力を調節するステップと、
を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記方法は、前記1つ以上の電子処理デバイスにおいて、前記DCバスと前記AC負荷およびAC電源の少なくとも一方との間に電力潮流を選択的に引き起こすために、前記DC/ACインバータを制御するステップを含む、請求項18~21の何れか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記DC/ACインバータの制御は、前記複数のDC/DCコンバータの制御より優先される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記方法は、1つ以上の電子処理デバイスにおいて、
a)前記AC電源の1つ以上の動作パラメータのパラメータ値を求めるステップと、
b)前記1つ以上の動作パラメータの目標パラメータ値を求めるステップと、
c)前記パラメータ値と前記目標パラメータ値との間の差を求めるステップと、
d)前記DC/ACインバータを制御して前記パラメータ値を前記目標パラメータ値に向かわせる電力潮流を前記DCバスと前記AC電源との間に選択的に引き起こすために、前記求められた差に少なくとも部分的に基づき、制御信号を生成するステップと、
を含む、請求項18~23の何れか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記AC電源の前記1つ以上の動作パラメータは、
a)AC電源周波数、
b)AC電源電圧、
c)位相負荷、および
d)負荷力率、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記AC電源は、ユーティリティグリッドまたは発電機の少なくとも一方を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記パラメータ値を求める前記ステップは、前記少なくとも1つの電子処理デバイスにおいて、
a)AC電圧の大きさ、AC電流の大きさ、およびAC電流の位相角、の測定値をインバータ出力において求めること、および、
b)AC電圧の大きさ、AC電流の大きさ、およびAC電流の位相角、の測定値を前記AC電源において求めること、
を含む、請求項24~26の何れか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記制御信号は、前記DC/ACインバータに、
a)前記AC電源から前記DCバスへの電力潮流を引き起こすこと、および、
b)前記DCバスから前記AC電源への電力潮流を引き起こすこと、
の少なくとも一方を行わせる、請求項24~27の何れか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記制御信号は、前記DC/ACインバータに、前記DCバスから前記少なくとも1つのAC負荷への電力潮流を引き起こさせる、請求項24~28の何れか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記電力潮流は、有効電力(kW)および無効電力(kVAR)の少なくとも一方を含む、請求項28または請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記方法は、前記少なくとも1つの電子処理デバイスにおいて、前記少なくとも1つのAC負荷の動作を制御するために、前記DC/ACインバータに1つ以上の切り換えデバイスを作動させる制御信号を生成するステップを含む、請求項29または請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記少なくとも1つの電子処理デバイスは、前記インバータ出力を前記AC電源に同期化させる、請求項18~31の何れか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記少なくとも1つ以上の電子処理デバイスと、前記DC/ACインバータと、前記エネルギー貯蔵装置と、前記少なくとも1つのAC負荷と、前記AC電源と、1つ以上の外部通信ネットワークとが無線通信によって制御される、請求項24~32の何れか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記制御信号は、マシンラーニングアルゴリズムによって、または前記AC電源の前記1つ以上の動作パラメータの履歴データから、少なくとも部分的に生成される、請求項24~33の何れか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記方法は、1つ以上の電子処理デバイスにおいて、複数のインバータを制御して前記パラメータ値を前記目標パラメータ値に向かわせる電力潮流を複数のエネルギー貯蔵装置と前記AC電源との間に選択的に引き起こすために、前記求められた差に少なくとも部分的に基づき、複数の制御信号を生成するステップを含む、請求項24~34の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電ネットワークにおいて電力を管理するためのシステムに関する。本発明は、特定の一形態において、これだけに限定されるものではないが、給電グリッドと一体化された、更にはエネルギー貯蔵部を含む、太陽光起電(solar PV(photovoltaic))発電を含むシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
以前の刊行物(または、それから導き出された情報)への、または公知の何れかの事項への、本願明細書における言及は、以前の刊行物(または、それから導き出された情報)または公知の事項が本願明細書に関連する研究分野における共通の一般知識の一部を形成するとの確認、または承認、または何れかの示唆形態としては取られないものとし、且つ取られるべきではない。
【0003】
住宅用、商用、および工業用電力需要家による太陽光起電発電の取り込みにおけるブームは、フィードインタリフおよび他の助成金を含む報奨金によって大きく推進されてきた。これらの報奨金は過去数年において徐々に減ってきたので、スローガンは、発生させた電力の「自家消費」へと向けられた。太陽光起電システムは、一般に、負荷が一般に低い日中に最大電力を発生させるので、余剰エネルギーは給電グリッドに送り出され、負荷に給電するために需要家によって消費されない。太陽光起電システムが非活動中で、負荷が一般に最大である夜間には、負荷はグリッドから電力を引き込むので、需要家はグリッド運用者が発電した電気の代金を支払う必要がある。
【0004】
したがって、望ましいのは、エネルギー貯蔵部をシステム内に含めることによって、太陽光起電システムが発電した余剰電力をエネルギー貯蔵部に貯蔵して、太陽光起電システムの非活動中に使用できるようにすることである。ただし、グリッドに接続された太陽光起電システムへのエネルギー貯蔵部、特に重要なエネルギー貯蔵部、の統合は、性能、効率、およびコスト属性を考慮に入れる必要があるので、容易な仕事ではない。
【0005】
例えば、エネルギー貯蔵部を組み込んだシステムが一般に蒙っているのは、負荷またはグリッドへの供給前に、太陽光起電モジュールと貯蔵部との間に存在する多数のエネルギー変換ステージに起因する非効率性である。更に、エネルギー貯蔵システムは、効率を低下させる低周波トランスを一般に必要とする低電圧電池を貯蔵媒体として以前使用していた。
【0006】
したがって、グリッドに接続された太陽光起電システムにエネルギー貯蔵部を効率的に統合した、配電ネットワークにおいて電力を管理可能なシステムを提供することが有利であろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、広範な1つの形態において、配電ネットワークにおいて電力を管理するためのシステムを提供しようとするものである。本システムは、複数のDC/DCコンバータであって、各DC/DCコンバータは複数のDC電源のうちの1つの出力とDCバスとの間に電気的に結合され、これらコンバータは並列にDCバスに電気的に結合され、各コンバータはDC電源からDCバスに電力を転送するように構成されている、複数のDC/DCコンバータと、DCバスに電気的に結合された少なくとも1つのDCエネルギー貯蔵装置と、DCバスに電気的に結合された入力とAC負荷およびAC電源の少なくとも一方に電気的に結合された出力とを有する少なくとも1つのDC/ACインバータと、複数のDC/DCコンバータを選択的に制御することによって少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置への電力の転送を選択的に制御する1つ以上の電子処理デバイスと、を含む。
【0008】
1つの実施形態において、1つ以上の電子処理デバイスは、DC/DCコンバータの出力電圧およびDCバスの電圧の少なくとも一方に応じて、各DC/DCコンバータの出力を独立に制御する。
【0009】
1つの実施形態において、各DC/DCコンバータの出力電圧は、各コンバータのそれぞれの入力電圧より大きい。
【0010】
1つの実施形態において、各DC/DCコンバータの出力の制御は、少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置の充電限界、少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置の放電限界、少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置の充電状態(SOC:State of Charge)、および少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置の健全状態(SOH:State of Health)のうちの少なくとも1つに依存する。
【0011】
1つの実施形態において、1つ以上の電子処理デバイスは、共通の電圧限界を各DC/DCコンバータに送信する。
【0012】
1つの実施形態において、共通の電圧限界は、少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置の最大充電電圧を示す。
【0013】
1つの実施形態において、1つ以上の電子処理デバイスは、各DC/DCコンバータに、当該DC/DCコンバータの出力が共通の電圧限界に達するまで、最大電力点追従(MPPT:Maximum Power Point Tracking)アルゴリズムを実施させ、電圧限界に達したら、電圧限界を超えないように出力を調節させる。
【0014】
1つの実施形態において、共通の電圧限界は少なくとも600VDCである。
【0015】
1つの実施形態において、複数のDC/DCコンバータのうちの1つ以上が電気的に絶縁される。
【0016】
1つの実施形態において、少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置は、公称動作電圧が少なくとも600VDCである電池を1つ以上含む。
【0017】
1つの実施形態において、DC電源は、太陽光起電発電モジュールを含む。
【0018】
1つの実施形態において、DC/DCコンバータは、太陽光起電発電モジュールと一体化される。
【0019】
1つの実施形態において、インバータは、インピーダンスを介してAC電源に結合された出力を有する双方向DC/ACインバータである。
【0020】
1つの実施形態において、インバータは、配電用静止型補償装置(dSTATCOM:distribution static compensator)を含む。
【0021】
1つの実施形態において、インバータは、DCバスとAC負荷およびAC電源の少なくとも一方との間に電力潮流を選択的に引き起こすために、1つ以上の電子処理デバイスによって制御可能である。
【0022】
1つの実施形態において、インバータの制御は、DC/DCコンバータの制御より優先される。
【0023】
1つの実施形態において、システムは、少なくとも1つ以上の電子処理デバイスと、複数のDC/DCコンバータと、少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置と、インバータとの間の無線通信を含む。
【0024】
本発明の一態様は、1つの広範な形態において、配電ネットワークにおいて電力を管理するための方法を提供しようとするものである。本方法は、1つ以上の電子処理デバイスにおいて、システムの1つ以上のパラメータを決定するステップであって、システムは、複数のDC/DCコンバータであって、各DC/DCコンバータはそれぞれのDC電源の出力とDCバスとの間にそれぞれ電気的に結合され、これらコンバータは並列にDCバスに電気的に結合され、各コンバータはDC電源からDCバスに電力を転送するように構成されている、複数のDC/DCコンバータと、DCバスに電気的に結合された少なくとも1つのDCエネルギー貯蔵装置と、DCバスに電気的に結合された入力とAC負荷およびAC電源の少なくとも一方に電気的に結合された出力とを有する少なくとも1つのDC/ACインバータとを含む、ステップと、少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置への電力の転送を選択的に制御するために、決定されたパラメータに応じて複数のDC/DCコンバータを選択的に制御するステップと、を含む。
【0025】
1つの実施形態において、各DC/DCコンバータの出力は、コンバータの出力電圧およびDCバスの電圧の少なくとも一方を含む、決定されたパラメータに応じて、独立に制御される。
【0026】
1つの実施形態において、本方法は、1つ以上の電子処理デバイスにおいて、共通の電圧限界を各DC/DCコンバータに送信するステップを含む。
【0027】
1つの実施形態において、本方法は、1つ以上の電子処理デバイスにおいて、DC/DCコンバータの出力が共通の電圧限界に達するまで、最大電力点追従(MPPT)アルゴリズムを各DC/DCコンバータにおいて実施するステップと、電圧限界に達したら、電圧限界を超えないように出力を調節するステップと、を含む。
【0028】
1つの実施形態において、本方法は、1つ以上の電子処理デバイスにおいて、DCバスとAC負荷およびAC電源の少なくとも一方との間に電力潮流を選択的に引き起こすために、インバータを制御するステップを含む。
【0029】
1つの実施形態において、インバータの制御は、DC/DCコンバータの制御より優先される。
【0030】
1つの実施形態において、本方法は、1つ以上の電子処理デバイスにおいて、AC電源の1つ以上の動作パラメータのパラメータ値を求めるステップと、1つ以上の動作パラメータの目標パラメータ値を求めるステップと、パラメータ値と目標パラメータ値との間の差を求めるステップと、インバータを制御するために、ひいては、パラメータ値を目標パラメータ値に向かわせる電力潮流をDCバスとAC電源との間に選択的に引き起こすために、求められた差に少なくとも部分的に基づき、制御信号を生成するステップとを含む。
【0031】
1つの実施形態において、AC電源の1つ以上の動作パラメータは、AC電源周波数、AC電源電圧、位相負荷、および負荷力率のうちの少なくとも1つを含む。
【0032】
1つの実施形態において、AC電源は、ユーティリティグリッドまたは発電機の少なくとも一方を含む。
【0033】
1つの実施形態において、パラメータ値を求めるステップは、少なくとも1つの電子処理デバイスにおいて、AC電圧の大きさ、AC電流の大きさ、およびAC電流位相角、の測定値をインバータ出力において求めることと、AC電圧の大きさ、AC電流の大きさ、およびAC電流位相角、の測定値をAC電源において求めることとを含む。
【0034】
1つの実施形態において、この制御信号は、AC電源からDCバスへの電力潮流を引き起こすこと、およびDCバスからAC電源への電力潮流を引き起こすこと、の少なくとも一方をインバータに行わせる。
【0035】
1つの実施形態において、この制御信号は、インバータに、DCバスから少なくとも1つのAC負荷への電力潮流を引き起こさせる。
【0036】
1つの実施形態において、この電力潮流は、有効電力(kW)および無効電力(kVAR)の少なくとも一方を含む。
【0037】
1つの実施形態において、本方法は、少なくとも1つの電子処理デバイスにおいて、少なくとも1つのAC負荷の動作を制御するために、インバータに1つ以上の切り換えデバイスを作動させる制御信号を生成するステップを含む。
【0038】
1つの実施形態において、少なくとも1つの電子処理デバイスは、インバータ出力をAC電源と同期化させる。
【0039】
1つの実施形態において、少なくとも1つ以上の電子処理デバイスと、インバータと、エネルギー貯蔵装置と、少なくとも1つのAC負荷と、AC電源と、1つ以上の外部通信ネットワークとが無線通信を介して制御される。
【0040】
1つの実施形態において、制御信号は、マシンラーニングアルゴリズムによって、またはAC電源の1つ以上の動作パラメータの履歴データから、少なくとも部分的に生成される。
【0041】
1つの実施形態において、本方法は、1つ以上の電子処理デバイスにおいて、複数のインバータを制御するために、ひいてはパラメータ値を目標パラメータ値に向かわせる電力潮流を複数のエネルギー貯蔵装置とAC電源との間に選択的に引き起こすために、求められた差に少なくとも部分的に基づき、複数の制御信号を生成するステップを含む。
【0042】
以下においては、添付の図面を参照して、本発明の一例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】配電ネットワークにおいて電力を管理するためのシステムの一例の概略図である。
【
図3】配電ネットワークにおいて電力を管理する方法の一例のフローチャートである。
【
図4】電池の最大充電電圧をシステムパラメータとして使用する、配電ネットワークにおいて電力を管理する方法の一例のフローチャートである。
【
図5】配電ネットワークにおいて電力を管理するための方法の第2の例のフローチャートである。
【
図6】AC電源の電圧レベルを動作パラメータとして使用する、配電ネットワークにおいて電力を管理するための方法の一例のフローチャートである。
【
図7】配電ネットワークにおいて電力を管理するためのシステムの別の例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
次に、
図1を参照して、配電ネットワークにおいて電力を管理するためのシステムの一例を説明する。本システムは、DC出力を生成可能な、燃料電池、DC発電機、風力タービン、および太陽光起電セルを含む、ただしこれだけには限定されない、何れの電源とも併用可能であることを以下の説明から理解されるであろう。図示の例において、DC電源は、複数の太陽光起電モジュールを備える。これら太陽光起電モジュールは、例えば、屋根搭載型太陽光起電アレイの一部を形成し得るが、これだけには限定されない。
【0045】
この例において、システム100は、複数のDC/DCコンバータ130を含む。各DC/DCコンバータ130は、それぞれのDC電源120の出力122とDCバス106との間に電気的に結合されている。これらコンバータ130は並列にDCバス106に電気的に結合されている。各コンバータ130は、DC電源120からDCバス106に電力を転送するように構成されている。
【0046】
システム100は、少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置140を更に含む。エネルギー貯蔵装置140は、DCバス106と少なくとも1つのDC/ACインバータ160とに電気的に結合されている。DC/ACインバータ160は、DCバス106に電気的に結合された入力161と、AC負荷182、184とAC電源150との少なくとも一方に電気的に結合された出力162とを有する。エネルギー貯蔵装置140は、何れか適した貯蔵デバイスであればよく、例えば、電池などの電気化学貯蔵デバイス、またはコンデンサまたは水素貯蔵部などの静電エネルギー貯蔵デバイスが挙げられる。図示の例において、エネルギー貯蔵装置140は1つ以上の電池を備える。AC電源150は、一般には配電グリッドまたはユーティリティ給電ネットワークであるが、スタンドアロンAC発電機とすることもできる。AC負荷182、184は、システム内の、制御される、および制御されない、両方の負荷を表し、例えば、AC機器などの需要家負荷と誘導モータおよび他の各種AC機械などの産業負荷とを含む。
【0047】
図1には示されていないが、システム100は、1つ以上の電子処理デバイスを更に含む。電子処理デバイスは、以下により詳細に説明するように、DC/DCコンバータ130を選択的に制御することによって少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置140への電力転送を選択的に制御する。
【0048】
上記システムの一利点は、DCエネルギー貯蔵との太陽光発電の効率的なグリッド統合を可能にすることである。複数の太陽光起電モジュール120と複数のDC/DCコンバータ130とが並列に接続されるので、太陽光起電モジュールのエネルギー出力を最大化できる。複数の太陽光起電モジュールが直列に接続された場合、システムの最大出力は、最も弱い太陽光起電セルによって制約される。そのため、合計出力は、変わりやすい陰影、パネルの向き、太陽光起電セルおよび/または接続部の低品質、等々の影響を蒙りやすい。
【0049】
加えて、上記のシステムは、単一の電力逆変換ステージのみを有する。この逆変換は、太陽光起電出力がエネルギー貯蔵装置140に貯蔵された後に行われる。これにより、AC電源および/またはAC負荷への供給前に、太陽光起電出力とエネルギー貯蔵装置との間で必要とされるエネルギー変換の数が最小化される。
【0050】
DC/DCコンバータ130を選択的に制御することによって少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置140への電力転送を選択的に制御できることにより、DCバス電圧の調節が更に保証されるため、以下により詳細に説明するように、エネルギー貯蔵装置140の効率的な充電が可能になる。
【0051】
次に、更なる特徴をいくつか説明する。
【0052】
一般に、1つ以上の電子処理デバイスは、コンバータの出力電圧およびDCバスの電圧の少なくとも一方に応じて、各DC/DCコンバータの出力を独立に制御する。これらのパラメータは、何れか適した電圧センサを使用して測定され得る。適した電圧センサとして、例えば、電圧計、マルチメータ、真空管電圧計(VTVM:vacuum tube voltmeter)、電界効果トランジスタ電圧計(FET-VM:field effect transistor voltmeter)、またはこれらに類するものが挙げられる。各DC/DCコンバータを独立に制御すると有利であるのは、システムを本質的にスケーラブルにできるからである(すなわち、システムは、任意数の太陽光起電モジュール、エネルギー貯蔵装置、またはインバータを備え得る)。
【0053】
各DC/DCコンバータの出力の制御は、少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置の充電限界、少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置の放電限界、少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置の充電状態(SOC)、および少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置の健全状態(SOH)のうちの少なくとも1つに依存する。
【0054】
エネルギー貯蔵装置の健全状態(SOH)は、理想的な状態と比較した貯蔵装置の状態を表し、内部抵抗、容量、電圧、自己放電、充電/放電サイクルの数、等々を含む諸要因の考慮を含み得る。エネルギー貯蔵装置の上記パラメータのうちの1つ以上を考慮に入れることによって、エネルギー貯蔵装置の充電を、例えば充電電圧限界を超えた電圧での充電による損傷を一切引き起こさずに、効率的に行えるように、DC/DCコンバータを制御できる。
【0055】
特定の一例において、1つ以上の電子処理デバイスは、共通の電圧限界を各DC/DCコンバータに送信する。一例において、共通の電圧限界は、少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置の最大充電電圧を示す。各DC/DCコンバータに対して共通の電圧限界を設定しておくと、1つ以上の電子処理デバイスは、DC/DCコンバータの出力が共通の電圧限界に達するまで、各DC/DCコンバータに追従アルゴリズム(例えば最大電力点追従(MPPT)アルゴリズム)を実施させ、この電圧限界に達したら、この電圧限界を超えないように、出力を調節させる。
【0056】
この共通の電圧限界は、一般に少なくとも600Vである。このような高電圧でのエネルギーの貯蔵は、非効率的な低周波トランスを一般に必要とする低電圧貯蔵部(例えば、48VDC鉛酸蓄電池)に比べ、効率的な電気エネルギー貯蔵手段である。
【0057】
出力がインピーダンスを介してAC電源に結合された、好ましくは双方向性の、インバータは、DCバスとAC負荷およびAC電源の少なくとも一方との間に電力潮流を選択的に引き起こすために、1つ以上の電子処理デバイスによって制御可能である。したがって、例えば、AC電源の1つ以上の動作パラメータを制御するために、1つ以上の処理デバイスは、電池充電を最適化するためにDC/DCコンバータからエネルギー貯蔵装置への電力潮流を制御するばかりでなく、複数の負荷またはグリッドに電力を供給するために、DCバスとAC負荷およびAC電源の少なくとも一方との間のインバータ経由の電力潮流も制御する。好適な制御階層において、インバータの制御は、DC/DCコンバータの制御より優先される。換言すると、二層制御階層において、システムのAC側の制御は、電池充電の制御より優先順位が高い。
【0058】
一般に、本システムは、少なくとも1つ以上の電子処理デバイスと、複数のDC/DCコンバータと、少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置と、インバータとの間の無線通信を含む。本システムは、1つ以上のAC負荷、外部通信ネットワーク(例えば、グリッドとの通信用)、および家庭または事業がAC電源から消費する電力量を一定の時間間隔で測定および記録するように構成されたAC電源メータとも無線で通信し得る。
【0059】
1つの例において、電力を管理するための制御方法は、1つ以上の電子処理デバイスにおいて、AC電源の1つ以上の動作パラメータのパラメータ値を求めるステップを含む。これら動作パラメータは、AC電源周波数、AC電源電圧、位相負荷、および負荷力率のうちの少なくとも1つを含む。本方法は、1つ以上の動作パラメータの目標パラメータ値を求めることと、パラメータ値と目標パラメータ値との間の差を求めることとを更に含む。本方法は、次に、インバータを制御するために、ひいてはパラメータ値を目標パラメータ値に向かわせる電力潮流をDCバスとAC電源との間に選択的に引き起こすために、この求められた差に少なくとも部分的に基づき、制御信号を生成することを含む。
【0060】
このようにして、AC電源の動作パラメータを含む、配電ネットワークのAC側パラメータを制御するために、インバータを使用できる。いくつかの例において、電力潮流は、DCバスを通ってAC電源とエネルギー貯蔵装置との間に直接流れ得る。
【0061】
パラメータ値を求めるステップは、少なくとも1つの電子処理デバイスにおいて、AC電圧の大きさ、AC電流の大きさ、およびAC電流の位相角、の測定値をインバータ出力において求めることと、AC電圧の大きさ、AC電流の大きさ、およびAC電流の位相角、の測定値をAC電源において求めることとを含む。これらの測定値から、負荷電力係数など、他の全てのAC側パラメータが決定され得る。
【0062】
1つの例において、1つ以上の電子処理デバイスによって生成された制御信号は、AC電源からDCバスへの電力潮流を引き起こすこと、およびDCバスからAC電源への電力潮流を引き起こすこと、の少なくとも一方をインバータに行わせる。
【0063】
別の例において、1つ以上の電子処理デバイスによって生成された制御信号は、AC電源からエネルギー貯蔵装置への電力潮流を引き起こすこと、およびエネルギー貯蔵装置からAC電源への電力潮流を引き起こすこと、の少なくとも一方をインバータに行わせる。
【0064】
別の例において、この制御信号は、インバータに、DCバスから1つ以上の負荷への電力潮流を引き起こさせる。上記の例において、電力潮流は、有効電力(kW)および無効電力(kVAR)の少なくとも一方を含む。
【0065】
別の例において、本方法は、少なくとも1つの電子処理デバイスにおいて、1つ以上の負荷の動作を制御するために、インバータに1つ以上の切り換えデバイスを作動させる制御信号を生成するステップを含む。例えば、切り換えデバイス(例えば、リレーまたはスイッチ)は、負荷によって引き込まれる電力を調節し得るし、または負荷をネットワークから完全に切り離し得る。
【0066】
制御信号は、測定またはこれに類するものによって得られた、求められたパラメータ値に基づき、生成され得る一方で、マシンラーニングアルゴリズムによって、または、例えば、一日の特定時刻に期待される一般的なピーク負荷値など、ネットワークの1つ以上のパラメータの履歴データから、少なくとも部分的に制御信号を生成することも可能である。
【0067】
別の例において、本方法は、1つ以上の電子処理デバイスにおいて、複数のインバータを制御するために、ひいてはパラメータ値を目標パラメータ値に向かわせる電力潮流を複数のエネルギー貯蔵装置とAC電源との間に選択的に引き起こすために、求められた差に少なくとも部分的に基づき、複数の制御信号を生成するステップを含む。複数のインバータと複数のエネルギー貯蔵装置モジュールとを有するシステムにおいて、これらモジュールは配電用給電線に沿って選択された、例えばネットワークを支援するために最も必要とされる、複数の位置に設置され得るので、大きな制御能力がもたらされる。
【0068】
次に、
図1に示されているシステムアーキテクチャをより詳細に説明する。システム100は、複数の太陽光起電モジュール120を含む。これらモジュール120は、例えば住宅の屋根設置型太陽光起電アレイの一部を形成し得る。各太陽光起電モジュールの低電圧出力122(一般に80VDC未満)は、DC/DCコンバータ130に電気的に結合されている。1つの例において、各DC/DCコンバータは、太陽光起電モジュールと一体化される。これは、例えば、高周波磁性部品をコンバータ内に使用することによって実現され得る。各DC/DCコンバータ130は、例えば同時係属中の国際公開第2014/078904号に記載されているように、更に、電気的に絶縁され得るし、および/または障害検出をもたらし得る。各DC/DCコンバータを電気的に絶縁することによって、インバータなど、システムの他の構成要素を非絶縁型にできる。
【0069】
これらDC/DCコンバータ130は、複数の保護用フューズ108を介して並列にDCバス106に電気的に結合されている。DCバス106は、高電圧DCバス(一般に少なくとも600VDC)であることが好ましい。したがって、各DC/DCコンバータの出力電圧は、各コンバータのそれぞれの入力電圧より大きい。具体的には、各DC/DCコンバータ130は、太陽光起電モジュールからの低電圧出力をDCバス106の高電圧に昇圧させるために機能する。高電圧DCバス106が有利であるのは、必要とされる導体およびコンデンサのサイズ/コストを本質的に下げるからである。
【0070】
エネルギー貯蔵装置140がDCバス106に電気的に結合されている。一般に、エネルギー貯蔵装置140は、DCバス106に直接接続された高電圧電池を1つ以上備える。DCバス106は、DC/ACインバータ160にも電気的に結合されている。DC/ACインバータ160は、太陽光起電モジュール120および/または電池140からの電力をAC電源150と、配電ネットワークの一部を形成する1つ以上のAC負荷182、184と、に配電する。したがって、グリッドに接続されたDC/ACインバータ160は、DCバス電圧を幹線周波数(例えば230~240VAC、50Hz)のAC幹線またはグリッド電圧に変換する。
【0071】
1つの例において、インバータ160は四象限自己同期型であり、同期化接触器164を介して小さなインピーダンス154を通ってAC電源150に同期化されて動作する。本システムにおいて使用され得るインバータトポロジーの一例がWolfs,PおよびMaung Than Oo共著(2013)「A LV Distribution Level STATCOM with Reduced DC Bus Capacitance for Networks with High PV Penetrations(太陽光発電設備が大量導入されたネットワークのためのDCバス容量が低減された低電圧配電レベルSTATCOM)」、IEEE電力・エネルギー学会総会(PES)に記載されている。したがって、インバータがAC電源150への、およびAC電源150からの、電力転送を支援できるように、インバータ160は、配電用静止型補償装置(dSTATCOM)を含む双方向DC/ACインバータでもよい。例えば、DCバス106からAC電源150に、またはAC電源150からDCバス106上に、および電池140に、電力が転送され得る。
【0072】
システム100は、AC電源150における測定を更に含み得る。メータ152は、家庭または事業がAC電源150から消費している電力量を一定の時間間隔で測定および記録可能なスマートメータであることが好ましい。
【0073】
上記のように、システム100は、1つ以上の電子処理デバイスを更に含む。電子処理デバイスは、複数のDC/DCコンバータ130を選択的に制御することによって、少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置140への電力転送を選択的に制御する。1つ以上の電子処理デバイスは、インバータ160の、および、いくつかの例においては、電池140およびローカル負荷182、184の、動作を更に制御する。
【0074】
次に、
図2を参照すると、システム100のさまざまなデバイスが通信ネットワーク200を介して通信し得ることが示されている。これらデバイスは、有線または無線接続など、何れか適切な機構を介して通信できる。適切な機構として、モバイルネットワーク、802.11ネットワークなどの私設ネットワーク、インターネット、LAN、WAN、またはこれらに類するものなど、ならびにブルートゥース(登録商標)、ジグビー(登録商標)、またはこれらに類するものなどの、直接接続、または二地点間接続が挙げられるが、これらだけに限定されるものではない。
【0075】
図示の例において、各DC/DCコンバータ30は、ノード202においてネットワークに接続されており、電池140は、ノード204を介してデータをやり取りし、(1つ以上の電子処理デバイスから成る)システム制御装置170がノード206を介して接続されている。システム制御装置170は、例えばユーティリティグリッド運用者と、通信し得る外部通信ネットワーク208に接続され得る。図示されていないが、インバータ、複数のAC負荷、およびAC電源メータも、それぞれのノードを介して、通信ネットワーク200に接続されることを理解されたい。
【0076】
システム制御装置170は単一のエンティティでもよいが、例えば、クラウドベース環境の一部として設けられる処理システムおよび/またはデータベースを使用することによって、システム制御装置170を地理的に離れたいくつかの場所に分散できることを理解されるであろう。ただし、上記の配置は必須ではなく、他の適した構成を使用することもできる。
【0077】
1つの例において、システム制御装置170は、1つ以上の処理システムなどを含む、何れか適した電子処理デバイス(単数または複数)を含み得る。電子処理デバイスは、場合によっては、例えば履歴負荷およびAC電源パラメータに関する情報を収容している、1つ以上のデータベースに結合され得る。したがって、1つ以上の処理システムは、インバータ、DC-DCコンバータ、エネルギー貯蔵装置、ローカル負荷、AC電源メータ、および外部通信ネットワークのうちの1つ以上を制御可能な何れか適した形態の電子処理システムまたはデバイスを含むことができる。
【0078】
1つの例において、適した処理システムは、処理システムバスを介して互いに結合されたプロセッサ、メモリ、キーボードおよびディスプレイなどの入力/出力(I/O)デバイス、および外部インタフェースを含む。I/Oデバイスは、必須ではないが、ユーザにデータを入力させるキーボード、キーパッド、タッチスクリーン、ボタン、スイッチ、またはこれらに類するものなどの入力部を更に含み得ることを理解されるであろう。外部インタフェースは、処理システムを各システムデバイスに結合するために使用される。システムデバイスとして、インバータ、DC-DCコンバータ、エネルギー貯蔵装置、ローカル負荷、AC電源メータ、および外部通信ネットワークが挙げられる。
【0079】
使用中、プロセッサは、少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置140への電力転送を選択的に制御するためにDC/DCコンバータ130の選択的制御を少なくとも可能にするために、メモリに記憶されているアプリケーションソフトウェアの形態の命令を実行する。したがって、以下の説明の目的として、1つ以上の処理システムによって実施される動作は、一般に、メモリに記憶されている命令の制御下でプロセッサによって実施されることを理解されるであろう。したがって、これについては、以下においては詳細には説明しない。
【0080】
したがって、1つ以上の処理デバイスは、適切にプログラム化された何れの処理システムからでも形成され得ることを理解されるであろう。ただし、一般に、電子処理デバイスは、マイクロプロセッサ、マイクロチッププロセッサ、論理ゲート構成、場合によっては、FPGA(Field Programmable Gate Array)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)など、論理の実施に対応付けられたファームウェア、またはシステム内の各種デバイスとの対話およびこれらの制御が可能な何れか他の電子デバイス、システム、または配置の形態になるであろう。
【0081】
次に
図3を参照すると、複数のDC電源からの電力を管理する方法の一例のフローチャートが示されている。ステップ300において、1つ以上の電子処理デバイスは、1つ以上のシステムパラメータを決定する。システムパラメータとして、例えば、それぞれのDC/DCコンバータの出力電圧、DCバス電圧、エネルギー貯蔵装置の充電限界、エネルギー貯蔵装置の放電限界、エネルギー貯蔵装置の充電状態(SOC)、およびエネルギー貯蔵装置の健康状態(SOH)が挙げられる。エネルギー貯蔵装置の健全状態は、理想的な状態に比べた貯蔵装置の状態を表し、内部抵抗、容量、電圧、自己放電、充電/放電サイクル数、等々の諸要因の考慮を含み得る。ステップ302において、決定された1つ以上のパラメータは、次に、1つ以上の電子処理デバイスによって解釈され、複数のDC/DCコンバータを選択的に制御することによって複数のDC電源から少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置への電力の転送を選択的に制御するために使用される。
【0082】
この制御方法により、システムは、エネルギー貯蔵装置の充電を最適化するために、DC電源(例えば太陽光起電モジュール)の出力を調節できる。各DC/DCコンバータは、アーキテクチャが完全にスケーラブルであるように、システム構成とは独立に、自律的に制御されることが好ましい。
【0083】
適切な制御方法の一具体例が
図4に示されている。この例では、ステップ400において、1つ以上の処理デバイスによって決定されるシステムパラメータは、電池の最大充電電圧である。このパラメータは、電池から1つ以上の処理デバイスに無線で伝達され得る。ステップ402において、この電圧は、1つ以上の処理デバイスによって各DC/DCコンバータに送信または一斉送信される。その後、この電圧は、各DC/DCコンバータによって共通の電圧限界として使用される。
【0084】
各太陽光起電モジュールが活動中であると想定すると、ステップ404において、1つ以上の処理デバイスは各DC/DCコンバータに最大電力点追従(MPPT)アルゴリズムなどの追従アルゴリズムを実施させる。これにより、システムの各太陽光起電モジュールから最大電力を得ることができる。各DC/DCコンバータは、個々のDC/DCコンバータの電圧出力が共通の電圧限界に達するまで、MPPTモードで動作する。ステップ406において、1つ以上の電子処理デバイスは、各DC/DCコンバータの電圧出力を求める。ステップ408において、各電圧出力は共通の電圧限界と比較される。特定のコンバータの電圧出力が共通の電圧限界に達したと判定されると、次に、ステップ410において、1つ以上の処理デバイスは、この特定のコンバータの電圧出力が限界未満に戻るように、その電圧出力を調節させる。
【0085】
1つ以上のDC/DCコンバータの出力の調節が、その他のDC/DCコンバータが依然として、例えばMPPTモードで、動作しているときに行われ得るよう、各DC/DCコンバータは独立に制御される。こうして、各DC/DCコンバータは、その他のDC/DCコンバータが何をしているかとは無関係に、独立に制御されるので、システムは本質的にスケーラブルである(すなわち、システムは、任意数の太陽光起電モジュール、エネルギー貯蔵装置、またはインバータを備え得る)。
【0086】
1つ以上の処理デバイスは、少なくとも1つのエネルギー貯蔵装置への電力の転送を選択的に制御するためにDC/DCコンバータを選択的に制御することに加え、更に、DCバスとAC電源との間に電力潮流を選択的に引き起こさせてAC電源の動作パラメータを制御するために、インバータを制御するために使用され得る。
【0087】
次に
図5を参照すると、配電ネットワークにおいて電力を管理するための方法の第2の例が示されている。この方法は、AC電源の1つ以上の動作パラメータを制御しようとするものである。ステップ500において、1つ以上の電子処理デバイスは、AC電源の1つ以上の動作パラメータのパラメータ値を求める。例えば、AC電源が配電ネットワークの幹線電力グリッドである場合、1つ以上の動作パラメータは、AC電源電圧、AC電源周波数、位相負荷(三相システムの場合)、および負荷力率を含み得る。負荷力率は、有効電力(kW)対皮相電力(kVA)(有効電力と無効電力の組み合わせ(kVAR))の比である。無効電力を消費または生成する負荷は、負荷に給電するために実際に働く、転送される所与の有効電力量のために、AC電源からより多くの電流を引き込む。したがって、負荷力率が低い負荷は、AC電源からより多くの電流を引き込むので、非効率的である。
【0088】
1つ以上の動作パラメータの1つ以上のパラメータ値は、適した測定から求められ得る。1つの例において、AC電圧の大きさ、AC電流の大きさ、およびAC電流位相角の測定は、AC電源メータにおいて行われ、AC電圧の大きさ、AC電流の大きさ、およびAC電流位相角の測定は、インバータのAC出力において行われる。1つ以上の処理デバイスは、これらの測定からAC電源の全ての動作パラメータを決定できる。AC電圧の測定は、何れか適した電圧センサを使用して行われ得る。適した電圧センサとして、例えば、電圧計、マルチメータ、真空管電圧計(VTVM)、電界効果トランジスタ電圧計(FET-VM)、またはこれらに類するものが挙げられる。AC電流の測定は、何れか適した電流センサを使用して行われ得る。適した電流センサとして、マルチメータ、電流計、ピコアンメータ、またはこれらに類するものが挙げられる。
【0089】
ステップ502において、1つ以上の動作パラメータの目標パラメータ値が1つ以上の処理デバイスによって求められる。例えば、1つ以上の処理デバイスは、目標パラメータ値を示すデータをユーティリティグリッドから受信し得る。あるいは、目標値はデータベースから取り出され得る。ステップ504において、1つ以上の処理デバイスは、1つ以上の動作パラメータの実際のパラメータ値と目標パラメータ値との間の差を求める。ステップ506において、1つ以上の処理デバイスは、エネルギー貯蔵装置とAC電源との間の電力転送のためにインバータを制御するために、求められた差に少なくとも部分的に基づき、制御信号を生成する。その結果としての、インバータへの、またはインバータからの、電力潮流は、パラメータ値を目標パラメータ値に向かわせる。これにより、エネルギー貯蔵装置は、配電ネットワークの効率および電力品質を向上させるための電力ソースまたは電力シンクとして使用され得る。
【0090】
配電ネットワークにおいて電力を管理する方法の具体的な一例が
図6に示されている。この例では、ステップ600において、1つ以上の処理デバイスは、AC電源のAC電圧レベルを求める。例えば、AC電圧は、AC電源メータに位置する電圧センサによって適切に測定され得る。AC電源メータは、AC電源電圧を示す信号を1つ以上の処理デバイスに送信する。ステップ602において、AC電源の目標電圧レベルが求められる(目標電圧レベルは、上限と下限とを有する許容範囲でもよい)。AC電源が幹線ユーティリティグリッドである場合、ユーティリティ運用者が目標電圧レベルを設定する。ステップ604において、AC電源の電圧レベルと目標電圧レベルとの間の差が1つ以上の処理デバイスによって求められる。
【0091】
ステップ606および608において、1つ以上の処理デバイスは、AC電源電圧が目標電圧より高いか低いかをそれぞれ判定する。換言すると、本システムは、過電圧問題または不足電圧問題がネットワークに存在するかどうかを判定する。過電圧への応答として、ステップ610において、1つ以上の処理デバイスは、インバータに無効電力をAC電源からエネルギー貯蔵装置に吸い込ませてAC電源電圧を下げるための制御信号を生成する。不足電圧への応答として、ステップ612において、1つ以上の処理デバイスは、インバータに無効電力をエネルギー貯蔵装置からAC電源に吐き出させてAC電源電圧を上げるための制御信号を生成する。
【0092】
別の例において、負荷力率が低いシステムの場合(例えば、無効電力を消費する1つ以上の誘導性AC負荷が存在するとき)、負荷力率を許容レベルに上げるために、無効電力をグリッドに注入するために、または無効電力を負荷に直接供給するために、インバータを使用できる。
【0093】
別の例において、インバータはAC電源と同期化されているので、例えば、AC電源が失われているとき、または負荷のために十分な電力を供給できないとき、システムは、1つ以上のAC負荷のために無停電電源(UPS:uninterrupted power supply)機能を提供できる。この例において、エネルギー貯蔵部が十分な容量を有すると想定すると、システムは、1つ以上のAC負荷に給電するために、電力をエネルギー貯蔵装置から吐き出すことができる。
【0094】
別の例において、本システムは、三相ネットワークにおける電圧不平衡を動的な負荷平衡化によって低減するために使用され得る。各相の電圧レベルは、適した電圧センサを使用して測定され得る。1つ以上の電子処理デバイスは、次に、これら測定値に基づき電圧レベルを判定し、過負荷相から軽負荷相に電力を転送させるための制御信号をインバータに送信する。
あるいは、インバータは、エネルギー貯蔵装置から1つ以上の軽負荷相への電力潮流(例えば無効電力補償)に過負荷相を平衡化させ得る。
【0095】
上記の各例において、AC電源の動作パラメータは、二層形態の制御階層において、エネルギー貯蔵装置の充電より優先的に制御され得る。例えば、インバータの制御は、エネルギー貯蔵装置に充電するDC/DCコンバータの制御より優先される。そのため、インバータは、AC電源の申し分ない動作パラメータを維持するために、DCバスとAC電源との間で電力を適宜吸い込み/吐き出す。このようにして、インバータは、インバータを通して電力が吐き出されるか、吸い込まれるかに応じて、DCバス電圧を制御する。したがって、DC/DCコンバータはAC電源パラメータの制御に役立つので、例えば、インバータがDCバスから電力を引き込んでいる場合、DC/DCコンバータはMPPTモードで単に動作し続けることによって、太陽光起電モジュールの出力を最大化し、DCバス電圧を維持する。インバータがDCバスから電力を引き込んでいない場合、DC/DCコンバータは、(例えば上記のように)最大電圧限界に達するまで、電池を充電し、MPPTモードで動作し、その後、電池の最大充電電圧を超えないように、それぞれの出力を調節する。
【0096】
次に
図7を参照すると、配電ネットワークにおいて電力を管理するためのシステムの別の例が示されている。このシステムは、複数のエネルギー貯蔵装置740(例えば高電圧電池)を備える。各エネルギー貯蔵装置740は、それぞれの高電圧DCバスを介して、それぞれのDC/ACインバータに電気的に結合されている。各DC/ACインバータ760の出力762は、AC電源750に電気的に結合されている。例えば、各インバータ760は、配電グリッドの給電線に結合され得る。ここで、AC電源は、配電フィーダを表す。複数の負荷780がグリッドに結合されている。1つの例において、エネルギー貯蔵装置740およびDC/ACインバータ760の少なくとも一方を備えた各モジュール700は、給電線に沿った、配電ネットワークを支援するために最善に利用可能な、複数の選択的な位置にユーティリティ運用者によって設置され得る。別の例において、各モジュール700は、住宅に設置されたシステムを表し得る。
【0097】
図7に示されている配置において、各モジュール700は、ネットワークを支援するために、およびAC電源電圧、AC電源周波数、位相負荷(三相システムの場合)、および負荷力率などの動作パラメータを向上させるために、使用され得る。加えて、各モジュール700は、互いに通信し得るので、例えば、ネットワークの一部における負荷が低い(および電池が十分に充電されている)場合、電池は、充電レベルが低い別の電池に、または負荷が高いネットワークの一部に、電力を供給するために使用され得る。
【0098】
本願明細書および添付の特許請求の範囲の全体にわたって、文脈が別様に要求していない限り、用語「を備える(comprise)」およびその変化形「を備える(comprises)」または「を備えた(comprising)」などは、記載の物(integer)または物のグループまたはステップ群を含むことを示唆し、何れか他の物または物のグループの排除を示唆していないことを理解されたい。
【0099】
当業者は、多数の変形および修正が明らかになることを理解されるであろう。当業者に明らかになるこのような変形および修正の全ては、上記の本発明の広く明らかな精神および範囲に含まれると見做されるべきである。
【国際調査報告】