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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-31
(54)【発明の名称】ピロクトンオラミン再結晶化
(51)【国際特許分類】
   C07D 213/64 20060101AFI20220324BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20220324BHJP
   A61K 31/4412 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
C07D213/64
A61P31/10
A61K31/4412
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547698
(86)(22)【出願日】2020-02-17
(85)【翻訳文提出日】2021-08-19
(86)【国際出願番号】 EP2020054131
(87)【国際公開番号】W WO2020169544
(87)【国際公開日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】201911006542
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(31)【優先権主張番号】19218774.8
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596081005
【氏名又は名称】クラリアント・インターナシヨナル・リミテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】エンドレス・アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】メータ・ヒテン
(72)【発明者】
【氏名】ムレ・ティエリー
【テーマコード(参考)】
4C055
4C086
【Fターム(参考)】
4C055AA17
4C055BA03
4C055BA06
4C055BA42
4C055CA01
4C055DA06
4C055FA41
4C086AA01
4C086AA04
4C086BC17
4C086GA14
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB35
(57)【要約】
本発明は、ピロクトンオラミンの再結晶化方法、ピロクトンオラミン結晶の製造方法、及びこの方法によって得ることができるピロクトンオラミン結晶に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピロクトンオラミンの再結晶化のための方法であって、
a)ピロクトンオラミンを、アルコールを含む溶剤中に溶解し、但し、溶解は、50℃より高くかつ前記アルコールの沸点より低い温度である溶解温度で行われ;
b)溶液を、最大で10時間で、好ましくは10分間~10時間で、前記溶解温度から1℃と15℃との間の温度まで冷却し;
c)ピロクトンオラミンの結晶を回収する;
ことを含む、前記方法。
【請求項2】
a)において、ピロクトンオラミン1キログラムあたり、1.5~4kg、好ましくは2kgの溶剤が使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ピロクトンオラミンの結晶が、シーディング用に加えられる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
冷却が次の二つのステップで行われる、請求項1~3のいずれか一つに記載の方法:
i.第一の冷却ステップでは、溶液を、最大5時間続く第一の冷却期間の間に、前記溶解温度から20℃と40℃との間の温度に冷却する;
ii.第二の冷却ステップでは、溶液を、最大で5時間続く第二の冷却期間の間に、20℃と40℃との間の温度から、1℃と15℃との間の温度に冷却する。
【請求項5】
前記アルコールが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
前記アルコールがイソプロパノールを含む、請求項1~5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
前記溶剤がアルコールからなり、好ましくはイソプロパノールからなる、請求項1~6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
前記溶解温度が60~82.5℃、好ましくは70~75℃である、請求項1~7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
ピロクトンオラミン結晶の製造方法であって、
a)ピロクトンオラミンを、アルコールを含む溶剤中に分散し、但し、分散は、50℃より高くかつ前記アルコールの沸点より低い温度である分散温度で行われ、
b)分散液を、前記分散温度から、1℃と15℃との間の温度に、最大15時間で、好ましくは10分間~15時間で、より好ましくは1~12時間で冷却し、
c)ピロクトンオラミンの結晶を回収する、
ことを含む、前記方法。
【請求項10】
a)において、ピロクトンオラミン1キログラムあたり、1~3kg、好ましくは1.0~1.5kg、より好ましくは1.2~1.4kg、特に好ましくは1.33kgの溶剤が使用される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
冷却が次の二つのステップで行われる、請求項9または10に記載の方法:
i.第一の冷却ステップでは、分散液を、最大で10時間続く第一の冷却期間の間で、前記分散温度から20℃と40℃との間の温度に冷却する;
ii.第二の冷却ステップでは、分散液を、最大で5時間続く第二の冷却期間の間に、20℃と40℃との間の温度から1℃と15℃との間の温度に冷却する。
【請求項12】
前記アルコールが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項9~11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
前記アルコールがイソプロパノールを含む、請求項9~12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
前記溶剤がアルコールからなり、好ましくはイソプロパノールからなる、請求項9~13のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
前記分散温度が60~82.5℃、好ましくは70~75℃である、請求項9~14のいずれか一つに記載の方法。
【請求項16】
平均幅:長さ比が1:4超であるピロクトンオラミン結晶。
【請求項17】
50が110マイクロメータ超、好ましくは140マイクロメータ超である、請求項16に記載のピロクトンオラミン結晶。
【請求項18】
10が30マイクロメータ超、好ましくは50マイクロメータ超である、請求項16または17に記載のピロクトンオラミン結晶。
【請求項19】
請求項1~15のいずれか一つに定義される方法によって得ることができる、請求項16~18のいずれか一つに記載のピロクトンオラミン結晶。
【請求項20】
請求項1~15のいずれか一つに定義される方法によって得ることができる、ピロクトンオラミン結晶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピロクトンオラミンを再結晶化するための方法、及びそれによって得ることができるピロクトンオラミン結晶に関する。本発明は、更に、ピロクトンオラミン結晶を製造するための方法、及びそれによって得ることができるピロクトンオラミン結晶に関する。
【背景技術】
【0002】
DE2234009A1(特許文献1)及びDE1795270A1(特許文献2)を参照して、ピロクトンエタノールアミンまたはピロクトンオラミンとも知られる1-ヒドロキシ-4-メチル-6-(2,4,4-トリメチル)-ペンチル-2(1H)-ピリドンは、フケの原因に対して効果的な抗真菌剤である。シャンプーなどのパーソナルケア用品中にピロクトンオラミンを含めることが知られている。DE1795270A1(特許文献2)は、ピロクトンオラミンを製造する方法も記載している。
【0003】
ピロクトンオラミンは結晶の形で存在し、これをパーソナルケア用品に加えることができる。上述したものなどの方法によって製造された商業的に入手可能なピロクトンオラミンは、典型的には、約1:7の幅/長さ比及び約100マイクロメータの中央径(d50)を有する一次結晶を有する。一次結晶は、結晶化プロセス中に、但し、更なる二次加工及びバルクハンドリングステップの前に形成される。このような二次加工や、バルク量でのハンドリングの後に、これらの結晶は寸法を変える場合がある。ピロクトンオラミン結晶のこのようなバルク量は、一緒に集まって集塊物を形成する虞がある。集塊現象は、バルク結晶をハンドリング及び加工する時に困難さを招く虞がある。
【0004】
CN1907971A(特許文献3)は、抗真菌材料としてのシクロピロックスオラミンの製造方法に関する。この文献は結晶化について記載はあるものの、集塊の問題については触れられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】DE2234009A1
【特許文献2】DE1795270A1
【特許文献3】CN1907971A
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Schulze,D(2009)“Pulver und Schuetgueter”,2nd Edition,Springer,Berlin
【発明の概要】
【0007】
本発明は、このような背景技術の下に発明されたものである。
【0008】
本発明の全ての観点の全ての態様も含めて、本明細書では、特段他に記載がなければ、以下の定義が適用される。
【0009】
ここで使用する粒度分布の測定値に関して、d50、d(50)またはD50、中央値は、総数の半分がその値以下にある直径として定義される。同様に、総数の10パーセントは、d10、d(10)またはD10径以下にある。
【0010】
全てのパーセンテージは、全組成物の重量%(w/w)である。全ての比率は重量比である。“wt.%”は重量%を意味する。「部」という時、例えば1部のXと3部のYとの混合物という時は、それは重量比である。「QS」または「QSP」とは、100%または100gとするために十分な量を意味する。±は、標準偏差を示す。全ての範囲は、包括的であり、また組み合わせ可能である。有効桁数は、示した量についての制限、または測定値の精度のいずれも伝えるものではない。全ての数値は、「約」という言葉によって修飾されると理解される。全ての測定値は、23℃及び周囲条件で測定されたものと理解され、ここで、「周囲条件」とは、1気圧(atm)の圧力及び50%相対湿度を意味する。「相対湿度」とは、空気の湿度と、同じ温度及び圧力での飽和水分量との(パーセントとして表示される)比率を指す。相対湿度は、湿度計、特にVWR(登録商標)インターナショナル社製のプローブ湿度計を用いて測定できる。ここで、「min」は「分」を意味する。ここで、「mol」はモルを意味する。ここで、数値の後に記載される「g」は「グラム」を意味し、そして「kg」は「キログラム」を意味する。ここで、「含む」とは、他のステップまたは他の成分も追加的に存在し得ることを意味する。ここに記載の態様及び観点は、不適合性が記載されていない限り、明確に組み合わせとして例示されてなければ、他の態様及び/または観点の要素、特徴または成分を含み得るかまたはこれらと組み合わせ可能である。「少なくとも一つの態様において」とは、本発明の一つまたはそれ超の態様、任意選択的に全ての態様または態様の大きなサブセットは、その後に記載の特徴を有することを意味する。「分子量」または「M.Mt」もしくは「MW」及び文法的に等価の記載は、数平均分子量を意味する。
【0011】
本発明の第一の観点によれば、ピロクトンオラミンの再結晶化の方法が提供され、該方法は:
a)ピロクトンオラミンを、アルコールを含む溶剤中に溶解し、但し、溶解は、50℃より高くかつ前記アルコールの沸点より低い温度である溶解温度で行われ、
b)溶液を、前記溶解温度から、1℃と15℃との間の温度に、最大10時間で、好ましくは10分間~10時間、より好ましくは1~7時間、更により好ましくは1~5時間で冷却し、
c)ピロクトンオラミンの結晶を回収する、
ことを含む。
【0012】
本発明の第二の観点によれば、ピロクトンオラミン結晶の製造方法が提供され、該方法は:
a)ピロクトンオラミンを、アルコールを含む溶剤中に分散し、但し、分散は、50℃より高くかつ前記アルコールの沸点より低い温度である分散温度で行われ、
b)分散液を、前記分散温度から、1℃と15℃との間の温度に、最大15時間で、好ましくは10分間~15時間、より好ましくは1~12時間で冷却し、
c)ピロクトンオラミンの結晶を回収する、
ことを含む。
【0013】
本発明の第一の観点の再結晶化方法及び本発明の第二の観点の製造方法は、原料の結晶とは異なる寸法を有する結晶を与える。これらの異なる寸法を有する結晶のバルク量は、驚くべきことに、集塊し難いことが観察される。これらの結晶は、本発明の第三の観点の対象である。
【0014】
本発明の第一の観点によれば、ピロクトンオラミン1kgあたり、1.5~4kg、好ましくは2kgの溶剤が使用される。
【0015】
特定の態様の一つでは、ピロクトンオラミンの結晶が、シーディングのために使用される。当業者には、シーディングのコンセプト及びシード結晶の使用のコンセプトは既知である。好ましくは、シーディングのためのピロクトンオラミンの結晶は、ステップa)の後に加えられる。同様に好ましくは、シーディングのためのピロクトンオラミンの結晶は、ステップb)の前にまたはその間に加えられる。好ましくは、シーディングのためのピロクトンオラミンの結晶は、ステップa)で使用されるピロクトンオラミンの量を基準にして、0.1~3.0重量%、より好ましくは0.3~1.0重量%、特に好ましくは0.5重量%の量で加えられる。
【0016】
本発明の第一の観点によれば、冷却は二つのステップで行い得る:
i.第一の冷却ステップでは、溶液を、溶解温度から、20℃と40℃との間の温度に、最大で5時間続く第一の冷却期間で冷却し;
ii.第二の冷却ステップでは、溶液を、20℃と40℃との間の温度から、1℃と15℃との間の温度に、最大で5時間続く第二の冷却期間で冷却する。好ましくは、第二の冷却期間は3時間以下続ける。
【0017】
溶剤中に含まれるアルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール及びこれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、前記アルコールはイソプロパノールを含む。
【0018】
溶剤は、追加的に、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、ジクロロメタン、クロロホルム、n-ヘキサン、ベンゼン、トルエン、アセトン、ブタノン、ジイソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン及びこれらの混合物から選択される材料を含んでよい。
【0019】
有利には、溶剤は、50重量%以上、好ましくは90重量%以上のアルコールを含む。より好ましくは、溶剤はアルコールからなる。より更に好ましくは、溶剤はイソプロパノールからなる。
【0020】
本発明の第一の観点では、a)において、溶解温度は60~82.5℃、好ましくは70~75℃である。更に、ピロクトンオラミンと溶剤との混合物は、ピロクトンオラミンが溶剤中に完全に溶解するまで、溶解温度に維持される。透明な溶液が、完全な溶解を示す。
【0021】
本発明の第二の観点によれば、ピロクトンオラミン1kgあたり、1~3kg、好ましくは1.0~1.5kg、より好ましくは1.2~1.4kg、特に好ましくは1.33kgの溶剤が使用される。
【0022】
特定の態様の一つでは、ピロクトンオラミンの結晶が、シーディングのために使用される。好ましくは、シーディングのためのピロクトンオラミンの結晶は、ステップa)の後に加えられる。同様に好ましくは、シーディングのためのピロクトンオラミンの結晶は、ステップb)の前にまたはその間に加えられる。好ましくは、シーディングのためのピロクトンオラミンの結晶は、ステップa)で使用されるピロクトンオラミンの量を基準にして、0.1~3.0重量%、より好ましくは0.3~1.0重量%、特に好ましくは0.5重量%の量で加えられる。
【0023】
本発明の第二の観点によれば、冷却は二つのステップで行い得る:
i.第一の冷却ステップでは、分散液を、分散温度から、20℃と40℃との間の温度に、最大で10時間続く第一の冷却期間で冷却し;
ii.第二の冷却ステップでは、分散液を、20℃と40℃との間の温度から、1℃と15℃との間の温度に、最大で5時間続く第二の冷却期間で冷却する。好ましくは、第二の冷却期間は3時間以下続ける。
【0024】
溶剤中に含まれるアルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール及びこれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、前記アルコールはイソプロパノールを含む。
【0025】
溶剤は、追加的に、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、ジクロロメタン、クロロホルム、n-ヘキサン、ベンゼン、トルエン、アセトン、ブタノン、ジイソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン及びこれらの混合物から選択される材料を含んでよい。
【0026】
有利には、溶剤は、50重量%以上、好ましくは90重量%以上のアルコールを含む。より好ましくは、溶剤はアルコールからなる。より更に好ましくは、溶剤はイソプロパノールからなる。
【0027】
本発明の第二の観点では、a)において、分散温度は60~82.5℃、好ましくは70~75℃である。
【0028】
本発明の第三の観点によれば、1:4超の幅:長さ平均比を有するピロクトンオラミン結晶が提供される。
【0029】
比率について言及しているため完全を期すために、比率が或る値よりを「超える」ことを述べることは、二番目の値(コロンの後の値)が、規定の値よりも小さいこと、すなわちこの場合には「4」未満であることを意味する。
【0030】
上述したとおり、先に言及したものなどの方法によって製造された商業的に入手可能なピロクトンオラミンは、典型的には、約1:7の幅/長さ比を有する一次結晶を有する。一次結晶は、結晶化プロセス中に、但し、二次加工及びバルクハンドリングステップの前に形成されるものである。このような加工及びバルクハンドリングステップの間に、脆い一次結晶はその形状を変え得るが、1:4よりもかなり小さい平均幅/長さを有することが確認される。先に説明した通り、このような寸法を有する結晶は、バルク量では、集塊現象を被る虞がある。
【0031】
好ましくは、ピロクトンオラミン結晶は、1:4超でかつ1:2未満の幅:長さ平均比を有する。
【0032】
本発明の第三の観点の好ましい態様の一つでは、ピロクトンオラミン結晶は、110マイクロメータ超、好ましくは140マイクロメータ超のd50を有する。より好ましい態様の一つでは、ピロクトンオラミン結晶は、30マイクロメータ超、好ましくは50マイクロメータ超のd10を有する。
【0033】
好ましくは、ピロクトンオラミン結晶は、110マイクロメータ超でかつ400マイクロメータ未満のd50を有する。より好ましくは、ピロクトンオラミン結晶は、140マイクロメータ超でかつ350マイクロメータ未満のd50を有する。更により好ましくは、ピロクトンオラミン結晶は、140マイクロメータ超でかつ300マイクロメータ未満のd50を有する。
【0034】
好ましい態様の一つでは、ピロクトンオラミン結晶は、170マイクロメータ超でかつ350マイクロメータ未満のd50を有する。特に好ましい態様の一つでは、ピロクトンオラミン結晶は、250マイクロメータ超でかつ300マイクロメータ未満のd50を有する。
【0035】
好ましくは、ピロクトンオラミン結晶は、30マイクロメータ超でかつ120マイクロメータ未満のd10を有する。より好ましくは、ピロクトンオラミン結晶は、50マイクロメータ超でかつ100マイクロメータ未満のd10を有する。特に好ましい態様の一つでは、ピロクトンオラミン結晶は、70マイクロメータ超でかつ100マイクロメータ未満のd10を有する。
【0036】
好ましくは、ピロクトンオラミン結晶は、ここに定義されるピロクトンオラミンの再結晶化のための方法によって得ることができる。
【0037】
好ましくは、ピロクトンオラミン結晶は、ここに定義されるピロクトンオラミン結晶の製造方法によって得ることができる。
【0038】
本発明は更に、ここに定義されるピロクトンオラミンの再結晶化のための方法によって得ることができる、ピロクトンオラミン結晶に関する。
【0039】
本発明は更に、ここに定義されるピロクトンオラミン結晶の製造方法によって得ることができる、ピロクトンオラミン結晶に関する。
【0040】
本発明を、添付の図面に基づいて更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は、幾つかの再結晶化したピロクトンオラミン結晶の顕微鏡画像を示す。この画像は、以下に記載する方式で幅及び長さ測定を行うための準備で、レチクルスケールを用いて4つの部分に分割されている。
図2図2は、本発明に従う再結晶化がされていないピロクトンオラミンの粒子の直径(x軸)に対する、粒子の体積分布密度q(左側のy軸)及び体積累積分布Q(r)(右側のy軸)を示す。
図3図3は、本発明に従う再結晶化に付した例3によるピロクトンオラミンの粒子の直径(x軸)に対する、粒子の体積分布密度q(左側のy軸)及び体積累積分布Q(r)(右側のy軸)を示す。
図4図4は、本発明の方法を用いて再結晶化したピロクトンオラミンの時間圧密(左側のグラフ)と、非結晶化ピロクトンオラミンの時間圧密(右側のグラフ)との比較を示す。
【0042】
粒度分布測定法
生成物の直径、体積分布密度及び体積累積分布を測定するためには、堀場製作所製のLA-950粒度分布分析器を使用した。この分析器は、分布を測定するためにレーザー回折法(ISO13320:2009、フラウンホーファー回折法)を使用し、そして直径に対し、粒子によって散乱した光の強度が正比例することをベースとする。更に、散乱角は直径に反比例し、そして逆の場合も同じである。
【0043】
分析のための準備として、必要量の生成物を、メッシュサイズが1mmの篩上に置く。この生成物を、1.5mmの振幅で3分間、篩にかける。
【0044】
必要量の篩にかけた生成物を、ドライ分散ユニットのガータに加える。
【0045】
以下のパラメータを用いて、堀場製作所製のLA-950粒度分析器で三回の測定を行った:
・ガータ初期値85~110(無単位)、自動制御
・分散圧 0.3MPa
三回の測定値を、平均測定値を形成するためにソフトウェアを用いて組み合わせた。分析のために、d10及びd50体積分率に焦点を当てる。
【0046】
ピロクトンオラミン結晶の幅/長さ比の測定
少量の篩分けした生成物(上記参照)を、スパチュラを用いてペトリ皿上に塗りつける。
【0047】
顕微鏡下に、孤立した粒子が明確に見える位置を探す。使用した顕微鏡は、VHX-S90BE自由角度観察システムを用いた、VH-Z20Wズームレンズを備えたキーエンス社製VHX2000シリーズデジタル顕微鏡であった。この顕微鏡は、本発明の一部を構成するものではなく、当業者は、適した代替的な顕微鏡を選択し得る。
【0048】
被写界深度について限度を定め、そして適切な倍率での画像を、顕微鏡の被写界深度機能を用いて得る。
【0049】
バルク結晶の全体的な印象を得るために、×50、×100、150、×200の倍率で写真を撮影する。
【0050】
ペトリ皿上で、3×3の画像の領域を、できるだけ多数の個々の粒子をもって作ることができる位置が必要である。
【0051】
3×3の画像は、×200の倍率で撮影する。
【0052】
画像は、レチクルスケールを用いて4つの部分に分割する。各々の四半分において、5個の代表的な粒子を選択する(合計で20個の粒子)。これらの20個の粒子の各々について、幅(w)及び長さ(L)及びw/L比率を決定する。次いで、これらの全ての粒子について、測定されたw/Lの合計を粒子の数で除した値である平均w/L比率(Σw/L)/20)を計算する。
【0053】
流動性測定
結晶の集塊は、低いレベルの流動性として見なすことができる。それ故、集塊の客観的な測定値を得るために、結晶の流動性を測定することができる。当業者には、集塊を特徴付けするための他の方法は既知であろう。
【0054】
バルク固体の流動性は、圧密応力σ及び貯蔵期間tに依存して、それの一軸降伏強度σによって特徴付けすることができる。通常は、一軸降伏強度σに対する圧密応力σの比率ffが、流動性を数値的に特徴付けするために使用される:
ff=σ1/σ
【0055】
より大きなffほど、すなわち圧密応力σに対する一軸降伏強度σの比率が小さいほど、バルク固体はより良好に流動する。流動挙動は次のように定義される:
1未満のff、非流動性。
1~2未満のff、非常に強い凝集性。
2~4未満のff、凝集性。
4~10未満のff、易流動性。
10超えるff、自由流動性。
【0056】
パラメータffは、Schulze,D(2009)“Pulver und Schuetgueter”,2nd Edition,Springer,Berlin(非特許文献1)によって記載された方式でリングせん断試験を用いて生成することができる。この方法は、本発明の一部を構成するものではなく、単に、本発明に従う再結晶化された結晶のより流動性の高い性質の効果を実証するために、流動性の特徴付けのための一つの方法として言及したものである。当業者には、流動性を特徴付けするための他の方法は既知である。
【0057】
実験室規模の合成例
例1
【0058】
【表1】
【0059】
手順:
1.反応器を洗浄及び乾燥する。
2.25~30℃でエタノール(200kg)を導入する。
3.25~30℃でピロクトンオラミン(100kg)を導入する。
4.塊状材料を70℃に加熱する。
5.30分間、70~75℃に維持する。
6.溶解を検査する(透明な溶液が観察されるべきである)。
7.溶解が不完全な場合には、更に30分間、70~75℃に維持し、そして透明性を検査する。
8.3~4時間の期間で塊状材料を25~30℃に徐冷する。
9.2時間の期間で塊状材料を8~10℃に冷却する。
10.1分間、8~10℃に維持する。
11.8~10℃で遠心分離、冷却(5~10℃)したエタノールで洗浄遠心分離する(37Lで二回洗浄)。
12.30分間、スピン乾燥する。
13.湿分をポリバック中に抜き取り、材料を計量する。
14.材料を熱風炉中で、45℃未満で4時間乾燥する。
15.0.3重量%液体まで、60℃で材料を乾燥する。
16.含湿生成物79.1kg及び乾燥生成物77.4kgが得られた。
【0060】
例2
【0061】
【表2】
【0062】
手順:
1.反応器を洗浄及び乾燥する。
2.25~30℃でイソプロピルアルコール(200kg)を導入する。
3.25~30℃でピロクトンオラミン(100kg)を導入する。
4.塊状材料を70℃に加熱する。
5.30分間、70~75℃に維持する。
6.溶解を検査する(透明な溶液が観察されるべきである)。
7.溶解が不完全な場合には、更に30分間、70~75℃に維持し、そして透明性を検査する。
8.4~5時間の期間で、塊状材料を8~10℃に除冷する。
9.1時間、8~10℃に維持する。
10.8~10℃で遠心分離、冷却(5~10℃)したイソプロピルアルコールで洗浄遠心分離する(37Lで二回洗浄)。
11.30分間、スピン乾燥する。
12.湿分をポリバック中に抜き取り、材料を計量する。
13.材料を熱風炉中で、45℃未満で4時間乾燥する。
14.0.3重量%液体まで、60℃で材料を乾燥する。
15.含湿生成物92.5kg/乾燥生成物90.5kgが得られた。
【0063】
例3
【0064】
【表3】
【0065】
手順:
1.反応器を洗浄及び乾燥する。
2.25~30℃でイソプロピルアルコール(200kg)を導入する。
3.25~30℃でピロクトンオラミン(100kg)を導入する。
4.塊状材料を70℃に加熱する。
5.30分間、70~75℃に維持する。
6.溶解を検査する(透明な溶液が観察されるべきである)。
7.溶解が不完全な場合には、更に30分間、70~75℃に維持し、そして透明性を検査する。
8.65~70℃で、シーディングのために500gのピロクトンオラミン結晶を加える。
9.3~4時間の期間で塊状材料を25~30℃に徐冷する。
10.2時間の期間で塊状材料を8~10℃に冷却する。
11.1時間、8~10℃に維持する。
12.8~10℃で遠心分離、冷却(5~10℃)したイソプロピルアルコールで洗浄遠心分離する(37Lで二回洗浄)。
13.30分間、スピン乾燥する。
14.湿分をポリバック中に抜き取り、材料を計量する。
15.材料を熱風炉中で、45℃未満で4時間乾燥する。
16.0.3重量%液体まで、60℃で材料を乾燥する。
17.含湿生成物93.0kg/乾燥生成物91.0kgが得られた。
【0066】
結果
図1は、例3に従い製造されたピロクトンオラミンの再結晶化された結晶を×200の倍率で示す。この画像は、先に記載したような測定の目的のために四つに分割されており、そしてその寸法が測定された粒子を示している。総計では、20個の粒子のそれぞれのw/Lを測定し、そして平均w/L値を決定した。個々の粒子から得られた測定値を示されている。本発明に従う再結晶化に付していないピロクトンオラミンの原料に対して、同じ手順を事前に行った。
【0067】
更に、原料及び最終生成物の両方の直径に対して、粒子の体積分布密度及び体積累積分布を上述のように測定し、そして各々の場合において、d50及びd10を決定した。先に記載したように、図2は、本発明に従う再結晶化をしていないピロクトンオラミンの粒子の直径(x軸)に対する、粒子の体積分布密度q(左側のy軸)及び体積累積分布Q(r)(右側のy軸)を示し、他方で、図3は、本発明による再結晶化に付した例3に従い製造されたピロクトンオラミンの粒子の直径(x軸)に対する、粒子の体積分布密度q(左側のy軸)及び体積累積分布Q(r)(右側のy軸)を示す。
【0068】
結果は次の通りであった:
【0069】
【表4】
【0070】
図4は、再結晶化されたピロクトンオラミンの時間圧密(左側のグラフ)及び再結晶化していないピロクトンオラミンの時間圧密(右側のグラフ)の比較を示す。両セットのグラフは、二つのセットの三つの測定を含み、すなわち第一のセットの測定は、20℃、0%相対湿度(rH)での貯蔵の結果であり、そして第二のセットの測定は、50℃、0%相対湿度での貯蔵の結果である。各々のセットは、それぞれ2kPa、4kPa及び12kPaの垂直圧力をかけた後の圧密の結果得られた三回の測定を含む。先に記載したフローファクターffを測定し、そしてこれらのグラフに示している。これらの結果は、同じ貯蔵及び圧密条件下に、再結晶化されたピロクトンオラミンは、再結晶化していない生成物と比べて、かなりより流動性が高く、それ故、集塊しづらいことを実証している。
【0071】
例4
【0072】
【表5】
【0073】
手順:
1.反応器を洗浄及び乾燥する。
2.25~30℃でイソプロピルアルコール(200kg)を導入する。
3.25~30℃でピロクトンオラミン(100kg)を導入する。
4.塊状材料を70℃に加熱する。
5.30分間、70~75℃に維持する。
6.溶解を検査する(透明な溶液が観察されるべきである)。
7.溶解が不完全な場合には、更に30分間、70~75℃に維持し、そして透明性を検査する。
8.65~70℃で、シーディングのために500gのピロクトンオラミン結晶を加える。
9.3~4時間の期間、25~30℃に塊状材料を徐冷する。
10.2時間の期間、8~10℃に塊状材料を冷却する。
11.1時間、8~10℃に維持する。
12.8~10℃で遠心分離、冷却(5~10℃)したイソプロピルアルコールで洗浄遠心分離する(37Lで二回洗浄)。
13.含湿フィルターケーキをコーンドライヤー中で45℃未満の温度で、次いで1時間、60℃で乾燥する。
14.含湿生成物92.0kg/乾燥生成物90.0kgが得られた。
【0074】
平均w/L、d50及びd10は先に記載の通りに決定した。結果は次の通りであった:
【0075】
【表6】
【0076】
例5
【0077】
【表7】
【0078】
手順:
1.反応器を洗浄及び乾燥する。
2.25~30℃でイソプロピルアルコール(200kg)を導入する。
3.25~30℃でピロクトンオラミン(150kg)を導入する。
4.塊状材料を70℃に加熱する。
5.1分間、70~75℃に維持する(白色の分散物が形成される)。
6.8時間の期間で塊状材料を25~30℃に徐冷する。
7.2時間の期間で塊状材料を8~10℃に冷却する。
8.1時間、8~10℃に維持する。
9.8~10℃で遠心分離、冷却(5~10℃)したイソプロピルアルコールで洗浄遠心分離する(37Lで二回洗浄)。
10.冷却(5~10℃)したイソプロピルアルコールを用いて(37Lで二回洗浄)、懸濁物をフィルタードライヤーで8~10℃で濾過する。
11.含湿フィルターケーキをフィルタードライヤーで45℃未満の温度で、次いで1時間、60℃で乾燥する。
12.含湿生成物154kg/乾燥生成物144kgが得られた。
【0079】
平均w/L、d50及びd10は先に記載の通りに決定した。結果は次の通りであった:
【0080】
【表8】
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】