(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-31
(54)【発明の名称】シリコーンエマルジョンおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/02 20060101AFI20220324BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20220324BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20220324BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20220324BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220324BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20220324BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
C08J3/02 A CFH
A61K8/06
A61K8/891
A61K8/86
A61Q19/00
C08L83/04
C08L71/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547771
(86)(22)【出願日】2019-12-05
(85)【翻訳文提出日】2021-08-16
(86)【国際出願番号】 KR2019017049
(87)【国際公開番号】W WO2020184814
(87)【国際公開日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】10-2019-0028711
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521060187
【氏名又は名称】ケーシーシーシリコーンコーポレーション
【氏名又は名称原語表記】KCC Silicone Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100118256
【氏名又は名称】小野寺 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】ユ ヒョン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】リ ジ ヘ
(72)【発明者】
【氏名】パク ジ ユン
【テーマコード(参考)】
4C083
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4C083AD051
4C083AD151
4C083BB04
4C083CC03
4C083DD01
4C083DD33
4C083EE03
4C083EE05
4C083FF05
4F070AA52
4F070AA60
4F070AB11
4F070AB22
4F070AC12
4F070AE10
4F070AE14
4F070AE28
4F070BA02
4F070CA03
4F070CB02
4F070DC16
4F070FA05
4F070FA17
4F070FB07
4F070FC03
4J002CH022
4J002CH052
4J002CP031
4J002CP121
4J002CP131
4J002CP141
4J002GB00
4J002HA07
(57)【要約】
本発明は、シリコーン樹脂混合物および非イオン界面活性剤を含み、前記シリコーン樹脂混合物および非イオン界面活性剤は、1:0.1~1:0.4の重量比で含まれるシリコーンエマルジョンおよびその製造方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン樹脂混合物および非イオン界面活性剤を含み、
前記シリコーン樹脂混合物および非イオン界面活性剤は、1:0.1~1:0.4の重量比で含まれる、シリコーンエマルジョン。
【請求項2】
前記シリコーン樹脂混合物は、シリコーン樹脂混合物の全重量に対して30~60重量部のシリコーン樹脂および40~70重量部の希釈剤を含む、請求項1に記載のシリコーンエマルジョン。
【請求項3】
前記非イオン界面活性剤は、PEGおよびPPGを2:1~6:1のモル比で含む、請求項1に記載のシリコーンエマルジョン。
【請求項4】
前記非イオン界面活性剤は、エチレンオキシド(EO)-プロピレンオキシド(PO)-エチレンオキシド(EO)ブロック共重合体であり、EO-PO-EOを1:1:1~3:1:3のモル比で含む、請求項3に記載のシリコーンエマルジョン。
【請求項5】
非イオン界面活性剤を水分散させるステップと、
水分散された非イオン界面活性剤にシリコーン樹脂混合物を8回以上分割投入し、混合物を製造するステップとを含み、
前記シリコーン樹脂混合物は、シリコーン樹脂および希釈剤を含み、
前記シリコーン樹脂混合物および非イオン界面活性剤は、1:0.1~1:0.4の重量比で含まれる、シリコーンエマルジョンの製造方法。
【請求項6】
前記シリコーン樹脂混合物は、8回~15回分割投入される、請求項5に記載のシリコーンエマルジョンの製造方法。
【請求項7】
前記混合物を製造するステップは、50~70℃で行われる、請求項5に記載のシリコーンエマルジョンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高濃度の透明シリコーンエマルジョンおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンエマルジョンは、シリコーンを有機溶剤または水に分散させたものであり、通常、高い粘度を有するシリコーンガム(gum)をシリコーンガムより低い粘度のシリコーンオイルやシロキサン(siloxane)で希釈した後、界面活性剤、乳化剤および溶剤などを添加し、オイル/水(O/W)エマルジョン形態に製造される。
【0003】
特に、高粘度および高固形分シリコーンエマルジョンは、通常、シリコーンガムに界面活性剤を混合してから水または有機溶剤を投入するインバージョン(inversion)方法で製造される。前記インバージョン方法は、オイルをベースとする反応であり、スクレーパ混合器で高速撹拌を伴う相転移工程、および高速撹拌による反応槽の温度上昇を制御するための冷却工程を用いることが一般的である。
【0004】
これと関連して、日本特開第2015-508116号(特許文献1)には、シリコーン樹脂または感圧接着剤100重量部およびエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー5~100重量部を含む分散液を製造する工程と、十分な量の水を混合し、エマルジョンを形成する工程と、任意に、エマルジョンを混合する工程とを含むシリコーンエマルジョン製造方法が開示されている。しかし、特許文献1は、上述のインバージョン方法を用いたものであって、エマルジョン乳化が難しく、安定性が良好でないという問題があった。
【0005】
したがって、固形分含量が高く、使用感および持続性に優れ、色が透明なシリコーンエマルジョンおよびその製造方法に関する研究開発が必要な状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、固形分含量が高く、使用感および持続性に優れ、色が透明なシリコーンエマルジョンおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、シリコーン樹脂混合物および非イオン界面活性剤を含み、前記シリコーン樹脂混合物および非イオン界面活性剤は1:0.1~1:0.4の重量比で含まれるシリコーンエマルジョンを提供する。
【0008】
また、本発明は、非イオン界面活性剤を水分散させるステップと、水分散された非イオン界面活性剤にシリコーン樹脂混合物を8回以上分割投入し、混合物を製造するステップとを含み、前記シリコーン樹脂混合物は、シリコーン樹脂および希釈剤を含み、前記シリコーン樹脂混合物および非イオン界面活性剤は、1:0.1~1:0.4の重量比で含まれるシリコーンエマルジョンの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるシリコーンエマルジョンは、色が透明であり、固形分の濃度が高く、使用感および持続性に優れ、常温および高温での貯蔵安定性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明において、「重量平均分子量」は、当業界において周知の方法によって測定することができ、例えば、GPC(gel permeation chromatograph)の方法で測定した値を示すことができる。
【0012】
シリコーンエマルジョン
本発明によるシリコーンエマルジョンは、シリコーン樹脂混合物および非イオン界面活性剤を含む。
【0013】
シリコーン樹脂混合物
シリコーン樹脂混合物は、シリコーンエマルジョンの主樹脂であり、シリコーンエマルジョンの物性および性能を調節する役割を果たす。この際、前記シリコーン樹脂混合物は、シリコーン樹脂および希釈剤を含む。
【0014】
<シリコーン樹脂>
前記シリコーン樹脂の種類は、特に制限されない。例えば、前記シリコーン樹脂は、下記化学式1で表されることができる。
【0015】
[化学式1]
(R1
3SiO1/2)a(R2
2SiO)b(R3SiO3/2)c(SiO2)d
【0016】
前記化学式1中、
R1およびR3は、それぞれ独立して、C1-10のアルキル基またはC2-10のアルケニル基であり、
R2は、それぞれ独立して、C1-10のアルキル基、C2-10のアルケニル基、またはC6-15のアリール基であり、
a~dは、それぞれ独立して、0以上であり、
a+d+c+dは、4~10,000であり、
(a+d+c)/(a+b+c+d)は、0超0.7以下である。
【0017】
この際、前記アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、またはシクロヘキシル基などであってもよく、具体的には、メチル基、エチル基またはプロピル基であってもよい。
【0018】
また、前記アルケニル基は、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、またはヘキセニル基などであってもよく、具体的には、ビニル基またはブテニル基であってもよい。
【0019】
前記アリール基は、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、またはビフェニレン基(biphenylene)などであってもよく、具体的には、フェニル基であってもよい。
【0020】
具体的には、前記シリコーン樹脂は、M単位[R1
3SiO1/2]およびQ単位[SiO2]で構成されたMQシリコーン樹脂であってもよい。例えば、前記MQシリコーン樹脂は、M単位およびQ単位のモル比(M/Q)が0.5~1.5:1、または0.5~1:1であってもよい。この際、前記R1は、例えば、C1-10のアルキル基であってもよく、具体的には、メチル基、エチル基またはプロピル基であってもよい。
【0021】
前記シリコーン樹脂は、25℃での粘度が1~1,000cPであり、重量平均分子量(Mw)が1,000~8,000g/molであってもよい。具体的には、前記シリコーン樹脂は、25℃での粘度が1~700cPであり、重量平均分子量が2,000~7,000g/mol、または3,000~5,000g/molであってもよい。前記シリコーン樹脂の粘度が前記範囲内である場合、これを含む組成物の粘度が適切であり、組成物の使用性が向上し、前記シリコーン樹脂の重量平均分子量が前記範囲内である場合、効果の持続性が向上し、密着性に優れた使用感を有する製品を提供することができる。
【0022】
また、前記シリコーン樹脂は、シリコーン樹脂混合物の全重量に対して30~60重量部の含量でシリコーン樹脂混合物に含まれることができる。具体的には、前記シリコーン樹脂は、シリコーン樹脂混合物の全重量に対して30~50重量部の含量でシリコーン樹脂混合物に含まれることができる。前記シリコーン樹脂の含量が前記範囲内である場合、使用感と持続性に優れ、色が透明なエマルジョンの製造が可能である。
【0023】
<希釈剤>
前記希釈剤は、25℃での粘度が0.1~200cPであってもよい。具体的には、前記希釈剤は、25℃での粘度が0.5~200cP、または10~150cPであってもよい。前記希釈剤の25℃での粘度が前記範囲内である場合、エマルジョンの乳化安定性を向上させ、軽くて密着感に優れた使用感を付与する効果がある。
【0024】
また、前記希釈剤は、低分子量のシリコーンオイルであってもよい。前記低分子量のシリコーンオイルは、例えば、ジメチルポリシロキサンおよびメチルハイドロジェンポリシロキサンどの直鎖状オルガノポリシロキサンおよびオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサンなどの環状オルガノポリシロキサンなどが挙げられる。
【0025】
この際、前記希釈剤は、重量平均分子量が100~5,000g/molであってもよい。具体的には、前記希釈剤は、重量平均分子量が2,000~5,000g/mol、または3,000~5,000g/molであってもよい。
【0026】
前記希釈剤は、シリコーン樹脂混合物の全重量に対して40~70重量部の含量でシリコーン樹脂混合物に含まれることができる。具体的には、前記希釈剤は、シリコーン樹脂混合物の全重量に対して50~75重量部の含量でシリコーン樹脂混合物に含まれることができる。前記希釈剤の含量が前記範囲内である場合、シリコーン混合物の粘度が適切で、エマルジョンの乳化が容易であり、乳化安定性を向上させる効果がある。
【0027】
前記エマルジョン組成物の25℃での粘度が前記範囲内である場合、エマルジョンの常温および高温安定性に優れ、高粘度の透明な外観を有するレジンエマルジョンの製造が可能である。
【0028】
また、前記シリコーン樹脂混合物は、エマルジョンの全重量に対して50~70重量部の含量でシリコーンエマルジョンに含まれることができる。具体的には、前記シリコーン樹脂混合物は、エマルジョンの全重量に対して50~65重量部、または52~62重量部の含量でシリコーンエマルジョンに含まれることができる。前記シリコーン樹脂混合物の含量が前記範囲内である場合、使用感と持続性に優れた高粘度の透明レジンエマルジョンの製造が可能である。
【0029】
前記シリコーンエマルジョンは、前記シリコーン樹脂混合物および非イオン界面活性剤を1:0.1~1:0.4の重量比で含む。具体的には、シリコーンエマルジョンは、前記シリコーン樹脂混合物および非イオン界面活性剤を1:0.15~1:0.35の重量比で含むことができる。前記シリコーン樹脂混合物と非イオン界面活性剤の重量比が前記範囲内である場合、エマルジョンの乳化が容易であり、安定性に優れた高粘度透明レジンエマルジョンの製造が可能であるという効果がある。具体的には、前記非イオン界面活性剤が前記重量比未満で含まれると、乳化力が減少して安定性および粘度が減少し、前記重量比を超えると、粘度が増加し、スムーズな撹拌作業性を有することができない。
【0030】
非イオン界面活性剤
非イオン界面活性剤は、シリコーン樹脂混合物の乳化性を向上させる役割を果たす。
【0031】
前記非イオン性界面活性剤は、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアリルアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシアルキレンアリールエステル、ポリオキシアルキレンソルビン酸アルキルエステル、ナトリウムラウリルエーテルサルフェートおよびステアリルトリメチル塩化アンモニウムなどが挙げられる。また、前記非イオン界面活性剤は、ポリアルキレングリコールを含むことができる。具体的には、前記非イオン性界面活性剤は、ポリエチレングリコール(PEG)およびポリプロピレングリコール(PPG)のブロック共重合体であってもよい。前記ポリエチレングリコール(PEG)およびポリプロピレングリコール(PPG)のブロック共重合体は、1種または2種以上の互いに異なる重合度のポリエチレングリコール(PEG)およびポリプロピレングリコール(PPG)のブロック共重合体であってもよい。
【0032】
また、前記非イオン界面活性剤は、PEGおよびPPGを2:1~6:1のモル比で含むことができる。具体的には、前記非イオン界面活性剤は、PEGおよびPPGを2.5:1~5.5:1、または2.7:1~5.2:1のモル比で含むことができる。前記非イオン界面活性剤のPEGおよびPPGの含量が前記範囲内である場合、シリコーン樹脂混合物の乳化が容易であり、透明レジンエマルジョンの製造が可能である。具体的には、PEG含量が多いと、親水性に優れ、溶媒との乳化性に優れる。
【0033】
具体的には、前記非イオン界面活性剤は、エチレンオキシド(EO)-プロピレンオキシド(PO)-エチレンオキシド(EO)ブロック共重合体であってもよい。より具体的には、前記非イオン界面活性剤は、EO-PO-EOを1:1:1~3:1:3のモル比、または1.4:1:1.4~2.6:1:2.6のモル比で含むEO-PO-EOブロック共重合体であってもよい。
【0034】
前記非イオン界面活性剤は、重量平均分子量(Mw)が1,000~30,000g/molであり、水酸基価(Ohv)は1~50mgKOH/gであってもよい。具体的には、前記非イオン界面活性剤は、重量平均分子量が5,000~20,000g/molであり、水酸基価は5~30mgKOH/gであってもよい。前記水酸基価は、当業界において周知の方法によって測定することができ、例えば、滴定(titration)の方法で測定した値を示すことができる。前記非イオン界面活性剤の重量平均分子量が前記範囲内である場合、エマルジョンの乳化が容易であり、透明な高粘度のエマルジョンの製造が可能であり、水酸基価が前記範囲内である場合、シリコーン樹脂混合物の乳化が容易であるという効果がある。
【0035】
また、前記非イオン界面活性剤の市販品としては、例えば、Croda社製のSynperonic PE/F68、PE/F87、PE/F108およびPE/F127などが挙げられる。例えば、前記非イオン界面活性剤は、Croda社製のSynperonic PE/F87を単独で、またはPE/F68およびPE/F108、PE/F68およびPE/F127、PE/F87およびPE/F108、またはPE/F87およびPE/F127を4~6:6~4の重量比で混合して使用することができる。
【0036】
前記非イオン界面活性剤は、エマルジョンの全重量に対して5~25重量部の含量でシリコーンエマルジョンに含まれることができる。具体的には、前記非イオン界面活性剤は、エマルジョンの全重量に対して10~23重量部または13~20重量部の含量でシリコーンエマルジョンに含まれることができる。前記非イオン界面活性剤の含量が前記範囲内である場合、所望のエマルジョンの粒径を得ることができ、乳化安定性に優れた透明レジンエマルジョンの製造が可能であるという効果がある。
【0037】
溶媒
前記シリコーンエマルジョンは、溶媒をさらに含むことができる。すなわち、前記シリコーンエマルジョンは、前記シリコーン樹脂混合物が溶媒に分散された形態であってもよい。
【0038】
また、前記溶媒は、水であってもよく、前記水は、脱イオン水、純水、超純水および蒸留水からなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0039】
前記溶媒は、エマルジョンの全重量に対して15~40重量部の含量でシリコーンエマルジョンに含まれることができる。具体的には、前記溶媒は、エマルジョンの全重量に対して16~35重量部、または17~30重量部の含量でシリコーンエマルジョンに含まれることができる。前記溶媒の含量が前記範囲内である場合、エマルジョン最終粘度が高く、貯蔵安定性に優れ、透明なエマルジョンの製造が可能である。
【0040】
添加剤
前記シリコーンエマルジョンは、防腐剤および中和剤からなる群から選択される1種以上の添加剤をエマルジョンの全重量に対して0.1~5重量部の含量でさらに含むことができる。
【0041】
前記防腐剤は、前記シリコーンエマルジョンが微生物に汚染され変質することで安定性が低下する問題を防止する役割を果たす。また、前記防腐剤は、通常、シリコーン組成物に使用される防腐剤であれば特に制限されない。例えば、前記防腐剤は、ナトリウムベンゾエート、フェノキシエタノール、1,2-ヘキサンジオール、プロピレングリコール、ジアゾリジニルウレア、イミダゾリジニルウレア、15クオタニウム、DMDMヒダントイン、ベンザルコニウムクロライド、2-ブロモ-2-ニトロ-プロパン-1,3-ジオール、デヒドロ酢酸、2-ジクロロ-ベンジルアルコール、ナトリウムヒドロキシメチル-グリシネート、トリクロサン、安息香酸、クロロ安息香酸、ベンジルアルコール、サリチル酸、ヨウ素酸ナトリウム、ソルビン酸、カルシウムベンゾエート、メチルベンゾエートおよびベンジルベンゾエートからなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0042】
前記中和剤は、シリコーンエマルジョンのpHを調節する役割を果たし、シリコーン組成物に通常使用可能なpH調節剤であれば、特に制限なく使用可能である。例えば、前記中和剤としては、クエン酸、酢酸、乳酸、ホルム酸、硝酸、グリコール酸、リン酸といった任意の有機酸または無機酸が挙げられる。
【0043】
前記シリコーンエマルジョンは、溶媒内に分散された粒子の平均粒径が0.1~5μmであってもよい。具体的には、前記シリコーンエマルジョンは、溶媒内に分散された粒子の平均粒径が0.1~3.5μm、0.1~1.5μmまたは0.1~1.0μmであってもよい。シリコーンエマルジョンの溶媒内に分散された粒子の平均粒径が前記範囲内である場合、エマルジョンの外観が透明であり、常温および高温貯蔵安定性に優れ、使用感が軽く、密着感に優れるという効果がある。
【0044】
また、前記シリコーンエマルジョンは、25℃での粘度が300,000~1,500,000cPであってもよい。具体的には、前記シリコーンエマルジョンは、25℃での粘度が350,000~1,300,000cP、または500,000~1,000,000cPであってもよい。シリコーンエマルジョンの25℃での粘度が前記範囲内である場合、常温および高温安定性に優れるという効果がある。
【0045】
前記シリコーンエマルジョンは、固形分含量がシリコーンエマルジョンの全重量に対して40~80重量%であってもよい。具体的には、前記シリコーンエマルジョンは、固形分含量がシリコーンエマルジョンの全重量に対して45~65重量%、または50~60重量%であってもよい。シリコーンエマルジョンの固形分含量が前記範囲内である場合、使用感が軽く、密着感に優れるという効果がある。
【0046】
また、前記シリコーンエマルジョンは、化粧品用であってもよい。具体的には、前記シリコーンエマルジョンは、通常製造される化粧品の剤形として剤形化されることができ、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、せっけん、界面活性剤-含有クレンシング、オイル、パウダーファンデーション、エマルジョンファンデーション、ワックスファンデーションおよびスプレーなどに剤形化されることができるが、これに限定されるものではない。例えば、前記シリコーンエマルジョンは、柔軟化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アイクリーム、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォータ、パック、スプレーまたはパウダーなどの剤形として剤形化されることもできる。
【0047】
この際、「化粧品」は、人体を清潔および美化して容子を変化させるか、皮膚および毛髪の健康を維持または増進するために、人体に使用可能な任意の化粧品を意味する。
【0048】
また、前記シリコーンエマルジョンは、単独でまたは重複塗布して使用するか、本発明で開示したもの以外の他の化粧品用組成物とともに重複塗布して使用することができる。また、前記シリコーンエマルジョンは、通常の化粧品の使用方法にしたがって使用されることができ、ユーザの皮膚状態または好みに応じて異なる使用回数で使用することができる。
【0049】
上述のような本発明によるシリコーンエマルジョンは、色が透明であり、固形分の濃度が高く、使用感および持続性に優れ、常温および高温での貯蔵安定性に優れる。
【0050】
シリコーンエマルジョンの製造方法
本発明によるシリコーンエマルジョンの製造方法は、非イオン界面活性剤を水分散させるステップと、水分散された非イオン界面活性剤にシリコーン樹脂混合物を8回以上分割投入し、混合物を製造するステップとを含む。
【0051】
この際、前記シリコーン樹脂混合物は、シリコーン樹脂および希釈剤を含み、製造されたシリコーンエマルジョンは、前記シリコーン樹脂混合物および非イオン界面活性剤を1:0.1~1:0.4の重量比で含む。前記シリコーン樹脂、希釈剤および非イオン界面活性剤の具体例は、前記シリコーンエマルジョンで説明したとおりである。
【0052】
非イオン界面活性剤を水分散させるステップ
本ステップでは、非イオン界面活性剤を水分散させる。
【0053】
具体的には、本ステップでは、非イオン界面活性剤および溶媒を混合して水分散させることができる。より具体的には、本ステップでは、溶媒に非イオン界面活性剤を添加し、50~70℃、または55~65℃に昇温しながら10~60分間撹拌して水分散させることができる。非イオン界面活性剤の水分散時に温度が前記範囲内である場合、ペースト(Paste)状態の非イオン界面活性剤の分散が容易であるという効果がある。
【0054】
また、本ステップでは、非イオン界面活性剤と溶媒を1:0.5~1:5.0、または1:0.5~1:1.5の重量比で混合することができる。非イオン界面活性剤と溶媒の混合質量比が前記範囲内である場合、非イオン界面活性剤の分散が容易であるという効果がある。
【0055】
シリコーン樹脂混合物を分割投入するステップ
本ステップでは、水分散された非イオン界面活性剤にシリコーン樹脂混合物を8回以上分割投入し、混合物を製造する。
【0056】
具体的には、本ステップでは、水分散された非イオン界面活性剤にシリコーン樹脂混合物を8回~15回または10回~15回分割投入することができる。より具体的には、本ステップでは、水分散された非イオン界面活性剤にシリコーン樹脂混合物を2~15分間隔で10回~15回分割投入することができる。シリコーン樹脂混合物を前記回数範囲内に分割投入する場合、シリコーン樹脂混合物が溶媒内によく乳化し、分割投入時に時間間隔が前記範囲内である場合、エマルジョン内にミセルを安定的に形成し、所望の粒径のシリコーンエマルジョンの製造が可能である。
【0057】
また、本ステップは、50~70℃で行われることができる。具体的には、本ステップは、55~65℃で行われることができる。本ステップを前記温度範囲内で行う場合、乳化剤の融点(mp)内でエマルジョン粒子が形成されて透明なエマルジョンの製造が可能であるという効果がある。
【0058】
本ステップは、水分散された非イオン界面活性剤にシリコーン樹脂混合物を8回以上分割投入した後、100~2,000rpmで10~120分間撹拌することができる。具体的には、本ステップは、水分散された非イオン界面活性剤にシリコーン樹脂混合物を8回~15回分割投入した後、500~1,500rpmで10~60分間撹拌することができる。
【0059】
前記シリコーンエマルジョンの製造方法は、前記混合物に溶媒を2次添加および混合する(a)ステップと、溶媒を2次添加した混合物に防腐剤を添加および混合する(b)ステップと、防腐剤を添加した混合物に溶媒を3次添加および混合する(c)ステップとをさらに含むことができる。また、防腐剤および溶媒の具体例は、前記シリコーンエマルジョンで定義したとおりである。
【0060】
この際、2次添加される溶媒の含量は、非イオン界面活性剤100重量部に対して5~500重量部であってもよい。具体的には、2次添加される溶媒の含量は、非イオン界面活性剤100重量部に対して5~400重量部または10~200重量部であってもよい。
【0061】
また、前記(a)ステップでは、100~2,000rpmで10~360分間撹拌することができる。具体的には、前記(a)ステップでは、500~1,500rpmで10~240分間撹拌することができる。
【0062】
3次添加される溶媒の含量は、非イオン界面活性剤100重量部に対して10~200重量部であってもよい。具体的には、3次添加される溶媒の含量は、非イオン界面活性剤100重量部に対して10~150重量部または10~120重量部であってもよい。
【0063】
前記(c)ステップは、防腐剤を添加した混合物に溶媒を3次添加し、添加剤をさらに添加した後、混合することができる。この際、前記添加剤は、防腐剤以外の他の添加剤であってもよく、前記添加剤の具体例は、前記シリコーンエマルジョンで定義したとおりである。
【0064】
以下、本発明を実施例を参照して詳細に説明すると以下のとおりである。ただし、下記の実施例は、本発明を例示するものであって、本発明が下記実施例によって限定されるものではない。
【0065】
実施例1.シリコーンエマルジョンの製造
表1に記載のような組成で成分を使用し、表3に記載のような工程条件でシリコーン樹脂混合物を分割投入した。
【0066】
具体的には、反応器に脱イオン水-1および非イオン界面活性剤を投入し、30分間55℃に昇温しながら撹拌した。次に、反応器を55℃に維持しながらシリコーン樹脂混合物を5分間隔で15回分割投入した後、60分間1,000rpmで撹拌した。次に、反応器に脱イオン水-2を添加し、1,000rpmで30分間撹拌した後、防腐剤を添加し、1,000rpmで30分間撹拌した。次に、脱イオン水-3を反応器に添加し、1,000rpmで30分間撹拌し、シリコーンエマルジョンを製造した。
【0067】
実施例2~8および比較例1~8.シリコーンエマルジョンの製造
表1および2に記載のような組成で成分を使用し、表3に記載のような工程条件でシリコーン樹脂混合物を分割投入した以外は、実施例1と同じ方法でシリコーンエマルジョンを製造した。
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
比較例および実施例で使用した各成分のメーカーおよび製品名などは、表4に示した。
【0072】
【0073】
実験例
実施例および比較例のシリコーンエマルジョンの物性を下記のような方法で測定し、その結果を表5に示した。
【0074】
(1)乳化有無
製造されたシリコーンエマルジョンの乳化有無は、エマルジョンの外観で相が分離されず均一に分散しているかを確認した。
【0075】
(2)色
製造されたシリコーンエマルジョンの色を肉眼で観察した。
【0076】
(3)分散された粒子の平均粒径
Marvern社製のMaster Size 3000を使用して、シリコーンエマルジョン内の分散された粒子の平均粒径(μm)を測定した。
【0077】
(4)粘度
ブルックフィールド(brookfiled)粘度計およびヘリパススタンド(helipath stand)♯93を使用して、シリコーンエマルジョンを2.5rpmで撹拌しながら25℃での粘度を測定した。
【0078】
(5)貯蔵安定性
シリコーンエマルジョンを25℃または50℃で10日間放置し、シリコーンエマルジョンの相分離有無を確認して貯蔵安定性を評価し、水層とオイル層の相分離が発生しない場合、良好と評価した。
【0079】
(6)使用感
シリコーンエマルジョンを2.0重量%の濃度になるように水に希釈してサンプルを製造した。次に、前記サンプルを10名の実験対象者が使用するようにした後、密着感とコーティング性を基準に使用感評価を行い、5点満点を基準として評価した。
【0080】
(7)持続性
前記項目(6)と同じサンプルを同じ実験対象者が使用するようにした後、持続性の評価を行い、5点満点を基準として評価した。
【0081】
(8)屈折率
シリコーンエマルジョンの屈折率(RI)を測定し、透明性を評価した。
【0082】
【0083】
表5に示されているように、実施例1~8のシリコーンエマルジョンは、シリコーン樹脂混合物が溶媒内によく乳化しており、使用感および持続性に優れていることが分かった。特に、実施例1、5、7および8のシリコーンエマルジョンは、色が透明であり、分散された粒子の平均直径が適切であり、常温および高温での貯蔵安定性に優れる。
【0084】
一方、シリコーン樹脂混合物に比べて、少量または過量の非イオン界面活性剤を含む比較例1および2、シリコーン樹脂混合物内のシリコーン樹脂の含量が少量または過量である比較例3および4、シリコーン樹脂混合物の分割投入時に温度が低いか高い比較例5および6、およびシリコーン樹脂混合物の分割回数が多い比較例7のシリコーンエマルジョンは、使用感および持続性が十分でなかった。また、シリコーン樹脂混合物の分割回数が少ない比較例8のシリコーンエマルジョンは、シリコーン樹脂混合物が乳化しないという欠点があった。
【国際調査報告】