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特表2022-520669核酸検出のための方法、システム、及び装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-31
(54)【発明の名称】核酸検出のための方法、システム、及び装置
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20220324BHJP
   C12Q 1/6886 20180101ALI20220324BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALN20220324BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALN20220324BHJP
   C12N 9/50 20060101ALN20220324BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12Q1/6886 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6869 Z
C12N9/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559077
(86)(22)【出願日】2020-04-02
(85)【翻訳文提出日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 US2020026480
(87)【国際公開番号】W WO2020206184
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】62/828,386
(32)【優先日】2019-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/828,416
(32)【優先日】2019-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/828,420
(32)【優先日】2019-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/828,409
(32)【優先日】2019-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/829,358
(32)【優先日】2019-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/829,291
(32)【優先日】2019-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521325444
【氏名又は名称】ミッション バイオ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ディングラ ダリア
(72)【発明者】
【氏名】ラフ デヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】メンデス ペドロ
(72)【発明者】
【氏名】オーイ アイク
【テーマコード(参考)】
4B050
4B063
【Fターム(参考)】
4B050CC07
4B050KK18
4B050LL03
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA19
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS34
(57)【要約】
シングルセル由来の標的核酸を検出及び特性決定するための方法を、本明細書で提供する。一実施形態は、BCR-ABL融合転写物を有する、または有する疑いのあるシングルセルに由来する核酸試料においてBCR-ABL遺伝子融合物を検出するための方法である。本発明の好ましい一実施態様は、BCR-ABL融合転写物を有することが疑われる標的核酸に相補的な核酸増幅プライマーセットを提供することを含む。いくつかの実施形態では、核酸増幅プライマーセットの1つまたは両方のプライマーは、バーコード識別配列を有する。AML腫瘍を検出するための方法もまた提供し、方法は、白血病の検出、骨髄性白血病の検出、及び、BCR-ABL融合転写物を有することが疑われる患者の予後の診断のために使用される。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シングルセル由来の核酸試料内で遺伝子発現を検出するための方法であって、
個別の細胞で、1つ以上の標的核酸配列を選択することであって、前記標的核酸配列がDNAまたはRNAに含有されている、前記選択することと、1つ以上の個別のシングルセルを有する試料を提供することと、
液滴内に個別の細胞を封入することと、
前記封入した細胞プロテアーゼを液滴内でインキュベートして、細胞溶解液を作製することと、
標的核酸に相補的な核酸増幅プライマーセットを供給することであって、前記核酸増幅プライマーセットの少なくとも1つのプライマーが、バーコード識別配列を含む、前記供給することと、
逆転写及び核酸増幅反応を行って、シングルセルの核酸から増幅産物を形成することと、
前記標的核酸が転写物を含む場合に前記標的核酸が発現されるか否かを判定することと
を含む、前記方法。
【請求項2】
1つ以上の核酸プライマーのバーコード配列と相補的な核酸配列を含む親和性試薬を供給することであって、前記バーコード配列と相補的な前記核酸配列を含む前記親和性試薬が、バーコード配列を含む核酸増幅プライマーに結合できる、前記供給することと、
親和性試薬が標的核酸に結合して、親和性試薬が結合した標的核酸を形成するのに十分な条件下で、前記親和性試薬と、アンプリコンを含む増幅産物とを接触させることと
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記標的核酸が存在するか否かを判定するための、増幅産物またはアンプリコンの核酸シーケンシングを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
他の標的化核酸と比較しての、標的核酸レベルを測定するための、増幅産物またはアンプリコンの核酸シーケンシングを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記標的核酸が融合転写物を含むか否かを判定するための、増幅産物またはアンプリコンの核酸シーケンシングを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記標的核酸がBCR-ABL1融合転写物を含むか否かを判定するための、増幅産物またはアンプリコンの核酸シーケンシングを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記核酸増幅プライマーセットがスプライスジャンクションにまたがる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記核酸増幅プライマーセットがBCR-ABLスプライスジャンクションにまたがる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
埋め込まれたバーコード識別配列を有するフォワード増幅プライマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
埋め込まれたバーコード識別配列を有するリバース増幅プライマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
AML腫瘍の検出のために使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
白血病の検出のために使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
骨髄性白血病の検出のために使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
BCR-ABL融合転写物を有することが疑われる患者の予後を判定するために使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記核酸増幅プライマーセットが、
増幅のためのフォワードプライマーとして使用される、配列ACTCCAGACTGTCCACAGCA(配列番号)またはいずれかの末端にて1~3個のヌクレオチド置換または欠失を含むそのバリアント、及び、
増幅のためのリバースプライマーとして使用される、配列TTGGGGTCATTTTCACTGGGTCCAGCGAGAAGGT(配列番号)またはいずれかの末端にて1~4個のヌクレオチド置換または欠失を含むそのバリアント
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
個別の細胞が、水溶液、油中水型エマルション、または油中水型懸濁液中に反応混合物を含む単一の液滴中に封入される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記反応混合物が、プロテイナーゼK、または別の細胞溶解性プロテアーゼを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞溶解性プロテアーゼが、前記核酸増幅反応前に、または前記核酸増幅反応中に、熱不活化される、請求項18に記載の方法。
【請求項19】
前記核酸増幅反応が、ポリメラーゼ連鎖反応、またはその既知の変形である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
BCR-ABL遺伝子融合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、標的核酸の検出及び識別、ならびに、標的核酸内での変異及びアレリックバリアントの検出及び識別、より具体的には、シングルセル内での標的核酸の検出及び識別、ならびに、シングルセル内の標的核酸内での変異及びアレリックバリアントの検出及び識別に関する。
【0002】
関連出願
本出願は、以下の米国仮出願である、米国特許出願番号第62/829,291号(2019年4月4日出願、表題「Method, System And Apparatus For Antibody Tag Priming And Genomic Dna Bridge」);米国特許出願番号第62/828,386号(2019年4月2日、表題「A Complete Solution For Hight Throughput Single Cell Sequencing」);米国特許出願番号第62/828,416号(2019年4月2日、表題「Analytical Methods To Identify Tumor Heterogeneity」号);米国特許出願番号第62/828,420号(2019年4月2日、表題「Method and Apparatus for Universal base library preparation」);及び、米国特許出願番号第62/829,358号(2019年4月4日出願、表題「Method and Apparatus for Fusion in DNA and RNA」I);及び、米国特許出願番号第62/828,409号(2019年4月2日出願、表題「High Throughput Singel Cell DNA Sequencing」)の優先権を主張し、これら全てが本明細書に参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
遺伝子型と表現型を対形成しながらハイスループットのシングルセル核酸の検出を行うための方法、システム、及び装置が必要とされている。同一のシングルセルから対形成したDNA及びRNAの両方に由来する標的核酸の検出及び識別を含む、ハイスループットのシングルセル検体の検出及び分析を行うための方法、システム、及び装置もまた、必要とされている。
【0004】
例えば、BCR-ABL遺伝子融合物は、一般的にはフィラデルフィア症候群として知られている疾患と関連することが知られている。フィラデルフィア染色体またはフィラデルフィア転座(Ph)は、白血病がん細胞(具体的には、慢性骨髄性白血病(CML)細胞)の染色体22での、特異的な遺伝異常である。染色体には欠陥があり、通常、染色体9と染色体22との間の遺伝物質の、相互転座t(9;22)(q34;q11)によって短く、BCR-ABL1と呼ばれる融合遺伝子を含有する。この遺伝子は、染色体22のブレークポイントクラスター領域BCR遺伝子上に並列した染色体9のABL1遺伝子であり、ハイブリッドタンパク質である、「オールウェイズオン」のチロシンキナーゼシグナル伝達タンパク質をコードし、ゲノムの安定性を妨げ、細胞周期を司る様々なシグナル伝達経路を損なわせることにより、細胞を制御不可能に分裂させる。
【0005】
CMLの症例の95%はBCR-ABL1に陽性であるため、この融合転写物が存在することは、CMLにとって非常に高感度な検査となる。(いくつかの症例は、G分染した染色体調製物上で見えない隠れた転座、または、別の1つまたは複数の染色体、加えて、染色体9及び22のロングアームを伴う様々な転座のいずれかにより混同される。他の同様の、しかし真にPh陰性状態は、CML様の骨髄増殖性腫瘍形成と考えられる。)しかし、フィラデルフィア(Ph)染色体の存在は、CMLを診断するのに十分に特異的ではない。なぜなら、フィラデルフィア染色体は、急性リンパ性白血病[4](ALLとも呼ばれ、成人症例の25~30%、及び、小児症例の2~20%を占める)、ならびに、場合により急性骨髄性白血病(AML)、加えて混合表現型急性白血病(MPAL)でも発見されているからである(Wikipediaを参照されたい)。
【0006】
SNP、変異、融合転写物、遺伝子発現などを含む、アレリックバリアントを識別し、特性決定するより良い方法が求められている。本明細書に記載されている発明は、解決されていないこれらの課題及びニーズに対応するものである。
【発明の概要】
【0007】
本書で説明及び特許請求されている発明には、多くの特質及び実施形態があり、その特質及び実施形態としては、この発明の概要で規定、説明または言及されているものが挙げられるが、これらに限らない。本書で説明及び特許請求されている発明は、この発明の概要で特定されている特徴または実施形態に限定されたり、またはこの発明の概要で特定されている特徴または実施形態によって限定されたりはせず、この発明の概要は、例示目的で含まれているに過ぎず、制限を課すものではない。
【0008】
第1の態様では、本発明の実施形態は、シングルセル由来の標的核酸を検出及び特性決定するための、標的化PCRの使用に関する。
【0009】
方法の例示的実施形態は、個別細胞において、対象とする標的核酸配列を1つ以上選択することであって、その標的核酸配列が、細胞内の核酸と相補的であり、細胞内の核酸がDNAまたはRNAであることができる、選択することと、個別のシングルセルを1つ以上有する試料を準備することと、プロテアーゼを含む反応混合物に、1つ以上の個別細胞を封入することと、封入した細胞をプロテアーゼとともに液滴内でインキュベートして、細胞溶解液を作製することと、1つ以上の核酸増幅プライマーセットを供給することであって、各プライマーセットが、標的核酸と相補的であり、核酸増幅プライマーセットのプライマーの少なくとも1つが、バーコード配列を含む、供給することと、反応混合物を用いて核酸増幅反応を行って、シングルセルの核酸から、増幅産物を形成することであって、その増幅産物が、1つ以上の標的核酸配列のアンプリコンを含む、形成することと、及び任意に、プライマーセットの核酸プライマーのうちの1つ以上の識別バーコード配列と相補的な核酸配列を含む親和性試薬を供給することであって、そのバーコード配列と相補的な前記核酸配列を含む前記親和性試薬が、バーコード配列を含む核酸増幅プライマーセットに結合できる、供給することと、その親和性試薬がその標的核酸に結合して、親和性試薬が結合した標的核酸を形成するのに十分な条件下で、親和性試薬と、1つ以上の標的核酸配列のアンプリコンを含む増幅産物とを接触させることと、第1のバーコード及び第2のバーコードのシーケンシングによって、標的核酸の同一性を求めることと、を含む。
【0010】
別の態様では、本発明の実施形態は、シングルセル由来の標的核酸の、PCRに基づく検出及び特性決定の方法及びシステムであって、シングルセル由来の標的核酸変異または遺伝子発現を検出するためのシステム及び方法であって、方法が、提示される順序と独立して、i)1つ以上の標的核酸配列を選択する工程であって、標的核酸配列が(例えば、1つ以上の細胞を含む細胞集団由来の)細胞内の核酸に相補的である、工程と、ii)個別のシングルセルを複数有する試料を準備する工程と、iii)プロテアーゼを含む反応混合物に、1つ以上の個別細胞を封入する工程と、iv)封入した細胞をプロテアーゼとともに液滴内でインキュベートして、細胞溶解液を作製する(及び任意に、いくつかの他の工程の前に、プロテアーゼを不活化する)工程と、v)1つ以上の核酸増幅プライマーセットを供給する工程であって、各プライマーセットが、標的核酸と相補的であり、核酸増幅プライマーセットのプライマーの少なくとも1つが、バーコード配列を含む工程と、vi)任意に、ポリメラーゼ(例えば逆転写酵素、またはその活性バリアント)、プライマー、及び、逆転写を行うために必要な、他の必要な反応成分を添加し、シングルセルの核酸から逆転写反応を行う工程と、vii)核酸増幅反応を行って、シングルセルの核酸から、増幅産物を形成する工程であって、その増幅産物が、1つ以上の標的核酸配列のアンプリコンを含む工程と、viii)バーコードを含む1つ以上の核酸プライマーを含むビーズを含む親和性試薬を提供する工程と、ix)その親和性試薬がその標的核酸に結合して、親和性試薬が結合した標的核酸を形成するのに十分な条件下で、親和性試薬と、1つ以上の標的核酸配列のアンプリコンを含む増幅産物とを接触させる工程と、x)核酸シーケンシングまたは他の技術により、標的核酸と関連する、対象となる変異、融合転写物、アレイックバリアント、または遺伝子発現レベルを特性決定する工程と、を含む、方法に関する。
【0011】
いくつかの実施態様において、固体支持体、ビーズなどが、親和性試薬でコーティングされる。親和性試薬としては、抗原、抗体、または、標的分子に対して特異的結合親和性を有するアプタマーが挙げられるが、これらに限定されない。親和性試薬は、シングルセル構成要素内で1つ以上の標的に結合する。親和性試薬は多くの場合、(例えば、フルオロフォアで)検出可能に標識されている。親和性試薬は場合によっては、独自のバーコード、オリゴヌクレオチド配列、またはUMIで標識されている。
【0012】
いくつかの実施態様において、例えば反応混合物中で、反応混合物への添加において、または、反応混合物の一部への添加において、RT-PCRポリメラーゼ反応が行われる。
【0013】
いくつかの実施態様において、例えば反応混合物中で、反応混合物への添加において、または、反応混合物の一部への添加において、RT-PCRポリメラーゼ反応が行われる。
【0014】
いくつかの実施態様において、逆転写反応を実施して、逆転写生成物を生成する。
【0015】
いくつかの実施態様は、逆転写を行って、核酸増幅工程前に逆転写生成物を生成することを含む。
【0016】
いくつかの実施態様は、RNA上で逆転写を行って逆転写生成物を生成することと、逆転写生成物を増幅することと、を含み、逆転写を行うこと及び増幅を行うことは、単一の工程で生じる。
【0017】
いくつかの実施態様は、増幅産物の核酸シーケンシング反応を行うことを含む。
【0018】
いくつかの実施態様において、親和性試薬はビーズなどを含む。
【0019】
いくつかの実施態様において、方法は、液滴中で、プロテアーゼ及び/または逆転写酵素の存在下で、封入された細胞をインキュベートして、cDNA及び細胞溶解液を生成することにより行われる。
【0020】
特定の一実施態様において、固体支持体は、異なる標的分子に対してそれぞれ特異的な、複数の親和性試薬を含有する。特異的な標的分子に結合する親和性試薬は、異なる試薬に対して異なる結合親和性を有する親和性分子が、異なるオリゴヌクレオチド配列で標識されるように、同一のオリゴヌクレオチド配列でまとめて標識される。このようにして、単一の標的構成要素内の標的分子は、これらの器具内で区別されて標識される。
【0021】
上記実施形態のいくつかのバリアント、及び本明細書に記載する他のバリアントは、対象となる変異、融合転写物、またはアレイック多様性ことが疑われる、1つ以上の標的核酸配列上で行われる。
【0022】
核酸及び遺伝子の検出及び特性決定のための、対象となる特定のある種類のバリアントとしては、任意の核酸の変異、融合及び再配列、またはこれらの組み合わせが挙げられる。したがって、本発明の特定の実施形態は、シングルセル由来の核酸試料内での、遺伝子融合を検出するための方法に関する。このような方法の例示的な実施形態は、個別の細胞内で1つ以上の標的核酸配列を選択することと、1つ以上の個別のシングルセルを有する試料を準備することと、液滴内に個別の細胞を封入することと、封入した細胞をプロテアーゼとともに液滴内でインキュベートして、細胞溶解液を作製することと、標的核酸に相補的な核酸増幅プライマーセットを準備することであって、核酸増幅プライマーセットの少なくとも1つのプライマーが、バーコード識別配列を含む、準備することと、核酸増幅反応を行って、シングルセルの核酸から増幅産物を形成することと、前記核酸か否かを判定することと、を含む。ある種の特定の実施態様は、核酸プライマーのうちの1つ以上のバーコード配列と相補的な核酸配列を含む親和性試薬を供給することであって、そのバーコード配列と相補的な前記核酸配列を含む前記親和性試薬が、バーコード配列を含む核酸増幅プライマーセットに結合できる、供給することと、その親和性試薬がその標的核酸に結合して、親和性試薬が結合した標的核酸を形成するのに十分な条件下で、親和性試薬と、アンプリコンを含む増幅産物とを接触させることと、を更に含む。
【0023】
上記方法の一実施態様は、遺伝子融合物の検出または特性決定のためのものであり、これは、標的核酸が融合転写物を有するか否かを判定するための、増幅産物またはアンプリコンの核酸シーケンシングを更に含むことができる。
【0024】
一実施態様は、アンプリコンがスプライスジャンクションにまたがる核酸増幅プライマーセットを含む。
【0025】
一実施態様は、スプライスジャンクションにまたがる核酸増幅プライマーセットを含む。
【0026】
一実施態様は、埋め込まれたバーコード識別配列を有するフォワード増幅プライマーを有する、核酸増幅プライマーセットを含む。
【0027】
遺伝子融合物を検出するための上記方法の一実施態様は、埋め込まれたバーコード識別配列を有するリバース増幅プライマーを有する、核酸増幅プライマーセットを含む。
【0028】
いくつかの実施態様は、2つ以上のフォワードまたはリバースプライマーを有する。
【0029】
遺伝子融合法の検出のための、上記方法の別の実施態様において、個別の細胞は、水溶液、油中水型エマルション、または油中水型懸濁液中に反応混合物を含む単一の液滴中に封入される。
【0030】
遺伝子融合法の検出のための、上記方法の別の実施態様において、反応混合物は細胞溶解性プロテアーゼを含む。
【0031】
遺伝子融合法の検出のための、上記方法の別の実施態様において、細胞溶解性プロテアーゼは、プロテイナーゼKを含む。
【0032】
遺伝子融合法の検出のための、上記方法の別の実施態様において、細胞溶解性プロテアーゼは、核酸増幅反応前に、または核酸増幅反応中に、熱不活化される。
【0033】
遺伝子融合法の検出のための、上記方法の別の実施態様において、核酸増幅反応は、ポリメラーゼ連鎖反応、またはその既知の変形である。
【0034】
遺伝子発現の検出のための上記方法の一実施態様は、標的核酸が存在するか否かを判定するための、増幅産物またはアンプリコンの核酸シーケンシングを更に含む。
【0035】
遺伝子発現の検出のための上記方法の一実施態様は、アプリコンがエクソン-エクソン境界にまたがる核酸増幅プライマーセットを含む。
【0036】
遺伝子発現の検出のための上記方法の一実施態様は、スプライスジャンクションにまたがる核酸増幅プライマーセットを含む。
【0037】
遺伝子発現を検出するための上記方法の一実施態様は、埋め込まれたバーコード識別配列を有するフォワード増幅プライマーを有する、核酸増幅プライマーセットを含む。
【0038】
遺伝子発現を検出するための上記方法の一実施態様は、埋め込まれたバーコード識別配列を有するリバース増幅プライマーを有する、核酸増幅プライマーセットを含む。
【0039】
遺伝子発現法の検出のための、上記方法の別の実施態様において、個別の細胞は、水溶液、油中水型エマルション、または油中水型懸濁液中に反応混合物を含む単一の液滴中に封入される。
【0040】
遺伝子発現法の検出のための、上記方法の別の実施態様において、反応混合物は細胞溶解性プロテアーゼを含む。
【0041】
遺伝子発現法の検出のための、上記方法の別の実施態様において、細胞溶解性プロテアーゼは、プロテイナーゼKを含む。
【0042】
遺伝子発現法の検出のための、上記方法の別の実施態様において、細胞溶解性プロテアーゼは、核酸増幅反応前に、または核酸増幅反応中に、熱不活化される。
【0043】
遺伝子発現法の検出のための、上記方法の別の実施態様において、核酸増幅反応は、ポリメラーゼ連鎖反応、またはその既知の変形である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1A図1Aは、Tapestri(商標)装置でRNA及びDNAの両方を検出する、同時検出のためのTapestri(商標)ワークフロー及びシステムを用いる実施形態を概略的に示す。細胞はTapestri(商標)器具で希釈及び入力され、ここでは、細胞は試薬でドロップレットに分割される。これらの試薬は、細胞溶解、プロテアーゼ処理、及び逆転写のための構成成分を含むことができる。最初のドロップレットでの反応後、これらの封入されたシングルセル溶解液は、より多くの試薬を導入するドロップレット混合のために、Tapestri(商標)システムに入れられる。これらの試薬は、核酸増幅及び逆転写のための物質を含むことができる。図1Bは、BCR-ABL1融合転写物を検出するための実施形態を概略的に示し、対形成されたシーケンシングリード(リード1及びリード2)を有する、融合転写物を示す。この図では、BCR-ABL1 p210 b3a2融合転写物を検出するために、リード1は、BCR中の2つのエクソンをカバーする。リード2はスプライスジャンクションをカバーする。図1Cは、標的化RT-PCR反応後の、シングルセルドロップレットの10X増幅における顕微鏡画像を示す。細胞の15%~24%に由来する、標的化DNA及びRNAライブラリーは、2x150bpのリードにおいて、Illumina装置でシーケンシングされる。単一のクローン細胞は、K-562としてのジェノタイプ細胞にTapestri Insights v1.6.2を使用して分析した。細胞は、10xを超えてカバーされるアンプリコンの80%を有することに基づいてフィルタリングした。結果を図1Dに示す。RNAリードの数はY軸に示し、DNAリードの数はX軸に示す。RNAリードは、単一のRNAアンプリコン及び50個のDNAアンプリコンを有するDNAリードと同時に検出した。K-562としての細胞遺伝子型の37.5%は、3つ以上の融合リードを有した。
図1B図1Aの説明を参照のこと。
図1C図1Aの説明を参照のこと。
図1D図1Aの説明を参照のこと。
図2A】細胞混合実験からの、合わさったDNA及びRNAライブラリーのバイオアナライザートレースを示す。
図2B】パネル均一性測定の結果である、融合リードの数によりランク付けされた、それぞれの遺伝子型細胞に見られる融合リードを示す。K-582及びRaji細胞の50:50混合物を用いると、K-562細胞では、融合リードのみが検出され、細胞当たり4つ以上の融合リードが必要な場合、Raji細胞では検出されなかった。Raji細胞の4.8%は、単一融合リードを有した。K-562の5.1%は、単一融合リードを有した。
図3A】バリアントの検出を示す。パネル3Aは、T分布型確率的近傍埋め込み法(t-SNE)分析及びプロットの結果を示す。K-562細胞とRaji細胞クラスターの50:50混合物は、11個のSNVならびに挿入及び/または検出(インデル)を用いる、t-SNAプロットでの細胞種に基づく。K-562及びRajiとしてジェノタイプされる細胞は右上のK-562クラスター、及び左下のRajiの両方で見られる。3個以上のBCR-ABL1融合リードは、三角形として示される、K-562細胞でのみ発見された。
図3B】バリアントの検出を示す。図3Bに示す実験では、K-562細胞とRaji細胞の50:50混合物をクローンに分離し、クローン1は、K-562に対する想定された対立遺伝子頻度であり、クローン2は、Rajiに対する想定された対立遺伝子頻度である。
図3C】バリアントの検出を示す。図3Cは、9個の細胞に対するゲノムバリアント結果を示し、3個以上のBCR-ABL1融合リードが検出された。11個のSNVに対して、RNAリードを有するこれらの細胞は、DNAからの想定されたSNVコールを有した。アレイックドロップアウト分析のための、ゲノム上の位置は、ADOと略する。
図4A】Tapestri(商標)システムを使用する、シングルセルRNAライブラリーのバイオアナライザートレースを示す。
図4B図4B図4C図4Dは、Broad Institute製のIntegrative Genomics Viewerによる画像を示し、各パネルは、シングルセル由来の対形成されたリードである。リードはエクソンからエクソンにまたがっており、リードが、イントロンを含有しないこれらの核酸増幅プライマーセットにより捕捉されたRNA分子から由来していることが示される。エクソン-イントロンの境界にまたがるリードは、同一のプライマーにより標的化されるDNA分子に由来することができる。図4Bは、GUSB遺伝子を示す。図4Cは、ITGAM遺伝子を示す。図4Dは、NFKBIA遺伝子を示す。
図4C図4Bの説明を参照のこと。
図4D図4Bの説明を参照のこと。
図5】RNA及びDNAの両方を検出する、同時検出のためのTapestri(商標)ワークフロー及びシステムを用いる実施形態を概略的に示し、単一のライブラリーが生成される。図5Aは、Tapestri(商標)プラットフォームでの最初のドロップレットでの逆転写反応及びプロテアーゼ処理を示し、図5Bは、細胞バーコードの付着を含む、標的化増幅を示す。
図6】ライブラリーのバイオアナライザートレースを示し、DNA及びRNAの両方が、3つの細胞株混合物であるK-562、TOM-1、及びRajiで標的化される。BCR-ABL1は、急性骨髄性白血病で関係のある変異を有する128個のDNAアンプリコンと共に標的化された。K-562は、BCR-ABL1 p210 b3a2融合転写物に対して陽性である。TOM-1は、BCR-ABL1 p190融合転写物に対して陽性である。RajiはBCR-ABL1融合転写物を有しない。
図7図6に示すライブラリーに由来するDNAパネル及びRNA融合パネルの性能を示す。図7Aは、細胞の総数、標的でのシーケンシングリード、及びパネルの均一性を含む、DNAのパネル性能を示す。図7Bは、DNAパネルデータで発見される、3個のヌクレオチドバリアントからジェノタイプされる細胞の数、及び、1、3、5、または10個以上の融合シーケンシングリードを有する細胞数を示す。図7Cは、5つの融合リードが陽性コールに対して必要なときの、感度及び特異度の計算を示す。p210 b3-a2検出に対する感度は92.0%であり、p190 e1-a2検出に対する感度は69.2%であった。両方が98%を超える特異度を有した。Rajiには融合コールがなかった。
図8】4個の細胞株混合物からの、合わさったDNA及びRNAライブラリーからの結果を示す。BCR-ABL1 p210 b3a2に対して陽性であるK-562、BCR-ABL1 p210 b2a2に対して陽性であるKCL-22、BCR-ABL1 p190に対して陽性であるTOM-1、及び、全てのBCR-ABL1融合転写物に対して陰性であるKG-1を使用した。これら3つのBCR-ABL1融合物を標的にするプライマーを、128多重度の急性骨髄性白血病DNAパネルと共に使用した。図8Aは、1311個の遺伝子型細胞、及び、5つ以上の融合シーケンシングリードを有する細胞の数を示す。図8Bは、細胞当たり、5つ以上のシーケンシングリードを必要とする場合の、各融合転写物に対する感度及び特異度の計算を示す。図8Cは、20個以上に対する、同一の1311個の遺伝子型細胞に必要な、融合シーケンシングリードを増加させる。図8Dは、3つの融合転写物に対して計算される感度、及び改善された特異度を示す。
図9】RNA及びDNAの両方を検出する、同時検出のためのTapestri(商標)ワークフロー及びシステムを用いる実施形態を概略的に示し、標的化RNA及び標的化DNAに由来するライブラリーは分離することができる。図9Aは、Tapestri(商標)プラットフォームでの最初のドロップレットでの逆転写反応及びプロテアーゼ処理を示す。図9Bは、細胞バーコードの付着を含む、標的化増幅を示す。このワークフローに由来するRNA及びDNAアンプリコンは、異なるシーケンシングライブラリーに分離することができる。
図10】シングルセルからの結果を示し、110多重度のRNAライブラリー、及び88多重度のDNAライブラリーが同一のシングルセルから作製される。図10Aは、逆転写プライマーが63℃のアニーリング温度を有するときの、細胞の総数、標的でのシーケンシングリード、及びパネルの均一性を含む、DNAのパネル性能を示す。図10Bは、逆転写プライマーが45℃のアニーリング温度を有するときの、細胞の総数、標的でのシーケンシングリード、及びパネルの均一性を含む、DNAのパネル性能を示す。
図11A図10に記載するものと同一のシングルセルからの、対応するRNAライブラリー性能を示す。図11Aは、RNAシーケンシングの結果に基づきumapによりクラスター化され、DNAライブラリーからのジェノタイピングデータにより着色された、63℃逆転写プライマーからの細胞を示す。Jurkat細胞は赤色に着色し、Y79細胞はオレンジに着色し、KG1細胞は青色に着色する。2つ以上の細胞の混合物として分類した細胞は紫に着色し、ジェノタイピングデータによりジェノタイプすることができない細胞は灰色に着色する。
図11B図10に記載するものと同一のシングルセルからの、対応するRNAライブラリー性能を示す。図11Bは、63℃逆転写プライマーを使用するDNAパネルデータから測定した、細胞種により分離した各シングルセルで発見される遺伝子の数の、バイオリンプロットを示す。
図11C図10に記載するものと同一のシングルセルからの、対応するRNAライブラリー性能を示す。図11Cは、45℃逆転写プライマーシングルセルからの、umapクラスターである。Jurkat細胞は赤色に着色し、Y79細胞はオレンジに着色し、KG1細胞は青色に着色した。2つ以上の細胞の混合物として分類した細胞は紫に着色し、ジェノタイピングデータによりジェノタイプすることができない細胞は灰色に着色する。
図11D図10に記載するものと同一のシングルセルからの、対応するRNAライブラリー性能を示す。図11Dは、45℃逆転写プライマーを使用するDNAパネルデータから測定した、細胞種により分離した各シングルセルで発見される遺伝子の数の、バイオリンプロットを示す。
図12A】Broad Institute製のIntegrative Genomics ViewerによるPTEN遺伝子の画像を示し、各パネルは、プロテアーゼ無し(上パネル)、及びプロテアーゼあり(下パネル)で作製したRNAライブラリーからの、対形成したリードである。リードはエクソンからエクソンにまたがっており、リードが、イントロンを含有しないこれらの標的化プライマーにより捕捉されたRNA分子に由来するものであることを示している。エクソン-イントロンの境界にまたがるリードは、同一のプライマーにより標的化されるDNA分子に由来することができる。
図12B】DNAによりジェノタイプされた354個の細胞に対する、細胞当たりの遺伝子を示す。
図13A-1】RNAのパネル性能を図12に示した、同一の354個の細胞に対する、DNAのパネル性能を示す。図13Aに見られるように、DNAパネル、細胞の均一性、及びアンプリコンの均一性から、リードの数を用いて354個の細胞を識別した。
図13A-2】図13A-1の説明を参照のこと。
図13A-3】図13A-1の説明を参照のこと。
図13B】これらの354個の細胞のDNAライブラリーからの、単一のヌクレオチドバリアントのヒートマップを示す。ヒートマップは、本実験で使用する2つの細胞型と対応する2つのクラスターを示す。
図13C】単一のヌクレオチドバリアントに基づく細胞のクラスターである。
図14】外部で連結したプライマーを含むビーズの例示的実施形態の、概略的図解である。
図15】ビーズに外部で連結したプライマーの例示的用途の図解である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
詳細な説明
以下では、下記の節を参照しながら、本発明の様々な態様を説明するが、その説明は、例示として示されるに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない旨を理解されたい。
【0046】
「相補性」とは、核酸が、従来のワトソン・クリック形式または従来型とは異なる他の形式のいずれかによって、別の核酸配列と水素結合(複数可)を形成する能力、すなわち、別の核酸配列とハイブリダイズする能力を指す。本明細書で使用する場合、「ハイブリダイゼーション」とは、分子が、特定のヌクレオチド配列のみと、低ストリンジェント、中ストリンジェントまたは高ストリンジェントな条件で結合、二本鎖形成またはハイブリダイズすることを指す(その配列が、複合混合物(例えば全細胞)のDNAまたはRNAに存在する場合を含む)。例えば、Ausubel,et al.,Current Protocols In Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York,N.Y.,1993を参照されたい。ポリヌクレオチドのある特定の位置におけるヌクレオチドが、アンチパラレルなDNA鎖またはRNA鎖の同じ位置におけるヌクレオチドとワトソン・クリック対を形成できる場合には、そのポリヌクレオチドと、そのDNA分子またはRNA分子は、その位置において、互いに相補的である。そのポリヌクレオチドと、そのDNA分子またはRNA分子は、所望のプロセスに影響が及ぶように、各分子における対応する位置が十分な数、互いにハイブリダイズまたはアニーリングできるヌクレオチドで占められている場合には、互いに「実質的に相補的」である。相補的な配列は、ストリンジェントな条件下でアニーリングして、相補鎖合成起点として機能する3’末端をもたらすことのできる配列である。
【0047】
「同一性」とは、当該技術分野において知られているように、2つ以上のポリペプチド配列または2つ以上のポリヌクレオチド配列間の関係であって、それらの配列を比較することによって求めたものである。当該技術分野においては、「同一性」とは、ポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列間の関連度であって、それらの配列からなる鎖間の一致率を求めたものも意味する。「同一性」及び「類似性」は、既知の方法によって容易に算出でき、その方法としては、Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York,1988、Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993、Computer Analysis of Sequence Data,Part I,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994、Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987、Sequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,M Stockton Press,New York,1991及びCarillo,H.,and Lipman,D.,Siam J.Applied Math.,48:1073(1988)に記載されているものが挙げられるが、これらに限らない。加えて、同一性パーセントの値は、Vector NTI Suite 8.0(Informax、Frederick,Md.)のAlignXというコンポーネントのデフォルト設定を用いて生成したアミノ酸配列アラインメント及びヌクレオチド配列アラインメントから得ることができる。同一性を求める好ましい方法は、試験する配列間の一致率が最も大きくなるように設計する。同一性及び類似性を求める方法は、公的に入手可能なコンピュータープログラムに体系化されている。2つの配列間の同一性及び類似性を求めるための好ましいコンピュータープログラムの方法としては、GCGプログラムパッケージ(Devereux,J.,et al.,Nucleic Acids Research 12(1):387(1984))、BLASTP、BLASTN及びFASTA(Atschul,S.F.et al.,J.Molec.Biol.215:403-410(1990))が挙げられるが、これらに限らない。BLAST Xというプログラムは、NCBI及びその他の供給源から公的に入手可能である(BLAST Manual,Altschul,S.,et al.,NCBINLM NIH Bethesda,Md.20894、Altschul,S.,et al.,J.Mol.Biol.215:403-410(1990))。周知であるSmith Watermanアルゴリズムを用いて、同一性を求めてもよい。
【0048】
「増幅する」、「増幅すること」、「増幅反応」という用語、及びそれらの類似表現は概して、核酸分子の少なくとも一部(鋳型核酸分子という)を複製またはコピーして、追加の核酸分子を少なくとも1つもたらすいずれかの作用またはプロセスを指す。その追加の核酸分子は任意に、その鋳型核酸分子の少なくとも相当な部分と実質的に同一であるかまたは実質的に相補的である配列を含む。その鋳型核酸分子は、一本鎖であることも、二本鎖であることもでき、その追加の核酸分子は独立して、一本鎖であることも、二本鎖であることもできる。いくつかの実施形態では、増幅には、核酸分子の少なくとも相当な部分を少なくとも1コピー作製するか、または核酸分子の少なくとも相当な部分と相補的である核酸配列を少なくとも1コピー作製するための、酵素を触媒とする鋳型依存性のin vitro反応が含まれる。増幅には任意に、核酸分子の線形的または指数関数的な複製が含まれる。いくつかの実施形態では、このような増幅は、等温条件を用いて行い、別の実施形態では、このような増幅には、熱サイクリングを含めることができる。いくつかの実施形態では、増幅は、1回の増幅反応で複数の標的配列を同時に増幅することを含むマルチプレックス増幅である。その標的配列の少なくともいくつかは、1回の増幅反応に含まれる同じ核酸分子または異なる標的核酸分子に位置することができる。いくつかの実施形態では、「増幅」には、DNAベース及びRNAベースの核酸の少なくとも相当部分を単独で、または組み合わせて増幅することが含まれる。その増幅反応は、一本鎖または二本鎖の核酸基質を含むことができ、さらに、当業者に知られている増幅プロセスのいずれかを含むことができる。いくつかの実施形態では、その増幅反応は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含むことができる。本発明では、核酸の「合成」及び「増幅」という用語を使用する。本発明では、核酸の合成とは、合成起点として機能するオリゴヌクレオチドから、核酸を延長または伸長させることを意味する。この合成のみならず、他の核酸の形成と、この形成された核酸の延長反応または伸長反応も連続的に行う場合、これらの一連の反応は、包括して増幅という。採用した増幅技術によって作製されたポリ核酸は一般に、「アンプリコン」または「増幅産物」という。
【0049】
本明細書に示されているある特定の実施形態で用いられる増幅反応では、多くの核酸ポリメラーゼを使用することができ、そのポリメラーゼには、ヌクレオチド(そのアナログを含む)が重合して核酸鎖となるのを触媒できるいずれの酵素も含まれる。ヌクレオチドのこのような重合は、鋳型依存的に行うことができる。このようなポリメラーゼとしては、天然のポリメラーゼ、そのサブユニット及びトランケート体のいずれか、変異ポリメラーゼ、バリアントポリメラーゼ、組み換えポリメラーゼ、融合ポリメラーゼ、または別段に操作したポリメラーゼ、化学的に改変したポリメラーゼ、合成の分子またはアセンブリー、ならびに上記のような重合を触媒する能力を保持するこれらのアナログ、誘導体または断片のいずれかを挙げることができるが、これらに限らない。任意に、そのポリメラーゼは、1つ以上のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されているか、そのポリメラーゼから1つ以上のアミノ酸が挿入もしくは欠失されているか、または2つ以上のポリメラーゼの一部分が連結されていることを伴う変異を1つ以上含む変異ポリメラーゼであることができる。典型的には、そのポリメラーゼは、ヌクレオチドの結合及び/またはヌクレオチドの重合の触媒を行うことができる活性部位を1つ以上含む。いくつかの例示的なポリメラーゼとしては、DNAポリメラーゼ及びRNAポリメラーゼが挙げられるが、これらに限らない。本明細書で使用する場合、「ポリメラーゼ」という用語及びその類似表現には、連結し合った少なくとも2つの部分を含む融合タンパク質も含まれ、その第1の部分は、ヌクレオチドが重合して核酸鎖となるのを触媒できるペプチドを含むとともに、第2のポリペプチドを含む第2の部分に連結されている。いくつかの実施形態では、その第2のポリペプチドは、レポーター酵素またはプロセッシビティ向上ドメインを含むことができる。任意に、そのポリメラーゼは、5’エキソヌクレアーゼ活性またはターミナルトランスフェラーゼ活性を有することができる。いくつかの実施形態では、そのポリメラーゼは任意に、例えば、熱を利用するか、化学物質によるか、または新たな量のポリメラーゼを反応混合物に再度加えることによって再活性化させることができる。いくつかの実施形態では、そのポリメラーゼとしては、任意に再活性化させることができるホットスタートポリメラーゼまたはアプタマーベースのポリメラーゼを挙げることができる。
【0050】
本明細書に示されているある特定の実施形態で用いられる伸長反応では、本明細書に記載する、または、当該技術分野において既知である核酸逆転写酵素を使用することができ、その核酸逆転写酵素には、ヌクレオチド(そのアナログを含む)が重合して核酸鎖となるのを触媒できるいずれの酵素も含まれる。ヌクレオチドのこのような重合は、鋳型依存的に行うことができる。
【0051】
「標的核酸」としては、DNA(例えば、ゲノムDNA(gDNA)、nDNA、cDNA、ミトコンドリアDNA、細菌DNA、ウイルスDNAなど)、及びRNA(例えば、mRNA、非コーディングRNA、ミトコンドリアRNA、細菌RNAなど、rRNA、tRNA、tmRNA、snRNA、snoRNA、SmY、scaRNA、gRNAmiRNA、siRNAなど)が挙げられるがこれらに限定されない、天然に存在する、または修飾された核酸の任意の種類または組み合わせを挙げることができる。
【0052】
「標的プライマー」または「標的特異的プライマー」という用語、及びそれらの類似表現は、結合部位の配列と相補的であるプライマーを指す。標的プライマーは概して、標的核酸配列と少なくとも部分的に相補的である配列を少なくとも1つ含む一本鎖または二本鎖のポリヌクレオチド、典型的にはオリゴヌクレオチドである。
【0053】
「フォワードプライマー結合部位」及び「リバースプライマー結合部位」とは、鋳型DNA及び/またはアンプリコンの領域のうち、フォワードプライマー及びリバースプライマーが結合する領域を指す。これらのプライマーは、元の鋳型ポリヌクレオチドの領域のうち、増幅の際に指数関数的に増幅される領域を定める働きをする。いくつかの実施形態では、追加のプライマーは、フォワードプライマー及び/またはリバースプライマーの5’領域に結合することができ、5’領域は逆転写結合部位を結合することができる。このような追加のプライマーを用いる場合、フォワードプライマー結合部位及び/またはリバースプライマー結合部位は、これらの追加のプライマーの結合領域と、そのプライマー自体の結合領域を含んでよい。例えば、いくつかの実施形態では、本発明の方法では、フォワードプライマー結合領域及び/またはリバースプライマー結合領域の5’側に位置する領域に結合する追加のプライマーを1つ以上使用してよい。このような方法は例えば、「置換プライマー」または「アウタープライマー」の使用について開示しているWO0028082に開示されている。
【0054】
「バーコード」核酸識別配列は、核酸に組み込むか、またはプライマーに連結して、独立したシーケンシング及び識別が、同一の試料に存在する分子に由来する情報及び識別に関係するバーコードを介して互いに関連することを可能にすることができる。個別の構成要素の中で核酸にバーコードを取り付けるために使用可能な、多数の技術が存在する。例えば、標的核酸をまず増幅して、より短い片に断片化してもよいし、しなくてもよい。分子を個別の構成要素、例えば、バーコードを含有するドロップレットと組み合わせることができる。バーコードを次に、例えば、オーバーラップ伸長によるスプライシングを使用して、分子に取り付けることができる。本アプローチにおいて、最初の標的分子は「アダプター」配列が追加されていることができ、これは、プライマーが合成可能な既知の配列の分子である。バーコードと組み合わせたときに、アダプター配列及びバーコード配列に相補的なプライマーを使用することができ、標的核酸とバーコードの両方の生成物であるアンプリコンが互いにアニールし、かつ、DNA重合などの伸長反応により、互いに伸長することができ、バーコード配列に取り付けられた標的核酸を含む二本鎖生成物を生成する。あるいは、当該標的を増幅するプライマーは、それ自身がバーコード化されることができるため、標的へのアニーリング及び伸長の際に、生成されたアンプリコンは、アンプリコンに組み込まれたバーコード配列を有する。これは、PCRによる特異的増幅、または、例えばMDAによる非特異的増幅を含む多数の増幅法により応用することができる。バーコードを核酸に取り付けるために使用可能な代替の酵素反応、平滑末端または付着末端ライゲーションを含むライゲーションである。本アプローチにおいて、DNAバーコードは、核酸標的及びリガーゼ酵素でインキュベートされ、バーコードの、標的へのライゲーションがもたらされる。核酸の末端は、分子末端に取り付けられるバーコードの数よりも大きな制御が可能なリガーゼまたは断片と共に導入されるアダプターを使用することを含む多数の技術により、必要に応じてライゲーションのために修飾することができる。
【0055】
バーコード配列をマイクロフルイディクスビーズに組み込んで、同一の配列タグでビーズを標識することができる。このようなタグ付きのビーズをマイクロフルイディクスドロップレットに挿入でき、ドロップレットPCRによる増幅を介して、それぞれの標的アンプリコンを、固有のビーズバーコードによってタグ付けできる。このようなバーコードを用いて、鋳型に由来するアンプリコン集団において所定のドロップレットを特定できる。個別の細胞を1つ含むマイクロフルイディクスドロップレットと、タグ付きのビーズを含む別のマイクロフルイディクスドロップレットを組み合わせる場合に、このスキームを使用できる。多数のマイクロフルイディクスドロップレットを回収して合わせたら、アンプリコンシーケンシングの結果によって、各産物に、固有のマイクロフルイディクスドロップレットを割り当てられるようになる。典型的な実施態様では、我々は、Mission BioのTapestri(商標)ビーズ上のバーコードを用いて、各ドロップレットのアンプリコン内容物にタグ付けを行ったうえで、そのアンプリコン内容物を特定する。バーコードの使用については、2018年3月29日にAbate,A.らが「Sequencing of Nucleic Acids via Barcoding in Discrete Entities」という標題で出願した米国特許出願第15/940,850号に記載されており、この特許出願は、参照により、本明細書に援用される。
【0056】
いくつかの実施形態では、固体ポリマービーズまたはハイドロゲルビーズなどのビーズの表面で、バーコードを個別の構成要素、例えばマイクロドロップレットに導入するのが有利であり得る。これらのビーズは、様々な技術を用いて合成することができる。例えば、混合分離技術を使用すると、同一な無作為のバーコード配列の多くのコピーを伴うビーズを合成することができる。これは例えば、DNAを合成可能な部位を含む複数のビーズを作製することにより達成することができる。ビーズは4つの集まりに分けることができ、それぞれに、A、T、G、またはCなどの塩基をビーズに添加する、緩衝液と混合することができる。母集団を4つの亜集団に分けることで、各部分母集団は、その表面に添加された塩基のうちの1つを有することができる。本反応は、単一の塩基のみが添加され、更なる塩基が添加されない方法で達成することができる。4つの亜集団全てに由来するビーズを合わせて互いに混合し、2回目の4つの集団への分割を行うことができる。この分割工程において、以前の4つの集団に由来するビーズを、無作為に一緒に混合することができる。これらを次に、4つの異なる溶液に添加し、各ビーズの表面上の、別の無作為な塩基を添加することができる。本プロセスを繰り返し、ビーズ表面に、母集団が分離及び混合される時間数におよそ等しい長さの配列を生成することができる。本プロセスを繰り返し、ビーズ表面に、母集団が分離及び混合される時間数におよそ等しい長さの配列を生成することができる。これを10回行ったら、例えば、結果は、各ビーズが、その表面に同一の無作為の10個の塩基配列が合成された多数のコピーを有する、ビーズの母集団となろう。各ビーズ上の配列は、各分離混合サイクルを通して終了した、反応器の特定の配列により測定される。
【0057】
バーコードは、「固有識別配列」(UMI)をさらに含んでよい。UMIは、そのUMIがコンジュゲートされている1つ以上の第1の分子を、1つ以上の第2の分子から識別及び/または区別するのに利用できる配列を有する核酸である。UMIは典型的には、長さが短く、例えば、約5~20塩基長であり、対象とする1つ以上の標的分子またはその増幅産物にコンジュゲートしてよい。UMIは、一本鎖であっても、二本鎖であってもよい。いくつかの実施形態では、核酸バーコード配列及びUMIの両方を核酸標的分子またはその増幅産物に組み込む。概して、UMIは、1つの集団または群における似た種類の分子を区別する目的で用いるのに対して、核酸バーコード配列は、複数の分子集団または分子群を区別するのに用いる。いくつかの実施形態では、UMI及び核酸バーコード配列の両方を使用する場合、そのUMIは、その核酸バーコード配列よりも配列の長さが短い。
【0058】
本明細書で使用する場合、「同一性」及び「同一な」という用語、ならびにそれらの類似表現は、2つ以上の核酸配列に関して使用する時には、その2つ以上の配列(例えば、ヌクレオチド配列またはポリペプチド配列)の配列類似性を指す。2つ以上の相同配列に関しては、配列またはその部分配列の同一性パーセントまたは相同性パーセントは、同じであるすべてのモノマー単位(例えば、ヌクレオチドまたはアミノ酸)のパーセンテージを示す(すなわち、約70%の同一性、好ましくは、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%の同一性)。その同一性パーセントは、BLASTまたはBLAST2.0という配列比較アルゴリズムを下記のデフォルトパラメーターで用いるか、またはマニュアルアラインメント及び目視確認によって測定した場合において、比較ウィンドウまたは指定領域にわたって最大限一致するように比較及びアラインメントを行った時の所定の領域に対するものであることができる。配列は、アミノ酸レベルまたはヌクレオチドレベルの同一性が少なくとも85%である時に、「実質的に同一」であるとする。好ましくは、その同一性は、少なくとも約25残基長、約50残基長もしくは約100残基長である領域、または少なくとも1つの比較配列の全長に対して存在する。配列同一性パーセント及び配列類似性パーセントを求めるための典型的なアルゴリズムは、BLAST及びBLAST2.0のアルゴリズムであり、これらは、Altschul et al,Nuc.Acids Res.25:3389-3402(1977)に記載されている。他の方法としては、Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)及びNeedleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)などのアルゴリズムが挙げられる。2つの核酸配列が実質的に同一であることの別の指標は、その2つの分子またはそれらの相補体が、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、互いにハイブリダイズすることである。
【0059】
「核酸」、「ポリヌクレオチド」及び「オリゴヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドのバイオポリマーを指し、文脈上別段に示されている場合を除き、改変ヌクレオチド及び非改変ヌクレオチド、DNA及びRNAの両方、ならびに改変核酸主鎖を含む。例えば、ある特定の実施形態では、その核酸は、ペプチド核酸(PNA)またはロックト核酸(LNA)である。典型的には、本明細書に記載されているような方法は、DNAを増幅用の核酸鋳型として用いて行う。しかしながら、ヌクレオチドが、天然のDNAまたはRNAに由来する人工の誘導体または改変核酸に置き換えられている核酸も、相補鎖合成用の鋳型として機能する限りは、本発明の核酸に含めてよい。本発明の核酸は概して、生体試料に含まれている。その生体試料には、動物、植物または微生物の組織、細胞、培養液、及び排泄物または抽出物が含まれる。ある特定の態様では、その生体試料には、ウイルスまたはマイコプラズマのような細胞内寄生体のゲノムDNAまたはRNAが含まれる。本発明の核酸は、前記生体試料に含まれる核酸に由来してよい。例えば、好ましくは、記載されている方法では、ゲノムDNA、mRNAから合成したcDNA、または生体試料に由来する核酸に基づいて増幅した核酸を使用する。別段に示されていない限り、オリゴヌクレオチド配列が示されている場合、そのヌクレオチドは、左から右に向かって、5’から3’の順であり、「A」はデオキシアデノシンを示し、「C」はデオキシシチジンを示し、「G」はデオキシグアノシンを示し、「T」はチミジンを示し、「U」はデオキシウリジンを示すと理解されたい。オリゴヌクレオチドは、「5’末端」及び「3’末端」を有するという。典型的には、モノヌクレオチドが反応して、ある1つのヌクレオチドの5’リン酸基または同等の基が、任意にホスホジエステル結合またはその他の好適な結合を介して、その隣接ヌクレオチドの3’ヒドロキシル基または同等の基に結合することによって、オリゴヌクレオチドを形成するからである。
【0060】
鋳型核酸は、核酸増幅法において相補鎖を合成する際の鋳型として機能する核酸である。その鋳型と相補的なヌクレオチド配列を有する相補鎖は、その鋳型に対応する鎖としての意味を持つが、これらの2つの関係は、相対的なものに過ぎない。すなわち、本明細書に記載されている方法によれば、相補鎖として合成された鎖は、再び鋳型として機能できる。換言すると、相補鎖は、鋳型となることができる。ある特定の実施形態では、鋳型は、生体試料、例えば、植物、動物、ウイルス、微生物、細菌、真菌などに由来する。ある特定の実施形態では、その動物は、哺乳動物、例えばヒト患者である。鋳型核酸は典型的には、標的核酸を1つ以上含む。例示的な実施形態における標的核酸は、試料中に存在する疑いがあるか、または試料中に存在すると予測されるいずれの核酸配列も含め、本開示に従って増幅または合成できる一本鎖または二本鎖のいずれの核酸配列も含んでよい。
【0061】
本発明における実施形態で用いるプライマー及びオリゴヌクレオチドは、ヌクレオチドを含む。ヌクレオチドは、ポリメラーゼに選択的に結合できるか、またはポリメラーゼによって重合化できるか、または逆転写酵素によって伸長できるいずれの化合物も含み、いずれの天然ヌクレオチドまたはそのアナログも含まれるが、これらに限らない。必然ではないが、典型的には、ヌクレオチドがポリメラーゼまたは逆転写酵素に選択的に結合した後には、そのヌクレオチドは、ポリメラーゼによって伸長して核酸鎖となるが、時折、ヌクレオチドが、核酸鎖に組み込まれずに、ポリメラーゼまたは逆転写酵素から解離することがあり、この事象は、本明細書では、「非生成」事象という。このようなヌクレオチドには、その構造にかかわらず、ポリメラーゼに選択的に結合できるか、またはポリメラーゼによって重合化できるか、または逆転写酵素によって伸長できる天然のヌクレオチドのみならず、いずれのアナログも含まれる。天然のヌクレオチドは典型的には、塩基部分、糖部分及びリン酸部分を含むが、本開示のヌクレオチドは、このような部分のいずれか1つ、一部またはすべてが欠損している化合物を含むことができる。例えば、そのヌクレオチドは任意に、リン原子を3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個またはそれを上回る数含むリン原子鎖を含むことができる。いくつかの実施形態では、そのリン鎖は、糖環のいずれかの炭素(5’炭素など)に結合できる。そのリン鎖は、介在するOまたはSとともに、糖に連結できる。一実施形態では、その鎖のリン原子の1つ以上は、P及びOを有するリン酸基の一部であることができる。別の実施形態では、その鎖のリン原子は、介在するO、NH、S、メチレン、置換メチレン、エチレン、置換エチレン、CNH、C(O)、C(CH)、CHCHまたはC(OH)CHR(式中、Rは、4-ピリジンまたは1-イミダゾールであることができる)とともに連結できる。一実施形態では、その鎖のリン原子は、O、BH3またはSを有する側鎖基を有することができる。そのリン鎖では、O以外の側鎖基を持つリン原子は、置換リン酸基であることができる。そのリン鎖では、O以外の介在する原子を持つリン原子は、置換リン酸基であることができる。ヌクレオチドアナログの例のいくつかは、Xuによる米国特許第7,405,281号に記載されている。
【0062】
いくつかの実施形態では、ヌクレオチドは標識を含み、そのヌクレオチドは、本明細書では、「標識ヌクレオチド」といい、標識ヌクレオチドの標識は、本明細書では、「ヌクレオチド標識」という。いくつかの実施形態では、その標識は、末端リン酸基、すなわち、糖から最も遠いリン酸基に結合した蛍光部分(例えば色素)、発光部分などの形態であることができる。本開示の方法及び組成物で使用できるヌクレオチドの例のいくつかとしては、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、改変リボヌクレオチド、改変デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチドポリホスフェート、デオキシリボヌクレオチドポリホスフェート、改変リボヌクレオチドポリホスフェート、改変デオキシリボヌクレオチドポリホスフェート、ペプチドヌクレオチド、改変ペプチドヌクレオチド、メタロヌクレオシド、ホスホネートヌクレオシド、及び改変リン酸-糖という主鎖のヌクレオチド、上記化合物のアナログ、誘導体またはバリアントなどが挙げられるが、これらに限らない。いくつかの実施形態では、そのヌクレオチドは、そのヌクレオチドのαリン酸と糖、そのヌクレオチドのαリン酸とβリン酸、そのヌクレオチドのβリン酸とγリン酸、そのヌクレオチドのいずれかの他の2つのリン酸、またはこれらをいずれかに組み合わせたものを架橋する酸素部分の代わりに、例えばチオ部分またはボラノ部分のような非酸素部分を含むことができる。「ヌクレオチド5’-三リン酸」とは、5’位に三リン酸エステル基を有するヌクレオチドを指し、「NTP」、または特にリボース糖の構造的特徴を示す目的で、「dNTP」及び「ddNTP」と称する場合がある。三リン酸エステル基は、様々な酸素に対する硫黄置換基を含むことができる(例えばα-チオ-ヌクレオチド5’-三リン酸)。核酸化学の論評については、Shabarova,Z.and Bogdanov,A.Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids,VCH,New York,1994を参照されたい。
【0063】
PCRベースのアッセイ、例えば定量PCR(qPCR)、または等温増幅のようないずれかの核酸増幅法を用いて、別個の物体、またはその構成成分の1つ以上、例えば、その物体に封入された細胞に存在するある特定の核酸、例えば、対象とする遺伝子の存在を検出してよい。このようなアッセイは、マイクロフルイディクスデバイスもしくはその一部、またはいずれかの他の好適な位置にある別個の物体に適用できる。このような増幅またはPCRベースのアッセイの条件は、経時的に核酸の増幅を検出することを含んでよく、1つ以上の方法が異なっていてよい。
【0064】
逆転写反応のような任意の核酸伸長法を用いて、別個の物体、またはその構成成分の1つ以上、例えば、その物体に封入された細胞に存在するある特定の核酸、例えば、対象とする遺伝子の存在を検出してよい。このようなアッセイは、マイクロフルイディクスデバイスもしくはその一部、またはいずれかの他の好適な位置にある別個の物体に適用できる。このような伸長または逆転写アッセイの条件は、経時的に核酸の増幅を検出することを含んでよく、1つ以上の方法が異なっていてよい。
【0065】
マイクロドロップレットに加えてよい増幅/PCRプライマーの数は、様々であってよい。マイクロドロップレットに加えてよい増幅またはPCRプライマーの数は、約1~約500個以上の範囲、例えば、約2~100個のプライマー、約2~10個のプライマー、約10~20個のプライマー、約20~30個のプライマー、約30~40個のプライマー、約40~50個のプライマー、約50~60個のプライマー、約60~70個のプライマー、約70~80個のプライマー、約80~90個のプライマー、約90~100個のプライマー、約100~150個のプライマー、約150~200個のプライマー、約200~250個のプライマー、約250~300個のプライマー、約300~350個のプライマー、約350~400個のプライマー、約400~450個のプライマー、約450~500個のプライマーまたは約500個以上のプライマーであってよい。
【0066】
マイクロドロップレットに加えてよい逆転写プライマーの数は、様々であってよい。マイクロドロップレットに加えてよい逆転写プライマーの数は、約1~約500個以上の範囲、例えば、約2~100個のプライマー、約2~10個のプライマー、約10~20個のプライマー、約20~30個のプライマー、約30~40個のプライマー、約40~50個のプライマー、約50~60個のプライマー、約60~70個のプライマー、約70~80個のプライマー、約80~90個のプライマー、約90~100個のプライマー、約100~150個のプライマー、約150~200個のプライマー、約200~250個のプライマー、約250~300個のプライマー、約300~350個のプライマー、約350~400個のプライマー、約400~450個のプライマー、約450~500個のプライマーまたは約500個以上のプライマーであってよい。
【0067】
プライマーセットの一方または両方のプライマーが、バーコード配列を含んでよい。いくつかの実施形態では、一方または両方のプライマーが、バーコード配列及び固有分子識別子(UMI)を含む。いくつかの実施形態では、UMI及び核酸バーコード配列の両方を用いる場合には、そのUMIを標的核酸またはその増幅産物に組み込んでから、その核酸バーコード配列を組み込む。いくつかの実施形態では、UMI及び核酸バーコード配列の両方を用いる場合には、そのUMIを標的核酸またはその増幅産物に組み込んだ後に、その核酸バーコード配列をそのUMIまたはその増幅産物に組み込む。
【0068】
プライマーセットのうちの1つまたは複数のプライマーもまた、親和性試薬に付着またはコンジュゲートすることができる。いくつかの実施形態では、例えば個別の細胞を、個別の構成要素、例えばドロップレット内で単離する。これらの細胞を溶解することができ、それらの核酸をバーコード化することができる。本プロセスは、個別の構成要素内の多数のシングルセル上で行うことができ、独自のバーコード配列が、バーコードにより、混合された配列リードのその後のデコンボリューションを行い、シングルセル情報を得ることができる。本アプローチは、多数のシングルセルに由来する核酸と合わせてグループ分けする方法を提供する。加えて、抗体などの親和性試薬を、核酸ラベル、例えば、抗体の種類、例えば抗体の標的特異性を識別するために使用可能なバーコードを含むオリゴヌクレオチドとコンジュゲートすることができる。これらの試薬を次に使用して、細胞内または細胞上にタンパク質を結合することができ、これにより、親和性試薬によって、タンパク質が結合する細胞に送達される核酸が会合する。次に、これらの細胞を、本明細書に記載するバーコード化ワークフローにより処理し、親和性試薬上で、バーコードを核酸ラベルに取り付けることができる。次に、ライブラリー調製、シーケンシング、及びバイオインフォマティクスの技術を使用して、細胞/個別の構成要素バーコードに従い、配列をグループ分けすることができる。タンパク質、分子、またはその複合体などの、生体試料またはタンパク質またはそれらの構成成分に結合する、またはこれらを認識することができる、任意の好適な親和性試薬を、これらの方法と合わせて利用することができる。親和性試薬を、その同一性、例えば抗体の標的特異性を関連付ける核酸配列により標識することができ、これにより、本明細書に記載するバーコード化及び方法を用いて、それらの検出及び定量化が可能になる。例示的な親和性試薬としては例えば、抗体、抗体断片、Fab、scFv、ペプチド、薬物など、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。親和性試薬、例えば抗体は、1つ以上の生体により発現することができるか、または、生物学的合成技術、例えばファージ、mRNA、もしくはリボソームディスプレイを使用して提供することができる。親和性試薬は、例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド(NETS)を用いる化学結合、クリックケミストリー、またはストレプトアビジン-ビオチン相互作用などの化学的または生化学的手段によってもまた、生成することができる。オリゴ親和性試薬コンジュゲートは、オリゴを親和性試薬に付着させ、ポリメラーゼなどによって、追加のオリゴを、以前にコンジュゲートしたオリゴに、ハイブリダイズ、ライゲーション、及び/または伸長することによってもまた生成することができる。核酸による親和性試薬標識の利点は、生体試料の大きく多重化した分析が可能になる点である。例えば、試料内で多数の標的を認識する、それぞれが自身の核酸配列で標識された、抗体または結合試薬の多量の混合物を、一緒に混合することができる。このカクテルを次に試料と反応させて、本明細書に記載するバーコード化ワークフローに供し、どの試料が結合したのか、量、及び、試料中の異なる構成要素間で、例えばシングルセル間で、量がどのように変化するかについての情報を回収することができる。上記アプローチを、1つ以上の細胞、ペプチド、タンパク質、巨大分子、巨大分子複合体などを含む試料を含む多様な分子標的に適用することができる。試料を、固定及び易透化、親和性試薬の結合の補助といった、分析のための従来の処理に供することができる。非常に正確な定量化を行うために、本明細書に記載する、固有分子識別子(UMI)技術もまた使用して、親和性試薬分子を正確に計数することができる。これは、UMIを、コンジュゲーションの前、間、もしくは後に各親和性試薬に付着した標識に合成すること、または、試薬の使用時にUMIをマイクロ流体的に付着させることを含む多数の方法によって成し遂げることができる。バーコードを生成する類似の方法、例えば、シングルセルシーケンシングに適用され、本明細書に記載するコンビナトリアルバーコード技術が、親和性試薬技術に適用可能である。これらの技術は、様々な生体試料でのタンパク質及び/またはエピトープを分析して、例えば、エピトープのマッピング、または、タンパク質及び他の構成要素での翻訳後修飾、またはシングルセルプロテオミクスの実施を行うことを可能にする。例えば、本明細書に記載の方法を使用すると、生体のプロテオーム内の全てのタンパク質でエピトープを検出する、標識済親和性試薬のライブラリーを生成し、これらのエピトープを試薬で標識し、本明細書に記載するバーコード化及びシーケンシング技術を適用し、これらのエピトープと関連する標識を検出し、正確に定量することが可能になる。
【0069】
プライマーは、対象とする1つ以上の核酸、例えば、対象とする1つ以上の遺伝子に対するプライマーを含んでよい。対象とする遺伝子用プライマーの添加数は、約1~500個の範囲、例えば、約1~10個のプライマー、約10~20個のプライマー、約20~30個のプライマー、約30~40個のプライマー、約40~50個のプライマー、約50~60個のプライマー、約60~70個のプライマー、約70~80個のプライマー、約80~90個のプライマー、約90~100個のプライマー、約100~150個のプライマー、約150~200個のプライマー、約200~250個のプライマー、約250~300個のプライマー、約300~350個のプライマー、約350~400個のプライマー、約400~450個のプライマー、約450~500個のプライマーまたは約500個以上のプライマーであってよい。プライマー及び/または試薬は、別個の物体、例えばマイクロドロップレットに、1工程または2工程以上で加えてよい。例えば、プライマーは、2工程以上、3工程以上、4工程以上または5工程以上で加えてよい。プライマーを1工程で加えるか、2工程以上で加えるかにかかわらず、プライマーは、溶解剤を加えた後、溶解剤を加える前、または溶解剤を加えるのと同時に加えてよい。溶解剤を加える前または加えた後にPCRプライマーを加える場合、そのプライマーは、溶解剤を加えるのとは別の工程で加えてよい。いくつかの実施形態では、PCR試薬を加える前に、その別個の物体、例えばマイクロドロップレットに対して、希釈工程及び/または酵素不活化工程を行ってよい。このような方法の例示的な実施形態は、PCT公開第2014/028378号に記載されており、その開示内容は、参照により、その全体が、あらゆる目的で本明細書に援用される。
【0070】
標的核酸を増幅するためのプライマーセットは典型的には、標的核酸またはその相補体と相補的であるフォワードプライマー及びリバースプライマーを含む。いくつかの実施形態では、増幅は、1回の増幅反応において、複数の標的特異的プライマー対を用いて行うことができ、この場合、各プライマー対は、標的特異的なフォワードプライマー及び標的特異的なリバースプライマーを含み、それぞれ、試料中の対応する標的配列と実質的に相補的であるかまたは実質的に同一である配列を少なくとも1つ含み、各プライマー対は、対応する標的配列が異なる。したがって、本発明におけるある特定の方法を用いて、シングルセルの試料に由来する複数の標的配列を検出または識別する。
【0071】
別の態様では、ユニバーサル塩基ヌクレオチド(ユニバーサル塩基)を、核酸内で独自識別子として使用することができるアンプリコン内の部位に組み込むことができる。出発物質として、核酸を含む固有分子を計数する能力を持つ、標的化ライブラリー調製を行うための2つの実施態様を提供する。様々な実施形態では、標的分子として、DNA、RNA、または、RNAと組み合わせたDNAを使用することができる。最初のアプローチのために、我々は、ユニバーサル塩基が遺伝子特異的配列内に組み込まれた尾部を有する、遺伝子特異的プライマーを設計した。これらのユニバーサル塩基は依然として、必要な特異性を強要する残りの天然塩基と共に、標的核酸への安定したハイブリダイゼーションを可能にする。これらの遺伝特異的プライマーを、プライマー伸長または逆転写により伸長することができる。増幅(例えばPCR)の第2サイクル、または第2の鎖分析の間に、ポリメラーゼまたは逆転写酵素を、これらのユニバーサル塩基部位に無作為に組み込む。これらの無作為塩基はそれぞれ、これらの実施形態で増幅可能な独自識別子を形成することができる。本アプローチは、シングルセルまたはバルク試料により行うことができる。シングルセルに関しては、両方の末端に尾部を有する標的分子をもたらす第2のコピーの合成後、エマルションを破壊することができ、いずれかの種類の試料に対して、遺伝子特異的プライマーが取り除かれる。これの後に、これらの尾部配列を用いるバルクライブラリーPCRが続き、標的分子を増幅するか、または、完全なシーケンシングアダプターを付加するかのいずれかを行う。分析中、遺伝子特異的プライマー配列は知られており、単一のヌクレオチド変化は、試料に起因しない。ユニバーサル塩基が組み込まれている部位は、それぞれの元の分子を区別するために使用することができる。
【0072】
第2のアプローチのために、遺伝子特異的プライマーの後に、ユニバーサル塩基の鎖、次いで尾部配列を含む単一配列が続く。これらのユニバーサル塩基は、遺伝子特異的プライマーの標的へのハイブリダイゼーションに寄与する。PCRの第2サイクル、または第2の鎖合成の間に、ポリメラーゼまたは逆転写酵素は、当該分子に対する固有識別子を作製するこれらのユニバーサル塩基と対形成する無作為な塩基を組み込む。シングルセルに関しては、エマルションが破壊される時点に、ならびに、シングルセル及びバルク試料に関しては、全ての遺伝子特異的プライマーが取り除かれる。ここで、これらの固有識別子はそれぞれ、尾部配列を使用して標的分子を増幅するか、または完全シーケンシングアダプターを付加するかのいずれかにより、ライブラリーPCRの間にバルクで増幅することができる。遺伝子特異的プライマーの前にある塩基鎖を次いで使用し、元のそれぞれの分子を識別することができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、この第2のアプローチは、DNA用の遺伝子特異的プライマーなしで用いることもまた可能であり、この場合、ライゲーションは、既知の短い配列、ユニバーサル塩基の鎖、及び尾部配列を含有する分子を用いて行うことができる。尾部配列は、1つのプライマーに対する遺伝子特異的プライマーを用いて、または単に尾部配列を用いて、増幅のために使用することができる。デオキシイノシン及びその誘導体類、またはニトロアゾールアナログ(例えば、5-ニトロインドール)などの、ユニバーサル塩基またはユニバーサル様塩基を、プライマー及び増幅産物に組み込むことができる。既知のもの、または文献に記載されたものを含む多くのユニバーサル塩基を、これらのアプローチ、または本明細書に記載する他の実施形態のいずれかのために使用することができる(例えば、本明細書に参照により組み込まれるLoakes, D., The applications of universal base analogues, Nucleic Acids Research, Vol. 29, No. 12, 2437-2447 (2001)を参照されたい)。
【0074】
例示的実施形態は、シングルセルから標的核酸を検出するためのシステム及び方法であって、当該方法が、提示された順序とは独立して、個別の細胞で、対象となる1つ以上の標的核酸配列を選択する工程であって、標的核酸配列が細胞内の核酸に相補的である、工程と、個別のシングルセルを複数有する試料を準備する工程と、プロテアーゼを含む反応混合物に、1つ以上の個別細胞を封入すると工程と、封入した細胞をプロテアーゼとともに液滴内でインキュベートして、細胞溶解液を作製する工程と、1つ以上の核酸増幅プライマーセットを供給する工程であって、各プライマーセットが、標的核酸と相補的であり、核酸増幅プライマーセットのプライマーの少なくとも1つが、バーコード配列を含む工程と、核酸増幅反応混合物中で1つ以上のユニバーサル塩基を準備する工程と、ユニバーサル塩基を含む反応混合物を使用して核酸増幅反応を行って、シングルセルの核酸から、増幅産物を形成する工程であって、その増幅産物が、1つ以上の標的核酸配列のアンプリコンを含む工程と、及び任意に、プライマーセットの核酸プライマーのうちの1つ以上のバーコード配列と相補的な核酸配列を含む親和性試薬を供給する工程であって、そのバーコード配列と相補的な前記核酸配列を含む前記親和性試薬が、バーコード配列を含む核酸増幅プライマーセットに結合できる工程と、その親和性試薬がその標的核酸に結合して、親和性試薬が結合した標的核酸を形成するのに十分な条件下で、親和性試薬と、1つ以上の標的核酸配列のアンプリコンを含む増幅産物とを接触させる工程と、第1のバーコード及び第2のバーコードのシーケンシングによって、標的核酸の同一性を求める工程と、を含む、上記システム及び方法である。
【0075】
ハイスループットシングルセルシーケンシングのための方法及びシステムを使用する、標的核酸、SNP、転座、多型、アレリックバリアント、及び他の変位の識別
精密医療における根本的な課題は、がんの不均質性及びクローン進化の理解を改善することであり、これは、標的療法の選択及び疾患の監視において主たる示唆を有する。しかし、現在のバルクシーケンシング法は、希少な病原性または薬剤耐性細胞集団を明確に識別すること、そして、変異が同一細胞内で同時発生することを測定するのが不可能である。シングルセルシーケンシングには、感度を比較しない状態での、細胞及び遺伝子組成、ドライバー、及びがんの特徴に独自の視点をもたらす可能性がある。以前に、我々は、ドロップレットマイクロ流体及び多重PCRベースの標的化DNAシーケンシングアプローチを高める、ハイスループットのシングルセルDNA分析プラットフォーム(Tapestri(商標),Mission Bio,South San Francisco CA)を開発し、急性骨髄性白血病(AML)主要から、クローンアーキテクチャの高解像マップを生成したものを示した。
【0076】
例示的実施形態は、シングルセルから標的核酸の変異または転座を検出するためのシステム及び方法であって、当該方法が、提示された順序とは独立して、1つ以上の標的核酸配列を選択する工程であって、当該標的核酸配列が、変異または転座を有することが疑われる細胞内の核酸に相補的である工程と、個別のシングルセルを複数有する試料を準備する工程と、プロテアーゼを含む反応混合物に、1つ以上の個別細胞を封入すると工程と、封入した細胞をプロテアーゼとともに液滴内でインキュベートして、細胞溶解液を作製する工程と、1つ以上の核酸増幅プライマーセットを供給する工程であって、各プライマーセットが、標的核酸と相補的であり、核酸増幅プライマーセットのプライマーの少なくとも1つが、バーコード配列を含む工程と、核酸増幅反応を行って、シングルセルの核酸から、増幅産物を形成する工程であって、その増幅産物が、1つ以上の標的核酸配列のアンプリコンを含む工程と、プライマーセットの核酸プライマーのうちの1つ以上のバーコード配列と相補的な核酸配列を含む親和性試薬を供給する工程であって、そのバーコード配列と相補的な前記核酸配列を含む前記親和性試薬が、バーコード識別配列を含む核酸増幅プライマーセットに結合できる工程と、その親和性試薬がその標的核酸に結合して、親和性試薬が結合した標的核酸を形成するのに十分な条件下で、親和性試薬と、1つ以上の標的核酸配列のアンプリコンを含む増幅産物とを接触させる工程と、核酸シーケンシングにより、標的核酸と関連する変異または転座を特性決定する工程と、を含む、上記システム及び方法である(例えば、図1Aを参照されたい)。
【0077】
いくつかの実施形態は、細胞サブクローン内、または、標的核酸もしくはそのアレリックバリアント内で、変異またはバリアントを検出するための方法及びシステムに関する。例えば、いくつかの実施形態は、本明細書に記載する方法及びシステムを使用して、有益な、または臨床的に関係のあるシングルセルバリアントを選択することに関する。他の実施態様は、インデル(挿入/欠失)及び融合転写物の検出に関する。対象となる特定の1つの融合転写物はBCR-ABL1であり、これを使用して、AML腫瘍を検出するための実施形態、白血病を検出するための実施形態、骨髄性白血病を検出するための実施形態、ならびに、進行及び予後の試験をするための、加えて、AML腫瘍、白血病、骨髄白血病などを治療するための実施形態を提供する。特定の一実施態様は、選択されたプライマーを用いる増幅法により、シングルセルから、BCR-ABL1核酸変異を検出するための方法に関する(図1Bを参照されたい)。いくつかの実施形態は、標的核酸が、BCR-ABL融合転写物の検出を可能にするものである、図1に示し、かつ上述した方法及びシステムの使用を提供した。他の実施態様は、サブクローン及び腫瘍純度を検出するための、クローン分布及び系統分析に関する。
【0078】
例示的実施形態は、シングルセルから、核酸試料内のBCR-ABL遺伝子融合物を検出するためのシステム及び方法であって、当該方法が、提示された順序に関係なく、個別の細胞で、1つ以上の標的核酸配列を選択する工程であって、標的核酸配列が、BCR-ABL融合転写物を有する疑いがある工程と、1つ以上の個別のシングルセルを有する試料を提供する工程と、プロテアーゼを含む反応混合物に、1つ以上の個別の細胞(複数可)を封入する工程と、封入した細胞をプロテアーゼとともに液滴内でインキュベートして、細胞溶解液を作製する工程と、BCR-ABL融合転写物を有することが疑われる標的核酸に相補的な核酸増幅プライマーセットを提供する工程であって、核酸増幅プライマーセットの少なくとも1つのプライマーが、バーコード識別配列を含む工程と、核酸増幅反応を行って、シングルセルの核酸から増幅産物を形成する工程と、及び任意に、核酸プライマーのうちの1つ以上のバーコード配列と相補的な核酸配列を含む親和性試薬を供給する工程であって、そのバーコード配列と相補的な前記核酸配列を含む前記親和性試薬が、バーコード配列を含む核酸増幅プライマーセットに結合できる工程と、その親和性試薬がその標的核酸に結合して、親和性試薬が結合した標的核酸を形成するのに十分な条件下で、親和性試薬と、アンプリコンを含む増幅産物とを接触させる工程と、前期標的核酸がBCR-ABL1融合転写物を含むか否かを判定する工程と、を含む、上記システム及び方法である(例えば、図4Aを参照されたい)。
【0079】
別の態様では、BCR-ABL遺伝子融合物を有する、または有することが疑われると診断されたヒト患者の予後を判定するための方法及びシステムを提供する。例示的実施形態は、シングルセル由来の核酸試料内に、BCR-ABL遺伝子融合物を有する、または有することが疑われる患者の予後の存在を測定するためのシステム及び方法である。例示的実施形態は、個別の細胞で、1つ以上の標的核酸配列を選択する工程であって、標的核酸配列が、BCR-ABL融合転写物を有する疑いがある工程と、1つ以上の個別のシングルセルを有する試料を提供する工程と、プロテアーゼを含む反応混合物に、1つ以上の個別の細胞(複数可)を封入する工程と、封入した細胞をプロテアーゼとともに液滴内でインキュベートして、細胞溶解液を作製する工程と、任意に、ポリメラーゼ(例えば逆転写酵素、またはその活性バリアント)、プライマー、及び、逆転写を行うために必要な、他の必要な反応成分を添加し、シングルセルの核酸から逆転写反応を行う工程と、BCR-ABL融合転写物を有することが疑われる標的核酸に相補的な核酸増幅プライマーセットを提供する工程であって、核酸増幅プライマーセットの少なくとも1つのプライマーが、バーコード識別配列を含む工程と、核酸増幅反応を行って、シングルセルの核酸から増幅産物を形成する工程と、BCR-ABL遺伝子融合物を有する、または有することが疑われる患者の予後を判定する工程と、を含む。予後は、部分的には、いくつかの実施形態では、増幅産物(複数可)の核酸シーケンシングにより測定される。本アプローチの変形を代替実施形態で使用して、骨髄増殖性疾患を有することが疑われる患者の予後を診断する。本明細書で提供するいくつかの実施形態では、増幅プライマーセットを選択して、BCR-ABLスプライスジャンクション部位にまたがらせ、これを増幅する。
【0080】
本発明の他の態様は、下記の実施形態で説明し得る。
【0081】
1.本明細書に記載されている方法を行うための装置またはシステム。
【0082】
2.本明細書に記載されている方法を行うための組成物または反応混合物。
【0083】
3.本明細書に記載されている方法に従って作製したトランスクリプトームライブラリー。
【0084】
5.本明細書に記載されている方法に従って作製したゲノムライブラリー及びトランスクリプトームライブラリー。
【0085】
6.本明細書に記載されている方法を行うためのキット。
【0086】
7. 本明細書に記載されている方法により選択した細胞集団。
【0087】
8.本明細書に記載されている方法により構築したBCR-ABL遺伝子融合物。
【実施例
【0088】
下記の実施例は、例示目的で含まれており、限定するものではない。
【0089】
実施例I
ハイスループットシングルセルシーケンシング
本実施例では、図1Aに示すTapestri(商標)プラットフォームを利用する実施形態を提供し、この上で、DNA及びRNAを同時に検出するためのシングルワークフローを開発することができる。試料調製のために、新鮮なK-562細胞(ATCC)を、Mission Bio細胞緩衝液で調製した。生存能及び細胞計数を、Countless II(商標)自動化細胞計数機(Thermo Fisher Scientific)で測定した。2490cells/uLを、Tapestri(商標)機器にロードした。これらのシングルセルの封入は、Mission Bio試薬を使用して実施した。細胞溶解及びプロテアーゼ処理の後、細胞バーコード化及び標的増幅を、Tapestri(商標)Single-Cell DNA急性骨髄性白血病パネル(50個のアンプリコン)及びSuperScript(商標)IV One-Step RT-PCRシステムにスパイクしたBCR-ABL1を標的化するプライマーを使用して実施した。BCR-ABL1リバースプライマーは、DNAリバースプライマーの4X濃度であった一方、BCR-ABL1フォワードプライマーは、DNAフォワードプライマーの1X濃度であった。RTを50℃で10分間行った後、標的化増幅のためのPCRを行った。BCR-ABL1プライマーは、K-562で発見されたb3a2融合転写物を標的化し、237個のbpアンプリコンを生成した。ライブラリー調製が完了すると、シーケンシングアダプター及びデュアルインデックスを有するDNA及びRNAの両方から、標的化されたアンプリコンが得られた。本実施例で実施したように、細胞調製物からシーケンシング準備のできたライブラリーまで、DNA及びRNAの両方を標的化する。
【0090】
図1Bは、BCR-ABL1を検出するための実施形態を概略的に示し、シーケンシングから対形成されたリード(リード1及びリード2)を有する、融合転写物を示す。プライマーは、K-562で発見されたBCR-ABL1 b3a2融合転写物をカバーするように設計された。リード1はBCR内の2つのエクソンをカバーし、リードがRNA由来であることを立証する。リード2はスプライスジャンクションをカバーする。本実施例では、K-562細胞を有するBCR-ABL1プライマーが、融合転写物由来の237bpのアンプリコンを生成する。
【0091】
表1は、図2Bに示す融合転写物の図解を生成する増幅に使用したプライマーを示す。
【0092】
(表1)BCR-ABL1アンプリコン
【0093】
標的化RT-PCRサイクリング後にTapestriで形成されたドロップレットを図1Cに示す。これは、反応を通して、シングルセル溶解液及び反応構成成分が分画されたままだったことを示している。
【0094】
図1Dは、1423個の細胞からb3a2融合転写物を検出する、50多重度のAML DNAパネル、及びRNAアンプリコンの両方からの、シーケンシングリードの同時検出を示す。K-562細胞としてジェノタイプされた細胞の37.5%は、細胞当たり、シーケンシングされた3個以上の融合リードを有した。
【0095】
図1Eにおいて、融合検出とは独立した、同様のDNAパネル性能を示す。
【0096】
実施例II-DNA及びRNAでの融合のための方法及びシステム
本実施例は、DNA及びRNAの両方に由来する遺伝及びアレイック変化を分析するための、Tapestri(商標)を使用した結果及びワークフローを示す。K-562細胞(ATCC)及びRaji細胞(ATCC)を使用して、RNA由来の融合物が、DNA内の挿入/欠失及びSNVと一致して検出することができることを示した。2690cells/uLの、K-562とRaji細胞の50:50混合物を、Mission Bio細胞緩衝液で調製し、Tapestri(商標)機器にロードした。Mission Bio試薬を用いての、これらのシングルセルの封入、溶解、及びプロテアーゼ処理の後、標的化した増幅を行った。RT-PCRのために、Tapestri(商標)Single-Cell DNA急性骨髄性白血病パネル(50個のアンプリコン)に、BCR-ABL1プライマーを補充した。BCR-ABL1リバースプライマーは、DNAリバースプライマーの2X濃度であった一方、BCR-ABL1フォワードプライマーは、DNAフォワードプライマーの1X濃度であった。SuperScript(商標)IV One-Step RT-PCRシステムを、RT-PCRのために使用した。RTを45℃で10分間行った後、標的化PCRを行った。BCR-ABL1プライマーは、K-562で発見されたb3a2融合転写物を標的化し、237個のbpアンプリコンを生成した。ライブラリー調製を行うと、図2Aに示すように、Tapestri(商標)機器からの各チューブのアウトプットに由来する、DNA及びRNAの両方を含むシングルライブラリーが得られた。
【0097】
表2は、融合アンプリコンにアラインされた、BCR及びABL1の対形成されたリードを示す。細胞内での融合物の存在を確認するために、細胞当たり、シーケンシングされた3個以上の融合リードが必要な場合、偽陽性は存在しなかった。表2の図式版は図2Bに見られ、ここでは、シングルセル当たり3個以上の融合リードが、K-562細胞でのみシーケンシングされ、または、細胞が混合された混合細胞はK-562及びRaji細胞である。
【0098】
(表2)細胞と関連する融合リード
【0099】
K-562とRaji細胞クラスターの50:50混合物は、11個のSNV及びインデルを用いた、図3Aでのt-SNEプロットでの細胞型に基づく。K-562及びRajiとしてジェノタイプした細胞をそれぞれ、赤色と青色で示す。3個以上のBCR-ABL1融合リードは、K-562細胞でのみ発見され、緑色で示す。K-562及びRaji細胞に関して予想されるDNAバリアントもまた、上手く発見された。図3Bは、K-562及びRaji細胞がクローンに分離することを示し、クローン1は、K-562に対する想定された対立遺伝子頻度であり、クローン2は、Rajiに対する想定された対立遺伝子頻度である。11個のSNVを全て図3Cに示し、3個以上のBCR-ABL1融合リードを含む各細胞に対して予想されるバリアントコールが検出された。アレイックドロップアウト分析のための、ゲノム上の位置は、ADOと略した。
【0100】
実施例III-DR005
本実施例は、RT-PCRを用いて、RNAに由来する遺伝子発現を分析するための、Tapestri(商標)を用いた結果及びワークフローを示す。複数の標的に由来する遺伝子発現に対する、58多重度の遺伝子発現パネルと共に使用したKG-1細胞は、Tapestri(商標)機器を使用して検出し、細胞を分画して、標的化増幅を行うことができた。Mission Bio細胞緩衝液中の3000cells/uLのKG1細胞を、Tapestri(商標)機器に入れた。これらのシングルセルの封入及び細胞溶解を行った。58多重度の遺伝子発現パネルプライマーと共に、SuperScript(商標)IV One-Step RT-PCRシステムを、RT-PCRのために使用した。RTを50℃で10分間行った後、標的化PCRを行った。ライブラリー調製を行うと、図4Aに示すように、Tapestri(商標)機器からの各チューブのアウトプットに由来する、DNA及びRNAの両方を含むシングルライブラリーが得られた。
【0101】
表3は、58多重度遺伝子発現パネルから標的化された遺伝子を示す。
【0102】
(表3)58多重度の遺伝子発現パネル
【0103】
シーケンシングリードを対にして、DNAネクサス上でSTARを用いて、hg19にアラインした。図4Bは、細胞のバーコードに基づき分離されたGUSB遺伝子にアラインされたリードの、Integrative Genomics Viewer(Broad Institute)で作成した画像であり、各細胞バーコードは、シングルセルに対して固有である。リードを、青色で示すエクソンにアラインすると、RNAに由来するリードから予想されるように、リードはイントロンと交差しない。図4Cは、Integrative Genomics Viewerで同一のシングルセルを有するITGAM遺伝子を示す。リードを、青色で示すエクソンにアラインすると、ほとんどのリードがイントロンと交差しない。イントロンと交差するリードはDNAに由来するものである可能性がある一方、エクソン内でのみアラインするリードは、RNAに由来するものである。図4Dは、Integrative Genomics Viewerで同一のシングルセルを有するNFKBIA遺伝子を示す。エクソンリードとイントロンリードの両方を含有するリードが混在する。エクソン内でのみアラインされるリードは、RNAに由来するものである一方で、エクソン領域とイントロン領域の両方を有するリードは、DNAに由来するものである可能性がある。
【0104】
実施例IV-DR010
本実施例は、逆転写、続いて、標的化PCRを使用して、複数のRNA標的を検出することによる、DNA及びRNAの両方に由来する遺伝及びアレイック変化を分析するための、Tapestri(商標)を使用した結果及びワークフローを示す。本実施例は、逆転写が、標的化PCRとは異なるマイクロドロップレットで行われる、第2のワークフローを示し、また、本実施例は、DNAバリアントと同時に、複数の融合転写物を単一の反応で標的化することもまた示す。K-562と、TOM-1と、Raji細胞との混合物を、Mission Bio細胞緩衝液で調製し、Tapestri(商標)機器にロードした。シングルセルを封入した第1のドロップレットでは、細胞溶解、逆転写、及びプロテアーゼ処理を行った。SuperScript(商標)IV First-Strand合成システム、及び、3つのBCR-ABL1融合転写物を標的化する単一のプライマーを用いて、逆転写を行った。これらのドロップレットを次に、標的化PCRのために、ドロップレット混合用のTapestri(商標)機器に入れた。Tapestri(商標)Single-Cell DNA急性骨髄性白血病パネルv2(128個のアンプリコン)を、標的化PCRのために、BCR-ABL1フォワードプライマーを用いてスパイクした。概略図を図5に示す。図5Aは第1のドロップレット反応を示し、図5Bは第2のドロップレット反応を示す。ライブラリー調製を行うと、図6に示すように、Tapestri(商標)機器からの、4個のチューブのDNA及びRNAの両方のセットを含む、シングルライブラリーが得られた。
【0105】
表4は、使用したプライマーを含む、標的化融合物とアンプリコンのサイズを示す。単独のプライマーを逆転写に用いて、2つのプライマーをフォワードプライマーに用いた。K-562はp210 b3a2融合転写物を有し、TOM-1はp190融合転写物を有する。b2a2融合転写物は、本実施例には存在しなかった。
【0106】
図7Aに示すように、Tapestri(商標)の8個のチューブのうち4個を、識別された2352個のシングルセルでシーケンシングした。3つのシングルヌクレオチド変化を使用して、3つの細胞株を分化させ、2181個のジェノタイプ細胞を得た(図7B)。図7Cは、これらのジェノタイプ細胞の感度及び特異度の計算を示す。陽性コールに必要な5つの融合リードを用いると、p210 b3-a2検出に対する感度は92.0%であり、p190 e1-a2検出に対する感度は69.2%であった。両方が98%を超える特異度を有した。Rajiには融合コールがなかった。
【0107】
実施例V-DR014
本実施例は、逆転写、続いて、標的化PCRを使用して、複数のRNA標的を検出することによる、DNA及びRNAの両方に由来する遺伝及びアレイック変化を分析するための、Tapestri(商標)を使用した結果及びワークフローを示す。本実施例は、DNAバリアントと同時の、単独反応での3つの異なる融合転写物の検出を示す。K-562と、TOM-1と、KCL-22と、KG-1細胞との混合物を、実施例4に記載するように調製した。K-562は、p210 b3a2融合転写物を含有する。TOM-1は、p190融合転写物を含有する。KCL-22は、p210 b2a2融合転写物を含有し、KG-1は融合転写物を有しない。Tapestri(商標)のプロトコールを実施例4に記載するものの、BCR-ABL1融合転写物用のフォワードプライマーの濃度の2倍とした。
【0108】
Tapestri(商標)の8個のチューブのうちの4個を、3個のシングルヌクレオチドバリアントでジェノタイプした1311個の細胞で識別した1898個のシングルセルでシーケンシングした。図8Aは、シーケンシングした細胞当たり6個以上の融合リードでジェノタイプした細胞でコールされる融合物を示す。これらのジェノタイプ細胞に対する、対応する感度及び特異度の計算を、図8Bに示す。陽性コールに必要な20個の融合リードを用いると(図8C)、p210 b3-a2検出に対する感度は97.0%であり、p210 b2a2検出に対する感度は94%であり、p190 e1-a2検出に対する感度は70%であった。全ての特異度は96%以上であった。
【0109】
実施例VI-DR015
本実施例は、異なるアニーリング温度を有する逆転写プライマーを用いた逆転写、続いて、標的化PCRを使用して、複数のRNA標的を検出することによる、DNA及びRNAの両方に由来する遺伝及びアレイック変化を分析するための、Tapestri(商標)を使用した結果及びワークフローを示す。本実施例は、ワークフローの使用、及び化学的性質を示す。逆転写は、標的化PCRとは異なるマイクロドロップレットで行い、これらの同一のシングルセルに由来するDNAのバリアントと同時に、遺伝子発現を検出する。本実施例は、同一のシングルセルに由来するDNA及びRNAライブラリーを分離し、これらを、細胞バーコードに基づいて対にする能力もまた示す。加えて、本実施例は、逆転写プライマーのアニーリング温度の柔軟性を示す。
【0110】
KG-1と、Jurkatと、Y79細胞の混合物を、Mission Bio細胞緩衝液で調製し、Tapestri(商標)機器にロードした。シングルセルを封入した第1のドロップレットでは、細胞溶解、逆転写、及びプロテアーゼ処理を行った。一反応では、SuperScript(商標)IV First-Strand合成システム、及び、63℃のアニーリング温度を有する、110多重度の遺伝子発現パネルに由来する逆転写プライマーを用いて、逆転写を行った。第2の反応では、SuperScript(商標)IV First-Strand合成システム、及び、45℃のアニーリング温度を有する、110多重度の遺伝子発現パネルに由来する逆転写プライマーを用いて、逆転写を行った。これらのドロップレットを次に、標的化PCRのために、ドロップレット混合用の別のTapestri(商標)機器に入れた。88多重度のDNAパネルを、110多重度遺伝子発現パネル用のフォワードプライマーと組み合わせた。概略図を図9に示す。図9Aは第1のドロップレット反応を示し、図9Bは第2のドロップレット反応を示す。ライブラリー調製を行うと、対形成された、分離されたライブラリーが得られ、1つは、Tapestri(商標)機器製の4つのチューブの、標的化されたDNAアンプリコンを有し、他方は、同チューブの、標的化されたRNAアンプリコンを有した。遺伝子発現の標的を表5に示す。
【0111】
(表5)
【0112】
両方の反応からの、図10に示すDNAパネル性能は、リードの高い割合が、良好なアンプリコンの均一性を有しながら、予想されるゲノム標的にアラインされることを示す。図10Aは、63℃のアニーリング温度を有する逆転写プライマーによる結果を示す一方で、図10Bは、45℃の低いアニーリング温度を有する逆転写プライマーによる結果を示す。
【0113】
遺伝子発現リードは、両方の反応で検出された。DNAライブラリーシーケンシング結果による、シングルヌクレオチドバリアントにより識別された細胞型から検出された細胞当たりでの、遺伝子の数を計算した。図11Aは、63℃のアニーリング温度を有する逆転写プライマーの結果を示す一方で、図11Cは、45℃のアニーリング温度を有するプライマーの結果を示す。
【0114】
図11B及び11Dは、DNAリードと、RNAリードに由来する細胞型のデータ間での一致を示す。細胞を、RNAライブラリーシーケンシング結果に基づき、umapでクラスター化し、その後、各細胞を、DNAライブラリーシングルヌクレオチドバリアントデータにより識別した細胞型に基づき着色した。
【0115】
実施例VII-DR012
本実施例は、逆転写、続いて、標的化PCRを使用して、複数のRNA標的を検出することによる、DNA及びRNAの両方に由来する遺伝及びアレイック変化を分析するための、Tapestri(商標)を使用した結果及びワークフローを示す。本実施例は、ワークフローの使用、及び化学的性質を示す。逆転写は、標的化PCRとは異なるマイクロドロップレットで行い、これらの同一のシングルセルに由来するDNAのバリアントと同時に、遺伝子発現を検出する。本実施例は、同一のシングルセルに由来するDNA及びRNAライブラリーを分離し、これらを、細胞バーコードに基づいて対にする能力もまた示す。K-562と、Y79細胞の混合物を、Mission Bio細胞緩衝液で調製し、Tapestri(商標)機器にロードした。シングルセルを封入した第1のドロップレットでは、細胞溶解、逆転写、及びプロテアーゼ処理(有り及び無し)を行った。SuperScript(商標)IV First-Strand合成システム、及び、915多重度遺伝子発現パネルからの逆転写プライマーを用いて、逆転写を行った。これらのドロップレットを次に、標的化PCRのために、ドロップレット混合用の別のTapestri(商標)機器に入れた。88多重度のDNAパネルを、915多重度遺伝子発現パネル用のフォワードプライマーと組み合わせた。本実施例は、図9に示す概略図に従う。図9Aは第1のドロップレット反応を示し、図9Bは第2のドロップレット反応を示す。ライブラリー調製を行うと、対形成された、分離されたライブラリーが得られ、1つは、Tapestri(商標)機器製の4つのチューブの、標的化されたDNAアンプリコンを有し、他方は、同チューブの、標的化されたRNAアンプリコンを有した。
【0116】
図12に示すように、RNAライブラリーをRNAリードから作製した。図12Aは、PTEN遺伝子にアラインされたリードの、Integrative Genomics Viewer(Broad Institute)による画像であり、上面は、プロテアーゼが存在しない試料由来のライブラリーであり、下面は、プロテアーゼを使用した試料由来のライブラリーである。シーケンシングリードは、両方の反応のエクソンに対してアラインし、イントロンとは交差しない。このことは、シーケンシングリードがRNA分子に由来することを示す。図12Bは、プロテアーゼが存在する試料に対して、各シングルセルで検出された遺伝子の数を示す。
【0117】
図13は、図12Bに示す同一の354個の細胞に由来するDNAライブラリーの性能を示す。図13Aは、細胞ファインダー閾値、細胞の均一性、及び、アンプリコンの均一性を示す。図13Bは、シングルヌクレオチドバリアントが、細胞がRNAライブラリーも有する同一のDNAライブラリーで検出可能であることを示す。図13Cは、これらの同一細胞が、シングルヌクレオチドバリアントに基づいてクラスター化することができることを示す。
【0118】
ビーズ上プライマーパネルによるハイスループットシーケンシング
述べたように、バーコード配列をマイクロフルイディクスビーズに組み込んで、同一の配列タグでビーズを標識することができる。このようなタグ付きのビーズをマイクロフルイディクスドロップレットに挿入でき、ドロップレットPCRによる増幅を介して、それぞれの標的アンプリコンを、固有のビーズバーコードによってタグ付けできる。このようなバーコードを用いて、鋳型に由来するアンプリコン集団において所定のドロップレットを特定できる。個別の細胞を1つ含むマイクロフルイディクスドロップレットと、タグ付きのビーズを含む別のマイクロフルイディクスドロップレットを組み合わせる場合に、このスキームを使用できる。
【0119】
一実施形態では、本開示は、ビーズの外側に1つ以上のプライマーが付着したビーズを含む、カスタムパネル用の方法、システム、及び装置を提供する。図14は、外部で連結したプライマーを含むビーズの例示的実施形態の、概略的図解である。図14では、ビーズ1410がビーズを概略的に示す。ビーズ1410は、外面を有する従来のビーズを含むことができる。ビーズの化学的性質は、所望の用途に従い変化することができる。従来のビーズとしては例えば、架橋アクリダイトオリゴヌクレオチド(「オリゴ」)を含むアクリルアミドビーズが挙げられる。オリゴは、合成オリゴを定義することができる。オリゴは、ビーズ調製中に、または、商業用ビーズ内で、ビーズに結合することができる。ビーズのサイズは60~80umの範囲であることができるが、他のサイズも使用可能であり、例えば、ビーズは約1~100umの範囲であることができる。ビーズの他の例としては、化学処理の後に、アミノ塩基を含むオリゴに結合可能な、商業用ビーズの使用が挙げられる。
【0120】
図14を再び参照すると、ビーズ1410は、プライマー1400の一部分1420に結合する。付着は、化学的付着、及び/または結合を含むことができる。例えば、バーコードを含有するオリゴは、例えば、ビーズに結合したオリゴに相補的な配列を用いるPCR伸長により、ビーズに結合することができる。他の場合、バーコードは、ビーズのオリゴへのライゲーションにより付加することができる。
【0121】
図14の一部分1420は、一対のシーケンシングリード(例えば、リード1、及びリード2、図1)を含むことができる。図1の一部分1430は、バーコード(BC)を含むことができる。バーコードは、検出及び読取りのために構成された一般的なバーコードであることができる。
【0122】
プライマー1430の一部分1430は、共通の配列を含み得る。共通配列は、特異的増幅のために構成されてよい。
【0123】
図15は、ビーズに外部で連結したプライマーの例示的用途の図解である。具体的には、図15は、左手側でビーズに外部で連結したプライマー(バーコード)を含む、ビーズ上バーコードを示す。右手側上では、図は、鋳型DNA及び遺伝子特異的プライマー(GSP)を示す。
【0124】
本開示の一実施形態に従った例示的な方法は、固体基質上で親和性基を形成することであって、当該固体基質が微小球を含む、形成することと、リード部分、バーコード、及び共有配列を有する合成オリゴヌクレオチドを形成することと、オリゴヌクレオチドを、結合点にてバーコードの親和性基に結合することと、を含む。例示的実施形態では、合成オリゴは、標的配列に対する相補配列を含むことができる。別の実施形態では、親和性基は、アクリルアミドゲルを含むことができる。
【0125】
例示的用途において、開示した実施形態は、2段階マイクロフルイディクスワークフロー、及び高多重度PCR生化学スキームにより可能となる、正確なゲノムプラットフォームを提供する。2段階マイクロフルイディクスにより、下流ゲノム反応用のDNAへの効率的なアクセスが可能となり、追加の用途及びマルチオミクス(multi-omics)に適合するための柔軟性をもたらす。多重度PCRケミストリー(図14、15)を開発し、AI駆動型パネル設計パイプラインで同時最適化すると、バーコード化された個別細胞内での、標的化ゲノム領域の直接的かつ効率的な増幅が可能となる。プラットフォームを考慮に入れると、高ゲノムカバレッジ、対立遺伝子の低いドロップアウト率、1回の実行での、数千個の細胞での非常に均一な増幅がもたらされ、これは多様かつ難しい試料と適合性があり、あつらえた内容物にも容易に実装可能である。
【0126】
本明細書で参照または言及されているいずれの特許、刊行物、科学論文、ウェブサイト、ならびにその他の文書及び資料も、本発明が属する技術分野の当業者の知識レベルを表すものであり、このような参照文書及び参照資料はそれぞれ、参照により、個々にその全体が援用される場合、またはその全体が本明細書に示されている場合と同程度に、参照により本明細書に援用される。出願人は、このようないずれの特許、刊行物、科学論文、ウェブサイト、電子的に入手可能な情報及びその他の参照資料または文書に由来するあらゆる資料及び情報を本明細書に物理的に援用する権利を留保する。
【0127】
本明細書に記載されている具体的な方法及び組成物は、好ましい実施形態の代表的なもので、例示的であり、本発明の範囲を限定するものとしては意図されていない。他の目的、態様及び実施形態は、本明細書を考察すれば、当業者には明らかとなるであろうし、特許請求の範囲によって定義されているような、本発明の趣旨に含まれる。本明細書に開示されている本発明に対して、本発明の範囲及び趣旨から逸脱せずに、様々な置換及び改変を行ってよいことは、当業者には容易にわかるであろう。本明細書に例示的に記載されている本発明は好適には、いずれかの1つの要素もしくは複数の要素、または1つの制限事項または複数の制限事項であって、本明細書に必須事項として具体的に開示されてはいない要素または制限事項が欠けた状態で実施してもよい。すなわち、例えば、本明細書の各ケース、または本発明の実施形態もしくは実施例では、「含む」、「~から本質的になる」及び「~からなる」という用語のいずれも、本明細書において、他の2つの用語のうちのいずれかと置き換えてよい。また、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」などの用語は、広範囲に、かつ限定なしに解釈すべきである。本明細書に例示的に記載されている方法及びプロセスは好適には、工程を異なる順序で実施してよく、必ずしも、本明細書または請求項に示されている順序の工程に制限されるわけではない。また、本明細書及び添付の請求項で使用する場合、「a」、「an」及び「the」という単数形には、文脈上明らかに別段に示されている場合を除き、複数の言及物が含まれる。本特許は、本明細書に具体的に開示されている具体例もしくは実施形態、または方法に限定されるとは、いずれの状況でも解釈できない。いずれの審査官もしくはいずれの他の当局者、またはPatent and Trademark Officeの被用者によるいずれの陳述も、具体的かつ無制限または無条件に、本出願人による返答書で明示的に作用される場合を除き、本特許を限定するものとは、いずれの状況でも解釈できない。
【0128】
採用されている用語及び表現は、説明のための用語として用いられており、限定のための用語ではなく、このような用語及び表現の使用によって、表示及び記載されている特徴またはその一部の均等物のいずれかを除外する意図はなく、特許請求する本発明の範囲内で、様々な改変が可能であることが認識される。すなわち、本発明は、好ましい実施形態及び任意選択の特徴によって、具体的に開示されているが、本明細書に開示されている概念の改変形態及び変形形態を、当業者は用いてよく、そのような改変形態及び変形形態は、添付の請求項によって定義されるような、本発明の範囲内とみなされることを理解されたい。
【0129】
本発明は、本明細書に広範かつ概括的に説明されている。属の開示に含まれる、より狭い種及び亜属の群もそれぞれ、本発明の一部を形成する。これには、本発明の属の記載であって、その属からいずれかの主題を除去する但し書きまたは否定的な限定を伴う属の記載が含まれ、その削除物が、本明細書に具体的に示されているか否かは問わない。
【0130】
他の実施形態は、下記の請求項の範囲内である。加えて、本発明の特徴または態様が、マーカッシュグループの観点で説明されている場合、本発明が、そのマーカッシュグループの個々の構成要素、または構成要素からなるサブグループのいずれの観点でも説明されることを当業者は認識するであろう。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図12A
図12B
図13A-1】
図13A-2】
図13A-3】
図13B
図13C
図14
図15
【手続補正書】
【提出日】2021-12-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2022520669000001.app
【国際調査報告】