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特表2022-5206801,2-ペンタンジオール製造用触媒およびこれを用いた1,2-ペンタジオールの製造方法
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  • 特表-1,2-ペンタンジオール製造用触媒およびこれを用いた1,2-ペンタジオールの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-01
(54)【発明の名称】1,2-ペンタンジオール製造用触媒およびこれを用いた1,2-ペンタジオールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/62 20060101AFI20220325BHJP
   B01J 23/835 20060101ALI20220325BHJP
   C07C 31/20 20060101ALI20220325BHJP
   C07C 29/141 20060101ALI20220325BHJP
   C07C 29/17 20060101ALI20220325BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220325BHJP
【FI】
B01J23/62 Z
B01J23/835 Z
C07C31/20 Z
C07C29/141
C07C29/17
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021512500
(86)(22)【出願日】2019-07-04
(85)【翻訳文提出日】2021-03-04
(86)【国際出願番号】 KR2019008195
(87)【国際公開番号】W WO2020009493
(87)【国際公開日】2020-01-09
(31)【優先権主張番号】10-2018-0078842
(32)【優先日】2018-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0010591
(32)【優先日】2019-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514266091
【氏名又は名称】コリア リサーチ インスティチュート オブ ケミカル テクノロジー
【氏名又は名称原語表記】KOREA RESEARCH INSTITUTE OF CHEMICAL TECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ヨン キュ
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ド ヨン
(72)【発明者】
【氏名】クワク,ジェソン
(72)【発明者】
【氏名】ウペア,パンダリナス プレヴィン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ドン ウォン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジョン ホ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ジョン-サン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ジョンモ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ウ ファン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,キョン ホ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ス キョン
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA02B
4G169BA05A
4G169BA06A
4G169BA07A
4G169BA15A
4G169BA27A
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BB05A
4G169BB05B
4G169BB06A
4G169BB08A
4G169BC01A
4G169BC06A
4G169BC08A
4G169BC09A
4G169BC10A
4G169BC10B
4G169BC12A
4G169BC13A
4G169BC16A
4G169BC16B
4G169BC22A
4G169BC22B
4G169BC29A
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169BC35A
4G169BC35B
4G169BC41A
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC50A
4G169BC51A
4G169BC65A
4G169BC67A
4G169BC67B
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BC69A
4G169BC70A
4G169BC70B
4G169BC71A
4G169BC72A
4G169BC74A
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169BD12A
4G169BD13A
4G169BD14A
4G169CB02
4G169CB70
4G169DA05
4G169DA06
4G169EC23
4G169EC24
4G169FA01
4G169FA02
4G169FB14
4G169FB19
4G169FB30
4G169FB44
4H006AA02
4H006AC11
4H006AC41
4H006BA05
4H006BA11
4H006BA20
4H006BA21
4H006BA23
4H006BA26
4H006BA55
4H006BB14
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC14
4H006BC34
4H006BE20
4H006FE11
4H006FG29
4H039CA60
4H039CB10
4H039CB20
4H039CH50
(57)【要約】
本発明は、フルフラール(furfural)および/またはフルフリルアルコール(furfuryl alcohol)から1,2-ペンタンジオールを製造するための触媒に関し、より詳細には、塩基性支持体に遷移金属のうちの1種以上と、スズ(Sn)とを同時に含有する触媒活性金属が担持された、1,2-ペンタンジオールの反応選択性を増加させる触媒、およびこれを用いた1,2-ペンタンジオールの製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルフラール(furfural)およびフルフリルアルコール(furfuryl alcohol)のうちの1種以上を含む出発物質と水素との反応から1,2-ペンタンジオールを製造するのに用いられる触媒であって、
塩基性支持体に触媒活性金属が担持され、
前記触媒活性金属は、スズ(Sn)を含み、別の金属として、遷移金属のうちの1種以上の金属を含むことを特徴とする、出発物質の水素化反応による1,2-ペンタジオール製造用触媒。
【請求項2】
前記塩基性支持体は、アルカリ酸化物、アルカリ土類酸化物、ランタン族酸化物、亜鉛酸化物、スピネル、ペロブスカイト、ハイドロタルサイト、ケイ酸カルシウム、塩基性ゼオライト、および塩基性金属有機骨格体の中から選ばれた1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の出発物質の水素化反応による1,2-ペンタジオール製造用触媒。
【請求項3】
前記塩基性支持体は、MgO、CaO、BaO-ZnO、MgO-Al、ZnO、ZrO、CeO、ヒドロキシアパタイト(hydroxyapatite)、MgAl、ZnAl、BaTiO、ZnTiO、CsO、CsX(X=OH、Cl、Br、またはI)、Zr系MOFs、Mg系MOFs、Ca系MOFs、Sr系MOFs、Ba系MOFs、MgAl、ZnAl、BaTiO、およびZnTiOの中から選ばれた1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の出発物質の水素化反応による1,2-ペンタジオール製造用触媒。
【請求項4】
前記触媒活性金属中におけるスズの含有量は20~99.5モル%であることを特徴とする、請求項1に記載の出発物質の水素化反応による1,2-ペンタジオール製造用触媒。
【請求項5】
前記遷移金属は、第8族、第9族、第10族および第11族に属する遷移金属のうちの1種以上の金属であることを特徴とする、請求項1に記載の出発物質の水素化反応による1,2-ペンタジオール製造用触媒。
【請求項6】
前記遷移金属は、Ru、Pt、Rh、Ir、Pd、Ni、Co、Cuの中から選ばれた1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の出発物質の水素化反応による1,2-ペンタジオール製造用触媒。
【請求項7】
前記触媒は、酸化性雰囲気での焼成なしに還元して使用されるものであることを特徴とする、請求項1に記載の出発物質の水素化反応による1,2-ペンタジオール製造用触媒。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の触媒の存在下に、フルフラール(furfural)およびフルフリルアルコール(furfuryl alcohol)のうちの1種以上を含む、出発物質の水素化反応から1,2-ペンタンジオールを製造する方法。
【請求項9】
前記出発物質であるフルフラール(furfural)、フルフリルアルコール(furfuryl alcohol)はバイオマスに由来するものであることを特徴とする、請求項8に記載の出発物質の水素化反応から1,2-ペンタジオールを製造する方法。
【請求項10】
前記フルフラールは、キシランが加水分解(hydrolysis)されたキシロースを脱水反応して得られたものであり、前記フルフリルアルコールは、前記フルフラールが水素化されて生成されたものであることを特徴とする、請求項8に記載の出発物質の水素化反応から1,2-ペンタジオールを製造する方法。
【請求項11】
前記反応温度は100~200℃であり、反応圧力は5~50barであり、前記反応は液相で行われることを特徴とする、請求項8に記載の出発物質の水素化反応から1,2-ペンタジオールを製造する方法。
【請求項12】
前記反応温度は200~300℃であり、反応圧力は5~100barであり、前記反応は気相で行われることを特徴とする、請求項8に記載の出発物質の水素化反応から1,2-ペンタジオールを製造する方法。
【請求項13】
前記出発物質を1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-ブタノールおよびこれらの混合物の中から選択されるいずれか1種の溶媒に希釈して液相で反応させることを特徴とする、請求項8に記載の出発物質の水素化反応から1,2-ペンタジオールを製造する方法。
【請求項14】
前記触媒の使用量は前記出発物質に対して0.001~25wt%であることを特徴とする、請求項8に記載の出発物質の水素化反応から1,2-ペンタジオールを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルフラール(furfural)および/またはフルフリルアルコール(furfuryl alcohol)から1,2-ペンタンジオールを製造するための水素化反応用触媒およびこれを用いた1,2-ペンタンジオールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1,2-ペンタンジオール(pentanediol)は、無色または淡黄色の液体であって、2つの水酸基(-OH)と炭素数5のアルキル基を持っており、水と脂溶性溶液の両方に混ざる性質を持っている。このような性質により、1,2-ペンタンジオール(pentanediol)は、化粧品分野において、皮膚が環境的影響および天候の影響で乾いてしまうことを防止する有効成分である保湿剤の役割を果たし、赤ちゃん製品、バスルーム用製品、メイキャップ製品、クレンジング製品、スキンケア製品、およびヘアケア製品などに使われる。
【0003】
また、1,2-ペンタンジオール(pentanediol)は、抗菌活性を持っており、他の防腐剤と一緒に使用する場合に、抗菌活性を増加させる役割を果すことができるので、既存の防腐剤の代替品として使用できる。
【0004】
一般な1,2-ペンタンジオール(pentanediol)の製造は、石油化学から得られるn-pent-1-eneを用い、過酸化物(peroxides)を用いて製造する。この際、中間体として形成される1,2-ペンタンジオール(pentanediol)のジエステル(diester)は除去されなければならないが、この工程により多量の廃水が発生する。また、n-pent-1-eneは、非常に低い沸点(boiling point)を持つため取り扱いが難しいので、産業的規模で実行できる簡単な合成経路を見つけることが好ましい。
【0005】
その代替案として、再生可能な原料から得られる物質であるフルフラール(furfural)またはフルフリルアルコール(furfuryl alcohol)を反応物として用いた1,2-ペンタンジオールの合成が可能であり、これらのフルフラールなどは、糖を含有した穀物廃棄物から大量に得ることができるので、廃棄物の利用および環境保護の観点から、その研究が進められている。
【0006】
図1に示すように、フルフラールまたはフルフリルアルコールの水素化(hydrogenation)または水素化分解(hydrogenolysis)から、様々な化合物が形成されることが文献により明らかにされている。
【0007】
非特許文献1[Journal of American Chemical Society 45、3029(1923)]では、常温で白金黒(platinum black)の存在下に、フルフラールの水素化分解/水素化によってフルフリルアルコール(furfuryl alcohol)、1-ペンタノール(pentanol)、テトラヒドロフルフリルアルコール(tetrahydro furfuryl alcohol)、1,2-ペンタンジオール(pentanediol)および1,5-ペンタンジオール(pentanediol)の混合物を得たことを報告している。
【0008】
また、非特許文献2[Journal of American Chemical Society 53、1091(1931)]では、液状のフルフリルアルコールを、銅クロマイト(copper chromite)を触媒として用いて、175℃での水素と反応させて1,2-ペンタンジオール(pentanediol)40%、1,5-ペンタンジオール(pentanediol)30%を得ることができることを報告している。
【0009】
前記フルフラールまたはフルフリルアルコールの水素化(hydrogenation)反応から生成された混合物の中で、化粧品などにおける使用量が増大する、1,2-ペンタンジオールの反応収率を増加させることができる方法について研究が進められているのであり、日本公開特許2015-107954号(2015年6月11日)は、銅含有金属触媒の存在下に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物で構成されるアルカリ性化合物を用いて、フルフリルアルコールから1,2-ペンタンジオールを製造する方法について記載しており、これにより製造された1,2-ペンタンジオールの反応収率は50%未満の数値を示すと報告している(特許文献1)。
【0010】
また、韓国公開特許10-2014-0011387号(2014年1月28日)は、白金、ロジウム、ルテニウム、ニッケル、パラジウムのうちの1種以上の金属化合物が支持体(support material)に担持された形態の触媒を用いて、フルフラールまたはフルフリルアルコールから1,2-ペンタンジオールを合成する方法に関するものであり、例示的に白金酸化物触媒を用いて、最大80%の1,2-ペンタンジオールを得ることができると報告している(特許文献2)。
【0011】
前述したように、フルフラールまたはフルフリルアルコールの水素化(hydrogenation)反応から1,2-ペンタンジオールを製造する方法は、バイオマスを活用することができる重要な技術に該当するので、これを行うための様々な触媒が開発されている。ところが、1,2-ペンタンジオールに対するより高い反応選択性を有する新規な触媒の開発、およびこれを用いた1,2-ペンタンジオールの製造方法に関する研究の必要性は、持続的に求められている。
【0012】
前記反応は、気相或いは液相で行うことができ、液相での反応は気相での反応よりも反応温度の調節の面で有利であり、生産性の面では気相での反応が、より有利である。
【0013】
本発明の目的は、フルフリルアルコールおよび/またはフルフラールから出発して、できる限り効率的で環境調和的に(環境にやさしい具合に)1,2-ペンタンジオール(pentanediol)を製造する、気相反応或いは液相反応の方法、およびこのための効率的な触媒を開発することにある。
【0014】
本発明者は、現在までの触媒系よりも高い収率で1,2-ペンタンジオールの製造が可能な触媒系を探索する中で、特定の金属組み合わせの触媒系を使用する場合、1,2-ペンタンジオールの反応選択性が増加することを見出し、本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、前述した問題点を解決するためのものであって、フルフラールまたはフルフリルアルコールの水素化反応にて、1,2-ペンタンジオールに対する反応選択性が高い、気相或いは液相の反応用の触媒系、およびこれを用いた1,2-ペンタンジオールの製造方法を提示する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記技術的課題を解決するために、本発明は、フルフラール(furfural)およびフルフリルアルコール(furfuryl alcohol)のうちの1種以上を含む出発物質と、水素との反応から、1,2-ペンタンジオールを製造するのに用いられる触媒に関するものである。さらに詳細には、前記触媒系は、塩基性支持体に触媒活性金属が担持されたものであって、前記触媒活性金属は、遷移金属のうちの1種以上、およびスズ(Sn)を含むことを特徴とする、1,2-ペンタンジオール製造用触媒を提供する。好ましくは、前記遷移金属は、第8族、第9族、第10族および第11族のうちの1種以上のものであり、さらに好ましくは、Ru、Pt、Rh、Ir、Pd、Ni、CoおよびCuの中から選ばれた1種以上のものである。
【0017】
本発明の一実施例として、前記塩基性支持体は、アルカリ酸化物、アルカリ土類酸化物、ランタン族酸化物、亜鉛酸化物、スピネル、ペロブスカイト、ハイドロタルサイト、ケイ酸カルシウム、塩基性ゼオライト、塩基性金属有機骨格体(MOFs)などがあり得る。例えば、MgO、CaO、BaO-ZnO、MgO-Al、ZnO、ZrO、CeO、ハイドロキシアパタイト(hydroxyapatite)、MgAl、ZnAl、BaTiO、ZnTiO、CsO、CsX(X=OH、Cl、Br、またはI)、Zr系MOFs、Mg系MOFs、Ca系MOFs、Sr系MOFs、Ba系MOFs、MgAl、ZnAl、BaTiO、ZnTiOなどが挙げられるが、支持体が塩基性を帯びる限りは、これに限定されない。
【0018】
本発明の他の一実施例として、前記触媒活性金属が前記支持体に対して0.1~90wt%の範囲内で担持されうる。
【0019】
本発明の他の一実施例として、前記触媒活性金属中のスズの含有量は、一緒に使用される遷移金属の種類によって異なり得るが、総触媒活性物質の20~99.5モル%であり、好ましくは30~98モル%、さらに好ましくは50~96モル%、より好ましくは75~94モル%でありうる。
【0020】
本発明の他の一実施例として、前記触媒は、酸化性雰囲気での焼成なしに、還元して使用できる。
【0021】
本発明の別の目的を達成するために、本発明は、前述した触媒のうちの1種以上の触媒下に、フルフラール(furfural)およびフルフリルアルコール(furfuryl alcohol)のうちの1種以上を含む出発物質の水素化反応から1,2-ペンタンジオールを製造する方法を提供する。
【0022】
本発明の他の一実施例として、前記フルフラール(furfural)および/またはフルフリルアルコール(furfuryl alcohol)が、バイオマス由来の化合物でありうる。
【0023】
本発明の他の一実施例として、本発明の方法において、前記フルフラールは、キシランが加水分解(hydrolysis)されたキシロースを脱水反応して得られたものであり、フルフリルアルコールは、前記フルフラールが水素化されて生成されたものであることを特徴とすることができる。
【0024】
本発明の他の一実施例として、本発明の方法は、前記出発物質と水素との反応の温度が100~200℃であり、水素圧力が5~40barであり、前記反応は液相で行われ得る。
【0025】
本発明の他の一実施例として、本発明の方法は、前記出発物質と水素との反応の温度が200~300℃であり、水素圧力が5~100barであり、前記反応は気相で行われ得る。
【0026】
本発明の他の一実施例として、本発明の方法は、前記出発物質を1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-ブタノールおよびこれらの混合物の中から選択されるいずれか一つの溶媒に希釈して液相で反応させ得る。
【0027】
本発明の他の一実施例として、本発明の方法は、触媒の還元時に、還元剤を用いて液相で焼成なしに還元させて使用できる。
【0028】
本発明の他の一実施例として、本発明の方法は、前記触媒の使用量が前記出発物質に対して0.001~25wt%でありうる。
【0029】
本発明の他の一実施例として、本発明の方法では、前記溶媒が、前記出発物質に対して1wt%以上100wt%未満の範囲内で含まれ得る。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、遷移金属のうちの1種以上と、スズ(Sn)とを含む触媒活性金属を塩基性支持体に担持してなる触媒系は、フルフラールおよびフルフリルアルコールのうちの1種以上を含む出発物質と、水素との気相或いは液相での反応によって1,2-ペンタンジオールを高収率で生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】キシラン(xylan)に由来するフルフラール(furfural)またはフルフリルアルコール(furfuryl alcohol)から合成可能な1,2-ペンタンジオールおよびそれ以外の化合物が生成される反応模式図である。
図2】RuまたはRuとSnがZnOに担持された触媒系の還元後のXRDデータである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
他に定義しない限り、本明細書で使用されたすべての技術的および科学的用語は、本発明の属する技術分野における熟練した専門家によって通常理解されるのと同じ意味を持つ。一般に、本明細書で使用された命名法は、本技術分野でよく知られており、通常使用されるものである。
【0033】
本明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは特に反する記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0034】
本発明に係るフルフラール(furfural)およびフルフリルアルコール(furfuryl alcohol)のうちの1種以上を含む出発物質と水素との反応から1,2-ペンタンジオールを製造するのに使用される触媒は、塩基性支持体に、遷移金属のうちの1種以上とスズ(Sn)とを含む活性金属が担持されたことを特徴とする。
【0035】
フルフラール(furfural)およびフルフリルアルコール(furfuryl alcohol)のうちの1種以上を含む出発物質からは、第1ステップである直接水素化反応を介して1,2-ペンタンジオール(1,2-pentandiol)と1,5-ペンタンジオール(1,5-pentandiol)を含む混合物が製造できるのであり、使用される触媒成分の活性に応じて、1,2-ペンタンジオールの反応収率が調節されうる。
【0036】
前記遷移金属は、第8族、第9族、第10族および第11族に属する遷移金属のうちの1種以上の金属であり、好ましくは、Ru、Pt、Rh、Pd、Ir、Ni、Co、Cuのうちの1種以上、或いはRu、Pt、Ni、Co、Cuのうちの1種以上でありうる。
【0037】
前記スズの含有量は、総触媒活性物質中の20~99.5モル%であり、好ましくは30~98モル%、さらに好ましくは50~96モル%、より好ましくは75~94モル%でありうる。
【0038】
前記触媒活性金属は、支持体に担持された不均一触媒系であることが好ましく、前記支持体は、塩基性を帯びるもので、アルカリ酸化物、アルカリ土類酸化物、ランタン族酸化物、亜鉛酸化物、スピネル、ペロブスカイト、ハイドロタルサイト、ケイ酸カルシウム、塩基性ゼオライト、塩基性金属有機骨格体などであり得る。前記塩基性支持体の例として、MgO、CaO、BaO-ZnO、MgO-Al、ZnO、ZrO、CeO、ハイドロキシアパタイト(hydroxyapatite)、MgAl、ZnAl、BaTiO、ZnTiO、CsO、CsX(X=OH、Cl、Br、またはI)、Zr系MOFs、Mg系MOFs、Ca系MOFs、Sr系MOFs、Ba系MOFs、MgAl、ZnAl、BaTiO、ZnTiOなどが挙げられるが、支持体が塩基性を帯びる限りは、これに限定されない。
【0039】
前記支持体は、好ましくはZnO、MgO、CeO、ZrOの中から選択された1種以上であり、さらに好ましくはZnOまたはMgOを含むことができる。
【0040】
前記触媒活性金属は、前記支持体に対して0.1~90wt%の範囲内で担持されることが好ましく、触媒活性金属の量が上記の範囲であるとき、触媒活性と担持量との間で最適な効果を示す。
【0041】
前記触媒活性金属が支持体に担持された触媒系の製造方法は、支持体を予め形成し、活性金属の前駆体を含浸法などによって担持することもでき、支持体として使用される物質および触媒活性金属前駆体を同時に用いて、共沈法によって触媒活性金属を担持させることもできる。
【0042】
前記活性成分としての遷移金属前駆体は、その種類について特に制限されるものではないが、ハロゲン塩、硝酸塩、シュウ酸塩、炭酸塩、硫酸塩、ニトロシル酢酸塩およびニトロシル硝酸塩などから選択された1種以上を使用することができる。
【0043】
本発明の活性金属のうちの1種であるスズの前駆体は、その種類について特に制限されるものではないが、Sn(NO、SnCl、SnCl、Sn(OC(CH、SnCl・2HO、SnBr、SnI、Sn(OH)、SnSO、Sn(CHCOO)、Sn(CHCOCHCOCH、SnO、SnO、Sn(PO)の中から選択される1種以上の成分を使用することができる。
【0044】
本発明による遷移金属およびスズ(Sn)を含有する触媒活性金属が塩基性支持体に担持された触媒系の製造方法は、a)支持体を水または有機溶媒に分散させて支持体溶液を製造するステップと、b)前記支持体溶液に活性成分として遷移金属とスズの前駆体を添加した後、撹拌させるステップと、c)前記触媒前駆体溶液を乾燥させて乾燥物を得るステップと、d)前記乾燥物を焼成して焼成物を得るステップと、e)前記焼成物を還元して、触媒活性成分が担持された触媒系を得るステップとを含む。
【0045】
また、前記製造ステップにおけるa)のステップは、活性成分として使用される遷移金属とスズの前駆体を溶解した溶液を製造するa’)のステップでもって代替することができ、b)のステップは、前記遷移金属とスズの前駆体を溶解した溶液に支持体を分散させるb’)のステップでもって代替することができるのであり、a)のステップとb)のステップとが同時に行われて、支持体と活性成分金属の前駆体を同時に投与することもできる。
【0046】
前記b)、b’)ステップの前駆体は、a)、a’)のステップの溶液に直ちに投入することもでき、別々に、b)、b’)のステップの前駆体をそれぞれ別途の溶媒に溶解させ、前記溶解させた溶液をa)、a’)のステップの溶液に添加することもできる。
【0047】
前記d)ステップの焼成は省略し、直ちにe)のステップに進むこともできる。
【0048】
また、本発明による触媒の製造法は、i)支持体として使用される物質の前駆体と活性金属としての遷移金属およびスズの前駆体を定量して溶媒に溶解した溶液を準備するステップと、ii)前記溶液のpHを調整するステップと、iii)前記ii)のステップの後の溶液を所定の温度でエイジング(aging)するステップと、iv)前記iii)のステップの後の溶液で沈殿物をろ過および選択的に洗浄した後、乾燥させるステップと、v)前記乾燥した沈殿物を焼成するステップと、vi)前記焼成後の焼成物を還元するステップとを含む。
【0049】
前記i)のステップで支持体として使用される物質の前駆体と活性金属として使用される金属の前駆体は、同時に溶媒に投入して溶液に製造することもでき、それぞれの前駆体を個別に溶解した溶液を互いに混合することもできる。この際、混合の順序は、活性金属の前駆体を先に混合し、後で支持体として使用される物質の前駆体を混合することもでき、逆に、支持体として使用される物質の前駆体の溶液に、活性金属の前駆体を混合することもでき、支持体および遷移金属のうちの1種の前駆体を先に混合し、ここにスズ前駆体を混合することもでき、支持体とスズの前駆体を先に混合し、ここに遷移金属の前駆体を混合することもでき、また、異なる混合順序の変形があり得る。但し、前記i)のステップが一つのステップではない順次的な混合である場合には、ii)のステップのpH調整は順次的な混合の後に行われ、iii)のステップのエイジングは、最終の混合の後に行われるか、或いは各ステップ別の混合の後に行われることもありうる。
【0050】
したがって、触媒の製造手順は、i)、ii)、iii)が必要に応じて繰り返されてi)→ii)→iii)→i)→ii)→iii)......vi)→v)→vi)の形で行われてもよく、i)→ii)→i)→ii)......iii)→vi)→v)→vi)の形で行われてもよい。この際、前記v)の焼成ステップを省略し、直ちにvi)の還元ステップを行ってもよい。
【0051】
前記エイジングは、温度を加えた状態で放置するか、或いは別の加温なしに放置する形式を取ることができる。
【0052】
前記pH調整には、塩基性物質または酸性物質を使用することができ、好ましくはNaOHを使用する。
【0053】
また、前記還元ステップは、ヒドラジン、NaBHなどの還元剤を用いて、液相で還元工程を経るか、或いは水素雰囲気下での熱処理過程を経る。これは、活性金属の分散度および比表面積の制御、触媒自体の不純物の除去、および活性金属と支持体との結合力増進のためのものであり、常温~500℃の温度範囲で処理することが好ましい。
【0054】
前記還元ステップでは、触媒活性金属として存在する金属がすべて還元されてもよく、一部のみ還元されてもよい。例えば、RuとSnが活性金属として使用される場合、Ruは、金属に還元された状態をなしているが、Snは、一部が金属に還元されず、酸素などと結合された状態のSn2+、Sn4+などの状態で存在することができる。また、触媒活性金属として使用された遷移金属とSnは、互いに合金(alloy)を形成することができる。
【0055】
触媒活性金属の還元後の状態を確認するためにXRD測定を行った結果が図2に示されている。図2においてRuのみをZnOに担持した場合には、RuとSnの合金(alloy)相が示されないが、RuとSnが同時に担持された場合には、RuSnなどの金属合金(alloy)相が存在することを示す。
【0056】
また、本発明に係る1,2-ペンタンジオールを製造する方法は、塩基性支持体に遷移金属のうちの1種以上とスズ(Sn)を含む活性金属が担持された触媒の下で、フルフラール(furfural)およびフルフリルアルコール(furfuryl alcohol)のうちの1種以上を含む出発物質と水素とを反応させて製造することを特徴とする。
【0057】
前記フルフラール(furfural)および/またはフルフリルアルコール(furfuryl alcohol)は、バイオマス由来の化合物であり得る。具体的に、ヘミセルロースに由来しうる。ヘミセルロースの大部分を占める物質は、キシランであるが、前記キシランは、加水分解によって五炭糖のキシロース(xylose)に分解され、キシロースを脱水してフルフラール(furfural)を容易に取得することができる。
【0058】
前記触媒の使用量は、出発物質に対して0.001~25wt%であり、触媒の含有量が0.001wt%未満である場合には、十分な触媒活性効果が示されず、触媒の含有量が25wt%を超える場合には、触媒の含有量による触媒活性の上昇効果の面で非経済的であり得る。
【0059】
前記塩基性支持体に遷移金属のうちの1種以上とスズ(Sn)を含む活性金属が担持された本発明の触媒を用いて、フルフラール(furfural)および/またはフルフリルアルコール(furfuryl alcohol)などの出発物質と水素との反応を行う場合、1,2-ペンタンジオールの反応収率が増加する。
【0060】
前記1,2-ペンタンジオールの反応収率は40%以上であることが好ましく、さらに好ましくは70%以上であり、最も好ましくは80%以上である。
【0061】
前記触媒の存在下の反応は、液相(liquid phase)または気相(gas phase)で行われ得る。
【0062】
触媒の存在下の反応が液相で行われると、前記反応は、反応温度100~200℃および水素圧力5~50barの範囲で行うことが好ましい。前記水素圧力が5bar未満である場合には、反応速度が遅いという問題点が発生するおそれがあり、前記水素圧力が50barを超える場合には、副産物の反応収率が高くなるに伴い、1,2-ペンタンジオールの反応収率が小さくなるという問題点が発生するおそれがある。
【0063】
本発明の反応は、液相で行われるときの出発物質が液相を維持する条件で行われるが、前記出発物質は、出発物質を溶解することができる溶媒に希釈して使用することもできる。ここで、前記溶媒は、前記出発物質に対して25~1000wt%の範囲内で含まれることが好ましく、さらに好ましくは100~500wt%である。非制限的に、前記溶媒は、アルコール、GBL(ガンマブチルラクトン)、水およびこれらの混合物でありうる。前記溶媒は、好ましくはアルコール、より好ましくは1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール或いはこれらの混合物でりうる。
【0064】
前記アルコール溶媒は、フルフラールおよびフルフリルアルコールに対して高い溶解度を有し、反応性の大きい反応点を含んでいないため、水素との反応による官能基の変化や急激な化学的性質の変化を伴わないので、反応工程の間に一定の反応条件を提供することができる。
【0065】
触媒存在下の反応が気相で行われるならば、前記反応は、反応温度200~300℃および水素圧力5~100barの範囲で行うことが好ましい。前記水素圧力が5bar未満である場合には、反応速度が遅いという問題点が発生するおそれがあり、前記水素圧力が100barを超える場合には、副産物の反応収率が高くなるに伴い1,2-ペンタンジオールの反応収率が小さくなるという問題点が発生するおそれがある。
【0066】
触媒存在下の反応は、気体流れ(gas stream)が連続的に通過して流れる反応器で起こり得る。反応器での気体流れは、前記出発物質(フルフラールおよび/またはフルフリルアルコールを含む)、水素、および任意選択的に不活性ガスを含み、前記触媒の体積に対する気体流れのガス空間速度(gas hourly space velocity、GHSV)は、500乃至50,000h-1、好ましくは900~500h-1である。気体流れのガス空間速度が500h-1未満であれば、反応は良好に行われるが、生成物の量があまりにも少なくて工業的に好ましくない。
【0067】
気相での不均一系触媒存在下の反応器は、不均一系触媒で充填されたチューブ型(tubular)の反応器である。
【0068】
適切な流量供給装置(metering devices)を経てチューブ型反応器に注入されるフィード流れ(feed stream)は、フルフリルアルコールおよびフルフラールよりなる群から選択される1種以上を含む出発物質、必要な量の水素、および任意選択的な不活性気体で構成される。前記出発物質は、液相のフルフリルアルコールおよび/またはフルフラールを80~120℃、好ましくは90~110℃の温度で加熱する飽和器(saturator)を用いて気相に転換され、水素または水素と不活性ガスのフロー(flows)を前記液相出発物質を通過させて使用するか、或いは、液相出発物質を定量ポンプなどで蒸留器(evaporator)に投入し、液相出発物質を気化させて使用する。
【0069】
以下、本発明に係る1,2-ペンタンジオール製造用触媒およびこれを用いた1,2-ペンタンジオールの製造反応に対する製造例および実験例などによって詳細に説明する。
【0070】
本発明の好適な実施例に対する原理を詳細に説明するにあたり、関連する公知の機能または構成についての具体的な説明が本発明の要旨を不要に曖昧にするおそれがあると判断された場合には、その詳細な説明を省略する。
【0071】
<製造例>触媒の製造方法
製造例1:5wt%のRu/ZnOの製造
5wt%のRu/ZnOは、次のように沈殿-蒸着(precipitation-deposition)法によって製造された。
【0072】
Znの前駆体としてはZn(NO・6HOを使用し、Ruの前駆体としてはRuCl・xHOを使用して、これらのそれぞれを、Ruに換算された質量がZnOに換算された質量の5wt%となるようにZn(NO・6HOとRuCl・xHOを定量し、これらの前駆体を蒸留水に溶解した水溶液に常温の状態で2.0M NaOH溶液を点滴(dropwise)してpHを7.2~7.5に維持しながら、5時間攪拌した後、85℃で5時間静置した。
【0073】
その後、前記溶液で沈殿物を濾過した後、これを450℃で空気雰囲気下で6時間焼成した。前記焼成触媒は、反応前に、420℃で5%H/N雰囲気下で2時間還元させて使用した。
【0074】
製造例2~4:4.1wt%のRu-Sn/ZnOの製造
RuとSnの合金触媒は、次のように共沈殿-蒸着(coprecipitation-deposition)法によって製造された。
【0075】
RuとSn金属の総質量がZnOの質量の4.1wt%となるようにZn(NO・6HO、SnCl・5HOおよびRuCl・xHOを定量した。この際、前記RuとSnのモル比は、それぞれ1:2(製造例2)、1:5(製造例3)または1:7(製造例4)に調節した。
【0076】
前記定量されたZn(NO・6HOは0.1M、SnCl・5HOは1Mの水溶液となるように水に溶解した後、常温の200ml蒸留水に点滴した。2M NaOHを用いて溶液のpHを7.5に維持しながら12時間攪拌した。
【0077】
その後、前記溶液にRuCl・xHOの0.5M水溶液を点滴しながら2M NaOHを用いてpHを7.2に維持して1時間攪拌した。前記RuCl・xHOの0.5M水溶液の添加が完了した後、常温で5時間攪拌した。その後、85℃で5時間静置した。
【0078】
次に、生成された沈殿物を濾過および水洗してNaおよびClイオンを除去した後、120℃で12時間乾燥させた。前記乾燥物は、反応前に、420℃で5%H/Nの雰囲気下で2時間還元させて使用した。
【0079】
製造例5:5wt%のPt/ハイドロタルサイトの製造
ハイドロタルサイト0.95gを、HPtCl・xHO0.1050gが蒸留水100.0mlに溶解した溶液に浸漬し、60℃で回転蒸発器(Rotary evaporator)によって余剰の水を蒸発させた後、空気雰囲気下、450℃で6時間焼成して5wt%のPt/ハイドロタルサイト触媒を得た。前記触媒は、反応前に、420℃で5%H/N雰囲気下で2時間還元させて使用した。
【0080】
製造例6:4.1wt%の1Ru-5Sn/ハイドロタルサイトの製造
Mg-Alハイドロタルサイト(Mg/Al=3)は、共沈殿(coprecipitation)法によって製造した。19.23gのMg(NO・6HOと7.67gのAl(NO・9HOを200mlの脱イオン水に投与した後、この溶液に0.5M NaCO水溶液100mlをゆっくりと入れながら沈殿させた。溶液のpHは、10となるように2.0MのNaOHを用いて調整した。生成された沈殿物は、100℃で24時間静置した後、濾過(filtering)を行った溶液が中性となるまで脱イオン水で洗浄した。濾過した固体は、120℃で12時間乾燥させた後、450℃で10時間スチームを用いて焼成した。焼成したサンプルは、再び200mlの脱イオン水に入れた後、50℃で24時間窒素を流しながら音波破砕を行った。前記固体は、濾過の後、80℃で12時間乾燥させてMg-Alハイドロタルサイトを得た。
【0081】
前記製造されたMg-Alハイドロタルサイトを、RuとSnに換算された総質量が4.1wt%となるように定量されたSnCl・5HOとRuCl・xHO水溶液に浸漬して、共沈法でRuとSnを担持した。このとき、前記RuとSnのモル比はそれぞれ1:5に調節した。余剰の水は、60℃で回転蒸発器(Rotarye vaporator)によって蒸発させた。前記触媒は、空気雰囲気下で12時間乾燥させた後、420℃で5%H/N雰囲気下に2時間還元した。
【0082】
製造例7:4.1wt%の1Pt-5Sn/ZnOの製造
前記製造例2でRuの代わりにPtを用いた以外は、同様の過程で担持した。前記Ptの前駆体は、HPtCl・xHOを使用した。
【0083】
製造例8:6.1wt%の1Ni-1Sn/ZnOの製造
NiとSnの合金触媒は、次のように共沈殿(coprecipitation)法によって製造された。
【0084】
NiとSnの金属の総質量がZnOの質量の6.1wt%となるようにZn(NO・6HO、SnCl・5HOおよびNi(NO・6HOを定量した。この際、前記NiとSnのモル比は1:1に調節した。
【0085】
このために、34.99gのZn(NO・6HOと0.99gのSnCl・5HOをそれぞれ400mLと200mLの蒸留水に溶解した後、2種の溶液を混ぜた。この溶液を0.02MのNi(NO・6HO水溶液200mLに混ぜ、2M NaOHを用いて溶液のpHを9.0に維持しながら12時間攪拌した。
【0086】
その後、80℃で5時間さらに攪拌した後、生成された沈殿物を濾過および水洗してNaおよびClイオンを除去した後、120℃で12時間乾燥させ、550℃で6時間焼成した。前記乾燥物は、反応前に、500℃で5%H/N雰囲気下に4時間還元させて使用した。
【実施例
【0087】
製造例9および10:4.1wt%の1Ru-5Sn/SiO 、4.1wt%の1Ru-5Sn/Al の製造
湿式含浸法を用いて、支持体としてSiO(製造例9)、Al(製造例10)を使用する以外は同様の方法によってRuおよびSn前駆体を混ぜて4.1wt%の1Ru-5Sn/支持体を製造した。この時、RuとSn金属の総質量が各支持体であるSiOとAlの質量の4.1wt%となるように、ハイドロタルサイト、SnCl・5HOおよびRuCl・xHOを定量した。前記RuとSnのモル比はそれぞれ1:5に調節した。前記触媒は、反応前に、420℃で5%H/N雰囲気下に2時間還元させて使用した。
【0088】
製造例11:5wt%のRu/(8:2)SnO -SiO の製造
まず、13.75gのLudox-SM30(400ml)水溶液と37.0gのSnCl・5HO(400ml)とを混合した後、2M NaOHを用いてpHを8.5に維持しながらゆっくりと(dropwise)混合した。前記混合された溶液は、常温で5時間攪拌した後、85℃で5時間静置し、その後、沈殿物を濾過し、蒸留水で洗浄した後、乾燥させ、しかる後に、450℃の空気中で焼成して、SnOとSiOの質量比が8:2である(8:2)SnO-SiOを製造した。
【0089】
前記製造された(8:2)SnO-SiOを、Ruに換算された質量が5wt%となるように定量されたRuCl・xHO水溶液に浸漬して、含浸法でRuを担持させた。余剰の水は、60℃で回転蒸発器(Rotary evaporator)によって蒸発させた。
【0090】
得られた5wt%のRu/(8:2)SnO-SiOは、空気雰囲気下、450℃で6時間焼成した。前記焼成触媒は、反応前に、420℃で5%H/N雰囲気下に2時間還元させて使用した。
【0091】
製造例12:5wt%のCu/(8:2)SnO -SiO の製造
製造例11でRuCl・xHOの代わりにCu(NO・6HOを用いて、Cu金属が(8:2)SnO-SiOの質量の5wt%となるようにした以外は同様にして、5wt%のCu/(8:2)SnO-SiOを製造した。
【0092】
製造例13:4.1wt%の1(Cu-Ni)-5Sn/SiO の製造
CuとNiとSn金属の総質量がSiOの質量の4.1wt%となるように、Cu(NO・6HO、Ni(NO.6HO、SnCl・5HOを定量した。この際、前記(Cu+Ni)とSnのモル比が1:5となるようにし、CuとNiのモル比は1:1となるようにした以外は製造例9と同様にして、4.1wt%の1(Cu-Ni)-5Sn/SiOを製造した。
【0093】
<実験例1>液相反応による1,2-ペンタンジオールの製造実験
前記製造例で製造された触媒を用いて、次のとおり1,2-ペンタンジオールの製造実験を行った。
【0094】
テフロン(登録商標)容器が装着された100mlのステンレス鋼オートクレーブ反応器に、各0.1gの前記製造例で製造された触媒、10mlの無水イソプロパノールおよび1mlのフルフラールを投入し、水素で3回以上パージして容器内の雰囲気を水素に置換した後、高圧水素で加圧し、反応温度まで昇温した後、所定の時間反応を行った。この際、攪拌はテフロン(登録商標)マグネチックバーを使用し、攪拌速度は1000rpmであった。前記水素圧力、反応温度および反応時間は、表1に記載された通りである。
【0095】
反応の後、温度を常温に下げた後、触媒を単純濾過して除去し、しかる後に、反応器内の溶液を採取してCyclosil-Bカラム(30m×0.32mm×0.25μm)が装着されたGC(ガスクロマトグラフィー;FID)で分析した。その分析結果を表1に示した。
【0096】
下記表1では、前記製造例で製造された触媒を用いて水素との反応で合成された1,2-ペンタンジオールの反応収率を計算した結果を示した。
【0097】
下記表1において、Furfural Conv.%(フルフラール転換率%)およびC Yield(製品収率)は、次のとおりに計算された。
【0098】
【0099】
【表1】
1,2-PDO:1,2-ペンタンジオール、1,5-PDO:1,5-ペンタンジオール、MTHF:メチル-テトラヒドロ-フラン、HT:ハイドロタルサイト
【0100】
前記表1によれば、遷移金属としてルテニウムが単独で5wt%担持された触媒(製造例1)の場合は、1,2-ペンタンジオールの反応が起こっていないのに対し、ルテニウムとスズが同時に総重量で4.1wt%となるように担持された触媒(製造例2~4)を使用するときには、むしろ活性金属の担持量が減少したにも拘らず、1,2-ペンタンジオールが生成されることを確認することができた。ルテニウムとスズの相対的なモル比によっても反応性の差が生じるが、スズ/ルテニウムのモル比が2から5に増大する場合には、むしろ同じ条件で反応時間が短いにも拘らず、1,2-ペンタンジオールの反応収率は42.2%から84.2%へと劇的に増大することを確認することができる。
【0101】
また、同じ活性金属でもZnOやハイドロタルサイトなどの塩基性支持体を用いた場合が、シリカやアルミナなどの支持体を用いた場合に比べて遥かに高い1,2-ペンタンジオールの収率を示すことにより、活性金属の種類に劣らず、支持体の性状も本触媒系でかなり重要であることが分かる。
【0102】
製造例14:10wt%の1Ni-1Sn/ZnOの製造
NiとSnの合金触媒は、次のとおりに共沈殿(coprecipitation)法によって製造された。
【0103】
NiとSnの金属の総質量がZnOの質量の10wt%となるように、Zn(NO・6HO、SnCl・5HOおよびNi(NO.6HOを定量した。この際、前記NiとSnのモル比は1:1に調節した。
【0104】
このために、32.9gのZn(NO・6HOを400mlの蒸留水に溶解した溶液、1.64gのNi(NO・6HOを400mlの蒸留水に溶解した溶液、および1.98gのSnCl・5HOを400mLの蒸留水に溶解した溶液を、すべて一緒にゆっくりと200mlの蒸留水に点滴しながら混合した。このとき、溶液のpHは2M NaOHを点滴して8.5~9に維持した。沈殿が形成された後、前記溶液を常温で12時間攪拌した。
【0105】
その後、常温で5時間さらに攪拌し、85℃で5時間静置させた後、沈殿物を濾過および水洗してNaおよびClイオンを除去し、しかる後に、空気雰囲気下、120℃で12時間乾燥させ、これを圧縮および粉砕してサイズ320~420μmの粒子を篩別し、前記篩別された粒子を空気雰囲気下に550℃で6時間焼成した。前記焼成物は、反応前に、500℃で5%H/N(50cc/min)雰囲気下に4時間還元させて使用した。
【0106】
製造例15:10wt%の1Cu-1Sn/ZnOの製造
Ni(NO・6HO(1.64g in 400ml HO)の代わりにCu(NO・6HO(32.9g in 400ml HO)を使用し、SnCl・5HO(1.98g in 400ml HO)の代わりにSnCl・5HO(1.893g in 400ml HO)を使用し、最終還元を300℃で行った以外は製造例14と同様にして、10wt%の1Cu-1Sn/ZnOを製造した。
【0107】
製造例16:10wt%の1Co-1Sn/ZnOの製造
Ni(NO・6HO(1.64g in 400ml HO)の代わりにCo(NO・6HO(32.9g in 400ml HO)を使用し、SnCl・5HO(1.98g in 400ml HO)の代わりにSnCl・5HO(1.978g in 400ml HO)を使用し、最終還元を400℃で行った以外は製造例14と同様にして、10wt%の1Co-1Sn/ZnOを製造した。
【0108】
製造例17:4.1wt%の1Ru-7Sn/ZnOの製造
RuとSn金属の総質量がZnOの質量の4.1wt%となるように、Zn(NO・6HO、SnCl・5HOおよびRuCl・xHOを定量した。この際、前記RuとSnのモル比はそれぞれ1:7に調節した。
【0109】
前記定量されたZn(NO・6HOは0.1M、SnCl・5HOは1Mの水溶液となるように水に溶解した後、常温の200ml蒸留水に点滴し、2M NaOHを用いて溶液のpHを7.5に維持した。沈殿発生に続いて12時間攪拌した後、前記溶液にRuCl・xHOの0.5M水溶液を点滴しながら2M NaOHを用いてpHを7.2に維持した。前記RuCl・xHOの0.5M水溶液の添加が完了した後、常温で5時間攪拌した。その後、85℃で5時間静置した。
【0110】
次に、生成された沈殿物を濾過および水洗してNaおよびClイオンを除去した後、120℃、空気雰囲気下に12時間乾燥させ、これを圧縮および粉砕してサイズ320~420μmの粒子を篩別した。前記篩別された乾燥物は、焼成なしに直接還元法(direct reduction without calcination)で還元された。
【0111】
製造例18:10wt%のNi/ZnOの製造
Sn前駆体を用いず、Ni前駆体のみを用いてNi金属の質量がZnOの質量の10wt%となるようにNi(NO・6HOを定量して担持した以外は製造例14と同様にして、10wt%のNi/ZnOを製造した。
【0112】
製造例19:10wt%の1Ni-1Sn/γ-Al の製造
担持体としてγ-Al(9.0g)を用いた以外は製造例14と同様にして、10wt%の1Ni-1Sn/γ-Alを製造した。
【0113】
製造例20:10wt%の1Ni-1Sn/CeO の製造
担持体前駆物質であるCe(NO・6HOの水溶液(22.7g/400mL)をNiおよびSnと一緒に200mLの水溶液にゆっくりと点滴しながら混合した以外は製造例14と同様にして、10wt%の1Ni-1Sn/CeOを製造した。
【0114】
<実験例2>:気相反応による1,2-ペンタンジオールの製造実験
前記製造例で製造された触媒を用いて、次のとおり気相でフルフリルアルコールを水素と反応させて1,2-ペンタンジオールを製造する実験を行った。
【0115】
触媒の活性測定は、加圧状態で固定層の下方流れのステンレススチール(SUS316)反応器で行われた。予熱区域は250℃に維持されてフルフリルアルコールを蒸発させた。触媒(1.0g)を、石英ウールを支持体として用いて反応器の中間に位置させた。反応は220~280℃で行った。水素圧力は、反応器および水素ガスラインに連結された圧力調節器を用いてモニタリングした。フルフリルアルコールは、イソプロピルアルコール中に10wt%で混合された状態で水素(流量61cc/min)と一緒に液体計量ポンプを用いて1.0のWHSVで反応器に導入した。
【0116】
反応混合物(Hおよびガス状炭化水素)の気体成分は、炭素球体毛細管が装着されたオンラインガスクロマトグラフィー(Donam Instrument DS6200)を用いてTCDで分析した。1,2-ペンタンジオール(1,2-PDO)、1,5-ペンタンジオール(1,5-PDO)、メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフルフリルコール(THFA)、2-メチルフラン(2MF)、2-メチルテトラヒドロフラン(MTHF)、1-ペンタノール(PO)、1,4-ペンタンジオール(1,4-PDO)、テトラヒドロフラン(THF)などを10時間間隔で収集し、水素炎イオン化検出器(FID)およびCyclosil-Bカラム(0.32mm×30)とHP-5を用いて検出した。液状生成物の炭素質量バランスは97%以上と推定された。フルフリルアルコールの転換率および1,2-PDOの収率から触媒性能を評価した。
【0117】
触媒活性の結果は、表2に提示されている。
【0118】
下記表2におけるFurfuryl alcohol Conv.(FFA Conv)は、前記(式1)でFurfuralの代わりにFurfuryl alcoholのモル数を代入して計算し、C Yieldは、前記(式2)のように計算した。
【0119】
【表2】
【0120】
前記表2によれば、実験した全ての触媒は、実験条件でフルフリルアルコールの転換率が100%以上を示したが、生成物の分布は、実験条件である温度、圧力、および使用した触媒の種類によって異なるように示した。
【0121】
製造例14の触媒を用いた実験例からみると、反応温度が250℃であるときに最も高い1,2-PDOの収率を示し、水素の圧力も30barから40barに増加するにつれて、1,2-PDOの収率は増加した。
【0122】
また、気相触媒反応における1,2-PDOの収率は、製造例14によって製造された触媒が最も高かった。
【0123】
前記製造例18と製造例14の触媒による反応実験の結果を比較してみると、Snが追加される前には1,5-PDOの収率がさらに大きかったが、Snが追加された製造例14の触媒では1,2-PDOの収率が格段に増加することを確認することができるため、フルフリルアルコールの1,2-PDOへの転換にはSnの存在が不可欠であることが分かる。
【0124】
また、塩基性支持体の効果を確認するために、他の塩基性支持体であるCeO(製造例20)と酸性担持体であるγ-Al(製造例19)を用いた触媒の活性を比較した。CeO担持体を用いたときは、ZnOを用いたときよりも1,2-PDOの選択性がやや減少するのに対し、γ-Alを用いたときは選択性が非常に減少することからみて、塩基性支持体が重要な要素であることが分かる。
【0125】
以上、本発明は添付図面および実施例を参照して説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当該技術に属する分野における通常の知識を有する者であれば、そこから様々な変形および均等な他の実施例が可能であることを理解するだろう。よって、本発明の技術的保護範囲は、次の請求の範囲によって定められなければならない。
図1
図2
【国際調査報告】