IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハニータ レンズ アール.シー.エーの特許一覧

特表2022-520694適応可能な曲率を有するコンタクトレンズ
<>
  • 特表-適応可能な曲率を有するコンタクトレンズ 図1A
  • 特表-適応可能な曲率を有するコンタクトレンズ 図1B
  • 特表-適応可能な曲率を有するコンタクトレンズ 図2A
  • 特表-適応可能な曲率を有するコンタクトレンズ 図2B
  • 特表-適応可能な曲率を有するコンタクトレンズ 図3A
  • 特表-適応可能な曲率を有するコンタクトレンズ 図3B
  • 特表-適応可能な曲率を有するコンタクトレンズ 図4
  • 特表-適応可能な曲率を有するコンタクトレンズ 図5
  • 特表-適応可能な曲率を有するコンタクトレンズ 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-01
(54)【発明の名称】適応可能な曲率を有するコンタクトレンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20220325BHJP
【FI】
G02C7/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021531961
(86)(22)【出願日】2018-12-05
(85)【翻訳文提出日】2021-07-02
(86)【国際出願番号】 IL2018051334
(87)【国際公開番号】W WO2020115729
(87)【国際公開日】2020-06-11
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521106050
【氏名又は名称】ハニータ レンズ アール.シー.エー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ポラット,メナシェム
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006BD00
(57)【要約】
ドーム形状の可撓性材料シートを含むソフトコンタクトレンズである。ドーム形状の可撓性材料シートは、(a)ドーム形状の可撓性材料シートの周辺部を含み、ドーム形状の可撓性材料シートの周辺部の上部を含む上部周辺ゾーン、および、ドーム形状の可撓性材料シートの周辺部の下部を含む下部周辺ゾーンを含む、非視覚ゾーンを含む。ドーム形状の可撓性材料シートの曲率は、上部周辺ゾーンおよび下部周辺ゾーンのうちの少なくとも一方が横方向に拡張および収縮するように構造化されていることによって、動的に適応可能である。および(b)上部周辺ゾーンと下部周辺ゾーンとの間にあるドーム形状の可撓性材料シートのエリアに配置された視覚ゾーンであり、視覚ゾーンは、眼の視軸と整列するように構成されている。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドーム形状の可撓性材料シートを含む、ソフトコンタクトレンズであって、前記ドーム形状の可撓性材料シートは、
(a)前記ドーム形状の可撓性材料シートの周辺部を含む非視覚ゾーンであって、前記非視覚ゾーンは、眼の角膜の部分および強膜の部分を覆うように構成され、前記非視覚ゾーンは、
前記ドーム形状の可撓性材料シートの前記周辺部の上部を含む上部周辺ゾーン、および
前記ドーム形状の可撓性材料シートの前記周辺部の下部を含む下部周辺ゾーン、を含み、
前記ドーム形状の可撓性材料シートの曲率は、前記上部周辺ゾーンおよび前記下部周辺ゾーンのうちの少なくとも一方が横方向に拡張および収縮するように構造化されていることによって、動的に適応可能である、非視覚ゾーンと、
(b)前記上部周辺ゾーンと前記下部周辺ゾーンとの間にある前記ドーム形状の可撓性材料シートのエリアに配置された視覚ゾーンであって、前記視覚ゾーンは、前記眼の視軸と整列するように構成されている、視覚ゾーンと、を含む、ソフトコンタクトレンズ。
【請求項2】
前記上部周辺ゾーンおよび前記下部周辺ゾーンのうちの少なくとも一方の前記横方向の拡張により、前記上部周辺ゾーンまたは前記下部周辺ゾーンをそれぞれ中心とする45°の円弧において、前記ドーム形状の可撓性材料シートの円周が少なくとも9%増加し、
前記上部周辺ゾーンおよび前記下部周辺ゾーンのうちの少なくとも一方の前記横方向の収縮により、前記上部周辺ゾーンまたは前記下部周辺ゾーンをそれぞれ中心とする45°の円弧において、前記ドーム形状の可撓性材料シートの円周が少なくとも9%減少する、請求項1に記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項3】
少なくとも1つのスリットをさらに含み、
各スリットは、前記レンズから切り取られた細長い部分であり、
各スリットは、前記スリットが通常のニュートラル状態にあるときに、膜の前記周辺部から前記スリットの基部まで前記膜の内側領域に向かって延在する間隙を維持し、
各スリットは開閉するように構成され、これにより、前記ディスク形状の膜の前記曲率を変更するために、前記レンズ周辺部の可撓性が可能になる、請求項1および2のいずれか一項に記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項4】
前記スリットが前記通常のニュートラル状態にあるときに、前記少なくとも1つのスリットのうちのいずれか1つの前記間隙は、前記スリットの長さに沿って均一である、請求項3に記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項5】
前記スリットが前記通常のニュートラル状態にあるときに、前記少なくとも1つのスリットのうちのいずれかの前記間隙は、前記スリットの長さに沿って不均一である、請求項3に記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項6】
前記スリットが前記通常のニュートラル状態にあるときに、前記少なくとも1つのスリットのうちのいずれかが、細長い「U」字形状を有している、請求項3に記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項7】
前記スリットが前記通常のニュートラル状態にあるときに、前記少なくとも1つのスリットのうちのいずれかが、「V」字形状を有している、請求項3に記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項8】
前記スリットが前記通常のニュートラル状態にあるときに、前記少なくとも1つのスリットのうちのいずれかが、長方形形状を有している、請求項3に記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項9】
前記スリットが前記通常のニュートラル状態にあるときに、前記少なくとも1つのスリットのうちのいずれかが、尖ったピケット形状を有している、請求項3に記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項10】
前記少なくとも1つのスリットは、少なくとも2つのスリットである、請求項3~9のいずれか一項に記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項11】
前記上部周辺ゾーンは、前記少なくとも2つの細長いスリットのうちの少なくとも1つを含む少なくとも1つの上部スリットを含み、前記少なくとも1つの上部スリットは、開閉するように構成され、それにより、前記上部周辺ゾーンの前記曲率を動的に適応させ、前記下部周辺ゾーンは、前記少なくとも2つの細長いスリットのうちの少なくとも別の1つを含む少なくとも1つの下部スリットを含み、前記少なくとも1つの下部スリットは、開閉するように構成され、それにより、前記下部周辺ゾーンの前記曲率を動的に適応させている、請求項10に記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項12】
前記少なくとも1つの上部スリットは、少なくとも2つの上部スリットを含み、前記少なくとも1つの下部スリットは、少なくとも2つの下部スリットを含む、請求項11に記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項13】
前記上部周辺ゾーンは、前記少なくとも1つのスリットを含み、前記少なくとも1つのスリットは、開閉するように構成され、それにより、前記上部周辺ゾーンの前記曲率を動的に適応させ、
前記下部周辺ゾーンは切断されている、請求項3~9のいずれか一項に記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項14】
前記下部周辺ゾーンは、前記少なくとも1つのスリットを含み、前記少なくとも1つのスリットは、開閉するように構成され、それにより、前記下部周辺ゾーンの前記曲率を動的に適応させ、
前記上部周辺ゾーンは切断されている、請求項3~9のいずれか一項に記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項15】
前記視覚ゾーンは、異なるジオプトリ度数を有する少なくとも2つの視覚ゾーンを含む、請求項1および3のいずれか一項に記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項16】
前記視覚ゾーンは、遠見視力ゾーンおよび近見視力ゾーンを含み、前記遠見視力ゾーンは、前記近見視力ゾーンとは異なるジオプトリ度数を有する、請求項15に記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項17】
前記視覚ゾーンは、非球面構成を有する、請求項15に記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項18】
前記視覚ゾーンは、交代視構成を有する、請求項15に記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項19】
前記視覚ゾーンは、同心構成を有し、前記遠見視力ゾーンは、前記視覚ゾーンの中心に位置し、前記近見視力ゾーンは、リング形状であり、前記視覚ゾーンの周辺部に位置している、請求項15に記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項20】
前記視覚ゾーンは、前記遠見視力ゾーンと前記近見視力ゾーンとの間に位置するリング形状の中間視覚ゾーンをさらに含む、請求項19に記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項21】
前記眼の前記視軸が前記視覚ゾーンの前記下部周辺部と整列したときに、前記上部周辺ゾーンは拡張するように構成され、前記下部周辺ゾーンは収縮するように構成され、前記眼の前記視軸が前記視覚ゾーンの中心と整列したときに、前記上部周辺ゾーンおよび前記下部周辺ゾーンは、通常のニュートラル状態になるように構成されている、請求項1および3のいずれか一項に記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項22】
前記上部周辺ゾーンと前記下部周辺ゾーンとの間に位置付けられた安定化中間ゾーンをさらに含み、前記安定化中間ゾーンの厚さは、前記上部周辺ゾーンおよび前記下部周辺ゾーンの厚さよりも大きい、請求項1および3のいずれか一項に記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項23】
前記スリットの各々の長さ:0.5~4ミリメートル(mm)と、
前記スリットの各々によって提供される間隙:0.1~1mmと、の寸法を有する、請求項3に記載のソフトコンタクトレンズ。
【請求項24】
前記スリットの各々の長さは、2~4mmである、請求項3に記載のソフトコンタクトレンズ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年12月6日に出願された「Contact Lens With Adaptable Curvature」と題する米国仮特許出願第62/595,118号の優先権の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、コンタクトレンズの分野に関する。
【背景技術】
【0003】
多焦点レンズは、通常、遠見視力用の遠屈折力視覚ゾーンおよび近見または拡大視力用の近屈折力視覚ゾーンなど、異なる屈折力を有する2つ以上のエリアまたはゾーンを有する。多焦点レンズでは、ゾーンは、追加の屈折力ゾーンにさらに分割され得る。
【0004】
二重焦点コンタクトレンズを効果的に使用するには、眼が遠くの物を注視することから近くの物を注視することへと変化するときに、視力面間での視覚系の平行移動が必要である。あるいは、遠屈折力視覚ゾーンおよび近屈折力視覚ゾーンに加えて、1つ以上の中間屈折力ゾーンを有し得る交代視型多焦点コンタクトレンズが望まれる場合がある。このような交代視型コンタクトレンズは、瞳孔が遠見視力から、中間視力、近見視力、またはそれらの任意の組み合わせに平行移動するときに、レンズの移動量を制御および最適化する能力を有していなければならない場合がある。
【0005】
ソフト交代視型コンタクトレンズには多くの設計があるが、ソフトコンタクトレンズは、通常、焦点が真っすぐ前への注視から下方注視に変化するときに、眼の表面を横切って平行移動するのが困難である。いくつかのソフト二重焦点コンタクトレンズの設計は、平行移動を助けるために一体形成されたベベルを提供する。他のレンズ設計では、焦点が真っすぐ前への注視から下方注視に変化するときに、レンズが眼の表面を横切って平行移動することを可能にし得るが、異なる視方向への眼の平行移動中にレンズのレンズ移動を制御可能にすることにおいてあまり効率的ではない。別の先行技術の例は、レンズの平行移動を助けるためにまぶた上に位置する外側に延在する緯度隆起に隣接して一体形成された傾斜隆起ゾーンを有するソフト多焦点コンタクトレンズについて説明している。緯度隆起部分は、各端に突起を有し、それにより隆起の端の仰角高さが中央の仰角高さよりも高くなる。しかし、これらおよび他の既知の設計の欠点は、装着者に不快感を与えることである。
関連技術の前述の例およびそれに関連する限定は、例証的であり、排他的ではないことが意図される。関連技術の他の制限は、本明細書を読み、図を検討すれば、当業者には明らかになるであろう。
【発明の概要】
【0006】
以下の実施形態およびその態様は、範囲を限定するものではなく、例示的かつ例証的であることを意味するシステム、ツール、および方法と併せて説明および図示される。
【0007】
一実施形態は、ドーム形状の可撓性材料シートを含むソフトコンタクトレンズに関する。ドーム形状の可撓性材料シートは、(a)ドーム形状の可撓性材料シートの周辺部を含む非視覚ゾーンであって、非視覚ゾーンは、眼の角膜の部分および強膜の部分を覆うように構成され、非視覚ゾーンは、ドーム形状の可撓性材料シートの周辺部の上部を含む上部周辺ゾーン、および、ドーム形状の可撓性材料シートの周辺部の下部を含む下部周辺ゾーンを含み、ドーム形状の可撓性材料シートの曲率は、上部周辺ゾーンおよび下部周辺ゾーンのうちの少なくとも一方が横方向に拡張および収縮するように構造化されていることによって、動的に適応可能である、非視覚ゾーンと、(b)上部周辺ゾーンと下部周辺ゾーンとの間にあるドーム形状の可撓性材料シートのエリアに配置された視覚ゾーンであって、視覚ゾーンは、眼の視軸と整列するように構成されている、視覚ゾーンと、を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、上部周辺ゾーンおよび下部周辺ゾーンのうちの少なくとも一方の横方向の拡張により、上部周辺ゾーンまたは下部周辺ゾーンをそれぞれ中心とする45°の円弧において、ドーム形状の可撓性材料シートの円周が少なくとも9%増加し、上部周辺ゾーンおよび下部周辺ゾーンのうちの少なくとも一方の横方向の収縮により、上部周辺ゾーンまたは下部周辺ゾーンをそれぞれ中心とする45°の円弧において、ドーム形状の可撓性材料シートの円周が少なくとも9%減少する。
【0009】
いくつかの実施形態では、ソフトコンタクトレンズは、少なくとも2つのスリットをさらに含む。各スリットは、レンズから切り取られた細長い部分であり、各スリットは、スリットが通常のニュートラル状態にあるときに、膜の周辺部からスリットの基部まで膜の内側領域に向かって延在する間隙を維持し、各スリットは開閉するように構成され、これにより、ディスク形状の膜の曲率を変更するために、レンズ周辺部の可撓性が可能になる。
【0010】
いくつかの実施形態では、スリットが通常のニュートラル状態にあるときに、少なくとも2つのスリットのうちのいずれか1つの間隙は、スリットの長さに沿って均一である。
【0011】
いくつかの実施形態では、スリットが通常のニュートラル状態にあるときに、少なくとも2つのスリットのうちのいずれかの間隙は、スリットの長さに沿って不均一である。
【0012】
いくつかの実施形態では、スリットが通常のニュートラル状態にあるときに、少なくとも2つのスリットのうちのいずれかが、細長い「U」字形状を有している。
【0013】
いくつかの実施形態では、スリットが通常のニュートラル状態にあるときに、少なくとも2つのスリットのうちのいずれかが、「V」字形状を有している。
【0014】
いくつかの実施形態では、スリットが通常のニュートラル状態にあるときに、少なくとも2つのスリットのうちのいずれかが、長方形形状を有している。
【0015】
いくつかの実施形態では、スリットが通常のニュートラル状態にあるときに、少なくとも2つのスリットのうちのいずれかが、尖ったピケット形状を有している。
【0016】
いくつかの実施形態では、上部周辺ゾーンは、少なくとも2つの細長いスリットのうちの少なくとも1つを含む少なくとも1つの上部スリットを含み、少なくとも1つの上部スリットは、開閉するように構成され、それにより、上部周辺ゾーンの曲率を動的に適応させ、下部周辺ゾーンは、少なくとも2つの細長いスリットのうちの少なくとも別の1つを含む少なくとも1つの下部スリットを含み、少なくとも1つの下部スリットは、開閉するように構成され、それにより、下部周辺ゾーンの曲率を動的に適応させている。
【0017】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの上部スリットは、少なくとも2つの上部スリットを含み、少なくとも1つの下部スリットは、少なくとも2つの下部スリットを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、視覚ゾーンは、異なるジオプトリ度数を有する少なくとも2つの視覚ゾーンを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、視覚ゾーンは、遠見視力ゾーンおよび近見視力ゾーンを含み、遠見視力ゾーンは、近見視力ゾーンとは異なるジオプトリ度数を有する。
【0020】
いくつかの実施形態では、視覚ゾーンは、非球面構成を有する。
【0021】
いくつかの実施形態では、視覚ゾーンは、交代視構成を有する。
【0022】
いくつかの実施形態では、視覚ゾーンは、同心構成を有し、遠見視力ゾーンは、視覚ゾーンの中心に位置し、近見視力ゾーンは、リング形状であり、視覚ゾーンの周辺部に位置している。
【0023】
いくつかの実施形態では、視覚ゾーンは、遠見視力ゾーンと近見視力ゾーンとの間に位置するリング形状の中間視覚ゾーンをさらに含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、眼の視軸が視覚ゾーンの下部周辺部と整列したときに、上部周辺ゾーンは拡張するように構成され、下部周辺ゾーンは収縮するように構成され、眼の視軸が視覚ゾーンの中心と整列したときに、上部周辺ゾーンおよび下部周辺ゾーンは、通常のニュートラル状態になるように構成されている。
【0025】
いくつかの実施形態では、ソフトコンタクトレンズは、上部周辺ゾーンと下部周辺ゾーンとの間に位置付けられた安定化中間ゾーンをさらに含み、安定化中間ゾーンの厚さは、上部周辺ゾーンおよび下部周辺ゾーンの厚さよりも大きい。
【0026】
いくつかの実施形態では、ソフトコンタクトレンズは、スリットの各々の長さ:0.5~4ミリメートル(mm)、または2~4mm、および、スリットの各々により提供される間隙:0.1~1mmの寸法を有する。
【0027】
上記の例示的な態様および実施形態に加えて、さらなる態様および実施形態は、図を参照することによって、および以下の詳細な説明を検討することによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
例示的な実施形態は、参照図に示されている。図に示されているコンポーネントおよび特徴の寸法は、概して、表示の便宜と明確さのために選択されており、必ずしも縮尺どおりに示されていない。図は以下のとおりである。
【0029】
図1A-1B】一実施形態による、適応可能な曲率を有し、真っすぐに注視する眼に装着されたソフトコンタクトレンズの正面図および断面図をそれぞれ示す。
図2A-2B】一実施形態による、下方を注視する眼に装着された図1A~Bのソフトコンタクトレンズの正面図および断面図をそれぞれ示す。
図3A-3B】一実施形態による、上方を注視する眼に装着された図1A~Bのソフトコンタクトレンズの正面図および断面図をそれぞれ示す。
図4】一実施形態による、追加の注釈があり、虹彩の図は示されていない図1A~1Bのソフトコンタクトレンズの正面図を示す。
図5】一実施形態によるソフトコンタクトレンズの断面図を示す。
図6】一実施形態による、適応可能な曲率を有し、真っすぐに注視する眼に装着されたソフトコンタクトレンズの正面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本明細書では、拡張および収縮する動的に適応可能な周辺部を有し、レンズが眼の表面上を垂直に移動するときに、レンズがその曲率を変更して装着者の眼の形状の変化に順応できるようにする、ソフト交代視型多焦点コンタクトレンズが開示されている。任意選択で、レンズは多焦点レンズである。装用者がレンズの異なる視力ゾーン間で焦点をシフトすると、それに応じてレンズが眼球の表面上を垂直に移動する。レンズの曲率を眼の表面のさまざまな曲率に順応する能力は、レンズのさまざまな領域に焦点をシフトするときに、装着者にとってより簡単でより快適な体験を提供し得る。
【0031】
レンズの周辺部には、開閉する1つ以上のスリットが配置され得、これにより、周辺部の曲率を動的に変化させ、装着者がレンズのさまざまな多焦点光学ゾーン間で焦点を切り替えるときに、レンズが眼の表面上を垂直に移動できるようにする。
【0032】
ここで、図1A、1B、2A、2B、3A、および3Bを参照する。これらは、一実施形態による、適応可能な曲率を有するソフトコンタクトレンズ100を示している。これらの図の各対、すなわち1A~B、2A~B、および3A~Bは、レンズ100をそれぞれ正面図および断面図で示している。
【0033】
レンズ100は、シリコンエラストマー、例えば、ヒドロゲルを含み得るシリコーン含有マクロマー、シリコーン含有ヒドロゲルなどであるがこれらに限定されない材料(適切なソフトコンタクトレンズ材料)のドーム形状の可撓性シートであり得る。レンズ100の表面は、シロキサンであり得るか、またはシロキサン官能性を有する物質、例えばポリジメチルシロキサンマクロマー、メタクリロキシプロピルポリジメチルシロキサンマクロマー、メタクリロキシプロピルポリアルキルシロキサン、およびそれらの組み合わせ、ならびに/またはジロコンヒドロゲルまたは他のヒドロゲル、例えばエタフィルコンAを含み得る。ソフトコンタクトレンズおよびその引張特性、ならびにソフトコンタクトレンズに適した材料のさらなる考察については、Contact Lens & Anterior Eye 27(4):177-91、2005年1月、におけるIoannis Tranoudis他の「Tensile properties of soft contact lens materials」を参照されたい。
【0034】
レンズ100の中心領域は、装着者の視軸と整列し、矯正視力のための1つ以上のサブ領域を提供する視覚ゾーン102であり得、その詳細は以下に提供される。視覚ゾーン102に隣接するレンズ100の周辺領域は、眼の角膜および強膜の部分を覆う非視覚ゾーンであり得る。非視覚ゾーンは、3つの一般的なセクション、レンズ100の上部および下部周辺部における視覚ゾーン102の上下の上部周辺ゾーン104aおよび下部周辺ゾーン104b、ならびにゾーン104aおよび104bの間に位置付けられ、ゾーン102を両側から囲む安定化中間ゾーン104cを含み得る。
【0035】
以下の説明では、「上部」および「下部」、ならびに「上方」および「下方」という用語は、説明を図面と一致させるために、明確にする目的でのみ使用されており、絶対的な意味で解釈されることを意図しないことを理解されたい。本明細書で以下に説明されるレンズは、水平軸に関して対称性を有し得、したがって、上部および下部の特徴は同一であり、交換可能であり得る。
【0036】
非視覚ゾーン104は、レンズ100の上部周辺部に位置する上部周辺ゾーン104aと、レンズ100の下部周辺部に位置する下部周辺ゾーン104bとを含み得る。上部周辺ゾーン104aおよび下部周辺ゾーン104bの各々の曲率は、レンズ100の全体的な曲率を動的に変更することを可能にするために動的に適応可能であり得、眼の表面上でのレンズ100の垂直移動に順応することができる。この曲率の変化は、上部周辺ゾーン104aおよび下部周辺ゾーン104bにおいて特定の角度にわたって延在する1つまたは2つの円弧におけるレンズ100の円周の変化によって表すことができる。円弧は図4に示されている。円弧は、角度αおよびβを形成する破線間で区切られたレンズ100の円周(スリットの円周は無視する)である。円弧は、例えば、45°であり得る。すなわち、レンズ100がその曲率を動的に変化させるときに、それぞれ45°の上部および下部の円弧にわたって、円周はマイナス9%とプラス9%との間で変化し得る。これらの円弧は、レンズ100の曲率の変化が主にこれらの円弧において表され、これらの円弧を超えるとあまり表されない(またはまったく表されない)ことをより明確に示す目的で示されている。
【0037】
少なくとも9%は、いくつかの実施形態では、9~15%、9~20%、9~25%、9~11%、11~13%、13~15%、15~17%、17~19%、19~21%、21~23%、23~25%、または25%超であり得る。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0038】
曲率変更を達成するために、上部周辺ゾーン104aおよび下部周辺ゾーン104bの各々に、スリット106a、106b、106c、および106dなどの1つ以上のスリット106を設けることができる。スリット106は、レンズ100の曲率を動的に適応させるために必要に応じて、適宜に周辺ゾーン104aおよび104bなどのレンズ100の周辺部で開いたり、閉じたりし得る。任意選択で、レンズ100は、2つの上部スリット106a、106bおよび2つの下部スリット106c、106dを有するが、これは1つの実装形態に過ぎず、より多くのまたはより少ないスリットが使用され得ることを理解されたい。例えば、代替レンズ(図示せず)は、3つ、または4つ、または5つ、またはそれ以上の上部スリット、および3つ、または4つ、または5つ、またはそれ以上の下部スリットを有することができる。任意選択で、上部スリットの数は下部スリットの数とは異なる。例えば、上部スリットが下部スリットより多くてもよいし、あるいは上部スリットが下部スリットより少なくてもよい。
【0039】
スリット106は、レンズ100から切り取られた細長く、細い部分であり得、通常のニュートラル状態(レンズが静止状態にあるとき、すなわち、装着者の注視が真っすぐ前であるとき)において、レンズ100の周辺部からスリット106の基部まで、レンズ100の内側領域に向かって延在する間隙を維持する。通常のニュートラル状態にあるとき、スリット106は、細長いU字形状、V字形状、長方形形状、レンズ100の中心に向く「V」字形の基部を有する尖ったピケット形状、およびレンズ100の周辺部まで延在する細長い垂直壁などであるがこれらに限定されない任意の適切な形状を有し得る。通常のニュートラル状態では、スリット106のいずれかの長さに沿って維持される間隙は、実質的に均一であり得る。あるいは、通常のニュートラル状態では、スリット106のいずれかに沿った間隙は不均一であってもよく、例えば、間隙はレンズ100の周辺部でより大きく、スリット106の基部に向かって先細になっていてもよい。スリット106は、均一な形状およびサイズを有するように示されているが、これは限定を意図するものではなく、同じレンズ100上の異なるスリット106が異なる形状および/またはサイズを有し得ることを理解されたい。スリット106は、開いたとき、レンズ100の周辺部の間隙を増加させ、閉じたとき、スリット106は、レンズ100の周辺部の間隙を減少させ得る。スリット106は完全に閉じて、レンズ100の周辺の間隙を閉じることができる。スリット106は、必要に応じて、部分的に開いたり、部分的に閉じたりして、レンズ100の円周を増加させたり、および/または減少させたりすることができる。
【0040】
スリット106を開くと、レンズ100の周辺部でより広い間隙を開き、レンズ100の円周を長くする。図2A~Bを参照すると、上部スリット106aおよび106bは開いており、レンズ100の円周をその上部周辺部で長くしている。完全に開いたとき、レンズ100の周辺部におけるスリット106によって生じる間隙は、1ミリメートル(mm)~3mmの範囲であり得る。閉じたとき、スリット106の周辺端は接触し得(または互いに非常に近くとなり得、例えば互いに0.01~0.1mm)、図2Aの下部スリット106cおよび106dのような涙滴形状を形成し、スリット100の内側端において均一な間隙を維持し、レンズ100の周辺部において間隙を閉じ、レンズ100の円周をその下部周辺部で短くする。上部周辺ゾーン104aおよび下部周辺ゾーン104bのいずれかにおけるスリット106を開くことにより、それらの曲率が減少し、したがって、それに応じて平坦化される。逆に、上部周辺ゾーン104aおよび下部周辺ゾーン104bのいずれかにおけるスリット106のいずれかを閉じると、それらの曲率が増加し、それに応じて、より凸状になる。図3A~Bは、図2A~Bの反対を示している。すなわち、上部スリット106aおよび106bは閉じており、下部スリット106cおよび106dは開いている。
【0041】
眼の強膜は角膜よりもわずかに凸状が少ないため(または、別の言い方をすれば、強膜の半径は角膜の半径よりも大きいため)、スリット106のいずれかを開くおよび/または閉じることによってレンズ100の周辺領域の曲率を動的に変更することにより、レンズの異なるエリアが強膜および角膜の異なるエリア上に位置付けられる、眼の表面上の異なる垂直位置にその曲率を適合させることができる。レンズ100の曲率を動的に変更しないと、装着者が眼球を移動したときに、レンズが眼球上で固定されたままになる危険性がある。つまり、動的な曲率の変更がないレンズは、眼球の移動と共に上下左右に移動する可能性がある。対照的に、本実施形態の動的な変更は、装着者の注視が変化したときに、レンズ100が眼球上をスライドできること(ただし、上下(垂直方向)だけで横方向(水平方向)はスライドしない)を確実にするのに役立つ。
【0042】
視覚ゾーン102は、複数のサブゾーンを含み得、各サブゾーンは、近視を矯正するための遠見視力ゾーン102a、遠視を矯正するための近見視力ゾーン102b、および中間視力を矯正するためのゾーン102cなど、異なるジオプトリ度数を有し、異なるタイプの屈折状態を矯正する。あるいは、これらの視覚サブゾーンまたは図示されていない他の視覚サブゾーンは、異なる目的を有していてもよい。視覚ゾーン102の異なる矯正サブゾーンについて図に示される構成は同心であるが、これは1つの実装形態に過ぎず、限定を意図するものではない。非球面または交代視構成などの他の適切な構成を適宜に使用することができる。
【0043】
一般に、視覚ゾーン102の任意の構成に関して、眼の視軸が視覚ゾーンの下部周辺部と整列したときに、上部周辺ゾーン104aが拡張するように構成され、下部周辺ゾーン104bが収縮するように構成され、レンズ100が眼球に対して垂直上方に移動することを可能にしている。同様に、眼の視軸が視覚ゾーンの中心と整列したときに、上部周辺ゾーン104aおよび下部周辺ゾーン104bは、それらの通常のニュートラル状態になるように構成されている。
【0044】
遠見視力ゾーン102aは、実質的に円形であり、レンズ100の中心を含む視覚ゾーン102の中心に位置し得、これにより、レンズ100が角膜上で中心に位置付けられているときに、装着者は真っすぐ前を見ることによって遠見用に焦点を合わせることができる。図1A~Bに示されるように、装着者の瞳孔108は、遠見視力を矯正するために、レンズ100の中心を通る視軸を整列させる遠見視力ゾーン102aの中央に位置付けられる。
【0045】
近見視力ゾーン102bは、実質的にリング形状であり得、視覚ゾーン102の周辺部に位置し得、これにより、装着者は、読書するときなどに、下を見ることによって近見視力用に焦点を合わせることができる。図2Aに示されるように、視覚ゾーン102の底部周辺部を含む近見視力ゾーン102bは、装着者の瞳孔108の上に実質的に位置付けられ、装着者の近見視力を矯正するために、視覚ゾーン102の底部を通して装着者の視軸を整列させる。図1A~Bと図2A~Bとの違いは、図1A~Bでは遠見視力のために角膜上で中心にあるレンズ100の位置が、図2A~Bでは、装着者が近見視力のために視軸(瞳孔108)を下部の近見視力ゾーン102bと整列させたときに、瞳孔108に対して上方にシフトしているため、理解できるであろう。装着者の眼球上でのレンズ100のそのような垂直方向のシフトは、スリット106a、106b、106c、および106dを介して上部周辺ゾーン104aおよび下部周辺ゾーン104bの曲率を変更して、眼球の変化する曲率に順応することによって容易にすることができる。逆に、図3A~3Bに示されるように、装着者が近見視力のために視軸(瞳孔108)を上部の近見視力ゾーン102bと整列させると、レンズ100の位置は瞳孔108に対して下方にシフトする。
【0046】
任意選択で、レンズ100は、遠方範囲および近方範囲間の中間焦点距離について矯正するために、遠見視力ゾーン102aと近見視力ゾーン102bとの間に位置するリング形状の中間視覚ゾーン102cを含んでもよい。中間視覚ゾーン102aと整列するように視軸をシフトすると、それに応じて装着者の中間視力が矯正される。
【0047】
任意選択で、レンズ100は、乱視を矯正するためのゾーンを含んでもよく、これは、上記の矯正ゾーンと重なっていても、またはそれから離れていてもよい。
【0048】
ここで図4を参照する。図4は、明確にするために、図1Aのレンズ100に、レンズの様々な寸法を伝えるのに役立つ追加の注釈を付けて示している。スリット106の各々の長さは、0.5~4mmの範囲、または、より具体的には2~4mm、例えば約2.7mmであってよい。スリット106は、レンズ100の外縁から内側に延在することができる。任意選択で、スリット106は、レンズ100の縁から視覚ゾーン102の外縁まで延在することができる。スリット106は、0.1~1mm(図1A)の範囲である、例えば約0.5mmのスリットの長さに沿って均一な間隙を維持するニュートラルな「真っすぐな」位置を有し得る。スリット間の距離「sg」は、3.0mm~7.0mmの範囲であり得、例えば約5.0mmである。
【0049】
任意選択で、上部周辺ゾーン104aと下部周辺ゾーン104bとの間に位置付けられるレンズ100の中間ゾーン104cの1つ以上の部分は、上部周辺ゾーン104aおよび下部周辺ゾーン104bよりも厚くてもよく、眼の上でレンズ100を水平に安定させるように働く。近見視力ゾーン102bの全直径は、8mm~9mmの範囲であり得、約8.5mmであり得る。遠見視力ゾーン102aの全直径は、4mm~5mmの範囲であり得、例えば約4.5mmである。中間ゾーン104cの厚さは、0.25mm~0.75mmの範囲であり得、約0.5mmであり得る。レンズ100の直径D1は、12mm~16mmの範囲であり得、約14.2mmであり得る。図3Aの中間ゾーン104cにおけるレンズ100の厚さは、0.3mm~0.4mmの範囲であり得、約0.35mmであり得る。灰色で示される薄いエリアの点におけるレンズ100の厚さは、0.2mm~0.3mmの範囲であり得、約0.25mmであり得る。
【0050】
乱視などの一部の視覚欠損は、角膜の変形、または眼の水晶体の内部形状に起因する内部の原因によって引き起こされる。図5を参照すると、中心視覚ゾーン102aの前面の曲率は、水平子午線および垂直子午線で異なる半径を有することにより、そのような変形に順応することができる。
【0051】
レンズ100の中心視覚ゾーン102a部分は、人間の角膜上に載るように構成されており、典型的な角膜よりもいくらか平坦である(すなわち、より大きな半径を有する)ことができる。中心視覚ゾーン102aの後面のサジタルデプスS2は、角膜のサジタルデプスS1よりも小さい場合があり、その結果、レンズ100と角膜における眼の表面との間にS1からS2を差し引いた間隙が生じる。この間隙により、レンズ100と眼の表面との間の表面張力が低下し、レンズ100が眼の表面上をより自由に移動できるようになる。
【0052】
任意選択で、間隙は0.001mm~0.1mmの範囲であり得る。レンズ100の相対的な平面度によって生じるこの間隙は、スリット106と共に、レンズ100がユーザの焦点の変化に応答して眼の表面上を移動できるようにする。
【0053】
眼球上でのレンズ100の垂直方向の動きについて説明する。
図1A~Bを参照すると、瞳孔108がレンズ100の中心上に位置付けられているとき、スリット106は通常のニュートラル状態にあり、眼(瞳孔108)の視軸をレンズ100の中心の遠見視力ゾーン102aと整列させている。
【0054】
図2A~Bを参照すると、装着者が読書などのために注視を下方に向けると、眼球が下方に回転し、眼の視軸を下部の近見視力ゾーン102bにシフトする。装着者がまばたきをすると、下まぶたおよび上まぶたがレンズ100を上方に押し上げ得る。上部スリット106aおよび106bが開いて、上部周辺ゾーン104aをわずかに拡張し、上部周辺ゾーン104aにおけるレンズ100の曲率を平坦化して、角膜の上方のわずかに凸状が少ない強膜に順応する。同時に、下部スリット106cおよび106dが閉じて、下部周辺ゾーン104bをわずかに収縮させ、下部周辺ゾーン104bにおけるレンズ100の曲率を増加させて、わずかに凸状が多い角膜に順応し、今度は、下部周辺ゾーン104bの上部部分に隣接する視覚ゾーン102の下部部分における近見視力ゾーン102bと整列される。したがって、レンズ100の曲率を変更し、眼球の表面との表面張力を減少させることにより、眼球の表面上でのこの上向きの動きを容易にすることができる。
【0055】
装着者が遠見視力のために注視を戻すと、スリット106は、図1A~Bに示されている通常のニュートラル状態に返り、レンズ100は角膜上で中心に整列されるように戻り、瞳孔108は遠見視力ゾーン102aの中心に位置付けられる。
【0056】
図3A~Bは、図2A~Bの反対を示している。すなわち、図3A~Bでは、装着者は注視を上方に向け、眼球が上方に回転し、眼の視軸を上部の近見視力ゾーン102bにシフトする。下部スリット106cおよび106dが開いて、下部周辺ゾーン104bをわずかに拡張し、下部周辺ゾーン104bにおけるレンズ100の曲率を平坦化して、角膜の下のわずかに凸状が少ない強膜に順応する。同時に、上部スリット106aおよび106bが閉じて、上部周辺ゾーン104aをわずかに収縮させ、上部周辺ゾーン104bにおけるレンズ100の曲率を増加させて、わずかに凸状が多い角膜に順応し、今度は、上部周辺ゾーン104bの下部部分に隣接する視覚ゾーン102の下部部分における近見視力ゾーン102bと整列される。
【0057】
上記の光学特性は、レンズ100の両側に実装することができ、これにより、装着者は、レンズのいずれかの面を眼の表面に置いて、それに応じて視力を矯正することができる。例えば、乱視、近視、および遠視の矯正は、レンズ100のどの面でも実装することができる。レンズ100はトーリックレンズとすることができ、標準的なラスカット、成形、振動システム、または回折技術などによる任意の適切な技術を使用して製造することができる。
【0058】
上記のレンズにより、バラストレンズ設計の欠点のいくつかを回避しながら、レンズが眼球上を移動できることを理解されたい。バラストレンズは、通常、安定性を提供するために下半分がより厚い。しかしながら、下半分のこの厚さは、角膜および強膜の領域への酸素の供給を遮断し、これらの組織の適切な代謝を妨げ、装着者に不快感を与える可能性がある。
【0059】
レンズ100は、スピンキャスト技法、射出成形、注型成形などであるがこれらに限定されない任意の適切な方法を使用して製造することができる。例えば、適切な注型成形技法は、EzekielへのPCT公報第WO2013/033752号に説明されている。
【0060】
ここで、一実施形態による、適応可能な曲率を有するソフトコンタクトレンズ200を示す図6を参照する。レンズ200は、前の図のレンズ100に類似しているが、レンズ200はその下部エリアが切断210されており、下部周辺ゾーンがないという顕著な違いがある。図6における参照番号は、考察を簡単にするために、前の図における対応する要素よりも100だけ大きくなっている。これらすべての要素は、図6および他の図全体で同一であり得る。
【0061】
レンズ200のこの切断構造により、下部周辺スリットの必要性が回避される。なぜなら、レンズの下部エリアには、変化する曲率の角膜および/または強膜上をレンズが自由にスライドすることを妨げるものがないからである。
【0062】
切断線は、図6に示されるように真っすぐであってもよいし、弓形であってもよいし、他の任意の形状(図示せず)であってもよい。切断線は、スリット206a~bの長手方向寸法に垂直であるか、またはその長手方向寸法に対して例えば60~120度の角度(図示せず)で配置されてもよい。
【0063】
切断線は、視覚ゾーン202と隣接するか、または、そこからわずか離れていてもよく、例えば、視覚ゾーンから0.3~0.6mm、0.6~0.9mm、0.9~1.2mm、1.2~1.5mm、1.5~1.8mm、または1.8mmよりも大きい距離にあり得る。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0064】
当業者はまた、切断線がレンズの上部にあり、1つ以上のスリットがレンズの底部にある、反対の実施形態(図示せず)も容易に認識するであろう。
【0065】
図では、要素に常に参照番号が付けられているとは限らない。例えば、特定の要素は、より多くの図のうちの1つでは参照番号が付けられ、他の1つ以上の図では、単に簡潔にするために、その参照番号なしで示されている場合がある。本出願のすべての図は同じデバイスを示しているので、同じ形状を持ち、参照番号を有するときもあれば有さない時もある、異なる図に現れる要素は、同じ要素として解釈されることが意図されている。
【0066】
本出願の説明および特許請求の範囲において、「備える(comprise)」、「含む(include)」、および「有する(have)」という語、ならびにそれらの形態のそれぞれは、必ずしも、その語が関連付けられ得るリスト内のメンバーに限定されない。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
【国際調査報告】