(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-01
(54)【発明の名称】シーラント層及び吸音要素を備えるタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 19/00 20060101AFI20220325BHJP
B60C 5/00 20060101ALI20220325BHJP
B60C 19/12 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
B60C19/00 G
B60C5/00 F
B60C19/12 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021545746
(86)(22)【出願日】2020-01-31
(85)【翻訳文提出日】2021-09-17
(86)【国際出願番号】 IB2020050793
(87)【国際公開番号】W WO2020161579
(87)【国際公開日】2020-08-13
(31)【優先権主張番号】102019000001641
(32)【優先日】2019-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518333177
【氏名又は名称】ブリヂストン ヨーロッパ エヌブイ/エスエイ
【氏名又は名称原語表記】BRIDGESTONE EUROPE NV/SA
【住所又は居所原語表記】Kleine Kloosterstraat 10, B-1932 Zaventem (BE)
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100202636
【氏名又は名称】鈴木 麻菜美
(72)【発明者】
【氏名】エンリコ フレスチ
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA28
3D131AA30
3D131BA02
3D131BC09
3D131BC24
3D131BC44
3D131BC55
3D131BC57
3D131CB01
3D131CB03
3D131LA13
3D131LA28
(57)【要約】
トレッド(2)と、内部空洞(4)を区画するカーカス(3)と、圧力下でカーカス(3)の内部空洞(4)内に含まれた空気を確実にとどめるように設計されたインナーライナー(5)と、インナーライナー(5)と接触するように内部空洞(4)内に配置されたシーラント層(6)と、内部空洞(4)内に同様に配置された吸音層(7)と、を備えるチューブレスタイヤ(1)。タイヤ(1)は、内部空洞(4)内に収容され、吸音層(7)を支持するように設計され、常にシーラント層(6)から隔てられた状態に保つ、支持構造(8)を備えている。支持構造(8)は、インナーライナー(5)と接触する端を有するとともに、シーラント層(6)に部分的に埋設された間隔部(9)と、吸音層(7)がその上に固定された支持部(10)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド(2)と、内部空洞(4)を区画するカーカス(3)と、圧力下で前記カーカス(3)の前記内部空洞(4)内に含まれた空気を確実にとどめるように設計されたインナーライナー(5)と、前記インナーライナー(5)と接触するように前記内部空洞(4)内に配置されたシーラント層(6)と、発砲材料で作られ、且つ、前記内部空洞(4)内に同様に配置された吸音層(7)と、を備えるチューブレスタイヤ(1)であって、
前記タイヤは、前記内部空洞(4)内に収容され、前記吸音層(7)を支持するように設計され、常に前記シーラント層(6)から隔てられた状態に保つ、支持構造(8)を備え、前記支持構造(8)は、ポリマー非発砲材料で作られており、前記インナーライナー(5)と接触する端を有するともに、前記シーラント層(6)に部分的に埋設された、間隔部(9)と、前記吸音層(7)がその上に固定された支持部(10)と、を備えることを特徴とする、タイヤ(1)。
【請求項2】
請求項1に記載のタイヤであって、前記支持構造(8)は、各々が前記インナーライナー(5)と接触する、複数の脚(9a)を備えることを特徴とする、タイヤ(1)。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のタイヤであって、前記支持構造(8)は、1000~2900N/m
2の範囲のヤング率を有する材料でできていることを特徴とする、タイヤ(1)。
【請求項4】
請求項3に記載のタイヤであって、前記支持部(10)と前記シーラント層(6)の自由表面との距離は、少なくとも2mm以上であることを特徴とする、タイヤ(1)。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のタイヤであって、前記支持構造を構成する材料は、アクリロニトリル・ブタジエンスチレン(ABS)であることを特徴とする、タイヤ(1)。
【請求項6】
請求項3又は4に記載のタイヤであって、前記支持構造を構成する材料は、シリコーンであることを特徴とする、タイヤ(1)。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のタイヤであって、前記支持構造(8)は、3D印刷、射出成形、又は押出によって製造されることを特徴とする、タイヤ(1)。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のタイヤであって、前記シーラント層の厚さは0.5~6mmの範囲であり、前記吸音層の厚さは、好ましくは2~50mmの範囲であることを特徴とする、タイヤ(1)。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のタイヤであって、前記支持部(10)の幅(L)は、5~50mmの範囲であることを特徴とする、タイヤ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンクした後でも、タイヤ自体の機能を確保するためのシーラント層と、使用中に発生する騒音を低減するための吸音要素と、の両方を備えるタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
パンクした後でもタイヤの機能を確保するために、その内部空洞内に配置された粘性のシーラント層を用いることが、長年知られている。特に、シーラント層は、トレッドバンドの領域において、不浸透性層(以下、「インナーライナー」と称する)に接触して配置されている。
【0003】
シーラント層の機能は、トレッドを貫通した物体の周りに、いわば瞬間的な「シール」を作成して、空気がタイヤから流出するのを防ぐことである。さらに、上記物体が出てきたときに、シーラント層の材料は、物体によって残された穴を埋めて、シールする機能を有する。
【0004】
シーラント層の粘度は、上記のタスクを効果的に実行できるようにするための、最も重要なパラメータの1つである。実際、シーラント層の粘度は、上記のように、とても短い時間で、トレッドを貫通した物体及び物体によって残された穴に発揮されるシール作用と、タイヤの内部空洞における、タイヤの回転局面又は停止局面の間の寸法安定性との両方を確実にするようなものでなければならない。
【0005】
タイヤ産業においては、吸音層を用いることが知られており、これもタイヤの空洞内に配置されている。実際、タイヤの動作によって発生される騒音の1つは、その内部空洞内に存在する、圧力下の空気の振動によって発生される共鳴空洞音であり、内部空洞は、知られているように、インナーライナーによって覆われており、圧力下の空気で満たされている。吸音層は、通常は発泡材料で作られており、空洞に面するインナーライナーの表面に適用される。
【0006】
この目的のために用いられる最も一般的に知られた材料は、ポリウレタンフォームである。実際、ポリウレタンフォームは、低い吸水率を有し、その結果として、経時的な重量増加への影響が少なく、その結果、転がり抵抗及びそれから派生する車両の燃費に関して利点がある。
【0007】
シーリング作用及び吸音作用を1つのタイヤにおいて兼ね備える必要があるとき、その内部空洞は、シーラント層及び吸音層の両方を同時に収容する必要がある。明らかに、シーラント層が作動するメカニズムを考慮して、実験された工学は、インナーライナーに接触するように配置されたシーラント層と、今度は、インナーライナーに対して反対側のシーラント層と接触して配置された発泡材料を採用した。
【0008】
実験は、発泡材料がシーラント層と物理的に相互作用して、前者の吸音層と後者のシーリング特性の両方が危険にさらされる結果を示したため、このような解決策は、効果がないことが判明した。
【0009】
従って、製造者が、タイヤの内部空洞において、シーラント層及び吸音要素の両方を用いることができるようにしながら、同時に、シーリング及び吸音特性をそれぞれ変化させないようにする、解決策に頼る必要があった。
【0010】
本発明の発明者は、簡便且つ経済的な手法で、上記のニーズを満たすことができる解決策を考案した。
【0011】
本発明の要旨は、トレッドと、内部空洞を区画するカーカスと、圧力下で前記カーカスの前記内部空洞内に含まれた空気を確実にとどめるように設計されたインナーライナーと、前記インナーライナーと接触するように前記内部空洞内に配置されたシーラント層と、発砲材料で作られ、且つ、内部空洞内に同様に配置された吸音層と、を備えるチューブレスタイヤであって、前記タイヤは、前記内部空洞内に収容され、前記吸音層を支持するように設計され、常に前記シーラント層から隔てられた状態に保つ、支持構造を備え、前記支持構造は、ポリマー非発砲材料で作られており、前記インナーライナーと接触する端を有するとともに、前記シーラント層に部分的に埋設された、間隔部と、前記吸音層がその上に固定された支持部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
前記支持構造は、好ましくは、各々が前記インナーライナーと接触する、複数の脚を備えている。
【0013】
そうすることによって、シーラント層に覆われていないインナーライナーの表面を可能な限り最小限に抑えられる。
【0014】
前記支持構造は、好ましくは、1000~2900N/m2の範囲のヤング率を有する材料でできており、より好ましくは、前記支持部と前記シーラント層の自由表面との距離は、少なくとも2mm以上である。
【0015】
このようにして、タイヤの回転中に、支持部が曲がり、それによって、吸音層がシーラント層に接触することによって、両者の有効性が危険にさらされることが防止される。
【0016】
支持構造を構成する材料は、好ましくは、アクリロニトリル・ブタジエンスチレン(ABS)である。ABSは、高い硬度及び高い衝撃性を有している。ABSの他の有益な点は、リサイクル性にある。
【0017】
支持構造を好ましく製造することができる別の材料は、シリコーンである。この材料は、タイヤから簡便に取り除くことができるので、タイヤ自体の正しいリサイクルを確実にできるという有利な点を有する。
【0018】
支持構造は、好ましくは、3D印刷、射出成形、又は押出によって製造される。
【0019】
シーラント層の厚さは、好ましくは0.5~6mmの範囲であり、その一方で、吸音層の厚さは、好ましくは2~50mmの範囲である。
【0020】
前記支持部の幅は、好ましくは5~50mmの範囲である。
【0021】
以下、本発明に従うタイヤの断面を示す、添付図面の助けを借りて、単なる例として、本発明の実施形態の説明を理解することができるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】前述の図面において、番号1は、全体として、本発明に従うタイヤを示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
タイヤ1は、トレッド2と、タイヤ1の内部空洞4を区画するカーカス3と、内部空洞4に面するとともに、圧力下で、内部空洞4内に含まれた空気を確実にとどめるように設計された、インナーライナー5と、トレッド2の領域において、不浸透性層5と接触するように配置されたシーラント層6と、動作中のタイヤによって発生される共鳴空洞音を軽減するために空洞4内に配置された、吸音層7と、を備えている。
【0024】
タイヤ1は、さらに、シーラント層6から隔てられた状態を保ちながら、吸音層7を支持するように設計された支持構造8を備えている。
【0025】
支持構造8は、本明細書に示す例では、複数の脚9aからなる間隔部9と、吸音層7がその上に配置された支持部10とを備えている。
【0026】
間隔部9は、インナーライナー5と接触する第1の端と、支持部10に固定された第2の端とを有する。図面によれば、間隔部はインナーライナー5の上に載っており、それが延びるところから、シーラント層6を通過して、支持部10、従ってそこに固定された吸音層7を、シーラント層6から適切な間隔に保持するようにする。そうすることによって、発泡材料で作られた吸音層7が、両者を機能的に危険にさらし得る、シーラント層6と接触しないことが保証される。実際、そこでシーラント層と接触しているのは、非発泡材料では作られていない、支持部10のみであり、シーラント層と物理的に相互作用しないだろう。
【0027】
当業者がすぐに理解できるように、動作中のタイヤの回転中、支持構造8は、必然的に、それを変形させ得る力を受ける。支持構造8が、シーラント層6と吸音層7との間の分離をもはや確実にすることができないような変形を防ぐために、支持構造8は、好ましくは、1000~2900N/m2の範囲のヤング率を有する材料で製造され、支持構造8とシーラント層6の自由表面との距離は、好ましくは、少なくとも2mm以上である。
【0028】
特に、実施例の支持構造8を構成する材料はABSであり、それは、本発明のニーズによく適合する機械的特徴を有する。
【0029】
支持構造8を製造するのに有利に用いられてきた、他の材料は、シリコーンである。シリコーンは、タイヤから簡便に取り除くことができるので、タイヤ自体の正しいリサイクルを確実にできるという有利な点を有する。
【0030】
上記のことによって、本発明は、支持構造の存在のおかげで、従来技術の問題によって影響されることなく、製造者が、同時に且つ効果的な方法で、シーラント層及び吸音層を備えるタイヤを製造することができるようにすることは明らかである。これは、シーラント層によって、パンクしたタイヤの影響に対抗するとともに、吸音層の手段によって、内部空洞内で発生された騒音を軽減することの、両方が可能な技術的特徴を有する、タイヤにつながる。
【国際調査報告】