(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-01
(54)【発明の名称】in vivoでの免疫細胞の増殖をブースト可能なアジュバント
(51)【国際特許分類】
A61K 39/39 20060101AFI20220325BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20220325BHJP
C12N 5/078 20100101ALI20220325BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20220325BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220325BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220325BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20220325BHJP
A61K 39/29 20060101ALI20220325BHJP
A61K 39/245 20060101ALI20220325BHJP
A61K 39/21 20060101ALI20220325BHJP
A61K 39/02 20060101ALI20220325BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20220325BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20220325BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220325BHJP
C07K 14/02 20060101ALN20220325BHJP
C07K 14/155 20060101ALN20220325BHJP
C07K 14/005 20060101ALN20220325BHJP
C07K 14/205 20060101ALN20220325BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20220325BHJP
C12N 5/0781 20100101ALN20220325BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20220325BHJP
【FI】
A61K39/39
C07K14/705 ZNA
C12N5/078
C12N5/0783
C12N5/10
C07K19/00
A61K39/12
A61K39/29
A61K39/245
A61K39/21
A61K39/02
A61K39/00 H
A61K35/17 Z
A61P35/00
C07K14/02
C07K14/155
C07K14/005
C07K14/205
C12N15/12
C12N5/0781
C12N15/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021546810
(86)(22)【出願日】2020-02-11
(85)【翻訳文提出日】2021-10-11
(86)【国際出願番号】 CN2020074686
(87)【国際公開番号】W WO2020164465
(87)【国際公開日】2020-08-20
(31)【優先権主張番号】201910106097.7
(32)【優先日】2019-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520161045
【氏名又は名称】キネオ メディカル テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グー、ウェイユエ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C085AA38
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4C085BA80
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4C087AA01
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4C087BB37
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4C087NA14
4C087ZB26
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、in vivoでの免疫細胞数の増殖を促進することのできるアジュバント、およびアジュバントと免疫細胞とを含む組み合わせを提供する。本発明はさらに、前記アジュバントと改変された免疫細胞とを含むカスケード増殖促進システムを提供する。本発明はさらに、本発明のアジュバントおよび免疫細胞を用いた処置方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫細胞治療を補助するためのアジュバントであって、前記アジュバントがブースター抗原(BA)を含み、前記ブースター抗原が特定の改変が施された治療性免疫細胞をin vivoで活性化することができ、in vivoでの増殖のために前記免疫細胞の数をブーストすることを特徴とするアジュバント。
【請求項2】
前記ブースター抗原は、末梢血細胞または腫瘍細胞または病原体の表面上のマーカーまたは膜タンパク質であり、前記末梢血細胞は、B細胞、T細胞、NK細胞、顆粒球、赤血球、血小板より選ばれ、前記病原体は、HPVウイルス、EBウイルス、ヘリコバクターピロリ菌(HP)、B型肝炎ウイルス(HBV)、エイズウイルス(HIV)より選ばれることを特徴とする、請求項1記載のアジュバント。
【請求項3】
前記ブースター抗原は、一つのヒトの天然タンパク質の野生型または変異型の完全長または部分的フラグメント、または、複数のヒトの天然タンパク質の野生型または変異型の完全長または部分的フラグメントであることを特徴とする、請求項1記載のアジュバント。
【請求項4】
前記ブースター抗原は、CD19もしくはEGFRviii、または、CD19および/またはCD86および/またはCD137Lを含む組成物、または、EGFRviiiおよび/またはCD86および/またはCD137Lを含む組成物であることを特徴とする、請求項1記載のアジュバント。
【請求項5】
前記アジュバントは、タンパク質、化合物、複合体、ブースター細胞または人工のナノ材料から選ばれることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のアジュバント。
【請求項6】
前記ブースター細胞は、対象の自己または異種体由来の末梢血単核細胞(PBMC)またはB細胞、T細胞、およびNK細胞のうちの1つまたは複数であることを特徴とする、請求項5記載のアジュバント。
【請求項7】
前記ブースター細胞は、未改変の天然の細胞、または改変された細胞、または不死化B細胞もしくはNK細胞(NK92など)もしくはK562細胞であることを特徴とする、請求項6記載のアジュバント。
【請求項8】
前記アジュバントはブースター細胞であり、前記ブースター抗原が前記ブースター細胞上に発現される膜貫通性であり、前記ブースター抗原は、細胞外結合ドメインおよび膜貫通領域を含む融合タンパク質であり、前記治療性免疫細胞は前記細胞外結合ドメインを認識することができ、前記膜貫通領域は、前記ブースター細胞によって天然に発現されるタンパク質の一部または完全な構造であることを特徴とする、請求項5記載のアジュバント。
【請求項9】
前記ブースター細胞はブースターT細胞であり、前記細胞外結合ドメインはEGFRviiiまたはCD19の一部の領域であり、および、前記膜貫通領域はCD3の一部の領域であることを特徴とする、請求項8記載のアジュバント。
【請求項10】
請求項1~4または6~9のいずれか1項に記載のブースター抗原に特異的に結合することのできるキメラ抗原受容体(aBA-CAR)であって、前記aBA-CARは前記ブースター抗原に特異的に結合する抗体の抗原結合ドメインを含むことを特徴とする、aBA-CAR。
【請求項11】
CD3ζと、前記ブースター抗原を標的とする抗体の可変領域と、共刺激分子とを含む請求項10記載のaBA-CAR。
【請求項12】
前記共刺激分子は、CD28、41BBzおよびICOSのうちの1つまたは複数から選択されることを特徴とする、請求項10記載のaBA-CAR。
【請求項13】
CARまたはCAR-T細胞の発現を調節する、または、CAR-TもしくはCAR-NK細胞に細胞死もしくはアポトーシスを起こさせるスイッチングエレメント、例えばTET-ONを含むことを特徴とする、請求項10~12のいずれか1項に記載のaBA-CAR。
【請求項14】
治療性免疫細胞であって、前記免疫細胞は二重特異性を有し、前記二重特異性は標的細胞の特異的認識および請求項1に記載のアジュバントに含まれるブースター抗原の特異的認識を意味し、前記標的細胞は、例えば腫瘍細胞、またはウイルス、細菌、真菌などの病原体細胞などの人体に有害な細胞であり、前記免疫細胞は請求項1記載のアジュバントによってin vivoで活性化されおよび増殖され得、前記免疫細胞によって認識される標的細胞の標的は違っていてもまたは同一でもよいことを特徴とする、治療性免疫細胞。
【請求項15】
前記免疫細胞は請求項10記載のaBA-CARを発現していることを特徴とする、請求項14記載の治療性免疫細胞。
【請求項16】
前記免疫細胞はT細胞またはNK細胞のうちの任意の一つ、またはそれらの混合物であることを特徴とする、請求項14または15記載の治療性免疫細胞。
【請求項17】
前記免疫細胞はT細胞であることを特徴とする、請求項16記載の治療性免疫細胞。
【請求項18】
前記T細胞は腫瘍認識性T細胞または腫瘍抗原反応性T細胞であり、腫瘍ネオアンチゲン、または腫瘍関連抗原(TAA)、またはがん精巣抗原、またはウイルス抗原(HPVまたはEBVウイルスに感染してがん化した細胞表面のウイルス抗原など)を認識するために、天然の未改変のTCRを用いて腫瘍または腫瘍アンチゲンを認識し、前記腫瘍認識性T細胞または腫瘍抗原反応性T細胞は、ワクチン誘導によって得るか、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)から得るか、または、末梢血の特定のマーカー(PD1、TIM3、CD137、CD39、CD28など)を用いたポジティブまたはネガティブスクリーニングによって得られ得ることを特徴とする、請求項17に記載の治療性免疫細胞。
【請求項19】
前記T細胞は、腫瘍湿潤Tリンパ球(TIL)由来であるか、または、PD1、TIM3、CD137、CD39、CD28などのマーカーの1つまたは複数を用いてポジティブまたはネガティブスクリーニングに付されたTILであることを特徴とする、請求項17記載の治療性免疫細胞。
【請求項20】
前記T細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)由来であるか、または、PD1、TIM3、CD137、CD39などのマーカーの1つまたは複数を用いてポジティブまたはネガティブスクリーニングに付されたPBMC由来であることを特徴とする請求項17に記載の治療性免疫細胞。
【請求項21】
前記T細胞は、前記aBA-CARの改変以外の追加の遺伝子改変に付されることを特徴とする、請求項17~20のいずれか1項に記載の治療性免疫細胞。
【請求項22】
前記T細胞は、前記aBA-CARの改変に加えて、CARまたは外来性TCRを発現するように改変されたCAR-TまたはTCR-T細胞であり、および、前記CARまたは外来性TCRは、その天然TCR以外の標的細胞を認識する特異性を付与することを特徴とする、請求項17~21のいずれか1項に記載の治療性免疫細胞。
【請求項23】
前記T細胞は強化受容体を発現し、前記強化受容体は、膜貫通タンパク質であり、および、T細胞の細胞外ドメイン(ECD)と細胞内ドメイン(ICD)とから構成され、前記ECDは、前記免疫細胞の標的細胞の膜タンパク質の受容体、リガンド、抗体のうちのいずれか一つの完全な配列構造、または前記膜タンパク質に結合することのできる他のタンパク質構造、またはそれらの結合ドメインを含む部分であり、前記ICDは、CD28または41BBまたはICOSなどの共刺激シグナルタンパク質のいずれか1つであり、CD3は含まないことを特徴とする、請求項17~22のうちいずれか1項に記載の治療性免疫細胞。
【請求項24】
前記強化受容体のECDが、そのリガンドへの結合により、前記T細胞上に抑制シグナルを産生し、完全な強化受容体はそのリガンドへの結合により、前記T細胞上に活性化シグナルを産生することを特徴とする、請求項23に記載の治療性免疫細胞。
【請求項25】
前記免疫細胞は前記aBA-CARを発現するための改変以外に、追加の他の遺伝子改変に付されたNK細胞であることを特徴とする、請求項16に記載の治療性免疫細胞。
【請求項26】
前記NK細胞は、aBA-CAR改変に加えてCARを発現するように改変されたCAR-NK細胞であり、および、前記CARは、前記NK細胞が標的細胞を認識して死滅させることを可能にしていることを特徴とする、請求項25に記載の治療性免疫細胞。
【請求項27】
前記細胞はNKG2Dの構造の一部を含むように改変されていることを特徴とする、請求項26に記載の治療性免疫細胞。
【請求項28】
前記アジュバントが、n種類の請求項9記載のブースター細胞から構成されるカスケード増殖ブースターシステムであり、nは正の整数であり、第1段階ブースター細胞は第1のブースター抗原(BA1)を発現し、第2段階ブースター細胞は、第2のブースター抗原(BA2)と第1のブースター抗原を特異的に標的とするaBA1-CARとを発現し、第3段階ブースター細胞は第3のブースター抗原(BA3)と第2のブースター抗原を特異的に標的とするaBA2-CARとを発現し、…第n段階ブースター細胞は第n番目のブースター抗原(BAn)と第(n-1)番目のブースター抗原を特異的に標的とするaBA
n-1-CARとを発現し、前記第n番目のブースター抗原BAnは、前記治療性免疫細胞により認識されることができ、かつ、各段階のブースター抗原は相互に異なることを特徴とする、請求項1に記載のアジュバント。
【請求項29】
前記nは、1~10000000の範囲の任意の整数に等しいことを特徴とする、請求項28に記載のアジュバント。
【請求項30】
異なる段階のブースター細胞は、同一タイプの細胞であってもよく、異種の細胞であってもよく、複数のタイプの細胞の混合物であってもよいことを特徴とする、請求項28または29に記載のアジュバント。
【請求項31】
請求項1~9または28~30のいずれか1項に記載のアジュバントを含むことを特徴とする、医薬組成物。
【請求項32】
前記医薬組成物が、請求項31に記載の医薬組成物と、請求項14~27のうちいずれか1項に記載の治療性免疫細胞とを含み、前記治療性免疫細胞と前記医薬組成物とは適切な時点で単回または連続的に複数回で再投与することで、前記治療性免疫細胞が前記医薬組成物中のアジュバントにより活性化されおよび定量的に増殖され、これにより標的細胞を同定および死滅させ得ることを特徴とする、医薬の組み合わせ。
【請求項33】
請求項31に記載の医薬組成物または請求項32の医薬の組み合わせを用いることを含み、前記医薬組成物および前記治療性免疫細胞が適切な時点で単回または連続的に複数回再投与することを特徴とする、がんを処置するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオ医薬技術分野に属する。具体的には、本開示は、比較的手動で制御可能な定量的な増殖を達成し、それによって免疫治療の効果を高めるために、T細胞などの免疫細胞のin vivoでの増殖を改善することのできるブースターアジュバントを提供する。
【背景技術】
【0002】
充実性腫瘍の免疫細胞治療における第一の困難は、患者自身の天然のT細胞には腫瘍を認識する細胞が非常に少ないことである。このため、自己の天然T細胞から腫瘍認識性T細胞を分離することが非常に難しくなっている。次に、たとえ分離に成功しても、晩期腫瘍に対抗可能かつ有意な治療効果を生み出すのに必要な数までin vitroで増殖させるのもまた、非常に難しいプロセスである。さらに、in vitroで所要数まで増殖できたとしても、そのプロセスの周期の長さ、コストの高さが、実用化を阻んでいる。この他、多くの腫瘍認識性T細胞は疲弊状態にあり、in vitroでの増殖後に大量死亡し、想定される効果を発揮することができない。細胞免疫治療で使用する免疫細胞の機能をいかに改善しより良い治療効果を実現するかは、未だ解決が待たれる問題である。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、免疫細胞治療のためのブースターアジュバントを提供し、ここでブースターアジュバントは、相応に改変された免疫細胞と併用された場合に、当該免疫細胞のin vivoでの増殖をブーストすることができ、増殖数が大幅に向上され、これにより免疫治療の効果を増強して上記の問題を解決する。
【0004】
別途説明がある場合を除き、本明細書で開示する方法の実践には、免疫学、生物化学、化学、分子生物学、微生物学、細胞生物学、ゲノム科学、組換DNAの従来技術を用いており、これらの技術は本分野の技術範囲に含まれる。例えば、SambrookおよびGreen,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th Edition(2012)、シリーズ分子生物学(F.M.Ausubelら編)、シリーズ酵素科学の方法(Academic Press,Inc.)、PCR 2:A Practical Approach(M.J.Machersrs,B.D.Hames and G.R.Taylor編(1995))、Harlow and Lane編(1988)Antibodies,A Laboratory Manual、およびCulture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique and Specialized Applications,第6版(R.I.Breshney編(2010))を参照されたい。
【0005】
用語「約」や「およそ」は、当業者が確定する特定の値の許容可能な誤差範囲内にあることを意味するが、これは測定方法または当該値の確定方法、すなわち測定システムの極限性により決まる部分がある。例えば、本分野の実践に基づくと、「約」は1または1より大きい標準偏差内であることを示すことができる。あるいは、「約」は所定値の最大20%、最大10%、最大5%または最大1%の範囲をも示し得る。あるいは、特に生物学的システムまたはプロセスにおいて、当該用語は数値のオーダーを示すことができ、好適には5倍以内、より好適には2倍以内である。本願および特許請求の範囲において特定の値を挙げている場合、別途説明がない限り、用語「約」とは、特定の値の許容可能な誤差範囲内を意味すると仮定すべきである。
【0006】
本明細書で用いる「細胞」は、通常、生物学的細胞を指す。細胞は、生物体の基本構造、機能および/または生物学的単位であってもよい。細胞は、1または複数の細胞を有する任意の生物由来であってもよい。非限定的な例としては、原核細胞、真核細胞、細菌細胞、古細菌細胞、単細胞真核生物細胞、原生動物細胞、植物由来の細胞、藻類細胞、真菌細胞、動物細胞(無脊椎動物由来の細胞(例えば、ミバエ、刺胞動物、棘皮動物、線虫など)、脊椎動物由来の細胞(例えば、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類)、哺乳類由来の細胞(例えば、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、げっ歯類、ラット、マウス、ヒトなど)を含む)などが含まれる。細胞は天然生物由来ではないこともある(例えば、人工細胞とも呼ばれる合成の細胞であってもよい)。
【0007】
本明細書で用いる用語「抗原」とは、選択的な結合剤によって結合され得る分子またはそのフラグメントを指す。例えば、抗原は、受容体などの選択的な結合剤によって結合され得るリガンドであってもよい。別の例として、抗原は、免疫タンパク質(例えば抗体)のような選択的な結合剤によって結合され得る抗原分子であってもよい。また、抗原とは、動物の体内において当該抗原に結合可能な抗体を産生するのに用いられる分子またはそのフラグメントを指すこともできる。
【0008】
本明細書で用いる用語「ネオアンチゲン」とは、通常、遺伝子の突然変異により生じた腫瘍特異性の抗原を指す。得られた突然変異タンパク質またはそのフラグメントは抗腫瘍T細胞の応答を引き起こすことができる。
【0009】
本明細書で用いる用語「遺伝子」とは、核酸(例えば、ゲノムDNAおよびcDNAなどのDNA)およびその対応するRNA転写産物をエンコードするヌクレオチド配列を指す。本明細書で用いる、ゲノムDNAに関する用語には、介在非コード領域および調節領域を含み、5’および3’末端も含まれ得る。いくつかの用途において、当該用語は転写配列を含み、ここには5’および3’非翻訳領域(5’-UTRおよび3’-UTR)、エクソンおよびイントロンが含まれる。いくつかの遺伝子において、転写領域にはポリペプチドをエンコードする「オープンリーディングフレーム」を含む。当該用語のいくつかの用途において、「遺伝子」にはポリペプチドのエンコーディングに必要なコード配列のみを含む(例えば、「オープンリーディングフレーム」または「コード領域」)。いくつかの場合において、遺伝子はポリペプチドをコードしない。例えばリボソームRNA遺伝子(rRNA)およびトランスファーRNA(tRNA)遺伝子である。いくつかの場合において、用語「遺伝子」には転写配列だけでなく非転写領域も含み、ここには上流および下流の調節領域、エンハンサーおよびプロモーターが含まれる。遺伝子とは、生物のゲノムのうち天然の位置の「内在性遺伝子」または天然遺伝子を指すことができる。遺伝子は、「外来遺伝子」または非天然遺伝子を指すことができる。非天然遺伝子とは、通常は宿主の生物体内では見られないが遺伝子導入によって宿主の生物体に導入される遺伝子を指すことができる。また、非天然遺伝子は、生物体のゲノムの天然の位置にない遺伝子を指すこともできる。さらに、非天然遺伝子は、天然に存在する核酸またはポリペプチド配列を指すこともでき、ここには突然変異、挿入および/または欠失(例えば、非天然配列)が含まれる。
【0010】
本明細書で用いる用語「抗体」とは、免疫グロブリン様の機能を有するタンパク質結合分子を指す。抗体という用語には、抗体(例えば、モノクローナルおよびポリクローナル抗体)およびその誘導体、バリアントおよびフラグメントを含む。抗体には、異なるクラス(すなわちIgA、IgG、IgM、IgDおよびIgE)およびサブクラス(例えば、IgG1、IgG2など)の免疫グロブリン(Ig)が含まれるがこれに限らない。その誘導体、バリアントおよびフラグメントとは、対応する抗体の結合特異性(例えば、完全な、および/または部分的な)を保持した機能的誘導体またはフラグメントを指すことができる。抗原結合フラグメントには、Fab、Fab’、F(ab’)2、可変領域フラグメント(Fv)、単鎖可変領域フラグメント(scFv)、マイクロ抗体、二重抗体およびシングルドメイン抗体(「sdAb」または「ナノボディ」または「ラクダ化抗体」)が含まれる。抗体という用語には、最適化された、操作された、または化学結合された抗体および抗体の抗原結合性フラグメントが含まれる。最適化された抗体の例には、親和性成熟された抗体が含まれる。抗原操作された抗体の例には、Fc最適化抗体(例えば、フラグメントの結晶化可能領域を最適化した抗体)および多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)が含まれる。
【0011】
本明細書で用いる用語「ヌクレオチド」とは、通常、塩基-糖-リン酸の組み合わせを指す。ヌクレオチドには合成ヌクレオチドが含まれ得る。ヌクレオチドには合成したヌクレオチドアナログが含まれ得る。ヌクレオチドは、核酸配列のモノマー単位(例えば、デオキシリボ核酸(DNA)やリボ核酸(RNA))であってもよい。ヌクレオチドという用語には、リボヌクレオシド三リン酸であるアデノシン三リン酸(ATP)、ウリジン三リン酸(UTP)、シトシン三リン酸(CTP)、グアノシン三リン酸(GTP)、およびデオキシリボヌクレオシド三リン酸であるdATP、dCTP、dITP、dUTP、dGTP、dTTP、またはそれらの誘導体が含まれ得る。これら誘導体には、例えば、(αS)dATP、7-デアザ-dGTPおよび7-デアザ-dATP、並びにこれらを含む核酸分子にヌクレアーゼ耐性を付与するヌクレオチド誘導体が含まれ得る。本明細書で用いるヌクレオチドという用語は、ジデオキシリボヌクレオシド三リン酸(ddNTP)およびその誘導体を指すことができる。ジデオキシリボヌクレオシド三リン酸を説明する例としてはddATP、ddCTP、ddGTP、ddITPおよびddTTPが含まれ得るが、これに限らない。ヌクレオチドは、周知の技術によって無標識または検出可能な標識を行うことができる。標識は量子ドットで行ってもよい。検出可能な標識には、例えば放射性同位元素、蛍光標識、化学発光標識、生物発光標識および酵素標識が含まれ得る。
【0012】
用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は互換使用が可能であり、任意の長さのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドのどちらであってもよいヌクレオチド、またはそのアナログの重合体であって、一本鎖、二本鎖、または多重鎖の形状であってもよい重合体を意味するように互換的に使用される。ポリヌクレオチドは、細胞に対して外来のものでも内在のものでもよい。ポリヌクレオチドは、無細胞環境中に存在することができる。ポリヌクレオチドはその遺伝子またはフラグメントであってもよい。ポリヌクレオチドはDNAであってもよい。ポリヌクレオチドはRNAであってもよい。ポリヌクレオチドは、任意の3次元構造を有してもよく、また既知または未知の任意の機能を果たしてもよい。ポリヌクレオチドは、1または複数のアナログを含み得る(例えば、改変された主鎖、糖または核酸塩基)。
【0013】
用語「発現」とは、それによってポリヌクレオチドがDNAテンプレートから例えば、mRNAまたはその他のRNA転写産物へ転写される1または複数のプロセス、および/または、それによって転写されたmRNAが続いて、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質に翻訳される1つまたは複数のプロセスを指す。転写産物およびエンコードされたポリペプチドは、「遺伝子産物」と総称され得る。ポリヌクレオチドがゲノムDNA由来である場合、発現には真核細胞中のmRNAのスプライシングを含み得る。発現に関して、「アップレギュレーション」とは、通常、ポリヌクレオチド(例えば、mRNAなどのRNA)および/またはポリペプチド配列の発現レベルが、野生型の状態での発現レベルに比べて増大することを指し、「ダウンレギュレーション」とは、通常、ポリヌクレオチド(例えば、mRNAなどのRNAなど)および/またはポリペプチド配列の発現レベルが、野生型の状態での発現に比べて低下することをいう。
【0014】
本明細書で用いる、発現または活性に関する用語「調節」とは、発現または活性のレベルを改変することを指す。調節は、転写レベルおよび/または翻訳レベルにおいて発生することができる。
【0015】
用語「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」は、本明細書において互換使用が可能であり、ペプチド結合によって結合する少なくとも2つのアミノ酸残基の重合体を指す。当該用語は、特定の長さの重合体を意味するものではなく、また、ペプチドが組換技術、化学合成または酵素反応による合成で産生されたものであったり、または天然に存在するものであったりすることを示唆したり、そのような区別をしたりする意味もない。当該用語は、天然に存在するアミノ酸重合体、および、少なくとも1つの改変されたアミノ酸を含むアミノ酸重合体に適用される。いくつかの場合において、重合体は非アミノ酸により中断され得る。当該用語は、任意の長さのアミノ酸の鎖を含み、ここには全長タンパク質、および、二次または三次構造を有するまたは有しないタンパク質(例えば、ドメイン)が含まれる。当該用語はさらに、修飾アミノ酸重合体も含み、前記修飾は、例えば、ジスルフィド結合による形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、酸化およびその他任意の操作(例えば、標識成分との共役など)によって行われる。本明細書に用いる用語「アミノ酸」は、通常、天然および非天然のアミノ酸を指し、ここには修飾アミノ酸およびアミノ酸アナログを含むがこれに限らない。改変したアミノ酸には、天然アミノ酸と、天然のアミノ酸には存在しない基または化学的部分が含まれるような化学的改変が施された非天然アミノ酸とが含まれ得る。アミノ酸アナログは、アミノ酸誘導体を指すことができる。用語「アミノ酸」にはD-アミノ酸およびL-アミノ酸を含む。
【0016】
本明細書中でポリペプチドに使用する場合、用語「誘導体」、「バリアント」および「フラグメント」は、例えばアミノ酸の配列、構造(例えば、二次および/または三次)、活性(例えば、酵素活性)および/または機能上によって、野生型ポリペプチドに関連付けられるポリペプチドを指す。野生型ポリペプチドと比較すると、ポリペプチドの誘導体、バリアントおよびフラグメントは、1つまたは複数のアミノ酸変異(例えば、突然変異、挿入および欠失)、短縮、改変またはその組み合わせを含み得る。
【0017】
本明細書で用いる「融合」は、1つまたは複数の非天然配列(例えば、部分)を含むタンパク質および/または核酸を指すことができる。融合体は、1または複数の同一の非天然配列を含み得る。融合体は、1または複数の異なる非天然配列を含み得る。融合体はキメラであってもよい。融合体は核酸親和性標識を含み得る。融合体はバーコードを含んでもよい。融合体はペプチド親和性標識を含み得る。融合体は、部位特異的ポリペプチドの細胞内局在化(例えば、細胞核を標的とするための核局在化シグナル(NLS)、ミトコンドリアを標的とするためのミトコンドリア局在化シグナル、葉緑体を標的とするための葉緑体局在化シグナル、小胞体(ER)保留シグナルなど)を提供することができる。融合体は、追跡または精製に用いられ得る非天然配列(例えば、親和性標識)を提供することができる。融合体は、例えばビオチンなどの低分子、または、Alexa fluordye、Cyanine3dye、Cyanine5dyeなどの色素であってもよい。
【0018】
本明細書で用いるフレーズ「人工TCR」とは、「外来性T細胞受容体(TCR)複合体」と理解することができ、それは、TCRの1または複数の鎖が免疫細胞のゲノムに導入され、内在的にTCRを発現するかもしれない、または、しないかもしれないTCR複合体を指す。いくつかの場合において、外来性TCR複合体とは、内在性TCRの1または複数の鎖が、例えば核酸またはアミノ酸レベルにおいて、1つまたは複数の突然変異配列を有するようなTCR複合体を指すことができる。外来性TCRが免疫細胞上に発現することで、エピトープまたは抗原(例えば、がん細胞やその他の疾患を引き起こす細胞または粒子表面上に優先的に存在するエピトープまたは抗原)の結合特異性が付与される。外来性TCR複合体はゲノムに導入されるTCR-α、TCR-β鎖、CD3-γ鎖、CD3-δ鎖、CD3-ζ鎖または任意のその組み合わせを含有し得る。いくつかの場合において、ゲノムに導入される鎖は内在性の鎖の代替となることができる。
【0019】
用語「被験者」、「個体」および「患者」は、本明細書において互換使用が可能であり、脊椎動物、好適にはヒトなどの哺乳類を指す。哺乳類には、ネズミ類、サル、ヒト、家畜、競技用動物および愛玩動物が含まれるがこれに限らない。さらに、in vivoで獲得された、またはin vitroで培養された生物学的実体の組織、細胞およびその子孫を含む。
【0020】
本明細書で用いる用語「治療」は、有益な、または所望の結果を得るための方法を指し、治療上のメリットおよび/または予防上のメリットを含むがこれに限らない。例えば、治療には、本明細書で開示されるブースターアジュバントおよび免疫細胞の投与を含み得る。治療上のメリットとは、治療における1または複数の疾患、障害または症状の、治療に関連した何らかの改善または作用を指す。予防上のメリットとしては、本組成物は、特定の疾患、障害、または症状の発生リスクがある被験者、または、疾患、障害、または症状がまだ顕在化していなくても1または複数の疾患の生理的症状を報告している被験者に対し投与され得る。
【0021】
用語「有効量」または「治療有効量」とは、組成物、例えば本開示のブースターアジュバントおよび/またはリンパ球(例えば、Tリンパ球および/またはNK細胞)などの免疫細胞を含む組成物の量であって、それらを必要とする被験者に投与したときに、所望の活性をもたらすために十分な量のことを指す。本開示の文脈において、用語「治療上有効」とは、本開示の方法で治療される疾患の少なくとも1つの症状の発現を遅らせ、進行を阻止し、軽減し、または緩和するのに十分である組成物の量を指す。
【0022】
本明細書で用いる用語「遺伝子プロファイル」とは、個体またはあるタイプの組織における変異および遺伝子発現を含む、特定の遺伝子に関する情報を指す。遺伝子プロファイルはネオアンチゲン選択に用いることができる。本明細書で用いる用語「体細胞突然変異プロファイル」とは、体細胞の突然変異に関する特定遺伝子の情報を指し、ここには体細胞の突然変異により産生した特定の遺伝子を含むがこれに限らない。体細胞突然変異プロファイルはネオアンチゲンの選択に用いることができる。
【0023】
本開示で用いる用語「ブースターアジュバント」または「アジュバント」とは、免疫細胞治療を補助することのできる製剤を指し、ブースター抗原(Booster Antigen、BA)を有することを特徴とする。前記ブースター抗原は、in vivoで特定の治療性免疫細胞により特異的に認識され得る特定の抗原であり、前記アジュバントは、前記ブースター抗原を介して、当該免疫細胞を刺激し、そのin vivoにおける量的な増殖をブーストし得る。
【0024】
いくつかの場合において、特定の治療性免疫細胞がブースター抗原を認識する方法は、人工的に改変したキメラ抗原受容体(CAR)を治療性免疫細胞に発現させ、前記CARがブースター抗原を特異的に認識するために使用されるものであってよい。前記CARは、ブースター抗原を標的とすることのできるキメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor targeting a Booster Antigen、以下では「anti-Booster Antigen-CAR」または「aBA-CAR」ということもある)であり、その構造は、ブースター抗原を認識する抗体の可変領域などの抗原結合ドメインを含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、ブースター抗原はヒトの細胞で広範に発現される膜タンパク質の変異体、または腫瘍細胞で発現する膜タンパク質の変異体であり得、これら膜タンパク質には、クラスI RTK(例えば、EGFRを含む上皮成長因子(EGF)受容体ファミリー、ErbB-2、ErbB-3およびErbB-4を含むErbBファミリー)、クラスII RTK(例えば、INSR、IGF-1RおよびIRRを含むインスリン受容体ファミリー)、クラスIII RTK(例えば、PDGFR-α、PDGFR-β、CSF-1R、KIT/SCFRおよびFLK2/FLT3を含む血小板由来成長因子(PDGF)受容体ファミリー)、クラスIV RTK(例えば、FGFR-1、FGFR-2、FGFR-3およびFGFR-4を含む線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体ファミリー)、クラスV RTK(例えば、VEGFR1、VEGFR2およびVEGFR3を含む血管内皮増殖因子(VEGF)受容体ファミリー)、クラスVI RTK(例えば、肝細胞増殖因子受容体(HGFR/MET)およびRONを含む肝細胞増殖因子(HGF)受容体ファミリー)、クラスVII RTK(例えば、TRKA、TRKBおよびTRKCを含むトロポミオシン受容体キナーゼ(Trk)受容体ファミリー)、クラスVIII RTK(例えば、EPHA1、EPHA2、EPHA3、EPHA4、EPHA5、EPHA6、EPHA7、EPHA8、EPHB1、EPHB2、EPHB3、EPHB4、EPHB5およびEPHB6を含むephrin(Eph)などの受容体ファミリー)、クラスIX RTK(例えば、AXL、MERおよびTRYO3などのAXL受容体ファミリー)、クラスX RTK(例えば、LTKおよびALKなどのLTK受容体ファミリー)、クラスXI RTK(例えば、TIEおよびTEKなどのTIE受容体ファミリー)、クラスXII RTK(例えば、ROR受容体ファミリーROR1およびROR2)、クラスXIII RTK(例えば、DDR1およびDDR2のようなディスコイジンドメイン受容体(DDR)ファミリー)、クラスXIV RTK(例えばRETなどのRET受容体ファミリー)、クラスXV RTK(例えば、PTK7を含むKLG受容体ファミリー)、クラスXVI RTK(例えば、Rykを含むRYK受容体ファミリー)、クラスXVII RTK(例えば、MuSKなどのMuSK受容体ファミリー)、CD47、CD70、NKG2D、またはそれらの任意の誘導体、バリアントもしくはフラグメントが含まれるが含まれる。
【0026】
いくつかの実施形態において、ブースター抗原は、例えば、受容体型チロシンキナーゼ(RTK)などの酵素結合型受容体の少なくとも1つの細胞外領域(例えば、リガンド結合ドメイン)、またはこれらの任意の誘導体、バリアントもしくはフラグメントを含み得る。いくつかの実施形態において、ブースター抗原は、クラスI RTK(例えば、EGFRを含む上皮成長因子(EGF)受容体ファミリー、ErbB-2、ErbB-3およびErbB-4を含むErbBファミリー)、クラスII RTK(例えば、INSR、IGF-1RおよびIRRを含むインスリン受容体ファミリー)、クラスIII RTK(例えば、PDGFR-α、PDGFR-β、CSF-1R、KIT/SCFRおよびFLK2/FLT3を含む血小板由来成長因子(PDGF)受容体ファミリー)、クラスIV RTK(例えば、FGFR-1、FGFR-2、FGFR-3およびFGFR-4を含む線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体ファミリー)、クラスV RTK(例えば、VEGFR1、VEGFR2およびVEGFR3を含む血管内皮増殖因子(VEGF)受容体ファミリー)、クラスVI RTK(例えば、肝細胞増殖因子受容体(HGFR/MET)およびRONを含む肝細胞増殖因子(HGF)受容体ファミリー)、クラスVII RTK(例えば、TRKA、TRKBおよびTRKCを含むトロポミオシン受容体キナーゼ(Trk)受容体ファミリー)、クラスVIII RTK(例えば、EPHA1、EPHA2、EPHA3、EPHA4、EPHA5、EPHA6、EPHA7、EPHA8、EPHB1、EPHB2、EPHB3、EPHB4、EPHB5およびEPHB6を含むephrin(Eph)受容体ファミリー)、クラスIX RTK(例えば、AXL、MERおよびTRYO3などのAXL受容体ファミリー)、クラスX RTK(例えば、LTKおよびALKなどのLTK受容体ファミリー)、クラスXI RTK(例えば、TIEおよびTEKなどのTIE受容体ファミリー)、クラスXII RTK(例えば、ROR受容体ファミリーのROR1およびROR2)、クラスXIII RTK(例えば、DDR1およびDDR2などのディスコイジンドメイン受容体(DDR))ファミリー)、クラスXIV RTK(例えばRETなどのRET受容体ファミリー)、クラスXV RTK(例えば、PTK7を含むKLG受容体ファミリー)、クラスXVI RTK(例えば、Rykを含むRYK受容体ファミリー)、クラスXVII RTK(例えば、MuSKなどのMuSK受容体ファミリー)、CD47、CD70、NKG2D、またはそれらの任意の誘導体、バリアントもしくはフラグメントが含まれる。
【0027】
ブースター抗原は、RTKまたは任意のその誘導体、バリアントもしくはフラグメントを含むことができる。RTKリガンドの非限定的な例には、成長因子、サイトカインおよびホルモンが含まれる。成長因子には、例えば、上皮成長因子ファミリーのメンバー(例えば、上皮成長因子またはEGF、ヘパリン結合性EGF様増殖因子またはHB-EGF、トランスフォーミング増殖因子-αまたはTGF-α、アンフィレグリンまたはAR、エピレグリンまたはEPR、epigen、betacellulinまたはBTC、ニューレグリン-1またはNRG1、ニューレグリン-2またはNRG2、ニューレグリン-3またはNRG3、ニューレグリン-4またはNRG4)、線維芽細胞増殖因子ファミリー(FGF1、FGF2、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF9、FGF10、FGF11、FGF12、FGF13、FGF14、FGF15/19、FGF16、FGF17、FGF18、FGF20、FGF21およびFGF23など)、血管内皮増殖因子ファミリー(VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-DおよびPIGFなど)および血小板由来成長因子ファミリー(例えば、PDGFA、PDGFB、PDGFCおよびPDGFDなど)が含まれる。ホルモンには、例えば、インスリン/IGF/リラキシンファミリーのメンバー(例えば、インスリン、インスリン様成長因子、リラキシン-1、リラキシン-2、リラキシン-3を含むリラキシンファミリーペプチド、ライディッヒ細胞特異的インスリン様ペプチド(遺伝子INSL3)、初期胎盤インスリン様ペプチド(ELIP)(遺伝子INSL4)、インスリン様ペプチド5(遺伝子INSL5)およびインスリン様ペプチド6が含まれる。
【0028】
いくつかの実施形態において、ブースター抗原は、少なくとも、例えば受容体型スレオニン/セリンキナーゼ(RTSK)などの酵素結合型受容体の細胞外領域(例えば、リガンド結合ドメイン)、または任意のその誘導体、バリアントもしくはフラグメントを含むか、または、これらフラグメントを抗原とする抗体の可変領域のフラグメントを含む。ブースター抗原は、I型RTSK、II型RTSKまたはそれらの任意の誘導体、バリアントもしくはフラグメントを含み得る。ブースター抗原は、ALK1(ACVRL1)、ALK2(ACVR1A)、ALK3(BMPR1A)、ALK4(ACVR1B)、ALK5(TGFβR1)、ALK6(BMPR1B)およびALK7(ACVR1C)からなる群より選択されるI型受容体、または任意のその誘導体、バリアントもしくはフラグメントを含み得る。ブースター抗原は、TGFβR2、BMPR2、ACVR2A、ACVR2BおよびAMHR2(AMHR)からなる群より選択されるII型受容体、または、任意のその誘導体、バリアントまたはフラグメントを含み得る。いくつかの実施形態において、ブースター抗原はTGF-βを含む。
【0029】
ブースター抗原は、RTSKまたは任意のその誘導体、その突然変異型を含む。
【0030】
いくつかの場合において、ブースター抗原はB細胞表面タンパク質またはそのフラグメントである。B細胞表面タンパク質は、B細胞表面に発現する任意のタンパク質であってよい。非限定的な例には、CD1d、CD5、CD10、CD11a、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD25、CD27、CD28、CD29、CD34、CD37、CD38、CD40、CD44、CD45、CD49b、CD69、CD72。CD74、CD80、CD83、CD84、CD86、CD93、CD95、CD117、CD127、CD138、CD147、CD148、CD185、CD270、CD284およびCD360が含まれる。いくつかの実施形態において、CARの抗原相互作用ドメインは、表面タンパク質との結合が宿主の一般的な健康状態または免疫系を顕著に損なわないかぎり、非B細胞上の表面タンパク質と結合することができる。いくつかの実施形態において、表面タンパク質は免疫細胞上の表面タンパク質である。いくつかの実施形態において、表面タンパク質は免疫細胞以外の細胞上の表面タンパク質である。いくつかの実施形態において、表面タンパク質への結合は宿主の一般的な健康状態または免疫系を顕著に損なわないという条件で、前記表面タンパク質は、CD31、CD32(A、B)、CD33、CD34、CD35、CD36、CD37、CD38、CD39、CD40、CD41、CD42(a、b、c、d)、CD43、CD44、CD45、CD46、CD47、CD48、CD49(a、b、c、d、e、f)、CD50、CD51、CD52、CD53、CD54、CD55、CD56、CD57、CD58、CD59、CD61、CD62(E、L、P)、CD63、CD64(A、B、C)、CD66(a、b、c、d、e、f)、CD68、CD69、CD70、CD71、CD72、CD73、CD74、CD78、CD79(a、b)、CD80、CD81、CD82、CD83、CD84、CD85(a、d、e、h、j、k)、CD86、CD87、CD88、CD89、CD90、CD91、CD92、CD93、CD94、CD95、CD96、CD97、CD98、CD99、CD100、CD1(ac)、1A、1D、1E、CD2、CD3(γ、δ、ε)、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、a、CD9、CD10、CD11(a、b、c、d)、CD13、CD14、CD15、CD16、A、B、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD25、CD26、CD27、CD28、CD29、CD30、CD101、CD102、CD103、CD104、CD105、CD106、CD107(a、b)、CD108、CD109、CD110、CD111、CD112、CD113、CD114、CD115、CD116、CD117、CD118、CD119、CD120(a、b)、CD121(a、b)、CD122、CD123、CD124、CD125、CD126、CD127、CD129、CD130、CD131、CD132、CD133、CD134、CD135、CD136、CD137、CD138、CD140b、CD141、CD142、CD143、CD144、CD146、CD147、CD148、CD150、CD191、CD192、CD193、CD194、CD195、CD196、CD197、CDw198、CDw199、CD200、CD201、CD202b、CD204、CD205、CD206、CD207、CD208、CD209、CDw210(a、b)、CD212、CD213a(1、2)、CD217、CD218、(a、b)、CD220、CD221、CD222、CD223、CD224、CD225、CD226、CD227、CD228、CD229、CD230、CD233、CD234、CD235(a、b)、CD236、CD238、CD239、CD240CE、CD240D、CD241、CD243、CD244、CD246、CD247、CD248、CD249、CD252、CD253、CD254、CD256、CD257、CD258、CD261、CD262、CD263、CD264、CD265、CD266、CD267、CD268、CD269、CD271、CD272、CD273、CD274、CD275、CD276、CD278、CD279、CD280、CD281、CD282、CD283、CD284、CD286、CD288、CD289、CD290、CD292、CDw293、CD294、CD295、CD297、CD298、CD299、CD300A、CD301、CD302、CD303、CD304、CD305、CD306、CD307、CD309、CD312、CD314、CD315、CD316、CD317、CD318、CD320、CD321、CD322、CD324、CD325、CD326、CD328、CD329、CD331、CD332、CD333、CD334、CD335、CD336、CD337、CD338、CD339、CD340、CD344、CD349、CD350、CD151、CD152、CD153、CD154、CD155、CD156(a、b、c)、CD157、CD158(a、d、e、i、k)、CD159(a、c)、CD160、CD161、CD162、CD163、CD164、CD166、CD167(a、b)、CD168、CD169、CD170、CD171、CD172(a、b、g)、CD174、CD177、CD178、CD179(a、b)、CD180、CD181、CD182、CD183、CD184、CD185およびCD186より選ぶことができる。
【0031】
いくつかの場合において、ブースター抗原はNK細胞、顆粒球、赤血球、血小板の全長の表面タンパク質またはそのフラグメントである。
【0032】
いくつかの場合において、ブースター抗原は、ウイルス、細菌、真菌など病原体の表面マーカーまたは膜貫通タンパク質またはそれらのフラグメントであり、前記病原体には、HPVウイルス、EBウイルス、ヘリコバクターピロリ菌(HP)、B型肝炎ウイルス(HBV)、およびエイズウイルス(HIV)が含まれる。
【0033】
いくつかの場合において、ブースター抗原は、任意の種類のヒト細胞内タンパク質またはそのフラグメントである。
【0034】
いくつかの場合において、ブースター抗原は、任意の種類のヒト細胞外分泌タンパク質またはそのフラグメントである。
【0035】
いくつかの実施例において、ブースター抗原は、ヒトの完全な天然タンパク質の野生型もしくは変異型、または、複数の完全なヒトの天然タンパク質の野生型もしくは変異型の組み合わせである。
【0036】
いくつかの実施例において、ブースター抗原は、CD19もしくはEGFRviii(完全なEGFRviiiまたはEGFRviiit、すなわち短縮されたEGFRviii)、または、CD19および/もしくはCD86および/もしくはCD137Lおよび/またはmbIL15(膜結合型IL15、membrane-bound IL15)および/もしくはIL15Ra(IL15受容体のαサブユニット)を含む組成物、または、EGFRviiiおよび/またはCD86および/もしくはCD137Lおよび/またはmbIL15および/もしくはIL15Raを含む組成物である。
【0037】
いくつかの場合において、ブースターアジュバントはブースター抗原を含むタンパク質、化合物、複合体、細胞(または以下「ブースター細胞」ということがある)、または人工のナノ材料であってもよい。
【0038】
いくつかの実施形態において、ブースター抗原は粒子(例えば、ナノ粒子)の表面に結合(例えば、共有および/または非共有結合を介して)され得る。粒子は、有機および/または無機材料を含む任意の粒子材料であってよい。粒子は、各種形状および寸法を有し得る。粒子は、少なくとも1つの次元において約1ナノメートル(nm)~約50ナノメートル(nm)であってよい。粒子は、少なくとも1つの次元において、最小で約1nm、5nm、10nm、50nm、100nm、500nm、1μm、5μm、10μm、50μmまたはそれより大きくてもよい。粒子は、少なくとも1つの次元において、最大で50μm、10μm、5μm、1μm、500nm、100nm、50nm、10nm、5nm、1nmまたはそれより小さくてもよい。粒子は、ナノ粒子、マイクロ粒子、ナノスフェア、マイクロスフェア、ナノロッド、マイクロロッド、ナノファイバー、ナノリボンなどであってよい。粒子の例には、金属ナノ粒子(例えば、金ナノ粒子、銀ナノ粒子および鉄ナノ粒子)、金属間ナノ半導体ナノ粒子、コア-シェルナノ粒子、ポリマーシェルを有する無機コアをもつ粒子、ポリマーシェルを有する有機コアをもつ粒子、およびそれらの混合物が含まれる。代替的には、粒子は、例えば交差架橋ポリマー、ハイドロゲルポリマー、生分解性ポリマー、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、コポリマー、多糖、でん粉、セルロース、キトサン、ポリヒドロキシ酪酸(PHA)、PHB、PHV、脂質、ペプチド、ペプチド両親媒性物質、ポリペプチド(例えば、タンパク質)またはその組み合せなどの有機ナノ粒子であってよい。表面上にB細胞表面タンパク質を提示している粒子が、B細胞表面タンパク質に結合するCARを含む免疫細胞にin vitroで導入されてもよい。代替的または追加でB細胞表面タンパク質を提示している粒子が、CARを含む免疫細胞と共にin vivoで(例えば、局部的または全身的な注入など)導入されてもよい。これらの粒子は、in vitroまたはin vivoでCARを含む免疫細胞群を増殖するために用いられ得る。
【0039】
いくつかの場合において、ブースターアジュバントはブースター細胞であり、そしてブースター細胞は、患者自身または他者由来の末梢血単核細胞(PBMC)もしくはB細胞、T細胞、NK細胞などの任意の種類の細胞、または様々なタイプの細胞の混合物であり、当該細胞は天然の未改変の細胞、または改変された細胞、または不死化B細胞もしくはNK細胞(NK92など)もしくはK562細胞である。
【0040】
いくつかの場合において、ブースターアジュバントはブースター細胞(T細胞など)であり、膜貫通ブースター抗原が前記ブースター細胞上に発現し、前記ブースター抗原は、細胞外結合ドメインおよび膜貫通領域からなる融合タンパク質であり、このうち前記細胞外結合ドメインは、特定の治療性免疫細胞(EGFRviiiまたはCD19など)により認識され得る構造であり、前記膜貫通領域は、前記ブースター細胞によって天然に発現されるタンパク質(CD3など)の一部または全体の構造である。
【0041】
aBA-CARの「抗原結合ドメイン」は、ブースター抗原に結合可能な任意のタンパク質または分子を含み得る。抗原結合ドメインの非限定的な例としては、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、マウス抗体、またはそれらの機能的誘導体、バリアント、フラグメントが挙げられ、これらに限定される訳ではないが例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、単鎖Fv(scFv)、マイクロ抗体、二重抗体、並びに、ラクダ科動物由来のナノボディの重鎖可変ドメイン(VH)、軽鎖可変ドメイン(VL)および可変ドメイン(VHH)などのシングルドメイン抗体が含まれる。いくつかの実施形態において、抗原結合ドメインはFab、Fab’、F(ab’)2、FvおよびscFvのうち少なくとも1種を含む。いくつかの実施形態において、抗原結合ドメインは抗体ミメティックを含む。抗体ミメティックとは、抗体と同等の親和力で標的分子に結合可能な分子を指し、一本鎖結合分子、シトクロムb562に基づく結合分子、フィブロネクチンまたはフィブロネクチン様タンパク質足場(例えば、アドネクチン)、リポカリン足場、カリックスアレーン足場、Aドメインおよびその他の足場を含む。いくつかの実施形態において、抗原結合ドメインは膜貫通受容体または任意のその誘導体、バリアントもしくはフラグメントを含む。例えば、抗原結合ドメインは膜貫通受容体の少なくともリガンド結合ドメインを含むことができる。
【0042】
いくつかの実施形態において、aBA-CARの「抗原結合ドメイン」はscFVを含み得る。scFVは既知の可変領域配列の抗体に由来することができる。いくつかの実施形態において、scFVは入手可能なマウスのハイブリドーマから得た抗体配列に由来することができる。scFVは、腫瘍細胞または初代培養細胞の全エクソン配列から得ることができる。いくつかの実施形態において、scFVは改変され得る。例えば、各種の方法でscFVを改変することができる。いくつかの場合において、scFVは突然変異され、標的に対する更に高い親和力をもち得る。いくつかの場合において、標的に対するscFVの親和力は、正常な組織には低レベルで発現する標的に対して最適化してもよい。高サイトカイン血症などの潜在的傷害性を最小化するために当該最適化を行ってもよい。その他の場合において、膜結合型の標的により高い親和力を有するscFVのクローニングが、その可溶型の対応物よりも好ましい場合がある。ある標的が異なるレベルの可溶型でも検出可能で、かつそれらの標的が高サイトカイン血症などの意図せぬ傷害性を引き起こす可能性がある場合、この改変が行われ得る。
【0043】
膜貫通ドメインを介して、対象のシステムのaBA-CARの抗原結合ドメインが細胞内シグナル伝達ドメインに連結される。膜貫通ドメインは膜貫通セグメントであってよい。対象のCARの膜貫通ドメインは、CARを、免疫細胞など細胞の形質膜に固定することができる。いくつかの実施形態において、膜貫通セグメントはポリペプチドを含む。CARの抗原結合ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインとを連結する膜貫通ポリペプチドは、適切な任意のポリペプチドを有し得る。いくつかの場合において、膜貫通ポリペプチドは、内在性または野生型膜貫通タンパク質の膜貫通部分のポリペプチド配列を含む。いくつかの実施形態において、膜貫通ポリペプチドは、内在または野生型膜貫通タンパク質の膜貫通部分と比較して、少なくとも1つ(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)のアミノ酸置換、欠失および挿入を有するポリペプチド配列を含む。いくつかの実施形態において、膜貫通ポリペプチドは、例えばポリペプチドリンカーの配列など、非天然のポリペプチド配列を含む。ポリペプチドリンカーはフレキシブルでもリジットでもよい。ポリペプチドリンカーは構造化されたものでも非構造化のものでもよい。いくつかの実施形態において、膜貫通ポリペプチドは、抗原結合ドメインを介して、細胞の細胞外領域から細胞内領域にシグナルを伝達する。CD28の天然の膜貫通部分をaBA-CARに用いることができる。その他の場合において、CD8αの天然膜貫通部分をaBA-CARに用いることもできる。
【0044】
aBA-CARを含む本開示のCARは、免疫細胞のシグナル伝達に関与するシグナル伝達ドメインまたは任意のその誘導体、バリアント、もしくはフラグメントを含み得る。CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、CARを含む免疫細胞の活性を誘導することができる。細胞内シグナル伝達ドメインは、エフェクター機能シグナルを形質導入して細胞に特殊化機能を実行させることができる。シグナル伝達ドメインは、他分子のシグナル伝達ドメインを含み得る。いくつかの場合において、シグナル伝達ドメインのトランケートされた部分がCARに用いられる。
【0045】
いくつかの実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫細胞シグナル伝達に関与する複数のシグナル伝達ドメイン、または任意のその誘導体、バリアント、もしくはフラグメントを含む。例えば、細胞内シグナル伝達ドメインは、少なくとも2つの、例えば少なくとも2、3、4、5、7、8、9または10の免疫細胞シグナル伝達ドメインを含み得る。免疫細胞シグナル伝達ドメインは、刺激または抑制の方法で、TCR複合体の一次活性化を調節することに関与することができる。細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞受容体(TCR)複合体のシグナル伝達ドメインであってもよい。対象のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、Fcγ受容体(FcγR)、Fcε受容体(FcεR)、Fcα受容体(FcαR)、新生児Fc受容体(FcRn)、CD3、CD3ζ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD4、CD5、CD8、CD21、CD22、CD28、CD32、CD40L(CD154)、CD45、CD66d、CD79a、CD79b、CD80、CD86、CD278(ICOSともいう)、CD247ζ、CD247η、DAP10、DAP12、FYN、LAT、Lck、MAPK、MHC複合体、NFAT、NF-κB、PLC-γ、iC3b、C3dg、C3dおよびZap70のシグナル伝達ドメインを含み得る。いくつかの実施形態において、シグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシン依存性活性化モチーフまたはITAMを含む。ITAMを含むシグナル伝達ドメインは、6~8個のアミノ酸によって隔てられたアミノ酸の2塩基繰り返し配列を含み得、ここでxは独立して、任意のアミノ酸であり、保存モチーフYxxL/Ix(6-8)YxxL/Iを形成する。抗原結合ドメインがエピトープと結合する場合、ITAMを含んだシグナル伝達ドメインは例えば、リン酸化によって、修飾され得る。リン酸化されたITAMは、例えば各種シグナル伝達経路に関与するタンパク質など、他のタンパク質のドッキング部位として機能し得る。いくつかの実施形態において、主要シグナル伝達ドメインは、例えば突然変異された、トランケートされた、および/または最適化されたITAMドメインなどの、改変されたITAMドメインを含み、これは、天然ITAMドメインと比較して、改変された(例えば、増加されたまたは減少された)活性を有する。
【0046】
いくつかの実施形態において、CAR(aBA-CARを含む)の細胞内シグナル伝達ドメインは、FcγRシグナル伝達ドメイン(例えば、ITAM)を含む。FcγRシグナル伝達ドメインは、FcγRI(CD64)、FcγRIIA(CD32)、FcγRIIB(CD32)、FcγRIIIA(CD16a)およびFcγRIIIB(CD16b)から選択され得る。いくつかの実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、FcεRシグナル伝達ドメイン(例えば、ITAM)を含む。FcεRシグナル伝達ドメインはFcεRIおよびFcεRII(CD23)から選択され得る。いくつかの実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、FcαRシグナル伝達ドメイン(例えば、ITAM)を含む。FcαRシグナル伝達ドメインはFcαRI(CD89)およびFcα/μRから選択され得る。いくつかの実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態において、主要シグナル伝達ドメインはCD3ζのITAMを含む。
【0047】
いくつかの実施形態において、CAR(aBA-CARを含む)の細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシン依存性抑制モチーフまたはITIMを含む。ITIMを含むシグナル伝達ドメインは、免疫系のいくつかの抑制性受容体の細胞質側末端に見られる保存されたアミノ酸配列(S/I/V/LxYxxI/V/L)を含み得る。ITIMを含む主要シグナル伝達ドメインは、酵素(例えばSrcキナーゼファミリーのメンバー(例えばLck))によって、例えばリン酸化されるなど改変され得る。リン酸化の後、酵素を含む他のタンパク質は、ITIMにリクルートされることができる。これら他のタンパク質には、例えばホスホチロシンホスファターゼSHP-1およびSHP-2、SHIPと呼ばれるイノシトールホスファターゼなどの酵素、並びに、1つまたは複数のSH2ドメインを有するタンパク質(例えばZAP70)を含むがこれに限らない。細胞内シグナル伝達ドメインは、BTLA、CD5、CD31、CD66a、CD72、CMRF35H、DCIR、EPO-R、FcγRIIB(CD32)、Fc受容体様タンパク質2(FCRL2)、Fc受容体様タンパク質3(FCRL3)、Fc受容体様タンパク質4(FCRL4)、Fc受容体様タンパク質5(FCRL5)、Fc受容体様タンパク質6(FCRL6)、タンパク質G6b(G6B)、インターロイキン4受体(IL4R)、免疫グロブリンスーパーファミリー受容体転座関連1(IRTA1)、免疫グロブリンスーパーファミリー受容体転座関連2(IRTA2)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体2DL1(KIR2DL1)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体2DL2(KIR2DL2)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体2DL3(KIR2DL3)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体2DL4(KIR2DL4)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体2DL5(KIR2DL5)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体3DL1(KIR3DL1)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体3DL2(KIR3DL2)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー1(LIR1)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー2(LIR2)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー3(LIR3)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー5(LIR5)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー8(LIR8)、白血球関連免疫グロブリン様受容体1(LAIR-1)、マスト細胞機能関連抗原(MAFA)、NKG2A、天然細胞傷害性惹起受容体2(NKp44)、NTB-A、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、PILR、SIGLECL1、シアル酸結合Ig様レクチン2(SIGLEC2またはCD22)、シアル酸結合Ig様レクチン3(SIGLEC3またはCD33)、シアル酸結合Ig様レクチン5(SIGLEC5またはCD170)、シアル酸結合Ig様レクチン6(SIGLEC6)、シアル酸結合Ig様レクチン7(SIGLEC7)、シアル酸結合Ig様レクチン10(SIGLEC10)、シアル酸結合Ig様レクチン11(SIGLEC11)、シアル酸結合Ig様レクチン4(SIGLEC4)、シアル酸結合Ig様レクチン8(SIGLEC8)、シアル酸結合Ig様レクチン9(SIGL EC9)、血小板/内皮細胞接着分子1(PECAM-1)、シグナル調節タンパク質(SIRP2)およびシグナル閾値調節膜貫通アダプター1(SIT)のシグナル伝達ドメイン(例えば、ITIM)を含み得る。いくつかの実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、例えば突然変異された、トランケートされた、および/または最適化されたITIMドメインなどの、改変されたITIMドメインを含み、これは、天然ITIMドメインと比較して、改変された(例えば、増加されたまたは減少された)活性を有する。
【0048】
いくつかの実施形態において、CAR(aBA-CARを含む)の細胞内シグナル伝達ドメインは、少なくとも2つのITAMドメイン(例えば、少なくとも3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つまたは10のITAMドメイン)を含む。いくつかの実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、少なくとも2つのITIMドメイン(例えば、少なくとも3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つまたは10のITIMドメイン)(例えば、少なくとも2つの主要シグナル伝達ドメイン)を含む。いくつかの実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、ITAMおよびITIMドメインの両方を含む。
【0049】
いくつかの場合において、CAR(aBA-CARを含む)の細胞内シグナル伝達ドメインは共刺激ドメインを含み得る。いくつかの実施形態において、例えば共刺激分子由来などの共刺激ドメインは、免疫細胞シグナル伝達、例えばITAMおよび/またはITIMドメインからのシグナル伝達などのための、例えば免疫細胞活性の活性化および/または不活性化のための共刺激シグナルを提供し得る。いくつかの実施形態において、共刺激ドメインは免疫細胞中の増殖および/または生存シグナルの調節に用いられ得る。いくつかの実施形態において、共刺激シグナル伝達ドメインはMHCクラスIタンパク質、MHCクラスIIタンパク質、TNF受容体タンパク質、免疫グロブリン様タンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、NK細胞活性型受容体、BTLAまたはTollリガンド受容体のシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態において、共刺激ドメインは、2B4/CD244/SLAMF4、4-1BB/TNFSF9/CD137、B7-1/CD80、B7-2/CD86、B7-H1/PD-L1、B7-H2、B7-H3、B7-H4、B7-H6、B7-H7、BAFF R/TNFRSF13C、BAFF/BLyS/TNFSF13B、BLAME/SLAMF8、BTLA/CD272、CD100(SEMA4D)、CD103、CD11a、CD11b、CD11c、CD11d、CD150、CD160(BY55)、CD18、CD19、CD2、CD200、CD229/SLAMF3、CD27リガンド/TNFSF7、CD27/TNFRSF7、CD28、CD29、CD2F-10/SLAMF9、CD30リガンド/TNFSF8、CD30/TNFRSF8、CD300a/LMIR1、CD4、CD40リガンド/TNFSF5、CD40/TNFRSF5、CD48/SLAMF2、CD49A、CD49D、CD49f、CD5、CD53、CD58/LFA-3、CD69、CD7、CD8α、CD8β、CD82/Kai-1、CD84/SLAMF5、CD90/Thy1、CD96、CDS、CEACAM1、CRACC/SLAMF7、CRTAM、CTLA-4、DAP12、Dectin-1/CLEC7A、DNAM1(CD226)、DPPIV/CD26、DR3/TNFRSF25、EPHB6、GADS、Gi24/VISTA/B7-H5、GITRリガンド/TNFSF18、GITR/TNFRSF18、HLAクラスI、HLA-DR、HVEM/TNFRSF14、IA4、ICAM-1、ICOS/CD278、Ikaros遺伝子、IL2Rβ、IL2Rγ、IL7Rα、インテグリンα4/CD49d、インテグリンα4β1、インテグリンα4β7/LPAM-1、IPO-3、ITGA4、ITGA6、ITGAD、ITGAE、ITGAL、ITGAM、ITGAX、ITGB1、ITGB2、ITGB7、KIRDS2、LAG-3、LAT、LIGHT/TNFSF14、LTBR、Ly108、LY9(CD229)、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、リンホトキシン-α/TNF-β、NKG2C、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80(KLRF1)、NTB-A/SLAMF6、OX40リガンド/TNFSF4、OX40/TNFRSF4、PAG/Cbp、PD-1、PDCD6、PD-L2/B7-DC、PSGL1、RELT/TNFRSF19L、SELPLG(CD162)、SLAM(SLAMF1)、SLAM/CD150、SLAMF4(CD244)、SLAMF6(NTB-A)、SLAMF7、SLP-76、TACI/TNFRSF13B、TCL1A、TCL1B、TIM-1/KIM-1/HAVCR、TIM-4、TL1A/TNFSF15、TNF RII/TNFRSF1B、TNF-α、TRANCE/RANKL、TSLP、TSLP R、VLA1およびVLA-6からなる群より選ばれる分子のシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは複数の共刺激ドメイン含み、例えば少なくとも2つ、例えば少なくとも3、4、または5つの共刺激ドメインを含む。共刺激シグナル伝達領域は、一次エフェクター活性化シグナルと相助作用のあるシグナルを提供することができるとともに、T細胞活性化の要求を満たすことができる。いくつかの実施形態において、CARへの共刺激ドメインの追加は、本明細書で提供される免疫細胞の効率および持続性を強化し得る。
【0050】
CAR、特にaBA-CARを欠く免疫細胞と比較して、CAR、特にaBA-CARがブースター抗原と結合すると、免疫細胞の増殖を強化することができる。免疫細胞の増殖とは、免疫細胞の増殖を意味し得る。免疫細胞の増殖とは、免疫細胞の表現型の変化を意味し得る。本明細書で提供されるCAR、特にaBA-CARを含んだ免疫細胞の増殖は、前記CARを欠く免疫細胞の増殖を上回ることができる。CARを含んだ免疫細胞の増殖は、CARを欠く同等の細胞の増殖よりも、約5倍から約10倍、約10倍から約20倍、約20倍から約30倍、約30倍から約40倍、約40倍から約50倍、約50倍から約60倍、約60倍から約70倍、約70倍から約80倍、約80倍から約90倍、約90倍から約100倍、約100倍から約200倍、およそ200倍から約300倍、約300倍から約400倍、約400倍から約500倍、約500倍から約600倍、約600倍から約700倍大きい。CARを含んだ免疫細胞の増殖は、CARを欠く同等の細胞の増殖よりも、約5倍から約10倍、約10倍から約20倍、約20倍から約30倍、約30倍から約40倍、約40倍から約50倍、約50倍から約60倍、約60倍から約70倍、約70倍から約80倍、約80倍から約90倍、約90倍から約100倍、約100倍から約200倍、およそ200倍から約300倍、約300倍から約400倍、約400倍から約500倍、約500倍から約600倍、約600倍から約700倍大きく、ここで増殖は、ブースター抗原の免疫細胞への接触後、少なくとも約12、24、36、48、60、72、84または96時間、確実とされる。in vitroでもin vivoでも、向上された増殖が確実とされる。いくつかの実施形態において、増殖は、免疫細胞数の定量を含むことができる。免疫細胞の定量は、フローサイトメトリー、トリパンブルー色素排除法、および/または血球計算法を含むことができる。免疫細胞の表現型分析によっても、増殖を確定することができる。
【0051】
いくつかの場合において、CAR構造は、発現制御エレメントを含み得、これはCARまたはCAR-T細胞の発現を調節するおよび/または、CAR-TまたはCAR-NK細胞に自死またはアポトーシスを起こさせるスイッチエレメント、例えばTET-ONなどであり得る。
【0052】
いくつかの実施例において、治療性免疫細胞は、T細胞、またはNK細胞である。
【0053】
いくつかの実施例において、治療性免疫細胞は、例えばCAR-T、CAR-NK、TCR-T、TCR-NK細胞などの人工的に改変されたT細胞、またはNK細胞である。
【0054】
ある様態において、本開示の治療性免疫細胞は、腫瘍関連抗原に特異的に結合する腫瘍浸潤リンパ球(TIL)であり、例えばネオアンチゲン(neoantigen)を含むがこれには限らない。改変されたTILは、キメラ刺激分子を含み得る。キメラ刺激分子は、ネオアンチゲンに結合するポリペプチド細胞外ドメイン(PED)を含み得る。PEDは、免疫細胞活性化シグナルを媒介する共刺激分子の細胞内ドメイン(ICD)と融合することができる。キメラ刺激分子のネオアンチゲンへの結合は、改変されたTILにおいて免疫細胞活性化シグナルをもたらし得る。いくつかの実施形態において、PEDは、未改変のTILの表面タンパク質の細胞外ドメインであり得る。いくつかの実施形態において、PEDの例には、抗体ならびにその誘導体、バリアント、およびフラグメントが含まれる。
【0055】
ある様態において、本開示は、二重特異性を有する、改変されたT細胞を提供する。前記二重特異性とは、まず1つは、標的細胞への認識性を指す。すなわち、前記T細胞は、標的細胞(腫瘍細胞などの人体に有害な細胞、またはウイルス、細菌などの非腫瘍細胞)を認識して殺すことができる一面を持つ。もう1つは、ブースター抗原に対する認識性を指す。すなわち、前記免疫細胞は、ブースター抗原またはブースター抗原を有するアジュバントを独立して認識でき、その数を増幅するために活性化され得る。
【0056】
ある様態において、本開示は、二重特異性を有する、aBA-CARで改変されたT細胞を提供する。前記二重特異性とは、まず1つは、標的細胞への認識性を指す。すなわち、前記T細胞は、標的細胞(腫瘍細胞などの人体に有害な細胞、またはウイルス、細菌などの非腫瘍細胞)を認識して殺すことができる一面を持つ。もう1つは、ブースター抗原に対する認識性を指す。すなわち、前記免疫細胞は、aBA-CARを介して、ブースター抗原またはブースター抗原を有するアジュバントを独立して認識でき、その数を増幅するために活性化され得る。
【0057】
ある様態において、本開示は、二重特異性を有する、aBA-CARおよびTCRまたはCAR(aBA-CARとは異なる別のCAR)で改変されたT細胞を提供する。前記二重特異性とは、まず1つは、標的細胞への認識性を指す。すなわち、前記T細胞は、人工(または外来性ともいう)のTCRまたはCAR(aBA-CARではない別のCAR)を有し、前記人工のTCRまたはCARが標的細胞(腫瘍細胞などの人体に有害な細胞、またはウイルス、細菌などの非腫瘍細胞)を認識して殺すのを補助することができる。もう1つは、ブースター抗原に対する認識性を指す。すなわち、前記免疫細胞は、aBA-CARを介して、ブースター抗原またはブースター抗原を有するアジュバントを独立して認識でき、その数を増幅するために活性化され得る。
【0058】
いくつかの実施形態において、前記免疫細胞によって認識される標的細胞の標的と、ブースター抗原の標的とは、異なるかまたは同一である。
【0059】
ある様態において、本開示は、二重特異性を有する、aBA-CARで改変された腫瘍認識性T細胞または腫瘍抗原反応性T細胞を提供する。前記二重特異性とは、まず1つは、腫瘍細胞への認識性を指す。すなわち、前記T細胞は、腫瘍細胞を認識して殺すことができる一面を持つ。もう1つは、ブースター抗原に対する認識性を指す。すなわち、前記免疫細胞は、aBA-CARを介して、ブースター抗原またはブースター抗原を有するアジュバントを独立して認識でき、その数を増幅するために活性化され得る。
【0060】
腫瘍認識性T細胞(または腫瘍抗原反応性T細胞)による腫瘍の認識は、ネオアンチゲン(neoantigen)、腫瘍関連抗原(TAA)、またはがん精巣抗原、ウイルス抗原(HPVまたはEBVウイルスに感染してがん化した細胞表面のウイルス抗原など)などの、天然の未改変のTCRを介した認識であってもよい。このような腫瘍認識性T細胞は、ワクチン誘導によって得ることができ、また、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)から得ることもでき、また、末梢血の特定のマーカー(PD1、TIM3、CD137、CD39、CD28など)を用いたポジティブまたはネガティブスクリーニングによって得てもよい。
【0061】
腫瘍認識性T細胞による腫瘍の認識はまた、人工的に改変されたCARまたはTCRによって、および、対応する腫瘍細胞を認識するためにおCAT-TまたはTCR-Tの形成によってなされ得る
【0062】
腫瘍浸潤リンパ球(TIL)は、腫瘍から得られる任意の細胞であり得る。例えば、TILは腫瘍に遊走した細胞であってよい。TILは、腫瘍に浸潤した細胞であってよい。いくつかの実施例において、TILは、対象の血流から腫瘍に遊走した白血球である。TILは、例えば、T細胞、B細胞、単球、またはナチュラルキラー(NK)細胞であってよい。いくつかの場合において、改変されたTILは、CD8+細胞傷害性T細胞(リンパ球)、Th1およびTh17CD4+T細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、またはM1マクロファージを含む。TILを含む免疫細胞群は、混合された細胞群であってもよい。TIL群は、異なる表現型の細胞、異なる分化度の細胞、異なる系統の細胞、または任意のその組み合わせを含み得る。TILは通常、生化学的に細胞表面マーカーを用いることによって、または、腫瘍への湿潤および治療に影響を及ぼす能力によって機能面から、定義できる。TILは、CD4、CD8、TCRαβ、CD25、CD27、CD28、CD39、CD56、CD137、CCR7、CD45Ra、CD95、PD-1およびTIM-3のバイオマーカのうち、1または複数の発現に基づき分類できる。いくつかの実施形態において、改変されたTILは、PD-1、CD39、CD137およびTIM-3のうちの少なくとも1つを発現する。いくつかの場合において、TILは、患者に再導入した時に充実性腫瘍に浸潤する能力によって、機能面から定義することができる。いくつかの場合において、改変されたTILは「一次TIL」を含む。これは患者の組織サンプルから得たTILのことを指す。いくつかの場合において、改変されたTILは「二次TIL」を含む。これは増殖または増殖したTILのことを指す。TILは、ネオアンチゲンへの特異的結合を発現することができる。いくつかの場合において、TILのTCR複合体は、抗原結合特異性(例えば、ネオアンチゲン結合)を付与する。
【0063】
いくつかの実施形態において、免疫細胞は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)である。TILは、例えば、T細胞、B細胞、単球、またはナチュラルキラー(NK)細胞であってよい。いくつかの場合において、TILは、CD8+細胞傷害性T細胞(リンパ球)、Th1およびTh17CD4+T細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、またはM1マクロファージを含む。いくつかの実施形態において、TILは、PD-1、CD137およびTIM-3のうち少なくとも1種を発現することができる。いくつかの場合において、改変されたTILは「一次TIL」を含む。これは患者の組織サンプルから得たTILのことを指す。いくつかの場合において、改変されたTILは「二次TIL」を含む。これは増殖または増殖したTILのことを指す。
【0064】
いくつかの場合において、TILは腫瘍組織を離れて末梢血に存在してもよい。いくつかの実施例において、TILは腫瘍組織から採取したものでなくてもよい。いくつかの実施例において、TILは、アフェレーシスにより末梢血単核細胞(PBMC)を分離することによって得られ得、または、更に、PD1、TIM3、CD137、CD39などの1または複数のマーカーを用いて得られるスクリーニングまたは富化によって得られ得る。
【0065】
ある様態において、本開示は、ネオアンチゲンに特異的に結合する改変されたT細胞を提供し、前記改変されたT細胞は、aBA-CARを含むだけでなく、強化受容体も含む。強化受容体は、タンパク質の細胞外ドメイン(ECD)を含み得る。ECDは、免疫細胞活性化シグナルを媒介する共刺激分子の細胞内ドメイン(ICD)と融合することができる。強化受容体がリガンドに結合することによって、改変されたT細胞において、免疫細胞不活性化シグナルの代わりに免疫細胞活性化シグナルを発生させることができる。
【0066】
改変されたT細胞は、ネオアンチゲンへの特異的結合を発現するT細胞受容体(TCR)複合体を含み得る。いくつかの実施形態において、TCR複合体は内在性TCR複合体である。いくつかの実施形態において、TCRは外来性TCR複合体である。改変された免疫細胞のTCR複合体(例えば、内在性または外来性)は、免疫細胞の抗原結合特異性(例えば、ネオアンチゲン結合)を付与することができる。いくつかの実施形態において、本開示は、ネオアンチゲンに特異的に結合する内在性TCR複合体を含む改変されたT細胞を提供し、前記改変されたT細胞はキメラ刺激分子を含み、前記キメラ刺激分子は、限定される訳ではないが腫瘍細胞などを含む細胞上の膜タンパク質に結合するポリペプチド細胞外ドメイン(PED)を含み、前記PEDは、免疫細胞活性化シグナルを媒介する共刺激分子の細胞内ドメイン(ICD)に融合され、前記キメラ刺激分子の膜タンパク質への結合は、前記改変されたT細胞において前記免疫細胞活性化シグナルを発生させる。
【0067】
改変された免疫細胞(例えば本明細書で提供される改変されたT細胞または改変されたTIL)のネオアンチゲンへの結合は、免疫細胞を活性化し得る。改変細胞の強化受容体は、免疫細胞活性に対してさらなる制御を提供することができる。例えば免疫細胞の活性化や増殖であるが、これに限らない。強化受容体の改変された免疫細胞(例えば改変されたT細胞または改変されたTIL)中のリガンドへの結合は、改変された免疫細胞において免疫細胞不活性化シグナルの代わりに免疫細胞活性化シグナルを引き起こすことができる。改変された免疫細胞において免疫細胞不活性化シグナルの代わりに免疫細胞活性化シグナルを誘導することによって、免疫細胞中の免疫抑制作用を最小化することができる。免疫細胞中の免疫抑制作用を最小化することは、例えば標的細胞(例えば、腫瘍細胞)に対する免疫細胞細胞傷害性を高めることによって免疫応答における免疫細胞の有効性を高めることができる。
【0068】
強化された受容体は、未改変の免疫細胞においては、リガンドに結合すると免疫細胞シグナルを誘導するタンパク質の細胞外ドメイン(ECD)を含むことができる。当該シグナルは、不活性化シグナルでもよく、活性化シグナルでもよく、活性化シグナルでも不活性化シグナルでもなくてもよい。タンパク質は、シグナル伝達受容体、または任意のその機能フラグメント、誘導体、もしくはバリアントでであってもよい。いくつかの場合において、シグナル伝達受容体は、膜結合型受容体であってもよい。リガンド結合に応答して、シグナル伝達受容体は、細胞内の1または複数のシグナル伝達経路を誘導することができる。いくつかの場合において、シグナル伝達受容体は、非膜結合型受容体であってもよい。強化受容体は、Gタンパク質共役受容体(GPCR)、インテグリン受容体、カドヘリン受容体、酵素結合型受容体(例えば、キナーゼ)、細胞死受容体、チェックポイント受容体、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、成長因子受容体、ホルモン受容体、および免疫受容体より選ばれる受容体のフラグメント、例えば、細胞外ドメインを含むことができる。
【0069】
いくつかの実施形態において、強化受容体は、免疫系の調節に関与することのできる免疫チェックポイント受容体のフラグメントを含む。この種の受容体の非限定的な例には、プログラム細胞死1(PD-1、またはPD1)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)、BおよびTリンパ球アテニュエーター(BTLA)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG3)、T細胞免疫グロブリンムチン3(TIM-3)、IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)、SIRPα、NKG2Dを含むがこれに限らない。
【0070】
いくつかの実施形態において、強化受容体は、少なくともTCRの細胞外フラグメントを含み、それは標的細胞のネオアンチゲン(例えば、がん細胞抗原または腫瘍抗原)の認識に関与し得る。いくつかの例において、強化受容体はTCRαおよび/またはβ鎖の細胞外可変領域を含み得る。
【0071】
強化受容体は、免疫チェックポイント受容体または任意のその誘導体、バリアントもしくはフラグメントを含むことができる。強化受容体は、任意の適切な免疫チェックポイント受容体リガンドまたは任意のその誘導体、バリアントもしくはフラグメントを含む抗原に結合することができる。このようなリガンドの非限定的な例には、B7-1、B7-H3、B7-H4、HVEM(ヘルペスウイルス侵入メディエーター)、AP2M1、CD80、CD86、SHP-2、PPP2R5A、MHC(例えば、クラスI、クラスII)、CD47、CD70、PD-L1(またはPDL1)およびPD-L2を含むがこれらに限らない。このようなリガンドに結合する強化受容体の領域は、このようなリガンドの天然の受容体であってもよく、またはこのようなリガンドのモノクローナル抗体であってもよい。
【0072】
いくつかの実施形態において、強化受容体はサイトカイン受容体のフラグメントを含む。サイトカイン受容体は多くの機能を発揮することができ、その非限定的な例には、免疫細胞の調節および炎症の媒介が含まれる。いくつかの実施形態において、強化受容体は、サイトカイン受容体、例えば、I型サイトカイン受容体もしくはII型サイトカイン受容体、または任意のそれらの誘導体、バリアントもしくはフラグメントを含む。いくつかの実施形態において、強化受容体は、インターロイキン受容体(例えば、IL-2R、IL-3R、IL-4R、IL-5R、IL-6R、IL-7R、IL-9R、IL-11R、IL-12R、IL-13R、IL-15R、IL-21R、IL-23R、IL-27RおよびIL-31R)、コロニー刺激因子受容体(例えば、エリスロポエチン受容体、CSF-1R、CSF-2R、GM-CSFRおよびG-CSFR)、ホルモン受容体/神経ペプチド受容体(例えば、成長ホルモン受容体、プロラクチン受容体およびレプチン受容体)、または任意のその誘導体、バリアントもしくはフラグメントを含む。いくつかの実施形態において、強化受容体は、II型サイトカイン受容体、または任意のそれらの誘導体、バリアントもしくはフラグメントを含む。いくつかの実施形態において、強化受容体は、インターフェロン受容体(例えば、IFNAR1、IFNAR2およびIFNGR)、インターロイキン受容体(例えば、IL-10R、IL-20R、IL-22RおよびIL-28R)、組織因子受容体。(血小板組織因子ともいう)、または任意のそれらの誘導体、バリアントもしくはフラグメントを含む。
【0073】
いくつかの実施形態において、強化受容体の細胞外結合ドメインは、任意の抗体または抗体のフラグメントであってよく、当該抗体の結合する抗原は、ヒトの細胞で広範に発現されている任意の膜タンパク質、または、腫瘍細胞で発現される膜タンパク質であってよく、これら膜タンパク質には、クラスIのRTK(例えば、EGFRを含む上皮成長因子(EGF)受容体ファミリー、ErbB-2、ErbB-3およびErbB-4を含むErbBファミリー)、クラスIIのRTK(例えば、INSR、IGF-1RおよびIRRを含むインスリン受容体ファミリー)、クラスIIIのRTK(例えば、PDGFR-α、PDGFR-β、CSF-1R、KIT/SCFRおよびFLK2/FLT3を含む血小板由来成長因子(PDGF)受容体ファミリー)、クラスIVのRTK(例えば、FGFR-1、FGFR-2、FGFR-3およびFGFR-4を含む線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体ファミリー)、クラスVのRTK(例えば、VEGFR1、VEGFR2およびVEGFR3を含む血管内皮増殖因子(VEGF)受容体ファミリー)、クラスVIのRTK(例えば、肝細胞増殖因子受容体(HGFR/MET)およびRONを含む肝細胞増殖因子(HGF)受容体ファミリー)、クラスa VIIのRTK(例えば、TRKA、TRKBおよびTRKCを含むトロポミオシン受容体キナーゼ(Trk)受容体ファミリー)、クラスVIIIのRTK(例えば、EPHA1、EPHA2、EPHA3、EPHA4、EPHA5、EPHA6、EPHA7、EPHA8、EPHB1、EPHB2、EPHB3、EPHB4、EPHB5およびEPHB6を含むephrin(Eph)受容体ファミリー)、クラスIXのRTK(例えば、AXL、MERおよびTRYO3のようなAXL受容体ファミリー)、クラスXのRTK(例えば、LTKおよびALKのようなLTK受容体ファミリー)、クラスXIのRTK(例えば、TIEおよびTEKのようなTIE受容体ファミリー)、クラスXIIのRTK(例えば、ROR1およびROR2のROR受容体ファミリー)、クラスXIIIのRTK(例えば、DDR1およびDDR2のようなディスコイジンドメイン受容体(DDR)ファミリー)、クラスXIVのRTK(例えばRETのようなRET受容体ファミリー)、クラスXVのRTK(例えば、PTK7を含むKLG受容体ファミリー)、クラスXVIのRTK(例えば、Rykを含むRYK受容体ファミリー)、クラスXVIIのRTK(例えば、MuSKのようなMuSK受容体ファミリー)、CD47、CD70、NKG2D、または任意のそれらの誘導体、バリアントもしくはフラグメントが含まれるが含まれる。
【0074】
いくつかの実施形態において、強化受容体の結合し得る膜タンパク質は、酵素結合型受容体(例えば受容体チロシンキナーゼ(RTK))もしくは任意のその誘導体、バリアントもしくはフラグメントの少なくとも1つの細胞外領域(例えば、リガンド結合ドメイン)を含むか、または、これらフラグメントを抗原として有する抗体可変領域のフラグメントを含み得る。いくつかの実施形態において、前記強化受容体によって結合され得る膜タンパク質は、クラスIのRTK(例えば、EGFRを含む上皮成長因子(EGF)受容体ファミリー、ErbB-2、ErbB-3およびErbB-4を含むErbBファミリー)、クラスIIのRTK(例えば、INSR、IGF-1RおよびIRRを含むインスリン受容体ファミリー)、クラスIIIのRTK(例えば、PDGFR-α、PDGFR-β、CSF-1R、KIT/SCFRおよびFLK2/FLT3を含む血小板由来成長因子(PDGF)受容体ファミリー)、クラスIVのRTK(例えば、FGFR-1、FGFR-2、FGFR-3およびFGFR-4を含む線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体ファミリー)、クラスVのRTK(例えば、VEGFR1、VEGFR2およびVEGFR3を含む血管内皮増殖因子(VEGF)受容体ファミリー)、クラスVIのRTK(例えば、肝細胞増殖因子受容体(HGFR/MET)およびRONを含む肝細胞増殖因子(HGF)受容体ファミリー)、クラスa VIIのRTK(例えば、TRKA、TRKBおよびTRKCを含むトロポミオシン受容体キナーゼ(Trk)受容体ファミリー)、クラスVIIIのRTK(例えば、EPHA1、EPHA2、EPHA3、EPHA4、EPHA5、EPHA6、EPHA7、EPHA8、EPHB1、EPHB2、EPHB3、EPHB4、EPHB5およびEPHB6を含むephrin(Eph)受容体ファミリー)、クラスIXのRTK(例えば、AXL、MERおよびTRYO3のようなAXL受容体ファミリー)、クラスXのRTK(例えば、LTKおよびALKのようなLTK受容体ファミリー)、クラスXIのRTK(例えば、TIEおよびTEKのようなTIE受容体ファミリー)、クラスXIIのRTK(例えば、ROR1およびROR2のROR受容体ファミリー)、クラスXIIIのRTK(例えば、DDR1およびDDR2のようなディスコイジンドメイン受容体(DDR)ファミリー)、クラスXIVのRTK(例えばRETのようなRET受容体ファミリー)、クラスXVのRTK(例えば、PTK7を含むKLG受容体ファミリー)、クラスXVIのRTK(例えば、Rykを含むRYK受容体ファミリー)、クラスXVIIのRTK(例えば、MuSKのようなMuSK受容体ファミリー)、CD47、CD70、NKG2D、または任意のそれらの誘導体、バリアントもしくはフラグメントが含まれる。
【0075】
いくつかの実施形態において、強化受容体の結合し得る、RTKもしくは任意のその誘導体、バリアントもしくはフラグメントを含む膜タンパク質の強化受容体は、任意の適切なRTKリガンドまたは任意のその誘導体、バリアントもしくはフラグメントを含む抗原と結合するか、または、これらフラグメントを抗原とする抗体可変領域のフラグメントを含むことができる。RTKリガンドの非限定的な例には、成長因子、サイトカインおよびホルモンが含まれる。成長因子には、例えば、上皮成長因子ファミリーのメンバー(例えば、上皮成長因子またはEGF、ヘパリン結合性EGF様増殖因子またはHB-EGF、トランスフォーミング増殖因子-αまたはTGF-α、アンフィレグリンまたはAR、エピレグリンまたはEPR、epigen、betacellulinまたはBTC、ニューレグリン-1またはNRG1、ニューレグリン-2またはNRG2、ニューレグリン-3またはNRG3、ニューレグリン-4またはNRG4)、線維芽細胞増殖因子ファミリー(FGF1、FGF2、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF9、FGF10、FGF11、FGF12、FGF13、FGF14、FGF15/19、FGF16、FGF17、FGF18、FGF20、FGF21およびFGF23など)、血管内皮増殖因子ファミリー(VEGF)-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-DおよびPIGFなど)および血小板由来成長因子ファミリー(例えば、PDGFA、PDGFB、PDGFCおよびPDGFDなど)が含まれる。ホルモンには、例えば、インスリン/IGF/リラキシンファミリーのメンバー(例えば、インスリン、インスリン様成長因子、リラキシン-1、リラキシン-2、リラキシン-3を含むリラキシンファミリーペプチド、ライディッヒ細胞特異的インスリン様ペプチド(遺伝子INSL3)、初期胎盤インスリン様ペプチド(ELIP)(遺伝子INSL4)、インスリン様ペプチド5(遺伝子INSL5)およびインスリン様ペプチド6)が含まれる。
【0076】
いくつかの実施形態において、強化受容体の結合し得る膜タンパク質は、少なくとも、酵素結合型受容体、例えば受容体スレオニン/セリンキナーゼ(RTSK)の細胞外領域(例えば、リガンド結合ドメイン)、もしくは任意のその誘導体、バリアントもしくはフラグメントを含むか、または、これらフラグメントを抗原とする抗体可変領域のフラグメントを含む。前記強化受容体の結合し得る膜タンパク質は、I型RTSK、II型RTSKまたは任意のその誘導体、バリアントもしくはフラグメントを含み得る。強化受容体は、ALK1(ACVRL1)、ALK2(ACVR1A)、ALK3(BMPR1A)、ALK4(ACVR1B)、ALK5(TGFβR1)、ALK6(BMPR1B)およびALK7(ACVR1C)より選ばれるI型受容体、または任意のその誘導体、バリアントもしくはフラグメントを含み得る。強化受容体は、TGFβR2、BMPR2、ACVR2A、ACVR2BおよびAMHR2(AMHR)からなる群より選ばれるII型受容体、または、任意のその誘導体、バリアントまたはフラグメントを含み得る。いくつかの実施形態において、強化受容体は、TGF-β受容体または任意のその誘導体、バリアントもしくはフラグメントを含む。
【0077】
RTSKを含む、強化受容体が結合し得る膜タンパク質または任意のその誘導体、バリアントもしくはフラグメントは、任意の適切なRTSKリガンドまたは任意のその誘導体、バリアントもしくはフラグメントを含む抗原と結合するか、または、これらフラグメントを抗原とする抗体可変領域のフラグメントを含むことができる。
【0078】
強化受容体は、免疫細胞活性化シグナルを誘発する共刺激分子の細胞内ドメイン(ICD)を含み得る。共刺激分子はリガンドに結合し得る。いくつかの場合において、共刺激分子はリガンド応答タンパク質によって活性化され得る。いくつかの実施形態において、共刺激分子は免疫細胞中の増殖および/または生存シグナルを調節するように作動可能である。いくつかの実施形態において、ICDは共刺激分子の細胞内ドメインであり、前記共刺激分子は、MHCクラスIタンパク質、MHCクラスIIタンパク質、TNF受容体タンパク質、免疫グロブリン様タンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、NK細胞活性型受容体、BTLAまたはTollリガンド受容体より選択される。いくつかの実施形態において、共刺激ドメインは、2B4/CD244/SLAMF4、4-1BB/TNFSF9/CD137、B7-1/CD80、B7-2/CD86、B7-H1/PD-L1、B7-H2、B7-H3、B7-H4、B7-H6、B7-H7、BAFF R/TNFRSF13C、BAFF/BLyS/TNFSF13B、BLAME/SLAMF8、BTLA/CD272、CD100(SEMA4D)、CD103、CD11a、CD11b、CD11c、CD11d、CD150、CD160(BY55)、CD18、CD19、CD2、CD200、CD229/SLAMF3、CD27リガンド/TNFSF7、CD27/TNFRSF7、CD28、CD29、CD2F-10/SLAMF9、CD3、CD30リガンド/TNFSF8、CD30/TNFRSF8、CD300a/LMIR1、CD4、CD40リガンド/TNFSF5、CD40/TNFRSF5、CD48/SLAMF2、CD49a、CD49D、CD49f、CD5、CD53、CD58/LFA-3、CD69、CD7、CD8α、CD8β、CD82/Kai-1、CD84/SLAMF5、CD90/Thy1、CD96、CDS、CEACAM1、CRACC/SLAMF7、CRTAM、CTLA-4、DAP12、Dectin-1/CLEC7A、DNAM1(CD226)、DPPIV/CD26、DR3/TNFRSF25、EphB6、GADS、Gi24/VISTA/B7-H5、GITRリガンド/TNFSF18、GITR/TNFRSF18、HLAクラスI、HLA-DR、HVEM/TNFRSF14、IA4、ICAM-1、ICOS/CD278、Ikaros、IL2Rβ、IL2Rγ、IL7Rα、IL-12R、インテグリンα4/CD49d、インテグリンα4β1、インテグリンα4β7/LPAM-1、IPO-3、ITGA4、ITGA6、ITGAD、ITGAE、ITGAL、ITGAM、ITGAX、ITGB1、ITGB2、ITGB7、KIRDS2、LAG-3、LAT、LIGHT/TNFSF14、LTBR、Ly108、Ly9(CD229)、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、リンホトキシン-α/TNF-β、NKG2C、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80(KLRF1)、NTB-A/SLAMF6、OX40リガンド/TNFSF4、OX40/TNFRSF4、PAG/Cbp、PD-1、PDCD6、PD-L2/B7-DC、PSGL1、RELT/TNFRSF19L、SELPLG(CD162)、SLAM(SLAMF1)、SLAM/CD150、SLAMF4(CD244)、SLAMF6(NTB)-A)、SLAMF7、SLP-76、TACI/TNFRSF13B、TCL1A、TCL1B、TIM-1/KIM-1/HAVCR、TIM-4、TL1A/TNFSF15、TNF RII/TNFRSF1B、TNF-α、TRANCE/RANKL、TSLP、TSLP R、VLA1およびVLA-6からなる群より選ばれる分子のシグナル伝達ドメインを含む。
【0079】
強化受容体のECDとICDは、膜貫通ドメイン、例えば膜貫通セグメントを介して接続され得る。いくつかの実施形態において、膜貫通セグメントはポリペプチドを含む。膜貫通ポリペプチドは、任意の適切なポリペプチド配列を有し得る。いくつかの場合において、膜貫通ポリペプチドは、内在性または野生型膜貫通タンパク質の膜貫通部分のポリペプチド配列を含む。いくつかの実施形態において、膜貫通ポリペプチドは、内在または野生型膜貫通タンパク質の膜貫通部分と比較して、少なくとも1つ(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)のアミノ酸置換、欠失および挿入ポリペプチドを有するポリペプチド配列を含む。いくつかの実施形態において、膜貫通ポリペプチドは、例えばポリペプチドリンカーの配列など、非天然のポリペプチド配列を含む。ポリペプチドリンカーはフレキシブルでもリジットでもよい。ポリペプチドリンカーは構造化されたものでも非構造化のものでもよい。いくつかの実施形態において、膜貫通ポリペプチドは、ECDからのシグナル、例えばリガンド結合を示すシグナルをICDに伝達する。いくつかの実施形態において、ECDは膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態において、ICDは膜貫通ドメインを含む。
【0080】
いくつかの実施形態において、ICDは、免疫細胞における免疫細胞活性化シグナル(免疫細胞励起シグナルともいう)の産生を媒介することができる。いくつかの実施形態において、免疫細胞活性化シグナルは活性化因子により媒介される。活性化因子は免疫調節分子であってもよい。活性化因子は、T細胞またはその他の免疫細胞を結合、活性化または刺激してそれらの活性を調節することができる。いくつかの実施形態において、活性化因子は免疫細胞から分泌されてもよい。活性化因子は、例えば、可溶性サイトカイン、可溶性ケモカインまたは成長因子分子であってもよい。免疫細胞の活性化を媒介し得る活性化因子の非限定的な例には、可溶性サイトカイン、例えば、IL-1、IL-2、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12、IL。-15、IL-21、腫瘍壊死因子(TNF)、トランスフォーミング成長因子(TGF)、インターフェロン(IFN)または任意のその機能フラグメントもしくはバリアントが含まれる。
【0081】
免疫細胞活性化シグナルは、改変された免疫細胞(例えば、改変されたTILまたは改変されたT細胞)のクローン増殖、改変された免疫細胞(例えば、改変されたTILまたは改変されたT細胞)によるサイトカイン放出、改変された免疫細胞(例えば、改変されたTILまたは改変されたT細胞)の細胞毒性、改変された免疫細胞(例えば、改変されたTILまたは改変されたT細胞)の増殖、改変された免疫細胞(例えば、改変されたTILまたは改変されたT細胞)の分化、脱分化または分化転換、改変された免疫細胞(例えば、改変されたTILまたは改変されたT細胞)の動きおよび/または輸送、改変された免疫細胞(例えば、改変されたTILまたは改変されたT細胞)の枯渇および/または再活性化、改変された免疫細胞(例えば、改変されたTILまたは改変されたT細胞)による他の細胞間分子、代謝物質、化学化合物またはその組合せの放出を、含む、またはもたらし得る。
【0082】
いくつかの実施形態において、免疫細胞活性化シグナルは、免疫細胞のクローン増殖を含む、またはもたらす。クローン増殖は、免疫細胞から生じる娘細胞の産生を含み得る。クローン増殖で生じた娘細胞は、強化受容体を含み得る。改変された免疫細胞のクローン増殖は、強化受容体を欠く同等の免疫細胞のクローン増殖を上回り得る。改変された免疫細胞のクローン増殖は、強化受容体を欠く同等の免疫細胞と比較して、約5倍から約10倍、約10倍から約20倍、約20倍から約30倍、約30倍から約40倍、約40倍から約50倍、約50倍から約60倍、約60倍から約70倍、約70倍から約80倍、約80倍から約90倍、約90倍から約100倍、約100倍から約200倍、約200倍から約300倍、約300倍から約400倍、約400倍から約500倍、約500倍から約600倍、または約600倍から約700倍であり得る。いくつかの実施形態において、クローン増殖の測定は、例えば、強化受容体があるかまたはない場合下での、および、リガンドが受容体と結合した後での、免疫細胞数の定量を含み得る。免疫細胞の数の定量は、様々な技術によって達成されるが、その非限定的な例としては、フローサイトメトリー、トリパンブルー色素排除、および血球計算が含まれる。
【0083】
いくつかの実施形態において、免疫細胞活性化シグナルは、免疫細胞によるサイトカイン放出を含むか、またはもたらす。いくつかの実施形態において、免疫細胞活性は、細胞間分子、代謝物質、化学化合物またはその組合せの放出を含むか、またはもたらす。改変された免疫細胞によるサイトカイン放出は、IL-1、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-13、IL-17、IL-21、IL-22、IFNγ、TNFα、CSF、TGFβ、グランザイムなどの放出を含み得る。いくつかの実施形態において、サイトカイン放出は、酵素結合免疫吸着測定(ELISA)、フローサイトメトリー、ウェスタンブロットなどを用いて定量され得る。改変された免疫細胞によるサイトカイン放出は、強化受容体を欠く同等の免疫細胞のサイトカイン放出を上回り得る。本明細書中で提供される改変された免疫細胞は、強化受容体を欠く同等の免疫細胞と比較して1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、150倍、200倍、250倍、または300倍を上回るサイトカインを放出し得る。強化受容体がリガンドに結合し、かつ改変された免疫細胞が標的細胞上に提示されているネオアンチゲンに結合したとき、強化受容体を欠く(例えば、未改変の)同等の免疫細胞と比較して、改変された免疫細胞は増加されたサイトカイン分泌を示す。いくつかの実施形態において、分泌されるサイトカインはIFNγまたはIL-2である。いくつかの実施形態において、サイトカインの放出はin vitroまたはin vivoで定量され得る。
【0084】
いくつかの実施形態において、免疫細胞活性化シグナルは、免疫細胞の細胞傷害性発生を含むか、またはもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書で提供される改変された免疫細胞の細胞傷害性は、標的細胞を死滅させるのに使用され得る。強化受容体を発現した免疫細胞または免疫細胞群は、標的細胞の死を誘導することができる。標的細胞の死滅は様々に応用し得る。ここには、治療において細胞群を除去する必要があるまたはその増殖抑制が望まれる疾患または障害に対する治療が含まれるが、それに限らない。細胞傷害性はまた、免疫細胞による例えばIFNγやグランザイムなどの細胞傷害性サイトカインの放出を意味し得る。いくつかの場合において、本明細書で提供される改変された免疫細胞は、(i)例えばパーフォリン、グランザイムおよびグラニュリシンなどの細胞毒素の放出、および/または(ii)T細胞と標的細胞との間のFas-Fasリガンド相互作用によるアポトーシス誘導、を改変することができる。いくつかの実施形態において、細胞傷害性は、共培養測定、ELISPOT、クロム遊離細胞傷害性測定等を含む細胞傷害性測定によって定量し得る。本明細書で提供される改変された免疫細胞の細胞傷害性は、強化受容体を欠く同等の免疫細胞の細胞傷害性を上回ることができる。改変された免疫細胞は、強化受容体がリガンドに結合して、そして改変された免疫細胞が標的細胞上に提示されているネオアンチゲンと結合した場合、強化受容体を欠く(例えば、未改変の)同等の免疫細胞と比較して、標的細胞に対する増大された細胞傷害性を示し得る。強化受容体を欠く同等の免疫細胞と比較して、本発明の改変された免疫細胞は、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、125%、150%、175%または200%標的細胞に対してより細胞傷害性である。本開示の改変された免疫細胞は、改変されていない同等の免疫細胞と比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、125%、150%、175%または200%多い標的細胞の死を誘導し得る。いくつかの実施形態において、本明細書で提供される免疫細胞は、表面に標的エピトープ(例えば、ネオアンチゲン)を提示している標的細胞においてアポトーシスを誘導し得る。いくつかの実施形態において、細胞性傷害性はin vitroまたはin vivoで測定することができる。いくつかの実施形態において、細胞傷害性の測定は、本明細書で提供される改変された免疫細胞を投与した後で、投与前の疾患レベルと比較して疾患レベルを測定することを含むことができる。いくつかの実施形態において、細胞傷害性の測定は、本明細書で提供される改変された免疫細胞を投与した後の疾患レベルと、強化受容体を欠く同等の免疫細胞を投与した後の疾患レベルとを測定することを含み得る。
【0085】
いくつかの実施形態において、免疫細胞活性化シグナルは、免疫細胞の増殖を含むか、またはもたらす。免疫細胞の増殖とは、免疫細胞群の増殖を意味し得る。免疫細胞の増殖とは、免疫細胞の表現型の変化を意味し得る。本開示の改変された免疫細胞の増殖は、強化受容体を欠く同等の免疫細胞の増殖を上回ることができる。本明細書で提供する改変された免疫細胞の増殖は、強化受容体が欠乏した同等の免疫細胞の増殖の約5倍から約10倍、約10倍から約20倍、約20倍から約30倍、約30倍から約40倍、約40倍から約50倍、約50倍から約60倍、約60倍から約70倍、約70倍から約80倍、約80倍から約90倍、約90倍から約100倍、約100倍から約200倍、およそ200倍から約300倍、約300倍から約400倍、約400倍から約500倍、約500倍から約600倍、または約600倍から約700倍となり得る。いくつかの実施形態において、増殖は、免疫細胞の数の定量によって測定され得る。免疫細胞の数の定量は、フローサイトメトリー、トリパンブルー色素排除法、および/または血球計算法を含み得る。増殖はまた、免疫細胞の表現型分析によっても測定され得る。
【0086】
いくつかの実施形態において、免疫細胞活性化シグナルは、免疫細胞の分化・脱分化または分化転換を含むか、またはもたらし得る。免疫細胞の分化、脱分化または分化転換は、フローサイトメトリーによって細胞表面の分化・脱分化または分化転換のマーカーの表現型発現を評価することによって確定することができる。いくつかの実施形態において、強化受容体を欠く同等の免疫細胞と比較して、本明細書で提供される改変された免疫細胞は分化能が増加している。いくつかの実施形態において、強化受容体を欠く同等の免疫細胞と比較して、本明細書で提供する改変された免疫細胞は脱分化能が増加している。いくつかの実施形態において、強化受容体を欠く同等の免疫細胞と比較して、本明細書で提供する改変された免疫細胞は脱分化能が増加し得る。いくつかの実施形態において、強化受容体を欠く同等の免疫細胞と比較して、本明細書で提供する改変された免疫細胞はより大きい分化転換能を有している。
【0087】
いくつかの実施形態において、免疫細胞活性化シグナルは、免疫細胞の動きおよび/または輸送を含むか、またはもたらし得る。いくつかの実施形態において、動きは、免疫細胞の標的部位への局在化を定量することによって測定され得る。例えば、本明細書で提供される改変された免疫細胞は、投与後に標的部位で、例えば標的部位ではない部位で、定量され得る。定量は、病変部を単離し、強化受容体を含む例えば腫瘍浸潤リンパ球などの免疫細胞の数を定量することによって行われ得る。強化受容体を含む免疫細胞の動きおよび/または輸送は、強化受容体を欠く同等の免疫細胞の運動および/または輸送を上回ることができる。いくつかの実施形態において、標的部位、例えば腫瘍病変部などにおける強化受容体を含む免疫細胞の数は、強化受容体を欠く同等の免疫細胞の約5倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍または40倍であってよい。トランスウェル移行アッセイを用いてin vitroで輸送を測定することもできる。いくつかの実施形態において、標的部位の強化受容体を含む免疫細胞の数は、例えばトランスウェル移行アッセイにおいて、強化受容体を欠く同等の免疫細胞数の約5倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍または40倍であってよい。
【0088】
いくつかの実施形態において、免疫細胞活性化シグナルは、免疫細胞の枯渇および/または活性化を含むか、またはもたらし得る。免疫細胞の枯渇および/または活性化は、フローサイトメトリーまたは顕微鏡分析による表現型分析によって測定され得る。例えば、定量的および/または定性的に枯渇マーカーの発現レベルを確定する。例えばプログラム細胞死タンパク質1(PD1)、リンパ球活性化遺伝子3タンパク質(LAG3)、2B4、CD160、Tim3、および免疫グロブリンとITIMドメインとを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)などの枯渇マーカーの発現レベルは、定量的および/または定性的に測定され得る。である。いくつかの場合において、T細胞などの免疫細胞は、階層的様式でエフェクター機能を失い枯渇し得る。枯渇によって、IL-2産生およびサイトカイン発現などの機能および高い増殖能が失なわれ得る。枯渇はまた、IFNγ,TNFおよびケモカインの産生における異常並びに脱顆粒における異常を導き得る。本明細書で提供される改変された免疫細胞の枯渇または活性化は、強化受容体を欠く同等の免疫細胞の枯渇または活性を上回ることができる。いくつかの実施形態において、本明細書で提供する免疫細胞は、強化受容体を欠く同等の免疫細胞と比較して、枯渇または活性化において、少なくとも1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、150倍、200倍、250倍、または300倍を上回るほどに増加され得る。いくつかの実施形態において、本明細書で提供される含まれる免疫細胞は、強化受容体を欠く同等の免疫細胞と比較して、枯渇または活性化において、少なくとも1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、150倍、200倍、250倍、または300倍を上回るほどに減少され得る。
【0089】
いくつかの実施形態において、標的細胞の強化受容体への結合は、強化受容体により改変された免疫細胞において免疫細胞活性化シグナルを産生し得る。
【0090】
いくつかの実施形態において、強化受容体のリガンドへの結合により、強化受容体を欠く免疫細胞と比較して、強化受容体により改変された免疫細胞(例えば、改変されたTILまたは改変されたT細胞)は、強化されたネオアンチゲン結合を示す。
【0091】
いくつかの実施例において、強化受容体により改変された免疫細胞(TIL、ネオアンチゲン反応性T細胞、CAR-T、TCR-T、NKなど)は、強化受容体改変されていない免疫細胞(それぞれ前記のTIL、ネオアンチゲン反応性T細胞、CAR-T、TCR-T、NKなどと対応)と比較して、腫瘍微小環境から免疫細胞への抑制シグナルをある程度より良好に克服することができる。当該抑制シグナルは、強化受容体の細胞外ドメインのリガンドまたは抗原由来であり得、腫瘍微小環境からリガンドまたは抗原以外の免疫細胞への抑制シグナルであってもよい。
【0092】
いくつかの実施例において、強化受容体のECDはPD1またはPDL1モノクローナル抗体であり、ICDは任意の種類の共刺激分子であり、ここで、一定程度効果的に克服され得る腫瘍抑制シグナルはPDL1からだけでなく、また、CD47、TIM-3リガンド(Galectin-9など)、TIGITリガンド(CD155およびCD122またはPVRなど)、CTLA-4リガンド(B7など)からの免疫細胞抑制シグナルであってもよい。
【0093】
いくつかの実施例において、強化受容体のECDがSIRPαまたはCD47モノクローナル抗体であれば、ICDは任意の種類の共刺激分子であり、ここで、一定程度効果的に克服され得る腫瘍抑制シグナルはCD47からだけでなく、また、PDL1、TIM-3リガンド(Galectin-9など)、TIGITリガンド(CD155およびCD122またはPVRなど)、CTLA-4リガンド(B77など)からの免疫細胞抑制シグナルであってもよい。
【0094】
いくつかの実施例において、強化受容体のECDはTIM-3リガンドモノクローナル抗体(Galectin-9モノクローナル抗体またはTIM-3モノクローナル抗体など)であり、ICDは任意の種類の共刺激分子である場合、ここで、一定程度効果的に克服され得る腫瘍抑制シグナルはTIM-3リガンド(Galectin-9など)からだけでなく、また、PDL1、TIGITリガンド(CD155およびCD122またはPVRなど)、CTLA-4リガンド(B77など)からの免疫細胞抑制シグナルであってもよい。
【0095】
いくつかの実施例において、強化受容体のECDがTIGITまたはそのリガンドのモノクローナル抗体(CD155モノクローナル抗体またはCD122モノクローナル抗体またはPVRモノクローナル抗体)である場合、ICDは任意の種類の共刺激分子であり、ここで、一定程度効果的に克服され得る腫瘍抑制シグナルはTIGITリガンド(CD155およびCD122またはPVRなど)からだけでなく、また、PDL1、TIM-3リガンド(Galectin-9など)、CTLA-4リガンド(B77など)からの免疫細胞抑制シグナルである。
【0096】
いくつかの実施例において、強化受容体のECDはVISTAである場合、ICDは任意の種類の共刺激分子であり、ここで、一定程度効果的に克服され得る腫瘍抑制シグナルはVISTAリガンドからだけでなく、また、PDL1、CD47、TIM-3リガンド(Galectin-9など)、TIGITリガンド(CD155およびCD122またはPVRなど)、CTLA-4リガンド(B77など)からの免疫細胞抑制シグナルである。
【0097】
いくつかの実施例において、aBA-CARおよび強化受容体により改変されたT細胞は、人工(外来性)T細胞受容体(TCR)または別のキメラ抗原受容体CARをさらに有し、TCRまたはCARが標的細胞を認識できる場合、強化受容体により改変されたT細胞は、強化受容体による改変がなされていないT細胞と比較して高い免疫細胞活性化機能を有し、人工TCRまたは別のCARのいずれも標的細胞を認識できない場合、強化受容体により改変されたT細胞は、強化受容体による改変がなされていないT細胞よりも強い免疫細胞活性化機能を有しない。
【0098】
ネオアンチゲンへの特異的結合を示すT細胞受容体(TCR)複合体は、内在性TCR複合体であっても外来性TCR複合体であってもよい。改変された免疫細胞のTCR複合体(例えば、内在性または外来性)は、免疫細胞への抗原結合特異性(例えば、ネオアンチゲン結合)を付与し得る。
【0099】
ある様態において、本開示は、ネオアンチゲンに特異的に結合する改変された免疫細胞を提供し、前記改変された免疫細胞は、(a)ネオアンチゲンに結合するポリペプチド細胞外ドメイン(PED)を含むキメラ刺激分子であって、PEDは免疫細胞活性化シグナルを媒介する共刺激分子の細胞内ドメイン(ICD)に融合し、かつ、ネオアンチゲンへのキメラ刺激分子の結合が、改変された免疫細胞における免疫細胞活性化シグナルをもたらすキメラ刺激分子と、(b)(i)ブースター抗原に結合可能な相互作用ドメイン、(ii)膜貫通ドメイン、(iii)細胞内シグナル伝達ドメインを含むaBA-CARと、を含む。いくつかの実施形態において、PEDは、未改変のTILの表面タンパク質の細胞外ドメインであり得る。いくつかの実施形態において、PEDの例としては、抗体ならびにその誘導体、バリアント、およびフラグメントが含まれる。
【0100】
ある実施例において、本開示は、ネオアンチゲンまたは腫瘍関連抗原(TAA)、またはがん精巣抗原、またはウイルス(HPV、EBV)由来抗原に特異的に結合する改変された免疫細胞を提供し、ここで、前記改変された免疫細胞は、(a)ネオアンチゲンに特異的に結合し得る天然TCRまたは遺伝子操作された外来性TCRと、(b)タンパク質の細胞外ドメイン(ECD)を含む強化受容体であって、ECDは免疫細胞活性化シグナルを媒介する共刺激分子の細胞内ドメイン(ICD)に融合し、かつ、強化受容体のリガンドへの結合は、改変された免疫細胞において、免疫細胞不活化シグナルの代わりに免疫細胞活性化シグナルを生じる強化受容体と、(c)(i)ブースター抗原に結合可能な相互作用ドメイン、(ii)膜貫通ドメイン、(iii)細胞内シグナル伝達ドメイン、を含むaBA-CARとを含み、上記a、b、cの三者のうちcは不可欠であり、いくつかの実施例においてbまたはaは一方だけが存在していてもよく、いくつかの実施例においてはa、b、cの三者が共存する。
【0101】
ある実施例において、本開示はネオアンチゲンに特異的に結合する改変された腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を提供し、前記改変された免疫細胞は、(a)ネオアンチゲンに特異的に結合し得る天然TCRと、(b)タンパク質の細胞外ドメイン(ECD)を含む強化受容体で、ECDは免疫細胞活性化シグナルを媒介する共刺激分子の細胞内ドメイン(ICD)と融合し、かつ、分子はリガンドに変換されて、改変されたTILにおいて免疫細胞不活性化シグナルの代わりに免疫細胞活性化シグナルを生じる強化受容体と、(c)(i)ブースター抗原に結合可能な相互作用ドメイン、(ii)膜貫通ドメイン、(iii)細胞内シグナル伝達ドメインを含むaBA-CARとを含む。上記a、b、cの三者のうちcは不可欠であり、いくつかの実施例においてbまたはaは一方だけが存在していてもよく、いくつかの実施例においてはa、b、cの三者が共存し、そして三者が共存する細胞はスーパーTIL(Super TIL、STIL)と称される。
【0102】
ある様態において、本開示はサイトカイン、例えばケモカインを過剰発現する改変された免疫細胞を提供し、このうち免疫細胞は(i)腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、(ii)間質腫瘍浸潤リンパ球(sTIL)、または(iii)抗原への特異的結合を示すT細胞である。ケモカインを過剰発現する改変された免疫細胞は、本明細書で提供される任意の改変された免疫細胞であり得る。
【0103】
サイトカインとは、細胞によって放出されるタンパク質(例えば、ケモカイン、インターフェロン、リンホカイン、インターロイキンおよび腫瘍壊死因子)を指し、それは細胞の挙動に影響を及ぼし得る。サイトカインは、マクロファージ、Bリンパ球、Tリンパ球、およびマスト細胞などの免疫細胞、並びに内皮細胞、線維芽細胞、および各種の間質細胞を含む様々な細胞により産生される。所定のサイトカインは、2以上の細胞により産生され得る。サイトカインは、全身または局所的な免疫調節作用の産生に関与し得る。
【0104】
いくつかのサイトカインは、炎症性サイトカインとして作用することができる。炎症性サイトカインとは、炎症反応の誘導または増殖に関与するサイトカインを指す。炎症性サイトカインは、免疫系の各種細胞(例えば好中球および白血球)と共に免疫応答を形成するために働き得る。いくつかのサイトカインは抗炎症性サイトカインとして機能し得る。抗炎症性サイトカインとは、炎症反応の減少に関与するサイトカインを指す。いくつかの場合において、抗炎症性サイトカインは炎症性サイトカインの反応を調節することができる。いくつかのサイトカインは、炎症性サイトカインおよび抗炎症性サイトカインとして作用することができる。ケモカインなどいくつかのサイトカインは、走化性において機能し得る。ケモカインは、付近の応答細胞において指向的走化性を誘導することができる。
【0105】
いくつかの実施形態において、炎症促進および/または遊走活性化の機能を有するサイトカインの発現が、免疫細胞においてアップレギュレーションされ得る。炎症促進および/または遊走活性化の機能を有するサイトカインの発現のアップレギュレーションは、例えば免疫療法において標的細胞に対する免疫応答の刺激に有用であり得る。
【0106】
本明細書により提供される免疫細胞によって過剰発現されるサイトカインの例としては、リンホカイン、モノカインおよび従来のポリペプチドホルモンが含まれ得るがこれに限らない。サイトカインとして含まれるものは、成長ホルモン(ヒト成長ホルモン、N-メチオニンヒト成長ホルモン、およびウシ成長ホルモンなど)、パラトルモン、チロキシン、インスリン、プロインスリン、リラキシン、プロリラキシン、糖タンパク質ホルモン(卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)および黄体形成ホルモン(LH)など)、肝細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子、プロラクチン、胎盤性プロラクチン、腫瘍壊死因子-α、mullerian抑制物質、マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド、インヒビン、アクチビン、血管内皮増殖因子、インテグリン、トロンボポエチン(TPO)、神経成長因子(NGF-αなど)、血小板成長因子、トランスフォーミング増殖因子(TGFs、例えばTGF-α、TGF-β、TGF-β1、TGF-β2およびTGF-β3など)、インスリン様成長因子-Iおよび-II、エリスロポエチン(EPO)、FLT-3L、幹細胞因子(SCF)、骨誘導因子、インターフェロン(IFN、例えばIFN-α、IFN-β、IFN-γ)、コロニー刺激因子(CSFs、例えばマクロファージ-CSF(M-CSF))、顆粒球-マクロファージ-CSF(GM-CSF)、顆粒球-CSF(G-CSF)、マクロファージ刺激因子(MSP)、インターロイキン(ILs、例えばIL-1、IL-1a、IL-1b、IL-1RA、IL-18、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-20)、腫瘍壊死因子(CD154、LT-β、TNF-α、TNF-β、4-1BBL、APRIL、CD70、CD153、CD178、GITRL、LIGHT、OX40L、TALL-1、TRAIL、TWEAK、TRANCEなど)、およびその他のポリペプチド因子(LIF,オンコスタチンM(OSM)和KITリガンド(KL)を含む)である。サイトカイン受容体とは、サイトカインを結合させる受容体タンパク質を指す。サイトカイン受容体は、膜結合型および可溶型の両方であり得る。
【0107】
いくつかの実施形態において、過剰発現するサイトカインは、インターロイキン(IL-1)ファミリーのメンバー(リガンドなど)、IL-1受容体ファミリーのメンバー、インターロイキン-6(IL-6)ファミリーのメンバー(リガンドなど)、IL-6受容体、インターロイキン-10(IL-10)ファミリーのメンバー(リガンドなど)、IL-10受容体、インターロイキン-12(IL-12)ファミリーのメンバー(リガンドなど)、IL-12受容体、インターロイキン-17(IL-17)ファミリーのメンバー(リガンドなど)、またはIL-17受容体である。
【0108】
いくつかの実施形態において、過剰発現するサイトカインは、インターロイキン-1(IL-1)ファミリーのメンバーもしくは関連タンパク質、腫瘍壊死因子(TNF)ファミリーのメンバーもしくは関連タンパク質、インターフェロン(IFN)ファミリーのメンバーもしくは関連タンパク質、インターロイキン-6(IL-6)ファミリーのメンバーもしくは関連タンパク質、または、ケモカインもしくは関連タンパク質である。いくつかの実施形態において、サイトカインは、IL18、IL18BP、IL1A、IL1B、IL1F10、IL1F3/IL1RA、IL1F5、IL1F6、IL1F7、IL1F8、IL1RL2、IL1F9、IL33、BAFF/BLyS/TNFSF138、4-1BBL、CD153/CD30L。/TNFSF8、CD40LG、CD70、Fasリガンド/FASLG/CD95L/CD178、EDA-A1、TNFSF14/LIGHT/CD258、TNFA、LTA/TNFB/TNFSF1、LTB/TNFC、CD70/CD27L/TNFSF7、TNFSF10/TRAIL/APO-2L(CD253)、RANKL/OPGL/TNFSF11(CD254)、TNFSF12、TNF-α/TNFA、TNFSF13、TL1A/TNFSF15、OX-40L/TNFSF4/CD252、CD40L/CD154/TNFSF5、IFNA1、IFNA10、IFNA13、IFNA14、IFNA2、IFNA4、IFNA7、IFNB1、IFNE、IFNG、IFNZ、IFNA8、IFNA5/IFNaG、IFNω/IFNW1、CLCF1、CNTF、IL11、IL31、IL6、Leptin、LIF、OSM、CCL1/TCA3、CCL11、CCL12/MCP-5、CCL13/MCP-4、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17/TARC、CCL18、CCL19、CCL2/MCP-1、CCL20、CCL21、CCL22/MDC、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CCL28、CCL3、CCL3L3、CCL4、CCL4L1/LAG-1、CCL5、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9、CX3CL1、CXCL1、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCL17、CXCL2/MIP-2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7/Ppbp、CXCL9、IL8/CXCL8、XCL1、XCL2、FAM19A1、FAM19A2、FAM19A3、FAM19A4およびFAM19A5から選ばれる。
【0109】
サイトカイン発現の評価には様々な方法を用いることができる。サイトカイン発現は、改変された免疫細胞が培養される細胞培地(例えば、in vitro産生)、または、改変された免疫細胞を有する対象から得られる血清(例えば、in vivo産生)を1または複数のサイトカインの存在についてアッセイすることによって評価され得る。サイトカインレベルは、任意の適切なアッセイを用いて、濃度を含む各種の適切な単位で定量され得る。いくつかの実施形態においては、サイトカインタンパク質を検出する。いくつかの実施形態においては、サイトカインのmRNA転写産物が検出される。サイトカインアッセイの例としては、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウェスタンブロット、免疫蛍光アッセイ、放射免疫アッセイ、試料中の様々なサイトカインを並行して検出することを可能にする抗体アレイ、ビーズベースのアレイ、定量的PCR、マイクロアレイなどが挙げられる。その他の適切な方法としては、プロテオミクスの手法(2次元ゲル、MS分析など)が挙げられ得る。
【0110】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される改変された免疫細胞によって過剰発現されるサイトカインは、ケモカインである。ケモカインは、例えばCCケモカイン、CXCケモカイン、Cケモカイン、およびCX3Cケモカインであってよい。いくつかの実施形態において、改変された免疫細胞により過剰発現されるケモカインは、CCL1、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9、CCL10、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27およびCCL28より選ばれるCCケモカインである。前記ケモカインは、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16およびCXCL17から選ばれるCXCケモカインである。いくつかの実施形態において、改変された免疫細胞によって過剰発現されるケモカインは、XCL1およびXCL2より選ばれるCケモカインである。いくつかの実施形態において、免疫細胞によって過剰発現されケモカインはCX3Cケモカインであり、CX3CケモカインはCX3CL1である。
【0111】
いくつかの場合において、本明細書において免疫細胞が提供され、これは、aBA-CAR改変以外の遺伝子改変NK細胞である。
【0112】
いくつかの場合において、本明細書はNK細胞を提供し、当該NK細胞は、aBA-CAR改変以外のCAR遺伝子改変CAR-NK細胞であり、そして、aBA-CAR改変以外のCAR遺伝子改変は、NK細胞に対し、標的細胞を特異的に識別して死滅させる特性を付与する。前記aBA-CAR以外のCAR遺伝子改変は、NKG2Dの構造の一部を含んでいてもよい。
【0113】
いくつかの場合において、ブースターアジュバントは、本発明のn種類のブースター細胞からなるカスケード増殖ブースターシステムであり、前記nは正の整数であり、第1段階ブースター細胞は第1のブースター抗原(BA1)を発現し、第2段階ブースター細胞は第2のブースター抗原(BA2)と第1のブースター抗原を特異的に標的とするaBA1-CARとを発現し、第3段階ブースター細胞は第3のブースター抗原(BA3)と第2のブースター抗原を特異的に標的とするaBA2-CARとを発現し、……第n段階ブースター細胞は第nのブースター抗原(BAn)と第(n-1)のブースター抗原を特異的に標的とするaBAn-1-CARとを発現し、前記第nのブースター抗原BAnは、前記治療性免疫細胞により認識されることができ、かつ、各段階のブースター抗原は相互に異なる。
【0114】
いくつかの場合において、カスケード増殖する多段階ブースターシステムの段階数nは、1~10000000の範囲の任意の正の整数と等しくてよい。
【0115】
いくつかの場合において、カスケード増殖する多段階ブースターシステムにおいて、第2段階以降のブースター細胞はすべて、in vivoでBA-CARを通して、1つ前の段階からのブースター抗原により活性化され、および、増殖され得る。異なる段階のブースター細胞は、同一種の細胞であってもよく(すべてT細胞、またはすべてNK細胞であるなど)、異なる種類の細胞であってもよく、複数種の細胞の混合物であってもよい。
【0116】
本開示は、免疫細胞治療のためのアジュバント医薬組成物を提供し、当該医薬組成物は、本明細書に記載のブースターアジュバントを含むことを特徴とする。
【0117】
本開示は、免疫細胞治療のための医薬の組み合わせを提供する。当該医薬の組み合わせは、本明細書に記載のブースターアジュバントと、本発明に記載の治療性免疫細胞とを含み、前記治療性免疫細胞および前記医薬組成物が、適切な時点で単回または連続複数回再注入されることで、前記治療性免疫細胞が前記医薬組成物中のアジュバントにより活性化され数的に増殖され、これにより標的細胞を認識して死滅させ得ることを特徴とする。
【0118】
本発明は、がんの治療方法を提供する。それは、本明細書に記載の免疫細胞治療のためのアジュバント薬学的組成物または免疫細胞治療のための薬学的組み合わせ、特には適切な時点で単回または連続複数回再注入される免疫細胞治療のための治療性免疫細胞およびアジュバント薬剤を用いることを特徴とする。
【0119】
ある様態において、本開示は、対象のがんを処置する方法を提供し、該方法は、(a)改変されたTIL、PD1、TIM3、CD137、CD39の1または複数による末梢血PBMCのポジティブスクリーニングから得られる改変されたT細胞、改変されたT細胞、または本明細書中に記載の態様の様々な実施形態の任意の1つである改変された免疫細胞を対象に投与すること、(b)ネオアンチゲンを発現しているがんである標的細胞を、改変されたTIL、スクリーニングにより得られる改変されたT細胞、改変されたTILの細胞毒性を誘導する条件下での改変されたT細胞または改変された免疫細胞、スクリーニングにより得られる改変されたT細胞、改変されたT細胞、またはがんである標的細胞に対して改変された免疫細胞と接触させ、これによってがんである標的細胞の死を誘導することを含む。
【0120】
ある様態において、本開示はT細胞群を増殖する方法を提供し、該方法は、(a)少なくとも1つの、本明細書中に記載の態様の様々な実施形態の任意の1つである改変された免疫細胞を含むT細胞群の提供すること、(b)T細胞群の増殖をもたらすために、T細胞群をブースター抗原に曝露することを含む。
【0121】
ある様態において、本開示はT細胞群を増殖する方法を提供し、これは、(a)aBA-CARをエンコードする核酸をT細胞群に導入し、これによってaBA-CARを発現している細胞または細胞群を産生することであって、ここで、aBA-CARは、(i)CARを結合することのできる抗原相互作用ドメイン、(ii)膜貫通ドメイン、(iii)細胞内シグナル伝達ドメインを含み、(b)aBA-CARを発現している細胞群をブースター抗原に接触させ、これによって増殖されたおよび/または活性化された免疫細胞群を産生することとを含む。ここで、抗原は、腫瘍標的細胞によって特異的に発現されるものではない。
【0122】
ある様態において、本開示は、(a)免疫細胞活性化シグナルを媒介する共刺激タンパク質の細胞内ドメイン(ICD)と融合する、タンパク質の細胞外ドメイン(ECD)を含む、強化受容体、および(b)抗原特異性T細胞受容体複合体、または、その成分のうちの1または複数、のうちの1または複数をエンコードする1または複数のポリヌクレオチドを含む組成物を提供する。
【0123】
ある様態において、本開示は、1または複数のコードを含む以下の1または複数のポリヌクレオチドの組成物を提供する。(a)抗原特異性T細胞受容体複合体、または、その成分のうちの1または複数、(b)(i)ブースター抗原に結合可能な相互作用ドメイン、(ii)膜貫通ドメイン、(iii)細胞内シグナル伝達ドメインを含むaBA-CAR、のうちの1または複数をエンコードする1または複数のポリヌクレオチドを含む組成物を提供する。
【0124】
ある様態において、本開示は、(a)免疫細胞活性化シグナルを媒介する共刺激タンパク質の細胞内ドメイン(ICD)と融合する、タンパク質の細胞外ドメイン(ECD)を含む、強化受容体、(b)(i)B細胞表面タンパク質に結合可能な抗原相互作用ドメイン、(ii)膜貫通ドメイン、および(iii)細胞内シグナル伝達ドメインを含むaBA-CAR、のうちの1または複数をエンコードする1または複数のポリヌクレオチドを含む組成物を提供する。
【0125】
ある様態において、本開示は、(a)免疫細胞活性化シグナルを媒介する共刺激タンパク質の細胞内ドメイン(ICD)と融合するタンパク質の細胞外ドメイン(ECD)を含む、強化受容体、(b)抗原特異性T細胞受容体複合体、または、その成分のうちの1または複数、(c)(i)B細胞表面タンパク質に結合可能な抗原相互作用ドメイン、(ii)膜貫通ドメイン、(iii)細胞内シグナル伝達ドメインを含むaBA-CAR、のうちの1または複数をエンコードする1または複数のポリヌクレオチドを含む組成物を提供する。
【0126】
本明細書の様態の様々な実施形態において、本開示の組成物と共に使用できるプロモーターは、真核生物、哺乳類、ヒト以外の哺乳類またはヒトの細胞中で活性であるプロモーターを含む。プロモーターは誘導性または構成型活性のプロモーターであってよい。代替的に、または追加で、プロモーターは組織または細胞特異性であり得る。
【0127】
適切な真核プロモーター(すなわち、真核細胞中で機能的であるプロモーター)の非限定的な例としては、早期サイトメガロウイルス(CMV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ、早期および晩期SV40、レトロウイルス由来の長い末端反復配列(LTR)、ヒト伸長因子-1プロモーター(EF1)、ニワトリβ活性プロモーター(CAG)と融合するサイトメガロウイルス(CMV)エンハンサーを含むハイブリッド構築物、マウス幹細胞ウイルスプロモーター(MSCV)、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1遺伝子座プロモーター(PGK)、およびマウスメタロチオネイン-1などに由来するプロモーターが挙げられ得る。プロモーターは真菌プロモーターであってもよい。プロモーターは植物プロモーターであってもよい。植物プロモーターのデータベースは周知である(例えば、PlantProm)。発現ベクターはまた、翻訳開始のためのリボソーム結合部位と、転写ターミネーターとを含み得る。発現ベクターはまた、発現を増殖させるための適切な配列を含んでもよい。
【0128】
本明細書の様態の様々な実施形態において、改変された免疫細胞はネオアンチゲンおよび/またはネオエピトープに特異的に結合し得る。ネオアンチゲンおよびネオエピトープとは、通常、腫瘍特異性突然変異を指し、いくつかの場合において抗腫瘍T細胞反応を引き起こす。例えば、全エクソンシークエンスの方法でこれらの内因性突然変異は同定され得る(Tran Eら、「突然変異特異性CD4+T細胞に基づく上皮がん患者におけるがん免疫療法」、Science 344:641-644(2014))。強化受容体を含む改変された免疫細胞(例えば、改変されたTIL、または改変されたT細胞)は、腫瘍特異性ネオアンチゲンとの特異的結合を示し得る。免疫細胞によって結合されるネオアンチゲンは、標的細胞上で発現され得、例えば内因性遺伝子における突然変異によりエンコードされる。いくつかの場合において、免疫細胞によって特異的に結合されるネオアンチゲンまたはネオエピトープは、突然変異遺伝子によりエンコードされ得る。当該遺伝子は、ABL1、ACO1 1997、ACVR2A、AFP、AKT1、ALK、ALPPL2、ANAPC1、APC、ARID1A、AR、AR-v7、ASCL2、β2Μ、BRAF、BTK、C15ORF40、CDH1、CLDN6、CNOT1、CT45A5、CTAG1B(コードNY-ESO-1)、DCT、DKK4、EEF1B2、EEF1DP3、EGFR、EIF2B3、env、EPHB2、ERBB3、ESR1、ESRP1、FAM111B、FGFR3、FRG1B、GAGE1、GAGE 10、GATA3、GBP3、HER2、IDH1、JAK1、KIT、KRAS、LMAN1、MABEB16、MAGEA1、MAGEA10、MAGEA4、MAGEA8、MAGEB 17、MAGEB4、MAGEC1、MEK、MLANA、MLL2、MMP13、MSH3、MSH6、MYC、NDUFC2、NRAS、NY-ESO、PAGE2、PAGE5、PDGFRa、PIK3CA、PMEL、polタンパク質、POLE、PTEN、RAC1、RBM27、RNF43、RPL22、RUNX1、SEC31A、SEC63、SF3B 1、SLC35F5、SLC45A2、SMAP1、SMAP1、SPOP、TFAM、TGFBR2、THAP5、TP53、TTK、TYR、UBR5、VHLおよびXPOTからなる群より選択され得る。いくつかの実施形態において、ネオアンチゲンは、個体由来の腫瘍試料の遺伝子プロファイルに基づいて選択される。いくつかの実施形態において、ネオアンチゲンは、個体由来の腫瘍試料の体細胞突然変異プロファイルに基づいて選択され得る。
【0129】
本明細書の様態の様々な実施形態において、改変された免疫細胞はさらに、死滅スイッチ(または自殺スイッチ)をさらに含む。高サイトカイン血症のように傷害性が重篤である場合において、死滅スイッチは、免疫細胞を排除するために活性化され得る。これは、免疫系が、多くの炎症性サイトカインが放出されるこのような強烈な応答を有する場合に起き得、発熱、頭痛、発疹、心拍数上昇、血圧低下、呼吸困難を含む軽微~重篤な症状を引き起こす。死滅スイッチは薬物誘導型死滅スイッチであってもよい。死滅スイッチは誘導型カスパーゼ9を含み得る。
【0130】
本明細書の様態の様々な実施形態は、例えば改変された免疫細胞などの細胞を含む。例えば免疫細胞(例えば、T細胞およびNK細胞を含むリンパ球)などの細胞は、対象から取得することができる。対象の非限定的な例としては、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラットおよびそれらの遺伝子改変種が含まれる。細胞が獲得され得る対象からの試料の例としては、皮ふ、心臓、肺、腎臓、骨髄、乳腺、膵臓、肝臓、筋肉、平滑筋、膀胱、胆嚢、結腸、腸、脳、前立腺、食道、甲状腺、血清、唾液、尿、胃液および消化液、涙、便、精液、膣液、腫瘍組織に由来する間質液、眼液、汗、粘液、耳垢、油脂、腺分泌物、髄液、毛髪、爪、血漿、鼻腔スワブもしくは鼻咽頭洗浄液、髄液、脳脊髄液、組織、咽頭スワブ、生検、胎盤液、羊水、臍帯血、強力液、腔液、痰、膿、微生物群、胎便、母乳、並びに/またはその他の排泄物もしくは体組織が挙げられるが、これらに限らない。
【0131】
いくつかの場合において、細胞は、対象から得たT細胞、NK細胞、B細胞などの群であってもよい。T細胞は、PBMC、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、並びに、感染部位、腹水、胸水、脾臓組織および腫瘍由来の組織を含む、多くの原料から得られる。いくつかの実施形態において、T細胞は、例えばFicollTM分離など、任意の数の技術を用いて対象から採取した血液単位から得られ得る。ある実施態様において、アフェレーシスによって個体の循環血液からの細胞が得られる。アフェレーシス製品は、典型的には、T細胞を含むリンパ球、単球、顆粒球、B細胞、その他の有核白血球、赤血球、および血小板が含まれる。アフェレーシスによって収集された細胞は、血漿部分を除去するため、および、その後の処理ステップのための適切な緩衝液または培地に細胞を入れるために洗浄され得る。
【0132】
本明細書の様態において、様々な免疫細胞のうちの任意のものが利用され得る。いくつかの実施形態において、免疫細胞には、顆粒球(例えばasophils、好酸球、および好中球など)、マスト細胞、マクロファージに発達し得る単球、抗原提示細胞(樹状細胞など)、およびリンパ球(ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、B細胞、およびT細胞など)が含まれる。いくつかの実施形態において、免疫細胞は免疫エフェクター細胞である。免疫エフェクター細胞とは、刺激への応答において特異的な機能を果たすことのできる免疫細胞を意味する。いくつかの実施形態において、免疫細胞は、細胞死を誘導できる免疫エフェクター細胞である。いくつかの実施形態において、免疫細胞はリンパ球である。いくつかの実施形態において、リンパ球はNK細胞である。いくつかの実施形態において、リンパ球はT細胞である。いくつかの実施形態において、T細胞は活性化されたT細胞である。T細胞には、ナイーブおよび記憶細胞(例えばセントラルメモリーまたはTCM、エフェクターメモリーまたはTEM、およびエフェクターメモリーRAまたはTEMRA)、エフェクター細胞(例えば、細胞傷害性T細胞もしくはCTL、またはTc細胞)、ヘルパー細胞(例えばTh1、Th2、Th3)、Th9、Th7、TFH)、調節性細胞(例えばTregおよびTr1細胞)、ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、リンパ球を活性化させたキラー細胞(LAK)、αβT細胞、γδT細胞およびT細胞系統の類似のユニークな種別が含まれる。T細胞は、細胞表面に存在するタンパク質によって、CD8+T細胞とCD4+T細胞の2種類に大別される。対象のシステムを発現しているT細胞は、感染細胞の殺滅および他の免疫細胞の活性化またはリクルートを含む、複数の機能を実行することができる。CD8+T細胞は細胞傷害性T細胞または細胞傷害性Tリンパ球(CTL)と呼ばれる。対象のシステムを発現しているCTLは、ウイルス感染細胞またはがん細胞の認識と除去に関与し得る。CTLは、アポトーシス(例えばプログラムされた細胞死)を引き起こす細胞毒素を含む特別のコンパートメントまたは顆粒を有する。CD4+T細胞は、追加のサブセットが存在する可能性もあるものの、Th1、Th2、Th17およびTregの4つのサブセットに分けることができる。「Th」は「ヘルパーT細胞」を指す。Th1細胞は、細胞内微生物、特に細菌に対する免疫応答を協調させることができる。これらは、細菌貪食のマクロファージなどの他の免疫細胞に警告し活性化する分子を産生および分泌することができる。Th2細胞は、B細胞、顆粒球およびマスト細胞に警告することによる、蠕虫(寄生虫)などの細胞外病原体に対する免疫応答を協調させることに関与する。Th17細胞は、免疫および非免疫細胞を活性化するシグナル分子であるインターロイキン17(IL-17)を産生することができる。Th17細胞は好中球のリクルートにおいて重要である。
【0133】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される免疫細胞群は、異種期限であってもよい。いくつかの実施形態において、使用する細胞はCD4およびCD8T細胞の異種性混合物で構成されていてもよい。CD4およびCD8細胞は、循環エフェクターT細胞の表現型特性を有し得る。前記CD4およびCD8細胞はまた、エフェクターメモリー細胞の表現型特性を有し得る。いくつかの実施形態において、細胞はセントラルメモリー細胞であってもよい。
【0134】
いくつかの実施形態において、細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)、末梢血リンパ球(PBL)、および、これらに限定される訳ではないが例えばT細胞、ナチュラルキラー細胞、単球、ナチュラルキラーT細胞、単球前駆細胞、造血幹細胞または非多能性幹細胞などの他の血液細胞サブセットを含む。いくつかの場合において、細胞は、例えばCD3+T細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞などの腫瘍浸潤細胞(TIL)、または任意の他タイプのT-細胞などの任意のT細胞を含む任意の免疫細胞であってよい。T細胞はまた、メモリーT細胞、幹細胞メモリーT、またはエフェクターT細胞を含み得る。例えば全血からT細胞を選択するなど、T細胞はバルク集団(bulk population)より選択してもよい。T細胞はバルク集団から増殖されてもよい。T細胞は特定の集団および発現型に偏らせてもよい。例えば、T細胞は、CD45RO(-)、CCR7(+)、CD45RA(+)、CD62L(+)、CD27(+)、CD28(+)および/またはIL-7Rα(+)を含む表現型的に偏らせてもよい。CD45RO(-)、CCR7(+)、CD45RA(+)、CD62L(+)、CD27(+)、CD28(+)および/またはIL-7Rα(+)を含むリストより選ばれる1または複数のマーカーを含む、適切な細胞を選ぶことができる。細胞にはさらに、例えば、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、造血幹細胞、神経幹細胞および間葉系幹細胞などの幹細胞が含まれる。細胞は、任意の数の初代培養細胞(例えばヒト細胞、非ヒト細胞および/またはマウス細胞)を含み得る。細胞は前駆細胞であってもよい。細胞は、治療対象の被験者(例えば、患者)からのものであってもよい。細胞は、ヒトドナーに由来することができる。宿主細胞は、CD45RO(-)、CCR7(+)、CD45RA(+)、CD62L+(L-セレクチン)、CD27+、CD28+およびIL-7Rα+からなる幹細胞様メモリー細胞TSCMであってよく、前記幹細胞様メモリー細胞はCD95、IL-2Rβ、CXCR3およびLFA-1を発現し得、前記幹記憶細胞とは異なる多くの機能的属性を示してもよい。宿主細胞は、L-セレクチンおよびCCR7を含むセントラルメモリー細胞TCMであってよく、前記セントラルメモリー細胞は、例えばIL-2を分泌できるが、IFNγまたはIL-4は分泌しない。細胞はまた、L-セレクチンおよびCCR7を含むエフェクターメモリー細胞TEMで、かつ、例えばエフクターサイトカイン(IFNγおよびIL-4など)を産生してもよい。
【0135】
本明細書の様態の各種実施形態において、免疫細胞はリンパ球を含む。いくつかの実施形態において、リンパ球はナチュラルキラー細胞(NK細胞)である。いくつかの実施形態において、リンパ球はT細胞である。T細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、脾臓組織、臍帯および腫瘍を含む多くの原料から得られる。いくつかの実施形態において、任意の数の利用可能なT細胞株を使用することができる。リンパ球(例えば細胞傷害性リンパ球)などの免疫細胞は、好適には自己細胞でよいが、異種細胞を用いてもよい。例えばFicoll単離など、任意の数の技術を用いて対象から採取した血液単位からT細胞を得ることができる。個体の循環血液由来の細胞は、アフェレーシスまたは白血球除去によって得ることができる。アフェレーシス製品には、通常、T細胞を含むリンパ球、単球、顆粒球、B細胞、その他の有核白血球、赤血球、および血小板が含まれる。アフェレーシスによって収集された細胞は、血漿部分を除去するため、および、その後の処理ステップのための適切な緩衝液または培地に細胞を入れるために洗浄され得る。洗浄後、細胞は、例えばCaを含有しないMg不含PBSなどの、各種の生体適合性緩衝液で再懸濁され得る。または、アフェレーシス試料から不要成分を除去して、細胞を直接培地で再懸濁してもよい。試料は、対象より直接提供されるか、または、例えば試料採取業者または医療提供者(例えば医師または看護師)のような1または複数の媒介者を介して間接的に提供されることができる。いくつかの実施形態において、末梢血白血球からのT細胞分離には、赤血球を溶解し、例えばPERCOL TM勾配などを用いた遠心分離によって末梢血白血球から単球を分離することを含むことができる。
【0136】
ポジティブまたはネガティブセレクション技術によって、例えばCD4+またはCD8+T細胞などのT細胞の特定のサブグループを更に分離することができる。例えば、負の選択をされる細胞特有の表面マーカーに対する抗体組成を用いて、T細胞群のネガティブセレクションを実現することができる。ある適切な技術は、負の磁気免疫付着による細胞選別を含む。それは、負の選択をされる細胞上に存在する細胞表面マーカーに対するモノクローナル抗体混合物を利用している。例えば、CD4+細胞を分離するために、モノクローナル抗体混合物は、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、およびCD8に対する抗体を含むことができる。ネガティブセレクションのプロセスは、主に均質な所望のT細胞群を産生するために用いることができる。いくつかの実施形態において、組成物は、2種またはそれ以上(例えば、2、3、4、5種、またはそれ以上)の異なる種類のT細胞の混合物を含む。
【0137】
いくつかの実施形態において、免疫細胞は富化された細胞群のメンバーである。任意の適切な方法により1または複数の所望する細胞タイプが富化され得る。その非限定的な例としては、増殖および/または所望の細胞タイプへの分化をトリガーするための細胞群に対する処理、不要な細胞タイプの成長を阻止するための処置、不要な細胞タイプを殺滅または溶解するための処理、所望の細胞タイプの精製(例えば、アフィニティーカラムでの精製により、1または複数の細胞表面マーカーに基づいて所望のまたは不要の細胞タイプを保持する)が含まれる。いくつかの実施形態において、富化された細胞群は、細胞傷害性リンパ球を豊富に含む細胞群であり、前記細胞傷害性リンパ球は、細胞傷害性T細胞(細胞傷害性Tリンパ球、CTL、Tキラー細胞、細胞溶解性T細胞、CD8+T細胞、およびキラーT細胞ともいう)、ナチュラルキラー(NK)細胞およびリンホカイン活性化キラー細胞(LAK)より選択される。
【0138】
ポジティブまたはネガティブセレクションによる所望の細胞群の分離のために、細胞および表面(例えば、ビーズなど粒子)の濃度を変えられてもよい。いくつかの実施形態において、細胞とビーズの最大接触を確保するため、ビーズと細胞とを混合したときの体積を有意に下げる(つまり、細胞濃度を上げる)ことが必要となる可能性がある。例えば、20億cells/mLの濃度を用いてもよい。いくつかの実施形態においては、10億cells/mLの濃度を用いる。いくつかの実施形態においては、1億cells/mLを上回る濃度を用いる。1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500または5000万cells/mLの細胞濃度を用いてもよい。別の実施形態においては、7500万個、8000万、8500万、9000万、9500万または1億cells/mLの細胞濃度を用いてもよい。更なる実施形態において、1.25億cellsまたは1.5億cells/mLの濃度を用いてもよい。高濃度の使用は、細胞収率の増加、細胞活性化および細胞増殖を招く。
【0139】
本開示のシステムおよび方法を用いて、様々な標的細胞を死滅させることができる。当該方法を利用できる標的細胞には、広範な範囲の細胞タイプが含まれる。標的細胞はin vitroのものであってよい。標的細胞はin vivoであってよい。標的細胞はex vivoであってよい。標的細胞は分離した細胞であってよい。標的細胞は生体内の細胞であってよい。標的細胞は生体であってよい。標的細胞は細胞培養物中の細胞であってよい。標的細胞は細胞集合体の中の1種類であってよい。標的細胞は哺乳類細胞または哺乳類細胞由来であってよい。標的細胞はげっ歯類細胞またはげっ歯類細胞由来であってよい。標的細胞はヒト細胞またはヒト細胞由来であってよい。標的細胞は原核細胞または原核細胞由来であってよい。標的細胞は細菌細胞であっても細菌細胞由来であってもよい。標的細胞は古細菌細胞または古細菌細胞由来であってよい。標的細胞は真核細胞または真核細胞由来であってよい。標的細胞は多能性幹細胞であってよい。標的細胞は植物細胞または植物細胞由来であってよい。標的細胞は動物細胞または動物細胞由来であってよい。標的細胞は無脊椎動物細胞または無脊椎動物細胞由来であってよい。標的細胞は脊椎動物細胞または脊椎動物細胞由来であってよい。標的細胞は微生物細胞または微生物細胞由来であってよい。標的細胞は真菌細胞または真菌細胞由来であってよい。標的細胞は特定の器官または組織由来であってよい。
【0140】
標的細胞は幹細胞または前駆細胞であってよい。標的細胞は、幹細胞(例えば、成体幹細胞、胚性幹細胞、人工多能性幹(iPS)細胞)または前駆細胞(例えば、心臓前駆細胞、神経前駆細胞など)を含み得る。標的細胞は、げっ歯類幹細胞、げっ歯類前駆細胞、ヒト幹細胞、ヒト前駆細胞などを含む、哺乳類幹細胞または前駆細胞を含み得る。クローン細胞は、細胞の子孫を含み得る。標的細胞は標的核酸を含み得る。標的細胞は生体内にあってよい。標的細胞は遺伝子改変細胞であってよい。標的細胞は宿主細胞であってよい。
【0141】
標的細胞は初代培養細胞であってよい。例えば、初代培養細胞の培養物は、継代0次、1次、2次、4次、5次、10次、15次、またはそれ以上であってよい。細胞は単細胞生物であってよい。細胞は培地中で成長されてもよい。
【0142】
標的細胞は疾患細胞であってもよい。疾患細胞は代謝、遺伝子発現および/または形態学的特徴の改変を有し得る。疾患細胞はがん細胞、糖尿病細胞またはアポトーシス細胞であってよい。疾患細胞は、有疾患被験者の細胞由来であってよい。例示的な疾患としては、血液疾患、がん、代謝疾患、眼疾患、臓器疾患、筋骨格系疾患、心疾患などを含み得る。
【0143】
標的細胞が初代培養細胞である場合、任意の方法で個体から採取され得る。例えば、アフェレーシス、白血球除去、密度勾配分離などによって白血球を採取し得る。生検によって、皮ふ、筋肉、骨髄、脾臓、肝臓、膵臓、肺、腸、胃などの組織由来の細胞を採取し得る。採取した細胞の分離または懸濁には適切な溶液を用い得る。このような溶液は、通常、低濃度の許容可能な低濃度の緩衝液と併せて、ウシ胎児血清またはその他の天然に存在する因子で適宜補充された平衡塩溶液(例えば生理食塩水、リン酸緩衝食塩水(PBS)、Hank’s平衡塩溶液など)であり得る。緩衝液には、HEPES、リン酸塩緩衝液、乳酸塩緩衝液などを含んでよい。細胞は、即座に使用してもよいし、保存してもよい(例えば凍結によって)。凍結細胞は、解凍して再利用され得る。細胞は、DMSO、血清、培地緩衝液(例えば、10%DMSO、50%血清、40%緩衝培地)および/または凍結温度で、細胞を保存するために使用されるその他同種の常用される溶液中で凍結され得る。
【0144】
標的細胞となり得る細胞の非限定的な例としては、リンパ球(例えばB細胞、T細胞(細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、制御性T細胞、ヘルパーT細胞)、ナチュラルキラー細胞、サイトカイン誘導キラー細胞(CIK)細胞(例えば米国特許第20080241194号明細書を参照))、骨髄細胞(顆粒球(好塩基球、好酸球、好中球/過分葉好中球)、単球/マクロファージ、赤血球(網赤血球)、マスト細胞、血小板/巨核球、樹状細胞)、内分泌系由来の細胞(甲状腺(甲状腺上皮細胞、濾胞傍細胞)、副甲状腺(副甲状腺主細胞、Oxyphil細胞)、副腎(クロム親和性細胞)、松果体(松果体細胞)を含む)、神経系細胞(グリア細胞(アストロサイト、ミクログリア)、マグノセルラー神経分泌細胞、星状細胞、Boettcher細胞および下垂体(性腺刺激ホルモン、コルチコイド、甲状腺ホルモン、成長ホルモン、乳酸ホルモン)を含む)、呼吸器系細胞(肺細胞(I型肺細胞、II型肺細胞)、Clara細胞、杯細胞、塵埃細胞を含む)、循環器系の細胞(心筋細胞、周皮細胞を含む)、消化器系の細胞(胃(胃主細胞、壁細胞)、杯細胞、パネート細胞、G細胞、D細胞、ECL細胞、I細胞、K細胞、S細胞を含む)、腸内分泌細胞(腸クロム親和性細胞、APUD細胞、肝臓(肝細胞、クッパー細胞)、軟骨/骨/筋肉を含む)、骨細胞(骨芽細胞、骨細胞、破骨細胞、歯(骨芽細胞、エナメル芽細胞)を含む)、軟骨細胞(軟骨細胞、軟骨細胞を含む)、皮膚細胞(毛母細胞、角化細胞、メラニン細胞(母斑細胞))、筋細胞(筋細胞を含む)、泌尿器系細胞(足細胞、傍糸球体細胞、糸球体メサンギウム細胞/糸球体メサンギウム細胞、近位細尿管刷子縁細胞、黄斑細胞を含む)、生殖系細胞(精子、セルトリ細胞、Leydig細胞、卵子を含む)、およびその他の細胞(脂肪細胞、線維芽細胞、腱細胞、表皮性ケラチン産生細胞(分化表皮細胞)、表皮性基底細胞(幹細胞)、手の爪および足の爪のケラチン産生細胞、爪床基底細胞(幹細胞)、髄様毛幹細胞、皮質毛幹細胞、クチクラ毛幹細胞、クチクラ毛根鞘細胞、Huxley層の毛根鞘細胞、Henle層の毛根鞘細胞、外毛根鞘細胞、毛母細胞(幹細胞)、湿潤重層障壁上皮細胞、角膜・舌・口腔・食道・肛門管・遠位尿道・膣の重層扁平上皮の表面上皮細胞、角膜上皮・舌・口腔・食道・肛門管・遠位尿道・膣の上皮の基底細胞(幹細胞)、尿路上皮細胞(膀胱および尿道)、外分泌系分泌上皮細胞、唾液腺粘液細胞(多糖類に富んだ分泌物)、唾液腺漿液細胞(糖タンパク質酵素に富んだ分泌物)、舌のVon Ebner腺細胞(味蕾を洗浄)。乳腺細胞(乳汁を分泌)、涙腺細胞(涙を分泌)、耳の耳垢腺細胞(耳垢を分泌)、エクリン汗腺暗細胞(糖タンパクを分泌)、Eccrine汗腺明細胞(低分子を分泌)、アポクリン汗腺細胞(匂いのある分泌物、性ホルモンに敏感)、眼瞼Moll細胞腺(特別な汗腺)、皮脂腺細胞(脂質に富んだ皮脂分泌物)、鼻のBowman腺細胞(嗅上皮を洗浄)、十二指腸Brunner腺の細胞(酵素およびアルカリ性粘液)、精嚢細胞(精子遊泳のための果糖を含む精液成分を分泌)、前立腺腺細胞(精液成分を分泌)、Bulbourethral腺細胞(粘液分泌)、バルトリン腺細胞(膣の潤滑剤を分泌)、Littre腺細胞(粘液を分泌)、子宮内膜細胞(炭水化物を分泌)、呼吸器および消化管から分離された杯細胞(粘液を分泌)、胃粘膜細胞(粘液を分泌)、胃腺酵素原細胞(ペプシノゲン分泌)、胃腺酸分泌細胞(塩酸を分泌)、膵臓腺房細胞(炭酸水素塩および消化酵素を分泌)、小腸Paneth細胞(リゾチームを分泌)、肺II型肺細胞(サーファクタント分泌)、肺Clara細胞、ホルモン分泌細胞、下垂体前葉細胞、Somatotropes、Lactotropes、Thyrotropes、Gonadotropes、Corticotropes、下垂体中間部細胞、Magnocellular神経分泌細胞、腸および呼吸器系細胞、甲状腺細胞、甲状腺上皮細胞、傍濾胞細胞、副甲状腺細胞、副甲状腺主細胞、オキシフィル細胞、副腎細胞、クロム親和性細胞、精巣のLey掘細胞、卵巣の卵胞間質細胞、卵巣卵胞破裂黄体細胞、顆粒膜ルテイン細胞、Thecaルテイン細胞、Juxtaglomerular細胞(レニン分泌)、腎臓Macula densa細胞、代謝および貯蔵細胞、バリア機能細胞(肺、腸、外分泌腺および泌尿生殖路)、腎臓、I型肺細胞(肺の気腔を被覆)、膵管細胞(中心細胞)、線条導管細胞(汗腺、唾液腺、乳腺など)、導管細胞(精嚢、前立腺など)、密閉した体腔を被覆する上皮細胞、推進機能を持つ繊毛細胞、細胞外マトリックス分泌細胞、収縮性細胞、骨格筋細胞、幹細胞、心筋細胞、血液および免疫系細胞、赤血球(赤血球)、巨核球(血小板前駆体)、単球、結合組織マクロファージ(各種タイプ)、表皮ランゲルハンス細胞、破骨細胞(骨中)、樹状細胞(リンパ組織)、ミクログリア細胞(中枢神経系)、好中球、好酸球、好塩基球、マスト細胞、ヘルパーT細胞、抑制性T細胞、細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、網赤血球、血液および免疫系に用いられる幹細胞および単分化能前駆細胞(各種タイプ)、多能性幹細胞、Totipotent幹細胞、誘導多能性幹細胞、成体幹細胞、感覚変換細胞、自律神経細胞、感覚器および末梢神経支持細胞、中枢神経細胞およびグリア細胞、水晶体細胞、色素細胞、メラニン細胞、網膜色素上皮細胞、生殖細胞、Oogonium/Oocyte、Spermatid、Spermatocyte、Spermatogonium細胞(精母細胞の幹細胞)、精子、ナース細胞、卵巣濾胞細胞、セルトリ細胞(精巣)、胸腺上皮細胞、間質細胞および腎臓間質細胞、またはK562、NK92などの加工改造もしくは照射した非ヒト細胞などを含む)が挙げられるがこれらに限らない。標的細胞は、天然細胞でも、改変された細胞でもよい。
【0145】
特に興味深いのは、がん細胞である。いくつかの実施形態において、標的細胞はがん細胞である。がん細胞の非限定的な例としては、棘細胞腫、Acinic細胞がん、聴神経腫瘍、Acral lentiginous黒色腫、Acrospiroma、急性好酸球性白血病、急性リンパ球性白血病、急性巨核球性白血病、急性単球性白血病、成熟を伴う急性骨髄芽球性白血病、急性骨髄性樹状細胞白血病、急性骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病、アダマンチノーマ、腺がん、腺様嚢胞がん、腺腫、腺腫様歯原性腫瘍、副腎皮質がん、成人T細胞白血病、アグレッシブNK細胞白血病、エイズ関連がん、エイズ関連リンパ腫、肺胞軟部肉腫、エナメル上皮腫、肛門がん、未分化大細胞リンパ腫、甲状腺未分化がん、血管免疫芽球型T細胞リンパ腫、血管平滑筋脂肪腫、血管肉腫、付属器がん、星細胞腫、非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍、基底細胞がん、基底細胞様がん、B細胞白血病、B細胞リンパ腫、Bellini管がん、Biliary tract cancer、膀胱がん、Blastoma、悪性骨腫瘍、良性骨腫瘍、脳幹グリオーマ、脳腫瘍、乳がん、Brenner腫瘍、気管支腫瘍、細気管支肺胞がん、ブラウン腫瘍、バーキットリンパ腫、原発不明がん、カルチノイド腫瘍、がん、上皮内がん、陰茎がん、原発不明がん、Carcinosarcoma、Castleman病、中枢神経系胎生期腫瘍、小脳星細胞腫、脳星細胞腫、子宮頸がん、胆管がん、軟骨腫、軟骨肉腫、脊索腫、絨毛がん、脈絡叢乳頭腫、慢性リンパ球性白血病、慢性単球性白血病、慢性顆粒球性白血病、慢性骨髄増殖性疾患、慢性好中球性白血病、明細胞肉腫、結腸がん、結腸直腸がん、頭蓋咽頭腫、皮膚T細胞リンパ腫、デゴス病、皮膚線維肉腫、類皮のう胞、線維形成性小細胞腫瘍、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、胚芽異形成神経上皮腫瘍、胎児性がん、内胚葉洞腫瘍、子宮内膜がん、子宮内膜がん、子宮内膜様腫瘍、腸管症関連T細胞リンパ腫、上衣芽細胞腫、上衣腫、類上皮肉腫、赤白血病、食道がん、Esthesioneuroblastoma、Ewing腫瘍ファミリー、Ewing肉腫ファミリー、ユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、外胚細胞腫瘍、肝外胆管がん、乳房外Paget病、卵管がん、胎児胎児、線維腫、線維肉腫、濾胞性リンパ腫、濾胞性甲状腺がん、胆嚢がん、胆嚢がん、神経膠腫、神経節細胞腫、胃がん、胃リンパ腫、消化管がん、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍、消化管間質腫瘍、胚細胞腫瘍、胚芽腫、妊娠性絨毛がん、妊娠性栄養胚葉腫瘍、骨巨細胞腫、多形性膠芽細胞腫、グリオーマ、脳性グリオーマ、Glomus腫瘍、Glucagonoma、Gonadoblastoma、Granulosa細胞腫、ヘアリー細胞白血病、ヘアリー細胞白血病、頭頸部がん、頭頸部がん、悪性心臓腫瘍、血管芽細胞腫、血管外皮細胞腫、血管肉腫、悪性心臓腫瘍、血管芽細胞腫、血管外皮細胞腫、血管肉腫、血液悪性腫瘍、肝細胞がん、肝脾T細胞リンパ腫、遺伝性乳がん、ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、視床下部グリオーマ、炎症性乳がん、眼内メラノーマ、膵島細胞がん、膵島細胞腫、若年性骨髄性白血病、カポジ肉腫、カポジ肉腫、腎臓がん、クラツキン腫瘍、Krukenberg腫瘍、喉頭がん、喉頭がん、悪性メラノーマ、白血病、白血病、口唇および口腔がん、脂肪肉腫、肺がん、黄体細胞腫、リンパ管腫、リンパ管肉腫、リンパ上皮腫、リンパ性白血病、リンパ腫、マクログロブリン血症、悪性線維性組織球腫、悪性線維性組織球腫、骨悪性線維性組織球腫、悪性グリオーマ、悪性中皮腫、悪性末梢神経鞘腫、悪性ラブドイド腫瘍、悪性トリトン腫瘍、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫a、マスト細胞白血病、縦隔胚細胞腫瘍、縦隔腫瘍、甲状腺髄様がん、髄芽腫、髄芽腫、髄上皮腫、メラノーマ、メラノーマ、髄膜腫、Merkel細胞がん、中皮腫、中皮腫、転移性扁平上皮がん、潜在性原発性、転移性尿路上皮がん、ミュラー管混合腫瘍、単球性白血病、口腔がん、粘液腫、多発性骨髄腫、多発性骨髄腫、菌状息肉腫、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成症候群、骨髄性白血病、骨髄腫、骨髄増殖性疾患、粘液腫、鼻腔がん、鼻咽腔がん、鼻咽腔がん、腫瘍、神経鞘腫、神経芽細胞腫、神経芽細胞腫、神経線維腫、神経鞘腫、結節型黒色腫、非ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、非メラノーマ皮膚がん、非小細胞性肺がん、眼部腫瘍、乏リンパ腫、乏突起神経膠腫、オンコサイトーマ、視神経鞘髄膜腫、口腔がん、またはalがん、口腔咽頭がん、骨肉腫、骨肉腫、卵巣がん、卵巣がん、卵巣上皮がん、卵巣の胚細胞腫瘍、卵巣の低悪性度潜在性腫瘍、乳腺Paget病、Pancoast腫瘍、膵臓がん、膵臓がん、甲状腺乳頭がん、パピローマ症、傍神経節腫、副鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、血管周囲性類上皮細胞性腫瘍、咽頭がん、褐色細胞腫、中間型松果体実質腫瘍、松果体細胞腫、下垂体腺腫、下垂体腫瘍、形質細胞腫、胸膜肺芽腫、多胎芽腫、Tリンパ芽球性リンパ腫、中枢神経系原発リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、原発性肝細胞がん、原発性肝がん、原発性腹膜がん、未分化神経外胚葉性腫瘍、前立腺がん、腹膜偽粘液腫、直腸がん、腎細胞がん、染色体15上のNUT遺伝子関連の気道の悪性腫瘍、網膜芽細胞腫、横紋筋腫、横紋筋肉腫、リヒター形質転換、仙尾部奇形腫、唾液腺がん、肉腫、神経鞘腫、皮脂腺がん、続発性腫瘍、精上皮腫、漿液性腫瘍、セルトリ-ライディッヒ細胞腫瘍、性索間質性腫瘍、セザリー症候群、印環細胞がん、皮膚がん、小円形細胞性腫瘍、小細胞がん、小細胞肺がん、小細胞リンパ腫、小腸がん、軟部組織肉腫、ソマトスタチノーマ、煤煙性いぼ、脊髄腫瘍、脊椎腫瘍、脾辺縁帯リンパ腫、扁平上皮がん、胃がん、表層拡散性メラノーマ、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、表層上皮性・間質性腫瘍、滑膜肉腫、T細胞急性リンパ性白血病、T細胞大顆粒リンパ球性白血病、T細胞白血病、T細胞リンパ腫、T細胞前リンパ球性白血病、奇形腫、末期悪性リンパ腫、精巣がん、Thecoma、喉頭がん、胸腺がん、胸腺腫、Thyroidがん、腎盂および尿管の移行上皮がん、移行上皮がん、尿膜管がん、尿道がん、泌尿生殖器系腫瘍、子宮肉腫、ぶどう膜黒色腫、腟がん、ヴァーナー-モリソン症候群、疣状がん、視覚路神経膠腫、外陰がん、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、ワルチン腫瘍、ウィルムス腫瘍を含むがん細胞、およびその組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態において、標的がん細胞は、例えばがん幹細胞などのがん細胞群中のサブグループを表す。いくつかの実施形態において、がんは、例えばリンパ腫などの造血系統のものである。抗原は腫瘍関連の抗原であってよい。
【0146】
いくつかの実施形態において、標的細胞は腫瘍を形成する。本明細書の方法において用いて処置する腫瘍は、腫瘍成長の安定を引き起こし得る(例えば、1つまたは複数の腫瘍の体積増加は1%、5%、10%、15%もしくは20%未満、および/または転移しない)。いくつかの実施形態において、腫瘍は、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12週またはそれ以上、安定する。いくつかの実施形態において、腫瘍は、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12か月またはそれ以上、安定する。いくつかの実施形態において、腫瘍は、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10年またはそれ以上、安定する。いくつかの実施形態において、腫瘍の大きさまたは腫瘍細胞の数は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上減少する。いくつかの実施形態において、腫瘍は完全に除去されるか、または検出レベル未満まで低減される。いくつかの実施形態において、被験者は治療後に無腫瘍状態(例えば寛解)を少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12週またはそれ以上保持する。いくつかの実施形態において、被験者は治療後に無腫瘍状態を少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12か月またはそれ以上保持する。いくつかの実施形態において、被験者は治療後に無腫瘍状態を少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10年またはそれ以上保持する。
【0147】
標的細胞の死滅の確定は、処理前もしくは処理後の細胞数計算、または、生きている細胞もしくは死んだ細胞(例えば生きているもしくは死んだ標的細胞)に関するマーカーのレベルの測定を含むがこれに限られない、任意の適切な方法で行うことができる。細胞の死滅度の測定は、任意の適切な方法で行うことができる。いくつかの実施形態において、初期条件との比較で細胞の死滅度が測定される。例えば、個体は、既知の初期量の標的細胞(例えば既知のサイズの初期細胞集団または既知の濃度の循環標的細胞)を有し得る。このような場合において、細胞の死滅度は、治療後の生存細胞と初期細胞群との比率で表し得る。いくつかの実施形態において、細胞の死滅度は、適切な細胞死滅アッセイにより測定され得る。各種の細胞死滅アッセイが使用可能であり、および、また様々な検出方法が利用され得る。検出方法の例としては、細胞染色、顕微鏡検査、フローサイトメトリー、セルソーティングおよびこれらの組み合わせの使用が含まれるがこれらに限らない。
【0148】
治療期間終了後、腫瘍を外科的切除する場合、壊死(すなわち死亡)した切除組織の割合を測定することによって、腫瘍サイズ減少に関する治療効果が決定され得る。いくつかの実施形態において、切除組織の壊死率が約20%を上回る(例えば、少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%であれば、治療上有効である。)または100%)。いくつかの実施形態において、切除組織の壊死率は100%、すなわち、生きている腫瘍組織は存在しないか、または検出不能である。
【0149】
本明細書で開示する免疫細胞または免疫細胞群への標的細胞の曝露は、in vitroまたはin vivoで行うことができる。免疫細胞または免疫細胞群への標的細胞の曝露は、通常、標的細胞を免疫細胞に接触させる、および/または、十分近づけることによって、標的細胞の抗原(例えば、膜結合または非膜結合)が、免疫細胞に発現されている強化受容体またはCARまたはTCRに結合できるようにすることを指す。免疫細胞または免疫細胞群への標的細胞の曝露とは、また、標的細胞を免疫細胞に接触させる、および/または、十分近づけることによって、標的細胞が非特異的キラー免疫細胞に結合できるようにすることも指す。in vitroでの免疫細胞または免疫細胞群への標的細胞の曝露は、標的細胞および免疫細胞の共培養によって達成され得る。標的細胞と免疫細胞は、例えば、接着細胞として、代替的には懸濁液中で、共培養され得る。標的細胞と免疫細胞は、例えば、補充物質、成長因子、イオンなどで補充された各種の適切なタイプの細胞培地で共培養され得る。標的細胞をin vivoで免疫細胞または免疫細胞群に曝露することは、いくつかの場合においては、免疫細胞を対象(例えばヒト被験者)に投与すること、そして、循環系を介して免疫細胞を標的細胞に局在化させることによって達成され得る。いくつかの場合において、免疫細胞は、例えば直接注射により、標的細胞が局在化している直接の領域に送達され得る。
【0150】
曝露は、例えば少なくとも1分、少なくとも5分、少なくとも10分、少なくとも30分、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも12時間、少なくとも16時間、少なくとも20時間、少なくとも24時間、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも1週、少なくとも2週、少なくとも3週、少なくとも1か月またはそれ以上など、任意の適切な時間にわたって行うことができる。
【0151】
本明細書で提供される強化受容体およびCARの各種ドメインは、化学結合、例えばアミド結合またはジスルフィド結合、小さな有機分子(例えば炭化水素鎖)、例えばペプチドリンカーなどのアミノ酸配列(例えば、約3~200個のアミノ酸長であるアミノ酸配列)、または小さな有機分子およびペプチドリンカーの組み合わせなどによって連結され得る。ペプチドリンカーは、キメラポリペプチドの所望の発現、活性および/またはコンフォーメション位置を可能にするための所望の柔軟性を提供し得る。ペプチドリンカーは、少なくとも2つの目標ドメインを接続するために、任意の適切な長さを有することができ、また、好適には、それが接続する1つまたは2つのドメインの正確なフォールディングおよび/または機能および/または活性を可能とするために十分に柔軟に設計される。ペプチドリンカーは、少なくとも3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100個のアミノ酸長を有し得る。いくつかの実施形態において、ペプチドリカーの長さはアミノ酸約0~200個、アミノ酸約10~190個、アミノ酸約20~180個、アミノ酸約30~170個、アミノ酸約40~160個、アミノ酸約50~150個、アミノ酸約60~140個、アミノ酸約70~130個、アミノ酸約80~120個、アミノ酸約90~110個である。いくつかの実施形態において、リンカー配列は内在性タンパク質の配列を含み得る。いくつかの実施形態において、リンカー配列は、グリシン、アラニン、セリンのアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態において、リンカーは、GS、GGS、GGGGS、GGSGまたはSGGGのモチーフ、例えば多数の繰り返しのモチーフを含み得る。リンカー配列は、任意の天然のアミノ酸、天然には非存在のアミノ酸またはそれらの組合せを含み得る。
【0152】
任意の適切な送達方法が本開示の組成物および分子(例えば、ポリペプチドおよび/またはポリペプチドをエンコードする核酸)を宿主細胞、例えば免疫細胞に導入するために用いられ得る。様々な成分が、同時にまたは一時的に別個で送達され得る。方法の選択は、形質転換される細胞のタイプおよび/または形質転換が行われる環境(例えば、in vitro、ex vivoまたはin vivo)に依存し得る。
【0153】
送達方法には、標的ポリヌクレオチドを接触させること、または、1もしくは複数の本開示の組成物をエンコードするヌクレオチド配列を含む核酸を細胞(または免疫細胞などの細胞群)に導入することを含み得る。本開示の組成物をエンコードするヌクレオチド配列を含む適切な核酸は、発現ベクターを含み得、ここで、本開示の1または複数の組成物をエンコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターは、組換発現ベクターである。
【0154】
送達方法または形質転換の非限定的な例には、例えば、ウイルスまたはバクテリオファージ感染、トランスフェクション、コンジュゲーション、プロトプラスト融合、リポフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレンイミン(PEI)媒介トランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、リポソーム媒介トランスフェクション、パーティクルガン技術、リン酸カルシウム沈殿、直接のマイクロインジェクション、およびナノ粒子媒介核酸送達が含まれる。
【0155】
いくつかの様態において、本開示は、1もしくは複数のポリヌクレオチド、または本明細書に記載の1もしくは複数のベクター、またはそれらの1もしくは複数の転写産物、および/またはそれらから転写される1もしくは複数のタンパク質を宿主細胞に送達することを含む方法を提供する。いくつかの様態において、本開示はさらに、これらの方法によって産生される細胞、およびこれらの細胞を含むかまたはこれらの細胞により産生される生物(例えば動物、植物、または真菌)を提供する。
【0156】
従来的なウイルスおよび非ウイルスベースの遺伝子導入法が、哺乳類細胞または標的組織に核酸を導入するために、用いられ得る。これらの方法は、本開示の組成物をエンコードする核酸を、培養中の細胞または宿主生物に投与するために用いることができる。非ウイルスベクター送達システムは、DNAプラスミド、RNA(例えば、本明細書に記載のベクターの転写産物)、ネイキッド核酸、および、例えばリポソームなどの送達ベクターと一体化された核酸を含み得る。ウイルスベクター送達システムは、DNAおよびRNAウイルスを含み得、これは、細胞への送達後に、エピソームまたは組み込まれたゲノムを有し得る。
【0157】
核酸の非ウイルス的送達方法には、リポフェクション、ヌクレオフェクション、顕微注射、バイオリスティック法、ビロソーム、リポソーム、イムノリポソーム、ポリカチオンまたは脂質:核酸結合体、ネイキッドDNA、およびDNAの薬剤強化取り込みを含み得る。ポリヌクレオチドの効果的な受容体認識リポフェクションに適したカチオン性および中性の脂質が使用され得る。送達は、細胞(例えばin vitroまたはex vivo投与)または標的組織(例えばin vivo投与)であってよい。脂質を用いて、例えば免疫脂質複合体などの標的リポソームを含む脂質:核酸複合体の調製が使用され得る。
【0158】
RNAまたはDNAウイルスに基づくシステムが、体内の特定の細胞を標的とするため、および細胞の核へのウイルス搭載物の輸送のために使用され得る。ウイルスベクターは、直接(in vivo)投与されてもよく、または、in vitroで細胞を処置するために用いられてもよく、そして、任意には改変された細胞が投与され得る(ex vivo)。ウイルスに基づくシステムには、遺伝子導入に用いるレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴および単純ヘルペスウイルスベクターを含むことができる。レトロウイルス、レンチウイルスおよびアデノ随伴ウイルス遺伝子導入方法を用いて、宿主ゲノムに組み込みを行うことができ、これによって、挿入した導入遺伝子が長期的に発現される。多くの様々な細胞タイプおよび標的組織において、高い形質導入効率を観察することができる。
【0159】
レンチウイルスは、そのゲノムを宿主細胞(例えば293細胞、またはT細胞)に組み込むことができる。レンチウイルスは、3プラスミドシステム、または4プラスミドシステムを使用することができる。
【0160】
レトロウイルスの指向性は、外来のエンベロープタンパク質を組み込むことによって変更することができ、これによって標的細胞の潜在的な標的群を増殖することができる。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞に形質導入するまたは感染をさせることができ、高いウイルス力価を産生するレトロウイルスベクターである。レトロウイルス遺伝子導入システムの選択は、標的組織に応じて決定し得る。レトロウイルスベクターは、6~10kbにも達する外来配列のパッケージング能力を有するシス作用性の長い末端反復配列を含み得る。最小シス作用性LTRはベクターの複製およびパッケージングに用いるのに十分であり得、それは治療遺伝子を標的細胞に組み込んで恒久的な導入遺伝子発現を提供するのに用いることができる。レトロウイルスベクターは、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)およびその組み合わせに基づくベクターを含み得る。
【0161】
アデノウイルスに基づくシステムを使用することができる。アデノウイルスに基づくシステムは、導入遺伝子の一過性発現をもたらすことができる。アデノウイルスに基づくベクターは、細胞中で高い形質導入効率を有することができるとともに、細胞分裂が不要である。アデノウイルスに基づくベクターを用いて、高い力価および発現レベルを得ることができる。アデノ随伴ウイルス(「AAV」)ベクターは、標的核酸を用いた細胞への形質導入、例えばin vitroでの核酸およびペプチド産生に用いることができ、また、in vivoおよびex vivoでの遺伝子治療プロセスに用いることができる。
【0162】
パッケージング細胞は、宿主細胞を感染させることができるウイルス粒子を形成するために用いることができる。この種の細胞は293細胞(例えば、レンチウイルスまたはアデノウイルスのパッケージングのため)およびPsi2細胞またはPA317細胞(例えば、レトロウイルスのパッケージングのため)を含み得る。核酸ベクターをウイルス粒子中にパッケージングする細胞株を産生することによって、ウイルスベクターを産生することができる。ベクターは、パッケージングおよびその後の宿主への組み込みに必要な最小ウイルス配列を含み得る。ベクターは、発現されるべきポリヌクレオチドの発現カセットで置換されたこの他のウイルス配列を含み得る。欠失しているウイルスの機能は、パッケージング細胞株によってトランスで供給されることができる。例えば、AAVベクターは、パッケージングおよび宿主ゲノムへの統合に必須の、AAVゲノム由来のITR配列を含むことができる。他のAAV遺伝子をエンコードするヘルパープラスミド、すなわちrepおよびcapを含むことができる一方でITR配列を欠失している細胞株中に、ウイルスDNAをパッケージングすることができる。細胞株はまた、アデノウイルスを用いてヘルパー細胞として感染させることができる。ヘルパーウイルスは、AAVベクターの複製と、ヘルパープラスミドからのAAV遺伝子の発現とを促進することができる。アデノウイルスによる汚染は、例えば、アデノウイルスのほうがAAVより感受性が高い熱での処理によって低減することができる。核酸を細胞に送達するための他の方法を用いてもよい。例えば、引用により本明細書に組み込まれている米国特許第20030087817号明細書に記載されている通りである。
【0163】
本明細書に記載の1または複数のベクターを用いて、一過性または非一過性の宿主細胞のトランスフェクションが可能である。細胞は、対象中に天然に存在するので、トランスフェクションを行うことができる。細胞は、対象から採取したまたは対象由来のもので、トランスフェクションを行うことができる。細胞は、細胞株など、対象から採取した細胞に由来することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の1または複数のベクターでトランスフェクションを行った細胞は、1または複数のベクター由来の配列を含む新しい細胞株を確立するために用いられる。いくつかの実施形態において、本開示の組成物で一過性トランスフェクションを行った細胞(例えば1または複数のベクターの一過性トランスフェクションによって、またはRNAトランスフェクションで)が改変を含むがその他一切の外来性配列を欠く細胞を含んだ、新しい細胞株を確立するために用いられ得る。
【0164】
宿主細胞と適合性のある任意の適切なベクターを、本開示の方法とともに使用することができる。真核生物宿主細胞のためのベクターの非限定的な例としては、pXT1、pSG5(StratageneTM)、pSVK3、pBPV、pMSG、およびpSVLSV40(PharmaciaTM)が含まれる。
【0165】
細胞と組成物との接触は、任意の培地で、また細胞の生存を促進する任意の培養条件下で発生させることができる。例えば、任意の簡便であり適切な栄養培地に細胞を懸濁させることができる。例えば、Iscove改変DMEMまたはRPMI 1640に、ウシ胎児血清または熱不活化したヤギ血清(約5~10%)、L-グルタミン、チオール(特に2-メルカプトエタノール)、および抗生物質(例えばペニシリンやストレプトマイシン)を補充したものなどである。培養物は、細胞が反応性の成長因子を含み得る。本明細書で定義する成長因子とは、膜貫通受容体に対する特異的作用によって、培養物または完全な組織中における細胞の生存、成長および/または分化を促進できる分子である。成長因子には、ポリペプチドおよび非ポリペプチド因子が含まれ得る。
【0166】
多くの実施形態において、選択される送達システムは、特定の組織または細胞タイプを標的とする。いくつかの場合において、送達システムを組織または細胞特異的マーカー(例えば細胞表面タンパク質)に結合させることによって、送達システムが組織または細胞を標的とすることを実現する。ウイルス性および非ウイルス性の送達システムを、着目した組織または細胞タイプを標的とするようにカスタマイズすることができる。
【0167】
本明細書に記載の分子(例えば、ポリペプチドおよび/またはポリペプチドをエンコードする核酸またはタンパク質)または免疫細胞を含む医薬組成物を、予防的および/または治療的療法のために投与することができる。治療への使用において、本組成物は、既に疾患または障害を有する被験者に投与することができ、その量は、疾患もしくは障害の症状を治癒するか、もしくは少なくとも部分的に阻止する、または、治癒、癒合、改善、もしくは条件改善するのに十分な量とする。当該用途の有効量は、疾患または障害の重症度や経過、それまでの治療、被験者の健康状態、体重や薬剤への反応、および治療医の判断に基づいて変えることができる。
【0168】
複数種の治療剤を、任意の順序で、または同時に投与してよい。同時とする場合、複数種の治療剤は、1つにまとめた形で、または複数種の形で(例えば、複数の個別錠剤または細胞溶液として)提供することができる。分子や細胞溶液は、1つのパッケージまたは複数のパッケージに、一緒に入れても別々に包装してもよい。1種類または全ての治療剤は、複数回投与することができる。同時としない場合、複数回投与の間隔は、およそ1~24か月で変えることができる。
【0169】
本明細書に記載の分子または細胞は、疾患または障害の発生前、発生中、または発生後に投与することができ、化合物を含む組成物を投与するタイミングは変えることができる。例えば、医薬組成物は予防薬として用いることができ、かつ、疾患または障害の発生予防のため、障害または疾患の傾向のある被験者に連続投与することができる。分子、細胞、および医薬組成物は、症状の発生中かまたはなるべく早くに、対象者に投与することができる。分子の投与は、症状発生の最初の48時間以内、症状の発生から24時間以内、症状の発生から6時間以内、または症状の発生から3時間以内に開始することができる。初期投与は、現実的な任意の経路で行うことができる。例えば、本明細書に記載の任意の経路によって、本明細書に記載の任意の製剤を用いることができる。疾患または障害の発生が検出されるかまたは疑われたら、可能な限り早めに、かつ、疾患の治療に必要な期間(例えば、約1か月~約3か月)、分子を投与することができる。治療期間は各被験者で異なることがある。
【0170】
分子は生物学的コンパートメントにパッケージングすることができる。当該分子を含む生物学的コンパートメントを、被験者に投与することができる。生物学的コンパートメントには、ウイルス(レンチウイルス、アデノウイルス)、ナノスフェア、リポソーム、量子ドット、ナノ粒子、マイクロ粒子、ナノカプセル、小胞、ポリエチレングリコール粒子、ハイドロゲル、およびミセルが含まれるがこれに限らない。
【0171】
例えば、生物学的コンパートメントは、リポソームを含み得る。リポソームは、1つまたは複数の脂質二重層を含む自己集合構造であってよく、各脂質二重層は、逆方向に配向した両親媒性脂質分子を含んだ単層を2つ含むことができる。両親媒性脂質は、1つまたは2つまたはそれ以上の非極性(疎水性)アシルまたはアルキル鎖に共有結合した極性(親水性)頭部基を含み得る。疎水性アシル鎖と周囲の水性媒質との間の、エネルギー上不利な接触により、両親媒性脂質分子の自己配列が誘導され、極性頭部基が二重層の表面側へ向けられ、アシル鎖が二重層の内側へ向けられて、アシル鎖が水性環境と接触しないよう有効に遮蔽され得る。
【0172】
リポソームに使用される、グリセロリン脂質およびスフィンゴ脂質が挙げられ得、代表的な例としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジパルミトイルレシチン、好ましい両親媒性化合物の例としては、DPPC、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジリノレオイルホスファチジルコリンおよび卵スフィンゴミエリンまたは任意のそれらの組み合わせが挙げられる。
【0173】
生物学的コンパートメントは、ナノ粒子を含むことができる。ナノ粒子の直径は、約40ナノメートル~約1.5マイクロメートル、約50ナノメートル~約1.2マイクロメートル、約60ナノメートル~約1マイクロメートル、約70ナノメートル~約800ナノメートル、約80ナノメートル。ナノメートル~約600ナノメートル、約90ナノメートル~約400ナノメートル、約100ナノメートル~約200ナノメートルであってよい。
【0174】
いくつかの場合において、ナノ粒子のサイズが増加すると、放出速度は減速されまたは引き延ばされ得、そして、ナノ粒子のサイズが縮小されると、放出速度は増大され得る。
【0175】
ナノ粒子中のアルブミンの量は、約5%~約85%(v/v)のアルブミン、約10%~約80%、約15%~約80%、約20%~約20%のアルブミン、約70%(v/v)、約25%~約60%、約30%~約50%、または約35%~約40%とすることができる。医薬組成物は、最大で30、40、50、60、70、または80%以上のナノ粒子を含み得る。いくつかのケースでは、本開示の核酸分子は、ナノ粒子の表面に結合することができる。
【0176】
生物学的コンパートメントは、ウイルスを含むことができる。ウイルスは、本開示の医薬組成物の送達システムであり得る。例示的なウイルスには、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルスIまたはII、パルボウイルス、細網内皮症ウイルス、およびアデノ随伴ウイルス(AAV)などが挙げられる。ウイルスを用いて本開示の医薬組成物を細胞に送達することができる。ウイルスは、in vivo、ex vivo、またはin vitroにおいて細胞に感染し、形質導入することができる。ex vivoおよびin vitroでの形質導入において、形質導入された細胞を治療が必要な被験者に投与することができる。
【0177】
医薬組成物をウイルス送達システムにパッケージングすることができる。例えば、HSV-1ヘルパーウイルスフリーパッケージングシステムによって組成物をウイルス粒子中にパッケージングすることができる。
【0178】
ウイルス送達システム(例えば、本開示の医薬組成物を含むウイルス)は、脳室内への直接注射、ステレオタクティック注射によって、マイクロポンプ注入システムによって、対流、カテーテル、静脈内、腸管外、腹腔内および/または皮下注射によって、必要とする被験者の細胞、組織、または器官に投与することができる。いくつかの場合において、細胞はウイルス送達システムを用いてin vitroまたはex vivoで形質導入することができる。形質導入された細胞は、疾患を有する被験者に投与することができる。例えば、医薬組成物を含むウイルス送達システムで幹細胞に形質導入を行うことができ、かつ、該幹細胞が、疾患を治療するために患者の体内に移植され得る。
【0179】
いくつかの場合において、被験者に投与する細胞の用量は、1×104cells/kg未満、または約1×104cells/kg、約2×104cells/kg、約3×104cells/kg、約4×104cells/kg、約5×104cells/kg、約6×104cells/kg、約7×104cells/kg、約8×104cells/kg、約9×104cells、約1×105cells/kg、約2×105cells/kg、約3×105cells/kg、約4×105cells/kg、約5×105cells/kg、約6×105cells/kg、約7×105cells/kg、約8×105cells/kg、約9×105cells、約1×106cells/kg、約2×106cells/kg、約3×106cells/kg、約4×106cells/kg、約5×106cells/kg、約6×106cells/kg、約7×106cells/kg、約8×106cells/kg、約9×106cells、約1×107cells/kg、約5×107cells/kg、約1×108cells/kgまたはそれ以上であり得る。細胞投与量については、トランスフェクションに成功した有効に改変された細胞の数に基づいて計算してもよく、または、総細胞数に基づいて計算してもよい。
【0180】
生物学的コンパートメントを細胞中に導入するには、ウイルスまたはバクテリオファージ感染、トランスフェクション、コンジュゲーション、プロトプラスト融合、リポフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレンイミン(PEI)媒介トランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、リポソーム媒介トランスフェクション、パーティクルガン技術、リン酸カルシウム沈殿、直接のマイクロインジェクション、ナノ粒子媒介核酸送達などの方法を用いることができる。
【0181】
いくつかの実施形態において、被験者システムを発現する免疫細胞が投与される。被験者システムを発現する免疫細胞は、疾患または障害の発生前、発生中、または発生後に投与することができ、免疫細胞を投与するタイミングは変えることができる。例えば、被験者システムを発現する免疫細胞は予防薬として用いることができ、かつ、疾患または障害の発生予防のため、障害または疾患の傾向のある被験者に連続投与することができる。免疫細胞は、症状の発生中かまたはなるべく早くに、対象者に投与することができる。症状発生の最初の48時間以内、症状発生の最初の24時間以内、症状発生の最初の6時間以内、または症状発生の最初の3時間以内に投与を開始することができる。初期投与は、適切的な任意の経路で行うことができる。例えば、本明細書に記載の任意の経路によって、本明細書に記載の任意の製剤を用いることができる。疾患または障害の発生が検出されるかまたは疑われたら、可能な限り早めに、かつ、疾患の治療に必要な一定期間(例えば約1か月~約3か月)、免疫細胞を投与することができる。治療期間は各被験者で異なることがある。
【0182】
本明細書に記載の分子(例えば、ポリペプチドおよび/または核酸)は、約1mg~約2000mg、約5mg~約1000mg、約10mg~約25mg~500mg、約50mg~約250mg、約100mg~約200mg、約1mg~約50mg、約1mg~約50mg、約50mg~約100mg、約100mg~約150mg、約150mg~約200mg、約200mg~約250mg、約250mg~約300mg、約300mg~約350mg、約350mg~約400mg、約400mg~約450mg、約450mg~約500mg、約500mg~約550mg、約550mg~約600mg、約600mg mg~約650mg、約650mg~約700mg、約700mg~約750mg、約750mg~約800mg、約800mg~約850mg、約850mg~約900mg、約900mg~約950mg、または約950mg~約1000mgの範囲で組成物中に存在することができる。
【0183】
本明細書に記載の分子(例えば、ポリペプチドおよび/または核酸)は、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、約100mg、約125mg、約150mg、約175mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約550mg、約600mg、約650mg、約700mg、約750mg、約800mg、約850mg、約900mg、約950mg、約1000mg、約1050mg、約1100mg、約1150mg、約1200mg、約1250mg、約1300mg、約1350mg、約1400mg、約1450mg、約1500mg、約1550mg、約1600mg、約1650ミリグラム、約1700ミリグラム、約1750ミリグラム、約1800ミリグラム、約1850ミリグラム、約1900ミリグラム、約1950ミリグラム、または約2000ミリグラムの量で組成物中に存在することができる。
【0184】
本明細書に記載の分子(例えば、ポリペプチドおよび/または核酸)は1mgあたり少なくとも0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、10またはそれ以上の単位の活性分子を提供する組成物中に存在することができる。当該活性は遺伝子発現の調節であってよい。いくつかの実施形態において、被験者へ送達される分子の活性ユニットの総計は、最少で25,000、30,000、35,000、40,000、45,000、50,000、60,000、70,000、80,000、90,000、110,000、120,000、130,000、140,000、150,000、160,000、170,000、180,000、190,000、200,000、210,000、220,000、230,000または250,000またはそれ以上の単位である。いくつかの実施形態において、被験者へ送達される分子の活性ユニットの総計は、最多で25,000、30,000、35,000、40,000、45,000、50,000、60,000、70,000、80,000、90,000、110,000、120,000、130,000、140,000、150,000、160,000、170,000、180,000、190,000、200,000、210,000、220,000、230,000または250,000またはそれ以上の単位である。
【発明を実施するための形態】
【0185】
本発明の全面的理解および活用のため、以下の文では実施例および添付図を参照しつつ本発明につき詳細な説明を行う。前記実施例は、本発明について例を挙げつつ説明することのみを意図しており、本発明の範囲を限定する意図はない。本発明の範囲は、添付する特許請求の範囲により具体的に限定される。
【0186】
実施例1.末梢血由来のCAR-T細胞およびスーパーTIL細胞の調製
発明者らは実施例1~7において、CD19をブースター抗原とし、CD19を標的としたCAR(使用するCARの配列は中国発明出願公開番号CN110016465AのSEQ ID NO:1を参照のこと)をaBA-CARとした。
【0187】
ヒトCAR-T細胞は以下のとおり調製した。ヒトPBMC細胞を採取した後、CD3/CD28磁性ビーズを用いることによりPBMC由来のCD19-細胞中のT細胞を活性化し、CD19-CARレンチウイルスでトランスフェクションを行った。
【0188】
ヒトスーパーTIL細胞は以下のとおり調製した。末期腫瘍の患者から単球を採取した後、磁性ビーズがPD1+のT細胞を捕捉するために用いられた。aBA-CARとしてのCD19CARをエンコードするヌクレオチド配列と、強化受容体-PD1-CD28をエンコードするヌクレオチド配列と、の2つのコード配列を含むレンチウイルスベクターが構築された。構築されたレンチウイルスが、捕捉したPD1+T細胞をトランスフェクションするため用いられた。
【0189】
実施例2.ブースターアジュバント1-自己B細胞はスーパーTILの増殖をブーストする。
患者のアフェレーシス細胞からB細胞を分離し、細胞数が107オーダーになるまで培養した。B細胞は、ブースター抗原としてのCD19膜抗原を天然に有する。
【0190】
実施例1のとおりに調製したスーパーTIL細胞をAとBとの2群に分け、それぞれ細胞数を106オーダーとし、A群は対照として自然の成長に付され、B群は以下のように処理された。106オーダーの自己B細胞を106オーダーのスーパーTIL細胞と共培養し、10日を1サイクルとし、毎サイクル、106オーダーの自己B細胞を系に追加し、連続3サイクル培養した。全てのサイクルにおいて、スーパーTIL細胞が当該サイクルの前よりも6倍以上に増殖したことが観察され、対照群のA群ではスーパーTIL数の有意な増加はなかった。
【0191】
実施例3.ブースターアジュバント2-自己CD19+T細胞はスーパーTILの増殖をブーストする。
患者のアフェレーシス細胞からT細胞を分離し、CD19コード配列を担持するレンチウイルスを用いて、分離したT細胞へのトランスフェクションを行い、得られたCD19+のT細胞をブースター細胞として、CD3/CD28磁性ビーズで刺激することにより、当該細胞を107オーダーまで培養した。
【0192】
スーパーTIL細胞をAとBとの2群に分け、それぞれ細胞数を106オーダーとし、A群は対照として自然の成長に付され、B群は以下のように処理された。106オーダーの自己CD19+T細胞は106オーダーのスーパーTIL細胞と共培養され、10日を1サイクルとし、毎サイクル、106オーダーの自己CD19+T細胞をシステムに追加し、連続3サイクル培養された。全てのサイクルにおいて、スーパーTIL細胞が当該サイクルの前よりも6倍以上に増殖したことが観察され、対照群のA群ではスーパーTIL数の有意な増加はなかった。
【0193】
実施例4.ブースターアジュバント3-患者の自己NK細胞はスーパーTILの増殖をブーストする。
患者のアフェレーシス細胞からNK細胞を分離し、CD19コード配列を担持するレンチウイルスを用いて、分離したNK細胞へのトランスフェクションを行い、得られた自己CD19+NK細胞をブースター細胞として、CD3/CD28磁性ビーズで刺激することにより、当該細胞を107オーダーまで培養した。
【0194】
スーパーTIL細胞をAとBとの2群に分け、それぞれ細胞数を106オーダーとし、A群は対照として自然の成長に付され、B群は以下のように処理された。106オーダーの自己CD19+NK細胞は106オーダーのスーパーTIL細胞と共培養され、10日を1サイクルとし、毎サイクル、106オーダーの前記自己CD19+NK細胞をシステムに追加し、連続3サイクル培養された。全てのサイクルにおいて、スーパーTIL細胞が当該サイクルの前よりも6倍以上に増殖したことが観察され、対照群のA群ではスーパーTIL数の有意な増加はなかった。
【0195】
実施例5.ブースターアジュバント4-他者由来B細胞はスーパーTILの増殖をブーストする。
被験者とは異なる別個体のボランティアのB細胞を107のオーダーまで培養した。B細胞は、ブースター抗原としてCD19膜抗原を天然に有する。
【0196】
スーパーTIL細胞をAとBとの2群に分け、それぞれ細胞数を106オーダーとし、A群は対照として自然の成長に付され、B群は以下のように処理された。106オーダーの他者由来B細胞が106オーダーのスーパーTIL細胞と共培養され、10日を1サイクルとし、毎サイクル、106オーダーの他者由来B細胞をシステムに追加し、連続3サイクル培養された。全てのサイクルにおいて、スーパーTIL細胞が当該サイクルの前よりも6倍以上に増殖したことが観察され、対照群のA群ではスーパーTIL数の有意な増加はなかった。
【0197】
実施例6.ブースターアジュバント5-他者由来NK細胞はスーパーTILの増殖をブーストする。
被験者とは異なる別個体のボランティアの(他者由来)アフェレーシス細胞からNK細胞が分離され、CD19コード配列を担持するレンチウイルスによって、分離した他者由来NK細胞が107オーダーまで培養された他者由来CD19+NK細胞をブースター細胞として得るためにトランスフェクションされた。
【0198】
スーパーTIL細胞をAとBとの2群に分け、それぞれ細胞数を106オーダーとし、A群は対照として自然の成長に付され、B群は以下のように処理された。106オーダーの前記他者由来CD19+NK細胞が106オーダーのスーパーTIL細胞と共培養され、10日を1サイクルとし、毎サイクル、106オーダーの他者由来CD19+NK細胞をシステムに追加し、連続3サイクル培養された。全てのサイクルにおいて、スーパーTIL細胞が当該サイクルの前よりも6倍以上に増殖したことが観察され、対照群のA群ではスーパーTIL数の有意な増加はなかった。
【0199】
実施例7.ブースター抗原を有するブースターアジュバント6-ナノ粒子はスーパーTILの増殖をブーストする。
ブースター抗原を有するナノ粒子を構築するためにCD19タンパク質がナノ粒子に付着された。
【0200】
スーパーTIL細胞をAとBとの2群に分け、それぞれ細胞数を106オーダーとし、A群は対照として自然の成長に付され、B群は以下のように処理された。担持するCD19タンパク質の総量が合計約1マイクログラムとなるナノ粒子が、106オーダーのスーパーTIL細胞と共培養され、7日を1サイクルとし、毎サイクル、担持するCD19タンパク質の総量が合計約1マイクログラムとなるナノ粒子が、径に追加され、連続3サイクル培養された。全てのサイクルにおいて、スーパーTIL細胞が当該サイクルの前よりも6倍以上に増殖したことが観察され、対照群のA群ではスーパーTIL数の有意な増加はなかった。
【0201】
実施例8.自己T細胞の2段階ブースターシステムはスーパーTILの増殖をブーストする。
患者自身のT細胞を用いて2種のブースター細胞が構築され、2段階ブースターシステムが構築された。
【0202】
第1段階ブースター細胞:T細胞が、EGFRviiiコード配列を担持したレンチウイルスを用いて、トランスフェクションをされて、EGFRviii+T細胞がブースター細胞として得られ、そして、細胞は、CD3/CD28磁性ビーズによる刺激によって、107オーダーまで培養された。
【0203】
第2段階ブースター細胞:CD19コード配列と、EGFRviii標的とするCARのコード配列(コードヌクレオチド配列はSEQ ID NO:1に示されている)との両方を担持したレンチウイルスを用いて、T細胞がトランスフェクションされて、CD19+EGFRviii+-CAR-T細胞が得られ、そして、細胞はCD3/CD28磁性ビーズによる刺激によって、107オーダーまで培養された。
【0204】
スーパーTIL細胞をA、BおよびCの3群に分け、それぞれ細胞数を106オーダーとし、A群は対照として自然の成長に付され、B群は以下のように処理された。
【0205】
B群において、106オーダーの第2段階ブースター細胞(CD19+EGFRviii-CAR-T細胞)が単一段階ブースター細胞を陽性対照として用いてスーパーTILと共培養された。106オーダーの2段階ブースター細胞が106オーダーのスーパーTIL細胞と共培養され、10日を1サイクルとし、毎サイクル、106の2段階ブースター細胞をシステムに追加し、連続3サイクル培養された。
【0206】
C群において、106オーダーの第1段階ブースター細胞(EGFRviii+T細胞)が第2段階ブースター細胞(CD19+EGFRviii-CAR-T細胞)と10日間共培養された後、106オーダーのスーパーTIL細胞の添加、および、106オーダーの第1段階ブースター細胞の同時の添加が行われ、スーパーTILがこの環境下で共培養され、10日を1サイクルとし、10日ごとに106オーダーの第1段階ブースター細胞を追加し、3サイクル共培養された。
【0207】
全てのサイクルにおいて、B群のスーパーTILが当該サイクルの前よりも6倍以上に増殖したことが観察され、C群の各サイクルで増殖する倍数はB群よりもさらに多かった。A群ではスーパーTIL数の有意な増加はなかった。
【0208】
実施例9.他者由来NK+自己T細胞の2段階ブースターシステムによる、スーパーTIL増幅ブースト
2種のタイプのブースター細胞が他者由来NK細胞と患者自身のT細胞とを用いて構築され、2段階ブースターシステムが構築された。
【0209】
第1段階ブースター細胞:他者由来NK細胞がEGFRviiiコード配列を担持したレンチウイルスを用いてトランスフェクションされ、EGFRviii+NK細胞がブースター細胞として得られ、そして細胞は、CD3/CD28磁性ビーズにより刺激され、107オーダーまで培養された。
【0210】
第2段階ブースター細胞:自己T細胞がCD19コード配列と、EGFRviii標的とするCARのコード配列(SEQ ID NO:1)とを同時に担持したレンチウイルスを用いてトランスフェクションされ、CD19+EGFRviii-CAR-T細胞が得られ、そして細胞は、CD3/CD28磁性ビーズにより刺激され、107オーダーまで培養された。
【0211】
スーパーTIL細胞がA、BおよびCの3群に分けられ、それぞれ106オーダーとされ、A群は対照として自然の成長に付された。
【0212】
B群は以下のように処理された。106オーダーの第2段階ブースター細胞(CD19+EGFRviii-CAR-T細胞)が、陽性対照として単一段階ブースター細胞を用いてスーパーTILと共培養された。すなわち106オーダーの2段階ブースター細胞が106オーダーのスーパーTIL細胞と共培養され、10日を1サイクルとし、毎サイクル、106オーダーの2段階ブースター細胞がシステムに追加され、連続3サイクル培養された。
【0213】
C群は以下のように処理された。106オーダー第1段階ブースター細胞(EGFRviii+NK細胞)と第2段階ブースター細胞(CD19+EGFRviii-CAR-T細胞)と共に10日間共培養され、その後、106オーダーのスーパーTIL細胞を加え、同時に106オーダーの第1段階ブースター細胞を追加で加え、スーパーTILがこの条件下で共培養され、10日を1サイクルとし、10日ごとに106オーダーの第1段階ブースター細胞が追加され、3サイクル共培養された。
【0214】
全てのサイクルのスーパーTIL細胞が、B群の先のサイクルと比較して6倍以上増殖しており、一方、C群は、B群よりも各サイクルにおいて多重に増殖した。A群ではスーパーTIL数の有意な増加はなかった。
【0215】
実施例10.B細胞と、ブースター抗原としてCD19-CD86を有する人工ブースター細胞2種との、CAR-T細胞の増殖のブーストにおける比較
本実施例では、特定の免疫細胞-CD19を標的とするCAR-T細胞に対する、3種のブースター細胞の増殖ブースト効果を比較した。この3種のブースター細胞とは、1)CD19を発現している天然B細胞、2)ブースター抗原としてのCD19およびCD86の組み合わせならびにブースター細胞としてのT細胞を有する人工ブースター細胞(T/CD19-86と略す)、および3)ブースター抗原としてのCD19およびCD86の組み合わせならびにブースター細胞としてのK562細胞を有する人工ブースター細胞(K562/CD19-86と略す)である。
【0216】
本実施例の実験プロセスは以下のとおりに行った。
【0217】
1.PBMCおよびB細胞の調製
1)PBMCは新鮮な血液から単離され精製された。
2)CD19+細胞(B細胞)およびCD19-細胞が細胞ソートにより単離された。
【0218】
2.CD19を標的とするCAR-T細胞(CART19と表示)の調製
1)293T細胞が、CD19-CAR cDNAを含むレンチウイルスを調製するためにトランスフェクションされた。
2)PBMC由来のCD19-細胞中のT細胞がCD3/CD28磁性ビーズにより刺激された。
3)ステップ2)からのT細胞がCD19-CARを担持したレンチウイルスによってトランスフェクションされた。
4)トランスフェクションされたT細胞上のCD19-CARの発現が分析された。
【0219】
3.ブースター細胞T/CD19-86の調製
1)293T細胞が、CD19-CD86cDNAを含むレンチウイルスを調製するためにトランスフェクションされた。
2)PBMC由来のCD19-細胞中のT細胞がCD3/CD28磁性ビーズにより刺激された。
3)ステップ2)からのT細胞がCD19-CD86を担持したレンチウイルスによってトランスフェクションされた。
4)トランスフェクションされたT細胞上のCD19-CD86の発現が分析された。
【0220】
4.ブースター細胞K562/CD19-86の調製
1)293T細胞が、CD19-CD86cDNAを含むレンチウイルスを調製するためにトランスフェクションされた。
2)K562細胞がCD19-CD86を担持したレンチウイルスによってトランスフェクションされた。
3)CD19-CD86の発現が分析され、および、CD19+CD86+細胞がソートされた。
4)倍数増殖、100Gray γ-線照射を行い、分注して凍結した。
【0221】
5.CART19と3種のブースター細胞それぞれとの共培養
1)CART19を均等に3部に分け、それぞれ、上記2~4で調製した3種のブースター細胞、すなわちB細胞、T/CD19-CD86、K562/CD19-CD86と混合した。CART19細胞とブースター細胞との比は1:1とした。
2)細胞濃度を1x106/mlに調整し、培地に2U/mlのTscmおよび100U/mlのIL-2を追加した(以下同)。
3)インキュベーターで細胞を培養し、毎週月曜と水曜に培養液を半分交換(培養液交換後、半分の体積の旧培地を残し、新たな培地を半分追加し、細胞濃度を1×106/mlに保持)し、金曜にフローサイトメトリーで分析を行い、CART19細胞とブースター細胞との比が1:1に保たれるようにCART19細胞の比率に基づき計算してブースター細胞を補充投入し、培地を全て新しい培地に交換した。
4)3回目のブースター細胞投入後、1週間培養を続け、フローサイトメトリーでCART19細胞の比率を分析した。
【0222】
6.分析データ
3種のブースター細胞をそれぞれCART19細胞と共培養した後のCART19の増殖倍数を計算したところ、結果は以下のとおりであった。
B細胞群は、CART19が487倍増殖した。
T/CD19-CD86群は、CART19が134倍増殖した。
K562/CD19-CD86群は、CART19が2719倍増殖した。
【0223】
実施例11.2つのCAR-T増殖のブーストにおける、ブースター抗原としてEGFRviiiの組成物を含む人工ブースター細胞による人工ブースター細胞の効果の比較
本実施例では、特定の2つの免疫細胞上にEGFRviiiを含む組成物を発現している人工ブースター細胞の、増殖をブーストする効果が比較され、このうち1つには強化受容体が含まれている。ここで、EGFRviiiを含む組成物は、EGFRviiit(細胞内セグメントが除去されているトランケートEGFRviii)、CD86、CD137L、mbIL15-IL15Raの組成物であり、人工ブースター細胞はK562であり、当該組成物を発現している細胞をK562/EGFRviiitと表示する。ブーストされる2つの免疫細胞は、1)EGFRviiiを標的とするCAR-T細胞(EGFRviii-CAR-Tと表示)、および2)EGFRviiiを標的とするCAR-T細胞で、PD1-CD28強化受容体で追加で改変されたもの(EGFRviii-ECAR-Tと表示)である。
【0224】
本実施例の実験プロセスは以下のとおりに行った。
【0225】
1.PBMCの調製
1)PBMCは新鮮な血液から単離され精製された。
2)分注して凍結した。
【0226】
2.EGFRviii-CARTおよびEGFRviii-ECARTの調製
1)293T細胞がEGFRviii-CARおよびEGFRviii-CAR/PD1-CD28cDNAを含むレンチウイルスをそれぞれ調製するためにトランスフェクションされた。
2)PBMCが活性化され、T細胞がCD3/CD28磁性ビーズを用いて刺激された。
3)調製した3種のレンチウイルスそれぞれで、CD3/CD28磁性ビーズ処理したPBMCがトランスフェクションされた。
4)T細胞におけるEGFRvIII-CARの発現を分析した。
【0227】
3.ブースター細胞K562/EGFRviiitの調製
1)293T細胞が、EGFRviiitの組成物のcDNAを含むレンチウイルスを調製するためにトランスフェクションされた。
2)前記レンチウイルスでK562細胞のトランスフェクションを行った。
3)EGFRviiit、CD86、CD137LおよびmbIL15-IL15Raの発現を分析するとともにEGFRviiit+CD86+CD137L+mbIL15+細胞をソートした。
4)倍数培養、100Gray γ-線照射を行い、分注して凍結した。
【0228】
4.ブースター細胞K562/EGFRviiitとの2つのCAR-T細胞の共培養
1)EGFRviii-CART、EGFRviii-ECARTを、それぞれ上記ブースター細胞K562/EGFRviiitと混合した。CAR+T細胞とブースター細胞との比率は1:1とした。
2)細胞濃度を1x106/mLに調整し、30ng/mLのIL-21、50U/mLのIL-2、10ng/mLのIL-15、50ng/mLのIL-7が培地中に補充された(以下同)。
3)インキュベーターで細胞を培養し、毎週月曜と水曜に培養液を半分交換(培養液交換後、半分の体積の旧培地を残し、新たな培地を半分追加し、細胞濃度を1×106/mLに保持)し、金曜にフローサイトメトリーで分析を行い、CAR+T細胞とブースター細胞との比が1:1に保たれるようにCAR+T細胞の比率に基づき計算してブースター細胞を投入し、培地を全て新しい培地に交換した。
5)4回目のブースター細胞投入後、1週間培養を続け、フローサイトメトリーでCAR+T細胞の比率を分析した。
【0229】
5.分析データ
ブースター細胞K562/EGFRviiitをEGFRviii-CARTおよびEGFRviii-ECARTとそれぞれ3週間共培養した後の、2つのCAR-T細胞の増殖倍数を計算したところ、結果は以下のとおりであった。
EGFRviii-CART群では、CAR-T細胞数が3.6倍増殖された。
EGFRviii-ECART群では、CAR-T細胞数が22.8倍増殖された。
【配列表】
【国際調査報告】