(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-01
(54)【発明の名称】高解像度3Dディスプレイ
(51)【国際特許分類】
G02B 30/10 20200101AFI20220325BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20220325BHJP
G02F 1/29 20060101ALI20220325BHJP
H04N 13/307 20180101ALI20220325BHJP
H04N 13/324 20180101ALI20220325BHJP
H04N 13/346 20180101ALI20220325BHJP
【FI】
G02B30/10
G02F1/13 505
G02F1/29
H04N13/307
H04N13/324
H04N13/346
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021547321
(86)(22)【出願日】2020-02-18
(85)【翻訳文提出日】2021-10-07
(86)【国際出願番号】 IL2020050182
(87)【国際公開番号】W WO2020170246
(87)【国際公開日】2020-08-27
(32)【優先日】2019-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521355773
【氏名又は名称】アールエヌブイテック リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】アリエリ,ヨエル
(72)【発明者】
【氏名】ギルボア,シェイ シャロム
【テーマコード(参考)】
2H088
2H199
2K102
5C061
【Fターム(参考)】
2H088EA05
2H088EA45
2H088EA48
2H088GA02
2H088GA03
2H088GA04
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2H088HA18
2H088HA25
2H199BA20
2H199BA29
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2H199BA63
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2H199BB03
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2H199BB27
2H199BB42
2H199BB44
2K102AA21
2K102BA07
2K102BC04
2K102BD08
2K102DC09
2K102DD02
2K102EA21
2K102EB10
5C061AA06
5C061AB16
(57)【要約】
【課題】
【解決手段】3次元画像の投影のタイムベース多重化によって画像の解像度を増大させるためのデバイスは、画素のアレイを備える2次元ディスプレイを含む。画素の前方に光学素子のアレイが配置されている。光学素子は、画素から放出された光を屈折させて、複数の角度の複数の平行光ビームに構成するよう構成されている。画素の前方に調整可能光偏向デバイスのアレイが配置されている。調整可能光偏向デバイスの各々は、画素によって放出された光を偏向させるように構成されている。少なくとも1つのコントローラは、(1)3次元画像の表示のために設定された3次元情報に従って、画素の各々により放出される光の強度又は色のうち少なくとも1つを変動させるように、及び、(2)人間の視覚システムの画像積分期間中に光偏向デバイスの偏向角を変化させるように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元画像の投影のタイムベース多重化によって前記画像の解像度を増大させるためのデバイスであって、
複数の画素のアレイを含む2次元ディスプレイと、
前記画素の前方に配置され、前記アレイ上に規定された近隣画素のサブアレイの各画素から放出された光を屈折させて複数の角度の複数の平行光ビームに構成するよう構成された光学素子のアレイと、
それぞれが前記画素の前方に搭載された複数の調整可能光偏向デバイスのアレイであって、前記複数の調整可能光偏向デバイスの各々は前記画素によって放出された前記光を偏向させるように構成されている、調整可能光偏向デバイスのアレイと、
(1)3次元(3D)画像の表示のために設定された3D情報に従って、前記画素の各々により放出される光の強度又は色のうち少なくとも1つを変動させるように、及び、(2)人間の視覚システムの画像積分期間中に複数回、前記光偏向デバイスの偏向角を変化させるように構成された、少なくとも1つのコントローラと、
を備えるデバイス。
【請求項2】
前記光学素子のアレイはマイクロレンズアレイであり、前記2次元ディスプレイは前記マイクロレンズアレイの焦点面に位置付けられている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
各マイクロレンズ及び対応する近隣画素のサブアレイはセルを規定し、更に、隣接するマイクロレンズ間に配置されて隣接するセル間のクロストークを防止するように構成されたバリアを備える、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
各マイクロレンズに対応する近隣画素のサブアレイの各々は2つ以上の画素を含む、請求項2に記載のデバイス。
【請求項5】
各調整可能光偏向デバイスは、前記近隣画素のサブアレイの各画素により放出された光を画素の幅よりも小さい量だけ偏向させる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記調整可能光偏向デバイスは、調節可能マイクロプリズム、液晶システム、微小電気機械システム、電気光学デバイス、液晶偏光格子デバイス、又はマイクロミラーのうち1つ以上を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記調整可能光偏向デバイスはマイクロプリズムのアレイ及び対応する液晶システムを含み、各マイクロプリズムの偏向角は対応する液晶システムの活性化によって調整可能である、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記画素はRGB画素であり、前記赤、緑、及び青の画素の各々のフィルファクタは約25%であり、前記タイムベース多重化の結果として、前記赤、緑、及び青の画素の各々からの光は前記画素のアレイの全体から放出されているように知覚される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記画素のアレイ及び前記集束素子と同一平面内にある第1の偏光子アレイと第2の偏光子アレイとを更に備え、画素によって放出された前記光ビームが前記第1及び第2の偏光子アレイを通過する場合、前記光ビームの第1の部分は第1の方向に偏光され、前記光ビームの第2の部分は前記第1の方向に対して垂直な第2の方向に偏光される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記光学素子のアレイはマイクロレンズアレイであり、各マイクロレンズ及びそれに平行な近隣画素のサブアレイは3D画素を規定し、所与の3D画素の画素によって放出された光線の少なくとも一部は、前記第1及び第2の偏光子アレイを通過した後、異なる3D画素に関連付けられたマイクロレンズを通過するように方向を変えられる、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記画素はRGB画素であり、前記偏光子アレイを通過する場合の前記赤、緑、及び青の画素の各々のフィルファクタは約12.5%であり、前記タイムベース多重化の結果として、前記赤、緑、及び青の画素の各々からの光は前記画素のアレイの全体から放出されているように知覚される、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記画素はRGB画素であり、更に1つ以上のカラーフィルタを備え、前記カラーフィルタの各々は赤、緑、又は青の光のうち1つだけを通過させるように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
前記光学素子のアレイはマイクロレンズアレイであり、各マイクロレンズ及びそれに平行な近隣画素のサブアレイはセルを規定し、隣接するセルの前記カラーフィルタは赤、緑、又は青の光を交互に通過させるよう周期的にパターニングされている、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記マイクロレンズアレイによって生じる屈折を無効にするように前記マイクロレンズアレイと協調的に配置できる着脱可能マイクロレンズアレイを更に備える、請求項2に記載のデバイス。
【請求項15】
前記調整可能光偏向デバイスは前記画素のアレイと前記光学素子のアレイとの間に位置付けられている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
前記光学素子のアレイは前記画素のアレイと前記複数の調整可能光偏向デバイスのアレイとの間に位置付けられている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項17】
前記3D情報は、以下のステップ、すなわち、
(1)表示される複数のポイントについて、(x、y、z、R、G、B)ベクトルデータによって3Dデータの行列を生成すること、
(2)表示される各ポイントごとに、そのポイントから各マイクロレンズ中心までの全てのベクトルの方向を計算することによって、扇形光線を生成すること、
(3)表示される各ポイントごとに、セルを通過するベクトルに最も近い角度を有するR、G、及び/又はBサブピクセルを選択することによって、表示されるポイントの光線を生成する適正なR、G、及び/又はBサブピクセルを決定すること、
(4)表示される各ポイントごとに、例えば表示されるポイントの前記RGB光を生成するため、前記適正な強度で前記適正なR及び/又はG及び/又はBサブピクセルをオンにすること、
(5)調整可能光偏向デバイスを用いる場合、各R及び/又はG及び/又はBサブピクセルの時間的画像位置を考慮して、ステップ(1)から(4)を実行すること、
を含むアルゴリズムに従って設定される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項18】
各マイクロレンズは平坦面及び球面を含み、前記球面は前記2次元ディスプレイの方を向いている、請求項2に記載のデバイス。
【請求項19】
ライトフィールドの画像のタイムベース多重化によって前記画像の解像度を増大させるための装置であって、
複数のセンサで構成された2次元センサアレイと、
前記センサの前方に配置され、前記ライトフィールドからの光を屈折させて1つ以上のセンサ上に集束するよう構成された光学素子のアレイと、
前記センサの前方に配置され、調整可能偏向角に従って前記ライトフィールドから受け取った光の伝搬角を偏向させるように構成された調整可能光偏向デバイスのアレイと、
前記光偏向デバイスの前記偏向角を調整するように構成されたコントローラと、
を備える装置。
【請求項20】
前記調整可能光偏向デバイスは、調節可能マイクロプリズム、液晶システム、微小電気機械システム、電気光学デバイス、液晶偏光格子デバイス、調節可能格子、又はマイクロミラーのうち1つ以上を含む、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
3次元画像の投影のタイムベース多重化によって前記画像の解像度を増大させるための方法であって、前記画像は、複数の画素のアレイを含む2次元ディスプレイと、前記アレイ上に規定された近隣画素のサブアレイの各画素から放出された光を屈折させて複数の角度の複数の平行光ビームに構成するよう構成された光学素子のアレイと、少なくとも1つのコントローラと、前記画素の前方に搭載された複数の調整可能光偏向デバイスのアレイと、によって発生され、前記複数の調整可能光偏向デバイスの各々は前記画素によって放出された前記光を偏向させるように構成され、前記方法は、
前記少なくとも1つのコントローラによって、3次元(3D)画像の表示のための3D情報に従って、前記画素の各々により放出される光の強度又は色のうち少なくとも1つを選択することと、
前記コントローラによって、人間の視覚システムの画像積分期間中に複数回、前記光偏向デバイスの偏向角を調整することと、
を含む方法。
【請求項22】
前記選択するステップは、以下のステップ、すなわち、
(1)表示される複数のポイントについて、(x、y、z、R、G、B)ベクトルデータによって3Dデータの行列を生成すること、
(2)表示される各ポイントごとに、そのポイントから各マイクロレンズ中心までの全てのベクトルの方向を計算することによって、扇形光線を生成すること、
(3)表示される各ポイントごとに、セルを通過するベクトルに最も近い角度を有するR、G、及び/又はBサブピクセルを選択することによって、表示されるポイントの光線を生成する適正なR、G、及び/又はBサブピクセルを決定すること、
(4)表示される各ポイントごとに、例えば表示されるポイントのRGB光を生成するため、適正な強度で前記適正なR及び/又はG及び/又はBサブピクセルをオンにすること、
(5)調整可能光偏向デバイスを用いる場合、各R及び/又はG及び/又はBサブピクセルの時間的画像位置を考慮して、ステップ(1)から(4)を実行すること、
を有するアルゴリズムに従うことを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記調整可能光偏向デバイスは、マイクロプリズム、液晶システム、微小電気機械システム、電気光学デバイス、液晶偏光格子デバイス、又はマイクロミラーのうち1つ以上を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記光学素子のアレイはマイクロレンズアレイであり、前記調整可能光偏向デバイスはマイクロプリズムのアレイ及び対応する液晶システムを含み、前記調整するステップは、液晶システムを活性化することによって対応するマイクロプリズムの偏向角を調整することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記光学素子のアレイはマイクロレンズアレイであり、更に、前記マイクロレンズアレイによって生じる屈折を無効にするように前記マイクロレンズアレイに対して着脱可能マイクロレンズアレイを解放可能に取り付けることを含む、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年2月18日に出願された米国仮特許出願第62/806,948号、2019年6月4日に出願された米国仮特許出願第62/856,766号、及び2019年9月3日に出願された米国仮特許出願第62/894,999号の優先権の利益を主張する。これらの内容は全体が援用により本願に含まれる。
【0002】
本発明は、いくつかの実施形態において、高解像度かつ大視野の3次元ディスプレイに関し、更に具体的には、限定ではないが、3次元画像の投影のタイムベース多重化によって画像の解像度を増大させるためのデバイスに関する。また、本発明は、いくつかの実施形態において、高解像度でライトフィールド(light field)を撮像するためのデバイスに関し、具体的には、限定ではないが、ライトフィールドのタイムベース多重化によって解像度を増大させるための装置に関する。
【背景技術】
【0003】
2次元ディスプレイから3次元画像を投影するため、様々な方法が開発されている。立体法は、2つのオフセット画像を視聴者の左目と右目へ別々に提示する。次いで、これらの2次元画像を脳内で組み合わせて3Dの奥行き知覚を与える。立体表示では、3D画像情報は単一の表示面に限定される。奥行き知覚と目の調節との混乱によって、疲れ目、眼精疲労、吐き気が生じたり、物体距離に対する目の調節が遅くなったりする。
【0004】
正確に焦点が合った3D画像の感覚を与えることができる様々なタイプの3Dディスプレイがある。ボリュームディスプレイ(volumetric display)は、物理的機構を用いて3D空間内に光の点を表示する。3D画像の各ボクセル(voxel)は特定の空間位置に物理的に配置され、その位置から観察者の方へ光を反射又は放出する。3Dボリュームディスプレイのボクセルは組み合わされてリアルな3D画像を形成する。しかしながらボリュームディスプレイには、低解像度、大きい物理的サイズ、システムの複雑さを含む様々な問題がある。これらの問題のため、ボリュームディスプレイは一般的に使用するには高価かつ扱いにくいものである。
【0005】
3Dディスプレイの第2のカテゴリはホログラフィックディスプレイである。ホログラフィックディスプレイは、光の屈折を利用して物体の仮想3次元画像を生成するタイプのディスプレイである。これらのディスプレイでは、物体の光波面が再構築される。この技術の欠点は非常に複雑であることである。また、極めて詳細な波面を生成するには、ごく少数しか存在しない空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)が必要である。
【0006】
自然な網膜焦点キュー(retinal focus cue)を提供できる別の3Dディスプレイ技術は、ライトフィールド(LF:Light Field)ディスプレイと呼ばれるものである。LFディスプレイは、多層LCDパネルを使用し、表示時に圧縮アルゴリズムを用いる。平坦なフォームファクタのLF3Dディスプレイは、両目に見える照明画素を制御することによって、目の輻輳角(convergence angle)と焦点角(focus angle)を同時に生成できる。また、照明画素からの光ビームの方向も制御される。しかしながらこの技法には、表示できる視野及び角度分解能が限られているという欠点がある。
【0007】
プレノプティックカメラ(plenoptic camera)としても既知であるライトフィールドカメラは、シーンから発するライトフィールドと、光ビームが空間内で進行する方向とに関する情報を捕捉する。これは、光強度のみを記録する従来のカメラとは対照的である。ライトフィールドカメラの1つのタイプは、高解像度のセンサアレイの前方に配置されたマイクロレンズアレイを用いて、強度、色、及び方向の情報を検知する。ライトフィールドカメラの別のタイプは、マルチカメラアレイである。マイクロレンズアレイを備えたライトフィールドカメラの欠点は、解像度が低いことである。高い角度分解能で方向情報を検知するためには、高いフィルファクタ(fill factor)と解像度で多数のセンサの前方に各マイクロレンズを配置しなければならない。この要求により、現在既知であるライトカメラ(light camera)の性能が制限されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、高い解像度と広い視野で3Dシーンを生成し、目の疲れ、眼精疲労、及びフィールド調節が遅くなること等の問題を回避する3Dディスプレイを提供することである。また、本発明の目的は、マルチカメラアレイを必要とすることなく、高い角度分解能を含む高い解像度でライトフィールドを撮像するためのデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの目的は、いくつかの実施形態において、2次元ディスプレイから表示される3次元画像を高解像度で見せるように、そのディスプレイから表示される有効画素数を増加させることによって達成される。有効画素数の増加は、人間の視覚システムの積分期間中に画素によって放出される光ビームを何度も偏向させる調整可能光偏向デバイスを用いて実行される。
【0010】
例えば、従来のスクリーンが個別に光を放出する10の画素を含み、放出された光がマイクロレンズを介してコリメートされた場合、全ての角度からスクリーンを見る視聴者は10の異なる画素を識別する。本発明の実施形態に従った調整可能光偏向デバイスを用いると、人間の視覚システムの積分期間中にこのデバイスが8回調整された場合、全ての角度からスクリーンを見る視聴者は80の画素を識別する。事実上、スクリーンは、スクリーン内の物理的画素の8倍の画素が存在するのと同様に見える。従って、得られる3D画像は高解像度で視認され、目の疲れ又は同様の問題は生じない。同様の原理が、ライトフィールド撮像デバイスの有効センサ数を増加させるために適用される。
【0011】
第1の実施形態に従って、3次元画像の投影のタイムベース多重化によって画像の解像度を増大させるためのデバイスが開示される。デバイスは、複数の画素のアレイを備える2次元ディスプレイを含む。光学素子のアレイは、アレイ上に規定された近隣画素のサブアレイの各画素から放出された光を屈折させて、複数の角度の複数の平行光ビームに構成するよう構成されている。画素の前方に、複数の調整可能光偏向デバイスのアレイが搭載されている。複数の調整可能光偏向デバイスの各々は、画素によって放出された光を偏向させるように構成されている。少なくとも1つのコントローラは、(1)3次元(3D)画像の表示のために設定された3D情報に従って、画素の各々により放出される光の強度又は色のうち少なくとも1つを変動させるように、及び、(2)人間の視覚システムの画像積分期間中に複数回、光偏向デバイスの偏向角を変化させるように構成されている。
【0012】
有利な点として、偏向角を変化させることで3次元画像は多重化され、これにより視聴者の視野内の複数の視点から見られる。このように複数の角度から画像を見ることで、実質的に有効画素の密度を増大させ、これによって視聴者の画像解像能力を向上させる。画像積分時、視聴者は、有効画素数が増加した高解像度の画像を見たと感じる。更に、3次元画像のそれぞれ偏向されたビューにおいて、スクリーンから放出される偏向光線は、最初に2次元ディスプレイから放出された光線を正確に再現する。また、この装置は、視聴者の数やスクリーンに対する視聴者の位置にかかわらず、同じように良好に機能する。高い角度分解能と広い視野を有し、更に、奥行き知覚と観察者の目の調節との適合性を有する画像が知覚される。
【0013】
第1の態様に従った別の実施例において、光学素子のアレイはマイクロレンズアレイであり、2次元ディスプレイはマイクロレンズアレイの焦点面に位置付けられている。有利な点として、2次元ディスプレイがアレイの焦点面に位置付けられている場合、画素から放出される全ての光線は対応するマイクロレンズによって集光され、コリメート光ビームとして投影される。
【0014】
第1の態様に従った別の実施例において、光学素子のアレイはマイクロレンズアレイであり、各マイクロレンズ及び対応する近隣画素のサブアレイはセルを規定する。デバイスは更に、隣接するマイクロレンズ間に配置されて隣接するセル間のクロストークを防止するように構成されたバリアを備える。有利な点として、隣接するセル間のクロストークの防止は画像のぼけを防止する。
【0015】
第1の態様に従った別の実施例において、光学素子のアレイはマイクロレンズアレイであり、各マイクロレンズに対応する近隣画素のサブアレイの各々は2つ以上の画素を含む。有利な点として、1つのマイクロレンズ当たり1つだけの画素でなく、各マイクロレンズによって2つ以上の画素からの光を偏向させることにより、光を偏向させる角度の数を増加させ、従って画像の視野を拡大する。
【0016】
第1の態様に従った別の実施例において、各調整可能光偏向デバイスは、近隣画素のサブアレイの各画素により放出された光を画素の幅よりも小さい量だけ偏向させる。有利な点として、画素の幅よりも小さい量の画像の変位は、画像を超解像度で表示することを可能とする。
【0017】
第1の態様に従った別の実施例において、調整可能光偏向デバイスは、調節可能マイクロプリズム、液晶システム、微小電気機械システム、電気光学デバイス、液晶偏光格子デバイス、又はマイクロミラーのうち1つ以上を含む。任意選択的に、調整可能光偏向デバイスはマイクロプリズムのアレイ及び対応する液晶システムを含み、各マイクロプリズムの偏向角は対応する液晶システムの活性化によって調整可能である。有利な点として、液晶システムは、各マイクロプリズムを伝搬する光の偏向角を連続的に又は離散的に変化させるように細かく制御することができる。
【0018】
第1の態様に従った別の実施例において、画素はRGB画素であり、赤、緑、及び青の画素の各々のフィルファクタは約25%であり、タイムベース多重化の結果として、赤、緑、及び青の画素の各々からの光は画素のアレイの全体から放出されているように知覚される。有利な点として、装置はこれにより、フィルファクタに比べて高い比率で画像の有効解像度を増大させることができる。
【0019】
第1の態様に従った別の実施例では、画素のアレイ及びマイクロレンズアレイと同一平面内に第1の偏光子アレイ及び第2の偏光子アレイがある。画素によって放出された光ビームが第1及び第2の偏光子アレイを通過する場合、光ビームの第1の部分は第1の方向に偏光され、光ビームの第2の部分は第1の方向に対して垂直な第2の方向に偏光される。任意選択的に、各マイクロレンズ及びそれに平行な近隣画素のサブアレイは3D画素を規定し、所与のセルの画素によって放出された光線の少なくとも一部は、第1及び第2の偏光子アレイを通過した後、異なる3D画素に関連付けられたマイクロレンズを通過するように方向を変えられる。有利な点として、偏光子を用いて、近隣マイクロレンズを通るように画素からの光の方向を変えることにより、装置は表示画像の視野を拡大することができる。方向を変えた画素からの画像の「欠けている(missing)」部分は、時間多重化によって補われる。任意選択的に、画素はRGB画素であり、偏光子アレイを通過する場合の赤、緑、及び青の画素の各々のフィルファクタは約12.5%であり、タイムベース多重化の結果として、赤、緑、及び青の画素の各々からの光は、画素アレイ全体から放出されているように知覚される。有利な点として、装置はこれにより、フィルファクタに比べて高い比率で画像の有効解像度を増大させることができる。
【0020】
第1の態様に従った別の実施例において、画素はRGB画素であり、デバイスは1つ以上のカラーフィルタを含む。カラーフィルタの各々は、赤、緑、又は青の光のうち1つだけを通過させるように構成されている。任意選択的に、各マイクロレンズ及びそれに平行な近隣画素のサブアレイは3D画素を規定し、隣接するセルのカラーフィルタは、赤、緑、又は青の光を交互に通過させるよう周期的にパターニングされている。有利な点として、カラーフィルタを用いて近隣マイクロレンズを通るように光の一部の方向を変えるので、装置は表示画像の視野を拡大することができる。阻止された画素の「欠けている場所(missing place)」は、時間多重化によって完全にするか又は補うことができる。このようにして得られる画像は、高い解像度と広い視野で視認することができる。
【0021】
第1の態様に従った別の実施例において、光学素子のアレイはマイクロレンズアレイであり、マイクロレンズアレイによって生じる屈折を無効にするようにマイクロレンズアレイと協調的に着脱可能マイクロレンズアレイを配置できる。有利な点として、着脱可能マイクロレンズアレイにより、ディスプレイは従来の2次元形式の画像を表示することができる。
【0022】
第1の態様に従った別の実施例において、調整可能光偏向デバイスは画素のアレイと光学素子のアレイとの間に位置付けられている。第1の態様に従った別の実施例において、光学素子のアレイは画素のアレイと複数の調整可能光偏向デバイスのアレイとの間に位置付けられている。有利な点として、マイクロレンズアレイ及び調整可能光偏向デバイスの効果は累積的であるので、それらを装置内の交換可能な場所に配置して、装置構成の柔軟性を得ることができる。
【0023】
第1の態様に従った別の実施例において、3D情報は、以下のステップ、すなわち、(1)表示される複数のポイントについて、(x、y、z、R、G、B)ベクトルデータによって3Dデータの行列を生成すること、(2)表示される各ポイントごとに、そのポイントから各マイクロレンズ中心までの全てのベクトルの方向を計算することによって、扇形光線を生成すること、(3)表示される各ポイントごとに、セルを通過するベクトルに最も近い角度を有するR、G、及び/又はBサブピクセルを選択することによって、表示されるポイントの光線を生成する適正なR、G、及び/又はBサブピクセルを決定すること、(4)表示される各ポイントごとに、例えば表示されるポイントのRGB光を生成するため、適正な強度で適正なR及び/又はG及び/又はBサブピクセルをオンにすること、(5)偏向デバイスを用いる場合、各R及び/又はG及び/又はBサブピクセルの時間的画像位置を考慮して、ステップ(1)から(4)を実行すること、を含むアルゴリズムに従って設定される。有利な点として、このアルゴリズムは、表示される固有の各画像を変更する場合はいつでも実施することができる。
【0024】
第1の態様に従った別の実施例において、光学素子のアレイはマイクロレンズアレイであり、各マイクロレンズは平坦面及び球面を含み、球面は2次元ディスプレイの方を向いている。有利な点として、そのような状況における球面は、マイクロレンズアレイよりも小さい屈折率を有し得ると共に平坦面を形成するサポート内に収容されるか、又はこのサポートによって支持することができる。
【0025】
第2の態様に従って、ライトフィールドの画像のタイムベース多重化によって画像の解像度を増大させるための装置が開示される。装置は、複数のセンサで構成された2次元センサアレイを含む。センサの前方に光学素子のアレイが配置されている。光学素子のアレイは、ライトフィールドからの光を屈折させて1つ以上のセンサ上に集束するよう構成されている。センサの前方に調整可能光偏向デバイスのアレイが配置され、これは、調整可能偏向角に従ってライトフィールドから受け取った光の伝搬角を偏向させるように構成されている。コントローラは、光偏向デバイスの偏向角を調整するように構成されている。
【0026】
有利な点として、屈折角又は偏向角を時間の関数として変化させることによって、シーンの異なる角度からの光ビームがセンサによって記録される。この結果、シーンの異なる角度の画像が時間の関数として記録される。このように複数の角度から画像を変化させることによって、有効センサ解像度が実質的に増大し、これによりセンサがライトフィールドを撮像する能力が向上する。
【0027】
第2の態様に従った別の実施例において、調整可能光偏向デバイスは、マイクロプリズム、液晶微小電気機械システム、電気光学デバイス、液晶偏光格子デバイス、調節可能格子、又はマイクロミラーのうち1つ以上を含む。有利な点として、これらの材料で作製された調整可能光偏向デバイスは、各マイクロプリズムの偏向角を連続的に又は離散的に変化させるように細かく制御することができるシステムである。
【0028】
第3の態様に従って、3次元画像の投影のタイムベース多重化によって画像の解像度を増大させるための方法が開示される。画像は、複数の画素のアレイを含む2次元ディスプレイによって発生される。画素の前方に光学素子のアレイが配置されている。集束素子は、アレイ上に規定された近隣画素のサブアレイの各画素から放出された光を屈折させて、複数の角度の複数の平行光ビームに構成するよう構成されている。画素の前方に、複数の調整可能光偏向デバイスのアレイが搭載されている。複数の調整可能光偏向デバイスの各々は、画素によって放出された光を偏向させるように構成されている。2次元ディスプレイは少なくとも1つのコントローラも有する。この方法は、少なくとも1つのコントローラによって、3次元(3D)画像の表示のための3D情報に従って、画素の各々により放出される光の強度又は色のうち少なくとも1つを選択することと、コントローラによって、人間の視覚システムの画像積分期間中に複数回、光偏向デバイスの偏向角を調整することと、を含む。
【0029】
有利な点として、偏向角を変化させることで3次元画像は多重化され、これにより視聴者の視野内の複数の視点から見られる。このように複数の角度から画像を見ることで、実質的に画素の解像度を増大させ、これによって視聴者の画像解像能力を向上させる。画像積分時、視聴者は、有効画素数が増加した高解像度の画像を見たと感じる。更に、3次元画像のそれぞれ偏向されたビューにおいて、スクリーンから放出される偏向光線は、最初に2次元ディスプレイから放出された光線を正確に再現する。また、この方法は、視聴者の数やスクリーンに対する視聴者の位置にかかわらず、同じように良好に機能する。高い角度分解能と広い視野を有し、更に、奥行き知覚と観察者の目の調節との適合性を有する画像が知覚される。
【0030】
第3の態様に従った別の実施例において、選択するステップは、以下のステップ、すなわち、(1)表示される複数のポイントについて、(x、y、z、R、G、B)ベクトルデータによって3Dデータの行列を生成すること、(2)表示される各ポイントごとに、そのポイントから各マイクロレンズ中心までの全てのベクトルの方向を計算することによって、扇形光線を生成すること、(3)表示される各ポイントごとに、セルを通過するベクトルに最も近い角度を有するR、G、及び/又はBサブピクセルを選択することによって、表示されるポイントの光線を生成する適正なR、G、及び/又はBサブピクセルを決定すること、(4)表示される各ポイントごとに、例えば表示されるポイントのRGB光を生成するため、適正な強度で適正なR及び/又はG及び/又はBサブピクセルをオンにすること、(5)調整可能光偏向デバイスを用いる場合、各R及び/又はG及び/又はBサブピクセルの時間的画像位置を考慮して、ステップ(1)から(4)を実行すること、を有するアルゴリズムに従うことを含む。有利な点として、このアルゴリズムは、表示される固有の各画像を変更する場合はいつでも実施することができる。
【0031】
第3の態様に従った別の実施例において、調整可能光偏向デバイスは、調節可能マイクロプリズム、液晶システム、微小電気機械システム、電気光学デバイス、液晶偏光格子デバイス、又はマイクロミラーのうち1つ以上を含む。任意選択的に、調整可能光偏向デバイスはマイクロプリズムのアレイ及び対応する液晶システムを含み、調整するステップは、液晶システムを活性化することによって対応するマイクロプリズムの偏向角を調整することを含む。有利な点として、これらの材料で作製された調整可能光偏向デバイスは、各マイクロプリズムの偏向角を連続的に又は離散的に変化させるように細かく制御することができるシステムである。
【0032】
第3の態様に従った別の実施例において、集束素子はマイクロレンズアレイを含み、方法は更に、マイクロレンズアレイによって生じる屈折を無効にするようにマイクロレンズアレイに対して着脱可能マイクロレンズアレイを解放可能に取り付けることを含む。有利な点として、着脱可能マイクロレンズアレイにより、ディスプレイは従来の2次元形式の画像を表示することができる。
【0033】
以下の図面及び詳細な説明を検討することで、当業者には、本開示の他のシステム、方法、特徴、及び利点が明らかとなろう。全てのそのような追加のシステム、方法、特徴、及び利点は、この記載内に含まれること、本開示の範囲内にあること、及び、添付の特許請求の範囲によって保護されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本発明のいくつかの実施形態は、添付図面を参照して単なる例示として本明細書に記載されている。これより図面を具体的に参照するが、示されている詳細事項は例示であり、本発明の実施形態を説明のため検討する目的のものであることを強調しておく。この点に関して、図面と関連付けた記載により、どのように本発明の実施形態を実施できるかが当業者に明らかになる。
【0035】
【
図1】本発明の実施形態に従った、3次元画像の投影のタイムベース多重化のためのデバイスのコンポーネントを示す概略図である。
【
図2】本発明の実施形態に従った、2Dディスプレイを介して投影されて3次元のように見える光ビームの概略図である。
【
図3】本発明の実施形態に従った、複数のセルを含む3Dディスプレイのマイクロレンズアレイの概略図である。
【
図4】本発明の実施形態に従った3Dディスプレイの単一のセルの概略図であり、光ビームが画素によって放出され、マイクロレンズによって屈折及びコリメートされている。
【
図5】本発明の実施形態に従った3Dディスプレイの複数のセルの概略図であり、光ビームが画素によって放出され、マイクロレンズによって屈折及びコリメートされている。
【
図6A】本発明の実施形態に従った、画素アレイ、マイクロレンズ、及び調整可能光偏向デバイスを有する3Dディスプレイの単一のセルの概略図である。
【
図6B】本発明の実施形態に従った、3Dディスプレイからの光を多重化するため用いられる
図6Aの調整可能光偏向デバイスの概略図である。
【
図6C】本発明の実施形態に従った、RGBアレイ、マイクロレンズ、及び調整可能光偏向デバイスを有する3Dディスプレイの単一のセルの概略図である。
【
図6D】本発明の実施形態に従った、
図8Cのセルからの光を多重化するために用いられる
図6Cの調整可能光偏向デバイスの概略図である。
【
図7A】本発明の実施形態に従った、3Dディスプレイを介してユーザの両目に投影されている2つの多重化光ビームの概略図である。
【
図7B】本発明の実施形態に従った、3Dディスプレイを介してユーザの両目に投影されている3つの多重化光ビームの概略図である。
【
図8】本発明の実施形態に従った、マイクロレンズ、調整可能光偏向デバイス、及び視野を拡大するため用いられる偏光子を備える3Dディスプレイの単一のセルの概略図である。
【
図9】本発明の実施形態に従った、偏光子を備える3つの隣接セルの概略図であり、偏光子が投影画像の視野を拡大することを示している。
【
図10】本発明の実施形態に従った、ディスプレイがRGB画素で構成されている
図9のセルの概略図である。
【
図11】本発明の実施形態に従った、マイクロレンズ、調整可能光偏向デバイス、及びRGBフィルタを備えた3Dディスプレイの概略図である。
【
図12】本発明の実施形態に従った、マイクロレンズ、調整可能光偏向デバイス、及びRGBフィルタを備え、単一のRGB画素が各マイクロレンズに対応する3Dディスプレイの概略図である。
【
図13】本発明の実施形態に従ったライトフィールド撮像システムの概略図である。
【
図14】本発明の実施形態に従った、光ビームがマイクロレンズで屈折されてセンサへ誘導されるライトフィールド撮像システムの機構の概略図である。
【
図15A】本発明の実施形態に従った、調整可能光偏向デバイスを備えたライトフィールド撮像システムの概略図である。
【
図15B】本発明の実施形態に従った、2つの光ビームを画像センサの方へ屈折させる
図15Aの調整可能光偏向デバイスの概略図である。
【
図16】本発明の実施形態に従った、第1のマイクロレンズアレイの効果を打ち消すために使用できる第2のマイクロレンズアレイと組み合わせたマイクロレンズアレイの概略図である。
【
図17】本発明の実施形態に従った、マイクロレンズの球面が2次元ディスプレイに向かい合っているマイクロレンズアレイの代替的な実施形態の概略図である。
【
図18】本発明の実施形態に従った、マイクロレンズアレイの面内で用いられる代替的な光学システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、いくつかの実施形態において、高解像度かつ大視野の3次元ディスプレイに関し、更に具体的には、限定ではないが、3次元画像の投影のタイムベース多重化によって画像の解像度を増大させるためのデバイスに関する。また、本発明は、いくつかの実施形態において、高解像度でライトフィールドを撮像するためのデバイスに関し、具体的には、限定ではないが、ライトフィールドのタイムベース多重化によって解像度を増大させるための装置に関する。
【0037】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明が、その適用例において、以下の記載で述べられている及び/又は図面及び/又は実施例で示されているコンポーネント及び/又は方法の構成及び配置の詳細に限定されないことを理解するべきである。本発明は他の実施形態も可能であり、又は、様々な手法で実施もしくは実行することが可能である。
【0038】
図1は、3次元画像の投影のタイムベース多重化のためのデバイス10の要素を示す概略図である。デバイス10は、スクリーン20、光学素子アレイ30、調整可能光偏向デバイス40、及びコントローラ50を含む。
【0039】
スクリーン20は、画像を表示することに適した任意のディスプレイとすればよい。本開示で用いる場合、「スクリーン」及び「2次元ディスプレイ」という用語は交換可能に使用される。好適な実施形態において、スクリーン20は8K解像度の超高密度2次元ディスプレイを有する。8K UHD(7680×4320画素)は、Rec.2020(UHDTV)規格で規定される最も高い解像度である。8Kディスプレイの利点は、投影される画像が多重化の前でも高解像度であることである。
【0040】
スクリーン20は、複数の画素22の2次元アレイとして構成されている。画素22は、単色(すなわちグレースケール)又はRGB画素とすることができる。
【0041】
図示されている実施形態において、光学素子アレイ30は、スクリーン20に対して平行に搭載されたマイクロレンズ32のアレイから成る。マイクロレンズアレイ30は画素22の前方に位置している。つまり、画素22によって放出された光はマイクロレンズアレイ30を通過する。本開示で用いる場合、マイクロレンズとは、直径が1mm未満の小型レンズであり、直径は例えば10マイクロメータ又は1マイクロメータ程度の小ささである。マイクロレンズ32は、例えばガラス、コロイド粒子、又はナノリソグラフィによってパターニングされた液体等、当業者に既知である多くの材料で作製され得る。マイクロレンズアレイ30は、支持基板(
図1には示されていない)上に配置することができる。
【0042】
マイクロレンズアレイ30は、2次元アレイに形成された複数のマイクロレンズ32を含む。各マイクロレンズ32は、平坦面33と球状凸面36を有する。例示されている実施形態では、球面36は2次元ディスプレイから離れる方向を向いている。しかしながら、球面36が2次元ディスプレイ20に面する方向を向くことも可能である。好ましくは、スクリーン20はマイクロレンズアレイ30の焦点面に位置している。2次元ディスプレイ20がアレイ30の焦点面に位置付けられている場合、画素22から放出される全ての光ビームは対応するマイクロレンズ32によって集光され、コリメート光ビーム(すなわち、全ての光線が同一方向を向いた光ビーム)として投影される。
【0043】
調整可能光偏向デバイス40も画素22の前方に搭載されている。例示されている実施形態では、光偏向デバイス40は調節可能マイクロプリズム42から成る。マイクロプリズム42は、ディスプレイ20及びマイクロレンズアレイ30の面に対してある角度に配置されている。マイクロプリズム42は動的である。つまり、マイクロプリズム42の角度は、適切な電気光学デバイスの動作によって調整可能である。例示されている実施形態では、各マイクロプリズム42は液晶ベースのシステム44の動作によって調整可能である。液晶システムは、電気入力に基づいて形状、角度、屈折率、又は偏光を変化させるように構成できる。液晶は、コレステリック相、スメクチック相、又はネマチック相とすることができる。調整可能光偏向デバイス40は、代替的に又は追加的に、電気光学デバイス、液晶偏光格子(LCPG:liquid crystal polarization grating)デバイス、マイクロミラー、又は光ビームの伝搬角を偏向及び制御することができる他の任意の既知のデバイスを含み得る。
【0044】
例示されている実施形態では、調整可能光偏向デバイス40はスクリーン20とマイクロレンズアレイ30との間に配置されている。この配置は単なる例示であり、マイクロレンズアレイ30と調整可能光偏向デバイス40の位置を逆にして、マイクロレンズアレイ30をスクリーン20と調整可能光偏向デバイス40との間に配置することも可能である。
【0045】
コントローラ50は、スクリーン20及び調整可能光偏向デバイス40に命令を与える。これらの機能は、異なるサブコントローラによって実行できる。例えば、スクリーンをスクリーンコントローラ52によって制御し、偏向デバイス40を偏向コントローラ54によって制御することができる。
【0046】
コントローラ50はコンピュータプログラム製品を含み得る。コンピュータプログラム製品は、本発明の態様をプロセッサに実行させるためのコンピュータ可読プログラム命令を有する1又は複数のコンピュータ可読記憶媒体を含み得る。コンピュータ可読記憶媒体は、命令実行デバイスによって用いられる命令を保持及び記憶できる有形のデバイスとすることができる。コンピュータ可読記憶媒体は、限定ではないが例として、電子記憶デバイス、磁気記憶デバイス、光学記憶デバイス、電磁記憶デバイス、半導体記憶デバイス、又は前述のものの任意の適切な組み合わせとすればよい。
【0047】
コントローラ50及びそのサブコントローラは、ユーザから命令を受信するようにプログラムすることができる。例えばユーザは、コントローラ50及び/又はスクリーンコントローラ52を用いて、3次元画像を表示するための3次元情報に従って、画素22の各々により放出される光の強度又は色のうち少なくとも1つを選択することができる。この選択は、以下で更に説明されるアルゴリズムに従うことを含み得る。
【0048】
ユーザは同様に、コントローラ50及び/又は偏向コントローラ54を用いて、人間の視覚システムの積分時間(t)中に複数回、光偏向デバイス40の偏向角を調整することができる。
【0049】
人間の視覚システムは、平均して約0.1秒おきに画像を積分することができる。この時間を本明細書では「視覚積分時間(visual integration time)」と称する。動作中、ユーザはコントローラ50を用いて、視覚積分時間をn個の離散期間t1~tnに分割する命令を与えることができる。t1~tnの各期間中に、画像がスクリーン20から表示され、その光がマイクロレンズアレイ30及び調整可能光偏向デバイス40を介して屈折する。期間と期間との間に、調整可能光偏向デバイス40の偏向角(例えばプリズム42の偏向角)を変化させる。あるいは、偏向角の変化は連続的としてもよい。偏向角が変化すると、画素22によって発生した画像を見る視野角が変化する。この結果、時間(t)中に画像の投影はn回多重化される。時間(t)の終了時に目が知覚する画像は、画像の単一の表示を見る場合に比べ、解像度が高く、かつ有効画素数が増えたものとなる。
【0050】
図2から
図7Bは、どのようにスクリーン20及びマイクロレンズアレイ30を用いて3Dディスプレイを生成するか、並びに、どのようにデバイス10の各コンポーネントが画素22からの3D画像の伝送に影響を及ぼすかを示す。
【0051】
図2は、通常どのようにスクリーン20を用いて3次元表示を表現するかを基本レベルで示す。例示の目的のため、スクリーン20によって投影される3次元物体が、スクリーン20の後方の異なる面内にポイント24及び26を有すると考えることができる。これに相当する、照明されるか又は自己照明する現実の3D物体(例えば電球)は、ポイント24及び26から全ての方向に光線を放出する。同様に、ディスプレイ20から本物そっくりの3Dシーンを表示するため、ディスプレイ20の各ポイント(例えば各画素22)は、実際は全て同一面内にあるが、多くの異なる色、強度、及び角度の光線を同時に放出する。このため観察者は、視差効果に従って、3D物体の画像をどの角度からも異なるように観察することができる。
【0052】
一例として、画素28はスクリーン20上の1つの任意のポイントである。観察者がどの角度からもポイント24及び26を見ることを可能とするため、画素28は、異なる色及び異なる強度の光線を同時に異なる角度へ放出しなければならない。図示されている例では、画素28は、ポイント24から放出されているように見える光線61を放出し、更に、ポイント26から放出されているように見える光線63を放出する。これと同じ解析がスクリーン20上の画素22の各々に適用される。スクリーン20上の全ての画素22が適切な色、強度、及び角度の光線を同時に放出することで、これらの光線が3D物体の全てのポイントから来ているように見える連続した光線に見える場合、観察者はどの視点からも3次元の画像を視認する。
【0053】
図3は、前方にマイクロレンズアレイ30を備えた
図2のスクリーン20を示す。スクリーン20はマイクロレンズアレイ30の焦点面に位置付けられている。マイクロレンズアレイ30は様々なマイクロレンズ32を含み、各マイクロレンズ32は1つ以上の画素22と同一平面内にある。例示されている実施形態では、各マイクロレンズ32は1群の画素22に向かい合っている。本明細書では、各マイクロレンズに向かい合っている画素群を画素の「サブアレイ」とも称する。
【0054】
スクリーン20とマイクロレンズ30の組み合わせは、3D画素14から成る3Dディスプレイ12を形成する。各3D画素14は、1つのマイクロレンズ32とスクリーン20の少なくとも1つの対応する画素22とを含むセル34から構成される。本開示で用いる場合、「セル」及び「3D画素」という用語は交換可能に使用される。上記で検討したように、スクリーン20は任意の既知の2次元ディスプレイとすればよく、画素22は単色又はRGBとすればよい。異なるセル34間のクロストークを防止するため、異なるセル34間には任意選択的にバリア36、38が設けられる。
【0055】
図4は、3Dディスプレイ12の単一の3D画素14を通る光ビームの伝送を示す。
図3と同様、3D画素14又はセル34は、画素22、バリア36及び38、並びにマイクロレンズ32を含む。画素22はマイクロレンズ32の焦点面に位置付けられている。例示されている実施形態では、画素22はRGB画素である。
【0056】
上述のように、3Dディスプレイ12からリアルな3D画像を得るため、ディスプレイ12上の各ポイントが、異なる色、強度、及び角度を有する多くの光線を同時に放出することで、観察者は視差効果によって異なる角度から異なるように物体を視認する。従って、各セル34は3Dディスプレイ12の個々の画素14と同等であるので、各セル34は、異なる色、強度、及び角度を有する多くの光線を同時に放出する。各セル34がこれら多くの異なる光線を生成するため、スクリーン20の異なるRGB画素22が用いられる。例えば、物体の任意のポイント24の方向から来る特定の強度及び色の光線を生成するため、また、これと同時に、物体の別の任意のポイント26の方向から来る別の強度及び色を有する異なる光線を生成するため、RGB画素21が、理論上ポイント24から来る光線と同じ強度及び色の光を放出し、これと同時にRGB画素23が、理論上ポイント26から来る光線と同じ強度及び色の光を放出する。スクリーン20、従って画素22の各々は、マイクロレンズアレイ30のマイクロレンズ32の焦点面に位置付けられているので、各セル34において、各RGB画素から放出された全ての光線はそのセル34のマイクロレンズ32により集光され、例えばビーム61a、61b、61c、63a、63b、63cのようなコリメート光ビームとして投影される。各コリメート光ビーム61、63は、各ビームを放出している画素とセル34の光軸31とが生成する角度に向けられている。RGB画素21、23は光軸31に対して特定の角度に位置付けられており、これらの角度は、セル34から発した光ビームを見ている観察者に対する物体のポイント24、26の角度と同様である。このため、セル34を見ている観察者にとって、光ビーム61、63はそれぞれポイント21又は23から来るように見える。観察者の網膜上で、各RGB画素22からの各光ビームは一点に集束される。記載されているセル34の動作は、表示される3D物体上の他の全てのポイントに当てはまる(ポイント24、26以外にも)ので、観察者は3D物体を視認する。
【0057】
視聴者が左右又は上下の次元に視野角をシフトした場合、3D物体の知覚は継続する。有利な点として、3Dディスプレイ12の各セル34からの光線はコリメートされて狭ビームを形成するので、観察者は表示された物体をその「リアルな」距離で視認し、目の疲れ、眼精疲労、及び吐き気は防止される。
【0058】
次に
図5を参照すると、3Dディスプレイ12のより包括的な機構が示されている。この図では、複数のセル34が単一の面内に示されており、各セル34は、1つのマイクロレンズ32と、マイクロレンズ32の焦点面に位置付けられた少なくとも2つの画素22と、任意選択的に2つのバリア36、38と、を備えている。個別セル34の各々は、
図4に関連付けて上述したように機能する。従って、例えばポイント24のような3D物体の1つのポイントを生成するため、各セル34は、理論上ポイント24から来るはずの光線の強度及び色と同じ強度及び色を有する光ビームを生成する。各セル34はこのビームをそれぞれ異なる伝搬角で生成する。これを達成するのは、理論上ポイント24から来るはずの光線の強度及び色と同じ強度及び色を有する光を放出するがセル34の光軸に対して適切な角度に位置付けられている各セル内の適切な1又は複数のRGB画素22である。この結果、観察者には、3Dディスプレイ12の全てのセル34からの扇形の全ビームがポイント24から来ているように視認される。同様に、例えばポイント26のような3D物体15の別のポイントを生成するため、各セル34は、ポイント26から来るはずの光線の強度及び色と同じ強度及び色を有する光ビームを生成し、セル34の光軸に対して適切な角度に配向された1又は複数の適切なRGB画素22からの光の伝搬に基づいて、各セルは、ポイント26から来るはずの光線の強度及び色と同じ強度及び色を有する光ビームを生成する。従って、観察者には、3Dディスプレイ12の全てのセル34からの扇形の全ビームがポイント26から来ているように視認される。視聴者が左右又は上下の次元に視野角をシフトした場合、3D物体の知覚は継続する。
【0059】
上述したシステムは様々な利点を有する。3Dディスプレイ12は、3D物体の適正なポイントから来ているように見える適正な角度を有する多数の光ビームを生成するので、多くの異なる観察者が同時に、3Dディスプレイ12に対する各自の位置に応じた異なる角度で物体を見るのに適している。更に、3Dディスプレイ12の各セル34からの光ビームは狭ビームにコリメートされて投影されるので、観察者はその「リアルな」場所の物体を視認する。目の疲れ、眼精疲労、及び吐き気は防止される。
【0060】
しかしながら、
図4及び
図5に示されている3Dディスプレイ12が提供する3D解像度は依然として限られている。各セル34のRGB画素22の数が限られているので、生成することができる異なる角度のビームは限定される。3D物体の多くの近接したポイントが各セル34の同一のRGB画素22によって再構築される可能性があり、このため再構築の角度分解能は低減する。更に、所与のRGB画素22内のR、G、及びBサブピクセルのフィルファクタが限られているので、R、G、及びBサブピクセルの各々は角度範囲全体をカバーせず、従って再構築の角度分解能は低減する。
【0061】
3D解像度を増大するために可能な1つの手法は、マイクロレンズ32に対する画素22の視角(angular subtense)を小さくするため、マイクロレンズ32の焦点距離を長くすることである。しかしながら、焦点距離を長くすると、それに応じて視野が限定される。別のアプローチは、視野を広くするため、RGB画素22の数を増加させることである。しかしながら、これはマイクロレンズの開口寸法を増大させ、それに応じて3Dディスプレイの横方向解像度が低下する。
【0062】
本開示は、各セル34内のRGB画素22の有効数を増加させる別のアプローチを提供する。各セル34において、マイクロレンズ32の前又は後に調整可能光偏向デバイス40を追加する。調整可能光偏向デバイス40は、人間の視覚システムの画像解像度期間内で1度以上、離散的に又は連続的に調整され、これによって視聴者に見える画素数を実質的に増倍(multiply)させる。
【0063】
図6Aを参照すると、3Dディスプレイ12のセル34は、2Dディスプレイスクリーンの少なくとも1つのRGB画素22と、少なくとも1つのマイクロレンズ32と、2つの任意選択的なバリア36、38と、を含む。セル34は調整可能光偏向デバイス40も含む。偏向デバイス40は一実施形態において、マイクロプリズム42及び液晶システム44から構成される。液晶システム44は、
図1に関連付けて上述したように、マイクロプリズム42の角度を偏向させるよう動作可能である。調整可能光偏向デバイス40は、追加的に又は代替的に、電気光学デバイス、液晶偏光格子、マイクロミラー、又は、光ビームの伝搬角を偏向及び制御することができる他の任意の既知のデバイスとしてもよい。光ビームの屈折角又は偏向角を時間の関数として変化させた場合、RGB画素22の異なる角度の異なる画像が得られる。
【0064】
図6Bは、2つの別個の時点で視聴者の目に見える2つのRGB画素21、23の画像を示す。偏向デバイス40の1つの偏向状態において、画素21、23はRGB画素21a及び23aとして視認され、偏向デバイスの別の偏向状態において、それらはRGB画素21b、23bとして視認される。従ってRGB画素21b、23bは、例えばRGB画素21a、23aの間のような異なる位置に位置付けられているように知覚される。偏向の結果、RGB画素の有効数は増加し、3Dディスプレイの全角度分解能は向上する。
【0065】
一実施形態において、画素21、23の知覚される偏向は画素の幅よりも小さい。画像の変位が画素の幅よりも小さいので、画像を超解像度で表示することが可能となる。
【0066】
各セル34の光ビームの偏向角は連続的に又は離散的に何度も変動され得るので、各画素の画像は、画像積分時間中の異なる部分では異なる角度で見ることができる。
【0067】
図6Cは、少なくとも1つのRGB画素を備えた3Dディスプレイの単一のセル34を示す。各RGB画素22はサブピクセルR、G、及びBを備え、例えば、Rサブピクセル25、Gサブピクセル27、及びBサブピクセル29を備えている。サブピクセルR、G、及びBの各々のフィルファクタは100%よりも低いので、R、G、及びBサブピクセルによって「カバーされる」のは角度範囲全体よりも小さい範囲である。従って、投影画像の角度分解能は低減する。更に、各サブピクセルR、G、及びBの視角が限られているので、セル34の角度分解能は限られている。調整可能光偏向デバイス40を用いて、屈折角及び偏向角を時間の関数として変えることにより、サブピクセルR、G、及びBの異なる角度の異なる画像が得られる。
【0068】
図6Dは、
図6Cのセル34内のRサブピクセル25の異なる画像を示す。偏向デバイス40の1つの偏向状態において、RサブピクセルはRサブピクセル25aとして視認され、偏向デバイス40の別の偏向状態において、RサブピクセルはRサブピクセル25bとして視認され、第3の偏向状態において、RサブピクセルはRサブピクセル25cとして視認される。これに応じてRサブピクセルの光線はセル34から異なる方向に放出し、それぞれビーム65a、65b、及び65cとして現れる。これと同じプロセスが、3Dディスプレイ全体でセル34の各々においてR、G、及びBサブピクセルの各々で行われる。これにより、R、G、及びBサブピクセルの有効数が増加し、従って各サブピクセルのフィルファクタが増大する。
【0069】
2Dディスプレイとは異なり、3Dディスプレイでは、画素又はサブピクセルが100%よりも大幅に低いフィルファクタを有するディスプレイが望ましい。このようなシステムでは、各画素の視角が小さいので、高い角度分解能の3D画像を発生することができる。しかしながらそれに応じて、このようなシステムでは、2Dディスプレイからの画素の変調を用いて複数の画像を表示する必要がある。このため、実質的な画素の増倍によって低いフィルファクタを補償する。
【0070】
特に、RGB画素を備えたディスプレイでは、R、G、及びBサブピクセルの各々はディスプレイの約25%を占め、ディスプレイの残り部分は機械的コンポーネントによって占有される。タイムベース多重化の効果は、各RサブピクセルがG及びBサブピクセルをカバーしている空間まで多重化されるように、及びその逆になるように、R、G、及びBサブピクセルの有効数を増加させることである。このため、赤、緑、及び青のサブピクセルの各々からの光は、画素アレイ全体から放出されているように知覚される。
【0071】
偏向状態を変動させることに加えて、サブピクセルの強度及び色を連続的に又は離散的に変動させることも可能である。この変動によってもRGB画素の有効数は増加する。これに応じてフィルファクタが増大し、3Dディスプレイの角度分解能が向上する。
【0072】
図7Aは、2つの光ビーム61、63が3Dディスプレイを介して3回多重化されてユーザの目に投影されることを示す概略図である。
図7Bは、本発明の実施形態に従って、3つの多重化された光ビーム61、63、65が3Dディスプレイを介してユーザの目に投影されることを示す概略図である。
図7A及び
図7Bで見られるように、多重化の効果は、光ビーム61、63、65の有効解像度を、この例では3倍増大させることである。
【0073】
ここで
図8を参照すると、3次元画像の投影のタイムベース多重化のためのデバイスの第2の実施形態110が開示されている。デバイス110はほとんどの点でデバイス10と同様であるので、同様の要素は、「1」で始まること以外は同様の参照番号を有する。デバイス110が前述の実施形態と異なる点は、2つのマイクロレンズアレイ130と同一平面内にある第1の偏光子アレイ170及び第2の偏光子アレイ172を含むことである。例示されている実施形態では、第1の偏光子アレイ170は画素アレイ120に隣接し、第2の偏光子アレイ172は画素アレイ120とマイクロレンズアレイ130との間に提供されている。この構成は単なる例示であり、他の構成も可能である。偏光子170、172によって、デバイス110は、前述の実施形態よりも広い視野で3D画像を表示することができる。
【0074】
動作中、第1の偏光子アレイ170は、偏光子172の偏光方向に平行な偏光方向を有する第1の群の偏光子173と、偏光子172の偏光方向に垂直な偏光方向を有する第2の群の偏光子174と、を含む。偏光子173、174は画素アレイ120に沿って交互に位置決めされ、各偏光子173、174は異なる画素又は画素群に対して平行であるので、隣接するセルから放出される光は偏光子173又は174によって交互に偏光される。例えば、奇数番号の画素175及び177から放出される光は偏光子172の偏光方向に平行な偏光方向を有する偏光子173によって偏光され、偶数番号の画素176及び178から放出される光は偏光子172の偏光方向に垂直な偏光方向を有する偏光子174によって偏光される。従って、画素175及び177からそれぞれ放出される光線165及び167は偏光子172の偏光方向に平行な方向に偏光され、偏光子172を通過する。一方、画素176及び178からそれぞれ放出される光線166及び168は偏光子172の偏光方向に垂直な方向に偏光されるので、偏光子172によって阻止される。偏光子170、172は
図8に示された位置に厳密に配置する必要はなく、セル134内の画素の一部の光を透過させると共にセル内の画素の他の部分の光を阻止する機能を達成する限り、セル134内の任意の面内に配置することができる。
【0075】
図9は、偏光子170、172、174を備えた3つの隣接するセル135、137、139の概略図であり、投影画像の視野を拡大する偏光子172、174、176の効果を例示している。セル135、137、139の各々は、少なくとも1つのRGB画素を含む。例示されている実施形態において、各セルは、複数の画素を含む画素のサブアレイを有する。例えば、セル137は画素183、184、及び185を有する。各セルは、少なくとも1つのマイクロレンズ132及び少なくとも1つの偏向デバイス140も有する。
図8に関連付けて上述したように、各セルは、第1の偏光方向の偏光子172a、172b、172cも有する。偏光子173a、173b、173c、及び174a、174b、174cは、各セルの画素を交互にカバーしている。各偏光子173は偏光子172の偏光方向に平行な偏光方向を有し、各偏光子174は偏光子172の偏光方向に垂直な偏光方向を有する。セル135、137、139の間にバリアは存在しない。
【0076】
特に、この実施形態では、セル135及び137又はセル137及び139のような2つの隣接セルの偏光子172の偏光方向は相互に直交している。上述したように、偏光子によって、例えばセル135の画素184により放出される光線194等、いくつかの画素の光線はその偏光子172bを通過する。一方、セル135の偏光子172a及びセル137に隣接するセル139の偏光子172cの偏光方向は偏光子172bの偏光方向に垂直であるので、セル137内の阻止される画素183及び185によって放出される光線193及び195等の光線は、それぞれ隣接セル135、139のみで偏光子172a及び172cを通過することができる。この結果、各セルの広角光投影が得られるので、画像の視野を拡大することが可能となる。言い換えると、隣接するセルに光を放射する画素を用いて、広い視野で見ることができる像(figure)を生成できる。いずれかの特定のセル内の画素の「欠けている場所」は、上述のように偏向デバイス140を用いてそのセルの画素の画像の角度を偏向させることによって補うか又は完全にすることができる。当業者に認められるように、各セル134の偏光子173、174は、そのセルを通過するよう設計された光の極性に関連付けなければならない。
【0077】
この実施形態では、偏光子の効果によって、各セルの画素の半分だけがそのセルを介して光を放出できるので、赤、緑、及び青のサブピクセルの各々のフィルファクタはわずか約12.5%である。タイムベース多重化の結果として、赤、緑、及び青の画素の各々からの光は、画素アレイ全体から放出されているように知覚される。
【0078】
図10は、3次元画像の投影のタイムベース多重化のためのデバイスの別の実施形態210を示す。
図8及び
図9の実施形態110と同様、実施形態210は広い視野で3D画像を表示するように構成されている。実施形態210はほとんどの点で前述の実施形態と同様であるので、同様の要素には、「2」で始まること以外は同様の参照番号を割り当てる。
【0079】
各セル234は、例えば画素283、284、及び285のような2Dスクリーンの少なくとも1つのRGB画素と、少なくとも1つの偏向デバイス240と、マイクロレンズ232と、を含む。更に、赤色フィルタ290のようなフィルタも存在する。従って、画素283rのようなRGB画素の赤サブピクセルによって放出される光線293rのような光線は、赤色フィルタ290を通過する。しかしながら、セル234内のRGB画素の緑及び青サブピクセルによって放出される283g及び283bのような光線は、赤色フィルタ290によって阻止される。フィルタ290は、セル234の画素の一部の光を透過させると共にセル234の画素の他の部分の光を阻止するという本明細書に記載されている機能を達成するため、セル234の内部のいずれかの面内、又はセル234の外部に位置付けることができる。
【0080】
図11は、
図10に示されている種類のセルから構成された3Dディスプレイの一部を示す。
図11は3Dディスプレイの3つの隣接セル235、237、及び239を示す。各セルは、2Dスクリーン220の少なくとも1つのRGB画素を含む。簡略化のため、1群のR、G、Bサブピクセルのみを備えたRGB画素が1つだけ図示されている。各セルは、少なくとも1つの偏向デバイス(図示せず)及びマイクロレンズ232も含む。更に、各セルはフィルタ290を有する。
【0081】
3Dディスプレイの隣接するセルのフィルタ290は、赤、緑、又は青の光を交互に通過させるよう周期的にパターニングされている。フィルタによって、各セルのフィルタ290と同じ色を有するそのセルのサブピクセルR、G、及びBにより放出される光線は、フィルタ290を通過する。フィルタ290と異なる色のサブピクセルによって放出される光線は、フィルタによって阻止される。例えば、セル235は赤色フィルタを有する。光線235rのようなRサブピクセルの光線はそのセルのRフィルタ290を通過するが、G及びBサブピクセルによって放出される光線はRフィルタによって阻止される。しかしながら、セル235内の阻止されたG及びBサブピクセルによって放出される光線は、隣接するセル237及び239のフィルタ290を通過することができる。例えば、光線235gはセル237のGフィルタを通過し、光線252bはセル239のBフィルタを通過することができる。この結果、広い視野の広角光投影が得られる。各セル内の画素の「欠けている場所」は、上述したように、偏向デバイス240を用いて画素の画像を偏向させることによって完全にすることができる。
【0082】
ここで
図12を参照すると、3Dディスプレイの各セルがRサブピクセル、Gサブピクセル、又はBサブピクセルのうち1つだけを含む事例に、
図11の実施形態の原理が拡張されている。要素222は2Dディスプレイ220の単一のRGB画素を表し、要素235、237、及び239は3Dディスプレイの3つのセルを表す。セル235、237、及び239の各々は、RGB画素222のRサブピクセル、Gサブピクセル、又はBサブピクセルだけを含む。
図11の実施形態と同様、光線が特定のフィルタ290だけを通過するので、各セルの視野は拡大し、画素の「欠けている場所」は、偏向デバイスを用いて画素の画像を偏向させることによって完全になる。この実施形態の利点は、広い視野と高い角度分解能を達成することに加えて、3Dディスプレイの各セルの寸法が2Dディスプレイ画素222の寸法と同等であるために3Dディスプレイの高い横方向解像度が得られることである。
【0083】
上述した実施形態は単なる例であり、視野を拡大するために任意の種類のフィルタ、セルの配置、及びフィルタの配置又は順序を適用することができる。
【0084】
図13は、上述した実施形態に関連付けて検討される原理に従って実施され得るライトフィールド撮像システム310のコンポーネントを示す。ライトフィールド撮像デバイス310は前述の実施形態と同様のコンポーネントを有するので、同様の要素は、「3」で始まること以外は同様の参照番号を用いて言及される。
【0085】
ライトフィールド撮像システム310は、マイクロレンズアレイ等の光学素子アレイ330、及びその焦点面に位置付けられた2Dセンサアレイ320から成る。マイクロレンズアレイ内の各マイクロレンズ332は、ライトフィールド撮像システム310における1つの画素又はセル334を表す。各画素314は、1つのマイクロレンズ332及び2Dセンサアレイ320の少なくとも1つのセンサから成る。2Dセンサアレイ320は、単色、RGB、ハイパースペクトル、及び/又は偏光検出センサを含む、いずれかの既知の2Dセンサアレイとすればよい。
【0086】
図14を参照すると、ライトフィールド撮像システム310の1つの画素又はセル334が図示されている。各画素334は、マイクロレンズアレイの1つのマイクロレンズ332と、マイクロレンズの焦点面に位置付けられた2Dセンサアレイ320のセンサ321、323のような少なくとも2つのセンサと、から成る。シーンの任意のポイントから発する光線がマイクロレンズアレイ330に当たると、各マイクロレンズ332は光線束をその焦点面に収束する。各光線束は、その主光線の方向に応じて異なるセンサへ誘導される。例えば、光線束361の光線は誘導されてセンサ321上に集束し、光線束363の光線は誘導されてセンサ323上に集束する。従って、光線361、363の強度及び色が記録されるだけでなく、それらの方向も記録される。任意選択的に、偏光を記録するため偏光子を挿入してもよい。
【0087】
図14のシステムでは、ライトフィールド撮像システム310の各画素又はセル334内のセンサ322の数が限られているので、角度分解能の潜在的な可能性が限られている。これに応じて、記録することができる光線束の異なる角度も限られており、シーン内の角度が近いポイントは画素の同一センサ上に記録され得るので、角度分解能は低減する。このシステムの別の制限は視野が限られていることであり、これもライトフィールド撮像システムの各画素内のセンサ数に依存する。しかしながら、各画素322内のセンサ数を増加させるとマイクロレンズ322の開口寸法が増大し、従って撮像システム310の横方向解像度が低減する。
【0088】
図15Aを参照すると、マイクロレンズの寸法を大きくすることなく各画素又はセル334内のセンサ322の有効数を増加させるため、調整可能光偏向デバイス340が追加されている。調整可能光偏向デバイス340は、液晶システム、液晶プログラマブル格子、電気光学デバイス、マイクロミラー、又は光線の伝搬角を偏向及び制御できる他の任意のデバイスを含み得る。調整可能光偏向デバイス340は、前述の実施形態を参照して記載されているデバイス40、140、240と同様のデバイスとすればよい。具体的には、偏向デバイス340はコントローラを用いて制御可能とすることができる。1つの例示的な実施形態において、デバイス340は調節可能マイクロプリズムである。偏向デバイス340は、マイクロレンズアレイの前又は後に横方向に配置することができる。
【0089】
図15Aに示されているように、ライトフィールド撮像システム310の画素又はセル334は、センサ321、323等のいくつかのセンサと、1つのマイクロレンズ332と、調整可能光偏向デバイス340と、を含む。デバイス340の屈折角又は偏向角を時間の関数として変化させることによって、シーンの異なる角度の画像が時間の関数として記録される。言い換えると、デバイス340の屈折角又は偏向角を時間の関数として変化させることによって、各画素334のセンサ322の異なる画像が取得され、これにより有効画素数を増加させる。
【0090】
図15Bは、2つの異なる時点でセンサ321及び323によって観察される画像を示す。調整可能光偏向デバイス340の1つの偏向状態では、センサは画素位置321a及び323aに位置付けられているように見え、調整可能光偏向デバイス340の別の偏向状態では、センサは画素位置321b及び323bに位置付けられているように見える。センサ321b及び323bは、センサアレイ320の面内に物理的に位置付けられているセンサとは異なる角度に位置付けられているように見える。例えば、センサ321b及び323bはセンサ321aと323aとの間に位置付けられているように見えるので、シーンからの異なる方向を有する別の光線束も記録される。この現象を特徴付ける別の考え方は、センサ322上に表示される画像がセンサ上の元の位置に対して変位して見えるということである。従って、この構成はセンサ322の有効数を増加させる。
【0091】
各画素334の光ビームの伝搬角は、調整可能光偏向デバイス340の動作によって連続的に又は離散的に変動し得る。各センサ322の画像が異なる時点で異なる角度に見えるように、デバイス340を多くの異なる角度に何度も変化させることができる。その結果として、記録シーンを時間で多重化し、それによりライトフィールド撮像システムの全体的な解像度を増大させることによって、センサ322の有効密度を増大させる。
【0092】
3Dディスプレイ10とライトフィールド撮像システムが相互に極めて類似していることは認められよう。これら2つのデバイスの相違は、3Dディスプレイ10では2Dディスプレイ20の画素22が光を放出し、ライトフィールド撮像システム310では検出器アレイ320の画素が光を受け取ることである。従って、3Dディスプレイスクリーンに関連付けて上述した、例えば調節可能偏向デバイス及び/又は偏光子及び/又はフィルタを用いるアイディアのような、横方向解像度及び/又は角度分解能の増大及び/又は視野の拡大のための全てのアイディア及び実施形態は、ライトフィールド撮像においても実施され得る。
【0093】
3Dディスプレイ10又はライトフィールド撮像システム310の他のコンポーネントの様々な代替的な構成を実施することができる。例えば、すでに開示した実施形態では、マイクロレンズアレイ30は微小球形レンズを含む。これらのレンズは、2次元すなわち左右及び上下の双方で特定ポイントから来るように見える扇形ビームを生成する。微小球形レンズを用いずに、微小円柱レンズアレイを用いて、「左右」のような1次元のみで扇形ビームを生成することも可能である。この場合、1次元用の偏向デバイスを使用すればよい。また、様々な実施形態で検討した偏光子及びフィルタも、2次元又は1次元のいずれかとすることができる。
【0094】
また、
図16を参照すると、3Dディスプレイのマイクロレンズアレイ30(球形又は円柱形)は、「ターンオン(turn on)」及び「ターンオフ(turn off)」デバイスを含み得る。「ターンオン」とは、デバイスがマイクロレンズアレイとして作用すると共に光学撮像システムが3Dディスプレイ又はライトフィールド撮像システムとして作用することを意味し、「ターンオフ」とは、デバイスが通常の2Dディスプレイ又は撮像システムとして作用することを意味する。これは、いずれかの既知の「ターンオン」及び「ターンオフ」マイクロレンズアレイデバイスによって達成できる。例えば
図16において、正マイクロレンズアレイ30は、負マイクロレンズアレイデバイス430で覆われてフラットパネルを形成する。2つのデバイス30、430の屈折率が異なる場合、各マイクロレンズ32は正及び負のマイクロレンズから成り、全体的な屈折力(optical power)はゼロではない。2つのデバイスの屈折率が等しい場合、各マイクロレンズ32の全体的な屈折力はゼロである。正及び/又は負のマイクロレンズアレイは、液晶又は電気光学材料等のいずれかの制御可能材料から製造することができる。
【0095】
更に、
図17の実施形態では、マイクロレンズアレイ530の球形部は、2Dディスプレイスクリーン520から離れる方でなく2Dディスプレイスクリーン520の方を向いている。また、球形部は、マイクロレンズアレイ530よりも小さい屈折率を有し得ると共に平坦面を形成するサポート519内に収容されるか、又はサポート510によって支持することができる。
【0096】
更に、
図18の実施形態では、マイクロレンズの代わりに別の光学素子630が用いられる。上述したようにビームを集束しコリメートする機能を実行するならば、いかなる光学素子又は光学素子アレイであってもよい。
【0097】
更に、光ビームの伝搬角を偏向及び制御するために用いられる調整可能光偏向デバイス40は任意の構成とすることができ、例えば、1つのセルもしくは画素に対して1つの偏向デバイス40、各セルもしくは画素に対していくつかの偏向デバイス40、いくつかのセルもしくは画素に対して1つの偏向デバイス、又は、3Dディスプレイもしくはライトフィールド撮像システム全体に対して1つの偏向デバイスとすればよい。
【0098】
偏向デバイス40は、1次元偏向用又は2次元偏向用とすることができる。
【0099】
セル又は画素の光ビームの伝搬角を偏向及び制御するために用いられる偏向デバイス40は、調節可能プリズム、回転ミラー、可動偏向レンズ、調節可能格子、又は光の伝搬角を偏向及び制御できる他の任意のデバイスとすればよい。
【0100】
更に、光偏向デバイスを用いて有効画素数を増倍させるのではなく、微小振動によって同じ効果を発生させることも可能である。人間の視覚システムの積分期間中に、画素アレイ、光学素子アレイ、偏光子、及び/又はフィルタ、又はデバイス全体を、視聴者に対して複数の物理的位置に及び/又は角度配向に位置付けるように、極めて少量だけ複数回振動させることができる。この結果、視聴者は、各位置でデバイスによって表示される3D画像を結合した累積3D画像(cumulative 3D image)を見る。
【0101】
また、有効画素数を増加させるために偏向デバイスを用いて画素から放出される光ビームの伝搬角を偏向及び制御するという概念を、通常の2Dディスプレイで使用して、例えば有効画素数を増加させ、それにより横方向解像度を増大させることができる。
【0102】
有効画素数を増加させるために偏向デバイスを用いて各画素で光ビームの伝搬角を偏向及び制御するという概念を、カメラのような通常の撮像システムで使用して、解像度を増大させることも可能である。
【0103】
偏向デバイスを用いて光ビームの伝搬角を偏向及び制御するという概念を、カメラのような任意の撮像システムで用いて、撮像システムの視野を安定化させることも可能である。撮像システムの視野が安定していない場合、画像は検出器アレイ上で画素から画素へ「ジャンプ」する。偏向デバイスを用いてシーンの光線の伝搬角を偏向及び制御することで、シーンの光線を画像の「ジャンプ」と反対方向に偏向させ、これにより画像を安定化させる。
【0104】
各セルにおける光ビームの偏向角は、各偏向デバイスに応じて連続的に又は離散的に変動し得る。
【0105】
3Dディスプレイの各セルは、1つだけのRGB画素を含むか、又は1つだけのRサブピクセル、Gサブピクセル、もしくはBサブピクセルを含むことができる。また、ライトフィールド撮像システムの各画素には、1つだけのRGBセンサが存在するか、又は1つだけのRセンサ、Gセンサ、もしくはBセンサが存在し得る。
【0106】
光ビームの伝搬角を偏向及び制御するために用いられるデバイス40は、マイクロレンズアレイ30の後方すなわちマイクロレンズアレイと画素アレイ20との間に、又はマイクロレンズアレイ30の前方に位置付けることができる。
【0107】
開示されている実施形態の概念は、例えば画像プロジェクタによって画像がスクリーンに投影される映画スクリーン等、照明された3Dスクリーンに拡張することができる。TI-DLP(登録商標)のように、スクリーンの各「画素」は回転ミラーで構成することができ、特定の時点で、画像プロジェクタと同期されているスクリーンの各「画素」における各ミラーが、画像プロジェクタによって投影される特定の光線を適切な色と強度で適正な角度に偏向させるので、観察者は、3D物体の特定のポイントから来る扇形光線の全体を見ることができる。画像プロジェクタを用いて適切に変動するRGB画像でスクリーンを照明することにより、また、ミラーの偏向角を制御及び変動させることにより、いかなる時点でも、適正な色と強度を有する適正な光線が特定のミラーによって偏向されるので、その時点で物体の適正なポイントから来ているように見える。物体の各ポイントの扇形光線の全ての光線が目の積分期間中に生成される限り、正確な時間でないとしても、物体は正しく視認される。
【0108】
3Dディスプレイで3D画像を生成するためのアルゴリズムは、以下のステップを含み得る。(1)3Dデータの行列を生成する。つまり、表示される各ポイントごとに、(x、y、z、R、G、B)データによってベクトルを指定する。この行列のための3D情報は、CTもしくはNMRスキャナ等の様々なデバイスから、又はKinect(登録商標)等の3次元カメラから、又はライトフィールドカメラから取得され得る。また、3D情報は、2つ以上のカメラを使用し、視差効果に適したアルゴリズムを利用することで、2次元写真撮影によって取得され得る。(2)表示される各ポイントごとに、そのポイントから各マイクロレンズ中心までの全てのベクトルの方向を計算することによって、扇形光線を生成する。(3)セルを通過するベクトルに最も近い角度を有するR及び/又はG及び/又はBサブピクセルを選択することによって、表示されるポイントの光線を生成する各セル内の適正なR及び/又はG及び/又はBサブピクセルを決定する。(4)例えば表示されるポイントのRGB光を生成するため、適正な強度で適正なR及び/又はG及び/又はBサブピクセルをオンにする。(5)偏向デバイスを用いる場合、各R及び/又はG及び/又はBサブピクセルの時間的画像位置を考慮して、上記したものと同じステップを実行する。このアルゴリズムのための3Dデータは、3Dカメラで直接取得することによって、又は既知のアルゴリズムを用いて2つの視差画像を3Dデータに変換することによって取得できる。
【0109】
本出願から生じる特許の期間中、多くのタイプのスクリーン及び2Dディスプレイが開発されることが予想される。スクリーン及び2Dディスプレイという用語の範囲は、全てのそのような新しい技術を推測的に(a priori)含むことが意図される。
【0110】
本明細書で用いる場合、「約」という用語は±10%を指す。
【0111】
「備える(comprise)」、「備えている(comprising)」、「含む(include)」、「含んでいる(including)」、「有している(having)」という語句、及びそれらの同根語(conjugate)は、「限定ではないが以下を含む」を意味する。この用語は、「~から成る(consisting of)」及び「基本的に~から成る(consisting essentially of)」という用語を包含する。
【0112】
「基本的に~から成る」という語句は、組成物又は方法が追加の成分及び/又はステップを含み得るが、ただし、追加の成分及び/又はステップが特許請求される組成物又は方法の基本的な新規の特徴を実質的に変更しない場合に限ることを意味する。
【0113】
本明細書で用いる場合、単数形「a(1つの)」「an(1つの)」及び「the(その)」は、文脈上明らかに他の意味に指示される場合を除いて複数形の言及を含む。例えば、「化合物」又は「少なくとも1つの化合物」という用語は、複数の化合物を含み、それらの混合物も含み得る。
【0114】
「例示的な(exemplary)」という言葉は、本明細書で用いる場合、「例(example)、実例(instance)、又は例示(illustration)として機能すること」を意味する。「例示的な」として記載される実施形態は、必ずしも、他の実施形態よりも好適又は有利であると解釈されず、及び/又は、他の実施形態からの特徴を組み込むことを除外しない。
【0115】
「任意選択的に(optionally)」という言葉は、本明細書で用いる場合、「いくつかの実施形態では提供され、他の実施形態では提供されない」を意味する。本発明のいかなる特定の実施形態も、複数の「任意選択的な(optional)」特徴が矛盾しない限り、そういった特徴を含み得る。
【0116】
本出願全体を通して、本発明の様々な実施形態を範囲の形式で提示することができる。範囲の形式の記載は、単に便宜上及び簡略化のためのものであり、本発明の範囲に対する変更できない限定として解釈するべきでないことを理解しなければならない。従って、ある範囲の記載は、具体的に開示された全ての可能な部分範囲(subrange)、及び、その範囲内の個々の数値を有すると見なすべきである。例えば、1から6までといった範囲の記載は、例えば1から3、1から4、1から5、2から4、2から6、3から6等の具体的に開示されたサブ範囲、及び、例えば1、2、3、4、5、6等、その範囲内の個々の数を有すると見なすべきである。これは、範囲の広さにかかわらず適用される。
【0117】
本明細書において数値範囲が示される場合はいつでも、その示された範囲内で挙げられたいかなる数字(小数又は整数)も含むことが意図される。第1の指示数と第2の指示数「との間の範囲」、及び、第1の指示数「から」第2の指示数「までの範囲」という語句は、本明細書において交換可能に用いられ、第1及び第2の指示数、並びにそれらの間の全ての小数及び整数を含むことが意図される。
【0118】
明確さのため別個の実施形態の文脈で記載されている本発明のいくつかの特徴は、組み合わせて単一の実施形態で提供してもよいことは認められよう。逆に、簡潔さのため単一の実施形態の文脈で記載されている本発明の様々な特徴は、それぞれ別個に、又はいずれかの適切なサブコンビネーション(subcombination)で、又は適宜、本発明の他のいずれかの記載された実施形態で提供してもよい。様々な実施形態の文脈で記載されているいくつかの特徴は、そういった要素なしでは実施形態が動作不能である場合を除いて、それらの実施形態の不可欠な特徴とは見なされない。
【0119】
本明細書で言及される全ての公報、特許、及び特許出願は、個々の各公報、特許、又は特許公報が援用により本願に含まれると明確かつ個別に指摘されている場合と同じ程度に、援用により全体が本明細書に含まれる。更に、本出願における引用文献の言及又は識別は、そのような引用文献が本発明に対する従来技術として利用可能であることを認めたと解釈するべきではない。セクションの見出しが用いられる限りにおいて、それらは必ずしも限定と解釈するべきではない。
【0120】
更に、本出願の1又は複数の優先権書類はいずれも援用により全体が本願に含まれる。
【国際調査報告】