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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-01
(54)【発明の名称】携帯型電気刺激システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20220325BHJP
   A61N 1/05 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
A61N1/36
A61N1/05
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547342
(86)(22)【出願日】2020-02-13
(85)【翻訳文提出日】2021-10-06
(86)【国際出願番号】 US2020018196
(87)【国際公開番号】W WO2020168136
(87)【国際公開日】2020-08-20
(31)【優先権主張番号】62/805,019
(32)【優先日】2019-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/819,475
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514300557
【氏名又は名称】アヴェント インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】521356091
【氏名又は名称】ゾブキウ、クリス
(71)【出願人】
【識別番号】521356105
【氏名又は名称】クリモビッチ、グレブ
(71)【出願人】
【識別番号】521356116
【氏名又は名称】リュウ、ワンチャン
(71)【出願人】
【識別番号】521356127
【氏名又は名称】コールドウェル、ライアン
(71)【出願人】
【識別番号】521356138
【氏名又は名称】シェピス、エリック
(71)【出願人】
【識別番号】521356149
【氏名又は名称】ショア、フィリップ・エー
(71)【出願人】
【識別番号】521356150
【氏名又は名称】シャー、ジャルパ
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゾブキウ、クリス
(72)【発明者】
【氏名】クリモビッチ、グレブ
(72)【発明者】
【氏名】リュウ、ワンチャン
(72)【発明者】
【氏名】コールドウェル、ライアン
(72)【発明者】
【氏名】シェピス、エリック
(72)【発明者】
【氏名】ショア、フィリップ・エー
(72)【発明者】
【氏名】シャー、ジャルパ
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053CC10
4C053JJ02
4C053JJ04
4C053JJ06
4C053JJ18
4C053JJ27
(57)【要約】
本開示は、疼痛を治療するべく神経伝導を遮断するために神経系の標的とする神経組織及び非神経組織を調節するための携帯型電気刺激システム及び方法に関する。本開示は、ユーザが持ち運ぶことができ、ユーザが治療を継続的に受けながら自由に動き回ることを可能にする、高効率の携帯型電気刺激システムを提供する。この携帯型電気刺激システムは、ユーザにとって扱い易い及び/または快適な重量を有し、かつ、治療レベルの高周波電気刺激を、意図された持続期間(例えば、最大24時間以上)にわたって、標的神経に送達するように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経皮的に神経伝導を遮断するように構成された携帯型電気刺激システムであって、
モジュール式電源と、
前記モジュール式電源に接続されたスイッチング回路であって、該スイッチング回路の出力部において、電気刺激出力を、神経伝導を遮断することができる出力レベル範囲にわたる複数の選択可能な出力レベルで、連続的に生成するように構成された、該スイッチング回路と、
前記スイッチング回路に接続されたコントローラと、を備え、
前記スイッチング回路は、1以上のプログラム可能な出力レベルを有し、
前記スイッチング回路の前記出力部は、直接的にまたはケーブルを介して、標的部位にまたはそれに近接して配置された1以上の電極に接続され、
前記電極は、3ミリメートル超の互いに重なり合っている神経領域における末梢神経の長軸に対して略平行に配置され、
前記スイッチング回路は、70%超の出力効率で前記電気刺激の出力を連続的に生成するように構成されている、システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、
前記スイッチング回路は、90%超の出力効率で前記電気刺激出力を連続的に生成するように構成されている、システム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムであって、
前記スイッチング回路は、スイッチングステージとフィルタステージとを備え、
前記スイッチングステージは、方形波振幅変調出力を生成するように構成されており、
前記フィルタステージは、前記方形波振幅変調出力を正弦波波形に整形するように構成されている、システム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムであって、
前記スイッチング回路は、スイッチングステージとフィルタステージとを備え、
前記スイッチングステージは、パルス状振幅変調出力を生成するように構成されており、
前記フィルタステージは、前記パルス状振幅変調出力を非正弦波形に整形するように構成されている、システム。
【請求項5】
請求項3または4に記載のシステムであって、
前記フィルタステージは、1.5~75kHzの範囲の前記正弦波波形の動作周波数出力において、高品質係数を有する誘導性成分と容量性成分とを含む、システム。
【請求項6】
請求項3または4に記載のシステムであって、
前記スイッチング回路は、可変出力電源を備え、
前記可変出力電源は、前記方形波振幅変調出力または前記パルス状振幅変調出力の振幅を変化させるために、前記可変出力電源を前記スイッチングステージに変化させるように構成されたリニアレギュレータを含む、システム。
【請求項7】
請求項3または4に記載のシステムであって、
前記スイッチング回路は、可変出力電源を備え、
前記可変出力電源は、前記方形波振幅変調出力または前記パルス状振幅変調出力の振幅を変化させるために、前記可変出力電源を前記スイッチングステージに変化させるように構成されたスイッチング電力レギュレータを含む、システム。
【請求項8】
請求項3または4に記載のシステムであって、
前記スイッチング回路は、可変出力電源を備え、
前記可変出力電源は、前記方形波振幅変調出力または前記パルス状振幅変調出力の振幅を変化させるために、前記可変出力電源を前記スイッチングステージに変化させるように構成されたリニアレギュレータとスイッチング電力レギュレータとの組み合わせを含む、システム。
【請求項9】
請求項3~8のいずれかに記載のシステムであって、
前記スイッチング回路は、1以上のフィードバックループを含み、
前記コントローラは、前記方形波振幅変調出力または前記パルス状振幅変調出力の検出されたエンベロープに基づいて、前記方形波振幅変調出力または前記パルス状振幅変調出力を変化させるように構成されている、システム。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載のシステムであって、
第2のモジュール式電源であって、一時的な期間にわたって前記電気刺激出力を連続的に生成するのに十分な蓄積された電気エネルギーを有する、該第2のモジュール式電源と、
ブレーカであって、前記スイッチング回路を前記第2のモジュール式電源に接続し、前記一時的な期間中は、中断することなく前記モジュール式電源を絶縁する、該ブレーカと、
をさらに備える、システム。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載のシステムであって、
前記コントローラは、ディスプレイを備え、
前記コントローラは、前記ディスプレイを介して、前記電気刺激出力の選択された出力レベルまたは監視された出力レベルを提示するように構成されている、システム。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載のシステムであって、
前記コントローラは、スピーカを備え、
前記コントローラは、刺激モードでの動作中に前記電気刺激出力の中断を監視し、前記刺激モードでの動作中に前記電気刺激出力の中断が検出された場合に、前記スピーカを介して可聴警報を生成するように構成されている、システム。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載のシステムであって、
前記スイッチング回路は、一対の電極間のフェーザ振幅負荷インピーダンスを検出する回路を備え、
前記コントローラは、検出された前記フェーザ振幅負荷インピーダンスを監視し、検出された前記フェーザ振幅負荷インピーダンスが予め定められた閾値を超えた場合に警報を出力するように構成されている、システム。
【請求項14】
請求項13に記載のシステムであって、
前記コントローラは、検出された前記フェーザ振幅負荷インピーダンスに基づいて、前記電気刺激出力に関連する1以上の制御パラメータを変更するように構成されている、システム。
【請求項15】
請求項1~14のいずれかに記載のシステムであって、
当該システムは、600グラム未満の重量を有し、かつ600ミリリットル未満の体積を有する、システム。
【請求項16】
請求項1~15のいずれかに記載のシステムであって、
前記スイッチング回路は、第1の出力での第1の故障安全スイッチと、第2の出力での第2の故障安全スイッチとを備え、
前記第1の故障安全スイッチ及び前記第2の故障安全スイッチのそれぞれは、前記スイッチング回路を前記電極から絶縁するように構成されている、システム。
【請求項17】
請求項1~16のいずれかに記載のシステムであって、
前記スイッチング回路の1つは、故障安全スイッチを備える、システム。
【請求項18】
請求項17に記載のシステムであって、
前記スイッチング回路は、故障安全スイッチを備え、
前記故障安全スイッチは、前記スイッチング回路の故障が検出された場合に、前記モジュール式電源をアクティブ出力コンポーネント及び電極回路から絶縁するために、前記モジュール式電源と前記アクティブ出力コンポーネントとの間に接続されている、システム。
【請求項19】
請求項1~18のいずれかに記載のシステムであって、
前記コントローラは、ディスプレイと監視回路とを備え、
前記監視回路は、前記モジュール式電源の蓄電池状態を監視するように構成されており、
前記コントローラは、監視された前記蓄電池状態に基づいて、前記ディスプレイを介して電池残量または残りの動作時間を提示するように構成されている、システム。
【請求項20】
請求項1~19のいずれかに記載のシステムであって、
前記コントローラは、持続性不揮発性メモリを備え、
前記コントローラは、
前記電気刺激出力に関連する1以上のパラメータの第1のセット、
前記スイッチング回路、前記コントローラ、または前記モジュール式電源に関連する1以上のパラメータの第2のセット、
前記スイッチング回路に接続されたリードに関連する1以上のパラメータの第3のセット、
前記スイッチング回路に接続された前記電極に関連する1以上のパラメータの第4のセット、及び、
ソフトウェア状況に関連する1以上のパラメータの第5のセット、
からなる群から選択される1以上のパラメータを、予め定められた断続的な持続期間において記録するように構成されている、システム。
【請求項21】
請求項1~20のいずれかに記載のシステムであって、
前記スイッチング回路は、高インピーダンス差動電圧検知回路と、可変DC電流注入回路とを備え、
前記高インピーダンス差動電圧検知回路は、前記電極対における差動DC電圧を測定するように構成されており、
前記可変DC電流注入回路は、測定された前記差動DC電圧に基づいて、過剰なDC電圧を打ち消すために前記電極対間に電流を注入するように構成されている、システム。
【請求項22】
請求項1~21のいずれかに記載のシステムであって、
前記スイッチング回路は、前記モジュール式電源を交換または再充電することなく、前記モジュール式電源を使用して、少なくとも24時間にわたって前記電気刺激出力を連続的に出力するように構成されている、システム。
【請求項23】
請求項1~22のいずれかに記載のシステムであって、
前記スイッチング回路に接続された1以上のバイパスフィルタ回路と、
前記バイパスフィルタ回路に接続された接続要素であって、直接的にまたはケーブルを介して、前記電極に接続されるように構成された、該接続要素と、をさらに備える、システム。
【請求項24】
請求項1~23のいずれかに記載のシステムであって、
前記電極を含む経皮リードは、前記末梢神経の前記長軸に対して略平行な配向をなして、前記標的部位に外科的にまたは介入的に配置される、システム。
【請求項25】
請求項1~24のいずれかに記載のシステムであって、
前記電極の配置により、前記電極を含む経皮リードの長手方向軸が前記末梢神経の前記長軸に対して略平行に配置される、システム。
【請求項26】
請求項1~25のいずれかに記載のシステムであって、
前記電極は、4mm超、5mm超、6mm超、7mm超、8mm超、9mm超、1cm超、2cm超、2.5cm超、3cm超、3.5cm超、4cm超、4.5cm超、5cm超、5.5cm超、6cm超、6.5cm超、7cm超、7.5cm超、8cm超、8.5cm超、9cm超、9.5cm超、及び、10cm以下、からなる群から選択される距離にわたって、前記神経領域に対して略平行に配置される、システム。
【請求項27】
請求項1~26のいずれかに記載のシステムであって、
前記電気刺激は、主に、正弦波形、方形波形、三角波形、シンク波形、ノイズ波形、またはチャープ波形である、システム。
【請求項28】
請求項1~27のいずれかに記載のシステムであって、
前記電極は、前記神経領域において前記末梢神経の一部と直接接触せず、前記神経領域に15mm未満の距離で近接している、システム。
【請求項29】
請求項1~28のいずれかに記載のシステムであって、
前記末梢神経は、腸神経、自律神経、及び脳神経からなる群から選択される、システム。
【請求項30】
請求項1~29のいずれかに記載の携帯型電気刺激システムを動作させる方法。
【請求項31】
回路を介して、70%超の出力効率で高周波電気刺激を連続的に生成し、生成した前記高周波電気刺激を電極に印加して、標的神経の神経伝導を遮断することができる平衡電荷を生成するステップを含み、
前記高周波電気刺激は、少なくとも5KHzの基本周波数高調波を有する正弦波形を有し、神経伝導を遮断する治療過程にわたって連続的に印加され、
前記高周波電気刺激は、末梢神経の長軸に対して略平行に配置された経皮リードに印加され、
前記経皮リードは、3mm超の互いに重なり合っている神経領域に及ぶ電極を有する、方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法であって、
前記高周波電気刺激を生成する前記ステップが、
方形波振幅変調出力を生成するステップと、
前記方形波振幅変調出力をフィルタリングして正弦波形を生成するステップと、を含む方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法であって、
前記方形波振幅変調出力の振幅を変化させるために、前記回路を介して、該回路のスイッチング電源レギュレータを変化させるステップをさらに含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2019年2月13日出願の「携帯型電気刺激システム及び方法」という標題の米国特許仮出願第62/805、019号、及び、2019年3月15日出願の「携帯型電気刺激システム及び方法」という標題の米国特許仮出願第62/819、475号に基づく優先権を主張するものである。上記両出願の開示内容の全体は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、一般的に、高周波電気刺激を用いて神経組織または非神経組織の活動を調節して神経伝導を遮断する(例えば疼痛を治療する)ための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
疼痛は、破壊的または非破壊的な方法を用いて、脳に送られる疼痛信号の伝達を妨害することによって治療することができる。高周波アブレーションなどの破壊的治療法は、最後の手段であり、通常、急性(すなわち、術後)の疼痛の治療には使用されない。疼痛を治療するための非破壊的方法としては、局所麻酔注射や電気刺激などがある。
【0004】
末梢から生じる疼痛の治療には、(1)通常の電気刺激と、(2)高周波の電気刺激との2種類の電気刺激が使用される。末梢神経の通常電気刺激(例えば、1KHz未満の刺激)は、慢性疼痛の治療に使用されており、一般的に、治療される神経の受容野内で感覚麻痺を誘起することによって、痛みの感覚(知覚)を減衰または減弱させる。いくつかの高周波電気刺激が知られている。或る種類の高周波刺激は、感覚麻痺を引き起こすことなく疼痛を減衰させるために、(例えば、多くの場合は脊椎に)感覚閾値以下の電気刺激を提供する。このような高周波電気刺激または通常電気刺激による治療は、疼痛を治療する手段として、神経伝導を完全に遮断しない。別の種類の高周波刺激が、切断術後の疼痛治療に使用されているが、電極を標的神経に直接物理的に接触させて配置したり、神経の周囲に複雑な形状のリード線を配置したりするために、切開外科的処置を必要とする。さらに、高周波電気刺激の有用性は、近傍の興奮性組織の「オンセット活性」や「共励起」によって制限されている。また、高周波電気刺激動作は、携帯型装置の場合には、使い易さや電池寿命に関連する課題がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、疼痛を治療するべく神経伝導を遮断するために神経系の標的とする神経組織または非神経組織を調節する(例えば、可逆的かつ一時的に調節する)ための携帯型電気刺激システム及び方法に関する。本開示は、ユーザが持ち運ぶことができ、ユーザが治療を継続的に受けながら自由に動き回ることを可能にする、高効率の携帯型電気刺激システムを提供する。この携帯型電気刺激システムは、ユーザにとって扱い易い及び/または快適な重量を有し、かつ、治療レベルの高周波電気刺激を、意図された持続期間(例えば、最大24時間以上)にわたって、標的神経に送達するように構成されている。高周波電気刺激は、約3mm超の互いに重なり合っている神経領域における末梢神経の長軸に対して平行または略平行に、かつ直接接触しないように配置された経皮リード上に配置された1以上の電極から印加され、例えば、標的神経のいくつかのランビエノードに対して影響を与える破壊電荷を提供する。電気刺激は、いくつかの実施形態では、約1.5KHz超、かつ約75KHz未満の基本周波数の高調波を有する。なお、本明細書に記載されるように、他の周波数を使用してもよい。経皮リードは、複雑なパドルリード構造を必要とすることなく、標的神経に対して指定されたまたは意図された位置に、より容易に配置することができる。
【0006】
いくつかの実施形態では、例示的な本システムは、例えば臨床または非臨床な環境での周術期の疼痛管理のために(例えば術後の急性疼痛の症状の軽減を提供するために)、薬物を使用しない(例えば、麻薬を使用しない)電気神経遮断として使用される。いくつかの実施形態では、例示的な本システムは、創傷部位に挿入された経皮カテーテルへの麻酔薬の流れを制御する注入ポンプシステムと共に使用するように構成される。いくつかの実施形態では、本システムは、単回使用の使い捨て式装置として構成される。他の実施形態では、本システムは、本システムの電子部分を再利用できるように構成される(例えば、別の患者群または治療セッションのために)。
【0007】
また、神経伝導の完全な遮断、または神経伝導の十分な部分的遮断によって、患者が疼痛や不快感を抑制することができる。さらに、例示された本システム及び方法は、標的神経への直接的な接触を必要とすることなく、また、切開外科的処置を必要とせずに、経皮電極を配置するための大きな送達ウィンドウを提供する。本方法は、互いに重なり合っている神経領域を通る神経伝導を完全かつ一貫して遮断し、これにより、その神経領域の下流に位置する身体領域からの痛覚などの伝導を阻止することが観察された。実際、上記のような配向で配置された経皮電極は、神経伝導の完全なまたはほぼ完全な遮断を容易にすることができる。また、例示された本システム及び方法は、非標的構造体のオンセット活性及び共励起を誘起することなく、神経状態を遮断するように構成することができる。
【0008】
一態様では、本開示は、(例えば、ユーザの疼痛の知覚を抑制するために)経皮的に神経伝導を遮断するように構成された携帯型電気刺激システムを提供する。本開示の携帯型電気刺激システムは、モジュール式電源と、モジュール式電源(例えば、充電式電池または非充電式電池)に接続されたスイッチング回路であって、該スイッチング回路の出力部において、(例えば、ユーザの疼痛の知覚を抑制するために)電気刺激の出力を、神経伝導を遮断することができる出力レベル範囲にわたる複数の選択可能な出力レベル(例えば、振幅レベル、デューティサイクル、または周波数)で、連続的に生成するように構成された、該スイッチング回路と、スイッチング回路に接続されたコントローラと、を備え、スイッチング回路は、1以上のプログラム可能な出力レベルを有し、スイッチング回路の出力部は、直接的にまたはケーブルを介して、標的部位にまたはそれに近接して配置された1以上の電極に接続され、電極は、3ミリメートル超の互いに重なり合っている神経領域において、末梢神経の長軸に対して略平行に配置されている(例えば、電気刺激の印加によって、1以上の電極のうちの或る電極と神経領域との間に発生した電界が、神経領域を通る神経伝導を十分に遮断する)。
【0009】
いくつかの実施形態では、スイッチング回路は、70%超の出力効率で電気刺激出力を連続的に生成するように構成されている。
【0010】
いくつかの実施形態では、スイッチング回路は、90%超の出力効率で電気刺激出力を連続的に生成するように構成されている。
【0011】
いくつかの実施形態では、スイッチング回路は、スイッチングステージ(例えば、第1のスイッチング素子と、電源とグランドとの間で第1のスイッチング素子に接続された第2のスイッチング素子とを含む)とフィルタステージとを備え、スイッチングステージは、方形波振幅変調出力を生成するように構成されており、フィルタステージは、方形波振幅変調出力を正弦波波形に整形するように構成されている。
【0012】
いくつかの実施形態では、フィルタステージは、1.5~75kHzの範囲の正弦波の動作周波数出力において、高品質係数(例えば、低抵抗損失)を有する誘導性成分と容量性成分とを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、スイッチング回路は、可変出力電源を備え、可変出力電源は、方形波振幅変調出力またはパルス状振幅変調出力の振幅を変化させるために、可変出力電源をスイッチングステージに変化させるように構成されたリニアレギュレータを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、スイッチング回路は、可変出力電源を備え、可変出力電源は、方形波振幅変調出力またはパルス状振幅変調出力の振幅を変化させるために、可変出力電源をスイッチングステージに変化させるように構成されたスイッチング電力レギュレータを含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、スイッチング回路は、可変出力電源を備え、可変出力電源は、方形波振幅変調出力またはパルス状振幅変調出力の振幅を変化させるために、可変出力電源をスイッチングステージに変化させるように構成されたリニアレギュレータとスイッチング電力レギュレータとの組み合わせを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、スイッチング回路は、1以上のフィードバックループ(例えば、電圧エンベロープ検出及び電流検出)を含み、コントローラは、方形波振幅変調出力またはパルス状振幅変調出力の検出されたエンベロープに基づいて、方形波振幅変調出力またはパルス状振幅変調出力を変化させるように構成されている。
【0017】
いくつかの実施形態では、本開示の携帯型電気刺激システムは、第2のモジュール式電源であって、一時的な期間(例えば、10分間未満)にわたって電気刺激出力を連続的に生成するのに十分な蓄積された電気エネルギーを有する、該第2のモジュール式電源と、ブレーカであって、スイッチング回路を第2のモジュール式電源に接続し、一時的な期間中は、中断することなく(例えば、電気刺激出力を中断することなく、または、関連する治療を中断しないように電気刺激出力を限定的に中断して)第2のモジュール式電源を絶縁する、該ブレーカと、をさらに備える。
【0018】
いくつかの実施形態では、コントローラは、ディスプレイを備え、コントローラは、ディスプレイを介して、電気刺激出力の選択された出力レベル(例えば、選択された強度制御値)または監視された出力レベルを(例えば、最大出力に対する割合として)提示するように構成されている。
【0019】
いくつかの実施形態では、コントローラは、スピーカを備え、コントローラは、刺激モードでの動作中に電気刺激出力の中断を監視し、刺激モードでの動作中に電気刺激出力の中断が検出された場合に、スピーカを介して可聴警報を生成するように構成されている。
【0020】
いくつかの実施形態では、スイッチング回路は、一対の電極間(例えば、経皮電極)のフェーザ振幅負荷インピーダンスを検出する回路を備え、コントローラは、検出されたフェーザ振幅負荷インピーダンスを監視し(例えば、開始時、及び、配置中の断続的な期間、例えば15分毎)、検出されたフェーザ振幅負荷インピーダンスが予め定められた閾値を超えた場合に警報を出力するように構成されている。
【0021】
いくつかの実施形態では、コントローラは、検出されたフェーザ振幅負荷インピーダンスに基づいて、電気刺激出力に関連する1以上の制御パラメータ(例えば、出力強度、波形周波数出力、波形デューティサイクル)を変更するように構成されている。
【0022】
いくつかの実施形態では、本開示の携帯型電気刺激システムは、600グラム未満の重量を有し、かつ600ミリリットル未満の体積を有する。
【0023】
いくつかの実施形態では、スイッチング回路は、第1の出力での第1の故障安全スイッチと、第2の出力での第2の故障安全スイッチとを備え、第1の故障安全スイッチ及び第2の故障安全スイッチのそれぞれは、スイッチング回路を電極対から絶縁するように構成されている。
【0024】
いくつかの実施形態では、スイッチング回路の1つは、(例えば、電極対の1つについて)故障安全スイッチを備えている。
【0025】
いくつかの実施形態では、スイッチング回路は、故障安全スイッチを備え、故障安全スイッチは、スイッチング回路の故障が検出された場合に、モジュール式電源をアクティブ出力コンポーネント及び電極回路から絶縁するために、モジュール式電源とアクティブ出力コンポーネントとの間に接続されている。
【0026】
いくつかの実施形態では、コントローラは、ディスプレイと監視回路とを備え、監視回路は、モジュール式電源の蓄電池状態を監視するように構成されており、コントローラは、監視された蓄電池状態に基づいて、ディスプレイを介して電池残量または残りの動作時間を提示するように構成されている。
【0027】
いくつかの実施形態では、コントローラは、持続性不揮発性メモリを備え、コントローラは、電気刺激出力に関連する1以上のパラメータの第1のセット、スイッチング回路、コントローラ、またはモジュール式電源に関連する1以上のパラメータの第2のセット、スイッチング回路に接続されたリードに関連する1以上のパラメータの第3のセット、スイッチング回路に接続された電極に関連する1以上のパラメータの第4のセット、及び、ソフトウェア状況に関連する1以上のパラメータの第5のセット、からなる群から選択される1以上のパラメータを、予め定められた断続的な持続期間において記録するように構成されている。
【0028】
いくつかの実施形態では、スイッチング回路は、高インピーダンス差動電圧検知回路と、可変DC電流注入回路とを備え、高インピーダンス差動電圧検知回路は、電極対における差動DC電圧を測定するように構成されており、可変DC電流注入回路は、測定された差動DC電圧に基づいて、過剰なDC電圧を打ち消すために電極対間に電流を注入するように構成されている。
【0029】
いくつかの実施形態では、スイッチング回路は、モジュール式電源を交換または再充電することなく、モジュール式電源を使用して、少なくとも24時間にわたって電気刺激出力を連続的に出力するように構成されている。
【0030】
いくつかの実施形態では、本開示の携帯型電気刺激システムは、スイッチング回路に接続された1以上のバイパスフィルタ回路と、バイパスフィルタ回路に接続された接続要素であって、直接的にまたはケーブルを介して、電極に接続されるように構成された、該接続要素と、をさらに備える(例えば、方形波振幅変調出力またはパルス状振幅変調出力は、例えば神経位置や理想的な電極配置を検出するために、組織に直接送達することができる)。
【0031】
いくつかの実施形態では、経皮リードは、末梢神経の長軸に対して略平行な配向をなして、標的部位に外科的にまたは介入的に配置される。
【0032】
いくつかの実施形態では、電極の配置により、経皮リードの長軸が末梢神経の長軸に対して略平行に配置される。
【0033】
いくつかの実施形態では、1以上の電極は、電極は、4mm超、5mm超、6mm超、7mm超、8mm超、9mm超、1cm超、2cm超、2.5cm超、3cm超、3.5cm超、4cm超、4.5cm超、5cm超、5.5cm超、6cm超、6.5cm超、7cm超、7.5cm超、8cm超、8.5cm超、9cm超、9.5cm超、及び、10cm以下、からなる群から選択される距離にわたって、神経領域に対して略平行に配置される。
【0034】
いくつかの実施形態では、電気刺激は、主に、正弦波形、方形波形、三角波形、正弦波形、ノイズ波形、またはチャープ波形である。
【0035】
いくつかの実施形態では、電極は、神経領域において末梢神経の一部と直接接触せず、神経領域に15mm未満の距離で近接している。
【0036】
いくつかの実施形態では、末梢神経は、腸神経、自律神経、及び脳神経からなる群から選択される。
【0037】
いくつかの実施形態では、電気刺激は、約2KHz~約100KHzの範囲の基本周波数高調波を有する高周波刺激を含む。いくつかの実施形態では、高周波電気刺激は、主に、正弦波形である。別の実施形態では、高周波電気刺激は、方形波形、三角波形、シンク波形、ノイズ波形(例えば、予め定められた周波数分布を有する非構造化波形)、またはチャープ波形である。いくつかの実施形態では、電気刺激は、様々な平衡電荷を組織に送達する二相性を含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、電気刺激は、約2KHz~約100KHz範囲の基本周波数高調波を有する高周波刺激を含む。いくつかの実施形態では、高周波刺激は、主に、正弦波形である。他の実施形態では、高周波刺激は、方形波、三角波、シンク波形、ノイズ波形(例えば、予め定められた周波数分布を有する非構造化波形)、またはチャープ波形である(例えば、これらのいずれかが高周波成分を有する)。いくつかの実施形態では、電気刺激は、主に、平衡電荷である。
【0039】
本発明の上記及び他の特徴、態様及び利点は、以下の説明及び添付された特許請求の範囲を参照することによって、より良く理解できるであろう。添付図面は、本明細書に組み込まれてその一部を構成し、本発明の実施形態を図示し、本明細書と共に本発明の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0040】
当業者を対象にした本発明の完全かつ実現可能な開示(ベストモードを含む)が、添付図面を参照して、本明細書の残りの部分により詳細に説明される。
【0041】
図1図1は、例示的な実施形態による、例えば、末梢神経における疼痛感覚を経皮的に遮断するために電気刺激を送達するように構成された例示的な携帯型電気刺激システムを示す図である。
図2図2は、別の例示的な実施形態による、例えば、非標的の運動活動及び感覚活動を誘起することなく、末梢神経における疼痛感覚を経皮的に遮断するために電気刺激を送達するように構成された別の例示的な携帯型電気刺激システムを示す図である。
図3図3は、例示的な実施形態による、例示的な高効率電気刺激発生器を示す図である。
図4図4は、例示的な実施形態による、(例えば、シミュレーションモデルにおける)電気刺激発生器の例示的な刺激発生回路の回路図である。
図5A図5Aは、例示的な実施形態による、電気刺激を提供するように構成された、図1または図2の例示的な携帯型電気刺激システムの回路図である。
図5B-1】図5Bは、例示的な実施形態による、電気刺激を提供するように構成された、図1または図2の例示的な携帯型電気刺激システムの回路図である。
図5B-2】図5Bは、例示的な実施形態による、電気刺激を提供するように構成された、図1または図2の例示的な携帯型電気刺激システムの回路図である。
図5C-1】図5Cは、例示的な実施形態による、電気刺激を提供するように構成された、図1または図2の例示的な携帯型電気刺激システムの回路図である。
図5C-2】図5Cは、例示的な実施形態による、電気刺激を提供するように構成された、図1または図2の例示的な携帯型電気刺激システムの回路図である。
図5D-1】図5Dは、例示的な実施形態による、電気刺激を提供するように構成された、図1または図2の例示的な携帯型電気刺激システムの回路図である。
図5D-2】図5Dは、例示的な実施形態による、電気刺激を提供するように構成された、図1または図2の例示的な携帯型電気刺激システムの回路図である。
図5D-3】図5Dは、例示的な実施形態による、電気刺激を提供するように構成された、図1または図2の例示的な携帯型電気刺激システムの回路図である。
図5E図5Eは、例示的な実施形態による、電気刺激を提供するように構成された、図1または図2の例示的な携帯型電気刺激システムの回路図である。
図5F-1】図5Fは、例示的な実施形態による、電気刺激を提供するように構成された、図1または図2の例示的な携帯型電気刺激システムの回路図である。
図5F-2】図5Fは、例示的な実施形態による、電気刺激を提供するように構成された、図1または図2の例示的な携帯型電気刺激システムの回路図である。
図5G図5Gは、例示的な実施形態による、電気刺激を提供するように構成された、図1または図2の例示的な携帯型電気刺激システムの回路図である。
図6A図6Aは、例示的な実施形態による、携帯型電気刺激システムによって生成された例示的な電気刺激を示す。
図6B図6Bは、例示的な実施形態による、図4の携帯型電気刺激システムによって生成された50kHz正弦波出力を含む別の例示的な電気刺激を示す。
図7図7は、別の例示的な実施形態による、携帯型電気刺激システムによって生成された別の例示的な電気刺激の図である。
図8図8は、例示的な実施形態による、神経位置及び理想的な電極配置を検出するために電気刺激発生器によって生成されたスイッチング波形出力の一例を示す図である。
図9図9は、例示的な実施形態による、電気刺激発生器によって生成された配置補助用の方形波形を示す。
図10図10は、例示的な実施形態による、携帯型電気刺激システムの例示的な動作状態を示す図である。
図11図11は、例示的な実施形態による、図1の携帯型電気刺激システムの一例を示す図である。
図12図12は、例示的な実施形態による、患者/ユーザから収集した、患者の伏在神経に経皮的に送達された10キロヘルツの電気刺激(正弦波形の形態の電気エネルギーを含む)の印加に対する患者の感覚反応の測定値を示すグラフである。
図13図13は、例示的な実施形態による、患者/ユーザから収集した、患者の伏在神経に経皮的に送達された10キロヘルツの電気刺激(正弦波形の形態の電気エネルギーを含む)の印加に対する患者の感覚反応の測定値を示すグラフである。
図14図14は、例示的な実施形態による、患者/ユーザから収集した、ランピングプロファイルを有する別の10キロヘルツの電気刺激の印加に対する患者の感覚反応の測定値を示すグラフである。
図15図15は、例示的な実施形態による、患者/ユーザから収集した、10キロヘルツの電気刺激と疼痛刺激との同時印加に対する患者の感覚反応の測定値を示すグラフである。
図16図16は、例示的な実施形態による、患者/ユーザから収集した、10キロヘルツの電気刺激と疼痛刺激との同時印加に対する患者の感覚反応の測定値を示すグラフである。
図17図17は、例示的な実施形態による、足関節の近位部位で伏在神経を経皮的に高周波電気刺激した場合に、足の神経の従来の電気刺激によって誘起される侵害受容反射に対して観察された効果を示すグラフである。
図18図18は、例示的な実施形態による、高周波電気刺激の短パルスによって誘起される筋電図(EMG)活性のバーストを示すグラフである。
図19図19は、例示的な実施形態による、高周波電気刺激波形を伏在神経に印加したときに不連続プロファイルを有するという、観察された効果を示すグラフである。
図20図20は、例示的な実施形態による、高周波電気刺激を、末梢神経の長軸に対して平行に、または実質的に平行に、かつ直接接触させずに配置した経皮リードに送達するための例示的な電気刺激システムを使用して、痛覚を抑制する治療方法(例えば、疼痛に対する)を示す図である。
図21A図21Aは、例示的な実施形態による、電気刺激を介して治療部位における神経伝導を遮断するために(例えば、疼痛治療を提供するために)、ユーザの治療部位に経皮リードを配置する、図20の例示的な手順を示す図である。経皮リードの電極は、約3ミリメートルを超える互いに重なり合っている神経領域において、標的神経の長軸に対して平行に、または実質的に平行に配置される。
図21B図21Bは、例示的な実施形態による、電気刺激を介して治療部位における神経伝導を遮断するために(例えば、疼痛治療を提供するために)、ユーザの治療部位に経皮リードを配置する、図20の例示的な手順を示す図である。経皮リードの電極は、約3ミリメートルを超える互いに重なり合っている神経領域において、標的神経の長軸に対して平行に、または実質的に平行に配置される。
図21C図21Cは、例示的な実施形態による、電気刺激を介して治療部位における神経伝導を遮断するために(例えば、疼痛治療を提供するために)、ユーザの治療部位に経皮リードを配置する、図20の例示的な手順を示す図である。経皮リードの電極は、約3ミリメートルを超える互いに重なり合っている神経領域において、標的神経の長軸に対して平行に、または実質的に平行に配置される。
図21D図21Dは、例示的な実施形態による、電気刺激を介して治療部位における神経伝導を遮断するために(例えば、疼痛治療を提供するために)、ユーザの治療部位に経皮リードを配置する、図20の例示的な手順を示す図である。経皮リードの電極は、約3ミリメートルを超える互いに重なり合っている神経領域において、標的神経の長軸に対して平行に、または実質的に平行に配置される。
図22図22は、1以上の電極を介して内転筋管における伏在神経の神経伝導を遮断することによって膝痛を治療するために使用される例示的な神経遮断療法を示す。他の疼痛治療療法も、本明細書に開示する方法を用いて同様に実施することができる。
図23図23は、1以上の電極を介して内転筋管における伏在神経の神経伝導を遮断することによって膝痛を治療するために使用される例示的な神経遮断療法を示す。他の疼痛治療療法も、本明細書に開示する方法を用いて同様に実施することができる。
図24図24は、1以上の電極を介して内転筋管における伏在神経の神経伝導を遮断することによって膝痛を治療するために使用される例示的な神経遮断療法を示す。他の疼痛治療療法も、本明細書に開示する方法を用いて同様に実施することができる。
図25A図25Aは、本明細書に記載のシステム及び方法で使用することができる例示的な経皮リードを示す。
図25B図25Bは、本明細書に記載のシステム及び方法で使用することができる例示的な経皮リードを示す。
【0042】
本明細書及び図面において繰り返し使用される参照符号は、本発明の同一または類似の特徴または要素を表すことを意図している。
【発明を実施するための形態】
【0043】
定義
【0044】
本発明の概念の特定の例についての以下の説明は、特許請求の範囲を制限するために使用されるべきではない。他の例、特徴、態様、実施形態、及び利点は、以下の説明から当業者に明らかになるであろう。理解されるように、本発明の装置及び/または方法は、本発明の概念の精神から逸脱することなく、他の異なる自明な態様が可能である。したがって、図面及び説明は、本質的に例示的なものであり、制限的なものではないと見なされるべきである。
【0045】
この説明の目的のために、本開示の実施形態の特定の態様、利点、及び新規な特徴が本明細書に記載される。本開示の方法、システム、及び装置は、いかなる点においても限定的であると解釈されるべきではない。むしろ、本開示は、開示された様々な実施形態の全ての新規かつ非自明な特徴及び態様、または、それらの様々な組み合わせ若しくは部分的な組み合わせに関する。本開示の方法、システム、及び装置は、特定の態様、特徴、またはそれらの組み合わせに限定されるものではない。また、本開示の方法、システム、及び装置は、任意の1以上の特定の利点が存在すること、または問題が解決されることを必要とするものではない。
【0046】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用するとき、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、[その(the)]は、文脈が明らかにそうでないことを示していない限り、その指示対象の複数形も含むことに留意されたい。本明細書では、範囲は、或る特定の値についての「約」から、及び/または、別の特定の値の「約」まで、と表現することができる。このような範囲が表現される場合、別の態様には、或る特定の値から及び/または別の特定の値までが含まれる。同様に、或る値の前に「約」を付けて、その値を近似値として表現する場合、その特定の値が別の態様を形成することが理解されたい。さらに、各範囲の終点は、他の終点との関係においても、または、他の終点とは独立しても、有意であることを理解されたい。
【0047】
本明細書の説明及び特許請求の範囲の全体を通じて、「含む(comprise)」という用語やその派生語(comprising、comprisesなど)は、「それを含むが、それに限定されない」ことを意味するものであり、例えば、他の添加物、成分、整数、またはステップの排除を意図するものではない。「例示的」及び「例えば」は、「一例」を意味するものであり、好ましいまたは理想的な態様を示すことを意図するものではない。「例えば~など」は、制限的な意味ではなく、説明のために使用される。
【0048】
本明細書で使用するとき、「電気刺激」、「電気神経遮断刺激」、「電気神経遮断」という用語は、コントローラによって1以上の電極を使用して組織に送達される電気エネルギーを指す。電気エネルギーは、ニューロンの軸索に到達すると、刺激部位を通る活動電位の伝播を遮断し、これにより、神経伝導を部分的または完全に阻害し、例えば、刺激部位における患者の痛覚を部分的または完全に抑制する。電気刺激が、非標的の運動活動及び感覚活動を誘起することなく行われる場合、本開示はそのように示す。
【0049】
電気エネルギーは、いくつかの実施形態では、特に明記しない限り、時間的に変化する高周波の電圧、電流、電力、及び/または他の電気的手段として、例えば、高周波の交流電流として特徴付けられる。標的組織への電気エネルギーの送達は、電気治療、電気療法、または、単に治療または療法と呼ばれる。電気エネルギーは、電気エネルギーの制御が組織内の電界の制御に強く影響を与えるように、組織内に電界を生成する。
【0050】
本明細書で使用するとき、「神経構造体」という用語は、神経組織及び非神経組織を含む構造を指す。神経組織(ニューロン、及びニューロンの構成要素、例えば、軸索、細胞体、樹状突起、ニューロンのシナプス)に加えて、神経構造体には、グリア細胞、シュワン細胞、ミエリン、免疫細胞、結合組織、上皮細胞、神経膠細胞、星状膠細胞、ミクログリア細胞、上衣細胞、オリゴデンドロサイト、サテライト細胞、心血管細胞、または血液細胞などの非神経組織が含まれ得る。
【0051】
本明細書で使用するとき、「経皮的」という用語は、皮膚の表面を貫通する1以上の電極を使用して加えられる電気刺激を指す。皮膚の下の標的神経に電気刺激を送達する電極は、皮膚の下に配置される。特に明記しない限り、リターン電極またはアノードは、皮膚の下または皮膚の表面に配置されると考えられる。
【0052】
本明細書で使用するとき、「経皮電極」という用語は、神経構造に電気的影響を与えるために、低侵襲的に、神経に接触させることなく、皮膚を通して挿入され、神経の近傍(mm~cmの距離)に配置される、例えば経皮リード内の電極アセンブリを指す。
【0053】
本明細書で使用するとき、「痛覚」という用語は、感覚侵害受容器または神経線維の活性化によって生じる不快な感覚を指す。侵害受容(痛覚)は急性疼痛の知覚を指し、一般的に、侵害受容器の感覚の活性化または侵害受容経路の破壊(例えば、切断されたニューロンや破壊された侵害受容器)によって引き起こされる。慢性痛覚は、神経線維の活性化によって生じ、侵害受容器の活性化によって生じた痛覚と同様の性質を有する不快な感覚である(例えば、神経障害性疼痛)。慢性疼痛の治療を目的とした手術後などの一部の症例では、急性痛覚と慢性痛覚との両方が、全体の痛覚に複合的に寄与し得る。
【0054】
本明細書で使用するとき、「標的神経」という用語は、運動神経線維と感覚神経線維とを含む混合神経を指す場合がある。加えて、「標的神経」という用語は、感覚神経線維のみを含む感覚神経、及び/または運動神経線維のみを含む運動神経を指す場合もある。
【0055】
本明細書で使用するとき、「末梢神経」という用語は、脳及び脊髄(中枢神経系)を身体全体に接続する、中枢神経系外の運動神経及び/または感覚神経あるいは神経節構造を指す。
【0056】
本明細書では、「近位」及び「遠位」という用語は、神経の領域、神経の位置、または刺激装置の領域を指す相対的な用語として使用される。「近位」とは、脊髄、脳、または中枢神経系に近い位置を意味し、「遠位」とは、脊髄、脳、または中枢神経系から遠い位置を意味する。末梢神経系またはその付属器に沿った神経構造体上の位置について言及する場合、近位または遠位とは、その神経構造体またはその付属器に続く経路に沿った、中枢神経系に近い位置または中枢神経系から遠い位置を指す。脊髄の神経構造体上の位置を指す場合、近位または遠位とは、その神経構造体に続く経路に沿った、脳に近い位置または脳から遠い位置を指す。
【0057】
本明細書で使用するとき、「維持する」という用語は、神経機能が部分的には維持されるが完全には維持されない場合と、神経機能が完全に維持される場合とを指す。比較例では、或る機能が阻害されるが、別の機能が維持される場合があり、これは、比較の意味で、阻害された機能が、維持された機能が受けた減少よりも大きい減少を受けたことを示唆する。具体的には、比較例では、或る機能の阻害及び別の機能の維持は、それらの一方の機能または両方の機能の完全な維持または完全な阻害を必要としない。
【0058】
発明の詳細な説明
【0059】
以下、本発明の1以上の実施形態及び添付図面に図示した本発明の実施例について詳細に説明する。各実施例及び実施形態は、本発明を説明するために提示されたものであり、本発明を限定するものではない。例えば、或る実施形態の一部として例示または説明された特徴を、別の実施形態と共に使用することによって、さらなる別の実施形態を創出することができる。本発明は、本発明及びその均等物の範囲に含まれる限り、そのような変更形態及び変形形態を包含することを意図している。
【0060】
本明細書に記載された各特徴、及びそのような特徴の2以上の各組み合わせは、そのような組み合わせに含まれる特徴が互いに矛盾しない限り、本発明の範囲内に含まれる。
【0061】
一般的に言えば、本発明の実施形態は、例えば、痛覚を抑制するために、約3mm超の互いに重なり合っている神経領域(overlapping nerve region)において末梢神経の長軸に対して平行に、または実質的に平行に、かつ、該長軸に直接接触することなく配置された経皮リードからの電気刺激を用いて、標的神経(例えば、伏在神経、大腿神経、陰部神経、腕神経叢神経、橈骨神経、正中神経、尺骨神経、脛骨神経、坐骨神経、腸骨鼠径神経、肋間神経、後頭神経、肩甲上神経、腋窩神経、大腿外側皮神経、外側恥骨神経、または骨盤神経などの末梢神経)、並びに、腸神経、自律神経、及び脳神経における神経伝導を経皮的に遮断することができるシステム及び方法に関する。このような構成では、本システムは、電極で電荷を発生させる連続的な高周波刺激を送達して、いくつかのランビエノード上の末梢神経の長さにわたって活動電位を一時的かつ可逆的に阻害し、これにより、その領域における神経伝導を遮断することができる。このため、下流の神経源からの神経伝導は、末梢神経の領域で阻害され、これにより、その神経源に関連する疼痛信号が脳や脊髄に到達することを阻止する。電気刺激は、オンセット活性に対応する感覚(知覚)を誘起しないランプで送達され得る。
【0062】
実際、本明細書に記載の例示的な高周波電気刺激システムは、いくつかの実施形態では、末梢神経に位置する有髄Aδ線維及び無髄C線維のうちの少なくとも1つを介した神経信号伝達を可逆的かつ一時的に阻害する一方で、Aβ線維及びAα線維、及び/または運動線維のうちの少なくとも1つを介した神経信号伝達を維持するために使用することができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明される例示的な高周波電気刺激は、例えば、約2.5mm超の直径を有する神経領域において、末梢神経、例えば、伏在神経、大腿神経、陰部神経、腕神経叢神経、橈骨神経、正中神経、尺骨神経、脛骨神経、坐骨神経、腸骨鼠径神経、肋間神経、後頭神経、肩甲上神経、腋窩神経、大腿外側皮神経、外側恥骨神経、骨盤神経、または他の大きな末梢神経など、に印加される。いくつかの実施形態では、本明細書で説明される例示的な高周波電気刺激は、例えば、約2.5mm超の直径を有する領域において、神経節、例えば、後根神経節、交感神経節、副交感神経節、翼口蓋神経節、またはガッセル神経節など、に印加される。
【0064】
電気刺激システムの例
【0065】
図1は、例示的な実施形態による、例えば、標的神経104(例えば、末梢神経)における神経伝導を経皮的に遮断して、非標的の運動活動及び感覚活動を誘起することなく、そのような神経上の痛覚の伝達を阻止するために、高周波電気刺激106を送達するように構成された例示的な携帯型電気刺激システム102の図である。いくつかの実施形態では、携帯型電気刺激システム102は、標的神経104の刺激送達部位における神経線維活動を可逆的かつ一時的に遮断するために、電極を含む経皮リード110のセットを介して、電極において平衡電荷を標的神経104に送達する二相性正弦波波形を含む高周波電気刺激106(例えば、持続的な高周波電気刺激)を送達するように構成されている。本明細書で使用するとき、「高周波」という用語は、治療セッション中に生成される刺激周波数を指し、その刺激は、1.5kHz超の基本周波数の高調波を有する。経皮リードは、リード本体と電極アセンブリとを含み、皮膚とその下の組織の一部を貫通して挿入され、神経の近傍(mm~cmの距離)に低侵襲的に配置され、神経の生理学に対して電気的な影響を与えるように構成されている。いくつかの実施形態では、経皮リード110は、皮膚の下または皮膚の表面に配置または固定される1以上のアノード電極113及びカソード電極115(115aとして示されている)を含む。別の実施形態では、カソード電極(またはリターン電極)(115bとして示されている)は、経皮リード110上に配置される。図1では、2つの電極で生成された2つの電荷効果が示されているが、単一の刺激出力を印加することも考えられる。経皮リード110は、いくつかの実施形態では、例えば、シリンジまたはボーラス操作のためのユニバーサルルアーコネクタを有するイントロデューサニードルを使用して標的部位に送達されるように構成されている。
【0066】
いくつかの実施形態では、例示的な携帯型電気刺激システム102は、約1.5kHz~約15kHzの範囲の基本周波数高調波を有する高周波電気刺激106を生成するように構成されている。いくつかの実施形態では、例示的な携帯型電気刺激システム102は、約1.5kHz~約25kHzの範囲の基本周波数高調波を有する高周波電気刺激106を生成するように構成されている。いくつかの実施形態では、例示的な携帯型電気刺激システム102は、約1.5kHz~約50kHzの範囲の基本周波数高調波を有する高周波電気刺激106を生成するように構成されている。いくつかの実施形態では、例示的な携帯型電気刺激システム102は、約1.5kHz~約75kHzの範囲の基本周波数高調波を有する高周波電気刺激106を生成するように構成されている。
【0067】
いくつかの実施形態では、例示的な携帯型電気刺激システム102は、約1.5kHz~約15kHzの範囲の任意の周波数成分(例えば、任意の高調波)を有する高周波電気刺激106を生成するように構成されている。いくつかの実施形態では、例示的な携帯型電気刺激システム102は、約1.5kHz~約25kHzの範囲の任意の周波数成分(例えば、任意の高調波)を有する高周波電気刺激106を生成するように構成されている。いくつかの実施形態では、例示的な携帯型電気刺激システム102は、約1.5kHz~約50kHzの範囲の任意の周波数成分(例えば、任意の高調波)を有する高周波電気刺激106を生成するように構成されている。いくつかの実施形態では、例示的な携帯型電気刺激システム102は、約1.5kHz~約75kHzの範囲の任意の周波数成分(例えば、任意の高調波)を有する高周波電気刺激106を生成するように構成されている。
【0068】
引き続き図1を参照して、例示的な携帯型電気刺激システム102は、ケーブル108(108a、108bとして示されている)を介して、電極を搭載した経皮リード110に電気的及び物理的に接続される外部高周波信号発生器として構成されている。
【0069】
ケーブル108は、その内部に封入された1以上の導体を有する。また、ケーブル108は、それぞれが高周波電気刺激106を送達する別個のケーブルを含み得る。また、ケーブル108は、電気刺激及びフィードバック信号のための内部ケーブルを有する単一の結合ケーブルを含み得る。
【0070】
所与の経皮リードの露出させた電極を、標的部位112に挿入し、標的神経の近位の組織または標的神経と接触している組織に接触させる。電極とは、伝導流を阻害する電荷を確立するために使用される露出させた導体を指す。いくつかの実施形態では、経皮リードの露出電極は、標的神経から約0.5mm~約15mmの距離、例えば、約0.75mm~約10mmの距離、または約1mm~約5mmの距離を隔てて組織に挿入される。いくつかの実施態様では、露出電極は、経皮リードの先端部にのみ配置される。別の実施形態では、露出電極は、経皮リードの先端領域における複数の位置に配置される。別の実施形態では、露出電極は、経皮リードの長手方向の長さに沿って、複数の位置に配置される。
【0071】
図1に示すように、例示的な携帯型電気刺激システム102は、高効率電気刺激発生器114と、1以上の電源116(116a、116bとして示されている)とを備え、これらは、キャリア117に収容されている。高効率電気刺激発生器114は、高周波電気刺激106を規定する電気波形出力を生成するように構成されている。1以上の電源116は、電気刺激のための電力を提供し、いくつかの実施形態では、例示的な携帯型電気刺激システム102の基礎となる制御装置及び電子機器のための電力を提供する。
【0072】
いくつかの実施形態では、電気刺激発生器114は、(例えば、他の感覚機能及び運動機能を維持しながら、その神経組織においてのみ神経伝導を遮断することによって、患者またはユーザの疼痛感覚を抑制するために)、高周波電気刺激106を、少なくとも80%超、例えば90%超の出力効率で、かつ、患者またはユーザの標的部位112における標的神経組織での神経伝導を遮断することができる出力レベル範囲にわたる複数の選択可能な出力レベル(例えば、振幅レベル、デューティサイクル、または周波数)で、連続的に発生するように構成されている。実際、高効率動作は、連続的な高周波電気刺激、例えば1.5KHz~75KHzの範囲の基本周波数高調波を、治療レベルで、意図された期間にわたって(例えば、最大24時間)、ユーザにとって扱い易い及び/または快適な重量(例えば、いくつかの実施形態では、約350グラム未満、すなわち約0.75ポンド未満)で提供する場合の電気刺激システム102の携帯性(可搬性)を容易にする。
【0073】
電源116は、いくつかの実施形態では、容器118に挿入され、所定の位置に保持されるように構成された、1以上の充電式または非充電式の電池の第1のセットを含む。いくつかの実施形態では、電源(例えば、116a、116b)は、容器118内に収容され、かつ容器118と嵌合するように構成されたキャリア117内に配置される。電源116は、18650規格の標準リチウムイオンセルなどの標準リチウムイオンであり得る。一般的な18650セルは、18mm×65mmのサイズを有し、2200mAh~2600mAhの容量を有する。この高効率刺激回路により、例示的な携帯型電気刺激システム102は、いくつかの実施形態では、最大出力/強度(例えば20mA)での連続的な治療動作を、20%の設計マージンで、少なくとも24時間にわたって提供することができる。別の実施形態では、例示的な携帯型電気刺激システム102は、公称出力/強度(例えば、15mA)での連続的な治療動作を、少なくとも20%の設計マージンで、少なくとも24時間にわたって提供することができる。実際、例示的な携帯型電気刺激システム102は、最大出力よりも低い出力を提供する場合、より長い期間にわたって、連続的な治療動作を提供することができる。
【0074】
図1では、例示的な携帯型電気刺激システム102は、容器118内に保持され、モジュール式電源として機能する第1の電源116aを備えている。容器118は、該容器と嵌合して該容器を保持するように構成されたキャリア117内に収容される。また、例示的な携帯型電気刺激システム102は、容器118によって保持される第2の電源116b(例えば、より小さい電源、例えば、第1の電源116aのエネルギー密度の10%を有する電源)を備えている。いくつかの実施形態では、第1の電源116aは、例示的な携帯型電気刺激システム102のための一次電源として使用され、最大8時間にわたって、連続的な電力出力(例えば、50%の電力レベル)を提供することができるようなサイズに構成されている(エネルギー密度の観点から)。いくつかの実施形態では、第1の電源116aは、最大24時間にわたって、連続的な電力出力(例えば、50%電力レベル)を提供することができるようなサイズに構成されている。いくつかの実施形態では、第2の電源116bは、例示的な携帯型電気刺激システム102のための一時的な電源を提供するために使用され、例えば、交換作業において第1の電源116aのホットリムーバル及びホットインサーションを可能にするために、最大3分間(例えば、最大5分間、最大20分間)にわたって、連続的な電力出力(例えば、80%の電力レベル)することができるようなサイズに構成されている(エネルギー密度の観点から)。いくつかの実施形態では、例示的な携帯型電気刺激システム102は、単一の一次電源を備えている。
【0075】
引き続き図1を参照して、例示的な携帯型電気刺激システム102は、電気刺激発生器114の動作を指示し、ユーザインターフェース124(「入力/出力部」124a及び「ディスプレイ」124bとして示されている)を提供するコントローラ122を備えている。いくつかの実施形態では、ユーザインターフェース124は、ユーザ(すなわち、患者またはユーザ)から入力を受信し、医療専門家(例えば、薬剤師、薬局技術者、医師、麻酔看護師(CRNA)、看護師など)へ出力するように構成されている。ユーザ(すなわち、患者)は、電気信号を、選択可能な電力レベルの設置へ変更することを含む刺激装置100の入力指示動作を提供することができる。ユーザインターフェース124は、いくつかの実施形態では、本システムのオン/オフ状態、電気刺激のオン/オフ状態、信号送達モデル(例えば、電力レベル、強度出力など)、システム状態、蓄電池状態(例えば、電池残量、低蓄電池状態/高蓄電池状態など)の表示を、電気刺激システム102のユーザに提供するディスプレイをさらに備える。いくつかの実施形態では、ユーザインターフェース124は、刺激強度の要求された設定(またはユーザ変更)が、動作範囲内にあるか、動作範囲外にあるか、または範囲限界にあるかの表示を含む。いくつかの実施形態では、ユーザインターフェース124は、エラー状態(例えば、自動刺激停止に関連するエラー、または、検出された自己診断エラー)の表示を含む。いくつかの実施形態では、ユーザインターフェース124は、アラートまたはアラーム状態を示すための音声出力を含む。いくつかの実施形態では、ユーザインターフェース124は、電気刺激発生器114のスケジュール設定、電気刺激システム102の使用の追跡(例えば、電気刺激の電力設定)、または電気刺激発生器114の出力の追跡を行うために、タブレット、モバイルコンピュータ、またはデスクトップコンピュータなどの外部デバイスへの通信ポートを含む。いくつかの実施形態では、コントローラ122は、生理学的信号(例えば、患者の表面温度、血流、血中酸素レベル、心拍数、筋肉活動に関連する信号)を増幅及びフィルタリングし、患者モニタリングのためにコントローラ122に出力するように構成された患者モニタリングシステムを含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、ユーザインターフェース124は、第1の電源116aを新しいセットの第1の電源116a(例えば、非充電式バッテリの新しいセット、あるいは、完全に充電されたか、またはより多く充電された充電式バッテリの新しいセット)とホットスワップするようにユーザに案内するために、視覚または音声出力を提供するように構成されている。
【0077】
コントローラ122及び/または電気刺激発生器114は、アラームまたはアラート条件、例えば、とりわけ、範囲外の出力設定、ソフトウェアエラー、ウォッチドッグエラー、残りの蓄積エネルギー、電気刺激の最大電流出力、電気刺激の最大電圧出力、電気刺激の最大電力出力、電源電圧、装置温度、電極インピーダンスなどを監視するように構成されている。いくつかの実施形態では、コントローラ122及び/または電気刺激発生器114は、アラーム条件またはアラート条件に関連する1以上のパラメータが検出されたときに、アイドルモードまたはサスペンドモード(電気刺激を中断するモード)に入るように構成されている。
【0078】
例示的な携帯型電気刺激システム202は、コントローラ122、ユーザインターフェース124(124a、124bとして示されている)、及び電源(例えば、116a及び116b)を収容するキャリア117を備えている。図11は、例示的な実施形態による、図1の例示的な携帯型電気刺激システム102を示す。
【0079】
電気刺激システム#2
【0080】
図2は、電気刺激(106)を送達するように構成された別の例示的な携帯型電気刺激システム202の図である。この別の例示的な実施形態は、非標的の運動活動及び感覚活動を誘起することなく、末梢神経104における疼痛の知覚を経皮的に遮断するように構成されている。この例示的な携帯型電気刺激システム202は、別の電気刺激発生器(114aとして示されている)を備えている。この電気刺激発生器114aは、例えば、経皮リード110の近傍で患者の表面に配置される(例えば、取り付けるか、または固定することによって、患者身体の表面に直接配置される)ように構成されたキャリア204内に収容される。この例示的な携帯型電気刺激システム202のコントローラ122は、ケーブル108を介して電気刺激発生器114aに制御信号を提供するように構成されている。電気刺激発生器114a、または、キャリア204もしくは電気刺激発生器114a内に配置された第2のコントローラ206は、電気刺激発生器114aの出力を指示する制御信号を受信し、高周波電気刺激106を経皮リード110a、110bの電極に提供する。
【0081】
高効率電気刺激発生器
【0082】
図3は、例示的な実施形態による、例示的な高効率電気刺激発生器114(114aとして示されている)の図である。電気刺激発生器114aは、コントローラ122(「MCU制御」122aとして示されている)からスイッチング入力306、308を受信して、プログラマブル電源312からローパスフィルタ314にスイッチング波形出力310を供給するように構成されたスイッチング回路素子(例えば、電界効果トランジスタ302、304として示されている)のセットを含む電気刺激発生回路を備えている。実際、一組のスイッチング回路素子302、304は、スイッチング入力306、308の方形波出力またはパルス波出力から(例えば、入力間の差として)高周波数の方形波出力またはパルス波出力を生成することを可能にし、これにより、このような実施形態のための高効率動作を可能にする。ローパスフィルタ314は、高インピーダンス出力(キャパシタ318として示されている)及び一組の障害遮断スイッチ(「故障安全スイッチ」320a、320bとして示されている)を介して、経皮リード110の電極113(316として示されている)に電気刺激出力を提供する。
【0083】
いくつかの実施形態では、電気刺激発生器114aは、差動DC電圧を検出するための高インピーダンス差動電圧検出回路を備えている(例えば、322aにおいて)。いくつかの実施形態では、電気刺激発生器114は、電極の両端のDC電圧の蓄積を打ち消すことができる可変DC電流注入回路を備えている(例えば、322bにおいて)。いくつかの実施形態では、電気刺激発生器114aは、DC汚染の蓄積を打ち消す振幅及び極性でDC電流注入振幅を駆動するフィードバック制御システムを備えている。いくつかの実施形態では、電気刺激発生器114aは、回路障害の場合に、電極とアクティブ回路との接続を遮断する障害緩和スイッチング回路を備えている。いくつかの実施形態では、電気刺激発生器114aは、回路障害の場合に、電極に電流を供給することができるアクティブ回路と電源との接続を遮断する障害緩和スイッチング回路を備えている。いくつかの実施形態では、電気刺激発生器114aは、障害緩和スイッチング回路と共に使用される回路障害を検知するために使用されるDC電流検知回路を備えている。いくつかの実施形態では、電気刺激発生器114aは、障害緩和スイッチング回路への障害感知入力として、検出差動DC電圧のための高インピーダンス差動電圧感知回路を使用する。いくつかの実施形態では、電気刺激発生器114aは、差動DC電圧の検出のため、及び、障害緩和スイッチング回路への障害感知入力としての差動DC電圧の検出のために、同一の高インピーダンス差動電圧感知回路を使用する。
【0084】
いくつかの実施形態では、電気刺激発生器114aは、電極対間の短絡を検出するように構成されたインピーダンス測定回路を備えている。インピーダンス測定回路は、いくつかの実施形態では、電気刺激を正規化するために、組織及び電極負荷の推定インピーダンスを測定するように構成されている。いくつかの実施形態では、インピーダンス測定は、電気刺激発生器114が電極に適切に接続され、電極が標的部位に適切に送達されることを確実にするために、電気刺激の出力を開始するための前提条件として用いられる。
【0085】
図3では、電気刺激発生器114aは、電気刺激発生器114aの電圧出力、電気刺激発生器114aの電流出力、プログラマブル電源312の電圧出力、及びプログラマブル電源312の電流出力を検出し、その検出フィードバックをコントローラ(122a)に提供するように構成されたフィードバック回路(アナログ/デジタル変換器「ADC」322aとして示されている)を備えている。いくつかの実施形態では、制御された電圧エンベロープから測定した正弦波電流及び電流エンベロープを使用して、可変電圧スイッチング電源を制御し、これにより、従来の技術よりも高い高電力効率動作が容易になる。
【0086】
図3は、ローパスフィルタ314の出力部に接続された接続素子(例えば、スイッチ324)をさらに示す。この接続素子(例えば、324)は、例えば、神経位置及び理想的な電極配置を検出するために、スイッチング波形出力310を電極316に直接印加するバイパスフィルタ回路を提供する。
【0087】
図4は、例示的な実施形態による、電気刺激発生器114a(400として示されている)の例示的な刺激発生回路の回路図(例えば、シミュレーションモデル)である。一組のスイッチング回路素子、例えば電界効果トランジスタ302、304は、n型MOSFET(302a)と、p型MOSFET(304a)とを含み、p型MOSFET(304a)のドレインがn型MOSFET(304a)のソースに接続されている。MOSFET(302a、304a)のゲートは、抵抗負荷406、408に直列に接続されたMCUコントローラ122a(電圧源402、404として示されている)の出力ピン(例えば、306、308)に接続されている。p型MOSFET(304a)のソースは、プログラマブル電源(電圧源410として示されている)の出力部及び電圧調節ダイオード(ツェナーダイオード412、414として示されている)に接続されている。n型MOSFET(302a)のドレインは、回路グランドに接続されている。
【0088】
図4では、ローパスフィルタ314は、誘導性素子416、418及び容量性素子420、422のセットを含むLCローパスフィルタ(314aとして示されている)として構成されている。当然ながら、このような要素の数は、より少なくてもよい。LCローパスフィルタ314aは、いくつかの実施形態では、高周波動作、例えば1.5kHz~75kHzの範囲に適した成分値で構成されている。図示のように、LCローパスフィルタは、約70kHzのカットオフ周波数を有する。他のカットオフ周波数を使用してもよい。ハイインピーダンス出力は、コンデンサ318bを使用して形成される。経皮リード110の電極と標的神経とは、抵抗負荷と容量負荷との組み合わせ(例えば、500オームと20pF)としてモデル化される。いくつかの実施形態では、経皮リード110の電極と標的神経とは、最大で1500オームまでの負荷の組み合わせとしてモデル化することができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、電気刺激発生器(例えば、114、114a、400)は、1μAを超えるDC電流を、2秒間を超える持続期間にわたって出力しないように構成されている。
【0090】
実際、例示的な刺激生成回路(例えば、114、114a、400)は、高電力効率及び低電力消費を提供するための効率的な可変電圧スイッチング電源を含む、正弦波及び/または大きなデューティサイクル波形のための電力効率の高い電極駆動回路を提供する。例示的な刺激生成回路(例えば、114a、400など)は、広範囲の電源変動、及び(例えば、電源設定を介した)振幅変調制御にわたって性能を維持する、比較的少数の電子部品を有する(最適化された実装を提供する)。いくつかの実施形態では、リニアレギュレータのユーザは、可変電圧スイッチング電源と共に、例えば、出力信号振幅のダイナミックレンジを拡張するために使用することができる。正弦波形を生成するためのスイッチ出力に続くローパスフィルタステージは、広範囲の負荷インピーダンスにわたって性能を向上させる。
【0091】
電気刺激システムの回路設計例
【0092】
図5A図5B図5C図5D図5E図5F、及び図5Gは、例示的な実施形態による、電気刺激を送達するように構成された図1または図2の例示的な携帯型電気刺激システム(500)の回路図を示す。
【0093】
電気刺激システム500は、正弦波及び/または大きなデューティサイクル波形のための電力効率の良い電極駆動回路を提供する。電力効率の良い電極駆動回路は、可変電圧スイッチング電源を備えた効率の良いスイッチング出力回路を含み、方形波形または矩形波形を生成するために使用される。電力効率の良い電極駆動回路は、広範囲の負荷インピーダンスにわたって性能を維持することができる正弦波波形を生成するように構成されたスイッチング出力回路に続くローパスフィルタステージを含む。実際、電気刺激システム500は、高電力効率及び低電力消費のために構成されている。また、電気刺激システム500は、電子部品の数が少なく、複雑度が低い。電気刺激システム500は、出力信号振幅のダイナミックレンジを拡張するために、可変電圧スイッチング電源と共にリニアレギュレータを含み、これにより、例えば電源設定を介した、振幅の制御及び変調が可能になり、広範囲の電源変動にわたって性能を維持することができる。
【0094】
具体的には、図5Aは、例示的な実施形態による、図1または図2の例示的な携帯型電気刺激システムのハイレベルシステム図を示す。図5Bは、例示的な実施形態による、図5Aのコントローラ回路を示す。図5Cは、例示的な実施形態による、図5Aの制御サポート回路を示す。図5Dは、例示的な実施形態による、図5Aのユーザインターフェース回路を示す。図5Eは、例示的な実施形態による、図5Aの電源回路を示す。図5Fは、例示的な実施形態による、図5Aの刺激出力回路を示す。図5Gは、例示的な実施形態による、図5Aの電圧・電流監視回路を示す。
【0095】
システム回路:上述のように、図5Aは、例示的な実施形態による例示的な携帯型電気刺激システム102(500として示されている)の電子機器及び刺激回路のシステム図を示す。図5Aでは、例示的な携帯型電気刺激システム500は、電気刺激発生器(例えば、114)と、コントローラ(例えば、122)と、1以上のプリント回路基板で実装されたユーザインターフェース(例えば、124a、124b)とを含む。基板は、ハウジング(例えば、図11に示されている)内に収容されている。図5Aに示すコントローラ(例えば、122)及び電気刺激生成器(例えば、114)は、コントローラ回路502(「MCU」502として示されている)と、コントローラ回路502のサポート回路504(「MCUサポート」504として示されている)と、ユーザインターフェース回路506と、電源回路508(「Prog電源」508として示されている)と、刺激出力回路510(「出力」510として示されている)と、電圧・電流監視回路512(「DCVIモニタ」512として示されている)とを含む。図5B図5Gは、これらの各サブ回路の実施例を示す。
【0096】
図5Aでは、制御入力(例えば、強度または振幅の選択)が、ユーザインターフェース要素(「ボタン」として示されている)からユーザインターフェース回路506に提供される。ユーザインターフェース回路506は、ユーザが選択した出力(例えば、強度の設定/調節、装置のオン/オフ、刺激の有効/無効など)をコントローラ502に提供し、コントローラ502は、制御信号をデジタル信号として直接、またはMCUサポート回路504内に配置されたアナログ/デジタル変換器を介してアナログ制御信号として、それぞれの回路(例えば、電源回路508、刺激出力回路510、電圧・電流監視回路512)に送信する。コントローラ502は、制御可能な可変電圧スイッチング電源で構成されたプログラマブル電源回路508に、(サポート回路504のADC回路を介して)電圧出力制御設定値/レベルを送信することができる。コントローラ502は、刺激制御信号を刺激出力回路510に送信することができる。刺激出力回路510は、正弦波エンベロープ振幅制御のための制御された電流正弦波電極駆動信号を生成するように構成されている。刺激出力回路510は、電圧・電流監視回路512に提供される高周波刺激波形を生成する。電圧・電流監視回路512は、それぞれの制御のために正弦波電流エンベロープ振幅または正弦波電圧エンベロープ振幅を測定するとともに、経皮リード(例えば、110、110a、110b、110c)への接続部514を提供する。当然ながら、他の回路及びトポロジー、特に低電力動作に適したものを使用してもよい。
【0097】
コントローラ回路:図5Bは、例示的な実施形態による、図5Aのコントローラ回路502を示す。コントローラ回路502は、揮発性フラッシュメモリ、ADC、デジタル入力/出力部、及びシリアル通信などを備えて構成された低電力マイクロコントローラ516(記載されている特定の部品はテキサス・インスツルメンツ社(Texas Instruments)製)と、独立したウォッチドッグとを含む。マイクロコントローラ516は、図10に関連して説明するような動作などの命令を実行するように構成されている。特定用途向け回路や汎用マイクロプロセッサなどの他の種類の処理ユニットを使用してもよい。マイクロコントローラ516は、刺激制御信号(「P_Phase」402´及び「N_Phase」404´として示されている)を刺激出力回路510aに供給する(図5F参照)。
【0098】
コントローラ回路のサポート回路:上述のように、図5Cは、例示的な実施形態による、図5Aのサポート回路504を示す。上述のように、コントローラ502は、MCUサポート回路504に配置されたアナログ/デジタル変換器516(記載されている特定の部品はマキシム・インテグレーテッド社(Maxim Integrated)製)を介して、アナログ命令信号として各回路(例えば、電源回路508、刺激出力回路510、電圧・電流監視回路512)に送信するように構成されている。図5Cにおいて、アナログ/デジタル変換器516は、コントローラ502からシリアル制御信号を受信し、複数のアナログ制御信号520(「PPSCtrlHi」520として示されている)、522(「PPSCtrlLow」522として示されている)、及び524(「PlaceCtrl」524として示されている)を生成するように構成されている。また、コントローラ502は、電圧・電流監視回路512の電圧及び電流感知回路のための-0.25Vのオフセット基準518(「Vref-0p25」518として示されている)を提供するために、制御サポート回路504でオフセットされる電圧基準出力を提供する。図5Cでは、制御サポート回路504が、低密度、低エネルギーのコード記憶メモリデバイス526(特定の部品番号はアデスト・テクノロジーズ社(Adesto Technologies)製)をさらに含むことが示されている。
【0099】
ユーザインターフェース回路:上述のように、図5Dは、例示的な実施形態による、図5Aのユーザインターフェース回路506を示す。ユーザインターフェース回路506(506aとして示されている)は、ESD保護デバイス528(特定の部品番号はSTマイクロエレクトロニクス社(ST Microelectronics)製)と、マルチボタン入力用の入力回路(例えば、入力/出力部124aに接続するための)とを含む。いくつかの実施形態では、ボタン入力(例えば、124a)は、「オン/オフ」ボタン、「刺激オン/オフ」ボタン、「強度アップ」ボタン、及び「強度ダウン」ボタンに対応し得る。当然ながら、入力のための他のUI回路及び方法を使用してもよく、特に、低電力動作に適したものを使用してもよい。
【0100】
ユーザインターフェース回路506(506b)は、複数のLED(「D12」~「D19」として示されている)(例えば、ディスプレイ124bに対応する)を駆動するバスドライバ530を含む。複数のLEDは、出力されている高周波電気刺激の強度レベル、及びシステムの出力状態を示すために使用することができる。当然ながら、他の種類のディスプレイやディスプレイドライバを使用してもよく、特に、低電力動作に適したものを使用してもよい。加えて、様々な数のLED素子を使用してもよい。
【0101】
ユーザインターフェース回路506(506cとして示されている)は、スピーカ534を駆動するためのオーディオアンプ532(特定の部品番号は、テキサス・インスツルメンツ社製)を含むオーディオドライバ回路を備えている。音声警報は、エラー(例えば、ハードウェアエラー、リード切断、障害状態)が検出されたときに、音声出力を生成するために使用することができる。
【0102】
電源回路:上述のように、図5Eは、例示的な実施形態による、図5Aの電源回路508を示す。電源回路508は、マイクロ低ノイズブーストコンバータ(リニア・テクノロジー社製の特定部品)を含む制御可能な可変電圧スイッチング電源装置536を備えている。可変電圧スイッチング電源装置536は、制御信号「PPSCtrlHi」520に接続された基準入力部を含み、スイッチング電源装置536の内部フィードバック基準は、その出力電圧(「PPSVout」410´として示されている)を制御するために調節することができる。電源回路508は、制御信号「PPSCtrlLow」522に接続され、装置がスリープモード/低電力モードにあるときに出力電力540を提供するための第2の電源を備えている。
【0103】
刺激出力回路:上述のように、図5Fは、例示的な実施形態による、図5Aの刺激出力回路510を示す。刺激出力回路510(510aとして示されている)は、正弦波エンベロープ振幅制御のための制御された電流正弦波電極駆動信号を生成するように構成された回路を提供する。刺激出力回路510aは、例示的な刺激生成回路(例えば、図4の400または図3の114a)で構成されている。この例の目的のために、説明は図4の参照番号及び構成要素に関連して提供されるが、このような説明は図3の参照番号及び構成要素にも同様に適用することができる。
【0104】
図5Fにおいて、刺激出力回路510aは、n型MOSFET302a(302a´として示されている)及びp型MOSFET304a(304a´として示されている)を含むスイッチング回路素子302、304のセットを備え、p型MOSFET304a´のドレインは、n型MOSFET302a(302a´)のソースに接続されている。MOSFET302a´、304a´のゲートは、MCU制御部402、404の出力ピンに接続されている(図4を参照すると、MCUコントローラ402´及び404´がパルス信号であることが分かる)。p型MOSFET304a´のソースは、プログラマブル電源410(「PPSVout」410´として示されている)の出力部と、電圧調節ダイオード412、414(ツェナーダイオード412´、414´として示されている)とに接続されている。n型MOSFET302a´のドレインは、回路グランドに接続されている。図5Fにおいて、スイッチング回路素子302a´、304a´は、誘導性素子416、418(416´、418´として示されている)と容量性素子420(420´として示されている)とのセットを含むローパスフィルタ314に接続されている。実際、LCローパスフィルタは、高周波動作(連続した高周波動作を含む)に適した成分値で構成されている。刺激出力回路510aは、例えば図6A図6B、または図7に関連して図示及び説明したものと同様の高周波電気刺激を生成するために使用することができる。
【0105】
刺激出力回路510aは、高電力効率及び低電力消費を提供するための効率的な可変電圧スイッチング電源を含む、正弦波及び/または大きなデューティサイクル波形のための電力効率の良い電極駆動回路を提供する。刺激出力回路510aは、広範囲の電源変動及び振幅変調制御にわたって性能を維持する比較的少数の電子部品を有している(最適化された実施形態を提供している)。
【0106】
図5Fはさらに、例示的な配置刺激回路542と、関連するセレクタ回路に結合されたリレーアセンブリ及び回路(544)とを示し、このセレクタ回路は、刺激出力回路510aの出力及び配置刺激回路542の出力から、システムの出力550(「駆動550」として示されている)を選択する。配置刺激回路542は、例えば図8に関連して図示及び説明するものと同様の配置パルスを生成するために使用することができる。
【0107】
加えて、図5Fは、電極の両端のDC電圧の蓄積を打ち消すように構成された可変DC電流注入回路322b(510bとして示されている)を示す。可変DC電流注入回路510bは、例えばリード/電極におけるDC電圧(「ISense-」562a及び「ISense+」562bとして示されている)を検出して、そのような蓄積を軽減するために電流出力(「DriveCurrent」560として示されている)を出力する高インピーダンス入力増幅器558を含む。
【0108】
電圧・電流監視回路:上述のように、図5Gは、例示的な実施形態による、図5Aの電圧・電流監視回路512を示す。実際、電圧・電流監視回路512は、(i)制御された電流出力のためのエンベロープ振幅電圧駆動、及び、(ii)制御された電圧出力のためのエンベロープ振幅電圧駆動のそれぞれの制御のために、正弦波電流エンベロープ振幅及び正弦波電圧エンベロープ振幅を測定することができる。加えて、電圧・電流監視回路512は、差動DC電圧を検出するように構成された高インピーダンス差動電圧感知回路(546、548として示されている)を含む。図5Gにおいて、2つの高インピーダンス入力増幅器546、548は、それぞれ駆動出力信号550に接続されており(ワイヤ552a及び552bを参照)、DC電圧感知出力(「DC電圧+DC電流」554として示されている)及びDC電流感知出力(554、「DC電流」556として示されている)を提供する。
【0109】
加えて、図5Gに示すように、電圧・電流監視回路512は、回路障害が発生した場合に、電極とアクティブ回路との接続を遮断するように構成された障害緩和スイッチング回路を備えている。図5Gに示すように、電圧・電流監視回路は、障害緩和スイッチング回路と共に使用して回路障害を検出するように構成されたDC電流検出回路を備えている。図5Gに示すように、電圧・電流監視回路は、障害緩和スイッチング回路への障害感知入力として差動DC電圧を検出するように構成された高インピーダンス差動電圧感知回路を備えている。図5Gに示すように、同一の高インピーダンス差動電圧検出回路(例えば、546及び548)が、制御及び障害検出入力のための差動DC電圧を検出するために使用される。実際、電圧・電流監視回路512は、DC汚染の蓄積を打ち消す振幅及び極性でDC電流注入振幅を駆動するために、MCU(例えば、516)にフィードバックを提供することができる。
【0110】
高周波電気刺激の例
【0111】
図6Aは、例示的な実施形態による、携帯型電気刺激システム102によって生成された(例えば、図5A図5Gの高効率電気刺激発生器114からの)例示的な電気刺激106(106aとして示されている)を示す。いくつかの実施形態では、例示的な電気刺激106aは、約20Vpeakの最大電圧を有する電圧波形と、約20mApeakの最大電流を有する電流波形とを含む。例えば、いくつかの実施形態では、例示的な電気刺激106aは、-10mA~+10mAの範囲で、約-10V~+10Vの範囲である。別の実施形態では、例示的な電気刺激106aは、0mA~20mAの範囲で、約0V~20Vの範囲である。いくつかの実施形態では、携帯型電気刺激システム(例えば、102、202)は、パルス当たりの電荷密度及び電荷を、シャノン基準の安全動作限界未満に制限するように構成されている。
【0112】
図6Aに示すように、電気刺激106aは、基本周期波形Wx(f、t)(602として示されている)によって定義され、これは、時間期間tにわたる周波数fによって定義される反復パルス(例えば、正弦波)と、基本周期波形の振幅を変調する振幅エンベロープE(t)(604として示されている)とのセットを含む(例えば、ED(t)=E(t)×Wx(f、t))。
【0113】
図6Bは、例示的な実施形態による、図4の携帯型電気刺激システム102によって生成された(例えば、高効率電気刺激発生器114からの)50kHz正弦出力を含む別の例示的な電気刺激102aを示す。電気刺激106aは、約10KHzの基本周波数高調波を有する正弦波形を含む、本明細書で説明されるような任意の他の周波数及び波形であり得る。
【0114】
図7は、別の例示的な実施形態による、携帯型電気刺激システム102によって生成された(例えば、高効率電気刺激発生器114などからの)別の例示的な電気刺激106(106bとして示されている)を示す。電気刺激106bは、神経遮断後にオンセット反応を引き起こさない複数の複雑な刺激波形を提供するようにパラメータ化される。パラメータの例及び説明を表1に示す。
【0115】
【表1】
【0116】
配置補助用の方形波形出力
【0117】
図8は、例示的な実施形態による、神経位置及び理想的な電極配置を見つけるために、電気刺激発生器114によって生成されるスイッチング波形出力の一例を示す図である。図8では、スイッチング波形出力310は、二相平衡電圧波形として示されている。パラメータの例及び説明を表2に示す。
【0118】
【表2】
【0119】
いくつかの実施形態では、パルス波形周期(TW)のパラメータは、一定の値である。いくつかの実施形態では、パルス振幅(AP)は、ユーザによって提供される強度制御値(例えば、入出力124aを介して)にリンクする。
【0120】
いくつかの実施形態では、電気刺激発生器(例えば、114、114a、400、500)は、配置補助用の波形振幅を生成し、次いで治療用電気刺激に移行するように構成されている。別の実施形態では、電気刺激発生器(例えば、114、114a、400、500)は、予め定められた配置補助用の波形出力のセットを生成し、次いで、刺激のフィードバックを評価して、電極の配置の特性を決定するように構成されている。そして、コントローラは、その評価後に、電気刺激を継続的に出力するように電気刺激発生器114に指示する。図9は、例示的な実施形態による、生成された配置補助用の方形波形を示す。
【0121】
図10は、例示的実施形態による、携帯型電気刺激システム(例えば、102、202など)の例示的な動作状態を示す図である。図10に示した様々な例示的状態の説明を表3に示す。
【0122】
【表3】
【0123】
実験結果
【0124】
図12図19は、例示的な実施形態による、患者のオンセット反応を生させることなく急性疼痛を治療するために、様々な高周波刺激を標的神経に印加した実験結果を示す。
【0125】
例1:図12は、健常者において高周波電気刺激を経皮的に送達した場合の、感覚反応を示す。この感覚反応は、感覚神経の高周波刺激によって誘起されるオンセット反応と一致する。S8電極(アボット社(Abbott)製)を使用して、足関節から5~10cm近位の部位で、伏在神経を刺激した。刺激は、定電流、10kHzの正弦波からなり、4mA(A:符号1204を参照)、6mA(B:符号1206を参照)、10mA(C:符号1208を参照)、及び15mA(D:符号1210を参照)を含む様々な振幅で20秒間にわたって送達された。ユーザは、生じた感覚(知覚)の質(例えば、軽い触覚や痛み)を口頭で説明し、その感覚の強度を11段階で示した。レベル1及び2は触覚を示し、レベル3は痛覚閾値を示し、レベル4~10は軽度~重度の痛覚を示す。
【0126】
一般的に、4mAでの高周波刺激は、ほとんど感じることができない感覚(すなわち感覚閾値)が生じたが、その感覚は数秒以内に減衰し、高周波刺激が終了する前に消えた。感覚閾値は、ユーザが感知できる最も弱い刺激強度(10サイクルの10kHz正弦波、;1ミリ秒の刺激持続期間)として規定した。感覚閾値(6mA)の約150%の強度の高周波刺激は、疼痛に対するユーザの閾値と一致する感覚(感覚スコア3)を誘起し、これは刺激が終了する前にベースラインまで再び減衰した。
【0127】
表4は、経皮的にかつ様々な刺激振幅で高周波電気刺激が送達された健常者における、感覚反応の平均(±標準偏差)を示す。また、表4は、感覚反応を説明するために使用される様々な基準を示す。その基準は次の通りである。
1.ピーク感覚スコア(11段階評価);
2.応答野(単位:mA*s);
3.オフセット潜時、または感覚反応を感じるまでの最短時間(単位:秒);
4.ピーク潜時、または感覚/感覚スコアの最大値を感じるまでの時間(単位:秒);
5.感覚反応が停止するまでのオフセット時間(単位:秒)。
実際に、図12及び表4は、高周波電気刺激の振幅が大きくなるにしたがって、ピーク感覚及び応答野が増加し、一方、オンセット感覚が減少することを示す。ピーク潜時及びオフセット潜時は、より大きく変化した。また、誘起された感覚は、常に、誘起後の数秒以内に終了することも観察された。
【0128】
【表4】
【0129】
表4は、様々な電流振幅での10kHzの経皮的電気刺激を20秒間行った場合の感覚反応の平均を示す(n=3、±標準偏差)。
【0130】
表4に示すように、4mAの刺激強度では、ピーク感覚ランキングは11段階評価で0.35であり、ユーザは感覚反応を「消えていく振動」と表現した。また、ユーザが感覚反応を示すまでのオンセット時間は1.82秒であり、感覚反応が停止したことを示すオフセット時間はわずか5.72秒であり、感覚反応のピークを感じるまでの潜時は3.55秒であった。さらに、応答野は0.64(mA*s)であり、これは、感覚反応の強度が低いことを示す。
【0131】
6mAの刺激強度では、ピーク感覚ランキングは、11段階評価で3.26であり、ユーザは感覚反応を「急速に増加する感覚」と表現した。また、ユーザが感覚反応を示すまでのオンセット時間は1.04秒であり、感覚反応が停止したことを示すオフセット時間は11.09秒であり、感覚反応のピークを感じるまでの潜時は3.99秒であった。さらに、応答野は20.5mA*sであり、これは、4mAでの刺激の場合と比較して、感覚反応の強度が増加したことを示す。
【0132】
10mAの刺激強度では、ピーク感覚ランキングは11段階評価で4.95であり、ユーザは感覚反応を「最初は鋭いが、しばらくすると鋭い感覚は他の感覚と共に消えていく」と表現した。また、ユーザが感覚反応を示すまでのオンセット時間は0.60秒であり、感覚反応が停止したことを示すオフセット時間は11.67秒であり、感覚反応のピークを感じるまでの潜時は3.85秒であった。さらに、応答野は38mA*sであり、これは、4mA及び6mAでの刺激の場合と比較して、感覚反応の強度が増加したことを示す。
【0133】
15mAの刺激強度では、ピーク感覚ランキングは11段階評価で7.54であり、ユーザは感覚反応を「最初は痛いが、痛みはすぐに消えた」と表現した。また、ユーザが感覚反応を示すまでのオンセット時間は0.39秒であり、感覚反応が止まったことを示すオフセット時間は10.87秒であり、感覚反応のピークを感じるまでの潜時は2.52秒であった。さらに、応答野は58.74mA*sであり、これは、4mA、6mA、及び10mAでの刺激の場合と比較して、感覚反応の強度が増加したことを示す。
【0134】
さらに、6mA刺激は、痛覚閾値に達する刺激強度と規定された。また、痛覚閾値も、3以上のピーク感覚/感覚スコアに関連していた。また、例1では、刺激強度が増加するにしたがって、感覚スコアが増加し、感覚反応野が増加し、かつ、オンセット潜時が減少することが示された。
【0135】
加えて、15mAでの刺激は、最初は痛いが、その痛みはすぐに消失するという事実によって示されるように、最初の痛みのオンセット反応後の神経遮断では、15mA刺激は神経の遮断に成功したと判断された。したがって、例2では、以下により詳細に説明するように、15mAの刺激強度でのオンセット反応を最小限に抑えることに焦点を当てるために実施された。
【0136】
例2:15mAの刺激を伏在神経に送達したときに生じるオンセット反応を最小限に抑えるか、または除去することができるか否かを判断するために、振幅を直ちに15mAに設定するのではなく、15mAレベルまで徐々に増加させる様々なランプ条件を試験し、その後、15mAの刺激を20秒間にわたって送達した。具体的には、ランプを利用しなかった例1での15mAで刺激した場合のデータを、2つの異なるランプ率、すなわち、(1)1ミリアンペア/秒及び(2)0.5ミリアンペア/秒の場合と比較した。その結果を、図13図14及び下記の表5に示す。
【0137】
【表5】
【0138】
表5は、10kHz、15ミリアンペアの電流振幅での経皮的電気刺激を20秒間行った場合の、感覚反応の平均を示す(n=3、±標準偏差)。
【0139】
図14は、所望する15mAの刺激強度に達するまで電気刺激を徐々に増加させるために、1ミリアンペア/秒のランプ率を利用した電気刺激の結果を示す。図14で見られるように、ピーク感覚ランキングは、11段階評価で0.81まで有意に減少し、ユーザは感覚反応を「痛覚は、最初はほとんど感じなく、その後、すぐに消える」と表現した。感覚反応は、振幅が約5.3mAに達したときに初めて感じられた。また、ユーザが感覚反応を感じるまでのオンセット時間は5.89秒であり、感覚反応が停止したことを示すオフセット時間は20.67秒であり、感覚反応のピークを感じるまでの潜時は16.56秒まで増加した。応答野は、7.08mA*sであった。
【0140】
図15は、所望の15mAの刺激強度に達するまで、電気刺激を徐々に増加させるために、0.5ミリアンペア/秒のランプ率を利用した電気刺激の結果を示す。ピーク感覚ランキングは11段階評価で0~11であり、ユーザは感覚反応を「感覚反応は全く感覚がない」と表現した。これは、オフセット応答の存在が完全に除去されたことが示す。感覚反応は、振幅が約5.3mAに達したときに初めて感じられた。したがって、全ての測定値は0であった。
【0141】
実際、電気刺激を所望のまたは予め定められた刺激強度または振幅まで徐々に変化させることにより、(同じ刺激であるがランプさせない場合の)ベースラインよりも低いピーク感覚/感覚反応レベルを提供することが観察された。また、応答野がベースラインよりも小さくなり、応答が発生するまでの時間はベースラインよりも長くなり、最大潜時はベースラインよりも長くなることが観察された。また、オフセット時間がベースラインよりも長くなることも観察された。
【0142】
例3:以下の結果は、経皮的に送達される高周波電気刺激によって、急性疼痛感覚を遮断する能力を示す。図16は、疼痛を誘導する電気刺激をユーザに加えながら、様々なレベルの正弦波波形を伏在神経に経皮的に送達した場合の感覚反応を示す実験結果の図である。具体的には、図16は、2人の健常者における急性疼痛感覚の遮断における高周波電気刺激の効果を示す。
【0143】
図16では、従来の電気刺激(9パルス列、500Hz、パルス幅1ミリ秒、振幅約28mA、パルス列間の間隔4秒)を、伏在神経上のユーザの足に送達して、急性疼痛をシミュレートする/引き起こす疼痛感覚を誘起した。次に、高周波電気刺激を、0.05mA/sのランプ率、及び、91秒間持続する5.5mAプラトーで、足関節の近位部位の伏在神経に経皮的に送達した。疼痛を遮断するために高周波刺激を印加する前の、ユーザの主観的な感覚スコアは約6の最大レベルが記録され、高周波刺激の印加中は、約1の最小レベルが観察された。ここでも、高周波電気刺激の振幅は、感覚閾値の約4倍、すなわち1.3mAであった。高周波刺激の終了後も、感覚スコアの減少が、約270秒の試験期間中継続することが観察された。なお、ユーザの感覚スコアは、数分の休息後、次の試験の前に7.5まで回復した。
【0144】
実際、試験したユーザにおいては、ランプ率がより低い方が、足で誘起された痛みの感覚を、より長く、かつより顕著に軽減することが観察された。
【0145】
例4:図17は、侵害受容反射を遮断する場合の、経皮的な高周波電気刺激の結果をさらに示す。急性疼痛をシミュレートする/引き起こすために伏在神経上の足に疼痛電気刺激を送達し、それに応答する内側広筋、外側広筋、及び縫工筋から筋電図(EMG)信号を記録した。侵害受容反射によってホストされるEMGバーストは、ヒトの疼痛を評価するための定量的方法と考えられている。図17の左側プロット及び右側プロットは、足関節の近位部位の伏在神経に、高周波電気刺激(10kHz)を経皮的に送達する前後の、高周波電気刺激によって誘起されたEMGバーストを示す。図示された3つの試行は、各データトレースを表す。高周波電気刺激の前に、試験した3つの筋肉の全てにおいて、85ms~160msの範囲の潜時で、侵害受容反射を誘起した(左側プロット)。高周波電気刺激によって誘起されたEMGバーストは、刺激直後はほとんど見られなかった(右側プロット)。EMG活性の試験期間中にユーザによって報告された平均感覚スコアは、7.5から3(疼痛閾値)に減少した。実際、これらのデータは、痛覚の低下に関与する機序は、高次過程ではなく、神経遮断に起因することを示唆する。
【0146】
例5:図18は、高周波電気刺激(10サイクル、10kHz正弦波)の短パルスによって誘起されるEMG活性のバーストを示す実験結果の図であり、筋間中隔の内腔への電極の配置が、その付近の組織の共励起を引き起こすことなく伏在神経活性を遮断するために使用される電流の大きなウィンドウを提供できることを実証する。具体的には、図18は、内転筋管の筋間中隔に送達される高周波刺激の短時間のバーストによって誘起される筋活動は、脊髄反射によってホストされ、体積伝導または付近の筋肉の「共励起」に起因しないことを示す。図18の結果を得るために、高周波電気刺激(10サイクル、10kHz正弦波)の短パルスによって、EMG活性のバーストを誘起した。高周波電気刺激は、単極方式で動作する円筒状電極(モデル:Octrode;アボット社製)を介して、内転筋管の筋間中隔の内腔に経皮的に送達された。筋電図(EMG)活性を、内側広筋、外側広筋、及び縫工筋から記録した。EMGのバーストを、25mAの最小刺激強度(すなわち、運動閾値)で誘起した。さらに、バーストは、刺激後、約164msで生じた。さらに、この例示的な方法は、筋間中隔の内腔内への電極の配置が、その付近の組織の共励起を引き起こすことなく伏在神経活性を遮断するために使用される電流の大きなウィンドウを提供できることを実証した。
【0147】
例6:図19は、健常者の伏在神経に送達される高周波電気刺激波形の適用における不連続性の影響を示す。実際、図19に示すように、波形の振幅及び時間の不連続性は、感覚スコアの急激な変化によって示されるように、ユーザによって確実に検出された。実際、このような不連続性(例えば、不連続性の過渡期)を回避するシステム及び方法が、本実施形態によって企図される。
【0148】
治療方法の例
【0149】
図20は、例示的な実施形態による、末梢神経の長軸に対して平行に、または実質的に平行に、かつ直接接触させずに配置された経皮リードに高周波電気刺激を送達するための例示的な電気刺激システムを使用して、痛覚を抑制する治療(例えば、疼痛の治療)の方法2000を示す図である。本方法2000は、切開外科的処置を行うことなく実施することができる。図20に示すように、本方法2000は、介入処置のための患者の初期準備(ステップ2002)を含む。この初期準備段階には、刺激装置(例えば、102、202など)、経皮リード(例えば、110)、及びリターン電極のための術前準備や、皮膚表面への接地電極の配置による患者の接地が含まれ得る。
【0150】
いくつかの実施形態では、経皮リードは、治療部位への挿入のためにリードに剛性を付与するために経皮リードの管腔に挿入される中央スタイレットによって操作されるように構成されている。いくつかの実施形態では、経皮リードは、術前準備中に中央スタイレットと組み合わせてもよい。別の実施形態では、経皮リードは、中央スタイレットと予め組み合わされた状態で提供される。
【0151】
初期準備(例えば、ステップ2002)は、標的神経及び神経伝導を遮断する神経領域を識別するために、例えば超音波イメージングによって関心領域を画像化することを含み得る。超音波画像では、まず斜位像を用いる。また、最初の準備段階は、予想されるリード挿入経路に沿って局所麻酔薬を送達するためのニードルの挿入を含み得る。
【0152】
次いで、本方法2000は、いくつかの実施形態では、経皮リード(例えば、110)及びそれに対応する電極の配置を補助するための配置アセンブリを送達するステップ2004を含む。配置アセンブリは、いくつかの実施形態では、配置アセンブリの入口ポート(例えば、ニードル、イントロデューサ、またはシース)に挿入された経皮リードを受け取るように構成されており、経皮リードは、治療部位の関連する表面に対して規定された第1の挿入角度をなして配置される。次いで、配置アセンブリは、経皮リード(例えば、110)を末梢神経の長軸に対して平行なまたは実質的に平行な第2の挿入角度をなして、経皮リードの電極を、約3mmを超える互いに重なり合っている神経領域に配置する。いくつかの実施形態では、第1の挿入角度は、皮膚表面に対して約10度~約90度の範囲の角度をなす角度である。別の実施形態では、第1の挿入角度は、約25度~約60度の範囲、例えば約30度の角度をなす角度である。いくつかの実施形態では、配置アセンブリは、ニードルである。別の実施形態では、配置アセンブリは、トゥーイ・ニードル(硬膜外針)である。別の実施形態では、配置アセンブリは、イントロデューサである。いくつかの実施形態では、医師は、治療部位の下流に位置する疼痛領域に関連する初期疼痛スコアを提供するよう患者に求めてもよい。この処置で使用することができる配置アセンブリ/イントロデューサの例のさらなる説明は、2019年3月15日出願の「経皮リード配置アセンブリ」なる標題の米国特許出願第16/335、670号明細書に開示されている(この特許文献の開示内容の全体は、参照により本明細書中に援用される)。
【0153】
いくつかの実施形態では、本方法のステップ2004は、配置アセンブリ(例えば、湾曲トゥーイ)を標的部位内に配置するステップを含む。配置アセンブリの位置決めは、超音波イメージングによって誘導しながら行ってもよい。配置アセンブリの配置は、配置アセンブリを標的部位に挿入し、配置アセンブリを刺激装置(例えば、この処置のこのパートに使用される信号波形機器)に接続することを含み得る。次いで、本方法のステップ2004は、配置アセンブリを刺激して標的神経を刺激することにより配置を確認し、配置アセンブリの遠位端を標的神経に対して平行な方向に配向させるステップを含み得る。いくつかの実施形態では、例示的な携帯型電気刺激システム(例えば、102、202)は、配置アセンブリに印加される配置刺激を生成するように構成されている。実際、ニードルを介した配置刺激(つまり、配置アセンブリ)は、ニードルの配置を誘導するためにのみ使用される。いくつかの実施形態では、医師は、治療部位に関連する疼痛スコアを提供するよう患者に求めてもよい。配置アセンブリの送達のさらなる説明を以下に提供する。
【0154】
本方法2000は、配置アセンブリを介して経皮リード(例えば、110)を標的部位に送達するステップ2006を含む。経皮リードを標的部位に送達するステップ2006は、経皮リード(例えば、110)の遠位端を配置アセンブリ内に配置するステップと、経皮リード(例えば、110)をその表面に示されている第1のリードマーカーまで前進させるステップとを含み得る。次いで、ステップ2006は、超音波イメージャを再配向して、標的神経に対して平行な領域を画像化し、次いで、経皮リードを、指定された距離または所望の距離だけ、例えば経皮リード上に示されている第2のリードマーカーまで前進させることを含み得る。実際、経皮リード(例えば、110)内に挿入または固定されたスタイレットは、経皮リードの組織への挿入を容易にするために、経皮リードの構造に対して剛性を付与する。いくつかの実施形態では、医師は、治療部位及び/または治療部位の下流の疼痛領域に関連する更新された疼痛スコアを提供するよう患者に求めてもよい。
【0155】
本方法2000は、閉鎖処置(ステップ2008)を含む。この閉鎖手順は、ニードル、スタイレット、接続部、及び初期接地パッドを除去することを含み得る。実際、スタイレットをロック状態から解除して経皮リードから除去してもよい。閉鎖手順は、経皮リード(例えば、110)の電気的接続部を刺激装置(例えば、例示的な携帯型電気刺激システム102、202)に接続することを含み得る。刺激装置を動作させて、配置位置を確認してもよい。いくつかの実施形態では、医師は、治療部位の下流の疼痛領域に関連する疼痛スコアを提供するよう患者に求めてもよい。
【0156】
図21A図21B図21C、及び図21Dは、例示的な実施形態による、リードの電極を、約3mmを超える互いに重なり合っている神経領域において、標的神経の長軸に対して平行に、または実質的に平行に配置した電気刺激によって、治療部位における神経伝導を遮断するために(例えば、疼痛治療を提供するために)、患者の治療部位に経皮リードを配置する図20に示した方法の例示的な手順を示す図である。
【0157】
図21Aは、配置アセンブリとしての湾曲トゥーイ2020を治療部位112(112aとして示されている)に挿入(2022)して、標的神経110(110aとして示されている)に配置した状態を示す。湾曲トゥーイ2020を標的神経110に配置する前に、上述のように、治療部位を、例えば、局所麻酔薬で処置したり、またはスキャンしたりしてもよい。いくつかの実施形態では、局所麻酔薬は、例えば、ニードルを介して、予想されるリード挿入経路に沿って導入され、配置デバイスは、イメージング(例えば、超音波)によって誘導され得る。
【0158】
湾曲トゥーイ2020の位置決めを補助するために、湾曲トゥーイ2020に刺激を加えて、湾曲トゥーイ2020の先端部が標的神経110aに隣接または接触することを確認するようにしてもよい。
【0159】
図21Bでは、湾曲トゥーイ2020を刺激供給源2026に接続し、湾曲トゥーイ2020に配置刺激2028を印加して、湾曲トゥーイ2020(例えば、湾曲トゥーイ110の先端部)に刺激を加えた状態を示す。このため、挿入処置を実施する医師または医療従事者は、このようにして、標的神経110aに対する、湾曲トゥーイ2020の配置及び/または位置(例えば、湾曲トゥーイ110の先端部または一部)を確認することができる。
【0160】
次いで、湾曲トゥーイ2020を使用して、経皮リード110(110aとして示されている)の挿入を補助/誘導することができる。図21Cは、経皮リード110a(1以上の電極2029を備えて構成されている)を、湾曲トゥーイ2020を介して治療部位に挿入し(2030)、例えば、標的神経110aに対して平行に、または実質的に平行に配置した状態を示す。
【0161】
経皮リード110aの挿入後、湾曲トゥーイ2020は、経皮リード110aを挿入位置に残した状態で、除去することができる。刺激または確認刺激(2032)を、経皮リード110aの電極2029を介して印加することにより、治療構成における電極/リードの所望の配置及び/または位置決めを確認する(図21D)。確認刺激2032は、治療刺激(例えば、106)とは異なる刺激である。いくつかの実施形態では、確認刺激2032は、治療刺激106と同じ刺激である。いくつかの実施形態では、図21Dの刺激供給源は、本明細書の様々な実施形態に記載されたような刺激システム(例えば、102、202)である。別の実施形態では、図21Dの刺激供給源は、外部のファンクションジェネレータである。
【0162】
いくつかの実施形態では、医師または医療従事者は、治療部位の下流の位置での疼痛の知覚が停止したか否かを患者に質問してもよい。別の実施形態では、医師または医療従事者は、標的神経に関連すると予想される治療部位の下流の位置に感覚刺激を印加し、その位置で感覚入力が感知されないことを確認してもよい。経皮リードの配置を確認した後、治療部位を閉鎖及び/または包帯をする。確認刺激は、配置アセンブリの位置決めを確認するために使用される刺激供給源(例えば、2026)と同一の刺激供給源によって、またはそれとは異なる電源によって印加される。
【0163】
いくつかの実施形態では、配置アセンブリは、緩やかな屈曲を有する固定角度のイントロデューサとして構成されている。配置アセンブリは、流体注入または他の方法を必要とすることなく、経皮リードの通過を可能にするべく事前に組織内に空間を形成するためのイントロデューサの組織内への前進を容易にする先端部を有し得る。配置アセンブリの先端部または他の部分は、配置アセンブリの配置を確認するための電気刺激の印加を容易にするために、導電性を有し得る。イントロデューササブシステムは、いくつかの実施形態では、ニードルとイントロデューサとを含む。ニードルは、経皮リードの挿入が可能なイントロデューサから除去することができる。イントロデューサの先端部は、経皮リードの電極を神経に対して平行になるように配置するのを容易にするために、イントロデューサの先端部の初期角度から10°~90°の範囲の角度、より具体的には25°~60°の範囲の角度、例えば30°の角度の方向転換角度になるように、入口ポートに対して角度をなすように方向付けされている。
【0164】
いくつかの実施形態では、イントロデューサの先端部の方向付けは、固定された先端部の曲線を有するニードルまたはイントロデューサの使用によって達成される。別の実施形態では、イントロデューサの先端部の方向付けは、直線状のニードル/イントロデューサ内を通してまたはその外周に沿って挿入されるシースの使用によって達成される。ニードル/イントロデューサを抜去すると、シースは曲がった形状を呈する。さらに別の実施形態では、イントロデューサの先端部の方向付けは、可逆的に曲げることができるニードル/イントロデューサの使用によって達成される。
【0165】
配置アセンブリ及び/または経皮リードは、電気的神経遮断処置のためのキットとして提供してもよい。キットは、物品及び/または構成要素を提供してもよい。いくつかの実施形態では、キットは、ECG電極及びEMG電極を含み得る。キットは、容器、例えば、その内部に収容した物品を覆う除去可能な密封カバーを有する適当なトレイ、を含み得る。いくつかの実施形態では、キットは、ドレープ、部位ドレッシング、テープ、皮膚マーカーを含み得る。キットは、いくつかの実施形態では、導電性の液体またはゲル、防腐剤、及び/またはスキンプレップ液体の1以上の容器をさらに含み得る。また、キットは、導電性の液体またはゲルのワイプ、防腐ワイプ、またはスキンプレップワイプなどの予めパッケージされたワイプを含み得る。また、キットは、薬用液や電解液を含み得る(例えば、電解液は、液体形態で注入されるが、経皮電極の開口部を出た後に実質的に粘性になるか、またはさらには固体状になる生体吸収性ゲル材料であってもよいし、または、そのような生体吸収性ゲル材料を含んでいてもよい)。いくつかの実施形態では、キットは、携帯型刺激装置システム(例えば、102、202)及びそれに対応するケーブル(例えば、108)を含む。
【0166】
いくつかの実施形態では、経皮リード(例えば、110)を使用して、追加の局所麻酔薬を、経皮リードの先端領域またはそれに沿った他の領域に送達してもよい。実際、シリンジを経皮リードのコネクタに接続して、局所麻酔薬をリードに送達してもよい。その後、治療部位を包帯で覆って、治療部位を閉じる。医師は、例えば疼痛を治療するために、刺激装置の動作に関する指示を提供し、電気刺激の送達を開始させる。
【0167】
いくつかの実施形態では、配置アセンブリは、例えば手術後の膝痛を治療するために、大腿中央の伏在神経遮断の近位に配置されるように構成されている(例えば、適切な寸法及び形状に形成されている)。
【0168】
疼痛治療の方法の例
【0169】
図22図23、及び図24は、1以上の電極を介して内転筋管で伏在神経の神経伝導を遮断することによって膝の痛みを治療するために使用される例示的な神経遮断療法を示す。他の疼痛治療法も、本明細書に開示される方法を用いて、同様に実施することができる。
【0170】
図22では、経皮リード110bは、筋肉隔壁2058によって画定される空洞2056内にぴったり収まるように構成されている(すなわち、適切な形状及びサイズに形成されている)。このようなリード構成は、体積伝導に起因する、内転筋管2054を形成する筋肉(例えば、縫工筋2060、内側広筋2062、及び長内転筋2064)の運動活動を誘起することなく、伏在神経2052の即時かつ可逆的な神経遮断の提供を可能にする。これにより、治療用の神経伝導刺激を可能にするとともに、筋肉の共励起を低減または排除することができる。加えて、このような構成により、内転筋管2054内での経皮電極110bの移動を防止することもできる。さらに、経皮電極100bは、伏在神経2052の近傍に配置する必要があり、例えば縫工筋2060を貫通する必要があるため、患者による経皮電極100bの偶発的な除去のリスクを軽減することができる(これは、神経遮断を一定期間(例えば、数週間の期間)にわたって提供するために使用されているシステムにおいて懸念されることである)。
【0171】
一般的に、伏在神経の活動の選択的な調節及び遮断は、内転筋管2054の解剖学的構造に合わせて行うことができる。内転筋管2054は、腱膜トンネルとして、大腿前面の中央3分の1に位置する。また、内転筋管2054は、縫工筋2060の下側に位置し、内側広筋2062及び長内転筋/大後筋2064と接する。内転筋管2054は、伏在神経2052、大腿神経、動脈、及び静脈2066(図22参照)、並びに、リンパ節(図示せず)を含む。大腿部の遠位前内側1/3において、内転筋管2054は、内側広筋2062から長内転筋/大内転筋2064まで延びる筋間中隔(筋下筋膜)2058によって覆われており、これにより、三角形状の空洞またはポケット2056を形成している。この空洞またはポケット2056は、大腿部の遠位1/3に位置し、約5cm~6cmの長さ及び約2cmの近位開口部を有し、経皮リード110bを安全に配置するのに十分な空間を提供する。この部位の近くでは、伏在神経2052は、約3mm~約4mmの範囲の直径を有し得る。構造的には、筋間中隔2058は、伏在神経2052を周囲の興奮性組織から絶縁する電気絶縁体としての役割を果たす結合組織から構成されている。このため、予備的なEMG研究では、筋間中隔2058において、伏在神経2052に、高周波電気刺激を経皮的に最大で25mAまでの大きな刺激振幅で印加したところ、その付近の筋肉の共励起を伴わない治療用の神経伝導刺激が得られた。
【0172】
このように、経皮リード110b(110または110aも同様)は、内転筋管2054を覆う筋間中隔2058の三角形状のキャビティまたはポケット2056内に挿入され得る。経皮リード110bは、伏在神経2052に対応する方向に沿って、伏在神経2052からの距離、例えば最大で約1.5cmまでの距離を隔てた位置に挿入され得る。伏在神経2052によってホストされる疼痛の知覚を遮断するための電気刺激は、内転筋管2054の筋間隔壁2058で伏在神経2052に送達することができる。そして、伏在神経2052は、その付近の神経及び筋肉を共活性化することなく、経皮電気刺激によって調節及び遮断され、一方でそれと同時に、内転筋管2054内の電極移動を防止することができる。さらに、例示的なシステム及び方法で使用される経皮電極設計は、医師または患者が行うことができる直接的かつ安全な電極除去を可能にする。したがって、本実施形態は、外科的処置の前後に実施することができる数秒間ないし数分間の1回の入院または外来処置で使用することができる。また、本開示のシステム及び方法は、外科的処置後に数時間ないし数週間にわたって電気刺激を送達し、膝及び/または脚や足の内側面から生じる急性疼痛及び/または慢性疼痛などの急性疼痛及び/または慢性疼痛を緩和するために、標的神経(例えば、伏在神経)を完全または部分的に遮断するように設計することができる。
【0173】
図23は、本明細書に開示及び説明した方法を用いた疼痛の治療の特定の利点をさらに示す。図23において、神経伝導遮断療法は、治療部位112(112aとして示されている)で、伏在神経(2052a)の位置に適用される。この治療は、伏在神経2052aの位置で神経伝導を遮断することができるので、伏在神経2052aの位置よりも上流(2070として示されている)では、伏在神経及びそれに対応する末梢神経の感覚機能(及び運動機能(該当する場合))は影響を受けない。そして、実際、伏在神経2052aの位置よりも下流(2072として示されている)では、伏在神経に関連する感覚機能のみが影響を受ける。このため、本開示の方法を用いて、治療部位112aの下流の部位(例えば、2074を含む領域2072)における術後膝痛を治療することができる。
【0174】
図24は、例示的な実施形態による、標的神経に対して平行に配置された経皮電極を使用し、その経皮電極に高周波電気刺激を送達することによって疼痛を治療する経皮的方法に関連する実験を示す。
【0175】
健常人(N=5)を対象にして、電気刺激の試験を複数回行った。足関節の伏在神経(図24参照)を電気刺激することによって、急性疼痛感覚を誘起した。10kHzの基本周波数の正弦波形を有する高周波電気刺激を、経皮リードを介して、内転筋管で伏在神経に対して略平行に配置した電極に加えた(図24参照)。様々な高周波刺激振幅(全て≦25mA)及び持続期間(数秒~数分)を用いた。急性疼痛スコアと筋活動とを含む評価項目を記録した。本試験では、ユーザは、手持ち式のポテンショメータを使用して、疼痛強度を10段階評価で記録した。ここでは、10段階中の3を、疼痛閾値として定義した。筋活動は、目視とEMG記録との両方でモニタした。
【0176】
本試験では、伏在神経に対して略平行に配置された経皮電極を介した伏在神経の高周波電気刺激によって、伏在神経の付近の筋肉の望ましくない収縮を誘起することなく、遠位で誘起された急性疼痛感覚を遮断する有効性を実証した。本試験では、遮断作用が、調節可能かつ可逆的であることがさらに分かった。
【0177】
実際、本試験は、内転筋管の感覚神経と略平行に配置された経皮電極を介して、内転筋管の感覚神経を経皮的に高周波電気刺激すると、その感覚神経の近傍の筋肉または組織の共刺激または刺激を引き起こすことなく、ヒトの急性疼痛感覚を一時的かつ可逆的に遮断することができると結論付けている。
【0178】
他の実験及び結果のさらなる説明は、2019年3月15日出願の「疼痛感覚を経皮的に遮断するためのシステム及び方法」なる標題の米国特許出願第16/335、673号明細書に記載されている(この特許文献の開示内容の全体は、参照により本明細書中に援用される)。また、2019年3月15日出願の「疼痛感覚を経皮的に遮断するためのシステム及び方法」なる標題の米国特許出願第16/335、673号明細書及び2019年3月15日出願の「疼痛感覚を経皮的に遮断するためのシステム及び方法」なる標題の米国特許出願第16/355、651号明細書に記載されたものを含む、他の電気波形プロファイル及び構成を使用してもよい。
【0179】
経皮リードの例
【0180】
図25A及び図25Bは、本明細書に記載の方法を実施するために例示的な携帯型電気刺激システム(例えば、102、202など)と共に使用することができる例示的な経皮リード110(110cとして示されている)を示す。経皮リード110cは、例示的な実施形態にしたがって、リード上に配置された電極を標的神経に対して平行に、または実質的に平行に配向させるために、標的神経の長軸の一側に沿うように意図された配向で、組織を介して挿入するのに特に適している。本明細書で説明するように、経皮リードは、イントロデューサ/ニードルを介して挿入することができる。
【0181】
経皮リードを標的神経に対して平行な標的組織空間内に前進させるのを補助するために、経皮リード110cは、いくつかの実施形態では、経皮リードの中央領域に挿入されて、挿入手順中に経皮リードを支持する、すなわち剛性を付与する取り外し可能なスタイレット(例えば、取り外し可能な中央スタイレット)を含む。いくつかの実施形態では、経皮リードは、該リードを、ニードルから最大10cmの距離だけ、標的神経に対して平行な標的組織空間内に前進させることを容易にする剛性を有するように構成されている。いくつかの実施形態では、経皮リードは、該リードを、ニードルから最大4cmの距離だけ、標的組織空間に前進させることを容易にする剛性を有する。いくつかの実施形態では、経皮リードは、該リードを、ニードルから最大3cmの距離だけ、標的組織空間内に前進させることを容易にする剛性を有する。
【0182】
いくつかの実施形態では、中央スタイレットは、約0.2032mm~0.254mm(約0.008インチ~0.010インチ)の直径を有する。中央スタイレットは、ステンレス鋼、タングステン、チタン、炭素、または他の適切な医療グレードの材料から作製することができる。中央スタイレットは、挿入を容易にするために、経皮リードに可逆的または非可逆的にロックされ得る。
【0183】
いくつかの実施形態では、経皮リードは、中央スタイレットを可逆的にロックするためのクランプを有する。クランプは、リードの管腔とスタイレットとの間に摩擦を生じさせる。いくつかの実施形態では、中央スタイレットは、クランプを有する。
【0184】
その代わりに、またはそれと組み合わせて、経皮リードは、電極本体の金属補強を含み、リードを標的神経に対して平行な標的組織空間内にニードルから10cmまでの距離だけ前進させるために必要な剛性を提供する。
【0185】
図25Aは、経皮リード110cの機能的概略図を示す。別の例示的な実施形態では、経皮リード110cは、標的神経の長軸に対して平行に、または実質的に平行に配置される編組電極で構成されている。図25Bは、本明細書に記載するように、例えば末梢神経(例えば伏在神経)で使用するためのサイズを有する経皮リード110cの別の例を示す。
【0186】
経皮リード110cは、1以上のチューブ部材で構成することができ、各チューブ部材(例えば、2074、2076)は、内側導電層2078(2078a、2078bとして示されておる)と、内側導電層2078を部分的または完全に取り囲んで電極対を形成する外側絶縁層2080(2080a、2080bとして示されている)とを含む。内側導電層2078及び外側絶縁層2080は、いくつかの実施形態では、同軸チューブとして構成されており、チューブ毎に、1つの電極接点対が形成されている。別の実施形態では、チューブ毎に、単一の電極接点のみが形成される。さらに別の実施形態では、内側導電層2078及び外側絶縁層2080は、複数の電極領域を形成するように構成されている。内側導電層2078(2078c、2078dとして示されておる)は、いくつかの実施形態では、経皮リード110cの近位端において露出し、刺激装置システム(例えば、102、202など)への電気的接触及び接続のための部分を提供する。いくつかの実施形態では、経皮リード100cの長手方向の本体は、リード110cの電極(及びそれに関連する電極)を標的神経に対して平行に配向させて配置することを可能にし、かつ、本体の外側の接点(例えば、2078c及び/または2078d)への電気的接続のためのアクセスを提供するのに十分な長さを有している。別の実施形態では、各チューブ状部材の内側導電層2078は、接点への電気接続を提供するリード線(図示せず)に接続される。
【0187】
ワイヤチューブの絶縁は、個々のワイヤを絶縁するか、または絶縁性チューブ内に導電性チューブを配置することによって実現される。いくつかの実施形態では、個々のワイヤを封入して、内側導電層2078及び外側絶縁層2080を形成してもよい。別の実施形態では、単一の外側絶縁層2080が、コイル状の内側導電層上に封入される。別の実施形態では、コイル状導電層の実施形態の例は、2019年3月15日出願の「経皮リード」なる標題の米国特許出願第16/335、660号明細書に記載されている(この特許文献の開示内容の全体は、参照により本明細書中に援用される)。他のリードの例は、特に、WO/2016/032929に記載されている(この特許文献の開示内容の全体は、参照により本明細書中に援用される)。
【0188】
いくつかの実施形態では、ワイヤは、例えば、移動防止手段として、または超音波視認性を高めるために、リードの長さに沿って互いに隣接するコイル間に空間がない状態で密充填してもよいし(例えば、閉コイル)、または、コイル間に空間がある状態で粗充填してもよい(例えば、互いに隣接するコイル間の間隔は均一または不均一である)。
【0189】
いくつかの実施形態では、経皮リードは、2以上の同軸導電性部材を有する長手方向本体部を含む完全な編組アセンブリを形成する。同軸導電性部材の各々は、ポリマーに埋め込まれたメッシュチューブに織り合わせて形成した複数の導体(例えば、スチールリボン、炭素リボン、白金リボン、炭素など)を有し、各メッシュチューブは、ポリマーによって画定される1以上の露出領域を有する。別の実施形態では、編組導電層の実施形態のさらなる説明は、2019年3月15日出願の「経皮リード」なる標題の米国特許出願第16/335、660号明細書に記載されている。
【0190】
実際、経皮リード(例えば、110、110a、110b、110c)は、少なくとも1つの電極がカソードとして機能し、別の電極がリターンアノードとして機能する双極方式で動作するように構成された2以上の電極を形成することができる。別の実施形態では、経皮リード(例えば、110、110a、110b、110c)は、皮膚上に配置された表面電極によって提供される電気的リターンを有する単一の電極を形成する。さらに別の実施形態では、経皮リード(例えば、110、110a、110b、110c)は、多極方式で動作するように3以上の電極で構成されている。多極電極は、電極の位置調節及び/または電流ステアリングのために使用することができる。
【0191】
さらに図25Aを参照して、いくつかの実施形態では、内側導電層2078の導電性材料は、電気治療を行うために標的神経に対して平行に配置することを目的としている1以上の電極部位(2078a、2078bとして示されている)を形成する。外側絶縁層2080(例えば、2080a、2080b)は、内側導電層2078(例えば、2078a、2078b)を取り囲んで密封し、内側導電層2078a、2078bの一部を露出させて電極を画定する開口部を含む。
【0192】
チューブ(例えば、2074、2076)は、特定のワイヤカウント及び/またはコイルピッチを有し、所与の内径及び外径のチューブに形成されたコイルワイヤを含み得る。ワイヤは、平坦なものであってもよいし、丸みを帯びたものであってもよい。コイルワイヤを互いに交差させて編組メッシュを形成してもよい。別の実施形態では、編組メッシュは、チューブに固定される単一の一体構造体として形成される。
【0193】
いくつかの実施形態では、導電性材料は、患者の体外に位置する接触部位(例えば、2078c、2078d)で露出し、波形発生器から埋込み電極に治療波形を伝送するケーブル配線に接続される。
【0194】
引き続き図25Aを参照して、経皮リード(例えば、110、110a、110b、110c)は、連続した個別の電極で構成されている。別の実施形態では、経皮リード(例えば、110、110a、110b、110c)は、特定の長さを有する電極セグメントを互いに所定の間隔を隔てて配置した、複数の電極セグメントで構成されている。例えば、3つのセグメントで構成されている電極は、各セグメントが1mmの電極長を有し、各セグメントが4mmの間隔を隔てて配置されており、これにより、約11mmのリード長が提供される。
【0195】
経皮リード(例えば、110、110a、110b、110c)は、約1mm~約10cm、例えば約3mm~約10mmの電極長を有するように構成され得る。リード本体上に複数の電極を設ける場合、各電極は、1mm~10cm、例えば10mmの間隔を隔てて配置され得る。
【0196】
引き続き図25Aを参照して、内側導電層2078(例えば、層2074または2076の)は、304または316ステンレススチール、白金、炭素、及び他の好適な医療用グレードの電極材料などの金属から作製され得る。また、外側絶縁層2080は、ポリイミド、Pebax(登録商標)、または他の好適な医療用グレードの絶縁などのポリマーから作製され得る。
【0197】
引き続き図25Aを参照して、経皮リード(例えば、110、110a、110b、110c)の遠位端は、ボールチップ2084を含む。ボールチップ2084は、血管または神経幹を穿刺及び/または損傷する可能性を最小限に抑えることによって、経皮リード(例えば、110、110a、110b、110c)の組織内への前進を容易にする。
【0198】
経皮リード(例えば、110、110a、110b、110c)は、経皮リードの細長い壁部(例えば、第1の部材2074及び第2の部材2076)の剛性を高める中央スタイレット2086を含む。いくつかの実施形態では、中央スタイレット2086は、経皮リード(例えば、110、110a、110b、110c)の管腔内(例えば、第1の部材2074の内面)に固定的に配置される。別の実施形態では、中央スタイレット2086は、取り外し可能であり、経皮リードとの係合時に中央スタイレット2086を経皮リード(例えば、110、110a、110b、110c)の管腔(例えば、第1の部材2074の内面)に固定するクランプを有する。
【0199】
一般的に、特定の設計に関わらず、経皮電極アセンブリは、単極形式または単極モードで刺激を送達することができる。単極モードでは、1以上の刺激電極を標的神経に配置し、比較的大きな表面積を有する第2の分散電極を患者の身体の表面に配置して回路を完成させる。あるいは、刺激は、双極方式または双極モードで送達してもよく、この場合、上記のシステムは、1以上のアノードをさらに含む。各アノードは、経皮電極に配置してもよいし、あるいは、皮膚接触面に配置してもよい。刺激を双極方式または双極モードで送達する場合、1以上の電極(「カソード」とも呼ばれる)を、標的神経の付近に経皮的に配置するとともに、1以上のアノードを、標的神経の付近に経皮的に配置するか、または標的神経上の皮膚上に配置して、カソードとアノードとの間で電気エネルギーの送達を優先的に集中させる。いずれのモードでも、シャントやショートの可能性を避けるために、電極は互いに十分な距離を隔てて配置する必要がある。各アノードの組織接触面または皮膚接触面は、刺激電極の組織接触面の表面積と少なくとも同じかまたはそれよりも大きい表面積を有することが望ましい。
【0200】
2019年3月15日出願の「経皮リード」なる標題の米国特許出願第16/335、660号明細書(この特許文献の開示内容の全体は、参照により本明細書中に援用される)に記載されているものを含め、他の経皮リード及び構成を使用してもよい。
【0201】
いくつかの実施形態では、単一の電極接点を使用してもよい。別の実施形態では、複数の電極接点(例えば、約2~20の接点、例えば約4~16の接点、例えば約6~12の接点)を使用してもよい。
【0202】
明瞭にするために別個の実施形態で説明した本発明のいくつかの特徴は、互いに組み合わせて単一の実施形態で提供してもよいことを理解されたい。その逆に、簡潔にするために単一の実施形態で説明した本発明の様々な特徴は、別々にまたは任意の適切な部分的な組み合わせで提供してもよい。
【0203】
本発明をその特定の実施形態と併せて説明したが、様々な代替形態、変更形態、及び変形形態が当業者には明らかであろう。したがって、添付の特許請求の範囲の精神及び広範な範囲に含まれるそのような代替形態、変更形態、及び変形形態の全てを包含することを意図している。本明細書に引用されたすべての刊行物、特許、及び特許出願は、それぞれが参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されると同じ程度で、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。加えて、本出願における文献の引用または特定は、当該文献が発明の先行技術として利用可能であることを認めるものと解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B-1】
図5B-2】
図5C-1】
図5C-2】
図5D-1】
図5D-2】
図5D-3】
図5E
図5F-1】
図5F-2】
図5G
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21A
図21B
図21C
図21D
図22
図23
図24
図25A
図25B
【国際調査報告】