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特表2022-520814逆グリオキシル酸短絡を通じたグリコール酸およびグリシンの生成のための微生物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-01
(54)【発明の名称】逆グリオキシル酸短絡を通じたグリコール酸およびグリシンの生成のための微生物および方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/21 20060101AFI20220325BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220325BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220325BHJP
   C12P 7/42 20060101ALI20220325BHJP
   C12P 13/04 20060101ALI20220325BHJP
   C12N 15/53 20060101ALN20220325BHJP
   C12N 15/31 20060101ALN20220325BHJP
   C12N 15/52 20060101ALN20220325BHJP
   C12N 15/29 20060101ALN20220325BHJP
【FI】
C12N1/21
C12N1/15 ZNA
C12N1/19
C12P7/42
C12P13/04
C12N15/53
C12N15/31
C12N15/52
C12N15/29
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547355
(86)(22)【出願日】2020-02-14
(85)【翻訳文提出日】2021-09-22
(86)【国際出願番号】 BR2020050041
(87)【国際公開番号】W WO2020163935
(87)【国際公開日】2020-08-20
(31)【優先権主張番号】62/806,195
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319007767
【氏名又は名称】ブラスケム エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】コッホ ダニエル ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ガルゼラーニ フェリペ
(72)【発明者】
【氏名】ラデュアン アレキサンドリノ パウロ モイセス
(72)【発明者】
【氏名】モラン ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ ジャン マリー
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AD04
4B064AE03
4B064BJ04
4B064BJ11
4B064CA02
4B064CA05
4B064CA06
4B064CA19
4B064CC24
4B064CD09
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA26X
4B065AA26Y
4B065AA57X
4B065AA57Y
4B065AA72X
4B065AA72Y
4B065AA88Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065BD36
4B065CA10
4B065CA17
4B065CA41
4B065CA43
4B065CA44
4B065CA47
4B065CA50
(57)【要約】
本発明は、逆グリオキシル酸短絡を通じたグリコール酸および/またはグリシンの生成および収率改善のための生化学的経路、グリオキシラートを生成する組換え微生物および方法を提供する。逆グリオキシル酸短絡は、ホスホエノールピルビン酸(PEP)からオキサロアセタート(OAA)へのカルボキシル化を触媒する酵素、またはピルベートからオキサロアセタート(OAA)へのカルボキシル化を触媒する酵素、またはピルベートからマラートへのカルボキシル化もしくは上記反応のいずれかの組み合わせを触媒する酵素;マラートからマリル-CoAへの変換を触媒する酵素;マリル-CoAからグリオキシラートおよびアセチル-CoAへの変換を触媒する酵素;および、任意で、オキサロアセタート(OAA)からマラートへの変換を触媒する酵素を含む。グリオキシラートは、グリコラートを生成するよう還元される。あるいは、グリオキシラートは、グリシンに変換される。本発明の逆グリオキシル酸短絡経路は、生成物収率を増加させるよう他のグリコール酸および/またはグリシン生成経路と相乗作用的に利用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリコール酸(GA)および/またはグリシンの合成のためのグリオキシラートを生成する組換え微生物であって、
(a)ピルベートからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、
(b)マラートからマリルコエンザイムAへの変換を触媒するリンゴ酸チオキナーゼをコードする遺伝子、ならびに
(c)マリルコエンザイムAからグリオキシラートおよびアセチル-CoAへの変換を触媒するマリルコエンザイムAリアーゼをコードする遺伝子
を含む、前記組換え微生物。
【請求項2】
グリコール酸(GA)および/またはグリシンの合成のためのグリオキシラートを生成する組換え微生物であって、
(a)ピルベートからオキサロアセタート(OAA)への変換を触媒するピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸からOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸からOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼをコードする遺伝子、
(b)OAAからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、
(c)マラートからマリルコエンザイムAへの変換を触媒するリンゴ酸チオキナーゼをコードする遺伝子、ならびに
(d)マリルコエンザイムAからグリオキシラートおよびアセチル-CoAへの変換を触媒するマリルコエンザイムAリアーゼをコードする遺伝子
を含み、マリルコエンザイムAリアーゼによって生成されるアセチル-CoAが、GAおよび/またはグリシンの生合成を増加させるようOAAと組み合わさる、前記組換え微生物。
【請求項3】
グリコール酸(GA)および/またはグリシンの合成のためのグリオキシラートを生成する組換え微生物であって、
(a)ピルベートからオキサロアセタート(OAA)への変換を触媒するピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸からOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸からOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼをコードする遺伝子、
(b)マラートからマリルコエンザイムAへの変換を触媒するリンゴ酸チオキナーゼをコードする遺伝子、ならびに
(c)リンゴ酸コエンザイムAからグリオキシラートおよびアセチル-CoAへの変換を触媒するマリルコエンザイムAリアーゼをコードする遺伝子
を含み、オキサロアセタートからマラートへの変換を触媒しない、前記組換え微生物。
【請求項4】
マリルコエンザイムAリアーゼにより生成されるアセチル-CoAを通じてイソプロピルアルコール、エタノール、アセトン、クエン酸、イタコン酸、酢酸、酪酸、(ポリ-)3-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシイソ酪酸、3-アミノイソ酪酸、2-ヒドロキシイソ酪酸、メタクリル酸、(ポリ)グルタミン酸、グルタミン酸、アルギニン、オルニチン、シトルリン、ロイシン、イソロイシン、およびプロリンを生成しない、請求項1~3のいずれか1項記載の組換え微生物。
【請求項5】
マリルコエンザイムAリアーゼにより生成されるアセチル-CoAが、GAおよび/またはグリシンの生合成を増加させるようOAAと組み合わさる、請求項1および3~4のいずれか1項記載の組換え微生物。
【請求項6】
リンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子内に変異を含み、該変異がオキサロアセタートからマラート、マラートからピルベートおよび/またはマラートからオキサロアセタートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼ活性の部分的または完全な阻害をもたらす、請求項1~5のいずれか1項記載の組換え微生物。
【請求項7】
グリオキシラートからグリコラートへの変換を触媒するNADH依存性グリオキシル酸レダクターゼをコードする遺伝子またはグリオキシラートからグリコラートへの変換を触媒するNADPH依存性グリオキシル酸レダクターゼをコードする遺伝子を含む、請求項1~6のいずれか1項記載の組換え微生物。
【請求項8】
アラニン-グルオキシル酸アミノトランスフェラーゼをコードする遺伝子、グリシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、グリシントランスアミナーゼをコードする遺伝子、セリン-グリオキシル酸トランスアミナーゼをコードする遺伝子、および/またはグリオキシラートからグリシンへの変換を触媒するグリシンオキシダーゼをコードする遺伝子を含む、請求項1~7のいずれか1項記載の組換え微生物。
【請求項9】
ピルベートからマラートへのカルボキシル化を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼが、酵素分類(E.C.)1.1.1.38、E.C. 1.1.1.39、またはE.C. 1.1.1.40に属するものである、請求項1~8のいずれか1項記載の組換え微生物。
【請求項10】
オキサロアセタートからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼが、酵素分類(E.C.)1.1.1.37に属するものである、請求項2、4、5、7、8および9のいずれか1項記載の組換え微生物。
【請求項11】
ピルベートからマラートへのカルボキシル化を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子が、maeA、maeB、dme、mez、mae1、nad-me1およびnad-me2、またはそれらのホモログからなる群より選択される、請求項1~10のいずれか1項記載の組換え微生物。
【請求項12】
遺伝子maeAが大腸菌(E.coli)、シュードモナス(Pseudomonas)またはバシラス(Bacillus)由来である、遺伝子maeBが大腸菌またはサルモネラ(Salmonella)由来である、遺伝子dmeがリゾビウム(Rhizobium)由来である、遺伝子mezがマイコバクテリウム(Mycobacterium)由来である、遺伝子mae1が出芽酵母(S.cerevisiae)由来である、および遺伝子nad-me1またはnad-me2がシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)由来である、請求項10記載の組換え微生物。
【請求項13】
遺伝子maeAがB.サブチリス(B. subtillis)由来である、遺伝子dmeがR.メリロテ(R. melilote)由来である、または遺伝子mezがマイコバクテリウム・ツベルキュロシス(Mycobacterium tuberculosis)由来である、請求項12記載の組換え微生物。
【請求項14】
オキサロアセタートからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子が、大腸菌、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、サッカロマイセス(Saccharomyces)およびアラビドプシス(Arabidopsis)由来の遺伝子mdhまたはそのホモログからなる群より選択される、請求項2および4~13のいずれか1項記載の組換え微生物。
【請求項15】
遺伝子mdhがS.コエリカラー(S. coelicolor)由来である、または遺伝子mdh1/2/3が出芽酵母由来である、請求項14記載の組換え微生物。
【請求項16】
リンゴ酸チオキナーゼをコードする遺伝子が、メチロバクテリウム(Methylobacterium)属の種、メチロバクテリウム・エキストロクエンス(Methylobacterium extorquens)、大腸菌、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophiles)、ヒフォミクロビウム(Hyphomicrobium)属の種、メタノカルドコックス・ヤンナスキイ(Methanocaldococcus jannaschii)、メタノサーモバクター・サームオートトロフィカス(Methanothermobacter thermautotrophicus)、リゾビウム、メチロコッカス・カプスラタス(Methylococcus capsulatus)もしくはシュードモナス由来のsucCDおよび/もしくはSucCD-2および/もしくはmtkAB、またはそれらのホモログである、請求項1~15のいずれか1項記載の組換え微生物。
【請求項17】
マリルコエンザイムAリアーゼをコードする遺伝子が、メチロバクテリウム・エキストロクエンス、ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)、ストレプトマイセス、クロロフレクサス・オーランティアカス(Chloroflexus aurantiacus)、ニトロソモナス・ユーロピア(Nitrosomonas europaea)、メチロコッカス・カプスランス(Methylococcus capsulans)、ネレイダ・イグナバ(Nereida ignava)、ヒフォミクロビウム・メチロボラム(Hyphomicrobium methylovorum)、サラッソビウス・アクティバス(Thalassobius activus)、ロゼオバクター・リトラリス(Roseobacter litoralis)、ヒフォミクロビウム・デニトリフィカンス(Hyphomicrobium denitrificans)、R.スフェロイデス、マイコバクテリウム・スメグマティス(Mycobacterium smegmatis)もしくはロドコッカス・ファシアンス(Rhodococcus fascians)由来のmclおよび/もしくはMcl1および/もしくはmclA、またはそれらのホモログである、請求項1~16のいずれか1項記載の組換え微生物。
【請求項18】
ピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子が、リゾビウム・エトリ(Rhizobium etli)由来のpyc、酵母由来のPYC1もしくはPYC2、B.サブチリス由来のpyc、またはそれらのホモログである、請求項2~17のいずれか1項記載の組換え微生物。
【請求項19】
ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子が、大腸菌由来のppc、R.マリナス(R. marinus)由来のppcもしくはpepC、M.サームオートトロフィカス由来のppcA、トウモロコシ(Z. mays)由来のpep1、シロイヌナズナ(A. thaliana)由来のppc1/2/3、G.マックス(G. max)由来もしくはロドサーマス(Rhodothermus)、コリネバクテリウム、サルモネラ、ヒフォミクロビウム、ストレプトコッカス(Streptococcus)、ストレプトマイセス、パントエア(Pantoea)、バシラス、クロストリジウム(Clostridium)、シュードモナス、ロドシュードモナス(Rhodopseudomonas)、ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)、アマランタス・ヒポコンドリアカス(Amaranthus hypochondriacus)、トリチカム・エスチバム(Triticum aestivum)またはムラサキウマゴヤシ(Medicago sativa)由来のppc、またはそれらのホモログである、請求項2~18のいずれか1項記載の組換え微生物。
【請求項20】
ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼをコードする遺伝子が、大腸菌由来のpckもしくはpckA、セレノモナス・ルミナンティウム(Selenomonas ruminantium)由来のpckA、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)由来のpckA、クレブシエラ(Klebsiella)属の種由来のpckA、サーマス属の種由来のpckA、ルミノコッカス・アルブス(Ruminococcus albus)もしくはルミノコッカス・フラベファシエンス(Ruminococcus flavefaciens)由来のpckもしくはpckA、アクチノバシラス・スクシノジェネス(Actinobacillus succinogenes)由来のpckA、ストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis)由来もしくはバシラス、ルミニクロストリジウム・サーモセラム(Ruminiclostridium thermocellum)、クレブシエラ、マイコバクテリウム由来のpckもしくはpckA、またはそれらのホモログである、請求項2~19のいずれか1項記載の組換え微生物。
【請求項21】
(a)OAAおよびマリル-CoAリアーゼにより生成されるアセチル-coAをシトラートに変換するクエン酸シンターゼをコードする遺伝子、
(b)シトラートをシス-アコニテートに変換するクエン酸ヒドロ-リアーゼをコードする遺伝子、
(c)シス-アコニテートをイソシトラートに変換するD-トレオ-イソクエン酸ヒドロ-リアーゼまたはアコニターゼをコードする遺伝子、
(d)イソシトラートをスクシナートおよびグリオキシラートに変換するイソクエン酸リアーゼをコードする遺伝子、
(e)スクシナートをフマラートに変換するコハク酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、ならびに
(f)フマラートをマラートに変換するフマラーゼをコードする遺伝子
を含む、請求項1~20のいずれか1項記載の組換え微生物。
【請求項22】
リンゴ酸シンターゼをコードする遺伝子の機能喪失変異または欠失を含む、請求項1~21のいずれか1項記載の組換え微生物。
【請求項23】
グルオキシル酸レダクターゼ活性をコードする遺伝子が、大腸菌由来のycdWおよび/もしくはyiaE、出芽酵母由来のGOR1、サーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)由来のgyaR、ならびに/またはシロイヌナズナ由来のGLYR1からなる群より選択される、請求項8~22のいずれか1項記載の組換え微生物。
【請求項24】
ピルベートをOAAに変換するピルビン酸カルボキシラーゼが、酵素分類体系番号E.C. 6.4.1.1に属するものであり、ホスホエノールピルビン酸をOAAに変換するホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼが、E.C. 4.1.1.31に属するものであり、ホスホエノールピルビン酸をOAAに変換するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼがE.C. 4.1.1.32およびE.C. 4.1.1.49に属するものである、請求項2~23のいずれか1項記載の組換え微生物。
【請求項25】
マラートをマリルコエンザイムAに変換するリンゴ酸チオキナーゼが、酵素分類体系番号E.C. 6.2.1.4、E.C. 6.2.1.5、E.C. 6.2.1.9もしくはE.C. 6.2.1.-に属するものであり、および/またはマリルコエンザイムAをグリオキシラートおよびアセチル-CoAに変換するマリルコエンザイムAリアーゼが、E.C. 4.3.1.24もしくはE.C. 4.3.1.25に属するものである、請求項1~24のいずれか1項記載の組換え微生物。
【請求項26】
1つまたは複数の遺伝子が異種的に発現される、請求項1~25のいずれか1項記載の組換え微生物。
【請求項27】
(a)イソクエン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、
(b)ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸オキシダーゼおよび/またはピルビン酸ギ酸-リアーゼをコードする遺伝子、
(c)ピルビン酸キナーゼをコードする遺伝子、ならびに
(d)グリコール酸オキシダーゼをコードする遺伝子
からなる群より選択される1つまたは複数の内在性遺伝子の活性を減少させる欠失または修飾を含む、請求項1~26のいずれか1項記載の組換え微生物。
【請求項28】
リンゴ酸シンターゼをコードする遺伝子が、大腸菌由来のaceBおよび/もしくはglcBまたは酵母由来のDAL7および/もしくはMLS1である、請求項22記載の組換え微生物。
【請求項29】
イソクエン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子が、大腸菌由来のicdまたは酵母由来のIDP2および/もしくはIDH1/2である、請求項27記載の組換え微生物。
【請求項30】
(a)グリオキシル酸カルボリガーゼをコードする遺伝子、
(b)2-オキソ-4-ヒドロキシグルタル酸アルドラーゼをコードする遺伝子、
(c)グリコアルデヒドレダクターゼをコードする遺伝子、および
(d)イソクエン酸リアーゼのレプレッサーをコードする遺伝子
からなる群より選択される1つまたは複数の内在性遺伝子の活性を減少させる欠失または修飾を含む、請求項1~29のいずれか1項記載の組換え微生物。
【請求項31】
グリオキシル酸カルボリガーゼをコードする遺伝子がgclであり、2-オキソ-4-ヒドロキシグルタル酸アルドラーゼをコードする遺伝子がedAであり、グリコアルデヒドレダクターゼをコードする遺伝子がfucOおよび/またはgldAであり、イソクエン酸リアーゼのレプレッサーをコードする遺伝子がiclRである、請求項22記載の組換え微生物。
【請求項32】
アラニン-グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼをコードする遺伝子、グリシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、グリシントランスアミナーゼをコードする遺伝子、セリン-グリオキシル酸トランスアミナーゼをコードする遺伝子、および/またはグリシンオキシダーゼをコードする遺伝子の発現レベルが増加している、請求項1~31のいずれか1項記載の組換え微生物。
【請求項33】
アラニントランスアミナーゼをコードする遺伝子および/またはNADPH依存性グルタミン酸シンターゼをコードする遺伝子の発現レベルが増加している、請求項1~32のいずれか1項記載の組換え微生物。
【請求項34】
リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、リンゴ酸チオキナーゼおよびマリルコエンザイムAリアーゼにより触媒される反応において他のグリコール酸および/またはグリシン生成経路により生成されるNADHおよびCO2を利用する、請求項1~33のいずれか1項記載の組換え微生物。
【請求項35】
リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、リンゴ酸チオキナーゼおよびマリルコエンザイムAリアーゼにより触媒される反応において外部から添加されたCO2、カルボナート、および/または還元剤を利用する、請求項1~33のいずれか1項記載の組換え微生物。
【請求項36】
還元剤が、水素、電子および/またはNAD(P)Hである、請求項35記載の組換え微生物。
【請求項37】
還元剤が、外部供給源由来である、請求項35記載の組換え微生物。
【請求項38】
リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、リンゴ酸チオキナーゼおよびマリルコエンザイムAリアーゼにより触媒される反応においてセリン/ヒドロキシピルビン酸ベースの経路により生成されるNADHおよびCO2を利用する、請求項1~34のいずれか1項記載の組換え微生物。
【請求項39】
リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、リンゴ酸チオキナーゼおよびマリルコエンザイムAリアーゼにより触媒される反応においてグリオキシル酸短絡経路により生成されるNADHおよびCO2を利用する、請求項1~34のいずれか1項記載の組換え微生物。
【請求項40】
リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、リンゴ酸チオキナーゼおよびマリルコエンザイムAリアーゼにより触媒される反応においてD-エリスロースからグリコアルデヒドベースの経路により生成されるNADHおよびCO2を利用する、請求項1~34のいずれか1項記載の組換え微生物。
【請求項41】
リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、リンゴ酸チオキナーゼおよびマリルコエンザイムAリアーゼにより触媒される反応においてペントース誘導体からグリコアルデヒドベースの経路により生成されるNADHおよびCO2を利用する、請求項1~34のいずれか1項記載の組換え微生物。
【請求項42】
細菌、酵母および真菌からなる群より選択される、請求項1~41のいずれか1項記載の組換え微生物。
【請求項43】
グルコール酸および/またはグリシンの合成が、ピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、リンゴ酸チオキナーゼ、マリルコエンザイムAリアーゼ、アラニン-グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ、グリシンデヒドロゲナーゼ、グリシントランスアミナーゼ、セリン-グリオキシル酸トランスアミナーゼ、グリシンオキシダーゼ、NADH依存性グリオキシル酸レダクターゼおよびNADPH依存性グリオキサル酸レダクターゼからなる群より選択される少なくとも1つの酵素の発現または活性または特異性のレベルを増加させることにより増加する、請求項1~35のいずれか1項記載の組換え微生物。
【請求項44】
グルコール酸および/またはグリシンの合成が、リンゴ酸シンターゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸オキシダーゼおよび/またはピルビン酸ギ酸-リアーゼ、ピルビン酸キナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、グリオキシル酸カルボリガーゼ、2-オキソ-4-ヒドロキシグルタル酸アルドラーゼ、グリコアルデヒドレダクターゼならびにグリコール酸オキシダーゼからなる群より選択される少なくとも1つの酵素の発現または活性または特異性のレベルを減少させることにより増加する、請求項1~43のいずれか1項記載の組換え微生物。
【請求項45】
グルコール酸および/またはグリシンの合成が、イソクエン酸リアーゼのレプレッサーをコードする遺伝子の発現のレベルを減少させることによって増加する、請求項1~44のいずれか1項記載の組換え微生物。
【請求項46】
前記請求項のいずれか一項記載の組換え微生物を用いてグリコール酸および/またはグリシンを生成する方法であって、グリコール酸および/またはグリシンが生成されるまで、炭素源を提供する原料を含む培養培地中で該組換え微生物を培養する工程を含む、前記方法。
【請求項47】
炭素源が、糖、グリセロール、アルコール、有機酸、アルカン、脂肪酸、ヘミセルロース、リグノセルロース、タンパク質、二酸化炭素および一酸化炭素からなる群より選択される、請求項46記載の方法。
【請求項48】
炭素源がヘキソースおよび/またはペントース糖である、請求項46または47記載の方法。
【請求項49】
炭素源がグルコースである、請求項46~48のいずれか1項記載の方法。
【請求項50】
炭素源がスクロースである、請求項46~48のいずれか1項記載の方法。
【請求項51】
炭素源がCO2またはカルボナートである、請求項46または47記載の方法。
【請求項52】
グリオキシラートからグリコール酸および/またはグリシンを生成する組換え微生物を作製する方法であって、該微生物に、
(a)ピルベートからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、
(b)マラートからマリルコエンザイムAへの変換を触媒するリンゴ酸チオキナーゼをコードする遺伝子、および
(c)マリルコエンザイムAからグリオキシラートおよびアセチル-CoAへの変換を触媒するマリルコエンザイムAリアーゼをコードする遺伝子
を導入する工程を含む、前記方法。
【請求項53】
グリオキシラートからグリコール酸および/またはグリシンを生成する組換え微生物を作製する方法であって、該微生物に、
(a)ピルベートからOAAへの変換を触媒するピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸からOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸からOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼをコードする遺伝子、
(b)OAAからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、
(c)マラートからマリルコエンザイムAへの変換を触媒するリンゴ酸チオキナーゼをコードする遺伝子、ならびに
(d)マリルコエンザイムAからグリオキシラートおよびアセチル-CoAへの変換を触媒するマリルコエンザイムAリアーゼをコードする遺伝子
を導入する工程を含み、マリルコエンザイムAリアーゼによって生成されるアセチル-CoAが、GAおよび/またはグリシンの生合成を増加させるようOAAと組み合わさる、前記方法。
【請求項54】
グリオキシラートからグリコール酸および/またはグリシンを生成する組換え微生物を作製する方法であって、該微生物に、
(a)ピルベートからオキサロアセタート(OAA)への変換を触媒するピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸からOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸からOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼをコードする遺伝子、
(b)マラートからマリルコエンザイムAへの変換を触媒するリンゴ酸チオキナーゼをコードする遺伝子、ならびに
(c)マリルコエンザイムAからグリオキシラートおよびアセチル-CoAへの変換を触媒するマリルコエンザイムAリアーゼをコードする遺伝子
を導入する工程を含み、該組換え微生物がオキサロアセタートからマラートへの変換を触媒しない、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年2月15日に出願された「MICROORGANISMS AND METHODS FOR THE PRODUCTION OF GLYCOLIC ACID AND GLYCINE VIA REVERSE GLYOXYLATE SHUNT」を標題とする米国仮出願第62/806,195号に基づく優先権を主張し、その開示を参照により本明細書に組み入れる。
【0002】
発明の分野
本願は、逆グリオキシル酸短絡を用いたグリオキシラートからのグリコール酸および/またはグリシンの生合成および収率改善のための組換え微生物ならびに当該組換え微生物を作製する方法に関する。本願はさらに、当該組換え微生物を用いる逆グリオキシル酸短絡を通じたヘキソースまたはペントース原料のような炭素源からグリコール酸および/またはグリシンを生成する方法に関する。本願はさらに、これらの化合物および/または組換え微生物の1つまたは複数を含む組成物に関する。
【0003】
配列表に関する宣言
本願に付属する配列表は、紙面の複写物に代えてテキスト形式で提供され、参照により本明細書に組み入れられる。配列表を含むテキストファイルの名称は、BRSK-010_02WO_ST25.txtである。このテキストファイルは約45.5 KBであり、2020年2月12日に作成され、EFS-Webを通じて電子的に提出される。
【背景技術】
【0004】
背景
グリコール酸およびグリシンは、多くの化合物の製造において価値のある原材料である。例えば、グリコール酸は、ポリグリコール酸および他の生体適合性コポリマー等の生成物の製造における重要な原材料である。同様に、グリシンは、医薬および美容産業、農薬品(ピレトロイド系殺虫剤)におけるならびに食品および飼料添加物としての多くの用途を有する。
【0005】
グリコール酸(GA)およびグリシンの環境に優しい製造プロセスを開発するために、研究者らは、GAおよび/またはグリシンを生成する生合成経路を有するよう微生物を改変した。例えば、米国特許第9,034,615号(特許文献1)および米国特許第8,945,888号(特許文献2)は、グリオキシル酸短絡(GS)経路を通じたグリコール酸の生成を開示している。米国特許前公開第2014/0295510号(特許文献3)は、グリコール酸の生成のための真核生物のGS経路を開示し、WO 2017/059236(特許文献4)、WO 2016/079440(特許文献5)、US 2016/0076061(特許文献6)およびUS 2015/0147794(特許文献7)のような特許文献は、ペントースベースの糖を用いたグリコール酸の生成を開示している。これらおよび他の特許文献に記載される生化学的経路は、高いGAおよびグリシンの収率を提供する目的で開発されたものであるが、これらの経路によって提供されるGAおよびグリシンの収率は、これらの経路が生成物の収率を低下させる過剰なNADHおよび過剰なCO2を生成するため、依然として最適ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第9,034,615号
【特許文献2】米国特許第8,945,888号
【特許文献3】米国特許前公開第2014/0295510号
【特許文献4】WO 2017/059236
【特許文献5】WO 2016/079440
【特許文献6】US 2016/0076061
【特許文献7】US 2015/0147794
【発明の概要】
【0007】
本発明は、既存の代謝経路と比較して高い理論的生産力でグリコール酸およびグリシンを生成する生合成経路を提供し、生成物の低い生産力の問題を解決または、一部、軽減する。本発明は、グリコール酸およびグリシンを生成しそれらの収率を増加させるよう炭素固定酵素および逆グリオキシル酸短絡酵素が連結された、生合成経路を提供する。本発明はまた、以前に記載された経路からの炭素損失を防ぐため、および炭素固定を逆グリオキシル酸短絡に連結させるためのさらなる改善を提供する。
【0008】
本発明はまた、以前に記載された経路のグリコール酸およびグリシンの理論的収率を、一部、これらの経路により放出されるCO2および/もしくはNAD(P)Hを利用することにより、または外部から提供される炭素源(CO2、HCO3-、もしくは他のカルボナート)を捕捉することにより、さらに増加させることを目的とする。本発明はさらに、GAおよびグリシンを生成しかつ以前に記載された経路のGAおよびグリシンの生産力を改善する生合成経路を提供し、炭素の流れをピルベートおよびホスホエノールピルビン酸のノードにおける炭素固定を通じてオキサロアセタートに経路変更し、一部、その微生物にとってネイティブである代謝および酵素反応における炭素損失を減少させるまたは消滅させさえする。
【0009】
したがって、本発明は、同量の出発炭素源(例えば、糖)を用いてより多いGAおよびグリシンの生成を可能にし、現在の方法の経済的成功を増大させる方法を提供する。
【0010】
本開示の要旨
本開示は、組換え微生物およびその使用を提供する。当該組換え微生物を作製する方法も提供される。様々な態様において、本開示の組換え微生物は、中間体としてのグリオキシラートを通じてグリコール酸(GA)および/またはグリシンを生成する。
【0011】
いくつかの態様において、グリコール酸(GA)および/またはグリシンの合成のためのグリオキシラートを生成する組換え微生物であって、(a)ピルベートからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、(b)マラートからマリルコエンザイムAへの変換を触媒するリンゴ酸チオキナーゼをコードする遺伝子、ならびに(c)マリルコエンザイムAからグリオキシラートおよびアセチル-CoAへの変換を触媒するマリルコエンザイムAリアーゼをコードする遺伝子を含む前記組換え微生物が、本明細書に提供される。
【0012】
いくつかの態様において、グリコール酸(GA)および/またはグリシンの合成のためのグリオキシラートを生成する組換え微生物であって、(a)ピルベートからオキサロアセタート(OAA)への変換を触媒するピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸からOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸からOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼをコードする遺伝子、(b)マラートからマリルコエンザイムAへの変換を触媒するリンゴ酸チオキナーゼをコードする遺伝子、ならびに(c)マリルコエンザイムAからグリオキシラートおよびアセチル-CoAへの変換を触媒するマリルコエンザイムAリアーゼをコードする遺伝子を含み、マリルコエンザイムAリアーゼにより生成されるアセチル-CoAが、GAおよび/またはグリシンの生合成を増加させるようOAAと組み合わさる前記組換え微生物が、本明細書に提供される。
【0013】
いくつかの態様において、グリコール酸(GA)および/またはグリシンの合成のためのグリオキシラートを生成する組換え微生物であって、(a)ピルベートからオキサロアセタート(OAA)への変換を触媒するピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸からOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸からOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼをコードする遺伝子、(b)OAAからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、(c)マラートからマリルコエンザイムAへの変換を触媒するリンゴ酸チオキナーゼをコードする遺伝子、ならびに(d)マリルコエンザイムAからグリオキシラートおよびアセチル-CoAへの変換を触媒するマリルコエンザイムAリアーゼをコードする遺伝子を含み、マリルコエンザイムAリアーゼによって生成されるアセチル-CoAが、GAおよび/またはグリシンの生合成を増加させるようOAAと組み合わさる前記組換え微生物が、本明細書に提供される。これらの態様のいくつかにおいて、組換え微生物は、ピルベートからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を含み得る。
【0014】
いくつかの態様において、グリコール酸(GA)および/またはグリシンの合成のためのグリオキシラートを生成する組換え微生物であって、(a)ピルベートからオキサロアセタート(OAA)への変換を触媒するピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸からOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸からOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼをコードする遺伝子、(b)マラートからマリルコエンザイムAへの変換を触媒するリンゴ酸チオキナーゼをコードする遺伝子、ならびに(c)マリルコエンザイムAからグリオキシラートおよびアセチル-CoAへの変換を触媒するマリルコエンザイムAリアーゼをコードする遺伝子を含み、オキサロアセタートからマラートへの変換を触媒しない前記組換え微生物が、本明細書に提供される。
【0015】
いくつかの態様において、グリコール酸(GA)および/またはグリシンの合成のためのグリオキシラートを生成する組換え微生物であって、(a)ピルベートからオキサロアセタート(OAA)への変換を触媒するピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸からOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸からOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼをコードする遺伝子、(b)マラートからマリルコエンザイムAへの変換を触媒するリンゴ酸チオキナーゼをコードする遺伝子、ならびに(c)マリルコエンザイムAからグリオキシラートおよびアセチル-CoAへの変換を触媒するマリルコエンザイムAリアーゼをコードする遺伝子を含み、マリルコエンザイムAリアーゼによって生成されるアセチル-CoAが、GAおよび/またはグリシンの生合成を増加させるようOAAと組み合わさる前記組換え微生物が、本明細書に提供される。これらの態様において、この組換え微生物は、減少したグルコースリン酸イソメラーゼ活性を有する、または、より好ましくは、酵素グルコースリン酸イソメラーゼによりグルコース-6-リン酸からフルクトース-6-リン酸への変換を触媒しない。さらに、この組換え微生物は、過剰発現される内在性または外来性酵素クエン酸シンターゼ、イソクエン酸リアーゼおよび/またはグリオキシル酸レダクターゼを含む場合または含まない場合がある。グルコースリン酸イソメラーゼの活性を減少させることにより、またはより好ましくはグルコース-6-リン酸からフルクトース-6-リン酸への変換を触媒するグルコースリン酸イソメラーゼをコードする遺伝子(例えば、大腸菌(E.coli)における遺伝子pqi)を欠失させることにより、その炭素源は、グリオキシラートからグリコラートへの最適な変換のために潜在的に必要とされるさらなるNADPHを提供するよう、少なくとも部分的に、ペントースリン酸経路(PPP)に経路変更され得る。いくつかの態様において、PPP経路を通じて生成されるCO2は、潜在的に、本願で提案されるカルボキシラーゼおよびカルボキシキナーゼの使用により再取り込みされ得る。
【0016】
本明細書に記載される態様の任意の1つの組換え微生物は、マリルコエンザイムAリアーゼにより生成されるアセチル-CoAを通じて、イソプロピルアルコール、エタノール、アセトン、クエン酸、イタコン酸、酢酸、酪酸、(ポリ-)3-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシイソ酪酸、3-アミノイソ酪酸、2-ヒドロキシイソ酪酸、メタクリル酸、(ポリ)グルタミン酸、グルタミン酸、アルギニン、オルニチン、シトルリン、ロイシン、イソロイシン、およびプロリンを生成しないものであり得る。
【0017】
本開示の組換え微生物において、マリルコエンザイムAリアーゼにより生成されるアセチル-CoAは、GAおよび/またはグリシンの生合成を増加させるようOAAと組み合わさると考えられる。
【0018】
いくつかの態様において、本明細書に記載される組換え微生物の任意の1つは、リンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子内に、オキサロアセタートからマラート、マラートからピルベートおよび/またはマラートからオキサロアセタートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼ活性の部分的または完全な阻害をもたらす欠失または機能喪失変異を含み得る。
【0019】
組換え微生物がグリコール酸を生成する態様において、組換え微生物は、グリオキシラートからグリコラートへの変換を触媒するNADH依存性グリオキシル酸レダクターゼをコードする遺伝子および/またはグリオキシラートからグリコラートへの変換を触媒するNADPH依存性グリオキシル酸レダクターゼをコードする遺伝子を含む。
【0020】
組換え微生物がグリシンを生成する態様において、組換え微生物は、アラニン-グルオキシル酸アミノトランスフェラーゼをコードする遺伝子、グリシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、グリシントランスアミナーゼをコードする遺伝子、セリン-グリオキシル酸トランスアミナーゼをコードする遺伝子、および/またはグリオキシラートからグリシンへの変換を触媒するグリシンオキシダーゼをコードする遺伝子を含む。
【0021】
いくつかの態様において、本開示の組換え微生物は、グリコール酸およびグリシンの両方を生成し得、グリオキシラートをGAおよび/またはグリシンに変換する上記遺伝子の1つまたは複数を含み得る。
【0022】
いくつかの態様において、グリオキシル酸レダクターゼ活性をコードする遺伝子は、大腸菌由来のycdWおよび/もしくはyiaE、出芽酵母(S. cerevisiae)由来のGOR1、サーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)由来のgyaR、ならびに/またはシロイヌナズナ(A. thaliana)由来のGLYR1からなる群より選択される。本開示はまた、グリオキシラートからグリコラートへの変換を触媒するこれらの遺伝子のホモログの使用を想定している。
【0023】
いくつかの態様において、本開示の組換え微生物におけるピルベートからマラートへのカルボキシル化を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼは、酵素分類(E.C.)1.1.1.38、E.C. 1.1.1.39、またはE.C. 1.1.1.40に属するものである。
【0024】
いくつかの態様において、本開示の組換え微生物におけるオキサロアセタートからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼは、酵素分類(E.C.)1.1.1.37に属するものである。
【0025】
いくつかの態様において、本開示の組換え微生物におけるピルベートからマラートへのカルボキシル化を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子は、maeA、maeB、dme、mez、mae1、nad-me1およびnad-me2、またはそれらのホモログからなる群より選択される。これらの態様において、遺伝子maeAは大腸菌、シュードモナス(Pseudomonas)またはバシラス(Bacillus)由来であり得、遺伝子maeBは大腸菌またはサルモネラ(Salmonella)由来であり得、遺伝子dmeはリゾビウム(Rhizobium)由来であり得、遺伝子mezはマイコバクテリウム(Mycobacterium)由来であり得、遺伝子mae1は出芽酵母由来であり得、遺伝子nad-me1またはnad-me2はシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)由来である。例えば、遺伝子maeAはB.サブチリス(B. subtillis)由来であり得、遺伝子dmeはR.メリロテ(R. melilote)由来であり得、または遺伝子mezはマイコバクテリウム・ツベルキュロシス(Mycobacterium tuberculosis)由来であり得る。本開示はまた、ピルベートからマラートへのカルボキシル化を触媒するためのこれらの遺伝子のホモログの使用を想定している。
【0026】
いくつかの態様において、本開示の組換え微生物においてオキサロアセタートからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子は、大腸菌、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、サッカロマイセス(Saccharomyces)およびアラビドプシス由来の遺伝子mdhからなる群より選択される。例えば、遺伝子mdhはS.コエリカラー(S. coelicolor)由来であり得、または遺伝子mdh1/2/3は出芽酵母由来であり得る。本開示はまた、オキサロアセタートからマラートへの変換を触媒するためのこれらの遺伝子のホモログの使用を想定している。
【0027】
いくつかの態様において、マラートをマリルコエンザイムAに変換するリンゴ酸チオキナーゼは、酵素分類体系番号E.C. 6.2.1.4、E.C. 6.2.1.5、E.C. 6.2.1.9、またはE.C. 6.2.1.-に属するものであり得る。
【0028】
いくつかの態様において、本開示の組換え微生物におけるリンゴ酸チオキナーゼをコードする遺伝子は、メチロバクテリウム(Methylobacterium)属の種、メチロバクテリウム・エキストロクエンス(Methylobacterium extorquens)、大腸菌、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophiles)、ヒフォミクロビウム(Hyphomicrobium)属の種、メタノカルドコックス・ヤンナスキイ(Methanocaldococcus jannaschii)、メタノサーモバクター・サームオートトロフィカス(Methanothermobacter thermautotrophicus)、リゾビウム、メチロコッカス・カプスラタス(Methylococcus capsulatus)もしくはシュードモナス由来のsucCDおよび/もしくはSucCD-2および/もしくはmtkAB、またはそれらのホモログであり得る。
【0029】
いくつかの態様において、マリルコエンザイムAをグリオキシラートおよびアセチル-CoAに変換するマリルコエンザイムAリアーゼは、E.C. 4.3.1.24またはE.C. 4.3.1.25に属するものである。
【0030】
いくつかの態様において、本開示の組換え微生物におけるマリルコエンザイムAリアーゼをコードする遺伝子は、メチロバクテリウム・エキストロクエンス、ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)、ストレプトマイセス、クロロフレクサス・オーランティアカス(Chloroflexus aurantiacus)、ニトロソモナス・ユーロピア(Nitrosomonas europaea)、メチロコッカス・カプスランス(Methylococcus capsulans)、ネレイダ・イグナバ(Nereida ignava)、ヒフォミクロビウム・メチロボラム(Hyphomicrobium methylovorum)、サラッソビウス・アクティバス(Thalassobius activus)、ロゼオバクター・リトラリス(Roseobacter litoralis)、ヒフォミクロビウム・デニトリフィカンス(Hyphomicrobium denitrificans)、R.スフェロイデス、マイコバクテリウム・スメグマティス(Mycobacterium smegmatis)もしくはロドコッカス・ファシアンス(Rhodococcus fascians)由来のmclおよび/もしくはMcl1および/もしくはmclA、またはそれらのホモログであり得る。
【0031】
いくつかの態様において、ピルベートをOAAに変換するピルビン酸カルボキシラーゼは酵素分類体系番号E.C. 6.4.1.1に属するものであり得、ホスホエノールピルビン酸をOAAに変換するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼはE.C. 4.1.1.31に属するものであり得、ホスホエノールピルビン酸をOAAに変換するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼはE.C. 4.1.1.32およびE.C. 4.1.1.49に属するものであり得る。
【0032】
いくつかの態様において、本開示の組換え微生物におけるピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子は、リゾビウム・エトリ(Rhizobium etli)由来のpyc、酵母由来のPYC1もしくはPYC2、もしくはB.サブチリス由来のpyc、またはそれらのホモログであり得る。
【0033】
いくつかの態様において、本開示の組換え微生物におけるホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子は、大腸菌由来のppc、R.マリナス(R. marinus)由来のppcもしくはpepC、M.サームオートトロフィカス由来のppcA、トウモロコシ(Z. mays)由来のpep1、シロイヌナズナ由来のppc1/2/3、G.マックス(G. max)由来もしくはロドサーマス(Rhodothermus)、コリネバクテリウム、サルモネラ、ヒフォミクロビウム、ストレプトコッカス(Streptococcus)、ストレプトマイセス、パントエア(Pantoea)、バシラス、クロストリジウム(Clostridium)、シュードモナス、ロドシュードモナス(Rhodopseudomonas)、ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)、アマランタス・ヒポコンドリアカス(Amaranthus hypochondriacus)、トリチカム・エスチバム(Triticum aestivum)またはムラサキウマゴヤシ(Medicago sativa)由来のppc、またはそれらのホモログであ得る。
【0034】
いくつかの態様において、本開示の組換え微生物におけるホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼをコードする遺伝子は、大腸菌(Escherichia coli)由来のpckもしくはpckA、セレノモナス・ルミナンティウム(Selenomonas ruminantium)由来のpckA、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)由来のpckA、クレブシエラ(Klebsiella)属の種由来のpckA、サーマス属の種由来のpckA、ルミノコッカス・アルブス(Ruminococcus albus)もしくはルミノコッカス・フラベファシエンス(Ruminococcus flavefaciens)由来のpckもしくはpckA、アクチノバシラス・スクシノジェネス(Actinobacillus succinogenes)由来のpckA、ストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis)由来もしくはバシラス、ルミニクロストリジウム・サーモセラム(Ruminiclostridium thermocellum)、クレブシエラ、マイコバクテリウム由来のpckもしくはpckA、またはそれらのホモログであり得る。
【0035】
いくつかの態様において、本開示の組換え微生物は、(a)OAAおよびマリル-CoAリアーゼにより生成されるアセチル-CoAをシトラートに変換するクエン酸シンターゼをコードする遺伝子、(b)シトラートをシス-アコニテートに変換するクエン酸ヒドロ-リアーゼをコードする遺伝子、(c)シス-アコニテートをイソシトラートに変換するD-トレオ-イソクエン酸ヒドロ-リアーゼまたはアコニターゼをコードする遺伝子、(d)イソシトラートをスクシナートおよびグリオキシラートに変換するイソクエン酸リアーゼをコードする遺伝子、(e)スクシナートをフマラートに変換するコハク酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、ならびに(f)フマラートをマラートに変換するフマラーゼをコードする遺伝子、を含む。同じ態様において、組換え微生物は、少なくとも部分的に保存されたマラートからオキサロアセタートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼを有し得る。あるいは、マラートからオキサロアセタートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼは、リンゴ酸チオキナーゼ酵素の活性が優先されるよう下方調節または不活性化さえされ得る。
【0036】
いくつかの態様において、本開示の組換え微生物は、リンゴ酸シンターゼをコードする遺伝子の機能喪失変異または欠失を含み得る。リンゴ酸シンターゼをコードする例示的な遺伝子には、大腸菌由来のaceBおよび/もしくはglcBまたは酵母、例えば出芽酵母由来のDAL7および/もしくはMLS1が含まれる。
【0037】
本明細書に開示される態様の任意の1つの組換え微生物は、(a)イソクエン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、(b)ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸オキシダーゼおよび/またはピルビン酸ギ酸リアーゼをコードする遺伝子、(c)ピルビン酸キナーゼをコードする遺伝子、ならびに(d)グリコール酸オキシダーゼをコードする遺伝子、からなる群より選択される1つまたは複数の内在性遺伝子の活性を減少させる欠失または修飾を含み得る。イソクエン酸デヒドロゲナーゼをコードする例示的な遺伝子には、大腸菌由来のicdまたは酵母由来のIDP2および/もしくはIDH1/2が含まれる。ピルビン酸デヒドロゲナーゼをコードする例示的な遺伝子には、大腸菌由来のaceEおよび/またはaceFが含まれる。ピルビン酸キナーゼをコードする例示的な遺伝子には、大腸菌由来のpykAおよび/またはpykFが含まれる。グリコール酸オキシダーゼをコードする例示的な遺伝子には、大腸菌由来のglcD、glcE、glcFおよび/またはglcGが含まれる。例示的な遺伝子。
【0038】
本明細書に開示される態様の任意の1つの組換え微生物は、ピルビン酸デヒドロゲナーゼの活性を減少させる欠失または修飾を含み得、アセチル-CoAへのピルベートの変換からの主要な炭素損失を防ぐまたは少なくとも減少させ、本願で提案される酵素候補のカルボキシル化活性を通じて炭素をピルベートまたはホスホエノールピルビン酸からオキサロアセタートへと経路変更させる。
【0039】
本明細書に開示される態様の任意の1つの組換え微生物は、ピルビン酸キナーゼの活性を減少させる欠失または修飾を含み得、本願で提案される酵素候補のカルボキシル化活性を通じてオキサロアセタートへのホスホエノールピルビン酸の炭素固定を優先する。
【0040】
本明細書に開示される態様の任意の1つの組換え微生物は、(a)グリオキシル酸カルボリガーゼをコードする遺伝子、(b)2-オキソ-4-ヒドロキシグルタル酸アルドラーゼをコードする遺伝子、(c)グリコアルデヒドレダクターゼをコードする遺伝子、および(d)イソクエン酸リアーゼのレプレッサーをコードする遺伝子、からなる群より選択される1つまたは複数の内在性遺伝子の活性を減少させる欠失または修飾を含み得る。グリオキシル酸カルボリガーゼをコードする例示的な遺伝子はgclである。2-オキソ-4-ヒドロキシグルタル酸アルドラーゼをコードする例示的な遺伝子はedAである。グリコアルデヒドレダクターゼをコードする例示的な遺伝子はfucOおよびgldAである。イソクエン酸リアーゼのレプレッサーをコードする例示的な遺伝子はiclRである。
【0041】
いくつかの態様において、本開示の組換え微生物においては、アラニン-グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼをコードする遺伝子、グリシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、グリシントランスアミナーゼをコードする遺伝子、セリン-グリオキシル酸トランスアミナーゼをコードする遺伝子、および/またはグリシンオキシダーゼをコードする遺伝子の発現レベルが増加している。
【0042】
いくつかの態様において、本開示の組換え微生物においては、アラニントランスアミナーゼをコードする遺伝子および/またはNADPH依存性グルタミン酸シンターゼをコードする遺伝子の発現レベルが増加している。
【0043】
いくつかの態様において、本開示の組換え微生物において、グルコール酸および/またはグリシンの合成は、ピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、リンゴ酸チオキナーゼ、マリルコエンザイムAリアーゼ、アラニン-グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ、グリシンデヒドロゲナーゼ、グリシントランスアミナーゼ、セリン-グリオキシル酸トランスアミナーゼ、グリシンオキシダーゼ、NADH依存性グリオキシル酸レダクターゼおよびNADPH依存性グリオキシル酸レダクターゼからなる群より選択される少なくとも1つの酵素の発現または活性または特異性のレベルを増加させることにより増加する。
【0044】
いくつかの態様において、本開示の組換え微生物において、グルコール酸および/またはグリシンの合成は、リンゴ酸シンターゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸オキシダーゼおよび/またはピルビン酸ギ酸-リアーゼ、ピルビン酸キナーゼ、グリオキシル酸カルボリガーゼ、2-オキソ-4-ヒドロキシグルタル酸アルドラーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、グリコアルデヒドレダクターゼならびにグリコール酸オキシダーゼからなる群より選択される少なくとも1つの酵素の発現または活性または特異性のレベルを減少させることにより増加する。
【0045】
いくつかの態様において、本開示の組換え微生物において、グルコール酸および/またはグリシンの合成は、イソクエン酸リアーゼのレプレッサーをコードする遺伝子の発現のレベルを減少させることにより増加する。
【0046】
いくつかの態様において、本開示の組換え微生物は、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、リンゴ酸チオキナーゼおよびマリルコエンザイムAリアーゼにより触媒される反応において他のグリコール酸および/またはグリシン生成経路により生成されるNADHおよび/またはCO2を利用し得る。例えば、いくつかの態様において、本開示の組換え微生物は、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、リンゴ酸チオキナーゼおよびマリルコエンザイムAリアーゼにより触媒される反応においてセリン/ヒドロキシピルベートベースの経路により生成されるNADHおよび/またはCO2を利用し得る。いくつかの態様において、本開示の組換え微生物は、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、リンゴ酸チオキナーゼおよびマリルコエンザイムAリアーゼにより触媒される反応においてグリオキシル酸短絡経路により生成されるNADHおよび/またはCO2を利用し得る。いくつかの態様において、本開示の組換え微生物は、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、リンゴ酸チオキナーゼおよびマリルコエンザイムAリアーゼにより触媒される反応においてD-エリスロースからグリコアルデヒドベースの経路により生成されるNADHおよび/またはCO2を利用し得る。いくつかの態様において、本開示の組換え微生物は、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、リンゴ酸チオキナーゼおよびマリルコエンザイムAリアーゼにより触媒される反応においてペントース誘導体からグリコアルデヒドベースの経路により生成されるNADHおよび/またはCO2を利用し得る。
【0047】
いくつかの態様において、本開示の組換え微生物は、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、リンゴ酸チオキナーゼおよびマリルコエンザイムAリアーゼにより触媒される反応において外部から添加されたCO2、カルボナート、および/または還元剤を利用し得る。還元剤は、水素、電子および/またはNAD(P)Hであり得る。
【0048】
本開示により提供される組換え微生物には、細菌、酵母および真菌が含まれる。いくつかの態様において、本開示の組換え微生物は、エンテロバクテリアセアエ(Enterobacteriaceae)、クロストリジアセアエ(Clostridiaceae)、バシラセアエ(Bacillaceae)、ストレプトマイセタセアエ(Streptomycetaceae)およびコリネバクテリアセアエ(Corynebacteriaceae)からなる群より選択される細菌であり得る。例示的な態様において、本開示の組換え微生物は、エシェリキア(Escherichia)、クロストリジウム、バシラス、パントエア、サルモネラ、ラクトバシラス(Lactobacillus)、またはコリネバクテリウム属の種であり得る。例えば、本開示の組換え微生物は、大腸菌、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)、クロストリジウム・アセトブチリクム(Clostridium acetobutylicum)、またはバシラス・サブチリス(Bacillus subtilis)であり得る。
【0049】
いくつかの態様において、本開示の微生物は、サッカロマイセタセエ(Saccharomycetaceae)科から選択される酵母であり得る。例示的な態様において、本開示の微生物は、サッカロマイセス属の種であり得る。例えば、本開示の組換え微生物は、出芽酵母であり得る。
【0050】
本開示の組換え微生物において、本明細書に記載される遺伝子の任意の1つが、異種的に発現される。
【0051】
本開示はまた、本明細書に記載される組換え微生物を用いてGAおよび/またはグリシンを生成する方法を提供する。いくつかの態様において、本明細書に記載される組換え微生物を用いてグリコール酸および/またはグリシンを生成する方法は、グリコール酸および/またはグリシンが生成されるまで炭素源を提供する原料を含む培養培地中で組換え微生物を培養する工程を含む。
【0052】
いくつかの態様において、GAおよび/またはグリシンを生成する方法において使用される炭素源は、糖、グリセロール、アルコール、有機酸、アルカン、脂肪酸、ヘミセルロース、リグノセルロース、タンパク質、二酸化炭素および一酸化炭素からなる群より選択され得る。例示的な態様において、炭素源はヘキソースおよび/またはペントース糖である。例示的な態様において、炭素源はグルコースである。別の例示的な態様において、炭素源はスクロースである。別の例示的な態様において、炭素源は、ヘミセルロースを含むバイオマス加水分解物を含む。別の例示的な態様において、炭素源は、CO2またはカルボナート、例えばHCO3 -である。
【0053】
グリオキシラートからグリコール酸および/またはグリシンを生成する組換え微生物を作製する方法もまた、本明細書に提供される。
【0054】
いくつかの態様において、グリコール酸および/またはグリシンを生成する組換え微生物を作製する方法は、微生物に、(a)ピルベートからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、(b)マラートからマリルコエンザイムAへの変換を触媒するリンゴ酸チオキナーゼをコードする遺伝子、および(c)マリルコエンザイムAからグリオキシラートおよびアセチル-CoAへの変換を触媒するマリルコエンザイムAリアーゼをコードする遺伝子を導入する工程を含む。
【0055】
いくつかの態様において、グリコール酸および/またはグリシンを生成する組換え微生物を作製する方法は、微生物に、(a)ピルベートからOAAへの変換を触媒するピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸からOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸からOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼをコードする遺伝子、(b)OAAからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、(c)マラートからマリルコエンザイムAへの変換を触媒するリンゴ酸チオキナーゼをコードする遺伝子、ならびに(d)マリルコエンザイムAからグリオキシラートおよびアセチル-CoAへの変換を触媒するマリルコエンザイムAリアーゼをコードする遺伝子を導入する工程を含み、マリルコエンザイムAリアーゼによって生成されるアセチル-CoAが、GAおよび/またはグリシンの生合成を増加させるようOAAと組み合わされる。これらの態様のいくつかにおいて、この方法は、ピルベートからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を微生物に導入する工程を含み得る。
【0056】
いくつかの態様において、グリコール酸および/またはグリシンを生成する組換え微生物を作製する方法は、微生物に、(a)ピルベートからオキサロアセタート(OAA)への変換を触媒するピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸からOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸からOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼをコードする遺伝子、(b)マラートからマリルコエンザイムAへの変換を触媒するリンゴ酸チオキナーゼをコードする遺伝子、ならびに(c)マリルコエンザイムAからグリオキシラートおよびアセチル-CoAへの変換を触媒するマリルコエンザイムAリアーゼをコードする遺伝子を導入する工程を含み、該組換え微生物はオキサロアセタートからマラートへの変換を触媒しない。
【0057】
例示的な態様において、微生物に異種的に導入されるリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子は、オキサロアセタートからマラート、マラートからピルベートまたはマラートからオキサロアセタートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼ活性の部分的または完全な阻害をもたらす変異を含む。別の例示的な態様において、ピルベートからマラートおよび/またはオキサロアセタートからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子が組換え微生物中に内在的に存在する場合、グリコール酸および/またはグリシンを生成する組換え微生物を作製する方法は、オキサロアセタートからマラート、マラートからピルベートまたはマラートからオキサロアセタートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼ活性の部分的または完全な阻害をもたらす変異を、リンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする内在性遺伝子に導入する工程を含む。
【0058】
いくつかの態様において、グリコール酸および/またはグリシンを生成する組換え微生物を作製する方法はさらに、(a)グリオキシラートからグリコラートへの変換を触媒するNADH依存性グリオキシル酸レダクターゼをコードする遺伝子、(b)グリオキシラートからグリコラートへの変換を触媒するNADPH依存性グリオキシル酸レダクターゼをコードする遺伝子、ならびに/または(c)アラニン-グルオキシル酸アミノトランスフェラーゼをコードする遺伝子、グリシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、グリシントランスアミナーゼをコードする遺伝子、セリン-グリオキシル酸トランスアミナーゼをコードする遺伝子、および/もしくはグリオキシラートからグリシンへの変換を触媒するグリシンオキシダーゼをコードする遺伝子を微生物に導入する工程を含み得る。
【0059】
いくつかの態様において、グリコール酸および/またはグリシンを生成する組換え微生物を作製する方法はさらに、リンゴ酸シンターゼをコードする遺伝子の機能喪失変異または欠失を微生物に導入する工程を含み得る。
【0060】
いくつかの態様において、グリコール酸および/またはグリシンを生成する組換え微生物を作製する方法はさらに、(a)イソクエン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、(b)ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸オキシダーゼおよび/またはピルビン酸ギ酸-リアーゼをコードする遺伝子、(c)ピルビン酸キナーゼをコードする遺伝子、ならびに(d)グリコール酸オキシダーゼをコードする遺伝子からなる群より選択される遺伝子によりコードされる1つまたは複数の酵素の活性を減少させる欠失または修飾を微生物に導入する工程を含み得る。
【0061】
いくつかの態様において、グリコール酸および/またはグリシンを生成する組換え微生物を作製する方法はさらに、(a)グリオキシル酸カルボリガーゼをコードする遺伝子、(b)2-オキソ-4-ヒドロキシグルタル酸アルドラーゼをコードする遺伝子、(c)グリコアルデヒドレダクターゼをコードする遺伝子、および(d)イソクエン酸リアーゼのレプレッサーをコードする遺伝子からなる群より選択される遺伝子によりコードされる1つまたは複数の酵素の活性を減少させる欠失または修飾を微生物に導入する工程を含み得る。
【0062】
いくつかの態様において、グリコール酸および/またはグリシンを生成する組換え微生物を作製する方法はさらに、アラニン-グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼをコードする遺伝子、グリオキシラートからグリシン アラニン-グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼをコードする遺伝子、グリシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、グリシントランスアミナーゼをコードする遺伝子、セリン-グリオキシル酸トランスアミナーゼをコードする遺伝子、および/またはグリオキシラートからグリシンへの変換を触媒するグリシンオキシダーゼをコードする遺伝子に機能獲得変異を導入する工程を含み得る。
【0063】
いくつかの態様において、グリコール酸および/またはグリシンを生成する組換え微生物を作製する方法はさらに、アラニントランスアミナーゼをコードする遺伝子および/またはNADPH依存性グルタミン酸シンターゼをコードする遺伝子に機能獲得変異を導入する工程を含み得る。
【0064】
機能獲得変異が遺伝子に導入される態様において、機能獲得変異は、微生物にとって内在性の遺伝子に導入され得る、または機能獲得変異は、外来性遺伝子に導入され得、機能獲得変異を含む外来性遺伝子が微生物に導入され得る。
【0065】
本開示の組換え微生物を作製するために使用され得る微生物には、細菌、酵母および真菌が含まれる。本開示において使用され得る例示的な細菌には、エンテロバクテリアセアエ、クロストリジアセアエ、バシラセアエ、ストレプトマイセタセアエおよびコリネバクテリアセアエからなる群より選択される細菌が含まれる。例えば、組換え微生物は、エシェリキア属の種、例えば大腸菌、クロストリジウム属の種、例えばクロストリジウム・アセトブチリクム、バシラス属の種、例えばバシラス・サブチリス、クレブシエラ属の種、パントエア属の種、サルモネラ属の種、ラクトバシラス属の種、またはコリネバクテリウム属の種、例えばコリネバクテリウム・グルタミクムであり得る。
【0066】
本開示の組換え微生物を作製するために使用され得る例示的な酵母は、サッカロマイセタセエ科のものであり得る。例えば、組換え微生物は、サッカロマイセス属の種、例えば出芽酵母であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1図1は、逆グリオキシル酸短絡を通じたグリコール酸(GA)およびグリシン(Gly)生成の概要を示している。記号
は、下方調節されるまたは不活性化/無効化される可能性のある酵素、すなわち、減弱化または欠失される可能性のある各遺伝子を意味する。
図2図2は、既知のグリコール酸(GA)およびグリシン(Gly)生成経路と本開示の逆グリオキシル酸短絡経路の同時利用の概要を示している。破線は、反応の要約を示している。記号
は、下方調節されるまたは不活性化/無効化される可能性のある酵素、すなわち、減弱化または欠失される可能性のある各遺伝子を意味する。
図3図3は、ヘキソキナーゼ輸送系、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PPC)またはピルビン酸カルボキシラーゼ(PYC)を通じたカルボキシル化、およびグリオキシル酸短絡(GS)および逆グリオキシル酸短絡(rGS)の組み合わせを用いたグルコースからのGAの最大理論的生成収率に向けたフラックスマップを示す図である。フラックス分析は、NADPH依存性グリオキシル酸レダクターゼ酵素候補の使用に基づいた。フラックス値は、グルコース投入量に対して正規化されている。
図4図4は、ホスホトランスフェラーゼ系(PTS)輸送系、PEPCK、PPCまたはPYCを通じたカルボキシル化、およびGSとrGSの組み合わせを用いたグルコースからのGAの最大理論的生成収率に向けたフラックスマップを示す図である。フラックス分析は、NADPH依存性グリオキシル酸レダクターゼ酵素候補の使用に基づいた。フラックス値は、グルコース投入量に対して正規化されている。
【発明を実施するための形態】
【0068】
詳細な説明
定義
以下の定義および略語が、本開示の解釈のために使用されるべきである。
【0069】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、そうでないことを前後関係が明白に指示しない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「1つの酵素(an enzyme)」への言及には、複数のそのような酵素が含まれ、「微生物」への言及には、1つまたは複数の微生物への言及が含まれ、他も同様である。
【0070】
本明細書において使用されるように、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含む(contains)」、「含む(containing)」という用語、またはそれらの他の語尾変化は、非排他的な包含をカバーするものとする。要素のリストを含む組成物、混合物、過程、方法、物体、または装置は、必ずしも、それらの要素のみに限定されず、明示的にリストされていない、またはそのような組成物、混合物、過程、方法、物体、もしくは装置に固有でない他の要素を含んでいてもよい。さらに、反対のことが明示されない限り、「または」とは、包括的な「または」をさし、排他的な「または」をさすのではない。
【0071】
「約」および「およそ」という用語は、数値を修飾するために本明細書において使用されるように、その明示的な値の周りの近い範囲を示す。「X」が値である場合、「約X」または「およそX」は、0.9X~1.1Xの値、または、いくつかの態様において、0.95X~1.05Xの値を示すであろう。「約X」または「およそX」への言及は、具体的には、値X、0.95X、0.96X、0.97X、0.98X、0.99X、1.01X、1.02X、1.03X、1.04X、および1.05Xを少なくとも示す。従って、「約X」および「およそX」とは、例えば、「0.98X」の、特許請求の範囲の限定のための記載サポートを教示し提供するものとする。
【0072】
本明細書において使用されるように、「微生物の」、「微生物(microbial organism)」、および「微生物(microorganism)」という用語には、古細菌、細菌、または真核生物のドメインに含まれる微視的な細胞として存在する任意の生物が含まれ、後者には、酵母および糸状菌、原虫、藻類、または高等原生生物が含まれる。従って、その用語には、微視的なサイズを有する原核細胞もしくは真核細胞、または原核生物もしくは真核生物が包含されるものとし、全ての種の細菌、古細菌、および真正細菌が含まれ、酵母および真菌のような真核微生物も含まれる。化学物質の生成のために培養され得る任意の種の細胞培養物も含まれる。
【0073】
本明細書中に記載されるように、いくつかの態様において、組換え微生物は、原核微生物である。いくつかの態様において、原核微生物は、細菌である。「細菌」または「真正細菌」とは、原核生物のドメインをさす。細菌には、以下のような少なくとも11の別個の群が含まれる:(1)次の2つの主要な亜群が存在するグラム陽性(グラム+)菌:(1)高G+C群(放線菌(Actinomycetes)、マイコバクテリア(Mycobacteria)、ミクロコッカス(Micrococcus)他)、(2)低G+C群(バシラス、クロストリジウム(Clostridia)、ラクトバシラス、スタフィロコッカス(Staphylococci)、ストレプトコッカス(Streptococci)、マイコプラズマ(Mycoplasmas));(2)プロテオバクテリア(Proteobacteria)、例えば、紅色光合成+非光合成グラム陰性菌(大部分の「一般的な」グラム陰性菌を含む);(3)シアノバクテリア(Cyanobacteria)、例えば、酸素発生型光栄養生物;(4)スピロヘータ(Spirochetes)および近縁種;(5)プランクトマイセス(Planctomyces);(6)バクテロイデス(Bacteroides)、フラボバクテリア(Flavobacteria);(7)クラミジア(Chlamydia);(8)緑色硫黄細菌;(9)緑色非硫黄細菌(嫌気性光栄養生物も);(10)放射線抵抗性ミクロコッカスおよび近縁種;(11)サーモトガ(Thermotoga)およびサーモシホ・サーモフィレス(Thermosipho thermophiles)。
【0074】
「グラム陰性菌」には、球菌、非腸内桿菌、および腸内桿菌が含まれる。グラム陰性菌の属には、例えば、ナイセリア(Neisseria)、スピリルム(Spirillum)、パスツレラ(Pasteurella)、ブルセラ(Brucella)、エルシニア(Yersinia)、フランシセラ(Francisella)、ヘモフィルス(Haemophilus)、ボルデテラ(Bordetella)、エシェリキア、サルモネラ、シゲラ(Shigella)、クレブシエラ、プロテウス(Proteus)、ビブリオ(Vibrio)、シュードモナス、バクテロイデス、アセトバクター(Acetobacter)、アエロバクター(Aerobacter)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)、アゾトバクター(Azotobacter)、スピリルム(Spirilla)、セラチア(Serratia)、ビブリオ(Vibrio)、リゾビウム、クラミジア、リケッチア(Rickettsia)、トレポネーマ(Treponema)、およびフソバクテリウム(Fusobacterium)が含まれる。
【0075】
「グラム陽性菌」には、球菌、非胞子形成桿菌、および胞子形成桿菌が含まれる。グラム陽性菌の属には、例えば、アクチノマイセス(Actinomyces)、バシラス、クロストリジウム、コリネバクテリウム、エリシペロスリクス(Erysipelothrix)、ラクトバシラス、リステリア(Listeria)、マイコバクテリウム、ミキソコッカス(Myxococcus)、ノカルジア(Nocardia)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス、およびストレプトマイセスが含まれる。
【0076】
「組換え微生物」および「組換え宿主細胞」という用語は、本明細書において交換可能に使用され、内在性酵素を発現するかもしくは過剰発現するよう遺伝学的に改変された微生物、ベクターに含まれるもの、組み込み構築物に含まれるもののような異種酵素を発現するよう遺伝学的に改変された微生物、または内在性遺伝子の発現の変化を有する微生物をさす。「変化」とは、発現、レベル、または活性が、変化の非存在下で観察されるものより大きくまたは小さくなるよう、遺伝子の発現、または1つもしくは複数のポリペプチドもしくはポリペプチドサブユニットをコードするRNA分子もしくは等価なRNA分子のレベル、または1つもしくは複数のポリペプチドもしくはポリペプチドサブユニットの活性が、上方調節されるかまたは下方調節されることを意味する。「組換え微生物」および「組換え宿主細胞」という用語は、特定の組換え微生物のみならず、そのような微生物の子孫または可能性のある子孫もさすことが理解される。
【0077】
遺伝子配列に関する「発現」という用語は、遺伝子の転写をさし、適宜、得られたmRNA転写物のタンパク質への翻訳もさす。従って、前後関係から明らかであるように、タンパク質の発現は、オープンリーディングフレーム配列の転写および翻訳に起因する。宿主細胞における所望の生成物の発現のレベルは、細胞内に存在する対応するmRNAの量または選択された配列によりコードされる所望の生成物の量のいずれかに基づき決定され得る。例えば、選択された配列から転写されたmRNAは、qRT-PCRによってまたはノーザンハイブリダイゼーションによって定量化され得る(Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)を参照のこと)。選択された配列によってコードされるタンパク質は、様々な方法によって、例えば、ELISAによって、タンパク質の生物学的活性についてアッセイすることによって、またはタンパク質を認識しそれに結合する抗体を使用したウエスタンブロットもしくはラジオイムノアッセイのようなそのような活性に依存しないアッセイを利用することによって定量化され得る。Sambrook et al., 1989, 前記を参照のこと。
【0078】
遺伝子の発現のレベルまたは酵素活性を「減少させる(decreasing)」または「減少させる(reducing)」という用語は、遺伝子の発現または酵素活性の部分的または完全な抑制をさす。この発現または活性の抑制は、遺伝子の発現の阻害、遺伝子発現に必要とされるプロモーター領域のすべてもしくは一部の欠失、遺伝子のコード領域の欠失、またはより弱い天然もしくは合成プロモーターによる野生型プロモーターの置換のいずれかであり得る。例えば、遺伝子は、完全に欠失され得、本発明にしたがう菌株の同定、単離および精製を促進する選択マーカー遺伝子により置換され得る。あるいは、内在性遺伝子は、新しい代謝経路が優先されるようノックアウトまたは欠失され得る。さらに別の態様において、遺伝子の発現は、弱いプロモーターを用いることによりまたは特定の変異を導入することにより減少(decreased)または減少(reduced)され得る。
【0079】
本明細書において使用されるように、「天然に存在しない」という用語は、本開示の微生物または酵素活性に関して使用される時、言及された種の野生型株を含む言及された種の天然に存在する株に通常見出されない少なくとも1つの遺伝的変化を、微生物または酵素が有することを意味するものとする。遺伝的変化には、例えば、代謝性ポリペプチドをコードする発現可能な核酸を導入する改変、その他の核酸付加、核酸欠失、および/または微生物の遺伝物質のその他の機能的破壊が含まれる。そのような改変には、例えば、言及された種に対して異種のポリペプチド、相同なポリペプチド、または異種および相同の両方のポリペプチドについての、コード領域およびその機能性断片が含まれる。さらなる改変には、例えば、改変が遺伝子またはオペロンの発現を変化させる非コード調節領域が含まれる。例示的な天然に存在しない微生物または酵素活性には、上記のヒドロキシル化活性が含まれる。
【0080】
「外来性」という用語は、様々な分子、例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、酵素等に関して本明細書において使用されるように、自然界で所定の酵母、細菌、生物、微生物、または細胞において通常または天然には見出されないおよび/または生成されない分子をさす。
【0081】
他方、「内在性」または「ネイティブ」という用語は、様々な分子、例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、酵素等に関して本明細書において使用されるように、自然界の所定の酵母、細菌、生物、微生物、または細胞において、通常または天然に見出されかつ/または生成される分子をさす。
【0082】
「異種」という用語は、改変された宿主細胞に関して本明細書において使用されるように、以下の少なくとも一つに当てはまる様々な分子、例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、酵素等をさす:(a)分子が、宿主細胞に対して外来(「外来性」)である(即ち、天然に見出されない);(b)分子が、所定の宿主微生物もしくは宿主細胞において天然に見出される(例えば、「内在性」である)が、細胞内で非天然の位置においてもしくは非天然の量で生成される;および/または(c)分子が、内在性のヌクレオチド配列もしくはアミノ酸配列と、ヌクレオチド配列もしくはアミノ酸配列が異なっており、そのため、内在性のヌクレオチドもしくはアミノ酸とヌクレオチド配列もしくはアミノ酸配列が異なる当該分子が、細胞内で非天然の(例えば、天然に見出されるより大きい)量で生成される。ポリヌクレオチドの異種発現は、関心対象の遺伝子を含む1つまたは複数のベクター(例えば、プラスミド、コスミド、ウイルスベクター等)の宿主微生物への導入を通じてまたは関心対象の遺伝子を含む構築物の宿主微生物のゲノムへの組み込みを通じて行われ得る。
【0083】
「ホモログ」という用語は、第1の科または種の最初の酵素または遺伝子に関して本明細書において使用されるように、機能的分析、構造的分析、またはゲノム分析によって、第1の科または種の最初の酵素または遺伝子に相当する第2の科または種の酵素または遺伝子であると決定された第2の科または種の別個の酵素または遺伝子をさす。ホモログは、最も多くの場合、機能、構造、またはゲノムの類似性を有する。酵素または遺伝子のホモログを、遺伝子プローブおよびPCRを使用して容易にクローニングすることができる技術が、公知である。クローニングされた配列のホモログとしての同一性は、機能的アッセイを使用して、かつ/または遺伝子のゲノムマッピングによって、確認され得る。
【0084】
遺伝子によってコードされたアミノ酸配列が、第2の遺伝子のものと類似のアミノ酸配列を有する場合、そのタンパク質は、第2のタンパク質との「相同性」を有するかまたは第2のタンパク質と「相同」である。あるいは、2種類のタンパク質が「類似の」アミノ酸配列を有する場合、そのタンパク質は、第2のタンパク質との相同性を有する。従って、「相同タンパク質」という用語は、2種類のタンパク質が類似のアミノ酸配列を有することを意味するものとする。ある特定の場合において、2種類のタンパク質の間の相同性は、進化によって関連しているその共通の祖先を示す。「相同配列」または「ホモログ」という用語は、機能的に関連していると考えられているか、信じられているか、または公知である。機能的関係は、(a)配列同一性の程度、および/または(b)同一もしくは類似の生物学的機能を含むが、これらに限定されるわけではない、多数の方式のうちのいずれか1つで示され得る。好ましくは、(a)および(b)の両方が示される。配列同一性の程度は、変動し得るが、一つの態様において、(当技術分野において公知の標準的な配列アライメントプログラムを使用した時)少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも98.5%、または少なくとも約99%、または少なくとも99.5%、または少なくとも99.8%、または少なくとも99.9%である。相同性は、Current Protocols in Molecular Biology (F.M.Ausubel et al., eds., 1987) Supplement 30, section 7.718, Table 7.71に記述されたもののような当技術分野において容易に入手可能なソフトウェアプログラムを使用して決定され得る。いくつかのアライメントプログラムは、MacVector(Oxford Molecular Ltd, Oxford, U.K.)およびALIGN Plus(Scientific and Educational Software, Pennsylvania)である。他の非限定的なアライメントプログラムには、Sequencher(Gene Codes, Ann Arbor, Michigan)、AlignX、およびVector NTI(Invitrogen, Carlsbad, CA)が含まれる。類似の生物学的機能には、以下のものが含まれ得るが、これらに限定されるわけではない:同一または類似の酵素反応を触媒すること;基質もしくは補因子に対して同一もしくは類似の選択性を有すること;同一もしくは類似の安定性を有すること;様々な発酵条件(温度、pH等)に対して同一もしくは類似の耐性を有すること;および/または様々な代謝基質、生成物、副産物、中間体等に対して同一もしくは類似の耐性を有すること。生物学的機能の類似性の程度は、変動し得るが、一つの態様において、所定の生物学的機能を決定するための当業者に公知の1つまたは複数のアッセイによって、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも98.5%、または少なくとも約99%、または少なくとも99.5%、または少なくとも99.8%、または少なくとも99.9%である。
【0085】
「バリアント」という用語は、本明細書中に記載された任意のポリペプチドまたは酵素をさす。バリアントには、多量体の1つまたは複数の成分、個々の成分を含む多量体、複数の個々の成分を含む多量体(例えば、参照分子の多量体)、化学的分解産物、および生物学的分解産物も包含される。具体的な非限定的な態様において、酵素は、参照酵素をコードするポリペプチド配列の任意の部分における変化によって、参照酵素に対して「バリアント」であり得る。参照酵素のバリアントは、参照酵素の調製物の酵素活性を測定するために使用された標準的なアッセイにおいて、少なくとも10%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも105%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、またはそれより多くの酵素活性を有し得る。いくつかの態様において、バリアントとは、本開示の全長のまたはプロセシングを受けていない酵素との少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するポリペプチドもさすことがある。いくつかの態様において、バリアントとは、本開示の成熟型のまたはプロセシングを受けた酵素との少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するポリペプチドもさすことがある。
【0086】
「生産力」という用語は、本明細書において使用されるように、生合成経路からの生成物の収率をさす。一つの態様において、生産力は、出発化合物の重量当たりの最終生成物の重量パーセントとして表され得る。
【0087】
「熱力学的最大収率」という用語は、本明細書において使用されるように、原料と比較した生成物のエネルギー値に基づく、グルコースのような所定の原料の発酵から得られる生成物の最大収率をさす。例えば、光、水素ガスまたはメタンまたは電気のような付加的なエネルギー源を使用しない、通常の発酵において、生成物は、原料より多くのエネルギーを含有し得ない。熱力学的最大収率とは、原料からの全てのエネルギーおよび質量が生成物へ変換される生成物収率を意味する。この収率は、計算可能であり、具体的な経路に依存しない。生成物への特定の経路が、熱力学的最大収率より低い収率を有する場合、それは質量を失っており、生成物へのより効率的な経路によって改善され得るか、または該経路に置き換えられ得る可能性が最も高い。
【0088】
「酸化還元バランス」という用語は、所定の反応群における酸化還元補因子の全体量をさす。酸化還元補因子が不足している時、酸化還元バランスは負であり、そのような経路の収率は、損なわれた補因子を満たすために原料を燃焼させる必要があるため、現実的ではないであろう。酸化還元補因子が過剰な時、酸化還元バランスは、正であると言われ、そのような経路の収率は、最大収率よりも低くなる(Dugar et al. “Relative potential of biosynthetic pathways for biofuels and bio-based products” Nature biotechnology 29.12 (2011): 1074)。さらに、その経路が消費したのと同量の酸化還元補因子を生成する時、酸化還元バランスはゼロであり、この経路は、「酸化還元バランスが保たれている」と称され得る。酸化還元補因子がバランスを保つまたはほぼバランスを保つよう代謝経路を設計し生物を改変することは、通常、バランスを保っていない経路と比較して、所望の化合物のより効率的、より高い生成物収率をもたらす。酸化還元反応は、つねに、1つが酸化反応でありもう1つが還元反応である2つの半分の反応が同時に起こるよう一緒に発生する。酸化還元プロセスにおいて、還元体は、酸化体に電子を引き渡す。したがって、この反応において、還元体または還元剤は電子を失い酸化され、酸化体または酸化剤は電子を獲得し還元される。1つの態様において、酸化還元反応は、生体系において起こる。酸化還元状態という用語は、しばしば、微生物細胞のような生体系における天然または非天然の代謝経路のNAD+/NADHおよびNADP+/NADPHのバランスを表すために使用される。酸化還元状態は、様々な代謝産物群(例えば、ラクタートおよびピルベート、ベータ-ヒドロキシブチラート、ならびにアセトアセタート)のバランスを反映し、これらの相互変換はこれらの比に依存する。1つの態様において、水素または電子の外部供給源は、水素をNAD(P)Hに変換することができるヒドロゲナーゼ酵素の使用と組み合わせてまたは組み合わせないで、負の酸化還元バランスを有する、すなわち、NAD(P)Hのような酸化還元補因子が不足している代謝経路における生成物収率を増加させるために有益であり得る。
【0089】
序論
グリオキシル酸短絡(GS)(グリオキシル酸回路とも呼ばれる)は、トリカルボン酸回路(TCA回路)の派生であり、植物、細菌、原生生物および真菌において見られる同化経路である。TCA回路とグリオキシル酸短絡は、グリオキシル酸短絡においてイソシトラートがα-ケトグルタルラートに脱カルボキシル化および脱水素化されるのではなくイソクエン酸リアーゼによりグリオキシラートおよびスクシナートに切断される点で相違する。これは、炭素損失なしにアセチル-CoAをTCA回路中間体に変換するTCA回路において起こる2つの脱カルボキシル化工程を迂回する。グリオキシラートは、アセチル-CoAの分子を組み込むことにより、マラートに変換される。
【0090】
グリオキシル酸短絡(GS)経路を用いたグリコール酸の生成は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第9,034,615号に記載されている。この特許は、グリオキシル酸消費経路を減弱化することによるおよびNAD(P)H依存性グリオキシル酸レダクターゼの活性を増加させることによるGAの生成を開示している。グリコール酸の生成のためのグリオキシル酸短絡経路の使用はまた、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第8,945,888号、米国特許前公開第2014/0295510号およびPCT公開第WO 2016/193540号にも開示されている。しかし、グリオキシル酸短絡経路は、0.84 g_GA/g_グルコースという低い総生産力を有するのに対して、グルコース→GA変換の熱力学的最大収率は1.70 g/gである。この経路はまた、酸化還元バランスが保たれておらず、消費されるグルコース1 molあたり高過剰な4 molのNADHおよび2 molのキノールを生じ、これらはすべて細胞が生存するために再酸化されなければならない。この経路の全体化学量論および生産力は、以下のように要約され得る:グルコース→2 GA + 2 CO2 + 4 NADH + 2 キノール + 2 ATP;y=0.84 g/g、Y(最大)=1.70 g/gの49%。
【0091】
ペントース誘導体からグリコアルデヒドベースの経路を通じたGA生成は、PCT公開第WO 2017/059236号および同第WO 2016/79440号ならびに米国特許前公開第US 2016/0076061号および同第US 2015/0147794号に記載されており、これらすべての全体が参照により本明細書に組み入れられる。しかし、これらの経路もまた、低い総生産力を有する。例えば、供給源としてキシロースを用いるGA生成は、1.01 g_GA/g_キシロースという低い生産力を有するのに対して、キシロース→GA変換の熱力学的最大収率は1.71 g/gである。キシロースベースの経路の全体化学量論および生産力は、以下のように要約され得る:キシロース→2 GA + 1 CO2 + 3 NADH + 1 キノール + 0 ATP;y=1.01 g/g、Y(最大)=1.71 g/gの59%。この等式から見ることができるように、キシロースベースの経路はまた、過剰なNADHおよびCO2を生成する。
【0092】
その全体が参照により本明細書に組み入れられるPCT公開第WO 2015/181074号は、D-エリスロースの生成およびその後のD-エリスロースからグリコアルデヒドへの変換の方法を開示している。グリコアルデヒドはさらに、グリコール酸および/またはグリシンに変換され得る。この経路は、1.27 g_GA/g_グルコースという低い生産力を有するのに対して、その熱力学的最大収率は1.70 g/gである。エリスロースベースの経路の全体化学量論およびその生産力は、以下のように要約され得る:グルコース→3 GA + 2 NADH + 1 キノール - 1 ATP、y=1.27 g/g、Y(最大)=1.70 g/gの75%。この経路は、酸化還元バランスが保たれておらず、消費されるグルコース1 molあたり高過剰な2 molのNADHおよび1 molのキノールを生じ、これらはすべて細胞が生存するために再酸化されなければならない。
【0093】
GA生成のためのセリン/ヒドロキシピルビン酸経路は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第8,911,978号に記載されている。
【0094】
これらの経路はすべて、過剰なNADHを生成し、過剰なCO2を放出する、すなわち、これらの経路は熱力学的に可能性のある最大収率に達しない。それらは典型的に、CO2に必要とされるよりも多くの糖炭素を酸化し、それによって生成物収率を低下させる。
【0095】
本願は、グリコール酸(GA)および/またはグリシンの生成のための1つまたは複数の生合成経路を有するグリオキシラートを生成する組換え微生物に関する。1つの態様において、本発明のグリオキシラートを生成する組換え微生物は、GAおよびグリシンの収率を増加させる逆グリオキシル酸短絡ベースの経路を含む。別の態様において、本発明のグリオキシラートを生成する組換え微生物は、GAおよび/またはグリシンの生成に関して以前に記載された代謝経路および修飾ならびにGAおよびグリシンの収率をさらに増加させる逆グリオキシル酸短絡ベースの経路を含む。「グリコール酸」および「グリコラート」という用語は、本願を通じて交換可能に使用される。
【0096】
特定の特許文献は、逆グリオキシル酸短絡経路を開示している。例えば、米国特許第9,410,131号は、オキサロアセタートおよびマロニル-CoAを生成するための逆グリオキシル酸短絡経路を開示している。米国特許前公開第2016/369292号は、イソシトラートおよびアセチル-CoAを生成するための逆グリオキシル酸短絡の使用を開示している。EP特許第2738247B1号は、アセチル-CoA生成のための逆グリオキシル酸短絡の使用を開示している。しかし、これらの特許文献のいずれも、グリオキシラートの生成ならびにその後のグリコール酸および/またはグリシンの生成を増加させるための逆グリオキシル酸短絡を開示していない。さらに、これらの特許文献のいずれも、マリル-CoAリアーゼの活性により生成されるアセチル-CoAが、例えば、グリコール酸および/またはグリシンの生成を増加させるために、グリオキシル酸短絡においてシトラートを生成するためにオキサロアセタートと組み合わさることによって、代謝経路に再取り込みされる逆グリオキシル酸短絡を開示していない。
【0097】
本開示は、それをCO2およびNADH過剰な現在のGAおよびグリシン経路のほとんどに対する適切な共経路にする、GAまたはグリシン生成のための炭素固定経路を初めて提供する。適切な共経路を提供することによって、本開示は、これまでに報告されたすべてのグリコール酸(GA)およびグリシン経路のNADH過剰の問題を解決し、最近公開されたキシロースを用いる高収率経路を含む以前に報告された経路単独よりも高いGAおよびグリシン収率を実現する。
【0098】
本開示は、GAおよびグリシンの生成のためにカルボキシル化反応を利用する逆グリオキシル酸短絡経路を初めて提供する。これまでに報告されているGAまたはグリシン生成経路のいずれも、GAまたはグリシンの合成のためにカルボキシル化反応を使用するものではない。
【0099】
特定の態様において、本開示のカルボキシル化ベースの逆グリオキシル酸短絡経路は、公知のGAまたはグリシン生成経路と相乗作用的に利用され得る。
【0100】
本開示は、本明細書に記載される遺伝子および/またはこれらの遺伝子によりコードされる酵素のホモログおよび天然または人工バリアントの使用を包含する。
【0101】
本発明の微生物、経路および方法
1つの態様において、本開示は、逆グリオキシル酸短絡経路を用いてグリオキシラートからグリコール酸および/またはグリシンを生成するグリオキシラートを生成する組換え微生物を提供する。逆グリオキシル酸短絡経路の発現は、中間体としてのグリオキシラートの生成を増加させ、最終生成物であるグリコール酸およびグリシンの生成を増加させる。いくつかの態様において、本発明のグリオキシラートを生成する組換え微生物は、グリコール酸およびグリシンを同時に生成する。別の態様において、本発明のグリオキシラートを生成する組換え微生物は、グリコール酸および別の同時生成物、例えば、非限定的に、スクシナートまたはラクタートを同時に生成する。さらなる態様において、本発明のグリオキシラートを生成する組換え微生物は、グリシンおよび別の同時生成物、例えば、非限定的に、スクシナートまたはラクタートを同時に生成する。
【0102】
いくつかの態様において、本開示は、グリコール酸および/またはグリシンの合成のためのグリオキシラートを生成する組換え微生物であって、(a)ピルベートからオキサロアセタート(OAA)への変換を触媒するピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸からOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸からOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼをコードする遺伝子、(b)マラートからマリルコエンザイムAへの変換を触媒するリンゴ酸チオキナーゼをコードする遺伝子、ならびに(c)マリルコエンザイムAからグリオキシラートおよびアセチル-CoAへの変換を触媒するマリルコエンザイムAリアーゼをコードする遺伝子を含み、マリルコエンザイムAリアーゼによって生成されるアセチル-CoAが、GAおよび/またはグリシンの生合成を増加させるようOAAと組み合わさる前記組換え微生物を提供する。
【0103】
いくつかの態様において、本開示は、グリコール酸および/またはグリシンの合成のためのグリオキシラートを生成する組換え微生物であって、(a)ピルベートからオキサロアセタート(OAA)への変換を触媒するピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸からOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸からOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼをコードする遺伝子、(b)マラートからマリルコエンザイムAへの変換を触媒するリンゴ酸チオキナーゼをコードする遺伝子、(c)マリルコエンザイムAからグリオキシラートおよびアセチル-CoAへの変換を触媒するマリルコエンザイムAリアーゼをコードする遺伝子を含み、マリルコエンザイムAリアーゼによって生成されるアセチル-CoAが、GAおよび/またはグリシンの生合成を増加させるようOAAと組み合わさる組換え微生物を提供する。これらの態様において、この組換え微生物は、低いグルコースリン酸イソメラーゼ活性を有する、または、より好ましくは、酵素グルコースリン酸イソメラーゼによりグルコース-6-リン酸からフルクトース-6-リン酸への変換を触媒しない。さらに、この組換え微生物は、過剰発現された内在性または外来性酵素クエン酸シンターゼ、イソクエン酸リアーゼおよび/またはグリオキシル酸レダクターゼを含む場合または含まない場合がある。グルコースリン酸イソメラーゼの活性を減少させることによって、またはより好ましくは、グルコース-6-リン酸からフルクトース-6-リン酸への変換を触媒するグルコースリン酸イソメラーゼをコードする遺伝子(例えば、大腸菌における遺伝子pgi)を欠失させることによって、その炭素源が、少なくとも部分的に、グリオキシラートからグリコラートへの最適な変換に潜在的に必要とされるさらなるNADPHを提供するよう、ペントース-リン酸経路(PPP)へと迂回させられ得る。いくつかの態様において、PPP経路を通じて生成されるCO2は、潜在的に、本明細書で提案されるカルボキシラーゼおよびカルボキシキナーゼ酵素の使用により再取り込みされ得る。
【0104】
1つの態様において、本開示の逆グリオキシル酸短絡ベースの経路は、ピルベートからマラートへのカルボキシル化、マラートからマリル-コエンザイムA(CoA)への変換ならびにマリル-CoAからグリオキシラートおよびアセチル-CoAへの変換を含む。したがって、1つの態様において、ピルベートをマラートに変換するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、マラートをマリルコエンザイムAに変換するリンゴ酸チオキナーゼをコードする遺伝子、ならびにマリルコエンザイムAをグリオキシラートおよびアセチルコエンザイムAに変換するマリルコエンザイムAリアーゼをコードする遺伝子を含む組換え微生物が、本明細書に提供される。1つの態様において、リンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子は、ピルベートからマラートへの変換を触媒するが、マラートからピルベートへの逆反応は触媒しないまたは低いマラートからピルベートへの変換性を示す修飾されたリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする。いくつかの態様において、リンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子は、欠失または機能喪失変異を含み得る。修飾されたリンゴ酸デヒドロゲナーゼは、天然に存在するバリアントまたは人工バリアントであり得る。
【0105】
別の態様において、本開示の逆グリオキシル酸短絡ベースの経路は、ホスホエノールピルビン酸(PEP)および/またはピルベートからオキサロアセタート(OAA)へのカルボキシル化、OAAからマラートへの変換、マラートからマリル-コエンザイムA(CoA)への変換ならびにマリル-CoAからグリオキシラートおよびアセチル-CoAへの変換を含む。したがって、1つの態様において、ピルベートをOAAに変換するピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子および/またはホスホエノールピルビン酸をOAAに変換するホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子および/またはホスホエノールピルビン酸をOAAに変換するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼをコードする遺伝子を、OAAからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、マラートからマリルコエンザイムAへの変換を触媒するリンゴ酸チオキナーゼをコードする遺伝子ならびにマリルコエンザイムAをグリオキシラートおよびアセチルコエンザイムAに変換するマリルコエンザイムAリアーゼをコードする遺伝子と共に含む組換え微生物が、本明細書に提供される。
【0106】
別の態様において、本開示の逆グリオキシル酸短絡ベースの経路は、ホスホエノールピルビン酸(PEP)もしくはピルベートからオキサロアセタート(OAA)へのカルボキシル化および/またはピルベートからマラートへのカルボキシル化、OAAからマラートへの変換、マラートからマリル-コエンザイムA(CoA)への変換ならびにマリル-CoAからグリオキシラートおよびアセチル-CoAへの変換を含む。したがって、1つの態様において、ピルベートをOAAに変換するピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子および/もしくはホスホエノールピルビン酸をOAAに変換するホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子および/もしくはホスホエノールピルビン酸をOAAに変換するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼをコードする遺伝子、ならびに/またはピルベートからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、OAAからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、マラートをマリルコエンザイムAに変換するリンゴ酸チオキナーゼをコードする遺伝子ならびにマリルコエンザイムAをグリオキシラートおよびアセチルコエンザイムAに変換するマリルコエンザイムAリアーゼをコードする遺伝子を含む組換え微生物が、本明細書に提供される。1つの態様において、リンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子は、ピルベートからマラートもしくはOAAからマラートへの変換を触媒するが、マラートからピルベートもしくはマラートからOAAへの逆反応を触媒しない、またはマラートからピルベートもしくはマラートからOAAへの低い変換性を示す修飾されたリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする。修飾されたリンゴ酸デヒドロゲナーゼは、天然に存在するバリアントまたは人工バリアントであり得る。
【0107】
別の態様において、本開示の逆グリオキシル酸短絡ベースの経路は、ホスホエノールピルビン酸(PEP)および/またはピルベートからオキサロアセタート(OAA)へのカルボキシル化、マラートからマリル-コエンザイムA(CoA)への変換ならびにマリル-CoAからグリオキシラートおよびアセチル-CoAへの変換を含み、OAAからマラートへの変換を含まない。したがって、1つの態様において、ピルベートをOAAに変換するピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子および/またはホスホエノールピルビン酸をOAAに変換するホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子および/またはホスホエノールピルビン酸をOAAに変換するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼをコードする遺伝子、マラートをマリルコエンザイムAに変換するリンゴ酸チオキナーゼをコードする遺伝子、ならびにマリルコエンザイムAをグリオキシラートおよびアセチルコエンザイムAに変換するマリルコエンザイムAリアーゼをコードする遺伝子を含み、OAAからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を含まないまたはOAAからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子内に機能喪失変異を含む組換え微生物が、本明細書に提供される。
【0108】
別の態様において、本開示の逆グリオキシル酸短絡ベースの経路は、ホスホエノールピルビン酸(PEP)および/またはピルベートからオキサロアセタート(OAA)へのカルボキシル化、ピルベートからマラートへのカルボキシル化、マラートからマリル-コエンザイムA(CoA)への変換ならびにマリル-CoAからグリオキシラートおよびアセチル-CoAへの変換を含み、OAAからマラートへの変換を含まない。したがって、1つの態様において、ピルベートをOAAに変換するピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸をOAAに変換するホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸をOAAに変換するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼをコードする遺伝子、ピルベートからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、マラートをマリルコエンザイムAに変換するリンゴ酸チオキナーゼをコードする遺伝子、ならびにマリルコエンザイムAをグリオキシラートおよびアセチルコエンザイムAに変換するマリルコエンザイムAリアーゼをコードする遺伝子を含み、OAAからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を含まないまたはOAAからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子内に欠失もしくは機能素質変異を含む組換え微生物が、本明細書に提供される。
【0109】
逆グリオキシル酸短絡および他の経路により生成されるグリオキシラートは、グリコール酸および/またはグリシンに変換され得る。GAの生成を増加させるために、本明細書に開示される態様の任意の1つの組換え微生物は、グリオキシラートからグリコラートへの変換を触媒するNAD(P)H依存性グリオキシル酸レダクターゼをコードする遺伝子を含み得る。1つの態様において、組換え微生物は、GAの収率を増加させるようNAD(P)H依存性グリオキシル酸レダクターゼを過剰発現し得る。別の態様において、本明細書に開示される態様の任意の1つの組換え微生物は、NAD(P)H依存性グリオキシル酸レダクターゼをコードする遺伝子内に機能獲得変異を含み得、そのような変異を欠く微生物と比較してNAD(P)H依存性グリオキシル酸レダクターゼの活性が増加している。
【0110】
「NAD(P)H依存性」という用語は、本明細書で使用されるように、NADH依存性およびNADPH依存性の両方の酵素活性を包含する。
【0111】
グリシンの生成を増加させるために、本明細書に開示される態様の任意の1つの組換え微生物は、グリオキシラートからグリシンへの変換を触媒する酵素をコードする1つまたは複数の遺伝子を含み得る。例えば、本明細書に開示される態様の任意の1つの組換え微生物は、アラニン-グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼをコードする遺伝子、グリシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、グリシントランスアミナーゼをコードする遺伝子、セリン-グリオキシル酸トランスアミナーゼをコードする遺伝子、および/またはグリシンオキシダーゼをコードする遺伝子を含み得る。1つの態様において、本明細書に開示される態様の任意の1つの組換え微生物は、グリシンの収率を増加させるようこれらの遺伝子の1つまたは複数を過剰発現し得る。別の態様において、本明細書に開示される態様の任意の1つの組換え微生物は、グリシン生成酵素をコードする上記遺伝子の1つまたは複数に機能獲得変異を含み得、これらの遺伝子の活性がそのような変異を欠く微生物と比較して増加している。
【0112】
1つの態様において、本開示の組換え微生物は、rGS経路を通じてマロニル-CoAを生成しない。
【0113】
本発明の組換え微生物は、ピルベートからマラートへのカルボキシル化および/またはOAAからマラートへの還元を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を含む。1つの態様において、OAAからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼは、酵素分類(E.C.)1.1.1.37に属するものであるがこれに限定されない。別の態様において、マラートからOAAへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼは、EC 1.1.5.4に属するものである。マラートからOAAへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼは、リンゴ酸:キノンオキシドレダクターゼとしても公知である。特定の態様において、ピルベートからマラートへのカルボキシル化を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼは、酵素分類(E.C.)1.1.1.38、E.C. 1.1.1.39、またはE.C. 1.1.1.40に属するものであるがこれらに限定されない。
【0114】
1つの態様において、本開示の組換え微生物は、ピルベートからマラートおよび/またはOAAからマラートへの変換を触媒することができるが、マラートからピルベートまたはマラートからOAAへの逆反応を触媒しないまたは低い効率で触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を含む。1つの態様において、本開示の組換え微生物は、オキサロアセタートからマラートへの変換を触媒することができるが、ピルベートからマラートまたはマラートからピルベートへの変換を触媒することができないリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を含む。1つの態様において、リンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子は、オキサロアセタートからマラートもしくはマラートからオキサロアセタートまたはピルベートからマラートもしくはマラートからピルベートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼ活性の部分的または完全な阻害をもたらす変異を含み得る。
【0115】
例示的な態様において、ピルベートからマラートへのカルボキシル化を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子は、細菌、例えばエシェリキア(例えば、大腸菌由来の遺伝子maeAもしくはmaeB)、シュードモナス、バシラス(例えば、バシラス・サブチリス由来の遺伝子maeA)、リゾビウム(例えば、R. メリロテ由来の遺伝子dme)、マイコバクテリウム(例えば、マイコバクテリウム・ツベルキュロシス由来の遺伝子mez)、サルモネラ(例えば、遺伝子maeB)由来;または酵母由来(出芽酵母由来の遺伝子mae1);または植物由来(例えば、シロイヌナズナ由来の遺伝子nad-me1もしくはnad-me2もしくはnad-me3もしくはnadp-me1もしくはnadp-me2)であるがこれらに限定されない。
【0116】
例示的な態様において、オキサロアセタートからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子は、細菌、例えばエシェリキア(例えば、大腸菌由来の遺伝子mdh)、コリネバクテリウム、ストレプトマイセス(例えば、S.コエリカラー由来の遺伝子mdh)由来;または酵母、例えばサッカロマイセス(例えば、出芽酵母由来の遺伝子mdh1/2/3)由来;または植物、例えばアラビドプシス由来であるが、これらに限定されない。別の態様において、マラートからオキサロアセタートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼ(リンゴ酸:キノンオキシドレダクターゼとしても公知)をコードする遺伝子は、エシェリキア(例えば、大腸菌由来の遺伝子mqo)、シュードモナス(例えば、P.プチダ(P. putida)由来の遺伝子mqo)またはバシラス属の種由来であるがこれらに限定されない。
【0117】
マラートは、リンゴ酸チオキナーゼ活性(リンゴ酸-CoAリガーゼもしくはマリル-CoAシンセターゼとしても公知)によりまたはスクシニル-CoAリガーゼ活性(スクシニル-CoAシンセターゼとしても公知)によりマリルCoAに変換される。1つの態様において、リンゴ酸チオキナーゼは、EC 6.2.1.4、EC 6.2.1.5、EC 6.2.1.9またはEC 6.2.1.-に属するものであるが、これらに限定されない。例示的な態様において、リンゴ酸チオキナーゼまたはスクシニル-CoAリガーゼをコードする遺伝子は、細菌、例えばエシェリキア(例えば、大腸菌由来の遺伝子sucCD-2)、サーマス・サーモフィルス、クロストリジウム・クルイベリ(Clostridium kluyveri)、バシラス・サブチリス、メタノカルドコックス(例えば、M. ヤンナスキイ(M. jannaschii)由来の遺伝子mtkABもしくはsucCD)、スタフィロコッカス・オーレウス(Staphylococcus aureus)、メタノサーモバクター・サームオートトロフィカス、シュードモナス、メチロコッカス属の種、メチロバクテリウム(例えば、M.エキストロクエンス由来の遺伝子mtkABもしくはsucCD)、ニトロソモナス・ユーロピア、グラヌリバクター・ベセスデンシス(Granulibacter bethesdensis)、メゾリゾビウム・ジャポニカム(Mesorhizobium japonicum)、ヒフォミクロビウム・メチロボラム、ヒフォミクロビウム・デニトリフィカンス、メチロコッカス・カプスラタス、ロドバクタラセアエ細菌またはリゾビウム由来である。1つの態様において、リンゴ酸チオキナーゼまたはスクシニル-CoAリガーゼは、マラートに対する高い活性および/または特異性、ならびに他の化合物、例えばスクシナートに対する低い活性および/または特異性を有する。これは、酵素改変を通じて達成され得る。
【0118】
マリルCoAは、マリルCoAリアーゼによりグリオキシラートおよびアセチル-CoAに変換される。1つの態様において、マリルcoAリアーゼは、EC 4.1.3.24またはEC 4.1.3.25に属するものであるが、これらに限定されない。例示的な態様において、マリル-CoAリアーゼをコードする遺伝子は、メチロバクテリウム(例えば、M. エキストロクエンス由来のmclA)、メチロバクテリウム・エキストロクエンス、サラッソビウス・アクティバス、ロドバクター(例えば、R.スフェロイデス由来の遺伝子mcl1)、ロゼオバクター・リトラリス、ストレプトマイセス、ストレプトコッカス、マイコバクテリウム(例えば、M.スメグマティス由来の遺伝子mcl1)、ヒフォミクロビウム・メチロボラム、ロゼオバクター(例えば、R.リトラリス由来の遺伝子mcl1)、ニトロソモナス・ユーロピア、カプリアビダス・ネカトール(Cupriavidus necator)、クロロフレクサス(例えば、C.オーランティアカス由来の遺伝子mcl)、ネレイダ(例えば、N.イグナバ)由来の遺伝子mcl1)、ヒフォミクロビウム・デニトリフィカンス、ロドコッカス・ファシアンス由来である。
【0119】
PEPからオキサロアセタートへのカルボキシル化は、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼまたはホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼにより触媒される。1つの態様において、PEPカルボキシラーゼは、EC 4.1.1.31に属するものであるが、これに限定されない。例示的な態様において、PEPカルボキシラーゼをコードする遺伝子は、細菌、例えばエシェリキア(例えば、大腸菌由来の遺伝子ppc)、ロドサーマス(例えば、R.マリナス由来の遺伝子ppcまたはpepC)、コリネバクテリウム、サルモネラ、ヒフォミクロビウム、ストレプトコッカス、ストレプトマイセス、パントエア、バシラス、クロストリジウム、シュードモナス、ロドシュードモナス、メタノサーモバクター(例えば、M.サームオートトロフィカス由来の遺伝子ppcA);植物、例えばサトウキビ交雑種(Saccharum hybrid)、グリシン(例えば、G.マックス由来の遺伝子ppc)、ニコチアナ・タバカム、アマランタス・ヒポコンドリアカス、トリチカム・エスチバムまたはムラサキウマゴヤシ、トウモロコシ(Zea mays)(例えば、遺伝子pep1)またはアラビドプシス(例えば、シロイヌナズナ由来の遺伝子ppc1またはppc2またはppc3)、古細菌または酵母由来であるが、これらに限定されない。1つの態様において、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼは、EC 4.1.1.32またはEC 4.1.1.49に属するものであるが、これらに限定されない。例示的な態様において、PEPカルボキシキナーゼをコードする遺伝子は、細菌、例えばエシェリキア(例えば、大腸菌由来の遺伝子pckまたはpckA)、セレノモナス(例えば、S.ルミナンティウム由来の遺伝子pckA)、サルモネラ(S.ティフィムリウム由来の遺伝子pckA)、マイコバクテリウム、シュードモナス、ロドシュードモナス、クロストリジウム、サーモコッカス、ストレプトコッカス(例えば、S.ボビス由来の遺伝子pckまたはpckA)、ルミノコッカス(R.アルブスまたはR.フラベファシエンス由来の遺伝子pckまたはpckA)、アクチノバシラス(例えば、A.スクシノジェネス由来の遺伝子pckA)、バシラス、ルミニクロストリジウム・サーモセラム、クレブシエラ、サーマス;酵母、例えばサッカロマイセス(例えば、出芽酵母由来の遺伝子pck1またはpepcまたはppc1);またはトリパノソーマ(例えば、T.ブルセイ(T.brucei)由来の遺伝子)由来であるが、これらに限定されない。
【0120】
ピルベートからオキサロアセタートへのカルボキシル化は、ピルビン酸カルボキシラーゼにより触媒される。1つの態様において、ピルビン酸カルボキシラーゼは、EC 6.4.1.1に属するものであるが、これに限定されない。例示的な態様において、ピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子は、細菌、例えば、バシラス(例えば、B.サブチリス由来の遺伝子pyc)、カンジダ(例えば、C.グラブラタ(C. glabrata)由来の遺伝子pyc1)、カプリアビダス(例えば、C.ネカトール由来の遺伝子pyc1)、マイコバクテリウム(M.スメグマティス由来の遺伝子pyc)、コリネバクテリウム(例えば、C.グリシニフィラム(C. glyciniphilum)由来の遺伝子pyc)、ノカルジア(例えば、N.ノヴァ(N. nova)由来の遺伝子pyc1);または酵母、例えばサッカロマイセス(例えば、出芽酵母由来の遺伝子pyc1およびpyc2)、ピキア(例えば、P.パストリス由来のpyc);またはカエノラブディティス(例えば、C.エレガンス(C. elegans)由来のpyc)由来;またはホモ・サピエンス由来である。
【0121】
グリオキシラートは、NADH-グリオキシル酸レダクターゼによりまたはNADPH-グリオキシル酸レダクターゼにより還元されグリコラートが生成され得る。1つの態様において、NADH-グリオキシル酸レダクターゼは、EC 1.1.1.26に属するものである。1つの態様において、NADPH-グリオキシル酸レダクターゼは、EC 1.1.1.79に属するものである。例示的な態様において、NADHまたはNADPH依存性グリオキシル酸レダクターゼ活性をコードする遺伝子は、大腸菌における遺伝子「ycdW/ghrA」および/または「yiaE」、シロイヌナズナ由来の遺伝子「GLYR1」、出芽酵母由来の遺伝子「GOR1」、ならびにサーモコッカス・リトラリス由来の「gyaR」である。いくつかの態様において、この酵素の補因子嗜好性(NADHまたはNADPH)は、酵素改変を通じて変更され得る。いくつかの態様において、大腸菌由来の遺伝子「ycdW/ghrA」もしくは「yiaE」またはシロイヌナズナ由来の「GLYR1」によりコードされる酵素NADPH依存性グリオキシル酸レダクターゼは、NADH依存性グリオキシル酸レダクターゼ酵素となり、NADHおよびこの酵素が本来的に受け入れる補因子であるNADPHを受け入れ、それでもなおグリオキシラートからグリコラートへの変換に関して同じ性能を示すよう改変される(すなわち、所望の反応に関するその動態パラメータを損なわない補因子切換え)。
【0122】
1つの態様において、グリオキシラートの生成ならびに究極的にはグリコール酸および/またはグリシンの生成は、グリオキシル酸短絡(GS)経路とrGS経路の同時利用によって増加し得る。例えば、rGS経路において、すなわちマリル-CoAに対するマリル-CoAリアーゼの活性により生成されるアセチル-CoAは、グリオキシラートの生成をさらに増加させるよう、すなわち、クエン酸を生成するようOAAと組み合わさることによりGS経路に入ることによって、代謝経路に再取り込みされ得、シトラートがイソシトラートに変換され、イソシトラートがスクシナートおよびグリオキシラートに変換される。GS経路により生成されるスクシナートは、フマラートを通じてマラートに変換され得、この経路を通じて生成されるマラートは、rGS経路に入り得、そこでマリルコエンザイムAに変換され、これがグリオキシラートおよびアセチルコエンザイムAにさらに変換される。
【0123】
本発明の組換え微生物においては、最初にrGS経路が進行しその後にGS経路が進行する場合、または最初にGS経路が進行しその後にrGS経路が進行する場合がある。
【0124】
rGSおよびGS経路の同時利用の1つの態様において、PEPはOAAに変換され得(PEPカルボキシラーゼもしくはPEPカルボキシキナーゼ)および/またはピルベートはOAAに(ピルビン酸カルボキシラーゼ)もしくはマラートに(リンゴ酸デヒドロゲナーゼ)変換され得、OAAはマラートに変換され得(リンゴ酸デヒドロゲナーゼ)、マラートはマリル-CoAに変換され得(リンゴ酸チオキナーゼ)、マリル-CoAはグリオキシラートおよびアセチル-CoAに変換され得(マリル-CoAリアーゼ)、アセチル-CoAはOAAと組み合わされてシトラートを形成し得(クエン酸シンターゼ)、シトラートはシス-アコニテートに変換され得(クエン酸ヒドロ-リアーゼ)、シス-アコニテートはイソシトラートに変換され得(D-トレオ-イソクエン酸ヒドロ-リアーゼもしくはアコニターゼ)、イソシトラートはスクシナートおよびグリオキシラートに変換され得(イソクエン酸リアーゼ)、スクシナートはフマラートに変換され得(コハク酸デヒドロゲナーゼ)、そしてフマラートはマラートに変換され得る(フマラーゼ)。マラートは、rGS経路に再度入り得、マリル-CoAに変換され得る。
【0125】
rGS経路とGS経路の同時利用の別の態様において、PEPはOAAに変換され得(PEPカルボキシラーゼもしくはPEPカルボキシキナーゼ)および/またはピルベートはOAAに(ピルビン酸カルボキシラーゼ)もしくはマラートに(リンゴ酸デヒドロゲナーゼ)変換され得、OAAはアセチル-CoAと組み合わさることによりシトラートに変換され得(クエン酸シンターゼ)、シトラートはシス-アコニテートに変換され得(クエン酸ヒドロ-リアーゼ)、シス-アコニテートはイソシトラートに変換され得(D-トレオ-イソクエン酸ヒドロ-リアーゼもしくはアコニターゼ)、イソシトラートはスクシナートおよびグリオキシラートに変換され得(イソクエン酸リアーゼ)、スクシナートはフマラートに変換され得(コハク酸デヒドロゲナーゼ)、フマラートはマラートに変換され得る(フマラーゼ)、そしてマラートは、マリル-CoAに変換され得(リンゴ酸チオキナーゼ)、そしてマリル-CoAはグリオキシラートおよびアセチル-CoAに変換され得る。この態様において、OAAは、もっぱらアセチル-CoAと組み合わさってシトラートを形成し得る(すなわち、例えばOAAからマラートへの変換を触媒する酵素リンゴ酸デヒドロゲナーゼを不活性化することにより、OAAからマラートへの変換をブロックすることにより)またはその一部がマラートに変換され得る。
【0126】
本明細書に開示される態様の任意の1つの組換え微生物は、GS経路に関与する酵素をコードする遺伝子を含み得る。1つの態様において、組換え微生物は、(a)アセチル-CoAおよびOAAをシトラートに変換するクエン酸シンターゼをコードする遺伝子、(b)シトラートをシス-アコニテートに変換するクエン酸ヒドロ-リアーゼをコードする遺伝子、(c)シス-アコニテートをイソシトラートに変換するD-トレオ-イソクエン酸ヒドロ-リアーゼまたはアコニターゼをコードする遺伝子、(d)イソシトラートをスクシナートおよびグリオキシラートに変換するイソクエン酸リアーゼをコードする遺伝子、(e)スクシナートをフマラートに変換するコハク酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、ならびに(f)フマラートをマラートに変換するフマラーゼをコードする遺伝子、を含む。
【0127】
GSおよびrGS経路により生成されるグリオキシラートは、リンゴ酸シンターゼによりマラートに変換され得る。しかし、この反応は、グリオキシラートの収率を減少させ、それによってGAおよびグリシンの生成を減少させ得る。したがって、1つの態様において、本明細書に記載される組換え微生物は、リンゴ酸シンターゼをコードする遺伝子内に機能喪失変異を含み得る。本明細書で参照される機能喪失変異は、完全または部分的な機能喪失をもたらし得る。機能喪失変異はまた、関心対象の遺伝子の完全な欠失を含み得る。例示的な態様において、本開示にしたがい不活性化され得るリンゴ酸シンターゼをコードする遺伝子は、大腸菌におけるaceBおよび/もしくはglcBまたは出芽酵母におけるDAL7およびMLS1を含む。
【0128】
1つの態様において、その経路における過剰なNADHの量に依存して、同時利用されるrGSおよびGSのフラックス比は、最適な収率のために最小限の純(net)NADH生成量が得られるよう適合される。
【0129】
関心対象の酵素をコードする本明細書に開示される1つまたは複数の遺伝子は、内在的に存在し得、微生物のゲノムに挿入され得、および/または微生物に導入された1つもしくは複数のベクター(例えば、プラスミド、コスミド、ウイルスベクター等)を通じて発現され得る。高レベルの酵素活性は、当業者に公知の組換え法により導入され得る1または複数コピーの遺伝子を用いてまたは1または複数コピーの遺伝子をゲノムに挿入することによって取得され得る。ベクターを通じた発現の場合、異なるタイプのベクター、例えば、それらの複製起点、したがって細胞内でのそれらのコピー数に関して相違するプラスミドが使用され得る。関心対象の遺伝子を発現させるための例示的なプラスミドには、pSK bluescript II、pSC101、RK2、pACYC、pRSF1010等が含まれるがこれらに限定されない。酵素ポリペプチドをコードする遺伝子は、インデューサー分子により導入される場合またはされない場合がある異なる長さを有するプロモーターを用いて発現され得る。プロモーターの例には、Ptrc、Ptac、Plac、ラムダプロモーターclまたは当業者に公知の他のプロモーターが含まれる。遺伝子の発現はまた、対応するメッセンジャーRNA(Carrier and Keasling (1998) Biotechnol. Prog. 15, 58-64)またはタンパク質(例えば、GSTタグ、Amersham Biosciences)を安定化させる要素により促進され得る。
【0130】
1つの態様において、組換え微生物における内在性グリオキシル酸短絡(GS)経路および/または他の中心的代謝経路は、逆グリオキシル酸短絡を通じたグリコール酸および/またはグリシンの生合成への炭素の流れを最大化するため、例えば、競合経路または副産物形成を回避し、炭素損失反応を迂回することにより、修飾され得る。例えば、1つの態様において、rGS経路を含む組換え微生物は、
(a)リンゴ酸シンターゼ(例えば、大腸菌における遺伝子aceBおよび/もしくはglcBまたは出芽酵母における遺伝子DAL7およびMLS1)、
(b)イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(例えば、大腸菌における遺伝子icdまたは出芽酵母における遺伝子IDP2およびIDH1/2)、
(c)ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(例えば、大腸菌における遺伝子pdhcおよび/もしくはlpd)、ピルビン酸オキシダーゼ(例えば、大腸菌における遺伝子poxB)ならびに/またはピルビン酸ギ酸-リアーゼ(例えば、大腸菌における遺伝子pfl)、ならびに
(d)ピルビン酸キナーゼ(例えば、大腸菌における遺伝子pykAおよび/もしくはpykF)
からなる群より選択される酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子を欠失またはその発現を減弱化するよう修飾され得る。
【0131】
いくつかの態様において、rGS経路を含む組換え微生物における内在性グリオキシル酸消費経路は、グリコール酸および/またはグリシンの収率をさらに増加させるよう欠失または減弱化され得る。例えば、1つの態様において、rGS経路を含む組換え微生物は、
(a)グリオキシル酸カルボリガーゼをコードする遺伝子(例えば、大腸菌における遺伝子gcl)、
(b)2-オキソ-4-ヒドロキシグルタル酸アルドラーゼをコードする遺伝子(例えば、大腸菌における遺伝子edA)、
(c)グリコアルデヒドレダクターゼをコードする遺伝子(例えば、大腸菌における遺伝子fucOおよび/またはgldA)、
(d)グリコール酸オキシダーゼをコードする遺伝子(例えば、大腸菌における遺伝子glcD、glcE、glcFおよびglcG)、
(e)イソクエン酸リアーゼのレプレッサーをコードする遺伝子(例えば、大腸菌における遺伝子iclR)、ならびに
(f)グルコース-6-リン酸イソメラーゼをコードする遺伝子(例えば、大腸菌における遺伝子pgi)
からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子を欠失させるもしくはその発現を減弱化するまたはその活性を阻害するよう修飾される。
【0132】
遺伝子発現の減弱化または遺伝子によりコードされる酵素の活性の阻害は、対応する酵素の活性を減少させる変異をその遺伝子に導入することによりまたは天然のプロモーターを低強度のプロモーターで置き換えることによりまたは対応するメッセンジャーRNAもしくはタンパク質を不安定化させる作用物質を用いることにより行われ得る。遺伝子発現の減弱化または遺伝子によりコードされる酵素の活性の阻害は、当技術分野で公知の技術を用いて微生物から対応する遺伝子を欠失させることにより行われ得る。
【0133】
1つの態様において、本開示の組換え微生物は、
(a)ピルベートからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼ、
(b)マラートからマリル-CoAへの変換を触媒するリンゴ酸チオキナーゼ、ならびに
(c)マリル-CoAからグリオキシラートおよびアセチル-CoAへの変換を触媒するマリルCoAリアーゼ
(d)任意で、PEPからオキサロアセタートへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、および/またはPEPからオキサロアセタートへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、および/またはピルベートからオキサロアセタートへの変換を触媒するピルビン酸カルボキシラーゼ
をコードする遺伝子群を発現し、
(a)リンゴ酸シンターゼをコードする遺伝子の欠失または減弱化、
(b)イソクエン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の欠失または減弱化、
(c)ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸オキシダーゼおよび/またはピルビン酸ギ酸-リアーゼをコードする遺伝子の欠失または減弱化、
(d)オキサロアセタートからマラートへまたはマラートからオキサロアセタートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼ(リンゴ酸:キノンオキシドレダクターゼ)をコードする遺伝子の欠失または減弱化、ならびに
(e)ピルビン酸キナーゼをコードする遺伝子の欠失または減弱化
からなる群より選択される少なくとも1つの修飾を含む。
【0134】
1つの態様において、本開示の組換え微生物は、
(a)PEPからオキサロアセタートへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、および/またはPEPからオキサロアセタートへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、および/またはピルベートからオキサロアセタートへの変換を触媒するピルビン酸カルボキシラーゼ、および/またはピルベートからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼ、
(b)リンゴ酸チオキナーゼ、
(c)マリルCoAリアーゼ、ならびに
(d)任意で、オキサロアセタートからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼ
をコードする遺伝子群を発現し、
(a)リンゴ酸シンターゼをコードする遺伝子の欠失または減弱化、
(b)イソクエン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の欠失または減弱化、
(c)ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸オキシダーゼおよび/またはピルビン酸ギ酸-リアーゼをコードする遺伝子の欠失または減弱化、
(d)マラートからピルベートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の欠失または減弱化、ならびに
(e)ピルビン酸キナーゼをコードする遺伝子の欠失または減弱化
からなる群より選択される少なくとも1つの修飾を含む。
【0135】
別の態様において、rGS経路を含む組換え微生物は、
(a)ピルベートからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼ、
(b)マラートからマリル-CoAへの変換を触媒するリンゴ酸チオキナーゼ、ならびに
(c)マリル-CoAからグリオキシラートおよびアセチル-CoAへの変換を触媒するマリル-CoAリアーゼ、
(d)任意で、PEPからオキサロアセタートへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、および/またはPEPからオキサロアセタートへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、および/またはピルベートからオキサロアセタートへの変換を触媒するピルビン酸カルボキシラーゼ
をコードする遺伝子群を発現し、
(a)リンゴ酸シンターゼをコードする遺伝子の欠失または減弱化、
(b)イソクエン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の欠失または減弱化、
(c)ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸オキシダーゼおよび/またはピルビン酸ギ酸-リアーゼをコードする遺伝子の欠失または減弱化、
(d)オキサロアセタートからマラートまたはマラートからオキサロアセタートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の欠失または減弱化、
(e)ピルビン酸キナーゼをコードする遺伝子の欠失または減弱化、
(f)グリオキシル酸カルボリガーゼをコードする遺伝子の欠失または減弱化、
(g)2-オキソ-4-ヒドロキシグルタル酸アルドラーゼをコードする遺伝子の欠失または減弱化、
(h)グリコアルデヒドレダクターゼをコードする遺伝子の欠失または減弱化、
(i)グリコール酸オキシダーゼをコードする遺伝子の欠失または減弱化、ならびに
(j)イソクエン酸リアーゼのレプレッサーをコードする遺伝子の欠失または減弱化
からなる群より選択される少なくとも1つの修飾を含む。
【0136】
1つの態様において、rGS経路および/または上記遺伝子の1つまたは複数における修飾を用いたグリコール酸生成の全体化学量論は、グルコース + 2 CO2 → 2 GA + 2アセチル-CoA - 2 NAD(P)H - 2 ATPである。別の態様において、rGS経路および/または上記遺伝子の1つまたは複数における修飾を用いたグリコール酸生成の全体化学量論は、グルコース + 2 CO2 + 2 NAD(P)H + 2 ATP → 4 GA + 2キノールである。
【0137】
酸化還元バランスは、最大生成物生産力を達成するための代謝経路の微調整において重要である。酸化還元状態のアンバランスさ、例えば、NADPHおよびNADH補因子のアンバランスな細胞内プール、アンバランスな純ATP、および/または還元物質の不足は、より低い生成物収率および望まれない副産物の生成をもたらし得る。本開示は、酸化還元バランスが微調整された組換え微生物およびその使用方法を包含する。例えば、本明細書に開示される態様の任意の1つの組換え微生物は、NADHおよび/またはNADPHの細胞内濃度を増加させ、それによって増加した生成物収率を達成するようトランスヒドロゲナーゼおよび/またはNADキナーゼをコードする遺伝子を含み得る。例示的な態様において、本明細書に開示される態様の任意の1つの組換え微生物は、トランスヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、例えば、大腸菌由来の「pntAB」および/もしくは「udhA」ならびに/またはNADキナーゼをコードする遺伝子、例えば、大腸菌由来の「yfjB」を含み得る。これらの遺伝子の発現は、例えば、NADPHの細胞内濃度を増加させ、それによってNADPH依存性グリオキシル酸レダクターゼの活性を増加させ、グリオキシラートからグリコラートへの変換を促進し得る。
【0138】
NADHまたはNADPHの細胞内濃度を増加させるトランスヒドロゲナーゼ(例えば、大腸菌における遺伝子pntABおよびudhA)ならびに/またはNADキナーゼ(例えば、大腸菌における遺伝子yfjB)の使用は、US20140335578、Cui et al., Microbial Cell Factories 2014, 13:21、およびShi et al., Metabolic Engineering 16 (2013) 1-10に記載されており、これらすべてが参照により本明細書に組み入れられる。
【0139】
1つの態様において、その生成物収率を増加させるよう代謝経路の酸化還元バランスを調節するために、還元剤、例えば硫黄含有化合物(例えば、亜硫酸塩、二酸化硫黄およびシステイン)ならびに/または水素が、追加の還元力の供給源として培養培地に添加され得る。別の態様において、NADHまたはNADPHの負のバランスを有する代謝経路のために、水素の外部供給源または電子/NAD(P)Hの他の追加の供給源が、培養培地に添加され得る。
【0140】
特定の態様において、リンゴ酸:キノンオキシドレダクターゼ(リンゴ酸デヒドロゲナーゼとも呼ばれる)をコードする遺伝子は、逆GS経路を含む組換え微生物において欠失または減弱化により不活性化される。
【0141】
本開示のrGS経路は、公知のGAおよびグリシン生成経路と組み合わされ得る。現時点で公知となっているGAおよび/またはグリシン生成経路は、米国特許第8,911,978号に記載されるセリン/ヒドロキシピルビン酸経路、米国特許第9,034,615号および同第8,945,888号、PCT公開第WO 2016/193540号ならびに米国特許前公開第2014/0295510号に記載されるグリオキシル酸短絡(GS)経路、PCT公開第WO 2015/181074号に記載されるD-エリスロースベースの経路、ならびにPCT公開第WO 2017/059236号および同第WO 2016/79440号ならびに米国特許前公開第US 2016/0076061号および同第US 2015/0147794号に記載されるペントース誘導体からグリコアルデヒドベースの経路を含む。これらの経路はすべて、過剰なNADHを生成し、過剰なCO2を放出する、すなわち、これらの経路は、熱力学的に可能な最大収率に達しない。これらの公知のGAおよびグリシン生成経路を本開示のrGS経路と組み合わせることにより、GAおよび/またはグリシンの収率が実質的に増加し得る。
【0142】
以前に公開された経路のいくつかを用いた場合のGAの収率:
・セリン/ヒドロキシピルビン酸経路:
1グルコース → → 2 GA +2 CO2 +6 NADH +0 ATP;y=0.84 g/g、Y(最大) = 1.70 g/gの49%
・GS経路:
グルコース → 2 GA +2 CO2 +4 NADH +2キノール+ 2 ATP;y=0.84 g/g、Y(最大) = 1.70 g/gの49%
・GSありのペントース誘導体経路:
キシロース→ 2 GA +1 CO2 +3 NADH +1キノール+0 ATP;y=1.01 g/g、Y(最大) = 1.71 g/gの59%
・エリスロース経路:
グルコース → 3 GA +2 NADH +1キノール -1 ATP、y= 1.27 g/g、Y(最大) = 1.70 g/gの75%
【0143】
上記経路と本発明のrGS経路を組み合わせるまたは同時利用することにより、GAの収率を実質的に増加させることができる。例えば、特定の態様において、公知のGA生成経路と本発明のrGS経路の同時利用は、以下のように増加したGA収率を提供し得る:
・GSおよびrGS経路:
グルコース +2/3 CO2 + 2/3 ATP → 10/3 GA +2キノール; y=1.41 g/g、Y(最大) = 1.69 g/gの83%
・GSおよびrGS経路(リンゴ酸デヒドロゲナーゼへのフラックスなし):
グルコース + 2 CO2 + 2 NAD(P)H → 4 GA +2キノール;y=1.69 g/g、Y(最大) = 1.69 g/gの100%
・GSおよびrGSありのペントース誘導体経路:
キシロース + CO2 + 1 ATP → 3 GA +1キノール;y=1.52 g/g、Y(最大) = 1.69 g/gの90%
・セリン、GSおよびrGS経路:
グルコース + CO2 + 1.5 ATP → 3.5 GA +1.5キノール; y=1.48 g/g、Y(最大) = 1.69 g/gの88%
【0144】
1つの態様において、本発明の逆グリオキシル酸短絡経路は、他のグリコール酸グリシン生成経路および/もしくはグリコアルデヒド生成経路により生成されるNADHおよびCO2、ならびに/または外部から提供されるCO2および/もしくはHCO3-および/もしくは他の炭素源を利用し、それによって生産力を増加させる。例えば、1つの態様において、本開示の逆グリオキシル酸短絡経路は、米国特許第8,911,978号に記載されるセリン/ヒドロキシピルビン酸ベースの経路により生成されるNADHおよびCO2を利用する。別の態様において、逆グリオキシル酸短絡経路は、米国特許第9,034,615号および同第8,945,888号、PCT公開第WO 2016/193540号ならびに米国特許前公開第2014/0295510号に記載されるグリオキシル酸短絡経路により生成されるNADHおよびCO2を利用する。さらに別の態様において、逆グリオキシル酸短絡経路は、PCT公開第WO 2015/181074号、同第WO 2017/059236号および同第WO 2016/79440号ならびに米国特許前公開第US 2016/0076061号および同第US 2015/0147794号に記載されるD-エリスロースおよびペントース誘導体からグリコアルデヒドベースの経路により生成されるNADHおよびCO2を利用する。
【0145】
本開示の組換え微生物には、細菌、酵母または真菌が含まれる。特定の態様において、微生物は、エンテロバクテリアセアエ、クロストリジアセアエ、バシラセアエ、ストレプトマイセタセアエ、コリネバクテリアセアエ、およびサッカロマイセタセエから選択されるが、これらに限定されない。1つの態様において、微生物は、エシェリキア、クロストリジウム、バシラス、クレブシエラ、パントエア、サルモネラ、ラクトバシラセアエ(Lactobacillaceae)、コリネバクテリウムまたはサッカロマイセス属の種である。1つの態様において、微生物は、大腸菌、コリネバクテリウム・グルタミクムまたはクロストリジウム・アセトブチリクムまたはバシラス・サブチリスまたは出芽酵母である。
【0146】
グリシン生成
上記経路の任意の1つを用いて生成されるグリオキシラートは、様々な酵素を用いてグリシンに変換され得る。例えば、グリシンは、例えばアラニン-グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.44)による、アラニンとのアミノ基転移反応を通じてグリオキシラートから生成され得る。通常、天然の経路は、アラニントランスアミナーゼ(EC 2.6.1.2)により触媒されるピルベートからアラニンを補充する別のアミノ基転移反応においてアミノ基供与体としてグルタマートを利用する。グルタマート自身は、生じる2-オキソグルタレートから、共通窒素源であるNH3をそれに固定することにより補充され得、これはNAD(P)Hグルタミン酸シンターゼ(E.C. 1.4.1.13、E.C. 1.4.1.14)を必要とする。全体化学量論は、グリオキシラート + NH3 + 1 NAD(P)H → グリシンである。グリオキシラートからグリシンへの変換を促進し得る他の酵素には、グリシンデヒドロゲナーゼ(E.C. 1.4.1.10)、グリシントランスアミナーゼ(E.C. 2.6.1.4)、セリン-グリオキシル酸トランスアミナーゼ(E.C. 2.6.1.45)およびグリシンオキシダーゼ(E.C. 1.4.3.19)が含まれる。したがって、本明細書に開示される態様の任意の1つの組換え微生物は、アラニン-グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.44)をコードする遺伝子、グリシンデヒドロゲナーゼ(E.C. 1.4.1.10)をコードする遺伝子、グリシントランスアミナーゼ(E.C. 2.6.1.4)をコードする遺伝子、セリン-グリオキシル酸トランスアミナーゼ(E.C. 2.6.1.45)をコードする遺伝子、および/またはグリシンオキシダーゼ(E.C. 1.4.3.19)をコードする遺伝子からなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子を含み得る。
【0147】
例示的な態様において、グリシンデヒドロゲナーゼ(EC 1.4.1.10)をコードする遺伝子は、マイコバクテリウム属の種(例えば、マイコバクテリウム・ツベルキュロシス、マイコバクテリウム・スメグマティス)、シュードモナス属の種、キサントバクター(Xanthobacter)属の種、またはバシラス属の種由来であり得る。
【0148】
例示的な態様において、グリシントランスアミナーゼ(EC 2.6.1.4)をコードする遺伝子は、ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)、ラクトバシラス属の種、ヒドロゲノバクター(Hydrogenobacter)属の種、ラタス(Rattus)属の種、またはロドシュードモナス属の種由来であり得る。
【0149】
以前に公開されたまたは天然の経路を用いた場合のグリシンの収率:
・グリオキシル酸短絡を用いるグリオキシル酸:
グルコース → 2グリオキシル酸+6 NADH +2キノール+2 ATP;y= 0.82 g/g、Y(最大) = 2.51 g/gの33%
・グリオキシラートのアミノ基転移を通じたグリシン:
グルコース +2 NH3 → 2グリシン +4 NADH +2キノール +2 ATP;y= 0.701 g/g(グルコース+2NH3)、Y(最大) = 1.20 g/gの58%
・セリンの脱カルボキシル化を通じたグリシン:
グルコース +2 THF +2 NH3 → 2グリシン +2 M-THF +2 NADH +0 ATP;y= 0.701 g/g(グルコース+2NH3)
【0150】
公知の経路と本発明のrGS経路を同時利用した場合のグリシンの収率:
・グリオキシラートのアミノ基転移を用いるペントース誘導体経路、GSおよびrGS:
キシロース +3 NH3 +CO2 + 1 ATP → 3グリシン+1キノール;y= 1.12 g/g(キシロース+3NH3)、Y(最大) = 1.25 g/gの90%
・グリオキシラートのアミノ基転移を用いるGSおよびrGS:
グルコース +10/3 NH3 + 2/3 CO2 + 2/3 ATP → 10/3グリシン+ 2キノール; y= 1.06 g/g(グルコース+10/3 NH3)、Y(最大) = 1.24 g/gの85%
・グリオキシラートのアミノ基転移を用いるGSおよびrGS(リンゴ酸デヒドロゲナーゼに対するフラックスなし):
グルコース + 4 NH3 + 2 CO2 + 2 NAD(P)H → 4グリシン+2キノール;y=1.24 g/g、Y(最大) = 1.24 g/gの100%
・セリン、GSおよびrGS経路:
グルコース + 3.5 NH3 + CO2 + 1.5 ATP → 3.5グリシン + 1.5キノール;y= 1.10g/g (グルコース+3.5NH3)、Y(最大) = 1.24 gの89%
【0151】
1つの態様において、
(a)アラニン-グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼをコードする遺伝子、
(b)グリシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、
(c)グリシントランスアミナーゼをコードする遺伝子、
(d)セリン-グリオキシル酸トランスアミナーゼをコードする遺伝子、
(e)グリシンオキシダーゼをコードする遺伝子、
(f)アラニントランスアミナーゼをコードする遺伝子、および
(g)NAD(P)H依存性グルタミン酸シンターゼをコードする遺伝子
からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現のレベルを、グリシンの生成を増加させるようrGS経路を含む組換え微生物において増加させる。1つの態様において、これらの遺伝子の1つまたは複数は、これらの遺伝子によりコードされる酵素の活性を増加させる機能獲得変異を含み得る。
【0152】
本発明のグリオキシラートを生成する組換え微生物はまた、グリコール酸およびグリシンを同時生成し得る。
【0153】
いくつかの態様において、本発明の微生物は、イソプロピルアルコールを生成しない。1つの態様において、本発明の微生物は、逆グリオキシル酸短絡経路を通じてセリンおよび/またはグルタミン酸を生成しない。いくつかの態様において、本発明の微生物は、グリシンをセリンに変換する1つまたは複数の酵素を含まない場合がある。例えば、1つの態様において、本発明の微生物は、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子内に機能喪失変異を含み得る。別の態様において、微生物は、グリシンを消費する経路を含まない場合がある。
【0154】
逆グリオキシル酸短絡経路を含む微生物は、グリコール酸およびグリシンの生成の増加を示す。1つの態様において、本開示の微生物は、グリコール酸および/またはグリシンを他の生成物または中間体に変換する経路を欠いている。
【0155】
rGS経路と他のグリコール酸生成経路の同時利用
特定の態様において、逆グリオキシル酸短絡経路を含む組換え微生物は、他のグリコラートおよび/もしくはグリシン生成経路により生成されるNADHおよびCO2ならびに/または外部から提供される他の炭素源(CO2および/もしくはHCO3 -ならびに/または他のカルボナート)を利用する。例えば、1つの態様において、本発明のrGS経路は、WO 2017/059236、US 2016/0076061、US 2015/0147794および/またはWO 2016/079440に記載されるペントース誘導体からグリコアルデヒドベースの経路と同時利用され得る。
【0156】
したがって、1つの態様において、rGS経路を含む組換え微生物はさらに、これらの文献に記載される経路および/または修飾を含み得る。例えば、rGS経路を含む組換え微生物は、キシルロキナーゼの減少もしくは消失した活性または減少もしくは消失した発現を示し得、キシルロースをリブロースに相互変換する酵素を組換え発現し得、D-リブロース-リン酸アルドラーゼ(例えば、大腸菌由来のfucA遺伝子)を組換え発現し得、D-リブロキナーゼ(例えば、大腸菌由来の遺伝子fucK)を組換え発現し得、および/またはグリコアルデヒドデヒドロゲナーゼ、例えばアルデヒドデヒドロゲナーゼA(例えば、大腸菌由来の遺伝子aldA)を組換え発現し得る。
【0157】
rGS経路を含む組換え微生物は、キシルロキナーゼの減少もしくは消失した活性または減少もしくは消失した発現を示し得、D-キシルロースをD-キシルロース-1Pに変換する酵素(例えば、ホモ・サピエンス由来のkhk-C)を組換え発現し得、D-キシルロース-1-リン酸アルドラーゼ(例えば、ホモ・サピエンス由来の遺伝子aldoB)を組換え発現し得、グリコアルデヒドデヒドロゲナーゼ、例えばアルデヒドデヒドロゲナーゼA(例えば、大腸菌由来の遺伝子aldA)を組換え発現し得る。rGS経路を含む組換え微生物は、キシルロースをD-キシルロースに相互変換する酵素(例えば、大腸菌由来の遺伝子xylA)の減少もしくは消失した活性または減少もしくは消失した発現を示し得、キシルロースをD-キシロネートに変換する酵素を組換え発現し得、D-キシロネートを2-デヒドロ-3-デオキシ-D-ペントネート(DPP)に変換する酵素(例えば、大腸菌由来の遺伝子yagF)を組換え発現し得、2-ケト-3-デオキシ-D-ペントネートアルドラーゼ(例えば、大腸菌由来の遺伝子yagE)を組換え発現し得、グリコアルデヒドデヒドロゲナーゼ、例えばアルデヒドデヒドロゲナーゼA(例えば、大腸菌由来の遺伝子aldA)を組換え発現し得る。
【0158】
いくつかの態様において、rGS経路を含む組換え微生物は、キシルロキナーゼをコードする遺伝子(例えば、大腸菌由来の遺伝子xylB)の欠失を含み得る。いくつかの態様において、キシルロースとリブロースの相互変換を行う酵素は、D-タガトース 3-エピメラーゼ(例えば、シュードモナス・シコリィ(Pseudomonas cichorii)由来の遺伝子dte)である。特定の態様において、D-タガトース 3-エピメラーゼは、大腸菌または出芽酵母に対してコドン最適化されたP.シコリィ由来のdte遺伝子によりコードされる。いくつかの態様において、rGS経路を含む組換え微生物は、グリコアルデヒドレダクターゼの減少もしくは消失した活性または減少もしくは消失した発現を示し得る。例えば、組換え微生物は、グリコアルデヒドレダクターゼをコードする遺伝子(例えば、遺伝子fucO)の欠失を含み得る。
【0159】
別の態様において、本発明のrGS経路は、米国特許第8,911,978号に記載されるセリン/ヒドロキシピルビン酸経路と同時利用され得る。したがって、1つの態様において、rGS経路を含む組換え微生物は、ピルビン酸デカルボキシラーゼ(例えば、酵母由来の遺伝子Pdc1、Pdc5、Pdc6によりコードされるピルビン酸デカルボキシラーゼ)、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(例えば、遺伝子aldA、aldB、aldHおよびgabDによりコードされるアルデヒドデヒドロゲナーゼ)、セリントランスアミナーゼ、ならびに/またはセリンオキシダーゼの増加した発現レベルを示し得る。
【0160】
別の態様において、rGS経路を含む組換え微生物はさらに、米国特許第9,034,615号および同第8,945,888号、PCT公開第WO 2016/193540号および同第WO 2015/181074号、ならびに米国特許前公開第2014/0295510号に記載される遺伝子修飾を含み得る。
【0161】
方法
本発明は、本明細書に記載される組換え微生物の任意の1つを用いるグリコール酸およびグリシンの生成方法を提供する。
【0162】
1つの態様において、この方法は、適切な培養培地中で、ピルベートからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、マラートからマリルコエンザイムAへの変換触媒するリンゴ酸チオキナーゼをコードする遺伝子、ならびにマリルコエンザイムAからグリオキシラートおよびアセチルコエンザイムAへの変換を触媒するマリルコエンザイムAリアーゼをコードする遺伝子を発現する組換え微生物を培養する工程を含む。リンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子は、ピルベートからマラートおよび/またはOAAからマラートへの変換を触媒するが、好ましくはマラートからピルベートまたはマラートからOAAへの逆反応を触媒しない(またはより低い効率で触媒する)リンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードし得る。
【0163】
1つの態様において、この方法は、適切な培養培地中で、ピルベートからOAAへの変換を触媒するピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルベートからOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルベートからOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼをコードする遺伝子を、マラートからマリルコエンザイムAへの変換を触媒するリンゴ酸チオキナーゼをコードする遺伝子ならびにマリルコエンザイムAからグリオキシラートおよびアセチルコエンザイムAへの変換を触媒するマリルコエンザイムAリアーゼをコードする遺伝子と共に発現する組換え微生物を培養する工程を含む。
【0164】
1つの態様において、この方法は、適切な培養培地中で、ピルベートからOAAへの変換を触媒するピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルベートからOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルベートからOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼをコードする遺伝子を、マラートからマリルコエンザイムAへの変換を触媒するリンゴ酸チオキナーゼをコードする遺伝子ならびにマリルコエンザイムAからグリオキシラートおよびアセチルコエンザイムAへの変換を触媒するマリルコエンザイムAリアーゼをコードする遺伝子と共に発現する組換え微生物を培養する工程を含み、マリルコエンザイムAリアーゼにより生成されるアセチル-CoAが、GAおよび/またはグリシンの生合成を増加させるようOAAと組み合わさる。同じ態様において、組換え微生物は、下方調節または欠失されたグルコース-6-リン酸イソメラーゼ、ピルビン酸キナーゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼおよび/またはリンゴ酸デヒドロゲナーゼ酵素を有する場合または有さない場合がある。
【0165】
1つの態様において、この方法は、適切な培養培地中で、ピルベートからOAAへの変換を触媒するピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸からOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸からOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼをコードする遺伝子を、OAAからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、マラートからマリルコエンザイムAへの変換を触媒するリンゴ酸チオキナーゼをコードする遺伝子ならびにマリルコエンザイムAからグリオキシラートおよびアセチルコエンザイムAへの変換を触媒するマリルコエンザイムAリアーゼをコードする遺伝子と共に発現する組換え微生物を培養する工程を含む。リンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子は、ピルベートからマラートおよび/またはOAAからマラートへの変換を触媒するが、好ましくはマラートからピルベートまたはマラートからOAAへの逆反応を触媒しない(またはより低い効率で触媒する)リンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードし得る。
【0166】
別の態様において、この方法は、適切な培養培地中で、ピルベートからOAAへの変換を触媒するピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸からOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸からOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼをコードする遺伝子;ピルベートからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子;OAAからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子;マラートからマリルコエンザイムAへの変換を触媒するリンゴ酸チオキナーゼをコードする遺伝子;ならびにマリルコエンザイムAからグリオキシラートおよびアセチルコエンザイムAへの変換を触媒するマリルコエンザイムAリアーゼをコードする遺伝子を発現する組換え微生物を培養する工程を含む。1つの態様において、リンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子は、ピルベートからマラートまたはOAAからマラートへの変換を触媒するが、マラートからピルベートもしくはマラートからOAAへの逆反応を触媒しないまたはマラートからピルベートもしくはマラートからOAAへの減少した変換性を示す。
【0167】
別の態様において、この方法は、適切な培養培地中で、ピルベートからOAAへの変換を触媒するピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸からOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸からOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼをコードする遺伝子;マラートからマリルコエンザイムAへの変換を触媒するリンゴ酸チオキナーゼをコードする遺伝子、ならびにマリルコエンザイムAからグリオキシラートおよびアセチルコエンザイムAへの変換を触媒するマリルコエンザイムAリアーゼをコードする遺伝子を発現する組換え微生物を培養する工程を含み、微生物は、OAAからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を含まないまたはOAAからマラートへの変換を触媒リンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子内に欠失もしくは機能喪失変異を含む。
【0168】
別の態様において、この方法は、適切な培養培地中で、ピルベートからOAAへの変換を触媒するピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸からOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸からOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼをコードする遺伝子;ピルベートからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子;マラートからマリルコエンザイムAへの変換を触媒するリンゴ酸チオキナーゼをコードする遺伝子、ならびにマリルコエンザイムAからグリオキシラートおよびアセチルコエンザイムAへの変換を触媒するマリルコエンザイムAリアーゼをコードする遺伝子を発現する組換え微生物を培養する工程を含み、微生物は、OAAからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を含まないまたはOAAからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子内に機能喪失変異を含む。
【0169】
1つの態様において、グリオキシラートは、組換え微生物により発現されるNAD(P)H依存性グリオキシル酸レダクターゼによりグリコラートに還元される。
【0170】
1つの態様において、グリオキシラートは、組換え微生物により発現されるアラニン-グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ、グリシンデヒドロゲナーゼ、グリシントランスアミナーゼ、セリン-グリオキシル酸トランスアミナーゼをコードする遺伝子、および/またはグリシンオキシダーゼを用いてグリシンに変換される。
【0171】
本開示の方法において使用される適切な培養培地は、発酵可能な炭素源を含む。1つの態様において、炭素源は、糖、グリセロール、アルコール、有機酸、アルカン、脂肪酸、リグノセルロース、タンパク質、二酸化炭素、および一酸化炭素から選択される。例示的な態様において、炭素源は糖である。さらなる例示的な態様において、炭素源は、ヘキソースおよび/またはペントース糖である。別の態様において、炭素源は、グルコースもしくはグルコースのオリゴマーである、またはヘミセルロースを含むバイオマス加水分解物を含む。別の態様において、炭素源は、単糖(例えば、グルコース、キシロース、アラビノース、フルクトース、およびマンノース)、二糖(例えば、スクロース、ラクトース、およびマルトース)、オリゴ糖(例えば、ガラクトース)または多糖(例えば、セルロース)である。
【0172】
別の態様において、GAおよび/またはグリシンを生成する方法は、適切な培養培地中で、
(a)ピルベートからマラートへのカルボキシル化を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼ、
(b)マラートからマリル-CoAへの変換を触媒するリンゴ酸チオキナーゼ、ならびに
(c)マリルCoAからグリオキシラートおよびアセチル-CoAへの分割を触媒するマリル-CoAリアーゼ、
(d)任意で、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、および/またはホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、および/またはピルビン酸カルボキシラーゼ
をコードする遺伝子群を発現し、
(a)リンゴ酸シンターゼをコードする遺伝子の欠失または減弱化、
(b)イソクエン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の欠失または減弱化、
(c)ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸オキシダーゼおよび/またはピルビン酸ギ酸-リアーゼをコードする遺伝子の欠失または減弱化、
(d)オキサロアセタートをマラートにまたはマラートをオキサロアセタートに変換するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の欠失または減弱化、ならびに
(e)ピルビン酸キナーゼをコードする遺伝子の欠失または減弱化
からなる群より選択される少なくとも1つの修飾を含む組換え微生物を培養する工程を含む。
【0173】
別の態様において、GAおよび/またはグリシンを生成する方法は、適切な培養培地中で、
(a)ピルベートからマラートへのカルボキシル化を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼ、
(b)マラートからマリル-CoAへの変換を触媒するリンゴ酸チオキナーゼ、ならびに
(c)マリルCoAからグリオキシラートおよびアセチル-CoAへの分割を触媒するマリル-CoAリアーゼ
をコードする遺伝子群を発現し、
(a)マラートからピルベートへの減少した変換性を示すよう、オキサロアセタートからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子もしくはマラートからオキサロアセタートを触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の減弱化またはピルベートからマラートへのカルボキシル化を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の減弱化/変異、ならびに
(b)リンゴ酸シンターゼをコードする遺伝子(例えば、大腸菌由来の遺伝子aceBおよび/もしくはglcBまたは出芽酵母由来の遺伝子DAL7およびMLS1)の欠失または減弱化
を含む組換え微生物を培養する工程を含む。
【0174】
別の態様において、GAおよび/またはグリシンを生成する方法は、適切な培養培地中で、
(a)PEPからオキサロアセタートへのカルボキシル化を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼおよび/またはPEPからオキサロアセタートへのカルボキシル化を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼおよび/またはピルベートからオキサロアセタートへのカルボキシル化を触媒するピルビン酸カルボキシラーゼおよび/またはピルベートからマラートへのカルボキシル化を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼ、
(b)マラートからマリル-CoAへの変換を触媒するリンゴ酸チオキナーゼ、ならびに
(c)マリル-CoAからグリオキシラートおよびアセチル-CoAへの変換を触媒するマリル-CoAリアーゼ、
(d)ならびに任意で、オキサロアセタートからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼ
をコードする遺伝子群を発現し、
(a)リンゴ酸シンターゼをコードする遺伝子の欠失または減弱化、
(b)イソクエン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の欠失または減弱化、
(c)ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸オキシダーゼおよび/またはピルビン酸ギ酸-リアーゼをコードする遺伝子の欠失または減弱化、
(d)マラートからピルベートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子またはマラートからオキサロアセタートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の欠失または減弱化、
(e)ピルビン酸キナーゼをコードする遺伝子の欠失または減弱化、
(f)グリオキシル酸カルボリガーゼをコードする遺伝子の欠失または減弱化、
(g)2-オキソ-4-ヒドロキシグルタル酸アルドラーゼをコードする遺伝子の欠失または減弱化、
(h)グリコアルデヒドレダクターゼをコードする遺伝子の欠失または減弱化、
(i)グリコール酸オキシダーゼをコードする遺伝子の欠失または減弱化、ならびに
(j)イソクエン酸リアーゼのレプレッサーをコードする遺伝子の欠失または減弱化
からなる群より選択される少なくとも1つの修飾を含む組換え微生物を培養する工程を含む。
【0175】
さらに別の態様において、GAおよび/またはグリシンを生成する方法は、適切な培養培地中で、ピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、リンゴ酸チオキナーゼ、マリルコエンザイムAリアーゼ、NADH依存性グリオキシル酸レダクターゼ、およびNADPH依存性グリオキシル酸レダクターゼからなる群より選択される1つまたは複数の酵素の発現レベルの増加もしくは活性の増加(すなわち、所望の反応についての動態パラメータの向上)またはより高い特異性(すなわち、その野生型酵素との比較で標的基質に対して>5倍、>101倍、>102倍、>103倍、104倍もしくは好ましくは>105より特異的な改変された酵素、もしくは新規の相同な酵素)を示す組換え微生物を培養する工程を含む。
【0176】
さらに別の態様において、GAおよび/またはグリシンを生成する方法は、適切な培養培地中で、リンゴ酸シンターゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸オキシダーゼおよび/またはピルビン酸ギ酸-リアーゼ、ピルビン酸キナーゼ、グリオキシル酸カルボリガーゼ、2-オキソ-4-ヒドロキシグルタル酸アルドラーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、グリコアルデヒドレダクターゼ、ならびにグリコール酸オキシダーゼからなる群より選択される少なくとも1つの酵素の発現レベルの減少を示す組換え微生物を培養する工程を含む。
【0177】
別の態様において、GAおよび/またはグリシンを生成する方法は、ピルビン酸デヒドロゲナーゼの活性を減少させる欠失または修飾を含み得、アセチル-CoAへのピルベートの変換による主要な炭素の消失を防ぎまたは少なくとも減少させ、本明細書に提案される酵素候補のカルボキシル化活性を通じてピルベートまたはホスホエノールピルビン酸からオキサロアセタートへの炭素の経路変更を優先させる。
【0178】
別の態様において、GAおよび/またはグリシンを生成する方法は、ピルビン酸キナーゼの活性を減少させる欠失または修飾を含み得、本明細書に提案される酵素候補のカルボキシル化活性を通じてホスホエノールピルビン酸からオキサロアセタートへの炭素固定を優先させる。
【0179】
本開示の方法は、炭素源1gあたり約1.1gのグリコール酸~約2.0 g/gの範囲(その間の値および範囲を含む)のグリコール酸の収率を提供し得る。例えば、グリコール酸の収率は、約1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9または約2.0 g/gであり得る。グリコール酸の収率は、約1.1~約1.8 g/g、約1.2~約1.8 g/g、約1.3~約1.8 g/g、約1.4~1.8 g/g、約1.4~1.7 g/g、または約1.4~1.6 g/gの範囲であり得る。
【0180】
本開示の方法は、炭素源1gあたり約1.0gのグリシン~約1.5 g/gの範囲(その間の値および範囲を含む)のグリシンの収率を提供し得る。例えば、グリシンの収率は、約1.0、1.1、1.2、1.3、1.4または1.5 g/gであり得る。グリシンの収率は、約1.0~約1.4 g/g、約1.0~約1.3 g/g、約1.0~約1.2 g/g、約1.1~1.5 g/g、約1.1~1.4 g/g、または約1.1~1.3 g/g、または約1.2~1.4 g/gの範囲であり得る。
【0181】
ポリグリコール酸(PGA)の生成
本開示はまた、ポリグリコール酸(PGA)を生成する方法も包含する。本開示の組換え微生物により生成されるグリコール酸は、PGAの生成に使用され得る。PGAは、インビボ重合反応を通じてまたは化学的重合反応を通じてGAから生成され得る。
【0182】
1つの態様において、PGAは、その全体が参照により組み入れられる米国特許前公報第2011/0118434A1号に記載されるインビボ重合経路を用いて生成される。この経路においては、GAが生成されると、2つのクラスの酵素 - コエンザイムAトランスフェラーゼ/シンターゼおよびPHAシンターゼが、細胞内でPGAを生成するために使用され得る。したがって、1つの態様において、本明細書に開示される態様の任意の1つの組換え微生物は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)シンターゼをコードする遺伝子を含み得る。
【0183】
PHAシンターゼの4つの主要なクラスが公知となっている(Rhem, B., 2003)。クラスIおよびクラスII PHAシンターゼは、1つのタイプのサブユニット(PhaC)のみからなる酵素を含む。それらのインビボおよびインビトロ特異性により、(例えば、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)における)クラスI PHAシンターゼは、3~5個の炭素原子を含む様々なヒドロキシ脂肪酸のCoA-チオエステルを優先的に利用し、一方、(例えば、シュードモナス・アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)における)クラスII PHAシンターゼは6~14個の炭素原子を含む様々なヒドロキシ脂肪酸のCoA-チオエステルを優先的に利用する。(例えば、アロクロマチウム・ビノサム(Allochromatium vinosum)における)クラスIIIシンターゼは、2つの異なるタイプのサブユニット、PhaCおよびPhaEサブユニットからなる酵素を含む。これらのPHAシンターゼは、3~5個の炭素原子を含むヒドロキシ脂肪酸のCoA-チオエステルを好む。(例えば、バシラス・メガテリウム(Bacillus megaterium)における)クラスIV PHAシンターゼは、クラスIII PHAシンターゼに似ているが、PhaEがPhaRと置き換わっている。
【0184】
1つの態様において、PHAシンターゼをコードする遺伝子は、phaC、phaECおよび/またはphaCRである。
【0185】
1つの態様において、グリコール酸は、アシル-CoAシンセターゼ、アシル-CoAトランスフェラーゼ、および酪酸キナーゼに付随するホスホトランスブチリラーゼからなる群より選択される1つまたは複数の酵素によりグリコリル-CoAに変換される。
【0186】
例示的な態様において、グリコール酸をグリコリル-CoAに変換する酵素は、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)の種由来である。例示的な態様において、本明細書に記載される態様の任意の1つの組換え微生物は、大腸菌またはサルモネラ・ティフィムリム(Salmonella Thyphimurium)由来のプロピオニルコエンザイムAシンセターゼをコードする遺伝子prpE、アセチル-CoAトランスフェラーゼをコードする大腸菌由来の遺伝子acs、ホスホトランスブチリラーゼをコードする遺伝子ptbおよび/または酪酸キナーゼをコードする遺伝子bukを含み得る。
【0187】
インビボ重合を通じる以外では、高分子量PGAを生成するKurehaの開環重合(書類を添付する)および低分子量PGAに達する直接重縮合(Singh & Tiwari, 2010.)という化学的重合法が当技術分野で公知である。
【0188】
あるいは、PGAは、化学的重合経路、例えば、環状ジエステルの開環重合または2-ヒドロキシカルボン酸の重縮合を通じて調製され得る。例示的な態様において、高分子量PGAを得るために、Yamaneら(Polymer Journal, August 2014, pp. 1-7)に記載される開環重合法を用いてPGAが生成され得る。別の例示的な態様において、低分子量PGAを得るために、直接重縮合を通じてPGAが生成され得る(Singh & Tiwari, International Journal of Polymer Science, Volume 2010, Article ID 652719, 23 pages, doi:10.1155/2010/652719)。
【0189】
本開示はまた、逆グリオキシル酸短絡を用いてグリオキシラートからグリコール酸および/またはグリシンを生成することができる組換え微生物を作製する方法を提供する。1つの態様において、組換え微生物を作製する方法は、
(a)ピルベートをOAAに変換するピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、
(b)ホスホエノールピルビン酸をOAAに変換するホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、
(c)ホスホエノールピルビン酸をOAAに変換するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼをコードする遺伝子、
(d)OAAをマラートにおよび/またはピルベートをマラートに変換するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、
(e)マラートをマリルコエンザイムAに変換するリンゴ酸チオキナーゼをコードする遺伝子、
(f)マリルコエンザイムAをグリオキシラートおよびアセチル-CoAに変換するマリルコエンザイムAリアーゼをコードする遺伝子、
(g)グリオキシラートをグリコラートに変換するNADH依存性グリオキシル酸レダクターゼをコードする遺伝子、ならびに
(h)グリオキシラートをグリコラートに変換するNADPH依存性グリオキシル酸レダクターゼをコードする遺伝子
からなる群より選択される1つもしくは複数の遺伝子を微生物に導入するまたは1つもしくは複数の遺伝子に機能獲得変異を導入する工程を含む。
【0190】
上記ポリペプチドをコードする遺伝子のヌクレオチド配列は、当技術分野で公知であり、公衆利用可能である(www.ncbi.nlm.nih.gov/genbank/)。所望の核酸配列を微生物のゲノムにまたは発現ベクターに組み込む方法もまた公知である。例えば、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第9,034,615号は、(NADPH依存性グリオキシル酸レダクターゼをコードする)遺伝子ycdWを発現ベクターに組み込む方法を開示している。
【0191】
特定の態様において、組換え微生物は、内在性遺伝子の発現を減弱化する欠失または修飾を含む。これらの微生物を作製する例示的な方法は、遺伝子を欠失させるまたは天然プロモーターを低強度プロモーターで置き換えることによりもしくは減少した酵素活性をもたらす変異を遺伝子に導入することにより遺伝子の発現を減弱化する工程を含む。
【0192】
いくつかの態様において、組換え微生物を作製する方法は、
(a)リンゴ酸シンターゼをコードする遺伝子、
(b)イソクエン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、
(c)ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸オキシダーゼおよび/またはピルビン酸ギ酸-リアーゼをコードする遺伝子、
(d)ピルビン酸キナーゼをコードする遺伝子、
(e)リンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、
(f)グリオキシル酸カルボリガーゼをコードする遺伝子、
(g)2-オキソ-4-ヒドロキシグルタル酸アルドラーゼをコードする遺伝子、
(h)グリコアルデヒドレダクターゼをコードする遺伝子、
(i)グリコール酸オキシダーゼをコードする遺伝子、
(j)イソクエン酸リアーゼのレプレッサーをコードする遺伝子、ならびに
(l)グルコース-6-リン酸イソメラーゼをコードする遺伝子
からなる群より選択される少なくとも1つの内在性遺伝子によりコードされる酵素の発現を減弱化するまたは活性を阻害する欠失または修飾を微生物に導入する工程を含む。
【0193】
組換え微生物を作製する方法はさらに、(a)リンゴ酸:キノンオキシドレダクターゼをコードする遺伝子の発現を減弱化する欠失もしくは修飾を微生物に導入する工程、ならびに/または(b)リンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、ピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼをコードする遺伝子、リンゴ酸チオキナーゼをコードする遺伝子、マリル-CoAリアーゼをコードする遺伝子、アラニン-グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼをコードする遺伝子、グリシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、グリシントランスアミナーゼをコードする遺伝子、セリン-グリオキシル酸トランスアミナーゼをコードする遺伝子、グリシンオキシダーゼをコードする遺伝子、アラニントランスアミナーゼをコードする遺伝子、および/もしくはNADPH依存性グルタミン酸シンターゼをコードする遺伝子に機能獲得変異を導入する工程を含み得る。
【0194】
上記の詳細な説明は、理解を明確にするために提供されるにすぎず、それに基づき不要な限定がなされるべきでなく、改変は当業者に明らかである。
【0195】
本開示はその特定の態様に関連して記載されているが、さらなる改変が可能であること、および本願は、概ね、本開示の原理にしたがい、かつ本開示の属する技術分野における公知または慣例的な実務の範囲内でなされ、本明細書中以前に示された本質的特徴に適用され得、添付の特許請求の範囲に包含される本開示からのそのような逸脱を含む、本開示の任意の派生、使用または適応を網羅することが意図されていることが理解されるであろう。
【実施例
【0196】
実施例1
大腸菌における逆グリオキシル酸短絡活性を通じたグリコール酸生成の生合成および改善のインシリコ分析
様々なシナリオ下でのグリコラートの生成収率に対する本明細書に記載される遺伝子改変の影響をシミュレートするため、フラックスバランス解析(FBA)を行った(図3および図4)。これを行うために、大腸菌のすべての既知の代謝反応を含むゲノム規模の代謝モデルiJO1366(Orth JD. et al. (2011) A comprehensive genome-scale reconstruction of Escherichia coli metabolism - 2011. Mol Syst Biol. 7:535)を、グリオキシラート(GS)および逆グリオキシラート(rGS)短絡の組み合わせを用いたグリコール酸(GA)生成をシミュレートするよう改変した。このモデルを、リンゴ酸チオキナーゼ反応(EC 6.2.1.9)、マリル-coAリガーゼ反応(EC 4.1.3.24)およびピルビン酸カルボキシラーゼ反応(EC 6.4.1.1)を含む追加の反応および対応する代謝産物を含むよう改変した。
【0197】
シミュレーションは、OptFluxソフトウェアを用いて行った(Rocha L. (2010) OptFlux: an open-source software platform for in silico metabolic engineering. BMC Syst Biol. 4:45)。例示的な態様において、GS/rGS改変を通じたGAの最大理論的生成収率を評価するため、パーシモニアス(parsimonious)型フラックスバランス解析を行った。例示的な態様に依存して、使用した輸送系は、ヘキソキナーゼHXK(E.C. 2.7.1.1)またはホスホトランスフェラーゼ系(PTS)のいずれかとし、TCA回路に入るために使用したカルボキシル化酵素は、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)(E.C. 4.1.1.32)、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PPC)(E.C. 4.1.1.31)またはピルビン酸カルボキシラーゼPPC(EC 6.4.1.1)のいずれかとした。
【0198】
シミュレーションは、グルコースが炭素基質である大腸菌株のインビボ培養条件下かつ好気条件下で容易に再現される制約群を適用することにより行った。グルコース基質のフラックスは、裁量で、10μモル.gCDW-1.h-1に設定した。最小バイオマス収率または細胞メンテナンスコストに関する制約は設定しなかった。GAの最大理論的生成量を示すシミュレーションの結果を、表1に示す。
【0199】
(表1)GAの最大理論的生成量を示すシミュレーションの結果
【0200】
シミュレートされたフラックスマップを図3および図4に示す。シミュレーションは、GS/rGSを通じたグルコースからのGAの理論的生成収率が、使用されたグルコース輸送系およびカルボキシル化酵素に依存して、0.83~1.43 gGA/gグルコースに達することができることを示している。カルボキシル化酵素としてのPEPCKまたはPPCに依存する菌株は、PTS+株でより低性能である。これは、それらの共通基質であるホスホエノールピルビン酸に対するPTS系とPEPCK/PPCの間での競合に起因するものと考えられる。当該菌株の性能は、しかし、グルコースがほぼヘキソキナーゼHXKを通じて輸送されるPTS欠損株において強化され得る。フラックスマップ(図3および図4)に示されるように、最大収率は、グルコースから来る炭素フラックスの86~100%を、最後のグリオキシル酸レダクターゼ反応(E.C. 1.1.1.26)のための酸化還元補因子を提供するペントースリン酸経路に経路変更させることによってのみ達成され得る。このペントースリン酸経路への炭素の流れを、NADPH依存性グリオキシル酸レダクターゼが要求するNADPH補因子を提供する代替手段とみなした。
【0201】
実施例2
ピルビン酸カルボキシラーゼ活性を通じたカルボキシル化と組み合わせた、大腸菌における逆グリオキシル酸短絡活性を通じたグリコール酸生成のインビボ生合成および改善
以前に記載されたように(Alkim C. 2016)、合成性キシルロース-1リン酸経路は、キシロース豊富な糖混合物からのグリコール酸の生成を増加させる。Biotechnol Biofuels, 9:201)、大腸菌におけるグリコール酸(GA)の生成は、グリオキシル酸を消費するすべてのアノテートされた反応、すなわち、aceB(GenBank Gene ID: 948512)およびglcB(GenBank Gene ID: 948857)よりコードされるリンゴ酸シンターゼ、gcl(GenBank Gene ID: 945394)によりコードされるグリオキシル酸カルボリガーゼ、ならびにeda(GenBank Gene ID: 946367)によりコードされる2-オキソ-4-ヒドロキシグルタル酸アルドラーゼを不活性化させることにより強化され得る。GAの再酸化は、さらに、グリコール酸オキシダーゼをコードするglcDEFGオペロン(GenBank Gene ID: 947353、2847718、2847717、947473)を欠失させることによって防止され得る。
【0202】
したがって、以下に記載される実験を、大腸菌K12株MG1655 ΔaceB ΔglcDEFGB Δgcl Δedd-edaにおいて行った。SGK_rGS_00と呼ばれる菌株は、Alkimら(Alkim C. (2016) The synthetic xylulose-1 phosphate pathway increases production of glycolic acid from xylose-rich sugar mixtures. Biotechnol Biofuels, 9:201)からの贈与品であった。
【0203】
グルコースリン酸イソメラーゼをコードするpgi座の欠失
強化されたペントースリン酸活性およびNADPHプールを有する菌株を構築するために、グルコース-6-リン酸イソメラーゼをコードするpgi(GenBank Gene ID: 948535)の欠失を、標準的な手順(Jiang Y. et al. (2015) Multigene editing in the Escherichia coli genome via the CRISPR-Cas9 system. Appl Environ Microbiol, 81:2506-2514)にしたがいCRISPR-Cas9により行った。ガイドRNAを含むプラスミドpTargetF(pMB1 aadA sgRNA-cadA)ならびにcas9遺伝子およびλ-Redリコンビナーゼを含むpCas(repA101-Ts kan Pcas-cas9 ParaB-Red lacIq Ptrc-sgRNA-pMB1)を、AddGeneから入手した(それぞれ、Addgene プラスミド62226番および62225番;Addgene, Cambridge, USA)。
【0204】
pgi座を標的化するN20配列を有するガイドRNAを発現するpTargetF pMB1 aadA sgRNA-pgiを、表2に記載されるプライマーPgi_N20_FWおよびPgi_N20_RVを用いたオーバーラップPCRにより得た。ドナーDNA/破壊カセットを、プライマーPgi_H1_FW、Pgi_H1_RV、Pgi_H2_FWおよびPgi_H2_RVを用いたオーバーラップPCRによりpgi座の500bp上流および下流を増幅および結合することにより得たPCRフラグメントとして供給した(表2を参照のこと)。
【0205】
(表2)CRISPR-Cas9を用いたpgi破壊に使用したオリゴヌクレオチド。結合領域に下線が引かれている。pgiに特異的なN20配列は斜体で示されている。
【0206】
(Jiang Y. et al. (2015) Multigene editing in the Escherichia coli genome via the CRISPR-Cas9 system. Appl Environ Microbiol, 81:2506-2514)のプロトコルを適合させることにより、ゲノム編集を行った。SGK_rGS_00株を、最初に、標準的な手順(Woodall CA. (2003) Plasmid Vectors. Methods in Molecular Biology. 235)を用いたpCASプラスミドのエレクトロポレーションにより形質転換した。以前に記載されたように(Jiang Y. et al. (2015) Multigene editing in the Escherichia coli genome via the CRISPR-Cas9 system. Appl Environ Microbiol, 81:2506-2514)、アラビノース(10 mM終濃度)を用いてλ-Redリコンビナーゼを誘導しつつ、pCASを有するSGK_rGS_00株のコンピテント細胞を調製した。その後、50μlのコンピテント細胞を、100 ngのpTargetFプラスミドおよび400 ngのドナーDNAと混合した。2-mmエレクトロポレーションキュベット(VWR)内で2.5 kVでのエレクトロポレーションを行い、その生成物を、直ちに、(30℃に事前に温めておいた)1 mlのLB培地中に懸濁した。細胞を30℃で一晩回復させ、その後にカナマイシン(50μg/ml)およびストレプトマイシン(50μg/ml)を含むLB寒天上にプレートし、30℃で一晩インキュベートした。形質転換体を、コロニーPCRおよび配列決定により同定した。得られた菌株を、SGK_rGS_01: MG1655 ΔaceB ΔglcDEFGB Δgcl Δedd-eda Δpgiと名付けた。
【0207】
ピルビン酸デヒドロゲナーゼのサブユニットE1をコードするaceE座の欠失
クレブス回路に入るようカルボキシル化酵素、例えばピルビン酸カルボキシラーゼの使用を強化するためにピルベートを蓄積する菌株を構築するため、SGK_rGS_01株において、標準的な手順(Thomasson LC. (2007) E. coli Genome Manipulation by P1 Transduction. Curr Protoc Mol Biol. 79:1.17)にしたがいKeio単一遺伝子欠失コレクションから得たMG1655 Δpgi::KanR株JW0110(Baba T. et al. (2006) Construction of Escherichia coli K-12 in-frame, single-gene knockout mutants: the Keio collection. Mol Syst Biol. 2:2006.0008)を用いてピルビン酸デヒドロゲナーゼサブユニットE1 aceEの欠失を行った。形質転換体を、100μg/mlカナマイシンを補充したLB寒天上で選択し、コロニーPCRおよび配列決定により同定した。さらに、抗生物質マーカーの除去を、以前に文献(Datsenko KA. et al. (2000) One-step inactivation of chromosomal genes in Escherichia coli K-12 using PCR products. Proc Natl Acad Sci USA. 97(12):6640-5)に記載されたようにしてFlp組換えを用いたFTR領域の特異的組換えにより行った。得られた菌株を、SGK_rGS_02: MG1655 ΔaceB ΔglcDEFGB Δgcl Δedd-eda Δpgi ΔaceEと名付けた。
【0208】
炭素固定、グリオキシル酸短絡活性およびグリコール酸合成を強化するためのピルビン酸カルボキシラーゼ、クエン酸シンターゼ、イソクエン酸リアーゼおよびグリオキシル酸レダクターゼの発現
リゾビウム・エトリ株CFN42由来のピルビン酸カルボキシラーゼ(SEQ ID NO:20)(Uniprotアクセッション番号Q2K340)を、Genewiz(登録商標)(Leipzig, Germany)により合成した。ネイティブのイソクエン酸リアーゼaceA(SEQ ID NO:21)(GenBank Gene ID: 948517)およびグリオキシル酸レダクターゼghrA(SEQ ID NO:23)(GeneBank Gene ID: 946431)遺伝子を、表3のプライマーを用いて大腸菌MG1655のゲノムからPCRにより増幅した。NADH非感受性クエン酸シンターゼ変異体gltAR163L(SEQ ID NO:22)を、Trichezら(Trichez D. (2018) Engineering of Escherichia coli for Krebs cycle-dependent production of malic acid. Microb Cell Fact. 17:113)に記載されるように、プラスミドpACT3w-ppcK620S-gltAR163LからPCRにより回収した。
【0209】
これらの遺伝子を合成オペロンとして発現させるために、最初にpZS13-Lucプラスミド(Expressys)を、PA1lacO-1プロモーターをJ23119構成性プロモーター(SEQ ID NO:19)(http://parts.igem.org/Promoters/Catalog/Anderson)で置き換え、マルチクローニング部位を導入することにより改変した。J23119プロモーターは、GeneWiz(登録商標)(Leipzig, Germany)により合成された合成遺伝子フラグメントとして得た。その後、それを、制限部位AatIIとKpnIの間での制限クローニングによりpZS13-Lucプラスミドにクローニングした。マルチクローニング部位を、pZA21-MCSプラスミド(Expressys)からKpnIおよびAvrIIでの消化により回収し、制限部位KpnIとAvrIIの間での制限クローニングによりプラスミドに組み込んだ。得られたプラスミドは、pZS1-J23119-MCSと称される。
【0210】
すべての遺伝子を、表3に記載されるプライマーを用いてPCRにより増幅した。PCRフラグメントを、EZ-10スピンカラムDNAゲル抽出キット(BioBasic)を製造元のプロトコルにしたがい用いてゲル上で精製した。その後、精製されたフラグメントを、NEBuilder(登録商標)HiFi DNAアセンブリクローニングキット(New England Biolabs)を製造元のプロトコルにしたがい用いることにより、KpnIおよびHindIIIでの制限により直鎖状にされたpZS1-J23119-MCSプラスミドにクローニングした。構築物を、PCRおよび配列決定により確認した。得られた合成オペロンはJ23119-pyc-aceA-gltAR163L-ghrA(SEQ ID NO: 24)と、プラスミドはpZS1-pycと称される(表4を参照のこと)。
【0211】
(表3)合成オペロンJ23119-pyc-aceA-gltAR164L-ghrAの構築に使用したオリゴヌクレオチド。結合領域に下線が引かれている。オーバーハングは、NEBuilder(登録商標)HiFi DNAアセンブリクローニングキット(New England Biolabs)を用いたアセンブリクローニングのために使用される。
【0212】
(表4)合成オペロンPTac-sucCD-mclの構築に使用したオリゴヌクレオチド。結合領域に下線が引かれている。オーバーハングは、NEBuilder(登録商標)HiFi DNAアセンブリクローニングキット(New England Biolabs)を用いたアセンブリクローニングのために使用される。
【0213】
逆グリオキシル酸短絡活性を導入するためのリンゴ酸チオキナーゼおよびマリル-coAリガーゼの発現
リンゴ酸チオキナーゼをコードするメチロコッカス・カプスラタスstr.Bath由来のsucC2-sucD2オペロン(SEQ ID NO:26)(Uniprot Q607L9およびQ607L8)ならびにマリル-coAリアーゼをコードするメチロバクテリウム・エキストロクエンスAM1由来のmcl遺伝子(SEQ ID NO:27)(Uniprot C5B113)を、GeneWiz(登録商標)(Leipzig, Germany)からの合成遺伝子として注文した。これらの遺伝子を合成オペロンとして発現させるために、最初に、pZA31-MCSプラスミド(Expressys)を、PLtetO-1プロモーターを標準的なpACT3プラスミドから回収したPTac誘導性プロモーター(SEQ ID NO:25)で置き換えることにより改変し、制限部位AatIIとKpnIの間での制限クローニングによりクローニングした。得られたプラスミドは、pZA3-PTac-MCSと称される。
【0214】
すべての遺伝子を、表4に記載されるプライマーを用いてPCRにより増幅した。PCRフラグメントを、EZ-10スピンカラムDNAゲル抽出キット(BioBasic)を製造元のプロトコルにしたがい用いてゲル上で精製した。その後、精製されたフラグメントを、NEBuilder(登録商標)HiFi DNAアセンブリクローニングキット(New England Biolabs)を製造元のプロトコルにしたがい用いることにより、EcoRIおよびMluIでの制限により直鎖状にされたpZA3-PTac-MCSプラスミドに合成オペロンとしてクローニングした。構築物を、PCRおよび配列決定により確認した。得られた合成オペロンはPTac-sucCD-mcl(SEQ ID NO: 28)と、プラスミドはpZA3-rGSと称される(表5を参照のこと)。
【0215】
グリコール酸生成アッセイ
3つの大腸菌株を、GA生成アッセイにおいて試験した。野生型株MG1655ならびに改変株SGK_rGS_01およびSGK_rGS_02を、(i)陰性対照として、プラスミドなし、(ii)プラスミドpZS1-pycのみあり、(ii)プラスミドpZA3-rGSあり、(iv)両方のプラスミドあり、で試験した。すべての菌株を、標準的な手順(Woodall CA. (2003) Plasmid Vectors. Methods in Molecular Biology. 235)を用いた対応するプラスミドのエレクトロポレーションにより形質転換した。プラスミドおよび菌株の遺伝子型を表5に示す。
【0216】
(表5)グリコール酸生成アッセイにおけるプラスミドおよび菌株の遺伝子型
【0217】
菌株を、15 mM酢酸塩および1 g/Lカザミノ酸を補充したM9グルコース培地(20 g/Lグルコース)中で約50時間成長させた。アンピシリンおよびクロラムフェニコールを、それぞれ100 μg/mLおよび25 μg/mLの終濃度となるよう添加した(すなわち、pZS1-pycを有する菌株に対してはアンピシリンを、pZA3-rGSを有する菌株に対してはクロラムフェニコールを添加)。それらのOD600がおよそ0.6~0.8に達したときに、培養物をIPTG(0.5 mM最終)で誘導した。成長をOD600により観察した。成長中、静止相まで、サンプルを採取した。その後、グルコース消費および代謝産物の生成を、移動相(0.5 mL/分)としてH2SO4 0.5 mMを用いる、80℃での、Rezex ROA-有機酸カラム(Phenomenex)におけるHPLC-UV/RI(Dionex Ultimate 3000, Thermo Fisher Scientific)により分析した。24時間後のGA価およびGA収率が表6に示されている。
【0218】
表6に示されるように、プラスミドを含まないまたはプラスミドpZS1-pycもしくはpZA3-RGSのみを含むMG1655野生型対照においては、グリコール酸の実質的な生成が検出されなかった。野生型株においてはすべての主要な競合経路(すなわち、グリオキシラートおよびグリコール酸分解経路)が依然として活性であったため、これは予想されたことであった。しかし、興味深いことに、MG1655野生型株においてpZS1-pycプラスミドおよびpZA3-rGSの両方を発現させた場合、限定的な量のGAを検出することができた。力価は、0.11 g/LのGAに達し、これはGS/rGS経路の組み合わせが野生型株においてさえもGAの生成に対して正の影響を有することを初めて示すものである。
【0219】
改変株SGK_rGS_01に関して、空の対照株またはpZA3-rGSのみを有する株においては実質的なGA生成が検出できなかった。しかし、プラスミドpZS1-pycを用いてグリオキシル酸短絡活性およびグリオキシル酸レダクターゼ活性を強化すると、最大約0.18 g/Lの力価までGA生成を検出することができた。この菌株におけるpZA3-rGSプラスミドの添加は、GA価を910%改善し、最大1.91 g/Lに達した。その生成収率は、22.5時間後に最大0.24 gGA/gグルコースに達し、rGS改変なしでの生成収率と比較すると2400%の改善を示した。
【0220】
改変株SGK_rGS_02に関して、単一のプラスミドを含む対照株においては実質的なGA生成が検出できなかった。両方のプラスミドを含む場合のみ、最大約0.28 g/Lの力価のGA生成が検出された。
【0221】
(表6)24時間の成長後のグリコール酸生成の間に評価されたGA価および収率
【0222】
実施例3
pepカルボキシラーゼ活性を通じたカルボキシル化と組み合わされた、大腸菌における逆グリオキシル酸短絡活性を通じたグリコール酸生成の生合成および改善
以下に記載される実験を大腸菌K12株MG1655 ΔaceB ΔglcDEFGB Δgcl Δedd-edaにおいて行った。SGK_rGS_00と呼ばれる菌株は、Alkimら(Alkim C. et al. (2016) The Synthetic Xylulose-1 phosphate pathway increases production of glycolic acid from xylose-rich sugar mixtures. Biotechnol Biofuels, 9:201)からの贈与品であった。
【0223】
グルコースリン酸イソメラーゼをコードするpgi座の欠失
強化されたペントースリン酸活性およびNADPHプールを有する菌株を構築するために、グルコース-6-リン酸イソメラーゼをコードするpgi(GenBank Gene ID: 948535)の欠失を、標準的な手順(Jiang Y. et al. (2015) Multigene editing in the Escherichia coli genome via the CRISPR-Cas9 system. Appl Environ Microbiol, 81:2506-2514)にしたがうCRISPR-Cas9により行った。菌株の破壊は、先の実施例2に記載されるようにして行い、これはSGK_rGS_01と称される(表5)。
【0224】
ピルビン酸キナーゼIをコードするpykF座の欠失
クレブス回路に入るようカルボキシル化酵素、例えばpepカルボキシラーゼの使用を強化するためにホスホエノールピルビン酸を蓄積する菌株を構築するため、SGK_rGS_01株において、標準的な手順(Thomasson LC. (2007) E. coli Genome Manipulation by P1 Transduction. Curr Protoc Mol Biol. 79:1.17)にしたがいKeio単一遺伝子欠失コレクションから得たMG1655 Δpgi::KanR 株JW1666(Baba T. et al. (2006) Construction of Escherichia coli K-12 in-frame, single-gene knockout mutants: the Keio collection. Mol Syst Biol. 2:2006.0008)を用いた形質導入により、ピルビン酸キナーゼI pykF(GenBank Gene ID: 946179)の欠失を行った。形質転換体を、100μg/mlカナマイシンを補充したLB寒天上で選択し、コロニーPCRおよび配列決定により同定した。さらに、抗生物質マーカーの除去を、以前に文献(Datsenko KA. et al. (2000) One-step inactivation of chromosomal genes in Escherichia coli K-12 using PCR products. Proc Natl Acad Sci USA. 97(12):6640-5)に記載されたように、Flp組換えを用いたFTR領域の特異的組換えにより行った。得られた菌株を、SGK_rGS_03 MG1655 ΔaceB ΔglcDEFGB Δgcl Δedd-eda Δpgi ΔpykFと名付けた。
【0225】
炭素固定、グリオキシル酸短絡活性およびグリコール酸合成を強化するためのpepカルボキシラーゼ、クエン酸シンターゼ、イソクエン酸リアーゼおよびグリオキシル酸レダクターゼの発現。
【0226】
プラスミドpACT3w-ppcK620S-gltAR163Lを、Trichezら(Trichez D. (2018) Engineering of Escherichia coli for Krebs cycle-dependent production of malic acid. Microb Cell Fact. 17:113)から入手した。それは、誘導性PTacプロモーターの制御下に、リンゴ酸非感受性pepカルボキシラーゼ変異体ppcK620SおよびNADH非感受性クエン酸シンターゼ変異体gltAR163Lを含んでいる。さらにそれを、以下に記載されているように改変し、合成オペロンを構築するための骨格として使用した。ネイティブイソクエン酸リアーゼaceA(GeneBank Gene ID: 948517)およびグリオキシル酸レダクターゼghrA(GeneBank Gene ID: 946431)をコードする遺伝子を、それぞれ、表7に記載されるプライマーaceA_FW/aceA_RVおよびghrA_FW/ghrA_RVを用いて大腸菌MG1655のゲノムからPCRにより増幅した。遺伝子ppcK620S(SEQ ID NO:29)を、テンプレートとしてのプラスミドpACT3w-ppcK620S-gltAR163Lおよび表7に記載されるびプライマーpACT3_FW/ppc_RVを用いるプラスミド骨格pACT3に沿ったPCRにより増幅した。最後に、遺伝子gltAR163Lを、テンプレートとしてのプラスミドpACT3w-ppcK620S-gltAR163Lおよび表7に記載されるプライマーgltA_FW/gltA_RVをを用いるPCRにより増幅した。
【0227】
(表7)合成オペロンJ23119-pyc-aceA-gltAR164L-ghrAの構築に使用したオリゴヌクレオチド。結合領域に下線が引かれている。オーバーハングは、NEBuilder(登録商標)HiFi DNAアセンブリクローニングキット(New England Biolabs)を用いたアセンブリクローニングのために使用される。
【0228】
PCRフラグメントを、EZ-10スピンカラムDNAゲル抽出キット(BioBasic)を製造元のプロトコルにしたがい用いてゲル上で精製した。その後、精製されたフラグメントを、NEBuilder(登録商標)HiFi DNAアセンブリクローニングキット(New England Biolabs)を製造元のプロトコルにしたがい用いることによって組み立てた。構築物を、PCRおよび配列決定により確認した。得られた合成オペロンはPtac-ppcK620S-aceA-gltAR163L-ghrA(SEQ ID NO: 30)と、プラスミドはpACT3-ppcと称される。
【0229】
逆グリオキシル酸短絡活性を導入するためのリンゴ酸チオキナーゼおよびマリル-coAリガーゼの発現
実施例2に記載されるように、リンゴ酸チオキナーゼをコードするメチロコッカス・カプスラタスstr.Bath由来のsucC2-sucD2オペロン(SEQ ID NO:26)(Uniprot Q607L9およびQ607L8)ならびにマリル-coAリアーゼをコードするメチロバクテリウム・エキストロクエンスAM1由来のmcl遺伝子(Uniprot C5B113)を、GeneWiz(登録商標)(Leipzig, Germany)からの合成遺伝子として注文した。合成オペロンPTac-sucCD-mcl(SEQ ID NO: 28)を含むプラスミドpZA3-rGSを、実施例2に記載されるようにして得た。プラスミドpACT3-ppcに適合するバックグラウンドでPTac-sucCD-mclを発現させるために、それをさらに、制限部位AvrIIとBglIIの間での制限クローニングによりpZE23-MCSプラスミド(Expressys)に移した。得られたプラスミドは、pZE2-rGSと称される。
【0230】
グリコール酸生成アッセイ
2つの株をGA生成アッセイにおいて試験した。野生型MG1655および改変株SGK_rGS_03を、(i)プラスミドpACT3-ppcのみあり、(ii)プラスミドpZE2-rGSのみあり、および(iii)両方のプラスミドあり、で試験した。すべての菌株を、標準的手順(Woodall CA. (2003) Plasmid Vectors. Methods in Molecular Biology, 235)を用いた対応するプラスミドのエレクトロポレーションにより形質転換した。プラスミドおよび菌株の遺伝子型が表8に示されている。
【0231】
(表8)グリコール酸生成アッセイに使用したプラスミドおよび菌株の遺伝子型
【0232】
菌株を、15 mM酢酸塩および1 g/Lカザミノ酸を補充したM9グルコース培地(20 g/Lグルコース)中で約50時間成長させた。クロラムフェニコールおよびカナマイシンを、それぞれ25μg/mLおよび50μg/mLの終濃度となるよう添加した(すなわち、pACT3-ppcを有する菌株に対してはクロラムフェニコールを、pZE2-rGSを有する菌株に対してはカナマイシンを添加)。それらのOD600がおよそ0.6~0.8に達したときに、培養物をIPTG(0.5 mM最終)で誘導した。成長をOD600により観察した。成長中、静止相まで、サンプルを採取した。その後、グルコース消費および代謝産物の生成を、移動相(0.5 mL/分)としてH2SO4 0.5 mMを用いる、80℃での、Rezex ROA-有機酸カラム(Phenomenex)におけるHPLC-UV/RI(Dionex Ultimate 3000, Thermo Fisher Scientific)により分析した。グルコース価、GA価およびGA収率が表9に示されている。
【0233】
表9に示されるように、野生型対照株において、pACT3-ppcをpZE2-rGSありおよびなしで発現させたとき、GAの生成が検出できたが、わずか0.02 gGA/gグルコースの最大収率であり、他方、プラスミドpZE2-rGSのみ有するSGK_rGS_03株ではグリコール酸の生成が測定されなかった。GA生成は、しかし、この株において、プラスミドpACT3-ppcを用いて炭素固定、グリオキシル酸短絡活性およびグリオキシル酸レダクターゼ活性を強化したとき、最大約0.8 g/Lの力価まで検出できた。SGK_rGS_03におけるpZE2-rGSプラスミドの添加は、GA価を改善しない。その生成収率は、46時間後に最大0.21 gGA/gグルコースに達し、pACT3-ppcを発現する株で525%の改善および両方のプラスミドを発現する野生型株で1050%の改善を示した。
【0234】
(表9)46時間後のグリコール酸生成アッセイの間に評価されたGA価および収率
【0235】
例示的態様
1. グリコール酸(GA)および/またはグリシンの合成のためのグリオキシラートを生成する組換え微生物であって、
(a)ピルベートからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、
(b)マラートからマリルコエンザイムAへの変換を触媒するリンゴ酸チオキナーゼをコードする遺伝子、ならびに
(c)マリルコエンザイムAからグリオキシラートおよびアセチル-CoAへの変換を触媒するマリルコエンザイムAリアーゼをコードする遺伝子
を含む、前記組換え微生物。
2. グリコール酸(GA)および/またはグリシンの合成のためのグリオキシラートを生成する組換え微生物であって、
(a)ピルベートからオキサロアセタート(OAA)への変換を触媒するピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸からOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸からOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼをコードする遺伝子、
(b)OAAからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、
(c)マラートからマリルコエンザイムAへの変換を触媒するリンゴ酸チオキナーゼをコードする遺伝子、ならびに
(d)マリルコエンザイムAからグリオキシラートおよびアセチル-CoAへの変換を触媒するマリルコエンザイムAリアーゼをコードする遺伝子
を含み、マリルコエンザイムAリアーゼによって生成されるアセチル-CoAが、GAおよび/またはグリシンの生合成を増加させるようOAAと組み合わさる、前記組換え微生物。
3. グリコール酸(GA)および/またはグリシンの合成のためのグリオキシラートを生成する組換え微生物であって、
(a)ピルベートからオキサロアセタート(OAA)への変換を触媒するピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸からOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸からOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼをコードする遺伝子、
(b)マラートからマリルコエンザイムAへの変換を触媒するリンゴ酸チオキナーゼをコードする遺伝子、ならびに
(c)リンゴ酸コエンザイムAからグリオキシラートおよびアセチル-CoAへの変換を触媒するマリルコエンザイムAリアーゼをコードする遺伝子
を含み、オキサロアセタートからマラートへの変換を触媒しない、前記組換え微生物。
4. マリルコエンザイムAリアーゼにより生成されるアセチル-CoAを通じてイソプロピルアルコール、エタノール、アセトン、クエン酸、イタコン酸、酢酸、酪酸、(ポリ-)3-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシイソ酪酸、3-アミノイソ酪酸、2-ヒドロキシイソ酪酸、メタクリル酸、(ポリ)グルタミン酸、グルタミン酸、アルギニン、オルニチン、シトルリン、ロイシン、イソロイシン、およびプロリンを生成しない、前記態様のいずれかの組換え微生物。
5. マリルコエンザイムAリアーゼにより生成されるアセチル-CoAが、GAおよび/またはグリシンの生合成を増加させるようOAAと組み合わさる、前記態様のいずれかの組換え微生物。
6. リンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子内に変異を含み、該変異がオキサロアセタートからマラート、マラートからピルベートおよび/またはマラートからオキサロアセタートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼ活性の部分的または完全な阻害をもたらす、前記態様のいずれかの組換え微生物。
7. グリオキシラートからグリコラートへの変換を触媒するNADH依存性グリオキシル酸レダクターゼをコードする遺伝子またはグリオキシラートからグリコラートへの変換を触媒するNADPH依存性グリオキシル酸レダクターゼをコードする遺伝子を含む、前記態様のいずれかの組換え微生物。
8. アラニン-グルオキシル酸アミノトランスフェラーゼをコードする遺伝子、グリシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、グリシントランスアミナーゼをコードする遺伝子、セリン-グリオキシル酸トランスアミナーゼをコードする遺伝子、および/またはグリオキシラートからグリシンへの変換を触媒するグリシンオキシダーゼをコードする遺伝子を含む、前記態様のいずれかの組換え微生物。
9. ピルベートからマラートへのカルボキシル化を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼが、酵素分類(E.C.)1.1.1.38、E.C. 1.1.1.39、またはE.C. 1.1.1.40に属するものである、前記態様のいずれかの組換え微生物。
10. オキサロアセタートからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼが、酵素分類(E.C.)1.1.1.37に属するものである、前記態様のいずれかの組換え微生物。
11. ピルベートからマラートへのカルボキシル化を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子が、maeA、maeB、dme、mez、mae1、nad-me1およびnad-me2、またはそれらのホモログからなる群より選択される、前記態様のいずれかの組換え微生物。
12. 遺伝子maeAが大腸菌(E.coli)、シュードモナス(Pseudomonas)またはバシラス(Bacillus)由来である、遺伝子maeBが大腸菌またはサルモネラ(Salmonella)由来である、遺伝子dmeがリゾビウム(Rhizobium)由来である、遺伝子mezがマイコバクテリウム(Mycobacterium)由来である、遺伝子mae1が出芽酵母(S.cerevisiae)由来である、および遺伝子nad-me1またはnad-me2がシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)由来である、前記態様のいずれかの組換え微生物。
13. 遺伝子maeAがB.サブチリス(B. subtillis)由来である、遺伝子dmeがR.メリロテ(R. melilote)由来である、または遺伝子mezがマイコバクテリウム・ツベルキュロシス(Mycobacterium tuberculosis)由来である、前記態様のいずれかの組換え微生物。
14. オキサロアセタートからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子が、大腸菌、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、サッカロマイセス(Saccharomyces)およびアラビドプシス(Arabidopsis)由来の遺伝子mdhまたはそのホモログからなる群より選択される、前記態様のいずれかの組換え微生物。
15. 遺伝子mdhがS.コエリカラー(S. coelicolor)由来である、または遺伝子mdh1/2/3が出芽酵母由来である、前記態様のいずれかの組換え微生物。
16. リンゴ酸チオキナーゼをコードする遺伝子が、メチロバクテリウム(Methylobacterium)属の種、メチロバクテリウム・エキストロクエンス(Methylobacterium extorquens)、大腸菌、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophiles)、ヒフォミクロビウム(Hyphomicrobium)属の種、メタノカルドコックス・ヤンナスキイ(Methanocaldococcus jannaschii)、メタノサーモバクター・サームオートトロフィカス(Methanothermobacter thermautotrophicus)、リゾビウム、メチロコッカス・カプスラタス(Methylococcus capsulatus)もしくはシュードモナス由来のsucCDおよび/もしくはSucCD-2および/もしくはmtkAB、またはそれらのホモログである、前記態様のいずれかの組換え微生物。
17. マリルコエンザイムAリアーゼをコードする遺伝子が、メチロバクテリウム・エキストロクエンス、ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)、ストレプトマイセス、クロロフレクサス・オーランティアカス(Chloroflexus aurantiacus)、ニトロソモナス・ユーロピア(Nitrosomonas europaea)、メチロコッカス・カプスランス(Methylococcus capsulans)、ネレイダ・イグナバ(Nereida ignava)、ヒフォミクロビウム・メチロボラム(Hyphomicrobium methylovorum)、サラッソビウス・アクティバス(Thalassobius activus)、ロゼオバクター・リトラリス(Roseobacter litoralis)、ヒフォミクロビウム・デニトリフィカンス(Hyphomicrobium denitrificans)、R.スフェロイデス、マイコバクテリウム・スメグマティス(Mycobacterium smegmatis)もしくはロドコッカス・ファシアンス(Rhodococcus fascians)由来のmclおよび/もしくはMcl1および/もしくはmclA、またはそれらのホモログである、前記態様のいずれかの組換え微生物。
18. ピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子が、リゾビウム・エトリ(Rhizobium etli)由来のpyc、酵母由来のPYC1もしくはPYC2、B.サブチリス由来のpyc、またはそれらのホモログである、前記態様のいずれかの組換え微生物。
19. ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子が、大腸菌由来のppc、R.マリナス(R. marinus)由来のppcもしくはpepC、M.サームオートトロフィカス由来のppcA、トウモロコシ(Z. mays)由来のpep1、シロイヌナズナ(A. thaliana)由来のppc1/2/3、G.マックス(G. max)由来もしくはロドサーマス(Rhodothermus)、コリネバクテリウム、サルモネラ、ヒフォミクロビウム、ストレプトコッカス(Streptococcus)、ストレプトマイセス、パントエア(Pantoea)、バシラス、クロストリジウム(Clostridium)、シュードモナス、ロドシュードモナス(Rhodopseudomonas)、ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)、アマランタス・ヒポコンドリアカス(Amaranthus hypochondriacus)、トリチカム・エスチバム(Triticum aestivum)またはムラサキウマゴヤシ(Medicago sativa)由来のppc、またはそれらのホモログである、前記態様のいずれかの組換え微生物。
20. ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼをコードする遺伝子が、大腸菌由来のpckもしくはpckA、セレノモナス・ルミナンティウム(Selenomonas ruminantium)由来のpckA、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)由来のpckA、クレブシエラ(Klebsiella)属の種由来のpckA、サーマス属の種由来のpckA、ルミノコッカス・アルブス(Ruminococcus albus)もしくはルミノコッカス・フラベファシエンス(Ruminococcus flavefaciens)由来のpckもしくはpckA、アクチノバシラス・スクシノジェネス(Actinobacillus succinogenes)由来のpckA、ストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis)由来もしくはバシラス、ルミニクロストリジウム・サーモセラム(Ruminiclostridium thermocellum)、クレブシエラ、マイコバクテリウム由来のpckもしくはpckA、またはそれらのホモログである、前記態様のいずれかの組換え微生物。
21. (a)OAAおよびマリル-CoAリアーゼにより生成されるアセチル-coAをシトラートに変換するクエン酸シンターゼをコードする遺伝子、
(b)シトラートをシス-アコニテートに変換するクエン酸ヒドロ-リアーゼをコードする遺伝子、
(c)シス-アコニテートをイソシトラートに変換するD-トレオ-イソクエン酸ヒドロ-リアーゼまたはアコニターゼをコードする遺伝子、
(d)イソシトラートをスクシナートおよびグリオキシラートに変換するイソクエン酸リアーゼをコードする遺伝子、
(e)スクシナートをフマラートに変換するコハク酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、ならびに
(f)フマラートをマラートに変換するフマラーゼをコードする遺伝子
を含む、前記態様のいずれかの組換え微生物。
22. リンゴ酸シンターゼをコードする遺伝子の機能喪失変異または欠失を含む、前記態様のいずれかの組換え微生物。
23. グルオキシル酸レダクターゼ活性をコードする遺伝子が、大腸菌由来のycdWおよび/もしくはyiaE、出芽酵母由来のGOR1、サーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)由来のgyaR、ならびに/またはシロイヌナズナ由来のGLYR1からなる群より選択される、前記態様のいずれかの組換え微生物。
24. ピルベートをOAAに変換するピルビン酸カルボキシラーゼが、酵素分類体系番号E.C. 6.4.1.1に属するものであり、ホスホエノールピルビン酸をOAAに変換するホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼが、E.C. 4.1.1.31に属するものであり、ホスホエノールピルビン酸をOAAに変換するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼがE.C. 4.1.1.32およびE.C. 4.1.1.49に属するものである、前記態様のいずれかの組換え微生物。
25. マラートをマリルコエンザイムAに変換するリンゴ酸チオキナーゼが、酵素分類体系番号E.C. 6.2.1.4、E.C. 6.2.1.5、E.C. 6.2.1.9もしくはE.C. 6.2.1.-に属するものであり、および/またはマリルコエンザイムAをグリオキシラートおよびアセチル-CoAに変換するマリルコエンザイムAリアーゼが、E.C. 4.3.1.24もしくはE.C. 4.3.1.25に属するものである、前記態様のいずれかの組換え微生物。
26. 1つまたは複数の遺伝子が異種的に発現される、前記態様のいずれかの組換え微生物。
27. (a)イソクエン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、
(b)ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸オキシダーゼおよび/またはピルビン酸ギ酸-リアーゼをコードする遺伝子、
(c)ピルビン酸キナーゼをコードする遺伝子、ならびに
(d)グリコール酸オキシダーゼをコードする遺伝子
からなる群より選択される1つまたは複数の内在性遺伝子の活性を減少させる欠失または修飾を含む、前記態様のいずれかの組換え微生物。
28. リンゴ酸シンターゼをコードする遺伝子が、大腸菌由来のaceBおよび/もしくはglcBまたは酵母由来のDAL7および/もしくはMLS1である、前記態様のいずれかの組換え微生物。
29. イソクエン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子が、大腸菌由来のicdまたは酵母由来のIDP2および/もしくはIDH1/2である、前記態様のいずれかの組換え微生物。
30. ピルビン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子が、大腸菌由来のaceEおよび/またはaceFである、前記態様のいずれかの組換え微生物。
31. グリコール酸オキシダーゼをコードする遺伝子が、大腸菌由来のglcD、glcE、glcFおよび/またはglcGである、前記態様のいずれかの組換え微生物。
33. 前記酵母が出芽酵母である、前記態様のいずれかの組換え微生物。
34. (a)グリオキシル酸カルボリガーゼをコードする遺伝子、
(b)2-オキソ-4-ヒドロキシグルタル酸アルドラーゼをコードする遺伝子、
(c)グリコアルデヒドレダクターゼをコードする遺伝子、および
(d)イソクエン酸リアーゼのレプレッサーをコードする遺伝子
からなる群より選択される1つまたは複数の内在性遺伝子の活性を減少させる欠失または修飾を含む、前記態様のいずれかの組換え微生物。
35. グリオキシル酸カルボリガーゼをコードする遺伝子がgclであり、2-オキソ-4-ヒドロキシグルタル酸アルドラーゼをコードする遺伝子がedAであり、グリコアルデヒドレダクターゼをコードする遺伝子がfucOおよび/またはgldAであり、イソクエン酸リアーゼのレプレッサーをコードする遺伝子がiclRである、前記態様のいずれかの組換え微生物。
36. アラニン-グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼをコードする遺伝子、グリシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、グリシントランスアミナーゼをコードする遺伝子、セリン-グリオキシル酸トランスアミナーゼをコードする遺伝子、および/またはグリシンオキシダーゼをコードする遺伝子の発現レベルが増加している、前記態様のいずれかの組換え微生物。
37. アラニントランスアミナーゼをコードする遺伝子および/またはNADPH依存性グルタミン酸シンターゼをコードする遺伝子の発現レベルが増加している、前記態様のいずれかの組換え微生物。
38. リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、リンゴ酸チオキナーゼおよびマリルコエンザイムAリアーゼにより触媒される反応において他のグリコール酸および/またはグリシン生成経路により生成されるNADHおよびCO2を利用する、前記態様のいずれかの組換え微生物。
39. リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、リンゴ酸チオキナーゼおよびマリルコエンザイムAリアーゼにより触媒される反応において外部から添加されたCO2、カルボナート、および/または還元剤を利用する、前記態様のいずれかの組換え微生物。
40. 還元剤が、水素、電子および/またはNAD(P)Hである、前記態様のいずれかの組換え微生物。
41. 還元剤が、外部供給源由来である、前記態様のいずれかの組換え微生物。
42. リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、リンゴ酸チオキナーゼおよびマリルコエンザイムAリアーゼにより触媒される反応においてセリン/ヒドロキシピルビン酸ベースの経路により生成されるNADHおよびCO2を利用する、前記態様のいずれかの組換え微生物。
43. リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、リンゴ酸チオキナーゼおよびマリルコエンザイムAリアーゼにより触媒される反応においてグリオキシル酸短絡経路により生成されるNADHおよびCO2を利用する、前記態様のいずれかの組換え微生物。
44. リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、リンゴ酸チオキナーゼおよびマリルコエンザイムAリアーゼにより触媒される反応においてD-エリスロースからグリコアルデヒドベースの経路により生成されるNADHおよびCO2を利用する、前記態様のいずれかの組換え微生物。
45. リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、リンゴ酸チオキナーゼおよびマリルコエンザイムAリアーゼにより触媒される反応においてペントース誘導体からグリコアルデヒドベースの経路により生成されるNADHおよびCO2を利用する、前記態様のいずれかの組換え微生物。
46. 細菌、酵母および真菌からなる群より選択される、前記態様のいずれかの組換え微生物。
47. エンテロバクテリアセアエ、クロストリジアセアエ、バシラセアエ、ストレプトマイセタセアエ、およびコリネバクテリアセアエからなる群より選択される細菌である、前記態様のいずれかの組換え微生物。
48. エシェリキア、クロストリジウム、バシラス、クレブシエラ、パントエア、サルモネラ、ラクトバシラス、またはコリネバクテリウム属の種である、前記態様のいずれかの組換え微生物。
49. 大腸菌またはコリネバクテリウム・グルタミクムまたはクロストリジウム・アセトブチリクムまたはバシラス・サブチリスである、前記態様のいずれかの組換え微生物。
50. サッカロマイセタセエ科から選択される酵母である、前記態様のいずれかの組換え微生物。
51. サッカロマイセス属の種である、前記態様のいずれかの組換え微生物。
52. 出芽酵母である、前記態様のいずれかの組換え微生物。
53. グルコール酸および/またはグリシンの合成が、ピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、リンゴ酸チオキナーゼ、マリルコエンザイムAリアーゼ、アラニン-グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ、グリシンデヒドロゲナーゼ、グリシントランスアミナーゼ、セリン-グリオキシル酸トランスアミナーゼ、グリシンオキシダーゼ、NADH依存性グリオキシル酸レダクターゼおよびNADPH依存性グリオキサル酸レダクターゼからなる群より選択される少なくとも1つの酵素の発現または活性または特異性のレベルを増加させることにより増加する、前記態様のいずれかの組換え微生物。
54. グルコール酸および/またはグリシンの合成が、リンゴ酸シンターゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸オキシダーゼおよび/またはピルビン酸ギ酸-リアーゼ、ピルビン酸キナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、グリオキシル酸カルボリガーゼ、2-オキソ-4-ヒドロキシグルタル酸アルドラーゼ、グリコアルデヒドレダクターゼならびにグリコール酸オキシダーゼからなる群より選択される少なくとも1つの酵素の発現または活性または特異性のレベルを減少させることにより増加する、前記態様のいずれかの組換え微生物。
55. グルコール酸および/またはグリシンの合成が、イソクエン酸リアーゼのレプレッサーをコードする遺伝子の発現のレベルを減少させることによって増加する、前記態様のいずれかの組換え微生物。
56. 前記態様のいずれかの組換え微生物を用いてグリコール酸および/またはグリシンを生成する方法であって、グリコール酸および/またはグリシンが生成されるまで、炭素源を提供する原料を含む培養培地中で該組換え微生物を培養する工程を含む、前記方法。
57. 炭素源が、糖、グリセロール、アルコール、有機酸、アルカン、脂肪酸、ヘミセルロース、リグノセルロース、タンパク質、二酸化炭素および一酸化炭素からなる群より選択される、前記態様のいずれかの方法。
58. 炭素源がヘキソースおよび/またはペントース糖である、前記態様のいずれかの方法。
59. 炭素源がグルコースである、前記態様のいずれかの方法。
60. 炭素源がスクロースである、前記態様のいずれかの方法。
61. 炭素源が、ヘミセルロースを含むバイオマス加水分解物を含む、前記態様のいずれかの方法。
62. 炭素源がCO2またはカルボナートである、前記態様のいずれかの方法。
63. カルボナートがHCO3 -である、前記態様のいずれかの方法。
64. グリオキシラートからグリコール酸および/またはグリシンを生成する組換え微生物を作製する方法であって、該微生物に、
(a)ピルベートからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、
(b)マラートからマリルコエンザイムAへの変換を触媒するリンゴ酸チオキナーゼをコードする遺伝子、および
(c)マリルコエンザイムAからグリオキシラートおよびアセチル-CoAへの変換を触媒するマリルコエンザイムAリアーゼをコードする遺伝子
を導入する工程を含む、前記方法。
65. グリオキシラートからグリコール酸および/またはグリシンを生成する組換え微生物を作製する方法であって、該微生物に、
(a)ピルベートからOAAへの変換を触媒するピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸からOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸からOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼをコードする遺伝子、
(b)OAAからマラートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、
(c)マラートからマリルコエンザイムAへの変換を触媒するリンゴ酸チオキナーゼをコードする遺伝子、ならびに
(d)マリルコエンザイムAからグリオキシラートおよびアセチル-CoAへの変換を触媒するマリルコエンザイムAリアーゼをコードする遺伝子
を導入する工程を含み、マリルコエンザイムAリアーゼによって生成されるアセチル-CoAが、GAおよび/またはグリシンの生合成を増加させるようOAAと組み合わさる、前記方法。
66. グリオキシラートからグリコール酸および/またはグリシンを生成する組換え微生物を作製する方法であって、該微生物に、
(a)ピルベートからオキサロアセタート(OAA)への変換を触媒するピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸からOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、および/またはホスホエノールピルビン酸からOAAへの変換を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼをコードする遺伝子、
(b)マラートからマリルコエンザイムAへの変換を触媒するリンゴ酸チオキナーゼをコードする遺伝子、ならびに
(c)マリルコエンザイムAからグリオキシラートおよびアセチル-CoAへの変換を触媒するマリルコエンザイムAリアーゼをコードする遺伝子
を導入する工程を含み、該組換え微生物がオキサロアセタートからマラートへの変換を触媒しない、前記方法。
67. リンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子が、オキサロアセタートからマラート、マラートからピルベートまたはマラートからオキサロアセタートへの変換を触媒するリンゴ酸デヒドロゲナーゼ活性の部分的または完全な阻害をもたらす変異を含む、前記態様のいずれかの方法。
68. (a)グリオキシラートからグリコラートへの変換を触媒するNADH依存性グリオキシル酸レダクターゼをコードする遺伝子、
(b)グリオキシラートからグリコラートへの変換を触媒するNADPH依存性グリオキシル酸レダクターゼをコードする遺伝子、または
(i)アラニン-グルオキシル酸アミノトランスフェラーゼをコードする遺伝子、グリシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、グリシントランスアミナーゼをコードする遺伝子、セリン-グリオキシル酸トランスアミナーゼをコードする遺伝子、および/またはグリオキシラートからグリシンへの変換を触媒するグリシンオキシダーゼをコードする遺伝子
を微生物に導入する工程を含む、前記態様のいずれかの方法。
69. リンゴ酸シンターゼをコードする遺伝子の機能喪失変異または欠失を微生物に導入する工程を含む、前記態様のいずれかの方法。
70. (a)イソクエン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、
(b)ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸オキシダーゼおよび/またはピルビン酸ギ酸-リアーゼをコードする遺伝子、
(c)ピルビン酸キナーゼをコードする遺伝子、
(d)グリコール酸オキシダーゼをコードする遺伝子、ならびに
(e)グルコース-6-リン酸イソメラーゼをコードする遺伝子
からなる群より選択される遺伝子によりコードされる1つまたは複数の酵素の活性を減少させる欠失または修飾を微生物に導入する工程を含む、前記態様のいずれかの方法。
71. (a)グリオキシル酸カルボリガーゼをコードする遺伝子、
(b)2-オキソ-4-ヒドロキシグルタル酸アルドラーゼをコードする遺伝子、
(c)グリコアルデヒドレダクターゼをコードする遺伝子、および
(d)イソクエン酸リアーゼのレプレッサーをコードする遺伝子
からなる群より選択される遺伝子によりコードされる1つまたは複数の酵素の活性を減少させる欠失または修飾を微生物に導入する工程を含む、前記態様のいずれかの方法。
72. アラニン-グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼをコードする遺伝子、アラニン-グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼをコードする遺伝子、グリオキシラートからグリシン、グリシンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、グリシントランスアミナーゼをコードする遺伝子、セリン-グリオキシル酸トランスアミナーゼをコードする遺伝子、および/またはグリオキシラートからグリシンへの変換を触媒するグリシンオキシダーゼをコードする遺伝子に機能獲得変異を導入する工程を含む、前記態様のいずれかの方法。
73. アラニントランスアミナーゼをコードする遺伝子および/またはNADPH依存性グルタミン酸シンターゼをコードする遺伝子に機能獲得変異を導入する工程を含む、前記態様のいずれかの方法。
74. 前記組換え微生物が、細菌、酵母および真菌からなる群より選択される、前記態様のいずれかの方法。
75. 前記組換え微生物が、エンテロバクテリアセアエ、クロストリジアセアエ、バシラセアエ、ストレプトマイセタセアエ、およびコリネバクテリアセアエからなる群より選択される細菌である、前記態様のいずれかの方法。
76. 前記組換え微生物が、エシェリキア、クロストリジウム、バシラス、クレブシエラ、パントエア、サルモネラ、ラクトバシラス、またはコリネバクテリウム属の種である、前記態様のいずれかの方法。
77. 前記組換え微生物が、大腸菌またはコリネバクテリウム・グルタミクムまたはクロストリジウム・アセトブチリクムまたはバシラス・サブチリスである、前記態様のいずれかの方法。
78. 前記組換え微生物が、サッカロマイセタセエ科から選択される酵母である、前記態様のいずれかの方法。
79. 前記組換え微生物が、サッカロマイセス属の種である、前記態様のいずれかの方法。
80. 前記組換え微生物が、出芽酵母である、前記態様のいずれかの方法。
【0236】
参照による組み入れ
本明細書で引用されているすべての参考文献、記事、刊行物、特許、特許公報および特許出願は、すべての目的のために、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0237】
しかし、本明細書で引用されている参考文献、記事、刊行物、特許、特許公報および特許出願に関する言及は、それらが有効な先行技術を構成することまたは世界のある国において共通の一般的知識を形成していることの承認または何らかの形態の示唆ではなく、かつそのように解釈されるべきでない。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
2022520814000001.app
【国際調査報告】