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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-01
(54)【発明の名称】拡張スペクトルX線画像化
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20220325BHJP
   G01N 23/046 20180101ALI20220325BHJP
   G01N 23/087 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
A61B6/03 373
G01N23/046
G01N23/087
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021547776
(86)(22)【出願日】2019-12-06
(85)【翻訳文提出日】2021-10-14
(86)【国際出願番号】 SE2019051238
(87)【国際公開番号】W WO2020171748
(87)【国際公開日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】62/807,457
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512120638
【氏名又は名称】プリズマティック、センサーズ、アクチボラグ
【氏名又は名称原語表記】PRISMATIC SENSORS AB
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100217940
【弁理士】
【氏名又は名称】三並 大悟
(72)【発明者】
【氏名】ハンス、ボーネファルク
(72)【発明者】
【氏名】フレドリック、グレンベルイ
(72)【発明者】
【氏名】マッツ、ダニエルソン
【テーマコード(参考)】
2G001
4C093
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001AA10
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA06
2G001EA03
2G001HA14
2G001JA02
4C093AA22
4C093CA06
4C093EA07
4C093EB13
4C093EB30
4C093FA59
4C093FD09
4C093FD12
4C093FF50
(57)【要約】
X線源(10)と多数の検出要素を有するX線検出器(20)とを備える、X線画像化のための装置(100)が提供され、X線源(10)およびX線検出器(20)は、異なる視野角での投影セットを実行可能にするために、画像化されるべきサブジェクトまたはオブジェクトの周りを回転可能なサポート上に配置される。装置(100)は、投影セットを介して低エネルギーおよび高エネルギーの露光を実行可能にするための回転の間、低電圧および高電圧を含む少なくとも2つの異なる電圧を交互に印加するための切り替えkVpモードでX線源(10)を動作させ、それによって低エネルギー投影および高エネルギー投影を提供するように構成される。X線検出器(20)は、光子計数を複数のエネルギービンに割り振るように構成された、光子計数マルチビン検出器であり、また装置は、低エネルギー投影および高エネルギー投影の両方について対応する光子計数情報を提供するために、エネルギービンの少なくともサブセットからカウントを選択するように構成される。装置(100)は、対応する光子計数情報に基づき、多数の低エネルギー投影および高エネルギー投影の各々について、および/または、少なくとも1つの低エネルギー投影および少なくとも1つの高エネルギー投影の多数の組み合わせの各々について、材料ベースの分解を実行するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線源(10)と多数の検出要素を有するX線検出器(20)とを備える、X線画像化のための装置(100)であって、前記X線源(10)および前記X線検出器(20)は、異なる視野角での投影セットを実行可能にするために、画像化されるべきサブジェクトまたはオブジェクトの周りを回転可能なサポート(12)上に配置され、
前記装置(100)は、前記投影セットを介して低エネルギーおよび高エネルギーの露光を実行可能にするための回転の間、低電圧および高電圧を含む少なくとも2つの異なる電圧を交互に印加するための切り替えkVpモードで前記X線源(10)を動作させ、それによって低エネルギー投影および高エネルギー投影を提供するように構成され、
前記X線検出器(20)は、光子計数を複数のエネルギービンに割り振るように構成された、光子計数マルチビン検出器であり、また装置(100)は、低エネルギー投影および高エネルギー投影の両方について対応する光子計数情報を提供するために、前記エネルギービンの少なくともサブセットからカウントを選択するように構成され、
前記装置(100)は、対応する光子計数情報に基づき、多数の前記低エネルギー投影および高エネルギー投影の各々について、および/または、少なくとも1つの低エネルギー投影および少なくとも1つの高エネルギー投影の多数の組み合わせの各々について、材料ベースの分解を実行するように、構成される、
装置(100)。
【請求項2】
前記装置(100)は、回転の間に、少なくとも2つの異なる電圧を前記X線源(10)に交互に印加するために、高速kV切り替えを提供するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記光子計数マルチビン検出器(20)は、低エネルギーまたは高エネルギーの露光の下で、各投影について、すなわち各検出要素および各視野角について、光子計数をエネルギービンに割り振るように構成され、前記装置(100)は、前記投影について対応する光子計数情報を提供するために、少なくとも前記エネルギービンのサブセットからカウントを抽出するように構成される、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記装置(100)は、前記印加されるX線スペクトルに関する情報に基づいて、材料ベースの分解を実行するように構成される、請求項1から3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記装置(100)は、多数の前記低エネルギー投影および高エネルギー投影の各々について、および/または、少なくとも1つの低エネルギー投影および少なくとも1つの高エネルギー投影の多数の組み合わせの各々について、ベース材料の経路長推定を生成するために、前記材料ベースの分解を実行するように、ならびに、前記経路長推定に基づいて画像再構成を実行するように、構成される、請求項1から4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記装置(100)は、少なくとも1つの低エネルギー投影および少なくとも1つの高エネルギー投影の光子計数情報を含む、近接する投影に基づく二重エネルギー経路長推定を生成するように構成される、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記装置(100)は、空間分解能とベース画像ノイズとの間のトレードオフを最適化するために、前記二重エネルギー経路長推定を事前情報として使用するように構成される、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記装置(100)は、ベース材料についての経路長推定、および前記推定された経路長の共分散を表す関連する共分散行列を生成するように、ならびに、前記対応する共分散行列に基づいて、低エネルギー投影および高エネルギー投影についての経路長推定を組み合わせるように、構成される、請求項5から7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
前記装置(100)は、選択された画像化タスクに依存して重み付け手順を選択的に実行するように構成される、請求項5から8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
前記光子計数マルチビン検出器(20)のしきい値は、前記スペクトルのコンプトン部分をカウントするために1つまたは複数のビンが割り振られ、残りは前記スペクトルの光電部分に割り振られるように、割り振られる、請求項1から9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
高エネルギー投影および低エネルギー投影についての前記光子計数マルチビン検出器(20)のしきい値は同一である、請求項1から10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
低エネルギー投影についての前記光子計数マルチビン検出器(20)のしきい値は、高エネルギー投影のしきい値とは異なる、請求項1から11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
前記光子計数マルチビン検出器(20)は直接変換材料に基づくものである、請求項1から12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
前記光子計数マルチビン検出器(20)には、前記直接変換材料としてシリコンが提供される、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
請求項1から14のいずれかに記載のX線画像化のための装置(100)を備える、X線画像化システム(100)。
【請求項16】
前記X線画像化システム(100)および/またはX線画像化のための前記装置(100)は、コンピュータ断層撮影(CT)システムである、請求項15に記載のX線画像化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
提案される技術は、一般にX線画像化に関し、より詳細には、X線画像化のための装置および対応するX線画像化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
X線画像化などの放射線画像化は、長年、医学的応用例および非破壊試験に使用されてきた。
【0003】
通常、X線画像化システムは、X線源および複数の検出要素からなるX線検出器を含む。X線源はX線を放出し、このX線はサブジェクトまたはオブジェクトを通過して、画像化された後、検出器によって登録される、図1は、入射X線スペクトルに対する、X線検出器内に実際に蓄積されたエネルギーの一例を示す概略図である。いくつかの材料はX線の大部分を他よりも吸収するため、画像はサブジェクトまたはオブジェクトの内部から形成することができる。
【0004】
X線コンピュータ断層撮影(CT)システムは、通常、サブジェクトまたはオブジェクトの投影画像を、少なくとも180度をカバーする異なる視野角で取得可能なように配置される、X線源およびX線検出器を含む。これは、サブジェクトまたはオブジェクトの周りを回転可能なサポートまたはガントリー上に、X線源および検出器を取り付けることによって、最も一般的に達成される。異なる視野角について異なる検出要素に登録された投影を含む画像が、サイノグラムと呼ばれる。通常、異なる視野角について異なる検出要素に登録された投影の集合は、たとえ検出器が2次元であり、サイノグラムを3次元画像にする場合であっても、サイノグラムと呼ばれる。
【0005】
X線画像化の興味深い進歩は、スペクトルX線画像化とも呼ばれるエネルギー分解X線画像化であり、X線伝達はいくつかの異なるエネルギーレベルについて測定される。
【0006】
例を挙げると、これは、2つの異なる発光スペクトル間でX線源を高速に切り替えさせることによって、あるいは、異なるX線スペクトルを発する2つまたはそれ以上のX線源を使用すること、いわゆる二重エネルギーX線画像化によって、達成され得る。典型的な実施例は、下記を含む。
i)二重露光(スピン・スピンまたは回転回転技法とも呼ばれ、第1の完全回転の後、より高い加速度電圧での第2の完全回転の間、低加速度電圧が使用される)
ii)二重源(2つの回転するX線管に、典型的にはおよそ80kVおよび140kVの異なる高電圧を供給する)
iii)高速kV切り替え(典型的にはおよそ80kVおよび140kVで交番する高電圧と共にX線管にパルスを発する)
iv)二重層技法(検出器の下部の方が、ソースに近い部分よりも実質的に高いX線エネルギーに会う、検出器を挟み込む)
【0007】
スペクトルX線画像化のための異なる手法において、2つまたはそれ以上のエネルギーレベルの入来放射を測定するエネルギー識別検出器が使用される。こうした検出器の一例が光子計数マルチビン検出器であり、登録された各光子は、しきい値セットと比較される電流パルスを生成し、それによって、多数のエネルギービンの各々に入射する光子の数を計数する。
【0008】
例を挙げると、光子計数検出器は参考文献[1]、[2]で概説されている。
【0009】
参考文献[3]では、少なくとも1つのエネルギーしきい値が放射源によって使用されるkV波形に従って調整されるため、それぞれのスペクトルビン内で検出される光子計数はほぼ等しくなる。
【0010】
スペクトルX線画像化を実行する方法およびこれを希望する理由は、文献に明確に説明されている。X線コンピュータ断層撮影画像化の場合の臨床的理由は、アーチファクトの除去およびコントラスト強調を包含している。方法は、材料ベースの分解を実行する能力に基づいており、要するにこれにより、ヒト組織の線形減衰係数が2つのエネルギー・ベース関数の線形組み合わせとして明確に記述されるという事実を使用することによって、ヒト組織の線形減衰係数の全エネルギー依存度が決定され得る。
【0011】
Faby等の[4]は、二重源スペクトル(上記項目iiを参照のこと)と組み合わせてCdTeに基づく光子計数検出器を使用する潜在的利益が調査された(2X線管)、シミュレーション研究を提示している。Faby等の表IIは、CdTeの現実的応答モデルが使用される場合、エネルギー統合検出器を備える二重源の両方を超え、また単一源の光子計数マルチビンCTも超える、画像品質利益が取得され得ることを示している。
【0012】
CdTeに基づく実験的マルチソース(二重源)光子計数検出器(CT)からの測定値が、2018年11月のRSNA[5]に提示されている。すなわち、システム制限に起因して、低加速度電圧を使用する第1の完全回転に続く、高加速度電圧での第2の完全回転という、二重エネルギーのスピン・スピンまたは回転回転手法が適用されたが、実験設定は、2つのX線スペクトル(二重源)と組み合わせた光子計数検出器に基づいている。
【0013】
光子計数マルチビン検出器を利用する光子計数スペクトルCTは、二重エネルギーCTの機能を改善している。2つより多くの個別エネルギーにおける線形減衰係数を推定することで、より進歩した画像再構成、例えばkエッジ画像化が可能になる。より単純な再構成タスク、例えば2ベース材料分解(すなわち、ヨウ素、ガドリニウム、または金のナノ粒子などの任意の造影剤のkエッジを利用しない)であっても、スペクトル重複の減少に起因して画像品質は向上されるという、一般的な理解も存在する。
【0014】
スペクトル重複とは、二重エネルギー画像化(1つは低エネルギー分布、1つは高エネルギー分布)において2つの信号を生成するために使用される、光子エネルギーの最大帰納(MAP)分布の重複を指す。典型的には、重複量を減少させるために、二重源または切り替えkVpにおいて、Snまたは何らかの他の金属を用いる大量フィルタリングが高エネルギースペクトルに適用される。これが、高エネルギースペクトルおよび低エネルギースペクトルの平均エネルギー間の差を増加させ(スペクトル分離の増加)、またそれによって線形減衰係数をより良好に推定することができる。光子計数検出器は、少なくとも理想的な光電吸収器である場合、ビンと大きなスペクトル分離との間に重複制限を有する。
【0015】
理想的な光子計数検出器が、keV単位の上限および下限T、Ti+1によって画定されるエネルギービン内にイベントを置く場合、元のX線エネルギーは、二重エネルギー技法の場合のように、低エネルギースペクトルまたは高エネルギースペクトルのいずれかから発せられたという相対的により不確かな知識ではなく、T<E<Ti+1に従ったことがわかる。これは図2Aおよび図2Bに示され、2つの例示システムについて、実際の光子エネルギーの入射確率密度関数の最大帰納(MAP)推定が示されている。
【0016】
図2Aは、80kVおよび140kVによって供給される切り替えkVシステムについて、光子エネルギーの入射確率密度関数の最大帰納(MAP)推定の例を示す概略図である。管が80kVで動作したときに光子が検出される場合、実線は、その元のエネルギーに関して行うことが可能な最善の知識に基づいた(分布に関する)推測を示す。破線は、管が140kVで動作したときの、入射エネルギーの最大帰納推定である。利用可能な追加情報はないため、これらがまさに入射線スペクトルである。
【0017】
図2Bは、唯一の相互作用機構として光電効果を伴う理想的な光子計数マルチビン・システムについての、同様の最大帰納推定の一例を示す概略図である。ここで、およそ80keVを中心とする線は、120kVpスペクトルからの光子が、そのエッジ74および91keVによって定義される第3のビン内で検出される場合、実際の光子エネルギーの最善の推定である。重複は、限定されるが現実的なエネルギー分解能から生じ、またスペクトル重複を減少させる概念を明白に示し、それによって、画像再構成において有利な何らかの、入射エネルギーのより正確な推定を取得する。
【0018】
言い換えれば、図2Aは、二重エネルギーシステムについての入射X線エネルギーのMAP確率分布(140kVpスペクトルの大量フィルタリングなし)を示し、図2Bは、光子計数マルチビン検出器システムについて、同様に示す。例示の光子計数システムは、光電検出器を有し、すなわち入射光子の全てのエネルギーが変換される。
【0019】
図2Aにおいて、80kVpスペクトル線は、80kV露光の間に、および同じく140kV露光について検出されたという情報を考慮すると、X線エネルギーの最善の推定である。これらはかなり無情報であって、2つの入射X線スペクトルのみを示しており、スペクトルが30keVから80keVで重複していることがわかる。図2Bでは、エネルギー分離がより明白であり、イベントが検出されたのがビン1から5のいずれであるかに応じて、エネルギーのMAP推定の重複はより小さい。
【0020】
実際の光子計数検出器は、典型的には、理想的ではない応答関数を有する。テルル化カドミウム亜鉛(CZT)またはテルル化カドミウム(CdTe)が使用される場合、応答の大きな低エネルギー・テールが存在することになる。シリコンが使用される場合、コンプトン相互作用の結果として、入射X線エネルギーの完全な変換よりは少なくなる。これらどちらの場合においても、検出エネルギーは実際の光子エネルギーよりも少なくなる。これは図3に示されており、シリコン検出器(点線)およびCZT検出器(破線)のそれぞれについて、70keVのX線に対する応答が示される。
【0021】
検出されたエネルギーから実際の光子エネルギーを決定するため、すなわち、MAP推定を決定するために、こうしたより現実的な応答関数の応答が反転される場合、結果は再度、画像化性能全体を低下させる傾向があるスペクトル重複である。
【0022】
したがって、改善されたスペクトルX線画像化が一般的に要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
拡張スペクトル画像化のための技術的解決策を提供することが、一般的な目的である。
【0024】
X線画像化のための装置および対応するX線画像化システムを提供することが、特定の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0025】
これらおよび他の目的は、提案される技術の1つまたは複数の実施形態によって達成され得る。
【0026】
第1の態様に従い、X線源と多数の検出要素を有するX線検出器とを備える、X線画像化のための装置が提供され、X線源およびX線検出器は、異なる視野角での投影セットを実行可能にするために、画像化されるべきサブジェクトまたはオブジェクトの周りを回転可能なサポート上に配置される。装置は、投影セットを介して低エネルギーおよび高エネルギーの露光を実行可能にするための回転の間、低電圧および高電圧を含む少なくとも2つの異なる電圧を交互に印加するためのいわゆる切り替えkVpモードでX線源を動作させ、それによって低エネルギー投影および高エネルギー投影を提供するように構成される。X線検出器は、光子計数を複数のエネルギービンに割り振るように構成された、光子計数マルチビン検出器であり、また装置は、低エネルギー投影および高エネルギー投影の両方について対応する光子計数情報を提供するために、エネルギービンの少なくともサブセットからカウントを選択するように構成される。装置は、対応する光子計数情報に基づき、多数の低エネルギー投影および高エネルギー投影の各々について、および/または、少なくとも1つの低エネルギー投影および少なくとも1つの高エネルギー投影の多数の組み合わせの各々について、材料ベースの分解を実行するように、さらに構成される。
【0027】
主要な特徴の非常に特殊な組み合わせを含むこの技術的な解決策は、拡張スペクトルX線画像化を実行可能にする。
【0028】
第2の態様に従い、X線画像化のための装置を備えるX線画像化システムが提供される。
【0029】
実施形態は、さらなる目的およびその利点と共に、添付の図面と共に下記の説明を参照することによって最もよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】入射X線スペクトルに対する、X線検出器内に実際に蓄積されたエネルギーの一例を示す概略図である。
図2A】80kVおよび140kVによって供給される切り替えkVシステムについて、光子エネルギーの入射確率密度関数の最大帰納(MAP)推定の一例を示す概略図である。
図2B】唯一の相互作用機構として光電効果を伴う理想の光子計数マルチビン・システムについての、同様の最大帰納推定の一例を示す概略図である。
図3】シリコン検出器(点線)およびCZT検出器(破線)のそれぞれについて、70keVのX線に対する検出器応答の一例を示す概略図である。
図4】シリコン検出器において5、7、10、および15keVを蓄積するイベントについての、入射エネルギーのMAP推定の一例を示す概略図である。
図5A】80kVp入力スペクトルに対する検出器応答を示す概略図である。
図5B】140kVp入力スペクトルに対する検出器応答を示す概略図である。
図6】コンプトンイベントの二重エネルギー処理を明示的に使用することなく、データ上で材料ベース推定方式がどのように動作するかの一例を示す概略図である。
図7】コンプトンイベントが明示的に使用されるデータ上で材料ベース推定方式がどのように動作するかの一例を示す概略図である。
図8A】一実施形態による、X線画像化システムの関連部分の一例を示す概略図である。
図8B】一実施形態による、X線画像化システム全体の一例を示す概略図である。
図8C】一実施形態による、X線画像化システム全体の別の一例を示す概略図である。
図9】一実施形態による、コンピュータ実施例の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
下記では、エネルギー統合X線検出器を、エネルギーEの1つの追加の相互作用光子(keV)からの増分出力信号がEに比例する検出器と呼ぶ。Eが特定のしきい値を超えるとカウンタが増分される検出器は、光子計数検出器を示す。最後に、光子計数マルチビン検出器は、いくつかのしきい値およびカウンタを備える検出器を指し、カウンタは、蓄積されたエネルギーEとしきい値設定との間の関係に依存して増分される。
【0032】
一般にX線画像化のため、および特にコンピュータ断層撮影(CT)のための二重エネルギー技法に言及するとき、画像生成において2つの異なる効率的なX線スペクトルが使用される解決策が考慮される。前述のように、典型的な実施例は、二重露光(スピン・スピンまたは回転回転技法とも呼ばれる)、二重源(2つの回転するX線管に、典型的にはおよそ80kVおよび140kVの異なる高電圧を供給する)、高速kV切り替え(例えば、典型的にはおよそ80kVおよび140kVで交番する高電圧と共にX線管にパルスを発する)、および二重層技法(検出器の下部の方が、ソースに近い部分よりも実質的に高いX線エネルギーに会う、検出器を挟み込む)を含む。
【0033】
スペクトルX線画像化を改善するための問題点のいくつかを解決するために、提案される技術は、X線源と多数の検出要素を有するX線検出器とを備える、X線画像化のための装置を提供し、X線源およびX線検出器は、異なる視野角での投影セットを実行可能にするために、画像化されるべきサブジェクトまたはオブジェクトの周りを回転可能なサポート上に配置される。装置は、投影セットを介して低エネルギーおよび高エネルギーの露光を実行可能にするための回転の間、低電圧および高電圧を含む少なくとも2つの異なる電圧を交互に印加するためのいわゆる切り替えkVpモードでX線源を動作させ、それによって低エネルギー投影および高エネルギー投影を提供するように構成される。X線検出器は、光子計数を複数のエネルギービンに割り振るように構成された、光子計数マルチビン検出器であり、また装置は、低エネルギー投影および高エネルギー投影の両方について対応する光子計数情報を提供するために、エネルギービンの少なくともサブセットからカウントを選択するように構成される。装置は、対応する光子計数情報に基づき、多数の低エネルギー投影および高エネルギー投影の各々について、および/または、少なくとも1つの低エネルギー投影および少なくとも1つの高エネルギー投影の多数の組み合わせの各々について、材料ベースの分解を実行するように、さらに構成される。
【0034】
主要な特徴の非常に特殊な組み合わせを含むこの技術的な解決策は、拡張スペクトルX線画像化を実行可能にする。
【0035】
例を挙げると、本発明は、光子計数マルチビンX線検出器、例えば直接変換材料としてシリコンを用いる光子計数マルチビン検出器と組み合わされた、高速切り替えkV技法を使用することを提案する。解決策の一部は、回転の間(場合によっては各回転の間)に低エネルギー投影および高エネルギー投影の両方を提供するために、特定の二重またはマルチエネルギー技法、すなわち切り替えkVの使用と、光子計数マルチビンX線検出器とを統合すること、および、これらの投影のための光子計数情報を提供するためにマルチビンX線検出器を採用することである。次の発想は、対応する光子計数情報に基づき、多数の低エネルギー投影および高エネルギー投影の各々について、および/または、少なくとも1つの低エネルギー投影および少なくとも1つの高エネルギー投影の多数の組み合わせの各々について、材料ベースの分解を実行することである。
【0036】
提案される技術は、画像再構成および/または画像品質を向上させるための材料ベースの分解と共に、特に有用である。その理由は、そうでなければかなり無情報の、検出器内にわずか5~10keVを蓄積する低エネルギーのコンプトンイベントから、より多くの情報が抽出可能なためである。
【0037】
図4は、シリコン検出器において5、7、10、および15keVを蓄積するイベントについての、入射エネルギーのMAP推定の一例を示す概略図である。5および7keVイベントの場合、MAP推定は入射スペクトルに酷似しており、すなわち、5または7keVが蓄積されたという事実の知識は余分な情報を付け加えない。検出されたエネルギーから実際の光子エネルギーを決定(MAP推定)するために、応答関数が反転可能であることに留意されたい。
【0038】
典型的には投影の2分の1または3分の2が、より軟のX線スペクトル(例えば、140または150kVpではなく80または90kVp)を見るように、切り替えkVが使用される場合、すなわち、回転の間に加速度電圧を高速に交番させる場合、エネルギー分布のMAP推定は、低電圧投影および高電圧投影によって異なる。実際、80および140kVが印加されるとき、5keVを蓄積するイベントについての入射エネルギーのMAP推定は図2Aのようになり、2つの別個の分布は、入射X線スペクトルに関する異なる事前情報が存在するという事実による。したがって、追加の情報が導入されたことは明らかである。
【0039】
参考文献[5]の測定およびシミュレーション研究の両方が、一般的な二重エネルギー技法を光子計数検出器と組み合わせるためのスペクトル画像化に利益があることを示す。しかしながら、[5]で提案されるような二重エネルギーに対する2X線管(典型的には、回転ガントリー上で90度離して取り付けられる)またはスピン・スピン手法の場合、オブジェクトの低エネルギーX線露光と高エネルギーX線露光との間に、相対的に大きな時間遅延が存在することになる。二重源の場合、この時間は回転時間の4分の1であり、スピン・スピン手法では全回転時間である。CTにおける典型的な回転時間は0.3~0.5秒である。心臓の鼓動または他の運動性構造を画像化するとき、この時間遅延は典型的に、かなりの動きアーチファクトを生じさせることになる。
【0040】
高速切り替えkVは、回転の間に高エネルギー露光と低エネルギー露光との間を交番させることによって、これを解決する。典型的には、低エネルギー露光が1つまたは2つの投影/視野内で印加され、続いて、1つの高エネルギー露光が次の投影/視野内で印加され、さらに続いて低エネルギー露光を伴う1つまたは2つの投影/視野というように、全ての望ましい投影/視野が集められるまで続く(視野とは、ガントリーが特定の回転角度内での露光である)。例えば典型的に、2000視野がガントリーの全回転となる。
【0041】
したがって提案される技術は、特に、画像再構成および/または画像品質を向上させるために、拡張された材料ベースの分解と共に使用するために、kV切り替えの利益を、光子計数マルチビン・シリコン検出器などの光子計数マルチビンX線検出器と組み合わせる、方法および対応する装置を包含する。
【0042】
CTシステム、またはkV切り替えX線源を備える同様のX線画像化システムの、ガントリーの回転の間の、多数の低エネルギー投影および高エネルギー投影の各々について、ベース材料分解および/または画像再構成についてのスペクトル情報を提供するために、異なるエネルギービンに割り振られた光子計数を含む光子計数情報が取得され得る。
【0043】
一般に、kV切り替え動作とも呼ばれる切り替えkVp、または高速kV切り替えは、投影セットを介して低エネルギーおよび高エネルギーの露光を実行可能にするための回転の間、低電圧および高電圧を含む少なくとも2つの異なる電圧をX線源に交互に印加することを指す。kVpという用語は、ピーク・キロ電圧を指し、X線を発生させるとき、X線源のターゲットに当たる電子の最高運動エネルギーに対応し、結果として生じるX線放射スペクトルの最大エネルギーに比例する、X線管にわたって印加される最高電圧を意味する。
【0044】
したがって装置は、回転の間に(場合によっては各回転の間に)、少なくとも2つの異なる電圧をX線源に交互に印加するために、高速kV切り替えを提供するように構成され得る。
【0045】
例を挙げると、例えば図8Aに関して、光子計数マルチビン検出器は、低エネルギーまたは高エネルギーの露光の下で、各投影について、すなわち各検出要素および各視野角について、光子計数をエネルギービンに割り振るように構成され得、また装置は、投影について対応する光子計数情報を提供するために、少なくともエネルギービンのサブセットからカウントを抽出するように構成され得る。
【0046】
例えば装置は、多数の低エネルギー投影および高エネルギー投影の各々について、および/または、少なくとも1つの低エネルギー投影および少なくとも1つの高エネルギー投影の多数の組み合わせの各々について、ベース材料の経路長推定を生成するために、材料ベースの分解を実行するように、ならびに、経路長推定に基づいて画像再構成を実行するように、構成され得る。
【0047】
例えば装置は、印加されるX線スペクトルに関する情報に基づいて、材料ベースの分解を実行するように構成され得る。
【0048】
特定の例において、装置は、少なくとも1つの低エネルギー投影および少なくとも1つの高エネルギー投影の光子計数情報を含む、近接する投影に基づく二重エネルギー経路長推定を生成するように構成される。
【0049】
一例として、装置は、空間分解能とベース画像ノイズとの間のトレードオフを最適化するために、二重エネルギー経路長推定を事前情報として使用するように構成され得る。
【0050】
例えば、二重エネルギー経路長推定は、異なる視野角を有する近接する投影に起因して低下した空間分解能を補償するために、ペナルティ関数で使用され得る。
【0051】
任意選択として、装置は、ベース材料についての経路長推定、および推定された経路長の共分散を表す関連する共分散行列を生成するように、ならびに、対応する共分散行列に基づいて、低エネルギー投影および高エネルギー投影についての経路長推定を組み合わせるように、構成され得る。
【0052】
例を挙げると、装置は、選択された画像化タスクに依存して重み付け手順を選択的に実行するように構成され得る。
【0053】
任意選択として、光子計数マルチビン検出器のしきい値は、スペクトルのコンプトン部分をカウントするために1つまたは複数のビンが割り振られ、残りはスペクトルの光電部分に割り振られるように、割り振られる。
【0054】
このようにして、装置は、例えば、最大尤度手法を使用するかまたはその線形化に基づいて、投影領域内で材料ベースの分解を実行するために、スペクトルの光電部分からビン内のカウントを使用するように、および、下記でより詳細に例示するように、材料ベースの分解と同様の二重エネルギーについて、スペクトルのコンプトン部分内のカウントを使用するように、構成され得る。
【0055】
高エネルギー投影および低エネルギー投影についての光子計数マルチビン検出器のしきい値は同一であり得るか、または低エネルギー投影についての光子計数マルチビン検出器のしきい値は、高エネルギー投影のしきい値とは異なり得る。
【0056】
例えば、光子計数マルチビン検出器は直接変換材料に基づくものとすることができる。好ましくは、光子計数マルチビン検出器には、直接変換材料としてシリコンが提供される。
【0057】
補足的に、本明細書で説明するX線画像化のための装置を備えるX線画像化システムが提供される。
【0058】
例を挙げると、X線画像化システムおよび/またはX線画像化のための装置は、コンピュータ断層撮影(CT)システムとすることができる。
【0059】
下記において、非限定的な例を参照しながら提案される技術が説明される。
【0060】
例えば装置は、画像化されるべきオブジェクトの周りを回転する単一のX線管を備える、第三世代CTスキャナによって実装され得る。例えば検出器は、光子計数マルチビンモードで動作するシリコンセンサを備える。X線管には、高速kV切り替えのための手段がさらに装備される。スキャン投影の間、データは、X線管に一定の電圧を供給する規則モードで取得されるか、または、いくつかの投影は相対的に低い加速度電圧に会い、残りはより高い加速度電圧に会う、切り替えモードで取得される。検出器は、エネルギービンにカウントを割り振り、高エネルギー投影および低エネルギー投影についてのしきい値が同じであるかまたは同じでなくてよい。
【0061】
特定の例では、各投影について、ビンにおけるカウントは、その特定の投影についての入射X線スペクトルの実際の形状の知識を考慮して、投影領域内または画像領域内で材料ベースの分解を実行するために使用される。これは、様々なやり方で行うことができる。例示の一実施形態において、最大尤度推定が実行される。別の実施形態において、その他の方法で同一管設定を使用して、較正ファントム測定値が取得されている(少なくとも1つは相対的に低い加速度電圧を使用し、少なくとも1つは相対的に高い電圧を使用し、好ましくは高速切り替えモードで取得されるため、任意の残光または他の焦点効果は臨床スキャンの場合と同一となる)。較正測定からの結果は、少なくとも1つの高エネルギースペクトルおよび少なくとも1つの低エネルギースペクトルについての参考文献[7]に従って、別の順モデルを決定するために使用され得る。こうした手法は、異なる低エネルギーおよび高エネルギーのスペクトル形状を暗黙にキャプチャする。いずれにしても、このようにして、ベース分解および/または画像再構成を実行するとき、使用されたX線スペクトルに関する(先験的)情報を採用するか、または考慮に入れることが可能である。
【0062】
さらに別の例示の実施形態において、光子計数マルチビン検出器のしきい値は、スペクトルのコンプトン部分をカウントするために、非常に少数の、場合によっては1つのビンのみが割り振られ、残りはスペクトルの光電部分に割り振られるように、割り振られる。蓄積されたエネルギーのスペクトルをコンプトン部分および光電部分に分割することは、直接変換材料がシリコンであることを利用するか、またはこれに依存し、この概念は図5Aおよび図5Bに示されており、ここでT1、T2、・・・、T8は、エネルギービンを定義するしきい値を示す。したがってこの特定の例では、8つのエネルギービンが存在する。
【0063】
図5Aおよび図5Bは、それぞれ、80kVp入力スペクトルおよび140kVp入力スペクトルに対する検出器応答を示す概略図である。実線は検出器内で検出エネルギーの典型的な分布(パルス高スペクトル)であり、T1、・・・、T8で示される破線は、カウントをビンにグループ化するために使用されるエネルギーしきい値を示す。
【0064】
特定の例において、スペクトルの光電部分からのビン内のカウントは、例えば[6]で概説されるように、例えば最大尤度手法を使用して、またはその何らかの線形化に基づいて、投影領域内で材料ベースの分解を実行するために使用され得る。場合によっては1つのビン内でのみ割り振られたスペクトルのコンプトン部分におけるカウントは、エネルギー統合検出器を使用する現在の二重エネルギーシステムと同様の様式で、材料ベースの分解と同様の二重エネルギーに使用され得る。
【0065】
例えばヨウ素、骨、および軟組織の3つの材料が分解される場合、3つまたはそれ以上のベース材料に分解することを可能にする合計4つの別々の効率的なエネルギーを得るために、スペクトルのコンプトン部分に割り振られた2つのビンを有することが有益な場合がある。
【0066】
切り替えkVpモードからのデータを使用する材料ベースの分解が、1つはコンプトンイベントおよび1つは光子イベントについて、印加される各kVpについて2つの経路で別々に行われる場合、結果は、材料経路長の2つの別々の推定値になる。それらは、同じ期待値であるが、異なる共分散行列(想定される2つまたはそれ以上のベース材料の推定された経路長の共分散)を有することになる。逆重み付けなどの重み付け方式は、場合によっては画像化タスクに依存し、場合によっては行列の乗算によって重み付けされた、低エネルギースペクトルおよび高エネルギースペクトルから取得される2つの独立推定値の重み付けされた総和によって、最も効率的な(最低の分散を伴う)推定量に達するために適用され得る。
【0067】
逆重み付け方式などの重み付け方式の使用は、イベントがコンプトンイベントとして明示的に指定されず、標準の二重エネルギー方法を使用して処理される場合にも、適用可能である。最大尤度またはその線形化バージョンが適用される場合、切り替えkVpモードにおける各投影は、依然として、同じ期待値であるが異なる共分散行列を有する経路長推定値を生成し、したがって何らかの(逆)分散重み付けを実行することが望ましい。これは、図6および図7に概略的に示されている。
【0068】
図6は、コンプトンイベントの二重エネルギー処理を明示的に使用することなく、データ上で材料ベース推定方式がどのように動作するかの一例を示す概略図である。
【0069】
図7は、コンプトンイベントが明示的に使用されるデータ上で材料ベース推定方式がどのように動作するかの一例を示す概略図である。
【0070】
二重エネルギー経路長推定は、完全な整合なしに2つの近接する投影を使用しなければならないことに留意されたい。このわずかな位置ずれは、ベース材料の分解が実行される全ての切り替えkVp再構成方法にとって一般的であり、結果として空間分解能の損失を生じさせる可能性がある。これは、画像化タスクに応じて、(逆)重み付け方式において考慮されるかまたは考慮されなくてもよい。画像化タスクは、図6および図7に記載される方法のどちらを使用するべきかを決定するためにも使用可能である。例えば、高空間分解能が必須である場合、図6に概説されるような再構成経路が好ましい可能性があり、低コントラスト分解能または画像ノイズが好ましい場合、図7のような経路が好ましい可能性がある。
【0071】
さらに別の実施形態において、材料ベースの分解は、ビニングされたいくつかの視野で実行され得る。典型的なこうした視野のビニングは、低エネルギー露光を見た視野内のN個のエネルギービンからのカウント、および、高エネルギー露光を見た(近接する視野角内の)N個のエネルギービンからのカウントを取ることになる。この例では、2Nセットのカウントを生み出し、それらがわずかに異なるガントリー角度で取得されることに起因して、わずかに整合しないことになる。材料ベースの分解は、2Nカウント上で実行され得る。この情報は、(例えば、最大尤度推定において制約を呼び出すことによって)、図6に概説されるような高忠実度データセットの材料ベースの分解について、事前情報として使用され得る。
【0072】
この情報は、少なくとも高エネルギーおよび低エネルギーのデータセットを図6に概説されるように別々に使用する、高空間分解能の材料ベースの分解についての事前情報として使用され得る。事前情報を使用するための1つの可能な方法は、集約経路長推定からの経路長偏差に依存する、本来の分解能材料ベースの分解においてペナルティ項を追加することによって、画像のコントラスト対ノイズ比と空間分解能(および場合によってはエイリアシング)との間のより望ましいトレードオフを取得することである。
【0073】
下記の例は、概念を示す。
【0074】
低エネルギー露光からの検出要素γ内のNカウントが
【数1】
で示される場合、および、同じ検出要素内であるが、高エネルギー露光を伴う近接する視野からのNカウントは、Y(γ,θhigh)で示され、2Nカウントを伴う組み合わせ視野は、2つのカウントベクトルの連結
【数2】
によって生成され、上式では、
【数3】
である。Faggregateが、集約されたスペクトルについての順モデルである、すなわち、経路長からカウントへのマッピング、
【数4】
である場合、経路長推定の最大尤度ソリューションは、
【数5】
であり、上式でLは、Faggregate(A)の負の対数尤度関数を示す。
【0075】
以前のように
【数6】
を使用しない場合、本来の分解能経路長推定は、
【数7】
となる(上式で、θは低エネルギー露光または高エネルギー露光のいずれかについての視野角である)。
【数8】
の推定は、より多くのエネルギー情報が使用されるため、A(γ,θ)よりもノイズが少なくなる。他方で、
【数9】
は、2つの視野の混合を表し、したがって、結果として悪化した空間分解能が生じる可能性があり、また、再構成で直接使用される場合、再構成にA(γ,θ)を使用することと比較したとき、場合によってはエイリアシング・アーチファクトを生じさせる可能性がある。空間分解能とコントラストとの間のトレードオフは、以下のように、再構成においてペナルティ関数ψを追加することによって達成され得る。
【数10】
【0076】
例えば、ペナルティ関数は、大きな偏差をますます不利にするψ(x)=λ・xを含むことができる。ペナルティ関数は、画像化の場合(すなわち、ベース画像において高空間分解能または低ノイズのいずれが最も望ましいか)に依存させることができる。例えば、ψ(x)=0は、結果として、ノイズ減少のために混合視野データを使用しない、本来の分解能となる。
【0077】
下記の非限定的な例は、3つの異なる手順が、二重エネルギーを切り替えkVp技法と組み合わせることによって利用可能な追加のエネルギー情報を、どのように利用するかを示す。
【0078】
手順1のための方式の例
1.X線露光の所定のシーケンスでオブジェクトを露光し、X線管の加速度電圧は回転の間に数回変更される。1つのシーケンス(視野にわたる)は、低、低、高、低、低、高、・・・であり得、別のこうしたシーケンスは低、高、低、高、・・・などであり得る。
2.検出において相互作用する光子をカウントし、蓄積されたエネルギーがどのしきい値間にあるかに基づいてビン・カウンタを増分する。
3.出力は、異なるX線スペクトルを使用して取得した投影データの少なくとも2つのサブセット(各検出要素および各視野角についての、ビン内のカウント)である。
4.材料ベースの分解は投影データに適用され、結果として、ベース材料の経路長推定(各検出要素(γ)および視野角(θ)についてA(γ,θ)と示される)が生じる。
5.異なる視野角θは、加速度電圧の切り替えに起因して、異なる事前患者X線スペクトルを見ていることになる。したがって、経路長推定A(γ,θ)の共分散行列は異なることになる。
6.共分散行列における相違(特定の視野角θに使用される実際のX線スペクトルに依存する)は、必ずしも必要ではないが、場合によっては画像化タスクに基づく逆重み付け方式と共に、再構成において考慮に入れることが可能である。
7.ベース画像は、全てのセットまたは、場合によっては重み付けされたそのサブセットA(γ,θ)を使用して、例えば、逆ラドン変換の何らかの実施によって、再構成される。
【0079】
手順2のための方式の例
1.X線露光の所定のシーケンスでオブジェクトを露光し、X線管の加速度電圧は回転の間に数回変更される。1つのシーケンス(視野にわたる)は、低、低、高、低、低、高、・・・であり得、別のこうしたシーケンスは低、高、低、高、・・・などであり得る。
2.検出において相互作用する光子をカウントし、蓄積されたエネルギーがどのしきい値間にあるかに基づいてビン・カウンタを増分する。
3.出力は、異なるX線スペクトルを使用して取得した投影データの少なくとも2つのサブセット(各検出要素および各視野角についての、ビン内のカウント)である。
4.低エネルギービンにおけるカウント(図5Aおよび図5Bにおける、しきい値T1とT2との間)は、コンプトン相互作用から発せられることがわかっている。材料ベースの分解は、高エネルギー露光と低エネルギー露光との間で視野角がわずかに異なるため、空間分解能におけるペナルティを伴うが、現在のエネルギー統合検出器を利用する切り替えkVpシステムによって材料分解が実行される際に使用する方法と同じ方法を使用して実行され得る。この結果として経路長推定
【数11】
が生じ、上式で、
【数12】
は平均視野角(高エネルギーおよび低エネルギーのX線露光の平均)である。これらの推定は、特定の共分散行列を有することになる。
5.光電効果が優勢である場所(上記図5のT2)でビン・カウントを使用する材料ベースの分解は、投影データに基づいて実行され、結果としてベース材料の経路長推定(各検出要素(γ)および視野角(θ)についてθと示される)が生じる。この結果、A(γ,θ)のセットが生じる。
6.異なる視野角θは、加速度電圧の切り替えに起因して、異なる事前患者X線スペクトルを見ていることになる。したがって、その視野角内でどのスペクトルが印加されたかに依存して、経路長推定A(γ,θ)の共分散行列は異なることになる。
7.共分散行列における相違は、必ずしも必要ではないが、場合によっては画像化タスクに基づく逆重み付け方式と共に、再構成において考慮に入れることが可能である。
8.ベース画像は、全てのセットまたは、場合によっては重み付けされたそのサブセットA(γ,θ)、および
【数13】
を使用して、例えば、逆ラドン変換の何らかの実施によって、再構成される。
【0080】
手順3のための方式の例
1.X線露光の所定のシーケンスでオブジェクトを露光し、X線管の加速度電圧は回転の間に数回変更される。1つのシーケンス(視野にわたる)は、低、低、高、低、低、高、・・・であり得、別のこうしたシーケンスは低、高、低、高、・・・などであり得る。
2.検出において相互作用する光子をカウントし、蓄積されたエネルギーがどのしきい値間にあるかに基づいてビン・カウンタを増分する。
3.出力は、異なるX線スペクトルを使用して取得した投影データの少なくとも2つのサブセット(各検出要素および各視野角についての、ビン内のカウント)である。
4.X線露光の所定のシーケンスに基づいて視野をグループ化する。「低、高、低、高、・・・など」が所定のシーケンスであり、各露光についてN個のエネルギービンが集められる場合、各平均視野角
【数14】
について2Nビンが生成される(ただし、より少ない視野角の場合)。
5.材料ベースの分解は集約された投影データ(2Nビン)に適用され、結果として、ベース材料の経路長推定
【数15】
が生じる。平均視野角
【数16】
の本来の間隔よりも大きいことに起因して、空間分解能にはペナルティが付く。
6.
【数17】
が本来の分解能の材料ベースの分解において事前情報として使用され、
【数18】
からのA(γ,θ)の偏差を不利にする。言い換えれば、A(γ,θ)が決定されるとき、θは、印加された高エネルギーまたは低エネルギーのいずれかのスペクトルに対応する視野角であり、
【数19】
に関する情報は、例えば前述のように使用され得、上式で、
【数20】
は高エネルギーおよび低エネルギーのX線露光の平均視野角である。
7.ベース画像は、全てのセットまたは、場合によっては重み付けされたそのサブセットA(γ,θ)を使用して、例えば、逆ラドン変換の何らかの実施によって、再構成される。
【0081】
関心のある読者の場合、ベース材料の分解は、一般に、ヒト組織などの低原子番号の元素から構成される全ての物質は線形減衰係数μ(E)を有するという事実を利用し、そのエネルギー依存度は、下記のようにかなり近い数字で2つの基底関数の線形組み合わせとして表すことが可能である。
μ(E)=α(E)+α(E)
上式で、fは基底関数であり、αは対応する基底係数である。k吸収エッジが画像化に使用されるエネルギー領域内に存在するように十分に高い、高原子番号の画像化容積内に、1つまたは複数の元素が存在する場合、こうした元素の各々について、1つの基底関数を追加しなければならない。医療用画像化の分野では、こうしたkエッジ元素は、典型的には造影剤として使用される物質、ヨウ素またはガドリニウムであり得る。
【0082】
こうしたベース材料の分解は、[8]に記載されている。ベース材料の分解において、基底係数の各々の積分、A=∫αdlは、ソースから検出要素への各投影線l内で測定されたデータから推論され、i=1、・・・、Nであり、Nは基底関数の数である。一実施例において、これは第1に、各エネルギービン内の予期される登録カウント数を、Aの関数として表すことによって達成される。
【数21】
【0083】
上式で、λはエネルギービンi内の予期されるカウント数であり、Eはエネルギーであり、Sは、画像化されたオブジェクト上に入射するスペクトル形状、検出器の量子効率、およびエネルギーEを伴うX線に対するエネルギービンiの感受性に依存する、応答関数である。「エネルギービン」という用語は最も一般的には光子計数検出器に使用されるが、この定型句は、多層検出器またはkVp切り替え源などの、他のエネルギー分解X線システムも説明可能である。
【0084】
次いで、最大尤度法は、各ビン内のカウント数がポアソン分布確率変数であるという想定の下で、Aを推定するために使用され得る。これは、下記のように負の対数尤度関数を最小化することによって達成され、RoesslおよびProksaによる、K-edge imaging in x-ray computed tomography using multi-bin photon counting detectors,Phys.Med.Biol.52(2007年)、4679-4696を参照されたい。
【数22】
上式で、mはエネルギービン内で測定されたカウント数であり、Mはエネルギービンの数である。
【0085】
結果として推定される各投影線についての基底係数線積分
【数23】
は、画像行列に配置され、その結果は、各ベースiについての材料固有投影画像であり、ベース画像とも呼ばれる。このベース画像は、直接見ることができる(例えば、投影X線画像化において)か、または、オブジェクト内部(例えば、CT内)に基底係数αiのマップを形成するための再構成アルゴリズムへの入力とすることができる。いずれにしても、ベース分解の結果は、基底係数線積分または基底係数自体などの、1つまたは複数のベース画像表面とみなされ得る。
【0086】
完全のために、一実施形態による、X線画像化システム全体の一例を示す概略図である図8Bを参照しながら、X線画像化システム全体の例示的な例の簡単な概要を提供することが有用であり得る。
【0087】
この非限定的な例では、X線画像化システム100は、基本的にX線源10、X線検出システム20、および関連する画像処理デバイス30を備える。
【0088】
X線源はX線を放出し、このX線はサブジェクトまたはオブジェクトを通過して、画像化された後、X線検出システムによって登録される。いくつかの材料はX線の大部分を他よりも吸収するため、画像はサブジェクトまたはオブジェクトで形成され得る。システムは、X線源10のkV切り替え動作を実行可能にするように構成される。
【0089】
一般に、X線検出システム20は、任意選択のX線光学系によって合焦され、オブジェクトまたはサブジェクトあるいはそれらの一部を通過し得る、X線源10からの放射を登録するために構成される。X線検出システム20は、画像処理デバイス30による基本材料分解および/または画像再構成などの画像処理を実行可能にするために、適切なアナログ処理および読み出しエレクトロニクス(X線検出システム20に組み込み可能)を介して、画像処理デバイス30に接続可能である。
【0090】
一般的に使用されるX線画像化システムの一例がコンピュータ断層撮影(CT)システムであり、X線の扇ビームまたは円錐ビームを生成するX線源と、患者またはオブジェクトを介して伝送されるX線の部分を登録するための反対側のX線検出システムとを含むことができる。X線源および検出器システムは、通常は、画像化されるオブジェクトの周りを回転するガントリー内に取り付けられる。
【0091】
したがって、図8Aおよび図8Bに示されるX線源10およびX線検出システム20は、CTシステムの一部として配置され得、例えばCTガントリー内に取り付け可能である。
【0092】
この例では、X線検出システム20は光子計数マルチビン検出器であり、画像処理デバイス30は、本明細書で説明される基本材料分解および/または画像再構成のための入力として、X線検出器20から光子計数情報を受信し得る。
【0093】
図8Cは、一実施形態による、X線画像化システム全体の別の例を示す概略図である。この例では、X線画像化システム100は、X線源10、ガントリー12、および患者テーブル14、X線検出システム20、関連する画像処理デバイス30、様々なコントローラ31、32、33、34、オペレータコンソール35、およびディスプレイを備える。
【0094】
この例では、X線源10およびX線検出システム20は、アイソセンタ15に関連して回転するガントリー12内に取り付けられる。
【0095】
この非限定的な例において、様々なコントローラは、X線源を制御するため、例えばオンとオフを切り替えるため、および、kV切り替えモードなどの動作のモードを制御するための、X線コントローラ31を含む。システム100は、例えば、それぞれガントリーおよびテーブルの移動および回転を制御するための、ガントリー・コントローラ32およびテーブル・コントローラ33も含む。光子計数情報および他の可能な検出器出力の読み出しを含む、光子計数マルチビン検出器20の動作を制御するための検出器コントローラ34も存在する。
【0096】
本実施形態においても、X線検出システム20は、画像処理デバイス30による画像処理、基本材料分解、および/または画像再構成を実行可能にするために、適切なアナログ処理および読み出しエレクトロニクスならびにアナログおよび/またはデジタルのデータ経路を介して、画像処理デバイス30に接続可能である。
【0097】
システム100は、オペレータがシステムと対話できるようにするための関連するディスプレイを備えたオペレータコンソール35も含み得る。
【0098】
本明細書で説明される方法およびデバイスは、様々な方式で組み合わせおよび再配置が可能であることを理解されよう。
【0099】
例えば、特有の機能は、ハードウェア内、または、適切な処理回路要素によって実行するためのソフトウェア内、あるいはそれらの組み合わせ内に実装され得る。
【0100】
本明細書で説明されるステップ、機能、手順、モジュール、および/またはブロックは、半導体技術、汎用電子回路要素および特定用途向け回路要素の両方を含むディスクリート回路または集積回路技術などの、任意の従来技術を使用するハードウェア内に実装され得る。
【0101】
特定の例は、1つまたは複数の適切に構成されたデジタル信号プロセッサおよび他の既知の電子回路、例えば、特殊機能を実行するために相互接続されたディスクリート論理ゲート、または特定用途向け集積回路(ASIC)を含む。
【0102】
代替として、本明細書で説明されるステップ、機能、手順、モジュール、および/またはブロックの少なくともいくつかは、1つまたは複数のプロセッサまたは処理ユニットなどの適切な処理回路要素による実行のための、コンピュータプログラムなどのソフトウェア内に実装され得る。
【0103】
処理回路要素の例は、1つまたは複数のマイクロプロセッサ、1つまたは複数のデジタル信号プロセッサ(DSP)、1つまたは複数の中央処理ユニット(CPU)、ビデオ・アクセラレーション・ハードウェア、および/または、1つまたは複数のフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)あるいは1つまたは複数のプログラマブル論理コントローラ(PLC)などの、任意の適切なプログラマブル論理回路要素を含むが、限定されない。
【0104】
提案される技術が実装される任意の従来型デバイスまたはユニットの、汎用処理機能を再利用することが可能であり得ることも理解されたい。既存のソフトウェアを、例えば既存のソフトウェアの再プログラミングによって、または新しいソフトウェア・コンポーネントの追加によって、再利用することも可能であり得る。
【0105】
図9は、一実施形態による、コンピュータ実装の一例を示す概略図である。
【0106】
この特定の例において、システム200はプロセッサ210およびメモリ220を備え、メモリはプロセッサによって実行可能な命令を備え、これによってプロセッサは、コンピュータ実装可能ステップおよび/または本明細書で説明されるアクションを実行するように動作可能である。命令は、典型的にはメモリ220内に事前構成され得るか、または外部メモリデバイス230からダウンロードされ得る、コンピュータプログラム225、235として組織される。任意選択として、システム200は、入力パラメータおよび/または結果として生じる出力パラメータなどの関連データの入力および/または出力を実行可能にするために、プロセッサ210および/またはメモリ220に相互接続され得る入力/出力インターフェース240を備える。
【0107】
「プロセッサ」という用語は、一般的な意味で、特定の処理、決定、またはコンピューティングのタスクを実行するための、プログラム・コードまたはコンピュータプログラム命令を実行することが可能な、任意のシステムまたはデバイスとして解釈されるべきである。
【0108】
したがって1つまたは複数のプロセッサを含む処理回路要素は、コンピュータプログラムを実行するとき、本明細書で説明されるような明確に定義された処理タスクを実行するように構成される。
【0109】
処理回路要素は、前述のステップ、機能、手順、および/またはブロックの実行専用である必要はなく、他のタスクも実行することができる。提案される技術は、こうしたコンピュータプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体220、230を備えるコンピュータプログラム製品も提供する。
【0110】
例を挙げると、ソフトウェアまたはコンピュータプログラム225、235は、通常はコンピュータ可読媒体220、230、特に不揮発性媒体上で実施されるかまたは記憶される、コンピュータプログラム製品として実現され得る。コンピュータ可読媒体は、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、コンパクト・ディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ・ディスク、ユニバーサル・シリアル・バス(USB)メモリ、ハード・ディスク・ドライブ(HDD)記憶デバイス、フラッシュ・メモリ、磁気テープ、または任意の他の従来型のメモリデバイスを含むが、限定されない、1つまたは複数の取り外し可能または取り外し不可のメモリデバイスを含むことができる。このようにしてコンピュータプログラムは、コンピュータまたは等価の処理デバイスのオペレーティング・メモリ内に、その処理回路要素によって実行するためにロードされ得る。
【0111】
方法のフローまたはその関連部分は、1つまたは複数のプロセッサによって実行されるとき、コンピュータ・アクション・フローとしてみなされ得る。対応するデバイス、システム、および/または装置は、機能モジュールのグループとして定義され得、プロセッサによって実行される各ステップは機能モジュールに対応する。この場合、機能モジュールは、プロセッサ上で実行するコンピュータプログラムとして実装される。したがって、デバイス、システム、および/または装置は、代替として、機能モジュールのグループとして定義され、機能モジュールは、少なくとも1つのプロセッサ上で実行するコンピュータプログラムとして実装される。
【0112】
したがって、メモリ内に常駐するコンピュータプログラムは、プロセッサによって実行されるとき、本明細書で説明されるステップおよび/またはタスクの少なくとも一部を実行するように構成された、適切な機能モジュールとして組織され得る。
【0113】
代替として、主にハードウェア・モジュールによって、または代替としてハードウェアによって、モジュールを実現することが可能である。ソフトウェア対ハードウェアの程度は、純粋に実装選択である。
【0114】
前述の実施形態は単に例として与えられており、提案される技術がこれらに限定されるものと理解されるべきではない。当業者であれば、本発明を逸脱することなく、実施形態に対する様々な修正、組み合わせ、および変更が可能であることを理解されよう。特に、異なる実施形態における異なる部分解決策は、技術的に可能な他の構成において組み合わせ可能である。
【0115】
参照文献
1.US2012/0087463
2.US9,757,085
3.US9,836,859
4.Sebastian Faby,Stefan Kuchenbecker,Stefan Sawall,David Simons,Heinz-Peter Schlemmer,Michael Lell,Marc Kachelrieβによる「Performance of today’s dual energy CT and future multi energy CT in virtual non-contrast imaging and in iodine quantification:A simulation study」、Medical Physics 42(7)、2015年7月、doi:http://dx.doi.org/10.1118/1.4922654
5.Tao,A,Huang、R,Tao,S,Michalak,G,McCollough,C,Leng,Sによる、Dual Source Photon-Counting-Detector CT with a Tin Filter:A Phantom Study on Iodine Quantification Accuracy and Precision, Radiological Society of North America 2018 Scientific Assembly and Annual Meeting,2018年11月25日から11月30日、イリノイ州シカゴ、archive.rsna.org/2018/18014541.html。2019年2月18日アクセス済み。
6.Robert E.Alvarezによる「Estimator for photon counting energy selective x-ray imaging with multibin pulse height analysis」、Med.Phys.38(5)、2011年5月
7.Ehn,S,Sellerer,T,Mechlem,K,Fehringer,A,Epple,M,Herzen,J,Pfeiffer,F,Noel,PBによる「Basis material decomposition in spectral CT using a semi-empirical,polychromatic adaption of the Beer-Lambert model」、Phys.Med.Biol.62,2017年
8.Alvarez and Macovskiによる「Energy-selective reconstructions in X-ray computerised tomography」、Phys.Med.Biol.21,733
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
【手続補正書】
【提出日】2021-10-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線源(10)と多数の検出要素を有するX線検出器(20)とを備える、X線画像化のための装置(100)であって、前記X線源(10)および前記X線検出器(20)は、異なる視野角での投影セットを実行可能にするために、画像化されるべきサブジェクトまたはオブジェクトの周りを回転可能なサポート(12)上に配置され、
前記装置(100)は、前記投影セットを介して低エネルギーおよび高エネルギーの露光を実行可能にするための回転の間、低電圧および高電圧を含む少なくとも2つの異なる電圧を交互に印加するための切り替えkVpモードで前記X線源(10)を動作させ、それによって低エネルギー投影および高エネルギー投影を提供するように構成され、
前記X線検出器(20)は、光子計数を複数のエネルギービンに割り振るように構成された、光子計数マルチビン検出器であり、また装置(100)は、低エネルギー投影および高エネルギー投影の両方について対応する光子計数情報を提供するために、前記エネルギービンの少なくともサブセットからカウントを選択するように構成され、
前記装置(100)は、対応する光子計数情報に基づき、多数の前記低エネルギー投影および高エネルギー投影の各々について、および/または、少なくとも1つの低エネルギー投影および少なくとも1つの高エネルギー投影の多数の組み合わせの各々について、材料ベースの分解を実行するように、構成され、
前記装置(100)は、多数の前記低エネルギー投影および高エネルギー投影の各々について、および/または、少なくとも1つの低エネルギー投影および少なくとも1つの高エネルギー投影の多数の組み合わせの各々について、ベース材料の経路長推定を生成するために、前記材料ベースの分解を実行するように、ならびに、前記経路長推定に基づいて画像再構成を実行するように、構成され、
前記装置(100)は、ベース材料についての経路長推定、および前記推定された経路長の共分散を表す関連する共分散行列を生成するように、ならびに、前記対応する共分散行列に基づいて、低エネルギー投影および高エネルギー投影についての経路長推定を組み合わせるように、構成される、
装置(100)。
【請求項2】
前記装置(100)は、回転の間に、少なくとも2つの異なる電圧を前記X線源(10)に交互に印加するために、高速kV切り替えを提供するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記光子計数マルチビン検出器(20)は、低エネルギーまたは高エネルギーの露光の下で、各投影について、すなわち各検出要素および各視野角について、光子計数をエネルギービンに割り振るように構成され、前記装置(100)は、前記投影について対応する光子計数情報を提供するために、少なくとも前記エネルギービンのサブセットからカウントを抽出するように構成される、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記装置(100)は、前記印加されるX線スペクトルに関する情報に基づいて、材料ベースの分解を実行するように構成される、請求項1から3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記装置(100)は、少なくとも1つの低エネルギー投影および少なくとも1つの高エネルギー投影の光子計数情報を含む、近接する投影に基づく二重エネルギー経路長推定を生成するように構成される、請求項に記載の装置。
【請求項6】
前記装置(100)は、空間分解能とベース画像ノイズとの間のトレードオフを最適化するために、前記二重エネルギー経路長推定を事前情報として使用するように構成される、請求項に記載の装置。
【請求項7】
前記装置(100)は、選択された画像化タスクに依存して重み付け手順を選択的に実行するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記光子計数マルチビン検出器(20)のしきい値は、前記スペクトルのコンプトン部分をカウントするために1つまたは複数のビンが割り振られ、残りは前記スペクトルの光電部分に割り振られるように、割り振られる、請求項1からのいずれかに記載の装置。
【請求項9】
高エネルギー投影および低エネルギー投影についての前記光子計数マルチビン検出器(20)のしきい値は同一である、請求項1からのいずれかに記載の装置。
【請求項10】
低エネルギー投影についての前記光子計数マルチビン検出器(20)のしきい値は、高エネルギー投影のしきい値とは異なる、請求項1からのいずれかに記載の装置。
【請求項11】
前記光子計数マルチビン検出器(20)は直接変換材料に基づくものである、請求項1から1のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
前記光子計数マルチビン検出器(20)には、前記直接変換材料としてシリコンが提供される、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
請求項1から1のいずれかに記載のX線画像化のための装置(100)を備える、X線画像化システム(100)。
【請求項14】
前記X線画像化システム(100)および/またはX線画像化のための前記装置(100)は、コンピュータ断層撮影(CT)システムである、請求項1に記載のX線画像化システム。
【国際調査報告】